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2005/04/05 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第9号
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2005/04/05 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第9号

#1
第162回国会 法務委員会 第9号
平成十七年四月五日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   政府参考人
       金融庁総務企画
       局参事官     大藤 俊行君
       法務省民事局長  寺田 逸郎君
       財務省主計局次
       長        松元  崇君
   参考人
       弁護士
       日本弁護士連合
       会副会長     益田 哲生君
       日本司法書士会
       連合会会長    中村 邦夫君
       日本土地家屋調
       査士会連合会会
       長        西本 孔昭君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○不動産登記法等の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 不動産登記法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に弁護士・日本弁護士連合会副会長益田哲生君、日本司法書士会連合会会長中村邦夫君及び日本土地家屋調査士会連合会会長西本孔昭君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(渡辺孝男君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 不動産登記法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に金融庁総務企画局参事官大藤俊行君、法務省民事局長寺田逸郎君及び財務省主計局次長松元崇君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#6
○委員長(渡辺孝男君) 不動産登記法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
 不動産登記法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 一昨年の六月、政府の都市再生本部は、都市再生の円滑な推進に土地の境界及び面積等の地籍を整備することが不可欠であるとして、全国の都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進する必要がある旨の方針が示されました。しかしながら、近年は土地の境界をめぐる紛争が多発しており、境界を公的に明らかにする方法は境界確定訴訟しかないわけでございますよね。隣り合って暮らしている人と訴訟を起こさなければ解決できないというのは大変悲しい話で、早急に何らかの方策を打たなければならないと感じていたやさきの改正案でありまして、幾つかの点について質問させていただきたいと思います。
 そもそも不動産登記法は不動産及びその権利関係を正確に公示するための制度だと承知をしておるところでございますが、今になってなぜ新たに土地の範囲を明らかにするための制度を整備するのでしょうか。大臣、お聞かせいただきたいと思います。
#8
○国務大臣(南野知惠子君) 委員御指摘のとおりでございまして、不動産登記制度と申しますのは、不動産及びその権利関係、それを公正に、正確に公示するための制度でございます。登記所備付地図につきましては、残念ながらその整備が遅れているのが現状でございます。
 法務省といたしましても、地図整備が重要な課題であるということを十分認識いたしており、その整備のための努力を続けてきたところではございますが、先生御指摘のとおり、いろいろな紛争がある等、最近の社会経済情勢の変化にも伴い、正確な地図を整備することの重要性がとっても強く認識されております。
 平成十五年六月には、内閣に設置されました都市再生本部によりまして、民活と各省連携によります地籍整備の推進、その方針が示されました。その中におきましては、法務局が境界の確定等に関与しまして、地籍調査図、素図というのを迅速に正式な地図とするための整備を行おうということとされております。
 地図の整備を進めるに当たりましては、先生御案内のとおり、筆界の現地における地位についての争いが生じた場合、筆界の現地における位置について争いが生じた場合には、登記所におきましてその専門的知識を活用して迅速かつ正確に筆界を明らかにする仕組みを設けることが一つの方策ではないかというふうに考えられます。
 今回の筆界特定制度は、このような観点から不動産登記法を改正しまして、筆界を迅速かつ適正に特定するための制度を設けることとしたものであります。筆界をめぐります紛争を早期に解決することにより地図の整備の促進に寄与するものであると考えております。
#9
○吉田博美君 ところで、その不動産登記法は第十四条で登記所に地図を備え付けることとしているわけでありますが、その意義についてお聞かせいただけますでしょうか。
#10
○政府参考人(寺田逸郎君) そもそも、不動産登記法でございますが、この不動産登記制度は、不動産の具体的な内容、つまり、どういう不動産、それがどういう権利関係をもって存在するかということを公示して、これを社会的に示すことによりまして不動産の取引の安全と円滑に資するという、こういう目的でできているものでございます。
 この十四条におきまして登記所に地図を備え付けるということとしておりますのは、この公示されるべき権利の客体となる一つの土地というものの区画、どこにあるかということを明らかにする、そういう目的でございます。
#11
○吉田博美君 この筆界特定制度は、地図の整備を促進するという観点から、私は行政レベルで簡易迅速に境界を明らかにする制度と理解をしているところでございますが、具体的にどのように行われるのでしょうか。
#12
○政府参考人(寺田逸郎君) ポイントは三つございます。
 まず第一に、この土地の筆界を確定してほしいというように希望されている方、この方が登記所に、具体的には所有権の登記名義人ということになるわけでありますが、この土地の境界を明らかにしてほしいという申請をなさると。この申請というのが第一のポイントでございます。
 第二は、この申請が行われた場合に、事件ごとに専門家であります筆界調査委員というのを指定いたします。この筆界調査委員が調査を行って、様々な資料を基にこの筆界についての意見を述べるわけでございます。
 三つ目は、この筆界について筆界調査委員によって述べられた意見に基づきまして筆界の確定ということを筆界特定登記官という者がするということになります。具体的には、この登記官は意見聴取のための期日を開きまして、筆界の特定についての申請人のほかに、その関係者、相手方の土地の所有者等でございますが、そういったものを、意見を聴く機会を与えまして、それらすべての資料あるいは御意見、そういったものを総合いたしまして最終的に筆界の特定をこの登記官がするという、そういう制度でございます。
 この特定が行われました場合には、それに基づく書面ができまして、以後これに基づいて登記の手続が行われ得るという、そういう状況になる、こういう手続でございます。
#13
○吉田博美君 登記所備付地図の整備状況は現在どのようになっているのでしょうか。
#14
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほどの新しい不動産登記法で申しますと、十四条に基づくものでございますが、この十四条に基づく地図の整備状況は、平成十六年四月一日現在で全国に六百四十万枚ございます。そのうち、今申し上げました精度の高い、十四条に基づく地図が三百五十万枚、地図に準ずる図面が二百九十万枚、これはそれぞれ五五%、四五%に相当するわけでございます。地図に準ずる図面は、ほとんど明治時代にできました旧土地台帳附属地図、いわゆる公図と呼ばれているものでございますが、それでございます。
 登記所に備えられております地図約三百五十万枚の内訳でございますが、国土調査法に基づきまして作成されました地籍図が三百万枚をやや上回っておりますが、そのほかに土地改良法による土地所在図等が四十八万枚、法務局自身が作成した地図が四千枚、こうなってございます。
 ちなみに、地籍調査の進捗率でございますけれども、今年の三月三十一日現在では全国で約四六%になってございます。
#15
○吉田博美君 全国的に見て大分、半分ぐらいのところでございますが、今後は段階的に整備が進められるものと考えるところでございますが、ところで、整備対象地域をどのような基準で選定されるのでしょうか。
#16
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、先ほどの現状からお分かりになりますとおり、基本的には全国の国土調査法に基づく地籍調査というものを基にしているところでございます。
 しかしながら、現実にあります法務局が持っています地図に準ずる図面、多くは公図と言われるものでございますけれども、それと現状が一致しない地域で非常に混乱が著しいものがございます。これは特に都市部においては非常に深刻な問題を来しておりますし、そうでない部分、場所におきましても問題が多いところでございます。そういうところは国土調査法に基づく地籍調査というのも非常に困難な状況でございますので、このような地域を重点的に法務局が自ら地図を作成すると、こういう作業を行っているわけでございます。
 この選定でございますけれども、今申し上げましたように、都市部で地図の混乱が著しいということのほか、現実に非常に御不便をお掛けしているその緊急性の度合いというものを勘案いたしまして、毎年、翌年にどういう地域を対象としてこの作業を行うかというのを決めているわけでございます。
#17
○吉田博美君 緊急性の高いところだということでございますが、地図の整備は国の責任で行うことであり、実際、地図の作成作業は法務局の判断で進められておるわけでございますが、しかしながら、この改正案では、筆界特定は申請に基づいてのみ行うということとされていますが、どうしてでしょうか。地図の整備のために必要があれば職権で行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
#18
○政府参考人(寺田逸郎君) これは正直申し上げまして、私どもといたしましても、いろんな考え方があり得るというふうに思ったところでございます。
 これで職権で行うということになりますと、相当こちらの方から、重点的な地域について一挙に筆界の確定、特定ができるということも場合によっては考えられるわけでございまして、それが望ましいところがあることは、これは否定できないところでございます。
 他方、しかし、そういう職権をもってこのような手続を行うということになりますと、必ずしもそれを望んでおられない方がおられるのも、これも一方の現実でございまして、あえてはっきりはしないけれども現状維持的に推移している権利状態というものを明らかな紛争状態に逆に置いてしまうという懸念もないわけではございません。
 元々、そういう職権的なことというのは、もう少し様々な環境が整備された後でないとなかなかうまく機能しないのではないかというような考慮をいたしまして、このような当事者の申請ということで、紛争性を当事者が意識しておられることが中心となる地域というものを念頭に置いて手続を置くのが現実的ではないかと、このように考えたわけでございます。
#19
○吉田博美君 筆界特定が申請によってのみ行われることとなりますと、申請のない地域はいつまでたっても地図が整備されないことになるのではないかと、こういう心配があるんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
#20
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、申請のない地域というのをどう扱うかというのは非常に問題がないわけではございません。
 私どもも、先ほど申しましたように、特に混乱が大きい地域、地図がないことによって社会生活上もあるいは公の立場からも非常に問題が多いというように考えられる地域につきまして重点的に地図の整備状況、整備を、作業を行っているところでございます。
 これは今後もそういう方針で続けていくつもりでございまして、この筆界特定も、もちろんその地図整備の作業の中において行われる場合もありましょうけれども、しかし、そういうこととは別に、この全体の地図整備作業自体は続けていくと。それによって、問題がある場合には解決され、問題がない場合にはそのまま権利関係が落ち着いていくということは維持されるだろうというふうに考えております。
 このような地域、つまり、この申請がないところにおいて地図整備がしかし必要である地域においても、これをなるべく早く地図の整備された状況に置くというのは、長期的に見れば私どもの非常に強い念願でございますので、それは続けていくというように御理解いただきたいと思います。
#21
○吉田博美君 是非続けていただきたいと思います。
 筆界特定がなされた場合、その結果はどのような手続で地図や登記記録に反映されるのでしょうか。
#22
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、先ほどの手続のところで申し上げましたけれども、筆界特定がされた場合には、その筆界特定がされたということを土地の登記簿に記録いたしまして、登記簿からどのような筆界の特定がされたかということが明らかになるようにいたします。
 筆界特定の手続の中で登記簿に記録されました地積、あるいは筆界特定によって特定された筆界が、地図の、現実に置かれていました地図と一致しないということが明らかになったと、そういう誤りがあったという場合には、これを訂正する必要が出てまいるわけでございます。その場合には、表示登記の原則に基づきまして、当事者からそのような地積の更正あるいは地図の訂正等の申出をしていただいてこれをするということは当然のことでございます。
 なお、この当該特定された筆界以外の筆界についても、一義的にこれが明らかだということになりますと、地図の職権による訂正等もできないわけではございません。そういうようなことも補助的には念頭に置いて手続を進めていくと、こういうことになろうかと思います。
#23
○吉田博美君 ところで、筆界と所有権の範囲とは社会的事実として密接な関係があると考えますが、改正案では、筆界を特定するだけで所有権については判断しないとのことですが、その理由をお聞かせいただけますでしょうか、政務官。
#24
○大臣政務官(富田茂之君) 先生御指摘のように、筆界と所有権の範囲とは社会的事実として密接な関係があるのはもう事実でございます。
 ただ、筆界の特定は、元々、登記所が土地を登記した際に特定した筆界を発見し明らかにする行為ですから、固有の所有権の作用を行うものではございません。
 所有権についての判断を行政機関にゆだねようといたしますと、実質的には行政機関が固有の所有権の作用を行うことになりかねません。そのような考慮から、筆界特定制度におきましては、私法上の権利である所有権については判断の対象といたしませんでした。
 ただ、筆界特定制度の事実上の機能といたしまして、筆界のみを対象として特定した場合でありましても、客観的な筆界が特定されることによりまして、特定された筆界を越えて所有権を取得する私法上の原因がないと当事者の方が考えるときには、事実上、筆界をめぐる紛争に十分な解決が図られることになりまして、この点にも筆界特定制度の意味があるものと考えております。
#25
○吉田博美君 筆界と所有権界とは私は一致しているのが本来の姿ではあり、現実もそうだと考えておるところでございますが、筆界と所有権界とが異なることがあるのでしょうか。あるとすれば、どのような場合起こるのでしょうか。
#26
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、筆界ということの意味から御説明した方がよろしいかと思いますが、筆界は、これは不動産登記法上の一筆がどういう中身であるか、どういう範囲であるかということのための概念でございます。つまりは、公法上の概念と言ってよろしいかと思います。しかしながら、元々この公法上の概念である一筆というのを観念するのは、それが所有権の対象として機能するからであります。したがいまして、本来は、つまり理念的にはこの所有権の境と一筆の範囲というのが一致しているはずでございます。
 ただ、いろいろイレギュラーな現象が起きます。一番典型的には、長期間一筆の土地の一部を占有していると取得時効ということで所有権が移ってしまうということがございます。また、当事者間では一筆の土地の一部を譲渡するということも、これは私法上認められるという考え方で民法が今解釈されております。したがいまして、このような場合には筆界と所有権の境の境界が一致しないという現象が起きるわけでございますけれども、それはまた何らかの形で修正する手段があるわけでございます。
 そういう関係に立つわけでございますので、イレギュラーな所有権界と筆界というものが一致しない場合も、これは否定できないということになるわけでございます。
#27
○吉田博美君 今、何らかの形の中で修正する手段があるということでございますが、仮に筆界と所有権の範囲が異なっていることが分かったときには、どのような手続で一致させることができるのでしょうか。
#28
○政府参考人(寺田逸郎君) これは通常多く行われるやり方でございますが、時効取得でありますと時効取得した部分、譲渡する場合ですと譲渡する部分、あるいは譲渡された部分と言った方が正確かも分かりません、その部分を分筆して他方の土地に合筆するというようなことで、筆の境、筆界と境界と、所有権の境界とが一致すると、こういうことになります。
#29
○吉田博美君 筆界と所有権界とはまあ別物だとしましても、当事者からすれば同じ手続で所有権に関する紛争も解決することができればより便利だと考えます。所有権に関する紛争の調停を行えないこととした理由をお聞かせいただけますでしょうか。
#30
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、所有権ということになりますとこれは私権でございまして、権利そのものでございまして、これを行政機関が実質的にどちらにあるかということを決めてしまっていいのかと。そういうことになりますと、これは固有の司法権を行政機関が行うことになりはしないかという懸念があるわけでございます。
 他方、このような所有権をめぐる境界に関する紛争につきましては、現に土地家屋調査士のような専門家の皆さんが弁護士さんと協力なさいまして、いわゆるADR、裁判外の紛争解決手続を行っておられるという実績もおありになるわけでございまして、これが更に広がっていくだろうというようなことが見て取れるわけでございます。
 紛争解決の役割分担といたしまして、やはり司法、純粋の司法の部分は司法にゆだねるのが相当であろうというふうに考えられますし、国と民間の役割という意味でも、民間でもあえていろいろおやりになれるところを国がわざわざそれに屋上屋を重ねるということもまたいかがかと思う、そういう側面もあるわけでございます。そのようないろいろの考慮から、この手続においては所有権そのものに関する紛争は扱わないということにしているわけでございます。
#31
○吉田博美君 そのような国が関知するような部分ではないんじゃないかというようなお答えであったわけでありますが、例えば、隣接土地の所有者がそれぞれの所有権の範囲について合意していれば、その合意に基づいてもう筆界をそこで認定するようにすれば迅速な処理が図られると考えますが、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
#32
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃることは現象として実際に見ればあり得ることでございます。ただ、これを理論的に考えますと、筆界と筆界について当事者が合意しているのか、あるいは所有権の範囲について合意しているのかということは極めて当事者間ではあいまいであるかというふうに思われます。
 私どもといたしましては、所有権が合意されても理論的には筆界は動かないということは、そのとおり理論的にはその立場を維持せざるを得ないわけでございますが、しかし現実には、筆界というのは、この筆界特定のための手続にかかわる調査委員の皆様あるいは登記官にいたしましても、結局はそれを発見するという手続に出ているわけで、その発見するに際しまして一番有力な資料の一つは、やはり当事者が現にどう占有されて、どうお考えになっておられるかということでございます。
 したがいまして、今おっしゃられましたように、当事者が意識的には所有権の境として合意されたということも特定のための非常に有力な資料にはなり得るわけでございまして、現実には多くの場合、そのようなことで当事者がお立ち会いになられて、こことここが筆界ですねということで双方異議なく承認されれば、それが筆界と認められるケースというのもないわけではない、そういう現状にもあるわけでございます。
#33
○吉田博美君 新たな制度における筆界特定には法的にどのような効力があるのでしょうか。例えば、境界確定訴訟のように、特定された筆界はその後争うことができないというような効力はあるのでしょうか。
#34
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、結論から申し上げますと、境界確定訴訟のような効力はないわけでございます。つまり、境界確定訴訟におきましては、そこに、それまでどうであれ、境界が裁判所の引いたライン、線において決まってしまうという、そういう極めて強い効力があるわけでございますが、これはそのようなものではございませんで、先ほど来御説明申し上げましておりますとおり、実際に筆界がどういう状況にあるかということをいろんな資料に基づいて発見するという作用でございまして、したがって本質的には、それについて公の機関がこのような認定をしたという証明力のようなものがございまして、これは非常に事実上は相当重んじられる効力ではなかろうかと思いますが、しかし法律上確定的にそこに線が引かれたという効力、それを争えなくなる、そういう効力はないわけでございます。
#35
○吉田博美君 もう時間が余りないものですからちょっと飛ばさせていただきまして、この改正案では、筆界特定登記官は外部の専門家の中から任命される筆界調査委員の意見を踏まえて筆界特定を行うこととなっていますが、この意見は登記官の判断にどのような効力を及ぼすのでしょうか。
#36
○政府参考人(寺田逸郎君) この手続に筆界の特定のための調査委員をお願いするのは、やはりこの分野において筆界特定調査委員になるべき専門家の方々というのの実績が非常に上がってきているという背景がございます。こういう方々の御意見を伺った上で登記官、これまた最近では相当いろいろな訓練も経て、この筆界特定の分野においても相当の実績を地図整備の過程等で上げてきているわけでございますが、これがそれらの方々の意見を踏まえて最終的な認定を行うわけでございます。
 したがいまして、法律上はもちろんそれの筆界特定の調査委員の皆様が出されました意見と食い違う場合もあり得なくはないわけでございますが、しかし現実にはそれらの方々の、委員の方々の意見というのが十分に尊重されると、そういう運用になろうかというふうに見込んでおります。
#37
○吉田博美君 結局、筆界調査委員の意見は筆界特定登記官の判断を左右する重要な資料ということになりますが、この意見が出された場合、当事者はそれを知ることができるのでしょうか。また、その反論の機会は与えられるのでしょうか。
#38
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、筆界調査委員の意見というのは、この手続上は、法律上は筆界特定登記官に対して提出されますので、必ず当事者に開示するということは要求されておりません。しかし、やはり現実には紛争がある場合がほとんどでありましょうし、当事者の方からそれについての御意見を伺わなければ本当は正確な判断ができないということにもなり得るわけでございますので、この筆界調査委員の意見というのは筆界特定手続の記録の一部といたしまして申請人と関係人は閲覧することができるという扱いにいたしております。当然その閲覧結果を踏まえていろいろ御意見をお出しになる、それについては十分に参酌した上でこの登記官が最終的な判定を行うわけでございまして、運用上は、筆界特定をする前に当事者にこの意見についてどうお思いになりますかということを聞くということも、これはもう十分現実の正確性、妥当性を担保するためには必要になってくる場面も出てくるというふうに認識はいたしております。
#39
○吉田博美君 この制度では最終的に筆界を特定する権限は筆界特定登記官にあるわけでございますが、筆界特定登記官にこのような重要な権限行使を認める根拠をお聞かせいただけますでしょうか。
#40
○政府参考人(寺田逸郎君) 元々この表示登記の分野は、昭和三十五年に正式に法律上の制度ができまして、それまで権利の登記を扱ってきた法務局、登記所としては人材の育成が求められるようになったわけでございます。それ以後、この表示登記の専門家というのを相当意識的に育てて育成をしてまいりました。測量の関係の訓練所にも送って、今日では相当多くの表示登記の専門家が法務局の中にもいるわけでございます。この法務局の表示登記というのは本質的には権利の客体を決めるという責任を負っているわけでございますから、権利の登記とはまた違った意味で非常に責任が重いわけでございますので、こういう仕事についてはそれなりの専門家が必要だということもまた背景としては言えようかと思います。
 そういうことで、権限の上でもあるいは訓練を経たという意味でも、今日では表示登記専門官の中の、とりわけこれまでキャリアを十分に積んできた者という者をこの筆界特定登記官というふうに、権限が非常に重たいものでございますけれども、そういった者として任命するということも不合理でないという判断に至っているわけでございます。
