2004/05/21 第159回国会 参議院
参議院会議録情報 第159回国会 本会議 第23号
#1
第159回国会 本会議 第23号平成十六年五月二十一日(金曜日)
午前十時一分開議
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#2
○議事日程 第二十三号平成十六年五月二十一日
午前十時開議
第一 文化財保護法の一部を改正する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
第二 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
第三 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
第四 構造改革特別区域法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、証券取引法等の一部を改正する法律案及び
株式等の取引に係る決済の合理化を図るため
の社債等の振替に関する法律等の一部を改正
する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
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#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。この際、日程に追加して、
証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。竹中国務大臣。〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(竹中平蔵君) ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。まず、証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、内外の経済・金融情勢の変化に対応し、市場監視機能の強化及び有価証券の販売経路の拡充を行うなど、市場機能を中核とする金融システムを改善、強化するため、所要の措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、多様な投資家の幅広い市場参加を促進するため、銀行等の金融機関が株式等の売買の証券会社への仲介業務を営むことができるよう、所要の措置を講ずることとしております。
第二に、市場監視機能・体制を強化するため、証券取引における不公正取引や発行開示違反の抑止を目的とした課徴金制度を導入するほか、証券取引等監視委員会の検査範囲の拡大等の措置を講ずることとしております。
第三に、目論見書の交付を受けないことについて同意した一定の者については、目論見書を交付しないことができることとする等、ディスクロージャー制度の合理化を図ることとしております。
第四に、組合型ファンドへの投資家保護範囲を拡大するため、投資事業有限責任組合契約に基づく権利等を有価証券とみなして、証券取引法の規定を適用することとしております。
第五に、効率的で競争力のある市場を構築するため、証券会社による顧客の注文の執行に当たり、最良執行義務を導入することとしております。
次に、株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、内外の金融情勢の変化に即応し、株式等の取引に係る決済の合理化を図るため、株式について、振替制度の対象に加えるとともに、株券不発行制度の整備を行うほか、投資法人が発行する投資口その他の有価証券に表示されるべき権利について振替制度の対象に加えるなど、より安全で、効率性の高い金融資本市場の基盤である証券決済制度を構築していくため、所要の措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、決済の安全性、効率性の向上を図るため、振替口座簿への記載又は記録による株式の保有及び移転を可能とすることとしております。
第二に、券面の管理や受渡しに係るコストの削減等を図るため、会社は、定款で、株券を発行しない旨の定めをすることができるものとする等、株券不発行制度を創設することとしております。
第三に、新株の引受権、新株予約権、新株予約権付社債及び投資法人が発行する投資口その他の有価証券に表示されるべき権利についても、新たに振替決済制度の対象とすることとしております。
以上、証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
何とぞ、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
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#6
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。大塚耕平君。〔大塚耕平君登壇、拍手〕
#7
○大塚耕平君 民主党・新緑風会の大塚耕平です。ただいま議題となりました二法案について、関係大臣に質問をさせていただきます。
