くにさくロゴ
2004/11/25 第161回国会 参議院 参議院会議録情報 第161回国会 経済産業委員会 第5号
姉妹サイト
 
2004/11/25 第161回国会 参議院

参議院会議録情報 第161回国会 経済産業委員会 第5号

#1
第161回国会 経済産業委員会 第5号
平成十六年十一月二十五日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月十七日
    辞任         補欠選任
     藤末 健三君     白  眞勲君
     浜田 昌良君     澤  雄二君
 十一月十八日
    辞任         補欠選任
     白  眞勲君     藤末 健三君
     澤  雄二君     浜田 昌良君
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任
     直嶋 正行君     藤本 祐司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐藤 昭郎君
    理 事
                泉  信也君
                加納 時男君
                小林  温君
                藤原 正司君
                渡辺 秀央君
    委 員
                魚住 汎英君
                沓掛 哲男君
                保坂 三蔵君
                松田 岩夫君
                松村 祥史君
                加藤 敏幸君
                木俣 佳丈君
                平田 健二君
                藤末 健三君
                藤本 祐司君
                浜田 昌良君
                松 あきら君
                田  英夫君
                鈴木 陽悦君
   国務大臣
       経済産業大臣   中川 昭一君
   副大臣
       経済産業副大臣  小此木八郎君
       経済産業副大臣  保坂 三蔵君
   大臣政務官
       経済産業大臣政
       務官       平田 耕一君
       経済産業大臣政
       務官       山本 明彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        世木 義之君
   政府参考人
       法務大臣官房審
       議官       深山 卓也君
       外務大臣官房審
       議官       鈴木 庸一君
       経済産業省通商
       政策局長     北村 俊昭君
       経済産業省通商
       政策局通商機構
       部長       小川 恒弘君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法
 に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別
 措置法案(内閣提出、衆議院送付)
○経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査
 (APEC閣僚会合に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(佐藤昭郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、直嶋正行君が委員を辞任され、その補欠として藤本祐司君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(佐藤昭郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房審議官深山卓也君、外務大臣官房審議官鈴木庸一君、経済産業省通商政策局長北村俊昭君及び経済産業省通商政策局通商機構部長小川恒弘君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(佐藤昭郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(佐藤昭郎君) アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○小林温君 おはようございます。自民党の小林温でございます。
 今国会、先輩方、同僚の皆さんに御配慮いただきまして、ずっと質問をさせていただいております。ありがとうございます。
 大臣におかれましては、APECへの御出張、お疲れさまでございました。
 今日も議題になります通商関係につきましては、バイ、マルチ、リージョナル、それぞれ様々な議論の場が設けられ、幾つかの果実もあったのではないかと、こういうふうに認識をさせていただいております。また後ほど御報告をお聞きするということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 今国会の経済産業委員会での議論は、FTAの法案を一つ成立をさせていただいて、今日はWTOの協定に関する法律について議論をさせていただくわけでございます。日本の今後のやはり通商政策の根幹についてのかかわりのある二法の議論だということでございます。
 そして、今回のこのAD法の法案の相手は、言うまでもなく、日本の最大の貿易相手国である米国でございます。米国は、また後ほど触れさせていただきますが、世界で最も開放的な市場だというふうに言われる反面、その通商制度には保護主義的な側面が見られることもよく指摘されるところでございます。
 そういう中で、先般、ブッシュ大統領が再選をされました。例えば、仮にケリー政権が誕生していたら、アメリカの通商政策は少し保護主義的な方向を向くんじゃないかということも言われていたわけでございますが、ブッシュが再選をされたということで、日本から見た場合、米国の通商政策はこのブッシュの再選ということを受けてどういう形になっていくのか、大臣の御認識をお聞かせいただければと思います。
#7
○国務大臣(中川昭一君) おはようございます。
 今の小林委員の御質問でございますが、今回のアメリカ大統領選挙、いろいろと私も、また小林委員も、また委員の先生方も非常に関心を持っていたと思いますけれども、少なくとも、ブッシュ政権が継続をしたということは、基本的に通商政策に関しましては大きな変化はないというふうに私自身思っております。
 ブッシュ大統領が、世界との貿易・経済のより密接な関係を構築しようという今までの姿勢、これは変わらないものというふうに思っております。
 今、小林委員御指摘のように、院の御許可をいただきまして、私、チリのAPEC閣僚会合に出てまいりましたが、アメリカの通商代表のゼーリック大使とも二人でお会いをさせていただきまして率直な意見交換をさせていただきましたが、ゼーリック代表も、今後とも、WTOの一層の作業の促進、あるいはまた二国間に関しましては、いろいろな仮に問題が起こったときには率直に話し合って、WTOのルールあるいはまた二国間の信頼関係に基づいて課題を解決をしていこうという積極的な御発言もございました。全く私も同感でございました。
 そのようなこと等々を総合的に私なりに判断をさせていただきますと、今までの流れというものが大きく変化をすることはない、むしろ、日米の総じて良好な経済関係あるいは貿易関係、個々にはいろいろ、もちろん経済大国同士、隣国同士でございますからあるわけでありますけれども、総じていい関係は引き続き持続していくものというふうに認識をしております。
#8
○小林温君 是非、APECで得られた様々な結果を今後の通商政策の中に生かしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。
 そこで、今回の法案でございますが、衆議院で審議をし、成立をして参議院に送られてきたわけでございます。十一月十九日に、アメリカ議会においては、レームダックセッションの最終日にこの一九一六年アンチダンピング法の廃止条項を含む法案が承認をされたわけでございます。こういう動きについては、日本側からの、今回の法案化も含め、我が方からの働き掛けが影響を持ったということは私は間違いないことだというふうに思うわけでございますが。
 そこで、この法案によって提訴された事案は、資料によりますと過去二十件、そしてそのうちの十件が我が国の企業又はその米国子会社に対して提起をされたものでございます。既に原告が敗訴したり訴えを取り下げたりということで、現時点で存在しているのはゴス・インターナショナルと東京機械製作所の一件だけであるというふうに認識をしているわけでございますが、そういうことになりますと、今回の法案というのはこの一事案のために法案を成立させるというふうな認識でいいんでしょうか。
#9
○政府参考人(北村俊昭君) お答え申し上げます。
 小林先生御指摘のように、米国議会におきましては、去る十九日、十一月十九日にこの一九一六年アンチダンピング法を含む関税一括法案が成立をいたしております。ただ、この法案が議会で成立はいたしておりますけれども、法案、廃止法が成立するあるいはこの一九一六年法がきちっと廃止をされるには、まずこの法案が大統領に送られ、提出をされて大統領が署名をすると、大統領が署名をしてそこで廃止法案が有効になると、そういった手続がございます。現時点で、したがいまして、観念的、理論的には、現在は、今、いまだに大統領が署名をしているという情報には、私ども確認をしておりませんので、理屈の上ではありますけれども、ある種駆け込み的に、この法案がぎりぎり有効な間をねらって駆け込み的な訴訟が提起されるといった可能性は理論的には否定できないというふうに思います。
 それから、仮に現時点で、小林先生御指摘のように、東京機械、ゴス社と東京機械の案件だけであると、結局それだけであったという場合であっても、これは現在、アイオワ州の連邦地裁の判決で四十億円という巨額の賠償命令を受けております。これを当然不服として同社は連邦控訴審、第二審に今訴えているということでございます。そういう意味では、これが不幸なことに控訴審あるいは最高裁といったところで判決が同社の敗訴という形で確定した場合には、この四十億円もの巨額の損害を回復する手だてとしてこの法案が是非とも必要であるというふうに考えております。
