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2004/03/11 第159回国会 参議院 参議院会議録情報 第159回国会 文教科学委員会 第1号
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2004/03/11 第159回国会 参議院

参議院会議録情報 第159回国会 文教科学委員会 第1号

#1
第159回国会 文教科学委員会 第1号
平成十六年三月十一日(木曜日)
   午後零時十二分開会
    ─────────────
   委員氏名
    委員長         北岡 秀二君
    理 事         亀井 郁夫君
    理 事         後藤 博子君
    理 事         鈴木  寛君
    理 事         山本 香苗君
    理 事         林  紀子君
                阿南 一成君
                有馬 朗人君
                大仁田 厚君
                大野つや子君
                扇  千景君
                中曽根弘文君
                橋本 聖子君
                伊藤 基隆君
                佐藤 泰介君
                谷  博之君
                中島 章夫君
                西岡 武夫君
                草川 昭三君
                畑野 君枝君
                山本 正和君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         北岡 秀二君
    理 事
                亀井 郁夫君
                後藤 博子君
                鈴木  寛君
                山本 香苗君
                林  紀子君
    委 員
                阿南 一成君
                有馬 朗人君
                大野つや子君
                扇  千景君
                中曽根弘文君
                橋本 聖子君
                伊藤 基隆君
                谷  博之君
                中島 章夫君
                西岡 武夫君
                畑野 君枝君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   河村 建夫君
   副大臣
       文部科学副大臣  稲葉 大和君
       文部科学副大臣  原田 義昭君
   大臣政務官
       文部科学大臣政
       務官       田村 憲久君
       文部科学大臣政
       務官       馳   浩君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山口 俊史君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関
 する調査
 (文教科学行政の基本施策に関する件)
 (平成十六年度文部科学省関係予算に関する件
 )
 (派遣委員の報告)
    ─────────────
#2
○委員長(北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(北岡秀二君) 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(北岡秀二君) 教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関する調査を議題といたします。
 まず、文教科学行政の基本施策について河村文部科学大臣から所信を聴取いたします。河村文部科学大臣。
#5
○国務大臣(河村建夫君) 第百五十九回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。
 我が国が二十一世紀において活力ある国家として更に発展し、子供たちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り開いていくためには、国家百年の計に立ち、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指した改革を積極的に進めていくことが極めて重要であります。