初めに、証取法改正案について竹中金融担当大臣にお伺いいたします。
我が国の金融制度は、四つの自由化を軸に変革が進められています。為替・資本移動の自由化、金利の自由化、業務の自由化、そして本法案の対象である参入の自由化であります。日本が目指すべき新しい金融制度は、この四つが担保された上で、金融行政当局が決済インフラとセーフティーネットという公共財を提供するという構造です。ビジネスや行政のルールを極力明確にし、行政当局はルール遵守状況の監視と違反者に対して罰則を科すことにできる限り特化することが期待されます。
行政当局には、不公正な行為を抑止し、違反者を監視するとともに、違反には罰則を科し、被害者を救済することが求められます。
以下、本法案の目的と、ただいま申し上げました抑止、監視と罰則、救済の三段階の枠組みに沿って質問をさせていただきます。
まず、本法案の目的についてお伺いいたします。
預金者を利益相反行為から守ることを目的とした銀行と証券の分離原則が確立されたのは、昭和二十三年の証取法制定時です。本法案では、証券会社から委託を受けた銀行が株式等の売買の仲介を行うことを解禁いたします。あくまで仲介であり、銀証分離の基本的な考え方を変えたわけではないというのが政府の考え方のようですが、その一方で、現在、既に銀行の子会社による証券業務への参入が認められています。一つの金融グループとして、事実上、銀証分離の精神が守られなくなる可能性が高いと言えますが、この点に関する政府の見解を伺います。
昨年十二月の金融審議会報告書や本法案の衆議院審議における政府答弁では、我が国では銀行部門にリスクが集中し過ぎており、当該リスクを分散することが必要という趣旨のことが再三述べられています。ある意味で理解できる説明ではありますが、具体的に、だれが、どのようなリスクを負おうとしているのでしょうか、あるいは負ってもらおうとしているのでしょうか。
一方、銀行業界は、護送船団方式の中でリスクに見合ったリターンや保護を長年受けてまいりました。今回のリスク分散に伴って、どのようなリターンあるいは既得権益を放棄しようとしているのでしょうか。分かりやすい言葉で御説明いただきたいと思います。
次に、現在の金融情勢認識に絡めて、基本的な立場を確認させていただきます。
我が国の金融情勢は、危機を脱して健全化したのでしょうか。逆に、いまだ健全とは言えないのでしょうか。
私自身は、引き続き健全な状態ではないと認識しておりますので、そうした状況下、銀行は本業に専念すべきだと考えております。健全ではないので収益機会を提供するという発想ならば、本末転倒と言わざるを得ません。本業を立て直せない中で、どうして証券仲介業務をうまく運営できるのでしょうか。健全ならばそれは結構ですが、そうであるならば、衆議院で審議された金融機能強化法、いわゆる公的資金新法のようなものは必要ないはずであります。
竹中大臣は金融健全化の公約を果たしたと言え、竹中大臣に心から敬意を表したいと思います。しかし、現実には本法案と金融機能強化法の両方が提出されており、論理的な対応とは言えません。
御承知のとおり、ここに来て、一部のメガバンクが再び経営難に陥っております。金融情勢が安定したから証券仲介業務を認めるのか、あるいは本業で収益を稼げないからこうした業務を認めるのか、基本的な立場を確認させていただきたいと思います。
次に、三段階の一番目、つまり不公正な行為の抑止についてお伺いいたします。
利益相反行為を抑止するために、現行法でも親銀行、子証券間の取引にかかわる非公開情報の共有禁止などの措置が講じられています。また、本法案では、新たに融資を条件とする証券取引受託行為の禁止、証券仲介部門と融資部門の情報共有禁止などが盛り込まれています。そこで、今後具体的に問題になりそうな事例等について、政府見解を伺っておきたいと思います。財政金融委員会の委員のみならず、広く議員各位に周知させていただく観点から確認をさせていただきます。
そもそも、仲介業務はだれが行うのでしょうか。既に銀行が投信販売を行っておりますが、その場合には、顧客に対して勧誘を行う行員は証券外務員登録を要件としております。仲介業務を行う者の要件、コンプライアンス等の研修の義務化について、どのように考えているのでしょうか。
その上で、第一の事例としてお伺いいたします。銀行内部の預金者データで富裕層の把握等を行い、特定顧客に対して仲介業務を行うことをどのようにお考えになりますか。銀行部門と証券仲介部門の情報共有禁止規定の実効性をどのように担保するのでしょうか。
第二に、株購入資金の融資を条件とした証券仲介、つまりバックファイナンス付きの勧誘をどのように考えるのでしょうか。禁止であるとすれば、その実効性をどのように担保するのでしょうか。
第三に、銀行が経営支援を行っている企業の株式引受けや購入を企図した仲介をどのように考えるのでしょうか。禁止であるとすれば、どのように実効性を担保するのでしょうか。
第四に、銀行が取引先企業に対し証券仲介に応じることを条件に融資を行うなど、いわゆる圧力販売禁止の実効性をいかに担保するのでしょうか。
第五に、銀行が自行株を推奨することをどのように考えるのでしょうか。禁止であるとすれば、どのように実効性を担保するのでしょうか。
あわせて、衆議院での政府答弁の矛盾について確認しておきます。
