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2005/03/18 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第8号
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2005/03/18 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第8号

#1
第162回国会 本会議 第8号
平成十七年三月十八日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第八号
  平成十七年三月十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(「新防衛計
  画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関
  する報告について)
 第二 地方自治法第百五十六条第四項の規定に
  基づき、公共職業安定所の設置に関し承認を
  求めるの件
 第三 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する
  法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
  議院送付)
 第四 地方税法等の一部を改正する法律案(内
  閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義
  務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律
  案(趣旨説明)
 一、日程第二より第四まで
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の報告に関する件(「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告について)
 大野国務大臣から発言を求められております。発言を許します。国務大臣大野防衛庁長官。
   〔国務大臣大野功統君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(大野功統君) 政府は、昨年十二月、安全保障会議及び閣議において「平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱について」、すなわち新防衛大綱及び「中期防衛力整備計画について」、いわゆる新中期防を決定いたしました。
 以下、これらについて御報告を申し上げます。
 新防衛大綱は、今後の我が国の安全保障及び防衛力の在り方について新たな指針を示すものであります。
 これまでの防衛大綱は、策定から十年近くが経過し、今日、我が国を取り巻く安全保障環境には大きな変化が生じております。特に、米国の九・一一テロのような国際テロ組織の活動、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展など、新たな脅威や多様な事態への対応が国際社会の共通の課題となっております。
 特に、我が国周辺の情勢につきましては、極東ロシアの軍事力は量的に大幅に削減されましたが、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在しております。また、北朝鮮は、大量破壊兵器あるいは弾道ミサイルの開発、配備、拡散等の軍事的な動きを見せており、地域の安全保障上の重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力に対する深刻な課題となっております。さらに、中国は、軍事力の近代化や海洋における活動範囲の拡大などを図っており、その動向には今後も注目していく必要があります。
 このような安全保障環境を踏まえ、新防衛大綱は、第一に、安全保障の目標として、我が国に直接脅威が及ぶことを防止、排除することと、国際的な安全保障環境を改善して我が国に脅威が及ばないようにすることの二つを掲げ、かかる目標を我が国自身の努力、同盟国との協力及び国際社会との協力を統合的に組み合わせて達成するとの安全保障の基本方針を明らかにいたしております。
 第二に、今後の防衛力については、いわゆる基盤的防衛力構想の有効な部分は継承してまいりますが、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応すること、同時に、国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むことを主眼といたしております。そのため、即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を効率的に構築してまいりたいと思っております。
 第三に、我が国の安全確保にとって必要不可欠な日米安全保障体制についてであります。新たな安全保障環境の下での戦略目標に関する日米の認識の共通性を高めつつ、日米の役割分担や在日米軍の兵力構成等に関する米国との戦略的対話に主体的に取り組む等の日米安全保障体制を強化することといたしております。
 かかる方針の下、弾道ミサイル、ゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部に対する侵略等の新たな脅威や多様な事態に実効的に対応することが肝要となっております。一方、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断されます。したがって、いわゆる冷戦型の防衛力整備構想を転換し、防衛力の本来の役割にかんがみ、最も基盤的な部分は確保しつつも、本格的な侵略事態に備えた装備、要員の抜本的な見直しを行うことといたしております。また、国際平和協力活動に適切に取り組むため、自衛隊の任務における同活動の適切な位置付けを含め、所要の体制を整えてまいります。
 なお、新防衛大綱は、おおむね十年後までを念頭に置いておりますが、五年後又は情勢に重要な変化が生じた場合には、必要な修正を行います。
 次に、新中期防について御報告を申し上げます。
 計画の方針については、第一に、本格的な侵略事態に備えるための基盤的な部分を確保しつつ、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を効率的に整備いたします。
 第二に、防衛行政を担う組織等を見直すとともに、自衛隊の基幹部隊、主要装備等について新たな体制へ早期かつ効率的に移行いたします。
 第三に、科学技術の発展に的確に対応しつつ、人的資源の効果的な活用を図りながら、統合運用の強化や情報機能の強化を図ります。
 第四に、装備品等の効果的かつ効率的な取得、関係機関や地域社会との協力等、防衛力を支える各種施策を推進いたします。
 第五に、日米安全保障体制強化のための各種施策を推進いたします。その際、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする在日米軍施設・区域に係る過重な負担軽減に努めてまいります。
 第六に、各年度の予算編成に際しては、格段に厳しさを増す財政事情等に配慮し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力の一層の効率化、合理化を図り、経費の抑制に努めてまいります。
 なお、この計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、平成十六年度価格でおおむね二十四兆二千四百億円程度をめどとし、また、このほかに一千億円を限度として、所要の事業の実施について措置し得るようにいたしております。
 以上、新しい防衛大綱、新しい中期防の下、国民の皆様の信頼にこたえ、国の安全と国民の安心のため、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を構築するとともに、国際的な安全保障環境の改善のための施策に取り組んでまいります。また、新たな安全保障環境に適切に対応し得るよう統合運用体制の強化を図り、高度な技術力、情報力、そして質の高い人的基盤に支えられた自衛隊の運用がなし得るよう心掛けてまいる所存であります。
 何とぞ、皆様の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(扇千景君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。浅野勝人君。
   〔浅野勝人君登壇、拍手〕
#6
○浅野勝人君 私は、自由民主党を代表して、新しい防衛計画の大綱について質問いたします。
 安保政策はその国のあるべき姿を決めますから、国民一人一人に自らの信念と生きる意味を考えさせて決断を迫ります。国防は軍人の占有物にあらずと述べて、軍部の圧力を抑え、ワシントン条約をまとめて史上まれに見る軍縮を実現した加藤友三郎の戒めをないがしろにした結果が太平洋戦争でした。政治の役割は誠に大きいことを自覚させられます。
 去年暮れに決まった防衛計画の大綱は、五年後の見直し規定が新たに設けられていますが、基本的には向こう十年にわたって日本の進路を決定付ける指針となります。
 総理は、新しい防衛計画が、これまでの基盤的防衛力構想とどう違うと認識しておいでになるのか、まずお伺いいたします。
 マラッカ海峡の海賊の襲撃事件には、世界の治安の悪化が日本の安全に直結していることを思い知らされました。シーレーン対策と被害者の救出について、じかに総理からお聞かせいただきたいと存じます。
 北朝鮮は、日本全域が射程に入るノドンミサイルを二百発保有しているという情報があります。弾道ミサイルの脅威は、日本にとって今日、そこにある危機であります。仮に日本を攻撃する目的でノドンが飛んできた場合、個別的自衛権を行使して迎撃できます。ところが、グアムやハワイに向けてテポドンが発射され、日本の領空を通過する場合、憲法は集団的自衛権を認めていませんから、一切手出しはできません。同盟国のアメリカへ向けて飛んでいくミサイルを見上げているだけというのも、それで済むのかという思いがいたします。
