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2005/07/13 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第31号
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2005/07/13 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 本会議 第31号

#1
第162回国会 本会議 第31号
平成十七年七月十三日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十二号
    ─────────────
  平成十七年七月十三日
   午前十時 本会議
    ─────────────
 第一 郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案
  、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法
  案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管
  理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う
  関係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明
  )
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 日程第一 郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明)
 六案について提出者の趣旨説明を求めます。竹中国務大臣。
   〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(竹中平蔵君) このたび、政府から提出いたしました郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 郵政民営化は、民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資することにかんがみ、内外の社会経済情勢の変化に即応し、日本郵政公社、以下公社と申し上げます、に代わる新たな体制を確立するものであり、地域社会の健全な発展及び市場に与える影響に配慮しつつ、公社が有する機能を分割し、その機能を引き継ぐ新たな株式会社を設立するとともに、一定の期間、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講ずるものであります。これにより、経営の自主性、創造性及び効率性を高め、公正かつ自由な競争を促進するとともに、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上、資金のより自由な運用を通じた経済の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。この郵政民営化を実現するため、これら六法案を提出するものであります。
 それぞれの法律案の概要について、順次御説明申し上げます。
 初めに、郵政民営化法案についてであります。
 第一に、郵政民営化の基本的な理念及び方針並びに国等の責務を定めております。
 第二に、郵政民営化を推進するとともに、その状況を監視するため、政府に、郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会を平成二十九年三月三十一日まで設置することとし、郵政民営化委員会が、三年ごとに、郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行うこと、郵政民営化推進本部がその検証等について国会に報告すること等、郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会の所掌事務、組織等について定めております。
 第三に、準備期間中の公社の業務について、国際貨物運送に関する事業を行うことを主たる目的とする会社に出資することができる等の特例等を定めております。
 第四に、日本郵政株式会社を準備期間中に設立することとし、日本郵政株式会社に公社の業務等の承継に関する実施計画を作成させ、この実施計画に関する事項を決定する経営委員会を設置すること、その他の準備期間中の業務の特例等並びに移行期間中の郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の保有及び完全処分等の業務の特例等について定めております。
 第五に、郵便事業株式会社、郵便局株式会社及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、以下機構と申し上げます、を平成十九年四月一日に設立することとし、その設立及び移行期間中の業務の特例等について定めております。
 第六に、一般の商法会社として郵便貯金銀行及び郵便保険会社を日本郵政株式会社に設立させるとともに、銀行法及び保険業法の特例等として、郵便貯金銀行及び郵便保険会社がそれぞれ銀行業の免許及び生命保険業免許を平成十九年四月一日に受けたものとみなすことを定めるほか、預入限度額、保険金額等の限度額、業務範囲等について適正な競争関係等を確保するための必要な制限を加えるとともに、民営化に関する状況に応じ、移行期間中にこれらの制限を解除し、自由な経営を可能としていくこと等について定めております。
 第七に、公社の業務等の日本郵政株式会社等及び機構への承継に関する基本計画、その承継を円滑に行うための税制上の措置その他の所要の規定を設けております。
 次に、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案及び郵便局株式会社法案についてであります。
 いずれの法案も会社の目的、業務の範囲等について定めるものでありますが、まず、日本郵政株式会社につきましては、第一に、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済株式の総数を保有し、両社の経営管理を行うこと並びに両社の業務の支援を行うことを目的とすることを定めております。
 第二に、政府は、常時、日本郵政株式会社の発行済株式の総数の三分の一を超える株式を保有していなければならないことを定めております。
 第三に、日本郵政株式会社は、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社が発行する株式を引き受けるとともに、両社の発行済株式の総数を保有していなければならないこと、両社の経営の基本方針の策定及びその実施の確保並びに両社の株主としての権利の行使の業務を行うほか、その目的を達成するために必要な業務を行うことができることを定めております。
 郵便事業株式会社につきましては、第一に、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むことを目的とすることを定めております。
 第二に、郵便事業株式会社は、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、お年玉付郵便葉書等及び寄附金付郵便葉書等の発行の業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内でこれらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。
 郵便局株式会社につきましては、第一に、郵便窓口業務及び郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことを目的とすることを定めております。
 第二に、郵便局株式会社は、郵便事業株式会社の委託を受けて行う郵便窓口業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律に定められた事務に係る業務、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内でこれらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。
 第三に、郵便局株式会社は、郵便局の設置について、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならないことを定めております。
 さらに、郵便事業株式会社に関し、第三種郵便物、第四種郵便物に係る業務等であって一定の要件を満たす社会貢献業務に関する規定を、郵便局株式会社に関し、地域住民の生活の安定の確保のために必要であること等の要件を満たす地域貢献業務に関する規定を、それぞれ設けるとともに、日本郵政株式会社は、社会貢献業務又は地域貢献業務の実施に要する費用に充てる資金を郵便事業株式会社又は郵便局株式会社に対し交付するものとし、その財源を運用によって得るために、日本郵政株式会社に社会・地域貢献基金を設けることを規定しております。
 また、これら三会社に対する監督に関する規定その他所要の規定を設けております。
 次に、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案についてであります。
 この法律案は、機構が、公社から承継した郵便貯金及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行し、もって郵政民営化に資することを目的とすることのほか、機構の役職員、業務、財務、会計等について定めております。
 最後に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案についてであります。
 この法律案は、郵政民営化法、日本郵政株式会社法、郵便事業株式会社法、郵便局株式会社法及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法が施行されることに伴い、郵便貯金法、簡易生命保険法、日本郵政公社法等十三の関係法律を廃止するほか、郵便法について郵便認証司の制度を設けるなど百五十八の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めるものであります。
 これら六法案は、一部を除き、平成十九年四月一日から施行することとしております。なお、システム対応上の問題がある場合には民営化の実施時期を延期できるよう、所要の規定を設けております。
 なお、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。
 第一に、郵政民営化法案について、郵政民営化委員会が三年ごとに行う「総合的な検証」を「総合的な見直し」に修正するとともに、議決権の行使に関する事項を郵便貯金銀行及び郵便保険会社の定款に必ず定めなければならない旨を規定することであります。
 第二に、日本郵政株式会社法案について、日本郵政株式会社が、社会・地域貢献基金について一兆円を超えて積み立てることができることを明確にし、二兆円まで積み立てる場合には、一兆円までと同じルールで積み立てなければならない旨を規定することであります。
 第三に、郵便局株式会社法案について、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として、銀行業及び生命保険業の代理業務を明示することであります。
 第四に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、地方公営企業法について所要の改正を行うことであります。
 以上が郵政民営化法案等の六法案の趣旨でございます。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。市川一朗君。
   〔市川一朗君登壇、拍手〕
#6
○市川一朗君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました郵政民営化関連六法案について、総理大臣に質問いたします。
 総理が改革の本丸と位置付けているこの郵政民営化について、我が党は、正に昼夜を分かたず徹底的な議論を積み重ねてまいりました。そして、政府側との協議におきましても、国民的な視点に立って、郵便局設置の法的義務付けや金融のユニバーサルサービスの確保等について修正を求めるなど、粘り強い交渉を行ってまいりました。
 この間、我々が一貫して、国民のためになる郵政民営化であれば賛成するが、国民にとっての利益を生まない改革ならば断じて通すわけにはいかない、そう主張してまいりました。このことは総理もよく御存じのことと思います。
