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2003/07/10 第156回国会 参議院 参議院会議録情報 第156回国会 法務委員会 第21号
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2003/07/10 第156回国会 参議院

参議院会議録情報 第156回国会 法務委員会 第21号

#1
第156回国会 法務委員会 第21号
平成十五年七月十日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 七月八日
    辞任         補欠選任
     野間  赳君     南野知惠子君
     加藤 修一君     浜四津敏子君
 七月九日
    辞任         補欠選任
     小泉 顕雄君     青木 幹雄君
     南野知惠子君     野間  赳君
     角田 義一君     本田 良一君
 七月十日
    辞任         補欠選任
     青木 幹雄君     藤井 基之君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                荒井 正吾君
                市川 一朗君
                千葉 景子君
                荒木 清寛君
                井上 哲士君
    委 員
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                野間  赳君
                藤井 基之君
                江田 五月君
                鈴木  寛君
                本田 良一君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
                福島 瑞穂君
   衆議院議員
       修正案提出者   漆原 良夫君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    増田 敏男君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中山 隆夫君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   大野市太郎君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   山崎  恒君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推
       進本部事務局長  山崎  潮君
       警察庁長官官房
       国際部長     小田村初男君
       警察庁生活安全
       局長       瀬川 勝久君
       警察庁刑事局長  栗本 英雄君
       法務大臣官房司
       法法制部長    寺田 逸郎君
       法務省民事局長  房村 精一君
       法務省刑事局長  樋渡 利秋君
       法務省矯正局長  横田 尤孝君
       国土交通省海事
       局次長      金子賢太郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る八日、加藤修一君が委員を辞任され、その補欠として浜四津敏子君が選任されました。
 また、昨九日、小泉顕雄君及び角田義一君が委員を辞任され、その補欠として青木幹雄君及び本田良一君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁長官官房国際部長小田村初男君、警察庁刑事局長栗本英雄君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び国土交通省海事局次長金子賢太郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(魚住裕一郎君) 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 今日は、刑法の一部を改正する法律案についてお尋ねをさせていただきますが、これはちょっと通告をいたしておりませんで大変恐縮でございますが、冒頭、私のちょっと思いも含めて、法務大臣に思いを聞かせていただければというふうに思います。
 本当に衝撃な事件でした。長崎で四歳のお子さんが殺害をされたと。本当に心痛む思いがいたしておりました。事件が分かってまいりましたら、殺害をしたのが十二歳の少年であったということで、補導をされ、そして児童相談所から家裁へと送致がされるのではないかという報道発表がされております。何か本当に、四歳で、もう一方が十二歳、何ともこういたたまれないというか、どこにこの思いをぶつけたらいいのかなと、そんな感じがいたします。
 こういうやっぱり非常に衝撃的な事件がありますと、また処罰の対象を広げる必要があるのではないか、あるいは少年に対する厳しい制裁を加える必要があるのではないかというような声が出てこないとも限りません。前回の少年法の改正のときも、やはり刑罰を科すことのできる年齢の引下げというようなことにいろいろな事件からつながっていった経緯もございます。
 しかし、それが結果的には功を奏したんだろうかという気もいたしますし、本当に、よく言われるように、心のやみとでもいうのか、本当にただ刑罰を強化をするということだけで問題が解決、本当にするのだろうか、こんな思いも今率直に持つところでもございまして、法務大臣、いかがでしょうか、こういう事件があるといろいろなまた声が大臣の下へも聞こえてくる、あるいは寄せられてくるということもあろうかというふうに思いますが、ここは本当に、大人が本当に全身で今の事態を受け止めていかなければいけないのではないかと、こんな気がいたしますが、率直な、何というんでしょう、御感想というか、思いがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
#7
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、誠に痛ましい事件でございまして、四歳の小さい無邪気な子供が殺されたというだけでもショッキングなんですけれども、そういうことをしたのがまた十二歳の本当にまだ幼い少年ということを考えますと、それを知りますと何とも言葉に表しようのない、悲しい、切ないといいましょうか、表現のしようのない気持ちで一杯でございます。
 少年による凶悪な事件がこのところ時々聞こえてくるわけでございまして、被害者になった親御さん始め、家族の方々の思いはさぞやと思いますと、本当に切ない気持ちでございますし、家庭や学校においてこのような子供たちが、何とか面倒を見ることはできなかったんだろうかと。加害者の子供についても、かわいそうに、これから一生そういう問題を背負っていかなきゃならないということをよく承知していない年齢の間にそのようなことになって、今日の新聞では後悔しているという言葉が出ておりましたけれども、年がたつにつれて更に後悔が深まっていくのではないかということを考えますと、この子供たち、加害者であった少年にとっても大変悲劇的な事件だったというふうに思います。
 私もちょうど十一歳の孫がおりまして、その子供の普通の、ふだんの状況から見ますと、とてもとてもそんなことは想像もできないんでございますけれども、現にこのようなことが十二歳の少年に起こったということを考えますと、全く恐ろしいことだと。どういうふうに説明してどういうふうに考えたらいいのかよく分からないという、誠に戸惑った、茫然自失した気持ちで一杯でございます。
 おっしゃるように、少年法の該当年齢よりはまだ更に低いわけでございまして、この少年法を前提として考えますと、法務省が何かをするということは非常に少ないわけでございますし、むしろ児童の福祉とか教育とか、そういう面でもう少し何とかしなければいけないんじゃないかという気がするわけでございますが、少年法の年齢をもっと下げたらいいんではないかということが新聞にもちらちら出てはおりますけれども、日本の現在の少年法は、三年前に年齢をいろんな理由で下げさせていただいてまだ日が余りたっておりませんし、諸外国とも比べましてもそう違いはございませんので、少年法の問題というよりは、子供を取り巻く環境の整備、あるいは教育とか福祉とかいう面についてもっときめ細かく対処するべきなのではないかというのが私の個人的な率直な感想でございます。
#8
○千葉景子君 ありがとうございました。
 このことにつきましては、今日は率直な御意見をいただいたということでとどめておきたいというふうに思っております。
 さて、刑法の一部を改正する法律案でございますけれども、あの法案の提出のきっかけといいますか、これは、御承知のとおり、TAJIMA号事件が一つに引き金になっておるのではないかというふうに私も承知をしております。
 ただ、確かにこの法律がそういう意味では改正が必要だということをこの問題が、事件が知らしめたというところはあろうかというふうに思うんですけれども、考えてみれば、問題自体はそれまでもなかったわけではないのかなというふうに思います。何か事件があったからぽっと法案が出てくるというのも極めて何か短絡的な感じもいたしまして、決してこの法案改正が悪いという意味ではありません。
 ただ、こういう問題は、その間も、それまでの間も、やっぱり国際状況とか今の社会状況とか考えながら法務省当局などでも検討されたり御議論がされていたのかなと。いたのであるとすれば、じゃ、何でこれまで法案とか改正案が提案をされてこなかったんだろうか。逆に、これで突然出てきたということは、その間、全然、検討は怠っていたというか、こういう点については考えも及ばないでいて、こりゃ大変だと、こういうことになったのか、どうもこの辺の経緯がちょっと唐突な感もするわけでございまして、ちょっとこの法案が出てくるまでの経緯を御説明をいただきたいというふうに思います。
#9
○国務大臣(森山眞弓君) 昭和二十二年の刑法改正で、国民に対する犯罪に係る国外犯処罰規定が削除されましたが、その後の刑法改正作業の中で、昭和四十九年に法制審議会から答申されました改正刑法の草案には同種の国外犯処罰規定が盛り込まれたところでございました。しかし、その草案は法案として提出されるに至らないで、その後も国民に対する犯罪に係る国外犯処罰規定を欠いたまま、そのままになってきたわけでございます。
 その後、国際的な人の移動が大変多くなって日常化いたしまして、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増えまして、特に殺人や誘拐、強盗等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくない現状にございます。しかも、いわゆるTAJIMA号事件のように、犯罪地国において必ずしも直ちに適切な刑罰権の行使がなされないような事例も認められるわけでございまして、日本国民の保護の観点から、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定につきましては緊急にその整備を行う必要があるというふうに考えまして、今回の法案を提出させていただいたわけでございます。
#10
○千葉景子君 責めるつもりは全然ありませんが、何か、そうすると、この問題がもし大きな問題にならなければ、あるいは議員の側から非常に議員立法等の必要性なども指摘をされていた問題でございまして、そういうことがもしなかったら、じゃ、この問題は当分この俎上には、国会の議題にはならなかったのかしらと、こんなふうにも思ったりするわけでございます。
 いろんな契機をとらまえて必要な法整備をしていくということは決して悪いことではないというふうに思いますけれども、法務省の方でもいろいろな課題につきましてはふだんからいろいろな角度での検討をしていただく、そして問題を、国会にも情報を提起をしていただくということが必要ではないかというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。
 さて、このTAJIMA号事件、これは突き詰めて考えますと、この刑罰権をどう行使するかという問題にとどまらず、根幹にはやはりこれがいわゆる便宜置籍船であったということも大きな問題ではないかというふうに思っております。
 この便宜置籍船についてはいろいろな問題が指摘をされています。例えば、やはり責任の所在といいますか、そこがいま一つはっきりしないということもあり、事故が多いとか、そしてその事故の結果、環境汚染、海の汚染ですね、油が漏れて海の汚染が進行するという指摘もありますし、あるいは運航に携わる船員の皆さん、そこは日本の船員の方も同乗する、外国の船員の方もですね、そこに本当にきちっとした指揮命令系統やあるいは人権の配慮、あるいはそれぞれの労働上の権利のきちっとした配慮、こういうものが本当にきちっとできているんだろうか、相互のコミュニケーションなどもきちっと取られているのか、非常に不安定なところもあるのではないかと。こういうことが、ある意味では事故とかあるいはこういうトラブル、そして傷害、殺害行為などにも発展していくということなどもあるのかなと考えたりいたします。
 そういうことで、ちょっと国土交通省に今日はお話を伺わせていただきますが、この便宜置籍船について、その抱える問題、そして国土交通省として、やはり海運の健全なる発展のようなことも踏まえながら、どんな処方せんといいますか、何か対応策などを考えておられるのか。この便宜置籍船の、何というんでしょうね、に対する御認識、その辺りがどういうものなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいというふうに思います。
#11
○政府参考人(金子賢太郎君) お答え申し上げます。
 便宜置籍船とは、船舶の登録要件が緩やかな国の船として便宜的に登録されたものでございまして、船舶の保有コストとか、それから運航コストの削減を図ることが可能となっているものです。外航海運企業というのは、グローバルな市場の中で厳しい国際競争を展開しておりますために、世界的にこれは便宜置籍船を活用して、可能な限りのコスト削減に取り組んでいるというのが現状、実態でございます。
 確かに、国際的な基準を満足しておらず、海洋汚染の原因となるような事故を引き起こす船や、いわゆる混乗に伴います船員間のトラブルの発生が便宜置籍船に多いとも言われております。特に、昨年の四月に発生いたしましたTAJIMA号事件は、我が国の管轄権が及ばないことによる問題を再認識させられた事件でございました。
 こういった事項につきまして国土交通省といたしましては、改めて船内融和の促進について外航船社に指示を出すなどいたしまして、TAJIMA号類似事件の再発防止に努めますとともに、いわゆるサブスタンダード船の排除についてポートステートコントロールを的確に実施するなど、種々の対応を行っております。
 また、他方、国際貿易量の九九%超を海上輸送に依存しております我が国にとって、緊急時を含めまして安定的な輸送を確保するために、日本籍船を維持確保することも重要な課題だと認識しております。私どもといたしましては、コスト競争力を勘案、配慮いたしました国際船舶制度を通じまして、日本籍船の確保にも努めてまいる考えでございます。
 以上でございます。
#12
○千葉景子君 いろいろな、確かに競争力の問題、価格のコストの軽減というようなことも含めまして、なかなか難しい問題ではあろうかというふうに思います。これからも引き続きまして、この便宜置籍船等を含む海運の問題について、是非、適正な、また発展に向けて努力をしていただきたいというふうに思っております。
 今回の、その中でまずは刑法の改正という形になったわけですけれども、この刑法が改正されまして刑罰、処罰をすることができるということになります。ただ、考えますと、本当に十分な効果が発揮し得るんだろうかというふうに思います。確かに、処罰要件はできました。しかし、やはり犯人の引渡しとか、あるいは捜査の共助とか、様々な手だてが一緒に動きませんと、結果的には処罰条項はあっても処罰できなかったということにもなるわけですね。その辺、この改正の効果、それから他の制度とのやはり総合的な対応、この辺りについてどうお考えになっておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
#13
○政府参考人(樋渡利秋君) 現在は、日本国外で日本国民が外国人により殺人等の重大な犯罪の被害を受けた場合でございましても、犯人に我が国の刑法は適用をされず、その犯人の処罰は犯罪地国にゆだねられ、その国において全く刑罰権の行使がなされなくても、我が国といたしましてはその適切な行使を外交的に促すといった道しかございません。
 もとより、この改正になりましても犯罪地国に我が国の官憲が直ちに乗り込んで何かできるというものではないということは委員御指摘のとおりでございますが、しかし今回の改正によりまして、このような事例にも我が国の刑法が適用されるようになりますことから、我が国が事案に応じ捜査共助や犯人の身柄引渡しの手続を経て、あるいは犯人が我が国に現在するときには直ちに適切に刑罰権を行使することが可能となるわけでございます。要は、捜査共助、犯人の身柄引渡しの請求をできる根拠を得たということになろうかと思います。
#14
○千葉景子君 今回の改正については、先ほど大臣からもお話がございましたけれども、昭和二十二年に、今回言わば復活したといいますか、その改正、今回、改正となる点が削除をされたんですね。元々あったと。削除をされたと。そしてまた、今回、復活したと。こういう経緯をたどるわけですけれども。
 今回、これまで、この間は削除をしておいて、そして今回は復活をする、昭和二十二年のところへ回帰するという多分ことではないんだろうと思うんですね。やっぱりそのときそのときのいろんな背景といいますか、二十二年の削除をした背景、そして今回また復活する背景と、それぞれあるんだろうというふうに思うんです。
 ただ、非常にこういう形で、なくなったり、またできたりとか、こういう動きなものですから、この辺、どういうふうに統一して御説明いただけるものか。ちょっとこの削除に至った経緯、それからまた復活する背景、それぞれちょっと御説明をいただきたいと思います。
#15
○政府参考人(樋渡利秋君) 昭和二十二年の刑法改正におきまして、国民に対する犯罪にかかわる国外犯処罰規定が削除をされた理由につきましては、国会における提案理由説明等におきまして、諸外国の立法例や国際主義の原則にかんがみたものと説明されております。そこで言う国際主義の原則にかんがみといいますことは、国際協調の精神を指すものと思われますが、いずれにしましても、当時の我が国の社会情勢及び我が国を取り巻く国際的な状況を背景に刑法三条二項は削除をされるに至ったものと思われます。
 しかし、現在は、国際的な人の移動が日常化し、自国民が自国外において犯罪の被害に遭う機会が増えており、一定の場合に国民に対する犯罪にかかわる国外犯処罰規定を設けることは、諸外国の立法例におきましても多く認められるところとなっております。このような国際的な情勢の変化を踏まえまして、国民保護のための国外犯処罰規定を設けることは、当時の刑法三条二項が削除をされた理由と矛盾するものではないというふうに考えております。
#16
○千葉景子君 その昭和二十二年の削除のときに国際協調ということでございまして、そうすると今は国際協調ではなくなるのかなと、これはちょっと揚げ足取りみたいになって恐縮ですけれども。多分そういうことではなくして、この国際協調というその中身も、やはり当時とそれから現在では大きく変わってきているということもあるのかなという感じがいたします。
 ただ、このように、この間、削除をされて、なかったものが、TAJIMA号事件などを契機に復活をすると。どうも、先ほど言ったように、ちょっと唐突な感がするものですから、復活をする際にも、その内容が本当に十分に吟味し切れたのかなという感じがいたします。
 どういうことかといいますと、例えば国外犯処罰を考えるときも、例えば双方可罰主義という考え方も取り得ます。あるいは、軽い法の、軽い法ですね、法の原則、こういうものを採用をするということもあり得るわけで、こういう点については、今回は双方可罰主義を採用しておりませんし、それから軽い法の原則という形にもなっていないと。この辺のやっぱり十分な検討等が行われ切ったのか。どうも、急にばたばたと法案策定ということになったものですから、どうもこの辺の議論が多少乏しかったのかなという感じはするのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
#17
○政府参考人(樋渡利秋君) まず、その点につきまして検討したかどうかということでございますが、いろいろな考え方があることは承知しておりまして、法制審議会の刑事法部会におきましても、その点を含めまして様々な角度から検討した結果、この改正になったものでございます。
 まず、双方可罰主義の点に関してでございますが、本法案におきましては、生命・身体に障害を生じさせ、あるいは生じさせ得るような犯罪であって、その被害者が日本国民である場合に限って我が国の刑法を適用することとしており、国民保護の見地からは、犯罪の行われた地において犯罪とされているか否かに拘束されるべきものではない上、これらの犯罪は他国におきましても一般的に犯罪とされていると考えられますことなどから、あえてそのような要件を設ける必要はないと考えた次第でございます。
 なお、外国法制におきましても、例えばフランスやイタリアでは双罰性は要件とはされておりません。
 また、刑の軽いものに従うかどうかということの点でございますが、本法案は、国民保護の見地から、日本国民が殺人等の一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法を適用するものでございますから、法定刑についても我が国の刑法の法定刑が適用されるのでありまして、犯罪が行われた国の法定刑に拘束されるものではないというふうにまず考えております。
 また、そもそも我が国の刑法は、各罪について合理的な範囲の法定刑を定めています上、世界各国において、これらの罪にどのような法定刑が定められ、それが合理的なものであるか否かを網羅的に検証するということも困難でございまして、犯罪地国の法定刑が軽いからといって一律にこれに従うべき理由も見いだし難いというふうに考えている次第でございます。
 なお、外国法制におきましても、多くの国ではそのような法制は取っていないというふうに承知しております。
#18
○千葉景子君 分かりました。
 ただ、その中で一点、死刑にかかわる場合、これはなかなか重大だというふうに思うんですね。諸外国、死刑廃止国も大変増えております。欧米諸国などでは、特にヨーロッパなどは死刑が廃止されているというところがほとんどなわけですけれども。その国において死刑が廃止されている、あるいはその該当する罪について死刑という刑罰が決められていないというような際には、やはりこれは一番の極刑ということになり、究極の刑ということにもなるわけで、こういう場合には、やはり万が一、日本の刑罰で死刑というのが可能であるとしても、そこは慎重に取り扱うべきではないかというふうに思いますが、先ほどの軽い法の原則ということは取らないとしても、この死刑については慎重に考えるべきと思いますが、いかがでしょうか。
#19
○政府参考人(樋渡利秋君) そもそも我が国の刑法は、真に必要やむを得ない罪に限って死刑を定めておりまして、またこれを科しているのでございまして、もとより、この法の改正によって新たに適用できる場面にかかわらず、そういうふうに慎重に裁判所の方では判断されていると思うわけでございます。
 そして、この死刑の問題につきましても、先ほど軽い罪のところで御説明申し上げましたように、たとえ犯罪地国が死刑を廃しているからといいましても、法定刑について我が国の刑法が適用されるのでありますから、その犯罪地国の在り方に拘束される理由はないといいますことと、日本国内で殺人等を犯した外国人に対しまして我が国の刑法が適用されることになるわけでありますが、その刑罰が科されることと格別に異なるものではないというふうに考えている次第でございます。
#20
○千葉景子君 もう一点お聞きしておきます。
 今回の対象犯罪については、先ほどお話があった昭和二十二年に改正されるまでは存在しておりました窃盗について、今回は除外をされております。これについては、考えてみますと、外国での犯罪では非常に窃盗も多いわけでございまして、そういう被害に遭うことがですね、この窃盗を除外してしまっていいのかなと。確かに、重大な殺人とかそういうことについてきちっとした対処をするということは必要ですけれども、よく遭遇しやすい窃盗のようなものについて、特段、除外をするということは何か理由があるのでしょうか。
#21
○政府参考人(樋渡利秋君) 窃盗罪等の財産犯につきましては、ほとんどの場合におきまして金銭的な補償により相当程度の被害回復が可能であるなど、生命・身体に侵害をもたらすような犯罪と比較すれば、その要保護性の程度は必ずしも高いとは言えないと思うのであります。また、その被害実態といたしましては、すり、置き引き等が大多数でございまして、その態様からしまして、実際上、現行犯でなければ立件が困難であるなど、犯罪地国にその処罰をゆだねざるを得ない場合がほとんどでございます。
 これらの事情も考慮いたしまして、今回の改正におきましては、国民保護の必要性の高い殺人、傷害等の一定の罪に限って刑法の適用範囲を広げることとしたものでございます。
#22
○千葉景子君 分かりました。趣旨はよく分かるところでございます。
 ただ、考えてみると、そうすると、昭和二十二年まで、以前、この窃盗も国外犯処罰の対象になっていたと。対象にはなっていたけれども、まあ、ほとんど適用されたりあるいは機能していたということはなかったのかなと率直に思うわけでございますけれども、そういうことなんでしょうかね。──結構です、結構です、これは。はい、ありがとうございました。
