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2004/02/09 第159回国会 参議院 参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第5号
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2004/02/09 第159回国会 参議院

参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第5号

#1
第159回国会 本会議 第5号
平成十六年二月九日(月曜日)
   午後六時三十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第五号
  平成十六年二月九日
   午後一時開議
 第一 平成十五年度の水田農業経営確立助成補
  助金等についての所得税及び法人税の臨時特
  例に関する法律案(衆議院提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、裁判官訴追委員予備員辞任の件
 一、裁判官訴追委員予備員等各種委員の選挙
 一、平成十五年度一般会計補正予算(第1号)
 一、平成十五年度特別会計補正予算(特第1号
  )
 一、平成十五年度政府関係機関補正予算(機第
  1号)
 一、日程第一
 一、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する
  法律案(衆議院提出)
 一、平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の
  処理の特例に関する法律案(内閣提出、衆議
  院送付)
 一、農業共済再保険特別会計の農業勘定におけ
  る平成十五年度の再保険金の支払財源の不足
  に充てるために行う積立金の歳入への繰入れ
  に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 一、イラクにおける人道復興支援活動及び安全
  確保支援活動の実施に関する特別措置法第六
  条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等に
  よる人道復興支援活動及び安全確保支援活動
  の各活動の実施に関し承認を求めるの件(衆
  議院送付)
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 松村龍二君から裁判官訴追委員予備員を辞任いたしたいとの申出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ─────・─────
#5
○議長(倉田寛之君) この際、欠員となりました
 裁判官訴追委員予備員一名、またあわせて
 検察官適格審査会委員、同予備委員各一名の選挙
を行います。
 つきましては、これら各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、これを議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、
 裁判官訴追委員予備員に福山哲郎君を、
 検察官適格審査会委員に上野公成君を、
 同君の予備委員に山内俊夫君を、
それぞれ指名いたします。
 なお、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、第三順位の堀利和君を第二順位に、第四順位の羽田雄一郎君を第三順位に、福山哲郎君を第四順位といたします。
     ─────・─────
#7
○議長(倉田寛之君) この際、日程に追加して、
 平成十五年度一般会計補正予算(第1号)
 平成十五年度特別会計補正予算(特第1号)
 平成十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。予算委員長片山虎之助君。
    ─────────────
   〔審査報告書は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔片山虎之助君登壇、拍手〕
#9
○片山虎之助君 ただいま議題となりました平成十五年度補正予算三案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 補正予算の内容につきましては、既に谷垣財務大臣の財政演説において説明されておりますので、これを省略させていただきます。
 補正予算三案は、去る一月十九日、国会に提出され、二十三日、財務大臣から趣旨説明を聴取した後、衆議院からの送付を待って、二月三日、四日及び五日の三日間にわたり、小泉内閣総理大臣及び関係各大臣に対し、質疑を行いました。
 以下、質疑の若干につき、その要旨を御報告申し上げます。
 まず、イラク問題に関して、「イラクへの人道復興支援のために自衛隊を派遣する意義は何か。イラクで期待されている雇用創出にどう対応していくのか。イラク戦争支持の根拠となった大量破壊兵器の情報について、国民への説明責任を果たすべきではないか」との質疑があり、これに対し、小泉内閣総理大臣及び関係各大臣より、「世界の平和と安定の中に、日本の発展と繁栄がある。国際社会の一員として、日本はイラクに対し何ができるかを考え、その役割を果たしていくことが重要と考えている。イラクの現状を踏まえれば、人的貢献については、一般の国民やNGO等では難しく、日々、訓練を積み重ね、危険を避ける能力を持った自衛隊を派遣することが、イラクの復興を成功させるために必要と判断した」、イラクでの雇用創出については、「宿営地の設営、通訳、警備、清掃等の雇用が生まれると思われるが、自衛隊の活動に伴う雇用増加には限界があり、ODAなど政府全体で取り組むべき問題と考えている」、また、大量破壊兵器については、「イラクが大量破壊兵器がないことを立証せず、国連決議を忠実に履行してこなかったので、開戦を支持した。大量破壊兵器について、米英が調査委員会を設け、捜査を継続しており、その動向を注視していきたい」旨の答弁がありました。
