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2003/05/19 第156回国会 参議院 参議院会議録情報 第156回国会 本会議 第24号
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2003/05/19 第156回国会 参議院

参議院会議録情報 第156回国会 本会議 第24号

#1
第156回国会 本会議 第24号
平成十五年五月十九日(月曜日)
   午後一時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十四号
    ─────────────
  平成十五年五月十九日
   午後一時 本会議
    ─────────────
 第一 安全保障会議設置法の一部を改正する法
  律案、武力攻撃事態における我が国の平和と
  独立並びに国及び国民の安全の確保に関する
  法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与
  等に関する法律の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 日程第一 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 三案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。国務大臣福田内閣官房長官。
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(福田康夫君) ただいま議題となりました安全保障会議設置法の一部を改正する法律案及び武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 初めに、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
 この法律案は、武力攻撃事態等に際して、政府が事態の認定、対処に関する基本的な方針の策定等の重大な判断を行うに際しての安全保障会議の重要性にかんがみ、内閣総理大臣の諮問事項及び同会議の議員に関する規定を改めるとともに、会議に専門的な補佐組織を設けることにより、事態対処に係る安全保障会議の役割を明確にし、かつ、強化することを目的として提出するものであります。
 以上がこの法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、内閣総理大臣の諮問事項に武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針を加え、これに伴い、防衛出動の可否を諮問事項から除いております。また、諮問事項に内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態等及び重大緊急事態への対処に関する重要事項を加えることを定めております。
 第二に、会議の機動的な運営を図るため、議員の構成を見直すとともに、常置の議員以外の国務大臣を議員として臨時に会議に参加させることができるようにすること等としております。
 第三に、事態対処に係る安全保障会議の審議及び意見具申に資するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する事態対処専門委員会を置くこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 引き続きまして、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について御説明いたします。
 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、我が国に対する外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護するために必要な法制を整えておくことは国としての責務であります。
 この法律案は、こうした観点から、武力攻撃事態等への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態等への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。
 以上がこの法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、武力攻撃事態等への対処に関する基本理念として、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならないこと、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合にあっても、その制限は当該武力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならないこと、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力しつつ、国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならないこと等を定めた上で、この基本理念にのっとり、国の責務等について所要の規定を置いております。
 第二に、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針、武力攻撃事態等対策本部の設置、組織、所掌事務及び同対策本部長の権限、内閣総理大臣の権限等について所要の規定を置いております。
 第三に、政府は、武力攻撃事態等への対処に関して必要となる法制の整備について、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するための措置、武力攻撃事態等を終結させるための措置等が適切かつ効果的に実施されるようにするとともに、その緊要性にかんがみ、総合的、計画的かつ速やかに実施しなければならないこと等を定めております。
 第四に、政府は、武力攻撃事態等以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するため、武装した不審船の出現、大規模なテロリズムの発生等の我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、必要な施策を速やかに講ずるものとしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 なお、この法律案は衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりでございます。
 第一は、武力攻撃事態からいわゆる予測を切り離して事態を二分し、それぞれの事態について、対処の基本理念を明らかにするとともに、対処基本方針に記載すべき重要事項を列記することとし、また、いわゆるおそれと予測の定義をそれぞれ分かりやすいものにするものであります。
 第二は、武力攻撃事態等への対処における基本的人権の保障について、日本国憲法第十四条等の規定は最大限に尊重されなければならない旨の規定を盛り込むものであります。
 第三は、武力攻撃事態等における政府による適時適切な国民への情報提供に関する規定を盛り込むものであります。
 第四は、対処基本方針に定める事項として、武力攻撃事態等の認定に加え、当該認定の前提となった事実を対処基本方針に定める内容とするものであります。
 第五は、内閣総理大臣が対処基本方針の廃止につき閣議の決定を求める場合として、「国会が対処措置を終了すべきことを議決したとき」を加えるものであります。
 第六は、事態対処法制の整備を速やかに行う旨を規定し、これに関連して、武力攻撃事態等対策本部長の権限、内閣総理大臣の権限等を規定する法律案第十四条、第十五条及び第十六条について、別に法律で定める日から施行することとするものであります。
 第七は、国民の保護のための法制に関し、広く国民の意見を求め、その整備を迅速かつ集中的に推進するため、内閣に国民保護法制整備本部を設置する等の規定を盛り込むものであります。
 第八は、武力攻撃事態等以外の緊急事態対処のための措置について、一、武装不審船事案や大規模テロなどの新たな脅威への対処に取り組む旨、二、これらの事態に対処するために必要な施策の内容として、情報の集約、分析、評価のための体制の充実等、三、これらの事態への対処という課題の緊要性にかんがみ、速やかに必要な施策を講ずべき旨をそれぞれ明示するものであります。
 第九は、附則に、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行う旨の規定を盛り込むものであります。
 以上がこの法律案の衆議院における一部修正の概要でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(倉田寛之君) 国務大臣石破防衛庁長官。
   〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(石破茂君) 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、防衛出動を命ぜられた自衛隊がその任務をより有効かつ円滑に遂行し得ることが必要であり、このため、防衛出動時及び防衛出動下令前における所要の行動及び権限に関する規定を整備し、並びに損失補償の手続等を整備するとともに、関係法律の適用について所要の特例規定を設けるほか、武力攻撃の事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等が新設されることに伴い防衛出動命令の手続について所要の整備を行い、あわせて防衛出動を命ぜられた職員に対する防衛出動手当の支給、災害補償その他給与に関し必要な特別の措置を定める必要があります。
 以上がこの法律案を提出する理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 まず、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。
 第一に、第百三条の規定により土地を使用する場合において、都道府県知事等は当該土地の上にある立木等を移転又は処分することができることとし、同条第一項の規定により家屋を使用する場合において、都道府県知事等は当該家屋の形状を変更することができることとするとともに、同条の規定により処分を行う場合には、都道府県知事は公用令書を交付して行わなければならないこと、及び、この場合において、土地の使用に際して公用令書を交付すべき相手方の所在が知れない場合等にあっては事後に公用令書を交付すれば足りること等とするものであります。
 第二に、自衛隊の行動として防衛出動下令前の防御施設構築の措置を新設するとともに、当該職務に従事する自衛官が自己又は自己とともに当該職務に従事する隊員の生命等の防護のためやむを得ない場合に武器を使用することができることとし、及び、防御施設構築の措置を命ぜられた自衛隊の部隊等の任務遂行上必要があると認められるときは、都道府県知事は防衛庁長官等の要請に基づき土地を使用すること等ができることとするものであります。
 第三に、防衛出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、当該自衛隊の行動に係る地域内を緊急に移動する場合において一般交通の用に供しない通路等を通行することができることとするものであります。
 第四に、道路法等について、防衛出動等を命ぜられた自衛隊の任務遂行を円滑ならしめるため、適用除外その他の特例を設けることとするものであります。
 第五に、取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿等した者は六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処すること等とするものであります。
 第六に、武力攻撃事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等の手続が新設されることに伴い防衛出動命令の手続について所要の整備を行うこととするものであります。
 次に、防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改正について御説明いたします。
 これは、防衛出動を命ぜられた職員で政令で定めるもの以外のものに対し防衛出動手当を支給することとするとともに、防衛出動手当を公務災害補償の平均給与額算定の基礎に加えること等とするものであります。
 以上が自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 なお、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案は衆議院において一部修正されておりますが、その概要を御説明いたします。
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案において武力攻撃事態の定義に係る修正がなされたことに伴い、所要の文言の整理を行うものとすること。
 以上でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
#7
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。阿部正俊君。
   〔阿部正俊君登壇、拍手〕
#8
○阿部正俊君 私は、自由民主党・保守新党を代表して、武力攻撃事態対処法案等三法案について、総理並びに関係大臣に質問させていただきます。
 まず冒頭、我が国のかねてからの重要懸案事項であります有事法制につきまして、本院の審議がいよいよ開始されるに当たり、長年にわたる先輩諸氏の国の安全を願う多大なる御尽力に思いを致すとき、本法律案の早期成立を図る決意を新たにし、身の引き締まる思いでございます。
 国民の生命と財産の安全を守ることは国家の最大の使命であり、そのために法制面や装備あるいは運用面において十分な体制を整えることが国民に対する政治の最大のかつ重大な責務であります。
 そのために、小泉総理の備えあれば憂いなしという大方針の下に、世論の動向を見極めつつ、与党と野党第一党が真剣に協議を重ね、大局に立って合意し、これにより、今国会の後半において有事法制の整備に向かって大きく前進し得たことは画期的なことでございます。ここに至るまでの関係者の真摯な努力に心からの敬意を表するものであります。
 振り返れば、昭和五十二年、福田内閣のとき、近い将来の立法化を前提としないという極めて無理な環境の中で、いわゆる有事法制の研究が開始され、四半世紀余りも経過してまいりました。それが正に今ここに至り、与野党が対立していた安全保障問題についてこのような合意に達し得たことは、我が国の国家体制にとってだけでなく、政党政治、議会政治にとりましても大きな大きな意義を持つものと確信するものであります。
 この間、米ソ冷戦は終結したものの、他方で、地域紛争が多発し、大量破壊兵器が拡散する中で、一昨年、同時多発テロの発生により、世界の情勢が一変しました。さらに、このたびのイラク戦争でフセイン体制が短期間で崩壊したものの、その復興を始め、なお難しい事態の国際的な解決が迫られております。また、冷戦の傷跡が残る朝鮮半島において、北朝鮮のミサイル発射、武装工作船や核開発の動きなど、我が国の安全を脅かす懸念が一層高まってきております。
 このような中で、第一の視点として、我が国外交の基軸である日米同盟を基本とした国際協調体制を確立すること、第二の視点は、イラクの復興や北朝鮮の核開発等の直面する問題の解決を図ること、こうした基本的な課題について、近く予定されている米国やロシアなど主要国の首脳会談にいかなるお考えで臨まれるのか、まず総理の基本方針をお伺いいたします。
 近年、世界の平和、我が国の安全に対する脅威が高まる中で、八割近い多くの国民が安全確保に不安を感じております。総理は、イラク危機におきましても、日本の国益を踏まえ確固とした姿勢で臨まれ、安全保障のために何が大事なのか、真剣かつきっぱりと国民に訴え掛けられました。
 最近の世論の動向を見ると、国民の危機管理、有事対処への関心が今までになく高まってきております。
 我が国の国是は、日本国憲法を遵守する専守防衛にあります。この専守防衛に徹しながら相手にすきを見せないようにするには、困難かつ危機的事態から目を背けず、それに備えるあらかじめの立法こそが要諦なのではないでしょうか。
 このような我が国の防衛の基本に立って、日本は、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないことをより鮮明にしつつ、北東アジアの安全保障についても視野に入れながら外交努力を積み重ねていく必要があると存じます。
 総理は、我が国の国際的な役割や国家としてのありようを展望する中で、この有事法制の整備をどのように位置付けられ、内外、特に近隣諸国の誤解を受けることのないようにされていかれるのか、有事法制の意義、役割等について基本的な考えを改めて御説明願います。
 国民全体の生命等の安全にかかわるような重要法案については、でき得る限り多くの政党の賛成を得て成立させることが望ましく、そのために本三法案について幾つかの重要な合意がなされたことは国民の要請に大きくこたえるものであります。
 すなわち、憲法の基本的人権に関する規定の最大限尊重を始め、自衛隊の活動の終結に関する国会関与等の明記、さらに、附則において、国民保護法制整備まで首相の代執行規定を凍結することや迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方を検討するなどの点で政府原案を修正し、衆議院で圧倒的多数で可決されました。
 総理は、このような幾つかの重要な法案修正や今後の検討課題に関する合意について、有事法制の実効性への影響面も含め、どのように受け止めておられるのか、特に基本法制の検討に当たっては、災害対策基本法案との関係もあり、いかに取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。
 国会の関与の在り方については、原則として事前の承認が必要であるという考えもありますが、国民の生命、財産の安全確保にかかわる危機への対応が手後れになってしまっては、何のための有事法制か分からないことになります。危機への迅速な対応、事態変化への即応、これらを可能とするためには、情報収集能力を高め、武力攻撃の動きをできるだけ早く察知することが肝心であります。新たな脅威になりつつある弾道ミサイル攻撃の場合には、特にこの点が死活的に重大な問題となります。
