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2003/04/24 第156回国会 参議院 参議院会議録情報 第156回国会 法務委員会 第8号
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2003/04/24 第156回国会 参議院

参議院会議録情報 第156回国会 法務委員会 第8号

#1
第156回国会 法務委員会 第8号
平成十五年四月二十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                荒井 正吾君
                市川 一朗君
                千葉 景子君
                荒木 清寛君
                井上 哲士君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                野間  赳君
                江田 五月君
                鈴木  寛君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    増田 敏男君
       文部科学副大臣  河村 建夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
       財務大臣政務官  森山  裕君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推
       進本部事務局長  山崎  潮君
       法務大臣官房司
       法法制部長    寺田 逸郎君
       文部科学大臣官
       房審議官     清水  潔君
   参考人
       日本弁護士連合
       会副会長     尾崎 純理君
       早稲田大学法学
       部教授      宮澤 節生君
       龍谷大学法学部
       教授       村井 敏邦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般
 職の国家公務員の派遣に関する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件

    ─────────────
#2
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、日本弁護士連合会副会長尾崎純理君、早稲田大学法学部教授宮澤節生君及び龍谷大学法学部教授村井敏邦君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず尾崎参考人、宮澤参考人、村井参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、尾崎参考人からお願いいたします。尾崎参考人。
#3
○参考人(尾崎純理君) 御紹介いただきました日本弁護士連合会副会長の尾崎純理でございます。
 本日は、このような機会をお与えいただきましてありがとうございます。
 多少の自己紹介をさせていただきたいと思います。私は、一九四七年生まれ、団塊の世代に属します。受験信仰の中に育ち、全共闘世代でもありましたので大学にまともに通わない、一発試験の恩恵を受けて弁護士となり、三十年を過ごしてまいりました。プロセスを経ていない法曹として、常日ごろ自分自身、何となくいかがわしさを感じつつ弁護士人生を送ってきた者としての反省を踏まえて意見を述べさせていただきます。
 それでは、内容に入らせていただきたいと思いますが、本日、この意見は私の責任において行いますが、本日随行しております椛島日弁連司法改革調査室副室長の協力を得たことを付け加えさせていただきたいと思います。
 最初に、本法案の意義について述べさせていただきます。
 現職の検察官、裁判官が、その実務経験を基礎にしながら、法科大学院において法曹養成のための教育を行うことは有意義なことと考えます。法科大学院の立ち上がり時期においては、法曹三者及び関係各位の協力の下で検察官等実務家教員の安定的な供給を確保することを目的として、本法案のように派遣というスキームを設けることについては一定の合理性が認められるものと考えます。したがいまして、私はこの法案の成立には賛成する立場であります。
 しかしながら、この派遣というスキームによって現職の検察官等が法科大学院の教員になることは、積極的な側面にとどまらず、以下に述べるような懸念が存在することもまた事実でございます。したがいまして、今後、定められた政省令の内容や、定められる政省令の内容や運用の中でそのような懸念を現実化させないための工夫が求められているものと考えます。
 以下、幾つかの点について指摘させていただきたいと思います。
 まず第一の点でございますが、だれを派遣するかという点については、最大限法科大学院の要請を尊重した人選が行われる必要があると考えます。
 本法案によると、法科大学院サイドは一般的な希望を要請段階で述べるにとどまり、その希望を踏まえて検察庁、裁判所側は適任者を派遣するという形になっております。検察庁等の対応によっては、法科大学院サイドの要請と実際に派遣される検察官等との間にミスマッチが生ずる危険性は否定できません。法科大学院と例えば検察官個人が直接交渉し、話がまとまったならば検察庁がこれを認めるといった方法も確保するなど運用の上で、運用の上で十分な配慮が必要なのではないかというふうに考えます。
 第二でございます。このスキームを通じて派遣される検察官等についても、学問の自由を保障された大学の構成員として自由な教育を行うことが現実的に確保される必要があります。
 派遣される検察官等が法科大学院が目指す実務と理論を架橋する教育を実践していくためには、派遣元である検察庁等が行っている実務の運用や方針に対し無批判的であってはなりません。
 私は、一九九六年から四年間、住宅金融債権管理機構あるいはRCC、整理回収機構において専務取締役として勤務いたしましたが、その間、大変優秀な裁判官、検察官、行政官あるいはまた銀行の銀行マンと一緒に仕事をする非常に貴重な経験を得ることができました。大口悪質先の債権回収、破綻した金融機関の経営者責任の追及などで、RCCは社会から一定の評価をいただいたと自負しております。このような評価をされる実績を上げることができたのは、彼らが優秀であったということはもとより、しかしながらそれだけにとどまらず、やはりそれぞれのカルチャーを異にする者がその異なるカルチャー同士を遠慮なくぶつけ合うことによって、マグマのような新しいエネルギーを発生させることができたから、そのような成果が発生、成果を生むことができたんじゃないかというふうに私は考えています。
 理論的教育と実務的教育の架橋により、公平性、開放性、多様性の確保を目指すロースクールは、日本の文化系高等教育改革の先陣を切るものと位置付けられております。改革を行う以上、理論家も実務家も現状に対する真摯な反省の上で共同作業の制度設計をしていかなければなりません。何のエネルギーもない冷え切った現状肯定の上に学者も実務家も無反省にタコつぼ的にすみ分けてしまえば、ロースクールに通う学生にとっても、さらには質量の充実した法曹を望むユーザーである国民にとっても、極めて不幸なことになると思います。そして、またしても税金が無駄遣いされるという我が国の悲しい経験を増やすだけになる、そういう危険性があるということを、私としては指摘しておきたいと思います。
 現在、派遣元である検察庁や裁判所が研修、教材作成、情報提供などでバックアップを計画していると伺っておりますが、改革の志を同じくする者としてこの点の配慮を是非お願いしておきたいと考えるものであります。
 第三に、衆議院法務委員会や火曜日の本貴委員会の審議においても繰り返し指摘されている点でございますが、派遣される検察官等が法科大学院の教授会の構成員となってその管理運営に関与することについては、法科大学院の自治、とりわけ教授会の自治を侵害する結果にならないよう十分な配慮が必要であると思います。
 とりわけ、検察官については、法科大学院にフルタイムで勤務する状態であること、及びいわゆる連携法の法務省と法科大学院との関係等から裁判官以上に慎重で抑制的な姿勢が必要であると考えられます。例えば管理運営面に関与しない勤務形態も予定されているので、運用上そのような教員制度を利用することも積極的に考慮されてよいのではないでしょうか。
 第四に、派遣に際しては、その基準並びに手続が公平で透明なものであり、またジェンダーの視点も当然必要であると考えます。
 例えば検察官については、初年度である平成十六年度は派遣要請のあったすべての法科大学院の、法科大学院に現職検察官を派遣することは容易ではないと伝えられております。しかしながら、現職検察官等の派遣を希望している法科大学院に対して最終的に派遣がなされないことになれば、法科大学院によっては設置基準を満たされなくなって、設立を断念せざるを得ない事態にもなりかねません。このような重大な意義を持つものですから、要請があった法科大学院に派遣するか否か、どのような人物を派遣するかについては、公平で透明な基準と手続によって決せられることが不可欠です。派遣教員名を白紙で設置申請をしたけれども、最終的には教員派遣がなされず、その結果、法科大学院の設立を断念せざるを得なくなったという事態が万が一にも生じないよう適切な対応がなされることは必要であると考えます。
 第五番目でございます。給与補てんの問題です。
 これについては、法案十三条にある特に必要と認められるときという点についての適切な運用が必要と思われます。
 この点に関し、衆議院法務委員会の審議で推進本部の山崎局長は、適任者がその地域にいない場合であるとか、大都会でもOBをいろいろ探したけれども適任者がいないなど、派遣をすることが本当に必要だという場合が特に必要と認められるときであると答弁されておられますが、誠に適切な答弁と考えます。このように運用していただきたいと思います。
 補てんする給与の額についても、派遣検察官等の生活水準や他の法科大学院教員の報酬等の額との差を考慮して、必要不可欠と認められる限度で補てんされるべきであると考えるものであります。
 最後になりました。この法案の派遣というスキームについては、運用状況を継続的に検証し、検証結果に基づき必要に応じて見直しが行われるべきであると考えます。
 なお、私が配付しております資料、有識者によってこの司法制度改革に関して非常に建設的な意見を述べられております司法改革国民会議の要望というものをお配りしております。この三ページに法科大学院の在り方ということが書いてありますので、御参照いただけたらというふうに思います。
 冒頭にも申しましたとおり、この法案に基づく派遣は、法科大学院の立ち上がり時期には一定の合理性を持った制度であると考えます。しかしながら、法科大学院制度が安定し、派遣スキームによらなくてもOBやあるいは一時的に身分を離れる裁判官、検察官教員を安定的に供給できる状態になれば、法案を存続させる必要性はなくなります。また、この派遣スキームが実際に運用される中で、これまで指摘させていただいたような懸念が実際に生じていないかどうか検証される必要があると思います。
 したがいまして、いわゆる連携法附則の十年という見直し時期ということを待つことなく、より早い時期に、例えば派遣教員の任期が三年で一サイクルになっておりますから、その二回りする六年程度をめどに、その運用状況について、法曹、法科大学院そして法科大学院の学生らの視点も踏まえた上で全面的な検証が行われる必要があるというふうに考えております。そして、検証の結果、いずれにいたしましても、検証の結果を踏まえ、法案自体の廃止という選択も当然考えられるべきであると考えております。
 いずれにいたしましても、この法律がロースクールの初期の段階において高い評価を受けるべく、関係者一同、運営面で工夫を凝らしつつ協力していきたいと日弁連としては考えております。さらには、良いロースクールを立ち上げるためには、派遣法にとどまらず、大学院にも個人にもあるいは第三者評価機関に対しても従来に比べるならば大規模と言い得る財政措置、財政支援が必要であることを強調いたしまして、発言を終わらせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
#4
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、宮澤参考人にお願いいたします。宮澤参考人。
#5
○参考人(宮澤節生君) 宮澤でございます。
 このたびは、法科大学院の命運を制する可能性を持つ重要法案の審議に際して参考人としてお招きいただき、誠に光栄に存じます。
 持ち時間が限られておりますので、まず用意した文章を読ませていただきまして、詳細につきましては後ほど御質問をいただきたいと存じます。
 また、お手元に若干の資料をお配りしましたので、お時間がおありの際にでも御参照いただけましたら幸いに存じます。
 ところで、私は、日本で法学部を出て法学博士号を取り、アメリカで社会学のPhDを取った法社会学者であります。研究テーマは司法制度全般をカバーしておりまして、最近では司法制度改革専門誌であります「月刊司法改革」や「カウサ」といった雑誌の編集、執筆に携わっております。ごく最近では、ここ十年間ほどのアメリカにおけるロースクール改革のバイブルとなりましたいわゆるマクレイト・レポートの翻訳を出版しております。
 教育経験といたしましては、北海道大学法学部助教授を四年間、神戸大学法学部教授を十七年間務めた後、二〇〇〇年十月から早稲田大学法学部教授として現在に至っております。その傍ら、一九九五年以来、ハーバード・ロースクールその他アメリカ、カナダの七つのロースクールで合計九回、客員教授として教壇に立っております。
 このような研究関心と教育経験を持つ私にとりまして、我が国司法制度を根本的に改革するために、大学院レベルにプロフェッショナルスクールとして法科大学院を設置することは長年の夢でありました。したがって、二〇〇一年六月十二日に司法制度改革審議会、司法審意見書が法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度を提唱されたことは、正に我が意を得た思いがいたしました。その後、関係各位の御努力によって、二〇〇四年四月、法科大学院の設置が確定し、各大学が本年六月末の設置申請を目指して一斉に準備を進める状態となったことは心からうれしく存じております。
 私自身は、早稲田大学法科大学院設置準備委員会のメンバーとして早稲田大学における企画立案に携わってまいりましたし、このたびは、さいたま市の学校法人佐藤栄学園が第二東京弁護士会と提携して設置を目指している大宮法科大学院大学の副学長を委嘱されまして、早稲田大学に辞表を提出し、今年の九月からは大宮法科大学院大学の設置に取り組むことになっております。そのような立場の私にとりまして、今回の審議はひとしお思いが深いものがあるのであります。
 そこで、本日のテーマであります、法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案、いわゆる派遣法が、あるべき法科大学院の設置にとって必要不可欠なものであるかという論点に進んでいきたいと思います。
 なお、言うまでもなく、これから述べさせていただく意見は私個人のものでありまして、早稲田大学や佐藤栄学園の見解ではないことをお断りしたいと存じます。
 それでは、派遣法の基本構造はどうなっているでしょうか。簡単に要約すれば次のように言うことができます。
 一、派遣要請を行う法科大学院側に人選の自由はない。人選は派遣元が行う。二、そのような制約を受けながら派遣要請をしても派遣される保証はない。三、派遣中も派遣元の身分、つまり判検事等としての身分を失うことはなく、必要に応じて一定限度の給与差額を補てんしてもらうことができる。四、派遣の形としては、法科大学院側の意思決定に深く関与することがないパートタイム型のほかに、教授会の一員として意思決定に深く関与することができるフルタイム型も含まれている。このように整理して誤りはないと思われます。
 このような派遣法について、単に実務家教員を獲得する便宜の問題にすぎないかのように論ずる傾向がありますが、私はそのようには考えておりません。パートタイム型はともかく、フルタイム型は大学の一機関として法科大学院を設立することの意義を根本的に破壊する危険性を持ったものであると考えております。
 私が結論として申し上げたいのは以下の四点であります。
 一、法科大学院が派遣対象者を特定せずに、現在の身分を維持したままの派遣要請を行うという方式においては、フルタイム形式を廃止し、パートタイム形式のみにとどめること。二、パートタイム形式においても、中心は、法科大学院と法科大学院教育に意欲を持つ判検事その他公務員の間の自主交渉とすべきであること。そして、今必要とされている法制度は、自らの意思で法科大学院教育に携わる意欲を持つ判検事その他公務員に対してその意欲を発揮するチャンスを与えることを主眼とすべきであって、中央集権的な選別を行うべきではないこと。三、フルタイム教員の場合には、教員在職中、判検事、一般公務員等としての身分を失い、完全に法科大学院に雇用されるものとすること。四、設置審査においてはもちろん、第三者評価においても現職判検事、一般公務員が教員に加わっていないことを理由として不利益な評価を行わないこと。
 以下、これらの結論の理由を述べたいと思います。
