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2004/02/04 第159回国会 参議院 参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第4号
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2004/02/04 第159回国会 参議院

参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第4号

#1
第159回国会 本会議 第4号
平成十六年二月四日(水曜日)
   午後零時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四号
    ─────────────
  平成十六年二月四日
   正午 本会議
    ─────────────
 第一 イラクにおける人道復興支援活動及び安
  全確保支援活動の実施に関する特別措置法第
  六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等
  による人道復興支援活動及び安全確保支援活
  動の各活動の実施に関し承認を求めるの件(
  趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、元本院副議長阿具根登君逝去につき哀悼の
  件
 一、元議員白木義一郎君逝去につき哀悼の件
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 元本院副議長阿具根登君は、去る一月十六日逝去されました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。
 つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞をささげることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ さきに参議院副議長として憲政の発揚につとめ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられました 元議員正三位勲一等阿具根登君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます
     ─────・─────
#5
○議長(倉田寛之君) さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員白木義一郎君は、去る一月二十五日逝去されました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。
 つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞をささげることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられ さきに懲罰委員長 公職選挙法改正に関する特別委員長等の重任にあたられました 元議員白木義一郎君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます
     ─────・─────
#7
○議長(倉田寛之君) 日程第一 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件(趣旨説明)
 本件について提出者の趣旨説明を求めます。国務大臣石破防衛庁長官。
   〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(石破茂君) イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件について、その趣旨を御説明いたします。
 イラク特別事態を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するとの立場に立ち、できる限りの支援、協力を行うことが重要であると考えております。
 このため、政府としては、同法第八条第二項の規定に基づき、自衛隊の部隊等が人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動を実施することとし、同法第六条第一項の規定により国会の承認を求めることとした次第であります。
 以上が本件につき承認を求める理由であります。
 次に、本件の内容について、その概要を御説明いたします。
 本件は、同法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施について、国会の承認を求めることを内容とするものであります。