 このような一刻の猶予も許されない急襲型の攻撃を含め、攻撃の抑止、排除等についていかに機動的、効果的に対処するのか。情報の収集、分析等、危機や攻撃予測能力の向上を始めとする運用上の態勢整備は本法案の実効性を高めるために大変重要なものと考えられますが、その取組につきまして防衛庁長官にお伺いいたします。
 武力攻撃事態の定義も修正され、予測事態を切り離し、分かりやすくはなりました。他方、四年前に成立した周辺事態法との関係で、周辺事態と武力攻撃事態とが併存することも想定されるわけです。
 このように、両事態が併存する場合、米軍への支援や協力関係がどのようになるのか。周辺事態法では我が国の役割は米軍への後方支援に限定されておりますが、一方で、武力攻撃事態への対応として、米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるためには、必要となる新たな事項の内容がまだ必ずしも明らかではございません。
 この際、その措置の内容につきましてできるだけ具体的に考えをお聞かせ願うとともに、武力攻撃事態と周辺事態が併存する場合等の米軍に対する支援や協力について、憲法の枠内で行われることを前提にしつつ、国民に分かりやすく総理から御説明願いたいと存じます。
 また、武力攻撃事態以外の緊急事態として、いわゆる武装不審船事案、テロ攻撃などの事案を含めて、すき間なく対処するように政府原案が修正されております。国家でないテロリストグループの生物化学兵器の使用など、国境なき新たな脅威への対応にも万全を期さねばなりません。
 特に、原子力施設につきましては、放射能被害の恐ろしさを考えると、手後れにならないよう、自衛隊による特別な警備や防護等が必要となるケースについて具体的な検討が必要であります。
 このように、多様な危機への対応として、アメリカのいわゆる連邦緊急管理庁のような構想も検討課題ではありますが、行政改革との関係や屋上屋を重ねるのではないかといった懸念をクリア果たしてできるのか、早急に検討していく必要があると思われます。
 シビリアンコントロールの下で、多くの関係機関との緊密な連携を図りつつ、情報の迅速な分析、的確な判断、指揮等が不可欠であります。多様な危機の管理、対処に万全を期するよう、最高指揮責任者である総理の基本的な心構えを改めてお伺いするものであります。
 外国から攻撃を受けたとき、どう国民の命や財産を守るのか、その避難や救援、復旧等のルールをあらかじめつくっておくことが是非必要であります。いったん事が起きてしまってからでは、超法規的に処理せざるを得ないということにもなりかねず、それではかえって被害も大きくなり、人権もないがしろにされがちでございます。法治国家として体を成さず、大きな禍根を残すことにもなりかねません。
 そのために、国民と地方公共団体、自衛隊、消防など国全体がどう連携していくか、言わば国民、国家を守るルールを国民や関係機関の意見を広く聴いてあらかじめつくっていかねばなりません。被害を最小限にするには、国民の理解と協力を得ていくことが肝要であります。早急に国民保護法案の概要を取りまとめ、全国各地で説明、意見交換会等を重ね、成案を得て、来年の通常国会に提出すべきであると考えますが、総理大臣の基本方針をお伺いいたします。
 地域住民の安全確保はまた地方自治体の最優先事項でありますので、総務省の立場としての具体的な取組方につきまして、片山大臣のお考えも併せてお聞かせ願いたいと思います。
 今国会は、有事法制本三法案のほかにいまだ多くの法案が残されており、さらに、デフレ金融対策やイラク復興等、重大な課題に直面しております。今回の超党派的な取組を大切にしつつ、この難関を打開すべく与党も一致結束し対処してまいりますが、総理は待ったなしの内外の重要課題に対しまして決然と不退転の決意で臨まれんことを改めて申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。
 米ロとの首脳会談についてでございますが、今週アメリカを訪問してブッシュ大統領と会談する予定でございますが、イラク復興や北朝鮮の問題等の喫緊の課題に国際社会が一致して取り組む必要があるとの観点より、日米両国が同盟国としていかに連携していくかにつき意見交換を行う考えであります。
 また、ロシアにおきましては、プーチン大統領と会談がある場合には、一月に私自身が訪ロした際の成果を踏まえまして、イラクや北朝鮮の問題に加えて、日ロ間の平和条約あるいはエネルギー等の幅広い分野で日ロ関係を発展させていくべく意見交換を行う考えでございます。
 有事法制の意義、役割についてでございますが、有事関連法案は、国と国民の安全を確保するため、武力攻撃事態を始めとする緊急事態に的確に対応できる態勢を構築するためのものであります。今後とも、憲法の平和主義を遵守し、専守防衛に徹する立場に変わりはなく、有事法制の整備は周辺諸国に不安を与えるものではありませんが、有事法制の意義、役割等については、国際的にも正しい理解を得るべく、引き続き努力してまいります。
 法案修正と検討課題の合意についてでございますが、有事法制は、国及び国民の安全を守る基本法制であり、できるだけ多くの会派の協力を得ることが大切であると考えてきました。今回、与党と民主党との間で修正協議を行った結果、共同の修正案に合意することができました。さらに、この修正案に対して、衆議院において、与党三党と民主党に加えて、自由党からも賛成が得られたわけであり、いずれも画期的なことと考えております。
 今後、与党と民主党の間で緊急事態に係る基本的な法制について具体的な検討が進められる過程では、災害対策基本法を含めて、既存の法令との関係などの問題について国民に分かりやすい成果が上がるよう十分な議論を尽くしていただきたいと考えます。
 緊急事態に係る基本的な法制が必要であるとの考え方は十分共有するものであり、今後、政府としても、今回の合意にある必要な措置について真摯に検討してまいります。
 周辺事態と武力攻撃事態が併存する場合の米軍に対する措置内容についてでございますが、複数の事態が同時期に発生したり、一つの事態が次第に拡大するなど、武力攻撃事態と周辺事態とが併存することはあり得ると私は考えております。その場合であっても、両者はそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものであり、各々の法制に基づいて対米措置を実施するというのが考え方の基本であります。
 武力攻撃事態においては、米軍が我が国を防衛するために行う行動が円滑に行われるよう物品役務を提供することなどを想定しています。具体的には、事態対処法制の整備の中で検討してまいります。
 危機管理に対する基本的な心構えでございますが、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす様々な緊急事態に的確に対処できる態勢を構築することは政府の当然の責務であります。政府としては、緊急事態に対する基本的法制が必要であるとの考え方を共有しつつ、対応の態勢づくりを進める上で必要な措置を検討するとともに、その中核を成す組織の在り方についても検討してまいります。また、内閣の統率の下で緊急事態に迅速、的確に対処できるよう、情報の集約・分析体制、関係機関の連携強化などに努めてまいります。
 国民保護法制の早期整備についてでございますが、政府としては、国会の意思を十分尊重して国民保護法制の早期整備に努めてまいります。その際、幅広い国民の理解を得ることが重要であることから、本法案の成立後、地方公共団体や関係する民間機関との本格的な調整を早急に進めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(石破茂君) 阿部議員より、防衛力の運用上の態勢整備に関するお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、本法案の下、武力攻撃事態を始め国家の緊急事態において的確に国及び国民の安全を確保するためには、情報収集・分析能力や即応性、機動性等を含め、防衛力の迅速かつ効果的な運用態勢が確保されることが極めて重要であります。
 御指摘の弾道ミサイル攻撃の危険に対しては、日米安保体制の枠組みに基づく対処を基本としてきたところでありますが、冷戦終結後の大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散等を踏まえれば、こうした危険への対応には我が国の主体的な取組によりなお一層の万全を期すべきは当然のことと考えております。
 こうした中、弾道ミサイル防衛は、弾道ミサイルによる攻撃に対して我が国国民の生命、財産を守るために純粋に防御的な、かつ他に代替手段のない唯一の手段であることから、専守防衛を旨とする我が国防衛政策上の重要な課題であると考えます。
 こうした点を踏まえ、今後の安全保障環境の下において我が国の平和と独立、国及び国民の安全確保に遺漏なきを期すために、あるべき防衛力の在り方を目指して、今後とも積極果敢に検討を進めてまいりたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣片山虎之助君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(片山虎之助君) 阿部議員から、国民保護法制の整備に向けた総務省の取組についてのお尋ねがありました。
