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2005/04/27 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第19号
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2005/04/27 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第19号

#1
第162回国会 本会議 第19号
平成十七年四月二十七日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十九号
  平成十七年四月二十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(西日本旅客
  鉄道株式会社福知山線列車事故について)
 第二 社会保障に関する日本国とベルギー王国
  との間の協定の締結について承認を求めるの
  件
 第三 社会保障に関する日本国政府とフランス
  共和国政府との間の協定の締結について承認
  を求めるの件
 第四 社会保障に関する日本国政府とフランス
  共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年
  金保険法等の特例等に関する法律案(内閣提
  出)
 第五 社会保障に関する日本国とベルギー王国
  との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等
  の特例等に関する法律案(内閣提出)
 第六 都市鉄道等利便増進法案(内閣提出、衆
  議院送付)
 第七 有限責任事業組合契約に関する法律案(
  内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、元議員三木忠雄君逝去につき哀悼の件
 一、日程第一
 一、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正す
  る法律案(趣旨説明)
 一、旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収
  益の規制等に関する法律の一部を改正する法
  律案(趣旨説明)
 一、日程第二より第七まで
 一、日本国憲法に関する調査の報告
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 秋元司君、松田岩夫君から来る二十九日から十日間、小林温君から来る五月一日から八日間、桜井新君から来る五月十日から九日間、段本幸男君から本日から十二日間、山本一太君から来る三十日から九日間、簗瀬進君から来る二十九日から八日間、いずれも海外渡航のためそれぞれ請暇の申出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ─────・─────
#5
○議長(扇千景君) さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員三木忠雄君は、去る二月二十七日逝去されました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。
 つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞をささげることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
 弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられ さきに法務委員長 運輸委員長の重任にあたられました 元議員三木忠雄君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます
     ─────・─────
#7
○議長(扇千景君) 去る二十五日発生いたしました西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車事故により、多くの尊い人命が失われましたことは、誠に痛恨の至りに堪えません。犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、その御遺族に対しまして、衷心よりお悔やみ申し上げます。また、負傷された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 ここに、犠牲者の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと存じます。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕
#8
○議長(扇千景君) 黙祷を終わります。
     ─────・─────
#9
○議長(扇千景君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車事故について)
 国土交通大臣から発言を求められております。発言を許します。北側国土交通大臣。
   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
#10
○国務大臣(北側一雄君) 西日本旅客鉄道株式会社福知山線における事故について御報告をいたします。
 四月二十五日午前九時十八分ころ、西日本旅客鉄道株式会社福知山線の尼崎駅―塚口駅間において列車が脱線し、多数の死傷者が生じる事故が発生をいたしました。事故に遭いお亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りし、御遺族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げる次第でございます。また、多くの方々が事故で負傷を負われました。一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。
 この事故は、宝塚駅発同志社前駅行き七両編成の快速列車のうち前の五両が脱線し、そのうちの前の二両がマンションの一階部分に衝突したものでございます。約五百八十名の方が乗車をされておりましたが、これまでに判明したところでは、死者は九十一名、負傷者は四百五十六名に上っております。
 言うまでもなく、安全は運輸サービスの基本であり、安全性の確保こそが利用者に対する最大のサービスでございます。今回、このような重大事故が生じたことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 政府といたしましては、この重大事故に対しまして、現在懸命な取組を行っているところでございます。現在も昼夜を徹しまして、官邸対策室を中心に国土交通省、消防庁、警察庁、防衛庁、厚生労働省等の関係省庁が一丸となって、被害を受けられた方々の救助を最優先とした事故への対応を行っているところでございます。
 国土交通省の対応といたしましては、私を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するとともに、現地でも近畿運輸局に福知山線事故対策本部を設置し、事故の対応に全力を挙げているところでございます。
 私自身も事故当日、鉄道局長を伴い事故現場に急行いたしました。事故の実態を把握するとともに、西日本旅客鉄道株式会社の社長に対しまして、次の二点を強く要請をさせていただきました。
 事故の被害者に対して誠実かつ万全な対応を期すること、二点目は、事故原因の究明につきまして、航空・鉄道事故調査委員会等関係機関に対し全面的に協力をすること、この二点を強く要請をしたところでございます。また、その旨を改めて鉄道局長名で文書にて警告をいたしました。
 現在も、現地の方では国土交通省の岩崎政務官に残っていただき、現地での対応に当たっていただいております。
 国土交通省といたしましては、公共交通機関に係る安全対策の徹底を図る観点から、事故直後の二十五日に、国土交通大臣名で公共交通事業者あてに文書にて、改めて安全対策の徹底を図ること、その際、本社の安全担当の責任者が直接現場に赴き確認することについて強く求めたところでございます。
 加えて、今後の状況を踏まえつつ、できるだけ早い段階で、JRを含みます、また航空事業者を含みます主要な交通事業者に対しまして、私自身が自ら赴きまして、輸送安全総点検の実施状況について、現場での取組状況等を直接聴取し、確認する機会を設けたいというふうに考えております。
 また、事故の調査については、航空・鉄道事故調査委員会において、事故当日、委員二名と調査官五名を派遣をしており、翌日、追加で委員二名を派遣、さらに本日、専門委員一名を派遣いたしまして、総勢十名で今回のこの事故の原因究明に向けまして全力を挙げて今調査に取り組んでいるところでございます。
 今後につきましては、まずは被害を受けられました方々への対応を最優先とするとともに、事故原因の究明、さらには今後の事故再発の防止に向けまして全力を挙げて取り組む所存でございます。
    ─────────────
#11
○議長(扇千景君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。末松信介君。
   〔末松信介君登壇、拍手〕
#12
○末松信介君 おはようございます。自由民主党の末松信介でございます。
 扇議長を始め先輩、同僚の先生方のお許しをいただき、自由民主党を代表いたしまして、このたびのJR福知山線で起こりました列車脱線転覆事故につきまして質問をいたします。
 事故後、自由民主党本部の連絡を受け、直ちに現地に赴きました。現地の惨状は言葉に言い表しにくいものであり、先頭車両がマンションの一階ガレージに一つの塊となって潜り込んでしまい、二両目は車両の上下が完全に分かれて、上部は一枚のステンレスのようになってしまっておりました。そのわずかのすき間からレスキュー隊員による懸命の救出作業が続けられておりました。しかし、救出作業ができる場所は極めて限定されており、各地から派遣された消防当局の皆様方も、ただ祈るように見守るしかなかったわけであります。
 何時間かたつうちに数人の方々が救出をされましたが、一人を除けば残りの方々は全く意識もないようで、血の気のないだらりとした白い腕が見えた瞬間、毛布がかぶせられ、病院へ搬送されていかれました。全く心が痛むのみであります。
 改めてお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、けがをされた乗客の皆様方の一日も早い御回復をお祈りいたしております。
 さて、なぜこのような最悪の事態が生じたのでありましょうか。
 小泉総理は、事故直後に緊急対応と再発防止を指示され、事故発生から約三十分後に政府に対策本部が設置されました。
 総理直轄指揮下の下、国土交通省、消防庁、警察当局はもちろんのこと、JR西日本は、事故原因の徹底した究明を行い、安全対策の確立と国民の信頼回復に努めなければなりません。
 JRは、国鉄時代から世界一と言われたダイヤどおりの運行を受け継ぎ、駅舎の新築や快速電車の増発などサービスの向上に努めてきたことは国民の高い評価を得ているところでございます。しかしながら、それにより採算性を重視して、ダイヤ編成や定時の運行等に無理が生じ、安全運行のための運転士の育成、安全確保のための技術を軽視することが常態化してしまったのではないかという声が上がっております。
 事故の直前、運転士は手前の停止駅でオーバーランしており、以前にも同様のミスを犯しております。経験十一か月とのことでありますが、運転適性検査や社員教育の在り方に問題があったと言わざるを得ません。また、ステンレス製の車両は軽くてコスト削減の効果があります。しかし、強度に疑問があることは何よりも事故現場の状況が物語っております。乗客の安全性は確保されているのでしょうか。
 安全設備の不備も発覚いたしました。現場は速度オーバーに対応しない旧式のATSであり、現在新型に切替え中で、不運が重なりました。五年前の営団地下鉄日比谷線の脱線死亡事故後、国土交通省は急カーブ区間の脱線防止ガードレールの設置を指導されました。しかし、今回の事故現場は、時速七十キロ制限の半径三百メートルの急カーブにかかわらず、脱線防止ガードレールが設置されておりませんでした。
 言い過ぎかもしれませんが、採算重視、安全軽視の経営感覚が存在していることを危惧いたします。目に見えるところだけサービスを向上させ、目に見えない安全へのコストを抑え利益を生むならば、これは利用者への裏切りであります。信楽高原鉄道の大事故の反省と教訓はどこに行ったのでありましょうか。
 事故の調査には、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が合わせて十人体制という鉄道事故としては過去最大規模の調査体制で臨まれております。徹底した事故原因の究明を求めます。
 折から、国土交通省では、鉄道事業会社すべてに対して緊急総点検を実施中であり、四月末までの報告を求めることになっていると伺っております。昨日の国土交通委員会で北側大臣が、総点検というのは一体どういうことを指すのか、どういうように事業者が実施しているのか、直接現場を見たいというお気持ちを述べられました。
 この際、すべての鉄道事業会社があらゆる問題点を共有して、安全対策が図られるよう国土交通大臣の指導力発揮を強く期待するものであります。
 以上、私の思うところを述べさせていただきましたが、国土交通大臣としての所感と事故究明に対する取組、今後の安全対策等についてお伺いをいたします。