 次に、経済問題について、「景気は回復基調にあると言われるが、地域経済や中小企業の状況は依然厳しい。政府は景気の現状をどう見ているのか。また、地域の再生を地域経済の活性化にどう結び付けていくつもりか」との質疑があり、これに対し、小泉内閣総理大臣及び関係大臣より、景気の現状について、「失業率が三十か月ぶりに五%を切るなど、雇用面にも持ち直しの動きが見られ、財政に安易に頼ることなく、構造改革を進めることによって、経済全体が良い方向に向かってきている。景気ウオッチャー調査ではすべての地域で改善傾向が見られ、中小企業関連でもようやく良い方向が出始めている。現在の景気回復は設備投資に支えられているが、企業収益の増加が雇用者所得につながり始めており、今後、家計に波及し消費を押し上げていくかどうかが、景気動向を見る上で、大変重要なポイントと考えている」、また、地域経済については、「地域再生は日本全国の発展につなげていかなければならない大事な問題であり、構造改革特区などを活用し、地域の様々な知恵をくみ上げ、支援していくことが重要と考えている」旨の答弁がありました。
 質疑は、このほか、年金制度の改正、農業問題、高速道路建設の基本方針、鶏インフルエンザへの対応策、三位一体改革、為替介入による米国債購入の是非、米軍基地問題など多岐にわたりましたが、その詳細は会議録によってこれを御承知願いたいと存じます。
 質疑は五日に終局し、本日、直ちに討論に入りましたところ、民主党・新緑風会を代表して高橋理事が反対、自由民主党及び公明党を代表して渡辺理事が賛成、日本共産党を代表して紙委員が反対の旨、それぞれ意見を述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、平成十五年度補正予算三案は賛成多数をもっていずれも原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#10
○議長(倉田寛之君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。高橋千秋君。
   〔高橋千秋君登壇、拍手〕
#11
○高橋千秋君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました平成十五年度補正予算三案に対して、反対の立場から討論を行います。
 先週行われた参議院の委員会で、小泉総理は、改革が進まないことに対して、「桃栗三年柿八年」と申されました。小泉内閣が発足して間もなく三年になろうとしていますが、三年前と比較しても我が国を取り巻く環境はますます厳しさを増すばかりで、今も正にがけっ縁のところで日本、そして国民は踏ん張っているんです。小泉内閣は、この間判断を誤り、政権公約を守ることもできず、このままでは実がなるどころか、その前に木は枯れてしまいます。
 今月三日には、国民に対してきちんとした説明もないまま陸上自衛隊本隊がイラクに向けて派遣され、昨日には第一陣がサマワに到着しました。派遣された自衛隊員の無事の帰還をお祈り申し上げます。
 しかし、連日のように駐留軍への襲撃が報道され、我が国の二人の外交官の尊い犠牲を出したイラクの地のどこに非戦闘地域があるのか、いまだに戦争に行くのではないと強弁を続ける根拠がどこにあるのか。イラク復興支援法の考え方に反し、また憲法の大原則をも大きく破るものであります。
 イラク戦争の大義としていた大量破壊兵器も、米国のケイ前団長があったとは思えないと断言し、今日の夕刊によれば、ブッシュ大統領も製造の能力があったと言い方を変え、その大義も完全に失う中で、衆議院ではあのような強行採決という与党の不誠実な国会運営の中で、まず最初に自衛隊の派遣ありきという姿勢は日本の将来をも大きくゆがめる暴挙と断ぜざるを得ず、私たちは現時点での自衛隊派遣に断固反対いたします。
 国内の課題でも、小泉内閣が唱える聖域なき構造改革はすべてが小手先の国民の目をごまかす帳じり合わせと先送りでしかなく、改革断行内閣ではなくて改革断念内閣でしかありません。
 二名の委員が抗議の辞任をした道路四公団の民営化推進委員会は、正にその象徴です。委員会の最終報告は民営化により無駄な道路建設をやめて債務の返済を優先する内容だったのに、総理の再三にわたる委員会を尊重するという発言とは裏腹に、結局は道路族や官僚の抵抗により、四十兆円にも及ぶ膨大な債務の削減のめどはなく、無駄で不採算な道路の建設が続く仕組みが温存されております。
 また、国と地方の税財政改革を行うとしている三位一体改革も、結局は各省の省益を守ることのみに終始して、とても三位一体などと言えるようなものではなく、地方の苦しみが全く分かっていない内容であります。
 年金制度改革に至っては、これだけ多くの国民が将来の不安を訴えているのに、何ら国民的議論もないまま単なる数字合わせを行っただけで、取る分を多くして出す分を少なくするだけのことでは論評にも値しないものであります。国民の将来不安や制度に対する不信を払拭できないままの先送りでは単なる国民への負担の押し付けでしかなく、今でさえ四割もの人が払っていない国民年金も制度そのものの破綻が目に見えています。