 議論の第一の前提は、設置基準における実務家教員の意味であります。設置基準は、専攻分野における実務の経験を有し、かつ高度の実務の能力を有する者と規定しているだけでありまして、その具体化である告示も五年以上の実務の経験としているだけであります。つまり、現職であることを要求しているわけではありません。どのような実務家教員を採用するかは各法科大学院の教育理念やカリキュラムに応じて決まることでありまして、現に採用された実務経験者が適切な教育を行っているかどうかは、実態に基づく第三者評価によって事後的に判定すれば足りることであります。
 確かに、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、連携法は、第三条第三項において、国は法科大学院における法曹である教員の確保のための施策を講ずると規定しております。しかし、連携法は同時に、第三条第四項において、極めて適切にも、「国は、法科大学院における教育に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならない。」とも規定しております。ところが、今般の派遣法は、大学における教育の特性の最たるもの、つまり大学の自治を破壊するのであります。
 大学の一機関である大学院として法科大学院を設置するということは、取りも直さず、法科大学院においても大学の自治が保障されなければならないということであります。この点について、昭和三十八年、一九六三年五月二十二日のポポロ事件大法廷判決は次のように言っております。「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。」と述べております。派遣法立案者はこの判例を知らないようであります。実務家教員を必要とする法科大学院に対して、大学の自治の根幹である教員人事権の放棄を要求しているからであります。
 現在、現職判検事が中央集権的人事によって教員派遣されている機関は、言うまでもなく司法研修所であります。我が国英米法学の最高権威であられた故田中英夫東大教授は、その名著「ハーヴァード・ロースクール」において、司法研修所には、大学に見られるような自律的教授団というものがない。司法研修所教官は、最高裁判所によって任免され、大学教授のような身分保障はない。このことは、司法研修所での修習を、大学での教育に比して現行制度、現行法に対する批判的精神のより乏しいものにするおそれを伴うと警告して、大学にプロフェッショナルスクールとしての法学教育機関を設置する意義を示唆されたのであります。
 派遣法は、運用次第によっては、故田中教授が警告した司法研修所教官の問題点を司法研修所から大学に拡大する結果をもたらすものであります。このような私の批判に対しては、派遣を要請するかどうかは各法科大学院の自由であるし、派遣要請をしなかったからといって設置認可や第三者評価において不利益に扱われることはないという反論が容易に予想されます。
 確かに、制度の建前はそうであります。しかしながら、実際には、多くの法科大学院関係者が、派遣要請をしなければ、また現職判検事を教員に採用していなければ、何らかの不利益があるのではないかと考え、カリキュラム上は本来不必要であるにもかかわらず派遣要請を行わざるを得ないと感じていることは明らかであります。
 このような悩みを伝えてくる他大学の教員は多いのであります。それに対して、私が、無理に派遣要請することはないではないかというふうに言いますと、そのように言い切ってしまいたいところですが、本学のポジションはそんなに良くないのでいろいろと気を遣うことになると思いますと、このような答えが返ってくるのであります。これが現場の声なき声であります。
 派遣教員が自分たちの教育内容や教育方法を共有する存在にはなり得ないのではないかということに悩んでいるわけで、本来不必要であるにもかかわらず、後難を恐れて派遣申請を行おうとしているのであります。これまで批判の声を上げた学者グループが、司法改革フォーラムとそのメンバーである安念潤司教授しか見当たらないという事実は、制度への歓迎を意味するものではなく、じっと息を潜めているにすぎないと理解すべきであります。
 また、去る三月二十七日の法科大学院協会準備会総会において、派遣要請を受理したからといって実際に派遣できるとは限らないと明確に述べられております。これは、取りも直さず、派遣側が法科大学院の生殺与奪の権力を持つことにほかならないものであります。
 ここで指摘させていただきたいのは、派遣法のような制度がなくても、これまでにも判検事を辞職、退職して大学の通常の給与で大学教授になられた判検事、とりわけ裁判官は相当数に上るということであります。例えば、早稲田大学にはそのような方は複数おられます。したがって、自主的に大学教員になろうとする方こそ望ましいのでありまして、そのような人材の発掘は各法科大学院が直接判検事と交渉する自由を認めさえすればそれほど困難なことではないのであります。
 それに対して、本人の同意を要件とするとはいえ、基本的に職務命令で、しかも一定の収入を保証されなければ法科大学院教員になる意思はないなどという方は、むしろ法科大学院には適していないというふうに私は考えます。
 また、地方大学、中小大学にとっては派遣法が不可欠であるという反論もあり得ます。しかし、本当にそうでしょうか。設置基準で要求される専任教員の最低数は十二名であります。これで入学定員六十名の法科大学院を作ることができます。十二名の法学者がいない法学部などはあり得ません。
 問題は、法学部を残すのではなく、法科大学院に全力を集中するという高度の見識を持っているかどうかであります。しかも、そのうち三割、つまり四名の実務家教員がいればよいのであります。現職にこだわりさえしなければ、全国から人材を集めることは困難ではありません。つまり、法科大学院設置者に高度の見識があり、しかも現職判検事が不可欠であるという思い込みさえなければ、地方大学や中小大学においても教員人事は可能なのであります。
 以上の理由から、私は、既に述べた四点の結論を提起させていただいたのであります。簡単に言いますと、この法案は相当の修正を要するというのが私の立場であります。
 諸先生方の御賢察を心から祈念いたしまして、貴重な機会をお与えいただいたことに対して心からお礼申し上げたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#6
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、村井参考人にお願いいたします。村井参考人。
#7
○参考人(村井敏邦君) 村井でございます。
 本日、参考人として意見を陳述させていただく機会を与えられまして、大変うれしく思っております。私は、現在、龍谷大学という京都にある小さな私立大学ですが、私立大学の法科大学院設置委員長ということで、法科大学院の設置の準備に日夜追われている身であります。そういった立場から、今回の派遣法案について御意見を申し上げたいと思っております。
 若干の紹介を兼ねまして、資料として、法科大学院について書きました二つの論文を資料として添付させていただきました。
 自己紹介をさせていただきますと、私は一九六四年に一橋大学の商学部を、ドイツ経営学をやりまして、出て、その年に司法試験に合格しまして、一九六六年から二十期生として司法研修所に行っております。ここにおられる江田議員とは同期生で、マージャンで大変にいじめられたのですが、楽しい思い出がありますけれども、いろいろ司法研修所についても多少の御意見を申し上げさせていただきたいと思いますけれども。
 基本的に、先ほども申しましたように、私立大学の、地方の私立大学の法科大学院を設置を目指している者としての立場から、もちろんこれは個人的見解ではありますけれども、特に教育内容等との関係から今回の派遣法案をどのように考える、若干の意義と問題点、そして要望という形でお話しさせていただきたいと思います。
 その本題に入る前に、今回の法科大学院の在り方、理念、教育の在り方について、まず前提として御指摘、指摘させていただきますが、二つの要請があるわけですね、今回の法科大学院については。一つは、多様性、レジュメの方では開放、公開性と書きましたが、開放性、そして公平性。第二点は、点による評価からプロセスによる評価を達成すると。この二つの要請があって、この二つの要請を満足させる制度と教育が必要とされております。
 そのために、様々な法律を作っていただき、さらに現場においては現在努力しているところであるわけですが、さてこの二つの要請を満足させるという観点から、法科大学院における理論教育と実務教育というのはどのような形であるべきかということについて私の意見を申し述べさせていただきますけれども。
 まず、法科大学院というのは明確な目標を持った教育が必要になります。従来のそういう意味では大学とは若干異なるというか、大きく異なると言っていいですね。専門職大学院における教育であるということで、研究職を中心とする研究者を養成する大学院とも異なってくると。その意味で、理論と実務との統合的教育が是非とも必要である。これはもう否定しようがないわけです。
 他方で、法学以外の教育を受けた人々にも開かれたものであるということ、それが開放性であり多様性ということに係るわけですが、その意味で、多様性を持った大学院における教育であるという点において、司法試験合格者を対象とした司法研修所における教育とも異なるわけです。この点は、司法研修所の教育と同じようにお考えですと、大変な大きな間違いを起こすということになります。
 司法研修所の教育について多少意見を申し述べさせていただきますというふうに言いましたが、これは配付しました資料の二つ目のものですが、「新司法試験、司法修習のあり方」と題した論文の六十五ページに若干書いておきました。司法研修所の教育を受けた人間としては、それはそれなりに私は良かったとは思っているんですが、やはり一か所に集められて教育をするということでの大変な、バラエティーがないといいますか、画一性が生まれてくるという問題があります。
 現実に画一的な教育をやっているつもりはないというように教官の方々はおっしゃるだろうとは思うんですが、司法修習生の中には、最近の傾向、この十年、二十年の傾向と言ってよろしいでしょうか、では教官がどのように考えているか、それに沿った、例えば私は刑事関係の専門にやっておりますので、例えば無罪判決を書きたくてもやはりタフな結論を出さないとまずいというように少なくとも修習生は考えている。そのために、少なくともタフな判決を出さないと、判決意見を出さないといじめられるというんでしょうか、徹底的にやられるというようなことで、できるだけ大勢に沿ったタフな結論に出していくんだという、その方が得なんだという思いがあるということですね。それが言わば萎縮効果というんでしょうかね、そういうものになっているということで、画一的な教育になってしまう要素がある。その辺りは、今回の法科大学院においては、一つは専門家、一応の司法試験の合格者を対象とするものではないということと併せて、司法研修所の教育とは異なるということを自覚しなければならないところだと思います。
 いずれにしましても、今回の法科大学院における理論教育、実務教育ともに新しい方法と内容を持ったものであり、それのための新しい創造力を持って創意工夫をして確立していかなければならない。この点は設置申請の段階でも要求されますけれども、いわゆるFD研究会といいますが、ファカルティーディベロプメント、要するにどういった形で教育するかというのをお互い討議しながら教育方法について模索していくためのファカルティーメンバーでの研究会を持つこととなっていますが、従来から持っているんですが、これは一層やっていかなきゃならない。もう現に準備段階で我々はやっておるわけですけれども、そこに準備段階からかかわってもらう人たちを必要としております。この点がまず前提として踏まえなければならない点だと思います。
 そして、具体的に派遣法案の意義と問題点について述べさせていただきますが、意義は大きくあります。理論と実務の統合的教育の場としての法科大学院にとっては、現職であれ現職でなくても、現職実務家の協力というのがあるということは必要なことではあります。これを容易にする法案の意義は大きいと思われます。
 しかし、他方で、問題点幾つか、現場にいる人間から言わせていただく問題点があります。第一に、大学の教員というのは教育と研究さえしていりゃいいんだというような、そんな簡単なものではないんですね。雑多な雑務があります。事務との関係、事務職員をどのようにするか、自分自身が事務をしなければなりません。簡単な話、コピー一枚取るのも自分でやらなきゃならないんです。大変なことです。それで、十二時ぐらいまで、夜の十二時ぐらいまでも学生とも付き合わなきゃならない。朝早くから、九時半から、九時ぐらいから会議をやって、一日会議をやって、一体いつ研究するんだ。企業の研究所から来た人は、これじゃ大学の研究できないじゃないかというように苦情が出ています。それほど雑多な職務をこなさなければならない大学の教員の、現場というのはなかなか御理解いただけないとは思うんですが、そういった立場にいるということと現職裁判官、検察官の立場との競合というのは果たしてできるかという問題、これは是非やっていただかなきゃならないんですが、大変なことです。そのまず大変であるということを御認識いただきたい。
 付け加えて言いますと、薄給です。薄給で大変だという教員の立場を、そこに飛び込んで理解していただく教員が必要なんです。そういったことがまず第一点として指摘しておきたいと思います。
 それから、関連しますけれども、やはり法科大学院での新しい教育と研究を構築するということになりますとチームワークというのが必要です。このチームワークとしての教育構築の必要性と、今回の法案における派遣形態との大きなギャップがどうもあるんですね。先ほどから言いましたけれども、準備段階からかかわっていただいて教育内容等を構築するということが果たしてできるんでしょうか。この辺、お客さんではないということですね。お客さんでないような派遣法案にしていただきたいということになります。
 この点との関係で先ほど来出ておりますけれども、大学側に人選の自由がないということ、これは大きな問題です。この人に来ていただきたいというようなのを我々、現在もう申請間近ですから、既にほぼ人選を固めているわけですね、どの大学も。その中で人選をするのは、この人は我々チームワークの中に、チームの中に加わってもらうのに適切であるということで三顧の礼をもって来ていただく人たちであるわけですけれども、そして、準備段階からいろいろと御相談申し上げて構築していくという形ですが、果たしてそれは今回の派遣法案の中では、残念ながら人選は大学側にはないという形ですので、この点は是非とも修正をお願いしたいという点であります。
 それから、先ほど来申しておりますように、多様性が必要です。多様性が求められている教育内容と裁判官、検察官の現職保持のままの教育とのギャップというのも大きな問題です。先ほども言いましたけれども、いろいろなことをやると言いましたけれども、法学部における、あるいは法科大学院における教育もそうですけれども、全く今回は法学を履修していない人たちも受け入れます。法学の基礎から教えなければなりません。これは大変な努力を要します。この辺りにもかかわっていただきたい。現職の裁判官であれ検察官であれ、教員である限りはかかわっていただきたいということになりますと、果たしてばっと来てさっとできるものであろうか、現職という立場でそれが可能なんだろうか、そういう人たちをどうやって求めればいいのか、その辺りをある意味では苦慮しているということになります。
 それから、先ほど来大きなポイントとして出ておりますけれども、待遇が違うということですね。法案で補てん、法案ですと大学の安月給を補てんされる、大変に結構なことだとは思うんですが、先ほどから出ておりますけれども、既に現職を辞めて、若い人でも現職を辞めて、私のような大学にも若い、裁判官を辞め、若くして裁判官を辞めて来ていただいている優秀な人材がおります。この人は安月給で甘んじております。大変に力を尽くしていただいておりますけれども、その人と同期の人が仮に来たとして、月給が全く違う。これはちょっと大変、いや面白くないという気持ちができるのは当然だろうという気がします。そういった多様な待遇の違いのある人を抱え込むというのは、これは管理者的発想からしますと人事管理は大変に難しいということになりまして、これは容易に御想像いただけると思います。
 それから最後に、法曹を目指す人々、学生ですね、受験生等のニーズとの関係で言いますと、確かに現職実務家の専門家の教育を受けるということは大変面白いことだし、喜びになるだろうと思われますけれども、他方で教育の専門家でないということで、よほど教育の専門家であるための御努力をいただかないとニーズに合わないということになります。この点は不安の残る点であります。
 もう一つは、現在法科大学院を目指している人たちにとって一番の頭の痛い問題は授業料です。これは大学側、設置者としても一番頭の痛いところです。この授業料に対しての何らかの補てんですね、補てんという言葉を使うならば、そちらの方の補てんいただくんだったらいいけれども、裁判官に対して補てんというのはどうも、自分たちは関心はないし、むしろその金をこちらへ回してもらえないかという要望は、私自身、学生からも聞いております。そういった点での派遣裁判官、検察官への給与補てんへの疑問というのが生じております。