 もう一点追加をさしていただきますと、この法案の意義でございますけれども、やはりこういったWTOの協定に反する法律の効力は認めないと、日本は国際的なルールに従って自由貿易体制を確保すると、そのためのきちっとした毅然とした対応をしていくと、そういう日本の国際社会の中における、あるいは通商秩序の中における日本としての明確な姿勢を示すという意味で大きな意義があるというふうに考えております。
#10
○小林温君 大統領の署名については、ちょうど感謝祭の週末が掛かっているということで、多分別荘か何かにブッシュ大統領も行かれているんだと思いますが、そこに働き掛けるわけにはいかないかと思いますが、是非、駆け込みでまた余計な事案が発生しないように、是非関係各方面の努力をお願いをしておきたいというふうに思います。
 そこで、本法律案はその六条で、その一九一六年のAD法に基づいて外国の裁判所が行った確定判決の効力を日本において否定する、そういう旨の規定が盛り込まれているわけでございますが、我が国の中でこの外国の判決を否定する旨の立法例というものは今まであったんでしょうか。
#11
○政府参考人(小川恒弘君) お答え申し上げます。
 外国裁判所の判決の効力に関する立法例でございますけれども、まず、総論的、一般的な規定といたしましては、民事訴訟法第百十八条がございます。同条によれば、外国裁判所の判決が例えば我が国の公序良俗に反する内容であった場合には、その効力が否定されることになるわけでございます。
 この民事訴訟法第百十八条以外に外国裁判所の判決の効力に関する立法例といたしましては、船舶による油濁損害賠償保障法第十二条というものがございます。これは、我が国が締結いたしました条約に則しまして、外国裁判所が油濁損害の賠償責任の訴えについてした判決につきましては、その判決が詐欺によって取得された場合等にはその効力が否定される旨の規定となっております。
 しかしながら、特定の外国の法律を示し、その法律に基づく判決の効力をすべて否定するという立法例はこれまで我が国においては見当たらず、今御審議いただいている法案が我が国最初の立法例というふうに承知しておるところでございます。
 以上でございます。
#12
○小林温君 今までなかったような画期的な立法例だということでございます。WTOの協定違反という重大なアメリカ側のある意味では過失に対して、我が国の通商戦略としてこういう立法をしていただくというのは非常に意味のあることだというふうに私は思います。
 そこで、先ほど来お話にあります四十億の損害賠償を東京機械製作所が命じられ、アイオワ州の連邦地方裁判所、そして今、控訴中であるというふうに認識をしておりますが、先般、米国で一九一六年法の廃止が承認をされました。そして、今、我が委員会でもこうして本法案の成立に向けて議論させていただいておるわけでございますが、こういう動きがこの東京機械製作所の案件に関する控訴審における審理に大きな影響を与えるものであるかどうか、その辺りの認識をお伺いをしたいと思います。
#13
○政府参考人(北村俊昭君) お答え申し上げます。
 外国における裁判の行方につきまして、私ども政府として公式に評価をするあるいは予測をする、そういったことは本来差し控えるべきだと思います。
 そういう意味で一点だけお答えをさしていただきますと、この一九一六年法の廃止が含まれております関税関連一括法案の中では、この廃止、一九一六年法の廃止の効果として、この法律の廃止前に提起され、それまでに係属中のものには廃止の効力は及ばないという規定がございます。
 以上でございます。
#14
○小林温君 まあ、そういうお答えなんだろうというふうに思いますが。
 では、仮にこの法案が成立をいたしますと、現在控訴中、提訴されております東京機械製作所は具体的にどういう手続を取ることがこの国内において、我が国の中において可能であるのか、その結果どういう判決が出されることが見込まれるのかについて御認識をいただきたいと思います。
#15
○政府参考人(小川恒弘君) お答え申し上げます。
 アメリカにおける訴訟は、現在、控訴審での審理がなされておりますけれども、仮に東京機械製作所の敗訴が確定した場合、ゴス社は勝訴判決に基づきまして、東京機械が控訴を行う際に提出いたしました保証書を執行いたしまして同社から実際に四十億円を得ることになるわけでございます。
 これに対しまして東京機械製作所は、本法に規定されました損害回復請求権を行使することによりましてゴス社から四十億円を取り戻すとともに、アメリカの訴訟に要しました弁護士費用などの訴訟費用、利息、諸経費などの損害賠償を請求することができることになるわけでございます。
 具体的には、まず、本法に基づき、東京機械製作所はアメリカのゴス社に対しまして、四十億円、それから東京機械が訴訟に要しました弁護士費用などの回復を求める訴えを日本国内の裁判所に提起することができるわけでございます。さらに、東京機械製作所は、ゴス社の一〇〇%子会社に対しても同様の訴えを提起することができます。
 これらの訴えを受理いたしました日本国の裁判所は、本法に基づきまして、ゴス社及びその一〇〇%子会社に対し四十億円、それからアメリカでの訴訟に要した費用などを東京機械製作所に支払うことを命じる旨の判決出すこと、命じる旨の判決を出すことが見込まれるところでございます。
 以上でございます。
#16
○小林温君 分かりました。
 では、そういう判決が出されるというふうに見込まれるということでございますが、その場合、東京機械製作所はゴス・インターナショナル及びその子会社が日本国内に有する財産について損害回復の請求をできるということになっているかと思いますけれども、ゴス・インターナショナル若しくはその親会社、子会社は、その場合、四十億円に見合うような十分な資産を有しているんでしょうか。
#17
○政府参考人(小川恒弘君) お答え申し上げます。
 損害回復法に基づきます裁判の結果、被告である米国ゴス社及びその一〇〇%日本子会社などに損害回復を命じる判決が出た場合、東京機械製作所はその判決に基づき、アメリカ・ゴス社が日本国内において有する財産、例えば同社が日本子会社など取引先に対して有する売買代金債権、それから同社が日本国内で有します特許権などの知的財産権などに対して執行することが考えられます。また、ゴス社の一〇〇%日本子会社などに対しては、同社が国内に有する財産に対し判決の執行が可能でございます。
 米国ゴス社が日本国内に保有する資産の規模については情報が公開されていないため不明でございますけれども、同社の一〇〇%日本子会社は埼玉県狭山市に工場を持ちまして実際に生産活動を行っているというふうに聞いているところでございます。
 以上でございます。
#18
○小林温君 本案に係る事案が今一件、この具体的に東京機械製作所の案件でございますので、法案の成立後は速やかに損害回復が図られるような、そういうバックアップもお願いをしたいというふうに申し上げておきたいと思います。
 一番最初の質問で、アメリカが開かれた市場である一方、保護主義的な通商政策も度々採用するということも指摘をさせていただいたわけでございますが、一方、日本は貿易立国として与えられた条件を考えると、やはりWTOのルールというものを遵守をしていくと、新しい枠組みに積極的にかかわっていくという姿勢が求められているというふうに私は認識をしております。そんな中で、日本が重視をしておりますアンチダンピングのルール交渉、これについては交渉の促進を進めていくということが政府においても再認識をされているわけでございますが、今後このWTOでのルール交渉についてどのような見通しを政府がお持ちであるか、お伺いをしたいと思います。
#19
○国務大臣(中川昭一君) 二〇〇一年十一月のドーハがスタートしたときに、いわゆるルール交渉、アンチダンピングを含めたルール交渉が議題としてスタートしているわけでございまして、これは主に日本等が積極的な役割を果たしているわけであります。ダンピングはいけないんですけれども、そのアンチダンピングが余りにも自由貿易をある意味で阻害するようなものではいけないという立場に立っているわけでございます。
 その後いろいろありましたけれども、今年の七月のジュネーブでの大枠合意におきましても、幾つかの項目の中の一つとしてルール、ここにアンチダンピングが入っているわけでありますけれども、これについても留意をするというふうにあの大枠合意文書の中に明記をされておりますので、引き続き、一部の国がこの議論に消極的あるいは反対の国々がありますけれども、やっぱりきちっとしたルールを確立することがWTOのあるいはまたDDAの目的達成のために必要でございますので、日本としては引き続きこのアンチダンピングに関するルールの確立のために努力をしていかなければならないというふうに考えております。
#20
○小林温君 このルール交渉については是非リーダーシップを取っていただくように御努力をお願いをしたいと思います。
 そういったルール交渉がWTOの場で進められている一方で、これは前回のFTAの議論の際にも私の質疑の中でも述べさせていただきましたが、一時期アメリカの通商関係の仕事をしていた人間として、やはりこういう通商政策の決定に当たっては、アメリカというのは国益であるとか自国の企業の利益を守るためにいろんな戦略的なアンチダンピング措置も含めて採用してくるということ、保護主義的な措置を取ってくるということが間々見受けられるわけでございます。
 今回の一九一六年法、それからもう一つ、バード修正条項というのもこれから日米間に残っているアンチダンピング措置の濫用の事案としてはあるわけでございますが、こうした一種アンチダンピング措置の濫用というような状況について、政府としてはどのような姿勢で取り組んでいかれるのかということについてお聞きをしたいと思います。
#21
○副大臣(保坂三蔵君) お答えいたします。
 ただいまもお話がございましたとおり、アンチダンピング措置の発動に関しましては、WTOのルールに基づけばこれはもう一切問題はないわけでございますが、しかしながら、御指摘いただきましたとおり、一九一六年法やあるいはバード修正条項のように、現実にはルールの濫用というような状況の事実がございます。
 我が国といたしましては、このような事例が起きましたときには、当面二国間で粘り強く交渉して是正措置を取るように努力してきたところでございますが、遺憾ながらそのような方向に至らない場合はWTOに提訴するというようないわゆる紛争手続を取ることにしております。この一九一六年法もあるいはバード修正条項もここの部分に該当する事例でございます。
 昨日も御存じのとおりゼロイング、これはアンチダンピングのマージンの拡大計算方式でございますが、この問題につきましてもWTOに対しまして米国に対する協議の要請を行ったところでございまして、いずれにいたしましても、このような紛争処理の国際ルールに基づいた手続にのっとって濫用防止に努めていく、これが我が国の方針でございます。
#22