 法案について何点か聞かせていただきましたが、この法案、国外犯を処罰をするということで、言わば国際的な関係ということがその根底にあるわけですね。先ほどお話があった、犯人の引渡しとか犯罪捜査の共助とか、こういう問題が大きく関連をしているということでございます。
 そういうこととのかかわりで、一点ちょっと、ここの間の事実経過なり考え方をお聞かせをいただきたいというふうに思っておりますのは、元の、前というのでしょうか、ペルーのフジモリ大統領、フジモリ氏の問題でございます。
 今、日本に滞在をされているやに伺っておりますけれども、実は私の知るところでは、このフジモリ氏についてはペルーで何件かの事件に関与したということで訴追をされているということも聞いております。そして、ペルー政府の方もこのフジモリ氏について日本政府に対して引渡しを請求をすると、されたかどうかはちょっと私もそこは確認できておりませんけれども、引渡しを請求したいというような意向も表明している。あるいは、国際刑事警察機構、ICPOが国際逮捕手配書を発令をしているというような情報も聞いておるんで、もし違えば御指摘をいただきたいというふうに思いますし、こういう状況があるということをどういうふうに法務省の方で御承知をなさっておられるか。そして、今、日本の法律でも、やはり国外犯処罰という関係ではありますけれども、こういう国際的な中で、やっぱりきちっとした捜査、裁判を行って、そして犯罪を厳しく抑止をしていこう、そして処罰をしていこうということでございます。
 こういうことにかんがみながら、フジモリ氏についてはいろいろな思いがそれぞれあろうかというふうには思いますが、やはり事、裁判、司法権のきちっとした行使ということになれば、日本も当然それに対応すべき責任もあるんだろうというふうに思っていますが、この間の少し経緯とそして対応につきまして、御承知のところございましたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。
#23
○政府参考人(樋渡利秋君) ペルー政府におきまして、今後、フジモリ氏に対して引渡し要請を行う予定であるとの発表がされているとの報道は承知しておりますが、これは外国当局における犯罪の捜査、訴追にかかわる問題でありますので、現時点においてお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
#24
○千葉景子君 もう時間あれですので、一点だけ。
 これも聞くところによりますと、フジモリ氏は日本の国籍も所持をされているやにもお聞きをいたしております。こういう場合、もし、だから多重籍ということになっておられるのかというふうに思いますが、フジモリ氏ということではなくして、こういうケースの場合に、もし引渡し請求等がなされると法的にはどういう対応が取られるということになるんでしょうか。
#25
○政府参考人(樋渡利秋君) 正式に引渡し請求を受けましてから考えるべきことでございますが、今お尋ねの国籍の問題で申し上げますと、引渡し条約による場合を除きまして、外国籍を有していると否とを問わず、日本国籍を有している者でありましたら、逃亡犯罪人引渡法上、引渡しは不可能でございます。
#26
○千葉景子君 法的にそういうことがあるということでございます。今後、またいろいろな国際関係の中で検討をされていくものかもしれません。今日は、こういう問題の指摘だけさせていただきまして、時間ですので、質問を終わらせていただきます。
#27
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 本法案は、海外にいる日本人に対する外国人による犯罪にも日本の刑法が適用できる、いわゆる消極的属人主義を採用をするわけです。先ほどの議論にもありましたように、かつてこの規定がありましたけれども、一九四七年の刑法改正でこれが削除をされた。先ほどの御答弁では、当時の国際情勢にかんがみてと、こういうことがございました。では、どういう情勢だったのかと。
 私、当時の第一回国会参議院司法委員会会議録第九号ということで、趣旨説明が行われておるのを読んでみました。こういうふうに書いているんですね。「憲法の改正によりまして、戦争放棄並びに国際信義、かような原則に基きましてこの規定は特別に我が国の特殊な保護主義を強く主張しておるというふうに見られましたので、この点を削除いたした次第でございます。」と、こう説明がされております。
 ですから、憲法が、新しい憲法ができて戦争放棄と国際信義ということが掲げられた、これに基づいて当時、この消極的属人主義が削除をされたと、こういう経過かと思うんですね。その経過と、今回これが復活をする、この関係についてどのようにお考えでしょうか。
#28
○政府参考人(樋渡利秋君) 御指摘の説明がなされております当時の参議院司法委員会における政府委員説明と同時期に行われました衆参両院の司法委員会におきます提案理由説明では、刑法改正の第二点といたしまして戦争の放棄及び国際主義に関するものが掲げられ、その一として戦争状態の発生及び軍備の存在を前提とする外患罪の規定を改めるとされておりまして、その二として国外規定である第三条第二項を削除をすることとされているのでございます。したがいまして、御指摘の戦争放棄にかかわるものは、戦争状態の発生及び軍備の存在を前提とする当時の外患罪の規定を改める部分と考えられます。
 当時の資料が乏しいために、政府委員説明において御指摘のような説明がなされた経緯については判然としておりませんが、日本国外で日本国民が外国人による犯罪の被害に遭った場合に、日本の刑法を適用するものとすることが直ちに戦争につながるものとは考え難く、したがって戦争放棄と当時の刑法第三条第二項の削除とは直接関係がないものと思われます。
 次に、もう一つの御指摘の国際信義の原則に基づいてといいますのは国際協調の精神を指すものと思われますが、いずれにせよ、当時の我が国の社会情勢及び我が国を取り巻く国際的な状況を背景に刑法第三条第二項が削除されるに至ったものであると思います。
 当時は、諸外国におきましても、こういう国外犯、外国人の自国民に対する罪に関する規定を置いている国が少なかったというふうに、少なかったのであります。しかしながら、現在は、国際的な人の移動が日常化し、自国民が自国外において犯罪の被害に遭う機会が増えており、一定の場合に国民に対する犯罪にかかわる国外犯処罰規定を設けることは、最近の諸外国の立法例においても多く認められるところとなっております。このような国際的な情勢の変化を踏まえまして、国民保護のための国外犯処罰規定を設けることは国際主義の原則等に反するものではないというふうに考えております。
#29
○井上哲士君 衆議院での説明を基に今言われましたけれども、先ほど読み上げましたように、参議院での趣旨説明は明確に戦争放棄という文脈でこの規定の削除を説明をしております。私は、だからといって、今回の改正が憲法に反するということを言う議論をするつもりはないんです。やはり、当時の国際情勢をかんがみるといった場合に、日本がいろんな他国の主権を侵したというその反省というものが憲法にもあっただろうし、いろんな法改正の中に生かされてきた、そういう反省が込められているとして私は読むべきではないかと思うんです。
 そういう点でいいますと、今回の改正でもそのことは忘れられるべきでない。この改正によって他国の主権を侵害をする、こういう問題は出てこないんだと、こういうふうに聞いてよろしいですかね。
#30
○政府参考人(樋渡利秋君) 結論といたしまして、御指摘のとおり、そういう懸念を持っておりません。
 本法案は、日本国外で日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法の適用を認めるものでございまして、外国での犯罪捜査の権限には何ら変更を加えるものではございません。
 したがいまして、従来どおり、事案に応じて外国に対し捜査共助を要請するなどして必要な証拠を収集し、犯罪人引渡請求を行って犯人を逮捕、処罰することとなるのでございまして、外国の主権と衝突することはないと考えております。
#31
○井上哲士君 越境化する犯罪対策での国際協力という点でも、そして人権の国際的な保障を支えるという点でも、犯罪カタログの統一などの刑法の国際化というものが進んでいるかと思います。もちろん、特定の国家や社会の基準を押し付けるということではなくて、共存のための地球市民的刑法とでも言うんでしょうか、途上国の利益をも考慮した尊重されるべき国際人権、それから非難されるべき国際犯罪、こういうものに関する国際的なスタンダードを作るべきだという議論があります。
 こういういわゆる刑法の国際化ということに対する考え方と、その中でこの今回の改正がどのように位置付けられているのか、その辺いかがでしょう。
#32
○政府参考人(樋渡利秋君) まず、世界各国の法制度が均一化いたしまして、いずれの国においても迅速かつ適切に処罰がなされる社会が実現したとするならば、処罰の確保という意味におきましては、外国において自国民が被害者となった犯罪につきまして、自国の刑法の適用を認める必要性が減少するということは言えなくもないというふうに思うわけでございます。
 しかしながら、現在のところ、そもそも各国の法制度は均一であるとは言い難く、必ずしも犯罪地国において適切な刑罰権の行使がなされるとは限らないところ、日本国外で日本国民が生命・身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合におきましても、我が国の刑法をおよそ適用できないとすることは、国民の保護の見地からも妥当であるとは言い難いのでございまして、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定を整備することが急務であるというふうに考えた次第でございまして、先生御指摘の問題との位置付けという関係では、なかなかストレートにお答えすることもできないのでございますけれども、要は国際主義、国際協調を重視いたしましても、やはりその被害を受けた方が現実におられて、それが何らどこの国でも処罰ができないと、あるいは処罰をされるような方向に向いていないという場合に、そのものを是正するような根拠規定を持っておくことは必要であろうというふうに考えている次第でございます。
#33
○井上哲士君 それでは、法案そのもので幾つかお聞きをいたしますけれども、今回のこの立法の契機になりましたのがTAJIMA号事件なわけですが、これ以外にこういう規定がないがために犯人を処罰できないということで問題になったようなケースがこれまでにあったでしょうか。
#34
○政府参考人(樋渡利秋君) TAJIMA号事件のような事件がこれまでにも発生していた可能性はございますが、我が国の刑法が適用されず、刑罰権を行使することができないという問題が顕在化したという事例は当局では承知しておりません。
#35
○井上哲士君 そうしますと、当初、便宜置籍船内の犯罪のみに対応するという動きもあったのが、こういうふうに外国一般に広げる改正になったのは一体なぜでしょうか。
#36
○政府参考人(樋渡利秋君) これは、先ほども大臣の方からお答えいたしましたように、刑法改正草案の法制審議会の審議の中でも、二十二年でしたか、そういうふうに削除された部分を復活させるような考えがあったわけでございまして、それが不幸にも法案自体が提出されなかったという経緯があるわけでございますが、その後も当局といたしましてはその問題は真剣に検討しておったのでございますが、いかんせん、刑法の総則規定の改正でございますから慎重に検討を進めておったという経緯でございます。
 近時、先ほど御説明いたしましたように、国際的な人の移動が日常化し、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増え、特に殺人や誘拐、強盗等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくない。そのような中で、いわゆるTAJIMA号事件のように犯罪地国において必ずしも直ちに適切な刑罰権の行使がなされないような事例もございましたことから、日本国外において日本国民が生命・身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法をおよそ適用できないままにしておくことは国外にいる日本国民の保護の見地からも妥当であるとは言い難いと。そこで、日本国民の保護の観点から、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定につきましては、緊急にその整備を行う必要があるというふうに考えた次第でございます。
#37
○井上哲士君 今御紹介にありました一九七四年のときの改正刑法草案ですが、このときもこの消極的属人主義は取り入れられたわけですけれども、その行為地の法律によれば罰せられないものであるときはこの限りではない、こういう双罰規定が当時の草案にはあったかと思います。
 先ほど、今回はこれを採用しなかったというお話があったわけですが、なぜ七四年の時点では採用したものを今回は変えたのか、そこの理由はどういうことなんでしょうか。
#38
○政府参考人(樋渡利秋君) 本改正も刑法改正草案第六条第二項も日本国外で日本国民が犯罪の被害に遭った場合に我が国の刑法の適用を認めようとするものでございまして、この種の国外犯処罰規定として刑法改正草案と同程度の範囲の犯罪を対象犯罪とすることも考えられないではございませんが、国民保護の見地から緊急に行う本改正におきましては、日本国外での日本国民の犯罪被害の実態等を踏まえた一定の重大な犯罪に限るとしたものでございます。
 この対象犯罪を広げますとやはり双罰主義という考え方も大きくクローズアップされることもあり得るでありましょうが、そうではなしに、今回その対象犯罪としましたものは、およそどこの国でも犯罪になっているものだ、犯罪にされるものだというふうにも理解できるところでございまして、先ほど説明しましたような事由から双罰主義の必要はないというふうに考えた次第でございます。
#39
○井上哲士君 先ほども議論があったわけですが、実際、この刑法を海外で日本人に犯罪行為を行った外国人に適用するという場合に、相手国内での、行為地での刑罰が我が国よりも相当軽いという場合も出てくるかと思うんですね。そうした場合に、犯罪を犯した外国人はこれほど重い罰だという認識がなくて起こしたということもあり得ようかと思うんです。そういうときには、実際の裁判の場面ではどのようにこれが考慮をされることになるんでしょうか。
#40
○政府参考人(樋渡利秋君) 具体的な裁判の場面では量刑は裁判所が様々な事情を考慮してお決めになることでございましょうから、刑事局といたしまして一概に申すことはできないわけでございますが、犯罪地国で軽い法定刑が定められていること一般が裁判における量刑において被告人の有利に考慮されるわけではないというふうに思われますが、例えば、御指摘のように、犯罪地国において当該行為に軽い法定刑が定められていることが行為者の規範意識に影響を与えたような特別な事情がある場合には、これが情状として考慮されることも、それはあり得るというふうに思っております。
#41
○井上哲士君 次に、犯人の引渡しを求める相手国の刑罰の方が日本の国内法の刑罰よりも低いという場合に、それを理由に犯人の引渡しを断られるということもあり得ると思うんです。先ほども議論になりました、死刑制度のない国に日本が犯人引渡しを求めた場合に断られると、こういうこともなりかねないと思うんですね。
 過去、こういう例がありましたでしょうか。その点どうでしょうか。
#42
○政府参考人(樋渡利秋君) お尋ねの事案といたしましては、近年では、例えば平成四年、外国人が日本人女性を東京都内で殺害した、殺害して国外に逃亡し、スウェーデンで発見されたという事案につきまして、我が国から引渡請求を行いましたところ、スウェーデン政府が引渡しを拒絶した例がございます。スウェーデン政府が引渡しを拒絶した理由は、同国の犯罪人引渡法上、引渡犯罪者が請求国で死刑に処せられないことの法的拘束力ある保証が必要であるところ、本件においてはこの保証が満たされないと判断したことによるものと承知しております。
#43
○井上哲士君 その結果、引渡しが行われなかったことになるんだと思うんですが、そうしますと、その犯人はその後、どこで、どのように処罰を受けたのか、受けなかったのか。どうでしょうか。
#44
○政府参考人(樋渡利秋君) スウェーデンでは代理処罰主義を取っているということがございまして、当該犯罪人は、スウェーデン政府により訴追の上、処罰されたものと承知しております。
#45
○井上哲士君 代理処罰主義というのがあったので、結果としては処罰をされたということであります。
 今後、この今回の改正刑法の規定を使うということになりますと、今の例のように日本における死刑制度の存在というのは大きな問題になってくることかと思います。先ほど刑法の国際化ということについても議論をしたわけでありますが、世界を見渡しますと、今、死刑廃止というのが大きな流れになっておりますし、いわゆる先進国で死刑制度を採用しているのは日本とアメリカの幾つかの州と、こういう状況になっておりますし、国際人権規約委員会も、九三年、九八年に我が国政府あてに死刑の廃止に向けた措置を取ることなども勧告をしているという状況があります。
 国際的な人権保障という観点から見ましても、刑法の国際化ということから見ましても、この機にやはり死刑制度自体の見直しが必要ではないかと思うんですが、この点で大臣の御所見をお願いをいたします。
#46
○国務大臣(森山眞弓君) 死刑の問題が国際的な関心を呼んでいるということはよく承知しております。しかし、死刑の存廃につきましては、基本的にはそれぞれの国におきましてそれぞれの事情を踏まえて独自に決定するべき重要な刑事政策の一つであろうと思います。
 死刑の存廃は我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題でございますから、国民世論に十分配慮しながら、社会における正義の実現等の種々の観点から慎重に検討すべきことだと考えておりますが、我が国では国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対する殺人とか誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況でございますので、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ない、死刑を廃止することは適当ではないというふうに考えております。
#47
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 今回、この刑法の改正案が出たことを大変喜ばしく、うれしく思っています。TAJIMA号事件を特にきっかけとして、法律上これは瑕疵があるのではないか、海員組合やいろんな船乗りさんたちからもたくさん意見を聞かせていただきました。現実に、日本の港に船が泊まっていても何もできない、日本人が被害者でも何もできないということから、こういう法案ができたことを、議論されていることを大変必要なことだと考えています。
 ところで、法制審議会刑事法部会における委員提出の要綱修正案の中で、軽い法の適用、「刑法を適用するに当たり、行為地において、その行為に該当する罪について定めた刑をこえないものとする。」、それから、死刑適用に関する特則、「刑法の適用にあたり、行為地において、その行為に該当する罪の刑について死刑が定められていないときは、死刑を適用しないものとする。」、このような概要が出ておりますが、なぜこれが今回、採用されなかったのでしょうか。
#48
○政府参考人(樋渡利秋君) 確かに、法制審議会刑事法部会でそのような案が出されたことはございます。
 しかし、先ほど申し上げましたように、我が国の刑法が適用されるというふうに改正するわけでございますから、我が国の刑法の量刑、これは合理的なものだというふうに思っておりますので、それを排除する理由が見いだし難いといいますこと、それから死刑に関しましては、その同じ理由が当然でありますけれども、それと同時に、我が国の国内で外国人が、日本人あるいは日本人でなくとも死刑の法定刑のある罪を犯した場合に、そもそも我が国の刑法がそのまま適用されるということと何ら格別変わるところはないということ、そもそも死刑というのは我が国において慎重に規定され、適用されているというところから、そういう案を取らずにこの案になったということでございます。
#49
○福島瑞穂君 ただ、TAJIMA号事件や今日の刑法の改正案が提示しているのは、非常に世界がグローバル化して、世界の様々な潮流を日本もきちっと考えなくちゃいけないという、本当にそういうレベルになっていることを示していると思います。
 先ほども井上委員からありましたが、二〇〇一年、ヨーロッパ評議会は日本に対して勧告を出しました。もう御存じのとおり、ヨーロッパ評議会に所属する国はすべて死刑を廃止しています。オブザーバーステータスを持っている日本、アメリカ、カナダ、バチカン、メキシコ、その五つの国の中で死刑制度を持っているのは日本とアメリカの一部の州ですから、御存じのとおり、日本とアメリカ合衆国に対して死刑の廃止について前進がない限り、ヨーロッパ評議会のオブザーバーステータスを剥奪するかどうかについて検討すると、そこまでヨーロッパの評議会、カウンシル・オブ・ヨーロップで、本会議でそういう議決まで、決議までされて、しています。
 それを踏まえて、先ほどもありましたけれども、法務省はやはり、ヨーロッパの国々がもうそういうふうに前進して、日本の国会議員もヨーロッパの評議会と大変懇意にしていますし、経済的でも密接なわけですから、その点について一歩をやはり進めるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
#50
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほどもお答え申し上げましたんでございますが、死刑については非常に重要な政策でございますので、国民の世論ということも十分考えなければいけないというふうに思いますが、その国民が、残念ながら日本の国内において非常に重大で凶悪な犯罪がなかなか減らない、むしろ増える傾向にあるということを踏まえまして、死刑も場合によってはやむを得ないということを考えておられる人々が非常に今なお多いわけでございます。ですから、そのような世論を十分踏まえまして、我が国としては、大変残念ながら死刑制度を廃止するということは今できないというふうに私は考えています。
#51
○福島瑞穂君 死刑制度を持っているアメリカの州の中でむしろ凶悪犯罪が多いということもありますし、是非、世界的潮流である死刑廃止について法務省が何らかの前進をしてくださるようにお願いをします。
 今後、もちろんフランス、ドイツ、イタリア、多くの国は死刑を廃止していますので、そこの国の国会議員さんたちと話をしますと、えっ、日本にはまだ死刑があるのか、執行しているのかというふうに非常に驚かれてしまいます。先ほど、スウェーデン政府が日本に対して、スウェーデンに逃げ込んだ外国籍の人間を日本に返さないということもかつてありましたので、是非その点についてはお願いをいたします。
 次に、通訳制度などについてお聞きをしたいんですが、日米地位協定は、私から思うに非常に不平等であると。捜査の段階における身柄の引渡しができない。重要な、特定の者に関して、合意をしてアメリカ側が引き渡すということになっています。そうすると、日本人の被害者からすれば、加害者が日本人であるか米軍であるかによって捜査の在り方が全然違ってしまうと。
 その点についての日米地位協定協議でアメリカ側は、日本の捜査当局の取調べの際に米政府関係者やアメリカ側が手配した通訳を立ち会わせると、実現しない場合は起訴前の身柄引渡しに応じないこともあると示唆をしております。密室性の高い日本の取調べは容疑者への暴力や自白強要につながりかねない、人権が侵害されていると、米国内ではこんな論議があります。
 私は、日本人としてはこの地位協定は不平等でおかしいと思いますが、アメリカ側の主張も一定、理にかなっていると。通訳制度に対する不満、不安、取調べに対する不満、不安は私はむべなるかなというふうにも思っております。捜査段階、裁判段階での通訳制度の現状と課題について、いかがでしょうか。
#52
○政府参考人(樋渡利秋君) 我が国の急速な国際化の進展に伴いまして我が国に滞在する外国人が関係する犯罪も増加しておりますが、有能な通訳人を確保して、このような事件の捜査、公判手続において、正確、公正な通訳を実現することは刑罰権を適正かつ迅速に行使するために不可欠であるのみならず、関係する外国人の権利保障の観点からも極めて重要であるというふうに考えております。
 法務省といたしましては、検察庁の取調べ段階における有能な通訳人の確保という観点から、これまで通訳人名簿のデータベース化支援、法律用語対訳集を始めとする通訳資料の作成、全国規模で通訳人セミナーの実施等の施策を講じて、通訳人の質的、量的な充実を図ってきたところでございます。
 法務省におきましては、今後ともこのような諸施策を継続するとともに、有能な通訳人を確保する上での新たな施策の必要性も含めて検討し、通訳人の更なる質的、量的な充実に向けて力を傾けてまいりたいと考えております。
#53
○福島瑞穂君 この通訳制度について捜査段階でよく被疑者、被告人から不満が出るのは、実は自分が、警察側の人間であって、公平に通訳をしてくれなかったんじゃないかというふうなことを実は聞くこともあります。雑談で話したようなことが全部筒抜けになっていたという、まあ事実かどうか分かりませんけれども。
 それで、先ほど、アメリカ、日米地位協定協議の中でアメリカ側が、捜査当局の取調べの際に米政府関係者やアメリカ側が手配した通訳を立ち会わせてほしいと。これは一定程度、理にかなうと。これ、逆転して、日本人の場合に、日本人が外国で何か犯罪になったときに通訳が公平であるかどうかというのは物すごく重要なポイントになりますから、そういうことについてはいかがでしょうか。
#54
○政府参考人(樋渡利秋君) 通訳をされる方が公平、公正な立場で通訳していただかなきゃならないということは当然のことでございます。
