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2005/03/09 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第6号
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2005/03/09 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第6号

#1
第162回国会 本会議 第6号
平成十七年三月九日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  平成十七年三月九日
   午前十時開議
 第一 国家公務員等の任命に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、日露通好百五十周年に当たり日露関係の飛
  躍的発展に関する決議案(溝手顕正君外六名
  発議)(委員会審査省略要求事件)
 一、京都議定書発効に基づく国際合意の積極的
  推進と京都議定書以後の新枠組形成に向けた
  新たな国際合意の実現に関する決議案(溝手
  顕正君外六名発議)(委員会審査省略要求事
  件)
 一、平成十七年度における財政運営のための公
  債の発行の特例等に関する法律案及び所得税
  法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 日程第一 国家公務員等の任命に関する件
 内閣から、
 人事官に小澤治文君を、
 情報公開・個人情報保護審査会委員に橋本瑞枝君、上村直子君、稲葉馨君及び新美育文君を、
 国家公安委員会委員に吉田信行君を、
 預金保険機構監事に高橋瞳君を、
 日本銀行政策委員会審議委員に西村清彦君を、
 宇宙開発委員会委員に森尾稔君を、
 中央社会保険医療協議会委員に遠藤久夫君を、
 社会保険審査会委員長に大槻玄太郎君を、また、同委員に粥川正敏君及び関野杜滋子君を
任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 これより採決をいたします。
 まず、人事官の任命について採決をいたします。
 内閣申出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#4
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#5
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百十八  
  賛成            百二十七  
  反対             九十一  
 よって、同意することに決しました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#6
○議長(扇千景君) 次に、情報公開・個人情報保護審査会委員のうち橋本瑞枝君、上村直子君及び新美育文君、国家公安委員会委員、預金保険機構監事、日本銀行政策委員会審議委員、宇宙開発委員会委員、中央社会保険医療協議会委員、社会保険審査会委員長及び同委員のうち関野杜滋子君の任命について採決をいたします。
 内閣申出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#7
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#8
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百二十  
  賛成            二百二十  
  反対               〇  
 よって、全会一致をもって同意することに決しました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#9
○議長(扇千景君) 次に、情報公開・個人情報保護審査会委員のうち稲葉馨君の任命について採決をいたします。
 内閣申出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#10
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#11
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百二十  
  賛成            百三十五  
  反対             八十五  
 よって、同意することに決しました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#12
○議長(扇千景君) 次に、社会保険審査会委員のうち粥川正敏君の任命について採決をいたします。
 内閣申出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#13
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#14
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十二  
  賛成            二百十六  
  反対               六  
 よって、同意することに決しました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#15
○議長(扇千景君) この際、お諮りいたします。
 溝手顕正君外六名発議に係る日露通好百五十周年に当たり日露関係の飛躍的発展に関する決議案及び京都議定書発効に基づく国際合意の積極的推進と京都議定書以後の新枠組形成に向けた新たな国際合意の実現に関する決議案は、いずれも発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加して一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
 よって、両決議案を議題といたします。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。溝手顕正君。
    ─────────────