 弾道ミサイル対応を理論的に再構築しておく必要を感じますが、総理はいかがお考えでしょうか。
 もう一つ重要なテーマがあります。
 政府は、新しい大綱と一緒に、官房長官談話で、弾道ミサイル防衛システムに関する日米共同開発に限って武器輸出三原則の対象としないことといたしました。至極当然の措置と存じますが、問題はBMD以外のケースです。
 例えば、アメリカとヨーロッパ諸国が共同で開発している次期戦闘機F35は、参加各国が費用を分担し、それぞれ技術を持ち寄って造っています。こういうスタイルが世界の主流になっています。
 紛争地帯に武器を売る死の商人をやるわけではありません。いつまでも古い固定観念にとらわれていると、世界の潮流から取り残されます。武器輸出三原則は維持しながら、一方で、我が国も国際的な装備品の共同開発に参画できる仕組みを考える時期に来ていると存じますが、総理、いかがでしょうか。
 在日米軍の見直しに関する日米協議が本格化しますが、オペレーションの範囲が日米安保条約との関連で気になります。弾道ミサイルが世界四十六か国に拡散している現状の中で、地域的な安全保障の取決めにいつまでも縛られているのは時代後れかなと自問いたしますが、六〇年安保世代の私どもにはこだわりがどうしても残ります。
 総理は、トランスフォーメーションの実施に当たって、日米安保条約と関連取決めの枠内で対応すると明言しておいでです。この機会に改めて総理の見解を確認するとともに、今夜来日するライス国務長官との会談が実りあるものとなるよう期待いたします。
 昭和三十年の保守合同以来、自民党は今年、結党五十年を迎えました。秋には歴史の評価に堪え得る憲法改正草案を国民の皆様にお示しさせていただくことにしています。
 その中で、軍隊としての自衛隊の法的位置付けを明確にする方向で検討が進められています。自衛隊も発足して五十年が経過しました。この際、防衛庁を省に昇格するお考えはございませんか。私は、その時期が来ていると考えます。
 戦後を総括する節目の年に、我が国が国連安保理の常任理事国入りを果たす総理の決意を確認して、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 浅野議員に答弁いたします。
 新防衛大綱と従来の基盤的防衛力構想の違いについてでございますが、冷戦終結から十年余りたち、我が国をめぐる安全保障環境は大きく変化しております。従来の基盤的防衛力構想は、大規模な武力侵攻を念頭に置き、これを抑止することを目指しているものでありましたが、今後はテロなどの新たな脅威や多様な事態への対処に力点を移す必要があります。新防衛大綱は、我が国の今後の安全保障の指針として、テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな安全保障環境に適切に対処し得る防衛体制を構築することを目的とするものでございます。
 シーレーン対策と海賊襲撃事件の被害者救出についてでございますが、資源エネルギーの大半を海外に依存する我が国にとりまして、我が国への海上交通路の安定は極めて重要であります。このため、我が国としては、海上交通路にある各国との間で共通の安全保障上の課題に対する協力を推進し、この地域の安定化に努めることが必要であります。
 今回の海賊事件につきましては、関係国政府に被害者の安全確保につき協力を要請するとともに、政府一体となって関連情報の収集等に努めております。引き続き、関係国等とも緊密に連携し、安全かつ早期の被害者解放に向け全力を尽くす考えでございます。
 日本の上空を通過し、他国領域へ飛行する弾道ミサイルへの対応でございますが、我が国の弾道ミサイル防衛は、我が国国民の生命、財産を守るため、我が国に飛来する弾道ミサイルへの対処を目的としております。他国に向けて飛行する弾道ミサイルは、飛行の方角や高度の違いによって区別することが可能であり、これらについて対処することは考えておりません。なお、弾道ミサイルの発射に関し、自衛隊の任務遂行のために得られた情報を情報交換の一環として米軍へ提供することは可能であると考えております。
 国際的な装備品の共同開発に参画できる仕組みについてでございますが、昨年末の官房長官談話において、弾道ミサイル防衛システムに関する案件については、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、我が国の安全保障に資するとの観点から、共同で開発・生産を行うこととなった場合には、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないことといたしました。
 なお、弾道ミサイル防衛以外の米国との共同開発・生産案件やテロ・海賊対策支援等に資する案件については、今後、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念に照らし、個別の案件ごとに検討の上、結論を得ることとしております。
 在日米軍の兵力構成の見直しについては、現行の安保条約及び関連取決めの枠内で行われるものであります。現段階において、個別の施設・区域に関する見直しについては、いかなる決定も行われておりませんが、軍事技術の進歩なども踏まえつつ、抑止力の維持と地元の負担の軽減を両立させるべく、様々な可能性を追求しているところでございます。
 防衛庁の省移行についてですが、国民が自分の国は自分で守るという気概を持ち、国として適切な防衛の体制を取ることは国家存立の基本であると認識しております。この防衛庁の省移行につきましては、このような点を踏まえて、国民の十分な理解が得られる形で議論が尽くされることが重要であると考えております。
 我が国の国連安保理常任理事国入りについてですが、国際社会が直面する脅威に有効に対処するためには、二十一世紀の国際社会の現実を反映し、実効性及び信頼性を強化する形で安保理を改革することが必要であります。我が国は、アナン国連事務総長や関係国と協力しつつ、安保理改革の早期実現を目指しております。
 我が国が安保理常任理事国入りした場合、これまでに培われた能力、経験を生かして、安保理の意思決定に積極的に参画し、国際の平和と安全の維持に一層の役割を果たしていく考えであります。(拍手)
    ─────────────
#8
○議長(扇千景君) 榛葉賀津也君。
   〔榛葉賀津也君登壇、拍手〕
#9
○榛葉賀津也君 私は、民主党・新緑風会を代表して、新防衛計画の大綱及び新中期防衛力整備計画について小泉総理に質問いたします。
 そもそも、防衛大綱とは、日本をどんな脅威からどのように守るのかという根本的な問題と、その方法論を明記したものです。それを今回、約十年ぶりに新たに策定したのは、言うまでもなく、日本の防衛をMDすなわちミサイル防衛システムを中心としたものに変えていくという方向に大きくかじを切ったことにあります。
 八千億から一兆円と言われる高額なMDを導入したいけれども、だからといって防衛費を大幅に増やすわけにはいかない、そこで言わば集中と選択、企業の構造改革のように、人や予算の使い方を見直してスリム化する必要に迫られた、これが新防衛大綱が策定された理由でございます。
 MDについては、費用対効果の問題、導入決定までの説明不足に加え、日本においては防衛や安全保障といった本来大切な問題が、国民的な理解や関心が進まないままに既成事実だけが先行しているという面が否めません。
 冒頭、極めて重要な本件について、これからの国会議論が活発に行われることを心より期待をいたします。
 さて、まず、新防衛大綱の核心部分であるMDの技術的な不安要素についてお伺いします。
 政府は、ほかに代替手段がない、専守防衛的だからといった言葉だけを念仏のように唱え続けて、ここまで導入を進めてまいりました。米軍だけが行っているという実験の詳細も知らされないまま、また、目に見える形でどうしてMDしか選択肢がないのかという問いに対する明確な回答を国民に示さないまま、ただただ防衛庁が太鼓判を押しているのが現状です。総理、これで国民が本当に納得するとお考えでしょうか。総理の御認識をお伺いいたします。
 イラク戦争では、MDシステムの一部でもあるパトリオットが味方の英軍機、米軍機を誤って撃ち落としてしまったという報告もあります。国民の中には、この高価なMD計画という商品を品質保証もないまま日本が買うことにうさん臭さを感じている人が少なからずいます。これは政府の説明責任の欠如に起因しているからにほかありません。だからこそ、民主党は、MD技術に対する国民への更なる情報開示を強く要求しているわけでございますが、総理の御認識をお伺いします。
 新防衛大綱の策定と同時期に、ミサイル防衛を進めるために武器輸出三原則も緩和しました。確かに、日本を取り巻く戦略環境が変化する中で、ミサイル防衛が有効であるとの議論はあります。
 しかし、一方で、これまでの日本外交の理念やイメージの一つは武器を輸出していないということでもあったはずです。武器輸出三原則の緩和で、日本は実態として、国際的に最先端の兵器開発にかかわっているというイメージがつくられていき、拡散していきます。こうした一連のことで、日本が軍縮外交や核廃絶の取組をこれまでどおり、あるいはこれまで以上に展開することに影響は全くないと考えるでしょうか。総理に、三原則緩和による外交上の影響の有無についてお伺いします。
 言うまでもなく、日本の安全保障にとって自衛隊と米軍は大きな柱です。そのような現状の中、その一方の米軍の再編が予定されており、その再編の結果によっては自衛隊の役割や体制の見直しに影響してくることが容易に想像できます。しかも、その結論が出るのは数か月先だと政府自身が述べております。
 つまり、せっかく昨年末に策定した新大綱は、米軍再編の結果、わずか半年程度で再度見直さざるを得なくなってしまう可能性が否定できないのであります。政府の作業の時期が不適切であったのではないか、大綱の見直しの時期を再編の時期に合わせるべきではなかったのかという点について、総理はいかがお考えでしょうか。
