2004/02/27 第159回国会 参議院
参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第7号
#1
第159回国会 本会議 第7号平成十六年二月二十七日(金曜日)
午前十時一分開議
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#2
○議事日程 第七号平成十六年二月二十七日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(平成十四年
度決算の概要について)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。日程第一 国務大臣の報告に関する件(平成十四年度決算の概要について)
財務大臣から発言を求められております。発言を許します。谷垣財務大臣。
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(谷垣禎一君) 平成十四年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書、政府関係機関決算書、国の債権の現在額総報告並びに物品増減及び現在額総報告につきまして、その概要を御説明申し上げます。まず、平成十四年度の一般会計の決算につきましては、歳入の決算額は八十七兆二千八百九十億円余、歳出の決算額は八十三兆六千七百四十二億円余であり、差引き三兆六千百四十七億円余の剰余を生じました。
この剰余金は、財政法第四十一条の規定により、既に平成十五年度の一般会計の歳入に繰り入れております。
なお、平成十四年度における財政法第六条の純剰余金は三千八百七十四億円余となります。
以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額八十三兆六千八百八十九億円余に比べて三兆六千億円余の増加となります。この増加額には、前年度剰余金受入れが予算額に比べて増加した額二兆九百八億円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加額は一兆五千九十一億円余となります。
一方、歳出につきましては、予算額八十三兆六千八百八十九億円余に平成十三年度からの繰越額四兆千五百五十一億円余を加えました歳出予算現額八十七兆八千四百四十一億円余に対し、支出済歳出額は八十三兆六千七百四十二億円余であり、その差額は四兆千六百九十八億円余となります。このうち、平成十五年度への繰越額は三兆二千二百七十三億円余であり、不用額は九千四百二十五億円余となっております。
なお、歳出のうち、予備費につきましては、その予算額は二千億円であり、その使用額は三百五十八億円余であります。
次に、平成十四年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十七であり、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算のとおりでございます。
なお、歳入歳出決算に添付されている国の債務に関する計算書による債務額につきましては、平成十四年度末における債務額は七百三十九兆七百十七億円余であります。このうち、公債につきましては、平成十四年度末における債務額は五百四兆三千四百八十七億円余であります。
次に、平成十四年度における国税収納金整理資金の受入れ及び支払につきましては、同資金への収納済額は五十三兆三千四百二十五億円余であり、一般会計の歳入への組入額等は五十二兆六千四百七十八億円余であります。
次に、平成十四年度の政府関係機関の決算でありますが、その内容につきましては、それぞれの決算書のとおりでございます。
次に、国の債権の現在額につきましては、平成十四年度末における国の債権の総額は三百四十五兆九千九百九十億円余であります。
次に、物品の増減及び現在額につきましては、平成十四年度末における物品の総額は十三兆九千百十三億円余であります。
以上が平成十四年度の一般会計歳入歳出決算等の概要であります。
何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。(拍手)
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#5
○議長(倉田寛之君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。南野知惠子君。〔南野知惠子君登壇、拍手〕
#6
○南野知惠子君 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました平成十四年度決算について、総理並びに関係大臣に質問いたします。まず最初に、十四年度決算の審査に入るに当たり、その重要性、とりわけ決算審査の予算への反映などについて、総理にお伺いいたします。
昨年の参議院改革協議会報告を受け、十三年度決算は三十五年ぶりに常会内に審査を終了し、長年の課題であった決算の早期審査は大きな進展を見ました。これは正に参議院が、党派を超えて、参議院の独自性を発揮するために、衆議院では財政の入口である予算審議に重点を置き、参議院では財政の出口である決算の審査に重点を置くという、両院間の機能分担を具現したものであります。
さらに、総理は、本院の警告に対する本会議での所信において、平成十五年度決算から十一月二十日前後に決算提出が可能となるよう努力する旨、答弁しておられます。
政府予算案閣議決定前の決算の提出と審査開始、概算要求前の審査終了は、決算審査の結果を予算編成に反映させようというものであり、財政規律の回復、ひいては財政再建への道筋を付ける上でも極めて重要なプロセスであります。
改めて、十四年度決算の早期審査、十五年度決算の早期提出、決算審査の予算編成への具体的反映に向けた総理の所見、決意をお伺いします。
また、十五年度決算の十一月提出に関しては、会計検査院は、効率性・有効性検査を強化、拡大しつつ、検査報告の早期作成という困難な課題に取り組んでおります。十三年度決算に係る本院決算委員会の要請決議においても会計検査院の検査機能の強化を求めていますが、そのために政府はいかなる措置を講じようとしているのか、お伺いします。
次に、新たな予算編成手法についてですが、十六年度予算から、自由民主党政権公約でうたっているモデル事業、すなわち予算の複数年度による歳出の合理化が導入されます。また、財務省は十四年度から予算執行調査を導入しています。予算執行調査の現時点における成果はどうなっているのか、また、今後どの程度までこれらの新しい手法を拡大し、単年度限りの予算編成から複数年度を視野に入れた財政支出プロセスの改革につなげていくのか、その場合の事後評価は今までとどう異なるのか、財務大臣の明確な答弁を求めます。
次に、十四年度決算の特徴とその背景にある十四年度の政府の経済財政運営について伺います。
十四年度の財政運営は、小泉政権発足直後の骨太の方針に基づき、国債発行額三十兆円を掲げ、公共投資、ODAの一割削減、特殊法人等への財政支出の一兆円超の削減など、果敢な改革が行われました。しかし、デフレが進行する中で、景気の回復は緩やかであり、不良債権処理に備えたセーフティーネットの構築も求められたことから、十二月に雇用対策、中小企業対策に重点を置いた改革加速プログラムを決定し、補正予算を編成、セーフティーネット充実対策費、構造改革推進型公共投資の促進など、柔軟かつ機動的な経済対策を講じたのであります。
その結果、十四年度の国債発行額は三十五兆円と結果として目標を上回ったものの、十四年度の経済成長率は一・二%と当初見通しの〇・〇%を上回り、銀行の不良債権残高は十三年度末の四十三・二兆円から三十五・三兆円へと大きく減少しました。
我が国の再生に向け着実な一歩を踏み出した十四年度の経済財政運営とその結果である十四年度決算についての総理の総括的所見を求めます。
しかし、その一方で、十四年度決算は多くの課題を残しました。一つは増加し続ける国債残高であり、もう一つは税収の過大見積りであります。
十四年度税収決算値は四十三兆八千億円と、対当初予算比で三兆円近くの減となっております。十四年度決算は歳入欠陥こそ免れたものの、依然として税収が当初見積りを大幅に下回る状況が続いていることは遺憾であります。
本院の警告においても、税収見積りの精度向上を繰り返し求めておりますが、バブル崩壊後の決算で税収が当初見積りを下回らなかったのは八、十一、十二の三年度のみであるということをどう受け止めておられるのか、今後の改善策について財務大臣の明確な所見を求めます。
税収が低迷する一方で、歳出の無駄遣いは依然として続いております。十四年度決算検査報告における指摘金額は四百億円と、過去二十年間で最多となっております。支出適正化の対応策として、公共事業を始めとする、より一層のコスト改革、予算の複数年度化、複数省庁にまたがる政策群の活用など、新たな手法の拡大が期待されます。それらによる無駄と非効率の排除など、徹底した歳出の適正化が以前にも増して求められると思いますが、総理の所見をお伺いいたします。