 通訳人を我が、我がといいますか、検察庁で通訳人を選びますのは、要は、これは何か資格を設けて公務員とするというようなものではございませんでして、いろいろな方々の応募をいただき、あるいは推薦をいただいて通訳人をお願いしているものでございますから、そういう意味で、そういういろいろな方面からの御推薦を受けて、適役と考えればその方に通訳をしていただくことに何ら支障はないものと考えております。
#55
○福島瑞穂君 捜査段階あるいは裁判段階での通訳制度に関して、例えば準公務員みたいにするのはなかなか難しいかもしれませんが、何らかの資格制度などを設けるというようなことは進んでいるのでしょうか。
#56
○政府参考人(樋渡利秋君) 司法通訳の法的な資格制度の創設につきましても重要な課題の一つと受け止めておりまして、これまでも諸外国で採用されている法廷通訳人の資格認定制度についての調査を行っておるところでございますが、少数言語の通訳人や地方都市における通訳人の確保の問題もあり、また資格制度の内容、審査の方法及び対象等についても種々検討すべき点もありますことから、引き続き諸外国で採用されている法廷通訳人の資格認定制度等を参考にしつつ、関係機関とも連携を図りながら、その是非等も含め、十分な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。
#57
○福島瑞穂君 確かに、少数言語の場合など大変だと思うのですが、語学ができると同時に、法廷で使われる言語について理解をしてもらわなくてはいけないという面があります。
 一九九八年四月、国連犯罪防止刑事司法委員会が刑事手続における外国人の地位に関する決議を採択、外国人の差別的取扱いの禁止、国際的に承認されている諸権利の保障、母国語による適切な通訳の保障等が規定をされています。また、国際人権自由権規約九条二項、十四条三項などで無料で通訳を受ける権利の保障を求めています。この無料、有料という点は現在どうなっているのでしょうか。──じゃ、これは質問通告していない。じゃ、無料、有料は、ちょっと済みません、質問通告をしていなかったので。
 私がここで申し上げたいのは、是非、できれば資格制度などへ向けて、一歩、通訳制度の充実をしてほしいと、その点についてはいかがでしょうか。
#58
○政府参考人(樋渡利秋君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、通訳人が正確で偏らない通訳をしてもらうことは非常に重要なことでございますから、先ほど説明しましたように、その資格制度を含めて検討して、十分に検討してまいりたいというふうに思っております。
#59
○福島瑞穂君 特に、沖縄で起きる米兵暴行あるいは強姦事件等に関して、先ほど日米地位協定での議論を申し上げましたが、もう一方でアメリカ側は、日本に代用監獄の制度があると、それからアメリカはミランダ・ルールがあって捜査に弁護士が立会いができると、しかし日本はそういうことがないのであるから捜査段階で身柄を引き渡すとどんな捜査があるか分からないということも述べていると報道をされています。私は、地位協定は平等化すべきだというふうに思いますが、アメリカ側の主張も本当にこれは耳を傾ける必要があると、そういう懸念を持つ意味は十分理解ができるというふうに思っています。
 代用監獄あるいはミランダ・ルール等についてお考えはいかがでしょうか。
#60
○政府参考人(樋渡利秋君) ミランダ・ルールあるいは代用監獄と、一つ一つのことを問題にいたしますと非常に難しいことが出てくるわけでございまして、要は、その国の司法制度がどうあるかということが前提で考えられるべきことだと思います。
 我が国におきましては、緻密な捜査とそれに裏付けられた起訴、不起訴の決定段階における厳格な選別等を心髄とする我が国の刑事司法が行われておりまして、その一つ一つの問題はその根本問題にかかわることでございますから、それを切り離さずに、全体の司法制度の中で考えていくべきものだというふうに考えております。
#61
○福島瑞穂君 ただ、そういう議論が起きてくるのは非常に理解ができるというふうに私は思うんですね。今後、日本の司法制度の在り方が世界の中の流れの中で議論、日本のは日本の独自の発達の仕方をしていますけれども、そういう議論が出てくるだろうと。その不信感の払拭の必要性はあると考えますが、それはいかがでしょうか。
#62
○政府参考人(樋渡利秋君) その不信感がどこからくるかという問題もございますでしょうが、それはおっしゃるとおりに、不信を抱かれないように運営していくことは大事だというふうに思っております。
#63
○福島瑞穂君 是非、こういう点での見直しもよろしくお願いします。
 ところで、公的弁護制度、捜査段階での公的弁護制度は現在ないわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
#64
○政府参考人(山崎潮君) ただいまの御指摘の点につきましては司法制度改革審議会の意見でも取り上げておりまして、結論的に言えば、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階を通じ、一貫した弁護体制を整備すべきであると、こういう結論付けておるわけでございます。
 これに従いまして、私ども、現在、検討会を設けておりまして、鋭意検討中でございます。まだその大きな方向ということは見えておりませんけれども、来年の通常国会には御承認得られるように今作業を鋭意続けているところでございます。そういう点で御理解を賜りたいと思います。
#65
○福島瑞穂君 是非、司法制度改革の中での公的弁護制度の充実について是非よろしくお願いします。国会としても大変そのことは期待をしています。
 ところで、今回の刑法の一部を改正する法律案ですが、先ほどちょっと引用しました法制審議会刑事法部会における委員提出の要綱修正案、軽い法の適用原則を取ったらどうか、それから死刑適用に関する特則を設けたらどうか、二重処罰の禁止についてはどうか、行為地法による処罰、行為が行為地の法律によれば罰せられないものであるときは犯罪としないものとするなど、意見が述べられております。
 今日、刑法の一部を改正する法律案が審議をされているのですが、積み残した問題も今後あるのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
#66
○政府参考人(樋渡利秋君) 国外犯といいますが、外国人が国外で日本の国民に加害行為をしたということについての刑法の改正でございまして、この点につきましては、法制審議会で十分に議論された結果を踏まえたものを法案として提出させていただいています。
 そもそも、刑法につきましては今後十分に検討していかなきゃならない課題があると言われればあるのでございまして、そういうものを全体を含めて今後とも検討してまいりたいというふうに考えております。
#67
○福島瑞穂君 是非、行為地法の処罰や死刑適用に関する特則は今後とも是非よろしくお願いします。
 三条の二で、「この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。」として様々な犯罪が載っているんですが、これに絞った理由あるいはこれを挙げた理由について簡単に最後、教えてください。
#68
○政府参考人(樋渡利秋君) 要は、国民の生命・身体に害を及ぼすものは被害の甚大性が高いという観点から、このような罪種に絞ったものでございます。
#69
○福島瑞穂君 時間ですので、終わります。
#70
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#71
○委員長(魚住裕一郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、青木幹雄君が委員を辞任され、その補欠として藤井基之君が選任されました。
    ─────────────
#72
○委員長(魚住裕一郎君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 刑法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#73
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#74
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時二十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#75
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の審査のため、来る十五日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#76
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#77
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#78
○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君、警察庁刑事局長栗本英雄君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び法務省矯正局長横田尤孝君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#79
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#80
○委員長(魚住裕一郎君) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#81
○江田五月君 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の質疑でございますが、まず、午前中の千葉委員の質疑でも触れました昨日の少年の事件についてもう少し伺っておきたいと思います。
 大変、皆、沈うつといいますか、暗い気分の中で今朝を迎えたと思っております。種元駿君、こうやってにこっと笑うあの笑顔の写真が全国に衝撃を与え、そしてその後、どうも少年ではないか、中学生ではないか、最初、十三歳という報道がちょっと流れたんですが、結局、十二歳の中学一年生の子供が加害者だということが分かった。本当に衝撃的な事件だったですね。殺された駿君の御両親、関係者の皆さんにも心からお悔やみを申し上げます。かわいそうだったですね。
 同時に、この十二歳の加害少年、この子も本当に、やったことは大きい、その責任はそれはこの子なりの取り方をしていかなきゃならぬ。しかし同時に、この子がこれからまだまだこの先ずっと長い人生を生きていかなきゃいけない。どういう人生行路を送るのか。その人生の中でどれほど今回のことが大きな重荷になっていくのか。親御さんもそうだと思いますけれどもね。本当にこういう事件が起きることを防げなかった社会の、あるいは我々の責任も痛感をしなきゃならぬと思っております。
 法務大臣、午前中、今の思いを話してくださいましたが、繰り返しということだと恐縮ですが、簡単にで結構ですが、今の思いを一言お述べください。
#82
○国務大臣(森山眞弓君) 全くどういう言葉で表したらよろしいか、非常に沈痛な、また複雑な気持ちでございまして、亡くなられた駿君の御冥福をお祈りするとともに、加害少年の長いこれからの人生のことを考えますと、これもまた別の意味でどうしたらいいのか、途方に暮れるような気持ちでございます。
 大変年が若過ぎてといいましょうか、少年法の該当もしないというような小さい幼い少年でありますので、やはり法務省の仕事というよりは、児童福祉や教育、あるいは家庭環境等の問題なのではないかなと思いながら、ではどうしたらいいのかということになると、本当に答えのしようもないような苦しい気持ちでございます。
#83
○江田五月君 最近、どうも世の中、非常にみんな何か気が短くなっていまして、もう何か事があればすぐ、解決策は何だ、どこをどうやったらいいんだ、さあこれは十五秒で話してくださいとか、短答式の問題というのが世の中多過ぎるんじゃないかという感じもするんですが、この事件もまだ分かっていない、分かっていることは本当にわずかで、分かっていないことだらけなんですけれども、それでももう、やれ、少年法をどうしよう、刑法をどうしようというような議論がわっと起きてくるので、ちょっと待てよと。もう少しじっくり落ち着いて反すうをしながら、自問自答しながら考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、それなら今日ここで質問するなと言われても困るんですけれども。
 私は、どうも、例えばこの間の心神喪失者等医療観察法の審議のときにも申しましたが、精神障害を装った人間が何かの犯罪をやる、それは大変ショッキングな犯罪で、小泉総理がばっと瞬間的に反応して刑法というようなことを言ったものですから、なかなか問題が複雑になってしまったんですが、幸いなことに、今回は小泉首相も慎重な物言いをされているのでほっとしていますし、また森山法務大臣も言葉を選びながら、そして言葉がないというお話をされているので、じっくり腰を落ち着けて取り組んでほしいと思うんですけれども。
 ただ、私は、これは法務省のお役人の皆さん、あなた方は何のために付いておるのかと言わなきゃならぬ。今、少年法の該当年齢にもならないと、午前中もそういう答弁をされたんですよ。それは後ろにそれだけ役人の皆さん並んでいるのに、なぜ一体訂正しないのか。少年法は十四歳未満の子供も扱うじゃありませんか。触法少年ということで審判できるじゃありませんか。少年法のどこにこの事件について欠陥があるというんですか。
 これは法務大臣に聞いてもまずいので、今日は刑事局長ですか。
#84
○政府参考人(樋渡利秋君) 確かに、少年法によりますと、こういう場合には、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年ということで触法少年に当たるわけでございます。
 しかし、この触法少年として扱われますということは、犯罪捜査のための強制処分といいますか、そういう捜査はできないということでございまして、あとは、この場合には、少年の保護という、育成という観点から、第一義的には都道府県知事や児童相談所長による、いわゆる児童福祉法上の措置にゆだねられることになるわけでございまして、そのゆだねられた児童相談所長等が必要があると認めるときには、一時保護を加えた上で、又は適当な者に委託して一時保護を加えさせることができると同時に、家庭裁判所に送致することができるわけでございまして、家庭裁判所に送致されますと、家庭裁判所の審判によりまして、保護観察、児童自立支援施設送致などの保護処分などの決定ができることになっております。
 もう少し詳しく言いますと、保護観察には年齢の定めはございませんので、保護観察ができるということで、あとは児童自立支援施設に送致されまして、その施設において育成を図っていく、保護を図っていくということになることになるわけであります。
#85
○江田五月君 御丁寧な答弁もいいんですけれども、少年法の、この事件についてですよ、少年法のどこに欠陥があるということが、何かあるんですかと聞いたんです。
 触法少年ということで、十三歳以下の少年についても家庭裁判所は権限を持っているわけですよね。で、捜査権限がないと。しかし、少年法のどこにも、触法少年には捜査権限は及ばないと書いているわけじゃないんですよね。これは、そうではなくて、刑法の刑事責任年齢の問題でしょう。
 ですから、何かこういう事件が起きればすぐ少年法と、こう言うんですが、法務大臣、午前中おっしゃったとおり、少年法は二年ちょっと前でしたか、三年ほど前に、これも大変な議論をしました。そして、少年法のいろんな処遇の区分があるわけですが、その全体の年齢を引き下げたり、あるいは処分の方法を厳しくしたり、被害者の保護にいろんな手当てを加えたり、そういう改正をしました。後ほど聞きますが、この改正によってそれなりの処遇がこの二年ほど行われてきているわけで、すぐ少年法と、こう言うのは短絡に過ぎるんですよ、これはもう明らかに。
 ちょっとこの事件で、この事件でと言うと語弊がありますが、触法少年の場合の事件の流れというのを、これはどなたがいいんですか、警察庁あるいは家庭局、最高裁、説明をしてみていただけますか。
#86
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 触法少年につきましては、まず家庭裁判所は直接警察等からの送致を受けることはできませんで、まず児童相談所等の児童福祉機関、知事等から送致を受けたときに限り審判を行うことになります。
 送致を受けますと、そこでいろいろやはり調査を行いまして、その結果、審判を開始するのが相当であるというときには審判の開始決定を行います。その後、審判で非行事実、その触法事実ですが、それが存在するかどうかということを認定した上で、非行事実ありということになりますと、次にその処遇をどうするかということで、先ほど刑事局長から御説明がございましたように、保護観察にするとか、あるいは児童自立支援施設に送致するというような形で保護処分を行うというような流れになるかと思います。
#87
○江田五月君 最高裁としては、こういう触法少年の保護について、少年法に何か不備があると、そういうことはお感じですか。
#88
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 運用に当たる者としましては、現在ある制度の下で一番最適な方法を考えるということでやっておりまして、特段、立法の問題についてはちょっと意見は差し控えさせていただきます。
#89
○江田五月君 家庭裁判所が触法少年の保護に当たるについて、ここをこうやってくれなきゃ困るというような意見は、控えるとおっしゃいましたが、特にないと思います。
 もう一度、刑事局長、少年法には、触法少年の処遇について特にこの点が困っているんだというのは、私はないと思うんですが、いかがですか。少年法にはですよ。
#90
○政府参考人(樋渡利秋君) 私といたしましても、どの点が必要かということを今この段階で意見を言うことは差し控えさせていただきますけれども、世の中にはいろいろな考え方があると思うんでありまして、先ほど先生は、これは刑法の刑事責任年齢の問題だと、それはもちろんそうでございます。
 しかし、刑法で罪は問われないといたしましても、犯罪はどのようにして行われたかという調査ができるようなものがあってもいいんではないかというようなお考えも世の中にはあるのかもしれませんし、そういうようなことをいろいろもし御指摘があれば我々も考えなければならないのだろうなと思いますけれども、我々の方として、何かが欠陥あるというふうに思っているわけではございません。
#91
○江田五月君 警察庁、お見えですよね。
 この事件は、もちろん加害少年の保護に支障のない限度でですが、今、どういう流れで、どうなっているかということを説明してくれますか。
#92
○政府参考人(栗本英雄君) お尋ねの事件につきましては、本年の七月一日の午後七時過ぎころに、長崎市所在の家電量販店におきまして四歳の幼稚園男児が誘拐をされ、同日の午後九時過ぎごろに、同市内の別のところに所在いたしますパーキングビルの屋上から突き落とされ、殺害されたという事件でございます。
 本件につきまして、長崎県警察といたしましては、七月の二日に事案を認知をいたしまして、捜査本部を置いて、その後、所要の捜査、調査を推進した結果、十二歳の少年の行為であることが判明をいたしまして、昨日、七月九日に児童相談所に通告をいたしたものでございます。
#93
○江田五月君 二日に認知をして、捜査本部を立ち上げて捜査をした、その結果、十二歳の少年の行為であることが判明をして、昨日、児童相談所に、これは通告ですか、をしたと。
 それで事件の処理は終わったわけですか。
#94
○政府参考人(栗本英雄君) 今申し上げましたように、児童相談所の方に通告をいたしておりますので、その後は児童相談所の方から家庭裁判所に送致され、今後、調査等がなされるものと承知をいたしておるところでございます。
#95
○江田五月君 私が聞いたのは、警察としての事件の処理はそれで終わったのかということなんですが。
#96
○政府参考人(栗本英雄君) 今後の事案につきましては、家庭裁判所との連携協力を図りながら、警察としてやるべきものがあるのか否か、どのような形でやるのかということにつきましては、今後考えていかなければいけないと考えております。
#97
○江田五月君 児童相談所が家庭裁判所に送致をした後、恐らく、新聞報道によると、身柄は、昨日の段階では警察署で泊めたんですかね、今日は恐らく家庭裁判所で、私の想像ですけれども、観護措置でも取られて、あとは鑑別所ということになるのかと思いますが、先ほど刑事局長の話にそこから入っていくんですが、十二歳ですからどうやっても犯罪にはならないんで、そうしますと、犯罪にならないものを捜査をするという権限は警察にはない。警察どころじゃない、どこにもない。そうすると、家庭裁判所と協力をしてというんだけれども、何を、どういう協力の余地があるんですか。それも、その前に、事件の処理としては、警察ではこれでもう終わっているんですか。それとも何かまだ残っているんですか。どうなんですか。
#98
○政府参考人(栗本英雄君) 先ほども申し上げましたように、事件の処理としては既に通告をしたところということで判断すべきかと思いますが、そのほか何かこの事案をめぐって警察としても関係すべきものがあるか等々については、家裁等々との連携協力が必要になろうかと思っております。
#99
○江田五月君 これ、私も実は悩みながら聞いているんです。警察としては児童相談所に対する通告でこれは終局処分だろうと思いますね。したがって、捜査はそれでおしまい。で、家庭裁判所は、少年法の十六条ですか、援助の規定があって、そして警察官にも援助の要求ができる。その援助は、これは最高裁決定が何かこの六法には書いてあるんですけれども、援助によって警察に、援助ということでなくて警察に補充捜査を促すこともできるし、それから援助という規定で補充捜査をしてくれと頼むこともできるということはあるんだけれども、元々捜査の権限がなければ、幾ら援助で捜査してくれと言ってもこれは捜査のしようがないですよね。警察庁、いかがですか。
#100
○政府参考人(栗本英雄君) 先ほども申し上げましたけれども、事件の捜査という観点から警察として今後するということはもちろんないわけでございますが、今までの、いわゆるどの段階までの捜査、調査という大変難しい問題がございますが、これまで警察として行った活動で得たものについて、先ほど申し上げましたように、例えばその一部の資料を提供するとか、そういう形での具体的な家庭裁判所との連携協力という問題はあろうかと思いますが、今、具体的にどのようなものかということについては差し控えたいと思います。
#101
○江田五月君 私どもは報道でこの事件のことを知るほかないんで、ほかに全然資料がないんで、皆さんも恐らくそういろんなことが分かっているわけじゃないだろうと思うんですね。しかし、冒頭申し上げたとおり、反射的に何かぱっとこうするというのが出てくるわけじゃないんで、じっくり腰を落ち着ける、そして事実をしっかりと把握をするということが本当に大切なんだろうと思うんですよ。
 そうすると、こういうときに、もう児相への通告で捜査というものはもう手の出しようがないというんで本当にいいんだろうかなというのをやはり感ずるんですね。もちろん、任意のいろんな調査はいろいろできると思いますよ。やらなきゃならぬと思いますけれども、事案が一体どこまで分かっているのか。突き落としたという表現なんですけれども。
 例えば、法務大臣、ごらんになっていただいておれば大変うれしいんですが、最近、弁護士会が「裁判員」という映画を作ったんです。まだごらんになっていないですか。
#102
○国務大臣(森山眞弓君) 見ました。
#103
○江田五月君 あれは突き落としたんですよね、と言われたんですよ。で、起訴された。介護が必要な義理のお母さんをお嫁さんが、お寺だったかな、の階段から突き落としたということで殺人で起訴されている。しかし、突き落としたんだか、あるいは御近所の人が来て、やあ、おばあさんと言って、ふっと振り向いた拍子に、お年寄りですから、足下がふらついて落ちたんだか分からないという事案で、映画の説明してもしようがないんですけれども、そういうことは世の中ある。よく事実を見てみないと分からない。
 この事件は、裸にしてというんですから、恐らくそこに故意の行為が何かあったということは十分推測できるけれども。そうすると、これは例えば現場の検証をしっかりとやるとかそういうときに、例えば立入りを拒まれたら令状を持って入っていって捜索をしなきゃいかぬとか、いろんなことが出てくる。出てくることは、今すぐ具体的に何がとは言えなくたって、十分あり得る話で、やっぱりそういう、最大限事案を解明するそういう手法があるのに、それが全く使えないというのは何かもどかしいなという感じがいたします。
 刑事責任年齢を十四歳より未満に下げろという、これはまだ分かりません。本当によく議論して考えてみなきゃ分かりません。だけれども、こういう場合であっても、あるいは精神障害などの場合であっても、構成要件該当の行為があって法益侵害が起きているわけですから、それはやっぱり事案を解明して、そして次のことに資するという意味で私は、例えば親告罪で告訴がない状態だって捜査はできますよね、何か捜査はできるという考え方は十分あり得る考え方だと思うんですが、法務大臣、私が言っていることはお分かりですよね。ちょっと感想を聞かせてください。
#104
○国務大臣(森山眞弓君) 真相を解明するということは多くの場合に大変必要なことだと思いますし、そういうことを先生も求めていらっしゃるんだろうと思いますので、そのお気持ちはよく分かります。
#105
○江田五月君 これはもうすぐ今答えを求めても無理なんですが、問題提起をしておきます。事案をしっかりと解明をしなきゃいけない。それをどこまでオープンにするかというのは、またこれ次のこれもまた難しい難しい課題なんですけれども、何よりもやはり事実をしっかり踏まえる、そのためにはやはり最大限この持てる力を振り絞って事案を解明していただきたいと。