 いよいよ本日より本院において郵政改革法案の審議がスタートしました。真に国民の利益となる郵政改革の姿を模索しながら、衆議院で行われた修正の内容も含め、国民的な立場から率直に総理に伺ってまいりたいと思います。
 衆議院におきましては、五票差という僅差の可決となりました。世論調査においても、郵政民営化に関する賛否は拮抗しております。これは、民営化の是非もさることながら、総理始め政府側の説明が十分ではないということの表れでもあろうかと存じます。
 これから始まる本院の審議におきましても、様々な意見や質問が予想されますが、民営化への理解を得るためには、多くの議員の指摘を謙虚に受け止め、それへの対応を明らかにするなど、より一層誠実かつ真摯な答弁をしていただかなければなりません。このことをまず総理に強く要望しておきたいと思います。
 まず、民営化の基本論についてであります。
 郵政公社は、平成十五年四月の発足以来、着々と改革を進め、郵便、貯金、簡保のいわゆる郵政三事業とも二期連続の黒字を重ねるなど、実績を上げてまいりました。このような経緯から、中期経営目標の四年間を待たずに、何ゆえに民営化を急ぐのかという疑問はいまだ根強く残っております。また、公社を維持しつつ改革に取り組めばよいのではないのかという指摘もあります。
 まず、端的に質問します。なぜ今民営化が必要なのか、また公社では改革できないのか、御答弁をお願いしたいと思います。
 郵政公社は、三事業一体の効率的な経営により郵便ネットワークを維持し、国民に対して全国一律のサービスを提供してまいりました。これは国民的利益にもかなったものと私は考えております。
 この点、四つの会社に分社化することは、郵政三事業の体力を分散することになりかねず、現行と同水準のサービスを提供することは困難になるのではないかといったことが改革の主要な論点の一つであったわけであります。
 この点については、衆議院において、実質的に一体的経営を担保し得る株式持ち合い等の修正が行われました。一定の懸念は払拭されたと私は思います。
 しかし、こうした衆議院における修正に対し、小泉総理は、全く評価をしていないと取られるような発言をしているように思います。
 改めて、この修正も含めまして、今回の修正全般に対する総理の見解をお伺いしておきます。
 中央省庁改革基本法第三十三条一項六号の解釈について伺います。
 同法では、民営化等の見直しは行わないと明記されております。衆議院においてもこの問題が大きく取り上げられました。そこで、この点についての政府の見解を確認しておきたいと思います。
 次に、郵便局の設置基準についてであります。
 郵便局は百三十年間掛けて築き上げられてきた国民共有の財産であります。地域コミュニティーの拠点として、過疎地においては唯一の金融機関として、なくてはならない存在であります。民営化によって過疎地における赤字郵便局の統廃合を招くような事態は避けなければなりません。
 民営化後も、郵便局の設置に関しては、国民の利便性に万一にも支障が生じないよう十分配慮すべきだと考えますが、いかがですか。
 地域住民にとっては、郵便局が存続したとしても、郵貯、簡保といった金融サービスを引き続き受けることができなくなるのではないかとの懸念があります。郵便のユニバーサルサービスについては法的義務付けがなされておりますが、金融のユニバーサルサービスについては義務付けがありません。
 また、郵便局株式会社法案の原案では、第四条に業務の範囲が明記されていますが、貯金、保険の業務が盛り込まれておりませんでした。この点、衆議院において、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として、銀行業、生命保険業の代理業務を例示的に明記するという修正が行われております。
 そこで、政府は、金融の事実上のユニバーサルサービスの維持のために万全の措置を講ずるとともに、過疎地の郵便局においても今までと変わらず金融サービスを提供すると理解してよろしいのか、明確な答弁を求めます。
 郵政民営化法案第九十八条、第百二十九条では、銀行業、生命保険業の免許付与の条件に、安定的な代理店の継続的な設置や生命保険募集人への継続的な業務の委託を義務付けております。つまり、郵貯銀行、郵便保険会社に対して、みなし免許の付与の際に、郵便局会社に安定的な代理店業務、保険募集業務の委託をすることを条件としていますから、二〇〇七年から二〇一七年までの移行期間中は、事実上金融のユニバーサルサービスを義務付けることになっております。
 移行期間後を心配する声もありますが、政府・与党の合意では、安定的な代理店契約について、その期間は、移行期間を超えて長期とすることも妨げないものとすると盛り込まれております。
 そこで、完全民営化後も地域において金融サービスをしっかりと展開していくために、移行期間後の長期にわたっても安定的な代理店契約を結ぶことができるのか、お伺いいたします。
 次に、地域・社会貢献基金について伺います。
 過疎地の郵便局においても、金融のユニバーサルサービスを、移行期間終了後は地域・社会貢献基金によって支えると伺っております。平成十五年度郵政事業における郵便局別損益試算によりますと、郵便局の直接かかわる費用を抽出した方式では、一万四千百五十五局が赤字であり、利益を出しているのは東京、関東、東海、南関東、近畿支社のみであります。
 このように、赤字の郵便局が都市部を除いて多数あるという現状からも、過疎地の金融サービスを確保するために積極的に同基金を活用すべきであるということを申し上げておきます。
 そのためには安定した十分な財源が必要です。原案の日本郵政株式会社法案第十三条では、一兆円に達するまで基金に積み立てなければならないと規定されておりましたが、衆議院において、二兆円まで増額を可能とする修正が行われました。
 この修正を受けていかに取り組むのか、お伺いします。あわせて、地域・社会貢献基金においては地域の声を十分に聞くべきだと考えますが、基金はどのようなプロセスを通じて交付されるのか、お尋ねいたします。
 金融のユニバーサルサービスを担保するためには、もう一つの柱として、縦及び横の株式持ち合いによる三事業の経営の一体性の確保が必要となります。郵政民営化法案第六十二条においては、持ち株会社が、移行期間中に郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の全部を段階的に処分する義務を課しております。
 ただ、四月下旬の政府、与党間において、連続保有を妨げないとの合意が交わされております。衆議院においては、この合意を明確に担保するために、完全民営化後も郵便貯金銀行、郵便保険会社の株主に与えられる議決権の連続的保有を法案に明記する修正が行われました。そこで、政府は本修正をどのように受け止めているのか、お伺いします。
 横の株式持ち合いについてもお尋ねいたします。
 郵政民営化法第百五条及び百三十四条は、総理大臣及び総務大臣が、移行期間中の銀行法及び保険業法等の特例規定を適用しなくとも、他の金融機関等の競争関係を阻害するおそれがないと認めるときは、その旨の決定をしなければならないとの規定が定められております。
 そこで、この決定後は郵便局会社による郵便貯金銀行等の株式取得といった横の株式の持ち合いが可能であるのか、政府の御見解をお伺いします。
 現状のままでは郵政が先細り傾向にあることも事実ですから、できるだけ早期に経営の自由度を拡大して維持、発展させていかねばならないことは私も理解しております。
 しかし、民間会社との間のイコールフッティングは大切なことですが、それを強調する余り、経営が厳しくなり事業を失敗したからといって税金を投入するわけにはまいりません。そもそも、民営化しても経営が成り立たなければ意味がないのであります。
 そこで、政府としては、民営化会社の経営の自由度の確保にいかに取り組むのか。また、預入限度額・保険金額に関する政令の改正に当たっては新会社の意見を十分に聞くべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 郵政民営化により、国民の利便性が下がるのであれば改革をする意味はありません。民営化により、国民の利便性が高まるとともに、社会貢献サービスが維持されることも肝要であります。特に、社会的貢献サービスである第三種、第四種郵便はしっかりと堅持していくべきと考えますが、今後どのような取扱いとなるのか、お尋ねいたします。
 また、社会貢献サービスであるひまわりサービスや災害時における政策的料金免除等の政策は引き続き維持されるのでしょうか。
 民営委員会による三年ごとの総合的な見直しについて伺います。
 この見直しの対象には、郵便局の設置状況や基金の活用等による金融・保険サービスの提供状況が当然含まれていると思いますが、経営形態の在り方についてはどうなのか、お伺いします。
 小泉改革の総決算とも言うべき郵政民営化については、衆議院においては国鉄民営化法案の七十六時間を大きく上回る百時間以上の審議が行われました。しかし、野党が質疑時間の一部を閣僚の個人攻撃に当てたこともあり、審議時間を掛けたにしてはまだまだ議論をしなければならない論点が残されていると私は考えます。
 そこで、良識の府である参議院においては、国民のために法案の中身自体に関する議論を十分尽くすべきであると、このことを強く申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 市川議員に答弁いたします。
 郵政民営化の必要性、公社では改革できない理由についてでございますが、郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も民間企業が自由な経営の下で同様のサービスを提供しており、公務員でなければできない事業ではなく、民間により十分運営が可能なものであります。
 他方、現在の公社制度には、郵便局では郵便、郵貯、簡保しか取り扱えない等、業務範囲が限られるため環境変化にも柔軟に対応できないこと、郵貯・簡保資金は官の資金として国民負担回避のため国債等の安全資産に運用せざるを得ないこと、法人税等が非課税であること等、民間企業と対等な競争条件となっていないこと等の問題点があるところであります。公社形態を維持したままの改革では、その成果は限定的にならざるを得ません。
 このため、郵政民営化を実現することにより、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより質の高い多様なサービスが提供されるようにしていくとともに、郵便局を通じて国民から集めた約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流す道を開く、約三十八万人の郵政公社の職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等により財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現に資する等のメリットを引き出し、構造改革を一層前進させ、国民の利便性の向上が図られるようにしていくことが重要であると考えております。
 他方、郵便物の減少や金融の技術革新など、郵政事業を取り巻く環境は急激に変化しており、これに適時適切に対応して郵政事業の健全な経営を確保するためには速やかに郵政事業を民営化することが必要であります。また、最終的な民営化が実現するには相当年数の準備期間と移行期間が必要であること等を考慮すれば、直ちに民営化に取り組む必要があり、政府としては平成十九年四月に民営化を実施したいと考えております。
 なお、郵政民営化の実現に当たっては、過疎地を始め都市部においても必要な郵便局ネットワークを維持し、また、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、貯金、保険の金融サービスが低下しないよう制度設計に工夫を凝らしており、国民の利便性には十分配慮しております。
 郵政民営化は、私が官から民へ、民間にできることは民間にの方針の下に進めてきた改革の本丸と言うべき改革であり、郵政事業を改革する最善の案と考えております。
 衆議院における法案修正についてでございますが、衆議院における修正は、政府・与党合意の中で、与党の主張を入れ、法律化されなかったものについてできるだけ法律に明記することにより、より強い担保を確保するなどぎりぎりの修正が行われたものであり、郵政民営化にかかわる国民の不安感や懸念の払拭にこの修正が役立つものであると考えております。政府として、これまでの議論の経過や衆議院での修正等を真摯に受け止め、参議院における審議において法案に対する御理解を賜るよう誠実に対応してまいります。
 中央省庁基本法についてでございますが、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号は、郵政事業について国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定していますが、これは公社化までのことを規定しているものであって、公社化後の在り方を拘束するものではないというのが政府の見解であります。
