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2005/04/14 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第12号
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2005/04/14 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第12号

#1
第162回国会 法務委員会 第12号
平成十七年四月十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十三日
    辞任         補欠選任
     末松 信介君     関谷 勝嗣君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   政府参考人
       内閣官房内閣参
       事官       鈴木 基久君
       内閣府男女共同
       参画局長     名取はにわ君
       警察庁生活安全
       局長       伊藤 哲朗君
       警察庁刑事局組
       織犯罪対策部長  知念 良博君
       法務省民事局長  寺田 逸郎君
       法務省刑事局長  大林  宏君
       法務省人権擁護
       局長       小西 秀宣君
       法務省入国管理
       局長       三浦 正晴君
       外務大臣官房国
       際社会協力部長  神余 隆博君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       伍藤 忠春君
       厚生労働省社会
       ・援護局長    小島比登志君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨十三日、末松信介君が委員を辞任され、その補欠として関谷勝嗣君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(渡辺孝男君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣官房内閣参事官鈴木基久君、内閣府男女共同参画局長名取はにわ君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長知念良博君、法務省刑事局長大林宏君、法務省人権擁護局長小西秀宣君、法務省入国管理局長三浦正晴君、外務大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君及び厚生労働省社会・援護局長小島比登志君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(渡辺孝男君) 刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。
 本日の法律案審議の質問をさせていただきます。
 先日、あるマスコミの調査がございました。日本人の関心事項、とりわけ政治に対する期待ということでございましたが、治安対策への期待が最大で、景気、雇用などを上回っておりました。また、郵政民営化などの期待は、期待があるのかどうか分からないようなアンケートの結果でございました。
 国民の皆さんが治安の状況に不安を持っておられる原因は、若年の凶悪犯罪、近所で発生する放火、窃盗、家族を巻き込む殺人事件など、身につまされる思いがする事件が多発していることに深い関係があると思います。中でも、我が国在留の外国人による犯罪がここ最近極めて増加していることも大いに関係があると思います。グローバル化の副作用に対し我が国治安当局は十分な処方せんを持っているのかどうか、我が国は国際化の中で犯罪抑止能力が十分あるものかどうか試されていると思います。
 日本は人身売買の受入れ大国とも言われております。二〇〇四年六月十四日に米国国務省が発表いたしました人身売買報告書によりますと、その中で、日本は、アジア、中南米及び東ヨーロッパから、強制労働や性的搾取のために売買される女性や子供の目的地になっているという表現がございます。一方、警察庁が把握しておられます平成十六年中の人身取引事犯の検挙は七十九件、五十八人であります。被害者となった外国人女性は七か国、七十七人とされております。受入れ大国の検挙数という数字にしては相当低いんじゃないかという印象を持つわけでございます。検挙の実態と受入れ大国という国際的評価には大いに格差があると思います。目に届かない真実はどういうところにあるのかどうか。人身取引対策を効果的に進める上では、人身取引の被害者数の実態を正しく把握することが重要であると考えます。
 警察庁にお聞きいたします。
 非検挙、保護されていない被害者も含めて、人身取引の被害者数はどの程度あると考えておられるんでしょうか。また、それを把握するためにどのような工夫をされているのでしょうか。
#7
○政府参考人(伊藤哲朗君) 人身取引事犯の取締りを推進するためには、被害の実態を把握することが極めて重要であると認識しております。警察では、昨年、人身取引事犯の取締り等により、お話がありましたように、七十七人の被害者を確認したところでありますけれども、人身取引事犯の被害者でありましても、ブローカー等から、警察に保護を求めれば母国に残した家族に危害を加えると脅かされたり、警察に言っても無駄だなどと虚偽の情報を吹き込まれるなどしておりますため、自分が人身取引事犯の被害者であることを警察に正直に申告しない者が多くいることも事実でございます。それらを踏まえれば、我が国には事件によって把握した数以外の相当数の被害者がいるものと認識しているところであります。
 このため、警察では、人身取引事犯取締りを通じまして被害者の把握に努めるほか、人身取引に関係する国の在京大使館、国際機関、NGOと警察との間にコンタクトポイントを設けまして、いつでも情報交換や連絡が取れる体制を構築しているところでございまして、今後とも人身取引事犯の被害者の把握に努めてまいりたいと考えているところでございます。
#8
○荒井正吾君 姿勢という点ではよく分かったんですけれども、実態というのはとてもよく分からないという感じがいたします。検挙数は、サッカーのゴールキーパーに例えればつかまえたボールということですが、実際はキーパーが抜かれた球が幾ら多いか分からない状態ですので、幾らブロックしたといったところで、幾ら抜かれているかということを分かりませんじゃ、ちょっとゴールキーパーの評価は大変低くなるんじゃないかというふうに思います。
 目に見えない大国、受入れ大国の実態を政府はどのように把握されているのかということについて御質問を続けたいと思いますが、この人身取引の性格上、日本社会は、人身売買問題は自分には関係ない外国人の問題だという日本人の意識があるというふうに言われております。また、日本全体で社会的に人身売買は犯罪だという認識が足りないという外国の指摘もあります。今警察庁の御答弁でも、被害者の申告が十分その裏にある犯罪の実態を捕捉するのに十分でないというお話もございました。実態把握のないところに有効な対策はないんじゃないかというふうに思っております。
 ある推計ですが、新聞の推計ですが、今、不法滞在者が二十万七千人いると。一方、法務省が本年の二月に調査された調査では、三千五百十七名中五十三名が被害者に該当する可能性が高いという報告がなされております。割合にすれば、調査対象の一・五%という程度だと思いますが、それを比較しますと、不法滞在者の約半分が女性だとして十万人強、それの一・五%が取引にかかわって被害者になっている可能性が高いとすると約千六百人という数字が出るんですけれども、これは一回の調査ですから当てにならない調査ですけれども、それを継続して調査して実態に迫るという努力を政府に期待したいと思うのでございますが。
 内閣官房なり御担当の部局にお聞きしたいんですが、人身取引の実態を把握してその結果を人身取引対策に結び付けるという枠組みが是非とも要ると思うんですが、一省庁だけでできないシステムだと思いますので、政府内でそういうシステムをちゃんとつくろうという意思がおありなのか、どのように進めようとされておられるのか、内閣官房にまずお聞きしたいと思います。
#9
○政府参考人(鈴木基久君) 人身取引対策の実態把握ということについてのお尋ねでございます。
 先生のお話のとおり、人身対策を進めていく上で、被害者の実態あるいはブローカー等の実態、こういった人身取引の実態把握というのは大変重要だというふうに政府としても認識しております。警察庁さんの方から先ほど答弁もございましたが、警察のみならず、入国管理局さん、あるいは婦人相談所等の関係機関におきましても、NGOの方々や在京大使館等の関係機関とも連携しつつ、積極的に実態の把握に努めておるものと承知しております。
 そして、それぞれの機関が把握いたしました人身取引の実態、こういったものにつきましては、政府としてもこれが重要な問題だということで、昨年の四月に人身取引対策関係省庁連絡会議というものを設置しておりまして、この連絡会議の枠組みの中において緊密に情報共有を行っておりまして、そういった取組によって引き続き適切な対策を講じてまいるように努めてまいりたいというふうに考えております。
#10
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 相変わらず認識と姿勢というのは十分よく伝わっておるんですが、実態というのは本当に分からないものだなというふうに本当に思います。これは引き続き努力をお願いせにゃいかぬと。継続的にしないとやっぱり把握できないと。立法があるからちょっと調査したとか、外国で議定書ができた、指摘されたから調査したというだけじゃこれ駄目じゃないかというふうに思うものでございますので、継続的調査を期待申し上げたいと思いますが。
 さて、今回の立法作業に当たりまして、立案当局であります法務省としては、法改正の動機というので提案理由があったわけでございますが、議定書ができたという、人身取引議定書ができたというのが、国際的な環境が整ったということはまず第一に挙げておられるんですけれども、この取引の実態がなけりゃ我が国にはそういうニーズがないということなんですが、ただ、外国からは受入れ大国だとか言われて、大変、もっとせにゃいかぬと言われておったりするわけでございますが、その立法当局たる法務省は、今回の法改正に当たって、我が国の人身取引の実態についてどのように把握した上で立案をされたというふうに考えるんでしょうか。
#11
○政府参考人(大林宏君) 我が国における人身取引の実態につきましては、これまでこれを直接に処罰する罰則がなかったことから正確な数字として把握することは困難でございますけれども、これまで現行の売春防止法違反や職業安定法違反等の罪により人身取引が背景にうかがわれる事案の摘発が行われてきたところでありますので、法務省におきましては、今回の法律案の立案に際し、こうした事案の記録を精査し、例えば以下に述べるような事案が存在することを把握しているところでございます。
 まず、一つ目の例といたしましては、日本人が東南アジアに出向いてブローカーから外国人女性二名を一名当たり三百万円で買い受けることとして、日本の空港で同女らの引渡しを受けた後、パスポートを取り上げ、ブローカーへの支払分や自己の利得分等として一名につき八百万円という理由のない高額な借金を課するとともに、居住場所や外出等の日常生活を制限したり、売春をしない場合等にペナルティーを科すなどして同女らを支配下に置き、一年数か月にわたって売春をさせていたという事案がございます。
 また、日本人男性と外国人女性のスナックの共同経営者二名が東南アジアに出向くなどしてブローカーから外国人女性三名を一名当たり二百万円で買い受けることとして、日本の空港等で同女らの引渡しを受けた後、パスポートを取り上げ、居住場所を指定し、常時監視するなどして行動を制約し、一名当たり五百万円の虚偽の借金を課して一切給与を与えず、さらには逃走を図った女性に対し他の女性の面前で手ひどい暴行を加えるなどして同女らを支配下に置き、約六か月にわたって売春をさせていたという事案もございます。
 さらに、日本人が一年余りの間に東南アジアから女性を連れてきたブローカーから女性六名を一名当たり二百万円前後で買い受けた後、パスポートを取り上げ、買受け金額に自己や背後にある暴力団組織の利得分二百数十万円を上乗せした額の借金を課した上で売春クラブ等に紹介して雇用させ、その売春代金を雇用先から直接回収していたという事案もございます。
 このような悪質な人身取引事案が我が国に現に存することは事実でございますので、こうした事案に適切に対応できることをも視野に入れて今回の立案に至ったものでございます。
 もとより、先ほど申し上げましたとおり、人身取引の総数ですとか現に摘発された事例のほかに、どのような事例が何件あるのかといった数字をお示しすることは困難でございますけれども、少なくとも我が国をめぐって人身取引が現に行われていることは明らかであると認められますので、これらの対策に万全を期すために今回の法改正は是非とも必要であると、こういうふうに考えております。
#12
○荒井正吾君 犯罪として確定的な明確な罪刑が確立されたら、それに伴って犯罪情報がたくさん入る、更に分析が進んで今まで捕捉できなかった情報も取れるというふうに、ある程度期待が少々膨らむような御答弁だったと思います。
 昨年に米国国務省が人身売買報告書というものを発表されております。アメリカの国務省もこういうこともやるんだなというふうに思いましたんですが、その中で、日本は国際的な人身売買への政府の対応が不十分だという指摘で、第二階層監視国四十二か国の一国にされております。G8と呼ばれる主要八か国では、ロシアと日本が最低レベルの評価でございます。
 それが発表された直後の新聞記事で引用されている法務省幹部の言葉、「報告書が出たから何かするということはないが、日本が努力しなければいけないことは多い」と、こういう御立派なコメントがあったわけでございます。今の法務御当局の答弁は、更にまあ熱心な気持ちがこもっているように思いますが、その国務省報告書では、日本政府は人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないとか、日本は人身売買防止法案の検討を急ぎ、深刻な犯罪に相応しなければいけないというふうな記述があるわけでございます。
 法務御当局においては不本意な記述かもしれませんが、その中で法務省に関係する部分だけで結構ですが、その指摘は正確な事実に基づくものであるとお考えでしょうか。何かすることはないがというお言葉は今も出るんでしょうか。御感想を伺いたいと思います。
#13
○政府参考人(大林宏君) 御指摘の昨年六月に米国国務省が発表した人身取引に関する報告書において我が国への言及があることは承知しております。一外国政府が作成した報告であって、その認定資料、具体的根拠も明示されているものではございませんので、その指摘の正確性については論評は難しいところでございます。
 まあ、例えばということで申し上げるならば、アジア及び中南米の男性が性的搾取のために日本へ密入国させられているという記載がございます。これは、当局としてその事実を確認しておりませんし、又は国内外から特に御指摘をいただいてはいないんではないかというふうに考えております。
 ただ、この監視リストに触れられている刑事司法において犯罪者に対して厳罰に処すべきだとか、被害者を保護することに対策を尽くすべきだという指摘、これは正にそのとおりだというふうに考えておりますので、今回の法案を出さしていただいたことも、当然その一つの、何といいますか、効果的な方策の一つであるというふうに考えておりまして、この問題、重大であるという認識の下に私どももできるだけの努力をしたいと、このように考えております。
#14
○荒井正吾君 外国の言うことだから余りうのみにすることはないんですが、自己の客観的評価が十分あるかどうかの方が大いに重要だというふうに思います。いずれにしても、今回、一歩進むというふうには理解できるものでありますが。
 引き続き、法務省にお伺いいたしますが、提案理由説明の一つに国連の人身取引議定書の採択ということが挙げられております。当初御質問いたしました質問と同旨であるわけでございますが、犯罪の実態を正確に把握し、国民に法改正の必要を訴え立法するというのが筋じゃないかと思います。議定書ということと、議定書の成立ともう一つ、提案理由説明の中では、近年、我が国でも、人身取引やこれに関する反社会的行為が発生していることがうかがわれるということは提案理由説明の言葉に入っておるわけでございますが、先ほどお聞きした限りではうかがわれないように思うわけで、どういうふうに多発してうかがわれるのかということを、いうふうには思うわけでございますが、全体的な環境あるいは他人の評価からして、今回の法改正をして更に実態に迫るという刑事局長のお言葉でございますので、今後、人身取引の総数など客観的なデータを把握した上で法の執行に努めていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。
 内閣官房にお伺いしたいと思いますが、人身取引対策行動計画というものが決定されております。大変立派な重要な内容であろうかと思います。我が国の治安体制の結果、一般的な欠陥は縦割りであって横の連絡が不十分だ、法執行が分散的で、国際的犯罪組織は一方連携が十分でありますし、ITなど近代的装備を持っているし、法律的知識も十分だ、行動力のある賢い人々が国際犯罪を執行して、実行しているというふうにも見えるわけでございます。
 行動計画を作成されたわけでございますが、いろいろ実態を聞いてみますと、その法執行の日々のシステムが連携しているというところまでなかなかないようにも思うわけでございます。会議で集まって行動計画を作っておられますが、実行、具体的な行動の継続、結果の追求ということが大事かと思うわけでございます。作成されました人身取引対策行動計画の実施状況、だれがどのようにフォローアップして、また、その結果を各省庁で分散されております法執行機関の対策にどのようにシステム的に反映されるように考えておられるのでしょうか。内閣官房にお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(鈴木基久君) 御指摘のとおり、人身取引対策は国際的な組織犯罪でもございまして、継続的な取組が必要であるというふうに考えております。
 行動計画におきましては、行動計画に盛り込まれた施策について随時、人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を開催するなどにより進捗状況の検討を行い、フォローアップなどを図るということとしております。人身取引対策は内閣の重要課題の一つであるということでございまして、引き続きこの関係省庁連絡会議を中心に関係省庁連携いたしまして、行動計画の施策の進捗状況等を踏まえつつ、人身取引対策について検証、検討を継続してまいりたいと考えております。
#16
○荒井正吾君 何か聞いているとさっと流れてしまって、本当にこう継続的に、こうギアのようにかみ合っていくのか、まあ国会の論議ですので聞いたり答えられたりというだけでございますが、後、その機会がありましたらどのようになったのか、どのように犯罪が摘発されたのか、実態像がどれだけ分かったのかということをまた改めて聞かせていただく機会があればというふうに思います。
 法案の内容について若干御質問申し上げたいと思います。
 一つ目は、逮捕監禁の罪の法定刑の引上げというのが今回の審議の中に入っておるわけでございます。これは、長期間の監禁の罪刑が軽過ぎるんじゃないかというような事件があった面があろうかと思いますが、これはこの人身取引対策と直接関係のないケースの罪刑の引上げのように思われますが、今回、このような法定刑の引上げを一緒にやられるというのはどういう理由があるのでしょうか。それ自身はまあ大変議論があったり、まあ必要であるとも思われるんですけれども、ちょっとこの全体の中で埋もれて、どういう位置付けで改正されるのかというのがちょっと腑に落ちない点があったので、御質問いたします。
#17
○政府参考人(大林宏君) 今回の逮捕及び監禁の罪の法定刑の引上げは、御指摘のとおり、人身取引議定書の要求によるものではございません。逮捕監禁罪は、人身の自由を侵害する犯罪という意味で人身取引と密接に関連し、現に人身取引の被害者が監禁状態に置かれていることも考えられますので、その罰則強化は人身取引対策にも資するというふうに考えております。
 また、委員御指摘のとおり、近年、いわゆる新潟女性監禁事件のように、長期間における監禁事案が発生するなど、現行の逮捕監禁罪では適正に処罰することが困難な重大事案が見られるところでございます。また、逮捕監禁罪の認知件数は近年、増加を続けておりまして、平成七年が三百五十七件でありましたところ、平成十六年には約一・八倍の六百三十九件にまで増加しておりまして、これらに対する第一審科刑状況を見ても、法定刑の上限である五年に近い量刑のなされた事案も見られます。
 一方、人身の自由に関しましては、近時、その侵害行為の悪性に対する非難も高まっておりまして、逮捕監禁罪の三月以上五年以下という法定刑の在り方が現在の国民の規範意識に合致しているのかという問題はかねてから指摘されていたところでございます。
 そこで、逮捕監禁罪に対し、近時の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向を踏まえた上で、事案の実態に即した対処が可能になるよう法定刑を引き上げ、三月以上七年以下の懲役とすることとしたものでございます。
#18
○荒井正吾君 分かりました。
 次は、今度の改正の二百二十六条の二で人身売買罪というのが新設されるわけでございますが、「人を買い受けた者は、」と、こういう構成要件でございます。人を買い受けたというとどういう事態が罪になるのかというふうに思うわけでございます。まあ結納を納めて嫁さんもらうって、これはお金で買い受けたというのと、そういう風習は残っているわけでございますが、構成要件として大変日常語を使っているのでちょっと不明確じゃないかという御批判もあるように思うわけでございますが、買受けという用語をこういう法律の新設で今採用されるというのは、少々悩みもあったかもしれませんが、御説明を願えますでしょうか。
#19
○政府参考人(大林宏君) 今御指摘の買受けの罪は今回新設するものでございます。その内容は、対価を支払って現実に人身に対する不法な支配の引渡しを受ける行為を処罰しようとするものでございます。この買受けあるいは対向犯であります売渡しという罪もできるわけですが、これらの言葉は一般的には物の売買に用いるものでございまして、この用語については確かに委員御指摘のとおり、いろいろな御意見があると承知しております。
 ただ、現行の刑法第二百二十六条の第二項の国外移送目的による人の売買の罪、あるいは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第八条におきまして児童の売買の罪ということで、既に売買という言葉が使用されております。
 考え方としては売る、買うというそういう用語もあるわけでございますが、今回の犯罪の構成要件といたしましては、引渡しを受ける、引渡しをするという言葉が、そういう行為が必要なものですから、買い受ける、売り渡すというような形で定義しているものでございます。
#20
○荒井正吾君 ある面分かりましたが、人の売買契約書というのは普通ないわけで、余りその成立をどう証明するのかと、対価を支払い不当な支配をすると、給料を取ってもらって家事労働、選挙運動を手伝わせるというのは多少事実認定で似たようなところかというような、一般的な不法とそういう日常の家族関係というのがなかなか一緒に評価されるような言葉遣いかなという、私ごときが言う評価ではありませんが、裁判所で判例で埋めていただけるんじゃないかというふうに思います。
 次は単純人身売買罪、目的を要件としない人身売買罪ですが、人身取引議定書でも犯罪化というのは要請されてないようでございますが、これも犯罪として認定する事例を確立するのに少々困難があるようにも思うのでございますが、特に成人の単純人身売買罪のようなものを新設された理由をこの際伺っておきたいと思います。
#21
○政府参考人(大林宏君) 先ほどの委員の御指摘のような、世上、例えば結婚とか何かで金銭の対価が支払われる事例もあるとの御指摘がありまして、それとの差というのは、対象者を不法に支配するに至ったかどうかということが基準でございまして、それと対価の支払形態がどうなのかという問題も含めて総合的に判断されることだというふうに考えております。
 今御指摘の点でございますが、人身取引議定書は、御指摘のとおり、搾取の目的を伴わない売買行為を犯罪として処罰することまでは求めておりませんが、売買行為のうち、売渡し行為について申し上げますと、その対価を得る以上、常に営利目的が存することになりますので、我が国の刑法上、売渡し行為は常に重い処罰の対象とすべきものと考えられます。
 そして、買受け行為につきましては、この売渡し行為と必要的共犯の関係に立ちます。自らの出捐により他人の支配状態を取得する行為でありまして、類型的に見て買受け者において自由を拘束する強い動機に基づくことから、被害者に対して更なる法益侵害の危険性も高く、処罰に値する行為ではないかと、こういうふうに考えられます。そこで、買受け行為についても、その目的のいかんを問わず処罰することとし、さらに実際に営利の目的が存する場合には売渡し行為と同様に重く処罰することとしたものでございます。
#22
○荒井正吾君 今後のその事犯の摘発の実態、あるいはそれがバランスの取れたものであることを期待申し上げたいと思いますが、このような構成要件、質問した、例えば、ちょっと想像、想像といいますか、思い付く事例でございますが、例えば東南アジアの女性が、日本の農村、農村花嫁のケースですが、日本の農村の男性と結婚して、結納に代わるような支度金が御家族に払われて結婚される場合もあるわけでございますが、その中に、遠くへ、日本の農村へお嫁に来るということですから、それ自体を望んで来られているのかどうかちょっと分からないわけでございます。また、男性の家族が農村労働に従事されることを期待してお嫁さんに来てもらうということでありますれば、逃げて帰らないようにパスポートを管理したり、そういう結婚を仲介するブローカーが介在するというようなことも時々新聞に出たりしたことを思い出すわけでございますが。
 そのような場合もこの売買罪というような、これ大変社会的な風習なりと、犯罪というのと、我々の犯罪意識が妥当かどうかということも問われる面もあるかもしれませんが、そのようなケースは法務御当局が今判断されるというような事例でもないかもしれませんが、普通、ちょっと想像はそういうところに行きますので、そういうようなケースについての成立するのかどうかというような御意見を伺いたいと思います。
#23