 それから、この触法少年の場合に、家庭裁判所へ送られる。観護措置は取れる。そして、鑑別所で十分な鑑別はできる、保護処分はできる。しかし、その保護処分の中の、児童自立支援施設への送致はできるし保護観察もできるけれども、少年院送致だけができない。こういう少年の場合に初等少年院がいいのか医療少年院がいいのか、それも今すぐ答えといったって、まだ何も分かっていないんですから答えの出しようもないんですが、法律上あらかじめもう少年院は駄目なんだと決めてしまっているんですけれども、これもちょっと、やはりその結論はまだ別として、検討すべきテーマかなという気はするんですが、これも私も結論を持たず、悩みながら質問しているんですが、矯正局長、いかがですか。
#106
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
 少年院法の第二条でこの少年院の種類の規定がございまして、その中の二項で初等少年院の規定がございますが、これは、「心身に著しい故障のない、十四歳以上おおむね十六歳未満の者を収容する。」という規定がございます。これが現行の規定なんですが、実はこの二条は昭和二十三年に施行されたんですが、その施行当初の規定は、「初等少年院は、心身に著しい故障のない、おおむね十四歳以上十六歳未満の者を収容する。」という規定であったわけです。この規定で成立、施行したんですが、そのわずか五か月後に、この「おおむね十四歳以上」の「おおむね」が取れまして、「十四歳以上」というふうに現行の規定に決まったといういきさつがございます。
 それはなぜかということですけれども、これ、当時の記録によりますと、この理由といたしましては、十四歳に満たない少年は、十四歳以上の犯罪少年又は虞犯少年と同一に取り扱うことは適切でなく、もしこれに収容保護を加える必要のあるときはすべてこれを児童福祉法による施設に入れるのが妥当と思われという、また、少年院の運用もその方が一層効果的になるので、少年院法の第二条二項を改めて十四歳以下の少年は少年院に収容しないことにしたんだと、こういう提案理由になっております。こういう経過があるということをまず申し上げさせていただきます。
 当局といたしましては、このような経過もございます。その上で、十四歳未満の少年による犯罪、非行の質的、量的変化、これは大きく変わってきておりますので、そういった変化、それから、十四歳未満の少年を少年院に収容して矯正教育を行うことの効果等、様々なことについて幅広く配慮して慎重に検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
#107
○江田五月君 慎重にということはやらないということと同義だと言われたりするんですが、慎重にでもちろん結構なんですが、私も、繰り返すように、結論を持って聞いているわけじゃないんですけれども、今の児童自立支援施設がどういうことができるのか、少年院だとどういうことができるのか、あるいはもっとほかのいい知恵があるのか、これはみんなで知恵を絞ってみなきゃいけないところで、一つの検討の対象だということで、問題を指摘をしておきたいと思います。
 いずれにしても、本当に言葉もない大変悩ましい事件なんですが、恐らくこの事件は、しかし私は、全く特異なケースだと言えないところがあるんじゃないか、それだけに余計に深刻なのではないかと思うんですね。今の我が国の子供たちの成長の過程で子供たちがどんな状況に置かれているのか、その中にどんなに心の中に暗い暗いやみが広がっているのかといったこと、もちろんこの事件、まだ分からないからそう直截にこうだと言うわけにはいかないんですけれども、そういうことについて私どもが問題意識を持たなきゃいけないと。少年事件の傾向が随分最近また変わってきているところもあって、本気でこれはみんなで考えていきたいと思っております。
 矯正局長、もう結構です。
 報道によれば、今年になって少年の殺人は五十二人あったということですが、より正確には、十四歳以上十九歳までの少年で殺人及び殺人未遂で検挙されたのが五十二人。この中、これは殺人が何人で殺人未遂が何人か、それから事件数でいうと殺人が何件で殺人未遂が何件かということは、これはお分かりですかね。
#108
○政府参考人(瀬川勝久君) 今年になって発生しました十四歳以上の少年による殺人事件の件数でございますが、三十件でございます。うち、既遂は十件、未遂は二十件というふうになっております。なお、更に申しますと、少年のみによる事件が二十六件であり、成人との共犯事件は四件というふうになっております。
#109
○江田五月君 五十二という数字を聞いたんですが、これは、じゃ違うのかな。
#110
○政府参考人(瀬川勝久君) 件数についてのお尋ねかと思いましたので、件数を申し上げました。人数につきましては、五十二人ということでございます。
#111
○江田五月君 済みません、失礼しました。
 じゃ、その五十二の人数は、殺人が何人で殺人未遂が何件かというのはお分かりなんですか。
#112
○政府参考人(瀬川勝久君) 申し訳ありません。現在、手元にちょっとその数字がございません。
#113
○江田五月君 十三歳以下の今年になってからの殺人の人数と件数、殺人未遂の人数と件数、これはどうですか。
#114
○政府参考人(瀬川勝久君) 十三歳以下の殺人につきましては、今年に入りましてからは五月までの統計で一件一人ということになっております。
#115
○江田五月君 殺人未遂。
#116
○政府参考人(瀬川勝久君) 失礼しました。
 この一件一名というのは殺人未遂でございます。殺人はございません。
#117
○江田五月君 今回の事件はいわゆる触法少年の事件ですが、十三歳以下で法に触れる行為で補導あるいは保護をされた事件とこの触法少年事件の最近の動向というのは、これはどういうことになっていますか。
#118
○政府参考人(瀬川勝久君) 触法少年による事案でございますが、ちょっと大きな流れで見ますと、刑法犯少年のピークは昭和五十八年でございまして、十九万六千人余りとなっておりました。触法少年につきましてもこの辺がピークでございまして、触法少年は昭和五十六年に六万八千人という数字がございまして、これが最大のものでございます。以後、減少をしてきておりまして、過去十年で見ますと、最近では、平成十年に二万七千人というのが過去十年では最も多い数字となっておりまして、ここ数年は二万人程度で推移をしておるところでございます。
 ちなみに、昨年の触法少年の補導人員は二万四百七十七人ということでございまして、十三年に比べまして四百十人、二%の増ということであります。その中身を見ますと、凶悪犯は百四十四人ということで前年比二十一人の減少ということでございまして、ただ、殺人はそのうち三人ということになっております。
 今年に入りましてからですが、触法少年の補導人員は七千二百六十三人ということで、前年同期に比べまして約七%減少しておりますが、非常に特徴的なのは凶悪犯が九十一人を占めているということで、昨年の同時期に比べまして三十四人、約六〇%増加をしているという、今年に入ってからの特徴が見られるところでございます。
#119
○江田五月君 全体に減少傾向もあるが、しかし凶悪化もしているという、その辺りのことを統計的にもまた個別にもよく分析もしていかなきゃいけないと思います。
 今回の事件は、四歳の子供を裸にしているという一つの特徴があるので、これがどういうことであったかというのはまだ私ども知る由もないんですけれども、十三歳以下、つまり触法の少年の性犯罪、これは強姦罪、強制わいせつ、過去十年でそれぞれ何件ずつあったか、あるいは性犯罪と殺人とが結び付いた触法事件は過去にあったのか、ないのか、あったとすればどういう事件があったか、これは説明できますか。
#120
○政府参考人(瀬川勝久君) 強姦と強制わいせつのそれぞれの数字というのはちょっと持ち合わせてございませんが、過去十年間の統計で、過去十年間を累計してみますと、強姦と強制わいせつで補導された十三歳以下の少年の数でございますが、九百六十六人となっております。うち、既遂は八百九十六人、未遂は七十人というふうになっております。
 それから、性犯罪と殺人が結び付いた触法少年の事案でございますが、統計的に網羅的に把握したこの種数字は持ち合わせていないところでございますが、ただ、私どもに残っている記録を手繰ってみたところでは、承知している限り三件ございまして、年齢は、触法少年の年齢は十三歳、十一歳、七歳ということでございました。昭和四十六年、昭和五十四年、昭和五十五年にそれぞれ一件ずつ発生しているというものが、手元の資料としてはございます。
#121
○江田五月君 三件、四十六年に十三歳、五十四年に十一歳、五十五年に七歳、なかなかショッキングなケースがやっぱりあるということだと思います。
 今回の事件、再発防止の観点からも、加害者のプライバシーその他不必要なことはもちろん除きますが、事件の経緯や手口、動機あるいは他の事件との関連など、情報公開を求める声は強いと思うんですね。
 そこで、これは最高裁としては、改正少年法でどこまで可能か、お尋ねします。
#122
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 少年事件につきましては非公開が原則でございますが、先ほど委員御指摘のとおりの平成十三年の改正少年法で、一定の場合にはその当事者に対する開示を認めております。
 その運用の件数等も必要ですか。
#123
○江田五月君 いやいや、私が質問されたんで。
 そうじゃなくて、改正少年法でこの事件について情報公開、あるいは公開でなくても被害者への開示、それはどこまで可能なのかという質問をしますとどういうお答えになりますかということです。
#124
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) この事件につきましては、被害者からの要望があればその記録というものは被害者に対しては開示されることになると思います。
#125
○江田五月君 たしか神戸の事件でしたかね、審判書、審判のその決定を公開しましたよね。これは最高裁がどうと言うとまた別の意味で問題が起きるかもしれませんが、ああいうような、この事件の審判の決定を公開をするというようなことはお考えになるでしょうか。
#126
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 神戸の事件におきましても、その結果、結果だけは開示なされると思いますが、その審判書全体を開示することはしておりません。その要旨が開示されたんだろうと思います。
 こういうような事件で、その要旨が開示されるということはあり得ることだろうと思います。
#127
○江田五月君 やはり、これは社会みんなで考えていかなきゃならぬことで、もちろん単なる興味本位というんではなくて、みんなで考える素材を社会に提供していただくことは必要なことかなと思っております。法務大臣おっしゃるとおり、少年事件としての処理だけでなくて、子供の生育過程の環境であるとか福祉の観点であるとか、いろんなことからこれは光を当ててみなきゃいけないんで、ここはみんなで協力をしなきゃならぬ重い課題だと思っております。
 改正少年法ですが、平成十三年の四月一日施行後二年がたちました。運用の概況がまとまったようなので、最高裁の方でまとまった概況を御報告ください。これは二十条一項の刑事処分年齢の引下げ、二十条二項のいわゆる原則検察官送致、この概況をまず説明してください。
#128
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 施行日でございます平成十三年四月一日から平成十五年三月三十一日までの二年間に終局決定のあった事件のうち原則検察官送致対象事件は百五十二人でございまして、うち検察官送致となった者が八十九人、保護処分となった者が六十三人でございます。
 その内訳を見ますと、殺人が二十三人中十人、傷害致死は九十二人中五十一人、強盗致死二十二人中十四人、危険運転致死十五人中十四人がそれぞれ検察官送致となっております。
#129
○江田五月君 そのほか、裁定合議のことであるとか検察官関与であるとか、あるいは抗告受理申立てであるとか被害者への配慮であるとか、いろいろ結果はまとまっておるんだろうと思いますが、ちょっと時間の方が気になり出したのでこの点はおいておいて、本来の司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の方に移ります。
 私たちは、この法案は反対でございます。司法制度改革については、これはもう積極的に推進するという司法制度改革与党であると、こういう立場で協力もし、叱咤激励もし、通してまいりました。審議会の意見書にのっとった法案には賛成が基本でございますが、この法案は反対。具体的には、弁護士法改正案の五条の二の弁護士の資格の特例で、司法試験合格後五年以上国会議員の職にあった者は司法修習を終えることなく弁護士の資格を取得できるという、この規定ですね。
 これは衆議院で修正をされました。今日は修正案の提出者がお見えですので、修正案の趣旨について伺います。
 この政府原案のどこに問題があると考えて修正案をお出しになったのか、修正によってここは問題だというところは解決されるのか、それから、大変聞きにくいんですが、国会議員が立法によって自らに特権を与えるのはお手盛りではないかという批判もお耳に届いておるかと思いますが、その三点、お答えください。
#130
○衆議院議員(漆原良夫君) 政府原案によれば、今回新たに弁護士資格を付与することとなる者のうち、企業法務等の担当者には所定の研修を要件としておりますが、国会議員や特任検事には研修要件となっておりませんでした。しかし、実務的な知識、能力という点に関しては、国会議員や特任検事についても、必ずしも民事、刑事にわたる幅広い分野について弁護士として活動するために必要となる知識、能力を十分に備えているとは限らないと考えられます。そういうことから、より慎重を期して、企業法務等の担当者と同様に研修を課すべきであると考えたものであります。国会議員や特任検事が研修を受けることによって、弁護士として活動するために必要となる実務的な知識、能力が身に付くものと考えております。
 お手盛りではないかという批判、これはもう私どもの耳にも届いております。国会議員については、立法事務の中核として幅広い分野についての高度の専門的知識、能力を必要とする法律事務にかかわっておりまして、その職務は定型的な評価が可能であるという点で弁護士の資格の特例に国会議員を加えること、そのこと自体は合理性があるというふうに考えております。したがって、お手盛りという批判は当たらないのではないかというふうに考えておりますが、更に企業法務担当者と同様に研修を課するという修正を加えることによって、慎重を期すというふうに考えておるものでございます。
#131
○江田五月君 いろんなことを一緒にやってきた漆原先生と余りここで口角泡を飛ばすのも気が重いんですが、漆原先生のお言葉とも思えない、国会議員に優し過ぎる言葉ではないかと思うんですね。
 弁護士資格には司法試験に合格したことプラス修習というのが要るので、修習というのは二年、我々のときは二年だった。今は一年半。一年半の間、それも片手間で修習をやるのではとても修了できない修習です。これは本当に、まあいろんなやり方もあるんでしょうけれども、私などは二年、楽しかったけれども忙しかったですよ、やはり。今もう一年半になって、時々、修習生から、あんな詰め込み修習で病気になる者が続出しているじゃないかなどという、そういう苦情さえ来るような、いやいやそんなことを、弱音を吐くようなことでは駄目だと言って、それでもやっぱりちょっとやり過ぎなんじゃないかなと思うような修習をやっているわけですよね。
 それを、国会議員、五年ですか。国会議員のどこが一体、何か専門的なんだかかんだか、弁護士になれるような、これで何か、皆どう思います。恥ずかしいと思いませんか、同僚の皆さん。これ、お手盛りじゃなくて何ですか、これは一体。本当に、本当に漆原さん、そう思われますか。どこかで心の隅が痛みませんか。
#132
○衆議院議員(漆原良夫君) 厳しいお言葉をちょうだいいたしましたが、五年間という、一般の修習生は、我々のころは二年、今は一年ですか、そういう修習が要るわけなんですが、その修習に代わるものとして実務の、司法試験受かって国会議員になった人は五年間というある意味では実務を担当されてきているわけでございまして、それに匹敵するのかなという考えであります。しかし、特に研修ということも必要だろうということで、実際の民事、刑事、家事にわたった弁護研修をしていただくというふうに修正をさせていただいたわけでございます。
#133
○江田五月君 いや、五年の国会議員の経験というのは、まあそれでおっしゃるような評価ができるのかなという微妙な言い回しで言われたわけですが、しかしそれでも、それだけでは駄目なので研修を加えたと。五年の経験が必要な資質を身に付けさせるので十分だという評価ができると。
 これは法案の提出者の方に伺いますが、だれがそんなことを言い出したんですか。
#134
○政府参考人(山崎潮君) 御案内のとおり、この原案というんですか、元の議論は司法制度改革審議会の中でも行われておりまして、もちろん企業法務の関係を中心に行われていたわけでございますけれども、この国会議員の問題についてもそこで議論がされております。
 議論のそのまとめの中には「企業法務等」というふうに書かれておりまして、その「等」の中に公務員の場合も、国家公務員の場合もいろいろ入るわけでございますが、これをきちっと検討を続けろという趣旨でございます。私どもの方の検討会を設けましてこの議論を進めてきたわけでございますが、企業法務で考える、そういう考え方はほかのジャンルでも活躍されている方、そういう方にも当然同じ場面があり得るだろうということで、最大限どこまでそういうものが入っていくのかという議論をしたわけでございます。
 ある一部分だけを取り上げて、ある一部分も取り上げないというわけにまいりません。法制上の問題もございます。そういうバランスで議論をしていったら、企業法務、公務員、それから国会議員と、こういうふうに出てきたわけでございます。
#135
○江田五月君 司法制度改革審議会の中で議論をされたと。それはまあ、されたのかもしれませんけれども、「企業法務等」、企業法務が怒るかもしれませんね。逆に、国会議員も怒りますよね。こっちは企業法務とはかなり違う仕事をしていると思って、それが「等」で同等視されたと。企業法務の方は、国会議員みたいなそんな大ざっぱなことではない、自分たちは企業の法務ですから、企業が右へ行くか左へ行くか、傾くかどうかの運命を担って法務をやっているわけですよね。一緒にしてくれちゃ困ると言うかもしれません。
 何で企業法務と国会議員の仕事が「等」で結び付くのか。いや、本当にそう思いますか、これ。「等」でいいんですか。我々の方の仕事は、これは党と。党務はやりますよ、いろいろ。だけれども、それはトウが違うんで。
 ちょっと違うんじゃないですか。
#136
○政府参考人(山崎潮君) そのまとめについて私、全く関与しておりませんので何とも申し上げられませんけれども、文言の問題というよりも、先ほど江田議員の方から研修の問題が指摘されておりました。私も二年の研修は受けておりますけれども、司法試験受かっても、これは座学をやっているだけでございまして、現実に法律の一部の知識を知っているだけでございます。これを実際使えるようにするための、それが研修だろうと思います。
 要は、具体的な事案に即してどういうような解決方法を求めていくのか、その中にはいろいろ、人生観の問題とかいろんな問題が入ってくるわけでございます。そういう訓練をするのが正に、その訓練の端緒をやるのが研修だろうと思います。
 じゃ、その研修は必ずしも研修所へ行かなければできないのかということでございまして、企業法務でも、ある限られた部分かもしれませんけれどもそういうような経験はするわけでございますし、国会議員の先生方は、社会に起こった事象、先ほどから御議論もございますけれども、そういうものについて法律をどうしていくかと、そういうような議論をしているわけでございます。現実に、法律になれば御審議をいただくわけでございまして、正に法律事務に特化した仕事を五年間行われるわけでございます。
 そういう意味では、法制局、衆議院、参議院の法制局の参事という現在認めているものがございますけれども、それと同じような位置付けになると、こういうことでございまして、同じに扱ったということです。
#137
○江田五月君 いや、山崎さん、もうちょっと渋い顔をして答えたらどうですか。ちょっと余りまじめに答え過ぎるんじゃないかという気がしますよ。
 ひどいですよ、本当にね。それは、法制局のやるような仕事を皆やっていると言うんだったら、もう衆参の法制局はなしにしましょう。我々、法制局の仕事できる、そうはいかないでしょう。法制局は法制局の仕事をしているんで、法制局の手助けがなければ僕ら議員立法できない。
 やっぱり違いますよ、それは。国会議員はいろんな仕事をやります。いろんな仕事をやるけれども、別に国会議員の仕事だけが偉いわけじゃないんで、国会議員の仕事をやっていたら人生の機微に触れることまで全部分かるわけじゃない。もしそれでいいというんだったら、じゃ、いいですよ。司法試験受かって五年間、国会議員じゃなくたって、会社でもよろしい、どこでもよろしい、家庭の中でもよろしい、何でもよろしい、フリーターでもよろしい。五年間経験積んであればそれはもう立派な人になっているんだから、五年たったらみんなにもう弁護士資格を与えたらいいじゃないですか。そういうことになりませんか。何か国会議員のお手盛りを皆さんやっているんですか。
#138
○政府参考人(山崎潮君) 私が申し上げているのは、単に社会の経験を積めばいいと言っているわけではございませんで、それは法律的なものでございますので、例えば会社でも、契約事務あるいは会社の運営に伴ういろいろ、事業計画とか、それからあるいは裁判手続、公務員でも同じでございます、立法事務あるいは裁判手続、こういうものに関与している。国会は、国会議員は国権の最高機関で、法律、様々な法律について御審議をいただくわけです。あるいは、議員立法として提案をいただくわけでございまして、それは同じではないでしょうか。
 それで、別に単なる社会経験を言っているわけではないということでございます。
#139
○江田五月君 それは、国権の最高機関だからといって偉いわけでも何でもないんで、国権の最高機関という役目を与えられているだけの話なんですよ。全く理解ができないんで。これは衆議院の方でも何か枝野さんと山崎さんとでかなりやり取りをしていて、それも拝見しましたけれども、例えば今度、ロースクールということになりますと、これはやっぱり一定のプロセスによる養成ということで、司法試験を受ける前にいろんな経験を積ませて、あとは司法試験受けたら最後のブラッシュアップ、職場へ出ていく研修をやるということですからある程度分からぬわけじゃないんですけれども、これまでの司法試験というのは合格して二年なり一年半なり、そういう研修、そこでやっと実務家として通用するというふうになってきているわけですよね。やっぱりこれはお手盛りだという批判を免れない。
 これは修正案によって、研修を行うことになるわけですが、この研修を行う法務省令で定める法人というのは何を想定をしておられるんですか。これは修正案提出者に聞くんですかね。
#140
○衆議院議員(漆原良夫君) 政府原案においても研修は日本弁護士連合会というふうに考えておるようでございますが、我々、修正案も同じく日本弁護士連合会というふうに考えております。
#141
○江田五月君 なるほどね。つまり、原案にあった企業法務などに携わった皆さんに対して行う修習、研修と国会議員や特任検事に対して行う研修と行う主体は同じだと。
 行う研修の中身はどうなんですか。違うんですか、同じなんですか。
#142
○衆議院議員(漆原良夫君) 基本的にはどんなカリキュラムにするかという問題になりますが、例えば企業法務の場合であれば、ずっと民事の方が中心でやってこられた、そうすると刑事の方が手薄になっていますから、個別的な弁護士事務所に行って仕事する場合にはそっちの方を多くやるのかなと思いますし、あるいは特任検事の場合は、民事の方が今度は薄いわけですから、そういう場合は現場の弁護士事務所では民事の方が重くなるのかなというふうな感じでおります。
 したがって、それは法務省と日弁連の間でしっかり、どのぐらい、だれがどのぐらい何を研修すれば弁護士として一人前になれるかという、こういう観点からカリキュラムを作っていくべきだというふうに考えております。
#143
○江田五月君 時間としては、何か月とか何時間とか、どういう言い方をするのか、どの程度の研修を考えておられるんでしょうか。
#144
○衆議院議員(漆原良夫君) 期間をどうするかという点については結構議論があるところなんですが、私どもの方は、実際どういう研修をすれば弁護士としての必要最低限度の実務能力を取得できるのかという観点で、まず研修内容をきちっと詰めていただくことが先決だろうというふうに考えて、その積み上げの結果が期間になろうというふうな考え方でございます。
#145
○江田五月君 積み上げの結果であると。
 司法書士の皆さんが、これはもうそういう法律実務に通暁しておられる皆さんですが、その皆さんが簡易裁判所で代理人として活動することができるようになる。しかし、研修を行うということになってきているわけです。司法書士の法律実務家としての素養に加えて、簡易裁判所という一定の限度の中での代理権限、そのための修習、研修。これと、よもやフル規格となる弁護士の研修とが同じということはないと思いますよね、時間にして。当然、司法書士の皆さんの研修の少なくとも二倍以上にはなるべきだと思いますが、修正案提出者、いかがですか。
#146
○衆議院議員(漆原良夫君) 研修に要する期間、時間については、民事、刑事、家事といった研修の項目、あるいは講義形式にするか演習形式かといった研修の態様、さらには、一か所に集合するか個別の弁護士事務所で行うかといった研修の場所というふうな点について、法務省始め関係機関において、研修効果なども十分考慮しながら具体的なカリキュラムを作成する過程で決めていただく方がいいだろうというふうに考えておりまして、現時点では何時間というふうな考えを、数字を持っているわけではございません。