 最後に、若干の要望を申し述べておきますけれども、先ほども言いましたように、派遣裁判官等についての大学側の要望が入れられるということ。それから第二番目に、実務家教員間での待遇格差を生じさせる給与の補てんというのは是非とも考え直していただきたいということ。第三に、大学からの特定の裁判官、検察官等に対する非常勤、パートタイム教員就任要請に対して最大限の便宜を図っていただきたいと。この点が派遣法案で実現すべき点ではないかというように思っております。第四番目は、法科大学院認可、評価に当たって、派遣を受ける受けないという大学側の判断が不利益な取扱いを受けないことを明記していただきたいといいますか、この点は是非配慮事項として入れていただきたいと思います。
 こんなばかな話はないだろうと、毅然たる態度でいいんだというように思われるでしょうけれども、先ほど宮澤参考人からもありましたように、大学側はこの点懸念しております。懸念が萎縮効果になっているというのが事実です。その点を是非御配慮いただきたいと思います。
 最後に、付け加えて、先ほど来言っておりますニーズとの関係からいいますと、奨学金とかローン制度の充実によって学生の授業料負担の軽減を図ることを強く要望して、私の意見陳述とさせていただきました。
 ありがとうございました。
#8
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○佐々木知子君 おはようございます。自民党の佐々木知子でございます。
 今日は、三人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。
 最初に、尾崎参考人にお尋ねしたいんですけれども、このたび第二東京弁護士会の会長に御就任ということで、おめでとうございます。
 第二東京弁護士会は、聞くところによりますと、大宮法科大学院の設置に深くかかわられるということなんですけれども、法科大学院でありますから、もちろん実務教育をなさると。新たに教材などを作らないといけないわけですけれども、日弁連や各地の弁護士会ではどのような協力をするということを考えておられるのでしょうか。日弁連が教材の作成に協力するという場合には、その科目の教育内容が全国画一的なものになるおそれもないのかなというふうにも考えるわけですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
#10
○参考人(尾崎純理君) まず最初に、第二東京弁護士会は、大宮法科大学院、大宮ロースクールに対して教育面での協力をするということになっています。
 先ほど宮澤参考人がおっしゃいましたけれども、宮澤参考人が大宮の副学長ということですので、大宮に関する答弁は多少は宮澤参考人に譲りたいと思いますが、二弁としては教員の確保というものに最大限力を尽くしておりますし、大宮のロースクールに関する教材、教育内容については、当然のことながら、我々第二東京弁護士会の指導的な、有力な、その部門での権威の方々にお願いして教材作りに御協力しているということでございます。
 また、日弁連レベルでございますが、これは教材についての御協力をするという基本的な立場で、大学の要請がありましたならば教材協力をしておりまして、現に行っているわけでございます。また、教員についても、具体的に派遣要請がございましたらばその派遣に応じているということでございますが、事実は、実際上は、直接大学からその人、これと思うような人に要請が来て、その人が応じているという方が多いというのが事実かと思います。そしてまた、日弁連の教材作成におきましては、当然のことながら基本的な枠組みというものは日弁連で検討いたしますが、その上で各ロースクールにおける特色というものがあろうかと思います。それはそのロースクールとよく相談しながら、そこの大学の特色に合わせた形でそれにふさわしい教材を作るという形で御協力しているというのが現状でございます。
#11
○佐々木知子君 ありがとうございます。
 法科大学院の実務家教員となった弁護士がその法科大学院の教授会に参加して管理運営面に関して発言するということにもなろうかと思いますけれども、そのことについてはどのようにお考えでしょうか。
#12
○参考人(尾崎純理君) 御承知のとおり、弁護士というのは非常に非組織的な人間でございまして、私も二弁の会長をやっておりますが、二弁の会員は私のことを余り尊敬していない、これは私の人格的に至らぬところもあるのかと思いますが、そういう点で、教授会に各実務家、弁護士の方で実務家教員になるということで、ある程度、自分の仕事を辞めて大学に行った場合は、その個人がやはりその個人の考えに基づいて教授会に参加して大学の運営に関与していくということになっております。この点について我々弁護士会は、大学の管理運営についてはこうすべきであるとかそういうようなことを申し述べるつもりは全くないし、そのような力も全くないというのが弁護士会の実情ではないかというふうに思います。
#13
○佐々木知子君 現職の裁判官や検察官等が法科大学院の教員として派遣されるということをこの法案は想定しているわけですけれども、その方たちが法科大学院の教授会に参加して発言するということについてはどのようにお考えでしょうか。今おっしゃった弁護士の場合とは取扱いを異にすべきであるとか、そのようなことをお考えでしょうか。
#14
○参考人(尾崎純理君) 非常に難しい質問でございまして、その個人がやはり個人的な良心に従って参加されるということがもう当然想定されるわけですから、そういう限りではよろしいのかなとも思いますけれども、私が最初の意見で申しましたとおり、やはり弁護士とは違いまして、検察官、とりわけ検察官というのは組織的な人間であるというふうに私は理解しておりまして、その組織的側面が余り強く出ないような工夫というのは是非ともお考えいただきたい。その面での、運用面での工夫は絶対必要ではないかというのが私の基本的な見解でございます。
#15
○佐々木知子君 ありがとうございます。
 じゃ次に、続きまして宮澤参考人にお尋ねしたいと思います。
 早稲田大学では現職の裁判官や検事あるいは行政庁の職員の派遣を要望するという予定はあるのでしょうか、お伺いいたします。
#16
○参考人(宮澤節生君) 私が理解している限りでは、現に、先ほど申し上げたように、数名の裁判官出身者が元々専任教員として存在しています。それに加えて、法科大学院要員として新たに裁判官あるいは検察官の派遣を要請しようかどうかということを今検討している段階だというふうに理解しております。
#17
○佐々木知子君 検討するということは、派遣を要望するかもしれないということなんですけれども……
#18
○参考人(宮澤節生君) そういうことですね。
#19
○佐々木知子君 現職の裁判官や検事、行政庁の職員の派遣を要望するとすれば、その理由というのは何なんでしょうか、OBだけではなくて。
#20
○参考人(宮澤節生君) 早稲田大学の場合、OBのみに教員を限るという方針は現在では取られておりませんので、そういうことはまずないと思います。
 それから、もし派遣を要請するとすれば、それはカリキュラム編成上ある特定の科目について教員が必要とされていると、だから例えば現職判検事の派遣をお願いしようではないかということになるのであろうというふうに思います。
#21
○佐々木知子君 例えば、刑事訴訟の実務の基礎を教育する場合というのはOBでもよろしいのかもしれませんけれども、これは日々割と変わっておりまして、現在の実務に精通している現職の検事とか裁判官がやはり学生に教えるには適任だとか、そういうような考え方はありませんか。
#22
○参考人(宮澤節生君) それは授業の内容をどのようなものとして構成するかということによるのではないでしょうか。例えば早稲田大学ですと、刑事法学者は大勢いるわけでありまして、そのメンバーで授業が十分に編成できれば、それはそれで運営がなされていくだろうというふうに思います。
 私は、先ほど申し上げたように、早稲田大学の開設、設置準備委員ではありましたけれども、現在は大宮の設置準備委員の方を中心にやっておりますので、早稲田大学については必ずしも詳しくお答えすることができないと思います。
#23
○佐々木知子君 確かに、法科大学院も規模がたくさんありますけれども、仮に早稲田大学とした場合、これは非常に大規模な法科大学院になろうかと思います、他と比べまして。そういうところで現職の裁判官や検事あるいは行政庁職員が数少なく、あるいは一人とかいう単位で教授会の構成員になった場合でも、教授会に何らかの影響を及ぼすというふうにお考えでしょうか。
#24
○参考人(宮澤節生君) 私はそれは、失礼しました、人数やそれから個々の人の良心の問題ではなくて、普通の学者でありますとか弁護士の場合でしたら採用はこれは一本釣りなわけです。今までの裁判官出身者の方々もこれ一本釣りなわけであります。こういう場合には正に個人としての行動をされるわけです。
 それに対して今回の、とりわけフルタイムの派遣につきましては、組織内部で推薦されて派遣されてくるわけです。そして、しかも一定期間後に組織に戻ることが予定されているわけであります。そのときに、その方の行動が将来の自分のキャリアを考えた何らかの行動になるであろうということは、これは当然予想されるわけでありまして、先ほどの、弁護士との比較がありましたけれども、弁護士の場合には弁護士会によって雇用されているわけではありません。それに対して裁判官、検察官の状況は違っているわけであります。そのことを考えますと、私が先ほど述べたような危惧というのは全くあながち根拠がないものではないというふうに考えております。
#25
○佐々木知子君 村井参考人にお伺いしたいと思います。
 参考人は龍谷大学で法科大学院の設置準備に関与しておられるというふうに理解しているものですけれども、実務家教員の確保状況というのはどのようになっておられますでしょうか。
#26
○参考人(村井敏邦君) かなり、実は私どもの大学、法科大学院は、刑事弁護に力を注ぐという形で弁護士の協力は多数いただいております。裁判官も、先ほど申しましたように、それほど多数ではありませんけれども数人の裁判官、現職を辞められた方ですね、の協力を得ております。残念ながら、検察官、お一方、お二方考えていたんですけれども、ちょっと協力を得られなくなって、検察官の方の現在人選は行われておりません。
#27
○佐々木知子君 現職の裁判官や検事あるいは行政庁の職員を派遣を要望する予定というのはあるんでしょうか。
#28
○参考人(村井敏邦君) そうですね、今のところまだ検討中というふうに申し上げておいた方がよろしいかと思いますが、ただ先ほど、非常勤とかパートタイムの派遣をこちら側から要望してお願いしたいというように考えておりますのは、私の大学ではエクスターンシップに力を注いでおりますので、是非裁判所や検察庁での研修の機会を与えていただきたい。そのときには、その担当官は非常勤という形で携わっていただくということで、そういった形でのかかわり方を今回の法案で認めるという形にはなるのかならない、まあならない形なんですよね。ですから、そこをできるような形への修正をお願いしたいというように思っております。そういう形では今御協力いただけないかというようには思っておりますけれども。
 実務、現職が必要だというのは、やはり現場を見るということのかかわり合いだと思うんですね。現実の事件等につきましては、私などの授業においても現在進行中の事件などを取り上げて、それについて模擬裁判形式で弁護士と一緒にジョイントレクチャーをパイロットスキームとしてやっておりますけれども、そういうようなのを法科大学院でやることになるでしょうから、事件を現実にやり、弁護士にかかわっていただけばその辺りは現実の進行状況というのは分かるというように思いますので。ただ、現実の裁判所、検察庁ではどういうような形で実務が動いているかというのは、見て研修の機会があると大変有益だと思います。
#29
○佐々木知子君 それはおっしゃることはよく、おっしゃることはよく分かるんですけれども、そうすると、司法研修所での実務教育というのとある程度似てくるという形でしょうか。
#30
○参考人(村井敏邦君) 先ほど来、何度来てもこれは戸惑うことでして、ごめんなさい、ちょっと違う。先ほど来言っていますように、研修所の教育というのと我々法科大学院における教育というのは違うと思うんですね。基本的に実務教育ではない、実務、全くの実務教育というのは法科大学院にはできない。やはりアカデミック教員と実務家教員とのタイアップでやっていくことですから、場合によったら派遣、派遣というか、研修の際に教員も付いていって、教員も、アカデミック教員も付いていって教員もそこで研修を受けるというようなシステムが必要だろうと思うんですね。
 そういう意味での、実務経験のない教員への研修をどうするかというのを今度申請書に書かなければなりませんけれども、私などは、場合によって裁判所だとか研修所も含めて、研修所、裁判所、検察庁へ教員を派遣して、学生と同時に教員を派遣して研修すると、そういうようなものにしたいと思っていますので、そこで得るものを更に教育に反映させるということですから、司法研修所での教育とはかなり違ってくるだろうというふうに思います。
#31
○佐々木知子君 ありがとうございます。私も、法律家になって二十年になるんですけれども、同じクラスで一人の弁護士、ごめんなさい、一人の裁判官は辞めてもう大学教授に数年前になりました。仲のいい弁護士は、この前大学院に通って博士課程に行っていたので、何をするのかなと思ったら、実は今度できる法科大学院の専任教授に転身するんだということで、ちなみに、もう懲戒処分を受けた弁護士が私の知る限りそこの中に三人もいるんですけれども、それは別といたしまして、非常に流動的にきっとなってくるんだろうと思います。教育の現場から実務に、それから実務から教育の現場に、その方が私は基本的に望ましいというふうには思っております。
 ただ、今は人数が少ないですので、この当座を乗り切るためには、やはり実務家を今うまく法科大学院の教育に関与させる方法というのは現実問題として考えていかなければいけないのではないかなということで、これは私の意見になりますけれども、これで質問を終わります。ありがとうございました。
#32
○角田義一君 民主党・新緑の角田義一と申します。
 今日は、お三人の先生から大変貴重な御意見を承りまして感謝申し上げます。と同時にこれ、ロースクールというのは前途多難だなと思いましたね。
 私はもう実務から離れていますし、安保の世代ですから大分時代は変わっちゃっているのかなというふうに思いますが、一つは両大学の先生にお聞きしたいんですけれども、検察官だとか裁判官が行って大学の自治というのはそんなにかんまされる、そんな悪党ばっかりいるんですかな。その裁判官、検察官が行ってですね、それほど、かんますほどの力のある裁判官、検察官はいるのかなという気がするんだけれども。それどうしたらいいかという、その仲間に入れないで例えば客員教授にしちゃうとか運営に一切口差し挟めないようにするとか、仲間外れというのはちょっといかがかと思うけれども、何か工夫をしなきゃあれですか、大学の自治はもたないですか。お二人にちょっと聞きたいんですけれども、そんなに今大学というのは弱くなっちゃっているんですか。昔は偉い先生ばっかりと思ったけれども、どうなんでしょうかな。ちょっとざっくばらんに聞いて申し訳ないけれども。
#33
○参考人(宮澤節生君) ここで考えなければいけないのは、一人一人の現職判検事が法科大学院に来てどういう行動をするかという問題ではないんですね、私が取り上げた問題というのは。
 そうではなくて、どの人を採用するかということについて大学側に自主的な判断権がないということを問題にしているわけです。それが大学の自治の一部としての大学教員の人事の権利というものなわけですね。その後どういう行動をするかというのは、それは大学、元々純粋の学者でも妙な行動をする人もいますし、そうじゃない人も、元々お役人だった方々でもきちんと大学の文化を理解して行動される方もおられるわけです。
 それはまた別な問題でありまして、私が問題にしていますのは、これは根本的に大学側に選択権がないという、そういう教員採用制度を導入しようとしているという制度のことを私は問題にしているわけです。その意味で、制度的に大学というものの存在に大きな風穴を空けることになるということを私は恐れているということであります。
#34
○参考人(村井敏邦君) 私は、大学の自治には触れておりませんけれども、意見の中では、意見としては今、宮澤さんがおっしゃったのと同じです。やはり、人選について大学側の要望が聞かれないというのは大きな問題だろうと。教授会の構成員をだれにするかというのは、やはり大学の方の判断でありますから、その点が最大の問題だろうというふうに思います。来られた方について、やはり、ただ現職で来られた場合に裁判官という立場を離れて発言をしていただかなければならないんですね、教授会においても。それが果たしてできるかということを懸念しております。
#35
○参考人(宮澤節生君) 実は、私どもの周辺でもそういう議論をしているわけですね。現職判検事が来た場合に、身分を残したまま来られるわけでありまして、そういう方々に一体何を教えさせることができるだろうかと。
 例えば裁判官論というものをさせたと、担当していただいたとしますね。現在裁判官はこうなっていますという話はできるでしょうけれども、現在の裁判官制度にどういう問題があってどう変えなければいけないかなんという議論をその方はできるんでしょうかというわけですよね。大学というのは、そのような現状の理解だけではなくて、現状をどのように変えなければいけないかという議論もしなければいけないわけであります、特に将来の法律家になろうとする人々にとっては。
 そういうことを考えますと、どういう科目を担当させたらいいのかということについて、ほとんど教えさせる科目がないというのが我々現場でカリキュラムを編成している者にとっては実感なのでありますね。そのこともまた実質的な問題としても御理解いただきたいというふうに考えております。
#36
