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2005/04/19 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第13号
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2005/04/19 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第13号

#1
第162回国会 法務委員会 第13号
平成十七年四月十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                荒井 正吾君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   参考人
       明治大学大学院
       法務研究科・法
       学部教授     川端  博君
       人身売買禁止ネ
       ットワーク(J
       NATIP)共
       同代表
       弁護士      吉田 容子君
       特定非営利活動
       法人女性の家サ
       ーラー理事    武藤かおり君
       国際移住機関(
       IOM)東京事
       務所長      中山 暁雄君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に明治大学大学院法務研究科・法学部教授川端博君、人身売買禁止ネットワーク共同代表・弁護士吉田容子君、特定非営利活動法人女性の家サーラー理事武藤かおり君及び国際移住機関東京事務所長中山暁雄君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(渡辺孝男君) 刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、四名の参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、本委員会における今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、川端参考人、吉田参考人、武藤参考人、中山参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、川端参考人からお願いいたします。川端参考人。
#5
○参考人(川端博君) おはようございます。川端でございます。
 刑法等の一部を改正する法律案につきまして、刑事法学者の立場から意見を述べさせていただきます。
 従来、刑事法におきましては、固定的な刑事法令の解釈が重要な課題とされてきましたが、それは、刑事立法に関して慎重な態度が取られ、判例による事案の解決が図られてきたことに起因すると考えられます。
 明治四十年に制定された基本法典である刑法の全面改正がなされずに、必要限度の部分改正がその都度なされてきましたので、言わば安定的な法状況が続いてきたと言えます。近代刑法の根本原理である罪刑法定主義は、法的安定性を強く要求いたしますので、基本法典の大幅改正に抑制的であった、そのことには一定の合理性が認められるのであります。
 しかしながら、各領域においてグローバリゼーションが推進されている今日、時代の要請に対応する刑法典の改正のほかに、刑事関係の法律の新規立法が相次いでなされており、刑事立法の時代と言われるようになっております。このような刑事立法は、時代の要請に迅速に対応する点において極めて高く評価されるべきものであります。立法に関与されておられる国会の諸先生方に敬意を表するゆえんであります。
 今回の法律案を検討する場合、刑事立法の歴史のパースペクティブにおいて評価される必要があります。そこで、刑事立法の歴史を概括的に見てみますと、次の三つの段階があると言えます。
 まず、明治初期、つまり十九世紀後半が第一段階であります。この時期は、近代化、西欧化を目標とする刑事立法の時代として特徴付けることができます。明治政府は、近代国家の世界に仲間入りするために、近代的な刑事法体系を確立する必要に迫られたのであり、近代化イコール西欧化という観点から西欧の刑事法制を模範にした刑事立法が推進されたのであります。
 第二段階は、第二次世界大戦が終わった戦後期、つまり二十世紀中葉であります。この時期は、自由化、民主化としての刑事立法の時代であります。明治憲法下において制定された刑法を新憲法の根底にある自由主義、民主主義の観点からとらえ直すための改正がなされたのであります。しかし、その場合にも、新憲法の理念に従って刑法典を全面的に改正したのではなくて、不当な条文の削除や新規定の増設や法定刑の変更などの応急的措置が施されたにとどまります。
 そして第三段階は、現在、つまり二十一世紀初頭であります。この時期は、グローバリゼーションへの対応としての刑事立法の時代であると言えます。この段階における特徴は、国際化のほかに、被害者保護の観点を重視する点に認められます。従来、刑事法の領域においては、刑罰を科せられる立場にある行為者の人権保護の観点が非常に強かったと、このように言うことができます。それは一定の成果を上げたと評価できますが、その反面、被害者の立場がなおざりにされてきたという側面があります。安全な市民生活を送る権利を有する国民が被害者となった場合には、最大限に尊重されなければなりません。にもかかわらず、被害者に対して必ずしも十分に考慮が払われなかった点で、私たち刑事法学者は大いに反省する必要があると考えられます。刑法の運用や立法論を主張するに当たって、私たち刑事法学者は努力しなければならないと思っております。
 以上述べました観点から今回の刑法等の一部を改正する法律案を見てみますと、以下のように評価することができると思います。
 まず、刑法の国際化という点におきまして、国際組織犯罪防止条約人身取引補足議定書、以下、人身取引議定書と略称させていただくことにいたしますが、その議定書の要求を充足するために人身売買等を犯罪化して刑法典の中に規定することの意義は極めて大きいと言えます。議定書の締結国の義務として国内法を整備することは当然ですが、人身売買罪を刑法典に規定するのは、その罪を基本的な刑法犯として性格付けることを意味します。すなわち、我が国は、この犯罪を重大視していることになるわけであります。
 現行刑法の下では、日本国外への移送を目的とする人身売買だけが刑罰の対象とされてきましたが、立法当時よりも国際化が飛躍的に進展している今日、人身売買をそれだけに限定するのは妥当ではないと考えられます。このように処罰対象を広げることは、人身売買の被害者となる者の保護という観点からも重要な意義を有すると考えられます。
 ところで、現行法に存在する人身売買という概念を用いることによって、人身取引議定書が要求している人身取引が漏れなく捕捉されております。すなわち、買い受けるとは、対価を得て人に対する支配を不法に取得することを意味します。名目のいかんを問わず、要するに、実質において対価を得て人に対する不法な事実的支配を取得すれば買受けに当たるのであります。そして、規定された目的が認められる限り、人身取引議定書に言う人身取引が処罰されます。また、現行法上存在するほかの犯罪類型と連動することによって、人身取引議定書が犯罪化すべきものとしているものも既に取り組まれていることになります。そのことによって国内法の整備が十分になされていることになるわけであります。
 さらに、それを超えて目的要件のない買受けも犯罪化されますが、売渡し行為が常に営利目的を有するため重く処罰されますので、これと必要的共犯、学問上は対向犯と申しますが、そういう関係にある買受け行為を処罰することによって犯罪の抑止を図る必要があります。これによって被害者の保護が図られるわけであります。
 人身取引議定書が要求していない行為を犯罪化することの持つ意味を考える必要があります。人身売買行為の発生を抑止して被害者となる可能性を有する者を事前に保護することは重要であると言えます。これは、我が国独自の立法事実を基礎とする立法として重要な意味を持つわけであります。
 人を買い受ける行為について、未成年者である場合には法定刑を加重し、営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的を持ってなされた場合には、更に法定刑が加重されています。これは、行為態様の悪質さの程度と被害を受けやすい者をより強く保護するものであり、妥当であると思われます。これらの規定は、人身取引議定書が犯罪化すべき人身取引をすべて構成要件化するとともに、それ以外の当罰性を有する行為をも包含しているのであります。
 次に、逮捕監禁罪の法定刑の引上げが提案されております。すなわち、三月以上七年以下の懲役に改定されるべきであるとされています。今回、法定刑を引き上げることに理論的な根拠が存在するのかどうか、この点について検討する必要があります。なぜならば、今回の立法においては、人身取引議定書に基づく国内法を整備することに主眼があるからであります。
 確かに、国内法の整備だけでしたら人身売買罪の新設で足りると言えるはずであります。しかし、前に述べましたように、刑法の全面改正は困難な状況にあります。そこで、部分的ではあっても、是正の必要が生じた場合にはその都度改正するのが立法政策上望ましいと言えることになるのであります。人身売買罪は行動の自由を侵害する犯罪類型であり、逮捕監禁罪も行動の自由を侵害する犯罪類型として同じ性質を有しておりますので、両者は共通の基盤の上で立法論として議論される必然性があります。問題は、改正すべき理由の有無であります。
 この点については、被害者の自由の尊重が根拠とされます。自由の価値は、自由主義・民主主義社会においては最大限に保障される必要があります。にもかかわらず、従前どおりの法定刑が維持されてきたため、約九年間も監禁された新潟女性監禁事件においてその不当性が明らかになったのであります。自由の尊重を明確にするために法定刑の上限を引き上げることには十分な根拠があります。なぜならば、法定刑は犯罪行為に対する法秩序からの評価を示す機能を有しているからであります。つまり、法定刑は罪質評価のバロメーターと言えるのであります。法定刑を引き上げることは、罪質としてその犯罪行為を重大悪質なものとして評価することを意味することになります。
 極めて長期間にわたる監禁行為が現実に犯されていることが明らかになった以上、その行為に対応するだけの立法上の手当てが必要であります。それが法定刑の引上げにほかなりません。身体的行動の自由を尊重することをより明確に宣明する点において、逮捕監禁罪の法定刑の引上げは極めて正当であると思います。
 このような観点から、略取誘拐罪の法定刑の引上げの提案も妥当であると考えます。
 また、略取誘拐罪の構成要件の見直しと法定刑の引上げが提案されています。