 最後に、亡くなられた方々の御遺族、けがをされた多くの乗客の皆さんの救済について、また今は元気でも今後PTSDや体調を壊す方々も予想されますが、万全の体制をお約束していただくことを要請をいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
#13
○国務大臣(北側一雄君) 末松議員にお答えをさせていただきます。
 安全対策の確立と鉄道に対する国民の信頼回復に取り組むべきとのお尋ねがございました。
 かねてより、安全は運輸サービスの基本であり、安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございます。今回、このような多数の死傷者が生じるような重大事故が発生したこと、誠に遺憾でございます。
 今も現場では、消防の方を始め警察、自衛隊、医療関係者の方々、懸命な救助救援活動に取り組んでいるところでございます。政府関係機関一体となりまして、被害を受けられた方々の救助を最優先とした事故への対応を行っているところでございます。
 事故原因の徹底究明、さらには今後の事故再発の防止に向けまして政府一丸となって全力を挙げて取り組むことにより、一日も早く鉄道に対する国民の信頼が回復されるよう全力を尽くしてまいります。
 次に、採算性と安全運行についてお尋ねがございました。
 安全確保は鉄道輸送の基本でございます。鉄道事業者は安全の確保を最優先に事業を行う必要があり、国土交通省といたしましても、従前より、輸送の安全確保に最大限の努力を傾注してきたところでございます。事業の効率化を図っていくことも必要でございますが、その場合であっても、効率化のために安全が犠牲になってはならないと考えております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、安全確保に関する責任をおろそかにすることがないよう、全国の鉄道事業者を適切に指導してまいります。
 適性検査や社員教育についてお尋ねがございました。
 鉄道に関する技術上の基準を定める省令では、鉄道事業者は、運転士などの乗務員に対し必要な知識及び技能を保有するよう教育訓練を行うとともに、必要な適性、知識及び技能を保有しているかを確認しなければその作業を行わせてはならないと規定をしております。
 JR西日本においても、乗務員に対する運転に係る教育及び訓練、視機能や聴力等の身体機能検査、クレペリン検査などの適性検査を定期的に行うよう実施基準を定めており、これに従って行われているものと聞いております。
 今回の事故につきましては、現在、調査委員会において事故原因等を調査しているところでございます。今後の調査の状況を踏まえ、引き続き指導をしてまいりたいと考えております。
 近年、多くの鉄道事業者において、車体の軽量化、塗装の不要化等によりコスト削減が図られることから、ステンレス製の車両が導入されております。車体の強度に係る基準では、使用される材料にかかわらず、通常の運転で想定される車体への荷重に対して十分な強度を有しなければならないこととしております。この想定される荷重については、具体的には踏切における自動車との衝突等を考慮しており、今回の脱線事故のようにマンションに衝突するという特殊な状況は車両の設計上考慮しておりません。
 しかし、平成十二年の営団地下鉄日比谷線や、平成十四年のJR九州鹿児島本線の事故を踏まえ、現在、鉄道総研におきまして車両の衝突安全性に関する研究を行っているところでございます。今回の事故原因の分析・調査によって得られる知見も踏まえながら、車体の強度、構造等の在り方について検討してまいります。
 脱線防止ガードレールの設置の指導についてお尋ねがございました。
 脱線防止ガードレールの設置については、日比谷線脱線事故を踏まえ、低速走行時の車輪の乗り上がり脱線を防止するため、半径二百メートル以下の曲線等について設置するよう指導しているところでございます。今回事故が発生した現場の曲線は半径三百メートルでございまして、この基準に該当していないため、脱線防止ガードレールが設置されておりません。
 鉄道各社への指導についてお尋ねがございました。
 鉄道の安全確保に関しましては、施設、車両の構造、運転取扱い等に関して、安全確保のために鉄道事業者が遵守すべき技術基準を鉄道に関する技術上の基準を定める省令において規定をしております。最高速度や列車本数等の輸送の特性に応じた安全確保を図らせるため、省令に基づき事業者ごとに詳細な実施基準を定め、国土交通省に届出させることとしており、必要に応じ変更を指導しております。
 さらに、安全に係る法令の遵守状況等の確認を行うため、鉄道事業法五十六条の立入検査に関する規定及び関連の規則等の定めに従い、事業者に立ち入り、業務の状況を監査し、適宜必要な改善指導を実施しております。
 このような制度に基づき、今後とも、すべての鉄道事業者に対し、安全の確保に全力を挙げるよう指導してまいります。
 事故検証を共有し、安全対策を図ることについてお尋ねがございました。
 これまで各地で発生いたしました鉄道事故の状況や原因究明に関する情報については、すべての鉄道事業者に提供するなど、事故情報の共有化を図っているところでございます。
 現在、国土交通省において、更に詳細な事故情報に関するデータベース化を進めるとともに、鉄道総研を通じまして、全国の鉄道事業者が利用できるシステムの構築に取り組んでいるところでございます。事故情報の共有化を進めてまいります。
 今後、こうした取組を通じて、鉄道事業者間での情報の共有化を進めることにより、一層の安全対策を図ってまいります。
 御遺族、負傷者の方々の救済についてお尋ねがございました。
 事故直後、先ほど申し上げましたように、私からJR西日本の社長、また会長に対しましても、事故の被害者に対して誠実かつ万全の対応を期すること、事故の原因の究明につきまして調査委員会等、関係機関の調査に対して全面的に協力することを強く要請をしたところでございます。
 したがいまして、御遺族の方々、負傷者の方々に対する救済措置につきまして、JR西日本において今後とも、適切に指導をしてまいる所存でございます。(拍手)
    ─────────────
#14
○議長(扇千景君) 辻泰弘君。
   〔辻泰弘君登壇、拍手〕
#15
○辻泰弘君 私は、民主党・新緑風会を代表し、去る四月二十五日、兵庫県尼崎市のJR西日本福知山線において発生した脱線事故につきまして、官房長官、国土交通大臣及び国家公安委員長に御質問申し上げます。
 まず、このたびの事故で亡くなられた犠牲者の方々とその御遺族の皆様方に対して心から哀悼の意を表しますとともに、負傷された方々に対し心からお見舞いを申し上げます。
 民主党は菅直人前代表を本部長とする事故対策本部を設置し、私はその副本部長として、当日の午後、事故現場に駆け付けました。痛々しい現場を目の当たりにし、大変なショックを受けた次第であります。このような悲惨な事故を二度と起こさないため、原因の徹底究明と再発防止対策に万全を期さなければなりません。
 そこで、まず、現在把握しておられる事故による被害の状況並びに発生当初から現在に至るまでの政府、関係各省庁の対応について、官房長官から御報告をいただきたいと存じます。
 同時に、何ゆえこのような悲惨な事故が起きたのか、国土交通大臣、国家公安委員長に現時点で明らかとなっている事実関係及び原因についての御所見と今後の事実解明に向けての方針をお伺いいたします。
 原因に関して、JR西日本は、レールの上に置き石があった可能性を示唆しております。私自身、レールの上の痕跡を確認してまいりましたが、政府としてそのような事実をどのように把握、認識しておられるのか、お答えいただきたいと存じます。
 また、伝えられるところでは、この快速電車は前の伊丹駅でオーバーランをし、通常より速度を速めて運転していたと言われております。しかも、あろうことか、四十メートルのオーバーランの距離を、運転士と車掌が口裏を合わせ、八メートルと伝えていたとのことであります。この事故の背景に、大勢の人間の命を預かる運転する側にモラルの低下があったと言われても仕方がありません。
 速度優先、ダイヤ優先の体質など、JR西日本の運行管理上の問題点を指摘する声もありますが、国土交通大臣はどのように判断しておられるでしょうか。
 さらに、運転士は、見習期間を含め過去に三たび訓告や厳重注意処分を受けていたと言われております。大勢の乗客の命を預かる運転士の資格、適性というものは極めて厳格に見極め、配置されなければなりません。
 同社においては乗務員の教育訓練、身体検査、適性検査などが十分に行われていたのかどうか、あわせて、これまでの全国の鉄道各社に対する国の指導はどのようになされてきたのか、また、今回の事故を教訓としていかなる指導を行っていくつもりなのか、国土交通大臣にお伺いいたします。
 同時に、これまで半径二百メートル以下の急カーブ等に設置するよう求めてきた国土交通省の脱線防止ガードの設置対象基準拡大の必要性及び速度超過を防止する新型のATSの全国の路線への普及促進についての国土交通大臣の御所見をお伺いいたします。
 私は、兵庫県の出身者として、阪神・淡路大震災において大変悲しい体験をいたしました。震災は自然災害でありますが、今回の事故は人災と言うべきでありましょう。
 自然災害への備えに努めるとともに、かかる人災が二度と起こらぬよう、原因の徹底究明と再発防止対策に万全を期すことを重ねて政府に強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
#16
○国務大臣(北側一雄君) 辻議員にお答えを申し上げます。
 まず、事実関係及び原因等についてお尋ねがございました。
 四月二十五日に発生いたしましたJR西日本福知山線における列車脱線事故では、塚口駅―尼崎駅間で、宝塚駅発同志社前駅行き七両編成の快速列車のうち前の五両が脱線し、そのうちの前二両がマンションの一階部分に衝突したものでございます。約五百八十名の方が乗車をされておりましたが、これまでに判明したところでは、死者は九十一名、負傷者は四百五十六名に上っております。
 安全は運輸サービスの基本中の基本でございます。安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございます。今回のような重大事故が生じたことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 国土交通省といたしましては、事故発生後直ちに私と鉄道局長が現場に急行をいたしました。私を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するとともに、近畿運輸局に運輸局長を本部長とする福知山線事故対策本部を設置し、事故の対応に全力を挙げております。
 事故原因につきましては、航空・鉄道事故調査委員会が、現在、総勢十名で派遣をされておりまして、調査に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
 まずは、被害を受けられた方々への対応を最優先するとともに、事故原因の究明、さらには今後の再発防止に向けまして全力を挙げて取り組んでまいります。
 レール上の置き石の可能性がある痕跡に関する把握、認識についてお尋ねがございました。
 JR西日本がレール上に置き石の粉砕痕と思われる痕跡があったと発表したことについては承知をしております。しかしながら、この痕跡については、置き石によるものなのか又は他の原因によるものなのかどうかは確認できておらず、また、脱線の原因とどのような関係にあるかは現時点で不明でございます。
 現在、航空・鉄道事故調査委員会が全力を挙げて詳細な調査を実施をしておりますので、その調査を通じて事故原因が明らかになるものと考えております。
 JR西日本の運用管理上の問題点についてお尋ねがございました。
 安全確保は鉄道輸送の基本でございます。鉄道事業者は、安全確保を最優先に事業を行う必要があることは当然のことでございます。御指摘のように、今回の事故に関連いたしまして、JR西日本が公表した内容が翌日大幅に変更されるなど、その信頼性が問われるようなことがあったことは非常に残念であり、遺憾でございます。
 国土交通省といたしましては、鉄道事業者は公共交通機関としての使命を果たすため、利用者から信頼されることが重要であると考えております。今後とも、JR西日本に対しまして厳しく指導してまいります。
 乗務員の教育訓練などについてお尋ねがございました。
 鉄道に関する技術上の基準を定める省令では、鉄道事業者は、運転士などの乗務員に対し、必要な知識及び技能を保有するよう教育訓練を行うとともに、必要な適性、知識及び技能を保有しているかを確認しなければその作業を行わせてはならないと規定しており、定期的な運転適性検査等の具体的な実施方法を指導しております。
 これを受けまして、JR西日本においても、乗務員に対する運転に係る教育及び訓練、視機能や聴力等の身体機能検査、クレペリン検査などの適性検査を定期的に行うよう実施基準を定めており、これに従って行われていると聞いております。
 今回の事故につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会におきまして事故原因等を調査しているところでございます。今後の調査状況を踏まえまして、引き続き全国の鉄道事業者に対しまして適切に指導をしてまいります。
 脱線防止ガード設置対象基準の拡大や新型ATSの普及促進についてお尋ねがございました。
 御指摘の脱線防止ガードは、本来、主として日比谷線事故のような低速走行時の車輪の乗り上がり脱線を防止するために設置されたものでございます。今回のような脱線に対して効果があるのかないのか、その検証をしていく必要があります。