○小林温君 最後になりますが、やはり我が国は、繰り返しになりますが、貿易立国としてこれからも生き残っていかなければならないわけでございます。世界がFTA、EPAという方向の中に進む中で、WTOのルール作りにもしっかりとかかわり、そして質の高い貿易体制を作っていくことによってのみ我が国の国益というものは確保されるというふうに思います。
 是非、今回の法案の中身も含めて、今後とも万全の通商体制を取っていただきますように、大臣始め経済産業省さんにお願いをさせていただいて、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。
#23
○藤原正司君 民主党・新緑風会の藤原でございます。
 大臣、御苦労さまでございました。遠路、チリまで出張していただきまして、新聞報道などによりますと、それなりの成果があったというふうに聞いておりますし、この点につきましてはこの委員会の最後でいろいろと御報告がいただけるというふうにお聞きしておりますし、願わくはその御報告についてもこの委員会の場で是非いろいろとお聞きをしたいものだというふうに思っているところでございます。
 そこで、本法案について質問させていただきますが、この本法案の根拠となりました米国一九一六AD法が廃止されることが確実になったということで、ある意味で、この法は極めて時限的で極めて個別的な法案に変質したということが言えるわけでございますが、それはそれとして大変喜ばしいと。臭いにおいは元から絶たなきゃ駄目ですから、幾ら対応の法案を作ったとしても、やっぱり元の法案なくなるというのが一番好ましいわけでして、それはそれでいいわけでありますけれども、ただこの法案に至るまで、あるいは米国のAD法が廃止されるまでの経過というものについて、やはり反省と吟味というものを加えながら、これからの我が国の通商政策の中に少しでも生かしていくということが最も好ましいのではないか、そういう視点で質問をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
 まず、米国のこの一九一六AD法というのは、正に一九一六年、大正五年ですか、化石のような法律でございまして、この法律がある日突然息を吹き返したような、そんな状況になっているわけでありますけれども、我が国と同じような歩調を取って対応したEUとの関係で見ますと、この米国AD法がWTO協定に違反するんだということでパネル提訴したのが、EUが一九九八年、日本が一九九九年、こういった中でそれぞれがパネル提訴した背景というのはどういうものがあったのか、これをまずお聞かせ願いたいと思います。
#24
○副大臣(小此木八郎君) おはようございます。
 九八年の十一月に我が国商社の米国現地法人三社を含む八社が熱延鋼板のダンピングを行ったとして、この一九一六年法に基づき米国鉄鋼メーカーより提訴をされました。我が国はこれを受け、翌九九年七月、一九一六年法がアンチダンピング行為への対抗措置として政府によるダンピング防止税の賦課のみ認めているWTO協定に違反するとして、WTOに提訴をいたしました。
 なお、EUは、九六年に欧州系の鉄鋼流通業者が同法で提訴されたことを受け、我が国に先駆け、九九年二月にWTO提訴を行っております。
#25
○藤原正司君 そこで、その後の経過なんですけれども、要はEUも日本もパネル提訴をして、そして二〇〇〇年の九月にWTO協定にこれは違反するんだということ、事実が確定をいたしました。そして、二〇〇一年十二月にはもうこの履行期限が切れ、そして二〇〇二年の一月に対抗措置の承認を申請し、これに対して米国が異議を申し立てて、仲裁へ付託がされたと。ところが、二〇〇二年の三月に、アメリカとして前向きにこの法案撤廃に取り組むという意向を受けていったん仲裁手続を中断したわけでありますが、二〇〇三年九月にまた仲裁手続が再開され、そしてその直後の二〇〇三年十二月にEUが損害回復法を制定をしているわけでして、この一連の動きの背景というのは一体どういうところにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
#26
○政府参考人(北村俊昭君) 今、先生御指摘のように、EUそれから日本が引き続き二〇〇二年に仲裁手続、失礼しました、九九年にいわゆるWTOに提訴をいたしたわけでございます。その後、御指摘のように仲裁になったわけでございますけれども、その仲裁につきまして、これもまた先生御指摘のように、アメリカの議会で廃止をするという法案が出るということで、いったん仲裁を停止をいたしました。
 ところが、議会での審議が進まない間に、二〇〇二年にEUの域内企業に対しまして新たに訴訟が提起をされたと。具体的にちょっと例を申し上げさせていただきますと、二〇〇二年の七月にアメリカのAKスチールという会社がフランスの鉄鋼メーカーでありますユジノール社をこの一九一六年法によって訴えたと。また、同じ時期に、アメリカのブルノ・インディペンデント・リビング・エイドという、介護機器の会社のようですけれども、イギリスの同じ介護機器メーカーのアコーン・モビリティー・サービスという会社をそれぞれ一九一六年法で訴えたと。そういう意味で、EUとしては自ら、訴えられた企業の損害をEU企業が被ることを防止するために、二〇〇三年に入って、二〇〇三年十二月でございますけれども、損害回復法の立法に踏み切ったというふうに承知をいたしております。
#27
○藤原正司君 結局、WTOに訴えてWTOの判断が出たとしても、結局、今回のような、すなわち米国の一九一六AD法のような悪法に対してWTOの抵抗手段というのは有効に機能するのかしないのかと。結局、報復関税しか認めていないわけでして、いわゆるアンチダンピング方式は認めていない中で、一体、その時点でもう機能するのかどうかというのが分かっているわけですけれども、この仲裁を申請して、我が国としては一体、あるいはEUも含めてですけれども、どういうことを仲裁の中に求めようとしたものか、あるいはその仲裁結果としてどういうものが出てくるというのが予測されたのか、この点についてもう一度お聞きしたいと思います。
#28
○政府参考人(北村俊昭君) EUと日本が仲裁に移行し、一時中断をしているという状態でございますけれども、仲裁で、一般的にこういったケースにおいて仲裁の結果認められる対抗措置としては、損害、アメリカが違法な措置によって日本に、日本の貿易に具体的に損害を与えた金額を算定をいたしまして、その算定に応じて日本のアメリカからの輸入に対する関税を引き上げるといったことが一般的な仲裁によって得られる対抗措置の典型例でございます。
 もちろん、ケースによってはアメリカがやっていることと同じ措置をやることを認めるとか、様々な仲裁措置を求めるケースがございますけれども、現実に私どもが中断をしておりますので結果が出ておりませんが、EUの仲裁については、再開をされた結果、そういった考え方での対抗措置を認めてもいいと。
 ただ、若干話は複雑になるんですけれども、EUのケースにつきましては、仲裁が出る時点で裁判は終わっておりました。いずれも原告の敗訴あるいは和解という形で裁判が終わっておりましたので、EUの企業が損害を受けていないと。したがって、損害を受けていない以上、対抗措置としての金額を確定できないと。したがって、具体的には関税の引上げ云々というところまでの具体的な対抗措置は認められなかったということでございます。
#29
○藤原正司君 ちょっと分かりにくい答弁だったんですけれども、要は、アンチダンピングの濫用といいますか、違反行為というのはたくさんあるわけですけれども、この一九一六AD法のように、私企業がペナルティーを受け取ることができると、そういうふうなダンピング法に対抗するものとして報復関税を掛けたからといって、ダメージを受けた例えば我が国の企業が救済されるわけでも何でもないと。ということになると、本当にそれはWTOの場というものが、このような法律に対してちゃんとした抵抗手段といいますか、解決の場になり得るのかどうかということがまずあるというふうに思うわけですけれども。
 いずれにしましても、これまでのこのWTOの場でのEUも含めた動き、あるいは米国の対応などを踏まえますと、我が国の今回のAD法、これ何法と、特別措置法といいますか、今回の法案の提出というのは余りにも遅いのではないかと、なぜ今日まで至ったのかということについて端的にお答えいただきたい。
#30
○国務大臣(中川昭一君) まず、藤原委員も御指摘のように、一九一六年、これは一体どういう、何でこの時期にこんな法律ができたのかということなんですが、第一次世界大戦が終わりかけてヨーロッパ経済が復興をしていくとどっとアメリカに物が入ってくる、アメリカの経済というか生産に影響を与えるということを恐れてこの法律ができてしまったという経緯があるやに聞いております。
 そして、先ほど藤原委員もおっしゃられたように、何かもうたんすの奥といいましょうか、土の中に埋まっているような法律が突然出てきて、そしてどんどんどんどん、二十件という先ほどお話がありましたけれども、そういう提訴が結果的に、現在に至るまでのトータルでありますけれども、出てきているわけでございまして、しかも今委員御指摘のように、今、北村局長から答弁いたしましたが、対抗措置としては関税とか、損害賠償を確定した上での関税、関税というのはあくまでも入ってくる物に対しての物品を選んでの関税ですから、強いて言えば国の収入になるにすぎないわけでございます。
 しかし、この法律は、今御指摘のように、私企業が何か相手にどうも意図があれば裁判を起こして、そしてしかも損害額の三倍までその私企業が奪うことが、獲得することができる。現に、損害金額が約十億円と言われておりますけれども、四十億円を東京機械は既に裁判所に供託をしているわけでございまして、これは単純に十掛ける、三十億で済まないで、訴訟費用とかいろんなことも含めて四十億という巨額の金額を、東京機械も払えるからいいようなもんですけれども、これだけでも大変な金額になるわけでございます。
 何でこんな法律が貿易・通商で適用されるかということが、当然これはWTO上問題だということになったわけであります。なったにもかかわらず、引き続きこの法律を適用された訴訟は起こされるわ、そしてまた、仲裁手続はやりながらまた中断するわということで、確かに今委員御指摘のように、遅かったのではないかという御指摘は私自身も率直に言って思うわけでありますが、たしか日本にかかわる十件のうち、この件を除いてはいずれも和解若しくは原告敗訴ということになっておりましたので、今まではあっても実害がないだろうというのが結果的な判断であったわけでありますが、今回は、WTOの敗訴の確定期間が過ぎた後でもアメリカとして一向にこの法律を改める気がない。しかし、アメリカ政府の方、特にUSTRの方は、やっぱりこの法律はおかしいのではないかということを既に日本にも、あるいはまたゼーリック代表は今年の夏にアメリカの下院議長にもこれは是非廃止すべきであると、WTOのルールからいっても廃止すべきであるということを言っておりましたけれども、議会においては、選挙も近いということもございましたし、なかなか、ずるずると延びてきたわけでありますが、ここに来て議会は成立したという状況になっているわけでございます。