   〔議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔溝手顕正君登壇、拍手〕
#17
○溝手顕正君 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案に係る両決議案につきまして、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の御賛同を得て、発議者を代表し、提案申し上げます。
 まず、日露通好百五十周年に当たり日露関係の飛躍的発展に関する決議案について申し上げます。
 案文を朗読いたします。
    日露通好百五十周年に当たり日露関係の飛躍的発展に関する決議案
  一八五五年に日魯通好条約が調印され、両国の間に公式な関係が樹立されるとともに、択捉島とウルップ島の間に両国の国境が平和裡に画定された。同条約の調印から、本年は百五十周年に当たる。日露両国の先人は、粘り強い交渉を通じて信頼関係を構築し、この日魯通好条約に調印したが、以来百五十年の両国間の歴史を想い、国民とともに深い感慨を覚える。
  日本とロシアは、両国の利益に合致した隣国として真の安定的な平和友好関係の構築に向けて尽力すべきであり、日露関係をその潜在力に見合ったレベルに引き上げることが必要である。
  しかしながら、戦後六十年の節目の年に当たる今日なお、北方領土問題が解決せず、日露両国間に平和条約が締結されていないことは誠に遺憾である。政府は、日露通好百五十周年という歴史的に重要な節目の年に当たり、ロシアとの間で幅広い分野での協力を進めるとともに、全国民の悲願にこたえ、歯舞、色丹及び国後、択捉等の北方領土の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するという一貫した方針に基づき、平和条約締結交渉を具体的かつ実質的に前進させ、日露関係を大きく発展させるため、最大限の努力を継続するべきである。
  右決議する。
 以上であります。
 次に、京都議定書発効に基づく国際合意の積極的推進と京都議定書以後の新枠組形成に向けた新たな国際合意の実現に関する決議案について申し上げます。
 案文を朗読いたします。
    京都議定書発効に基づく国際合意の積極的推進と京都議定書以後の新枠組形成に向けた新たな国際合意の実現に関する決議案
  地球温暖化現象が、二十一世紀における最も深刻な問題の一つとなる中で、国際社会の十数年に及ぶ努力の結果、京都議定書は、二〇〇五年二月十六日に発効するに至った。このことは、我が国が地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国として一定の役割を果たすことができたばかりでなく、国際社会、未来世代にとっても大変喜ぶべきことであり、実に画期的な出来事である。我が国は、速やかに「京都議定書目標達成計画」を策定・実施の上、京都議定書締約国会議(COP/MOP)において主導的役割を果たし、各国における合意内容の履行に向けて、最大限に効果的、積極的な推進を図るべきである。また、同時に世界最大の温室効果ガス排出国である米国に対し改めて参加を促すべきである。
  今後の地球の気候安定化を目指すためには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書が指摘するように、温室効果ガス排出量を半分以上削減することが急務であるが、京都議定書後の二〇一三年以降の削減約束は未だ国際合意に至っていない。我が国は、この度の発効を契機に京都議定書以後の新枠組形成に向けて、人類益の視点から積極的に国際的なリーダーシップを発揮すべきである。
  新枠組の交渉においては、早期に新たな国際合意を目指し、米国、そして中国、インドを始めとした途上国を含む世界各国が参加できる共通の枠組の構築に向けて、京都議定書の国際合意を踏まえつつ、より実効性の高いスキームになるように最大限努力するとともに、地球の気候安定化が一層効果的に進むことを強く訴えるものである。
  右決議する。
 以上であります。
 両決議案に対しまして、何とぞ皆様方の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#18
○議長(扇千景君) これより両決議案を一括して採決いたします。
 両決議案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#19
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#20
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十三  
  賛成           二百二十三  
  反対               〇  
 よって、両決議案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#21
○議長(扇千景君) ただいまの両決議に対し、内閣総理大臣から発言を求められました。小泉内閣総理大臣。
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#22
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日露通好百五十周年に当たる決議に対して所信を申し述べます。
 政府といたしましては、ただいま採択された御決議の趣旨を十分に体しまして、日ロ両国の利益に合致する戦略的パートナーシップの構築に向けて、ロシアとの間で幅広い分野での協力を進めるとともに、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、もって両国関係を飛躍的に発展させるべく、引き続き最大限の努力を払っていく考えであります。
 京都議定書発効に基づく決議に対して所信を申し述べます。
 地球温暖化は、その影響が将来の世代にわたり、また地球全体に及ぶ問題であり、世界各国が一体となって取り組む必要があると認識しております。
 政府は、ただいまの御決議の趣旨を十分体しまして、京都議定書目標達成計画の策定とその確実な実施並びに脱温暖化社会の実現に全力で取り組むとともに、将来に向けてすべての国が参加する枠組みの構築に努力してまいります。(拍手)
     ─────・─────
#23
○議長(扇千景君) この際、日程に追加して、