○参考人(村井敏邦君) 補足させていただきますと、大学における教育というのは、実務教育をするとしても判例を前提とした教育をするとしても、判例の問題点等を含めてやはり批判的に取り扱うというのは非常に重要なことだと思うんですね。そのときに、私自身、司法研修所の教育を受けておりますが、やはり判例を金科玉条にしなければならない、最高裁判所の判例があるということになると、それに従った判断という形になります。それが、現職の裁判官の場合にはやはりそういう形でやってくるわけですよね。そうなりますと、法科大学院においてやはり自由な討論というのが可能かと。
 もちろん、そういう人が来て、いや、これは問題点があるんじゃないかということで、我々自身が、その裁判官、現職の裁判官を含めて議論に入ってもらって変えていくという努力はしなければならないとは思います。もちろんそれは、やるのが大学での任務だろうと思いますけれども、なかなかそこで現職という形だと難しい面があるかなという気もしないではありませんね。
#37
○参考人(宮澤節生君) 先ほど、そういう現職の裁判官に来ていただいたとして、身分を持ったままの方に何を教えさせることができるでしょうかと、それは余り期待できないのではないかとおっしゃった方は、実は裁判官の籍を、元裁判官の方なわけであります。その方はもう裁判官、完全にお辞めになっていますからよろしいわけで、そういうことが言えるわけですけれども、現に身分を引きずったまま来られた場合に、果たしてそのような自由濶達な議論というのはできるものだろうかというのが我々の中でよく分からない点であります。
#38
○角田義一君 それで、法科大学院の方が教師を選べないというかな、その権利がないということをおっしゃっておられる。それをどういうふうに、じゃ合理的にそこのところを、これ、もう法案上がるわけですから、配慮するかという。修正もあると思いますけれども、例えば運用の面で、今日午後、それは政府に対する質問があるわけで、今日の意見を踏まえた上で皆さんまた御質問になると思いますけれども。
 例えば、大学側というかな、設置をする方の側で、一本釣りはなかなか難しいにしても三十人ぐらい、いい、あんた方が見て立派そうな先生、裁判官、裁判官らしくない裁判官、あるいは検察官らしくない検察官だな、僕に言わせりゃ、うんと自由濶達でぼんぼん言えるようなそういうのを三十人ぐらいびゃあと並べて出したらどうですか、こういうのが欲しいんだというようなことを逆におやりになったらいかがですか。
 これ、ちょっと尾崎さんにも聞きたいけれども、お三人に聞きたいです。そういうふうに積極的に、こういうのが欲しいんだと、これをリストに載せてくれというようなことを言ったらいかがかと思うんですけれども。
#39
○参考人(尾崎純理君) 先生のおっしゃるとおり、正にそういうことを大学側が積極的にやるべきじゃないかというふうに思います。
 先ほどの先生の質問と参考人の答弁に私、全く関与できなかったんですが、私自身、このロースクールの立ち上げにいろいろ関与してきておりまして、必要以上にやっぱり大学側がちょっと萎縮するという、何かで萎縮、政府側の行動に対して萎縮するという傾向がどうしてもあるというのを率直に感じておりまして、やはり萎縮する方も問題だけれども、萎縮させないような工夫もしなきゃいけないのかなということを常日ごろ痛感しております。
 そういう意味で、大学側からやっぱり積極的にリストなり、一本釣りは難しいにしても、リストを少なくとも提案、提起して、それに合ったような形で裁判所、検察庁側も工夫するという、そういうことがあればなかなかいいんじゃないかというふうに私は思います。
#40
○参考人(宮澤節生君) 私が先ほど修正の必要があると申し上げたポイントの一つはそれであったわけですね。今、先生がおっしゃったことであります。
 つまり、大学側が、この裁判官あるいはこの検察官に非常勤講師としてかくかくしかじかの科目を一科目、例えば一学期間教えていただきたいと、そういう人選をしますね。それを最高裁なり任命権者に提出をして、それではその方については例えば勤務形態をこのように変えましょうという配慮をしてくださると。そのことがありさえすれば、私は現職判検事を法科大学院において必要な限度で採用するということは円滑に進行するんだというふうに思っております。
 それに対して、今回の法案はそれができない。そうではなくて、全く何も示さずに大学院側はとにかくお願いしますという形でしか最高裁それから任命権者に対して要請することができないということになっているということが私は問題だと思うんですね。
 大学側と現職判検事との間で直接交渉が許されさえすれば、私は、一本釣りで具体的な候補者を見付けて、この人の勤務形態を法科大学院で教えられるような形にしていただきたいと要望を大学から出すことは容易であると。今までも現にそのように行われてきたわけですし、アメリカのロースクールなどはみんなそうしているわけですね。是非そのような一項目を私は付け加えていただきたいと、そちらの方がずっと有効であるというふうに考えております。
#41
○参考人(村井敏邦君) 私も同様で、三十人のリストをばっと出すというのではなくて、やはりそれは具体性のあった形でのリストを、我々がある程度この人はやっていただけるというような話をしておいて、そして、この人にこういう科目で来ていただけますかという内諾のようなものがあった上でリストを提出して、そして派遣していただくと。その派遣というのは、勤務状況等について配慮いただくということですね。それは、是非そういう形での修正をお願いしたいというのが私の要望であるわけです。
#42
○参考人(宮澤節生君) 一点補足させていただきたいと思うんですけれども、先ほどから私はフルタイムについて、それは危険であるとか必要がないというようなことを言っているわけですけれども、実は大学でフルタイムで教えるということはどれぐらい教えなければいけないかということを是非お考えいただきたいと思うわけです。
 早稲田大学ですと、ミニマム年間十六単位です。ということは、一学期八単位ということですけれども、そうすると二単位の科目四つということです。法科大学院では大体二単位週一回教えるというのが基本的な単位になると、授業になると思いますが、四科目やるということです、一学期に。大宮法科大学院は、それをアメリカ並みに引き下げていまして十二単位です。それでも一学期六単位ですから、一学期について三科目ですね。それだけのものを実務家教員にフルタイムでやらせる。それだけのニーズは実はないのです。必要性がないわけなんですよね。そうであるにもかかわらず、なぜフルタイムという項目を入れなければいけないかということです。
 むしろ我々として期待したいのは、実務家についていえば、とりわけ判検事の方々に期待したいのは、特定の分野について御自分の経験を生かした教育をしてくださるということが必要なことなのであって、その上に一般教員並みの労働をしていただくということでは私はないというふうに考えております。
#43
○角田義一君 私は、裁判官でも、フルタイムでなくてパートで裁判官行くらしいんだけれども、これはあなた方に聞くのは酷だと思うんだけれども、行く裁判官も私は、実はこれはパートでもやっぱり容易じゃないと思いますよ。実務をやりながら、裁判やりながら、また、して教えるという大事な役目をするんで。これは、仮に裁判官を出すにしても、例えばAならAという裁判所で甲なら甲という人間を出すとすれば、それを補うだけの陣容というものを裁判所自身も作らないと、これはおまえさん勝手に好きなように行っているんだという話にはならないでしょう。
 この点に対する要望もちょっと聞いておきたいですね、最後に。尾崎先生にでも。
#44
○参考人(尾崎純理君) 私ども、この法科大学院の問題にとらわれず、また今回の法案、国会にも提出されている迅速化法等との関係からいいましても、裁判官は司法制度改革の中では大幅に増員することは不可欠であるというふうに考えております。その意味で、私どもとしては、今年度の予算の要求においても裁判官が大幅に増員できるように是非とも先生方の御協力をいただきたいというふうに思っております。
#45
○角田義一君 終わります。
#46
○荒木清寛君 それでは、まず尾崎参考人に質問いたします。
 先ほどの大宮法科大学院大学についてでありますけれども、このロースクールは他の法科大学院と比べてどのような特色を持たせようとしているのか。
 関連しまして、参考人の寄稿を読みますと、アメリカのロースクールでは一年時の必修科目が一定のレベルに達しない者は退学勧告をすると、そのようにしているというふうに聞きました。ですから、入ってから猛勉強が始まるわけであります。私はこれは、日本のこれから設立をされる法科大学院でも是非取り入れるべきだと思っておりますが、大宮法科大学院大学でもこうした方針はお取りになるんでしょうか。
#47
○参考人(尾崎純理君) 後者については正確な答弁は宮澤参考人にお譲りしたいと思いますが、この特色でございますが、我々としては、審議会意見書に書かれたロースクール、これを、紙に書かれたものを現実のものにしていきたいというふうに考えております。そういう意味で三年制だけ、ほかの大学院、ロースクールにおいては二年制を併存していて、しかも二年制の方が多いというような制度設計になっているようでございますが、我々は三年制だけをしている、三年制だけを採用しているということでございます。
 それからまた、教員でございますが、三十人予定されているというふうに聞いておりますが、そのうち十九人が実務家教員である。なおかつ、今回の法案の恩恵を得ることなく、すべてこれは現在の実務家、弁護士、弁護士である実務家で補っているというふうなところでございます。それからまた、働きながらも通えるように昼夜開講制をしている。夜間で、夜間制もしいているというところが、これが特色かと思います。
 それ以上は、副学長が横におりますので、副学長に譲りたいと思います。
#48
○参考人(宮澤節生君) 大要は今御説明があった、失礼しました、私もどうも悪い癖がまだ残っておりまして、今、大略は御説明があったわけですけれども、三年制だけで、できれば法学部以外の出身者をほとんど入れたいと、それから社会人は半分以上入れたい、それから男女比も半々にしたいと、これが理想であります。それから、教職員の、専任教員の数は、一学年百名ですので、基準によれば二十名フルタイムがいればよろしいわけですけれども、三十名既に確保しております。
 しかも、今御質問にあったように、意見書が期待するとおりの厳しい教育を行おうということになっておりまして、学年から学年へ変わるときに余りにも成績が悪いという者については退学勧告をすると。というか、実際に退学処分にするという方針を取っております。ただ、三年時になりましたらもう選択科目だけですから、その段階でもう退学させてしまうというのはいささか気の毒でありますから、一年間だけ留年を認めると、しかしその間授業料は取らない、こういう制度にしております。
 それから、さらに大きな特色として、三十名の教員の中で十九名が実務家教員でありまして、これは二弁だけではなくて埼玉弁護士会それからアメリカの弁護士もいるわけですけれども、その人たちの四分の一ほど、五、六名がいわゆるクリニック、医学部でいう附属病院に当たるものを開設します。つまり、学内の弁護士事務所ですね、そこにおいて実際に依頼者に対して学生が接することによって教育を行うと。これは全員、全学生がクリニックに参加することができる、こういう制度にしております。つまり、意見書が理想としているものをそのまま現実化するというのが大宮法科大学院大学が現実に今やろうとしていることであります。
#49
○荒木清寛君 もう一つ尾崎参考人にお尋ねしますが、先ほど、最後に、法科大学にかかわる財政支援の必要性を強調されました。具体的にどのような形での財政支援を充実をする必要があるというふうに考えていらっしゃいますか。
#50
○参考人(尾崎純理君) 現在、日弁連でいろいろアンケートを取らせていただきましたけれども、やっぱり学費が百万円以上を超えるとなかなかやっぱりちゅうちょする人、もう非常に増えてくるんじゃないか。機関補助をしていただきまして、なるべく学費が百万円を超えないぐらいの、そういうような制度設計にならないかどうか、そこは是非御検討して、御協力いただきたいというふうに思っております。
 それからまた、学生個人でございますが、現在の月額の有利子貸与額が十三万円ということで、年間百五十六万円が貸与の上限になっておるようでございます。これについては、少なくとも月額二十万、非常にささやかな要望であるかというふうに思いますが二十万を、二百四十万、年間二百四十万ぐらいまで貸与していただくような、そういうような制度設計をしていただきたいというふうに思っております。学費を百万以下にして、そしてまた貸与する金額を二百万以上にすると、それなりの、財政上についてちゅうちょする人はそれだけちょっと少なくなってくるのではないかというふうに思っています。
 それからまた、ローンの関係でございますが、現在は親に貸している、そういうのが現状でございますが、これはやっぱり非常におかしな話、自己責任の社会が出てくるならば、ロースクールに通うその人個人に、学生個人に本来は貸与すべきじゃないか。これについて何らかの政府の保証を付けるような、そういう工夫をしていただけないだろうかというふうに考えております。
 また、ロースクールを卒業して法曹に育った後の返済の免除制度、例えば公益的な活動に従事するという期間が、非常に長い期間従事するというような方については減免ということも考えていただけたらというふうに思っています。
 私が考えている財政上の支援というのはそういうところでございまして、金額としてはそんなにびっくりした金額にはならないんではないか。しかしながら、やはり文科省一つのレベルではなかなか乗り越えられないハードルがあるかというふうに思っていますので、やはり政治の世界でここは決断していただきたいというふうに思っております。
#51
○荒木清寛君 宮澤参考人にお尋ねします。
 先ほど、本法案が大学の自治との関係で人事権の放棄を要求しているというような観点から非常に問題があると、そういう御指摘でありました。しかし、私は、もしそうであれば、どうして大学側が声を上げないのかということを思うんですね。よく、権利の上に眠る者は保護されないというわけでありまして、本当に大学の自治が侵害されるのであれば、大学がきちんと反対声明なりなんなりを出さなきゃいけないはずなんですけれども、早稲田大学も含めてそういう声明が出たという話も聞いておりませんし、あるいはいろんな大学の協会ございますね、そういうところがそういう意見を発表したということも聞いていないわけであるわけです。
 先ほど、後難を恐れて言えないのではないかという人もありましたけれども、もしそうであれば、そこまで今の高等教育機関というのは落ちぶれてしまったといいますか、そんな政府に従属するような存在なんだろうかというふうに思うんですね。私、本当に大学の自治の関係で問題があるんであれば、なぜ大学がきちんとそういう表明しないんでしょうね。
#52
○参考人(宮澤節生君) それは残念ながら、先生が危惧されたような状態が大学の内部に存在しているということは否定できないと思います。これは、私のような、私がこのように申し上げて早稲田大学のほかの先生たちが賛成してくれるかどうかは分かりませんけれども、私の目から見るといささか歯がゆい、ふがいない状態になっているわけであります。しかし、それはある意味では致し方ないのでありまして、同情的に理解することもできます。
 なぜかといいますと、例えば法科大学院を作るためには認可をしてもらわなければいけません。したがって、できるだけ波風を立てないように行動しようとするのが今までの大学人の言わば習い性になってしまっているわけですね。しかも、今度の場合には単に設置認可の基準を満たせばよいだけではなくて、その後に第三者評価というのも待ち構えていると。評価が二段階になっているわけであります。
 そうしますと、そこで、この派遣法というものができている以上、必要がなくても我々としてはやはり派遣を要請しなければいけないのではないかという心理状態に陥っているわけですね。個々の教員と話していると、必要がないのになぜ呼ばなければいけないのかということを言います。しかし、組織として発言するときには、是非お越しいただきたいと、こういう発言になるわけであります。
 この辺のことは大学の内部にいますとよくその仕組みが分かるわけでありますけれども、ですから、発言できる者は私でありますとか、それから別な参考人、問題についての参考人として、私の同僚の須網隆夫という早稲田大学の教授がおりますけれども、彼も私と同じことを言ったはずであります。しかしながら、早稲田大学法学部としては決して反対はしないのであります。そのような仕組みになってしまっているのだということなんですね。
#53
○荒木清寛君 私ももう少し大学の実態というのを、これを契機にちょっと研究する必要があると思います。
 そこで、村井参考人に、先ほど派遣法に基づく派遣を要請するかどうか、まだ決めていらっしゃらないようなことでしたですね。龍谷大学ですね。今、大学の内部で、法律ができたらこれに基づいて要請しないと後々しっぺ返しがあるから取りあえず申請をしておこうかと、そんなような議論があるんですか。
#54
○参考人(村井敏邦君) 今、私どもの設置委員会の中ではありません。ありませんというのは、基本的には派遣を要請する必要はないんじゃないかなというように今のところは思っておりますので、派遣する派遣しないは、やはりこの人に来てもらいたいという形での派遣を要望できるんだったらいいけれども、そうでないと使いにくいよなという話にはなっていますね。ですから、今の状態ですと、今の法案の状態ですと、我々としてはちょっと派遣を要請するという形にはならないだろうというように思っていますし、そのことが何らかの形でその認可に影響があってもしようがないかというようなのはありますが、その辺のおそれを感じている向きはあることはあります。