 地域住民の生命、身体及び財産を守ることは地方公共団体の最大の使命でございます。そういう意味からいって、国民保護法制、これから中身が具体的に決まってくるわけでありますけれども、例えば、地域住民の避難だとか救援だとか被害が起きた場合の応急措置だとか消防等が私はその主な役割になるのではなかろうかと思っております。そういうことについての認識は地方団体にもあるんですけれども、相当な役割を果たさなければならないという自覚はあるんですけれども、内容についていろんな注文があるわけです、あるいは懸念、不安がある。
 そういう意味で、私どもの省は国と地方の調整をやる、連絡をやる、そういう立場ですから、できるだけ幅広く地方団体に説明をして、意見を聞いて、それを生かしていく、こういうことが必要だと思っておりまして、具体的なその手続等を内閣官房とも相談しながら進めてまいりたいと、こういうふうに思っております。
 以上であります。(拍手)
    ─────────────
#12
○議長(倉田寛之君) 小林元君。
   〔小林元君登壇、拍手〕
#13
○小林元君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました武力攻撃事態対処関連三法案につきまして、内閣総理大臣及び関係大臣に質問をいたします。
 本題に入る前に、一点お伺いいたします。
 十七日、初の金融危機対応会議が開催され、りそなグループに対し公的資金の再投入を決定いたしました。これまで金融危機は絶対起こさないと再三繰り返してきましたが、これは正に経済無策の表れではないか。小泉総理、こうした経済有事を招いた責任を明らかにしていただきたい。
 民主党は、結党時に確認された基本政策について、シビリアンコントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事、危機に際して超法規的措置が取られることのないよう、関連法制の整備を進めることを宣言しました。そして、その後も機会あるごとに、我が国は有事における法整備が欠けており、緊急事態法制は是非とも整備されなければならない旨、一貫して主張し続けてきたのであります。
 しかしながら、昨年、政府より提出された有事関連三法案は、冷戦時代における北方脅威論、大規模上陸型侵攻を前提とした、いささか時代後れのものでございまして、さらに、事態認定における民主的統制の在り方が不十分であること、さらに基本的人権の確保に関する規定があいまいであることなどの問題がありました。
 このため、我々民主党は、緊急事態法制は是非とも必要であるが政府案は不十分であるとの立場から、真剣な議論を重ねてまいりました。すなわち、今日においては、上陸型侵攻の事態よりも、むしろ大規模自然災害や原子力発電事故、又はテロ攻撃やミサイル飛来などの事態の方がはるかに発生の可能性が高いのではないか、又は、これら緊急事態に際しては、国民の基本的人権が侵害されるおそれはないのか、さらに、緊急事態に際し、国会は一体どのような役割を果たすべきなのか、これらの点につき、真剣かつ熱心、具体的かつ前向きな議論を長時間にわたって重ねてきたのであります。
 御存じのとおり、我が民主党は既得権益に侵された自民党政治と日本の将来の行く末を案じる同志が大同団結を遂げた国民政党であります。多種多様な人材が集まることにより、その考え方がやや幅広いことも事実でございます。中には、人によっては我々のことを、悪意を持ってばらばらな政党だとやゆする向きもあります。
 しかし、私は思うのです。様々な考え方を持つ我々だからこそ、真剣かつ熱心な議論を尽くすことによって、本当に厚みのある真に国民が必要とする政策を作り出すことができるのです。既得権益にまみれ、官僚に依存し、政策論議を忘れた自民党には、これは不可能なことであります。そして、我々民主党こそが、政権担当能力がある責任政党として、国民に約束した責務を果たすことができるのであります。
 その結果として、我々は、緊急事態における原理原則を定めた緊急事態基本法案を取りまとめ、政府案への対案として国会提出するに至りました。そして、過日十三日、与党三党と民主党の間で、ここに議題となっている武力攻撃事態対処法案について修正合意を見るに至ったのであります。
 そこで、総理にお伺いいたします。
 戦後、長らく我が国では、とりわけ安全保障に関する考え方につき、与野党で鋭く対立をしてきました。しかしながら、今回、緊急事態法制につき合意するに至ったことは、我が国の安全保障の在り方を考える上で正に歴史的な出来事だと考えますが、いかがですか。その意義について総理はどのように認識しておられるか、御所見をお伺いいたします。
 さて、先日の合意、さらに、引き続き行われた党首会談において、緊急事態への対処及びその未然防止に関する基本法案の意義につき、政党間で真摯に検討し速やかに必要な措置を取る旨が確認され、また、衆議院の委員会質疑においても、総理から、必要という考え方は共有できるという前向きな答弁をいただいたと理解しております。これは正に我々が主張してきた点、つまり緊急事態において、国民の基本的人権を守ることが必要であること、国家権力の行き過ぎを防ぐ必要があること、そしてそれを担保するために基本法を制定する必要があることが世論にも広く認知された結果によるところが大きいと考えます。
 そこで、総理にお伺いしたい。
 この政党間合意に基づき今後政府が基本法を検討するに当たっては、今述べた点、すなわち国家権力の濫用、暴走を防ぎ、国民の基本的人権を守ることが立法の趣旨として第一に大切だと私は考えます。今後検討する基本法のあるべき姿について、総理は現時点でどのような認識をお持ちなのか、お答えください。
 さて、我々は、緊急事態法制の在り方を考える上で、人権侵害等の危険な対処措置が取られないようにするため、国会による適切な統制が図られなければならないと主張してきました。今回の与野党合意で、対処基本方針の終了につき国会の議決により可能とする旨が盛り込まれたこともその一環なのであります。
 そこで、官房長官にお伺いします。
 本法では、対処基本方針の策定につき閣議決定後速やかに国会の議決を求めるとありますが、この速やかにとはどのようなプロセスを意味するのでしょうか。民主的統制を適切に図るためには、閣議決定後、間髪を入れずに国会議決の手続をする必要があり、いたずらにそれが遅延されないような仕組みとするため、事前にそのプロセスにつき周知しておく必要があると考えますが、いかがですか。
 次に、基本的人権に関連してお伺いいたします。
 先日の合意において、従来の政府案の記述に加え、憲法十四条、十八条、十九条、二十一条の規定を最大限尊重する旨が加筆され、基本的人権の確保を重要視する我々の主張が取り入れられることになりました。
 もとより、我々民主党は、ここで規定された条文以外の基本的人権、例えば学問の自由や信教の自由、裁判を受ける権利などについても、平時、有事を問わず、最大限尊重されなければならないと考えているところであります。この点につき政府はどのようにお考えになりますか、官房長官の御見解をお伺いします。
 さらに、本法案には、地方公共団体や指定公共機関が実施すべき対処措置につき、これが実施されない場合は、内閣総理大臣は自ら又は所管大臣を指揮することによって当該措置を実施又は実施させることができるとされています。これについて、内閣総理大臣が例えば警察や自衛隊などの実力部隊を用いることによって当該実施措置の実行を迫ることは、憲法十八条に定める意に反する苦役の禁止に抵触することだと私は考えます。
 そこで、官房長官にお伺いします。
 政府は、このような手段により対処措置の実施を強制することを想定しているのでしょうか。仮に想定しているのであれば、これは憲法上許されるものではないと思いますが、いかがでしょうか。
 さて、本法案には、事態対処法制に関するプログラム規定が設定されています。また、先日の与野党合意では、二年以内に目標として整備とされている部分につき速やかにと修正するとともに、国民保護法制について、衆議院の特別委員会における附帯決議に一年以内を目標に実施との文言が盛り込まれました。しかしながら、国民保護に係る措置を実際に実施することとなる地方自治体を中心にこの国民保護法制の内容に関する懸念が高まっています。
 政府は、既に都道府県知事を始めとする地方自治体に対して説明を行っているとしておりますが、今後一年以内を目途に行われる法制化作業に当たっては、自治体の意見をダイレクトに反映させる機会を更に強化させる必要があると考えますが、いかがですか。今後の法制化作業に関し、地方自治体への説明と意見反映の機会につき、その基本的な考え方をお答え願います。
 さらに、事態対処法制に関連して質問いたします。
 本法案第二十一条二項に、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。」とされております。しかしながら、例えば文民保護、非人道的行為の処罰、捕虜の処遇等を定めたジュネーブ条約について、その関連する国内法の整備はいまだに行われておりません。早急に法整備を行う責務が政府にはあると考えますが、いかがですか。その具体的な見通しにつきまして、外務大臣の答弁をお願いいたします。
 次に、対処すべき緊急事態の範囲に関連して、緊急事態への対処に資する組織の在り方について質問いたします。
 今回の法案では、いささか時代後れの事態が想定されておりますが、このような準備も必要でありましょう。しかし、わずか八年前の一九九五年の出来事を思い起こしていただきたい。かつて世界一安全な日本で何が起きましたか。
 その一つは、言うまでもなく阪神・淡路大震災であります。何千名もの方々が崩壊した家屋の下敷きとなり、炎に包まれている中で、政府には十分な情報すらも伝わらず、いかに無力な存在であったかを忘れてはなりません。極めて得難い貴重な教訓を我々は得たはずであります。
