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2004/04/06 第159回国会 参議院 参議院会議録情報 第159回国会 法務委員会 第8号
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2004/04/06 第159回国会 参議院

参議院会議録情報 第159回国会 法務委員会 第8号

#1
第159回国会 法務委員会 第8号
平成十六年四月六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月六日
    辞任         補欠選任
     中川 義雄君     小林  温君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本  保君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                小林  温君
                鴻池 祥肇君
                陣内 孝雄君
                野間  赳君
                今泉  昭君
                江田 五月君
                角田 義一君
                樋口 俊一君
                堀  利和君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     野沢 太三君
   副大臣
       法務副大臣    実川 幸夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  園尾 隆司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務省民事局長  房村 精一君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       文部科学大臣官
       房審議官     清水  潔君
   参考人
       駿河台大学長
       法制審議会倒産
       法部会長     竹下 守夫君
       日本弁護士連合
       会副会長     宮崎  誠君
       東京商工会議所
       中小企業金融委
       員会副委員長   石井 卓爾君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○破産法案(内閣提出)
○破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する
 法律案(内閣提出)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、駿河台大学長・法制審議会倒産法部会長竹下守夫君、日本弁護士連合会副会長宮崎誠君及び東京商工会議所中小企業金融委員会副委員長石井卓爾君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、まず竹下参考人、宮崎参考人、石井参考人の順に、お一人二十分程度で御意見をお述べいただきます。そして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、竹下参考人からお願いいたします。竹下参考人。
#3
○参考人(竹下守夫君) 先ほど御紹介いただきました竹下でございます。
 本日は、当法務委員会で御審議中の破産法案並びに同法案施行に伴う整備法案につきまして意見を述べる機会を与えていただき、大変光栄に存じます。法制審議会の倒産法部会長をしております関係で、破産法案を中心にそのような立場から意見を申し上げます。
 まず、今回の破産法案の倒産法制の全面的見直しにおける位置付けを確認しておきたいと思います。
 御案内のように、倒産法制の全面的見直し作業は平成八年十月に法務大臣の諮問を受けたことに始まるわけでございまして、法制審議会におきましては、倒産法部会を設置いたしまして鋭意見直し作業を進めてまいりました。その成果といたしましては、御案内のとおり、民事再生法、個人債務者再生手続の新設のための民事再生法の一部改正法、外国倒産処理の承認援助法、さらに新しい会社更生法等の基礎になりました要綱案を策定してまいったわけでございます。
 破産法は、再建型倒産法をも含めた倒産関連法の基本法でございます。今回の破産法案は、その意味で実質的には倒産法制の全面的見直し作業の総仕上げとしての地位を占めるわけでございます。
 次に、倒産法制の社会経済的な役割と破産法の全面的改正の必要について申し上げます。
 倒産は、現在では、企業にとりましては市場経済の下で必然的に生ずる競争市場での敗北の結果でございまして、倒産法制はこのような競争市場での敗者が市場から退場する透明、公正なルールでございます。しかし、それは、市場から退場とはいいましても、敗者にも再挑戦の機会を与え、また終局的退場を余儀なくされるときでも、社会的に価値のある事業・資産は、譲渡、移転等により可及的に生かす方法を用意しながら、債権者に可及的多くの公平平等な満足を与える役割を担っておるものでございます。
 他方、個人にとりましても、倒産は、企業倒産に伴って必然的に生ずる労働者の家計の破綻、あるいは消費者信用の膨張に伴ってマクロ的にはこれも必然的に生ずる一定数の消費者の経済的な破綻ととらえることができます。
 そこで、倒産法制は、可及的速やかに社会的復帰の機会を与えるため、社会的に是認される範囲で債務者を過去の債務から解放し、経済生活の再生を図り得るようにすることをその社会的役割として期待されていると申すことができます。
 このような倒産法制の基本を成す破産法の社会経済的使命に照らしますと、現行破産法には種々の課題があり、全面的改正が必要とされてきたところでございます。今般の破産法案は、以下に述べるような主要な課題を始め、他の大小の諸課題にこたえようとするものでございます。
 そこで、課題ごとにその概要を見てまいりたいと思います。
 まず、破産手続全般についての改正の主要な課題と、それに対する破産法案の対応でございますが、第一に、手続の迅速化の要請がございます。
 これにこたえるために、破産法案では、管轄裁判所の拡大ということを決めております。親子会社、法人と代表者などの関連事件の一体的処理、あるいは、一方が民事再生、会社更生事件の場合であっても、他方の当事者に対する破産手続申立てについての管轄を認めて一体的処理を可能にするとか、あるいは債権者が五百人以上あるいは千人以上の場合についての各高裁所在地の地方裁判所、あるいは東京、大阪両地方裁判所の特別の管轄を認める等でございます。
 それから第二に、手続の迅速化のための方策といたしまして、破産債権の調査、確定手続の簡易化を挙げることができます。原則といたしまして書面による調査といたし、異議がある場合には決定手続によって確定をするという方策を取っております。また、配当手続の簡易化も迅速化に役立つ方策として定められております。
 第二の課題といたしましては、手続の実効化。具体的に申しますと、債権者に対する可及的多くの公平平等な満足の実現ということでございます。
 この課題にこたえるためには、第一に、各種の保全処分というものを整備いたしました。強制執行等の中止命令あるいは包括的禁止命令、保全管理命令と、従来、民事再生法、会社更生法で取り入れてまいりました保全処分のほか、さらに否認権のための保全処分というものを設けました。
 それから第二に、破産者の説明義務の強化。その一環として、重要財産開示義務というものを新たに設けることにいたしまして、債権者のために可及的多くの公平平等な満足を実現するために、破産者に強力な協力義務を認めたということになります。
 さらに第三に、事業継続あるいは営業ないし事業の譲渡への機動的な対応ということでございまして、現在の倒産法制は、先ほど申しましたが、一部事業再編法制という意味を持っております。そのために、事業の継続あるいは営業譲渡ということが破産法についても必要になってくるものでございまして、これを裁判所の許可で実現が可能にする。さらには、保全管理人が選任されている場合には、破産開始決定以前であっても裁判所の許可で可能にするということにいたしております。
 第四に、担保権消滅を伴う任意売却制度の新設等によりまして、破産財団の換価に関する規定を整備いたしております。
 第三の課題は、手続の透明化ということでございまして、利害関係人に対する情報開示と手続参加の機会の拡充というものが現在の倒産法制には求められているところでございます。
 そこで、破産法案におきましては、事件に関する文書等の閲覧、謄写等について新しい規定を設け、さらに債権者委員会制度を導入して、債権者の代表者が手続についていろいろ意見を述べ、あるいは情報を収集することが可能なようにいたしております。このほかにも各種の情報提供手段というものを整備しているところでございます。
 さらに第四といたしまして、大規模破産事件への対応ということが求められます。
 御案内のとおり、近年では大型破産事件というものが著しく増加してまいりました。これに対する対応も今回の破産法改正の重要な課題の一つであったわけでございまして、大規模事件に対する管轄の特例あるいは移送の規定を整備いたしました。先ほど申しましたとおり、千名以上の債権者がいる場合には東京、大阪両地方裁判所に言わば全国的な規模での管轄を認める、あるいは五百人以上の場合には各高裁所在地の地方裁判所に管轄を認めるというようなことをいたしまして、さらに、それらの場合には、他の裁判所に係属した破産事件をこれらの裁判所に移送することを認めるということにいたしました。そのほか、代理委員制度というものを民事再生、会社更生に倣って導入いたしました。このほかにも、個別事項において債権者数が非常に多い場合について特別の取扱いをすることを認めております。具体的な説明は省略させていただきたいと思います。
 次に、特に個人破産についての改正の主要な課題と破産法案の対応でございますが、第一の課題といたしましては、自由財産の範囲の拡張ということがございます。これは破産、個人破産者に対しましては、先ほども申しましたとおり、倒産法制一般、さらには、特に破産法では、経済的再生の機会を実効的に保障する必要があり、そのためには自由財産の範囲の拡張、つまり破産者が手元に保持できる財産の範囲を拡張する必要がございます。
 そのために、まず第一に、破産者が保持できる金銭の額の拡張をいたしました。これまでは、民事再生法の規定に依拠いたしまして、標準世帯の一か月の必要生計費を勘案して政令で定める額ということで二十二万円ということになっておりましたけれども、民事再生法の方が六十六万円に差押禁止の範囲を拡張しました上に、更に破産法案ではその額に二分の三を乗じた額ということで実質的には九十九万円、まあほぼ百万円を自由財産として保持できることにいたしております。
 さらに、農業に必要な器具等あるいは漁業に必要な用具等は、これまで民事執行法上は差押禁止財産とされながら、破産の方では自由財産から外れておりましたけれども、これも自由財産化するということにいたしました。
 更に重要と思われますのは、個別の事情に応じてこのように法律で定めました自由財産の範囲を更に拡張することを認めている点でございます。破産者の生活の状況、開始時に有していた自由財産の種類、額、あるいは収入を得る見込みその他の事情を考慮して拡張をできるということにいたしました。
 個人破産についての課題の第二は、免責手続の実効化とモラルハザードの防止でございます。破産者の経済的再生のみを考えれば免責手続を強化するということだけで足りるわけでございますけれども、他方では、モラルハザードを起こしてはいけませんので、そのための防止策を考え、両者の調和を図る必要があるわけでございます。
 この課題につきましては、まず第一に、免責手続と破産手続の一本化ということをいたしました。自己破産の場合であれば、反対の意思を表示しない限り、破産手続の申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなすことにいたしておりますし、また債権者申立ての場合でも、破産手続開始決定から一か月の間に免責の申立てをすることができるということにいたしまして、従来のように破産が終わってから免責の手続に入るというのではなくて、同時並行的に行えるということにいたしたわけでございます。
 さらに、破産手続終了後もなお免責許可の申立てがあってそれについて裁判がなされない間は、破産債権者の個別の強制執行等を禁止するということにいたしました。
 他方、破産者のモラルハザードの防止といたしましては、破産者に対する協力義務を強化いたしました。先ほど説明義務、重要財産開示義務の話をいたしましたが、免責手続中でも管財人の調査に協力するという義務を課しております。さらに、債権者に対しては免責に関する意見陳述の機会を従来どおり保障いたしておりますし、さらに、免責取消しの申立てをすることも可能だということにいたしました。
 さらに、免責不許可事由といたしましては、従来どおり、浪費等による財産の減少とか詐術を用いた信用取引等を挙げておりまして、そのような場合には免責が許可されないということにいたしております。
 個人破産に関する三番目の課題といたしまして、非免責債権の拡張ということを定めております。これは具体的には故意、重過失による生命、身体障害に基づく損害賠償請求権、あるいは婚姻費用の分担義務、子の監護義務、親族間扶養義務等に係る請求権、これらのものはこれまで非免責債権とされておりませんでしたけれども、その社会的な必要性を考えて非免責債権としたわけでございます。
 次に、大きな三番目といたしまして、倒産実体法にかかわる改正の主要課題と破産法案の対応について申し上げます。
 その第一は、各種債権の優先順位の見直しということでございます。現破産法が制定されましたのは大正時代のことでございまして、各債権、各債権者の優先劣後の関係に関する社会的な価値観、意識というものも大きく変わってまいっております。
 そこで、今回その見直しをしたわけでございますが、その第一は労働債権の一部財団債権化でございます。あわせて、労働債権保護のために破産手続中もやむを得ない強い必要性があれば弁済を許可するという制度も導入いたしております。
 一部財団債権化は、御承知のとおり、未払給料債権につきましては、手続開始前三か月の給料債権は財団債権ということで最も順位の高い債権に位置付けました。退職手当の請求権についても、手続終了前に退職した労働者の退職手当請求権は退職前三か月の給料相当分を財団債権としたわけでございます。
 他方で、租税債権の一部破産債権化、と申しましても優先破産債権ということになりますが、ということをいたしました。従来は、破産手続開始前の原因に基づく租税債権でありましてもすべて財団債権ということにされておりましたけれども、一部を破産債権化した、あるいはむしろ財団債権になるものを一部に限ったというふうに申した方が正確かと思います。具体的には、破産手続開始当時まだ納期限の来ていない租税債権又は納期限が来てからまだ一年を経過していない租税債権は財団債権とするといたしまして、それ以外のものは優先破産債権ということにしたわけでございます。もっとも、附帯税等は劣後的破産債権ということで更に劣位に置くということにいたしました。
 それから、倒産実体法に関する第二の課題は否認制度の見直しでございまして、ここでは詐害行為否認とへんぱ行為否認との区別を明確化いたしました。また、適正価格による財産処分の否認を、取引の安全を考慮いたしまして明確に規律をするということにいたしたわけでございます。
 さらに、倒産実体法に関する第三の課題といたしましては、賃貸人が破産をした場合の賃借人の保護の強化が挙げられます。対抗力のある賃借権を持っている賃借人は、破産管財人に破産手続上認められている特別の解除権の対象から除外をするということにいたしまして、解除できないということにいたしました。さらに、賃借人の敷金返還請求権につきましては保護の必要が説かれているところでございますけれども、それに対応するため、賃料債務を弁済する際に将来の敷金返還請求権の確保のため弁済金の寄託を請求できるということにいたしました。
 倒産実体法に関する課題の第四といたしましては、相殺禁止の範囲の見直しということを挙げることができます。取引の安全を害しない限度で債権者間の公平を図るために相殺禁止の範囲を拡大しているところでございます。
 以上の申し上げたようなことが破産法案の対処した主要な議題と、それに対する具体的な対応策でございますけれども、以上述べましたように、今般の破産法案は現行破産制度が当面している主要な諸課題によくこたえているというふうに言えるのではないかと考えております。
 また、同法整備法案もこれにならって、とりわけ民事再生法、会社更生法に実体倒産法及び手続相互間の移行に関する規定を整備するものでございます。これによりまして、平成八年以来続けてまいりました倒産法制の全面的見直し作業が大きな山を越えることになります。そこで、当委員会におかれましては、十分御審議の上、可及的速やかに可決くださるように望みたいと思います。