 略取誘拐罪も行動の自由を侵害する点において人身売買罪と同じ犯罪類型に属しますので、今回改正することについては、逮捕監禁罪について述べたのと同じことが言えることになります。昨今、略取誘拐事件が多発、多数発生するようになり、連れ去り行為の続発が社会不安を醸成しているのであります。その抑止のために法定刑の引上げが要請されることになります。生命若しくは身体に対する加害の目的による略取誘拐罪の新設は、当罰性を有する行為の処罰を可能にするものとして相当の理由があると言えます。さらに、日本国外移送目的から所在国外移送目的に拡張することによって、国際交流のために日本国外にいる多数の日本国民の保護に資するものとして高く評価できます。
 略取誘拐され又は売買された者の所在国外移送行為や、これらの者を引き渡し、収受し又は輸送する行為を処罰する規定の新設は、被害者の保護と略取誘拐や人身売買の抑止のための有効適切なものと解されます。
 以上でございます。
#6
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、吉田参考人にお願いいたします。吉田参考人。
#7
○参考人(吉田容子君) 私は、被害者保護の観点から今回の改正法案について意見を申し上げます。
 まず、刑法についてですけれども、現行刑法でも加害者処罰はある程度可能であったわけです。ところが、これがなされてこなかったわけですし、今回の法改正が実現したとしても、その効果には若干の不安がございます。といいますのは、捜査の端緒として重要な意味を持つ被害者の供述、これが十分に確保できるのであろうかという点であります。つまり、被害者が証言できない、あるいは証言したがらないという状況を変える必要があると考えます。そのためには、まず、被害者が捜査機関を信頼し、安心して供述できる体制が必要であり、捜査機関の研修と、そして一時保護その他被害者保護の施策が極めて重要であると考えます。
 次に、刑事訴訟法についてですが、ビデオリンク方式の証人尋問の対象犯罪にわいせつ又は結婚目的の人身買受け罪も含めるとされております。これについては、営利目的の人身買受け罪を除外すべきではないと考えます。同様に、人身売渡し罪、これも対象犯罪とすべきであると考えます。
 次に、入管法についてですけれども、人身取引の定義規定を入れることになっております。この規定からは、議定書が定める脆弱な立場に乗ずること、あるいは権力の濫用などが含まれるか否か文言上必ずしも明らかではないと考えます。被害者保護の施策である上陸拒否、退去強制事由からの除外及び上陸特別許可、在留特別許可事由の追加については、これらが、すなわち脆弱な立場に乗ずること、権力の濫用等が含まれることを明示すべきであるというふうに考えます。
 第二に、人身取引被害者を上陸拒否、退去強制の対象から除外するのは売春若しくはその周旋等の業務に従事したことを理由とする場合に限定されており、オーバーステイ、資格外就労等については除外事由を設けないとされております。しかし、人身取引の結果として入管法違反がある場合には同様の除外規定を設けるべきであると考えます。
 さらに、人身取引被害者であることを在留特別許可として追加したことはいいことだと思います。しかし、あくまでも法務大臣の裁量によるという不安定さがある上、許可される場合でもその在留資格は特定活動あるいは短期滞在であって、社会保障関係法の適用から除外されることが予想されます。必要に応じて在留資格、定住を認める、あるいは社会保障関係法の適用を認めるなど、更に検討すべきものと考えます。
 次に、改正法案には含まれておりませんけれども、被害者保護に関し更に必要な事項を述べます。
 まず、国は定住以外の在留資格のない外国人には原則として社会保障関係法の適用ないし準用はしないという大前提を変えておられません。これは、被害者の状況に応じたきめ細かな対応を行うという行動計画冒頭に示された理念と大きく乖離するものと考えます。国はその責任で有効かつ適切な被害者保護施策を実施すべきであると考えます。
 この施策には、日本国内で取るべき施策と出身国で取るべき施策がございますけれども、ここでは日本国内で取るべき施策について申し上げます。詳細はお手元に資料を配付しておりますのでごらんいただきたいと思います。
 ポイントだけ申し上げます。
 まず、国は被害者の保護、支援の中心となるセンターを設置すべきであると考えます。被害者が発見、救出されたときには、まずは安全かつ安心できる環境で緊急保護をし、十分に事情を聞いた上で本人の希望を尊重しつつ以後の保護、支援を実施する必要があります。そのためには、被害の背景、被害者の心身の状況、文化的、社会的背景等も十分理解し、もちろん言語的にも十分な意思疎通ができる専門スタッフが常駐し、かつ各種社会保障サービスを提供できる施設、制度が必要であると考えます。
 政府対策では、入管、警察、婦人相談所等が連携するとされておりますけれども、いずれも専門スタッフが常駐する体制はございませんし、すべての必要な保護をカバーできるわけではございません。また、保護の主要部分を担うこととされている婦人相談所に対しては、人的、財政的援助は一切なく、社会保障サービス提供の権限もありません。医療費の保障もなく、一時保護の後をどうするかについても何ら対策がありません。
 日本弁護士連合会や人身売買禁止ネットワークの調査では、婦人相談所の現場から、法的根拠もなく、予算やスタッフ、通訳の拡充もない状態で被害者を受け入れるのは無理である、あるいは、一時保護だけでなくステップハウス的機能も持った専用の施設が必要であるなどの声が出ております。既存の施設、制度を使うことももちろん必要ではありますけれども、それだけでは対応できないことは明らかであると考えます。
 そこで、当面は全国に一ないし二か所でよいと思いますけれども、被害者保護支援センターというものを設置し、そこに十分な人的、物的、財政的資源を投じた上で被害者保護支援に関する業務を統括することが必要であると考えます。このセンターが中心になり、自らの権限で保護を行うとともに、既存の施設、制度の利用もコーディネートしていく、そこに集中的に各種資源を用いることにより、効果的であるだけでなく効率的でもあると考えます。是非この点を検討していただきたいと考えます。
 次に、民間団体の支援、協力ですけれども、現在の被害者保護が民間団体、特に民間シェルターに大きく依存していることは恐らく政府も否定なさらないと思います。ところが、一時保護の委託費以外に何らの支援も予定していません。これさえ、現に被害者の一時保護を行うときに都道府県が半額負担して初めて実現するものです。そもそも、人件費その他を考えると実費すら到底補てんできない金額になります。民間シェルターがなくなったら政府は一体どうするつもりであろうかと私はかねがね考えております。本来、国がなすべき業務を肩代わりしている面もあるのですから、本気で被害者を保護するということであれば、真剣に民間シェルターへの補助金等の支給を検討していただきたいというふうに思います。
 さらに、被害者保護支援法の制定が必要であると考えます。
 現在の法解釈では、生活保護法も含め、社会保障関係法の多くが外国人への適用ないし準用は定住以上の在留資格がある場合に限定するとされています。しかし、人身取引被害者の多くはこの要件に該当いたしません。この解決のためには法的手当てが絶対に必要であると考えます。被害者保護支援法を制定し、国の責任の明示と専門的センターの設置及びその権限を示すこと、また医療保障を含む被害者保護施策や民間シェルターに対する補助金の支給も明示し、ホットライン実施や法的権利の回復のための施策、職務関係者の研修、教育、啓発等々についても併せて規定すべきものと考えます。
 被害の防止についてですけれども、人身取引の根絶のためには需要の抑制が必要です。それは正に日本の責任であり、日本でしかできないことであろうと考えます。そのためにはまず学校教育、社会教育、メディア等を通じた意識啓発が重要と考えますけれども、さらにトラフィッキングを題材にしたポルノグラフィーに対する法的規制、あるいは風俗営業の法的規制等について抜本的な検討が必要であるというふうに考えます。
 最後に、被害者の心身の回復なくして加害者に対する捜査協力や訴訟における証言はあり得ないものと考えます。
 被害者保護は、もちろんそれ自体重要ですけれども、さらに加害者処罰にとって有効であり、かつ被害防止にも役立つものと考えます。被害者の保護、支援には一定のコストが掛かるわけですけれども、このコストは、新たな被害者を生み出さないこと、組織犯罪集団を起訴し処罰することで日本の安全が守られること、国際社会の要請にこたえること等々を考えれば十分に合理性があると考えます。本改正法案で加害者処罰に関する法整備はほぼ完了するというふうに考えます。しかし、これで事足れりということではなく、被害者保護の法制、さらに被害防止の法制について今後更に継続して御審議いただきたいというふうに思います。
 以上です。
#8
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、武藤参考人にお願いいたします。武藤参考人。
#9
○参考人(武藤かおり君) 私は、刑法等の一部を改正する法律案について、民間シェルターのスタッフという立場から、被害者の一時保護という観点から述べさせていただきます。
 そもそも、人身売買の被害者の一時保護が少ない社会的制約というのを説明いたします。
 まず、人身売買とは何かが理解されていなかった、被害者が主に犯罪を犯した不法滞在者という犯罪扱いを受けていた、邦人保護や人身売買に理解のある少数の大使館が、被害者からのSOSを受け、主に民間シェルターに被害者の保護を依頼していたのみ、相談機関や被害者の受皿が少なく、住居や心理・物質援助に乏しかったという理由が挙げられます。
 被害者の立場から言わせていただきますが、ほとんどの被害者は日本語も日本の地理も日本の社会も知りません。こういった状況で、心理的にも物理的にもブローカーから拘束されていて、言われるままに借金返済に追われて、自分の権利を知らないから彼女たちは逃げることができません。情報提供も不足しておりました。彼女たちは助けを求める先がありません。相談相手もいません。逃亡に失敗してリンチや輪姦される仲間を見たり、転売されることを非常に恐れております。
 借金を返さないと脅しやペナルティーが加わるので、怖くてブローカーに刃向かうことができません。本国の家族に危害が加わると脅迫されておりますので、なすすべがない状態にいます。
 また、家族が貧困から脱出するために収入を得なくてはならない立場にいて、与えられたノルマを達成しなければならないつらい立場にも置かれております。
 また、異国にいて、身分証明書やお金など大切なものをすべて取り上げ、帰りのチケットも含めてですが、在留資格もなく、気弱になっていらっしゃいます。
 ですから、このような外国人女性が身の上を日本の警察や行政機関に相談するということはほとんどなかったということが挙げられます。
 したがって、このような立場の女性の心理、行動パターンを調査研究して、適切な相談機関と適切な一時保護策を講じる必要があると考えます。
 私は民間シェルターの立場ですから、私の見解を述べます。
 被害者を支援したいのはやまやまでしたし、できるだけ実行してきたつもりであります。しかし、社会的に被害者が理解されずに、保護されない状態が今まで続いておりました。逃げ切れておりません。