 話があちこちに飛んで大変恐縮でございますが、日本といたしましては、EUと連携を取りながらといいましょうか、EUの動きも見ながら、そして東京機械については、御承知のとおり連邦地裁で原告勝訴ということになっておりますので、これが確定してしまいますと救済する方法がない、WTO違反の法律に基づいて、しかもそれを救済する法律がないということになりますと、日本の企業、ひいては日本の国益にとって多大な影響が現実のものとして早ければ来年春にも、最高裁に行ったとしても、確定してしまう可能性があるということで急遽、EUも一年前に似たような、似たような法律を既に制定をしておりますけれども、日本としてもそのような事態が、初めて有罪という一審判決が出た以上は、現実のものとして出てきたものですから、日本としても、先ほど小林委員との御議論にもありましたが、異例の法律を急遽提出をさしていただき御審議をいただいているところだというふうに御理解いただきたいと思います。
#31
○藤原正司君 この東京機械製作所とゴス社の、どうも東京機械製作所も実際にダンピングをやったのかどうかということについても、アメリカの通商代表部はシロだという判断を下し、しかし連邦地裁はアメリカ特有の裁判方式の中でクロだと言う。
 これまで同僚議員が質問しましたように、二十件これで、この法律でやられて、我が国もその半分がやられていると。たまたま原告敗訴と、あるいは取下げというような形で推移しているけれども、一つ間違うとどうなるか分からないというのがアメリカの法律と、それで裁く裁判所の特質があるということをまず頭に入れておく必要があるだろう。だから、今までは負けていなかったからといっても、それはちょっと余り当てにならないというのが一つ。
 もう一つは、先ほど言いましたように、WTOに提訴してもWTOは抵抗手段として報復関税しか認めていないと、だから被害を受けた企業の救済というのはできない。例えば、その報復関税を山分けしようとしてその企業にバックペイしようとするとこれWTOは許さないということになると、個別企業は救済できないわけですよ。
 ということは、元々こういう一九七〇年以降、化石のような法律が息を吹き返してぼんぼんぼんぼん裁判をやられる、そういう経過の中でたまたま全部勝つ、勝ち若しくは向こうが引き下げたけども、そういうずうっとリスクが継続してきた中で、東京機械製作所が負けましたから慌てて作りましたということでは余りにもそれはちょっと問題じゃないですかと、きちっとやるべきことをやっていないんじゃないですかという認識を持たざるを得ないんですけど、もう一度その辺りについて。
#32
○国務大臣(中川昭一君) 藤原委員御指摘のことは、全く私も理解ができるところでございます。
 ただ、あえて、じゃ、たまたま負けなかったからということでございますが、一つは、御指摘のように陪審員制度でもって有罪か無罪か、原告勝訴か敗訴かを決めるというアメリカの独特の制度が一つあるということで、どうもこのアイオワ地裁の原告勝訴の後、大変、それに参加した弁護士の皆さん方は大変有名になったということだそうでありますけれども。
 しかし、それはそれといたしまして、アメリカも三審制でございますから、被告が引き続き控訴なり上告をしている間は裁判としては確定しないわけでございますので、まあ慌ててという言葉を私の立場からは使いたくはありませんけれども、東京機械のそのペナルティーが確定する前に、万が一原告勝訴になって、東京機械がUSTR的に言うとシロであるにもかかわらず、その三倍ものお金プラスアルファを払わなければいけないということがないようにするためにこの法律を作って確定判決前に間に合うようにさしていただいたということでございまして、まあ、ここから先は仮定の話ですけれども、仮に過去の裁判において同じようなことが起こっていれば、当然そういうことを選択することになったであろうと。これは過去のことでございますから断定はできませんけれども、そういう認識で。
 WTOの、そもそもこの法律は、WTOの求められているアンチダンピングの制度というのは、もう委員御指摘のように国がやらなければいけないということですけれど、これはゴス社ならゴス社が、だれでもできるというところにWTOの整合性がないということがそもそもこの法律の欠陥だとも思っておりましたので、どういう形になっても日本の企業が不当な損害請求に応じざるを得ないようなことがないようにということでこの法律を御審議いただいているということでございます。
#33
○藤原正司君 いや、私が心配しましたのは、例えば報復関税という形で抵抗手段、対抗手段を取れるという場合でしたら政令でいけますから割合速やかに対応できるんですね。今回のような場合は法律で対応しなければならないということになると、議会に、そして議会が開かれているとか開かれていないとかいろんな問題がありまして、今回はたまたま滑り込みセーフですけれども、滑り込みセーフにならないことだって考えられるわけで、だから個々の訴訟を見ながら、そしてこれは大変だということで対応するやり方で本当にできるんですかということをお聞きしたかったわけであります。
 次に、今、同僚委員の質問で、一応、東京機械製作所は敗訴になったとしてもきちっと損害は回復できるということ、すなわち江戸の敵を長崎で十分討てるということがはっきりしたというふうに私は承知をいたしました。
 したがって、ゴス社から見れば、これ以上争ったとしても何の得にもならない。何の得にもならないということになれば、私個人とすれば、もうこの争いは引き下がっていただくのが最も好ましいことだと、これ以上争いを継続することは好ましいことではないというふうに私は思うわけですけれども、政府はどういうことを御期待されますか。
#34
○国務大臣(中川昭一君) 先ほども小林委員に答弁、政府側でいたしましたけれども、これが現在控訴中の裁判にどういう影響を与えるかということについては我々としてはコメントはしない方がいいと思いますけれども、しかし、これが成立をさせていただくならば、日本に一〇〇%子会社あるいはまた資産のあるゴス社を、同等額、これは対抗法案というより、対抗法というよりも損害回復法でございますので、勝ったとしても東京でやられちゃう。正に江戸と長崎みたいな話になるわけでございまして、そうなると、訴訟の時間、費用等を考えたときには、何もないときに比べれば原告側もまた原告の弁護団も相当慎重に考えるのではないかという推測はできるものではないかというふうに理解をしております。
#35
○藤原正司君 ちょっと視点が変わるんですが、今回、この法案については附則部分で修正をする予定になっております。
 これは、政府側から見れば、レームダックセッションという議会の場、期間中に予想外に早く廃止が進展していったためということなのだそうですけれども、実際問題、この米国の一九一六AD法の廃止に向けた取組というのは我が国も一生懸命これまでやってきたし、そして米国政府も含めていろんな考え方を示してきているわけでして、そういうことを考えると、参議院に回ってきてから慌てて附則を直さにゃいかぬというのは、これちょっと不手際じゃないですか。
#36
○政府参考人(北村俊昭君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、従来から私どもとして、WTOのパネルの提訴、それに基づく結論として、この一九一六年法がWTOに違反をすると、したがってアメリカはこれを廃止すべきであるといったWTOのパネルの結論をまず得ております。それにもかかわらず、米国議会で廃止法がなかなか通らないという状態でございました。
 従来も何本かの廃止法が出ておりましたけれども、先ほど大臣から御答弁申し上げたように、アメリカの行政府、特にUSTRは、そういったWTOへの整合性を確保するという観点から廃止法の成立を強く働き掛けてきたところでございますけれども、議会における様々な全体の審議の中で、結果的にはなかなか、今まで審議が滞っておったということでございます。
 私ども、もちろん日米間、特にUSTRあるいは商務省との間で、この一九一六年法の廃止に向けてどういった活動が行われ、アメリカの行政府としてどのような努力をしているのか、さらには、これはアメリカの議会が決めるべきことでありますけれども、アメリカの行政府としてどのような見通しを持っているのかと、そういったことをこの間十分、私どもとしては最善の努力をしたつもりでございます。
 そういった意味で、この法律を政府部内で作成する過程におきまして、このタイミングで、いわゆるレームダックセッション、特に大統領選挙の後のレームダックセッションという、非常に通常のアメリカの議会の会期とは異なる仕組みの審議の状況の中で、こういった、十一月の十九日に米国で廃止法が成立をするといったことにつきましては、私どもの、最善の努力と申し上げましたけれども、結果的には私どもの見通しとしては大変不透明な状況であったということでございます。
 現実に、先週、いわゆるレームダックセッションが十一月の十六日からたしか開始をされておりましたけれども、この十一月十六日から数日間のレームダックセッションでこの廃止を含む関税関連一括法案が廃止をされるのかどうか、実はこれについてもアメリカ国内でも見通しが分からないと。
 と申しますのは、やや細かくなりますけれども、これは関税関連一括法案でございますので、様々な法案が言わばオムニバスとして一緒に乗っかっている法案でございます。その法案の中には、一部のその条項について、これは全く日本とは関係ない部分なんですけれども、一部の条項について強く反対をする議員がいらっしゃって、この議員が、アメリカの議会のその手法でありますけれども、長時間演説をするということで、実際上、その審議採決に持ち込ませないと、そういった手法を取るのではないかといったことも現実の可能性としてアメリカの関係者は予想をしておりました。
 したがいまして、私ども、この法案を衆議院に提出させていただいた時点、あるいは今御審議をいただいている参議院で先日提案理由を大臣からお話をさせていただいた時点におきまして、廃止をされるということについては、率直に申し上げると極めて不透明な状態であったということでございます。そういったことで御理解をいただきたいと思います。
#37
○藤原正司君 まあ何はともあれ、滑り込みセーフで良かったということでございましょう。