 その大きな道筋は既に一昨年八月に人間力戦略ビジョンにおいて取りまとめられており、私といたしましても、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、画一と受け身から自立と創造へという基本理念の下で、初等中等教育から大学までを通じた教育の構造改革を進めてきたところであります。この人間力向上のための戦略ビジョンについては、知育、徳育、体育のほか、食育も重視しつつ、その内容の充実を図りながら、引き続き確かな学力や豊かな心の育成、知の世紀をリードする大学改革などにしっかりと取り組んでまいる所存であります。
 物の豊かさの中で心の豊かさをいかにはぐくむかが現在の教育の大きな課題となっております。私といたしましては、今求められている教育の構造改革を更に進める観点から、特に次の五点に重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
 第一に、教育の根本を定める教育基本法の改正については、昨年三月の中央教育審議会の答申を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、また与党における議論も踏まえながら、教育基本法の改正に精力的に取り組んでまいります。
 第二に、子供たちをめぐる事件、事故が大きな問題となっている近年の状況を踏まえ、本年一月に学校安全緊急アピールを発表したところですが、今後とも学校の安全、安心の確保に組織的、継続的に取り組んでまいります。また、青少年の問題行動の深刻化や家庭や地域の教育力の低下等の課題も踏まえ、今後、地域の大人たちの力を結集し、子供の活動拠点を整備するため、子供の安全、安心な居場所づくりの具体策を早急に実施し、家庭、地域の教育力の再生に取り組んでまいります。また、学校や家庭における食育の充実にも取り組んでまいります。
 第三に、国民の学校教育への信頼を取り戻すためには、子供たちの確かな学力と豊かな心をはぐくむことはもとより、信頼される学校づくりを進めることこそが極めて大切であり、各学校では特色ある取組が積極的に行われておりますが、昨今の子供たちの状況については国民の皆様から不安や懸念の声が聞かれます。
 このため、現在、中央教育審議会において義務教育制度の基本的な在り方を含め幅広く検討いただいているところですが、引き続きその議論を深めてまいります。また、信頼される学校教育制度の確立のため、社会の変化に対応したこれからの学校の在り方について更に幅広い検討を行ってまいります。
 また、教育委員会制度の在り方についても、先般、中央教育審議会に諮問したところであり、その意義や役割を含め精力的に検討を進めてまいります。
 第四に、教育課程実施状況調査など全国的、総合的な学力調査の結果や文化審議会答申等を踏まえ、学習指導要領の不断の見直しを推進し、国語教育、英語教育や理数教育などの一層の充実改善を図るための検討を行ってまいります。
 第五に、これからの社会で活躍できる人材の育成のため、科学技術・学術分野の優れた人材や新たな課題に対応した様々な分野の専門家の育成、キャリア教育の充実に取り組んでまいります。
 なお、義務教育費国庫負担制度については、今国会に義務教育費国庫負担法等の一部改正法案を提出するとともに、平成十六年度から地方の自由度を高めるため総額裁量制を導入することとしております。国の責任により義務教育水準を確保するとの制度の根幹は引き続き堅持しつつ、このような取組により地方の特色ある教育の展開をしっかりと支えてまいります。
 新学習指導要領のねらいは、子供たちに基礎、基本を徹底し、個性を伸ばすとともに、知識、技能に加えて、学ぶ意欲や思考力、判断力等まで含めた幅広い確かな学力をはぐくむことにあります。先般、このようなねらいの一層の実現を図るためその一部を改正したところであり、これを踏まえ、各学校で創意工夫に満ちた取組が行われるよう、教職員定数改善計画を着実に実施し、少人数指導や習熟度別指導など個に応じたきめ細かな指導を推進します。また、学力調査の分析等を進め、学習意欲の向上や指導の改善等をねらいとする学力向上アクションプランを引き続き実施するなど、総合的な施策を進めてまいります。
 豊かな心の育成に関しては、基本的な規範意識と倫理観、公共心や他者を思いやる心など豊かな人間性や社会性をはぐくむことを目指します。このため、子供の居場所づくりによる地域の教育力の向上、学校における道徳教育の充実、奉仕・体験活動の推進を図ります。子どもの読書活動の推進に関する法律の制定もあり、全国の約七〇%の小学校、約六〇%の中学校で朝の読書が実施されており、引き続き読書活動の推進を図ってまいります。また、不登校や問題行動等への適切な対応にも努めてまいります。さらに、すべての教育の出発点である家庭教育の支援や幼児教育の振興にもしっかりと取り組んでまいります。就学前の幼児の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の実現に向け、関係府省等との検討を進めてまいります。LD、ADHD等を含む障害のある児童生徒の状況の多様化等を踏まえ、一人一人の教育的ニーズに適切に対応するための特別支援教育の推進を図ってまいります。
 子供たちの健やかな体をはぐくむため、低下傾向にある子供の体力の向上に取り組むとともに、生活習慣病など子供の健康に関する現代的な課題に積極的に対応してまいります。さらに、栄養教諭制度の創設を内容とする法律案を今国会に提出するなど、心身の健康に重要な食生活の大切さを教える食に関する教育を推進してまいります。