 司法書士の簡易裁判所業務についての研修期間との比較については一概には申し上げられませんが、確かに弁護士はフル規格になるわけでございますから、どれだけの時間があれば、どれだけの研修を積めばフル規格に等しい、匹敵する、ふさわしい弁護士としての業務が行えるかということは、先ほど申しましたように、具体的なカリキュラムの詰めの積み上げの結果だというふうに考えております。
 充実した研修を是非ともやっていただきたいというふうに希望しております。
#147
○江田五月君 是非、充実したことになればいいんですが。
 この法案はいろんな内容があって、私どももその中には、この法案反対しますが、しかし大部分は実は、それはパスです、パスですという賛成のところなんです。この弁護士資格のところは、これはやっぱり同じ国会議員として、国会議員のお手盛りを認めるわけにいかないという、ある種の私どものけじめを付けようということですが、それでも、何とかこれだけみんなで頑張れよと、賛成で出発をさせたい要素がたくさんある法案だからというので、衆議院で修正ができないものかと、合意ができないものかという努力をしたんですね。
 衆議院で与野党の修正協議が行われたその経緯がどんなもので、どの程度歩み寄って、最後はどこが一致できなかったのか、修正案提出者としてそれお話しになれる限度で結構ですが、参議院の方の審議の参考のためにお聞かせください。
#148
○衆議院議員(漆原良夫君) 私どもも、民主党の皆さんと一緒に、野党の皆さんと一緒に、新しい制度の出発に当たってはそういう制度として送り出したいなと思いまして、いろんな修正の打ち合わせ、検討をさせていただきました。
 その結果、国会議員や特任検事に弁護士資格を与える、付与するのであれば、その要件として研修を課すべきだという点では合意がほぼできたわけであります。問題なのは、この研修の期間をどうするか、時間数ですね。時間数について、野党の側では時間数を何百時間というふうに明記をするべきであるというふうにお考えだったのに対して、私どもはこれを明記するのは妥当でないと。先ほど申しました、いろんな必要なカリキュラムの組合せ、積み合わせの結果、必要な時間でよろしいのではないか、あらかじめ法案で時間を設定する、しておくということは必要ではないのではないかということになりまして、ここが唯一の相違点でございまして、合意に至らなかったわけでございます。
#149
○江田五月君 私どもの方は、元々国会議員五年やっているというので、もうそれは昔々司法試験パスしていて、いや、はっきり言えば、昔々パスしていて国会議員五年ならまだいいかもしれぬけれども、十年も十五年もやっていれば、もうそんな昔パスしたものなんか全部どっか行っていますからね。それどころじゃない。私なんかちゃんとフル規格弁護士なんですよ、私だって。だけれども、もう二十何年も国会にいたら、今更、裁判所へ提出する訴状を書けと言われたってもう書きようがないですよね。ペーパードライバーもいいところですよね。だから、国会議員を五年以上やった者は弁護士だってもう一遍研修しなきゃ現場へ戻っちゃ困るぐらいの法律を作りたいぐらいな話で、とんでもないお手盛りだというところから我々は出発した。
 そして、それでも、まあ何とかほかにこれだけのものがあるんだから修正で何とかできないかと、ぐうっと。皆さんの方は、いやいや、国会議員はこれだけ五年もこういう仕事をやっていれば、それはすばらしい知識、経験を蓄えられているんですからもう研修なんか要りませんよというところから出発しているから、そもそも出発点が大違いだったから最後のぎりぎりのところでお別れしましょうということになったんだろうと思いますが、私たちはやっぱりこれはおかしいと思う。後に我々の方で検討しますが、この部分、そして特任検事の部分は削除をするという、そういう修正案を提出をしたいと思っておることを申し上げておきます。
 結構です。どうぞ、修正案提出者、もう結構です。
 ちょっと済みません。速記止めてください。ごめんなさい。ちょっと十秒ぐらい、速記を止めてください。
#150
○委員長(魚住裕一郎君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#151
○委員長(魚住裕一郎君) 速記を起こしてください。
#152
○江田五月君 次に移ります。
 簡易裁判所の管轄の拡大でございますが、上限を九十万から百四十万に引き上げるという趣旨、そしてまた上限を百四十万とした理由、これはどういうことなんですか。説明してください。
#153
○政府参考人(山崎潮君) 従来から、簡易裁判所の事物管轄の引上げに関しましては、例えばある時期に簡易裁判所で行われていた事件、これが経済情勢がいろいろ変わってくるということによりまして、それは地方裁判所で、実質的にはみんな地方裁判所で裁判を行うという形にもなってくるわけでございます。そうなりますと、国民が近い裁判所で裁判のサービスを受けられると、いわゆるアクセスの問題でございますが、これについてやはり不便が生ずるだろうと、こういうような観点から事物管轄の引上げをしてきたわけでございます。
 それは、じゃどういう範囲で行われているかということでございますが、様々な経済指標がございますけれども、大体基本的にはその経済指標の範囲内で上げていくということを行ってきたわけでございます。ただ、これだけではやはり足りないわけでございまして、元々簡易裁判所はどういう裁判所であるかという、その簡易裁判所の性格の問題がございます。簡易な事件を迅速に、その手続も簡易にやりましょう、あるいは法曹資格のない裁判官もやられます、そういうことから、それから定型的な金銭的な事件、そういうものをやるということで、その性格が変わってはならないという命題もございます。
 そういうことをいろいろ勘案いたしますと、その指標の中で大体百四十万、この辺ならば大きく性格が変わらないだろうということで選択をしたということでございます。
#154
○江田五月君 なぜ百三十万じゃなく百四十万か、なぜ百五十万じゃなく百四十万なのかなどと言い出したらなかなか難しいんだろうと思いますが。
 衆議院で附帯決議が付いていまして、「不動産に関する訴えを提起しようとする者が、簡易裁判所の事物管轄の上限引き上げに伴い、訴訟の目的の価額の上限を超えない請求をする場合でも、簡易迅速に事件を解決する簡易裁判所の機能を十分に踏まえ、第一審裁判所を選ぶよう周知すること。」と。これは政府と最高裁と両方に周知せよと、こういう附帯決議をしているわけですが、周知せよと言うといけませんか、周知してくださいねと、そういう附帯決議をしておるわけですが、ちょっと分かりにくい。
 不動産訴訟では、上限を超えない場合でもいろいろ論点が難しいものもあるから地方裁判所を選ぶように周知せよと言っているのか、それとも簡易迅速に事件を解決する簡易裁判所を選ぶように周知せよと言っているのか、これは政府としてはどちらだと理解していますか。
#155
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘ございました前段でございまして、地方裁判所で行うようにと、こういうことでございます。
#156
○江田五月君 最高裁も同じでよろしいですか。
#157
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 同じでございます。
#158
○江田五月君 是非ひとつそういうことでお願いをいたします。簡裁は、やはり簡裁の機能、簡裁に適する事件というものがございますから。
 それから次に、最高裁に伺います。
 民事調停官それから家事調停官制度、これは当初実施するのは、最高裁では、東京、大阪、名古屋、福岡の大都市のみと言っておられると聞いているんですが、これはそのとおりなんですか。
#159
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) この制度につきましては平成十六年一月からの実施を考えておりますけれども、その際の配属庁は、民事調停につきましては東京、横浜、大阪、京都、名古屋、福岡、札幌、また家事調停につきましては東京及び大阪で実行することを検討しているところでございます。
#160
○江田五月君 なぜ全国に展開しないんですか。準備が整わないというんですか。しかし、それはもう一生懸命準備をしていただければいいことじゃないんですか。なぜ全国に展開をしないのか、理由を聞かせてください。
#161
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) この制度は、議員も御承知のとおり、我が国で初めて導入する制度でございますが、目的は二つございます。
 一つは、弁護士任官の推進でございます。この十年間で弁護士任官は残念ながら四十名程度しかおりませんでした。そこで、いろいろな隘路があるわけでありますが、これを非常勤裁判官制度、いわゆる非常勤裁判官制度としてのこの調停官制度を制定していただくことによって一つのきっかけになるのではないかというところが一つであります。
 それからもう一つは、調停事件の審理の充実でありますが、これらが一体どの程度本当にこういうような制度の下で有効に機能しているかというところはきちんと見ていかなければなりません。例えば、調停事件の充実一つをとらまえましても、一週間に一度、裁判所に来られるということでありますけれども、先生も御承知のとおり、裁判官としての御経験からお分かりのように、書記官あるいは調査官と平素の連携を保っていかなければならない。そういう中で、本当にその辺の問題点が表れないで、しかも国民のためになる調停事件の審理の充実につながるのはどういう類型のものなのか、こういうところも冷静に検証していかなければならない。それから、弁護士任官でどの程度本当にこれが効果があるものかということも見ていかなければならないと思います。
 また、特に小規模庁におきましては、あるときは訴訟代理人として現れ、あるときはこういった中立公正の調停官として現れるということになりますので、裁判所のユーザーの方が、国民の方が一体その辺りどんなことになっているんだとかなりの戸惑いを持って迎えられる可能性もありますので、その辺りの国民の反応というものも見てみたい。
 それから、かつ、もうあと一点付け加えさせていただきますれば、弁護士としてのこれまでの経験あるいは知見、そういったものを有効に活用できる事件というのはある程度事件数が多くなければなりませんので、そういったところも見なければならない。弁護士数の多寡というものも見なければならないと。そういうところから、まずは先ほど申し上げた庁で始めるということにしたわけでございます。
#162
○江田五月君 いや、分からぬわけじゃないんです、もちろん。しかし、この制度は、まあちょっと試しにやってみようか、駄目ならやめようというのじゃなくて、やっぱりそれは考えに考えを重ねた上で出てきた制度だと思いますので、これはあれですかね、受ける側の最高裁はそういうことで、どうなるかよく見なきゃと言うんだけれども、出す方の、こういう制度を作った方は、これは司法制度改革本部ですよね。そんな、まず部分的にちょろちょろと始めてみて試験的にとかいう、そういうものとして構想されたんですか。
#163
○政府参考人(山崎潮君) 制度としてはこういうルートをきちっと作ったということでございますが、それをどのように始めていくか、運用の問題でございます。
 先ほど最高裁判所の方からも御答弁がございましたけれども、いろいろな要素を考えながら、これは徐々にまた多分増やしていかれる、そういう予定だろうというふうに伺っておりますけれども。
#164
○江田五月君 やはり、弁護士任官のきっかけを作るという意味でも、それから調停制度の充実という意味でも私はなかなか面白い試みだと思うんですね。ですから、どうぞ、例えば私の地元の岡山弁護士会、百五十名ぐらいの弁護士で十分対応できるんじゃないかと思うんですが、是非、始めたいという声が上がれば、今日言ったからあしたというわけにはいかないだろうけれども、やはり裁判所としても地元にそういう声があるところはなるべく展開をしていくと、なるべく全国に展開していくように努力していきたいという、そういう意欲を持っていただきたいと思いますが、いかがですか。
#165
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 私は、この関係で日弁連と協議してきている者の一人でございますけれども、所管局としては大いに期待したいと思っております。
 所管局として、局長としての個人的な思いでありますけれども、数年のうちには三けたまで乗せるような是非とも実績を作っていきたいというふうに思っているところでございます。
#166
○江田五月君 その意欲を高く評価をしたいと思います。
 民事調停官、家事調停官に非常勤、二年任期の弁護士を任命すると。この非常勤、要するにパートタイム裁判官というものをつくっていくということの意味、これは私は法曹一元という理念、ずばりそれにのっとっているかどうかは別として、そういう理念からしても大きな意義があることだと思っておりますが、推進本部としては、これはどういう意義をこの制度に認めてスタートをさせようと考えておられるのか、説明してください。
#167
○政府参考人(山崎潮君) この制度、元々趣旨は、先ほど最高裁からも答弁ございましたけれども、弁護士任官を推進していこうという、そのきっかけになるという位置付けと、それからやはり裁判所外の通常の社会における感覚ですね、こういうものを調停の中に取り入れて、いい調停をやっていきたいと、これが二つが目的でございます。そういうことを行うことによって、裁判所がより一層やっぱり国民に身近なものになっていくと、そういう大きな流れも出てくるわけでございまして、そういう意味でこの意義は大変大きいというふうに思っております。
 また、この意見書の、改革審の意見書の中にも、今度、裁判官が逆に他職の経験をするということですね、その感覚を持って裁判をやっていくと、こういう提言されておりまして、今、私ども検討中でございますけれども、やはり両方がいろいろ感覚を持ち合って、いい裁判をやっていくという一つのきっかけになるだろうというふうに思っております。
#168
○江田五月君 先ほど最高裁の方で、ちっちゃな都市だと、あるときは調停官として裁判官の立場に立つ、別のときには当事者の代理人として裁判所に現れる、あるいは弁護人として。世の中で、いや、どうなっているんだろうと思う、そういう混乱が生ずるというお話ありました。
 取りあえずはそういう混乱が生ずるかもしれない。しかし、よくよく考えてみたら、同じ人間が裁いているんだということですよね。だから、あるときは裁判官のいすに座っているけれども、同じ人が、もちろん当然、あるときにはプールで泳いでいたり、あるときにはテニスをやっていたりというのは当たり前の話ですから。それが、あるときには当事者として出てくるということもあってもおかしいことじゃないんだという、そういう裁判官像というものが世間に出てくると、私はそれはそれでいいことだと。裁判官というのは何かいつも官舎群で、もう隣近所が全部裁判官で、奥さん方も全部、自分の夫がその裁判所でどうなっているかというようなことを気にしながら生活しているなんというのは余り良くないと思いますよね。
 裁判所の中にこういうパートタイムの裁判官が現れることによって、裁判所と市民社会とのつながりがずっと良くなる、風通しが良くなる、そういうふうに生かしていく。そんなところもひとつ見ておいていただきたいと思いますが、今、推進本部、山崎さんはそういう趣旨を踏まえてお答えいただいたんだと思いますが、最高裁の方はどうですか。
#169
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) おっしゃることもよく分かりますし、そういった機能を是非とも果たしていってもらいたいと思いますけれども、先生御承知のように、裁判官としての御経験からお分かりのように、日常生活ずっと官舎の中におるなんということもございません。むしろ、そういったところは裁判所は意外と自由であるということで、宣伝の媒体になっていただけるかなというふうに非常勤の裁判官の方に期待したいという思いも持っております。
#170
○江田五月君 しかし、結構不自由なところもあるんですね。それはまた別の機会に。
 特任検事を五年経験した者に弁護士資格、これはどういう意味なんですか。
#171
○政府参考人(山崎潮君) 特任検事というのは、法曹資格を持った検事と全く同じでございます、仕事をやる以上は。
 そこのステップが違うわけでございますが、例えば、例えばというか、失礼しました、副検事を三年以上経験をして政令で定める一定の試験に受かり、かつ、受かりますとそこでいわゆる正式な検事になるわけでございますが、なってから五年間の経験を経た者、これについて法曹資格を付与するということを考えているわけでございまして、これにつきましては、そのやる仕事は法曹資格を持った検事と全く同じでございまして、弁護士と対等に法廷でもやり合っているわけでございますし、経済事犯等、民事系の事件についてもやっております。
 それから、試験の科目も憲法、民法、商法、刑法、刑事訴訟法、そういうような基本的な科目を全部含んでいるものでございます。基本的な素養はそこでできており、かつ実務もやっていると、こういうことから法曹資格を与えていこうと、こういう発想でございます。
#172
○江田五月君 司法試験、先ほどの国会議員の場合でも、あるいは企業法務の場合でも地方議員の場合でも司法試験を通っていると、これが共通のベースになっていると思うんですが、この特任検事だけは司法試験に合格する必要がないと。どうもこれは、司法試験をそんなに大したものだと思うなという、そういう趣旨かもしれませんけれども、ちょっとやっぱりすとんと落ちないですよね。
 検事の仕事をやっていると、それは検事の仕事はやっているけれども、あくまで公訴官あるいは捜査官としての仕事をやっているわけで、弁護士の経験がそれで積めるというのは、全然、弁護士の仕事の意味が分かっていないんじゃないかと思いますが。
 ということで言うと、例の一定範囲の大学等の法律学の教授、助教授、こうした者の弁護士資格、これもどうも、司法試験通っていないのはこのままに置いておくんですか、これ、どうなんですか。
#173
○政府参考人(山崎潮君) 今回の立案に関しまして様々な御議論がございまして、大学の教授の点についてもいろいろ御意見がございました。意見としては、そもそも司法試験に受かっていないじゃないかと、実務もやっていないじゃないかと、これでいいのかと、こういう御意見でございました。
 私どもは、今回はこの御承認いただく範囲ということで、もう一度この考え方をベースにして全体を見直していきたいというふうに考えております。
#174
○江田五月君 全体を見直すという意味でいえば、私は、やはり裁判所で国民の期待をしっかり受けて、そして個別の国民の委任を受けて、裁判所という中で基本的人権、社会正義の実現という大きな責務を負いながら行動していくと。刑事の事件も間違いなく、ちゃんと手続の権利をきっちり行使すると。あるいは、民事でいえば、しっかりとやっぱり事実に立脚した主張もし、同時に証拠調べもちゃんとやると、そういう能力が基本的にあるということは、やはり一番の基礎だと。
 それに加えて、さらに、そういう人間が今後、法廷の中だけではなくて、企業の中でも、あるいは政治の中でも立法の世界でもいろんなところへ出ていって仕事をしていく。そういう意味で、弁護士の資格というものが単に法廷の中だけでなくて広く広がっていく。そういう、広がっていって、新しい社会像の中で法律専門家としての弁護士がいろいろ活動する、そんな社会を想定しながら、構想しながら弁護士資格というのをきっちり見直していくというのは、それは必要だと思うんですよ。
 そういうことを司法制度改革審議会の意見書は書いていて、さっきの「等」というのもそういう意味で書いてあるわけで、やれ、「等」は国会議員はどうだ、何とかはどうだ、何とかはどうだと、そんな議論より、もっと根本のところの、弁護士というのは何だということをやっぱりしっかり議論して、そこから考えていただきたい。今の、もう一度、弁護士資格というものをトータルに見直してみたいと、いきたいということは、そういう意味で是非やっていただきたいと思います。
 外国法事務弁護士、これが今回手を入れることになるわけですが、それからまた日弁連の綱紀委員会の関係とか、あるいは弁護士の報酬の関係とか、こういうところにも手が入っていくわけですが、これらについてもいろいろ伺いたいところもございますが、ちょうど時間となりましたので、私の質問を終わります。
#175
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私からも、まず長崎の少年事件について大臣にお伺いをしたいと思います。
 朝も、大臣として、また政治家として、また孫を持つ一人の人間としての御所見もございました。私も小学校三年の娘もおりますし、斜め向かいにはちょうど中学校一年生の男の子もおりまして、大変なショックでこの事件を受け止めました。
 繰り返しになりますけれども、まず、この事件への受け止めをまずお願いをしたいと思います。
#176
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほども申し上げましたように、大変、何と言ったらよろしいか、言葉を探すのが大変難しい複雑な気持ちでございます。
 四歳で亡くなられた駿ちゃん、本当にかわいそうだったし、心から御冥福を祈りたい。親御さんのお気持ちはどんなものかということを想像いたしますと、本当に胸がつぶれるような思いでございますし、また加害少年が十二歳ということで、さらにもう一つびっくりしたわけでございまして、私の周辺にいるそのくらいの年ごろの子供たちを見ておりますと、まさかそんなことがと信じられないような気持ちでございまして、それが本当にそうだったとすれば全く大きなショックでありまして、何とかできる方法があるのかしらと思いながら、具体的にはいいアイデアが浮かんでこないというような茫然自失の状態でございます。
 法務省といたしましては、先ほども申し上げましたが、少年法の刑事手続の対象とはならない年齢でございまして、触法少年ではもちろんありますけれども、どういうふうに法務省がかかわるか、恐らく今の状態では余りかかわるべきことはないのかもしれませんが、教育とか家庭の問題とか児童福祉とか、その他いろんな面で必要なことがあるのかもしれないと思いながら、どうすればいいのか、本当に途方に暮れるような気持ちでございます。
#177
○井上哲士君 こういうショッキングな事件がありますとすぐに少年法改正などの議論が出てくるというのは、私は大変危険だし、慎重に見なくてはいけないことだと思っております。どういうことが必要なのかということを明らかにする上でも、直接的な動機はもちろんですけれども、本人の成長歴とか家族関係とか、そういう背景の解明ということにまず力を注ぐということが再発防止の上でも大変重要だと思うんですけれども、その点、いかがお考えでしょうか。
#178
○国務大臣(森山眞弓君) それはおっしゃるとおりだと思います。どのくらいその調査が進んでいるのか分かりませんし、現在では一般にはこれという詳しいことは公表されておりませんので何とも申しようがございませんけれども、家庭裁判所その他を経て、そのような必要な事実が明らかになって、今後の対策にもプラスになっていけばと思います。
#179
○井上哲士君 それでは、この一括法についての質問をいたします。
 まず、今も議論になっておりました弁護士資格の緩和の問題です。
 この法案で、弁護士資格の特例を拡充をして、司法試験合格後国会議員五年以上やった者、これは司法修習なしに弁護士になれる、また、いわゆる特任検事、司法試験に合格をされていないにもかかわらず、これも経験五年以上で弁護士になれるということが盛り込まれています。
 今後、ロースクールが立ち上がりまして、法曹人口を大幅に増やす、こういう方策が進んでいる、そういうさなかになぜあえてこういうふうに弁護士資格の特例というものを拡充を図る、その必要性が一体どこにあるのか、この点、まずどうでしょうか。
#180
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、このたびの司法制度改革におきまして、法科大学院を中核といたしますプロセスとしての法曹養成、法曹養成制度、この下で法曹人口の拡大を図ろうとしているわけでございますけれども、これは、やはり弁護士の果たすべき役割が増大をしていく中で、多様で広範な国民の要請に十分こたえ得るように、多様なバックグラウンドを有する層の厚い法曹の確保を目的とした、こういうものでございます。
 やはり、今後の社会を見た場合に、仮に司法試験に、法科大学院を出て司法試験に受かってもすぐに修習に行かなくていろんな社会で活動される方、そういう方が増えてくるだろうと、こういうことを一応視点に置いて考えたことは間違いございません。
 ただ、じゃ、それは将来だけの問題かということでございまして、それは現在だって、法制上、司法試験は受かったけれども研修を受けなくても法曹資格がもらえるという制度があるわけでございまして、これもやはり一種の、その仕事をやることによって必要なリーガルマインド、これが備わっていると見る、そういうことから法曹資格を与えるわけでございます。そういうことを考えますと、現在の制度の下でもそういう法曹資格、いわゆるリーガルマインドが備わった方がいないか、こういう目で見ていったわけでございます。
 まず、国会議員の先生方でございますけれども、先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、やはり様々な事象に法律を当てはめていく、あるいは解決をしていくと、これは正にリーガルマインドそのものでございます。これを中心にお仕事をされているということになるわけでございます。こういう点は、研修を経なくてもそういう解決能力、これが備わっていくということから、法曹資格を認めるというふうに考えたわけでございます。
 それから、特任検事、先ほどちょっと御説明をいたしましたけれども、司法試験に受かっていないと、確かにそのとおりでございます。ただ、政令に基づく試験と先ほど私、申し上げましたけれども、憲法、民法、商法、刑法、刑事訴訟法、検察実務、これが必須でございます。それ以外に、選択といたしまして民事訴訟法、それから法医学、刑事政策、この中から一つを取れ、こういうような試験でございます。