 次に、この今回の米国のAD法についても、あるいはまだ、このダンピングに関連しては、例えばバード修正条項などもまだ残された大変大きな問題であるわけですけれども、これまでのこれらの廃止に向けた外交努力、そして今後どのような方向でこれを、特にバード修正条項などについては廃止に取り組んでいくのかということでございます。
 特に、このバード修正条項というのは、何といいますか、ダンピングマージン山分け法といいますか、そんな法律ですわな。私は表現が悪いのであれですが。要は山分け法で、これはWTOが認めていないやり方を米国は採用しているわけでして、この廃止に向けた働き掛けと今後の見通しについてお尋ねをしたいわけです。
 特に、先般、十一日でしたか、十日の日でしたか、新聞報道で、EUとともに米国への制裁手続をWTOに申請をしていくと。そして、二十四日に、昨日ですね、昨日にもWTOでこれが受理されるのではないかという報道があった。
 この辺も含めて、あるいは日米間の規制改革に関するイニシアチブの第三回報告の中にも、このAD法以外のいわゆる悪法に関して米国の考え方が明らかにされている面もあるわけですが、これら一連、このAD法以外の問題についても、これまでの取組と、これからこういうふうにやっていくんだという考え方をお聞きしたいと思います。
#38
○副大臣(保坂三蔵君) お話がございましたとおり、WTO協定違反が確定している一九一六年法、バード修正条項につきましても、中川大臣からお話がありましたとおり、日本政府といたしましては米国に対しましても度々その早期履行を繰り返して求めてきたわけでございます。
 しかし、現実にこうなったわけでございますが、今回、一九一六年法に関しましては、我が国の議会の今回の損害回復法が準備され、また法案が通るという見通しになってまいりまして、本年十一月十九日にアメリカの議会で正式に撤廃が関税一括法としてその中に含まれて通ったわけでございます。これは、我田引水ではございませんが、日本政府の努力の一環として広く認識されているところだと存じます。
 他方、バード修正条項につきましても、お話しのとおり様々な努力が展開してきたわけでございますけれども、十一月の十日、EUを始め八か国・地域が合わせて対抗措置をWTOに申請をしたわけでございます。できますればこの対抗措置というものが発動されないように、アメリカがこの一連の推移を真摯に受け止めて履行に至らしめるように、またそのほかのものに関しましても、アメリカの努力に関しまして一層私たちは外交努力を展開していきたい、これが基本的な方向でございます。
#39
○藤原正司君 この日米間の規制改革イニシアチブ、この第三回報告の中でこういう表現がされているわけで、米国政府は、バード修正条項の関連する規定をWTOの勧告及び裁定に適合したものにする法案を支持するが一つ。もう一つ、悪法であるこの日本製の熱延鋼板の紛争案件に係るWTOの勧告及び裁定を実施するための立法について、引き続き米国議会と緊密に協力して取り組んでいく。だから、このバード修正条項とこの日本製の熱延鋼板とはちょっと表現が違うんですね。
 ちょっと質問通告してなかったんやけど、専門家がおられるんで、これはどういうことなんかちょっと教えてもらえませんか。
#40
○政府参考人(北村俊昭君) お答え申し上げます。
 手元に資料を持っておりませんので記憶でお答えをお許し願いますが、熱延鋼板のアンチダンピングにつきましては、アンチダンピングの金額の算定の方法についての日本側としての異議申立てでありまして、したがいまして、バード修正法あるいは一九一六年法といったアメリカの法律そのものに基づいたWTOに違反をするという事例ではございません。
 したがいまして、行政府、アメリカの行政府としますと、アメリカのアンチダンピングの算定に当たってのある意味でのテクニカルな、技術的なやり方についての日本からの異議申立てについては、テクニカルなレベルでもう少し議論をしたいということで、そういった一九一六年法あるいはバード修正法に対する表現ぶりとは異なった対応ぶりになっているものだというふうに承知をいたしております。
#41
○藤原正司君 今回の一九一六のAD法についても、バード修正条項につきましても、なかなか、WTOの場で解決をするというよりも、二国間協議の中にゆだねられなければなかなか解決しない状況にある。WTOそのものが、できるだけ多く集まってみんなで少しずつ良くなっていこうということですから、そのみんなでという部分を強調する余りどうしても、例外的な部分をどうしても作ってくると。それが例外破りという方に発展していくし、WTO自身がなかなか強制力を持ちづらい状況にあると。
 こういう中で、本当にWTOというのはこれらの違反事項などについて紛争解決能力の実効性というのはあるんだろうかという疑問も出てくるわけでありますけれども、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
#42
○副大臣(保坂三蔵君) 御案内のとおり、ガット・ウルグアイ・ラウンドを経まして九五年からWTOが発足して以来、WTOの判断が出ましたのは九十件ございます。九十件の中で是正されずに今日まで残っているというのは極めて少ない例しか現実にはないわけでございまして、その中に今言った一九一六やバード修正法などがあるわけでございます。
 そのことを考えますと、お話しのとおり、二国間の交渉を努力しながら、またWTOの場でという国際ルールに基づいたこの解決方法は、紛争処理システムとしては基本的にはうまくいっていると、こういう判断を我が国政府は考えているわけでございます。
 しかし、その一方で、現実的に一九一六年法のように、現実、WTOのルール違反が確定いたしましても守らないと、こういうことが出てまいりますので、このことにつきましては、アメリカ政府のあるいはまた議会の良識をまつしかないわけでございますが、誠に遺憾に思っているわけでございます。
 お話しのとおり、そういうことを考えまして、多国間と協議をし、また連携をしながら対抗措置の承認申請などを行うことによって勧告が是正される、あるいは守られていく、こういう努力をしていくことが必要ではないかと思っております。
 いずれにいたしましても、外交交渉の部分でございますから、力関係もございます。そういう点では、やはり粘り強く加盟国、WTOという加盟国の強い意志を表示するということが今実際重要でございまして、これらを私たちは、日本が先頭に立って担保することによって、WTOのルールがしっかりと守られるように今後も努力していきたい、こういう方向でございます。
#43
○藤原正司君 ちょっと大臣が中座されておりますので、別の質問に。
 ということで、要は、WTOと二国間というものをいかにうまく組み合わしていくかということにしていかないと、WTOだけでもうまくいかないし、二国間あるいはブロック間だけでもうまくいかない。そこのところをどのように進めていくかと。今回はアメリカとの問題でしたけれども、このAD措置の濫用というのはかなり多いわけでございまして、最近特に増えていると。この濫用防止という観点から、我が国としてどういう取組をしていくのかということが極めて大事ではないかというふうに思っております。
 本年七月末のWTOのドーハ・ラウンドの枠組み合意の場におきまして、アンチダンピング等のルール分野に関しましては、我が国としてどのような提案を行い、どのような成果、進展があったのか。なかなか苦労された会議であったということで、何とか枠組みだけでもという、合意に努力をされたようでありますけれども、このドーハ・ラウンド枠組み合意の場において我が国としての取組についてお聞きしたいと思います。
#44
○副大臣(保坂三蔵君) 御指摘のとおりでございまして、濫用を防止することは概念的には理解されておりましても、貿易間の間では現実的にはいろいろ不公正がまだまかり通っているところがございます。そこで、お話がございましたとおり、過日のドーハでも、アンチダンピング措置の濫用防止に向けまして、韓国、ブラジル、EU等の幅広い国との連携を図ってまいってきたところでございます。
 我が国が具体的に主張しているところを申し上げますと、例えば損害が安易に認定されないようなシステム、あるいはまたアンチダンピング措置の規模を必要最小限にとどめるべきだと、こんな主張、あるいはまたアンチダンピングの措置が永続することを禁止すべきではないかと、五年以内の撤廃等、具体的に提案してきたところでございます。中には三十年続いているというやつがあります。
 そういうことがございますので、そういった取組を踏まえて、この七月のドーハ・ラウンドにおきまして、枠組み合意、枠組み合意、全体の枠組み合意の中でアンチダンピングに関する交渉を進展していこう、こういうことで決意の再確認が加盟国によってなされたところでございます。
 九月以降も累次の交渉を続けていく予定でございますので、今後とも、お話をいたしましたとおり、他国と連携を図りながら我が国の立場を、ラウンド交渉を通じてアンチダンピング措置の濫用を防止すると、これに向けた取組を今後鋭意努力していく予定でございます。
#45
○藤原正司君 特に中国の場合、WTOに加盟してからアンチダンピング措置が急増しているということもございます。我が国が第三国参加国案件としてやりました半導体増値税の還付問題あるいはアンチダンピング措置の運用、これなど、この日中間の通商上の懸案解決に向けて、これまでの経過とこれからどういうふうにやっていこうとされるのか、お考えをお聞きしたいと思います。
#46
○副大臣(小此木八郎君) 中国とのことに関しましては、御案内のように年々貿易量がもう増大をしてきているわけでありますから、前にも増して中国の政策や貿易に関することには我々も注視をしていかなければならないと思っております。
 そうした中で、我が国の利益を阻害する御指摘の問題につきましては、WTO協定を始めとする国際ルールに照らしつつ個別具体的に指摘を行うことにより、その改善や撤廃を今促しているところでございます。
 半導体に賦課される増値税の還付問題やAD措置の運用問題等に関しては、当省と中国の関係部局との協議や産業別の官民対話、さらにWTOの経過的レビューメカニズムを含む様々な機会を活用をしまして、WTO上の義務の着実な履行等措置の改善や撤廃を求めております。その結果、半導体増値税に関する措置に関しては、中国政府から来年四月一日までには廃止をされることが発表されているということでございます。
 我が国といたしまして、引き続き、こうした中国の不公正な貿易政策や措置について、二国間、多国間等様々な機会を通じて改善及び撤廃に向けた取組を行ってまいる所存であります。
#47
○藤原正司君 是非やっていただきたいと。特にダンピング調査なども、これ高い低いと言ったって、要は品質の、どういうものが、品質のレベルをあいまいにしたまま高い安いと言ったってこれ全然合わないし、その根拠も明示されない。ですから、それぞれの、中国はもう途上国とは言えないんでしょうけれども、その国の中で配慮すべきこととはっきりすべきことというのをしておかないと、何か分からぬままにダンピングだと。これは最も、これは信頼して貿易ができないわけですから、是非努力をしていただきたいと思います。