○政府参考人(大林宏君) 個別の事案における人身売買罪の成否は、人の不法な支配の成否、そして授受される金銭等がその対価と言えるかという事実認定、構成要件への当てはめの問題に帰着すると考えております。
 今委員御指摘の結婚の問題でございますが、結婚に際して金銭の授受が行われることは少なからず見られることだと思っております。通常の結婚生活においては配偶者となった女性において行動の自由が認められるものと考えられまして、その場合は、そもそも対象の女性を不法に支配するに至ったとは認められないのではないかと、こういうふうに思っております。
 また、仮に結婚の動機が真の愛情によるものではないとか、男性の家族が女性のパスポートを管理するなどの事実が認められたといたしましても、その当否は別といたしまして、結婚生活と呼ぶべき範囲を逸脱したものでなければ、かかる事実のみをもって女性が不法に支配されるに至ったと認めるか否かについては一概に断じ得ないのではないかと、こういうふうに考えております。さらに、これに先立つ善意の支度金の授受につきましては、人身の支配の移転の対価とは言えない場合がほとんどではないかというふうに思っております。
 このように、通常の結婚の場合には今回の売買罪に当たることは想定し難いのではないかと、このように考えております。
#24
○荒井正吾君 ある意味分かりました。
 忙しい法務官僚さんは、他人の破壊された家族のことは大変よく分かる、まあ仕事ということでございますが、お忙しい中でございますので、身の回りのことも十分固められて仕事に励んでいただきたいと思います。ちょっと余計なことを申し上げて、大変失礼しました。余り忙しくなられないように。
 もう一つ法案の中身でございますが、人身取引議定書で搾取に含まれるとされました臓器の摘出ということでございますが、臓器移植法、我が国にありますが、なかなか臓器移植の実例が増加しない。その反面、外国で人身取引の結果、摘出された臓器を利用するために外国へ行って手術を受けるということも見えないところで行われているやにも聞くわけでございます。
 今回の改正では、生命若しくは身体に対する加害の目的という中に臓器の摘出が含まれているという御説明でございますが、臓器の摘出の目的というふうな直接的な表現の方がその事例に、国際的な事例に即した表現かなという意見もあるように思うわけでございますが、そのような加害の目的というふうに、ちょっと包括的で直ちに臓器の摘出というふうに連想されないような表現を使われた理由を伺いたいと思います。
#25
○政府参考人(大林宏君) 臓器摘出の目的という表現につきましては、今御指摘のように、臓器の概念が現行法上、臓器移植法で定義されているものの、その一部を省令に委任するなど、必ずしも一義的に明らかなものではないということで、刑罰法規の基本法である刑法において臓器の用語を用いることがいかがかということもありますし、加えて、暴力団関係者等が対象者に暴行を加える目的、リンチとか、そういう問題がありますけれども、そういうことで略取誘拐に及ぶ事案も多いという実態がございます。したがいまして、このような目的による行為も処罰の対象とする必要があるのではないかと、こういうふうに考えております。
 人の略取、誘拐、売買において、身体に対する不法な有形力の行使等の目的がある場合には、対象者の人身の自由に対してより深刻かつ重大な危害が生ずるおそれが大きいことから、このような目的による略取等の行為を処罰の対象としたものでございます。
#26
○荒井正吾君 次の質問に入りたいと思います。
 この人身取引の犯罪の特色が、外国人が多い、国際取引になることが多いということと、取引に巻き込まれた被害者が不法滞在というような、犯罪人であるとともに被害者であるというふうなのが特色であろうかと思います。
 外国の、米国務省の報告、あるいは日本のNPO、NGOの方たちの報告にも被害者の保護ということに随分指摘もあり、活動もされているわけでございますが、米国務省の報告の中でございます、報告の中の表現でございますが、過去一年間にわたって日本政府は、性的奴隷の被害者に対して法的な助言や精神的又は財政的支援をほとんど提供してこなかった、通常、被害者は不法滞在者として強制送還される、被害者というよりも犯罪者としての扱いの方が色合いが強かったというふうに指摘されたりしておるわけでございます。
 今回の法改正によって、保護を求める人身取引の被害者である外国人が退去強制されることはなくなるということでございますので、日本人と外国人の取扱いの差はなく、被害者の保護に資するというふうに見受けられるわけでございますが、人権の確保という観点の対策は基本的に国籍による差別というものをしちゃいけないんじゃないか、我が国におられる人は外国人であろうと日本人であろうと同じように扱うというのが我が国の法治の基本的な考え方であるように思うわけでございますが、一般的に、外国人は余り守らなくていい、人権擁護法の対象にしなくていいとか、そういう論もなきにしもあらずでございまして、日本人だから守る、外国人だから守らないというのはちょっと基本的にずれていると思うんでございますが。
 そのような基本的な考え方も踏まえて、今回の被害者に対する、外国人である被害者に対する取扱いというものの外国人、日本人の差というものはないというふうに考えてよろしいんでございましょうか。
#27
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘のとおり、人権につきましてはこれを外国人でありましてもひとしく保障するというのが我が国の考え方であると認識しておりますが、今回の法改正によりまして、退去強制事由に該当する人身取引の被害者につきましては原則として在留特別許可が認められることになります。したがいまして、被害者の方は我が国に適法に在留して必要な保護を受けるということが可能な状態になるというふうに考えております。
#28
○荒井正吾君 あれ、短かったですね。
 法務入管御当局にあっては在留特別許可で、多分、家族の実態があったり生計の実態があるのを実態に即して保護しようという姿勢をうかがわれるわけでございます。
 ところで、法務、入管法のそういう手当てというのは、そういう在留の、裁量的な、実態に即した裁量というふうになるわけでございますが、被害者の保護は、各国がされている被害者の保護の実態を見ますと、いろんなカウンセリングをしたり、その後の人生の手助けをしたり、シェルターと言われるような一時的な避難場所、保護場所がされたりするわけでございます。
 日本でも昔、江戸時代は駆け込み寺というのが救いの神であって、そのような仕組みもあったわけでございますが、日本における被害者の、こういう被害者の保護というのは十分でないというふうに言われる面もあるわけでございます。それが予算措置だとかいろんな各省の対策にまたがるもんだから、これも相変わらず各省にお任せというふうに今のところなっているように思うんですけれども、これも、包括的な法を整備するとか保護対策を統合的に過不足ないようにするとかというようなことも必要じゃないかと思うんですけれども、こういう御所管はどこかはちょっとよく分からないんですね。そういう主管官庁というのはなかなか見付けられないような実情ではないかと思うんですけれども。
 そういうことでございますので、取りあえず内閣官房に被害者の保護の法的な整備、体系的施策ということについてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
#29
○政府参考人(鈴木基久君) 人身取引被害者の保護というのは大変重要な問題でございまして、昨年十二月に策定いたしました人身取引対策の行動計画におきましても、人身取引被害者の保護というのを対策の柱の一つとして位置付けまして、被害者の状況に応じ、一時保護のためのシェルターの提供、あるいは被害者の帰国支援等のためのきめ細かな対応ということを行うことといたしておりまして、関係省庁が一体となってこれらの施策を適切に実施することにより、人身取引被害者を適切に保護してまいりたいというふうに考えております。
 被害者の保護に関しましての法的な問題でございますが、現在御審議いただいております入管法の改正のほかは、現行法におきましても、婦人相談所は国籍にかかわりなく被害者の保護を実施することとなっておりますこと、あるいは民間シェルター等への一時保護委託制度につきましては予算措置、今回、予算措置を新たにとることによって実施可能であることから、基本的には現行の法体系の中でも効果的な政策展開が可能であるというふうに考えております。
 包括的な法整備はというふうな御質問でございますが、まずは現行の対策を着実に実施するということが重要でございまして、それにより、人身取引被害者の保護についてはかなりの効果が上がるものというふうに考えております。
#30
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 被害者の保護という体系的な施策の必要かどうかを考えます場合、これは被害者が外国人である場合が多いということを考えますと、我が国における外国人の扱いというのを基本的にどうするかというのはより大きな問題だというふうにこの人身取引の議論から見えてくるわけでございます。
 日本における外国人労働者あるいはその他在留外国人をどのように扱うかというのは大変大きな問題だと思いますが、先日、自民党の中での外国人労働者問題小委員会というのがありまして、経団連と商工会議所と連合が出てお話を伺いました。大変興味ある議論の展開でございました。
 経団連と連合は大変意見が分かれると思いましたのは単純労働の扱い、単純労働を認めない、いや、場面に、場面といいますか、状況によっては、産業によって地域によって単純労働も要ると。例えば、南野大臣の御専門でおられます介護の部分で単純労働が要る、外国人の介護ヘルパーが要るという意見と、困るという意見があるわけでございます。
 それと、連合は、単純労働は、日本に外国人は要らないということを明確におっしゃっていましたが、経団連の方はむしろ、日系人の扱い、あるいは外国人の労働者城下町のようなものが発生しているのでそれの保険とかいろんな社会的な対応、法整備が不十分だ、これを何とかしなきゃ、なし崩しじゃとても大変だという悲鳴に近い意見もあるわけでございます。
 もう一つの大きな論点違うのは雇用、日本人の雇用に与える影響、連合の方は失業率が四・数%だから日本人は余っていると、いや、日本人、部局によっては日本人余ってない、介護ヘルパー、例えば介護ヘルパーなどに田舎の方で募集しても日本人はとても来てくれない、日本人が来てくれないところを外国人の人に来てもらって悪いんだろうか、いや、それがないとできないというような声もあったりするわけでございます。
 本委員会は外国人労働問題の委員会ではないわけでございますが、そのような外国人の就労の機会がないことにより、入国後、人身取引の網に掛かったり、不法な就労を余儀なくされたり、その結果、殺人を起こしたり窃盗を起こしたり強盗を起こしたりというのは事例として時折マスコミに登場するわけでございます。犯罪の摘発と外国人就労をどう扱うかというのは大変密接した問題かと思います。同じ入管局で最近出されました第三次出入国管理基本計画というのは、従来の姿勢を大変革新的に踏み込まれた基本計画だというふうに評価をする面多いし、私もそのように思っておりますが、在留する外国人に係る政策を総合的、包括的にカバーしているというところまでは行っていない。
 自民党の議論でも世の中の議論でも大変、外国人の扱い方という、日本人のその姿勢、基本的な姿勢が大変まだ分かれている中での基本計画ですので法務省だけで決められないところがあると思いますが、この際、法務大臣にお伺いしたいんですが、ある面御専門家でおられますし、また、現場で外国人の就労をどう扱うかということをある面お悩みになりながら将来の像を考えておられるようにもお見受けいたしますが、法務大臣として、あるいは、法務大臣から見て、政府の中での方向性の期待ということになるかもしれませんが、在留する外国人の政策について総合的、包括的に検討して方向性を定めるために、そういう、内閣全体になると思いますが、体制の整備を含めた検討が必要じゃないかというふうに思うわけでございますが、法務大臣あるいは先生個人の御意見ということで、この際、御所見を賜れれば幸いでございます。
#31
○国務大臣(南野知惠子君) 先生の御質問にありましたとおり、やはり外国人の方々の労働という問題は、我が国における労働という問題は大きなこれからの検討課題であろうかと思っておりますし、そういうような問題点を今後に抱えながら、今御報告申し上げられる観点といいますのは、我が国に在留する外国人をめぐる様々な環境整備の問題は日本人の場合と同様に多くの関係機関が連携して取り組むべき課題であると思っております。これは、厚労省の方々とも、また経産省の方々とも、範囲は広がって、検討していかなければならない課題であろうかと思っております。
 このような取組の検討のために新たな機関を設置して、そして様々な、それをしていこうとする様々な議論があろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、法務省といたしましては、先般策定いたしました第三次出入国管理基本計画におきまして、外国人が住みやすい環境をつくり、それを進めていくためには、労働の問題、それから教育の問題、又は福祉に係る支援施策等々、様々な分野の施策がございます。そういった問題を連携しながらその方策を検討していく必要があろうかというふうに思っておりますので、今後この方針に沿って対応してまいりたいと思っております。
#32
○荒井正吾君 また、法務大臣を離れられても、またこういう問題についていろいろ所見を賜り、またいい方向性のある政策を南野先生個人としてでもまた能力を発揮していただきたいというふうに思います。
 人身取引という犯罪に対する対応の政策ですが、日本における外国人の犯罪、あるいは日本の組織犯罪と外国人が絡む国際犯罪というのは、従来の近所で発生する犯罪対策と違った取組が必要だと思いますが、グローバル化の中で、島国である日本は、やはりまだ安全な地域、安心できる地域だというふうな認識が我々もあったし、治安当局にももしかしたらおありになったかもしれませんが、その間、見えない世界で大変侵食されている面があると思います。麻薬などの密輸とか、密漁、あるいは銃器とかいうのはもう少し目立つので減っているかもしれませんが、密航とか、いろんなのがまだ存在しているように思います。
 そのような外国人の犯罪を、まあ治安大国を取り戻そうという動きがあるのでそういう面で期待をするわけでございますが、その対応について、この人身取引のこの議論の中でも、官庁間の協力とか連携とか、主務官庁という、省庁でみんな完結するような対応なかなかできないもんですから分かれてしまうわけでございますが、日本の役所は分権的でございますから、いろいろ、この法案の議論をしても、それはうちがやっていない、あれは向こうだとかいうので、もうそういうこと自身が対応ができていない証拠のように思うわけでございます。
 このような外国人犯罪対策については、官庁間の情報の共有、利用などの連携協力体制や国際的な協力関係を構築するということが大変重要だと思います。とりわけ、犯罪の関係する情報の収集、分析と、犯罪の摘発、抑止に役立てるという情報利用というのが大変不足しているように思います。一方、個人情報にかかわりますので、個人情報の保護という点も、官庁で保有されて利用される場合にもしっかりしてもらわなきゃいけないと思いますが、この点はまだ体系的な姿がまだ見えるに至っていないというふうに思うわけでございますが、これは、ほかのテロ対策だとか原子力施設への攻撃とか、いろんな部分で共通の必要性があるように思うわけでございますが、外国人犯罪対策について、またその中で、とりわけ個人情報保護と犯罪情報の収集、分析、利用について内閣官房の方では取りあえずどのようにお考えか、伺いたいと思います。
#33
○政府参考人(鈴木基久君) 国際犯罪、外国人犯罪の深刻化は治安上大きな問題でございまして、政府一体となって取り組むべき課題であると認識しております。
 そのため、平成十三年の七月、この問題に関する関係行政機関の緊密な連携を確保するとともに、有効、適切な対策を総合的かつ積極的に推進することを目的といたしまして、内閣に国際組織犯罪等対策推進本部が設置され、同年八月に同推進本部が策定いたしました国際組織犯罪等対策に係る今後の取組についての中に、不法入国・不法滞在対策として関係機関相互の情報交換・連携、関係国との連携を掲げるなどして、国内外の関係機関の連携した取組を図っているところでございます。
 また、平成十五年九月より内閣総理大臣が主宰いたしまして、全閣僚を構成員といたします犯罪対策閣僚会議が開催されておりまして、同会議において平成十五年十二月に策定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画におきましても、重点課題の一つとして、国境を越える脅威への対応を掲げ、国際犯罪・外国人犯罪対策に政府一体となって取り組むことといたしております。
 なお、その具体的な施策として、出入国関連情報の相互利活用の推進を掲げ、関係行政機関の情報交換の緊密化を図ることとしているほか、外国関係機関との連携強化を施策の一つの柱といたしまして、国際的な協力関係の構築にも努めていくこととしております。
 このように国際犯罪あるいは外国人犯罪対策について関係省庁、連携した取組が行われている中で、議員御指摘の関係省庁間の情報共有ということについても必要な範囲で図られているものと承知しておりますが、その際には、個人情報保護の問題に十分配意することが必要であると認識しております。
 今後とも関係行政機関の緊密かつ適切な連携を確保すべく、犯罪対策閣僚会議及び国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部の効果的な運営に努めてまいる所存でございます。
#34
○荒井正吾君 ありがとうございます。
 会議をしたり行動計画を作ったり、図るという言葉が連発されたりする時点ではまだちゃんとできていないんじゃないかという、思う癖が付いてしまって、実行、本当に実行されているところは無言の迫力といいますか、言われなくても実行していますよという雰囲気が漂うように経験上思うわけでございますが、ちょっと冷やかし的な発言になって恐縮でございますが、しかしそういう計画を立てられたり対策をされたりするというのは第一歩でございますので、第一歩の言葉として取りあえず受け取らせていただきたいというふうに思う次第でございます。
 最後に、入管局長にお伺いしたいと思いますが、よく日本における犯罪防止、あるいは感染症の防止って水際対策、日本だけ入ってこなきゃいいと、外が汚れてても日本だけがいいと、そのためには水際対策が重要だというので、水際対策ということはよく言われるわけでございますが、グローバル化の中で、資本も、外資もばい菌のように最近言う人もいるわけでございますけれども、水際でやって日本だけクリーンというのは、もうそのグローバル化の中でなかなかいかないわけでございまして、いろんな人が来たり、ばい菌が来たり、お金が来たりしても、日本の健全な社会システムというのをグローバルの中でどう構築するかというのが基本的な課題じゃないかと思いますが。
 卑近な例でございますが、水際対策は、行き過ぎると健全な人的交流が阻害されたり入国での入管審査が長時間化する。成田に外国人の列が随分並ぶとか、目立たないんですが、地方の空港で韓国、中国から二時間ぐらいで飛んできたら空港の入管チェックで三時間待たされると、何ていう国だというようなクレームが実は来るわけでございます。人がいなかったり審査が大変だということは分かるわけでございますが、私はかねてから入国審査は、ただ、地方の空港に来る場合は羽田から人が、チームが行って審査をしてその日に帰ってくると。配置をしてその管轄区域を決めている明治政府の管轄区域という在り方はもうちょっと古い面があるんじゃないか。もう遊撃隊で、その審査を羽田から行ってまた帰る、また行って、まあ要は東京に日帰り出張ができる体制に交通施設はなっているわけでございますが、集中的に能力を高めてその人たちを有効に活用するということなどを、システムを十分考えられて、その入管の厳格チェックとか言葉があるんですが、時間を掛ければ厳格だというわけでも私はないと思いますので、円滑な受入れと厳格な対応のバランスを取るのがそのグローバル化の中での日本の統治能力が問われているという面もあると思いますので、最後に入管局長から御所見を伺っておきたいと思います。
#35
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおりでございまして、不法滞在者の対策でございますとか犯罪、外国人犯罪の対策等を考えますと、やはり水際で不正な目的を持ったような人が入国しないようにという措置をとることがこれは非常に大事なことであろうと思っております。
 そのためには厳格な入国審査ということが必要であるというふうに思うわけでございますが、一方で、我が国は国際化の中にはございまして、観光立国という目標も掲げているわけでございますので、問題のない外国の方にはたくさん来ていただくという必要があるわけでございます。そのためには、円滑な入国審査ということも一方で当然必要になってまいります。この二つはいずれも重要な施策であるというふうに考えております。入管局といたしましては、めり張りの利いた入国審査を実施することによりまして、この二つの要請の実現に努めているところでございます。
 具体的な当面の方策といたしまして若干御紹介させていただきますと、外国の出発空港におきまして、日本の入管の職員をそこに派遣いたしまして事前に入国審査の確認作業を行うと、これ、プレクリアランスと呼んでおりますが、こういった措置でございますとか、我が国の主要な空港におきまして、二次的審査、セカンダリー審査と、こう言っておりますけれども、入国審査の際に問題のありそうな方につきましては別室で詳しく事情を聴き、そうでない方についてはスムースに入国審査を済ませるといったような手法を既に導入して実施しているところでございます。こういうことによりまして、問題のある外国人への厳格な審査と同時に、多くの問題のない外国の方に対する審査の円滑化を図っているところでございます。
 また、ただいま委員から御指摘がございました、人員が少ないといいますか出張所が設けられていないような地域におきまして、地方空港に外国のチャーター便が多く来るようになっております。こういう場合におきましては、近隣の出張所のみならず各地方の入国管理局の本局から職員を派遣するなどいたしまして行政サービスの向上に努めているところでございますが、さらに昨年の七月には、成田空港支局と関西空港支局に空港審査遊撃班というものを設けまして、随時、地方空港に派遣しているという状況にございます。
 以上、これらの方策を更に進めまして、厳正かつ的確な審査の実施によります行政サービスの一層の向上に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#36
○荒井正吾君 これで終わりますが、最後に、私、入国管理局長という言葉が余り好きじゃないんです。本当は在留管理とか出国管理とかより重要になっておりますので、入国管理を重点的にされているように思いますので、入国在留出国管理局長の方が、長いですけれども、いいというふうに思います。そんなふうなコメントで終わらせていただきます。
#37
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
 今議題になっていますこの刑法の一部を改正する法律案につきまして、人身取引を犯罪規定にしてその予防とその被害者の保護と罰則をしっかりと設定していこうという趣旨でございます。この人身取引というのは、決して新しい課題ではなくて非常に古い問題であります。我が国の中では、かつて人身売買、すなわち日本の我が国の女性が海外に売られていくということを防止するためにそういう法律整備はあるんですが、今回はそれだけではないんですね。人身取引というふうになっておりまして、改めて、前段でありますが、この法改正に至る経過ですね、なぜこのような法改正の提案がされたのかという経過について簡単に説明をしていただきたいのと、同時に、我が国の人身取引の現状というものが本当にこの改正案で改善できるのかという、その見通しについてその考え方を聞かせていただきたいというふうに思いますが、簡単にお願いします。
#38
○国務大臣(南野知惠子君) 先生のお話しになられております人身の自由を侵害するための典型でありますいわゆる人身取引につきましては、国連におきまして、平成十二年十一月十五日、これは国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、これは特に女性と児童というものが対象になっているかと思いますが、その取引を防止したり、抑止したり、及び罰則したりする議定書が採択されました。この議定書は平成十五年十二月二十五日に発効いたしておりますが、同議定書は、三条におきまして人身取引を定義した上、五条において人身取引を犯罪として処罰すると、これが大きなテーマになってくるかというふうに思いますが、そういうふうにいたしました上に、必要な立法その他の措置をとることを締約国に義務付けるということでございます。我が国は、平成十四年十二月九日に同議定書に署名いたしました。その背景といたしましては、近時、我が国においても人身取引やこれに関連する反社会的行為が少なからず発生しているということがうかがえることでございます。
 政府といたしましても、人身取引が基本的人権を侵害する人道的に深刻な問題であるということの認識の下におきまして、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議において策定いたしました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これに人身取引に係る行為を処罰するための法整備に関する検討を進める旨を盛り込んだところであります。平成十六年四月には、内閣におきまして人身取引に関する関係省庁連絡会議、これを設置いたしました。同年十二月、同議定書の締結に必要な罰則を整備することを含めまして、人身取引対策として総合的、包括的な見地から早急に講ずるべき措置を盛り込んだ人身取引対策行動計画、これを取りまとめたところでございます。
 加えまして、長期間にわたります監禁事案や、それから悪質な幼児略取誘拐事案、あるいは国境を越えた略取誘拐事案が発生するなどいたしており、これを現行罰則では適正に処罰することが困難な事案と見られているところであります。これらの犯罪の実情に即した罰則の構成要件及び法定刑の見直しを行う必要があるというところが主なポイントであろうかと思います。
 それに付け加えますと、このような法改正の効果を具体的な数字で述べるということの御質問がありましたが、それは大変困難でございます。そういう意味におきましては、捜査機関といたしましても、今回の改正で新設され又は見直されます罰則を積極的に適用してその取締りの一層の強化を努めるものと承知いたしており、人身取引を含む人身の自由を侵害する犯罪の防止、撲滅に資するものと強く期待をしているところでございます。
#39