 民営化後の郵便局についてでございますが、郵便局の設置については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえ、過疎地は当然のこととして、都市部も含め、国民の利便性に支障が生じないよう十分な配慮がなされることが重要と考えております。このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付け、さらに省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するとともに、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、きめ細やかな法制上の担保を行うこととしております。
 また、設置基準に基づく郵便局の設置状況について、法案においては、毎事業年度、郵便局会社からの事業報告書の提出等により、総務大臣が把握し、必要に応じ適切な措置を講ずるとともに、与党との合意を踏まえ、郵政民営化委員会による三年ごとの総合的な見直しの対象に必ずすることとしており、その結果、必要があれば委員会は政府に意見を述べ、総務大臣において適切な措置を講ずることが可能な仕組みとしているところであります。
 民営化後の郵便局における金融サービスについてでございますが、これまで全国津々浦々の郵便局において貯金、保険のサービスが提供され、それが地域の人々の生活を支えてきた重みについては十分認識しております。したがって、郵政民営化後も、利用者の利便性を確保するために、従来どおり郵便局において貯金、保険のサービスが提供されることが重要であります。
 そのため、貯金、保険のサービスについては、あまねく公平に利用させるためのユニバーサルサービスの提供義務を法律により課すこととしていないものの、郵便貯金銀行、郵便保険会社に対する免許に当たり、最低限、移行期間をカバーする長期・安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを条件として付すことにより、郵便局会社への業務委託が長期にわたり担保され、郵便局における貯金・保険サービスの提供が確保されます。
 その後においても、郵便局ネットワークの重要性にかんがみ、全国一括の代理店契約、保険募集委託契約が継続され、基本的にはこれに基づき各郵便局において引き続き貯金・保険サービスが提供されます。
 さらに、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用してサービスの提供を確保することとしたところであります。これらにより、郵便局における貯金、保険のサービスの提供が確保されるものと考えております。
 こうしたサービスの提供については、衆議院における修正において、郵便局会社が営むことができる業務のうち、銀行業及び生命保険業の代理業務について具体的に法律上明示することとされ、これにより郵便局会社の業務としての位置付けの明確化が図られたものと考えております。
 移行期間後の長期にわたり安定的な代理店契約を結ぶことができるのかというお尋ねですが、銀行免許、生命保険業免許の条件として付される代理店契約、保険募集委託契約については、郵便貯金銀行、郵便保険会社の円滑な業務運営と健全性を確保する観点から、最低限、移行期間をカバーするものであることが求められる一方、移行期間を上回る長期の契約を締結することは特に妨げる必要はないと考えております。
 したがって、具体的な契約期間を移行期間を超えて十年超とすることは、免許条件を満たしている限り、郵便貯金銀行、郵便保険会社及び郵便局会社の経営判断により可能と考えております。
 基金に係る法案修正及び基金の交付の仕組みについてでございますが、基金に関しましては、政府提出法案では、一兆円であれば資金交付に充てる運用益が不足することは基本的にないものと考え、企業一般の配当の動向を考慮して政令で定めるところにより計算した金額を一兆円に達するまで積み立てなければならないと規定しておりました。
 しかしながら、一兆円を超える積立ても経営判断により可能であり、政府・与党合意でも、基金は地域、社会の様々な要望への対応に万全を期するため一兆円の積立てを行うが、それが完了した後においても、それまでと同様の規律ある配当の下で利益の留保と運用益の確保に努め、それらを基金へ組み入れることにより総額二兆円に達するまで積立てを継続できるものとするとされていたところであります。
 衆議院における修正は、このような趣旨において法律の条文上明確化を図られたものであると理解しており、政府としてはこのような議論の経過等を真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。
 また、地域貢献業務については、御指摘のように地域の声を十分に聞いて実施していくことが重要と考えております。このため、郵便局会社が地域の有識者等の意見を聞き、これを尊重して計画案を策定した上で、主務大臣が認可の際にその適切性をチェックすることとしております。郵便局会社は、認可を受けた計画に従って、社会・地域貢献基金から地域貢献業務の実施に必要な資金の交付を受けて地域貢献業務を実施することとなります。こうした仕組みにより、地域にとって必要性の高い貯金、保険のサービスの提供が確保されることになると考えております。
 議決権の連続的保有を明記する衆議院における修正についてでございますが、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の連続的保有に関しては、衆議院における法案審議においてもいろいろと議論があったところでありますが、政府としては、これまでも御説明してきたとおり、郵便貯金銀行、郵便保険会社が民間金融機関と同一の条件で自由な経営を行い、より質の高い多様なサービスの提供を可能とするとの民営化の趣旨を徹底するためには、信用が競争上決定的に重要な金融業務においては国の信用、関与を完全に断ち切る必要があり、このため、移行期間中に両社の全株式を処分することと、一方、移行期間終了後についてはこれらの会社は普通の銀行、普通の保険会社となるので、他の金融機関の株式を取得するのと同様に、持ち株会社が速やかに、独占禁止法や銀行法等の一般的な法規制の下、特殊会社の規制の範囲内で両社の株式を市場から取得することにより、結果的に株式の連続的保有が生じることを妨げないこととしております。
 この株式の連続的保有を可能とするため、株主総会における権利行使や配当を受ける権利といった株主権を連続して行使することが可能となるよう、郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に株主の権利行使の基準日を定めることを考えているということについて、これまで、政府・与党合意に基づき、衆議院において説明してきたところであります。
 衆議院における修正は、株主総会における議決権の行使に関する事項を郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に必ず定めなければならない旨を規定することにより、これまで政府として御説明してきた議決権等の行使の面で、株式の連続的保有を可能とすることを法律上しっかりと担保したものであると理解しております。
 政府としては、このような議論の経過等を真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。
 郵政民営化法第百五条及び第百三十四条の決定後の郵便局会社による郵便貯金銀行の株式の取得についてでございますが、先ほど申し上げたとおり、郵政民営化法案において郵便貯金銀行、郵便保険会社株式について完全処分を求めている理由は、信用が決定的に重要である金融事業において、イコールフッティングを確保する観点から、国の信用、関与を完全に断ち切る必要があるとの考え方に基づくものであります。持ち株会社の一〇〇%子会社である郵便局会社が移行期間中に郵便貯金銀行等の株式を保有することは、郵政民営化法のこのような趣旨に反することとなります。
 ただし、イコールフッティングの観点から問題がないと認められた結果、御指摘の郵政民営化法第百五条又は第百三十四条の決定がなされた後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、普通の保険会社となります。この場合、郵便局会社が他の民間金融機関と同様に、密接な取引関係を有する郵便貯金銀行、郵便保険会社株式を、特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により保有することは可能であり、民間の慣行に照らしても問題とすべきことではないと考えております。
 もとより、移行期間終了後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、保険会社となることから、特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により他の民間金融機関と同様な株式保有は可能であり、その結果、株式の連続的保有の生ずることは妨げられません。
 民営化会社の経営の自由度の確保に関する取組及び預入限度額・保険金額の限度額に関する政令の改正についてでございますが、移行期間中の民営化会社の業務拡大についてはイコールフッティングと経営の自由度のバランスを取ることが重要であります。このような観点から、郵政民営化関連法案においては、一方で民業圧迫にならないよう、他方で経営が順調にいくよう、郵政民営化委員会を活用し、透明、公正なプロセスの下、新規業務に進出し、円滑に民間経済の中に吸収統合されるよう制度設計しております。
 また、郵便貯金銀行の預入限度額、郵便保険会社の保険金額の限度額については、郵貯、簡保の巨額な資金が無理なく市場に溶け込むよう、民間金融機関とのイコールフッティングの状況及び郵便貯金銀行と郵便保険会社の経営状況等を勘案して、民営化委員会の意見を聴取した上で政令で定めることとなっております。
 このような透明、公正なプロセスの下、郵便貯金銀行や郵便保険会社の限度額を改定していく制度的枠組みとなっておりますが、これに加えて、規制がより実情を踏まえた適切なものとなるためには、当事者である郵便貯金銀行や郵便保険会社の経営者の意見を十分に聴取することが重要であると認識しており、政府としても適切に対応してまいります。
 第三種、第四種郵便物についてでございますが、郵便事業については、国民生活に密着した基礎的な通信手段として重要な社会的機能を有してきたところであります。民営化後の郵便事業会社が引き続きこのような機能を有するサービスを提供していくことが必要だと考えております。第三種、第四種郵便物については、社会、文化の発展や福祉の増進等という観点から、現在、政策的低料金とすることを義務付けております。民営化後も、改正郵便法案により、郵便事業会社に同様の義務付けを行うこととしております。
 また、災害時における郵便料金の免除等については、現在、公社において必要があると認めるときはこれを行うことができる旨の現行郵便法の規定に基づき、公社が企業の社会的貢献として行っているものであります。民営化後も郵便法の当該規定は存置することとしており、引き続き郵便事業会社がその企業の社会的貢献として行うこととなると考えております。
 さらに、郵便事業株式会社法案において、特に第三種、第四種郵便物のうち盲人用の点字、録音物等やひまわりサービスといった社会福祉の増進に寄与する郵便サービス及び災害時における郵便料金の免除等については、社会・地域貢献基金からその実施に必要な資金を受けられることとし、確実かつ安定的な実施を確保することとしております。
 これらの措置により、郵便の社会貢献サービスの提供が確保され、国民利用者の利便性がしっかりと維持される仕組みとしております。
 民営化委員会による見直しについてでございますが、郵政民営化は国民の利便の向上及び経済の活性化を図るために行われるものであります。民営化委員会は、こうした目的に照らして、経営形態の在り方を含めた郵政民営化に関する事項全般について何らかの問題が生じているようなときには、問題点についても見直しを行うこととなると考えられます。
 なお、当然のことながら、民営化委員会における総合的な見直しは、郵政民営化法に定められた理念、方向に即して行われるべきものであります。(拍手)
    ─────────────
#8
○議長(扇千景君) 伊藤基隆君。
   〔伊藤基隆君登壇、拍手〕
#9
○伊藤基隆君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました郵政民営化関連六法案に対して質問をいたします。