 最後にお尋ねをしたいと思いますが、日本版USTRの話ですけれども、アメリカ通商代表部の場合は、通商政策の立案から外国との交渉まで全般的に通商を担当しているわけでございます。我が国の場合は、たまたま中川大臣が農水にも明るいし通商政策にも明るいということで、個人的には十分カバーされているわけですけれども、どうしてもそれぞれの省庁の利害というものがうまくいかない場合があって、外国と対応する場合にそれが逆にウイークポイントになってくる面もあって、やっぱりきちっと、アメリカのUSTRのようにきちっとした対外的な対応体制というものを整備すべきではないかと、そういう、あるべきではないかという声が極めて強いわけですけれども、そういう点について最後に大臣のお考えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
#48
○国務大臣(中川昭一君) 藤原委員御指摘のようなお話は、最近よく国会でも御質問いただくわけであります。私は、結論的に申し上げると、交渉に支障のあるような体制は良くない、これはもう大前提だろうと思います。
 過去におきましては、シンガポール、それからメキシコとやってまいりましたけれども、特にメキシコ、一年前でございましたけれども、これは私どもの手前みそかもしれませんが、総理大臣の指導の下で、外務大臣、それから懸案を抱えておりました農水大臣、それから私どもの方もいろいろと、いろいろございましたけれども、私、三人が極めて連携を取ってやってきたというふうに私自身は思っているところでございます。
 今後はASEANあるいはまた韓国等々とFTA交渉をやり、また、今後もまた新たな交渉がスタートしていくのだろうと思っておりますが、いずれにいたしましても、そういう形でやっていくために省庁間の連携、そしてまた、今でもASEAN全体を含めますと、これは来年四月からのスタートでありますが、現にやっているのが今ASEAN三つと韓国ということでございまして、いずれも非常に多分野にわたる、そして濃密な交渉をやっておりますので、そういう意味で非常に、だんだん外務省あるいはまた農水省、経済産業省その他の役所のやる分野は量的に非常に多くなってくるんだろうということが予想されます。
 今年の夏にジュネーブでアメリカのUSTRの高官が、自分たちは一年以内の間に八つFTA交渉をやり、まとめてきたんだと、もう本当に少ない人員で大変だったという、これは質の問題というよりも量の大きさに対しての悲鳴のような話を伺ってきたことを今思い出しているところでございます。
 もちろん、USTRがじゃ万能の権限を持っているかというと、あれはもう委員御指摘のとおり、議会が通商交渉をするに当たってファストトラックあるいはTPAという権限を、交渉権限を与えているわけでございまして、そのためにUSTRという場、組織を大統領の下に作ったのは、そもそもこれ議会が作ったわけでございまして、したがって議会に対しての一定の報告義務等々もあるようでございますけれども、彼らもなかなか議会あるいはまた各業界団体との調整には中で苦労しているようでございます。しかし、出てくるときはUSTR代表としてアメリカを代表して出てくるわけでございまして、そのメリットもまたいろいろと、日本とはまた違う意味のいろいろなこともあるわけでございます。
 いずれにいたしましても、現在の交渉あるいは今後の交渉につきまして、総理大臣のリーダーシップの下、また委員会、議会の御指導の下で、本来の目的達成のためにきちっとした交渉が遅滞なく行われるような体制を作っていくことが最大の目的であって、それについてどういう体制がいいのかどうかということは、最終的には、議会の御意見、あるいはいろいろの、様々な御意見を聴きながら内閣総理大臣が御判断されることではないかというふうに思っております。
#49
○藤原正司君 終わります。
#50
○松あきら君 公明党の松あきらでございます。
 大臣、サンティアゴからの御帰国、大変に御苦労さまでございました。
 今年の初め、まだ寒いころであった気がいたしますけれども、東京機械が米国のゴス社から提訴されまして、そして一審で四十億円の損害賠償の判決が下りたというのを聞きまして大変にびっくりいたしました。なぜならば、訴えているこの法律、つまり一九一六AD法そのものがWTOで明確に違法であると認定をされているからであります。しかも、この東京機械の敗訴、四十億円の損害賠償というものを、判決を聞き付けて、米国のいろいろな企業が、日本の企業を訴えればこれはお金を取れるかもしれないぞというので、我も我もという形でその訴訟の準備に動き出したと、こういうことも聞いているわけでございます。
 EUではEU内の企業を守る損害回復法が制定されているのに、なぜ日本の国は日本の企業を守る対抗措置法案を作らないのかと、私はいろいろ聞いて怒りに燃えておりました。今回、やっとぎりぎりセーフという形で今回この法律案がこの臨時国会で成立をされるであろうということに大きな喜びを感じている次第でございます。
 米国には弁護士を始めといたします国際経済ルールの専門家が数多く存在をしておりまして、現在ワシントンDCとニューヨークだけでもいわゆる通商弁護士が合わせて約八百人くらいいるというふうに言われております。こうした専門家は米国における政府と産業界のパートナーシップ形成に大変重要な役割を果たしているそうでございます。専門家人材育成のためには、政府、産業界、法曹界等の間での人材交流を促進するための産学官連携が必要であると思っております。
 今回の東京機械のケースは、政府と企業との連携がうまくいっていなかったことも原因の一つかなというふうに思います。したがって、政府と産業界とで情報の共有やあるいは意見交換というものがなされる環境が整備されることが重要であるというふうに思うわけでございます。
 今回のその事件の概要、先ほど来何回も出ておりますけれども、昨年十二月に米国アイオワ州連邦地方裁判所において、米国一九一六法に基づいて、我が国の新聞輪転機メーカーである東京機械製作所に約四十億円相当の損害賠償を命じる判決が下されたわけであります。しかし、これまで一九一六法に基づいて提訴をされました鉄鋼製品等の分野では米国企業の敗訴やあるいは和解にとどまっておりまして、一審段階とはいえ、東京機械のケースに限って日本企業の敗訴の判決が出たわけでございます。
 先ほど大臣もおっしゃっておられました三倍額賠償の問題、あるいは裁判員制度の問題、敗訴者弁護士費用負担の問題、これらもこの中に含まれる重要な問題であると私は思っている次第でございます。経済産業省といたしましてはこれらの点についてどのようにお考えなのか、まずお伺いをしたいと思います。
#51
○政府参考人(小川恒弘君) お答えを申し上げます。
 まず、具体的な事案における海外の裁判所の判断そのものに対しましては、直接的に評価をすることは差し控えさせていただきたいと思うところでございます。
 しかしながら、判決の前提となりました一九一六年法につきましては、既に、我が国及びEUがWTOに提訴をした結果、WTO違反が確定しているものでございます。しかるに、米国は履行期間を超えても同法の廃止には至らなかったところ、その間隙を縫って、先ほど御指摘がございましたけれども、第一審レベルではございますけれども、このような判決がなされたという点につきましては、国際ルールでありますWTO協定の遵守という観点からかんがみまして、極めて遺憾であるというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
#52
○松あきら君 米国の一九一六年、いわゆるこの法律に対する対抗措置をめぐっては我が国もEUと同じ状況に置かれているわけで、EUにおける損害回復法の制定に向けた動きについて政府は当然承知をしていたというふうに思います。
 そこで、今回提出をされました米国一九一六法に対する対抗法案の必要性について、いつごろから経済産業省あるいは外務省あるいは法務省で認識をされていたのでしょうか。また、東京機械を始め、米国企業によって一九一六法に基づいて提訴されている各日本企業ですね、今まで、代理人あるいは協会等から政府に対して米国への対抗措置を求める働き掛けがあったのかどうか、またどのような働き掛けがあったのか、またこれらにどのように連携をしてあるいは対応されたのか、連携もされてなかったのか、その辺についてもお伺いをしたいと思います。
#53
○政府参考人(北村俊昭君) お答え申し上げます。
 この案件に関しまして、具体的な損害回復法と、こういった新たな立法の必要性を認識をいたしましたのは昨年の十二月の段階でございます。これは、先ほど先生から御紹介ありましたように、EUにおいて昨年十二月に損害回復法が制定されたことと、またアメリカの連邦地裁の陪審が東京機械製作所に損害賠償を命じる評決を出したと、この二つを受けて、具体的な損害回復を行うためには、WTO違反の法律に基づいて日本の企業が受けた損害を回復するためには新たな立法措置を講ずるべきではないかという認識に至りましたのは昨年の十二月でございます。
 こういった認識を受けまして、私ども、この法案、こういった外国の法律に基づいた損害を回復をするといった特別の法律は、先ほど来御議論がございましたように、我が国の法律の歴史の中でも初めてのものでございます。そういう意味では、通商関係、アメリカとの関係、WTOとの関係という意味では外務省、また我が国の国内法上初めての法律であると、憲法、民法、民事訴訟法と、そういった大変難しい新しい立法であるという意味では法務省、この両省と密接に御相談をいたしまして、この法案の政府としての原案をまとめてきたところでございます。
 また、WTOの違反が確定をしたと先ほど申し上げましたけれども、WTOに提訴する段階におきましては、当然でありますけれども、外務省と密接な連携をしWTOに対応してきたところでございます。
 また、第二の御質問でございましたけれども、企業とのコミュニケーションはどうなっているのかという御質問でございました。もちろん、私ども経済産業省といたしましては、企業との密接なコミュニケーションがなければ適切な政策の実施はできないというのが基本的な認識でございます。
 本件につきましても、東京機械製作所からはアメリカでの裁判の進捗状況の報告を綿密に受けておりましたし、具体的には、例えば裁判、アメリカの裁判の過程で、日本政府としてアメリカの裁判所に対して意見書を出すという仕組みがございますので、その仕組みを利用して日本政府としての意見書を提出したという経緯も現実にございます。