 衆議院では、同僚の前原議員のこれに関する質問に、新防衛大綱は必ずしもトランスフォーメーションに関する協議のために策定したのではないなどと意図的に論点を外した答弁がされました。これは大綱と再編の時期を全く合わせる必要がないという意味なのでしょうか。参議院のこの場で、総理の明快な答弁を求めたいと思います。
 また、同じく、この大綱とトランスフォーメーションの関係について公明党の赤松議員が、今度は範囲の観点から、新たな大綱を日本が主体的に先に決めたのですから、再編計画もその範囲に収まるのは当然でしょうがとの質問しているにもかかわらず、総理は答弁すべき内容をすり替えておりました。
 もしも、仮に米軍再編の結果として自衛隊の役割や人員が変わるとしても、それはあくまでも新防衛大綱の範囲内で収まるということでいいのかどうかについて、総理にお答えを願いたいと思います。
 次に、宇宙の平和利用についてお伺いします。
 昭和四十四年五月九日、衆議院本会議において、宇宙を平和の目的に限って開発、利用するという宇宙の平和利用に関する決議がなされています。また、その後の昭和六十年、この決議における平和とは非軍事であるという確認がされました。ところが、平成十年の官房長官談話では、BMDが防衛的であるという趣旨だけ述べて、宇宙と非軍事の関係に触れないまま今日に至っています。
 国会が明確に宇宙の平和利用の決意を示しているにもかかわらず、これを尊重せず、政府がなし崩し的に宇宙を明らかに軍事的な目的で利用しようとしている現状について、総理の明快な見解を求めたいと思います。
 次に、マラッカ海峡での海賊襲撃事件についてお伺いします。
 言うまでもなく、マラッカ海峡は日本が輸入する石油の八〇%が通過し、世界の船舶の四分の一が通過する海峡でもあります。一刻も早い被害者の救出を求めます。
 日本は、一九九九年、日本人船長の貨物船が海賊船に乗っ取られた事件を契機に、ASEAN諸国と連携して海賊対策に本格的に取り組み、各国の海事当局間で情報連絡体制の窓口を一元化するなどの整備をしてまいりました。ところが、今回の事件でその連携がまだまだ十分でないことが明らかになりました。
 九・一一以降、安全保障上の脅威がグローバル化し、危機管理体制が多様化してきたにもかかわらず、実際には新防衛大綱や2プラス2などでアメリカとの連携だけが強化されている感が否めません。一体この間、アジアとの安全保障上の連携はどれだけ強化されたのでしょうか。私は、海賊対策などの現実的な危機管理を考えていく上で、むしろアジア各国との連携を加速させるべきだと信じますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
 私は、外交と防衛は車の両輪であると思います。
 各国にPKOなどで部隊を派遣することが、あたかも国連安保理常任理事国入りのための手段であるかのような議論もありますが、これは本末転倒であります。日本が国際社会で何をやりたいのか、そのための手段の一つが国連安保理常任理事国入りではないでしょうか。国連は己の姿を映す鏡だとも言われています。鏡に映った自分の姿に向かって何をしたらいいのか尋ねても、その答えはありません。
 総理は、安保理常任理事国という手段を使って一体何をしたいのか、日本をどういう国にしたいと考えているのでしょうか。総理の御理念を御自身の言葉で国民に語っていただきたいと思います。
 新防衛大綱で日本の防衛力の在り方をしっかりと議論することはとても大事なことです。しかし他方で、それと並行して、同等の重さを持ってこの国の外交の在り方をきちんと形にしていくことも大事なのではないでしょうか。外交と防衛が真の車の両輪となって、日本がどういう国として国際社会で生きていくのか、国民にも国際社会にも伝わるような迫力ある行動に民主党こそが全力を尽くしていくこと、このことを改めて決意をして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#10
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 榛葉議員に答弁いたします。
 弾道ミサイル防衛システムの信頼性と国民への情報開示についてでございますが、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が進展する中、ミサイル防衛システムは、弾道ミサイルによる攻撃から我が国を守る現在におきましては唯一の手段であると認識しております。
 このうち、イージス型護衛艦が装備するミサイルによるシステムはこれまで良好な試験結果を収めており、またペトリオットミサイルによるシステムは現に実戦にも配備されているものであります。どのような兵器でも百発百中を保証することは難しいと思っております。しかし、いずれのシステムも技術的信頼性は現在において高いと考えております。
 装備の能力に関する情報やデータについては、他国との関係などから一定の制約が伴うものでありますが、できるだけ国民に示してまいりたいと考えております。
 武器輸出三原則の緩和による外交上の影響でございますが、国際的に弾道ミサイルの拡散が進展する中で、弾道ミサイル防衛の能力向上は日米安保体制や我が国の安全保障に資するものであります。その観点から、BMDシステムに関する共同開発・生産案件に係る輸出については武器輸出三原則等によらないことといたしました。これは、厳格な管理を行う前提でとられる措置であり、武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念に反するものではございません。
 我が国は国際社会の先頭に立って軍縮・不拡散外交を推進しておりまして、この方針に全く変わりはありません。
 新防衛大綱とトランスフォーメーション、いわゆる米軍の変革についてですが、新防衛大綱は、我が国の今後の安全保障の基本指針として、テロ、大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな安全保障環境に適切に対処し得る防衛体制を構築することを目的とするものであります。
 新防衛大綱は、必ずしもトランスフォーメーションを進める米国との協議のために策定したものではありません。新防衛大綱では、米国との戦略的な対話に主体的に取り組むこととしております。また、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議に臨む方針として、米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域に係る負担軽減に配慮することを明示しております。
 米国との協議の本格化に先立って新防衛大綱を定めたことは、今後、戦略的な対話に主体的に取り組むためにも適切であったと考えております。また、米国との協議の結果、直ちに新防衛大綱の見直しが必要になるとは想定しておりません。
 弾道ミサイル防衛システムと宇宙の平和利用決議との関係でございますが、政府としては、専ら我が国領域における人命、財産に対する被害の防止を目的とした弾道ミサイル防衛についての取組は、御指摘の宇宙の平和利用についての国会決議の趣旨や平和国家としての基本理念に反するものではないと考えております。
 この国会決議が求めている宇宙の平和利用については、今後ともその趣旨を尊重してまいりたいと考えます。
 海賊対策についてですが、海賊等の国境を越える問題の解決に当たってはアジア各国等の緊密な協力が不可欠であります。このような観点から、我が国の提唱により、海上警備機関の間の協力強化を図ることを主たる目的としたアジア海賊対策地域協力協定を作成し、昨年の日本・ASEAN首脳会議においてテロ対処能力向上等に関する日本・ASEAN反テロ宣言を発出するなど、積極的に今までも協力を推進してまいりました。
 今後も、ASEANプラス日中韓などの枠組みで、海賊・テロ対策等を含む幅広い分野において関係国と一層緊密に連携していく考えであります。
 安保理常任理事国としての我が国の果たす役割でございますが、我が国はこれまでも平和の定着や国づくり、人間の安全保障、軍縮や不拡散等の様々な分野において国際社会への貢献を行ってきております。我が国が安保理常任理事国入りすることで、これまでに培われた能力と経験を生かして、安保理の意思決定に積極的に参画し、国際の平和と安全の維持に一層の役割を果たしていくことが重要であると考えております。(拍手)
    ─────────────
#11
○議長(扇千景君) 荒木清寛君。
   〔荒木清寛君登壇、拍手〕
#12
○荒木清寛君 私は、公明党を代表して、新防衛大綱及び新中期防について質疑をいたします。
 まず、新大綱が、関係者の真摯な議論の結果、同時多発テロ以降の不透明さを増す国際情勢に適切に対処し得る指針となったことを評価いたします。
 新大綱の特徴の一つは、防衛力の在り方だけではなく、我が国の安全保障の基本方針を明らかにしたことであります。すなわち、安全保障の二つの目標を示した上で、我が国自身の努力、同盟国との協力及び国際社会との協力の三つのアプローチが必要であるとしました。この統合的な安全保障戦略は、単に防衛庁だけの問題ではなく、全政府的取組が必要です。総理はどうリーダーシップを発揮していくのか、お尋ねいたします。
 また、三つのアプローチのうちの国際社会との協力として、ODAの戦略的な活用を含め外交活動を積極的に推進する等としています。
 ODAの戦略的な活用を言うのであれば、そろそろその予算の減少傾向に歯止めを掛けるとともに、国民のODAへの信頼を回復する必要があると考えますが、外務大臣、いかがでしょうか。
 関連して、新大綱では、中国軍の動向にも注目していく必要があるとしています。この点で、軍事力や防衛力の整備が互いの不信をもたらすことになってはならず、これを和らげるのが外交の力であります。政冷経熱と言われる日中関係の改善は総理の指導力に懸かっています。打開の道筋についてお答え願います。
 次に、新大綱では、自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むため、所要の体制を整えるとしております。国際テロの時代の中では、PKOへの参加だけではなく、紛争後の混乱にあえぐ国家の復興支援にも日本は多面的に参加すべきだと考えます。しかし、一部にある対米追従を深めるとの批判にどうこたえるのか、総理にお尋ねいたします。