 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。谷垣財務大臣。
   〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(谷垣禎一君) ただいま議題となりました平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
 平成十七年度予算においては、歳出改革路線を堅持、強化するという方針の下、従来にも増して、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出について三年ぶりに前年度の水準以下に抑制し、新規国債発行額についても四年ぶりに前年度より減額したところであります。一方、予算の内容については、活力ある社会経済の実現や国民の安全、安心の確保に資する分野に重点的に配分するなど、めり張りのある予算の配分を実現いたしました。
 しかしながら、我が国の財政収支は引き続き厳しい状況となっており、特例公債の発行等の措置を講じることが必要であります。
 本法律案は、厳しい財政事情の下、平成十七年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置及び年金事業等の事務費に係る負担の特例に関する措置を定めるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、平成十七年度の一般会計歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書の規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができること等としております。
 第二に、平成十七年度において、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務の執行に要する費用に係る国等の負担を抑制するため、国民年金法、国民年金特別会計法、厚生保険特別会計法及び国家公務員共済組合法の特例を設けることとしております。
 次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、定率減税の縮減とともに、金融・証券税制、国際課税、中小企業関係税制等につき所要の措置を講ずるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、国と地方のいわゆる三位一体の改革との関係で、平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要となることを展望しつつ、平成十一年以降、景気対策のための臨時異例の措置として継続されてきた定率減税について、導入時と比較した経済状況の改善を踏まえ、その規模を二分の一に縮減することとしております。
 第二に、金融・証券税制について、株式投資を促進するための環境整備の一環として、特定口座で管理されていた株式の無価値化による損失を譲渡損失とみなす特例を創設する等の措置を講ずることとしております。
 第三に、国際課税について、外国子会社合算税制を国際的な企業活動の実態により一層即したものとするとともに、国債の保有者層の拡大を図る観点からの、非居住者等が保有する国債の非課税特例を受けるための手続の簡素化等を行うこととしております。
 第四に、中小企業関係税制について、中小企業の新たな事業活動の総合的な促進に資する観点からの中小企業の支援のための税制上の措置等を講ずることとしております。
 その他、所得税の寄附金控除の限度額の引上げ、法人税に関し民事再生等の場合の資産評価損益と欠損金の損金算入等に関する措置、検査機関等の登録等に対し登録免許税の負担を求める措置のほか、共同で現物出資をした場合の課税の特例の廃止等既存の特別措置の整理合理化を図るとともに、住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等期限の到来する特別措置について、その適用期限を延長するなど所要の措置を講ずることとしております。
 以上、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ─────────────
#26
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。山下英利君。
   〔山下英利君登壇、拍手〕
#27
○山下英利君 私は、自由民主党、公明党を代表して、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問をいたします。
 まず最初に、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、いわゆる特例公債法案に関連して、財政問題についてお伺いいたします。
 財務大臣は、我が国の財政悪化に歯止めを掛けるには、歳出の抑制、歳入の拡大、そして全体の景気の着実な回復の三点を主張されており、この視点からお尋ねをいたします。
 高齢化社会が進展する中で、社会保障費は、公共事業、文教・防衛関係費を合わせた予算を上回る二十兆円まで拡大をしてきております。さらに、毎年一兆円程度の自然増が見込まれており、社会保障制度全般にわたって制度の見直しや合理化が急がれております。ようやく与野党間において、年金を中心に社会保障制度全般について協議が開催される運びとなりました。また、政府においても、官房長官の下に社会保障の在り方に関する懇談会が設置をされました。公助、共助、自助をどのように考えるか、与党、野党の垣根を越えて、国民の目線に立った実効性のある成果が出てくるものと期待しております。
 財政が福祉を始めとする行政サービスをどこまでやるのか、財政に大きな影響を与えます。三位一体の改革で国と地方の役割分担を議論している中で、限られた財源で政策の選択と予算の集中をしていかなければなりません。プライマリーバランス達成までの中期的な歳出削減についての基本的スタンスと短期的な当面の諸課題をどのように認識しておられるのか、財務大臣に伺います。
 歳入の基本である税、特に国民の大きな関心事である消費税についてお尋ねいたします。