次に、年金福祉施設等についてですが、十三年度決算審査においては、労働保険に係る労働者福祉施設の問題が取り上げられました。先日、本院決算委員会が旧スパウザ小田原を視察しましたが、四百五十五億円の巨費を投じて建設された施設がわずか八億五千万円で売却されたことには慨嘆を禁じ得ません。また、厚生年金、国民年金に係る福祉施設のうち、累計赤字を抱えているのがかなり見られます。平成十二年の閣議決定によりその見直しを行うこととされていますが、進捗状況は遅々として進んでおりません。
小泉総理は、二十四日、年金福祉施設について抜本的な厳しい見直しを指示されたと報道されております。
民間にできることは民間にをモットーとする小泉総理としては、本来の目的から逸脱した年金福祉施設が多数存在し、年金財政の負担となっている事態をどうお考えでしょうか。年金改革への国民の理解を一層深めるためにも、民間と競合する施設については大胆な厳しい見直しを行う一方、厚生年金病院など年金福祉施設本来の趣旨に沿った施設として財務の健全化を行うことが必要かと考えますが、総理の所見を求めます。
次に、少子化対策について伺います。
現在の年金不安そのものの原因は予想を上回る少子化の進行であり、実効ある少子化対策の推進こそ最大の年金不安解消策と言えます。総理は御就任以来、十四年の少子化対策プラスワン、待機児童ゼロ作戦等に力を入れてこられましたが、これらの対策がどのような成果を上げつつあるのか、さらに十五年に少子化社会対策基本法が施行されておりますので、国を挙げて少子化対策に取り組む体制を早急に作り上げるべきと考えますが、総理の御決意のほどをお聞かせ願います。
また、目下、戦略性、国益などの観点を重視したODA改革が進められておりますが、リプロダクティブヘルス、性と生殖に関する健康、エイズなど人間の安全保障もますます重要になっており、我が党としても最重要課題として取り組んでいく決意であります。
決算重視の観点から、本院独自の新たな取組としてODAにかかわる調査団派遣のための外国旅費約二千万円が十六年度予算案に計上されております。この調査実施に当たっては政府も積極的に取り組むことが必要不可欠でありますので、この点について総理の所見をお伺いいたします。
我が国の財政再建は今や待ったなしの段階にあり、予算、決算両面で政治が主導権を発揮することが今こそ求められております。参議院が長年力を注いできた決算審査がより一層充実し、それが我が国の財政再建の一助となることを強く強く期待しまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 南野議員にお答えいたします。決算の早期審査、予算編成への反映、早期提出についてのお尋ねでございますが、初めに、参議院において、これまでも決算審査を重視され、種々の改革を進められてきたことに対しまして、政府として改めて敬意を表します。
国会における決算の審査は、予算の執行が所期の政策目的を果たしているかどうか等について審査、検討するものであり、各省庁が予算執行や事務事業の在り方を絶えず見直していく上で極めて重要な役割を果たすものと認識しております。
参議院において昨年決定された、「決算審査は、審査の結果を翌年度予算編成の概算要求に反映できるようにするため、常会中に終了するよう努める」との方針について、政府としてもその趣旨を重く受け止め、本日より行われる決算審査が円滑に行われるようできるだけ協力を行うとともに、審議における議論を十七年度の予算編成において的確に役立てていきたいと考えております。
決算の早期提出については、昨年五月の参議院の要請を踏まえ、平成十五年度決算から決算事務の電算化を進めるなど工夫を凝らし、会計検査院とも協力しつつ、今年の秋から十一月二十日前後に提出が可能となるよう努力してまいります。
会計検査院の検査機能の強化についてでございますが、国民の負担に値する質の高い小さな政府の実現に向けては、内閣から独立した外部監査機関である会計検査院が適切に予算執行状況などについて検査を行い、その結果を踏まえつつ各省庁が事務事業の在り方等について不断に見直しを進めていくことが重要であります。このため、会計検査院の検査活動が円滑に行われ、その機能が十分発揮できるよう、必要な人員、予算の確保など、検査体制の充実強化についてはこれまでも配慮してまいりましたが、昨年の参議院決算委員会の要請も踏まえ、平成十六年度予算においては厳しい財政状況の中、会計検査院の定員を四十名の大幅純増とするなど、検査体制の充実強化に十分配慮したところであります。
平成十四年度の経済財政運営と十四年度決算についてですが、小泉内閣は、日本経済の再生のためにはデフレ克服を目指しながら改革を進める以外に道はないとの認識の下、改革を推進するとともに、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するという一貫した方針で経済財政運営に当たってまいりました。
平成十四年度につきましては、小泉内閣最初の当初予算である平成十四年度予算において、特殊法人等への財政支出の一兆円を超える削減を行うなど、改革断行予算を実現するとともに、不良債権処理の加速化を図るなど、構造改革路線を堅持する一方、秋口からの金融経済情勢における不確実性の高まりに対応するため、雇用や中小企業のセーフティーネットに万全を期すなどのための補正予算を編成し、経済情勢に応じて適切に対応してきたものと考えております。
これらの結果、御指摘のように、平成十四年度の実質経済成長率は一・二%と当初見通しゼロ%を上回り、銀行の不良債権残高も大幅に減少するなど、我が国経済の再生に向け着実な前進が見られたところであります。
こうした経済財政運営の結果としての平成十四年度決算については、国債発行額は三十兆円を上回ることとなりましたが、税収や税外収入の減少を上回る歳出の不用が生じ、二年ぶりに剰余金が生じることとなったところであります。
歳出の適正化についてでございますが、現下の厳しい財政状況にあっては、歳出全般にわたって厳しく見直しを行い、歳出の合理化、効率化に取り組まなければならないことは御指摘のとおりでございます。
こうした観点から、十六年度予算においては例えば、公共事業のコストについて五年間で一五%の総合コスト縮減を目指す公共事業コスト構造改革の推進、定量的な目標設定と厳しい事後チェックを前提に複数年度にわたる事業の実施の円滑化など、予算の効率化を図るモデル事業の試行的な導入、民間の潜在力を最大限引き出すための制度改革、規制改革等の施策と予算の組合せである政策群の手法の活用、特別会計の事務事業の見直しによる歳出の合理化、効率化などの取組を進めてきたところであります。
今後とも、歳出の徹底した見直しを行い、予算の重点化、効率を図るなど、歳出改革に取り組んでまいります。
年金の福祉施設についてですが、御指摘のような問題がありまして、年金制度の厳しい財政状況を踏まえ、その在り方について抜本的な見直しを行うよう指示したところであります。その際には、年金保険料は福祉施設整備費に投入しない、厳しい福祉施設の整理合理化計画を策定するなど、国民の理解が得られるよう進めていくことが重要と考えます。
少子化対策の成果についてでございますが、急速な少子化の進行は我が国の経済社会に深刻な影響を与えるものであり、国の基本政策として、各般にわたる少子化対策を総合的に推進することが重要であります。
御指摘の待機児童ゼロ作戦においては、平成十四年度から平成十六年度まで毎年五万人の受入れ児童数の増を図ることとし、これを着実に実施しております。また、新エンゼルプランに基づく延長保育、休日保育等についても目標値を上回る整備状況にあります。さらに、少子化対策プラスワンを踏まえ、昨年の三月に関係閣僚会議において次世代育成支援に関する当面の取組方針を決定し、次世代育成支援対策推進法等の一連の立法措置を講じるなど、少子化の流れを変えるための枠組みを着実に整備しているところであります。
今後の少子化対策への取組についてでございますが、社会全体での一層の少子化対策の取組が重要であると考えております。政府としては、御指摘の少子化社会対策基本法に基づく大綱を本年五月を目途に策定することとしており、全閣僚から成る少子化対策会議を中心に一体となって総合的に施策を推進してまいります。
参議院によるODAに関する調査団派遣についてでございますが、ODAについては、透明性の確保、効率性の向上、国民参加の促進等を主眼に改革を積極的に進めてきており、昨年八月には新たなODA大綱を閣議決定いたしました。今後は、このODA大綱にのっとり、ODAのより一層効率的、効果的な実施に努めてまいりますが、ODAの実情を現地で直接見ていただくために、参議院調査団の派遣に際しましては政府としても協力してまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(谷垣禎一君) 南野議員にお答えをいたします。まず最初に、平成十四年度から導入されている予算執行調査の現時点における成果はどうかというお尋ねでございました。
十四年度につきましては、四十三の事業を対象に調査を行い、百八十九億円を十五年度予算に反映しました。また、十五年度については、一般会計に加えて、特別会計の二十事業を含む五十一の事業を対象とするなど調査の拡充を行いまして、四百九十二億円を十六年度予算に反映したところでございます。
