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2002/11/26 第155回国会 参議院 参議院会議録情報 第155回国会 外交防衛委員会 第6号
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2002/11/26 第155回国会 参議院

参議院会議録情報 第155回国会 外交防衛委員会 第6号

#1
第155回国会 外交防衛委員会 第6号
平成十四年十一月二十六日(火曜日)
   午前九時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     舛添 要一君     福島啓史郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         松村 龍二君
    理 事
                山下 善彦君
                山本 一太君
                広中和歌子君
                小泉 親司君
    委 員
                河本 英典君
                佐藤 昭郎君
                桜井  新君
                日出 英輔君
                福島啓史郎君
                海野  徹君
                佐藤 道夫君
                齋藤  勁君
                榛葉賀津也君
                遠山 清彦君
                吉岡 吉典君
                田村 秀昭君
                大田 昌秀君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 信明君
   参考人
       防衛大学校教授  孫崎  享君
       東京大学大学院
       教授       山内 昌之君
       中央大学教授   横田 洋三君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○外交、防衛等に関する調査
 (イラク情勢等に関する件)

    ─────────────
#2
○委員長(松村龍二君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十五日、舛添要一君が委員を辞任され、その補欠として福島啓史郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(松村龍二君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外交、防衛等に関する調査のため、本日の委員会に防衛大学校教授孫崎享君、東京大学大学院教授山内昌之君及び中央大学教授横田洋三君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(松村龍二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(松村龍二君) 外交、防衛等に関する調査のうち、イラク情勢等に関する件を議題といたします。
 この際、委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人の方々におかれましては、御多用のところを本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日は、各参考人の方々からイラク情勢等に関する件について忌憚のない御意見をお述べいただき、本委員会における今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 このような趣旨を踏まえ、本日の意見交換が有意義なものとなりますよう、よろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、参考人からお一人二十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、正午までをめどに質疑を行いますので、御協力をお願いいたします。
 また、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず孫崎参考人に御意見をお述べいただきます。孫崎参考人。
#6
○参考人(孫崎享君) 防衛大学校教授孫崎でございます。よろしくお願いいたします。
 国際社会では、従来より、イラクが生物・化学・核兵器を秘密裏に開発しているのではないかとの懸念があり、この懸念を受けて、先般、国連安保理は決議一四四一を採択しました。また、米国では、イラク攻撃の必要性を説くブッシュ大統領の共和党が中間選挙で勝ち、間接的に米国国民がイラク攻撃を支持する形となりました。また、米国と同盟国等との観点では、NATO首脳会議及び米ロ首脳会議でイラクに大量破壊兵器破棄を求め、従わない場合には重大な結果を招くと警告いたしました。これにより、米国及びNATO諸国などは、イラクの対応次第では軍事行動も辞さない態勢を取りました。したがって、米国等による軍事行動の有無は、イラクの国連決議への対応に掛かっています。
 国連側は、決議一四四一で、イラクは大量破壊兵器の破棄を定めイラクが受諾した国連安保理決議に違反していると決定したように、イラクが大量破壊兵器を保有していると見ています。
 しかし、イラクは、国連決議遵守を国連に伝達した際に、一九九八年以降、大量破壊兵器の開発製造は行っていないと報告し、また、国連査察チームのブリックスに対してイラク大統領顧問は、過去の計画に関しては詳細に報告する、しかし現在は大量破壊兵器計画は有していないと述べております。これを受けブリックスは、イラク側は我々を納得させる準備ができていないのではないかとの懸念を表明いたしました。
 イラクの対応は、米国及び国連関係者の認識と明らかに異なっているようです。米国及び国連関係者が、イラクは大量破壊兵器の破棄に真剣に対応していないと判断される可能性があると思われます。
 今後、イラクの対応が米国ないし国連によって不十分と判断される山場は幾つか想定されます。近い将来では、十二月八日予定のイラクの対国連開発計画報告がその一つです。イラクの報告次第によっては、米国及び国連が厳しい判断を行うおそれがあります。
 私は、イラクに対する軍事行動がなされた際、仮に軍事行動自体が問題なく推移したとしても、軍事行動後のイラクの政治状況の安定性については相当の懸念を持っております。そのことは、中東全体、更にアジアのイスラム教徒の存在する国家等へのマイナスも想定されます。それだけに、イラクが国連決議を真剣にとらえ、国連決議遵守に向かうことを強く希望します。
 しかしながら、サダム・フセイン大統領は、従来より、極めて危険な状況になっても自己流のゲームをすることを好んでいるように見られます。例えば、湾岸戦争直前、仲裁に入ったソ連のプリマコフ氏が、今は取引や駆け引きの時期ではないのだ、国の命運が決められようとしているのだと強く譲歩を助言したにもかかわらず、助言に耳をかさずに湾岸戦争突入になりました。
 イラク攻撃は、サダム・フセイン大統領の命運のみならず、中東、国際情勢全体及び米国と同盟国との関係にも影響を与えると見られ、これらにも言及しつつ、若干付け加えたいと思います。
 現在、イラクに対する厳しい見方は米国が主導していることは事実です。米国のイラクに対する動向を見るとき、その決定に当たっては次の三つの要素が重要な役割を果たしていると思われます。第一に、安全保障から見たテロの位置付け、第二に、内政、特に大統領選挙との関係、第三に、米国中東政策におけるイスラエル要因の影響。
 九月十一日の米国同時多発テロ事件は、米国の考え方に深刻な影響を与え、米国軍事戦略を大きく変化させました。従来にもテロはありました。例えば、日本に関係するペルー日本大使公邸占拠事件あるいは浅間山荘事件等が代表例と言えましょうが、ここでは、テロが勃発しても、テログループの同僚を釈放しろとかお金を与えろとかという交渉の段階があります。また、時によって特殊部隊を派遣することも考えられました。したがって、テロに関する危機管理はテロ発生後が中心とも言える状況でした。
 しかしながら、米国同時多発テロは従来のものと明確に異なりました。テロリストは何ら交渉することを考えず自爆を行う、そして、自爆に際しては米国、米国人に最大の被害を与えることを目指す。そうしますと、テロ側が最大被害を与えるために、通常兵器のみならず生物・化学・核兵器の保有を目指す可能性がある、かつ、テロが発生したときには莫大な被害を残して一気に終結します。
 こうした状況の帰着として、次の二つが出てきます。一つは、生物・化学・核兵器、かつ、その運搬手段としてのミサイル開発の動きについては厳しく対応する、いま一つはテロの脅威に対しては先制攻撃で対応する、こうしてテロの脅威に対抗することを中心に据え、先制攻撃を含む新しい米国戦略が出るに至ったと思います。
 米国の政策は、国内の各種思想、利益グループのぶつかり合いにより絶えず変化していることに特徴があり、新戦略も恒久的なものであるかは疑問がありますが、新戦略を模索する中で出てきた傾向には次のものがあります。単独主義、先制攻撃、中東政策におけるイスラエル要素の強固な反映。
 この中、単独主義に関しましては、小泉総理がブッシュ大統領に直接国連を重視するよう述べられたことを含め、国際社会が米国に国際社会との協調を訴えたこと及び米国内での影響力をめぐる争いの中でパウエル国務長官が取りあえず勝利したこともあって、米国はイラクをめぐる国連決議重視の姿勢を出しました。
 米国が単独主義的な傾向を強化することは国際政治の安定に望ましいことではありません。そのことは、逆に国連や同盟諸国側に米国が単独主義に走らないよう、当面最大の焦点である国連安保理決議一四四一が効力を有する努力を行う等、歯止めに向け努力をする必要があるのではないかと思われます。
 最近、NATOは、テロや大量破壊兵器の拡散をNATOが直面する脅威とし、これに対抗できる軍事力の強化と域外にも派遣するNATO即応部隊の創設を決定いたしました。これによって、米国の軍事面での欧州離れを当面食い止めたと言えましょう。
 ラムズフェルド国防長官の考え方を見ますと、どの国が我々を脅かすかというとらえ方を幾分弱め、どのようにして我々が脅かされるのか、その脅威から我々を守るには何が必要なのかが重視されるとし、かつ他国の貢献の方法の決定を各国にゆだねるとしていますが、このことは米国から見ての同盟国の重要性は個々の脅威に対するのにどう協力しますかにより変化するわけで、日本が米国との強固な同盟関係を必要とするのであれば、個々のケースに何ができるかを真剣に考慮せざるを得ない時期に来ていると思われます。
 冷戦が終了し、国際社会の役割は明らかに変化しています。今や国連安保理が重大な安全保障の問題を全会一致で決定できるまでになりました。特定国の単独行動は好ましいものではありません。そのためにも、国連安保理決議一四四一を受け、日本も更にこれを積極的に支持する姿勢を鮮明に打ち出すことが望ましいと思われます。その意味で、個人的には国連が決議一四四一を支持し協力する決議をするのが国際平和に貢献するのではないかと思われます。
 話をイラクに戻し、米国等の軍事行動がイラクに行われたときにどうなるかに言及したいと思います。