#41
○吉田博美君 登記官の果たす役割あるいは調査委員の果たす役割というのは極めて重要だと思うわけでございますが、さて、この改正案で創設される筆界特定手続につきましては土地家屋調査士などの専門家を大いに活用することが肝要だと考えますが、具体的にどのように活用されるのでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。
#42
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども申し上げましたとおり、このような手続をつくることができるという背景には、当然このような専門家の方々の実績が今日では非常に積まれて評価も上がってきているということでございます。
 具体的には、今回の法案によりまして土地家屋調査士の皆さんなど専門家が活躍されるということを想定いたしますと、次のような場面ではないかと思います。
 第一は、先ほど来申し上げております筆界調査委員でございます。これらの方々を専門資格者として筆界委員に任命するということによって、これらの方々の専門知識、これまでの様々な御経験というものが生かせるんではないかというふうに考えるわけでございます。
 第二は、これらの専門資格者の方々のうち、争訟的な手続というものを十分に担える方については筆界特定手続の代理ということを行うということがむしろ合理的ではないかと。もちろん、弁護士さんの皆さんもこういうことが行えるわけでございますけれども、弁護士さんでない方々においてもこれらの代理業務を行うということを認める、これらによって、両面でこれらの制度を通じて権利関係の安定というものに寄与していかれるだろうというふうに考えております。
#43
○吉田博美君 その筆界特定手続の代理業務を行うことが認められた資格者は、その知識や経験を活用し、制度の円滑な運用に貢献することが求められていると考えますが、その点についてお考えはいかがでしょうか。
#44
○政府参考人(寺田逸郎君) これまでも、その不動産登記において校合事務と言われます申請、新たな申請についての代理をなさるのはこれら不動産登記においては土地家屋調査士の皆さん、あるいは司法書士の皆さんでありまして、その割合は九割以上を占めているわけでございます。この新しい制度におきましても、弁護士さんのほか、これらの方々が制度の運用に十分に寄与されるだろうというふうに私どもは確信しているわけでございます。
#45
○吉田博美君 そこで大臣にお伺いいたしますが、新たな制度を大いに活用し、地図の整備が促進されますことを期待いたしますが、地図の電子化を進めることも重要だと考えます。地図の電子化と今後の地図の在り方について、大臣の御所見をお伺いいたします。
#46
○国務大臣(南野知惠子君) 委員御指摘のとおりでございまして、今後の地図の在り方として、やはり地図の電子化の推進、これは重要な課題であると考えております。現在、法務局におきましても、地図情報の適正な維持管理、そのためには登記所が保管する地図の電子化を図っているところでございます。
 今後とも地図の電子化を推進しまして、登記事務の効率化を図っていこうとしているところでございます。将来は、オンライン化によりまして地図情報の提供を可能にすること、それによりまして国民の皆様にとってより利便性の高いものにしていきたいと考えているところでございます。
#47
○吉田博美君 大臣、そこで現在進められている登記簿の電子化についてもできるだけ早く完成をさせ、登記情報と地図情報を連携させ、登記事務全体の効率化を図るべきだと考えますが、大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。
#48
○国務大臣(南野知惠子君) 吉田議員御指摘のとおり、登記地図、登記情報と地図情報、これの連携につきましては、昨年一月からあります地方法務局におきまして試行的なシステムを導入して、検証作業を行っております。その結果を踏まえまして、全国展開に向けたシステム開発を行っているところでございます。
 今後は、登記簿の電子化をできるだけ早く完成させる、それを完成させるとともに、登記情報と地図情報とを電子的に連携させまして、登記制度が国民にとってますます利便性の高いものにしていきたいと考えております。
#49
○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
 筆界特定という新しい制度ができましたので、時間が許す限りこの条文を丁寧に見ていきたいと、こんなふうに思っています。
 その前提で、まず寺田民事局長にお尋ねしたいんですが、百二十三条の一号に筆界の定義があります。この筆界特定制度の前提となる筆界の定義について御説明をお願いできませんでしょうか。
#50
○政府参考人(寺田逸郎君) 今お示しになりました百二十三条に筆界の定義がございますが、「表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」と、こういう定義がされております。
 これはまず観念的に、これは登記法上の概念だということを明らかにいたしておりまして、表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間における線、境界線だということを明らかにしているわけでございまして、これは先ほども御質問にも出ましたけれども、いわゆる所有権の境とは別の概念で、民法上は一つのものの境ということにはなりますが、それを手続上は表示登記という登記の概念として一つのものとしてとらえているということを示しております。
 第二に、これは境を構成するものとされた二以上の点と直線から成っているわけでございまして、具体的には非常に多くの点を結んだそれぞれの直線ということにもなるわけでございますけれども、それぞれを結んだ直線、それ自体がこの筆界ということになっているわけでございます。
#51
○前川清成君 百二十三条の一号に「当該一筆の土地が登記された時にその境を構成する」と。その時期の限定も入れておられますので、ちょっとこの点、もう少しこの制度を利用する国民の皆さん方に分かりやすいように御説明お願いできませんでしょうか。
#52
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、先ほども申し上げましたとおり、あくまで登記法上の概念であります。土地の権利の登記をする場合に、その前提といたしまして、その権利の登記の対象が一体どういうものであるかということがこの表示の登記になるわけでございます。その表示の登記がされる以前には土地というものは登記法上は全く存在しないものでありまして、したがいまして、ここで言う土地と土地の境というものも存在しないわけでございます。
 少なくとも一方の土地に登記ができた時点でそのものの権利の対象としての境が出るということを示すために、ここは登記のときにということが入れられているわけでございます。
#53
○前川清成君 もう少し分かりやすい説明ができないかなと、こういうふうに思っているんです。
 例えばですけれども、自然状態においては土地にラインは引いていないわけですけれども、国が公法上、登記をする際に線を引きましたと、それによって、一物一権主義によって取引の対象になりました、それで登記制度と結び付きましたと、私はこんなふうに理解をしていたんですが、先ほど吉田委員の質問にもありましたけれども、所有権の限界としての境目を特定する制度ではなくて、筆界を、いわゆる境界を特定する制度ですので、もう少し国民の皆さん方に分かりやすく境界という意味、筆界というのを御説明する必要があるんじゃないかなと、こんなふうに思っているんです。
 その関係でお尋ねしたいんですが、所有権の範囲とは異なるということが百三十五条の二項に明記してあります。筆界調査委員は、前項の調査に当たっては所有権の境界の特定を目的とするものでないことを留意しなければならないと、こういうふうな条文があるんですが、今の関連でお聞きしたいんですが、この百三十五条の二項によって調査委員が特に留意すべきことというのは具体的には何を指すのか、分かりやすくお教えいただけますでしょうか。
#54
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、先ほども申し上げましたとおり、当事者の方々というのは、申立てをされる際に必ずしも所有権の境と公法上の不動産登記、表示登記上の概念であります筆界というものを意識されてないことがかなり多いんではないかということをまず念頭に置いているわけでございます。
 現地に筆界調査委員が参りまして、一体境はどこですかということを問題にした場合に、当事者の方がここです、あそこですといろんなことをおっしゃるわけであります。それは現実には占有の境であったり、あるいは所有権の境を意識されていることが多いんではないかというこれまた見方があり得るわけでありまして、そういうところから一歩離れまして、この手続というのは筆界を定めますよということを筆界調査委員の方も当事者の方に御説明されなきゃいけませんし、また自らそのことを十分に念頭に置かれなきゃいけないわけであります。
 具体的には、先ほど申したように、例えば長い間占有していて現実にこの土地と土地の境に垣根があるということになりますと、当事者の方々はここが境ですとおっしゃるかもしれません。それは、しかしながらここで言う筆界の認定にストレートに結び付くわけではありませんで、そこが仮に最終的には所有権の境ということであっても、ここで言う筆界を探してくださいという求めに応じて確定すべき筆界というのは別のところにあるかもしれない。そのことを意識して手続を進めなきゃならない。このことが先ほどお示しになった条文で明らかにされているわけでございます。
#55
○前川清成君 筆界というのは、専門家の間ではもちろん理解しているわけですが、民事局長がいみじくもおっしゃったとおり、この制度を利用される国民の方々にとっては知らない概念ですよね。重要なのは、自分の所有権がどこまで及んでいて、どこまで土地を利用できるかということが関心があることであって、大昔、その土地が登記されたときに国がどの線でラインを引いたか、これはどうでもいいことだと思う。
 で、お聞きしているのは、国民の皆さん方に所有権の境目と筆界と、どのように簡単に平易に説明して、そしてこの制度を利用しやすいものにしていただくか、誤解のないようにしていただくか。そういう意味でこの筆界の定義というのは大変重要じゃないかなと、こんなふうに思っているんですが、もう少し工夫はできないんでしょうか。
#56
○政府参考人(寺田逸郎君) 私どもといたしましても、実はその点がこの制度の一つのポイントでございますので、この点を御理解いただくというのが大変に難しいと同時に大事であろうというふうに思っているわけでございます。
 筆界というのは、先ほど申しましたように、所有権とは異なりますものですから、所有権の境とは違うということをむしろ御説明をしなきゃならないだろうというふうに思います。所有権の境とは離れて、この土地が国として一つのものとして扱う境はどこかということが本来は決まっている。その本来決まっている線を見出すのがこの筆界特定手続だというような御説明になろうかと思います。
#57
○前川清成君 それじゃ、今のお答えに関連してお尋ねしますが、所有権の範囲とは別に、筆界を法務局において特定する制度を設ける、その必要性といいますか、その点についてお答えいただけますでしょうか。
#58
○政府参考人(寺田逸郎君) 元々、おっしゃるとおり、紛争の当事者から見ますと、所有権の範囲を確定したいというのが実際の希望ではないかということは私どもも十分認識はいたしております。
 ただ、先ほども御質問出ましたとおり、現実の占有あるいは現実の所有の範囲と筆界というのは本来はおおむね一致している、あるいは本来は全く一致していると言うべきかもしれませんが、ものでございます。分からなくなっているときは、それどれもが分からなくなっているのが極めて多い、そういうケースが多いわけでございますので、私ども、仮に筆界というものと所有権の境というものがほとんどのケースにおいて食い違っているというのが世の中の現実である場合には、こういう制度というのは機能しないだろうというふうに逆に思うわけであります。
 多くは、所有権の境を見いだしてほしいというのは、結局のところ、筆界を見いだすと片付くケースがこれまた現実に、私ども、地図の整備作業の中で筆界未定の土地を探して、そこの当事者の方々に立会いをいただいていろいろ御相談いたしますと、結局そういうことが多いわけでございまして、そういう意味からも、このような手続を設けますと、現実の紛争あるいは現実に直面されているいろいろな困難、国民の方々が直面されている困難というのは大方解消できるんではないかなと。そういうような、ややアバウトな言い方でございますけれども、現実的な立場に立ってこのような制度をつくっている、このように御理解をいただきたいということでございます。
#59
○前川清成君 今の御説明とその百三十五条二項とが少し乖離するんじゃないかと思いますが、少し前に進めたいと思います。
 それで、境界確定訴訟という制度があるわけですけれども、境界確定訴訟とは別に、今回この筆界特定制度を設けられた趣旨をお尋ねしたいと思います。
 何だか、聞いたところでは、当初の案ではもう境界確定訴訟をなくしてしまってこの筆界特定制度一本にするというようなお考えもあったかに聞いていますが、この制度を立ち上げる理由についてお伺いしたいと思います。
#60
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃいますとおり、この制度をつくるに当たりましては、専門家の皆様を中心といたしまして研究会を設けて、その研究会の御意見を聞きまして、それから政府としてどういう案を作るかという作業に入ったわけでございます。
 その過程では、この手続というのをむしろ非常にメーンのものとしてとらえて、これによってすべてを解決できるようにしようというところから、所有権の争いもこの手続の中で何とかあっせん等で解決できるようにできないかというような問題ですとか、元々効力を非常に強くして最後は行政訴訟で争うようにして、現在の境界確定訴訟、裁判所が行われておられます境界確定訴訟は廃止してはどうかというような考え方も浮上しておったことは、これは事実でございます。
 しかしながら、一つは、この制度の効力を強めまして最終的に行政訴訟で争い、逆に境界確定訴訟を廃止するということになりますと、この手続の中に、相当いろいろなケースを考えた非常に複雑な手続も場合によっては組み込まなきゃならないということになるわけでございます。また、最終的に境界が決まったということになってそれが行政訴訟で争われても、行政訴訟で否定されるともう一度最初から手続が元へ戻って、境界の新たな認定をした上で再び登記官によってそれが確定されるというような、ぐるぐる回りと言ってはややオーバーかもしれませんが、というようなことにもなりかねないわけでございます。
 他方、境界の紛争が非常に大規模な範囲で起こっている場合はともかくといたしまして、普通に一対一で境界の争いが起こっている場合においては、現に境界確定訴訟というものがあって、それはそれなりに実績を上げてこられておられ、裁判所におかれましても、かつては非常にこの訴訟は厄介なものといたしまして、長い時間が掛かって、手続も非常に複雑なもので、専門家もなかなかいなくて、厄介な訴訟の一つとして考えられていたわけでございますけれども、相当スピードアップをされまして、新たに全くそのものを廃止して行政訴訟型にしてしまうというほどのニーズが全体として圧倒的であると、あるいは、全体としてそちらの方がメリットが大きいというのは、どうもややそこまでは言えないんではないかなという見方が出てきたわけでございまして、つまり、この新しい専門家と登記官とで行います手続というものの実績というのがまだ全くない段階で、それのみで行政訴訟でやってしまうというのは筋の上では一つのあり得る考え方ではありましょうけれども、しかし、現実にはなかなか社会的に御理解を得られないのではないかというようなところから、最終的にこの手続というのは、言わば登記官といたしましての認定を一つの非常に登記所としてその実質的な正しさというのを前面に出しはすれ、あくまで法律上の効力としては証明力にとどめ置く、こういう制度として組むのが一番現実的じゃないかというふうに考えたわけでございます。
#61
○前川清成君 今の大変難しいお答えでしたので、私なりに理解したところを申し上げますと、境界と所有権の範囲とおおむね一致しているという社会的事実を前提として、法務局によって迅速に境界を確定しようと、筆界を確定しようと。それによって所有権に関する紛争の処理を、所有権の範囲に関する国民の皆さん方の、国民の間に存在する紛争を迅速に解決すると、こういう趣旨で裁判とは別に制度を設けたんだというふうに理解していいんですかね。
#62
○政府参考人(寺田逸郎君) 私が、この手続を設ける際に、所有権についての当事者の御希望といいますか、その範囲がよく分からなくなっているからはっきりさせてほしいという御希望が、現に境界が分からないという形で出てくるということは社会的な事実としてはあるわけでございます。
 したがいまして、当事者がそのことを意識された上で境界の確定がされればもうそれで事は解決するというふうにお思いであればこの手続が非常に有用であると、そういう場合が多いんではないかというふうに考えているわけでございます。もちろん、当事者の中には、境界というのは所有権と別のものというふうにお考えになって、それは所有権と別のものだから、しかしここでは所有権とは別のものの解決として出していただく分には構わないという、例えば相手方の当事者がそういうふうにお思いの場合は、それはそういう扱いをもちろんいたします。そのために、先ほどおっしゃったような調査委員というのはそのことを意識しながら手続を進めなきゃいけないということを決めているわけでございますが、しかし、当事者あるいは関係者の方々が先ほど申しましたような紛争の解決にとってこういう手続で十分だという場合には、これで相当多くの社会的な役割が果たせるわけでございますので、そういう意味でこの手続を新たに設けたと、こういう趣旨でございます。
#63
○前川清成君 ですから、裁判とは別個にこの制度を設けたのは、簡易に、そして迅速に解決したい、そういう要望にこたえるためと理解していいんですか。
#64
○政府参考人(寺田逸郎君) 最低程度の手続的保障は必要でございますが、裁判をやるというほどの重たい手続というのを避けたいという方々にとっては、これは有用な手続であろうというふうに理解をいたしております。
#65
○前川清成君 今のところは、例えば意見聴取の機会をどういうふうに運営していくかとか、筆界特定登記官ですか、それの主宰の下での手続を職権的に進めるか当事者的に進めるかというのにもかかわってくると思うんですね。だから、大きな理念として、この筆界確定制度が安く早くを目指すのか、高く丁寧を目指すのかというのは重要なところではないかと、そう思って今二度にわたってお尋ねしたんですが、いかがでしょうか。
#66
○政府参考人(寺田逸郎君) 私どもとして答えるとすると、適正な価格で適正な手続でということに役所側から見るとなるわけでございますけれども、しかし、理念といたしましては、訴訟よりは低コストでということを意識いたしておりますし、またできるだけ当事者の方々の具体的なニーズに沿った手続のやり方をしたいと、このように考えているわけでございます。
#67
○前川清成君 百二十三条は、一項で筆界の定義で、二項に筆界特定の定義を置いておられます。この筆界の特定についてなんですが、定義規定でありながら、筆界特定とは何か、位置を特定することと、問いをもって答えてしまっているんですね。
 そこでお伺いしたいんですが、この特定というのはどういう行為を指すのか、お伺いします。
#68
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、具体的に申しますと、この線がここと、このAという土地とBという土地の筆界ですよということを決めること、これが特定でございまして、具体的には、先ほど来申し上げておりますとおり、裁判所における境界確定訴訟における確定とは異なりまして、その線を新たに引いて、その線で今後筆界が決まってしまう、それが争えないというものではございませんで、具体的にはここで「この章の定めるところにより、」と書いてあるところから、結局のところ裏から分かるわけでございますけれども、争える、裁判では更に争えるもの、つまり先ほど申した証明力が与えられるのみで、最終的な確定的な効力のないそういう定め方、これがここで言う特定ということになるということを意味しているわけでございます。
#69
○前川清成君 定義としては特定書によって筆界を指し示すことと、こういうふうに理解していいんでしょうか。
#70
○政府参考人(寺田逸郎君) そのこと自体はそのとおりでございます。
#71
○前川清成君 この法律に限らずなんですけれども、以前、民法の改正が問題になりましたときに電磁的記録物というのはどういう意味ですかというふうに大臣にお尋ねして、私も大臣もよく分かりませんねというお話をさせていただきました。
 今回、この筆界にしても筆界特定にしても、あるいは、もうお尋ねしませんが、四号で関係土地の定義も挙がっています。これ、ちょっとこの関係土地という日本語、関係土地に関する日本語を読んだだけでイメージとして理解できる方というのは少ないんじゃないかなと思うんですけれども、もう少しその法律が市民にとって利用しやすいものにするためにはできるだけ分かりやすい日本語で表記すると、そういう御努力、これはもちろんしていただいていると思いますが、これからも更にお続けいただきたいということを特にお願いしたいと思います。
 次なんですが、吉田委員からの質問にもありましたが、その質問に答えて大臣も地図の重要性について言及されました。これ、お答えいただくのは民事局長で結構なんですが、不動産登記法十四条で言う地図、十四条一項に言う地図ですね、これは何なのか、ちょっと定義をお答えいただきたいと思います。
#72
○政府参考人(寺田逸郎君) 不動産登記法の十四条の地図は、その地図をもって現地がどこか分かるということが一番のポイントでございます。
#73
○前川清成君 ですから、定義としてはどうなるんですか。
#74
○政府参考人(寺田逸郎君) 区画を明確にし、地番を表示するということで、区画を明確にするということがここでのポイントでございます。
#75
○前川清成君 十四条、不動産登記法十四条二項にありますが、一筆又は二筆以上の土地ごとに作成され、土地の区画を明確にし、かつ地番を表示した地図と、こういうふうに理解してよろしいですか。
#76
○政府参考人(寺田逸郎君) そのとおりでございます。
#77
○前川清成君 そこでお伺いしたいんですが、地積測量図というのがよく日本語として使われます。この地積測量図というのはどういうものなのか、そしてこの地積測量図が十四条一項に言う地図に当たるのかどうか、併せてお答えいただけますでしょうか。
#78
○政府参考人(寺田逸郎君) この地積測量図は、表示登記の申請をされる際に添付しなければならない図面の一つでございまして、土地の分筆等があります際に、その新たな土地が生ずるわけでございますので、その土地の区画をそれ自体として明らかにするものが地積測量図ということになるわけでございます。
#79
○前川清成君 ですから、十四条一項に言う地図には当たらないんですよね。だから、どの点で当たらない。
#80
○政府参考人(寺田逸郎君) 十四条一項の地図といいますのは、これはその土地の位置関係、区画を全体的に明らかにして公示するために設けているものでございます。地積測量図というのは、これは申請書の附属書類ということで、必ずしも全体に土地の位置関係を示すものとして公示するものとして不動産登記法上設けられたものではございません。
#81
○前川清成君 先ほど吉田委員の質問にもありました公図というのがあります。公図やこの地積測量図が十四条四号に言う地図に準ずる図面と、こういうことでよろしいでしょうか。
#82
○政府参考人(寺田逸郎君) いわゆる公図、つまり明治時代にできました台帳附属地図は、これは準地図、地図に準ずる図面として扱ってございますが、地積測量図は地図に準ずる図面という扱いをしておりません。
#83
○前川清成君 地積測量図が地図に準ずる図面として扱われていないのは、全体の位置関係がはっきりしていない、その土地の形状、面積は指し示しているけれども、隣の土地や周辺との関係が明らかではないから、こういうことですよね。
#84
○政府参考人(寺田逸郎君) その周辺の土地、特に問題となる分筆ですと、その反対側の分筆されるべき土地というのの位置関係は地積測量図によっても明らかになるわけでございますけれども、これは元々そういうことを外部にそのことによって位置関係を示すものとして作られているわけではないということを申し上げているわけでございます。
#85
○前川清成君 今、以上のことを前提にちょっとお伺いしたいんですが、たしか二月に奈良県の土地家屋調査士会さんがシンポジウムを開かれました。私も滝副大臣も出席をさせていただいたんですが、そのときに、土地家屋調査士会が実費を四百万お出しになって、皆さん方の手弁当でGPSを使って測量をされました。
 今のお話で、例えば地積測量図については全体としての位置関係がはっきりしないということであれば、このGPSを使うことによって絶対値といいますか、地球上のどこの土地かというのがはっきりするわけですから、このGPSを活用することによって地積測量図を十四条一項に言う図面として活用できないものだろうかな、こんなふうに思っているんですが、この点いかがでしょう。
#86
○政府参考人(寺田逸郎君) 仮に、すべての土地に地積測量図というものが存在するという前提でお考えになられますと、今のようなお立場も決して理論的に間違っているわけではございません。GPSを使うかどうかはともかくといたしまして、全体としての位置関係が分かり、かつ、それ自体として区画が明確であれば、それはそれをつなぎ合わせることによって法十四条の地図になり得ることも否定できないわけでございます。