 今、参議院は国民の大きな注目を集めております。日本が今、数多くの難問を抱え、国民が正に苦闘しているときに、国政の最優先課題を郵政民営化問題のみと位置付け、他の課題をほうり投げて平然としている小泉首相の行く末に国民の関心が集まっているのであります。
 本法案の提出をめぐっては、総理と与党の間で長時間の論争が行われてまいりましたが、衆議院を通過した段階で、その対立は何ら解決をしていないことが明白になりました。
 本法案は、国民生活に大きな影響を与える重要な法案です。民主党・新緑風会は、じっくりと論議を行い、問題点を明らかにし、本法案を断固として廃案に追い込んでいく決意であります。その結果、総理が国民の信を問うというのであれば、私たちは正々堂々、これを受けて立つ覚悟であることをまず冒頭に申し上げます。
 本法案は、前島密により日本に近代的な郵便制度が導入された明治以来、国が直接運営してきた郵便、郵便貯金、簡易保険の郵政三事業が、二年前の四月一日から国営の日本郵政公社によって担われるという大幅な制度改正が行われたにもかかわらず、わずか二年後にこの郵政三事業を民営化して、窓口、郵便、貯金、保険の四機能に分解し、六つの会社に切り分け、さらに十年後には郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を完全処分するなど、完全に民間会社の手にゆだねようというものであります。
 御承知のとおり、郵便局は全国津々浦々に二万四千七百局に及ぶネットワークを有し、都市部はもちろん、離島や山間へき地を含めた全国のどこでも、国民のだれもが利用することができます。毎日七千万通もの郵便物が確実に配達され、郵便貯金は便利な金融機関として日々の利用者は一千万件を数え、簡易保険は七千二百万件もの契約が、いざというときの備えとして庶民のささやかな暮らしに安心感を与えています。
 しかも、日本郵政公社は、民間出身の生田総裁の下で民間的経営手法を取り入れ、自律的、弾力的な経営を行う一方で、公的な任務を果たしながら黒字を計上しています。独立採算制の下、常勤職員二十六万人の人件費はもちろん、一円の税金も投入されることなく健全な経営が行われている郵政三事業は、国民から親しまれ、また国民生活に大きな貢献を行っていることは間違いありません。大方の評判は郵便局は良くなったと前向きで、日本郵政公社は確実に成果を上げつつあるように見えます。
 私には、日本郵政公社が発足後わずか二年目で、四年間の第一期中期経営計画の途中であるにもかかわらず、その結果も見ないうちに本法案を提出し、日本郵政公社を廃止しようとするのか理解できません。総理は、この間の生田総裁の努力と日本郵政公社の成果をどのように評価されているのでしょうか。
 小泉首相は、構造改革の本丸は郵政民営化と位置付け、異常なまでの執念を持ち、本法案の成立を最優先に今国会に臨んでおられることは十分に承知しておりますが、小泉内閣挙げての大キャンペーンにもかかわらず、郵政民営化問題が国民的な関心を集めているとは言えません。最近の各種世論調査の傾向は一致して、小泉内閣の取り組んでほしい課題として、多い順に、年金や医療の社会保障、景気対策、財政再建などを挙げ、郵政民営化と答える人の数は驚くほど低い数字しか出ていません。
 また、本院での郵政民営化法案の審議に関しては、今国会での成立にこだわらず議論を尽くすべきとの回答が、圧倒的に賛成論、反対論を上回っています。この国民の声に対する総理の見解をお聞きいたします。
 私は、第一に、国民は日本郵政公社に引き継がれた郵政三事業のサービスに満足し、おおむねこれを受け入れている現状であること、第二に、国民は小泉首相の進めようとしている郵政民営化については関心が薄く、その内容は理解されていない現状であるとの認識に立ち、以下、本法案の内容について伺います。
 第二次橋本内閣の下で設置された行政改革会議の最終報告に基づき、中央省庁等改革基本法が成立し、平成十三年より一府十二省庁制が採用され、今日に至っております。
 大蔵省が財務省と金融庁に分離され、建設省と運輸省が合併して国土交通省となる等の大幅な省庁再編の一環として、自治省、郵政省、総務庁の一部が新たに総務省となりました。郵政事業は国営の公社が担うこととなり、その際、中央省庁等改革基本法第三十三条一項六号で民営化等の見直しは行わないことと規定され、平成十五年の日本郵政公社の設立をもって一連の中央省庁改革は完成を見たのであります。
 今回の小泉内閣の郵政民営化関連六法案の提出は、これまでの流れと真っ向から対立するものです。国の機関の配置を変える必要があるというのなら、まず中央省庁等改革基本法を改正すべきであります。重大な欠陥を生じたわけでもないのに国の機関をいじくり回すのでは、朝令暮改のそしりを免れることはできません。なぜ、改革が行われて日が浅いにもかかわらず中央省庁改革の枠組みを変更しようとするのか、また、郵政事業を民営化しようというのであれば、中央省庁等改革基本法第三十三条一項六号の改正をなぜ国会に諮らないのか、その理由を御説明ください。
 次に、根本的な問題として、なぜ郵政事業の民営化が必要なのかについてお聞きします。
 総理はこれまで、官から民へ、民間でできることは民間でと短い言葉を繰り返してきました。また、随意契約の在り方が問題となった政府広報では、大量の郵貯・簡保資金が民間に流れる、コンビニのような郵便局になる、公務員が三割も減ると説明しています。しかし、これで日本じゅうの町と暮らしが元気になると言われても、国民の多くから理解が得られないのも無理のないところであります。
 まず、資金の流れに関してですが、日本の景気は一時期に比べて緩やかな回復をしつつも、いまだに明るい展望は描き切れておりません。長期間のゼロ金利にもかかわらず民間の資金需要は停滞しており、貸出し先不足のため民間金融機関も大量の国債を購入し続けている有様です。
 百四十兆円もの国債を保有している郵便貯金、簡易保険が民営化されたとしても、財政政策上、今後も国債の増発や借換えが必至と思われる中で、従来同様、郵貯・簡保資金による国債の大口引受けが期待されている状況は変わりありません。仮に、民営化によって、国債を自由に売却し、新規購入を停止する事態となれば、国債価格に悪影響を招くことになります。国債管理政策の上から、これを避けなければならないのは当然のことで、結局は、景気とともに民間の資金需要が回復し、同時に国債の発行額を減らせる経済情勢をつくり出さない限り、資金の流れを民間に変えることにならないのではありませんか。
 商業統計によれば、コンビニエンスストアとは、主として飲食料品を中心とした各種最寄り品をセルフサービス方式で小売する事業所で、売場面積が三十から二百五十平米、営業時間が十四時間以上の店舗とされています。一店舗で三千種類以上の商品を扱うフランチャイズ方式で、幾つものコンビニチェーンが競争でしのぎを削っていることは広く知られています。
 一方、切手、はがきや為替、貯金、保険を始めとした金融商品を扱い、個人情報の取扱いに細心の注意を払いながらワンストップ行政サービスを担っているのがごく普通の郵便局の姿であります。将来は乗車券やチケット類の販売など堅実に業務範囲を広げていこうという話なら理解できますが、郵政民営化準備室が作成した採算性に関する試算によると、二十四時間営業で民間業者並みの一店舗当たり販売額年間二億円を確保と皮算用しております。これが可能な立地条件の郵便局が全国に幾つあるのでしょうか。郵便局のコンビニ化とは、具体性の乏しく、余りにも現実離れした乱暴な説明なのではありませんか。
 日本郵政公社で現在二十六万二千人、非常勤職員を含めれば三十七万九千人が働いています。公社職員は国家公務員の身分ではありますが、郵政三事業の事業収入ですべての人件費は賄われており、税金は一円も使われておりません。したがって、郵政民営化が実現しても国の財政支出が減らないことは明らかです。しかし、政府は、郵政民営化で国家公務員の三割削減ができる、小さな政府が実現できるとの説明をいまだに繰り返しています。事実を誤って認識させるおそれがある説明を政府が行うべきではありません。
 なぜ郵政事業の民営化が必要なのか、正確な事実を国民に提供することがなければ、議論が深まることも、その是非が正当に判断されることもありません。これらの論点について、誠意ある答弁を求めるものであります。
 今回の郵政民営化をめぐる議論の中で国民が一番心配しているのは、郵便局がなくなるかもしれないという問題であります。郵便局は減らさないと公言されてきた総理も、衆議院の審議では都市部の郵便局の統廃合の可能性を認めています。
 また、民間企業の店舗となった過疎地の郵便局を将来にわたって閉鎖しないように設置基準や規則で縛ることが本当にできるのでしょうか。今後、人口減少が確実な中で過疎地ではより顕著な傾向が予想され、民間企業としては柔軟な店舗戦略を取るようになるのがごく自然の流れのように思われます。民間企業の発想ではなく、国民共有の財産としてのネットワーク維持の観点から郵便局の設置を考えるべきではないでしょうか。
 郵便局の多くでは、郵便、郵便貯金、簡易保険の三事業を効率的に提供することによって経営が成り立ってきました。本法案では、郵便局の営む業務は郵便窓口業務と印紙の販売のみであり、銀行業や生命保険業はあくまでも営むことができる業務とされています。郵便貯金銀行、郵便保険会社との安定的な代理店契約が終了すれば、郵便局で郵便貯金や簡易保険のサービスが提供される保証はなくなります。仮に、利益が上がらないという理由で安定的な代理店契約が打ち切られれば、郵便局ネットワークの崩壊に直結する事態となる危険性があるのではないでしょうか。
 地域貢献基金と社会貢献基金については、いまだにその内容が明らかではありません。特に、過疎地を中心に展開し、末端の郵便局ネットワークを支えている約五千局の簡易郵便局は、最も採算が悪く削減の可能性が高いと心配されています。しかし、基金の算出根拠、対象となる郵便局の数、場所、金額が分かっていません。どうして、これで郵便局はなくならないと言えるのでしょうか。本院における審議では、丁寧な答弁、資料提出を特に求めるものであります。
 現在、全国の郵便局数は二万四千六百七十八局であります。十年前は二万四千五百十七局で、ほぼ同じ水準で推移してきました。民営化されれば、市場競争の中で過疎地や地方の郵便局が閉鎖されるのではないかとの心配は全く薄らいでおりません。果たして、十年後、二十年後に現在と同じような郵便局のサービスが提供されるという保証はどこにあるのでしょうか。政府が民営化の成功例としているドイツでも、民営化によって郵便局数は三万局から一万二千局に減少した実例があります。多くの国民の不安にどのようにこたえられるのか、明確な答弁を求めるものであります。
 以上の指摘から明らかなように、この法案はごまかしと決め付けの甚だしい法案であります。官から民へというスローガンの下に、税金を使っていない郵政事業を民間の株式会社に変え、これまで国が国民に保証してきた貯金、保険のユニバーサルサービスを二年後の四月から廃止するものです。
 郵便局ネットワークを維持する仕組みをぶち壊しにしながら、国民からの批判を恐れて、これまでどおり大丈夫ですとごまかしの説明に終始しているのです。この法案では、郵便局ネットワークも貯金、保険のユニバーサルサービスも国からは一切保証されるものではありませんが、総理の認識を伺います。
 また、このように官から民へのスローガンの下で公的な仕組みを否定していくと、国民生活や財政を支える公的金融や地方財政を支える仕組み、中小企業や社会的弱者を励まし支援するような仕組みもいずれは否定されるのではないかと不安になります。この不安を増幅させている小泉首相の本法案をめぐる政治姿勢について伺います。
 本法案は、衆議院においてわずか五票差で可決されて本院に送付されました。過半数を大きく上回る議席を確保している与党の中から、三十七人の反対と十四人の欠席を出したショッキングな出来事が政治の潮目を変えたことは明らかです。
 直近の世論調査では、小泉内閣の支持率が軒並み低下しています。この原因の多くが本法案をめぐる総理の言動にあることは疑いありません。本法案の提出や衆議院の審議に当たって、総理本人あるいは与党幹部を通じて、直接間接に解散権行使の可能性について触れる発言を行ってきましたが、こうした強権的な政治手法が大きな反発を招いたとはお考えになりませんか。
 総理は、サミット会場となったグレンイーグルズから、本院審議の結果に介入するかのような発言を行ったと伝えられております。異例の経過をたどった本法案を、二院制の下で本院がより慎重に審議して結論を得なければならないのは当然のことであります。総理はこれまでの姿勢を改め、謙虚な気持ちで国民の声を代表する国会の議論に耳を傾けるべきではありませんか。
 本法案は、衆議院において修正の上、本院に送付されたものであります。すなわち、郵便局会社法案において郵便局の業務範囲について、日本郵政株式会社法案において社会・地域貢献基金について、郵政民営化法案において議決権の面での株式の連続的保有と民営化委員会の見直し規定について、そして政府原案作成の際の技術的な欠陥部分の補正であります。