 そして、その三月、東京であのオウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こしました。世界一の大都市で一般市民を標的にした無差別テロが行われる恐ろしさを私たちは身をもって見せ付けられたのであります。
 確かに、阪神・淡路大震災の後、災害対策基本法の改正、内閣危機管理監の設置、初動対処における指揮命令系統の強化など、一定の改善は図られました。しかしながら、これら緊急事態につき対策本部を設置するに当たっては、各省庁から派遣された寄せ集めの人員が中心になるなど機動性に欠ける面があり、さらに、救援、復旧、復興など住民保護のための措置の実際は依然として各省庁が行うことから、相互連絡の不都合や機能の重複など行政の縦割りの弊害が指摘されているところであります。
 そこで、総理に質問いたします。
 民主党は危機管理庁設置を求めたのに対し、先日の党首会談における合意で、本法案の附則に、政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方を検討するとの文言が追加されました。この点を踏まえてお答えいただきたい。
 総理は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす事態について、どのような事態の発生が現在最も切迫して想定されるのか、そしてまた、その事態の発生について的確に対応するため、現行の政府組織に欠けているのはどのような点にあると認識しているのか、そのためにどのような組織の在り方が望ましいと考えておられるのか、お伺いいたします。
 最後に、我が国が、国際平和及び安全のため、我が国の積極的かつ恒常的な取組が直ちに我が国の平和の確保につながることから、国際連合を中心に各国との相互理解の増進を図り、国際紛争の未然防止に積極的に取り組むべきことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#14
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小林議員にお答えいたします。
 与野党合意の意義及び今後検討される緊急事態に係る基本的な法制についてでございますが、有事法制はできるだけ多くの会派の協力を得ることが望ましいと考えてまいりました。今回、与党と民主党との間で修正協議を行った結果、共同の修正案に合意することができました。さらに、この修正案に対し、衆議院において与党三党と民主党に加えて自由党からも賛成が得られたわけであり、いずれも画期的なことと考えております。
 今後、与党と民主党との間で緊急事態に係る基本的な法制について、具体的な検討が進められる過程では、既存の法令との関係などの問題について国民に分かりやすい成果が上がるよう十分な議論を尽くしていただきたいと考えます。
 緊急事態に係る基本的な法制が必要であるとの考え方は十分共有するものであり、今後、政府としても今回の合意にある必要な措置について真摯に検討してまいります。
 なお、こうした検討を通じて、国民の基本的人権については、緊急事態においても最大限尊重されるよう配慮してまいります。
 事態対処のための組織の在り方についてでございますが、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす武力攻撃事態を始めとする様々な緊急事態に迅速かつ的確に対処できる態勢を構築することは政府の当然の責務であります。
 それぞれの性格が異なることから、どのような事態の発生が切迫しているのか、想定される順序などを申し上げることは困難ですが、政府としては、事態に応じて適切な対応が取れるよう、緊急事態対処の中核を成す組織の在り方についても検討してまいります。
 りそな銀行に対する公的資金の投入と私の経済運営の責任についてのお尋ねでございますが、りそな銀行に対する公的資金の投入は、金融危機が生ずることを未然に防止し、銀行の再生と金融システムの安定を確保するために行うものであります。金融機関が破綻したわけではなく、金融危機が生じたわけでもありません。
 株価の低迷、デフレ状況の継続など、日本経済は依然厳しい状況が続いているものと認識しておりますが、引き続き、金融危機は起こさせないとの方針の下、改革を進めるとともに、日本銀行と一体となってデフレ克服に取り組み、日本経済を再生させていくことが私に課せられた責務であると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(福田康夫君) 小林議員にお答えします。
 まず、対処基本方針の国会承認についてお尋ねがございました。
 武力攻撃事態等への対処については、行政府と立法府の統一的な意思の下で行っていくことが重要となっております。このため、法案では、対処基本方針を閣議で決定した後、直ちに国会の承認を求めなければならないとしております。
 政府としては、対処基本方針の閣議決定後、可能な限り早急に国会の承認を求める考えであり、例えば、当該閣議における決定後、同日中に国会に対し承認を求めるための手続を取るといった運用を想定しております。
 また、基本的人権に関するお尋ねがございました。
 武力攻撃事態における基本的人権の尊重はもとより重要であると考えておりまして、政府案にもその趣旨を想定していたところでありますが、衆議院における修正により、基本的人権を尊重するとの理念が更に明確になったものと考えております。
 御指摘の学問の自由、信教の自由、裁判を受ける権利などについても、最大限尊重されるのは当然であると考えております。
 次に、内閣総理大臣による対処措置の実施についてお尋ねがございました。
 法案第十五条第二項では、内閣総理大臣が自ら又は関係する大臣を指揮して対処措置を実施することができる旨を定めておりますが、この規定は、内閣総理大臣が地方公共団体の長等に代わって必要な対処措置を実施することができることとしているものでございまして、地方公共団体等に対する対処措置の実施を強制するものではありません。
 最後に、国民保護法制の法制化作業における地方公共団体の意見の反映についてお尋ねがございました。
 国民の保護のための法制については、これまでも機会をとらえ、地方公共団体に対する説明を行ってきたところであります。
 武力攻撃事態対処法案の修正案では、広く国民の意見を求めて法制整備を推進するため国民保護法制整備本部の設置が定められており、政府としては、法案成立後、この本部を活用し、引き続き地方公共団体の意見を聴いて、法制の整備を進めてまいります。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(川口順子君) ジュネーブ諸条約等に関連する国内法の整備についてのお尋ねでございますが、現在、関係省庁間で国際人道法の的確な実施を確保した国内法制の整備に向けた検討作業が進められております。
 外務省としては、事態対処法制の検討に引き続き積極的にかかわっていき、できる限り速やかにこのような法制全体の整備を通じてジュネーブ諸条約等の国際人道法の的確な実施を確保するよう努めていく考えでおります。(拍手)
    ─────────────
#17
○議長(倉田寛之君) 風間昶君。
   〔風間昶君登壇、拍手〕
#18
○風間昶君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました武力攻撃事態平和安全確保法三案に対し質問を行います。
 初めに、本修正案が、与党三党のみならず、野党第一党である民主党と自由党の賛成も得て修正案が可決されましたことは、この法案が我が国安全保障の根幹を形成する重要法案であることから、大変に喜ばしいことでありまして、総理もおっしゃるように、画期的で大変に意義のあることと我が党としても考えております。まずは、与党の一員として、民主党、自由党の両党の皆さんの勇気ある決断にエールを送るものであります。
 次に、この法案が成立すれば、言うまでもなく、武力攻撃という事態に当たり、憲法の枠内で法律に基づいて整然と対処することが初めて可能になるのであって、武力攻撃という最悪の事態にあっても、国民の生命と財産を守るために国民と政府が法律に従って行動をし、法治国家として対応していくことを確認するものであります。
 この有事法制で、国民とのかかわりの中で最も基本となるものが人権保障の問題であります。我が党は、そもそも本法律案が政府原案として盛り込まれて提出される際に人権保障規定の明記を要求し、既にその基本は盛り込まれております。この武力攻撃事態における人権保障について総理はどうお考えなのでしょうか、第一に伺います。
 さらに、確認の意味で伺っておきますが、二十条、信教の自由、二十三条、学問の自由も全く差異はないと我が党は考えておりますが、総理の御見解を伺います。
 第二に、国民保護法制についてであります。
 四党合意により、国民保護法制の整備は一年以内を目標として実施すべきとの衆院での附帯決議が盛り込まれました。したがって、この法案については来年の次期通常国会に提出されるものと考えてよいか、総理に確認をいたします。また、法案作成に当たり、政府において具体的にどのような手段をお考えか、併せてお答えをいただきたいというふうに思います。
 第三に、国民保護法制が整うまで地方公共団体の長に対する総理の指示権などが凍結されますが、地方公共団体と政府との共通認識の重要性について伺います。