 あわせて、自衛隊の国際平和協力活動の法的位置付けを改め、いわゆる本来任務とすることについて、その検討状況について御説明ください。
 さらに、この場合、武器使用基準を見直すのかどうか、防衛庁長官に説明を求めます。
 次に、弾道ミサイル防衛についてお尋ねします。
 今回の新中期防により、イージス艦四隻とペトリオットPAC3三個高射群の整備が完了します。しかし、ペトリオットの場合、十か所程度の拠点の防衛が可能になるだけで、日本全土の防衛体制が整うわけではありません。一方で、全土をカバーするには莫大な費用が掛かります。今後の弾道ミサイル防衛の在り方について総理の考えをお示しください。
 次に、武器輸出三原則について、当初、その大幅な緩和を求める要請もありましたが、我が党の主張を入れ、弾道ミサイル防衛分野に限り例外扱いとすることになりました。この措置はあくまでも例外であり、平和国家日本の旗印を掲げ続けるために、武器の輸出管理については今後とも厳格に対処していくべきものと考えます。総理の見解を求めます。
 今回の新大綱の策定に当たって、公明党は、めり張りの利いた見直しを行い、防衛費を全体としては抑制することを主張いたしました。その結果、新中期防は前中期防に比べ七千七百億円の減額となり、十七年度の予算も三年連続の減額となりました。今後も、一層の効率化を追求して、節度ある防衛力整備を行っていただきたい。総理の見解をお尋ねいたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#13
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 荒木議員に答弁いたします。
 統合的な戦略実現のための考え方でございますが、まず国防は、自分の国は自分の力で守る、この気概が大切であります。テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな安全保障環境に適切に対処するため、多機能で実効性の高い防衛力の整備に努めてまいります。その意味で、荒木議員が御指摘された、まず我が国自身の努力、同盟国との協力、国際社会との協力、これは今後一貫して堅持していかなきゃならない一つの重要なイデオロギーだと考えております。
 米国との戦略的な対話に主体的に取り組むとともに、在日米軍の兵力構成見直しに関しましては、米軍による抑止力を維持しつつ、施設・区域に係る負担の軽減に努めてまいります。
 さらに、日本の永続的な繁栄は世界の平和と安定の中に見いだされるものである、そういう考え方の下に、人道復興支援などの国際平和協力活動や取組、ODAの活用などを通じて、国際的な平和の確立に積極的に貢献してまいります。
 日中関係についてでございますが、昨年、胡錦濤国家主席と温家宝と私の会談において、日中関係は、二国間のみならず、地域、国際社会全体にとっても極めて重要であるとの認識を共有し、引き続き未来志向の協力を発展させていくことで一致いたしました。
 今後とも、日中間で意見が異なる個別の問題についても対話を深め、相互理解、相互信頼を増進し、幅広い分野における協力を一層強化していく考えであります。
 復興支援を含む平和実現のための取組についてですが、国際社会の平和の実現に向けて、我が国は、紛争解決のための手段として国連平和維持活動、いわゆるPKO等に取り組むとともに、復興支援等の紛争後の国づくりも含め、平和構築の分野で積極的な取組を行っております。こうした取組は関係国や国際機関とも協調しつつ我が国が主体的に行っているものであり、対米追従との批判は当たりません。
 今後の弾道ミサイル防衛の在り方についてですが、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が進展する中、ミサイル防衛システムは、弾道ミサイルによる攻撃から我が国を守る唯一の手段であると認識しております。
 我が国のミサイル防衛システムは、ほぼ我が国全域をカバーするイージス型護衛艦が装備するミサイルによるシステムと、これによる破壊をくぐり抜けた弾道ミサイルに対して目的地付近上空での破壊を目的としたペトリオットミサイルによるシステムの二段階の防御から成り立っております。
 御指摘のとおり、弾道ミサイル防衛には相当の費用を要すると見込まれますが、政府としては、広く国民の安全を守るために、実効的なミサイル防衛システムを既存の装備の改良等により効率的に整備してまいります。
 武器の輸出管理でございますが、昨年末の官房長官談話において明らかにしたとおり、武器の輸出管理については、武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念にかんがみ、今後とも引き続き慎重に対処するとの方針を堅持してまいります。
 効率的な防衛力の整備でございますが、冷戦終結後、我が国に対する本格的な侵略が発生する可能性は少なくなっていると考えております。大規模な武力侵攻に備えた装備、要員については、最も基盤的な部分は残しつつ、縮減を図ってまいりたいと考えております。
 今後は、新たな脅威への対応や国際平和協力活動への取組などをこれまで以上に重視してまいりますが、格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率化、合理化を図り、経費を抑制しつつ、多機能で実効性の高い防衛力の整備に努めてまいります。
 残余の質問については関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣大野功統君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(大野功統君) 荒木議員から、自衛隊の国際平和協力活動、そして武器使用基準についてお尋ねがありました。
 昨年十二月に閣議決定されました新防衛大綱においては、国際社会の平和と安定は我が国の平和と安全に密接に結び付いている、このような認識の下、自衛隊が国際平和活動に主体的かつ積極的に取り組むため、同活動の位置付けを含め所要の体制を整える、このようなことをいたしております。
 こうした活動を本来任務化することにより、我が国の国際平和における取組を国内のみならず国際社会にメッセージとして送る、これにより、厳しい環境の中で活動する隊員が一層の自覚と誇りを持って職務に専念し得る、このように考えております。
 今般の本来任務化は、武器使用権限などの枠組みを変えることなく、自衛隊の任務における位置付けを見直すことを考えております。
 他方、自衛隊が国際平和協力活動を行う場合の武器使用については、活動する隊員が安全かつ効果的に任務を遂行できるよう、国連PKO活動等の実態や国会等での御議論を踏まえつつ、不断に検討してまいりたい、このように考えております。
 いずれにせよ、本来任務化のための自衛隊法改正につきましてはできるだけ早期に実施したい、このように考えておりまして、与党とも十分調整の上、作業を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣町村信孝君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(町村信孝君) ODAについてのお尋ねがございました。
 日本を取り巻く国際環境の安定を確保するためには、不断の外交努力が必要であります。その一環として、開発途上国への援助を通じまして、日本にとって必要な平和で安定した国際環境を醸成し、諸外国との友好関係を増進するための重要な手段でありますODAを積極的に活用することは、極めて重要であると考えております。
 一方、ODAは国民の貴重な税金を原資とするものであり、また依然として我が国の経済・財政状況は厳しい状況にございます。そのため、政府としては、ODA大綱に示された基本方針や重点課題を踏まえて、我が国の外交政策上有意義なものとなるよう、ODA予算をより一層戦略的かつ効率的に活用してまいります。
 十七年度のODA予算と十六年度の補正予算の中のODA予算とを合計いたしましてようやくODA予算の減少傾向に歯止めを掛けることができたかと、こう思っているところであります。
 さらに、国民の皆様の御支持と御理解を得るべく、引き続きODA大綱に沿って、透明性の確保に向けて様々な取組を行っていく考えでございます。(拍手)
#16
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#17
○議長(扇千景君) この際、日程に追加して、
 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。中山文部科学大臣。
   〔国務大臣中山成彬君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(中山成彬君) 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 義務教育は、知育、徳育、体育の調和の取れた児童生徒を育成し、国民として共通に身に付けるべき基礎的資質を培うものであり、国は、憲法の要請により、すべての国民に対して無償で一定水準の義務教育を提供する最終的な責任を負っております。
 一方、政府においては、いわゆる三位一体の改革に関する政府・与党合意に基づき、国及び地方を通じた行財政の効率化を図る観点から、国庫補助負担金の改革等を進めているところでございます。
 このうち、義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する方針の下、費用負担についての地方案を生かす方策と教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について、今年秋までに中央教育審議会において結論を得ることとし、それまでの平成十七年度予算については暫定措置を講ずることとしております。