 なお、別紙において、当該活動を外国の領域で実施する場合の当該外国について示しておるところであります。
 以上が本件の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。齋藤勁君。
   〔齋藤勁君登壇、拍手〕
#10
○齋藤勁君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました自衛隊のイラク派遣にかかわる国会承認に対して質問をいたします。
 質問に入る前に、私は、本案件に対する衆議院での質疑の際、政府・与党が取った態度は、国権の最高機関である国会を軽視し、議会制民主主義をじゅうりんする暴挙であったと厳しく弾劾せざるを得ません。
 特に、一月三十日のイラク復興支援特別委員会、それに続く予算委員会、財務金融委員会、翌三十一日未明の本会議で、時間的にも内容的にも審議不十分のままの審議打切りと強行採決、与党単独採決を強行したことは、我が国政治史上に残る一大汚点であったことを指摘し、政府・与党に深刻な反省を求めるものであります。
 結果論からいえば、イラクへの自衛隊派遣国会承認に関する衆議院での質疑は、二月一日に旭川駐屯地で行われた陸上自衛隊本隊の隊旗授与式に本案件の衆議院通過を間に合わせるために、審議打切りと強行採決、与党単独採決が行われたことが明らかとなりました。
 同時に、仮に本案件が政府・与党の思惑どおり可決、成立したとしても、衆議院での暴挙は、戦後初めて戦地であるイラクに派遣される自衛隊の皆さんが、政府が言う復興人道支援活動を行うに当たり、誇りと使命感を持ってその任務を全うする上で決してプラスにならないことも指摘しておきたいと思います。
 そこで、総理に伺います。イラクへの自衛隊派遣国会承認に関する衆議院での質疑経過について、シビリアンコントロール、議会制民主主義の面から全く問題がなかったと思われているのか、その所見を明らかにしていただきたいと思います。
 次に、イラク武力行使の正当性と支持の理由について質問をします。
 イラクをめぐる最近の情勢は、大量破壊兵器がいまだに発見されないことに象徴されるように、米英両国の対イラク武力行使は大義なき戦争であり、国際法違反であることが明らかとなっております。民主党は、このような戦争を支持し自衛隊をイラクに派遣することは憲法違反であると一貫して指摘してまいりましたが、反対に政府は、イラクに大量破壊兵器が存在する証拠については一貫して言及することを避けてきました。
 去る一月二十八日、アメリカ上院の軍事委員会の公聴会で、イラクにおける大量破壊兵器の調査団の団長を務めていたデビット・ケイ氏は、情報機関の分析が誤りだったと証言をしました。ケイ氏の証言で明らかなのは、開戦を急ぐ米英両国政府にとっては、正確な情報よりも武力行使に踏み切る口実が必要だったということです。
 小泉総理は、イラクにおける大量破壊兵器の存在とその脅威を理由に、米英両国の対イラク武力行使を諸外国に先駆けて真っ先に支持し、国会審議でも何度もそのことを強調されました。米国議会でのケイ氏の証言を踏まえて、改めて戦争の大義、戦争の正当性及びこの戦争を我が国が支持した根拠について、総理の所見を改めて求めます。
 また、今日なお、総理は今後イラクで大量破壊兵器が発見されるものと認識しておられるのか、このことについても所見を明らかにしていただきたいと思います。
 民主党は、イラクの復興人道支援は国連を中心とした国際協調の立場で行うべきであると一貫して主張し、国会で十分に審議して問題点を明らかにし、真の意味でのイラク人のイラク人によるイラクの復興を追求してまいりました。しかるに、先ほども申しました衆議院でのイラク特別委員会、この審議では、自衛隊が駐留するサマワ市の治安が安定している根拠とされた統治評議会をめぐる政府答弁は二転三転したばかりか、調査の名に値しない自衛隊先遣隊の現地調査報告などに加え、イラク情勢に対する政府の認識の甘さ、政府部内の情報伝達の不備なども次から次へと明らかになり、政府に対する国民の不信は日ごとに高まっております。国民は、イラクの現状に対する正確な情報を求めております。
 総理、政府はイラクの現状をどのように認識しているんですか。米英両国の武力行使の前と後、フセイン前大統領の身柄拘束の前と後、直近の状況などについて、具体的かつ詳細に明らかにしていただきたいと思います。
 対イラク武力行使以降、報道などでは米英軍兵士の死傷者数は明らかにされていますが、民間イラク人の死傷者数はほとんど知られておりません。イラクにおける民間人の死傷者数について、政府はどのように把握をしているのか、外務大臣にお尋ねをいたします。