 これはちょっと余計なことを付け加えさせていただきますと、私は国立大学で法学部長もやりましたし、現在私立大学の設置委員会の委員長という立場でおりますので、両方が分かります。とりわけ国立大学はその認可との関係では大変に神経を使うんです。これは事実なんです。大学の自治というのを私は非常に大事にするもので、たとえ文科省とけんかしてでもというように私などは、当時は文部省ですが、いろいろな交渉で言って、しかし事務の方は、ともかく先生、けんかはしないでくださいというように抑えられるという中で非常に厳しい折衝をするわけです。本心を隠して折衝をするということを、そういうのが染み込んでしまうのがあります。
 したがって、なるべく平和に平和にという気持ちが出てくるのも、これは実は認可業務のかかわり合いで国会でも問題にされているわけですけれども、企業との関係で出てくるのと同様のことが大学についてもあり、特に国立大学の場合には大きな意味を持つと。私立大学の場合も、私学助成というのを受けられるかどうかというのが大きな問題です。今回も私学助成を是非多額にいただきたいというように思うわけですね、法科大学院については支援をいただきたい。そのときに派遣法に反対するということになるとやっぱりちょっとまずいかなという判断は実は私などの中にも出てくるんですね。
 これは大学の自治というよりか、大学の自治の問題ではあるんですが、そこが非常に実務的な観点と難しいところですね。それを両方を兼ね備えてやらなければならないというのが大学人なんです。理論的な問題について、例えばここに私も参考人として何回か来ておりますけれども、私の専門にかかわることについての法案については反対と個人で言います。これは私の言わば理論的な立場とのかかわり。ただ、これは極めて実務的な問題なんですね。そうしますと、認可を受けられなきゃ話になりませんから、それから評価が悪けりゃこれはもうどうしようもないですから、いいもの作ろうと思っても。この辺りでの現実的な判断が出てくるのはやむを得ないと。だから、そういった萎縮効果の出ないようないい形にするための法案作りを是非御努力いただきたいというのが私の切なる要望です。
#55
○荒木清寛君 終わります。
#56
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、三人の参考人、本当にありがとうございます。
 まず、派遣の在り方等の問題でお聞きをいたしますが、まず尾崎参考人にお伺いをいたします。
 立ち上がりのときの安定的確保のためには有意義だということでありましたが、とりわけ司法過疎の解消のための全国的な配置にとって必要だということも議論があったわけですが、日弁連としてもいわゆる地方大学等への派遣ということでは様々な努力をされているかと思うんですが、その辺の努力の中身と、その上で、かつやはり一定のこういう仕組みが必要だというような実情ですね、それを是非まずお願いいたします。
#57
○参考人(尾崎純理君) 私ども、今度の司法制度改革というのは、その地域地域に法曹がそこのロースクールで育ってその地域に貢献していくと、こういう制度が非常に必要であろうというふうに思っています。アワタウン、アワコート、アワローヤーというような言葉があるようでございますけれども、そういうような姿として司法制度改革を実現していきたいというふうに思っています。その意味で、日弁連といたしましては、各地域でロースクールを作りたいという、そういう地域における要望に対しては最大限こたえるべき、その該当する単位会の弁護士会がそこの大学等と協力させていただいて、今まで各地域において設立の準備を進めてきております。
 具体的にどの地域でどういうことをやっているかというのについての説明は差し控えたいと思いますが、そういう意味で、例えばその単位会では対応し切れなくて、もう少し教官、教員を確保できないかというようなことを言われましたらば、例えば東京の単位会で東北の地域に教官になって行く人はいないかどうかの募集を掛けて、現に手を挙げる人がいて行ってもらうというような、そういうふうな工夫も凝らしているところでございます。
 そのような中で、やはり実務家教員、いわゆる公務員の、裁判所、検察官の実務家教員も欲しいんだという、そういう地域があることも事実でございます。そのようなところに対してはやっぱり差別なく公平に派遣してしかるべきであろう、していただかなきゃいけないんじゃないかというふうに私どもは考えておりますということでございます。
#58
○井上哲士君 次に、宮澤参考人にお聞きいたします。
 アメリカのロースクールとの違いを幾つか御発言もありましたし、配付いただいた資料にもあるわけですが、アメリカの場合、多くの裁判官、検察官が非常勤教授として教えていると。それができる日本との今の違い、いろんな素地も含めてあろうかと思うんですが、制度的なことも含めて、何が違っていて、そしてやっぱりアメリカ型にしていくためには一体何が必要だろうとお考えでしょうか。
#59
○参考人(宮澤節生君) それは、裁判官、検察官側の行動の自由度が大きいのだというふうに思います。もちろん裁判官、検察官という身分を維持しながらフルタイムでロースクールで教えるということはできません。これはアメリカでも同じ、日本でも同じ問題ですね。その意味で、今回の法案は非常に異例なものであります。フルタイムで法科大学院で教えていながら、フルタイムの判検事としての給料を何とかして保障しようというのは、そういうことをやっているわけですね。
 そういう制度はアメリカでは考えられません。なぜかといいますと、裁判官には職務専念義務があり、大学教授としては大学で職務に専念しなければいけないからであります。したがって、現職判検事がロースクールで教えるというのは非常勤講師あるいは客員教授、そういうものに限られます。その場合には一対一の交渉になるわけでありまして、例えば私がニューヨーク大学で教えていたとき、数年前でありますけれども、隣の研究室にはクリントンを追及していたケネス・スター特別検察官がおりました。彼は客員教授で来ていたわけであります。ワシントンから一週間に一回、夜来ていたわけですね。
 そういう形で実務家の教員というのが参加しているということです。もしフルタイムの先生になろうとすれば、それは裁判官なり検察官なりをもう辞めなければいけないことはこれはっきりしているわけなんですね。そのことをこの派遣法では非常にあいまいにしているというふうに私は思っています。
 ですから、日米の違いという点でもう一度強調いたしますと、非常勤講師として教える自由度というものを日本の裁判官、検察官というものにもう少し大きく認めていただきたい、そのような便宜を図るということが私は派遣法の主たる内容であるべきだというふうに考えております。
#60
○井上哲士君 さらに、その派遣されてくる裁判官、検察官の問題なんですが、いただいた配付資料でいいますと、今の設置認可申請書のいろんな書式の中で、それを見ていると、言わば司法行政のキャリアを積み重ねた主流派裁判官などに事実上限定されるのではないかと、こういう懸念を言われておりますけれども、この中身、もう少しお願いいたします。
#61
○参考人(宮澤節生君) これは、失礼しました、どうもパターンがなかなかのみ込めませんで、失礼しました。
 それは、文科省が設置申請書類の説明書として、マニュアルとして出したものをごらんいただければ非常に分かりやすいわけでありますけれども、例えばどういう実務家教員が望ましいかということで、どういう経歴が挙がっていると望ましいかといういろんなリストがあるわけなんですけれども、その中に、例えば判検交流で検察官をやったことのある裁判官とか、あるいは最高裁事務総局にいるとか、あるいは最高裁から派遣されて外国に留学したことがあるとか、要するに、そのようにして言わば裁判官あるいは検察官として日の当たる道を歩いてきた人だけがなぜか高く評価されるような仕組みになっているというわけであります。
 しかし、そういう経歴と法科大学院教員として例えば一般庶民の苦しみや悩みを理解するような科目を教えられるかどうかということは別の話なのでありまして、法科大学院側としては別の観点から個別に人選したいというふうに考えているわけなんですね。その意味で、私は非常に大きな食い違いがそこに存在しているというふうに考えています。
#62
○井上哲士君 もう一点、宮澤先生にお聞きします。
 第三者評価機関で、実務家教員がいることが評価の対象になるんではないかという懸念がやっぱり大学人の側にあるというお話がありました。
 今後の法科大学院の質を決める上では、非常に第三者評価機関というのはもろ刃のやいばでもあり非常に大事だと思うんですが、この第三者評価機関の在り方、構成、そしてそういう評価基準についてどのようにお考えでしょうか。
#63
○参考人(宮澤節生君) まず最初に申し上げたいことは、第三者評価機関は複数なければならないというふうに考えます。単一の機関しかなければ、それが全国一律に支配することになるわけですね。そうすると、法科大学院の間で多様性が生まれるということはありません。それから、他の第三者評価機関に比べて、やや高い水準を設定するというような第三者評価機関があれば、それによって徐々に法科大学院全体の水準がまた引き上げられていくという効果も期待できるわけですね。ですから、まず前提として、複数、第三者評価機関というものはなければならないということであります。
 それから、その次の段階が今、先生がおっしゃった質問の内容にかかわるわけでありまして、第三者評価のメンバーはどのようにあるべきかということであります。
 これは、アメリカですとABAがやっておりますけれども、アメリカ法曹協会がやっておりますが、この委員の半数以下しか法曹ではないわけですね。それ以外はユーザー代表ということになるわけであります。日本でも同じようにして、法曹三者及び法科大学院関係者はこの第三者評価委員の半数以下にすべきであろうというふうに思います。それ以外の方々は、エンドユーザーの代表であるべきだというふうに思います。例えば、様々な消費者団体、市民団体あるいは企業団体、そういうところの人々が、どういう教育を行っている法科大学院が望ましいのかということが第三者評価の過程でも発言することができる、そのようになるべきだろうというふうに思います。そうしませんと、今までどおりの司法研修所型の、あるいは法学部型の法科大学院がはびこっていくということになるのではないかというふうに私は恐れています。
#64
○井上哲士君 今、司法研修所型のというお話があったんですが、村井先生にお聞きしますが、そこと大学とは違うんだという先ほどお話もありました。
 今、この間の質疑でもあったんですが、最高裁も、それから法務省の方も、一定の教材は準備をするんだということを言われております。先生の論文の中にもありましたように、今の司法研修所の中で、判例に対して非常にこれに沿った判断が奨励をされるという弊害のようなことも書かれております。
 そうしますと、教材の在り方というものは大変重要になるかと思うんですが、今、そういう最高裁なり法務省などが作ろうとしている教材の在り方、そして使われ方、この辺について、村井先生、それから宮澤先生、それから尾崎参考人にもそれぞれお聞きをしたいと思います。
#65
○参考人(村井敏邦君) 最高裁判所や法務省等で教材を作成されるのは、それはそれで結構だとは思うんです。
 ただ、それは一つの教材でして、それを使う使わないは大学側の判断になると思うんですけれども、なるようにしなければならないわけで、大学側は大学側としまして、それなりの教材作成を現在進行させております。これは、申請書類の中に既にもう教材を作成しているかどうかなんというようなのも書く欄がありますので、先ほど言いましたFD研究会などでどういうような教育をするかというのを各科目ごとに研究をして、その中で教材をどのような形で作成するかというのをそれぞれのファッハごとに研究をし、我々独自の教材を作り、その独自の教材が全国的になればそれはそれで結構なんですけれども、出版社とも話し合ったりしながら作成をしていくという段階です。もう既にいろいろな出版社でもそういった形での教材作成というのが進行しております。
 幾つかの教材が出てきて、それはそれぞれの法科大学院がそれぞれの法科大学院の特色に従って、先ほど来問題の焦点、多様性ということで私は言っておりますけれども、法科大学院はたくさん出てくるというのは、それが多様な法科大学院でなければいけないんですね。一つ一つが特色を持ったものでなければいけない。その点が司法研修所とは違うということを言っているところなんです。
 それぞれ自分の特色でこういう法律家を育てますよというのを出していく、これはもう正に大学人の気概で出さなければいけません。それで生み出せるような法曹養成システムでなければいけない。その辺がちょっと懸念されるということで書きましたけれども、新司法試験があるために画一的になってしまうんじゃないかというのを懸念するんですが、何とかそうしないような形で我々自身の努力と制度作りをしていかなければならないというように思っておりますけれども、正に教材はそういった性格のものなんですね。画一的な教科書を使ってやるというようなものでは、到底いい法曹養成はできません。
#66
○参考人(宮澤節生君) これは私のアメリカのロースクールにおける経験から申し上げたいわけでありますけれども、ロースクール教員が皆同じ教材を使っているなんというそんなばかなことはないのであります。それぞれのロースクールにおいて、またロースクールの中でも、それぞれの教員が自分が考える理想的な教材はいかなるものかということを常に考え続けて毎年毎年更新を続けているわけですね。それがケースブックその他の形で出版されるという形になります。
 日本においてもやはり同じことが考えられなければならないわけでありまして、法科大学院教員は、それぞれが自分の教材を開発する能力を持っていなければなりません。現にないというのであれば、先ほど村井参考人がおっしゃいましたけれども、ファカルティーディベロプメント、つまり教員の能力開発というプログラムを各法科大学院においてはやらなければいけません。
 そのように考えますので、例えば私の立場からすると万が一ということになるわけですけれども、現職判検事が専任教員となってどこかの法科大学院に来たという場合にも、その方自身が自分の教材を、自分が現に奉職しているその法科大学院の理念あるいは教育目的に沿って開発する能力がなければならないわけであります。そうであるにもかかわらず、どこか中央集権的に作られた教材を持ってくるなんというのは、これは法科大学院教員の能力がそもそもないということを意味するわけですね。
 私はそのように考えますので、一見、最高裁や法務省が教材を開発してくれるというのは、親切なように見えて、実は法科大学院においてはあってはならないことなのであると、それは正に私が繰り返し申し上げている研修所型教育の発想なのだということを申し上げたいわけです。
 同じことは弁護士会の関係についても言うことができます。二弁は確かに大宮に対して非常に大きな支援をしてくださっているわけです。支援委員会ができているわけですね。しかしながら、大宮法科大学院において教えるのは、二弁会員あるいは埼玉弁護士会会員の中の特定の人であります。最終的には、その方が自分の教材を開発しなければならないわけですね。ですから、背後に支援委員会があって、そこの今までの研究成果を参照するということはあっても、最終的には個々の教員が教材開発をしなければならないと。その意味で、例えば大宮の民法でしたら、四名の学者、弁護士のチームが今教材開発に取り組んでいるわけであります。
 教材開発というのはそのようなものであろうというふうに私は考えております。
#67
○参考人(尾崎純理君) いろいろなところがいろいろな教材を作成するのはそれなりの意味があるのかとも思いますが、私どもは現在、五十年あるいは百年に一度の司法制度改革に取り組んでいるわけでございます。したがって、その教える内容、教え方というものは、やっぱり現状に対する反省が原点になければならないというふうに私は思います。最初の陳述でも申し述べたとおりでございます。そういったものがなくて、現状をただ紹介するだけ、現状を肯定するだけ、そのような教育内容になってしまったならば、これは全く改革の名にも値しないし、ロースクールも全く魅力のないものになってしまうだろうというふうに思っております。
 そういう意味で、やはり教える人間が熱意を持って改革に向かって後継者を養成する、そういう心構え、教え方が必要なんじゃないかというふうに私は考えております。
#68
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#69
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君及び文部科学大臣官房審議官清水潔君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#70
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#71
○委員長(魚住裕一郎君) 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#72
○千葉景子君 今日は、法科大学院への派遣法でございますが、ちょっとその前に一問だけお尋ねをさせていただきたいと思います。
 大臣、大臣の肝いりでといいましょうか、刑務所問題等にかかわりまして行刑改革会議が立ち上がったと伺っております。四月の十四日に最初のお集まりがあったとも聞いているところでございますが、この問題はこの参議院の法務委員会がまず始めに問題指摘をさせていただいたということも大きなきっかけになっていることでもございますし、そして今後の抜本的な改革等に向けて大変重要な役割を負っていただかなければいけない、そういう会議であろうかというふうに思っております。