 民間、サーラー、例えば私の施設はサーラーというのですが、被害者への衣食住の提供と精神的支援と、多言語対応可能なスタッフはおりますが、被害者すべての帰国に必要な航空運賃や医療費等を捻出できなく、帰国支援が大変だったということも挙げられます。
 また、社会的ニーズに合わせまして、今ある、法律のあるDV被害者やほかの婦人保護も仕事として抱えておりまして、様々な女性を保護して運営を安定せなければならず、人身売買被害者用の専門シェルターになり切れておりませんでした。また、連携できる行政機関のなさも挙げられます。
 現状ですが、昨年辺りから再び人身売買の現場から逃げる被害者が増え始めています。例えば平成十六年度ですが、一時保護の総合件数は五十二件でありましたが、うち人身売買被害者は十四ケースに上っております。
 私たちの団体は横浜にありまして、被害者が大使館を頼るという理由から横浜に来る、東京の一つのシェルターにHELPというものがありますが、そちらが満員な場合うちにやってくるというような形が取られておりまして、一時保護の件数と、あとシェルターのスケール、部屋が四つしかないという状況を考えますと、たくさんの女性を一時的に預かることはできないのですが、それでも人身売買被害者は十四ケースに上がっております。
 タイ人女性が多いのですが、タイ人女性は長野県から逃げてくることが今多くなっております。そして、長野県警も被害者保護には理解があります。
 DV被害者や婦人保護された女性の中に、先ほど一時保護件数、昨年度、平成十六年度五十二件と言いましたが、実はこの中に元人身売買被害者、人身売買されてしまって日本に残った女性たちが多く含まれているということが挙げられます。
 例えば、過去三年間の一時保護における人身売買被害者、元被害者について調査をしたのですが、例えばタイ人、平成十四年度は三名の一時保護があるのですが、主訴が人身売買の被害者が一名、昔人身売買され、DV被害者となったり婦人保護の対象になった方が二名。フィリピン人は十二名おりましたが、主訴が人身売買という方はおりませんでして、昔人身売買されたという方が十名というふうに平成十四年度は数字が上がっております。
 昨年度、平成十六年度になりますと、タイ人十八名の一時保護のうち、主訴が人身売買だった方が九名、元人身売買被害者という方が四名。フィリピン人、一時保護が十七名ですが、主訴が人身売買という方は一名で、人身売買された方というのが十四名に上がっています。というほど、過去に人身売買されて日本に残っている方が多く、タイ人の四〇%、フィリピン人の八〇%に当たる方がこのような状態で日本に残っているというふうに考えられます。
 積極的に被害者の一時保護を行っている大使館はタイとコロンビアなんですが、民間団体につながってはいませんが、台湾人女性というのも保護を受けている結果がJNATIPの調査結果から出ています。
 最近ですが、入管が被害者に特定活動の在留特別許可を出すようになって、被害者として強制送還されずに済むようにはなってまいりました。しかし、手続に一か月以上時間が掛かり、なおかつ、入管とシェルターの行き来に随行者が必要であるとか通訳が必要であるとか、民間団体はそのマンパワーの確保が現在とても大変です。また、被害者の方が入管の手続のために残されているという感覚を持ちやすいように思われます。
 この間の一か月以上の手続の間、シェルターでの時間が長過ぎるという理由で被害者にストレスを与えがちです。この間、精神的にも肉体的にも被害者の方はバランスを崩しやすいという状況になっております。
 現在、サーラーは、被害者保護に使えるお金というのは、米国の国務省からの助成金により医療費やシェルター滞在費の一部をカバーしているにすぎません。女性たちの心の支えになるこの待ち時間を解消する特別なプロジェクトが必要だというふうに考えております。そして、こういうことができるシェルターというのは、たくさんの女性が一度に集まって、様々な背景を持つ女性たちがいるようなシェルターや婦人相談所ではなく、人身売買被害者用のシェルターが必要だというふうに私は考えます。
 被害者は、肉体的だけでなく精神的なダメージを受けておりまして、一時保護された後のケアがとても大切です。先ほど申しましたように、大量の一時保護の女性を抱える婦人相談所等で人身売買被害者に対応したことのない職員に対応されて、言葉も通じずに過ごす時間が被害者の精神的ダメージを倍増させてしまうというおそれを私たちは抱いております。
 被害者保護についてですが、人身売買被害者の方は情報が圧倒的に足りません、言葉の壁があります、逃げる方法を知りませんということで、社会の表に出てくることが非常に少ない。私たちは、被害者の出現や警察などへの出頭を待っているだけでなくて、積極的に情報を発信するべきだと思います。また、被害者本人から相談を受けるNGOのホットラインというものも必要で、この経費さえもどこからも捻出できずに困っております。
 被害者には住居や心理、医療、物的援助を受けられる制度が必要です。今国が考えていられるのは、民間施設に一時保護一件ごとに委託というような形を考えられているようなんですが、委託費以外にも運営の負担金又は補助金というものを民間シェルターに出していただければと思います。
 被害者が受ける心の傷に対するケアは、被害者とは何かという基本的な問題に精通しており、被害者の社会的、文化的な背景を理解しつつ、彼女たちが理解する言語での意思疎通が可能な人間が行うことが好ましいと考えています。日常会話、日常的に接するスタッフも、それなりの彼女たちの言語をしゃべるスタッフが必要ですし、また特別なカウンセリングをするスタッフも必要だというふうに考えております。
 先ほど言いましたように、国は婦人相談所に一時保護された被害者を、必要に応じて経験のある民間シェルターへ一時保護を委託するというふうに考えていらっしゃいますが、サーラーに来る前に被害者がいた場所というのを挙げてみますと、茨城県四十二名、千葉県三十一名、長野県二十三名、東京都十七名、神奈川県十六名と多岐にわたっており、全体で、女性の家サーラーだけで約百九十件というふうになっています。このような地域の婦人相談所と私たちは面識があるわけでもありませんし、そこが私たちに委託を、一時保護の委託をしてくるとは到底考えられないということで、一時保護の委託という制度が利用されるかどうか、私たちは大変疑問に思っております。
 そして、被害者の方たちが交番に駆け込むというよりは、彼女たちが信用できるような体制を築きながら、被害者支援センターという専門性を持った機関を一つつくり、一つ、二つつくり、そこからホットラインを通じて被害者の声を受け、そして民間シェルターの方に被害者の保護を依頼するような形が取られれば、人身売買が問題でしこってしまって、後ほどDV被害者や婦人保護で現れるようなケースも少なくなってくるだろうというふうに考えます。
 また、日本に一つ足りないことでありますが、アウトリーチという、被害者を積極的に探して情報を発信していくNGOというのが非常に少ないというふうに考えられます。民間シェルターでも利用できる資金がほとんどありませんで、人身売買の被害者を受け入れるシェルターはあらゆる資源を投入して今まで自転車操業でやってまいりましたが、このような国が、国としてこの問題に立ち向かうと決めた以上、アウトリーチ、民間シェルターへの援助、そして被害者の保護の充実というのを図りながら、防止、保護、処罰を行ってほしいというふうに思います。
 以上です。
#10
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、中山参考人にお願いいたします。中山参考人。
#11
○参考人(中山暁雄君) まず、私たちの機関であります国際移住機関、一般に英語でIOMというふうに呼んでおりますが、の基本的な考え方というところをまず述べたいと思います。
 私たちは、人道的で秩序のある移住、マイグレーション、人の移動というのは移民と社会の双方に利益をもたらすという、これは基本的な考え方です。この考え方に基づきまして、秩序のある人の移動というものは保護し促進すると。その一方で、不正規の移住というものは防止する。特に、移民の権利というものを保護するという立場から活動を続けています。女性の性的搾取といった非常に深刻な人権侵害をもたらす人身取引に対する対策というのは、中でも非常に緊急性の高い分野であります。
 私自身の経験になりますけれども、私は一九九六年にIOMのマニラ事務所で勤務を始めましたが、その前年に北京の女性会議というのが開かれまして、私たちも人身取引問題に取り組むということを宣言したその翌年に仕事を始めました。
 その取組の一環としまして、日本で人身取引の被害に遭ったフィリピン人女性の実態調査というものを一九九六年に行いました。その中で、興行資格という在留資格で日本に就労しているフィリピン女性の中に売春の強要といった人権侵害を受けているケースが非常に相当数含まれているという可能性を当時指摘しました。当時の日本政府の反応というのはやはり、まあ当時の入管行政という中では、不法入国、不法滞在者という一般的な扱いであって、その中に人権侵害を受けた被害者が含まれているという認識は非常に希薄であったというふうに思います。
 それから十年近くがたちまして、昨年、人身取引問題に関する関係省庁連絡会議というものが発足しまして、年末には行動計画というものが発表になりました。その中で、人身取引の被害者を被害者として保護するということが明確に宣言された。また、興行資格というものの在り方も非常に抜本的にというか、実質的に大幅に制限されるという対策が打ち出されました。このことは非常に歓迎すべきことであるというふうに考えます。
 ただ、これは、私、日本に限らず、私たち国際機関などがよくいろんな国際会議をやりまして行動計画というのを出すんですけれども、やはりこの行動計画というのは当然実施されなければいけないということでして、例えば北京女性会議の場合でもプラットホーム・フォー・アクション、行動綱領というものが採択されまして、その後、その実施状況がどうであるかということを定期的に検証するということが非常に重要な国際的な取組になっております。今、武藤さんの方からもいろいろな意見が出されておりますが、この行動計画の実施状況というものを定期的に検証し、その必要な改善策というものを今後講じていくということが重要であるということは言うまでもないことであるというふうに考えます。
 私たちは、この行動計画の一環の中で、特に人身取引の被害者に対する自主的な帰国支援というものを担当することになっております。この帰国支援を実施する上で今回の法改正、特に入管法の改正は非常に重要な意義を持っておりますので、そのポイントを整理してみます。
 人身取引の被害者と言われる人たちは、ほとんどの場合、短期滞在で日本に入り、その後、オーバーステイになっている方々が大多数を占めています。この方々、従来は不法残留者ということで退去強制の対象になっていたんですが、今回の入管法改正の非常に重要なポイントというのは、人身取引の被害者に対して在留特別許可を認めるというものです。
 この在留特別許可というのは元々、先ほども話ありましたが、法務大臣の裁量によるものですので、法改正がなくても必要であれば出すことができるというものでもあります。昨年来、実際、人身取引の被害者に対しては在留特別許可が運用的に認められるということになっております。