 ただ、問題は、地積測量図というのはあくまで新しい申請、表示登記の申請の際に当事者から附属書類として出される、申請書の附属書類として出されるもので、全体をカバーするものではないわけでございます。そこが一番の今おっしゃったことを実現しようとする場合のネックということになろうかと思います。
#87
○前川清成君 百二十五条で、「筆界特定は、筆界特定登記官が行う。」と、こういうような条文があります。
 そこでちょっとお伺いしたいんですが、登記官がどういうような仕事をされているのかというと、残念ながら国民の皆さん方にとっては余り身近なものではないように思います。登記官というのがどういうお仕事なのかというのを簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
#88
○政府参考人(寺田逸郎君) 現在、登記官というのは、登記官という名前の付いた者に限らず、登記に従事している者全体でいいますと、約一万人法務局にいるわけでございます。この登記官は、元々明治の時代から裁判所の書記官の位を持つ者が登記を扱っていたという伝統をくむものでございまして、戦後、登記が裁判所から分かれまして法務局の仕事になった場合に登記全体を扱っております。
 ただ、今委員の御指摘になられましたとおり、戦後、登記制度ができました際は、あくまで所有権の移転でございますとか、あるいは抵当権の設定でございますとか、そういう権利の登記が中心でございましたので、この間の登記官というのも基本的には当事者の申請によってその書類上の誤りがないかどうかということを確認して最終的に登記簿上にデータとして記録をすると、そういう役目を担っていたわけでございます。ところが、昭和三十五年にそれまで税務署が持っておりましたこの表示登記の前身であります台帳事務というのが移管された後に、それ、並行して法務局がそれを持ってたわけでございますけれども、それが昭和三十五年に登記という形で一元化されて表示登記になったわけでございます。
 それ以後、登記官の仕事というのも二つに大きく言って分かれるわけでございまして、一つは、先ほど申しました書類上の審査というのが非常に大きな中心になります権利の登記の登記官でございます。他方、新しくできました表示登記においては職権主義も規定されておりまして、この職権主義も背景に当事者の申請があって、それが疑わしい場合には自ら現地に赴いて、例えば建物の床面積が本当に正しいのかどうか、あるいは土地の境界というのはこの申請どおりなのかということを調査できる、そういう権限も持っているわけでございまして、言ってみれば権利の登記を担当いたします登記官に比べまして外回りの仕事もこなす、非常にどちらかというと動的な性格を持つ審査、こういうものを担当している登記官もいるわけでございます。
#89
○前川清成君 それで、登記官の方がどのように採用されているのかということと、特に表示登記に関して、この法案についてですから表示登記についてで結構ですので、資質や能力についてお伺いしたいと思います。
#90
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、通常の法務局の職員というのがまず土台にあるわけでございます。先ほど申しましたように、全国にこれに関係する者は約一万人いるわけでございますが、様々な法律的素養を必要とする戸籍でありますとか、あるいは供託でありますとか、そういうのを含めまして法務局の中で様々な法律事務を行うわけでございます。その者の中から、二十年以上の経験がありまして、特にこの分野で十分にやっていけるということを法務局側で判定をいたしまして登記官に任命すると、こういう仕組みになっております。
#91
○前川清成君 ちょっと法務局で認定すると言われるとどういう能力でどういう資質なのかよく分からないんですが、その筆界の特定に関して、境界を決めるに当たって具体的にどのような能力をお持ちなんでしょうか。
#92
○政府参考人(寺田逸郎君) 今申し上げました登記官の中から、特に表示登記の専門家をどうやって見いだすかということでございますが、これは今登記官を養成する過程でもそうでございますが、その後においても、表示登記というのが法務局の中で比較的新しい事務であり、かつ職権的な権限の行使も必要な非常に重要な事務であるということから、中心となります者は六か月間の測量研修を含めて様々な研修を表示登記について行った上で、表示登記の専門の者を表示登記専門官というように任命をいたしております。
 今回、この境界の確定、境界の特定に当たる登記官というのはそういう表示登記の専門家の中から特にベテランで、これまで以上申し上げたような様々な職務上の経験と訓練、で、併せまして、特に最近では地図の備付けが必ずしも十分でないということから法務局自ら地図の作成作業に当たっているわけでございますが、そういう作業の中心となってこの筆界の事務に精通した者と、こういう者を充てたいと、このように考えているわけでございます。
#93
○前川清成君 寺田さんのお話にありましたように、まず法務局に採用されると、そこからある一定の能力を持った人が表示登記に関する登記官に任命されると、こういうことですよね。
 そこでお伺いしたいのは、どのような能力があればその登記官に任命されるのかどうか。今おっしゃっていたように、ただ長期間勤めれば自動的に登記官になれるというのではないと思いますし、六か月間測量の学校へ行けばそれだけでなれるというものでもないと思います。今回、その筆界を登記官の方がお決めになると、準司法的な機能を与えるわけですから、登記官はこういうような能力を持っていますと、だから筆界を特定することができるんですというふうに御説明いただかないと国民は安心してこの制度を利用できないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#94
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるのはそのとおりでございます。
 この登記官は、具体的に、先ほど申しましたように現在の表示登記の中でも様々、現地へ出掛けまして当事者の方々といろいろな場面で協議をさせていただくと、これは公式には協議じゃございませんで、もちろん事実認定の一環でございますが、そういう面で折衝技術というのを身に付けておる者が非常に多くなってきております。
 他方、法務局の仕事の中でも訟務が一番典型でございますけれども、手続的な保障ということについて相当に踏み込んだいろいろな職務上の経験もいたしております。また、基本的には権利の登記もそうでございますけれども、私どもの仕事というのは当事者の間に利害の対立というのがあることをある程度前提にせざるを得ないような仕事でございます。手続的公正さ、手続的な保障というものについての意識を非常に高く持たなければならないわけでございます。
 現実にどのような者を任命するかということになりますと、これは人事の一環でもございますので、なかなか総合的にこれだということを申し上げるのは難しいわけでございますが、以上言ったようないろんな側面というのを総合的に判断いたしまして表示登記の専門の登記官に任命しているのが現実でございます。その中から特に信頼するに足る者をここで言う筆界特定登記官に任命したいと、このように考えているわけでございます。
#95
○前川清成君 私がお聞きしているのは、経験やこれまでどういう仕事をしていたんですか、それをお聞きしているんじゃないんです。現地に行ったことがある、ベテランです、六か月以上測量の学校に通いました、それだけで筆界を決める権限を持つ特定登記官に任命していただいたら困るわけです。私がお聞きしているのは、筆界の確定に当たってどのような具体的なノウハウを持っておられるんですか、能力を持っておられるんですかと。逆の言い方をすると、どのような基準でその特定を定める登記官を任命するんですかということをお伺いしたいわけです。そうでないと国民は安心してこの制度を使えません。お願いします。
#96
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほど申し上げましたように、短い条件というのを申し上げるのは困難でございますけれども、しかしながら、これは当事者の間の権利の確定ではございませんけれども、しかしそれに非常に深くかかわっていることでございますので、そういう手続的公正さということについての意識というのが非常に高いということが何よりも条件であろうかと思います。また、仕事上のノウハウと申しますか、能力の上では表示登記の知識、それからこの筆界というものの歴史を含めた知識、そういうものが大変に重要であろうかと思っております。
#97
○前川清成君 時間がありませんので、午後に。
#98
○浜四津敏子君 公明党の浜四津敏子でございます。
 既に様々な角度から同僚議員より詳細な質疑が行われてまいりましたので、私は可能な限り重複しないように質問させていただきたいと思います。
 まず初めに、法務大臣に、今回の改正の背景事情及びメリットについてお伺いいたしますが、今回の不動産登記法改正によりまして、筆界特定登記官が筆界の位置を特定する制度を創設するということとされておりますが、このような改正をする背景としてどのような事情があり、また、この制度を創設することにより国民の皆様にとってどのようなメリットがあるのでしょうか、お伺いいたします。
#99
○国務大臣(南野知惠子君) 今回の改正の背景といたしましては、平成十五年六月、都市再生本部から、民活と各省連携による地籍整備の促進というような方針が示されたものでございます。都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進するということとされたことでございますが、また同時に最近では、裁判以外の専門家を活用した手続によりまして国民の権利の実現や保護を図るということも重要であると認識されております。
 先生お尋ねの筆界特定制度は、一方の土地の所有権登記名義人などの申請によりまして、筆界特定登記官が外部専門家の意見を踏まえまして筆界を特定する制度でございます。
 例えば、筆界の登記をしたり、分筆の登記をしたり、地図を作成します作業の中で筆界に争いがあることが判明いたしました場合など、筆界確定訴訟によるまでもなく、境界確定訴訟によるまでもなく、申請に基づきまして必要な資料を収集し、簡易かつ適正に筆界を特定するためであるということでございます。
 また、したがいまして、筆界特定制度には、当事者から見ますと、境界確定訴訟のように隣人を訴えたり、またかつ、証拠資料を自ら集めなければならないというようなこともございますので、そういう負担を負うことがないように筆界につきましての公の機関の判断を求めることができるということが一つのメリットであろうかなと思っております。
#100
○浜四津敏子君 今の御説明によりますと、この制度の目的は、土地の筆界の迅速適正な特定を図り、筆界をめぐる紛争の解決に資すると、こういうことのようでございます。
 そこで、まず、議論の前提として伺いますが、筆界特定制度が対象とする筆界とはどのようなものなのか。境界確定訴訟は公法上の境界を対象とすると、こう言われておりますが、筆界特定が対象とする筆界はこれと同じものなのか、別のものなのか、法務省にお伺いいたします。
#101
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、結論といたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、境界確定訴訟の対象となる境界と、筆界特定制度の下での筆界というのは同じものでございます。元々、この筆界特定制度が対象とする筆界というのは、境界確定訴訟と同様に、所有権とは別に、公法上一つのものの範囲の外周、隣のものとの境、区別するものという意味での概念でございます。
#102
○浜四津敏子君 次に、富田政務官にお伺いいたします。
 筆界特定手続と境界確定訴訟は、いずれも公法上の境界を対象とするもののようでございますが、この二つの手続の関係についてでございますけれども、一方が他方に前置されるわけでもなく、併存する関係になると考えてよいのでしょうか。その場合、二つの制度は相互にどのような関係に立つことになるのでしょうか、お伺いいたします。
#103
○大臣政務官(富田茂之君) 筆界特定手続は、境界確定訴訟を提起する場合の必要的な前置手続ではございません。したがいまして、筆界特定手続を経ることなく境界確定訴訟を提起することも可能ですし、境界確定訴訟が提起された後も、その確定前であれば当事者の申請により筆界特定制度を利用することができます。
 両者の関係についてですが、筆界特定がされた後、境界確定訴訟が提起された場合には、裁判所は、筆界特定の結果を裁判の資料として利用し、争点整理等に活用することができます。
 仮に境界確定訴訟と並行して筆界特定手続が行われることになった場合には、境界確定訴訟が係属する個々の裁判所の判断によりまして、筆界特定が終了することが見込まれる時期に訴訟の進行を合わせる等の方法により両手続の連携を図ることができるものと考えております。
#104
○浜四津敏子君 筆界をめぐる紛争を解決するという観点からは、筆界を法的に確定する効力が必要だという考え方もあるのではないかと思います。筆界特定が登記官の認識を示すにすぎず、筆界の位置を法的に確定する効力はないとすれば、わざわざ法的な効力のない制度を設ける意義はどこにあるのでしょうか、法務省にお伺いいたします。
#105
○政府参考人(寺田逸郎君) これは二つのポイントございます。
 一つは、現実の問題といたしまして、相当多くの部分が筆界の確定により所有権についての様々な両者間のトラブルを含めた問題というのが解決することが現実として多いであろうというように考えられることでございます。
 その場合には、わざわざ裁判所等で所有権の争いとして持ち出さなくても、当事者がこの筆界の特定によってお隣との間の問題解決したというふうにお思いになれば、それはそれで終了するわけでございますので意味があると、こういうことになります。
 もう一つは、裁判所の境界確定訴訟といいますのは、これは先ほど申し上げましたとおり、非常に実績もあり、かつ長い歴史で非常な信用もあるわけでございますけれども、他方、何といいましても、やや重たい手続、時間も掛かる手続ではございますし、それに、全体として土地がどういう状態になるかということを広い範囲で首尾一貫して確定するということを必ずしも意識されない手続でございます。
 逆に、このような登記所を中心といたします、調査委員の方々のノウハウもおかりするわけでございますが、そういう手続においては、全体を見た上でその資料を利用して専門家とともに認定するわけでございますから、効力は仮に証明する程度の弱いものでありましても、現実には大きな効果を発揮し、これが裁判所においても利用できるという余地も十分に残されているわけでございますので、その二つの面で十分に意味があるというふうに考えております。
#106
○浜四津敏子君 法案第百四十三条によれば、筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見を踏まえ、対象土地の筆界特定をしと、こういうふうに定められております。これは筆界登記官が筆界調査委員の意見を踏まえて特定すると。
 筆界調査委員という外部専門家を関与させる制度にした理由はどこにあるのでしょうか、法務省にお伺いいたします。
#107
○政府参考人(寺田逸郎君) 外部専門家の方々はもうこの分野において非常に実績をお持ちで、社会的に評価されるようなそういう方々、多くなってきておられます。こういう方々の知見を活用することによって、公的機関が示す判断というのもより正確になるというねらいがございます。そういうことで、正確になりますと、これが結局はこの制度の信用というものを増すということになります。
 何といいましても、土地の境界、筆界をめぐる手続というのはなかなか当事者の御納得が得られないと最終的な意味での紛争の解決にはならないわけでございます。そういう意味で、外部の方々のお知恵、お知見というものを十分に活用して、その信用性が高まるということによってこの制度のねらいが生きてくるんではないかというふうに考えているわけでございます。
#108
○浜四津敏子君 法案第百二十八条には、筆界調査委員の欠格事由が列挙してあります。それによれば、弁護士法、司法書士法、土地家屋調査士法の規定による懲戒処分により、除名又は業務の停止の処分を受けたこと、公務員で懲戒免職の処分を受けたことが列挙されております。
 なぜ、これらの士業及び公務員についてのみあえて欠格事由として法定されているのか、お伺いいたします。
#109
○政府参考人(寺田逸郎君) この筆界調査委員というのは、筆界特定についての事実の調査を行うという仕事でございまして、特別にどういう資格でなければならないということが法律上決まっているわけではございません。
 しかし、現実には、そのような専門的知識経験を有する者として、表示登記の専門家でおられます土地家屋調査士の皆さん、あるいは境界確定訴訟についての代理業務をこれまで行ってこられた弁護士の皆さん、あるいは簡易裁判所における認定司法書士の皆さん、これらの方々が代表的であり、それらの方々以外に資格者としてはなかなか考えにくいところでございます。
 それで、この資格を有する方々がそれぞれの業法に基づく懲戒処分を受けておられる場合には、これはやはり類型的にこの委員をしていただくのはやや難しいかなというふうに考えられますので、法欠格事由として規定したわけでございます。また、この仕事自体は公務でございますので、公務員として過去に懲戒処分を受けた方々、これもやはり適当ではないのではないかと、こういうことで欠格事由としてそれらも挙げたわけでございます。
#110
○浜四津敏子君 次に、法案第百二十七条一項には、「筆界調査委員若干人を置く。」と、こう規定してあります。
 つまり、筆界調査委員というのが複数になることも予定されているようですけれども、このような場合、筆界調査委員が調査及び意見の提出をするに当たり調整や連携が図られるような仕組みになっているのでしょうか。具体的に調査及び意見の提出がどのようにして行われるのかについてお伺いいたします。
#111
○政府参考人(寺田逸郎君) 非常にややこしい事件になりますといろんな方々の御参加をいただかなければなりません。また、非常に大規模な筆界確定になりますと、これは相当地域的にも広いということで、複数の方々に分担していただくということも実務の運用としては考えなきゃならないわけでございます。
 そういうことから、ここでは複数の筆界調査委員が置かれるということも予定されているわけでございますけれども、現実にはこれらの方々の間で、当然のことながら、例えばある筆界と次の筆界とを分担される場合にはその間の意見調整が必要でございますし、また権利の歴史の部分でありますとかあるいは測量の部分でありますとか、そういう分担になりましてもそれらの間でも当然調整が必要になるわけでございます。もちろん、合議体を構成するということによって多数決で決まるわけでございませんで、それぞれ御意見をお持ちの場合にはそれぞれ御意見をお出しいただくということにはなるわけでございますけれども、しかし実際はすり合わせをなさった上で意見の一致が見られるような運用が図られるということを期待しているわけでございます。
#112
○浜四津敏子君 法案第百三十二条には、申請の却下をするべき場合を列挙してありますが、その一項五号によれば、「申請が対象土地の所有権の境界の特定その他筆界特定以外の事項を目的とするものと認められるとき。」と、その場合には申請を却下しなければならないとされております。
 しかし、多くの申請人は筆界と所有権界とが一致していることを前提として筆界特定を申請するものと思われます。そうだとしますと、多くの場合に申請は却下されることになってしまうのではないでしょうか。なぜこれが却下事由とされているのか、その理由についてお伺いいたします。
#113
○政府参考人(寺田逸郎君) これが所有権の境の確定ということになりますと、これは先ほども申し上げましたとおり、本来は司法作用に属することでございますので、それを行政手続で行うということは適当でないということから、ここはあくまで公法上の線であります筆界というものの認定ということを中心とした手続にとどめているわけでございます。
 したがいまして、形式的にはなるわけでございますけれども、仮に所有権の線を引いてくださいという申立てであることが分かった場合には、それは却下せざるを得ないと、事の性質上そういうことになるわけでございます。
 ただ、運用の面で申し上げますと、当然のことながら、当事者がどこまでそれを意識されてきたかということを確かめるということも必要でございます。確かめた上で、それが結局のところ、筆界の確定、筆界の特定をしてもらえばそれで所有権の争いも片付くからそうしてほしいということであれば、これはこの手続を御利用、そのまま御利用いただいてよろしいわけでございます。あくまで、いや、ここではどうも筆界のラインと所有権のラインが違っていそうだと、しかし私は一発で解決してほしいので所有権もお願いしますということになりますとこの手続は利用できないと。そういう、余り恐らく例はないであろうことのためにこの規定を対処するための規定として置いているわけでございます。
#114
○浜四津敏子君 次に、法務副大臣にお伺いいたします。
 今回の改正案は、筆界特定制度を創設するだけでなく、司法書士法及び土地家屋調査士法を改正し、司法書士及び土地家屋調査士に新たな権限を与えるということになるわけですが、この改正はどのような背景に基づくもので、どのような意義を持つものでしょうか、お伺いいたします。
#115
○副大臣(滝実君) 一連の司法制度改革につきまして、当法務委員会でもいろんな法律を御審議をしていただいてきたわけでございますけれども、その司法制度改革の一環として、法律専門職だけでなくて隣接法律の領域の皆さん方にもその専門的な知識を生かして活動してもらわなければこれからの日本の法制度というのはうまく回転しない、こういうようなことがございまして、そういう意味で、言わば民事における民間の紛争手続についても、隣接法律専門職種の皆さん方に代理業務始めそういうものにかかわっていただくと、こういうようなことになっているわけでございます。
 そこで、今回この法案を出すに当たりまして、特に司法書士あるいは土地家屋調査士、この皆さん方は既に紛争解決のための研修を積んでおられる、あるいは実績も、相談業務としての実績も積んでおられる、そういうこともございますので、この紛争解決のための代理業務というものを、この法律で、言わばこの種のものとしては初めてでございますけれども、代理業務ということもこの中で規定させていただくと、こういうことでございますし、また司法書士については、上訴の手続も従来よりは幅を広げてきたと、こういうようなことでございます。
 したがって、そういう意味では、それなりの専門的な知識をこれによって生かしていただける、紛争もこの中で解決していただくということでございますから、かなりスピーディーな解決がこの法律によって図られると、こういうことだと思っております。
#116
○浜四津敏子君 最後に、政務官にお伺いいたします。
 簡裁訴訟代理関係業務を行うことができる司法書士に対しては、今回の改正により更に多くの権限が与えられるわけですが、改正法が成立した場合には司法書士にはどのような役割が期待されることになるのでしょうか。
 また、土地家屋調査士にとっては、民事に関する紛争について、当事者を代理することができる権限が初めて付与されることになります。また、筆界特定の手続についての代理はすべての土地家屋調査士に認められることになります。改正法が成立した場合には、土地家屋調査士の皆さんにどのような役割が期待されることになるのでしょうか、お伺いいたします。
#117
○大臣政務官(富田茂之君) まず、司法書士の先生方についてでありますが、法務大臣の認定を受けた司法書士は、今回の改正により一定の範囲で筆界特定手続についての代理業務を行うことができることとなるほか、簡裁におきまして、自ら代理人として関与している事件についての上訴の提起、紛争の目的の価額が百四十万を超えない事件についての仲裁手続の代理ができることとなります。
 司法書士につきましては、これまでに蓄積した専門的知識と豊富な経験を生かして、今回の改正で新たに追加された権限を適切に行使し、国民の権利の保護に一層寄与することとなることを期待しております。
 次に、土地家屋調査士の先生方についてでありますが、土地家屋調査士は、今回の改正により筆界特定手続についての代理業務を行うことができることとなるほか、一定の研修を経た上で、筆界が明らかでないことを原因とする民事紛争について、民間紛争解決手続についての代理業務を弁護士との共同受任により行うことができることとなります。また、今回の改正において導入される筆界調査委員につきましては、多くの場合、筆界の専門家である土地家屋調査士が筆界調査委員となることが想定されているところであります。
 したがいまして、土地家屋調査士につきましては、筆界特定手続の代理人や筆界調査委員として新しい制度の円滑な運用のために中心的な役割を果たすとともに、その専門的知識を生かして民間紛争解決手続における代理業務を行うことにより、国民の権利の保護に一層寄与することが期待されていると考えております。
#118
○浜四津敏子君 終わります。
#119
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 境界確定訴訟がいろんな点で使い勝手が悪いということが言われてまいりました。今回の筆界確定の制度がうまく運用されれば、大変国民の利便の向上になると思っております。
 そこでまず、筆界特定の制度、登記の問題についてお聞きをいたします。
 境界確定訴訟の場合に、訴訟は裁判所、登記事務は法務省と別々に行われていることから、連携が図られていないということの問題がしばしば指摘をされてまいりました。この新たな筆界特定の場合は、その結果がどういうふうに登記に反映をされていくんでしょうか。
#120
○政府参考人(寺田逸郎君) この筆界特定手続が行われました結果、登記簿に記録された地積が、これが誤りだったと、あるいはこの特定された筆界が登記所の備付地図と一致していないというようなことが分かったということになりますと、地積更正あるいは地図の訂正をするという必要が生ずるわけでございます。これは、現在のところは当然のことながら表示登記の一環でございますので、当事者からの申請、訂正申出等に基づいて行われるわけでございます。もちろん、この場合の手続においてもそのとおりでございます。