○松岡徹君 その今回の法改正に至る経過というのが議定書の署名、それにこたえていこうということでございますし、当然、批准、締約、締結にまで持っていこうという動きがあるということは承知いたしております。問題は今までの人身売買という定義から、今回の議定書の署名に至って、議定書に示されている人身取引の定義というものがより具体的に定義されていたということが大きな意義なんですね。それからすると、今回の刑法改正で本当に原状回復できるのか、すなわち日本の人身取引の実態が改善されていくのかというその効果のほどを私たちは当然考えるわけであります。
 我々自身も、今回の法改正、すなわち人身取引の問題は以前からある課題ではあるけれども、同時に私たち自身も近年の大きな課題として理解をしていましたし、今回の法改正で一歩前進するという評価はしたいというように思うんですが、問題は効果がどう上がるかということです。そのためにはまず実態をどう、実態がどうであるのかということなんですね。先ほど大臣も、要するに数字としては表し切れないとおっしゃいました。先ほどの荒井委員からもありましたように、実態把握の重要性というものがございました。しかも、その人身取引のその複雑な犯罪性といいますか、間に介在するブローカーが我が国だけではなくて多国間にまたがるということもあります。しかも、その人身取引の被害者として認定するというのは非常に難しい複雑な事情があります。
 そういう意味で、実態をしっかりとつかまなくてはならないと思うんですが、先ほどの荒井委員のところでもありまして、私も、幾つかの点で聞きたいと思うんですが、昨年、二〇〇四年でこれは入管局、警察庁が実態把握している調査として聞いているんですが、検挙件数が七十九件、検挙人員が五十八人、その内訳が経営者が三十五人で、受入れブローカー、あっせんブローカー等が二十三人とか、これらの事件で確認された被害者はすべて女性だと、七か国、七十七人。その前の二〇〇三年では、検挙件数が五十一件というふうになっているんですね。
 そういう意味では、去年は検挙の数が最高の数だと思うんですね。そういう意味では、そういう実数はありますが、同時に全国の地方入管局の方でその実態の把握として二〇〇四年の二月に入管局の調査によって三千五百十七人の対象のうち五十三人が人身取引の被害者に該当する可能性が高いとしてその数値、結果が出ています。この実態の把握は非常に私は大事だと思いますが、改めて特にその三千五百十七人のうちの五十三人の現状をちょっと教えていただけませんか。
#40
○国務大臣(南野知惠子君) 昨年、入管当局においての五十三名という件についての御質問であろうと思います。
 御質問の調査は昨年二月の一か月間にこれ、全国の地方入国管理官署におきまして入国警備官が外国人の違反調査を行いました際、併せて人身取引の被害と思われる事象の有無について聞き取りを行った結果の調査票を分析したものでございます。人身取引の被害と思われる事象といたしましては、例えば強制労働や又は売春等の強要、それから在留中の他人による金銭徴収あるいは入国時のブローカーの引率などの項目を挙げておりまして、その有無を記した調査票を全国から回収いたした後、人身取引議定書における人身取引の定義に該当する事案を抽出したものが、これが五十三人と、先生のお尋ねの数でございます。
#41
○松岡徹君 まあ去年、そういうふうにその、私はその可能性が高いというふうなあいまいな表現の五十三人ですから、本当にその議定書で定義されている内容でどこまで調べられたのか。私は、中にはその調査に素直に応じる、あるいは応じられないというような事情を持って、わざとそういう調査には違う答えを述べる人たちもおったんではないかというのが、まあこれは憶測の範囲であります。しかし、そういう意味では丁寧な実態把握というのがなおさら必要だと思うんですね。
 大臣に確認したいのは、去年二月に調べただけでそれだけの数なんですね。この数字をどういうふうに見るかなんです。どういうふうに受け止めるかなんです。それは、この数が多いと見るのか少ないと見るのか、大臣、どう思われます、この数字は。
#42
○国務大臣(南野知惠子君) それは調査の方法にもよろうかというふうに思いますが、このたびの五十三人という調査は、今申し上げましたような形で議定書に合わせてピックアップしたら五十三人ということでございますので、それが多いか少ないか、その中にどれだけ隠れているのかということも、これは想像の域を出ないものであろうかと思っております。
#43
○松岡徹君 その想像の域を出ないということの話ではなくて、今申し上げているように、実態を把握しなかったらどんな効果を上げていくのかということは分からないんですね。ここにこそ人身取引を撲滅していく課題が埋まっているんですね。全容をつかみ切れていないというのは、正に先ほどからの議論の中にもあったとおりです。ですから、私はこれをやっぱり氷山の一角だというふうにとらえるべきだと思うんですね。だからこそ実態の把握に最大の力を注いでいかなくてはならない。先ほど荒井委員がおっしゃっていました。これからの施策にどうつなげていくのかということになると思うんですね。私はそういうふうに思う、そういうふうにとらえるべきだと思うんですけど。
#44
○国務大臣(南野知惠子君) 本当に、正確な調査をしていくというところにも大きなポイントはあろうかと思いますが、昨年十二月に人身取引対策行動計画が策定されました。これを受けまして本年一月から人身取引の定義をその目的、手段、行為のそれぞれについて具体的に明らかにした上で、全国の地方入国管理官署における取扱いを徹底しまして、当該案件を発見した都度、報告させることにより実態把握を行っているということも申し添えたいと思っております。
#45
○松岡徹君 是非、その実態把握の仕方はいろいろあると思うんです。我々が民主党がいろいろ情報を聞いて、NGOの意見では二万五千人ぐらいの人身取引の被害者がいるんではないかということが、NGOの付き合いとか、その活動の状況で、そういう予想を立てています。
 そういう意味では、五十三人というのは非常に実態から懸け離れているというふうに思うんで、実態の把握なんですが、問題は、その私は三千五百十七人を調査票で調べたと。そのときの可能性が高いというあいまいなことではなくて、その定義にしっかりと即してどういうふうにやっていくかということなんですが、その問題はその定義の解釈のところなんですが、どういうふうに、その人身取引の被害者としての定義のところですが、まあ議定書あるいは今回の法改正のときもそうですが、その目的、手段、行為というふうに議定書の中の書かれている定義を三つの要素としてされています。
 その目的の中の性的搾取、強制労働、臓器摘出等による目的によって手段、すなわち暴行とか脅迫、欺罔、対象者を支配する者などとか、そういうふうになっている。ここで、目的のところで、今回の犯罪の定義になります搾取目的の性的搾取、強制労働、そして臓器摘出なんですが、先ほどもありましたけれども、この臓器摘出というのは三千五百十七人の中には被害者はいなかったわけですね。いなかったわけですね、対象者としては。臓器摘出は先ほど、後のこれに対応する今回の刑法の改正のところで、生命・身体加害目的というふうに定義して広い、より広い定義でやろうということですが、私も、荒井委員おっしゃったように、私は臓器摘出としてはっきりとすべきだと思うんですね。例えば、臓器摘出という場合の事例なんですが、その今回の人身売買罪の新設のところで、売渡しと買受けというのがあります。これまでもそうですが、例えばフィリピンで腎臓を無理やりブローカーによって摘出されて、そして日本人がフィリピンへ行って腎臓移植をする。何百万のお金を払ってやると。これは、買った、要するに買って腎臓移植をした日本人は買受け罪に当たるんですか。どうですか。
#46
○政府参考人(大林宏君) 技術的なことでございますので、私の方からお答えさせていただきます。
 今の委員の御指摘の事案については、やっぱり最終的には証拠の判断、当てはめの問題だと思いますが、臓器の摘出に関しましては、非常に問題は、治療といいますか、社会的相当の問題、医学の発展の問題も裏腹にあります。
 ですから、委員がおっしゃるのは恐らく悪質な事例をおっしゃっているんだろうと思いますので、多分、犯罪に当たるような事例が多いんじゃないかと思いますけれども、ただ、私どもの意識しているのは、そういう医療的な問題も国内でいろいろな議論があるところでございまして、そういうところを踏まえたやはり捜査処理が必要じゃないかなというふうに考えております。
#47
○松岡徹君 医学的なこととかあるいは臓器移植ということについて、一般的に我々は否定しているのではないんですね。それが、要するに、今回の人身売買の臓器摘出という要件に当てはまるのかどうかということがはっきりしなかったら駄目なんですね。だから、生命とか、広い定義、非常に、生命・身体加害目的というところに今回組み入れるんだと、臓器摘出というのを入れるんだと、解釈を入れるんだと言っていますけれども、正にそういうあいまいなというか、要するに、すれすれのところで犯罪が行われているということもあるんですから、やっぱりはっきりと臓器摘出ということはしっかりと犯罪要件として、言葉として入るべきだと思うんですね。
 だから、今おっしゃったように、私は一般的にはその臓器移植の問題を否定しているんじゃないですよ。実際にそういう犯罪行為があるわけですから、そのことについて考えますと、非常にあいまいなんですね。ですから、そのことを今回も、臓器摘出がそういうふうに使われることが犯罪だということ、この臓器摘出という言葉と、今刑事局長おっしゃったように、普通の医学の発展による臓器移植とは全く違うことですから、概念ですから、やっぱり臓器摘出というのを生命及び身体というようなこの分かりにくい言葉ではなくて、しっかりと明記すべきだと思うんですけれども、大臣、どう思われます。
#48
○国務大臣(南野知惠子君) この中身に入りまして、目的のところにはちゃんと臓器摘出等という文字が出ておりますので、それを最大限に解釈した人身に対するというような文言を使ったものと、その中には臓器という問題が含まれていると思います。
 今国会の法案に言います「生命若しくは身体に対する加害の目的」といいますのは、人身取引議定書に言う臓器の摘出の目的よりも広いと。だから、それより狭い問題であれば私も困ったなと思いますけれども、それを含む広い範囲であるということの御解釈がいただければよろしいのかなというふうに思っております。
#49
○政府参考人(大林宏君) 補足してお答えさせていただきます。
 おっしゃられるその臓器の摘出というのは重大な犯罪行為でございますので、委員御指摘のように、それを明確にすべきだとおっしゃられる意味は私どもも分かりますが、それは今回の議定書を踏まえた国内法の担保でございまして、これが含まれるということは明らかであるというふうに私ども考えております。
 先ほども御説明いたしましたけれども、同時に、日本の場合には、いわゆるやくざがさらうといいますか、そういう先はリンチとか、いろいろな非合法な目的を持ってさらうという形ができていますし、いわゆる略取誘拐だけでは済まない問題が含まれています。
 ですから、そういう問題も含めてこのような表現にさせていただいたものでございまして、今回の主要な改正の目的として、委員が御指摘の臓器の摘出ということを私ども強く意識していることは間違いございません。
#50
○松岡徹君 やっぱりそういう事例、もう一つ、例えば目的の、搾取目的の中で臓器摘出等というのがあります。この等というのをどう解釈するかということなんです。いろんなケースが考えられるんです。
 例えばフィリピンとか、あるいはそういう貧しい国の人のところの幼児を買い受けて、買い受けて、そして日本に連れてきて、それで、性的搾取とか強制労働ではなくて、ちゃんとした教育を受けて自分の子供のように育てていくということもありますね。これは対象になるんですか、この場合は。
#51
○政府参考人(大林宏君) 今の教育目的という問題、先ほど申し上げましたように、これは買受けの罪の問題だと思いますけれども、それは対価性と、それから不法な、何といいますか、移転といいますか、支配というものでございます。ですから、今おっしゃるような、本当の教育の目的で、しかも認識の問題、また証拠の問題になるかと思いますけれども、例えばブローカーなりを正式な、正式なというのは合法的なものとして理解して、それなりの手続を取ってという形であれば、教育の目的、そうすると当然不法な支配の移転という定義には当たらないことになりますので、当然そういうものには成立しないという場合もあろうかというふうに思います。
#52
○松岡徹君 広い意味でいったらそれも人身取引なんですね。
 ですから、やっぱりそれも処罰の対象に、やっぱり歯止めを掛けていくべきだと思うんですね。それがやっぱり今回の場合はあいまいなんです。先ほどの臓器摘出の問題もそうです。やっぱりそれがあいまいです。それをどこでどういうふうにカバーしていくかということは、しっかりと課題としてやってほしいと思うんですね。
 例えば、もう一つ、今度、被害者としての認定する場合のケースなんですが、要するに被害者というのは、今までは私たちは一方の犯罪者としての扱い、見方というのがスタートにありましたけれども、例えばこういう場合、どうなのか。
 例えば、タイとかフィリピンのブローカーがだましてそこの現地の女性たちを確保して、そして日本に連れてきて、普通でしたらそこに介在するブローカーがおるんですけれども、そして日本の買受人、受取人に売り渡すということになるんですが、そのことを抜いて、タイとかフィリピンのブローカーが直接日本で売春をやっていたと。そして、そこで働かされていた女性が保護された場合、この彼女は被害者として認定されるんですか。
#53
○政府参考人(大林宏君) 今のおっしゃられるものについては当然、日本で、今のお話だと直接ということですので、例えば買受け罪とかいう問題ではないと思いますけれども、それは当然、日本で売春させている場合は、管理売春等、外国人でも当然適用がございますので、そういう罪が成立し、当然、女性はそちらの方での被害者ということは言えるかと思いますが。
#54
○松岡徹君 そういうふうにいろんなケースというのが出てきます。どんな実態なのかまだつかみ切れていません。だからこそ実態をしっかりとつかまなかったら適切な対策が出てこない、効果が上がらないということになると思うんですね。
 先ほど大臣答えていただきましたように、やっぱり私は、実態把握をするということは非常にまず大事でありますから、それに最大の努力をして、傾注していただきたい。しかも、それが継続的にしっかりとやっていくべきだというように思うんですね。
 問題は、その実態把握をするときに、一番分かるのは、被害者の人から事情を聴くということがまずスタートといいますか、大事な点になります。それで、その被害者の、その被害者からの事情を聴くという視点をしっかりと持ってこの取組をしなくてはならないと思うんですが。
 そこで、こういう実態だということを踏まえて、もう一つ、内閣官房なりにもう一度聞きたいんですが、今回のこの議定書を署名をするに至った経過、その中に一つありましたアメリカの報告書の批判、あるいはその年の十一月のILOの批判もございます。昨年の六月にアメリカ国務省の人身売買年次報告書というのがありまして、日本が監視対象国というふうに言われまして、またその年の十一月に、ILO、国際労働機関が日本には人身取引被害者の保護が十分でないと、被害者が犯罪者扱いされているというような指摘がされていますね。
 そういう意味では、こういった状況というものをどう受け止めるか。私は非常に不名誉なことだというふうに思うんですね。今聞かしていただきました我が国の人身取引の実態というものも含めて、決して五十三人がすべてではなくて、氷山の一角だというふうにとらえていかなくてはならないし、そういう意味では、こういった国際的な批判はどういうふうに受け止めるのか。私は非常に不名誉なことだというふうに思うんですが、それを是非とも、受け止め方を聞かしていただきたいというふうに思っています。それと、この議定書の批准、締約の見通し、これちょっと聞かしていただけますか。
#55
○政府参考人(神余隆博君) お答え申し上げます。
 人身問題、人身取引問題は、人身取引被害者の送り出し国、目的地国を含めた国際社会全体で取り組む必要のある問題でございます。様々な国際的な枠組みにおいて取り扱われ、議論がなされてきております。そのような議論の中で、人身取引被害者の目的地国としての我が国の状況につきまして、先ほど委員の御指摘のあったような指摘がなされてきたことは承知をしております。
 我が国としては、このような国際社会における議論に積極的に参加することを通じまして、各国の状況や取組についてお互いの理解を深めることは非常に有意義であると考えております。実際、我が国は、昨年十二月に策定しました人身取引対策行動計画を始めとする日本の取組については、主な送出国政府や国際機関、あるいはNGO等との協議の場を含む様々な機会をとらえまして国際社会の理解を得るべく努めてきておりますけれども、今後ともこのような取組を積極的に実施していきたいというふうに考えております。
#56
○松岡徹君 それで、先ほどもありました、これからの課題もありますが、ちょっと先ほどの答弁の中にもありましたけれども、この刑法改正の意義は、先ほど言いました議定書の署名、批准へ向けた国内の法整備、対応なんですね。しかし、法改正の中には非常にまだまだ不十分な点があるということを先ほど指摘させていただきました。同時に、刑事局長も答弁の中に、必ずしも人身売買、人身取引の対応だけで法改正の部分がすべてではないと、ほかの国内的な事情も反映した対応の改正にもなっている。
 私は、この人身取引を本当に撲滅するという、戦うという姿勢を政府は示しているんですから、あの年次計画の中に。そういう意味では、私は、この人身取引の犯罪を撲滅していくための総合的な法律が必要ではないか。単なる刑法改正で、その趣旨が分からない。先ほど言ったように、臓器摘出だといっても、正にそれが一般的な医学の面からとか言われていますけれども、実際あいまいなんですね。日本政府は、やっぱりこの国際的な批判、そして議定書を批准し、それに対応していこうとする姿勢からすれば、しっかりと人身取引に対しては日本はこんな姿勢を持つんだということをメッセージするためにも、あるいはこの非常に複雑な人身取引の実態を改善していくためにも総合的な法整備が必要だというふうに思うんですね。
 これは別に法務大臣が答えるべきではないかもしれませんが、私は、取りまとめてきた内閣官房が答えるべきだと思うんですけれども、是非ちょっと、総合的、包括的な法律というものを作る必要があると思うんですが、いかがですか。
#57
○政府参考人(鈴木基久君) 人身取引は重大な人権侵害、また国際的な組織犯罪でございまして、政府を挙げて対策を講じる必要があるということは御指摘のとおりでございます。
 そこで、政府といたしましては、昨年十二月に人身取引の防止、それから人身取引の撲滅、そして被害者の保護を含む総合的、包括的な対策として人身取引対策の行動計画を策定したところでございます。行動計画で位置付けられた各種の施策のうち、法整備が必要なものについては法整備をお願いし、現行の法体系で対応可能なものについては予算措置等により対応することといたしておりまして、その一環として、現在御審議いただいております刑法や入管法等の改正を御審議いただいておるわけでございますが、被害者保護のための必要な予算措置も講じておるというところでございます。
 包括的な法整備をという御質問でございますが、まずは今申し上げましたような対策というのを着実に実施していくということが重要でございまして、それにより人身取引対策にかなりの効果が上がるものというふうに考えております。
#58
○松岡徹君 かなりな効果があるものと思うんやったら、この法律改正やったらどんだけの改善のめどがあるんですかということをなぜ答えられないんや。かなりの効果が期待されますと言うのやったら、どんな根拠で言うてるんですか。
 だから私、最初に冒頭聞いたでしょう。今回の法改正で本当に人身取引の現状をどういうふうに改善するめどは持っていますかと言ったら、数字では表せませんと言っているでしょう。一方で、官房の方でやね、内閣官房で、相当な効果が上げられると。どっちやねん、これ。それ、どういうふうに解釈したらええの。だから最初に聞いたんですがな。もう一回。
#59
○政府参考人(鈴木基久君) 今回の人身取引の関係の対策でございますが、今回お願いいたしております刑法等の一部改正のみならず、人身取引の防止、それから人身取引の撲滅、それから被害者の保護、こういった三本柱から成る総合的な対策でございます。
 先ほど法務省御当局の方からも、明示的な数字での効果というのはなかなかお答えするには非常に困難が伴うというふうなことでございますが、今回、法律改正により人身取引の刑罰化が進むことにより、それにより対策が進むということではございますので、これにより相当の効果が進むというふうに考えておるということでございます。
#60
○松岡徹君 全然分からぬね。相当効果が進むという根拠が全然分からぬ。それやったらね、臓器摘出の事案は、あれでどうやって解決されるんですかと。具体にこっちは聞いている。すなわち、我々、今は人身取引の実態がどんな実態なのかということの何%までつかんでいるんですか。だから、三千五百十七人の、去年、入管が調査して、そして被害者と認められる人が五十三人だったと。しかし、それ自身も氷山の一角ではないですか。しかし、それをやったということは大事ですよ。議定書の定義に書かれてあることによってずっと調べたから五十三人という数字が出てきたんですよ。そういう意味では、実態はまだ十分全部、すべての実態はつかみ切れてないんです。だからこそ、先ほども言ったように、実態をしっかりつかんで今後の施策に生かしていかなあかん。
 相当な効果が上げられるというのは、今まで何もやってこなかったからちょっとでも前へ進むんですよ。それが相当というのか、その認識違うんですよ。我々はまだまだこれからだと思うんです。だからこそ、今回の法改正でも、先ほど指摘しましたように、やっぱり幾つか不十分点がある、実態に即していないというところがあります。だからこそ総合的な法整備をしていくべきではないかと、こういうふうに言うんです。
 これ、昨年の十一月の百六十一国会で参議院の内閣委員会で、総合的な法整備がなぜできないのかという質問をしているときに、細田国務大臣、細田官房長官がこう答えているんですよ。あらゆる角度から検討しなければならないと思いますので、御提案のことも含めて検討してまいりたいと言うているんです。しかしその一方で、まず今の現状をちょっとでも前進、改善、前進させるために今回の法整備を提案しているんですと言っているんです。私、この細田官房長官の去年の答弁、国会答弁の趣旨分かりますよ。正直ですがな。あなたの答えはちょっと後退していますよ、細田官房長官の答弁から。議事録見てくださいよ。官房長官ですら検討しましょう、検討しますと言っているんです。あなたの言い方やったら必要ないというふうな言い方に聞こえるんです。どうです、もう一回答えてください。
#61
○政府参考人(鈴木基久君) 昨年十一月の時点の御答弁でそのような御答弁をさせていただいて、官房長官からさせていただいたことは承知しておりまして、その後、昨年の十二月に人身取引対策の行動計画を策定して、総合的、包括的な対策を講ずるということにしておるものでございます。したがいまして、現時点では、あそこで掲げられました施策について、まず必要な法改正をお願いし、それから必要な予算を取りまして必要な施策を推進する、そういったことによってそういう対策をまず講じていくと、そういうことが重要であるということでございます。
#62
○松岡徹君 だから、そのまず講じるいうことは別に否定しませんがな。だから一定評価していると言っているんですよ。しかし、含めてね、そういうことを引き続き検討していこうということにならなくてはならないと思うんです。
 これで議論やっていたら時間がないので次に行きますけれども、是非とも、官房長官のあの答弁を下回ることのないような姿勢で是非ともお願いを申し上げたいというふうに、これは要望しておきたいと思います。
 そこで次に、要するに予防のところなんですが、特にブローカー対策とかありますが、幾つかあるんですが、今回の法改正でブローカーの摘発についてどこまで行くのか。時間の関係ありますから申し上げますけれども、去年、おととし、おととしの十一月に日本、日本人の男性のブローカーが逮捕されて、起訴されて、懲役一年十か月という判決が出ているんですね。これ、いわゆるソニー事件と言うてるやつですけれども。これは、この男はコロンビア女性の人身取引のかかわったブローカーなんですね。ところが、この事件にかかわったブローカーというのはこの男だけではなくてほかにもおったんですね。で、摘発された人間がたくさんおるんです。ところが、逮捕されて実刑判決出たブローカーは一人だけでね、罰金を払って出てきたブローカー、ほかのね、これにかかわって出てきた人間は翌日からまたブローカーとして復帰しているという実態があるんですね。
 そういう意味では、予防あるいは撲滅ということから考えると、このブローカーの実態をどういうふうにつかんでいるのかということもありますが、なかなかつかみにくいということがあろうかと思いますが、少なくとも今回のこの予防のところで、例えば風営法の改正案が同時に出されておりまして、この接客従業員の在留資格等を確認するとか、あるいは確認記録の保存義務を課して、これに違反した場合は百万円の罰金というふうに検討されているんですが、これ自身が非常に軽過ぎると。先ほど言ったように、罰金さえ払ったらすぐ出てくるんです。で、その翌日からまたブローカーとしてやっている。軽過ぎるんではないかという批判があるんですけれども、そういう意味では、そのことについて、これは国家公安委員長、警察。
#63
○政府参考人(伊藤哲朗君) 今国会で御審議いただくこととなっております風営法の改正案では、接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、その他の性的搾取につながる危険性の高い営業を営む者に対しまして、その営業に関し客に接する業務に従事させようとする者の生年月日、国籍及び外国人である場合には在留資格、在留期間等を確認するよう義務付けているところでございます。
 今回の風営法の改正におきましては、ブローカーからというよりも、むしろその人身取引事犯の被害者がこうした営業に就労していることが多いということから、その不法就労していることの弱みとか経済的困窮に付け込んで売春などを強要するような事例が見られますので、そうした営業者に対する規制という形になっておりますので、こうした営業者に対して罰則を加えるという形にしております。
 具体的には、罰則を加えられますと営業としても成り立たなくなってくるといいましょうか、場合によっては営業停止、取消しという形になりますので、そうした意味で、そうした場を排除していくということが目的でございます。
#64
○松岡徹君 ちょっと時間の関係であれなんですが、要するにブローカー摘発というのは、同時に、国内の問題もありますが、国際的な協調という面が当然必要になってくるんですね。日本が送り出し国あるいは受入れ国、他の受入れ国と連携をしながら予防していく、あるいは摘発していく、そして裁判、起訴にまで持っていくというようなこれが必要だと思うんです。
