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2003/03/28 第156回国会 参議院 参議院会議録情報 第156回国会 経済産業委員会 第7号
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2003/03/28 第156回国会 参議院

参議院会議録情報 第156回国会 経済産業委員会 第7号

#1
第156回国会 経済産業委員会 第7号
平成十五年三月二十八日(金曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十八日
    辞任         補欠選任   
     峰崎 直樹君     藤原 正司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         田浦  直君
    理 事
                加納 時男君
                松田 岩夫君
                木俣 佳丈君
                平田 健二君
    委 員
                小林  温君
                近藤  剛君
                関谷 勝嗣君
                福島啓史郎君
                直嶋 正行君
                藤原 正司君
                簗瀬  進君
                若林 秀樹君
                鶴岡  洋君
                松 あきら君
                緒方 靖夫君
                西山登紀子君
                広野ただし君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        塩入 武三君
   参考人
       プライスウォー
       ターハウスクー
       パース・フィナ
       ンシャル・アド
       バイザリー・サ
       ービス株式会社
       取締役パートナ
       ー        田作 朋雄君
       日本労働組合総
       連合会総合政策
       局長       成川 秀明君
       元野村證券株式
       会社副社長
       元住友ライフ・
       インベストメン
       ト株式会社代表
       取締役社長    斉藤  惇君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○株式会社産業再生機構法案(内閣提出、衆議院
 送付)
○株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律
 の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
○産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)



    ─────────────
#2
○委員長(田浦直君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、峰崎直樹君が委員を辞任され、その補欠として藤原正司君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(田浦直君) 株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
 本日は、三案の審査のため、参考人としてプライスウォーターハウスクーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービス株式会社取締役パートナー田作朋雄君、日本労働組合総連合会総合政策局長成川秀明君及び元野村證券株式会社副社長・元住友ライフ・インベストメント株式会社代表取締役社長斉藤惇君の三名の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございました。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の三案の審査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席したままで結構でございます。
 それでは、参考人の皆様から御意見を伺います。
 まず、田作参考人にお願いをいたします。
#4
○参考人(田作朋雄君) 田作朋雄と申します。
 私は、プライスウォーターハウスクーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービスという会社で会社の立て直しのコンサルティングを行っている者であります。
 私の主な仕事は、会社の業況が苦しくなったときにその会社に雇われてそこを立て直す、いろんな形で出口を作っていくということであります。
 典型的には、その会社にまずお邪魔しまして、その会社の診断をさせていただきます。会社というのは、通常は人、物、金の集合体でありますから、それぞれについての診断が必要なわけですね。
 人の点でいえば、経営者がどうなっているのか、従業員がどういう関係にあるのか、放漫経営が原因で会社がおかしくなったならその経営者の交代は可能であろうか、いろんな点を分析いたします。
 それから、物というのは、事業基盤、会社の競争力、そういったものを含めて広く物と呼んでいるんですが、そういう要因を分析しながら、その会社が本当にこれからも存続していけるのかどうかということを調べます。具体的には、その会社がどういうところと競争しているのか、そこに伍して市場で生き残っていく力があるのだろうか、あるとしてその決め手は一体何なのか、それは販売力なんだろうか、それとも品質競争力なんだろうか、あるいは価格競争力なんだろうか、いろんなことを考えます。で、その会社はその力を持っているのか、そういったことを考えます。
 それから今度、その会社を取り巻くいろんな環境要因の分析も必要ですね。具体的には、例えば供給サイドから非常にある大手の一社の圧力が来ているんじゃないかとか、需要サイドから消費者運動が盛り上がって会社が押しつぶされそうになっているんじゃないのかとか、あるいは会社を取り巻く業界自体はそれなりにいいと思っていたんだけれども、代替商品が発生して新しい商品に取って代わられてしまってその業界自体が衰退するんじゃないかとか、あるいは新しい人が参入してきて新規参入のために業界そのものが相当苦しい状況に追い込まれるんじゃないかとか、こういったことも分析するわけですね。非常にここの物のところの分析は時間も掛かりますし手間も掛かります。
 それで、その辺りの人、物の点でこの会社に存続可能性ありと判断できれば、金のところは最後、ある程度処方の仕方があります。つまり、それなりに人材とか事業基盤があるわけですから。ところが、いかんせん借金漬けで首が回らないということであれば、その部分について何らかの処方せんを書くことは可能なわけですね。
 具体的には、そういう事業基盤としての人、物に支えられて、その会社が一体これからどれだけの収益を生んでいけるのか、どれだけのお金を生み出していくんだろうかということを予測しまして、予測といっても、これもちろんぴたっと一発で予測することは不可能でありますからいろんなシナリオがあり得るんですが、そうは言いながら、何通りもシナリオを作っていきますと、おのずから大体この会社、幾らぐらいの収益を生んでいくだろう、それに見合ってどのぐらいの借金なら背負って走っていけるだろうかということが分かってきます。それを踏まえて、今借りている借金とこれから背負って走っていけるであろう借金との差がどのぐらいあるかということを計算するわけですね。
 今度、その言わば借入れ過多になっている部分をどう作り替えていくかという作業に入ります。これを債権放棄とか債務免除とかいう形にすれば一番手っ取り早いんですが、私はそれは極論だと思うんですね。お金を借りて返せなくなったから放棄してもらえばいいじゃないか、免除してもらえばいいじゃないかというのは、全くあり得ない考えではありませんが、極めて例外的な極論だろうと思うわけです。そうなる前に、今申しましたように、一体幾らの借金を背負っていけるのか、それに対して背負っていけない分が幾らあるのか、その背負っていけない分をどう作り替えたらいいだろうかというふうに考える方が本来の筋だと思います。
 具体的には、今払えないんであれば、一定程度今払える分を払い終わった後に初めて利息の支払が発生するような別の借入金に組み替えておくとか、あるいはその払えない分を取りあえず無配当の株でいいから株にしておいて、借金が減ってきたらその株の価値が上がりますので、将来的には配当できるかもしれないし、株の価値も上がるかもしれないという、そういう考え方もできますね。これがいわゆる債務の株式化、デット・エクイティー・スワップと言われる考え方なわけですが、債務を株式に振り替えておくわけですね。それは今は紙切れですが、将来の楽しみがそこにありますので、単純に債権放棄するよりは、駄目元でも株をもらっておいた方が債権者にとっても有利ですから、早い段階でそういういろんな処方せんを書けばかなりの会社は実は立て直しが可能なわけですね。
 会社というのは一遍に駄目になるわけではありませんで、必ずそのプロセスがあります。だんだんだんだん駄目になっていきますので、なるべく早い段階で手を打てば処方せんの数はたくさんあります。後へ行けば行くほど選択肢の幅が狭まって、最後の最後の局面ではだれがやってももうどうしようもないという局面に追い込まれてしまいますので、なるべく早い段階でそういう問題を特定して、早く多様な選択肢を列挙して、その中で最適な対策を取っていくということが会社の立て直しの鉄則であります。
 残念ながら、我が国では、とりわけメーンバンク制の下でどうしても手遅れになってしまった面があったことは否めないと思うんですね。これは、右肩上がりの経済のときであれば、多少カンフル剤を打って、追い貸しをしたり人を派遣したりしてメーンバンクが債務者を支えていれば、そのうち右肩上がりの経済の中に問題が吸収されて、解決できたということがあったことは事実です。ただ、残念ながら、この九〇年代に入って既に十年、十三年ぐらいがたってしまって、もうこのやり方というのは機能しないということが明らかになってきたわけですね。そうだとすれば、問題を先送りして、そのうちに右肩上がりの経済の中に吸収されるという対策ではなくて、なるべく早い段階で問題を特定して、早く多様な処方せんをみんなで話し合って問題を解決していった方が国民経済的に資するものが大きいということが言えると思いますね。
 そんな中で、私自身もそういう会社の診断をしましたら、今度それを実行することが必要になりまして、その場合に、従来のようにメーンバンク主導で行うというよりは、債権者を普通は一堂に集めて私は作業をするのが通常であります。関与する利害関係人、債権者を一堂に集めて、そこでこの会社の処方せんを説明する。これは私どもが三人、四人、五人と掛かって二月、三月掛かって行った処方せんですから、そんなに理不尽なものではないはずなんです。これを説明しますと、大方の債権者の方は合意いただけるのが普通です。
 ただ、十人の債権者がおられると、一人、二人、どうしてもこれは応諾できないとおっしゃる方もおられることが多いこともまた事実です。そういう場合は、究極の手段として、実は法廷へ行って解決するという手段があるわけですね。出るところへ出て問題を解決するということです。具体的には、民事再生法だとか会社更生法だとかを使って、今俎上に上っている再建計画を実行するわけですね。いやそれは倒産ではないかとお思いかもしれませんが、事前に十分に準備してあれば、最後の最後だけ出るところへ出ても倒産だ破綻だというほどに深刻にはならないはずなんです。裁判所へ行きましても、再建計画はあるのかと聞かれて、いやもうできていますという答えになりますし、多数決は取れているのかというと、十人中八人取れているわけですから、これはすぐ終わります。つまり、最後の最後だけ出るところへ出て手続を透明にしたというだけですから、これをもって倒産だとか破綻だとかいう必要は私はないと思うんですね。
 そういう意味では、私のような仕事をしている人間にとっては私的整理でも法的整理でも極論すれば同じことです。会社の実態が同じなんですから、その会社を診断して、人、物、金を分析してどういう処方せんが書けてというのは、法廷であろうが法廷外であろうが全く同じ作業です。法的整理か私的整理かというのは、それを実行するときの手段の違いにすぎません。