 ただ、この筆界特定の結果、結局、その土地の周辺の土地との関係が全体として一義的に決まってしまうということが登記所において明らかに分かるということになりますと、これは登記所は職権でも地図の訂正等ができることになるわけでございます。そういう面で、従前よりはスムーズな関係が維持できているというふうに考えております。
#121
○井上哲士君 当事者からその手続がない場合、筆界は特定したけれども登記の手続がない場合というのはどういうふうになるんでしょうか。
#122
○政府参考人(寺田逸郎君) 基本的には当事者の申請あるいは申出を待つということになるわけでございますけれども、それでも、そういうものがなくて、かつ、今申し上げましたように全体としてその土地の位置が一義的に決まる程度に明らかであると、つまり問題の、特定された筆界以外の筆界も全部明らかであるということになりますと、これは職権でも地図の訂正ができることになります。ですから、そういう扱いをすることも十分登記所としては考えているわけでございます。
#123
○井上哲士君 その四辺が特定されていない、かつ当事者の申請がないという場合は、実際にはこれは筆界特定をされているということは、そうすると、登記簿上は全然分からないということなんですか。
#124
○政府参考人(寺田逸郎君) 登記手続の上では、この登記簿上に筆界特定がされたということは、その旨が明らかにされます。しかし、今申し上げましたのは地図の訂正等で、自動的に地図が訂正されるかというと、これは必ずしもそうではないということを申し上げているわけでございます。
#125
○井上哲士君 そうすると、登記簿上にこういうふうに筆界特定がされたという中身も含めて書かれるということになるのか、何らかの書類添付をするようなことになるのか、そこはどうなんでしょうか。
#126
○政府参考人(寺田逸郎君) この筆界特定の特定書というものがどういう形でするかということは、まだ実務上は、法律上は何も決まっておりませんけれども、その番号と、特定書の番号と登記簿上の記載とがつながりが持てるような形で明らかになるということでございます。
#127
○井上哲士君 そうすると、登記簿上に書かれた番号を見て、筆界特定がどういうふうにされたかということが、まあ言わばインデックス機能みたいな形で国民に分かるようになると、こういう理解でよろしいでしょうか。
#128
○政府参考人(寺田逸郎君) そのとおりでございます。
#129
○井上哲士君 この筆界を特定をした場合は、境界確定訴訟が提起をされても、この筆界が、判決が確定するまでは筆界が効力を有するということだと思うんですが、民事調停などの場合は訴訟が提起されますと決定などが無効になるということとの関係でいいますと、どうしてこの制度の場合は訴訟が提起をされても効力を有するという形になっているんでしょうか。
#130
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、登記所としてのこの筆界特定の手続としてはもう最終的な結論が出ているわけでございますので、それはそういう意味では明らかに登記簿上もするという仕切りでございます。
 したがいまして、当然、逆に申し上げますと、この筆界特定の効力というのはあくまで証明力にすぎないということを十分に関係者の方々には御説明する、そういう周知徹底策というものを別に取らなきゃならないということは十分認識いたしております。
 従来から、裁判所における境界確定訴訟とのつながりがないという問題がございまして、私どももそこはいろいろと裁判所の方とも今後御連絡を取って様々な解決策を考えていかなきゃならないというふうに思いますが、境界確定訴訟の結果が登記簿上に一対一の関係で必ず反映されるということでないのはおっしゃるとおりでございまして、提起された後に、したがって、その提起された訴訟によってこの筆界特定手続の結果というのが覆ることは今度の新しい規定によっても明らかにされているところでございますけれども、それはそれでやむを得ないというふうには思います。従前と状況としては残念ながらそこは変わりがないというところでございます。
#131
○井上哲士君 そうしますと、筆界特定がされて、それに当事者が異議があって訴訟が提起をされても、手続があれば登記は行われるということになります。
 そうしますと、見掛け上は紛争が解決をしたように見えるけれども、実は紛争は続いているということになるわけですね。それを知らずに、例えば第三者がその土地を不当な売買で取得をするというような可能性もあると思うんですが、例えば訴訟が提起をされた場合には登記への反映を保留をするとか、いろんな工夫はできるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうでしょうか。
#132
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、ここは運用の工夫である程度はカバーできるかなとも思っております。例えば、筆界の特定手続が終わりまして、先ほど申したように当事者からの申請あるいは職権でそのことを地図の訂正等に反映できる状況になりましても、現実に登記所の方で境界確定訴訟が提起されたということが分かれば、それは地図の訂正等はしばらく保留するというようなことも運用としてはあり得るわけでございます。それには、一つは裁判所から、裁判上の運用の問題ではございますけれども、しかし境界確定訴訟が提起された、あるいは判決が確定したということの御連絡をいただくのがベストということになるわけでございます。
 そこには裁判との問題で様々、一義的にそういうことを決めることについての問題点もあろうかとは思いますが、しかし、当事者の方の御利便を考慮するならばそういうことが望ましいというように、今後、次第に意識されていくだろうというふうにも見込んでもおります。したがいまして、裁判所ともこの点は十分に御協議を申し上げたいというふうに思っております。
#133
○井上哲士君 この制度を利用する上でやはり費用の問題というのがあるわけですね。
 去年、当委員会で派遣で愛知に行きましたときに、愛知県の土地家屋調査士会の代表からいろんなお話聞いたんですが、境界紛争の当事者として相手が県とか国とか市町村という場合があると。ところが、この愛知のお話でいいますと、そういう事件があっても相手の自治体の方が予算がないから応じられないと、こういうケースもあるというお話を聞くんですね。
 やはり、今回のこの手続というのがある意味では本来国の責任で行うべき問題だということも、衆議院でもいろんな御答弁でもあるわけですが、少なくとも一方の当事者が国や地方自治体の場合には必ず共同申請になると、そして負担を軽減すると、国民の。こういうことは是非徹底をしていただきたいと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
#134
○政府参考人(寺田逸郎君) これは実際はなかなか難しい問題でございます。どんな場合にでも、このような場合に官側にも特定手続を取るような申請をするということになりますと、普通に民と民との間では申立人、申請者側に費用が課せられるということに対して、その境目の相手方が官であればその費用の負担は応分にということになるというのも必ずしも納得できる制度設計かどうか、それは大いに議論のあるところではないかというふうに思われます。
 また、私どもとしては、当然その相手が官であるからといって、その境界に接しられておられる当事者の方がいつもいつも濫用的に申立てをされるとは思いませんけれども、しかし濫用的に申立てをされることもまた考えておかなきゃならないので、その場合に官が必ずそれに応じなきゃならないというのもいかがかと思うわけでございます。
 そういう意味で、この問題について必ず官の側も申立てをしていただかなきゃならないという運用をするのは適当ではないと思っておりますけれども、しかし、現実には官の側、官民の境界というものについてはいろんな経緯が起こって、相当官の側にその境界線を明らかにすべき立場におありになるケースもないわけではございませんので、事案によっては筆界特定登記官においてそういう相手方の方、特に相手方の管理をしておられる官の側にそういう申立てをするように促す場合もないわけではないというふうにも思っております。
#135
○井上哲士君 大変歯切れの悪い御答弁なんですが、去年お聞きしたのは、実際には必要な場合であっても、自治体の方が予算処置がしてないからということで断る場合もあるというお話なんですね。ですから、こういう制度をよくやはり地方自治体にも徹底もそうですし、特にやはり国が当事者の場合はやはり基本的にこの共同申請になるということで、本来国が決めるべき公的な性格を持ったものですから、そういう運用を是非徹底をしていただきたいと思います。
 最後にもう一つ、費用の点でいいますと、どれだけ費用が掛かるのかよく分からないという不安があると思うんですね。この手続の場合、どの範囲まで例えば測量するかということも調査委員の方が決めるということになりますから、申請人から見ますと、どれぐらいの費用が一体掛かるんだろうかというのが見えにくいというのがあると思いますが、その辺、使いやすくする上でどういう運用上の工夫をされているのか、お願いします。
#136
○政府参考人(寺田逸郎君) これは境界確定訴訟においてもかねてから指摘されているわけでございますけれども、一体どのぐらいの費用について当事者が負担しなきゃならないかということが必ずしも明らかでないと。そのことが紛争の解決を妨げているという面もないわけではございません。
 私ども、今の段階で一義的にこういうケースが多くて、こういうケースがどのぐらい負担が現にあるかということを明らかにするだけの準備がないわけでございますけれども、しかし、この制度がスタートいたしましてある程度実績ができましたら、これを相当パターン化してお示しできるという工夫はしたいと思っております。
 また、現にこの手続がスタートした個別のケースにおいても、できるだけ早くその当事者の方に一体どのぐらいの御負担があるか、これは非常に重要な問題でございますので、当事者の方にとっては、そのことを明らかにできるような運用を登記官の方あるいは調査委員とも協力して、そういうような運用になるように努力をしたいというふうに考えております。
#137
○委員長(渡辺孝男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十六分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#138
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、不動産登記法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人の方から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、弁護士・日本弁護士連合会副会長益田哲生君、日本司法書士会連合会会長中村邦夫君及び日本土地家屋調査士会連合会会長西本孔昭君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、本委員会における今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方について申し上げます。まず、益田参考人、中村参考人、西本参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、益田参考人からお願いいたします。益田参考人。
#139
○参考人(益田哲生君) 日本弁護士連合会の副会長の益田でございます。
 本法案につきまして、私どもの意見を申し述べたいと思います。
 それでは、恐縮です、座ってやらせていただきますので。
 本法案につきまして、まず結論から申し上げますと、私は、司法書士法の改正部分のうち、上訴の提起の代理業務について、後に指摘いたします点を除き、それについては基本的に反対するものではございません。特に、土地の筆界特定手続につきましては、運用いかんによっては現在の制度よりも簡易迅速に土地の境界が確定するのではないかと期待するものであります。
 御承知のとおり、現在、土地の境界をめぐる紛争につきましては、最終的には裁判所における境界確定訴訟においてその解決が図られているわけですが、当事者が適切な訴訟資料を提出できない等の事情から判決までに相当時日を要することがございまして、これでは有効な紛争解決制度として機能していないのではないかとの指摘を受けております。境界の確定をもっと円滑に行うことができないのかと、こういった御要請があることは私どももよう承知しておるところでございます。しかしながら、この土地の境界をめぐる紛争は国民の権利義務に影響を及ぼす争い事の最たるものですから、その解決に当たりましては、国民の裁判を受ける権利を十二分に保障したものでなければならないと考えます。
 当初示されていた土地境界確定制度では、境界確定登記官は土地所有者からの申請がなくても職権で境界確定の手続を開始することができ、しかも境界確定登記官の行った境界確定の処分につきましては行政事件訴訟法に基づく取消し訴訟等でのみ争うことができまして、現下、現在認められております民事訴訟としての境界確定訴訟は提起することができないとされるなど、国民の裁判を受ける権利に重大な影響を及ぼすものでした。
 これに比して、今回示されました土地筆界特定制度は、あくまで関係者の申請に基づき手続が開始されることとされておりますし、筆界特定登記官が行った筆界特定について不服あるときは従来どおり裁判所に境界確定訴訟を提起することができるなど、国民の裁判を受ける権利に対して一定の配慮がなされておりまして、私どもとしてもこれを評価するものであります。
 しかしながら、この制度の運用に当たりましては、以下のような点についてなお十分な配慮、対応が必要ではないかと考えるものです。
 まず第一点ですが、手続上、当事者に十分な主張、立証の機会を与える必要があると考えております。筆界の特定、確定といいますのは公法上のものですから、直接国民の権利義務に影響を及ぼさないという考えがございます。確かに概念上は、筆界とは登記された一筆の区画の土地とこれに隣接する他の土地との公法上の境界であり、個人の土地所有権の範囲を画する私法上の境界、いわゆる所有権界とは異なるとされております。しかしながら、筆界確定は所有権の範囲に実質的に大きな影響を与えるものです。
 恐縮ですが、お手元の図をごらんください。
 この図は、左側の一番の土地を甲が所有し、右側の二番の土地を乙が所有していたといたします。甲が図のように建物を建てたのに対して、乙が一番と二番の土地の境界はABの線であり、斜線部は境界を越えているから撤去せよと、こういったことで争いになった場合を例に挙げてみます。
 この場合、甲の方は、両方の土地の境界はAB線ではなくCD線であるから、斜線の建物は自分の所有地内に建てたものであると、このように主張します。したがいまして、裁判の第一の争点というのは、筆界が果たしてどこなのかということになります。そして、もし筆界がABということになりますと、甲の方では、仮にそうだとしても、ABCDで囲まれた土地については自分が二十年以上占有しているのであるから、時効でこの土地の部分を取得したと、このような主張をするのが一般の事例としては多いわけです。
 このように見ますと、土地の所有権の範囲をめぐる争いであるとはいいましても、筆界というものはその結論に大きな影響を及ぼすものであります。このように、裁判の実務とか国民の認識では、土地の筆界問題と所有権の範囲、すなわち所有権界の問題とは密接不可分と言うことができるわけです。
 また、法務省の説明では、筆界特定登記官による特定といいますのは、筆界確定の効果を持つ行政処分ではなくて、登記官による認識の表明であり、筆界の位置についての証明力を有するにすぎないと、このように御説明になっておられます。しかし、今お手元のような事例で考えますと、甲乙間の争いで、仮に登記官が筆界はAB線であると特定するならば、乙に有力な証拠を与え、裁判の帰趨に大きな影響を及ぼすことになります。
 このように、筆界の特定は事実上国民の権利義務に大きな影響を及ぼしますので、特定の手続を行うに当たっては、当事者に十分な主張や立証の機会を与えるよう格段の配慮が必要であると考えるものです。当事者に主張や立証を尽くさせる適正な手続の詳細を法務省令で規定することが必要だと存じます。
 第二に、この制度が正しく定着するためには、この制度を担う人的な面での整備が必要だと考えます。
 登記官は、御承知のとおり、従来は登記手続について専ら書面による形式的審査を行ってきたわけですが、この制度の下では、筆界調査委員の意見を踏まえてという条件付ではありますが、自ら事実の認定を行い、筆界の特定を行うことになります。しかも、法務省の説明によれば、筆界の特定を行うのは筆界特定登記官であるから、その判断は必ずしも筆界調査委員の意見に拘束されるものではないとされています。
 筆界特定登記官に対して十分な研修を行い、手続の迅速性だけでなく、民事訴訟手続に準じて当事者の主張等を十分に聴く手続についても教える必要があろうかと思います。また、この適正な手続を進めるに当たっては調査委員の陣容を整えることも極めて大切であり、今まで筆界確定の裁判を担ってきた弁護士の調査委員の役割も大きいと考えております。
 次に、必要な資料の開示も進めるべきだと考えます。当事者に十分な主張、立証を尽くさせるためには、相手方から提出された資料や取り寄せた資料を開示するだけではなくて、法務局が元々持っている手持ち資料、特に調査委員が調査に利用した資料も当事者に開示して手続を進めることが必要です。省令を検討するに当たりましては、こうした情報公開の点についても十分に配慮することが必要であろうと考えます。
 さらに、申請人が負担すべき費用についても格段の配慮が必要だと考えます。筆界特定の申請人は、測量に要する費用その他の手続費用を負担しなければならないこととされていますが、筆界の特定は、一面、登記所備付地図の整備という公的な意義も有しております。この手続が国民にとって利用しやすい制度として定着するためには、手数料は最低限のものとして制度設計する必要があると存じます。
 先ほど申し上げましたとおり、隣接する地番の土地の境界を定める筆界問題と所有権の及ぶ範囲を定める所有権界とは密接不可分の関係にあります。筆界の争いの背景には、必ずと言っていいほど所有権の範囲に関する争いがございます。筆界特定の制度はあくまで公法上の境界を定めるだけだとされていますので、問題の速やかな解決を図るためには土地家屋調査士会が弁護士会との協働で進めているADRの境界問題相談センターや簡易裁判所等との手続の連携を図っていくことが是非とも必要であろうと存じております。境界問題は隣近所の問題でありまして、感情的な面も含んでおります。まず話合いを進めながら特定手続を行った方がいい事案が多いのではないかと存じます。その意味で、ADRや簡易裁判所の手続等との連携というものが欠かせないのではないかと存じます。
 冒頭申し上げましたとおり、私は今回創設される筆界特定手続に反対するものではありませんが、以上のような様々な問題をクリアする必要があろうかと存じます。いずれにいたしましても、市民に利用しやすい司法を目指すという司法改革の精神にのっとり、法務局、土地家屋調査士会、弁護士会などが制度実施の前後を通じて協議し、本当に国民にとって使い勝手のいい、そして国民の利益に資するようなものにする必要があろうかと考えております。
 最後に、冒頭述べましたように、司法書士法の改正について、一点御指摘申し上げたいと存じます。
 今回の改正法案では、認定司法書士は自ら代理人として関与している簡裁事件の判決等について上訴の提起の代理業務を行うことができるとされています。その理由につきましては、二週間という限られた上訴期間内では弁護士に引き継ぐなどの適切な対応が困難であるから、取りあえず上訴の提起だけは認定司法書士でもできるようにするということにあるようです。
 通常、上訴しますときには、上訴を提起する旨記載したにとどまる書面、いわゆる控訴の場合でありますと控訴状を裁判所に提出いたしまして、後日詳しい上訴理由を記載した書面、一般には準備書面と呼ばれておりますが、これを裁判所に提出することになります。この上訴理由が上訴裁判所における当事者の主張の基本となるものです。認定司法書士は、御承知のとおり上訴裁判所での訴訟活動はできませんので、上訴審においてこうした書面の提出はできないということになります。
 ところが、民事訴訟規則の条文上は最初に提出する上訴状に上訴の理由を記載してもいいということになっております。ただ、この場合、民事訴訟規則では、上訴状に上訴理由を記載したときには当該上訴状は上訴裁判所で提出されるべき準備書面を兼ねることとされておりまして、上訴状という一通の書面に書かれておりましても、その中で上訴理由を主張することは、上訴審における訴訟活動であることを明らかにしております。したがいまして、もし認定司法書士の方が裁判所に提出する上訴状に上訴する旨の記載だけではなくて上訴理由まで記載してしまいますと、認定司法書士が上訴裁判所における訴訟活動にかかわったと同様の結果を招来することになります。これでは法の趣旨に反することになってしまいます。
 したがいまして、今回の改正により認定司法書士が上訴するときには、あくまで上訴状には上訴する旨の記載のみにとどめ、上訴理由の記載はしないことを明らかにしておく必要があると考えます。この点、特に御指摘申し上げたいと存じます。
 今回の法案に対する日本弁護士連合会としての意見は以上でございます。以上をもって私の意見陳述を終えたいと思います。
 ありがとうございました。
#140
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人。
#141
○参考人(中村邦夫君) 日本司法書士会連合会会長の中村邦夫でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 委員長の御指示がございましたので、座って発言させていただきます。
 本日は、不動産登記法等の一部を改正する法律案に関しまして参考人として意見を申し上げる機会をいただきましたことに関しまして、渡辺委員長を始め法務委員会委員の先生方にまずもって厚く御礼を申し上げます。
 先生方におかれましては、国民がより利用しやすい充実した司法制度並びに不動産登記制度、これら諸法令に関連する国民の権利を十全に守るより良い司法書士制度の実現に真摯な御努力を日々重ねていただいておりますことにつきましても、心から敬意を表し、重ねて厚く御礼を申し上げます。
 司法書士会は、今日まで司法書士制度を、国民のための、そして国民に愛される身近な法律家制度として定着ないし永続させるべく精一杯の真摯な努力を継続してまいりました。今後とも、国民の権利を保護する司法制度及び国民の権利を保全する不動産登記制度の充実発展のために、その一翼を担う重要な存在としての役割を着実に果たしてまいりたいと存じます。
 そのような私どもの決意から見ますれば、本日意見を述べさせていただきます不動産登記法の一部改正法案及び私ども司法書士職能に関する司法書士法の一部改正法案につきましては、その早期の成立を心から願うところでございます。
 まず、不動産登記法の一部改正法案の内容である筆界特定手続の創設に関しましては、かかる筆界特定制度が、一定の土地境界確定訴訟の代理人としての業務を行う司法書士職能としては、その迅速かつ利用者の満足形成に資する適切な審理を促進するものと考え、賛成するものであります。
 司法書士の業務におきましても、特に固定資産税評価額の小さい地方におきまして、いわゆる境界争いとして土地境界確定訴訟は取扱事件としては少なくない事件の一つとなっております。通常、一般国民間の境界争いは、地番範囲の争い、つまり何番の土地はどこまでか、すなわち隣人同士で勝手に線を引くことのできない筆界の紛争とともに、支配範囲の争い、すなわち自分の所有地はどこまでか、隣人同士で合意することのできる所有権の範囲の紛争が混在している場合がほとんどであると言うことができます。したがって、それが訴訟としても長引く要因の一つとなっているものであります。
 今回導入されようとしております筆界特定制度は、土地の境界に関し様々な資料、情報を有している登記所の機能と、それに関係する専門家を活用し、筆界に関し信頼性の高い判断を示すことにより、かかる境界争いを全体として迅速かつ的確に解決する作用を営むものと期待するところであります。
 特に、筆界調査委員として多様な専門家を活用することとともに、筆界特定手続の申請人及び関係人に対し意見を述べ、又は資料の提出機会を与え、かつ参考人の陳述等の適正な手続を保障する諸方策を盛り込んでいることに関しましても、これを評価するところであります。
 この筆界特定制度の創設により、不動産取引の迅速化ないしは活性化に資するものと考えられ、司法書士としても、土地境界確定訴訟における迅速かつ的確な証拠収集手続として大いに利用したいと考えているところでございます。
 以上が不動産登記法の一部改正法案に賛成するゆえんでございます。
 次に、司法書士法の一部改正法案に関しましても、これに賛成し、その早期成立を強く期待するところであります。
 現在、簡易裁判所における訴訟代理権を有している、いわゆる司法書士法第三条二項司法書士は、総数にして約九千名に近づいております。早晩一万名を超え、全国司法書士会員の二人に一人はこの訴訟代理権を有していることとなるとともに、これらの司法書士は全国に満遍なく均在するという事実を有しております。司法書士の適切な業務範囲の拡大は、間違いなく国民の身近な紛争の適切な処理のために資するものと考えております。
 さて、御審議をいただいております司法書士法の一部改正法案の要点は、まず第一点が、司法書士法三条二項の司法書士に対する上訴提起の代理権付与であります。
 現在の司法書士法におきましては、例えば簡易裁判所において司法書士が代理人として関与した事件の判決に当該事件の依頼者が不服である場合、司法書士は控訴審に関する訴訟代理権がございませんので、当該依頼者は控訴審において本人自ら訴訟を行うか、若しくは新たに弁護士に当該訴訟行為を委任するかの選択に迫られるわけであります。
 御案内のとおり、控訴期間は判決書を受け取った日から二週間と定められております。また、控訴は、司法書士が代理人として訴訟行為をした第一審裁判所である当該簡易裁判所に控訴状を提出することとされており、言わば司法書士が専門とするフィールドでその手続がされるわけであります。