 また、ATSの改良その他の対策については、現在進めている航空・鉄道事故調査委員会による調査の最終結果を待つことなく、原因分析の調査中に得られる情報等も踏まえながら、その効果、適用範囲等を検討し、必要なものから逐次実行に移していきたいと考えておるところでございます。
   〔国務大臣細田博之君登壇〕
#17
○国務大臣(細田博之君) 辻議員にお答えいたします。
 一昨日発生いたしました西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車脱線事故に関しまして、まずは事故に遭いお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げ、また御遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げますとともに、事故で負傷された方々の一刻も早い御回復を心からお祈り申し上げます。
 本件事故による被害状況につきましては、北側大臣の答弁のとおりに、現在、死者九十一名、負傷者四百五十六名に上ることが確認されておりますが、現在なお懸命の救出活動を継続しておりますことは御存じのとおりでございます。
 政府の対応についてでございますが、事故発生の一報を受け、直ちに、すなわち午前九時四十五分に官邸連絡室を設置するとともに、被害状況を踏まえまして官邸対策室に改組いたしましたほか、国土交通省を始め消防庁、警察庁などの関係省庁においてもそれぞれ対策本部を立ち上げ、被災者の救助、救援を最優先に対処したところであります。
 また、官邸で開催した関係省庁局長会議におきまして、国土交通省を中心に関係省庁が連携し、被災者の救助活動、救急医療活動等に万全を尽くすこと、消防、警察及び自衛隊が現場において緊密に連携し支援することなどの政府方針を確認し、現在まで政府一丸となって取り組んできておるところでございます。
   〔国務大臣村田吉隆君登壇〕
#18
○国務大臣(村田吉隆君) まずは今回の事故で亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、負傷された皆様にお見舞いを申し上げます。
 また、警察といたしましては、兵庫県警察及び大阪府警の広域緊急援助隊を中心に、現在も列車内に閉じ込められている方々の救助活動を継続中であり、一刻も早く全員を救助できるよう最大限の努力をしているものと承知しております。
 今回の事故については、事故当日、兵庫県警察において、尼崎市内JR福知山線における死傷者多数を伴う列車事故事件捜査本部を設置したところでございます。
 今後、御指摘のレール上の痕跡も含め、事故原因の解明に向け、事故現場における実況見分、関係者からの事情聴取等、鋭意捜査を推進しているものと承知しております。
 今後とも、本件事故の原因解明に向けた捜査を徹底するよう警察を督励してまいる所存でございます。
    ─────────────
#19
○議長(扇千景君) 谷合正明君。
   〔谷合正明君登壇、拍手〕
#20
○谷合正明君 公明党の谷合正明でございます。
 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたJR西日本福知山線列車脱線事故について、北側国土交通大臣に質問をいたします。
 まず、今回の事故により犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に衷心よりお見舞い申し上げます。あわせて、負傷された方々の一日も早い回復を切望いたします。
 さて、今回の列車脱線事故は、現時点で犠牲者九十一名、負傷者四百五十六名を数える大惨事となりました。私も、昨日、公明党の調査団の一員として尼崎の事故現場に参りました。先頭車両がマンションの一階の駐車場に完全にのめり込む形で原形をとどめていない様子に、事故のすさまじさを思い知りました。まだ車内には閉じ込められている方が十数人いると現場で聞き、涙が出る思いがいたしました。私の知人の関係者も負傷者の中におりました。
 今回の事故に関しては、安全軽視の速度超過や、オーバーランの距離を偽って報告していたことが判明されるなど、言葉に尽くせないほどの憤りを覚えました。JR西日本は、御遺族の方々、そして負傷され、今なお傷のいえない方々に対して、その補償問題に誠心誠意取り組むことが必要であります。
 そこで、鉄道事業者を監督する政府においても、被害者への支援のため、JR西日本に対して力強い指導力を発揮していただきたいと要望するものであります。監督官庁である北側国土交通大臣の決意をお聞かせください。
 また、あわせて、安全を最優先した鉄道行政への取組と再発防止策について納得のいく御説明をお聞かせください。
 今日の巨大な技術システムは、いったん事故を起こすと、そのシステムの巨大さゆえに、正に大惨事と言うべき事態に陥ります。システムがいかに高度かつ複雑になっても、その事故原因は案外身近で日常的な側面を持っていて、こんなささいなことでと驚かされることが少なくありません。
 一件の重大事故には二十九件の軽微な事故と三百のささいな事例があると言われます。今回の事故では、従来から従業員や経営者の心構えの緩みがあったのではないかと思わざるを得ません。安全にかかわる技術システムが巨大で複雑になるに従い、かえって基本的なところに盲点や落とし穴が生じ、往々にしてシステムの新しさや高度な仕組みに目を奪われる余り、その危険性を見落としがちであると思いますが、この点についての御見解をお伺いします。
 鉄道の事故といえば、近くは平成十二年の地下鉄日比谷線の列車脱線衝突事故、平成三年の信楽高原鉄道の衝突事故が脳裏によみがえります。
 政府は、日比谷線の事故について、鉄道事業者は、他社の事故事例を基に自社の安全対策を再点検する目を持つことが重要である、また、事故情報の周知、適切な安全対策の策定及びその徹底を図ることが重要であると指摘しております。信楽高原鉄道の事故の原因は、列車運行に最も重要な安全の確認に関する基本ルールを守っていなかったことにあるとの報告を行っております。
 正に安全対策の再点検、安全の確認に関する基本ルールの遵守の必要性が指摘されているにもかかわらず、本件を含めた列車事故は、このような極めて初歩的な基本ルールに違反して起きているのではないかと言わざるを得ません。大臣の御所見をお伺いします。
 十九世紀の鉄道事故の多くは、車両や線路の構造上の弱さと材料の欠陥及びシステムの不完全性に求められました。二十世紀に入ると、安全システムが整う中で人間のミスによる大事故が目立ち始めたところであります。二十一世紀においては、安全にかかわるすべての技術システムにおいて、あくまでも人間を核心に置いた体系的、戦略的な安全対策が必要であること、そして安全対策には終わりがないことを肝に銘じるべきであります。
 最後に、この点について国土交通大臣の御所見をお伺いして、私の質問とさせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
#21
○国務大臣(北側一雄君) 谷合議員にお答えいたします。
 被害者の方々への補償に関するお尋ねがございました。
 今も事故現場では、消防の皆さん、警察、自衛隊、医療関係者の方々など、先頭車両に残された乗客の皆様の救出、救援に懸命に今取り組んでいるところでございます。政府といたしましても、関係省庁等が一丸となりまして、被害を受けられた方々の救出を最優先とした事故への対応を現在行っているところでございます。
 被害に遭われた方々への対応につきましては、事故当日、私は事故現場でJR西日本の社長にお会いをいたしました。事故の被害者の方々に対して誠実かつ万全の対応を期すること、そして、調査委員会も入りますので、事故原因の究明について関係機関に対し全面的に協力をすること、このことを強く要請をしたところでございます。被害を受けられた方々への補償につきましても、JR西日本において適切に対応がなされるものと認識をしております。
 安全対策に対する鉄道行政の取組などについてお尋ねがございました。
 従来より、安全は運輸サービスの基本中の基本でございます。安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございまして、このような考え方を基本といたしまして鉄道行政に取り組んできたところでございますが、今回のようなこのような痛ましい事故が発生したことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 今回の事故につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会において事故原因等を調査しているところでございますが、今回の事故を教訓として、このような事故が二度と起こらないよう全国の鉄道事業者に対し厳しく指導してまいる所存でございます。
 事業者等の心構えについてお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、重大な事故には多くの軽微な事故やささいな事例が潜むと言われております。特に、鉄道及び航空の分野において人的要因と考えられる事故等が多発していることにかんがみ、本年三月に、輸送安全総点検の緊急実施についての通達により、鉄道事業者に対しまして輸送の安全に万全を期すことを指示し、事業者の長自らの責任で点検、確認し、経営者から現場の輸送に携わる一人一人の職員に至るまで、安全に対する意識を高めるように指導をいたしました。
 このような輸送安全総点検中にこのような事故が発生したことから、事故直後の二十五日に、改めまして、公共交通事業者に対し、安全対策の徹底を改めて図ること、その際、本社の安全担当の責任者が直接現場に赴き確認することを強く要請をいたしました。
 加えて、今後の状況を踏まえつつ、また、このような安全総点検中にこうした重大事故が起こった、こうしたことをかんがみまして、JR、また航空事業者も含めまして、主要な交通事業者に対し、できるだけ早い段階に私自身が参りまして、輸送安全総点検の実施状況について現場での取組状況等を直接聞かしていただきたい、また確認をさせていただきたいと思っているところでございます。
 安全対策の初歩的な基本ルールの遵守についてお尋ねがございました。
 公共交通機関における最大の使命は輸送の安全であることは言うまでもありません。その安全を確保するためには基本ルールの遵守が不可欠でございます。今般の事故の原因につきましては、現在、調査委員会が全力を挙げて調査をしているところでございますが、いずれにいたしましても、鉄道輸送の安全確保のためには、鉄道事業者自らがいま一度基本に立ち返り、万全の対策を講じていくことが極めて重要と考えております。経営トップから現場の職員の方々まで、社を挙げて、社全体として、安全サービスが、安全の確保がサービスの基本、それが大前提ということを肝に銘じていただきたいというふうに思っております。
 今後の安全対策の継続的な取組についてお尋ねがございました。
 鉄道輸送については、不幸にも発生しました事故を教訓としつつ、安全性を確保するためのシステムが構築され、安全性の向上が図られてきたところでございます。この結果、安全性を確保するためのシステムはより高度化されたものとなっておりますが、それでもやはり、委員の御指摘のように、人間による取組も依然として重要なファクターとなっていると考えます。
 鉄道の信頼性を向上させるためには、ヒューマンエラーを可能な限り減らすことに加え、仮にヒューマンエラーがあったとしても事故につながらないシステムの構築に向けた継続的で真摯な取組が不可欠でございます。
 御指摘のように、安全対策には終わりがないという認識の下、今回の事故を貴重な重要な教訓といたしまして、国土交通省といたしましても、鉄道が更に安全な交通システムとして国民の信頼を回復できるよう、全力を挙げて取り組んでまいる決意でございます。(拍手)
#22
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#23
○議長(扇千景君) この際、日程に追加して、
 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。島村農林水産大臣。
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(島村宜伸君) 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の趣旨につきまして御説明申し上げます。
 将来にわたる食料の安定供給と農業の持続的発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成するとともに、このような農業経営を営む者に対する農地の利用集積を図ることが重要であります。特に、水田農業を始めとする土地利用型農業においては農地の利用集積の遅れが大きく、地域での話合いを促進し、集落合意に基づく農地の利用集積を推進していくことが喫緊の課題となっております。
 また、農業従事者の主力を担ってきた昭和一けた世代の引退が本格化する中、遊休農地が増大しており、担い手への農地の利用集積の妨げとなる事態も生じていることから、その解消を図ることが強く求められております。
 政府といたしましては、このような課題に対応するため、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、農地保有合理化事業の拡充であります。
 農地保有合理化事業に、農業生産法人への金銭出資及び農用地等の貸付信託の事業を追加し、農地の仲介機能の強化を図ることとしております。