 また、信頼される学校づくりのためには適切な学校評価と情報公開が不可欠であり、各学校への支援に努めてまいります。地域住民や保護者などが運営に参画する新しいタイプの公立学校については、その制度化のための法律案を今国会に提出することとしております。さらに、教員評価システムの改善や十年経験者研修制度の着実な実施など、児童生徒や保護者に信頼され尊敬される、教えるプロとしての教師の育成を図ります。学校施設の耐震補強や改築の推進等にも努めてまいります。
 知の創造と継承の拠点である大学がその期待される役割を十二分に果たしていけるよう、国立大学の法人化を始めとする様々な大学改革が進行中であり、我が国の大学制度の歴史の中でも極めて大きな変革のときを迎えております。
 いよいよ本年四月から国立大学の法人化がスタートします。各大学が自主性、自律性の下で、更なる教育研究の活性化を図り、個性豊かな大学づくりを進めていけるよう、国として必要な準備と支援に努めてまいります。また、国公私立を通じ、競争的な環境の下で各大学における改革への取組が一層促進されるよう、二十一世紀COEプログラムの推進により世界的な研究教育拠点の形成を図るとともに、特色ある大学教育改革の支援、法科大学院を始めとする専門職大学院の形成支援等に取り組んでまいります。さらに、医療技術の高度化や医薬分業の進展を背景に、薬剤師養成を目的とする大学学部段階の修業年限を四年から六年に延長するための法律案を今国会に提出したところです。
 また、大学の教育研究の質の向上を目指し、本年四月から導入される国公私立大学を通じた第三者評価制度の円滑な実施に取り組んでまいります。あわせて、学校法人制度の整備を図るための法律案を今国会に提出するなど、私立学校の一層の振興に努めるとともに、教育を受ける意欲と能力のある者の学習機会を確保するため、奨学金の充実に努めてまいります。
 科学技術は、国民の生活や経済活動を持続的に発展させ、また環境問題など地球規模の問題の解決に大きく貢献するなど、我が国の、そして人類の未来を切り開くかぎとなるものであります。科学技術基本法に基づく第二期科学技術基本計画も四年目に入ろうとしております。私としては、政府の研究開発の中核を担う立場にあることを踏まえ、世界最高水準の科学技術創造立国の実現を目指し、科学技術及び学術の振興に力を注いでまいります。
 そのためには、人材が最も重要な基盤であり、その養成、確保は極めて重要な課題であります。このため、人材養成拠点の整備や若手研究者の支援等を総合的に実施します。科学技術・理科大好きプランなど国民の科学技術に対する理解の増進、科学技術・理科教育の充実に積極的に取り組んでまいります。
 次に、新たな知を切り開く基礎研究を推進するため、その中心となる国立大学、大学共同利用機関の法人化に向けて万全の対応を取るとともに、ニュートリノ研究、加速器研究、天文学研究、南極地域観測等の国際水準の独創的、先端的な研究を進めてまいります。さらに、競争的資金の拡充や国立大学等施設緊急整備五か年計画の着実な実施、最先端の計測分析技術・機器の開発といった研究開発基盤の整備に一層の取組をしてまいります。また、大学等における知的財産の戦略的な取得、活用の促進、大学発ベンチャーの創出など産学官連携の推進、大学等を核とし、全国十八か所で展開する知的クラスターの創成など地域科学技術の振興を図ってまいります。
 また、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の分野において、経済活性化に資するみらい創造プロジェクトや、安全、安心な国民生活に大きく寄与する研究開発を重点的に推進します。特に、ライフサイエンスについては、国際的なヒトゲノムの解読作業の成果を生かして、画期的な創薬や次世代のがん治療法のための研究に積極的に取り組みます。環境については、本年四月に東京で第二回地球観測サミットを主催するなど、環境保護と経済成長の両立に貢献してまいります。
 さらに、国の存立基盤となる宇宙、原子力、地震・防災、海洋等の研究開発も戦略的に推進してまいります。宇宙開発については、HUAロケット六号機の打ち上げ失敗等が続いた事態を厳しく受け止め、徹底した原因究明に基づく万全の再発防止対策等を講じ、早期の打ち上げ再開を目指します。原子力については、放射線障害の防止に関する法律の一部改正法案を今国会に提出するなど安全規制の充実を図るとともに、国民の信頼と安全確保を大前提として、原型炉「もんじゅ」などの高速増殖炉サイクル技術の研究開発等を行ってまいります。「地上に太陽を」と言われる核融合エネルギーの研究開発を行うITER計画については、人類の未来のため、日本への誘致に引き続き最大限努力するなど、国際協力により推進してまいります。
