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2003/02/12 第156回国会 参議院 参議院会議録情報 第156回国会 国民生活・経済に関する調査会 第1号
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2003/02/12 第156回国会 参議院

参議院会議録情報 第156回国会 国民生活・経済に関する調査会 第1号

#1
第156回国会 国民生活・経済に関する調査会 第1号
平成十五年二月十二日(水曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員氏名
    会 長         勝木 健司君
    理 事         魚住 汎英君
    理 事         北岡 秀二君
    理 事         中島 啓雄君
    理 事         内藤 正光君
    理 事         松 あきら君
    理 事         西山登紀子君
    理 事         森 ゆうこ君
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                山東 昭子君
                田村耕太郎君
                伊達 忠一君
                月原 茂皓君
                藤井 基之君
                松山 政司君
                山内 俊夫君
                池口 修次君
                神本美恵子君
                円 より子君
                和田ひろ子君
                渡辺 孝男君
                畑野 君枝君
                島袋 宗康君
                山本 正和君
    ─────────────
   委員の異動
 一月二十日
    辞任         補欠選任
     島袋 宗康君     加藤 修一君
 二月四日
    辞任         補欠選任
     神本美恵子君     郡司  彰君
 二月五日
    辞任         補欠選任
     郡司  彰君     神本美恵子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         勝木 健司君
    理 事
                魚住 汎英君
                北岡 秀二君
                中島 啓雄君
                松 あきら君
                西山登紀子君
                森 ゆうこ君
    委 員
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                山東 昭子君
                田村耕太郎君
                伊達 忠一君
                月原 茂皓君
                藤井 基之君
                松山 政司君
                山内 俊夫君
                池口 修次君
                神本美恵子君
                円 より子君
                和田ひろ子君
                加藤 修一君
                渡辺 孝男君
                畑野 君枝君
                山本 正和君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        村松  帝君
   参考人
       立命館大学産業
       社会学部助教授  前田 信彦君
       アイ・ビー・エ
       ム・ワールド・
       トレード・アジ
       ア・コーポレイ
       ションAPワー
       クフォースダイ
       バシティーマネ
       ジャー      西嶋美那子君
       有限会社アパシ
       ョナータ代表   パク・ジョア
                ン・スックチ
                ャ君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○委員派遣承認要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○国民生活・経済に関する調査
 (「真に豊かな社会の構築」のうち、少子高齢
 社会における多様なライフスタイルを可能とす
 る働き方について)
    ─────────────
#2
○会長(勝木健司君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る一月二十日、島袋宗康君が委員を辞任され、その補欠として加藤修一君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(勝木健司君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 国民意識の変化に応じた新たなライフスタイルに関する実情調査のため、来る十九日から二十一日までの三日間、沖縄県に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○会長(勝木健司君) 御異議ないと認めます。
 つきましては、派遣委員の人選等の決定は、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○会長(勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#6
○会長(勝木健司君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国民生活・経済に関する調査のため、今期国会中必要に応じ参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○会長(勝木健司君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○会長(勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#9
○会長(勝木健司君) 国民生活・経済に関する調査を議題とし、「真に豊かな社会の構築」のうち、少子高齢社会における多様なライフスタイルを可能とする働き方について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、立命館大学産業社会学部助教授前田信彦君、アイ・ビー・エム・ワールド・トレード・アジア・コーポレイションAPワークフォースダイバシティーマネジャー西嶋美那子君及び有限会社アパショナータ代表パク・ジョアン・スックチャ君に御出席いただき、御意見を承ることといたします。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「真に豊かな社会の構築」のうち、少子高齢社会における多様なライフスタイルを可能とする働き方につきまして忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、まず前田参考人、西嶋参考人、パク参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、二時間半程度、午後四時三十分までの間、各委員からの質疑にお答えいただく方法で議事を進めてまいりたいと存じます。
 この質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行いたいと存じます。
 また、時間が限られておりますので、質疑、答弁とも簡潔に行っていただくようお願いをいたします。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、前田参考人からお願いいたします。
#10
○参考人(前田信彦君) ただいま御紹介にあずかりました立命館大学の前田と申します。
 私は、今日のテーマである多様なライフスタイルを可能にする働き方ということについて、私が従来から研究テーマとしております仕事と家庭生活の調和という視点から幾つか私の意見を述べてみたいというふうに思っております。
 今日は、お手元に一枚紙のA4判のレジュメが配られているかというふうに思いますが、それに沿ってごく簡単にお話ししていきたいというふうに思います。
 まず、多様なライフスタイルを可能にする働き方ということになぜ仕事と家庭生活の調和という視点が必要かということで、第一番目のテーマになるわけですが、非常に簡単に言いますと三つのポイントがあるのではないかというふうに思われます。
 まず第一番目は、(1)「家族的責任を持つ労働者の権利」というふうに書いてありますが、正にこれはこの文脈、文面どおり、育児あるいは介護をしている労働者もそうではない労働者と同じように均等、平等に企業、使用者は処遇するべきだということの点です。
 これはかなり以前から国際的にも議論されておりまして、例えば、ここには書いておりませんけれども、ILO条約ですね、一九八一年にILOで批准された百五十六号条約というのがございますが、これは正に家族的責任を有する労働者の権利をうたったものでございます。これは、日本は一九九五年に周知のように批准をいたしまして、これは育児休業法が改正されて介護休業法ができたときにILO百五十六号条約と百六十五号勧告というものが日本で批准されたわけでございます。こういう文脈から、当然のことながら日本においても仕事と家庭生活の調和という視点がどうしても必要になってくるということになります。これが第一番目です。
 それから第二番目は、「日本的文脈」と書いておりますが、これはかなり日本人の働き方に非常に特徴的なことで、従来から言われている働き過ぎという問題があるわけです。これは例えば過労死ですね、英語で言いますとデス・デューティー・オーバーワーク、つまりオーバーワークによって死んでしまうという奇妙な、国際的に見ればちょっと不思議なような現象が日本で非常に多いということ、こういうことから、いわゆる仕事といわゆる私生活のバランスを欠いているのではないかという問題が指摘されるわけでございます。
 例えば、現在日本は労働時間が年間、全部で千八百四十二時間でございますが、ドイツが千四百七十八時間、フランスが千五百時間、オランダが千三百六十五時間で、ほとんど四百時間ぐらい日本が長い時間労働をしているわけでございます。こういういわゆる日本的な働き方というものが経済パフォーマンスを達成する上では非常に良かったわけですが、片方で仕事と家庭生活のバランスを欠いているという問題が指摘される、それゆえにこの仕事と家庭生活の調和という問題がクローズアップされるわけでございます。
 それから第三番目のポイントですが、これは実は「福祉国家の考え方の変化」と、ちょっと難しく書いてございますが、これが一番最近注目されているポイントでございます。前者の一番目と二番目の家族的責任とか日本的文脈というのは比較的従来から言われてきたことでございますが、この三番目の福祉国家の考え方の変化というものは、今EUを中心としまして非常にクローズアップされているテーマでございます。これは何かと言いますと、EUの社会保障、近代化を進めるに当たって実は働く、労働の概念が極めて重要になってきているということでございます。
 例えば、男性であれ女性であれ、つまり性別によって差があるとか、あるいは高齢になったから働けなくなるという年齢差別ですね、それから人種、それから障害を持っているか持っていないかという障害の有無ですね、そういういわゆる社会的な属性によって働くことができなくなるということはできるだけ避けなければいけないと、これは非常に社会保障、この近代化の中で言われ始めています。これは、つまり性別、年齢、人種、障害の有無にかかわらず、働くということによって社会参加するということですね。この働くということによって社会参加し、そして福祉社会を構築するということが一つのいわゆるデザインというふうになりつつあるというふうに言っていいかというふうに思います。
 こういうふうに考えていきますと、実は家族的責任を持つ労働者も、例えば育児をしているからといって働きたくても働けなくなる、あるいは親の介護をしていて働けなくなるという状況は避けていかなければいけないということになります。だから、先ほどの言葉で言いますと、家族的責任を持つ労働者も一般の労働者と同じように雇用、働く、雇用だけじゃなくて働くということによって積極的に社会参加する、そして社会的に統合されていく必要があるということが、これが正に福祉国家の考え方の変化というふうにございます。
 こういう文脈から、仕事と家庭の調和ということが言われるというのが最近の現状かというふうに思われます。
 さて、じゃ、こういう仕事と家庭生活の調和という視点が出てきて、一体じゃこういうことをうまくやっている国があるんだろうかという議論が出てくるわけでございます。当然、日本が立ち後れているというふうな問題意識から入るとしますと、では進んでいる国はどこだろうかということになりますと、やはり、幾つかの問題を抱えるにせよ、EU、特に私が関心を持っておりますオランダという国はかなり積極的にこの多様なライフスタイルを可能にする働き方ということを実現しつつあるんではないかというふうに思われるわけです。
 二番目のテーマ、「オランダモデルの示唆すること」というふうに書いてありますが、正に私たちは今、多様なライフスタイルを可能にする働き方として、このオランダモデルというものを私たちは参考にできるんではないかというふうに思います。
 今日は時間がございませんので、細かいことはもう割愛させていただきますが、そのオランダモデルの一番の特徴は、失業率が非常にオランダはかつて高かったんですが、急速に失業率が下がってきた。景気も回復したわけですね。今、日本が景気低迷をしているという状況は、実はオランダはかつて経験していて、オランダはどうやらそれを克服したらしいということが分かってきたわけです。その克服した一つの要因は、労働市場の改革にあったというふうに言われています。これは細かい話になりますので割愛いたしますが、基本的には今日のテーマにかなり近い、つまり多様な働き方を可能にする社会を実現しつつあるということであります。
 最近は、オランダモデルといいますと、パートタイム労働の均等待遇ということが非常に強く言われていまして、この点で非常に注目されているわけですが、このパートタイムというのは、多様な働き方の一つとして位置付けられるわけでございます。つまり、例えば育児をしながら働きたいという労働者に正規の労働者と同じような条件でパートタイムで働いてもらうということです。例えば、正規労働者が、正社員が百時間働いて百という賃金をもらうとする。パートタイムは、八十時間しか働かないというと百分の八十時間なわけですね、労働時間が。そうすると、賃金も自動的に百分の八十ということになります。これは理論的には当然可能なように思われますが、なかなかこれを実現している国はないのでございます。オランダは、この点、労働法の改正によりまして、一九九〇年代以降、パートタイム労働の均等待遇を進めている。これによって労働市場が非常に大幅に改善されたというふうに言われています。
 これがオランダモデルが注目される一つの理由でございますが、これは、日本のマスメディアではよくワークシェアリングという言葉を使いますが、ワークシェアリングというのも一つのポイントでございますが、どちらかというとオランダはパートタイムというのを多様な働き方の一つとして正当な地位を与えたということなわけです。ここでやはり注目すべきだろうというふうに思われるわけです。
 実は、オランダのパートタイム労働ということを見ていきますと、非常に面白いモデルができ上がります。このレジュメの二番目の「オランダモデルの示唆すること」の@、「仕事と家庭生活の調和の新しいモデル」ということですが、例えば、先ほど言ったように、普通日本の場合は、夫がばりばり働いて妻が専業主婦あるいはパートで働くということであります。子育てということが実は問題になってくるわけですが、妻が外で働かない分、子育てを行うというような、従来日本が行ってきたいわゆる片稼ぎというんでしょうか、英語で言うとブレッドウイナーというふうに言うんですが、片稼ぎ型のタイプですね。
 これの対極モデルが実はもう一個あります。これは何かというと、共働きの家族です。夫もばりばり働くし、妻もばりばり働くということです。こうなってきますと、子育てをだれが担うかという問題が当然出てくるわけですが、この場合のモデルのときには子育てというのは、家族の中で部分的にはやるんですが、国あるいは民間の保育所というものがこの子育ての役割を担うということになります。つまり子育てを外部化するという発想がここで出てくるのでございます。だから、日本型の夫が一人で稼ぐ、そして妻が子育てをするというモデルとは随分対照的なモデルでございます。
 実は、この日本型のモデルと今言った共働きのモデルというのが今までの家族の一つのタイプとして考えられてきたわけですが、オランダはこのどちらのタイプも取らなかったということです。どういうことかというと、夫も正社員で働くんです。妻も正社員で働いて、なおかつ子育てもするというモデルです。
 一体こういうことが可能なのかどうかということですが、オランダはこの子育ての外部化ということも考えたんですが、もう一つ大事なポイントは、夫の労働時間を短くする。つまり正規のパートタイムのような働き方ですね。これパートタイムと言うとちょっと語弊があるんで、正規の短時間労働者と言ってもいいと思います。この正規の短時間労働者で夫も働いて、妻も正規の短時間労働者で働く。そうすると、収入が若干減りますが、二人で働くのでそこそこ家庭でやっていける。余った労働時間、労働時間で余る生活時間を子育てに集中する、投資をするということになります。家族でできない部分だけ、例えばベビーシッターとか保育所に預ける、つまり外部化をするという、こういう仕組みをオランダは行っているということです。面白いことは、これはかなり政策のイニシアチブでこういうモデルが登場してきたということ、これが非常に興味深い点だというふうに思います。
 こういうオランダモデルというものも参考にしながら私たちは仕事と家庭生活の調和ということを考えるというのが私の一つのメッセージなわけでございます。
 では最後に、実際、今日のテーマでございます多様なライフスタイルを可能にする働き方をどうしたらいいかということの問題ですが、三点ほどちょっとお話しさせていただきたいというふうに思います。
 レジュメのこれは三番目に書いてあることでございますが、その@、まず「ワーク・ライフバランスを可能にする労働時間・生活時間」です。
 私たちは労働というと必ず賃金ということが念頭にあります。つまりお金ということですね。しかし、私たちのこれからの社会では、賃金あるいはお金と同時に時間ということが非常に大事になってくるんではないかというふうに思います。だから、例えば男女間での偏った時間の配分ですね。例えば、男性が専ら会社で働いて女性が育児をするという、ある意味ではかなり労働時間については偏っているわけですが、この時間の再配分をしていくことが必要ではないかというふうに思います。
 EU、ヨーロッパ連合でも、最近、女性だけではなくて父親の育児参加のことが政策レベルで議論されるようになっています。EUも実はそんなに進んでいないところもありまして、例えばドイツでは、育児休業を取る男性はわずか一%か二%にすぎないんです。これに対して、例えばデンマークでは二週間の父親休暇があって、大体半分の、労働者の半分の男性はこの父親休暇を取るというふうに言われています。それから、スウェーデンでは十日間の父親休暇がありますが、もし、そのほかに育児休業中に母親ではなくて父親が三十日間取得しないと育児休業の取得の権利がなくなるという制度もあります。だから、これは別名強制父親休暇というふうにも呼ばれていますが、かなり父親の育児休暇を促進する政策だというふうに思います。これはもう少し考えてみますと、いわゆる時間を仕事だけではなくて生活時間、時間というものを考慮した一つの政策ではないかというふうに思われるわけです。
 それから、第二番目のポイントは、Aと書いてありますが、育児休業とか介護休業のみならず、すべての人のワーク・ライフ・バランスを可能にするような支援、職業キャリアとかライフコースへの支援ということです。つまり、私たちは、多くの方は結婚されて子供を持たれることも多いわけですが、最近はそうでないライフスタイルを選ばれる方も多いわけですね。そうすると、家族ということだけに視点を当てるんではなくて、あらゆるライフスタイルを持っている労働者も仕事と生活のバランスが必要だということになります。
 例えば、これを可能にするのは、先ほど言いましたようなオランダのパートタイム労働の均等待遇とか、あるいは最近非常に興味深い事例としては、ベルギーで行われていますキャリアブレーク制度というのがございます。これは、育児休業とか介護休業だけじゃなくて、長い職業人生の中で、例えばもう一度大学に行って勉強したい、専門知識を身に付けたいとか、あるいはバカンス、少し長いバカンスで少し人生リフレッシュしたいとか、そういう人のために、職業キャリアを中断して有給の、お金をもらいながら休みを取れるシステムがございます。こういうようなキャリアブレーク制度というのも、家庭生活だけではなくて、すべての人のワーク・ライフ・バランスを可能にする支援の一つではないかというふうに思われます。
 それからもう一つ、最後のポイントになりますが、働くということを私は今当然のことのようにお話ししてきましたけれども、実は働くことの意味、定義というものをもう少し広くこれから解釈していく必要があるのではないかというのが最後の提言でございます。