 簡易裁判所における判決言渡し後においては、本人訴訟を行うかどうかの決断には一定の時間が必要でありますし、新たに弁護士を選任する場合であっても、事件の内容を十分に説明し、今後の見通しなどについても第一審における訴訟代理人であった司法書士の的確な情報提供が事件を引き継ぐ弁護士に対して必要になるところであります。かかる情報提供と当事者の弁護士選択にも一定の時間が必要となるところであります。当事者にとっては、これら困難な状況を把握しながら、控訴期間を徒過しないよう注意を払う司法書士の関与が是非とも必要な場面であると考えます。
 したがって、簡易裁判所において訴訟代理人として果たした役割を広げ、依頼者に対し不服申立ての機会を確実なものとし、控訴期間の徒過を避けるための控訴状の提出までの役割を果たさせていただく、かかる上訴提起の代理権が司法書士には是非とも必要と考えるわけであります。
 第二点目は、同じく司法書士法三条二項の司法書士に対する仲裁手続の代理権の付与であります。
 仲裁手続は、いわゆる仲裁法の整備により、今後、一層充実発展してまいる裁判外の紛争解決手続であると考えております。一部の専門的な紛争事案だけではなく、国民の日常生活において発生する民事紛争事件につきましてもその活用が期待されるところでございます。したがいまして、国民に身近な法律家である司法書士の仲裁手続関与が国民の身近で迅速な紛争解決のために必要であると考えるところでございます。
 司法書士会といたしましても、裁判外の紛争解決機関として全国五十の司法書士会に対し司法書士調停センターを設置し、その活動を充実していくための準備を具体的に行っているところでございます。仲裁手続の実施機関としても今後充実した機能を果たすべく、真摯に努力してまいりたいと存じます。
 司法書士に対する仲裁手続の代理権の付与は、国民の身近な紛争解決の迅速かつ適切な道具としての役割を必ず果たしていくものと確信いたしております。特に、いわゆる司法過疎地域における司法書士の紛争処理機能の充実は、必ず国民の法的紛争の迅速な処理に資するものと考える次第であります。是非とも、この仲裁手続に関する代理権付与の部分に関しましても、先生方の御理解を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
 第三点目は、先ほど申し上げました筆界特定手続に関する書面作成業務及び一定の代理権の付与であります。
 この点におきましても、国民に身近な境界争い、すなわち土地境界確定訴訟の迅速な処理のために司法書士業務に是非とも必要であると考えております。重ねての御理解をお願いするものであります。
 以上、るる申し述べてまいりましたが、今次の不動産登記法等の一部を改正する法律案は、国民の法生活の安定のために是非とも必要な事項が数多く含まれております。是非とも早期の成立を重ねてお願いいたし、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#142
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、西本参考人にお願いいたします。西本参考人。
#143
○参考人(西本孔昭君) 私は、日本土地家屋調査士会連合会会長で土地家屋調査士の西本孔昭と申します。よろしくお願い申し上げます。
 以降、着席させていただきます。お願いいたします。
 私たちは、日々、登記所備付地図と登記の内容と現地の境界、この三つが常に符合し、しかも安定していることを願って業務を遂行して、依頼人である市民、国民、あるいは法人や自治体、国の機関から信頼を得ている者でありますが、その業務の母体ともなっています不動産登記法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法案を御審議いただいている場にお招きを受けましたことに厚くお礼を申し上げます。
 さて、昨今、都市再生、経済再生、森林再生といった観点からも、土地の転換利用、高度にして無駄のない利用でありますとか、公共用地取得のための適正な資本投下を図ることが真剣に検討されておりますが、そこでしばしば登記所備付地図が現地と符合しないとか、登記内容との間にそごがあるためにスムーズに事が運ばない、あるいは無駄な費用が掛かる等の弊害が指摘されております。
 近年の測量機器・技術の進歩に支えられた、いわゆる旧不動産登記法十七条、新法十四条に指定する地図の中でも、都市部地籍調査、区画整理、市街地再開発、あるいは登記所が自ら土地家屋調査士協会とともに作成した十七条地図の整備された地域を除けば、国民的視野に立って望まれる地図が整っているとは言い難いのが現状でありまして、いまだに明治六年の地租改正条令以降に次々と公布、指示された租税徴収のための地図、例えば改租図、字限り図、更正図、地押し調査図等々、その時代その時代、あるいはその地域特性を反映した様々な図面が大蔵省の所管で作られまして、直税署、税務署等の管理下にあったものが登記所に移管され、登記所では一般の人の閲覧や分筆線の記入等、紙の破損、しわ、汚れのために新しい用紙に書き直しただけのものも多数存在しております。そして、用紙が新しくてきれいに製図したものは、新しい測量に基づいて作成された地図と一見したところ素人の目では判断しにくいのが実情であります。
 そこで、この改正前十七条、改正後十四条の地図を、法務局、地方法務局で作成しております予算をここ二、三年増額していただいて精力に取り組んでいただいておりますので、私たちも、公共嘱託土地家屋調査士協会を通しまして、厳しい予算の中ではありますが全面的にお手伝いし、関係者の立会、測量から地図作成までを担っております。
 また、土地家屋調査士制度は、昭和二十五年に議員立法で誕生しましてから、表示の登記、測量に基づいて分筆や地積更正の登記なども専門的に取り扱ってきましたが、そこで作成する地積測量図に表現した毎筆ごとの情報が地図の十分ではない部分を補ってまいりました。また、今日までの五十五年間に、各地で行政の窓口ともタイアップして無料相談を繰り返して実施し、市民、国民の皆様方から寄せられる不動産に関する悩み相談をお受けし、あるいは日々の立会い測量業務から、筆界不明のために起こり得る境界紛争に直面することを整理分析して、境界管理、紛争予防の手段と、あるいはまた不幸にして紛争になった場合の解決方法等を研究してきました。
 そもそも一番の土地と二番の土地の筆界を定めたときには紛争性はありません。筆界が分からないことが問題と言うことはできようかと思います。筆界が分からないのに、それが分かる専門家に相談することなく、道路、上下水道、門塀の新設、改良等、何らかの工事が施工されてしまう場合が実に多いことと、隣接する人同士がお互いの利便のためにカーブを折れ線に直すとか、凹凸を削って直線にするとかの変更をしても、登記手続を経ないで代替わりしてしまうとか、あるいは転売したために昔の事情を十分に知らない者同士が不信感を募らせることも多いし、長期間のうちに災害も含めて土、水が高きから低きへ移動することも筆界が分からなくなる要因であります。常に元々の筆界はどこにあったのかを考えることが最も重要なことであります。
 次いで、個人でも法人でも公共用地でも取得するときは、その土地が登記と同じ面積か、登記所地図とほぼ符合するかなど熱心に考えますが、工事後の境界標識の正しい復元とその後の管理については熱心でない例が多いのであります。取得したときの数値、図面等の資料と境界標の管理をしていただくことが紛争予防につながります。
 不幸にして紛争が発生しましてからも、民事訴訟の中で筆界鑑定業務を嘱託されることも少なくありませんので、各土地家屋調査士会でも連合会でも鑑定研修を継続して実施し、ほとんどの土地家屋調査士会には筆界鑑定委員が設けられて、現行法上もお役に立っています。
 あるいはまた、この実務において大いに助かっておりますのは、先ごろ改正された土地家屋調査士法第二十五条第二項で、「調査士は、その業務を行う地域における土地の境界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない。」と規定されたことであります。
 調査士会員個人の研究に負うところが大きかった古来の慣習や、それを生かしつくられた制度を広めてこられた明治時代の条例、布達、布告、規則等を体系的に統一した資料にすべく、国立国会図書館から始まって全国の公文書館、古文書集成館博物館から旧家の後継者をも訪ねて調査をし、あるいはまた他の資料を持つ行政機関、例えば土木事務所等の調査をし、その結果を例えばこのような四分冊から成る土地境界基本実務叢書にまとめました。そのときの法改正審議の際には、私も招かれました折に、一間の長さを六尺五寸とするもの、六尺三寸とするもの、六尺とするもの、その指示に地域性があった証拠である地券之證をお見せして御説明申し上げました。
 私たちはこのほかに、各地の弁護士会さんの温かい御協力を得て、境界問題相談センターを既に立ち上げまして、境界紛争の深刻さが増す前に迅速に解決できるよう、あるいは解決したものを確実に登記に反映できるよう努力を重ねております。愛知、大阪、東京、福岡、宮城、神奈川の順に設立し、弁護士の先生との研修も重ねておりまして、周囲の期待も高まっているところであります。
 ところで、法務局にも全国から選抜されて東京へ出て、六か月間測量実習等の研修を経た人の中から表示登記専門官という方々が、正に地図と登記を担う表示登記のプロとして活躍しておられます。この方々を中心に、境界確定委員会制度を考えていただいておりましたが、今回最終的には筆界確定委員会制度を、あるいは筆界特定登記官制度にトーンダウンして落ち着いたのはいささか残念であります。民間型ADR同様に弁護士さんの力をおかりするとしても、改正法百二十八条筆界調査員の欠格事由として、突如司法書士という資格名を目にして驚くのでありますが、境界確定委員会制度と筆界特定委員の制度とは明らかに異なっており、正に表示登記の真実性を高めるために必要な専門性は何かを考えるときに、余りにも不自然な気がいたします。
 単なる手続の問題ではございません。地域の慣習を知り、資料の解析、分析ができる専門家の適切なアドバイスが必要なのであります。先ほど申しました表示登記専門官が測量研修を受けた人の中から選ばれるということは、すなわち測量図が読める、解析できる人を選ぶという意味であり、しかし、それでもなお十分ではなく、地域性等の研修が必要だと申し上げますところからも御賢察願いたいのであります。
 蛇足かとは思いますが、私たちは業務拡大のためにこれらを考えてきたのではありません。困っている人にとって必要なことは、最もふさわしい人に巡り合うことであります。どうかこの法律改正の早期実現と、施行後もどうか適切な御指導をいただいて、広く社会に利用されるように、また、地図の緊急整備という側面も果たせますように応援、御指導いただけますことを念願いたしまして、終わりにいたします。
 ありがとうございました。
#144
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#145
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
 参考人の皆様方におかれましては、大変お忙しい中を当法務委員会にお越しいただき、不動産登記法等の一部を改正する法律案について、それぞれのお立場から貴重な御所見を賜りまして、ありがとうございます。
 いにしえより、領土の争いは血を見ることになるとやゆされるように、土地の境界をめぐる争いは古くて新しい問題であります。とみに、最近では土地の境界をめぐる紛争が多発しているやに聞いておりますが、それにもかかわらず境界を公的に明らかにするのは境界確定訴訟しかなかったわけでございます。隣り合って暮らす人と訴訟を起こさなければ解決できないというのは余りにも悲しく手間の掛かる状況であります。この新しい筆界特定制度は参考人の皆様や関係団体の皆様の御理解なくしては円滑な運用はならないものと考えております。
 そこで、お尋ねをしたいわけでございますが、まず益田参考人にお伺いいたしますが、紛争の実効的な解決という観点から見まして、この法案が成立すると仮定いたしまして、筆界特定制度、また境界確定訴訟及び民間ADRの相互の連携を図ることが大切だと考えるわけでございますが、具体的にどのような連携が可能なことでしょうか。その点についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
#146
○参考人(益田哲生君) お答えいたします。
 今先生の方から、まず現在の境界確定訴訟との、今回の制度との連携ということと、それからADRとの連携という二点お話があったかと思うんですが、従来の境界確定手続につきましては、実は御案内のように、当事者は必要な資料を十分に持っていなかったということがかなり裁判が長引く一因であったかと思います。この制度ができますと、この筆界特定手続において作成された資料が裁判所に嘱託で提出できるという仕組みになっておりますので、裁判所に境界確定の訴訟が持ち込まれましたときにもこの筆界特定の資料が非常に役立つのではないかと、審理の促進にも非常に役立っていくのではないかというふうに考えております。
 それから、従来の筆界といいますか、境界確定裁判ではなかなか登記行政と裁判所との連携が十分でなかったといううらみがございまして、せっかく判決を取りましても判決に添付されている図面では登記ができないというようなことが多かったわけですが、裁判所の手続でもこの筆界特定で作成された資料が使われるということになりますとそういった問題点も解消されていくのではないかと。そういう意味では、この筆界特定手続と裁判手続というのはうまく使い分けていけば国民にとって使い勝手がいい制度になろうと思っております。
 それから、ADRとの関係なんですが、先ほども参考人皆さんお話になられましたように、この筆界の争いの背景には必ず所有権の範囲に関する争いがあるわけですが、もし深刻な対立の中で筆界に関する争いが発生したとしますと、やはりできれば話合いで解決をする、解きほぐす、そういう考え方でADRの手続を利用するというのも大いにあってしかるべきだと思うのですが、そのときにも筆界がきちっと決まれば話合いが前に進むということになると思いますので、ADRの手続でもこの筆界特定で作成された資料等が使っていくことができるということで、私は今回の制度については、筆界特定制度単独の効力というよりは、今申しましたように裁判手続で利用され、あるいはADRの手続と連携するということによって国民の利便に資することになるのではないか、そういう形で使われていくということが最も望ましいのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
#147
○吉田博美君 ありがとうございました。
 それでは、中村参考人と西本参考人にそれぞれ同じ質問でございますが、まず新しい筆界特定制度が円滑に運用され、それを、使命を果たすことが私は大事なことではないかと思うんですけれども、その場合、皆さん方見てどのような点が問題があって、どのようなことに注意すればいいのかということについてお聞かせいただけますでしょうか、それぞれ。
#148
○参考人(中村邦夫君) この筆界特定制度が要は境界を確定する前提としての手続ということにまずなるんだろうというふうに思います。ということは、すなわち、それは権利の確定に最終的に至るまでの段階の一過程であるということに考えます。
 ということになってまいりますと、まず現在の法務局、登記官が実際に大きな役割を果たすことになるだろうと思いますけれども、その登記官がそういった権利関係について背後にある権利関係までを含めた形の判断をするということについて相当な、何と申しましょうか、専門的なその方面における能力というものが要求されてくるんだろうというふうに思います。
 ということは、取りも直さず、我々にとりましても、例えば私どもが代理になった場合でも同じことが言えるわけでございまして、その土地の境界をめぐる様々な来歴であるとかあるいは権利関係の整理ですね、整序ということになりますが、そういったもの、あるいは場合によっては時間的な問題から時効なども考えなければならないかと思います。そういったものを、私どもがそれを整理して代理人として扱うということができるということが必要だろうと思います。また、調査委員としても同じことが言えるんだろうというふうに思っております。
 と同時に、まずこの問題がどこから発生してくるだろうかと考えますと、まず国民の皆さんがどこに行くだろう、最初から法務局へ行くということも考えられますし、またあらゆる、今後でき上がるADR機関であるとか、あるいは司法ネットなどで予定されている様々な相談センターと申しますか、そういった機関に来るだろうということを考えます。ですから、そういった機関、私どもも、そちら、そういった機関には十分配慮をして今準備をしているところでございますけれども、そういった機関からスムーズに法務局のそういった手続の、この制度の方に移行できるようなことは考えなきゃならぬというふうに思っておるところであります。
#149
○参考人(西本孔昭君) 今まで法務省が必ずしも得意で、法務省と言ってはいけないのかもしれません、法務局、地方法務局が得意でなかったことに、制度をPRする、こういったことで役に立ちますよということをアピールしてこないということがございました。そういう意味で、今回新しい制度ができますと、こんなことで役に立ちますと、使ってくださいと言うことがまず第一であろうと思います。それから、今までも相談の窓口は法務局、地方法務局に限らず他の行政機関のいろんなところにもあるわけですが、それらの連携も悪いということを感じております。
 したがいまして、相談しましても、相談した側から見れば聞くだけにすぎないとか、あるいはあっちへ行けこっちへ行けと何か所も行かなきゃならないということが、これはどこでも、どんな部門でもありました。これはやはり適切な専門家が関与するまでに相当無駄なことがあったわけであります。そういった意味でも是非PRをしていただきたい。
 それから、実際に相談においでになったときに、適切な調査委員を選任するということが必要でありましょう。したがいまして、そういう相談を聞くには、これは相当な判断能力、あるいは法務局にあります図面を見ても様々なことが分かるような、あるいは図面の解析能力、それから外部にあります資料、私がるる申し上げました資料が、例えば他の公文書館なんか行けばカラーで、物によりましては赤線なら赤線の幅員まで入っているような図面がどこにあるかというようなことも必要になるわけです。そういったことが非常にスタートになります。
 そういったものを見せながらお話を聞いてあげていますと、まず相談者のあるいは申立人の心が柔らかくなってきます。そういう意味で、どうか、聞いていただくためのスタッフの教育ということも是非これから重要ではないかなと思います。適切な委員を選任していただいて関与させていただくということも重要であろうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
#150
○吉田博美君 筆界特定制度において、参考人の皆様方それぞれ、今日は日本弁護士会、司法書士会、そして土地家屋調査士会としてお越しいただいているんですけれども、会員の皆さんが現場でどのようなそれぞれの役割を果たすことを期待されているのかということで、西本参考人から中村参考人そして益田参考人の順で、もう簡単で結構でございますので、お答えいただけますでしょうか。
#151
○参考人(西本孔昭君) 日常の業務で、まず立会いであるとか測量する前の準備段階であるとか資料の御説明ということは、もうしょっちゅうやっておることでございます。それらをやはり丁寧に分かりやすく説明をし、そして、必ずしも争い事をきつくするというのではなくて、やはり整理をしてあげて優しく導いてあげるというようなことをふだんから気を付けてやっております。そんな研修もしておりますし、メディエーションのトレーニング等も開始しているところでございます。
#152
○参考人(中村邦夫君) 元々、この境界をめぐる紛争というのは大変根深いものがありますし、問題の解決は難しいものであります。そういう難しい問題であるからこそ、こういう手続が今設けられたんだろうと思うんですね。ですから、その趣旨からいきますと、簡単に資料を集めれば結論が出るという問題はほとんど来ないだろうというふうに想像しております。
 当然のことながら、長い間の権利関係をめぐる問題がそこに存在しているわけでありまして、そういったものを整理しながら、そして筆界の特定、すなわち、先ほど申し上げたとおり、それはすなわち所有権の争いでもあるわけでありますから、そこの確定に至るような手続を我々としては考えていかなきゃならぬというふうに思っております。これは、今まで我々がいわゆる不動産登記の申請を受ける場合、所有権移転に関する登記がほとんどでありますけれども、そういった場合でも常に心掛けてきているところであります。また、司法書士会の研修などでも、そこの問題については鋭意努力をしながら、今までもその紛争解決については努力をしてきたと、こういうことでございます。
#153
○参考人(益田哲生君) 先ほどもお話が出ましたように、現在、土地家屋調査士会さんと弁護士会とでは、境界問題相談センターということで全国各地に制度を立ち上げましていろいろな皆さんの御要望におこたえしているわけですが、その現場では、やはりそういった測量であるとか境界の問題であるとか、現場の専門家である土地家屋調査士さんと私ども法律的な問題について長年携わってきた弁護士とがうまく協働し合いながら進めているというふうに私ども考えております。
 この今回できる制度におきましても、やはり調査委員の果たす役割が非常に大きいのではないか。そこでは、土地家屋調査士さんとか弁護士さんとかがそういう調査委員に入っていくという、この調査委員が果たす役割は大きいと思うんですが、やはり同様に法律的な問題が絡む事案が多いわけですから、その分野はやはり弁護士が従来の経験とか知恵でもってお助けする、現場の専門的なことについては土地家屋調査士さんにお願いする、そういう形で連携していく役割分担だというふうに理解しております。
#154
○吉田博美君 結構です。
#155
○江田五月君 今日は三人の参考人の皆さん、お忙しい中、本当にありがとうございます。
 そうですね、まず簡単なところからというとおかしいですが、先ほど益田参考人から上訴の関係について若干の懸念のお話ございました。
 これは中村参考人にお伺いしたいんですが、民訴規則によると、上訴状に理由も書けと、しかし認定司法書士さんについては上訴の提起の代理権しか認めていないということなんで、この点は何か、今後、認定司法書士さんに対する指示なり御指導なりというようなことは考えておられますか。
#156
○参考人(中村邦夫君) 元々、上訴の提起について私ども要望したのは、いわゆる、先ほど申し上げましたけれども、時間的な非常な制約があるということでございます。そういう制約の中で依頼者を、どのようにしてその権利を守るかという観点からこういうお願いをしているわけでございまして、そもそも、元々、上訴の内容についてどうこうすることはできないということはもう当然のことでございます。
 ですから、ただ、一方で法律の規定でそういったものは書かなきゃならないということになっているということは非常にじくじたるものがありますけれども、そこのところは一つそういう状況でこういう代理権をお願いしているということで御理解をいただきたいということが一つでございます。
 と同時に、もう一つは、例えば、今までもそうだったんですけれども、私どもが代理権ないときには、例えば地裁であれ高裁であれ、本人支援訴訟というのはできるわけでございまして、その場合には代わってそういった訴状なども書いてまいりました。その場合には、当然のことながら今言った理由なども書いてきたわけでありまして、仮に能力という点からもし御指摘されたんだとすれば、その辺は十分今までもやってきたとは言えます。
 ただ、あくまでも、今回お願いしておるのは、そういった時間的な制約があるので、そういった観点から是非御考慮いただきたいということでございますので、御理解賜りたいというふうに思います。
#157
○江田五月君 私は今十分理解できるんです。それは判決の送達を受けてもすぐに本人と連絡取れないというような場合だって極端に言えばあるでしょうし、とにかく上訴だけはしておかなきゃと。
 ただ、今伺ったのは、今つくろうとしている制度というのは上訴の提起だけの代理権ですから、認定司法書士の皆さんにそのことは徹底するように会として何かお考えですかということです。
#158
○参考人(中村邦夫君) 当然のことながら、この今の御審議いただいている法案が仮に可決、成立したとしたら、我々としては、当然、本来の業務の範囲というものをもう一回厳格に認識してその業務を行うようにということは当然のことながら指導してまいりたいというふうに思っております。
#159
○江田五月君 そこで、益田参考人、そのような措置もおとりになるでしょうし、また元々、いろいろ理由を書いてあってもその分については代理権がないわけですから、したがって、これは後で何らかの措置をとらないと、仮に否認すべき要件事実について自白の記載があったとしても、その書面が出ているからというだけで本人に不利益ということにはならないわけですよね。
 ですから、今のおっしゃったような懸念は懸念として、司法書士の皆さんによくそこは注意していただくとして、弁護士さんとしてこの上訴だけに限った代理権に反対ということではないですよね。
#160
○参考人(益田哲生君) そういうことではございません。
 先生御承知のように、認定司法書士には控訴審、上訴審での代理権が認められてないんですが、これは先生御案内のように、一審判決が不服でなお争うという事件というのは相当に深刻な事案であるとか困難な事案が多いわけです。そういう事案についてはやはり従来訴訟してきた弁護士さんにゆだねようというのが精神だったと思うんです。
 上訴理由についてはやはりそういう立場で、一審判決を受けた後、本人の意見もよく聞き、法律的にどういうふうに構成すればいいのかというようなことをきっちり確認した上で上訴審での主張の構成をする、それがやっぱり法の趣旨だということを申し上げているだけでございますので。ありがとうございます。
#161
○江田五月君 もう少し中村参考人に伺っておきます。