 例えば、内閣官房が本年三月、地方公共団体からの質問、意見に対して回答した文書を見ますと、武力攻撃事態における原子力施設等の安全確保などが示されています。しかし、武力攻撃事態を想定した場合、まず標的となる可能性の高い原子力発電所など果たして警察だけで万全かどうか。いかがでしょうか。
 地方公共団体と政府の認識がずれたままでは、国民保護法制が成立し、凍結が解けた場合であっても、適切な運用をすることはできません。国民保護法制の整備に国民の意見を聞くことと同様に、地方公共団体の長に対する総理の指示権の凍結解除までにこうした認識のずれを解消して、地方公共団体と政府が共通の認識に立つよう、総理にその考え方を伺います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 第四に、この法案が成立した場合における防衛施策についてであります。
 本法案では、不審船や大規模テロなど新たな脅威に対して取り組む旨を明示することになりました。この修正により、平時から情報の収集や対処方針の準備が必要になってきますが、本法律案の成立により、防衛大綱や中期防衛力整備計画が見直されることはないのか、あるいは防衛予算が急増するのではないかとの懸念もあります。この点につきまして、防衛庁長官にお答えをいただきたいと存じます。
 ともあれ、最良を望みつつも最悪に備えるという政治原則の中で、最悪に備えるという側面での政治責任を果たすべく、私たちは今第一歩を踏み出そうとしています。しかし、もう一方の最良を望むという不断の努力も私たちは怠ってはならないと考えます。すなわち、武力攻撃事態を回避する日常の外交努力こそが重要であります。戦争とは形を変えて行われる外交であるとはプロイセンの参謀将校クラウゼヴィッツの言葉でありますが、むしろ、戦争とは外交の失敗に対する報いであるというイギリスの歴史家トインビー博士の言葉を我々はかみしめるべきであります。
 現在、朝鮮半島をめぐる情勢は緊迫しております。北朝鮮が核開発を断念することを内外に鮮明にしない限り問題の解決はありませんが、そのための外交努力を怠ってはなりません。先ごろ、米韓首脳会談も行われ、対話による解決の重要性が確認されたところでもあります。日米首脳会談やエビアン・サミットを控えて、この際、総理並びに外務大臣に伺いまして、第五の質問といたします。
 この法案の論議の中で、いかなる事態にあっても憲法の枠内で対処するという総理の姿勢について、我が党も高く評価するものであります。憲法は、その前文において、「日本国民は、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とうたっております。平和を愛さない権力者が一時的には出たとしても、その国民は必ず平和を望んでおります。同様に、我が国も、周辺諸国に脅威を与えることなく、共存共栄していく以外に繁栄の道はありません。
 アジアの国々の中には今でも我が国の軍事大国化を心配する声が消えません。この法案の成立が周辺諸国に脅威を与えるものではないにしても、無用な誤解や懸念を生まないよう、格段の外交努力が必要であると思いますが、周辺諸国にどのように理解を得ていくのか、総理の方針を最後に伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#19
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 風間議員にお答えいたします。
 有事における基本的人権の尊重に関してですが、武力攻撃事態における基本的人権の尊重はもとより重要であり、法案においても国民の自由と権利の尊重を明記しております。御指摘の信教の自由、学問の自由についても、当然、最大限尊重されるべきものと考えております。
 国民保護法制の早期整備についてですが、政府としては、国会の意思を十分尊重して、国民保護法制の早期整備に努めてまいります。その際、幅広い国民の理解を得ることが重要であることから、本法案の成立後、地方公共団体や関係する民間機関との本格的な調整を早急に進めてまいります。
 原子力施設等の安全確保についてですが、武力攻撃事態において原子力施設等の安全を確保することは国民の生命等を保護する上で非常に重要なことであり、警察、海上保安庁のみならず、事態の状況に応じ自衛隊を積極的に活用して、国全体として万全の措置を講じてまいります。
 国民保護法制の整備に当たり、国と地方公共団体が認識を共有すべきとの御指摘ですが、地方公共団体に対しては、これまでも、国民保護法制について逐次説明を行い、理解を得るよう努めてきたところであります。法案の成立後も、国民保護法制整備本部を活用するなどして地方公共団体の意見を伺い、理解を得ながら、国民保護法制の整備を行ってまいります。
 北朝鮮問題についてでございますが、政府としては、問題の平和的、外交的解決を図るべく、アメリカや韓国を始めとする関係国及び国際機関と緊密に連携しつつ対応していくこととしております。来る日米首脳会談やエビアン・サミットにおいても、各国と協力しつつ、問題の解決に向けて努力を続けてまいります。
 武力攻撃事態対処法制について、周辺諸国の理解を得るための外交努力についてでございますが、武力攻撃事態対処法制は、主権国家であれば当然整備すべきものであり、各国に不安感や警戒感をもたらすものではございません。しかし、誤解を避けるべく、本法制の基本的な考え方などを各国に随時紹介しており、今後ともこうした努力を続けてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(石破茂君) 風間議員より、御審議いただく法案と、防衛大綱や防衛予算など我が国の防衛政策の基本的在り方との関係に関するお尋ねがございました。
 国家の緊急事態への対処は独立国家として当然の最も重要な責務であり、本法案に基づき適切な措置を講じていくことは極めて重要であると考えております。冷戦後の国際的な軍事情勢の変化、特に一昨年九月十一日の米国同時多発テロ後の世界の安全保障環境の下、不審船や大規模テロといった新たな危機に対して、我が国の平和と独立、国及び国民の安全確保に遺漏なきを期すことは国の基本的な責務であります。
 防衛庁といたしましては、憲法の下、専守防衛に徹し、節度ある防衛力を自主的に整備するなど、我が国の防衛の基本的な方針は今後とも堅持しつつ、二十一世紀にふさわしい防衛力の在り方について今後とも真剣に考えてまいる所存でございます。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(川口順子君) 北朝鮮の核開発問題に関するお尋ねがございました。
 政府としては、北朝鮮の核兵器開発問題は国際社会全体の問題であると認識をしており、北朝鮮が問題の平和的解決に向けて前向きな姿勢を取るよう、関係国や関係国際機関とも協力し、北朝鮮に対する働き掛けを行ってきたところです。
 来る日米首脳会談やエビアン・サミットにおいても、各国と協力しつつ、問題の解決に向けた方向性が示せるよう努力していく考えです。(拍手)
    ─────────────
#22
○副議長(本岡昭次君) 市田忠義君。
   〔市田忠義君登壇、拍手〕
#23
○市田忠義君 私は、日本共産党を代表して、武力攻撃事態法案外二法案、いわゆる有事関連三法案について質問します。
 有事法制は、言うまでもなく我が国の進路、国民の生命と安全、基本的人権など、憲法の平和、民主の原則に大きくかかわる重要法案であります。したがって、法案への賛否は別にして、徹底した審議を行うことが不可欠であります。しかも、海外での武力行使に道を開くこの法案の本質が明らかになる中で、国民の間の反対や不安の声は大きく高まりつつあります。また、この間、政府は、地方自治体に対して法案の説明を行ってきましたが、その説明によって自治体の不安、懸念は解消するどころかますます拡大し、慎重審議を求める自治体の数は周辺事態法の際の倍に大きく広がっています。
 ところが、衆議院で修正された本法案は、修正について国会での審議も国民的な議論も一切尽くされず、憲法にかかわる重大な問題点は何ら解決されないまま本院に送付されてきました。したがって、本院においては衆議院の轍を踏まず徹底的な審議を行うこと、これこそ本院が熟慮の府として国民に負託された期待にこたえる道であることをまず強調しておきたいと思うのであります。
 第一に、本法案の最大の問題は、日本への武力攻撃から国土、国民を守るためとの装いを施しながら、その本当の目的が、アメリカが行う戦争に我が国を本格的に参戦させ、海外での武力攻撃に道を開くものであるということであります。
 武力攻撃事態法案は、我が国に対する外部からの攻撃に対処するためのものとされています。しかし、そこで言う我が国とは、日本の領土、領空、領海だけに限定されてはいません。福田官房長官は、衆議院での答弁で、我が国とは、公海上にある我が国艦船も含まれることを繰り返し言明してきました。また、石破防衛庁長官は、これらに対する組織的、計画的な攻撃を武力攻撃事態と認定し法律を発動することを本法案は排除していないことも明らかにしました。
 これでは、今、テロ特措法に基づいてインド洋に派遣されているイージス艦も我が国となります。周辺事態法に基づいてアジア太平洋地域に派遣される自衛艦隊も我が国になります。しかも、総理は、我が国艦船の展開する公海には地理的な限定はないことも衆議院において言明されました。法律上は正に世界じゅうが我が国になるのではありませんか。そして、そこが危ない、そこへの武力攻撃が予想される事態だと判断すれば、世界じゅうどこであっても有事法制が発動されるということになるではありませんか。