 ですけれども、今回その法改正を行ってその基準を明確にするというのは非常に重要なことであるというふうに考えます。入管法の中に人身取引の定義が盛り込まれたということも、その基準の明確化という意味で非常に重要であるというふうに考えます。これは日本も署名している人身取引議定書の定義に従っておりますので、そういう国際的な規範に日本も準ずると、のっとるということを明確にするということで非常に意義のあることだというふうに考えます。
 私たちが実施する自主的な帰国支援というのは、被害者の方が母国への帰国を希望していると、ですから自主的というふうに言うわけですが、ことが条件となっております。そのことを判断するためには、やはり一定期間、日本での合法的な在留というものが認められて、その中で初めて本人の意思を確認するということができるということになります。
 この被害者の方に与えられる在留期間ですが、三か月又は六か月というふうに、日本の場合には三か月又は六か月であるというふうに聞いておりますが、これは主要先進国が同様のケースで認めている在留期間とほぼ同じレベルになっております。具体的には、ドイツの場合には四週間、ベルギーは四十五日間、オランダが三か月間の一時滞在というものを認めております。その後の在留期間の延長というものについては、これらの国々においては、捜査、訴追への協力というものをした人たちに対して在留期間を延長するという方式が取られております。日本の場合にはそういう関係にはなっておりません。
 ですから、その捜査、訴追に協力して在留を認めるという方式にはなっていないわけなんですが、ただ、欧米でよく見られるこの方式についてはいろいろな意見というものがありまして、批判的な意見というものもあります。また逆に、イタリアのように、そういったこと、条件付けをしないで必要に応じて滞在を認めているという国もあります。ですから、国際的な取組というのも必ずしも一様ではないということが、そのことにこの問題の難しさというものも表われているというふうに思います。
 総合的な人身取引対策という点に戻りますと、この問題への対応には、出身国、日本の場合にはアジア地域から来ている方々が多いわけですが、出身国における取組、出身国との提携というのが非常に重要なポイントになります。
 皆さんのお手元の方にIOMの人身取引の対策をまとめたパンフレットというのをお配りしておりますので、これは後で目を通していただきたいと思いますが、一言で申しますと、その出身国における予防、そして帰国者に対する支援体制と、日本のような受入れ国における被害者の保護、そして加害者の訴追といった法執行、この二つの柱がありまして、それに基づいて被害者の方の帰国支援、社会復帰支援というものを実施することができるという関係になっております。
 日本も、行動計画の中でODAの活用であるとか地域協力の推進ということをうたっております。特に、アジア地域を始めとする出身国における人身取引防止ネットワークの構築というのは極めて重要な取組でありまして、日本の積極的な貢献が強く求められている分野であるというふうに思います。
 IOMは、このメコン地域など主要な出身地域で十年来この問題に取り組んできておりますが、例えばタイ政府の場合には人身取引の問題にかかわっている政府機関が共同で作成した共通ガイドラインというようなもの、こちらにそのコピーがありますけれども、というようなものを作成しております。
 このガイドラインの中で、人身取引の被害者を保護した場合にどう対応するかということが定められています。例えば、社会開発及び人間の安全保障省という、日本でいう厚生労働省のような省庁があるんですが、そこが被害者保護のために運営している保護施設というものがありまして、十八歳未満の被害者の方は保護された時点から二十四時間以内にその保護施設に移されるということになっております。
 タイの場合には、タイの方が日本など国外に連れてこられるというケースもあるんですが、タイに周辺国から、人身取引の被害者がカンボジアとかミャンマーとかそういった地域から来るという、ですから受入れ国であると同時に送り出し国でもあるという非常に、そういう意味で非常に複雑な問題を抱えている国であるんですが、その両方のケースですね。タイの海外から帰国してきた被害者の方、それからタイで保護された外国人の被害者の、その双方に対してそういう保護を行うということを定めております。こういったガイドラインを作成するというような、つまり政府間の連携ということですけれども、そのガイドラインの中にNGOも、タイのNGOのネットワークというものも入っております。
 ですから、私たち、こういった出身国における取組というのを十年来サポートしてきまして、それなりの成果は上がってきていると。今後、こういったネットワークは既にでき上がりつつありますので、更に強化していくということが大変重要であると思います。
 ちょっと話をまた帰国支援の方に戻しますが、帰国支援というものは一つの前提があります。それは何かといいますと、多くの被害者にとって基本的には帰国するということが望ましい選択肢であるということが一つの前提になっております。これは、例えば日本の場合を考えますと、そこで非常に深刻な人権侵害を受けたと、あるいは言葉の壁であるとか日本と出身地域における社会経済的な環境の違いと、こういった様々な事情を考えたときに、やはり特別な事情ある人たちを除いては、自分の出身国に帰って、そこで社会復帰を果たすということが望ましい選択肢なんではないかということが一つの前提となっております。
 ただし、先ほども申しましたように、そういう被害者の方が本当に帰国したいという意思を持っていると、場合によっては帰国することが安全であるということを確認する作業も必要になりますので、そういったことを行うためには一定期間日本で合法的な在留が認められると。そして、そういう特別な事情がある人に対しては更に日本で一定期間後も何らかの形で保護されるというような救済も必要になってくるんだというふうに考えます。ですから、そういった法的なメカニズムとして今回入管法の改正が行われるということを私たちは評価したいというふうに考えます。
 その上で、帰国した後の被害者の方に対する支援体制、そして予防ネットワークというものを強化していく、そういった長期的な取組というのが求められていると。日本の行動計画というものもそのような長期的な、そして国際的な取組が必要であるということは視野に入れて策定されているというふうに考えます。そして、このような総合的な国際的な対策の一環として今回の法改正を位置付けるということが重要であり、また、そういう方向に今後進んでいくように行政や立法府の皆様が一層取組を強化されていくということが重要であるというふうに考えます。国際機関としても引き続き協力を続けていきたいというふうに考えております。
 以上です。
#12
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#13
○荒井正吾君 自由民主党の荒井と申します。
 大変有意義でかつ豊富な量の情報をいただきまして感謝いたします。また、感銘いたしました。
 時間が限られておりますので、たくさんお聞きしたいんですけれども、絞ってお聞きしたいと思います。
 川端先生にお聞きしたいんですけれども、刑法の内容につきまして、人身売買で買ったというような言葉で表現されて、その買うというのが構成要件の法律言葉になっているんですが、今先生は、対価を得て人に対する不法な事実的支配というような言い方をされました。要件が、法上の表現の仕方があいまいじゃないかという気がしているんですが、今、先生が先ほど述べられたような言い方の構成要件を明示という方が法の明記という罪刑の明示性ということではいいような気もするんですが、私、専門家じゃないんで、専門的な立場の御意見を改めて伺いたいと思うんですが、刑法の表記の仕方でございますが。
#14
○参考人(川端博君) お答えいたします。
 確かに、先生がおっしゃるように、構成要件というのはかなり明確な言葉で表現される必要がございます。これは、罪刑法定主義という刑法の基本原理から導かれる結論でもあります。構成要件の明確性という言葉で表現されます。その点は正におっしゃるとおりでございます。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、人身売買という言葉が既に刑法典にございます。そして、これに関して、判例、学説も固まっているわけであります。その言葉を用いてここで人身売買という新たな規定を設けることになるわけでありますが、その場合に、この買受け行為というものと売渡し行為と、これが売買行為を意味するわけでありますが、これは民事法の売買とは違いまして、刑事法特有の概念として定着しているものでございます。当然これは、売買という言葉自体はあくまでも比喩的な表現でございまして、これを、人間がその売買の対象になるということ自体おかしいんですが、これを従来の言葉の範囲内で理解すると。それから、国民にも売買という言葉の持つ内容というのはかなり浸透していると、こういうことがございます。そういった観点から、この構成要件で示す場合に、有償で不法な支配を移転するとか対価を得て移転するとか、そういう表現をいたしますとかえって分かりにくくなるという面もございます。
 したがいまして、この刑法典の中で定着した売渡し行為それから買受け行為と、そういう表現で我々の目からいたしますと十分に明確に表現されていると、こういうように考えることができると、このように思っております。
 以上でございます。
#15
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 まだ聞きたいことがありますが、ちょっと時間がありません。
 吉田先生にお聞きいたします。
 吉田先生、吉田弁護士は、かねてから受入大国日本でしょうか、何かいろんな本を書かれたり、この分野で大変先進的な活動をされていて、日ごろから敬意を払っておりましたが、今日お目に掛かれて、また立派な御意見を賜りまして、改めて感謝、感銘申し上げますが。
 たくさんお聞きしたいんですが、一つは、このような被害者の保護を非常に熱心に活動されて、被害者の保護を通じて犯罪の防止ということになる。あるいは日本の、日本の中の人身取引の産業構造といいますかマーケット構造と、言葉は不適切かもしれませんが、どうして日本を舞台に、日本は大国と認定されるんだろうかということを立法当局あるいは警察当局に聞いても、犯罪の実態というのが分からないような印象を受けております。
 しかし、立法は必要だと。立法を通じて犯罪の実態が分かるという刑事局長のお言葉もありましたので、一つの前進かなと思っておりますが、犯罪の実態、被害者の救済を通じて犯罪の実態をどのように見ておられるのかという、ちょっと漠とした質問でございますけれども。