 この法律案は、こうした政府の方針を受け、義務教育費国庫負担金についての平成十七年度限りの暫定措置を講ずるとともに、文部科学省関係の補助金の整理及び合理化を図るものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について御説明いたします。
 第一に、義務教育費国庫負担金について、平成十七年度限りの暫定措置として、本来の国庫負担額から四千二百五十億円を減額するための所要の措置を講ずるものであります。
 第二に、市町村が行う就学援助に係る国の補助についての対象を要保護者に限定するなど、文部科学省関係の補助金の整理及び合理化を図るものであります。
 なお、このことに伴う地方財源の手当てについては、所要の財源措置が講じられることとされております。
 以上が法律案の趣旨でございます。
 よろしくお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
#20
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。北岡秀二君。
   〔北岡秀二君登壇、拍手〕
#21
○北岡秀二君 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案、いわゆる義務教育費国庫負担法案について、文部科学大臣に質問をいたします。
 今回の義務教育費国庫負担分の削減、いわゆる一般財源化は、三位一体改革を推進する中で、その一環として税源移譲を伴い実施されるものとして認識いたしております。
 そもそも三位一体改革は、地方の独自性を発揮させ、特色ある地方自治、地方分権を推進するために、地方への権限移譲に加え、その裏打ちとなる財政手当て、すなわち税源移譲等を進めるものであります。
 三位一体改革は、小泉改革の大きな柱であり、将来にわたり、日本の発展の原動力となる地方の在り方を構造的に改革するものであります。
 そこで、三位一体改革を進める中で、平成十七年度予算では義務教育費国庫負担の削減を地方への税源移譲の一環として位置付けられた政策判断について、大臣の御認識をお聞かせください。
 さて、義務教育費国庫負担の歴史を振り返ってみますと、戦後すぐに廃止されていた義務教育費国庫負担法が昭和二十八年に復活したことに始まります。復活した背景を見てみますと、地方により義務教育への財政てこ入れにかなりの格差が生じたこと、学級当たりの教員数が低下したことなどを受け、知事や教育委員会から制度復活の要請が出されました。また、学級規模や教職員の適正化を定める標準法が当時はなかったこともその背景にありました。
 その後の学校教育環境の変遷を私なりの理解で申し上げますと、社会経済の動きと不可分の関係があったことを認めざるを得ません。高度成長期やその後の安定成長期を通じ、我が国の教育は有能な人材を育成することで時代に貢献してきたと言えます。
 しかし、バブル崩壊をきっかけに、価値観の多様化やグローバリゼーションが一段と進展する中にあって、教育も変質を迫られてきたと言えます。高等教育の充実のみならず、義務教育においても、問題を迅速かつ正確に処理するだけでなく、生徒個々人の個性を発揮させ、創造的な能力を引き出し、世界各国と伍していける日本国家の建設に役立つ人材の育成が求められているものと思います。
 同時に、教育現場などではあしき平等が広がり、道徳観念や社会規範のゆがみ、家庭や社会環境の変化により青少年の悲惨な事件や事故が後を絶たない現実などから、心の教育の対応も急務であります。
 大臣には、教育環境の荒廃への対処を強めていただくようお願いするとともに、教育をめぐる環境変化の中で教育の在り方をどのように認識され、また青少年の深刻な問題などに関してどのような姿勢で改善を図るお考えなのか、お伺いいたします。
 さらに、教育面で創意工夫を凝らし、個性的、創造的人材を育成するには、国が統一的に方針を定める現在のような体制では限界があるとの意見があります。これが三位一体改革と連動し、地方の教育面での裁量権の拡大、その裏付けとなる義務教育財源の移譲の考え方が生まれたものと思います。
 閉塞状況にある学校教育を改革し、自ら考えて解決方法を見いだす人材、厳しさを増す世界規模での経済戦争に立ち向かう気宇広大な人材をはぐくむには、地方の様々な知恵を活用する必要があると思います。
 そこで、大臣には、地方が教育面でも独自の裁量権を発揮し、人材を育成していくことの重要性をどのように認識されているのか、率直な御意見をお聞かせください。
 今回の法律案の中で、義務教育費国庫負担については平成十七年度限りの暫定措置として位置付けられ、国庫負担の額を四千二百五十億円減額するものとされています。今後の費用負担の在り方については、今年秋の中央教育審議会の答申などを見て判断することになります。
 一般財源化については、義務教育の機会均等と水準確保が必要との根強い反対意見がある反面、現在でも高等教育は県の一般財源で支障なく行われていること、また地方格差が生まれないよう法的対処を行うことで義務教育の機会均等と水準維持はできるとの考えもあります。
 大臣は、将来の義務教育費の負担の在り方について、憲法や教育基本法での義務教育の規定や三位一体改革の進展などとも関連し、国庫負担のあるべき姿をどのように描かれているのか、御認識をお聞かせください。
 最後になりますが、小泉総理は、就任直後の所信表明演説で、米百俵の精神で聖域なき構造改革を主張され、大きな反響を呼びました。
 中国の古典、管子に次のような名句があります。「一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし」というものです。意味するところは、生涯の計画として、人物を育て、政に登用するならば、穀物や樹木から得るものよりはるかに大きな実りがあるということです。米百俵の精神にもつながるものであります。
 二十一世紀の世界の中での日本を見据えて、世界に冠たる歴史、文化、伝統を後々の世に継承し、更に発展させるためにも、人という木を植え、いかに立派にはぐくんでいくお考えなのか、御認識をお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中山成彬君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(中山成彬君) 北岡議員にお答えいたします。
 平成十七年度予算で、義務教育費国庫負担金の削減が地方への税源移譲の一環として位置付けられたことについてのお尋ねでございます。
 今回の改正は、三位一体の改革に関する昨年十一月の政府・与党合意に基づいて、平成十七年度限りの暫定措置として、義務教育費国庫負担金の総額から四千二百五十億円を減額するとともに、その減額分を税源移譲予定特例交付金によって補てんすることとなっております。
 この税源移譲予定特例交付金を含む今後の措置は、本年秋までに中央教育審議会において、義務教育費国庫負担金制度を含む義務教育の在り方について幅広く検討を行い、結論を得るまでの間において講ずることとされた暫定措置でありまして、今後の取扱いについては、中央教育審議会の審議結果を踏まえ、政府として本年中に結論を出すこととしております。
 次に、教育をめぐる環境変化の中での教育の在り方についてのお尋ねであります。
 我が国の教育は、第二次世界大戦後、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、その時々の時代の要請に対応しつつ、人材の育成を通じて我が国社会の発展の原動力となってきたものであり、諸外国からも高く評価されているものと考えております。
 一方で、戦後六十年が経過し、社会情勢が大きく変化する中で、昨今の教育の現状を顧みますと、いじめ、不登校、中途退学や青少年の凶悪犯罪の増加などの深刻な問題が生じております。
 このため、今後の教育においては、自己実現を目指す自立した人間の育成、豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成、知の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成、新しい公共を創造し二十一世紀の国家社会の形成に主体的に参画できる日本人の育成、日本の伝統文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成を目指し、人間力向上のための教育改革を推進することが必要であると考えております。
 次に、青少年の深刻な問題などに関してどのような姿勢で改善を図るつもりかというお尋ねでございます。
 青少年の問題行動については、悲惨な事件が相次ぐなど、大変深刻な状況にあると認識しております。
 その原因、背景としては、規範意識や社会性が十分身に付いていないこと、他人への思いやりや人間相互の連帯感が希薄化していること、死や生に関する現実感覚の希薄化が生ずる懸念があること等、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。このため、家庭、学校、地域社会において、様々な人々と接し社会とかかわる体験等を通じて、青少年に善悪の判断などの規範意識や倫理観、社会性、命の大切さや他人を思いやる心等をしっかりと身に付けさせることが必要であると考えます。
 今後とも、青少年の心の豊かさをはぐくむことができるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、教育面で地方が裁量を発揮することの重要性についてのお尋ねでございます。
 子供や地域の状況に応じた特色ある教育を実現するために、できる限り市町村や学校の裁量を拡大し、学校や地域が創意工夫を発揮できるようにすることは大変重要であると考えております。このため、文部科学省といたしましても、教育長の任命承認制度を廃止するとともに、教育課程の基準の大綱化、弾力化や義務教育費国庫負担金への総額裁量制の導入を図るなど、地方の自由度を大幅に拡大してきたところでございます。
 今後とも、全国的な教育水準の確保と教育の機会均等についての国の責任もしっかりと担いつつ、現場主義を徹底し、教育現場の創意工夫を生かすことができる教育改革の実現に精力的に取り組んでまいります。