 こういう国際、国際協調といいますか協力というのは、人身取引対策行動計画においても国際捜査共助の充実化と条約締結の検討というのがあるんです。これについてどういうふうに考えて今進めようとしているのか、聞かしていただけます。
#65
○国務大臣(南野知惠子君) その件に関連いたしましては、人身取引の取締りのために諸外国との間で捜査協力を推進していくことは重要なことであるというふうに思っております。国際組織犯罪防止条約及び人身取引議定書は、条約の対象となる犯罪の捜査におきまして締約国がお互いに最大限の法律上の援助を与えるということを規定いたしております。これによりまして一層の捜査協力が期待できるのではないかなと思っております。また、二国間の刑事共助条約が人身取引に関する協力に資する場合もあると考えております。
 条約の締結は外務省の所管ではありますけれども、法務省といたしましては、相手国との共助や実績、相手国の法制等を踏まえながら関係省庁と協議しつつ、諸外国との間での条約締結に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。
#66
○松岡徹君 そのときに、法務省はもう既にもう韓国と実務レベルで打合せをしているとかいうことを聞いております。そういう意味では、国際的な協力、二国間あるいは多国間の協力が大事だと思うんです。
 それは、すなわちブローカーの摘発とか予防とかということが重きですが、是非ともその中に被害者の保護という観点を是非とも入れてほしい。日本で保護された被害者が自分の本国へ帰るときに、また向こうのブローカーや、危害加えられるということがあるということの実態はもうもちろん聞かれていると思うんです。その二国間あるいは多国間との協議のところで、しっかりとその被害者保護という観点を同時に入れた条約なり覚書なり、そういう協力関係を是非ともやっていただきたいと思いますけれども、どうですか。大臣、いかがですか。
#67
○政府参考人(大林宏君) 条約等におきましては、司法共助的なかなり広範的な内容になろうかと思います。ですから、具体的な犯罪被害者のことが盛り込まれるかどうかというのは技術的な問題があろうかと思います。ただ、委員がおっしゃるように、被害者保護というものを国際的なレベルで救済していかなきゃならないということは、それはもう確かにそのとおりでございます。
 私どもも警察等の捜査当局と協力して、できるだけ、あるいは入管局も関係ある話なんですが、そのようないわゆる更に後発的な被害を起こすような形が避けられる方策については更に検討していきたいと、このように考えております。
#68
○松岡徹君 非常に歯切れの悪い、今日はちょっと歯切れ悪いですな、局長さん。
 非常に大事な点だと思うんですよ、課題でしょう。で、私は全体的にこの今回の法改正、趣旨はよく分かります。しかし、被害者保護という観点はちょっと弱いと思うんですね。そこが法改正のところでは弱い、だからこそ総合的な法律を作るべきだというふうに思うんです。私は、連絡会議設置されて検討しているということでありますけれども、そうではなくて、しっかりと担当部局をつくるべきだというふうに思うんですね。そのことについて聞かせていただきたいというふうに思います。
 今年のこの人身取引にかかわる予算としても約六千六百万の予算が法務省に組まれていますね。それはすなわちブローカー等と被害者のデータベース化のための六千六百万です。しかし、一方で、厚労省の方は一千万の予算です。何かといえば、被害者保護のための婦人センターのかかわる経費なんです。その数字だけでこう言う気は毛頭ないですが、ちょっとやっぱり保護の視点が弱いんではないかというように思うんです。そういう意味では、それぞれが受け持っているところが勝手に手上げて、自分の問題意識だけで議論するんではなくて、しっかりとそれらを調整する組織といいますか、人権取引対策局というような機関をつくるべきだというふうに考えます。
 それと、あわせて、人身取引対策連絡会議というのがあります。この行動計画の中にもありますように、人身取引は重大な人権侵害だというふうに言われています。私も全くそのとおりだと思います。そこの構成メンバーの中に、構成メンバーの中に法務省の人権擁護局、内閣府の男女共同参画局が入っていないんです。なぜですか。
 先ほど聞いた専門の局といいますか、をつくるべきだということと、なぜ連絡会議にその二局が入っていないのか。
#69
○国務大臣(南野知惠子君) 先生の御指摘でございますが、人身取引が重大な人権侵害であるということは、これはもう御指摘のとおりでございます。
 法務省といたしましては、人身取引対策関係省庁連絡協議会、これを含めまして、会議に直接出席者を出していない部局でありましても常に所管業務の遂行に関する情報は省内でこれ共有しておりますので、そういう意味では人権擁護局におきましても会議の動向を常に掌握してもらっているというふうに思っております。
#70
○松岡徹君 ちょっと済みません、質問時間の関係で。
 その人権擁護局も、実は人権擁護局がそれぞれの地方の局で外国人の人権相談を受けたと。その中で人身取引被害者と思われる人が六人ほどおったというふうに報告は聞いておるんです。それはどうしたんだ、どういう対応をしたんだと。分からないんです。私は、いろいろこの人身取引のやつで取組をしようとしています、警察の方もこんなリーフレットというか、パンフレットを作って。そういう意味では、人権擁護局が一体何を考えているんだと。外国人の相談、年間あったんですよ。例えば、聞いた、どこへやったかな、ちょっと今数字あるんで、時間がありますから。
 是非、そういう意味では人権擁護局も入るべきだ、それと男女共同参画局も入るべきだというふうに思うんですけれども、男女共同参画局、答えてください。
#71
○政府参考人(名取はにわ君) お答えいたします。
 昨年四月に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議が設置されました際には、関係する法令や政策手段を有する省庁で構成されるという考え方の下、内閣府男女共同参画局は構成員には加わっておりません。しかしながら、人身取引対策行動計画の中で、内閣府は女性に対する暴力をなくす観点から人身取引根絶に向けた広報活動を行うことが記載されておりまして、男女共同参画局におきましては、行動計画に基づき、女性に対する暴力をなくすため広報啓発を推進しているところでございます。内閣府男女共同参画局といたしましては、今後とも男女共同参画の視点を適切に反映するために、関係省庁連絡会議と密接な連携を図ってまいりたいと思っております。
#72
○松岡徹君 連携を取るということではなしに、男女共同参画局がなぜできたのか、男女共同参画基本法がなぜ作られたのか。この人身取引の被害者のほとんどは女性ですよ。しかも人権、重大な人権侵害だというふうに位置付けているんですよ。そこから聞いたことをやるだけのこれ姿勢というのは大きな問題がある。積極的に入って、女性の問題として、しっかりと女性の人権としてとらえて男女共同参画局の課題としてやっぱり取り組んでいくべきだというふうに思います。そのことを私はしっかりと問題提起だけしておきたいというふうに思います。
 時間の関係がありますので、聞きますが、そういう意味では我が国のところではそれぞれの課題はそれぞれのテーマになっているんです、それぞれの局で。しかし、共通する人権というところではみんなあるんですね。すなわち、人権に関する総合的な法律というものがまだ整備されてない。
 そういう意味では、今問題になっています人権侵害救済法、擁護法案ですね。これは大臣も幾つかの国会でも述べられましたが、百六十二通常国会で、この国会でしっかりと成立図るように、ただまだ上がっていないということでありますが、大臣、その人権擁護法案の救済法の制定の必要性についてどう思われます。伺いたいと思います。
#73
○国務大臣(南野知惠子君) 先生が先ほどおっしゃっておられました地域において、まだそういうリーフレットを作ったりいたしてはおりますけれども、意思が徹底されていないということについては、これ今後もしっかり考えていき、徹底させていくという方向にも持っていきたいと思っております。
 今お問い合わせのその問題点につきましては、法務省といたしまして人権擁護、人権問題等に関する懇話会、これの方針決定を踏まえまして、本当に人権擁護法案を早期に提出していきたい、その方針は変わっておりません。そのような下に、引き続き精力的に問題を解決していきたいということを願っているところでございます。
#74
○松岡徹君 今、その人権擁護法案がなぜ上がってこないのかということがマスコミ、テレビで出ています。自民党さんの内部の中で人権擁護法案の人権の定義があいまいだと、そして人権擁護委員の選出については国籍条項を設けるべきだというような議論があって、それのいろんな調整をされているということであります。
 人権には国籍はないんですね。先ほど言ったように、どんな国の人たちが人身取引として人権侵害を受けているかということがあります。人権の定義は国籍というレベルで計るべきではないというふうに思うんです。是非、その国籍の問題ですね、今もう大臣御存じだと思いますが、この人権侵害救済にかかわる法律、すなわち人権擁護法案に国籍要件を設けるべきだというふうに思いますか。大臣のお考え方は。
#75
○国務大臣(南野知惠子君) 人権擁護推進委員会の追加答申におきまして、我が国に定住する外国人が増加している、そういったことなどを踏まえておりますが、外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選出することを可能にする方策を検討すべきであると指摘されております。法務省といたしましてもこの方針は変わっておりませず、追加答申の指摘を踏まえまして、人権擁護法案を再提出するために検討を行っているところでございます。
#76
○松岡徹君 もっとはっきり答えてほしいんですけれどもね。答申の中にはそう書いてあります。私らもそうだと思います。ですから、やっぱり人権に国境はないです。ましてや、それを政争の具に使うようなことがあってはならないと思うんです。
 だから、やっぱりこの人権侵害にかかわる、人権侵害を救済するための法律というのは、やっぱり、まず、なぜどういう経過でやられてきた、議論されてきたのかということは、正に私たちの日本の国内にある人権侵害の状況、すなわち特に差別の問題ですね。部落問題、同和問題を始めずっと議論をしてきて、そして一九九六年の地域改善対策協議会の意見具申が出て、同和問題といえども人権の基本からとらえ直し、改めて解決に取り組んでいこうということがありました。
 そういう意味では、私たちもそれはそのとおりだと思います。そのときに、一つ部落問題だけではなくて、他の国内が抱えている様々な差別や人権侵害状況も同時に解決していこうということになります。そういうことからすると、是非とも一日も早く、この人権侵害を救済するための法律の制定は必要だと思うんですね。決して、この人権侵害を、差別という形で人権侵害を受けている国内のまず問題をどう解決するかということも同時にあります。
 私は、一番身近な例で申し上げますけれども、一九九九年に大阪で起きたことですけれども、大阪の市内の生野警察の警部補が逮捕されたんですね。これは私もかかわっていたことでありますけれども、その被害に遭った女性がおります。彼女は、私は初めての面接、面会でした。彼女は身元調査をされて、大阪市内の病院の看護婦さんでした。そして、相手はお医者さんでした、結婚する相手。彼女は身元調査されていたんですね。ずっとその身元調査をやったのはだれかといったら、その警部補だったんです、生野警察の。これは逮捕されて有罪になりました。彼女は自分の戸籍が取られて、身元調べられた、なぜかというのをずっとひもといていったら、その刑事に依頼したのが興信所の人間なんですね、友人で。その興信所はだれから依頼されたのかということをずっとさかのぼっていけば、実はそのフィアンセのお医者さんだったんです。
 我々は直接事情を聞きました。なぜ彼はその秋に結婚する予定の彼女の身元を調べたんだといえば、春にそのための釣書交換をしたと。その中に、彼女のお兄さんの連れ合いさんが結婚する前にどこに住んでいたかというところに被差別部落の地名があった。そうすると、彼の親たちは、彼女の身内に被差別部落の出身者がおるかもしれないということで調べたんです。彼女は、自分の身元を調べた人間が結婚する相手家族だったということにショックを受けて、そしてその病院を辞めていった。その人権侵害に手をかし、それを実行していったのは警察、生野警察署の書類、捜査のためと書かれた書類なんです。
 逮捕されたこの警部補は、人権侵害に加担していたにもかかわらず、何かといえば、有印公文書偽造同行使で逮捕された。人権侵害については裁かれないんです。
 こういった事情が、部落問題は今でもあります。あるいはアイヌの人たちやハンセン病回復者の人たちや様々あります。この救済法はそれらにこたえるべき私は法律だというふうに思っているんですね。だからこそ、人権をそういうふうにしてはならないし、ましてや人権に国境はないというふうに思うんです。
 最後にもう一度、もう時間もありませんけれども、最後になりますけれども、大臣に、私はそういう思いで、一日も早く救済法の制定を成し遂げたいというふうに思っています。だからこそ、国籍を付けるべきではないし、しっかりとした、それらに対応できるような立派な法律を作るべきである。その結果がしっかりとパリ原則にも合致していく、そういうものに私はなっていくと思うんですね。
 大臣の感想と今後の決意をちょっと一遍、最後に聞かせていただいて。
#77
○国務大臣(南野知惠子君) 人権問題ということは、本当に我々、しっかりと検討していかなければならない問題だと思っております。人権擁護法案が今与党の中で論議されております。その行く末も見守っていかなければならないとは思いますが、私の気持ち、法務省の考えというのは先ほど御説明したとおりでございますので、我々としては、いい形でその法案が通っていくように、テーブルに乗っけていただけるように、そういったことを念願しているところでございます。そして、法律ができれば、もちろんどのような人であろうと、日本にいる場合のこの法が満遍なく適用されることということを願っております。
#78
○委員長(渡辺孝男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#79
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長寺田逸郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#80
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#81
○委員長(渡辺孝男君) 休憩前に引き続き、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#82
○千葉景子君 午前のそれぞれの質疑に引き続きまして、質問させていただきたいと思っております。
 この刑法等の一部を改正する法律案にちょっと先立ちまして、一点、御所見を伺わせていただきたいと思います。それは、もう御承知のところと思いますが、今日の新聞等に大きく報道をされております。
 昨日十三日、東京地裁で、いわゆるフィリピンの女性とそして日本の男性の間に生まれた子供の国籍について判決が下されました。日本の国籍法上では国籍が認められないというこれまで状況でございましたが、この東京地裁の判決は、その国籍を認めないことがやはり法の下の平等にも反すると、その扱いは憲法違反であるという判決を出したところでございます。
 このフィリピンの女性とそして日本の男性との間の子供の問題は、もうこれ長年非常に指摘をされておりまして、いろいろ原因はあろう、背景はあろうかと思いますけれども、ジャピーノというようなこと、言葉でも称せられるように、なかなか、今回の場合は父親が認知をしているということで、それでもまだ父親が判明をしているということですけれども、父親も判明しない、そしてそのために日本の国籍どころか無国籍になってしまっているというようなケースも多々出ていると私も聞いております。何とかしなければという、こういうことが長年言われてきたわけですけれども、今回の判決では、多少条件は付けられております。認知をしているということと、それから婚姻の実態といいましょうか、法律婚ではありませんけれどもそういう生活実態があると、こういうことを前提にして国籍を認めるべしと、こういう判決でございます。
 私は、本来、その婚姻関係の実態があるなしにかかわらず、やはり日本の男性とフィリピンの女性の間に生まれたというようなことであれば、まあこれはおしなべて日本の国籍を認める、日本人として温かく迎えるというのがやっぱりこの子供にとっても大事なことではないかというふうには思っておりますけれども、少なくともこういう実態の中で国籍を認めないということが違憲であると、地裁の判決ではありますけれども、こういうものが出たということについて大臣としての御所見をお聞かせいただきたいと思います。
 こういう問題について、私たちも国籍法の問題をもっと真剣に議論をさせていただかなかったこと、私も反省をするところ大ではございますけれども、これを機に国籍法の在り方等々も議論していく必要があるのではないかというふうにも思いますが、大臣の御所見を今日はお聞かせいただいておきたいというふうに思っております。
#83
○国務大臣(南野知惠子君) 新聞の一面に今朝報道されました。そういうこともございますが、今先生の御指摘のとおり、判決につきましては、国の主張が認められなかったということについて、我々国側といたしましては残念だなというふうに思うことがまず第一点ではございます。
 国籍法第三条は、日本人を父とする非嫡出子については、父が子を認知することのほか、父母の婚姻の国籍取得の要件としております。先生がお述べになられたとおりの形で今法律が行われておりますが、国としましては、この規定は、日本国民である父の子であって、父母の婚姻によって嫡出子たる身分を取得した者については、我が国との真実のいわゆる結合関係を有することが明白であるということによって届出によって日本国籍を付与するということが適切であるとの配慮によるものでございます。相応の合理的根拠を有するものと考えております。
 今後の対応につきましては、判決文を十分に検討した上で対処してまいりたいというふうに思っております。
#84
○千葉景子君 多分、大臣はもっと率直なお考えをお持ちなんじゃないだろうかと推測をするところでございますが、何やら書いていただいたものをお読みになったという感じがいたします。
 是非、少なくともこういうことについて、国の主張が認められなかったから残念だではなくて、これをきちっと受け止めて、控訴をして争うとかいうことではなくして、むしろ、積極的に国籍法の在り方などをむしろ再検討してみようと、こういう方向へ是非大臣のリーダーシップを発揮していただきますようにまず要望をさせていただきまして、この点についてはまた今後の法務省の、国の対応いかんによっては改めてまたその中身を指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
 それでは、本題の方に移らせていただきたいと思います。
 午前のそれぞれの質疑の中で、人身取引問題についての大きな総論的なところなども議論がされたところでございます。ただ、せっかくの機会ですので、改めてちょっと私なりの考えも指摘をしながら、大臣のお考えも聞かせていただきたいというふうに思っているところでございます。
 そもそもこの人身取引、午前もいろいろな指摘がございました、国際社会からも厳しい批判があるということなんですけれども、それから、一体実態というのがどんなふうになっているのかというのがやっぱりいま一つはっきりしないというのもそれぞれ御指摘があったところだというふうに思っています。
 確かに、今回の刑法の改正という形で刑罰を、どういう者に刑罰を科すか、処罰をするかということは一定枠ができたということは言えるんだと思いますけれども、人身取引というのは一体何なんだろうと。やっぱりそこがきちっとしていませんと、一体何が被害なんだろう、あるいは、そのためにどういうものを規制したりあるいは処罰をしたりしなきゃいけないんだろうかということがなかなかはっきりしてまいりません。この人身取引というのは一体何なんだろうかということを私も考えてみました。
 それで、たまたま私も勉強させていただく機会がございまして、ケビン・ベイルズ氏、これは国連の人身売買問題のコンサルタントをやっておられる方のお話を伺う機会がございまして、大変分かりやすくというか、人身取引の本質みたいなところを的確に指摘をいただいたのではないかと私は受け止めたところなんです。
 確かに、人身取引は現代の奴隷制度だというふうに言われております。それから、人身取引というと何となく日本の社会の中で子供が無理やり売り飛ばされたというような歴史みたいなものからイメージがわくわけですけれども、この人身取引というのが一体何だということで、新旧、言わば古く言われる奴隷制、それから現代の奴隷制と言われるこの人身取引、その言わば違いと、そして現代の人身取引の本質、こういうところをちょっと私なりに勉強したところを披瀝をさせていただいて、大臣のお考えもお聞かせいただきたいというふうに思っております。
 この古い、古くの旧奴隷制と言うんでしょうか、というのは基本的には合法的な所有権の主張だと、その相手というか対象に対しての合法的な所有権の主張だと。しかし、現代の人身取引、新しい奴隷制だと言われるものは、合法的な所有権の回避、それを所有物として支配しようというんじゃなくて、そういうことは回避をしている。旧奴隷制は高い原価、それを所有するための高い原価、でも新しいこの人身取引は激安の原価だと。古い旧奴隷制では利益は非常に低い、低利益、それに対して今の新奴隷制といいましょうか、新しい奴隷制度というのは超高利益を生み出している。古く言われる奴隷制は潜在的な数の不足、しかし今言われているような人身取引は潜在的な数の余剰、どこにでも余るようなその対象があると。旧奴隷制というのは長期にわたる関係であって、そしてそのために奴隷の生命の維持、何とか大事なものですから維持をしなければいけない。ところが、現在の奴隷制というのは短期の関係であって、それがゆえにその対象となる言わば新しい奴隷は使い捨て、こういう対比がされておりました。
 こういう、言わば新しい奴隷制と言われているものの姿というのは、正に身分を丸ごと人間を支配するというよりは、やっぱり労働の搾取という、そこに基本的な本質があるのではないだろうかということが指摘をされております。
 その背景としては、生活手段の選択とかあるいは教育機会、そういうものに恵まれない、人権の無視とか性差別というものが社会の中に存在をしている、こういうところに人身売買されやすい人々を片方では生み出し、また人間、経済格差などの中でより良い生活を求める、そういうところに、言わばブローカー等、それを利用していくそういう集団なり組織ができていくんだということでございます。
 そういう意味では、これは別に私の結論というわけではありませんけれども、この人身取引がやっぱり欺瞞的で不正で、そして強制的なといいましょうか、合法ではないやっぱり労働移動というものの中で人身売買というのが言わば形作られていく。これに対して、やっぱり透明で、そして合法的で、そして合意に基づいてきちっと労働移動がなされるような社会あるいはシステムがあれば、安全な移住、そしてそこに言わば人身売買、搾取が潜り込むようなことは避けることができるのではないか、こういう指摘でございました。
 これですべてを語ることはできないのかもしれませんけれども、この人身売買のある意味での本質を表しているのではないかなと、私は大変自分の頭の整理といいますか、それに大変参考にさせていただいたところでございます。
 いずれにしても、この人身取引ということについて、これも質問ありましたけれども、国際社会からも大変厳しい指摘がされている、そして実態もなかなかまだまだ分かっていないというような実情でございまして、大臣としては、この人身取引ということについてのその言わば本質というか、実態といいますか、それと、こういう諸外国から、国際機関から、これも既に松岡議員の方からも指摘がありましたアメリカの国務省、アメリカの国務省から指摘をされるというのも非常に何か理不尽なところもありまして、アメリカそのものもかなりの人権侵害をイラクを含めて行っているのではないかなというふうに思いますけれども、そういうところからまでも指摘をされている、それからILOあるいは国連の女子差別撤廃委員会等々厳しい指摘がされている。
 こういう背景もございまして、こういうことについて、今回は刑法の一部を改正する法律という形でまとめはされておりますけれども、こういう何か根深い大きな人身取引という問題について、大臣としてはどんなふうに認識をされ、そしてこの批判に対してどう受け止めていかなければならないかと、この辺はどうお考えでしょうか、まずお聞きしたいと思います。
#85
○国務大臣(南野知惠子君) 今先生がケビン・ベイルズ氏のお話を取り上げてレクチャーをいただきました。私もしっかりと聞かしていただきましたが、本当に今の社会生活の中、経済状態もそうですけれども、多様化しておりますし、価値観も多様化しております。そして、我々お互いに生活していく上でのルール化という問題についても、そのルールもお互い守るという規範が乏しいのかなと思うような一面も見られております。そういう中では、大人はどのようなビヘービアをするのか、子供はどういうビヘービアをするのか、家庭においてどうするのかという、それもお互いの家族の価値観というところから発生してきているのかなと、そのようにも思ったりいたしております。そういう社会生活の中で、今掲げられましたこの人身取引という問題をどう考えていくかということになろうかというふうに思います。
 人身取引というこの四文字、これは本当になくしていきたいと思う文言でございますが、先生御指摘のとおり、人身取引というのは女性、子供、そういう弱い人たちが本当に遭う課題でございまして、そういうものはもう退けていきたい、なくしていきたいというのが私の本当の気持ちでございます。被害者の人格や、それからその人たちの尊厳を侵害する、心も体もむしばまれてしまう。私は、人間としての尊重、得られるんだろうかと、究極的には考えていかなきゃならない課題になってくるものだろうと思います。
 本当に、人間としてどう歩いていくの、どう生活していくのということを一人一人が考えたときに、特に人身売買をされた被害者はどのように考えていったらいいんだろうか、そういう人たちを一人でも少なくするというのが大きな課題になってくるだろうというふうに思っております。そういうことを考えますと、本当に人道的な観点からこういう法律の実効ある形を取っていくべしというふうに思っているところでございます。
 そこで、また加害者の処罰、これを実現することによって人身取引の一刻も早い撲滅ということにもなろうかなというふうにも思っておりますが、被害者につきましてはその立場について十分配慮した対応をする、この法律の中にもそれを盛り込んでおります。そういうような法律案でございますので、人身取引対策を更に強化するものであろうというふうに考えております。