 第二に、農用地利用改善事業の見直しであります。
 集落における総合的な農地利用の準則である農用地利用規程の規定事項を見直し、集落での話合いを通じ集落営農の役割分担や担い手に対する農地の利用集積目標の明確化等が図られることとなるよう措置することとしております。
 第三に、遊休農地対策の充実であります。
 都道府県、市町村に対し遊休農地の解消・防止に関する基本的な構想の作成を求めるとともに、都道府県知事の裁定による賃借権の設定、市町村長による遊休農地所有者等に対する措置命令等の措置を講じ、体系的な遊休農地対策の整備を図ることとしております。
 第四に、農業生産法人以外の法人に対する農地の貸付事業の創設であります。
 構造改革特区制度の全国展開として、遊休農地が相当程度存在する区域において、市町村等が農業生産法人以外の法人に農用地を貸し付ける事業を創設し、遊休農地の利用の増進を図ることとしております。
 第五に、農業振興地域整備計画の策定手続の見直しであります。
 地域全体の合意に基づく計画的な土地利用を進めるため、農業振興地域整備計画の策定・変更に際し、市町村の住民による意見提出の機会を付与すること等としております。
 以上、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ─────────────
#26
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。岩永浩美君。
   〔岩永浩美君登壇、拍手〕
#27
○岩永浩美君 ただいま議題となりました農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案について、私は、自由民主党、公明党を代表いたしまして島村農林水産大臣に質問をいたします。
 まず、質問に入る前に、一昨日、福知山線で起こった脱線事故で残念ながらお亡くなりになられた方に心から哀悼の誠をささげたいと思います。
 また、負傷された方々には、一日も早く御回復され、日常生活に戻られることを心から願ってやみません。このような大きな事故に遭われた方たちは、後々まで心理的にも大きな影響を受け後遺症に悩まされると聞いております。関係者の誠意ある対応を要望しておきたいと思います。
 それでは、質問に入りたいと思います。
 本改正案は、去る三月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画でも示されているように、効率的かつ安定的な農業経営と、これを目指して経営改善に取り組む農業経営をいわゆる担い手として、その育成と、それによる農地の利用集積を一層促進するほか、農地の有効利用に向けた農地のリース特区の全国展開や体系的耕作放棄地対策の整備、農業振興地域整備計画の策定・変更手続の透明性の向上を行おうというものであると私は理解しています。
 そこで、まず、担い手に対する農地の利用集積の促進についてであります。
 農業経営基盤強化促進法は、認定農業者以外にも、集落内の営農組織である特定農業団体、特定農業法人という担い手育成制度を設けています。しかし、食料・農業・農村基本計画における農業構造の展望では、平成二十七年までに、効率的、安定的な農業経営として、家族農業経営は三十三万ないし三十七万、法人経営一万、集落営農経営二万から四万程度を見込むとしておりますが、現在、認定農業者数が約十九万、集落営農が約一万であり、特定農業団体、特定農業法人となっているのは、それぞれ百二十、二百二十六にとどまっており、農用地を利用集積する担い手が足りないというのが実態であります。認定農業者、特定農業団体、特定農業法人を育成することは早急の課題であると言えます。
 そのため今回の改正案は、担い手、特に集落営農の特定農業団体、特定農業法人化を促進するために、農用地利用規程の法定記載事項の改正、拡充等の措置を講じようというものでありますが、その改正措置の実効性をどう確保するかが今後の担い手育成のかぎとなります。
 そこで、そもそも担い手の育成、農地の利用集積という政策目的は、平成四年のいわゆる新政策以来、農業経営基盤強化促進法を始めとする諸制度、諸政策によって進められてきたはずなのに、なぜいまだ十分な効果を上げていないのか、制度が不備だったのか、支援措置が足りなかったのか、それともその運用や実行体制が不十分だったのかなど、その原因について伺っておきたいと思います。
 また、担い手の育成、特に集落営農の組織化、法人化を促進するため、当局や関係行政機関はどのようなPRや働き掛けを行っているのか、当事者である各集落、個々の農業者の改正案についての周知状況はどの程度のものなのか、集落営農の組織化、法人化への機運が高まっているのかについて伺っておきたいと思います。
 また、地域に市町村、農業委員会、JA、土地改良区などのメンバーで構成する担い手育成総合支援協議会が結成され、認定農業者や集落営農組織化への支援を行うこととなったほか、財政、金融、税制支援も拡充されると聞いていますが、こうした支援措置の概要、支援効果、支援期間、関係者の周知状況なども伺います。
 次に、集落営農の組織化、法人化の成否を決めるもう一つの大きなかぎと考えられる集落営農に対する新たな経営安定対策についてであります。
 食料・農業・農村基本計画では、現在、品目別に講じられている経営安定対策を見直し、施策の対象となる担い手を明確化した上で、その経営の安定を図る対策に転換する、また、対象となる担い手は、認定農業者のほか、集落を基礎とした営農組織のうち、一元的に経理を行い法人化する計画を有するなど、経営主体として実体を有し将来効率的かつ安定的な農業経営に発展すると見込まれるものを基本とするとして、平成十九年産から導入される新たな経営安定対策の対象に集落営農も含むことにしています。
 これにより、専業農家だけでなく、小規模な農家や兼業農家も集落営農組織に参画することによって間接的に新たな経営安定対策による支援効果を受けることができるため、望ましいこととは思いますが、同時に、どの程度の実体を伴っている集落営農であれば、この新たな経営安定対策の対象となるのかが問題ともなってまいります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 地域によっては集落営農の実態は様々であるため、経営規模や法人化する計画を有することといった余り厳格な要件を設定すべきではなく、同計画でも示しているように、地域の実情を十分に勘案して要件を決めるべきでありますし、この新たな経営安定対策の対象になるか否かが集落営農の組織化、法人化が進むか、逆に停滞するかに影響する可能性が大きいと思われます。
 そこで、平成十九年産からの制度導入に向け、この秋までに支援対象や支援規模を具体的に検討していくと言われている新たな経営安定対策に、集落営農の組織化、法人化の促進という改正案の政策目標がどの程度反映されることになるのか、伺っておきます。
 また、農業の多面的機能を発揮させる観点から検討されている農地、水などの資源保全政策の対象として、集落営農への参加などを通じてこの資源保全を担う小規模農家、兼業農家が対象となり得るのか、どのように位置付けられるのかについても伺います。
 次に、農地のリース特区の全国展開についてであります。
 改正案では、構造改革特別区域法に基づくリース特区の全国展開の措置として、耕作放棄地等の農業上の利用の増進を図る必要があると認められる場合は、市町村自らの判断で農業生産法人以外の株式会社等の法人による利用が認められることになっています。
 そこで、構造改革特別区域法施行以来、二年間での実績の評価、全国展開を認める理由、全国展開による参入促進効果について伺います。
 また、改正案による全国展開で、今後、農業外から農業参入の増加が期待できるとしても、一方では、市町村の制度運用次第でかなり参入状態にばらつきが出てくるのではないのか、参入を希望する法人と受け入れる市町村側の姿勢との間にミスマッチが生じた場合や、リース契約の条件等で折り合いが付かない場合はどうするのかなどの点で若干の懸念も生じてまいります。
 このような事態が生じた場合どのような解決策があるのか、逆に、参入した法人が経営に失敗して撤退する場合の対応策についても伺います。
 次に、体系的耕作放棄地対策の整備についてであります。
 近年、耕作放棄地が急速に増加し、農業構造改革を進める上で深刻な障害となっています。農林水産省の調査によると、全国で耕作放棄地が三十四万ヘクタールに上り、しかも年々それは増加傾向にあると言われています。
 こうした事態を受け、改正案では、市町村遊休農地解消マスタープランの策定など、地域の主体的な取組による耕作放棄地対策を総合的、実効的に進めることが可能となるよう、関連諸規定を整備することとしています。
 そこで、これらの改正により、どの程度まで耕作放棄が防止できるのか、また耕作放棄地の有効利用が期待できるのか、伺います。
 最後に、担い手への農地の利用集積が進まず、また耕作放棄が解消できない原因は、制度的な問題というよりは、地域に担い手がいない、中山間地域のため耕作条件が悪い、農産物価格が低下するなど、諸制度を超えた農業を取り巻く環境の悪化による要因の方が大きいと考えられます。
 このような中で、食料・農業・農村基本計画においては、平成二十七年度までに担い手への農地の集積や耕作放棄地対策などにより十九万ヘクタールの耕作放棄の抑制、再活用が見込まれ、現在四百七十万ヘクタールの農地が二十万ヘクタールの減少に食い止められる見込みとなっています。
 しかし、今の指摘から考えると、農地の減少がこれで済むのか、耕作放棄の抑制、再活用が見込みどおり達成できるのかなどの懸念を払拭することができません。
 そこで、なぜ十九万ヘクタールもの抑制、再活用が期待できると見込むのか、その根拠と、今後の食料自給率向上にも不可欠な農地確保の在り方についてお伺いをし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(島村宜伸君) 岩永議員の御質問にお答えいたします。
 まず、担い手の育成などが進まない原因についてのお尋ねでありますが、平成四年の新政策において、他産業並みの所得を上げ得る効率的かつ安定的な経営体を育成するとの考え方が導入されました。そして、その実現のため、認定農業者制度や市場価格を基礎とした価格安定対策などを推進してまいりました。これらの施策は一定の成果を上げましたが、機械化の進展により兼業農家であっても稲作継続が容易であること、農地を人手にゆだねることに抵抗感があり、また安心して貸し付けられる相手が見当たらないこと、政策面では品目別の価格・所得政策が幅広い農家を対象に実施されてきたことから、担い手への農地の利用集積につながりませんでした。
 このような状況を踏まえ、今般、担い手を明確化し、これを対象に経営安定対策を講ずるという政策転換を行うこととしたところであります。
 次に、集落営農の組織化、法人化の働き掛けについてのお尋ねでありますが、現在、農林水産省と農業関係団体が連携を取って全国運動を展開し、多くの農家に集落営農の組織化、法人化の必要性を訴え、組織づくりの指導や情報提供を行うなど、現場への働き掛けを行っているところであります。
 今後は、県段階、地域段階での取組を加速化することとしており、集落営農の組織化、法人化がしっかりと進むよう全力で取り組んでまいります。
 次に、認定農業者や集落営農に対する支援措置についてのお尋ねでありますが、認定農業者に対しては、リースによる機械施設の導入、低利の政策融資、機械施設の割増し償却の税制特例などにより支援しております。また、集落営農に対しては、リーダーの育成、担い手不在地域において組織化を図るための計画の作成などについて支援を行っております。
 こうした支援措置により、今後、認定農業者や集落営農の更なる増加が期待されております。また、これらの支援措置については、各種説明会でのパンフレットの配布、農林水産省ホームページへの掲載などにより、農業者を始め関係者への周知を図っているところであります。
 次に、法改正の目標と新しい経営安定対策についてのお尋ねでありますが、今回の法案では、農用地利用規程の規定事項を拡充し、集落内の役割分担や農地の利用集積目標を明確化するなど、地域の話合いに基づいて集落営農の組織化、法人化を推進することとしています。このため、地域においては、将来の集落の農業を集落営農で担っていくという基本的な考え方を確立し、だれがどのような役割を果たすか、農地をどのように集積していくかなど、集落段階での集団的な土地利用調整を進めていくことが必要となります。このような現場での取組も踏まえ、新しい経営安定対策の対象経営の要件を決定する考えであります。
 次に、資源保全施策についてのお尋ねでありますが、農地、農業用水などの資源は農家を中心に集落の共同活動によって守られてきましたが、近年、高齢化や混住化などが進み、保全管理が難しくなってきております。このため、新たな基本計画において、農家だけでなく地域住民などの参画を得てこれらの資源を保全管理する施策を構築することとし、調査を行っているところであります。小規模農家、兼業農家も資源の保全管理を担う重要な一員として今後位置付けてまいりたいと考えております。
 次に、リース特区の全国展開についてのお尋ねでありますが、耕作放棄地が多い地域で一般の株式会社などが農業に参入できるリース特区を実施しております。この特区について、昨年十月に調査したところ、耕作放棄地が解消されたといった評価が多くあり、他方、特に弊害は認められませんでした。このため、構造改革特区推進本部の決定を経て、リース特区の全国展開を行うこととしたところであります。全国展開により、市町村の判断で、受け手のいない耕作放棄地について株式会社やNPO法人が参入して営農することができるようになるため、耕作放棄地の発生防止、解消に役立つものと期待しております。
