くにさくロゴ
2004/11/09 第161回国会 参議院 参議院会議録情報 第161回国会 法務委員会 第5号
姉妹サイト
 
2004/11/09 第161回国会 参議院

参議院会議録情報 第161回国会 法務委員会 第5号

#1
第161回国会 法務委員会 第5号
平成十六年十一月九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月九日
    辞任         補欠選任
     尾辻 秀久君     秋元  司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                秋元  司君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務省民事局長  房村 精一君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授
       同大学院法務研
       究科教授     池田 眞朗君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会副会長     清水 規廣君
       日本商工会議所
       金融問題小委員
       会委員・経済法
       規小委員会委員  石井 卓爾君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○民法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
 する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学法学部教授・同大学院法務研究科教授池田眞朗君、弁護士・日本弁護士連合会副会長清水規廣君及び日本商工会議所金融問題小委員会委員・経済法規小委員会委員石井卓爾君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、本委員会における今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、池田参考人、清水参考人、石井参考人の順に、お一人二十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、池田参考人からお願いいたします。池田参考人。
#3
○参考人(池田眞朗君) 慶應義塾大学で法学部と法科大学院の教授をしております池田眞朗でございます。
 専攻は民法でございますが、法科大学院では金融法を担当しております。私は、一九九八年の債権譲渡特例法制定の際にもこの参議院法務委員会で参考人意見陳述をさせていただきました。
 それでは、早速、本日の意見陳述に入ります。どうぞよろしくお願いいたします。
 審議事項は多岐にわたりますので、個々の諸規定の詳細については御質問のあった際に分かる範囲でお答えするといたしまして、法案提出の経緯を含め、学者としての今回の二法律案の評価を中心に意見を申し述べます。
 まず第一点、民法の一部を改正する法律案についてでありますが、この中には、御案内のように、民法の前三編のいわゆる財産法の部分を全部現代語化する法案と、個人の包括根保証について制限をする、具体的には、民法四百六十六条に二項と三項を追加し、四百六十五条の二から四百六十五条の五までを追加する、個人の根保証について制限をする法案が含まれております。
 まず、恐らく御異論の少ないと思われる民法現代語化の方からお話をいたします。
 これは既に平成三年から、法務省民事局の依頼を受けまして、星野英一東京大学名誉教授を座長に、私ども七、八名の学者が民法現代語化研究会というものを組織して検討してまいりました。平成八年には研究会案が民事局長に提出されております。しかしながら、何分、民事の基本法典で大部のものでありますから、その後、法務省内でも慎重に準備をされて、今日提出に至ったということと伺っております。
 財産法部分は明治三十一年施行のもので、部分的に改正は入っておりますけれども、片仮名、文語体の文章で、近年は用いられなくなりました用語がありましたり、学生を含めて一般市民にも読みにくくなってきているということがございまして、まずは、今回の現代語化は喫緊の課題が一つ実現するということになろうかと存じます。
 もちろん、民法というのは全私法分野の様々な特別法の解釈にもかかわる基本法でありますので、軽率な口語化によって解釈に変更を来すことがあってはならないということで、研究会案の段階から、まずは内容の変更を来さない忠実な現代語化を心掛けました。とはいっても、施行後百年を超えている法典でありますから、判例、通説が条文と異なる取扱いをしている点などは最低限修正する必要がございます。
 そのような配慮から、法務省側で検討を加えた案を公表して研究者その他各界の意見を徴しまして、その結果、補正点を更に絞って提案されたのがこの法案でございます。最終的に、保証の部分を除きますと、確立された判例、通説との整合を図るための改正点とされた箇所については、この法務委員会調査室資料百三十二ページをごらんください。
 なお、民法典の場合は、基本的な条文は、例えば不法行為の七百九条、公序良俗違反の九十条等、条文番号を言うだけで法律専門家以外の国民でもある程度知識のある条文がございますので、今回はこういう条文番号についても、一部枝番の整理で動いたところはわずかにございます以外は、現状の条文番号を極力そのままに維持いたしました。
 したがいまして、私としましては、今回の民法現代語化案は長時間を掛けて衆知を集めた作品となったと理解しております。国民生活に生かされる民法典となることを期待しておりますので、どうか御可決いただけますようお願い申し上げます。
 次に、個人の包括根保証の制限であります。個人の根保証の制限であります。
 これにつきましては、既に社会問題としてマスコミに取り上げられることも多かったところでございます。本法案では、まず、保証契約全般の適正化のために書面を要求する要式契約といたしました。ただ、これは特段の必要的記載事項を要求したりしてはおりませんで、保証意思が書面に表されていれば十分という考え方であります。
 そして、制限の対象は、専ら貸金、つまり融資取引に関する個人の根保証契約に限定いたしました。中でも、特に極度額に制限のない貸金等の根保証については無効といたしております。また、保証期間を合理的な範囲に制限する趣旨から、保証人は元本確定期日までの間に行われた融資に限って責任を負うということにいたしまして、この期日を、契約で定めた場合には五年以内、定めなかった場合には三年で元本確定期日となると定めております。
 保証契約自体は、御案内のように、現在の金融担保の中で非常に汎用されている重要なものでありますから、一概に保証人の責任を制限することは金融の円滑化を阻害いたしますので、このような対象範囲の限定を設けて、専ら個人が保証の判こをつくことによって過大な負担を負うことを避けようという点にねらいを絞ったものであります。
 私は、この法案の絞りの掛け方は適切であると思います。一部の金融機関の方々からは、これでも金融を阻害するという御意見もあるやに聞いておりますが、私はそうは思いません。と申しますのも、私は一方で経済産業省の産業構造審議会の産業金融部会の委員をしておりますが、そちらでも、従来の物的・人的担保に過度に依存した金融の構造を是正して、資金調達の多様化を図るべきという議論が強くなされております。安易な人的担保の徴求によって資金調達を図るのではなく、多様な資金調達の道筋を開拓するということが金融機関にとってもリスクの分散になり、融資を受ける企業にとってもその体質を強化することになるのであります。
 この点は、正にもう一つの法案である債権譲渡特例法の改正法律案の法務委員会調査室参考資料の三ページが非常に分かりやすい図を作っておりますので、これをごらんいただけますと幸いでございます。今回の二つの法案が正に企業の資金調達の多様化、適正化に資するものであることがお分かりいただけると思います。
 そこで次に、債権譲渡特例法改正法律案の方に移ります。
 前提としてデータを申し上げますと、平成十四年度で我が国全企業の保有資産は土地百六十六兆円に対し、売り掛け債権が百六十九兆円、棚卸資産が百兆円。中小企業でいうとそれぞれが八十一兆円、六十二兆円、四十四兆円ということでございまして、売り掛け債権は土地にほぼ匹敵する額、棚卸資産も土地の半額を超える額がございます。
 それなのに、売り掛け債権の流動化比率は、これは二〇〇〇年、日本では一九九九年のデータですが、アメリカ合衆国では売り掛け債権の流動化比率一三%であるのに対し、我が国では一%となっておりました。動産担保は、制度がございませんでしたので、もっとその差が大きいのではないかと思います。公示制度がございませんでしたので、もっとその差が大きいのではないかと思います。要するに、我が国では、売り掛け債権、棚卸し動産、こういうものを資金調達のために活用できていなかったわけであります。
 殊に動産でいえば、日本では、動産を活用して資金調達をしようとしても、動産の譲渡を第三者に公示する制度が不十分であるために担保として不安定で、担保価値、いわゆる掛け目が高く取れない。で、売り掛け債権の方はといいますと、これは九八年に債権譲渡特例法の登記制度を作って大変進展を見たのでありますが、まだ第三者、債務者不特定の将来債権の譲渡は登記できない等の制約があると。そういうところを改善しようとするのがこの法案でございます。
 まず、動産の方から参ります。
 御案内のように、今回のこの法案は債権譲渡特例法の改正の形態を取っておりますが、この動産譲渡に登記制度を創設するというのが大きな眼目になっております。
 私は先月、国連国際商取引法委員会のアメリカ代表の方と、これは私が日本代表をしておりましたときに一緒だった方ですが、大学でセミナーをやりましてこの法案を紹介いたしました。アメリカ合衆国は御承知のようにUCC、統一商事法典で広くファイリングシステムという貸付証書の登録制度を持ってやっておりまして、日本でも債権に続いて動産にも登記制度ができるということで、まずは第一歩でおめでとうと言ってもらいました。
 今回の規定は、集合動産に限らず単一の大きな動産の場合にも適用できます。また、担保目的とか流動化目的とかの制限を付けておりません。これは、実際の契約では目的の識別が難しいということもありますので、広く使われるためには結構なことと思っております。
 それから、この登記は民法百七十八条の引渡しと同等の対抗要件にしてございます。これは、債権譲渡登記が民法四百六十七条二項の確定日付ある通知と同等のものとして作られたのと同様であります。結果的にはこれで理解しやすい、予測可能性の高い法制度となると思われますので、新たに動産を担保にして、あるいは売却して資金を得る場合には、融資者たる譲受人はこの登記によってしっかり権利を確保して、適正でフェアな取引秩序ができていくのではないかと期待をしております。
 ただ、動産の方では、これは日本では条文に規定があるわけではないのですが、判例、通説が占有改定という、外見からは何の変化もない引渡形態をも動産譲渡の対抗要件として認めております。したがって、今回の立法に当たっては、先行する占有改定をしのぐ強さの対抗要件とすることも検討されましたけれども、対抗要件というものは法定の一定の手続を経れば他者に対して自己の取得した権利を対抗できるという、画一的で予測可能な処理ができるところに最大の利点がございます。複数の対抗要件に優劣関係を付けるということになりますと、優劣決定基準が錯綜して混乱を招くわけであります。したがって、複数の対抗要件を置くときには、効果を同等にして具備時の先後で優劣を決めるということになるわけです。これは、債権譲渡特例法の方でも同じであります。そういう意味で、この今回の動産譲渡登記の強さは適正であると思います。で、この効果が強過ぎないということは、乱用のおそれが少ないということでもあるわけであります。
 債権の方では、債務者不特定の将来債権譲渡を登記の対象としたことが大きな改良点であります。これは、私が九八年の特例法制定時に国連の国際商取引法委員会の議場で紹介をして、この我が国の新法であるということで英文の法文を配付しましたときに、先ほど御紹介したアメリカ代表からすぐに、どうして第三債務者名を書かなければいけないのだと聞かれた点でございまして、例えば、まだ借り手の決まっていないビルの賃料債権を流動化するとか、クレジット会社が将来の、これから新たに顧客となる者に対するクレジット料債権を担保に融資を受ける等の場合に、この制度が使えないという不便があったわけでございます。したがって、今回の改正によって、これらの場合も債権譲渡登記ができるようになりますので、活用場面が国際水準に広がると申し上げてよろしいかと思います。
 また、将来債権についての登記の場合には、これまで譲渡総額を見積額で書かせていたのですが、毎月発生し回収されていくような債権を一定期間担保に取ったような場合、残額は毎月大した額ではなくても発生ごとの累積額を登記いたしますとこれは莫大な額になりまして、これによって信用不安を惹起するということがございました。今回は、将来債権の譲渡ないし将来債権を含む譲渡の場合、この債権総額も書かなくてよくなりました、よくなるというふうにしたようでございます。
 もちろん、将来債権で債務者の名前も額も決まらなくて特定できるのかという御懸念もあるかと思いますが、これは、発生の始まりと終わりの時期とか債権の種類等、法務省令に定めるものから特定可能と考えられます。ちなみに、この将来債権の実体法上の特定性は、他の債権から識別可能ならばよいというのが既に示されている最高裁判所の判例の態度でございます。
 さらに、債権譲渡特例法が九八年にできたときに当初弊害と言われましたのが、登記の概要がそのまま商業登記簿にスライドして記載されるというところでございました。つまり、だれでも見られるその情報を見て、こんなに債権譲渡をしているというのはこの会社は危ないのではないかという譲渡し人企業の信用不安、風評被害を惹起したということでございます。
 これは、かつて昭和五十年代ぐらいまでは、債権譲渡というのは、経営状態の危うくなった企業が債権者からの弁済請求に苦し紛れに同一債権を譲渡するというケースが確かに多かったからでありますが、今日では、債権譲渡は資金調達のために企業の正常業務の中で行う金融取引に変貌しております。このところを世間の皆様によく認識していただきたいのですが、それでも六年前には風評被害が実際に若干起こったわけであります。
 そこで今回は、債権譲渡登記の方も動産登記の方も、商業登記簿に概要情報をスライドさせることをやめまして、別に登記事項概要ファイルというものを作りまして、だれでもそこに含まれる一番簡単な概要情報については知ることができるという形にしたわけでございます。
 ただ、こうして新たな動産登記制度を作ったり、将来債権の登記を広げたりといたしますと、新たな資金調達ルートが開拓されるのは結構だけれども、例えばある会社の品物も売り掛け債権も長い間の分が全部他人の手に渡ってしまうのではないかという疑問も起こるかと思います。殊に、従業員の方々の労働債権の問題があるわけです。
 ただ、この点も本法案はいろいろ考えております。まず、動産、債権ともに全部の詳細情報を開示される者、いわゆる登記事項証明書の交付を請求できる者というのは限定されているわけでありますが、今回はここに譲渡し人の使用人を含め、これは十一条二項四号ですけれども、労働者が登記の状態を確認できるようにいたしました。それから、動産登記と債務者不特定の将来債権譲渡登記の存続期間を原則最高十年に限定いたしましたのも、長期間にわたる一括担保等を防ぐ副次的な効果があるだろうと思います。ちなみに、一般の債務者特定の債権譲渡登記は、従来から、住宅ローンのことを考えまして、最長五十年としてございます。また、登記の仕方は、具体的には法務省令で定められることになると思いますが、動産でいえば型式や製造番号で特定したり、保管場所で特定したりということになると思われますので、この会社の製品全部というようなことには実際にはまずならないと言うべきだろうと思います。
 それから、破産のときに不利になるという御意見もおありかと思いますが、是非お考えいただきたいのは、特に中小企業にとって大事なのは、いかに資金が回るかということだということでございます。つぶれたときの話の前に、どうしたらつぶれないようにできるかを考える方が先であると私は思います。
 例えば、売り掛け債権担保融資というのは、銀行から調達する間接金融ではありますが、中小企業が自己の信用力で借りるのではなく、売り掛け債権の債務者、つまり売り掛け先の信用力で融資を受けられるものであります。不動産は既に何重にも担保に入れてしまい、保証人になってくれる人もなくて、銀行はもうどこも貸してくれないということになると、これまでは中小企業は運転資金がなくて倒産してしまうというケースが多かったのであります。しかしながら、いい製品を作りしっかりした納入先を持っている中小企業は、売り掛け債権を担保に融資が受けられるならば商売が回るわけであります。つぶれないで済むんです。つぶれたときの不安もごもっともですけれども、つぶれる前の倒産を回避できる資金調達を是非重視していただきたいと思います。動産担保の方も、まず今回の登記制度で取引慣行ができれば実務の担保評価技術も進んでいくことと思います。
 ただ、そうはいっても、労働者の方々の生活を守ることには十分注意を払うべきでありますので、私は企業が合理的な行動を取れば乱用事例は起こらないとは思っておりますが、今後の運用の状況を観察いたしまして、必要があれば別途何らかの対応手段を講じるという姿勢を作っておくことは必要であろうと思っております。
 以上、駆け足で意見を申し述べました。現代は法律や制度を作って経済の活性化をするという時代になっております。言わば、法律が経済政策のお手伝いをするという時代でございます。本法案は資金調達の多様化に、ひいては企業活動の円滑化に必ず役立つものと信じて、御可決をいただけますようお願い申し上げる次第でございます。
 以上、終わります。
 ありがとうございました。
#4
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、清水参考人にお願いいたします。清水参考人。
#5
○参考人(清水規廣君) 日本弁護士連合会副会長の清水規廣でございます。
 本日は、私が意見を申し上げますのは、時間の関係もございますので、第一に民法の一部を改正する法律案の中の保証制度の見直しに関する部分、第二にもう一つの法案であります債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 では、第一の保証制度の見直しでありますが、個人の保証人が保証債務を負い、そこから経済的に破綻をすることが多発しております。このことは客観的な資料からも明らかでありまして、日本弁護士連合会は、最高裁判所の御協力を得まして、平成九年、十二年、十四年と三回にわたりまして全国の地方裁判所において破産記録全国調査を実施しております。
 この結果によりますと、破産者が多重債務を負担するに至った理由のうち、保証債務だとかあるいは第三者の債務の肩代わりという、そういう理由の占める割合は、三回ですから、約二四から二七%にもなっておりました。極めて高い数値を示しております。また、平成十四年に併せて個人再生事件の全国調査を行っておりますけれども、そこでも個人再生手続を開始した再生債務者の破綻理由を尋ねましたところ、一八・六%が保証債務であるとか第三者の債務の肩代わりであるとされておりました。
 このように経済的に破綻した方の中で保証債務を負ったことが原因とされる場合がなぜこれほど多いのでしょうか。
 保証人はいわゆる人的担保として我が国においては広く普及しております。しかし、その実態に着目してみますと、保証人と保証される人、つまり被保証人との親族関係その他の情実的関係を動機として保証契約が結ばれる場合が多いわけです。さらに、保証契約においては、保証人が現実に履行を余儀なくされるような事態に立ち入るか否かは必ずしも保証人としては保証時には確定的ではありません。このため保証人は、自分は何らの負担も負わないで済むものと軽信しまして軽率に保証を引き受けることが少なくありません。また、保証契約は原則として無償契約、ただであります。また、片務契約、一方的な契約であります。保証人は保証を引き受けるについて対価たる報酬をだれからも取得していないというのが普通です。他人すなわち被保証人のために債務を負担するという特殊性を持っているものであります。
 保証契約をしたことを契機に債務を負担し、経済的に破綻する中でも、特に根保証契約を結んだ保証人の場合には予想を超える過大な責任を追及されるということになります。
 根保証には、保証期間と保証限度額の定めのない包括根保証と、それらについて定めのある限定根保証の二種類がありますが、また、保証人となる主体について、主たる債務者が法人の場合にその経営者が保証人となる場合、経営者保証と申しますが、それと、それ以外の全くの第三者が保証人となる場合、第三者保証と呼びますけれども、この二種類がございます。
 では、根保証契約を締結したことによりどのような被害が発生するのでしょうか。
 中小企業においては、銀行等の金融機関から融資を受ける際に、会社経営者は一般的に包括根保証をする場合が多いのであります。その経営する会社が倒産したときは、根保証人たる経営者は生活基盤を失い、破産に追い込まれ、保証債務履行を回避する余り法的整理の申立てが遅れ、再建の機会を失う結果となります。