衆議院の議事録を読む限り、銀行が融資先企業の発行する株式あるいは社債の仲介を行う場合において、発行代わり金で貸出し資金を回収することを必ずしも禁止しないようであります。ただし、当該事実を顧客に告知せずに仲介することは内閣府令で禁止すると述べています。しかし、同時に、融資部門と証券仲介部門の情報共有を禁止するとしていますが、情報共有が禁止されているのにどうして上述のような顧客への事前告知ができるのでしょうか。論理的な説明を求めたいと思います。
次に、監視、罰則についてお伺いいたします。
まず、監視において重要な役割を果たす証券取引等監視委員会の位置付けを確認させていただきます。
私どもは、同委員会の実効性を高めるために、日本版SECとも呼ぶべき独立組織にすることをかねてより提言しております。一方、竹中大臣は、同委員会は内閣府設置法第五十四条、金融庁設置法第六条、九条等に規定された組織であり、職務執行上、金融担当大臣や金融庁長官の指揮監督を受けずに独立して職権を行使することが保障されている、したがって独立性は実質的に保障されているという答弁を繰り返しておられます。実質的に独立性が保障されているのならば、この際、形式的にも独立性を高めてはいかがでしょうか。なぜそうしないのか、何が理由でそうできないのかをお伺いしたいと思います。
また、同委員会に告発された事実はどのように処理されるのでしょうか。
我が党が昨年設置した粉飾告発ホットラインには多数の事案が寄せられております。その中には、同委員会に告発したが全然反応がないという苦言を呈しているものも少なくありません。国民から告発を受けた場合、どういう基準でどのように処理されているのでしょうか。
次に、罰則についてお伺いいたします。
本法案には罰則規定がありません。どうやって実効性を担保するのでしょうか。違反行為には監督上の行政処分で対応するということですが、そういう裁量的対応こそ改善が必要であることは、昨年の東京海上問題に絡めて本院で指摘申し上げたとおりであります。お答えいただきたいと思います。
さらに、課徴金についてもお伺いいたします。
本法案では、不公正取引等に対して課徴金を新設することになっております。金融審議会報告書では、ルール破りは割に合わないという規律を確立し、規制の実効性を担保すると明記してあります。まさしくそのとおりだと思います。
本法案では、不公正利益の二倍を課徴金の上限にすることが検討されているようですが、フランスでは十倍という基準が設けられています。課徴金に対する考え方と水準の適否についてお伺いいたします。
次に、実際に被害が出た場合の救済であります。本席で確認しておきたいことは挙証責任の所在についてであります。
銀行の不公正な仲介によって顧客が財産的被害を受けた場合、銀行に対する損害賠償請求は民法七百九条の不法行為責任に基づいて行われます。ただし、同法の挙証責任は被害者側にあり、個人が銀行を相手に裁判を行うという状況に置かれます。この点に関して政府は、そういう場合は金融商品販売法が適用され、挙証責任が被告側に転換すると説明しております。
そこで、確認させていただきます。今後、こうした事態が発生した場合、いかなるケースでも被害者側は挙証責任を負わないと解釈していいでしょうか。それとも、ケース・バイ・ケースということでありましょうか。ケース・バイ・ケースであるとすれば、具体的にどのような判断基準が設けられるのでしょうか。
銀行に証券仲介業務が開放されますと、地方の中小地場証券はかなりの痛手を被ることが予想されます。加えて、取引所取引の原則も廃止されます。
そこで、お伺いしたいと思います。政府は、地方の証券取引所、中小地場証券の将来像をどのように考えているのでしょうか。
次に、社債等振替法改正案に関連してお伺いいたします。
本法案によって株のペーパーレス化が実現すれば、社債、国債、株という三つの基本的有価証券のペーパーレス化が完了いたします。関係者の御尽力に敬意を表したいと思います。
そうした中で、現在、日本の証券決済システムは、社債は債券決済ネットワーク、国債は日銀、株は証券保管振替機構が運営しております。このうち、国債の振替決済機関については、二年前の証券決済制度関係法成立によって一定の要件を満たす株式会社又は日本銀行とすると定められました。当面は日銀のシステムによる決済を前提としつつ、将来は一定の要件を満たす株式会社に移行することもあり得るということでしょうか。今後の考え方並びに一定の要件を満たす株式会社の定義についてお伺いいたします。
冒頭申し上げましたように、金融制度改革は四つの自由化を軸に進められております。資本・為替と金利の自由化が先行し、遅れて業務と参入の自由化が行われてきました。ところが、昨今の為替介入や金融政策を見ると、為替、金利の自由化に逆行する状況が恒常化しております。とりわけ長期金利に関しては、日銀総裁が、長期金利にふたをするといった表現も使っており、これは、長期金利は市場が決めると言っていた従来のスタンスと百八十度異なるものであります。非不胎化政策による為替介入や長期金利の動向は、金融自由化だけではなく、今後の国債管理政策にも重要な影響を与えます。
そこで、明日からサミット財務大臣会合に出席する谷垣財務大臣にお伺いいたします。