 連れてこられる方は労働力としての値打ちがある面あって売買の対象になるように思うんですけれども、そういう受入れのマーケットがあると。それを、人の値打ちを売り買いされるというようなことがその犯罪の現場にあると思うんですけれども、それはどういうことで日本がそういう原因になっているのかということを、あるいは外国人労働対策というのが正確に定義して対策を打ってこなかった国のような気がするわけでございますが、熟練労働と単純労働というふうに分けて、来られる取引の対象になるのは単純労働者なのだろうか熟練労働者なんだろうかと、なんて、こう思ったりもするんですけれども、犯罪のマーケットの実態を今までの御経験を通じてもう少し詳しく、限られた時間になりますが、お聞かせ願えたら幸いでございます。
#16
○参考人(吉田容子君) 大変難しい御質問なんです。実態というときに、統計上は従来の法違反という形でしか表れておりませんのでよく分からないというのが率直なところになります。ですから、私たちはむしろケーススタディー的に被害者の方からの聞き取り等で把握しております。
 なぜ日本が受入れ大国なのかということについてですが、やはり一言で言えば、先生おっしゃったように、産業構造というか需要があるからということになると思います。人身取引といった場合に、一番目立つのは確かに性的搾取を目的とする女性の受入れということになると思うんですが、もちろんそれ以外に、いわゆる労働力としての、まあ特に男性の方の取引ということもあり得ると思います。
 これはいろんな御意見あるかもしれませんけど、日本の外国人受入れ政策のときに、基本的には、何というんですか、短期的な視野でしか見てこなかったような気がしております。入管法でどのように規定するかという問題とは別に、グローバリゼーションの中でやはりどうしても人の流れというのは止まらないだろうというふうに思っています。そのときにいかに適正に受入れをするのか、その中でどうやって人権侵害が起きないようにするのかということを本来的には考えなければいけないと。
 したがって、人身取引の問題に関しましても、今回の入管法の改正では入っておりませんけれども、長期的に見て適法で搾取を受けない形の在留資格、もう労働ができる在留資格というものをどういうふうに考えていくのかということは大きな課題になっているかというふうに思います。
 済みません、その程度でよろしいでしょうか。
#17
○荒井正吾君 もう少し議論したいんですが、今我が国は単純労働を受け入れないということをまだ政策にしておりますが、その労働をある程度適法に、単純労働も含めて、その需要のあるところ、求人のあるところ、場所に受け入れて、それも一つのシェルターの、結果的にシェルターの役目を果たす面があると思うんですけれども、労働政策についての単純労働を受け入れることの是非ということは、ちょっと単純な質問になるかもしれませんが、どのようにお考えでございましょう。
#18
○参考人(吉田容子君) それも難しい御質問だと思うんですが、単純労働の受入れといった場合に、日本人の労働力との調整がどうしても必要になってきます。
 ただ、率直に言うと、今の入管法の規定見てみますと、単純労働という言い方自体が、実は単純労働と言いつつ、ある程度熟練を要するような労働というものも当然入って、ごめんなさい、現にその資格外ということで入ってきております。ですから、もう少し、単純に単純労働を受け入れないということではなしに、労働ごとに是々非々で、あるいは今の日本の労働力の構成の問題とか、そういうことも検討した上である程度もう少し広げた方がいいのではないかというふうに思っておりますけれども、この辺りはなかなか難しいと思っています。
#19
○荒井正吾君 ちょっと漠然とした質問で大変失礼いたしました。
 武藤さんにお聞きしたいと思います。
 おっしゃったことは大変もう適切だと思います。特に、被害者の支援に対する国の体制というのが、金額的な量が少ない。厚生労働省がやっておるということですが、厚生労働省は年金とかほかの予算は膨大なわけですが、日本人の中の所得移転は膨大なんですけども、このような部分に使う予算というのは大変少ないのが実態だということ、そのとおりだと思いますが。
 もう一つは、ここは法務委員会で、刑法の論議でございますが、被害者というのは厚生労働省あるいはほかの他省庁にかかわるから主務官庁がないというのを我々も感じておりますが、それを指摘されております。
 その中で、定期的連絡会議を持つことの意義ということを言っておられます。その被害者救済に現場で当たられておりまして、その役所の対応からこのような御意見が出ていると思うんですけれども、これからどのように、法務省は犯罪人にならないと自分の所管じゃないなんて、未犯罪者あるいは犯罪予備軍あるいは被害者といったものが法務省の所管じゃないという言い方もされたりしたことがあるんですけれども、人権擁護法なんかも法務省が所管というのに、いや、取締りのところは、人権の擁護できるのかというような、ちょっとそういう方面の信頼が少々世論的に低いという実態なんですが。厚生労働省はそのような大きな人権なり被害者の保護をやっておられる組織でなかなかできない、で、民間の方に頼りにされるという、この役所の方に対してもう少し具体的に、地方の組織、県とか市町村とかの当てにならなさ加減をもう少し具体的におっしゃっていただけたらと。
 あるいは、これ政治ですから、行政の体制をどう構築するかというのは我々の課題でもございますので、そのヒントになるような現場の情報をもう少し言っていただけないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#20
○参考人(武藤かおり君) 今、県とかという地方自治体のお話も出ましたが、地方自治体がこれ、この人身売買に対して何かしようという気は毛頭、更々ないわけでして、なぜ、大体、福祉の現場の方、男女共同参画系の方も、人身売買被害者というのはまず取り扱ったことがない、お会いしたことがない、被害も状況も訴えられたことがほとんどないということで、見たことのない人にどうやって対応していいかということですね。まず、地方自治体は全くこの問題、引いております。これは国の責務としてやっていただきたいというふうに私は思っております。
 そして、御指摘のとおり、何かを請求する先がない、これをどこに持っていったらいいのだろうと、行動計画を読んでも主体が明らかになっていない、これ一体どこの省に言ったらいいのだろうかというふうに私は頭を悩ませています。
 例えば、一つ、ホットライン一つにつきましても、厚生労働省にお話をしたことがありますが、どこから捻出したらいいのか分からないと、あとは民間団体に拠出する法的根拠がないとおっしゃられたことがあり、それでも必要なので、ホットライン経費は、私が思うに、厚生労働省ではないかと思われますのでというような話をしましたが、考えさせてくれと言った後お返事がございませんで、人事異動されてしまいました。これからどうしたらいいのかと思います。
 また、警察庁が音頭を取って作っている被害者のパンフレットというものがそろそろ印刷されるわけでありますが、ホットラインのところに私たちの電話番号を入れるということで、入れるのは構わないのですが、人件費とか通信費をカバーしてほしいという話をさんざん申したわけですが、他省にも聞いてみますとお答えになり、お聞きになって、やっぱり無理でありましたというお返事が返ってきました。そして今、内閣府の人権、男女辺りに予算が付かないかどうかというふうに聞いてみますというところで止まっております。そして、そのパンフレットは今年度にはまかれる予定でありますというふうに、どこに何を言ったらいいのか、私たちも非常に問題があるというふうに考えています。
 多分、人身取引、人身売買の問題は一つの省では、横断的な省が必要で、タイ政府が安全保障省などつくりましたけども、本来ならばそういうものがあって、そういうところで対応してくれたら私たちは非常にやりやすいと思っております。
#21
○荒井正吾君 時間で、貴重な意見、お礼だけを申し上げ、貴重な意見、ありがとうございました。
 厚労省のだれですかと聞きたいんですが、時間がありませんので後ほど。厚労省もその半分出して各県が半分負担する、文科省の義務教育費のように、全部自分が負担するというような省であってほしいというふうに改めて思いました。大変、御説明感謝いたします。中山さんには質問が回りませんで申し訳ございません。
 ありがとうございました。
#22
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
 参考人の皆さんには大変忙しい中、ありがとうございます。限られた時間でございますので、かいつまんで御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、川端参考人にお聞きしたいんですが、今回の刑法の改正によって人身取引が犯罪化として規定されて、大きな成果であるということは言われましたし、同時にそのことが保護にもつながっていくと、被害者の保護にもつながるという効果、それは我々も分かりますが、問題はそれがしっかりと摘発なりあるいは処罰につながっていくかということなんですね。しっかりと運用されるかということであります。
 そこで、幾つか聞きたいところがあるんですが、特に私も幾つか質問した中で、今回の刑法で人身取引が犯罪として提起される、処罰されると。それを目的、手段、そして行為によってきちっと提起されている。その搾取の目的のところで、例えばこの刑法の中にも買受け罪なり売渡し罪というようなものがありますが、臓器摘出等というのがあるんですね。それは今の刑法には入らないから、生命及び身体のという新しい、広い、広義で定義していこうということなんですが、例えば、その買受け罪の場合、臓器摘出、過去にもありますが、今もあるかもしれませんが、日本の患者さんが、例えば透析患者さんがフィリピンへ行って、フィリピンでだまされて臓器を摘出された、それを移植すると。当然フィリピンに行って、日本人が行って何がしかの対価を出してそれを買うんですね、手術を受けるんです。これは人身取引罪に当たるのかどうかなんですね。買受け罪にはなるのかどうかということになります。日本のこの刑法改正で当たるのかどうか。
 あるいは、非常に貧しい家庭の子供を買って、何も搾取の目的ではなくて自分の子供として養子として育てる。その場合、子供を買うという場合は、これも人身取引になるのかどうか。今回の刑法改正で当たるのかどうかのちょっと意見をお聞きしたいんですが。
#23
○参考人(川端博君) お答えいたします。
 まず、臓器に関してでございます。
 刑法典に取り入れるに当たって、臓器という用語を避けまして、生命若しくは身体に対する加害目的ということで表現がなされております。これは、臓器という用語を刑法典に取り込むこと自体に法体制の観点から実は問題がございます。と申しますのは、これは臓器移植法とかそういった法規の中で既に臓器という用語を用いられておりますが、これ自体が特定の定義規定がなくて、省令に任されている部分がございます。そういったものを基本法典である刑法典に取り込むということにはやはり大きな問題が生ずるということがございますので、それを議定書では触れられておりますが、その議定書で含まれている内容を包含し得る刑法典における日本の法律用語としてそれで賄えれば十分であろうと、このように考えられるわけであります。そういったことで、この生命又は身体に対する加害目的の中にそれを包括できると、こういう面がございます。