 商工ローン業者のほとんどは、融資をするに際して経営者から包括根保証を取ります。第三者からは限定根保証を取っています。その際、第三者に対して根保証について十分な説明をせず、主たる債務者が倒産し、保証人に対して保証債務の履行請求がなされた場合に、保証人は初めて、自分の行った契約が通常の保証じゃなくて限定保証契約であったということを初めて知ったという人が少なくありません。また、主たる債務者や経営者は第三者の保証人に迷惑を掛けまいとして破産手続を選択することもちゅうちょして、解決を逆に引き延ばして、保証人にとってはより一層債務が増大するということにもなってまいります。商工ローンからの借入れに起因する夜逃げ、自殺、倒産が多数発生し、社会問題となったことは記憶に新しいところであります。
 今回の保証制度見直しに関する民法の改正案を拝見して、評価すべき点と更に改正が必要な点について指摘させていただきます。
 まず第一点として、本法案は、保証契約は要式契約であるとして、書面でしなければ効力を生じないものとしていることは評価されます。しかし、一歩進めて、根保証人に対しては根保証契約書が交付されなければ効力は生じないものとすべきであるというふうに考えております。根保証人が自分の負担する債務の内容がどのようなものであるかを明確に知るためには、根保証契約書の交付を受けて手元においてじっくりと検討することが必要であります。
 今回の法案は、保証の要式化と包括根保証の見直しに限定されましたけれども、特に消費者金融や消費者取引に伴う保証被害がこれでなくなるものではありませんので、なおも検討をお願いしたいと思います。
 第二点として、法案は、貸し渡し金や手形割引について包括根保証を禁止し、限定根保証のみが許されているとしています。この点は、これまで包括根保証が非常に大きな責任を根保証人に課して、その結果、経済的再生の道を閉ざしてきたことを考えれば、誠に大きな前進であると考えます。しかし、平成十一年に社会問題となった商工ローン被害で明らかになりましたように、包括根保証を禁止して限定根保証になったとしても、今度は極度額を大きく設定して過剰な与信がなされれば、包括根保証の場合と同じような保証人被害が発生することには変わりありません。仮に、今回の法改正において、限定根保証についての規制を盛り込むことが時間的制約から困難であるとすれば、特に個人だとかあるいは個人と経済的実質の異ならない個人会社などがする根保証については、将来的な再検討、法改正の余地を残していただきたいと考える次第であります。
 また、今回の法改正において、国会での審議の中で御議論をいただき時間的に余裕があるのであれば、限定根保証であっても許されるのは経営者保証だけであって、特に個人や個人と経済的実質の異ならない個人会社による第三者保証は許されないというふうにすべきであると考えます。
 今回の改正では取り上げられない重要な点について更に申し上げます。
 個人の根保証人に対しては、一定の特別な事情がある場合には根保証契約からの離脱をすることが可能な方策を設けるべきであると考えます。
 すなわち、根保証契約による保証期間中であっても、主たる債務者と根保証人との関係とか、あるいは債権者と主たる債務者との関係、あるいは主たる債務者の資産状況のいずれかに著しい事情の変更があった場合など一定の特別な事情がある場合には、根保証人は保証すべき債権の元本の確定を請求することができるということにして、根保証契約から離脱することができるようなシステムを考えるべきではないかと思います。
 例えば、会社の取締役であった人がそのために根保証人になったという方がおりますけれども、そういう方が会社を退社した場合には元本確定を請求できることとして、退社以降に発生する債務については負担しないものとする制度を設けるべきではないでしょうか。
 さらにもう一点、通知義務についても規定を設けるべきです。
 根保証人に限らず、保証人というのは、保証をした後は融資の状況やどのように履行されているかという状況について債権者や主たる債務者から何の連絡もありません。主たる債務の変動、不履行の有無について十分な情報を有しない事例が多数あります。ある日突然に保証人の責任を追及されることが多いのであります。残高、履行状況等の情報が債権者から入れば、保証人からも主たる債務者に対して業況の改善や優先的にこの債務について弁済しなさいということを求めることができます。せめて、債権者に対して主たる債務者が遅滞となった場合など一定の事由が発生したことについて個人の保証人に通知をなすべきである、そういう制度を考えるべきだと考えます。
 次に、第二の法案について申し上げます。
 動産譲渡担保の公示制度につきましては、弁護士会の中で賛否両論あるところであります。
 賛成論は、従来実務で行われてきました動産の譲渡担保は占有改定の方法を取るため、外部から分からない、占有改定の公示力はないに等しいため不安のある担保であったので、公示制度を整備し、動産譲渡担保をより利用しやすく、かつ安定、実効性を高めたものにすることによって、資金調達・資金供給手法が多様な発展を遂げていくことが期待されるから、登記という公示方法を設けることに一定の評価をすることができるというものであります。
 しかし、賛成論ももろ手を挙げて賛成するというのは少なく、反対論の論拠であります動産の特定方法によっては企業のすべての動産が債権の担保となる事態が生ずる可能性があるとか、あるいは新たな与信や貸付けを生じさせることなく既存債務の補強や事業者が過剰担保を強いられる場面で使われる危険があるとか、企業の労働者や納品業者らが引き当てとなる財産がなくなることなどへの何らかの手当てを条件に賛成している者も多いのであります。
 賛成論と反対論が分かれるところは、企業への資金調達・資金供給手法に多くのメニューがあった方が良いとするか、法的安定性を求めるかの問題であると思われます。
 ただ、私から制度導入後の疑問点を一つ申し上げますと、本法案によりましても動産担保の法的不安定性は、登記しても即時取得を妨げないという例にもありますように、避けられません。これは、不動産と異なりまして正に動産でありまして、簡単に動いて転々流通されるという動産の性格からくるもので、即時取得され、他人のものでも登記できてしまいます。
 次いで、債権譲渡に係る債務者、つまり第三債務者不特定の将来債権の譲渡の登記制度について申し上げます。
 この問題につきましても、弁護士会内に賛否両論があります。意見の分かれる原因はおおむね動産譲渡担保の公示制度についてと同じと思われます。ただ、債務者が不特定の将来の債権で金額も明示しないというこのような権利について、権利の内容が不確定であるのに公示制度だけ作ろうとしているんではないかということで反対論の方が若干多いように見受けられます。
 私なりに気付いた疑問点を申し上げますと、既存の債権譲渡につきましては、第三債務者の名前や住所、それから債権の総額が必要的登記事項とされております。その理由は債権の特定に必要であるからとされているのでありますけれども、将来の債権についてはこれらはなくてもほかのもので特定可能で有効とされておりますけれども、第三債務者の名前や金額が特定できる段階できちんと特定の登記をしておかないと、譲渡された債権であったのかをめぐって債務者とトラブルになったり、債権が二重に譲渡されるときにトラブルが出ないか懸念があります。
 最後に、動産と債権譲渡との両方に関連したことについて二点申し上げます。
 債権譲渡登記の創設と債務者不特定の将来債権の譲渡の登記制度とは表裏一体であると考えます。集合動産の譲渡は将来の売り掛け債権に変じるから問題点が共通するんであります。
 では、第一点ですが、動産担保にしても将来の債権担保にしましても、その法的回収方法の難しさであります。法的回収に入ったときのこと、つまり融資等を受けた債務者が債務不履行になったときのことを想定して、原材料や在庫などの集合物担保については、正に倉庫などに出たり入ったりの動産をあるときに突然に把握できませんので、両者の関係がうまくいっているときから棚卸しの明細などを提出させて売り掛け先だとか買い掛け先の管理をする必要があります。将来の債権担保につきましても、日常の管理をしておかないと債権者自ら債権を回収することができません。この管理の内容がどの程度なのか、借主への会社の支配、借主に対する会社の支配を過度にしないでどう管理するのかの課題と、それから管理コストの問題がございます。この点から、金融機関の方に、新規の融資制度としてどの程度利用される制度であるのか、お尋ねいただきたいと思います。
 第二点としましては、本法案によるそれぞれの登記制度を採用して、反対論の懸念する問題、すなわちニーズがどれだけあるのかとか、過剰担保に取られないか、あるいは倒産時に悪用されないかとか、労働債権や納品業者の最後の手だてともいうべき先取特権の対象がなくなってしまうなどの事態が起こるのか起こらないのかは今後の金融実務慣行の形成にゆだねられているということであります。これらの事態を防止する手だては本法案には盛り込まれておりません。
 ニーズがあるかどうかでございますけれども、在庫品や将来債権の市場性、流通性があるかは商工団体関係者の方にお尋ねいただきたいと思います。集合物や将来債権の適正な評価ができなければ、つまり、例えば一億円で納品された在庫品又は債権額一億円になる将来債権に対して何割で買い取ってもらえるのか、何割融資してもらえるのか、現段階では分かりません。従来、高利金融業者は、商工業者に貸付けをするときに詳細を白紙とした売掛金の債権譲渡通知書を取りまして、高金利を支払い切れずに期限に遅れてまいりますと譲渡通知書に詳細を記入して取引先へ送付して売掛金を回収してまいりました。適正に評価されたとおりの資金調達をせずに過剰担保を取る高利業者の手口が今度は登記によって正当化されないように手だては必要であると思います。
 また、市場性がないと、倒産のどさくさに既存の債権を回収するために早い者勝ち式に押し掛けて、この登記制度を使って一網打尽式に倒産者の動産の、売掛金債権が移転されると、会社再建手続に支障となります。再建中の債権、再建計画策定中のファイナンスにこの制度が有用であるとの御意見もありますけれども、いわゆる乗っ取り屋が何がしかのお金を払って、倒産時には在庫がなくなっているという手段にも使われ、再建手続の法的支障となる可能性もあります。さらに、担保実行後の清算をどういうふうに行うのかという問題もあります。
 新破産法では、労働債権の一部を財団債権化としました。従来、労働債権は民法で先取特権があるのに、破産手続を行っても税金にばかり配当され、未払賃金や退職金には回らなかったという問題を、社会政策的に三か月分の給料などを確保しようとするものであります。この動きと本法案とがリンクしておりません。本法、本制度が悪用されたときの手だてはなされておりません。
 私の意見は以上であります。
 どうもありがとうございました。
#6
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、石井参考人にお願いいたします。石井参考人。
#7
○参考人(石井卓爾君) 日本商工会議所の金融問題小委員会及び経済法規小委会の委員を務めております石井でございます。
 日商は全国で五百二十四の商工会議所により組織されておりますが、私は東京商工会議所の議員及び中野支部会長を務めております。本業は電子部品の製造を営んでおります。
 本日は、このような発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。商工会議所は会員に多くの中小企業を抱えており、本日も中小企業の立場から意見を述べさせていただきます。
 また、なお、先般、破産法の審議に際しましても中小企業の立場から参考人として御説明申し上げましたが、改正法においては、破産した際、債務者の手元に残る自由財産を、商工会議所の主張をお酌み取りいただき、大幅に拡大していただきました。これも先生方の御尽力によるものと、この場をかりて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 中小企業の現状でございますけれども、大変日本経済、明るく兆しが見えてきてはおりますけれども、まだまだ大企業を中心に景気を引っ張っている状況であり、まだまだ中小企業や地域経済の末端まで波及するにはほど遠い状況でございます。中小企業を取り巻く環境は、一時よりは改善されてきておりますが、依然デフレも収まっておらず、真摯な経営努力のみでは解決できない問題も多く、引き続き厳しい状況が継続していると認識いたしております。そういう意味において、いろいろな法案でいろいろ、中小企業の経営改善努力、経営努力が報われるような活力のある経済体制になるよう、そういう面での、法律面でのサポートを是非期待いたしたいところでございます。
 まず、個人保証についてでございますが、これは大変、今度のデフレ不況に始まって、個人保証という問題について大変大きくクローズアップされ、果たしてこういう制度でいいんであろうかという問題が投げ掛けられてきて、非常に悲惨な中小企業の経営者が続出しているということは皆様御存じのとおりでございますが、それを契機にいたしまして、こういう個人保証についての改正と申しますか、新しい法案が、改正が提出されるということは、大変、我々商工会議所、中小企業の者にとりまして歓迎するところでございます。
 我が国の中小企業においては、融資による資金調達に際し、その信用補完の手段として、経営者個人やその家族、友人などの第三者を保証人とすることが広く行われております。そのため、会社の倒産時に経営者個人が破産に追い込まれるケースが数多く見られ、また第三者保証が行われている場合は、善意により保証契約を行った者までもが破産に追い込まれることも少なくありません。
 第三者保証をする場合に、必ずしも書面で行われるというよりも、口頭で契約を取り、取決めをするとか、あるいは詳しく金融機関からの説明もなく、安易に引き受けて保証してしまうと。そこにおける、最悪の場合、どういうふうになるのかということを十分認識されないままで保証していたというところが今までの現状でございまして、これが悲劇につながっているのが現状ではないかと思っております。
 本来、企業への融資は事業が生み出すキャッシュフローやその将来性に基づいて行われるべきところでございますが、我が国の融資慣行は過度に人的担保に依存しているのが現状でございます。倒産した中小企業の経営者は、保証追及により、財産のみならず生活そのものが脅かされることも多く、また、それを恐れて民事再生の申請が遅れ、再建のチャンスを逃し、申立てをしても再建できないケースもあるわけでございます。早めに退場して余力を残して再チャレンジすると。そういう面では、現在の保証制度、個人保証、人的保証に頼る制度というのは好ましくないのではないかと思っております。
 また、中小企業におきましての大きな問題は事業承継でございますが、事業を承継する場合、後継候補者が保証人になることを嫌がるケースが多いんでございまして、例えば専務を社長にしようと、したいと思っておっても、自分の財産が担保に入れられてしまうというようなことを考えますとどうしてもちゅうちょしてしまうと。有能な人材ではあるけれども後継者にできないということで、ずるずる現体制が維持されて改善されないと、新しい体制に移り変えられないという、そういう後継体制を阻んでしまうという問題が生じておるのが現状でございます。そして、一度経営に失敗いたしますと、先ほど自由財産の問題もありましたけれども、すべてを失ってしまいかねないという現実でございまして、経営者の再起や新規創業又は事業承継も阻む大きな要因となっておるわけでございます。
 こういう諸問題を抱えておった今までの保証の在り方に関しまして、今回、保証金額や保証期間に制限のない包括根保証契約については、保証人が契約締結時には予測できないほど長期間継続され、多額の保証債務を負う結果となることが少ないため、非常に問題が大きく、大きいと考えております。
 商工会議所としましては、包括根保証を禁止し、金額の定めのない保証契約を無効とし、保証期間にも制限を設けることに賛成であります。人的保証に過度に依存した我が国の融資慣行を改める第一歩となるものと考えております。是非とも法改正を実現いただきますようお願い申し上げます。
 以上が個人保証についての商工会議所としての考えでございます。
 次に、債権譲渡、動産・債権譲渡公示制度について御意見を申し上げさせていただきます。
 また、個人保証と併せ、我が国の企業における資金調達手段は、その多くをこれまで不動産を担保とした金融機関からの融資に依存してまいりました。特に、中小企業においては自己資本が少なく、大企業と比べ直接金融による資金調達が困難であることから、金融機関からの融資が圧倒的な割合で占めております。しかし、長期にわたる不況と資産デフレの進行により、不動産を担保とした融資による新たな資金調達は極めて困難になっているのが現状でございます。
 動産・債権担保を活用する融資方法が広く普及することは、これまでの過度に不動産評価に依存した融資慣行を改める新たな資金調達の手段として極めて有意義であると考えております。近年、売り掛け債権を担保とする融資制度の利用が広がりつつあるものの、我が国企業はこれまで在庫、設備機械等、不動産に匹敵する資産を持ちながら、法制度あるいは融資慣行上の困難によりこれまで有効に活用されてまいりませんでした。
 こうした中、今般、債権譲渡特例法改正法案において動産・債権譲渡に係る公示制度の整備を打ち出されたことは、とりわけ中小企業にとって新たな時代にふさわしい資金調達の道を切り開くものとして高く評価し、賛成いたします。
 新たな動産・債権譲渡公示制度が動産、債権を担保とした融資を促進し、人的担保や不動産担保に過度に依存した融資慣行により運転資金の調達に苦しむ中小企業や、新規事業など前向きな投資を行おうとする中小企業の新規の融資に活用されることを期待いたしております。あわせて、くれぐれも動産、債権が既存の融資の追加の担保として使われるものではなく、中小企業の新たな事業意欲を引き出し、その資金ニーズを満たすものとなり、ひいては我が国経済の活性化に貢献していくことを強く望むところでございます。
 近年、売り掛け債権を担保とする融資制度の利用が広がりつつあり、さらに今般、動産・債権譲渡に係る公示制度が整備されることにより、中小企業にとってこれまでとは異なる新たな資金調達の道を切り開くことが加速されていくものと期待いたします。
 以上、こうした意味から、今般御審議されております民法改正法案並びに債権譲渡特例法改正法案につきましては、過度な人的担保や不動産担保に依存した融資慣行から脱却する重要な第一歩であると考えております。それがひいては人的担保や不動産に過度に依存しない融資が根付くことにつながり、倒産を経験した経営者の再起や新規創業、経営革新、円滑な事業承継を促進し、我が国経済の活性化に資することを強く希望するところでございます。
 全国の商工会議所会員である中小企業は今般の法改正法案に、今般の法改正案について大きな期待を持って待ち望んでおり、是非、両法案が一刻も早く成立し、施行されることをお願い申し上げまして、私の意見を申し上げさせていただきました。
 ありがとうございました。
#8
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
 参考人の先生方におかれましては、大変お忙しい中を当法務委員会に御出席をいただきまして、それぞれのお立場から御所見を賜りまして、ありがとうございます。
 まず私は、民法の一部の改正につきまして、保証契約の適正化についてお伺いをしたいと思います。
 この見直しの発端となったのは、先ほど御説明にもございましたように、商工ローン等の過酷な取立てが大きな社会問題となったことも考えられるわけでありますが、私はむしろ古くて新しい課題ではないかなと、こう思っておるところでございます。
 私自身のことでございますが、四十六年前、父が連帯保証人になって、それが起因をしまして会社が倒産をし、びっくりしましたのは、すべての家財道具まで差押えをされたという苦い経験がございまして、そうした中で自分の何か、この今回の法案が成立することによって胸につかえたものが何か取れるんじゃないかというような期待もしているところでございますが、そこで、各参考人の先生方にお聞きしたいんですけれども、この法案の成立にどのような期待をされているのかということと、先ほど清水参考人の方からお話ございましたが、幾つかの問題点ございますが、特にこの点が問題ではないかということがございましたら、池田参考人、清水参考人、石井参考人それぞれお聞かせをいただきたいと思うんですけれども、よろしくお願いします。
#10
○参考人(池田眞朗君) 御質問ありがとうございます。
 私自身も、御質問の冒頭にあったような個人の人が他人の金銭債務を連帯保証するというようなことでいろいろその人の人生における悲劇が出てくるということはよく知っておりまして、もう二十数年前から市民大学講座のようなところでは決してそういう個人の金銭保証というのはするべきものではありませんということを折に触れてお話ししてきたところであります。
 で、今回の法案で更に問題点はという御質問でございますが、これ民法学者の立場から申しますと、確かに清水参考人の御指摘のようなことはいろいろございますけれども、消費者問題として、純然たる消費者問題としてとらえれば確かに不徹底な部分があるかと思いますが、しかし民法というものは民事一般法、民事の基本法でございまして、純粋消費者的な個人から企業経営等に通じている個人までいろいろその対象になるわけでございます。したがって、例えば退社したといっても退社後も実質支配を続けているケースはないのかとか、いろいろな疑問も出てきますので、民法典の中の改正としてはこれが適切なところでは今回ないかというふうに思っております。
 したがって、今後更に状況を見て改めるべき、あるいは一歩進めるべきところは進めるということはもちろん考えておりますけれども、本日のこの法案においてはまず適切な第一歩ではないかというのが私の考えるところでございます。
#11