 総理は、本件の質疑の中で、イラク開戦が起こったから今テロが起こっているわけじゃない、イラク開戦前からテロが起っているわけでありますと述べられておりますが、これは全くの事実誤認か曲解ではないんですか。米英両国の武力行使以前のイラクでテロはほとんど発生していなかったんではないんでしょうか。米英両国の武力行使以前一年間に限ってで結構ですから、イラクでいつ、どこで、どのようなテロが発生をしていたのか、死傷者の数も含めて詳細に明らかにしていただきたいと思います。
 政府は、自衛隊派遣をめぐるこの間の審議で、戦争に行くのではない、自衛隊が行くところが非戦闘地域だ、自衛隊の安全確保には万全を期すなどと答弁をしてまいりました。政府がこのような答弁を繰り返すのに反比例して、国民の間からは、自衛隊はイラクに行っても本当に大丈夫かといった疑問の声が強まっております。
 このような仮定は全くしたくないんですけれども、もし不幸にして自衛隊が攻撃を受けて死傷者が出た場合、総理はどのような責任をお取りになるのか。この点については過日の衆議院イラク復興支援特別委員会で我が党の前原誠司議員が既に質問をしておりますが、総理は明確に答弁をされておりません。改めて総理の所見を具体的に明らかにしていただきたいと思います。
 イラクの新統治機構作りの見通しと方策についてお尋ねをいたします。
 イラク人が完全な主権を持ち、独立した統一イラクの早急な成立が望まれます。イラク国民への政権移譲は楽観できる状況には、しかしないと思います。米国が新たな統治機構作りに国連の関与と支援を求めてきておりますが、これこそが米国の占領政策の行き詰まりと米国の焦りではないんでしょうか。民主的なイラクの再建に時間が掛かるようであれば、イラク国内の部族間、宗教間の対立と争いが発生をし、それが周辺諸国にも波及し、ひいては中東全体の不安定化に発展をしかねません。
 イラクの新たな統治機構作りについて、政府はどのような見通しと方策を持っているのか、外務大臣に所見を求めます。
 私のイラクに対する現状認識では、実はベトナム化どころかアフガン化といったような様相を呈しているのではないだろうか。テロという名の市街戦が、首都バグダッド周辺に限らず、イラク全土に広がり、しかも毎日のように米兵が戦死するなど、正に戦場になっていることから、米英軍を始めとするイラク駐留軍の長期駐留は避けられないのではないかということであります。
 アメリカ、米国は、外国政府の政策に大きく影響される国ではありません。その一方で、国内世論の動向には神経質と言っていいくらい敏感です。
 私が懸念するのは、対イラク武力行使以降、米兵の戦死者が実に五百人を超えていることであります。ソマリア内戦介入の際、死亡した米兵が凌辱されている映像が放映されたのをきっかけに米国の世論は派兵反対に傾き、米軍はソマリアから撤退をいたしました。イラクで米兵の戦死者がこのまま増えていけば、米国世論が撤退に傾くのはそう遠い将来ではないのであろうか、こう思わざるを得ません。
 ある日突然、イラクに駐留している諸国の軍隊に通告もなく米軍だけ撤退するなどということもなきにしもあらずではないんでしょうか。
 そこで、防衛庁長官に伺います。
 自衛隊がイラクから撤退する場合、撤退の時期、どのような条件が満たされれば撤退するのか、また、撤退に当たっては米軍と合意の上でするのか、我が国独自の判断に基づいて主体的にするのか、明らかにしていただきたいと思います。
 我が国の二人の外交官がイラクで殺害されて二か月が過ぎました。亡くなられたお二人の外交官、そしてイラク人運転手の方の御冥福を心からお祈りすると同時に、御遺族の方々に哀悼の誠をささげたいと思います。
 イラク復興支援活動のさなかに凶弾に倒れたお二人の遺志を継ぐ上でも、事件の早期解明は政府の責任だと思います。にもかかわらず、事件発生から二か月も経過した今日、いまだに事件の全容が明らかにされないのは、事件そのものが政府にとって何か都合の悪いことがあるからではないか、隠ぺいではないか、情報操作ではないかとの疑念が増すばかりであります。
 政府は、外務省葬をしてお二人の功績をたたえたのでありますから、実行犯が特定され、逮捕され、公正な裁判で真相が明らかになることに全力を傾注すべきではないんでしょうか。お二人の御遺族もこのことを待ち望んでいられるのではないでしょうか。
 そこで、国家公安委員長に伺います。
 お二人の司法解剖は既に済んでいると思いますが、司法解剖である以上、解剖は検察官の指揮の下に行われ、医師が鑑定書を作成し、検事あるいは裁判所に鑑定書を提出するということになると思います。
 したがって、検視報告書が残っているはずでありますから、その内容を公表すべきと思いますが、いかがでしょうか。また、公表できないとすれば、その理由を伺います。
 一月三十日、警察庁はこの事件に使われた銃弾について記者発表をいたしましたが、肝心な点は断言を避けるなど、何のための記者発表だったのかと勘ぐりたくなります。イラクへの自衛隊派遣承認をめぐる国会審議の山場にわざわざこのような記者発表をすること自体、政治的意図と情報操作が感じられます。