 認定司法書士の権限、今回はかなり限定的に、しかし若干この権限を広げるということですが、司法書士さんの場合には登記はこれはもう専門でございまして、私なんかも昔裁判官やっていても、とても登記所の皆さんや司法書士の皆さんにはかなわない。それだけの専門的な知識経験持って、しかも認定司法書士という形で一定の手続的なことについての素養も持っておられる方々ですから、幾つか、例えば今度のこの筆界特定制度の場合の百四十万、百四十万というこの算定の方法はいろいろあるにしても、というような制限とか、あるいはそのほか、仲裁ですかね、それから相続とか遺産分割とかの関係のこととか、そういうときの金額の限定というのは余り実は神経使わなくてもいいんじゃないか。神経というのは我々の方、立法者の方が神経を使わなくても十分やっていただけるんじゃないかなという気持ちを持っているんですが、どうですかね。
#162
○参考人(中村邦夫君) 今先生おっしゃっていただけたとおりなんですけれども、確かに、登記申請事件をやる場合に、その金額は当然のことながら百四十万とかそういった問題ではないわけでございまして、その登記申請をする前提として、いろんな依頼を受ける場合に、問題ない場合は別に申請だけですからよろしいんですが、今お話しいただきました、例えば相続の遺産を分割をどうするかとか様々な問題がある。今の境界紛争なんかもそうだと思うんですけれども、様々な問題がそこには存在しております。
 私どもとしては、そういう相談にはまず我々の持っている範囲でいろいろなアドバイスを差し上げなきゃならないわけでありますけれども、当然ながら、我々には認定司法書士といえども限定があるわけでございますから、ある一定以上のことは当然できなくなってくるわけであります。非常にその辺のところは難しい点が、本当のことを申しますと、難しい点と申しますか、やりにくいところのあることは確かでございますけれども、しかしそれは、今それをどうこうという問題ではございませんし、私どもといたしましては、まず、認定の範囲における実績を積んで信頼いただくということがまず第一だというふうに考えています。
 と同時に、恐らくそういった百四十万を超えるような問題という、相談というのはこれからも恐らく来るんだろうし、現実の問題としては、それは入口まだ分からないわけでございますから、当然あるわけでございますが、それについては、どういうふうな形になるか分かりませんけれども、使い勝手のいいものにしていただければなということはいつも考えておるところでございます。
#163
○江田五月君 今後の課題ですよね。
#164
○参考人(中村邦夫君) そうです。
#165
○江田五月君 先ほどからのお話聞いておりますと、この筆界特定制度について、益田参考人と西本参考人と御意見の違いがあるように聞くんですが、つまり、西本参考人の場合はもうちょっと、どういいますか、レベルの高い紛争をここで解決するという、そして、境界を確定できるような特定制度の方が良かったんではないかと、ちょっとレベルダウンしたという、そういう言葉でしたかね、ちょっと言葉忘れましたが。益田参考人の方は、いや、それでは国民の裁判を受ける権利を侵害することになるので今回のところまでレベルダウンして良かったという、こういうお話だったように伺うんですが。
 これ、実は私も一九九八年に参議院にもう一度戻ってくる前に一年半ほど弁護士をやっていたことがあって、そのときに境界紛争を依頼されまして、先ほど西本参考人おっしゃったようなことで、長い歴史の中でいろんな理由があったんだろうけどもう分からなくなっていると、あるいは洪水か何かか分かりませんけど、土地の形状も、側溝などがあったところもどうも土地じゃなくなったとか、いろんな地図がたくさんその間に現れて、その地図がどれが何を意味して、どういう機会に作られているものであるかがよく分からないと。これを調査士の皆さんにもう丸投げじゃありませんがお願いをすると、見事に解析をしてくださって、この地図はこういう事情でこういうときに作られているからここは信用できる、ここの部分はちょっと違うんだとか、そういうのが誠に鮮やかという感じで大変助かった経験があるんで、こういう土地家屋調査士の皆さんが筆界調査委員になって、さらに筆界特定登記官制度がちゃんとできて、こういうものができてくれば、これをただ単に登記官の土地の境界についての認識の表明だというふうに言ってしまうのはちょっともったいないんじゃないかという気がするんですが、これはどちらから、まず西本参考人、どうですか。
#166
○参考人(西本孔昭君) 私は、現在は上程されておる法案でもちろん早期実現をお願いしたいんですが、先生が勇気付けてくださいましたように、やはりこれをきっかけにしまして、関係する者お互いがやはり切磋琢磨しまして、より一歩進んだものを目指すべきではないかなという気はします。はい、ありがとうございます。
#167
○江田五月君 つまり、今私がちょっと触れたような、高い専門性でもって仕事をしているから、単に登記官の人が認識の表明をしてもらうためのお手伝いというよりも、もっともっと自信持っているんですよという、そういう自負はおありですか。
#168
○参考人(西本孔昭君) はい、ありがとうございます。そのとおりでございます。
#169
○江田五月君 益田参考人、そういうような仕事をやっているので、裁判を受ける権利といっても、これは行政処分性を与えて、その処分に対する行政事件訴訟法での争訟という道を空けておけば、ここまでレベルダウンしなくてもいいんじゃないか、何か中途半端というとあれだけど、ちょっと煮え切らない制度をつくらせてしまったなというような感じもするんですが、いかがですか。
#170
○参考人(益田哲生君) 将来、この制度がどういう形で育っていくのかという問題はあろうかと思うんです。ただ、従来なかった全く新しい制度でスタートするわけですから、やはり国民の側が持つ不安というものに対して目配りもやっぱりしておく必要があるのではないかなと思っております。
 私は、この制度でなされる筆界特定がそれほど軽いものになるとは思っていないんです。先ほど言いましたように、ADRの話合いにおいても裁判手続においても、この筆界特定登記官が調査委員の意見に基づいて行った筆界特定については、実際上はかなり裁判を左右する大きな要素になろうと思います。
 そういう意味で決して軽視するものではありませんし、土地家屋調査士さんが持っておられる自負心であるとか情熱であるとか、そういうものに流れにさお差すつもりは全くないわけなんですが、ただ、出発点の制度といたしましては、先生御案内のように、これ行政処分だと、しかも職権で開始されるということになりますと、寝た子を起こすような紛争もそこには出てきますでしょうし、それから行政処分でありますと、それは登記官が行った処分が正しいかどうかということだけを判断しますから、そこで間違っているということになりましてもまた一からやり直しという、ぐるぐる回りみたいなことにもなりかねませんし、執行停止もなかなか難しいというような問題もありますし、私は今この段階でスタートする制度としてはこの制度が極めてバランスが取れた制度ではないかと、将来、これが定着していく中で将来の制度としてはまた考えていくことがあるのではないかと、そのように思っております。
#171
○江田五月君 なるほどね。これも将来の課題だと。しっかりこの制度を育てていきたいという、そういう姿勢ですよね。
#172
○参考人(益田哲生君) はい。
#173
○江田五月君 時間もそろそろですが、最後にこの境界問題相談センター、これを弁護士会と調査士の会とでおつくりになっている。これは私は非常におもしろいといいますか、うまく運用していけば大変いい制度になっていくんじゃないかと思うんですが、これはあれですよね、ADR基本法で言えば将来、まだまだですが、将来認定ADRになると伺っていいんだと思いますが、それならば今の一、二、三、四、五、六ですか、もっと全国各都道府県にきっちりつくるような、そういう、これも将来の課題ですが、取組をされてはいかがと思いますが、これは益田参考人と西本参考人に結論だけ伺って、私の質問を終わります。
#174
○参考人(益田哲生君) 結論だけということで、江田先生おっしゃるとおり、今後ともこれをずっと広げていくことが肝心なことだというふうに思っております。
#175
○参考人(西本孔昭君) どんどん拡大したいと思っております。弁護士の先生方の応援を是非よろしくお願いいたします。
#176
○江田五月君 終わります。
#177
○浜四津敏子君 公明党の浜四津敏子でございます。
 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見をいただきまして大変ありがとうございます。これまでの質問と多少重なる点があるかもしれませんが、再度確認させていただきたいと思います。
 今回創設されます筆界特定手続につきまして、お三方、それぞれどういう効果を期待しておられるか、また課題が残されているとすれば、今後一番の課題は何だとお考えでいらっしゃいますでしょうか。お三方に伺います。
#178
○参考人(益田哲生君) お答えいたします。
 先ほど意見陳述で申し上げましたこととも重なろうかと思いますが、私は土地の境界をめぐる紛争につきましては、やはりその出発点になっている筆界がどこなのかというところが定まらないというところがやはり紛争が長期化する大きな要因であったというふうに思います。これは裁判だけでなくて、ADRの話合いの中でもそこがきちっと決まって、共通の図面で両方が話合いに入るということになりますと相当に前に進むというふうに思っております。今回の筆界特定の制度がうまく運用され、定着しましたら、先ほど申しましたように、裁判の中ではその資料が、取り寄せ制度が今回できますので、かなり効果を発揮して、迅速に進むのではないか。
 それから、先ほども言いましたように、今までは登記行政と裁判とが全然連携しておりませんでしたので、裁判官もある意味では登記のことについては素人だという、こう言うと江田先生に申し訳ないんですが、そういう面がございまして、判決をいただいたり、あるいは和解調書を作っても、登記官、登記所へ持っていったらそれで登記ができないというようなことがよくあったわけなんですが、今回はその間にこの特定制度というものをうまく使えば、これは筆界特定登記官が間に入って判定したものですから、そういう問題も解消されるのではないか、そういう意味では非常に紛争の解決について前へ進んでいくというふうに思っております。
 以上でございます。
#179
○参考人(中村邦夫君) 私どもは、いわゆる認定司法書士と申しまして、簡易裁判所の訴訟代理権を付与されております。そういう中では、当然のことながら、百四十万円以下ということではございますけれども、境界紛争などについても扱うこともあるだろうというふうに思っています。
 ですから、そういった意味で申しますと、やはり今後の問題はどこにあるだろうかという先生の御指摘だったと思いますけれども、やはり我々といたしましては、簡易裁判所に持ち込んで十分な、何と申しましょうか、証拠として役立ち得るようなものを、そういったものを我々がそれをつくり出すという、つくり出すというか、我々がそれをきちんと整理して組み立てることをするということが大事だろうと思います。
 そのためには、結論から申しますと、非常に簡単な言い方になるかもしれませんが、私は人の問題だろうと。そういうふうに堪え得るような、そういう修練を経た人間を一刻も早く一人でも多く、私どもはそういう育成をすることだろうというふうには考えております。
#180
○参考人(西本孔昭君) 役割を十分果たすには、やはり役所が相談しやすいという姿勢を強く打ち出していただきたい。それから、相談して良かったなというやはり実績を積むように努力いただきたいと。
 それには、例えば人の問題、質の問題、それから一番ネックなのが期間、やはり新しい制度をつくって幾らかでも簡便に、しかも早く安く終わるべきではないかなと思います。それが本当に実現するためには、公的資金の援助も含めて、何らかの体制が必要ではないかなという気がいたします。例えば、調査士会型のADRつくりましたときに、大阪土地家屋調査士は改造に、会館の中の改造にやはり一千万以上掛けている。愛知会では老朽化した会館でうまい工事ができないので、借金をして会館を造ってしまった。私は愛知会の会員ですが、負担です。
 そういうようなことで、熱心に取り組みたいんですが、費用的には、やはり安心して相談においでになる方のために相談者、あるいは申立人が被申立人とやたらに顔を合わせないで済むような体制をつくるというようなことも考えていかなければならないということからいきますと、つくっただけではどうしようもないので資金をやはりサポートしていただく。くどいようですが、人間の質の向上にもサポートしていただけるようお願いしたいなと思っております。
#181
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 益田参考人にお伺いいたします。
 手続におきましては、登記官など法務局の職員の皆様と協力して進めていくということが必要になっていくかと思いますが、この法務局の職員の研修など、法務局との協力については会としてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
#182
○参考人(益田哲生君) 法務局の方が今その点についてどのようにお考えになっているのか、今分からない点があります。むしろ私どもとすると、この少ない予算と言ったら非常に失礼なんですが、今法務局が考えているような予算、一つの法務局で百万か二百万ぐらいになっちゃうんじゃないかと思いますけれども、そのような中で果たして一体どのような研修を考え、どのような物的施設を整えようとしているのかが非常に不安なところがあります。
 ただ、弁護士会としましては、今、浜四津先生がおっしゃったようなことについて、当然、今度この制度ができるということになりますと、その研修等については十分に協議をして、十全の御協力をさせていただくというつもりをいたしております。
#183
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 次に、中村参考人にお伺いいたします。
 今回の司法書士法の改正は、すべて簡裁訴訟代理関係業務を行うことができる司法書士の方についての権限に関するものですから、今回の改正が有意義なものになるためには、簡裁訴訟代理関係業務を行うことができる司法書士の数が十分であることが必要であろうと思います。
 平成十四年の司法書士法改正後、簡裁訴訟代理業務を行う能力があると認定された司法書士の方々は全体の何割ぐらいに上っているんでしょうか。また、今後、どのぐらいにまで増加される御予定があるんでしょうか。
#184
○参考人(中村邦夫君) 現在、全国で司法書士の会員数は約一万七千八百名、一万八千名弱、切れるところでございます。その中で、今先生が御指摘されたいわゆる認定司法書士の数というのは、合格者といいますか、考査を経た者でございますが、約八千七百名、今回、今ありますが、細かい数字は若干違うかもしれませんが、大体そのぐらいの割合になっております。
 今後でございますけれども、今後は、新人のいわゆる司法書士試験を合格した者については私どもはその研修をまず行っておるわけですが、その中にカリキュラムとしてそれを組み込ましていただいて、これはもちろん私どもだけでできることじゃなくて、弁護士会さん、あるいは裁判所さん等のいろいろな御協力を得なきゃならないわけでありますけれども、そこで数を増やしてまいりたいというふうには思っておるところでございます。
#185
○浜四津敏子君 次に、西本参考人にお伺いいたします。
 土地家屋調査士の皆さんは今回の筆界特定制度のコアになると言われております。その土地家屋調査士の方々にとっては、民事に関する紛争について当事者を代理することができる権限は初めて付与されることになるわけでございます。また、筆界特定の手続についての代理はすべての土地家屋調査士の皆様に認められると、こういうことになります。
 そこで、この改正法が成立した場合に、土地家屋調査士のお立場として、このことに対してどのように準備され、対応されようとしておられるのか、またどういう役割を果たそうとお考えでいらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
#186
○参考人(西本孔昭君) 数年前から非常に重点的にこのことを視野に入れて研修を重ねました。それから、研修項目に民事上の様々な紛争にも関与することを考慮に入れた研修の中身にしてまいりましたが、なお一層充実あるいは高度化を図るために、先ごろから、財団法人日弁連法務研究財団さんにも御相談に乗っていただいたり、あるいは民事局にも相談に乗っていただいて詰めているところでございます。従来の研修のほかに、かなりの時間を考えております。
 それから、当然、代理権もその効果、あるいは代理ばかりでなくて、終結した後の手続にどうするかといったような法律的な手続につきましても、弁護士さんの御指導を得ながら、最終的に制度が確保できるような研修に高めていこうというふうに考えておりますので、是非御指導いただきたいと思います。
#187
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 終わります。
#188
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、西本参考人にお伺いをいたします。
 昨年の一月に当委員会で派遣で会長御出身の愛知に寄せていただきまして、愛知の会長さんから大変細かい資料もいただきまして、大変今回の審議に私は役に立っておるんですが。その際に、当日の陳述の中で、会として、いわゆる今、不動産登記法においても境界の規定というのが何もないという中で、法律の条文に明文の規定をするべきだということで運動したいということも言われておりまして、今回、この筆界という形で定義がされたわけですね。そのことについてのまず御感想が一つと。
 同時に、今回の筆界の定義を見ますと、二つの点を結ぶ直線ということになっておるんですね。これ、法務省に聞きますと、技術上そういうことしかできないんだというようなことを言われておったんですが、衆議院の参考人質疑のときの西本参考人のお話を見ますと、今、大変技術としてはソフトが発展をしていて、カーブ計算などが十分にできるようになっている、三点を通るカーブなどもすぐ求めるようなソフトがあるんだと、こういうふうな技術が非常に発展しているというお話なんですね。そうしますと、実際の境界はいろんなカーブもあるわけですから、むしろそれに合わせた筆界という考え方もあるんじゃないかと思うんですが、この点、この定義の問題についてどうお考えか、まず、よろしくお願いします。
#189
○参考人(西本孔昭君) 筆界という用語が明確にされましたことは大変感謝しております。二十年近く前に筆界鑑定・管理委員会というのを、内部的な話で大変恐縮ですが、つくりましたときにも、筆界というのは大変国民の皆さんに理解してもらうように説明しにくいんだという一部の会員がおりましたが、いや、これは分筆であるとか合筆であるとかという、筆という字を使っている以上は明確にすべきだということをずっと念頭に置いてやってきました。その関係で、筆界ということがこのように非常に世間的に認証されたといいますか、明らかになりましたことには大変感謝しております。
 それから、先生おっしゃいますように、特定の点を結ぶ直線というのは、表現としてはどうかなと思うんですが、これを連続した折れ線であるとかいうようなふうにするのも難しかろうと思いますし、曲線というのも難しかろうと思いますが、境界には曲線は付き物でございます。例えば道路境界、例えばこんな決め方をします。半径百六十メートル、内角九十五度とか、その間がその曲線であるという決め方をします。ですから、最近の都市計画道路に面したところは全国どこでも曲線で境界が指示されているところがございます。あるいは、不定曲線といいまして、これが短い期間に、なかなか規則的ではない曲線が連続するところがあります。あるいは高速道路のように、それを、運転者を眠らせないために計算し尽くされた不定曲線というのもありますが、どちらにしても曲線ということは今後、当然境界に用いられることであろうというふうに考えております。
#190
○井上哲士君 もう一点、西本参考人にお聞きします。
 午前中の審議の際に、この負担軽減という点から、この筆界確定の相手方が地方自治体とか国の場合に、基本的にはやはり共同申請者になってこの負担の軽減を図るべきではないかと、これを徹底すべきだということを法務省に申し上げたんですが、まあ濫用のおそれもあるからとか、なかなか歯切れの悪い答弁でありました。実はその質問をしましたのも、去年の愛知にお伺いした際に、こういう、愛知の方で国や地方公共団体が対象になる境界紛争があって、その際に地方自治体などが予算処置がないから応じられないということでうまくいかないケースがあるんだというお話を聞いたんですが、もう少し具体的にどういうような事態が起きているのか、少し御説明いただけるでしょうか。
#191
○参考人(西本孔昭君) 自治体が直接の当事者である場合には、これは申請であるとか様々な方法で当事者としておいでいただくことは可能ですが、例えば直接争いがある区域の一つ外に公共用地が位置します。そういうときに大変重要な参考人なので是非おいでいただきたいというふうにお願いをしても、前例がないとか予算がないとかということで、単に当事者になりたがらないのかもしれませんが、おいでいただけないケースがたくさんございます。
 架空の話がしにくいので、今日、この目玉のパンフレットは先生方のお手元にございますでしょうか、この青い。このパンフレットの中に幾つか用紙がございますが、表にトレーシングペーパーという薄紙で、後ろにカラーの明治時代の地図が付いているところがございます。
 例えば、ここに千六十四と千六十六という土地がございます。それから、千六十七という土地が真ん中辺に、右側、三角でございます。千六十七と千六十六の土地の境界について争っておりますときに、この千六十六と千六十四の間の道路の位置が違うのではないか、あるいは、これが幅三尺と書いてありますが、現地はとても大きいぞと。例えば、それにT形に交差しておる横線の幅は四尺と書いてあるのに、現に三尺と書いてある方が太いわけです。これは幾らでもありまして、明治時代は和筆で、筆で書いておりますから、墨がたくさん付いているものは太い、力入れたら太いわけでありまして、墨がなくなってきたり力が抜けていれば細いわけでありまして、この書いてある三尺とか四尺の情報の方が物を本来言うべきでありますが、それを図面をずっと作り直してまいりますと、上のこの薄紙のようになってまいります。単純にこの白黒だけで書きますとそういう情報が分かりませんし、あるいはこの交差点の辺りから道路は広くなってまいりますと、そのしわ寄せのために千六十六の土地が千六十七へ食い込んでいくという可能性は、これはもう日常あることでございます。
 そこで、千六十六と千六十七の境界をはっきりするために、千六十六と千六十四の間の道路の立会いを管理者である市町村にお願いをしても、千六十七の土地からは申請、立会い申請ができないとかいうようなことになりまして、非常に簡単に解決できるはずのものが即効性がないという結果に陥っているということを愛知会が御報告したかなと思います。
#192
○井上哲士君 大変よく分かりました。
 本当にこの制度が、よく意義が地方自治体などにも徹底をして、こういう場合にも積極的に協力されるようになることが必要だと思っております。
 次に、中村参考人にお聞きをいたします。
 先ほど、今回の法案が当初の要綱よりも言葉としては少しダウンをしたということについて、日弁連と土地家屋調査士会についてそれぞれ御意見をお聞きされておりましたけれども、中村参考人としてはその点はどのようにお考えでしょうか。
#193
○参考人(中村邦夫君) 当初、私どもも聞いておりましたのは、もっと相当強力と申しますか、例えば行政処分的な効果まであるものだというふうなこともちょっとお伺いしておりましたが、その後、そうではなくなったということでございました。
 考えてみますと、裁判所の方で裁判を受ける権利というものは、そういった意味では行政処分ですべて終わってしまうということではなくて、やはり裁判所の方まで持ち込まれて初めて結論が出るということは大事なことだろうというふうに私も、私どもも思います。そういった意味で言えば、この制度がその前の段階で、言わば証拠収集の段階になるんだろうと思いますけれども、そういう制度に取りあえずはしたという意味で私どもはよく理解ができるということに思っております。ただ、これはこのままずっとこういう状況でいいのかどうかということはちょっとなかなか今の段階では申し上げることできません。
#194
○井上哲士君 次に、益田参考人にお聞きをいたします。
 意見陳述の中でも、登記官の皆さんの能力について、研修が非常に大事だということが言われておりましたけれども、中身としてはどういう点の研修を今後強化をする必要があるとお考えでしょうか。
#195
○参考人(益田哲生君) 法律の知識というよりは、先ほども申し上げましたように、従来は書面審査で形式的審理というものを中心にしてきたわけですので、今度は関係者の方から資料を出していただいて、調査委員にも調査をしていただいて、その上で筆界を特定するという、ある種、事実認定をそこでしていくということになりますので、その辺りの能力、これはかなり経験も必要ではないかとは思うんですが、その辺りがやっぱり一番身に付けていただきたいなというふうに思っております。
 この制度は、先生方もお話しになっていますように、困っている人たちに対して迅速に対応できないかということで始まったわけですけれども、もちろん迅速であればそれだけでいいというわけではないわけで、やはり迅速であり、かつ当事者の意見をよく聞いて、きちっと正しい判断をしていくという、抽象的な言い方にはなりますが、そういう能力を身に付けなければいけないと思います。
 したがいまして、じゃ具体的にどういう研修内容になっていくのかということになりますと、先ほど浜四津先生からも御質問がありましたように、今後法務局の方と弁護士会の方とででも詰めていくべき事柄であると、もちろん弁護士会だけじゃなくて土地家屋調査士さんも含めてだと思いますが、そういう中身になっていこうかと思います。
#196
○井上哲士君 じゃもう一回、西本参考人にお伺いをいたします。