 次に、株式会社の参入に伴う問題点の解決策などについてのお尋ねでありますが、リース特区の全国展開に当たりましては、ただいまも申し上げたように、地域の耕作放棄地の実情について最も詳しい市町村が株式会社やNPO法人を参入させる必要があるかどうかを判断し、参入させる必要がある場合には市町村が農地を仲介する仕組みとしております。また、参入する法人と市町村の間できちんと農業を行う旨の協定を締結していただき、水利用の混乱といった問題が生じた場合にはリース契約を解除できることとしております。同様に、参入した法人が農業から撤退した場合にも市町村がリース契約を解除できることとしており、農地の返還を受けた上で、新たな受け手を探して改めて貸し付けることにより、農地がきちんと使われることが担保される仕組みとなっております。
 次に、耕作放棄地対策の効果についてのお尋ねでありますが、今般の耕作放棄地対策では、まず、地域の事情を勘案して、農地として再生すべきものと森林に戻すべきものに振り分けます。このうち、農地として再生すべきものについては、まず受け手である担い手がいれば農地保有合理化法人などを通じその担い手に、担い手がいなければリース方式により参入法人に、それぞれ利用させていくという重層的な仕組みを講ずることとしております。このような措置を通じ、耕作放棄されている農地の解消を目指したいと考えております。
 最後に、農地の確保の在り方についてのお尋ねでありますが、新たな基本計画においては、耕作放棄地の発生を抑制し再活用を図るため、知事の裁定による耕作放棄地への賃借権の設定など体系的な耕作放棄地対策の整備、新規参入の促進、中山間地域における生産条件の不利の補正、生産基盤の整備の推進などの施策を実施することとしております。これらの取組により、約十九万ヘクタールの施策効果を見込んでいるところであります。(拍手)
    ─────────────
#29
○副議長(角田義一君) 松下新平君。
   〔松下新平君登壇、拍手〕
#30
○松下新平君 私は、宮崎県選出の松下新平でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 ただいま議題となりました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法案につきまして、民主党・新緑風会を代表して関係大臣に質問をいたします。
 質問に先立ちまして、一昨日、兵庫県尼崎市において発生いたしましたJR福知山線の列車脱線事故は、JR発足史上最悪の大惨事となりました。ただいま御報告をいただいたとおりです。不幸にも亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、負傷された方々にお見舞い申し上げます。また、政府においては、事故の原因究明と再発防止に万全を期すよう要請いたします。
 それでは、本題の法律案に対する質問に入ります前に、米国産牛肉の輸入再開問題に関して質問いたします。
 この問題は、日本にとっては、将来の日本の子供たちの命、健康にかかわる重要な問題であります。この問題に対して政府の大きな二つの過ちを指摘します。
 まず一つは、外交の失敗です。日本側から牛肉の輸入再開の期日が示されないことにしびれを切らして、米国は再三にわたり我が国に圧力を掛けてきました。特に、米国の上下両院で対日経済制裁が検討されたことは誠にゆゆしき事態であります。この原因が、どうも昨年秋に開催された第四回日米BSE協議において交渉に当たっていた日本政府の代表が思わせぶりの態度を取ったことが発端のようです。
 結果として輸入再開になろうとも、当然、政府一体として毅然とした態度で臨むべきでした。そうすることが、日本は言うべきときにははっきり物を言う、外圧に屈せず自国の国民の命を最大に尊重したと、世界各国からも高い評価を受けたことでしょう。
 もう一つは、中立公正の立場を取ることを殊更強調し、食品安全委員会の科学的知見に基づく判断をといいながら、半ば公然と政治介入を続けていることであります。非常識発言に始まり、審議時間の速度に言及するなどの複数の大臣の言動が、食品安全委員会の皆さんに有形無形の影響があったことは容易に想像ができます。
 食品安全委員会は、本日、パブリックコメントの募集を締め切り、国内の基準について正式に答申をした後、いよいよ米国産の牛肉輸入再開の条件についての諮問がなされますが、問題はこの諮問の内容であります。
 所管する農林水産大臣は、衆議院の本会議や農林水産委員会の発言で、米国産牛肉の安全性をこれから諮問する食品安全委員会に対して、米国の飼料規制の有効性について諮問する必要はないと明言されました。果たしてこれでいいのでしょうか。
 現在のBSEも含めて、これから発症されるであろう病気については、まだまだ未知の分野が多いからこそ、その入口、原因とされる牛の飼料規制が今後の発生防止のためには極めて重要なのであります。
 しかも、アメリカの飼料規制には、日本の会計検査院に当たるGAOが検査体制が不十分とする報告をまとめており、一部の飼料工場ではBSEの感染ルートの一つである肉骨粉が一年余りにわたって飼料に混入していたということでありました。
 島村農林水産大臣の発言は、このような米国における牛の飼料規制の状況に目をつぶるもので、国民の食の安全の責任者としての自覚を著しく欠いています。また、輸入牛肉に対する国民の不安感をいたずらにあおるおそれがあるとも言えます。
 そこで、食品安全委員会へ諮問するもう一方の当事者であり、国民の健康をつかさどる尾辻厚生労働大臣にお伺いします。
 島村農林水産大臣の一連の御発言についてどのようにお考えなのか、やはり同様にBSE発生の原因とされる飼料規制について諮問しないという態度をお取りになるつもりなのでしょうか。国民の命、健康を受け持つ最高責任者としての答弁を求めます。
 また、食品安全基本法第二十三条第二項には、食品安全委員会は自ら食品健康評価を行うことができる規定があります。これは、諮問がなくとも必要ならば職権で調査できるということです。
 所管する棚橋大臣に同じ質問をいたします。この問題は、十年後あるいは二十年後に潜伏期間を経て発症する可能性のある極めて深刻な問題なのです。ずさんな諮問内容により、後でしまったというようなことにならないように、責任世代の代表者として明確な御答弁をお願いいたします。
 それでは、本題の法律案についてお尋ねいたします。
 皆さん御認識のとおり、今、農山村は疲弊しております。長年の不景気で農産物価格は低迷してしまっている中で発生した昨年の度重なる自然災害は相当な痛手になり、今もなお再生できず途方に暮れている農家も少なくありません。ここ数年の自殺者の推移でも農業従事者の割合が高くなっております。こうした現状を踏まえますと、今までの農業政策が失敗であったと、そのことにほかなりません。
 過去の反省の上に立ち、農業の原点に立ち返ることで見えてくるのが、本来の役割の原点から懸け離れた農業の利権と言われる分野の温存であり、うまみのある政官業癒着構造へのメスを入れさせない、ごまかし、まやかしの法案の姿です。
 そもそも農業は、天候や病虫害、国際化による輸入農産物との競合など極めてリスクの大きい側面を有する一方、品種改良や健康食品への活用などにより無限の価値を見いだすことが可能な分野でもあります。
 そうした農業の特性を考えると、私は、これからの農業は自立を基本として、大規模経営、集落営農、フランチャイズシステムによる中小企業的農業など多様な農業経営が地域の実情に応じて円滑に展開していけるよう、生産、加工、流通、価格の面で不必要な規制は撤廃する一方、安全面では規制を強化するなど、関連する制度の改革や地方自治体への権限移譲が行われていくべきだと考えます。
 こうして、国や地方行政は、農業の自立支援に必要な環境整備やセーフティーネットの充実などの面で農業を支えていくことが必要であります。特に国は、農業生産力の維持や多面的機能維持のための農地の確保、条件不利地対策、食料安全保障や食品安全、消費者保護などに重点化していくべきだと考えます。
 そこで、まず、こうした農業、農政の在り方について島村農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。
 戦後の食料難の時代から高度経済成長を経た今日、確かに国民の食料事情、食生活は改善しました。しかし、それは世界一の農産物輸入によって支えられており、昭和四十年にはカロリーベースで七三%だった食料自給率は四〇%まで低下しております。日本の農業は一体どうなってしまったのでしょうか。
 輸入農産物の激増に伴い国産農産物の価格が低迷し、農家の農業収入は伸び悩むなど、農家を取り巻く環境の悪化を受けて、農家の若い人たちは農業に未来を見いだせずに農村を離れ、農村地帯では高齢化、後継者不足が深刻な事態となっております。農業は危機的な状態なのであります。
 一方、国際的には地球環境問題、人口増加問題等を背景に食料需給の逼迫が顕在化していくものと見込まれており、国民の安定的な食料供給のために、輸入に頼ることなく、可能な限り国内農業生産力の維持拡大を図ることが急務です。
 そこで政府は、小規模零細が中心の農業経営から、経営感覚に優れた効率的、安定的な経営体中心へと農業構造改革を進めていくことを農政の基本課題として位置付けてきました。本改正案は、この基本課題への取組を更に加速化するために、担い手を特定、明確化し、農地の利用集績を一層促進していくための諸措置を講じ、担い手育成のための制度拡充や関係する農地制度を改正しようとするものであります。
 そこで、まず、本改正案による農地制度改正と、平成十二年に策定された旧計画に代わるものとして今年三月閣議決定されました食料・農業・農村基本計画との関連についてお伺いいたします。
 言うまでもなく、農地は農業の基本的な資源であり、その確保と農業上の有効な活用は極めて重要であります。本計画によれば、農地は平成十六年現在の四百七十万ヘクタールから、平成二十七年には二十万ヘクタール減少することが見込まれるとされています。しかし、本当にこの程度の減少で済むのでしょうか。
 実は、平成十二年策定の旧計画においても今回と同じく農地の有効利用、担い手への農地集積の必要性を説きながら、当初の予想を二倍も上回るスピードで減少したのです。このような結果をどう考えますか。その理由も含め、島村農林水産大臣に御見解をお伺いします。
 さらに、こうした構造改革や耕作放棄地対策を講じても、結局は旧計画の二の舞となってしまうのではないかと危惧されていますが、いかがでしょうか。
 次に、自給率との関係であります。
 新計画では、自給率を現在の四〇%から、十年後の平成二十七年度までに四五%、引き上げるとしております。しかし、農地面積から見ると、十年で自給率を五%も引き上げることが可能なのか、疑問を抱かざるを得ません。単純計算すると、実に一八%も生産性を向上させる必要があります。さらに、このまま減少傾向が続くと仮定すると、実にこの十年で生産性を二三、四%も向上させる必要があることになります。
 この点でも、現行の政策の延長では自給率四五%達成は無理、幻想にすぎないのではないでしょうか。本当に農地の確保は達成できるのか、また自給率もこの農地面積で達成可能であるのか、島村農林水産大臣にお伺いします。
 最後に、本改正案の一つの柱は、集落を基礎とした営農組織の育成・法人化を図るとともに、その営農組織を含む担い手に対し、農地を利用集積することが期待できるというものであります。
 ここで特に重要と思われるのが、その営農組織に小規模農家や兼業農家を参加させる仕組みをつくったことであります。地域農業の担い手は、主業農家や農業生産法人などといった認定農業者だけでなく、一定の役割を果たしているこうした農業者を集落営農に参加させるこれらの措置は一応評価できるものであります。
 しかし、問題は、この集落営農が特定農業団体、特定農業法人という法的な担い手として認定され、金融、税制その他ソフト面での経営支援を受けるためには、一元的に経理を行い法人化する計画を有するなどの条件が厳しく制定されております。さらに、平成十九年度からの導入に向けて具体的に仕組みや条件などが検討されている担い手経営安定対策、担い手に直接支払、財政支援でありますが、構造改革の見地から一定の経営規模を満たす集落営農でなければ対象にならないとも言われております。
 これでは、仕組みはつくったが、実際は条件が厳し過ぎてほとんどの集落営農が担い手に認定されない、担い手経営安定対策の対象にもならないことになりかねません。集落営農の営農形態や規模は地域の実情によって様々であり、こうした一律で厳しい条件を付すべきではないと思いますが、大臣の見解を伺います。
 こうした小規模農家や兼業農家はもう農業をやめるしかないということなのでしょうか、併せて島村農林水産大臣にお伺いします。
 結びに、このたびの中国や韓国における反日デモの暴徒は決して許されるべきものではありませんが、長年の事なかれ主義の日本外交のツケが回ってきていると思われても仕方がありません。同様なことが、取り上げましたBSE問題などの農業交渉にも言えるのではないでしょうか。
 今年は、ポーツマス条約に調印してから百年目に当たります。この調印を果たし、誠の心の外交、魂の外交として名高い小村寿太郎侯は、我が宮崎県出身であります。今こそ、私利私欲のない、正しいことは正しいとはっきり物を言い行動する小村侯に思いを巡らし、国のあるべきかたちを大いに語ることが大切であります。