 人々が生涯にわたり自己実現を図っていくためには、生涯のあらゆる時期に学習機会を選択して学ぶことができ、その学習の成果が適切に評価される生涯学習社会の構築が重要です。このため、生涯学習の環境整備や大学、専修学校における社会人のキャリアアップのための教育を推進します。また、専修学校や専門高校において企業実習と一体となった教育を実施する実務・教育連結型人材育成システムの導入などにより、額に汗して働くことの大切さなど勤労観、職業観をはぐくみ、明確な目的意識に基づく就業を促す若者自立・挑戦プランを推進します。男女共同参画社会の形成、環境教育や人権教育、情報活用能力をはぐくむ情報教育の充実に努めます。
 本年八月には、オリンピック発祥の地ギリシャのアテネにおいてオリンピック競技大会が開催されます。明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で、スポーツの振興は欠かすことができません。このため、スポーツ振興基本計画に基づき、総合型地域スポーツクラブの育成など国民のだれもが身近にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現や、ナショナルトレーニングセンターの整備等により世界で活躍するトップレベルの競技者の育成を推進します。
 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものです。日本社会の活性化のためには、経済力と並ぶ車の両輪として、文化力の向上を図ることが極めて重要であります。このため、近年、海外でも高い評価を得ている映画を始めとし、我が国の顔となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、文化芸術創造プランや「日本文化の魅力」発見・発信プランを推進します。また、国民が文化ボランティアなどにより自ら積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境づくりに努めます。文化的な景観を保護するための文化財制度の改善や著作権制度の改善を図るための法律案を今国会に提出するとともに、地域文化の振興、国際文化交流や文化財保護についての国際協力等の施策を推進します。あわせて、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう取り組んでまいります。
 我が国が、国際社会において積極的な役割と責任を果たし、世界から信頼される国となることは、極めて重要な課題です。このため、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術など各般にわたり、日本の経験や知見を生かした協力、交流に力を入れます。留学生交流については、昨年、留学生受入れ十万人計画の目標を達成したところですが、受入れ体制や留学生の質の向上にも留意しつつ、留学生受入れの推進を図るとともに、日本人の海外留学支援の充実にも取り組んでまいります。また、英語教育の改善充実を図るなど、英語が使える日本人の育成にも努めてまいります。
 このほか、知的財産戦略の推進、特殊法人改革、公益法人改革、規制改革、構造改革特区等の行政改革、地方分権や地域再生など様々な課題が山積しております。構造改革特区については、地方公共団体や民間の創意と工夫を生かし、教育の活性化や地域科学技術の振興を図る観点から、引き続き柔軟に対応していきます。また、地域再生については、個性ある豊かな地域づくりを支援するため、地域の実情に合わせた制度の見直しや施策の連携を進めてまいります。
 私といたしましては、国民の強い期待を真摯に受け止め、これまでの総括政務次官、副大臣としての経験を生かし、私が敬愛する吉田松陰が鎖国下での海外渡航の試みに際して決意を述べた言葉である「意を決して之を為す」の覚悟で文部科学行政に取り組んでまいりますので、委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますようによろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(北岡秀二君) 次に、平成十六年度文部科学省関係予算について、稲葉文部科学副大臣から説明を聴取いたします。稲葉文部科学副大臣。
#7
○副大臣(稲葉大和君) 御説明申し上げる前に、一言ごあいさつさせていただきます。
 私は、昨年から文部科学副大臣を拝命いたしました稲葉大和であります。
 副大臣といたしまして、科学創造立国の実現はもちろんでありますが、文化の振興にも積極的に取り組んでまいりますので、委員長を始め、委員の皆さんの御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げる次第であります。
 それでは、十六年度の文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十六年度予算の編成に当たっては、教育・文化立国と科学技術創造立国を実現することが極めて重要であるとの観点から、教育改革、科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興にわたる総合的な施策の展開を図ることのできる文部科学予算の確保に努めてきたところであります。
 文部科学省所管の一般会計予算額は六兆五百九十九億二千五百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は一千五百三十六億六千四百万円となっております。