 ただ、そうは申し上げながら、法的整理になりますと、どうしても破綻した倒産したという報道等もされて、それで売上げが非常に、通常三割から四割落ちますので、これがかなり大きい打撃になります。それから、従業員ももう自分の勤め先はつぶれたんだというふうに悲観してどんどん辞めていってしまう。それが本当に悪循環を呼んで駄目になってしまうという現象が起こるんですね。ですから、法的整理と私的整理は本当は同じことだと申し上げながら、できれば私的整理でやった方がいいんです。
 そのための手助けというものを国のサイドから私はいろいろする必要があると思います。つまり、国が問題解決のために提供している枠組みは裁判手続だけだというのでは私は足りないんじゃないのかなという認識を持っております。あとは私的整理に任せておいてということではなくて、なるべくその私的整理の方も法的整理に負けないぐらいの合理的なものをいろいろ枠組みとして準備しておく必要があると思います。産業再生機構というのは恐らくそのための一つの考え方だろうと思います。
 ですから、私の先ほどの説明の仕方からいけば、産業再生機構へ行ったってやることは同じです。人、物、金を分析して、この会社がどのぐらいの借金背負っていけて、どういう処方せんが書けて、それをみんなで集まって実行していく、それに尽きるわけです。ですから、そのことを私的整理として個別の銀行の部屋でやろうが産業再生機構のオフィスでやろうが裁判所へ行ってやろうが、これは同じ作業です。ただ、先ほど申しましたように、できれば私的整理でやった方がいいし、その私的整理も、密室で不明朗なことをやるんじゃなくて、産業再生機構というところできちっと透明な手続を通してやれば、これは早い段階で手も打てれば、いろんな処方せんを法的整理に行ったときほどに倒産だ破綻だという烙印を押されないで実行することは可能だと思うんですね。
 ですから、決してその産業再生機構で銀行の持っている債権を高値買いしたり、そこで塩漬けにしたりということを想定しているはずではないわけでありまして、くどいようですが、同じことをやるその実現の手段として一つの追加の選択肢を提示しているということですね。
 国の仕事というのは私はそういうところに尽きると思うんです。つまり、民間が手に負えない、権利関係が非常に複雑だとか、当事者同士でもういがみ合ってしまって話が進まない、そういうときに国がその問題解決のための枠組みを提供するわけです。それを使えと強制するつもりもなければ、無理やり介入して何かあしき行政指導をするつもりもない。それを使うか使わないかは民間の自由なわけなんですが、使いたければ使っていいし、使えば非常に効率的に進むようなメニューを一つ追加で提供するということだと思いますね。
 国の仕事というのはそういうふうに大きな枠組みを作ることでありまして、そういう枠組みを作って、使えば得だとなれば民間はおのずから活性化しますので、そういう枠組みも提供しないままに民間で勝手にやればいいとほうっておいたり、あるいは民間が動かないんだから国が全面的に介入すると。これはどちらも極論でありまして、国は税制面だとか罰則規定だとか、あるいは情報開示の徹底だとか、そういった面での枠組み作りに徹するのが役割であろうと思っております。
 以上で私の報告を終わらせていただきます。
#5
○委員長(田浦直君) ありがとうございました。
 次に、成川参考人にお願いをいたします。
#6
○参考人(成川秀明君) 御紹介いただきました連合総合政策局長をやっております成川と申します。
 私は、連合、これは労働組合の中央団体でございまして、産業別組織の労働組合の人たちの意見を聞きながら、私のところで政策問題を中心に議論し、皆さんの方に要請したり、あるいは経営者団体などとの話合いの窓口もやっております。
 今回の産業再生関係につきましては、日ごろ、御存じのように、今現在、大変、経済、産業、状況悪くなっておりまして、我々の組合の企業も売上げが伸びない、あるいは従業員を人員削減するなどがかなり広く起きてございます。民事再生法を適用して企業の再生に当たるという組合も多くございます。また、私的整理に関するガイドラインを活用しまして企業の再生に当たっている、こういう組合もございます。
 そういう組合、特に企業再生で苦労されている組合の方々からいろんな意見が我々に寄せられておりまして、一番その基本的な我々に対する強い要望としましては、やはり企業の再生については労使の話合いをしっかり早めにやって、そして企業再生に当たる、この仕組みを是非作っていただきたい、こういうのが関係の組合からの強い要望でございます。
 こういう我々の日ごろの意見交換の中を踏まえながら、今回の産業再生の関連二法案を見させていただきました。
 御存じのように、失業につきましては残念ながら改善する見込みがなかなか出ない、政府自らもまだ悪化する、こういう事態でございます。こういう中で、我々はこの株式会社産業再生機構につきましては、是非、これ以上の失業を増やさない、そして企業の再生に資する、そういう役割を担っていただきたい、これが私どもの第一の強い希望でございます。是非、この産業再生機構が雇用の安定、あるいはこれ以上の失業の悪化を防止するという役割を担うような、そういう組織として是非成立をお願いしたいということでございます。
 そして、当然、この産業再生機構の法案等を我々読ませていただきますと、これに対します資金調達等に対しまして、当然政府の保証あるいは預金保険機構からの出資など、こういう公的な支援措置の中で活動する、こういうことでございます。我々としましては、これらの活動に当たっては、やはり国民にしっかり説明できるような形での業務がなされるということが必要である、すなわち公正性をしっかり確保できているということを国民に説明できる形の中でこの仕事がされる必要があると、こう考えてございます。
 また、先ほども紹介しましたが、企業の再生、我々としましては、私的整理あるいは民事再生法等の中でいろいろ組合が困難に直面しているところでございます。その中で、特に我々問題と感じ、また当該組合からも訴えられておりますのは、私的整理に関するガイドラインにのっとった民間の企業再生におきましては、労働組合との話合い等について明示的なガイドラインが示されておりませんで、それは各事業者の判断に任されているということでありまして、メーンバンクと負債事業者の話合いの中で行われて、労働組合の話合いは最後の最後になって初めて示されるというふうな事態に直面したという組合からの訴えがございます。
 具体的な企業の再生に当たりましては、その後の当然従業員の削減計画あるいは賃金等の労働条件の一部切下げなどの合意もせざるを得ない、こういう事態に直面しているわけでございまして、是非、こういう企業の再生に当たりましては、早めの段階からのやはり労使協議の中で、従業員と心を一にした企業の再生を図り、雇用の安定、雇用の維持、失業を最低限出さない形で企業の再生を進めるということが大事であると、こう思っているところでございます。
 整理回収機構における企業再生の基本方針なども示されておりますけれども、先ほども御紹介ありましたけれども、やはり企業の再生のポイントは人と物と金の三要素、これをいかにしっかり活用する中で企業を再生を図るか。そして、人の場合には十分な経営遂行能力ある経営者と、そして従業員が企業再生に尽力する意思をしっかり持てると、こういう再生計画方針でないとなかなか再生はできない、こういうふうな考え方が示されているところでございまして、この考え方で是非、産業再生機構につきましても人材の問題、特に従業員の協力を得る形を是非整えていただきたい、こう考えているところでございます。
 衆議院の方でも議論がされまして、この点について一部、この再生計画、事業再生計画の認可に当たりましては労働組合等の話合いはなされているかどうか等について十分配慮するなどにつきまして、追加の法文を入れていただいたということについては我々高く評価をしているところでございます。
 具体的な点につきましては、したがいまして我々としては、この産業再生機構法案の中で目的につきましては、これも衆議院の方で雇用の安定等に配慮しつつ産業の再生を図るということを入れていただきましたが、是非、そういう形で雇用の安定を強く目的に備えた法として整えていただきたいということでございます。
 そして、この産業再生計画については、労使の話合い等に配慮するということを入れていただきましたけれども、具体的にそれを進めるに当たりましては、是非この産業再生計画の項目の中に、これは産業、現在の産業再生法の中では、その計画の中には、事業再構築等に伴いましては労務に関する事項をしっかり記載しなければならないという形になっているわけでございますが、同じような考え方で、産業再生機構の場合におきます事業再生計画におきましても、その記載事項の中に労務に関する事項、あるいは労働組合等と協議をするあるいは合意をしているというふうな記載の欄を是非設けていただきたい、こう考えているところでございます。
 先ほども紹介しましたように、こういう私的整理あるいは民事再生法における整理におきましては、当該の組合員あるいは従業員、労働組合は、早期退職あるいはやむなし解雇などの大変なつらい目に遭っているわけでありますし、退職金や賃金などの切下げというふうな、そういう目にも遭っているわけでありまして、早い段階からの十分な労使協議を行い、合意の中でしっかり企業再生を行う。従業員自らが企業再生に積極的に協力できるという条件を是非作っていただきたいということをお願いしたいと思います。
 したがいまして、主務大臣の支援基準につきましては、是非、労働組合等と十分な労使協議を行っている、また計画について労使の合意があるなどについての基準を是非設けていただきたい、こう思っておるところであります。
 同時に、この企業の再生に当たりまして、我々直面している課題は、その中で企業の合併、分割あるいは営業譲渡なども行われている事態にございます。企業の分割につきましては、これにつきまして二〇〇〇年の五月に企業の分割にかかわる雇用・労働条件の承継法を作っていただきまして、我々働く者にとって安心してこれらの企業再編に協力しながら仕事もできる、こうなっていますが、営業譲渡につきましては、残念ながら、それらにかかわる働く者の労働契約及び労働条件を承継するか否かについては判例も分かれている事態でございまして、実際、これに伴って一時解雇が行われるなどの事態がございます。我々としては、是非これらの営業譲渡におきましても、当該労働者の労働契約、労働条件を承継するという法律を是非作っていただきたい、こう思っておるところでございます。
 あわせて、我々労働組合の中でも中小組合の労働組合も大変多くございまして、その中で企業の再建で苦労しているという組合も多いわけでございます。是非、今回の産業再生機構、中小企業も適用されるということでございますけれども、是非積極的に中小企業の再生に対しまして支援をできるような、そういう力と実質的な人材等を備えて中小企業の企業再生への支援も担っていただきたい、こう考えておるところでございます。
 それから次に、公正な事業再生を進めるという上では、やはり国民にしっかり産業再生、企業再生、不良債権処理が公正なルールで処理されて企業再生を行っているということが分かる必要がある、こういうふうに我々考えておるところでございます。
 すなわち、具体的なこれらの事業再生を進めるに当たりまして、このガイドライン等の中で、既に社会的におおよそ確認できているような、そういうようなこの再生についてのルール、すなわち対象債権者の債権放棄の場合における株主責任あるいは企業経営者の責任などについて一定のルールがもうできていると、こういうふうに我々は見ておりまして、これらのルールについては事前に定めていただき、そのルールに従いながら、当然、この産業再生、不良債権処理が進められているという形を整えていただきたい、こういうふうにも思っておるところでございます。
 次に、改正産業活力再生特別措置法につきまして、考えを二点ばかりお願いを申し上げたいと思います。
 この産業活力再生特別措置法のできる時点におきましても、我々いろいろお願いをいたしまして、この中で労働組合あるいは労働者との協議等あるいは雇用への配慮等につきまして中に入れていただいたところでございます。今回、それぞれ事業の計画、再生計画等新しい事業が追加されておりますが、法案を見ますと、これらについても当然そういう雇用の安定あるいは労使の話合いについての配慮が定められたということでございまして、是非その点、一段と今の厳しい雇用情勢の中ではこれらの雇用安定、労使協議の実施についてしっかりこれを実行していただきたい、こう思っておるところでございます。