 そういう意味で、国会の議論ともある意味では連携をしながら、より良き調査、そして方向、こういうものを作り出していただきたいというふうに思うんですけれども、そういうことで一体この会議がどんなふうに動いていこうとしているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
 特に、どんな頻度で、かなり中身も盛りだくさんでございますし、それから資料等を含めて相当な膨大なものもあろうかというふうに思います。そういう中で、どんな頻度でこの会議が開かれていくのか。それから、やはり議論が公開されて、国会の議論あるいはそれぞれの専門的立場あるいは関連する皆さんのいろんな議論とも相まって進んでいくということも必要だと思いますので、その公開の問題。
 それから、今申し上げましたように、国会の議論との連携といいましょうか、どういう形でこちらの議論も受け止めていただき、あるいは会議の議論も節々で国会の方にもお聞かせをいただくというようなことも必要だというふうに思いますが、そういう点。
 それから、やっぱり基礎的な調査というんでしょうか、やっぱり実態をよく知っていただくということも必要だと思いますので、例えば受刑者とか、あるいは大変御苦労されておられるであろう刑務官の皆さん等々から直接意見を聞いたり、あるいはいろんな形でその事情聴取をされるというような御計画などもその会議としてお持ちであるのか、この辺りを、ちょっとまとめた形になりますけれども、どんなふうに今後進んでいくものか、大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
#73
○国務大臣(森山眞弓君) 四月十四日に第一回の会合を始めました行刑改革会議につきまして、非常に先生方大変多大の御関心をお持ちになっているかと存じます。
 今、千葉先生から御指摘になったさまざまな問題点、大体どのぐらいの頻度でという話が最初にございましたが、今のところ大体、月に一回ぐらいということで始まりまして、次第に議論が煮詰まっていきましたらもう少しまめに、あるいは濃密にやることになるんではないかと思いますが、最初のうちは月に一遍ぐらいということでございます。そして、やってみようということで始まったばかりでございます。
 それから、公開の問題でございますが、これは会議の席で初めて先生方相談されまして、そして別室にモニターを設置しまして、マスコミにはそのモニターを通じて会議を公表していこう、公開していこう、いわゆるリアルタイム公開ということでお決めいただきました。
 それから、現場の人たちの話をということでございましたけれども、私といたしましても国民に理解され、支えられる刑務所を作るということが大変大事だということを考えまして、そのようなことを行刑改革会議の先生にも申し上げたところでございまして、おっしゃいますように現場で苦労した人たちの意見をよく聞いていただくということも必要な方法だと思います。
 ただ、具体的にどなたから、あるいはどういう部署の人からどんなふうに聞いてみるかということについてはまだ何も決まっておりませんで、今後、会議において委員の方々の御意見によって決まっていくものと考えております。
 議事録は、モニターで公表していくほかに議事録をまとめまして、少し遅れますけれども、何週間か遅れた後、議事録が出てまいりますし、概要は法務省のホームページにも載るというようなことでございますので、先生方も見ていただく、あるいは知っていただく機会はいろんな方法であるのではないかと、議員の先生方にも見ていただけるものと思っております。
 そのようなつもりでございまして、まだ始まったばかりでございますので細かいことは決まらないものもたくさんございますけれども、一応基本的な姿勢としてただいま申したようなことを御議論いただきまして、一応決定をいただきました。
#74
○千葉景子君 はい。これから徐々に議論も濃密になっていこうかというふうに思います。是非、今、私の方からも指摘をさせていただきましたが、例えば受刑者などにも、やり方はいろいろあろうかというふうに思いますけれども、個人の意見を尊重できるような形でアンケートのようなものを取るとか、あるいは刑務官の皆さんにもそういうこともできようかと思いますので、是非そういう意見を持っている者が国会にもいるぞと、是非そういうことをお伝えいただきたいというふうに思っております。
 さて、法案の方に入らせていただきたいというふうに思いますが、今日午前中に参考人の皆さんから大変興味深い、そしてまた私も改めて勉強させていただきましたが、御意見もちょうだいをいたしました。参考人の皆さんの御意見を聞いておりましたら、いや、これは、この法案はやっぱりこのまま賛成してよかった、よろしいのかなと一瞬思ったりいたしまして、それだけにやっぱり議論を通じて疑問があるところ、あるいは大学の皆さんが大変心配をしておられるような部分をきちっと明らかにしておく必要があるのではないかというふうに思っております。
 そこで、何点かお聞きをいたしますけれども、大臣、やはり今の時代でございますので、法科大学院の教員等の中も、やっぱり男女共同参画といいましょうか、そういう視点が必要であろうというふうに思います。特に、これから実務家になっていこうという皆さんでございますので、やっぱり社会の中の男性、女性の置かれている今の立場とかそういうことに対して、どうきちっと受け止めていかなければいけないかというようなこともやっぱり身に付けていただくということも必要だというふうに思いますが、この法科大学院に関して、大臣、いかがでしょうか。そういう視点、大変重要ではないかと思いますが、大臣としての御認識はいかがでございましょうか。
#75
○国務大臣(森山眞弓君) 私も全く千葉先生の御指摘のようなことはとても大事だと同感させていただいております。
 衆議院においても、この法案に対する附帯決議におきまして、男女共同参画の趣旨を尊重するよう十分配慮をすることとされておりますし、法務省といたしましては、その趣旨を踏まえつつ適切に派遣を行っていかなければならないと。おっしゃることは当然だと考えております。
#76
○千葉景子君 じゃ、そこで、事務方の方で結構でございますのでお尋ねをいたしますけれども、この教員派遣という際に、具体的に男女の比率、ジェンダーに、やっぱりジェンダーバランスを取っ払うということを含めまして、どういう配慮をされていくのでしょうか。これは、大学の方にこうせいとなかなか指図をするという問題ではないと思いますけれども、法務省として、どういう点、形で配慮を加えていくのか、お考え方があれば教えていただきたいと思います。
#77
○政府参考人(寺田逸郎君) 男女共同参画、これは今、政府がいろいろな施策を検討するに当たって常に念頭に置いておかなければならないということは先ほど大臣の方からも申し上げたとおりでございます。したがいまして、この法科大学院への教員の派遣につきましても、やはり男女共同参画の観点からも決して忘れてはならないことが幾つかあるだろうというふうには考えております。
 ただ、他方、委員も御指摘になられましたとおり、大学の自治という問題もございまして、この派遣そのものが大学の御意向に沿った派遣の仕方を、あるいは人選をするというような他方の要請もございますので、そこのバランスがなかなか難しいところでございます。
 私どもの方から大学にこういう観点からこうしたらどうかと申し上げるのはなかなか難しいところもしたがいましてあるわけでございますが、法務省として派遣する際に、その大学の現在の構成等、あるいは派遣をするメンバーの全体の構成等を考えまして、やはり男女のバランスというものも十分に配慮の中に入れたいと、このようには考えております。
#78
○千葉景子君 本当に難しいと思います。
 午前中の参考人からのお話をお聞きいたしましても、なかなか大学の方からこれぞと、是非こういう人をといって指名をするという形にもなっていない、そこがなかなか難しいというお話がありましたけれども、今度は逆な意味で、送る側としても余り押し付けるということをやられるとこれまた困るわけですので、そういう中でジェンダーバランスを取るというのはなかなか難しいところはあるかと思いますけれども、是非そういう視点を忘れることなく取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 さて、これも参考人等の御意見も拝聴しながら私も感じたところでございますけれども、本来でいえば、実務家の派遣というのがやっぱり大学とそしてそれぞれの実務家との間で十分に合意がなされて、そして派遣をされるといいますか、そこの教員に就任をするというのが一番形としては、大学の自治そして教育の多様性なども考え合わせるとこういう形が望ましいのかなというふうには思うんですけれども、なかなかそれだけでは十分に実務家の教員が担保できないということも含めてこういう制度を取り入れるということになったものだというふうに思います。
 ということになりますと、本来の形というとおかしいですけれども、裁判官とか検察官等の身分を離れて、もうこの際頑張って法科大学院の教員としていい公人を育ててみたいと、こういう方もいると思うんですけれども、当然こういう自主的な形というのはあり得るわけでしょうね。それで、そういうことは別に否定されているわけではないと思いますが、その点はいかがでしょうか。
#79
○政府参考人(寺田逸郎君) 現段階で全部の実情を把握できる状況にはございませんけれども、しかしこの法科大学院を中心といたしまして教育の現場で働きたいという御意向をお持ちの方はそれはおられるわけでございます。今後、この法科大学院の構想が現実化するにつれてそういった方々もおいでになることは当然に予想をいたしておりまして、もちろん定年近い方もおられますが、しかし若い方の中にもそういう方も出てこられるだろうということでございます。
 そういった場合に、私どもがそれをあえてそういうことをしないでこの派遣法に基づいて行ってはどうかというようなことを申し上げるつもりは全くございませんで、それは、人材のそういった意味での流動化というのは、それはまた一つの社会の流れであろうというふうに受け止めております。
#80
○千葉景子君 そういう形で裁判官、検察官等の身分を離れてきちっと教員として頑張ろうという意欲を是非尊重していただきたいというふうに思いますが、その際、一定の任期といいましょうか、教員としての期間、契約をした期間を終えて、そして例えば再度いろいろな新しい、切磋琢磨してたくましくなり、また今度は現場で裁判官としてあるいは検察官としてそれも生かしてまた頑張ってみたい、働こうと。こういう復帰というのは例えばどういう形で可能なのでしょうか。それを保証するということはあり得ないんだろうとは思うんですけれども、その点については一般のまた新たなる任官というような形で復帰するということになるのでしょうか。
#81
○政府参考人(寺田逸郎君) これは現在の仕組みの下でも、別に法科大学院がなくてもあり得る話でございます。それで、法務省に限っていえば、過去にもそういう例がないわけではありません。
 ただ、これからはもちろん、何といいますか、人材確保の言わば供給源が多様化するというのが非常に望ましいことであろうかとは思いますが、必ず戻ってくることを保証するというような形でこの仕組みを作り上げるのも、これもまたなかなか難しいことでございますので、実情を申し上げると、ケース・バイ・ケースということにならざるを得ないのではなかろうかというふうに考えております。
#82
○千葉景子君 そこは、いったん職を離れて新たなる大学の教員ということになるというわけですから、原職に復帰する特別な措置というわけにはなかなかいかないだろうというふうに思いますけれども、そういうところでいろんな新しい分野の皆さんと交流をし、そしていろいろな資質を高めて、そしてまた実務に就くというのも、これまた決して無駄なことではないと思いますので、是非そういう際の処遇などについても十分に配慮をするようなことも考えておいていただきたいというふうに思っております。
 それから、これもやはり参考人からもお話がございましたけれども、派遣先の大学院によってやっぱり報酬などにかなりの差があったりすることが出てくるだろうというふうに思われます。
 考えてみますと、例えば弁護士などは自らの職をある意味ではいったん中断をしながら法科大学院の教員になる。多分、それぞれでしょうけれども、かなり収入もがくっと減ると。それでも意欲を持って頑張ろうという人もいるかもしれません。
 それから、お話がありましたように、やっぱり大学のいろんなことに関与をしていく、そうなると、やっぱりその中で本当にチームワークができるのかどうかという話もございました。そうなると、その格差があるから、そして大分従来の報酬よりも低くなってしまうからやっぱりそこを補てんしてあげようと、それも分からないではありませんけれども、余りほかの教員との格差が出たり、それから職を離れて収入が減るのもいとわず頑張ろうという人が片方にいたり、そういう中で補てんという問題がむしろ弊害をもたらすようなことになってはおかしくなると思うんですけれども、この派遣先大学院による報酬額の格差、それからほかの教員との格差等を考え合わせて、補てんという問題はどういうふうにこの上にかぶさってくるのでしょうか。その辺をちょっと分かりやすく御説明いただけませんでしょうか。
#83
○政府参考人(山崎潮君) 法科大学院の報酬、これはばらつきがあろうかと思います。ただ、私ども、この法案の中でやはり相当額の報酬を支払っていただくと、このように任命権者も努めなければならないというふうにされておりますけれども、仮に、じゃ相当額ということを前提にしてお話を申し上げますと、まず法科大学院、いろいろ派遣の希望があろうかと思いますが、私どももなるべくその派遣の希望を、報酬額に見合ったようなランクの者がおればその者を派遣をするということを運用上は工夫をしたいというふうに思います。そういうことによって、いわゆる給与との差額を支給するということが余り多くなくなってくるわけでございます。
 しかしながら、必ずしもそうはいかない状況もあるわけでございます。そのような場合に、やはり派遣を可能にするためにその差額分を支払うという法制を取っているわけでございます。その点につきましては、やはり安定的に継続的に多数の者を派遣できるということのために、その給与との差額、これを支給するということは必要やむを得ない状況であるということで、その点は御理解を賜りたいというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、運用でなるべくそういうような問題が起こらないようにということは配慮はしたいということと、それぞれのところで報酬が違っていれば、その給与との差額分、これについても差が出てくるということは当然でございます。
#84
○千葉景子君 そこは個々具体的に事例によって異なってはくると思うんですけれども、やはりこの派遣の一番の批判点としては、本当にフルタイムで行きながら、反面、身分は存続をしていると、こういう形が結局は何かいろんな問題を起こしているのではないかなという感じもいたします。
 いずれにしても、やっぱり不公平さ、あるいは何か従来の身分、そこは安定させておいて、それで教員という身分になってやろうという、片手間みたいなことではとてもできるものではないというふうに思いますので、それを報酬の、給与の補てん等の面でも、いい加減に、安易にそれが使われませんように、是非配慮をいただきたいというふうに思います。
 ところで、この法科大学院への派遣のこの形態、この法律で新しく作られるわけですけれども、例えば今後、法科大学院以外の専門職大学院等ができる可能性もございます。そういうときに、この法科大学院への派遣のこのシステムみたいなものがやっぱり下敷きになるといいましょうか、影響を及ぼすことになるんではないかなと思うんですけれども、その点はどうお考えでしょうか。これはもうあくまでも、この法科大学院という新しいものを何とか立ち上げ、そして充実をさせていくということのための非常に特異なやり方と考えておるのか。これから裁判官とか検察官とかあるいは国家公務員等がいろんな職種に派遣をされるというときに、ある意味では下敷きになるようなものと認識がされているのでしょうか。その点はいかがですか。
#85
○政府参考人(山崎潮君) この問題は、専門職大学院、今後どうあるべきかということにかかわる問題でございまして、直接私の所管ではないということではございますけれども、お答えを申し上げたいと思います。
 今回の法科大学院の設立に関しましては、昨年御審議をいただきました連携法がございまして、この中でやはり法科大学院における教育の充実を図ることが国の責務であるということが定められまして、それに伴いましてこの派遣法を制定をお願いしているという状況でございまして、やはりその必要性があったからこういう形を取らせていただいたということでございます。
 今後どのようなものができるか、これは一般的にちょっと私も想定し難いわけでございますけれども、そこの中でどのような必要性を感ずるのか、必要性を持つのかということで、そこの政策で決められるということでございまして、その政策の中で裁判官、検察官の派遣が必要であるということになれば、私どもとしてもそれは派遣をしていかなければならないし、またそういう法律が必要になってくるということでございまして、ちょっと一般的に今後の形がこういう形になっていくかどうかということは、私として申し上げられる立場にないということを御理解賜りたいと思います。
#86