 以下、平成十六年度予算における主な事項について御説明を申し上げます。
 第一は、全国的に優れた教員の確保と配置を担保する義務教育費国庫負担制度について、国の責任により義務教育水準を確保するという制度の根幹を堅持しつつ、第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を着実に実施するとともに、地方の自由度を拡大する観点から総額裁量制を導入することとしており、また、負担対象経費を国として真に負担すべきものに限定する観点から、退職手当及び児童手当を国庫負担の対象外とすることとし、二兆五千百二十八億円を計上しております。
 また、家庭、地域、学校が一体となった子供の居場所づくりについて、放課後や週末の学校等を活用して、子供たちが安全に、かつ安心して活動できる体制を緊急かつ計画的に整備することとして七十億円を計上しております。
 第二は、若者自立・挑戦プランの推進等キャリア教育の充実について、学校全体で勤労観、職業観の醸成を図るとともに、就業にかかわる基礎的な能力を付与する機会を提供することとしております。
 第三は、国立大学等が本年四月に法人化されますが、その移行が円滑に行われるとともに、教育研究活動が着実に実施されるよう運営費交付金一兆三千百二十一億円、国立大学等施設緊急整備五か年計画に基づき、施設整備費補助金等六百九十五億円を計上しております。
 また、国公私を通じて競争原理に基づいた重点的なプロジェクト支援として四百五十億円を計上しております。
 さらに、奨学金事業については、事業費総額で一千三十億円の増額を行い、貸与人員で九万九千人増員するなど、一層の充実を図ることとしております。
 第四は、私学助成について、法科大学院に対する支援を始め経常費助成を中心に総額で四千五百五十六億円を計上するなど、引き続きその充実を図ることとしております。
 第五は、留学生交流の推進を図るほか、日本の経験を生かした国際教育協力を推進することであります。
 第六は、国民のだれもがスポーツに親しむことのできる生涯スポーツ社会の実現、世界で活躍するトップレベルの競技者の育成を図るなど、スポーツ振興基本計画を推進することとしております。
 第七は、文化力の向上を図ることとして、「日本映画・映像」振興プランを始めとする文化芸術創造活動に対する支援など、文化芸術立国プロジェクトの推進を図るほか、文化財の次世代への継承と国際協力の推進、文化芸術振興のための文化拠点の充実を図ることとしております。
 第八は、大学共同利用機関等で実施されるニュートリノ研究、ALMA計画などの独創的、先端的な基礎研究について、適切な評価に基づきながら着実に推進することとしております。
 また、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の重点四分野への一層の重点化を図ることとして二千百三十四億円を計上するとともに、経済活性化のためのみらい創造プロジェクトを推進するほか、原子力、宇宙・航空、海洋、地震・防災分野については、国として積極的に推進すべき領域として、効果的に推進することとしております。
 特に、国際熱核融合実験炉ITERにつきましては、人類の未来のため、日本への誘致に引き続き最大限努力するなど、国際協力により推進してまいります。また、高速増殖炉「もんじゅ」については、地元の御理解の下、早期に改造工事に着手できるよう努力してまいります。宇宙航空分野については、信頼回復に全力を注ぐこととしております。
 第九は、科学研究費補助金を始めとした競争的資金について、引き続きその改革と拡充を図ることとして二千八百二十五億円を計上しております。
 また、大学等の知的財産戦略の強化を図るとともに、産学官連携の推進を図ることとしております。
 第十は、世界トップレベルの研究者を始めとする科学技術関係人材の養成や、多様な人材が能力を発揮できる環境の整備を図るとともに、科学技術・理科大好きプランの拡充等により人材をはぐくむ社会の構築を目指しております。
 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 なお、これらの具体的な内容につきましては、お手元に資料をお配りしておりますので、説明を省略させていただきたいと存じます。
 以上であります。
#8
○委員長(北岡秀二君) 以上で所信及び予算説明の聴取は終わりました。
 この際、原田文部科学副大臣、馳文部科学大臣政務官及び田村文部科学大臣政務官から発言を求められておりますので、順次これを許します。原田文部科学副大臣。
#9
○副大臣(原田義昭君) 昨年、総選挙を挟みまして、文部科学副大臣を拝命いたしました原田義昭でございます。
 私は主として教育及びスポーツの分野を担当させていただきます。新しい時代を切り開くたくましい日本人の育成を目指して、教育改革を一層進めるとともに、スポーツの振興を図ってまいりたいと思っております。
 大臣から既に所信の表明がございました。今求められる教育の構造改革を更に進める観点から、特に教育基本法の問題については、中央教育審議会の答申、国民的な議論を深めつつ、また与党協議も踏まえながら、その改正に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。