 さらに、先生が御指摘いただきましたアメリカからの提言ということでございますが、我が国の人身取引の実態やそれに対する取組状況につきまして、国際機関、特に米国からの、国務省から指摘がされたということでございますが、我が国の取組につきましては十分な御理解がいただけなかった部分もあるのではないだろうかというふうにも思って、言われたことについては多少残念である、こういうことは避けられればよかったのにというふうにも思ったりいたしております。もうそういう指摘をされないように、我が国はしっかりとやっていこうというふうにも思っております。
 法務省におきましては、こうした御指摘も含めながら、人身取引の実態や国際的な動向を踏まえた上でこの法律案の検討又は提出をしようと決めたところでございますので、人身取引の撲滅とともにその被害の保護に十分に配慮し、この法案を一刻も早く御検討いただき、通していただき、これが実効あるものになっていきたいというふうに願っております。
#86
○千葉景子君 今の大臣の御所見をちょっと前提にしながら、少し各項目についてお尋ねをしてまいりたいというふうに思っております。
 まず、被害者についての認知と、それから適切な保護という問題でございます。
 被害者、先ほど言いましたように、人身取引というのが非常に、何が人身取引かと、どういう人が被害者なのかというところもなかなかこれ線引きは難しい部分がございます。そういう中で被害者を認知し、そして適切にやっぱりそれは保護をするということになりますと、なかなかこれは大変なことでございます。多くは犯罪組織などからの報復等を恐れて警察等に保護を求めてこない、こういう実情もあるということも言われております。
 そういう意味で、被害者がまずは、自分はこんな状況に置かれていなくていいんだと被害を訴え出て、やっぱり安心して生活をし、そして働くことができるような、そういうところにまた復帰をするんだと、そういうことをやっぱり申し出るといいますか、やっぱりそういう環境というのが大事だろうというふうに思っております。
 それから、被害者となる人がやっぱり一番最初に取っ付いてくるのは入国のところでもあるわけですね。そういう部分でも、入国審査というのを厳格に的確に行うということは大事ですけれども、やっぱりそこでできるだけ、もし何かあれば保護をしていくという姿勢も大事だというふうに思います。
 そういう意味では、被害者と直接対応する一番の直面をするところですね、警察とかそれから入管の部分、こういうところでのやっぱり職員の姿勢、あるいは的確にその被害者を発見をする、認知できるやっぱり能力といいますか、そういうものが大事だというふうに思うわけです。
 それから、今申し上げましたように、自分はそんな被害者でもないんだと、働きに来たような意識もある。やっぱりそうじゃないんだよ、早く被害を申し出なさい、こういうところなら安心して大丈夫ですよというような情報をやっぱりきちっと被害者に伝える、あるいは分かるようにしておくということも、やっぱりこの問題の、まずは、まず発見をするということで大事なことだというふうに思うんですね。
 それで、法務省、警察庁の方にお尋ねをしたいと思いますが、警察職員、それぞれ入管職員の研修とか、この問題に対する取り組み方ですね、それからその被害者への情報の提供のようなものについてはどのような体制を取っていかれるのか、それぞれお尋ねしたいと思います。
#87
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 まず、入管職員が被害者の方に最初に接する機会というのは、委員御指摘のとおり、かなり多くなるというふうに予想しております。したがいまして、入管の職員がどのような態度で被害者の方に接するのかといったことですとか、人身取引に関する知識等も非常に重要になってくるというふうに思っております。
 そこで、入国管理局といたしましては、職員に対する様々な研修の機会を利用いたしまして人身取引問題に関する講義などを行っているところでございます。それにより必要な知識を習得させまして、人身取引問題に対する職員の意識を向上させるよう研修内容の充実を図っているところでございます。
 最近の例で御説明いたしますと、中堅職員を対象といたしました研修におきまして、NGOから講師をお招きしまして、人身売買問題の講義を受講をさせております。また、毎年実施しております人権に関する研修というものがございますが、昨年度はこの研修におきまして人身取引問題のみを取り上げまして研修を実施いたしました。ここには、国際移住機関でございますとかNGO、大学等から講師の方をお招きしまして、人身取引問題に関する最新の状況でございますとか各国の事情についての理解を深めるためにお話をしていただいたという状況にございます。
 さらに、WHOがトラフィッキングされた女性のためのインタビューマニュアルというものを作っております。また、警察庁の方でも広報啓発ビデオを作成されておりますので、こういうものを入手いたしまして、全国の地方入国管理局、支局や入国者の収容所に配布いたしまして、職員教育に活用するように指示をしているところでございます。今後とも、研修については積極的にこれを実施してまいりたいと思います。
 一方、委員御指摘のとおり、被害者の方が自ら被害を訴えやすくするという環境づくりも、これ非常に重要だと思っております。これまでややもすれば、被害者の立場になられた方というのは、不法滞在状態というようなケースもありまして、御本人の方で、もし出頭した場合には強制送還されるんではないかとか犯罪者扱いされるんではないかという意識があったことは、これ否定できないんだろうと思っております。そういうことも踏まえますと、やはり外国人の方に広報啓発をしていくことも重要だろうというふうに思っております。
 今回御審議いただいております入管法が改正されますと、御承知のとおり、被害者につきましては、人身取引などによりまして売春などに従事したというようなことを理由にして退去強制の対象にはならないということになるわけでございますし、また人身取引等によりまして他人の支配下に置かれたために不法滞在状態に陥ったという場合でございましても、在留特別許可により保護の対象となるということを明文化することにしておる関係上、こういう内容が周知されれば、これまで被害の申告をためらっていた外国人の方でありましても、安心して入国管理局に出頭して被害の申告ができるようになるのではないかというふうに考えておるわけであります。
 法案が成立いたしました折には、早急にホームページ等にその内容を掲載しますほか、地方入国管理官署等にそのお知らせ用のペーパーなども置きまして、十分に広報をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#88
○政府参考人(伊藤哲朗君) お答え申し上げます。
 まず、人身取引の被害者への対応について、現場の警察官に対する教養訓練についてでございますけれども、人身取引事犯は被害者の心身に著しい苦痛をもたらす深刻な人権侵害行為であり、被害者への適切な対応は大変重要だというふうに認識しております。
 被害者である外国人女性は雇用主により売春等を強要されておりまして、その心身は著しく傷付けられておりますことから、警察ではできる限り女性職員や被害者の母国語を解する職員をその対応に充てているところであります。また、被害女性が交番等に駆け込んで保護を求めてくることも考えられますことから、職員に対しましては、人身取引についての研修資料や広報啓発ビデオなどの資料を配付するなどしまして、被害者保護の重要性について周知徹底を図っているところであります。また、人身取引事犯の捜査担当者につきましても、被害者の心身の状況に応じてその対応に当たるよう、全国規模あるいは都道府県単位での研修を実施しているところであります。
 次に、人身取引の被害者が訴え出やすいようにするための情報提供の仕組みでございますけれども、警察では、人身取引の被害者が保護を求めて交番や警察署に駆け込んだり、一一〇番通報をした場合には直ちに対応するように努めているところでありますけれども、このことを人身取引の被害者自身に知ってもらうということもまた大切なことだというふうに考えております。
 そこで、警察におきましては関係国の大使館あるいは関係機関、団体と協力いたしまして、被害者に、警察が、もう訴え出れば直ちに保護をするということを呼び掛けるリーフレットを現在百万部作成しているところでございまして、近々これを広く配布することといたしております。
 今後とも、こうしたリーフレットの配布等によりまして、人身取引事犯の被害者が被害者であることを警察に進んで訴えることができますように、被害者への周知に努めてまいりたいと考えているところでございます。
#89
○千葉景子君 今御説明いただいたことは、一般的には確かに分かります。横の方からちょっとやじがありましたけれども、私も率直に思うのは、ホームページをといっても、そうホームページをきちっと読めるくらいだったらば被害を受けるということないわけで、あるいはまあそのリーフレットをたくさん作って、それが本当に必要なところに届いて、そしてああなるほどといって被害を訴え出てくると、本当にそうかなという、若干私はやっぱりそんなことなのかなという感じがやっぱり残ってしまいます。
 決してそれをやることが駄目だと言っているわけではないんですけれども、やっぱりこの本質というのが、やっぱりそういう情報にきちっと近づけない、そういうようなところにむしろ置かれてしまうというところに問題があるわけでもございますし、やっぱりそういうところを、草の根というかいろんなネットワークを持っているというのは、ある意味ではNGOの皆さんだったりするわけで、そういう意味では、そういうホームページを開く、リーフレットを作っていつでも大丈夫ですと、そういう情報を提供するということももちろんのことではありますけれども、更に本当にきめ細やかな対応というのを取っていただくように改めて申し上げておきたいというふうに思っております。
 さて、この被害については、被害者についてはどういう保護をしようかと、救済をするかということが問題になるわけで、今回はこの被害者に対しては婦人相談所、ここを一つの救済の拠点としていこうではないかということが指摘をされております。ただ、この婦人相談所、どうでしょうか、これまでもDV被害などでもう今手一杯というような状況もございます。
 それですらもっと人的、物的に拡充をしてほしい、していかなければとても賄い切れないという状況にもあるわけで、更にそこにこの人身取引の被害者を受け入れていくということになりますと、これは容易なこっちゃないな、こういうことで本当に被害者の保護、救済が十分に図られるんだろうか。それから、DV被害者とそれから人身取引の被害者というのが同じ一つの施設というこの中で対応される、保護されるというのも本来はどうなのかなという、そういう懸念もございます。
 その辺りをどう考えておられるのか、厚生労働省ということになるでしょうか、この今の実情、そして問題点をどう認識をなさっているか。そして、どうあってももし婦人相談所というのを活用するのであるとすれば、人的、物的な当然拡充というのが必要になってくる。これはもう必要不可欠な条件ではないかというふうに思いますが、その点についてどう考えておられるか、厚労省の方でお願いをしたいと思います。
#90
○政府参考人(伍藤忠春君) この被害者をどういうふうに保護するかというのは一つの大きな課題でございますが、国内においてこういったいろんな女性の方々の相談あるいは被害の保護に当たってきました婦人相談所というところが一番、知識、経験も蓄積もありますから、こういったところで引き受けさしていただくのが適当ではないかということで、まず個々の充実を図っていくということが私どもの基本的なスタンスというふうに考えております。
 今御指摘のありましたように、近年、DV被害者といったようなことを中心にして、この婦人相談所の活用といいますか、その利用がかなり増えておることも事実でございますが、それに対応して、また国それから自治体、力を合わせて、今婦人相談員の増員でありますとか予算の大幅な増額といったことに取り組んできておりますから、まずはこういった体制の充実を図って、できる限りこの新しい人身取引の被害者にも対応できるように充実をしていきたいというふうに考えております。
 課題でございますが、DV被害者の中にも外国人がかなり多いんでありますが、今回のこういう、例えば言葉が通じないような場合にはどうするかといったような、DV被害者も含めて、被害の個別ケースごとの困難性といいますか深刻さ、あるいは心理的被害にどう対応するかと、あるいは言葉の問題にどう対応するかと、こういういろいろ難しい事例がたくさん出てまいっておりますので、こういったことにどういうふうに対応していくかという、体制の整備、人員の増強といったことも必要でありますが、それと併せて、そういった個別のケースにどうやって対応できるかという、職員の専門性でありますとか、そういったことについての研修を少し充実をするとか、そういった目配りも必要ではないかというふうに考えておるところでございます。
 今回、更に加えて、この婦人相談所での対応ということでだけではなかなかうまく、例えばできるだけこの被害者の状況から、匿名性といいますか、そういったことが必要なところでやはり保護する方がいいといったようなケースも考えられますので、民間シェルター等にも一時保護が委託できるという新たな制度も導入いたしましたので、こういったものの活用も含めて、公立の婦人相談所での対応の充実を図るとともに、こういう民間のシェルター等の活用といったことも併せて対応していきたいというふうに考えております。
#91
○千葉景子君 あれもこれもなんですけれども。
 それじゃ、ちょっともう少し、一般的には拡充をしていきますというのは分かるんですけれども、婦人相談所などの職員の例えば増員についての今後の段取りとか計画とか、あるいは施設の拡充等についての具体的な計画とか、そういうものはございますんでしょうか。それによってどのぐらい人数が増えて、そして施設なども、これだけ入れる人員も増えるとか、そういう具体的な見通しみたいなものはもう既にお持ちなんでしょうか。
#92
○政府参考人(伍藤忠春君) これからどれぐらい人身取引の被害者が、現に、現実に婦人相談所を御利用されるかということは、なかなかこれは見通しが立たないところでもありますし、近年の実績を見ますと、昨年で二十数名だったと思いますが、そういったオーダーでありますが、先行していろいろ体制の整備が迫られておりますDV対策という観点から例えば申し上げますと、婦人相談所の婦人相談員の数を平成十二年から十六年度までに約一・三倍に増やしてきておりますし、一時保護所の予算の増額についても、十二年度に比べまして十六年度、約二・三倍というような増強を図っておるところでございます。
 これは国の予算と併せて交付税等で自治体が独自に取り組んでいただく部分もございますが、実情に合わせて、できる限りの整備、施設の整備あるいは体制の整備を図っていただくよう、私どもいろんな機会を通じてお願いをしておるところでございます。
#93
○千葉景子君 今、実情の把握がということがございました。確かに、数字の上で出てくるのは、保護を求めてという数は今二十幾つと言っておりましたけれども、これも午前中の質疑でもありましたけれども、一体本当に顕在化していない潜在的な数となるとどれだけあるのかということを考えたときには、まあそんなせいぜいそのくらいだからと言っている場合ではないというふうに思います。今回のこの行動計画やこの法案によってもでき得る限り保護を図っていこうという政府のもし姿勢であるのだとすれば、今のような体制あるいは計画ではとてもとても世界のやっぱり批判というのにこたえ得るかどうか、ちょっと私は疑問に思います。
 ちょっと細かいことは、また時間がございますればお聞きをしたいと思います。
 今、民間シェルターのお話も出てまいりました。もう一つ、やっぱり保護にきめ細かく対応できているのはやっぱり民間シェルターでもあるというふうに思うんですね。ここもやっぱりもう一生懸命、本当にボランタリーな形で頑張っていただいておりますけれども、もう本当に手一杯という状況もございます。今、実際に受入れを行っている施設というのは全国で二か所程度、それがもう一杯一杯ということでございます。
 今回、この民間シェルターについて人身取引被害者の一時保護委託制度というのを開始されたということでございますけれども、一体これはどのくらい予算措置がとられて、それがどういう形で民間シェルターで経費に充てられていくというふうに把握をされておられるのでしょうか。
#94
○政府参考人(伍藤忠春君) 今回、新たにこの民間シェルターにおいても、婦人保護所あるいは婦人保護所の一時保護所での対応というのを基本にはいたしますが、先ほど言いましたように、民間シェルターにも一時保護委託できるというようなことで制度を考えておりまして、取りあえず今年度は一千万円をこの一時保護委託のための予算として計上しておりますが、これは一応の枠を定めただけでありまして、これは例えば大体どのぐらいの数かといいますと、六日間、何といいますか、一時保護をするということを前提にして二百数十人分の経費というような積算で一応計上いたしておりますが、全体の、先ほど言いましたように、婦人保護事業、DVを含む婦人保護事業の中で対応する予算でございますのでこれしかないというわけではありませんので、そこは事態に応じて弾力的に対応していきたいというふうに思っております。
 一時保護委託の形式につきましては、これまで既にDV被害者の一時保護委託する民間団体との契約と同じような形式で対応していきたいというふうに考えております。
#95
○千葉景子君 先ほどの婦人相談所についてもこれまでのDV被害などに対応するために増やしている、それの延長のようなものでございますし、今の民間シェルターについても一千万という、非常にある意味ではささやかな額でございます。これだけ人身取引について政府一体となって行動計画を立て、そしてこの被害を防止し撲滅を図っていこうと、こういうことを考えておられ、しかも被害者の救済ということの中で民間シェルターのやっぱりこれから役割も大きいと思われるにもかかわらず一千万ですからね。いや、もう何か本当に、本当にこの問題について一丸となってやろうという体制なのか、私はちょっと問題だというふうに思います。
 これもまた、更にお話を伺うことができれば細かく伺いたいというふうに思っておりますが、時間の関係もありますので少し別な問題に移りたいというふうに思っております。
 被害者の支援、この婦人相談所あるいは民間シェルター等に保護をして、そして安心できるようにしてもらおうということですが、この中身も大変なんですよね。例えば、被害者にとっては心身ともに傷付いたりしている、そういうケースが多々あるわけで、そういうことになるとやっぱり医療の支援というのをきちっとしなければいけないという問題がございます。
 それから、一定の期間、やっぱり特別、特在などで滞在できるようにしたりする。そういうことになりますれば、生活そのものの基盤、これも問題になってまいります。まさか、売春をさせられていたそこでまた働いていなさいなんという話には当然ならないわけですから、やっぱり生活を何とか立てていく、そういう支援が当然必要になってまいります。あるいは、こういう支援を受ける、そして適切なやっぱり救済を図るという意味では、言葉ですね、先ほどこれも御指摘ありましたけれども、やっぱりきちっと自分の実情を伝える、それから保護してもらえる、どういうことができるのかということがよく理解できる、こういうことも大事だというふうに思います。
 こういう意味では、この支援の内容について、少しまず概括的にお答えをいただきたいというふうに思っております。これも厚労省の方でお願いをいたします。
#96
○政府参考人(伍藤忠春君) 婦人相談所で保護いたしました場合の援助の内容でありますが、いろんな各種の問題を抱えた女性に対してまず心理的なケアというようなことも必要になろうかと思いますので、そういった心理相談員、心理担当職員というのが配置されておりますが、そういったものでの心理的ケアを含めた相談、そういったものの充実がまず一つあるんじゃなかろうかと思っております。
 それから、医療的な支援というようなことが言及ございましたが、医療的支援を必要とされる場合にも、その場合には婦人相談所に嘱託の医師というのが置かれておりますが、ここで医師がある程度の判定とか、あるいはそこでできる軽度な医療、そういったものの提供というものはそこで行うということになろうかと思いますが、本格的な治療を要するようなものはなかなか対応困難でありますので、周辺の医療機関の情報を提供するとか、あるいは社会福祉事業としてやっております経済的に支援が必要な方については無料定額診療といったような制度についての情報を提供する、あるいは医療機関を紹介すると、そういった対応が考えられるのではないかというふうに思っております。
 それから、通訳の問題でありますが、こういった言葉の問題についての支援ということでございますが、外国人の一時保護に必要な経費として通訳雇い上げ費というものが婦人相談所の運営費の中に計上されておりますので、従来からこれを活用して既に婦人相談所ではいろいろ、DV被害者の外国人、そういった方々への対応に当たっておりますが、こういったものを更に活用してコミュニケーション、そういったものの確保に努めていくということが必要ではないかというふうに思っております。
#97
○千葉景子君 今お聞きしておりましてやっぱり私も率直に感じますのは、婦人相談所の場合には医療というのが一定確保される、こういうこともございますし、今の無料定額医療のような形での支援というものも考えられると。いずれにいたしましても、やっぱり従来の施策のある意味では延長といいますか、そこの範囲で何とかやっていこうという、こういう今回は対応なんだろうというふうに思います。
 ただ、やっぱり本当にそれでいいんだろうか。この人身取引の被害者に対して包括的に保護をする。そのために医療があり生活があり、あるいは言語があり、そういうものをトータルにやっぱり支援をする、そういう一つの仕組みというものがやっぱり必要なんじゃないだろうか。一つ一つこれは、これまでの医療支援のそれを進めて、通訳とか言語についても、一定のこれまでの通訳人の確保をできるだけまたやっていくというような形でございます。やっぱりここ、トータルなパッケージのようなものとして、支援策というか支援システム、そういうものをやっぱり検討していく必要があるんじゃないかということをしみじみ感ずるわけです。これは、トータルなやっぱり法整備が必要なんじゃないかと今日、松岡委員からも指摘がありましたけれども、私もそういう感が率直に言っていたします。
 これについてはまた更にお聞きをしてまいりたいというふうに思いますが、次の取りあえず課題に移らせていただきたいというふうに思います。
 今回の法案の中で、私はちょっと一、二点、大変気になる場所がございますので、今日はそこをあと聞かせていただきたいというふうに思うんですが。
 一つは、入国というか、この不当な、不法な入国を阻止するというようなことの観点から、運送業者等に対して旅券の確認義務を課すという条項が盛り込まれました。これは一体どういう意義があって、それからどういう機能を果たすんだろうかということがまず第一点でございます。
 それから、こうなりますと一つ心配なのは、例えば難民の申請をしたいというか、庇護を求めて日本に行きたい、そういうケースはきちっとした旅券を必ずしも持っていなかったりする、こういうケースも考えられます。そうすると、この運送業者のところでそういう確認がされて、いやあなた、きちっとした旅券、どうもおかしいみたいだからもうこの飛行機には乗せませんよと、日本にはこれで行かれませんよと。そういうことを民間業者のところで制約を課すというのも非常に何か私は違和感を感じますし、それから、そもそもこの民間運送業者のところで正確な旅券の確認のようなことが本当にできるんだろうか、それだけの負担を課すことができるんだろうか、こういう懸念も感ずるところでございます。
 この点について、この意味と、本当に機能するのかどうか、それから難民等に対する懸念、これについてお答えをいただきたいと思います。
#98
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘の運送業者等による旅券の確認義務の規定でございますが、これは一つには、密入国議定書の中にこの確認義務の規定を制度で担保すべしという規定がございます。また、そのほかに実質的な意味といたしましても、我が国政府で昨年十二月にテロの未然防止についての行動計画を策定いたしておりますが、要するに不正な形で我が国にテロリストその他の好ましからざる人物が入ってくることを防止するためにも有用であるということからこういう規定を設けるべきであるということがうたわれておりまして、こういったことを総合的に考えましてこの新たな規定を設けているわけでございます。
 御指摘の、委員御指摘のございました民間の業者に言わば旅券等の確認をお願いするわけでございますが、これも御指摘のとおり、例えば入管の職員のように専門家として旅券等の旅行の証明書等を日ごろから見ておる、またこの鑑識に当たっているというような場合と異なりますので、おのずからその確認の内容、程度は専門家とは異なるものというふうに考えております。
 例えば、旅券等に記載されております本人の生年月日とか、それから性別がございます。あと、身体的特徴なども旅券に記載されているわけでございますが、こういったものと現にその目の前にいる旅行者とを見比べていただいて、明らかに違う、年齢がおかしいとか身体的特徴が全く違うというようなケースであれば多分一般の方でもお気付きになるであろうということでありまして、その程度のことを期待するのかなというふうに思っておるわけでございます。
 実は、このような規定につきましては既に世界各国かなりの国で規定を置いておりますし、元々、航空会社等におきましては、その運送約款におきまして正規の旅券などの証明文書、言わば外国に行くことができる証明書を持っていることを航空機に乗せるですとか船に乗せる前提条件としていると、そういう約款がほとんどであるというふうに認識しておりますので、従来からこういう規定がなくとも事実上確認はしておるというふうに承知しているわけでございます。
 難民の方について不都合があるんではないかという、こういう御指摘があったわけでございますが、今御説明したような状況でございまして、これに加えまして、難民の方は時として偽造旅券を所持して日本に来るケースもございます。そのほかの国に行くケースもあるというふうには承知しております。もちろん、真正な旅券を持って日本に来て難民の主張をされる方もかなりいるわけでございますが、委員の御懸念は、偽造の旅券を所持して国籍国から逃れてくるというようなケースを御想定だろうと思うわけでございますけれども、こういう方につきましては、先ほど申し上げましたように、従来から行われております運送会社の旅券の確認がこの規定を設けることによって格段に異なったものになるというわけではないという認識でございますし、更に加えまして、世界のほとんどの国におきましては、そもそも、自国民だけではございませんが、自国から海外、外国に出国する人につきましては正規の旅券その他の旅行証明書を持っているかどうかというのを確認しているのが常でございます。そうしますと、その確認作業は当然、入国管理担当の公務員が行うわけでございますので、仮に偽造旅券等を所持していれば、そこでまずもって航空機に搭乗する前段階で発見される確率の方が高いのかなというふうに思っておりますが、それも現状とこの法改正後では変わるものではないというふうに思っております。