 周辺事態法では、自衛隊は海外に出て公海上で米軍への兵たん活動を行います。しかし、建前の上では、もしそこが戦闘地域になりそうな場合は、米軍への支援を中止し、部隊を撤収することになっています。武器弾薬の提供もできません。さらに、米軍支援を国民や自治体に強制することもできません。これはこれまでの政府答弁でも明らかであります。
 ところが、本法案では、米軍支援の内容は法律上何の制約もありません。同じ一つの事態を武力攻撃予測事態と読み替えることで、これらの制約を一気に突破しようというのではありませんか。もしそうでないというのなら、今後制定される予定の米軍支援法ではどのような制約を設けるつもりですか。明確な答弁を求めます。
 本法案に基づき周辺事態を武力攻撃予測事態と認定した場合は、対処措置が発動され、自衛隊の防衛出動待機命令による動員、自衛隊による物資の収用、陣地の構築など戦闘体制の確立、自治体や指定公共機関などの動員、アメリカ軍への協力などが一斉に動き出すことになります。
 我が国のこうした対応は、相手国の軍事的対応を更にエスカレートさせることになりかねないではありませんか。それとも、そんなことは絶対に起きないと言えるのですか。
 第二に、アメリカの先制攻撃についてであります。
 世界の安全保障を取り巻く環境は本法案が提出されたときとは大きく変化しました。それは、アメリカが先制攻撃戦略を公言するだけでなく、実際にイラクへの先制攻撃を行ったこと、世界の平和ルールが根本から踏みにじられたことによります。
 政府は、アメリカの無法で非人道的な侵略戦争を真っ先に支持しましたが、これが憲法九条を持つ国の政府が取るべき態度でしょうか。今、世界の平和と安全にとって大事なことは、アメリカの先制攻撃戦略をやめさせることに全力を注ぐことであり、それを支持したり後押しすることであってはなりません。総理の見解を問うものであります。
 ところが、石破防衛庁長官は、衆議院での審議において、アメリカが他国を先制攻撃した場合でも武力攻撃事態法が発動されるのかと聞かれて、原因が何であるかに関係なく、事態が認定されたら発動すると述べました。これは、国連憲章を公然と踏みにじるばかりか、二十世紀にアジアの国々を侵略した我が国の歴史的責任も省みない重大な発言であります。
 総理、後方支援なしに先制攻撃戦略の発動など容易にできるものでないことは、さきのイラク戦争へ至る経過からも明らかであります。先制攻撃の戦争に武力攻撃事態法案を発動することは、アメリカに先制攻撃への後顧の憂いをなくさせ、逆にそれを誘引し、ひいては日本をその戦争に参戦させることになってしまうのではありませんか。そうならない保証はどこにあるというのですか。
 第三に、本法案のもう一つの重大な問題点は、以上述べたように、アメリカの行う無法な戦争支援のために国民を強制動員する仕組みをつくろうとすることであります。
 衆議院における修正で基本的人権の尊重を明記したといいますが、元々、国民に戦争協力を罰則付きで強制する、人権を抑圧するところに有事法案の本質があります。首相に強大な権限を集中し、地方自治体や指定公共機関を思いのまま動かし、戦争への協力、土地、家屋の収用などに協力しない者を犯罪者として罰を加えるなど、国民を無法な戦争に強制動員するという点については修正は一切加えられていないではありませんか。それとも総理、修正によってこれらが変化したと言えますか。
 最後に、日本がアメリカとともに海外で武力行使を行う、戦争をしない国から戦争をする国へと変貌する、ここに本法案の本質があることにアジアの中からも深刻な不安が表明されています。本法案が衆議院有事特別委員会で採決された十四日、韓国の国会議員三十人がアピールを発表しました。アピールは、有事法制はその影響が日本国内に限定されるものではない、有事法制が過去のアジア諸国家と国民たちに大きな痛みを与えた不幸であった戦争の歴史を再演し得ると、深刻な憂慮を表明し、有事法制の通過は、直ちにアジアの軍事、安保環境を悪化させる十分な契機になるとの懸念も示されています。その上で、平和憲法の精神をもう一度考えてください、一瞬の誤った判断で世界の人々を戦争の苦痛に追いやった不幸であった歴史をもう一度考えてくださいと訴えています。
 私は、隣国の国会議員のこの心からの声明に触れて、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という憲法前文を改めて思い起こすものであります。
 本院での徹底的な審議を通じて、我が国民だけにとどまらず、平和と友好を望むアジアの人々の期待にもこたえ、本法案を廃案にすることを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#24
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 市田議員にお答えいたします。
 公海上にある我が国艦船に対する武力攻撃が我が国に対する武力攻撃と認められる場合についてのお尋ねでございます。
 我が国に対する武力攻撃とは、基本的には、我が国の領土、領海、領空に対する組織的、計画的な武力の行使を言うと考えます。公海上にある我が国艦船に対する攻撃も我が国に対する武力攻撃に該当する場合もあるとは考えますが、これに該当するかどうかについては個別の状況に応じて慎重に判断することになると思います。
 いずれにしても、我が国による措置は憲法及び国際法の枠内で行われるものであり、世界じゅうどこであっても有事法制が発動されるとの御指摘は当たらないと考えます。
 周辺事態と武力攻撃事態が併存する状況での対処措置についてでございますが、複数の事態が同時期に発生したり、一つの事態が次第に拡大するなどにより武力攻撃事態と周辺事態とが併存することはあり得ると思います。その場合であっても、両者はそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものであり、各々の法制に基づいて対米措置を実施するというのが考え方の基本であります。
 武力攻撃事態においては、米軍が我が国を防衛するために行う行動が円滑に行われるよう物品役務を提供することなどを想定しています。具体的には、事態対処法制の整備の中で検討してまいります。
 武力攻撃事態における我が国の対応が相手国の軍事的対応をエスカレートさせるおそれがあるとの御指摘ですが、武力攻撃事態とは、我が国自体に対する武力攻撃が発生し又はその危機が差し迫っている場合のことであります。この場合における我が国の対応は、相手国の動向に応じて我が国を防衛するために実施するものでありますから、相手国の軍事的対応をエスカレートさせるおそれがあるとの指摘は当たらないと考えます。
 米国のイラクへの軍事行動等の政策についてですが、米国の国家安全保障戦略には、米国が脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているわけではなく、先制を侵略のための口実としてはならない旨が明記されています。
 なお、イラクへの武力行使についても、安保理決議を根拠としたものであり、我が国として支持したところであります。
 米国の先制攻撃と法案の適用についてですが、武力攻撃事態の認定は我が国に対する武力攻撃の発生に関して我が国が主体的に判断するものであります。御指摘の米軍による先制攻撃とはいかなる状況か明らかではありませんが、いずれにせよ、我が国が他国への先制攻撃に加わることはあり得ません。
 法案は国民を戦争に動員するものではないかとのお尋ねですが、法案において、地方公共団体等に対する内閣総理大臣の権限は包括的に与えられるものではなく、今後、個々の法律においてその要件等を具体的に定めることとしています。また、土地や家屋の使用に協力しない市民に対して罰則を科すことは想定していません。
 武力攻撃事態等においても基本的人権が尊重されなくてはならないことは言うまでもなく、法案は国民を無法な戦争に強制動員するものであるとの批判は当たりません。(拍手)
    ─────────────
#25
○副議長(本岡昭次君) 平野達男君。
   〔平野達男君登壇、拍手〕
#26
○平野達男君 私は、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して、ただいま議題となりました武力攻撃事態対処関連三法案について質問をいたします。
 今回提出された三法案の原案は、衆議院において、自由党議員などから鋭く指摘があったように、欠陥だらけの法案でありました。
 衆議院において、民主党、自由党は各々独自の法案を提出、そして、民主党が与党側と粘り強く修正協議などを行った結果、国会の議決による事態対処措置の終了など、野党側の主張がかなり取り入れられた修正案が可決され、参議院に送られてきたのであります。このことにつきましては、ひとまず評価をしなければなりません。
 しかしながら、武力攻撃、テロ、大規模災害といった国家の存亡にかかわるような非常事態において、国民の生命、財産、自由、人権、文化を守ることは国家最大の責務であります。本三法案は、この責務を果たす上での一つの通過点であるということも併せて指摘しておかなければなりません。
 以下、本三法案に関連し、大きく四つの観点から総理に質問をいたします。
 一つ目は、いわゆる有事、あるいは非常事態と言われる事態をどのようにとらえるのか、その範囲、考え方の問題であります。