 例えば、ずっと一生涯企業に勤めて企業のために貢献する、これは非常に職業キャリアにとって大事なことでございますが、しかし、例えば一時期、働くのをやめて子育てをしたいとか、あるいは会社の仕事も大事だけれどもボランティア活動をしたいとか、あるいは近所付き合いをしたいとか、それから例えば自分のおばあちゃんとゆっくり縁側で話す時間が欲しいとか、そういうことというのは多くの人が希望として持っているわけでございます。したがって、例えば、企業で働くということも大事なんですが、もう少し社会のために働くということも積極的に評価していく必要があるというふうに思います。
 最近、NPO活動というのが非常に注目されているわけですが、なぜ注目されているかということです。これはなぜかというと、NPOというのは、つまりそれまで評価されてこなかった仕事、地域のボランティア活動のような評価されてこなかった仕事を公のものとしている、公のものとして社会的に有意義な仕事として位置付けているということにあるというふうに思います。したがって、もう少し働くということの意味を再定義していくことの必要性というのを私はちょっと感じておるわけでございます。
 一番最後に、レジュメの一番最後にありますが、多様なライフコースあるいはライフスタイルを可能にする働き方の制度の構築というのは、このような幾つかの条件があって成り立っていくのではないかと思います。
 一つ、私の最近の聞いた一つの言葉、論文からの引用になりますが、ここに書いてありますが、ちょっと読み上げますが、「失業者であれ、貧困者であれ、いわんや女性であれ、高齢者であれ、障碍者であれ、一個の自立したあるいはむしろ自立しうるしまた自立すべき市民としてとらえ、彼らが自立して社会を支える側にまわること」。これが実は、単なる弱者救済ということの発想の福祉ではなくて、もう少し個人個人が能力を最大限に生かしながら社会参加をする、働くということを通して福祉社会を構築していくということが今後の我々の社会の中で非常に重要な視点になってくるのではないかというふうに思われます。
 ちょっと早口で述べてしまいましたが、この辺で終わりにしたいと思います。
#11
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 次に、西嶋参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(西嶋美那子君) 西嶋でございます。
 今日、今回ここでお話しするようにという御依頼があったときに、私はワーク・ライフの専門家ではございませんし、お役に立つようなお話ができるのかどうかという疑問もございましたが、仕事を通してワーク・ライフ・イシューという問題を企業がどういうふうに解決していくかということを担当しておりますので、その観点から少しお話をさせていただきます。
 資料は、実は手を抜きまして、レジュメを用意をせずに、前にお配りしているこの参考資料の中で少しまとめが書いてありますので、そちらを参考にしていただければと思っております。
 それから、今日お話しさせていただく内容はIBMとしての正式な見解ということではなくて、私個人のこの問題に対する考え方を述べさせていただくということで御了解を得ておりますので、その点もあらかじめお話をさせていただきたいと思います。といっても、私が今までワーク・ライフ・イシューの問題について少しお話しする機会があったというのもIBMの仕事を通してこの必要性を感じているからでありますので、基本的にはIBMの人材活用の考え方というところを基本にお話をさせていただきたいと思います。
 今日のタイトルにも「少子高齢社会における多様なライフスタイルを可能とする働き方」というふうに書いてございましたけれども、私どもからすると逆でございまして、多様な価値観それからライフスタイルに対応する仕組み作りを企業の中でやっていく必要があるという観点でこのワーク・ライフ・イシューをとらえております。これからの人材を有効に活用していく上ではこのワーク・ライフの問題というのは見過ごせない問題というふうに考えております。
 私の役職の名前、先ほど長い名前を御紹介いただきましたけれども、この中にワークフォースダイバシティーという言葉がございます。ここのどういう仕事をしているかというお話をさせていただくとお分かりいただけるのかなと思うので、まずそこからお話を申し上げますけれども。
 実は私は、以前にこういう仕事、同じような仕事をしていたときにはイコールオポチュニティープログラム担当という名前でした、それは機会の均等を守る役目というような。制度的に差別がないような状態を作るかというような、ですからマイナスをゼロに持っていくような制度作りをしていたわけですが、それが九〇年代の中ごろから、今度はそのマイナスのものをプラスにするような仕組み、ダイバシティーという考え方に変わってきました。このダイバシティーという考え方、先生方、余り耳慣れない言葉ではないかと思いますが、欧米の社会ではこのダイバシティーという問題をかなり積極的に人事戦略、経営戦略として取り組んできているというのがこのところの動きです。
 じゃ、ダイバシティーとは何かというと幾つかの側面があります。
 まず一つは、優秀な人材を抱えるには、やはり性差とかそういうことにとらわれることなく、個人差で見て能力を活用していく必要があるということです。そういう形で、いろんな価値観を持った人たちが働き手として仕事場に来るということは組織としても強いという考え方をしています。同一の価値観の人たちの中ですと、議論が余り進んでいかない、前任者がやっていたことがいいことだというふうに進んでいくというようなことで、価値観の違う人たち、それから経験の違う人たちが来るということによって、議論が切磋琢磨されてその組織が強くなるという考え方をしております。
 まず、その多様な人たちを労働力として確保するためには、その価値観に合った働き方を提供していかないとその人たちが働いてもらえないわけです。例えば、女性の問題で言うと、子育て中フルタイムでは働けないといったら短い時間で働けるようにする、若しくは在宅で可能な働き方を提供していく、それからまだ働きながらも学校に行きたいという人でしたら学校にも行けるような、曜日を選択できるような働き方をする。つまり、優秀な能力を持った人たちを会社の中で生かすには、彼らの価値観からニーズに合わせた形での働き方を提供していかないと、いい人ほど逃げられてしまうという。つまり、これまでの日本社会のように終身雇用というのが前提になっている場合は別です。雇用が流動化していった場合に、いい人ほどいい条件が提示されてこっちに来ないかという話が出てくるわけですが、そのときに、やっぱりこの会社で働いていたいな、この会社で働いているということが自分にとってはプラスなんだなというものを持たせないと、いい人ほどいなくなってしまう。これ、ですから人事戦略としては非常に重要な人事戦略なんです。ですから、そういう意味で、人事戦略の一つとしてワーク・ライフ・バランスということを真剣に考えていくというふうになっています。
 それから、多様な価値観という意味では、もう一つ、マーケット戦略があります。
 戦後、物がないときに画一的なものを大量に作っていればいい時代で今はありませんよね。これだけ物があふれていて、製品としてもサービスとしても、それぞれの個々のニーズに応じたものを作っていかないと、サービスを提供していかないと売れないわけです。じゃ、そういうものを、サービスを提供する若しくはものを作るにはどうしたらいいかといったら、やっぱり多様なニーズを持った人たちが考えた方がそういうアイデアは出てくるんですよ。例えば働く女性だと、仕事を家事を効率的にやりたいと思う、こんな機能を持った洗濯機があればいいよねというようなアイデアというのは幾らでも出てくるんですよね。ところが、家事を全然しない、仕事だけをやっていればいいと言ったら、ごめんなさい、言い過ぎかもしれませんが、男性が、そういうアイデアって出てこないんですね。そういう意味では、やっぱり多様なニーズを持っている人たちからそういうアイデア、製品が出てくる。それを考えていかないとマーケット戦略としても負けるということです。
 それからもう一つ、多様なニーズを持った人たちに対して若しくはマイノリティーと言われている人たちに対して、会社としてそういうところに理解があるということを示しておくということは、その方たちがマーケッターとして、お客様として製品、サービスを買うときに、同じものだったら、自分たちに対して理解のある企業、企業イメージとしてそういうイメージがある企業のものを選ぼうよと思うのは割と自然の成り行きなんですよね。そういうところまでしっかり賢く考えてこの多様性というのを生かしていかない企業は負けるよね、これをうまく生かして、それを戦略として使っていこうというのがダイバーシティーという考え方です。
 実はまだこのダイバーシティーという考え方が日本の中になかなか定着がしていないので、私、ちょうど日経連に出向していたときに、最後のころにダイバーシティ・ワーク・ルール研究会というのを若い人たちを中心に作りまして、日本語で初めてのダイバーシティーに関する報告書ができましたので、これ実は日経連と経団連が統合する直前の日経連として最後の報告書なんですが、ワーク・ルール研究会というので報告書ができたので、これ参考にまた一冊、事務局の方にお渡ししておこうと思うんですが、日本の中でもやっとこのダイバーシティーということをどうやって戦略的に考えていこうかということに着目され始めたということです。
 ダイバーシティーという考え方を今お話をしたんですが、私どもでは、IBMの、私はアジア・パシフィックという日本IBMの上の組織にいるんですが、そこの会長の北城が年に一回IBMの本社の北城の上司とダイバーシティーについてのレビューをする、そして、今年どうした、来年どうするかという戦略を立てて話をする、その中の柱の一つにワーク・ライフ・バランスということが掲げられて、戦略を立てるということをやってきております。働き手、先ほど少子高齢化という、今後少子高齢化で労働力が不足するといったときには、本当に男性だけではなく女性の労働力というのも欠かせない、若しくはいったん企業を離れた方、高齢者になって今度はフルタイムじゃなくて持っている能力のここの部分だけを活用してというような形での、本当にいろんな形で持っている能力をうまく生かす職場作りをしていく必要性というのがやっぱり企業に求められてくると思っています。ですから、先ほどの優秀な人材を確保するためにと申し上げましたが、それと同時に、やはり労働力を確保するということでもいろんな働き方を提供していく必要があるというふうに思っています。
 もう一つ、多様な働き方を容認してその能力を生かすという観点からは、何もかも認めるということじゃなくて、会社として、人事として考えていることは、例えば優秀な社員がいて、何らかの個人生活の問題で悩んでいたとします。その問題が解決しないとやはり仕事に影響出てくるわけですよ。ですから、今、私どもはワーク・ライフということを言っていますが、個人生活の中で悩みを抱える若しくは問題を抱える社員に対しては、会社が何らかの問題提起をすることによってその社員が業務に専念してもらえるというしたたかな考え方なんです。
 ですから、企業ですから福祉でもありません。本当に給料の分だけ働いてもらわないと私どもは企業活動がやっていけないわけですから、決して働きやすい環境整備、例えば介護ですとかそれから育児の問題も、別に社員の福利厚生のためにやっているということよりも、社員がその個人の生活で問題を抱えることなく仕事にかかわっていられるような環境を作るということを視点にこういう制度を考えてきております。
 なかなか、日本の企業の中でワーク・ライフのイシューそれからワーク・ライフ・バランスという問題を提起してくると、余り真剣にまだ考えていられない、若しくはその問題は女性の問題だよねというような言い方をされていますが、もうこのワーク・ライフ・バランスの問題というのは決して女性だけの問題ではなく、男性の社員にとっても非常に重要な問題になっている。
 それから、私どもで、ついこの間、これはIBMコーポレートで調査をしたんですけれども、去年一年間で辞めてほしくない人が辞めたというケースを調べていきますね。その原因は何だったろうというふうに調べていくときに、三番目の中に、やっぱりワーク・ライフ・バランス、ワークとパーソナルライフのバランスがもっと広がっていれば辞めなかったという問題というのも入ってきているんですね。これというのは、やっぱり企業にとっても非常に大きなインパクトがありますので、本当に真剣に考えなくてはいけないと思いますので、人事の戦略の中の大きな柱に私どもではなっております。
 一つ、もう少しお話を申し上げると、日本の中で、じゃ、このワーク・ライフ・バランスの問題がどうして取り上げにくいか、若しくは阻害要因って何だろうというふうに考えたときに、やっぱり日本の組織の中では、顔を見ていないと信用できないというんですか、そこの場で働いて、英語だとフェースタイムカルチャーと言っているんですけれども、顔を合わせていることによって、ああ働いてくれているなというふうに見る。いないところだと何をしているか分からない、見えないところで。だから、結果さえ出せばいいという働き方じゃないんですね。プロセスを重視するというようなことでまた置き換えられている部分もありますが、プロセスを重視するといっても結果が出なかったらこれ何にもならない。
 例えば、職場にだらだらいるという言い方はあれですけれども、効率的な仕事をしていないんだったら職場にいてくれなくてもいいんですよね。逆に、いない方がいい。そういう意味では、結果をきちんと評価する仕組みができていないので、どこでどういう働き方をして、効率性を高めて仕事をするという形に考え方が行かないというのが今の日本の企業の体質にまだあると思います。
 それからもう一つは、横並びの意識がある。ほかと違う、ほかの人と違うことをやるということは決してマルじゃなくてかえってバツが付くんじゃないかという意識の方が上の方にもあるし、働き手としてもまだあるように思います。私どもでは、私も実際にもうこの仕事をし始めてから週に二日は在宅で仕事をしています。もうPCさえ持っていれば全く会社と同じ状況で仕事ができます。上司と話をすると、アウトプットさえきちんと出してくれば、いつどこで何を仕事しようと僕は構わないと、それははっきり言ってくれていますし、もう会議でも、例えば私どもの場合ですと、アジア・パシフィック全体があれですから電話会議になってしまうんですね。そうすると、家から入っても同じ状態で仕事ができるということです。
 実は、この在宅勤務の問題で一つ日本では問題になるのかなと思うのは、家が狭いというようなことを言われていますが、家の狭いのはやりくり幾らでもできるんですね。ところが、中高年の男性のお家での居場所がないという方が問題になっているように思います。女性ですと、多くは男性が外に、職場へ出ていっていますから、在宅をするときに自分の時間が取れるわけですよね、小さな子供がいたとしても。ところが、男性の場合は、御家庭に配偶者の方がいらっしゃると何か今までと違っていにくい、若しくは配偶者の方に、家にいると邪魔だからと言われる。今までお昼を作らなくてもよかったのをお昼をお家で作ってあげなきゃならないというような、在宅勤務をすることの効果も大きいんですが、残念ながらまだあんまり受け入れられない。そういう意味では、働き方の多様性ということに対して男性の中高年の方たちの方が割と否定的でいらっしゃる、これが今の現状なのかなと。
 それからもう一つは、あとは、会社がいろんな制度を、柔軟性のある制度を導入しようとしていくときに、やはり労働基準法の中でいろいろな細かい制限があって、あ、ここで引っ掛かってしまう。若しくは、例えばアメリカなんかでは、学校がどうしても金曜日、大学院に行くので金曜日をオフにして、そのオフの逸失する時間を週四日で割り振ってしまって働くというような働き方なんかもできるんですが、例えば日本でそうすると、十時半以降だと割増しのあれを払わなくちゃならないとか、そういういろんな仕組みを変えていこうとするときに、企業にとってはやりにくい仕組みがまだまだある。もっと、そういう意味では、ライフスタイルを認めるような多様な働き方を提供するには、そういう意味での労働基準法等の縛りをなくしていく必要性があるというふうに思っています。
 企業としては、やはりその選択肢を用意するということだと思うんです。みんなこうしなさいということではなくて、それぞれのニーズに合った選択肢を用意しておいて、そしてそれを自己責任の下にそれぞれの社員が選択して、自分の働きやすい、効率のある、効率の高い働き方ができるような仕組みを自己責任において選択して対応していくという方向に私どもは持っていきたいというふうに思っていますし、そういう流れになっていると思います。
 最後にちょっと申し上げたいのが、今企業の立場からワーク・ライフ・バランスの重要性ということをちょっとお話を申し上げたんですけれども、ここにあるように、多様なライフスタイルを可能にする働き方を議論するときに、やはり企業がその重要性を認識して、そしてそういう多様な働き方を提供することが本当に必要なんだということを認識しないとやはり企業って動かないんですね。そういう意味では、本当に多様性を生かしていくことが企業としてもメリットがあるんだというようなことを企業側に認識させていく、それがこれからの人材活用には重要だというポイントをまず認識しないとなかなか動かないんじゃないかなというふうに日ごろ考えていますので、その点だけ付け加えさせていただいて、お話を終わらせていただきます。
#13
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 次に、パク参考人にお願いいたします。
#14
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) ワーク・ライフ・コンサルタントのパクです。
 今日はこのような場でお話しさせていただく機会をいただいて、どうもありがとうございます。
 今回のテーマの少子高齢化時代の働き方につきましては、やはりワーク・ライフ・バランスという新しい取組が何か解決策の糸口になるのかなというふうに感じていますが、日本ではワーク・ライフ・バランスという言葉そしてコンセプトというのがほとんどまだきちんと正しく伝わっていない、ほとんどの方がまだ知らない状態ですので、今日はこの二十分を使いましてワーク・ライフ・バランスの基本的な背景やメリットなどについて御説明させていただきたいと思います。
 日本の労働時間はサービス残業を合わせると多分世界一長いと思うんですね。ところが、この労働時間の長さと成果が正比例せずに、十年以上たっても不況から抜け出せない状態でいるということと、仕事への満足度についての国際比較調査がやはり極端に低いという結果が出ていて、何か違うやり方があるんじゃないかなって感じている人がとても多くなってきているという気がします。
 私、四ページのレジュメを、このアウトラインの方ですね、基にお話ししたいと思いますので、まずは、ワーク・ライフ・バランスの目的ですけれども、これは企業がワーク・ライフ・バランスに取り込む目的、なぜかというと、こちらの目的は社員がやりがいのある仕事と充実した私生活のバランスを取りながら持っている能力をフルに発揮できるようにサポートすることですね。
 企業での積極的な取組はアメリカから始まりました。興味深いことに、ワーク・ライフ・バランスの取組は九〇年代初期のリストラの盛んなときに多くの企業の中で広まっていきました。不況によるリストラで残った社員の仕事が増大して、アメリカの企業が何に力を入れたかというと、残された社員のモラリティーを高めて生産性を上げ、社員の活性化を図り、能力がフルに発揮できる環境を作ったということですね。だから、長時間労働、以前よりも長時間労働になってきた、だから余計に私生活をサポートする必要がある。なぜかというと、仕事をしている間は私的な問題を気にせずに仕事に集中して、そういう環境を作ることによって集中力が高まって質の高い結果を企業として出してほしかったということです。
 この取組を推進していくに当たって、やっぱり革新的なアプローチ、今までと違うアプローチがあった。それは何かというと、この取組をやることによって企業も社員もお互い恩恵を受けようね、これをやることによっていい目に遭おうよ二人、だからウィン・ウィン関係になるということを目標にしたことです。ですから、困っている社員を助けるというのではなくて、社員のニーズを満たすことによって企業もいい目を見るということを目標としました。特に、アメリカ人はお金にとても、ちょっとシビアと言おうか細かいですから、自分が幾ら投資し、これだけ投資したらそれ以上のリターンというのを求めるということがあります。取組の一つとして、フレックスタイムとかありますけれども、日本ではうまくいっていないフレックスタイムですね、社員は自分のニーズに合った時間帯で働けるというメリットがありますし、企業ではやっぱりコストを掛けずにカスタマーサービスの時間帯を長くすることができたということがあったり、ほかにもいろいろなメリットがあります。
 私は、ちょっと「会社人間が会社をつぶす」という本を出したんですけれども、これについての調査結果はいろいろと、何%生産性が上がったとか満足度がどうなったという細かい調査結果というのが書いてありますので、御興味のある方はそちらの方を参考にしていただければと思います。
 では、米国企業はどういう状況だったかというと、そうですね、七〇年代とか八〇年代初期というころは仕事と私生活はゼロサムゲームでした。つまりどっちか一つ、仕事か家庭かという状態でしたね。だから、両方欲しがる人は、仕事も欲しいし、私生活も充実させたいし、子供も欲しいという人たちにとっては何のサポートもありませんでした。ところが、八〇年代後半から特にそうですね、従業員がバランスが取れるように人事制度やプログラムとして具体的に取り組み始めた。なぜかというと時代が変わったからです。それにつれていろいろなことが変わっていき、企業はその変化に対応する必要性が出てきた。ですから、社員の仕事と私生活の両面に効果的に対応することによって新しい時代の従業員の価値観や目的とビジネスの目的とのウィン・ウィン関係を創造的に作り出して両方によい結果をもたらしたということがあります。