 米国は既にプランの一部をリークさせています。現在言われている軍事プランは、北部、南部、西部をまず掌握しバグダッドでの蜂起を期待する、蜂起がない場合にはバグダッド攻撃するというものです。米国は圧倒的に強力な軍事技術によって軍事行動の成功に自信を持っていると思います。ただし、戦闘がバグダッド市内で行われる事態に至った場合には、大規模な都市を軍事力で奪う戦闘は最近の軍事史上でもそう多いことではなく、困難に遭遇することも排除されません。
 しかし、私個人の懸念は軍事行動後のイラク情勢です。イラク国民約二千二百万人、そのうち約六割がシーア派です。このシーア派は、過去、支配される側に立ち、宗教色が強いのでこれを中心に政権運営をすればイランのホメイニ政権的なものになる可能性もあります。したがって、米国としてはシーア派を政権の中心に据えることは困難であろうと思われます。
 また、北部クルド人に関しては、イラク攻撃の際、強力な協力が期待されるトルコがクルド人勢力の強化には反対しています。こうなると依然二〇%のスンニ派を基盤にしなければなりませんが、しかし、この中にはサダム・フセイン政権の協力者がいます。これをどこまで排除するのか。欧州には既に人権擁護の観点から特定グループを糾弾する動きが見られます。軍事行動後のイラク体制の在り方については第二次大戦後の日本モデルが言及されたりもしていますが、イラクでは人種、宗教をめぐっても一体でなく、対立が続き、イラク情勢は日本よりはるかに複雑であり政治的安定は困難ではないかと見られます。
 また、イスラム社会全体を見ますと、イラク攻撃はイスラエル要素が強く働いている。他方、パレスチナに関してはイスラエルの軍事行動が極めて顕著であるという不満が更に強化されると見られます。この不満はイスラム社会の一般市民に広範に広がり、イスラム社会政権を揺さぶっていく可能性も見られます。この動きは中東に限定されることなく、アジアのイスラム住民にも広がっていく可能性があります。
 昨年九月十一日からの一連の動きは、テロを抑止することにありました。イスラム社会が反発を強めれば、テロの減少は困難ではないかと見られます。脅威を除去するため、武力を使用する必要のあるときはあります。しかし、これはあくまで例外です。平和は基本的に平和的手段によって確保されるべきものです。
 イスラム社会が西側に不信を強める中、我々はこの不信を排除する手段を積極的に考える必要があります。イスラム社会の中で武力の使用を排し、西側社会との協調を図るグループ、人物との対話を図り、このグループの勢力助長を図るべきであろうかと見られます。
 イラク攻撃が考慮される中、例えばイランのハタミ大統領への支援を推進することが単にイランのみならずイスラム社会との関係で望ましいと言えましょう。日本は中東に石油の九割を依存しております。また、この地域との経済的結び付きも次第に強くなっていきます。中東の安定は、日本にとり利益です。
 米国のパウエル国務長官は、次のように新聞に寄稿しています。米国は、武力によることなく、国連の傘の下、イラクが武装解除を行うことを望んでいる。我々は、イラクとの戦争は望んでいない。我々は、平和的な武装解除を望んでいる。私もまたパウエル国務長官のこの文言を強く支持します。武力によることなくイラクの生物化学・核兵器の脅威を取り除く可能性がある限り、我が国もまたこの方向に向け努力を重ねるべきであると信じます。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、山内参考人にお願いいたします。山内参考人。
#8
○参考人(山内昌之君) おはようございます。東大の山内と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、専門が国際関係史そしてイスラム地域研究であります。そうした立場から、現在焦点になっているイラク問題を取り巻く全体としての現在の国際環境、そして日本の置かれている立場について、まず最初の二十分においては大きな枠組みでお話しさせていただきたいと思います。
 九月十一日以降のイラクも含めました中東と中央アジアにおきましては、現在、国際的な政治体制、国際システムの枠組みが大変大きく変わっております。変動しつつあります。現下のイラク問題に関しましても、こういう枠組みの大きな変化との関係でまず理解する必要があるというふうに私は考えております。
 そもそも中東は、今のパレスチナ問題さらにイラク問題に象徴されますように、いずれも、パレスチナにしましてもイラクにしましても元々人工的な枠組み、人為的な枠組みによって作られた国家、地域でありまして、これが紛争の根源になっているというのは、歴史的に見ますと、オスマン帝国という国家が一九二三年に消滅いたしますが、そうした広大な地域を支配していたオスマン帝国の滅亡を経ましても今日に至るまで帝国の解体と再編という政治プロセスがいまだに完成していない、そういう不安定地域だというふうに理解する必要があろうかと思います。
 さらに、もう少し広げて考えました場合に、もう一つの大きな隠れた帝国でありましたソ連が一九九一年に消滅いたしますが、このソ連の消滅によって中央アジアの国々が独立いたします。その後のチェチェン戦争、ひいてはタジキスタンの内戦、さらに、ナゴルノカラバフという小さな地域をめぐるアゼルバイジャンとアルメニアの紛争も、いずれもこれはロシア帝国の滅亡からソビエト連邦の消滅に続く帝国の解体と再編のプロセス、こうした一連の政治の過程が完了していないということを意味すると思います。
 こうした中央アジアというイスラム圏の出現や、さらに昨年来のアフガニスタンの民主化、日本が深くかかわっているこのアフガニスタンの復興過程、このことによって、今現れている、我々の目の前に現れている現象を一言で言うと、中東という世界が広がっているということかと思います。
 この大きな中東と仮に名付けた場合に、この大きな中東における現在働いている二つの大きな力というのは、正に中から生じているイスラム原理主義の力であり、あるいはイラクに象徴されますような大量破壊兵器の所有による国際的な安全保障に対する脅威というものが一方で働いております。そして、それは時にテロリズムなども伴っていることは皆様も既に御案内のとおりかと思います。それに対して外から、外からそれを抑止しようとしている、さらに、その抑止という大義名分なども通しまして権益を拡大しようとしているのが米国だという、このような大きな構図が存在するかと思います。
 そうした大きな構図の中で、時としてその政治に対して大きな発言を求めていくのがかつての超大国であったロシアでありまして、ロシアは国内問題におけるチェチェンの問題と並びましてイラク問題に関して非常に強い関心を示しております。
 これは、ソ連以来の伝統的な権益としてのイラクにおける石油への関心、さらに石油や武器の輸出入や援助にかかわるまだ未回収の債権の回収、こうした利益をめぐってロシアは米国との間に一線を画しているということは、昨今の国連決議一四四一の、安保理決議一四四一の採択の中で一番あらわになった米ロ関係の対立点ではなかったかと思われます。
 さらに、アラブの世論について少し見てみたいと思います。
 アラブの世論が今日の米国によるイラクに対する政策について持っている意識というのは、一言で言えば大きなる猜疑心、懐疑心というべきものでありましょう。これは、埋蔵レベルにおいて世界第二位の有数な石油エネルギー資源国であるイラクを制圧して米国が石油エネルギーの生産と供給でも主導権を取るのではないか。もう少し敷衍するならば、これはOPECという今のアラブ産油国によって仕切られている石油の生産供給調整システム、そのことによって得られているアラブの強い政治的な力の根源をアメリカは奪いかねない、そうしたことに対する懐疑心が行き渡っているかと思われます。
 米国のイラクに対する強硬な姿勢というものはいろいろあろうかと思いますが、その背景には、一つにはやはりロシアの力の相対的な低下というのは大変大きいと思います。とりわけ、NATOの東方拡大に伴うロシアの言わば妥協的な姿勢、さらにロシアのG8加入などによってロシアの力というものが実際に米国の関係において非常に弱まっているということは間違いありません。
 もう少し、私は、今後検証しなきゃならないのは、アメリカのそうした、例えば中央アジアにおけるアフガン問題をめぐって行われている積極的な軍事的な駐屯政策、さらにそれをめぐって中国に対する牽制を行っておりますが、それがアメリカの戦略としても語られるユーラシアに対する積極的な進出なのかどうか、この点は今回の恐らくイラクの問題を考えていく際に、私は少し中期的に慎重にアメリカの動向を見ていくポイントではないかと思っております。
 いずれにしましても、ロシアはチェチェンの武装勢力、この間のモスクワの事件でも御案内のとおり、そうしたチェチェンの武装勢力との対決を米国が反テロ戦線の一環として認知する限りにおいて米国のユーラシア進出を一部黙認できるわけでありますが、しかし、固有の利益、すなわちチェチェンを経由した石油パイプラインの問題、石油利益の問題、さらにもう一度申しますが、イラクにおける先ほど触れたロシアの伝統的な権益、あるいは新たに今獲得しつつある、サダム体制の下で獲得しつつある権益を侵害されることに関しては米ロ間において利益の不整合が起きますし、またロシアはそうした侵害されることを一方的に黙視、黙過することはないように思われます。
 他方、日本にとってこうした地域をどのようにまずとらえるのかという問題でありますが、日本には、まず何よりも昨年の九・一一以降のテロ特措法の成立以降、特にタリバン政権とウサマ・ビンラーディンとの結合に象徴されましたアルカーイダなどのテロリズムのネットワークがユーラシアの南部から中東に広がっている現実に直面したわけであります。
 こうしたテロリズムネットワークが私たちにかいま見せてくれたのは、中東という地域の拡大でありまして、その大きな中東という、東はアフガニスタンから更に一部は中央アジアも含めてイラク、パレスチナに至っていく、こうした大きな世界をどうとらえるのかということについて、日本は国際協調を図りながら国益を守る新たな外交的な戦略が必要とされているというのが現状ではないかと思われます。
 私は、かりそめに、これはかつて日本外交でユーラシア外交あるいはシルクロード地域外交というような名称が使われ、戦略的な対応が図られた地域と重なっておりますが、そうしたひそみに倣うならば、これは新たな中東シルクロード外交とも言うべき戦略が必要とされているのではないかと思います。しかし、実態として、日本は既にこの一月のアフガン復興東京会議においてこの方向に実態としては踏み出しております。
 そして、例えば、二月から三月以降様々なレベルにおけるミッション、あるいはタスクフォースがアフガニスタンを訪問し、国際的な動きに先駆けて日本は積極的にアフガンの社会基盤の再建あるいは民生の安定、すなわち医療、教育、技術、地雷除去、農業支援といった形で民生の安定などについて積極的に提言したわけであります。これは既に国会においても慎重かつ広範な範囲にわたって審議され、その多くは今政策として実施されているわけであります。
 一方において、テロ特措法によって日本政府は米国に対する後方支援を行うことになりましたが、これはただ単に日本外交あるいは日本の対外政策が日本の石油エネルギーの安全保障という、石油の安定供給だけを意図しているということではなくて、むしろそうした今触れました大きな中東の地域の安定にも責任を持つという意思を世界に表明したものとして、特にアフガニスタンを始めとして現地において私が受けた知見あるいは感想から考える限り、高く評価されているということであります。