○参考人(清水規廣君) 先ほど申し上げましたように、本法案は前進であるというふうに考えておりますけれども、これで保証被害が全くなくなったというふうには考えておりません。商工ローンも民法に従って高利を取ったわけです。それから、あるいは商工ローンは民法に従って保証料名目の高い金利を取ったわけです。消費者にとっては、民法であろうと消費者法であろうと被害は被害で同じなわけであります。そこをどういうふうに先取りして被害が少なくするようにするかというのは、やはり我々が工夫して考えていかなきゃいけないんではないかと思います。
 ですから、先ほど申し上げましたように、まだまだ保証制度、不十分なところもございますので、今後も時間を掛けて検討をお願いしたいと思っております。
#12
○参考人(石井卓爾君) 私、先ほど世代交代の話をいたしましたが、若返りをして活力ある企業になるべきだと、特に中小企業の場合はそういうことが必要だと思っておりますが、その一つの弊害といたしまして、根保証契約の場合、法人の代表者が退任する際、金融機関が同意しなければ保証契約の解除も元本確定も行えないため、退任後の前代表者の根保証契約が継続されてしまうというケースがあって、その辺、今回の法改正でもはっきりまだこの辺について決まっていませんので、この辺が今後の問題かなと、こういうふうに考えております。
#13
○吉田博美君 ありがとうございました。
 細部の問題でございますが、極度額については両者の合意にゆだねられるということでございますが、そうしますと、どうしても貸す側の方が必然的に強くなると思われるわけでありまして、そうした中で、保証人の支払能力に応じた範囲内での制限をする必要があるんではないかと思うわけでございますが、この点について、清水参考人、石井参考人、池田参考人の順でお答えをいただけますでしょうか。
#14
○参考人(清水規廣君) まず、考え方としては、貸す側ですね、貸す側は、保証人の資産だとか資力を目当てにして貸すという人は少ないわけですね。まあ、商工ローンの中には、主たる債務者よりか保証人から取れるからということで、主たる債務者に借りろ借りろというところでやった業者もあったようでありますけれども、普通の金融機関は、あくまでも借り主が計画どおりきちんと返済できるかどうかということを目的にして、保証人から回収するということは二の次なわけですね。保証人というのはあくまでも信用の補完にすぎません。
 そういうことから考えますと、極度額という考え方、つまり根保証そのものはやはりできるだけ避けるべきじゃないかというふうに私は思っております。ですから、会社の代表者だとか経営者の方、これは会社と運命共同体ですから、これは根保証、極度額というのはこれはまあしようがないかもしれませんけれども、個人の保証人の方は、やはり極度額というのは避けて、限度幾らというふうにしないと、保証人の方はよく分かりません。
 ですから、先ほどの御質問で、保証人の資力に応じた極度額と、こう言われますけれども、むしろ極度じゃなくて保証額というような形にしないと、保証人自身がよく理解できない人が多いんじゃないかと思います。
 以上です。
#15
○参考人(石井卓爾君) 極度額の問題、非常に微妙な問題だと思います。
 せっかく包括根保証から禁止されて極度額を設定していただくわけでございますが、ただ、心配なことは、実際必要なのが一千万円であるにもかかわらず十億円の極度額を設定してしまうということであると、包括根保証と似たようなケースになるということも懸念されますので、その辺の合理的な算定をどうしていくかという問題があるのではないかと思っております。
 以上でございます。
#16
○参考人(池田眞朗君) 両参考人の御発言、もっともでありますが、一つ大きな観点から民法というものをとらえますと、契約における私的自治というのはやはり民法の基本でございます。民法というのは、近代市民社会で望まれる市民像を考えて、それを後押しする、助力をするというものですから、そこではやっぱり自己決定、自己責任という考え方は根底にあるものでございます。
 そういう意味でいうと、極度額の決定、契約の中において当事者の合意によるというのは、その限りにおいては民法の基本でありまして、ただ、そうは言っても、こういう社会的な問題の出てきている部分については国民に対して十分な説明、情報提供をするということは必要であろうと思いますが、基本法たる民法としては、考え方としてはこの当事者の合意による定めというのは理論的には当然のことということを一言申し上げておきます。
#17
○吉田博美君 次に、債権譲渡の特例法の一部を改正する法律案について参考人の先生方にお聞きしたいんですけれども、この改正案は企業の資金調達を円滑に図るために動産・債権譲渡公示制度を整備するものと理解をしているところでございますが、実際にその経済効果というものはどのようにお考えになっておられるのか、石井参考人、池田参考人、清水参考人の順でお聞かせいただけますでしょうか。
#18
○参考人(石井卓爾君) 私は、この制度、大変今後期待……
#19
○委員長(渡辺孝男君) 石井参考人。
#20
○参考人(石井卓爾君) はい、失礼しました。
 それでは、もう一度やります。
 この新しい制度は今後大いに活用され、中小企業にとっては大変有効な資金調達の手段となっていくのではないかと思いますし、また、そういうふうに誘導していく性格のものではないかと思います。
 と申しますのは、先ほどの人的保証とかあるいは不動産担保によって融資を受ける慣行というものはいろいろ弊害がございますので、せっかくその会社の中にある資産、不動産でない債権とか動産の資産を有効に活用されて、欧米でもその制度は定着しておると聞いておりますので、是非ともそれを導入していかなければいけないし、そのためのいろいろな環境作りというものは今後進めていかなくてはいけないんではないかと思っております。
 以上でございます。
#21
○参考人(池田眞朗君) この点に関しては、最近、金融機関の関係の方の書いた論考の中でも、例えば中古自動車を担保動産とした銀行の融資スキームなどが報道されているとか、それから、法制審議会の審議の過程で聴取した見解の、意見の中でも、最初これ担保だけに使われるかと思っていましたら、プロジェクトファイナンスのような高価な物件を担保とする融資を伴う取引等で更に積極的にその流動化にも使いたいという意見も出てきたというところで、ですから、中小企業から大企業までかなりこの、先ほど私、意見陳述の中で申し上げたように、動産の流動化自体が日本は後れておりましたので、大いに活用される可能性があると私は見ております。
#22
○参考人(清水規廣君) 私は法律実務家ですので、夢と希望にあふれたお話はできません。むしろ、最悪の場合、トラブルが起こった場合にどうなのかということを考えるわけですけれども、金融機関が果たしてこの制度を使ってどの程度融資あるいは資金調達に手を差し伸べるかということを考えると、先ほど言いましたように、掛け目ですね、不動産であれば六掛けとか七掛けだとか、不動産の評価に対してそのぐらいの割合で銀行等は融資をするかと思いますけれども、今度、在庫品だとか原材料に対してどういう形で評価をして、どのぐらいの割合で貸付けをするのか、ちょっとこれはやっぱりやってみないと分からないと思います。
 ですから、それは逆に、私どもの方、法律の方の実務家が、これは見込みがないとか見込みがあるとかという問題ではないと思っております。
#23
○千葉景子君 本日はお三人の参考人の皆さんに大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私の方から、それぞれ御参考人に何点かずつ質問させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 まず、池田参考人にお願いをさせていただきたいと思います。
 先ほどのお話、大変分かりやすく聞かせていただきました。
 そこで、一つ、民法の方について御意見を聞かせていただきたいのは、今回の包括根保証の禁止という、これは本当に前進だというふうに思っております。ただ、そうは言っても、いわゆるそれ以外の根保証あるいは保証債務ですね、それについては、かなり保証人に負担になったり、あるいは問題が生じている部分があるかというふうに思います。今後、この包括根保証の禁止については大きな前進といたしましても、保証問題について今後どのような検討を更に加えていく必要があるのか、そんなところに御意見がございますれば御指摘をいただきたいというふうに思っております。
 それから、先に質問の方を言わせていただいてしまいます。
 債権の方でございますけれども、先ほどお話では、倒産を論ずるより前に、むしろ資金調達の方の可能性をより見るべきだというお話でございました。確かにそのことは分かるのですけれども、どうもこれは鶏と卵のような形になってしまいまして、本当に資金調達がこれによってうまく広がっていくことができれば倒産の際の問題というのはある意味では解消されていく。しかし、逆回転になりますと、資金はなかなか十分に調達をされず、むしろ、よく指摘をされているような倒産時のいろんな弊害がむしろ目に付いていくということになってしまいます。
 そこで、先生のせっかく資金調達の方のプラス面をというお話でございますので、今なかなかそうはいっても動産等の流通市場や評価の制度というのが十分に確立をしていない、そういう中で、これから本当に倒産を論ずるのではなくて資金調達をということであれば、そういう部分をどのようにこれから整備していくべきなのか。
 それからもう一つは、新規融資をこれは促す本来制度目的なのだと、こういうことを、確かに法律は整備をしても、それを本当に資金提供側が十分に認識をしていただきませんと、なかなか動産を使ってまで資金融資はそんなにするかなということにもなってしまいますので、この新規、これはもう資金融資のそういうことが制度目的なんだということをどのようにして実効あらしめていったらいいのかと、その辺りについて御意見を賜ればと思います。
#24
○参考人(池田眞朗君) ありがとうございます。
 お答えします。
 第一点からのお答えですが、まず、この保証の方については、私も今後、社会的な問題として、ある程度今回の法改正で収まるものか、更にいろいろまた新手のやり方等で問題が生起してくるのかというところは慎重に見ていかなければいけないと思いますし、その場合のやり方として、対処の仕方として、一つは、民法をこのままにして特別法で規制をするとか、消費者保護のサイドから規制条項を新たに加えるとか、こういうことが一つ考えられるだろうと思っております。
 私個人は、民法典自体を頻繁に改正するというのは、その解釈論の出発点の法文でございますので、そういう特別法による規制等も今後考える必要は状況によってはあるかと思っております。これが第一点のお答えでございます。
 それから、第二点でございますが、これは融資者にとってはやはり登記という制度はかなりの安心感を与えるといいますか、そういうもののようでございます。これは、千葉先生と私が御一緒させていただいた九八年のときの法務委員会でその債権譲渡特例法を審議したわけですが、今回の白表紙の後ろにございます登記、債権譲渡登記等の実績の推移のこの数字をごらんいただきましても非常に大きな伸びを示しているということでございまして、ですから、今回の動産登記制度も、そこまでは数字的にいくかどうか、これはやってみないと分かりませんが、一つ融資する側にとってはかなり安心のできる制度ができた。
 そうすると、今御質問にあった、次の段階はこの動産担保をどう評価するかということでございますが、これはやはり、マーケットといいますか、そういう制度ができたことによって取引が動き出し、そうすると、既に金融実務の方ではこういう動産の担保評価、担保掛け目の検討等も始まっているようでございまして、債権譲渡の方では既にいろいろな中で登記をした場合にどれだけ、異議をとどめない承諾をした場合にどれだけというような担保掛け目の研究は進んできておりまして、これも徐々に醸成されていくのではないかと思っております。
 それから最後の、三番目の御質問ですが、新規融資をどれだけ掘り起こせるか。
 先ほどのお答えでもちょっと申しましたが、実はこれは、外国では大企業の在庫担保の融資というものがかなり進んでおりまして、我が国でもこの話を、立法の話を聞き付けて大企業の方がそういう関心を示したというところもございます。したがって、中小企業さんの動産についてだけでなく、大企業のそういう在庫融資、在庫担保融資という方面からもこの制度が活用されていくと、その両方の動きである程度数字が出てくるのではないかというふうに思っておりまして、その意味では、そういう取引慣行が醸成されてくることによって、中小企業さんの動産についてもある程度の掛け目を慣行上見付け出してやっていくということが可能となってくるのではないかと思っております。
 取りあえず以上でございます。終わります。
#25
○千葉景子君 ありがとうございます。また、後ほど時間がございますればお尋ねをさせていただきたいと思います。
 次に、清水参考人にお願いをしたいというふうに思います。
 実務の立場で大変分かりやすくやはり問題指摘をいただきまして、ありがとうございます。先ほどの御意見で、やはり今回の民法、特に包括根保証の禁止の部分については、評価を言って、何という、第一歩といいましょうか、そういう御評価だろうというふうに思っています。
 そこで、今、池田参考人にもお尋ねをいたしましたように、そうはいっても、清水参考人の御指摘の中では、やはり個人の根保証の問題であるとか、それから保証人に対する様々な情報提供とか、そういうことも今後検討していかないと、保証自体のいろんな問題点が十分に解消されないというお話がございました。少し、私も時々相談を受けたりするものですから、お尋ねをさせていただきたいというふうに思うんですけれども、よく保証人が、よく分からないがだまされちゃったと、そんなはずではなかったんだけれども、こういう相談というか言葉を申されるということがよくあるわけなんですね。決して本来はだましたはずではないんだろうとは思うんですけれども、実感としてそういう感覚を持つというのはやはりどこかに問題があるんだろうというふうに思うんですけれども、これについては、実務を担当なさっていてやっぱりそういう御経験が多いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 もし、そういうだまされたというような形ではなくて、きちっと自分の債務が分かり、そして履行ができるということを、するためには、どんな制度とか、あるいはことを確立をしていったらよいとお考えでしょうか。その点について、まずお聞かせいただきたいと思います。
#26
○参考人(清水規廣君) だまされたというのは、保証をするときに主たる債務者の方から、迷惑は掛けないからと、こういうふうに頼まれたり、それから、形式だけだからお願いしますと、こういう形で勧誘されるわけですね。それは自由主義社会なんですから保証した方が悪いんだということになればそれまでなんですけれども。それで、今度逆に、取り立てる方といいますか、貸した方の立場からしますと、今度結果論として、あなたが保証したから貸し付けたんですよと、こういうせりふがよく出てくるわけです。
 自由契約論の中だったらそれでも、確かにそのとおりだと思うんですけれども、しかし、よく考えますと、先ほどちょっと申し上げましたけれども、金融機関などは、主たる債務者への信用の補完にすぎないんですね、保証人というのは。ですから、その貸付けの目的だとか、それから何のためにそのお金を使うのかという資金使途というのは必ずあるわけで、それに従って主たる債務者の信用状況だとか返済可能性というのは審査しているはずなんです。ところが一方、保証人というのはそれについては全く知らないですね。情実だけで、あるいは親戚だからとか友人だからというだけで保証しているわけですね。その結果、最初から情報がないがために、結果として悪いとだまされたと、こういうふうになるというふうに私は思っておりますので、むしろ保証する際に、やはり保証人に対する主たる債務者の信用状況について教えてあげるシステムが必要なんじゃないかというふうに思っております。
#27
○千葉景子君 ありがとうございます。
 もう一点、債権譲渡の方についてお尋ねをしたいと思っております。
 先ほどやはりちょっとお触れいただきましたんですけれども、もう少し詳しく話をいただければと思うんですけれども、要するに債権、不特定な将来債権のようなものを目的としますと、いつも管理をしなきゃいけないと。で、それが難しくなるとなかなかその権利行使ができない、こういうことにもなるのではないかというお話がございました。あるいは二重譲渡のようなそういう危険性なども存在をするということで、ここについてはどんなふうに今後なっていくか、その危険性とかですね。それから、それを回避するためには何か手段があるのかどうか。その辺りは実務の体験からどんなふうにお考えでしょうか。
#28
○参考人(清水規廣君) 集合動産を担保だとかあるいは買い受けたとか、あるいはその将来の債権を担保に取ったとか買い受けたという、そういう際に、今度具体的に法的回収に入る場合にどういうふうにやっていくのだろうかというのが必ずしも研究されておりません、これからの課題でありますけれども。
 旧来のやり方でやらざるを得ないんだろうと思うんですが、恐らく、その実際に融資した人ですね、お金を出した人が、今度は債権の譲受人として第三債務者に対して例えば訴えを起こしていくというような場面には、従来、債務者といいますか、中小企業の方から受けていた在庫品のリストだとか、それから売り掛けの明細、それだけではやっぱり訴えを起こせません。やはり契約書だとか、あるいは建設会社だとすれば、工事がどの程度まで進んでいて、その工事の進捗具合が金額にすると幾らぐらいになるのかと、そういう細かい書類だとかデータ等が必要になりますね。そういうものをいつ入手するかということになると、やはり破綻したとき、つまり債務不履行になったときになっていくんだろうと思うんですね。そこにおいて今度、その債務者といいますか中小企業側は、すんなりとそういう、債権書類といいますけれども、契約書等を渡すだろうかということが気掛かりであります。
 また、その債権者の人が事業所に乗り込んでいった場合、今度トラブルが起こるんじゃないかと。今度、労働組合等がピケット張っていた場合にどうなるんだろうかと。はっきり言って、非常に、やってみなきゃ分からないという場面が多いですね。
 また、納品業者の人もどう対応するのか。今までは、先取特権があるから先取りしますということで、その倒産した方の承諾を得て納品したものを引き揚げてくるというのが多かった。今度それができなくなりますね。
 実務的にどういうふうになっていくか、これはいろんな難しい問題が出てくると思います。
 以上です。
#29
○千葉景子君 ありがとうございます。
 何か、説明というか、お聞きをしたら何か余計不安が増してきたような、そんなところもあるんですけれども。今後、実務的に本当にいろいろな複雑な事態も起こってきそうな、そんな感じもいたすところでもございます。
 さて、石井参考人、今日はありがとうございます。
 石井参考人、先ほどからお話ありますように、これが本当に新規の、中小企業などにとって融資の拡大になることを私もこの債権譲渡などは望むところですが、何かそれを、目的が十分に達成できるために、そのお立場として例えば行政的にあるいは立法的にどんなことを望んでおられるか、その辺ございますればお聞かせをいただきたいというふうに思います。
#30
○参考人(石井卓爾君) とにかく新しい融資制度が今回こういう形で確立していくわけで、これが一つこういう、拡大して普及して、広く我々中小企業のいわゆる融資制度がやりやすくなっていくということを是非お願いしたいと思っております。
 それを実行していくために一番やはり問題になってくるのは、例えば機械だとか、例えば機械ですね、機械の動産の担保をした場合ですね。それが中古品で、そういう機械が取引できるような中古品売買市場というものが確立されておれば、金融機関の方も、それを担保にしておったものが、もし仮に倒産してしまった場合、登記しておるその動産、機械の動産担保が市場で売却できると、こういうふうになれば非常にこのシステムがうまく運営していくんじゃないかということから、そういう市場の確立とか、あるいはその市場をプレーするプレーヤーの育成とか、そういうものが行政で支援していただければ、大変このマーケットが、この市場というか、その融資制度が拡大していくんじゃないかと期待しております。
 以上でございます。
#31
○千葉景子君 ありがとうございました。
#32
○木庭健太郎君 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。公明党の木庭健太郎でございます。それぞれの参考人に今法律改正案についてお尋ねをしたいと思います。
 まず、池田参考人にお尋ねをしたいと思っております。
 参考人は、民法の中でも債権譲渡ということが、前回も参議院に来ていただいたとおり、第一人者ということで、また経済産業省でも企業金融部会ですか、その検討、その中での企業金融機能のあり方に関する小委員会の小委員長代理も務めていらっしゃいます。法科大学院でも金融法の講義をされているということでございますので、お尋ねしておきたいのは、中小企業の新たな金融の在り方等なんです。
 つまり、今後の中小企業の金融に関連して、例えば一つ話題に上がっているのは、知的財産の担保化の問題であるとか電子債権制度の創設といったような問題、この法整備の問題もあると思うんですけど、こういう必要性、そして、それとともに問題性もあると思いますが、その辺について御意見をお伺いしておきたいと思います。
#33
○参考人(池田眞朗君) 御質問ありがとうございます。