 その中で、先ほども御要請申し上げましたけれども、是非この営業譲渡等も積極的に進めると、こういう計画、それぞれの計画になっておりまして、これらの営業譲渡を進める際につきましては、先ほど御要請申し上げましたように、是非、労働雇用契約の承継ができるという法整備を整えていただきたい、こう思ってございます。
 あわせて、中小企業再生支援の役割を強めるということが今回の改正産業再生法の中に定められております。その一つとしまして、各都道府県に中小企業再生支援協議会を設置すると、こういうことでございますが、是非この中小企業の再生支援の役割を強めていただきたいと思っております。特に、この再生支援協議会の中には、再生法のアドバイスをできる人材を集め、アドバイスをすると、こういうことでございますが、その際には、是非、企業の再生に当たっては労働組合、従業員との労使協議を実施する中で行うなどについて是非しっかりアドバイスをしていただきたい、こういう指導をお願いしたいと思います。
 あわせて、各地域におきましては、我々労働組合も提唱し、協力いただきながら、地域の経営者団体あるいは行政等と地域の雇用の創出等について話合いをしているところでございますが、あわせて、中小企業の活性化などについても日ごろから話合いをしております。これらの話合いの成果につきまして、中小企業再生支援協議会も是非話合いの場を設けていただいて、これらの努力につきましてともに生かすという活動をお願いしたい、こう思っているところでございます。あわせて、この再生支援につきましては、金融面での支援もしっかりお願いをしたいというふうに思ってございます。
 最後に、これらの中で残念ながら離職者、失業者が出ている現状でございます。この離職者、失業者に対する対策につきましても、更に強化をしていただかないと失業者がますます増えていく、こう思っておりますので、これらの失業者、離職者に対する支援対策の強化もお願いしたい、こう思っているところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
#7
○委員長(田浦直君) ありがとうございました。
 次に、斉藤参考人にお願いをいたします。
#8
○参考人(斉藤惇君) 斉藤でございます。
 私は産業再生機構の社長候補ということになりまして、それを受諾いたしました背景からお話をさせていただきたいと存じます。
 私自身は、現在の我が国の置かれた経済状況というのは、もう言うまでもなく極めて深刻な状況であるというふうに思っております。したがいまして、官民を問わず、挙国一致体制であらゆる手段を講じて立ち向かわなければならないというふうに日ごろから強く感じております。
 某社会主義国の宰相ですらといいますか、が、白い猫でも黒い猫でもネズミを捕る猫はいい猫だと発言されたと聞き及んでおりますが、我が日本こそ今やそのような考え方や行動を取らなければならないというふうに思っております。特に、長い間、国内外の金融界に身を置いてまいりました経験から、こうした思いを痛切に感じております。
 今、正に日本が土台から崩壊しようとしているんではないかというふうに感じております。日ごろから欧米のアナリストたちと日本経済の分析も繰り返しておりましたけれども、彼らの日本経済に対する見方は非常に厳しいものがあります。細かなことにはいろいろな議論の余地というのはあるのかもしれませんけれども、問題の緊急性あるいは世界経済に占めます我が国経済の役割の重さを考えれば、こうしたことを国内で余りあれこれ議論しているような段階は既に遠くに過ぎ去っている、今や総力を挙げて果敢に実行していく時期であると思っております。
 一つ一つの具体的なビジネスの戦線において、フロントにおいて、具体的にだれかが現実に対応するということをしないで微細や経緯にこだわってこれに背を向けてしまうと、本当に我が国の経済全体が立ち行かなくなる、子供や孫の世代にこの国を安心して引き継ぐということができなくなってしまうんではないかと強く責任を感じております。
 私は常々、今現在に生きる一国民としてこういう思いを強くしておりますけれども、もし自分にこうした何らかの役割が求められることがあるならば、これに背を向けずに、この与えられた戦線で現実と向かい合う、具体的行動に果敢に取り組んでいくということが日本国民としての義務であろうと信じております。私自身の四十年間以上の金融界におけます経験が再生業務に直接役立つかどうかは分かりませんけれども、事業、企業の再生に関係する業務も幾つか経験的には手掛けてまいりました。こうした業務に対する感覚は一応十分に持っていると思っているつもりであります。
 再生業務自体は今や御案内のように一つの国際的に共有されているテクノロジーでありまして、こうした技能、能力を身に付けている若い人材が我が国にも増えてきているという現実を見まして、頼もしい限りであると思っております。ただ、残念ながら、この国、自分が身を置きました金融界を中心に、こういう国際的に共有されているテクノロジーに対して非常に鈍感であった、特に経営者がそういうものを理解しようとしなかったというとがめが今日来ているというふうに思います。事業再生を迅速に進めていくためには、旧態依然たる金融機関の手法ではなくて、こういうテクノロジーを使って解決を見いだしていくということが不可欠であるというふうに思っております。
 もし社長職をお引受けするということになった場合、私の仕事は、こうした若い人材がためらうことなく存分に能力を発揮できるような環境の整備を行うことと組織を円滑にマネージしていくということにあろうかと思います。そのためにこうした仕事に関する勘どころといいますか、そういうことは経験的にも承知しているつもりでございます。私は、既に野村証券も住友ライフ・インベストメントもとっくに退社しておりまして、そういう意味では無色透明の立場であります。公平中立に物事を判断できます。こうした立場から、もし社長に選ばれるということになれば、産業再生機構という新たな仕組みを通じて、この不況からの脱出、経済の立て直しをいかに早急に図るかということに純粋に集中していこうと思っております。
 私と事業再生とのかかわりは、ちょうど八〇年代の後半からいろいろな欧米の資産の証券化業務に携わったことから始まりました。先日、アメリカのRTCの社長を務めましたシードマンさんと久しぶりにお会いしまして話題になったんですけれども、もう十数年前ですけれども、シードマンさんのRTCの保有いたします債権を私は証券化するということによって、実は日本の国の資金でかなりの部分をファイナンスを付けるということを進めたことがございます。今とは全く逆の状況でございます。
 アメリカでは、八七年から九一年には不動産不況の状態にありました。私は、建設中のビルのキャッシュフローが切れるような状況において、不動産を証券化することでファイナンスを付けまして、工事を完工するということを可能にするというようなビジネスを何本かやりました。もちろん、現在言われておりますファイナンシャル・ターンアラウンドあるいはビジネス・ターンアラウンドというものとは同じではございませんけれども、その当時はアメリカにおいてまだ事業再生を進める手法が十分に開発されていなかった状態でありまして、証券化ぐらいしかなかったというのが実情であります。
 米国では、不良債権処理、事業再生ビジネスが立ち上がるころに米国でこうした仕事にかかわり、そして今度は我が国で事業再生ビジネスを本格的に軌道に乗せようとする今、こうした仕事に携わることになるかもしれないということには感慨深いものがございます。
 ところで、産業再生機構の役割が議論される際に、こうした仕事は民間に任せればいいのではないかという議論があるようでありますが、私は自分の十年近くにわたりますウォールストリートにおける勤務経験などから、ちょっと違った感覚を持っております。民間が民間ベースですべてを解決するということを支えている社会的な背景に目を向ける必要があるというふうに思うわけです。
 つまり、それは非常に厳しい自由の世界であります。規制はほとんど存在しない、自由にビジネスをやっていいという代わりは、貧富の差や勝ち負けのはっきりする社会を是認しているという社会構造が国民に受け入れられているという社会であります。
 アメリカでは、御案内のように、年齢や人種、性別による解雇は禁じられておりますけれども、あなたは能力がありませんから辞めてくださいということは堂々と通っている社会であります。そういう意味では、非常に厳しい社会です。
 恐らく、こういう社会構造を取り入れているのはアメリカが典型的であると思いますけれども、こうした社会構造の国においては、問題が発生した場合には民間ベースで解決していくということになろうかと思います。
 もちろん、民間ベースであるということは、効率性を軸に物事を判断し、最大限の利益を求めていくことを意味しております。非効率的な部分、つまり労働問題や貧富の差といったところにゆがみが生じることは避けられません。原則、収益の出ない事業や部門、人員や設備は徹底的に圧縮、整理することが正義でありますし、そのことが高い社会的倫理として位置付けられております。
 一方、我が国やヨーロッパは、こういった社会構造ではなく、非効率的な部分を残しており、その部分が公平性を担保していることに国民は安堵感を持ち、社会的評価をしているのだと思います。もちろん、効率性の追求は重要な要素ですから、効率性と非効率性のバランス、言い換えれば、利益性と公平性や社会的調和性をうまく取っていくことが求められます。
 産業再生機構は、こうした我が国の社会構造を背景にかんがみれば、現実的には、選択される実現性のある政策の一環であり、ワーカブルなものであろうと思います。
 次に、産業再生機構の大きな役割といたしまして、人材を創出していくことがあると思います。現在の不況の原因は、経営資源が有効に活用されていないということであり、本来再生されるべき事業がなかなか再生されてこないということにあると思います。
 こうした仕事を担っているのが本来は投資銀行ですけれども、我が国の銀行や証券会社には、こうした投資銀行業務を担える人材がその業務の発生量に比べますと極めて少ないというのが実態であります。その結果、経済システムから投資銀行的な機能が欠落し、事業再構築、事業再生が円滑に進んでいないという結果になってしまったのであろうと思います。
 成熟経済の下では、経済の新陳代謝や経営資源の有効活用が円滑に進むかどうかが極めて重要であり、今後もこうした事業再構築、事業再生を担う人材の活躍が大きく期待されております。
 我が国の経済の活性化を考える上では、こうした人材を育てていくということは極めて重要であります。外国からいろいろと指摘されるまでもなく、我が国は、自らの国においてこうした経済のインフラである人材を十分に育成していくという強い意思を持たねばならないだろうと思っております。もちろん、産業再生機構だけでできることではありませんが、再生機構はこうした人材を育成していく場としても十分に機能することと思います。再生機構が存在することだけでも、民間にも大きなインパクトを与えることになるものと考えております。
 最後に、先生方へのお願いでございますけれども、今申しましたように、私は、大きな経済団体や企業、政党などといった何の後ろ盾もございません。もはや職も離れた、無色透明の国民一人という立場でございます。純粋に不況からの脱出、経済の立て直しに全力を尽くしていく覚悟でございますので、どうか先生方からも是非御支援、御鞭撻をいただけますようお願い申し上げます。
#9
○委員長(田浦直君) ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言をお願いします。
#10
○小林温君 自民党の小林温でございます。
 三人の参考人の皆様におかれましては、それぞれすばらしい御意見の開陳を行っていただきました。まずもって、感謝を申し上げる次第でございます。
 それで、まず私の第一番目の質問は、今回こういう法整備を行うわけでございますが、産業再生機構を活用したスキームによって、今までできなかったどういうことが可能になるのかということをお聞きしたいわけでございます。
 田作参考人からお話がありましたように、例えば民事再生法、会社更生法といった法的整理も、あるいは私的整理も、今回の産業再生機構を活用した整理も、基本的には実行手段の違いであって、行う中身の手続についてはそれほど違いはないという御意見でございました。
 ただ、この場合に、実際、では今までと違った形で産業再生機構を使って企業再生を行う場合のメリットというのは果たして具体的にどういう部分にあるのか。例えば、メーン寄せの問題を解決したり、それから準メーン以下行にとっては例えばどういうインセンティブが働くのか、企業も銀行も含めてですが、それぞれにどういうインセンティブが働いてこの産業再生機構を活用した整理のスキームというものが今後生まれてくるのかということについてお聞きをしたいわけでございます。