 申し上げましたように、農業の発展は、美しい環境、国土をもたらし、地域を魅力的に再生する源であり、言わば日本再生のキーワードです。未来産業として農をもう一度原点に返って考えてみることを提起して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(島村宜伸君) 松下議員の御質問にお答えいたします。
 まず、今後の農業、農政の在り方についてのお尋ねでありますが、先般、今後の農政の基本方向を定める新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定したところであります。
 この基本計画におきましては、食料自給率の向上に取り組むほか、食の安全と消費者の信頼の確保、担い手の経営に着目した経営安定対策への転換や、担い手への農地の利用集積の促進、高品質な農産物の輸出などによる攻めの農政の展開などの政策の方向付けを行っています。
 今後、この基本計画に基づき、農業者が創意工夫を発揮し、特色ある経営を展開できるよう、積極的に後押ししてまいる考えであります。
 次に、農地面積の減少についてのお尋ねでありますが、我が国の農地面積の減少の大きな要因は耕作放棄地の増加であります。このため、新たな基本計画においては、農地制度の見直しを行い、体系的な耕作放棄地対策を整備するとともに、担い手の育成や農地の利用集積に資する生産基盤整備の積極的推進、中山間地域等直接支払における耕作放棄地の復旧に対する加算措置の導入などにより、農地面積の確保に努めてまいる考えであります。
 次に、農地面積の見込みなどについてのお尋ねでありますが、新たな基本計画においては、これまでの趨勢を踏まえ、また、耕作放棄の抑制などの施策効果を織り込んで、平成二十七年の農地面積について四百五十万ヘクタールと見込んでおります。また、先ほど申し上げた耕作放棄地対策を始め、農地の確保と有効利用を促進するための措置を講じることとしております。さらに、食料自給率四五%の達成の前提となる消費、生産両面における課題の解決に向け、生産者、消費者、食品産業の事業者などの関係者と一体となった取組を推進してまいります。
 次に、集落営農の要件についてのお尋ねでありますが、担い手として位置付けられる集落営農となるためには、持続的かつ安定的な経営体としての実体を有していること、集落を基礎として、核となる従事者が目標を持って取り組んでいることなどが最低限必要と考えております。このため、現在取り組んでいる集落営農の組織化、法人化に向けた全国運動の中では、規約を有することや一元的に経理すること、主たる従事者が所得目標を持って取り組むことなどを求めております。
 いずれにしても、新たな経営安定対策の対象となる経営の具体的要件については、構造改革の加速化の必要性、米政策改革の実施状況などを踏まえ、地域の実情を十分勘案し、今後検討してまいりたいと考えております。
 最後に、集落営農に参加できない小規模農家などについてのお尋ねでありますが、担い手として一定の集落営農を位置付ける以上、小規模農家や兼業農家も明確な役割の下に参加し、担い手の一員となっていただきたいと考えております。集落営農に参加できない場合であっても、例えば、農地を担い手に貸し出す、高付加価値農業を行うなどして営農活動を継続するなどの選択をすることにより、地域の農業で一定の役割を担うことは可能であります。また、生きがいを求めて悠々自適な農業を行うこともできます。
 なお、農政上も、例えば中山間地域対策や地域における生活環境整備などについては、小規模農家や兼業農家も対象となり得るものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣尾辻秀久君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(尾辻秀久君) 米国産牛肉の輸入再開についてお尋ねがございました。
 米国産牛肉の輸入再開に当たりましては、国民の健康保護を大前提に科学的知見に基づき対処することが基本であり、我が国に輸入される米国産牛肉が我が国と同等の安全性が確保されているかについて、食品安全委員会に諮問することといたしております。
 今後、農林水産省と連携しながら、飼料規制に関する情報を含め、米国産牛肉の安全性を評価するために必要な情報を食品安全委員会に提供をしていきたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣棚橋泰文君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(棚橋泰文君) 米国産の牛肉輸入再開の条件についての諮問に関するお尋ねがありました。
 現在、食品安全委員会におきましては、BSEの国内対策について議論を進め、報告案に関する意見、情報の募集を行っているところであります。したがって、米国産牛肉の問題についてお答えすることは適当ではないと考えております。
 いずれにいたしましても、食品安全委員会においては、今後とも中立公正な立場から科学的知見に基づき食品健康影響評価が行われるものと考えております。(拍手)
#34
○副議長(角田義一君) しばらくお待ちください。
 これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#35
○副議長(角田義一君) この際、日程に追加して、
 旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○副議長(角田義一君) 御異議ないと認めます。町村外務大臣。
   〔国務大臣町村信孝君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(町村信孝君) 旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 近年、旅券の不正取得や偽変造等の旅券犯罪が増加し、組織的な密入国などの組織犯罪にこれらの旅券が使用されているほか、国際テロリストによる不正旅券の使用も懸念され、旅券の不正取得や不正使用等に適正かつ厳格に対処する必要があります。また、国際社会においても、昨年のシーアイランド・サミットで渡航の安全性向上に関する行動計画が合意されるなど、旅券犯罪を防止し渡航の安全性を向上させるために、各国が協調して取り組むよう求められています。
 この法律案は、以上に述べた状況にかんがみ、旅券犯罪や不法な出入国の防止を強化し、渡航の安全を向上させ、海外に渡航する国民の便宜を図るため、旅券法等の一部を改正するものであります。
 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。
 改正の第一は、電磁的方法による記録を行った旅券の導入であります。
 国際民間航空機関が定める国際規格に準拠した、生体情報を搭載した旅券を導入することとし、旅券の名義人の写真及び身分事項の一部を電磁的方法により記録した旅券を発給することができることとしました。
 改正の第二は、紛失又は焼失した旅券の失効制度の導入及び旅券の再発給制度の廃止であります。
 現在は、紛失又は焼失した旅券は、当該旅券に代わる旅券が再発行等されない限り失効しないこととなっていますが、紛失等した旅券の悪用防止を強化するため、紛失又は焼失の届出があった旅券は、当該旅券に代わる旅券の再発行等の有無にかかわらず失効させることとしました。これに伴い、紛失等した旅券の効力を継承する旅券を再発行する現行の再発給制度を廃止することとしました。
 改正の第三は、旅券法の罰則の整備であります。
 増加、深刻化する旅券犯罪に的確に対処し、また、国連国際組織犯罪防止条約を補足する密入国議定書の国内的実施を担保するため、旅券の不正取得、不正行使等の罪に係る刑の引き上げ、偽造旅券等を譲り渡し、譲り受け、所持等した者の処罰、営利目的事犯の加重処罰、これらの罪の未遂の処罰を行うこととしたものであります。
 改正の第四は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の整備であります。
 先ほど申し上げた密入国議定書の国内的実施を担保するため整備する旅券法上の罪を、同議定書の規定に従い、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の犯罪収益等隠匿罪等の前提犯罪に加えることとしたものでございます。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
#38
○副議長(角田義一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。犬塚直史君。
   〔犬塚直史君登壇、拍手〕
#39
○犬塚直史君 私は、民主党・新緑風会の犬塚直史でございます。
 ただいま議題となりました旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案、これについて関係諸大臣に質問をいたします。
 旅券の誕生は明治十一年、今現在、日本で有効な旅券の数は三千四百万冊に上っております。一ドル三百六十円の時代には本当に渡航するのは珍しかったが、今では、この平成のこの期間だけでも日本全国で二億三千万人の人たちが海外に渡航をしております。正にこういう時代になりました。昨年、二〇〇四年の旅券の盗難、紛失は五万件、不正使用は二百九件、対策が今求められております。いわゆるIC旅券の導入が審議されておりますのは、こういう時代背景がございます。
 さて、我が党の同僚であります古本伸一郎議員が衆議院の審議で追及をし、そして、この衆議院を通過した後に明らかになった大きな問題点がございます。それは、この旅券発行の手数料に関する疑義でございます。
 まず、皆さん御存じのように、旅券発行の手数料は十年物で一万四千円でございます。四千円の部分は実費の冊子代、印刷代、あるいは人件費、間接物件費、そして、残りの一万円がいわゆる効用分と言われるものでございます。効用分とは、効果の効に用事の用、効用。これは、海外での邦人保護などの領事業務にかかわるこの領事手数料を、一年間千円、十年間で一万円、これを旅券発行に伴って前取りをするというのがこの効用分でございます。
 ここで質問がございます。
 効用分というのは、一体、一般予算には入っていないんでしょうか。平成十七年度、外務省の人件費は九百二十六億円、運営活動費九百七十三億、合計一千八百九十九億円が計上されております。これに加えて、年間三百億円を超える領事事務手数料を旅券発行に際して先取りの形で徴収をする。一般税に加えて年間三百億円を超える効用分をなぜ徴収をするのか、外務大臣に質問をいたします。
 また、加えまして、この効用分を徴収する法的な根拠を具体的な条文名でお答えください。
 今、この効用分の問題、これに加えまして、更に大きな問題は二重取りの問題でございます。
 今、年間五百万人を超える米国への訪問者のうち、古いタイプの旅券を持っている人たちが有効期限を残したままこの新しいIC旅券に切り替えるということが予想されております。
 なぜなら、遅くとも来春からは、IC旅券を持っていない旅行者は、そのために、入国するためにはまず大使館に行く、そして査証の申請をする、長い列をつくる、あるいは入国に際して不愉快な思いをするのではないかというこの不安感から、途中で有効期限を残して切り替えるということが予想されております。自ら選んでIC旅券にするんですから、実費に当たる四千円の徴収は理解ができます。ところが、この効用分前払い、残り九年分あったとしても、新たに十年分一万円を徴収されるというのはどういうことでしょうか。
 中途解約の場合、なぜ二重取りをするのか、いかなる名目で二重取りをするのか、外務大臣、しっかりとした御答弁をお願い申し上げます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 こうしたいわゆる先取りされた分は、自分が都合によって変えるとしても、信用を重んずる企業なら絶対にやりません。ましてや、国民の厳粛な負託を受けた政府がこのような二重取りをするということはどういうことでしょうか。正に国民もここのところを見ているわけです。
 このままでは、一般会計以外の収入の不透明性は氷山の一角と言われかねません。この問題こそが責任者のリーダーシップが問われているわけであります。まず二重取りをやめるよう外務省の部下に指示をする決意があるかどうか、外務大臣にお答えをお願いいたします。
 さて、九・一一を契機に、アメリカでは入国管理、国籍法に基づき、司法長官の判断で外国人を原則七日間まで無条件で拘束をできるという権限を与えました。入国管理全般の運用も非常に厳しくなり、実際の運用では、千名を超える外国人が査証の期限切れなどの軽微な違反で身柄を拘束をされ、批判を呼んでおります。
 こうした状況の下、我が国を始めとするアメリカとの査証免除プログラムに参加している国が、ビザ免除の条件として二〇〇四年十月二十六日まで、バイオメトリックス対応、つまり顔のイメージ、指紋、こうしたもののICの記憶が持っている旅券の対応が求められております。これがいわゆるIC旅券でございます。もちろん、不法入国の取締りと同時に、大多数の旅行者のプライバシーの保護という方面からも考えなくてはなりません。
 こうした中、我が国では、OECDのプライバシー原則を受けて個人情報保護法が本年より施行されております。
 アメリカには個人情報保護の包括的な法制はございません。テロの恐怖の中で導入期日が先に設定をされ、そうした中で日本国民の個人情報の蓄積は、我が国ではなく米国の入管で行われることになります。
 竹中大臣、このプライバシー保護の三つの原則が今言われておりますが、取替え不能な情報、同意なき情報入力、そして複写と流通の際限のない広がり、こうした原則を踏まえて日本国民の個人情報保護をどういうふうに守っていくのか、竹中大臣に御答弁をお願いをいたします。