為替と長期金利の運営について、明日以降の会合でどのような考え方を表明され、帰国後はどのようなスタンスで臨まれるのでしょうか。分かりやすい言葉で御説明いただければ幸いであります。
本日は、不公正な証券仲介業務に対する考え方を中心に質問させていただきました。金融証券市場の発展は、投資家や預金者からの信頼に懸かっております。同様に、私たち国会議員も、国民の皆様からの信頼を高めるために、自ら不公正な行為を戒め、襟を正すことが求められております。昨今の年金保険料未納問題をめぐる騒動について、与野党を問わず、真摯に反省する必要があります。
この問題に関連して、素朴な疑問を一つ述べさせていただきたいと思います。
小泉総理の年金、国民年金保険料に関しては、一九八六年の強制加入以降は正しく納付されていると伺っております。その後、何度も大臣等の政府の公職に就かれたものの、その際に、我が党の菅前代表や他の与党議員の皆さんのような事例は発生しなかったということであります。菅前代表を始め、同様の事態に遭遇した多くの議員の皆さんは、健康保険を共済に切り替える際に国民年金まで脱退し未加入状態が発生しました。小泉総理にそうした事態が発生しなかったのは、健康保険を共済に切り替えなかったのか、あるいは企業の厚生年金や健康保険にお入りになっていたからではないでしょうか。
小泉総理又はその代理の方は、一九八六年以降、総理が公職に就かれたたびに、いつ、どこの市町村の窓口で手続をしたのでしょうか。
この点について御説明をいただきたかったのでありますが、昨日の夜、内閣官房が私の部屋に参りまして、この質問をやめてほしいと言ってまいりました。これは国会議員の質問権に対する侵害になりかねない問題でもあります。
最後になりますが、不公正な行為がなくなり、銀行も証券会社も、そして国会議員も、預金者、投資家、国民から、そして今日見学に来てくださっている学生の皆さんから信頼される存在になることを祈念申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(竹中平蔵君) 大塚議員から合計十八問の質問がございました。まず、銀証分離の精神が守られなくなる可能性が高いとの御指摘でございますが、銀行等による証券仲介業の解禁は、銀行等が証券会社から委託を受けまして投資家からの株式等の売買注文を証券会社に仲介することを解禁するものでございます。銀行等に証券業務を行うことを原則として禁止した証券取引法第六十五条の基本的な考えを変えるものではこれはございません。また、本法案では、証券取引法第六十五条の趣旨を踏まえまして所要の弊害防止措置を講じるところでございます。
次に、金融システムにおけるリスク分担の在り方についてのお尋ねがございました。
我が国における資金仲介機能を強化して経済の活性化を図るためには、現在、金融機関に集中しているリスクが、資金の出し手である個人や企業においてリスク・リターンの選好を通じまして幅広く配分され、金融システム全体で幅広くリスクテークが行われることが望ましいというふうに考えます。また、銀行においても、リスクに見合った適切なリターンを確保することによってその健全化を促進する方向に作用するというふうに考えているところでございます。
我が国の金融情勢についてお尋ねがありました。
我が国の金融機関は、来年三月末での不良債権問題終結に向け、現在、懸命な経営努力を行っているところでございます。その直近の財務内容については、足利銀行を除き、すべての金融機関が健全性の基準を満たしており、金融情勢に特段の問題がある状況にはないというふうに認識をしております。
銀行等による証券仲介業務を解禁する趣旨はどうかというお尋ねがございました。
銀行等による証券仲介業務の解禁は、銀行等に新たな収益機会を提供して銀行等の健全な運営にも資するものとは考えておりますが、今回の措置の趣旨は、あくまでも、証券の販売チャンネルの拡充によって顧客の利便性の向上や投資家のすそ野の拡大を図りまして、市場機能を中核とする金融システムを改善、強化しようとする、その点にございます。
銀行等による証券仲介業務の適正性の確保をどうするのかについて、極めて包括的な御質問をいただきました。まず証券仲介業務を行う者の要件及びコンプライアンス等の研修、預金情報の利用、いわゆるバックファイナンス付きの勧誘、経営支援を行う企業の株式の仲介、いわゆる圧力販売について、自社株の推奨、有価証券の手取り金が借入金返済に充当される場合の開示義務と融資部門と証券仲介業務の間の情報の共有の禁止の関係はどうなっているのか、弊害防止措置等の実効性の確保の問題等々についてのお尋ねでございます。
まず、銀行等による証券仲介業務につきましては、現行の投資信託等の販売と同様に、勧誘等を行う者の証券外務員登録を要件とするとともに、証券業協会の自主規制によりまして証券外務員に対する所要の研修が義務付けられることとなります。
預金情報等の個人情報の取扱いにつきましては、昨年の個人情報保護法が制定され、平成十七年四月の施行に向けた準備が進められているほか、金融審議会特別部会においても検討が行われております。基本法の趣旨や金融審議会における議論等も踏まえて適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
バックファイナンス付きの勧誘につきましては、今回の改正においてこれを禁止することとしております。