 以上でございます。
#4
○委員長(山本保君) ありがとうございました。
 次に、宮崎参考人にお願いいたします。宮崎参考人。
#5
○参考人(宮崎誠君) ただいま紹介にあずかりました宮崎でございます。
 この四月一日から大阪弁護士会の会長並びに日本弁護士連合会の副会長を兼任することになっています。
 本日は、倒産事件に代理人あるいは管財人として携わる実務家の立場から意見を申し上げる機会を得ましたことを、大変光栄に存じております。
 この法案についての総論的な考えでありますが、バブル崩壊後の日本経済の低迷を背景として、この十年余りの間、経済的破綻を来す法人及び個人は全国的に急増し続け、法的倒産手続すなわち破産事件を中心とする倒産事件の申立て件数も増加の一途をたどっています。
 今般の破産法改正は、先ほど竹下参考人が言われましたように、平成八年十月以来行われてきた倒産法制の全般的見直しの一環と成すものであり、清算型倒産処理法の基本となる破産法の全面見直し改正ということになります。
 私が弁護士となりました昭和四十年代はもちろん、十数年前までの倒産では、いわゆる民暴に代表されるような暴力団関係者が債権者、債務者を食い物にする事件が多くございました。法的手続による清算、再建は、法人倒産に限ると五%をはるかに下回る程度にすぎなかったものが、関係者の努力により今では法人倒産の三五%近くが法的手続を申し立てるようになり、倒産という厳しい状況下の下においても法の支配が及んできたのは誠に好ましいことと考えております。さらに、今後は法人だけでなく個人債務者の申立てを促進し、厳しい取立てによる自殺などの悲劇を起こさないようにしなければならないと思っております。
 本改正法案は、関係者の工夫により行われてきました破産手続の運用を明文化し、迅速化、合理化を更に図るとともに、他方、実体面においては、現代の社会経済情勢、状況に適応した権利関係の調整を図るものであって、全般的に見れば関係者にとっては有意義な法改正であると考えています。
 法律施行後は裁判所の裁量権が大幅に増えることも踏まえ、日弁連としても裁判所などと協議し、個人債務者のフレッシュスタートのため、更に利用しやすい破産制度となるように協力を惜しまないつもりであります。
 さて、倒産法の各論でありますけれども、先ほど竹下参考人の言われたところにほぼ尽きるわけでありますが、我々弁護士としても、破産手続が個人も法人もその対象とし、法人については一部上場企業から零細企業まで対象としていることから、極めて多様な関係者を扱う倒産手続であるという特徴がございます。こうした破産手続の広範性を踏まえ、改正法案においては必ずしも一律の手続で規律することなく、複数の手続を設けてその中から適宜選択できるものとされ、事案に応じ処理ができるよう手続の柔軟が図られたということが言えると思います。
 具体的には、債権者集会の開催が任意化されたこと、配当の見込みがない場合には債権届出期間や債権調査期間を定めないことも可能となったことなど、従来のまた債権調査が書面による調査も可能とすること、さらに、配当手続におきましても簡易な配当手続や同意配当手続を創設したことなどの改正点が挙げられますが、いずれも妥当な改正であると考えております。
 また、管轄につきましても、親子会社関係等々、関係者間の管轄を柔軟に認めたこと、また費用予納義務を免除する余地、無資力の債務者については費用予納義務を免除する余地を認めたことも利用しやすい倒産法制の観点から妥当な改正であると思います。
 また、倒産手続が迅速に処理され早期に終結を迎えることは、配当を受ける債権者にとっても、経済的再生を図ろうとしている債務者ないし債務者関係者にとっても極めて有益なところであります。改正法案においては、債権者、債務者双方の適正な手続保障を確保した上で、可能な限り手続を簡素化することにより破産手続の迅速化が図られています。
 具体的には、破産債権の届出時期を原則として一般債権調査期日ないし一般調査期間満了までに制限したこと、異議が述べられた債権についての債権確定手続について査定の申立てという決定手続を導入したこと、否認権行使等について決定手続を導入したこと、一定金額未満の動産や債権を破産管財人が換価処分する際の裁判所の許可を不要としたこと、任務終了報告のための債権者集会を書面による報告に代える余地を認めたことなどの改正点が挙げられますが、いずれも妥当な改正であると考えております。
 労働債権の保護の強化も図られています。
 破産するに至った会社の従業員は会社の破産により職を失うことになることから、かかる従業員の未払賃金の請求権や退職金請求権については、十分に保護されることが社会的にも国際的にも要請されてきたところでありますが、労働債権は、破産手続上、一般債権よりは優先性が認められているものの、従来は労働債権に優先して租税債権が財団債権として弁済されるために、破産財団が十分に確保されていない事案では、実質的な保護が図られないことが多いことが指摘されていました。
 改正法案においては、一方において租税債権の一部を財団債権から優先的破産債権に移し、他方において労働債権の一部を優先的破産債権から財団債権に格上げしたことにより労働債権の保護を強化したということについては極めて妥当な解決であると考えております。
 ただ、今後、実務上、このように租税債権と労働債権については、いずれもその一部が財団債権となり、残部が優先的破産債権となるため、各債権について裁判所並びに破産管財人が正確にどの部分が財団債権であるかを把握することが重要となりますが、この点について実務上の混乱が懸念されるところでありまして、この点、裁判所、課税当局との間の運用上の協議を含め、実務上の工夫や配慮を要するところであると思います。
 さらに、現在、数多く利用されております労働福祉事業団による未払賃金の立替払制度による支払とその求償権、これと財団債権化された労働債権との関係については、今回の改正が労働者の実質的な手取り分増につながる運用を期待しているところであります。
 また、労働債権のうち優先的破産債権とされる部分について、生活の維持に困窮するような場合には配当に先立って早期弁済を受け得る制度も導入されましたが、この点も労働債権者の保護の観点から有益と言えます。
 今回の法改正によって労働債権の保護がかなり強化されましたが、一方、会社に資産がない、あるいは資産があっても担保権でほとんど資産が押さえられていて財団が集まらず、財団債権たる給与も支払えない事案も多いわけです。債権の流動化など、近時の担保法制の発展はこのような事案の増加ももたらしているところであります。未払債権の立替払制度の拡充など、是非この機会にお願いをしたいと考えております。
 また、賃貸人破産の場合における賃借人の保護の強化、これにつきましても、突然の破産によって地位を脅かされる賃借人の保護の観点からは是認できるところであります。
 さらに、破産財団の確保充実のために、強制執行の中止命令、包括的禁止命令、債務者の財産に対する保全処分、保全管理命令、否認権のための保全処分といった各種の手続が明文化され、その内容の充実が図られましたが、配当財源となるべき破産財団の確保充実という観点から妥当な改正であると考えております。
 また、換価につきましても、破産管財人のためには担保権消滅請求制度を創設し、換価手続の円滑化と売却代金の一部財団組入れによる破産財団の充実が図られることになったことも有益な改正であると考えております。今後は、担保権者と管財人との円滑な協議が実施されるところを期待しているところであります。
 さらに、個人債務者の再生支援策の充実につきましても、原則として、先ほど申し上げられましたとおり、破産手続の申立てをした場合に、原則として免責許可の申立てをしたとみなすことに、許可をしたものとみなすことにしたことや、免責許可の申立ての裁判が確定するまで破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行などが禁止され、既になされている強制執行などは中止されるとされたことは、個人債務者の再生支援の観点から極めて妥当な改正であります。
 また、自由財産が、金額にして九十九万円を自由財産とされるとされたことにつきましても極めて妥当な改正であると考えております。
 債務者財産の換価の基準につきましては、従来、運用上の問題として各裁判所において種々の基準が検討、実績されてきたところでありますが、その結果、裁判所によって必ずしも同一でない基準によって規律されてきたところもございます。今後は、自由財産の範囲の拡張の裁判の運用として、全国的に統一的な基準の下に、事案に応じた適切な運用がなされることを期待するところであります。
 以上のような新破産法の申立て、そして個人債務者のフレッシュスタートのためには、申立ての際、書類作成あるいは債権者対応など弁護士の助力は不可欠であり、現に東京地裁では全件、弁護士が申立代理人となるよう指導しているところであります。自己破産を申し立てようとする者にこのような費用の持ち合わせを期待するのは困難であり、親族の援助を得られない多くの債務者にとって法律扶助協会の費用立替え制度は有効であり、東京地裁では個人破産の実に三三%、全国平均では一二%強がこの扶助協会の制度を利用しています。法律扶助協会では、自己破産事件を援助するに当たり、借入れの動機が同情に値し、免責が見込め、更に緊急性があり、かつ弁護士又は司法書士により援助が必要であると認められたものに限定して援助を行っています。
 法律扶助事業に対する国庫補助金は徐々に増額されていますが、長引く不況を背景として、近年急増している自己破産事件に十分対応し切れていないのが実情であります。運用を厳しくした際には自己破産の申立て件数が急減し、扶助協会の運用を少し緩めると自己破産の申立て件数が急増するということが統計的にも明らかとなっております。このことは、十分な財政措置を取れば、生活の再建のため緊急に援助が必要なより多くの国民を救済できることを意味します。
 今回の法改正を生かすためにも、民事法律扶助事業に対するより一層の国庫補助金の増額がこの破産法改正の車の両輪として必要であると考えております。
 免責の不許可事由、処罰規定の整理についても今回改正が加えられたところであります。
 免責不許可事由が個別に明確化されたこと自体は妥当であると評価できますが、今後の免責不許可事由の妥当性をめぐる解釈、運用、あるいは非免責債権の解釈、特に破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権が非免責債権とされたことにつきましては、個人債務者の再生の観点からの慎重な配慮を要するところであると思料しております。
 また、処罰規定については、改正法案について構成要件該当行為が拡大され、また法定刑も加重されていますが、処罰規定の解釈、運用に関しましては、重罰化がもたらす取引の萎縮効果にも十分配慮し、適切かつ慎重な刑事手続の運用がなされることを強く望むものであります。
 以上でございます。
#6
○委員長(山本保君) ありがとうございました。
 次に、石井参考人にお願いいたします。石井参考人。
#7
○参考人(石井卓爾君) 東京商工会議所の石井でございます。東商の議員及び中野支部会長を務めております。本業は電子部品の製造を営んでおります中小企業の経営者でございます。
 本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。御存じのように、商工会議所は会員に多くの中小企業を抱え、法制審議会でも中小企業の代表として意見を述べさせていただきましたが、本日も同様の立場から意見を申し上げたいと存じます。
 最近、一部の経済指標に改善傾向がうかがわれ、日本経済に明るい兆しが見えてきたかのような報道を目にいたしますが、中小企業を取り巻く環境は、デフレ不況の長期化などにより、真摯な経営努力のみでは解決できない問題も多く、依然として厳しい状況にあると認識しております。
 お手元に配付しております資料を御参照いただきたいと思いますが、資料一に御用意いたしましたのは、帝国データバンクが発表いたしました月別の倒産件数と負債額の推移でございます。これによると、平成十六年二月度の企業倒産件数は千二百八件、負債総額は約一兆九百億円となっております。同社の分析によれば、倒産件数は前年同月比ベースで十四か月連続の減少となっており、全体的に倒産は減少傾向にあるように見えますが、前月比ベースで見ますと、最近三か月間は増加傾向にあり、負債総額が依然として一定の水準で推移していることも勘案すれば、今後とも予断を許さない状況にあると考えます。
 さらに、資料にはございませんが、東京商工リサーチの調査によれば、同じ二月度における負債総額一千万円以上で倒産した企業数は一千百五十九件で、このうち、全体の九九・六%となる千百五十五件が中小企業の倒産となっており、苦しい現状を示す数字となっております。
 申し上げるまでもなく、日本経済の土台を支えているのは企業の大宗を占める中小企業でございます。しかしながら、近年では、ただいま申し上げたような中小企業を取り巻く経営環境の悪化も影響しているのでしょうか、資料二にありますように、開業率の低下と廃業率の増加という非常に懸念される状況になっております。このまま放置しておけば、日本経済の技術力、競争力を根底で支えてきた中小企業は衰退し、日本経済全体の活力が損なわれることは明白であります。
 このような事態を打開していくためには、私ども中小企業が惜しまず自助努力を行うことは当然のことではございますが、その前提として、技術やアイデアを持った人が積極的に起業できるような環境を整えることに加えて、努力のかいなく不幸にして市場から撤退を余儀なくされた企業についてはちゅうちょすることなく市場から撤退できるような環境整備を行うことが必要であると考えます。その意味から、この今回の破産法改正は、私ども商工会議所としましても大きな意義を持つものと認識しております。
 東京商工会議所といたしましては、今回の破産法等の見直しに求めておりますことは、資料三にお示ししたとおり二点でございます。
 一つは、売り掛け債権者の立場から、手続の迅速化による配当財源の確保であり、もう一つは、債務者の立場として、失敗を経験した経営者が再挑戦できる環境の整備でございます。
 今回は、経営者の再挑戦を可能とする環境の整備に重点を置きながらお話しさせていただきます。
 経営者が再挑戦できるようにお願いしている背景には、中小企業経営者の個人保証の問題があります。中小企業が融資を受ける際、経営者は自宅その他の個人資産を担保提供するほか、個人保証を要求されることが一般的であります。企業経営が破綻して返済に窮した場合、保証人である経営者個人は、保証追及により、財産のみならず生活そのものが脅かされるという深刻なケースがあります。
 また、個人資産への担保権実行や個人保証の追及を恐れて民事再生の申立てが遅れ、再建のチャンスを逃し、申立てをしても再建できないケースがあるとも聞いております。さらには、中小企業では同族や出資者でない者が事業を承継しようとする場合、保証人になることを嫌がり、そのために後継体制を組むことができないという問題が生じております。
 一度経営に失敗したらすべてを失ってしまうという現実が再チャレンジの芽を摘み、それが起業率の低さにもつながっているのではないかと考えます。
 中小企業の場合、経済動向のみならず、社会や国際情勢の変化など、経営者本人の能力とは別の様々な要因が影響し、破産することがございます。その場合、それまで蓄積された経営ノウハウや経験などがすべて無になってしまうことになり、日本の経済にとって大きな損失ではないでしょうか。
 資料四にありますように、平成十四年度の中小企業白書によりますと、破産を経験した経営者が再び経営者に復帰する割合は、アメリカが四七%であるのに対して日本は一三%と極めて低くなっております。また、倒産を経験した経営者が二度目に開業した企業は新規開業企業よりも経営状況が良好であるという事実も、中小企業白書は指摘しております。倒産を経験した経営者の再起は産業界の強い要望であり、東京商工会議所といたしましても、日本経済の活力の源泉である中小企業が元気の出せる社会となるよう、経営者が再チャレンジできる環境の整備の必要性とその実現を訴えてまいりました。
 私どもがこのたびの破産法等の見直しに関心を持ち、期待しておりますことは、企業の市場からの退出を容易にすること、また、一度失敗した経営者の再チャレンジを可能とするためにどのような法整備がなされるのかということでございます。その意味で、債務者の手元に残る財産、すなわち自由財産の範囲の拡大が検討の対象になりましたことは正に的を射たものでございまして、この自由財産がどのように拡大されるかに注目しております。
 それでは、破産法の具体的な事項につきまして意見を述べさせていただきます。