 それで、アメリカ人はすぐに評価というか統計を取るんですけれども、これだけお金を払ったからどれだけ戻ってきたか、様々な統計がいろいろな企業メリットがあったということを証明したということがありまして、多くの企業が取り組み始め、今では独立した部署やその専任者を置く企業も増えています。そして、これは企業だけではなくて、政府機関や多くの大学にもワーク・ライフ・オフィスなどを設置して、職員や教授そして学生が仕事と学業、私生活、家庭のバランスが保てるようにサポートしています。例えば、私の行っていた大学や大学院は、私が行っていた時代はなかったのに、今では立派なクオリティー・オブ・ワーク・ライフというオフィスがあったり、ペンシルバニア大学ですけど、スタンフォード大学ではワーク・ライフ・オフィスがあります。ハーバードではオフィス・オブ・ワーク・アンド・ファミリーで、バークレーではセンター・フォー・ワーキング・ファミリー、というように大学がかなり、ほとんどの大学が積極的に取り入れているということがありますね。
 背景としては、労働人口構成の変化、つまり働く母親が増えてきて、そして片親も増加してきた、ビジネス環境もITなどによって変わっていった、価値観も多様化したという、世界に共通する変化に対して米国側がいろいろと対応していったんですけれども、この労働人口構成の変化というところは、九七年のナショナル・スタディー・オブ・ザ・チェンジング・ワークフォースによりますと、七八%の既婚労働者は共働き夫婦。フルタイムとして働いている共働き夫婦のうち七五%の配偶者はフルタイム、つまりフルタイム同士で働いている共働き家族が多いということですね。一九%は片親で、片親の二七%は父子家庭である。
 別の九八年の国勢調査では、一歳未満の子供を持つ女性のうち仕事を持つ人の割合は五九%。大卒の方が多いです、大卒の方が一歳未満で戻ってくるケースが多い、これは六八%ですね。じゃ、一歳以上はというと、七三%が仕事を持ち、五二%がフルタイム。子供のいる共働き夫婦も五一%になったというところで、多くの共働き家庭は正社員同士が多いということがあります。
 ところで、よく日本ではワーキングマザーが増えたから少子化が進んだとかって言いますけれども、米国ではこのように正社員同士の共働き家庭率がすごく高いですね。産休というのも産前産後で十二週間なんですね。日本では、育休が一年あるとか有給だったりしますよね。アメリカで守られているのは十二週間の無給です。それにもかかわらず出生率が二・一です。
 そして、子供のいない人たちは何をしているか。養子縁組を取っているんですね。だから、働きながら、それもフルタイム同士で二・一の出生率を維持して、そして子供のいない人は働きながらでも欲しいというので養子縁組まで取っているということです。で、それプラス、国内では需要が満たせないので、海外からのアダプションがとても増えていて、ロシア、中国、韓国という国からも赤ちゃんが、輸入というか、国に入ってきているわけですね。
 そして、留学生も多い、そして移民も常にあると。ところが、米国の企業そして米国の政府は、それでも将来に必要な若い労働力が足りないといって、今から一生懸命取り組んでいるということがあります。
 あと、ちょっとどうしてもこのワーク・ライフに関するところの労働時間に必ずかかわってくるんですけれども、先日、一月三十日の新聞を見ていましたら、厚生労働省の結果が出ていまして、毎日家族一緒に夕食を取れる家庭というのが全体の三一%だったんですね。
 私は、企業の方といろいろ話したりすると、三一%は多過ぎる、サラリーマン家庭だと多分一〇%ぐらいじゃないかって、本当に私もそう思うんですね。多分、農業とか自営業の方を含めた三〇%だと思いますけれども。
 じゃ、海外はどうかといいますと、アメリカの場合、九七年に十二歳から十六歳の子供たちを対象にした調査では、七二%の子供たちが五日以上家族とともに食事をしているという結果が出ていました。そして、この九七年というのはアメリカの経済が良かったときなんですね。だから、企業業績を上げながら、家族一緒に御飯を保てる時間が持てていたということです。日本では、普通の家庭では父親抜きの食事が当たり前だというちょっと特殊な状態になっているということがあります。ただ、じゃ経済はいいか、企業業績出ているか。出ていないところが大きな問題になっています。
 次の進展の方で、二ページ目ですけれども、じゃどのように進んでいったかといいますと、八〇年代は、八〇年代、特に後半の方なんですけれども、急増するやっぱり母親、ワーキングマザーの社会進出を助けるために企業がいろいろ取り組んだんですけれども、そのときはやっぱり仕事と家庭の両立だったので、ワーク・ファミリーと呼ばれていました。ところが、独身や子供のいない社員たちも企業の中で働きながら仕事と私生活のバランスが取れるようにしてほしいという要求が出てきまして、企業側がそのニーズにこたえて様々な取組を提供して、呼び方もワーク・ライフ・バランスというふうに変化しました。
 じゃ、企業、初めから言っていますけれども、これによって、じゃ企業はどういうベネフィットがあるのというところで、まず一番大きいのは、知的生産性の時代に一番必要なのは優秀な人材、頭数をそろえればいいというわけではないですよね。いろいろな統計によりますと、できる人ほど仕事も家庭も私生活も欲しがっている、充実させたいと言っているわけですね。というところで、いいワーク・ライフ・プログラムにいろいろ取り組んでいると、優秀な人材が喜んで働きに来る、そして来たら辞めないんですよ。そういう人たちはすごくいいコントリビューションを会社にもたらしてくれて、会社の業績が潤んでいくということがあります。
 二番目は、もう生産性の向上、社員の満足度とモラリティーアップ、コミットメント向上、カスタマーサービス向上、業績向上、これらについての調査結果というのも幾つか資料の中に入っておりますし、著書の中でも詳しく書いておりますので、御興味ある方はそちらの方で、ちょっと時間がないので省かせていただきます。
 調査結果としましては、九六年ですけれども、ウィリアム・マーサーの八百社対象の調査結果では、今後社員のワーク・ライフに対処していかないと競争には生き残れないと同意しているところが八六%ですね。ワーク・ライフの取組は優秀な人材の採用に有利と七六%が同意しています。
 今でも幾ら不況だといえ、実は解雇と同時に積極的な採用活動をしています。先ほどお伝えしましたように、高度情報化社会、知的生産性のこの時代では、一番大切なことはできる優秀な人材の確保とその人たちの能力をどう発揮させるかということですね。米国企業はそれを強く認識しています。ということで、もう男だとか女だとか、子供がいるいないとか、年齢、色などで差別している余裕はどんな企業にもないんだよ、八〇年代は人的理由、人道的な理由で人種差別をやめようとか言っていたんですけれども、今は企業の生き残りを懸けて差別をやめようというようなふうに出ています。
 そして、あと、企業が払えるサラリー、お給料というのはもう上限がありますよね。どんなに優秀な人でもある程度以上は払えない、であれば、どのようにしたらお金以外で社員の心をつかんでコミットメントを上げて、そして実際に能力を発揮してもらえるかというところがイシューで、その答えとしてワーク・ライフになったということです。
 じゃ、個人のメリットとしては、一番大きいのは仕事をしているときには仕事に集中できるということですね。生産性の高い働きができて勉強がやりやすくなる。これだけ変化の激しい時代、常に勉強していないと駄目ですね。その勉強時間が取りやすくなるということもありますし、健全なバランスを助けてストレスが減るなどがあります。
 取組につきましては、やっぱりワーク・ライフ・バランスの目玉商品はフレックスワーク、つまり柔軟な働き方なんですね。これについてはもう少し後でお話しさせていただきますけれども、ほかの取組としましても、社外学習への授業料援助や無給、有給の休暇制度、EAPという、何というのか、企業内のカウンセリング的なサービスですね。ヘルスウェルネス、つまりフィットネスセンターとか栄養のバランスを取ったコーチを受けるとか、体の健康面の方ですね。それから、転勤サポート、そしてワーク・ファミリーからきたので保育、介護サポートなどもあります。
 ここで、ちょっと一つ日本でも適用できるなと思うところで重要だと思う取組、社外学習の授業料援助についてちょっとお話しさせていただきたいんですけれども、一つとしては、例えば普通の企業ですと多分二千ドルぐらいですね。年間二千ドルぐらいの授業料援助をするということがあって、本当にいい企業だと何かもう五千ドルとかというのを私、見たことがあってちょっとびっくりしたんですけれども、大体二千から三千ドルぐらいの授業料援助があるんですね。で、日本も授業料援助をしているところがあると。やっぱり優良企業というのは結構授業料援助をやっているんですよ。
 それにもかかわらず、新聞に載っていたのは、二〇〇〇年度に全国のサラリーマンの六割強は自己啓発に取り組まなかったという調査結果が厚生労働省から発表されました。そして、自己啓発の問題点については、忙しくて自己啓発の余裕がないがトップで、次に費用が掛かる、三番目としては休暇取得や早退など会社の都合でできないというところで、日本のサラリーマンは勉強がしたいのにもかかわらずできない状態、この長時間労働によってということがありますよね。
 アメリカの場合、何をしているかというと、お金は二千ドル、三千ドルという授業料援助がありますけれども、勉強時間を確保できるようにフレックスワーク、つまりテレワークにしてもフレックスタイムにしても短縮労働週にしても、労働時間を下げずに労働、場所や時間を、その時間帯をシフトするだけでその勉強時間が取れるようにしているということと、あとは無給でも勉強のためやほかの理由にしても半年間とか休暇ができる、勉強の、ということがあります。だから、勉強するのにはお金も必要だけれども、それ以上に必要なのは時間ですよね。日本の場合は、日本の企業の場合はお金は上げるけれども時間は上げない。米国企業はお金も上げて時間も上げるというところがすごく大きいかなと。
 ところが、社員が勉強できないとだれが困るかというと、社員も困るけれども企業もこの変化の時代に対応できない。スキルの持っていない社員を抱えて、企業にもコストとなっているわけですね。特に、社員の場合は、やっぱり米国の場合は、熟年失業者の場合、これちょっと一年前の調査結果なんですけれども、二・七か月掛かって次の転職先が見付かって、そして八六%は減収とならなかった。つまり、常に変化に対応できるようなスキルアップをしているので、首になっても二・七か月ぐらいで現状維持又はそれアップの仕事を見付けられているということですね。
 だから、その一つ、今じゃすごい大失業じゃないかということがありますよね。今みんな失業して困っている。だから、多くの人はみんな大学に戻って勉強しています。ちょっと怖い。だから、景気が良くなったら大学で勉強した人たちがジョブマーケットに出てくるわけですから、そして変化に対応できるような能力を持つ。今一生懸命付けているわけですね。そういう面で、だんだん、すごく私怖いなと思っています。
 次は、調査結果としましては、フレックスワークについてですけれども、三ページ、九六年、またウィリアム・マーサー、同じ調査結果だったんですけれども、七百万人の社員を対象にした調査では、七五%の社員がフレックスワークが仕事と私生活のバランスを取るために一番重要な要素だと答えたというのがありまして、フルタイム正社員の中ではフレックスタイムとかテレワークとか裁量労働制があって、パートタイムでは時短勤務とかジョブシェアリングとかあります。
 アメリカの場合はワークシェアリングは余り聞かないですね。余りワークシェアリングというのは取り入れられていないような感じを受けます。
 次の表のベスト百社というのは、フォーチュンが毎年発表している優良企業のベスト百社、働きやすい会社ベスト百社で、こういうベスト百社の方が企業業績も平均の企業よりもいいという結果も出していて、そういう優良企業、業績を上げている企業の方がフレックスワークをかなり導入しているというところが出ています。
 先ほどお伝えしたように、フレックスタイムも日本ではもうみんなやめている企業が多いんですね。何でみんな海外ではこれだけうまくいっているフレックスタイムが、例えばフレックスタイムが日本ではうまくいかないかというと、やはり社員の権利として導入したところであって、業績に支障があるとか仕事に支障がある場合は使っちゃいけない、使えないんですよね。
 そのためには、やっぱりフレックスワークの目的をきちんと明確に提示したものや、マネジャーや社員の役割、効果的な運用方法などを書いたガイドブックや、そしてマネジャー向けや社員向けにもトレーニングを一生懸命行った上で導入をしているというところがあるので、ただ単にだれでも使っていいよというような制度だと、やはり企業にとってもうまくいっていないというところがあります。
 あと、トップマネジメントがフレックスタイムとかテレワークとか嫌いだと社員も使えませんし、やっぱりそれをサポートする企業文化というのが必要になってきます。済みません、ちょっと時間がないので早口になっていますけれども。
 ただ、いろいろなこれらの取組をやったんですけれども、九〇年代の中期になりますと、やっぱりリストラがすごく進歩したときに一人頭の仕事量と労働時間が増加したんですね。それで、ストレスとバーンアウトが社会問題になったというところで、プログラムや制度ではもう限界が来たというところで、じゃ何をしたかというと、既存の仕事のやり方にメスを入れたというところがあります。
 これは、フォード財団がバックアップをして三年間掛かって企業の中で行ったプログラムで出てきたんですけれども、やっぱりこの長時間労働でどうしようというところですよね、みんなストレス抱えてバランスも取れないしというところで、日本でも長時間労働が問題になっていますけれども、日本の場合は聞いていると、何かただ短くしろとか、もう労働時間を短くしろということだけを何か言われているような気がするんですね。
 ただ、仕事の量もやり方も変えずに仕事時間を短くすると、これはやっぱり企業が損をするというウイン・ルーズの関係になってしまう。じゃ、ここのワーク・ライフのフォード財団の場合は何をしたかというと、どのように仕事のやり方を変えれば期待される結果が達成でき、同時に私生活を充実させる時間が持てるのか。
 例えば日本の場合、今まで十四時間掛かっていた仕事がありますよね。どのように仕事のやり方を変えれば十四時間で掛かっていた仕事を十時間でできるのかというところを考えて、今度四時間分浮くわけですね。ところが、日本もそういうのやったじゃないですか、仕事の生産性高めようと。日本が何やったかというと、四時間分の時間が浮いたら、また四時間分の仕事が来るわけですよ。だから、結局十四時間働かなきゃいけないような状況になっている。となると、やっぱり社員のモチベーションというのがぐっと下がるわけですね。
 生産性高く働こうというところで、ワーク・ライフのこのアプローチというのは、四時間セーブしたんだったら少なくとも半分、部分的には社員に返そうよ、社員も恩恵受けるところがあるんだよ、勉強できるよ、ジムに行けるよ、そういう時間が持てるのよというふうにすれば社員も得るところがあるということでモチベーションをぐっと上げました。というところで、単なる例えばフレックスワークや様々な授業料援助とか休暇制度だけではなくて、特に今やっぱりかなり多くの取組、特にプログラムや制度面ではかなり充実しているので、これからはよりもっと柔軟性の働き方も高めるんですけれども、仕事のやり方の見直しというところに米国の方では力を入れていますというところで、ざっとワーク・ライフの簡単な御説明です。
#15
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑はおおむね午後四時三十分までをめどとさせていただきます。
 なお、時間が限られておりますので、発言は一回当たり三分程度でおまとめいただくようお願いいたします。また、各委員におかれましては、質疑時間が質疑及び答弁を含め全体で十五分以内となるよう、質疑は簡潔にお願いをいたします。追加質問がある場合には、この十五分の範囲内で行っていただくようお願いいたします。質疑の御希望は挙手をもってお知らせいただくこととし、質疑は会長の指名を待って行われますようお願いいたします。
 それでは、質疑を希望される方は挙手をお願いいたします。
#16
○松山政司君 自由民主党の松山政司でございます。よろしくお願いいたします。
 二点ほどお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず一点は前田先生の方に御質問させていただきたいと思うんですが、オランダに精通されているということで、私も福岡でございまして、九州は随分オランダを参考にいろんな町づくりをしたり、面積や経済力や同じということで、随分私も関心を持っておるわけでありますが、そのオランダについて、先ほどの家庭生活と仕事の調和というテーマですが、これについて御質問させてもらいたいと思います。
 今我が国では青少年の犯罪というものが非常に急増していまして社会問題化になっておりますけれども、青少年の健全育成上、家庭における父親の存在と、先ほどパクさんからもございましたけれども、非常にクローズアップされていると思うんですけれども、この長時間労働による父親が子供と触れ合う時間が極めて少なくなっているという中で、私も今東京単身生活をやっておりまして、小学生を持つ親でもございますが、極めて少ない中で大変努力をしているわけでありますが。
 このオランダの場合の、パートタイム労働の増加に伴って父親の労働時間が短くなったと。父親と子供が触れ合う時間が実際にどれだけ増えたのか、またそのことによって子供の育成にとってどういう好影響が認められるようなことがあったかということをオランダで生活された前田先生にお伺いしたいと思います。
#17
○参考人(前田信彦君) オランダの家庭生活における父親の存在という御質問でございますが、実はオランダはヨーロッパの中でも非常に保守的な国でございます。そのことは先生も御存じかというふうに思いますが、日本と同じように、男は外で女は家庭でという、いわゆる覊絆といいますでしょうか、意識が非常に強い国だったわけです。
 ところが、女性が急速に、女性解放運動とかあるいは高学歴化という要因が様々重なりまして、女性が労働市場に出るようになった。そのときに、一体労働市場がどういうふうにそれを受け止めるかという問題のときに、多くの女性は実は、アメリカ型とは違いましてフルタイムではなくてパートタイムで働きたいという人が多かったのでございます。それで国側としては、じゃ、パートタイムで働くのであれば、その労働条件を改善して、より女性の労働市場への進出を促進しましょうということで提言したわけです。だから、元をただしますと、かなり日本と同じように、男性の側も元々、家事時間、育児時間が少ないということがあると思います。これは、例えばスウェーデンとかデンマークに比べればかなり少ないわけです。
 ところが、この十年、十五、六年の間に実は、先ほど言いましたような政府のイニシアチブもありまして、男性の家事時間が増えてきているのでございますが、これはここ十年の間です。
 例えば、先ほど言いましたように、妻もパートタイムで夫も労働時間が短い働き方をしている妻の一週当たりの家事時間は、妻の方は子供がある場合は大体四十時間ぐらい、四十時間前後ですね、家事時間をするんですが、夫は大体それの三分の一ぐらいです。だから、まだまだ夫の家事参加、育児参加というのは少ないというのが現状です。
 ところが、これは、この統計は全労働者を取っていますので、若い労働者も高齢者も入っています。若い人だけを見ると、かなり育児時間、家事時間は増えているというデータがあります。オランダは元々保守的な国にもかかわらず、そういう政策が浸透したことによって男性も育児に積極的にかかわるようになったというふうに言われています。これは具体的な数字は出ていないんですが、私がオランダで幾つかのケーススタディー、いろんな御家庭に行ってちょっとお話を伺った際も、比較的都市部に住んでいる高学歴、こちらでいいますと大学、向こうでは高等専門学校以上のホワイトカラーの労働者にそういう積極的に育児参加をする男性が増えているということです。
 社会現象からしますと、そういうところで増えていきますと、次第に地方、地方といいますか農村部ですね、あるいはブルーカラーといった生活スタイル、仕事の領域の方にも次第に浸透していくのではないかというのが大方の予測でございます。
 ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんが。
#18
○松山政司君 ありがとうございました。
 それでは、お三方の先生方にそれぞれお聞きをさせていただきたいというふうに思いますが、私も中小企業の出身者でもございまして、現状、自分が勤めていたころの労働時間でありますとか、あるいは男女の働き方とかというものももうほとんど差がなくなってきましたし、特に女性においては仕事と家庭という、両立が難しいという面はひしひしと私も企業にいるころは感じておりましたけれども、また新しい価値観といいますか、これだけ経済が成長してきただけに、多様な価値観の中でいろいろ若い人の考え方も多様だということも実感をしております。
 そんな中で、確かに労働形態の変革が求められる時代だなということは本当に実感をしておりますけれども、とはいっても、日本の企業というか日本の中には、やっぱり長い歴史と伝統の中で、日本の地域社会ですね、日本ならではの心の豊かさを感じるような家族のぬくもりや親子のきずなや、そんなものがあると思うんですけれども、そんな日本ならではの心の豊かさというのをいま一度感じる、取り戻す、あるいは守っていくような、そういったことを大前提にこの労働形態の変革というのをやっていくことが大事かなと、こう今思っているんですが。
 今日、それぞれ先生方のお話をお聞きして、このワーク・ライフ・バランスの理論というのは今後の日本における働き方を考える上で非常に参考になるというふうに思うわけでありますが、いろんな障害もあるかと思いますけれども、今この導入が企業側においても活発化していないということについても障害があると思うんですけれども、今後、国としての施策といいますか、どういったことをやるべきなのか、企業としてはどういう取組を積極的にやっていくべきであるのか。その辺の国と企業の役割といいますか、国としては規制緩和でありますとか経済的支援とかいろいろあると思うんですけれども、先ほど労働基準法の縛りの問題も出ましたけれども、その辺の国と企業の具体的な取組、役割みたいなものが、参考までに教えていただければ有り難いと思います。
#19
○参考人(西嶋美那子君) 企業として考えるときに、私はやはり企業側とそれから社員、働く側、両方問題があると思っているんですけれども、やっぱり個の確立、社員側は個の確立というのが非常に重要な問題だろうと思っています。それから、企業側から見ると、今度はその個を尊重していろんな仕組みを作っていくということが必要なんだろうと。