経営支援を行う企業の株式等の仲介行為につきましては、融資部門と証券仲介業務部門との間の情報の共有を禁止することなどにより、取引の公正を確保してまいりたいと考えております。
いわゆる圧力販売につきましては、現行法令において、信用供与の条件として証券取引をさせる行為を禁止させているところでございます。
自社株の推奨については、現行法令において、特定の銘柄を一斉かつ過度に勧誘する行為を禁止しております。また、今回の改正において非公開情報を利用して勧誘する行為を禁止することなどにより、取引の公正を確保してまいりたいと考えております。
有価証券の手取り金が借入金返済に充当される場合の開示義務と融資部門及び証券仲介業務部門の間の情報共有の禁止との関係はどうかという点につきましては、当該情報の共有の禁止は取引の公正を確保する観点から行うものでございます。証券仲介業務部門が法令を遵守するために、取り扱う有価証券について、自行の貸出し及び手取り金の借入金返済への充当の有無について他部門に確認することを禁止するものではございません。
これらの弊害防止措置などの規制の実効性につきましては、市場監視機能の体制の強化に努めておるところでございまして、今後とも、法令違反行為を的確に把握しまして、これに厳正に対処することによりまして、その実効性の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
証券取引等監視委員会の独立性を形式的にも高めてはどうかという御指摘がございました。
金融コングロマリットの出現、諸外国の金融行政の機構統合といった流れを踏まえますと、我が国の金融行政当局におきましても、金融全般を業態横断的に所管しまして機能別に再編することが適当であるというふうに思います。証券行政部門だけを切り離して以前のような業態別の体制に戻すことは適当でないというふうに考えているわけでございます。こうした機能別編成という考えに基づき、証券取引等監視委員会は独立して職権を行使することが法律上保障されておりまして、現実にも独立した意思決定の下に職務遂行をされているところでございます。
違反行為に対する実効性の担保の方法についてお尋ねがありました。
本法案において、銀行等の証券仲介業における弊害防止措置などの行為規制違反につきましては、一次的には監督上の行政処分により対応することとしているものでございますけれども、行為規制の実効性に関しては、市場監視機能・体制の強化に努めているところでもあり、今後とも、法令違反行為を的確に把握して、これに厳正に対処することによりまして、その実効性の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。
課徴金に対する考え方、その水準の適否についてのお尋ねがございました。
今回、導入を図る課徴金制度は、違反行為抑止のために、違反者に金銭的負担を課す行政上の措置であります。その水準については、違反行為抑止のための必要最小限の水準としまして、経済的利得相当額を基準としております。実効性のある市場監視に向けて、まずは今回の制度の適切なる運用に全力を尽くしたいというふうに考えているところでございます。
不法な証券仲介行為を行った銀行等に対する損害賠償請求に係る挙証責任についてはどうかとお尋ねがありました。
金融商品販売法によりますれば、銀行等が証券仲介行為を行うに際して、元本欠損が生じるおそれがある等の同法に定める重要事項の説明を怠った場合には、損害額の推定や因果関係の立証責任が銀行等の側に転換されるというふうに定めているところでございます。
地方の証券取引所や中小地場証券会社の将来像についてお尋ねがございました。
地方の証券取引所や中小地場証券は、地域の企業に手近な資金調達の場を与え、また、地域の投資家に身近な資産運用の場を提供し、地域経済の発展に貢献したものというふうに認識をしております。金融庁としましては、証券市場における適正な競争関係を促進する観点から、各種の規制緩和を行うなど、必要な環境整備に努めたところでございまして、各地方証券取引所や地場中小証券においても、引き続き、地域のニーズを的確に把握して、創意工夫による効率的な市場運営や経営に努めていかれることを期待しているところでございます。
最後に、国債の振替決済機関についてのお尋ねがございました。
国債を取り扱う振替機関につきまして、現在は日本銀行のみでございますが、今後も一定の要件を満たす株式会社であれば、申請に基づく指定等を受けまして、国債発行者たる国の同意を得て国債の取扱いが可能となります。ここで一定の要件を満たす株式会社というのは、社債等の振替に関する法律第三条第一項に掲げられている人的構成、財産的基礎等に関する要件を満たす株式会社を指すものでございます。
以上、十八問お答えさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(谷垣禎一君) 大塚議員にお答えいたします。為替と長期金利についてのお尋ねでございますが、為替相場については、今後とも、四月のワシントンG7声明にもありますように、為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきであり、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくないとの基本的な考え方に基づいて対応していく考えであります。