 こうした新しい外交展開の中で、イラクを始めとする中東の様々な重要性をかりそめに私が整理いたしますと、まず第一に何よりも、ただいま孫崎参考人の方から詳細な御説明がありましたが、日本は何よりも国連決議一四四一に見られる平和的なイラク問題の解決を努力する、そのために何をもっても第一に優先されるのは、イラクの大量破壊兵器の廃棄に向けた国際圧力への積極的な参加、これが第一に強調されるべきかと思います。
 第二は、中東、特にアラブ・イスラム世界に由来する国際テロリズムの脅威の除去ということであります。
 三番目には、日米関係という最も重要な二国間関係と並びまして、そうした同盟関係と並びまして、しかしながら日本にとって重要な両地域間関係のかなめとしまして、特に石油エネルギー安全保障の問題として、我が国はサウジアラビアを始めとする湾岸諸国との友好増進ということを一貫して国是としてきております。したがって、三番目には、サウジアラビアなどの湾岸諸国との友好増進を通した石油、天然ガスなどエネルギー安全保障の確保という観点をイラク問題に関しても私たちは忘れてはならないと思います。
 四番目、これは既に日本が行っているところでありますが、イスラエル・パレスチナ紛争や地域の貧困、ひいては人口問題といった長期的な問題の解決に向け、そしてイラクのような一種の超軍事国家のような存在を長期的に消滅させていくためにも、ソフトパワーの活力に対して、中東のソフトパワーの活力を育て、それに対する援助を図っていくべきかと思います。
 最後に、五番目といたしまして、イランとの関係の拡大と強化ということかと思われます。アザデガンの油田の開発などを通して、ハタミ大統領やイラン穏健派の改革路線を支援するということは、これは日本が米国とイラン関係の緊張に満ちた関係改善の一助になることが期待されます。
 さて、イラクに少し特化してお話しさせていただきますと、もし仮に、この国連決議一四四一が不幸にしてそこで示されているタイムテーブルに沿って進まず、不幸にして米国によるイラクに対する軍事行動があると仮に大きく仮定した場合に、不幸な事態でありますが、そのときに、確かに先ほど来、孫崎参考人が詳細に陳述されましたように、もしこれが国連決議を更に踏まえて行われ、そして早期にフセイン大統領を排除できるということになるのならば、これは戦後のイラクというものが安定化するという可能性は決して否定できないわけであります。
 しかし同時に、こうした戦争という行為、軍事行動というのは予測できない結果をもたらすわけでありまして、例えばサッダーム・フセインその人を捕捉できない場合、こうした仮定を重ねていきますと、仮定に仮定を重ねるということは慎重でなければなりませんが、国内は混乱に陥り、イラクが更にもっと深い内乱若しくは混乱の道を歩み、中東全体が不安定化する可能性をなしとしないわけであります。もちろん、先ほど申したように、世界第二の有数の石油エネルギー資源の埋蔵国であるイラクの紛争が中東全域に拡大するなどというようなもしシナリオが起こり得るとした場合に、これは世界全体の影響は深刻なものとなることは間違いありません。
 いずれにしても、日本にとって望ましいシナリオ、そして日本があくまでも追求するべきシナリオは、サッダーム・フセインが大量破壊兵器の廃棄を完全に実施すること、そして米国による軍事行動が行われないような状態をサッダームその人が積極的に受け入れること、このことをおいてないのであります。これは、テロを含めまして中東の問題、すなわちイスラエル・パレスチナ紛争と密接なかかわりを持っている中東の和平の問題全体を解決していく場合にも私は大変重要な前提になろうかと思っております。
 反テロルというのは、広い意味でこれはイラクにおける大量破壊兵器の開発疑惑というもの、この開発された可能性が高く、イラク自身は廃棄している、持っていないと言っておりますが、その実態は今後の査察を通して明らかになろうかと思いますが、こうした大量破壊兵器の脅威というものがテロリズムと結び付く、様々な形で、これこそが国際的な安全保障や秩序に対する脅威なのでありまして、その際最も恐ろしい夢というのは、悪夢というのは、やはりこれが比喩的に申しますと、核というものを含めた形で、核や大量破壊兵器の不安定な拡散に向かう第一歩になるのではないかということを恐れるわけです。この点で、イラクの自制ある態度を日本はどこまでも求めていくべきかと思われます。さらに、そうした反テロルというのは普遍的な命題であります。
 もう一方、パレスチナ問題やイラク問題というのはそれ自身としては地域に固有の問題です。しかしながら、両者の問題は互いに関連しておりまして、双方の解決は不可分に結び付くところがあります。
 最後に、日本としてこれまでの貢献、更に今後なすべきことについて簡単に触れて終わらせていただきます。
 日本は、パレスチナひいてはこのイラクも含めてそうではございますが、中東和平プロセスに関して、一九九一年のマドリード会議以降、中東和平プロセスの環境部会の議長国であり、水資源部会の共同議長国、更に環境ワーキンググループの議長国であります。そして、折に触れて日本は中東和平に努力してきたわけでありますが、特にイスラエルとパレスチナの双方に圧力を掛けて、双方の関係を融和する努力、これが必要になってくると思います。すなわち、アラブ穏健派諸国と連携しながら、イラク問題の複雑化を避け、パレスチナ国家の独立宣言と民族自決に向けて米国を積極的にそうした方向に同意させていく努力、これに対して日本は粘り強く取り組むべきかと思います。
 そのためにも、私は最後に強調しておきたいことは二つあります。
 それは、やはりイラクも含めたイスラム・アラブ世界の中に、やはり改革や民主化の機運を促すようなNGOあるいは学術機関あるいは性差、ジェンダーを超えたような教育の普及といったようなソフトパワーの支援、これをやはり日本としては積極的に求めていくべきであろうかと思います。
 第二は、日本は、欧米世界がイスラムの歴史、アメリカに端的に現れておりますが、アメリカに代表されるような欧米の世界がイスラムの歴史や価値観を虚心に理解する場を設定し、そうしたプロセスを通して、テロを否定し大量破壊兵器の開発などを否定する論理を欧米的価値観とイスラム的な価値観との共存の中で位置付ける哲学や世界観を正にイスラム世界の中から、知識人から内外に発信してもらう、こうしたようなことに関する平和的な取組。日本の平和外交というのは、恐らくこうした九・一一の教訓を直ちに軍事による教訓に結び付けるのではなく、こうした対話と交流による繁栄をイスラムと非イスラムが協力して創出することを説いていく、こうした様々な意味での、仲介という言葉はもし大仰に過ぎるとするならば、調整あるいは手伝っていく、そういう点で日本の役割は大きいかと思います。
 イラク問題を含めた全体としての枠組みについての感想を述べた次第でございます。
#9
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、横田参考人にお願いいたします。横田参考人。
#10
○参考人(横田洋三君) 中央大学の横田洋三でございます。座って話をさせていただきます。
 私は、国際法それから国連法などを専門に研究しております。今日はイラク情勢等というテーマでお話をさせていただきますが、その中でも国際法、とりわけ国連法との観点でこの問題がどのように分析できるかということをお話しさせていただきたいと思います。
 事務局から事前に配っていただきました資料の真ん中辺に、十二ページから二十三ページ、私が執筆しました国連の下での安全保障の体制についての教科書の一部がございます。今日はその中には余り詳しく触れませんが、随時御参照いただければ幸いでございます。
 今回のアメリカによる対イラク強硬政策の背景というものをまず考えてみる必要があるだろうと思います。私の考えでは三つあるかと思います。
 一つは、アメリカの安全保障に対する脅威、これへのアメリカの反応ということでございます。御存じのとおり、第二次大戦後長く続きました冷戦構造の中では、アメリカへの脅威は主にソ連、社会主義国、共産主義国という形でもって説明されておりました。それに対する対応策をアメリカはいろいろと検討し、実施したわけでございます。冷戦後の状況におきましては、それが国際テロ及びテロ支援国家がアメリカへの脅威だというふうに変わったということでございます。しかし、他方で、対象は変わりましたが、アメリカへの脅威にアメリカが対応するというその図式そのものは実は根本的には変わっていないように思います。
 第二番目の背景は、アメリカ及びアメリカ人に対する武力的な攻撃に対しては自分たちの力で守るという安全保障観、防衛観でございます。国連憲章で言いますと、憲章の五十一条にあります個別的及び集団的自衛権というものでございます。
 アメリカは、まず、よく単独主義、一国主義ということが言われますが、その根底には、自国の利益、自国の国民の生命、身体、財産はアメリカの力で守るのだという自衛の観念が貫かれております。さらに、集団的自衛権という考え方で、アメリカ一国だけではなくて、そこに同盟国も巻き込もうとする、そういう考え方もございます。これが、NATO諸国あるいは日本のような安全保障条約を結んでいる国、アメリカから見て同盟国と考えられる国と協調してこういう脅威に立ち向かおうという、こういう考え方であるかと思います。
 三番目に、アメリカはその場合、アメリカへの脅威にアメリカが立ち向かうということは、実はアメリカへの脅威だけではなくて、アメリカと価値を共有し様々の利益を共有する同盟国の利益にも合致する、そして国際社会全体の利益にも合致するという、こういう割合楽観的なアメリカ人の、アメリカの国益イコール同盟国の利益イコール国際社会の利益という、この図式がアメリカ人の中にあります。ですから、アメリカが自国の利益を守ろうとすると、それに対して国際社会でまともな国であればアメリカと一緒になって戦うであろうという一つの楽観的な期待感があるように思われます。
 アメリカが認識する具体的なアメリカに対する脅威にはどのようなものがあるかといいますと、話はやはりイラクとの関係では、一九九一年の湾岸戦争の際の安保理決議に対してイラクがどう行動をしたかというところにさかのぼる必要があります。
 もちろん、イラクがクウェートに侵略して、その後の湾岸戦争というのはアメリカが中心になりまして行った軍事行動なんですけれども、これ自身ももちろんアメリカに対する脅威、中東の安全保障に対する脅威、国際社会に対する脅威ではあったのですけれども、アメリカにとって最も深刻な脅威は、アメリカの国土、アメリカ人の生命、身体、財産、こういうものに対する直接的な脅威という意味からいいますと、やはりイラクのような国が大量破壊兵器を開発し、そしてアメリカに対して使うことができる状況になるということであるかと思います。
 そこで、湾岸戦争でアメリカは、一応侵略軍であるイラク軍をクウェートから撤退させました。これで一応侵略に対する制裁は終わったわけなんですけれども、その後もイラクに対する厳しい条件を付けた国連決議、これは後ほど少し詳しく分析いたしますけれども、とりわけ決議六八七、一九九一年の六八七という決議でございますけれども、こういうものを突き付けてイラクを非武装化する、事実上非武装化するというそういう考え方を取ったわけでございます。したがいまして、この決議によってイラクは大量破壊兵器の開発、保有そして配置、こういったことが一切禁止されておりました。
 ただ、もちろんですけれども、アメリカも国際社会も、イラクにこういう要求を突き付けてもイラクがそのとおり守るかどうか分からないということで、更にそれを守らせるための仕組み、とりわけ国際査察というものを予定し、それを実行しようとしたわけでございます。