 斉藤参考人からも、今この産業再生機構の社長に内定されて心構えもいただいたわけでございますが、その点について、田作参考人それから斉藤参考人から御意見をいただければというふうに思います。
#11
○参考人(田作朋雄君) お答え申し上げます。
 私が先ほど申しましたように、また、今御指摘いただきましたように、会社の実体は同じですから、本来、情報がすべてに行き渡っていて、その当事者間で交渉に係るコスト等もないと仮定すれば、実は産業再生機構は必要ないということになります。つまり、この会社をどう立て直すかというのは、だれが見てもそんなにやりようはない、だれが見てもそれなりの処方せんというものはおのずから浮かび上がってくるので、それをやればいいだけなんです、本来は。ただ、今申しました大前提が実は本当は整っていないわけですね。
 まず、情報の非対称性というものがあります。当然ながら、一方の当事者の方は多くの情報を持っている、もう一方は持っていない、だからそこに判断のずれが出てくる。それから、その当事者間の交渉に係るコストというのは膨大なものがあります。非常に関係当事者が多かったり感情的なもつれがあったりすると、本来合理的な交渉がコストなしでできればいいんですが、残念ながら、実社会ではそうはいかない。そこの情報の非対称性を解除し、交渉のコストを低めるという機能をどこかが手伝わなきゃいけないわけですね。
 その手伝う一つのところは裁判所であります。裁判手続を通して、そういうものを、そういう障害を取り除いて必要な目的を達するということが可能であります。しかし、それしかないということでいいのかということが私は問題だろうと思いますね。
 これは先ほど申しましたように、裁判所へ、出るところへ出ますと、破綻だ、倒産だと騒がれて本当に駄目になってしまうんですね。従業員もやる気なくします。それをなるべく避けたいわけです。
 だからといって、急に今度、あれかこれかで一足飛びに密室でいい加減な私的整理と称するものをでっち上げてしまう、これまた問題の先送りにすぎませんので、本来なら法廷へ出てでもやっていいほどのきちっとしたものを、私的整理でもそれに負けないぐらいのことを追求していくというためにこそ、この産業再生機構はあるんだろうというふうに私は考えております。
#12
○参考人(斉藤惇君) 今のお話に加えまして、正しく産業再生機構でございまして、倒産、回収を促進する機構ではないということで、あくまでも産業の再生が目的であります。
 したがって、先ほど私が申しましたように、このことを民間ベースや民事再生法等々だけでやっていこうとしますと、現実に、過去十年間、いろいろ法律も改正をいただいたにもかかわらず、それほど進んでいないということは、やはり民間ベースで当事者が全部それぞれの利益マクスマイゼーションという考え方だけでテーブルに着いておきますと、なかなか妥結しないんだと思いますね。
 やはりそこには半官と申しますか、こういう機構が間に入って仲裁をするという役割が非常に重要なんではないかと。なおかつ、こういう機構でございますので、関係いたします産経省ですとか金融庁ですとか日銀等と、いろいろなところと協力して包み込んでいきますので、例えば非メーン銀行等々の行動をある意味では刺激するというようなこともできるというふうに思っております。その辺が少し違うんではないだろうかと、加えて、思っております。
#13
○小林温君 少し今の関連なんですが、例えばメーン行と対象の企業というものにとっては多分十分にそのインセンティブが働く仕組みだと思うんですが、非メーン行あるいは準メーン行以下のところについてはどういうメカニズムでそういうインセンティブが醸成されていくのかということについて、田作参考人、ちょっとお聞かせいただけますか。
#14
○参考人(田作朋雄君) 通常、苦しい会社についてはメーン銀行主導の下に何らかの再建策が作られております。問題は、メーンが債務者と一緒になって、今、先生御指摘のように、本来ならその計画を遂行していきたいというときに準メーン以下が協力しないという現象は非常に多うございます。これを俗にメーン寄せと呼んでおるわけでありまして、期限が来たら準メーン以下は全額回収と言い出す、メーンとしても泣く泣く追い貸しをして、その金で準メーン以下を逃がしてあげるという現象が非常に続いております。
 というのは、メーンとしてはそれしか手がないわけですね。それが嫌なら、先ほど申しましたように、出るところへ出て、裁判所へ行くしかない。しかし、メーンが引き金を引いてあの会社をつぶしたとなりますと、メーンバンクとしても先行き大変なことになりますので、これができない。その弱みに付け込んで準メーン以下がメーン寄せを図るわけです。これ、立場変わって準メーンがメーンのときに、今度メーン、ほかの案件でメーンだったところが準メーン以下になりますので、仕返しをするわけですね。ということで、お互い妙な均衡状態にあるわけです。
 このゲームのルールを変えなきゃいけないわけですね。そのゲームのルールを変える一つの刺激剤が産業再生機構だと私は思います。つまり、準メーン以下がメーン寄せをこれ以上図ろうとするのなら、場合によっては機構と相談して、機構の方が乗り出して、先ほど斉藤参考人がおっしゃったように、権利の調整の仲裁役のようなものの機能を果たすということは可能だろうと思いますね。権利調整機能、メーン寄せ防止機能というものをこの産業再生機構は持つべきだと思います。
 もちろん、準メーン以下も、相変わらずメーン寄せを図ってもいいんですが、これはある意味じゃ一か八かのかけに出ているわけです、準メーン以下も。それでもそういうふうに押し込めば、メーンとしては、メーン寄せの負担が余りにも大きい中でやむなく法的整理へ行くかもしれない、あるいはメーンバンク自体の屋台骨が揺るぎそうになっていてこれ以上協力できないという予期せぬ結果になるかもしれない。
 そんなことになってしまえば、一〇〇の債権を一〇〇で回収しようと思っておったのが一〇にしかならないかもしれないわけですね。ところが、既にできている再建策を機構と一緒に協力して進めようということであれば、機構の方は取りあえずそれを、出口の方の投資家とか同業他社としてその会社を買収したがっているところとか、そういう人の声も聞きながら、例えば三〇というふうに査定できたんであれば三〇ぐらいで買うわけですね。
 つまり、一〇〇か一〇しかない五分五分のかけをやるのか、三〇という安全な手段を取るのかということを準メーン以下に突き付けていけば、経済合理性からいったら普通は確実な道を取るはずなんですね。そういうふうに追い込みながら、今度返す刀でメーンバンクにきちっとこの三〇で計画を実行しろということをまた迫っていく。そういう非常にメーン寄せ防止、権利調整という機能をこれこそ国が果たさないとなかなか民間だけでは動かない機能だろうと思います。
#15
○小林温君 大変よく分かりました。
 それで、今のお話でもありました、いろんな利害関係が錯綜している中で、これは調整がいろんな意味で必要なんだろうと思います。
 それで、先ほど私、斉藤参考人のある意味では御決意をお聞きして、今回審議の中でも例えば再生にかかわる人材の問題ということが何度か議論されております。
 それで、まず大事なのは、志を持った方にこういう機能の中枢にたくさん入っていただくということが大事だということを先ほど私は斉藤参考人のお話を聞きながら強く思った次第でございます。
 この国難の時代に、国の正に競争力の源泉である産業あるいは企業をどういうふうにしていくかという心構えを持っていた方、いる方が正にそれに適した人材だというふうに思うわけですが、その一方、例えば今までのスキームでは、企業再生の法的な処理あるいはバランスシートの右側の修復をどうするかという金融的な処理が例えば中心に行われてきて、その分野の知識や能力を持った方々がチームを組まれて例えば法的、私的、それぞれの整理に当たられてきたんだと思うんですが、先ほど来お話をお聞きしていますと、やはり産業再生というのは、正に処理ではなくて、企業の抜本的な改革であるとか、ビジネスプランあるいはビジネスモデルの転換であるとか、それから産業全体の構造改革ももう視野に入れてやっていかなければならないんだろうというふうに思うわけですね。
 先ほど斉藤参考人の方からもそういう若い方が、その部分を担える方が育ってきているというお話もいただいたわけですが、実際そういう能力を持った方というのは、多分非常に良い条件で高額の報酬とともに実際引っ張りだこになっているというのが現実だろうと思います。私もアメリカでウォールストリートベースの法律事務所に二年ほどおりまして、企業再生のチームと仕事をしたこともありますが、かなりの高額のフィーをもらっているわけですね。
 ですから、一つには、本当に今新しい機構の中でこういう企業再生を担っていける人材がどの程度いるのか、一つは、現在の時点で。例えば、これはこれからそういう部分に慣れた外資のファンドとか外資のファイナンシャルアドバイザーともやり合わなきゃならないんだろうと思うんです。ですから、そういう能力を持った方が我がサイドにいるのかと。それから、そういう方々の経済的な動機を満足させることが果たして可能なのかということをお聞きしたい。これはまた田作参考人と斉藤参考人。
 それと、斉藤参考人にもう一つお聞きしたいのは、その人材の育成、この分野の人材の育成を産業再生機構は担うということを先ほど御決意をいただきましたが、ただこれは産業再生機構、五年ぐらいでこういう企業再生のめどを付けていかなければならない、そういう目前にある企業再生への対処という問題とその人材の育成、これ時間的な軸で考えたときにどういうふうにお考えかということについて御意見をいただければと思います。
#16
○参考人(斉藤惇君) 一緒の答えになるかもしれませんが、正しく御指摘のとおりかなり有能な人材がこの機関には必要だと思います。
 いろんな機会でこのようなお話を若い人たちとする機会もございましてお話ししていますと、私自身も非常に感激している面があるんですが、先生今おっしゃいますように、彼らが今本当にすごい収入を得て働いているにもかかわらず、国難なんだと、若者立ち上がれと言うと、分かりました、やりましょうというのがかなりいる。本当に今の若者しっかりしているという、感激してしまっております。
 十分な数には至っておりませんけれども、かなり名前が、こういう世界は非常に小さい世界なものですから名前がもう売れている方が多いんですが、そういう方が入ってこようとおっしゃっているのをまた見て、それより随分ジュニアな人が、あの人が行くんだから私も入れないですかなんという声があっちこっちから出始めておりまして、まだまだそれは始まりでございますし、小さい流れでございますが、かなり集人力はあるんではないかと思っております。
 正しく先生御指摘のとおり、これは五年で一応終わるような会社でございますが、そこに百人なり何人かプロの人が集まり、いろいろ刺激し合い、そしてまたお客さんもたくさん知ることができるということは、彼らにとっては、まだ若いですから非常に大きな財産にもなるということですね、次のステップに向かって。そういうことも、チャンスを与えてあげなきゃいけませんし、ある程度社会的インセンティブのある報酬制度を、政府機関ではありますが、使わせていただかざるを得ないかなと、こういうふうに思っております。
#17
○参考人(田作朋雄君) 斉藤参考人の御説明で十分かと思いますが、一点だけ付け加えさせていただければ、この機構自体で何百人、何千人、そういう優秀な人間を集め切る必要はないと思うんですね。今御指摘あったように、ある程度の人数がいれば、その人たちが更に外部の人間を使いこなしてあたかもオーケストラの指揮者のように全体を統率していくということであれば、かなりのところは機能するんじゃないかと思っております。
#18
○小林温君 ありがとうございました。
#19
○平田健二君 おはようございます。民主党・新緑風会の平田健二といいます。今日は、参考人の皆さんには、お忙しい中、本当に御苦労さまでございます。
 まずお聞きをしたいんですが、お三方に。今日まで小泉政権は、構造改革なくして景気回復なしと、ある意味では構造改革、財政構造改革、そういったものに中心的に経済運営を進めてまいったと思っております。景気対策も多少はやっておりますけれども、本格的な景気対策ということについては余り実効性がない、そういう中で不良債権が非常に増えてきておるということだと思います。我が国の金融機関、特に銀行の不良債権処理は、この十年間でおおよそ九十兆円前後の不良債権処理を行ってきたというふうに思っておるんですが、今日、銀行等の不良債権は減るどころかむしろ増えている、増加をしておると。
 なぜ銀行等の不良債権処理が進まないのか、このことについてお三方にまずお聞きをしたいというふうに思っております。田作参考人から。
#20