 私、意見陳述の中でも申し上げましたが、企業側にとっては資金調達のルートを多様化しておくということが企業の体質強化につながると申しました。つまり、どれか一つのルートが切れたときにほかのルートで資金が調達できると、こういう状況にしておくのが特に今のような世の中では非常に重要なんだろうと思います。
 そういう意味で、ただいま先生から御指摘のあった知的財産に関する担保の問題も検討を進めるべきだろうと思いますし、この電子債権というお話は、手形や指名債権のどちらでもないような、発生から消滅まで全部コンピューターの上で行われる電子債権というものを作って、これまた資金の調達にも決済にも役立てようということでございますので、こういうものも積極的に今後取り組んでいく、あるいは法律を作っていく必要があると思います。
 その場合に、中小企業さんの方は、したがってやはり、中小企業側の会計担当者といいますか、その債務管理、債権管理をする人がそういう新しい技術にも対応できるようにきちんとその社内の整備をしておくと、それがやはり中小企業にとっていろいろな資金調達を広げる道になろうかと思います。
 取りあえず、以上でございます。
#34
○木庭健太郎君 清水参考人にですね、今回のこの民法改正について、私は、この民法改正の流れを見ていると、保証の制度の中でも特にやっぱり今一番問題になっているこの包括根保証という、ある意味じゃ諸悪の根源だと私は思っておりますが、この制度を何とか変えてなくしていくということにある意味じゃ焦点を絞りながら、そしてそこから発想しながら保証制度全体を見ていこうというような形でやったんだろうと思うんですよ。
 ただ、先ほどもこれは御議論あって、これどっちがいいのかなと思ったんですけれども、例えば、じゃ、それで先ほど言った商工ローンの問題、解決しません、なかなか。難しい問題もあります。だったら、それを本当にもう少し、今回民法の大改正をしたと、さらにこの民法の改正の中で取り組んでいくべきが正しいのか。やはり、商工ローンの問題、消費者の問題というのはまた別途これは考えなくちゃいけない問題じゃないかなとも、こう感じたんです。
 そういう意味で、今回のこの民法改正という、この保証制度の適正化という問題についてどうだったと評価をされるのか。そして、そうは言いながら、解決できない現場としての課題はあると、これにどう取り組めばいいのかと、御意見があれば、重ねてのお尋ねになるかもしれませんが、御回答をいただきたいと思います。
#35
○参考人(清水規廣君) この問題は弁護士会の中でもいろいろ議論があるところです。つまり、特別法で対応すればいいではないかという部門と、要はどこに標準を合わせるのか。保証人といっても、金融業者から借りる際の保証とマイホームを建てるための住宅ローンを借りる際に親が保証するのと同じだというふうに考えていいかどうかという問題、これは非常に難しい問題があろうかと思います。
 ですから、基本法としての民法のレベルとしては先ほど申し上げましたように一歩前進だと思いますけれども、これで事足りたということではなくて、やはり基本法の中で取り組むべきもの、つまり消費者契約法の中でも、個々にそれぞれ官庁もまたがっておりますけれども、大体一般通則化できるようなものというのが随分出てきております。先ほど言いましたように保証人に対する開示義務のようなもの、それから、あるいは借主本人に対して返済能力を超えて貸さないと、こういうものは貸金業だけじゃなくて商品取引だとかそういうところにも表れてきておりますので、そういう特殊法の分野の中で一般通則化できるものは順次基本法である民法の中に引き上げていただくと、そういう作業は将来的にはやっぱり必要なんではないかというふうに思われます。
 以上です。
#36
○木庭健太郎君 石井参考人にお尋ねをいたします。
 今回のこの民法改正の場合は、主債務が貸金債務に限られております。この問題につきましては、商工会議所というか団体側からその適用範囲が限定され過ぎてはいないかと。例えば、この点に関しては、継続的な商品売買に係る代金債務であるとか不動産の賃貸借に係る貸借人の債務についても適用を求める、こういう声も現場というか皆さん方の中から強いとも聞いておりますが、この点どうなのかお尋ねもしたいし、また、この問題に関しては、そこまでやってしまうと今度はかえって金融機関からの融資が控えられるんじゃないかとかいろんな意見もあるようでございますが、これについて、言わば中小企業を代表する側から御意見承ればということでお願いをいたしたいと思います。
#37
○参考人(石井卓爾君) 今の御質問は債権、動産関係の譲渡の関係だと思いますが、それでよろしい、動産関係ですね、賃貸……
#38
○木庭健太郎君 じゃなくてですね、包括根保証の関係、保証の関係でですね、今度のその問題というのは貸金債務というものに限っているんですよね。ところが、これ、いろんな審議会の審議の過程の中で、皆さん方の中から、貸金債務だけじゃなくて、限定するのじゃなくて、ほかのものにも広げた方がいいんじゃないかというような意見が出されたような話をちょっとお聞きしていたものですから、どうかなということでお尋ねをしたんですが、余りお聞きになられてないですか、この点は。
 ちょっと専門的過ぎるかな。いや、じゃ、やめておきましょう。
#39
○参考人(石井卓爾君) 申し訳ありません、ちょっと。
#40
○木庭健太郎君 もう一つは、私、この前、議論する中でこれ中小企業庁にお尋ねしたんですけれども、今中小企業経営者に対して個人保証を求めないような融資制度というのが、これは商工中金さんとかそういった形でも始まっているんですけれども、利用状況を委員会で尋ねたんですね、この委員会で、法務委員会で。そうしたら、利用件数というのは物すごく少なかったんですよ。なぜかと尋ねましたら、自分たちのPR不足だというふうに実は経済産業省はおっしゃっておりましたが、こんな制度が、個人保証を求めないような融資制度というのは皆さん方はどのくらい御存じなんですかね。
#41
○参考人(石井卓爾君) 私、商工会議所の支部の会長をやっておりますから、生にそういう方々、中小企業の零細企業の方々と接する機会が多いんでございます。確かに、無担保無保証で資金を五千万円お貸しするという制度ができていますよということを再度皆さんにお伝えしております。
 したがいまして、ある程度のPRは行き届いておりますが、ただ、それが実際の契約というか、実際そういう形でそのお金を借りるというところまで、相当普及しているかなと思ってはいますが、まだまだその辺、金融機関との交渉の段階で無条件ということではなさそうでございますので、いま一歩かなと。なるべくPR活動して、せっかくそういう制度があるんですから是非活用していただきたいということでいろいろPRしておりますし、金融機関も、法的金融機関も中小企業を対象としてそういう制度を積極的にやろうとしている姿勢が見えますので、だんだん時間とともにそういう広がりが定着していくんではないかと期待しております。
 以上です。
#42
○木庭健太郎君 債権譲渡特例法の改正について池田参考人と清水参考人にお尋ねしたいんですけれども、今回のこの債権譲渡特例法改正案の法制審の部会での最大の論点が何だったかというと、動産譲渡登記に、他の担保目的の動産譲渡が占有改定により対抗要件を備えた後にされたものでも対抗することができるとする優先的効力を付与するか否かということであったというふうにお聞きをしております。
 部会でもいろんな修正案が出されて御論議されたという、最終的には実務や実体法への影響ということを考慮された結果、改正案はどうなったかというと、この優先的効力は付与しないということが採用されるようになったというふうにお聞きはしております。
 別に、ここでまた議論をしていただきたいということじゃないんですけれども、こういう登記の、この登記の効力の問題とか法的位置付けについて、参考人から御意見、今後期待されるその取引慣行の確立とか法改正について御所見あれば、専門家のお二人から伺っておきたいと思うんです。
#43
○参考人(池田眞朗君) その点は確かに大きな議論のあったところでございます。
 それで、そのいわゆるプロジェクトオリエンテッドといいますか、目的を達成するという観点からすれば、先行の、先にある占有改定を後の登記でひっくり返せるという強い登記の方がいいではないかと、その隠れた占有改定が問題なんだからとおっしゃる方も多かったわけですが、先ほどもちょっとお話ししましたように、これ対抗要件の中に優劣付けますと、占有改定より登記が勝つと。そうしたら今度は登記と引渡しはどうなるのかと、これはイーブンだと。そうしたら引渡しも占有改定より上位に持ってこないと筋が通らないといいますか、三すくみの状態になったり混乱が生じるわけです。そうすると、やっぱりその占有改定を対抗要件から外してしまうのかと、こういう学者の御意見もあります。
 そこまでいけばそれはそれで徹底するんですが、今日の実務からして、占有改定はやはりその引渡しの一種、同等の対抗要件だというふうにしますと、これはやはり私は、三つ平等の対抗要件にして、それを具備したものの先後で優先、先、後で優先を決めると。これがきれいである、きれいというか、この実務上安定的な取扱いになるだろうと申しました。取りあえず。
#44
○参考人(清水規廣君) A案、B案という形で検討されたというのを私も聞き及んでおります。
 登記の優先的な効力というのを強くいたしますと、今度は、担保目的の譲渡なのか、本当の譲渡なのかとかいろいろ分けなきゃいけないとか、それから今度は、こういう制度ができますと、全部が全部登記簿、登記簿といいますか、登記のファイルを、証明書をもらわなきゃいけないと、こういうような問題になってまいりますので、今、池田先生言われたとおり、本案の方がまあ穏当なところではないかというふうに私も考えております。
#45
○木庭健太郎君 ありがとうございました。
#46
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、三人の参考人の方、ありがとうございます。
 最初に、民法改正案にかかわって保証制度の見直しの具体的な問題について、石井参考人と池田参考人にお伺いをいたします。
 先ほど来これは議論になっておるわけですけれども、民法でやるのか、それともそれぞれの特別法等でやるのか、方法は別といたしまして、課題としてどうなのかという点をお聞きしたいんです。
 清水参考人から幾つかの点がございまして、私も多くは基本的に同感なんですが、一つは根保証人に対して契約書を交付しなければ無効にすべきだということ、それから保証人の方からの元本確定請求権を認めるべきではないかということ、それから、保証人に対して、主たる債務者に例えば追加融資などが行われた際にそういうことを通知をすることを義務化すべきじゃないかというような具体的なことがございましたけれども、方法は別として、この三つの課題についてはその必要性等はどのように認識をされているか、池田参考人、石井参考人それぞれからお願いをいたします。
#47
○参考人(池田眞朗君) まず、第一点の契約書を徴求するというところですが、これはこのように変えたこと自体がかなりの大きな進歩でありまして、その契約書の中に更にこういう要件を必ず書いておかなければいけないとか、そこまでになりますと、ちょっとこれは実際の取引実務上円滑にいかなくなる可能性があるのではないかという認識を私は持っております。
 それから、保証人の元本確定請求権ですが、これも審議会では議論があったところと伺っております。つまり、元本確定請求権の制度を置いたときに当事者の力関係で確定請求をすぐ出せるかとかですね、そういう意味では法が一律にその元本確定の要件を定めておく方がよろしいんではないかという考えがおありだったようでございます。
 それから、通知義務の点については、これは委任等のほかの民法の規定等から対比しますと、今後、状況によってはそういう義務を条文に付加していくことはあり得る話であろうと思います。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたように、これ保証は全部悪いわけではございませんで、その金融担保としてこれまで非常に有用に使われてきたことも事実でございますんで、そちらのプラス面も維持しつつ、最終的にどこが落としどころか、一番適切なところかというのをこれからも探求していくべきではないかと思っております。
 ありがとうございます。
#48
○参考人(石井卓爾君) 契約書でございますけれども、今までの慣例で金融機関から口頭で保証条件の合意を取ったりするというケースが間々あると聞いております。そういう面で、契約書をちゃんと、その金額とか期間について記入して契約書を結んでいくということになれば、書面でそういう契約書を取っていくということになればかなりの前進になるのではないかと思いますし、特に第三者、経営者以外の第三者に対してのことにつきましても、そういう書面でやるということになれば、十分内容を理解して契約を結んでいくということになりますので、これからいろいろなそういうトラブル、ケースが減少していくんではないかと思っております。
 それから、元本確定の件でございますが、先ほどちょっと触れさせてもらいましたが、経営者が交代したときに、その退任後の、その退任した前代表者の元本確定が、保証契約、金融機関がですね、在任中どれだけその保証したかという元本確定がしていただければよろしいわけですが、なかなかその辺がされないままに経営者が交代して、ずるずるその保証契約が継続されたり、元本も確定されないために、されないままにその根保証契約が継続されてしまうと、こういうことがありますので、是非その辺、元本確定をしていただくような形に持っていただけることを強く望んでおります。
 以上でございます。
#49
○井上哲士君 次に、債権譲渡登記の問題でお三方にお聞きをいたします。
 特例法ができまして、これが使われてきているわけでありますが、これまでの使い方を見ておりますと、必ずしも新たな融資のみではなくて、いわゆる既存債務の回収に使われてきたのではないかということがありまして、その下で今後更に広げるという点での懸念があるわけですが、例えば今年のこれは三月ごろのある新聞ですけれども、某都市銀行の審査担当者ということでコメントが出ていましたが、融資先に債権譲渡登記を設定することは、設定した理由はどうあれ、その企業に大きな信用不安をもたらすことは周知の事実、あらゆる手段を尽くし、最後の最後で行うのが債権譲渡登記だと、こういうコメントがされたりしておりまして、幾つかの実例でもそういう使われ方をしたこともいろいろ聞いておるわけですが、実際上、そういう言わば乱用ということがどのようにどの程度行われてきたか、そこの御認識をそれぞれからお聞きをしたいと思います。
#50
○参考人(池田眞朗君) 御質問のお言葉ではありますが、まず数字を見ていただきたいと思うんですね。この白表紙の後ろに付いている数字で見ていただければと思いますが、既存債務の回収のために債権譲渡特例法登記を使うというお話でしたけれども、恐らくこのデータで言うと、平成十年に、一番最初に施行されたときに、債権者が自分の権利を強化しようということでやった数字は少しこれに含まれているんだと思います。質権の設定なんかは、ですからこの年にちょっと多いんですが。
 その後見ていただきますと、この推移は、既存の担保を強化したいという数字ではございませんで、非常に多く使われている。しかも、具体的に私のかかわったものでも、この新規融資のための制度として、例えば十三年十二月に作られた売掛債権担保融資保証制度という、これは売掛債権担保融資、金融機関の担保融資に信用保証協会が保証を加えると、そこまでやれば大丈夫ですよということで作った制度ですが、こういう形で、その新規融資のために債権譲渡特例法登記を使う制度もいろいろできてきているわけでございまして、今回の動産登記の場合も出だしの、その当初のところは、申し上げましたように、今あるものを担保強化したいということで既存債務について使われるケースがないわけではないと私は思いますけれども、その後の数字ということはひとつこの債権譲渡登記の使われ方のデータを御参考にしていただければと思います。
 以上です。
#51
○参考人(清水規廣君) 私の個人的な経験の中だけでお話しさせていただきますけれども、池田先生言われるように、債権譲渡の登記が商社だとか大企業等がお互いに使っているとか、あるいはまあ取引先との間でそういう登記しているとかというのを私も見たことはございます。
 ただ、旧来の考え方ですと、債権譲渡をしたと、売掛金をほかの人に譲渡しているというのは、一つは、信用不安の一つということでありますので、私が逆に債権譲渡についての相談を受けた場合、これはやはりそういう効果があるよと、ですからそれは慎重にしなさいと。逆に取引先の方から相談を受けた場合には、じゃその債権譲渡は内実はどうなのかということをやっぱりきちっと見て、倒産の一つの兆候としての債権譲渡なのか、きちっとした通常の商業取引の中で行われているものか見極めなさいと、こういうアドバイスをするようになると思いますけれども。
 以上です。
#52
○参考人(石井卓爾君) 既存の資金の回収のためにこの動産譲渡が行われるということでございますが、これは一つに金融機関のサイドの考え方によるところが大きいと思いますので、金融機関が、今の会社の状況では担保が不足しているよと、だから更にそういう動産を担保にして資金をお貸しをすると、こういう形にならないように、新規事業に使われる方向に何らかの形で持っていくことが必要ではないかなと。
 御質問の趣旨はそういうことではないかと思いますので、どういうふうにしたらそういうふうな形になるのか分かりませんけれども、やはり金融機関サイドでそういう態度に、考え方になっていただくことが有り難いなと思っております。
 以上です。
#53
○井上哲士君 清水参考人にお伺いをしますが、労働債権の確保が非常に困難になるんではないかと、こういう御懸念がありまして、この法案にはそのための、それを回避するための具体的な措置が盛り込まれていないと、こういう御指摘でありましたが、参考人としてはどういう措置が盛り込まれることが必要だとお考えでしょうか。
#54
○参考人(清水規廣君) 法制審議会の中でその点について議論がなされたということは聞き及んでおります。労働組合の同意を得ることだとか、あるいは労働債権の方が何割優先するとか、そういう議論があったかもしれませんけれども、一つは、担保権に対して労働組合が承諾をしなければ担保権は設定されないということになりますと、ちょっと法体系としてどうだろうかというふうに私は考えておりました。
 結論から申しますと、今はその手段というのは思い浮かべません。
#55
○井上哲士君 最後に、池田参考人に今のに関連してお聞きするんですが、まあ法制審でも今後の施行状況を見てこの労働債権の確保についての措置を取っていくということが出されたわけですが、いろんな不安からいいますとむしろセットして出すべきではなかったと、こういう議論もあるわけですが、この点についていかがでしょうか。
#56
○参考人(池田眞朗君) 確かに、私自身はこの労働債権の確保ということをやはりないがしろにしてはいけないと思っておりますけれども、ただいま清水参考人の御回答にもありましたように、具体的にどういう形でこの法体系の中で労働者の権利、労働債権の確保を図っていくかというのはなかなか難しいように思っております。
 したがって、今後の状況、推移を見ながらいろいろ英知を絞っていかなければいけないんだろうと思うんですが、破産法の方ではそれなりの手当てをしたと伺っておりますが、この法律の性質上、この資金調達のための法律の側でどういう、その内部でどういう処理、対応ができるかというのは、現時点では私自身も思い浮かんでおりませんので、今後研究課題としたいと思っております。
 ありがとうございました。
#57
○井上哲士君 ありがとうございました。
#58
○委員長(渡辺孝男君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時四十五分まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時四十五分開会
#59
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長房村精一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#60
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#61
○委員長(渡辺孝男君) 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#62
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
 午前中は参考人質疑を行いまして、まとめの意味を込めて幾つかの質問をさせていただきます。
 まず、民法の一部改正についてお伺いいたしますが、この改正案では保護の対象を個人の保証人に限定していますが、零細企業が保証人になっている場合も含めて保護をすべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
#63
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、この改正案では個人が保証する場合に限ってその制限をしているわけでございます。これは、そもそも今回の検討が始まるきっかけとなりましたのが、個人が保証することによって過大な責任を追及されて生活すら危ぶまれるような事態が生じている、そのような事態を招く大きな原因として包括根保証があると、こういう御指摘を受けたということから始まったことによるわけでございます。