 ところで、その後に起こった一連の出来事、国際社会での出来事を見ますと、アメリカの在外公館、例えばナイロビは、ダールこれはエルとなっておりますがエス・サラーム、タンザニアの首都ですけれども、こういうところに対するテロ攻撃、それからアメリカの軍艦に対するテロ攻撃、さらにはパン・アメリカン航空機撃墜事件、これはロッカビー事件と言われておりますが、こういう一連のアメリカを標的としたテロ攻撃に対して、アメリカはますますアメリカに対する脅威が世界の中で醸成されているという、そういう認識をしたわけでございます。
 それに対するアメリカの政策上の答えは、イラン、イラク、シリア、リビア、北朝鮮、キューバ、スーダン、この七か国がテロ支援国家であるということを指定して、これらの国に対する経済制裁を中心にした制裁措置を取るという形での対応でありました。
 ところで、昨年の九月十一日の同時多発テロ、これが最終的なアメリカに対する決定的な攻撃、そして脅威になりました。アメリカは、第二次大戦のときの真珠湾攻撃以降、真珠湾攻撃もアメリカの本土ではなくて遠く離れた太平洋の島で起こったわけですけれども、アメリカの本土が攻撃されたという意味ではもうアメリカの歴史始まって以来の大きな出来事になったわけでございます。このことに対してやはりブッシュ政権はきちっと対応しなければアメリカ国民の大統領に対する信頼が崩れてしまうということで、この事件が決定的になって、それまでずっと続いていた湾岸戦争以降の一連のアメリカに対するテロ攻撃、これにも全部答えを出さなければいけないという政策になったのではないかと思います。
 この場合の湾岸戦争を終結させました国連安保理決議六八七、これは一九九一年、今から十一年前の決議でございますけれども、これが今回の決議一四四一でも依拠されております。これが出発点でございます。
 どういうことが規定されていたかと申しますと、第八項では、すべての生物化学兵器の在庫及び研究、開発、製造施設の破壊ということが規定されております。それから、第九項では、第八項の施設等の所在地、数量、種類の申告義務及び特別委員会による査察の実施、長距離ミサイルの破壊、こういったようなことが規定されております。さらに、十二項では、核兵器の研究、開発、製造の禁止、十三項では、核兵器関連施設の国際原子力機関IAEAによる査察の実施、そして三十二項には、国際テロ行為の実行、支援の禁止ということがございます。
 この決議は、国連憲章第七章の下で下されておりまして、国連の全加盟国を拘束しますし、イラクをも拘束するというものでございました。しかし、イラクに一層この決議の内容を遵守させるために、この決議はイラクに対してこの決議を受諾するようにと要求します。
 そのイラクの外務大臣の書簡、一九九一年四月六日の書簡、これはこのような内容になっております。イスラエルには核兵器等の大量破壊兵器の保有を認めつつイラクに当該兵器の撤廃を要求するのは二重基準である。次に、安保理決議六八七、当該決議ですけれども、これはイラクの主権、独立及び領土保全のあからさまな侵害である。三番目に、しかし決議六八七、一九九一は受諾せざるを得ない。このイラクの外務大臣の書簡の中に明白に見取れますように、イラクはただ力で押されたので負けてこの条件を受諾したということではなくて、自分たちの論理を一応展開しております。筋の通った論理かどうかは別にして、そういう主張をしております。こういうところに実はイラクのしたたかさというのを見取ることができるように思います。しかも、そのしたたかさは実際にその後の行動となって現れてくるわけです。
 一九九一年に実施されたIAEA査察では、イラクの核兵器開発が実際に行われているということを証明します。それ以後、イラクは更に新たな大量破壊兵器の開発の証拠を集められることに恐怖を感じまして、国連の特別委員会、UNSCOMといいますが、それから国際原子力機関による査察をあらゆる方法で妨害し始めます。これにつきましては、資料の四十ページから四十一ページにございます決議七〇七、それから決議一一一五、それから決議一一三七の要約をごらんいただきますと分かりますけれども、イラクが継続して国連決議の要求を拒否し査察に協力していない、決議違反を行っているということを繰り返し決議で言及しております。一九九八年以降、イラク政府は徹底的に国連の査察に非協力になりまして、それ以降今日までイラクは大量破壊兵器の査察を認めないでまいりました。二〇〇一年三月、昨年の三月、ブッシュ大統領は議会演説で、こういった状況を念頭に、イラク、イラン、北朝鮮をならず者国家、無法国家あるいはローグステーツと呼んだわけです。
 昨年の九月十一日、同時多発テロに関連しまして、その翌日の十二日に安全保障理事会が採択しました決議一三六八というのは、次のような文言を含んでおります。前文では、テロ活動に対してあらゆる手段を用いて戦うことを決意し、個別的、集団的固有の権利を認識し、そして第三項では、すべての国に対してテロ攻撃の実行者を法に照らして裁くために緊急に共同して取り組むことを求める。この文言はやや抽象的になっておりますが、アメリカはこれを盾にテロの撲滅という口実の下にある程度フリーハンドに軍事行動が取れる、テロの実行犯を逮捕し処罰する、そのために軍事行動を取るという、そういう口実を安全保障理事会決議の文言の中に見いだしているわけでございます。
 二〇〇二年、今年の三月及び七月には、イラク、それから国連の間の、イラクと国連との間の協議が行われておりまして、そこで国連監視検証査察委員会、UNMOVICと略称されておりますが、これによる査察を国連が要求したわけですが、イラクはこれを拒否し、この話合いは不成立になりました。二〇〇二年十月には、アメリカ議会がブッシュ大統領に対して対イラク攻撃を承認する決議を下します。こうして、今回の安保理決議一四四一につながるわけでございます。
 この決議は、前文で、イラクによる安保理決議違反行為、これを国際の平和及び安全に対する脅威であると認定しております。これは、国連憲章第七章の下で安保理が行動が取れるということの一つの前提でございます。さらに、前文では、安保理決議六七八はイラクに関連決議を遵守させ、同地域における国際の平和及び安全を回復するために加盟国に対しあらゆる必要な手段を取る権限を与えたことを想起しとなっておりまして、ここにもまたいわゆる授権規定に該当するような、アメリカの解釈を許すそういう文言が含まれております。そのほか、前文の中には、国連憲章第七章の下に行動しということが明確に書かれておりまして、第七章にあります四十一条の経済制裁、さらには四十二条の軍事制裁を示唆する言葉が見付けられます。
 さらに、第一項では、安保理決議六八七の第八項から十三項までの違反行為があったということを認定しまして、三項では、大量破壊兵器の開発計画のすべての側面に関する正確、十分かつ完全な申告の提出を三十日以内に行うようにと、これは期限付でございます。さらに、UNMOVIC、IAEAの査察が即時、円滑、無条件に行われること、これは四十五日以内という限定がございます。そして、それを六十日以内に報告するように。さらに、十二項では、UNMOVICとIAEAが違反行為があったということを報告したときには即時に安全保障理事会を招集する、そしてこの義務違反によってイラクは深刻な結果に直面するという表現にまでなっております。
 この決議一四四一は、通常の外交上の文書でいいますと、いわゆる最後通牒です。これらの要求が認められなければ戦争をするという、第二次大戦以前の国際関係においてよく使われた最後通牒でございます。これを国連決議という形で国連からイラクに突き付けたということ、これが非常に意味を持っております。もう一つは、これが全会一致で採択されたということです。途上国やアラブに同情的あるいはアラブを代表するような国が入る、そういう安全保障理事会で全会一致で採択されたというところに非常な重みを持っております。
 それでは、アメリカによる対イラク軍事行動は国際法的に正当化できるのでしょうか。アメリカは自衛権の行使ということを言いました。しかし、武力攻撃が前提になっておりません、今回のイラクに対する攻撃は。それから、緊急性も存在しません。その意味では、これを自衛で正当化することは不可能だと思います。
 それから、テロ支援国家としてのイラクに対する攻撃としてはどうか。これは、テロ支援国家であるということを明白に示す証拠が今のところ我々の目の前に示されておりません。しかも、テロ支援国家に対して一方的な軍事行動を取ってもよいという国連憲章上の根拠はございません。むしろ、一般的に国連は加盟国に対してこの種の軍事行動を禁止しております。したがいまして、安全保障理事会が憲章第七章の下でテロ支援国家などに軍事行動を取るようにということを認める決議を下す以外には、アメリカが一国でこういう行動を取ることは許されないというのが国際法的な考え方であると思います。安全保障理事会決議一四四一はアメリカによる一方的軍事行動を容認しているかという問いに対しては、答えは否定的でございます。
 アメリカの軍事行動のためには、更に新たな安保理の具体的な授権決議が必要であるというのが私の見解でございます。しかし、アメリカは、このような決議不在のまま軍事行動を取る可能性は十分にあります。この決議が通ったことを踏まえたブッシュ大統領の発言の中には、イラクが安保理決議に完全に従わなければアメリカ及びその他の国々がサダム・フセインを武装解除する、国連が武装解除すると言っていないところが非常に意味深長でございます。つまり、アメリカは、国連が容認決議を下さなくても、あるいは制裁決議を下さなくても、アメリカとアメリカと一緒に戦う国々とで武装解除するという、そういう決意を示しているわけでございます。
 残念なことに、アメリカのような唯一の超大国、そして安保理で拒否権を持っている大国がそのような行動を取ったときには、現在の国際社会の仕組み、とりわけ国連の安保理の仕組みの下では、仮にそれが違法であったとしてもこの国に対して制裁を下すことはできない、そういう現実が目の前にございます。
 このアメリカの一方的な行動は、しかし国際テロの脅威、あるいは無法国家による大量破壊兵器の開発、保有の脅威、これは確かにアメリカに対する脅威であると同時に国際社会全体、日本に対する脅威にもなります。
 国連憲章は、こういう大規模なテロ集団、あるいは無法国家による大量破壊兵器の開発、保有、そういう脅威に対して、国連憲章ができたときには想定していなかったわけですから、こういうものに対してこれからどのような対応をしていくかという大きな問いに答えなければいけない状況に直面していると思います。アメリカの一方的な行動を止めようとするのであれば、それに代わる国際的な仕組みを作るというイニシアチブを国連等で取る必要があります。日本には、そのような行動のイニシアチブを取る大きな責任があるのではないかというのが私の見解でございます。
 どうも御清聴ありがとうございました。
#11
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日は、理事会の合意により、まず大会派順に各会派一人一巡の質疑を行います。その際、発言時間は答弁も含めて十分以内でお願いいたします。その後、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行うことといたします。
 なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○福島啓史郎君 自由民主党の福島啓史郎であります。
 三人の参考人の方、貴重な御意見ありがとうございました。