○参考人(田作朋雄君) 御指摘のとおり、銀行勘定で既に九十兆円近くが積み上げで処理されております。しかしながら、これは大半はいわゆるバブル型不良債権であったと推定されます。バブルの時期、つまり八〇年代の後半に銀行勘定で貸し増しがなされた金額が約百十兆円と推定されますので、その八割方はある意味では処理が終わっているわけです。
 ただ、残念ながら、九〇年代に入ってからの長引く不況の中で、バブル型不良債権とは別の形の不況型不良債権というものが増えております。これは、今御指摘いただきましたように、古いものが処理されても、同じぐらいかあるいはそれより多く積もってしまっているというのが現実ですね。ですから、そうだとすれば、やはり景気を良くするといいますか、不況から脱却しない限り、これは雪を解かしても解かしても新しい雪が積もってしまうという現象は終わらないわけです。やはり銀行の処理が遅いと言われても、今申しましたように実はバブル型については相当一生懸命やってきている、にもかかわらず長引く不況の中でこういうのが増えてしまっているという現象ですね。
 これが悪循環を呼んでおりまして、銀行は、不良債権がやってもやっても増えますと、新しいリスクを取って産業を育成しようとかいう意欲がだんだんうせてきます。昔なら思い切ってこういうところへ貸して新規の産業を育成しようと思っていたところに対してでも、これ以上一円たりとも不良債権を増やしちゃいけないんだと思うと、貸さない。そのことがまた景気の悪化を招いているという問題がございます。この後者の現象を称して、構造改革なくして景気回復なしと表現しているんだと思うんですね。つまり、不良債権の問題を片付けないから金融機能が麻痺しているんだという現象だと思います。
 ただ、私、今申しましたように、両方の面があると思いますね。そうはいいながら、やはり景気が悪いからまた不良債権が増えている。この悪循環をどこかで断ち切らなければ、銀行だけを責めて、遅い、早くやれ、一気にやれと言ってもちょっと無理な面があると思います。
#21
○参考人(成川秀明君) なかなか不良債権が減らないというのは、やはり一つは景気が非常に長期の不況が続いていると、これが大変大きいと思います。この不況をどう脱却するかという対策をしっかりやらないと、なかなか不良債権を減らすことはできないんじゃないかと思います。
 小泉総理は、改革なしに成長なしと、こう言っておりますが、小泉総理のおっしゃっている改革の中身は、我々分析しますと、主に規制改革と財政構造改革。財政構造改革については主に財政再建策が中心でありまして、これで不況が克服できるかということになりますと、これでは不況が克服できないのが今までの経過ではないかと、こういうふうに見ております。
 もう一つ、不良債権が増大といいますかなかなか減らないのは、やはり今までの銀行の担保による融資で、その担保物件である土地資産価格が依然として下落が止まらない。土地にしましても株にしましても下落が十年以上にわたって下落しているわけでありまして、その下落率がかなりの、五%前後、土地の場合でもまだこれの下落が続けている。この問題をどう考えるかということが大事じゃないか、こう思っております。
#22
○参考人(斉藤惇君) 細かいお答えになるかどうか知りませんが、まず構造改革という意味が我々よく本当は理解していないんですけれども、まず一つは、資本をどこに置くか、社会的に。先ほど申しますように、民間というのは非常に厳しいですけれども、効率性は高い。したがって、本来は、景気が悪くなってまいりますと公的セクターから民間セクターへ資金を移す、そして規制を大いに撤廃してしまう。それによって資本が生み出します利益率が上がってきて、回復するわけですね。ということは、例えば税制等々によって資金を移動させなければいけない、パブリックからプライベートへ。あるいは景気が良くなってくると逆にプライベートからパブリックへ上げて、社会的な構築とかそういうものにお金を使っていく。資本効率は悪いわけですけれども、社会的なニーズを埋める。そういうフレキシブルな政策というのが本当は必要だと。しかし、今のところそういうことは打たれていなかったと。
 日本の今の企業、全産業の経常利益の状況を見ますと、三月末が参っておりますけれども、今年度、恐らくこれ七〇から八〇%の経常ベースでは増益です。恐らく来年度も、今の予想では二〇%前後の増益が予想されます。ただ、この増益の理由はほとんどが人件費カットとか合理化とか素材カットというような、ある意味ではコストをカットして収益を上げる、つまり売上げは上がっていない。先ほどからお話がありましたように、デフレ的現象が起こっているために売上げは上がらないんだけれども、企業利益は結構上がっていくということが起こっております。
 ところが、株は今八千円ぐらいになった、二十年前の株価だと。二十年前の日本全産業が生み出しておりました経常利益は三兆円でございました。今、全産業は十二兆円の経常利益を生み出しております。つまり、四倍ぐらいの経常利益を生み出しているにもかかわらず、株は、じゃ同じではないかと。どこが違うかというと、実は二十年前はROE、自己資本利益率は八・六%もあったわけです。ところが、今これ一%しかない。ということは、やはりオーバーキャパシティー、すごい無駄な資本の投入を過去やってしまって、投入した資本が利益を生まないという構造を持っていることは間違いありません。
 したがって、構造改革が必要であるということは、私は正しいんだろうと思いますが、それなら具体的にそういうところにメスを入れていって資本の効率性が上がるようにするとか、そういう策を打たないと経済は回復しないんだろうというふうに思っております。
#23
○平田健二君 斉藤参考人に総理大臣になってほしいですね。
 成川参考人、お尋ねをいたしたいんですが、先般、衆議院では機構法の、労働者の理解と協力という視点が欠けているという指摘があって、修正されたり附帯決議が付いておるんですが、そのことは多分御存じだと思いますが、これで十分だと思われますか。
#24
○参考人(成川秀明君) 法案自身の中に、目的の中に、雇用の安定等に配慮するというふうに入れていただきました。それから、主務大臣の認定の中で、また団体交渉等をちゃんと十分に行っておるかどうかについて配慮するという条文を入れていただいて、さらに中小企業等についてもこれでしっかり支えていくと、こういうふうな三点の法案修正をいただきまして、この辺、是非私としては高く評価をしております。
 ただ、やはりそれを具体的にどう進めるか、本当に労使の協議の中でこの事業再生、企業再生を進めていくのだということになりますと、やはりしっかり初めの段階から労使協議をやっていただくように是非いろいろな環境整備をより強めていただく必要があるんじゃないか、こう思っておりまして、そういう点について更に是非その条件の整備等をお願いしたいと、こう思いますし、あわせて、残念ながらこの中では、雇用がこの中で解雇なりあるいは希望退職募集なり出向なり、やはり退職するという人がこの企業再生では出ている実態がありますので、これらの中で、これら退職せざるを得なかった人についての対策をより強化していただく、そして同時に合意なしに強制的に退職させられるというふうな、例えば営業譲渡などにおいてそういう事例がありますので、そういうことのないような条件整備を是非お願いしたいと、こういうふうに思っております。
#25
○平田健二君 更に成川さんにお尋ねしたいんですけれども、この再生計画を、策定段階で、いわゆる労働者の意見が反映させる、いわゆる事前協議制ですね、当然だと思うんですけれども、これはいわゆる機構側じゃなくて、いわゆる支援をしてほしいという企業側の前段で、メーンとのやり取りのその更に前の段階で、企業、企業内のものとして企業内の労使できっちり話し合わなければならない問題だというふうに思いますが、そうしますと、企業側としては、さあ要管理先の私どもの企業をこの再生機構に手を挙げたいんだといって経営側が組合側の方に対して、事前協議をしようよと、こういうことにならなければいけないわけですね。その段階が終わって初めてメーンとの協議をして、そしてそれが終わって機構に手を挙げると、こういうことだと思うんです。
 ですから、私は、むしろ労働組合の、あるいは勤労者の、との企業とのその関係ですね、これが問われてくると思うんですが、この辺はどうでしょう。
#26
○参考人(成川秀明君) 具体的には、やはり経営の方が労働組合あるいは従業員と話合いの中で是非こういう再建をしたいんだということをやっている企業もございます。これは、かなり日ごろから労働組合としっかり話合いをしながらやっているという組合、経営の場合はそういう例もありますが、主に大変この企業再生、厳しい段階に至って、銀行等の、メーンの銀行等の発言が非常に強いというふうなところは、むしろやはり銀行主導でこの事業再生などの計画が作られ、その間には全然労働組合の意見を聞こうとしないという例もあるというふうに私ども聞いております。
 そういうことで、是非、今回は、債務事業の、債務側とそれからメーン銀行、両方で申請すると、こういうことなので、当然それはもう再生計画を作って申請するわけですから、作る段階から是非事業主と労働組合、まあ嫌っている事業主も今まであるわけですけれども、しっかりやらないと本当の再生はできませんということでやっていただくと同時に、銀行側も、そういう経過について率直にその中で意見を述べ、労働組合を排除するというふうなことのない形で、三者のしっかり意思が統一したところで非メーンにも賛同いただけるような事業再生計画を作っていただきたい、こういうふうに思っております。
#27
○平田健二君 田作参考人にお尋ねしたいんですが、我が国にも事業再生に取り組む事業者に対する融資制度として、日本政策投資銀行あるいは中小企業金融公庫、商工中金などが行っているDIPファイナンスがあるんですけれども、米国の制度との違い及び日本の制度で何か改善する点があれば、お伺いをしたいというふうに思っております。
#28
○参考人(田作朋雄君) 米国ではDIPファイナンス、DIPファイナンスというものが極めて一般的でございまして、我が国との大きな違いは、法的手続に入った企業に対して貸出しを行いますと、当該貸出債権は超優先的債権となります。つまり、通常の債権はもちろん、共益債権、手続に入った後のもろもろの管財人費用等の共益債権よりも更に上の立場で超優先的に保護される債権です。ですから、これは非常に安心して貸出しがなされるわけですね。そうすると、企業は法的手続に入っても運転資金を借りられる、それを見て納入業者も安心して物を納入するので、本当にその会社が早く立ち直ると、こういう現象があるわけです。
 我が国で通常DIPファイナンスと呼んでいるものは、残念ながらそういう超優先的な保護は与えられておりません。通常の共益債権として、手続に入った後の債権ですから手続前の債権よりはもちろん優先ですが、超優先性はなくて、共益債権同士で同順位になります。ですから、その貸出し債権も管財人費用も、手続に入った後の売掛金債権等もすべて同順位であります。もちろん、それでも保護はその範囲ではあるわけですから、アメリカほどではないにしても、ほぼ安全だと見ていいと思います。
 にもかかわらず、我が国では余りこれが実行されないで、むしろ政府系の金融機関にそれを依存している大きな原因は、やはり相変わらずつぶれた会社に金なんか貸せるかという思い込みが金融機関に蔓延しているからだろうと私は思いますので、その辺の意識を大いに変えていっていただきたいなと思います。
 アメリカの場合は、通常は取引銀行がそのままDIPファイナンスも供与するわけですね。それをやらなかったら、ほかの人にやられるだけですから、取引先を失ってしまいますし、いい担保も持っていかれてしまうかもしれない。だから、むしろ自分で防衛的にDIPファイナンスも行うんですが、我が国はなぜか倒産した会社はとなると途端に金を貸さなくなってしまう。それでやむなく政府系金融機関がそこを補完しているという奇妙な現象がございます。
 本来は、今申しましたように、手続に入った後の貸出しの方が安全なわけですから、もう少しその辺を金融機関の方々には意識を改めていただきたいなと思っております。
#29
○平田健二君 ありがとうございました。
 終わります。
#30
○松あきら君 本日はお三人の参考人の皆様、お忙しい中お出ましいただきまして、ありがとうございます。
 公明党の松あきらでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、田作参考人にお伺いをいたします。
 金融庁の再建計画検証チームのメンバーでもいらっしゃいまして、そして「事業再生」という御本もお書きになっていらっしゃいます。
 まず一点目は、その事業再生というのと産業再生というのと、どこがどう違うのか。これが一点目でございます。
 それから、時間の関係でこういうふうに言わせていただきますので、まとめてお答えいただきたいと思います。