 一般に法人、会社を含む法人が保証するというような場合には、その経済合理性に従って、それぞれ妥当な判断をして契約を結んでいただくということになるのだろうと思っているわけでございます。ただ、中には、零細企業のように、個人と余り変わらない、必ずしも経済合理性に従った契約ができるとは限らない場合があるのも事実でございますし、そういう意味で、検討の過程で零細企業を対象に含めるかどうかということも検討の対象と取り上げられたわけでございます。
 ただ、先ほど申し上げたように、法人一般について申し上げますと、これを制約しますと経済合理的な行動に対する制約になりかねないという面がございます。また一方、広く契約を対象としております民法の中でそのような零細企業をうまく切り分けることができるのか、そういう法理論的あるいは法技術的な問題もございます。また一方、会社の場合には、その責任を追及された場合に対象となるのは会社財産に限られております。個人の場合には、事業用の資産に限りませんで、正に日常生活を支えるようなすべての財産が対象となってしまう。その結果、責任追及をされるとその日の生活も危ぶまれるような事態が生ずると、そういうある意味では過酷な事態が生ずるわけでございます。そういう点に比べますと、会社の場合には、そもそもその事業の、会社の財産に限定されているという意味で相当の違いもございます。
 そのようなことから、今回の改正に当たりましては、やはり最も必要性、緊急性の高い個人の保証の場合に限定して法律を作るということになったわけでございます。
#64
○吉田博美君 御答弁の中に民法上の制約等もあるというようなお話ございましたが、零細企業というのは、どちらかというと、個人か会社か分からないような部分が多分にあるわけでございまして、そうした中で、今後の一つの検討材料にしていただかなきゃいけないんじゃないかなと思っておるところでございます。
 次に、保証人の保護の措置を貸金債務の根保証契約に限定した理由は先日お伺いしたところでございますが、身近な保証契約の例として、建物の賃貸借契約の保証人に対しても保護の必要性が高いのではないかと思うんですけれども、これを保護の対象範囲に加えた場合の問題点はどのようなものでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
#65
○政府参考人(房村精一君) 実は、今回の貸金債務の根保証契約に限定して制限を加えたわけでございますが、どのような制限にするかどうかというような点につきましても、それがその融資慣行等にどういう影響を与えるかという点を慎重に検討しながら進めてきたわけでございます。これは、もちろん保証人を保護するために制限を加える必要性があるということと並びまして、過度に制約をすることによって融資が滞ってしまってはかえって困ると、そういう配慮もあったわけでございます。
 これは、その他の契約、債務に対する根保証を制限するかどうかという場合につきましても問題は同じでございます。
 確かに、賃貸借契約につきまして相当広く保証人が付いていると思います。賃貸借契約と申しましても、それこそ間借りの場合から大企業の本社ビルの賃貸借契約というようなものまで様々なものがございますし、その保証の態様も相当多岐にわたっているのではないかと思われます。
 そういう場合に、保証人保護のためにどの程度の制約を加える必要があるのか、また逆に、どのような制約を加えるとその賃貸借契約に影響があるのか。すなわち、保証人を付けることが困難になるということから、賃貸借契約を嫌って賃貸物件が減少してしまうというおそれもないわけではございません。
 したがいまして、そのような保証契約に対する制約がどのような影響を及ぼすか、あるいは逆に、そういう賃貸借契約に基づいて保証人がどのような今保護を必要とするような状況にあるのかと、そういうことを十分調査いたしませんと、この保証契約の制限にこの賃貸借契約に対する根保証を加えるかどうかという点、適切に判断できないだろうと。そのためには相当の時間が掛かるというようなことから、今回この貸金等の場合に限って制限をするということとしたわけでございます。
#66
○吉田博美君 時間が掛かるようだったら、じっくり時間を掛けていただいて、またそうしたことも一つの判断の材料にしていただきたいなと思っているところでございます。
 前から申し上げていたんですけれども、当事者間の合意により元本確定期日を定める場合は、その期日を契約締結の日から五年以内としていますが、五年はちょっと長いんじゃないかというような気がするんですけれども、再度お伺いしたいと思います。
#67
○副大臣(滝実君) そのような御意見は確かにございまして、意見募集をした際にもそのような意見が散見されたわけでございますけれども、しかし、大方は五年程度というような感じで法務省としては受け取らせていただいております。
 それからもう一つは、やっぱり事務処理の問題で、多数のこの種の件数があるものですから、その煩雑さを考えるとやっぱり三年では大変だと、こういうようなこともあって五年にさせていただいているような次第でございます。
#68
○吉田博美君 この改正案が成立する以前に結ばれた包括根保証についてどのような規制が及ぶかについては先日お伺いしたところでございますが、既存の保証契約に対し改正法の規制がどのような形で及ぶのか、改めて整理してお聞きしたいと思います。
 まず、この改正案は、書面の作成が義務付けられることになりますが、既存の契約はどのように扱われるのでしょうか。
#69
○政府参考人(房村精一君) 改正法では、書面で作成をしない場合には無効となってしまうわけでございますが、これをそのまま既存の契約に適用いたしますと、いったん有効にした、成立した契約が無効ということになりまして、当事者に不測の損害を与えるということが懸念されるということから、今回の法案におきましては、書面によって作成しなければならないという条項につきましては既存の契約には適用しないということとしております。
#70
○吉田博美君 適用しないといえば、それはそればかりかも分かりませんけれども、何となく、せっかくいい法律を成立させても、その部分が救われないというのもちょっと問題点があるんじゃないかなという気がするわけでございますので、またこの後検討していただかなきゃいけないんじゃないかなと思いますが。
 極度額の定め及び元本確定期日に関する規制について、既存の契約はどのように扱われるのでしょうか、今度は。このことについての質問でございます。
#71
○政府参考人(房村精一君) 今回の法律におきましては、保証人の保護を図るために根保証においては極度額を定めなければならないと。また、元本確定期日について定めのない場合にはもう三年ということにして、極度額及び元本確定期日が必ず定まっているような状態にするということを考えているわけでございます。
 ただ、既存の根保証契約にそのまま適用いたしますと、先ほども申し上げましたが、いったん有効に成立した契約が無効になってしまう、あるいは本法施行と同時に確定してしまうというようなことになりますと、これは当事者双方にとりまして、新たな融資が得られなくなる、あるいは融資をしようにも保証人が付かない融資ということになってしまうということで、不測の損害を与えるおそれがあるということからそのまま適用するということはいたしませんで、ただ、従来の極度額も期間も定まっていない契約をそのままいつまでも放置するということでは、これは保証人の保護に欠ける面があるのは御指摘のとおりでございますので、今回の経過措置といたしまして、既存の根保証契約は原則として改正法の施行日から最長三年で元本が確定すると、こういうこととしております。
 この三年経過前に確定期日が定められているような場合には、当然その定められた確定期日で確定をすると、三年より後の確定期日が仮に定められたとしても、それは三年の経過で確定をすると、こういうこととしております。
 ただ、例外的に、極度額が定められていて、かつ元本期日も、元本確定期日も定められている、その定められている元本確定期日が改正法の施行日から五年を経過しているような場合、そういう場合には五年までは確定する日を遅らせる。すなわち、五年たったところで確定をすると。ですから、通常は三年で確定いたしますが、今申し上げたように、極度額と元本確定期日の両方の定めがある場合には最長五年ということになる場合がございます。
 以上が今回の経過措置の内容でございます。
#72
○吉田博美君 分かりました。
 次に、元本確定事由について、既存の契約はどのように扱われるのでしょうか。例えば、保証人が新法の施行前に死亡した場合と施行後に死亡した場合に分けて御説明願います。
#73
○政府参考人(房村精一君) 今回の法律におきましては、保証人の保護を図るために元本確定事由として三つの事由を考えまして、それが生じた場合には元本が確定するとしているわけでございます。
 この元本確定事由につきましては、原則として既存の契約にも適用するということとしております。したがいまして、既存の契約につきまして、本法施行後に例えば保証人が死亡した場合、そういう場合には保証人が死亡した時点で確定をすると。これはもう法律をそのまま適用すればよろしいわけでございます。
 ただ、問題は、御質問にもありましたように、施行前に死亡していた場合どうなるのか。そうすると、その死亡した時点ではまだ確定事由になっておりませんので確定していない。確定していないことを前提として金融機関等も融資をするわけです。その後、本法が施行されたときに、さかのぼって死亡のときに確定していたということになりますと、これはもう当事者の予測を害しますので、そういう場合につきましては、経過措置として、この改正法の施行日に確定事由が生じたとみなしてその時点で確定をさせます。
 ですから、できる限りその保証人の保護を図りたいということと同時に、融資時点においては保証が付くと思っていた金融機関も保護しなければなりませんので、その調和を、その確定事由が施行前に生じている場合には施行日に生じたものとみなすということによって調和を図ると、こういうことを考えております。
#74
○吉田博美君 いろいろな中で御検討されていることだと思いますが、いずれにしても、その保証人の本当に善意のその行為が地獄に落ちるというようなこともありますものですから、これからもいろいろな中でケースが出てくると思いますが、変えるべきところは変えていかなきゃいけないんじゃないかなということを改めて感じているところでございます。
 次に、法務省の所管する法律で、片仮名、文語体で表記されている法律はこの民法のほかにどのようなものがあるのでしょうか。
 また、その法律の現代語への書換えのスケジュールはどのようになっているのでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。
#75
○政府参考人(房村精一君) 法務省の所管する中で、特に民事局所管のものについて若干御説明を申し上げますと、今回の民法がその筆頭でございますが、そのほか、主な片仮名法律といたしましては、商法それから有限会社法、信託法、手形法、小切手法、それと非訟事件手続法というようなものがございます。このほかにも細かいものを挙げると相当あるんですが、大きなものとしては今言ったようなものがございます。
 これについての現代化の関係でございますが、御承知のように、商法と有限会社法につきましては、会社法部分につきまして、会社法の現代化ということで来年の通常国会への提出を目指して現在作業中でございます。それから、信託法でございますが、これにつきましても全面改正ということで、現在法制審議会で検討を行っているところでございます。これも成案がまとまりましたらできるだけ早く立法化をしたいと、こう思っております。
 手形法、小切手法、あるいは非訟事件手続法については、現在具体的な改正作業は行っておりませんが、やはり国民にとって分かりやすい法律に直していくということは当然必要なことでございますので、私どもとしても、できる限り速やかに所管する法律についての現代化を図りたいと、こう思っております。
#76
○吉田博美君 とにかく分かりやすくするということが一番大事なことだと思います。幾らディスクローズして、その情報公開しても意味が全然分からないようじゃどうしようもないですから、本当に我々が理解しやすいような形の表現をしていただきたいなという、改めてお願いをしておくところでございます。
 次に、債権譲渡特例法改正案についてお伺いいたします。
 この改正案では、動産譲渡登記がされたときには、動産について民法第百七十八条の引渡しがあったものとみなすとしていますが、その意味をお聞かせいただきたいと思います。
#77
○政府参考人(房村精一君) 現在の民法、この改正法案においても同様でございますが、これは動産に関する物権の譲渡の対抗要件といたしまして、その百七十八条で動産に関する物権の譲渡はその動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができないと、こういう具合に定めております。したがいまして、単に約束をしただけでは第三者に対してその動産を譲り受けたということが主張できないということになりますが、この百七十八条によりまして、その動産を引渡しを受ければ、これをほかの人にもその動産、譲り受けたことを主張できると、こういうことが定められているわけでございます。
 従来は、この引渡ししか対抗要件の方法がなかったわけでございますが、今回のこの債権譲渡特例法の改正によりまして動産譲渡登記制度が設けられますと、動産についても譲渡登記が可能になります。その登記を受けた場合に、この百七十八条の引渡しを受けたのと同じように第三者に対抗することができると、こういうことを規定するために民法第百七十八条の引渡しがあったものとみなすと、こういう規定の仕方をしたものでございます。
 ですから、ここで言っておりますことは、登記と同時に対抗要件が備えられると、第三者に対して主張することができると、こういうことをその法律効果としては定めていることになります。
#78
○吉田博美君 民事局長が法律の方の専門でございますから、この質問をしてもいかがなものと思いますが、あえてお聞きしますけれども、この改正案によって動産譲渡登記の制度はどの程度利用されると見込んでいるのでしょうか。
#79
○政府参考人(房村精一君) これは、今回のこの法改正作業の前提といたしまして、経済産業省が一般事業会社あるいは金融機関を対象といたしましてアンケート調査をしております。
 そのアンケート調査結果でございますが、この場合、融資に際して金融機関から担保の提供を求められた場合に、今後企業の有する在庫や機械設備等の動産を活用して資金調達の道を広げると、こういう回答をした会社が事業会社の中で四二%を占めております。回答者数が三千八十二社で、そのうち千二百九十四社がそういう積極的に動産担保を活用していきたいと、こういうことを言っております。
 また、金融機関について見ますと、これは五一・九%の金融機関が今後そういう動産を担保とする融資をしていきたいと、こう答えております。金融機関二百十社中の百九社がそういう前向きの回答をしております。
 また、登記制度についてですが、資金調達の道を広げるために動産の譲渡を登記、登録する新たな制度を創設することについて意見を伺ったところ、事業会社の中では五五・七%、三千六十六社中千七百九社が望ましいと、こういう回答を寄せております。
 また、金融機関について見ますと、実に九二・四%、二百十社中百九十四社の金融機関がそのような登記・登録制度を創設することが望ましいと、こういう回答を寄せております。
 したがいまして、こういうことから見ますと、今回の動産譲渡登記制度についてはそれなりの社会的なニーズはあるのではないか。したがいまして、相当程度の利用があるのではないかと期待しております。
#80
○吉田博美君 かなり利用されることが私どもも期待するところでございますが、この改正案の施行前にされた動産又は債務者不特定の将来債権の譲渡について、施行後において動産譲渡登記又は債権譲渡登記をすることが可能なのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。
#81
○政府参考人(房村精一君) 今回の経過措置におきましては、本法律による改正後の債権譲渡特例法の規定は本法律の施行前に生じた事項にも適用するとしておりますので、施行前になされました譲渡について登記をするということも可能でございます。
#82
○吉田博美君 この改正案の施行前に占有改定によって対抗要件を具備した動産の譲渡担保について、改正案施行後に動産譲渡登記をされた場合、どの時点で対抗要件を具備したことになるのでしょうか。
#83
○政府参考人(房村精一君) 先ほど申し上げましたように、改正後に改正前の譲渡についての登記をすることも可能でございますが、施行前に譲渡がなされ、かつ占有改定によって既にその時点で対抗力が生じているということになりますと、施行後に動産譲渡登記をした場合に、既に備えられている対抗力がそれで失われるということではございませんので、対抗力としては既に施行前の占有改定の時点からの対抗力を主張できると、こういうことになります。
#84
○吉田博美君 債務者不特定の将来債権の譲渡についてでございますが、債務者は譲渡された債権が自分に関係あるかどうか分からない場合が生じるのではないでしょうか。この場合、債務者を保護する手段を講じる必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
#85
○政府参考人(房村精一君) 債権譲渡登記をいたしまして第三者に対する対抗要件を備えたという、そういう債権につきましても、債務者にこれを主張するためには債権の譲渡人又は譲受人から登記事項証明書をその債務者に対して交付するということが必要になります。したがいまして、債務者としてはその登記事項証明書を見て自分の債権が譲渡されているかどうかを判断するということになりますが、債務者不特定の将来債権につきましては確かに債務者の氏名は記載されておりませんので、通常の債権のように自分の名前がそこに書いてあるということで直ちに確認できるということではございません。
 ただ、この債務者不特定の将来債権の譲渡登記につきましても、当然債権を特定できるだけの事項は登記に記載されているわけでございます。例えば、譲渡人の表示、債権の種別、債権の発生原因、それから債権の発生年月日、これが一定期間にわたる場合にはその始期と終期、こういったものが記載されておりますので、その債権の当事者である債務者としては、その記載を見れば自分に対する債権がこの譲渡された債権に含まれているかどうかということは当然に分かるような仕組みにはなっております。
 万一、例えば譲渡人と譲受人との間で譲渡の有無あるいはその譲渡債権に問題の債権が入っているかどうかというような点に争いがあるというようなことがあって債務者として判断ができないような場合には、これは民法の弁済供託という手段が用意されておりますので、そのようなことを考えますと、特に債務者としてそういった不安の念を持たれる必要はないだろう、心配はないだろうと、こう思っております。
#86
○吉田博美君 次に、将来発生する債権と既に発生した債権とを合わせて譲渡する場合には、譲渡に係る債権総額を登記事項として記録をしないこととしていますが、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
#87
○政府参考人(房村精一君) 現在の債権譲渡登記におきましては、譲渡を特定する一要素といたしまして、その譲渡に係る債権総額を登記事項としているわけでございます。その場合、将来債権が入っている場合には見積額ということでその額を出していただいているわけでございますが、将来債権の見積額というのはあくまで見積りでございますので、実際に発生する債権額と食い違いが生ずるということが一般でございます。
 そうなりますと、登記されている額と実際に生じた額が食い違った場合に利害関係人に混乱を招くおそれがあると、そういう指摘もかねてあったわけでございますが、今回、特にその債務者不特定の債権についても登記を許すということといたしましたので、その点を検討を加えまして、やはりそのような混乱を招かないように、この際、将来債権譲渡の場合には債権総額を登記事項としないということとしようと、こうしたわけでございます。
#88
○吉田博美君 先ほど副大臣の方に、元本確定期日が五年じゃ長過ぎるんじゃないかということを申し上げましたら、いや、事務的な量が増えてきてそれはなかなか大変だから三年じゃ難しいというような御答弁でございましたが、この改正案により法務局の登記官や法務事務官の業務量が大幅に増大すると思いますが、その点についてはどのように対処されるのでしょうか。
#89
○政府参考人(房村精一君) 従来ない新しい登記の仕組みを作るわけでございますので、当然業務量の増加ということは予想されるところでございます。
 ただ、従来の債権譲渡特例法もそうでございますが、今回の動産譲渡登記につきましてもコンピューター処理を前提としておりますので、そういったシステム開発を図りまして、できる限り効率的に事務処理ができるようにということを工夫しておりますので、今回の改正後の体制につきましても、そういった効率化を図りまして、適切な処理が可能になるようにという努力をしてまいりたいと、こう考えております。
#90
○吉田博美君 この両改正案によって、従来不動産や個人保証に依存をしていた中小企業等の資金調達が大幅に円滑化されるものと考えますが、両法案の成立に向けた大臣の決意のほどをお伺いして、私の質問を終わります。
#91
○国務大臣(南野知惠子君) 民法の一部を改正する法律案の方でございますが、それは金融の実務において過大な責任を負いがちな個人保証の保護を図り、保証契約の内容を適正化することを目的とするものであります。また、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案では、動産譲渡の公示制度を整備することによりまして、企業の資金調達の円滑化、多様化を図る、それを目的としているものでございます。