○千葉景子君 今、今後のことは確かにそうだろうというふうに思いますが、今のお話も含めまして考えると、先ほど指摘をさせていただきましたように、本当にこの派遣の形が、身分を残してフルタイムで行くと、こういうことが本当にうまく機能するのかとか、あるいは現場でうまく教育内容等において自主的な取組が充実をしていくのか等々、まだ本当に手探りといいましょうか、試行錯誤という部分がやっぱり相当多いのではないかというふうに思います。
 この法律そのものは、スタートをさせること、改めて否定的に考えるわけではありませんけれども、やっぱり一つ一つ考えてみましても、一体どういうふうになるのか、あるいはどういう効果が出るのか、あるいはどんな問題が生ずるのか、それぞれ参考人の意見、そして質疑の中でも分からない部分がたくさんございます。そういう意味では、この法案が制定をされて、このシステムが機能をし始めても、やっぱり不断の検証と、それから、もうどうしてもこれはおかしいという部分があったらば、あるいは不足だとか足りないとか、いろんな面で後れを取ることなくその都度きちっと対処をする、あるいは法の不十分なところ、見直しをする等の対応が必要だというふうに思います。
 たしか連携法は十年で見直すということになっておりますけれども、これは現場現場でいろんな問題が出てくるのだろうというふうに思いますので、何か十年一区切りといって、そこで、よいしょ、見直しましょうということではなくして、適宜のいろんな点検が必要だというふうに思いますが、その辺りについて大臣としてはどんなふうにお考えでしょうか。
#87
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃいますとおり、この法律は初めての試みでございまして、正直言って、やってみなければ分からないという部分もあるわけでございます。
 ですから、いわゆる連携法におきまして施行後十年ということを区切って、十年を経過した場合においては検討を加えて、必要があると認めればその結果に基づいて所要の措置を講ずるということを言いましたのもそのような意味もあったものと思っておりますが、この法案による裁判官や検察官等の法科大学院への派遣問題につきましても、新たな法曹養成制度の一環としてその見直しの対象となるわけでございますけれども、そのほかに施行後十年を経過するまでの間におきましても、不断に制度の運用状況を見ながら、必要に応じてこの派遣制度の充実のために所要の措置を講じていかなければならないと考えております。
#88
○荒木清寛君 それでは、法科大学院に対する財政支援の問題につきまして、先日の質疑に補充して、まず文科省にお尋ねいたします。
 先日の答弁では、法科大学院に対する財政支援については本年夏の概算要求を目指して具体策を検討したいということでありましたが、具体的なメニューとしてどういう方策を検討の対象として、対象とする予定ですか。
#89
○副大臣(河村建夫君) 法科大学院が実務家教員の確保や少人数による双方向性とか多方向性授業等が必要とされますし、その整備にはかなりコストを要するということが予想されます。
 やっぱり我が国の三権の一翼を担う人材を法曹養成という立場でやるわけでありますから、非常に重大な使命を帯びるものでありますから、国としても多面的な支援が必要であるという認識を持っておるところでございます。
 この法科大学院に関する財政支援については、国立、私立通じて平等で公正な競争的環境を作っていくということに十分配慮をしながら、また各大学の授業料設定の状況も併せて勘案をしながら、第一点は、授業料の高額化の抑制あるいは教育研究の充実に配慮した機関に対する補助ということが考えられます。第二点として、経済的な理由により進学することが妨げられることがないようにということで、今の奨学金の制度の在り方。このような様々な支援方法をバランスを取って考えていくということでありまして、これは全体としてどのような支援をするかということをきちっと設計をしていかなきゃいかぬと、このように考えておるところでございます。
 来年度の概算要求をこれから行うわけでございまして、真に法曹養成にふさわしい充実した教育が行われるようにということで最大努力してまいりたいと、このように考えておるところであります。
#90
○荒木清寛君 さきの国会の附帯決議では、そのほかに、「民間の認証評価機関についての財政支援等に努めること。」というふうに決議をしております。
 今日も午前中の質疑の中で、多様性を確保するためには複数の評価機関があることが大事であるという参考人の陳述もございました。この附帯決議については、どう検討を文科省はしていますか。
#91
○政府参考人(清水潔君) ただいま御指摘がございましたように、法科大学院の評価につきましては、複数の評価機関が、そしてその評価機関相互が公正な競争条件の下で切磋琢磨し、そして多元的な観点から適切に行うと。これは当院の附帯決議にも示され、また附帯決議におきましては、その財政支援に努めるようにという方向性が示されているところでございます。
 私どもは、財政状況ございますけれども、それを踏まえながら、今後どのような支援が可能かということについて検討してまいりたいというふうに思っております。
#92
○荒木清寛君 続いて、財務省に質疑をいたします。
 先日の委員会でも紹介しましたが、さきの臨時国会における当委員会の附帯決議では、「資力の乏しい者にも公平に就学の機会を確保するとともに、法科大学院在学中充実した教育が受けられるよう、法科大学院の学生に対し、既存の奨学金制度等の拡充や民間資金を活用する等新たな公的財政支援策の創設にも努めること。」としたところでございます。
 先般の森山政務官の答弁でも、この附帯決議の趣旨を尊重するという発言でございました。法科大学院の学生支援のための具体的な方策について、現在、財務省としてどうした検討をしておりますか。
#93
○大臣政務官(森山裕君) お答え申し上げます。
 法科大学院生の学生支援の具体的な方策についてのお尋ねでございますが、今般の司法制度改革におきましては、法科大学院を法曹養成のための中核的な教育機関として位置付けるということとされておりまして、このような新たな法曹の養成のための施策を実施するため、平成十六年四月の法科大学院の発足に向けて今後具体化される制度改革の実情も踏まえ、民間銀行も含めます関係機関とも相談をしながら、必要な財政上の措置を含め、所要の措置を検討をしてまいりたいと考えております。
#94
○荒木清寛君 先日の政務官の答弁では、官民の役割分担という観点から、いわゆる国民生活金融公庫の教育ローンについては縮小の方向に向かっているということでした。しかし、法科大学院の学生支援策のように、今おっしゃったように、公益性が高く、しかも民間による金融支援が適切に行われないような場合には、積極的に政策金融といいますか、公的金融の活用をすべきだと考えますけれども、財務省の考えはいかがですか。
#95
○大臣政務官(森山裕君) 政策金融を積極的に実施すべきではないかというお尋ねでございますが、先般もお答えを申し上げましたとおり、教育の機会均等と家庭の経済的負担の軽減を図る観点から、進学資金等を貸し付ける教育貸付けにつきましては、先般もお答えを申し上げましたとおり、平成十三年十二月に閣議決定をされました特殊法人等整理合理化計画を踏まえ、官民の適切な役割分担の観点から貸付け規模を縮小してきたところでございます。
 法科大学院の学生への支援につきましても、やはり政策金融機関の改革ないしは官民の役割分担等の観点も踏まえた上で検討しなければならない課題であると基本的に考えております。
 ただ、財務省といたしましては、法曹志望者が経済的理由からその道を断念することのないようにしていく必要性につきましては強く認識をいたしておるところでございます。そのためには、国としてどのような関与をする必要があるのか、官民の役割分担や受益者負担の観点も踏まえつつ、今後具体化される法科大学院の実情を見ながら検討をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
#96
○荒木清寛君 今の官民の役割分担という観点からは、私も、先日、民間の教育ローンの拡充を図るために公的な保証制度を創設をすべしという提言といいますか、提案をさせていただきました。
 先ほどの附帯決議の趣旨を踏まえまして、財務省からこの点について、公的保証制度の創設について積極的な答弁を、回答をいただきたいと思いますが、いかがですか。
#97
○大臣政務官(森山裕君) 公的な保証制度の創設に関してでございますけれども、お尋ねの公的な保証制度の創設につきましては、法科大学院の学生に対して経済的理由によって就学の機会が失われることがないように、官民の役割分担という観点から、受益者負担の観点も踏まえつつ、関係機関とも相談をしながら検討をしてまいりたいと考えております。
 アメリカにおきましてこの制度があることは承知をいたしておりますが、アメリカの場合は公的な保証制度からまた直接貸付けへ少し移行しているやにも伺っておりますので、外国の例等もよく研究をしてみたいと考えております。
#98
○荒木清寛君 具体的な詰めをこれからといいますか、今もしておられるようでありますけれども、学生に対する支援の必要性は財務省も十分に認識しているというふうに伺いました。
 それで、先ほどの読み上げました附帯決議の中には、新たな公的財政支援策の創設というようなこともうたっているわけでありまして、こうしたことも視野に入れて検討をする予定があると理解してよろしいですか。
#99
○大臣政務官(森山裕君) 新たな公的財政支援策の創設に関してでございますけれども、荒木先生御承知のとおり、法曹養成過程における法曹志願者、学生、修習生に対する国の支援、関与につきましては法曹資格取得にかかわる受益と負担の観点も踏まえつつ検討を進めていく必要があるというふうに考えております。
 なお、修習生につきましては、給費制から貸与制への切替えの指摘がなされているところでもあります。一方で、経済的理由によって就学の機会が失われることがないように、学生支援の在り方を考えていく中で、官民の役割分担にも留意しながら公的な保証制度の是非を含めて関係機関と相談をしながら検討を続けてまいりたいと考えております。
#100
○荒木清寛君 財務省にもう一問ですが、やはりこの民間の認証機関についての財政支援等に努めることという決議をしておりますが、この点の検討はいかがですか。
#101
○大臣政務官(森山裕君) 民間の認証評価機関に対する財政支援についてのお尋ねでございますけれども、基本的には大学からの評価料を徴収をしていただき、その費用で賄われているということが想定をされるわけでありますけれども、今後、評価機関における公正かつ的確な評価を確保する観点から、国の支援の必要性の是非については文部科学省等の関係省庁とも相談をしながら検討を続けてまいりたいと考えております。
#102
○荒木清寛君 では、財政支援の問題はここまでにしまして、改革推進本部事務局にお尋ねをします。
 司法制度改革審議会意見書では、法科大学院の入学者選抜について多様性の拡大を図るため、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上に入学させるべきであるというふうに言っております。この一定割合という点についてはどういう制度設計を今していますか。
#103
○政府参考人(山崎潮君) この点に関しまして、私ども事務局に設置されております検討会で意見の整理がされたわけでございますが、そこでは、当分の間、非法学部出身者及び社会人の合計が三割以上となるよう努めるものとすると、こういうようなまとめがされているところでございまして、この点を踏まえ、あるいは中央教育審議会の結論を踏まえまして、法科大学院の設置基準に関します文部科学省の告示、これが今年の三月三十一日に告示がされておるわけでございますけれども、そこでも同趣旨の定めがされておりまして、置かれておりまして、法科大学院の入学者のうちに法学部以外の出身者等や社会人が占める割合が三割以上となるよう努めなければならないと、同じようにされているところでございます。
#104
○荒木清寛君 文科省に法科大学院の入学者選抜についてお尋ねをいたします。
 先般も新聞の記事に報道がございました。法科大学院の入学者選抜は具体的にどのような方法によって行われると見込まれておりますか。
#105
○副大臣(河村建夫君) 法科大学院の選抜でございますが、これはまず全員が、希望者全員が受けていただくいわゆる適性検査、法曹の資質を見るといいますか、思考力、判断力、分析力、表現力等と、こういう表現をいたしておりますが、その資質を見る適性検査、これは全員が受けてもらう。次に、面接や小論文など、各法科大学院が個別にやっていただく個別試験、この二段階に分けて試験をやって採用をすると、こういう方向でございます。
#106
○荒木清寛君 同じく文科省に質問いたします。
 今日も午前中の参考人の陳述の中で大宮法科大学大学院ではいわゆる三年コース、法学未修者コースを手厚くするという発言がございました。私は非常にこれはいいことだと思います。そういう多様性を高めるということに資するわけでございますが、この点、明年四月設置予定の状況はどうなっておりますでしょうか。
#107
○副大臣(河村建夫君) これはアンケートを、設立準備会といいますか、そこでこれからの各法科大学院がどのようなお考えでお進めになるか、予定者、いわゆる設立予定者といいますか、そこにお聞きをしたわけでございますが、これによりますと入学定員における法学未修者と既修者の割合については、回答総数七十件のうちで未修者を既修者より多く設定するものが三十五件、既修者を未修者より多く設定するものが二十二件ということですから、いわゆる未修者、多様性をうんと求めるという考え方の方が多いわけでございまして、これ、この結果では入学定員の総数における未修者及び既修者の内訳がまだ十分では、不明でございますから全体における未修者の割合は分かりませんが、文部科学省としても今後の法曹養成制度改革の趣旨を踏まえますと将来の法曹の多様性が確保できる、これを前向きに検討していただくというふうに考えておるところでございます。
#108
○荒木清寛君 では、最後に、法務大臣に今回の実務家教員派遣法案の運用に当たりまして、大学、高等教育機関の教育の自主性あるいは大学の自治を損なわないよう十分に尊重するという決意をお尋ねいたしまして、私の質疑を終えます。
#109
○国務大臣(森山眞弓君) この法律案による教員の派遣は、法科大学院における教育の充実を図り、国民の多様かつ広範な要請にこたえることのできる法曹を養成するために、法科大学院からの要請に基づいて当該法科大学院設置者と最高裁判所又は任命権者が協議の上、裁判官や検察官等の派遣についての取決めをするという制度設計としておりまして、法科大学院側からの要請もないのに国が一方的に派遣するということはございません。
 大学の自治や教育の自由を十分に尊重しておりますし、またその運用に当たりましても、大学の自治や教育の自主性を十分尊重すべきであることはおっしゃるとおり当然であると考えます。
#110
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 午前中の参考人質疑を受けまして、まず現職裁判官、検察官の派遣の在り方について質問をいたします。
 ちょっと通告してないんですが、法務省からまずお聞きをいたしますが、今日の午前中の参考人からも、大学の自治の根幹である人事権ということの観点からも、いわゆる大学が要請する人材が派遣をされる仕組みが必要だということが口々に言われまして、いわゆる法務省、最高裁側からのリストではなくて、大学がやはり個別交渉、いわゆる一本釣りをしてこの人の派遣をしてほしいと言うことができることが必要だということが口々に言われました。
 衆議院の議論を見ておりますと、直接交渉、大学側が直接交渉をやっている人が、例えばA大学に希望していると、その人が派遣リストに載っているけれども実はB大学に派遣しようとしていると、こういう場合にどうなのかといいますと、これは同意が必要なのでB大学には行けないということになると。こういう答弁はあるんですが、こういう個別交渉で合意をした場合に、法務省側が用意したところに行けないだけじゃなくて、そういう希望もちゃんと入れられた運用がされると、こういうことでいいでしょうか。
#111
○政府参考人(寺田逸郎君) これは個別具体的なケースになりますと様々でありますので、なかなか一概には申し上げられないんですが、基本的には各大学それぞれ要望がおありになって、その要望の中にはもちろん非常に、カテゴリーからいえば非常に狭い範囲の御要望というのも中にはあろうかと思います。そういうものをしかし全部お聞きした上で、こちらの方としては、じゃこの方でどうでしょうかと。しかし、もちろん大学側は、それはそんな人じゃない方がいいということをおっしゃっていただく自由はおありになるわけで、すべて見た上で、これはもちろんパートタイムもフルタイムもいろいろの組合せもございますので、見た上で、ではこれはどうでしょうかと、最終的には大学側と合意をした、こういう方が派遣ができる、こういうことになるわけでございます。
 その上で取決めをするわけでございますので、まあ言ってみれば、完全に御納得いただくのもなかなか難しいですけれども、できるだけその要望に沿うような形で派遣をしたいと考えておりまして、むしろ全く意に沿わないような方が派遣されてどうにもこうにもうまくいかないというようなことはこれはもう避けたい、このように考えております。
#112