 児童虐待など、子供をめぐる悲惨な事件、事故が頻発している近年の状況を踏まえて、地域の大人たちの力を結集し、子供の活動拠点を整備するなど、家庭、地域の教育力の再生にも取り組みたいと思っております。
 子供たちに食生活の大切さなどを教える食に関する教育、いわゆる食育の推進にも努めたい。学校に対する国民の信頼を取り戻すために、豊かな心の育成とともに、確かな学力を伸ばすということにも積極的に取り組みたいと思っております。
 いずれにいたしましても、稲葉副大臣、馳、田村両政務官とともに、河村大臣をしっかりと支えて、教育・文化立国、科学技術創造立国の実現に向けて努力をしたいと思っております。
 今後とも、北岡委員長を始め、委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願いをいたします。
#10
○委員長(北岡秀二君) 馳文部科学大臣政務官。
#11
○大臣政務官(馳浩君) 政務官を拝命いたしました馳浩です。よろしくお願いいたします。
 大臣、副大臣を支え、また皆様方の御指導をいただきながら、我が国の文教科学行政の推進に誠心誠意取り組まさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
#12
○委員長(北岡秀二君) 田村文部科学大臣政務官。
#13
○大臣政務官(田村憲久君) 昨年、大臣政務官を拝命いたしました田村憲久でございます。
 子供たちに夢が持て、また心豊かな活力ある社会の構築、これを目指しまして、科学技術・学術、また文化、芸術等々の推進にしっかりと頑張ってまいりたいと思っております。
 大臣、また副大臣を馳政務官とともに支えてまいりますので、どうかよろしく先生方には御指導賜りますようにお願いを申し上げます。
 ありがとうございます。
    ─────────────
#14
○委員長(北岡秀二君) 次に、先般本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。後藤博子君。
#15
○後藤博子君 去る一月十三日から十五日までの三日間、鹿児島県に委員派遣が行われましたので、その調査の概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、北岡委員長、亀井理事、山本理事、林理事、有馬委員、中島委員、山本委員、そして私、後藤でございます。
 一日目は、宇宙航空研究開発機構の種子島宇宙センターを訪問いたしました。
 同センターでは、ロケット発射までの工程や、昨年十一月のHUAロケット六号機打ち上げ失敗の原因究明の状況などについて説明がありました。特に、六号機の打ち上げ失敗については重く受け止め、徹底的な原因究明を行うとともに、その対策に万全を期すことによってこの失敗を今後の発展の糧にしていきたいとの強い決意が述べられました。
 当面の目標としては、静止トランスファー軌道への投入に必要な四トン程度のロケットの信頼性を向上していくことですが、将来的には宇宙ステーションの活用も視野に入れ、衛星積載能力を六トンないし八トン程度にまで増強させる必要性が挙げられました。また、我が国は諸外国に比べてロケット打ち上げ回数が少ない状況にあることから、今後実績を重ね、打ち上げ技術の蓄積と確立を図ることが必要であるとのことでした。
 その後、竹崎総合指令棟、大型ロケット発射場、大型ロケット組立棟などを視察し、そのスケールの大きさに驚くとともに、世界水準にある技術力に誇りを感じた次第であります。
 二日目は、まず屋久島世界遺産センターを訪問いたしました。屋久島は、平成五年に世界遺産に登録されております。
 同センターは、屋久島の自然環境の調査研究、自然遺産の意義や保全の必要性の普及啓発などを行っております。施設内には、子供たちが自分で手を動かして屋久島の自然について楽しく学習できる展示や、訪問者が屋久島の自然の様子について情報交換を行うための掲示板など、一般の訪問者が主体的に学ぶことができる展示もありました。
 続いて、屋久島環境文化研修センターを視察いたしました。
 同センターは、平成八年に設立され、様々な環境学習プログラムの実施やガイドの養成などを行っております。特にガイドの養成については、ガイド急増に伴う質の低下が問題になっているため、一層努力していきたいとのことでございました。
 センターの運営は、県、屋久町、上屋久町及び屋久島環境文化財団の職員などにより行われており、年間約五千五百万円掛かる施設管理費は全額県が負担しております。
 同センターではさらに、屋久島に関する書籍が置いてある自然ライブラリーや研修者が安価で利用できる宿泊棟などを視察いたしました。施設は木のぬくもりを感じさせるものであり、自然の中でいやされながらの研修は、豊かな感性をはぐくみ、心にしみ入る学習ができると感じました。
 午後は、高度へき地校に指定されている上屋久町立永田小・中学校を訪問いたしました。