 消費税は、平成十一年に、国民の理解を深めていただくために福祉目的化し、予算総則に消費税収の使途を明記し、広く国民の老後等を支える基礎年金、老人医療及び介護のための福祉予算に使う旨を明らかにしました。以降、国民の間でも消費税と社会保障の関係は密接不可分、両方相まっての論議が定着してきた感があります。各種アンケートでも、社会保障給付費を消費税によって賄うことに賛成の意見が多く寄せられております。政府の税制調査会でもその論議が開始されたと伺っております。
 我が党では、平成十九年度をめどに、長寿・少子化社会における年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革の実現を目指しております。
 総理は、再三、在任中の消費税引上げはしない、しかし論議は活発にという態度でおられます。今、党内、政府、そして国民の間でも、消費税の引上げ、その使途等はかなりの注目度であります。消費税についての総理の基本的考え方を御披瀝願います。
 十六年度の国税収入が当初から二兆三千億円の自然増収が見込まれ、特例公債の発行が少々圧縮されました。これは、これまでの景気対策の成果が景気回復につながり、税収増になったと思います。しかしながら、景気は踊り場にあり、その上昇に不可欠なものとして、地方と中小企業が元気になる取組が必要であります。これまでの景気対策と景気回復の関連についての認識と、景気回復を確かなものにするための今後の取組について、財務大臣にお伺いいたします。
 次に、所得税法等一部改正案の定率減税について質問いたします。
 定率減税が実施された平成十一年は、次の新しい千年紀、ミレニアムを迎える前夜でありました。
 時の小渕総理は、この時期に、日本は経済的な苦難に直面しているが、これを克服し、身命を賭して国政運営に当たる覚悟を国民に示し、行き過ぎた悲観主義よりも確固たる意思を持った建設的な楽観主義が必要であると当時述べられております。
 そして、平成十一年を経済再生元年と位置付け、日本経済の再生に取り組み、景気回復に全力を尽くすため、税制では、内需拡大や我が国企業の国際競争力の強化を図るため、従来なし得なかった思い切った内容の個人所得課税や法人課税の恒久的な減税を実施、住宅ローン減税等の政策減税とともに、九兆円を超える規模の景気対策になりました。
 以来、不良債権等の処理が進む中、この税制と政府の景気対策の取組の結果、景気は長い低迷から脱し、景気拡大期間は三年に及び、平成十六年度は二・一%程度、十七年度は一・六%程度の実質成長が見込まれようとしております。
 今回の定率減税の縮減は、厳しい財政事情とやや明るさが見えてきた景気状況等から提案されたものと理解をいたしております。しかしながら、全国各地すべてが景気回復したと胸を張って言える状況にはありません。ようやく明かりが多少強まったというところではないでしょうか。
 我が党の税制調査会は、今年度税制大綱に次の考え方を記しております。「本来、財政に課される役割は、国民の合意を得た基準で徴収した税収により、提供されるべき公共サービスを国民に配分することにある。同時に、その過程で、歳入・歳出をあわせた財政運営を金融政策と一体的に行うことにより、適時適切な経済運営を図ることも重要な使命である。」。
 この考え方によって、定率減税は、当時の著しく停滞した経済状況に対応して、本則の税率ではなく、税額を一定率だけ軽減した時限的措置として導入がなされました。
 したがって、今般、導入当時に比べ経済状況に改善が見られることから、減税の縮減を提案することになったものと理解をいたしております。しかし、本則に戻すとはいえ、国民、納税者からすれば増税と感じられます。恒久的とした減税をなぜに縮減するのかと、懇切丁寧な説明が必要であります。財務大臣の説明を求めます。
 加えて、かつて橋本内閣のときに消費税率引上げが原因で再び景気が低迷したと言われております。今回の措置によってその再現が危ぶまれております。国民も我が国経済と財政の現状を十分に理解して、減税縮減に真っ向から反対を唱えるとは思いませんが、これに関する財務大臣の所見を伺います。
 残りの減税を今後どうするのかという問題でありますが、先ほど申し上げたように、社会保障制度について与野党の協議が開催され、消費税が大きな課題の一つになります。
 さらに、三位一体の改革に伴う税源の問題、潜在的な国民負担率や直間比率の問題、公平公正で透明な制度設計等多くの問題を抱えており、十八年以降、大幅な税制改正論議が必要な状況にあり、その中で議論されていくものと思いますが、そのような理解でよいか、確認しておきたいと存じます。
 入るを量りていずるを制す。税制を語るときに、また改正のとき、必ず頭をよぎる言葉です。歳入を確実に得、歳出を極力抑制する。歳出削減には、官民はもちろんですが、最も必要なのは政治家の努力であります。政治の要諦を表した、税は政の言葉もあります。
 政治家が国家国民に思いをはせ、将来の国家像を描いて、そのためには国民に納めていただく税をいかに使うか、そのためには何をなすべきか、真摯に取り組まなければならない最重要課題について最後に総理の経綸の哲学をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#28
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山下議員にお答えいたします。
 消費税についてですが、私は従来から、在任中に引き上げることは考えていないと申し上げておりますが、税制全体の在り方として議論することは歓迎しております。少子高齢化が進展する中、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合い、社会保障等の公的サービスを安定的に支える歳入構造を構築する上で消費税は重要な税であると認識しております。今後、税制全体の在り方を幅広く検討していく一環として、消費税についても国民的な議論を進めていく必要があると考えております。
 今後の定率減税の取扱いについてでございますが、これまでの政府税調答申や与党税制改正大綱を踏まえ、平成十八年度税制改正の審議の過程において、経済社会の動向も考慮しつつ、三位一体の改革との関係で、国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しを行う中で議論していきたいと考えております。
 財政運営の哲学についてでございますが、人口減少社会が到来する中で、経済活力を維持しつつ、持続可能な財政を構築することは政治家に課せられた将来世代に対する重要な責務であります。
 このため、私は、官から民へ、国から地方へという方針の下に行財政改革を最優先課題として推進し、歳出の無駄を徹底的に排してきているところであります。今後とも、財政支出のより一層の効率化、適正化を徹底し、二〇一〇年代初頭には政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄うよう、歳出、歳入両面から財政構造改革を強力に推進してまいります。今後とも皆さん方の御協力をお願い申し上げます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(谷垣禎一君) 山下議員にお答えいたします。
 まず、財政健全化についてのお尋ねですが、我が国財政が非常に厳しい状況にある中で、十七年度予算においては、一般歳出を三年ぶりに前年度の水準以下に抑制する、それから、社会保障関係費それから科学技術振興費を除いたすべての主要経費につきまして対前年度マイナスとするなど、歳出の規模や中身の徹底した見直しなどを行ったところであります。
 今後の課題としては、持続的な社会保障制度の構築、国と地方のいわゆる三位一体の改革、それに必要な公的サービスの費用を広く公平に分かち合うための税制改革が重要であると考えておりまして、二〇一〇年代初頭の国、地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指して、歳出、歳入両面にわたってバランスの取れた財政構造改革を強力に推進してまいりたいと考えております。
 それから、十六年度国税収入の増加要因と景気回復を確かなものとするための取組についてお尋ねがございました。
 十六年度の国税収入の増加につきましては、一つは、構造改革に起因した景気の回復などによりまして土台となる十五年度税収が一・五兆円程度増加したこと、それから二つ目には、現在でも上り坂の中の微調整が見られるものの、大局的には景気回復局面が続いて企業収益が一段と改善していること、こういったことを踏まえまして、十六年度の補正予算におきましては約二兆三千億円の増額補正を行ったところであります。
 一方、大企業に比べて中小企業の状況は厳しく、また地域の回復動向にもばらつきが見られることは御指摘のとおりでありまして、政府としては、回復の動きを日本の隅々まで浸透させるためにも構造改革を一層推進してまいります。
 それから、定率減税縮減の考え方についてお尋ねがございました。
 定率減税は、平成十一年以降、著しく停滞した経済活動の回復に資するため、個人所得課税の抜本的見直しまでの間の特例措置として継続されてきたものでありますが、今回の見直しは、導入時と比較した経済状況の改善や、三位一体の改革との関係で平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要になること等々を踏まえまして、段階的な縮減を行うという観点から、その規模を二分の一に縮減するものでございます。
 定率減税の縮減によって平成九年度の景気低迷の再現が危惧されているという御指摘がございました。
 平成九年度後半以降の経済の低迷については、アジアの通貨・金融危機や我が国金融機関の相次ぐ経営破綻が大きく影響したのに対しまして、現在は経済の体質強化が実現されつつございます。民需中心の緩やかな回復を続けると見込まれているところでございます。
 定率減税の縮減等の検討に当たりましては、民間部門に過度の負担が生じないように配慮したところでございます。平成九年度の景気低迷の再現になることはないものと考えております。(拍手)
    ─────────────
#30
○議長(扇千景君) 平野達男君。
   〔平野達男君登壇、拍手〕
#31
○平野達男君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました二法案に関しまして、総理始め関係大臣に質問いたします。
 まずもって、冒頭申し上げなければならないことがあります。
 所得税法等の一部を改正する法律案には、いわゆる予算関連の日切れ事項に該当しないものが含まれております。特に、法案の中心となる定率減税の縮減は、その施行が来年の一月に予定されたものであり、いわゆる日切れではありません。本来、こうした部分は別法案とし、予算の成立とは切り離して審議すべきものであります。ましてや国民生活に重大な影響を与える法案であり、公聴会を含めた幅広い角度からの慎重な審議が必要であります。
 しかるに、あたかも日切れ法案であるがごとく装いながら法案提出し、年度内成立が必要であるというのは、法案審議の手続をできるだけ省きたいとする官僚の都合を優先させた政府・与党の国会軽視にほかなりません。強く抗議するとともに、財政金融委員会の場においては徹底審議を求めるものであります。
 今年はプラザ合意後二十年に当たります。
 一九八五年九月、ニューヨークのプラザホテルにおいて、日、米、独、英、仏の先進五か国が緊密な政策協調と強力な為替介入に合意しました。米国の財政赤字と経常収支の双子の赤字を背景としたドル高是正を目的としたものでした。
 プラザ合意後の翌年度に経済運営の羅針盤として策定されたのがいわゆる前川リポートです。前川リポートは、経済収支不均衡の原因は輸入国ではなく、専ら輸出国である我が国の輸出志向の経済構造にあるとし、内需主導の経済成長を志向する経済構造への転換を提唱しました。
 その実現を目指す過程で大きなつめ跡が残りました。合意後、急激に進んだ円高への対応として講じられた金融政策は、バブル経済を発生させる背景となりました。バブル崩壊は巨額の不良債権を生み出し、その処理には、資金面においても、人的な面においても今なお大変な痛みを伴っています。また、バブル崩壊後の経済の下支えに行われた国の財政発動は空前の国債発行残高の山を築きました。その山は依然として成長中であります。
 プラザ合意当時、一ドル二百四十円だった為替は百円近い水準になっています。にもかかわらず、我が国の経常収支は輸出を軸に依然として大幅な黒字を続けています。我が国輸出産業の底力の強さを示していると言えます。しかし、好調なのは輸出部門だけで、経済全体としては、長引くデフレ不況からの出口は見えていません。
 一方、米国の双子の赤字が拡大しているという点において、プラザ合意当時と現在との日米間のマクロ経済環境は同じ状況になっています。
 総理に伺います。
 当時の我が国の経済・財政状況と現在の状況とでは、何が変わり何が変わっていないのか。また、プラザ合意をどのように総括されるのか。特に、前川リポートの言うところの、内需主導型の経済成長を志向する経済構造への転換は実現されたか。実現されていないとすれば、その原因はどこにあるか。以上、総理に伺います。
 為替介入に関連して、財務大臣に伺います。
 プラザ合意時とは大きく異なり、最近の為替介入の目的は円高是正へと変わっています。これに伴い、外貨準備高は急激に増え、併せて巨額の含み損も生じているはずであります。その現状について報告願います。
 また、一昨年から昨年にかけて史上空前とも言える巨額の為替介入を行っていますが、その規模はどのぐらいか。さらに、資本収支までが黒字になるほどの介入規模になった理由と併せ、円高ドル安進行を阻止するには今後とも巨額の介入が必要なのかどうかについてもお聞きします。
 以下、法案に関して質問します。
 我が国は、少子高齢化の進展と相まって人口減少社会に突入すると言われています。こうした変化を踏まえた税制の在り方について、その基本的考え方を総理に伺います。
 所得税法等の一部改正案の柱は、平成十一年に恒久的減税として導入されたはずの定率減税の半減であります。中間所得層の家計を直撃するものであります。GDPの六割を占めるのが個人消費、この個人消費の動向が景気を大きく左右することは言うまでもありません。
 金融危機が叫ばれ、デフレスパイラルが懸念された時期もありましたが、堅調な個人消費が景気の底割れを防いできました。景気を自律的な回復軌道に乗せるには、やはり民需中心の需要拡大が必要であります。このためには、民間の設備投資とともに、個人消費が堅調に伸びていく環境を整備することが不可欠であります。
 しかし、国民生活をめぐる状況は厳しくなっています。医療費負担の増、年金保険料の引上げ、配偶者特別控除の縮減など、国民負担が増える制度改正を現内閣は次々と実施しています。
 民間部門の貯蓄・投資バランス、いわゆるISバランスはトータルとしては黒字を続けています。それは我が国の経常収支黒字の大きな要因となっています。しかし、内訳には大きな変化があります。
 国民の旺盛な貯蓄意欲に支えられた家計部門は大幅な貯蓄超過、企業部門は支出超過という状態が長く続きました。しかしながら、最近は家計部門の貯蓄超過は縮小しています。代わって企業部門は貯蓄超過に転じ、その幅は拡大しています。
 国民経済計算によれば、平成十一年度から十五年度にかけて雇用者総報酬は約十兆円減少しています。一方、同じ時期に企業所得は約十一兆円増えています。雇用者総報酬の減がそのまま企業所得へ転嫁された形になっているわけであります。こうしたここ数年の雇用者総報酬の低下あるいは労働分配率の低下を背景とし、家計収入は減り、貯蓄の取崩しも増えています。
 二月の月例経済報告では、個人消費は伸びが鈍化からおおむね横ばいへと判断が下方修正されました。企業部門は好調なものの、家計部門の回復の遅れが明らかになっています。家計をめぐる状況が厳しさを増しているにもかかわらず、政府がやろうとしているのが定率減税の半減という実質の大増税であります。
 総理は、現在の経済状況については定率減税の導入時とは異なり、経済体質は強化されている、今後とも引き続き民需中心の緩やかな回復を続けると見込んでいると、定率減税の縮減を正当化しています。民需主導といっても、これまで企業部門の設備投資は伸びていますが、個人消費は、先ほど言いましたように、堅調ではあるものの伸びていません。設備投資も輸出関連が主体であり、事実上、外需主導になっているわけです。
 個人消費が伸びるための前提条件となるのが雇用者総報酬の増加であります。確かに、最近になって雇用者総報酬が名目で上昇しています。しかし、これがどこまで続くかは予断を許しません。むしろ、原油価格の高騰は続いており、原油を使う素材産業が価格転嫁を進めれば、川下の加工産業がコスト吸収へ人件費を圧縮する可能性が高いと見るべきです。
 今後とも引き続き民需主導の緩やかな回復を続けると見込む根拠と、それは個人消費の拡大による自律的回復を意味するのかどうか、総理に伺います。
 また、景気回復が見込まれる段階ではなく、景気がいわゆる踊り場を過ぎ確実に上向くまで、あるいは雇用者総報酬が伸び、個人消費が安定的に伸びるまで、サラリーマン家庭を直撃する増税には踏み込むべきではないと考えますが、総理の見解を伺います。
 さらに、政府は定率減税の半減だけではなく、廃止まで視野に入れ、その実行の可否は景気の動向を見ながら決めると伝えられています。この景気の動向とは具体的に何の尺度をもって判断されるのか、併せて総理に伺います。
 国債管理政策について伺います。
 平成十七年度末の国債の発行残高見込みは五百三十八兆円、国、地方を合わせて七百七十四兆円、対GDP比は一五〇%を超える規模となっています。なぜ、これまでに我が国の国債発行残高が増え、かつ増え続けるのか、その根本的な原因はどこにあるのか、総理の見解を伺います。
 発行主体にとっての利払い費の増大、保有主体にとっては含み損の発生によるバランスシートの毀損など、国債の金利変動による財政、経済のリスクは国債発行残高が増えれば増えるほど増します。今後の景気上昇局面における金利上昇リスクへはどのように対応していくのか。財務大臣が言うように、あるいは総理が言うように、財政規律の確保は最も重要な条件ですが、しかし財政規律の確保、維持、国債保有者層の多様化だけで対応は十分なのか、総理に伺います。
 また、国債の長期金利の形成は市場に任せるのか、あるいはその動向については政府、日銀による一定の管理下に置くのかも併せて伺います。
 政府は二〇一〇年代初頭に基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスを均衡させるとしています。国の財政赤字が持続可能な水準でコントロールされるためには、これと併せ名目成長率が名目金利以上であることが必要です。しかしながら、近年は金利が名目成長率を上回る状態が長く継続しています。いわゆるリスクプレミアムによって名目金利は名目成長率を上回るという有力な説があります。財政赤字の継続による国債発行残高の増大はこのリスクプレミアムの増大要因であり、名目金利と名目成長率が均衡することはかなり困難と見なければなりません。どういう条件になれば名目成長率が名目金利と均衡するのか、その道筋はどうなっているのか、またそれは二〇一〇年代初頭までに達成可能なのか、経済財政担当大臣に伺います。
 年金事業等の事務費に係る国の負担の特例措置に関して質問します。
 年金保険事業制度においては、保険料は事業の事務の執行に要する費用に充当することを本来認めてはいません。制度の運営に必要な経費は全額国費で負担することを基本としております。一方、他の政府管掌の保険事業では、事務等は保険料収入を充当することを基本としています。事務費に関し年金制度が独自の制度体系になっている理由を財務大臣にお聞きします。
 法案は、本来国庫で負担すべきものに対し、一部保険料を充当するというものであります。その対象をこれまでより限定したことは半歩前進ではあります。しかし、保険料で事実上国庫支援を行うことに変わりはなく、本末転倒であります。高まっている年金制度への不信解消のためにも、年金保険料は保険給付金にしか充当しないという本来の原則に戻るべきと思います。財務大臣の見解を伺います。
 もし、どうしても保険料で事務費を賄う必要があれば、制度の根本から議論し直し、特例法ではなく年金法等の改正を目指すのが筋と考えますが、併せて見解を伺います。
 景気がこれから回復へ向かうための大きなキーワードは、成長期待と信頼であります。先行きは明るいとの市場の確信が投資や消費の拡大につながり、お金の循環を円滑にすることは論をまちません。
 この成長期待の形成と浸透には、本来であれば政府が大きな役割を果たさなければなりません。そのためには、市場と政府との間に一定の信頼関係が成立することが必要です。そのためには何をすべきか。
 政府が何をしようとしているかについての明確な方針と具体策を明示し、それを確実に実行する。もしできなければ、大したことないとか、政策変更でありながら政策強化などとごちゃごちゃ言わず、ごまかさず、きちんと説明責任を果たすことがまず必要であります。要するに、これまでの政府の対応とは正反対のことをしなければならないということであります。
 これまで、企業や国民の自助自立の精神と、それをばねにした懸命の努力を推進力として、経済は底割れすることなく動いてきました。しかし、デフレからの脱却と本格的な景気回復の筋道は一向に見えていません。ちなみに、長い踊り場は世間では廊下と言います。今の状況は、その廊下が下り坂に向かっているように思えて仕方がありません。
 一方の官、すなわち信頼をかち得ないためにその推進力が機能しない政府・与党の下、この難局を乗り切っていかなければならないことにこの国の経済の苦しさとつらさがあります。経済という生き物は、この苦しさとつらさに懸命に耐えている、耐えかねない状況に来ている。
 総理は、眼光紙背に徹すれば物事が見えると、どこかの場で、記者会見でおっしゃいました。是非、眼光紙背に徹して今の状況を見ていただきたい。それでもこういう状況が分からないとすれば、総理の目こそ節穴であると、このことを申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#32
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 平野議員の質問に答弁いたします。
 プラザ合意でございますが、一九八五年のプラザ合意により円高が進行し、日本経済には大きな影響があると思われました。このため、金融緩和や経済対策が実施されましたが、プラザ合意を乗り切ったため、日本経済に過度の自信が高まり、こうした要因がバブル発生の一因となったと考えられます。
 一方、民間部門では、世界経済のグローバル化が進展する中、製造業を中心に、円高に備え、競争力を強化するための改革を促す役割もあったと考えております。
 プラザ合意時と現在とでは、その間に、冷戦の終結やIT革命、我が国の少子高齢化の進展などの大きな環境変化があることから、一概に比較することは難しいと考えますが、当時と比べ現在は、公債発行額の累増等の財政状況の悪化が見られるため、内外の経済の状況を的確に把握し、構造改革を通じて財政出動に頼らない民間主導の持続的な成長を図っていく必要性が一層高まっていると考えております。
 内需主導型の経済成長についてでございますが、前川リポートでは内需主導型の経済成長に向けた経済構造変革の必要性が提言されておりましたが、小泉内閣においては、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、税制、規制、歳出の改革に全力を挙げて取り組んでまいりました。
 こうした中、現在の日本経済は、不良債権処理や産業再生等が進展し、企業部門の有利子負債がバブル崩壊後最低の水準にまで低下するなど、経済の体質強化が実現されつつあり、また、我が国経済は、政府の財政出動に頼ることなく、設備投資など国内の民間需要を中心に回復してきております。
 今後とも、官から民へ、国から地方への構造改革を一層推進することにより、改革の成果を地域や中小企業にも広く浸透させ、国内の民間需要主導の持続的な経済成長を図ってまいります。
 少子高齢化や人口減少社会などの変化を踏まえた税制の在り方についてでございますが、人口減少社会の到来などの構造変化に対応し、活力ある経済社会を実現するためには、持続可能な財政を構築しなければなりません。このため、歳出の無駄を徹底的に排し、行財政改革を推進するとともに、社会保障給付などの公的サービスの費用を広く公平に分かち合い、持続的な経済社会の活性化に資する税制を構築することが必要であります。
 こうした観点から、これまでの政府・与党の方針に沿って、個人所得課税、消費税を中心に、税制改革の具体化に向けた取組を進めてまいります。
 経済の今後の見通しと定率減税縮減の考え方でございますが、景気の現状を見ますと、昨年末の暖冬などの一時的な要因もあり、一部に弱い動きが続いておりますが、企業部門は前年と比べて収益の改善、設備投資の増加が依然として続くなど好調であり、家計部門に関しても失業率がここ十年来初めて趨勢的に低下するなど雇用環境の改善が進み、雇用者報酬が十―十二月期に増加に転じ、消費支出が一月に入り増加に転じるなど、所得環境の改善も進んでおり、大局的に見れば緩やかな景気回復が続いているものと考えております。
 今後についても、世界経済の回復が続く中で、企業部門が引き続き改善することを背景に、景気回復が雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及する動きが強まり、消費は着実に増加すると見込まれることから、我が国経済は引き続き民間需要を中心とした回復を続けるものと考えております。