 この政府原案修正に関し、総理は衆議院の委員会において、単なる字句の修正で、法案の中身は全く変わっていないと答弁されていますが、今もこの考えに変わりはありませんか。
 最後に、本法案は、郵政民営化論を政治的信念とする小泉首相の政治生命を賭したものであります。しかし、その内容は、政治課題の選択を誤り、地方議会の声を無視し、自民党内の意見を受け入れることなく、ごく少人数の手で作成され、強権的な手法で押し通そうとするものです。このため、本法案は大きな欠陥を持っています。最大の問題は、郵政事業の持つ公的な役割と民営化による自由経営という相反する課題について、長所と短所の調整が全く行われていないことです。また、政令、省令や経営判断への委任部分が余りにも多く、具体的な将来像が見えないことです。仮に本法案が成立すれば、郵政事業の現場に多大な混乱が持ち込まれ、取り返しの付かない結果となることは必至であります。
 私は、郵便貯金と簡易保険が廃止され、郵便局ネットワークが崩壊する一方で、新規事業による民業圧迫、個人資産の海外流出を招くような事態を最も心配するものであります。
 本法案は、慎重の上にも慎重に審議されるべきものであります。このことを、所属会派を問わず、本院の同僚議員の皆さんに訴えて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#10
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 伊藤議員に答弁いたします。
 郵政公社発足後の生田総裁の努力、公社の成果に対する評価についてのお尋ねでございます。
 日本郵政公社は、発足後、生田総裁の下、サービスの向上、事業の効率化を推進しており、その努力は高く評価されるべきものであると考えております。私は、郵政公社は民営化の一里塚と申し上げてまいりましたが、このような経営努力は今後の民営化にもプラスに働くものと考えております。
 他方、郵政公社の経営については、郵便物数や簡易生命保険の契約件数の減少への早急な対応など、取り組むべき課題もあるところであり、中期経営計画を見ても、今後の経営見通しは楽観が許されないところであります。
 また、現在の郵政事業を取り巻く環境は、金融の技術革新などにより民間の提供する金融サービスが広範かつ多様な展開を示していること、物流サービスが大きく変貌し、ドイツやオランダでは郵便会社による国際展開が進んでいることなど、劇的に変化しております。将来にわたって郵政事業の経営の健全性を確保し、これを更に発展していくためには、こうした郵政事業を取り巻く厳しい環境変化に適時適切に対応していくことが必要であります。
 しかしながら、公社形態のままでは、その公益性の目的による制約や国の強い関与があるため、柔軟かつ機動的な事業運営が困難であり、限界があると考えております。したがって、民間企業と対等な競争条件の下、経営の自由度を高めるため、速やかに郵政事業を民営化することが必要であります。
 また、民営化が最終的な姿に至るまでには相当年数の準備期間と移行期間が必要であること等を考慮すると、直ちに民営化に取り組む必要があります。このため、公社としての一期四年を経過した平成十九年四月から民営化を行うこととしております。
 郵政民営化についての国民の声についてでございますが、これまでの世論調査の傾向を見ると、郵政民営化に関心があると答えた方の割合は大体七割程度に達しており、国民の関心は必ずしも低いとは考えておりません。郵政民営化について賛成が反対を上回っているものが多数であると認識しております。これから始まる参議院での法案審議においても、政府として、これまでの議論の経過や衆議院での修正等を真摯に受け止め、法案を含め郵政民営化について丁寧に説明し、国民の御理解を得られるように誠実に対応してまいります。
 中央省庁改革が行われて間もなくその枠組みを変更する理由でございますが、郵政公社の経営については、中期経営計画を見ても、今後の経営見通しは楽観が許されないところであります。また、取り巻く環境は、金融や物流サービスの面で劇的に変化しております。将来にわたって事業の経営の健全性を確保していくためには、こうした環境変化に適時適切に対応していくことが必要であります。
 しかしながら、公社形態という現在の枠組みのままでは限界があると考えております。したがって、速やかに郵政事業を民営化することが必要でありますが、民営化が最終的な姿に至るまでには相当年数の準備期間と移行期間が必要であること等を考慮すると、直ちに民営化に取り組む必要があります。このため、公社としての一期四年を経過した平成十九年四月から民営化を行うこととしております。
 中央省庁改革基本法第三十三条第一項第六号を改正するべきではないかとお尋ねでございますが、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号は、郵政事業について国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定していますが、これは公社化までのことを規定しているものであって、公社化後の在り方を拘束するものではないというのが政府の見解であります。したがって、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号については、改正の必要はないものと考えております。
 資金の流れの改革でございますが、郵貯、簡保は政府保証付きで約三百四十兆円もの膨大な資金を家計から集めておりますが、公社のままでは、公的な資金として運用範囲は国債等の安全資産に限られることになります。また、こうした制約の下では、郵貯資金等が財投債の購入につながり、特殊法人等の活動のために活用されるという面は否定できません。こうしたことから、入口である郵貯、簡保が公社のままでは、出口の特殊法人、中間の財政投融資制度を改革しても資金の流れの構図は変わらないと思っております。
 したがって、郵政民営化を実現し、郵貯、簡保の資金を民間資金に転化することにより、民間企業としての経営判断に基づき、厳密な資産負債総合管理の下、資金調達が行われるとともに、段階的に貸出しや証券化商品への投資などへの運用が拡大し、民間へ資金が流れることになると思います。経済成長による資金需要の増加や住宅金融公庫の廃止等による公的金融の縮小等の中において、郵便貯金銀行、郵便保険会社が民間への資金供給の主体として貸出し市場で一定のシェアを確保する機会はあるものと考えております。
 このように、郵政民営化の実現により、政府系金融機関の見直し等出口の改革や財政健全化の改革と相まって、資金の流れが官から民へと転換し、国民の貯蓄が経済の成長、発展の源泉として有効に活用されるようになると考えております。
 民営化後の郵便局における物品販売業等の新規サービス提供についてでございますが、郵便局会社が具体的にどのような新規事業に進出するかはすぐれて経営判断にかかわる問題でありますが、郵便局ネットワークという経営資源はその活用の仕方によって様々な事業展開の可能性を秘めたものと考えております。郵便局会社は、こうした経営資源の特性を生かして、物品販売業等を含め様々な事業分野において、地域の様々な要望に応じて新規事業を展開する潜在力を持っていると私は認識しております。
 なお、郵政民営化準備室作成の採算性に関する試算では、郵便局会社については、様々な新規事業を実施することにより、二千億円以上の利益を既存の事業の利益に上積みする可能性があることが示されております。物品販売業についても、郵便局という拠点を活用した新規事業の可能性の一つとして試算したもので、集客と販売スペースの確保が見込まれる普通局千三百局で順次取扱いを拡大する前提で試算しております。
 この試算を作成するに当たっては、公社から協力を得た上で、民間市場の動向に準拠した前提を置き、必要に応じ専門家等の意見等も参考にしており、試算された利益の水準は十分に可能性のあるものと考えております。いずれにしても、この試算は、集客力のある郵便局という営業拠点を活用することによる郵便局会社全体としての潜在力を示したものと認識しております。
 郵政民営化による小さな政府の実現についてですが、民間にできることは民間にということが小泉内閣の推進する構造改革の大原則であり、郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も公務員でなければできない事業ではないと思っております。民間による経営が十分可能であると思っております。
 郵政民営化は、この考え方を踏まえ、巨大な官業を縮小し、約三十八万人もの公務員を縮減することにより、民間の活力が発揮される領域を拡大しようとするものであり、正に小さな政府の実現を目指すものであります。
 また、現在の公社制度の下では、業務範囲が限られる等経営の自由度が制限されている一方、法人税、固定資産税、預金保険料等が免除されており、言わば隠れた補助金が投入される形で運営されてきていること、郵貯、簡保については、民間金融機関の預金、保険と異なり政府保証が付されていること等の優遇措置が講じられており、民間企業と同一の競争条件となっていないと考えております。むしろ、民営化により、これらの税金や預金保険料などを負担することは、民間とイコールフッティングになるのみならず、国や地方の財政再建にも貢献するものと考えております。
 過疎地の郵便局設置についてでございますが、郵便局の設置については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえ、過疎地は当然のこととして、都市部も含め、国民の利便性に支障が生じないよう十分な配慮がなされることが重要と考えております。
 このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付け、さらに省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するとともに、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、きめ細やかな法制上の担保を行うこととしております。
 また、設置基準に基づく郵便局の設置状況について、法案においては、毎事業年度、郵便局会社からの事業報告書の提出等により、総務大臣が把握し、必要に応じ適切な措置を講ずるとともに、与党との合意も踏まえ、郵政民営化委員会による三年ごとの総合的な見直しの対象に必ずすることとしており、その結果、必要があれば、委員会は政府に意見を述べ、総務大臣において適切な措置を講じることが可能な仕組みとしているところであります。
 これらの措置により、必要な郵便局ネットワークはしっかりと維持されるものと考えております。
 不採算地域の郵便局から貯金・保険業務の撤退が起こるのではないかとのお尋ねでございます。
 郵便貯金銀行、郵便保険会社のビジネスモデルは、全国津々浦々をカバーする郵便局ネットワークを活用して、地域密着型の業務や生命保険募集等を展開するというものであります。このようなビジネスモデルに沿って、銀行業、生命保険業を営み、健全で安定的な業務運営を確保していくためには、郵便局ネットワークを活用した店舗網、保険募集体制を継続的に維持されていることが必要となると考えております。さらに、過疎地の金融サービスを確実かつ安定的に提供することを可能とするため、社会・地域貢献基金の仕組みも併せて講じているところであります。
 社会・地域貢献基金についてでございますが、社会・地域貢献基金は、過疎地の金融サービスなど、地域にとって必要の高いサービスを簡易郵便局を含む郵便局で確実かつ安定的に提供することを可能とするために設けるものであります。この基金については、将来過疎化が大幅に進行したとしても、過疎地の金融サービスなどの提供に必要な額を運用益によって賄えるようにするため、一兆円に達するまでの積立てを義務付けたところであります。さらに、衆議院における修正により、一兆円を超えて積立てを継続できることが法律の条文上明確化されたところであります。これにより、地域にとって必要性の高い金融サービスの提供を確保することができると考えております。
 また、政府としては、参議院における法案の審議において、基金の問題を含め、丁寧な答弁に努めるとともに、議院からの資料の請求があれば、真摯に対応してまいります。
 将来の郵便局数についてでございますが、郵便局の設置については、私は全部今のままだとは思っておりません。時代の変化に合わせて、減るところもあれば増えるところもあると思っております。ただ、先ほど申し上げたとおり、過疎地における郵便局がなくなるというようなことがないような規定も盛り込み、現在設置されているネットワークは資産として十分活用するという配慮を十分したところでございます。
 郵便局ネットワーク、貯金、保険のユニバーサルサービスの保証でございますが、貯金・保険サービスの提供については、まずサービスの提供拠点を確保することが重要であり、この点については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付けるとともに、そのような形で設置される全国の郵便局で貯金・保険サービスを提供できるものとしております。