 それで、まず概括的にお三人の方にお聞きしたいわけでございますが、今回のアメリカとイラクの関係が、アメリカが武力攻撃する、そういう事態に発展する可能性、見通しをどういうふうに考えておられるか。つまり、半分以上は武力闘争、武力攻撃に発展すると考えておられるのか、あるいはそこまで発展しないだろうというふうに考えておられるか、そういう見通しで結構なんですが、お三人の方にお聞きしたいと思います。
 孫崎参考人からお願いします。孫崎参考人、それから山内参考人、横田参考人にお願いいたします。
#13
○参考人(孫崎享君) 見通しは五分以上で武力行使が行われるんではないかと思われます。
 これは、ひとえにイラク側が深刻に国連決議をとらえ、それに対応できるかどうかということに掛かっていますが、この点については若干まだ不安があると思っています。
#14
○参考人(山内昌之君) すべては国連決議一四四一をイラクが誠実に履行するかどうか、ここに掛かっているわけです。そのプロセスにおいてもしイラクの側に不誠実な態度、あるいはためらい、あるいは隠匿、様々なことが起こればそれから次の段階へ進むわけです。
 問題は、その内容をアメリカを始めとする国連安保理の主要諸国あるいは国際世論がどう考えるかということにかかわるわけですので、ここから先は、もう様々な歴史な過程と、それからそのときの条件によって決まることだと思います。今の段階では、そこまで私は申し上げておきたいと思います。
#15
○参考人(横田洋三君) 私も、大変残念ですけれども、アメリカが武力攻撃をする可能性は五〇%以上あると考えざるを得ません。
 一つは、国連の決議一四四一、第三項、四項、五項などをごらんいただきますと分かりますけれども、イラクにとっては極めて屈辱的で、完全に実施するということはどんな国においても難しいと思われる条文になっております。ほとんど丸裸にされる状況ですね。これを本当にイラクが守れるかといいますと難しい。しかし、日数的に制限が出ておりまして、完全に守れなければ行動を取るということになっております。
 その場合に、国連を通しての行動ならばよいのですが、ブッシュ大統領の発言は、アメリカ及びアメリカの同盟国と一緒になって行動を取るような文言になっております。アメリカ議会は、ブッシュ大統領に対してもう既に、イラクに対する攻撃の許可を、攻撃権の許可を与えております。
 こういった全体的な状況を見ますと、かなり高い確率で起こるのではないかということを私は心配しております。
#16
○福島啓史郎君 お二人の参考人の方が、五割以上の確率といいますか、見通しとしてアメリカのイラク攻撃があり得るだろうというふうに見通しを立てておられるわけでございますが、そうした場合に、アメリカあるいはアメリカの同盟国が日本に対する、同盟国としての日本に何を期待するのか、あるいはどういうことを要請してくることが考えられるか、それにつきまして孫崎参考人にお聞きしたいと思います。
#17
○参考人(孫崎享君) 冒頭申し上げましたように、アメリカは、テロとの戦いにおいては何をやるかは同盟国側が決めるんだと、しかしそれでもって自分たちは同盟の強さというものを量るんだと、こういう態度を取ってきていますので、いろんなことが想定されますけれども、基本は日本に任せるという姿勢であろうかと思います。
#18
○福島啓史郎君 それでは、日本に任せられた支援ですが、孫崎参考人はどういう支援をすべきであるか、あるいはできるということなのか、もう少し具体的にお願いしたいわけですが。
#19
○参考人(孫崎享君) 日本には日本の特殊状況がございますので、武力行動のところに入れないことは、これは日本国民の一般した共通認識であろうかと思います。
 したがって、現在日本ができ得ることは、一つは国際圧力への参加というものを積極的に行うということ。これは国会決議とかその他幾つかありますけれども、政治的な姿勢を明確にするということが一つ。それから、軍事的には、これまでは後方支援を行ってきていますけれども、アメリカにとってはアフガンの問題よりは、イラクに対しては軍事的な重要性というのははるかに重要だと国民は思っていると思いますので、これよりも後退するということは相当悪いシグナルをアメリカに与えるんではないかと思います。
#20
○福島啓史郎君 次に、山内参考人にお聞きしたいわけでございますが、参考人も述べておられましたように、二つのことをやっていかなきゃいけないだろうと、つまり中東の緊張緩和のためには。一つが、イランとの関係を改善するように、アメリカがイランとの関係を改善するように誘導していく、そのための日本がしかるべくリーダーシップを取るべきだということ、これが一つだろうと思いますね。
 ただ、アメリカの場合は、イランがパレスチナに武器を支援しているということで、非常にそれについては正に悪の枢軸の一つに入れているわけでございますね。それをどういう形でもって、あるいはどのようにしてアメリカがこのイランとの関係改善、特にハタミ大統領との、穏健派との関係を改善していくように仕向けていくか、それが一つでございます。もう一つは、それに併せてパレスチナを国家として承認するようにアメリカに仕向けていかないといけないと思います。
 そのイランとの関係改善とパレスチナ国家の承認というのは、この二つが並行して行うことがこの中東和平にとって、中東全域の緊張緩和にとって必要だと思うわけでございますが、その具体的なプロセスなり、どういう方法を講じたらよろしいか、その辺りにつきましての山内参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
#21
○参考人(山内昌之君) 前者の方、イランとの関係につきましては、既に日本は外務省あるいはNGO、様々なレベルにおいてかなり早くからアメリカとイランとの間の関係の改善を目指した自由な立場での調停あるいは和解に向けた対話の努力というものをかなり熱心に取り組んできたというふうに私は理解しております。
 そうしたレベルというのは、ただ単に外交の正式なトラックだけではなくて、正にNGOも触れましたが、もう一つやはり議員外交といったようなレベルにおいても私は積極的に進められてよろしいかと思います。すなわち、皆さん方のやはり積極的な努力によってこうしたアメリカとイランとの間にかかわる交流というようなものを図っていくべきだと。この面はまだ日本にとって特に重要かと思われます。
 それからもう一つ、やはりハタミ大統領は改革派でありまして、既に森内閣当時、森総理時代に日本も訪問しておられます。日本としては、ハタミ大統領の改革というものが国内における彼の立場というものを押し上げていくような、そういう方向で国際的な世論あるいは圧力といったものが、国際的な世論と言うべきでしょう、それから支援、そうしたものが高まることによって彼の立場が強まるし、それによる対米和解といったような機運が盛り上がる。そうした方向でいろいろな工夫がなされると思いますし、更にパレスチナについてでありますが、これは誠におっしゃるとおりでして、これは先ほども孫崎参考人のお話の中にも出ました、米国の中東政策の中におけるイスラエル要因という問題を一つ突破しなければいけないかと思います。
 この点でなかなか難しいのですが、日本としてでき得ることは、例えば日米関係における外交交渉などの場において、二国間関係の中において、やはり中東問題といったものが政策協議の一つの対象、アジェンダとして私はこれから入ってよろしいかと思います。現実に昨今の日米関係の中では、中東に関して話し合われたり触れられる機会が多くなってきていると思います。そういう中で、中東問題の推進は、日本と中東地域のそういうバイラテラルな関係、バイの関係で処理するというだけではなくて、日米という大きな軸の中で日本外交の重要な柱として政策協議の対象にも加えていくということも大事かと思っております。もちろん、そこに議員外交が加わることは言うまでもありません。
 以上です。
#22
○福島啓史郎君 委員長。
#23
○委員長(松村龍二君) 時間が参りましたが。
#24
○福島啓史郎君 じゃ、これで終わります。ありがとうございました。
#25
○佐藤道夫君 民主党の佐藤ですけれども、参考人のお三方に集団的自衛権行使について、法律的な、法律家の見地から御意見を伺えればと、こう思います。
 御案内のとおり、日本国政府、もう伝統的に集団的自衛権、これは憲法違反であると。個別的自衛権、これは憲法上認められるけれども、集団的自衛権は行使できないという考えをずっと取ってきているわけです。よってもって、湾岸戦争の際にはああいうことで金で済ましたと。それから、今度のアフガンの問題については、後方支援と称してインド洋上でアメリカの軍船に燃料補給をすると。民間のタンカーや補給船の方がよほど能率的にやるんでしょうけれどもね。
 そういうことで、自衛隊関係者あるいはまた有力な国会議員の方々も、本当に恥ずかしい、肩身が狭い、こんなことでいいんだろうかと深刻に考えざるを得ないというふうなことになってきていたわけですけれども、今度防衛庁長官に就任した石破議員、御案内と思いますけれども、彼は熱心な集団的自衛権行使合憲論の主唱者なんですね。論文とかあるいは演説などでそのことをきちっともうはっきり述べている、声高に述べていると。それから、委員会でも政府を相手に大論戦を展開して、断固認めろ、一体何を考えているんだと鋭く追及もしておりました。
 その人が防衛庁長官に就任した。一体これは何なんだと。小泉内閣、従来の政府の方針を変更して、アメリカのイラク侵入の際は一緒になってイラクに自衛隊を派遣する、そして何をやるかは、それはいろんな国々あるいは国民の顔色を見て決めるんだろうけれども、場合によっては兵器や銃器を使うこともあるだろうと。単なる後方で燃料補給とか、そういうことをやっているだけではまた今までと同じような非難を受けるに違いないと。本当にこれでいいんだろうかと。一体、憲法上、集団的自衛権の行使ということを改めて考え直すべきではないのかと。今までどおりなら今までどおりと。しかし、石破長官の言っておるように、やって何が悪いんだと、そういう居直った感じの合憲論もあるくらいですからね。
 そこで、学者先生方に、この集団的自衛権の行使についてどのようにお考えなのか、忌憚のない御意見をお聞かせください。
#26
○参考人(孫崎享君) 冷戦以降、私は安全保障をめぐる環境というものが非常に大きく変わってきたんだと思います。日本の憲法あるいは法律の下で集団的自衛権がどうあるかということは、私の専門の分野でありませんので発言は差し控えますけれども、今回の対イラクに見られるように全会一致で安全保障の問題に対して国連が対応しなければならないと、この事態は東西冷戦の時代では考えられなかった事態であります。
 したがって、安全保障の面で国連が一致して行動を起こそうというときに日本がいかなる役割を果たすかということについては、冷戦時代と異なった政治的な思想が必要になってくるのではないかと思っております。
#27
○参考人(山内昌之君) 私は、ちょっと不案内なのですが、石破大臣がイラクに軍隊を派遣するべきだと、こういう発言をされているわけですか。
#28
○佐藤道夫君 そういうことではなしに、集団的自衛権行使が合憲である、今までの政府の見解は明らかに間違いだということを声高に叫んでいるという意味ですよ。イラクの問題が起きる前から言っていることでもありますよ。どうぞ。
#29
○参考人(山内昌之君) 私の今日の参考人としての仕事は、伺っていたことは、私の専門性、先ほど最初に申し上げましたけれども、国際関係史とイスラム地域研究という立場での参考人としての発言になります。
 ただいまのような問題について、私は十分に今日の段階でお答えする用意はありません。