 それと同時に、先ほども申し上げましたが、当罰性を有する行為をもここで包含しておくのが立法政策上非常に妥当であると、こういう観点がございますので、例えば暴力団等のリンチ目的で略取誘拐したりするような場面も含むと、こういうようなことでこういう用語が用いられていると、このように思います。
 それで、外国で有償で臓器移植のためにそれを買い受けるという場合には、これはこの新しい刑法でも処罰の対象となり得ると、このように思います。これは、既に臓器移植法でも禁止されている問題ございまして、これを更に刑法典に明確にその加害目的でもって対価を受けて取得するという部分が出てまいりますから、これは当然処罰の対象になり得ると、このように思います。
 それから、養子縁組で金銭の授受がなされる場合ということでございます。これも、要するに実態が対価を受けて不法な支配を受けておるかどうかという点にございます。真摯な自由な観点、教育上の観点から養子縁組を行うというのは、これはある意味で非常にすばらしい行為でございまして、それ自体に伴う必要経費的なものは、これはここで言う売買の内容を成さないと、このように考えられます。
 ただ、その場合であっても、表向きはそういう善意で固めておりますが、内実はやはり経済的に苦しいとか、そういったことで一種の親孝行的な観点から同意を示したと、こういうような事態が出て養子縁組となりますと、実態が正にそういった経済的な搾取という点にかかわりますから、こういったのはここで言う売買に当たり得ると、このように考えます。
#24
○松岡徹君 ありがとうございます。
 要するに、実態をどうつかむかというのが非常に大事な点なんですね。今回の法改正で幾つかありましたけれども、予防、処罰、そして保護、救済というのがありますが、とりわけ被害者の保護、救済、支援というのが非常に大事な観点だと思うんですね。今回の法改正で具体的にその辺がなかなかはっきりしないという気が一つはするんです。
 吉田参考人に、武藤参考人にもお聞きしたいんですが、私自身もその処罰が人身取引を予防し、なくしていく効果を上げていくということは川端参考人がおっしゃったとおりだと思うんですが、ただ問題は、そこにどう持っていくかということ。実態が非常につかみにくい。そういう意味では、吉田参考人がおっしゃっていましたように、まず保護、被害者の保護あるいは救済というところから実態が見えてくるというふうに思うんですね。だからこそ、より丁寧な被害者の保護、救済、支援という取組に重点を置かなくてはならないということを言われておりました。
 その中で、吉田参考人もあるいは武藤参考人もおっしゃっていましたけれども、この専門センターといいますか専門の支援センターといいますか、救済保護センターの必要性が問われましたけれども、特にその必要性をもう一度、大事なポイントとして私の問題意識と一致するのかどうかということなんですが、その辺をちょっともう一度お聞かせ願いたいのと、とりわけ、まず実態としては、被害者の方が自分が被害者だということをどこに訴えていったらいいのか、あるいはだれが信用、信頼できるのかということがあります。そういう意味では民間の役割というのは極めて重要な位置を占めていると思うんですね。その民間NGOとの連携の在り方の課題についてそれぞれお聞かせ願いたいと思うんです。
 とりわけ、武藤参考人もそうですが、今年の予算で一千万の支援予算が付いておるんですけれども、先ほど言いましたように、地方自治体との協力とかありますが、その辺の予算面も含めてどのような考え方を持っておられるのか。
 それぞれ、吉田参考人、武藤参考人からお聞かせいただきたいと思います。
#25
○参考人(吉田容子君) では、また私の方からお答えいたします。
 支援センターの必要性についてということですけれども、繰り返しになりますけれども、現在の被害者保護というのは婦人相談所が一時保護をすることもありますけれども、数としては少ない。保護した場合も速やかに、今二か所しかございませんけれども、民間シェルターの方に移されている。なぜかといえば、婦人相談所では十分ケアできないということが相談所自体お分かりになっていらっしゃるということだと思います。
 やはり、言葉の問題が非常に大きいということが一つ。それから、婦人相談所といいますのは、端的に言えば衣食住、食べて寝ることはできます、一時保護の間。しかしながら、それ以外のプログラムですね、医療も含めたプログラムというものは独自にはできないわけです。予算もございません。スタッフもございません。そこでただただじっと被害者の方が毎日食べて寝ているという状況、それでケアになるとは到底思えませんし、それから、例えば帰国等のための手続についても十分に対処できないというふうに思っております。
 ですから、まずは本当に安心で安全な環境、その中には、要するに被害者が自分たちがここは安心してできるんだと、ケアがされるんだということが十分理解していただかなければいけない。その場合には、もちろん被害の背景とか被害者の心身の状況、文化的、社会的背景なども十分理解した方たちが当たらなければいけないわけです。ところが、今の婦人相談所では、もちろん相談員の方たちが努力されているということは私もDV等の関係ではもう存じ上げておりますけれども、DVの対応で一杯だということと、それから人身取引の被害の実態であるとか言語的な対応というのは到底無理でございます。先ほども言ったように、特別のプログラムもないという状態。
 したがって、やはり専門的な施設が必要であろうと。その場合に、婦人相談所は全国都道府県にございます、四十数か所あるかと思いますけれども、そこにすべて専門スタッフを配置するというのもこれまた難しい問題になります。ですから、むしろ一か所ないし二か所程度専門のセンターをつくって、そこに集中的に人的あるいは財政的な資源を投入して、被害者の方たちの十分なケアを行うということが必要であろうというふうに思っております。
 以上でございます。
#26
○参考人(武藤かおり君) 被害者の方は今、先ほど私が申しましたように、大使館にSOSを出して、大使館の職員が手が空いたときに迎えに行ってもらう、若しくは交通費がない方もいらっしゃいますし、十分な電話代がない方もいらっしゃって、どこかでお金を借りて電車に乗ってやってくるとかタクシーに乗ってやってくるとか、そういうような状況なんですね。それが、婦人相談所に、本人が例えば地理が分からずに婦人相談所に行こうとした場合、タクシーに乗っていくしかないんですが、そういうようなタクシーに乗ってキイッと婦人相談所の前に横付けにしてタクシー代がありませんと言ったら婦人相談所がそれが払えるかといったらそうではないとか、入国管理局に、今回私たちのシェルターで四名ほど保護したタイ人の女性は、在留特別許可を出してもらうに当たって四回、東京入管、横浜入管に行っております。その同行というものも、地方にあってはそれが難しい。また、大使館もそれなりに調査をいたしますから、大使館職員と余りにも距離が離れていると何も帰国手続が進んでいかないということがあります。そのようなことをすべてできるような予算を持って、人員を持ってやっている婦人相談所かといえば、そういうことではないというふうに私は考えます。
 ですから、不安で不安でしようがない被害者をただ黙って寝かせて、時間になったら御飯を与えて、時間になったらおふろに入らせて、まあ基本的なことは言うかもしれないけどそれ以上の会話が続かないというような状態で、通訳を探せば一日二日、ひどくなれば五日以上通訳が見付からないというような状態では、被害者の方、自分が救われているのか監禁されているのか、何だか分からないような状態になってしまうので、婦人相談所ではなく、センターが、どこからでも被害者が駆け付けられるような仕組みが必要で、駆け付けたらそこできちんとヒアリングを行って、それをシェルターにつなげるというようなことをしていただけるようなセンターが必要だというふうに思っています。
 あと、私たちの去年の実績なんですが、DV防止法の一時保護、これは参考になるかどうか分かりませんが、二十七人の大人を保護して、平均十四日間一時保護をして、一泊六千五百円の一時保護を行って得た私たちの委託費は合計で一年間で二百四十五万円にすぎませんでした。ということは、二十七人、十四日保護して、そのような支援をしてやっと二百四十五万円、そして私たちの全体の支出は二千万ということで、かなりこれだけでやれと言われても無理というぐらい一時保護委託費というのは、ケースが入って幾らということでありますから、なかなかそれでやってくれと言われても困ってしまうというのが現実です。
#27
○松岡徹君 もう最後でございます、もう時間なくなりましたので。
 最後に中山参考人に聞きたかったんですが、ちょっともう聞けないんで、国際協調というところがありまして、また是非ともおいおい折を見てお知らせいただきたいんですが、それぞれの国間の協調というのは大事だと思います。条約とか覚書とかいう方法もあるでしょう。こういう法律が改正されたことによってどういうふうな内容が付されていくべきなのかというのは最後に聞きたかったんですけれども、ちょっと時間ありませんので聞けません。また折々教えていただきたいということをお願いして、ありがとうございました、私の質問を終わります。
#28
○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。
 今日は四人の参考人の方、人身取引という、まあ日本としてこういう問題に取り組み始めるという、私は法改正そのものは大変いいことだと思っておりますし、それに対して貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 私も限られた時間の中で御質問をしたいと思います。
 中山参考人、しゃべりたくてもしゃべれない状況のようでございますから、今御質問があった件も踏まえて、私どもがちょっと感じている点は、この委員会でも質疑したんですけれども、日本は人身取引大国だと世界で見られていると。ところが、その実態というものが日本国内どうなっているかというのはなかなかこれ分かりにくいということもあるというのが議論をされました。是非、世界を見てこられた中山参考人ですから、先ほど質問あった件も含めて、どうその辺お感じになっているかをまずお聞きしたいと思います。
#29
○参考人(中山暁雄君) お答えします。
 この人身取引の問題というのは、国際的に見ても非常に実態の解明は難しいということは、一つの共通認識になっていると思います。これは元々、組織犯罪の関与でありますとか、そもそもアンダーグラウンドで行われていることですから実態は難しいと。その場合に、やはり通常出てくる数字というのは公的機関、例えば警察などが検挙した数。でも、それは当然全体の一部にすぎないというような問題があります。ということは前提としてあります。
 ただ、そういう中でやはり実態の解明というのがやっぱり非常に進んだ取組を行っている地域というのはありまして、やはりEUというのは非常に、まあこれは地域統合というのが進んでいる地域ですから、通常の我々の国家という概念とはかなり違いますので、そういう国家間にまたがるデータの例えば共有であるとか、協力というのが、警察官の協力とかですね、いろんなことが可能だということが前提としてありますけれども、EUの場合は非常に進んだ取組が行われております。