 次に、郵便貯金銀行、郵便保険会社に対する免許を付与するに当たり、最低限、移行期間をカバーする長期・安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを条件として付すことにより、郵便局会社への業務委託が長期にわたり担保され、郵便局における貯金・保険サービスの提供が確保されます。
 その後においても、郵便局ネットワークの重要性にかんがみ、全国一括の代理店契約、保険募集委託契約が継続され、基本的にはこれに基づき各郵便局において引き続き貯金・保険サービスが提供されます。
 さらに、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用してサービスの提供を確保することとしております。これらにより、郵便局における貯金、保険のサービスの提供が確保されるものと考えております。
 こうしたサービスの提供については、衆議院における修正において、郵便局会社が営むことができる業務のうち、銀行業及び生命保険業の代理業務について具体的に法律上明示することとされ、これにより郵便局会社の業務としての位置付けの明確化が図られたものと考えております。
 郵政民営化関連法案での衆議院の採決に当たり強権的な政治手法が反発を招いたのではないか、また、参議院の審議にどう臨むのかというお尋ねでございますが、郵政民営化は、今まで多くの政党が反対を唱え、私が総理になって初めて具体的な政治課題となった賛否両論ある難しい問題であります。こういうことから、反対者、欠席者が出たものと考えております。
 しかしながら、郵政民営化については、平成十三年、平成十五年の二度にわたる自由民主党総裁選において、私は、民営化の実現を主張し、総裁に選出されてまいりました。また、衆議院議員選挙、参議院議員選挙においても、郵政民営化を公約として主張し、政権を引き続き担当することについて国民の信任を受けてまいりました。したがって、郵政民営化関連法案の成立を図り、郵政民営化を実現することは私の責任であると考えております。
 これから始まる参議院での法案審議においても、政府として、これまでの議論の経過や衆議院の修正等を真摯に受け止め、法案を含め郵政民営化について丁寧に説明し、御理解を得られるよう誠実に対応してまいります。
 衆議院での法案修正についてでございますが、衆議院における修正案の内容については、郵政民営化の基本方針を変更することなく、法案審議等における種々の議論を踏まえ、国民の不安感や懸念を払拭するため、政府・与党合意や政府が法案審議において答弁させていただいた事項について、できるだけ法律に明記することにより、より強い担保を確保しようとしたものであると承知しております。
 この修正は、例えば、郵便局会社のできる業務に銀行業、生命保険業を法律に明示することによって、郵便局において引き続き金融サービスが提供されることを明確にするなど、国民の不安感や懸念の払拭に役立つものであると考えております。(拍手)
    ─────────────
#11
○議長(扇千景君) 平野達男君。
   〔平野達男君登壇、拍手〕
#12
○平野達男君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました法案について質問いたします。
 まずその前に、総理の先ほど来の説明を聞いていますと、片っ方で四分社化をする、しかし、いろんな仕組みを用意して相互依存性を強める、あるいは事実上の一体経営を可能にする、そういう説明だったと思います。
 これは、右でやろうとしていることと実際に左でやろうとしていることが全く矛盾しているんです。これが、この今回の法案の最も分かりづらくしている点であるということを冒頭申し上げておきます。
 法案に関しての具体的な質問は委員会で徹底して行わせていただきます。ここでは、法案に懸ける総理の政治姿勢に重点を置いてお聞きいたします。
 我が国は今、外交上も内政上もたくさんの課題に直面しております。景気回復は、あらゆる世論調査で国民が最も関心のある課題であります。外交面においては行き詰まりだけが目立っております。にもかかわらず、総理が最優先でがむしゃらに進めてきたのがこの郵政民営化法案であります。そして、その最後の関門がここ参議院であります。与野党問わず、徹底した審議をやろうではありませんか。
 郵政民営化法案をめぐっては、これまでも総理と自民党内の反対派との争いにマスコミなどの好奇の目が集まり、やれ党内修正だ、解散だと誠に騒がしい限りでした。その結果が、自民党内からの反対が三十七人、欠席が十四人、そして五票差の衆議院通過であります。
 総理は、御自身の党がここまで割れた原因はどこにあると考えているのでしょうか。先ほど難しい法案だからそうなったという答弁がありましたが、これは全く答弁になっておりません。法案にあるのか、総理のやり方に問題があるのか、あるいはほかにあるのか、丁寧な説明を求めます。
 ちなみに、自民党では反対や欠席した議員に対していずれ処分を下すと伝えられております。よその党のことについてとやかく言うつもりはありません。しかし、処分を下すとなれば、自身の党からこれだけの反対、欠席者が出たことに対する総理のけじめこそが優先されるべきと思いますが、総理の見解を伺います。
 一連の解散発言に関連してお聞きします。
 総理は、さきの本会議で、解散は衆議院議員の身分を失わせる重い行為であることを認識しつつ、新たに民意を問うことの要否も考慮して内閣がその政治的責任において決すべきものだと答弁されております。
 しかし、総理の専決事項であるはずの解散について、法案否決の場合は解散と自民党議員に半ば恫喝的な発言を繰り返したのは、内閣の一員でもない、ほかならず武部幹事長を始めとした自民党幹部であります。しかも、総理は衆議院の委員会答弁において、不成立なら解散するは私が言った言葉ではないと否定し、自民党幹部が雰囲気で私の口ぶりでそう感じたのでしょうと人ごとに答弁されております。
 確認をいたします。総理は本当に自民党幹部に対し、法案否決の場合は解散と発言しなかったのでしょうか。むしろ、ここでは素直に発言した事実を認めるべきであります。もし、本当に言っていなかったとすれば、自民党幹部は大変な越権な行為をしたことになりませんか。ましてや解散を恫喝の材料として使ったとすれば、総理としてはゆゆしき問題としてとらえなければならないはずであります。こうした点をあいまいなままにしておくことは許されません。総理はこの件についてどのように対応するつもりなのか、きちんと説明をしていただきたい。
 なお、解散は、内閣不信任が可決された場合、憲法六十九条に基づいて行われるのが一般的な解釈であります。憲法七条に基づく解散は濫用、恣意的になりやすいと思われますが、総理の見解を伺います。
 衆議院での法案修正に関連してお聞きします。
 自民党執行部は、郵政民営化法案の衆議院審議の最終盤において、このままでは内部から反対者が続出し、否決に追い込まれかねないとの危機感から法案の修正に踏み切りました。
 修正のポイントは、完全民営化後も持ち株会社が郵貯銀行、郵便保険会社の株を連続的に保有できる規定を置く、郵便局網を引き継ぐ郵便局会社の地域住民の利便に資する業務の例示として銀行、保険の代理業務を明記する、民営化の進捗状況について三年ごとの検証を三年ごとに見直すに変更するといった諸点であります。
 以下、法案修正に係る小泉総理の甚だしく無責任な発言に関連して質問をいたします。
 総理は、前日まで、修正しなければ成立しないというのであれば廃案にしても構わない、責任は自分が取ると、胸のすくようなたんかを切っておられました。しかし、自民党総務会で修正が決まると一転します。いい知恵を出してくれたと評価し、何の抵抗もなくそれを受け入れました。これはいわゆる食言以外の何物でもありません。
 総理は、修正を考えていると言ったらまとまりっこないと弁解していましたが、それまでの発言を含め、すべて公の場での発言だけに、結果として国民をもだましたことになります。国民は、今後総理の発言はすべて政治的な引っ掛けではないかと疑って掛かる必要が出てきました。総理大臣の口から出た言葉の重さは総理自身も分かっていなければなりません。にもかかわらず、なぜこういった発言をされたのか、国民に向かって分かりやすく、それこそ丁寧に説明していただきたい。
 また、総理は、字句を分かりやすく変えただけで内容は変わっていないから修正に同意したとも弁解されています。修正してもしなくても法案の内容が同じである修正が、なぜいい知恵を出してくれたとの評価になったのでしょうか。そもそも、いい知恵はだれにとってのいい知恵であったのでしょうか。この点に関しても国民に対し分かりやすく説明していただきたい。
 あわせて、総理は先日の本会議において、衆議院での修正等を真摯に受け止めると答弁されております。真摯に受け止めるとは何をどのように受け止めることなのか、具体的に説明していただきたい。その説明がないままだと、字句を分かりやすく変えただけで内容が変わっていないことを真摯に受け止めたことになりますが、そういう理解でよろしいのでしょうか、お尋ねをいたします。
 郵貯、簡保に関してお聞きします。
 竹中大臣は、民営化の必要性を突き詰めれば金融の問題であると衆議院の特別委員会で答弁されております。総理は同じ認識をお持ちでしょうか。郵政民営化は二十年前からの総理の持論であると伝え聞いております。この間、郵政をめぐる情勢も大きく変わったはずです。特に、郵貯、簡保が大きく膨らんだのはここ数年のことです。また、郵貯、簡保がその資金の多くを運用に充てている国債の発行残高も小泉内閣になって急激に膨らみました。
 確かに、財政投融資制度の廃止に見られるように、郵貯、簡保の性格や政策的必要性が変わってきたことは事実であります。依然として特殊法人などに無駄なお金が流れていることも事実であります。しかし、だからといって即民営化というのは、財政・金融問題の本質を見誤ることになりかねません。特に、郵貯、簡保がここ数年の金融危機、経済危機を取りあえず乗り切るための受皿になってきたことは、今後の郵貯、簡保の在り方を考える上で極めて重要な要素であります。資金の流れを官から民へといっても、民間に十分な資金需要があってこそ初めて成立するスローガンであります。
 一方で、我が国はまだデフレからの脱却もできていません。経済の自律的回復もまだまだです。国債発行残高、これは当面増え続けます。その金利変動は財政、経済に重大な影響を与えます。こうした問題が全く未解決のまま、郵政民営化だけを進めることの今後の財政・経済運営上のリスクについて総理はどのように認識されておるのでしょうか。
 今やるべきことは、三百四十兆の資金をそのまま民間に任せるのではなく、まずは適正な規模に縮小すること、そして、その上で民間への資金の流れを徐々につくっていくことであります。その間、出口改革をしっかりとやる、そして財政再建のめどを付ける、デフレからの脱却を図っていくことです。これこそが民主党が掲げる本当の郵政改革であります。
 この法案は、このまま成立したのでは国民生活や財政・金融運営上極めて重大な影響を与える大問題法案であります。民主党・新緑風会は、ここ参議院でも時間をたっぷり掛け、徹底審議し、法案の問題点を丁寧に明らかにすることで、断固として廃案に追い込んでいく決意であります。
 その後、総理が衆議院を解散するなら全くの八つ当たり解散としか言いようがありませんが、御自由にどうぞ。歴史に総理の八つ当たり解散あるいは恫喝解散と名を残すのも悪くないかもしれません。ちなみに、民主党はこういう理不尽さにも正々堂々と受けて立ちます。受けて立ち、政権交代をして新しい日本をつくることをお約束して、私の質問といたします。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#13
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 平野議員に答弁いたします。
 郵政民営化関連法案の衆議院での採決に当たり、自民党から反対者、欠席者が出たことについてでございますが、郵政民営化はこれまで多くの政党が反対を唱えてまいりました。この問題は、私が総理になって初めて具体的な政治課題となったものであります。当然、今まで反対してきた方につきましては、自らの主張を展開されるでありましょう。賛否両論ある難しい問題であると思っております。こうした経緯から、反対者、欠席者が出たものと考えております。
 しかしながら、郵政民営化については、平成十三年、平成十五年の二度の自民党総裁選において、私は民営化の実現を主張してまいりました。それを承知で自民党議員、党員は私を総裁に選出していただきました。また、衆議院選挙、参議院議員選挙におきましても、郵政民営化を公約として主張し、政権を引き続き担当することについて国民の信任を受けてまいりました。したがって、郵政民営化関連法案の成立を図り、郵政民営化を実現することは私の責任であると考えております。