 個人的な経験で恐縮でございますが、私は司法試験委員も検察官特別考試の委員も両方やっております。このやった経験から申し上げれば、ほとんど、検察官特別考試の試験のやり方につきましては司法試験のやり方と全く同じ発想で進めているということでございまして、ここで相当な能力が試されているというふうに理解をしております。その上に実務を行っているということで、ニアリーイコールだろうということでございます。
#181
○井上哲士君 一発試験では駄目だからプロセスとしての養成を必要だと言っているときでありますから、今のような御説明ではとても私は納得がいきません。
 それで、多様で広範な国民の要請にこたえられるように多様なバックグラウンドを持った人をと言われましたけれども、それじゃ今回のような特例の拡充について、具体的に国民のどの分野からどんな要請があったんでしょうか。
#182
○政府参考人(山崎潮君) これは具体的にどこかからあったということではなくて、やはり今後の社会を考えていったときに、それぞれいろんなバックグラウンドを持った、それぞれに強い分野を持った弁護士さんたち、これが社会にたくさん出てほしいということでございます。それを念頭に置きながら、現在だってそういうジャンルの方はおられるではないか、それもやはり資格をきちっと与え、将来にもまた備えましょう、こういうふうに考えたわけでございます。
#183
○井上哲士君 要するに、特に国民的要請はなかったけれども、検討会でそういう議論をしたんだ、そういうことなわけですね。
#184
○政府参考人(山崎潮君) 国民的声といえば、ここの私どもの前身でございます司法制度改革審議会、ここでも様々な議論が行われまして、その中で声が上がったということでございまして、それは一つの国民の声というふうに理解できるわけでございますが、その流れを受けて私どもの検討会で検討をした、こういうことでございます。
#185
○井上哲士君 推進本部の検討会には様々な分野でいろんな声が直接上がっておりますけれども、なかなかそれが検討に生かされていないんじゃないかという声をお聞きしますけれども、この分野だけは国民の直接の声がなくても進めるというのはやはりお手盛りというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 プロセスとしての法曹養成ということでロースクールが立ち上がるわけですが、社会人入学など、様々な経歴を持った人も入ってくる、そういう人が法曹資格を取るということが今期待をされている。そういう場合であっても、やはり三年間ロースクールに行って、そして司法試験を受けて、さらに修習を受ける、こういうプロセスとして養成をしてこそ本当に高度な専門的知識と同時に様々な幅広い教養、そして十分な職業倫理を持った法曹をつくれるんだという、こういうプロセスを重視しているというときに、今回のように特定の者だけ言わば近道を作るというのは、やはり今回の、今の司法制度改革全体の理念、そして公平、公正、透明性、こういう理念からいっても私は反すると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
#186
○政府参考人(山崎潮君) 先ほどから御答弁させていただいておりますが、制度としては将来を見据えたプロセスとしての法曹養成、これを念頭に置いていることは間違いないということでございます。
 しかしながら、先ほど来ちょっと申し上げておりますけれども、じゃ現在そういう方がおられるのをどうするかという問題でございます。確かに、法科大学院で三年間教育を受ける、これも大変重要なことでございますが、そこで得られるものは実社会の中で得られないかということでございまして、あるいは修習でやること、これが実社会の中で得られないかというと、そうではないだろうということでございまして、いわゆるリーガルマインド、物事に接してこれをどうやって解決していくか、これが一番のポイントでございますが、これは社会の活動の中で得られていくものでございます。
 そういう点に着目をいたしまして、そういうことの基礎がある方については研修を行わないで法曹資格を与える、こういうことでございます。
#187
○井上哲士君 繰り返しの説明がありましたけれども、しかし実際のやはり経過を見ましても、そして国会議員でいいますと五年以上という経験でありますけれども、そこでの中身を見ましても、今言われたような御説明ではとても納得のできるものではありませんで、やはりお手盛りと言う以外にないし、司法制度改革全体への国民からの信頼という点でも、大変私は、これを傷付けるものだということを指摘をしておきます。
 その上で、裁判所へのアクセスの拡充というのが司法制度改革全体の大きな課題でありますし、本法案でも簡易裁判所の管轄の拡大や、利用者の費用負担の軽減などが提起をされております。
 このアクセスの拡充という観点から、現在、司法アクセスの検討会で議論をされております弁護士報酬の敗訴者負担制度についてお聞きをいたします。
 この問題は、そもそも審議会の俎上に上ったときから、法律の関係者、裁判の原告の皆さん、労働団体や消費者団体等、国民各層から、裁判提訴を萎縮させるものだ、こういう世論が巻き起こりました。ですから、当初、審議会の中間報告では、基本的に導入する方向で考えるべきとされておりましたけれども、最終の意見書では、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて、この制度の設計に当たっては、不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなくと、こういうふうに表現を変えざるを得なくなったという経過です。ところが、この間の検討会の議論を見ておりますと、こういう経過、そして最終意見書の基本認識をも無視をしたような議論が見られますし、委員の一部から大変重大な発言も出ております。
 そこで、まずお聞きをしますけれども、審議会意見書の基本認識というのは、市民の司法アクセスの拡充という方向性であって、そういう観点からのこの問題の提言なんだ、こういうことを確認できるでしょうか。
#188
○政府参考人(山崎潮君) これは審議会意見書でもまとまっているところでございますけれども、ここを若干読ませていただきますけれども、勝訴しても弁護士報酬を相手から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平を図って訴訟を利用しやすくする見地から、この制度を導入すべきである、こういうような記載になっております。
 ここで言っている内容は、弁護士報酬の負担の公平化を、これを図りながら、利用者の費用負担を軽減することによって裁判所へのアクセスの拡充をするという観点から導入を提言している、こういうふうに理解がされるところでございます。
#189
○井上哲士君 公平を図りながらという文言が付いておりますけれども、その上で目的はアクセスの拡充をどう図っていくのか、こういうことが今の審議会意見書でも示されている見解だと思います。
 実際、審議会の会長で、今、推進本部の顧問会議の座長をされています佐藤幸治さんも、いろんなところで発言をされておりますけれども、この弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについての議論は、この「司法制度改革」という本の中でも、元々裁判所へのアクセスの拡充を図ろうという文脈で出てきた、こういうふうに明確に言われておりまして、いわゆる公平性という文脈で出てきたものではないことは明らかです。
 やっぱり我が国の司法制度の改革にとって何よりもアクセスの拡充ということが求められておりますし、当然、敗訴者負担制度の検討についても、広範な市民にとって裁判へのアクセス拡充につながるかどうか、このことを基本に検討をしなくてはならないと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
#190
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど私、申し上げましたように、費用の負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から導入するということになるわけでございますけれども、この意見書の記載では、これと、これに続いて、この制度の設計に当たっては、上記の見地と反対に不当に訴えの提起を萎縮させないように、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱い、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について検討すべきであるということをうたっておるわけでございます。
 ですから、そういう意味では、負担の公平という問題とアクセスと、両方を述べているということでございます。
#191
○井上哲士君 公平性という問題は後ほど議論をしたいと思いますが、少なくとも、司法のアクセスの拡充ということが検討の大きな柱の一つだと、大きな柱だということは今認められました。
 それで、先ほど佐藤会長の言葉を引用しましたけれども、これ衆議院の法務委員会での質問に答えられまして、こういうふうに言われています。
 どうも原則導入、例外はわずかというように受け取られて、私どもの真意とちょっと離れた受け止め方をされたなという反省がございまして、最終的に意見書で、一定の要件の下で導入する、しかし一律に導入はしませんよ、それで、その範囲についてはいろいろ考えなければならないと、こういうふうに衆議院で述べられました。要するに、原則導入、例外はわずかではないんだと、こういうことであります。
 いわゆるこの制度導入による萎縮効果というのが、何か特別の例外的な訴訟に起こるわけではなくて、広い範囲に起こるおそれがある。ですから、それをやはり広く検討しなくちゃならないんだと、こういう立場はよろしいでしょうか。
#192
○政府参考人(山崎潮君) 考え方はそれぞれいろいろあろうかと思います。人によって考え方は違うのかもしれませんけれども、私どもの検討会では、そこのところは意見書に従いまして、それじゃ、本当にそういう萎縮が起こるようなものについてどういうジャンルがあり得るのかということを今、何というんですかね、一つ一つ検討をしているという段階でございまして、まだ最終的にどのような範囲になるか等、全く今のところは定まっておりませんけれども、それはその趣旨を踏まえながら今検討中であるということでございます。
#193
○井上哲士君 その趣旨を踏まえながらというのは、先ほど佐藤さんのお言葉も紹介しましたけれども、いわゆる原則導入、例外わずかということではないんだと。やはり全体の訴訟類型、やっぱり一つ一つ検討して、見ていかなくちゃいけないんだと、こういう立場でよろしいわけですね。
#194
○政府参考人(山崎潮君) どれが原則、例外と、そういうアプリオリなことを立てないで、じゃ本当にどういう場面においてそういう問題が起こり得るのかというところを、今、客観的に検討を加えているというところでございます。
#195
○井上哲士君 原則導入、アプリオリではないんだという答弁でありましたから、やはりそれぞれの訴訟類型について本当に萎縮効果が起きないかどうかということを見ていく必要があります。
 ですから、訴訟類型のそれぞれについて、この司法アクセスが拡充をされるのか、それとも抑制的になるのか、萎縮効果を生むのかと、しっかり検討をしていくことが必要ですが、それでは、こういう観点からの検討会での今の検討状況、そして今後の予定というのはどういうふうになっているでしょうか。
#196
○政府参考人(山崎潮君) 検討のその状況としては、一つは、仮にこれ導入をするという場合に、その敗訴者の負担とすべき額の定め方という論点が一つございます。これは意見書でも、全額ではなくその一部ということを言っておりますので、それはどういう範囲なのか、どういうことを基礎に考えるのかというのが一つの論点でございます。それからもう一つは、敗訴者負担を導入する範囲、導入しない範囲と、こういうところで幾つかのジャンルに分けて今議論をしているということでございます。
 予定でございますけれども、現在、私どもこの議論を進めておりますが、この議論を進めている現状をもって意見募集をしたいというふうに考えておりまして、そう遠くない時期に、議論のいろいろな意見がありましたものを記載をしましてパブリックコメント、これに付したいというふうに考えております。今月としては、今月の二十三日に検討会が予定されておりまして、その状況でパブリックコメントをしたいと、こういうふうに考えております。
#197
○井上哲士君 この敗訴者負担を導入するかしないかの範囲の議論というのは、いろんな訴訟類型ごとに一定の検討をこの間されていると、こういうことでよろしいでしょうか。
#198
○政府参考人(山崎潮君) 類型に分けて議論がされているということでございます。
 類型について御説明する必要がございますか。──はい。
 一つの類型は、行政訴訟ということでございます。これは、純粋に行政訴訟なのか、国、地方公共団体が当事者の事件というのか、そこの範囲の問題がございますけれども、行政訴訟というもの。それから労働訴訟、それと消費者訴訟、それから人事訴訟、それ以外には公害、薬害、医療過誤等と、こういうようなジャンルで今のところ議論をしているという状況でございます。
#199
○井上哲士君 その議論の中で、例えば消費者訴訟、それから労働者と使用者という、こういう労働訴訟、こういう分野にもこれ導入すべきだと、こういうような意見は出ているんでしょうか。
#200
○政府参考人(山崎潮君) 消費者契約については、これは導入すべきでないという意見で、これ導入すべきであるという意見は今のところ、現在は聞いていないということでございます。
 それから、労働の関係でございますが、これは二つの態様がございまして、使用者と労働者の関係ですね、これの事件につきましては導入すべきではないという御意見がございました。もう一つの態様としては、使用者と組合との間の訴訟、これについては意見が分かれたと、こういう状況でございます。
#201
○井上哲士君 議事要旨も読ませていただきましたけれども、萎縮がどうなるかという角度からの突っ込んだ議論がまだ見られていないというのが率直な感想であります。
 逆に、今もありましたけれども、例えば使用者と労働組合との間の訴訟というのは、組合がそれなりのバーゲニングパワーを持っているという前提なので、必ずしも敗訴者負担を導入しない範囲としなくてもよいという気がする、こういう発言が出ております。それから、交通事故も公害も薬害も、敗訴者負担を導入してもよいのではないか、こういう発言もあったと議事概要にありました。
 しかし、先ほども言いましたように、当初の審議会の中間報告ですら、労働訴訟とか少額訴訟など、敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟はその例外とすべきだと、こういうふうに言っていたわけですね。
 やはり、個別の訴訟の掘り下げた検討なしに、ここは導入してもいいんではないかというような、こういう議論は私は非常に不見識な議論だと思っているんですけれども、その点いかがでしょうか。
#202
○政府参考人(山崎潮君) 今、事務局は、この段階でその議論がどうだこうだということについては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これオープンな検討会でございます。その検討会の中でいろいろ御議論があるということ、これ自体は否定することはできないわけでございまして、私どもとしては、自由な御議論をいただき、それからいろいろな声をお聞きして、最終的にどのように判断していくかということは今後の検討であるというふうに認識をしております。
#203
○井上哲士君 私も自由な議論を決して否定するものではありません。大いにしていただくことが必要かと思うんです。しかし、議論をする上では、やはりこの審議会の意見書が示した、やはり司法アクセスをどう進めていくのかという、この観点での議論が必要でありますし、そして国民の権利、人権に深くかかわっているわけですから、現場の実態ということを踏まえた議論をしていただかなくては困るんですね。
 例えばこんな発言もありました。公害・薬害訴訟は勝ってきている訴訟じゃないか、提訴の際にちゅうちょするという話は分かるが、勝訴すれば弁護士報酬を相手から取れるということになれば提訴促進になる場合もあるのではないかと。これは、公害訴訟をやっている皆さんからいえば、これまでどれだけの努力をして、どれだけの被害者がその途中に亡くなられてきたのか、そういうことを見ずにこういう発言が出る、大変怒りの声も聞いておりまして、公害裁判の関係者の多くはやはりこの制度に反対をされております。
 この点で、検討会では別の委員も発言をされていますけれども、こういう公害とか薬害とか環境という裁判は、正に新しいタイプの訴訟で、勝てるか負けるか分からないと。最初から、負けたら二人分の弁護士費用を払うということになるならば、裁判にならなかっただろうと言われておりますし、例えばあの「もんじゅ」の裁判にしましても、二十一連敗した後にやっと勝ったという発言もされております。こういう本当の実態や現場の皆さんの苦労を御存じの上での議論がされているんだろうかということが私は疑問なんです。
 検討会にはいろんな資料は出されているそうでありますけれども、やっぱり直接声を聞いていただくということが大事だと思うんですね。それぞれの訴訟類型ごとに訴訟当事者から直接ヒアリングをすべきだと思いますけれども、この点の計画はどのようになっているでしょうか。
#204
○政府参考人(山崎潮君) 先ほども申し上げましたけれども、そう遠くない時期にパブリックコメントをさせていただきたいと思っております。ですから、これはジャンルは物すごいいろんなジャンルが、訴訟でございますから、ありますし、それに関係している方はおられると思いますが、是非、そのパブリックコメント、これ、オープンでございますので、そこに意見をお寄せいただきたいというふうに思います。
 私どもの方として、そのような意見をいろいろ集約いたしまして、その上で議事、今後の議事をどのように進めていくか、それを検討会に諮ってやってまいりたいというふうに考えております。
#205
○井上哲士君 パブリックコメントは必要でありますけれども、やはり文書ではなくて訴訟を闘ってきた方の生の声、その息遣いを聞いていただくということがどうしても必要だと思うんです。
 この弁護士報酬の敗訴者負担に反対する全国連絡会が八十万筆の署名を検討会に提出をされておりますけれども、この中でも直接のヒアリングというのを強く求めておられます。先日、十一できています検討会の検討状況というのを見させていただきましたけれども、十一のうち八つの検討会が何らかのヒアリングを既に行っておられますが、このアクセス検討会は一度もやっておられませんし、いわゆる顕名の公開というのも一番遅れた検討会になりました。本来、検討されている中身の性格からいいますと、最も国民の声を直接聞くべき検討会だと思うんですね。
 先ほど言われたように、パブリックコメントでやって、大枠整理をして絞って聞くというようなやり方ではなくて、私はまず、こういう大きな影響を及ぼすものでいいますと、確かにジャンルは広いかもしれないけれども、それだけ影響大きいわけですから、やはり、まず実態に即した検討が必要な課題でありますから、ヒアリングをまず行っていただきたいと思いますけれども、その点、改めてどうでしょう。
#206
○政府参考人(山崎潮君) 今、検討会の運営でございますので、事務局がどうこうということは言えないわけでございますが、今、井上議員の方からいろいろ御意見ございました。そのような点も踏まえまして、どのような方法があり得るか、どういうことをやったらいいのか、よく考えてみたいというふうに思います。
#207
○井上哲士君 是非、早期のヒアリングを改めて求めておきます。
 この検討会の中の議論の中である委員の方が、公害訴訟というのは、多くの犠牲の下に裁判に勝てるようになって法律も整備をされてきたと、こう言われております。個人の救済と同時に、法創造的機能を持つ、いわゆる政策形成訴訟についてまでこの敗訴者負担が導入をされるというのは、本当に論外だと思うんです。
 雇用における女性の差別問題でも同様のことが言えまして、最高裁で勝利和解した芝信用金庫の女性差別裁判の訴訟当事者はこう言われております。もし敗訴したら金庫側の弁護士費用を払わされる可能性があると言われていたら、八割が訴訟をやめるか訴額を減らすと、正にこの敗訴者負担制度が大変な萎縮効果を生むということを言われているわけですね。
 大臣は、この芝信の原告が勝利和解したときにお会いになったと思います。そして、長い間御苦労さまでしたというふうに激励をしていただきました。男女平等ということを切り開いてこられた大臣にこの点で所見を伺いたいんですが、こういう女性差別裁判の提訴に萎縮効果を及ぼすような、こういうような制度導入はあってはならないのではないか。同時に、この芝信の皆さんのアンケートなどを見ておりますと、自分たちは個人ではなくて組合として提訴したと考えていたと、こう言われております。これは労働裁判の中でも、労働者対使用者という裁判だけではなくて、労働組合対使用者という裁判の枠組みであっても萎縮効果を与えるということをこの発言は私は示していると思うんですが、こういう萎縮効果をこういった裁判に及ぼすことがあってはならないと思うんですけれども、その点での大臣の御所見をお願いをいたします。
#208
○国務大臣(森山眞弓君) 芝信の皆さんに私もお目に掛かりまして、大変御苦労であったということを申し上げたことを記憶しております。本当にあの時代のことを考えますと、今とは更に違っておりましたから、最初、訴えられるときに非常な勇気も要ったし、相当の覚悟でおやりになったことだと思いますが、それが長い時間掛けて、ようやく願いがかなったということで、本当に御苦労さまだったと思うわけでございます。
 しかし、政策形成訴訟と呼ばれるものがどういうものかということは様々ないろんな見方があると思いますけれども、そこで一概に申し上げることは難しいわけでございますが、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いにつきましては、今、事務局長がいろいろ御説明申し上げましたように、検討会において検討していただいているという段階でございますので、今、先生からお話が出たようなことも検討会のメンバーの皆さんにお取り次ぎいたしまして、検討会の十分な検討を期待するというふうに私も考えております。
#209
○井上哲士君 本当にこの裁判だけでなくて、住友ミセス裁判も始めとしまして、女性の雇用差別の裁判というのは大変な御苦労の中で長期の裁判を闘っていらっしゃって、それがやはり雇用における男女の機会均等の前進に大きな力になってきた。これが本当に萎縮するようなことは絶対にあってはならないということを改めて申し上げておきます。
 次に、公平性ということが言われました。確かに審議会意見書でその言葉は出てきますが、その負担の公平を図って訴訟を利用しやすくする見地からと、こういう文脈で言葉が出てまいります。公平という言葉を使っていますけれども、やはりその意味は、公平を図ることによって司法アクセスを促進をさせようということを述べています。ですから、あくまでも司法アクセスの寄与につながる公平を言っているのであって、司法アクセスの促進化、萎縮化、こういう点での公平性というのは検討されるべきでありますけれども、これとは無関係のところでの公平性ということの議論というのはやはり審議会の意見書のらち外になると思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
#210
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、このくだりは司法アクセスの中でうたわれていることでございますので、費用の負担の公平化ということですね、これとやはり司法アクセス、これが結び付いているということでございます。
#211
○井上哲士君 正に、この公平性というのが司法アクセスと結び付いた議論だということは今確認をいたしました。
 この司法制度改革の審議会に先立ちまして、平成九年に民訴費用制度等研究会報告というのが出されております。十二回にわたる検討が行われまして、公平論とかそれから権利目減り論とか様々な敗訴者負担にかかわる賛否の議論が尽くされて、その上で、いまだ導入の時期にあらずと、こういう結論を出しております。
 この結論と今の議論とはどういう関係になるんでしょうか。
#212
○政府参考人(山崎潮君) その研究会の取りまとめのとき、たしか私が司法法制部長だったと思いますけれども、それはその当時の認識でまとまっていることでございまして、それもまた踏まえながら、そういう研究の成果も踏まえながら改革審議会において議論がされてきたわけでございまして、それはこの見方はいろいろな考え方があるわけでございます。そういうことから、やはり時代の背景、こういうものを踏まえながら今回の意見が取りまとめられているということだろうと思います。必ずしも絶対のものではないというふうに理解をしております。
#213
○井上哲士君 このときの研究会報告でも、例えば法律扶助などが非常に諸外国と比べましてもけた違いに少ないことなども含めまして、様々なほかの制度との関係を含めて検討することが必要だということが言われているわけであります。
 日弁連なども諸外国のいろんな制度の調査もされておりますけれども、敗訴者負担というのが訴訟の抑制効果がやっぱり非常に強いと。仮に、導入している国でも、一方で経済的弱者のための法律扶助を非常に充実をさせている、こういうことも報告をされておりますけれども、我が国はこの法律扶助の制度もけた違いに少ないという状況があります。
 そもそも司法というのは、立場によっていろんな異なる多義的な調整システムでありますから、だれにでも公平なルールというのはフィクションとも言えることだと思うんですね。紛争解決のルール自体が社会的対立者間の綱引きの妥協の産物的なところもあるわけでありますから、強い方は形式的なルールを望んで、弱い方は実質的な公平ルールを望んでいくという問題があります。