 去年やはり行った際に、愛知県土地家屋調査士会資料センターというものの資料をいただきまして、会として様々な土地にかかわる資料を収集をされて、この情報提供で大変役に立っているお話を伺ったわけですけれども、本来的にいいますと、もっと行政機関のところで土地にかかわる情報をもう少し一元的に集めて提供するということが必要なんではないかなという気もこれを聞いて考えたんですけれども、今後このセンター自身の発展方向をどうお考えか、また、この行政とのかかわりについてはまたこういう支援がほしいとかいうことがございましたら、お願いをします。
#197
○参考人(西本孔昭君) 資料センターは、やはりこれからも無駄な争いをなくす、あるいは私、冒頭申し上げました中で、紛争予防にとって最も適切な手だてだろうというふうに今も考えております。それで、発展的にしたいと思っております。あるいは、取り組んでいる会も増加しつつあります。
 それから、行政がそのような取組をしたらいかがかというお話だったかと思いますが、是非お願いをしたいというふうに考えております。しかも、資料の多くは公的な資料がございますが、公的な資金を使って公的な事業をなさったのに、そのデータを公にしないという機関もあるわけです。これは相当お願いをしてデータをいただいているんですが、なおいただけないところもあります。やはり、行政がこういったことにもう少し関心を示していただいて参加していただけば、官民これ共同でやれば大変大きな資料になる。それから、何度もくどいように申しますが、紛争予防になるということは間違いないというふうに確信しておりますので、お願いしたいと思います。
#198
○井上哲士君 ありがとうございました。
 終わります。
#199
○委員長(渡辺孝男君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#200
○委員長(渡辺孝男君) 速記を起こしてください。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#201
○前川清成君 民主党の前川清成です。
 午前中に引き続きまして質疑の時間をちょうだいいたしましたこと、委員長始め理事の皆さんに感謝申し上げます。
 それで、午前中の質問に引き続いてお尋ねしたいんですが、私は登記官の方々の能力についてネガティブなことを申し上げているつもりはないんです。私はこれまで弁護士をしていましたので、比較的登記という仕事とかかわってきたつもりなんですが、それでも登記官という方とお話ししたこともありませんし、どういうふうに、どういうふうな過程を経て登記官になられるかも存じ上げませんし、ですから、ましてや国民の皆さん方は登記官の方というのが一体どういう方なのか御存じないだろうと思うんです。
 先ほど土地家屋調査士会の西本会長が、困っている人にとって必要なのは最もふさわしい人に巡り会うことだと、こういうふうにおっしゃっていました。その境界でお困りになっている方が自分にとって何がふさわしい手続なのかということを知るために、そして信頼を持ってこの筆界特定制度を利用するためには、やはり登記官という方がどういう方なのか、どういうふうなふうに能力が担保されているか、これが大変重要なことではないかと思うんですが、この点、民事局長いかがですか。
#202
○政府参考人(寺田逸郎君) それは正におっしゃるとおりでございます。
 私ども、午前中も御説明申し上げましたけれども、法務事務官として登記の仕事に従事してきた者の長年の経験を有する者の中から登記官というランクの者を一つの責任者のような形で選んでおりますけれども、その責任者の中でも測量講習を受けるあるいは表示登記について更に勉強させるというようなことで、表示登記の専門官というのが全国に約二百名現在いるわけでございます。
 その中でも特にこの表示登記の事務に精通している者、長年登記の関連する仕事の中で特に地図の作成でございますとかこの筆界の関係の事務を行ってきた者、こういう者を総括表示登記専門官ということで任命いたしております。これが約五十名おります。
 これらの者は、当然のことながら、地図の作成というのを責任ある立場で行ってきた経験もありますし、また能力もございます。筆界調査につきましても、長年その表示登記の事務の一環として、あるいは地図の作成作業の中で携わる経験というのも有しております。そういう中で境界についての争いについていかに公正的な立場で当事者に御納得いただくかということについての経験も有しております。
 そういう能力、経験を有する者を私どもといたしましては責任者と今考えているわけでございますが、今回の筆界特定登記官という者もそういう者の中から特に優れた者を選んでいくと、こういう考えでいるわけでございます。
#203
○前川清成君 寺田局長の御説明を聞いても少しまだ納得できないんです。
 例えば、今回、百四十三条の一項で特定書というのを登記官が作成することになります。このことについては、少なくとも今までの登記官がしてこなかった仕事であるということはお認めいただけるだろうと思います。あるいは、百四十条の四項で調書を作ることになっています。裁判所でいう期日調書のものやあるいは供述調書のようなものを作るわけですが、これも今まで登記官がしてこなかった仕事、新しい分野の仕事だと思います。
 そこで、ちょっとこの点通告していないんですが、大臣でも副大臣でも政務官でも結構ですから、この筆界特定制度に対する国民の信頼を確保するために、例えばこういうような基準で登記官の中から筆界特定登記官を任命しますというその基準を公にしたらいかがかな。人事の問題なんだからもう役所の内々で決めるんだ、表には出さないんだということではなくて、国民の権利義務に直接かかわってくることですから、ここは国民の皆様方にもオープンにして、それで、それによってこの制度の信頼性を高めていくということが大事じゃないかなと思うんですが、いかがですか。
#204
○副大臣(滝実君) 今委員は、専門家の立場からこの問題に取り組まれた経験を基にしての御指摘だろうと思います。私も実は法務省へ来るまでは、専ら法務局に対して早く職権でやってくれとか、そういうことを中継ぎでいろいろ申し上げていた経緯もあるものですから、この問題は確かに言われてみりゃそうだなというところがございます。そのために、登記専門官だけでは具合が悪いものですから、この種の言わばシステムを導入して、できるだけシステムとしていろんな意見を聞いた上で決定していこうと、こういうことだろうと思います。
 したがって、御指摘のとおり、今までにない特定調書なんかも作るわけですから、私は単純に経験だけというよりも、できればこういう人というものが何かガイドラインとして中に持っていることは当然だと思いますので、それは公表できるかどうかは分かりませんけれども、少なくともガイドラインとして中には持ってやっていかないと、恐らくは登記官仲間でも不公平な感じを与えたらまずいと思いますので、それはそれなりにこなしていく必要があるだろうとは思います。
#205
○前川清成君 是非、こういう開かれた社会ですから、公開するような形で御尽力をお願いしたいと、こんなふうに思います。
 それで、続いて、百二十七条以下で筆界調査委員という制度が設けられることになっています。午前中の質疑の中で政務官の方から、多くの場合は土地家屋調査士が任命されるだろうと、こういうようなお話がありました。私も、筆界の確定に関しては多くの場合はやはり土地家屋調査士さんの専門的な知見を利用することが必要だろうと思っていますが、条文を読みますと、例えば百二十八条の一項二号で、二号には弁護士法や司法書士法の懲戒処分の規定が出ています。それで、どのような場合に弁護士を調査委員として選ぶのか、どのような場合に司法書士を選ぶのか、この弁護士と司法書士、あるいは土地家屋調査士の使い分けといいますか、その点のところ、民事局で結構ですからお答えいただけますか。
#206
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、これまでの実績にいたしましても、この分野の専門家というのはやはり土地家屋調査士さんが第一でございます。測量、図面の見方、それらについてはやはり土地家屋調査士さんでないと分からないことがあるわけでございますので、原理的には土地家屋調査士さんが第一だろうというふうに考えております。
 しかし、先ほども申しましたように、境界確定訴訟については、現に弁護士さんでありますとか司法書士さんの間にも非常にそれに通じておられる方がないわけではありません。理想を言えば、事件の類型に応じていろんな方をお願いをしたいと、このように考えますが、しかし現実問題として、どこの地域にもそれを、能力、これを任せるに足る方がおいでになるとは限らないわけでありまして、むしろ、どちらかというと、需要側の論理と供給側の論理があるわけでございますけれども、その地域では非常に優れた弁護士さん、認定司法書士の皆さんというのがおいでになって、その方々がやはりその地域では境界の問題についても十分に把握されているというようなケースで、むしろそれらの方々をお願いするというのが現実の姿としては少なくとも当初はあると、姿かなというふうに考えてはおります。
#207
○前川清成君 百三十条の規定で標準期間を設ける、こういうふうになっています。これ、標準期間を設ける趣旨について御説明いただけますでしょうか。
#208
○政府参考人(寺田逸郎君) この手続は基本的に権利義務を直接決めるものではございませんので、俗に言う行政処分というものには当たらないわけでございます。
 しかしながら、行政手続法の考え方は、行政処分ということが非常に大きな中心的な課題ではございますけれども、やはり行政手続として利用者のためにおおよそどういう処理をするということについて、ある種の情報として基準を設定しておくというのがやはり利用者のためだという考え方からできているんだろうというふうに思っておりまして、この手続も行政処分そのものではないわけでございますので、行政手続法に言う標準処理期間を定めるというわけではございませんけれども、しかしそれに準じてやはり標準処理期間というものを定めておく方が利用者の方々にとっては便利だと、こういう考慮からこの条文が入っているわけでございます。
#209
○前川清成君 午前中に、この筆界特定制度は早く安くなのか、あるいはゆっくり丁寧なのかというようなお尋ねをしました。それに対して局長の方から適切な時間を掛けて適切な費用でというお答えがあったんですが、この百三十条で標準期間を定めているというのは、ある程度丁寧さを犠牲にしても迅速な認定を行うということではないんですか。
#210
○政府参考人(寺田逸郎君) 犠牲にしてもと言うと言い過ぎでございますので、私としては適正なと言う以外はないわけでございますけれども、しかし比較の問題で申し上げますと、裁判所で現在行われております境界確定訴訟に比べれば、よりコストも安く期間も短いというのが普通この手続を利用される方の御希望であろうというふうに考えておりますので、それは、そういう意味でこの標準処理期間を設定したいというふうに考えていることは事実でございます。
#211
○前川清成君 今、境界確定訴訟は時間が掛かるんだと、こういうふうにおっしゃいました。もしお手元に統計があればで結構ですが、その境界確定訴訟というのはどれぐらい掛かるのか。なぜ境界確定訴訟が時間が掛かってしまうのか、原因。それに、それと対比して、この筆界特定手続であればなぜ早く認定することができるのかというような点、御説明いただきたいと思います。
#212
○政府参考人(寺田逸郎君) 最新の統計はございませんけれども、平成十年の司法統計によりますと、審理期間別で最も多いのは審理期間が一年を超えて二年以内のものであり、次に多いものは二年を超えて三年以内のものでございまして、おおよそ二年程度というのが境界確定訴訟の審理期間であろうというふうに思われます。
 境界確定訴訟の実務については本来ですと裁判所の方から御説明申し上げるべきところかもしれませんが、私どもの理解しているところでは、やはり的確に専門家を探すというのはなかなか難しいという面もございますし、やはり訴訟でございますので、当事者が主張を尽くすということについて、裁判手続の中でそれを行うということになりますと、それは相当時間をまた費やすということではないかなというふうに理解をいたしております。
#213
○前川清成君 今のお答えは、裁判手続であれば適切な時期に専門家の関与がないから、二番目には当事者に十分な主張、立証を尽くさせるから、だから少し時間が掛かってしまうんだと、こういうことですよね。
 この手続であれば、まず前者の点ですが、最初の段階から調査委員が任命されるので、その点はクリアされると、こう理解していいんですかね。
 後者についてなんですけれども、先ほど益田参考人、日弁連からの参考人ですが、やっぱり手続上当事者に十分主張、立証の機会を付与しなければならないと、こういうふうな意見を述べておられたんですが、どうなんでしょう。
 確かに、十分な主張、立証を尽くさせれば、時間は掛かるのかもしれませんが、当事者が納得すると。当事者が納得してその筆界特定を受け入れるためには十分な主張、立証の機会を与えなければならないと、こんなふうに考えますが、その辺のバランスの問題、お答えいただきたいと思います。
#214
○政府参考人(寺田逸郎君) 私どもも、この当事者の納得というのがやはりこの問題を解決する一番大きなポイントの一つだろうというふうに理解はいたしております。
 ただ、私が、訴訟においてその当事者ができるだけ主張、立証を尽くすということの期間の長さというものとこれとを比較いたしますと、その訴訟はやはり相当公式な形でそれが行われます。法廷で双方、準備書面を用意して、その主張、立証が尽くされ、裁判官によってこれが整理されてということも、まあ最近でこそ国会でも御審議いただいた迅速化法等によりまして相当簡易な形もいろいろ研究はされてはおりますけれども、しかし、そこはやはりフォーマルな手続として変えてはならない部分がございます。
 ただ、この手続では、例えば両方の当事者にある一つの場所に最初から集まっていただいて、あなたの主張はこうですけれども相手方の御主張はどうですかということを例えば現場でお聞きして、すぐその場で、ああ、大体こういうことなんですねということが決められる、そういう、言ってみれば多少の形式的重厚さというものを犠牲にして簡便さというものを追求できる部分があるわけでございます。そういうところがこの手続の特徴として生かしていければ、非常に有効に紛争解決あるいは当事者の御希望に沿った解決になるんではなかろうかというふうに思います。
#215
○前川清成君 寺田さん、十分御存じの上でおっしゃっているんだろうと思うんですけれども、今、例えば民事裁判であっても法廷で弁論手続をやるというのはごくごく少なくて、ほとんどの場合、ラウンドテーブルで争点整理手続をやる。この筆界特定手続も、恐らく法務局の一室か何かでラウンドテーブルみたいな形でやるだろうと思いますんで、今おっしゃったようなその手続の重厚さ云々というのは直接には当てはまらないんじゃないかなと、そんなふうに思っています。
 いずれにしても、私もその当事者に十分主張、立証の機会を与えることは大事だと思いますので、その点のバランス、これを是非留意してお進めいただきたいと思いますし、手続がやっぱり迅速に進むためには、手続の主宰者に対する当事者の信頼がなかったら、必要なんではないかと思っています。やっぱりきっちりとした能力担保があって、その能力の基準が公開されていると、そういう登記官が主宰している手続であれば、当事者はやっぱり信頼してその指示に従って必要な手続、書類等を出すと思うんですけれども、どこのだれかもよう分からへんし、何でこの人になったんかも分からぬという人にあないせいこないせいと言われても、なかなかその指示を、指示に従えないというのが現実だと思いますので、ちょっと先ほどの話に戻りますが、筆界特定登記官については是非オープンな基準をお願いしたいと、こんなふうに思います。
 ちょっと時間の都合もありますので前へ行きますが、百三十一条に基づいて、当事者は百三十一条三項で「手数料を納付しなければならない。」、こんなふうに書かれています。この手数料というのがどれぐらいの金額を予定しておられるんでしょうか。
#216
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、この条文にございますとおり、政令で定めるわけでございまして、まだ確として決められるべき段階ではございませんけれども、私どもといたしましては、先ほどからも再三比較で出ております裁判所の境界確定訴訟の手数料というものを下回る程度の手数料で利用できるようにしたいと、このように考えております。
#217
○前川清成君 今の段階だからその程度しか答えられないというのは、ある意味分からなくもないんですけれども、その制度の立ち上げの問題ですから、いかに利用しやすい制度をつくるかというその制度の根本にかかわる問題ですから、後は任してくれと言われてもなかなか納得できなくて、やっぱりある程度の金額についてはお示しいただきます。
#218
○政府参考人(寺田逸郎君) なかなかこの数多い、あるいはそのバラエティーに富んでいる紛争形態でございますので一概には申せませんけれども、例えば標準的に二百平米の土地の境界の争いでありますと、まあ二万円しない程度の手数料が境界確定訴訟についても設定をされております。で、これを下回る程度の額というように御理解をいただきたいと思います。
#219
○前川清成君 定額になるんですか。
#220
○政府参考人(寺田逸郎君) これはほかの多くの訴訟と同様に、紛争の価額というものを基準にいたしますので、基本的にはその境界というものの長さ、これの値打ちというものを基準に決めるということになろうかと思います。
#221
○前川清成君 その訴額といいますかね、目的物の価額の認定の困難さだとか、今まで法務局がそういうことをしてこられなかったことだとか、あるいは御利用になる国民の皆さん方にとっての分かりやすさというようなことを考えれば、例えばですけれども、一律一万円というように決めたらいかがかと思うんですが、どうですか。
#222
○政府参考人(寺田逸郎君) それも一つのお考えだろうとは思います。で、このどういう類型の申出が出てくる、申立てが出てくるかということにもよりますので、現在、そういうようなことを直ちに決め難いところがございます。私どもは、まあ常識的にはこれまでと同様、やはり紛争の値打ち、争いになっているものの価額というものの評価によらざるを得ないんではないかと考えておりますが、一つの研究課題とはさせていただきたいと思っております。
#223
○前川清成君 その算定の仕方を、手数料の算定の仕方を国民の皆さん方に分かりやすく説明できるかどうかと、これが大事だと思うんですが、それできるんですか。
#224
○政府参考人(寺田逸郎君) 分かりやすくなるように私どももこの政令の規定を工夫したいと考えております。
#225
○前川清成君 百三十一条の三項のこの手数料に関しては、額の問題、そして額の定め方の問題も大事ですけれども、それと同様に、どこまでの範囲含まれているのかと、これも大事だと思います。百四十八条の規定がありまして、ごめんなさい、百四十六条の規定がありまして、手続についてもしその筆界特定手続で鑑定が必要になったら、それは申請人の負担になってしまう。要するに、別途お金が必要であって、最初に手数料を払ったら最後まで行けると、こういうわけではないわけですよね。その点の費用の説明、きっちりとその費用の点を説明しておかないと、利用される国民の皆さん方にとっては一種の消費者被害が起こってしまいますから、その点についてどのように費用を説明するおつもりなのか、説明してください。
#226
○政府参考人(寺田逸郎君) これは委員もおっしゃったように、できるだけスピーディーに、かつローコストでということがモットーでございますので、私どもといたしましても、この手数料以外に納めていただくこの手続費用の負担についてはできるだけ当事者に過大な御負担をお掛けしないように頑張るつもりでおります。現在のところは、ここに書いてございますとおり、最低その測量をあらかじめしていただかないと、どういう地域のどの部分ということは分かりませんので、これは費用として納めていただきます。
 しかし、通常、境界確定訴訟ですと、それに更に歴史的な調査でございますとか、様々な調査をした上で裁判所にこれを持ち込むわけでございます。通常のケースですと、そういうことから比べますと、半分以下の費用で足りるだろうというふうに私どもは見込んでおりますので、この点も分かりやすく説明できるように工夫はしたいと思っております。
#227
○前川清成君 今日は、実は財務省にもお越しいただいていまして、この筆界特定に、筆界特定制度を創設するに当たって、財務省として予算はどの程度お考えになっているのか、また年間の利用者、どの程度を想定されているのか、この辺、財務省からお伺いしたいと思います。
#228
○政府参考人(松元崇君) 筆界特定制度に関します予算措置でございますが、平成十七年度予算におきましては、弁護士、土地家屋調査士等から新たに任命されます筆界調査委員の委員手当を始めといたしまして、必要となります旅費、庁費あるいは諸謝金等を合わせまして約九千万円の予算措置を講じているところでございます。
 また、この想定されます件数でございますが、直近五年間の境界確定訴訟件数の平均値が約一千件ということでございますので、その半数と推定いたしております。
#229
○前川清成君 年間五百件ぐらいしか利用しないと、こういう予想ですか。となりますと、法務局の数が五十だとすると、年間一つの法務局で十件、一月に直すと、一件申立てがある場合もあればゼロ件の場合もある。民間企業の感覚であれば、月一件しか利用しない手続というのは、それは廃止の対象になるんですけれども、その程度のことを法務省としても、あるいは財務省としてもお考えになっているんですか。
#230
○政府参考人(松元崇君) 年間想定されます件数につきましては、法務省の方と御相談いたしたところでございますが、今回の法律制定されまして、それが一年内で施行を予定されておるということでございます。そういったことから、半年間施行されるということで推定いたしておりまして、この直近五年間の平均の約半数と、五百件ほどということで推定いたしておるところでございます。
#231
○前川清成君 違うんです、松元さん。時間がないから聞かれていないことは答えてくれなくていいんですけれども、五百件も、松元さんでなくていいです、寺田さんでいい。年間五百件程度というふうに想定しておられるんですか。年間五百件なら、今申し上げたように、月一件か月ゼロ件ですよ。地域的な偏りがあるかもしれません。例えば、大阪は月三件あるかもしれないけれども、そのほかのところはゼロ件かもしれませんけれども、月一件ないしゼロ件というのは、そういう小さな制度じゃなくて、もう少し、せっかく新しい制度をつくり上げると、で、国民の皆さん方の境界に関する紛争を迅速に解決するんだというような理想を掲げておられるんですから、もうちょっと欲張りなことをお考えいただいたらどうかなと思うんですが、いかがですか。
#232
○政府参考人(寺田逸郎君) ただいま財務省の方からお答えがありましたように、最初の施行は半年分でございますので、半年分の予算ということで御説明になったと思います。年間ですとその倍、約千件程度を一応のめどと考えてはおります。
 ただ、私どもの実感といたしましては、潜在的なこういう境界確定あるいは筆界特定ということについての需要というのは相当数あるだろうと思っております。それを当初の、まあ事件の出具合という言い方は失礼かもしれませんけれども、御利用ということを十分参照して、今後の予算獲得も財政当局と御相談して取ってまいりたいというふうに考えております。
#233
○前川清成君 先ほど土地家屋調査士会から配られたADRに関する資料ですと、境界問題相談センターおおさかだけで、これ一つのところだけで平成十五年三月一日から十六年十二月三十一日までの間に七百七十六件の問い合わせ件数があったと、こういうことですから、月一件ないしゼロ件というような小さな制度をお考えになるんじゃなくて、もう少し大きな制度を前提にされたらどうかなと思いますし、財務省も、是非、新しい制度を立ち上げるんですから、しみったれたことを言わぬと、ぼんと金出すというようなところ、どうですか、松元さん。
#234
○政府参考人(松元崇君) 制度創設ということでございますので、現在ありますデータといたしまして直近五年間の平均値ということを用いさせていただいておるということでございます。
 制度創設後どういったことになりますかということにつきましては、現時点で、今申し上げられないところでございますが、そういったいろんな実態を参照しながら、また法務省さんとよく御相談いたしてまいりたいと考えております。
#235
○前川清成君 この機会に、ちょうど一週間前にやりました裁判官の増員の問題について是非財務省の御所見を聞いておきたいと思うんです。
 裁判官を増やせということについては、自民党も民主党も公明党も共産党も、与野党一致して増やせ増やせと言っているんです。ところが、最高裁の方は、いや、もうおなかが一杯ですみたいなことをおっしゃる。いや、増やしたらどうですかと、それが司法改革でしょうと、こういうふうに言うと、まあ事件の増加数を見ながらその処理に差し支えのないように着実に増加していきたいと、そういうことをおっしゃるんです。今の松元さんの御答弁と併せて聞いていると、最高裁がそういう増員について消極的な発言を繰り返すのは財務省の強い意向があるのかなと、こういうふうに疑ってしまうんですが、裁判官の増員について財務省はどうお考えになっているんですか。
#236
○政府参考人(松元崇君) 裁判官の増員についての御質問でございますが、裁判官増員につきましては、現在、司法制度改革の中で御議論をいただいておるということかと考えております。
 司法制度改革につきましては、行政改革を始めといたします社会経済の構造改革が進められております中で、我が国司法機能の充実強化を図るべく、現在、総合的かつ集中的に推進されているところでございまして、重要な意義を有するものと認識いたしております。
 このため、御指摘の裁判官の増員につきましても、大変厳しい財政事情の下ではありますが、平成十七年度におきまして、裁判の専門化、複雑化、裁判迅速化への要請に加えまして、近年の事件数増加への対応、さらには平成二十一年に予定されております裁判員制度の導入に向けまして円滑な対応が可能となるよう、裁判所からの要求を受けまして七十五名の増員を実施するということにいたしておるところでございます。
#237
○前川清成君 違うんです。そういう、聞いていることには全然答えていただいていないんです。