財務省としては、予算の執行状況を的確に把握し、歳出の効率化を進めることが重要と考えておりますので、今後とも充実した調査、把握に努め、予算に反映してまいります。
それから次に、十六年度予算におけるモデル事業についてのお尋ねでございますが、十六年度予算においては、限られた財政資金を効率的に活用するという観点から、基本方針二〇〇三を踏まえ、十の事業について試行的にモデル事業として導入することとしておりますが、これらの事業については定量的なアウトカム目標に対する達成度等について報告を求めた上で予算執行調査等を行うこととしておりまして、こうした新たな方策も活用しながら、厳格な事後評価を通じた予算の効率化に努めてまいりたいと考えております。
それから最後に、近年の税収見積りについてのお尋ねがございました。
毎年度の税収見積りにつきましては適切な見積りを行うよう努めておりますが、近年において税収不足となったこともあることを踏まえまして、財務省としても見積り精度の向上に向けた取組が必要だと考えております。
具体的には、平成十六年度税収の見積りに当たりまして、大法人に対する聞き取り調査について対象法人の追加や調査項目の見直しを行いましたほか、民間調査機関からのヒアリングにつきましてその対象を追加するといった鋭意工夫を重ねてきたところでございますが、今後とも適切な税収見積りを行うようにより一層努力してまいりたいと考えております。(拍手)
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#9
○議長(倉田寛之君) 川橋幸子君。〔川橋幸子君登壇、拍手〕
#10
○川橋幸子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました平成十四年度決算について、総理及び関係大臣に質問いたします。最初に、決算の早期審査について質問いたします。
「決算の審査に当たっては、」「国会が議決した予算及び関係法律が適正かつ効率的に執行されたかを初め決算全般について審査しあわせて政策の実績批判を行なうものとする。」、また、「審査の結果を国会の予算審議及び立法に反映させる」。この文章は何と今から四十二年前の昭和三十七年の参議院決算委員会で申し合わされたものですが、正に今の状況にぴったりと当てはまるものであります。ごく当たり前のことでありながら、私たちはかくもその実現に長い時間を要していることをまず反省しなければならないと思います。
今年は参議院選挙の年であります。参議院の独自性は決算重視にあり、その役割を十分発揮しないままにいたずらに参議院無用論にくみするのは、国会が自らの怠慢を世論迎合のポピュリズムにすり替えるものであると思います。
昨年の通常国会におきましては、三十五年ぶりに会期内における決算審査が終了いたしました。今年は更に審査内容を充実し、次年度予算へ反映させるための具体化に、本院は、与野党を超えて取り組むべき年であると思います。
その前提として、まず決算の国会への早期提出を実現することが必要であり、昨年、委員会及び本会議におきまして、総理は二度にわたって、十一月二十日前後に提出すると約束しておられます。今年秋には約束が実際に果たされることを期待いたしまして、総理から確認の御答弁をお願いいたします。
次に、福祉施設の売却、処分について質問をいたします。
参議院決算委員会は過日、五年ぶりに実地視察を行い、旧勤労者リフレッシュセンター・スパウザ小田原、現ヒルトン小田原リゾート・アンド・スパを訪問し、私も参加いたしました。
昨年の決算審査においては、総工費四百五十五億円に上るこの施設が五十分の一の八億五千万の安値で売却されることが問題となりましたが、その後この施設は、今年二月一日以降、年間四億三千万の賃料で、譲渡先の小田原市から民間のホテルに運営委託されているという経緯をたどっております。
参加いたしました委員一同の感想は、率直に言ってすごく立派な施設という感じだというものでありました。私も、正にバブル期の遺産との思いを強くしたところでございます。
様々な問題がありますが、ここでは、労働保険特別会計から巨額な出資金を受けて建てられたこの施設をなぜ破格の値段で売り急がなければならなかったのかという問題に焦点を当てて考えてみたいと思います。
雇用・能力開発機構の説明によると、第一に、平成十三年十二月十九日に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画によって、遅くも十七年度中の廃止が決められたことから、急ぎ売却する必要に迫られたこと。第二に、元々この施設は公益目的を重視し、とりわけ中小企業の勤労者の福祉目的で建設された施設であり、これを、今回の譲渡に当たり、不動産投資の尺度となる収益還元法で評価したために不動産評価額が総工費の四%にまで激減してしまったこと。第三に、譲渡先が地方公共団体の場合は、公共性の確保や従業員の再雇用を条件として、五割まで減額することが認められており、結果として、価格は更に半減して総工費の二%になったということでした。
すなわち、公益性及び公共性という二重の意味での公の施設であることの要素が施設の譲渡価格を低下させたという説明でありますが、実際には再雇用の確保も十分ではなく、こうした説明に国民は到底納得できるものではありません。
小泉総理は、平成十三年四月の就任直後から、骨太方針を掲げて各省に改革断行を指示されました。官から民へ、民でできるものは民でという整理合理化方針を打ち出されましたが、現場ではこのように安値売り急ぎという事態が生じたわけです。大改革の前にはこの程度のことは仕方がない、あるいは公共性の確保はもう問題ではないというふうにお考えなのでしょうか。私には、政治主導、官邸主導の名の下、内閣の側からはずさんな丸投げ指示がなされ、各省の側には安易な指示の丸受け体質が生じ、国民が被るであろう損害についてはだれも真剣に考えようとしなかった、すなわち政治と行政のもたれ合い、無責任がこのような結果をもたらしたとしか思えないのです。
今後は、赤字が膨らんでいるグリーンピアなど多数の年金福祉施設の売却といった大きな問題を控えております。スパウザ小田原は、シンボリックな意味で、ほんの一例にすぎません。今後の施設処分に当たり、どのような姿勢で臨むのか、総理及び厚生労働大臣の所見を求めます。
次に、税収見積りについて質問します。
バブル崩壊後、毎年のように税収の過大な見積りが繰り返されており、十四年度決算においても当初予算に比べて約三兆円の税収不足が生じました。本院においては、税収見積りの精度向上について再三警告決議を発し、その都度財務大臣は努力すると答弁しておられましたが、その御答弁どおりにいったためしはなかったように思います。
税収不足を補うために、十四年度末の公債残高は約四百二十一兆円に上り、公債依存度は四一・八%もの高水準に達しております。日本の国家財政は借金財政だと言って過言ではありません。財政再建のためには、まず税収の正確な見積りが不可欠であります。改めて、どうして税収見積りの精度向上を図るおつもりなのか、具体的な取組について財務大臣の見解を求めます。
平成十三年度、総理は国債発行額の三十兆円枠を公約され、引き続き十四年度もこれを目標とすることを骨太方針の中に明記されました。しかし、この目標は、十三年度は辛うじて見せ掛けだけは達成したものの、十四年度決算における国債発行額は三十五兆円と目標を大幅に超過し、三十兆円枠はわずか一年で破綻しています。この問題につき、昨年、衆議院予算委員会で総理は、この程度の公約違反は大したことではないと発言をされ、ひんしゅくを買ったことはまだ記憶に新しいところでございます。改めて十四年度決算の数字をごらんになり、大したことではないというお気持ちに今も変わりはないのでしょうか、お尋ねいたします。
次に、改革の痛みについて質問します。
平成十四年度は総理御就任二年目の年でした。デフレ経済が進行する中で、就任当初の改革なくして景気回復なしというスローガンが改革なくして成長なしへと微妙に修正され、改革には痛みを伴うが我慢してほしいというメッセージが国民に伝えられました。しかし、いつまでどんな痛みを我慢すれば暗いトンネルの出口が見えるようになるのかといった説明がなく、多くの国民は深いいら立ちを感じています。
平成十四年度の痛みの程度はどのようなものであったのか、また今後どのくらい我慢が続きそうなのか、数字を挙げて検証してみたいと思います。
十四年度の日本経済は、マイナス成長であった十三年度に比べればやや持ち直したものの、失業率は十三年度が五・二%、十四年度は過去最悪の五・四%の数字を更新しております。また、雇用の質も大きく変わりました。雇用が安定せず、労働条件に恵まれず、社会保険の適用もない非正規雇用が急増し、就業構造基本調査によれば、男性は平成九年の一〇・一%から十四年には一四・八%へと五割の増加、女性は同じく四二・二%から五〇・七%へと過半数を上回るようになり、女性が働こうとすると正社員になれる人は二人に一人というのが実情であります。