 先ほど先生が、日本の特有な社会がある、家族体系があるとおっしゃっていらっしゃいましたけれども、アジアのいろんな国を見ていると、やはり同じように家族というものをすごく大切にされていますし、いい環境を保ちながら、でもその個というものをやっぱりきちんと確立した形でお互いが役割分担するところを役割分担していっているという仕組みができてきているように思うんですね。
 その中で、ちょっと、日本の家庭の問題や何かも含めて、それぞれの役割分担ということがうまく動いていないんじゃないかなというのは、既成概念にとらわれて、例えば今までのように男は外、女は中というような、それからそんなことをすべきじゃないとか、既成概念にどうもとらわれるのが日本の悪いところじゃないかなと思っていますので、それを取り払って、個というものを見て、どういう仕組みがいいかということを作っていく必要性があるというふうに感じています。
#20
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) 私の方は、個人も確かに、ワーク・ライフは、例えば米国の進め方を見ていると、企業が与えたんじゃなくて社員がかち取っていったというところがすごくあるんですね。だから、これだけやったんだから、だからこれだけやってよねという、何かお互いのウィン・ウィン関係を目指していて、ところが日本の場合を見ていると、何かどちらかというと守ってというような社員側のあれも強いのかなというふうに感じていますよね。
 だから、まず自分がこれだけやるためにはこういうような環境が必要だ、こういうような取組が必要だ、それをもらったらそれに対してやっぱりベストな結果を出すというような、そういうようなことを計る評価制度ということも必要だと思いますし、やっぱり時間に対する意識というのが、日本の人は毎日終わった時間がその日の終わった時間というのがあるじゃないですか。海外の場合は、何時までに家に帰るというおしりがあるわけですね。だから、時間が有限だということをもっと認識するようなことを推進するということと、やっぱり生産性の高い働き方をちゃんと評価する、時間の長さではなくてやっぱりアウトプットで評価するというところをきちんとやっていって、あとはやっぱり今やっている仕事をもう実際に見直さなきゃいけないと。もうこれだけ変化の激しい時代、去年のやり方だって合っていないかもしれないというところで、ちょっと無駄を省けば私、間違いなく皆さん二時間ぐらいは家に早く帰れると思います。
 ですから、そういうようなもう本当に仕事のやり方、今のやり方を見直して、柔軟な働き方、フレックスワークも正しく導入して推進していって、評価制度も例えばチームコントリビューションも含めた評価制度とか、あと時間に対する意識を向上するというようなことを企業側では提案したいと思っています。
 国側は、やっぱり日本男性の働き方というのが世界から見て特殊だと思うんですね。だから、労働時間、男性の労働時間を短くする、つまり今の十二時間でも十五時間でも十時間でもいいですけれども、それをもうちょっと八時間に近くするという働き方は、それはグローバリゼーションなんだということをもっとプロモーションしていきたい。だから私は、ワーク・ライフ・バランスは男性が働きやすくなるための取組だと日本では思っています。だから、男性の働き方のグローバル化、グローバリゼーション化というのを促進するような活動をやっていただきたい。今はちょっと、私、アジアでも仕事しましたし、アメリカでも仕事しましたけれども、異常ですね。
#21
○参考人(前田信彦君) 私は社会学者ですのでなるべく政策には中立でありたいと思うんですが、あえて私の観点を述べますと、やはり時間ということです。
 先ほど私もちょっと報告しましたように、お金と同時に時間というのがこれからすごい大事な私たちの、何というんでしょう、経済学的に言えば駆け引きの一つの手段になってくるような気がしています。というのは、ある程度、日本というのは貧しい社会から高度成長を経て経済大国になったわけですが、果たして私たちは豊かになったかという問いがいつも問われる。そのときに出てくるのはやっぱり時間なんですね。どうやら私たちが最近気付き始めているのは、賃金ももちろん食べていくのに大事なんですけれども、時間が大事だということです。
 私は、ちょっといったん社会学者の立場を離れて素人として新聞を読むと、片方で失業率がどんどん上がっているわけですね。五%、間もなくもしかすると六%になるかもしれない、そういう状況で失業が増えているのに、つまり働かない人が増えているのに労働者の労働時間は増えているんですよね。という非常に不思議な社会にいるんだなという気がするわけです。失業者が増えているのに労働時間が増えている、これはどうしてなのかなと。
 単純に考えれば、働く時間が労働者に偏り過ぎているんだろうというふうに思われるわけです。だから、ワークシェアリングという例えば発想が出てくるのは、恐らく時間をもう少し適正に、適正にと言うと変ですけれども、失業者に例えば労働時間を、正社員の長い労働時間を失業者に分け与えれば社会としては労働時間の配分は平等になるだろうというふうに考えるわけですね。ワークシェアリングというのは一つの方法で、必ずしもそれが日本に当てはまるかどうかは私も判断できないんですが、やはり時間ということが政策の一つのポイントになってくると思います。
 先ほど言ったEUというか、ヨーロッパの幾つかの国ではタイムクレジット制度というものが結構出てきているようです。EUもやはり時間は非常に大切にする国ですので、例えば仕事を始めるに当たってお金ではなくて時間をもらうわけですね。あなたは何時間上げます、自由な使える時間をこの何年かの間にこのぐらい与えますという、その人が仕事のキャリアを積んでいく途中で、例えば育児をするとか、出産で育児をするとか、親を介護するとか、先ほど言ったように大学に行って勉強し直すかというときにタイムクレジットから時間を引き出すわけですね。お金と同じように、要するに時間の銀行みたいなものですね。そこから時間を引き出して自分のために使っていくというシステムが幾つかの国で発想が出てきているということですね。
 これはどういうことを意味するかというと、どうやら私たちの社会は、若いときに一生懸命勉強して、中年になったら会社に出てひたすら働いて、それで六十歳、六十五歳になったら一気に労働時間が減って引退するという、そういう非常に制度化されたライフスタイルを歩んでいるわけですね。ヨーロッパのそのタイムクレジットが意味することは、どうやらそういう若いときに勉強して中年で働いて高齢で引退するという図式が崩れてきているんではないかということです。だから、例えば中年になって勉強したい人もいるし、高齢になってもまだまだ働きたい人もいてもいいわけですね。逆に、若年のときにもう少し自由に勉強したいという人、それはそれでいいというわけです。だから、典型的なライフコースが少しずつ崩れてきているので、社会が必要としているのは正にそういう時間のライフコースにおける再配分の政策だというふうに私は思うわけです。
 というふうな意味で、時間という点が非常に大事だというふうに、私は政策上そういうふうに考えております。
#22
○松山政司君 ありがとうございました。
#23
○円より子君 お三方、ありがとうございました。
 私は三十年ほど前に北欧諸国を取材に行きました。そのテーマは正にワーク・ライフ・バランスだったんですが、ある企業が、例えば夫と妻が共働きで、そして子供が保育園に行くのに二人がフレックスタイムを取っておりまして、一週間はお父さんが子供を保育園にゆっくり連れていって十時から働く、その代わりお母さんは早くから働くけれども早目に終わって子供を保育園に迎えに行く。そんな形で、夕飯も一緒にするとか食器洗いも一緒にする、そういうので、三十年ぐらい前に、ああいいな、是非日本も長時間労働をやめて夫も妻も子育てや個人の時間を楽しめるようにならないかなと、ずっとそういう形で、年齢差別を禁止したいとかいろいろやってきたんですが、三十年たって、これで進んだのか、遅々として進んでいないのかなという思いをしながら今日お話を聞いていたんですが。
 一つは、例えば前田先生にお聞きしたいんですが、オランダモデルの話も伺いましたし、オランダのことは大分前から本も読ませていただいているんですが、ちょっと分からないことは、例えばフルタイマーが百時間で百の賃金になった、パートタイマーが八十時間で百分の八十、これはとても理想的だと思うんですが、日本の場合、四十歳にもなると教師の仕事、職、資格を持っていても年齢制限で試験すら受けられない。保母さんなんて二十七歳で受けられないとか、ずっとその年齢、年を取ったから仕事ができないというよりも、早いうちからそういうものがあるわけですね。
 この一つに終身雇用制とか、それから一つは年金の問題、税制の問題、こういった問題があって、またもう一つ地域の問題ですね。江戸時代でしたら、裁判所に勤める、今でいうと裁判所、昔だったら奉行所ですが、そこに勤めるお父さんが子供を連れて奉行所で仕事ができるような、そういうことが江戸時代にはあったわけですが、今のような日本だと職場と住居が遠過ぎますからそういうこともできないというようなことを考えると、オランダがなぜこういうふうにうまくオランダモデルができたのか。
 その辺のちょっと、日本と元々の制度が違うのか、それとも、同じような制度はあるけれども何か特別こういうことができた理由があるのか、ちょっとそれを是非、私も日本で何とか少しずつ変えていきたいという思いがありますので、まずそれをお聞きしたいと思います。
#24
○参考人(前田信彦君) オランダモデルがなぜ成功したか。
 オランダモデルといいましても、先ほど言いましたように二つございます。一つは、いわゆる失業率を下げるという経済的な政策、それからもう一つが、これは私の関心である、仕事と家庭というか、ワーク・ライフ・バランスをある程度成功させているということですね。むしろ後者の方、御質問は後者の方だというふうに私は思うんですが、幾つか理由があるというふうに言われています。一つは、オランダの場合は、パートタイムを選ぶということが企業側からの提供ではないということです。つまり、労働者側からパートタイムで働きたいという意見が非常に強いということです。
 例えば、企業がコストを削減するためにパート労働、正社員を解雇なり出向なりさせてパートタイムに切り替えるというのが一つ常識的に考える方法なんですが、オランダの出発点は、企業がある程度痛みを伴ってパートタイムの条件を上げて、社会全体でパートタイム労働の条件、均等待遇を進めていきましょうというコンセンサスがあったということですね。
 これは、パートタイム、労働者の側から非常に強い意見があって、組合が、労働組合、FNVというんですが、組合がアンケートを取りまして、どういう働き方をしたいか、その中にパートタイム労働を法的に保障していく、つまり均等待遇、パートタイムでもいいから均等待遇を図っていくべきかどうかという質問をしたときに、五一%の人が賛成、一九%が反対で、圧倒的にパートタイムに対しては非常に肯定的だったんですね。これは政策を進める上で非常に有利だったんではないかと思います。組合の側の積極的なバックアップがあったということです。
 それからもう一つは、幾つかありますが、労使の関係が非常に安定しているということです。
 一九八一年に労使交渉がありまして、このときに賃金を抑制するという方針を政府が提案をしました。これはさすがに組合側も抵抗があったようですが、オランダは労使で決めた以上これはもうやっていくしかないという、いわゆるコンセンサスを非常に大事にする国ですので、賃金の抑制をのんだんですね、いわゆる組合側が。その代わり、労働時間の短い労働者あるいはそのほかの多様な形態で働く労働者の労働条件を上げる、そして失業率を下げるということ、そのトレードオフがあったというふうに言われています。
 だから、こういう意味で非常に労使のコンセンサスがまずあって、そこで政策が展開されたというのがオランダモデルが成功したもう一つの大きな理由だというふうに言われております。
#25
○円より子君 労働組合の中の執行部に女性がオランダが多いのかなという気もしたんですけれども。
 個人の意識は、それこそ三十年ぐらい前から、特に女性たちの意識は、長時間労働をやめて子育ても個人の生活もお互い楽しみ合いましょうよと、何とかならないかなと、先ほども申しましたように変わってきたと思うんですが、その労使交渉までとても行くような状況では日本は今でもない。それから、制度も全く専業主婦を優遇しているような状況が続いてきたと。
 それから、パートタイマーという言葉が全くオランダと日本では違うなという感じも一つあるんですが、それでもオランダも今まではパートタイムというのは賃金も低いと。日本では、フルパートと言われまして、時間は正社員並みに働いているのに待遇、賃金が低いということですから、なかなか自ら選ぶと、主婦の女性にはパートを選ぶ人も多いですけれども、ちょっと意味が違うかなという気がしたんですが。
 それはともかく、今のようなデフレ不況下ですと、例えば十人いた会社が七人に社員をして、その七人が減俸になった上に今まで以上に働いているというのが現状なんですね。こういう中で、オランダモデルはとても理想的なんですが、やっていけるのかなというところもあって、常に景気の動向に左右されながらなかなか理想どおりに進んでいかないというのが今の現状だと思いますが、これを打破するにはどういうことが考えられますでしょうか。
#26
○参考人(前田信彦君) なかなか難しい。オランダモデルが成功してなぜ日本でできないかというのは、それはどの社会科学者もみんな悩んでいる。なぜかというのに答えを見いだせないからうまくいかないんだというふうに私は思うわけですが。
 一つは、オランダの場合は恐らく、これはもう少し詳しく調べてみなきゃいけないんですが、政府が企業の社会保障負担費を減らした措置を取ったのではないかというふうに私は考えています。それからもう一つが、労働者に減税措置を行ったのではないかと思います。つまり、例えば労働時間を短くするということはそれだけ賃金が低くなるわけですから、減税措置は当然労働者にとってはメリットがあるわけですね。インセンティブがあるわけです。
 企業が、例えば短時間労働者というか、いわゆる従来型のパートを正社員の短時間労働者という非常に好待遇というんですか均等待遇を進めていくと、ある程度コストが掛かるはずなんですね。当然日本の企業ではそれができないんだと思うんですが、そういう短時間勤務の正社員を増やした場合に、オランダの政府は恐らく社会保障負担費を減らすような方向で政策を取ったのではないかというふうに私はちょっと仮説的に考えているんです。ただ、これはまだ研究者の立場上なかなか実証ということで言わなきゃいけないので私はまだ仮説としてしか考えていないんですが、恐らくそういう措置があるだろうというふうに思います。
 それからもう一つは、ある労働者の労働時間を短くしたというよりも、オランダの場合は、そうではなくて、女性が働きたいといって新たに雇用される労働者、女性労働者が中心なわけです。その人の短時間労働者を認めるということです。だから、元々あった正社員の労働時間をいきなり百を八十に減らして、七十に減らすということではなくて、新しく新規参入した労働者がパートタイムで働きたいといったときに、その人に従来型のパートではなくてちゃんと均等待遇である短時間正社員という地位を与えるということです。そういう発想なわけですね。だから、トータルで見ると労働力人口が増えているわけです。ところが、労働時間はそんなに増えない。だから、ワークシェアリングをしているというふうに見れるわけですけれども、そうではなくて、私が思うのは、新しい新規参入者に対してのそういう短時間正社員という形を提供したということですね。こうすることによって、ある程度社会全体が労働時間の適当な配分を行ったという、いわゆる結果として出てくるんじゃないかと思います。
 それからもう一つは世帯の方ですが、世帯としては、例えば一家のブレッドウイナーが、夫が短時間労働者になってしまって奥さんが働いていなければそれは非常に家計的に困るわけですが、二人とも、ダブルインカムだけれども、足して二にならないけれども、足して一・五ぐらいになるんだと、これだったらそこそこやっていけるというのが恐らく世帯の中で合意があるんですね。これが正にオランダのワークスタイルなわけです。これは正に価値観にあるわけですが、その一・五の稼ぎで十分な生活を受ける。不満だと思う人もいるかもしれないけれどもオランダ人はそういうのを選択しなかったんです。オランダ人は二でなくて一・五でいいというのを選択したということです。そういうことなんだというふうに思います。
#27
○円より子君 ありがとうございます。
 西嶋参考人にお聞きしたいんですが、ダイバーシティーの考え方、大変面白いと思うんですが、これをまず日本語で言うとどういうふうに言えるかという。いつもリプロダクティブヘルス・ライツなんかもなかなかいい日本語にできないんですが。
 それともう一つ、外資系の会社というのは、今までいろんなところを結構視察で行かせていただいているんですが、大変女性が働きやすい職場ではないかというふうに思うんですが、今のようなオランダモデルとかそういった形で、仕事と自分の生活、子育てもすべて含めて男性も女性も満足のいくような形で働いていくというのを、日本の会社、企業を見ていらして、どこが問題で、どうすればうまくそれを変えていけるかというのがもしあれば、教えてください。
#28
○参考人(西嶋美那子君) ダイバーシティーの日本語というのはないんですね。これを、やっぱり多様性ということなんですけれども、多様性を認める社会というとまたちょっと違うものですから、それを戦略的に使っていくというところまで含めてダイバーシティーと言っているものですから、日本語に置き換えるのはありません。
 ただ、今日経連の若い人たち、いろんな企業の若い人たち、人事の人たちが集まってやったときにやっぱり同じ問題があったんですが、タイトルとして、彼ら、原点回帰という言葉を使ったんです。私、これなかなか的を射たと思ったのは、実際にこの問題をずっと追求していくと当たり前のことなんですね。すごく自然のことなんですね。でも、それが今までいろんな理由でそうじゃない枠にはめてきた。だから、原点回帰だよねと。これは、若い人事の担当者が出したというのですごくうれしかったことなんです。済みません。だから、日本語でいう言葉ではない。
 それから、外資系の企業で働きやすかったというのは、でも、反面非常に厳しいところがあるという、やはり自由度とそれから成果を求められる、両方付いていますから、両方を、そういう働き方をしたいという人たちにはすごく働きやすいいい会社というふうに思っていますけれども、決して甘くはないし、男性と同じだけのもちろん成果も求められるわけですから厳しいところもあったと。
 日本の企業が今までどうだったかというと、そういう意味では、女性は取りあえずちょっとこっち側で働いていてくれればいいのというのが長かったものですから、なかなか女性が戦力になっていなかったわけですね。そうすると、企業にとってみれば、戦力になっている人が辞められると困るんですよ。ところが、戦力になっていない人が辞められてもこれは怖くない。そうすると、例えば家庭と両立の問題でも、今までは家庭と仕事の両立というのは女性の問題であって、戦力になっていない女性たちの問題だったから企業は真剣に考えなかったわけです。
 ところが、やはりこれから、そういう意味では女性が男性と同じように役割を与えられて、なくてはならない存在になっていけば企業としては考えざるを得ないんですね。そういう意味では、日本の企業が女性の能力を本当に活用する気になっていけば、その働きやすさというものは当然追求しないとやっていけない。ですから、本来その能力、性差に関係なく能力的にその能力を生かそう、人材を生かそうという企業はその問題に着目するはずだと私は考えています。
#29
○円より子君 もう一問、短くよろしいですか。
#30
○会長(勝木健司君) 時間が来ていますので。
#31
○円より子君 駄目ですか。はい。じゃ、結構です。
 ありがとうございました。
#32
○山東昭子君 まず、前田参考人にお伺いしたいんですけれども、日本とオランダの人口を比較してみますと、オランダは日本の約八分の一ぐらいという感じがするんですけれども、その労働環境というものを見た場合、これだけ人口が違うのに、いや、それだけ違っても中身は同じだよとおっしゃられるのかどうか。EUのほかの国とも比較してみますと、とにかく人口の少ない国と今日本とがいろんな意味で比較されている状況ですけれども、参考人からごらんになって、これからの日本の中で、他国と比べての就業体系というものがどういうふうな形になっていくのが理想なのかというようなこと、それから、先ほどちょっとお話が出ましたけれども、日本は非常に能力のある若い女性も増えてまいりましたし、それと同時に、私は企業の中でやはりいろんな経験を積んだ四十歳以上の女性の知恵というものが必要になってくるんじゃないかと思うんですけれども、どうも現在の段階ではそうした能力のある豊かな女性の知恵というものが逆になかなか企業で、年齢制限というようなこともあって受け入れられないというようなことが問題になっているわけですけれども、オランダにおいて希望する職業はチョイスできるのかというようなことをお伺いしたいと思います。
#33
○参考人(前田信彦君) オランダの人口が少ないという御指摘がありましたが、確かに先生のおっしゃるとおりで、八分の一。
#34
○山東昭子君 千五百八十六万人。
#35
○参考人(前田信彦君) そうですね、千五百万人強ですね。人口が少ないということは、それだけ国内のコンセンサスが取りやすいということですので、それはやはり日本に比べて圧倒的にアドバンテージが高いというか、コンセンサス社会と言われても当然のことだというふうに思います。
 ただ、私が、オランダモデルそのものを日本に移植するということはまずかなり難しい、相当日本型の、日本の社会、働き方、それから文化、考え方に合わせた形で移植する必要がもちろんあるというふうに思うわけですが、ただ、私がなぜそういうオランダあるいはEUに着目するかというと、バックグラウンドにある福祉国家の考え方が非常に参考になるからだというふうに思うわけです。元々ヨーロッパというのは非常にセーフティーネットがあって、ある意味では優しいわけですね。人に優しい。もちろん競争社会、資本主義ですので、もちろんその市場原理の中で動いていますから競争なんですが、中にはその競争に入れない人もたくさんいるわけですね。そういうときに、やっぱりセーフティーネットが非常にしっかりしているという点なんです。