 そういうことを総合的に考えますと、この規定が新たに設けられたことによって特段従来と異なった形になるものではなかろうというふうに考えておるところでございます。
#99
○千葉景子君 時間がなくなってきましたので、今のお答えでは私は納得できません。
 というのは、今までと異ならないんだ、で、何でこういう規定ができるわけですか。異ならない、異ならないようにするためにある意味では法に規定を設ける。あるいは、義務化をするわけですよね、これ義務化しているわけですから。でも、いや中身はこれまでと変わりません、大体よっぽど明らかな偽造のときぐらいでしょうとか、それじゃその基準とか、あるいは非常に不明確、恣意的なあれによって入国というか、が拒まれたり、あるいは日本への、向こうからですから、出国が阻まれたり、そういうことになってしまうわけですよ。それじゃ、とてもじゃないけれども、安心して、基本的なやっぱりこれは一人一人の権利ですから、それを何か恣意的なあるいは明確な手続等も経ないでやっぱりそこで制約をしてしまうということには私は非常に懸念を感ずるところでもございます。
 難民の問題についても、そういう意味ではしかりですよね。何か非常にあいまいで、この人は何かすうっと行っちゃった、ある人はそこでとどめられちゃった、こういうことが起こらないとも限らない。ここは改めてちょっと不明確なところをまた指摘をちょっとさせていただきたいというふうに思っておりますが、今日は時間になりましたので指摘にとどめさせていただきまして、また次回に譲らせていただきたいと思います。
#100
○浜四津敏子君 公明党の浜四津敏子でございます。
 二〇〇〇年に人身取引防止議定書が国連で採択されまして、我が国も二〇〇二年にこれに署名いたしました。しかし、日本には八〇年代、九〇年代からタイ、フィリピン、中国、メキシコ、コロンビアなど、数多くの国々から女性が商品として送り込まれる人身取引が行われ、それが依然続いている現状にあると言われております。被害女性の支援団体の調査によれば、これらの女性には通常、平均五百万円にも上る架空の借金が課せられて、監禁され、売春を強要されてきたということでございます。
 この現状に日本はこれまでどのように対処してきたのかというと、被害者である女性たちは、不法入国、オーバーステイなどにより、入管法違反、そして不申請による外国人登録法違反、さらに売春防止法違反などにより逮捕され、有罪判決を受け、退去強制などをされると、こういう扱いを受けてきたわけでございます。被害者である女性たちが処罰の対象とされ、本来加害者である人身売買のブローカーなどは、これまではこれを直接に取り締まる取締法はなく、刑法の営利誘拐、略取誘拐、外国移送目的略取罪などのほか、不法就労助長などの出入国管理法違反、有害職業紹介を禁じた職安法違反、労働基準法、売春防止法違反などで対応してまいりました。
 私ども公明党といたしましては、こうした現状を従来から深刻に受け止めまして、その対応策の検討に取り組んできたところでございます。昨年秋、まず党の女性委員会として被害女性支援団体の方々から人身売買の現状や救済状況、課題、要望等を伺いました。また、昨年十月の参議院代表質問で、私が人身取引の被害者が不法滞在者として処罰されている現状を指摘いたしまして、「処罰されるべきは人身売買のブローカーなどであり、女性たちは被害者として救済され、保護されるべき対象のはず」と、総理に被害者保護、救済の強化を迫りました。
 また、同年十月に、公明党内に人身取引による被害者保護対策プロジェクトチームを立ち上げました。そして、そのプロジェクトチームで被害者保護に取り組んでいるNPO法人等関係者から状況や意見を聞きまして、また内閣官房、外務省、法務省、厚生労働省、警察庁など関係省庁から人身取引の国内の検挙状況や法的対応、被害者保護の状況を聞くなど、精力的に活動してまいりました。それらを踏まえ、昨年十一月、南野法務大臣に対しまして、一、人身売買罪の創設、二、被害者救済、保護のための実効性ある行動計画の早期策定、三、被害者の仮放免や在留特別許可制度の弾力的な運営、四、出入国管理法の在留資格、興行の見直しなどを要望いたしました。昨年十二月七日、政府は人身取引の撲滅を目指す国連議定書の批准を目指して、国内法の整備や被害者保護を推進するために、人身取引対策行動計画を策定し、対策強化に乗り出しました。
 こうした中、公明党のPTといたしましては、十二月半ばに与党人身取引被害者保護対策プロジェクトチームを立ち上げまして、与党一体となってこの問題に取り組むこととなりました。そして、十二月十七日、与党のプロジェクトチームとして、財務省に対し、人身取引対策行動計画を実効性あるものにするために来年度で予算化することが不可欠との申入れを行いました。
 その申入れの結果、通常、昨年八月の各省概算要求中に盛り込まれていない項目が予算化されるということはほとんど通常はないわけですけれども、当時の来年度予算に、一、民間シェルターへの一時保護委託費一千万、これゼロだったものが一千万盛り込まれたわけでございます。二つ目として、加害者情報などのデータベース化の経費六千六百万円が緊急に盛り込まれました。これではとても足りないのは十分承知しておりますけれども、ともかく予算案に項目として入ったことは来年度以降に向けて大きな意味があると考えております。来年度予算においてはより十分な予算確保に努力したいと思っております。
 また、さらに、与党プロジェクトチームとして昨年の十二月二十二日、細田官房長官に対して、各省庁にまたがる政府の人身取引対策を強力に推進するため、官房長官自らが担当大臣に就任する必要がある旨を申入れいたしました。官房長官は、人権的にも外交的にも大変重要と、担当大臣をやらせていただく方向で考えたいと明言をされ、各省庁にまたがる強力な体制が整えられることになりました。
 少し長々とお話しさせていただきましたが、こうした経過を経て今回刑法に人身売買罪を新設した意義は大きいと思っておりますが、まず大臣にお伺いいたします。
 人身取引防止の観点から人身売買罪新設の意義をどのようにとらえておられるか、また、これまで人身取引の被害者が受けた被害は、今更繰り返すまでもありませんけれども、同じ女性の一人として人身取引の被害者が受ける心の痛みについてどのように感じておられるのか、大臣にお伺いいたします。
#101
○国務大臣(南野知惠子君) 先生御指摘のとおり、人身取引につきましては、本当に長いプロセスを経ながら今やっとここまで来て法律を出していく、人身売買はこれは罪ですよというところにやっとたどり着いたのかなというふうにも思っております。人身取引につきましては、女性や児童がその弱い立場ゆえに被害者となるということを先ほども申し上げましたが、そのような観点から、被害者の人格や尊厳を侵害し、その心と体の両面に大きな影響力を及ぼすものであるということに関しましては、女性の一人としても本当に遺憾に思っておるところでございます。許してはいけない犯罪であるというふうにも思っております。
 この法律案におきましては、我が国の刑罰法規の基本法である刑法に人身売買罪を新設することは、人身売買が重大かつ深刻な人権侵害であると、そして、先ほども申しましたが、犯罪行為であるということを明らかにして国民の規範意識を高めていくと、そして人身取引の抑止と撲滅に資する大きな意義があるというふうに考えております。
#102
○浜四津敏子君 次に、政務官にお伺いいたします。
 我が国の人身取引に関するアメリカ国務省の報告書では、日本の人身売買について組織犯罪集団の関与の指摘がなされており、また対策が不十分であるとして途上国並みの監視対象国に位置付けられ、G8ではロシアと並ぶ最低のレベルとされております。ILOも昨年、日本の対応の不十分さを指摘するなど、この問題に対する我が国への国際的な批判は大変厳しいものがあるわけでございます。
 今回の改正案は遅過ぎる嫌いもありますけれども、こうしたこれまでの厳しい国際的な批判に十分こたえるものとなっているのかどうか、政務官にお伺いいたします。
#103
○大臣政務官(富田茂之君) これまで我が国の人身取引に対する取組に関して、今先生御指摘のように、国際的に幾つかの御指摘がなされてきたことはもうそのとおりでございます。ただ、その中には、人身取引防止に対する我が国の取組に対して十分な理解が得られていないと思われるものもございます。午前中の荒井委員の質問に対しまして刑事局長の方で御答弁させていただきましたけれども、誤解に基づく指摘も数多くあるのではないかなというふうに思っております。我が国としましては、諸外国と協力しつつ人身取引の防止等のための施策を充実し、国際的にもより一層の理解を得るべく取り組んできたものと考えております。
 今回の法律案に盛り込まれました人身売買罪の創設等の人身取引に係る行為の処罰に関する法整備は、人身取引議定書を担保し、国際的な人身取引の防止、撲滅に十分に資する内容となっており、これまで御批判のありました法定刑の点も含めまして、諸外国の罰則と比較して遜色のないものとなっているというふうに考えております。さらに、人身取引の被害者につきまして、人身取引等により売春等に従事したことを理由としては退去強制等の対象とせず、また在留特別許可の対象者として明示するなど、人身取引の被害者の保護の観点からも十分な措置を講じているものと考えております。
#104
○浜四津敏子君 それでは次に、法務省にお伺いいたします。
 人身取引事犯につきましては、これまで刑法や特別法を適用して対処してきたと理解しておりますが、適用された罰則及びその事例はどのようなものだったんでしょうか、お伺いいたします。
#105
○政府参考人(大林宏君) 人身取引に関連する事犯に対して適用される現行の罰則といたしましては、職業安定法には、暴行、脅迫など自由を拘束する手段による職業紹介、有害な業務に就かせる目的による職業紹介などを処罰する規定がございます。労働基準法には、強制労働の罪、前借金によって賃金を相殺することを処罰する規定がございます。売春防止法には、売春をあっせんする行為を処罰する規定、管理売春の罪がございます。出入国管理及び難民認定法には、不法入国者などを働かせた者を処罰する不法就労助長罪がございます。児童福祉法には、児童に淫行など有害な行為をするおそれのある者に対して児童を引き渡す行為や、有害な行為をさせる目的で支配下に置く行為を処罰する規定がございます。また、いわゆる児童買春、児童ポルノ禁止法には、児童を買春等の目的で売買することを処罰する規定がございます。
 このうち、多く適用されておりますのは、職業安定法、売春防止法、出入国管理及び難民認定法の罪でございます。
 具体的事例につきましては、外国のブローカーから女性を買い受けた上、パスポートを取り上げたり、理由のない高額な借金を課し、さらには居住場所や外出を制限するなどして売春等に従事させるといった行為があることが判明しております。
#106
○浜四津敏子君 先ほど述べましたように、我が党としてはかねてより人身取引防止及び被害者救済、保護推進についての取組を進めまして、法務大臣に対して、昨年、六点の申入れを行いました。
 そのうち、法務省に直接関係するのは次の四点でございます。すなわち、一、早期に刑法を改正し、人身取引罪を創設すること、二、被害者救済、保護のための実効性ある行動計画を法務省、警察庁など関係省庁が連携して早期に策定すること、三、被害者に必要と認める場合、仮放免や在留特別許可制度を弾力的に運用し、我が国において保護及び支援策を講じること、四、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の在留資格、興行につき同法第七条第一項第二号の基準を定める省令で定める条件のうち、「外国の国若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる公私の機関が認定した資格を有すること。」については、その運用に問題が多いとの指摘が多くなされているところから、これを削除することと、こういう申入れをさせていただきました。
 今回の改正に当たりまして、今申し上げました四点につきましてどのように反映されているのか、お伺いいたします。
#107
○政府参考人(大林宏君) まず、刑事局の所管する分についてお答えいたしますと、人身取引議定書が規定する人身取引について人身売買の罪を新設するほか、臓器摘出目的を含む生命若しくは身体に対する加害の目的で行う人の略取誘拐等や被略取者引渡し、輸送、蔵匿等の行為について処罰規定を整備することとし、さらに、国外移送目的略取等の罪の構成要件を日本国外移送から所在国外移送に拡大するなどしており、これにより人身取引に関連する一連の行為を処罰することが可能になったというふうに考えております。
#108
○政府参考人(三浦正晴君) 続きまして、入国管理局の所管事項に関するものについて御説明申し上げます。
 三点ございます。
 まず、被害者の救済、保護のための実効性ある行動計画を策定すべしという点についてでございますが、これにつきましては、御要請のとおり、昨年の十二月七日に、政府におきまして人身取引対策行動計画が策定されております。目下、その行動計画に沿って関係省庁が緊密に連携して総合的な対策を推進しているところでございます。
 次に、二点目でございますが、被害者に対して仮放免や在留特別許可制度を弾力的に運用すべきという点でございます。
 現在でも、本人の希望を聞きまして、早期帰国を希望される被害者にはこの実現のために配慮しておりますし、帰国した場合には生命等の危険があるということなどを理由として日本に引き続き滞在したいという被害者の方に対しましては在留特別許可などを弾力的に運用することとしております。
 また、これはあくまで運用上の配慮でございます。しかし、今回御審議いただいております法改正が実現いたしますと、人身取引等の被害者に対して法務大臣が在留特別許可を与えることができるということが明確に明文で規定されることになるわけでございますので、今後、これらの事案に対してより積極的に在留特別許可の制度を活用することができるというふうに思っております。
 それから最後に、三点目といたしまして、興行の在留資格に関します出入国管理及び難民認定法第七条第一項二号に基づく基準を定める省令の改正の件でございます。
 これは、「外国の国若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる公私の機関が認定した資格を有する」という要件に当たりますと、それのみをもってエンターテイナーとして日本に上陸できるという形になっておったわけでございますが、これがかなり悪用されておりまして、本来のエンターテイナーでないような人にまで相当多数発行されていたという実情が分かりましたので、省令の改正を実施しております。本年三月十五日に施行になっておる状況でございます。
 以上でございます。
#109
○浜四津敏子君 それでは、法案についてお伺いいたします。
 今回新設する人身売買罪等の法定刑は諸外国に比べて遜色がないものになっているんでしょうか、お答えください。
#110
○政府参考人(大林宏君) 今回の人身売買罪等は、法定刑の点も含め、諸外国の罰則と比較して遜色のないものではないかというふうに考えております。
 例えば、新設する人身売買罪につきましては、その法定刑を、所在国外移送目的売買罪については二年以上の有期懲役、営利目的等買受け罪と売渡し罪については一年以上十年以下の懲役、未成年者買受け罪については三月以上七年以下の懲役とするなどしております。
 例えば、米国におきましては、売春等に従事させる意図、目的で人を輸送する罪等として十年以下の自由刑という規定がございますし、また英国におきましては、利益のため売春をさせる行為をする意図を有するなどして人の英国内への到着を手配等する罪として十四年以下の自由刑等に処するなどの規定がありますし、またフランスにおきましては、報酬等と引換えに売春をさせる等の目的で人を獲得し、輸送し、引き渡しし、蔵匿し、又は収受する罪として七年以下の自由刑等に処するなどの規定が設けられております。
 もとより、各国の刑事法制により構成要件の設け方自体がまちまちでございますので、単純な比較は困難でございますが、今申し上げたとおり、少なくとも我が国の法定刑が他国に比べて特に低いという状況にはなく、人身取引の適正な処罰を図るには十分なものであると考えております。
#111
○浜四津敏子君 この法律案は、略取誘拐の罪に類似した形で人身売買罪を新設すると、そういう内容となっているようでございますが、略取誘拐の罪や今回新設する人身売買の罪が成立するためには、被害者を逮捕監禁するなどその自由を完全に拘束することが必要とされるのかどうか、お伺いいたします。
#112
○政府参考人(大林宏君) 現行の刑法の略取誘拐の罪は、人を暴行、脅迫又は欺罔、誘惑により支配下に置くことによって成立する罪でございます。
 ここで言う支配とは、物理的、心理的な影響を及ぼし、その意思を左右できる状態の下に対象者を置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせることをいうものと解されております。
 個々の具体的事案について支配の有無について申し上げることは困難でございますけれども、一般論として申し上げますと、自由の拘束の程度やその時間の長短にとどまらず、場所的移動の有無やその程度、被拐取者の年齢、犯行の場所の状況、犯行の手段、方法等、あらゆる要素を総合考慮して認定されるものと考えられ、必ずしも被害者の自由を完全に拘束することまでは必要ないものと考えております。
#113
○浜四津敏子君 それでは、例えば被害者といいますか、対象者のパスポートを取り上げた場合も被害者に対する支配があったと認められることになるんでしょうか。
#114
○政府参考人(大林宏君) お尋ねの事案につきまして、外国人女性を売春スナックで稼働させるに際し、当該女性のパスポートを取り上げただけで支配が認められるかは一概には断じられませんけれども、言葉も地理も分からない地に連れてこられた外国人女性の立場からすれば、それのみをしてもパスポートを取り上げた者の影響下からの離脱は相当程度困難になると思われます。
 さらに、指定した住居に住まわせたり、買物等の外出以外の遠方への外出は禁止する、あるいはスナック等に出勤して売春をしないと罰金等の名目で報酬を与えない、さらには高額の借金を負わせる、また逃げ出せば本人又はその親族に危害を及ぼす旨、明示的又は黙示的に告知するなどの各行為が考えられ、こういうものと相まって、支配行為を認定することが重要な要素、先ほどおっしゃられたパスポートの問題ですけれども、そういうものになるというふうに考えております。
#115
○浜四津敏子君 時に売春させている者が、この外国人女性は売春をすることについて承知しているんだと、同意しているんだから人身取引とは言えないんだというふうに開き直るケースも多いと聞いております。成人の女性が家族を貧困から救うために、親からの働き掛けなしに自発的に自ら売春を希望して売られたような場合など、人身売買について被害者の同意がある場合のようにも見えますけれども、このような場合は改正法においてどのように評価されるんでしょうか。
#116
○政府参考人(大林宏君) 御指摘のような事例において、表面上被害者が自ら売春をして金銭を稼ぐことに同意していたといたしましても、本来は、不特定多数の相手方と性交等を行うことなどを希望しているのではなく、家族を貧困から救うため、金銭を稼ぐには売春によるほかはないとやむなく売春に及ぶに至ったと見るべきであろうというふうに思われます。このような場合には、被害者の同意は自由かつ真摯な意思に基づくものとは認め難く、当然に犯罪の成立が否定されるものではないと、このように考えております。
#117
○浜四津敏子君 刑法改正案二百二十六条の三についてお伺いいたします。
 国外移送の罪については、広く人が現に所在する国からその国の外に移送する行為を処罰の対象としておりますけれども、移送行為を処罰の対象にしようという考え方に基づくとしても、なぜ改正刑法草案のように居住国外とせずに所在国外と規定したのか、その理由をお伺いいたします。
#118
○政府参考人(大林宏君) 御指摘の改正刑法草案が議論された時代と現在とを比較いたしますと、日本国民の出国者数が飛躍的に増加したのに伴い、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う事案も大きく増加しております。平成十五年の刑法改正により、国民が被害者となった場合の国外犯処罰を規定した刑法三条の二が新設されるに至ったのも、このような情勢の推移について国会ひいては国民の理解を前提とするものと考えられるところでございます。
 このような情勢を背景として、海外旅行中の日本人が他人の支配下に置かれ第三国に移送されるといった事案の発生がより容易に想定されるようになっており、これに適正に対処すべきことは論をまたないものだと考えております。
 また、人身取引事案においても、居住国からの移送の場合しか処罰できないといたしますと、被害者の保護に欠ける結果となることが予想されます。これらにかんがみますと、居住国でなくても、人がある国にとどまる自由や現に所在しているという事実状態を保護する必要性は格段に高まっており、所在国外移送等の行為を処罰することとする必要性は十分に認められると考えております。
#119
○浜四津敏子君 今回、法整備の対象とする罪につきましては、いずれも刑法三条の国民の国外犯及び刑法三条の二、国民以外の者の国外犯の対象とされております。したがって、日本国民が日本国外で犯罪を犯した場合及び日本国民が日本国外で犯罪の被害を受けた場合に適用されることとなります。日本からの移送に限らず、所在国外への移送を処罰の対象にしようとするのであれば、日本国外において日本国民以外の者が日本国民以外の者を売買した場合も広く処罰の対象とすることも考えられると思いますけれども、いかがでしょうか。
#120
○政府参考人(大林宏君) 委員御指摘のとおり、今回の法律案で改正の対象となる犯罪につきましては、いずれも条約が要請する国外犯処罰の範囲や人身の自由を侵害する犯罪に関する従前の取扱い等を考慮し、刑法三条及び刑法三条の二により、国民の国外犯及び国民を被害者とする場合の国外犯を処罰の対象とすることとしているところでございます。
 これに対し、所在国外移送罪につき、すべての者の国外犯を処罰するということにいたしますと、外国人が外国人を外国から外国へと移送した場合にも処罰の対象とすることになりますけれども、人身取引議定書はそこまでの要求はございません。また、このような行為につきましては、犯罪地又は行為者、被害者の国籍国における処罰にゆだねることが相当であると考えられる場合が多いと考えられます。
 また、国外移送後の行き先が日本であるときには、その共同正犯者の犯罪地が日本国内にあることが少なくないと思われ、そのような場合には外国人の共犯者も国内犯として処罰が可能であること、また人身買受けの罪は、日本国外で買受人が被害者の身柄を受け取った時点で成立するので、外国の売渡し人を含め、同罪の国内犯の処罰が可能であること、さらに、日本に入国後の引渡し、収受、輸送等の行為についても処罰が可能であることなどにかんがみ、実質的にはかなりの部分を処罰できるというふうに考えられておりますので、所在国外移送罪についてすべての者の国外犯を処罰するとすることまでの必要はないと、このように考えたものでございます。
#121
○浜四津敏子君 ところで、今回の改正案では、刑法二百二十条、逮捕監禁罪の法定刑を現行の三月以上五年以下の懲役から三月以上七年以下の懲役に引き上げ、刑法二百二十四条、未成年者略取誘拐罪についても同様の法定刑引上げとなっていますが、その理由について御説明いただきたいと思います。
#122
○政府参考人(大林宏君) まず、逮捕監禁罪でございますが、その認知件数は近年増加を続けておりまして、平成七年の三百五十七件から平成十六年には約一・八倍の六百三十九件にまで増加しております。また、近年、長時間にわたる監禁事案など、現行の逮捕監禁罪では適正な処罰が困難な重大事案が見られ、人身の自由を侵害する行為への非難も高まり、逮捕監禁罪の法定刑が国民の規範意識に合致しているのかという御指摘もあります。このような近時の犯罪情勢や国民の規範意識の動向を踏まえ、法定刑の上限を懲役七年に引き上げたものでございます。
 次に、未成年者略取誘拐罪でございますが、略取誘拐罪の認知件数につきましても、平成七年の二百四十件から平成十六年には約一・三倍の三百二十件となるなど、増加傾向が明らかであります。そのうち、被害者が十三歳未満である事案が全体の四ないし五割を占めております。被害者が二十歳未満の事案まで含めると全体の七ないし八割に及ぶなど、未成年者が被害者とされる傾向が極めて顕著でございます。
 また、近時、低年齢児を対象とする連れ去り、連れ回しと呼ばれる事件が頻発しておりまして、中には長期間未検挙の事案もございます。こうした未成年者の略取誘拐事案については、営利やわいせつの目的が認められない場合、例えば、ただかわいいので一緒にいたかったなどという場合であっても、重大かつ悲惨な結果に結び付く危険性も大きく、また保護者等に与える心理的影響も計り知れないところでございます。
 したがって、このような未成年者略取誘拐行為自体の重大性等を適正に反映したものとするため、未成年者略取誘拐罪の法定刑を三月以上五年以下の懲役から三月以上七年以下の懲役に引き上げることとしたものでございます。
#123
○浜四津敏子君 もう既に一昨年のことになると記憶しておりますが、私ども公明党、自民党とで、与党の女性と刑法プロジェクトチームというPTを立ち上げまして、そこで様々検討を進めました。それによりまして、刑法に例えば集団強姦罪等を創設し、また性犯罪の法定刑を引き上げるという刑法改正につながりました。それに見られますように、女性や子供といった社会的に弱い立場にある者の人格をじゅうりんする犯罪に対しては厳しく対応すべきであると従来から考えてまいりました。
 今回、逮捕監禁罪や未成年者略取誘拐罪の法定刑の上限を引き上げることとなりまして、こうした方向は歓迎すべきものと考えておりますけれども、上限の懲役七年というのはまだ軽いような気がいたしますが、これを更に重くすべきではないかという意見もあるかと思いますけれども、いかがでしょうか。
#124
○政府参考人(大林宏君) まず、逮捕監禁罪についてでございますが、身体に対する罪という点では、例えば暴行罪の法定刑が二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とされております。遺棄罪の法定刑が一年以下の懲役、保護責任者遺棄罪の法定刑が三月以上五年以下の懲役とされていること等と比較しても、逮捕監禁罪の三月以上七年以下の懲役という法定刑は相当程度重いものではないかと考えております。