 また、今回のIC旅券の導入は、我が国の内在的な理由ではなくアメリカ先行によるテロ対策の一環であります。我が国は、先ほどのプライバシー原則を遵守しております。法制も整いつつあります。こうした我が国がなぜこうした交渉を主導できないのか。外務大臣にお答えをお願いをいたします。
 御存じのように、個人情報保護法を受けまして、各監督省庁がプライバシー保護のガイドラインを策定をしております。産業ごとに策定をされましたこのガイドラインの取組につきまして、現状を担当経済産業大臣、そして厚生労働大臣にお伺いをいたします。
 さて、個人情報保護法に厳しいEU圏では、一九九五年、EU指令に基づきまして米国の安全性が問われましたセーフ・ハーバー交渉が二〇〇〇年に締結をしております。正にEUと米国の取決めの違いがここに表れております。日本版のセーフ・ハーバー交渉は当然でございます。米国基準とそして日本の基準の整合性が問題になります。こうした今我が国が取り組んでいる個人情報保護のガイドラインに照らして、どんな交渉が必要なのか、担当の経済産業大臣、厚生労働大臣にお伺いをいたします。
 さて、この個人情報保護法、ここではセンシティブ情報と言われる、先ほどの顔のイメージや指紋についての記述を見送っております。内閣府が二〇〇三年十二月に行った世論調査によりますと、国民の六割以上が個人情報に不安を感じております。正にこうした個人情報の取扱いは国家の威信にかかわることであります。記述されていないセンシティブ情報をどう守っていくのか、外務大臣及び法務大臣の御所見をお願いいたします。
 今、この現代社会、旅券法に限らず、グローバルな対応が求められる法制がメジロ押しであります。国際条約を締結するために国内法整備を行わなければならない。そうした中で、この国際社会で京都議定書と並び称される条約でまだ我が国が締結をしていない条約がございます。ICにもう一つCを付け加えてICCのためのローマ議定書を一刻も早く我が国が締結することをお願いをしまして、私の質問を終わりにいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣町村信孝君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(町村信孝君) 犬塚議員にお答えを申し上げます。
 六つの質問があったかと存じます。
 まず、第一ですが、一般税から予算で旅券の手数料の効用分を賄わない理由、効用分徴収の理由及び効用分徴収の法的根拠についてお尋ねがございました。
 旅券手数料の徴収は旅券法第二十条に基づいて行われており、従来より手数料を定めるに当たっては、旅券作成に必要な直接的経費に加えまして、邦人保護経費に当たる効用分も含めてまいりました。これは、邦人保護の受益者は旅券所持者であるとの基本的考え方に基づくものでありまして、現在、年間約千六百万人を超える邦人が海外に渡航し、百万人近い邦人が海外で活躍しておりますところ、邦人の保護活動を円滑に行うため、効用分を含む旅券手数料の負担をいただいているところでございます。
 次に、現行旅券のIC旅券への切替えの際の旅券手数料徴収についてのお尋ねがございました。
 IC旅券導入後においても現行の非IC旅券は有効期間満了日まで有効でございまして、現行旅券をIC旅券に切り替える必要はございません。従来より、有効期間内に新たな旅券を申請する場合には、円滑な旅券行政実施との観点から手数料の割引等の措置はとってまいりませんでした。現行の非IC旅券を保持している方が自らの判断に基づいてIC旅券への切替えを希望する場合には新規にIC旅券の発行を行う予定ですが、この場合にも、従来の取扱いと同様、正規の手数料をお願いすることを考えております。
 次に、IC旅券導入において我が国が先行できなかったことについてお尋ねがございましたが、我が国は、IC旅券導入に当たっては国際的相互運用性の確保が最重要であるとの考え方に基づきまして、国際民間航空機関、ICAOにおけるIC旅券の導入の議論に積極的に参加し、IC旅券の国際標準化を推進してきました。昨年五月にIC旅券の国際標準が策定されたことを受けまして、現在、このIC旅券導入の準備を進めているところでございます。
 次に、IC旅券導入期限延期に関するアメリカとの交渉の進捗状況ということでございましたが、去る三月十九日、私よりライス国務長官に対しまして、導入期限の一年延期にかかわる米国議会への働き掛けについて協力要請を行いました。しかしながら、米国議会における延期の決定は現時点では行われておりませんので、政府といたしましては、引き続きあらゆる機会を利用して働き掛けを行ってまいりたいと考えております。
 個人情報についての我が国の今後の取組についてのお尋ねでございましたが、IC旅券に記録された個人情報が所持人の同意なく不正に読み出せない高度な技術を採用するなど、個人情報保護に努めているところでありまして、今後とも個人情報保護に万全を尽くしてまいります。
 最後に、アメリカによる日本国民の個人情報の管理についてのお尋ねでございましたが、政府は、米国に対して、外国人入国者の指紋情報を厳格、適正に管理するよう以前から強く申し入れてきております。これにこたえて、米国政府は、外国人の指紋情報を厳重に管理すべく種々の措置を講じている旨明確に表明しており、政府としては、個人情報の厳格な管理について引き続きアメリカに要請していく考えであります。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(竹中平蔵君) 犬塚議員から一問、個人情報の保護についてお尋ねがございました。
 個人情報の保護に関する法制度としましては、個人情報保護法のほかに行政機関個人情報保護法等がございます。私が所管をいたしております個人情報保護法は、これはOECD八原則を踏まえまして、高度情報通信社会における個人情報の適正な取扱いを確保するために、個人情報の利用目的の特定、第三者提供の制限、そして情報管理の徹底など事業者が遵守すべき義務等を定めております。政府としては、個人情報の保護に関する基本方針に基づきまして、事業分野ごとのガイドラインの策定及び徹底、苦情の円滑な処理の推進等々を行っております。
 いずれにしましても、政府としては、引き続き個人情報保護法の厳正な運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣南野知惠子君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(南野知惠子君) 犬塚議員にお答え申し上げます。
 いわゆるセンシティブ情報の保護に対する今後の取組についてお尋ねがありました。
 IC旅券が今後普及することとなれば、出入国審査においても、IC旅券内に記録された画像その他の旅券情報を読み取った上で、渡航者の同一人性の確認のための電子的な認証に活用することが考えられます。
 IC旅券内に記録されたバイオメトリックス情報については、今後、我が国での空港、海港での審査手続において、出入国管理行政上の目的に照らし、必要な範囲内で取得及び利用を図ることとしておりますが、既にバイオメトリックスによる本人認証を導入している各国の例も参考にしながら、制度、システムの整備を始め、厳格な運営を確保するために必要な措置をとってまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(中川昭一君) 個人情報保護法のガイドラインに関する取組についてのお尋ねでございますが、経済産業省では、経済産業分野における事業者が個人情報保護に関する対応を行う際の参考とするため、昨年十月に個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドラインを作成しております。
 このガイドラインでは、事業者が個人情報保護法に関する対応を行うに際して具体的なイメージが持てるように、できる限り具体的な例を掲載するなど、事業者が具体的にどのような対応を行えばよいのか分かるような工夫をしております。
 当省といたしましては、引き続きガイドラインの普及啓発に取り組み、個人情報保護の着実な実施を推進してまいります。
 次に、国民の個人情報の海外における保護についてのお尋ねですが、我が国の個人情報保護法では、欧州と異なり、我が国国民の個人情報の海外への移転に焦点を合わせた規定は置かれておりません。このため、当省のガイドラインにおいて、この点については特段触れておりません。ただし、国境を越えた企業活動がますます活発化する中で、個人情報の保護に関しても国際的調和を図っていくことは極めて重要な課題であると考えております。
 こうした課題に対応するため、内閣府を中心とした関係府省とも連携を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣尾辻秀久君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(尾辻秀久君) 個人情報保護のガイドラインの策定に向けた取組についてお尋ねがございました。
 厚生労働省では、事業者等による個人情報保護に向けた取組を支援するため、医療、福祉、雇用など七分野において十二のガイドラインを策定し、その周知に努めておるところでございます。中でも、国会の附帯決議などにおいて、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野の一つとされました医療分野につきましては、医療機関、研究者などに対する詳細なガイドラインを策定いたしまして、個人情報保護法の適用されない小規模な医療機関についても適正な取扱いを求めるなど、適正な取扱いの確保を図っておるところでございます。
 今後の米国との交渉と国民の個人情報保護についてのお尋ねがございました。
 我が国の個人情報保護法では、ただいま中川大臣からも御答弁ございましたように、国民の個人情報の第三国への移転に焦点を当てた規定は特段設けられておりません。このため、厚生労働省所管のガイドラインにおきましても、個人情報を第三国に移転する場合に、第三国に対して一定の水準の確保を求めるような規定は特段設けておりません。
 いずれにいたしましても、個人情報の保護に関して国際的調和を図っていくことは重要な問題でございますので、国民の個人情報の保護に向け、内閣を中心とした、関係府省とも連絡を図りながら取組をいたしてまいります。(拍手)
#45
○議長(扇千景君) 犬塚君から再質疑の申出があります。これを許します。犬塚直史君。
   〔犬塚直史君登壇、拍手〕
#46
○犬塚直史君 ただいま町村外務大臣にお答えいただけなかった部分がありますので、質問の部分をもう一度ここで申し上げます。
 まず、この中途解約の場合、どうして効用分を二重取りになってしまうのか、いかなる名目になるのか、ここの部分をもう一度お答えください。(拍手)
   〔国務大臣町村信孝君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(町村信孝君) 犬塚議員の再質問でございます。
 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、IC旅券導入後においても現行旅券の有効性には何ら問題はないと。したがって、現行旅券をこれ強制的に切り替えろというのであるならばいざ知らず、そういうわけではなくて、現行旅券をIC旅券に切り替えなければならないという必要性はそもそもないわけでございます。
 しかし、現行の非IC旅券を保持している方が御自分の判断で、御自分の判断でIC旅券に切替えを希望する場合、これについては、従前からもそうでございますけれども、従来の取扱いと同様で正規の手数料をお願いをするという扱いでございまして、このことについて先ほど、今、再質問がございましたが、先ほどと同じ答弁でお答えをしてございます。(拍手)
#48
○議長(扇千景君) このまましばらくお待ちください。──ただいま理事が協議中でございますので、しばらくお待ちください。
 これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#49
○議長(扇千景君) 日程第二 社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 日程第三 社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
 以上両件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長林芳正君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔林芳正君登壇、拍手〕
#50
○林芳正君 ただいま議題となりました条約二件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 両件は、いずれも人的交流に伴って生ずる年金制度及び医療保険制度等への二重加入等の問題の解決を図ることを目的とするものでありまして、我が国とベルギー及びフランスとの間で、それぞれ、年金制度及び医療保険制度等について適用の調整を行うこと並びに保険期間の通算による年金の受給権を確立すること等を定めるものであります。
 委員会におきましては、両件を一括して議題とし、人的交流の促進と社会保障協定締結の意義、東アジア諸国との社会保障協定締結の検討、労災保険制度等が両協定の適用対象となっている理由等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終え、順次採決の結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#51