 これは福祉国家のデザインなんですが、その点でまず参考になるということと、それからもう一つは福祉国家のデザインが最近少しずつ変わってきているという点です。これは先ほど言いましたように、例えば高齢になったから、あなたはもう社会では用がないから引退してくださいと、だから早期引退ですね。それから、例えば障害を持たれているので企業では働けませんとか、あるいは最近はないですけれども、女性だからいけませんとか、先ほど言ったように子育てしているから無理でしょうとか、そういう発想はやめましょうという方向に来ていることですね。これはイギリスなんかはウエルフェア・ツー・ワークと、御存じかと思うんですが、働くための福祉ということです。つまり、弱者と言われてきた人に国が一方的に救済をする。だから、例えば税金で年金生活者に年金を支給するとか、あるいは手当を支給するということももちろんあるんですが、しかし、その人の持っている能力というのがあるはずなんです。その人の持っている能力を最大限に生かしながら何とか社会参加してもらおうと、その人たちが社会参加することを国が支えましょうという発想に少しずつ転換しているんですね。
 これをある学者は雇用親和的な社会保障というふうに言っています。雇用は働くですね、雇用に親和的な、エンプロイメント・フレンドリー・ソシアルセキュリティーというように、雇用親和的な社会保障というふうに、つまり、やはり働くということが一つキーワードになってきていて、それが福祉国家の新しいデザインになってきているんではないかと私も感じているし、多くの研究者も指摘し始めているので、そういう意味では、じゃ翻って日本を考えたときに、日本はオランダに比べて人口が多くてコンセンサスが取れないというのは確かにそうなんですが、元々働く意欲は非常に強いんですね。
 例えば、高齢者の就業意欲というのは物すごく強いんです。例えば何歳まで働きたいかというと、大体六十五歳ぐらいまで働きたいというふうに言います。だから、もう既に働くことを通して社会参加をするということはかなり日本ではEUよりもある意味で進んでいるというふうに考えていいと思うんです。
 ただ、問題なのは、日本の場合、働くというときに多様な働き方は余り認めないんです。例えば極端なことを言えば、さっきのライフコースの話ですけれども、大学を二十二歳で出て、企業に入って、企業の再教育を受けて、企業の人になって一生懸命働いて、六十歳になったら引退する。何かそういうのが典型的にあって、途中で辞めたり、それから再学習をしたり、ボランティアをしたりしながら、人生を豊かにしながら働きたいという人のライフコースというのは、認められてきたところもありますけれども、ヨーロッパほど認められていないというところです。
 だから、私は、そのオランダモデルあるいはEUモデルから感じるのは、働くということを通しての福祉国家を建設するんであれば、多様なライフスタイルに応じた働き方を国が提供した方がいいということです。日本は正にそうすることによってある意味では福祉国家の先端をというか、かなり参考モデルになるようなものを作れるんではないかというようなこともちょっと考えているわけで、そういう意味でちょっとEUのことを例に取り上げた次第でございます。
#36
○山東昭子君 四十歳以上の方の職業が選べるのかどうかということは。
#37
○参考人(前田信彦君) それはオランダ、四十歳以上の方、それはちょっと私、まだ手元にないので正確なことは申し訳ないんですけれども、ただ、例えば大企業は終身雇用である、例えばフィリップスという会社が大きいのがありますけれども、あそこはやっぱり日本と同じように終身雇用でちゃんと働いていますし、すべての人がそんな離転職を繰り返すような社会ではないということです。
 四十歳以上の転職可能性については、ちょっと私、今のところデータがないので申し訳ないんですけれども、また何かの機会にお話しできればと思います。
#38
○山東昭子君 西嶋参考人とパク参考人に伺いたいんですけれども、企業と、いわゆる仕事と家庭の両立というのは個人差でいろいろ環境の違いがあると思うんですね。その際に、いろんな悩み、苦しみといったものを相談するカウンセラーというんでしょうか、アドバイザー、そういうものが、外国においては企業がそういうものを持っているのかというようなこと、あるいは何かしかるべきところに相談に行けば非常に納得するような人がいるのかどうかというようなことを伺いたいんですが。
 それと同時に、日本の場合には非常に、そういうところに行きますと大変ある程度の年齢の女性が多いんですけれども、最近の女性の生き方が多様化してきまして、若い女性なんかが行きますとやっぱり年齢差で何かそういう人たち、中年女性からの説得というんでしょうか、いろんな話を聞いてもちょっとやっぱりかみ合わないというような問題もあると思うんですね。同じぐらいの年代で、同じ考え方を持って、同じ社会の中で生きていこうという意欲を持つようなある程度の若いアドバイザーみたいなものが日本においても必要なのかどうかというようなことも含めて、日本におけるそうしたカウンセラーの在り方、あるいは外国においてこんないい制度があるんだよというようなことがあれば、簡単にお教えいただきたいなと思います。
#39
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) 外国において、アメリカにおいてですけれども、七十八ページを見ていただきますと、「ワーク/ライフ・バランスに関する各種の調査結果」というのがあります。そこで左側、十八と書かれている左側ですよね、最も導入されている取組の中でEAP九八%とありますけれども、これどちらかというと、元はといえば心療内科的なところだったんですけれども、そういうところが、例えばファイナンシャルプランニングとか法律的な問題とか、親子関係や子育て問題とかということ、いろいろなことについてカウンセラーの方とお話しできたりとか、その資料というのを受け取れるということがあります。
 このEAPがなぜ九八%かという理由は、医療費の削減になって、EAPでは一ドル投資すれば三ドルとか五ドルといいますから、大きな企業ですと、それだけ一人頭年間削減できると何千万とか何億円の削減に毎年なるわけですね。ですから、そういう意味で医療費の削減においてこのEAPを取り入れているというところがありますけれども、心療内科的なことではなくて、バランス問題や子育てについてとか、やっぱりティーンエージャーだとまた思春期の子供を抱えて問題があるとか、そういうことについての悩みとかも相談できてその情報も得れるということと。
 下の方の、下から三番目、ランチタイム・セミナーというのがありますね。これはいろいろなトピックなんですけれども、仕事と私生活のバランス問題だったり、仕事と家庭のバランス問題であったり、ちっちゃい子を持っていてどうバランス取るのというような、これはいろいろな内容のものが含まれているんですけれども、やっぱり企業の中ではよくランチタイムにブラウンバッグ・ランチとか言って、お昼持ってきて話を聞く、一時間話を聞くというようなセミナーがとてもカジュアルによく行われています。そういうところで提供しているということは言われますね。
#40
○参考人(西嶋美那子君) 仕事と家庭生活の両立というのは非常に大きな問題だと思ったものですから、私どもIBM、日本IBMで実は私がこれ当時担当したんですけれども、ファミリー・ケア・ダイヤルといって、今、労働省がやっているフレーフレー・ダイヤルの元となったものなんですけれども、仕事と家庭の両立で悩んだときに電話で相談をできる仕組み。それは、外部の方たちにそういう情報をまとめていただいて、その個人の生活の状況を相談して、そして答えてあげるというような仕組みを、これは八五年ぐらいに作って、これは当時としてはすごく、ああ企業がそこまでやるのかと言われたものだったんですが、それを今度ネットワーク化して、今度ネットで相談できるような仕組みに去年からまたしているというか、活用されています。
 それから、先ほど年齢の高い方たちのアドバイスはとおっしゃられたんですけれども、実は同じ年代の人たちだけでは問題解決できない問題ってあるんですよ。というのは、やっぱり自分たちがその問題通り過ぎているから、そのときそんな無理しなくて大丈夫、今ここで仕事八十点、百点取らなくても八十点取っても大丈夫なんだからそれで乗り越えようねと言ってあげられる人が、そのちょっと上の先輩がいるというのはすごく心強いことなんですね。ですから、私どもでは、女性の社員だけじゃないんですけれども、ワーク・ライフ・セミナーというのをやって、そういう問題を一緒に考える場、若しくはちょっと先輩たちが来てそういうアドバイスをしてあげるという場を作ってきました。
 それからもう一つ、最近うちだけではなくて富士通さんなんかでもやっていらっしゃいますけれども、チャットができるようなネットがありますから、そこの中でやっぱり同じような問題を抱える人たちが今こういうときどうしているというようなことをチャットでやって、ああ自分たちこうやっていたけれどもというような、そういう情報交換でお互いに助け合うというような仕組みができてきているというふうに思います。
 以上です。
#41
○山東昭子君 ありがとうございました。
#42
○松あきら君 お三人の参考人の先生方、お忙しい中をありがとうございます。
 今、お話をそれぞれ伺っておりまして、正に日本の国は、国も企業も、そして働く働き手もそれぞれの中でかなり後れているということをもう再実感をしたというところでございます。
 実は、パク先生からは以前お話を伺いまして、再度今日お話を伺って、更によく分かったというところでございますけれども。
 例えばオランダモデル、前田先生のオランダモデルもすばらしいなと思うんですけれども、例えばドイツなども失業率は日本と比べてかなり高いですよね。一〇%近いんですか、七、八%は失業率あると思うんですけれども。例えば、失業している間も次の職業訓練をしっかりしてくれると。そして、その訓練をしっかりされた方は大体その訓練をした七〇%そこに就職ができると。あるいは、失業している間も住宅手当、あるいは教育手当もしっかり出る。最低限生活していくお金もしっかり出るから失業ということを焦らなくてもいいとか、様々、いろいろな欧米、EUなどでは日本と比べてすばらしいなということがあるわけですけれども。
 私は、実はオランダモデルの点で先ほどちょうど質問しようと思ったこと、円先生がお聞きになったんですけれども、正に、例えば同じ時間、例えば十二時間一人の人が働いてそして上げられた生産性、これが二人の方が六時間ずつ働いて同じ生産性しか上がらなければ、企業としてはこれは負担になってしまうと。つまり、正社員が二人になるということになると、そういう点でどうしてうまくいったのかということも含めてお伺いしようと思ったんですけれども、先ほどの前田先生のお答えの中で、これは実は企業もある程度そうしたことも痛みを覚悟をしながらこれを進めていってうまくいったというお話でしたので、やはりこれは企業の努力も必要だなというふうに思ったわけでございますけれども。
 例えば、今、日本ではなかなかこれが進まない。そうした企業のこういうことを求めていくには、ある程度政府がイニシアチブを取らなければ日本の場合進まないんじゃないか。政府でこういう政策をして、例えばその負担に対しては少しサポートしますよというような、こういうこともある程度はやらなければ駄目なのではないかという点に関して、まず前田先生にお答えをいただきたいと思います。
#43
○参考人(前田信彦君) まず、ドイツのお話をされました。私、ドイツのことそんなに詳しくはないんでございますが、例えばオランダはそんなにバラ色ではなく、バラ色というか、いいところではない、悪いところもたくさんあるわけです。
 例えば、悪いところといいますと、ネガティブという、裏の面もたくさんあるわけです。例えば、失業率が非常に低くなっているんですが、逆に雇用障害というんでしょうか、障害を持つという、申請によって働かない、それで失業手当をもらうという雇用障害者ですね、割合が非常に多いんです。百万人というふうにも言われていまして、この人は失業者にカウントされませんので、雇用障害者の存在があります。労働力人口が全部で七百万人ですから、相当の割合なわけです。これは国家財政、非常に圧迫、国家の、あるいは財政面においても、それから行政面においても非常に大きな課題となっています。
 こういう雇用障害ですね、障害給付を受ける失業者をなるべく減らしたいという国家の意向がありまして、先ほど言いました、例えばイギリスのウエルフェア・ツー・ワークですね、働くための福祉というのも、つまり先ほど申しましたように、単に失業手当を支給するのではなくて、積極的に職業訓練の機会を提供するということですね。職業訓練の機会を提供して、その期間その訓練費として支給する。そして、無事働いて障害給付を受けるのをやめたときに、例えば失業期間の職業訓練の給付を全部国が支払うとか、かなり手厚い福祉から、個人の自己責任と言っていいかと思うんですが、そういう福祉、つまり先ほど言った参加型福祉というふうに言えるかと思うんですが、なるべく働いてもらうという方向に行っているというのが現実だというふうに思います。
 それから、もう一つの点は何でしたか、済みません、もう一点は政府のイニシアチブ、日本における政府のイニシアチブというのは、これについてはまた、立場上なかなか答えにくい点でも、経験上答えにくい点でもございますけれども、例えば男性のみが働く、つまり、一家の御主人と言われている夫が、大黒柱が働いて、妻が専業主婦すると。当然のことながら、今まで企業は、そういう夫の生活だけを考えるんじゃなくて、夫が持っている家族のことを考えて給料を支払うわけですよね。だから、いわゆるその人の仕事に対する給与のほかに生活給のようなものが支払われているわけですよね。例えば個人化する、例えば給与・賃金体系を個人化するということになってきますと、家族を持っているか持っていないか、妻が働いているか働いていないかということよりも、まずその人が働いていることに対してペイされるということになってくるわけですよね。
 最近の新聞を見てみますと、賃金体系を日本の企業が大幅に変えようとしている。様々な点で労働者にとって痛みも伴うものであると思うんですが、例えば、それを変えるのであれば、先ほど言ったように、労働者側から見れば、個人給にする、個人給というか生活給を外すのであれば、その分妻が働いたときに生活とバランスが取れる働き方のような、パートタイムをもっと条件を良くするとか、あるいは男性が労働時間を短くするときにも決して不利にならないようにする。例えばお互いにゆとりのある中で共働きをできるようなシステムを逆提案するというのが一つの政策的な可能性としてはあるんではないかなと思いながら最近新聞を読んでおりますが、これ以上、私ちょっと専門外ですので、コメントはこのぐらいにしておきたいと思います。
#44
○松あきら君 ありがとうございました。
 西嶋先生、先ほどお話を伺っておりまして、やはり多様な働き方を提供する、その能力を生かしてほしいと。しかし、これはその能力というものを評価するシステムができていない、日本の企業には、ということだと思うんですね。私もそういうふうに思っているんですけれども、どうすればこの能力を評価する仕組みができるのかどうか、あるいは、それは難しいんですけれども、企業努力でできるものなのかどうか、その辺も。あるいは国ということになるとまた言いにくいなんて、おっしゃりにくいということもあるかもしれないんですけれども、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
#45
○参考人(西嶋美那子君) 能力評価の仕組みというのは企業だけではなくて、例えば学校の先生の問題ですとか、そういうことでも随分議論をされているところだと思うんですけれども、基本的には、これまで年功序列の賃金の仕組みでずっとやってきている中で、評価が処遇に反映されていないという期間が長かったので、まず考え方の中に年功でやっていくのがいいだろうという同意みたいなものが、コンセンサスみたいなのが皆さんの中にあるんじゃないかなと。それで本当にいいのかなという疑問から発してその仕組みをちゃんと考えていかなくてはいけないんだろうと思うんですが、これからやはり、もちろん終身雇用制が全部崩れるわけではありませんし、ただ、雇用が流動化していくという中では、年功序列の賃金の仕組みだと、本当に欲しい人を欲しいときに採ってくるということが難しくなってくるんですね。だから、必然的にそこは賃金の仕組みを変えていかないとあれですから、ここはもう動かざるを得ないだろうと私は個人的には考えています。これまで流動化していなかっただけ、そこの今までの仕組みの中でやっていけたんだろうなと思っています。
 政府の指導かどうかというようなことですけれども、やっぱり企業が、私はもうこれ企業経営の問題だと思うんですね。企業が人材をどう使っていくか、そして社員がもたらした成果に対してどれだけ報酬を出していくかということによって経営をうまくやっていく。本当に企業経営の問題として真剣に考えなくてはいけない問題ですから、企業が真剣に考えていけば変わっていくものだと思います。
#46
○松あきら君 ありがとうございます。
 賃金ですけれども、ドル換算しますと、日本の個人の所得は世界最高であるという、ここをどうするかという、ちょっと今日時間がないから言えないんですけれども、こういうことも非常に関係しているかなというふうに思うんですね。
 それから、最後にパク先生。
 私は、「会社人間が会社をつぶす」を読ませていただいて、本当にすばらしいなというふうに思っているんですけれども、持ち時間が少なくなっちゃって、たくさんお聞きしたいことがあるんですけれども、一つだけ、もう自分の身は自分で守る、こういうふうに今のところは日本ではしなければ致し方ないというような状況の中で、スキルアップについてどのような心掛けが必要でしょうか、最後にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
#47
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) そうですね、やっぱりもう不確実性の時代だということをもう常に意識をして、そして実際のそこの知識というよりは対応性ですよね。変わったときにどう対応できて、そしてそれを適用できるか。私、今の時代ほど知識や経験、特に経験ですよね、価値がない時代ってないと思います。もうすべてが次から次へと新しい産業が出てきて、そこの中でのエクスパティーズといってもそんなに長くないんですよね。ですから、例えばウィンドウズ95といってもまだ十年、多分八年しかたっていませんし、それ以降の様々な新しい産業が生まれたエクスパティーズというのはみんなそんな長い経験というのはなかった。ただ、やっぱり何か新しいことができてきたときに、それをもううまく自分のものにするとか適応するとか、何を勉強しなきゃいけないかというのを見る目を持っていたということもあると思います。
 だから、私も子供がいるんですけれども、将来どんな職に就けば安定するかなんて思っていたら、今いい業種なんかは全部アウトになる可能性高いですよね。私が子供のころはこの企業は間違いなく花形企業とみんな言っていたのが、今となってみれば全然変わっている。だから、今が、例えばある業種がよくても分からない。だから、今ぐらい不確実性になったのは本当に、世界、もうみんなが経験しているわけですから、だったらもう不確実な時代を生きるためにフレキシビリティーというか柔軟性を持って適応できるやっぱり適応能力とか、もっと、特にスキルと知識というよりは、もっとその基本になる例えば考える力とか、やっぱり考える力ですよね。だからそこが一番基礎じゃないでしょうかと思います。
#48
○松あきら君 ありがとうございました。正に教育が大事だということがよく分かりました。ありがとうございました。
 以上です。
#49
○田村耕太郎君 今日は三人の参考人の方々に非常に興味深いお話をいただきまして、ありがとうございました。いろんな資料を見せていただきまして驚くことも多かったんですが、私は余り違和感を皆さんがおっしゃることに感じなかったんです。なぜかといいますと、ただ、パク参考人の御意見で、非常に日本は遅れているというのはもう私も正に大賛成で、私も保守的な金融機関に勤めたことがありましたんで、非常に共感を覚えます。
 ただ、私、鳥取県という日本一田舎の選出なんです。鳥取県の場合、パク参考人からいただいたデータと、アメリカの現状ですね、私、余り大差がないように思うんです。
 といいますのは、兼業比率、共稼ぎ比率は日本一なんです。それと、夜、家族と御飯を食べる人はたくさんいますし、昼御飯さえ家族と食べている人も一杯いるんですね。なぜかと考えますと、大家族が非常に多い。ですから、子育てにも困らない。職住近接、正に田舎ですから、もう昼御飯さえ帰って食べれるぐらい職住近接であると。
 それと同時に、労働力が乏しいわけです。経理の女の子がもし妊娠して子供ができた場合、いなくなったら代わりがいないと。その子にどうしてもいてもらわなきゃいけない。ですから、労働規則を変えて、その子を大事にするような、その子が生かせるような労働規則に変えているとか。
 正に日本は、私が申し上げたいのは、日本は都会よりも田舎の方がこういう面では進んでいるのじゃないかなと。もうライフスタイルも多様でして、出世とかキャリアよりも人生を謳歌したい。釣りとかトライアスロンやマラソンをやったりとか、そういう人もたくさんいます。ですので、都会では確かに日本はおかしいと思うんですけれども、私の選挙区のような田舎では、もう先生のおっしゃるようなことが既に進んでいるということもあると思うんですね。
 一つ、パク参考人にお伺いしたいのは、非常に面白いデータをいただいたんですけれども、フレックスタイムのところですね。私、これ報道なんで正確なデータを持っていないので私の認識違いかもしれませんけれども、日本の場合、フレックスタイムもカジュアルフライデーも生産性が落ちたのでやめるという商社や銀行が多かったように思うんです。
 この導入率比較のグラフなんですけれども、これ時系列の資料ではないので、これ、つまらない質問かもしれませんけれども、こういうベスト百の会社は、余裕があるからこういうことをやったのか、こういうことをやったから余裕ができたのか、どっちかちょっとよく分からないんですけれども、なぜ日本ではフレックスタイムが機能しなくて、生産性がもし落ちたという報道が正しかったとしたら、なぜ、そうなのに、アメリカは逆なんでしょうか。ITの導入比率とかアメリカ型経営と日本型経営の差なんでしょうか。この辺り、非常に興味があるんですけれども、お願いします。