 そもそも、司法解剖をしてこの程度の情報しか得られないこと自体が信じられません。やはり、何か政府にとって都合の悪いことが明らかになることを恐れて、詳細を伏せていると断じざるを得ません。本事件について、政府はいつまでに真相を解明するつもりなのか、このことについて最後に総理に伺いたいと思います。
 質問の項目の最後に、イラクにおける自衛隊取材の報道規制について伺いたいと思います。
 防衛庁が、イラクでの自衛隊の活動に関する取材、報道の自粛要請に加え、制服トップの定例会見も廃止したい意向との報道に触れ、私は、一瞬我が目と耳を疑いました。戦前戦中の軍による大本営発表、報道統制の悪夢を思い起こさせる、正に時代錯誤の暴挙であると思います。
 主権在民の民主主義国家では、報道の自由は何としてでも確保されなきゃならないはずです。報道統制が国民にもたらした惨禍は、戦前戦中の軍の横暴で言うまでもなく明らかです。防衛庁は戦前戦中の軍の横暴を全く教訓化していないんではないか、断じざるを得ません。
 報道自粛要請について、防衛庁長官は部隊の安全確保のため、官房長官は自粛は当然だと述べられておりますが、報道機関は自衛隊及び隊員の安全が脅かされるような情報まで報道するとお思いになっておられるのでしょうか。報道自粛要請の理由を防衛庁長官と官房長官に伺います。
 また、報道自粛要請ははっきりときっぱり撤回をすべきだということを申入れをし、この点についてお二人の所見を伺いたいと思います。
 質問を終えるに当たり、私は、イラクへの自衛隊派遣国会承認に関する質疑については、良識の府参議院では衆議院の愚を繰り返してはならない、特に政府・与党の皆さんに訴えたいと思います。
 政府・与党の皆さんは、初めに自衛隊派遣ありきという態度を改め、時間的にも内容的にも十分な審議を行い、問題点を明らかにし、平和憲法を持つ我が国にふさわしいイラクの復興人道支援活動を国連を中心とした国際協調の下で行われるよう努めるこそが良識の府参議院の役割であることを再度強調して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#11
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 齋藤議員に答弁いたします。
 衆議院における審議経過についてでございますが、審議は与野党協議の上、円滑になされることが望ましいと考えております。参議院の審議において、よく協議して円滑な審議が行われるように、政府としても充実した議論がなされるよう、これからも努めてまいりたいと考えております。
 米軍等による対イラク武力行使及び大量破壊兵器についてでございますが、イラクはかつて実際に大量破壊兵器を使用しており、国連査察団の報告書により指摘されている大量破壊兵器に関する疑惑は、今日に至るまで解明されておりません。
 米国等によるイラクに対する武力行使は、累次の関連安保理決議に合致し、国連憲章にのっとったものであります。我が国がこれを支持したことは正しかったと考えております。
 また、イラクの大量破壊兵器については、現在、イラク監視グループが引き続き捜索しており、我が国としてもこれを注視していく考えであります。
 イラクの現状についてでございますが、現在、フセイン体制が終わり、連合暫定施政当局による暫定的な施政の下、イラク人による民主的な政府の樹立に向けた道筋が示され、現在、その具体化に向けた議論が行われております。また、主要な戦闘は終結したものの、フセイン元大統領の拘束後もテロが継続する等、治安状況については今後ともその動向を注視していく必要があると考えます。
 テロについてでございますが、私の発言の趣旨は、イラクに対する武力行使以前から米国同時多発テロを始め世界各地でテロは多発しており、国際社会におけるテロの脅威は深刻であるということであります。以上の趣旨は、そのときの私の委員会における答弁全体から明らかであると考えております。
 自衛隊員が現地で被害を受けた場合の責任についてでございますが、自衛隊員の派遣に当たっては、必要な装備、武器、部隊運用について入念に検討と工夫を加えるとともに、常に現地の治安情勢の的確な把握に努めて、不測の事態が起こらないよう隊員の安全確保に万全を期することとしております。派遣される自衛隊の安全について、最終的に責任は内閣総理大臣にあります。
 イラクにおける我が国外交官の殺害事件についてでございますが、この事件につきましては現在も現地において捜査が継続されていると承知しており、また我が国の関係当局も必要な調査及び捜査を行っているところでありますが、実行犯の特定を含め最終的な真相解明にはいまだ至っておりません。政府としても引き続き真相の早期解明に努めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(石破茂君) 齋藤議員にお答えを申し上げます。