 いずれにしましても、企業のこういった事案につきましては、きちっと対応する、あるいは関係の政府の各省の中では密接に連携を取るというのが基本でございまして、その中で今回の法案の御審議をお願いしているという次第でございます。
#54
○松あきら君 ほかの省庁はいいですか。来ているんじゃないの。
#55
○政府参考人(鈴木庸一君) お答えいたします。
 外務省としては、この一九一六年AD法のWTO違反が確定しました後、経済産業省と緊密に協議、連絡をいたしまして、まずはアメリカ政府に対してこの法律の廃止を求めてきたわけでございます。アメリカ政府に対する働き掛けと同時に、EUの動きについてもフォローしていたわけでございまして、EUが昨年十二月に対抗立法を制定したということについても関心を持ってフォローしていたわけでございます。
 このような経済産業省との連携の中で、本年三月に経済産業省の方から具体的にその対抗立法を制定したいというお話がありまして、それを受けて相談をしてきたところでございます。
 また、今、北村局長からもお話がありましたが、同時に、日本の企業が損害を受けるというような形で司法行為が取られることがないようにということで、日本政府としては、外務省、経済産業省、緊密な連携の下に、アメリカの連邦地裁、あるいはその後控訴されましたので控訴裁判所に対して日本政府としての意見書を出して、日本の企業に対する損害がないように、司法行為が行われないようにということで共同で行動を取ってまいったところでございます。
 もちろん、具体的な立法に当たっては経済産業省のほかに法務省とも緊密に連絡してまいりました。
#56
○政府参考人(深山卓也君) 法務省でございます。
 法務省は、東京機械製作所を始めとする日本企業から直接の働き掛けを受けたことはございませんけれども、先ほど来、他の省庁からの御答弁にもあるように、本年三月に経済産業省から情報提供を受けて対抗立法の必要性について認識するに至りました。
 法務省は、先ほど来のお話に出ているように、民法、民事訴訟法といった民事基本法を所管する立場から、経済産業省及び外務省と緊密に連携をいたしましてこの法案の検討、立案の過程に参画をして、特に理論的な側面からどのような形で対抗立法を仕組むのが我が国の法制度として合理的かというような点からの御相談を緊密にしてきたところでございます。
#57
○松あきら君 三省の連携の努力が実って、今回上院の廃止に追い込んだというふうに私も理解をしているところでございます。
 この本法律案が成立をしますと、仮にアメリカでその東京機械に約四十億円の損害賠償を命じる判決が確定しても、ある程度その損害額を回復することが可能となるわけでございます。
 しかし、一方で、その一九一六法に基づくゴス社との裁判において被告となった東京機械以外の他社は既に和解をしております。そうした、こうした和解した企業はゴス社に対して一定の和解金を支払ったのではないかと、こういうふうに思います、当然のごとく。
 この損害回復法によって救済される企業とのバランスについてどのようにお考えでしょうか。このような対抗法案がもう少し早い段階で制定されていれば、東京機械以外の他社はゴス社と和解する必要がなかったのではないかというふうに思うわけでございます。これ、大臣、いかがでございましょうか。
#58
○国務大臣(中川昭一君) 先ほども申し上げましたように、十件ぐらいが日本企業絡みということでございまして、その中には原告、つまりアメリカ企業が敗訴したものがございます。それ以外につきまして、今、松委員御指摘のいわゆる和解、和解というときには何らかの和解金が支払われたのではないかということになりますと、これはそのWTO違反が確定をしたのが二〇〇〇年の九月二十六日でございまして、これ以降に和解をした日本企業もある、これゴス社との関係でもあるわけでございます。
 東京機械だけが頑張っていたということでございますから、じゃ頑張らなかったところは、違反であるにもかかわらず結果的に払ったということは、確かに幾ら、払ったかどうか私ちょっと詳しいことは、間違ってたら事務的に答弁訂正させますけれども、それはお気の毒と言えばお気の毒かもしれませんけれども、現に東京機械は、いやこれはおかしいんだから最後まで闘うんだということで闘っているからこそ、こういう法律によって救済をされていたわけでございますので、闘うのもなかなかこれはまた大変なことだろうと思いますので、単にその払わなくてもいいものを払ったということであればお気の毒ということになるわけでございますけれども、そこはそのときのそれぞれの企業の判断であったと。まあ、大変冷たい言い方だなと思われるかもしれませんけれども、そういうことになるというふうに言わざるを得ないわけでございますが、何か事務的には答弁ありますか。
#59
○政府参考人(北村俊昭君) 大臣のお答えのとおりでありまして、東京機械は、WTO違反かつ極めて理不尽な裁判であったという認識の下で堂々と裁判で闘っているというふうに認識をいたしております。
#60
○松あきら君 闘うのも大変であると、そしてまた東京機械が今回ある程度損害回復できたとしても四十億円すべてではないかもしれない。いろんなことを考えると、その時点では致し方がなかったということであるのかなというふうに理解をした次第でございます。
 本法律案におきましては、一九一六法に基づいて外国裁判所が行った確定判決の効力を日本において否定する旨の規定が第六条に盛り込まれておりまして、外国の判決を否定する旨の立法例はこれまでなかったというふうに思います。
 このように非常に画期的な法律であるわけでございますけれども、他方、先ほども出ました民事訴訟法第百十八条では外国裁判所の確定判決の効力について規定をしております。今回の損害回復法で外国裁判所の執行否認条項がなくても日本の裁判所でゴス判決が有効に執行されることはあり得ないというふうに考えられるんですけれども、この法案はこれを確認したことに意義があるというのでありましょうか。
 そこで、民事訴訟法と今般の損害回復法との関係についてどのように整理をされているのか伺って、質問を終わらせていただきます。
#61
○政府参考人(小川恒弘君) お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、民事訴訟法百十八条には外国裁判所の判決の効力に関する一般的な規定がございまして、例えば我が国の公序良俗に反するような判決は、その効力が否定されることになっております。しかしながら、今回の損害回復法に一九一六年法に基づいた外国裁判所の判決の効力に関する規定を設けなければ、その判決の承認、執行を求められました我が国の裁判所が必ずその承認、執行を否定するという確証がないところでございます。
 我が国の裁判所といたしましては、一九一六年法に基づく外国裁判所の判決が我が国の公序良俗に反するかどうかを一から判断をするため、場合によってはその結果、損害回復法に特別な、仮に特別な規定がなければ、その承認、執行を否定するほどのことはないという判断に達する可能性もあるわけでございます。
 したがいまして、民事訴訟法第百十八条の規定にかかわらず、損害回復法において承認、執行を否定する規定を設けることとした次第でございます。
 以上でございます。
#62
○松あきら君 ありがとうございました。
 実は、チリのサンティアゴにおけるAPECの会議で中川大臣のいろいろな御活躍伝わっておりますので、お話を伺いたかったんですけれども、この後で御説明、御報告をしてくださるということですので、これで質問終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#63
○鈴木陽悦君 まず、大臣、御苦労さまでございました。持ち時間、短うございますので、早速質問に入らさしていただきたいと思います。
 米国の一九一六アンチダンピング法案、廃案の運びとなりました。私は、前世紀、前の世紀です、第一次大戦中に国の企業を保護するために作られた法律が効力を持ち続けて、既に提訴された事件で有効であることに驚きを禁じ得ません。
 一九一六年といいますと、アメリカ合衆国はもうすぐ禁酒法を迎えようとしている、そういう混乱した時代でございます。世の中が混乱している中、世界じゅうが国力を競い合っている中で作られたものを、今正に国際協調の時代におきまして慌てて救済措置的な法律を定めようとしております。私は、この悪法をこれまでほうっておいたことにむしろ問題があるのではないかと考えます。言うなれば、重病の患者にばんそうこうを張るようなものでありまして、根本的な治療にはならない、むしろ回復を遅らせることになりはしないかという懸念を持っております。
 そこで、質問をさしていただきます。
 今回の一九一六年の法律に限らず、アンチダンピング法に対する利益返還を求める対抗法案が必要ではないかと思うんですけれども、その際、WTOルールに違反する法令に基づいて受ける利益は、民法七百三条の不当利得に該当するということを明らかにすることによって法制化は可能と考えるんですが、この辺についてのお考え、いかがでしょうか。
#64
○副大臣(保坂三蔵君) お答えいたします。
 ただいままで皆様方からお話がございましたように、一九一六法、一九一六年法はWTOが協定違反である、これを確定したにもかかわりませず、アメリカがこの期限内に履行をしなかったわけで、廃止をしなかった。この間に巧みに我が国の企業が損害賠償を命ずる判決が出されてしまった。こういう一連の経緯があるわけでございますが、お話のとおり、WTOのルール違反に、反する状況と考えておりまして、それは民法七〇三、七百三条の準拠すると、こういうふうな思料をいたしまして法案が作成されたわけでございます。憲法二十九条の問題等いろいろすき間を縫いまして、今般の法律提案、法案の提案となったところは私は極めて意義が高いと思っております。
 この意義の中には、単に企業の救済だけではなくて、その効力を認めないという、WTOの違反の法律に対してその効力を認めないという、そういう動きに対して毅然として日本政府が態度を表明し得たというようなところも大きな意味を持つんではないか、このように思っております。
 以上でございます。
#65
○鈴木陽悦君 ありがとうございました。
 七〇三、そして一一八と、いろいろと法律に関しては議論が時間の中でできない部分がありますので、次の質問に移らせていただきます。
 外国の判決を否定して対抗することのできる法令は前例がないということなんですが、本法案が日本のエゴ、そして保護主義と取られることがないかどうか、今回の措置で新たな貿易摩擦が発生するなど国際問題が生じることがないかどうか、また、不公正な国であるとのそしりを受けることになれば結果として国益を損なうことになるのではないかという懸念があります。
 そこで、このたびの法案なんですが、慎重の上にも慎重に検討されたとは思いますが、立法作業に関しまして、憲法、民法などの観点から必要欠くべからざる要件は何か、あわせて、今後、類似の法案の立法の際の方針についても伺いたいと思います。