 なお、長期間にわたる監禁事案等の悪質事案におきましては、被害者に死傷等の重大な結果を発生させることが特に多いというふうに考えられますが、このような場合には逮捕監禁致死傷罪が成立し、致傷の場合であれば三月以上十五年以下の懲役、致死の場合であれば三年以上の有期懲役、上限は二十年となりますけれども、そういうことで処せられることになります。
 次に、未成年者略取誘拐罪についてでございますが、懲役七年という法定刑の上限は現行の懲役五年よりも一段高くするものでございますが、例えば、不幸にして被害者が死傷に至った場合には、仮に殺意が認められなくても傷害罪又は傷害致死罪との併合罪として、それぞれ三月以上二十二年以下、又は三年以上二十七年以下の範囲で処罰が可能となります。
 また、法定刑につきましては刑法等の法体系全体における他の罰則との整合性も考慮する必要がありまして、悪質な未成年者略取誘拐の典型例と考えられます営利、わいせつ目的による場合には法定刑が一年以上十年以下とされていること、それから、対象を未成年者に限定しない一方で、より違法性の高い行為を処罰対象とする逮捕監禁罪の法定刑についても今回その上限を懲役五年から懲役七年に引き上げることとしていることなどとの均衡を考慮いたしますと、今回の引上げは必ずしも低きに失するものではないと、このように考えております。
#125
○浜四津敏子君 昨年、法務大臣にも申入れをさせていただきましたけれども、人身取引対策に当たりましては被害者の保護を欠かすことはできないところでございます。
 人身取引の被害者は、慣れない異国の地で心の傷もいやされないまま、加害者からの報復などにおびえていると思われます。そうした被害者に対しまして、刑事手続においてどのような配慮をしているのか、また今後どのように配慮していくおつもりか、お伺いいたします。
#126
○政府参考人(大林宏君) 人身取引の被害者につきましては、その被害状況を裁判において証言しなければならないようなことも考えられます。このような場合に、法廷において証人にその不安、緊張を和らげるような関係者を付き添わせること、あるいは、証人と被告人や傍聴人の間につい立て等を設けて互いに見えないようにする遮へい措置、さらには、証人を別室に在席させて、これを法廷の裁判官、検察官、弁護人がビデオでモニターしながら行うビデオリンク方式による証人尋問など、被害者の立場や心情に配慮した手続が実現されるための諸方策が定められ、活用可能とされているところでございます。
 今回新設するわいせつ又は結婚目的の人身売買罪等の被害者についても、類型的に性的被害を伴うことが予想され、公開の法廷で尋問を受ける場合にいわゆる二次的被害と言われるような心理的、精神的負担を受けることが少なくないと考えられるため、刑事訴訟法の改正によりビデオリンク方式による証人尋問の対象者とすることとしております。
 このほか、検察庁では被害者通知制度による情報の提供、被害者支援員等による被害者の支援も行っており、今後、人身取引の被害者についてもこのような配慮によりその保護や二次的被害の防止、軽減等の実現に努めるものと承知しております。
#127
○浜四津敏子君 被害者への配慮につきまして、もう一点お伺いさせていただきます。
 人身取引の被害者が、この被害に伴って、入管法違反等の犯罪を犯していることが間々あります。こうした被害者の犯罪について、その刑事処分に当たっては人身取引の被害者であることを十分考慮して行うべきであると考えますけれども、検察当局における取扱いについてお伺いいたします。
#128
○政府参考人(大林宏君) 人身取引の被害者が例えば不法入国の罪や売春防止法上の罪に当たる行為を行ったと認められる場合には、人身取引の被害者であるからといって法律上直ちに犯罪の成立が否定されるものではございません。
 しかしながら、人身取引の被害者が人身取引の一環として先ほど申し上げたような犯罪を犯すに至ったと認められる場合には、検察官において起訴、不起訴の判断において、人身取引の被害者であるとの地位などの諸情状を総合的に考慮し、適切に対処しているものと承知しております。
 また、検察当局においては、各種の会同や通達を通じて、被害者に対する配慮を行うことが指示されているものと承知しております。
#129
○浜四津敏子君 次に、入管法の一部改正関係について伺います。
 人身取引議定書や入管法などにおいて人身取引の定義がなされておりますが、個別具体的な事案が果たして人身取引に該当するのか否かという判断についてはなかなか難しい面があると思われます。入国管理局職員の方々は誤りなく明確にその判断ができるのか、どのようにして判断されるのかをお伺いいたします。
#130
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 警察等の捜査機関でございますとか、NGOの団体、また出身国の在日公館などを通じまして、被害者の可能性があるという方の存在を入管で認知いたしました場合には、これらの関係機関が収集しました情報の提供を得るほかに、入管当局独自に本人や関係者から事情を聴取するなどいたしまして、判明した事実を総合的に考慮して人身取引の該当性の判断を行うことになるわけでございます。
 また、被害者の可能性のある方が直接入管、入国管理局に保護を求めてきたというような場合でございますとか、入国管理局による摘発の際に認知されたような場合につきましても、当局の調査結果はもちろんのことでございますが、関係機関に対しても情報提供を行いまして、場合によっては、例えば被害者の出身国の在日大使館の職員に対して本人と直接面談して事情を聴取するようお願いするなどいたしまして、それらの結果も踏まえまして該当性の判断を行うことになると思われます。
#131
○浜四津敏子君 従前の制度で被害女性に在留特別許可を与えられた事例としてはどのようなものがあるんでしょうか。幾つか具体例を挙げて説明していただきたいと思います。
#132
○政府参考人(三浦正晴君) 具体例を二つほどちょっと御紹介したいと思いますが、一つは、中南米人の女性でございますが、本国におきまして同じ国籍の女性から日本でストリッパーとしての稼働をしないかということで勧誘されまして、偽造旅券を渡されまして、これを使って来日したわけでございますが、来日後、渡航費用であるというふうに称されまして五百万円も借金があるんだということを言われまして、それから各地のストリップ劇場を転々として稼働させられました上で、その出演の終了後に強制的に客と売春などの性的行為をさせられた。その挙げ句、給料の大半を借金返済であるというようなことで取り上げられていたと、こういう事例でございました。
 入管局におきましては、この被害者の方、この女性を人身取引の被害者と認めまして在留特別許可をいたしましたけれども、その後、本人は帰国を希望いたしましたので、本国に向けて出国をしております。
 二つ目の例でございますが、東南アジア人の女性でございます。やはり同国人のブローカーから渡されました偽造旅券を使って来日したわけでございますが、各地のスナックにおきまして売春をさせられまして、月二十万円の報酬のうち五万円のみを本人が受け取る、残金はブローカーが搾取していたという事例がございました。
 この被害者の女性は警察に保護されまして、NGOの関係者とともに入管局に出頭してまいりましたので、入管局といたしましては、本人を人身取引被害者と認め、在留特別許可をいたしました。その後、本人が帰国を希望して、本国に向け出国しております。
 ほかにも数例ございますけれども、いずれの事案につきましても、本国において日本での稼働を勧誘されて来日したというケースでございますが、その後、渡航費用であるというような理由を付けられまして多額の借金名目のお金を負わされ、売春などをさせられた上でブローカーなどに金銭等を搾取されたというものでございます。
 当局といたしましては、NGOでございますとか在日の各国大使館その他の関係機関と連携いたしまして、被害者と認められる方に対しましては在留特別許可を積極的に付与するなど適切に措置するよう努めているところでございます。
#133
○浜四津敏子君 今具体例を挙げられましたように、現行法上も、入管法五十条第一項第三号の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。」との条項によりましてそうした在留特別許可を付与することができるわけでございます。にもかかわらず、今回の改正により人身取引等の被害者に在留特別許可を与えることができる旨の規定を設けることになりましたが、これを設けることによって一体現行法と何がどう変わってくるんでしょうか、お伺いいたします。
#134
○政府参考人(三浦正晴君) 人身取引等の被害者が保護の対象であるということを法律上明記したということに一つは意味があるかと思っております。
 同じく大臣、法務大臣の裁量権限の行使ということにはなるわけでございますが、その対象として特定のパターンの人を明文で書くということによりまして、原則、よっぽどの例外がなければ在留特別許可が与えられるという、こういう解釈に当然なると思われますし、また、被害者の方にとってみましても、そういう規定ができることによりまして自分が保護の対象となっているということが認識できるわけでありますので、入国管理局等に被害の申告がしやすくなると、こういった効果があるものと考えております。
#135
○浜四津敏子君 在留特別許可を与えることが原則となるという御説明でしたが、入管法第五十条第一項においては「在留を特別に許可することができる。」とされているわけでございまして、人身取引の被害者のすべてが在留特別許可を与えられるとは限らないということになります。
 与えられない方が例外的だという今の御説明ですけれども、それでは、例外的に在留特別許可が認められないというのはどのような場合なんでしょうか、そうした場合に被害者の保護に欠けることにはならないでしょうか、お伺いいたします。
#136
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 なかなか、例外のケースを想定するのはちょっと難しいくらいに例外だと思っておりますが、例えば、極めて重大な犯罪を犯しておりまして、これが人身取引とは全く無関係な形で重大犯罪を犯していたようなケースが一つは想定されるのかなというふうに思います。
 それから、入管法の二十四条の退去強制事由の中に、例えば我が国の憲法制度や我が国政府を破壊するといったような人物である場合には、これは退去強制の対象になるというふうにされておりますが、こういった人物が仮に人身取引被害者であるというようなことを想定いたしますと、こういうケースでは在留特別許可を与えることがないというようなことになるのかとは思われますが、ただ、現実には、そのようなケースはほとんどないのではなかろうかと思っております。
#137
○浜四津敏子君 今回の入管法改正におきましては、人身取引等の結果として売春をさせられるなどしていた場合について退去強制事由や上陸拒否事由から除外することとされておりますが、今回の改正法の施行前に被害に遭って売春に従事している者については改正法施行後は保護されるのかどうか、お伺いいたします。
#138
○政府参考人(三浦正晴君) この点につきましては、改正法の施行前に例えば強制的に売春に従事されていた方であって改正法の施行時点ではそういう状況がなかったというようなケースもあり得るわけでございますが、こういう方につきましても、当然、かつて売春に、人身取引の被害者の状態で売春に従事させられていたということになるわけでございますので、新法の適用があるというふうに考えております。
#139
○浜四津敏子君 昨年十一月の公明党としての大臣に対する申入れにおいても指摘させていただきましたが、大臣にお尋ねいたしますが、人身取引対策を実効性のあるものにするためには、被害者の保護、支援を行っているNGOや民間団体との連携に努めることが必要と考えられますけれども、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
#140
○国務大臣(南野知惠子君) 委員御指摘のとおり、実効性のある人身取引対策のためには、NGOなどと連携が不可欠のものと考えております。
 法務省におきましては、人身取引事案につきましてNGOなどと緊密に連絡を取りながら、例えば、NGOからの通報を受けた被害者が不法滞在となっております場合で帰国を希望するときには、在留特別許可を与えるとともに、NGOの運営するシェルターに保護を求めたり、また協力して帰国支援に当たったりするなどの取扱いを行っております。また、本年一月から、すべての地方入国管理局及び支局に人身取引対策事務局を置きまして、この事務局がNGOや民間団体との連絡の窓口として積極的に対応することとなっております。
 今後とも、こうしました事案に関しては、各方面の方々と積極的かつ緊密に連絡を強めてまいりたいと思っております。
#141
○浜四津敏子君 人身取引の被害者はほとんど女性でございますけれども、そのような被害に遭ったという申出があった場合に、特に女性であるということに配慮した対応が必要であると考えておりますが、被害女性と直接接触する入国管理局の職員の方々においてはどういう配慮を行っておられるんでしょうか、また、これから行おうとしておられるんでしょうか、お伺いいたします。
#142
○政府参考人(三浦正晴君) 委員御指摘のような、女性の方で被害者の可能性があると思われる方につきましては、可能な限り入管の女性職員に事情聴取を行わせるように現在もしておりますし、また、これからもその措置は引き続き行っていきたいというふうに思います。
 また、言語などで問題がある方につきましては、母国語の通訳を付けるということなども配慮しておるところでございます。
#143
○浜四津敏子君 また大臣にお伺いいたします。
 人身取引の撲滅のためには社会全体がこの問題に関心を持つことも大変重要なことだと考えておりますが、法務省として、これまでどのような取組をし、また今後どのようにして取り組んでいかれるおつもりなのか、お伺いいたします。
#144
○国務大臣(南野知惠子君) 委員御指摘のとおり、この問題には社会全体として積極的な取組が不可欠であるというふうに思っております。そのため、法務省におきましては、関係省庁とも緊密に連携をしながら、人身取引撲滅につきまして社会的な啓発を図るよう積極的な広報活動も行っていきたいと思っております。
 具体的に法務省における取組につきまして申し上げますと、入国管理局において、昨年六月、人身取引撲滅に関するリーフレットを六万枚作成して各方面に配布いたしました。基本的には日本人の啓発を目的としたものでありましたけれども、さらに、人身取引の被害者となった外国の方も問題を理解し、入国管理局に申し出るなど適切な対応ができますように、それを英語、スペイン語、タイ語及びタガログ語などに翻訳し、各地方入国管理局の窓口などで多くの人が手にすることができるようにすることができました。また、入国管理局のホームページにも同様の内容を掲載し、広く啓発に努めております。
 今後とも、様々な機会をとらえまして積極的な広報活動を行ってまいりたいと思っております。
#145
○浜四津敏子君 法務省にお伺いいたしますが、今回の入管法改正と密入国議定書の関係はどのようなものになるんでしょうか、お伺いいたします。
#146
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 密入国議定書は、外国人を密入国させることを防止しまして、これに対処するために国際的な法的枠組みを構築することを目的としております。
 具体的には、外国人を密入国させることや外国人を密入国させることを可能にする目的で不正な旅行証明書の製造をすることなどを犯罪とするため必要な立法その他の措置をとること。二つ目といたしまして、外国人を密入国させる犯罪を防止するため、運送業者がすべての乗客が受入れ国への入国に必要な旅行証明書を所持していることを確認する義務を定めること。三つ目といたしまして、自国の法律上及び行政上の制度に従い密入国に関する情報を各国間で交換することなどが規定されているわけでございます。
 今回の入管法の改正につきましては、この密入国議定書の規定に沿いまして、他人の不法入国等の実行を容易にする目的で行う旅券等の不正受交付等に関する罰則の規定の新設、また新設する罰則に関します退去強制事由を設けることですとか、運送業者の旅券等の確認義務及び確認を怠った場合の過料に関する規定の新設並びに外国入国管理当局に対する情報提供規定の新設などを行うこととするものでございます。
#147
○浜四津敏子君 ただいまの御説明では、密入国議定書の担保等のため、旅券等の不正受交付罪等を新設するということでございますが、それでは具体的にどのような行為が処罰できるようになるんでしょうか、御説明ください。
#148
○政府参考人(三浦正晴君) ただいま御審議いただいております法案の、改正後の入管法の七十四条の六の二第一項の第一号という規定になるわけでございますけれども、これによりますと、例えば海外におります外国人で本邦に不法入国しようとしている者がおりまして、これに提供する目的で別の外国人が我が国の入管から再入国許可書の不正交付を受ける行為などがこの処罰の対象になるものでございます。
 それから同じく同項の第二号の規定によりまして、例えば海外にいる密入国ブローカーに渡す目的で我が国におります日本人が別の日本人らによって国内の偽造工場で作成された大量の偽造外国旅券を収受又は所持して、外国、海外にいる密入国ブローカーに提供する行為などが処罰できることになるわけでございます。
 それから三点目といたしまして、同じく同項の第三号の規定によりますと、国内におります不法滞在状態にある外国人が自ら不法出国して、再度不法入国するというような目的で我が国の入管から再入国許可書の不正交付を受ける行為などが処罰できることになります。
 それから第四号の規定ができますと、外国人が我が国に不法入国する目的で海外におきましてブローカーから偽造旅券を収受し、また所持する行為及びその未遂行為などが処罰できるようになるわけでございます。
#149
○浜四津敏子君 次に、厚生労働省にお伺いいたします。
 人身取引対策として、密入国の防止などの水際対策、加害者を処罰するための刑法改正、取締りの強化と併せて、被害女性の保護、救済、更生に国が責任を持って取り組むことが求められております。昨年十二月に策定された政府の人身取引対策行動計画を実効性あるものにするためには予算措置が不可欠と考えまして、私どもは予算化の申入れを行いました。その結果、人身取引被害者やブローカーなどに関する情報のデータベース化として六千六百万円、及び各都道府県の婦人相談所を活用した人身取引被害者の一時保護委託費として一千万円が本年度予算に盛り込まれたところでございます。当初予定されていなかった予算が計上され予算化されたという点では、金額は十分でないことは承知の上で、ともかく予算項目を立てるということで、人身取引被害者の保護、救済の第一歩がスタートしたものと考えております。
 しかし、特に都市部の婦人相談所はDV被害者の保護等のために既に手一杯の状態でありまして、通訳やカウンセリング、時に複数被害者の保護を必要とする人身取引被害者に対し迅速な対応をすることは困難な状態ではないかと思われます。婦人相談所の職員への研修や通訳、カウンセリングなどの人的拡充を始め、地方の婦人相談所との連携など、人身取引被害者の保護、救済を迅速に的確に行うためには婦人相談所の体制を拡充強化することが必要不可欠と考えます。
 厚生労働省としては今後どのような取組を考えておられるんでしょうか。さらに、人身取引被害者支援センターの設置を是非実現していただきたいと要望いたしますが、いかがでしょうか。
#150
○政府参考人(伍藤忠春君) 婦人相談所の体制でありますが、御指摘のありましたように、現在既にDV対策等で都市部の婦人相談所、かなり多忙を極めておるということも事実でありますが、平均してみますと、一時保護をしております一時保護所というのがございますが、全国平均では今五〇%ぐらいの入所率でございまして、こういったことを踏まえて必要な対策を講じていくべきだと思っております。
 特に、都市部で今までの実績を見ますと、人身取引被害者はむしろ地方の方でいろいろ相談にあずかるケースが多いわけでありまして、昨年二十八件ございましたが、これまでも平均在所日数六・八日ぐらいだったと思いますが、特段の支障なく保護しておるというのが実情でございますし、特に都市部等でそういう事例がありました場合にも、広域的にいろいろ婦人相談所同士で連携をして必要な措置を講ずるというような体制も講じていきたいというふうに思っております。
 それから、今御指摘のありましたような体制とか予算の面におきましても、これまで一時保護予算のかなり増額を図ってきておりますし、通訳の雇い上げ経費も計上したところでありまして、こういう施策を更に実情に応じて見ながら充実をしていきたいというふうに考えております。
 センターの設置につきましては、まずはこういった現在のいろんな政策手段を活用して必要な対策を講じると。どれぐらい件数が出てくるかというのは、先ほども言いました、分かりませんし、私ども、予算は一千万円計上いたしましたが、これも含めてDV対策経費と婦人保護経費の中で全体で対応できるようになっておりますので、何とか実態に応じて適切に対応してまいりたいというふうに今は考えておるところでございます。
#151
○浜四津敏子君 被害者の保護、救済は、緊急を要する一時的な保護、救済とともに、被害者の本国への帰国、また将来にわたる生活設計も含めた更生のための支援を望む声も強いわけでございます。被害者が再度日本に被害者として来日するようなこととならないよう被害者を支援する必要があるのではないかと思いますが、この点について厚生労働省はどのようにお考えでしょうか。
#152
○政府参考人(伍藤忠春君) 被害者が本国へ帰って、また再度こういう事態に陥らないように、何らかの手助けといいますか、事前に対応できればそれにこしたことはないわけでありまして、私どもも、この婦人相談所でできる対応というのにも限界があると思いますが、それとともに、言葉の問題もありますので限界はあろうかと思いますが、婦人相談所で保護していろんな心理的ケアなどを行います際に、そういった将来のことについてもできるだけ、アドバイスといいますか、そういったことができるようなそういう体制、専門職員の研修とか、そういった形で何とかそういうものに対応していけるように、これから一つの課題というふうに思っておりますので、保護、更生の観点からの指導がどこまでできるかということを一つの大きな課題として、私ども、職員の専門的な研修、それからそういったことを行う際の手引を作成するというような具体的なことも考えながら、御指摘のあったことに対応していきたいというふうに考えております。
#153
○浜四津敏子君 最後に法務大臣にお伺いいたします。
 入国管理局においては五年間で不法滞在者を半減させるということを目標として掲げ、その実現に取り組んでおられるということでございますけれども、今回の法改正を踏まえまして、今後、密入国防止対策に大臣としてどのように取り組んでいかれるおつもりか、その御決意をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
#154
○国務大臣(南野知惠子君) 今回の法改正案におきましては、密入国防止の観点から、他人の不法入国などを容易にする目的で不正に旅券等の交付を受ける行為等を処罰するための罪を新設いたしました。また、そのほかに、航空機等の運送業者に対する外国人の旅券等の確認義務や外国入国管理等に対する情報提供に関する規定の整備も行うことといたしております。
 先生御指摘のとおり、現在、法務省を始め政府が一丸となって、五年間で不法滞在者を半減させるための各種施策を講じておりますけれども、法務省といたしましては、今後とも警察等関係機関との連携を密にいたしまして出入国情報の収集に努めるとともに、密入国の手段として用いられることの多い偽変造文書対策を更に強化し、出入国管理の徹底を図るなどして密入国防止対策に万全を期していきたいと考えております。
 どうぞよろしくお願いしたいと思います。
#155
○浜四津敏子君 終わります。ありがとうございました。
#156
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私も、法案に入る前に、先ほども質問のございました昨日の国籍法に対する違憲判決の問題で大臣にお伺いをいたします。
 父母が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法三条の規定は違憲だと、こういう判決が出たわけですが、実はその前の日にも、父が日本人でフィリピン国籍の子供九人が国籍確認の提訴を集団で行うということも大きく報道をされておりました。あるフィリピンの母親は、日本人男性との間に二人の女の子をもうけたけども、認知制度をよく知らないままに出生後に認知された長女はフィリピン国籍、出生前おなかにいる間に認知された妹は日本国籍と、こういうふうに兄弟で分かれてしまったと、同じ父親なのにこんなことがあっていいのかということを訴えておられまして、大変これは大きな矛盾だと思います。
 昨年の二月の二十六日に、国連の児童の権利委員会の最終見解が日本政府に出されておりますけども、この中でも、「日本人の父と外国人の母の間に生まれた児童は、父親が出産前にその児童を認知しない限り日本の市民権を取得できず、それがしばしば、児童の無国籍化につながったことについて懸念する。」と、「日本で生まれた児童が無国籍にならないよう、条約第七条と適合させるべく国籍法及び関連法及び規則を改正することを勧告する。」というのがこの国連の委員会から出ておるわけでありますが、子供のやはり最善の利益という立場から、私はやはり国籍法なども見直しが必要ではないかと思っておりますけれども、昨日の判決も受けまして、大臣の所見を伺いたいと思います。
#157
○国務大臣(南野知惠子君) 先ほど千葉議員も御質問になられましたけれども、この案件につきましての今後の対応につきましては、判決を、判決文を十分に検討した上で対処したいというふうに思っております。
 国籍法は我が国の国民の範囲を超える法律であり、国民の範囲をいかに定めるかは国家の根幹にかかわる重要な問題でございます。法務省といたしましても、これまでの時代の趨勢に応じて、国籍法等の改正を含め国籍事務の円滑かつ適正な運用に努めてきたところでありますが、今後とも慎重かつ適切に対処してまいりたいと思っております。
#158
○井上哲士君 女性や子供のことに心を砕いてこられてきた大臣でありますから、是非、子供の立場からこの問題を見直していただきたいと、重ねて要望をいたします。
 さて、法案に入りますけれども、朝からの議論にありますように、日本はこの人身売買の受入れ大国という批判が国際的にされてまいりました。昨年、アメリカの政府の報告書で監視対象国とされた際も、そしてILOの駐日事務所からの指摘があった際も、その都度質問主意書なり、この委員会でも質問をいたしました。