 ここでいう非常事態とは、武力攻撃、テロなどが発生し、国民の生命、財産などに重大な被害が出る、あるいはそのおそれが生じた場合、さらには、食料、水など日常生活に必要不可欠なもの、石油、電気など国民経済上重要な物資、エネルギー等が欠乏し、国民生活や国民経済に深刻な影響が出てくるなど、通常の危機管理体制によっては適切に対処することが困難な事態と定義できます。したがって、非常事態の具体的な態様は、国家テロ、サイバーテロ、原発事故、大規模地震や洪水などの自然災害、エネルギー危機など様々なことが想定されます。しかるに、今回提出の三法案は、いわゆる武力攻撃事態だけを対象とした法案となっております。
 確かに、武力攻撃事態法案の第二十五条においては、大規模テロや武装工作船などの例示を示し、他の緊急事態に迅速かつ的確に対応する旨の規定を置いています。しかし、対処の考え方や具体化のための道筋も示されておらず、単なる先送りでしかありません。
 あらゆる非常事態を想定し、国民の生命、財産、基本的人権を守る原則と、対応に向けた国家の体制の枠組みを明示した非常事態基本法といった基本法の制定を急ぐべきであります。総理の見解を伺うものであります。
 あわせて、今回の法案がなぜその対象を武力攻撃事態のみに限定し、他の予想される非常事態は後回しになってしまったのか、武力攻撃事態以外の非常事態への対応に向けた現行の体制の評価を含め、総理に説明を求めるものであります。
 次に、先ほど述べた非常事態基本法の主要な部分となり得る非常事態への対応の体制の基本的な考え方であります。
 まず、非常事態への対応は、できるだけ総理に権限を集中し、総理を中心とした内閣の責任において行うべきであると考えます。また、一方で、権限の行使をチェックする国会機能の強化も不可欠です。
 また、非常事態はいつ、どこで、どのような形で発生するか予測し難いという特有の問題があります。この問題を克服するためには、まずは内閣があらかじめあらゆる非常事態を想定した対応の基本方針を閣議決定して国民に示す。それに基づき、内閣主導の下、不断に準備をしておくことが必要であると考えます。この点、総理の見解を求めます。
 専ら武力攻撃事態に対象を限定した本三法案では、平時は内閣の補助機関たる安全保障会議に対応をゆだね、事態が発生した後、内閣が対処基本方針を定めて動き出すという仕組みとなっております。非常事態への対応には判断の的確性と実行の迅速性が求められます。
 平時と非常時の対応に連続性を持たせることが必要であります。非常事態対応の平時における準備は安全保障会議、事が発生したら内閣という機能分離は検討の余地が大きいと思われますが、併せて総理の見解を伺います。
 三点目は、安全保障の理念とそれに基づく自衛隊の行動原理の確立という点であります。
 冷戦終えん後、我が国は、何か事があれば、起これば、言わば外圧により、PKO協力法、周辺事態法、テロ特別措置法といった特別法を制定し、その都度自衛隊法などの改正を行うという形で安全保障に関する法整備を行ってまいりました。
 こうした対応は、我が国の安全保障についての明確な基本原理を確立しないまま、かつ自衛隊の行動については内閣法制局の憲法解釈なるものに基づいて決めるなど、場当たり的、なし崩し的に行われてきたことは否めません。このことは、さきのイラク戦争の戦後を含めた我が国の対応についても例外ではありません。
 基本原則を持たないパッチワーク的な対応の結果、我が国の安全保障の考え方は一層あいまいさを増しているのであります。
 例えば、有事の際、後方地域において米軍などに物品などの提供を行ういわゆる兵たんは武力行使と一体化するのではないという解釈は、世界の常識と懸け離れたものであります。さきの大戦において兵たんが切断され、飢餓によって多くの兵士、市民が命を落とした我が国が言うべきこととも思われません。さらに、武器の性能が格段に進歩した近代戦争において、そもそも後方地域なるものが現実としてあるのかどうかという疑念は常に付きまといます。
 国連憲章においてその保有が認められ、保有しているが行使できない権利として憲法解釈されているいわゆる集団的自衛権についても、解釈自体の是非を始めとして、そもそも行使できない権利など権利ではないとする有力な指摘が出てくるなど、その位置付けは依然として不明確であります。
 問題は、こうした一連の政府解釈は法理論を追求しての結果なのか、現実的な対応を迫られた結果の行政上の解釈なのか、判然としなくなってきていることであります。
 言い換えれば、このまま放置しておけば、今後ともその場の雰囲気や外圧により、なし崩し的に我が国の安全保障の理念は変わっていく危険性を秘めているということであります。こうした意味において、我が国の安全保障は不安定な台座に置かれたガラス細工のようなものであり、これこそ非常事態であります。
 また、貿易立国であり、国連中心主義を掲げる我が国は、国際社会の一員として、国連が行うあらゆる平和、安全の維持活動に積極的に参加すべきであります。
 今こそ、日本国憲法の平和主義と国際協調主義の理念を踏まえ、我が国の安全保障の理念と、それに基づく自衛権行使の考えをしっかりと位置付けた自衛隊の行動原則、国連の平和活動への参加原則などをしっかりと確立すべきであります。そして、これらを基本法として制定し、内外に明確な形で示すべきであると思いますが、総理の見解を伺います。
 また、安全保障という国家の根幹にかかわる立法活動が内閣法制局という政府の官僚組織の解釈に大きく左右される状態は、三権分立の原則からしても放置できません。内閣法制局は廃止し、その機能を立法府たる国会に持ってくるべきと考えますが、総理の見解を伺います。
 最後に、非常事態における総理の在り方についてであります。
 武力事態などの国家レベルの非常事態への対応の仕組みをいかに精緻に構築したところで、それが有効に働くかどうかは最高指揮者たる総理の双肩に掛かっております。りそな銀行の二兆円の公的資本注入は金融危機の到来を告げています。非常事態の一歩手前というべきでありましょう。非常事態において、あるいはその可能性がある状態においてなお丸投げをする総理がいるとすれば、国の滅亡につながりかねない悲劇であります。
 備えあれば憂いなし、総理が繰り返し言った言葉であります。総理は国民に向かって語ったようでありますが、この言葉は総理自身にも向けられなければなりません。
 国家の非常事態に備え、小泉総理の総理としての日ごろの備え、心構えはどのようにされているのか。こうしたことを含め、平時の総理はどうあるべきか。さらには、非常事態になった際、あるいはそのおそれが生じた場合、総理はどうあるべきか。小泉総理はどのようなあるべき総理像、リーダー像を描き、行動されているのか。言わば小泉総理の宰相論、是非お聞かせ願いたい。
 この場において、総理の言葉で、時間はたっぷりございますので、この場でしっかりとお話ししていただくことを最後にお願いを申し上げまして、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#27
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 平野議員にお答えいたします。
 非常事態基本法及び自衛隊の行動原則についての基本法についてのお尋ねでございますが、本案は、法案は、武装不審船や大規模テロなど、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす武力攻撃事態以外の緊急事態についても迅速な内閣の意思決定の仕組みを始め、関係機関の機能が最大限に活用されるような対処態勢の強化を規定しております。
 今般、政党間で緊急事態に係る基本的な法制について真摯に検討がなされることとなったことを私としても高く評価しており、今後、十分な議論を尽くして成果が上がることを期待しております。
 また、自衛隊の行動原則などについての基本法の制定については、国民的議論の推移を見守りたいと考えます。
 非常事態への対応についてでございますが、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす様々な緊急事態に迅速かつ的確に対処できる態勢を構築することは政府の当然の責務であり、平素からこれらの事態への対処に関する検討を進めております。
 武力攻撃事態への対処に関する政府としての意思決定は、対処基本方針という形で安全保障会議の議を経て閣議決定されることとなっており、必ずしも安全保障会議と内閣の間に機能分離があるとは考えておりません。
 内閣法制局を廃止すべきだとの御指摘でございます。内閣法制局は、閣議に付される法律案、政令案等の審査を行うとともに、法律問題に関し内閣に対して意見を述べるために置かれた内閣の補佐機関であり、立法府や司法機関に対して何らかの権限を及ぼすものではありません。行政府としての憲法解釈は最終的に内閣の責任において行うものでありますが、解釈の一貫性や論理的整合性を保つとともに、法律による行政を確保する観点からも、法制局の技術的、専門的知見は今後とも活用してまいりたいと考えます。
 非常事態に対する私の心構えについてでございますが、様々な緊急事態にいついかなるときにも的確に対応することができるように、私自身、平素から十分心構えを保持していかなければならないと考えております。(拍手)
#28
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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