2004/03/26 第159回国会 参議院
参議院会議録情報 第159回国会 財政金融委員会 第7号
#1
第159回国会 財政金融委員会 第7号平成十六年三月二十六日(金曜日)
午後二時二十三分開会
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委員の異動
三月二十五日
辞任 補欠選任
樋口 俊一君 円 より子君
池田 幹幸君 岩佐 恵美君
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出席者は左のとおり。
委員長 平野 貞夫君
理 事
入澤 肇君
野上浩太郎君
森山 裕君
大塚 耕平君
続 訓弘君
委 員
上杉 光弘君
尾辻 秀久君
清水 達雄君
田村耕太郎君
西田 吉宏君
林 芳正君
溝手 顕正君
山下 英利君
若林 正俊君
大渕 絹子君
櫻井 充君
平野 達男君
円 より子君
峰崎 直樹君
山根 隆治君
山口那津男君
岩佐 恵美君
大門実紀史君
椎名 素夫君
国務大臣
財務大臣 谷垣 禎一君
副大臣
財務副大臣 石井 啓一君
事務局側
常任委員会専門
員 石田 祐幸君
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本日の会議に付した案件
○平成十六年度における財政運営のための公債の
発行の特例等に関する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
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#2
○委員長(平野貞夫君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。委員の異動について御報告いたします。
昨二十五日、樋口俊一君及び池田幹幸君が委員を辞任され、その補欠として円より子君及び岩佐恵美君が選任されました。
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#3
○委員長(平野貞夫君) 平成十六年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。両案に対する質疑は既に終局しております。
これより両案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#4
○大塚耕平君 私は、民主党・新緑風会を代表して、平成十六年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に反対する立場で討論を行います。初めに、所得税法等改正案について申し述べます。
本法案には、投資促進を図るための租税条約締結に伴う所要の改正や、中小企業育成を企図したエンゼル税制の拡充など、賛意を示すべき項目も含まれてはおりますものの、幾つかの点で是正を要する内容となっております。
第一に、年金税制の問題です。
本案には、公的年金等控除における高齢者特例や老年者控除の廃止など、六十五歳以上の世代への負担増を課す内容が含まれています。諸控除縮小に伴う課税所得の増加によって、国民健康保険や介護保険の保険料負担が増加し、これらを含む負担増は年金受給額三百万円程度の世帯で約二十万円という試算が示されています。
財政難の折から、高齢者世代にも相応の負担をしていただくことは必要だと思います。しかし、今回の年金税制改革案が医療や介護の保険料に影響を及ぼすことは、財務省、厚生労働省とも、本案が提出された後に気が付いた次第であります。準備不足、調整不足と言わざるを得ません。過度な負担増、所管省庁間での意思疎通の欠落に加え、これから正に年金制度改革論議をスタートさせようとしていることをかんがみると、本案の内容は拙速の感を否めず、賛成するわけにはまいりません。
第二に、不動産譲渡に係る損益通算廃止についてです。
本案では、当該措置を本年一月までさかのぼって適用することとしておりますが、これは税制における不利益不遡及の原則に反するものであります。毎年、年度末には損益通算制度を前提とした土地取引が行われてきたことを考えますと、十分な周知期間もなく打ち出され、かつ税制の基本原則に反する本案の内容は、拙速なだけではなく、対応が不適切と考えます。
以上、主な点のみ申し述べましたが、いずれにしても本案に反対するものであります。
次に、公債特例法案に反対する理由を申し述べます。
本法案は、所得税法等改正案がまともに思えてくるほど、余りにもひどい内容と背景を抱えております。
そもそも、当初予算案における歳出の見直し、無駄な歳出の削減が不十分であり、三十兆円以上もの特例公債を発行する大前提が整っておりません。
また、本案には、年金事業等の事務費を保険料で賄うことを認める特例措置を一年延長することが含まれております。こうした対応を認めるには、社会保険庁が最大限の経費削減努力をすることが当然の前提となりますが、実態は全く逆であります。詳細はあえて申し上げませんが、本委員会にかかわる話のみ一つ付言をさせていただきます。
一昨日の財政金融委員会では、年金相談施設建設費という摩訶不思議な名目で多額の予算が計上されていることを指摘いたしました。その際、社会保険庁次長は、相談員の使うブース設置のためという答弁をしましたが、その後の調べで、当該予算は各地の新庁舎建設のための費用の一部だということが判明しました。全く不誠実な答弁であり、こうした事態を放置したままでは特例措置を延長することには同意いたしかねます。
もっとも、谷垣大臣が、保険料収入から充当する事業経費の割合に厳しいシーリングを設けることで国庫負担を軽減し、かつ社会保険庁の無駄遣いにもメスを入れるという一石二鳥をねらっているのなら話は別ですが、衆議院での審議も含め、そういう点に関する谷垣大臣の考え方や決意を聞くことはできませんでした。谷垣大臣には、更に熟慮を重ね、厳しい財政状況の中で就任した財務大臣として、時代に合った職責を果たされることを期待いたします。
また、公債特例法の前提となっている今後の経済見通しに関する内閣府の対応に問題があることは委員各位がお感じのとおりであります。詳細は本会議で申し述べることとしますが、去る三月十一日の予算委員会における内閣府統括官の発言は虚偽答弁であり、国会審議を冒涜するものであります。
その一方、内閣府はモデルや推計結果の詳細を公開することに同意いたしました。今日はこの委員会にはおられませんが、それ自体は竹中大臣の御英断と評価申し上げます。しかし、公開に同意してから既に一週間以上が過ぎています。再三の資料督促に対して内閣府は、今作業中ですと言うばかりか、今日の午前中に内閣府から掛かってきた電話では、いつごろ公開できるか分かりませんとのことです。そうした言いぶりからは、現在推計をやり直していることが歴然としており、予算案や公債特例法の前提である政府の経済見通しの信頼性は完全に失墜したと申し上げざるを得ません。学者でもある竹中大臣には、担当部署の人材と事務体制を抜本的に見直していただきたいと思います。
以上のとおり、公債特例法の内容及び背景は余りにもずさんであり、とても賛成できる代物ではないことを申し上げて、私の反対討論を終わります。
#5
○大門実紀史君 日本共産党を代表して、両法律案に反対の討論を行います。まず、公債発行特例法案について申し上げます。
そもそも、現在の膨大な借金財政は、過去の膨大な公共事業のばらまきや構造改革がもたらした不況による税収減など、政府の誤った政策によってもたらされたものです。本法案は、政策の抜本的な転換もなしに、いたずらに借金だけを増やすという点で反対であります。さらに、年金事務費の国庫負担を引き続き停止しようという点も問題です。本来、国が負担すべき年金事務費をいつまでも年金加入者に負担させるなど、無責任極まりない、言語道断のことであります。
次に、所得税法等の改正です。
最大の問題点は、税の取り方の根本的な考えが間違っていることです。本改正案は、法人税軽減や資産取引の優遇など、大企業や資産家には厚く、老年者控除廃止、年金者控除の縮小など、年金生活者、高齢者に冷たい改正となっています。こんな税の取り方を続けていると、この委員会でも度々議論になったように、所得再分配機能を低下させ、貧富の差が広がる社会を作るだけです。
小泉内閣が向かっている方向は、二十一世紀の新しい社会ではなく、十九世紀の弱肉強食むき出しの資本主義への逆戻りであることを指摘して、私の反対討論を終わります。
#6
○委員長(平野貞夫君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。これより順次採決に入ります。
まず、平成十六年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
#7
○委員長(平野貞夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。次に、所得税法等の一部を改正する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
#8
○委員長(平野貞夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。この際、大塚君から発言を求められておりますので、これを許します。大塚耕平君。
#9
○大塚耕平君 私は、ただいま可決されました所得税法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。
所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 中長期的な財政構造健全化と経済社会の活性化の必要性が一層増大していることにかんがみ、今後の経済動向にも留意しつつ、歳出の重点化・選別化に努めるとともに、税制に対する国民の理解と信頼、税負担の公平性を確保する観点から、課税の在り方についての抜本的見直しを行い、社会経済構造の変化に対応しつつ持続的な経済社会の活性化を実現するための税制の構築に努めること。
一 国際課税全般にわたり、国際的な投資交流の促進と課税の適正化に向けた取組を一層進めること。
一 租税特別措置については、その政策課題の緊急性、効果の有無、手段としての妥当性、利用の実態等を十分吟味し、今後とも徹底した整理合理化を推進すること。
一 急速に進展する高度情報化社会において、経済取引の国際化・複雑化及び電子化等の拡大に見られる納税環境の変化、更には滞納整理事務等を始めとする事務量の増大にかんがみ、今後とも国税職員の処遇の改善、機構・定員の充実・確保を行うとともに、職場環境の整備及び事務に関する機械化の充実に特段の努力を払うこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#10
○委員長(平野貞夫君) ただいま大塚君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
#11
○委員長(平野貞夫君) 全会一致と認めます。よって、大塚君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。ただいまの決議に対し、谷垣財務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。谷垣財務大臣。
#12
○国務大臣(谷垣禎一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。#13
○委員長(平野貞夫君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○委員長(平野貞夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。次回は来る三十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十四分散会