○井上哲士君 やはり、衆議院の答弁を見ておりますと、直接交渉の場合には、もちろん一時的に休職なり退職されて法科大学院の教授になっていかれる方もおいでになるかもしれません。しかし、少なくともこの法律に基づく派遣の一環としてなされる場合には、任命権者の決定によってその者を派遣すると、こういう答弁なんですね。これを見ますと、要するに事前に直接交渉をしていた者は、もうこの法律に基づく派遣の一環としては除外をする、一時的に休職なり退職をして行きなさい、勝手にと、こういうふうにも聞こえるわけですね。
 ですから、運用として、個別に直接交渉をしていて本人も同意をしている、あそこに行きたいという場合に、入口からこの法律の枠外だということでは、そういうかたくなな運用ではないんだ、そういうことでいいでしょうか。
#113
○政府参考人(寺田逸郎君) それはそのとおりだというふうに理解をいたしております。
 私どもとしては、そういう例えば非常に狭い地域で、もうこの人しかいない、その人とも交渉できている、しかし事前に交渉があるからといってその人は送らないというようなかたくなな姿勢を取ることは全くございません。すべて勘案した上で、やはりその人が適切だという納得が得られれば、それはもうそういうふうにするわけでございます。
#114
○井上哲士君 じゃ、次に、第三者評価にかかわってお聞きをいたします。
 これも午前中の参考人の中で、今の一本釣りともかかわっていろんな議論がありました。法科大学院の認証評価機関の評価基準の細目の中で、大学評価基準の評価項目というのはどのように検討をされているのか。そして、その中でこの教員についてはどういうふうに定められようとしているのか。いかがでしょうか。
#115
○政府参考人(清水潔君) 法科大学院の第三者評価についてでございますけれども、今、私ども、評価機関を認証するための基準という、いわゆる認証基準でございますが、認証基準について今原案を検討中でございまして、早急に策定するというふうな予定になっております。
 認証基準におきましては、例えばカリキュラムとか教員組織でありますとか、その具体の項目について評価を行う、きちんとそれぞれの認証を受けた評価機関が評価を行ってくださいという形で示そうかというふうに考えておるところでございます。
#116
○井上哲士君 今も教員組織というのがその項目の一つだという御答弁だったわけですが、今朝の参考人の中でも、現役の裁判官や検察官などが教授陣にいるかいないかが第三者評価の対象になるんではないか、そのことが非常に大学陣の中で懸念があって、カリキュラム上必要がないのに検察官を要請しようかというようなこともあるんだというお話がありました。
 これは衆議院の答弁では、そういう第三者評価の基準の対象に現役がいるかどうかはならない、その懸念はないという御答弁で、それはミクロな評価はしないという答弁がありましたけれども、具体的にはこの懸念がないという、ミクロな評価はしないというのはどういうことなんでしょうか。
#117
○政府参考人(清水潔君) お答え申し上げます。
 評価基準自体は認証を受けた評価機関自体が定めるということでございまして、それぞれ今、評価機関の候補として、大学評価機構でありますとか、大学基準協会でありますとか、あるいは法務財団でありますとか、それぞれその認証を受ける準備を整えておる、こういうふうな状況であるというふうなことでございます。
 お尋ねの現職の裁判官又は検察官がいない場合ということでございますけれども、第三者評価機関はそれぞれ法科大学院についてそれぞれがお定めになることでありますけれども、法科大学院がどれだけ創意工夫ある、特色ある取組を、またその教育の内容あるいは法科大学院の趣旨、理念の実現のためということでそれを評価するという観点から、教員組織についても見るということであろうというふうに思っております。
 そういう意味で、正に理論と実務の架橋という観点、あるいはそのためのカリキュラムの在り方という観点から評価を行うということで考えますと、現職の方がいるかいないかということのみに着目した評価を行うというのは正直申し上げて考えにくい、こういう意味で申し上げております。
#118
○井上哲士君 設置審査の段階では、実務の経験を要する者と、こういう定めになっているわけで、それ以上に、要するに現職であるかどうかというようなことをその設置審査を超えて、しかも教育内容とかかわりなくやることはないと、こういうことで確認をしてよろしいね。
#119
○政府参考人(清水潔君) 設置認可に当たりまして、私どもは参照するのは設置基準でございます。設置基準は、御案内のように、実務家教員の具体的な範囲については特に規定してはおらないわけでございます。実務家教員は、基本的に開設される授業科目との関係において判断されるべきであって、それはあらかじめ、例えば職種でありますとか、実務を離れてからの期間など、そういうものを一律的に規定するというのは、かえって難しいばかりではなくて多様性という観点からも問題があろう、こういうふうな考え方で、少なくともそういう個別的な、当面とにかくそういう判断の積み重ねというのが必要なんだろうということであろうと思っております。
 したがいまして、現職の裁判官、検察官を教員として置くことを設置基準が求めているものではありません。そういう意味で、設置認可審査もそれを踏まえながら、法科大学院の目的あるいは授業科目、教育の内容等に照らして適切な実務経験を有する教員であるかどうかという観点から審査する、こういうことになろうと思っております。
#120
○井上哲士君 連携法では、法務大臣は設置基準の制定、改廃、認証評価機関に関する認証基準の制定、改廃について文部科学大臣に意見を述べ、あるいは必要な措置を求めることができる、こういうふうになっておるわけですが、今後、法務大臣として、この現役の裁判官や検察官等をやはり法科大学院の教員として採用するということを要求するような、そういう基準を設けるようなことを求めるということはないということで確認してよろしいですね。
#121
○国務大臣(森山眞弓君) 現職の裁判官又は検察官等を安定的かつ継続的に派遣することはこの法案によって初めて可能となるわけでございまして、この法案による教員の派遣は、法科大学院設置者の要請によりまして、当該法科大学院の設置者と最高裁判所又は任命権者が協議の上、締結した取決めに基づいて行われるものでございます。
 現職の検察官等の派遣を要請するか否かは、専ら法科大学院側が決定するべき事項でございます。このような法案の趣旨に照らしますと、現職の検察官又は裁判官の教員がいることを評価基準の項目としている第三者評価機関を認証すべきであるとの意見を申し上げることは適当ではございませんし、そのようなことを言う考えは全くございません。
#122
○井上哲士君 では、この第三者評価機関が非常に大きな役割を果たしていきます。その上で、複数の評価機関があって、大いに公正な、切磋琢磨をすることが重要だということは先日の答弁でもありました。
 問題は、複数の評価機関が本当に公正な競争条件の下でできるのかどうかということでありますが、日弁連の試算ですと、アメリカと同水準の徹底した評価を行いますと、現地調査なども行かなくちゃいけない、非常に多額の費用が掛かりまして、四十校評価をしますと約一億八千万円、これを大学の評価料だけで賄いますと、年会費が一校当たり二百万円以上、大学からの評価料は七百万円以上に設定する必要があると、こういうような試算も行われております。一方、学位授与機構の方は独立法人化されるといいまして現在約四億円の評価予算を持っていると、こういうことになるわけですね。先ほどの答弁で、公正な競争条件になるような、民間へもこの評価機関への援助をしていくということがありましたけれども、この評価料についてやはり大きな差ができないような、それが一番競争としては大きいと思うんですが、そのことを念頭に置いたそういう援助なのかということが一つ。
 それから、これも答弁にありましたが、大学評価のための基準や体制等々の調査研究のための経費が今年度予算で三千百万円組まれておりますが、これを維持しつつ別途そういう援助の枠組みを検討していると、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
#123
○政府参考人(清水潔君) 初めのお尋ねでございますが、ちょっと一点だけ付け加えさせていただければと思いますが、大学評価機構が現在行っている国立大学に対する評価は、国立大学が法人化され、法人化以降は正に設置者として、いわゆる法人評価委員会の下に要請に基づいて行われる評価ということでございまして、そういう意味で認証評価とは性格が異なるものでございます。
 認証評価につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、評価機構もあるいは基準協会も法務財団も今、正に認証評価ということを、そのための体制、評価基準等々検討に入っている、こんなふうな状況でございます。したがいまして、認証評価に当たりまして、例えば評価機構でございますとか基準協会でございますとか、様々な活動、事業を行っている場合には、基本的に経理を明確に認証評価と区別するということは重要なことであろうと思っておりますし、そこは認証基準の中にも明らかにするというふうなこととしております。また、それと同時に、評価料が著しく低いなど、他の認証評価機関に比べて有利な条件で認証評価を行うというようなことはやはり避けていただくというようなことを考えたいというふうに思っております。
 したがいまして、お尋ねは財政支援の問題でございますけれども、財政支援につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、今後、評価機関のこの当院の附帯決議を踏まえまして、私どもとしてどういう形の支援が可能なのかということを検討してまいりたいと思っております。
 そして、二点目のお尋ねでございますけれども、十五年度予算でいわゆる調査、第三者評価に関する調査研究経費ということで三千万円ほど、三千万を上回りますけれども、それを措置しております。これは、言わば我が国におけるいわゆる第三者評価については、正直なところ申し上げて、なかなか十分な経験と蓄積というものがまだないというふうな状況に、そういうものを踏まえまして認証評価を実施する、そういう準備を進められている機関に対して、そういう体制、評価基準でありますとか評価体制でありますとか様々な御検討を具体的に詰めていただかねばならないわけでございますので、その体制整備を支援するための調査研究の経費を支援しようというものでございます。
 したがいまして、この調査研究というものを踏まえながら、正に十六年四月、先般、連携法、学校教育法等の一部改正、十六年四月が施行でございます。したがいまして、認証評価が恐らくその時点で申請、認証の申請がなされてくるということでスタートをいよいよ切っていくということになるわけでございますので、そういう意味で、今後、認証評価機関に対する支援については、先ほども申し上げましたように、更に今後検討したい、こういうことでございまして、調査研究という場面につきましては、今そのようなスケジュールの中で考えれば、役目をある程度終えることになるのかなと、こういうふうに考えておるところでございます。
#124
○井上哲士君 では、次に、学生を中心とした財政の援助なんですが、先日の質疑でも日弁連のアンケートが紹介をされました。これは今年一月に法律家志望者に実施したもので、五千四百九十六人の回答ですので大変重要でありますし、興味深い内容で、入学に当たって考慮する要素のトップが学費を負担できるかどうかで六九・三%、そして実に五〇%が、学費が年間百万円を超える場合は進学をあきらめると、こう答えておるわけで、今予想されています学費からいいますと、相当の人々が奨学金の状況によっては進学をあきらめざるを得ないということになりますが、これ、文科省としてはこの調査結果をどのように受け止めておられるのか、そして文科省としても独自にこういう調査をしているのか、この点どうでしょうか。
#125
○政府参考人(清水潔君) 日弁連のアンケート調査につきましては、私ども非常に関心を持って読ませていただきました。先生御指摘のように、奨学金の貸与等がない場合に百万円を超えると進学を断念するという回答が五〇%。ただ、同じ調査でも、学費が年間二百万円と仮定した場合に、例えば奨学金がどれくらいであればという、進学を希望するかということについては、二百万円まで得られれば六一%、三百万円まで得られれば八二%、こういうふうな状況であるということでございます。
 これ、各法科大学院の授業料設定がまだ明らかでないという中での回答でもありますし、また奨学金が貸与がないという場合には、学生にとって授業料はできるだけ低廉であってもらいたい、これは自然でございます。私ども、そういう意味で、進学の動機、動向に授業料の設定、奨学金の充実は大きな要因としてあるということであるというふうに受け止めております。
 その調査についてでございますが、現在、私どもは、法科大学院について奨学金の希望等についての調査を行っておりません。奨学金の貸与水準の検討に当たっては、具体的な授業料の動向等を踏まえながら、様々な、いろんな調査結果を参考にしながら検討は進めてまいりたい、このように考えております。
#126
○井上哲士君 文科省として調査をされていないということですから、現状でいいますと、学生の生活実態とか要求を反映をした調査はこれしかないということでありますし、大変重大な中身であります。
 ですから、今後、おっしゃったような学費の設定などがされた上での様々な財政支援の検討に当たっては、ここで示されている調査結果をやはり重要な参考資料の一つとして取り組んでいただきたいし、その上で奨学金や私学助成についての実施を、必要な実施をしていく上での検討状況と決意を最後、お聞きをいたします。
#127
○政府参考人(清水潔君) 今御指摘がございましたように、私どもは、例えば奨学金とかそういう場合には、学生生活実態調査というようなものを実施しております。これ、各分野ごとではありますが、特に法科大学院に特化したというようなものではありません。私どもは、例えばそういう調査でありますとか、日弁連が行われたこのアンケート調査でありますとか、いろんな資料を参考にさせていただきながら、今後、奨学金の枠組みあるいはその支援策の充実ということについて取り組んでいきたいと、このように思っております。
#128
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#129
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
#130
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案に対し、自由民主党・保守新党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府並びに最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 法科大学院への裁判官又は検察官等の派遣については、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性を備えた法曹を養成するという目標に照らし、教育者としてすぐれた資質及び能力を備えた者が要請に応じて派遣されるよう必要な人員の確保に努めるとともに、派遣される裁判官又は検察官等の自主性を尊重しつつ教育方法等についての研修の実施に配慮すること。
 二 法科大学院への裁判官又は検察官等の派遣については、透明で公平な手続により、法科大学院の教員構成やカリキュラム編成等の必要性に基づいた要請を極力尊重して人選すること。また、人材確保に地方格差が生じないように十分配慮するとともに、男女共同参画の趣旨を尊重すること。
 三 法科大学院への裁判官又は検察官等の派遣については、派遣裁判官等が一方的な立場から実務教育内容への関与・画一化等により、法科大学院の自主的かつ多様な発展を阻害することにならないよう留意するとともに、管理・運営面に関与する場合には、法科大学院の自治を尊重し、教授の自由を損なわないよう十分な配慮をすること。
 四 法科大学院へ派遣される検察官等に対する国からの給与の一部支給については、派遣前の給与水準の維持自体が目的とされることなく、法科大学院の要請に応じた安定的・継続的な派遣と教育の実効性を確保するため特に必要があると認められる場合にのみ実施することとし、その報酬が法科大学院の他の教員と不公平が生じることがないよう配慮すること。
 五 裁判官、検察官等の派遣が新しい制度であることにかんがみ、本法の施行後、早期に、法科大学院における派遣される裁判官又は検察官等の教育内容、教育効果等について検討し、必要があると認めるときは、適宜本法の見直しも含め所要の措置を講ずること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#131
○委員長(魚住裕一郎君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#132
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森山法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森山法務大臣。
#133
○国務大臣(森山眞弓君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
 ありがとうございました。
#134
○委員長(魚住裕一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#135
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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