#30
○佐藤道夫君 ちょっとよろしいですか。大学生だってこの問題は真剣に議論していますよ。大学の先生が何のことか分からないと。本当ですか、本当なら本当でいいですよ。
#31
○参考人(山内昌之君) 何のことか分からないというようには申していません。今日、こういう場所で私はお答えする準備はないというふうに申し上げています。
#32
○佐藤道夫君 まあ、いいです。それじゃ、どうぞ。
#33
○参考人(横田洋三君) 私はこの分野の専門ですので、ちょっと考えを述べさせていただきます。
 今の佐藤先生の御質問は、憲法上、合憲か違憲かと。それで、御存じのとおり、日本政府も法制局の立場も、自ら自国を守る、これはある、憲法上認められているけれども、集団的自衛権、他国と一緒になって、あるいは他国のために防衛行動を取ることはこれは憲法上許されていないと、これははっきりこれまで国会答弁等で何度も何度も繰り返し確認されているというところでございます。私は、一応その憲法解釈というものを尊重したいというのが私の考え方でございます。
 ただ、私は国際法という分野をやっておりまして、個別的及び集団的自衛の権利というのはこれは国連憲章五十一条に書いてございます権利で、このことにつきましてちょっと国際法の視点から述べさせていただきますと、考え方としては、よその国が侵略その他でもって法的に違法に侵略されたり被害を受けているというときに、クウェートがイラクによって攻撃をされたというのが一つの例ですけれども、その場合にその被害を受けた国だけが個別的自衛権で戦えばよいと、ほかの国は黙って見ているのでいいと言えるのかというと、国際社会の今の考え方はそうではなくて、やはり本当の侵略の被害者に対しては、被害国に対してはほかの国も一緒になってその被害国を助ける必要がある。それで、集団的自衛権という言葉が国連憲章に書かれているわけです。
 ところで、最近、国連などでの議論はもう一歩進んでおります。進んでいるというのはこういう議論なんです。権利だとすれば行使しなくてもよいと。しかし、本当に気の毒な国の場合にはその国を守ってあげる義務があるのではないかという議論が出始めております。こうなってきますと、日本の憲法論だけで国際的な責任、侵略戦争の被害国に対して協力して助けてあげるという責任があるという議論に対して、日本が国際的な立場で議論ができるかというとやや難しくなります。
 ただ、確認しておきますが、まだこの議論は出始めている段階で、決して多数説になっているわけではございません。私は、日本の憲法論議をこういう国際的な動きを踏まえてもう一度議論をし直す、その必要がある時期に来ているのではないかと、こう考えております。
#34
○佐藤道夫君 そういうことで、もしアメリカがイランに入っていくと、アメリカ軍が入っていくと、そして日本にも参加を呼び掛けると。しかし、我が国はいろんな国際的な条約があるにしろ、取りあえず国内法では、憲法ではっきりとそういうことは禁止しているということですから、もしどうしても諸外国と協力をする必要があるということならば憲法を改正して堂々と派遣すればよろしいと、それだけのことだろうと私は考えるんですけれども、こういう考えについてはいかがでしょうか、三先生。
#35
○委員長(松村龍二君) どなたから御回答いただきますか。
#36
○佐藤道夫君 一番端から。
#37
○参考人(横田洋三君) 私が今説明したことにつながりますので、恐縮ですが先に私の考えを述べさせていただきますが、アメリカの今回のイラクに対する攻撃は、自衛権という言葉も一部使ったことがありますが、実際にはもう国連憲章違反ということで国連憲章決議に基づく行動に少し変わっておりますので、集団的自衛権で日本に協力してほしいという議論にはなっていかないだろうと思います。これがまず第一点です。
 それから、第二点として、今回の場合以外にも、もしアメリカが自衛の行動を取った場合に、日本はアメリカに協力して集団的自衛権を行使して行動する必要があるかという一般的な議論に対しては、私は佐藤先生のお考えに賛成で、今の時点で憲法解釈は日本がそういうことをすることを認めていないというのが私の立場でございます。
 ただ、これを今現在の国際情勢を念頭に、あるいは今後の国際情勢の変化を念頭にずっと維持することがいいかどうかというのは、これは政策論として今後国会を含め国民が議論すべきだと、こういう意見でございます。
#38
○参考人(孫崎享君) 現在の国際情勢は憲法制定当時に想定されなかった事態ですから、そういうような事態があるということを踏まえて憲法の在り方を討議するということは、これは十分に行っていくべきものであろうと思います。
#39
○参考人(山内昌之君) 今のお二方の御発言を踏まえてということになりますが、もちろん国民世論の動向、それからそれを踏まえた立法府における積極的な議論、その展開いかんによって法、とりわけその基本法が様々な形で見直される可能性があるということは否定できないんではないでしょうか。
#40
○委員長(松村龍二君) それでは、時間が参りました。
#41
○佐藤道夫君 終わります。
#42
○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
 参考人の三先生方には、本日は大変に有意義なお話をありがとうございました。
 まず、横田参考人の方に二点質問をさせていただきたいと思います。
 横田さんの用意されたレジュメの三ページ目の最後の項目でアメリカによる対イラク軍事行動は国際法的に正当できるかというところがあるわけでありますけれども、そのまず二点目のところで、テロ支援国家としてのイラクに対する攻撃は現状では否であるというような御見解を示されているわけでございます。
 これに関しましては、私、今手元にアメリカ政府が今年の九月十二日に、日本語で言いますと「欺まんと抵抗の十年」というタイトルの報告書を出しまして、その仮訳を私手元に持っております。その中の一項目で、サダム・フセインが国際テロ支援をしてきたということが、ちょっと抽象的なんですけれども、六項目にわたって列挙されております。
 これに関して、日本の政府の立場から考えたときに一番焦点になってくるのは、サダム・フセインが、いわゆる日本もアフガニスタンでの行動でテロ支援法に基づいて今国際貢献という形をしているわけでありますけれども、アルカイーダとフセイン政権の関係というものが現状では事実証明がされていないと私も認識しておりますが、しかし、新聞の報道を見ておりますと、アメリカの政府高官筋からアルカイーダとイラクは関係あるんだというような発言が既に飛び出しております。
 今後、この大量破壊兵器の査察とはまた別次元で、実はフセイン政権がアルカイーダを支援していたというようなことをアメリカ政府が言い出すんではないかということが一部で観測されているわけでありますけれども、そうなってきた場合に、この点における横田先生の御見解は変わるのか、またアフガニスタンで後方支援をしている日本の立場というものがこのイラクに対する事態に対しても変わっていくのか、そこの点について一点お伺いをしたいと思います。
 それから二点目は、同じこのレジュメの最後の項目の一番最後のところで、私も横田先生がおっしゃった見解に全く同意なんですが、つまり今、国際法という法体系は国内法と比べると違反行為に対する制裁が非常に弱いという意味で非常に限界性が実際あるわけですね。その国際法に基づいて作られている国連にも限界性があると。ですから、その限界性があるからこそ米国の単独行動主義というものが生まれてくる余地があるわけでありまして、横田先生がおっしゃるとおり、米国の一方的行動を止めようとするのであれば、それに代わり得る実体を伴った国際的枠組みがなければいけないと。
 それは、横田先生はここで、国連安保理を中心に有効な対応策を緊急に立てる必要があるというふうに書かれているわけですが、もうちょっと具体的にどのような、有効な対応策というのはどのようなものを横田先生としては想定されているのか、教えていただきたいと思います。
#43
○参考人(横田洋三君) 遠山先生の大変適切な御質問、ありがとうございます。
 まず、テロ支援国家かどうかというそのイラクの問題で、アメリカはそういうふうに言っているということなんですが、やはり私としては、あるいは日本という国家の立場で考えてみても、アメリカが言ったというだけでテロ支援国家ということを確認するというのはやはり難しい問題がありまして、やはり私としてはきちっとしたつながりを示す証拠というのがないといけないんですが、遠山先生の御質問は、もしそれが出てきたときにどうかと。当然、出てくればテロ支援国家ということになります。
 そして、それに対して、国際社会はそういう国としてどう対応するかということをやっていかなければいけませんが、だからといって直ちにテロ支援国家だからアメリカは一方的な軍事行動が取れるという、そういうつながりを私は考えておりません。そういうことが証明されたとすれば、それに基づいてやっぱり安全保障理事会でイラクの脅威ということを明確に議題に上げて議論をして、どうするかを決める。場合によれば、軍事行動を安保理の決議の下にきちっと取るということはあり得るというのが私の考えでございます。
 このことは第二点にもつながるわけでございますが、それではどういうことが具体的に安保理で議論できるのかということでございますけれども、まずはイラクのような具体的な事例については、それに証拠があり、きちっとできた場合には、このイラクの脅威をどうするかということを安保理で議論をし、軍事行動を取るのか経済制裁を強化するのか、そういうことをきちっと対応するということが必要ですが、もう一つ、もうちょっと一般的に、もうテロは今後も起こり得るという状況をアメリカなどは当然考えていますし、私たちも考えざるを得ません。それもかなり深刻なテロが起こる可能性というのは常に考えなければいけない。
 こういうものに対して安保理は、一般的にテロにどう対応するかということを一種の政策として議論をし、まずテロを非難すると同時に、テロに対しては安保理が、平和に対する脅威、場合によれば平和の破壊として断固戦うということを示して、それについての一つの指針を示して、テロリストの集団に対してあらかじめ警告をしておくという、そういうことをすべきではないかと。
 私の考え方は、いずれにしても、安全保障理事会の議論を通して対応するというのが一番いい答えだということでございます。
#44
○遠山清彦君 ありがとうございます。
 次に、山内参考人にお伺いしたいと思います。
 山内先生は、イスラム関係、大変に専門分野でございまして、新聞等によく論説書かれていて、私もよく読んで参考にさせていただいているところですが、先日、朝日新聞に、ハーバード大学のハンチントン教授がイラク問題についてインタビューを受けておりまして、その中で、アメリカとイラクの紛争というか、攻撃が特に起こった際に、これは文明の衝突と見るかというような質問がございまして、それに対してハンチントン教授は、全く違うと、そもそもサダム・フセインというのは敬けんなイスラム教徒じゃない、ただし、展開によっては文明の衝突に見えるような形になっていく可能性があって、そうなっていったときに、結局、イスラム諸国が、サダム・フセイン自身が敬けんなイスラム教徒であるかどうかということは別にして、イスラム圏を代表して米国を代表する違う文明圏と戦っているんだというような形になってしまう可能性はあるというような発言をしているわけでありますが。