 このようなことで改革と呼ぶには余りにほど遠く、ごまかしの改革で我が国を崩壊へと導く政治を認めるわけにはいきません。
 これらのことを前提に、以下、補正予算案に反対する具体的な理由を申し上げます。
 私たちは、被災したイラク国民に対して、医療、教育、経済分野などの人道復興支援については積極的に取り組むべきものと思います。しかし、今なお戦闘行為の続くイラクへの憲法違反とも言えるなし崩し的な自衛隊の派遣は直ちに中止し、支援の在り方全体を見直すべきであります。本補正予算に計上されているイラク復興支援費一千百八十八億円について、その拠出先、使途、運用等が明確でないままの拠出には断固反対の意思を表明します。
 反対の第二の理由は、義務的経費の大幅な追加が行われていることであります。
 本補正予算案では義務的経費について七千百七十九億円が計上されていますが、本来この経費は当初予算に計上しておくべきものであります。しかし、近年、財政が厳しさを増す中で、当初予算では過小計上して後から補正予算で追加するという、シーリング逃れとも思えるこそくな手段が毎年毎年行われています。
 あらかじめ当初予算編成の段階で支出の見通しが立たなかったのか。七千億円という巨額な経費を追加せざるを得ない予算というのは見積りが余りにも甘いと言わざるを得ません。
 当初予算の帳じり合わせの補正予算など、これから本予算を審議しようとしている中で、国会審議を形骸化させるだけで、財政法二十九条の趣旨にも反し、認められるものではありません。
 反対の第三の理由は、剰余金の使途についてです。
 本補正予算では、前年度剰余金受入れとして三千八百七十四億円が計上されています。しかし、剰余金とは、本来、財政法六条により、公債償還財源に充当すべきものです。
 本補正予算で国債の追加発行を行わないのは、全額剰余金受入れという例外的な措置を取っているからであって、政府による公債圧縮努力の成果ではありません。公債発行残高が平成十六年度末で五百兆円にも積み上がる厳しい状況の下では、剰余金は原則どおり公債の償還財源に充てるべきものであります。
 反対の第四の理由は、中小企業対策及び雇用対策が不十分なことです。
 中小企業対策として、本補正予算では約八百五十億円しか計上されていません。当初予算と合わせても、一般会計全体の一%にも満たない予算です。企業倒産はやや抑制されてきたとはいえ、依然として多くの中小企業は貸し渋り、貸しはがしにあえいでいます。失業率も少し改善されたものの、相変わらず高い水準のまま厳しい状況が続いているにもかかわらず、本補正予算では雇用対策が全く講じられていません。
 日本経済の屋台骨である中小企業、そして労働環境を改善し、公的部分を含めた積極的雇用創出を行うなど、本当のセーフティーネットを一刻も早く実現できるようにしなければなりません。その意味で、イラク復興支援費に比べ、日本復興のための対策には余りに少な過ぎて、とても効果が上がるとは思えません。
 以上のように、補正予算に反対する主な理由を述べてまいりました。
 小泉内閣は、外交、内政ともに重要課題へのかじ取りを誤っています。米国追従だけの外交姿勢、看板倒れの構造改革など、我が国と国民を崩壊へと導こうとしている小泉内閣に政権担当能力がないことは桃もクリも実る前に明らかになってまいりました。
 小泉総理はこの責任を真摯に受け止めるべきであり、一刻も早い退陣こそが日本の復興につながることを申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
#12
○議長(倉田寛之君) 林芳正君。
   〔林芳正君登壇、拍手〕
#13
○林芳正君 私は、自由民主党及び公明党を代表して、平成十五年度補正予算三案について、賛成の立場から討論を行います。
 昨年、世界の耳目を一点に集めたイラク戦争は、フセイン元大統領の拘束により、新たな局面に入っております。そしてまた、我が国も、二名の前途ある外交官をテロの凶弾で失うという、大変に痛ましい悲劇を経験いたしました。
 四半世紀にわたる圧政や今般の戦争の下、国土や国民生活が極度に荒廃をしたイラクにおいて、今、何をしなければならないのか。喫緊の課題は、イラク人による自由で、かつ民主的な政権を早急に樹立することであります。
 小泉総理は、自衛隊派遣の基本計画閣議決定後の記者会見で、日本国憲法の前文を引用され、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と説かれております。そして、既に四十か国近い各国の部隊が新生イラクを立ち上げるための支援を行っております。我が国としても、国際社会が一致して行う努力に対してできる限りの協力を行うことは当然の義務であります。
 昨年十月には、国連安全保障理事会はイラクへの多国籍軍派遣と戦後復興・再建費用への国際協力を盛り込んだ新決議を全会一致で採択をいたしました。我が国も、当面の無償資金援助十五億ドルを含む総額五十億ドルの資金支援を表明し、このうち約千二百億円を本補正予算に計上をいたしております。
 イラクの復興は中東全域、ひいては国際社会の安定に極めて大きな意味があり、我が国の国益にもかなうものであります。かかる意味において、本補正予算は、イラク復興支援に関して我が国が当面なし得る最善の予算措置を講じており、本予算を賛成する大きな理由であります。
 次に、賛成する第二の理由は、外国為替市場で進む急激な円高に対し万全の対応を講じていることであります。
 昨年秋のG7以降加速した円高は、世界的なドル安懸念も加わって、現在は百五円前後となっており、一年前に比べ実に十円以上も高い水準にあります。経済実態、ファンダメンタルズに見合わない円高が企業収益に悪影響を及ぼさないように、通貨当局は介入も含むあらゆる手段を駆使して為替の安定に邁進をしなければなりません。