 それから二点目は、この機構の、本機構の行う業務ととても類似するものとして、RCC、事業再生部、特定業務部で二〇〇二年の十一月から二〇〇三年の三月ぐらいまで全く同じようなことを三、四件もやっているんですね。例えば、このRCCにもう少し権限を強化させて、機構は要らないんじゃないかという意見もあるんですけれども、それについての御意見と、また機構とRCC、両方の役割分担というものについてどういうふうに考えていらっしゃるのか、この三点をまず田作参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
#31
○参考人(田作朋雄君) まず、事業再生と産業再生の概念の差でありますが、私は、事業再生という概念をよく用いるんですが、その趣旨は、企業再建とか企業再生にこだわる必要がないということを強調したいからであります。
 ある会社が駄目になった場合に、非常にそこを、きちっと人、物、金を分析していきますと、ある事業では非常に収益が出ているが、ある事業はやればやるほど赤字、こういったような会社が結構あるわけです。にもかかわらず、その会社を丸ごと何とか救おうとする行動を取りますと、結果として全部共倒れになってしまうことがあるわけですね。ですから、早い段階でいいものと悪いものを分けて、いいものを救い出すということが事業再生という概念であります。私が直近で扱ったある小売店ではそういうことをやりまして、従業員の方にも不採算部門から採算部門の方へ移ってもらって、雇用は全部維持したまま収益性を高めるということに成功いたしました。これが事業再生であって、私はそういう観点から、企業再建、企業再生ということにこだわる必要はないということをいつも強調しております。
 つまり、この事業再生を積み上げたものが産業再生だと思うわけですね。産業を再生していく上でも、やはり個別の企業を温存しようとか個別の企業を救済しようという発想では、産業再生は不可能です。むしろ、事業再生をきちっと見ていって、それの積み上げで産業再生を図っていくということが必要ですね。この事業が生き延びることが可能だと判断されるなら、場合によったらどこかへ身売りして行った先で生き延びたって、その方が従業員は幸せなことがあるわけです。企業自体を何とかしようと思う余り、その企業が最後の最後、破産や清算に終わって失業するよりも、事業価値があるうちにどこかへ売って行った先で引き続き雇用を維持する方がはるかにいい手段であります。そうやって産業再生というものを図っていく必要があります。
 二番目の、RCCと産業再生機構で前者があるから後者は必要ないのではないかという御意見も当然あるわけですが、私自身、実はRCCの企業再生検討委員会の委員もやっておりまして、正直申しましてRCCだけでは非常に荷が重いという感じがいたします。
 RCCは、御承知のとおり元々債権回収機関でございましたから、債権を回収すべく担保を処分する、会社を清算するという行動様式をずっと取ってまいりました。最近になって企業再生の機能も担わされたわけですが、それはやはりあくまで回収の延長としての再生という発想なわけですね。つぶして全部清算しても二束三文であれば、ある程度再生させられるものは再生させて、そこが生み出す収益力から回収した方が得だろうと判断した場合にそういうことを行うわけでありますから、再生マインドを持った回収を相変わらずやっているという言い方が正しいかと思います。そうは申し上げながら、今申しましたように何でもRCC送りだからつぶすということでは決してなくて、再生に成功している案件、相当程度ございます。
 ということで、私はやっぱりそれとは別に、特に五年間という期間を区切って集中的に官民一体となって我が国の産業を再生させていくべく、別のものをやはり作る必要がこの局面であるだろうと思っております。
 それで三番目の論点ですが、じゃ、どういうふうに役割を分担していくかということなんですが、やはり産業再生機構はこの五年間が勝負ですから、この五年間のうちにかなり大きなところでまだ要注意ぐらいになっているところ、こういうものの産業構造を変えていくという大きな文脈の中で、必要に応じてもちろん中小企業等も扱っていくということだと思うんですが、五年間という時間が限られていますので、出口を見据えて戦略を立てなきゃいけないわけですね。当該企業が本当に出口で魅力あるものとして投資家、同業他社による買収等で評価されるかということから逆算して銀行の方に値段を提示していかない限り、先へ進むのは難しいわけです。
 ですから、機構で受けたから救済だとかそういうことは全然なくて、機構はあくまで、私の先ほどの説明で言えば、情報の非対称性を解除して対称になるように連絡係を務めるという方が正確だと思うんですね。ですから、中小企業もそういうものに耐え得るような内容であれば、大いに使っていただいて構わないと思うんです。
 ただ私自身は、中小企業の立て直しにも一杯従事している中で、恐らく中小企業にとってはRCCを使った方が有利なことが多いんじゃないかと思われるわけです。RCCももちろん時限立法にのっとって設立されている機関ではありますが、今後とも、この五年でなくなるという予定は少なくともないのではないかなという中で、比較的長い目を持ってそういう再生、中小企業等を余り時間に縛られない中で再生の役割を果たしていくということが可能だろうと思いますね。
 ですから、別に大企業だから産業再生機構、中小企業だからRCCと決め付けるつもりは全然ございませんが、限られた時間で出口で市場でも評価されるような再建策を持っているのか、それとも自力更生である程度長い目で収益を生みながら、それで借金を弁済していくような再生マインドを持った回収を目指しているRCCの方を使った方がいいのか、これはケース・バイ・ケースだろうと思いますので、その辺りが役割分担かと思います。
#32
○松あきら君 ありがとうございました。
 次に、斉藤参考人にお伺いをいたします。
 この産業再生機構ができました暁にはトップになられる御予定というふうに伺っておりますけれども、まず一番目は、この機構の設立、どちらかといいますと、二日間私も質問させていただきましたけれども、その機構は突然出てきたわけではないという大臣からの御答弁もありましたけれども、何となく急に浮上したかなというような気もするわけでございます。で、その機構の設立に至るまでの経緯がもしお分かりになれば、教えていただきたいなという気持ちが一つでございます。
 それから、外国での御経験の中で、産業再生機構と同じようなスキームがあれば、それを教えていただきたいことと、またその特徴も教えていただきたいということでございます。
 それから、先ほどこの機構では若い人材が伸びるように育成する場にしたいというふうにおっしゃっておられましたけれども、今実はRCCでも専門的にできる人は二千四百名中百数十名、あるいは百名ちょっとぐらいしかいないと。アウトソーシングも考えると、例えば外資系コンサルタントファームとか、いろいろなところから有能な人材を連れてこなければ、とても間に合わないということもあるんですけれども、実際、そういう中で本当にこの育成する場になり得るのかなという気持ちがするわけでございます。
 それからもう一点、この機構がうまくいって、五年で解散するのはもったいないなんということになりました場合、例えば上場するような計画なんというのはできるのでしょうかという、この四点、よろしくお願いいたします。
#33
○参考人(斉藤惇君) まず経緯は、実は、大変申し訳ございません、私全然知りません。要請、説明を受けて要請を受けて、先ほど申しましたように、ああそれなら逃げてはいけないんだということで、もう自分の義務感で奉仕しようということでお受けしましたんで、ちょっと経緯はよく分かりませんです。
 それから、外国に同じようなものはということで、私も不勉強でよく勉強してないんですが、先ほど申しましたRTC、ちょっと違うんでございますが、これは御案内のように、アメリカで銀行、特殊住宅ローンを出します銀行が大変なスキャンダラスチックな貸出しをやりまして大不況に陥りましたときに、千二百億ドル、千五百億ドルでしたか、大体十五兆円から二十兆円ぐらい使って不良債権を買い取って、先ほど申しましたように、アメリカだけではなくて世界にもう社長自らが持って歩いてこの債権を買ってくれと、不良債権を、そういうことをやって、我々はその反対側にいて、それを買ってあげて証券化して、一〇%ぐらいのボンドを作って売ったというようなことはございます。ちょっと似ていますけれども、完全には同じではございません。
 それから、人材でございます。
 正しく五年間でどれだけ人が育てられるか、これは確かに限度がございます。ただ非常に残念なのは、ここにいらっしゃいます田作さんとか、皆さんこの業務でもうベテランと言われる方々は、みんなアメリカのビジネススクール出身です。残念ながら、日本の大学でこれを完全にマスターして戦線に立っておられる方は、おられるのかもしれませんけれどもほとんど見掛けません。是非私は、日本の大学は何をしているんだと言いたいと思います。自分の国、日本ほど富もあって金もある国が、自分の若者たちを育てて自分で経済体制のリカバリーができないというのは、大変な問題だと思います。是非、学校をまずやっていかなきゃいかぬというふうに思っております。
#34
○松あきら君 それから、その五年、上場、そこまで分かりませんか。
#35
○参考人(斉藤惇君) 上場はですね、私はちょっと、今、大変申し訳ございませんが、ちょっと。
#36
○委員長(田浦直君) いいですか。
#37
○松あきら君 はい。よく分かっております。
 最後に、成川参考人に御質問したいと思います。
 この機構に期待するところ、また懸念されるところ、これがございましたらよろしくお願いいたします。
#38
○参考人(成川秀明君) 我々労働組合あるいは働く者にとって、やはり自分の雇用の場が、しっかりした継続雇用が続いていくのが一番いいわけですが、残念ながら、この中堅中小企業を含めて、企業の再生あるいは一時倒産なども多いわけですが、そういう中で、この中堅中小企業などでしっかりした再建のやり方がこの中で確立していけば、非常にこれ、大手だけじゃなしに、中堅中小企業などでの働く場の安定につながって是非いくんじゃないか、そういうふうにあってほしいというのが私の希望です。
 二つ目。心配は、やはり残念ながら、この企業再生の中では、雇用を全部ここで継続できていなくて、退職せざるを得ない人あるいは解雇という形に遭っている人もかなりいるわけでございまして、こういう人たちをしっかり支えながら本当に雇用の場が維持あるいは更に拡大していくと、こういうふうにならなきゃいけないんじゃないかということで、この解雇なり離職せざるを得なかった人に対する受皿をきちっとやはり一方で設けていただきたいと、こう思っております。
#39
○松あきら君 ありがとうございました。
#40
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
 今日は大変専門的な皆さんにお越しいただきまして、ありがとうございます。
 まず、斉藤参考人にお伺いしたいわけですけれども、先ほど社長、新しい機構の社長候補としての並々ならない御決意をお伺いをいたしました。まだこの法案は今審議中でございまして、そのさなかということなんですけれども、やはり新聞などではいろいろ、救世主になるのか閻魔大王になるのかとかいろいろうわさもされているわけでございますけれども、私、斉藤さんがどういう方なのかということで、少し「汗と涙のグローバリゼーション」というようなものをちょっとかいま見させていただきましたけれども、九七年の野村証券の事件のときに、社長候補だったけれどもそれを辞めざるを得なかった、そこで涙を流したというようなお話がありまして、今度、機構に社長候補として言わばカムバックされる、非常に感慨深いものがあるというお気持ちは非常に伝わってまいります。それだけに、先ほど住友も野村も退社したので公正な立場に立てるんだと、自分は無色透明であるということを非常に強調されました。当然、そのメッセージというのは社会に対しては必要だろうと思うんですね。
 その場合に、そのメッセージはメッセージとして受け止めさせていただくんですけれども、例えば産業再生委員長、就任予定は高木さんという方で、ダイエーの顧問をされていたと。社長候補の斉藤さんは今申し上げたような経歴の方だと。機構の職員には、銀行とか証券会社から言わばプロ、そういう方が来られるということになりますと、その公正さというものを確保する場合に、申請企業に関係するような関係者はその案件審査にはなかなかかかわらないようにするというふうなことはどうなんでしょうか、そこらぐらいの決意というのはお持ちなのでしょうか。当然、いろいろそういうことで懸念されることもあると思うんですね。その公正さについてどうでしょうか。
#41
○参考人(斉藤惇君) 御指摘のとおり、二つお答えしたいと思います。