 そういう中で、昨年十二月の七日に政府の人身取引対策行動計画が出されたわけでありますが、この中で、「我が国に人身取引の存在を許容する要因となり得ていた諸制度にも踏み込み、人身取引の防止を図ることとした。」と、こういうくだりがございます。取締りが不十分だということではなくて、この人身取引の存在を容認する諸制度があったという認識は大変重い認識だと私は思うんですけれども、具体的にはこの諸制度というのは何を指しているんでしょうか。
#159
○国務大臣(南野知惠子君) 先生も御存じだと思いますが、従前、興行という形での在留資格で入国していたフィリピンの方がおられました。フィリピン政府が発行する芸能人資格証明書があれば法務省令で定める芸能人としての要件を満たすものとされておりましたけれども、過去の調査などから、その多くが風俗営業店等においてホステスなど不法就労に従事しており、芸能人としての実質がなく、中には人身取引の被害に遭っている方もおられました。
 このような状況を踏まえて、本年二月、外国政府が発行する芸能人資格証明書を所持していれば芸能人として要件を満たす、そのように規定されているのを削除する旨の法務省令の改正を行ったことを指しております。
#160
○井上哲士君 国際的な批判を受けて、今の問題も含めまして禁止法などの対策が取り組まれてきているわけですが、日本の対策がこういう批判がされるまでなぜ立ち後れてきたのか、その原因についてはどうお考えでしょうか。
#161
○国務大臣(南野知惠子君) 人身取引につきましては、我が国は平成十四年に人身取引議定書に署名いたしました上、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議が策定しました犯罪に強い社会の実現のための行動計画に議定書締結に必要な法整備の検討を進めることを盛り込み、さらに平成十六年四月には内閣に人身取引対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、総合的、包括的な行動計画を取りまとめるなどの取組を行ってまいりました。今回の改正法案は、こうした政府としての継続的な取組の中で、法務省として所要の検討を経て立案したものでございます。
 国際的に見て、提出が遅きに失したものとは考えてはおりませんけれども、今後とも国際社会と協調して人身取引の停止、防止、撲滅に向けた積極的な取組に努めていきたいというふうに思っております。
#162
○井上哲士君 国際的に後れたとは思っていないと、こういう答弁でありましたが、しかし、私はもっと早いうちに対策が取れていたと思うんです。
 先ほど、いわゆる興行ビザの問題について答弁がありました。これまで、フィリピンからの興行ビザによる入国者数の推移についてまず答弁してください。
#163
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 約十年前程度からでよろしゅうございましょうか。
#164
○井上哲士君 はい。
#165
○政府参考人(三浦正晴君) フィリピン人の興行の在留資格による新規入国者数でございますが、平成六年は一年間で五万三千七百四人でございます。平成七年に減っておりまして、二万四千二十二人、それから平成八年に一万八千九百五人ということで順次減ってきておりますが、平成九年にまた増えておりまして、平成九年は三万一千五百八十五人となっております。その後ずっと増え続けておりまして、平成十六年には八万二千七百四十一人が新規入国をしております。
#166
○井上哲士君 平成八年に一万八千九百五人に激減をして、そして昨年になりますと、実に八年間で四倍以上に膨れ上がっているわけですね。なぜこの平成八年、七年、八年に激減をし、その後短期間で四倍にも膨れ上がったのか、その理由は何なんでしょうか。
#167
○政府参考人(三浦正晴君) 委員御指摘のこの増減の原因につきまして、正確に分析ができるかどうかちょっと自信ないわけでございますし、分析したものはないわけでございますが、当時の記録等を見てみますと、実はフィリピン政府が平成七年の一月からARBという制度を設けております。
 このARBと申しますのは、フィリピン政府がフィリピンの国民、芸能人に発行する芸能人証明書のことでございますが、元々、フィリピン政府がこのARBの制度を設けるようになった契機というのは、自国民が芸能人ということで外国に出ていっていろいろ人身取引の被害等に遭うということがあって、それを政府が懸念したというふうに私聞いておりますが、それで、この政府発行の証明書を持っている人に限り外国に行って芸能活動ができるというふうに出国規制を掛けるための制度であったというふうに承知しております。
 これが一つは、この時点以降、フィリピンの方が日本に来る数が減った一つの原因なのかなというふうに思われます。当時は従来の制度からこのARBの制度への移行期間ということでありまして、ARBの発給が順調に行われなかったというふうにされておりまして、その結果申請者数が減少したということではなかろうかと推測されるわけでございます。
 また、その当時、我が国の入管局におきましても、一斉に外国の芸能人として入ってきている人たちが実際にはどのような職に就いているのかということで全国的な実態調査を行っておりまして、適正化を図っていた時期でもあります。そういうことも減少に影響しているのかと思っております。
 また、次に、再び増加をし始めているという、平成八年以降から九年にかけて増加を始めているわけでございますけれども、これは平成八年に我が国で興行の在留資格で入国する人の入国の基準について省令を改正いたしまして、それまでは外国において二年間芸能人としての実績を積んだという証明がない限り我が国はエンターテイナーとしての入国を認めていなかったわけでございますが、この平成八年の改正におきまして、外国の政府が発給した芸能人証明書を持っていれば、所持していれば、二年間の実績要件がなくとも日本にエンターテイナーとして入国できるという基準省令の改正をしたことがございます。これがその後、フィリピンの方が我が国に入国する数が増えた一つの原因なのかというふうに考えております。
#168
○井上哲士君 八年間で四倍という数はやっぱり異常だと思うんですね。今言われましたように、当時実態調査が行われたと聞いていますが、その後行われなくなっておるようです、ごく最近まで。
 それで、これについて、つい先日まで現職の東京入管局長だった坂中氏が最近いろんなところで発言もされておりますけれども、今日の事態について、政府が問題を放置したほか、業界や政治家などの圧力で入管行政が弱腰になったことが原因と、こう言われて、興行資格での入国は事実上外国人ホステスの調達手段で、時には劣悪な条件下の労働や売春まで強いるものになり果てている、これを長年政府が放置をしてきたと。そう述べた上で、自ら入国在留課長だった九五年に興行資格のチェックを強化したが、その後、立入調査の際に国会議員から電話があるなどの圧力が強まり、対応が腰砕けになったと。その上で、結果として国際社会から人身売買王国と批判される事態を招いたと、こういう指摘をついこの三月末まで現職の東京の入管局長だった方が言われているということは大変重い発言だと私は思うんですけれども、この間、こういう正に異常な入国の増え方をしたという背景にこういう業界とか政治家の圧力があったということは事実でしょうか。
#169
○政府参考人(三浦正晴君) そういう事実があったとは承知しておりません。
 入管行政におきましていろんな方から御意見、御指摘をいただくことはございますが、それによって行政が影響を受けたということはないと承知しております。
#170
○井上哲士君 まあ、あったとは言えないとは思いますが、しかし、この本当に異常な増え方というのはなかなか説明が付かない問題なんですね。
 そこで、大臣にちょっとお聞きをいたしますけれども、実は今回の改正がいろいろ議論になる中で、私どものところにもいろんな団体からのものが届くようになっておりまして、全国外国人芸能人事業者連絡協議会というところから最近ニュースが郵送されるようになっておりますけれども、この中では、今何もしなければ九六年の一斉摘発を上回る極めて深刻な事態に発展しかねませんという危機感が書かれた上で、様々な取組が報道もされております。この機関誌によりますと、昨年の六月の九日に招へい事業者全国連合会の設立総会というのが自民党の本部大ホールで開かれたと、こういう写真も出て、これが私どものところにも郵送をされてきております。
 私は、やっぱり再び業界や政治家が一体になった圧力でこの人身売買根絶の取組が弱まるようなことは絶対あってはならないと思っているんですが、その点、大臣の御決意を伺いたいと思います。
#171
○国務大臣(南野知惠子君) その自民党であったという件については私は存じ上げておりませんが、依頼もありませんし、私も出席しておりません。
 そういう観点から、政府が人身取引を対策を行っていく上では、そういう党、党というような縦割りではいけないというふうに思っておりますし、関係省庁が緊密に協力しながら、先生御指摘のとおり対策を立てていきたいと。そして、人身取引は罪であると決めた以上、この法律をしっかりと通していきながら守っていきたいというふうに思っております。
#172
○井上哲士君 再びこの腰砕けになるようなことがないように、もちろん我々は、日本に来られる様々な方々について、すべてが不法だとかそういうことを言うつもりはございませんけれども、やはり不法行為が結果としていろんな圧力で容認されるというようなことはあってはならないわけで、改めて求めておきたいと思います。
 その上で、具体的な法案の問題でありますけれども、まず、人身取引という言葉と人身売買という言葉が法案の中では使われているわけですが、それぞれの違いと関係というのはどういうことになるんでしょうか。
#173
○政府参考人(大林宏君) 人身取引議定書三条の(a)では、犯罪化が必要とされる人身取引の定義につきまして、「搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること」、それから、「又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、」し、「蔵匿し、又は収受すること」とされております。その際、「搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。」と、このようにされております。
 今回の改正で新設する人身売買罪は、今の議定書定義の後段の、他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて人を獲得する行為及び引き渡す行為を処罰するものでございまして、議定書の人身取引の一部を成すものと、そういう関係にあるものと考えております。
#174
○井上哲士君 人身取引の中に人身売買という概念が含まれるんだと、こういう説明なんですね。
 そこで、私は、よく分からないのは、この定義、目的の問題なんですね。
 改正法案の二百二十六条の二、「人身売買」では、「営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的」と、こうなっております。結婚が入っているんですね。ところが、これを含む、入管、入管法の方ですけれども、人身取引の定義は、「営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的」と、こうなっているんです。ですから、取引の方が売買を含んでいるのに売買の中にある結婚という目的が全体の概念にはないというのはどうも矛盾をしていると思うんですけれども、なぜこういうことになっているんでしょうか。
#175
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 人身取引議定書によりますと、人身取引の要件の一つといたしまして搾取の目的があるということが必要であると、こうされているところでありますが、搾取には、他人を売春させて搾取すること若しくはその他の形態の性的搾取、強制的な労働、臓器摘出などが当たるというふうにされておるわけでございます。結婚の目的というものが議定書の中には含まれておらないわけでございます。入管法でこのたび新しく人身取引の定義規定を設ける際にも、この議定書に基づきまして、結婚というものを、目的を含めなかったものでございます。
 なお、刑法には、今委員御指摘のとおり、人身買受け罪等におきましては結婚目的も含まれておるわけでございますが、これは私の方から申し上げるのが適当かどうかでございますが、従来から刑法には結婚目的の略取誘拐行為が処罰の対象とされているという、こういうことがあったこととも関連いたしまして、今回の人身取引議定書上の義務とはまた別に、より広い人身の自由の保護という一般の観点から規定されたのではないかというふうに承知しておるものでございます。
#176
○井上哲士君 ですから、より広い概念である取引の中には結婚がなくて狭い概念である売買の中には結婚があるというのは今の説明でもなかなか私は納得いかないんですが、問題は、刑法では罰せられる結婚目的の行為の被害者が入管法では被害者として救済されないというようなことが起こってはならないと思うんですけれども、その点は大丈夫ですか。
#177
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 先ほども御説明いたしましたように、正面から結婚という目的が規定されてはいないわけでございますけれども、具体例考えますと、例えば買手の方が結婚の目的で人身の買受けを行うようなケースを想定いたしますと、必ず売手の側から見た場合に人身の売渡しが行われると、こういう関係になるんだろうと思うわけであります。そうしますと、売手、お金をもらってそういう行為を行うということになりますと、これは営利目的が認められることになりますので、その売買の対象とされた人につきましては営利目的の人身の売渡しの被害者と、こういう立場になると解されるわけでございますし、また結婚の目的で略取誘拐をするような場合を想定いたしましても、例えば性行為を強要する目的があればわいせつ目的、入管法の新たな定義規定の中のわいせつ目的という認定ができるだろうと思われますので、その対象となった人については人身取引の被害者という認定ができるだろうというふうに思っておりまして、結婚目的というものが明文で書いてないということによりましても、結婚目的で人身取引をされた被害者につきましては、他の目的、新たな入管法での定義規定の他の目的による人身取引の被害者として認められるのが通常であろうと思われますので、実際上問題が生ずることはまずないであろうと考えておるものでございます。
#178
○井上哲士君 いわゆる結婚目的の被害者も救済をきちんとされるという答弁でありました。
 次に、被害者保護の問題をお聞きをいたしますが、被害者の方がいろんな脅しなどをされている中で、いつでも相談できるし、またどこに相談すればいいか分かるような広報というのは非常に大事だと思うんですけれども、警察庁来ていただいていますが、その広報の内容や、そして配布の方法などはどういう工夫を考えておられるんでしょうか。
#179
○政府参考人(伊藤哲朗君) 警察では、人身取引の被害者が保護を求めた場合、まず二十四時間でいつでも受け付けておりますのが一一〇番でございまして、そこに電話をすればいつでも対応できるという形になっておりますし、また交番や警察署も二十四時間いつでも開いているという状況でございますので、そこに駆け込んだ場合においても直ちに対応するというふうに努めているところでございます。
 そうしたことを人身取引の被害者の方に知っていただくということで、先ほども少しお話し申し上げましたけれども、一つはリーフレットを現在大量に作って、これをいろんなところに配布していこうということを考えております。配布の仕方としては、まず例えば入管当局の方にもお願いして、入国の際にこういったものをみんなに配るということで、入る際には大体外国人のそういった可能性があるような方々には手に取ってもらうということで、何だろうと思って手にするけれども、それはそのうち役に立ってくるかもしれないということもありますし、あるいは各国の大使館であるとかNGOであるとか関係機関等々にいろんな形でお配りをして、その中で一番可能性の、有効なやり方というものをそれぞれ考えていただきながら、そうした被害者の手に届くような形で工夫をしていただこうというふうに考えているところでございます。
#180
○井上哲士君 一一〇番は都道府県警につながるんだと思うんですが、なかなか県によっては対応できる言語に限りがあるんではないかなと思うんですね。ですから、例えば、かなりの言語の通訳者が常時待機しているような全国一本のホットラインのようなものをつくり、しかも一一〇番に抵抗ある方もいらっしゃいますから独自のホットラインの番号などもして、より利用しやすくすることも考える必要があると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
#181
○政府参考人(伊藤哲朗君) 一一〇番というのは二十四時間全国どこでもという形でございまして、もちろん受け付けるのは都道府県警察でございますからそれぞればらばらではございますけれども、かなりの言語についても対応できるようになっております。
 具体的に申しますと、例えば東京が一番そういった意味では充実しているかと思いますけれども、約六十か国から七十か国語の言語に対応できるということで、他の府県につきましてもそれに準じた形で努力しておりますので、また、もちろん県警や警視庁の方にそういった言語を話せる人がいるというわけではなくても、いわゆる第三者通話というやり方で、いわゆる言語ができる人にお願いをして、その方を、通話をしながら警察官とやり取りをするという仕組みもつくっておりますので、そういった形で対応していきたいと思っております。
#182
○井上哲士君 次に、この被害者保護の政府の行動計画では最も中心になるのは婦人相談所ということになるんだと思うんですが、そこ自身の人的体制の強化の重要性というのは先ほど来指摘をされてきたことなんですが、それ、そこでの一時保護以降の問題をどうするのかということをお聞きをしたいんですが、まず、被害者に在留特別許可を与える場合に在留資格としては何を与えるのか。それから、在留期間としてはどの程度を考えているのか。帰国したい場合には短期ということもあるでしょうけれども、刑事手続に協力する場合とかリハビリの場合とかあろうかと思うんですが、どの程度の在留期間を考えているんでしょうか。
#183
○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 在留特別許可する場合の在留資格でございますが、特定活動という資格がございます。これを付与することになるのであろうと考えております。
 期間につきまして、なかなかその個々の事案によって必要な期間が異なると思いますのでケースによるのであろうというふうに思いますが、例えば被害者の方が、我が国への在留を希望しましてかつ帰国したら生命・身体に危険があるというような状況でございますとか、我が国への在留を希望してかつ被害者の心身の状態とか保護の必要性等が高いとか、そういった事情を考慮しますと我が国への長期の在留を認めるのが相当と考えられるというようなケースにつきましては、特定活動で六か月とか、場合によってはもうちょっと短くていいというのであれば三か月、特定活動の三か月といったような資格を付与することを考えておりますが、もちろん、その期間が終了してなお必要性があるということであれば期間の更新も当然可能でございます。
 また、被害者の方がなるべく早く帰りたいというような御希望を持っているケースもあるわけでございますが、そういった場合には、やはり不法滞在の状態で出国ではなくて、合法な滞在の状態になってから出国していただくということで、出国準備のために在留特別許可を与えるということで一か月程度の特定活動という、帰国準備のために合法的に滞在できるというようなケースを、資格を付与するというようなことがあり得るのではないかと思っております。
#184
○井上哲士君 婦人相談所での一時保護というのは大体二週間が基本で、最大四週間というふうにお聞きをしているんですね。
 ところが、今答弁ありましたように、今回の入管法の改正でそれ以上、六か月とか、場合によってはその更新もあるという、相当長期の在留もあり得るということになるわけです。
 ところが、この政府の行動計画を見ていますと、その一時保護期間以降の対策というのがどうも見えてこないんですね。住居、生活、医療、それぞれの対策が必要だと思うんですが、従来のこの一時保護期間を超えた場合の対策というのは、厚生労働省、どうお考えなんでしょうか。例えば、一時保護の柔軟な適用とか、それから生活保護の適用、医療が掛かれるようにするとか、必要かと思うんですが、この点いかがお考えでしょうか。
#185
○政府参考人(伍藤忠春君) 概念といたしまして、今まで婦人保護所の一時保護というのは二週間程度、長くて一か月というようなことを一応の目安にはしておりましたが、これまでもかなり弾力的に運用してきておる実情がございます。
 今までの人身保護被害者のそれぞれのケースを見ますと、平均、先ほど申し上げましたが、大体七日間程度であるということでありますし、人身取引被害者で婦人相談所で一番長く今まで保護したのは二十七日というケースでございます。
 それから、人身取引被害ということではありませんが、DV被害者ということでこれまでも一時保護という形を適用して、最も長く適用したケースでは半年程度のケースもございますので、これはこれからの実情もよく見ながら、そこの一時保護所の機能を十分活用して弾力的に運用していくということが適当ではないかというふうに私どもは考えております。
#186
○井上哲士君 確かに去年までの平均は七日間程度だったんだと思うんです。最長二十七日と言われましたけれども、それはこれまではいわゆる在特というのがそう出ないという状況があったわけですけれども、明らかに制度が変わるわけですね。三か月、六か月という長期に在留される方が出てくるわけです。そういう人たちも婦人相談所にずっと入っていますと、もう本当たちまちパンクをしてしまうことは必至なわけですね。その際どうするんですかね。婦人相談所の定員を超えてしまって出ざるを得ないと、そういう人たちの住居、生活支援、生活保護は受けられるんでしょうか。いかがでしょうか。
#187
○政府参考人(伍藤忠春君) 先ほども申し上げましたが、全国平均では一時保護所の今入所率というのは五割程度でございますから、たちまちパンクするというようなことにはまずならないと思いますので、予算的にもかなりのものを確保しておりますので、その中で十分対応できると思っておりますが、いずれにせよ、こういう新たな計画がスタートして、何といいますか、意識の面、あるいは摘発といったようなことが進んだ場合にどうなるかということはよく見ながらそこは考えていきたいと思いますが、当面はまず今の状況では十分対応できるものというふうに私どもは考えております。
#188
○井上哲士君 事態が起きてからでは遅いと思うんですね。一時保護を、仮に婦人相談所の一時保護を出なくちゃいけないという人が出た場合には、何らかのその生活や住居を支援する制度があるのかないのか、それどうですか。
#189
○政府参考人(伍藤忠春君) 基本的には今言ったような一時保護で十分対応できるというふうに考えておりますし、この特別のケースがそうかなりの数、何といいますか、在留許可が認められるということも今の時点ではなかなか想定しにくいんですが、これからいろんな事態には対応できると思いますが、在留特別許可ということで、今まで生活保護の法適用が可能かどうかと、こういうお尋ねでありますが、従来からの取扱いで、入管法の別表第二に規定する在留資格を有する場合には、従来からもこの生活保護法に定める保護の要件を満たす場合には生活保護法を準用して保護を行うことが可能であるということにしておりますので、今後も同じようなケースについては同じ取扱いになるものというふうに考えております。
#190
○井上哲士君 いや、しかし、この在留資格は特定活動ですから、別表第一ということになりますから、生活保護、今までの取扱いでは生活保護の適用にならないんじゃないんですか。
#191
○政府参考人(伍藤忠春君) 別表第一の場合には適用にしておりませんし、今後も適用することはないというふうに考えておりますが、そういうケースにつきましては、基本的には一時保護の制度あるいは一時保護委託というような制度を活用して対応していけるものというふうに私どもは考えております。
#192
○井上哲士君 先ほど法務省答弁ありましたように、特定活動にという在留資格ですから、これまでの取扱いですと生活保護の適用にならないわけですね。ですから、一時保護でできるできると言われますけれども、今回のこの法整備によって相当摘発もするだろうと、相当の効果があるというのが午前中の答弁だったわけですね。相当の効果があって被害者が救済をされたけれども、その受皿が実際上大変小さいままだということでいいますと、これは新たな人権侵害ということが起きる可能性が私は高いと思うんです。
 一時保護を短く切らずにできる限り柔軟に対応していただくのは当然でありますけれども、一時保護後、例えば社会復帰のためのいわゆる自立支援をするようなステップハウス的なものを別途国として整備をするであるとか、それから生活保護の適用の在り方についてもこの人身売買被害者については可能にするであるとか、新しい制度自身を考えませんと、結局、朝からも議論ありましたように、今のある制度をどうやって使うかというだけにとどまっているからこういう問題が出てきていると思うんですね。やはり被害者保護については、国や自治体の責任をしっかり明確にして、そして必要な人員、予算というものをしっかり付けて、この被害者保護を確立をしていくということなしにやると、結局それぞれの省庁が従来の制度の枠組みの中でできることだけやるということでいいますと、これは本当の意味での被害者の保護ができないということになると思います。
 最後に大臣、今お聞きになったような問題が残されているわけでありますから、更に被害者の保護をしっかり確立をしていくという上で、私たちは独自の法律の枠組みも必要だと思っております。そのことも含めまして、被害者の保護をしっかり確立をしていく上で、各省庁との連携も含めてやっていくという点で大臣の決意を最後にお聞きしたいと思います。
#193
○国務大臣(南野知惠子君) 人身取引対策を推進していきます上におきましても、関係省庁が緊密に連携をすべきことは先生御指摘のとおりであろうと思っております。
 昨年十二月に政府が策定いたしました人身取引対策行動計画におきましても、総合的、包括的な人身取引対策を講じますために、関係省庁が緊密な連携を図るべきことをうたっており、目下その計画に沿いまして関係省庁が協力しながら諸政策を実施しておるところであります。
 法務省といたしましても、これまでより一層各省庁と協力し、人身取引対策に向かっていきたいというふうに思っております。
#194
○井上哲士君 終わります。
#195
○委員長(渡辺孝男君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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