 EUがこれは出している、EUが出しているといいますよりも、IOMがEUと提携して行っている人身取引問題に関する様々な調査を行っています。その中で、ヨーロッパ全体で四十万人ぐらいの、これはEUだけではありませんで、東ヨーロッパも含めたヨーロッパ全体で四十万人ぐらいの人身取引の被害者がいるというような推定がされております。
 今後の取組という点ですが、やはり一つの国の中でだけ得られるデータというのは非常に限られております。ですから、EUの場合にも、今後検討されている取組としまして、ヨーロッパ全域での例えば行方不明者に関するデータベース、これはインターポールとかユーロポールというところが提携して、そういう行方不明、ヨーロッパ全域で行方不明になっている方々のデータベースというものを作成し、その中で特に人身取引の被害に遭っている可能性の高い方々を抽出していくというような取組が今検討されています。
 ですから、やはり日本の場合にも、やはりアジア地域から来ていると見られる方々が多いわけですから、やはりアジア地域との間でのデータの共有、情報共有というものを進めていくということが非常に重要であります。非常に具体的な例になりますけれども、私たちのところも時々日本に行ったまま行方が分からなくなっているんだけれどもというような問い合わせが来たりすることがあります。ですから、こういった事例というのは恐らくいろんな国々にあるんだと思います。ですから、そういった情報を集めていくようなシステムがあれば、日本における人身取引の実態解明あるいは被害者の救済というものに大きく貢献していくことになると思います。
 それから、日本が人身取引大国であるかどうかというのは、これは非常に難しい論議でして、ヨーロッパの場合にも今四十万人というような数字が出ております。ですから日本、ただ、アジア地域も非常に重要な人身取引が行われている地域ですので、非常に重要な部分が日本に向かっているという可能性は高いということは言えると思います。
#30
○木庭健太郎君 それと、今回、法改正によってこの人身取引に対するいろんな取組が強化できるとは思うんです。
 ただ、我が国にはこれまでだってその人身取引の加害者を処罰できる法律というのは数多くあったと思うんですけれども、現実にはこの加害者の検挙というのは少ない。ある意味では十分に活用されていないと思うんです。もちろん、この法改正でそういった取組を強化をしていかなければならないと思うんですけれども、ある意味じゃこの原因がどういうところにあるのかというようなことについて、法律家の立場から川端参考人及び吉田参考人、なぜなかなかこの検挙というものが実際にできないのか、なぜ法律が十分に活用されないのか、原因をどんなところにあるとお考えになられているか、それぞれ御意見を賜ればと思います。
#31
○参考人(川端博君) お答え申し上げます。
 今、現実の刑法の運用の観点からの御質問だと思います。
 確かに、先生がおっしゃるような局面はございます。ただ、人身売買それ自体につきましては、現行刑法上処罰の対象となっておりますのはあくまでも国外に移送する場合だけに限定されておりまして、国外から日本に受け入れると、こういう場面が完全に排除されておりましたので、これについての摘発とかそういったものはできないと、こういうことがございました。これは、あくまでも刑法典の中にこういう基本的な犯罪類型として規定されているか否かというのが現実の警察権力の行使、警察権の行使という点にかかわってくることが原因だったと、このように思っております。
 今回、こういう形で法改正がなされましたら、これが必ず適用を受けて、そしてこれについて国民の理解も得られて、さらに被害者の保護という方向に向かうものと考えております。
 以上です。
#32
○参考人(吉田容子君) 今の現行刑法の中で暴行、脅迫、それから欺罔を手段とする場合には、現行の略取誘拐罪の適用ということが考えられてきたと思います。もちろん、金銭の供与等については、川端参考人がおっしゃったように、今まで法律にはございませんでしたけれども、ほかの略取誘拐ということは理論的には可能であったし、あるいは、もちろん暴行、脅迫、逮捕、監禁等の適用ということも理論的にはあり得たと思うんです。でも、それが使われてこなかったということについては、一つは人身取引であるというふうな認識がもちろん捜査側に乏しかったということがあると思いますけれども、より大きな理由としては、やはり立証の限界ということがあったと思うんです。
 率直に言えば、被害者の供述だけに頼ってしまうのは非常に危険だというのは私ども分かりますけれども、しかし捜査の端緒としては、被害者の供述、証言というものがとても重要な意味を持つというふうに思っております。そこのところが、今まではあくまで被害者は、しかし被害者であるにもかかわらず、入管法その他の法令の違反者であるということで処罰、むしろ処罰及び退去強制の対象でありました。ですから、被害者に丁寧に移送されてきた過程を聞くというようなことはなかったと思うんですね。発見された状態でパスポートがあるのかないのか、在留資格がどうかということしか聞かなかった。そこのところで限界があったんだろうと思います。
 これから人身取引ということで、被害者であるというふうに捜査官側が見て、それで丁寧に捜査をしていただくということが重要だと思うんですが、しかしながら、従来、犯罪者であるというふうな扱いをしてきた被害者に対していきなり、これから法律が変わった、被害者なんだからもう何でも言ってくださいと、安心していいですよというふうに言ってみても、なかなかそうはいかないだろうというふうに思います。
 被害者が本当に捜査あるいは日本の司法制度を信頼してお話しいただくためには、まず信頼していただく、制度を信頼していただく必要がある、それから運用も信頼していただく必要がある。そのためにこそ、被害者の保護というものをきちんとやらなければいけないだろうというふうに思っております。
 ところが、一つ問題がやはり残っていまして、交番に是非来てくださいというふうに政府もおっしゃっています。本当にそこに行けるんだったら私、何にも問題がないと思うんですが、残念ながら、交番に行って、警察が丁寧にお話は聞いてくださると思うんですが、お話を例えば二時間聞いて被害者かどうか判断しろと言われたら、なかなか厳しい問題があると思います。他方で、入管法違反等はもうコンピューターでぱっとこう分かってしまう。そうすると、被疑者としての立場を重視することになりはしないだろうかという危惧を私ども持っております。
 ですから、被害者であった場合に被害者として保護するのは当然なんですが、被害者の可能性がある段階で十分に保護していただかないと加害者処罰にもつながっていかないだろうと、こういうふうに思っております。
 以上です。
#33
○木庭健太郎君 大事な点、運用上でも御指摘をいただいてありがとうございます。
 そして、先ほどから議論になっている、今回法改正したとしても、その被害者の部分の保護という問題がこの法改正で十分担保されているだろうかと、疑問点が随分出されたわけでございまして、まだまだやるべき課題が多いんだなということも痛感をいたしました。
 ただ、私が少し感じましたのは、例えば国挙げて今度被害者の保護支援センターですか、つくるとします。でも、またこの新たなものをつくったとしても、それが機能するかどうかというようなことの問題を考えると、これはある意味では、今まで民間でお願いしてきたこの民間シェルター、ある意味では、活用というよりは、ここを中核としたような、そのセンター化への移行みたいな問題も含めて、民間のお知恵をかりる方がこういった問題への取組というのはより有効ではないかというような気もいたしておるわけでございます。
 そういう意味では、負担は大きいんだろうと思うんですが、私は、どちらかというと、すぐにセンター設置というような方向に行くよりは、まずそういった問題への強化、その中で足りない点、幾つか御指摘ももう既に武藤さんからも吉田さんからもいただいておりますが、さらにそういった点、被害者保護について私自身は、民間、今二か所しかないということもございましたが、ここをどう強化し、ここに対してどう支援を強化していくかということを優先すべきではないかというようなことも感じたんですけれども、この点について御意見をそれぞれしゃべって、ちょっと足りなかったというような点がございましたら、武藤参考人から、そして吉田参考人からも一言ずつ伺えればと思います。
#34
○参考人(武藤かおり君) ヨーロッパの国、ベルギーかと思うんですが、その支援センターの役割をNGOがやっているというのを聞いたことがございます。てこ入れがきちんと行われれば可能かと存じますが、今の現状で申しますと、どうなんでしょう、私たちはやる気もありますし、それなりに努力いたしますが、何といいますか、権力というものを持たないままこの日本社会で働いて、そこがキーパーソンとなれるのかということを少し感じます。
 ですから、完璧にNGOというような組織がいいのか、半官半民のような形がいいのかというのは議論していく必要があると思いますが、国だけでつくるというのは私も無理だと思います。
 以上です。
#35
○参考人(吉田容子君) 私も、民間と国が協力してつくるのが多分ベストであろうと思います。
 民間が今まで実績を積んできているわけで、先生御指摘のように、そこを有効に使うことは何の異論もないんですけれども、権限とお金がございません。ですから、そこをきちんと付けていただけるであろうかということと、それから他の国の機関あるいは自治体の機関との連携ということも当然必要になりますので、そういうコーディネートをする場合の権限といいますか、そういったものも併せて御検討いただけるのであれば官と民の協力ということでよろしいかと思います。
#36
○木庭健太郎君 終わります。
#37
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
 まず、吉田参考人にお聞きをいたします。
 被害者保護の支援法が必要だということが提起もされました。先日の対政府の質疑のときも、例えば在留特別許可が今後出されていくのが広がる中で、在留期間が長くなるけれども、じゃ一時保護後の対応はどうするんだということを厚生労働省に聞きましても、柔軟に対応するというお話だけで、やっぱり新しい枠組みをつくっていくという発想がなかったわけですね。
 そこで、私たちも、先日、社民党と一緒にこの保護支援法について提案もしたわけですけれども、いろんな党が出され、また民間からもいろんな提案があるものをすり合わせもして、いいものを是非政府に迫っていきたいと思っているんですが、吉田弁護士のお考えのこの被害者保護支援法、柱と主な内容としてはどのようなことをお考えか、まずお聞かせいただきたいと思います。
#38
○参考人(吉田容子君) 私が考えておりますのは、まず、やはり国がこの問題にきちんと取り組むんだという姿勢を明示するということが必要だと思います。