 もちろん、九七年の事件に対しましては、大変御迷惑をお掛けいたしまして、深く申し訳なく思っております。自分自身はたまたま直接事件にかかわっていなかったということでありましたけれども、最高幹部であったということで、むしろ代表権のある全員に退職をしようと自分で申し出まして、辞表を出して会社を去りました。
 今回のお話をいただいたときも、こういう社会に対して大変御迷惑をお掛けしたということもありまして、何か御奉仕的なことができるのならば、自分が四十年間の間に作ってきた内外の友人あるいは技術というものを御利用して国民の皆さんに恩返しができたらという気持ちが非常にあったということを一つ申し上げたいと思います。
 もう一つ御指摘の点は、非常に大事でございますので、御案内のとおり、正しくその再生委員会という、これは七名、今のところ多分七名の委員によって正しく中立公平に審議されると。ですから、案件を作っていきますそのスタッフはその委員には多分入らないんじゃないかと思っております。外部の社外重役の方々ですとか知識人によって構成される委員会によって、支援をするかしないか、買い取るか買い取らないか、売るか売らないかということもそこで決められるということで、かなり中立性というか公明性については担保されているんではないかと理解しておりますけれども。
#42
○西山登紀子君 この法案というのは、審議をいたしておりましても大変難しい法案だというふうに思っております。
 何が難しいかというと、機構のその役割というのが本当によく分からないというところがありまして、それで、いわゆる金融のプロが一生懸命やってうまくいかないものがこの機構に持ち込まれてきたときにそんなにうまくいくのかというようなこれは素朴な疑問を持ちますし、いやいや、そうじゃないんだと、調整役として非常に効果を上げられるんだという、利害が対立して非常に滞っているものがすっといくんだというようなお話を聞きますと、そのいわゆる神の手といいますか、機構の神の手というのは一体何なんだろうか。
 先ほど少しお話がありましたけれども、機構に持ってくればうまくいくというその神の手は、私が考えますには、それは結局のところ、国民の税金を注ぎ込むという政府保証、もう一つは、お上がお墨付きを与えるという、そういう点での企業の再生、そういうものが機構に与えられているからこそ、非常に困難なものでも機構に持ってくれば処理できるというような、そういうものじゃないかと。よく分からないんですよね、その辺が。
 だから、その辺は社長におなりになる斉藤さんはどんなふうにお考えになるのでしょうか。救世主か閻魔大王だとかいろいろマスコミに言われておりますが、私は、機構の神の手というのは一体何なんだろうかと。そこを教えていただきたいなと思うんですがね。
#43
○参考人(斉藤惇君) 大変難しい御質問だと思います。
 私、まず、この機構はオールマイティーではないと思いますね。それで、いろんな、先ほども申しましたように、ありとあらゆる、少しでもチャンスがあると思われることはもうやるしかないというふうにまず思うわけであります。いろいろな法律も変えていただいておりますから、民事ベースの案件も進んでおると思いますし、こういう機構ができたことは逆に刺激になって、銀行の方が先にどんどんやっていくということもこれまた非常によろしいことではないかというふうに思うわけであります。
 この機構にさえ来れば何か助かるとか、そういうことはまずないと思います。というのは、我々が基準にいたしますのは、まず再生可能であるかどうかを先に見ちゃうわけですね、このルールによりますと。それで、再生可能なものがあればそれを育成してあげようと。先ほどお話がありましたように、ある企業の中で、本業は物すごく技術があって世界的にも優秀なんだけれども、たまたま何かもうからないところに手を出してしまって、そこが足を引っ張って会社全体ではもう赤字になって苦しいというようなのを例えば整理してあげて、じゃ、その不良の部分だけを取り除いてあげましょうと。で、本業をしっかりやっていただくというような、それによって再生ができるかどうかを皆さんで判断して、それはいろんなデータをベースにして判断していこうということでございますので、あくまでも援助なんですね。支援というか、真ん中に入って再生を援助するということでありまして、ここが何かジャッジして、あなたは駄目です、あなたはいいですというふうなものではないというふうに思います。
 正しく、先生おっしゃいますように、国民の負担を使ってという話はあります。確かにそのとおりなんですが、これだけの五百何十兆というGDPの国がこういう状況に瀕して、何とかして皆リカバリーしなきゃいけないときに、無一文、お金を全く使わないでできるという方法はないだろうと思います。やはりお金をどういうふうに有効に使っていくかということが一番大事で、そのときに当然ながら負担をできるだけ小さくすると、プロ的に見て小さくするということは重要なことであろうかと思いますけれども、結果的には、企業がそれによって再生され、産業が戻り、景気が戻れば、国民が一番そのベネフィットを受けるわけでありまして、そこのところは一つのコストであると私は理解しております。
#44
○西山登紀子君 この法案の審議の、私も本会議からずっと参加しておりますけれども、やはり国民の負担がどのように使われるかということが一番私は大きな問題じゃないかというふうに思っているんですね。
 法律上は政府保証ができる、そしてまた国が損失についてはすべてあるいは一部負担できるというふうに書かれているんですけれども、質疑の中で谷垣大臣は、最初から全部を国が補てんしますよというふうに書けば、これはもうモラルハザードが生ずるおそれがあるということで、いろんな損失が拡大する場合だって、いろんな場合があるんだけれども、今は全部国がやるというようなことはもちろん書けないと、それはモラルハザードを生じるんだという、私は正直な方だなと思うんですけれども、そういうこともおっしゃっているんですけれども。
 これは、斉藤さんはあるマスコミのインタビューなんかでも、銀行が不良債権を手放すことを促して機構が積極的に買い取っていきたいというお話をされているんですけれども、積極的に買い取っていくということになりますと、要管理債権中心とは言っておりますけれども、谷垣大臣は非常に正直な方で、もう破綻懸念先でもどんどん買っていくんだというようなこともちょっと言われたりすることもあって、そうすると、もうどんどん買っちゃうんだと。これはやっぱり銀行のモラルハザードといいますか、あるいは当事者の企業のモラルハザードというものをむしろ助長してしまうんじゃないでしょうか。
 その点はどのようにお考えでしょうか。
#45
○参考人(斉藤惇君) 積極的に買い取るという、ちょっと言葉があれなんですが、先ほど申しましたように、じゃ、こういう業務を完全に民間だけでやるとします。当然、民間は利益が出ないことはやりません。ですから、例えば、先ほどから話題になっておりますように、労働者の皆さんとの問題というのも、民間ベースだけならぎりぎり詰めていきます。だけれども、やはりこういう機構である程度、先ほど私、断りましたように、非効率性というものを申しましたけれども、社会的な安定のため非効率性をある程度入れなきゃいけない。ということは、これは国民の負担が掛かるということです。
 つまり、ある程度の、最終的にこの会社が五年後に物すごく利益を出したということだけで仕事をすれば、徹底的にその最初の買い取りますアセットをたたいて、正直言って、それでその再生の事業も物すごく利益が出るように、労働者の方も圧縮しろ、これも捨てろ、利益があるところ、ここだけやれというふうにやるということによって利益が出るかもしれません。アメリカ辺りではそういう形で実はターンアラウンドをやったわけです。アメリカの社会はそういうことを良しとしている社会ですからあれですけれども、日本の場合は、そういうことは私はやっぱり国民性的にもできないんだと思います。したがって、ある程度のコストをみんなでシェアしなきゃしようがないと。そして、立ち上げる。
 だから、先生今おっしゃいましたように、何かアグレッシブにモラルハザードを乗り越えて銀行のものをどんどん買うなんて、そういう考えは全然持てませんですね。やっぱり全体のバランスを、買ったアセットは売る、エグジットと申しますけれども、そういうことをベースに考えているわけですから、そんな変な買い方をしたらまずエグジットできませんですし、正しく国民の負担が物すごく大きくなるという責任問題になります。したがって、そこはバランスを取りながら常識的にやっていくしかないんだろうと思っておるんですけれども。
#46
○西山登紀子君 今、十兆円の一応予算ということになっているんですが、これは国民にとっては非常に膨大な負担でございます。
 最後は、ちょっと残り時間が少なくなりましたので、連合の成川参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、産業再生法の関係でお伺いしたいと思いますが、この法律ができますときですかね、一九九九年、私も審議を参加をしたことを覚えておりますけれども、そのときに失業者百十八万人だったということで、今すごい失業者の数なんですが、本当に大変な事態だと思います。
 そこで、営業譲渡を先ほど御心配だというお話が確かにありましたので、これは私も話合いということ、配慮するということは非常に大事だと思いますけれども、労働者とそれから事業者の対等性ということを非常に懸念するんですね。
 その法案の審議のときに、とにかく労働者というのは仕事がなくなるか、それとも三割カットで、もう分社化で次のお仕事に行くかと迫られますと、どうしても仕方がないというようなことになってしまうので、その辺は非常に厳しいものがあるのではないかと思うんですけれども、その点と、それから今度は労働者の割増し退職金の減税措置が盛り込まれているというようなことになりますと、これはまたまたリストラが促進されるんじゃないかという懸念を持つんですけれども、その二点についてもう少し詳しくお話しいただければと思います。
#47
○参考人(成川秀明君) 大変、御質問のように、実際直面をして、この事業再生、企業再生に当たっている組合は本当に厳しいものがあります。雇用が維持できれば合意も、組合員の合意も比較的皆さん納得できるわけですけれども、どうしてもその中で一部早期退職をしてもらう、あるいは出向をしてもらう、またそれで人員が圧縮できない場合は希望退職をしてもらうなどの例も出ておりまして、そういう中で、まあしかし、やはり全体の働く者、その職場で働く者の雇用の場をどうしていくんだという話合いの中で、やはり協力するという場合は協力していこうということで、組合は各働く職場の人の意見を聞きながら決断しているという実態でございます。
 そういう意味で、是非、残る人、それから去らざるを得ない人、それぞれやっぱり納得いく形で、しかし雇用の継続ができるというのが我々の仕事じゃないかと思っています。残る人はそこで頑張るし、出ていく人についても、早く再就職するという条件を整えなければならないということじゃないかと、こう思っております。
 退職金等につきましても、残念ながら、出る、大体確保しているのはいい、大手の再建の場合は大体確保しておりますが、中堅中小になりますと退職金自身も確保できないと、こういう事例も出てきておりまして、大変我々も心を痛めているわけですが、そういう面で、なるべくそういう労働債権をしっかり保証をするという措置を我々としてもより強めていかなきゃいけない、こう考えているところでございます。
#48
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
#49
○広野ただし君 自由党・無所属の会、国会改革連絡会の広野ただしです。
 今日は、三人の参考人の方、本当にありがとうございます。私が最後でございますので、よろしくお願いいたします。
 まず、斉藤参考人にお伺いをさしていただきますが、最近、日本の倒産法制、倒産関連法制も非常に整備をされてきているんだと思います。そういう中で、今度、この再生機構に多分扱われるような企業さんというのは、流通関係あるいは商社関係あるいは信販、土木建設業、不動産あるいは大規模レジャー、リゾートホテル関係というようなところが大手では数十社になるだろうということを大臣等からもお聞きをしているわけなんですね。
 そういう中で、例えば大きく言えばモラルハザードの問題なんですけれども、例えば今現在でも大手電機メーカーというのは大変な決意でもって企業の再生を図っておられるわけですね。あるいはゼネコンの中でもスーパーゼネコンというのがちゃんとある意味ではやっているわけですね。あるいは中堅企業でもちゃんとやっている企業さんがある、中小でもちゃんとやっている企業さんがあるということなんですね。