 私、個人的に、このアメリカとイラクの、既にお互いに口でやり合っておりますから紛争と言っていいかと思いますが、これがいわゆる、ハンチントン教授はこの概念で有名になった方でありますけれども、イスラム圏とアメリカを中心とするキリスト圏と言い切っていいかどうかは別にいたしまして、違う文明圏とのいわゆる文明の衝突論みたいなところに収れんされていってしまうと、これは中東地域というものを考えたときに、イラクのみの問題ではなくて非常に国際社会全体に大きな与える深刻な事態になってしまうのではないかと懸念を持っているわけでありますけれども、この点について、御専門の立場から御見解を伺いたいと思います。
#45
○参考人(山内昌之君) 全くただいまの御指摘のとおりだと思います。
 ハンチントン教授のその限りの御指摘というのは私もほぼ共有するものです。文明の衝突というのは、私なりに理解いたしますと、現に存在するものではなくて、あらかじめ世界においてそうした文明の対立、衝突が存在するのではなくて、政治的な目的あるいは故意の目的などを通して実現されるのが文明の衝突だと思います。
 したがって、そうしたようなものが一見してあるように見えますけれども、そうではないのであって、意図的に作り出されるものであると。その際重要なことは、一つ二つ付け加えさせていただきますと、イスラム世界に住んでいる人間がすべて敬けんなイスラム教徒ではないわけですから、サダム・フセインが敬けんなイスラム教徒だということは全くないというのはそのとおりでございます。しかし、その人間によって象徴されているような、ある地域や世界の力というものがあります。この世界や地域の力をどのように人々、敬けんなイスラム教徒を含めて、そういう力を発揮しようとするか、あるいはその力を担っているような輿望があるかのような、見える人物を利用するか、あるいはその逆にその人物が利用するか、こういうところで衝突というもののエネルギーが蓄積されるということはあると思います。
 今、サダム・フセインその人に言わば期待する宗教的な勢力というのは、イデオロギーではなくて、むしろ政治のそういうリアルポリティークの世界で期待していると。そのことが現実化したときに、言わば文明の衝突といったようなものに見える現象が起きてくるであろうということは否定できないと思います。しかし、それは本質的には文明間の対立ではない、やはり政治の衝突であると言うべきかと思います。
#46
○遠山清彦君 ありがとうございました。以上で終わります。
#47
○小泉親司君 日本共産党の小泉親司でございます。
 今日は、お三人の先生方、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。私、三つの点について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、お三方に、ブッシュ政権の先制攻撃論についてお尋ねをしたいと思います。
 ブッシュ大統領は、御承知のとおり、先制攻撃ということを再三にわたって言っておられます。この問題というのは、このイラクの問題と決して無関係ではなくて、大変私は密接な関係があるというふうに思います。今度の問題というのは、お三方の先生がひとしく主張されましたように、私たちは、この国連一四四一決議をイラクがしっかりと査察を実行して、平和的に解決すべきだという立場を取っておりますが、ブッシュ政権は、国連安保理決議後も再三にわたって、国連の許可なしにでもアメリカはいかなる自由も束縛されないという立場を取っていて、大変先制攻撃の立場を明確にしていると私は思います。
 テロ攻撃に対しても先制攻撃をするんだという点はブッシュ政権の国家戦略の基本になっているというふうに思いますが、私は、この先制攻撃という問題は決して国連憲章によって許容されるものではない、国連憲章違反であるという立場を取っております。戦争を現実に遂行できる勢力というのは現段階ではアメリカしかないという意味では、この先制攻撃論に対して国際社会が明確に反対だという立場を示すという点は大変重要な点だというふうに思います。
 その意味で、先ほど孫崎参考人も先制攻撃に言及され、山内参考人も論文の中でも先制攻撃に言っておられますので、お三方にそれぞれ、私は先制攻撃は国連憲章違反だと思いますが、その点の御見解をまずお尋ねしたいと思います。
#48
○参考人(孫崎享君) 先制攻撃につきまして、政治的に正しい選択であるかどうかということについて申し上げたいと思います。
 テロが自爆をねらうということであれば、これに対して前もって排除するという選択は、これは政治的に正しい選択であろうかと思います。その他の方法はなかなかありません。しかしながら、問題は、抑止が働き得るものに対して先制攻撃をやることがどうかということでございます。
 かつてのソ連それから中国、こういうところは抑止理論でもって行われていますので、先制理論が適用しなくても、核その他の兵器があっても直ちに危険にはならないと。抑止理論が働いております。
 それでは、今言われるその間にある国、北朝鮮である、あるいはイランであるイラクである、こういう悪の枢軸的な国々に抑止というものが働かないんだろうかと。ここのところはそんなに議論が真剣になされておらず、私は、この悪の枢軸という国々に対しては抑止理論は依然として働く余地が非常に多い、ここを十分にエクスプロアー、十分に探ることなく直ちに先制攻撃で行くということは不安定につながるんではないかと、このように思っております。
#49
○参考人(山内昌之君) とりわけ、悪の枢軸と名指しをされた三か国のうち二か国がイスラム世界に属している国ですので、そういう関心事からお答え申し上げたいと思いますが、まず、やはりこのいわゆるブッシュ・ドクトリンというのは、従来の冷戦時代の抑止戦略や封じ込めとは違う。そこで新しい道に入ったと、こういう点が特徴かと思います。
 第二に、私が危惧するのは、こうした先制攻撃論というものが、もしドクトリン、一つの国際政治の支配的な考え方としてアメリカによって主張されるということは、それは普遍化するとすれば、そうした考え方をほかの国が使った場合どうなのか。例えばロシアなどが、あるいは仮定として様々な、国内において民族問題、内戦を抱えているような国々がそうした問題を広げていったらどうなるかというところにまで問題が波及する可能性はあります。
 したがって、この先制攻撃、ただプリーンプティブアクションズ、これを、アクションを攻撃とすぐに取ってしまうかどうかについてはやはりもう少し吟味して考えてみる余地があるという、こういう留保を付けた上で、私はこの考え方に対しては非常に慎重に対処しなければいけないと思っています。
#50
○参考人(横田洋三君) 小泉先生の御質問、これ大変重要なポイントだと思います。
 ブッシュ大統領が表現したことは、今、山内参考人が言われたように、いきなり武力攻撃で先制的に相手をたたくということを含むだけではなくて、もう少し幅の広い対応を、あらかじめ先手を打っておくということを含みますので、その中には国連憲章が禁止していない行動も十分あり得ると思いますが、他方で明らかに軍事行動も含んでおりますので、その場合には国連憲章に違反するという小泉先生の御判断、私も同様の意見を持っております。
 問題は、この点はどういうことかといいますと、先制攻撃を軍事力をもってでもしてもよいということになりますと、これはもうほとんど侵略戦争を認めるのと同じになるわけです。あの真珠湾攻撃をアメリカは非難したわけですけれども、日本もそれは認めて降伏したわけですけれども、それが何らかの理由によって正当化されてしまうかもしれないというような論理につながるわけですね。ですから、私は、やっぱり考え方として、軍事力を使った先制攻撃というのはやはり認めないというのが現在の国連の建前であり、過去に行われた侵略戦争はやはり否定していくべきだというのが私の考え方でございます。
 ただし、それだけで終わらないのが現在の状況でありまして、大量破壊兵器、生物化学兵器、それから核兵器、これをしかもテロ集団が保有できるような状況になってきた。生物化学兵器、化学兵器については日本ではオウムによるサリン攻撃も現実にあったわけですね。これに対して、確かに何らかの意味でそういうものが使われる前に、使われてから初めて自衛の行動が取れるというのでは遅過ぎるわけですね。何らかの先制的な行動は必要だろうと、こういうふうに思います。
 そういうことについての長期的な答えは、実は今まで話が出ておりましたように、冷戦時代にはいわゆる抑止力、あるいは両方が同じ程度の破壊力を持った兵器を持っていれば両方とも使わないという一つの議論なんですが、これは御存じのとおり、冷戦時代、恐怖のバランスという言い方で決して安定的なものではなかったわけですね。ですから、冷戦構造が崩壊して米ソの核戦争がなくなったというときに人々が本当にほっとしたのは、やっぱり冷戦時代はその不安を常に抱えていたということなんですね。
 私は、その意味では、本当のこういう危険からの人類の解放は有効な軍縮以外にないと思うんです。軍縮に本格的に取り組んで、あらゆる可能性のある武器の開発、大量破壊兵器の開発、製造、配置、こういうものを徹底的に検証して、お互いに持たないようにするという状況を作る以外にいい答えはないのではないかというのが私の考えです。
#51
○小泉親司君 私は、あと二つの問題についてお尋ねいたしますが、一つは横田参考人にテロ対策とイラク問題という問題であります。
 この問題というのは、テロとして認定するかどうかという問題は、日本のテロ特措法によってこれは支援が行えるかどうかという関係と大変密接に関係ある問題で、私もこの当委員会の場で再三外務省と議論をしてまいりました。まず、私は、国連決議一四四一というのは、いわゆる同時多発テロ、九・一一のテロ対策は含んでいないと思います。それから、テロ支援国家だからといって直ちにこれが武力行使に結び付くというのは、先ほど先生が御指摘したとおりであります。さらに、バトラーさんという例のUNSCOMのオーストラリア元国連大使が米上院外交委員会でも、繰り返しテロとイラクの大量破壊兵器は関係ないということを明言しているとおりだというふうに思いますので、私は、テロを理由にしてイラクに対する攻撃というのはこれはできない、よって、日本がテロを理由にしてテロ支援法でこれは支援ができないというふうに思いますが、その点の先生の御見解をお尋ねしたい。
 もう一つの問題は……
#52
○委員長(松村龍二君) ちょっと時間が。
#53
○小泉親司君 四十五分までですからね。
#54
○委員長(松村龍二君) 四十五分までありますが、参考人の答弁を含めて四十五分ですから、また後ほどでいかがでしょう。
#55
○小泉親司君 じゃ、その点だけお尋ねいたします。
#56
○参考人(横田洋三君) 簡単にお答えします。
 小泉先生のおっしゃるとおり、今度の一四四一決議はテロを念頭に置いたものではございません。大量破壊兵器の査察の徹底、そしてそれのイラクによる放棄ということでございますので、テロとは結び付けない方がこの決議を正確に理解したことになるのではないかと思います。
#57
○田村秀昭君 自由党の田村でございます。
 三人の先生からの貴重な御意見ありがとうございました。
 二点、質問させていただきます。ブッシュ大統領が北朝鮮とイラクとイランを悪の枢軸と呼んだわけですが、イランはどうして入って、それの中のイラクと北朝鮮というのは分かるんですが、イランは大統領も国会議員も選挙で選んでおるし、民主的な穏やかな穏健的なイスラム社会というふうに認識しているんですが、どうしてアメリカは、ブッシュ大統領はイランを悪の枢軸と呼んだのか、三先生にお尋ねいたします。
 それから二番目に、米国はイラクを攻撃するということは三先生も先ほど同僚議員の質問にお答えになっておりましたけれども、その際、米国がイラクを攻撃したときに我が国は政治的に米国と同じ認識を持つべきであると私は考えているんですが、どのようにお考えなのか、お尋ねいたします。