 今回の弁護士の敗訴者負担というのは、司法ルールとしてのやはり形式的な公平というものを貫かれようということになりますので、そうなりますと、本当に弱者にとっての実質的な公平というものが阻害をされることになる。
 そういう点でも、この検討会で、国民のための司法アクセスの拡充という角度から徹底した議論をするし、直接の声もしっかり聞くということを改めて求めたいと思いますけれども、その点でもう一度、事務局長からお願いをいたします。
#214
○政府参考人(山崎潮君) 議論は徹底してやりたいというふうに思っております。
 また、国民の声を聞く方法につきまして、先ほどもちょっと、どういう方法があるか検討してみたいというふうに申し上げましたけれども、とにかく、どういう形かは別として国民の声を聞くこと、これが大変重要であるということは十分に認識をしているというところでございます。また、もう少し検討会を進めて、最終的な結論に向けてやっていきたいというふうに思っています。
#215
○井上哲士君 様々な訴訟関係者の直接のヒアリングも含めて、本当に国民の声をしっかり聞いて、間違いのない結論を出していただきたいということを改めて強く求めまして、質問を終わります。
#216
○平野貞夫君 私、この司法制度改革推進本部から出された法律案については必ずお尋ねすることがあるんですが、それは、関係する機関と十分な協議をしたかということなんですよ。やっぱり実質的に、法務省の頭のいい官僚の人たちがかなり強引に引っ張っていっている嫌いもなきにしもあらずなので、同じことを聞きますが。
 この法案、いいところもありますよ。しかし、かなり問題なところもある。最高裁、日弁連を始め関係機関とどういう協議を、細かいことは言わなくてもいいですから、されて作り上げてきたか、答えてください。
#217
○政府参考人(山崎潮君) この司法制度改革、これを進めるに当たりまして、広く国民に情報を公開いたしまして検討過程の透明性を確保するという、これとともに、法曹三者を含む各界各層の御意見、これを十分に伺いまして参考にするということが大変重要であるというふうに認識をしております。
   〔委員長退席、理事荒木清寛君着席〕
 この法案についてでございますけれども、司法を国民に身近なものとすること等を目指しておりまして、司法制度に対する国民の多様かつ広範な要請にこたえようとするものでございますので、その立案に当たっても、最高裁、日弁連、法曹三者の意見、それ以外の意見にも耳を傾けながらこれを策定したものであるということでございます。
#218
○平野貞夫君 最大のやっぱり問題点というのは、国会議員五年以上やった人、職にある人、司法試験の資格があって、この方を、衆議院で修正はしたものの、推進本部の原案に、弁護士となる、登録できる資格を与えるというのが原案だったわけですが、これ、国会当局と相談しましたか。
#219
○政府参考人(山崎潮君) 国会そのものとでございますか。──それはしておりません。
#220
○平野貞夫君 それは議長なり議運に、これ、国会議員の身分の問題ですから、相談というか協議という、それは必要だったんじゃないですか。
#221
○政府参考人(山崎潮君) 国会議員の身分ではございますが、弁護士さんで国会議員になられている方、非常勤の特別公務員とされておりますので弁護士活動もできるという理解がされていると思いますけれども、そういう意味では、国会の活動そのものというよりも、それとは別の資格の問題というふうに我々は理解をしたわけでございます。
#222
○平野貞夫君 国会議員にやっぱり特別な権限を与えることでしょう。だから、そういう意味では、今やはり国会議員の特権について見直しというのが行われていまして、当然、これは両院の議運委員会に、今回こういうふうな対応をしたいという相談があってしかるべきじゃないですかね。いかがでございますか。
#223
○政府参考人(山崎潮君) 例えば、国会議員の役職にあった方が弁護士資格との関係でどうなるかと。例えば、このポストに就いた場合には弁護士登録をやめなければならないかどうか。幾つかの法律改正がございます。これ、弁護士法の改正でございますけれども、そのときにも、それは国会の方の、ただいま議運とおっしゃられましたけれども、そちらの方と調整してやったという記憶はございません。ですから、従来の、私は、慣行で、慣行にのっとって行ってきたということでございます。
#224
○平野貞夫君 従来の慣行を踏襲するというのは司法制度改革の対象じゃないですかね、そういう発想は。
 それと、論理をひっくり返せば、司法試験を受けたという資格を持っている人でも国会議員五年以上やったら資格剥奪するという制度だってできるわけでしょう。それは論理的に可能なわけでしょう。まあ、大した質問せぬと言って厳しい質問すると悪いから、これで抑えますがね。
 一体、この制度というのは司法制度の改革のどの部分ですか。
#225
○政府参考人(山崎潮君) やっぱり国民に利用しやすい司法という面だろうと思います。様々な経験を持った、そういうバックグラウンドを持った弁護士さんたちが世の中で活躍をしていただきまして、そして国民にいいサービスをしていただくと、こういう視点でございます。
#226
○平野貞夫君 細かいことを聞きますが、そちらが把握している対象者というのは何名ぐらいですかね。
#227
○政府参考人(山崎潮君) 五年の要件を満たしているというふうに思われる方が七名でございます。それから、五年をまだ満たしていないという方が三名ぐらいおられると。我々の調査でございますので必ずしも正確ではないかもしれませんけれども、そういうふうに承知をしております。
#228
○平野貞夫君 まあ、そのくらいで弁護士さんの数を余計増やしたということにもならぬと思うんですが。
 私も含め、国会議員を五年やっていますと、ろくなことはないですよ、いいことは一つも覚えませんよ。
 かつて、私は衆議院の事務局に三十三年いたんですが、社会党に田中武夫さんという非常にユニークな政治家がいまして、彼は、おれは政治弁護士だと言っていましたよ。ですから、こういう人を、政治弁護士という特別な制度を作って、それを弁護士にするなら司法制度の改革の一環と言えるかも分かりませんよ。
 ひどいね、これは本当に。かつてこの話聞きましたよ、理事懇か何かで。冗談だと思ったんですよ、私は、司法制度改革推進本部からこれが出てくるというのは。私は頭が悪くて司法試験なんか通っていませんから別に何ともないんですけれども、司法試験通った人から、厳しい研修受けた人から見れば、これ大変なことだと思うんですよ。それは立法府ですよ、立法府ですけれどもね、やっぱり立法手続、立法技術で国会議員をやっているわけじゃないですよ。まあ一々は申しませんが、非常に問題ですな。そのくらいで収めておきますが。
 もう一つ、法学部法律学科の教授、助教授から弁護士資格与えるという制度ありますね。これもかなり私は問題だと思っていますが、平成になってから大体何人ぐらい、大学のそういう法律学科の教授、助教授から弁護士に登録されていますか。
#229
○政府参考人(寺田逸郎君) 平成元年以降でございますが、この弁護士法の五条三号に相当いたしますが、この条項に基づきまして登録をした者、この合計数は二百二名になっております。
#230
○平野貞夫君 これは結構多いですね。それから、問題もあるんじゃないですか。私も何人か知っていますがね、そういう方で弁護士の登録をなさって国会議員になった人ね。今いませんけれどもね。結構、問題があったと思うんですがね。
 私はやっぱり、司法の大きな改革のうねりの中で法曹人を増やすことというのは大事だと思うんですが、ならば、それは大学の先生も人によりけりです、国会議員も人によりけりですがね。それは、司法書士で優秀な人なんかを研修するなり特別な試験をして弁護士に登録させる方がずっと実益といいますか、国民のためになると思うんですよ。そういう意味で、司法試験、これからはロースクール中心になると思いますが、そういうところからやっぱり弁護士という職種に登録なり仕事をさせる場合の全体的な見直しをこれやるべきじゃないかという意見を持っていますが、いかがですかな。
#231
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘ございました大学の先生の問題でございます。
 これ、今回、この法案の審議過程等におきましても様々な意見がございまして、今回御承認いただくそのジャンルの方では、司法試験は受かっているけれども実務はやっていないという方もおられる、それから実務はやっているけれども司法試験を受かっていないという方もおられるわけですね。そういうジャンルで考えますと、大学の先生は司法試験も受かっていなければ実務もやっていないじゃないかと、こういう御批判も相当ございまして、もう一度見直すべきじゃないかと、この際ですね。
 私ども、今回御承認を得るのに間に合いませんでしたけれども、この点はやはりいろいろ御指摘もありますのできちっと見直すべきじゃないかなということで、今その予定で考えております。
 それからもう一つは、議員修正が衆議院で行われまして、国会議員の先生方、それから特任検事も含めまして研修、短期の研修でございますが、これを受けていただくというふうに修正が今されておりますので、そういうことから、こういう考え方はまた新たな考え方になりますので、現在、ほかのルートから、研修を経ないでもいいというそういうルートもあるわけでございますが、そのルートについてもあるいは短期間でも研修を行うべきではないかと。そういう全体的な整合性、これももう一度見直してみる必要があるということで、私どもは今その作業を準備中でございます。
#232
○平野貞夫君 その衆議院の修正の、研修というのも大事ですよ。大事ですけれども、研修も研修によりけりでして、政策秘書のライセンスを取る試験、難しい試験あるんですよね、司法試験並みと、こう言っておるわけですけれども。それ以外に経験年数で研修受けて政策秘書に登用するという、こういう二つやり方があるんですが、大体、研修というのは、今までの研修というのは、研修なんですよ。それはかなり問題があるんですよ。それから、研修する人に問題があるわけよ。研修受ける人は立派な場合でも、研修する側にもう時代後れというか、全然もう問題にならぬ人たちがいる。だから、見直すなら、そういう研修の仕方、研修する方も見直していただきたい。
 それから、この法案で弁護士の綱紀問題というのが取り上げられていますが、まさか国会議員を弁護士にするから綱紀問題を厳しくするわけじゃないでしょうけれども、私、ある具体的なことで、とても有名な弁護士さんがある複数のタレントのプライバシー、個人情報を悪用して、今、日弁連で綱紀委員会にかかって審議されているようなんですが、ちょっとその具体的な相談を受けまして、弁護士の話を私なんかに相談するというのも、弁護士の弁護士みたいな感じなんですけれども、ちょっといろいろ調べましたら、この日弁連という世界は、ここにも弁護士の先生方何人かいらっしゃるんですけれども、これタブーなんですな。もう、国会よりタブーなんですね。
 そこで、弁護士さんの世界はおれたちに任しておけというのも一つの考え方なんですけれども、何かもうちょっと外部の人が、第三者が、弁護士の在り方、そういう綱紀問題にかかわれる、悪い意味じゃないですよ、弁護士の独立というのはそれはいいんですけれども、かかわれる仕組みを作る必要があるんじゃないかという意見を僕は持っているんです。
   〔理事荒木清寛君退席、委員長着席〕
 例えば、国会には裁判官訴追委員会とか弾劾裁判所というのがありますね。これも、アメリカが入れた制度なんですけれども、変わっておるといえば変わっていますよ、乱暴といえば乱暴ですよ。国会に弁護士の訴追委員会作れとは言いませんよ。言いませんですが、ここのところはもうちょっと、法務省が直接かかわるということになると、また、これまたいろいろトラブルのもとだと思いますが、ストレートに法務省じゃなくても、何か、国民的代表といったら国会ですかね、良識者の代表がやっぱり弁護士の在り方について、あるいは日本弁護士会に常識的なものを、日本弁護士会が常識的でないというわけじゃございませんから、意見を言えるというような、そういう仕組みというのは今あるんですか。
 あるいは、あれば、それをもうちょっと適当なものあるいは健全なものに、効果あるものにすべきだという意見なんですが、それについては、推進本部の山崎さん、どういう御意見ですか。
#233
○政府参考人(山崎潮君) 今回、弁護士の綱紀・懲戒手続、この改正案を提出さしていただいているわけですが、これ、やはり問題点は、その現在の綱紀・懲戒手続、基本的には弁護士のみで構成されているわけでございまして、やはり仲間内が仲間内を裁くみたいな形になりますので、どうしても手心を加えかねないんではないかと外からの批判がいろいろあるということでございます。
 そこで、今回の改正では、綱紀委員会というのは懲戒手続に付すかどうかを決める、調査をするところでございますが、現在、事実上、第三者が入っておりますが、表決権がございません。これではなかなか有効に機能しないということから、今回は外部の方を入れて表決権を持たせると、こういう改革をしております。ここでまず一つの客観性が出てくるということでございます。
 それから、現在のシステムでは、単位弁護士会で綱紀手続に入りまして、それで懲戒に付す必要がないといった場合に不服申立てを日弁連にすることができるわけでございますが、日弁連の方でもこれは懲戒手続に付す必要がないという結論になったときにはそこで終わりというのが現在の制度でございますけれども、これではやはり、その申立人、納得しないという場面も出てくるわけでございますので、今回の法案でその上に更に綱紀審査会というものを設けまして、綱紀委員会ですね、失礼、審査会でございました、審査会を設けまして、もう一度不服申立てをすることができると。
 そこの構成は弁護士が一切入りませんで、それ以外の有識者だけで構成される。そこで審議をいただいて、これは懲戒手続に付すべきだとなれば、もう付すと。しかし、そこまでやって付すべきでないとなったら、それはもう残念ながらそこであきらめていただくということになりまして、かなり客観性を持たした形になりまして、外部の意見が言えるというシステムに変えてございます。
 その点を御理解をいただければと思います。
#234
○平野貞夫君 この弁護士さんの綱紀制度の改善については評価しています。評価していますが、ちょっと足りないかなと。まあ、一回にはいかないかも分かりませんけれども、これからその法曹の人たちの活躍の場が大変大きくなりますので、更なるやっぱり改正というか、在り方の適切さを求めるべきじゃないかと思います。
 誠に恐縮ですけれども、私、明日、予算委員会で質問する準備があるものですから、今日はこれで。また来週、続きをやらさしていただきます。
#235
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 私は、司法制度改革案に、質問する前に、戸籍の続柄欄差別などについてお聞きをしたいと思います。
 今日は、性同一性障害の法律案が国会で成立をした日です。戸籍上の男、女という記載を変えることができる場合が出てきたということは、当事者たちが非常に苦しんでいらしたわけですから、非常に歓迎すべきであるというふうに考えております。
 ところで、住民票の続柄欄に関しては、一九九五年、当時の自治省の通達に基づいて、それまでは、両親が結婚届を出して生まれてきた子供は長男、長女、次男、次女、婚外子の場合は子とのみ書かれると。あと、養子、特別養子などの記載があって、養子などの記載を嫌だと、プライバシーの侵害になり得るという声もあり、一九九五年三月一日、当時の自治省の通達によって、それ以降、全部、子に変わりました。何も実務上支障が生じておりません。
 しかし、残念ながら、戸籍の続柄欄は、婚内子は長男、長女、次男、次女、しかし婚外子は男、女という記載のままになっています。そうしますと、一目瞭然、記号的な差別表記になっておりまして、これはなぜこういうことが必要なのか。住民票も変わっておりますので、戸籍の続柄欄も差別的表記のないものにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#236
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、戸籍の続柄欄の記載については、嫡出子と嫡出でない子について異なる記載をしております。これは、戸籍は国民の親族的身分関係を登録、公証する公簿であり、個人の親族的身分関係を正確に記載することがその戸籍制度の目的ということ。そのことから、現行法は嫡出子と嫡出でない子について相続等の面で異なる効果を認めておりますので、この法律上の区別を正しく戸籍に表示するため、戸籍法施行規則において戸籍の続柄の記載方法を定めている、そこから嫡出である子と嫡出でない子の違いが出てきているということでございます。
#237
○福島瑞穂君 改めて確認しますが、相続分の差別があるために戸籍の続柄欄の表記が違う、そういう理解でよろしいのでしょうか。
#238
○政府参考人(房村精一君) 現行法が嫡出である子と嫡出でない子について法的に異なる扱いをしている、そのことを戸籍面でも反映させると、そういう観点から異なる記載をしているということでございます。
#239
○福島瑞穂君 改めてお聞きしますが、法的に異なる取扱いというのは、法定相続分の差別のことを指していらっしゃるのでしょうか。
#240
○政府参考人(房村精一君) 現行法で最も異なる点は、その相続分の違いであるという具合には思っております。
#241
○福島瑞穂君 戸籍上は続柄欄の差別をなくしたとしても、認知や身分事項欄を見れば、戸籍を見れば、嫡出である子、嫡出でない子、婚内子、婚外子ということははっきり分かるわけです。この表記をなくしても何も支障は生じない。
 それから、現実には実務者、役所の窓口に対しては、弁護士もそうです、司法書士も、それから各役所も全部そうですが、表記が間違っていることがあるので、相続分の確定をするときはきちっと身分事項欄を見て、表記が間違っていることがあると、現場では。ですから、表記にむしろ頼ることなく、きちっと確定せよという訓練を受けるわけですけれども、そうだとすれば、むしろ表記が間違っていることが少なくないということに照らして、こういう表記は必要ではないと。むしろ、身分事項欄を見たら分かるわけですから、いや、きちっと見れば分かるわけですから、必要ないというふうに考えますが、いかがでしょうか。
#242
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、身分事項欄を正確に見れば、相続分というのは最終的には確定できるわけでございますが、戸籍が身分関係を公示するというその目的に照らして、丁寧に見れば分かるということで足りるかどうか。やはり、身分関係に法律面で相当な違いがある場合に、その違いを反映させた表記の方がより望ましいのではないか。こういう観点も含めて、この続柄の記載方法を定めたものと承知しています。
#243
○福島瑞穂君 男、女という表記で苦しむ人たちが現実にいた。住民票の続柄欄で子と書かれる、あるいは養子と書かれることで、子供にそのことを知らせたくないとかプライバシーが出るという、そういう悩みを持っている人たちがたくさんいました。
 戸籍の続柄欄、先ほどでも相続分の差別が一番大きい、差別というか二分の一という、でも相続は一生涯そんなに起きることではありません。そのことのためだけになぜ表記を変えるのか、その点はいかがでしょうか。
#244
○政府参考人(房村精一君) 繰り返しで恐縮ですが、基本的に戸籍の目的が親族的な身分関係を登録、公証するというところにある。嫡出である子と嫡出でない子について、現行法上、法的な違いが相当あると。そういうことから、その違いを反映した戸籍の記載方法を選択しているということでございます。
#245
○福島瑞穂君 私は、その差別的表記が問題であると考えます。というのは、身分事項欄見れば分かるわけです。当事者にしてみれば、身分事項欄に認知と書いてあるということで傷付く、それは嫌だという人も実際はいましたけれども、それはまあ仕方がないと、仕方ないというか、それは事実で消せないと、消したいという人もいましたけれども、消せないわけですよね。
 そうしますと、それで分かるわけですから、わざわざぱっと見て分かる表記をする必要があるのか。しかも、その表記が間違っていることがあるので、実際、実務者はきちっと確認しろ、まあ確認するわけですよね、その表記に頼ることなく。そうすると、やっぱりこの表記は不要ではないか。
 つまり、私がお聞きしたいのは、この表記を、じゃ逆にお聞きします。この表記を変えたところで、男、女に例えば全部統一したところで何か問題が生ずるんですか、具体的に。
#246
○政府参考人(房村精一君) 繰り返しになりますが、身分関係を登録、公証する、分かりやすく表示するという機能から見れば、やはり現行の記載の方がそういった身分関係をより正確に反映した記載であるということは言えようかと思います。
#247
○福島瑞穂君 繰り返しますが、表記が間違っていることがあるわけですね。
 それから、住民票の続柄欄も、かつて自治省は、現行法上いわゆる婚内子と婚外子に差があるのでこの表記はあるというふうに言っていました。しかし、実務上これをなくして何か支障があるかという検証をしたところ、実は何もないということが分かったので、プライバシーの観点からこの表記を全部、子に、子供はみんな子供でいいと、子というふうにしました。養子である人も子になるわけですから、住民票の続柄欄に、子供に言っていないためにおびえるということはなくなりました。
 同じことが戸籍上も言えるのではないか。確かに婚内子と婚外子の差は法律上、今あります。しかし、その最たるものは相続分であると。そのときはきちっと身分事項欄を見るわけですから、なぜ分かりやすい差別、私に言わせれば差別的表記をしているのか。実務上これがなくて問題はないわけですよね。いかがですか。
#248
○政府参考人(房村精一君) 住民票は直接的に身分関係を公示するという目的ではありませんので、住民票の記載の仕方を基準に戸籍の記載の仕方を考えるわけにはいかないだろうと思っています。
 一つ、先ほどから、戸籍の記載にも誤りがあるのではないかというようなこともおっしゃっておられますが、そういう意味でも、戸籍の記載ができるだけ身分関係を正確に反映したものになるような記載の仕方というのを工夫しているわけでございますので、御指摘の続柄については、そういう観点から法律的な違いを記載の仕方にも表しているということでございます。
#249
○福島瑞穂君 性同一性障害の問題も、男、女という記載で、例えば自分は女なのに男と書いてあることで苦しむと。そして、婚外子の人もその表記で苦しむと。ちょっと、全然違うかもしれませんが、住民票のもやはり、住民票よく流通しますので、やはりそれで非常に苦しむということがあると思います。
 今、残念ながら、やっぱり興信所などを使って、結婚や就職のときに戸籍で調べるということが実際上残念ながら行われている場面もあります、これはもちろん違法で問題なんですが。また、私も周りの人たちに聞くと、結婚するときに戸籍を交換をしたという人たちがいます。つまり、ちょっとかぎ括弧ですが、身の潔白を証明するために、かぎですけれども、お互いに戸籍を交換をすると。ですから、戸籍はやっぱりいろんな場面で残念ながら使われていると。
 そうしますと、ぱっと見て分かる記載なわけですから、これはなくすべきだというふうに思いますが、要するにその表記がなくても別に実務上困らない、ただしそういう表記で苦しむ人たちがいる。であれば、なくしたらどうかと思っているんですが、いかがでしょうか。
#250
○政府参考人(房村精一君) いろいろな考え方があろうかと思います。ただ、私どもとしては、先ほどから繰り返し申し上げておりますが、戸籍が身分関係を登録、公証すると、そういう機能から、法律的違いを反映した記載の仕方をしているということでございます。
#251
○福島瑞穂君 戸籍が身分事項を証明するものであることは当然です。しかし、そのことをどう表記をするかというのは別の問題で、戸籍上ははっきり身分事項欄、身分関係を表しているわけですから、再度お聞きしますが、このような表記は少なくともなくして何か実務上支障が生ずるのでしょうか。
#252
○政府参考人(房村精一君) ですから、実務上というのは、戸籍にどの程度の要求をするかという、相続分を算定するという機能だけで考えれば、御指摘のように身分事項欄をきちんと確認をすれば相続分は確定できます。そういう意味では、相続分の算定に当たってこの続柄の記載が不可欠であるということはありません。しかし、戸籍を全体としてそういった身分関係の登録、公証の機能を持ったものとして考えたときに、そういう法的な違いが、より明瞭な、を反映した記載が戸籍法の求めている記載の仕方に合致するという考え方で、現在の続柄の記載方法が定められているということでございます。
#253
○福島瑞穂君 困っている人がいて差別が生ずる余地があるのであれば考慮すべきではないでしょうか。ちょっと極端な説明かもしれませんが、新平民と新と一字付いたことですさまじい差別が起きたと。あれも続柄欄、いわゆる続柄欄ですよね、その表記をする必要がないわけで、それを、あるかないかということで一般の人にすぐ分かるということで、かつてすさまじい差別が起きました。ですから、差別を生ずるような表記はなくすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#254
○政府参考人(房村精一君) 確かに、差別というのはあってはならないことでありますし、戸籍がそういうことに用いられないような意を用いるべきであろうとは思いますが、先ほどから申し上げておりますように、現行法上、法的な扱いの違いがある、それを反映した記載の方法であるということで御理解をいただきたいと、こう思っております。
#255
○福島瑞穂君 法的な違いがあるわけですから、だからこそ身分事項欄を見ればはっきり分かるわけです。法的な違いが戸籍を見れば分かる記載になっているわけですから、それを基に法定相続分を確定すると。それ以外にほとんど必要のない記載をなぜ残しているのか。相続分の確定についても続柄欄によってはいけないというふうに言われていますから、結局、必要ないわけですよね。なくして何も支障がないのになぜ残っているのか、再度お聞きします。
#256