○議長(扇千景君) これより両件を一括して採決いたします。
 両件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#52
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#53
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一  
  賛成           二百三十一  
  反対               〇  
 よって、両件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#54
○議長(扇千景君) 日程第四 社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案
 日程第五 社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案
  (いずれも内閣提出)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長岸宏一君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔岸宏一君登壇、拍手〕
#55
○岸宏一君 ただいま議題となりました両法案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 両法律案は、日本とフランスとの間及び日本とベルギーとの間で、それぞれ医療保険制度、年金制度等の二重加入を解消するとともに、両国の年金制度への加入期間を通算することを目的とした社会保障協定を実施するため、公的医療保険各法及び公的年金各法に関する特例を定めようとするものであります。
 委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、今回の協定締結に至る経緯とその効果、協定締結国を拡大する必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、順次採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#56
○議長(扇千景君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#57
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#58
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成            二百三十  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#59
○議長(扇千景君) 日程第六 都市鉄道等利便増進法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。国土交通委員長田名部匡省君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔田名部匡省君登壇、拍手〕
#60
○田名部匡省君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、都市鉄道利便増進事業を促進し、併せて駅施設及び駅周辺施設における交通結節機能の高度化を図るために必要な措置を定めようとするものであります。
 委員会におきましては、事業対象地域の地方への拡大、地方における鉄道及び駅周辺整備等関連事業に対する支援の在り方、駅施設のバリアフリー化、西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車脱線事故の原因究明と再発防止策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して仁比委員より、本法律案に反対する旨の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#61
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#62
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#63
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成           二百二十一  
  反対               九  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#64
○議長(扇千景君) 日程第七 有限責任事業組合契約に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。経済産業委員長佐藤昭郎君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔佐藤昭郎君登壇、拍手〕
#65
○佐藤昭郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、個人又は法人による共同営利事業を促進するため、組合員の責任の限度を出資額までとする有限責任事業組合制度を創設するとともに、組合契約の登記、財務諸表の開示及び債務超過時の利益分配の禁止等、債権者保護に関する規定を整備しようとするものであります。
 委員会におきましては、法人格のない有限責任事業組合の法制上の位置付け、事業形態における有限責任の在り方、有限責任事業組合と合同会社の税制上の相違等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#66
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#67
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#68
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成           二百二十一  
  反対               九  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#69
○議長(扇千景君) お諮りいたします。
 この際、憲法調査会会長から、日本国憲法に関する調査の報告を聴取することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#70
○議長(扇千景君) 過半数と認めます。
 よって、聴取することに決しました。憲法調査会会長関谷勝嗣君。
    ─────────────
   〔調査報告書は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔関谷勝嗣君登壇、拍手〕
#71
○関谷勝嗣君 日本国憲法に関する調査報告書の概要につきまして、御報告を申し上げます。
 本憲法調査会は、平成十二年一月二十日、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うことを目的として設置され、五年三か月余にわたって調査を行ってまいりました。
 具体的な調査に際しましては、日本国憲法の三大原則に沿って「国民主権と国の機構」「基本的人権」「平和主義と安全保障」そして「総論」の四つのテーマを設け、委員間討議、参考人質疑等を行い、さらに、四回にわたる中央公聴会の開催、四回の海外調査を実施いたしました。
 基本的には本調査会において調査を進めてまいりましたが、特に「二院制と参議院の在り方」については参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきであり、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会を設けることといたしました。
 小委員会における調査内容の報告は、「二院制と参議院の在り方に関する小委員会調査報告書」として本年三月九日に憲法調査会に提出されております。これらの調査結果を取りまとめ、去る四月二十日、調査報告書を議決し、議長に提出いたしました。
 議決に当たり、各会派を代表して意見表明が行われ、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党からは本報告書に賛成である旨、日本共産党及び社会民主党・護憲連合から反対である旨の意見が述べられ、本報告書は多数をもって議決されました。
 本報告書の特色は次のとおりであります。
 第一に、論点に関する意見の紹介の中で、各党の意見として集約されたものについては政党名を明記いたしました。
 第二に、憲法に関する論点はできる限り多く取り上げるとともに、各党において「共通の認識が得られた」等の事項についてはその旨を明記いたしました。
 第三に、その総括とも言うべき「まとめ」におきましては、一、共通又はおおむね共通の認識が得られたもの、二、意見が対立したものの一方が趨勢であると認められたもの、三、意見が分かれた主要なもの、にそれぞれ取りまとめ、調査会における議論の状況が分かるように整理して記載をいたしました。
 その主な内容は次のとおりであります。
 その一、自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党の五党間で意見が一致した「共通の認識が得られたもの」及び党又は党内の一部に若干の異論があった「おおむね共通の認識が得られたもの」は、合わせて三十三項目でございました。すなわち、
 一、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の三大原則の維持、現行憲法への高い評価、国民主権の堅持・発展、
 二、象徴天皇制の定着と維持、天皇の公的行為の認知、女性天皇を認めること、
 三、平和主義の意義・理念の堅持、第九条第一項の維持、個別的自衛権の認知、自衛のための必要最小限の組織の必要性、シビリアンコントロールの重要性、国連重視とその改革の必要性、国際協力への積極的取組、世界平和にとって貧困などの解決が不可欠であるとの認識、
 四、基本的人権の重要性の評価、国際人権法の尊重、女性や子供・障害者・マイノリティーの人権の尊重、外国人の人権の基本的保障、社会保障・教育・労働等の重要性と国の保障、新しい人権へ原則的に憲法の保障を及ぼすべきこと、
 五、三権分立の重要性、「二院制と参議院の在り方」に関し、一、二院制の堅持、二、両院の違いの明確化のための参議院改革の必要性及び選挙制度設計の重要性、三、参議院議員の直接選挙制の維持、四、参議院が自らの特性を生かして、例えば、長期的・基本的な政策課題への取組、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など、衆議院とは異なる役割を果たすべきこと、五、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当であり、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきこと、また、衆参両院を基盤とした議院内閣制、司法の迅速化・裁判の充実、特別裁判所設置禁止の維持、私学助成の必要性、参議院の決算重視、
 六、国と地方の対等な関係、健全な地方財政の必要性、住民自治の強化、基礎的自治体の強化、地方分権の推進、
 七、憲法改正手続における国民投票制の維持、
の諸点であります。
 その二、自由民主党、民主党、公明党の三党間でおおむね一致した、趨勢である意見は六項目ございました。すなわち、
 一、新しい人権の憲法上の明記、特にプライバシー権、環境権の憲法上の明記、
 二、内閣総理大臣・国務大臣の就任資格は従前どおりとすること、
 三、複数年度予算の考え方の評価、
 四、今後の憲法論議について、憲法調査会において憲法改正手続の議論を続けること、
の諸点であります。
 その三、自由民主党、民主党、公明党の三党間でも意見が一致しなかった項目のうち主なものは、二十項目でございました。すなわち、
 一、憲法前文に書かれるべき理念・内容、天皇は元首か否か、また憲法に明記すべきか、
 二、戦力及び交戦権の否認を定める第九条第二項改正の要否、集団的自衛権を認めることの是非及びそれを憲法に明記すべきか、自衛隊の憲法上の明記、国際貢献の憲法上の明記、多国籍軍等への参加、緊急・非常事態への対処の憲法上の明記、
 三、人権と公共の福祉との関係、権利と義務との憲法上の取扱い、外国人の地方参政権、表現の自由の規制の在り方、政教分離の考え方、
 四、内閣強化か国会強化か、首相公選制導入の是非、憲法裁判所制度の導入の是非、私学助成について憲法改正の要否、会計検査院の位置付け、
 五、住民投票制の法定化、道州制の導入の是非、
 六、憲法改正要件の変更、
の諸点であります。
 これらの課題については、本報告書の発表を契機として、国民各層の間においても更なる議論がなされることを切に望むものであります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#72
○議長(扇千景君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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