 このようなことから、外国為替資金特別会計の一時借入金等の最高額を百兆円まで拡大をしており、円資金を機動的に調達する体制が十分に整ったと評価できるものであります。
 以上、本補正予算三案に賛成する主な理由を申し述べました。
 政府におかれましては、本補正予算成立後一刻も早くイラクへの資金援助を実行するとともに、派遣する自衛隊員の安全確保に最大限の努力を傾注されることを強く要請して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#14
○議長(倉田寛之君) これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
#15
○議長(倉田寛之君) これより三案を一括して採決いたします。
 三案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#16
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#17
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十九  
  賛成            百三十六  
  反対              百三  
 よって、三案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#18
○議長(倉田寛之君) 日程第一 平成十五年度の水田農業経営確立助成補助金等についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案(衆議院提出)
並びに本日委員長から報告書が提出されました
 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
 平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案及び
 農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成十五年度の再保険金の支払財源の不足に充てるために行う積立金の歳入への繰入れに関する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
を日程に追加し、四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。財政金融委員長平野貞夫君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔平野貞夫君登壇、拍手〕
#20
○平野貞夫君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、平成十五年度の水田農業経営確立助成補助金等についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案は、衆議院財務金融委員長提出によるものでありまして、十五年度の水田農業経営確立助成補助金等に関して、個人に交付されるものについては、これを一時所得とみなすこととし、農業生産法人に交付されるものについては、圧縮記帳の特例を設けることにより、それぞれ税負担の軽減を図ろうとするものであります。
 委員会におきましては、趣旨説明を聴取した後、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案は、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議決定に基づき対外取引に関する規制の発動を可能とするものであります。
 委員会におきましては、我が国単独で経済制裁を可能とする制度が及ぼす対外的影響、本改正が想定する経済制裁の発動対象等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
 次に、平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案は、十五年度の一般会計補正予算の編成に当たり、十四年度の一般会計歳入歳出の決算上の剰余金の処理について特例を講ずるものであります。
 次に、農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成十五年度の再保険金の支払財源の不足に充てるために行う積立金の歳入への繰入れに関する法律案は、低温等による水稲、大豆等の被害の異常発生に伴い、同特別会計の農業勘定における積立金を歳入に繰り入れようとするものであります。
 委員会におきましては、以上の二法律案を一括して議題とし、補正予算の歳出内容の妥当性、常態化した剰余金特例処理の是非、農業共済の財政基盤の安定と透明性の確保等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して池田幹幸委員より、剰余金処理特例法案に反対する旨の意見が述べられました。
 討論を終了し、順次採決の結果、剰余金処理特例法案については多数をもって、農業共済再保険特会繰入れ特例法案については全会一致をもって、それぞれ原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#21