 憲法や教育基本法における義務教育の在り方の規定と関連し、国庫負担制度がどのようにあるべきかというお尋ねでございます。
 義務教育については、国は、憲法第二十六条並びに教育基本法三条及び四条の規定により、すべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っております。
 義務教育費国庫負担制度は、国がこうした責任を制度的、財政的に担保するため、地方の財政力の実情にかかわらず、全国すべての地域において優れた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために極めて重要な制度であり、今後ともその意義は大きいと考えられます。
 なお、議員御指摘の高校教育については、授業料を徴収することができ、また地方自治体に設置義務がない、設置割合や定員も様々であります。一方、義務教育は設置義務が課せられ、無償の教育が確実に実施されなければならないことから、同列に論ずることはできないと考えております。また、義務教育の機会均等と水準維持のため、法的対処を行うことは、教育の地方分権の観点から適切ではないと考えられます。
 義務教育費国庫負担制度については、昨年末の政府・与党合意に基づいて、義務教育制度の根幹を維持し国の責任を引き続き堅持するとの方針の下、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討し、今年秋までに中央教育審議会において結論を得ることとしております。
 文部科学省としては、義務教育に対する国の責任をしっかり果たしていくことができるよう、義務教育改革に努めてまいりたいと考えております。
 今後の我が国における人材育成についてのお尋ねでございます。
 時代や社会の大きな変化の中で、我が国が経済社会の活力を維持し、子供たちが夢と希望を抱き未来を切り開いていくことができる社会を築いていくためには、教育を国政上の最重点課題と位置付け、国家戦略として人間力向上のための教育改革を推進することが必要であると考えております。
 私といたしましては、昨年十一月に「甦れ、日本」と題する教育改革案を発表し、頑張る子供を応援する教育を目標として掲げ、教育基本法の改正を始め学力向上のための具体的な方策、教員の質の向上、現場主義の徹底、義務教育国庫負担制度の改革などの改革を進め、人間力向上のための教育改革の推進に一層力を尽くしてまいりたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
#23
○議長(扇千景君) 水岡俊一君。
   〔水岡俊一君登壇、拍手〕
#24
○水岡俊一君 民主党の水岡俊一でございます。
 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず、質問に入る前に一言申し上げます。
 衆議院文部科学委員会にあってはならないことが起こりました。義務教育の根幹にかかわる義務教育費国庫負担制度に関して審議をしているさなか、自民党は、参考人招致をめぐって、民主党が推薦した参考人を拒否し、委員長が職権で参考人質疑を中止するという前代未聞の暴挙を行いました。
 民主党は、重要案件であり、参考人の意見を聴き、審議をすることを強く求めましたが、受け入れられませんでした。よって、この場において断固抗議をするものであります。
 去る二月の十四日、大阪府寝屋川市立中央小学校において、学校を訪れた卒業生により一人の教員が殺され、二人の教職員が重傷を負わされるという、本当に痛ましく悲しい事件が起こりました。亡くなられた鴨崎教諭に心から哀悼の意をささげるとともに、重傷を負われた二人の教職員の一刻も早い回復を願うものです。
 子供にとって何よりも安心、安全でなければならない学校や幼稚園、保育所において、またしても殺傷事件が起こったことは極めて残念でなりません。四年前の大阪教育大附属池田小学校の事件を始め、近年、学校などにおいて幾つもの殺傷事件が起きている中、文部科学省は、多少の防犯装置や施設の補助は行っているものの、基本的には通達や手引書を出すだけといった通達行政にとどまり、義務教育を行う学校における安全確保は国の責任でもあるという姿勢を示してはいません。
 学校などにおいて外来者に対応するためには、校長や教頭などの管理職だけでは手が足らず、専ら子供たちの教育に携わる教職員にもその余裕は全くありません。たとえ監視カメラを設置したとしても、モニター画面を常時チェックする体制は今の学校現場にはありません。そもそも、教職員に外来者との対応は本来の職務にないはずであります。
 今や、専門の保安職員を配置するなどして、不審な外来者に対し対応するといった方途がどうしても必要であると考えられます。
 大臣は、さきの予算委員会において、私の質問に対し、学校の巡視等に保護者や地域住民のボランティアを活用するも一つとの御答弁がありました。刃物を隠し持っているかもしれない不審者への対応をボランティアにゆだねるという発想は全く理解ができません。私は、さらに、ボランティアにもしものことがあったらどうするのですかとお尋ねしたところ、それに対し、保険を掛けて協力してもらっているところもあるとの大臣の御答弁。何たる理不尽なお答え。人の命の尊さを軽視し、危機管理の課題に対して全くの無策であることを物語るもので、耳を疑ったのは私だけではありません。
 文部科学大臣、もう一度聞かせてください。
 義務教育を行う学校において、掛け替えのない子供たちや教職員の命を守り、安全で安心して生活できるよう、国としての責任、義務教育費国庫負担制度の精神として学校の保安要員等を配置するお考えはないのか、また、学校の総合的防犯安全対策として学校安全法を策定する予定がないのか、お尋ねします。
 OECD、経済協力開発機構によるPISA、学習到達度調査の結果、そしてIEA、国際教育到達度評価学会の調査結果が大変話題を呼んでいます。日本の子供たちの順位が落ちたことにより、文部科学大臣は学力低下を声高に叫ばれ、そしてマスコミがそれを積極的に取り上げることを利用し、競い合う心、切磋琢磨する精神等々を強調しながら、学力テストの実施や総合的な学習の見直し、土曜日の授業復活などの発言を繰り返しておられます。
 PISA調査の目的は、二十一世紀を生き抜くための道具としての能力を測ることであり、状況を分析し、推論し、自分の考えを持って意思疎通することができるか、また生涯を通しての学習を継続できる能力を身に付けているかを調べることだと言われています。そのことを、大臣、あなたは御存じでしょうか。
 そしてOECDは、一九八〇年代、数学でトップを取っていた日本や韓国の子供たちの知識は変化が激しいこれからの社会に果たして役立つかどうか分からないと批判し、試行錯誤をしながら、新しい学力観に基づいた調査へと設問を変えてきたのです。そのPISAの新しい学力観による調査で順位を落とした日本の子供たちの結果が示しているものは、従来の暗記・詰め込み型から生きる力の習得への転換といった、思考力や判断力、問題解決能力を育てることが最も重要であり、正にゆとりの中でじっくり考えさせる教育や総合的な学習を求めていくべきだという方向性にほかなりません。そのことを、文部科学大臣、あなたがだれにも増して強く訴えるべきだと思いますが、いかがですか。
 かつて文部科学省は、PISA調査結果が示す日本の子供たちの学力に危機感を持ち、いち早く、生きる力に視点を当て、大変な勇気を持ってゆとり教育の必要性を説き、総合的な学習を勧めてきたではないですか。その結果、学校現場は、特別な教員の配置もなく、テキストもないまま、戸惑い、悩みました。しかし、全国の教職員たちは、文部科学省の考えを理解するよう努め、懸命に努力をしてきたわけです。今、ようやく総合的な学習も定着し掛けており、取組の成果が芽を出そうというこのときに、先祖返りとも言える方針転換は愚の骨頂であります。
 今、全国の学校現場では大変な混乱が起こっています。学習指導要領の見直し内容がまだ示されないうちに、ゆとり教育や総合的な学習の見直しを大臣が一方的に押し付けるかのように発言されるからであります。来年度の教育課程編成を行っている学校現場は大混乱です。一体何を根拠に教育課程を編成すればいいのか、羅針盤を失った船のようです。ここで、是非とも日本の文部行政のトップリーダーとして、目先にとらわれず、冷静で的確なメッセージを示していただきたいと思います。
 ところで、PISAの結果で総合一位に輝いた国はどこだか、もちろん大臣は御存じだと思いますが、フィンランドです。日本は、順位が下がったことにより学力が低下をしたとされ、さあ、世界のトップの座を取り戻せとばかり、ハッパが掛けられています。そこで、学力を向上させるためには、PISAの調査で連続一位となったフィンランドに注目し、その方法を学ぼうとするのが当然の考え方です。
 ところが、不思議なことに、そのような話は一切出てきません。なぜなら、一位のフィンランドの学校では、授業時間数が少ない、習熟度別学級もない、序列をつくるためのテストや競争もなく、有名校への進学熱や学力の二極分化のエリート教育もない、そして大学までほとんど無償という実情があるからです。つまり、フィンランドの教育は、大臣の言われる方向、政府が導こうとする方向と百八十度まるで反対を示しているからであります。
 更に付け加えるならば、教育費における公の財政支出のGDP比は、二〇〇一年のOECD統計によると、世界最低の日本三・五%に対し、フィンランドは五・七%と教育にお金を掛ける国であるからです。
 フィンランドの教育になぜ学ぼうとしないのか、改めて文部科学大臣の見解をお聞きいたします。
 現代の若者の変化、とりわけニートと呼ばれる若者の増加、度重なる学校の内外での殺傷事件などに何とか対応していきたいという思いの余り、十分な検証作業もしないまま、わらをもつかむ思いで、PISAの結果を読み違え、かつての詰め込み教育に逆戻りというのでは余りにもお粗末であります。完全なミスリードと断言できます。
 教員が悪い、親が悪い、挙げ句の果てに日教組が悪いなどと、いたずらにだれかの責任にして非難していれば教育行政の最高責任者の仕事が果たせると思っておられるなら、言語道断、全くの責任転嫁と言わざるを得ません。