○政府参考人(房村精一君) 繰り返しになりますが、戸籍で相続分を判断する際に、もちろん身分事項欄を正確に読めば分かるはずではありますが、しかし全体として相続分の算定に当たって誤りがないようにするには、戸籍全体としてそういう法的な違いがあることが反映した記載の方が、誤りが少なくなるということは言えようかと思っております。
#257
○福島瑞穂君 じゃ、再度言いますが、相続分の確定をするのは、ある一人の人にとって一生あるかないかぐらいのことです。そのためだけになぜこの表記を設けるのか、それは分かりません。
#258
○政府参考人(房村精一君) これはもう繰り返しですが、要するに戸籍の記載というのは身分関係を反映したものとするという、そういう観点から決めているわけでございますので、何度も申し上げますが、嫡出である子と嫡出でない子の違いが法的にあると、それを反映させた記載にしているということでございます。
#259
○福島瑞穂君 この長男長女、次男次女についても、十回結婚して十回とも男の子が生まれれば、十回長男というのが存在をします。つまり、長男というのが何人いるかということが、何番目の子供かというのを表しているわけでもないと。
 そうしますと、続柄欄の存在理由というのもちょっと分からないと思うのですが、いかがでしょうか。
#260
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の長男の記載、これはその夫婦の間で生まれた嫡出である子に順番に長男、次男という具合に付けておりますので、複数回の婚姻をして生まれた場合には、一人の人に複数の長男がいるということは現にあり得るわけでございますが、そういう記載があるということは、逆に言えば、複数回の婚姻をしているということがそこからも分かるわけでございますので、相続を判断する場合には、どういう婚姻の経歴をしたかということは当然重要な要素でございますから、そういった意味で、現行の戸籍の記載というのは、そういう判断をするに必要な場合に備えた種々の記載の仕方をしているということでございます。
#261
○福島瑞穂君 住民票の続柄欄のは、これは自治省の通達でした。戸籍の続柄欄も、これは法律ではなく省令で決まっています。つまり、法務省がこれを変えようというふうにもしお考えになれば、国会の審議も経ず実はできることであり、かつて自治省は住民票についてはそういたしました。
 大臣、最後にお聞きしますが、この点について法務省としては検討の余地はないのでしょうか。というのは、民行審が一九九六年、民行審、審議会でこの点について検討をし、一時は撤廃する方針を固めたというふうにも報道されておりますけれども、いかがでしょうか。
#262
○国務大臣(森山眞弓君) 今、民事局長が詳しく御説明申し上げましたような理由で現在のようなやり方になっていると思いますので、今すぐにどうしようということは考えておりません。
#263
○福島瑞穂君 七月八日、ニューヨークで女性差別撤廃委員会が開かれて、九年ぶりに日本の女性の人権状況がニューヨークの女性差別撤廃委員会で審議をされたばかりです。委員から質問が相次ぎ、選択的夫婦別姓の導入が進まない理由については、ナイジェリア、ハンガリー、クロアチアの三委員が質問し、婚外子差別条項が廃止されない理由については、オランダ、アルジェリア、クロアチア、モーリシャス、ベニンの五委員が質問をしております。
 そういう意味では、やはり条約に照らしても是非検討をしていただきたいというふうに思います。特に今、私が今日質問をしたことは法律ではなく省令でできることで、かつて自治省はプライバシーの観点から踏み切りました。是非、法務省で、かつて民行審で議論があったような議論で是非検討していただきたいと要請をいたします。
 では、司法制度改革のことなんですが、今日、五年以上国会議員の職にあった者はなぜ司法修習が不要なのかという点について質問が相次いでおります。私も、これはそのとおりだと思います。実務修習でやったことと国会でやっていることは全く違います。実務修習は、実際、裁判、検察、弁護がどうあるかという問題であり、国会でやっていることは立法なわけですから、全くこれは性格が違うと。なぜ国会議員の職にあった者は司法修習が不要なのか全く分かりません。これはまた、いかがでしょうか。
#264
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど来、何回も御説明を申し上げておりますけれども、この考え方につきましては、司法試験を受かりまして、これは勉強しているだけでございますけれども、それから修習を受けるわけですね。そのときに、やはり具体的な事件、これを見ながらどういう解決をしていくか。それからやっぱり、世の中どう動いているか、そういうことをじっくり勉強しながら、最終的にどういう解決に導くかということを学ぶ場であるというふうに私は理解をしております。
 これは修習だけでなくたって、ほかのいろいろな経験、それは法律的な経験ということに基づくわけですけれども、そういうものでも十分に培われる、いわゆるリーガルマインド、これこそ重要であるという考え方でございます。
 国会議員の先生方も、社会でいろんな問題が起こるわけでございますね。それについて、じゃ新しく法律が必要だったら法律を制定する、それから、あるいは政府から提案された法律についていろいろ御審議をいただく、正に法律事務をやられているわけでございまして、そこでやはり問題の解決というものを日々行っているわけでございまして、そういう中で十分リーガルマインドが養われていく、これは共通なものであるということから、私どもはこのような御提案をさしていただいたということでございます。
#265
○福島瑞穂君 でも、立法機関はリーガルマインドを身に付ける場所ではないというふうに思うんですね。
 衆議院で枝野委員が質問していますが、じゃ、なぜ地方議会議員は駄目なんでしょうか。
#266
○政府参考人(山崎潮君) 国会の法律は、民事、刑事、行政に限らず、すべてのものが入るわけですね。日本で行われているものすべてでございます。そういう意味では非常に広範なものが対象になるわけでございます。地方の議会のものは、法律で定まっている基本の中の、その一部、条例でやるということはございます。そういう意味では全然範囲が違うということでございます。
 それから、仕事も国会議員のような定型性は必ずしもないということから、これは企業法務とか公務員一般、これと同じようなジャンルに位置付けをさしていただいたということでございます。
#267
○福島瑞穂君 しかし、国会の中で一つの委員会でやっていますと全般をカバーするわけではありませんし、私たちはリーガルマインドの訓練のために立法機関で働いているわけではありません。都議会などは大きいところですから、条例だろうが法律だろうが、レベルとしては同じようなことを実はやっていると。
 つまり、一番の違和感は、なぜ国会議員だけ特例として認めているのか。いかがでしょうか。
#268
○政府参考人(山崎潮君) リーガルマインドを学ぶために国会議員というふうなことは申し上げておりませんで、この活動をきちっとやれば、それは当然、リーガルマインドは備わっていくということでございます。そこを御理解、まずいただきたいというふうに思います。
#269
○福島瑞穂君 いや、私も国会でリーガルマインドが身に付かないと言っているわけではないのですが、ただ、研修所あるいは実務修習でやる内容と国会でやる立法活動は全く性格が違うものだと。つまり、司法の一翼を担う人材として実務で、裁判所で、検察庁で、弁護士事務所で、研修所で受ける教育、リーガルトレーニングと、国会の立法機関の一員としてやることは、三権分立の観点からも全く性格が違うと。全く性格が違うものを、ずるしてこういうふうにやるのはおかしいんじゃないか。いかがでしょうか。
#270
○政府参考人(山崎潮君) 確かに性格は違うと思います。
 それから、法律について、政策をどういうふうに考えていくか、大きな仕切りをしていくかという問題と、もう少し細かい詰めをする、これはそれぞれ違うと思います、場面は。しかし、これはお互いにそれぞれを徹底して詰めていけば、それなりの応用力あるいは物の見方、これが当然備わってくるわけでございます。ですから、何かやるときに、一つのことを絶対にやらなければある種の力が付かないということではないというふうに思っておりまして、いろんな場面で付いてくるだろうということでございます。
 正に、国会は立法の機関でございまして、最高の機関でございますので、その点を御理解賜ればと思います。
#271
○福島瑞穂君 立法、リーガルマインドが付く仕事はほかにもたくさんあると思います。例えば、森山法務大臣は役人の出身でいらっしゃいますけれども、正に役人はもしかしたら立法技術を詰める作業をやっていらっしゃる面もあるかもしれませんし、それなら国会の法制局、国会の職員、至る所で国会議員以上に実は実務的な訓練を経ている人もいると。
 つまり、私が申し上げたいのは、リーガルマインドを養成する仕事は山のようにある、その中でなぜ国会議員だけピックアップするのか。これについてはいかがでしょうか。なぜ、じゃ、役人は駄目なんでしょうか。
#272
○政府参考人(山崎潮君) 国家公務員は対象になっております。ただ、国家公務員の場合はいろんな職種がございますので、必ずしも法律事務というふうに限らない場合もございますので、若干その期間を長めに、七年という期間になっておりますけれども、それも対象になっております。もちろん企業法務もなっております。要は、法律的な、リーガルマインドが学べるような職種、そういうことを経験された方については横並びで拾い上げているという形でございますので、そこはアンバランスはないというふうに理解をしております。
#273
○福島瑞穂君 しかし、年数の違いがあります。
 それから、ちょっともう一度繰り返して済みませんが、裁判所で検察庁で弁護士事務所で訓練を受けるときは、実質的にはインターンみたいな形で実務の訓練を受けます。国会議員は裁判所に行くわけでも検察庁に行くわけでも弁護士事務所で修習をするわけではないと。実務を全然知らないで司法試験にかつて受かっていればなれるというのはやっぱり絶対に変だというふうに思います。これは修習受けたくない国会議員が考え付いたのか、どうしてこういうのが出てきたのかやっぱりよく分からない。
 私は、修習生のときは、外交官であった人が修習生になって、定年退職後だと思いますが、来ていらっしゃいました。また、先日も財務省、大蔵省を辞められた人が研修所に通うということがありますけれども、やはりそれは資格は取っているけれども、年齢とかに関係なくきちっと実務修習、研修をやるべきではないかと、それがやっぱり平等ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#274
○政府参考人(山崎潮君) これは、元々考えた基本でございますけれども、弁護士の果たすべき役割と、これが非常に増大してきているわけでございますが、こういう中で、多様で広範な国民の要請に十分こたえ得るように、多様な経験、バックグラウンドを有する方を法曹に迎えて、厚い、層の厚い法曹を確保するということが今後の社会で十分求められるわけでございます。
 それにつきまして、じゃ、現在の方をどうするかということでございますが、これも同じでございまして、やはり研修だけで力が付くか。技術的な問題は確かに研修ということになるかと思いますけれども、それ以外でも、要は、細かいところだけの知識ではなくて、やっぱり大きく事件をどのように見ていくか、そういう能力がやっぱり法曹として一番求められるわけでございます。
 そういうことから、別のルートを取ってもそういう能力が十分備わる方については資格を与えていくと、これが正しい姿だと理解しているわけでございます。
#275
○福島瑞穂君 別のルートから引っ張ってくるというときに、なぜ国会議員なのかというのが分からないんですね。もっと実は、私は個人的に問題だと思うのは、特任検事を五年以上経験していると司法試験合格が不要になるという、その点です。検察官は刑事をやりますから、民事はやりません。司法書士の人たちの方がもっと満遍なくやるかもしれません。
 先ほど、両方の、特任検事の試験と司法試験の委員と両方やって似たような試験だというふうに答弁をされましたけれども、でも司法書士の試験だってほかの試験だって、憲法や民法、いろんなものをやるわけですから、試験の性格が似ているからといって特任検事は司法試験合格が不要とするのは、これはおかしいのではないか。なぜ、刑事しかやっていないというか、刑事裁判の検察官として調書を作ったり法廷へ立ったりしているので、なぜ司法試験に受からなくて弁護士になれるのか、司法試験合格は不要なのか、これは理解ができません。
#276
○政府参考人(山崎潮君) 先ほども申し上げましたけれども、検察官特別考試の試験については刑事の知識だけではございません。民事、もちろん憲法も含めたものを全部問うているわけでございまして、基本的なところは、司法試験ではございませんけれども、それに近いものをまず合格しているということです。
 それから、実務に関してでございますけれども、これはもう委員御案内のとおり、刑事事件、経済事件をバックにするものもたくさんあるわけでございます。租税関係もいろいろございます。そういう意味では、経済、世の中の実態、この辺の民法あるいは商法、この基本を知らないと捜査はやっぱりできない、公判もできない。
 それからもう一つは、人事訴訟でお分かりかと思いますけれども、本人が死亡しているような場合、検察官が公益の代表として民事事件に出頭しているわけでございまして、そういう意味においては広範な経験をしているということになろうかと思います。それはもう法曹資格を持った検事とほぼ同じ力を持ち、経験をしているということであるから、この資格の特例を認めようと、こういうことでございます。
#277
○福島瑞穂君 ほぼ同じ力を持っているのであれば、司法試験を受ければいいんじゃないでしょうか。
#278
○政府参考人(山崎潮君) 既に能力をお持ちの方でございますので、それを世の中の活力として活動していただくと、そういうルートを設けるべきでございます。その検察官と、じゃ、どこが違うのかという先ほどおっしゃられておりますけれども、これは、なる以上は検察官でございます。別に差別は全くございませんし、それから検事正になられた方もおられますし、それとそれ以外のいろいろな役職に就いてる方多数おられまして、法曹資格を持っている部下を指導していると、こういう状況でございますので、全部能力を持っているということでございますので、あえてそこをもう一度その試験をということは必要ないというふうに考えております。
#279
○福島瑞穂君 司法書士の中で同じようにもう弁護士以上に力を持っている人もたくさんいらっしゃるでしょうし、あるいは企業法務の中で、司法試験はたまたま受かってないけれども弁護士以上に力のある人もいるでしょう。国会のスタッフの人たちは法律に極めて精通していますし、はるかに、何を能力というかは別にしても、たまたま司法試験を受けてないだけで能力のある人はたくさんいます。能力があるかないかという論議をしていてはこの問題は間違えるだろうと。
 なぜ特任検事だけ司法試験に受からなくて、受かっていなくて弁護士になれるのか。ほかの世の中にたくさん能力がある人がいると。しかし、どんな能力がある人もロースクールを出て司法試験を受けるか、司法試験を受けるかして資格を取るというふうになっているわけです。たくさん能力がある人でも試験を受けなくちゃいけない。にもかかわらず、なぜ特任検事だけやるのか。これはやっぱり法務省の天下り、あるいは法務省とさっきの国会議員は修習が要らないというバーターでやったんじゃないか。あるいはこの法律を法務省が提案しているというところが、やっぱり自分のところで特典を付けるというふうな性格じゃないかと社会から思われても仕方ない面があるんじゃないか。やっぱり変な制度だと思いますが、いかがでしょうか。
 じゃ、逆にお聞きします。司法書士で物すごく優秀な人がいる。国会のスタッフ、それこそ法制局は法律を作るプロ、リーガルマインドは十分あります。委員部、調査部、この人たちは極めて能力がある。難しい試験を実は通ってなっています。この人たちはなぜ司法試験に通らないとなれないんですか。
#280
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど能力と申し上げたからちょっと若干誤解があったかと思いますけれども、その能力の前提として検察官特別考試という、これは政令で定められております試験でございます。これを、先ほど申し上げましたけれども、かなり高レベルの試験でございまして、基本的には司法試験の問題のレベルと同じに扱ってやっているわけでございます。これを通っているということですね。まずそこが一つございます。
 それから、その後の経験も十分に経て、それで能力もきちっと備わっている。試験も通り、能力も備わっている、こういうことでございますので、それは一般的に能力をお持ちの方がいきなり弁護士になれるかという問題とは少し違うというふうに理解しております。
#281
○福島瑞穂君 難しい試験と経験があればということなんですが、やはり余計おかしいというふうに思います。今、国会の職員の試験もいわゆるかつての国家上級、一級試験よりも難しいと言われるぐらい難しくなっています。国家上級、今は国家一級というんですか、もう非常に難しい、極めて難しい試験で、法律の試験もたくさんありますよね。ですから、特任検事になる試験が難しい、それは分かります。しかし、司法書士の試験だってどんどん難しくなっています。そうしたら、なぜ特任検事だけ試験が難しい、そして経験があるということでなるのか。
 同じ理屈で言えば、国会の職員だって試験が難しい、とっても難しい。法律の試験を受ける。その後、リーガルマインドとしては特任検事以上に、民事、刑事、行政、あらゆる立法にかかわって、リーガルマインドは十分である。じゃ、なぜ特任検事は司法試験が不要で、国会の職員は必要なんでしょうか。
#282
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど来申し上げておりますけれども、この検察官特別考試、司法試験とほぼ同じ試験という位置付けでございます。それに今度、日々、それを受かった後に実務を毎日のようにやるわけでございますね。この濃度というのは大変なものでございます。その経験を経ているわけでございますので、それは、それ以外の方と質的に全然違うというふうに私は理解をしております。
#283
○福島瑞穂君 やっぱりおかしい。法務省がこういう法律を出すのはおかしいと思います。裁判所の職員の人たちも昇進昇格試験が御存じのとおりあり、書記官の中には本当に優秀な人たちはたくさんいらっしゃいます。で、彼らは、彼、彼女たちは法廷に実際出ているわけですし、内部の昇任昇格試験はやっぱり難しいものなわけですよね。だったら、何で特任検事だけ特別にやるのか。もし特任検事を例えば司法試験合格が不要だとするのであれば、書記官の試験、物すごく難しい試験に例えば特別枠を作って、その人は司法試験合格不要とする方が平等じゃないですか。むしろ、裁判所の書記官の方が満遍なく実務をやっていますよ、民事も刑事も。まあ民事の書記官、刑事の書記官というのはありますけれども。いかがでしょうか。
#284
○政府参考人(山崎潮君) ここで比較するのはちょっとやりにくいんですけれども、言いにくいんですけれども、書記官の方は基本的には補助事務でございます。この特任検事は、法曹資格を持っている検事と全く同じ仕事を自ら切り盛りしているわけでございます。本当に当事者として活動しているわけですね、あるいは公益の代表者として活動しているわけでございます。そういう意味においては全く違うんじゃないでしょうか。
#285
○福島瑞穂君 この法務委員会でロースクールの議論を随分いたしました。ロースクールを出て司法試験に通る、あるいはロースクールを通らないで司法試験で合格をする、その二通りあるということを私たちは理解し、その関係が一体どうなるのか。しかし、ロースクールで三年間、やはり一発試験じゃなくてやるのがいいんじゃないかということでロースクール構想が実現をしました。
 特任検事の人たちが優秀であるとか実務の重要な部分を担っているというのはいいんです。ただ、一番問題なのは、内部の、一応内部の試験じゃないですか。要するに、法務省の中の人間を、法務省が作った法案で、この人たちだけ司法試験が不要とすることはやっぱりおかしいというふうに思います。
#286
○政府参考人(山崎潮君) 御説明申し上げますけれども、これ、内部の試験ではございますけれども、内部の試験委員だけではございませんで、試験委員のちょっと構成を申し上げますけれども、元金融庁の顧問の方、これ弁護士ですけれども、それから大学教授、それから日弁連事務総長、それから最高裁事務総長、それから大学の先生、大体こういうような構成になっておりまして、それは物すごく客観的にやっているわけでございまして、内部の単なる試験ということではないと。
#287
○福島瑞穂君 でも、司法書士の試験も税理士の試験も国家公務員の試験も国会職員の試験も極めて難しいですし、昇任昇格に外部の人を入れたり、今、地方公務員だってすごく難しくなっていますよね。
 ポイントはやっぱり、特任検事の資格を与えるのが、外部の人が入るにしろ内部の試験であり、そしてその人たちにだけ、司法試験に合格しなくてもなれるというのはやはり変ではないか。
 申し訳ないんですが、五年以上国会議員の職にあった者を司法修習が不要とする、それを国会で成立をさせる、法務省が提案する法案で特任検事については司法試験に通らなくても弁護士になれると。それを法務省と国会で成立させるというのは、国民から見たら、やっぱり内部に有利にしている、自分たちが有利にしたいからこんな法律を作りたいのだと、むしろ不審の目を持たれるんじゃないかというふうに思います。
 私は、特任検事の人たちが優秀でないとか、そういう話で、能力がないということで反対をしているのではありません。でも、能力があるのであればほかの人と同じようにすべきではないかということに尽きます。これについてはいかがでしょうか。
#288
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど来申し上げておりますけれども、試験、司法試験ではございませんけれども、ほぼそれと類似した試験を受け、これだけ実務の経験をし、社会としてはもう、すぐ活躍していただきたい人物でございます。そういう人物について法曹資格を与えないというのは、やっぱり国家の損失であるというふうに考えられます。
 それから、先ほど来、法務省のものについて法務省から提案しなかったら一体どこから提案するのかという問題になりますし、国会議員の問題に関して、国会を通さなきゃ絶対できないわけでございますので、それはいろいろ賛否あろうかと思います。十分御審議の上で決めていただくと、こういう性質のものだというふうに私どもは理解しております。
#289
○福島瑞穂君 国民には優秀な人たちがたくさんいる。その優秀な人たちをどう生かすかということがあるけれども、ただ、優秀な人たちのどこが優秀かという客観的評価がなかなかできない。だから、私たちは仕方なく国家試験というものを考えて、医師はそれに例えば通らないと駄目だというふうにしているわけですよね。どこの世界に医師法、医師の国家試験を通らずに医者をやれる人がいるのか、まあ医者はまた特別な技能が必要ですが。どんなにその人が優秀で、どんなにインターンをやっていて、どんなに優れていて、どんなに優秀な看護婦さんであろうが、医師の国家試験通らなければ、どんなにこの人が優秀で国家的な損失であるかと言っても、その人は医者にはなれないわけですよね。
 ですから、なぜ、やっぱり法務省の内部、それから国会議員の、国会議員で司法修習を不要とし、一方は司法試験のですね、要らないとするのか。いかがでしょうか、まだ私はこれだけ聞いてもちょっと納得がいきません。
#290
○政府参考人(山崎潮君) もう先ほど来申し上げておりますけれども、やはりそれに匹敵された方がおられるという事態があったとして、それをどのように社会として働いていただくかという、その考え方の差異、そこの意見の違いだろうというふうに私は思いますけれども、やはり私は、有為な人材はきちっと働いていただきたい、世の中の役に立っていただきたい、そういう道を与えるべきだというふうに思っております。
#291
○福島瑞穂君 有為な人材ということの判断がそこだけ、有為な人物は山のようにいる、国会にもいるし至る所にいる。その中で、なぜ特任検事だけ司法試験合格が不要とするのか、やはりこれだけお聞きしても分かりません。
 この点についてはやっぱりこの法案はおかしいというふうに思いますので、まだ次回ありますけれども、そこで改めてまたお聞きをしたいというふうに思います。
 次に、弁護士の報酬規定の会則記載事項からの削除に弊害はないのか、この点について教えてください。
#292
○政府参考人(山崎潮君) 今回、弁護士の報酬、会則から削除されるということでございます。
 これを削除いたしますと、国民としては、じゃ事件について幾ら掛かるのかと、分からないじゃないかと、こういう問題が起こってくるわけでございますが、これは日弁連の方で今いろいろ御検討をいただいているわけでございますけれども、弁護士会の会則等によりまして、まず個々の弁護士の報酬基準ですね、これを作成する、それからその備置き義務、これを義務として会則に盛るということ、それから弁護士の依頼者に対する契約前の報酬説明義務、これも課すということでございます。それから、報酬契約書の作成義務、これも設けるということでございまして、会則でその報酬はなくなりますけれども、個々の弁護士さんがそれぞれで作っていただいて、それを依頼者に明示していただいて、その上で判断をしていただくということ。それからもう一つは、日弁連の方で各弁護士にアンケートを取りまして、それを集約したものを国民の皆様は見ることができるという形から、そこで国民の皆さんに判断をしていただくと、こういうことによって、迷わないようにしようということを今考えております。
#293
○福島瑞穂君 時間ですので、終わります。
#294
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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