 このように二つの法律案は、両者相まって、新たな企業金融の在り方に関する法的基盤を整備しようとするものでありまして、中小企業等の資金調達の円滑化のために非常に重要な意義を持っているものと認識いたしております。
 そこで、私といたしましても、両法律案の早期成立とその速やかな施行に向けて、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思っております。
#92
○簗瀬進君 二案についての、私も、さきに千葉議員、そして前川議員が質問させていただきましたが、締めくくり的に御質問をさせていただければと思っております。
 まず、二案のうち、民法の一部を改正する法律案について御質問をさせていただければと思います。
 法務大臣に御見解をお聞かせいただければと思うんですが、私は、この法律、民法の一部を改正する法律案というよりも、むしろタイトルは再起可能な社会作りのための法律と、こういうふうにタイトル自体を変えて国民に大きくアピールした方がいいんではないのかなと、こういうふうに思っております。恐らく、ここに多くの委員がいらっしゃるんですけれども、友人やあるいは今まで応援をした、そういう方の中で、事業に失敗をして夜逃げをしたり、また果てには自殺をしたり、そういう身近な例を皆さんお持ちになっているだろうと思うんです。それだけ我が国の社会というのは失敗をした人に対して厳しい。失敗をしたその瞬間から二度と社会の表舞台には出られなくなってしまう。そして、もうその瞬間から残りはもう第二の、いわゆる表に出られない裏舞台の人生を歩まなければならない。こういうふうな世の中を大きく変えていくための一つの手段としてこの包括根保証を禁止しようと、こういう意味があるんではないのかなと思っております。
 正にそういう意味では再起可能な社会を作っていこうと、こういう大きな目的を持っていると思うんでございますけれども、大臣のその辺についての、この法律についての見方あるいは再起可能な社会作りをしていく御決意とをまず伺わせていただければと思います。
#93
○国務大臣(南野知惠子君) 私も国民の一人が主役となり、努力が報われ、先生おっしゃったように再挑戦できる社会を目指すべきであると、本当にそのように考えております。そのためには、不幸にして事業に失敗した場合にも、そのことが個人の人生の破綻にならないようにするということは、これは一番大切なことではないかなと思っております。個人の人生の破綻とならないよう再起可能な環境を整えるということが図られていかなければならない、大切な事柄であろうというふうに思っております。
 既にさきの通常国会では、破産者の手元に残すことのできる財産の範囲を拡大するということなど、事業者の再起にも配慮した新たな破産法の成立がなされております。来年一月から同法が施行される運びとなっております。さらに、経営者が保証人として過大な責任を負いがちであることが再挑戦の妨げとなっているとの指摘を踏まえまして、今回、包括根保証の禁止等を内容とする法律案を提出させていただいたところでございます。
 法務省といたしましては、今後とも、再起可能な社会の実現に向けた法整備を着実に進めてまいりたいと思っております。先生の御指摘のとおりだと思っております。
#94
○簗瀬進君 再起可能な社会作りを目指すと、そのための一つの施策として破産法の改正が行われました。今回またこの包括根保証の禁止ということで民法の一部を改正する法律案ができたんでございますけれども、そのほかに様々な工夫をして、できるだけ再起可能な社会作りのメニューを充実したものにしていくべきなんではないのかなと思っております。
 これは大臣じゃなくても結構なんですけれども、立案中というようなことで、大臣でももちろん結構でございますが、そのほか更に枝ぶりを豊富にするための新たなメニュー等について御検討中のものがあれば是非御披露いただければと思います。
#95
○国務大臣(南野知惠子君) 先生の優しい御配慮があるというふうに思いますが、法務省では、現在、社会法制の現代化、それを検討いたしております。あっ、社会、会社制、会社法制の現代化、会社法制の現代化と、これを検討いたしております。その中でも、最低資本金の制度を見直して新たな事業を起こすことを一層容易にすること、これは総理もおっしゃっています、一円からでも起こせるよと、そういうことも含めておりますが、破産者であることを取締役の欠格事由といたしていることを見直さなければならない、そういうことも一つの見直しであろうかと思います。
 そういう検討課題が挙がっておりますので、このように、今後とも再起可能な社会を作るために必要な施策を検討してまいりたいと思っております。
#96
○簗瀬進君 実は、この包括根保証の禁止というテーマについては民主党も随分議員立法等で努力をしてまいりました。そういう努力の一環が今回閣法という形で現れたのかなと私どもは評価をさせていただきまして、そういう意味では、若干の問題点等についてはこれから御質疑申し上げますけれども、全体的にはこの法案については賛成ということでいきたいなと思っております。
 ただ、大臣にお願いをしたいのは、今いわゆる再起可能といいますか、再びチャレンジできるという、そういう機会をたくさん社会全体で作っていこうと、こういう機運を大きく盛り上げていただくためには、この民法の一部を改正する法律案ができましたということではやっぱり国民に対するアナウンス効果が極めて低いと思うんですね。先ほどお話にあったように、破産法改正の問題もある、来年は会社法の改正も検討なさっていると、そういうようなものをトータルな一つの大きな取組として再起可能な社会作り、チャレンジャブルな日本と、これを作るということで、これセットにして大きく国民にアピールをし、ある意味では元気を作っていくと、こういうふうな努力も絶対すべきなんではないのかなと思っておりますけれども、そういう点で御所見があれば聞かせていただければと思います、大臣。
#97
○国務大臣(南野知惠子君) いろいろな課題に取り組んでいくためには広報活動も必要だというふうに思っております。そういった、皆さんが利用していただきやすい、目に見えるような形での広報を努力していこうと思っております。
#98
○簗瀬進君 その上で、午前中に三人の参考人の皆さんからそれぞれいろいろな御意見をいただきました。その中で、このいわゆる民法の一部改正する法律案についても、様々な不十分な点とか、あるいはこれからの取組等についての御提言もございましたんで、それに関連をする部分で若干の御質問をさせていただければと思っております。
 私は一番気になるのは、やっぱり極度額を定めさえすれば何でもいいのか、こういうことだと思うんです。これは清水参考人の御指摘の中にもございましたけれども、これを答弁ということで、しっかりと解釈上どうなるのかなと。
 例えば、金額の定めにしても、個人の資産状況からかんがみるととてもその保証人の返済能力が可能とは思えないような超巨額な金額が入っていたらどうなんだろうか。例えば、普通の方に一兆円というふうな金額が定まっていたら、これはもう大変な、もう逆立ちしても難しいという状況がこれ目に見えているわけでございまして、そのような超巨額な極度額が定められていた場合に、これは解釈上、これは事実上その額を定めなかったのと同じなんだということで、ある意味で優越的な地位を利用して極めて不当な契約を締結をさせたというふうな解釈をした上で、このような巨額、合理性をはるかに超えたような極度額の設定は無効であると、こういうふうに解釈をする余地があるのではないのかなと、こういうふうに思っておるんですけれども、御答弁を、解釈について。
#99
○政府参考人(房村精一君) 解釈の問題ではありますが、御指摘のような保証人の支払能力を著しく超える極端な極度額が定められたというような場合には、まあ一般論として言えば、債権者が主たる債務者及び保証人の窮状や事実上の力関係の差異に乗じて契約を締結させたというようなことで、正に御指摘の民法九十条に違反するということで無効とされる可能性は十分あると、こう思っております。
#100
○簗瀬進君 民法九十条、公序良俗に違反するという、その一般条項の適用ということでの無効の余地はあると、そういう御答弁として聞かせていただきましたが、そのような状況が、これは例えば今後もこの法律を運用していく過程で頻繁に起こるような事態があったら、私はこれは立法的にも見直すべきなんではないのかなと。正にそういう意味では、その解釈によって無効ということではなくて、法文の中で今の公序良俗の趣旨というようなものを書き込んでいくというふうな余地はあるのではないのかな。だから、その運用状況をしっかりと見るというふうな観点、それからその上での立法的な更なる工夫というような余地があるのかどうかということで御質問させていただきたい。
#101
○政府参考人(房村精一君) 今回は貸金等についての根保証契約ということにしておりますが、その貸金等の中にも様々なタイプがございます。民法でございますので広く貸金等の契約すべてが対象になっておりますけれども、その契約類型の中には、当事者間の力関係が明らかに違うような場合もあれば、対等な場合もあろうかと思います。
 御指摘のその極度額の定めについて明らかに弊害と見られるような事例が生じた場合にそれにどう対応するかということも、その起きた事象の起き方にもよるのではないか。ある特定の類型の場合にそういうものが見られるのか、あるいは幅広くいろいろな類型で見られるのかと。そういう場合にどういう規制を加えるのが、どのような形の規制が望ましいのか、また規制に違反したときの効果をどう考えるかと、様々なことを考慮しながら対応策は検討していかなければならないだろうと思います。
 いずれにいたしましても、今回初めて制約を加えるわけでございますので、私どもとしても、この制約後の状況を見まして、必要な対応が迫られるということであれば、その点について更に検討していかなければならないと、こう思っております。
#102
○簗瀬進君 さらに、清水参考人のお話の中で、立法的なもう一段の踏み込みをということで二点ほど御指摘があったように思っております。これも大変いい御指摘だと思いますので併せて質問させていただければと思うんですけれども、一つは、いわゆる契約書の根保証人に対する交付義務を定めたらいいのではないのかなというのが一点。それからもう一つ、いわゆる元本確定後、例えば会社経営者が退任をする等でそのままに放置されるような場合もあると、こういう例を引かれながら、一定の場合の根保証人から、その根保証契約から離脱をすると、自らですね、そういう余地も立法的に認めた方がいいのではないのかなと、このような大変いい御指摘があったと思います。
 私自身も全くこれは同感でございまして、先ほど大臣が大変力強く、また高らかに宣言をなさったチャレンジャブルな日本を作ると、こういうふうな理想からいえば、このような立法の工夫ももう一段と踏み込んでやられたらどうなのかなという感じがするんですけれども、これ、まあ立法政策でございますから大臣の方がよろしいのかな。じゃ、どうぞ。
#103
○政府参考人(房村精一君) 私の方からお答えさせていただきます。
 まず、書面の交付義務でございます。
 もちろん、契約に当たりまして書面を作るわけでございますので、両当事者がその書面を持っているということが望ましいことは御指摘のとおりだろうと思っております。
 ただ、そういう意味で、例えば貸金業法等では貸金業者に対して書面を交付する義務を課しているわけでございます。ただ、民法の場合は、特にそういう貸金業者であるとか金融機関であるとかという当事者に限らず広く一般の貸金すべてに適用がございますので、こういうものにすべてに交付義務を課すということはなかなか難しいのではないか。
 特に、その交付義務違反の効力をどう考えるのか。行政法規ですと行政処分その他の段階を付けた効果というものが考えられますけれども、民法で決めますと違反の場合に無効ということになる可能性が非常に高いわけでございますが、これは効果が相当強烈でございます。そうなりますと、例えば保証契約を結んだときの書面の交付義務を課しますと、自後に争いになったときに必ず交付の有無が争われる。そうなりますと、契約をした人は、単に契約書を保存しておくだけではなくて、書面交付した証拠も併せて保管をしていかなければならない。そのような書類の保管ということは、金融機関等の企業であればまだ適切に行うことが可能だと思いますが、純粋の個人に相当長年月にわたるような場合を、常にそういったものを持っていないと法律的トラブルが起こり得るというのはやはり法的制度としてはいささか難しいのではないか。そういうようなこともありまして、今回は交付義務ということについては積極的に認めるということはしておりません。
 それから、その保証人が、例えば会社の役員として保証をしたので退任したときにその元本確定請求権を与えるべきではないかという、確かにそういう大きな事情が変更したときに保証人に確定請求権を与えるということは、今回の法案の審議の過程でも種々意見が出たところでございます。そのような代表的なものにつきましては、この法案で三つ確定事由としたわけでございますが、それ以外のものになりますと様々な事情があり得るだろうと。確かに、役員として保証したけれども退任後も例えば株主であって影響力を持っている、あるいは事実上の影響力が相当ある、親子、例えば親が退任したけれども子供が役員になって親として相当の支配力を会社に持っているというようなこともあり得るだろうと思うわけです。そういう様々な事情を考慮して判断をしていかなければならないわけでありますが、法律の要件としてはなかなか明確化していくのが難しい。
 一方、現在の判例あるいは学説の下におきましても、契約締結時に予想できないような事情変更が生じた場合には確定請求権があると、こういう考え方が一般的でございますので、そういったものを活用すればその個別事情に応じた適切な救済は図れるのではないか。法律で書こうと思いますとなかなか要件等が難しいと、そういうようなこともありまして、今回この確定請求権については見送るということとなったものでございます。
#104
○簗瀬進君 若干の意見の相違がありまして、その交付義務を義務化したからといってその義務違反を直ちに契約全体を無効にするというふうな、それはまあかなり強烈な義務違反のペナルティーを立法化するということでございますから、そこまでに至らない様々な工夫はあると思うんですよね。もちろんそのペナルティーなしの義務規定、訓示規定的なものを置いておくということもこれはあり得るわけでございますので、私はそういう意味では、根保証契約を求める方、受ける方と、これはもう一般的に求める方がかなり優越的な状況の中で契約を迫るわけでございますから、私はそういう意味では、その社会的な公平という形からいってみると、そういう優越的な地位に置かれたものには当然優越の裏側には義務があるよと、ということで交付義務を課しておくというようなことを訓示的に書いておくことだって十分立法論としては可能だと思うんですね。
 でありますから、そういうことで、大臣、立法論でございますので、正に大臣が将来を決めることでございますので、この点についての、特に書面の交付義務等についてはもうちょっと前向きでいていいんではないのかなと思っておりますが、いかがでございましょうか。
#105
○国務大臣(南野知惠子君) もう先生の御心配、そのとおりだとは思いますが、再挑戦できる社会作りに資する施策についてはいろいろと考えていかなければならないと思います。いろいろな御意見がおありだろうと思います。
 御指摘の点につきましては、今、民事局長が御答弁させていただきました。このような法律の体系や法技術的な問題点もあろうかと思っておりますので、今後の検討課題とさせていただければと思います。
#106
○簗瀬進君 是非前向きにしっかりと御検討いただければと思っております。
 それから、先ほど吉田博美議員からも詳細にわたりましてこの法律の施行の前と後ということの様々な問題点、詳細な御質問がございました。私も、やはり法改正後に発生する改正前と改正後の不平等、バランス、これを非常に気になるところでございます。
 特に、貸金債権で遅延損害金という形になりますと、通常でも例えば五、六%の約定利息を定めておった場合でも、遅延損害金になりますと一八%とか二〇%近いかなりの高額な遅延損害金を定められるのが通常ですね。そこで、包括根保証という形になって、従前の人はとにかくその一八%、二〇%ぐらいのかなり高額な遅延損害金をずうっとしょわされた形でこの法律の新しい施行を迎えるという形になりますと、それがもう完全に入った形で例えばRCCの処理に臨まなきゃならないと、こういう事態になるわけですよ。これは私はかなり社会的な不公平感が助長されるのではないのかなと。この部分の手当てというようなものをしていかないと、せっかくいい法律を作っても、むしろ恨みを持つ方の方が増えてしまう、こういうことになりかねない。
 私はそういう意味では、徳政令というわけではありませんけれども、一つのこういうふうないい法律を作るんであるならば、やっぱり社会的な公平というような観点から、以前のものにも場合によっては高度な政治的な判断の中で手を加えていくというふうな、いわゆるならしをしていくというふうな調整もあるべきなんではないのかなと思っております。
 これも本当は大臣に聞きたいところなんですけれども、房村さんで結構ですけれども。
#107
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の点でございますが、この法律が施行された後は、根保証の場合必ず極度額を定めると。その遅延損害金も含めて極度額の範囲内での責任しか負わないということになります。それに対しまして、施行前のものにつきましては特段そういう制約がないというのは御指摘のとおりでございます。ただ、これは施行後で見ましても、確定債務についての保証ということについては特段そういう極度額の定めはございませんので、それは遅延損害金が発生すれば保証人としてもその責任は負わざるを得ない。それから、極度額の範囲内ではあれ、元本についての遅延損害金も当然保証の範囲として極度額に達するまではその責任を負わざるを得ないということは変わらないわけでございます。
 確かに、その施行前と施行後で状況が大分異なってくるわけではございますが、しかし、その保証の場合はその遅延損害金等にまで保証が及ぶというのが原則になっておりまして、これを当事者間の極度額という責任限度額を定める合意があるがゆえに打ち切れるという、そういう法的な構造になっております。
 そうしますと、そういった合意のないものについて、法律で遅延損害金の発生を保証の範囲から外すということが果たして可能なのか、妥当なのかということで、これはやはりかなり難しいのではないか。そのために、もちろん既存の契約をそのまま有効としていつまでも放置するわけにはいきませんので、私どもとしてもできるだけ早く切り替えてもらうということを考えまして、法施行後三年で原則として確定させるというような経過措置を取ったわけでございますが、更に進んで、その遅延損害金については保証の範囲から除外するというのはなかなか難しいのではないかというのが率直な考えでございます。
#108
○簗瀬進君 時間がない状況で、もっと議論したいところでございますが、今の問題はかなり高額な遅延損害金と約定損害金の差の中でこのいわゆる極度額の問題が出てくるということでございますんで、是非とも社会の公平を担保するというふうな観点で、高度な御判断を私としては要請したいなと思っております。
 では次に、債権譲渡の対抗要件の方で、特に私どもは動産譲渡について事実上労働債権の引き当ての部分が大幅に減らされることになってしまうと。例えば賃料不払、あるいは退職金がまだ払われていないと、そういう人たちが先取特権というようなことで会社の在庫品等について当てにしておって、現実にそれを換価しようと思ったら実はもう一括して動産譲渡登記の中に含まれていると。こういう形になってしまいますと、正に従業員としては踏んだりけったりの状況になっていくわけでございます。
 こういう観点から、この法律についてはどうもやっぱりなかなか賛成するのは難しいなというのが私どもの考えなんですけれども、一番基になっているのは、労働債権の確保に関する基本的な法整備が整えられていないと、こういう状況だと思うんですね。午前中のお二人の参考人はこれはなかなか難しいんだという一言で片付けられてしまいましたけれども、だけれども、難しいからといって放置できる話では私はないと思います。
 そういう意味では、まず労働債権の確保に関する今後の法整備についてのお考えがありやなしやと、ということで大臣の方にまず聞いてみたいと思います。
#109
○国務大臣(南野知惠子君) 先生の御心配、十分に理解しております。労働債権は労働者の生活の資源であり、その確保をどのように図っていくかということは極めて重要な問題である、それも認識いたしております。
 法務省は、これまでにも一般先取特権によって担保される労働債権の範囲、それの拡大や、また破産手続における労働債権の優先順位の引上げなどの労働債権の確保に関する法整備をも行ってまいりました。
 今後も、社会情勢また経済状況などを考慮しながら労働債権の確保のための法整備について引き続き検討してまいりたいと、そのように思っております。
#110
○簗瀬進君 お言葉ではあるんですけれども、清水参考人の御指摘の中にもあったと思うんですけれども、正にその破産時の労働債権の優先順位を上げるというふうなことを法律でやっておきながら、動産譲渡登記をするという形になると、上げたとしても、先に動産譲渡登記を設定されれば全く意味がなくなっちゃうわけですよ。これは参考人が鋭く御指摘しておりましたけれども、正にその破産法制の際に労働債権の保護を図っておきながら今度はその保護の足下を崩すような法律を作るということはどうもリンクしていない、逆行しているという、そういう遠慮がちなお言葉だったんですけれども、私は、全くこれ論理矛盾なんではないのかと、どうも足下が本当にふらついているなと、こういうふうに言わざるを得ないんですね。いかがでしょうか。