 解散に関する私の発言についてでありますが、私が申し上げてきたのは、郵政民営化の実現は政治的にも国民に対する当然の責務であり、郵政民営化関連法案の成立に向けて全力を尽くす必要があるということであります。
 解散に関して、自民党幹事長の発言についてお尋ねでありますが、私は自民党の幹部の皆さんと懇談することがあります。その際に、私の発言から、自民党幹部の皆さんは、それぞれ総理がどう言っていたかということはよくあることであります。そういう際に、この郵政民営化関連法案の成立に向けて全力を尽くすという、そういう意味は自民党幹部、十分理解されていると思います。そういう観点から、自民党幹部の皆さんがどのような発言するかについて、私は一つ一つ縛るような考えは持っておりません。
 憲法第七条に基づく解散についてお尋ねがございました。
 戦後、衆議院解散、過去十九回あったと聞いております。内閣不信任案が可決され、憲法第六十九条の規定に従い解散が選択されたケースは四回あったと聞いております。それ以外は、いずれの場合も憲法第七条を根拠としているものであります。衆議院の解散は衆議院議員の身分を失わせる重い行為であることを認識しつつ、選挙により新たに民意を問うことの要否については、内閣がその政治的責任において決断すべきものと考えております。
 いずれにしても、郵政民営化関連法案について速やかに御審議をいただき、成立することを期待しており、否決されることは考えておりません。解散する必要はないと思っております。
 衆議院での法案修正についてでございますが、衆議院における修正案の内容については、郵政民営化の基本方針を変更することなく、法案審議等における種々の議論を踏まえ、国民の不安感や懸念を払拭するために、政府・与党合意や政府が法案審議において答弁させていただいた事項について、できるだけ法律に明記することにより、より強い担保を確保しようとしたものであると承知しております。
 例えば、郵便局会社のできる業務に銀行業、生命保険業を法律に明示することによって、郵便局において引き続き金融サービスが提供されることを明確にし、国民の不安感を払拭することにつながるものであることから、いい知恵を出してくれたと申し上げたものであります。
 先日の本会議、真摯に受け止める等の私の発言についてのお尋ねでございます。
 私の発言は、衆議院の修正が国民の不安感や懸念を払拭するための対応をしっかりと担保するために行われたものであることを十分認識し、参議院での法案審議においても、この修正を踏まえ、国民の不安感や懸念を払拭できるよう、しっかりと丁寧に対応をしていきたいという考えを申し上げたものでございます。
 郵政民営化の必要性についてでございますが、郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も民間企業が自由な経営の下で同様のサービスを提供しており、公務員でなければできない事業ではありません。民間により十分な運営が可能なものであると思っております。このため、郵政民営化を実現することにより、どの分野についても、国の関与ができるだけ控えられ、民間企業と同一の条件で自由な経営が可能となり、質の高い多様なサービスが提供されるようになる等のメリットが引き出されるようになると考えております。また、郵貯、簡保の膨大な資金について官の資金としての制約がなくなり、民へ流れる道が開かれると考えております。
 議員御指摘の竹中大臣の答弁は、資金の流れを公的部門から民間部門へ変える観点から郵政民営化の重要性を述べたものであると私は認識しております。
 郵政民営化と今後の経済財政運営の関係についてでございますが、私は、改革なくして成長なしという方針の下に、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、税制、規制、歳出の改革を実行し、既に成果を上げてきていると思っております。
 残された大きな改革の一つが、官から民への資金の流れの改革である郵政民営化であります。公社のままでは、郵貯、簡保は公的な資金として安全資産に運用せざるを得ず、こうした制約の下では郵貯資金等が財投債の購入につながり、特殊法人等の活動のために活用されるという面は否定できません。このため、出口の特殊法人、中間の財政投融資制度だけでなく、入口である郵便貯金と簡易保険の改革、すなわち民営化が必要であります。
 郵政民営化が実現すれば、約三百四十兆円の郵貯、簡保の資金が民間資金に転化し、財政健全化の改革等と相まって、我が国の資金の流れ全体が官から民へと転換し、国民の貯蓄が経済の成長、発展の源泉として有効に活用されるようになると考えております。
 また、国債の安定的な消化を図るためには、健全な財政運営に向けて、歳出、歳入両面から財政構造改革を推進することが何より肝要であり、引き続き改革を進めてまいります。
 さらに、今回の郵政民営化関連法案においては、旧契約分は国債等の安全資産で運用する等の措置を講じており、国債管理政策についても、個人向け国債の販売等により保有者層を多様化するなど、適切に運用してまいります。(拍手)
#14
○議長(扇千景君) ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。──協議が続いておりますので、もうしばらくお待ちください。──まだ協議が続いているようでございます。もうしばらくお待ちください。
    ─────────────
#15
○議長(扇千景君) 山本香苗君。
   〔山本香苗君登壇、拍手〕
#16
○山本香苗君 私は、公明党を代表し、郵政民営化関連六法案につきまして、小泉総理並びに竹中郵政民営化担当大臣に質問いたします。
 本法案は、衆議院郵政民営化特別委員会において、戦後四番目の長さとなる約百十時間という審議を経て、五日、衆議院本会議で可決されました。票差はわずか五票。総理もかなり冷や汗をかかれたのではないかと思います。私も採決の模様を手に汗握る思いで見守っておりました。際どい採決ではありましたが、法案成立に向け一歩前進いたしました。ただ、本会議での採決において、自民党内から相当数の反対票が出て賛否が僅差で可決となったということは、真摯に受け止めなければならないのではないでしょうか。
 本法案の衆議院通過後、NHKが実施した全国電話世論調査では、本法案成立を目指す政府の姿勢を評価するかとの問いに対し、評価する、また評価しないと答えた人がそれぞれ四六%と拮抗しております。しかし、読売新聞の世論調査では、本法案を今国会で成立させるべきではないとする人が成立させるべきだという人をいまだに上回っております。これらマスコミ各社の世論調査並びに衆議院採決の模様を見る限りにおいては、国民の理解が十分に深まったとも、また総理が国会において十分に説明責任を果たしているとも必ずしも言えないのではないでしょうか。
 総理の衆議院採決に対する率直な御感想と、参議院での審議に向けての力強い御決意をお伺いいたします。
 郵政民営化は、これからの日本、国民の将来を左右する極めて重要な問題であります。参議院においては、その重要性を踏まえ、本法案の中身に関する議論をもっと深めていかねばなりません。と同時に、国民の皆さんが納得できるような、分かりやすい議論もしていかねばならないと考えております。
 そこで、まず最初に、問題点を整理する意味からも、郵政民営化の必要性、意義について総理にお伺いしたいと思います。
 国民の間では、なぜ民営化するのか分からないといった声がいまだに後を絶ちません。特に、ここ二年、郵政公社になって以前よりサービスが向上し、事業収支も黒字になっていることから、今の公社のままで改善すべきところを改善すればいいのではないかといった声が根強くあります。そこで、改めて総理にお伺いします。なぜ公社のままでは駄目なのでしょうか。なぜ今民営化しなければならないのか、その理由を分かりやすく、丁寧に御説明いただきたいと思います。
 公社のままでは駄目だとのことですが、今回の法案をじっくり読みますと、最終的な民営化後も、公社同様、郵便、貯金、保険という郵政三事業の一体的経営を可能とする工夫が随所に見られます。そのため、公社と最終的な民営化後の姿とどこがどう異なるのかよく分からないといった声がございますが、総理の目指す最終的な民営化とは一体どういうものなのか、その定義を教えてください。
 また、最終的な民営化の実現とは何を達成したら実現となるのか、どういう基準、メルクマールでその成否を判断するのか、総理に御答弁いただきたいと思います。
 次に、郵便局の設置基準についてお伺いします。
 我が党は、過疎地はもとより、都市部においても郵便局のサービスが維持されることを強く求めてまいりました。結果、法案では、郵便局はあまねく全国に配置することが義務付けられ、過疎地で郵便局がなくなるのではないかといった懸念はかなり払拭されたのではないかと思います。しかし、一方で、都市部においてはかなり統廃合が進むのではないかとの懸念が生じております。
 都市部における設置基準、状況は公社のそれと比べてどう変わるのか、また設置基準は省令に定められることとなっておりますが、具体的にはどのように定められることとなるのか、竹中大臣の具体的な答弁を求めます。
 次に、郵便事業について伺います。
 加藤寛千葉商科大学学長は、インターネットの普及もあって郵便は減少の一途をたどっている、このままいけば収入を増やすには郵便料金を上げるしかない、しかし値上げをすればますます利用されなくなる、民営化に反対する人は官業だからつぶれないと思っているようだが、法律でがんじがらめに縛られた官業だからつぶれるのである、だから民営化し、事業を多角化して収益力を付けなければならないと主張されております。
 竹中大臣も国会で同様の趣旨の発言をされておりましたが、確かに郵便事業をめぐる状況を考えますと、今のままではいずれ立ち行かなくなることは想像に難しくありません。とはいえ、民営化することによって本当に郵便事業で収益を上げることができるのでしょうか。逆に、第三種、第四種、災害時の無料郵便など採算の取れないサービスが切り捨てられたり、郵便料金が上がったりしないのでしょうか。公社のときよりもサービスが後退するようなことはあってはならないと思いますが、竹中大臣、いかがでしょうか。答弁を求めます。
 次に、雇用の問題を伺います。
 公社職員の雇用については、法律によってその継続が保障されることとなっておりますが、民間企業になれば、当然、リストラとか合理化による人員削減の問題が起きてくると思われます。その場合、現在の公社職員の雇用はどこまで確保されるのか、この点について、竹中大臣より具体的に御答弁いただきたいと思います。
 最終的な民営化まであと十二年。その間、民営化がうまくいくかどうかのかぎを握るのが郵政民営化推進本部の下に来年四月に設置される郵政民営化委員会であると思っております。郵政民営化委員会は、五人の有識者で構成され、三年ごとに民営化の進捗状況について総合的な見直しを行い、政府に意見を述べることとなっております。この委員会が国民全体で民営化を監視する透明な仕組みとして有効に機能するためには、メンバーを中立的な構成とし、意見の内容を公表するだけでなく、その議論の経過もオープンにしていかなければならないと考えます。
 この点については、六月二十三日の衆議院郵政民営化特別委員会において、我が党の石井啓一議員が当委員会の議事要旨や議事録の速やかな公開を提案しました。
 これに対し、竹中大臣は、議事録の要旨等の速やかな公表等は確かに考えられるというふうに我々も思っておりますと、前向きな姿勢を示されました。委員会運営の透明性と判断の公正性を担保するため、議事録を公開することは必要不可欠であると思いますが、公開するのかどうか、改めて竹中大臣にお伺いします。
 最後に、財政投融資制度、略して財投の改革と郵政民営化の関係についてお尋ねします。
 総理は、一九九九年十二月に出版された「郵政民営化論」という本の序文の中で、郵政三事業の民営化は単なる郵政省の改革にとどまらない、多くの特殊法人の統廃合、民営化、さらには税金を使って各特殊法人に投融資を行う国営金融機関、財政投融資制度の抜本的改革につながると、こう述べておられます。ところが、二〇〇四年九月に閣議決定された郵政民営化の基本方針や今回の法案では、財投改革に一言も触れられておりません。
 そこで、総理にお伺いいたします。
 第一点は、今回の郵政民営化は財投改革の一環と位置付けられているのか、そうであるならば、郵政民営化がどういう理由で財投改革につながるのか、この点をお伺いします。第二点は、財投資金の出口部分、すなわち特殊法人の赤字体質は十分に改革されているとの御認識かどうか。第三点として、総理は、財投は役割を既に終えたから廃止を目指すべきものと考えているのか、それとも今回の郵政民営化という財投の入口の改革のみで当面維持していくべきものと考えているのか、御答弁をいただきたいと思います。