 今、全国の義務教育を行う学校の教職員と保護者に対し、文部科学大臣の高い見識を披瀝し、文部科学省の義務教育に懸ける熱い思いを科学的、実証的な根拠とともに示すことができるかが、文部科学大臣、あなたの責任なのではないでしょうか。大臣、いかがお考えですか。
 近年、学力低下が叫ばれる中において、受験産業の予備校や塾はかつての繁盛ぶりを示しています。当然ながら、家計における教育費の増大を招き、同時に親の階層格差を拡大しています。例えば、年収四百万円以下の低所得世帯の年間教育費は約百五十八万円で、家計の半分近くも占めているのに、年収一千万円以上の裕福な世帯では、家計の四分の一ではありますが、約二百四十二万円と、そこには教育費の大きな格差が生まれています。言い換えれば、親の経済状態の格差が子供の教育に大きく影響しているわけです。
 また、全国の小中学校の図書費や教材費などは、一定の基準に基づき地方交付税交付金に算入されて、都道府県、市町村を通じて各学校に配分されているわけですが、文部科学大臣御自身が発言されているように、現実には各学校に配分されている図書費や教材費は基準に満たないケースが多く、十分に措置されている学校とそうでない学校との格差は、各市町村や各都道府県によって大きく広がっています。言い換えれば、地方自治体の財政状態の格差が、これまた子供たちの教育に大きく影響しているわけです。
 しかし、憲法第二十六条、教育を受ける権利、教育の機会均等、第二項に義務教育の無償がうたわれ、教育基本法第三条に「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。」と明確に示されています。また、教育基本法第十条第二項には、教育行政の任務は教育条件の整備義務にあるとうたわれております。
 このように、憲法、教育基本法の精神に基づいて考えてみると、今日の教育の格差問題がゆゆしき事態であることは、だれの目にも明らかです。国の責任としてこれまで掲げてきた義務教育費国庫負担の考え方が現実的に機能しているのか再検討すべきだと考えますが、総務大臣、文部科学大臣のお考えを示してください。
 今、この改正法案によって、更に義務教育費国庫負担の本来の意義が大きく揺らいでいます。地方分権の名の下、財政再建の単なる数字合わせに巻き込まれ、教員の給与費の一部を負担金削減の中に盛り込むような今次の改正案には、断じて賛成しかねるというのが私たちの立場であります。
 暫定的に四千二百五十億円を一般財源化するという案は、表向きには中教審の見解を待つというポーズですが、小泉総理は次のように述べています。義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、地方にその権限を渡してもいいということで、今後のことについては中教審等の意見を踏まえて協議していく。一方、麻生総務大臣は、地方の改革案が適切に生かされる形で中教審の結論が導かれると考えていると答弁しています。そして、中山文部科学大臣は、今回の暫定措置は中教審の今後の検討を制約するものではないと述べています。
 このように、小泉総理、麻生総務大臣、中山文部科学大臣の答弁がばらばらになっており、正に内閣不一致と言わざるを得ません。官房長官、内閣としての統一見解をここで明らかにしていただきたい。
 最後に、義務教育を国の責任として、子供の教育を受ける権利を保障し、そのために教育の機会均等を図る観点から、この改正法案にどのような意味があるのか、文部科学大臣にお尋ねを申し上げ、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣中山成彬君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(中山成彬君) 水岡議員にお答えいたします。
 国の責任で義務教育諸学校に保安要員等を配置する考えはないかというお尋ねでございます。
 国として学校の安全確保のための施策を推進することは極めて重要な課題であると考えております。安全確保のための人的措置を含め、各学校の具体的な安全対策につきましては、学校の設置者において、まずそれぞれの実情を踏まえて適切に対処していただく必要があると考えております。もちろん、文部科学省としては、子ども安心プロジェクトを推進いたしまして、学校の設置者がそれぞれの実情を踏まえた対策を円滑に実施できるよう支援を行ってきたところでございます。
 平成十七年度予算案におきましても、警察官OB等の協力の下、各学校を定期的に巡回して、警備のポイント等を具体的に指導する地域学校安全指導員を委嘱する経費等を計上しております。
 今後とも、各学校において安全管理に関する更なる取組が行われるよう、学校安全に関する施策の一層の推進を図ってまいります。
 学校の総合的防犯安全対策としての学校安全法を策定する予定はないのかというお尋ねでございます。
 学校の総合的な防犯安全対策につきましては、全国一律に一定の法的義務を課するよりは、各学校においてそれぞれの地域の実情を踏まえた実効性のある取組を継続的に進められるよう支援することがまず重要なことであると考えております。
 文部科学省としては、これまでも、危機管理マニュアルの作成や学校安全のための施設設備の支援等を通じて、各学校や教育委員会の取組を支援してきたところでございます。
 今後とも、各学校がそれぞれの実情を踏まえ、学校の安全確保という重要な課題に適切に対応していくことができるよう、学校安全に関する施策の一層の推進を図ってまいります。
 PISA調査の目的についてのお尋ねでございます。
 PISA調査は、OECDが行っている国際的な学習到達度に関する調査であります。具体的には、義務教育修了時点の十五歳児を対象として、その知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるか、応用力を測定することなどを目的として実施されているものであります。
 ゆとり教育の中でじっくり考えさせる教育や総合的な学習を求めていくべきだという御指摘でございます。
 OECDが発表しましたPISA調査の結果によりますと、読解力など、我が国の子供の学力には低下傾向が見られます。また、勉強する時間が短く、勉強への動機付けも乏しいなど、学ぶ意欲や学習習慣が十分身に付いていない状況にあります。
 現行の学習指導要領は、基礎的な知識を身に付けさせ、それを活用しながら自ら考える力などの生きる力をはぐくむことをそのねらいとしておりまして、これはPISA調査で評価する学力と同じ方向にあります。
 私は、こうした理念や目標に誤りはないと考えておりますが、ただ、先ほどのPISAの結果でも分かりますように、そのねらいが十分に達成されているのか、あるいは必要な手だてが十分講じられているのか、こういったことについて課題があると考えております。
 学習指導要領の時間の見直しについて、冷静で的確なメッセージを示すべきではないかという御指摘でございます。
 私としては、この国際的な学力調査で示された学力の低下傾向については深刻に受け止める必要があると考えております。このため、学習指導要領全体の見直しが必要であると考え、先般、中央教育審議会に対しまして見直しに当たっての検討課題を示し、御審議をいただいているところでございます。
 今後、中央教育審議会においては、各教科や総合的な学習の時間など、学習指導要領全体について検討し、本年秋までに具体的な方向性をお示しいただきたいと考えております。
 私といたしましては、あくまで教育を受ける子供の立場に立って、常にその時点で最善と考えられる教育を行うために、スピード感を持って検討を進めてまいります。
 PISAで連続一位になったフィンランドの教育について、なぜ学ぼうとしないのかというお尋ねでございます。
 フィンランドは、国が教育課程の基本的枠組みを定め、全国的な教育水準の確保、教育の機会均等等を図った上で、市町村や学校が一定の裁量を有して特色ある教育課程の編成に取り組んだり、あるいは教員の質の向上を図っておりまして、これがPISAの好成績にもつながっていると考えられます。
 現在進められております中央教育審議会における義務教育の在り方全般の審議におきましても、当然、このような諸外国の教育改革も参考にしながら、精力的に御審議をいただいているところでございます。
 文部科学大臣として、科学的、実証的な根拠に基づきつつ、義務教育に懸ける熱い思いを示し、義務教育の改革を進めることについてのお尋ねでございます。
 義務教育の在り方について議論するに当たりましては、PISA調査を始め、児童生徒の学力や学校における教育課程編成などの各種の実態調査とか、あるいは、フィンランドのみならず、義務教育制度に関する主要各国の国際比較などの実証的、客観的なデータに基づいて検討することは極めて重要であると考えております。
 文部科学省としては、各種のデータや資料の収集、分析に努めますとともに、それらを中教審における義務教育の審議にも提供しているところでございます。
 さらに、このたび、児童生徒、教員、保護者、地方自治体の首長などを対象といたしまして義務教育に関する意識調査を実施し、今後の検討に生かすこととしております。
 子供は社会の宝、国の宝でございます。新しい時代の国づくりの基盤となるのは人であります。教育は国家の礎として重要なものであると考えております。特に義務教育は、憲法が保障する国民の権利であるとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置付けられるものであります。
 私としては、学習指導要領全体の見直しなどによる学力の向上、教員の質の向上、現場主義の徹底などの義務教育の改革に責任感とスピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。
 憲法や教育基本法の精神に照らすと、現在の教育の格差はゆゆしき事態であり、義務教育費国庫負担の考え方が機能しているかというお尋ねでございますが、義務教育費国庫負担制度は、地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国のすべての地域において優れた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために極めて重要な制度であります。