#111
○政府参考人(房村精一君) 確かに、例えば動産譲渡担保で担保に供されますと、その担保に供された財産については先取特権が及びませんので、その限りにおいては労働者の取り分が減るというのは御指摘のとおりだろうと思います。
 ただ、これは動産担保に限りませんで、企業の財産すべてについて担保権を設定すればそういう事態になるわけでございます。かといって、企業の財産について、これを的確に用いて融資を得ることによって企業活動というのは成り立っているわけでございますし、また、そういう企業活動が円滑に進むということを前提として雇用の場も確保されているという関係にもございます。そういう意味では、確かに倒産の局面を見ますと労働者にとって厳しい結果を招くおそれもないわけではございませんけれども、ただ、同時に、企業が円滑に金融を得て企業活動を継続できるということも極めて重要であります。
 現在の日本の社会状況からいたしますと、特に中小企業について、もう不動産での融資をこれ以上望むことが困難でありますし、個人保証については正にそれを軽減しようという法律をお願いしているわけでございますので、その中小企業の金融を確保する手段として、やはり従来担保資産として余り活用されていなかったその動産、在庫等の動産であるとか、あるいは高額な機械設備あるいは将来債権と、こういったものを活用して企業が円滑にその資金を得られるということを保証するということも重要ではないか。また、そのことによって労働者も雇用の場の確保ということでメリットもあるのではないかと、そういうことからお願いをしているわけでございます。
 確かに、倒産の局面を見ますと、そのぎりぎりまでいきますと、先取特権を与えられた労働債権の対象となる財産が減ってしまうということは問題があることは私どもも認識しておりますし、その点についてどういう対応策が可能か。参考人の方々もなかなか難しいということは言っておりましたけれども、私どもとしても諸外国の例も調べて、できるだけその保護の方策を研究したいと、こういう具合には思っておりますが、今申し上げたような中小企業の実情も踏まえて今回の改正をお願いしているということでございます。
#112
○簗瀬進君 私は、一種の哲学の差というようなものを大臣あるいは局長の御答弁の中から感じるんですね。
 労働債権、あるいは会社と労働者の関係とは一体何なんだろうかと。やっぱり、会社というのは会社経営者だけのものではないと思うんですよ。会社はやっぱり従業員があって、従業員がそこで働いていただいて、そして成り立っている存在であるわけで、会社から従業員を取り去りますと、これはもう単なるMアンドAの対象みたいな、買収の対象みたいな、いわゆるアメリカ的な会社観というようなものが背景にもう露骨に出てくると。私は違うと思うんですね。
 でありますから、それはその労働債権というような形で、会社が債務者で労働者が債権者であると、そういう一種の債権者、債務者のその対立構造的なところで見る見方もある。会社は労働者と別物だと、という見方もあるんだけれども、私は、やっぱり会社の存在にとって労働者というのは不可欠な存在である以上は、一種の、日常活動の中で労働者は会社の様々なものについて目に見えない取り分を持っているんだと。一種の会社を共有しているようなものですよ、その共有が労働債権というような形で出ているだけの話であってね。
 そのような構成をすれば、やっぱりそれは今の法制の中では労働債権を別物にするというのは難しいというふうに簡単に結論出されるかもしれないけど、今のように会社と労働者は一体なんだというふうな形で新たな考え方で見れば、労働債権を別のものとして考えていって、それで、これについては例えばスーパー先取特権等の提案もあるわけだし、そういう意味で通常債権とは別の扱いをしていくんだという論理構成も私は可能だと思うんです。
 だから、そのような前向きな形をやらないと、これから激動してどんどんどんどん自然淘汰されていくような状況の中で労働者はもみくちゃになっていく。これ、そのままにしたら社会的な不安が助長されるばかりだと思うんですよ。正に、そういう意味では、社会政策的な見地からいっても、この労働債権の保護というようなものをしっかりとやっぱり幅広のものとして作っていかなければならないと思っているんですけれども、大臣、いかがですか。あるいは局長、その法律見解。
#113
○政府参考人(房村精一君) 労働債権の保護を充実しなければいけないというのは御指摘のとおりだろうと思っておりますし、私どもとしてもその方向で従来努力してきたつもりではおります。御指摘のスーパー先取特権についても、法制審議会でも相当突っ込んだ議論もしたところです。
 ただ、その段階では問題点の指摘の方が多いということから採用するには至らなかったわけでありますが、そういう諸外国、いろいろな労働債権の保護の仕方がございますので、私どもとしてもそういったものも調べ、また今回この法律の影響というようなものも調査しながら、その労働債権の保護の在り方についてはともかく知恵を絞って考えていきたい。
 今すぐ確かにこうすれば大丈夫ですと申し上げられるほど詰めた議論というのはできておりませんけれども、少なくともそういった様々な指摘を受けて私どもとしてはできる限りの突っ込んだ検討をしていきたいと、こう思っているところでございます。
#114
○簗瀬進君 あと五分程度しか残っておりません。二問ほどさせていただきたいと思うんで、答弁の方は簡潔にお願いしたいと思います。
 先ほどのやっぱり清水参考人の指摘の中で、特定はされていると言いながら、かなり不明確な特定の中で在庫品が一切合財取られてしまうという状況に結果としてなってしまうんではないのかなと。
 それで、そういう意味で、公示をする対象としてきちんとしたその特定というようなものが可能なのかなと。もう余すことなく全部一切合財持っていかれちゃうみたいな形になってしまうんではないのかなということを懸念するんですけれども、いかがでしょうか。
#115
○政府参考人(房村精一君) 特定の仕方といたしましては、登記事項としてまず動産の名称、種類、これを登記していただきます。それから、個別のものですね、例えば機械設備のような場合は、型式であるとか製造番号、製造年月日その他の同種類の他の動産と区別するに足りる特質、これを登記していただきます。ですから、この場合にはもう確実に一つ一つ特定できます。
 次に問題になるいわゆる集合動産の場合ですが、この場合には、動産の名称、種類、それから保管場所の所在地及び名称と、こういったものを登記していただきます。例えば、今考えておりますのは、例えば電気設備器具類、こういったものの在庫商品をする場合に、電気設備器具類の在庫商品というような名称、種類といたしまして、保管場所として、どこどこの何番地の土地に所在する、例えばその譲渡人の倉庫であれば倉庫、あるいは第三者の所有する倉庫であればその倉庫の名称と、そういったようなことを記載していただくという形で、その包括的に一切合財というような登記は認めないというつもりでおります。
#116
○簗瀬進君 ただ、やっぱり即時取得が可能だというふうなこともございまして、やっぱり倉庫の中から出たり入ったりすると。先ほどの参考人の御指摘の中にも、しっかりとその担保物品を管理するためにはかなり日常的なチェックしなきゃならないと。そのチェックの中で、会社がいつも何か見張られているという、そういう監視状況を作っていかないと駄目な話で、その結果として担保権者からの会社支配といいますか、不当な影響力行使がされてしまうということがちょっと問題だなというような御指摘もあったんですけれども、この点はどうでしょうか。
#117
○政府参考人(房村精一君) その点は、金融の実務慣行の問題としまして、従来の、例えば不動産であるとか保証人の場合には、その企業の営業活動の内容に余り着目しないで、最終的には物の価値あるいは保証人の資産ということで融資をしていた。それが、今後はそういう形から企業の収益力に着目した融資に切り替えていくべきだと、こういうことが金融庁等から指摘をされているわけでございます。その動産、特に在庫商品を担保にするということの意味は、正に在庫商品がその収益を表す。ですから、在庫商品を担保に取るということは、正に収益に着目した融資になるわけです。
 ですから、その収益の変調を絶えずウオッチ、モニタリングする必要があります。在庫は正に動きますので、そういうどうしても監視といいますか、モニタリングが必要になってくる。それが言わば新しい金融手法と一体となって利用されるという、そういう見通しでございます。
#118
○簗瀬進君 最後に、時間もないところで、担保の評価とか現実に換金化していくというその処分手続が現実に今の社会できちんと確立をされているのかなと、マーケットがちゃんとされているのかなと。いわゆるバッタもん的な処理しかされずという形になると、本当に、乗っ取り屋という話がありましたけれども、やらずぼったくりの世界になってしまう。この辺が一番懸念をされるところでございますけれども、それについての現状と今後の育成策等について聞かせてください。
#119
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、在庫品等を担保に取った場合、その流通市場あるいはその適切な評価、こういったものについて現在の日本ではまだ不十分だろうと思います。これはマスコミ報道等でもその点が指摘をされております。
 ただ、同時に、今後の方向として、事業会社、金融機関とも動産担保等の活用に前向きな姿勢を示しておりますし、そういう前向きの姿勢に応じてそういった流通市場の整備あるいは評価会社等に名のりを上げているところもございます。今回のこういった法整備がなされますと、従来よりも当然動産担保というものの利用が増えるだろうと思いますので、この今回の法案の成立というのはそういった環境整備を促進するということも期待されるわけでございます。
 したがいまして、そういった、この法整備だけで直ちにできるということではございませんけれども、法整備と併せてそういった周りの促進策が相まって、全体としての金融慣行が変わっていくのではないかと、こう思っております。
#120
○簗瀬進君 質問時間が過ぎましたので、最後に労働債権確保のための基本法制の整備を切にお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
 以上です。
#121
○木庭健太郎君 それでは、幾つか確認の意味で御質問をさせていただきたいと思います。
 まずは民法の改正の方でございますが、議論になっている極度額を定めなければならないということが今回の問題でございますが、この極度額について、これは融資の元本だけでなく利息や遅延損害金も含む上限の額ということなのか、確認をしておきたいと思います。
#122
○政府参考人(房村精一君) 極度額は保証人が最終的に責任を負う上限を定めると、こういう趣旨でございますので、元本に限らず、遅延損害金、違約金等も含めたすべてのものを含んだ額と、こういうことでございます。
#123
○木庭健太郎君 そうしていただかなければ、元本のみだったら一体どれだけ責任を負うかという問題になりますから、そこはきちんと解釈をしておいていただきたいと思います。
 それともう一点なんですけれども、これ、保証契約の締結後の事情変更の問題でございます。
 前回の答弁では、現行法上も判例及び学説において保証人の特別解約権が認められているので、それにゆだねるということであったと思いますけれども、今回の法改正でこの極度額を定めることが義務付けられるわけですね。保証期間についても一定の制限が加えられることになるわけです。そういう意味では、保証人の責任は予測された範囲内にとどまるというようなことになってくると。そうなると、これまでよりも特別解約権というものは認められなくなるんではないかなという心配をいたすんですが、これも確認しておきたいと思います。
#124
○政府参考人(房村精一君) 今回、その極度額とそれから期間が定められるということによりまして、契約当初におよそ予想しなかったような巨額の債務を保証することになる、そういう事態は減るだろうと、こう思われるわけであります。したがいまして、その特別解約権で保護をしなければならないような事態の発生そのものが今回の法改正によって減少するのではないか、そういうことは言えるだろうと思います。
 したがいまして、例えば裁判例で出てくる数としては減るかもしれませんが、それは、今申し上げたように、そもそもその保護を必要とする事例が減ったというその結果ではないか。したがいまして、今回の改正後も、やはり契約当初に予想できなかったような大きな事情変更が生じた場合には、裁判においては従前と同様に、特別解約権と申しますか、今回の法改正後の言葉で言えば元本の確定請求権、こういうものが行使できるという判断はされるだろうと。
 そういう意味の、法律的な判断の基準そのものが変わるわけではなくて、適用対象となる事例が減るということではないかと思っております。
#125
○木庭健太郎君 次、進みます。債権譲渡特例法の改正の方に行きます。
 これ、野党、反対のところが出てくるようでございますが、それはもうひとえにこの労働債権保護の形骸化への懸念のようなことで反対のようでございます。ですから、これ、一体、今回これを改正することによって、破産時における動産及び債権の担保、譲渡担保の法律の取扱い、この関係がどうなるのかというのがちょっと分かりにくいところもあると思うんです。ここについてちょっと説明をしていただけますか。
#126
○政府参考人(房村精一君) これは、破産法では担保権者は別除権者として破産手続によらずに権利を行使することができます。したがいまして、破産した会社の不動産に抵当権を設定している場合にはその抵当権の実行ができるというようなことでございます。
 譲渡担保については明文の規定はございませんけれども、解釈上担保権者として、別除権者として取扱いを受けております。したがいまして、債権あるいは動産について譲渡担保に供され、かつ対抗要件が具備しているという場合には、これは別除権者として破産手続によらずに権利を行使できますので、その財団債権等の引き当てにはならないということになります。
 ただ、その譲渡担保が例えば否認権行使の対象となると、こういうような場合には当然否認権の行使によって財団に取り戻されますので、それを前提として破産手続に服すると、こういうことにはなります。
#127
○木庭健太郎君 それだったら、どちらかというと、これ労働債権の保護というのを形骸化するというような方向に取られるんではないでしょうか。その辺はどうですか。
#128
○政府参考人(房村精一君) その点は、御指摘のように、譲渡担保に供された場合に労働債権の引き当てとなる財産が減少するというのは否めない事実だろうと思います。
 再三申し上げておりますけれども、確かに倒産まで至った場合を考えますと、そういう譲渡担保等で財産が活用された場合に、その引き当てとなる財産が減少してしまって労働者が不利益を被るというおそれはあるわけでございますが、ただ同時に、何度も申し上げますけれども、現在の日本の企業、特に中小企業の実情からしますと、適切な金融が得られないばっかりに営業としては成り立ち得るのに企業が存続できなくなるという場合が少なからずあるという指摘があるわけでございます。
 倒産してしまいますと、多少財産がありましてもその対象となるのはごく限られた未払賃料債権でございますので、そういうことを考えますと、やはりそういった企業の資産を活用することによって適切な時期に融資を得ることができて企業が存続できるのであれば、それはそこで働いている労働者にとってもメリットがあるわけでございますので、そういった今の日本の中小企業の置かれた状況を考えますと、私どもとしてはやはりまず企業をつぶさないようなこういう方策というのを考えるべきではないかと、こう思って今回の法案提出をしているわけでございます。
#129
○木庭健太郎君 我々も別にこの法案を提出したことについて党として批判しているわけではなくて、動産をどう活用できるかということは大事だし、中小企業がいろんな意味で、どういう形で融資を受けるかという形で様々なシステムが必要だと、そういう意味では、こういうやり方も必要だということは私たちも願っていることであって、そのこと自体は非常に評価をしているわけです。
 ただ、どうしてもそういう部分の形骸化、労働債権の形骸化についての御指摘もある。さらに、今御答弁聞いている限りは、何とかその保護、午前中も参考人のお話からは、じゃ今何かできるのかといったらできないという話がありました。難しい面があると思います。
 ただ、少なくともこの問題については、これ法制審の部会ですか、この中でも附帯要望事項としてこの指摘があったことも事実です。この要望事項、いわゆる附帯要望事項に対して法務省としてどう今後取り組むつもりなのかと、御答弁をいただいておきたいと思います。
#130
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、この法案の審議をいたしました法制審議会でも労働債権の保護をやはり充実する必要があるということから、附帯要望事項として「企業の倒産時における労働債権の法律上の保護の在り方については、本要綱案に基づいて立案される法律の施行後における動産・債権の譲渡の公示制度の利用状況等を踏まえ、なお検討することを要望する。」と、こういう要望事項を定めたわけでございます。
 法務省としてもこの指摘はもっともだろうと思っておりまして、私どもとしても、この労働債権の保護の在り方につきましては今後とも研究をしていきたいと。この法律、施行をされました場合にはそういった労働債権の保護の在り方についての研究会を立ち上げ、労働関係の方、あるいは経済関係の方、あるいは学者と、こういった人に入っていただいてその施行状況を見ると同時に、諸外国の状況も調べて、ともかくどんな知恵が出せるのか、そこは本日の参考人の方もおっしゃっていましたように、直ちにこうすればいいとぱっと出るほどのものは現段階ではございませんけれども、そこはやはり多くの人が集まっていろいろなことを議論すれば何かいい知恵が出てくるのではないかと、こう思っておりますので、それは積極的にやりたいと、こう思っています。
#131
○木庭健太郎君 是非、研究もするとおっしゃっているし、諸外国の例も調べるとおっしゃっている。また、研究会をそういう労働関係の方々も交えてやろうとおっしゃっている。是非そういったものを具体的形で早期に立ち上げていただくことがある意味じゃ一番大事なことなんだろうと思います。それは是非やっていただきたいと思いますが、いかがですか。
#132
○政府参考人(房村精一君) それは是非やるつもりでおります。
#133
○木庭健太郎君 ということで、この問題はこれ以上、野党ではありませんのでこの辺で止めさせていただいて、是非そういった懸念を払拭する努力をこれからもし続けていただきたいと。ただ、この法案を早く通す必要性もあると、融資の面では、中小企業の、と思っているということを申し述べ、あと、ちょっと指定法務局の関係について幾つか聞いておきます。
 何を聞きたいのかというと、これ法案そのものの問題なんですけれども、これ、動産・債権譲渡登記の申請受付を行う法案五条に規定する指定法務局となっているんですけれども、これ、具体的にこれはどこの登記所になるのか、なぜ限定しているのかと、この辺もちょっと教えてください。
#134
○政府参考人(房村精一君) この法案で規定しております「指定法務局等」としては、現在の段階では東京法務局を考えております。これは、現在の債権譲渡特例法に基づく債権譲渡登記も東京法務局を指定して、その一局で扱っております。
 なぜ一局で扱うのかということでございますが、不動産の登記あるいは会社の登記の場合には、不動産所在地あるいは会社の本店所在地を単位としてそれぞれ登記を行っているわけでございます。ただ、この債権譲渡あるいは動産譲渡の場合には物件を基準にするわけにまいりませんので、譲渡人を基準にその登記を編成せざるを得ない。ところが、譲渡人の場合、会社であれ、場所が移動するということは可能でございますので、そういたしますと、その登記されているかどうかを調査するのが複数の登記所で扱っていた場合には非常に困難になる、また前後関係で優劣を決めるということも難しくなると、こういうことから、債権譲渡登記、動産譲渡登記、どちらもコンピューター処理をいたしましてデータベースとしてはもう一つのものにする、すべての情報を一つのデータベースで扱うということによって検索を容易にし、前後関係が争われるような場合にはその判断が的確に行えるようにすると、こういう必要性がございますので一つの登記所で扱うということとしたものでございます。
#135
○木庭健太郎君 その点についてはいろいろ意見があったようにも伺っているんです。
 おっしゃるように、コンピューター処理して一か所で扱った方がいいという意見もある一方で、やっぱり企業側にしてみるとやはり一か所なんですかという疑問はある。この辺に対して、将来的な課題も含めて拡充する気があるのかないのかという点が一点と、もう一点は、これは企業法制研究会の報告書の中でこの指摘があったんですよね。もう一つ、この報告書の指摘によると、もう一点あったのは、債権特定のために必要な登記事項が詳細に過ぎるという意見も実際に指摘も出されているんですけれども、この新たな動産譲渡登記や債権譲渡登記に関して、法務省令で定める登記事項、簡素化を図ってほしいというようなこともありました。併せて御答弁をいただきたいと思います。
#136