 同小学校は、三・四年生が複式学級であり、児童数は四十三名、中学校は生徒数十九名であり、児童生徒数は今後更に減少する見込みであります。卒業後は、八割の生徒が島内の県立屋久島高等学校に、二割が鹿児島市内の高等学校に進学しております。
 小学校では、かめんこ留学という山村留学の取組を行い、本年度の十六名を含めて、平成九年度の受入れ開始から述べ七十三名の児童を全国各地から受け入れております。なお、里親家庭は、保護者から月四万円、町から月三万円の補助で山村留学生を受け入れております。山村留学生たちは、作物祭等を通じて地域について学習する永田小フェスティバルなど、学校や町が主催する様々な行事にも参加します。
 また、小中学校が同じ校舎を利用している点を生かして、小中合同運動会の実施や、中学校の教員が空き時間を利用して小学校で指導する取組も行われております。発達段階に応じたきめ細かな指導が可能になるとともに、中学校の教員にとっては、小学生に分かりやすく教えることが中学生への指導にも役立つとのことでした。
 このように、永田小・中学校では、家庭とのつながり、友達とのつながり、地域とのつながりというように、日常的な体験を通じてつながりの大切さを教育していることを実感しました。澄んだ空気と緑、そして何より熱心な先生と温かな地域の人たちに囲まれ、生き生きとして元気な子供たちの姿が印象的でした。
 次に、鹿児島県及び県教育委員会から、県勢の概要及び県の教育に対する取組について説明を受けました。
 鹿児島県は、離島・小規模校を多く抱えており、約半数の小中学校がへき地校に指定されております。教師用手引の配付や、ホームページでの情報交換によってへき地教育の充実が進められており、四割弱の小学校にある複式学級を解消するため、教員を増員する必要性が述べられました。このほか、高等学校卒業後の就職対策の充実、一般市民に対する学校の自由参観の実施など、学校と地域との連携強化にも取り組んでいるとのことでございました。
 さらに県からは、義務教育費国庫負担制度の在り方を検討する際の地方への配慮、へき地教育の充実、宇宙開発の推進など、六項目にわたる要望がなされました。
 三日目は、まず鹿児島大学を視察いたしました。
 国立大学法人化を四月に控え、その準備状況などについて、学長を始め、副学長、学部長などの方々から詳しい説明を受けました。同学では、法人組織の骨格もでき上がり、学内規則等の整備作業も着々と進んでいるとのことでございました。
 また、同学の特徴として、南九州の拠点校としての役割や国際貢献の視点を大切にするとともに、特に地域への貢献を重視していることが挙げられました。
 具体的には、地域共同研究センターにおける産学官連携の取組、近隣の大学との共同の連合農学研究科における地域農業振興に寄与する取組などが挙げられました。
 また、質疑応答の中で、運営費交付金については、形式的な一律削減に対して大学側の懸念が示されるとともに、基礎研究の振興に支障が生じないよう配慮することの重要性、地域社会に貢献するなど特色を打ち出している地方大学に対する適切な評価の必要性などが指摘されました。
 さらに、全学合同研究プロジェクトとして取り組まれていますBSE対策に関する先端的研究について農学部で説明を受けるとともに、島津家の旧蔵書など地域の歴史に関する資料を展示している玉里文庫を見学いたしました。
 午後は、まず知覧町において知覧武家屋敷群を視察いたしました。
 この町並みは、昭和五十六年、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、地区内には名勝として国の指定を受けた七つの庭園も保存されております。同地区では、地区内の知覧型二ツ家民家の管理を委託されている住民の方から、知覧武家屋敷群の特色、雨戸まわしなど知覧型二ツ家民家に施された先人の優れた知恵と工夫について説明を受けました。
 続いて、知覧特攻平和会館を訪問いたしました。
 知覧町は戦時中に陸軍の特攻基地が設けられた地域であり、同館では、特攻隊員の方々の遺影や遺品のほか、特攻隊員の方々の様子を映した映像を見て、胸が痛くなるとともに、改めて平和の大切さ及び平和教育の重要性について実感いたしました。
 最後に、頴娃町佃の棚田を視察いたしました。
 この棚田は、丘陵山岳が起伏している地形にあるため、明治二十五年以降に開墾されました。しかし、農道がないことなどから、従来のまま維持することは困難であるとして、平成六年度から整備事業が実施され、四百六十七枚あった棚田は百二十七枚に整理されました。
 なお、同地区は、平成十一年、農林水産省による棚田百選の選定を受けており、開聞岳を背景とした景観はすばらしいものであり、日本の残したい風景であると思いました。
 以上で報告を終わりますが、今回の調査に当たり、関係の皆様方に大変お世話になりましたことに対し、この場をおかりしまして厚くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 以上です。
#16
○委員長(北岡秀二君) 以上をもちまして、派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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