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 まず、平成十五年度の水田農業経営確立助成補助金等についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案及び農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成十五年度の再保険金の支払財源の不足に充てるために行う積立金の歳入への繰入れに関する法律案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#22
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#23
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百四十一  
  賛成           二百四十一  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#24
○議長(倉田寛之君) 次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#25
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#26
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十三  
  賛成             二百十  
  反対             二十三  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#27
○議長(倉田寛之君) 次に、平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#28
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#29
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百四十一  
  賛成            百三十八  
  反対              百三  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#30
○議長(倉田寛之君) この際、日程に追加して、
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員長清水達雄君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔清水達雄君登壇、拍手〕
#32
○清水達雄君 ただいま議題となりました承認案件につきまして、イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本件は、イラク人道復興支援特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施について国会の承認を求めるものであります。
 委員会におきましては、まず小泉内閣総理大臣並びに石破防衛庁長官、川口外務大臣及び福田内閣官房長官に対し質疑を行いました。次いで、所管大臣等に対する質疑を行い、また四名の参考人から意見を聴取し、さらに小泉内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行いました。
 委員会における質疑の主な内容を申し上げますと、イラクへの自衛隊派遣に関する基本的な考え方、基本計画の変更と国会承認、自衛隊の任務終了の条件、自衛隊員の安全確保、部隊行動基準と武器使用の在り方、自衛隊員への劣化ウラン弾対策、陸上自衛隊の宿営地設営をめぐる問題、派遣自衛隊員の法的地位、自衛隊派遣に伴う地元住民の雇用創出、米英等の対イラク武力行使の正当性と大量破壊兵器をめぐる問題、イラク復興支援の在り方等でありますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終え、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会のツルネン委員より反対、自由民主党及び公明党を代表して公明党の高野理事より賛成、日本共産党の小泉理事より反対、社会民主党・護憲連合の大田委員より反対の意見がそれぞれ述べられました。
 次いで、採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#33
○議長(倉田寛之君) 本件に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。辻泰弘君。
   〔辻泰弘君登壇、拍手〕
#34
○辻泰弘君 私は、民主党・新緑風会を代表し、イラクへの自衛隊派遣につき承認を求める件に対し、反対の討論を行います。
 冒頭、反対理由を述べる前に、衆議院における議決に際して、与党側が政党間の信頼関係にもとる国会運営を行ったことに対し、厳重なる抗議の意を表するものであります。海外に自衛隊を派遣するという国家としての重要な意思決定が、混乱の中で一方的に強行されたことは極めてゆゆしきことであり、到底容認できるものではありません。
 また、衆議院本会議での採決の際、福田官房長官が別室に退出し、採決に臨まなかったことは、事柄の重大性に対する認識と自らの職責の重要性に対する自覚を完全に欠いたものであり、そういうことが起こるんですねえなどと、全く他人事のように語って済まされることではありません。
 政府・与党の国民合意を得るための真摯な努力を欠いた民主主義の基本的なルールを無視した姿勢、また真剣さを欠いた極めて軽率な対応は正に言語道断であり、その責任の深さを強く指摘し、猛省を促すものであります。