#50
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) そうですね、フレックスタイムに関しては私も生産性が下がってやめている企業が多いということを聞きます。ただ、世界の流れからすると、アメリカだけじゃなくて、ヨーロッパもアジアも、もっとフレックスタイム、もっとフレックスワーク、もっとテレワークという状況になっている中、日本だけがもう逆走しているようなところは少し怖いなと思うところがあります。
 なぜ日本がフレックスタイム、例えばフレックスタイム、一番導入簡単なものなんですけれども、うまくいっていないかというと、やはり評価制度が、長くいる人の方が評価が高い。つまり、どんなに、朝六時に来ても四時には帰れないんですよ。だから、例えば六時から来て四時ということは十時間ぐらい働いていますよね。六時から来て四時じゃなくて、九時から来て十時間働く人の方が評価が高くなるということで、日本でフレックスタイムを使う人はみんな遅く来て遅く帰るためだけに使っていた。じゃ、お客様が九時に電話来たといったときにだれもいないというケースが多くて、トップマネジメントが怒って、じゃコアタイムを九時二十分から十時四十分だとか、じゃ、もうやめるというようなことになっていますよね。
 やっぱり、米国の方は社員の権利ではない。日本の場合は、コアタイムはこれで、だれでも好きな時間、コアタイムさえ守れば来ていいよだったんですけれども、アメリカの場合はやっぱり仕事に支障が出た場合は使えないということがあって、なぜフレックスタイムを導入するかという企業側の目的、そして社員側もどういうメリットがあるか、そして社員側がどういう責任がある、どういう役割がある、マネジャーがどういう責任があって、どういう役割があって、どう進めていけば効果的に運営できるかというガイドラインがあって、そしてマネジャー向けのトレーニングがあって、きちんと導入するとうまくいくということがあると思います。
 フレックスタイムだけではないんですけれども、やっぱりそういうようなフレックス、裁量労働制ですか、も含めた時間の自由度の高いものというのは、かえってエグゼクティブとかマネジャーとかの方がより多く使われていて、かえって、何というのかな、どうしてもこの時間にいなきゃいけないというちょっとレベルの低い人たちの方が使えていないという、かえってそこの方が問題になっていますよね。
 アメリカは、別に女だから事務職じゃなくて、できる人に仕事を与えていて、やっぱりその人の生産性の高い時間で働けるようにサポートするのがフレックスワークですから、朝型人間に九時まで待って、そしてそれから十二時間働きなさいじゃなくて、朝型だったら六時に来ていいよ、で、十二時間働いたら六時には帰れるでしょうというようなところがありますよね。やっぱり時間の長さじゃなくてアウトプットなんですよ。もうどこで何時間、規定の八時間以上だったら働いてもいいから結果出してねというところで、柔軟度さえくれれば結果出すわというような社員の忠誠心まで上げたわけですよね。
 例えば、フレックスを作って男性社員が子供のお迎えに行けるとなった場合、やっぱり感謝するわけですね、受けた場合は。そういうのが心理的なところをとてもうまく使ったということは感じていますし、テレワークにしても、本当に働いているのって、みんな、家で働いているのと。実際的な問題は、働き過ぎて困っているんですよ、テレワークをする人は。だから、マネジャー側とそしてテレワーク側にもトレーニングをして、ちゃんと自己管理ができるようなやり方というのをうまく導入していますけれども、かなりアメリカの場合トレーニングしていますね。
 だから、昔は例えば評価制度も、長くいた人の方が評価が高かった、アメリカでも。週末も来て、長い人が出世をしていたと。ところが、もうそれだと、何というのかな、余裕がないんですよ、結果が出せない人に高いお給料を払うという。というところで、もうアウトプットで重視。その代わり、アウトプットを出すベストな環境を与えるというふうなやり方に持っていったというところが大きいし、じゃ、どういうふうにして評価制度をマネジャーができるようになったかというと、トレーニングなんですよ。今までは日本人、トレーニングができなかった。じゃ、なぜアメリカ人だけできるの。教えられないとできないですよね、難しいので、というところがあると思います。
#51
○田村耕太郎君 じゃ、この導入率比較のグラフは、導入したから企業の業績が上がったということなんでしょうか。
#52
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) 例えば、生産性向上とか、どれぐらい忠誠心が上がったとか、いろいろなデータが業績向上もサポートするようなふうになっていますし、やっぱり例えば女性でもキーなところに働いているわけですから、後ろで事務をしてメモを取るとかというよりは、もうお金を作るポジションに押さえられている方が多いですから、そういう人たちが生産性の高い働き方をすると直接業績に結び付きますよね。でも、やっぱり裏方の、アシストするような人がフレキシビリティーで生産性高い働き方をしても会社の業績への貢献度というのはやっぱり限界があるというふうに思います。
#53
○田村耕太郎君 なるほど。非常によく分かりました。ありがとうございました。
 前田参考人に質問なんですが、いただいた事前資料の十三ページを見ますと、オランダのパートタイム労働、これうまくいったという話なんですが、先ほどパク参考人が言われたように、アメリカはそういうものを導入しなかった。じゃ、近くにあるヨーロッパはどうかといいますと、オランダ病だけではなくて、一九八〇年代というとヨーロッパじゅうが高インフレと高失業率に悩んでいたころだと思うんですけれども、オランダの成功事例を取り入れた国が少ないように思うんですが、ここは、もし私の認識が違っていたら済みません。もしそうだとしたら、なぜほかの欧州諸国がまねをしなかったのか、できなかったのか。
 例えば、ベルギーなんかは同じぐらいの失業率の減少をパートタイム増減率は四分の一でやっていますし、スペインなんかはパートタイムを減らして失業率も減らしていますし、ポルトガルなんかはパートタイム増減率がほとんど変わらなくて失業率は四%近く減らしています。この辺りはどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
#54
○参考人(前田信彦君) これについてはまだ研究、多分いろんな方も全部研究途上だと思うんですね。オランダモデルがにわかに登場したのがつい五、六年前です。私がオランダにいたときが一九九七年ですが、まだそのころオランダモデルというのはだれも言っていなかったんです。ワークシェアリングという言葉もなかったんですね。どうやらパートタイム労働についての均等待遇を進めているらしいということは、私、現地調査で分かったんですが、帰ってきて、九九年、二〇〇〇年ぐらいからオランダモデルと言われ始めた。その後にワークシェアリングという言葉が付いてきた状況です。だから、その評価についてはまだ実は定まっていないのが一つの現状です。
 隣国のドイツ、それからフランスについてですが、実はドイツでオランダ型のパートタイム労働を検討しているという話は一、二年前にちょっと聞いていたんですけれども、どうやらやっぱりうまくいかない。それについてはまだ、研究は多分進んでいると思うんですが、一つはやっぱり労使関係の違いだというふうに思います。
 オランダの労働組合の組織率が約三〇%、そんなに高くないんですけれども、正に労使のコンセンサスがあるということです。コンセンサスというと、いわゆる信頼関係ですね、物すごい信頼関係がある。ストライキがすごく少ないですね。オランダに住んでお分かりかと思うんですが、ストライキが少ないし鉄道も正確だし。私がオランダに行っていたころは、フランス、エアフランスが何かストライキを起こしたとか、かなり頻繁にストライキをやっていて、つまり、ドイツもかなり組合と使用者団体というのは対抗関係にありますね。
 先ほど言った人口が多いということも一つの原因ですし、もう少し、労使関係の安定性という点でもやはりオランダは一歩進んでいるんではないか。そこがオランダモデルが成功した一つの理由ではないかというふうに思われます。
#55
○田村耕太郎君 ありがとうございました。
#56
○畑野君枝君 どうも、日本共産党の畑野君枝でございます。
 前田参考人、西嶋参考人、パク参考人からはワーク・ライフ・バランスのお話を伺わせていただきまして、大変勉強になりました。ILO百五十六号条約につきましては、私も以前触れさせていただいたことがあるんですが、家族的責任と仕事との調和ということで、こうした考え方が、この調査会のテーマにもなっております「真に豊かな社会の構築」、特に二十一世紀に向けて本当に大きな力を発揮していくことが必要ではないかなというふうに思っております。
 それで、特にこれが浸透していく上で、参考人の皆さんがこの関連資料の中でもいろいろ書かれていることも私、大変興味深く読まさせていただきました。例えば、前田先生が資料の中で論文を書かれている中に、横浜市の二〇〇一年の子育てに優しい企業実態調査の中で、雇用情勢が悪化する中で企業が正社員の働き方の柔軟化ではなく、従来型のパートタイム労働者の増加を求めているという例を引きまして、しかし、コストの安いパートタイム労働や派遣労働者への切替えは短期的には企業に利益をもたらすが、長期的には人材確保の点でもデメリットも多いというふうにおっしゃっておいでですし、また西嶋参考人は、やはり仕事と個人生活の両立が困難で退職していった人のほとんどが女性で、そういう点では補助的な業務、定型的な業務を担当して、辞めても困らない、そういう女性が置かれてきた、真剣にワーク・ライフ・バランスが検討されてこなかったのではないかということも書かれていらっしゃいますし、またパク参考人の方からは、先ほどお話がありますが、アメリカでの経験、調査などでも今後こうしたことが進められないと競争にも勝てない、ニーズとしてもとらえられているというお話がございました。
 それで、私、三人の参考人の方に共通して伺いたいのは、今までおっしゃっていただいたことに加えて、こうしたワーク・ライフ・バランスの取組が、今後、社会あるいは日本の雇用情勢や企業の在り方にとってどのようなメリットになっていくと考えられるか、その上でどのような取組や改善が日本では必要と考えられているかということについて伺いたいと思うんです。
 特にお話がありました日本の働き過ぎ、特に男性を中心に、こうした弊害を取り除くためにどのような規制的な強化も含めて必要かということについて、お考えがあれば伺いたいと思います。
 一つだけ例を挙げますと、例えば昨年の総務省の労働調査の中では、月八十時間の残業ですか、もう過労死にもかかわってくるというようなそうした残業をしている男性が三十代でこの十年来最も高い、三十代前半では二七・一%と。これは三十代後半が二五・七%、二十代後半から四十代前半まですべての年代で二〇%を超えたと、こういう状況があるわけなんですね。学校の先生に伺いますと、先生も大体、持ち帰り残業を含めて月八十時間を超しているというような調査も伺っております。
 こういう点の改善点含めて伺いたいと思います。
#57
○参考人(前田信彦君) 私が横浜市で調査しましたことを御紹介していただいたわけでございますが、基本的に、例えばオランダの企業がなぜパートタイム労働を優先するかということは、一つはやはり生産性が高いということです。いったん育児なり介護なり個人的な理由で退職する、もう一度再雇用すると教育訓練としてコストが掛かるわけでございますが、その分、継続雇用ということがパートタイムでは可能になるだろうというふうに思います。
 それから、労働時間が短いのです。例えば九時からだらだらと、だらだらという言葉は変ですけれども、例えば九時に行って十時ぐらいから仕事を始めて夜中までやるというのも一つの働き方なんですが、パートタイムの場合は、例えば十時に行って四時に終わる。非常に短い時間で集中的にやるので、かなり生産性が高いというふうにオランダの企業は評価している点です。この点は、非常に長い目で見れば企業にとってはメリットがあるんではないかというふうに思います。
 それから、私は、もう一つワーク・ライフ・バランスの可能性ということについて見てみますと、何も女性とか中年男性だけではなくて、高齢者にとっても当てはまるんではないかと思います。例えば非常に元気で働いていらっしゃる高齢者の方もいますし、六十歳になったのでもう引退したいという方もいらっしゃいます。問題は、その人のライフスタイル、体力とかそれから健康とか、そういうことに合わせて働き方を提供することによって多様な引退の仕方というのもあるんではないかというふうに思います。
 今、日本もそうですけれども、年金支給年齢をもっと遅くするという方向で進んでいて、なるべく長い間働いてほしいという方向で動いているわけですけれども、しかし、すべての人がそういうことはできないわけです。したがって、その人のライフスタイルに合わせた形で、働きたい人は働く、働けない人はそうではない別の働き方を提供していくという意味で、多様な引退を可能にするワーク・ライフ・バランスということを私はもう一つの可能性としてお話ししたいと思います。
#58
○参考人(西嶋美那子君) 私も、前田先生と同じポイントは、一つはやっぱり効率というところだと思うんですね。長時間働くことによって本当に効果的な働きができるかというと決して、やっぱり十二時間以上職場にいると、これ良くないですよ、絶対。私は十時間でもいけないなと思いますので、そういうのが恒常化したときに本当に効率のある仕事ができるか、判断間違わないかといったら、そこはクエスチョンが付くと思うんですね。そういう意味ではやっぱり効率性からの面。
 それから、企業にとってみれば、やっぱり人材の活用ということで、私どもでも統計を取っていると、かなりポジションが高い人で評価がいい人ほどワーク・ライフ・バランスという問題は深刻な問題として取り上げているという例がございます。でも、やっぱり良い結果を出している人というのは一生懸命働いているんですよね。そうすると、やはりワーク・ライフの問題というのもやっぱり重要になってくるし、そこでバランスが欠けたら自分としては違う選択をするかもしれないというところにもつながっていくわけですから、やはり優秀な人材の活用という面からはここの問題は欠かせない問題というふうに思います。
 それから、最後にもう一つ申し上げたいのは、やはり若年層に対するアピールということだと思うんです。特に日本の社会を見ていて、これまでの働き方で、親の世代の働き方を見て疑問を持っている若い人たちというのはとてもたくさんいらっしゃいますよね。そういう人たちが、自分が働くのはそうじゃないと思って、今までの働き方を押し付けられるような職場は嫌だ、そういう意味で、働き方に対する価値観がかなり変わってきている。そういう中で、やはり企業にとってみれば若い子たちが入って循環していくということが必要になってきますから、若い世代に魅力がある職場であるということはやっぱり会社としてのアピール、非常に重要なポイントだと思っています。
 そういう意味では、やはり若い人たちへ働きやすい風通しのいい職場を提供するというのが非常に重要な問題だと思いますし、はっきり言うと、もうこれから辞めていく人たちは、辞めていくわけですから、その人たちのやり方がいい、若しくはその人たちが、いや、そうは言ったって自分の目の前に部下がいなきゃ理解できないよという人たちはもうさておいて、やっぱり若い世代に照準を当てて考えるべきだというふうに思っています。
 以上です。
#59
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) オランダモデルのワークシェアリングと米国の進めているフレックスワーク、パートの正社員も含んでいるんですけれども、どちらかというよりはフルタイム正社員の働き方の柔軟性なんですね。
 ワークシェアリングは、例えば今まで八時間働いていたのを六時間とか短くするということを進めていると思うんですけれども、米国のフレックスワークの推進の仕方というのは、勤務時間八時間というのは変えずに時間帯や場所をシフトして生産性の高い働きや勉強や家庭のニーズに満たせるようにというところなので、やっぱり勤務時間を短くして、生産性じゃなくて、勤務時間は同じで場所や時間帯をシフトして、そうすることによって社員が私生活を充実できるように、生産性が高まるようにというところが違うのかなというふうに感じました。
 それで、先ほど言いましたように、九七年ではアメリカの家庭というのは七二%の子供たちが家族一緒に五日以上食事ができたというそういうような、お父さんも夕食の時間帯に帰ってこれるような労働時間でありながら、九七年、アメリカ、とっても景気が良かったときだったんですね。
 ですから、もうIT時代になって今までの物づくりの働き方の構造から変わっていった。昔はアメリカももちろん物を作っていましたけれども、アメリカも賃金がほかの国に比べて高いのでだんだんもう、決めたわけですよね、もう物づくりは例えばメキシコとかアルゼンチンとか中国には勝てないというところで、じゃ自分たちは、この労働、その賃金が高いアメリカ人は何ができるかといったときに知的生産性だって決めて、そして働き方を変えていった。例えば、今まで物づくりであれば、一時間に十個できれば十時間働けば百個できる。ところが、知的生産性の時代になって、一時間で十個のアイデアが出た、じゃ十時間で百個出るか、出ないんですよ。もう根本的に知的生産性の働き方というのが物づくりの働き方から違ってきてしまったという、まずそこを日本の企業が認識してほしい。
 あと、やはり中国の労働力ですね。本当に三十分の一ですよね。私も前の仕事で中国時々行っていたんですけれども、初め何か賃金が七千円とか八千円とか言われて、一日にしたら中国人高過ぎると思ったら、一か月の物づくりの人たちの賃金ですよね。七千円とか八千円なわけですね。ミニマムが九千円で、それが払えていないからと言っていたんですけれども、もう勝てないんですよ、逆立ちしても、一か月九千円にしても。
 じゃ、日本のこの高賃金で、でもとても優秀で、こういう労働力はどうすればいいんだというと、やはり知的生産性、知的生産物で競争していく以外はないような気がします。物づくりは、もう精密機械とか特別な精密な何とかというのであれば別ですけれども、そういうところで日本の今後の在り方というのは、もう企業の生き残りを懸けて働き方を変えなきゃいけないんじゃないかなと思って、私は、企業ではやっぱり本当に生き抜きたければもう仕方がない、そのチョイスがないと思いますね、その働き方を変えるということは。
#60
○畑野君枝君 ありがとうございました。
#61
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
 この調査会は、「真に豊かな社会の構築」をテーマとして三年間の調査を継続するというそういう調査会なんですけれども、今、日本は経済大国に、一応今まだ経済大国日本でございますが、そういう経済大国になりながら国民が本当の豊かさを実感できないのはなぜなのかということで、こういうテーマを決めて調査を進めて今回で二年目になるわけですけれども、昨年、ニュージーランド、オーストラリアの調査に参加をさせていただきましたときに、非常に日本とは違う資本主義の社会がある、それを実際つぶさに見てまいりましたが、ニュージーランドは世界で最も早く一八九三年に女性参政権を取り入れた国だということで、私も大変注目をして参加をさせていただいたんですね。
 そのときに、一つなんですけれども、男女ともに五時には仕事から帰っているということで、店も五時に閉まって、社会全体の余暇の過ごし方というのは非常にゆったりとしていて、しかも四人に一人がヨットを持っていて、そういう週休二日制だとか、五時以降は何しているかというと、セーリングを楽しんだりガーデニングを楽しんだり、男性も女性も家事やそれから育児に参加をしているという、そういう社会でございました。
 そこで非常に、もちろんヨーロッパ、私も八〇年か八一年までスイスに住んでいたことがあるんですが、そのときも、もちろん夕方になったらみんな帰っちゃうし、週休二日だし、お昼休みは二時間もあるし、バカンスは一か月もあるし、残業なんてだれがしているのみたいな顔しておりますし、大変その時代からヨーロッパと日本はまるっきり違う、日本の労働者の非常に企業にがんじがらめにされているということについて非常に痛感をして帰ったという経験もございます。
 いよいよこの二十一世紀、新しくなって、これから日本の社会を考える場合には、やっぱりその一つのかぎを握るのは女性労働の在り方、女性の労働への参加ということがこれはやっぱりかぎを持っていく決め手だというふうに思います。
 そこで、三人の参考人の先生方にお伺いしたいんですけれども、日本はいわゆるM字カーブという、非常に世界でもこれも特異だと思いますけれども、非常に急なカーブを持っております。ニュージーランドも、行って聞いてみますと、M字カーブがないわけじゃなくて、少し緩やかなものだということですが、緩やかであると同時に、くぼみが緩やかであると同時に、全体がやっぱり、女性の就業率は高いですから、高いところでの緩やかなM字カーブはあるというわけなんですけれども、まずそのM字カーブということについて、日本のM字カーブということについて、世界との比較においてどのようにお考えになるのかというのが一点。
 それからもう一つ、これは西嶋参考人とそれからパク参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、日本の女性の機会費用というのが非常に高うございます。四千万から五千万という非常に高い額があって、これは何かというと、日本の女性の労働者が正規に勤めていたのを出産や育児のために辞める、そして次はパートで勤めざるを得ないというときに生涯にわたっての損失は幾らかということで機会費用という言葉があるわけですけれども、それが日本の女性の場合、四千万から五千万と非常に高い。こういうふうになりますと、やっぱり出産のために仕事を辞めるということはなかなか決断がしにくい、そういうことを自覚しているかしていないかは別にして、非常に出産がしにくいということではないかなというふうに思うわけです。