 松元さん、あのね、行政改革どうこうとおっしゃいましたけれども、行政改革と司法改革とが全く違うものだというのは御理解いただいていますか。
#238
○政府参考人(松元崇君) 行政改革も進められておりますし、また同時に司法改革も進められておるということで承知いたしております。
#239
○前川清成君 それじゃ、一言で結構ですから、行政改革の理念は何で、司法改革の理念は何なんですか。
#240
○政府参考人(松元崇君) ともに重要な、国民にとってより良い行政あるいはより良い司法を提供していくということで、大変重要な課題ということで認識いたしております。
#241
○前川清成君 行政改革は、私が答える立場にないのかもしれませんが、行政改革というのは公務員の数を減らしましょうと、無駄をなくしましょうと、小泉総理が口癖のようにおっしゃる、民間でできることは民間でやりましょう、それが行政改革だと思います。司法改革は逆なんです。ともかく、日本の司法、裁判所、そういう制度が社会の隅にあるんだ、片隅にあるんだ、小さな役割しか果たしてこなかったんだ、だから透明で公正なルールに支配された社会をつくっていくために法曹の数を増やしましょうというのが司法改革なんです。全く違う理念を持っているわけですから、財務省が裁判官の増員に当たって行政改革の理念に基づいて査定をしていただいたら大変困りますので。
 それともう一点、松元さん、司法改革の議論はもう終わっているんです。今議論中じゃなくて、司法改革推進本部というのももう五年間の役割を終わって解散したところなんです。今もう実現の段階ですので、是非、財務省におかれても、司法改革推進本部の本部長は谷垣財務大臣だったわけですから、副本部長が、副本部長は谷垣財務大臣だったわけですから、是非、財務省におかれても司法改革の推進に向けて積極的な予算をお願いしたい、こういうふうに思います。
 次の課題に行きたいんですが、筆界がどのような判断材料に基づいてどのようにして特定していくのか、この点に関連して、法務局は筆界の特定に役立つ資料としてどのようなものをお持ちなのかというのをお聞きしたいと思います。
#242
○政府参考人(寺田逸郎君) 再三御説明申し上げているとおり、筆界は、結局、これまでいったんどこかで決まっているものを発見するということが本質的な筆界特定の性格でございます。したがいまして、過去の資料その他が非常に重要になるわけでございます。そのほかに、現地の形状というようなものが問題になるわけでございます。
 この特定に必要な資料といたしまして法務局にございますものとしては、当然のことながら登記記録そのものがございますが、特に、表示登記の関係でございますので、備付地図あるいは地図に準ずる図面、また登記簿の附属書類として、委員も御指摘になりました地積測量図等がこれに役立つ資料としてあろうかと考えております。
#243
○前川清成君 ちょっと時間の都合もありますのでこちらの方で申し上げますけれども、法務局に筆界確定に、筆界の特定に要する資料がすべて備わっているわけではなくて、一部備わっていて、例えば市役所であるとか土木事務所であるとか税務署にもあるということだろうと思いますし、私の地元の奈良県でいいますと、寺領、社領というのがあった関係で、興福寺や春日大社といったところにもそういう重要な資料がいろいろあるそうです。
 その資料を収集するための手続として今回設けられたのが百三十八条の条文だろうと思うんですが、この百三十八条に基づいて提出を、協力を求められた関係機関は法律上の義務として提出義務、協力義務があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
#244
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、この百三十八条の関係団体に対する協力依頼というのは、資料の円滑な収集というのを主たる目的とするものでございます。
 これについては、弁護士法の二十三条の二等と同様に、相手方に協力すべき公法上の義務というのが課せられるわけでございます。
#245
○前川清成君 以前、予算委員会でこの点をお尋ねしたんですが、今おっしゃっているように公法上の義務が発生したとしても、弁護士法二十三条の二に基づいて銀行に振り込め詐欺の犯人の預金口座を照会したところで、銀行は答えない。なぜ銀行が答えないかというと、その振り込め詐欺の犯人の同意を取れないからというような扱いをしているみたいなんですね。それがいいのかどうかというのを是非皆さん考えていただきたいと思います。
 一方は、一方は、だまされてしまった。その人たちが被害を回復するためには、弁護士法二十三条の二であろうと不動産登記法の百三十八条であろうと、答えなければ、答えてもらわなければ前へ進まないんだけれども、単に公法上の義務ですと、答えなくてもサンクションがありませんということで済ませてしまうと、百三十八条で申し上げれば境界の確定は進まないし、弁護士法二十三条の二であれば振り込め詐欺の被害者救済は進まないわけです。
 そこで問題になってくるのは、照会を受けた先の公的な義務を果たす義務といいますか、そういうところなんだろうと思うんですが、実は、今日、金融庁にも来ていただいていて、お尋ねしないのも悪いと思いますので、時間の関係で最後になってしまいました。誠に申し訳ないんですが、とりわけ振り込め詐欺に関して、振り込め詐欺に関して銀行の照会義務に応じないことをどのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
 それと、実はこの点、通告していないんですが、私、お昼に議員会館の事務所に帰りますと、地元の方からファクスが来ていまして、奈良にお住まいの方が、法務局認定法人民事訴訟通達センターというところから総合消費料金未納分訴訟最終通告書というのが届いて、どうしようといってお困りのファクスをいただいた。当然ですが、法務局にこういう認定法人はないと思うんですが、法務局として、自分ところの、これは住所としては東京都千代田区麹町六丁目二番地の十七と書いてあるんです。今日の新聞で、法律扶助協会の名前を使ってどうこうしているので困るというのが出ていました。
 法務局の名前を使ってこうやって詐欺を堂々とやっている機関がある。これについて、法務局としてやはり何らかの対応をお考えいただかないといけないと思うんですが、ちょっと時間切れで申し訳ないが、簡潔にお答えいただけたらと思います。
 以上です。
#246
○政府参考人(大藤俊行君) お答えいたします。
 刑事訴訟法や弁護士法に基づく照会への回答につきましては、それぞれの金融機関が当該照会制度の趣旨を踏まえ適切な対応を取る必要があると考えております。
 一般には、大臣が予算委員会で答弁いたしましたように、各金融機関において個別の具体的な事案ごとにそれぞれの制度の趣旨を踏まえ、報告されることによって得られる公共的な利益が報告をしないことによって守られるプライバシー等の利益を上回るかどうかを十分に検討の上判断すべきものと考えております。
 いずれにしても、金融機関におきましては、自らがそれぞれの事案ごとに、例えば回答で求められる情報の内容、性格でありますとか犯罪の蓋然性等の金融機関として知り得る具体的な事実関係や状況等に基づき、十分な検討を行い判断をすべきものと考えております。
#247
○政府参考人(寺田逸郎君) ただいま委員が御指摘になりましたその法務局云々という法人については、私どもも、法人の存在はもとより、そのような法人が利用された振り込め詐欺に類する事案があるということもまだ承知しておりませんが、仮にそのようなことがございましたら、これまでの振り込め詐欺同様、関係の省庁とも十分御連絡申し上げまして、関係団体を通じてできるだけのことをする、情報提供をするということとともに、法務省としても、直接法務省のホームページ等を利用いたしまして、そのようなことによる被害が拡大しないような措置というのを検討したいと思っております。
#248
○前川清成君 時間ですので、終わります。
#249
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 午前中に続いて質問をいたします。
 最初に、司法書士法の改正について質問をします。
 先ほどの参考人質疑の中でも議論があったわけですけれども、今回の改正案の三条一項六号の部分で、認定司法書士が自ら代理人として関与している簡裁事件の判決等については上訴の提起を可能にしております。
 この点は、簡裁での代理業務を、代理権を付与した前回改正の際に、我が党は、十四日しか期限がない中で判決を受けて上訴すべきかどうかの正確な判断を持つのは代理人である司法書士だ、むしろ最後の御奉公として上訴すべきかどうかの判断をする義務もあるんじゃないかと、こういうことを申し上げたわけです。ところが、当時の法務省の答弁は、司法書士の方々に控訴の提起権を与えるとそれが控訴審においても代理権を有していると誤解されるおそれがあると、こういうことで首を横に振られたわけですね。
 施行後まだわずかな期間なわけですけれども、今回この上訴提起の代理権を与えるに至ったその理由をまずお聞かせください。
#250
○政府参考人(寺田逸郎君) この問題はかつて、今、井上委員がおっしゃったとおり、この司法書士法の改正の際に法務委員会でもかなり御批判をいただいたわけでございます。
 法律の建前の上からいいますと、控訴を提起するということは控訴審の手続の一部でございますので、司法書士に、仮にも認定を受けたといたしましても、そのような手続に関与させるのはいかがかということがこの問題の背景にあり、それに基づきまして、私ども、かつては現行法のとおりそのことを認定書士の権限外の行為という仕切りをして法案を提出し、その後それが法律となって現在に至っているわけでございます。
 しかし、その後、もう少し実際的に考えてみますと、井上委員の御指摘のとおり、控訴提起をする際に、様々な控訴理由をお書きになるということは別といたしまして、控訴することそのものについてまでそのように厳しいことを要求するのもいかがかという議論がありまして、そのような控訴を提起する時間的な制約もある以上、責任を持って控訴提起することまで、だけならこれを決めてもそれほど弊害は大きくないんじゃないかという考慮から、今回改めて全体の仕組みを見直しまして、その上で、この控訴の提起それ自体については認定司法書士の権限とするということでよいのではないかという考えに至ったわけでございます。
#251
○井上哲士君 不合理があれば直ちに正すということは大変結構なことだとは思っておるんです。
 その上で確認しておきたいのは、今もありましたけれども、この改正案で行うことができるのは上訴の提起の代理業務だけで、当然ながら、上訴審の代理人として行う行為までは含まれていないというふうに理解をしてよいかというのが一点目。
 それからもう一つは、判決に対する控訴についても、いわゆる民事訴訟法の第二百八十六条二項に掲げる事項を記載をした控訴状を提出をすることだけをいうんだと、そして起訴状に攻撃防御の方法などを記載する行為までは含まないんだと、この二点については確認してもよろしいでしょうか。
#252
○政府参考人(寺田逸郎君) ただいま委員の御指摘になられたとおりでございます。
 今回の改正によりまして認められる司法書士の権限の範囲というのは、あくまで控訴をすること自体でございますので、この二百八十六条の二項の控訴状に記載されるべき事項が正式な意味での権限ということになるわけでございます。
#253
○井上哲士君 分かりました。
 次に、新しい筆界特定制度を進めていく上での予算や体制の問題を中心にお聞きしますけれども、まず、いわゆる登記所備付地図の整備の推進についてお聞きをいたします。
 平成十五年の都市再生本部の決定で、国において、全国の都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進するとなりました。これに基づいて法務省自らが行う地図作成作業については、都市部の地図混乱地域であり、特に緊急性及び優先度の高い地域を実施するというのが衆議院でも答弁をされておりますけれども、この地図混乱地域というのは全国でどれだけあって、そのうち今後十年間で法務省としてはどこまでこの地図を整備をされようとしているんでしょうか。
#254
○政府参考人(寺田逸郎君) そこで言われております地図混乱地域、これは地図によりまして現地を特定することが全くできないような状況にある、そういう地域でございますが、平成十四年度で調査した結果によりますと、全国で約七百五十地区、八百二十平方キロメートルございます。これは以前にも申し上げたとおり、必ずしも都会ではございませんが、都会もかなりこれに含まれております。
 今後十年間でどのぐらい地図作成作業を行うかということでございますが、平成十五年六月の先ほどお示しになられました方針で、法務局自らが作成をすべきこととされているという点にかんがみまして、法務局の行う作業は十年間で約百平方キロメートルというように見積もっております。
#255
○井上哲士君 そうしますと、この百平方キロメートルを法務省として整備をする上で都道府県ごとに十年間でどれだけ整備をするのかと、こういう計画はあるんでしょうか。
#256
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、十年間で百平方キロメートルということになりますと、単純計算で、全国的に見ますと毎年十平方キロメートルということになるわけでございますけれども、これについてはやはり緊急性の高い地域から行っていくということで、現在いろいろな形でその緊急性というものを検討はいたしておりますが、最終的には、毎年毎年、例えば道路の計画がどうなるか、あるいは下水道の計画がどうなるかというようなこともございますので、十年間丸々現時点で決めてしまうということではございませんで、それらの状況の変化にも応じまして毎年の分を決めていきたいと、このように考えております。
#257
○井上哲士君 確かにいろんな状況変化があります、現状は生き物ですから。十年間、この年はここをやるというふうに余りコンクリートしたものはできないかもしれませんけれども、しかし少なくとも各都道府県ごとに、緊急性及び優先度の高い地域というのはおおむねこのぐらいだと、今後十年間にここまで各都道府県やるんだと、こういうものは当然あってしかるべきだと思うんですけれども、今のお話でいいますと、全体として年間約十平方キロやるだけで、各都道府県として十年間でどの程度やるのかという計画はないと、こういう理解でよろしいですか。
#258
○政府参考人(寺田逸郎君) まだ計画という形でそれをお示しできるようなものはございません。しかし、先ほど申しましたように、全体的な状況の把握というのは、これはこれまでもいろんな形で地元の御要望等もあるところもございますので、それは承知しているわけでございます。
 したがいまして、全く恣意的に行うというのでなくて、ある程度計画性を持って行いたいというふうには考えております。ただ、現段階ではそれを十年先までぴしっと決めたものはあるわけではございません。
#259
○井上哲士君 普通は、百平方キロメートル必要だといいますと、各都道府県ごとにここはやらなくちゃいけないというものがあって、それが積み重なって百平方キロになると思うんですが、そうすると、そういう積み重ねではなくて、最初に百平方キロありと、こういう計画なんですか。
#260
○政府参考人(寺田逸郎君) 一応の目安が百平方キロということでございまして、もちろんそれを多少はみ出たり下回ったりすることはあり得るわけでございますが、しかし予算獲得の際に念頭にありますのは、大体、毎年十平方キロで百平方キロを十年で達成するということでございます。しかし、毎年毎年多少の出入りはもちろんあるわけでございますので、それはその際にまた考えていかなきゃならないところでございます。
#261
○井上哲士君 どうも計画性、それから目標、方針というのが見えてこないんですね。
 お手元に都道府県別の実態の資料をお配りをいたしました。
 例えば、地図混乱地域、これは必ずしも都会だけとは限らないというお話でしたけれども、八百二十平方キロメートルございますが、一番左の数は地籍調査進捗率、これはほぼ地図整備状況に重なっているかと思うんですけれども、最も全国で後れているのが大阪、二%でありますけれども、地図混乱地域は七・二平方キロにすぎません。それから、京都も非常に地図整備が六%と後れておりますが、地図混乱地域が〇・七%。それから例えば岩手は、地図整備は八六%、非常に進んでいるんですけれども、地図混乱地域でいいますと、大阪の倍近い一二・八ということになっておりまして、どうもこの八百二十平方キロメートルというのが実態をつかんだ数字なのかということがまず疑問にあります。
 その上で、来年度の実施予定面積、まあ今年度ですかを見ますと、私はこの間のお話を聞いておりますと、大都市部を中心にかなり強力にやられるんだろうと思っておりますと、例えば今挙げました大阪は〇・三平方キロメートルでありますし、東京は〇・二平方キロ、京都の場合は計画なしと、こうなっているわけですね。一方、例えば鹿児島は〇・七平方キロメートル、北海道〇・六平方キロメートルが今年度の予定面積になっております。北海道の地図混乱地域というのは百七・五平方キロメートルで一番多いわけですけども、鹿児島っていうのは三・七平方キロメートルでして、地図混乱地域、まあ全国的にも非常に少ないわけですね。
 ですから、先ほどの答弁ともかかわって、実際にこの必要性の高い、優先度の高いとこをきちっと計画を持ってやっていらっしゃるとはどうもこの数字を見ていると私には見えてこないんですけども、この点どうでしょうか。
#262
○政府参考人(寺田逸郎君) これは様々な考慮が実はございます。
 これについて、現実に作業を行っていただきますのは、これもまた土地家屋調査士の先生方の御協力をいただいての上でございます。そういうことから考えますと、現地でどこまでこういうような作業を進められるかという体制の問題が一つ現実問題としてはございます。
 また、地方都市では比較的公共事業が進めやすい環境にあるために、そういうところをあえて優先して行わなきゃならないという事情もあります。
 なぜ大阪、東京が少ないのかというふうにお思いかもしれませんが、必ずしも東京、大阪が本当に緊急度が高いということは言えないのが現実でございます。しかしながら、トータルといたしましては、やはり東京や非常に備付地図の進捗率が低い大阪についても重要だという認識は別に持っていないわけではないわけでございまして、そこはトータルの十年間の間には十分に手当てはする。ただ、どこを先行さしてやるかということについては体制の問題、緊急度の問題、様々あるということを御理解いただきたいと思います。
#263
○井上哲士君 体制の問題でこれだけしかできないということが一年、二年の間に起こり得るのは理解しないでもないんです。だからこそ、今後十年間でこれだけがやはり緊急性、優先度が高い地域だということをやはり都道府県ごとにはっきり示して、それをやるだけの体制や予算を取るということが私は本来の在り方だと思うし、そういう立場でやってもらう必要があると思うんですけども、この点、大臣、いかがでしょうか。
#264
○国務大臣(南野知惠子君) 都市部における地図作成作業でございますけれども、限られた予算の中でございます。そういう効果的に実施するためにはどうしても毎年度、緊急性があると今お答え申し上げたとおりでございますが、そういうような緊急性が高く、かつ効果的な地域で実施する必要があるということから我々も認識しているところではございますが、そういう意味では、計画では全国で実施すべき面積をまず示されまして、そして具体的な実施に当たっては各年度ごとに計画で示した面積の範囲内で効果的な地域を選定して実施することが合理的であるというふうに考えておりますので、地図作成のための予算の確保も、これも大切なことだと思っております。
 そういうようなことを積み上げまして、法務省としても努力をさしていただきたいと思っております。
#265
○井上哲士君 その方が合理的とは言われましたけども、私はやっぱり各地域ごとにここがこれだけ本当に重要なんだということをしっかり示してこそ財務当局も説得できると思うわけで、どうも行き当たりばったりという印象がぬぐい切れません。
 もう一つ、さらに今度の新しい制度をどういう体制でやるのかということでありますけども、先ほどもどれぐらいの利用があるのかということで、この間の境界確定訴訟の千件程度というようなことが出てまいりました。しかし、良い制度として利用されればもっと広がるはずですし、そうしなくちゃいけないと思うんですね。
 まず、境界確定訴訟でいいますと、衆議院の参考人質疑でも言われておりましたけども、実際にはその訴訟にカウントされないけども、土地の境界をめぐる訴訟というのはもっとたくさんあるというのが一つです。
 それから、先ほどありましたように、ADRの利用状況を見ますと、例えば大阪でいいますと、実際に相談受付をした件数だけでいいましても二十か月でこれ百七十二件という資料になっていますから、年間約百件。今の境界確定訴訟の新受件数を見ますと大阪百二十件になっていますから、ほぼそれに匹敵する数がADRにも行っているというのがあります。
 それから、国土交通省の地籍調査が年間千五百から千六百平方キロメートルとお聞きしました。これ、筆数でいいますと七十万筆だって言うんですね。新聞報道にいいますと、このうち大体二から三%ぐらいが今、筆界未定になっているということになります。これ、単純に計算をいたしますと、毎年この地籍調査の中で一万四千から二万一千筆ぐらいの筆界未定が起きているということになるわけですね。これは必ずしも全部この制度に来るとは分かりませんけども、しかし地図整備でいいますとできるだけ多く来るべきだと思うんです。例えば、一割来ただけでも今の訴訟の件数よりも多いということになるわけですから、私は相当の数が可能性を持っている制度だと思うんですね。
 やはり、これにふさわしい体制と予算がなければ申請しても使えないという、やはり制度の信頼にもかかわることになってまいります。さっき、予算は、にもかかわらず五百件分だという、非常に乏しいというのがあります。それから、体制で見ますと、昨年度で百六十五人、来年度は二百十三人の減員ということに法務局なっているんですね。これで本当にできるんだろうかということを思っておりまして、改めて大臣に、本当にこの新しい制度が国民の信頼にこたえ得るような予算と体制をしっかり取るという点での御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
#266
○国務大臣(南野知惠子君) 先生たちの御努力も多としながら、平成十七年度においては筆界特定制度の体制及び予算におきまして所要の措置を講じたところでございます。それも御理解いただいておると思いますけれども、今後とも本制度を円滑かつ適正に実施するためには、必要な人員、予算、これが何においても必要でございますので、確保していきたいというふうに思っております。そのような決意でございますことを御報告いたしておきます。
#267
○井上哲士君 終わります。
#268
○委員長(渡辺孝男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 不動産登記法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#269
○委員長(渡辺孝男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
#270
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました不動産登記法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    不動産登記法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 筆界特定制度が、簡易迅速に土地の筆界を特定する手段であることが広く国民に理解され、活用されるよう、その意義及び内容等について周知徹底に努めること。
 二 筆界特定が土地所有権に事実上重大な影響を与えるものであることにかんがみ、筆界特定手続の運用に当たっては、申請人、関係人等の意見の陳述の機会を十分に付与するなど、制度の適正・公正さを確保するよう努めるとともに、従前の不動産表示登記手続に著しい変更を生じないよう、特に配慮すること。
 三 筆界特定制度において申請人が負担する申請手数料及び手続費用については、筆界の有する公共性にかんがみ、国民に過大な負担を強いることのないよう、公費負担を含め、十分な検討を行うこと。
 四 筆界特定制度が国民に利便性の高いものとなるよう、簡易裁判所における調停手続及び裁判外紛争解決手続との連携について必要な検討を行うこと。
 五 境界確定訴訟の結果を登記事務に反映させることができるよう、境界確定訴訟と筆界特定制度との連携を含め、十分に配慮すること。
 六 筆界特定制度が円滑・適正に運用されるよう、筆界特定登記官の能力の向上を図るための所要の措置を講ずるとともに、登記所備付地図の作成・整備が一層促進されるよう、人的物的体制の充実強化に、なお一層努めること。
 七 土地家屋調査士が民間紛争解決手続代理関係業務を行うために必要な研修については、その内容等が国民の信頼と期待に十分応えるものとなるよう、能力担保措置に万全を期すこと。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#271
○委員長(渡辺孝男君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#272
○委員長(渡辺孝男君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、南野法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。南野法務大臣。
#273
○国務大臣(南野知惠子君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#274
○委員長(渡辺孝男君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#275
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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