 それから、先ほどの御質問にもありましたけれども、どこが責任を持っていただけるのかと、国の方で、ということがさっぱり分かりません。省庁連絡会議が推進するという体制であることは承っておりますけれども、要するに、それぞれの所管官庁がそれぞれの所管事項を行うということで、その調整を行うのではないかというふうに承知しておりまして、そうしますと、先ほど武藤さんもおっしゃいましたけれども、どこに何を言ったらいいかさっぱり分からない。ついでに言うと、その谷間で放置されてしまう事態が当然生ずるだろうと。したがって、やはり中心となる、責任を持つ部局を是非つくっていただきたいということがございます。
 それから第三点に、財政上の措置をきちんと明示していただきたいということです。もちろん、国自体の支出ということについても必要ですけれども、先ほどから出ております民間への援助ということについても十分に配慮するような形のものが必要であろうと思います。
 それから、先ほどから出ておりますけれども、センター、これが民間との協力に基づくセンターであった場合でも同じなんですが、やはりセンターの設置というものは必要であろうと。別に箱物を新たに造るかどうかという問題ということで申し上げているつもりはありませんで、センター機能を持つところをきちんとつくっていただきたい。被害者の方がどこに連絡を取ればいいのか。先ほども言いましたけれども、警察よりもむしろ、まあ警察もそうかもしれませんけれども、センターに連絡を取る、あるいは弁護士が相談を受けた場合もそこに連携を取って、あとそこでコーディネートできるような形のセンターの設置というものも必要だろうと思っています。
 それから、先ほど言いました被害者の発見の場合に、先ほど言いましたように、警察に、交番等に駆け込んだ場合ですら場合によっては逮捕される可能性というのはまだ十分残っているわけです。いわんや強制捜査等の過程で被害者ではないだろうかというふうな方が発見された場合も、多くは残念ながら逮捕されてしまう。そうであれば、ますます被害者も潜在化するしかありませんので、被害者の可能性がある場合はそのセンターに連絡を取るなりして、基本的には身柄を収容しないということも必要だろうと思っています。
 それから、在留資格の保護に関しては、今回入管法改正されるわけですけれども、これについて、実際のところ在留特別許可というのがなかなか基準がはっきりしないというふうに弁護士の立場からは思っておりまして、そこをもう少し明確にしていただきたいということになります。
 それから、今回アクションプランができているわけですけれども、国の方も今後いろいろ検証などをして、場合によって改善をするというお話がございましたけれども、この行動計画について、さらに基本計画にランクアップをした上で、しかもそこにNGOが関与する形で検証をして、それから改善をしていくというような制度も必要になってくるだろうというふうに思っています。
 大体そのようなものです。
#39
○井上哲士君 ありがとうございました。
 今も民間への支援を明確にする必要があるというお話があったわけで、その点で武藤参考人にお聞きするんですが、いただいたこのメモの中で「現在サーラーは米国国務省からの助成金により、医療費やシェルター滞在費の一部をカバーしている」というくだりがありまして、私、初めて知ったんですが、日本の国、政府が何の援助もしていないときに、米国国務省からの助成金があるというのは大変ある意味びっくりしたんですが、これはどういう形で、どういう枠組みで援助がされているのかということをまずお聞かせいただきたいと思います。
#40
○参考人(武藤かおり君) 私も実はその助成金について今まで余り話をしたことがなかったものですから、知らない方がいて当然なんです。
 アメリカに拠点を持つNPOが日本にもオフィスをつくったと、その関係で日本のサービスプロバイダーという被害者支援をしているNGOとパートナーシップを結ぶ。役割分担ですが、そちらの場合はまあ啓蒙とかそちらにいく、うちは啓蒙とか研修とかそういうことをやる時間はありませんので主に被害者支援をしてくれと、それをする場合に、二年で五万ドルという資金が被害者支援に使えるというようなパートナーシップというのを結びました。
 それで、十二月から、昨年の十二月から始めまして、被害者一件に当たり一泊代幾らという値段と、あとは医療費の補助、交通費の補助というようなことがそれで唯一使えております。そういう助成金の申出があったので、ほかにどこか使えるものがないだろうかと探し、探し、探し、探した結果それが使えたということで、こういうことを行っております。
 以上です。
#41
○井上哲士君 いや、そういうことを日本政府こそするべきだと今改めて思っておるんですが。
 先ほど、なかなか六千五百円一泊では不十分だということが言われておりました。DV被害者と同じ枠だと思うんですが、やはり人身売買の被害者の場合にそれ以上のいろんな負担が必要だと思うんですけれども、具体的にはどういうものが必要であって、どういう負担にその施設になっているのか。ここを賄ってほしいという辺り、もう少し詳しくいただきたいと思います。
#42
○参考人(武藤かおり君) 私どものスタッフは、平均三か国語をしゃべるように人員を配置しております。六か国語通用するシェルターとして、その被害者に合った言語がしゃべれるスタッフをローテーションを組んで常駐させるということをやっておりまして、その結果、人件費が掛かってしまう。しかし、そのメリットは、常にその言語を使う被害者が入ってくれば、もうその日から常にケースワークができるという利点があります。そのために様々な言語をしゃべるスタッフを置いておりますので、人件費がどうしても掛かってしまいます。ただし、その人件費はその方の能力に合ったものを支払っているかというと、そうではないのですが、そのような人員を配置していますので人件費がというか、人数が、延べ人数が多いわけですね、稼働する人数が。それが一つあります。
 あと、被害者の方が母国に、母国の家族が元気かどうか、若しくは危害が加わっていないだろうかということで、しょっちゅう国際電話を実は掛けたいというようなお願い等があります。そのような電話代のカバーというのも私たちが行っております。
 国が無料低額診療施設を使って医療を、人身売買の被害者が医療が必要な場合、そこに行ったらいいのではないかというふうに提案してくれているのですが、私たちは先ほど言いました助成金がありますのでまだその制度は使っておりません。なおかつ、私たちのシェルターの近くにその医療施設はございません。電車で三十分以上行かないと行けませんので、夜に例えば必要になったとしても、それは行けません。今それをしなくてもいいようなお金のカバーができるのでまだ行っていませんが、それしかない場合どうしたらいいかというふうに考えております。
 また、ビザ、通訳、そして入管への出頭等の往復、そしてそれに対する随行者、若しくは入管できちんと通訳のできるスタッフというのも必要になってまいります。すべて私たちのスタッフだけでこれをやっております。というわけで、やはりそういう交通費、随行人の人件費というのも私たちの大きな支出になっております。
 以上です。
#43
○井上哲士君 本当に御苦労がよく分かりました。
 中山参考人にお伺いするんですが、出身国対策、それからそれは出さないという問題、それから大本にあるいろんな教育や貧困の問題ということもありましょうし、帰った被害者への対策ということもあると思うんです。先ほど、いわゆるいろんな民間のネットワークのことはお話もあったと思うんですけれども、政府としてこの出身国対策をしていくという点でどういうことが必要とお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
#44
○参考人(中山暁雄君) お答えします。
 つまり、日本として、日本政府としてどういう対応が必要かという質問だというふうに思いますけれども、やはりこれは、日本は援助というものを、ODAという予算を持っておりますので、やはりそれを有効に活用していくということが非常に重要であるというふうに思います。
 例えば、出身国における取組ですけれども、当然貧困という問題もありますし、それからやはり教育レベルの問題というものもあります。ですから、例えば学校教育の中で人身取引の被害というものについてもっと教育を行うであるとか、あるいはコミュニティーレベルにおける意識向上、啓発を行うとか、様々な取組というのが可能性があります。
 この場合やはり重要なのは、その当事国の援助を行っている政府機関、それからNGOの担当者と直接やはり意見交換を行って、その方々からアイデアを出してもらうと。こういう、もう既にフィリピンやタイやインドネシア、いろんな地域でNGO、草の根レベルでの人身取引に対する対策というのは行われておりますので、そういったアイデアをNGOとかそういう草の根レベルの方々から出していただいて、それを日本の援助の中に組み込んでいくようなことが必要なんだというふうに思います。その中で国際機関として行えることもあるかなというふうに思います。
 それから、やはりもう一つは、地域協力の推進ということが非常に重要であると思います。
 これは、オーストラリアとインドネシアがイニシアチブを取って三年前から始めているバリ・プロセスというふうに呼ばれている、不法入国それから人身取引、そして組織犯罪というものに対応する地域協力のメカニズムというものがあります。
 この地域協力の中で幾つかのワーキンググループというものが設置されまして、例えば法執行の問題であるとか、あるいは偽造旅券の鑑識の問題であるとか、入国管理行政の問題であるとか、そういった幾つかの分野ごとのワーキンググループというものができております。こういったワーキンググループの中でやはり日本が貢献できる分野がたくさんあると思いますので、その地域協力というものに日本として貢献していくということが非常に重要であるというふうに思います。
#45
○井上哲士君 若干だけ時間がありまして、最後もう一点、吉田弁護士に。
 現実には早期に帰国を望む被害者も多いかと思うんですが、一方、教育、職業訓練などはある程度期間も要るということがあると思うんですが、この辺、国際協力のことも含めてどうお考えか、お願いします。
#46
○参考人(吉田容子君) 本当に役に立つ教育であるとか、あるいは労働、職業訓練ですね、そういったものについて、日本で例えば三か月、六か月で果たしてどのくらい可能なんだろうかというような気持ちは一方でございます。
 しかしながら、他方で、例えば損害賠償等、損害賠償やらあるいは加害者への処罰への協力などで三か月ないし六か月程度の在留ということが考えられるわけですから、そういうときにまずスタートとしての基本的な教育であるとか職業訓練等ということを導入するということについては私は必要だと思います。ただ、日本だけですべてが完結するとはとても私思いませんので、やはり出身国の政府あるいはNGOにおけるそのような施策との連携という形で行うのが一番いいのではないかというふうに思っています。
#47
○井上哲士君 ありがとうございました。
#48
○委員長(渡辺孝男君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午前十一時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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