 企業の側からいえば、出産をしている期間というのはノーワークなんだからノーペイで当たり前じゃないかというようなことも伺うわけですけれども、先ほど来、企業側のいろいろなワーク・ライフ・バランスだとか、フォースダイバシティーですか、マネジャーに携わっていらっしゃるお二人、しかも女性のそういう新しい研究をなさっていらっしゃるお二人から、この問題についてはそのお二人にお伺いしたいんですけれども、そういう日本の女性の高い機会費用という問題についてどのようにお考えになるかということをお伺いしたいと思います。
 そして、前田参考人には、ワークシェアリングという言葉は特にオランダタイプという言葉が非常に流行しているように思いますけれども、私は、日本の社会がいろんな外国の制度を利用する、輸入する場合には大変注意をしなきゃいけないというふうに前々から思っているんです。
 例えば、ケアハウスという制度を導入するときに実はオランダに行って調べてみた、ドイツに行っても調べてみましたが、ケアハウスという場合にはちゃんとしたケアが付いていてアパートメントのような仕組みなんですけれども、日本のケアハウスというのは食事を提供するだけであって、介護のケアはありません。言わばケアレスハウスでございます。だから、言葉はケアハウスなんだけれども、全くやられていることは違うことがやられているというような例がよくございます。
 介護保険も導入しました。ドイツの介護保険は、家族が介護したときの家庭での介護手当はちゃんと付いています。ところが、日本の場合は、ドイツがいいよいいよというから導入したんですけれども、その家族手当はすっぽりと外すという形での導入なんですね。
 ですから、この点でワークシェアリングというものをよく見ないと、オランダで何かうまくいっているよということで日本でどんどんというふうな一つの流行になっているようですけれども、私はそういう点で、二つの点でこのワークシェアリングという問題についてちょっと前田先生にお伺いしたいんですけれども、オランダが導入するときにはかなりパートの待遇改善ということを、事前にいただいた資料でもそうですけれども、かなり法律の改正、三度ぐらいにわたって法律の改正をして、きちっとパートも正規も同じような待遇でということで政策的に政府がリードしていると思うんですけれども、その中身について少し御紹介いただきたいのと。
 それからもう一つは、ワークシェアリングといった場合に、前の調査会でもちょっと問題になったことがありますが、例えば父親と母親が短い時間を時間差で取ってしまう、こういうことになって、結局のところは、父親も母親も労働時間は短くなったんだけれども家庭はばらばら時間差育児という形で、父子家庭あるいは母子家庭のような状態が、ダブルインカムで働いてはいるんだけれども、そんなふうになっちゃっていると。
 だから、この問題はオランダではどういうふうになっているのか。ワークシェアリングというそういう制度が導入されているんだけれども、実際のオランダの働く家庭というのはそういう事態というのは起こっていないのかどうか。そういう点について御説明いただければと思います。
#62
○参考人(前田信彦君) 御質問は二つかと思います。一つはM字型カーブということと、それからオランダのワークシェアリングの中身ということでございます。
 一つ、最初のM字型カーブの評価でございますが、M字型カーブというのは御存じのように労働力人口に占める働いている人の割合ですよね。つまり、Mというのはちょうど子育ての期間に働いている割合が少なくなるということです。ところが日本の場合、この統計を、働きたいかというデータを入れると台形になるんですね。つまり引っ込まないんですね。つまり、実際に働いているプラスこの時期に働きたいかという就業を希望している人の数を加算するとこういう台形になるんですね。ということは、それだけこの期間には働きたい女性が多いということです。だから、逆に解釈すると、働きたくてもなかなか働ける機会がないということですので、やはりこのギャップですね、そのギャップを一つ考えるということが一つM字型カーブのポイントだと思うんです。
 私は、これは個人的な非常に意見になるわけですけれども、例えば先ほど言ったように、多くの人が働けるということを推進するというのは非常に大事なことなんですが、しかし、例えば一時期働かないということも選択するということも、ある意味ではそれを認めていくということも非常に大事だと思います。というのは、多様な働き方という以上は、働く働かないということまでも個人の選択肢の中に入るべきだというふうに思います。
 元々、以前は、大分昔ですが、農村社会だったころは夫婦ともに働くというのは当たり前のことだったわけですね。それが産業社会の中で夫が働いて妻が専業主婦というタイプが出てきたわけですけれども、しかし今になって、例えば夫は外で働いて妻は中で家庭を守るべきだという人が、そういう意見がやはりあってはもちろんならないわけなんですが、しかし、だからといって、すべての人が男も女も働くべきだというふうに一つのモデルを当てはめてしまうことは逆に選択肢を狭めるだろうという危機感を私は持っています。
 だから、配偶者控除もあった方がいいんですけれども、例えばそうすると働いていない人にハンディになることは当然出てくるわけで、それはやっぱりフォローしなきゃいけない。つまり、働くか働かないかというのもそれも多様なライフスタイルの一つであると私は評価していまして、ここをやはり一つ押さえておく必要があるというのが今のM字型カーブへの一つの私の考えです。
 それからもう一点は、ワークシェアリングの中身ですが、もう時間がございませんので法改正にだけ一点触れますが、一番新しい法改正は、新しいというか比較的新しいのは、一九九七年時点で、パートタイムになる権利ですね。個人がパートタイム──ごめんなさい、パートタイムとそれからフルタイムの均等原則が一九九六年に盛り込まれました。一番新しい法律は、ごく最近できた二〇〇一年だったと、ちょっとこれ正確な数字今持ってないんですが、おととしぐらいだったと思うんですが、労働者が自分がパートタイムになりたいと使用者側に申し出たときに、使用者側はパートタイムになる権利を認めなければいけないということです。つまり、パートタイムになりたいという人はパートタイムになれる権利が法的に保障されたということです。この場合、著しく企業利益に反しないことという附帯条件が付いていますので、そういう条件があるものの、かなりパートタイムの権利というものが最近の労働法でも保障されているというのが現状だというふうに思います。
 以上でございます。
#63
○参考人(西嶋美那子君) M字カーブについては私も前田先生と同じ意見です。かなり変わってきていると思う、底が高くなっていると私は思っているんですけれども、子育てはやはり自分でしたいという人はそれぞれの選択だと思っています。
 ただし、今まで問題だったのは、どんな優秀な人でもいったん辞めてしまうと正社員としてカムバックできなかったということが問題だったんですね。そこを私は、これから雇用が流動化してくるということは、私は今若い人たちにいつも言っているんですけれども、辞めるまでにしっかり身に付けておいて、売るものを持って辞めれば、今度買ってくれる市場があるよと言っているんですね。そこにつながっていけば、私は、再就職ということで広がっていく。今までは終身雇用という仕組みの中でそこが全くなかった。たとえ職場があったとしても、パート、いわゆる日本で言うパートの仕事しかなかったということが問題点だったと思っています。
 それから、機会費用の件なんですけれども、私は、これ個人的な感覚なんですけれども、ほとんどの方は、機会費用を考えて、これが大き過ぎるから子供を産まないという選択はしていないと思うんですね。むしろ、今の時点で自分が仕事と家庭、子育てしながら仕事を続けられるかなって、そこで不安を持つから、どうしようかなと思って子供を産む時期が遅れているというケースの方が多いと思うんですね。
 もう一つ、そこの中で、さっき機会費用のことでおっしゃったノーワーク・ノーペイについてどう思われますかと言いましたけれども、私は、企業の立場からするとノーワーク・ノーペイは当たり前だと思っています。ただ、そこのいない間に何らかの社会的な補助が必要という場合には、これは企業に求めるのではなくて、国の中でそこを何らかのカバーをするということはまあ必要になってくるかもしれませんが、それが、企業にいない間も給与を出せという仕組みというのは、これはとても難しいと思いますし、それはできない相談だろうというふうに私自身は思っているところです。
 やっぱり子供を産めない、子供を産みたいのに産めない。もう一つは、子供を作るということをゆっくり夫婦で考える時間がないということが結構やっぱり少子化につながっていっているように思います。ですから、女性だけの問題じゃないんですよね。
 それから、今どうも問題を見ていると、男性側がゆっくりする時間がないので子供を作ろうというところにまで気持ちが持っていけないというのが若い人たちの間の中にもあるわけですね。ですから、本当に、少子化の問題というとどうしても女性の問題と言われがちですけれども、男性、女性、若い人たち、両方の問題としてきちんと考えていかないといけないんじゃないかなというのは感じているところです。
 以上です。
#64
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) Mカーブの件ですけれども、私はヨーロッパ余り詳しくないんですね。仕事の関係で毎月アジアに前の会社で出張していたので、アジアにいるワーキングマザーたちや、あとアメリカのワーキングマザーたちと多く話す機会があったんですけれども、なぜ海外のワーキングマザーが働いているかというその第一の理由は、やっぱり経済的な理由なんですね。だから、辞めたくても辞められない海外の人たちも多い。だから、好きで台形じゃなくて、やっぱりこの、また不確実性の時代になりますけれども、もしも夫がリストラになった場合、例えば、夫と妻と例えば子供が二人で、夫が倒れたら、家族、倒れたら困るわけですよね。だからリスクマネジメントとして、そんなにフルで働きたくないけれども働いているというワーキングマザーも多いという実感はあります。だから、辞められるって何か余裕があるなと私いつも思うんですよ。フルタイムマザーというのはもう職業であって、このフルタイムマザーはぜいたくな職業、もうアジアやアメリカで、欧米もそうですけれども、専業主婦ってなれないんですよね、よっぽどお金持ちじゃない限りは。
 だから、もうこれだけ不確実性の時代に、じゃ夫が倒れたらどうなるかというと、やっぱりその日本の自殺率の高さ、男性の自殺率の高さというところに出ていると思います。だから、やっぱり男性の経済負担というのが余りにも大き過ぎるというところで、海外のワーキングマザーたちは別にみんな働きたくて働いているんではなくて働かなきゃいけないというこのリスクマネジメントも含めて、台形になっていると思います。
 だから、そのM字カーブいいかどうかというよりは、辞めてもいいけど大丈夫という、もしも夫が何かなったらどうなるのというような、そこのリスクマネジメントの部分だと思いますよね。だから、働くべきとか働きたいというよりは、もうどうせ働かなきゃいけないんだったら働きやすい環境を企業も国も与えるようになってほしいなというふうに思います。
 あとは、やっぱり仕事と家庭の両立は母親の問題じゃなくて両親の問題ですよね。今もやっぱり企業も行政も、仕事と家庭の両立の政策は母親だけの支援というような、保育所にしても育休にしてもそういうような部分が多いんですけれども、やっぱり男性が家庭責任を果たせるような政策や制度、プログラムを取らない限りは、どんなに保育を良くしても、どんなに育休を長くしても進行する少子化は止まらないというふうに思います。
 なぜかというと、結局、保育園を増やしても、だれか送り迎えをしなきゃいけない、だれか家事をしなきゃいけない。仕事、家事、育児、三重苦をやっぱり結構豊かな時代に育った若い人たちはやりたくないわけですね。というところで、今のような支援の仕方は、やっぱり女って子育て損よねと思わせるような状況だと思う。
 だから、そこを変えなきゃいけないということは、この男性の長時間労働を減らして、それも企業の業績に悪い影響を与えないような形で、そして男性が家に帰っても居場所があるような状況にする。つまり、男性が、夫が育児とか家事にかかわるとだれが一番得するかというと、夫、父親自身ですよね。子供が懐いて、そして家庭は円満になる。そうなることによって少年犯罪も減っていく。そうすると住みよい社会になるということで、私はなぜ長時間労働をここまで言うかというと、いろいろな社会問題や企業での問題、不況に対しての何か根本的な問題がここにあると思うからです。
#65
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
#66
○森ゆうこ君 自由党の森ゆうこでございます。
 三人の先生方、ありがとうございます。
 まず、パク参考人に伺いたいと思いますが、先ほどはフレックスタイムについて日本でうまくいかなかった理由、いろいろお聞きしたんですが、この裁量労働制につきましても、最近の調査で導入している企業がほんの数%にすぎないと。大企業の中でも三、四%でしたか、ちょっと数字忘れちゃったんですが、そういう話がありましたが、その裁量労働制についてどのようにお考えでしょうか、まずお願いいたします。
#67
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) 日本の場合は、やっぱり本人がプレッシャーを感じ過ぎて余計長時間労働になるというところが裁量労働制やテレワークについて言えると思うんですね。
 だから、やっぱりその自己管理と、何を求められているか、つまり、私は何を出せばいいのよというのをマネジャーと評価をきちっとする、目標をきちっとするということが必要だと思いますし、やっぱり、米国は何か新しいことをするにしても、トレーニングを与えているんですよ。全く新しいことをうまくやれといってもうまくできない場合が多いし、米国の場合、やっぱり効率よくやりたい場合はきちんとトレーニングを与えた方が効率がいい、効果が出る、投資効果が高いということが分かっているので、裁量労働制についてもテレワークについても、マネジャーのトレーニングもありますけれども、実際にテレワークをする本人自身にもトレーニングを与えている。特に、裁量労働制にしてもテレワークにしても、やっぱり自律的な働き方ができない限りは許可はしていないですね。というところもあります。だから、だれでも裁量労働制、だれでもテレワークとかというのではない、かなりやっぱり難しいですからね。というところでよろしいでしょうか。
#68
○森ゆうこ君 はい、ありがとうございました。
 裁量労働制も、結局は日本の場合には長時間労働、逆に長時間労働、働き過ぎというのを生み出しているという、フレックスタイムについてもいろんな同じ理由が考えられるということでございましたが、それでは前田参考人、そして西嶋参考人に伺いたいと思います。
 今、パートタイム労働の均等待遇等についていろいろなお話がありましたけれども、私もこのパートタイム労働の均等待遇ということについて今、議連に参加していろいろ勉強しているところなんですが、今この大変不況の中で、企業側はやはりこれを、均等待遇を実現するともう特に中小企業はやっていけない、企業の倒産につながるというふうな反対があります。
 私も、このパートタイム労働の均等待遇ということだけを進めますとそういう部分もあるかなと思うんですが、これを進めるに当たってはその賃金体系を変えていく、先ほどのお話がありましたけれども、生活給の部分を廃止していくようなことも必要なのではないかと思いますが、このパートタイム労働の均等待遇について、前田参考人にはその賃金体系又は日本の賃金の水準、今後あるべき水準というか、なかなか難しいと思うんですが、そういうところをお願いしたいと思います。それから、西嶋参考人には、企業側の立場でこのパートタイム労働の均等待遇等についてのお考えをお願いしたいと思います。
#69
○参考人(前田信彦君) 賃金体系ですか、これは現在正に過渡期にありますので、そんなに明確に、私も勉強不足のこともありましてそんなに明確にここで証拠をもってお話しすることはできないんですが、先ほど言いましたように、企業が体力が落ちている中で賃金体系を変えていこうとしているのは事実です。男性も例えば年功制をやめて業績給にするという方向に行っている中で、であるならば、賃金が下がることは目に見えているわけですね。
 つまり、日本の稼ぎという点では世帯が中心になっていますから、夫が稼いで妻がパートか専業主婦という形、であるならば、先ほど言ったM字型カーブの落ち込んでいる部分で、働きたいという人には働く機会を提供するんであれば、例えば差別のない、格差のないパートタイムというのを積極的に提言していって、そうすると先ほど言ったようにダブルインカムになるわけですね。ダブルインカムだけれどもワーク・ライフ・バランスが取れた働き方になるというふうに思います。
 だから、賃金体系を変えていこうというときに、男性の賃金体系は痛みを伴うけれども、配偶者の側で例えばそういう積極的に労働システムに参加できるような賃金体系であれば、むしろ労働者にとってはある意味で痛みだけではなくて、世帯全体にとってはプラスになることもあるはずだというふうに考えられます。だから、そういう意味では逆提案の一つの機会ではないかなというふうに私は考えているわけです。
 だから、先ほど私が時間ということを言いましたけれども、賃金というところにもう少し時間と関連して、例えば使用者と組合側がお互いに話し合うという、そういう場があると私は非常にいいんではないかというふうに今のところ考えております。
#70
○参考人(西嶋美那子君) 私、この意見は使用者を代表してという意見ではないので、ちょっとそれはお断りさせていただきますが。
 基本的には、私は、均等待遇ということをきちんと考えるべきだと思っています。というのは、パートタイムと言っているときに、いわゆる今、日本で言っているパートタイムと、それから欧米諸国でやっている正社員のパートタイム、正社員パートタイマーというのとちょっと違うんですよね。そこを整理した上でこれをきちんとしなくてはいけない。基本的には、やはり同じ仕事をしているんだったとしたら、それはやはり同じ賃金、時間が短いからといって賃金が少なくなるというのはこれはおかしいと思うんですね。
 ただ、今の、今までの日本の生産の現場等で使われているパートタイマーというのは、フルタイムであっても、仕事がある程度限られている中で、だからこの賃金ですよといって安く仕組みが作られてきているはずなんですよね。ですから、それは職種とその仕事の内容と賃金が見合った形でそれなりに抑えられているというふうに私は思っているんです。
 だから、本来やっぱりあるべき姿に私はしないと、これからの給与のいろんな仕組みというのも難しくなってくるんですけれども、本当にある程度軽い仕事で、制限をされている中で仕事を任されているんでしたら、これは、給与がある程度低い水準でもこれは仕方がないことですよね。ただ、本当に同じ、全く同質の仕事をしていて責任も同じだけの仕事をしているのに、時間だけ短いのに、一時間当たりのコストが少ないというのはこれはやっぱりおかしい。むしろ、能力によっては、時間は短いけれども、もっと貢献してくれる人なんかもいるわけですよ。本当に頭脳労働で、短い時間だけれども、この時間でしっかり勝負してくれる人たち、そういう人たちは当然お給料が高い、若しくは正社員でフルタイムで働いている人よりも短いような人たちなんかももう現実出てきているわけですよね。だから、ここの整理をうまくしないで、均等待遇がおかしいという議論そのものが私はクエスチョンマークを持っているので、本来のあるべき姿にやはりきちんと見詰め直していく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
#71
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 西嶋参考人に続いて伺いたいんですけれども、先ほど、一番最初の説明の中で労基法の改正も必要ではないかというふうな御発言があったんですが、もし具体的にこの点で改正をすることが必要ではないかというものがございましたら、是非お願いしたいと思うんですけれども。
#72
○参考人(西嶋美那子君) いい加減なことを言ってしまうと怒られるので、ちょっときちんと分かっているところだけ。
 先ほど裁量労働制のお話が出ていましたけれども、言わばあそこがホワイトカラーのある程度の限ったところで認められているというような仕組みもありますよね。ですから、もう本当にホワイトカラー全体が私は裁量労働制、当然やっておかしくないと思いますし、人事だってもう、完全にもう裁量労働でやって、アウトプットさえ出ればいい仕組みだと思うんですね。だから、いろんなところで、過去こうだったというところに引きずられて思い切った変更ができないというところが見られているので、現状に合った形、若しくは、やっぱり戦略的にそこを緩めることによってこっちの方に持っていけるだろうと。
 日本の制度というのはどうも後付けで、もう仕方がなくて、ぎりぎりになってからやっと制度が変わっていく。どうも、欧米のいろんな法律やなんかを見ていても、逆に、その仕組みを変えるために法律を変えていくというような動きがあるような気がしていて、日本の法律の問題、どうも後手後手に回っているような気がしているので、その辺を是非御検討いただけたらなというふうに思います。
#73
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 私も大変同感でございます。新しいグローバル社会に適応する、要するに日本の企業が国際競争力を保っていけるようなそういう労働市場にする、そういう環境を作っていくために政策がむしろ、又は法律がむしろそれを後押ししていくというか引っ張っていくような、そういうものを、ここは立法府ですから、私たちが作らなければいけないんですが、おっしゃるように後付けではなく、そのような新しい仕組みにインセンティブを与えるような法的整備を行っていかなければならないと思いますが、今のこういう件について、パク参考人、もし何か御意見がございましたら最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#74
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) アメリカの場合はどちらかというと、この仕事について幾らという形でジョブディスクリプションもはっきりしていますので、やっぱり私は、ちょっと日本のお給料システムは余りよく分からないんですけれども、もうちょっとそこを、何に対してお金払っているかというのを明確にして、価値の高いものにはそれだけの高いものを、そうでないものにはそれなりに払っていくようなところにやっていかないといけないと思います。