 まず、破産法案第三十四条三項一号の自由財産の金銭でございますが、フレッシュスタートの準備期間の生活を保障するためには最低でも三か月分の生活費は債務者の手元に残す必要があると考えております。破産法には政令で定める必要生計費の三か月分となっておりますが、今回一か月分の生計費が過去二十一万円だったところを三十三万円に増額していただきましたので、三か月分ですと九十九万円ということになります。法制審議会での議論の際、東京商工会議所は、生活費は最低三か月分、金額にして少なくとも百万円程度までは自由財産を拡大していただきたいということをお願いしてまいりましたので、今回の案である自由財産は生活費の三か月分、金額にして九十九万円という額は私どもの希望にかなった最低限の水準であると考えます。
 現実に照らしてみた場合、個人的にはまだ十分な金額ではないと考えますが、法制審議会において、東京商工会議所の主張に対する反対など様々な意見がある中で、ここまで自由財産の金銭を引き上げていただきましたことを考えますと、私どもの主張を考慮いただいたことに感謝申し上げるとともに、一刻も早い法案の実現を期待いたしているところでございます。
 続きまして、破産法案第三十四条四項について御意見を申し上げます。
 裁判所が破産者の生活の状況その他の事情を考慮して自由財産となるべき財産の範囲を拡張できるとありますが、この点には強く賛意を申し上げます。特に、法案に破産者が収入を得る見込みを考慮してとありますように、経営者は雇用保険の失業給付を受けることができません。中小企業経営者の様々な事情を考慮して、再挑戦を可能とするような運用がなされることを期待いたします。
 続きまして、破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 これまで、経営者が再チャレンジできる環境整備の必要性を申し上げ、自由財産の拡大をお願いしてまいりました。その点で、自由財産の拡大は再チャレンジ、フレッシュスタートのためには必要不可欠なものですが、私どもはそれだけでは十分でないと考えております。
 平成十三年四月一日より、民事再生法の個人再生手続によって、多重債務を抱える個人債務者が破産せずに再生を図ることができるようになりました。しかし、その対象は、債務総額が三千万円以下の人に限られております。中小企業の保証人は、ほとんどの場合、保証債務総額が三千万円を超えておりますので、個人再生手続で救済することが困難であります。
 このような問題意識の下、私どもは、法制審議会の議論におきまして、破産の問題とは直接関係ないということを承知しながら、経営者など個人である保証人が破産に至ることなく経済生活再建を容易にする方法につきまして問題提起をさせていただきました。その意味で、この度の法律案に民事再生法二百二十一条第一項について、個人再生手続の開始要件となる再生債権の総額の上限を三千万円から五千万円に引き上げるとしていただきましたことは、私どもの問題を解決する第一歩であると考えておりますので、是非、法案の成立をお願い申し上げます。
 最後に、主たる債務者である企業が民事再生などの法的倒産手続を申し立てた場合、保証人の保証債務を軽減する制度があれば、保証人となっている経営者が自分自身と企業を再起、再建させるため早期に民事再生等の申立てをすることになり、周囲にも自分自身にも大きな傷を残すことなく再チャレンジ、フレッシュスタートを可能にするのではないかと考えております。
 東京商工会議所は、このような個人保証人の再生手続を含めまして、経営者の再挑戦が可能となる方策を今後も更に検討を進めてまいりたいと存じますので、引き続き御指導いただければ幸いでございます。
 御清聴いただき、ありがとうございました。
#8
○委員長(山本保君) ありがとうございました。
 では、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○松村龍二君 自由民主党の松村龍二でございます。
 今日は、破産法及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、先回五時間の質疑が当委員会において行われまして、今日、この法案の成立に深くかかわった諸先生、また現場で破産の問題に精通しておられる先生方をお迎えいたしましてお話をお伺いする機会をいただきまして、大変参考になりました。平成八年、法務大臣の諮問から始まりまして、法制審議会で鋭意検討されて、現下の主な問題を全部網羅したような破産法ができてきたということを、大変御努力に対しまして敬意を表する次第でございます。
 私も、地元では、先ほど石井参考人からお話がありましたような、個人が会社が倒産すると同時に個人保証の面からがんじがらめになって再生できないでいる。先般も、私の町でスーパーマーケットへ行きましたら、あえておじぎする人がいますので、どこの方ですかと言いましたら、鯖江という眼鏡産地の人だというんですね。それで、あ、お孫さんに会いに来たんですかと言ったら、いえいえちょっと事情がありましてということで、破産して、眼鏡産業、今なかなか厳しいので破産して、県下の違う町にひそかに住んでいるという実態であるということを感じ取ったわけですけれども、そのような例も多いわけです。
 さて、御質問でございますが、まず竹下先生にお伺いしますが、先般質問している過程で、法務省の民事局長が、債権者委員会というのは現場からすると大変に意味がある、債権者がみんな一堂に会して、自分の債権がどれぐらい返ってくるかということをその債権者委員会に来ている、出席している人たちの顔を見て瞬間に感じ取るという意味で大変に意味のある委員会であるという話をしておられましたが、これが任意化された。先ほど宮崎先生のお話のように、いろんな実態に応じて複眼的なアプローチをしておるということで、任意化という道を開いただけであって、開くことも当然にするわけでありますので問題はないかと思いますが、この債権者委員会を任意化したというようなことについて竹下先生はどのようにお考えなのか。
 また、全般的に、この度の法案につきまして自己採点をされますと何点ぐらいになるのか。先ほどのいわゆる包括根保証があと一つ日本の社会において解決をしていかなければならない問題であるというふうにも言われるわけですが、これは破産法と関係ない話なのか、その辺について御忌憚のない御意見をまず聞かしていただきたいと思います。
#10
○参考人(竹下守夫君) それではお答え申し上げます。
 まず債権者委員会制度の意義といいますか、債権者委員会というものがどういう機能を果たすと期待しているかという御質問かと思いますが、御案内のように、債権者委員会という制度自体は、実は民事再生法それから会社更生法でも設けましたものでございます。会社更生法の場合には、債権者、担保権者、株主と別々でございますけれども、類似の制度がございます。破産にはこれまでなかったんでございますけれども、先ほども申しますように、これまではどちらかというと、倒産になった場合に、とりわけ破産では、管財人と裁判所との間で一体債権者の利益を守るためにどうしたらいいのだろうかというようなことでいろいろ御苦心をされて手続を進めてまいったわけでございます。しかし、一般の債権者から見ると、どのように手続を進められ、どういう考慮に基づいて、例えば資産の換価なら換価でもなされたのかというようなことについて情報が必ずしも得られないということがございました。
 そこで、今度、債権者の代表に集まってもらって委員会を作って、そこが管財人といろいろ折衝をする、場合によっては裁判所に債権者集会の申立てをするというようなことをいたしまして、一方、債権者の意思を裁判所が管財人に伝えるとともに、逆に他方では、裁判所は管財人から情報を得て、それを一般の債権者に周知させるというような役割を担っているものでございます。
 問題は、しかし債権者といってもいろいろな利害関係の異なる者がございます。売り掛け代金を持っている者、融資をした債権者、労働者等いろいろございますので、債権者委員会が一部の債権者の利益だけを代表する、あるいは一部の債権者の声だけを代表するということになっては困るということで、この破産法案の百四十四条一項の三号におきましても、「当該委員会が破産債権者全体の利益を適切に代表する」と、そう認められる場合でなければ裁判所は許可できないということにしたわけでございます。これまでの実績を踏まえて考えますと、破産手続でもこの債権者委員会というものができることによりまして、一種の債権者自治に近いような形の手続運営というものも可能になってくるのではないかというふうに考えております。
 それから、今回の破産法案、自己採点するとどうかという御質問がございましたが、これはなかなか自己採点は難しいので、先生方に御採点をお願いしたいと思います。
 それと関連いたしまして、先ほど石井参考人の方からもお話の出ました中小企業等で代表者が個人債務をしている、あるいは包括根保証というような場合もある、そういう問題に対する対応はどうかという御質問だったかと思います。
 この点につきましては、先ほど石井委員からも御説明がございましたように、今回、自由財産の範囲を法律上も、金銭でいうと九十九万円、約百万円保留できるということにいたしましたし、さらにその上、先ほど申しました個別の事情によって拡張ができる。これは必ずしも金銭を拡張するということばかりではなくて、例えば自動車が必要だというのであればその自動車も自由財産の中に入れるという、物で決めることも可能でございますので、そういう意味では、非常に代表、個人保証した代表者の経済的立ち直りあるいは再挑戦にも、果たして十分かどうかということになると多少問題もあるかと思いますけれども、少なくとも最低限度の保障ができたということになるのではないかと思います。これ以上広げますと、むしろ融資が得られないというような弊害も出てまいりますので、このぐらいのところが妥当なのではないかというふうに私としては考えているところでございます。
#11
○委員長(山本保君) この際、質疑者に申し上げます。
 質疑の際も御着席のままで結構でございます。
#12
○松村龍二君 宮崎先生も現場で破産法、倒産の問題について扱っておられまして、今回の法案を高く評価しておられるわけですが、国庫補助金をもっと増やすようにというようなお話もございまして、これは野党の先生からの御質問にもあったわけですが、一つ、質問のための質問のような感じですが、労働債権をしっかり認めるということは今回の大変な成果であると。そのために租税の問題は後回しになったということは、労働者を、国民を救うという点では非常にいいような感じですけれども、今、日本の国は税金がだれも納めなくても成り立っているというようなみんな認識で、どんどん使え使えと、税金を払うのはとんでもないと、無駄遣い解決せぬと税金払わぬぞというような社会的なムードになっているわけですけれども、そういう点において、この法案も租税債権を後回しにしたということはそういう一環かなとも思うんですけれども、これについてはどのような御反論といいましょうか、御意見をお持ちでしょうか。
#13
○参考人(宮崎誠君) 私ども、管財人をしておりますと、例えば、ごく最近も、二年ほど前でしたか、二十億円ほどの財団を集めたわけですが、租税債権が三十数億円あった。営々として集めた二十何億の財団がすべて国庫に帰属し、労働者というのか社員は立替払の制度を利用して一定の金額のものしかもらえなかった、退職金も一定の制約があった、こういうような事例があるわけです。今の破産法で管財人をしている者は、ほとんどすべてが、我々は財政当局というんですか国税庁のために働いているのではないかという事件が実に多いわけであります。
 今回も租税の地位を上回ってのことではなくて同列に一部をしたと、こういうことでありますから、財政状況厳しき折柄ではありますけれども、この程度の調整というものは現場でおる者として当然許されてしかるべきではないかと、このように考えております。
#14
○松村龍二君 時間がありませんので、石井参考人に一言だけお伺いしますが、バブルの後、倒産で大変に苦しんでいる方と、一部、銀行なんかが自分の都合で債権を免除しまして倒産しないで済んだという人もたくさんいるように思うんですが、その辺の不公平といいましょうかについて、何か御感想といいましょうか御意見あったらお願いします。
#15
○参考人(石井卓爾君) 詳しくその辺の事情は聞いておりませんが、地元の企業で、再生というんでしょうか、いろいろ苦労をしまして、銀行とそれこそ物すごい、お願いやら再建のための計画やらいろいろ出して、例えば百億円なら百億円の債務を免除してもらったというようなケースも聞いております。それは、実際は見事に立ち直って地元の企業の一役を担って発展しているという会社もあります。また、その辺の経営者の再建計画が銀行サイドに認められないでもったいないな、あれだけの技術を持っておきながらもう少し何で頑張れなかったのかなと。その辺、やはり微妙な経営者の立場、あるいは努力、あるいは勉強、あるいはバックにいるコンサルタント、その辺の違いによって明暗を分けてしまうというようなケースを現に見ております。
 以上でございます。
#16
○松村龍二君 どうもありがとうございました。
#17
○角田義一君 民主党・新緑の角田でございます。
 竹下参考人にお尋ねをいたします。
 先生は大変、倒産部会長をやられて、倒産法制について御苦労されたことに対して心から敬意を表しますが、先ほど御説明のありました担保権の消滅の制度であります。
 私もこれは一歩進んだ制度だと思っているんですが、いろいろな人の話を聞きますと、先ほど労働債権の話が出ていましたけれども、一生懸命管財人がお金を集めておりますが、しかしどうしても銀行の別除権というのが御案内のとおりございまして、その別除権は、別除権の本質からすれば、破産になろうが何になろうがおれは取るんだ、おれは取るんだという言いぐさはないが、銀行は取るんだと。こういうことのようでございますけれども、しかし、現実問題としますと、少し別除権者に遠慮してもらいたいなと。少し我慢してくれませんか、腹八分であんた我慢せいやということで我慢してもらうことによって、一般債権者にもお金も回るし、それから労働債権もかなり潤うというのが現実だと思うんです。
 そういう中で、この担保権の消滅は、かつて私も若干、昔破産管財人やったことありますけれども、これは裁判所の同意を得れば、同意を得ればって、別除権者が皆判こ押してくれればすぐ抹消できるんですけれども、今回は、仮に同意を得なくても、管財人が一定の条件の下に計画を立てて、裁判所が許可をすれば売却できるということですから、一歩前進だと私は思うんです。
 一歩前進だと思うんですけれども、更に例えばフランスのように別除権についてもこれ遠慮させるというような法制を進めるとすれば、例えば管財人が自らの判断において別除権をある程度遠慮してもらうような計画を出して、そして売却できるというところまで進められなかったのかどうかということを、私はどうしてもその辺がしっくりいかないんですけれども、法制審議会ではどういう御議論があってそこまでは駄目だよというふうになったのか、御説明をいただければ有り難いなと思うんですけれども。私の質問の趣旨はお分かりでしょうか、失礼ですけれども。
#18
○参考人(竹下守夫君) はい。
 今回、担保権消滅制度というものを正面から破産法で、破産法案で導入したわけでございますが、これは破産法案の審議の過程でも最も難しくて、いろいろな意見が分かれ、事務当局と私どもと相談をしながら何回も案を練ったものの一つでございます。
 御案内のように、これまでの実務におきましては、裁判所と相談をしながら、協議をしながら、管財人が担保権の付いている、主として不動産でございますが、これを任意売却すると。その場合に、代金のうちの一〇%ないし多い場合には二〇%ぐらいのこともあるように伺っておりますけれども、ぐらいのものを財団に組み入れてもらって、残りの分だけを担保権者に弁済をするというような運用が行われてきたわけでございまして、それは、今先生言われたように、確かに一般債権者の利益を守る、また担保権者の利益が不当に害されない限度においては非常によろしいのではないかと考えられてきたわけでございます。したがって、それを何とかして、そういう運用上の制度ではなくて、法律ではっきり定めようではないかというのが今回の制度でございます。
 確かに、おっしゃるように、個々のケースについて見ますと、担保権者が十分その担保の目的物の管理もしないで、管理費用はあるいは公租公課は財団の負担になっていて、売れると、売得金から当然だといって優先的に取ってしまうのが社会的に見て妥当でないというふうに評価される場合があることは間違いないんだと思いますけれども、他方では、やはり担保権というのは、実体的に、実体法上、そういう目的物から優先的に弁済を受ける権利ということになっておりますので、これを実体法の方の変更なしに破産手続の中だけで権利を縮小させるということは非常に困難であろう。そこで、今回の制度は一種の擬制で、つまり、担保権者の方が対抗措置を取らなければ、管財人が任意売却して一定のあらかじめ告げておいた範囲のその組入金を財団に組み入れることができる、そういう仕組みにしたわけでございます。
 やはり、担保権者の方に何らの対抗手段も認めずに、一方的に管財人と裁判所の許可だけで、管財人の意思と裁判所の許可だけで担保権者の権利を縮減してしまうというところはなかなか実体法上正当化することが難しいものでございますので今回のような仕組みにしたと、こういうことでございます。
#19
○角田義一君 そうすると、先生、あれですか、やはり私がちょっと申し上げたような仕組みをあえて破産法の中に今後も入れようといたしますれば、それは民法の別除権の問題について、本質的な議論と絡むものですから、それ、例えば普通の任意の競売と違って、例えば破産の場合はまた別なんだ、清算するときは別なんだというようなことが民法上どこかにきちっとないとできないと、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
#20
○参考人(竹下守夫君) 難しいのではないかというふうに思います。
#21
○角田義一君 それでは、宮崎先生に、宮崎参考人にお尋ねいたします。
 参考人が現場で大変御苦労されてこられて、先ほど現場の生の声をいろいろお聞かせいただいて大変有り難く思っているんですが、先ほどお話あった、東京では自己破産について弁護士さんが全部付いておって、民事局長からもその実態をこの前この委員会でかなり詳しくお尋ねをいたしました。大阪でもかなり高い率で法律扶助が行われているわけでしょうけれども、全国では御案内のとおりの一一%程度で、ほとんど弁護士さん付いていないという状況でございますね。ほとんど付いていないと言っちゃ申し訳ないけれども、大阪のような、大阪や東京のようなわけにいかない。
 しかし、特に自己破産者を擁護するという意味からいうと、それは弁護士さんが付いていただくにこしたことはないと思うんです。そうなると、これは弁護士会が幾ら頑張って、あるいは法律扶助協会が幾ら頑張ってもおのずから限界があるわけで、その辺の抜本的な取組なり改革というのは、弁護士会とすればどういうふうに今後やっていきたいというふうに考えておられますか。特に、法律支援センターということも、法案が出てくるようでございますが、それとの絡みにおいてどういうふうに考えておられるか、お聞きをいたしたいと思います。
#22
○参考人(宮崎誠君) 扶助の件数が一一%、一二%、全国平均を見ますとそうであると。ただ、それ以外に私選で代理人を付けますので、弁護士が付く件数というのはかなり高いというように思っております。
 これは御承知のとおり、やはり自己破産を申し立てる前後の債権者対応でありますとか、あるいは裁判所に提出する書類の問題でありますとか、管財人との関係とか、そういう形でやはり弁護士等の手助けが要るということからくるものだと思っています。
 ただ、御承知のとおり、現在扶助協会が行っておりますそういう支援につきましては、国の補助金が三十五億円あるいは四十億円、今年は四十億円、昨年は三十五億円と徐々に増えておりますが、運営費については、やはり財団法人に対する援助だということで出ていないわけであります。そのために、かなり財政支援を弁護士会などがやっておりましても、なかなかそういう細々とした運営、国の予算の範囲内でしかできないと、こういう状況になっております。
 そこで、今国会でも御審議をお願いしたいと思っております総合法律支援法という法律で、これは独立法人の形態ではありますけれども、国の、運営費についても国の補助が出るというのか、国のお金で運営されると、こういうシステムに制度設計されていると思いますので、現在の法律扶助ということよりは、かなりそういう意味で事務局スタッフ等の充実等も図られて、この自己破産についても大きく貢献をすると、このように考えております。
#23
○角田義一君 それと、先ほど、今度の新しい法律になりますと、御案内のとおり予納金の免除という制度もできて、これは法文上は法人も個人も限られてないわけですから個人もあり得ると思うんですが、当然あり得ると思うんですけれども、個人の場合は、予納金というのは御承知の、御案内のとおり、裁判所に対する納めるお金のほとんどは官報に対する公告代とか郵便代とかというんで一万数千円だというふうに聞いておりますが、やっぱりこれまで、それまでもやっぱり免除しなければならぬような自己破産者というのもかなりおるんでございますか。それとも、その程度のものは自己破産をするのであれば金集めてきてでも負担してもらいたいということなんでしょうか。その辺は実態はどうなっておりましょうか。これ、どうしたらよろしいというふうに先生はお考えですか、参考人は。
#24
○参考人(宮崎誠君) 予納金は確かに、同時廃止というんですか、管財人が付かない事件では官報公告費等を主な費用とする一万数千円でございますが、ただ、法律扶助はあくまで償還をしてもらうと、あくまで貸付けであるということで、事前に幾ばくかの返還を求めると、あらかじめ。おかしい話ではありますけれども、補助を出しておきながらすぐ償還を求めるというのはおかしいのでありますが、一部その償還を事前に求めるということで、やはり本人の負担は五万とか、そういう形になっているわけです。やはりその程度の金額になりますと、サラ金等に追われまして、生活の、職場の足場もなく、いろいろ厳しい取立てに追われている債務者というのは数多くございまして、それが結構障害になるというようなこともございます。
 そういう意味で、今回の国庫支弁ですか、こういう制度が活用できれば、あるいは法律扶助のそういう償還制度がもう少し緩和されれば、やはり自己破産の申立て件数はかなり増えるものと考えています。
#25
○角田義一君 最後に石井参考人にお尋ねいたしますが、先ほどお話がありました、会社経営の責任者が連帯保証をさせられているわけですが、私も何人か相談を受けますけれども、中小企業でも御案内のとおり連帯保証の債務の金額というのは何億とか何十億とかいう社長もいるわけですよ。そういうものを個人に、よほど資産のある人は別ですけれども、普通の経営者に何億とか何十億の連帯保証をさせる、させる方の銀行も私はさせる方だなと思っているんですが。そしてそれを全部、全部取れっこないけれども、死ぬまで掛かったってそれは払えませんわな。
 それで、先ほど言った個人民事再生の方は五千万円までなったって、五千万じゃどうにもならない。何億という借金を抱えさせられているわけですから、これはもう抜本的に保証人制度というものを私は考えなければ、日本のこれから企業を起こす人は起こせないんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどんなふうにお考えでございますか。
#26
○参考人(石井卓爾君) 全く同感でございまして、東京商工会議所としましても、一応五千万円まで民事再生の方で債務を免除していただけるという話でございまして、これは取りあえず賛成いたしております。
 ただ、それだけでは今御指摘のように不十分だということで、債務の総額に関係なく企業が再生できるようなことはできないだろうかということで、今現在、商工会議所といたしまして具体的な検討に入っておりまして、それを今日、まあお発表する──まだ検討中でございますので、その辺は御勘弁いただきたいと思いますが、おっしゃるとおり、今の経済界は、右肩上がりのときに非常に積極的に経営者というのは前向きに投資がされて、それがいい循環で日本経済が発展してきたわけなんですが、今非常に痛い目に遭っているのは経営者でございます、御指摘のとおり。それが蔓延していますから、再チャレンジというか、企業を起こそうという意欲が非常になえていまして、あんなに苦しいんだったら、そんな企業を起こすよりもサラリーマンやっておいた方がいいやという雰囲気、あるいは不動産屋になった方がいいやという雰囲気が蔓延しておりますので、これは非常に日本の経済にとって良くないことであるので、その辺の個人、包括根保証も含めて、その辺の個人保証についてのことについては、商工会議所、中小企業の代表的な団体でございますので、その辺、是非まとめて、機会があれば発表させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
#27
○角田義一君 終わります。
#28
○木庭健太郎君 参考人の皆さん方、今日は本当に貴重な意見をありがとうございました。
 まず、竹下参考人に。
 竹下参考人、今回の倒産法部会の部会長でもあり、法案の立案に当たり中心的な役割を果たされたということで、本当に私はいい形の法案が出てきたと、このように評価をいたしてはおりますが、先ほど石井参考人からもお話がありましたが、自由財産の範囲の問題でございます。
 いろんな議論がある中で、一応その九十九万円という形で認められるということになったということでございますが、私自身は、本当にこの九十九万円ということが再起を懸ける、次へつながるものという金額について妥当かなというと、若干少ないんじゃないかなと正直に私個人は思っておりますが、この点について御意見を更にお伺いしておきたいのと、自由財産の件。
 もう一つは、資格制限の問題でございます、破産者の。今回の法案提出によってもこれは様々な面で結局残ることになった。確かに資格制限せざるを得ないようなものもあると思うんですが、例えば、やっぱり私が一番感じたのは、会社役員の問題とか幾つか残っております。こういった点についてどんなふうに考えていらっしゃるのか。
 以上二点、御意見をお伺いしておきたいと思います。
#29
○参考人(竹下守夫君) まず、自由財産の範囲でございますが、これだけ拡張されても、とりわけ中小企業の経営者が倒産をしたときの立ち直りの資金として十分かというお話でございました。私どもとしましては、まあ現金でほぼ百万円と、それから、さらに個別の事情によって拡張を認めるということにいたしましたので、最低ラインのところは確保できているんではないかというふうに考えております。
 ただ、中小企業のつまり再建を目指すという場合は、倒産法制全体から見ますと民事再生の方の問題でございまして、やはり早期に個人債務者再生あるいは一般の民事再生の方で立ち直りを図っていただかないと、破産のところまで来てしまってから立ち直るというのは、なかなかこれは、前と同じような事業を展開するその資金を留保しておきたいというのはなかなか難しいのではないかというふうに基本的には考えております。つまり、倒産法制全体で対応するべき問題であって、破産ですべて対応するというのはなかなか難しいのではないかということでございます。
 それから、先ほども申しましたように、これ以上自由財産の範囲を広げますと、今度逆に融資を受ける方に支障が出てくるという問題もあるかと思います。
 それから第二は、資格制限の問題でございますが、これは確かに私どもも、倒産法制の全面的見直しをいたします初期の段階でその問題があるのではないかと。それと直接は関係ないんですけれども、破産者という名称も余り適当ではないんではないかと、もっとより適切な名称があれば変えた方がいいんではないかというようなこともいろいろ検討してまいりましたけれども、資格制限の方は、結局、破産法でどうこうするというわけにまいりませんので、それぞれの資格制限を定めている個別の法律で、その法律の趣旨に照らして、たとえ破産宣告を受けた者であってもこの資格を失わせる必要はないということであれば資格制限を外していただくという、そういう処理をするほかないんではないかということで、結局破産法の方では特別の規定を設けなかったと、そういう事情でございますので、どうも他に転嫁するようなことで申し訳ございませんけれども、実際それ以外に方法がないと思いますので、御理解をいただければと思います。
#30
○木庭健太郎君 ありがとうございます。
 次は、宮崎参考人に。
 宮崎参考人、これまでも現場で様々な管財人とかお務めになられたり全体のこともよく御存じの立場で、また現場の立場から様々な御意見をいただきました。今回のこの破産法が仕上がると、法務省自体は倒産法制全体の見直しいろいろなことやってきましたが、これで一段落というような考え方を法務省自身は持っているようでございます、私が受け取る限りは。
 ただ、やはり弁護士という現場の立場から見て、この法案、つまり、この破産法の一つの新しい形ができ上がれば倒産法制全体で本当に残された立法的課題がすべて果たされているのかというと、私はまだまだ様々な課題も残っているという部分も感じておりますし、宮崎参考人、現場からいろんな実務を携わる上で、一体これで本当に終わりなんだろうかと、いやいやこんな点、まだここは直さなくちゃいけないんだという点、どんなことを現場としてお感じになられているかという点。
 さらに運用上の問題はお話をいただきました。私ども、やっぱり、先ほどお話あった個人破産の問題では、例えばこの法律扶助協会の国庫負担、これは是非、国庫からの補助ですね、我々もこれ拡大をすべきだと考えておりますし、そういう運用上の整備をしていかなければ、せっかくこれだけやったとしても果たすべきことはできないと思っております。
 そういう、言ってみれば、ですから、この破産法自体ができ上がっても、残された課題と、こういう点を現場から感じるという点を是非教えていただきたい。
 もう一点は運用上の問題。法律扶助協会の問題、お話しいただきましたが、運用上の問題でもう少しこの点言っておきたいなと付け足す部分があるならば、是非併せてお伺いをしておきたいと思います。
#31
○参考人(宮崎誠君) 破産法そのものと言えるのかどうかは分かりませんが、やはり担保と、そういう労働債権とか、そういう債権者、複数債権者間の整合性の問題については、やはり今後とも協議を、あるいは検討しなければならないのではないか、これは現場でつくづく思うところであります。
 特に、先ほども少し述べましたけれども、債権でありますとかそういうものの流動化あるいは証券化ということで、融資を受けるためにありとあらゆるものを担保化するということで、倒産しますと何も残っていない、根こそぎ担保に入っている、これが少しずつこの傾向が広がってきていると思います。そういう中で、労働債権でありますとかそういうものの確保とか、フレッシュスタートのためにどういう形をすればよいのかというのはやはり御検討いただきたいと思っております。
 それから、やはり保証人等の問題も、これは破産法というよりは金融機関とかそういう体制の問題かと思いますが、私どもから見ますと、何かおまじないのように保証人を取っているという、こういうことを言うと怒られますが、ともかく、高額の融資をして見返りに必ず保証人あるいは親族の者を取っていくという、こういうことについて、しかも、いったん保証人を取ってしまうと、金融機関としては、債権放棄するためには保証人も破産してもらわないと不良債権処理ができないと、このような変な理屈で保証人の破産を迫る、迫られるというようなこともございます。この辺り、倒産法制そのものではありませんけれども、倒産法制を取り巻くものとして是非とも御検討いただきたいと、このように思っております。
 また、あと、運用上の問題で、扶助協会のほかは、やはり先ほど言いましたように未払賃金の立替払制度がございますが、やはりこれも金額あるいは対象がもう少し広げていただけてもよいのではないかなと、このように思っております。そうしますと、そういう根こそぎ皆持っていかれた後何も残らないという状況の中でも労働者に対しては一定の取り分があると、こういう法制が図れるのではないかと、このように考えております。
 以上でございます。
#32
○木庭健太郎君 石井参考人にある程度御意見、これも経営者としての立場からお話をいただきましたが、まず個別の問題では、先ほど自由財産の拡張のお話を石井参考人していただきましたが、今回それを認めるということができた。それに対する評価もしていただきましたが、実際に現場の立場から考えられて、いわゆる自由財産として拡張を認めてもらうとするならば、まあこんなもの、こんなものという形は拡張のものとしてあるんだがなというようなことをお考えのものがあるとするならば、どんなものがこの拡張という分野に入ってくるとお考えになっている部分があるならば、こういうことも必要なんじゃないかという御意見をいただければと思いますし、もう一点は、もう何回も石井参考人おっしゃっていますが、やっぱり根本的な問題というのは、これ確かにこの破産法の改正でいろんなことができるようになります。再生へのチャレンジの問題もできます。でも、やっぱり根本的問題の一つは、今も宮崎参考人からもありましたが、やっぱり日本に残る包括根保証の問題。
 これ、正直、私は包括根保証というのは廃止すべきだということを本当思っております。これ、日本の何か商慣習ででき上がったような一つの仕組みだと私は思っておりますし、今の実情に合わない。したがって、この包括根保証というものは、これからの課題ですけれども、正にこの法務委員会なり法務省と協議していく話ですが、私はこういう包括根保証の問題、廃止へ向かって取り組むべきと考えておりますが、石井参考人、これについても御意見があればお伺いしておきたいと思います。
#33
○参考人(石井卓爾君) 自由財産の拡張の件でございますが、実態の経営者、我々の同僚というか、一緒に仕事をしているというか、経営者、もし君が、会社が倒産したらどれぐらいあなた手元にお金残るのということを言いますと、彼らは、まあ我々ですね、我々は全然よく知らないと。二十一万円しか現在の法律では倒産した場合には残りませんよということを聞いたらびっくりしますね。まず、百人が百人びっくりします。ということは、逆に言えば、そういう意識で経営をしている人はほとんどいないということですね。
 それで、話は戻りますが、じゃ九十九万円がいいかということになりますと、私は取りあえず生活を三か月続けていくということで最低限を認めていただいたということに対して大変感謝申しております。
 じゃ、ほかに何かないかと言われた場合、いろいろ企業を経営した場合に、企業の経営の宝となるものはやはり会社にある技術が継続できるようなもの、例えば製造業でいいますと、金型あるいはそういう精密機械ですね。これがないと会社はもうどうしても生き延びられないというような、そういうものが何とか救われる方法はないかなという考えがあります。あとは、あとはまあ不足、いろいろ車であるとか、いろいろ日常生活していたもので金額が少々のものであれば認めていただきたいということでございます。
 それから、包括根保証でございますが、やはり中小企業というのは信用力が元々ありません。したがって、事業を拡大していくときにどうしても、資金を市場から調達するんじゃなくて、金融機関から援助をいただくしか手はないと。そうなりますと、貸す方と借りる方とのそのバランスでございますので、貸す方が担保を要求してきた場合に出さざるを得ない。
 ただ、包括根保証となりますと、これは限度のない保証でございまして、信用を補うという目的の担保の限度までは当然、ある意味においては貸す方と借り側の方との交渉事ですから、ある程度やむを得ないと思うんですが、包括根保証となりますと、巨額な借金というものに対して無制限になってくるということになりますから、これは是非、この辺は限度額を設けると、あるいは我々経営者としても担保に頼らないで経営ができるような方向の模索も必要だなと。
 というような観点で、今、商工会議所といたしましてもそういう検討委員会を作っておりまして、私もその委員として検討委員に加えさせていただいておりまして、それがまたまとまれば、個人保証の問題について機会があれば御意見を出させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
#34
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、三人の参考人、ありがとうございます。
 まず、石井参考人と竹下参考人にお伺いをいたします。
 石井参考人から、破産経験者のその後の動向について日米の比較がありまして、日本の場合の再チャレンジがなかなか困難だというお話がございました。良い点についてはどんどん取り入れたらいいと思うんですが、こういう結果になっているこういう日米間の制度上の差異というものが今回の破産法改正でかなりクリアをされたとお考えか、そうでなければどういう課題があるのかという点。竹下参考人には、それも含めまして、国際的なこの倒産法制の中で、今回の改正によりましてどのように到達したか、どういう評価をされているのか。それぞれにお願いをいたします。
#35
○参考人(石井卓爾君) お答え申し上げます。
 日米は法的に今回の改正によりましてかなり良くなったんではないかなと、こう解釈はしておりますが、やはり日米の間には風土とか社会文化の違いがありまして、日本の社会はやはり倒産というのは社会悪という概念が非常に強くありますから、レッテルを張って、あいつは会社をつぶした男だよと、こういう評価を受けやすいわけでございますので、その点なかなか、単に法律のアジャストメントというだけでなくて、やはりそういう文化、風土から、やはり経営者というものは、経営者は悪だという概念から経営者は尊いものだというそういう方向へ、法律とちょっと違う話になってしまいますが、そういうことが必要ではないかなと思っております。
 あとは、ちょっと忘れました。それだけでよろしいでございますか。
#36
○参考人(竹下守夫君) 今回の破産法案を国際的に評価するとどういうふうに考えられるのか、あるいは何らかの国際的な評価のようなものがあるかという御質問かと思います。
 私ども、破産法、今回の破産法案のみではなくて、これまでの立法作業の中では常に主要な外国の法制というものを参考にしてまいりました。破産法案の要綱案を検討する場合も同様でございまして、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスあるいは韓国等の法制というものを参考にしながら要綱案を作ってきたわけでございます。
 でき上がったものを一体どう評価されるかということでございますが、企業破産、それから個人破産、それぞれ分けて考えた方がいいのかもしれません。
 企業破産につきましては、今回の改正によりまして、かなりその手続は早くなってきたと。母法と言われるドイツの、これは一九九九年に倒産法という形で一本化した法律ができましたけれども、それと比べても、恐らく我が国の今回の破産法案の方が現在の経済情勢にはマッチしているのではないかというふうに考えております。
 それから、倒産実体法の面でも、もう既にできている外国の法制を参考にしながら考えているわけですから、まあそれの上をいくことになるのは当然といえば当然ですけれども、私どもとしては、十分国際的な評価に堪え得るものになったのではないかというふうに考えています。
 それから、個人破産の点でございますが、これは、国によってかなり事情も違っておりますし、単純に比較はできないと思いますけれども、先進国ではどこでも、消費者信用の膨張ということから、ここ十年ぐらいの間に個人破産の問題というのが重要になっていろいろな立法がなされてまいりました。
 従来、免責制度を知らなかったヨーロッパ大陸諸国、ただいま申しましたドイツの新しい倒産法でもそういう制度を設けたりいたしております。それから、フランスでも度々改正が行われてきております。そういうものと比べまして、今回の我が国の個人破産の諸規定というのは、決して遜色がないというか、アメリカと比べてどうかということになりますとなかなか一概に言えませんけれども、ヨーロッパ諸国のものに比べれば、十分遜色のないものだというふうに言えるかと思います。
 アメリカの場合は、背景となっているその社会の構造その他がいろいろ違いますので、それを抜きにして単純に、でき上がったのを、法律の規定だけを比べるというのはなかなか難しい。同じものを作っても、実際の機能は違ってくるというようなところがございますので、比較はなかなか難しいかと思いますが、いずれにいたしましても、企業破産の面でも個人破産の面でも、十分国際的なレベルを超えているといいますか、申し上げることができるのではないか。
 これに骨を折ってまいりました私としては、できるだけ早く英語にでも訳して、諸外国に日本からこういう新しい破産法ができたという発信をしたいというふうに考えているぐらいでございます。
#37
○井上哲士君 国際的な水準ということの関係で、労働債権の確保についてもう一点、竹下参考人にお伺いするんですが、ILOの百七十三号条約では租税債権よりも上に置くということを言っておりますが、今回の場合、先ほど別除権の問題はございましたが、財団債権の中では横並びということになりました。
 これを、労働債権を更に上に、その中でも優先させるということが必要だと私は思うんですが、その辺の御議論はどうだったんでしょうか。
#38
○参考人(竹下守夫君) それは議員の、事実としてはおっしゃるとおりで、ILO条約の定めているところから見れば、今回でやっと租税債権と労働債権が対等な横並びになったというにとどまることは、そのとおりだと思います。
 ただ、租税債権にどれだけの優先的な地位を認めるかというのは、やっぱり基本的には実体法の問題でございまして、我が国では租税債権は、国税徴収法上、担保権と法定納期限が対抗要件よりも先に到来し、対抗要件具備の時期より先にいっていれば担保権にも優先するということになっておりますし、それから一般の私債権に対しては一般的優先権があると、自己執行力も認められているというようなことがございますので、この破産の局面についてだけ労働債権の方を優先させるというのはやはりなかなか難しいのではないかと。それからまた、租税債権が実体的にそのような優位な地位に置かれているというのは、先ほど松村議員の方からも御指摘ございましたように、何といっても国家財政あるいは公共企業体、財政の基盤になるということがあるからだと思いますので、その辺りはなかなか破産法だけでは問題を解決するのは難しいのではないかというふうに考えております。
#39
○井上哲士君 ありがとうございました。
 次に、宮崎参考人に主に運用面についてお聞きをするんですが、処罰規定について適切かつ慎重な運用が求められるということを言われました。やみ金などの不法な取立てなどについてもきちっと規制できる処罰規定ができたわけですが、労働組合などがやるような労働債権の確保の正当な活動に対しての抑圧にならないかという懸念もお聞きをするわけですが、その辺りでこの適切かつ慎重な運用という点で求められる点についてお考えをお聞かせください。
#40
○参考人(宮崎誠君) 私ども弁護士は刑罰権を行使する立場にはないわけでありますから、あくまで弁護士としてそういうようなことについてどう対応しているかということですが、私どもも、倒産あるいは破産になりますと、労働組合の方々との交渉というんですか、そういうものをかなり求められておりますし、それについては誠実に対応すると。そこでできるだけ合理的な解決を図っていくということは私も個人的に運用してきたところでありますから、このような形で円滑な協議が行われておればそういうような厳しい事態に陥るということはないように考えます。
 あとは、刑罰権については今回そういう形で刑罰権も少し拡大されておりますから、我々としてもいわゆるサラ金、やみ金等の取立て等を防止するために設けられた制度であるという、この制度の趣旨を踏まえて運用していただければ幸いだと、このように思っております。
#41
○井上哲士君 もう一点ですね、免責不許可事由の明確化の関係でも、その解釈、運用について要望を先ほどされておりましたけれども、もう少し具体的にお願いをできますでしょうか。
#42
○参考人(宮崎誠君) 免責の不許可事由の中に、個人再生等でいわゆる免責とかそういう債権カットを得た人たちについては自己破産で免責を受けた者と同様の扱いをすると、七年間免責を受けられないというような形になっておりますが、これについても、そういった免責を受けましても七年の間に様々、リストラとか自分の責めに帰すべきような事由でなく、またやはり破産をしなければならない、あるいは免責を受けなければならないという事態もあり得るところでありまして、この辺り、我々としては、裁判所の適切な運用でそれに当たってもなおかつ免責許可をしていただけるような運用をお願いしたいと考えております。
 あと、先ほども申し上げましたように、免責はされましても、非免責債権ということで免責の対象にならない債権の中に破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償と、こういうような債権も入っております。これにつきましては当然、立法の必要性というのか、分からないわけではありません。例えば、最近でいいますと、ストーカーによる被害でありますとか、様々なそういう身体、生命に加えられたものでなくとも悪質な不法行為というものがあるわけでありますから、それを非免責債権にするということは分からないわけでありませんが、これを拡大解釈されますと、サラ金で順次借りまくっているというのか、申立て費用もないためにサラ金を借りて申立て費用を作るということもあるわけで、そういう人たちがすべてこのサラ金のそういう連続して借りて、弁済することが余り期待できない状況下でサラ金から借りておりますと、みんなこれで運用によっては非免責、免責されないというような運用になるということになると大変だなと思っておりまして、この辺については運用あるいは裁判での積み重ねで適切ないわゆる運用が行われることが望まれると考えております。
#43
○井上哲士君 ありがとうございました。
 終わります。
#44
○委員長(山本保君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところおいでいただきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩といたします。
   午前十一時五十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#45
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長房村精一君、法務省人権擁護局長吉戒修一君及び文部科学大臣官房審議官清水潔君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#46
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#47
○委員長(山本保君) 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#48
○角田義一君 民主党・新緑の角田です。
 前回、ちょっと実体法について時間の関係がございまして質問できなかったのが二、三ございますので、最初、ちょっと硬い話で申し訳ありませんが、質問させていただきます。
 今回の破産法案で詐害行為が否認された場合の相手方の権利の取扱いについていろいろ見直しがされまして、どちらかといえば取引の安全を図るということに主眼が置かれているようにも思えます。どのような点を取引の安全を図るために優先して認めたのかということをお聞きしたいと思うんですが、やっぱり事は具体的にお話を聞いた方がいいと思いますので、簡単な例を挙げてちょっとお聞きしますが、破産者が破産の直前に、例えば一億円の土地を半値の五千万円で売っちゃったと、その売っちゃった金は全部使っちゃったと、こういう場合に破産法案、今度の破産法案の取扱いではどういう形になってまいりますか、流れを説明していただきたい。
#49
○政府参考人(房村精一君) 今回の破産法案で、財産、土地を一億で売って、いや一億の土地を五千万で売って、五千万を既に使ってしまったという場合ですが、まず基本的に、この一億を五千万で売った売買が否認の対象で否認されたというときに、代金の五千万がそのまま残っている場合には、当然その代金全額が財団債権として買主の方に戻ります。で、土地は土地で破産財団の方に戻ってくると、こういう形になります。
 ない場合、もう既に、五千万が既に使われてしまっていると、こういう場合にどうなるかといいますと、原則としては、その受け取った額に見合う五千万の財団債権として金額を償還請求できるという考え方でございます。
 ただ、この相手方がそういう売買が費消する目的であるというようなことを、破産者の方が悪意で、要するに費消するつもりで売買をして、その買った方もそのことを知っていたと、そういう場合ですが、そういう場合には例外的に破産債権として請求をすると。したがって、配当率に従って、配当率が一割であればその一割、五千万なら五百万円しか戻ってこない、こういう形になりますが、そういう例外的な場合以外の原則の場合は五千万全額が財団債権として戻してもらえると、こういう形に今回の法案では考えております。
#50
○角田義一君 それじゃ、今の例でいいますと、相手方が破産者の意図を、さっきあなたが説明した、分かっている場合には五千万円の返済というのは受けられなくなるということになりますな。しかも、土地は返さなければならぬという形になってきます。そうすると、これは相手方の主観的な要件によって随分左右されることになるわけですね。
 こういう主観的な要件が非常に重要なあれになってくると、これについてはどういうふうになっていくのか、今の例で、ちょっともう一遍説明してくれませんか。
#51
○政府参考人(房村精一君) 基本的にそういう総債権者を害するような行為で財産が非常に安く売られてしまったというような場合を否認するのは、言わば総債権者のためにその財産を確保するということが目的で否認をするわけですので、その財産を戻して、その財産の対価として受け取ったものは相手方に返して前と同じ状態にすると、それが原則でございます。
 ですから、そういう代金が全額残っていればそのまま返しますし、仮に使われてなくなった場合にはその相当の財団債権として返還すると、こういうことになっているわけですが、例外的に、先ほど申し上げましたように、破産者がそもそも隠匿する目的と、こういうようなことで安く処分をして、かつその代金を実際に費消あるいは隠匿してしまう、そのことについて買った方もそのことが分かっていると、こういう場合にまで、それが分かってわざわざ買い受けた者を保護する必要性は低いわけですので、その場合には、破産債権として他の一般債権者と同じ配当率の弁済で我慢をしていただくと、こういう考え方にしたわけでございます。
 ただ、そうなりますと、正に今御指摘のように、その主観的要件があるかないかということが非常に重要になってまいります。これは、内容といたしましては、正に破産者が売買代金について費消あるいは隠匿等の意図を有していて、取引の相手方がそれを知っていると、そういうことがその主観的要件となります。で、この主観的要件につきましては、その売買を否認する破産管財人の方で主張、立証をする必要があるということになりますので、そのような悪意がない場合には十分保護されますので、取引の相手方としても、しかも立証責任が破産管財人の方にありますから、善意の取引相手は保護をされるということが間違いないわけですので、取引の相手方になる場合にも安心して取引ができると、萎縮効果がないと、こういうことになろうかと思っています。
#52
○角田義一君 ちょっとこれ、余りやっていたって聞いている人は余り面白くないだろうから、このくらいにしますけれどもね。
 先ほど参考人のお三方がお見えになって、いろいろ貴重な意見を私どもに聞かせていただいたので、それにかかわって若干御質問をさせていただきたいと思うんですが、前回私どもの今泉議員の方からもお話がありましたこの労働債権の確保の問題ですが、今回の法案によって、御案内のとおり、労働債権と租税債権が同列に並んだということはそれなりの私は進歩があるだろうというふうに思ってはいます。ただ、ILO条約の立場からいえば、労働債権の方が優先をされているということを考えますとこれは一歩前進ではあるけれども、一番ひどい目に遭うのは、これは労働者ですよ、リストラなり倒産なりでね。
 そうしますと、別除権の行使の問題ともこれは絡むわけだけれども、いろいろ絡むんだけれども、労働者の生活を擁護するために、この労働債権というのは、今回は一歩前進ではあるけれども、しかしこれで満足ではないのではないかと。別除権との関係もこれあり、その辺もう一層進めるということについては、法務当局がどういうふうに考えておるか。これでもう万々歳だと、日本の労働者はこれで我慢しなさいというふうにあなたは選択するのか、それともまだまだ考える余地があるというふうにおっしゃるのか、お答えをいただきたい。
#53
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように労働債権、これはもう労働者の生活を支える最も基礎的なものでございますので、その保護を図る必要性が高いということは私どももそう思っておりますし、その意味で、今回の破産法案の制定に当たりましても、労働債権の保護についてはできる限り意を用いたつもりでございます。
 ただ、この現在の破産法案をより更に労働債権の保護を図ろうということになりますと、御指摘のように、実体法における租税債権との優劣、これは、現在の実体法においては、御承知のように租税債権は他の一般の私債権に最優先をいたしますし、担保権との間でも、納期限で優劣が決まるという非常に強い立場にございます。これは、租税債権が国あるいは地方自治体の財政の基盤を成すと、そういう非常に重要なものだということからそういう優先的地位が与えられているわけでございますが、その労働債権の保護と租税債権の重要さというのをどういう具合に考えていくかというのは非常に重要な問題だろうと思っています。
 また、担保権と労働債権との関係ということでございますが、これも、担保権はこれは非常に強力でございます。破産法においても別除権にされておりまして、土地について抵当権を設定してそれを登記しておけば、まずはそれは最優先、租税債権と納期限との関係で優劣関係が生ずることを例外といたしまして、まず最優先の地位が確保できているわけでございます。
 現在の金融等はそういう権利であるということを前提として金融業務が成り立っている。与信額についても、この財産にこの程度の抵当権を付ければこの程度の回収が見込まれると、こういう前提の下に与信がなされているわけでございますので、その担保権に優先する地位を租税債権に認めるということを検討いたしますときには、そういう結論を出したときにどのような影響が金融行為に与えられるのか、そのことを恐れて与信が非常に低くなってしまうということによって結局企業が金詰まりに陥ってしまうということでは、経済全体に与える悪影響ということが心配されるわけです。
 したがいまして、御指摘の点につきましては、私どもも、労働債権の保護がこれで完全かと言われれば、それはまだまだ検討の余地はあろうかと思っていますが、検討すべき課題は、今申し上げましたように、租税債権の性格あるいは担保権の性格という国家財政にかかわる問題あるいは経済秩序にかかわる問題、そういうところを検討しないと結論が出していけない非常に重要な問題ではないかと、こう思っているわけでございます。
#54
○角田義一君 これはやっぱり最終的には、国家とはどういうものかとか国の社会思想だとか、そういうものとも私はうんと関係あると思うんですね。フランスのようにフランス革命をちゃんと経験をしている国と、日本は革命というのも余りなかったと思いますけれども、明治の近代国家、天皇制の国家の下で国家優先ですから、そういう考えというのは今日ずうっと尾を引いていると思うんですよ。なかなかヨーロッパのようなそういうちょっと社会観というのは必ずしも国民的な合意を得ていないと思うけれども、やっぱりフランスはフランスなりの考えがあって、それはそれで私は合理性があると思うんですね。
 国家がやっぱり国民がちゃんと生きていかなければ成り立たないという発想になれば、それはもう破産したところからばっかり税金取るわけじゃないから、正常なところは一杯あるわけだから、そこからちゃんと賄っていって、そういうある意味では例外的なところは例外的なところとして、労働者の保護をまず考えるということだと思うんです。
 僕は、今日の不況は、松村先生もいろいろ指摘があったように、私は、アメリカの一つの資本主義を日本に押し付けてきた結果、弱肉強食になって、大変な私は今世の中になっているんだろうと思う。そうなればなるほど、やっぱりそこに働く労働者というものの保護を考えないと日本全体の活力一体どうなるかということなんで、私は、そこはやっぱり深刻に今の情勢というものを踏まえて考えていただきたいということを要望しておきたいというふうに思っています。
 と同時に、竹下参考人の話からも、否認権の行使のときの抵当権のありようというのは、やっぱり実体というか、すなわち民法ですね、民法まで手を付けないとこれは解決できない問題だということなんですが、その抵当権の実行は、普通の任意の抵当権の実行、要するに破産に至らない抵当権の実行と本当に破産になっちまったときの抵当権の別除権の実行とはちょっと少しニュアンスは変わってもいいんじゃないかと、同じ別除権であっても、それ全部清算するわけですから。
 そういう発想にはなかなか法務省というのは立てないのか。民法の中まで手を突っ込んでやろうという気には、あなたは全然そういう発想はもう度外視しているんですか、どうですか。
#55
○政府参考人(房村精一君) 基本的に、先ほども申し上げましたけれども、担保権というのは現在の金融秩序の基礎を成していますので、それを変えるということについては相当慎重な検討が必要になるだろうと思っています。
 ただ、御指摘のように、破産に至った場合の抵当権の行使の在り方という点について一般の場合と全く同じかというと、そこは必ずしもそうではないんだろうと思います。それがゆえに、今回の破産法案でも、例えば任意売却の制度というようなものを破産の局面で設けて、通常の抵当権の行使とは異なる扱いをいたしているわけでございますので、私どもとしても、民法の性格に反しない範囲で破産の場合の合理的な在り方ということは今後も検討していくつもりでございますし、また、経済秩序全体を考えて担保制度をどうするかということもこれまた検討の対象だろうとは思います。
 ただ、これはそういう意味で、社会に与える影響が非常に大きいので、相当慎重な検討が必要になるということは間違いないだろうと思っています。
#56
○角田義一君 それと、問題になったのはこの保証人の在り方ですね。
 これは、石井さんという商工会議所の方がいろいろお話をしていただきましたけれども、僕らとほとんど意見は一致したんだけれども、銀行も、幾ら個人だといったって、今や中小企業だって何億ですよ、あるいは何十億という債務を連帯保証さしているわけですよ。そんなこと、いざなったとき取れるはずないんだよ。取れるはずないのにもかかわらず、判こを押させて、そして金を貸すと。破産になれば、同時に取締役以下、全部破産にしてしまって、そういう人たちはもう、あれですわ、九十九万ぐらいもらったってどうにもならないんです。社会復帰なんかできませんよ。みんな自分の家屋敷全部取られて、私の知っているのもいるけれども、家屋敷取られて、もうちっちゃなアパートに大会社、しっかりやった中小企業のおやじさんが入れられているわけですね。私はある銀行へ行って頼んだけれども、この人は死ぬ、畳の上で死なせてやってくれと、自分のうちで。死んでから処分しろやと。そのくらいの余裕があったっていいんじゃないかと言っても、なかなかうんと言わない。金融機関は薄情なところがあるね。
 だから、この担保を、保証を全部個人にさせてとことん搾り上げるという制度をやっておって、本当の日本の経済の活力というものがこれ蘇生できるのかどうか、そういうことも考えないかぬと思うんです。そうすると、やっぱりこの保証制度というのは今日の時点では根本的に改める必要があるのではないかと。商工会議所でも、今日は黙っていたけれども、何かしかるべき案を世間さんに出して示して、その検討してもらいたいと言ったんだけれども、法務省もやっぱりそこは世間さんから言われる前に、どうしたらいいんだ、どこが、どこまで行ったら、どういうのが合理的なのかということを検討するときに来ているんじゃないですか、この保証問題というのは、保証人問題。
 この認識と、その問題に対する認識と今後の考え方も聞いておきたいと思います。
#57
○政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、特に中小企業の場合、その経営者あるいはその親族が個人保証する、企業が倒産した場合に、その経営者あるいはその親族もその保証債務の負担のために結果破産に追い込まれると、こういうことが随分指摘されております。
 日本でアメリカ等に比べて起業が少ない、業を起こすことが少ないというその大きな理由としてこの保証の問題が取り上げられているわけでございます。これは、アメリカでももちろん保証という制度はあるものですから、単に保証という法制度があるというだけではなくて、その社会の在り方、あるいは例えば金融実務の慣行とか、いろいろなものが関係しているんだろうと思うんです。
 ただ、そうはいいましても、やはり保証制度の在り方、法制度の在り方も当然関係をしているわけでございますので、そういった問題を解決するために法制度を検討すべき点があれば検討し、改善をしていかなければならないだろうと思います。
 そういう意味で、特に大きな問題として現在指摘をされておりますのが包括根保証、要するに、金額についても期限についても制限のない保証ということで、こういう場合には、会社の取引額が非常に増えれば必然的に保証債務の額も急増してしまうというようなことで、結果として非常に過酷な責任を経営者が負わされるというようなことがよく問題点として指摘されております。
 法務省としても、そういった問題について、保証制度の在り方そのものを見直すべきではないかということで、今年の二月に大臣から法制審議会に諮問をいたしまして、現在、保証制度の在り方について法制審議会で検討をしているところでございます。主として、強く問題点を指摘されております包括根保証を中心に検討を加えておりますが、それにとどまらず、保証の在り方等についても広く現在検討を進めているところでございます。できるだけ早く検討をいたしまして、できれば今年中にも法案を国会に出したいと、こう思っているところでございます。
 ただ、余り保証の制度を厳しく、使いにくくしてしまいますと、現実に日本の中小企業というのは経営者の個人的な信用で融資を得ているという側面が強うございますので、余り保証制度を使いにくくいたしまして、結局、中小企業が金融を得られなくなってしまうということではその検討の目的にかえって反してしまいますので、そういった金融が得られなくなるという、そういう影響を起こさないようなことも併せて考えなければなりませんので、なかなか難しい面はございますが、私どもとしてはできるだけ早く検討をしてその結果を法案としてお出ししたいと、こう思っているところでございます。
#58
○角田義一君 じゃ、法制審議会で真剣な議論をされるのは結構なんで、なるべく早く出してもらいたいと思いますけれども、今、あなた、中小企業のおやじさんが金を借りやすいようにしなきゃいけない面も考慮しなきゃならぬと言っていますけれども、それは包括根保証のような形では、それはもう大変だと思いますよ。それは、少なくとも包括根保証で際限がないというのだけはやっぱりやめて、仮に保証を取るにしても一定の合理性のある限度に抑えるという、そういうことが大事じゃないんですか。
 これはちょっと大臣に政治的な質問だからお聞きしたいな。
#59
○国務大臣(野沢太三君) 確かに、委員御指摘のとおり、包括根保証ということで再起ができないという経営者、多く見られるわけでございますので、この問題につきましては、一番、この日本の中小企業を主体とする経済構造の中で大事な私は融資制度の根幹を成す一つの制度であると思っておりますが、その融資の可能性と併せて、やはり立ち直り可能な形にするという意味で、責任の限度を明確にするということはやっぱり大事なことではないかと思っておりますが、この点につきましては、法制審におきます御審議の経過を十分見極めまして、できるだけ早いうちに対応を法務省としても取るつもりでございます。
#60
○角田義一君 分かりました。是非なるべく早く合理的な案を国会に出していただくようにお願いをいたします。
 最高裁の民事局長にお尋ねいたしますが、あなたは破産の神様だからお聞きしますけれども、何しろ東京地裁で全部の自己破産に弁護士さん付けるという画期的なことをやり通しちゃったんだから大したものだと私は思うんだけれども、あなたの失礼ですが経験で、東京地裁でそういうことをおやりになって、弁護士さんというのは、一人の人が何件もやると思いますけれども、うんと粗く言ってどのくらいの弁護士さんが、私選にしろ何にしろ、東京は二万二千件ぐらいあるんでしょう、何人ぐらいの弁護士さんが関与したんですか。
#61
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) これは裁判所から見ていて感じる数ということでございますが、今東京に常設の多重債務者の相談、法律相談センターというのがございますけれども、そこに登録をされて法律相談を受けていて、それで希望があればその相談を受けた弁護士さんが事件の受任もするという体制を整えて法律相談業務を行っておられますけれども、その人数は、恐らく既に五百人を大分超えるところの人数がおられるというように見ております。
 そうしますと、裁判所に申し立てられる、例えば今申し上げました、会社の代表者が保証債務に苦しんでおられるということで会社も倒産の危機に瀕しておるというような事案について言いますと、現状では、東京地裁の破産再生部に、年間に、会社とともに会社の代表者が民事再生の申立てをしてくるというのが五十件を超えて毎年ございます。
 少額管財ということで二十万円の予納金で会社とともに破産宣告を受けて免責を得るということで再起をしていくというような会社の役員の方々は、これはその十倍、五百人をはるかに超えるだろうというように思っております。そういう方々には、すべて代理人が付いて申立てをしておられるという実情にありますので、相当活発に行動されておるというように認識しております。
#62
○角田義一君 それは東京だから弁護士さんも大勢おられて五百人も登録しておって、今言った、ある程度よく行き届いているわけですよ。だから、仮に中小企業の経営者も再生できるような道が開かれるわけだけれども、地方へ行けば、私ども民主党の部会でも話を、よく出るんだけれども、国会議員の仕事のうちの三分の一は弁護士さん紹介してくれという話だというんだ。安くて親切でしっかりした弁護士、紹介してくれと。これがみんな国会議員の仕事の相当の部分を占めているというわけだよ。そうすると、この自己破産というものを使って仮に再生をさせるなり、あるいは不当な高利貸しと、そういうものから守ってやるに何にしても、弁護士の数というのは相当なければこれはできないわけですよ、実際問題として。そうなると、今度は人権擁護局長に行くんだよ。
 法律扶助協会で、少なくとも今、四十億程度だけれども、イギリスもこの前話出たけれども百四十億も出しておるわけだ。今日も弁護士さんの話だと、これはお金増やしてほしいと。せめてもうこれ、まず、まずここからやってくれと、これが一つだ。それと、法曹の人口をどうやって増やしていくかと、過疎地域にどうやって配置していくかと、これは最大の課題でしょう。
 まず、じゃ法律扶助の方をどうするかと。今の四十億じゃどうにもならない。どうします。人権擁護局長さん、お願いします。
#63
○政府参考人(吉戒修一君) 今先生御指摘のとおり、法律扶助の予算はこの近年、毎年大幅な増額をしております。十四年度で三十三億円、十五年度で三十五億円、十六年度で四十億円でございます。
 この扶助の予算に加えて、民事法律扶助協会でやっておりますのは、国からの予算、予算とそれに加えて債務者、援助を受けた方からの償還金、それに加えて寄付金でございまして、実際上は十四年度で九十億円、十五年度で百億円近い予算規模で扶助事業が行われております。
 御指摘のとおり、もちろん四十億でも必ずしも十分じゃないと思いますけれども、年々一割以上の予算の増額の規模で努力をしているところでございまして、引き続き私どもの方も努力をしたい、してまいりたいと思っております。
#64
○角田義一君 これから法曹人口を増やしていくのでも、いよいよロースクールが四月一日から発足をしたということでございますが、幾つかお聞きしたいんですけれども、この定数を見ると、何と、国立、公立、私立で五千五百九十人の定数ですな、これどのくらいの人間がまずあれですか、応募、応募というか受験したんですか。文部省だな。
#65
○政府参考人(清水潔君) お答え申し上げます。
 法科大学院の入学者選抜の状況についてでございますけれども、志願者で申し上げますと……
#66
○角田義一君 えっ、志願者。
#67
○政府参考人(清水潔君) 志願者でございますが、七万四千四百五人ということでございまして、これは当然のことながら延べということになる、相なるわけでございますけれども……
#68
○角田義一君 延べ、延べね。
#69
○政府参考人(清水潔君) 延べ、延べ数でございます。複数校受験する者もおりますので、平均、延べ平均倍率、志願倍率で申し上げれば十三・三倍ということになろうかというふうに思っております。
#70
○角田義一君 ちょっとあれですな。私ども、びくりした。大変な人が応募しているわけですね。まだ現実には、その五千五百九十人のうち、まだ確定はしていないんでしょう。もうこれ、定数全部一杯なんですか。
#71
○政府参考人(清水潔君) 各法科大学院の入学者選抜は、この一月から三月の半ばにかけて行われております。各法科大学院、それぞれスケジュールが違っておりますので、私どもは今、全体として法科大学院の実際に入学許可をし入学した者も含めて今調査を行っておるところでございますので、ちょっとこの点について、幾つかのサンプルということについては申し上げられるけれども、全体としてはまだ申し上げる段階ではないということで、若干のお時間の御猶予をいただければと思っております。
#72
○角田義一君 それにしても、そんなにえらい、一割も狂わないと思いますけれども、五千人以上ぐらいの人が入るわけでしょう。
 二つまず質問しますけれども、国立の法科大学院の授業料、それから入学金というのはどの程度なのか。それから、私立はいろいろ、私学はいろいろ濃淡が、高い低いはあると思いますけれども、私学の場合、どの程度の入学金、あるいは入学金ないしあるいはその授業料、平均的に言ってくれますか。話してください。説明してください。
#73
○政府参考人(清水潔君) 授業料についてでございますけれども、国立については、この四月から法人化いたしますので若干の幅を持って国立大学として授業料額を設定できるわけでございますが、その標準額は八十万四千円ということでございます。
 また、私立の状況についてでございますが、実はこれもまだ集計中でございまして、入学定員の規模の大きな大学、百人以上の大学について見ますと、平均授業料は約百十八万円程度ということに相なっております。
#74
○角田義一君 入学金は。私立の入学金。質問に答えていない。
#75
○政府参考人(清水潔君) ただいま申し上げました授業料、平均ベースで申し上げますけれども、約百七十万、入学金と授業料等を合わせますと百七十万ということでございますが、平均で五十万から六十万という入学金、施設使用料、施設料等ということであろうかと思っております。
 なお、国立の入学金は約三十万円であったかというふうに思っております。
#76
○角田義一君 それで、大分ちょっと格差というか差があるようにも思いますけれども、この人たちの中には当然奨学金をもらいたいという人が多い、おられると思うんですね。予算とすると何人分ぐらいでどのくらいの金額を大ざっぱに用意しているんですか。
#77
○政府参考人(清水潔君) 奨学金について申し上げますと、日本育英会のものと、あるいは各大学が学生獲得戦略の一端として自ら奨学制度を設けるというふうなものもございます。
 学生個人に対する予算的なあれとしては、法科大学院分に付いた、貸与人員が三千五百人、事業費総額六十八億円というものを準備、この予算でお願いしておるところでございます。
#78
○角田義一君 それはあれですか、学校が独自に、人寄せじゃないけれどもするのとは別に、それはまた別なんですね。ちょっと。
#79
○政府参考人(清水潔君) 失礼いたしました。今のは日本育英会が有利子で貸与するものでございまして、一人頭で申し上げますと、最大貸与月額は月額二十万円、年額二百四十万。また、無利子貸与と併用いたしますと、更にこれが三百万を超えるというふうな状況でございます。
 一点だけ付け加えさせていただければと思っておりますが、例えば今回法科大学院に関しては授業料を先ほど平均額で申し上げましたが、実はこれはまた私立大学におきましても様々な形で授業料と同時に授業料の減免措置を講ずる。例えば私どもが承知しているある大学では、三百人の入学定員に対して三十名については全額免除を、二百名については半額免除をというふうな形の、そういう仕組みを取ったりというふうなことでございまして、奨学金トータルと、各大学の授業料と授業料免除、そして奨学金、そして各大学が準備される様々な奨学金というふうなトータルとして見ていくことが必要ではないかというふうに考えております。
#80
○角田義一君 もう一つ、もう一つだけ聞いておきますけれども、この法科大学院を作るための特別な国家の支援というのは予算上付けられているんですか。もし付けられるとすればちょっと説明していただけますか。
#81
○政府参考人(清水潔君) 法科大学院につきましては、私学助成ということで、私学助成では法科大学院の形成支援ということで二十五億円を新規に措置させていただいております。それから、国公私を通じて、法科大学院はまたそもそも初めての基盤を作っていくという必要がございますので、国公私を通じて法科大学院の形成支援ということで、それに加えて十五億を準備させていただいておると、このような状況でございます。
#82
○角田義一君 最後になりますけれども、ちょっと大臣にお尋ねしますけれども、今回の破産法の全面的な改正というのは、ある意味では、大正十一年以来のことですから非常に画期的な法案だと思います。私どもも賛成をしている法案でございます。
 ただ、こういう法案ができてこれで万々歳ということには私はならないのではないかと思っておりまして、自己破産を取りましても、ここ十年ぐらいに急激に増えて、何と年間二十二、三万人の人が自己破産状態に追い込まれると。まず、それは自己破産でやられればいいですけれども、自己破産もできずに夜逃げをする、あるいは自殺をするというような悲惨な状態というのは今日なお続いているわけで、これは政治の立場からいうと、最低の法律の整備はできたけれども、それが生まれる土壌というものにメスを入れて破産者を少なくしていかなきゃいかぬじゃないか、自己破産を減らさなきゃいかぬじゃないかと、こういうやっぱり発想に立たなければ、私は、制度としてまずいと私は思いますですね。
 この点について、大臣の存念を私は聞きたい、そして終わりたいと思います。
#83
○国務大臣(野沢太三君) 破産に至った皆様が再起できるようにということで、今回のこの破産法についてはできる限りの手当ても考えたわけでございますが、委員御指摘のとおり、やはり何よりも破産に至る原因を除去していく、減らしていくということがまた非常に重要であろうかと思います。
 このためには、経済全体の活性化を含め、あらゆる施策がこれ必要になるわけでございますけれども、少なくとも法務行政の立場からいたしましては、なるべく使いやすい、そして入りやすい方策を何としても考えなきゃいかぬ。そしてまた、このルールに乗らない方、今委員御指摘のとおり、自殺とか夜逃げとかというようなことに至らないようにむしろセーフティーネットを広げていく、すそ野を広げていくと、こういう努力が大事かと思っております。
 今回の一連の司法制度改革の中では、その意味でもできるだけ御相談を早めにしていただく、そして幅広に救援、支援措置の在り方についても多様な方法を組み合わせることによってまた救いが可能になるんじゃないかと、こう思っておりますので、本法案はもちろんでございますが、一連の司法制度改革のこの法案を是非ひとつ有益、有効に成立させていただきまして、この機能が一日も早く実現するようによろしくお願い申し上げたいと思います。私どもも全力を挙げてこれに取り組んでまいるつもりでございます。
#84
○角田義一君 終わります。
#85
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 前回に続きまして、まず免責不許可事由の拡大の問題で質問をいたします。
 給与所得者再生手続を選択をして、かつ再生計画を遂行した債務者がその後にリストラや病気などで職を失って多重債務に陥ることはあり得るわけで、こういう場合にも一律に免責不許可となることは問題ではないかということを、この間の質問の最後に法務省に立法趣旨をお聞きをいたしました。
 今日の午前中の参考人質疑でも、現場で管財人とかされております弁護士さんからもこの点での柔軟な対応ということの御意見が出されたわけでありまして、最高裁としてのそういう場合の柔軟な対応の必要性についての御認識をまずお伺いをいたします。
#86
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 今回の破産法案は、免責不許可事由がある場合にも、事案の内容を考慮し、裁判官の裁量によって免責許可決定をすることができるということを明文の規定をもって明らかにしております。現行破産法でも同じように解釈がされていたわけでございますが、規定上より明らかにされたという認識でございます。
 お尋ねの個人再生事件でのハードシップ免責を受けたようなもの、これについても七年経過前に破産免責の申立てがあったということについて免責不許可の事由とされているわけですが、やはりこの点についても、裁判官の裁量で免責許可決定をすることができるということが明文上明らかになっているということに基づいて運用していくということになります。
 従来、モラルハザードが生じるのを避けるという目的で、再度の免責許可決定をすることについてはこれはかなり制限的に解釈をするというような運用がなされておりました。しかし、最近ではこの再度の免責の許可を、例えば十年というふうに限られているわけですけれども、八年後の免責申立てについて再度の免責を許可しなければならないのではないかというように思われる事案がまれではございますが出てきております。そのような場合には、特に最近広がってまいりました少額管財手続で低廉な費用で管財人を選任しまして、その管財人の意見を聞きながら免責を許可するかどうかを決めるというような運用がなされ始めております。
 私も経験した事例によりますと、八年ほどしか経過していない、前の免責許可決定の確定から八年ほどしか経過していないという事案につきまして、違法な金融、いわゆるやみ金融から融資を受けて追われているというようなことで、免責の決定をしてしまわなければその問題が解決がされないというような問題が起こる事例に遭遇するというようなことがございましたが、破産管財人の意見を聞いて様々なその破産者の状況を総合的に勘案して、あえて免責、再度の免責の許可決定をしたというような事例がございます。
 そのように必要性が高いという場合には、やはり裁量権を行使するという場合が出てまいっておりますので、今の広がってきております少額管財手続に付して管財人の意見も聞きながら運用するというような様々な運用上の工夫を重ねながら、適切な運用がされていくようにこれから研究が続けられていくだろうというように考えております。
#87
○井上哲士君 そういう柔軟な運用について是非周知徹底をお願いをしたいと思います。その上で、次に罰則の問題についてお聞きをいたします。
 今も出ましたやみ金融などの不当な取立てなどについてしっかり規制をしていくということは大変大事でありますが、同時にこのことが労働組合等が行う正当な行為にまで波及をしていくのではないかと、こういう懸念の声があります。いざ会社が倒産をしたという場合には、労働債権をいかに確保するかということは当面の生活の糧を失った労働者にとっては死活問題であります。そういう場合に、労働債権の確保等に向けた労働者や労働組合等の行為が正当行為であり、そういったものが処罰をされるということになりますと大きな問題になります。
 そこで、幾つかお聞きをいたします。
 まず、二百六十五条の詐欺破産罪です。債務者の現状を改変して、その価格を減損する行為、それから債務者の財産を債務者の不利益に処分し、又は債務者に不利益な債務を債務者が負担する行為、これを詐欺破産罪として処罰の対象とし、その相手も罰則を加えることとしておりますが、この趣旨はどういうことなんでしょうか。
#88
○政府参考人(房村精一君) 債務者が経済的に破綻して破産に至る場合、破産手続開始の前後を問わず破産者の財産を隠匿する、あるいは損壊する、あるいは無用の債務を負担すると、こういうような形によりまして実質的に自己の財産を減少させるというようなことが行われます。これによりまして総債権者の利益が害されるわけでございますので、この法案ではそういう総債権者の利益を害する一定の行為類型をこの二百六十五条に規定いたしまして処罰の対象としたわけでございます。
#89
○井上哲士君 破産争議の場合には、労働組合が債権確保のために事業所を占拠すると、こういうような場合もあるわけですね。こういう労働組合の行為がこの罰則の対象になることはないわけですね。
#90
○政府参考人(房村精一君) ただいまの御指摘の行為、該当する可能性があるとすれば、この二百六十五条一項三号の「債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為」ということになろうかと思いますが、ここで「現状を改変して、その価格を減損する」と申しますのは、破産財団に属する財産の物理的状況を改変することによって当該財産の価格の著しい減少を招来する行為をいうという具合に解されますので、御指摘のような労働組合が事務所を占拠しているというにすぎない場合はこれに該当することはないと考えます。
#91
○井上哲士君 労働債権の確保という点でいいますと、特に中小企業なんかの場合は退職金といっても非常に少額の規定しかないという場合がありまして、上積み協定をしたり、あるいは売掛金や商品在庫を労組に譲渡したり、そんなことはこれまでもいろんな形で現場でやられてきておりまして、そういうことも含めて罰則の対象にして、結果としてやはり労働債権の確保が困難になると、こんなことがならないような運用を改めて求めておきます。
 もう一点、二百七十五条についてお聞きをします。
 これ、破産者等に対する面会強請等の罪でありますが、刑法にある証人等威迫罪とか、それから暴力行為等処罰ニ関スル法律にあります集団的・常習的面会強請、強談威迫、こういうところに使われているこの面会の強請、強談威迫、これを破産法の処罰規定に取り込んだということですけれども、この趣旨はどういうことなんでしょうか。
#92
○政府参考人(房村精一君) この二百七十五条、御指摘のように「破産者又はその親族その他の者に破産債権を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」ということになっております。
 これは先ほども出ましたけれども、特にやみ金融のような違法な金融機関が、破産手続が開始したにもかかわらずその破産者あるいはその親族に対して破産債権の弁済を求める、求めて面会を強要し、あるいは極端な場合には脅すというようなことも現実になされております。破産宣告がなされますと、すべての債権者は自らの権利を行使することが禁止されまして破産管財人による平等な弁済を受けると、こういう手続が進んでいるわけでございますが、今申し上げたようなやみ金融のようなやり方は、こういう、正に他の債権者が禁止されている中で実力をもってその債権者間の平等を害しようとする行為でありますし、またこういう行為が行われますと個人である破産者の経済的な再起が妨げられると、こういうことが指摘をされているわけでございます。
 そこで、この法案では、そういった指摘を受けまして、そのような行為に対して罰則でこれを取り締まるということを考えたわけでございます。そこで、対象といたしましては、破産者、個人である破産者に限りましてその者あるいはその親族に今申し上げたような破産債権を払わせる、あるいは保証させると、こういう目的でこのような面会の強要とか強談威迫の行為をするということを刑罰をもって禁止したものでございます。
#93
○井上哲士君 貸金業法などでの取締りもこの間行われてきました。これではできないということなわけですね。
#94
○政府参考人(房村精一君) まあ、貸金業法での取締りは取締りとしてございますが、すべてが貸金業者というわけではございませんし、やはり破産の局面に限定して、特にそういう保護を図る必要がある場合について破産法で独自の罰則を設けると、こういう考え方でございます。
#95
○井上哲士君 面会の強請というところまでが罰則を科すわけですが、これはどうも幅が広過ぎるんではないかと、こういう意見も聞きます。いわゆる強談威迫、直接会ってやる以前のところまでこの処罰対象にした理由はどういうことで、どういう具体的な問題を想定をされているのかと、この点いかがでしょうか。
#96
○政府参考人(房村精一君) 今回の法案では、強談威迫にとどまらず、その前段階の面会強請、これも処罰の対象にしております。
 ただ、現実に問題になる局面を考えますと、破産宣告を受けて、言わば非常に経済的にも精神的にも追い詰められている、そういう方々に対して、本来破産債権として管財人の前で平等に受けなければいけないそういう債権を直接取り立てようとする行為、これは直接会って強く威迫をするということまでいかなくても、面会を強く求められるだけでも、その元々弱い立場にいる破産者にとっては非常な困惑を感じるのではないか。
 そういう意味で、他の法律のことについてはどうか分かりませんが、少なくともこの破産の局面で、本来行使できない債権を行使してその債権者平等を害して満足を得ようと、そういう行為と、それから破産者が受けるそういった被害感情あるいはその置かれた立場というのを考えますと、やはり罰則をもってその面会の強請まで取り締まらないと十分なその保護が図れないのではないかと、こう考えた次第でございます。
#97
○井上哲士君 やみ金業者などがそれこそ親戚のところまで行ってやったりとか、様々な問題は聞いておりますので、そういう点でこういう問題にしっかり取締りがされるということは大事だと思うんです。
 ただ問題は、やはりこの二百七十五条によりまして、企業の労働者、労働組合が行う労働債権確保のための正当な行為ですね、団体交渉を申し入れるとか、こういうことまで処罰の対象になるんではないかと、こういう危惧の声があるわけですが、この点はいかがでしょうか。
#98
○政府参考人(房村精一君) まず、この条文で処罰の対象となっておりますのは個人債務者が破産した場合に限定されておりますので、企業破産の場合にはおよそ対象になっておりません。したがいまして、ほとんどの場合、労働組合が存在するほどの会社であれば、会社であればというか事業であれば、会社形態で行われていることが大半だと思いますので、まずそれで外れるということが一つございます。
 それから、個人事業者がやっている場合ももちろんなくはないと思いますが、この場合であっても、労働条件等に関する団体交渉ということであれば、その破産債権について弁済をさせ、あるいは破産債権について破産者の親族その他の者に保証をさせると、こういう目的からは外れるということになるのではないかと、こう考えております。
#99
○井上哲士君 基本的に企業の労働組合が行うこと、そしてまた労働組合、個人事業主の場合でも労働組合活動の範疇であれば外れるという答弁でありました。
 もう一点、警察の援助についてお伺いをします。
 第八十四条で、管財人が職務の執行に抵抗を受けるときに、その抵抗を排除するために裁判所の許可を得て警察の援助を求めることができることになるわけですが、まずこの八十四条の立法趣旨についてお伺いします。
#100
○政府参考人(房村精一君) これは実は個別執行である民事執行手続におきまして、執行官が職務の執行に際して妨害を受けたような場合には、これを排除するために警察上の援助を求めるということが現在の民事執行法で規定されております。破産管財人は言わば、そういう個別執行を超える包括執行の言わば執行を担う立場でございます。現行法の下におきましては、その破産管財人についてはそういう実力による妨害行為を受けた場合にも警察上の援助を受けるという制度が設けられておりませんので、やはりこれを何とかしてほしいという、こういう御指摘が前からございました。
 そこで、今回、個別執行の執行官に並ぶものとして、包括執行の破産において破産管財人にそういった抵抗を受けたときに警察上の援助を求めることができると、こういう制度を八十四条に規定したものでございます。
#101
○井上哲士君 今趣旨については答弁いただきましたが、これも運用に当たっては労働組合のいろんな正当な争議、破産争議について警察の介入などを招くというようなことはあってはならないと思うわけですが、裁判所の許可を得てという運用になるわけで、この点で運用について最高裁からお願いをします。
#102
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 管財人による警察上の援助請求がどのような場合に使われるかといいますと、例えば暴力団の関係者が破産財団に属する物件を不法に占拠しているというような場合に、占有関係の調査やあるいは物件の立入りを禁ずる封印措置を取るというために管財人が現地に赴きますが、その場合に暴力団関係者から脅迫をされたり、あるいは場合によっては危害を受けるというようなことがあるものですから警察官の援助を求めるということがあるわけでございます。
 この規定が労働組合の正当な行為に及ぶことがないかどうかという点についてでございますが、一般に適法な労働組合の活動が正当な業務行為として尊重されるということは当然であるというように考えております。したがいまして、そのような正当な行為に対して裁判所から選任される管財人が警察上の援助の規定を使うということは一般的に考えにくいことでございます。
 また、警察上の援助請求につきましては、裁判所の許可を更に要件としてございますので、言わば二重の安全策があるというように考えておりまして、これによって適正な運用が図られるというように考えておるところでございます。
#103
○井上哲士君 罰則や警察の援助について何点かお聞きをしましたけれども、全体としてやみ金などの非常に不当な取立てであるとか、そして今ありました暴力団などにおける妨害、こういうものを除去していくというのが全体の立法趣旨かと思いますので、そういうものを是非周知徹底をしていただいて、労働組合等の正当な行為についてこういうものが及ばないという点での徹底を是非図っていただきたいと思います。
 あと何点かお聞きをいたします。
 一つは、非免責債権の拡大についてですが、二百五十三条で免責許可を受けても免責対象とされない非免責債権の対象を拡大をしております。その内容とこれを入れた趣旨についてお願いをします。
#104
○政府参考人(房村精一君) 破産の場合に、すべての財産を清算いたしまして残った債権についても、免責をすることによってその再出発を図るというのが現行法あるいは今回の法案の基本的考え方でございますが、ただ債権の中にはそのまま免除したのでは相当でない、モラルハザードを招く、あるいはその債権の保護に欠けるというようなものもございます。そういうことから一定範囲の債権につきましては免責許可があってもなお免責されないと、こういうことといたしているわけでございます。
 現行法の下では、租税債権であるとか悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権あるいは労働者の労働債権と、こういったものが非免責債権として挙げられておりますが、今回、それらと並びまして、新たに破産者の故意又はそれと同視すべき重大な過失により人の生命又は身体を侵害する不法行為に基づいて生ずる損害賠償請求権、それから破産者が扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権、この二つを非免責債権といたしました。
 その趣旨といたしましては、やはりこの二つの債権はいずれもその保護の必要性が特に高い。やはり、他人の生命又は身体を侵害するという重大な違法行為を行った損害賠償請求権については、破産をしたからといって免責をするのはやはりその債権を取得した者に対する保護に欠けることになるだろう、こういうことが考えられますし、扶養義務についても全く同様でございます。そういうことから、今回、この二つの種類の債権について範囲を拡大いたしたものでございます。
#105
○井上哲士君 養育費につきましては、昨年改正をされた民事執行法で将来にわたる養育費についても保障するということになりましたので、その点と併せて大きな前進になることだと思います。
 それから次に、特定調停の問題でお聞きをするんですが、多重債務の整理法としては簡易裁判所の手続の一つである特定調停もあります。報道によりますと、二〇〇〇年には十六万二千九百六十六件が、二〇〇二年には三十九万四千百三十三件ということで、自己破産以上に大変これを利用される方が急増しているということであります。費用が格安であること、自分でこの返済計画を立てる分、苦労もあるけれども、支出と収支の概念が身に付いて生活再建にも役に立つということから、むしろこちらを勧めるという方も随分いらっしゃるようですが、この破産との違い、そして今回の改正によってむしろ破産の方に誘導しようというような、そんな思いがあるのか、今改正との関係はどういうことなんでしょうか。
#106
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、特定調停、非常に多くの方々に利用していただいております。
 この特定調停のメリットは、ただいま御指摘もありましたが、やはり何といっても費用が低廉である、また迅速に柔軟な解決ができると。で、専門的な知識、経験を有する調停委員のその関与の下でそういった柔軟、迅速な解決が図れるという意味で、非常にある意味では使いやすい制度だろうと思っておりますが、しかし、調停という性格がありますので、どうしても当事者の合意が成立しなければ仕方がない。そういう意味で、協力的でない方が関係者におりますと、この特定調停が成立するということが難しくなるわけでございます。
 一方、これに反しまして破産法は、特定調停に比べますと手続も厳格でございますし、費用も掛かります、また時間も掛かりますが、しかし、これは当事者の合意ということではなくて、裁判所の関与の下に債権者の意に反してもその整理ができると、こういう特質がございますので、そういった意味でそれぞれその特色があろうかと思います。
 その事案に応じて柔軟、迅速で、当事者の協力が得られるときには柔軟、迅速な解決を求めて特定調停を利用していただくことがふさわしいでしょうし、より多くの関係者がいて裁判所の関与の下に厳格な手続で平等な弁済を図るということを重視すれば、これは破産手続を利用するということになろうかと思います。
 今回、この破産法を改正いたしまして、従来に比べれば相当利用しやすく、また手続についても柔軟な扱いができるようになったと思いますが、やはり基本的なそういう大きな違いは残っておりますので、今後もその事案に応じてこの二つの制度、あるいはそのほかの再生手続等も含めて、倒産関係の諸手続を適切に使い分けていただければと、こう思っております。
#107
○井上哲士君 最後に、商事留置権の消滅の問題について聞きます。
 百九十二条で、破産手続開始のときに破産財団に属する資産に商事留置権がある場合に、一定の条件の下で管財人が留置権の消滅を請求することができるということにしておりますけれども、この内容とその趣旨についてお願いをします。
#108
○政府参考人(房村精一君) これは、留置権者が留置をしておりますと、破産管財人としてはそのものを自ら利用するということができませんし、また売却することもできないわけでございます。ところが、破産をいたしましてもなお事業を継続するという場合もございます。そういうときに、例えばその事業に必要なものが留置権で留置されてしまう、例えば原材料であるとか半製品が留置されてしまいますと事業の継続ができなくなってしまう。事業を継続することによって少しでも弁済のための原資を増やすということが破産管財人としては望ましいわけでございますので、そういうときには何とかその留置権を消滅させることによってそれらのものを使えるようにできないかと、こういうことから、今回、この商事留置権の消滅請求の制度を設けることとしたわけでございます。
 また、それ以外にも、事業そのものを例えば営業譲渡をするというときに、それと一体となっているものが商事留置権で留置されてしまいますと営業譲渡もできなくなってしまう。そういったことから今回認めました制度でございまして、その破産管財人の方で裁判所の許可を受けまして一定額を弁済すると、留置権者に弁済を申し出て、それと引換えに留置権を消滅させると。こういう仕組みといたしまして、留置権者とすればその留置しているものの価額相当の額を弁済してもらえばそれ以上占有を続ける必要はないはずでございますので、そういうことによりまして留置権で担保された債務の弁済を確保すると同時に、留置物を利用したいという破産管財人の要望も満たすと、それを裁判所が中に入ってそういった仕組みで適正な解決を図ると、こういう形でございます。
#109
○井上哲士君 破産手続が開始をされましても事業を継続するということが、債務者にとっても、そして債権者にとっても、財団の維持や増資化に資するという点で双方に望まれるときに、こういうことは大変一部の債権者の横暴などを抑えるという点でも効果があることかと思います。全体として中小企業などにも評価をされていることかと思います。
 繰り返しになりますけれども、やはり罰則等の問題について本来のやはり法の今回の改正の趣旨に付いた運用を改めて求めまして、質問を終わります。
#110
○委員長(山本保君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#111
○委員長(山本保君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、中川義雄君が委員を辞任され、その補欠として小林温君が選任されました。
    ─────────────
#112
○委員長(山本保君) これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、破産法案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#113
○委員長(山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
#114
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました破産法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    破産法案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の点につき格段の配慮をすべきである。
 一 本法の趣旨、内容、民事再生法及び会社更生法との相違等について、関係団体をはじめ広く国民に周知徹底するよう努めること。
 二 労働債権の保護については、多様化する労働形態に対応した配慮及び債権者に対する情報提供努力が十分なされるよう周知徹底するとともに、企業倒産に伴うセーフティネットの必要性から、労働債権と他の債権との調整について引き続き検討すること。
   また、ILO一七三号条約を早期に批准するよう努めること。
 三 債務者の生活再建に資するとの視点に基づく自由財産の拡張の裁判については、事案に応じて、自動車等も含めた多様な物件が対象となり得る柔軟かつ機動的な制度である旨を周知徹底すること。
 四 個人破産件数が極めて多い状況にかんがみ、その破産手続が適正に行われるための法的支援が受けられるよう、法律扶助関係予算の大幅な増額を図ること。
 五 破産者に対する資格制限については、それぞれの制度の趣旨を踏まえつつ、破産者の経済生活の再生の機会を確保する観点も考慮し、必要な見直しについて検討すること。
 六 新しい破産手続が適正かつ迅速に運用されるよう、裁判所の人的・物的体制の一層の整備に努めること。
 七 破産法の改正により、労働組合運動その他正当な活動が阻害されないものであることを周知徹底すること。
 八 個人の保証人が過大な責任を負わないよう、合理的な保証制度を確立するため、包括根保証の撤廃も含め、保証制度全体の見直しを早急に進めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#115
○委員長(山本保君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#116
○委員長(山本保君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、野沢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野沢法務大臣。
#117
○国務大臣(野沢太三君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
#118
○委員長(山本保君) 次に、破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#119
○委員長(山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#120
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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