 そういう中で、経営が失敗をして債権放棄を受けた企業、あるいは二度も債権放棄を受けた企業、そういうような、ちょっと言葉が悪いかもしれませんが、ゾンビ企業とか言われているところがまた駆け込むというようなことになると、これはある意味で自由主義経済で適正な資源配分といいますか、生産性のそういう低いところから効率性の高いところへということに対して大きな、何というか足止めをしてしまうというようなことがありますし、何しろ安易な駆け込みということが、片一方で一生懸命何の手もかりずに、それは当たり前のことなんですね、どの中小企業でも必死になってやっている、その中でちゃんと伸びていくというのが自由主義経済のいいところだと思うんですけれども、そういうところが何かなくなってしまうんじゃないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#50
○参考人(斉藤惇君) ごもっともな御指摘だと思います。
 私もまだ社長になってもおりませんので、一般的なあれでお答えさせていただこうと思うんですが、アメリカでも御案内のようにチャプターイレブンというのがございます。私自身、アメリカでやった物件がチャプターイレブンに引っ掛かりまして、この逆でございますね、債権者を私守ったんですけれども。本当にもうファイルした方が得だと、もう倒して、それでもう経営者も替わらなくていいですし、DIPファイナンスじゃないですけれども、先ほど御説明のあったようなファイナンスもどんどんできるんですね。これはどういう意味だというぐらいあれで、むしろ債権者をどうやって守るかというようなことをやったことがございます。
 それから、たまたま私、年金をずっと運用していたものですから、事業会社さんをいろいろ訪問して企業業績なんかをお話し聞きますと、特に建設業界なんかでは、先生今おっしゃったような話をまともに聞きました。自分のところは一生懸命やってこつこつやっているのに、あそこは何か再生を申請して、それでまた入札に入ってきて何か取っていっちゃう、おかしいというような声もありました。その辺は、常識的には私も分かっているつもりですが、いずれにしてもこの機関は、そういうことのジャッジは委員会がやるわけでありまして、そこで当然この機関が延命機関ですとかあるいは駆け込み寺的にはならないように、その辺は識者が結構集まっていらっしゃると思いますから、当然心にとどめてベストエフォートしなきゃいけないんではないかと思っておりますけれども。
#51
○広野ただし君 やはり社会的な公正といいますか、経済社会における公正、あるいは不公平のないようなということの中でやはりやっていくことが私は長い目で自由主義経済を大きく発展させる、民間企業出身でいらっしゃるからよくお分かりのことだとは思うんですが、いうふうに思っております。
 それともう一つ、対象企業の経営者責任といいますか、例えばRCC、銀行の方の場合はやはり経営者責任ということで前の人たちは辞めていただくと、こういうことになっているわけですね。場合によっては背任行為、特別背任等があれば告訴あるいは告発もできる非常に強い権限を持っております。
 今度の場合は何も、それの方をやるというよりも再生だということに重点が置かれるということではありますけれども、やはり庶民感覚としてあるいは中小企業の感覚として、借金を踏み倒して、しかも従業員を路頭に迷わせるような、そういう経営者というのはとんでもないことなんで、私は全面的に責任を取ってもらうということがやっぱり大事なことじゃないか、そうしないと社員も言うことを聞かないと思うんですね。そういう経営者責任、対象企業の経営者責任というものについてはいかがでしょうか。斉藤参考人に。
#52
○参考人(斉藤惇君) なかなか一般論的に難しいと思いますけれども、先生御指摘のとおり、この会社といいますか、機構には法的な強制権は付いておりませんので、多分再建計画の中でその辺も当然考慮しながらやっていくことになるんではないかと思います。
 基本的な考え方としては、もう先生おっしゃるとおり、私自身も会社の経営者でありましたけれども、やはり社会に対して、まず利益も出ないような会社を経営するということ自体、もう非常にギルティーコンシャスあるわけですし、社員を整理するというようなことはもう経営者としては非常に駄目だと、はっきり個人的にはそういうことを思っておりました。
 今後、この機構でどうするかというのは、そういうことで再建計画の中でいろいろ検討されるんではないかというふうに思っておりますけれども。
#53
○広野ただし君 それと、やるとしてある程度の国民の痛みを伴うというのはやむを得ないことではないかというふうなお話もございましたが、日産のゴーンさんでも最初、非常にある意味では厳しいことをやってV字型に復活させられたわけで、大変なお力を持ってやられたわけですが、私は斉藤参考人に是非日本経済のそういうゴーンさんのようにやっていただきたいとは思うんですが。
 やはり何といってもこの十兆円の政府保証、最大十兆円が投入される、この十兆円というお金はすさまじいお金で、この前、大臣にもお話を申し上げたんですが、一万円札を積み上げますと富士山の二十六倍になるんですね。富士山の山を越しまして、すさまじいお金になるわけで、庶民の感覚からいうと誠に気の遠くなるような話なんです。ですから、やはりその重みを是非考えていただいて、よろしくお願いしたいと思いますが。
 一つは、やはり先ほどネズミの例を取られてお話がありましたが、内外の話で私は白であろうと黒であろうと黄色であろうと、ちゃんと再建をしてくれるファンドといいますか人であればいいんじゃないかと。ただ、すぐに売り買いをして、そういうことをやられるんではとんでもないことだと思うんです。先ほどお話しありましたように、もう明らかに彼我の格差が非常にあって、もうそのノウハウが随分差があるんだと思うんですね。ですから、そういう中でいろいろと言われております、何というんですか、ハゲタカファンドだとか外資ファンドで、しかし、カーライル、ローンスター、リップルウッド、サーベラス、こういうところのノウハウをある意味で活用するというのは私は非常に大切なことなんではないかと思っておりますが、内外オープンにですね。ただ、先ほど言ったように、ただ、売り買いで利得を得るというのは厳に排除しなきゃいけないと思いますが、その点、どのようにお思いでしょうか。斉藤参考人。
#54
○参考人(斉藤惇君) もう本当に厳粛にそのポイントは受け止めさせていただきまして、一番注意しなきゃいけない点だと理解しております、国民の負担というのはもちろんないことが一番でございますし。
 先ほど申しますように、出口と入口があってどっちかに、入口がやはり甘いと出口にコストが掛かりますし、出口だけを考えてしまいますと入口のところでうまくいかないというようなこともあろうかと思いますので、これだけの不良債権を抱えてしまった経済ですから、できるだけコストの掛からないようにうまくエグジットができるようなスキームを考えながらやっていこうということだと思います。
 しかしながら、正しく富士山の二十六倍の、これはもう本当に大事なことでございますので、十分心掛けてやらせていただきたいというふうに存じます。
#55
○広野ただし君 成川参考人にお伺いしますが、やはり働く労働者に対する配慮というのは非常に大切だと思います。時々いろんな、再建に当たっては非常に経営者もしっかりと話をされるというのが再建の一番大事な要素かなとは思っているんですが、不幸にして、例えば地労委だとか中労委等の方に持ち込まれるというふうなことだってあるんではなかろうかと思うんですが、そういうようなことになった場合は、これは普通、なかなかこれまた再建が難しくなっちゃうんじゃないかと思いますけれども、そういう点はどういうふうに思われますか。
#56
○参考人(成川秀明君) やはりこれは労使の話合いで、日ごろどこまでしっかり経営問題あるいは労働条件問題について話をしているかというのが大事でございまして、企業再生に当たっても組合とほとんど話さないというふうな事態の場合には企業再生自身できないと、こういうふうになっていくんじゃないかと思います。こういう直面したときには、裁判所なり労働委員会に申し立てるというもう時間もないのが実情でありまして、現場で労働組合が経営側といかに再生を図るかということで日夜協議をすると、こういうのが現状であります。
 一番その中で出ている声は、こういう事態に追い込んだ、特に民事再生法などを適用している場合に、同じ経営者がその責任も十分でなしにまた再生の当事者と出てくると。これについては、もう従業員、組合員、とても納得できない、新しい経営者で再生図りたいと、こういう声が強く出ておりまして、先ほど御指摘ありましたような、そういうやはり経営者責任というのを明確にして再生を図るということが本当の再生に結び付くんじゃないかと、こういうふうに思っております。
#57
○広野ただし君 斉藤参考人に伺いますが、今のような地労委、中労委等に持ち込まれるような労使紛争、労使がしっかりしていないような案件等については、いかが扱いになられますか。
#58
○参考人(斉藤惇君) 先生御案内のように、今度、衆議院の方での法案も少し修正がありまして、労使問題を熟慮しなきゃいけないというふうな文章も入っておりますが、当然そこを十分考慮して、事業主と、事業会社とその労働問題についての進行状況を十分考慮した上でやらせていただくということになるんではないかと思います。
#59
○広野ただし君 最後に、田作参考人に質問をさせていただきます。
 本機構によって、私は、企業再生ビジネスといいますか、そういうものの芽を摘んでしまうおそれがあるんではなかろうかと。もちろん、規制ですとか何かを撤廃して、そういう中でやっていきますと、大いに再建ファンドですとか貸出債権市場ですとか、いろんなものが大いに整備をされるということが大事でしょうし、そういう中で、例えば格付企業だとかコンサルティング企業ですとか、あるいは投資、銀行関係ですとか、あるいはそれ関係の情報ですとか、そういうビジネスというものがある意味でしっかり育たなくなるおそれがあるのではなかろうかと、こう思うんですが、欧米等の比較等を交えてお話しいただければ幸いでございます。
#60
○参考人(田作朋雄君) 私は、むしろこういう機構があることによってビジネスは活性化するのではないかという期待を持っております。
 一つは、この機構は、先ほど申しましたように、この機構で何千人を雇って全部内製化するということは想定していないはずでありまして、専門家はある程度いるものの、その専門家がオーケストラの指揮者のようになって、バイオリン、ホルン、ティンパニーというものを使いこなしてものを進めるわけですから、その実際の楽器の演奏者というのは市場にいるわけですね。ですから、そういう人たちのアドバイザーとしての仕事はむしろ増えると思っております。
 それからもう一つ、出口を見据えて出口のところで投資家が当該企業をどう見るかということを考えて買取り値段等も決めますので、言わば投資ファンド等のビジネスも活性化すると思われます。十兆円というのは、あくまで最初の買取りの金ですから、十兆円で買い取っても、それを塩漬けにするんじゃなくてすぐ市場に出すわけですね。市場で投資家等がそれを買うように持っていく、その金で当初使った公的資金をなるべく回収するというのがこれ流れであります。
 現に欧米の例もほとんどそうでありまして、先ほど斉藤参考人がおっしゃったRTCも公的資金、瞬間最大風速では円にして二十兆円近く使ったわけですけれども、ある程度これは市場で売却する中で回収しているわけですね。お隣の韓国も九八年、九七、八年の金融危機のときにやはり公的資金を相当投入しましたけれども、その四分の一ほどは回収しております。それから、スウェーデンは九〇年代前半にやはり金融危機があったんですが、当初の買取りで使った公的資金のこれはほぼ全額を市場での売却で回収しております。
 ですから、この機構もそういうふうな動きをするんであれば、アドバイザーの仕事は増える、ファンドの投資機会も増えるということで、私はむしろこれが触媒作用を果たして事業再生ビジネスが活性化することを期待しております。
#61
○広野ただし君 斉藤参考人には、是非、日本経済の言わば日産のゴーンさんのようにやっていただきたいと思いますし、また一方で、庶民感覚でちゃんとやっていかれた中坊さんのように、それなりにちゃんとやっていただけるように期待しまして、終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#62
○委員長(田浦直君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。(拍手)
 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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