 だから、同じ仕事をして、ラッキーで正社員になってお給料が高くて、アンラッキーでパートで同じ仕事をしてこれだけ低いのという、やっぱりこの不公平さと言おうか、というところは、ただ、やっぱり違う仕事をしていたら別ですよね、あの人はこの仕事をしているからというところで。アメリカの賃金体系も年功序列じゃないですから、例えばカスタマーサービスをやって二十年しても、賃金の天井があるから二十年しても余り高くならないのに、日本はカスタマーサービスでも、二十年カスタマーサービスをすればすごく高いお給料になるわけですね。じゃ、アメリカのカスタマーサービスは高いお給料をもらいたかったらどうするかというと、スキルアップをして、よりグレードの高い、価値の高い仕事に移っていくという形でレベルアップしていますから。日本の場合は、自分のレベルが上がらなくても年とともに上がっていくと。アメリカの場合は、やっぱりやった分だけ、あなたが出した分だけ上げるわというようなところで、ただそれがやっぱり年を取るごとにスキルアップをしなきゃいけない現状が本人にとってもいいと思うんですね。
 つまり、この会社をいつ首になっても、私は少なくとも同じぐらいのレベルで隣の会社に行けるわという、ここがやっぱり今後の日本の大きな問題だと思います。特に、もう終身雇用もキープしてくれないのにやっぱりスキルアップをさせる時間もお金もくれないというのは問題だと思いますよね。
#75
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
#76
○和田ひろ子君 きっと最後になるんですか、今日はワーク・ライフ・バランスとか、ダイバーシティーとか、オランダ方式とか、本当に大変いいお話を聞かせていただいてありがとうございます。
 日本のワークシェアリングって、今すごく問題になっていますが、雇用がもう危機状態だから、もう経済が恐慌だから、だからワークシェアリング。でも世界では違っていて、もう企業が優秀な人材を求めるためにそういうワーク・ライフ・バランスとかそういうことを考えていて、日本とは本当にそういうことが根本的に違うんだなということをよく勉強をさせていただいたと思います。
 ちょっと振り返って、日本は、女性が社会進出をするというと、いつも言われるように、少子化の原因であるとか、子供が非行に走るとか、そんなことを女性だけに、母親だけに押し付けていいんだろうかと、みんなずっと言ってきたことなんですけれども、東京都のアンケートによって、男性に、例えば子供を育てるに当たってどんなことを望むかといったら、男の人は保育料を安くしてもらいたいとか、教育費を安くしてもらいたいとか、そういう要望だったんだけれども、女性は育児休業を充実してもらいたいとか、育児の時間をくれというような制度の充実とか、女性のニーズと男性又は行政側のニーズがすごく違うんですね。
 やっぱり日本の場合は、女性に対してもっともっと考えていかなければいけないなという思いでずっと聞いていたんですが、私が質問したいということはみんな質問していただいたので、視点をがらっと変えて、世界の中ではこういうライフスタイルが変わってきた中で、子供に対するケアというのはどういうふうにしているのかなということと、あと、女性が働いたり、男性も女性もそうなんですが、こういうことによって晩婚とか独身とか、結婚をしない男の人、女の人が増えていく心配なんというのは世界ではないんですか。そのことをお尋ねして終わります。三人の先生から。
#77
○参考人(前田信彦君) 後者の問題ですが、そういうことで独身が増えているかどうかというんですが、そもそも結婚というのが若干欧米諸国と考え方が違う。オランダの場合ですと同棲ですね。日本でいうと、日本語の同棲って何か余りいいイメージがないんですが、コハビテーション、一緒に住む、結婚、籍を入れないで住む男女の割合が非常に増えています。これは別に働き方がどうのこうのというよりも、むしろそういう結婚に対する一つの考え方がヨーロッパでは違うということがあると思います。だから、直接その働き方がそういう影響を及ぼしているというのは、直接の因果関係は今のところ私は直接は聞いておりません。
 それからもう一つ、働き方が変わる、ライフスタイルの多様化が進むというときに一つ私押さえておかなければいけないと思うのは、働くということだけじゃなくて、常に家族とそれからコミュニティーの活動と非常に有機的に結び付いているということです。
 例えば、オランダで、この間お客さんが来てちょっと話をしたときに、ごみ問題とカラス問題もオランダであるんだそうです。私も、実は杉並の善福寺というところに住んでいまして、善福寺公園はカラスが物すごく多くて困ったことがあるんですが、そのときにどうしてこれを解決できないかというと、やはりそれは行政が先頭に立ち過ぎてもうやっぱり住民のニーズが把握できないという問題があります。
 オランダでどうしているかというと、ハーグという、チーズで有名な町なんですが、そこでやっぱり時間外にごみを出す人がたくさんいて、それをカラスがつっつくのでごみが散らばってしまう。そのときにどうしているかというと、あるイニシアチブを取った人が町内会にレターを配るわけですね。レターを配って、何月何日に夕食後にみんなで集まって話しましょうと。そのときに、女性だけじゃなくて男性も大体七時ぐらいから一時間ぐらい掛けてカラス問題についてお茶を飲みながら話すんだそうです。そこでコンセンサスを得て市役所に陳情に行くというようなことを取っている。つまり、そうすることによってその地域住民のニーズが分かるわけですね、行政は。
 問題は、その七時と八時の間にオランダ人が集まれるというところが一つのポイントなわけです。日本人の男性は、七時や八時にお茶を飲みながらカラス問題を地域で話せるかというと、それができない。正に、そこで時間ということが問題になってくるわけです。つまり、働き方というのはそのように時間を通してコミュニティーとか家族と密接に結び付いているということです。
 私が働き方の多様化と言うときは、単にお金を稼ぐということと同時に、コミュニティーあるいは家族という、いわゆる生活環境といったものをトータルに考えていくワーク・ライフ・バランスの一つのきっかけになるのではないかというふうに思っています。
 ちょっとお答えになっているかどうかは分かりませんけれども、オランダの事例ということでお話ししました。
#78
○参考人(西嶋美那子君) 結婚観に関しては私も余りよく分からないんですが、結婚も離婚も再婚も割と多く、働きながらそういうところを繰り返している人たちがいるように私は思っています。若いうちに結婚されて、そしてまた子供を育てながら離婚をされてという方たちもまた再婚をしたりしていますので、世界じゅうでその動きは同じようなのではないかなと。
 それからもう一つは、やはり結婚という形にこだわらずパートナーとしてという形が、日本の中ではまだなかなか正式に認められていない部分がありますけれども、やっぱり欧米の社会ではかなり進んでいるというふうに思っています。
 その中で、実は、正式な婚姻関係でなくても子供ができるケースというのは結構あって、それが逆に、日本の少子化の問題のときに本当はそこまで議論しなきゃいけないんじゃないかなという、日本のそういう習慣というものを考え直すいい時期なんじゃないかなと思った時期がありました。
 それから、世界の中で子供に対するケアがどうなっているかというお話。これ、ちょっと御質問の趣旨とは違うかもしれないんですが、私どもIBMでは、グローバルにワーク・ライフ・ファンドというお金を設けて、これはディペンデントケア、つまり、育児だけではないんですが、介護の問題にも投資をしていこうということで、もうこれは五年以上前から始まっているんですが、最初はアメリカだけで始まった仕組みをグローバルに持っていこうということで、私のちょうどポケットに今お金が入っているのが五億ばかりあるんですが、それはアジア、パシフィック全体で使っていこうとするお金なんです。
 基本は、IBMが託児所を作るということではなくて、地域の託児所に、そこを充実する、若しくは拡充するような形で、若しくは新しく作る場合でも土地ですとか建物を造るときに最初の初期投資だけをして、運営は地域のNPOなりそこでずっと活動をしていらっしゃる方たちに任せて、IBMの社員と同時に地域の方たちにも利用してもらう仕組みを作るということで、かなりこれはグローバルに広げてきています。
 ただ、同じ仕組みを日本の中で作ろうとしたときに、日本の場合は非常に巨額、大きなお金が掛かるということと、一企業がお金を出して、だから社内託児所ということじゃないんですね、だから地域への託児所ですけれども、それを作ったときにやはり公の、例えば市のある補助金ですとかそういうのが使われると一企業に優先的に席をくれるという仕組みができないものですから、逆にやりづらいんです。これは非常に私は、これからの在り方として、やはり企業がある程度お金を出した場合に企業にもメリットがある、でも地域にも還元するんだからというような動きって非常にいい仕組みだと思っているんですが、そんな形で今、日本でやろうとするとちょっと問題にぶつかっているところがあるんですが。
 そのファンドを使って実は去年いいプログラムが出たのが、夏休みに子供たちが、サマーキャンプと言ったらおかしい、五週間、いろんなプログラムに参加できるような仕組みを作ったんですね。これは実は私どもがお金を出してYMCAさんにプログラムを考えていただいて、うちの社員だけではなくてその地域の方たちも参加できるようにしたんですが、両親が働いている場合って夏休みがすごく大変なんですよね。これまで欧米の社会ではそういうことがかなり浸透していましたから、アメリカなんかではサマーキャンプというのは非常にうまく使われていたんですが、日本にはそこの仕組みがまだなかったものですから去年私どもがそのファンドでお金を出してそういう仕組みを作って、また今年もやっていくと思いますけれども、そんな仕組みを作りつつあります。
 ですから、子供に対するケアだけではないんですが、私どもIBMではディペンデントケアに関してはそういうお金を有効に使おうということで動きが出ているというのを参考までにお話しさせていただきました。
#79
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) まず、結婚率のことですけれども、ヨーロッパと違ってアメリカ人は結婚したがるんですね。離婚もするけれども結婚もしたがると。ヨーロッパの場合、多分、税金とかいろいろな問題も含めて事実婚が多いということを聞きますけれども、アメリカは実際結婚する形を取って、でもうまくいかなかったら別れて、だから再婚同士もとても増えているということがあります。
 ただ、アメリカの場合はやっぱり、さっき夕食の話をしましたけれども、なぜ夫がマネジャーでもエグゼクティブでも夕食とか一生懸命一緒に食べるとか家族を大切にするかというと、家族を大切にしないんだったら何で一緒なのよと離婚されるわけですよね。だから、家族を大切にしないイコール離婚になっているというものも含めて、それがすべてじゃないですけれども、やっぱり現実問題として離婚はやっぱり五〇%近いということがあります。
 みんなやっぱり離婚はしたくないんですよということと、あと、二十年前のある調査結果があったんですけれども、二十年前に比べて今の父親の方が家事時間が一時間ぐらい増えていますね。そして子供と過ごす時間も増えている、二十年前の父親よりは。その分母親の家事時間が三十分ぐらい減っていました、父親がやる分。ところが、子供と過ごす時間は減っていない。つまり、父親も母親も自分の自由時間を減らしながら、仕事時間が増えながら、育児、そして子供と過ごす時間というのを増やしています。
 ですから、私は子供が小学校と保育園にいるんですけれども、例えば保育園の保護者会や子供の授業参観とか保護者会というのは昼間あるんですけれども、ほとんどママしか来ないんですね。海外ではやっぱり両親が子供の保護者会や授業参観に出席することは当たり前なんです。だから、家族のいろいろな在り方が当たり前じゃない、でも、それが日本では当たり前になっているというところがすごく怖いというところがありますね。
 それで、最近、この離婚率の高いアメリカでさえもこの三、四年ぐらい離婚率が減っています。ところが、日本では十二年連続離婚率の増加というのをこの前の厚生労働省の結果で見たばかりですけれども、結婚率も減って、出生率も減って、離婚率だけが十二年間連続増加しているということがありますよね。
 一つ、裁量労働制でアメリカのマネジメントとかエグゼクティブはどう裁量労働制を使っているかというと、例えば御飯を一緒に食べる。やっぱりもう七時ぐらいには家にいなきゃいけないとなれば、七時に家に帰って御飯を食べて、そして八時半とか九時に子供が寝たころからまた仕事をするという人もとても多いです。アメリカ人はまた朝も早いですね。朝六時、七時から起きて仕事というのもかなり多くやっていますので、そのようにしながら何とか家族で一緒に過ごす時間というのを努力して取っているということがあって、そしてやっぱり今の二十代というのがちょうど離婚世代なんですね。親が離婚して育った世代というのは家族が一番大切。だから、仕事も家庭も私生活も大切にしたいというところで、企業に一生懸命そのサポートをしろというような動きになっています。
 あともう一つ、保育のあれですけれども、アメリカもそしてアジアも保育は悲惨ですね。だから、企業がそういう負担度があると思うんですよ。ヨーロッパは私は余り分からないですけれども、北欧の方ではとても手厚いと聞いていますけれども、アジアも保育はそんなに充実していませんし、アメリカも、国がやっていないというところで、企業がやる必要性が高くなった。ところが、これだけ多い共働きのうち、やっぱり全然数が足りないというか充実していないというので、アメリカの共働きというのはとにかく保育施設を充実しろと。
 あと育休も一年取れるというのも手厚いです。アジアもアメリカも大体無給で十二週間というのがスタンダードですね。だから、私ね、日本で保育と育児休暇をもっと手厚くと、これだけ手厚いのにというところがあって、ただ、にもかかわらずアジアもアメリカも続けられるワーキングマザーが多いんですね。フルタイムでプロフェッショナルな仕事を続けられるワーキングマザーが多い。つまり、保育とか、特に育児休暇の長さではなくて、戻ってきたときに働き続けられやすい環境を企業が提供しているということです。
 さっき言ったように、みんなが子供よりも仕事が好きじゃなくて、辞めたいママだってたくさんいる。自分の子供はだれだって自分の手で育てたいんです。ただ、余りにも今不確実性の時代なので、やると夫が自殺をするかもしれないと思うと怖くてできないんだと思います。
#80
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。
 今日は、前田参考人、西嶋参考人、パク参考人、貴重な御意見ありがとうございました。
 今のお話とは続くようなお話なんですけれども、ワーク・ライフ・バランス、このライフというのは今までのお話ですと、やはり労働する人、働くお父さん、お母さんの観点からいろいろなお話だと思うんですが、子供さんのライフ、子供を持っている、仕事をしている方、家族にとって子供さんの視点からこのバランスを取っていくということも大事なのではないか。
 アメリカなんかで映画で「ホーム・アローン」みたいなのがありますけれども、たまたま一人で残されてしまった。親の立場からいけば、そういう社会のいろんな子育てシステムはあるんですけれども、たまたまああいう形になっている。ハッピーエンドで終わったからよろしいわけですけれども。子供の視点からいけば、もっと違った意味で企業に何というか、配慮を求めるという考え方があるんじゃないかと思うんですね。
 男女共同参画社会ではファミリーフレンドリーカンパニーといいますか、ファミリーフレンドリーな企業というのが非常に重要視されていますけれども、今度はチャイルドフレンドリーカンパニーといいますか、子供さんの権利、ネグレクトされない、そういう子供さんを大事にする企業というような観点で社会の整備といいますか、していけば、もっとより、ファミリーフレンドリーカンパニーよりも一歩進んだ良い社会になるんじゃないかなという思いがあります。
 例えば、片親だけはとにかく家庭にいなきゃいけないというようなことで交代交代に休みを取るというんじゃなくて、食事のときには両親が来る時間を工夫する、こういうことを私たちの企業はしていますよというような、そういうもう一歩進んだ考え方があっていいんじゃないかなと思うんですが、こういうことはいかがでしょうか。三人の参考人の方々に質問をさせていただきます。
#81
○参考人(前田信彦君) チャイルドフレンドリーという言葉は非常に興味深く聞かせていただきました。これは恐らく少子化の問題にもつながってくるかというふうに思うんですが、やはりこれだけ子供が少ない、なぜ子供を産まないのかという、その子供が産めない、産みたくても産めないとか産まないということを改善するという一つの政策だというふうに思いますが、いろんな理由がありますが、例えば、人口学的に言えば晩婚化が進んでいるとか、仕事と家庭生活の調和が取れないから子供を産めないんだというのもありますが、もう一つは、例えば健康な子供が生まれてくるということが一応前提とされているんですが、日本の私は例えば障害児の就業問題というのも少し関心がありまして、例えばそういう子供が普通の健康な子供と同じように学校に行って、それで働けるかというと、そうではない。何かやっぱりハンディが非常に大きい。そうすると、やっぱり何か安心して子供を産めないという状況が私はあるんではないかというふうに思っています。
 だから、少子化というと、常に健康で労働力再生産の担い手としてというのが非常に出てきますが、そうではなくて、たとえ多少障害があられたとしても、それは普通の健常の子供と一緒にきちんと働けるような権利を持つということ、そういうことを前提に考えていかないと、なかなか少子化問題というところまで、解決まで行かないんじゃないかというのが私の考えです。だから、チャイルドフレンドリーなというのを非常に私も大切だと思いますが、そういうもう少し広い意味での子供のケアということもやはり考えていくべきだというふうに私は思います。
#82
○参考人(西嶋美那子君) 私は、これは日本ではそうじゃないのかと聞かれたことがあったので、ああそうかと思ったんですが、ニュージーランド、オーストラリア、それから多分アメリカもそうですけれども、十三歳以下の子供を一人で家に置いておいてはいけないと、何かどこかに法律ありませんか。十三歳以下だとたしか子供を一人で家に置いておくということは親が罰せられるという。そういう法律ができていれば、どちらかがやっぱりお家にいるということを当然考えるだろうし、そういう仕組みが出てくるのかなとか、今のチャイルドフレンドリーというのは、私は企業に求めるのではなくて、地域に求める若しくは国に求めるということをしていきたいなというふうに思っています。
 じゃ、企業はどうかというと、親の働く視点でとおっしゃって、親だけでしょうというふうにちょっと取られたんですけれども、私はそうは思っていません。親の働く視点ということは、もちろん子供にとってもいいという視点が当然入ってくるし、もちろん子供にとって、親として自分の子供にとって何がいいかということを考えた上で、親がどう考えるかと判断してきているはずですから、そこも含まれてのワーク・ライフ・バランスという問題だと思っています。
 やはりこの問題というのは、子育てというのは地域でどう育てていくかというのが非常に重要な問題だと思うんですけれども、今日本の中で、昔はあったと思うんですね、子供を地域で育てようという。それがどうも日本の今の社会の中には欠けている。これがやはり企業でも手を出せない部分、若しくは国の法律の中でできない部分かもしれないけれども、地域の中でカバーし合えるものというのがないので、ちょっとがたがたしているのではないかなというふうに感じているところです。
#83
○参考人(パク・ジョアン・スックチャ君) そうですね、子供に対してのワーク・ライフの取組というのも幾つかありまして、先ほどお伝えしましたように、アメリカの場合は、自分で子供を産めなかったら、フルタイムで働いていても養子縁組をするぐらい子供が好きなんですね、二・一ですからね。だから、子供に対してはすごく企業もコミュニティーもとても寛容だと思います。そして、ワーク・ライフの取組というのはもう百何十種類ありますし、大企業と小さい中小企業では取り組み方が違っている部分もあります。
 小さいところで私が聞いたことがあるのは、子供を会社に連れてきてもいい、どうしても保育がない場合は子供を会社に連れてきてもいい。そこでプレールームがあるとか、隣の人と、何というのかな、交歓し合いながら何とかするとかね、というのもありますし、あと、サマープログラムをかなりサポートするということとか、あとよくあるのは、一年に一回か一年に何回か分からないんですけれども、子供が親の働く姿を見る日といってチャイルドデーとかドーターデーとかあるんですけれども、そしてその一日は会社に来て、いろんなアクティビティーがあって、親がどういうことをしているのかな、どういうところで働いているのかなというのを見ることもできるような。
 昔、初めはやっぱり女性のロールモデルが少ないといってドーターデーと言っていたんですけれども、最近、男の子だって見せてよという親も増えてチャイルドデーに変わったりしてきていますね。でも、それもワーク・ライフの一つの取組として、子供に親の働いている姿や場所を見てほしいというような取組をやっています。
#84
○渡辺孝男君 ありがとうございました。
#85
○会長(勝木健司君) 他に御発言はございませんか。
 それでは、以上をもちまして参考人に対する質疑を終了いたします。
 前田参考人、西嶋参考人及びパク参考人には、御多用の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
 本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査の参考にさせていただきたいと思います。本調査会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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