総理は、骨太方針でサービス分野を中心とする五百三十万人の雇用創出を掲げ、去る一月二十一日の衆議院本会議では、二〇〇三年上期を二〇〇〇年上期と対比すると、全産業で百五十七万人の雇用減がある一方、サービス業では百五十五万人の雇用増があり、全体では二万人減となっていると答弁されましたが、聞き方によりましては、サービス業で雇用が伸びているのだから心配はないという楽観的な認識を示されているようにも感じられます。しかしながら、サービス業における雇用の質は、先ほど述べたように、非正規雇用の割合が非常に高いことが特徴です。総理は、本当のところは労働市場の実態を御存じないばかりか、余り関心がないのではないでしょうか。
最近、景気動向に強気の報告をされておられる竹中経済財政担当大臣も、お金と物と情報の経済には関心があっても、人の経済にはとんと御関心が薄いように感じられます。日本も雇用増なき景気回復の時代に入ったという感があります。雇用政策は、これまでの企業単位の内部労働市場を対象とするのではなく、個人個人を対象とする外部労働市場を重視すべきではないでしょうか。
以上、雇用面における痛みの程度とその内容についてるる述べましたが、総理及び経済財政担当大臣はどのような所見をお持ちなのか、お伺いいたします。
次に、若年失業について質問します。
失業問題の中でも、とりわけ若年失業の問題が日本の将来にとって重大になってきています。昨年私は、参議院における補正予算審議の際、パネルを使用して若年失業が深刻化している現状を訴えさせていただきました。私の問題提起に閣僚の方々はどれだけ関心を持ってくださったのでしょうか。
本日は数字で説明いたしますと、平成十五年三月の大学卒業者の就職率は五五%、進学も就職もしていない卒業者が二二%。バブル期平成二年の就職率が八一%であったことを考えますと、正に隔世の感があります。若者にとりましては、雇用崩壊どころか人生の夢の崩壊になりかねないような状況です。
次世代の人材が育たず、結婚しない若者が増え、少子化に拍車が掛かり、年金、医療の支え手が減り、犯罪増加の社会不安につながりかねない状況です。日本が今こうした状況にあることを、政治家を始め、経済、教育のリーダーの皆様は分かっておられるのかどうか、多数の国民が心もとなく思っております。
今の若者は好んでフリーターになっているのでしょうか、それとも余儀なくされている方が多いのでしょうか。また、フリーターになった若者が再び正規雇用のチャンスを得ようとしてチャレンジした場合、その機会を得るのはかなり困難でしょうか、あるいはそれほど難しくはないのでしょうか。あえてアンケート調査のような質問をいたしますが、総理及び文部科学大臣の率直な御回答をいただきたいと思います。
最後に、ODA、政府開発援助について質問します。
昨年の決算審査では、外務省不祥事について議論が沸き、また、会計検査院の決算報告でも毎年、不適切なODA、効果が発現していないODAが指摘されており、ODAの透明性、効率性の確保が強く求められていることはもちろんであります。会計検査院と政府の一致した取組が必要であることは言うまでもありません。
ところで、二〇〇一年のODA実績は、日本は十一年ぶりに首位を転落いたしました。首位はアメリカであります。このところ私は、むしろ、ODAにおける国益重視が強調され、あるいは財政難を理由とするODA予算を減額することに、哲学のない我が国外交の姿を国際社会にさらすことになるのではないかという思いがしております。決して我が国にとって得策ではないと考えています。
今週二月二十四日、この本会議場にコフィ・アナン国連事務総長をお迎えし、大変感動的な国会演説を伺いました。このうちメディアが大きく報じたのは、イラクの復興支援について自衛隊派遣を含む日本の貢献に対する事務総長からの謝辞でしたが、演説自体はもっと広範なものでした。国連の歴史の中で最も困難な年の一つであるこの時期に、国連が担う使命とそれを遂行するための努力など、心にしみる言葉の数々があったと思います。
特に私が注目したのは、日本の技術力と人間の安全保障への重視なくして、世界がミレニアム開発目標を達成することはないというくだりです。ミレニアム開発目標、その第一に掲げられているのが極度の貧困の撲滅です。世界人口約六十億人中、一日一ドル未満で生活する人々が二〇%、十二億人もおります。
しかし政府は、こうした地球規模の国連開発目標について、直接国民に訴えようとはしない。マスコミも、無駄なODAは報じても、感謝されるODAは報じない。このような日本人の自国中心、自分中心の様子を故マザー・テレサは無関心と表現したそうです。国連開発目標や人間の安全保障に関するODAについて、日本としての数値目標を示すべき時期にあると私は考えます。
最後に、ODAについての総理の御見解を伺い、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#11
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 川橋議員にお答えいたします。決算の早期提出についてでございますが、決算の国会への早期提出は、決算結果を予算編成に反映させる見地からのみならず、決算の効果的な審議をお願いするためにも政府として努力すべき課題であると思います。
昨年五月の参議院の要請を踏まえ、平成十五年度決算から、決算事務の電算化を進めるなど工夫を凝らし、会計検査院とも協力しつつ、今年の秋から十一月二十日前後に提出が可能となるよう努力してまいります。
年金福祉施設でございますが、年金制度の厳しい財政状況等を踏まえ、グリーンピアについては平成十七年度末までに譲渡を含め廃止することを決定しております。また、その他の年金福祉施設については、その在り方について抜本的な見直しを行うよう指示しているところであり、その見直しに当たっては、まず厳しい整理合理化計画を策定し、売却についてはその計画に基づき着実に進めていく考えであります。
国債発行額三十兆円の公約についてでございますが、平成十四年度当初予算の編成に当たっては、税収が五十兆円程度にとどまると見込まれる中で、八十兆円を超える歳出の規模、内容について、財政の規律を確保するため、国債発行額三十兆円を目標とし、これを達成することができたところであります。
平成十四年度の補正予算の編成に当たっては、当初予算編成時には想定し得なかった税収の落ち込みへの対応、経済情勢に応じて大胆かつ柔軟に対応する観点からの雇用・中小企業などのセーフティーネットの構築などに必要な経費を追加するための財源に限り、国債の追加発行を行うこととしたところであります。
大したことではないとの私の発言は適切なものではありませんが、その後も、財政の規律、節度を確保するとの基本精神を受け継ぎ、歳出改革の取組を進めてきたところであり、今後とも、持続可能な財政構造の構築に向けて、歳出改革を含む構造改革の一層の推進を図る考え方に変わりはありません。
雇用面における今後の見通しですが、働き方に対する価値観の多様化を含め、経済社会を取り巻く状況が急速に変化する中で、平成十四年度においては完全失業率が平均で五・四%となるなど厳しい雇用状況にありましたが、政府としては、構造改革を進めていく中で考えられる様々な影響に十分留意し、雇用のセーフティーネットに万全を期してきたところであります。
その結果、現下の雇用情勢については依然として厳しいものの、平成十四年度と比較して、完全失業率が低下し、有効求人倍率が上昇するなど、改善の動きが見られます。
政府としては、雇用の更なる改善を図るべく、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図るとともに、サービス分野を中心とした新たな雇用の創出や、きめの細かな就職支援策の実施等を通じたミスマッチの解消など、雇用対策に全力を挙げてまいります。
フリーターについてでございますが、いわゆるフリーターとなった理由は様々であると考えますが、約四割の者がやむを得ずフリーターになっているとの調査もあります。また、フリーターの期間が長くなると、若年期に必要な技能、知識の蓄積がなされず、正規雇用の機会を得ることが困難となる場合が多いものと考えております。
このため、政府としては、若者自立・挑戦プランに基づき、企業実習と教育訓練を組み合わせた日本版デュアルシステムの導入などにより、フリーターになっている若年者が安定的な就業に移行できるよう積極的に支援していく考えであります。
ミレニアム開発目標、人間の安全保障とODAについてでございますが、貧困削減等の分野において明確な量的目標と達成期限を定めるとの考えは、我が国が主要な役割を果たして策定された開発援助委員会の新開発戦略によって確立されたものであります。ミレニアム開発目標はこのような考えを発展的に統合したものであり、我が国も重視しております。
我が国は、人間一人一人を重視する人間の安全保障の視点も踏まえ、ミレニアム開発目標が目指す途上国の貧困克服や地球規模問題の解決に向け、ODAを積極的に活用してまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(谷垣禎一君) 川橋議員にお答えいたします。私には、税収見積りの精度向上に対する具体的な取組についてお尋ねがございました。
平成十六年度税収の見積りに当たりましては、大法人に対する聞き取り調査について対象法人の追加や調査項目の見直しを行ったほか、民間調査機関からのヒアリングにつきましてその対象を追加するなど、見積り精度の向上に向けて鋭意工夫を重ねてきたところでございますが、今後とも適切な税収見積りを行うべく、より一層努力してまいりたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(坂口力君) 川橋議員にお答えを申し上げたいと思いますが、年金福祉施設につきましてのお尋ねでございました。先ほど総理からも御答弁をいただいたとおりでございますが、グリーンピアにつきましては、民間の類似施設の普及等によりまして一定の役割を終えたとして、平成十七年度までに廃止することが既に決定をされております。これまで各施設が貴重な年金資金を用いた資産でありますことや地域で果たしてきました役割等を踏まえまして、地域で有効に活用していただけるように地方公共団体への譲渡を進めるのが妥当であると考えております。今後とも、引き続きまして十七年度までの譲渡に向けて取り組んでまいりたいと思います。
また、年金の福祉施設につきましては、総理からの御指示もございます。年金制度の厳しい財政状況や国民のニーズの変化等を踏まえまして、その在り方について徹底的な見直しを早急に行いたいと考えております。
見直しに当たりましては、年金の福祉施設が年金資金を用いて設置されたものであることから、できるだけ年金財政に貢献できるようにすることが重要であると考えているところでございます。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(竹中平蔵君) 川橋議員から一問、雇用面における今後の見通しなどにつきお尋ねをいただきました。現下の雇用情勢は依然厳しいものの、平成十四年度と比較しまして失業率が低下し有効求人倍率が上昇するなど、改善の動きが見られております。政府経済見通しにおきましても、完全失業率は平成十四年度に比べまして、十五年度、十六年度と徐々に改善すると見込んでおります。一方で、産業構造の変化に伴いましてサービス経済化が進行しつつある、また、国民の価値観の変化に伴いまして働き方についても多様化が見られております。
政府としては、こうした状況も踏まえまして、今後とも、雇用の更なる改善を図るべく、民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、サービス分野を中心とした新たな雇用機会の創出など、雇用対策に全力を挙げてまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣河村建夫君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(河村建夫君) 私には、フリーターの再教育についてのお尋ねをいただきました。約二百万人と言われますフリーターの中には、定職を持たず自由な立場でいたいと思っている者も存在しておりますけれども、正規雇用を目指しているにもかかわりませず様々な事情によってフリーターになっている、この者が多いと考えられます。このような正規雇用を目指すフリーターが、知識、技術等を身に付けて自らの可能性を高めるチャンスを得られるように支援をしていく、これは大事なことだと、こういうふうに考えております。
このために、文部科学省といたしましては、若者自立・挑戦プランを推進していく中で、専門学校、専修学校などを活用いたしまして、ITそれから福祉等の分野で企業のニーズを踏まえた短期教育プログラム、これを開発、導入、進めております。また、学びながら働く人のために、就業を組み込んだカリキュラム編成を行う日本版デュアルシステムの開発、導入、総理からもお答えがあったところでありますが、こうしたことを通じて雇用につながる教育を推進してまいりたいと考えております。
また、これらの施策に加えて、学校教育における勤労観、職業観の醸成。最近、若者たちは就職してもすぐ離職するという指摘もございます。額に汗することの働く貴さというものを教える、あるいは勤労体験学習の推進を通じてフリーターの増加傾向の転換を図ってまいる所存であります。(拍手)
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#16
○議長(倉田寛之君) 山本香苗君。〔山本香苗君登壇、拍手〕
#17
○山本香苗君 私は、公明党を代表し、平成十四年度決算及び当面する重要課題につきまして、総理並びに関係各大臣に質問いたします。今回、会計検査院より提出されました平成十四年度決算報告は、小泉総理の下で編成されました予算の執行状況を検査したものです。この中で、税金の無駄遣いが約四百億円になることが指摘されております。これは過去二十年で最悪、前年と比べて六四%アップした金額です。しかも、会計検査院の検査は、すべての会計経理を検査しているわけではなく、一部を抽出して検査するものであります。一部の検査でさえもこれだけの無駄が指摘されているということは、ずさんな予算執行の横行が危惧されます。
総理は予算執行の最高責任者としてこの結果をどう受け止められていますか。総理の明快な答弁を求めます。
次に、内部監査体制についてお伺いいたします。
今回の報告に、各地の検察庁が電話の割引制度を適切に使わなかったことによって約一千万円を余計に支払っていたことなどが指摘されております。これらは本来、各省庁内部でチェックすべきことで、会計検査院が乗り出すまでもありません。しかし、各省庁内の内部監査体制はといえば、昨年の決算報告で既に指摘されているとおり、内部に独立した監査機構を置いているのはわずかで、監査の対象となる会計担当課内の組織又は職員が監査も担っている、つまり監査する方とされる方が重なるケースが多く、有効に機能しているとは言い難い状況です。ちょうど一年前の本会議でこのことを我が党の山下栄一参議院議員が指摘いたしました。その際、総理は、内部監査体制の構築が重要な課題と認識していると、検討を急ぐ姿勢を示されました。
そこで、総理に改めてお伺いします。総理は、この一年間、内部監査体制強化のために具体的にどういった手を打たれたのでしょうか。具体的な答弁をお願いいたします。
本来、決算書は、次の予算編成に反映するために、予算年度を終えた年の秋には国会に提出されていなくてはなりません。総理は、昨年六月十六日、平成十五年度決算から十一月二十日前後に提出が可能となるよう努力しますと答弁され、今年よりも約二か月早い提出を約束されております。総理は、この約束を守る意思がありますか。また、単に守る意思があるだけでなく、実際守れるのでしょうか。総理の力強い答弁を求めます。
次に、各論に移ります。
我が党は、向学の志がありながら経済的な事情で学業を続けられない学生を救済したいと、日本育英会の奨学金事業の拡充に全力で取り組んでまいりました。その結果、来年度予算においては無利子、有利子合わせて貸与枠が九十六万五千人と、百万人の大台が目前となっております。
他方、奨学金事業において、年々返還金の滞納が増え、約四百四十四億円が回収不能になると試算されております。就職できないなど、やむにやまれぬ事情がある場合はともかくとしても、返す能力があるにもかかわらず返さないというのは、社会の善意を裏切ることになり、奨学金制度の根幹を揺るがしかねません。極めて残念なことです。
日本育英会は、今年四月一日、独立行政法人化され、日本学生支援機構となります。新たな組織にこの不良債権を持ち込ませないよう、また新たに不良債権を生み出すことのないよう、早急に手だてを講じなければならないと思いますが、文部科学大臣に具体的な改善策についてお伺いいたします。
遠山前文部科学大臣は、昨年の日本学生支援機構法案の審議の際、「現在の奨学金事業というものをしっかりと引き継ぎ、そしてできるだけこれは更に充実をしていきたいというのが今回の独立行政法人化に際しての私どもの考え方でございます。」と答弁されています。当時、河村大臣は副大臣でいらっしゃいましたが、大臣となられた今も、奨学金事業を更に拡充させていくというお考えにお変わりはございませんでしょうか。河村文部科学大臣の御所見及び御決意をお伺いいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
次に、信用保証制度についてお伺いいたします。
今回の報告で、信用保証制度を利用した融資の貸倒れ急増に伴い、中小企業総合事業団の保険収支が赤字で、毎年数千億円の税金を穴埋めに投入せざるを得ないという事態が指摘されております。こうした事態は一刻も早く改善しなくてはなりません。
とはいえ、この制度は、金融機関からの貸しはがしや貸し渋りにより資金繰りに苦しむ中小企業の多くを救ってきた実績がございます。もしこの制度がなければ、中小企業の倒産はもっと深刻になっていたのではないでしょうか。ようやく景気に回復の兆しが見えてきたといっても、中小企業はまだまだ苦境に立たされております。日本経済の屋台骨である中小企業の活性化なくして、日本経済の再生はない。
今後、信用保証制度を活用した各種制度の更なる拡充を図るためにも、今回の会計検査院の指摘をしっかりと受け止め、早急に具体的な手だてを講ずるべきだと考えますが、中川経済産業大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、逮捕・拘留中の議員の歳費についてお伺いします。
私は、逮捕・拘留中の議員の歳費は凍結すべきだと考えております。働いてないのに給与がもらえる。国民の側からすると全く理解できないことです。総理は、この問題について、昨年の決算委員会で、我が党の風間、荒木両議員の質問に答え、率直に言っておかしいと思う国民が圧倒的多数だ、今までの方法がいいかどうかもう一度議論する価値がある、また各党で協議する価値のある提案と答弁されております。あれ以降一年近くがたちます。しかし、この問題は何も進展しておりませんし、国民の不満も高まるばかりです。
総理は、自由民主党の総裁でもあります。自民党の総裁として強力なリーダーシップを発揮し、この問題を早期に解決するお考えがあるのかないのか。総理の前向きな御答弁をお願いいたします。
最後に、重要課題といたしまして、集団的自衛権についてお伺いいたします。
安倍晋三自民党幹事長は、一月二十七日、産経新聞のインタビューに答えて、集団的自衛権の扱いについては、行使は許されないとする政府解釈を変更すべきだと集団的自衛権の政府解釈の見直しを主張されております。
他方、昭和五十八年二月二十二日の予算委員会で、角田内閣法制局長官は、集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考えがあり、それを明快にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然取らざるを得ないと思いますと明快に答弁しております。また、この予算委員会に同席していた時の外務大臣、安倍晋太郎外務大臣と谷川防衛庁長官も、法制局長官の述べたとおりでありますと答弁しております。
そこで、総理に改めてお伺いします。
総理は、集団的自衛権の行使が憲法解釈の変更で認められるという安倍幹事長と同じお考えなのか、あるいは従来の憲法改正という手段を取らなければ認められないというお考えなのか、どちらのお考えなのか、明快な御答弁をお願いいたします。
以上の質問につきまして、総理並びに関係各大臣の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#18
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山本議員にお答えいたします。会計検査院の検査結果についてですが、平成十四年度決算検査報告では、不正な経理や財政資金が有効に活用されていない事案などを含め三百三十七件の報告事項が掲記され、指摘金額は約四百億円となっているところです。前年度に比べ件数、金額ともに増加していることは、会計検査院の検査の成果という面もありますが、政府としては、誠に遺憾であると考えており、検査結果を十分に踏まえ、徹底した事務事業の見直しを図るなど、今後の予算編成に的確に反映するとともに、会計規律の保持など適正な予算執行に一層努めてまいります。
内部監査体制の強化でございますが、国民に信頼され、より一層効果的かつ効率的な行政運営を推進していく観点から、行政の内部監査が的確に機能する体制を構築していくことは重要な課題であると認識しております。
各府省においては、会計検査院の指摘等を踏まえ、内部監査の客観性、公正性の確保の観点から、会計監査計画の策定、監査マニュアルの整備、監査報告の作成などの具体的な取組が進められているものと承知しております。今後とも、各府省において、これまでの取組を評価しつつ、内部監査の更なる充実を図っていくべきものと考えます。
決算の早期提出についてでございますが、決算結果を予算編成に反映させる見地からのみならず、決算の効果的な審議をお願いするためにも政府として努力すべき課題であると思います。
昨年五月の参議院の要請を踏まえ、平成十五年度決算から、決算事務の電算化を進めるなど工夫を凝らし、会計検査院とも協力しつつ、今年の秋から十一月二十日前後に提出が可能となるよう努力してまいります。
逮捕・拘留中の議員の歳費凍結についてでございますが、前向きな議論がなされていることについては私も賛成でございます。有権者の信託を受けた国会議員の地位に直接かかわる問題であり、今後、国会の各党会派の間で十分に議論していただくべきものであると考えております。
集団的自衛権と憲法の問題ですが、現行憲法施行後の国際情勢の推移を踏まえて、集団的自衛権と憲法の関係について様々な議論があることは承知しております。憲法上の問題について、だれもが受け入れる状況の変化の中で時間の経過とともに制定時とは異なる憲法解釈が定着していくというものであれば、解釈の変更も一つの問題解決の方法となり得るものであると考えております。
しかし、解釈変更の手段が便宜的、意図的に用いられるならば、従前の解釈を支持する立場を含めて、解釈に関する紛議がその後も尾を引くおそれがあり、政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念されます。その意味で、私としては、憲法について見解が対立する問題があれば、便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋だろうと私は考えております。
いずれにせよ、政府の憲法解釈は今まで一貫してまいりましたし、これまで積み重ねてきた議論を尊重したいと思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣河村建夫君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(河村建夫君) 日本育英会の独立行政法人への移行に際しての奨学金の不良債権の改善策についてお尋ねでございました。奨学金は、返還された奨学金を後進育成のための資金として循環運用する制度でありますから、滞納額が増えるということは、これは重大な問題であると認識をいたしております。
このために、日本育英会の独立行政法人移行に当たりましては、貸倒引当金の適切な計上や自己資本の活用などによる不良債権のまず償却に努めること、第二点として、口座引き落とし方式による返還や滞納者に対する電話督促の徹底などによって返還金回収業務の強化に努めて、独立行政法人日本学生支援機構の財政基盤の改善を図ってまいりたいと、このように考えております。
もう一点、日本育英会の独立行政法人移行後においても奨学金を充実すべきであると、こういう御指摘を、御意見をいただきました。
奨学金事業につきましては、学ぶ意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく安心して学べるようにと、これまでも毎年充実を図ってまいりました。山本議員を始め公明党からも強い御要請をいただいてきたところでございます。これに私はこたえるべく、平成十六年度予算におきましても格別の増額を図ってきたところでありまして、独立行政法人日本学生支援機構への移行後におきましても、経済的理由によって修学ができない、こういう学生があってはならぬと、こういう考え方の下で、学生支援のために一層の充実に努めてまいりたいと、このように考えております。(拍手)
〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(中川昭一君) 信用保証制度についてのお尋ねでございますけれども、当省といたしましては、厳しい状況にある中小企業の資金調達の円滑化を図るため、信用補完制度を積極的に活用してきたところであります。セーフティーネット保証の実績は、累計で三十二万件、五兆二千億円、借換保証制度の実績は、累計三十六万件、五兆四千億円に達しております。一方、信用保険収支は非常に厳しい状況となっております。このため当省といたしましては、信用保険制度の運営基盤を強化するため、昨年四月より保険料率を〇・三%引き上げ、また平成十四年度補正予算で二千十億円、平成十五年度補正予算と十六年度予算案で合わせて九百七十二億円の信用保険準備基金への出資金を手当ていたしました。
また、信用保証協会の設立したいわゆるサービサーの活用を含む、中小企業者の実績に即した適切な回収の推進等に取り組んできたところでございます。議員御指摘のように、この制度の有効性は高く、今後とも信用補完制度の運営基盤の強化に取り組み、本制度の積極的な活用に努めてまいる所存でございます。(拍手)
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#21
○副議長(本岡昭次君) 大沢辰美君。〔大沢辰美君登壇、拍手〕
#22
○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表して、二〇〇二年度決算及び当面する重要課題について総理に質問をいたします。改革断行予算と銘打って小泉内閣によって編成された二〇〇二年度予算は、結局は、医療費を始めとする社会保障の本格的な改悪と国民負担増に踏み出し、低迷する個人消費に冷水を浴びせたばかりか、国民の生活不安を一挙に増大させるものでした。
今、政府は、景気は着実に回復していると言っていますが、国民の実感とは大きく懸け離れています。輸出大企業などの収益が急増している一方で、国民の暮らしは、勤労者世帯の年収が小泉内閣のこの約三年間で四十三万円も落ち込み、内閣府の世論調査でも生活に不安を持つ人が史上空前の六七%にも達しています。
中小企業も依然厳しい状況にあります。兵庫県にある中兵庫信用金庫が昨年十二月に実施したアンケートでは、業績について、回復を見込んでいる企業が八・二%に対して、悪化を予想している企業が六〇・五%と、圧倒的な企業が厳しい見方をしています。
そもそも、この間の大企業の収益は、輸出の伸びと国内でリストラと下請たたきを続けた結果なのです。しかも、幾ら利益があっても、大企業は一向にリストラ、賃金の引下げをやめようとしません。これでは、政府の言うように大企業の利益が雇用、所得の増加を通じて家計に波及するはずがないではありませんか。
総理、結局、あなたの構造改革は、大企業だけを栄えさせ、国民の暮らしと中小企業を痛め付けてきただけではありませんか。総理の認識を伺います。
全国の中小業者で作っている全国商工団体連合会の調査では、昨年、売上げ、利益をともに減少している業者が七割を占めています。とりわけ今、中小零細業者にとって重い負担になっているのが消費税です。売上げが伸びず、親企業による値引きや過当競争で、今多くの中小零細業者は消費税を転嫁できずに身銭を切って納税しています。こういう現場の実態を知るならば、四月から実施しようとしている免税点の引下げや簡易課税方式の縮小は中止すべきではないでしょうか。
今大切なことは、国民の暮らしや中小企業を応援する政治に転換することです。そのこと抜きに日本経済が本当に回復に向かうことなどできないのは、もはや明らかではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
次に、小泉内閣による医療費の国民負担について質問をします。
一昨年十月に実施されました高齢者の医療費の窓口負担の大幅引上げ、続いて、昨年四月からは健康保険本人の負担を一挙に一・五倍に引き上げました。
兵庫県保険医協会が昨年秋に行ったアンケート調査によれば、健康保険本人や家族の窓口負担が増えた結果、医療機関に掛からないようにしているとか、受診回数を減らした、薬や検査を減らしてもらったなどの受診抑制をしていると回答した人が過半数に達しているのです。しかも、そのうち八割の人が今後の病状や健康について不安を感じると答えています。そして、回答者の七割余りの方が健康保険本人三割負担を二割負担に戻すよう求めています。
一昨年十二月の決算審査で私も取り上げましたけれども、慢性気管支炎などの患者が受けている在宅酸素療法の中断、高血圧症や糖尿病など、適切な治療を受けていないと重病化する危険性が高い病気の患者が受診抑制を強いられている実態です。国民に適切な医療を保障するために、サラリーマン本人への三割負担など、この間に引き上げられた医療費を元に戻すべきではありませんか。
また、昨年十月には難病医療費の自己負担が見直しされました。患者団体の調査では、六割の方が負担が増えたと答えているんです。
さらに、今年は、これまで全額公費負担だった小児慢性特定疾患の子供たちの治療費に自己負担が導入されようとしています。慢性疾患の治療は長期で継続性が求められます。小児期発症インスリン依存型糖尿病の中学生の子供さんを持つ母親は、医療費の負担は治療の中断、検査の先延ばしを引き起こしかねない、この子はインスリンがなければ生きていけないんですと訴えています。
総理、あなたは子供たちにまで命の危険を伴う痛みを押し付けるのですか。小児慢性特定疾患の治療費自己負担は直ちに中止すべきです。答弁を求めます。
今、兵庫県内で特別養護老人ホームに入所を申し込み、空きがないなどの理由で入所の順番を待っている方が延べ二万三千人以上もいます。ところが、小泉内閣のいわゆる三位一体改革で、特別養護老人ホームの建設に対する補助金が一挙に三割も削減されようとしています。この結果、自治体の整備計画は混乱しています。建設予定の事業者は計画の全面見直しを余儀なくされて、申請を取り下げざるを得ない事態まで出ているんです。順番待ちをしている待機者の家族の間にも不安が広がっています。緊急に打開策を講じる必要があります。答弁を求めます。
これらの財源には、無駄な支出にきっぱりとメスを入れれば、医療や福祉を支える財源は作ることができます。また、総理もかつては公約に掲げた道路特定財源の一般財源化など、予算の使い道を抜本的に組み替えれば、消費税の増税などしなくとも社会保障の財源を生み出すことは可能ではないですか。答弁を求めます。
最後に、自然災害の被災者に対する国の責務と支援について質問します。
一九九五年、阪神・淡路大震災で、四十六万世帯を超える住宅が全半壊し、家屋の倒壊などの地震被害によって六千四百三十三名が犠牲となりました。
被災直後にわらをもつかむ思いで災害援護資金を借りた五万六千人の被災者の半分以上がまだ返済をできていないんです。建て替えをした自宅の二重ローンが払えず、我が家を手放さざるを得ない人も出ています。災害復興公営住宅でも六十五歳以上の高齢者の世帯比率が六割を超えています。そして、その中で家賃補助が切り下げられ、家賃を払えずに強制退去させられる被災世帯も増えているんです。また、中小企業の営業を困難にしている大本に震災直後の借入れが重くのし掛かっています。
私にとって震災は昨日のことなのですと、娘さんを亡くされた母親は語っています。心も暮らしも元に戻っていないのです。これが実態です。十年目で震災の区切りどころか、大震災はいまだ終わっていないのです。必要な被災者対策を国が責任を持って続けることこそ政治の責任と役割ではありませんか。それとも総理は、被災者の苦難は既に解消しているという認識でしょうか。答弁を求めます。
阪神・淡路大震災の教訓を生かして、二度と同じ過ちを繰り返さない、このことも厳しく問われています。地震によって住宅が倒壊しなければ多くの人の命は救えたのです。また、住宅という生活の基盤を一日も早く再建することが、被災者の自立を促し、そして地域の再建を進める一番の近道なのです。ところが、政府は、個人の住宅などの私有財産には税金は入れられないというかたくなな態度に今なおしがみついています。今国会に政府が提出している被災者生活再建支援法の改正で、居住安定支援制度を創設し、支援金を増額していますけれども、肝心かなめの住宅の建て替えや補修のための直接の工事費はあえて支援の対象から外しています。どうして被災者の皆さんが一番使いたいということをわざわざ支援の対象から外すのでしょうか。このことこそ支援すべきではありませんか。
災害を未然に防止し、被害を最小限に食い止めることに政治の責任があります。総理の明快な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#23
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 大沢議員にお答えいたします。構造改革は国民の暮らしと中小企業に痛みを強いるものであり、経済財政運営の方針を転換すべきではないかとのお尋ねであります。
私は、改革なくして成長なし、デフレの克服と経済の活性化を目指し、雇用・中小企業のセーフティーネットには万全を期しつつ、金融、税制、規制、歳出の改革を全力で進めてきたところであります。この方針に変わりはありません。
こうした中、日本経済は、企業収益が改善し、設備投資が増加するなど、国主導の財政主導に頼らなくても民需が主導する形で着実に回復しております。また、不良債権処理の着実な進展、動き出した構造改革特区、最低資本金特例を利用した起業の活発化など、多くの国民の努力によって改革の芽は着実に現れつつあります。これまでの改革の成果を地域や生活の現場にも浸透させるとともに、引き続き改革を進め、民間主導の持続的な経済成長を図ってまいります。
消費税の免税点制度や簡易課税制度についてでございますが、平成十五年度税制改正で措置した消費税の免税点制度や簡易課税制度の適用上限の引下げは、消費税に対する国民の信頼や制度の透明性を向上させる観点から行ったものであり、着実に実施することが必要と考えております。
なお、事業者が円滑かつ適正な価格への転嫁を行うことができるよう、今後とも広報、相談等に取り組んでまいります。
医療費の窓口負担についてでございますが、自己負担の引上げに当たっては、必要な受診が抑制されないよう、患者負担に一定の歯止めを掛け、特に低所得者については自己負担限度額を据え置くといった配慮を行っているところであります。
小児慢性特定疾患については、糖尿病などの小児慢性特定疾患に関する治療研究事業については、対象年齢の引上げや対象疾患の拡大など、全体として制度の充実を図りつつ、他の公費負担医療制度との均衡から、一部自己負担を新たに求めることとしております。その際、子育て家計への負担を考慮し、市町村民税非課税世帯には負担を免除するなど、低所得者に十分な配慮を行うこととしております。
特別養護老人ホームの建設でございますが、十六年度予算では、新規事業は前年度の三分の二程度と見込んでいるものの、前年度からの継続事業も含め、介護施設全体の整備費としては前年度とほぼ等しい九百三十一億円を計上しているところであります。これらの事業を通じ、十六年度を最終年度とした目標整備量は達成できる見込みであり、介護施設の整備について支障はないものと考えております。
予算の使い道の組替えについてでございますが、十六年度予算においては、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出を厳しく抑制する中、社会保障については将来にわたり持続可能で安定的、効率的な社会保障制度を構築する観点から、年金制度改革、診療報酬、薬価等改定等を行うとともに、国民の安心を確保する観点から各般の施策を推進することとし、プラス四・二%と大きな伸びとなっております。
また、道路特定財源については、平成十六年度においても受益と負担の観点から納税者の理解を求めつつ、使途の多様化を図っているところであります。
従来から繰り返し申し上げているとおり、消費税率は引き上げる考えはありません。
阪神・淡路大震災の被災者支援についてでございますが、阪神・淡路大震災の被災者の中には依然として様々な問題を抱えている方々もおられることから、その経済的自立を支援するとともに、精神面でのケアの充実を図るため、引き続き、地元地方公共団体、地元住民と一体となって残された課題に取り組んでまいります。
居住安定支援制度についてでございますが、今回の改正案は、解体撤去費やローン利子など、被災者が住宅を再建、補修する際に現実に負担する経費を幅広く対象としており、私有財産である個人住宅への支援について様々な議論がある中で、可能な限り公助としての支援の充実を図るものであります。(拍手)
─────────────
#24
○副議長(本岡昭次君) 又市征治君。〔又市征治君登壇、拍手〕
#25
○又市征治君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました二〇〇二年度決算に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。昨年の決算審議で、私は、三百六十九兆円にも上る特別会計を通じた国費の乱脈システムを抜本的に改めることを強く求めました。現に産業投資特別会計を始め、経由して数兆円の一般財源が特殊法人等へ出資されるなどし、これが焦げ付き、最後は法人解散という形で毀損されてしまったケースは会計検査院も指摘をするところであります。同時に、この資金の流れが高級官僚の天下りシステムと表裏一体になっていることも大きな問題であります。
総理は、昨年、こうした私の質問に対し、特別会計は国会で厳しく審査されない、あるいは透明性に欠けるという指摘はもっともだ、全面的に見直しを指示していると答えられました。その後、特別会計の透明化、存立意義の見直し、一般会計への再統合はどう進んだのか。十一月の答申や今回の予算を見たところ、細々とした改善は盛り込まれておりますが、三十を超える特別会計の数を減らすことすら明示をされておりません。
特に、道路整備など公共事業関連の五つの会計は、特定財源があることを理由に設置されていますが、実際には一般財源を囲い込んで聖域化する役割を果たしており、公共事業見直しに合わせて当然整理すべきであります。特定財源を明記することは一般会計の中で十分できることであり、現に地方自治体にはすべてこのように扱うことを義務付けているではありませんか。
そのほか、指摘した電源開発特別会計など、不透明かつ各省官僚によって既得権益化された特別会計が多くあります。一つ一つの存立意義を見直して、一般会計に再編するなど、今後どう透明化を進めるのか、改めて総理及び財務大臣にお伺いをいたします。
次に、今、国民の年金や雇用保険の資金で行ってきた施設事業に対して国民の批判が強まっています。その根底には、政府が今回、基礎年金の国庫負担二分の一の実施を大幅に遅らせながら、保険料の引上げと給付の引下げを提案していることがあります。景気は回復基調と言われますが、それは一部の大企業や輸出関連部門に限られており、勤労者はリストラや解雇、低賃金、不安定な雇用に苦しむ中でこの年金の改悪ですから、その批判は当然でしょう。
雇用保険についても同様で、失業率は二十五歳未満の男性で昨年平均一一・六%と高率が続き、給付の原資が厳しい中、昨年、弾力条項が法的に解禁され、危機感が強まっているのです。
そこで、総理及び厚生労働大臣にお尋ねをいたします。
第一に、保養施設等の乱造は、年金を原資とした施設で一兆五千億円以上、雇用保険を原資とした施設で四千五百億円にも上ります。なぜ保険料の一部を施設建設に固定的に割り振り、社会保険庁や雇用促進事業団が直営で行ってきたのか。また、政府は、保険事業の本務でない施設事業に承認を与えてきたことや、リゾート法などによる誘導や各種の助成をした責任をどう総括をされているのか、明らかにいただきたいと思います。
あわせて、当時の事業団等の経営陣は、歴代、天下り官僚です。企業的視点から見た場合、これらの人々の経営責任はどう取られるのでしょうか。郵政事業などでは経営者責任を厳しくせよと主張されている総理の見解をお伺いをいたします。
第二は、しかしそのことの解明と、他方で今自民党が盛んにおっしゃっている直ちに売却せよという主張とは全く別問題であります。売却論はむしろ経営責任を隠ぺいするものと言わざるを得ません。
過日、旧スパウザ小田原を視察をしましたが、四百五十五億円で建設された超豪華施設が、わずか六年後には五十分の一以下の八億円余りで売却をされ、しかも売却の条件であった公共性の維持及び従業員の雇用維持も守られてはおりません。
価額を極端に低くして売却を急ぐことは、新たな不正や利権を招き、会計検査院の不当事項ともなり得ます。公共性などの条件を厳密に確保し、中期的に適切な処分の時期を計るべきで、それがひいては国民の財産を生かすことではないのですか。明快な答弁を求めます。
以上、二〇〇二年度決算審議の皮切りの質問といたします。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#26
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 又市議員にお答えいたします。特別会計の見直しについてでございますが、昨年来すべての特別会計を対象として事務事業等の見直しを徹底的に進めるなど、総ざらい的な検討を実施しております。
この結果、十六年度予算においては、事務事業の廃止、縮減のみならず、一般会計からの繰入れの縮減や借入金の縮減など様々な見直しを進めており、これら性格の異なる様々な削減について単純に合計すれば五千億円以上の見直しを行ったところであります。また、企業会計に準じた新たな財務書類の作成など、透明性の向上に向けた取組も着実に進めています。
今後とも、特別会計については、分かりやすく説明することにも留意しつつ、その徹底した見直しを進めてまいります。
年金及び雇用保険の福祉施設についてでございますが、被保険者に対する福祉還元の充実を図るべきとする当時の国会附帯決議や地方自治体等からの設置要望などを踏まえ、予算として国会の承認を得て建設されてきたところであります。
こうした点を踏まえれば、過去の事業団等の関係者の責任を問うことは困難と考えますが、各制度の厳しい財政状況等を踏まえ、これらの事業の抜本的な見直しを行うとともに、今後このようなことがないように改革を進め、国民の理解を得ていくことが何よりも重要と考えます。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(谷垣禎一君) 又市議員にお答えいたします。特別会計の見直しについては、既に総理から御答弁もございましたが、財務省としては、財政制度等審議会における総ざらい的な検討に基づく提言などを踏まえまして、十六年度から事務事業の見直しによる歳出の合理化、効率化、それから歳入歳出を通じた構造の見直し、企業会計に準じた新たな特別会計財務書類の作成など説明責任の強化の推進、それから区分経理を行う必要性についての点検といった具体的な見直しを進めていくこととしております。
今後とも、特別会計については、分かりやすい説明にも意を用いて、透明性を高めるとともに、徹底した見直しを進めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(坂口力君) 又市議員に御答弁申し上げたいと思いますが、年金の福祉施設につきましては、先ほども川橋議員に御答弁申し上げましたとおり、年金制度の厳しい財政状況あるいはまた国民のニーズの変化を踏まえまして、その在り方について徹底した見直しを行うことといたしております。年金の福祉施設は、保険料財源により設置されているものでありますことから、見直しに当たりましてはできるだけ年金財政に貢献できるようにすることが重要であると考えております。
また、勤労者福祉施設など既に売却の方針が決まっている施設につきましては、地方公共団体への譲渡を優先をして、施設をできるだけ公共的、公益的な施設として引き続き活用することにしたいと考えているところでございます。(拍手)
#29
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十一分散会