また、金利につきましては、景気や物価の動向、それから財政・金融政策等の複合的な要因によって変動するものでありますから、今後の動向について一概に申し上げることは困難でありますが、市場の動向については今後とも引き続き注視してまいりたいと考えております。
なお、明日以降のこのサミット財務大臣会合では、経済政策については、中長期的な構造改革が議論の中心になるのではないかと考えておりますが、仮に為替や長期金利について我が国の考え方を問われた場合には、ただいま申し上げたような考え方を述べることにしたいと思っております。(拍手)
#10
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。─────・─────
#11
○議長(倉田寛之君) 日程第一 文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長北岡秀二君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔北岡秀二君登壇、拍手〕
#12
○北岡秀二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。本法律案は、社会の変化に対応した文化財保護制度の整備を図るため、人と自然とのかかわりの中で形成された文化的景観及び生活用具等の製作技術として伝承されてきた民俗技術を新たに保護の対象とするとともに、建造物以外の有形文化財、有形民俗文化財及び記念物を新たに登録制度の対象にしようとするものであります。
委員会におきましては、重要文化的景観の選定と景観法との関係、民俗技術を伝承するための方策、登録制度の対象拡大に伴い必要とされる地方自治体の役割等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────
#13
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#14
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#15
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 百八十五
賛成 百八十五
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────
#16
○議長(倉田寛之君) 日程第二 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案日程第三 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長山本保君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔山本保君登壇、拍手〕
#17
○山本保君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案は、国民の中から選任された裁判員が裁判官とともに刑事訴訟手続に加わることが、司法に対する国民の理解の増進と、より公正な裁判の実現に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法及び刑事訴訟法の特則その他の必要な事項を定めようとするものであります。
なお、衆議院において、裁判員等又はこれらの職にあった者による秘密漏示罪の罰則の変更、国民が裁判員として裁判に参加しやすい環境を整備する努力義務を国に対して課す規定及び施行三年後の見直し規定の追加等の修正が行われております。
次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、刑事裁判の充実及び迅速化を図るための方策として、争点整理のための新たな準備手続の創設及び証拠開示の拡充、連日的開廷の確保のための規定の整備等を行うとともに、被疑者に対する国選弁護人の選任制度の導入等国選弁護人制度の整備、検察審査会の一定の議決に基づき公訴が提起される制度の導入等のため、所要の規定を整備しようとするものであります。
なお、衆議院において、開示された証拠の目的外使用の禁止の規定に違反した場合の措置に関する規定の追加、検察審査員等又はこれらの職にあった者の秘密漏示罪の罰則の変更等の修正が行われております。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、裁判員制度を創設する意義、職業裁判官三名と国民から選ばれた裁判員六名による合議体構成の妥当性、裁判員に守秘義務を課す理由とその範囲を明確にする必要性、裁判員となることを辞退できる事由の明確化、五年後の実施までに制度について国民の理解を十分深めるための方策、真実を発見するため検察官の手持ち証拠を大幅に開示する必要性、捜査における取調べ状況の録画などによる透明性の確保、被疑者段階に国選弁護人を付けることの意義等について質疑が行われたほか、参考人からの意見聴取、仙台市と大阪市において地方公聴会を開催する等、慎重に審査を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局した後、日本共産党の井上委員より、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案に対し裁判員の参加する合議体の構成を改める等の修正案が、また刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対し開示された証拠の使用の在り方等の修正案がそれぞれ提出されました。
続いて、討論に入りましたところ、日本共産党の井上委員より、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案については修正案、原案とも賛成、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案については修正案に賛成し原案に反対する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、順次採決の結果、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案について、修正案は否決され、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次いで、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、修正案は否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両法律案に対してそれぞれ附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────
#18
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案の採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#19
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#20
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 百八十二
賛成 百八十
反対 二
よって、本案は可決されました。
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#21
○議長(倉田寛之君) 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#22
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#23
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 百八十二
賛成 百六十
反対 二十二
よって、本案は可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#24
○議長(倉田寛之君) 日程第四 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長和田ひろ子君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔和田ひろ子君登壇、拍手〕
#25
○和田ひろ子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。本法律案は、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図るため、病院等開設会社による病院等開設事業に係る措置その他の構造改革特別区域に係る法律の特例に関する措置を追加しようとするものであります。
委員会におきましては、構造改革特区制度への評価と今後の改善方策、株式会社による病院設立が医療制度に与える影響、教育職員の特別免許状の授与を市町村教育委員会が行うことへの懸念等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
昨日、質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党の小林委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#26
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#27
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#28
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 百八十三
賛成 百九
反対 七十四
よって、本案は可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#29
○議長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。午前十時四十四分散会