 以上の質問につきまして、総理並びに竹中大臣の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#17
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山本議員に答弁いたします。
 郵政民営化についての説明、また参議院の審議に向けての決意でございますが、郵政民営化関連六法案につきましては、その提出に当たり、政府と与党である自民党、公明党の間で十分な協議を行いました。さらに、衆議院においては百時間を超える貴重な審議時間を確保していただき、その間、政府としては、法案の内容を含め、様々な御質問に対してよく説明申し上げ、最終的には衆議院における修正を経て整然と可決されたものと認識しております。
 過去の世論調査の傾向を見ますと、郵政民営化について賛成が反対を上回っているものが多数であると認識しておりますが、これから始まる参議院での法案審議においても、政府として、これまでの議論の経過や衆議院での修正等を真摯に受け止め、法案を含め郵政民営化についてしっかりと丁寧に説明し、国民の理解が得られるよう誠実に対応してまいります。
 民営化の必要性についてでございますが、郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も民間企業が自由な経営の下で同様のサービスを提供しており、公務員でなければできない事業ではありません。民間により十分運営が可能なものであると思っております。
 他方、現在の公社制度には、郵便局では郵便、郵貯、簡保しか取り扱えない等、業務範囲が限られるため、環境変化にも柔軟に対応できないこと、郵貯・簡保資金は官の資金として、国民負担回避のため国債等の安全資産に運用せざるを得ないこと、法人税等が非課税であること等、民間企業と対等な競争条件となっていないこと等の問題点があるところであります。公社形態を維持したままの改革では、その成果は限定的にならざるを得ません。
 このため、郵政民営化を実現することにより、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより質の高い多様なサービスが提供されるようにしていくとともに、郵便局を通じて国民から集めた約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流す道を開く、約三十八万人の郵政公社の職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等により財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現に資する等のメリットを引き出し、構造改革を一層前進させ、国民の利便性の向上が図られるようにしていくことが重要であると考えております。
 他方、郵便物数の減少や金融の技術革新など、郵政事業を取り巻く環境は急激に変化しており、これに適時適切に対応をして郵政事業の健全な経営を確保するためには速やかに郵政事業を民営化することが必要であります。また、最終的な民営化が実現するには相当年数の準備期間と移行期間が必要であること等を考慮すれば、直ちに民営化に取り組む必要があり、政府としては平成十九年四月に民営化を実施したいと考えております。
 なお、郵政民営化の実現に当たっては、過疎地を始め都市部においても必要な郵便局ネットワークを維持し、また、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、貯金、保険の金融サービスが低下しないよう制度設計に工夫を凝らしており、国民の利便性には十分配慮をしております。
 郵政民営化は、私が官から民へ、民間にできることは民間にの方針の下に進めてきた改革の本丸と言うべき改革であり、郵政事業を改革する最善の案と考えております。
 最終的な民営化の姿についてでございますが、私が目指す民営化は、窓口サービス、郵便、郵貯、簡保といった郵政事業の四つの機能をそれぞれの市場に吸収統合し、市場原理の下でそれぞれの機能が新たな四つの会社として自立した存在となり、自由で公正な競争に基づき質の高い多様なサービスが提供され、市場の活性化、我が国経済の活性化をもたらすことになるというものであります。
 なお、最終的な民営化においては、郵便事業を行う郵便事業株式会社、郵便窓口業務を行う郵便局株式会社、これらの持ち株会社である日本郵政株式会社が一体となって適切に郵便事業を行うとともに、郵便局株式会社においては地域住民の利便に資する業務が行われ、郵便貯金銀行、郵便保険会社については日本郵政株式会社が保有する株式がいったん完全に処分され、民有民営が実現しているものであります。
 郵政民営化と財投改革の関係ですが、郵貯、簡保は政府保証付きで約三百四十兆円もの膨大な資金を家計から集めておりますが、公社のままでは、公的な資金として運用範囲は国債等の安全資産に限られることになります。また、こうした制約の下では、郵貯資金等が財投債の購入につながり、特殊法人等の活動のために活用されるという面は否定できません。こうしたことから、入口である郵貯、簡保が公社のままでは資金の流れの構図は変わりません。
 したがって、郵政民営化の実現によって郵貯、簡保の資金を民間資金に転化し、政府系金融機関の見直し等、出口の改革と相まって資金の流れを官から民へと転換することが必要であります。これにより、国民の貯蓄が経済の成長、発展の源泉として有効に活用されるようになると考えております。
 特殊法人改革でございますが、改革対象となる百六十三法人のうち百三十五法人について廃止、民営化、独立行政法人化等の措置が講じられました。また、民間準拠の財務諸表等を導入し、住宅金融公庫が民間で取り組んでいる直接融資を廃止するなど、事務事業の徹底した見直しを行いました。この結果、特殊法人等向け財政支出を実質的に一兆五千億円削減する等の成果が上がっております。
 さらに、政府系金融機関改革については、平成十四年十二月の経済財政諮問会議において、民間金融機関が正常化することを前提に、現行政策金融機関は民業補完に徹し、かつ、貸出し残高について将来的に対GDP比率で半減することを目指すこととしたことを踏まえ、現在改革を進めているところであります。
 今後も、経済財政諮問会議において、基本方針の取りまとめに向けた議論を進めていくこととしており、あるべき姿の実現に向けて、統廃合、民営化、民間委託等を含めてしっかりと議論していく考えであります。
 財政投融資についてでございますが、郵貯等からの義務預託により特殊法人等の財投事業の肥大化を招いたとの指摘もあったことから、平成十三年度に財投改革を実施し、郵貯等の預託義務を廃止し、財投債等により市場から直接資金を調達すること等としたところであります。
 このような中、平成十三年度以降、民業補完性や償還確実性について厳格な審査を行い、無駄な事業を見直してきた結果、平成十七年度においては特殊法人等向けの投融資額をピーク時の三分の一程度に圧縮しております。
 また、平成十七年度財投計画編成においては、民間準拠の財務諸表等も参考にしながら、すべての財投事業について総点検を行い、住宅金融公庫や都市再生機構について事業の抜本的見直し等を行うことで、将来の財務上の懸念を解消し、財投事業全体としての健全性を確かなものとしたところであります。
 このように、財投改革については、既に着実に進めてきたところでありますが、今後とも民業補完性、償還確実性等を精査しつつ、真に必要な資金需要には的確に対応してまいりたいと思っております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(竹中平蔵君) 山本議員から四問の質問をいただきました。
 まず、都市部の郵便局の設置基準についてお尋ねでございますが、郵便局の設置については、国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう十分な配慮がなされることが最も重要であると考えております。このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付けることといたしました。さらに、省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するなど、きめ細やかな法制上の担保を行うこととしております。
 また、お尋ねの都市部の郵便局につきましては、都市部についても国民の利便性に支障の生じることのないよう配慮するとしております与党との合意を踏まえまして、総務省令において、都市部を含む過疎地以外の地域についての設置基準として、現行の設置基準を十分参考にし、第一に、地域住民の需要に適切に対応することができるように設置されていること、第二に、いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置されていること、第三に、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されていることという基準を定めることを考えているところでございます。
 これらの措置によりまして、都市部においても必要な郵便局ネットワークはしっかりと維持されるものと考えております。
 郵便事業について、民営化によって公社時よりもサービスが後退するのではないかという御懸念でございますが、郵便は基礎的な通信手段の一つとして日常生活に不可欠なサービスでございます。このため、郵便の業務等を営むことを目的とする郵便事業会社を特殊会社として設立いたしますとともに、改正郵便法案において、この郵便事業会社に対し民営化後も引き続きユニバーサルサービスの提供義務を課すこととしております。
 この郵便事業につきましては、郵便物の取扱量が減少する傾向にあるなど、極めて厳しい状況にあると認識しております。このため、民営化により、物流事業等の新規事業の展開を始め、民間とのイコールフッティングの下で経営の自由度を拡大し、民営化後の郵便事業会社が一層のコスト削減やサービスの改善を図ることを可能とすることとしております。これにより、料金の値上げを行うことなく、郵便のユニバーサルサービスを確保することができるようになるものと考えております。
 また、第三種、第四種郵便物につきましては、これは現状と同様、民営化後も改正郵便法案により郵便事業会社に同様の義務付けを行うこととしております。
 さらに、郵便事業会社法案において、特に第三種、第四種郵便物のうち、盲人用の点字、録音物等の社会福祉の増進に寄与する郵便サービスでありますとか、さらに災害時における郵便料金の免除等につきましては、社会・地域貢献基金からその実施に必要な資金を受けられることとし、確実かつ安定的な実施を確保することとしております。
 これらの措置によって、民営化後の郵便事業についても公社時よりもサービスが後退することはないものと考えております。
 新会社の職員の雇用についてのお尋ねでございます。
 公社職員の雇用につきましては、法律によりまして新会社において確実に雇用することとしております。具体的には、公社解散の際に公社に所属する職員は、承継計画において定めるところに従い、いずれかの新会社の職員となることとしております。
 また、民営化後の新会社の職員の雇用については、これは一般の民間会社と同様、労働基準法等の適用の下、新会社の経営陣がビジネスモデルや会社の経営状況を勘案しつつ、労使自治の原則に即しながら適切に決定されるものと考えております。
 なお、雇用に十分配慮するということは、郵政民営化に当たっての五原則のうちの一つでございます。骨格経営試算におきましては、民営化後は、自然減が進む一方で、新規事業の実施に伴う新規採用を確保しながら運営していくという姿を念頭に置いているところでございます。
 いずれにしましても、サービスの担い手であります職員が安心して意欲的に働くことができるようにすることが肝要でございます。職員にとっても望ましい民営化を実現してまいります。
 最後に、郵政民営化委員会の議事要旨等の公表についてお尋ねがございました。
 民営化委員会について、これは、判断の公正性、透明性を確保する必要があるのは議員の御指摘のとおりでございます。このため、民営化委員会が意見を述べたときは、その内容を公表すべきことを法律上義務付けているところでございます。
 また、公正性、透明性を高めるための方策としては、ガイドラインの作成や議事要旨等の速やかな公表が考えられることにつきましては、衆議院における御審議の中でも申し上げてきたところでございます。
 民営化委員会の運営に当たり具体的にどのような方策を講じるかにつきましては、民営化委員会御自身の御判断もあるところではございますが、政府としては、委員会及び事務局の設置後、適切な関与を行ってまいりたいと考えているところでございます。(拍手)
#19
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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