 そもそも今回のイラクへの自衛隊派遣は、昨年三月二十日のアメリカの先制武力攻撃に端を発するものであります。その際のアメリカの行動は、国際紛争を正義と国際法に従い、平和的手段によって解決することを目的とした国連憲章の精神に真っ向から反するもので、戦後六十年にわたって築き上げてきた国際協調体制を根本から揺るがすものでありました。にもかかわらず、これに無批判なままアメリカの論理の追認に終始した小泉内閣の対応は、正に理想なき、主体性なき対米追従外交であったと改めて指摘しなければなりません。
 何ら批判的視点を持たず、アメリカの情報をうのみにしてアメリカの論理に付き従う小泉内閣の主張の限界と破綻が今現実のものとなっています。
 すなわち、イラクに対する開戦の理由とされた大量破壊兵器が見付からないどころか、実は情報機関の誤りであったとの証言が出され、それを受けてブッシュ大統領は、イラクの大量破壊兵器の情報分析を検証する独立調査委員会を設置する大統領令を発令するに至ったのであります。
 アメリカが武力行使の根拠とし、また日本政府も武力行使容認の根拠とした国連安保理決議一四四一の根幹は、イラクに大量破壊兵器の武装解除を迫るものでありました。しかし、その武装解除すべき対象がなかったとすれば、そもそも当初の武力行使の正当性が問われなければなりません。
 昨年三月二十日に出された小泉総理の談話は、イラクの大量破壊兵器の脅威の除去をアメリカの武力攻撃に対する支持の論拠とするものでありましたが、その正当性の根本が問われているのであります。主権国家に対して武力行使という非常手段を強行する以上、万人を納得させるだけの大義がなくてはなりません。大義がそもそも希薄であった武力行使を行い、イラクの国土と財産を破壊し、多くの無辜の民の命をも奪ったアメリカの力の論理、アメリカの力による支配は、戦後の歴史においても数多くの局面で見られましたが、それへの追従を事とする小泉内閣とともに、改めてその非が追及されなければなりません。
 今回の自衛隊の派遣は、そのような正当性を欠いた武力攻撃の延長線上にあるもので、現在は当事者の一方に偏した占領軍的統治形態の下とみなさざるを得ず、現時点での自衛隊の派遣には根本的な正当性が付与できないのであります。
 また、国会審議における政府の欺瞞と不誠実さについても指摘しなければなりません。国会での小泉総理や防衛庁長官の発言、答弁は、虚偽と詭弁の乱れ打ち、撤回と謝罪の繰り返し、その後に来たのが開き直りだったのであります。
 先遣隊の調査報告では、評議会は実質的に機能しているとされていましたが、肝心の評議会が解散していた事実すら把握されていませんでした。さらに、評議会の実態を把握した後も虚偽の答弁を繰り返し、先遣隊報告にあるサマワ評議会議長との会見の事実すら確定できず、先遣隊の派遣前に報告書の筋書が作られ、先遣隊の派遣そのものが本隊の派遣を正当化するための方便に使われたとみなさざるを得ないことなどは、国民に対する背信行為と言わざるを得ません。特に、総理の発言の撤回は、前代未聞の醜態でありました。
 また、自らは結果として隊員の生命を軽視しているにもかかわらず、隊員の生命の安全を引き合いに報道規制を図ろうとしている小泉内閣の姿勢には、自らに都合の悪い事実を隠ぺいしようとしているとの疑念を抱かざるを得ません。今回のサマワ評議会に関する虚偽報告と答弁がそれを如実に物語っております。安易に報道規制をしようとする姿勢は、国民の目から真実を遠ざけ、国会における客観的かつ冷静な判断を阻む極めて危険な体質と言わざるを得ません。
 もとより、イラク国民の暮らしを思えば、日本がイラクの復興に寄与すべきことは言うまでもありません。人道的支援には民主党も賛成です。しかし、大義に基づかない先制攻撃の延長線上にあり、国連の関与が不十分な現時点での自衛隊による支援には広範な国民の理解は得られません。また、派遣される自衛隊員にとっても、自らの行動の正当性についての確信が、誇りが持てないではありませんか。
 以上、申し述べましたとおり、アメリカの大量破壊兵器の存在に関する宣伝を無批判に追認しつつ、先制武力攻撃を支持し、かつ自衛隊の派遣もアメリカの言いなり。現地情勢の把握もできぬまま、まずは自衛隊派遣ありきの姿勢に終始。生命、身体に危険が及ぶ可能性を認識しつつ、今なお主権の回復していない国家に自衛隊員を送り出そうとする小泉内閣の方針を認めるわけにはまいりません。
 なお、民主党は今回のイラクへの自衛隊派遣には反対ですが、政府・与党の結論として自衛隊の派遣が決められた以上、派遣される自衛官に対しては安全確保のための万全の措置を講ずるよう強く求めるものであります。
 最後に、さきの国会審議において、構造改革が進んでいないとの指摘に対して小泉総理は、余計なことは何もしなかった、不必要なことは何もしなかったと言われました。しかし、それは全くの誤りと言わざるを得ません。正しくは、外交、内政両面にわたり、小泉総理は、小泉内閣は必要なことは何もしなかった、余計なことばかりしていた、これが正解であります。
 そのことを強く御指摘申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
#35
○議長(倉田寛之君) 常田享詳君。
   〔常田享詳君登壇、拍手〕
#36
○常田享詳君 私は、自由民主党並びに公明党を代表して、イラク自衛隊派遣国会承認案件について、賛成の立場から討論を行います。
 我々は、激動する国際情勢の中にあって、今歴史的な大転換の時代に居合わせていることを認識しなければなりません。特に、このたびの陸上自衛隊のイラク派遣は、新たな国際平和活動に関する大きな一歩であります。この問題は、イラクの人道復興支援を図り、イラクを破綻国家、テロの巣窟にしないために、我が国が主体的、積極的に国際協力するものであることは言うまでもありません。
 そして、我々は、国際協力・日米同盟関係、国益等を踏まえてなされた自衛隊のイラク派遣が、イラクの復興、世界の平和、日本の安定に大きく貢献するものとして支持し、国民の一層の理解と協力を得るよう最大限努めてまいりました。総理も、国民に対し、イラクへの自衛隊派遣の意義を何度も真剣に説明してこられ、かなりの理解も得られつつあります。
 言うまでもなく、今イラク国内では四十か国近い国々が、イラク復興のために汗水を流しながら、日夜積極的に活動しております。
 我が国も、国際社会における責任ある一員として、我が国の国力に見合った資金協力、人的支援の貢献を積極的に行っていかなければなりません。そのためには、官民ともに復興支援に携わっていくべきであります。
 しかしながら、イラクは、スンニ派三角地帯を中心にテロが続発しており、決して安全な地域ではなく、残念ながら、現段階において民間人が活躍できる状況ではありません。
 したがって、現時点においては、自己完結能力があり、厳しい訓練を積んでいる自衛隊こそがイラクで立派な任務を果たすことができるのであります。
 さて、以下に、主な賛成の理由を簡潔に述べさせていただきます。
 イラク承認案件の賛成の第一の理由は、我が国が、イラクに武力行使に行くのではなく、あくまでイラクの人道復興支援等に行くということであります。そして、我々は、国際協調と日米同盟を両立させて、議論だけではなく行動で示さなければならないのであります。
 賛成の第二の理由は、政府が、実施区域の選定を始め、携帯装備面等、自衛隊員に対する安全確保に十分な配慮を行っていると考えるからであります。
 賛成の第三の理由は、水を始め、雇用、電力、港湾、保健、教育等の面におけるイラク人の強いニーズが現に存しており、これに的確にこたえるためには自衛隊の力が是非とも必要と考えるためであります。
 以上の理由から、我々は、イラク承認案件について賛成をするものであります。
 今、国会に課せられている責務は、イラクや北朝鮮問題が国際社会における冷酷な現実であることを直視し、今後、いかに日本が国際社会で貢献していくのがふさわしいのか、憲法問題を始め、その道筋を明確にすることであります。
 良識の府である参議院において、イラク自衛隊派遣国会承認案件について十分な審議が行われ、本日の本会議において全党全会派が出席の下、採決が行われるに至ったことは、二院制の意義を高からしめるものと考えます。
 願わくは、一人でも多くの方が党派を乗り越えてこの承認案に賛成をし、国会として自衛隊を立派に送り出すことが自衛隊の激励、士気の高揚につながると確信しております。
 最後に、この場をおかりして、イラクにおける自衛隊の活躍、御奮闘と隊員全員の無事の御帰国を心よりお祈りを申し上げ、私の賛成討論といたします。(拍手)
#37
○議長(倉田寛之君) 大沢辰美君。
   〔大沢辰美君登壇、拍手〕
#38
○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表して、小泉内閣による陸海空三自衛隊のイラク派兵を承認することに反対の討論を行います。
 今回の派兵は、今なお戦争状態にあるイラクに武装した自衛隊を派兵し、米英による軍事占領支配に参加し、その一翼を担おうとするものであります。これは、戦後かつてなかったことであり、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した憲法九条に真っ向から違反し、到底許されるものではありません。
 衆議院での自民党、公明党の数の力による審議打切り、強行採決という事態を受けて始まった参議院でのわずか三日間の特別委員会の審議でさえ問題点が噴出し、戦争の根拠も派兵の根拠もことごとく崩れ去っています。
 イラク派兵は、二十一世紀の日本の進路と国民の命運にかかわる重大問題です。初めに派兵ありき、十分な審議を尽くさず、国民の数々の疑問に対する説明責任を果たさないまま、問答無用のやり方で派兵を追認することは断じて容認できません。
 承認に反対する第一の理由は、イラク戦争の大義が根本的に問われているにもかかわらず、小泉内閣は派兵を強行していることです。
 イラク戦争は、米英両国が国連の安全保障理事会の承認なしに一方的に始めた無法な侵略戦争です。国際法上の正当性、合法性も全くありません。
 米英両国は、イラクが大量破壊兵器を保有していると一方的に決め付け、それを開戦の最大の口実にしました。ところが、大量破壊兵器は今に至るも発見されないどころか、当のアメリカのイラク調査団長デビッド・ケイ氏が、大量破壊兵器は元々存在しなかったと証言しました。この下で、ブッシュ米大統領やブレア英首相ら戦争を強行した当事者は、開戦前の発言を事実上訂正せざるを得ない事態に追い込まれています。米英両国では、真相解明を求める世論に押されて独立した調査委員会を設置することになりました。
 ところが、イラクは大量破壊兵器を保有していると断定し、イラク戦争を支持した小泉総理は、自らの責任が厳しく問われているにもかかわらず、保有を断定した根拠を全く示すことができず、論拠のすり替えで開き直っています。戦争を支持した総理の責任をあいまいにしたまま派兵を強行するなど、絶対に認められません。
 第二の理由は、戦争をしない国としてアジアと世界の平和を希求する日本国憲法を踏み付けにする歴史的暴挙を、小泉内閣は国会と国民を欺いて強行していることです。
 小泉内閣は、自衛隊の派遣命令は、先遣隊の現地調査を受けて慎重の上にも慎重に検討して判断すると繰り返し国民に言明しました。陸上自衛隊の派遣先であるサマーワの治安が安定していることの最大の根拠として、住民の意向を反映した市評議会の存在を挙げました。ところが、市評議会は存在せず、総辞職し、解散していたことが明らかになって、衆議院の本会議で総理発言を撤回するという国会史上かつてない事態に陥りました。
 さらに、我が党議員が暴露した防衛庁内部文書によって、陸上自衛隊の派遣を決断する前提である現地治安情勢に係る先遣隊報告書が事前に作られ、市評議会議長のコメントが作文される一方、米軍やオランダ軍への襲撃の件数などを隠していたことが明らかになりました。この内部文書をめぐる参議院の質疑で、政府は、防衛庁と外務省の間で送信した記録があることを認めました。
 今や、先遣隊の調査や政府の慎重な検討が形だけのものであったことが明白です。虚構の上に虚構を重ね、虚偽の国会答弁を繰り返して国会と国民を欺く小泉内閣の責任は極めて重大です。派遣の前提が崩れた以上、派遣命令自体を撤回すべきことは余りにも当然ではありませんか。
 第三に、自衛隊のイラク派兵は、無法な戦争に続く不当な占領支配の下で占領軍の一員として占領支配の一翼を担うものであり、これは明らかに交戦権を否認した憲法九条に真っ向から違反していることです。
 派兵される自衛隊は、連合国要員として、刑事、民事、行政のいかなる裁判権からも免除され、占領軍と同様の特権、保護を受けます。連合軍司令部のホームページは連合軍の軍事作戦への軍隊派遣国の一つに日本を挙げ、私たちの問い合わせに、自衛隊は連合軍司令部の指揮下に入ることを当然と認めています。この連合軍の司令部に自衛隊員も駐在するのであります。
 総理は、自衛隊は戦争に行くのではない、イラクの人道復興支援に行くのだと言いますが、自衛隊がイラクで実際に行う任務は、米英占領軍が行う軍事作戦支援そのものです。安全確保支援活動の中には、掃討作戦への支援や武装した米兵の輸送、イラク国民の米英占領軍に対する抗議・抵抗運動の鎮圧への支援が含まれることを小泉総理も認めているではありませんか。航空自衛隊の輸送部隊は、米中央軍前線司令部の一元的な統制の下に、バグダッド、モスル等、イラク全土にわたって兵員、軍事物資の航空輸送を行うことも明らかになりました。
 占領軍と同様の特権、保護を受け、米英占領軍に対する軍事支援を行う自衛隊が占領支配の一翼を担い、正に憲法違反の占領参加となることは明らかです。
 イラクはだれが見ても戦争状態です。先日も、自衛隊の活動区域であるバグダッド飛行場で米軍に対する迫撃砲弾による攻撃が起きています。正にゲリラ戦の様相を呈しています。国際法上、イラク戦争は終結しておらず、今なお戦争状態が続いている下で、非戦闘地域などあり得ないことは、イラクの現実に照らせば明白です。
 占領軍の一員として活動する自衛隊が武力攻撃を受け、それに対して自衛隊が正当防衛として武器を使用することになれば、それは正に武力の行使そのものです。自衛隊がイラクの人々と殺し、殺される関係を作ることは断じて容認できません。イラクに派兵される自衛隊員を見守る家族の硬いあの表情、子供たちの泣く姿を小泉総理や与党の皆さんはどう見るのですか。
 最後に、私は、今、日本は、第二次世界大戦の敗戦の大きな犠牲によって平和を得てから半世紀以上、日本国の憲法の下で、軍隊を海外に派兵することなく、武力で他国を侵略せず、一度も他国の人々を殺していません。これは戦後日本の大きな宝です。この戦争をしない国日本という世界への信頼が、小泉内閣によって突き崩されようとしていることは極めて重大です。
 イラク特措法が強行成立された後も、米英占領軍や他国軍隊が相次いで攻撃され、国連までもが攻撃を受けるという、イラクの泥沼化の深刻な事態にもかかわらず、小泉内閣は、アメリカから逃げるな、お茶会じゃないと圧力を掛けられ、自衛隊派兵へ突っ走ってきました。異常なアメリカ追随の政府によって、現地情勢やイラクの人々の感情などお構いなしにイラク派兵が進められているのです。
 イラク問題の解決のためには、米英軍主導の軍事占領支配を一日も早くやめさせて、国連中心の枠組みによる復興支援に切り替え、イラク国民に速やかに主権を返還することが必要です。そのための外交努力を行うことこそ、憲法九条を持つ日本の政府が取るべき道であります。
 憲法違反のイラク派兵を承認することはできません。日本共産党は、イラク派兵をやめさせるために全力を尽くす決意を表明し、討論を終わります。(拍手)
#39
○議長(倉田寛之君) これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
#40
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 本件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#41
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#42
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百四十一  
  賛成            百三十八  
  反対              百三  
 よって、本件は承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#43
○議長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後七時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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