 仮にこの制度を廃止した場合には、地域間における税収格差によりまして四十道府県で教育費の財源不足に陥るおそれがあること、その財源不足を地方交付税で調整するとしても、そもそも地方交付税が三位一体改革により総額を抑制され、その影響が教育に及ぼすおそれがあること、使途が限定されないため義務教育費に充てられる保障がなくなることなどから、結果として教育水準に著しい地域格差が生ずるおそれがあり、教育の機会均等を図る上で重大な問題があると考えております。このため、我が国の教育の機会均等を果たす上でこの制度の役割は極めて大きく、今後ともその重要性に変わりはないと考えております。
 今後、義務教育費国庫負担制度の在り方につきましては、政府・与党合意に基づきまして、今年秋までに中央教育審議会において結論を得ることとなっておりまして、この結論を踏まえて義務教育費国庫負担制度の改革に努めてまいりたいと考えております。
 最後の質問でございます。子供の教育を受ける権利を保障し、そのために教育の機会均等を図る観点から、本改正案にどのような意味があるのかと、このような御質問でございます。
 義務教育は、憲法の保障します国民の権利であるとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置付けられるものであります。国が最終的な責任を負っているものと、このように考えております。
 一方、政府におきましては、いわゆる三位一体の改革に関する政府・与党合意に基づきまして、国庫負担金の改革等を進めているところでございます。
 今回の義務教育費国庫負担法の改正は、この政府・与党合意に基づき、義務教育に係る国の責務を引き続き堅持し、教職員給与費の実支出額の二分の一を負担するという法の原則は維持した上で、平成十七年度限りの暫定措置を講ずるものであります。
 いずれにしても、義務教育費国庫負担制度については、政府・与党合意に基づき、今年秋までに中教審の審議を、結論を得ることとなっておりまして、この結論を踏まえ、義務教育費国庫負担制度の改革を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(麻生太郎君) 義務教育について、国の責任と国庫負担制度との関係についてのお尋ねがあっております。
 義務教育費国庫負担制度は、これまで重要な役割を果たしてきたということは十分に認識をいたしております。しかしながら、教育を含めた行政サービスが一定水準に達した現在、地方分権に向けて、国、地方との役割分担の見直しが求められておると存じます。特に、義務教育については地方の自治事務とされており、国は、制度の大枠を法律によりまして担保し、その所要財源を確実に保障する一方で、具体的な運用は地方に任せるとの考え方に立って、地方の自由度を最大限拡大することが重要と考えております。
 所要財源の保障の方式につきましては、それは国費によるか否かは時代の流れを踏まえて選択し得るものであろうと存じます。地方団体からは、国庫負担金をやめて税源移譲をすることを求められてきております。このように、地方分権の方向性を踏まえれば、税を中心とした一般財源による保障も十分にあり得るものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣細田博之君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(細田博之君) 水岡議員にお答え申し上げます。
 義務教育費国庫負担金の取扱いについてお尋ねがございました。
 ただいま文部科学大臣、総務大臣がお答えしたとおりでございまして、十六年、昨年の十一月二十六日の政府・与党協議会の合意に基づきまして、政府一丸となって取り組むこととしております。
 私としては、総理大臣、総務大臣、文部科学大臣の見解は、いずれも政府・与党協議会の合意に基づくものであり、ばらばらとの御指摘は当たらないものと理解しております。(拍手)
#28
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#29
○議長(扇千景君) 日程第二 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、公共職業安定所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長岸宏一君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔岸宏一君登壇、拍手〕
#30
○岸宏一君 ただいま議題となりました承認案件につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本件は、厚生労働省の所掌事務の円滑かつ効率的な遂行を図るため、新たに越谷公共職業安定所を設置することについて、国会の承認を求めるものであります。
 委員会におきましては、公共職業安定所の現状、相談業務体制の改善の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、採決の結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#31
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#32
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#33
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成            二百三十  
  反対               〇  
 よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#34
○議長(扇千景君) 日程第三 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長渡辺孝男君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔渡辺孝男君登壇、拍手〕
#35
○渡辺孝男君 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、最近における市町村の廃置分合等に伴い、簡易裁判所の名称並びに所在地及び管轄区域の表示を改めるほか、新潟県新津市の新潟市への編入合併後も従前の簡易裁判所の管轄区域を維持するとともに、今後同様の事態に対応するための規定の整備等を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、管轄区域の変更と住民の利便性の確保、管轄区域を見直す場合の基準、今後の法改正の必要性、日本司法支援センターの運営の在り方、公正証書の作成の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#36
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#37
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#38
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十九  
  賛成           二百二十九  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#39
○議長(扇千景君) 日程第四 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。総務委員長木村仁君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔木村仁君登壇、拍手〕
#40
○木村仁君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、定率減税の縮減、所得譲与税の増額、法人事業税の分割基準の見直し等を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、地方の補助金改革案に対する政府の対応、義務教育費国庫負担金に関する中央教育審議会の結論の取扱い、定率減税の縮減・廃止と景気や国民の生活実態、六十五歳以上の者に対する非課税限度額の廃止の是非、地方公共団体の監視機能の強化等について質疑が行われました。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して吉川春子委員、社会民主党・護憲連合を代表して又市征治委員より、それぞれ反対する旨の意見が述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し三項目から成る附帯決議が付せられております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#41
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#42
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#43
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成             百三十  
  反対               百  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#44
○議長(扇千景君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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