 自衛隊のイラク派遣の撤退時期についてお尋ねがございました。
 我が国は、イラクにおける政治プロセスが着実に進展し、イラク人によるイラク人のための新しい政府が樹立され、統治権限の早期移譲が実現できますよう期待をしておるところでございます。
 自衛隊派遣の終了時期につきましては、イラク人道復興支援特措法の期間内におきまして、イラクの復興と民生の安定に向けて一定の道筋が付くかどうか、自衛隊が撤退しても、イラク人自身、あるいはほかの各国や国際機関の支援によりイラクの人々の生活の安定が確保されるかどうか、イラク新政権との関係、国連における動向を含めた国際情勢の推移、我が国の国内事情を種々考慮し、適切に判断することとなります。なお、そうした判断につきましては、あくまでも我が国として主体的に行うものでございます。
 次に、報道自粛要請の理由についてお尋ねがございました。
 報道統制というお話をなさいましたが、そのようなつもりは全くございませんし、できるはずもございません。
 イラク等での自衛隊の活動が広く国民の理解を得るため、取材、報道への対応は重要でありますが、これは自衛隊員の安全を確保しつつ適切に行われる必要がございます。本件については、例えば、いつどのような規模の部隊が派遣されるのか、緊急時に部隊や隊員がどのように対応するのかが報道されたことがあり、また先般、報道機関側におかれましても、危険や困難を招くような取材を行わない等の申合せがなされたと聞いております。
 お尋ねの報道自粛要請は、防衛庁から、派遣隊員等の生命及び安全に関する事項について報道の自粛をお願いするとともに、現在、イラクには退避勧告が出ていること、情報収集、連絡調整といった先遣隊の業務の性格等を総合的に考慮し、当面、現地における取材を可能な限り控えていただくようお願いをいたしたものでございます。
 報道自粛要請の撤回についてでございますが、報道自粛要請につきましては、派遣隊員等の生命及び安全を確保する必要があり、また報道機関側の安全に関することでもありますので、報道の自粛のお願いを撤回すべきとは考えておりません。
 いずれにせよ、防衛庁におきましては、既に行っている現地での定期ブリーフィングや隊員の訪問先での取材機会の提供に加えまして、自衛隊の活動の本格化に伴い、報道対応を通じて情報発信を強化してまいる考えであり、このためのルール作りの調整を報道機関側と行っておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(川口順子君) 二つのお尋ねがございました。
 イラクにおける民間人の死傷者数につきましては、個別の事例についての報道は承知をしているものもございますけれども、その全体像については必ずしも具体的に承知をいたしておりません。
 次に、イラクの政治プロセスについてのお尋ねでございますが、昨年十一月十五日のイラク統治評議会と連合暫定施政当局との間の合意によれば、本年六月末までに選出される移行行政機構が統治権限を承継することとされています。その後、二月末までに制定される基本法が定める基本的人権の尊重、司法の独立、軍・警察の文民統制といった原則の上に立ち、憲法制定や新政府の樹立を準備することとなるとされています。
 我が国としては、イラクの政治プロセスが着実に進展し、イラク内各派が受入れ可能なイラク人によるイラク人のための新しい政府が樹立され、一日も早く国際社会に復帰することを期待をしております。このようなイラク人の努力を後押しするためにも、国際協調の下、人道復興支援に努めてまいります。(拍手)
   〔国務大臣小野清子君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(小野清子君) イラクにおける我が国外交官の殺害事件についてお尋ねがございました。
 司法解剖の結果につきましては、奥大使は左側頭部の銃創による頭蓋内損傷、井ノ上書記官は左上腕部の銃創による失血死が死因と推定されるとの概略の報告を得ております。詳細につきましては、現在、鋭意鑑定が行われているところと承知をいたしております。
 なお、捜査中の事件に関する情報の公開については、捜査上の支障や関係者の意向に配慮する必要があるというところでございます。事案の重要性にかんがみ、重要な進展がありましたら、可能な範囲で公表に努めたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(福田康夫君) 齋藤議員から報道自粛要請の理由及びその撤回についてお尋ねがございました。
 イラクでの自衛隊の活動は、国民の関心も高く、取材、報道への対応は、自衛隊隊員の安全を確保しつつ適切に行われる必要がございます。
 お尋ねの防衛庁からの報道自粛要請の理由は、さきに防衛庁長官からお答えしたとおりでございます。派遣隊員等及び報道機関側の安全確保の観点から、当面、現地における取材を可能な限り控えていただくようにお願いしたものでございまして、これを撤回すべきものというようには考えておりません。
 いずれにしましても、イラク現地における取材対応につきましては、防衛庁当局において趣旨や目的について報道機関や国民の十分な理解を得ながら進めるべきものと考えておるところでございます。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(倉田寛之君) 小泉親司君。
   〔小泉親司君登壇、拍手〕
#17
○小泉親司君 私は、日本共産党を代表して、イラクへの自衛隊派兵承認案件について、小泉純一郎総理に質問をいたします。
 小泉内閣は、戦争状態にあるイラクに戦後初めて武装した自衛隊の派兵を強行いたしました。戦争をしない国としてアジアと世界の平和を希求する日本国憲法を軍靴で踏み付けにする正に歴史的暴挙であります。しかも、衆議院で日本の命運を分けるこの重大問題を虚偽とごまかしで押し通したことは絶対に許されるべきものではありません。
 総理は、自衛隊の派兵に当たって、慎重の上にも慎重に検討し判断すると述べ、陸自先遣隊の調査を受けて、サマーワの治安が安定している最大の論拠に、住民の意向を反映した市評議会が実質的に機能していることを挙げました。ところが、総理はこの派兵決定の根拠となる答弁を撤回しました。さらに、我が党の入手した政府内部文書では、事前に先遣隊報告が作られ、その中で市評議会議長のコメントが作文され、他方では襲撃事件の件数を隠すなど、派兵決定に都合の良い報告書が作られていたことが明らかとなりました。極めて重大であります。
 総理、これは、慎重の上にも慎重にと言いながら、まともな調査を行わず、都合の悪いことは国民に隠して、初めに派遣ありきで派兵を決定したということではありませんか。明確な答弁を求めます。
 そもそも、アメリカのイラク戦争も虚構の下に強行されました。総理が戦争支持の最大の論拠とした大量破壊兵器は見付かっておりません。そればかりか、アメリカの議会で、ブッシュ政権の調査団長であったデビット・ケイ氏は、イラクには元々大量破壊兵器が存在しなかったと証言したのであります。総理は、大量破壊兵器はあると断定してきましたが、衆議院でケイ氏の発言とのかかわりを問われ、あるともないとも断定できないと答えました。ということは、あると断定してきたことが間違いであったということを認めたことになるではありませんか。
 大義のない戦争を支持し、これに協力した誤りを認めるべきではないのですか。戦争への支持の論拠も虚偽とごまかし、自衛隊派兵の論拠も虚偽とごまかし、この責任をどのようにお考えなのですか。明確な答弁を求めるものであります。
 これらの事実が示すことは、政府のイラク派兵の論拠がすべて崩れ去ったということであります。このような虚偽とごまかしに基づく自衛隊派兵は、絶対に許されるものではないということを改めて強調するものであります。
 今回の自衛隊派兵が、アメリカとイギリス軍の大義のない無法な戦争と、それに続く不法な占領に支援、協力するものであることはだれの目にも明らかであります。
 総理は、昨年十二月の私の質問に、自衛隊が人道復興支援ばかりでなく、米英占領軍が行っている軍事作戦を支援することを認めました。この米英占領軍の軍事作戦は、アメリカの人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチの報告によると、イラク国民の家を焼き払い、イラク国民を不当に逮捕・拘束するものであります。同団体は、この軍事作戦は国際法違反だという書簡をブレマー占領機構、CPA行政官に送っています。政府はこの事実と指摘を把握しているのですか。
 サンチェス連合軍司令官は、自衛隊の活動を連合軍作戦の一部だと述べています。自衛隊がこのような米軍の軍事作戦の支援をするというのは、占領軍への支援そのものではありませんか。
 自衛隊は、米英占領軍の軍事作戦のための武器弾薬の輸送も行うとしております。総理は武器弾薬は運ばないと言明し、実施要項で担保すると発言をいたしました。確かに、実施要項には物品の輸送に際しては武器弾薬を輸送しないと書いてあります。しかし、武装した米兵は輸送するというのが総理の見解です。防衛庁は、武装米兵が機関銃や無反動砲、対戦車弾を携帯していたら輸送すると説明していますが、これでは武器弾薬の輸送はしないということにはならないのではありませんか。総理は、米軍が携行するものであればこうした武器弾薬の輸送も容認するのですか。明確な答弁を求めるものであります。
 このような占領軍への支援を行いながら、占領軍の一員でないなどということはできません。しかも、占領軍たる連合軍は、そのホームページで連合軍として日本を明記しています。総理は、自衛隊が占領軍の一員となるとの指摘は当たらないといいますが、あなたが支援、協力する連合軍自身が一員との指摘をしているのです。占領軍の一員ではないというなら、その事実と根拠を明確に示していただきたい。
 我が党は、占領軍に対し、イラクに派遣する自衛隊が占領軍の指揮を受けるのかとの質問を行いましたが、その回答は、自衛隊は連合軍の指揮の下に置かれるというものでした。この回答の示された事実を政府は占領軍に確認したのですか。国防総省ニュースも、自衛隊はオランダ軍とともに働き、イギリス軍の指揮下に置かれると明確にしています。占領軍から指揮を受ける自衛隊が占領軍の一員であることは、占領と交戦権に関する政府見解に照らしても明確ではありませんか。これは正に、憲法違反の占領行政への参加そのものではないのですか。総理の見解を伺います。
 今、イラク国民は戦争と占領に大きな疑念と不信を高めています。イラクの情勢が泥沼化の様相を呈しているのは米英軍の不当な占領、イラク全土にテロと暴力をはびこらせていることに起因しています。このような占領軍への支援、参加、合流によって、日本はイラク国民から反発を受け、敵対者と見られるのではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。
 総理は自衛隊派兵について、国際社会との協調と日米同盟が大事だと繰り返しています。しかし、イラクの復興に対して国連も人道復興支援ができない状態であります。国際赤十字も撤退したままであります。国連総長が指摘したように、事務総長が指摘したように、占領と復興は両立しないというのが大勢であります。
 今重要なことは、占領軍中心から国連中心の復興支援に切り替えることであります。総理は、国連の関与とは言いますが、なぜ国連中心の復興とは言わないのですか。なぜその実現のための外交努力を行わないのですか。今問われていることは、日米軍事同盟優先ではなく、こうした国連憲章に基づく国連を中心とした世界平和の構築だと思いますが、総理はどのように考えますか、答弁を求めるものであります。
 日米同盟が大事だといって自衛隊の派兵を強行した総理の対米姿勢は、フランスやドイツを始めとしたNATO加盟国の多くがブッシュ政権の言いなりにならず自主性を堅持していることと比べて、誠に異様と言わざるを得ません。
 アメリカのアーミテージ国務副長官は、イラク問題に関連して、昨年十二月、日本が戦後署名した最も重要な公式文書は日米安保条約だ、国連憲章は二番目だと述べました。事もあろうに、軍事同盟である日米安保条約が国連憲章よりも大事だというのであります。総理はこの発言をどのように考えるのですか。このアーミテージ発言と同じなのですか、違うのですか、明確な答弁を求めるものであります。
 総理はまた、イラクへの派兵を憲法前文を引用して説明しました。しかし、総理が引用した、自国のことのみ専念し他国を無視してはならないのであってとの文言について、金森国務大臣は憲法制定議会で、侵略戦争の深い反省を示す趣旨であると説明したのであります。侵略戦争を反省した文言を侵略戦争とその占領への派兵の口実に使うというのは、憲法を冒涜する以外の何物でもないではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。
 憲法にことごとく反する自衛隊派兵を虚偽とごまかしで強行することは、断じて許されません。直ちに中止することを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#18
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小泉親司議員に答弁いたします。
 先遣隊の報告についてでございますが、先遣隊は、CPAを訪問するとともに、ムサンナ県知事、部族長、宗教指導者等と会談するなど、様々な意見交換を行ってまいりました。
 陸上自衛隊の本隊派遣については、これまでの政府の調査等により収集した情報と諸外国から得た情報の総合的な分析を土台にして、今回の先遣隊の精力的な活動による事実確認を加味した最終的な報告に基づいて判断したところであります。したがって、初めに派遣ありきで決定したとの御指摘は当たりません。
 また、襲撃件数の公表を差し控えた点は、情報を提供した外国当局の意向を尊重したものであり、国民に隠したとの指摘は当たらないと考えます。
 いずれにせよ、今後とも現地情勢については十分注視してまいりたいと考えます。
 イラクの大量破壊兵器についてでございますが、国連査察団の報告等により指摘されている大量破壊兵器に関する疑惑は今日に至るまで解消されておりません。現在、イラク監視グループが引き続きイラクの大量破壊兵器を捜索しており、我が国としてもこれを注視していく考えであります。
 米国のイラク攻撃への支持及び自衛隊派遣の論拠でございますが、米国等によるイラクに対する武力行使は、この地域の平和と安全を確保するための措置として安保理決議にのっとって行われたものとされており、我が国としてもこうした立場を支持したものであります。
 また、イラクの復興と民生の安定を図ることは、中東地域のみならず、我が国を含む国際社会全体の平和と安全の観点からも重要であるとの考えに基づき、我が国にふさわしい貢献として自衛隊の部隊が人道復興支援活動を中心とする活動を行うこととしたものであります。
 いずれにせよ、虚偽やごまかしを行っているとの御指摘は当たりません。
 米国の人権団体の報告でございますが、御指摘の団体は、独自の調査に基づき、イラクに駐留する米軍等の活動につき勧告等を行っていると承知しております。
 イラクの治安情勢が全般として予断を許さない状況の下、米軍等が治安確保という困難な任務に取り組んでおります。そのような厳しい状況において、米軍等は、国連憲章並びに関連国際法に基づき行動しているものと考えます。
 自衛隊の活動は占領軍の軍事作戦に対する支援ではないかとの御指摘ですが、イラク特措法に基づく自衛隊の活動は、我が国として主体的にイラクの人道復興支援を中心とした活動に従事するものであり、米英などの占領の一翼を担うものではございません。
 また、安全確保支援の活動も、国連安保理決議第一四八三において加盟各国に協力を呼び掛けているものであります。自衛隊は、人道復興支援に支障のない範囲でそのような要請にこたえるものであり、占領軍の軍事作戦に対する支援そのものとの御指摘は当たらないと考えます。
 自衛隊が行う輸送についてですが、武器弾薬の輸送は行わないという我が国の方針については関係国によく説明して、既に理解を得ているところであります。
 また、兵員の輸送に当たっては、人員の輸送の一環として、常識的な範囲で、通常携行する武器とともに兵員を輸送することは可能であると考えております。人員が携行する武器の内容は、部隊の任務や活動の内容により異なるものと考えますが、いずれにせよ、兵員各自が通常手に携えている範囲のものに限られるべきであると考えます。
 自衛隊の法的地位及び占領行政への自衛隊参加についてでございますが、イラクに派遣される自衛隊は、あくまでも我が国の指揮下において活動するものであります。自衛隊が我が国の指揮下の下で活動することについては、随時、米国、英国、オランダに説明しており、また、一月下旬には、連合暫定施政当局及び米国防省との間で、自衛隊が連合の司令部の指揮下に置かれないことを改めて確認しております。
 我が国は、いかなる意味においても武力紛争の当事国ではなく、また、占領国でもありません。
 日本がイラク国民から反発されるとのお尋ねですが、自衛隊がイラクで行う支援活動は、イラク国民の切実な要望にこたえ、その生活の改善と向上に直接貢献する人道復興支援であります。
 この点については、中東の有力なテレビ局等を通じイラク国民始めアラブ諸国民に説明するとともに、各国への特使派遣の際も含め、様々な機会に理解を求める努力を重ねております。私は、自衛隊の活動は、必ずやイラク国民に評価され、我が国の国益にかなうものと確信しております。
 国連中心の復興のための外交的努力についてでございますが、イラク復興はイラク人が中心となって進めていくものであります。こうしたイラク人の努力を国連の十分な関与の下、国際社会が一致して支援していくことが重要であります。我が国は、特使の派遣を含め、あらゆる機会をとらえて国際協調の再構築に努めてきておりますが、今後ともこのような外交努力を継続してまいります。
 国連憲章に基づく国連を中心とした世界平和の構築でございますが、日米関係は日本外交のかなめであり、国際社会の諸問題に日米両国が協力していくことは我が国にとって極めて重要であります。同時に、近隣諸国を始めとする友好国及び国連等国際機関と緊密に協力していくことが必要であります。我が国としては、日米同盟と国連などを通じた国際協調をともに重視し、平和の構築を実現してまいります。
 アーミテージ国務副長官の発言についてでございますが、御指摘の発言は、我が国への武力攻撃が発生した場合、米国は日米安保条約上、我が国防衛の義務があるということを強調したもので、国連の役割を軽視したものではないと理解しております。私は、米国が我が国を防衛することに全幅の信頼を置きつつ、日米同盟と国連を始めとする国際社会との協調をともに重視しております。
 憲法前文とイラクへの自衛隊派遣でございますが、イラクに派遣される自衛隊は、戦争に行くのではありません。また、戦闘行為に参加したり占領を行うものでもありません。イラクの復興のために行う給水や公共施設の修理などの活動は地元イラク人から高い評価を得られるものと信じております。私は、こうした自衛隊の活動は憲法の掲げる国際協調の理念に立脚するものであることを申し上げたものであります。(拍手)
#19
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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