#66
○政府参考人(小川恒弘君) お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、この法律は我が国の憲法や民法などの整合性という観点から立法作業を進めてまいりました。その際に大きな前提となりましたのは、御答弁にもございましたとおり、一つには一九一六年法自体のWTO協定違反、それから米国のその協定の不履行、それから実際に我が国企業に対する損害賠償判決といったような三点の事情が我々の立法作業を進めた前提でございます。
 加えて、私どもといたしましては、これらの前提に加えまして、この法律が真に我が国の企業の救済に実効的なものであるかどうか、それから我が国の法律自体がWTO協定と整合的なものであるか等を考慮した上、今回の法案の提出になった次第でございます。
 したがいまして、今後の立法の際の方針をここで整理をしてつまびらかにするのはなかなか難しいところもございますけれども、例えば、今後もWTO協定違反、それから相手国のその協定違反に対する不履行の問題、それから我が国企業の損害が実際にあるといったような場合には、その立法が我が国の企業に実効的なものであるかどうかといった観点を十分に慎重に吟味した上で、今後とも同種の立法を検討していきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
#67
○鈴木陽悦君 先ほど保坂副大臣からも強い意思表示をいただきましたけれども、私は、強い日本の実現の第一歩は国際政治の舞台で態度をはっきりさせることだと考えております。
 本法案成立で重要なことは、本法案を通じて世界に日本政府が保護主義的な対抗法案を、対抗法案を立法したのではなくて、百年前の古い保護主義に別れを告げる法律を定めて、二十一世紀にふさわしい本当の意味で国際化、自由主義のルールを確立するための法整備を実現するために行動したことを理解させることではないかと考えます。
 私は、今回の法案が、日本が世界貿易のルールを守れと強い姿勢を示したと受け取っておりまして、意義のあることと理解いたします。
 最後に中川大臣の所見、伺いたいんですが。
#68
○国務大臣(中川昭一君) アメリカも日本もWTOに加盟している中で共通のルールというものがおのずからあるわけでございますけれども、一九一六年といえば、いわゆるガット体制ができるもう三十年も前の話でございまして、その法律がいまだに残っている。アメリカというのは、ガット・WTO体制以前の法律というものを割と今でも残している部分が幾つかございまして、グランドファーザー条項とかいうんだそうですけれども、それは作る前のものは、必要なものはまだ残しているんだという権利を持っているわけでございますが、いずれにしても、この法律は現在の日本やEU等の努力、努力というか作業によりましてWTOの場で議論され、そして違反であるということが確定をしたわけでございます。
 そういう意味で、これは何もこれによって日本が保護主義に行くのではなくて、極端な保護主義的な一世紀近くも前の法律に対する損害回復法であり、そしてまた我々の動きがアメリカのWTO違反の保護主義的な法律を、ブッシュ大統領が言っております自由貿易体制への推進に議会を向かわせたという意味があるというふうに思っております。
 貿易立国である日本としては、今後ともきちっとしたルールを構築し、そのルールの下で最大限の貿易効果が果たせるように引き続き努力していきたいというふうに思っております。
#69
○鈴木陽悦君 終わります。
#70
○委員長(佐藤昭郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 本案の修正について加納時男君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。加納時男君。
#71
○加納時男君 私は、ただいま議題となっておりますアメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案に対し、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。
 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
 これより、その趣旨について御説明申し上げます。
 本修正案は、去る十九日、米国連邦議会上院において、アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法の廃止条項を含む法案が承認、成立したことに伴い提出するもので、修正の概要は、本法の施行期日を、「公布の日から施行する」ことに改めるとともに、同法が失効する日について、「この法律の施行の日から起算して六月を経過した日に、その効力を失う」ことに改めるものであります。
 以上が、修正案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
#72
○委員長(佐藤昭郎君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これよりアメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案について採決に入ります。
 まず、加納君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#73
○委員長(佐藤昭郎君) 全会一致と認めます。よって、加納君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#74
○委員長(佐藤昭郎君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#75
○委員長(佐藤昭郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#76
○委員長(佐藤昭郎君) 経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査を議題といたします。
 APEC閣僚会合に関する件について、政府から報告を聴取いたします。中川経済産業大臣。
#77
○国務大臣(中川昭一君) 私は、十一月十七日から十九日までチリ・サンティアゴを訪問し、第十六回APEC閣僚会合に出席するとともに、各国・地域の閣僚との会談を行いました。
 その概要について御報告申し上げます。
 初めに、APEC閣僚会合の結果について御報告いたします。
 同会合には、APECに加盟するアジア太平洋地域の二十一か国・地域の閣僚等が参集いたしました。
 まず、経済面では、WTO新ラウンドの推進、APEC域内のFTA、知的財産権の保護強化等について建設的な議論が行われました。とりわけ、APEC域内での今後のFTA交渉の際の重要な参考となる諸原則に合意いたしました。
 また、地域の安全保障のための取組については、我が国の提案を基礎としたエネルギー安全保障の向上や輸出管理の整備強化に取り組んでいくための指針がまとまりました。
 以下、会合の具体的な内容について説明いたします。
 まず、WTO新ラウンドにつきましては、今後の進め方について意見交換を行い、来年のWTO香港閣僚会議までの短い時間を無駄にせずに交渉を進めることへの決意が確認されました。
 私からは、来年のWTO香港閣僚会議に向けてAPECが一つになって取り組むべきこと、残された時間は短く、OECD閣僚理事会、APEC貿易担当大臣会合などを節目として、交渉を積極的に進めるべきことを申し上げました。
 次に、FTAに関してでありますが、本件に積極的に取り組む議長国チリの主導により、APEC域内でのFTA交渉の際の重要な参考となる諸原則をまとめたAPEC・FTAベストプラクティスが採択されました。
 知的財産権問題につきましては、効果的な知的財産権の保護や執行の強化に向け、APEC域内での協力により、海賊版や模倣品対策のための行動を取るべきことが確認されました。
 輸出管理に関しては、APEC地域全体として輸出管理体制の整備及び強化に取り組むために我が国が米国と共同で提案した指針が、APEC輸出管理ベストプラクティスとしてまとまりました。
 エネルギー安全保障に関しては、最近の油価高騰がAPEC域内経済に与える影響について留意しつつ、我が国提案を基礎とした包括的エネルギー対策がケアンズ・イニシアティブとして採択されました。本提案は、APEC地域のエネルギー安全保障を一層向上させるものとして高く評価されました。
 次に、各国・地域の閣僚との会談について主なものを御報告いたします。
 フィリピンのプリシマ貿易産業省長官とは、日・フィリピンEPAに関し、二度にわたって交渉を行いました。特に、交渉が難航していた鉄鋼を含む鉱工業品関税の撤廃について大筋で合意いたしました。さらに、今月二十九、三十日に開催されるASEANプラス3首脳会合の際に、日・フィリピン首脳レベルでのEPA全体の大筋合意ができるよう、今後、事務レベルで詰めの作業を精力的に行うことで一致いたしました。
 ゼーリック米国通商代表とは、WTO新ラウンド交渉を中心として意見交換を行い、来年十二月の香港WTO閣僚会議までの短い時間で十分な成果を得られるよう、日米が連携してWTO新ラウンド交渉を主導していく努力を行っていくことを確認いたしました。
 チリのロドリゲス経済・エネルギー大臣との会談では、日・チリの経済関係を強化する必要性のほか、日・チリ間のFTAについて意見交換いたしました。なお、この後行われた小泉総理とラゴス大統領の首脳会談において、日・チリFTAの共同研究会の設置が合意されております。
 ロシアのグレフ経済発展貿易大臣とは、太平洋パイプラインの戦略的重要性について認識が一致いたしました。当方から、ルートはロシアが決定すべきものだが、日ロ両国相互に利益となる形で進めるために日本は協力する用意があると伝えました。また、WTO加盟問題について、自動車分野における進展を踏まえ、早期合意に向け意見の一致を見ました。
 このように、今回のサンティアゴ出張においては、APECを通じた多国間の協議と二国間の会談を通じて、貿易・投資問題やエネルギー、輸出管理といった安全保障に係る問題について有意義な進展が得られたものと考えております。今後も、あらゆる機会を利用して、我が国の国益を念頭に置きながら、通商政策に取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。
#78
○委員長(佐藤昭郎君) 以上で報告の聴取は終わりました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト