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2004/05/12 第159回国会 参議院 参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第20号
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2004/05/12 第159回国会 参議院

参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第20号

#1
第159回国会 本会議 第20号
平成十六年五月十二日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十号
  平成十六年五月十二日
   午前十時開議
 第一 地中海漁業一般委員会に関する協定の改
  正の受諾について承認を求めるの件
 第二 千九百九十二年の油による汚染損害の補
  償のための国際基金の設立に関する国際条約
  の二千三年の議定書の締結について承認を求
  めるの件
 第三 千九百七十三年の船舶による汚染の防止
  のための国際条約に関する千九百七十八年の
  議定書によって修正された同条約を改正する
  千九百九十七年の議定書の締結について承認
  を求めるの件
 第四 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する
  法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
  議院送付)
 第五 電波法及び有線電気通信法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国民年金法等の一部を改正する法律案、年
  金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年
  齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を
  改正する法律案(趣旨説明)
 一、日程第一より第五まで
 一、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一
  部を改正する法律案(衆議院提出)
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案について提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。坂口厚生労働大臣。
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(坂口力君) 国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明を申し上げます。
 まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 我が国は、急速な少子高齢化が進行しておりますが、国民の老後の生活設計の柱であります公的年金制度を将来にわたって揺るぎない信頼されるものとするべく、社会経済と調和した持続可能な制度に構築し、国民の制度に対する信頼を確保するとともに、多様な生き方及び働き方に対応した制度とするため、制度全般にわたりその根幹にかかわる改革を行うこととした次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、基礎年金の国庫負担割合につきましては、これを二分の一に引き上げることとし、平成十六年度からその引上げに着手し、平成二十一年度までに完全に引き上げるものとしております。
 第二に、国民年金及び厚生年金保険財政につきましては、将来の保険料水準を固定した上で、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入することとしております。
 第三に、国民年金の保険料額につきましては、平成十七年度から毎年度二百八十円ずつ引き上げ、平成二十九年度以降の保険料額を一万六千九百円とすることとしております。また、厚生年金保険の保険料率につきましては、平成十六年十月から毎年〇・三五四%ずつ引き上げ、平成二十九年度以降の保険料率を一八・三〇%とすることとしております。
 第四に、今後の年金額の改定につきましては、毎年度、賃金及び物価の変動率により行うことを基本とすることとしますが、五年ごとに作成する財政の現況及び見通しにおいて調整の必要があると見込まれる場合には、年金額の改定率に公的年金の被保険者数の減少率等を反映することとしております。
 第五に、在職老齢年金制度につきましては、六十歳代前半の在職者に対する一律二割の支給停止を廃止することとしております。また、一定以上の収入を得ている七十歳以上の在職者については新たに支給調整を行うこととしております。
 第六に、育児をする被保険者につきましては、厚生年金保険料の免除措置を子が三歳に達するまでに拡充すること等としております。
 第七に、厚生年金につきましては、離婚時等において、当事者の保険料納付記録を分割し、厚生年金の給付に反映させる制度を創設すること等としております。
 第八に、国民年金保険料の収納対策につきましては、所得に応じた多段階免除制度等の納付しやすい仕組みを導入するとともに、滞納処分等に関して被保険者に対する調査の規定の整備を行うこと等としております。
 以上のほか、障害基礎年金の受給権者が、六十五歳以降、老齢厚生年金等を併給することを可能とする等の所要の改正を行うこととしております。
 また、厚生年金基金等の企業年金や旧農林共済の特例年金等につきましても、所要の改正を行うこととしております。
 さらに、この法律案は衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。
 この修正案は、本法案の附則第三条を修正し、政府は、社会保障制度に関する国会の審議を踏まえ、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行いつつ、これとの整合を図り、公的年金制度について必要な見直しを行うものとすること、及び、このような公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行うものとすることを内容とする規定を追加するものであります。
 次に、年金積立金管理運用独立行政法人法案について申し上げます。
 この法律案は、特殊法人等整理合理化計画を実施するため、年金資金運用基金を廃止し、新たに年金積立金管理運用独立行政法人を設立しようとするものであります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、法人は、年金積立金の管理運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、年金事業の運営の安定に資することを目的としております。
 第二に、法人に運用委員会を置き、中期計画の審議等を行わせることとしております。
 第三に、法人の役職員に対し、職分に応じた注意義務、忠実義務等を課することとしております。
 また、年金資金運用基金において行われた大規模年金保養基地業務及び融資業務については、平成十七年度限りで廃止することとしております。
 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成十八年四月一日としております。
 次に、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 少子高齢化の急速な進行等を踏まえると、高年齢者が、少なくとも年金支給開始年齢までは意欲と能力のある限り働き続けることができる環境の整備が必要であります。
 このため、六十五歳までの雇用の確保、中高年齢者の再就職の促進等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、六十五歳までの雇用を確保するため、事業主は、平成二十五年度までに段階的に、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じなければならないこととしております。この場合、事業主は、労使協定等により継続雇用制度の対象者についての基準を定めることができることとしております。
 第二に、解雇等により離職する中高年齢者が希望するときには、事業主は、求職活動支援書を作成し、交付しなければならないこととしております。
 第三に、労働者の募集及び採用について、上限年齢を定める事業主は、求職者に対し、その理由を示さなければならないこととしております。
 第四に、シルバー人材センターは、届出により、一般労働者派遣事業を行うことができることとしております。
 最後に、この法律は、一部を除き、平成十八年四月一日から実施することとしております。
 以上、これら三法案の趣旨を申し上げたところでございます。
 よろしく御審議のほど、お願いを申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#6
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。武見敬三君。
   〔武見敬三君登壇、拍手〕
#7
○武見敬三君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案等年金三法案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 法案関連の質問に入る前に、先般、衆議院での審議の最終局面において、与党と民主党で、衆参両院に年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の在り方に関する小委員会、与野党での社会保障制度見直しの協議会の設置が決まり、そうした場で年金制度の一元化を中心に社会保障全般に関して議論されることの合意がなされたことを評価したいと思います。これにより、参議院での真摯な審議を経て、年金制度改革関連法案の今国会中の成立を期したいと思います。
 総理はかねてより、年金問題は長期的な課題であり、政権が替わることでその方針が変わることがあってはならない、与野党一体での合意形成が必要である旨を主張されておりました。今回の合意はまさしく総理のお考えとも一致するものと思いますが、総理はどのように御認識されていますでしょうか。
 さて、近年、少子高齢化が進展し、年金を始め社会保障制度全般において問題が深刻化しています。介護保険及び医療保険についても相当大胆な改革の必要性が認められます。これら各保険に年金制度を加えた社会保障全体を考えたとき、国民の自助自律と相互扶助をいかなるバランスで組み合わせ、負担と給付の在り方を考えたらいいのでしょうか。自助自律という考え方は極めて大切でありますが、困ったときに助け合う精神というものは社会保障の在り方を考えるかなめの精神であり、私は日本人の魂であろうと考えます。
 総理は、小泉構造改革の中でどのように社会保障の全般的な改革を位置付け、推進するお考えなのか、そして抜本的な年金制度改革を早期に実現しなければならない問題意識について分かりやすく御説明願います。
 今回の改正は、これまでの五年ごとの修正ではなく、長期的に年金制度を持続可能とするために、給付の下限と負担の上限を定め、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げることなどにより、年金制度が安定し、所得保障を通じて高齢者の生活の基礎的な部分を支える抜本改革であると理解をしています。
 今年の年金制度の抜本改正に向け、昨年来、政府、与党が正に一体となり、精力的に検討が進められてきました。最終的には、今年二月四日に与党年金制度改革協議会が「平成十六年年金制度改革について」を取りまとめ、政府によりこれが法案化されたものが今回の法案であります。その過程では、政府、与党の政策関係者と緊密に連絡を取り合いながら進められたと思います。
 総理は、年金制度の在り方に関して国民的合意を形成しつつ、高齢期でも安心して暮らせる社会に資するため、どのような制度上の工夫をされたのか、そして年金改革の実現に向けての過程をどう評価されているのかを伺います。
 今回の制度改革によると、将来の厚生年金の給付水準は現役世代の所得水準の五〇%以上が確保されます。ただし、この点に関しては、長期的な将来にわたり、本当に五〇%以上を維持できるのかという心配の声は消えません。
 そこで、厚生労働大臣には、長期的な人口構成を前提にして、給付水準が標準世帯で五〇%を確保できる明確で説得的な御説明を願います。
 加えて、この際の現役世代の所得水準は可処分所得を定義されているようでありますが、その定義で間違いないのか、確認いたします。
 今回の年金制度改革の議論を見ていても、年金制度は複雑で分かりにくいと思います。これは、我々政治家、また関係行政機関による国民への説明が簡潔、明瞭でないことも影響していると思います。
 政府としても、今回の年金改革の概要が分かりやすく国民に説明する努力をすべきであると思います。国民の将来不安を軽減するためにも、具体的にいかなる手段を用いて国民に説明をするのか、また年金相談窓口が大変混雑しておりますが、相談窓口の充実、またその在り方を含め、厚生労働大臣のお考えを伺います。
 各種のアンケート調査によると、国民の間で公的年金への不信感には高いものがあります。その具体的な証拠に、国民年金の未納率が平成十四年度には三七・二%といった高水準にまで高まっていることが挙げられます。この未納率の数字には、第一号被保険者として登録をしていない人は含まれていませんが、そうした人を加味すると更に未納率が高まります。厚生労働大臣は、国民年金の未納問題について、未納率の計算の仕方を含め、その背景をどのように認識し、今後どのように有効な対応を進めていくお考えなのか、御認識を伺います。
 厚生年金の負担に対する給付の倍率が世代によって大幅に違うことには問題があります。先般、厚生労働省が発表した試算によると、一九三五年生まれ、七十歳は負担額の八・三倍の給付を受けますが、この倍率は年代とともに低下します。そして、一九七五年生まれ、三十歳以降の世代は負担額の二・四倍から二・三倍の給付しか受けられないということになります。世代間の格差が存在するのはある程度致し方ないことでありますが、若人の年金不信を軽減するためにも、長期的には格差是正に向けた取組が必要と思われます。この点に関して厚生労働大臣の御所見を伺います。
 小泉総理は、在任中に消費税を引き上げないと公言されています。景気の状況を考えると致し方ない判断だろうと思います。しかし、中長期的な観点からは、年金改革など社会保障制度改革の中で財源をどう確保していくのか、また税制はどうあるべきであるのかは重要な政策課題であります。これに関して総理の御認識を伺います。
 次に、年金積立金管理運用独立行政法人法案に関して伺います。
 年金改革の本質が給付と負担の関係を長期にわたり安定させるものと理解していますが、給付の原資となる年金積立金の運用組織については、本法案によりしっかりと確立されねばなりません。本法案により、国民が安心できる年金積立金の運用がどのように図られることになるのか、また運用責任の所在をいかに定めているのか、厚生労働大臣の御所見を伺います。
 年金の保険料を財源に行われてきた事業の見直しが各方面で議論されてきました。もはや、年金財政には一円たりとも余裕はありません。自由民主党では、年金資金運用・福祉施設改革推進ワーキンググループが、厚生年金病院、それ以外の福祉施設など、例外なく年金福祉施設を見直し、整理合理化、売却を進めるといった厳しい方針を示しました。しかも、売却を円滑に進めるために、民間人も登用して清算のための独立行政法人を設置し、五年を目途に積極的に整理合理化を行うことにしています。政府としても、徹底的な年金の福祉施設事業の見直し方針に沿ってどのように具体的に実行していくのか、厚生労働大臣に御説明をいただき、またその御決意を伺いたいと思います。
 さらに、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案について伺います。
 我が国では高齢化が確かに進んでいますが、健康でかつ就業意欲の高い高齢者も増えています。意欲と能力のある限り、少なくとも年金支給開始年齢まで働ける環境を整備しておくことは大変重要です。政府として、高齢者の就業問題をどう認識し、この改正案によりどのような具体的案を講じることになるとお考えなのか、厚生労働大臣に御認識をお聞きします。
 最後になりますが、国会議員の国民年金の未納問題に関して一言申し述べておきます。
 国民に公的年金の必要性を説き、また高齢化社会の中で持続可能な制度にするための年金制度改革関連の法案を審議している最中にこの問題が顕在化し、国民の周知の事実となりました。国会議員として誠に襟を正すべきものと深く反省するとともに、今後そのような改善策を早急に整え、そして実行しなければなりません。与野党、衆参を問わず、国会議員としてのこの問題に真摯に取り組んでいくべきことであることは明らかであります。
 今後、参議院において、社会保障全体の在り方を踏まえ、年金三法案の審議を通じて国民の幅広い御理解を得る努力をしなければなりません。
 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#8
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 武見議員にお答えいたします。
 三党合意に関することでございますが、私は、かねてから、年金を始め国民の生活に大きくかかわる制度については、政権が交代するたびに見直すよりは、与野党の立場を超えて胸襟を開いて率直に協議していくことが望ましいと申し上げてまいりました。今般の三党合意は、年金の一元化問題を含めた社会保障制度全般の一体的見直しについて与野党の間で議論を行う方針を示したものであり、御指摘のように非常に有意義なものと考えております。
 社会保障の全般的な改革と抜本的な年金制度改革の早期実現についてでございますが、これまで我が国においては、皆保険、皆年金を中心に、国民の自助努力と相互扶助を適切に組み合わせながら運営されてまいりました。急速な少子高齢化が進む中で、このような世界に誇るべき社会保障制度を持続可能で安定的なものとして維持するための制度改革に取り組むことは、自助と自律の精神の下に、国民一人一人が安心して自らの能力や個性を十分に発揮できる活力ある経済社会の実現を目指す構造改革の重要な柱の一つと認識しております。
 こうした考え方に基づき、高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとして国民生活に不可欠な存在となっている公的年金制度について、給付と負担の長期的均衡を確保し、安定的な仕組みとすることにより、国民の年金に対する信頼を確保していくことが先送りのできない課題との認識の下に、今国会に年金制度改正法案を提出したところであります。
 この年金改正法案の内容と法案化の過程についてでございますが、まず、従来のように五年ごとに改正するのではなく、長期にわたって制度が維持できるように、給付の下限と負担の上限を定め、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるとともに、経済情勢や人口構成の変化に応じて給付と負担を自動的に調整する仕組みを定め、給付と負担の長期的均衡を確保することとしたところであります。
 法案の提出に当たりましては、政府、与党を含めた幅広い関係者の間で、今後一層の少子高齢化が見込まれる中での持続可能な制度の構築に向け、活発な議論がなされたと承知しており、そのような議論を経て提出された本法案の早期成立をお願いしたいと考えております。
 社会保障財源の確保及び税制の在り方についてでございますが、先般の与党税制改正大綱において、持続可能な社会保障制度の確立、地方分権の推進という課題に対応するため、個人所得課税や消費税を中心に、今後数年間の税制改革の道筋が示されました。
 今般の三党合意に基づく年金改革法の修正において、「政府は、社会保障制度に関する国会の審議を踏まえ、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行いつつ、これとの整合を図り、公的年金制度について必要な見直しを行うものとする。」とされたところであり、政府としては、この規定にのっとり、与党税制改正大綱も踏まえ、社会保障制度の見直しや三位一体の改革と併せ、中長期的視点に立って税制の抜本的改革に取り組んでまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(坂口力君) 武見敬三先生にお答えを申し上げたいと存じます。
 まず最初に、給付水準の確保についてでございますが、今回の改正案におきましては、保険料の上限を一八・三〇%としまして、将来推計人口の中位推計、二〇五〇年で合計特殊出生率を一・三九などと、一定の人口や経済などの前提の下に推計計算を行っているところでございます。
 平成三十五年、二〇二三年度におきましては、可処分所得の平均額に相当する現役男子の平均手取り賃金に対する標準的な年金額の比率で五〇・二%と推計を行っております。
 この推計に当たりまして、基準的なケースが前提にしている合計特殊出生率の一・三九%は国際的にも極めて低い水準であり、また、年率一・一%と見込んでおります実質賃金上昇率も、今後の人口減少を考えれば、経済全体の実質賃金で一%未満、〇・七%ぐらいと考えておりますが、誠に控え目な仮定でありまして、決して甘い数字の下に考えているわけではございません。
 その上で、人口でありますとか、賃金、物価等の変動の対応といたしまして、今回のこの改正案による調整で給付と負担の均衡を図っていけるような経済回復・発展や次世代育成支援対策に取り組んでいくことが重要であると考えているところでございます。
 年金改正案の国民への説明及び年金相談業務についてのお尋ねがございました。
 年金制度に対する信頼を確保するためには、国民の皆さんに今回の改正案の内容を御理解をいただくことが何よりも重要と考えております。そのためには、正に今国会で改正法案を御審議いただいているところでありますので、審議の中で提起されました問題につきましては分かりやすい説明に努めますとともに、年金制度改正の内容を紹介したパンフレットの配布、改正に対する資料のホームページ上での公開など、国民の皆さんに広く御理解をいただけるような取組を行っていきたいというふうに考えておるところでございます。
 年金相談の体制の整備でございますが、かなり混雑の激しい、厳しい社会保険事務所もあるわけでございますので、相談窓口の増設、そしてその分野におきます人の配置、年金相談センターの設置など、こうした体制整備を図りつつございますし、これからも進めていきたいと考えております。インターネットにおきます年金見込額の照会の受付など、年金相談体制の充実に努めてまいりたいと考えております。
 それから、国民年金の未納問題についてのお尋ねがございました。
 平成十四年度の国民年金保険料の納付率は六二・八%となっておりますが、御指摘のとおり、そのほかに推計で六十三万人程度の未加入者が存在することも事実でございます。この背景には、年金制度への不安や理解不足等から特に若い世代の納付状況が芳しくないこと、昨今の経済の低迷を背景といたしまして第一号被保険者の保険料負担能力が低下していること等が影響しているものと思います。
 未納者、未加入者の増加は、将来の無年金者、低年金者につながりますほか、制度の信頼を損ねるものでありますので、その解消は重要な課題と認識をいたしております。このため、国民年金につきましては、今後五年間で納付率八〇%の目標を設定いたしまして、未納者に対して戸別訪問等による地道な納付督励を基本としながらも、理解が得られない人に対しましては強制徴収を実施するなど、徹底した収納対策を実施していくことといたしております。また、今回の改正案におきましては、負担能力に応じたきめ細かな免除制度を導入するなど、制度的な面でも納付率向上に向けた対応を図ることといたしております。
 それから、給付と負担の世代間の格差についてのお尋ねもございました。
 年金制度における世代間の負担と給付の関係を見るに当たりましては、その背景に、昔の人は同居や仕送りで年を取りました両親の生活を私的に支えておりましたが、今日、それが公的年金に置き換わっていること、少子化と長寿化が同時進行することによって現役世代に掛かる扶養負担が高まっておりますこと、昔に比べて生活水準が向上し、実質的な保険料負担能力が高まっていることなどの要素を併せて考慮することが重要でありまして、年金制度における負担と給付の関係のみで世代間の公平、不公平を論ずることはできないものと考えております。
 その一方で、今後の制度設計に当たりましては、できる限り負担と給付の関係の格差が大きくならないことが世代間の公平の観点から求められるものと考えております。
 こうしたことから、今回の年金制度改正におきましては、厚生年金及び国民年金の保険料水準を平成十六年度以降段階的に引き上げる、また、課題でありました基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げにつきましても、引上げの道筋を明確に示すことで最終的な保険料水準をできる限り抑制することといたしております。
 給付面におきましても、今回導入いたしました国民年金、厚生年金共通の給付水準の自動調整の仕組みは、これからの年金をもらい始める方とともに、既に年金を受給している方についても適用することといたしております。高収入の七十歳以上の被用者につきまして年金の支給調整を行う仕組みの導入も盛り込んでいるところでございます。
 年金積立金の運用についてのお尋ねがございました。
 今回の改正は、年金積立金の運用に関しまして、より専門性を徹底した上で責任体制の明確化を図りますために、新法人の長に民間から資金運用の専門家を登用すること、学識経験者から成る運用委員会を開きまして、運用方針の検討や運用状況の監視を行うこと、グリーンピア業務でありますとか住宅融資業務を廃止をいたしまして、運用業務に特化すること、第三者機関によりますところの専門的かつ客観的な評価を受けることといたしまして、その結果を役員の報酬等に反映させることといたしているところでございます。
 年金の福祉施設の見直しについてのお話がございましたが、御指摘のとおり、例外なくこれを整理をいたしまして、国民の理解が得られるよう徹底した整理合理化を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 福祉施設の中には、厚生年金病院のように、多くの患者さんや、あるいはまた老人ホームに入居されている方の問題等、地域医療との関係も十分に配慮しなければならない点もあることは十分に考えていかなければならないというふうに思っております。
 また、整理をいたしますときに、期限を設けることにより、いわゆるたたき売りになるようなことのないよう、年金資金に貢献するよう努めなければなりませんが、それをもって遅らすということのないようにこれまた配慮をしなければならないと思っているところでございます。
 高齢者の就業問題に関します認識及び改正案の具体的内容についてのお尋ねがございました。
 少子高齢化の急速な進行でありますとか、年金支給開始年齢の引上げなどを踏まえますと、高齢者が意欲や能力のあります限り働き続けることができる社会の実現を目指す必要がございます。
 このため、高年齢者の雇用安定法改正案におきましては、定年の引上げ、継続雇用制度の導入によります六十五歳までの雇用の確保を図る、募集、採用時の年齢制限の是正を図りますなど、中高年齢者の再就職を促進する措置を盛り込んでいるところでありまして、こうした取組を通じまして高年齢者雇用対策の強化を図ってまいりたいと考えているところでございます。
 以上、御答弁を申し上げました。(拍手)
    ─────────────
#10
○議長(倉田寛之君) 山本孝史君。
   〔山本孝史君登壇、拍手〕
#11
○山本孝史君 ただいま議題となりました国民年金法改正法案等について、民主党・新緑風会を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 そもそも年金とは何か、公的年金の守備範囲をどこまでとするか、国民皆年金体制を維持するのか、今、公的年金にはその存在にかかわる根源的な問い掛けがなされています。
 参議院は良識の府、理性の府と期待されております。衆議院の審議で明らかにならなかった事項はたくさんございます。本院においては、有識者や年金受給者、保険料支払者など幅広く国民から意見聴取をするため、参考人質疑を数回は行いながら、慎重かつ充実した審議を行い、損得で語られる年金制度から納得できる年金制度へ、損得から納得の年金制度へ再構築する第一歩としたい、そうしなければならない、この民主党の決意をまず申し述べておきたいと思います。
 小泉内閣の七人の閣僚を始めとして国民年金保険料を納めていなかった国会議員が続出し、年金制度への不信を深め、政治への信頼を失墜させたことは誠に残念です。衆議院の本会議採決に当たって、未納期間があったにもかかわらず公表せず、国民に謝罪もしないままに賛成票を投じられた与党議員がおられるとすれば、政治家失格と言わざるを得ません。
 また、保険料納付の義務を果たしているのかの質問に、個人情報だと言い逃れ、しかも国会審議を優先させるために五日間も公表を遅らせた隠ぺい体質そのものの福田官房長官が辞任されたのは当然ですが、約二十一年間も未納であった中川大臣などが今も大臣の職にあるのは全く理解できません。小泉総理は、未納閣僚を今すぐ更迭すべきです。それが国民に保険料納付を求めた内閣や閣僚の責任の取り方ではないでしょうか。任命権者である小泉総理の明確な答弁を求めます。
 また、未納大臣の中川経済産業大臣、谷垣財務大臣、麻生総務大臣には、お辞めにならないのか、このまま居座るおつもりなのか、御答弁をお願いを申し上げます。
 政治への信頼を取り戻すために、各政党は、所属議員について年金保険料の納付状況を取りまとめて、本法案の委員会採決までに公表をすべきです。一説には、自民党は百五十名を超える未納議員がおられるようですが、総理には自民党総裁として、党所属議員の納付状況をなぜ公表されないのか、お尋ねをします。
 財務大臣には、御自身も未納期間があったとのことですが、その期間、まさか社会保険料控除は受けておられないでしょうね。念のためにお尋ねをいたします。あわせて、財務大臣の職責として、未納国会議員が社会保険料控除を受けていないかどうか調査すべきと考えますが、答弁を求めます。
 次に、三党合意と与野党協議機関についてお尋ねします。
 先に申し上げますが、民主党は政府案には断固反対であるとの態度は変わっておりません。このことは三党合意があっても変わりません。なぜならば、政府案は、現在の年金制度の体系を維持したまま給付を下げ保険料を上げるという、これまでの手法を繰り返す内容にとどまっているからです。ここ数年以内に行き詰まることは確実です。だれが喜んで穴の空いたバケツに水を入れるでしょうか。四割もの人が年金保険料の自主的な納付を期待することができない年金制度は、もはや破綻していると言っても過言ではありません。部分的な手直しのみで現行制度を延命させようとすることは、ただ時間を浪費するだけです。
 公的年金制度への不信を解消するためには、分かりやすくてシンプルな新たな年金制度を創設する以外に方策はありません。民主党は、そのような考えから年金制度改革推進法案を衆議院に提出し、所得比例年金と最低保障年金を組み合わせた新たな年金制度をスタートさせることを提案しました。そして、法案には、政治主導による年金改革を進めるため、衆参両院に年金改革調査会を設置することも盛り込みました。
 年金問題は、本来、国会で徹底した審議を行うべきです。ところが、自民、公明の両党は、数に物を言わせて、五年前の前回改正に続いて、今回も強行採決の暴挙に出ました。これでは国民から負託を受けた国会の責任が果たせません。参議院においては徹底審議が当然です。と同時に、年金改革は一、二か月で、国会審議で成し遂げられるものでもありません。
 我が党は、責任野党として一元化を含めた年金制度の抜本改革を実現するために、今回の合意を決断いたしました。これは、超党派議員による年金改革に情熱を注がれた故今井澄議員の遺言でもあると私は受け止めております。
 しかしながら、この与野党協議が密室での協議になったのでは国民不在になってしまいます。責任を持って各党を代表する国会議員が参加をし、学識経験者などに専門委員として参加を求めながら協議をする。もちろん、協議は公開をする。そして、政治主導で新しい年金制度を創設する。我が党は与野党協議機関をそのように考えていますが、総理も同じ御意見でしょうか。自民党総裁でもある総理には、与野党協議機関の構成やその運営に関してのお考えをお聞かせください。
 また、与党には、本法案の委員会採決までに与野党協議をスタートさせることを求めます。総理の決意をお聞かせをください。
 国会議員に未納者が出たことの背景には、議員の公的年金に対する関心の薄さがありますが、年金制度が複雑になっていることも原因です。
 一般に、会社員は厚生年金、公務員等は共済年金、自営業者は国民年金と、制度が就業形態によって縦割りになっていると理解されていますが、これは正確ではありません。昭和六十一年の基礎年金制度の創設に伴って、すべての国民がいわゆる一階部分と呼ばれる国民年金に加入することになりました。この一階部分の上に、会社員や公務員には二階部分として所得比例年金が乗っているのです。これが年金制度の姿です。すなわち、年金制度は縦割りではなく、横割りになっているのです。
 しかしながら、この国民共通であるはずの国民年金において、自営業者等の第一号被保険者、会社員や公務員の二号被保険者、会社員や公務員の妻、いわゆる専業主婦の三号被保険者と、被保険者は三タイプに区分され、就職や離職、転職の際には被保険者各自の責任において変更の届出をしなければならないため、未納や未加入が多数発生するという構造的欠陥があります。
 すなわち、国民共通であるはずの国民年金が就業形態によって依然として制度が縦に分かれたままに運営がされているのです。しかも、自営業者や厚生年金の適用されないパート、フリーターなどは定額の一万三千三百円の国民年金保険料を毎月支払いますが、低所得者には過重な負担であるため四割が未納という状態です。一方で、医師や弁護士など、一千万円を超える高額所得者にとっては一万三千三百円という比較的軽い負担で済んでいます。
 会社員は一三・五八%の厚生年金保険料を所得に応じて労使折半で負担していますが、申し上げたように、一階部分の国民年金と二階部分の厚生年金の双方の制度に加入しているにもかかわらず、保険料は一体のものとして支払をしています。そして、第三号被保険者は、自身では保険料を支払っていません。
 基礎年金は、給付の仕組みは確かに一元化されました。しかし、負担の仕組みは依然としてばらばらなんです。この保険料の不公平な負担構造を是正して、国民年金保険料をすべての国民が所得に応じて公平公正に負担することこそが今求められている抜本的な年金制度改革につながるものであると確信します。だからこそ、我が党は年金制度一元化を提案したのであります。
 自営業者の所得は正確に捕捉できないと答弁されますが、そのような答弁がまかり通ること自体が異常です。自営業者にも所得に応じて所得税や住民税を課税しながら、年金制度については所得が捕捉できないというのでいいのでしょうか。総理並びに財務大臣、厚生労働大臣の見解をお伺いをします。
 政府案が成立をすれば年金保険料は毎年上がり、現在よりも三割の負担増となります。一方、給付は一律に一五%カットされます。このような大改悪にもかかわらず、政府や与党は国民に対して明確な説明を行っておりません。これは国民に対する背信行為です。
 総理は、衆議院本会議で、公的年金としてのふさわしい給付水準の下限を、平均的な賃金で働いてきた被用者の専業主婦世帯の年金で見て五〇%と設定したと答弁されておられますが、この答弁は虚偽ではありませんか。給付水準五〇%は年金受給開始時のいっときのことであって、その後は年金受給期間が長くなるに伴って四〇%台の給付水準に落ちていくのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 なお、国家公務員や地方公務員共済には所得代替率によって給付水準を設定するという発想がありません。また保険料固定方式も導入されていないのですが、これらはなぜですか。財務大臣並びに総務大臣の御答弁を求めます。
 年金問題の本質は給付率よりも給付の実額であって、とりわけ基礎年金の給付額ではないでしょうか。政府案では、基礎年金にもマクロ経済スライドが適用される結果、一五%カットされ、四十年間保険料を払い続けた場合の給付額は現在の六万七千円弱から将来は五万七千円程度の価値しか持たなくなります。そのとき高齢者の基礎的生活を賄う費用は幾ら必要で、満額の基礎年金でその何割ぐらいが賄えるのでしょうか。現状と比較して御答弁ください。
 今後は、介護保険や医療保険、さらには税負担も増えることが考えられますが、そのような非消費的支出の割合は、基礎年金の満額に対して現在はどの程度であり、将来はどの程度になるのでしょうか。
 以上、厚生労働大臣の答弁を求めます。
 基礎年金の国庫負担率の引上げについてお尋ねします。
 財政審に提出された資料によれば、所得階級五千万円を超える者では二四・二%の者が、一千万円を超える者では二一・九%が公的年金の給付を受けています。このような高額所得者に対する基礎年金においても税金の割合を増やすことは妥当でしょうか。厚生労働大臣並びに財務大臣の答弁を求めます。
 厚生年金の保険料負担について総理にお尋ねします。
 これ以上の保険料引上げは更なる未納・未加入問題を引き起こすと考えるのが当然です。民主党は、国民年金にとどまらず、厚生年金も空洞化が進展していることを深刻に受け止めています。厚生年金の保険料は一五%が限度との主張が聞かれますが、総理の認識を伺います。
 無年金障害者の救済策については今国会の閉会までに結論を出していただきたい。厚生労働大臣の答弁を求めます。
 最後に、議場の皆様に申し上げます。
 年金改革はこの国のありようを決める大事業であります。そして、我々は国民の代表であります。すべてはこれからであります。年金改革について、これからのこの国のありようについて、この参議院において真摯に、真剣に、そして徹底的に議論しようではありませんか。
 民主党は全力で参議院での法案審議に取り組むとともに、安心できる新しい年金制度を必ず構築するとの決意を再度申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#12
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山本議員にお答えいたします。
 保険料の未納に関する閣僚の責任の取り方についてでございますが、福田前官房長官はけじめを付ける意味で辞職されたものであり、残念なことでありますが、他の閣僚には引き続き様々な課題に対しての閣僚としての職責を全うするように全力を挙げることでその責務を果たしてもらいたいと考えております。あわせて、今後こうしたことのないよう各人が十分に注意するとともに、先般の三党合意の内容を踏まえ、必要な対策を講じていくことが重要だと考えております。
 国会議員の年金保険料納付状況の公表についてでございますが、国会においても様々な議論があり、その公表について各党それぞれの判断により対応しているところであると承知しております。基本的には議員個々人の判断によるべきものと考えております。
 なお、今後の議論に当たっては、三党合意にある社会保障制度全般の見直し、年金の未納問題についての改善策など、より建設的な議論を期待しております。
 三党合意に基づく与野党の協議機関の在り方についてでございますが、社会保障全般の一体的見直しに関し、先日、自民党、民主党、公明党の三党が合意されたことは大変意義深いことだと考えております。
 この三党合意に基づき設置されることとなる与野党による協議会については、国会議員に加え有識者に委員として参加していただく方式や、委員は国会議員だけとするが随時有識者から参考意見を聞く方式など様々な形態があると思います。開始時期なども含め、与野党でまず協議していただくべきものと考えております。いずれにせよ、政府としては、与野党の決定に従い必要な協力を行う考えであり、与野党間で建設的な議論が進められることを期待しております。
 自営業者の所得把握についてでございますが、全国民を通じた一元的な所得比例年金を導入するためには、すべての被保険者について公平な保険料を賦課するための基礎となる所得をどうとらえるかが主要な論点であります。
 自営業者等の所得把握については、自営業者約一千万人に対し事業所得税を納付している者が約二百万人にすぎず、税法上の所得がないとされる者が多数存在する中で、公平かつ適正な保険料賦課の基となる所得の範囲をどのようにするかなど、幅広い議論を慎重に重ねていくべき問題と考えております。
 給付水準の下限についてでございますが、通常、老齢期の生活は現役期の延長線上にあることを踏まえ、現在の年金制度の仕組みにおいては、引退して年金を受給し始める六十五歳の時点においてはそれまでの賃金上昇を反映して年金額が算定され、それ以降は物価スライドによりその購買力を維持することとしております。
 したがって、これまでも、現役の平均手取り賃金と比較した給付水準については、引退して年金を受給し始める六十五歳の時点における割合で示してきており、この点は今回の改正においても同様でありますので、答弁の内容に問題があったとは考えておりません。
 なお、既に年金を受給している方について、受け取る年金額とその時々の現役世代の平均手取り賃金を比較すれば、徐々にその比率は逓減していくこととなります。高齢になるほど消費水準は低下する傾向にあること等も踏まえれば、高齢者の生活の安定が大きく損なわれることはないと考えております。
 厚生年金の保険料負担についてでございますが、今回の改正案では、厚生年金保険料の引上げについては、仮に現行制度のままで維持した場合、二六%程度まで引上げが必要なところ、将来の現役世代や企業負担が過大とならないよう配慮して、一八・三%と相当程度抑制を図ったところであります。
 保険料の引上げによって、確かに保険料を引き上げない場合に比べて企業や個人の負担は大きくはなりますが、企業にとっても年金は労働者の老後の不安等を解消することで活力ある経済活動の基礎となること、保険料を引き上げない場合、かなり大幅な給付の抑制が必要となるが、その場合の高齢者の消費に与える影響や現役世代の老親扶養負担が増加することなどを併せて総合的に考える必要があると思います。
 先般の三党合意にあるとおり、年金保険料については社会保障全体の在り方の検討状況や社会経済情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていく考えであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(坂口力君) 山本議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 まず、山本議員が最初に、損得から納得の制度へということをおっしゃいましたが、私も全く同じ思いでございます。
 自営業者の所得把握についてのお尋ねがまずございまして、総理からも御答弁のあったところでございますが、すべての被保険者につきましての公平な保険料賦課ベースとなります所得の把握が不可欠であることは御指摘のとおりだというふうに思います。
 しかし、現状から申しますと、先ほど総理からも御答弁がありましたとおり、第一号被保険者の中には税法上の所得がない者が相当数存在をいたしております。自営業に従事する人約一千万人の中で事業所得税を申告納税している人は約二百万人程度でありますから、こうしたことを考えますと、自営業者等につきまして現在の課税所得をそのまま所得比例の保険料の賦課ベースとした場合には、給与のほぼ全額を対象にしており、保険料にしておりますサラリーマンの方との間で大きな不公平が生じるというふうに思います。
 このような自営業者の所得把握の在り方について、税法上の所得も含めまして公平かつ適正な保険料賦課ベースとなります所得の範囲の定め方のルールの構築が必要でございまして、幅広い議論を十分に重ねていくべき問題であるというふうに思っているところでございます。
 基礎年金の水準についてお話がございました。
 基礎年金制度につきましては、全国民共通の給付として老後生活の基礎的な部分に対応した給付を行うものでありまして、現在の夫婦の基礎年金の水準の十三・二万円は、高齢者夫婦世帯におきます衣食住を始めとする老後生活の基礎的な部分をカバーする水準と思っております。
 改正法案におきまして導入することとしておりますマクロ経済スライドによります調整後の基礎年金の額を年金を受給し始めます六十五歳時点の年金額で見ますと、基礎となります経済等の諸条件の下で、夫婦二人で、平成三十七年、二〇二五年には、賃金上昇、物価上昇を加味した名目額で十六・五万円、物価上昇分を割り引いて十三・四万円という数字になります。平成六十二年、二〇五〇年をもう一つ同じ前提で申し上げますと、名目額で二十七・八万円、物価上昇分を割り引いて十七・六万円というふうになります。現在以上の基礎年金の水準は確保できるというふうに見込んでおります。
 一方、これまで高齢者夫婦世帯におきます衣食住を賄います費用は、物価上昇率とほぼ同程度の伸びとなっております。二〇二五年、二〇五〇年でも物価上昇分を割り引いて現在以上の基礎年金の水準を確保できるのであれば、今後も基礎年金は老後生活の基礎的な部分に対応できるものと考えている次第でございます。
 基礎年金の非消費支出の関係についてお尋ねがございました。
 平成十六年度におきます老齢基礎年金満額の、いわゆる月額でございますが、満額の二人分は約十三万円、十三万二千四百円であります。また、平成十四年家計調査におきます高齢夫婦の無職世帯の社会保険料や税等の非消費支出は二万三千六百八十四円でございます。年金を受給し始めます六十五歳時点の年金額で見た基礎年金の額は、基準となります諸条件の下では、夫婦二人で、先ほども申しましたとおり、二〇二五年におきましては名目額で十六万五千円、物価上昇分を割り引いて十三万四千円でございます。
 また、高齢世帯の社会保険料や税のいわゆる非消費支出につきましては、今後の少子高齢化の進行状況、あるいは社会保障の負担の増大が見込まれます中で高齢者の負担をどのように考えていくか、総合的に考えていかなければならないと思います。高齢者の負担能力を勘案しつつ、応分の負担を求めていくことになるというふうに思います。
 それから、高額所得者と国民負担についてのお尋ねがありました。
 現行制度の基礎年金に対する国庫負担は、現役世代全体の保険料拠出総額に対して一定割合で行われております保険料負担を軽減するものであります。個々の高齢者の給付について国庫負担を行う仕組みではなくて、高齢者の所得の状況によって国庫負担の引上げ方を変え、年金額を変えるという制度とはなっておりません。
 また、高額所得者につきまして年金の給付制限を行うことにつきましては、あらかじめ保険料を拠出して備えたにもかかわらず事後の状況によって給付が行われたり行われなかったりすることになりまして、拠出に応じた給付を行うという社会保険方式の基本が損なわれるという問題があるとも考えております。
 しかし、年金受給年齢になっても働ける高齢者につきまして、今後負担の増加する現役世代とのバランスを考え、今回の年金制度改正案におきましては、七十歳以上の被用者で、賃金と報酬比例年金の合計が現役世代の平均賃金の水準以上となる方につきましては一定の支給調整をお願いをしまして、保険料を負担する現役世代とのバランスを取ることといたしております。
 今年度の税制改正におきまして、より公平な負担となる観点から、高齢者を一律に優遇する措置であります公的年金等控除や老年者控除の見直し等を行いまして、年金を含めて負担能力に応じた適切な税の負担をお願いをし、その税収を基礎年金国庫負担の引上げに充てる措置を講じたところでございます。
 最後になりますが、無年金障害者の救済策につきまして、これはお尋ねがございました。
 年金を受給していない障害者の方々への対応につきましては、私自身も平成十四年七月に対応の試案を発表させていただいたところでございまして、その後も検討を進めてまいりました。現在、国会におきましてもいろいろとお話をしていただいているというふうにお聞きをいたしておりますが、今国会で成立しますよう私も最大限の努力をする決意でございます。
 以上、御答弁を申し上げました。(拍手)
   〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(中川昭一君) 私の国民年金についてのお尋ねでございますが、これまで衆議院厚生労働委員会等でお話ししたとおり、国民年金保険料の支払をしていなかった点について深く反省をしているところでございます。
 なお、私には引き続き閣僚としての職責を全うするように総理から御指示をいただいているところであり、現在の職務に全力を尽くしていきたいと考えているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(谷垣禎一君) 山本孝史議員にお答えをいたします。
 国民年金保険料の未納問題についてお尋ねがございました。
 私自身の未納につきましては、年金制度に対する自分の認識不足として誠に不明の至りでございまして、申し訳ないと考えております。
 他方、自分としては、総理から現在の職責を全うするよう御指示をいただいておりまして、与野党の合意も踏まえて、年金改革に積極的に取り組んでいくことも含めまして、自分の職務に懸命に邁進することによりましてこたえていくほかないと考えております。
 なお、過去の未納期間の社会保険料控除につきましては、既に十数年以上前のことでございますので調べる手だてがないと考えております。
 それから、国民年金保険料が未納であった国会議員が社会保険料控除を受けていないか調査すべきとのお尋ねがございました。
 一般論として申し上げますと、未納等があるため社会保険料控除の適用を認めることが適切でないと判明したものについては、確実に是正を行うことにより適正な執行に努めております。
 なお、個別にわたる事柄につきましては、守秘義務が課されておりますので、具体的に答弁することは差し控えさせていただきます。
 それから、年金制度における自営業者の問題についてのお尋ねがございまして、これは既に総理や厚生労働大臣からも御答弁がございましたが、自営業に従事する者が約一千万人いる中で事業所得税を申告納税している者はその一部であることなどを考えますと、自営業者等について所得に応じて保険料を賦課する場合、課税所得をそのまま基準とするのか、あるいは収入などそれ以外のものを基準とするのかなど、保険料の賦課対象の範囲をどうするかについては十分な検討が必要と考えております。
 それから、国家公務員の共済年金についてのお尋ねですが、共済年金の基本的な制度設計は厚生年金に準拠してきており、今後の給付水準の調整は厚生年金と同一の比率で行うこととしております。他方、国家公務員共済の財政状況、成熟の度合い等が厚生年金と異なりますから、保険料率については厚生年金と全く同様に固定することは困難であり、今後の収支見通し等に基づいて財政の健全性が確保されるよう財政再計算を行って決定していくこととしております。
 それから、高額所得者の年金給付に係る国庫負担の在り方についてのお尋ねでございますが、高額所得者に対する基礎年金給付をどう考えるか、その関連で国庫負担の在り方をどう考えるかという点については様々な議論が行われたところでございますが、年金制度が拠出に応じた給付を原則としていることや年金受給者の所得把握という実務面の課題等を総合的に勘案して、現行制度の考え方が維持されることとなったところでございます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(麻生太郎君) 山本孝史議員より私の年金未加入についてのお尋ねがありました。
 私の年金が一部未加入でありましたことにつきましては、おわびを申し上げているところであります。私といたしましては、与えられた職務を全うすべきと考えておるところでもあり、総理から引き続き閣僚として職責を全うするようにとの御指示もあったところであります。
 次に、地方公務員共済年金についてのお尋ねがあっております。
 地方公務員の共済年金の給付につきましては、基本的に厚生年金と同水準といたします。保険料につきましては、今後の収支見通しなどに基づきまして財政の健全性が維持されるということが大事でありますので、その計算を行った上、その率を設定いたしたいと存じます。その際、地方公務員の共済年金は、財政状況やその成熟度が厚生年金とはかなり異なっておりますことから、保険料水準を厚生年金と全く同様に固定するということは困難であろうと存じます。(拍手)
    ─────────────
#17
○議長(倉田寛之君) 渡辺孝男君。
   〔渡辺孝男君登壇、拍手〕
#18
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。
 公明党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 五月四日、こどもの日を前に総務省が発表した我が国の推計人口によれば、子供の数は二十三年連続して減少し、構成比で過去最低の一三・九%となりました。一方、高齢者の割合は前年より〇・四%増加し、一九・三%となり、一段と少子高齢化が深刻となってまいりました。
 このような中、年金財政は急速に悪化しており、年金制度の崩壊を防ぐためには、早急に抜本改革を実行に移さなければなりません。
 参議院で年金制度改革関連法案の審議が開始されるに当たり、私は、まず最初に、これらの法案が何ゆえ抜本改革案と言えるのか、国民に分かりやすく説明する必要があると思います。また、今回の年金制度改正案は、百年安心の年金制度と言われております。
 そこで、小泉総理に伺います。
 何ゆえ百年安心の年金制度と言えるのか、また、本改正案が何ゆえ抜本改革と言えるのか、その根拠を国民の前に堂々と示していただきたい。
 次に、国民の中には、夫のみ就労のモデル世帯では給付水準五〇%以上を確保されますが、共働き世帯や単身世帯では給付水準が三〇%から四〇%と低くなり、不公平だとの声もあります。この点の誤解をいかに解き、国民の理解を得ていくのか、坂口厚生労働大臣に伺います。
 また、若い人には、現在の高齢者は納めた保険料に比較して給付が多いのに、自分たちは給付が少ないとの根深い不公平感、不信感があります。これらをいかに払拭して、若い方々にも年金制度に参加していただくのか、政府の方針について小泉総理に伺います。
 保険料を納めている実績を点数化して表示するポイント制も若年者の年金制度に対する理解を深めるのに有効と思いますが、二〇〇八年四月実施予定とのことです。これをもっと早めることができないものか、坂口厚生労働大臣に伺います。
 さて、無年金障害者の救済も大きな課題です。無年金障害者をどのような形で救済していくのか、現在の検討状況について、また、今後いつごろまでに結論を出せるのか、その見通しについて坂口厚生労働大臣に伺います。
 今回の改正案では、障害年金に関して、障害基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ることができる道が開かれております。画期的なことと評価いたします。この改正案を盛り込むに至った背景について坂口厚生労働大臣に伺います。
 また、本改正案の成立により、この選択が可能となるチャレンジド、障害者のことを指しますが、その見込み数についても伺います。
 また、このような働くチャレンジドを政府としてどのように支援し、仲間の輪を広げていく方針か、小泉総理に伺います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 さて、去る五月六日に自民、公明の与党両党と民主党との間で交わされた年金制度改革法案に関連しての三党合意を私は高く評価しております。
 三党合意では、国民年金未加入・未納防止策に関して具体的に、一、未加入者及び未納者に対する通知、督促を適正に行うための措置を講じさせる、二、錯誤等による未加入、未納者について、今国会において一定条件の下で事後納付できるための法的措置を講ずる、三、民間人から登用される大臣等について、今国会において国家公務員共済年金に加入できるよう政令改正を行う旨が明記されております。これらの点に関して、政府としてどのように対処されるのか、小泉総理に伺います。
 同様に、三党合意では、年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていく旨が明記されております。この点に関してどのように対処なされるのか、坂口厚生労働大臣に伺います。
 特に、本改正案では、厚生年金保険料率の上限を一八・三〇%、国民年金保険料の上限を一万六千九百円としておりますが、これを堅持した上での検討であるのか否かについても坂口厚生労働大臣に伺います。
 また、保険料と給付水準は密接に絡んでおりますが、本改正案で示されたように、厚生年金の給付は現役世代の平均手取りの五〇%以上と規定した点は、この検討においても確保されるのか否か、坂口厚生労働大臣に伺います。
 さらに、三党合意では、衆参両院の厚生労働委員会での小委員会や与野党協議会で、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成十九年三月を目途に結論を得て、随時実施を図る旨が明記されています。小泉総理としては、これを受けて今後どのように対処なさるおつもりか、また、この見直しに関して、総理はどのような課題を重視し、政府として検討を進めていくおつもりか、お尋ねいたします。
 長期の景気低迷、高失業率で国民の多くは生活が大変苦しくなっています。そのような中で、老後の安心のために、年金保険料を捻出し、納入しています。その年金資金を預かっているのが厚生労働省であり、その年金積立金を無駄に浪費することは許されません。
 国民から批判を受けている全国の年金福祉施設等に関し、公明党は、一、年金保険料は福祉施設の整備に使用しない、二、これまで整備した二百六十五施設は廃止・売却し、年金資金に貢献させる、三、委託先公益法人の役員報酬、退職金を全面的に見直すことを主張し、与党合意を得ました。
 この与党合意について、どのように政府として対処する方針か、坂口厚生労働大臣に伺います。
 年金制度の安定には、長期的には年金の支え手を増やすことが重要であることは論をまちません。そのような意味で、次世代育成支援の観点からの年金制度改正も重要であります。今回の改正案には、このような観点での改正がどのように盛り込まれているのか、坂口厚生労働大臣に伺います。
 また、我が国の平均寿命は、二〇〇二年の資料では、男性七十八・三歳、女性八十五・二歳であり、年金受給者としては女性の方が多いことになります。しかし、これまでの年金制度では必ずしも女性は恵まれているわけではありませんでした。
 今回の改正では、女性の立場から見ての改革、あるいは家族単位から個人単位への年金制度の転換という視点からの改革はどのようになされているのか、坂口厚生労働大臣に伺います。
 我が国は、平均寿命だけではなく、健康寿命でも世界のトップレベルにあります。同じく二〇〇二年の資料では、男性七十二・三歳、女性七十七・七歳です。
 日本は健康寿命を更に延ばし、平均寿命と健康寿命が近づく活力ある高齢社会、幸せに齢の字を用いる幸齢社会を築いていくべきと考えております。
 また、健康で働く意欲のある高齢者には、働ける環境を整え、年金制度の支え手となっていただく。もちろん、その場合には、将来の受給年金にメリットを与えるような方向で幸齢社会を作っていくことも重要であると私は考えております。
 この点に関しての小泉総理の考えをお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#19
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 渡辺議員にお答えいたします。
 今回の年金制度改正案についてでございますが、少子高齢化が急速に進行し、今後も予想を上回る進行が見込まれる中で、給付と負担の長期的な均衡を図るための見直しは、先送りのできない課題であります。
 今回のこの改正案は、将来の負担が過大とならないよう極力抑制して、その上限を国民に明らかにするとともに、標準的な年金で見て、少なくとも現役世代の平均的収入の五〇%の給付水準を維持しつつ、年金を支える力と給付の均衡を図っていく仕組みに転換するものであり、急速な少子高齢化が進行する中においても、持続可能な制度の構築に向けた抜本的な改正であると考えております。
 世代間格差についてでございますが、年金制度における世代間の負担と給付の関係を見る際には、昔は同居や仕送りで親の生活を私的に支えておりましたが、今日、それが公的年金に置き換わっていること、少子高齢化の予想を上回る進行による現役世代の負担の高まり、昔に比べて生活水準が向上し、実質的な保険料負担能力が高まっていることなどの要素を併せて考慮することが必要であり、年金制度における負担と給付の関係のみで世代間の公平、不公平を論ずることは適当ではないと思っております。
 一方で、今回の年金制度改正は、将来の現役世代の負担が過大とならないよう極力抑制する観点から、将来の保険料負担の上限を抑制して固定し、国民に明らかにするとともに、急速な少子高齢化が進行する中で、既に年金を受給している高齢者の年金も含めて、年金を支える力に応じて給付水準を調整することとするなどの改革を盛り込んでおり、こうした点を若い世代に対しても理解していただけるよう努めてまいりたいと思います。
 障害者の支援についてでございますが、一人でも多くの障害者の方がその意欲や能力に応じて働くことができるよう、就業、生活の一体的支援や、試行的な雇用を推進するなどの施策を総合的に政府は推進しているところであります。また、年金を受給していない障害者の方々への対応については、与党と十分調整を図りながら結論を得られるよう努力してまいります。
 三党合意に基づく年金保険料への未加入等の防止対策ですが、年金制度への未加入、未納の防止策については、未加入や未納によって年金制度に対する信頼が損なわれることがないよう、三党合意の内容を踏まえ、その具体化に向け必要な準備を早急に進めてまいりたいと考えております。
 三党合意についてでございますが、社会保障全般の一体的見直しに関し、先日、自民党、民主党、公明党の三党が合意されたことは意義深いことだと考えております。
 今後、与野党間で建設的な議論が進められることを期待しておりますが、政府としても、与野党による検討を踏まえ、速やかな対応ができるよう、引き続き、経済、財政との整合性や世代間の公平の問題、給付相互間の重複等の調整の問題、保険料、公費、利用者負担の組合せの在り方などを含む幅広い課題について検討を進めていく考えであります。
 今後の高齢社会についてでございますが、我が国は、現在、世界最高水準の平均寿命を享受しておりますが、御指摘のように、単なる長寿にとどまらず生涯にわたり健康で活動的に過ごせることが重要と考えており、政府としては、高齢者の健康作り、介護予防などの対策に積極的に取り組んでいるところであります。
 また、健康で働く意欲のある高齢者が社会の支え手として活躍し続けることができるよう、今回の改正案においては、六十五歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高齢者雇用対策の強化を図ることとしております。
 さらに、年金制度においては、年金を受給しながら働いている六十歳代の高齢者について、被保険者として保険料を納付していただき、退職時に保険料納付実績を年金額に反映させることとしていることに加え、今回の改正案においても、高齢者の就労により中立的な年金制度となるよう見直しを行っているところであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(坂口力君) 渡辺議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 世帯類型ごとの給付水準についてのまず御質問がございました。
 給付水準の下限として申し上げております五〇%とは、平均的な賃金で夫のみが働いてきたサラリーマン夫婦世帯が受給する基礎年金二人分と夫の厚生年金の合計額の現役の男子被保険者の平均手取り賃金に対する比率で見たものでございます。この比率は世帯一人当たりの賃金によって異なるものでありますが、これは、厚生年金は、賃金にかかわらず一定額を給付する基礎年金制度を通じて所得再配分の機能を持たせることによりまして、一人当たりの賃金の低い世帯に相対的に高い割合で給付を行う仕組みになっていることによるものでございます。
 なお、下限五〇%は夫だけが働く場合でありまして、夫の賃金が同額で妻が少しでも働いている場合は、年金額はより高くなりますが、二人の賃金に対する比率は五〇%よりも低くなります。
 このように、下限五〇%というのは、一人当たりの賃金と年金で見ますと一番少ない額の割合の比率を見ていただいているものでございます。片働きでも賃金が高ければ給付水準は五〇%より低くなりますし、共働きでも一人当たりの賃金が低ければ五〇%よりも高くなることは御承知のとおりでございます。
 ポイント制についてのお尋ねがございますが、今回の年金制度改正案におきましては、現役世代、特に若い世代の年金制度に対する理解を深めますために、被保険者に対します保険料納付実績等の年金個人情報の定期的な通知を行うこととしまして、その際には被保険者個々人の保険料納付実績を点数化して表示する仕組みであるポイント制を導入するということといたしております。
 このポイント制によります年金個人情報の実施時期につきましては、今回のこの年金制度の改正内容を反映した形で実施することとしまして、そのシステムの開発など実施準備に時間を要しますが、できる限り早く行いたいと考えているところでございます。
 それから、無年金障害者の問題につきましては、先ほど山本議員にも御答弁を申し上げたところでございまして、学生等の年金制度の発展過程で生じた特別な事情がありますこと、こうしたことも十分考えながら今までも検討してきたところでございます。
 国会におきましても、いろいろ御議論をいただいているというふうに承知をいたしておりますが、是非今国会でその結果が得られるように、私も最大限努力をしたいと思っているところでございます。
 障害者年金と老齢年金の併給についてのお話がございました。
 一階の基礎年金と二階の厚生年金の組合せは、同一事由の年金のみとされております。このため、障害基礎年金の受給者にとりましては、障害を有しながら現役時代に自ら就労した厚生年金の保険料を納付をしましても、年金給付に反映されにくい仕組みとなっております。
 障害者で、障害者基礎年金を受給しながらも、被用者として長く働き続ける方がこれから増えてくると思われますが、今回の改正案では、障害を有しながら働いたことが年金制度上評価される仕組みとするよう、老後におきましても障害基礎年金と老齢厚生年金等との組合せの選択を可能にすることにした次第でございます。
 それから、三党合意につきまして御質問がございましたが、先ほど総理からも御答弁のあったとおりでございまして、社会保障全体の中で保険料とそして税、両方を見ながら、しかも負担と給付を併せて考えながら、そしてその中で年金につきましては一元性、一元化を含めて、その中で検討をしていくという内容であるというふうに認識をいたしております。総合的な御議論の中で検討していただけるものと考えているところでございます。
 それから、年金の福祉施設の見直しに係る与党合意についてどのように対処するのかということでございますが、福祉施設につきましては、これも先ほど御答弁を申し上げたとおりでございますが、厳しい財政状況、あるいはまた国会におきますいろいろの御議論を受け止めまして、例外なくこれを処理することといたしておりまして、併せてその在り方につきまして徹底した見直しを行いたいと考えているところでございます。
 次世代育成支援についてでございますが、世代間の扶養の仕組みを基本に運営されております公的年金制度におきまして、将来の支え手となります次世代育成支援の充実は重要な課題でございます。育児によって年金保障が不利になることを解消するという考え方に立ちまして、厚生年金につきましては、子が三歳に達するまでの間、育児休業中の保険料免除を行うこととしますとともに、勤務時間の短縮等によりまして賃金が低下した場合に、保険料は実際に低下した賃金によることとする一方で、年金の給付算定上は低下する前の賃金で保険料納付が行われたものとして取り扱う措置を創設をしたところでございます。
 最後に、女性と年金の問題でございますが、女性の社会進出、就業形態の多様化などへの対応、女性自身の貢献が実る年金制度の実現に向け、また近年、離婚等が増加しております一方で、夫婦間の年金受給額には大きな開きがありまして、女性の高齢期における所得水準が低くなるという問題等が起こっているわけでございます。このため、今回の年金改正におきましては、離婚した場合などによる厚生年金の分割ができる仕組みの導入でありますとか、遺族年金の見直しなどを行うこととしたところでございます。
 その際、第三号被保険者期間につきましては、現行制度におきます世帯単位での給付と負担の均衡を踏まえながら、できる限り個人単位での給付と負担の関係に向けて制度を見直していく。保険料につきましては、夫婦が共同負担をしたものであることを基本的な認識とする旨を法律上に明記をさせていただいたところでございます。
 女性の雇用や賃金の動向などを踏まえまして、今後も一層検討してまいりたいと考えているところでございます。(拍手)
    ─────────────
#21
○副議長(本岡昭次君) 小池晃君。
   〔小池晃君登壇、拍手〕
#22
○小池晃君 日本共産党を代表して、年金改革関連法案について質問します。
 安心して暮らせる年金をという願いは、年金加入者七千万人、受給者三千万人に共通する切実なものです。憲法二十五条に保障された生存権を支える柱である年金制度の在り方は、国政の最重要課題の一つであり、法案への賛否にかかわらず、十分に時間を掛けて審議を尽くすことは国会の最低限の責務です。徹底審議を強く求めます。
 最初に、年金保険料の連続する引上げについて総理に質問します。
 厚生年金では、支え手である加入者の激減という事態が起こっています。厚生年金の加入者数について政府が九九年に立てた予測では、二〇〇二年度から減少を始め、二〇一五年度に三千百七十万人になるとされていました。ところが、実際には政府の予測よりも十三年早く、〇二年度で既に三千百七十万人にまで減少したのです。失業、倒産の影響に加えて青年労働者の非正規雇用、いわゆるフリーターの激増がその原因です。
 厚生年金加入事業所は、この五年間で七万か所減っています。しかも、〇二年度の新規法人九万六千のうち、一八%に当たる一万七千法人が厚生年金に未加入です。厚生年金の空洞化は、年金の根幹を揺るがす事態となっています。ところが、本法案にはこうした空洞化に対する手だてが何一つないのではありませんか。答弁を求めます。
 国民年金も空洞化が進んでいます。保険料の未納率は〇二年度で三七・二%に上り、未納、未加入、免除を合わせると、保険料を支払っていない人は一千万人を超えると推計されます。一番多い未納の理由は、保険料が高くて経済的に支払うのが困難で、全体の六二・四%を占めています。こうした中で厚生年金や国民年金の保険料を連続して引き上げれば、年金の支え手を一層減らしてしまうのではありませんか。日本の雇用と経済にどのような影響を与えるとお考えか、お答えください。
 保険料の連続引上げが年金の空洞化を更に進め、年金財政をますます悪化させることは余りにも明白です。国民の懐も経済情勢も無視した年金保険料の連続した引上げはやめるべきではありませんか。答弁を求めます。
 次に、年金給付水準の削減について伺います。
 今回、マクロ経済スライドによってすべての年金水準が国会審議抜きで自動的に一五%引き下げられます。国民年金の受給額の平均は月四万六千円にすぎません。しかも、介護保険などの社会保険料や医療費の負担は増加を続けています。今でも、基礎的な衣食住の支出すら賄えない水準の年金を更に一五%もカットすることは、憲法二十五条に保障された生存権を一層破壊するものではありませんか。平均四万円台の国民年金の給付水準を一五%引き下げても国民の日々の生活が可能だというならば、その根拠を示していただきたい。
 今や、年金が国民所得に占める割合は九・九%であります。北信越、中国、四国、沖縄県を除く九州では、全県で県民所得の一割を超え、最高の島根県は一三・三%です。年金は、日本の経済にとって無視できない巨大な存在となりつつあります。一五%もの引下げは経済に深刻な影響を与えるのではないでしょうか。見解を伺います。
 年金給付の削減は、憲法で保障された生存権を乱暴に破壊するだけでなく、日本経済にも大きな打撃となります。年金給付削減はやめ、真に生存権を保障する制度に改革することこそ求められているのではありませんか。明確な答弁を求めます。
 しかも、最近になって重大な問題点が明らかになってきました。
 政府は、これまで本法案について、これまでのように五年ごとに改定するのではなく、将来の保険料の上限と給付水準の下限を明らかにしたから、これまでの改正とは大きく異なる抜本的な改正だと説明してきました。これは果たして本当だったのか。
 保険料については固定方式で上限を定めたとしていますが、国民年金の保険料は賃金の名目上昇率に連動するので、保険料が固定されると政府が説明した二〇一七年度を過ぎても上がり続けます。今後の実際の国民年金保険料が幾らになるのか、二〇一七年とその十年後、二十年後はどうなるのか。厚労大臣、示してください。
 二〇一七年を過ぎても実際の保険料が上がり続けるのであれば、保険料に上限を設けて固定するとした政府のこれまでの説明は事実に反するものだったのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 さらに、政府はこれまで現役世代の収入の五割を保障すると説明してきましたが、それはごく限られた厚生年金モデル世帯だけ、しかもそうしたモデル世帯ですら、五割保障されるのは年金受給が始まる時点だけで、その後は五割を下回ることが明らかになりました。現在、六十五歳、五十五歳、四十五歳の世帯で現役世代の収入に対する給付の割合が受給開始後どのように変化するか。厚労大臣、受給開始十年後、二十年後の割合を示していただきたい。
 給付水準の切下げにより、今後年金を受給するすべての世代で現役世代の収入の五割を切るのであれば、政府の五割保障という説明の根拠は崩れたのではありませんか。総理は、衆議院本会議で、給付水準についても現役世代の平均的収入との対比で五〇%を維持することを明確にしていると答弁していますが、これは誤りだったのではありませんか。総理、はっきり答えていただきたい。
 今回の政府案のたった二つのうたい文句が二つとも崩れたのですから、当然のことながら政府案は廃案とし、最初から出直すべきではありませんか。
 そもそも、日本の年金制度が抱える最大の問題点は、保険料を払わない人が一千万人を超える深刻な年金空洞化や、低額年金が放置されていることです。改革と言うならここにこそメスを入れるべきです。
 先日、日本共産党は、年金制度の劣悪な現状を抜本的に打開するため、最低保障額を当面、月額五万円とする最低保障年金制度の実現に速やかに踏み出すことを提案いたしました。最低保障年金制度は、厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台として全額国庫負担による一定額の最低保障額を設定し、その上にそれぞれの掛金に応じて給付を上乗せする制度です。財源は、大型開発など歳出の徹底した見直しと、大企業、高額所得者に応分の負担を求める歳入の見直しで生み出そうというのが私たちの提案です。
 国民所得に対する企業の税と社会保険料の負担水準について見ると、日本はヨーロッパに比べて低い水準です。社会保障の負担の原則は応能負担であり、その見地からも大企業に応分の負担を求めるべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
 イギリス、ドイツ、フランスでは、低額の年金しか受け取っていない人のために、公的扶助とは別に年金の最低額を保障する制度が作られています。さらに、北欧諸国やカナダ、オーストラリアなどには全額国庫負担による最低保障年金制度があります。生存権を保障するために、国の責任で年金受給者の所得の最低額を保障するのが世界の流れなのではありませんか。見解を伺います。
 二〇〇一年九月に、国連の社会権規約委員会が日本に対する勧告の中で、最低保障年金制度が存在しないことについての懸念を表明しています。政府は、この懸念にどうこたえるつもりですか。国連の指摘に基づいて、一刻も早く最低保障年金制度を実現すべきではありませんか。答弁を求めます。
 最後に、自民、公明、民主の三党合意について総理にお聞きします。
 この合意によって、政府案にある年金保険料の連続引上げ、あるいは年金給付水準の一五%カットはどうなるのですか。結局、三党合意によっても、この政府案に盛り込まれた年金制度改定の内容には一切の変化がないのではありませんか。お答えいただきたい。
 また、三党合意では年金制度の一元化を展望するとしていますが、ここで言う一元化は一体何を意味するのか。年金制度間の格差をなくし、国民から見て公平な制度を目指すことは重要な課題です。しかし、現状の枠組みのままで、国民年金や厚生年金などの保険料や給付水準の統一を一元化の名の下に行えば、保険料の大幅な引上げか、若しくは給付水準の引下げになるのではありませんか。答弁を求めます。
 そもそも三党合意で、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行うとしたことは、二〇〇七年度から消費税増税を含む抜本的税制改正を実現するとした昨年の与党税制大綱合意に沿うものにほかなりません。
 年金大改悪法案の採決強行を容認しただけでなく、消費税大増税に道を開く三党合意に対して厳しい批判の声が上がっています。年金空洞化を更にひどくする負担増と、生存権を破壊する給付の削減を押し付ける本法案は廃案とすべきです。そして、最低保障年金制度の実現による本当の年金改革に向けて進むことを訴え、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#23
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小池議員にお答えいたします。
 厚生年金の空洞化についてでございますが、今回の改正案においては、働き方や生き方の多様化に対応できるよう、在職老齢年金制度の見直しを始めとする改正を行うこととしております。
 また、短時間労働者の厚生年金の適用の在り方についても、その見直しに向け十分な検討をしていくことを法案に明記しているところであります。
 さらに、厚生年金からの違法な脱退については、適用事業所に該当しなくなった場合の事実確認の強化を図るなどにより対応しているところであります。
 保険料の引上げについてでございますが、今回の改正案では、引上げについては、仮に現行制度のままで維持した場合、二六%程度まで引上げが必要なところ、将来の現役世代、企業負担が過大とならないよう配慮して一八・三%と相当程度抑制を図ったところであります。
 保険料の引上げによって、確かに保険料を引き上げない場合に比べて企業や個人の負担は大きくはなりますが、経済や雇用等に与える影響については、企業にとっても、年金は労働者の老後の不安等を解消することで活力ある経済活動の基盤となること、保険料を引き上げない場合、かなり大幅な給付の抑制が必要となるが、その場合の高齢者の消費に与える影響や現役世代の老親扶養負担が増加することなども併せて総合的に考える必要があると考えており、高齢化する社会でも国民が安心して暮らすための負担が必要であることは御理解いただきたいと考えております。
 給付水準の調整に関してでございますが、その調整に当たっては、時間を掛けて穏やかに水準を調整していくとともに、前年度の年金の名目額を下回るような改定を行うことはしないこととしており、高齢者の生活の安定等にも十分配慮しているところであります。
 なお、今回の改正案が生存権を破壊するとの御指摘がありましたが、健康で文化的な最低限度の生活については、生活保護その他の施策が相まって実現されるべきものと考えており、本法案による給付調整が生存権を定めた憲法の規定に抵触する問題ではないと考えております。
 保険料水準の上限についてですが、改正案においては、平成十六年度価格で平成二十九年以降の最終の国民年金の保険料水準を固定したものであり、その旨を法案に明記したところです。平成十六年度以降、更に経済が発展し、物価や賃金が上昇していけば、実際に徴収される保険料の名目額が上がっていくのは当然のことであります。厚生年金においても同様に、保険料率を固定しても賃金が上昇すれば、実際に徴収される保険料の名目額は上がっていくこととなります。負担の在り方を考える上で、現在の賃金水準との比較でその水準を表示することは合理的であり、国民を欺くものとの御指摘は当たらないと考えます。
 給付水準の下限についてですが、通常、老齢期の生活は現役期の延長線上にあることを踏まえ、現在の年金制度の仕組みにおいては、引退して年金を受給し始める六十五歳の時点においては、それまでの賃金上昇を反映して年金額が算定され、それ以降は物価スライドによりその購買力を維持することとしております。
 したがって、これまでも現役の平均手取り賃金と比較した給付水準については、引退して年金を受給し始める六十五歳の時点における割合で示してきており、この点は今回の改正においても同様でありますので、答弁の内容に問題があったとは考えておりません。
 なお、既に年金を受給している方について、受け取る年金額とその時々の現役世代の平均手取り賃金を比較すれば、徐々にその比率は逓減していくこととなりますが、高齢になるほど消費水準は低下する傾向にあること等も踏まえれば、高齢者の生活の安定が大きく損なわれることはないと考えております。
 社会保障分野での企業負担についてですが、ヨーロッパ諸国と比較してこれまで比較的高齢化の進行が遅かった我が国の社会保障負担は、今後、急速な少子高齢化の進行による増大が不可避であります。社会保障制度が引き続き国民生活の安定を図る役割を果たしていくためには、企業にも引き続き応分の負担をお願いしていく必要があるものと考えております。
 最低保障年金制度の創設ですが、我が国の公的年金制度は自助自律の精神に立脚し、現役世代の拠出の実績に応じて給付を行う社会保険の仕組みを採用しております。
 また、我が国の年金制度においても、保険料免除制度を設け、低所得で保険料負担が困難な者に対しても、申請等により国庫負担割合に相当する年金額を保障しているところであります。
 御指摘のような全額国庫負担の最低保障年金制度については、国連からの指摘を受けていることは事実でありますが、そもそも自助自律という社会保険の長所を放棄するのではないか、生活保護との関係をどうするか、また必要となる巨額の税財源をどう賄うのか等の問題があるものと考えております。
 三党合意及び年金制度改革の方向に関するお尋ねでございますが、今後、少子高齢化の一層の進展が見込まれる中、年金制度を持続的で安定したものとしていくためには、いつまでも負担は軽く、給付は厚くというわけにはいかないと考えております。給付と負担の長期的な均衡を図るなどの課題に正面から取り組み、保険料負担水準に上限を設けるとともに、給付水準について下限を設けつつ自動調整する仕組みを設けることとした本法案の早期成立を期することが必要と考えております。
 同時に、今般の三党合意について、年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や社会経済情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていくこととされ、年金一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行うこととされたところであります。
 年金一元化については、給付と負担の公平の見地から、従来より議論のあるところですが、その実現のためには、特に自営業者など国民年金対象者に所得比例年金を導入する場合に、所得の捕捉をプライバシーとの関係でどうするかなど多くの基本的な問題があり、どのような形で一元化するかについても様々な意見のある中長期的な課題と認識しております。
 いずれにしても、この合意に基づき、社会保障制度全般の一体的な見直しに向けて、与野党間で建設的な議論が進められることを期待しております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(坂口力君) 小池議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 国民年金保険料の名目額につきましての御質問がございました。
 今回の改正案におきましては、保険料水準の上限を法律上明記しているところでありますが、六十五歳となり新たに年金を受け始めるときに、それまでの賃金上昇を反映した年金の受け取る制度の下で、国民年金の保険料につきましては、現在の賃金水準を基準とした平成十六年度価格で上限を固定をいたしております。このため、二〇一七年以降の保険料水準は、法律上、平成十六年度価格で一万六千九百円と明記して固定しているものでございます。
 この固定した保険料水準で実際に徴収する名目額は、今後の賃金上昇の状況に応じて変化をいたしますし、あらかじめ固定できるものではありませんけれども、仮に標準的な経済前提、一人当たりの賃金上昇が名目二・一%というふうに仮定をいたしまして推移をするというふうにいたしますと、二〇一七年で二万八百六十円、二〇二七年で二万五千六百八十円、二〇三七年で三万一千六百十円となります。
 この厚生年金におきましては、報酬額に対する保険料率で保険料水準が定められ、上限で固定した後も、実際の賃金上昇により納付する保険料額が増加することと照らし合わせて考えれば、国民年金においても、実際に徴収する名目額が賃金上昇に伴い上昇することは当然であると考えております。
 受給開始後の給付についてのお尋ねがございましたが、現行の年金制度におきましては、六十五歳となり、年金をもらい始める際に、これまでの賃金上昇を反映して年金額が算定されます。その後は、物価スライドによりまして購買力を維持する仕組みとなっております。
 今回の改正案は、一定期間、二〇二三年まででございますが、この両方に現役世代の減少率を反映したスライド調整を行うこととしておりますが、この基本的な構造に変化はありません。このため、年金の給付水準を示します所得代替率につきましては、六十五歳となります年金をもらい始める時点における現役世代の平均手取り賃金との比較で示しておりまして、今回の改正案ではその下限を五〇%としたものであります。
 なお、受給して以降の年金額につきましては、六十五歳時点の年金額を基に、物価スライドにより購買力を維持する考えを基本にしておりますため、その時々の現役世代の賃金と対比をして水準を議論することは行っておりませんが、あえてその比率を計算をいたしますと、六十五歳時点よりも低い水準となります。
 基準的な前提を置いた場合の御質問の数値につきまして、現在六十五歳の場合には、十年後には五一・三%、二十年後には四三・二%、現在五十五歳の場合には、十年後に四五・四%、二十年後に四〇・八%、現在四十五歳の人は、十年後に四五・一%、そして二十年後には四〇・五%になるわけでございます。
 パーセントは低下をいたしますが、年金額は低下はしない、増加をするということを付け加えておきたいと存じます。(拍手)
#25
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#26
○副議長(本岡昭次君) 日程第一 地中海漁業一般委員会に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件
 日程第二 千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の二千三年の議定書の締結について承認を求めるの件
 日程第三 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書の締結について承認を求めるの件
 以上三件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長山本一太君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔山本一太君登壇、拍手〕
#27
○山本一太君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、地中海漁業一般委員会協定の改正は、地中海における海洋生物資源の保存、管理及び最適利用を促進すること等を任務とする地中海漁業一般委員会に自主的な予算を導入すること等を内容とするものであります。
 次に、油汚染損害補償国際基金設立条約の二千三年議定書は、千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金による補償が十分でない場合に補償を行う追加的な国際基金を設立すること等を内容とするものであります。
 最後に、船舶汚染防止国際条約を改正する千九百九十七年議定書は、船舶による大気汚染の防止のための規則について定める附属書を船舶汚染防止国際条約に追加することを内容とするものであります。
 委員会におきましては、三件を一括して議題とし、地中海におけるクロマグロ漁業問題、油による汚染損害の補償のための追加的な国際基金が設立された経緯、船舶汚染防止国際条約を改正する千九百九十七年議定書の国会提出が遅れた理由等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終え、順次採決の結果、三件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#28
○副議長(本岡昭次君) これより三件を一括して採決いたします。
 三件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#29
○副議長(本岡昭次君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#30
○副議長(本岡昭次君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百八十六  
  賛成            百八十六  
  反対               〇  
 よって、三件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#31
○副議長(本岡昭次君) 日程第四 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。環境委員長長谷川清君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔長谷川清君登壇、拍手〕
#32
○長谷川清君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、海洋における廃棄物の処理に関する規制の一層の充実が求められている国際的動向等にかんがみ、廃棄物の船舶からの海洋投入処分を許可制とするとともに、海域における焼却を禁止する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、ロンドン条約九六年議定書の締結時期と発効の見通し、廃棄物の海洋投入処分の現状とその削減に向けた今後の取組等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#33
○副議長(本岡昭次君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#34
○副議長(本岡昭次君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#35
○副議長(本岡昭次君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百八十六  
  賛成            百八十六  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#36
○副議長(本岡昭次君) 日程第五 電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。総務委員長景山俊太郎君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔景山俊太郎君登壇、拍手〕
#37
○景山俊太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、電波の有効利用を促進し、デジタル無線通信システムの円滑な導入を図るため、電波の迅速な再配分により周波数の使用期限が早期に到来する既存免許人に対して電波利用料を財源として給付金を支給する制度を設けるとともに、一定の無線局の開設について登録制度を導入するほか、サイバー犯罪に関する条約を踏まえて無線通信及び有線電気通信について罰則規定の整備を行う等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、中長期的な電波の再配分方策、給付金支給制度における費用負担の在り方、電波利用料制度見直しの必要性等について質疑が行われました。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し七項目から成る附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#38
○副議長(本岡昭次君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#39
○副議長(本岡昭次君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#40
○副議長(本岡昭次君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百八十六  
  賛成            百三十五  
  反対             五十一  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#41
○副議長(本岡昭次君) この際、日程に追加して、
 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○副議長(本岡昭次君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長宮崎秀樹君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔宮崎秀樹君登壇、拍手〕
#43
○宮崎秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案の主な内容は、第一に、議員秘書の給与について、直接その全額を議員秘書に支給すること、第二に、国会議員は、六十五歳以上の者及び当該国会議員の配偶者を議員秘書に採用できないこと、第三に、議員秘書の兼職を原則禁止とすること、第四に、議員秘書に対する寄附の勧誘又は要求を禁止することであります。
 委員会におきましては、提出者である武部衆議院議院運営委員長から趣旨説明を聴取し、寄附の勧誘・要求禁止の是非、兼職禁止の立法趣旨及びその範囲等について質疑が行われました。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#44
○副議長(本岡昭次君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#45
○副議長(本岡昭次君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#46
○副議長(本岡昭次君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百八十五  
  賛成            百六十五  
  反対              二十  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#47
○副議長(本岡昭次君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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