○政府参考人(房村精一君) 一か所しかないということを問題にする御指摘があったのは私どもも承知しておりまして、今回の債権・動産譲渡の登記制度においては、もちろん登記所に出頭していただくほかに、郵送あるいはオンライン、そういう形での申請を広く認めるという方向で今システムを組んでおります。
 そのほか、複数の登記所に行ってできるようにと、そういうことをしようと思いますと、その登記所間をオンラインで直接結びましてどの登記所で受けた場合においても直ちにそのデータベースに反映できると、こういうシステムまでしなければなりませんので、それについてはさらに今後の検討課題として現在検討をしているところでございます。
 それから、登記事項の簡略化ということでございますが、これは確かに余り詳細であると使い勝手が悪くなるということもございますが、ただ、特定として不十分だと後で対抗関係があるかどうかも分からなくなりますので、そこを見極めながら、今度の動産譲渡については特に新しい試みですので、現在内部的に検討して、でき得る限り使い勝手の良いものにというつもりでおります。
#137
○木庭健太郎君 最後に、大臣にお尋ねしておきます。
 この制度、企業にとってはうまく回っていけば大変利用価値が高いものだと思います、新たな一つの融資手段を得るわけですから。その意味では価値があるわけなんですけれども、一方で、先ほどから御議論になっている労働債権のような懸念の問題があってみたり、もう一方でやはりこれを登記することによって信用不安をというような御指摘もあることも事実でございます。その意味では、なぜこういう法改正をやり、なぜこういう手段を作ったのかということを周知徹底することが何よりこれから大事になってくるんだろうと、こう思います。
 そういう意味では、この点、法務省、是非、どういう考えでこの法改正をやり、しかも、この問題についてどういう形で周知徹底をなさろうと思っていらっしゃるのか、決意を伺って、質問を終わります。
#138
○国務大臣(南野知惠子君) 法務省といたしましては、これまで新しい法律が制定されるたびにいろいろと検討を加えてきておりますが、法務省のホームページへの記載、また担当者による解説書の発行、又は法律関係雑誌への解説記事の執筆、担当者による主要都市での説明会の開催等を行う、実際に制度を利用するという関係団体の協力を得て、その周知徹底を図ってまいりたいと思っております。
 この法律案につきましても、このような様々な手段を用いてその趣旨や内容の周知徹底に遺漏のないよう努めていきたいと思います。先生いろいろと今御検討の案をいただきました。その案を真摯に検討していきながら、多く開かれた形で展開していっていただきたいというふうに思っております。
#139
○木庭健太郎君 終わります。
#140
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案に入る前に、大臣に一点、一言お聞きしたいことがございます。先日、千葉委員からも強い指摘のありました学生無年金障害の訴訟の問題です。
 二十八日に新潟地裁で国に責任があるという厳しい判決が下りました。昨日も原告の方が国会を回っておられまして、私も直接お会いをいたしました。もうこれ以上苦しめてほしくないと、是非控訴しないでほしい、そして一刻も早い救済の法律を作ってほしいという要請がありました。
 千葉委員からの要請があって数日たちましたし、期日はあと二日後に迫っております。相当前向きの検討が進んでいると私は確信をしておるんですけれども、大臣から一言お願いをいたします。
#141
○国務大臣(南野知惠子君) 御指摘のとおり、千葉委員からも御報告をお聞きし、私もいろいろと考えたりいたしておりましたが、今お尋ねの控訴するかどうかということにつきましては、関係機関と協議を重ねております。そして、協議の結果を踏まえて適切に判断していきたいということが御返事でございます。
    ─────────────
#142
○委員長(渡辺孝男君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として秋元司君が選任されました。
    ─────────────
#143
○井上哲士君 是非前向きな結果が出ることを強く期待をしておきます。
 では、債権譲渡特例法について質問をいたします。
 先ほど、登記についてどの程度まで特定する必要があるのかということについては答弁がございました。この特例法ができてから政府系の金融機関が実際登記を行った例を見ましても、店頭在庫のすべてを動産譲渡担保の目的にしたというようなケースもあります。こういうものまで登記が認めることになりますと、債務者の財産がほとんど際限なく根こそぎ担保に取られるという事例が相次ぎかねないと思うんですね。
 法制審の議論の、あっ、失礼しました、中間試案の補足説明で、動産譲渡登記制度における動産の特定の仕方によっては、債務者の財産が広く担保権者によって捕捉されてしまうこととなり、労働債権を始めとする無担保債権の引当財産を圧迫し、あるいは過剰担保としての動産の担保価値の有効利用を阻害するおそれがあると、こういう指摘がされているわけですが、こういう懸念、指摘というものが、この動産の特定の仕方を定めるに当たり、どういうふうに考慮をされていくんでしょうか。
#144
○政府参考人(房村精一君) 例えば特定ということだけで言いますと、譲渡人の持っている動産一切ということでも特定はできてしまうわけですね。正にそういう包括的な特定を許しますと、その持っているものすべてがなってしまう。すべてといったときにその評価が適切にされるかというと、これもまた心配でございます。したがいまして、やはりそういった過度に包括的な譲渡担保の設定あるいは過剰担保になりかねないという、そういうことを避けるためには、集合動産として登記をするにしても、それなりの特定の仕方を要求する必要があると。
 こういうことから、今回の集合動産の登記事項といたしましては、動産の名称、種類、それから保管場所の所在地及び名称と、こういったものを要求することによりまして、それなりの固まりのものに限ると。債務者、あっ、失礼、債務者といいますか譲渡人が持っている動産一切だというような、過度に広範な譲渡登記は許さないと。こういうこととしたわけでございます。
#145
○井上哲士君 今日も朝から繰り返し、根こそぎ譲渡登記によって財産が取られて労働債権の原資がなくなるんじゃないかという、こういう懸念の声が出ました。
 例えば、少なくとも会社財産に軽微とは言えない影響を与えるような登記をする場合には、労働組合なり労働者の代表の同意を必要とすると、こういうことも考えられるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#146
○政府参考人(房村精一君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、確かに労働債権に影響を与えるということは否定し難いわけではございますが、ただ同時に、融資等というのは企業にとって極めて重要な事項で、しかも迅速に行わなければならない場合があるということを考えますと、そういったものにつきまして労働組合等の同意を要求するということはなかなか困難ではないかと。
 例えば、ぎりぎりの状況になった破産法等においても、営業譲渡等について労働組合の意見を聴くというような制度は設けておりますが、更にそれより進んで、個々の財産の譲渡についてそういう制度は設けておりませんし、やはりそれは難しいのではないかと、こう思っております。
#147
○井上哲士君 倒産した企業が再生をしていくという局面を考えますと、例えば小売業では、この在庫を切らさないようにして商売を続けて日銭を稼いでいくと。中には経営者がいなくなって労働組合が自主管理をして再建をしていくというようなこともあるわけです。
 今回の法案で、しかし在庫であるとか様々な機械、こういうものが動産譲渡担保として取られていくということになりますと、そういう企業再生というのは非常に困難になっていくんではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
#148
○政府参考人(房村精一君) 実際に企業再生に携わっている方々に聞きますと、譲渡担保に取られ、例えば在庫商品等を譲渡担保に取られている場合、現状においては、譲渡担保に取った人にとっても必ずしも有利に換価できる流通市場が整備されていないということもあって、その譲渡担保権者も、再生の試みがなされるのであればそれに協力をしてその収益の中から弁済を受けるという方が最終的に有利になると。こういうことを踏まえて、別除権協定のようなものを結びまして、それでその自己が譲渡担保に取った在庫品等を利用して再生のための企業活動を行うことを認めると。こういうことが一般的だと。こういう具合に言われておりますので、御指摘のような場合は、よほど特殊な事情がなければそういう形で協力をしてもらえるのではないかと、こう思っております。
#149
○井上哲士君 そうしますと、朝からの議論で、そういう動産などを売り払ういろんなマーケットなどが今後整備をされていくだろうと、こういうお話でしたよね。それが可能になりますと、今の御答弁とは違うようなむしろ事態が出てくるんじゃないですか。
#150
○政府参考人(房村精一君) それは正に再生計画の内容いかんによるのではないかと。流通市場で処分するよりも、通常は在庫品等はその商品ルートに乗っている場合の方が価値が高いのが一般でございます。
 したがいまして、適切な再生計画が策定されて、その再生のために在庫品等が利用されるのであれば、それを、流通市場が他に整備されたとしても、別途の流通過程に乗せるよりも普通は譲渡担保権者にとっても利益が多いのではないか、また、そういうその適切な再生計画の策定ができなければ企業の再生そのものが難しいのではないかと、こういう具合には思います。
#151
○井上哲士君 そうしますと、この間の一連の倒産法制の改正の流れにどう位置付けるかということになるわけですが、この間のこの整備というのは、やはり再生可能なものをどう応援をするかということがテーマだったと思うんですね。
 そのことの関係と今回のこの法案というのはどう位置付けられるんでしょうか。
#152
○政府参考人(房村精一君) この倒産法制を見直すに当たりまして心掛けてまいりましたのは、再生可能なものはできる限り早期に再生に着手していただいて、企業価値を存続させるということでございます。
 そういう観点からいたしますと、例えば今回の動産譲渡担保等について見ますと、まず再生に着手したときに再生企業が最も難しいと思っているのは新たな融資を得ることでございます。DIPファイナンスということでそれが重視されておりますけれども、なかなか融資が得られない。その担保として、現在やはり比較的利用されていない在庫商品等を再生のためにまず使いたいと、そのための枠組みが欲しいということは、実は企業再生の研究会等でも提言をされておりまして、そういう意味でいいますと、早期に企業再生を図るという観点からしますと、このような新たな融資制度を設けるということは、再生のための武器を一つ増やすことになるだろうと、こう思っております。
 それからもう一つは、先ほども申し上げましたが、動産等についての融資ということになりますと、融資する側も絶えずその収益状況を着目していなければなりません。したがいまして、企業に変調が生じた場合には直ちにその再建のための方策を、融資をした者と融資を受けた者とで協議ができると、こういうメリットがあります。従来の抵当権等の不動産融資あるいは保証人融資ですと、いよいよ企業が駄目になってしまってからおもむろにということが多かったように言われておりますけれども、その点が、そういう意味では早くからの再生に資するという機能もこの動産融資というのは果たすのではないかと、こういう指摘が研究会等でされております。
#153
○井上哲士君 法律が可決したとすれば、その下で労働組合がどう権利を守っていくのかといういろんな知恵を出すことも必要かと思うんですが、例えば労働債権に基づいて労働組合の側がこの動産譲渡登記をしたり債権譲渡登記をすると、これは可能だということですかね。
#154
○政府参考人(房村精一君) 労働債権を持っている側が、者がこの動産譲渡登記を利用することはもちろん可能でございます。
#155
○井上哲士君 それから、これは滋賀県のある労働組合が債権譲渡登記や破産を乗り越えて退職金一三〇%確保したというレポートを読んだんですが、この場合はですね、既に債権譲渡登記がされていたと、その下でその先取特権に基づいて労働組合が差押えをして、その下で交渉をして、その結果、そういう退職金一三〇%確保したということなわけですが、こういうやり方ということはですね、この法改正後も引き続き可能になっていくと、これはよろしいでしょうか。
#156
○政府参考人(房村精一君) それは、もちろん譲渡登記がされた後でも差押えは可能でございますし、またその譲渡が詐害行為取消しあるいは否認権で否定される可能性も十分あるわけでございますので、そういう実益もあるのではないかと、こう思っています。
#157
○井上哲士君 以上、質問は終わりますけれども、既に朝から再三指摘がありましたように、やはり今の本当に厳しい状況の中で労働債権というものがしっかり確保されていくということについては、早急に研究会も立ち上げるという御答弁でありましたけれども、是非早めの検討を強く求めまして、質問を終わります。
#158
○委員長(渡辺孝男君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#159
○簗瀬進君 民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する討論を行います。
 初めに民法改正案でございますが、根保証をする個人保証人を保護するために保証契約を適正化するものであり、民主党が第百五十六回通常国会に提出した中小企業者に対する銀行等の資金の貸付けの適正な運営の確保に関する法律案の内容と合致する部分があることから賛成いたします。
 なお、委員会審議の中で指摘したとおり、法外な極度額の設定を防止する制度の創設、金融機関による融資先への契約内容の説明の徹底などに取り組むよう、改めて政府に要求いたします。
 次に、民法特例法改正案に反対する第一の理由でございますが、動産担保の公示制度が導入されることで労働債権保護が後退するおそれが強いことであります。
 労働債権の一部をあらゆる債権より優先させる保護制度がない、こういう現状の中で担保物件の範囲を拡大すれば、一般先取特権で保護される範囲は縮小し、労働債権として保護されるべき資産が取り崩されることが懸念されます。
 第二の反対の理由でございますが、将来発生する債務者不特定の債務についてまで債権譲渡を公示することにより、労働債権の確保を更に困難にすると懸念されることであります。労働債権を中心とする一般先取特権との均衡が著しく崩れることになります。
 第三の反対の理由でございますが、我が国において、在庫担保を換金する流通市場やノウハウが培われていない現状で、公示制度を設けることにより動産担保による融資が飛躍的に伸びるとは考えにくく、中小企業の資金繰りが直ちに改善することは期待できない点であります。
 総じて、この法案による中小企業の資金調達円滑化の効果よりも労働債権の確保が困難になるという弊害の方が大きいと考えます。企業の倒産時における労働債権の保護する制度を確立することが急務であり、それが実現しない状況で動産譲渡登記制度を創設すること、将来債権を債権譲渡登記の対象とすることには反対であります。
 以上、本法案に反対する理由を申し上げ、討論を終わります。
#160
○井上哲士君 債権譲渡特例法改正案に反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、本法案が、会社が倒産した場合に一定の責任を負うべき金融機関の融資回収可能性を高める一方で、担保を取ることのできない労働者などの利益を害することになるからです。
 本法案は、不動産等これまで担保とされたものに加え、動産や債務者の特定しない将来債権の担保提供の促進を目的とするものです。これでは、倒産時に労働者などへの配当原資として会社に残る財産はほとんどなくなり、特に賃金以外に収入を持たない労働者にとって過酷な結果となります。担保権に優先するスーパー先取特権などと一緒でなければ認められません。
 反対の第二の理由は、本法案が新たな融資提供の促進どころか、資金回収・保全の手段として使われ、金融機関が財産を根こそぎ回収する手段として使われかねないからです。債権譲渡登記制度は、倒産し掛けた企業からの資金回収手段として乱用されていると指摘されていますが、本法案によってこのようなやり方が拡大しかねません。また、一部の企業で融資の可能性が広がる可能性もありますが、全体として貸し渋りに苦しむ中小企業への新規・追加融資につながるとは言えないからであります。
 反対の第三の理由は、本法案によって事業用動産の担保提供が広がりますが、倒産時に会社が経営を続けるために活用できるものがなくなってしまい、民事再生、会社更生など、再生型倒産処理の支障になりかねないからであります。
 民法改正案は、極度額の決め方のルールがない、保証人からの元本確定請求権、貸手の説明義務がないなど不十分な面はありますが、包括根保証を禁止するなど根保証について全く規制のない現状を前進させるものであり、賛成であります。
 以上です。
#161
○委員長(渡辺孝男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 まず、民法の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#162
○委員長(渡辺孝男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
#163
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 保証制度の適正化及び民法の現代語化については、いずれも、国民の日常生活に関連した身近で重要な内容を含んだものであることにかんがみ、その十分な周知徹底に努めること。
 二 保証人の保護の在り方については、契約締結後に事情変更があった場合の負担等にも配慮し、法施行後の実施状況を勘案しつつ、引き続き検討を行うこと。
 三 貸金等債務のみならず、継続的な商品売買に係る代金債務や不動産賃貸借に係る賃借人の債務を主たる債務とする根保証契約についても、取引の実態を勘案しつつ、保証人を保護するための措置を講ずる必要性の有無について検討すること。
 四 契約の書面化、根保証期間の制限、極度額の定め等の今回の改正の趣旨が保証人の保護にあることにかんがみ、保証契約の締結に際し、銀行を始めとする融資機関の保証人への説明責任が十分果たされるよう必要な措置を講ずること。
 五 企業の資金調達の円滑化に資するとの観点から、債権の電子的取扱い等新たな制度に関する法整備についても一層検討を進めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#164
○委員長(渡辺孝男君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#165
○委員長(渡辺孝男君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、南野法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。南野法務大臣。
#166
○国務大臣(南野知惠子君) ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#167
○委員長(渡辺孝男君) 次に、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#168
○委員長(渡辺孝男君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
#169
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 動産・債権の譲渡が企業の倒産時における労働債権の確保に影響を与え得ること等を考慮し、かかる労働債権の法律上の保護の在り方については、本法の施行後における動産・債権譲渡登記制度の利用状況等を踏まえ、今後も引き続き十分検討すること。
 二 動産・債権譲渡登記制度については、その活用状況を常に注視しつつ、必要に応じ、動産・債権の取引の安全及び債務者の保護を図るという見地から、更なる検討を行うこと。
 三 新規融資の拡大に途を開くとの制度趣旨にかんがみ、債権回収の手段として濫用されることのないよう必要な対応を図るとともに、その十分な周知徹底に努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#170
○委員長(渡辺孝男君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#171
○委員長(渡辺孝男君) 多数と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、南野法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。南野法務大臣。
#172
○国務大臣(南野知惠子君) ただいま可決されました債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#173
○委員長(渡辺孝男君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#174
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト