2004/04/13 第159回国会 参議院
参議院会議録情報 第159回国会 法務委員会 第10号
#1
第159回国会 法務委員会 第10号平成十六年四月十三日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月八日
辞任 補欠選任
野間 赳君 森山 裕君
四月九日
辞任 補欠選任
森山 裕君 野間 赳君
榛葉賀津也君 樋口 俊一君
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出席者は左のとおり。
委員長 山本 保君
理 事
松村 龍二君
吉田 博美君
千葉 景子君
木庭健太郎君
委 員
岩井 國臣君
鴻池 祥肇君
陣内 孝雄君
野間 赳君
今泉 昭君
江田 五月君
角田 義一君
樋口 俊一君
堀 利和君
井上 哲士君
発議者 江田 五月君
国務大臣
法務大臣 野沢 太三君
副大臣
法務副大臣 実川 幸夫君
大臣政務官
法務大臣政務官 中野 清君
事務局側
常任委員会専門
員 加藤 一宇君
政府参考人
警察庁長官官房
審議官 米村 敏朗君
警察庁刑事局長 栗本 英雄君
法務省入国管理
局長 増田 暢也君
文部科学大臣官
房審議官 樋口 修資君
厚生労働大臣官
房審議官 大石 明君
参考人
東京都立大学法
学部長 前田 雅英君
移住労働者と連
帯する全国ネッ
トワーク事務局
次長 鈴木 健君
中央大学法科大
学院教授 横田 洋三君
日本弁護士連合
会難民認定問題
調査研究委員会
委員長 渡邉 彰悟君
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本日の会議に付した案件
○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
○難民等の保護に関する法律案(江田五月君外三
名発議)
○政府参考人の出席要求に関する件
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#2
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。委員の異動について御報告いたします。
去る九日、榛葉賀津也君が委員を辞任され、その補欠として樋口俊一君が選任されました。
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#3
○委員長(山本保君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び難民等の保護に関する法律案を一括して議題といたします。本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、四人の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、東京都立大学法学部長前田雅英君、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局次長鈴木健君、中央大学法科大学院教授横田洋三君及び日本弁護士連合会難民認定問題調査研究委員会委員長渡邉彰悟君でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議事の進め方でございますが、まず前田参考人、鈴木参考人、横田参考人、渡邉参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁も簡潔にお願いいたします。
なお、参考人の方の意見陳述それから質疑、答弁とも、着席のままで結構でございます。よろしくお願いします。
それでは、前田参考人からお願いいたします。前田参考人。
#4
○参考人(前田雅英君) それでは、座ったまま失礼させていただきます。本日は、何のメモもお持ちしないで本当に申し訳ございません。言い訳になりますが、若干時間が詰まっておりまして、準備ができなくて申し訳ございませんでした。口頭で意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、刑事法学者、刑法学者として犯罪情勢を研究しているわけですけれども、特に二十万人を超えると考えられている不法滞在者対策が必要であるという観点から、本法の一部改正について意見を述べさせていただきたいと思います。
また、私は法務省の出入国管理政策懇談会の委員を務めさせていただき、その中で入国管理の現状を見せていただいてきた者として、やはり現場を踏まえた本法の合理性についてのチェックといいますか、意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、一番初めに強調しておかなければいけないと私が考えますのは、やはり治安の悪化状況というのはやはり非常に深刻であるということで、表に出てきた、刑務所があふれて増設が必要であるとか留置場が足りないということ以上に、その背景にあるといいますか、その根底にあるマグマの部分といいますか、犯罪の増勢が止まっていない。若干、このところ、国を挙げての取組で、微妙な変化といいますか、止まり掛けてはいるんですが、ただ非常に危機的な状況にあると。
犯罪率というのは、もう御承知だと思いますが、人口十万人当たりの認知件数なんですが、これが戦後の混乱期を超えて戦後最悪の状況になったと。非常に危機的な状況にある。さらに、検挙率が急降下して、日本の治安の象徴であった検挙率六割をずっと維持してきたのが、ある時期から落ちてきて二割を切った。また戻してもせいぜい二割で、三分の一しか捕まらなくなった。凶悪犯である強盗が半分も捕まらなくなって五割を切ったというような御事情御承知だと思いますが、正にそれに対応するために行動計画なりが出てきているんだと思います。
その中で、やはり大きな柱は少年問題と外国人犯罪だと我々の側では認識しているわけです。少年問題に関しては別個のところで取組を、先生、ここにおられる先生方も大変な御努力をされているのは承知しているわけですけれども、外国人犯罪の問題に関して、やや遅きに失したということはちょっと僣越な言い方なんですが、入管法を変える取組、それからそれに関連して入管の制度を強めていく取組というのは、私は、ある部分必要といいますか、前に進めなければいけない施策だと考えております。
そのほかにもちろん、治安の回復のためには地域社会、家庭の力、その他非常に重要なものがあると思いますが、外国人問題が刑事司法に非常なオーバーワークを課している。要するに事件数が多くて、要するに大事な事件解決に注ぐべき力を失わせているといいますか、正に力をそいでいるという関係になっていると思います。
我々が一番身近な現場というのは東京地裁、裁判所であるわけですけれども、刑事裁判の被告人が三分の一、外国人になっていると。その前から、留置場の留置人の三分の一が外国人になっていると。都内の留置場では、女性に限れば外国人の方が多いという状況になっているわけです。
外国人犯罪を変にオーバーに取り上げて、その差別的な扱いとか排外的な動きになるということを厳に慎まなければいけないんですが、逆に、数値としてこれだけの割合を占めているということはきちっと認識して施策を立てていただかなければ困るということなんだと思うんです。
ピッキング盗が話題になって、外国人犯罪というと窃盗事犯が多いというような感覚を持つ面もあるんですが、非常に凶悪な事件で我々の刑事の世界で一番重い犯罪というのは実質的には強盗殺人、刑法二百四十条なんですが、その中で占める外国人の割合というのは非常に高いと。二百四十条の被告人の中での外国人の割合というのは非常に高いと。誘拐の割合も高いと。決して軽微なものではないんだと。
もちろん、外国人全部が危険だということではなくて、外国人といかにうまく付き合っていくか、また、どうするのが一番日本人、我々日本の国民にとっても、それから外国からいらした方にとってもハッピーであるかということの視点から考えていかなければいけないと思うんですが、少なくとも、非常なオーバーワークを刑事司法に課してしまっていると。
外国人犯罪というのはコストが非常に掛かるということですね。その表面的なコストとして、その通訳費用というのが、下手をすると事件によっては弁護士費用より通訳費用の方が掛かっている。ゴビンダ事件とか、有名な事件がありますけれども。裁判が必ず外国人の場合長くなる。司法制度改革で、裁判の長期化を何とかしなければいけないというようなことが必ず出てくるわけですけれども、今の日本、東京の地裁なんかの長引くポイントの一つは、やっぱり外国人問題になってくるということなんだと思います。
強制退去にしろ、非常にきちっと日本やりますので、それに対して刑事司法に払われているコスト、使っているコストというのは非常に大きいので、今度の改正の中で合理的に、本人が申し出た方に関してはその手続をやや緩やかにして帰っていただくというのも、そのための解決として私は十分に合理性があるというふうに考えております。
もちろん、よく言われるとおり、外国人すべてが悪いわけではないし、大部分の方は非常に日本で平穏に暮らされて、日本の国民全体に対してもプラスの面を多くもたらしていただいているというのはそのとおりだと思うんですね。
ただ、東京都の治安対策の中で、外国人問題取り上げて副知事以下いろいろ議論しているんですが、その中で、外国人の留学生の方やなんかに集まっていただいてヒアリングなんかをしていますと、やはり、中国人仲間で見てて、七割の学生はまじめに勉強するために日本に来ていると、三割ぐらいはやはり金のために来ていると。もちろん、犯罪のために来ているのが三割いるわけではないんですが、三割というのは一部だといえば一部なんですが、やはり大きな数の三割というのは非常に重大なんだと思うんですね。
やはり、だから外国人を締め出せというのは全く暴論でして、やはり適正な在留資格認定の必要性というのが私は当然のこととして導かれるんだと思うんです。
入国管理政策がきちんと行われなければ何が起こるかというと、やっぱり外国人排斥とか、もっと言えば極右的な動きといいますか、ヨーロッパでも外国人犯罪を原因、きっかけとして、例えば、フランスでルペンという候補が大統領選挙で非常に予想外の票を取った。これ、外国人犯罪の問題を訴えて受けたんですね。オランダのフォルタインという極右の政党の党首が活躍して、それが殺される、ドイツのネオナチズム。適正な外国人対策を誤ると、国民の排外主義が異常に高まって国家的な不利益を導くと思いますね。
もちろん、不法滞在を強く締め過ぎるといけないんですが、そういうレッテル張りが犯罪を導くみたいな議論というのはどこにでもあるんですが、私はやはり、適正な入国管理を行うためには一定のやはり罰則を付けたチェックというのが必要だと思います。やはり、安直に外国人を流入させると、これは日本の労働者の権利を害するという問題ももちろん労働省強く意識されておられますけれども、厚労省意識されておられますけれども、日本の労働市場の問題としてきちっと取り上げて考えていかなければいけない。
その中でどの程度の自由化が合理的かということなんですが、我々にとって非常に勉強になる例がブラジル人問題だと思いますね。ブラジルの方、日系二世ということで入れて、あっという間に外国人犯罪のナンバーツーになったと。物すごい勢いでブラジル人が増え、犯罪が増えて、少年犯罪の中でも、外国人少年、中国人よりむしろブラジル人が久里浜の少年院で大きな顔をしているというか重要な位置を占めるようになってきている。
これはもちろん、日系ブラジル人に対しての企業側の対応が不十分で、きちっとした雇用をしないとかいろんな問題あるわけですけれども、正規の形で入ってきた労働者だから犯罪を犯さないということでは決してない。やはり、受け入れたらば、きちっと生活ができて、子供を学校に入れて、きちっと生活できるだけの政策を取らないで受け入れれば、これはやはり犯罪を生む。ブラジル人の少年は半分ぐらいしか学校に行かない。学校に行かないから昼間ぶらぶらしていて、車上ねらいとか自販機荒らしを始める。日本のように道路にお金が置いてある国はないと。自販機というのは、彼らから見たら簡単にお金が取れるものというふうに見ちゃうわけですね。その文化の差の中で犯罪に走っていって、それだけを責めるわけにはいかない。やはりきちっとした入国管理政策、これが私は非常に重要なんだと思います。
ただ、そのときに、むちだけでは駄目で、やはり敵視するということではなくて、それから、現にこれだけ大勢の方がもう日本に来ていて不法残留という形になっていると、それに対応するために、どういう制度設計が最も合理的な入国管理になっていくかという観点から考えていただければと思うんですし、実際、今回の改正案は、動かしてみなければ分からない面もちろんあるんですが、考えられる範囲では非常に合理性のある制度設計をされておられるんだと私は拝見いたしております。
不法残留者を減少させるために罰金刑の大幅な引上げ。刑罰の中でも、不法残留の人にとっては、お金を取られる罰金というのは非常に効果があるんだというのは入管の現場の方から聞いております。というか、そこのところを強く意識しておられる。金をもうけるために来ているのにお金を召し上げられるのは、懲役二年で日本に長くいられるよりもきついんだというような現場の声も聞いたことがあります。それが有効に使われているかどうかという現状の問題あるんですが、今後の運用の仕方あると思いますが、やはり罰金刑の大幅な引上げというのはそれなりの合理性があるんだと思いますね。
あと、リピーターを防ぐための、悪質なものに対しての上陸拒否期間を十年に延ばす。この十年という数字がどれだけ合理性があるかとかいろいろ難しいことあるかもしれませんけれども、今のものだとどんどん繰り返すので、十年に延ばしてやってみるというのはやはり合理性があるのではないか。それに対して、自ら申し出た者に対して簡易迅速に出国させて、上陸拒否期間を今度は逆に短縮する。もう、一度不法残留した人に対して上陸拒否期間を一年に短くして、あめを与える必要があるのかというのも御批判あるかと思いますが、やはりそれによって、現にもう日本にある程度定着しているような方とか、そこまでいかないにしろ、ちょっと自分から申し出にくい方に対してやはりインセンティブを与えるということは政策的には十分合理性があると思います。
あと、不正手段による上陸許可に関して在留資格取消しですか、の可能性というのも、従来の取消しは非常に硬直したものですので、それを弾力的に運用するということで実効性のあるものが期待できるのではないかというふうに考えております。
今回お示しいただいた案というものは、これがベストというものであるかどうかというのは難しいと思います。ほかの制度が考えられるかどうかというのはあると思うんですが、やはり何らかの形で、もう非常に二十万を超えるだけの不法残留がいて、それを下手をするとそのまま定着させてしまえばいいというような議論になってしまいますと、これは非常に大きな問題になるんですね。どんどんどんどん自由に単純労働力を入れるというと、これはもうヨーロッパ諸国どこの国でも、それはもう治安の観点からいくと大変な問題を導いている。一定の幅の人を入れていくということを前提にするならば、やっぱり不法で残留している人に対して一定のチェックをしていかなければいけない、帰っていただかなきゃいけない、そのための制度としてはやはり非常に合理的なものであると思います。
あわせて、ただ、我々が見ていまして、日本の警察というのは二十六万いるわけですね、で、日本の治安を守っている。入管は二千五百とか、百分の一もいないわけですね。入管のチェックが甘いとかって言いますが、私はある意味でやむを得ない面があるんだと思いますね。今回政府の御判断で、もう歴史的な大増員をしたわけですが、それでも数は百とかの世界ですね。警察で一万増えるということは、入管四つ一遍に作っているわけですよ、一万人増員ということは。それに比べて、やはり入国管理に関しての認識というのはもうちょっと重く持っていただけたら。
それと、技術開発ですね。顔をチェックするにしろ、日本のこの国力の中で、科学技術の中で、もっともっとチェックの合理化。研究所とかも、警察なんかは非常に大きなものを持っています、技術開発のための。入国管理はそういうところの余力といいますか、そういうところからあふれ出た知識をうまく使っていくというような感じになりますので、そういう技術開発も含めて、それがやはり外国の方を含めて人権侵害をなくして、そしてハッピーな日本人との交流を作っていく基礎になっていくと思います。
非常に雑駁ですが、以上で私の意見に代えさせていただきます、どうも。
#5
○委員長(山本保君) ありがとうございました。次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
#6
○参考人(鈴木健君) 初めまして。移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局次長の鈴木と申します。私、非常に若いものでして、昨日、いろいろと仲間と話をしていましたら、私、参議院の選挙権はあるんですけれども、まだ残念ながら被選挙権の方はない、そういった年齢でございます。
早速ですが、私、若いのは若いんですが、これでも今まで十数年にわたって外国籍市民の方々と付き合って、支え、支え合ってきました。特に、この私の事人生、私の生命、私の命を支えてくださったのはオーバーステイと言われている労働者の人たちでした。彼らの存在がなかったら、今の私はあったかというと、もしかしたらなかったかもしれない、それぐらいの存在でした。
今、前田先生の方からも話はありましたけれども、外国人の犯罪問題、これにつきまして、私は、外国籍の方、ずっと付き合ってきて、いろんな御議論はあるかもしれません、また統計的な観点からもいろんな問題あると承知しております。ただ、私ども市民グループとしましては、外国籍の人の側に立って外国籍の人の視点で申し上げますと、例えば外国籍の子供、冷静な議論をと言っていましても、外国籍の子供、学校で、地域で、おまえは外国人だ、悪いんだ悪いんだって、そうやって悪い悪いって言われながら育っている子供が今たくさんいる。そういった反対側の側面からも是非この問題見ていただきたいなと思います。是非この問題の、外国人の犯罪は本当に増えているのかどうなのか、今後どうしたらいいのか、これはもう是非、また、今日私も余り長いこと話をすることはできませんが、是非この機会で十分議論していただければなと思っています。
早速ですが、今回の改定案についてなんですけれども、今回、私は、在留資格問題等について発言を中心にしたいと思っていますが、難民制度について一言だけ言わせていただくと、これはもう制度をどう変えようと余り変わらない部分というのは多いのかなと思っているんですね。というのも、まず最初に日本が難民を積極的に受け入れる、そういった姿勢がない限りは、制度が変わったところで根本的な部分変わらないのではないかなと考えています。
その他の部分、私の話の中心なんですけれども、こういった対策、対策、対策という中で、どうしてここまでいろんな対策を踏まなきゃいけないのか。私たち、最初九六年でしたでしょうか、その後、九九年、二〇〇一年、二〇〇三年、そして今回と入管法の改定があるたびに、入管法の改定、問題ありますよ、人権侵害生じますよ、外国籍の市民の人権問題、真剣に考えてくださいとずっと話をしてきましたけれども、なかなか政府の方、真剣に考えてくださっていないのかなと感じざるを得ないところがあるんですね。正直申しまして、若干、昔に比べたら多少は良くなったのかなという、入管の現場とかでも見させていただいても、正直そういう面もあるにしても、なかなか改善が見られないというところはあるかと思います。
というのも、例えばオーバーステイの方が増えたといいますけれども、これ、九二年、九三年に急激に増えて、九三年には約三十万人になりましたけれども、その当時来られた、例えばバングラデシュの方があることをおっしゃっていたんですね。ジャンボジェット機の中に若い男性が何百人も乗っていて、日本の入管はそのまま、僕らは観光と言えばそのまま素通りで通してくれた、それを今更になって何でこんなことを言うんだ、その当時入管で窓口に立っていた人、入管でいろんな政策を取っていた人は何を考えていたんだ、そういうふうにずっと話を私にしてくれたのを今でも覚えております。
この問題というのは、幾ら対策を練ったところで、この外国人の労働者、そして今、日本に暮らす外国籍市民と真剣に向き合わない限りは、どんな対策を取ったところで解決をしないんじゃないのか、そう思っております。
早速なんですが、今回の改定案についても、基本的な問題点というのはもうずっとこれは私たちが申していますとおり、人権侵害の被害者に非常に過酷な不利益を課す、そういったところがあるのではないのかなと考えております。
その特徴についてなんですけれども、私たちがずっと言っている点、今回、四点整理しました。
日本の入管制度についてなんですけれども、第一点目としては、人権侵害の被害者に沈黙を強いる制度であるということなんですね。
例えば、研修生、技能実習生、この制度がもう単純労働として使われているというのは、これはもう各界、恐らく中央省庁の方も含めて、そういった認識というのはもう持たれていると思うんですけれども、ただ、研修生、技能実習生、被害を申し出ると、ただ単に帰国させられるだけです。そして、国に帰った後、仲間たち、次に来ようとする仲間たちに非常に迷惑が掛かります。そういったもう仕組みになっているんですね。そのために、被害をもう訴えることができない。これは、もう私、現場で研修生、技能実習生とお会いして話をしていても、もうみんなそうです。これはもう相談窓口を作ったりですとかパンフレットを作ったりしたりして解決できる問題じゃなくて、制度の枠組みそのものがこういった沈黙を強いるということになっているのではないでしょうか。
もう一つ例として出させていただくのは、DVの被害者、ドメスティック・バイオレンスの被害者です。これも、自分のビザはどうなるのか、被害を申し立てれば自分のビザはどうなるのか分からない、その後どうなるのか分からない、そういった中で、もうDVというある意味恐怖を伴った被害に耐えざるを得ないというところがあるんです。これについては、入管に例えば在留資格こうなるんですよというようなパンフレットを作ってくださいと何回もお願いをしたんですけれども、いや、そんなのはできませんという話しかいただいてないんですね。
入管というのは、基本的に法律、人権侵害は起きないようになっていますよという、そういう運用をしていますよと言うんですけれども、そういったいいことというのはちっとも宣伝をしてくれないんですよね。人権侵害ないというんだったら、是非そういったものが分かるようなパンフレットを当事者に伝えていただく、そういったことも是非考えていただきたいと思いますが、ともかくそういった人権侵害の被害者に沈黙を強いているということ。
更に言えるのが、恐怖を強いている制度ということなんですね。
例えば、日本で生活基盤ができ上がっている方で最近、在留を争う、裁判で争いたいですとか、難民性を争いたい、そういった方もいらっしゃいますけれども、日本の入管は全件収容主義と申しまして、全部のケースを収容するという主義を取っているんですね。私たちとの話合いでも、例えば病人であっても妊婦であっても基本的に収容することには変わりませんという、これは入管側のお答えです。
ただ、そういった全件収容主義でどういったことが起きているかというと、例えば私のもう極めて親しい友人だったんですけれども、在留を争わざるを得なくなったときに、父親だけ収容されました。そのとき、母親と、まだ生後三歳でしたか四歳でしたかの子供と、生後三か月の赤ちゃん、この母親と娘二人だけが家に取り残されました。どういうことかというと、もう生きるすべがなくなってしまったんですね。そのときには、もう地域の民生委員の方、地域の住民の方々、保育園の方々、精一杯彼女のこと、今でも支えてくださっていますけれども、もう精一杯支えてくださっているんですね。それがもう唯一の救いだったんですけれども、こうやって、父親のみを収容して、兵糧攻めにして、強制送還を促すということをするんですね。
この娘さんの保育園の先生にお会いしたときに、非常につらい思いをしたんですね。その娘さんが保育園でお昼寝をするときに、あの子は夢で、お父さん、お父さんってうなされるんです。そして、急に夢が覚めて、お父さんどこ、今いたよね、そんなことを言うんですというような保育園の先生は話をしていました。こういった傷を持って子供たちは育っていかなきゃいけない、これが入管の収容の姿です。
こうした恐怖、人身売買の被害者等も、もう自分がどうなるのか分からないがためにその恐怖に耐えざるを得ない、こういった仕組みになっているというのがあるかと思います。
留学生等々まじめに勉強している人も、自分のビザがどうなるのかというのは、正直言って在留資格の更新についても、もう例えば、ほぼ本当に自分としてはまじめにやっているんだけれども、ビザの更新に行くたびに追加資料、追加資料を出せ出せと言うので非常な不安を抱えるんですね。そのうちにもう精神的に参ってしまう、そういった留学生とも私たくさん接してきました。こういった、不安を強いる制度になっているのではないのかというふうに感じざるを得ないことがあります。
更にあるのは、希望を奪い、絶望を強いている制度になっているんではないかなと考えているんですね。
というのは、もう日本で生まれ育って、日本で家族生活、家族で生活基盤ができ上がってとても幸せな生活をしている。でも、このままどうなってしまうのか分からない。こういった議論をしていると、親の論理と子供の論理というのがあるんですね。親の論理はいろいろあるかもしれないんですけれども、子供の側から見てみると、もう自分の状況を本当に身にしみて分かっている、五歳、四歳の子供でも身にしみて分かっている。でも、自分は国には帰りたくない。私、日本で生まれ育って、日本で友達ができて、日本でこんなにいい生活を送っている、国には帰りたくない。でも、今の状況、今後将来どうなるか分からない、非常に苦しい、希望が見えない、絶望ばっかり積もっていく、そういう子供たちがどんどん増えています。そういった子供たちに、希望を奪って、絶望を強いている制度になっているのではないのか。
また、例えば今回の改定でも関係するかと思うんですけれども、日本人、日本でオーバーステイ状態にあって、日本人と結婚されたんですけれども強制送還になって、次、日本に戻ってこれるかというと、入管の説明では、いや、そういった家族の結合権等を配慮していますと言うんですけれども、これはもう本当になかなか難しいです。すぐに戻ってこれるものじゃありません。これはもう現実です。
入管の方、現場の方も非常に審査をしていて苦労しているというのを私も重々承知をしていて、もうこういったケースでもうこんなに書類を積み上げて、入管の方も、何とかならないものなのかと感じている現場の方はたくさんいられます。でも、そういった、結婚したんだけれども戻ってくることができない、それがためには、もうそれが一年続き、二年続き、三年続き、そして結果として生きる希望を失い、家族が離散し、家族がばらばらになってしまう、こういった家族、たくさん見ております。
これは、入管が家族の結合権を保障しますと言っても、現実としてそういった家族がたくさんいるというのは事実です。こういった希望を奪い、絶望を強いている制度になっているのではないかと言わざるを得ない場面があります。
今回の改定点についてなんですけれども、在留資格の取消し、三つに分けていますが、悪質性が高い場合、悪質性が高くない場合、あと在留の継続の必要性がない場合、三つに分けています。
例えば、悪質性が高い場合については、例えばドメスティック・バイオレンスの加害者が、日本人夫が多いですけれども、それが、いや、おれはもううちの妻にだまされたんだ、やつと偽装結婚させられたんだと入管に申告、たくさんのケースでしていると思います。
そういったときに、前田先生の方からも話がありました、今の入管、人員少ない中でどこまで人権侵害がないようにしっかりとしたチェックができるか。そういったチェックができる体制、人員の問題もあるかもしれません、制度の問題としてもありますが、そういったチェックができる体制にはなっていません。そういった中でこういった在留資格の取消しというのが適正に運用されるかというと、こういったチェック漏れというのは必ず起きてしまう。そういったときにどういった歯止めがあるのかというのは是非考えていただきたいのかなと思っています。
これについて特に言いたいというのは、在留資格を取り消すと申しましても、それまでに生じた様々な家族的結合ですとか友人関係、人間関係、地域的な関係、そういったこれまでの十年、十五年に及ぶそういった関係というのをどう評価するのか、そういった部分についても是非考えていただきたいと思っています。
その他、悪質性が高くない場合というのは、法務省さんが例で示しているのが研修生のことで、研修員の受入れ機関が虚偽の研修計画を提出した場合、被害者である研修員の在留資格を取り消して国に帰っていただくと。これというのは、受入れ機関が悪いのであって研修員が悪くない。それを法務省さんは例示しているんですね。こんなばかげた話はありませんよね。
在留の継続の必要性がない場合というのも、何が正当な理由で継続の必要性がないのか、何が正当でないのか、そこの判断というのは難しいのではないかなと思っています。
出国命令制度、上陸拒否事由の整備については、まず言えるのは、収容について、今でも自主出頭して、それで収容される例というのはほとんどないんですね。これについては、現状の運用をただ法制化をしたということなのかなと考えています。
収容については、むしろ難民申請者であるとか裁判で収容がもう必然的に長期化する、病人、妊婦とかそういう収容が適さない人、そういった人は収容しませんよというふうに変えていかなきゃ駄目なんじゃないのか、そういうことを是非考えていただきたいと思います。
再上陸の拒否期間の整備については、もう、これはもう何年、これというのは何年たったら入れますよじゃなくて、何年は入れませんよということなんですね。ということは、もう日本人と結婚した家族どうなるのか、こういった家族の結合権とか様々な人権をどうやって保障していくのか、まずそれをしっかり法律なり規則なりで定めた上で考えていかなきゃいけないのかなと思っております。
罰金の引上げについても、もう、これはもうただ単なる脅しでしかなくて、余り効果がない。実際、罰金が裁判で科されたという例はほとんどないんじゃないのかなと思っています。実際、そういった効果のない刑罰というのは法制化を控えていかなきゃいけないんじゃないのかという、ただ単なる脅しでしかないというのはいかがなものかなと思います。
精神障害者の上陸拒否については、もう、これはもう精神障害者の国際交流をますます促進させていく必要ございますし、そういった方が日本に来た場合には上陸拒否をするんじゃなくて保護をする、上陸を認めて保護をする、そちらの方が先決ではないかなと思っております。
最後になんですけれども、まずは在留特別許可について話をしたいんですけれども、法務省さん、いろんな人権侵害、いろんな問題あるときに在留特別許可で救済しますよ、考慮しますよと言うんですけれども、これというのは、あくまでも個別ケースを総合的に勘案して考慮をするということで、そういった個別ケース、何が判断されるのかという基準は一切明らかにされていないんですね。そういった点を外国籍の側から見ると、一切救済措置としての体を成していない。是非これはもう基準を明確にして、自分はこういった場合だったら大丈夫なのかというのをある程度明らかにしていただくという必要があるのかなと思っています。
あと、続いてあるのはオーバーステイ状態にある家族、子供のこと、特に子供のことをどうにかしていただきたい。これは何かもう、親の責任だという個人の責任に還元できる問題ではないかと思います。
例えば、ちょっと次元の違う話ではありますけれども、少年法の議論のときに、少年の犯す犯罪というのは親の問題で、国の問題ではないなんて到底言えないですよね。この子供の問題というのは世界じゅうのどこかで引き受けていかなきゃいけない。日本で暮らし日本で生きている以上、世界じゅうの国でどこが適しているのかというと、日本なのかなと。そして、多くの子供が日本でできた友達とずっと一緒にいるということを望んでいる以上、まず日本がしっかりこの問題に向き合っていく、そういった一義的な責任を負っているのではないかなと感じています。母国政府の責任というのはあるという意見はあるかもしれませんけれども、母国政府の方に頼んだところで、日本人の今までできた友達と一緒にいれるとか、その関係はどうなるというのを考えるというのは無理です。まずやっぱり日本がどう考えていくのかというのを真剣に考えていただきたい。
そしてもう一つ、今、非常に過酷なことが起きているんですけれども、中国の残留邦人、帰国者の家族のことなんですけれども、これ、例えばインドシナの難民については家族の養子も含めて日本で引き受けるという措置を取ったんですけれども、中国の帰国者の場合は養子については入国を認めないという経過をたどっておりますので、でも、養子でも中国で実際に家族として暮らしていた、家族としての実績を積んでいたそういった家族的関係にある場合、養子の方も様々な経路をたどって日本に入国されて日本で生活をしている場合というのは往々にしてあります。
私、今、お付き合いしている、熊本で井上さん一家という家族がいらっしゃるんですね。その家族の子供、十六歳、晴子ちゃんといいますけれども、時々メール等でやり取りをしていただいて、今回も私の話をしましたところ、何か最近、バスケットボール部のマネジャーを始められたそうなんですね。もうとても友達といい関係ができて幸せだと……
#7
○委員長(山本保君) 鈴木参考人、済みませんが、予定の時間を超しておりますので簡潔にお願いします。#8
○参考人(鈴木健君) はい、済みません。そういった子供がいます。是非この中国人の帰国者の養子の問題というのを考えていただきたいということ、そして、今後の将来にわたってこの外国籍市民の問題、総合的にどうしていくのか、是非考えていただきたい、そう思っております。
済みません、多少長くなりましたが、以上で終わります。
#9
○委員長(山本保君) ありがとうございました。次に、横田参考人にお願いいたします。横田参考人。
#10
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。参考人として意見を述べる機会を与えられまして感謝いたします。お手元に二ページのレジュメをお配りしておりますので、それに沿って説明をさせていただきたいと思います。
初めに、私の専門、背景についてごく簡単に触れておきたいと思います。
私は、国際法、国際人権法、国連法といった分野をこれまで三十数年にわたって大学で研究、教育してまいりました。そしてその間、現在までも続いている部分がありますが、国連人権促進保護小委員会という人権に関する専門家の委員会の委員を務めております。それから、政府の方の関係では、第四次出入国管理政策懇談会の委員も務めさせていただいております。その政策懇談会の下にできました難民問題に関する専門部会では部会長を務めさせていただきまして、平成十四年十一月に中間報告、平成十五年十二月に最終報告を政策懇談会の方でまとめたわけですが、その原案作りの作業に携わらさせていただきました。
今回の出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案、これはこの政策懇談会の最終報告をある程度基礎に置いて作られたものというふうに理解しておりますので、その点で、今日の参考人としての意見の陳述は、こうした私の経験を土台にした意見陳述ということになるかと思います。したがいまして、私の主な論点は、難民認定制度のところに絞って説明させていただきたいと、こう思っております。
難民に関する私の基本的な考え方は四点に整理できると思います。
一つは、難民は人権問題であるということです。これは、世界人権宣言第十四条一項に明確に規定されております。すべての者は、迫害からの庇護を他国に求め、かつ享受する権利を有する。実は人権に関する詳細な規定を持っております現在の日本国憲法、これにはこの規定がございません。したがいまして、日本で人権の議論をするときにしばしば難民の人権というものが正面から扱われない傾向がこれまでございました。これが難民に対する日本国民全体の理解をやや低いものにしてしまった原因としてあるのではないかと、そういうふうに考えておりますが、私はこれは人権問題であると考えますし、また、これが現在国連などで議論されている難民問題についての基本的な考え方でもあると思います。
二番目は、難民を庇護する義務が国家にあるということで、これは難民条約第三十三条一項に規定してございます。「締約国は、難民を、いかなる方法によつても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」というふうに書いてございます。つまり、自国で保護を与える必要があるということを規定しているわけでございます。
さらに、市民的及び政治的権利に関する国際規約十三条では、「合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によつてのみ当該領域から追放することができる。」。追放ができるということは、これは国家の主権の問題なんですけれども、その場合には法律に基づいてのみできると書いてございます。これ逆に解釈をしますと、実は締約国の領域内に合法的にいない外国人、それから法律に基づいていればこれは追放できるという反対解釈が可能になっておりまして、この規定は若干国際的にも議論されている部分でございます。
最後の第四点ですけれども、これは九・一一の、二〇〇一年の九月十一日の同時多発テロを受けて、その直後、九月二十八日に採択された安全保障理事会、国連の安全保障理事会の決議一三七三号というものでこういうふうに規定されております。すべての国に対し、次のことを求める。難民の地位がテロ行為の犯人、組織者又は助長者により濫用されないことと。簡単に申しますと、難民認定制度あるいは庇護制度がテロリストによって濫用され、テロリストの活動をしやすくする条件を提供してくれるというようなことが起こってはいけないということを明確にしておりまして、各国は、日本を含めて各国はこのために適切な措置を取るということになっておりまして、安全保障理事会のこの決定はすべての国連加盟国を法的に拘束しております。したがいまして、これは日本としては実行しなければいけない義務的な規定でございます。
次に、出入国管理難民認定法の一部を改正する法律案につきまして簡単に触れたいと思います。簡単に改正案というふうに表現させていただきます。
これは、出入国管理政策懇談会の報告書、先ほど触れましたこの報告書の内容を踏まえて、以下の諸点で難民認定手続の改善が見られると考えております。
一つは、「申請期間を現行の六十日から六カ月に延長」と書いてありますが、これは実は不正確です、御訂正いただきたいと思いますが、申請期間が現在六十日となっておりますが、これは廃止するということです。
ただし、六か月のことが別の条項から出てきております。それは仮滞在許可を出し、更に退去強制手続を停止させるための条件として、迫害があるおそれのある国、地域から日本に上陸した、あるいはそういう迫害のおそれが出てきたことが事実として分かった時点から六か月以内に申請をした場合に仮滞在許可が与えられ、退去強制手続が停止されると、こういう仕組みになっているのは現在の改正案でございます。不正確ですので、ちょっとここは御訂正いただきたいと思います。前に廃案になりました案でこういう形になっておりまして、私はちょっとそこのところを思い込んでおりましたので、失礼いたしました。
不法滞在者である難民認定申請者について、今申し上げましたように、仮滞在許可を与え、更に退去強制手続を停止し難民認定手続を先行させる道を開いたという意味で、これは改善と考えてよいと思います。
三点目ですが、難民と認定された者に一律に在留を認め法的地位の安定化を図ったということも改善と言っていいと思います。
さらに、不服申立て制度につきまして、第三者を関与させる難民審査参与員制度を設け、公正性、中立性を高めるという点でも改善が見られると思います。
さらに、障害者に関しての欠格条項を見直して、先ほども鈴木参考人が触れられましたけれども、障害者について入国で、一律入国を認めないというような形ではなくて、入国を認める方向で規定が用意されているということはこれは改善だと思っております。
もう一つの法律案、難民等の保護に関する法律案、これは法律案と表現させていただきますが、この点については、改正案との違いだけをまず説明させていただきたいと思います。
出入国管理に関する法律とは独立の難民認定法を作ろうという提案でございまして、出入国管理と難民認定を別の法律で分けていこうという考え方、これが特徴でございます。
続きまして、難民認定機関としては、現在の法務省入国管理局の下の難民認定室の作業ではなくて、法務省の外にあります内閣府の外局に難民認定委員会という専門家による委員会を設置すると、そこで難民認定作業を行うということでございます。
それから、難民申請者に上陸特別許可及び難民申請者在留特別許可をまず与えるということで、この点も違いがございます。
さらに、難民認定後、法務大臣による難民在留特別許可を与えるというところでもまた違いが見られます。
六十日ルールの廃止、これは改正案と同じでございます。ですから、これは、先ほど説明が不十分でしたので、これは、改正案との違いという意味ではこの六十日ルールの廃止というのは削除していただいた方がいいかと思います。
難民認定基準は、国際的動向を踏まえて難民認定委員会が策定、公表するというふうになっております。
それから、異議申立て期間を六十日に延長するということです。現在七日になっておりまして、改正案も七日になっております。
それから、事実調査において補佐人、弁護士等の補佐人の関与を認めるという点も改正案との違いとして考えられると思います。
そこで、私の参考人としての意見を次に、最後にまとめてみたいと思います。
この法律案の方は、難民を人権の立場から手厚く保護しようとする意図が明らかに出されておりまして、その点で、人権の観点から私は評価できるものと考えております。
しかし、難民認定制度を濫用して入国を試みる者に対するチェックが必ずしも十分とは言えないのではないかという印象を持っております。この点は先ほど前田委員が特に日本における犯罪の増加との関係で憂慮されたわけですけれども、この点のチェックをどうするかという問題が残されているのではないかという印象を持ちました。
それから、出入国管理と難民認定の密接な関係が実は切り離されることになります。難民認定されなかった人については、今度は出入国の資格があるかどうか、いわゆる偽装難民と括弧付きで言いますけれども、そういう人たちを十分にチェックできるかというところが、これまでは出入国管理の観点で専門性のある法務省の中の専門家、調査官が行っておりましたけれども、この点が切り離されるということになりますと、法務省が培ってきた出入国管理の方の専門性がどこまで生かせることになるのかという点でやや不安を感じるところがあります。
それから、難民認定委員会という新しい制度を作る、これは一つの案だと私は思いますけれども、これにはさらに事務局を設けたりしてかなり大きな組織が想定されておりまして、それは、現在行政改革で政府を、政府の行政の在り方を簡素化するという動きとの関係からいいますと、新たなものを作るという意味、それも比較的大きなものを作るという意味でやや問題もあるのではないかという印象を持ちました。
他方で、改正案の方は、従来の難民認定制度を公正性、中立性、公平性、客観性といった観点で、とりわけ人権の立場から大きく改善する内容になっていると理解しております。また、現在の難民認定制度は、専門性と統一性、迅速性という点ではある程度の評価ができるものだと私は考えております。したがいまして、現在の制度を前提にして、それに公平性、中立性、公正性、客観性といったより重要な原則を反映させた改正案というのは、その点で大きな改善ではないかと、そう思っております。
したがいまして、この改正案の早期実現が難民の保護にとって、そしてまた難民と偽って日本に入ってこようとする日本にとっては好ましくない外国籍、外国人の入国を阻止するという両方の観点を満足させる上で非常に必要なことではないかと、こう考えております。
なお、法律案では、第三者による公正かつ公平で中立的、客観的な難民認定をしようと目指しております。その場合に、私の個人的な意見になりますが、法務省入国管理局、これが法務大臣の下で国民の、間接的ではありますけれども、民主的コントロールが及ぶ仕組みの中で難民認定が現在行われております。これを、調査官が現在不足しておりますし、また調査官の訓練も十分とは言えない面が見られます。この調査官の質と量の向上によって十分に確保できるものではないかというふうに私は理解しております。
それから、現在の改正案では、専門性、中立性を高めた難民審査参与員制度の下で不服審査を行おうと、不服申立て審査を行おうと考えております。これは一歩大きく前進したことになるのではないかと考えております。
さらに、日本の場合には、裁判所による、司法による審査がその後確実に用意されておりまして、もちろん時間が掛かるとか、あるいは経費が掛かるといった問題が残されておりますけれども、そういった点に手当てをした場合には、この司法によるチェックというのは一層中立性、客観性が確保できることになっておりまして、私としては、こういったことを全部考慮しますと、改正案による改善によって法律案が目指す目的はおおむね達成できるのではないかと、そういう理解をしております。
以上で参考人としての意見陳述を終えたいと思います。
#11
○委員長(山本保君) ありがとうございました。次に、渡邉参考人にお願いいたします。渡邉参考人。
#12
○参考人(渡邉彰悟君) 本日はこのような発言の機会をいただきまして、心から感謝申し上げます。私の方からは、日弁連の二〇〇四年三月の日弁連からの意見書と、それとグラフの表を皆様のお手元にお配りしています。このグラフについて若干最初にコメントをしておきたいと思います。
一枚目の表は各国における難民申請数、去年の二〇〇三年のものを示してあります。日本が右から三番目にあるということがこれで分かります。
そして、下から二枚目の表を見ていただきたいと思います。下から二枚目の表は、各国における難民異議申立ての認定率というもので、これは二〇〇二年の数字ですので、日本の場合は二〇〇二年はゼロでありましたので、ゼロ%になっておりますが、このような状況です。
そして、一番最後の表ですが、グラフですが、これは日本における過去四年間の難民認定率を示しています。二〇〇〇年の一四%の認定から徐々に、現段階で下がってきているということが分かります。
こういったことは、皆様のお手元にあろうかと思いますけれども、この参考資料の百八ページ、百九ページからもうかがわれます。
私の方からは、今日は、特に不服申立て制度に関する日弁連の意見というものを申し述べたいと思いますけれども、初めに私がどのような立場にいるかということについてお話をしたいと思います。
私は日弁連の人権擁護委員会に設置されました難民認定問題調査研究委員会の委員長としてこの問題にかかわってきました。九二年からはビルマ人の難民申請の弁護団の活動もしておりました。今回、この改正の問題というのは中国での瀋陽の日本領事館での事件をきっかけにしておりますけれども、それ以前から日弁連はこの委員会を設置し、検討をしてまいりました。今日は、その研究、検討の結果を踏まえつつ、参考人としての意見を述べたいと思います。
そして、改正案の問題に触れる前に、まず、やはり日本の難民の制度の現状について若干述べさせていただきます。
難民認定数ですけれども、欧米の先進諸国がいずれも年間数千、数万人の難民を認定しているというのに対して、昨年の日本の難民認定数は、先ほど言いましたように、わずかに十人でした。地理的な条件の違いということも言われますけれども、例えばニュージーランドが二〇〇一年には四百六十七人の難民を受け入れていると。この数は、日本が八二年以降条約に加入してから二十二年間の合計難民認定数をはるかに上回っています。
また、元々難民申請数が少ないということも言われます。難民として認定する率についても、二〇〇二年のUNHCRのデータ先ほども見ましたけれども、日本の認定率は最下位のグループの中にあります。認定申請数ですけれども、ニュージーランドでも年間千六百一名、今回の、先ほどお示しした表によれば、二〇〇三年はニュージーランド八百二十人ですけれども、地理的条件だけでは説明のできない、日本の難民に対する処遇の冷たさや申請自体を容易にさせない入国管理システムというものが申請数の抑制に働いているということが指摘できます。
また、この二年間ほどの間に、東京、名古屋、大阪、広島において難民不認定となり退去強制の対象となった八人ほどの人たちについて、彼らを難民として認める結果や判決が裁判所において相次いで出されました。退去強制の寸前で救われたという事態です。今年も、既に四名の裁判で不認定処分が取り消されています。こういったことは、現在の難民認定行政が十分な役割を果たしていないということの端的な表れかと私たちは認識しています。
このような現状に至った最大の原因として、私たちが指摘しているのは、やはりこの難民認定行政が専ら法務省入国管理局によって所管されてきたという問題です。これは、入国管理という国境管理、治安維持を主たる目的とする部局が庇護を求める者を保護するということを目的とする難民認定実務を同時に行っているということです。
国境管理の要請と庇護申請者の保護の要請というのは時として衝突する性質のものです。難民の多くは、本国から命からがら逃れてくるために正規の旅券等を取得できない場合が多いのは当然です。非正規の滞在者を入国させずに、あるいは退去させようとする入国管理の手続と難民保護というのは衝突、矛盾する作用とならざるを得ません。難民審査の中で、難民保護の要請よりも入国管理の要請が優先する事態が起きていないかどうかということが外形的にも疑われる事態になっています。
また、難民認定機関の独立性、専門性の欠如ということが言われています。難民の定義については、先ほどお話がありましたように、もう述べませんが、その難民というものを解釈する、解釈を補充する、国連難民高等弁務官事務所、UNHCR執行委員会の結論ですとか、あるいは同事務所作成の難民認定基準ハンドブックなどが存在し、各国でも判例として判例が積み重ねられ、データベースがあります。
難民保護の背景には、外国から逃れてきた方を保護するという人道的な思想があることはもちろんですけれども、同時に、このような難民に関する法律の解釈適用ということに本質があります。難民認定に際しては、難民の出身国の人権状況についての正確な知識、出身国情報、そして難民申請者の供述の信憑性の評価という過程を通じての事実認定が必要になります。こういった事実の中で虚偽の申請などを排除するということになります。申請者の信憑性の的確な判断や、難民調査において事実を引き出すための適切な発問等の作業が必要で、これらの信憑性評価の方法が打ち立てられつつあります。こういった専門性の分野、専門性の非常に高い分野であるということが言えます。
さらに、難民認定では、治安維持や国境管理の必要性に重点を置く余りに、出身国との外交関係に配慮するとか、そういうことがあってはいけません。そういった意味で、入管行政や外交関係からの独立性というものが必要になります。このような指摘というものは現行制度の下で不服申立てにも同様に当てはまります。二十年間余りの運用実績を見ても、UNHCRが指摘していますが、八二年以来、異議審査で当初の不認定処分が覆ったのは〇・六%、二〇〇〇年はゼロ、二〇〇一年は三件、先ほどの表の中にありましたけれども、ここの数字が間違っていますが、二〇〇二年もゼロ件、二〇〇三年は四件ということになっています。
こういった流れの中で、今回の改正案についてなんですが、少なくとも参与員というものを導入するという点で、法務大臣と入管のみで行ってきた不服申立て制度について第三者の視点を入れようというもので、一定の前進と言うことはできると思います。しかし、不服申立てについて一次認定と同じ法務大臣が判断をするという枠組みを残したままで法務大臣が参与員の意見を聴くということですから、第三者性、独立性の観点から甚だ不十分であると、今回の参与員制度は、本来あるべき不服申立て制度としては十分ではないというふうに指摘せざるを得ません。
その意味で、民主党の出されています法案というものについては、日弁連の考え、見解と一致しているところが多々あるかと思っています。
参与員制度ですけれども、具体的にもしこの参与員制度が導入されるという場合に、我々としては是非押さえておきたいという点があります。
それは、やはり第三者性を担保するという観点からどのような人選にするかという問題です。
国際的に難民保護の責務を負う国連難民高等弁務官事務所からの推薦とか、あるいは私たち日弁連からの推薦というものを是非とも考えていただきたいと思います。三人の合議体で行う審議であるとすれば、これらの団体の推薦を経た参与員がその三分の二以上を占めるということで第三者性が確保されるというふうに思います。この人選の問題が参与員制度の成否を決すると言っても過言ではないと思っています。
また、複数の参与員が一つの事案にかかわるに際して合議を行うということが言われています。
ただ、合議をするということは、ばらばらの意見でいいということを意味しないと思います。合議の実はそれでは上がりませんし、第三者性の意義は半減すると思います。法務大臣の下に設置された出入国管理懇談会でも、合議によって一つの結論を出すべきであるという、結論を出すべきだという修正意見が最終的に了解されています。合議といってもこういった形が望ましいと私たち考えます。また、どうしても少数意見が残った場合には、結論の中で少数意見に触れるべきだと思います。
また、参与員の人数ですけれども、去年の一年間の異議申出は二百二十六人でした。この人数の処理をする、相当な作業量が予想されますけれども、必要に応じて十分な人数を柔軟に増員するということを考えていただきたいと思います。
また、実際に仕事をする場合の事務の問題ですけれども、本人の本国の人権状況の情報でありますとか迫害に関する情報でありますとか、独立した立場からの追加的な資料収集と分析というものが必要だというふうに考えます。改正案にあるような若干名の参与員のみでは到底できないものと思いますので、参与員の事務を補助する事務局を是非、参与員の人選基準に準じる形で選任、設置すべきであるというふうに考えます。
五番目として指摘していますのは、判断過程の問題です。
法務大臣が異議申立てに対して棄却又は却下の決定を行う場合に、当該決定に付する理由において、前項の難民審査参与員の意見の要旨を明らかにしなければいけないと書いてあります。しかし、参与員の意見は、要旨だけではなく、事実認定、法律解釈について具体的意見を、これは肯定例も含めてすべて記載すべきであるというふうに私たちは考えます。このようなことによって難民認定の決定例が積み重ねられ、その質が向上されるというふうに考えます。
次に、収容の問題、仮滞在許可の問題について、じゃ簡単に触れたいと思います。
現在の制度の下では、難民申請者に在留資格が付与されていないために、在留資格のない申請者は退去強制手続による収容や逮捕の危険にさらされています。実際に、二〇〇一年の十月にアフガニスタンの難民申請者の一斉摘発・収容事件がありました。また、近時も不法滞在者に対する摘発強化の流れがあって、難民申請中にもかかわらず入管に収容されたり、不法入国、不法残留の容疑で逮捕されたりする事例が相次いでいます。また、退去強制を命じられて収容された場合に、審査中、審査や訴訟中の長期にわたって収容されるということで精神的な障害を生じさせた難民申請者が自殺未遂を図るという痛ましい事例も発生しています。こういった意味で、申請者に対する収容というのは人権上極めて重大な問題を引き起こしています。
今回、改正案では、これについて仮滞在という制度を設けました。一定の前進であることは間違いないと思っています。その要件ですが、六か月ということと、そして入国の直接性というものが要件になっています。
この六か月ですけれども、私たちは、この期間の制限というものについては、これは合理的ではないというふうに思っています。もちろん、やむを得ないという、やむを得ない事由という制度がありますので、これを、解釈の柔軟な運用ということが一つは考えられると思います。
また、直接性の要件ですけれども、これも、例えばアフガニスタンからの難民申請者は、多くの場合他国を経由して来ます。また、北朝鮮からの脱国者についても、当然そのようなことが予想されます。難民条約三十一条に直接来た難民ということが掲げられていますけれども、これについてもUNHCRは、第三国を短期経由した者や迫害から逃れて最初に行った国において有効な保護が得られなかった者については除外するものではないということを言っています。私たちとしては、改正案のこの規定は削除されるか厳密な運用がされるべきだというふうに思います。
また、濫用者排除ということが言われていますけれども、やはり濫用者排除のためには、結果的には迅速かつ正確な難民認定手続を行うということが唯一の防止策だと私たちは考えています。ビルマ人の難民申請者の中で、十八人がいますけれども、認定を受けた十八人調べましたが、十五人が六か月を経過しておりました。入国の経路についても、全員がタイなどを経由して日本に来ておりますし、その経由した国で八年とか一年という滞在期間の人もおりました。厳格な条件の適用というものは避けるべきだというふうに思います。
以下については省略したいと思いますけれども、是非とも誤って難民を送還するようなことがないように適正な難民認定実務が重要だと私たちは思っています。日本における難民認定手続が、難民をそのまま難民として受け入れるものとなることを祈っています。
以上述べたようなことを参考にしていただき、今回の改正に当たって十分な御審議をいただきたいと思っています。
#13
○委員長(山本保君) ありがとうございました。以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
#14
○岩井國臣君 まず、前田参考人にお伺いいたしたいと思いますが、先ほど不法滞在者対策の話をちょうだいいたしまして適正な在留資格認定というものについていろいろサジェスチョンをいただいたわけでございますけれども、これは一般的な不法滞在者対策と、こういうことですが、特に難民認定との関連でお尋ねしたいと思います。やはり、どうしても偽装難民の問題が難民認定の際にあるわけでございまして、現在、外国人犯罪もそうですけれども、特にテロの問題が大変深刻な問題で今あるわけでございまして、これ仮に、先ほど横田参考人は法律案と言われましたけれども、所管を、難民認定の所管を法務省から内閣の方に移すとか、要するに別なところにした場合にそういう偽装難民の問題は、これ果たしてきっちり対応できるのかどうか、そこを、私は大変不安に思っているんですけれども、その点、どのようにお考えなのか、お考えお聞きしたいと思います。
#15
○参考人(前田雅英君) お答えいたします。難民のことに関しては、さっき横田先生が御指摘になられたように、もう専門のお立場から御意見出ていたと思うんですが、入管できちっとした研修を行ってやっていくということが十分考えられるし、ある意味で合理性があると思うんですね。
ただ、先ほど渡邉参考人からも御指摘ありましたように、入管の問題と、亡命というか政治的なそういうものを認めるかどうかということではちょっと質が違うじゃないか、広く難民を認めていくべきでないかということなんですが、やはりどこまで広く今の時点で難民を認めるか、テロ対策も含めてどう考えるか、これはやはり国会の御判断であり、国民の声を聞いていただくということだと思うんですが、私は、今の状況下で、もちろん本当に苦しんでおられる政治的な難民の方を入れるということは必要なんですが、そのためのバーをどう作るかというのは政策的な問題だと思うんですね。
そのときには、私は難民の委員会には直接は参加していないので勉強不足している面あるかもしれませんけれども、入管の側でチェックする方が、今の状況の中で、先ほど申し上げた私の筋の中から言いますと合理性があるという、本当に私見ですけれども、考えを持っております。
ただ、今度の政府案ですか、最終的な案ですか、そういう委員会を作ること自体がそれほど危険なものだとまでは強くは申し上げる必要はないと思いますが、どちらが合理的か、どちらを自分だったら選ぶかということであれば、入管の審査の方が私は今の国情からいって、治安状況とかいろいろ勘案すると合理性があるというのが私の個人の判断です。
#16
○岩井國臣君 外国人問題につきまして、私は、私の言葉で言うと、えせけしからぬ外国人については徹底的に差別化を図るというか、峻別しなければならない。差別化という言葉を使っているんですけれども、と同時に、いい外国人はできるだけ日本は受け入れて、移民政策につきましても積極的にやりながら共生社会を作っていかなければならない、それは共同化と言っている。差別化と共同化という、これは相矛盾するところがあるわけですけれども。前田参考人にお尋ねしたいと思いますが、まず、先ほどのお話で、改正案の方がいいのではないかという御意見だったと思いますけれども、現在の難民認定において、これなかなか評判悪い面もあるんですけれども、鈴木参考人もそれから渡邉参考人も、今の状況は大変問題だと、こういう認識でお話しになっているわけですが、条約上、人権条約において、私は違反は、日本は違反をしているわけではないと。認定率見ましても、数は少ないんですけれども、絶対数は少ないんですけれども、他の諸外国とそれほど違わない認定率になっておるんで条約違反をしておるわけではないんではないかと思っているんですけれども、その点、横田参考人はどのように見ておられるんでしょうか。
#17
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。ただいまの御指摘について私の意見を述べさせていただきます。
五一年の条約、難民条約、これは日本も批准しております。それから、議定書がその後、六七年にできておりまして、これも日本は批准しておりまして、これを一括していわゆる難民条約システムというふうに呼んでいるわけでございますけれども、この規定は、一九五〇年の初めにできたということからもお分かりいただけるように、実は現在の難民問題がこういう形で展開するということは想定していなくて、第二次大戦中、そして第二次大戦直後に起こったあのたくさんの人の国境を越えた移動、そういう人たちが難民という形で出てきた、これをどういうふうに対処するかということを考えて作られたものですので、今の実情にややそぐわない部分があるわけでございます。
それから定義も、渡邉参考人もおっしゃられましたが、一応大枠はあるんですけれども、極めて一般的な規定になっておりまして、政治的意見、政治的な、特定の社会的集団に属しているとか、あるいは宗教的、人種的、国籍、そういったことによって迫害を受けているか受けるおそれのあるという言い方なんですが、それ以上のことは書いてないんですね。
とりわけ今問題になっておりますのは、御質問にありましたようにテロリスト、それから国際組織犯罪の実行者、計画実行者、こういう人たちが難民制度を使って何とか自分たちの活動の範囲を広げていこうという活動を現実にやっておりまして、そういった問題は実は難民条約体制では想定していなかったということがございます。したがって、どちらかというと難民に対して手厚く保護しようという一般的な姿勢がその条約の中にはあるわけです。
そういうことを考えますと、私は現在の条約難民の定義はやや広い、広い分、現在の状況に合わせて日本として独自にもう少し新しい要素を加えて、条約難民の定義から外れることはできませんが、その枠の中で厳密化を図るというようなことを今後考えていってもいいのではないかということと、テロリスト、それから犯罪組織の、国際組織犯罪の関係者に対する取締りを厳しくするための国としての対応、これもやはり難民条約の枠の中でできますのでやるべきだと、こう思っております。
#18
○岩井國臣君 さらに横田参考人に、もしお分かりであれば教えていただきたいと思いますが、所管の問題です。難民認定と入国管理行政を分けるべきか、同じ、同一の方がいいのか、どちらでもいいのか、そこの問題でございますけれども、諸外国の実例というのをもしお分かりになっておったら、どういうふう、どんな具合になっているのか教えていただきたいと思いますけれども。
#19
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。外国によってその制度が違うというふうに私は了解しております。
独自の難民認定の組織を作ってやっているところもございますし、それから日本と同じように入国管理の枠の中でやっているところもありまして、これは、私の理解では、それぞれの国の地理的な状況とかそれから歴史的背景、とりわけ移民政策で海外から人がやってこなければ国が成り立たない国というのがあるわけですね、歴史的には。オーストラリアとかニュージーランドとかカナダとか、アメリカも一時そうであった、かつては。そういったような国は元々移民を受け入れるという体制を持っておりましたので、それなりの移民政策、受入れの移民政策の観点からそういうものに対応していくということがあって、それのための独自の制度を持っているという場合があるわけですね。
日本の場合には、どちらかというとこれまで、国土が狭く人口が多い、人口過密という認識の下で余り移民を受け入れるという政策は取らずにやってきましたので、日本としては入国管理の一つの側面として難民認定の制度が始まったというふうに私は理解しております。
ただしかし、昨今の日本に対する難民申請の要求、それから国際社会による日本に対する余りに制約的過ぎるという批判を受けて、日本としても難民の受入れにもう少し門戸を広げるべきではないかということで今回の改正案につながったと、こういうふうに理解しております。
#20
○岩井國臣君 ありがとうございました。それで終わらせていただきたいと思います。
#21
○角田義一君 民主党・新緑の角田義一でございます。参考人の先生方、御高説を拝聴いたしまして、ありがとうございます。
前田先生にお尋ねいたしますが、御案内のとおり、政府の最近の方針によりますと、向こう五年間に不法滞在者を半分にする、五割にするという方針を立てておるようでありますが、先生はこれはどういう政府の基本的な考えだというふうに理解をされておりましょうか。それから、五年間にその半分にするというようなことが果たしてできると、こういうふうにお考えでございましょうか。私はどちらかというと非常に疑問視している一人でございますけれども、御意見をお聞かせいただければと思います。
#22
○参考人(前田雅英君) ありがとうございます。お答えいたします。
先ほども申し上げた私の考え方とそんなに違わないというか、やはりオーバーステイが悪だというわけでは必ずしもないのかもしれませんけれども、やはりいろんな意味で刑事司法に非常な負荷を掛けていますし、また、統計的には、やはり外国人犯罪の今でも五三・七%ですか、それはオーバーステイの人が犯しているとか、いろんなことがあるので、やはり政策的に二十万を超えるオーバーステイの人を少なくしていくことが日本の治安につながる。
先ほど申し上げた今の危機的な治安状況を打開するために何か手を打たなきゃいけないということで、一つはオーバーステイの数を半減しよう、それも五年の期間を区切ってやろうというのは、政策としては私も合理性があるといいますか、一つの考え方だと思っております。
ただ、私も若干いろいろなところで書かせていただいているんですが、その実現は非常に困難だと思っております。五年間で半減というのは非常に難しい。まあ努力目標として掲げられておられるということを是とはしますが、その実現のためには相当の努力といいますか、今の入管体制でどこまでやれるか。法改正も一定の効果はあると思いますが、それだけで半減というところまで行くのは大変ではないかというふうに私は認識しております。
#23
○角田義一君 法務大臣の所信表明やらいろいろな法務省の見解を聞いておりますと、何か不法滞在者が犯罪の温床であるかのごとき表現が頻繁に出てくるわけですよ。私は、これはやっぱりおかしいなというふうに思います。現に統計的に見れば、最近の、平成十五年の例えば凶悪犯で検挙されたのは、これはもちろん日本人も全部ひっくるめてですけれども、八千三百六十二人。言わば在日外国人というのはそのうち四百七十二人で、五・七%ですね。その五・七%しかないと、ある意味では。もっと私は多いと思ったけれども、ない。それから、粗暴犯は検挙人数が約五万人ですけれども、在日そのうち外国人は六百三十三人ですね。構成比は一・三%ということです。そうすると、何か在日外国人がオーバーステイをしていようがしていまいが関係なく、悪の温床であるかのごときことを盛んに言い触らすというかな、宣伝するというのは、事の解決に、本質に私はそぐわないんじゃないかというふうに思っておりまして、その犯罪の発生件数とか、そういうのはまた別の要因があって、そこに手を付けないで、ただ不法滞在者だけを減らせばいいんだ、半分にすればいいんだというのはいかがなものだと思うんでございますが、参考人の御意見を聞きたいと思います。
#24
○委員長(山本保君) 前田参考人でよろしいですか。#25
○角田義一君 よろしいです。#26
○参考人(前田雅英君) よろしいでしょうか。お答えさせていただきます。数字、御指摘のとおりだと思うんですが、凶悪犯の五・三%というのは私、非常に重い数字だと思っております。
要するに、日本の中にいる外国人の割合をどう推定するかというのは非常に難しいわけですけれども、日本人のやっぱり何倍か、特に強盗なんかでは我々の研究でも日本人よりも犯す率は非常に高いというふうに認識しております。粗暴犯というのは、暴行、脅迫その他というのはそんなに高くないかもしれない。窃盗も実はそんなに高くないかもしれないですが、凶悪犯を犯す率が高いというのは、私はやはり非常に重大な問題だと思っております。
五%という数字というのは、少なく見えますけれども、やはり日本の刑事司法全体にとってはかなり大きな影響力を持ち得る数字ではないかというふうに考えております。
ただ、不法残留の方が犯罪の温床だみたいなとらえ方は、確かにややもすると問題があるといいますか、そこだけが問題ではないんですが、ただ、現に先ほど申し上げたように、東京地裁に行ってみれば、三件に一件は外国人被告人になっているわけですね。その中でオーバーステイの問題なんかが非常に刑事司法にプレッシャーを掛けていると、そこにも人は割かなければいけない。そういう問題を少なくするために今度の法改正をして、早く帰りたい人は帰っていただく、で、刑事司法の負担を少なくしていく、それを凶悪なほかの事件に振り向けていくというような政策を今度の改正は私は目指していると思いまして合理性があるというふうに申し上げた次第です。
#27
○角田義一君 鈴木参考人にお尋ねします。今度の出国命令制度というのがありまして、自主的に自首してきたというかな、出頭してきた者は国へ帰すよ、帰っていいよ、一年間たったら帰っておいでと、こういうことですな、俗っぽい言い方をすれば。
だけれども、一年間まずひとつ行きなさいといったって、女房、子供や家族は一体どうするんだという話になるでしょう。それから、必ず一年たったら帰すんですか。そんな保証ないんじゃないですかね。だまされて出てきて、だまされてきたなんと言っちゃちょっと語弊があるけれどもね。まあ、私に言わせれば、あえてだまされて出てきたでもいいと思うけれどもね。出てきたのはいいけれども、一年間行けといったって、それは何のために一年間やるんですか。私は、一年間やる、出て行けという合理性が全く分からないんだよね。
あんたはどう思いますか。あんたと言っちゃいけない、参考人、ごめんよ。
#28
○参考人(鈴木健君) お答えします。もうこれというのは、特に九九年のときに五年間に延びた、でも、五年たてば戻ってこれますよ、五年我慢してくださいというような話というのはずっと広がっていったんですよね。でも、先ほどもお話ししましたけれども、これは今回も、一年間たてば戻ってこれるじゃなくて、一年間は戻ってこれませんよという、正確に情報を伝えていただきたいと思っているんですよ。でないと、例えば日本人と結婚された、でも一年間たってみて、戻ってこれると言ったじゃないの、でも戻ってこれない、法務大臣や入管局長が詐欺罪で訴えられてもおかしくないじゃないか、こう思っております。そうですね、はい、そう思っております。
#29
○角田義一君 一年間、要するに任意に人が一年間だけ行って帰ってきてもいいよというようなことになったとして、ぞろぞろぞろぞろ出てきますかね、あんたの経験で。#30
○参考人(鈴木健君) お答えします。これについては、もうしっかりとして日本で受け入れるということがない限りは、もうみんな戻ったってどうせ何にもならないということは分かっていますから、もうこれは、これは政府が期待する人がこれによって表面化するということは、そういった意味での効果は余りないのかと思っています。
逆に、こういったことをやるからどんどんどんどん水面下に潜ってしまうというか、沈黙を強いられる、そういった状況になっていくのではないか、そういうふうに思っております。
#31
○角田義一君 横田先生にお尋ねします。私は民主党・新緑ですから、私どもが出しておる難民等の保護に関する法律は非常にいい法律だと思って、これを通したいと思っていますけれども、力関係があってなかなか難しいと思うんですが、先生の、法律案に難民認定委員会のような新たな制度を作ることは行政改革の流れに逆行するのではないかという疑問が残るということが私は非常に引っ掛かるんですよ、引っ掛かるんです。
日本の行政というのは、人権擁護とかそういうところにおいてうんと疎いんじゃないですか。そういうところに人材を割くということでなければ、何でもかんでも人を切れば、今はやりのリストラじゃないけれども、何でもかんでもスリムにしてやればいいんだというのをすべての領域に押し付けるというようなことは私は許されないと思うんですね。
こういう国際的にもいろいろ問題のある人権擁護を推し進めなきゃならぬところは、ほかは切ってもここのところには金も人もつぎ込まにゃいかぬというのは私は正しい方策ではないかと思いますが、先生の御説明は、その辺がちょっと足らないのかどうなのか分かりませんが、もうちょっと丁寧に説明してくれませんか。
#32
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。今の角田委員の御指摘は、私おおむね全く同意見です。人権というのは、ここに来て非常にいろんな点で注目されるようになりまして、この人権を一層尊重し強化していくために新しい組織を作る必要があるならば、それは作っていくべきだと思っております。まだ実現されておりませんけれども、国際的には日本に対しても作るようにという圧力のあります人権擁護委員会の制度のようなものは、これは新しい組織ですが、私はそれを作ることに反対しているわけではございません。
ただ、一般的な流れとして、やはりいろいろなところで組織が簡素化されるという一定の政府の方針に基づく作業が進行している中で、多分こういうことをやる場合に、新しい組織を作るのがいいのか、それとも現行の組織の特徴を生かしつつ問題点を改善していくやり方で対応できるかどうかという配慮、これは必要なんだろうと私は思うわけなんです。
その点で、今の民主党の案とそれから改正案とを比較した場合に、私は民主党の案、もちろんできればそれはそれで一つのメリットがあると私は評価しておりますが、そうでなくても改正案でもある程度の目的が達成できるという理解をしてこういう表現になりました。
決して、行政改革だけを独立させて私が強調するつもりはなかったんで、その前の段階の、現在、法務省入国管理局にある専門性とかそれから情報、いろいろな国の情報、こういったものを、別の機関を作りますとどうしてもそれが、関連性が切れるということがあります。
それからもう一つは、やはり入国管理と難民認定はある意味で裏表の関係の部分がありまして、犯罪者の入国をやはりきちっとチェックするということと、難民に対しては人権、人道の観点で配慮するという、これを一緒に実現していく場合に、やはり現在の法務省の中の入国管理局の内容を、例えば調査官を増やし、訓練を通して質を高めるということをやることによってかなり実現できるのではないかと、そういう考えを持っているということでございます。
#33
○角田義一君 最後です。渡邉参考人にお尋ねします。日弁連から私どもの法案については高い評価をいただいておりまして、それは大変有り難いんですけれども、なかなかこれが実現しそうもないんで頭が痛いんですが、それはそれとして、先ほど参与員の問題がございました。
御案内のとおり、この参与員は、決めたって、これ法務大臣、別に拘束されないというんだから、これも弱ったもんだと私は思うんだけれども、えらい苦労して結論を出しても、法務大臣はそれ別に拒否したって構わないわけでしょう、建前上は。だから、それは拒否できないような立派なものを作ってもらう、作ってもらう以外にないわけなんだけれども、逆にいうと、そうすると先ほどお話があったように、二百二十六人も異議が出て、それで三人でやるということになると、ある程度専従じゃないが、プロの人をこの参与員に送り込まにゃいかぬと。日弁連の中に恒常的に、送り込んでくれますか。それともケース・バイ・ケースで番たび番たび違う人間を送り込めばいいというふうにあなた方は考えているのか、それともしっかりした者を送り込もうという根性があるのか、根性なんて言っちゃいかぬ、あるのか、ちょっとそこだけ聞きたいですな。
#34
○参考人(渡邉彰悟君) ありがとうございました。私たちは、是非とも日本の難民認定制度が本来の難民を保護するものになってほしいという思いを強く持っておりますので、可能な限り、我々としては三分の一の構成員は弁護士であってほしいという思いはあります。それについて要請があれば、是非ともおこたえしたいという覚悟でおります。
#35
○角田義一君 終わります。#36
○木庭健太郎君 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。まず、渡邉参考人にお聞きしようと思います。
今回の政府案、非常に厳しい目で見ていただいておりますが、私は逆に、この今回の改正というのは今までの発想から比べると大きな前進をしている部分、例えば六十日ルールがなくなっている問題、参与員の問題、ある意味では大きく前進しているところもあると思うんです。
問題は、どうそれをきちんと運用できるか。もう今日、ポイントを幾つか挙げていただいたんで非常に参考になりましたが、そう私は思っているんですけれども、渡邉参考人自体、今回の政府案というのは全然駄目なのか、全体としての評価はある程度評価できる部分あるのか、そこの部分は逆に聞いておきたいんですよね。しっかり運用の意味で歯止めをすべきところをやるということが大事なのかどうか、まずその点、全体の評価を伺っておきたいと思うんです。
#37
○参考人(渡邉彰悟君) この文書の中にもありますけれども、八二年に始まって以来初めての改正なわけであります。今まで入国管理局で終始されてきた手続の中に第三者が入ると。もしかしたら、もしかしたらといいましょうか、弁護士も入るかもしれない、UNHCRの職員なんかも入るかもしれない、そういった意味での第三者性というものが初めて導入されるかもしれない。非常に大きな前進だというふうに評価をしたいというふうに思っています。ただ、基本的な私たちの認識は、やはり独立性というものがありますので、そこについてはまだ遠いなというのが正直なところです。我々としては、やはり最終的なところで、これはまだまだ過渡期なものであって、本当に独立した機関になってほしいというふうに思っています。
その意味で、何といいましょうか、今日は私、日弁連の立場で来ておりますので、基本的な見解は先ほどお伝えしたとおりですけれども、やはりなぜ私たちがこの参与員についてここまで、細かい点まで言うかといえば、正に導入されていくということであれば、こういった点について留意されなければ、私たちが評価しようとしている点すらも評価できないということをお伝えしたいからであります。ですので、是非ともその人選の問題、判断過程の問題、さらに、これは本当に大事だと思っているんですが、結論に至った理由付け、これを正に肯定例も含めて詳細にお書きいただきたいと。こういった運用面で確保されることによって、確かにこの日本の難民認定制度が一歩前進するのかなという思いで見ています。
以上です。
#38
○木庭健太郎君 今度は横田参考人に、今、独立性の問題、厳しい指摘もございました。渡邉参考人に私申し上げておきますけれども、運用面、きっちり委員会でも歯止めを掛けながら、この法務委員会でも議論をして、そういった運用ができることを、努力することをお約束するとともに、そうやって始めることが大事だと思っているんです。その一方で、横田参考人に、国際社会の中で、先ほど各国によっていろんな審査機関等あるんだというお話もあったんですけれども、やっぱり逆に、今回はこういう形で一つの参与員という制度に落ち着いた、一つの日本の在り方として、そういうことも専門部会でも御発言なさったんだろうと思うんですけれども、だから要するに、業務が完全に分離されていない点について、国際的な観点から問題がないと言い切れる、一つの公正、客観的な審査は可能と考えているところの理由も伺っておきたいし、今後、課題は私もうちょっと残してはいるかなと思うんですけれども、もう一点、結局この参与員という制度で、一つの第三者性というものを担保する十分な制度として、一つの在り方としていいんだという理由付けの問題、この辺をちょっとお話ししていただきたいと思うんです。
#39
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。ただいま木庭理事からの御指摘大変に重要な点で、私、先ほど申し上げましたように、難民問題を考える専門部会での審議、部会長としてかかわりまして、非常にこの点は議論がたくさん出ました。
落ち着いた一つの考え方は、こういうことでございます。
一つは、不服申立ての手続をどういうふうに現在の日本の法制度の下で位置付けるか。これは、やはり一般的にあります行政不服審査の枠を外れるようなことをしてはかえっていけないのではないかと。そういう意味では、行政不服審査の考え方というのを私たちとしては専門家を呼んで勉強をさせていただきまして、そこで出てきた一つの結論は、日本の場合には行政不服審査という考え方は、行政の責任者、この場合には法務大臣に最終的になりますが、法務大臣がやはり全部一人で審査するわけにはいきませんので、自分の下にいる調査官等によって審査してもらう。しかし、そこでは人のやることですからいろいろと見落としもある、あるいは不適切な判断もある。これをもう一度法務大臣の立場でチェックする機会を与える。これが不服審査、本人の申出によってやると、こういう仕組みになっておりまして、日本の場合は、それで終わるのであれば私は問題だと思ったんですが、そうではなくて、その後司法審査が用意されていて、先ほど渡邉委員も御指摘になりましたように、実は最近、司法の判断で申請不許可が逆に取り消されたケースが出てきております。私は、これは行政の判断の誤りが余りにも多過ぎるという批判よりも、私は、日本全体として見ましたら司法が機能している例だと、日本全体に対する評価は、その意味では国際的には決して低くなってはいないと、こういうふうに理解しております。
もう一つは、こういうことが出てきますと、当然ですけれども、法務省入国管理局、難民認定をしているところは、やはり裁判判決が出ますので、自分たちのやり方を変えざるを得ない。そういうときに、法務大臣としてもどういう点が間違っていたのかを指摘してくれる専門家が必要であると。そういう意味でできるだけ第三者的に、最初の一次審査をした人ではない、もっと離れた人の意見を聞いて、法務大臣としてもう一度その意見を考慮して判断するという機会を与えてよいのではないか。それに、第三者性が弱い、独立性が弱いという御指摘はあると思いますが、その後には日本の場合には裁判がきちっと第三者性、独立性を確保した形で機能しているということで、日本全体としての私は客観性、独立性は確保されていると理解しております。
#40
○木庭健太郎君 前田参考人と鈴木参考人、両方にお聞きしたいんですけれども、まず前田参考人には、先ほど二十五万人と推定される不法滞在者、政府としてはこれを是非半減したいという考え方でものを進めていきたいと、なかなか難しいだろうと言われてしまいましたが。でも、やはりこれは一つの在り方として私は取り組まなければならない問題だと考えておるんですが、今回の法改正というのが、効果がどこまでかという議論も先ほどありました。これだけでは、じゃ足りない部分があるとするならば、これへ向かってあとどういう一つの取組をしていけばいいのか、御意見があればお伺いをしておきたいし、この法改正に加えて更にどういった取組が必要かという問題を前田参考人からお伺いしたいのと、逆に鈴木参考人からは、今回の法改正、いろんな問題意識を持っていらっしゃる、逆の、これからも会の活動は続けられる決意でしょうから、でも今回の法改正によって逆に会の活動に、こんなところ厳しいところ出るなというようなことをお感じになっているところがあれば、逆にそのことをお話しいただきたいと。お二人から伺って終わりたいと思う。まず、前田参考人から。
#41
○参考人(前田雅英君) お答えいたします。先ほどの申し上げようはちょっと不正確かもしれないので、効果がないというわけではなくて、ただ五年間に半減というのはかなり難しいだろうということで、この施策を私は取るべきだという立場で今日御意見を申し上げましたし、もちろん効果があるという考え方でございます。
ただ、これだけで達成できるわけではなくて、先ほど申し上げた入管体制ですね、審査官、それから警備官の数、これは一般に考えられている以上に非常に少ない。何か在留しておられる外国人の方から見ると、警備官というと何か摘発をする非常に怖い存在というようなことになるわけですけれども、やはり何らかの形、そういう強制的な取扱いをする前の段階でチェックをして不法滞在を、やっぱり制度として一定の要件のある人だけを入れるというものを設けている以上、それを維持する担保を作っていかなきゃいけない。そのためには人の手当ての問題と、あと技術的な先ほど申し上げた発達、それにも多くを期待したいと思っております。
ただ、いずれにせよ人数の増加というのは、百人単位で増えたというのはもう本当に初めてのことで、これがどう出るかというのはきちっとその効果を見て、それなりに政府でその後の手を考えていただきたいと。私は、今考えられる手としてはベストに近いものをやっていただいているというふうに考えています。ただ、だから必ず半減するとは申し上げられないと申し上げただけです。
#42
○参考人(鈴木健君) 済みません、ちょっと聞き取りづらくて、会の活動にとって何……#43
○木庭健太郎君 今回の法改正が会の活動に例えば支障が出るとか、こういう改正によって厳しいところが出てくるなとお感じになっているようなことがあるのかどうか。要するに、今回の法改正と会の活動というのがどういうふうな形でとらえられていらっしゃるのかという点をお話しいただけぬかなと。#44
○参考人(鈴木健君) はい、分かりました。まず、今回の改定案、いわゆる不法滞在者の半減とかということを目指しているということなんですけれども、その点について、例えば法務省、毎年送還をしている方の数というのが大体三万五千から四万人程度、そして、在留特別許可、いわゆる合法化している方というのは六千人、七千人、合わせて四万人以上の方がもう送還されたりとか合法化されたりしているんですけれども、オーバーステイの方、どうなっているかと申しますと、昨年から今年で実は千人も減ってないんですね。四万人もオーバーステイの人を減らしておいても統計上は千人も減ってない。これで五年間で半減するというのはもう明らかに不可能であろうと。
実際、今回の改定案が仮に成立をしたところで、直接的な影響というのはそれほどないんじゃないのかというところはあるのかなと思っているんですけれども、ただ、私たちどもが申しているのは、日本の出入国管理制度の基本的なところで人権侵害をチェックする機能、制度というものが整ってない、ないというより、そもそものそこの点が問題であるということをずっと主張しているかと思っております。
済みません。ちなみに、今回の改定案なんですけれども、あえて言うならば、在留資格の取消しで本人の聴聞とかという機会を設けました。今までは在留、上陸許可の取消し、もう本人の言い分聞かずに身柄収容していました。それを聴聞を設けたというのは、ある意味で前進なのかもしれませんし、あとは出国命令制度で収容、一部の人を収容しないよというのを、今までは全件収容だといっていたのが、法務省さんが自らの考え方を一部改めたのかなという気はしないでもありません。
#45
○木庭健太郎君 ありがとうございました。#46
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。
まず、前田参考人にお伺いをいたします。
先ほどもありましたけれども、不法残留者数というのは、平成五年の約三十万をピークに減っております。今この不法滞在をしている人が何か全体として犯罪傾向を強め、かつ数も増えているというような印象の議論があるわけですが、不法滞在者自身は減っている。一方で、来日外国人による犯罪の増加とか凶悪化というのが指摘もされました。この来日外国人の中には、いわゆる入国の仕方としては正当であるけれども、最近も摘発されたブローカーにかかわったりと、こういうこともあろうかと思うんですね。
ですから、全体としては不法在留が減っている下で、この来日外国人による犯罪の増加、凶悪化ということの原因、それにふさわしい対策ということはどうお考えでしょうか。
#47
○参考人(前田雅英君) 御質問、ありがとうございます。御指摘のように、不法残留者の数自体は頭打ちというか、やや微減という感じになってきていますよね。それに対して、外国人犯罪がある程度の割合で増えていっていると。ただ、あの時期までの上昇から比べますと、検挙人員で見るか件数で見るかで大分印象違ってくるんですけれどもね。そんなに外国人犯罪が急増しているという感じではないという面もあろうかと思いますね。
ただ、いずれにせよ、不法残留、オーバーステイの人だけが外国人犯罪を犯しているというわけではなくて、さっき申し上げたように、せいぜいが五三%というか、五三%をどう見るかということですが、それから刑法犯に関して言えばもっともっと低い割合なわけですね。
先ほど申し上げたブラジル人問題なんというのは正に象徴的なんですが、正規の形で入ってこられても、結局、非常に不安定な雇用条件でいつ帰されるか分からない。それだったら、子供連れてきているけれども、学校に入れない。入れない子供が不就学になって、犯罪少年になっていく。そういう構造の問題というのが片一方でもちろんあるわけですね。
ですから、その意味で、不法残留即犯罪の原因ということではないんです。先ほど、何回も申し上げましたように、不法残留者というものの存在がかなり広く認められてしまいますと、入国管理制度自体の崩壊になってしまうわけですよね。一定の要件の下で入国を認めているのに、それを一切きちっととがめなしでやっちゃうというのはまずい。
ただ、今回の改正は、だから厳しく捕まえて摘発してというんじゃなくて、手を挙げてくださった方にはちょっと出やすい形で帰っていただいて、不法残留のための刑事手続というのも大変なコストなわけです。この二十万を超す者を少しでも減らしたい。鈴木委員御指摘のように、そう簡単に半減にならない、私も申し上げたとおりなんですが、
ただ、こういう法律を作って少しでも減らしたい。減らすことが合理的だというのは私、絶対変わらないと思うんです。ただ、それが外国人犯罪のすべてを抑え込むことに直接つながるわけでも必ずしもない。ただ、それが減ることによって警備官の仕事がほかのものに振り向けられる、警察の仕事もほかのものに振り向けられる、それによって外国人犯罪対策がかなり私は好転するという面もありますし、正に総合的に考えていく中の一つとして、不法残留者を減らしていくというのは非常に合理的な政策であると、それは変わらないと思います。ただ、それが即外国人犯罪の数を減らすことに直結するというわけでは必ずしもない、それも御指摘のとおりだと思います。
やはり、ブラジル人問題に見られますように、国の全体の中で、外国人に来ていただくときに雇用の問題をどうするか。そこがある意味では根本的で、安い労働者として世界から集めて、製品を安くして世界に売って、そのことによって出るコストの一つである犯罪問題については税金で全部やるということはちょっと問題がある。やっぱりそういうこともトータルに考えた政策を考えなければいけないとは思います。ただ、それと並行して不法残留の問題を徹底して考えていくというのは全く矛盾しないというふうに私は考えております。
#48
○井上哲士君 次に、横田参考人にお伺いをします。この難民認定制度に関する検討をしていただいたわけですが、当初の難民問題に関する専門部会の結論があって、その後、出入国管理政策懇談会では修正意見というのがこの第三者機関の問題で付いておりまして、修正意見では「原則として合議によりつつ、個別の意見にも配慮するような制度とすることが望ましい。」と、こうなっております。結果、法案は議論はするけれども意見はまとめないと、こういう法案になりました。
ですから、その皆さんの部会の議論とこの修正意見、そして法案と、ここの議論の経過、そしてその趣旨、これをお願いいたします。
#49
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。ただいまの井上委員の御指摘、これは正に私が最初関係しておりました専門部会の方で大変な議論がありまして、本当に意見が二つに分かれました。両方とも真剣な議論の結果なんですけれども、物の考え方として、合議の上一つの答えを出すべきか、そして、出したとしますと、それは法務大臣を拘束するかしないかという、そういう答えを出さなければいけないところになります。そこで、先ほどの不服申立て、いわゆる行政不服審査の全体の考え方との整合性という問題が出てきて、その辺で意見が分かれたと言っていいと思います。私の部会の方では意見は分かれたんですが、わずかに、結局、合議制にすると、一人一人の意見が合議の過程で中和されて個人としての専門的な意見が出てこない可能性があるという意見の方に少し傾いた結果が私どもの原案として出たということになります。
それを今度は政策懇談会、親委員会の方に報告しましたところ、親委員会でその点がやはり議論になりまして、親委員会の方ではやはり議論になりましたが、どちらかというと、やはり三人でやる場合には何らかの合議をしなければ、ばらばらに議論をしても、ばらばらに検討しても意味がないし、合議をした以上はある程度のまとまった答えというのが見えてくるのではないかという意見の方に傾いた、そういう結果がああいう処理の仕方になったと思っております。
私は、結論的には私が責任を持っておりました部会の意見が親委員会、政策懇談会の方で変えられたという意味で不服かと言われますと、私はそういうことではなくて、正に部会の性格から出てきた意見を今度は親委員会がもう一度責任を持って議論をしていい答えを出したということで、私はこの決定のプロセスは大変意味のある議論の結果であったと、こういうふうに思っております。
#50
○井上哲士君 この参与員制度が機能するかどうかというのは今度の法案の本当に決定的だと思うんですが、その点で渡邉参考人にお聞きをするんですが、運用上の改善で難民不認定理由の明確化というのが去年の一月からされたということで、我々も資料をいただいているんですが、それでもまだまだ大変短いものなわけですね。今度不認定になってそれをこの参与員の方が判断をするということになりますと、一体なぜ不認定になったのかということを一層明確にする必要もあるし、それに対して申請者がこの補強をしていくということがこの第三者機関を効率的にするためには非常に必要だと思うんですが、現状のこの難民不認定理由を明確化したと法務省は言っておるんですが、現状でどうお考えか、そしてこの参与員制度の下で何が強化される必要があるか、いかがでしょうか。#51
○参考人(渡邉彰悟君) ありがとうございます。とても重要な指摘でして、私たち弁護士の中で議論していますのは、現在の難民不認定理由というものはせいぜい本当にこのA4一枚の上段部分を占めればいいところです。それでも以前に比べると二倍ぐらいの量になったということなんですが、残念ながらその中身は、あなたは本国政府から個別具体的に把握しているとは認められないというような言い回しでありまして、私たちから見ますとほとんどそれは結論を言っているに等しいと思っています。また、ある出身国情報によれば、あなたの民族に対する迫害のおそれは認められないことというような指摘があります。
本来ならば、その内容について異議の手続の中で捜査官が、あなたに対してこういうふうに理由述べているのはこれこれこういう理由で個別的に把握されているとは言えないんだよ、あるいはこの情報に基づく理由というのはこれこれこの論文の、文献のこの部分なんだよというような指摘があってしかるべきだと思うんですが、そういう指摘もありません。というか、指摘ができないでいます。そういう意味で、今の不認定理由というものは非常に不十分だと私たちは思っています。何よりも、難民の中の要件であります迫害でありますとか、迫害を受けるおそれでありますとか、そういったものについて、あるいは供述の信憑性でありますとか、そういったものについては、いわゆるUNHCRもそうですが、国際的な水準というものが着実に積み重ねられてきています。
私たちが是非皆さんにお考えいただきたいのは、やはり難民条約という同じ条約を各国が履行しているという事実です。同じ条約を各国が同じように適用して同じように難民を認めなければいけないというのが、これは論理的な話で、当然そうあるべきだというふうに思っているわけです。ですので、その水準に従った判定をしているんだよということを日本政府も法務省、入管当局も示す必要があるんだと私たちは思っています。
その意味で、今の現状は不十分ですし、今後、参与員制度が導入された場合に、やはりその水準に従った判定がされるべきだし、申請者側にそれがよく分かるように示されるべきだと、それによって日本の難民の認定水準は着実に上がっていくだろうと私たちは期待しています。
#52
○井上哲士君 鈴木参考人にお伺いをします。先ほどありましたように、前回の改正で入国拒否の期間が一年から一律五年に延びました。そのときにもその家族の関係というのは随分議論になって附帯決議も付いて、特別上陸許可の運用に当たってはそういう家族的結合を考慮するようにという附帯決議もありました。そして、そのように法務省は運用をしていると言っているんですけれども、実際上その後どのような運用になっているのか、具体例などもあれば紹介をしていただきたいと思います。
#53
○参考人(鈴木健君) お答えします。まず、先ほど今回の改定案でちょっと厳しい、厳しいところはどういう点ですかということが別の委員ですが御質問があって、ちょっと私もうっかり忘れていた点がありまして、今回の一年、五年、十年と、あと永久に入れない、四つの段階に分けたわけなんですけれども、一年短縮する方は、本当に百歩譲って多少の前進は事実として五年が一年になったわけですからあるのかもしれません。でも、問題は、十年になった、そしてあとは一部の刑法違反で、例えば入管法違反での懲役一年以上の執行猶予付きでも、有罪判決を受けると法文上は永久に日本に戻ってこれなくなってしまうという、そういった点があります。
実際の運用ですが、特に、昨年ですと、上陸特別許可と申しますが、こういった様々な上陸拒否事由にあったとしても、日本人と結婚したりとか、そういった特別な事情で再度日本に戻ってこれるための特別な許可を受けられるものというのはかなり限定されているというのが事実で、前の法改定からそういった上陸特別許可の運用が急増したですとか、そういった相談が減ったですとか、そういった事実は一切ございません。
#54
○井上哲士君 終わります。#55
○委員長(山本保君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
午前の審査はこの程度にとどめ、午後二時五十分まで休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
─────・─────
午後二時五十分開会
#56
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び難民等の保護に関する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房審議官米村敏朗君、警察庁刑事局長栗本英雄君、法務省入国管理局長増田暢也君、文部科学大臣官房審議官樋口修資君及び厚生労働大臣官房審議官大石明君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。─────────────
#58
○委員長(山本保君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び難民等の保護に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
#59
○角田義一君 民主党・新緑の角田でございます。本題というか、法案の審議に入る前に、大臣に二、三お尋ねしておきたいことがございます。
既に同僚の千葉議員、江田議員からもお話があったと聞いておりますが、御案内のとおり、福岡地裁で最近、総理の靖国参拝について明確に違憲だという判決が出ました。結果、国は勝っておりますから国は控訴をしない、それから原告の方も、何しろ違憲判決が出たというので大満足ということで、これも控訴はしないということでございますから、いや応なくこれは確定しちゃうわけで、地裁の判決とはいえ違憲ということが明確に出たということでございます。
まず、大臣として、この違憲判決が出たということについて率直にどんな感想を持っておられるか、お尋ねをいたします。
#60
○国務大臣(野沢太三君) 御指摘のとおり、この違憲という判決が出たわけですが、詳細伺ってみると、これは損害賠償ということが主訴になっておるということからいたしまして、これはもう国の方の主張が認められて退けられているということからいたしますと、これについて私どもが控訴する立場にはないということがまず一つございますが。もう一つ大事なことは違憲かどうかということでございますが、これまで同種の訴訟というものが各地で幾つもございまして、地裁レベルでも判決が出ておりますが、このような判断が出たのは初めてかと思いますが、内容的に見れば、今回の判決の中で、憲法二十条で規定しております内容に抵触するという御判断のようですけれども、あくまで総理の取られました参拝の姿は私的な立場で行われたものと我々は理解しておりまして、これが違憲に当たるとは想定できませんので、これについての判決は意外な結果ではあると思います。
ただ、さはさりながら、違憲という判断は極めて重いわけでございますので、一地裁の判断といえども、これは一つの判例として今後考慮はせねばならない課題かと思っておりますが。
#61
○角田義一君 ここで判決内容について一々司法の判断ですから私も申し上げるつもりはありませんけれども、今大臣は総理の靖国参拝が私的だというふうにおっしゃったけれども、少なくとも判決の中では、内閣総理大臣小泉と、純一郎という形でお参りをしておるし、公用車も使っておるし、これは明らかに総理としての公務としてやったことだと、こういう事実の認定はされておるわけであります。それはそれとしてこっちへ置きますが。この判決を受けた後の総理の談話なり感想なりというのが新聞でいろいろ報道されております。私はじかに聞いたことじゃないので分かりませんけれども、総理の談話とすれば、どうして違憲になったんだか分かんない、分かんないと、そればっかり何回も、十六回も言ったとかなんとか書いてありますが。
大臣はそばにおられるわけですから、総理はこの判決に対してどんな感想を漏らしておったんでしょうかね。
#62
○国務大臣(野沢太三君) この靖国参拝というのは小泉総理の段階で始まったものでなくて、戦後一貫して問題になってきた課題でありまして、これについてのそれぞれのお立場から検討がなされてきた結果、私的参拝ということであれば憲法に抵触するというに当たらないということも事実上定着してきたことではないかと思うわけでございます。それで、今回もその点を十分配慮した上で小泉総理は行かれたと考えられますが、その点をあえて違憲と言ったことが恐らく分からないということでおっしゃったのではないかと、まだ直接御見解聞いておりませんので確たることは申し上げられませんが、周辺事情からいたしますと、そういう判断の上で今回の判決の趣旨が分からないという表現を使われたんじゃないかなと思っております。
#63
○角田義一君 A級戦犯が合祀されておるとかどうかという問題はうんと大事なことなんですが、それはちょっと判決にありませんからこちらへ置きます。判決は、言わば憲法の二十条を、問題を真正面から取り上げて、傍論とはいえ、はっきり違憲だと言っているわけです。そうなりますと、これは法務大臣とすると、私は最初法務大臣にお尋ねしましたけれども、法務大臣の憲法の擁護、それから遵守、擁護と、少なくとも擁護ですな、これは強い言葉、擁護、こういう立場からいいますと、総理は、この判決があろうとなかろうと私は今後も靖国に行くんだということを言っておられますな、新聞報道で、少なくとも。
これは、もちろん中国だとか韓国だとか東南アジアだとか、そういう国々が靖国の問題はいろいろ言われておりますけれども、それはこっちへ置きますよ。こっちへ置いた上で、いやしくも、地裁とはいえ裁判所が違憲という判断を下したということの重みですね、重み。それは、下級裁判所であれ何にしろ、憲法上、違憲という判決を出せることになっているんですから、下級裁判所は、チェックする意味で。とすれば、──そんなとこであんた、そんなとこでうろちょろすることないんだよ。大臣とおれとやっているんだから。大臣と私が議論しているんだから、部下がのこのこ出てくることはないんだよ。
私は、大臣にお願いしたいのは、私は、憲法を無視して、無視というかな、この判決があろうがなかろうが行くんだというようなことをおっしゃっている、それはやっぱり慎むべきじゃないんでしょうかと。判決がここで出た以上、法務大臣としては、そのことはやっぱり慎んでいただいた方がいいと私は思うというようなことを進言するお気持ちがあるやなしや、こういうことですな。
#64
○国務大臣(野沢太三君) 今後の行き方につきましては、これはあくまで総理御自身の御判断に係るものでございますし、この福岡地裁の判断は、あくまでこれは一つの意見ということで出されておりますが、傍論という立場で出されたことに変わりはございませんから、これによって束縛されるということにはならないと考えておりますので、その点ははっきりしているかと思っております。私自身も、もちろん国務大臣として憲法擁護義務をしっかり持っていることもよく承知しておりますし、あわせてまた、九十六条におきます改正の議論もそれぞれのお立場で闘わせていただきまして、適切な方向を見出すことも大事なこととわきまえております。
#65
○角田義一君 今日はこの程度にしておいておきましょう。いずれ、問題提起だけをさせていただきました。では、本題の方に入りますが、私は、どちらかというと入管の法案の方についてお尋ねをいたしたいと思っております。
政府の最近の方針によりますと、五年間で、不法滞在者というものを五年間で半減をするんだと、半減をするんだと、こういうことをあれですな、高らかにうたっているんですけれども、どういう理念でこれ半減するんですか、半減をしようとするんですか。
#66
○政府参考人(増田暢也君) 不法滞在者は、我が国の出入国秩序に反して我が国に違法に在留するものでございますから、出入国管理行政を所管する入国管理局といたしましては、当然その減少に努めなければならないところであります。不法滞在外国人につきましては、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議で決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画にもあるとおり、我が国の治安悪化の原因の一つであるなどと指摘されているところでございます。
例えば、現在約二十五万人と推定される不法滞在者数でございますが、そこに占める、これは平成十四年の数字ですが、凶悪犯検挙人員の割合、これは正規滞在者のそれと比べますと約十二・五倍に上っております。不法滞在者が正規滞在者に比べて凶悪犯罪に及ぶ比率が高いという実情がうかがわれるわけでございます。
また、不法滞在に係る犯罪以外の犯罪に関与していない場合でありましても、多くは不法就労活動に従事しているところであって、国内における雇用情勢、これの悪化であるとか、あるいは日本人を含めた労働条件の向上の阻害であるとか、あるいは労働市場の二層化などの問題を生じさせる懸念があるものと承知しております。
このように、我が国の治安や社会経済に悪影響を及ぼす不法滞在者を減少させることは、我が国において外国人との共生を図り、健全な国際化の進展を図る前提として必要なことであると考えております。
#67
○角田義一君 私は必ずしもそうは思わないんですね。何で五割なんですか。五割だということの合理的理由言ってくださいよ。
#68
○政府参考人(増田暢也君) この半減というのは、言わば私どもに課せられた目標の数値であって、五年間でどれぐらい一体減らすことができるかというところで、現在およそ二十五万人いる数字を五年間で体制整備などの下で半分は減らさなければいけないということが政府の下で取られた措置であるということでございます。#69
○角田義一君 答えになってないや。なぜ半分かってね、半分になれば、あれですか、あなたが言っている理念が実現されてだね、外国人の犯罪はうんと減少するし、万々歳なんだと、こういうことになるんですか。じゃ、残った半分はどうなるんですか。半分になったからといって、半分残っているんですよ。それで、その半分の人たちはどうするの。みんな国外に追っ払っちまえばいいという発想かね、半分にするということは。
#70
○政府参考人(増田暢也君) 先ほども申しましたように、この五年間で半減の背景にあるのは、我が国の国民の間で治安に対する危機意識、不安感が高まっていると、その不安感の一つの要素として来日外国人犯罪のことが意識されている。そこには、正規滞在者だけでなくて、不法滞在者によって犯されている犯罪、とりわけ凶悪犯罪などについて不法滞在者が犯している、そういったことについて非常に国民の間で不安を醸していると。そういった中で、それではこのまま放置して、政府として放置してよいのかという中で、それではこれを減らしていかなければならない。その減らしていくためにはどうするのか、あるいはどういう目標を決めて目指していくのかというときに、それでは五年間で半減するということであって、その半減が実現した場合に、後はそれでいいのかとか、そういうことではございません。要は、その不法滞在者については、それは、私どもは不断にその減少に努めていかなければいけないことであると考えているところでございます。
#71
○角田義一君 あんた方の発想は単純なんだよ、単純過ぎるんだよ。要するに、不法滞在者、確かに不法だよ、不法には違いないかもしれないけれども、そこに住んでいる、いや、失礼、不法の滞在者というのが、あなた方の発想は、それはすべて犯罪予備軍のように思っているんだよ、犯罪予備軍。「犯罪の温床」と書いてあるんだよ、大臣の所信表明だって。これは、外国人一般に対する、正にこれから国際社会で国際化していこうというときに、そういうふうに犯罪の、不法滞在者を犯罪の温床であり、犯罪の予備軍だと、こういうふうに決め付けて、そしてあなたが言うところの外国人との共生なんということができるかね。少し理念や哲学が違うんじゃないかい。その半分の人を、じゃ、不法滞在者なんだから、今度はみんな外国、国外へ追っ払っちまえばいいんだと、こういう発想でしょう。追っ払っちまえば万々歳という発想でしょう。全部追っ払えるのかね、現実に。追っ払えもしないでそういうことを言うのは、僕は絵そらごとじゃないかと、こういうように思うんですよ。どうですか。
#72
○政府参考人(増田暢也君) まず、事実を数字に基づいて申し上げますと、たしか平成十五年の検挙実績はもう公表されたと思いますが、五三・七%、検挙された来日外国人の五三・七%は不法滞在者であったと。それから、その内訳が、正規滞在者九千二百人余り、不法滞在者一万七百人余りですが、正規滞在者はそもそも我が国に五百六十三万人いるのに、不法滞在者というのはおよそ二十五万人と見られていると。このことからも、不法滞在者が犯罪に及ぶ可能性が非常に高いということは明らかであると思います。だからこそ、国民の間でも治安に対する危険、危機意識あるいは不安感は高まっていると私どもは認識しているし、入管に対して、この不法滞在者をこれだけ増やしたのは一体何をやっていたんだという厳しい御批判がこれまでにも入管に寄せられていたところでございます。
それから、そもそもその不法滞在者ゼロになどできないのではないかという御指摘ですが、私どもとしては、とにかく今課せられているのは、今後五年間で今二十五万人いる者を半減させるのだということで、そのために組織総力を挙げ、全国入管が一丸となって、ありとあらゆる知恵を絞って実際に二十五万人を半減させるための方策を考え、それに取り掛かっているところでございますので、この点は、実際にゼロになる云々は別として、とにかく私どもの努力を見守っていただきたいと思います。
#73
○角田義一君 じゃ、ちょっと話題を変えましょうか。警察庁は来ておられるかな。
今日いただいた統計によりますと、平成十五年、凶悪犯というのは、検挙したのが八千三百六十二人、そのうち在日外国人は四百七十七人、構成比でいうと五・七%ということですが、これ、間違いありませんか。
#74
○政府参考人(栗本英雄君) 御指摘のとおりでございます。#75
○角田義一君 まあ、うんと計算、私得意じゃないけれども、凶悪犯が八千三百六十二人いて、四百七十七人は在日外国人だということになると、約七千九百人ぐらいは日本人ということになるな。#76
○政府参考人(栗本英雄君) その大方は日本人だと思います。来日外国人以外でございますから。#77
○角田義一君 窃盗犯、窃盗犯って多いんだけれども、窃盗犯で検挙されたのが十九万一千四百三人、そのうち在日外国人は四千五百五十五人、二・四%だよ。そうすると、十九万一千四百三人から四千人引くと十八万七千人ぐらいになるのかな。これ、日本人だね、算数で言うと。どうですか。#78
○政府参考人(栗本英雄君) 来日外国人以外でございますから、大方は日本人だと。ちょっと私、手持ちも持ち合わせておりませんので、来日外国人以外の方で多少あるかと思いますが、多くは日本人だと思います。#79
○角田義一君 もう一つだけ聞きましょうか。知能犯、総検挙人数は一万三千六百五十三人、うち在日外国人四百九十七人、そうすると、一万三千二百人ぐらい全部これ日本人、こういうことでよろしいか。
#80
○政府参考人(栗本英雄君) 御指摘のとおりでございます。#81
○角田義一君 私が言いたいのは、確かに局長が言うように、在日外国人の中で犯罪を構成した者の方が半分ぐらいいるということだから多いかもしれないけれども、多いかもしれないというのは、在日外国人の中で犯罪を犯したのが半分ぐらいが不法滞在者だということだから。しかし、全体から見れば、日本の犯罪の検挙数の全体から見ればこの程度なんだよ。むしろ問題なのは、そういう凶悪犯、これは発生した件数のうちどのくらいの者を挙げたかというのが検挙率ですな。これ、外国人であろうが日本人であろうが構わないですけれども、警察庁に聞きますけれども、凶悪犯というふうに言われているものの発生件数のうち、どのくらいの検挙率になっているんですか。外国人なんか関係ないですよ。
#82
○政府参考人(栗本英雄君) 急なお尋ねでございまして、ちょっと今資料がまだめくれて、もらっておりませんので、確認して……#83
○角田義一君 粗っぽいとこでいいです。ちゃんと長年のあれでやっているんだから、勘が、勘があるでしょうよ。#84
○政府参考人(栗本英雄君) 凶悪犯ですね。#85
○角田義一君 うん。#86
○政府参考人(栗本英雄君) 全体が二十、刑法犯全体で二三・ちょっとのパーセンテージでございますから、凶悪犯であればそれをかなり上回っていると思います。#87
○角田義一君 上回っているんじゃないよ、あんた。私は本会議で質問でやっているんだよ。凶悪犯の方が低いんですよ、検挙率が。だから国民はうんと不安に思っているんですよ。ちゃんと私は本会議でやっているんだから、やる前。#88
○政府参考人(栗本英雄君) 殺人などの凶悪犯は六〇%でございますから、全刑法犯二三・に対して六〇%の検挙率です。#89
○角田義一君 ああ、そう。要するに、凶悪犯であれ何であれ、この犯した者がちゃんと罰せられるということが国民の不安を解消することになるんであって、特に外国人をねらい撃ちするような印象を与える、こういう五年間で半減するというようなのは、私は、不法滞在者に対する、そのなくす対応としては一面しか見てないと思っているんですね。一面しか見てないと思っている。もうちょっと違った方法もあるんじゃないかという、発想を変えた方がいいと思う。私はそう思うんです。
そこでちょっと、それとも関連するので申し上げますが、特別許可制度というのがあって、これは毎年七千人ぐらいなっているそうですね。急激にこれ増えているようですけれども、どうしてこんなに増えているんですか。
#90
○政府参考人(増田暢也君) 平成十五年の数字が出ましたけれども、平成十五年で在留特別許可は一万三百二十七件となりました。平成十四年が約七千件でしたから、かなり増加しております。その理由ですけれども、退去強制手続を取った人の数が平成十五年全体で四万五千九百十件です。平成十四年は四万一千九百三十五件ですから、元々退去強制手続の対象者自体が約四千件増加しました。言わば、正確ではございませんが、このように分母といいますか母数が増えていることがあるいは在留特別許可を得た人の増加につながっているのではないかとも思われます。
#91
○角田義一君 その特別許可というのは、さっき言った、じゃ一万件といったら、これ法務大臣が一々全部一万件するわけにいかないでしょう、許可するわけにいかないでしょう。そうすると、恐らく、いろいろ地域に出入国管理事務所があるわけだけれども、そこのお役人さんに審査の権限を、法務大臣の委任を受けるというか、命を受けて与えているはずですな。そうじゃなきゃ法務大臣が一万件なんかできないもの、現実問題として。そうすると、その特別許可を与える基準というのは、これは明確なんでしょうな。#92
○政府参考人(増田暢也君) 在留特別許可を与えるかどうかにつきましては、入管法五十条の規定に基づきまして、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、あるいは家族状況、生活状況、素行、あるいは内外の諸情勢、その他諸般の事情を総合的に考慮して個別に決定しているところでありまして、在留特別許可の基準はございません。結局、これら事情、個々の事案によって異なりますので、これまでも一般的な基準を設けることは困難であると考えております。#93
○角田義一君 冗談じゃないよ、あなた。そんなこと通りませんよ、世の中。七千件だか一万件だか知らないけれども、幾つかのこういう事由があって総合的に判断すると。そうしたら、大臣の命を受けたその出先の人のあれじゃないですか、どういうふうに判断するかほしいままじゃないですか。一定の要件がちゃんと幾つかあって、当たるべき、該当すべき項目が幾つかあって、それで幾つ、例えば六つなら六つのうち四つだか五つ満たしていると、そのほかにいろいろな状況を判断してこれはいいだとか悪いだとか言うんであって、あなたの説明みたいに、何だか訳の分からぬけれども適当にやっちまうんだと、そんなことやっているのかね。
#94
○政府参考人(増田暢也君) もちろんこの許可に当たって恣意的に、あるいはその場の場当たり的な判断などをしているわけではございません。この在留特別許可を与えた事案については、それを先例として全国に申達しておりますので、言わば各地方入管におきましては、在留特別許可が与えられた事例、集積されている、それらを先例とし参考としてこの許可を決定しているということでございます。#95
○角田義一君 その先例が積み重なっていけば幾つかの柱が出てくるわけでしょうが。その柱というものは当然あるわけで、それは公表されてしかるべきでしょう。どこかの新聞見たら、四原則を開示要求したら出たと新聞に書いてあるんだけれども、本当だかうそか聞きたいと思っているんだよ。四条件というのがあるらしいんだが、その四条件というものがちゃんとあって、それが特別許可を与えるか与えないかの基準になっているというような新聞記事が出ているんですよ。開示要求したらなっていると、こう書いてあるんだよ。現にそうなのかどうか。
#96
○政府参考人(増田暢也君) お尋ねに出ている四条件、あるいはそれの開示ということが何を指しているのかちょっと理解、私どもでは今直ちにはちょっと理解できないのですが、もしも考えられるとしたら専決基準、各地方入管において専決するような、その専決基準について開示を求められているということはあるようでございます。#97
○角田義一君 センケツ基準というのはどういう日本語を書くんですか。#98
○政府参考人(増田暢也君) それは、その案件を扱っている地方入管において、地方入管局長がその判断において決定してよいという基準でございます。#99
○角田義一君 それが四条件になっているんですか。四つのファクターがあるんですか。#100
○政府参考人(増田暢也君) 必ずしも正確に理解しているわけじゃないのでそこは御容赦いただきたいのですが、四条件というものが今あるとはなっていないようでございます。過去においてあるいはその四条件というようなものがあったのかもしれませんが、今はそういうものはないというふうに、状況でございます。#101
○角田義一君 この前問題になった神戸の、この何だ、特別許可の裁判、これはイランかな、それから韓国、二つの裁判がうんと注目されたね。その裁判の中で裁判長は自ら、特別許可を与えるべきケースというか事項というものを裁判所自らが提示しているわけですよ。それにのっとって裁判所は判断して、これは特別許可を与えるべきだといって国は負けているわけだよ。そうすると、裁判所ですら、そんなこと言っちゃこれは怒られるな、裁判所が救ってやろうと思って特別許可の条件をちゃんと整理して、こういうときにはしようがないんじゃないかと、こう言っているんだよ。ところが、あんたの話聞いていると、あんたなんて言っちゃいけない、局長の話聞いていると、まだ、四つも裁判所で出ている、提起されているのになおかつしらばっくれるというかな、その感性が鈍いよ。四条件なら四条件はっきりそれは出して、五条件出して、そして、こういうのは特別許可を与えるんだということにならなきゃ、七千人から一万人の人を適当にやられたんじゃ困るじゃないですか。
僕は、何でこんな質問をするかというと、不法滞在者を減らす一つの手段として特別許可という制度をもっと活用してもいいんではないかと思うから言っているんです。そういう伏線があるから聞いているんですよ。
#102
○政府参考人(増田暢也君) まず、在留特別許可を活用することについては、私どもとしても、先ほど来申し上げたような状況で、現に現在、在留特別許可に当たっているということでございます。それから、おっしゃるとおり、下級審の判決の中にはこれは本来、在留を特別に許可してよいというような判断を示した一審判決もございましたけれども、それはその内容について必ずしも私どもの納得できるものではなかったために高裁で控訴して、恐らく、先ほど委員が御指摘になられた件についても高裁で既に取り消されております。
それは、そういう高裁判決は、私の理解しているところ幾つかございますが、結局どれも言っていることは、在留を特別許可するかどうかは、やはり法務大臣の広範な政治的な立場に立っての裁量が確保されなければいけないんだと、ということにあるわけでございまして、私どもとしては、実際恣意的な運用にならないように十分先例を積み重ねながらやっているところではございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
#103
○角田義一君 あのね、もうちょっとあなた方は柔軟な発想とか感性というのを磨いてもらいたいんだよ、私に言わせると。要するに、たしか、あれですよ、イランのあれは高裁でひんぐり返ったよ。ひんぐり返ったなんというのは、ひっくり返ったんだ。だけれども、僕は地裁の裁判官の方が人権感覚富んでいると思うよ。こんなこと言うと物議を醸すからやめるけれども、日本の裁判所というのは上へ行けば行くほどおかしくなるというふうに言う人もいる、言う人もいる、人権感覚が鈍くなると。私が言うんじゃない、言う人もいるんだ。ぐらいなんだから、やっぱり一審の裁判官というのはいろいろ苦労して、知恵絞って書いて、出しているんですよ。そうしたら、そういうものをやっぱり積極的に取り入れて、で、どういうふうにこれを生かしたらいいかというぐらいの発想を天下の局長は持たなきゃ駄目だよ。質問、答えてください。
#104
○政府参考人(増田暢也君) 先ほどから申し上げているとおり、この在留特別許可については、ただいまの委員の御指摘ももちろん十分に参考にさせていただきながら、これまでもそうであると自負していますが、これからも適正に運用してまいりたいと考えております。#105
○角田義一君 まあ、あなたの答弁はそこまでか。あとはまあ大臣がいろいろ指導してもらわなくちゃ困るんだけれども。じゃ、次に行きます。この不法滞在をしている人が外国人登録を受けていますな。受けているケースがうんと増えているね、このごろ。そして、外国人登録を受ける理由は、子供を学校に入れるため、あるいは銀行口座を開設するため、いろいろな理由があるようだけれども、地方自治体ではその外国人登録を不法滞在者へと認めているんですね。今年どのくらい認めていますか。
#106
○政府参考人(増田暢也君) 今のお尋ねは今年どれくらい認めていますかということですが、それは、申し訳ございませんが、分かりません。で、今私どもが持っているのは平成十四年。
#107
○角田義一君 ああ、十四年でいいです。#108
○政府参考人(増田暢也君) 十四年末現在で一万七千五百十五人です。#109
○角田義一君 要するに、平成十四年で一万七千何ぼの人が不法滞在者であるけれども外人登録を受けて、その外人登録を受けながら子供を学校に入れ、銀行口座開設しているわけですよ。要するに、日本の市民というかな、としてそういう待遇を受けているわけですよ。じゃ、私は、その人たちを摘発しろなんて、そんな意地悪な質問しようとしているんじゃないですよ。いいですか、誤解しないでくださいよ。
じゃ、この一万七千の人は不法滞在者でしょうが、あなた方の言う不法滞在者でしょう。じゃ、これは摘発してみんな国を追っ払うのかい。追っ払ってないじゃないですか。追っ払えないんでしょうや。追っ払うべきではないという判断になっているから、一万七千何ぼの人が外国登録受けて生活しているんじゃないですか。何が犯罪の温床だわね、あんた。どうです。
#110
○政府参考人(増田暢也君) 昨年十月に東京入管が警視庁と合同で一か月間、不法滞在者集中摘発をしまして、千六百四十三人を収容し摘発しましたが、その四分の一はこの在留資格なしとして登録していた人たちで、私どもはそれを手掛かりとして摘発に着手して収容したのが、したがっておよそ四分の一を占めております。それは一万七千人というような数でございますから、それはなかなかその全部を減らせるということは事実上難しいのはそうですが、今私どもの持っている陣容、体制でとにかく、また得られている情報で、少しずつですが、機会あるたびにこの摘発には努めているところでございます。
#111
○角田義一君 私の質問を誤解してもらっちゃ困るんだよ。私は、この一万七千人の人たちを摘発してみんな外国へ、国へ返しちまえばいいなんてことを私は言っているんじゃないんだよ。いいですか。地方自治体は苦労しながらも、不法滞在とはいいながらもそれなりの市民生活をやっている人たちに対して外国人登録を認めて、そして学校に入れたり、銀行口座開設させたりして、日本で平穏な生活をさせたいと思っているんですよ。それが正しいやり方なんですよ、むしろ。それが正しい国の政治のやり方なんですよ。
これ、でも誤解してもらっちゃ困るんだけれども、こういうことが分かったからどんどん摘発すればいいということを私は言っているんじゃないんだから、全然発想が違うんだからね、僕が言っているのは。
私が言いたいのはですよ、大臣、私が言いたいのは、単なる摘発をして今度は一年間たったら、おまえ、また帰ってこいよと言ったって、そんな簡単に出てくるものじゃないと私は思うけれども、何しろ国外に出せば、出せばいいという発想じゃなくて、正常に生活をしている人がいると。確かに不法滞在者であるかもしれないけれども、正常に生活をしている人がいる、者がいる。その一つの方法として特別の在留許可を与えて一万人ぐらい救済しているようだけれども、発想を変えてもらいたいと僕は思うんです。
それで、大臣に聞く前に、もう一つ局長に聞く。
諸外国でやっているアムネスティー制度というのはどういうのですか。
#112
○政府参考人(増田暢也君) 諸外国といいましても私が承知しているのはアメリカについてですけれども、かつてアメリカは不法滞在者に対してある時点、ちょっと今、年忘れましたが、ある時点で移民法を改正したか何か法律の手当てによって、その時点でいる不法滞在者をすべて正規滞在者に切り替えたということでございます。#113
○角田義一君 もうちょっと部下と一緒に勉強してもらいたいね。アメリカだけじゃないですよ。アメリカ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ベルギー、オランダ、カナダ、オーストラリア、マレーシア、タイ、台湾、韓国、アルゼンチン、ベネズエラ、こういう国々は、言わば一定の期間区切って申請を認めて、不法滞在という形になっているけれども、いろいろな条件を具備した者について、全部じゃないんだ、全員じゃないんだよ、合法の滞在に切り替えるんですよ。そして、市民生活を保障して、ちゃんと活力ある市民として頑張ってもらうと。年中でれでれでれでれやっておるわけじゃないんだ。一定の期間、申請する期間を決めて、しかも条件を決めて、それに合う者については不法滞在者じゃなくなるんですよ。ほかの国みんなやっているんだよ。こういう制度もあるんだから、日本もこれは勉強してみようという気には局長、ならないんかい。#114
○政府参考人(増田暢也君) 一定範囲の不法滞在者につきまして条件を定めて在留資格を与えるといういわゆるアムネスティーにつきましては、海外からの新たな不法滞在者の流入を助長するおそれもございますので、私どもとしてはそのような措置は必ずしも相当ではないと考えております。勉強する気がないかというお尋ねですが、勉強したことがあるのですが、アメリカはアムネスティーを取ったとき、たしか私の記憶では三百五十万人ほどの不法滞在者になっておりました。そのアムネスティーを取った結果がどうであったかというと、十年後に七百万か八百万の不法滞在者に膨れ上がったと。
つまり、ある国で不法滞在者に対して許すという、合法化するという措置を取ったことで、かえってそれが呼び水になって不法滞在者が膨大に膨れ上がったという、そういう国もあるわけでして、そういったことから私どもとしては、直ちにこのアムネスティーを採用することはやはりよく研究していろいろ枠組みを考えるとかいろいろ考えないと、にわかには採用できないものではないかと考えているところでございます。
#115
○角田義一君 私も堅いこと言っているんじゃないんだよ。にわかにすぐやれなんてばかなことは一言も言ってないんだ。アメリカはアメリカの方式で全部認めちゃったからおかしくなっちゃったんじゃない、ばあっと増えちゃったんですよ。じゃ、ほかのイタリア、ギリシャ、ポルトガルとか全部見てごらん。そんなに全部やっているところなんかないんですよ。やっぱりちゃんと一定の期限を切って申請させて、しかも非常に厳格な要件を付しながらもやっているんですよ。だから、ある意味では日本でやっている特別許可の制度をもうちょっと改善して拡充してやるということもあっていいんじゃないかということを私は結論として申し上げたいんだよ。そういう制度の柔軟性というものがあって初めてこの言わば不法滞在者というものも減るわけで、五年間で半減するなんて、ただ摘発ばっかりしているというそういう発想だけでは駄目だと、こういうふうに僕は言っているんだ。いろいろな柔軟な発想もあって、しかもいいんではないかと。ちゃんと秩序も守られる、その人たちの生活も守られる、そういう方法を柔軟に研究してみようじゃないかと。日本に合うには日本に合うようなことをやってみようじゃないかと、これを私は要求しているんですよ。あなたみたいにそんな単純なことを言っているんじゃないんですよ。もうちょっと複雑なもの、そういうことをちゃんとやってみたらどうだということなんです。
大臣、最後答えてください。私の時間だよ、もう。
#116
○国務大臣(野沢太三君) 治安確保のために不法滞在の方を半減するということは、とにかく今の日本の治安を改善するためには不可欠の私は仕事ではないかと。これは昨年の末に安全対策の閣僚会議で行動計画としても認められ、その方針を今進めておるわけでございますが、更にそれを徹底するために具体的にじゃどうするかと。半減ということについて今御意見を伺っておるわけでございますが、確かに半減させるためには新しく来る人をまず食い止めるということ、それからもう一つは今いる人たちの中で不法滞在と言われている人たちを減らしていくということ、それから滞在の在り方についての基本的な今のお話のような方針を見直していくこと、これも非常に重要なことだと思っております。そして、今お話しのように、在留の特別許可という制度も十分これは活用しながらやりませんと、なかなかこの半減ということもそう簡単にはできないということも十分承知をいたしております。
ただ、その前提としては、日本の社会があくまで遵法社会であり、入る手続も滞在する手続もやはり適法、遵法の範囲内で行われるということが確立されないことには、ただ条件だけ緩くするということにはならない。アムネスティー政策につきましても、今局長からもお話がありましたように、各国の実情について調べまして、単なる緩和政策だけでは私どもの目標とする治安の確立につながらないということを考えた上で今進めておるところでございます。
#117
○角田義一君 終わります。#118
○千葉景子君 角田委員に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。今、角田委員からるる指摘がございました。それぞれこれまでも議論がされた問題もございます。私もやはり不法滞在に対する姿勢というのは、一体これだけの多くの外国人の皆さんがやっぱり日本の社会に現実に存在をする、そして様々な分野で仕事をしたり、あるいは社会の一員として日本社会に貢献をしている、こういう事実。これはまずしっかり見据えておかなければいけないというふうに思いますし、そういうことをやっぱり念頭に置かないまま制度を多少改正をしても、あるいは対症療法をしても、本当の意味での解決策、そして、決して犯罪に甘くしろということではありませんけれども、犯罪にはきちっとした対処を、しかし本当にともに共生できる社会を構築をしていくと。こういう両方の命題にこたえていくには、やはりきちっとしたまず現状認識、そして実情の本当に理解ということが必要なのではないかというふうに思っております。
今回、不法残留に係る罰金の引上げ、在留資格の取消し、出国命令制度等の新設がなされました。これが、先ほどからお話にございますように二十五万と言われる者を半減をしようという目標だそうでございますけれども、その目標に向かっての言わば制度設計だということにもなるのでしょう。私は、この制度設計、適法な外国人に対しては一定の保障をする、しかし不適法な場合には厳しく当たっていく、こういう形で半減をしていこうということなのかなというふうに思います。法的には確かに一つの考え方だと思うんですね。適法な者をきちっと対処をし、そして不適法な者には厳しくしてものに当たっていくと。
しかし、どうなんでしょうか。今申し上げましたように、これまでの外国人の日本の実情あるいは増加の背景、そういうことを含めて考えたときに、本当にこの制度設計が効果のあるものなのか。逆に言えば、こういう制度設計をすることによって本当に共生できる社会、そういう道をむしろ閉ざしていくような、そういう方向につながりかねない、こんな懸念も感じるところでもございます。是非そういう意味で、もう一度根本的な在日・来日外国人の問題、あるいはその置かれている実情、こういうことから掘り下げた議論をこれからも続けていかなければいけないと思っております。
それを前提にいたしまして、先ほどこれも指摘がございましたが、どうでしょう、大臣、この法改正によって不法残留をどの程度いつごろまでにどういうプロセスで減少させられると考えておられるのでしょうか。先ほど目標なんだ、五年間で半減させる、それがある意味では、もし本当にそれが方針だとすれば、それを実行しなければ、方針を立てたけれども実現できなかったという責任が生じてくるわけです。本当にこれ、その五年間でこの制度設計に基づいて不法滞在の数を半減させられると確信を持って考えておられるのか。あるいは、参考人からもなかなか難しいものではないかと、こういう御意見もございました。
大臣としては、やはり責任者として、ある意味では責任をしょうわけですので、その辺をどう御認識をまずなさっておられるでしょうか。
#119
○国務大臣(野沢太三君) 今回の改正で、まずやっぱり私どもが心掛けますのは、現在いる二十五万人に対してどのように対応をしたらいいかと。そして、その上で正しい手続と正しい在留の資格その他が条件として満たされた段階で、さらに将来の問題として大勢の外国のお客様をお迎えしたり、あるいは資格のある技術者を受け入れたりという意味での長期的ないわゆる在留の外国人の皆様、将来の日本の人口政策、それらに絡む問題を設計せねばならない。その前提として、現段階でやはりこれまでのツケがたまっているかと思うんですが、これについてはいったんここできれいにしてから取り掛からなければならないんじゃないかと、こういう思いで取り組んでおるわけでございます。今回のこの罰金の引上げあるいは在留資格の取消し制度の新設、更には出国命令制度の新設等のこれらの政策を併せ行う中で、相当な方々がやはり自分の置かれている立場を考えていただきまして、自発的なやはり帰国であるとか、あるいは在留資格の見直し、変更についてであるとか、先ほど角田議員からも御指摘のありましたように、特別在留の更なる適用申請が出てくるとか、いろんな形で何としても目標である半減という政策の実現を図っていかなければならない。
そして、その先にさらに、じゃ日本と各外国、特に東南アジア、近い近国でございますが、隣の国の皆さんとの共存の問題、共生の問題についての展望を開いていきたいなと、こう考えておるところでございます。
半減は十分やれるし、またやらなければならないと考えております。
#120
○千葉景子君 大臣もなかなかおつらい御答弁かなと思いますけれども、今、やらなければならないし、やれるというお言葉がございました。是非それは五年間で検証をさせていただかなければいけないというふうに思いますし、なかなか難しい問題。これは五年たたずとも、本当にこれが一年一年効果が上がるものか、あるいはむしろそうではない、弊害なり懸念がむしろ増大をするのか、その辺りは今日結論は出せませんけれども、節目節目で是非国会での検証なども進めていかなければいけないものだと指摘をしておきたいというふうに思います。今回、その制度設計の中で幾つか柱があるわけですけれども、まず罰金の引上げ。
これまで罰金刑罰の制度がありました。しかし、もう刑罰をもって不法滞在を処罰をしているというのはそう多いものではないと私は認識をいたしております。これまでも余りこれが、罰則の制度が効果があったとか、適用されたというものでもない。今度これをわざわざまた引き上げるわけですけれども、この効果たるやどう考えておられるのでしょうか。単なる何か、あっ、罰金取られて大変だなという、そういう脅かしのような、こけおどしのようなことになってしまうんではないか、結果的にはですね、そんな気がしてなりませんけれども、この効果たるやどう御認識をなさっておられますか。
#121
○政府参考人(増田暢也君) 今回は不法滞在者に係る罰金額の上限を引き上げることといたしております。これは、当初から不法に入国あるいは上陸して不法に在留する人や、あるいはいわゆるリピーターなどの悪質な不法滞在者の多くが我が国で不法就労を行っていて多額の収益を得ているという実情にあることにかんがみまして、罰金刑を併科することによる経済的制裁をも加えることでこれら悪質な不法滞在行為の抑止効果をねらったものでございます。これにより、不法滞在者の発生の抑止と減少に結び付くものと考えております。#122
○千葉景子君 今、先ほど申し上げましたように、これまでも罰則はございます。しかし、それが抑止効果にもし額は違えどもなっているのであるとすれば、今のような逆に言えば事態には、実情には逆に言えばならないわけでして、この罰金の引上げがどの程度効果があるものなのか、私は大変疑問を感じております。それから次に、在留資格の取消しという制度が新たに設けられます。現行でも在留資格には期間が定められております。そういう意味では一定の再審査チェックができるという形になっているわけですね。しかし、これと別に在留資格の取消し制度を設けると。このまた要件というのがなかなか幅広になっております。そういう意味では、この取消し制度というのが本当に公平に、それから恣意的な形で適用されるようなことがないのか、大変私は懸念をするところでもございます。
これ、どうなんでしょうか。この在留資格の取消し等が適用される契機になるのは、どういうことからこれは在留資格、虚偽をしているということが発覚をすると考えておられるんでしょうか。そうすると、本当に発覚したもの、あるいは発覚しなかった場合、あるいは要件として非常に幅広い、そういう適用の運用、そういうことによってこれがどの程度本当に効果が上がるのか。逆に、今言ったような恣意的な運用や公平性を欠くというようなことによって外国人の皆さんが非常に不安や不安定な立場に置かれてしまう、こういうことが懸念されますが、いかがですか。
#123
○政府参考人(増田暢也君) まず、契機についてでございますけれども、例といたしましては、ブローカー摘発などによって婚姻の意思のない人が入籍事実の記載された戸籍謄本を提出して日本人の配偶者等の在留資格を取得しているというような偽装婚姻が、偽装結婚が判明するようなケースと、あるいは不登校の留学生を除籍した学校からの報告に基づいて、その外国人が継続して三か月以上留学に見合う活動を行っていないことが判明するケースなどが考えられます。これが公平な運用になるのかという点についての御懸念がございましたけれども、実際に、この在留資格取消しに当たっては本人から事情聴取をしますし、その事情聴取の中では、仮に偽り、不正の手段が用いられている場合であっても、どのような事情でそういう手段を用いたのか、また我が国に入ってからどのような在留状況であったのか、今後の我が国における活動の見込みがどのようなものであるのか、こういったことを詳しく聞いた上で、その上で在留を取り消す必要があるかどうかを判断することにしておりますので、その点では決して恣意的な運用にならないよう十分配慮して努めてまいりたいと考えております。
#124
○千葉景子君 次に、出国命令制度についても伺っておきたいというふうに思います。これは、先ほどから話になりますように、一つは、自ら出頭することによって、また日本への入国を逆に言えばしやすくする、言わばあめとむちのあめのような部分になるのかというふうに思いますけれども、この要件として、速やかに本邦から出国することが確実と見込まれる、こういう要件が出国命令制度には付けられております。これも非常に抽象的な文言でございまして、こういう要件が付いているとすると、これ自ら出頭するということは、不法滞在であるということを名のってリスクを負って出頭するということになるわけですね。本当にこれで、まあ救済ということはないんですけれども、一定の早い入国が保障されるような立場をもらえるのか。あるいは、ひょっとしたらそうではなくて、強制収容されて退去強制手続に乗せられてとんでもないことになってしまうのではないか。この辺り、本当にリスクを負って出頭してくるという人が考えられるのだろうか。
それから、先ほどこれも参考人等からも指摘がありましたけれども、一年という期間で入国ができるということになりましたけれども、これ必ずしも一年、もうすぐに入国が認められると保障されているわけではなく、一年間はちょっと待ってよと、それ以上どうなるかは分かりませんと、こういうことでもあるわけですので、この出国命令制度、一見は先ほど指摘あったアムネスティー制度に類似するような感もしますけれども、とてもそういう安定した地位とかそれを与えるようなものではなく、むしろこれに乗らない人に関しては、せっかくこういう道を残してやっているのにこれに乗ってこないんだからそういうのは厳しくしてやれと、こういうことでこれまで以上に収容手続が厳格になったり濫用されたり、こういうことになりかねないのではないかと、こういう感じもいたします。
その点について、そういうことではないのだとおっしゃり切れるのか、あるいは本当に効果たるやあるとお考えになっておられるのか、御認識を聞かせていただきたいと思います。
#125
○政府参考人(増田暢也君) まず、速やかに本邦から出国することが確実と見込まれることについての意味、あるいはなぜこういう要件にしたかということを申し上げますと、この確実と見込まれることのためには、その本人が帰国のために必要な渡航文書、パスポートなどですね、それを持っている、あるいは帰国の費用、また交通手段等が確保されると。したがって、近いうちに間違いなくもう出て、日本から出てもらえるということ、それを要件としたわけで、これは出国命令制度が、そもそも本人が名のり出てきて、その後速やかに、速やかというのは法律上十五日以内に出国命令を出す、十五日以内に出国しなさいという命令を出すことになっていますから、十五日以内に出てもらえるような条件を具備している人が対象になるということで、確実に出国が見込まれるということで、旅券を持っていることとか帰国費用を持っていることなどを求めたものでございます。こういう要件を満たす方については、収容されることなく合法滞在者として出国してもらうことになります。しかも、御指摘のとおり、そういう人については、今後、上陸拒否期間を今の五年から一年に短縮すると。このようにいろいろなメリットを与えようという制度でございます。
仮に、当局の摘発によって退去強制を、退去強制手続を取られた場合には身柄が収容所などに収容されますし、その場合の上陸拒否期間は五年、リピーターだったら、今後法改正が実現すれば十年というふうになります。それから、多額の罰金刑を科せられる可能性なども出てきます。そういった点でも、この出国命令制度は自ら出頭する人に対してかなりのメリットを与えるものと考えております。
実態といたしましても、かつて平成十一年に入管法を改正して、上陸拒否期間をそれまでの一律一年から五年に引き上げましたが、その際、約四万二千人もの大量の出頭申告者がございました。ところが、その後、その改正法が施行された後は、出頭申告者、特に帰国希望の出頭申告者が大幅に減少しております。
こういったことからも、やはり上陸拒否期間を長くする、あるいは短くするということは、出頭申告者の動向を大きく左右する要素であると考えております。今回のように、五年を一年にしますよという、そういう短縮のメリットは、出頭申告しやすい環境を整えることに結び付くものと考えております。
それから、この制度を設けることによってかえって例えば出てこない人について現状より厳しくなるようなことはないのかというお尋ねでしたけれども、出国命令制度はその出頭した本人についてメリットを与える、退去強制手続の例外としてメリットを与えると、こういう制度であって、この出国命令の対象とならない方については、これは現行法の退去強制手続が今と同様に取られるということになりますので、出国命令制度が設けられることによってこれに乗らない不法滞在者の取扱いが今よりも厳しくなるということはございません。
#126
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日は、二回目の質疑ですので、私も入国管理の部分について質問をいたします。
まず、今朝方から不法残留者が犯罪の温床ということが、言い方がどうなのかというのがずっと議論になってまいりました。私もこの基本認識についてまず質問をいたします。
まず、警察庁に来ていただいております。今、その不法残留者がどんどん増え続けて、そしてその中で、全体として犯罪傾向が強くなっていると、こういうような論調をよく聞くわけです。しかし、不法残留の数でいいますと、平成十年年で二十九万八千六百四十六人、十五年が二十二万五百五十二人ですから、数としては不法残留者は減っています。しかし、その一方で、来日外国人による犯罪は右肩上がりで増えていると、こういう状況になっているわけですね。この要因についてはどのように分析をされているでしょうか。
#127
○政府参考人(栗本英雄君) 不法残留者が減っている状況の中で来日外国人犯罪が増えているのはどういう理由かというお尋ねかと思いますが、私ども、来日外国人につきましては、先ほど来話が出ていますように、すべて不法残留だけではもちろんないわけであります。来日外国人犯罪が増えていることについてどういう理由が考えられるのかということで考えてみますと、これはもう当然、当初から犯罪を目的で不法入国あるいは不法滞在になった形の方が金銭目的で行うような窃盗、強盗のたぐいが非常に増えている、そういう状況が残念ながら過去と比べて非常に多いんではないかということが指摘できるわけであります。
その中で、不法滞在の方が先ほど、不法残留が減っているということですが、先ほど来お話がありますように、来日外国人犯罪の中でも不法滞在の方の占める比率というものについて見ますと、これ来日外国人犯罪で検挙された、昨年で見ますと八千二百二十五人でございますが、そのうちの不法滞在者が千五百二十人、約一八%になっていると。
ただ、私どもやっぱり注目いたしますのは、国民が大変強く不安に思います、普通の刑法犯以外に例えば侵入強盗とか侵入窃盗とか、こういう生活圏に入って窃盗、強盗を行う。これは非常に大きな反響を呼ぶわけでございます。こういうものを見ますと、来日外国人犯罪の中で不法滞在者の占める比率というのは半分以上ということで、したがいまして、そのようなより凶悪なものにつきましては、検挙の状況から見た場合に、不法滞在者が非常に増えているということは指摘できるかなと思っております。
#128
○井上哲士君 いわゆる単独犯ではなくて、その組織化、集団化というのが非常に進んでいるかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。#129
○政府参考人(栗本英雄君) 正に御指摘のとおりでございまして、外国人、来日外国人犯罪で見ますと、その三分の二以上、近くがいわゆる共犯者、まあ共犯事件でも二人の場合、三人の場合、四人の場合、たくさん、それ以上があるわけでございますが、特に日本人と比較しましても、来日外国人による犯罪というのは共犯事件が非常に多いということです。それから、特に共犯事件でも四人以上の比率が非常に高いということで、その多くは組織的に行われた事件だということは言えるかと思っております。#130
○井上哲士君 当初からそういう犯罪目的で入ってきた部分、そして四人以上の組織的なものが多いという答弁でありました。ですから、いわゆる不法残留になっている方々の全体が犯罪化をしているということではなくて、やはりこういう一部の組織立って入国し犯罪行為をしているということが私は一番の問題だと思いますし、こういう部分への取締りは大いに強化をすべきだと思うんですね。
最近、来日の外国人の刑法犯による検挙人数で、留学、就学、研修、この在留資格を持つ者が急増しているという報道もありますけれども、今の在留資格別に、やはり平成十年と十五年でどういう数になっているでしょうか。
#131
○政府参考人(栗本英雄君) お尋ねの平成十年と十五年ということで、しかも在留資格別を留学、就学、研修と、こういうことでのお尋ねだと思いますが、全体、トータルとして申し上げますと、刑法犯の検挙人員で見ますと、平成十年、これが五千三百八十二人でございますが、平成十五年には八千七百二十五人ということで、五年間で約一・六倍、これが全体でございます。その中で、今御指摘の留学、就学又は研修、この三つの資格を持って入国した者、これは不法滞在になった者も含んでおります。当初その資格を持って入国した者の検挙人員、これが平成十年には千二百三十三人でございましたが、平成十五年には三千三十三人ということで、約二・五倍になっているということで、全体の伸び方に比較して、非常にこの三つの資格を持った方の犯罪が多いということは指摘できるかと思います。
#132
○井上哲士君 二・五倍に増えているということでありました。もちろん、多くの留学生などの方は大変まじめに勉強をされているわけですね。やはりこの問題でも、そういう留学制度を悪用して不法な入国ビジネスをやっているということが大きいと思うんですね。典型的な例が、昨年逮捕されて起訴されました新東京語学院の吉田勝則被告、報道もされておりますけれども、この容疑の具体的内容はどうなっているでしょうか。
#133
○政府参考人(米村敏朗君) 御指摘の事案につきましては、引き続きなお捜査中ではありますけれども、昨年の十一月に、埼玉県警察が東京入国管理局と連携をいたしまして、内容虚偽の証明書等を持ち複数の中国人に在留資格を不正に更新させていた、これが東京都内の会社役員でありますが、これらを文書偽造の疑いで逮捕した事件であります。報道にありましたように、技能あるいは就学を始めとした在留資格を名目のみ取得をし、当初から不法就労等を目的としている者が多数存在をしているということでございます。以上でございます。
#134
○井上哲士君 これ、報道によりますと、中国側に約七十のあっせん業者があって、そして日本国内には中華料理店約三十など協力するお店もあると。そして、不法入国の仲介料として一人平均三百五十万円、そして在留期間の更新手続も代行して一回につき五十万円を受け取っていたというふうに報道をされております。これだけのお金を借金をして日本国内に入ってくるわけでありますから、これを稼ぎながら自分の生活費を稼ぎ、そして言わば持って帰るお金も稼ぐと。今日のいろんな経済情勢の中で、こういう人たちがいろんな道に手を染めてしまうという事態も起きていると。それを食い物にしているこういうビジネスがあるわけですね。
こういうやはり組織的な不法入国、そして来日外国人による組織的な犯罪行為、こういったものをしっかり対策を取ることが必要だし、中国当局との連携も進められていると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
#135
○政府参考人(栗本英雄君) ただいま御指摘のように、私ども、来日外国人犯罪も含めまして、現下の治安の大きな悪化させる要因として組織犯罪があるだろうと、こういう観点から、その対策のために一つは組織的な整備を図っておるところでございまして、今般の警察法の改正をいただきまして、警察庁刑事局に組織犯罪対策部を新設をし、いわゆる組織犯罪対策に対する業務の統合を図って効率的な組織犯罪対策を講じることとしておりますし、また、来日外国人犯罪の関連では、法務省の入国管理局との間におきまして協働しながら合同摘発の推進等も行っているところでございます。また、お尋ねの中国の機関との連携強化ということでございまして、正に先ほど先生が御指摘の蛇頭等、中国人の犯罪組織に対処するためには、国内及び水際におきます取締りの強化のみならず、中国の治安当局との連携強化が極めて大事だと思っておりますし、これまでにも、平成十年には国家公安委員長が訪中をされ、その後閣僚レベルでの交流を進めるとともに、私ども実務レベルでの協議も行い、不法出入国、薬物、銃器及び捜査共助の各分野において緊密な情報交換等を図っているところでございまして、更にこの面におきましては一層今後その進展を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
#136
○井上哲士君 その上で大臣にお聞きをいたします。今ありましたように、不法残留者全体が犯罪傾向を強めているということではなくて、一部のこの組織的な不法入国やそして犯罪というのが増えているということだと思います。ですから、私は、今求められているのは、悪質な者についてはしっかり取締りはする、一方で、現に、先ほどもありましたように、日本の国内で平穏にかつ善良な一市民として暮らしておられる方もたくさんいるわけですから、こういう人たちには人道上の配慮もしっかりしていくと、こういうめり張りの利いたことが今必要かと思います。
今回の法案で出国命令制度というのも設けまして、上陸拒否期間を一年に短くするということもあるわけですが、やっぱり悪質な者とそうでない者をしっかり分けると、こういう考え方ということでよろしいでしょうか。
#137
○国務大臣(野沢太三君) 委員御指摘のとおり、今回は、今までの入管のルールだけではどうしても不法滞在を食い止めることがうまくいかない、あるいは十分にいかないということの中から議論を重ねまして、幾つかの施策を併せ行い、そして先ほどから申し上げておりますが、まず水際で食い止める、そして在留資格の見直しをしっかり行う、その上で、正しく手続を取った方々に対しては今後とも日本に在留できるようないわゆる在留特別許可の制度もこれは弾力的に運用せねばならない。いろんな施策を併せ行うことが非常に重要でございます。特に、今委員御指摘いただきましたように、組織犯罪と結び付いた形での不法滞在の皆さんが悪に走るという道は何としてもこれ食い止めなければいけない。その意味で、犯罪対策閣僚会議におきましても、外国人犯罪の対応と併せて組織犯罪に対してもしっかり取り組もうということをうたっておるわけでございます。その意味で、今回のこの施策は、まず一番、すぐできることから始めまして、そして正しい手続、正しい資格で日本に滞在していただく、さらには入っていただくということを進めたいということからこの方針を打ち出したわけでございますので、その辺に関する御理解十分お願いいたしたいと思います。
#138
○井上哲士君 その関係で、上陸拒否期間の一覧を見ますと、麻薬、覚せい剤の不法所持の場合は一年にとどめているんですね。これはどういう理由でしょうか。#139
○政府参考人(増田暢也君) 薬物等を不法に所持する人については、我が国の関係取締法令によって厳格な取締りが行われておりまして、通常は刑事処罰がなされることになります。処罰を受けた者につきましては、入管法五条一項五号に該当して、その後の我が国への上陸が禁止されるという厳格な措置が取られます。また、刑事手続が取られない場合であっても、入管法五条一項六号によりましてその外国人を上陸拒否し、入管法五条一項九号により上陸を拒否された日から一年間はその者の我が国への上陸を認めないこととしております。このように、現行の入管法におきましても薬物等の不法所持に対して厳格な措置を取っているところでありまして、その点はこれからも維持することにして今回の改正の対象とはいたしておりません。
#140
○井上哲士君 前回この法律が改正をされたときに、それまでの上陸拒否期間が一年から五年に延びました。当時、我々は一律に五年延ばすことには反対をいたしまして、特に、家族が五年間離れ離れになるということは人道上も問題だということを指摘をいたしました。本委員会でも、この運用に当たりまして、上陸特別許可や在留特別許可の運用に当たり、当該外国人の在留中に生じた家族的結合等を十分配慮することと、こういう附帯決議が付いているわけですが、日本国内に家族のいる外国人の上陸特別許可については、この決議に沿った運用がその後されているということでしょうか。#141
○政府参考人(増田暢也君) 個々の事案の処理に当たりましては、この附帯決議の趣旨を十分尊重して適切に対応しているところです。ちなみに、この上陸拒否事由に該当する人に対する上陸特別許可の件数を申しますと、平成十年五十三件、十一年五十六件でございましたが、法改正が実現した後の平成十二年は百二十五件、十三年百五件、十四年百九十九件、十五年百九十三件と大幅に増加しております。
#142
○井上哲士君 午前中の参考人質疑ではまだまだされていない場合があるというお話もありました。一層この精神での運用をお願いをしたいと思います。今回、運用だけではなく、法律上も一年に縮めるという制度にしたことについては前進だと思いますが、先ほど来あるような在留特別許可についてもそういう精神が生かされるべきだと思います。特に、この家族的な結合の問題、それから子供がもう日本語しかしゃべれなくて、帰国をすれば成長に重大な障害が生じる可能性があると、こういう場合などは十分な配慮がされるべきかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
#143
○政府参考人(増田暢也君) 在留を特別に許可するかどうかにつきましては、平成十一年の入管法改正の際に採択された附帯決議にあるとおり、その外国人の在留中に生じました家族的結合等の実情に十分配慮すべきとの趣旨を踏まえて適切に措置することとしております。また、委員御指摘の日本で生まれて日本語しか話せない子供等の事情につきましては、在留特別許可を行うべきかどうかの総合的判断の中で一つの要素として考慮しております。
いずれにしましても、在留を特別に認めるか否かについて、法務大臣による個々の案件ごとに適切に判断して解決していきたいと考えております。
#144
○井上哲士君 次に、在留資格の取消し制度に関連してお聞きをします。法務省の例示の中でも、研修生の受入れ機関が虚偽の研修計画書を提出した場合というのが挙げられております。そこでまず、この研修、実習の実態について幾つかお聞きをするんですが、国際研修協力機構というのが、JITCOですか、五千百五十五企業に調査、巡回指導した結果が二〇〇三年六月に発表されておりますが、この中で例えば本来実習生が自ら保管をすべきパスポートを受入れ機関が預かると、これが二〇〇二年でいいますと百六十七の企業もあったということが指摘をされておりますが、研修生でもこういうことがあるとお聞きしています。本人と合意書を交わすという形式を取っていますけれども、多くは事実上強制になっていると。こういう実態と、そして指導はどのようにされているんでしょうか。
#145
○政府参考人(増田暢也君) 元々本邦に在留する外国人には旅券の携帯義務が課せられておりますから、その旅券は名義人が所持すべきものでございます。したがって、その受入れ機関が強制的に旅券を管理するなどということは適切ではございません。御指摘のような取扱いを行っている受入れ機関に対しましてはこれまでも改善を指導してまいりましたし、今後もそのような事案があるのであれば、探知すれば、当然厳しく指導をしてまいりたいと考えております。#146
○井上哲士君 ただ、通報してくると自分に不利益が来るんじゃないかというおそれを感じる方もいらっしゃると思うんですが、そういう場合、通報があった場合のそういう指導の配慮などはどうなっているんでしょうか。#147
○政府参考人(増田暢也君) その受入れ機関で適切な研修が行われているのであれば、それはそれで配慮することになると思います。#148
○井上哲士君 いやいや、そうじゃなくて、自分がパスポートを無理やり預けられている、取られているということを、例えば入管局に告発、通報をしたときに、それを調べに来ることによって自分に不利益が来るんじゃないかということでちゅうちょされるというケースもあるわけで、その辺の指導の仕方などについてどうされているのかということです。#149
○政府参考人(増田暢也君) 入管の方で具体的にその旅券を研修生から取り上げているようなケースを探知すれば、当然私どもでは指導をしなければいけないことになりますので、その場合には、その受入れ機関に対して、その旅券を取り上げていることに対しては是正するように指導をすることになります。その場合に、問題は、その研修生本人が自分の身がどうなるかを心配してなかなか言いにくいのではないかということですが、これ一つには、そういった案件があるときに、もちろん私どもとしてはその情報源の秘匿には努めますし、それから、その受入れ機関に問題があるときに、その受入れ機関での研修継続は問題だというときでも、場合によっては別の研修受入れ機関で引き続き研修を継続させられる道があるのであれば、例えばJITCOのあっせんなどによってそちらで研修継続ということもありますし、場合によっては、その元の受入れ機関でも改善を約束し、きちんと旅券を本人に戻して研修の適正な再開が望めるのであれば、そのような措置を講じることも考えられます。
#150
○井上哲士君 研修といいながら、実際はわずかなお金で労働をさせているという場合もありますし、実習生になった場合も最低賃金以下で働かせているというのが先ほどのJITCOの調査で言いますと二十社、それから残業しても割増賃金を払っていないものが七十四社と、こういうふうに報告されていますが、これ、厚生労働省はこういう部分についてはどのような調査、監督をされてきたんでしょうか。#151
○政府参考人(大石明君) 労働基準監督機関といたしましては、技能実習生の労働条件の確保ということは重点的な事項の一つでございますので、法に違反するような事項があれば適切な指導、是正に努めているところでございます。これまで、平成十四年に技能実習生を受け入れている事業場での監督指導の状況でございますけれども、四百三十七の事業場につきまして監督指導を行っておりますが、先ほど御指摘のありました賃金に関する労働基準法三十七条違反の事業場は百十四、それから最低賃金法の第五条違反は三十四事業場、こんなふうな状況になっております。
ただ、いずれにいたしましても、これらの事業場でも、私どもといたしましては、そういった事業場でその後きちっとした形で是正するということを指導しているというわけでございまして、それに基づいて各事業場において是正されているものというふうに考えております。
#152
○井上哲士君 このように、研修、実習といいながら、実態は安上がりの労働力として使っているという場合も少なくないわけですね。ですから、研修生などはむしろ被害者でありまして、その受入れ機関の問題なのに在留資格を取り消すということになりますと非常に過酷なことになります。研修生が、受入れ機関が虚偽文書を提出しているということを知らずに研修生が入国をして、そして受入れ機関が処分をされた場合でも、ほかに受入れの機関がある場合とか、そして、ないしはほかの受入れ機関を探している場合と、これはこの在留資格の取消しには当たらないということでよろしいんでしょうか。
#153
○政府参考人(増田暢也君) おっしゃるとおり、いろいろなケースがあろうかと思いますが、今委員が例示されたように、その研修生が別の受入れ機関で与えられている在留資格に見合う在留活動を現に行っているような場合には、在留資格に見合う活動が正当に行われているわけですから、在留資格の取消しの対象になるとは考えておりません。それから、別の機関を探している最中という場合ですが、これも法律の要件は継続して三か月間正当な理由なく活動を行っていないことですから、本人が在留資格に見合う活動ができるよう別の勤め先を現に探しているとなりますと、これは活動を行っていないことに正当な理由はあるということになりますので、一般論になりますけれども、取消しの対象になることはないであろうというふうに思われます。
#154
○井上哲士君 前回の審議のときに、この正当な理由の問題で、倒産をして求職活動をしている場合というのがありました。例えば解雇をされて、それが不当だということで同じ職場への復帰を求めていると。その間は、職場復帰活動をしていますから、求職の活動はしていないという場合ありますね。こういうときも正当な理由に当てはまるということでよろしいでしょうか。#155
○政府参考人(増田暢也君) 個々の事情に基づいて検討することになると思いますので、あくまで一般論としてのお答えになりますが、例えば解雇によって現に有する在留資格に見合う活動を行うことはできなくなっていると。しかし、その解雇の正当性を争って訴訟を起こしているとなりますと、現に有する在留資格に係る活動が在留期間内に今後再開する見込みもあるということになると、これは在留活動を行っていないことに正当な理由はあるというケースになろうと思います。あくまで一般論でございますけれども、取消しにならないケースはあるだろうと思います。
#156
○井上哲士君 はい、分かりました。朝の参考人の質疑でも、ブラジルからの来日者の例を挙げて、こういう非常に劣悪な労働条件、それから、その中で子供たちが学校に行っていないということが大変犯罪につながっているというお話もありました。
そこで、就学対策について文部科学省にお聞きをするんですが、公立小中学校などに在籍をする日本語指導が必要な外国人の児童生徒の数はどうなっているか。それから、それ以外の不就学の児童生徒数がどうなっているでしょうか。
#157
○政府参考人(樋口修資君) お答え申し上げます。我が国の公立小中高等学校に在籍をいたします日本語指導が必要な外国人児童生徒は、平成十五年の九月一日現在、一万九千四十二人となっております。学校種別で見ますと、小学校では一万二千五百二十三名、中学校は五千三百十七名、高等学校は千百四十三名、盲・聾・養護学校に四十九名、中等教育学校十名と、こういうふうになっておるわけでございます。
不就学のお話がございましたが、外国人児童生徒につきましては、公立の義務教育諸学校のほかにブラジル人学校等の外国人学校など様々な場で学んでいるところでございますが、私ども、いずれの学校にも属さない不就学の児童生徒がいることは承知はしておりますけれども、全国的な実態について把握することはなかなか容易ではないということで、私どもは、学校だけではなく地域ぐるみでの取組によってこの不就学のお子さん方への対応を適切に対処していただきたいというふうに考えているところでございます。
#158
○井上哲士君 このことは人権の問題でもあると同時に、犯罪のない地域作りという点でも大変重要だと思っております。そういう日本語指導が必要な外国人児童生徒を受け入れている小中学校等への援助がどうなっているか、それから就学をしていない児童生徒の就学対策はどうなっているか、そのことをお聞きをして終わります。
#159
○政府参考人(樋口修資君) 義務教育段階にございます外国人児童生徒が我が国の公立の義務教育諸学校へ就学を希望される場合には、これは国際人権規約等を踏まえまして、日本人児童生徒と同じように無償で受け入れておりまして、教科書は当然無償で配付をさせていただきますし、就学援助も行うということで、日本人と同様の教育を受ける機会を保障しているところでございます。そしてまた、これらの子供たちが日本の学校に適応するのを支援するために、日本語指導等に対応する教員を特別に配置いたしましたり、あるいは母語の分かる教育相談員を派遣するなど、様々な対策を講じさせていただいているところでございます。
他方、不就学のお子様方への対応といたしましては、私ども、外国語による就学のためのガイドブックを作成させていただいております。ポルトガル語、スペイン語、中国語、韓国語等、七言語にわたって就学ガイドブックを、これを全国各地に配付をさせていただいておりまして、都道府県、市町村の窓口でこういった外国人児童生徒に対しての適切な就学案内をするように促しているところでございまして、今後とも関係機関と十分に連携しながら就学の機会を確保するための取組を進めてまいりたいと考えております。
#160
○井上哲士君 終わります。#161
○委員長(山本保君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。午後四時二十四分散会