 また、この定率減税の縮減の実施は来年の一月以降であり、定率減税の縮減を含めた今般の税制改正による平成十七年度の増収額は約一千七百億円となっていることも勘案しますと、定率減税の縮減が時期尚早との御指摘は当たらないものと考えております。
 定率減税見直しを判断する際の景気動向の尺度についてですが、この点に関しては、昨年末の与党税制改正大綱において、今後の景気動向を注視し、必要があれば機動的、弾力的に対応する旨の一文が盛り込まれていますが、これは、その時々の経済状況やその後の見通しについて総合的に判断して対応するとの趣旨であり、あらかじめ一定の尺度を念頭に置いて対応を判断するという意味ではないものと考えております。この与党大綱も踏まえ、政府としては、今後とも、景気動向を注視しつつ、適時適切な対応を行ってまいります。
 国債発行残高の累増についてでございますが、我が国の財政状況は、バブル経済崩壊後景気が低迷する中で、累次にわたる経済対策として歳出の拡大や減税措置を行ったことに加え、高齢化の進展に伴う社会保障費の増加等もあり、御指摘のとおり、非常に厳しいものとなっております。
 私は、こうした状況を脱し、経済活力を維持しつつ将来にわたり持続可能な財政を構築していくためにも、改革なくして成長なしとの考え方の下、今後とも、各般の構造改革に併せて無駄な歳出を省くための徹底した歳出改革を進めるとともに、歳出面だけでなく、歳入面も含めた財政構造改革を進めていく必要があると考えております。
 金利上昇リスクへの対応でございますが、長期金利は、市場において景気の動向等内外の複合的な要因によって決定されるものであり、政府や日銀の管理の下に置けるようなものではございません。一方で、実体経済が回復する前に景気回復を先取りして金利が過度に上昇することは、景気回復に悪影響を及ぼすおそれがあると考えております。また、多額の公債残高を抱えている現状を踏まえれば、国債金利の上昇による利払い費への影響などについて常に細心の注意を払わなければならないと考えております。
 このため、引き続き、市場の動向について注視するとともに、歳出、歳入両面からバランスの取れた財政構造改革を進めていくことが国債に対する信認を確保していく観点からも重要であると考えます。その上で、市場の動向等を踏まえた国債の発行や個人向け国債の販売等による保有者層の多様化など、国債管理政策の適切な運営に努めるとともに、日銀と一体となって市場の安定を目指してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(谷垣禎一君) 平野議員にお答えいたします。
 まず、為替介入と外貨準備についてのお尋ねがございました。
 我が国の為替介入は、市場の思惑的、無秩序な動きに対応して、相場の行き過ぎを防いで乱高下を抑制するということを目的としているものでございます。
 二〇〇三年から二〇〇四年三月までの間、おおむね三十五兆円の為替介入を実施したところでございますが、これは当時のイラク情勢等の地政学的リスクや米国の双子の赤字への過度の注目等から、経済ファンダメンタルズを反映しない思惑的なドル売りが非常に強かったことに対応したものでございます。
 政府としては、今後とも、為替市場の動向をよく注視して、経済ファンダメンタルズを反映しない過度の変動や行き過ぎがあった場合には、適切に対処していく考えであります。
 なお、これまでの介入の結果、我が国の外貨準備は八千四百六億ドルとなっております。また、十六年度末に見込まれる外為特会の評価損は約十一兆四千億円でございますが、外貨準備は、必要な為替介入等に備え、外貨を外貨として保有し続けることに意味がございます。円建ての評価損が特会の運営に直ちに影響を与えるものではございません。
 次に、年金事務費に係る国の負担の特例措置に関して御議論がございました。
 年金事務費の費用負担については、年金が広く国民を対象とした制度でございますので、国民年金法等の本則において全額を国庫で負担することとされております。
 他方、年金事務費は年金給付に要するコストでありますから、保険料で負担すべきとの考え方もございますし、議員が御指摘のように、労働保険等では保険料を基本的には事務経費に充てていることにかんがみれば、特例として、年金事務費に保険料を充てることも許されると考えておりまして、平成十七年度においても国の厳しい財政状況にかんがみて特例措置を継続することとしております。
 なお、年金事務費の財源の在り方については、恒久的な制度改正を行うべきだとの考え方も含めまして様々な意見がございますが、仮に国庫負担の原則を恒久的に変更する場合には、制度全体の議論が必要になるために、社会保険庁改革の動向なども踏まえて今後検討を重ねてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(竹中平蔵君) 平野達男議員から一問、名目成長率と名目金利の関係についてお尋ねがございました。
 名目成長率と名目長期金利の関係につきましては、いわゆる経済理論上の概念であります定常状態ではこれは等しくなるという考え方がございます。過去の現実を見ますと、その時々でこれは様々に変わるわけでございますが、ちなみに一九六六年から二〇〇四年までの長期平均で見ますと、名目長期金利の方が名目成長率を下回るという状況になっております。
 近年のデフレ状況におきましては、これが逆転しているわけでございます。しかしながら、まず第一に、財政赤字の縮減のプロセスを明示することによりまして財政に対する信頼感を高め、リスクプレミアムの増大を抑えること、そして第二に、デフレの克服と経済活性化によって名目成長率を高めていくこと、それらによりまして、名目成長率と名目金利が均衡する条件を整えることができるというふうに考えているところでございます。
 骨太方針二〇〇四におきましては、この二年間でデフレからの脱却を確実なものとすることとしておりまして、「改革と展望―二〇〇四年度改定」の参考試算におきましても、このようなシナリオが実現されていくということを考えております。
 いずれにしましても、政府、日銀一体となりましてデフレ克服を目指した取組を推進するなど、適切な経済運営を行ってまいるつもりでございます。(拍手)
#35
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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