#58
○参考人(孫崎享君) まず、イランに対する認識でございますが、私は今年の三月まで駐イラン大使として在勤しておりました。御指摘のとおり、私はイランをイラク並みに定義付けるのは無理かと思います。
 大きい点は二点ございまして、国内的には、民主的な手段で国会議員が選ばれ、かつ大統領が選ばれているということ、それから対外的な面に関しましては、イランは西側諸国を含め、隣国も含め緊張緩和路線、武力を使うということなしに文明間の対話ということを大統領の政策として行っております。
 では、どうしてこのイランが同じように扱われているのか、アメリカの敵として扱われているのかという問題は、残念ながら私はイスラエル要因であろうかと思っております。
 それから、イラクに関しましては、基盤は、これからどういう展開になるか分かりませんけれども、大量破壊兵器をイラクが国連の決議に反して保持する、かつそれに対して協力をしないという形が出てくるのが一番想定されるシナリオだと思いますので、その場合にはアメリカと日本とは共通の認識があろうかと思います。
#59
○参考人(山内昌之君) イランの存在というのはアメリカにとって大変悩ましいと思うんですが、最大のやはり要因は前イラン駐在大使がお語りになったとおりで尽くされているんですが、やはりパーレビ朝という前王朝が、これはアメリカの中東における最大の同盟国であり、その同盟国を失ったときのトラウマ、これがまだ完全に回復されていない。これは湾岸戦争のトラウマもアメリカが完全に回復していない以上のものかもしれません。したがって、例えば米大使館の占拠事件、さらにパレスチナの運動に対するイランの中の急進派、穏健派でないグループによる武器支援、こういったような要素が一緒になってイランという国を言わば敵国とみなしていると。中東における最も大きな仮想敵国でさえあるかもしれないということになろうと思います。
 それから、後段の御質問でございますが、これは私は、やはり日本とアメリカはもちろん二国間関係において重要な同盟国であるかもしれません。あるわけですけれども、しかし中東の問題をめぐって石油エネルギー安全保障、さらにほかの諸問題をめぐってやはり日本とアメリカの間に利益のずれが存在することは間違いないと思います。このずれはずれとして、やはり米国に対してきちっと対応していくということが私はイラク問題を含めた中東問題に対する日本のかかわり方だと思っております。
#60
○参考人(横田洋三君) イランに対することは実は今このメモに書いてあるんですが、山内参考人がおっしゃったことと全く同じことを私言おうと思っておりましたので、全く同意見であるということで割愛させていただこうと思います。
 私は国際法をやっておりますので、イランのアメリカ大使館人質事件、これは大変大きな問題で、アメリカはあれで、御存じのとおり、救出作戦までやったわけですが、それも失敗したということで、いろんな面でアメリカはあの事件では国際的に名誉を失墜させられたという感じを持っておりまして、それがずっと尾を引いている部分があるように思います。
 それから、後の方のアメリカと日本の国家利益、中東との関係ですけれども、確かにそういう共有する部分もありますけれども、私はアメリカと日本で非常に大きな違いは、アメリカの場合には全世界を見渡してアメリカの利益を考えていると。それに対して日本の場合には、やはり特にいわゆる狭い意味の軍事的な安全保障ということを考えますと、日本の国土あるいはせいぜい日本の周辺地域に限られておりまして、国際社会全体を見渡しての安全保障観とか世界の平和秩序維持政策といったようなことはこれまで余りきちっと議論はされていませんでしたし、政府レベルの政策にもなっていなかったように思うんですね。
 ですから、結局は日本の場合には、アメリカが立てた政策にほぼ同盟国として従ってどこまで協力できるかというところが議論になっていて、アメリカの政策そのものを正面から批判したり、あるいはそれをこういうふうに変えてはどうかというようなことを言うことはこれまで余り積極的にしてこなかったような気がいたします。ですから、これから先、日本がもう少し全世界を見渡した安全保障政策を取るようになれば、アメリカとのずれが見えてくる可能性があるというふうに思っております。
#61
○田村秀昭君 横田先生にお尋ねいたしますが、先生の三ページに、最後に、国連安保理を中心に有効な対応策を緊急に立てる必要がある、日本の役割というふうなことを言われましたけれども、安保理にも入れない日本がどうして日本の役割だというふうにおっしゃっているんですか。私は、基本的に自分の国を自分で守れない国が余り偉そうなことを言わない方がいいと私は思っているんですが、いかがですか。
#62
○参考人(横田洋三君) 大変重要な点、御指摘いただきましたが、まず一番最後の先生の御指摘については、私は、世界の国の中で自分の国を守れる国がどれだけあるかという逆説的な言い方をしますと、日本だけではなくて、守れる国はほとんどないというのが状況です。それだけに、国際的な協調行動が重要な意味を持ってくるというふうに考えております。
 それで、いずれにしましても日本は、国際社会、経済的に見ますと、世界の経済生産力の一五%を日本は、不況だとか経済成長が止まっているという中でも影響力を持っているわけですね。そして、日本の経済活動は全世界に及んでおります。したがいまして、この日本の現在の繁栄というのは国際社会がある程度安定し繁栄するということを前提に初めて維持できるものでありまして、その意味からいいますと、日本は、できるかできないかは別にして、できる限りの国際社会における平和構築のための協力をすべきだというのが私の考えでございます。
 安全保障理事会については、私ははっきりとは申しませんでしたが、その日本の役割を考えると、経済力も含めた役割を考えると、日本を安全保障理事会の常任理事国に入れることによって、そして日本が国際社会の平和の構築に大きく貢献するということを前提にした場合には、国際社会はむしろそれを歓迎するということにこれから動いていくんではないかというふうに思います。そうだとしますと、日本はそれにこたえるだけのきちっとした国際的な平和戦略というのを持たなければいけない。まだ日本の国土だけ、日本の周辺だけの安全保障を考えているのでは、国連の安保理常任理事国になるにはふさわしいとは考えられないのではないかという気がいたします。その意味で私は、はっきり申しませんでしたが、役割があると同時に、日本はそれだけの発言権を持つ場所を与えられる必要があるかもしれないということも考えておりました。
#63
○田村秀昭君 私の申し上げたのは、自分の国を自分で守るというのは、よその国もないとおっしゃいましたけれども、自分の国を自分で守る決意のない国という意味です。これはお答えになられる必要はありません。
 終わります。
#64
○大田昌秀君 孫崎先生にお伺いしたいと思います。
 先生がお書きになった文章の中に、アメリカのCBC、それからCNNの世論調査の結果がありますけれども、昨年に比べて、今年に入りますとアメリカのイラク攻撃に対する世論が明らかに減少しているわけですね、比率が。その背景について御説明ください。
 それともう一つ、オスロ合意に対するパレスチナ人の意識の表が載っておりますが、これも年月がたってきますとオスロ合意に反対する意識が強くなっておりますし、それから自爆テロに対する支持が反対よりも増えている。この問題について教えていただけたら有り難いと思います。
#65
○参考人(孫崎享君) 私は、アメリカの国民の最大の関心はアメリカ経済がどうなるかということに現在移っていると思います。そして、イラク攻撃があったときにアメリカ経済にプラスになるのかマイナスになるのかということについては、マイナスになるのではないかという不安がアメリカの学者及びアメリカの国民に出てきているんではないかと。したがって、イラク攻撃への支持はアメリカ経済の動向と相当密接に関連していて、アメリカ経済が悪化の方向、悪い状況の方に行くとすればイラク攻撃に対する慎重論が今以上に私は出てくるんではないかと、こう思います。
 それから、パレスチナの問題でございますけれども、御承知のとおりに、オスロ合意が進展していたときにはパレスチナの人たちも自爆行為の方向に余り支持が高くなかったわけでございますね。しかしながら、残念ながら、現在パレスチナにおいて緊張が高まり、イスラエルの攻撃がある中で、自爆テロを正当化する人の動きが出てきていると。これは、イスラエルの攻撃と自爆テロが支持を受けているということとが相関関係がありますから、私、個人的には、イスラエルは武力行為を慎むということがむしろイスラエル国家のためになると、このように思っております。
#66
○大田昌秀君 山内参考人にお願いいたします。
 先生のお書きになりましたものに、アメリカのイラク攻撃について、私の理解が正しければ、単にフセイン政権を排除するというだけじゃなくて、そのほかにエネルギー資源戦略みたいなのもあるのではないかという趣旨のことがあったと思いますが、先生はアメリカのイラクに対する今の動きといいますか、それを、本当の動機というのはどういうふうに御判断されておられるんですか。
#67
○参考人(山内昌之君) これは大変難しいやはりお尋ねでして、二通りあると思います。
 一つは、やはり九〇年代、二十世紀のおしまいから積み残してきたアメリカの中東政策の課題というのはやはりイラク問題でした。それは、特に人脈的、血縁的にも、ブッシュ父政権のとき以来、イラクにおける湾岸戦争の終わり方が非常に不完全な形で終わり、中東の秩序の形成が十分に行えなかったという意識があることは間違いないと思います。
 これは、やはりアメリカが優位に再編成したいという、この地域の再編成ということをやはりアメリカは念頭に置いている。これが隠された動機の一つではないかというふうに私はひそかに考えております。それは、しかし、表へそのまま出すということには必ずしもいかないわけでありまして、その点で大量破壊兵器という、秩序形成と結び付いて、それを阻害している要因としての大量破壊兵器の廃棄という形で、すなわち国連決議の、従来からの決議六八七以降、一四四一に至っている一連の国連という手続とそのチャンネルを通した形でそれを実現していこうという、こういう意図、これが表と裏のかなり重なり合った部分でのアメリカのイラクに対する意図だと思います。
 しかしながら、何事においてもやはり政治を動かしていく動因のかなり多くは経済的な動機であるということは、ただいま大田先生御指摘の点にかかわるわけですが、現実に、最近やはりアメリカの中においては、むしろ非常に慎重にエネルギー問題に対するアメリカの関心を隠そう、非常にそれに対して慎重にしようという動きの方が目立つわけです。そうしますと、私どもとしては、隠すより現るるはなしという言葉もありますように、やはりアメリカにおけるメジャーを中心とした石油資本の中東への関心というようなことを、私たちとしては、それが現に固い動機として存在するかどうかは別としまして、アメリカの政策の重要な決定要因の一つになり得る、あるいは既になっているかもしれないファクターとして、日本は注視しておく必要があるんではないかという点でお答えして申し上げたいと思います。
 と申しますのは、いずれにしましても、イラクの政治状況のいかんによって、そこで行われる様々な石油エネルギー資源へのどのようにして国際的なかかわりが行われるのかということに関して日本も無関心ではあってはいけないという意味合いも含めてでございます。
#68
○大田昌秀君 横田先生にお願いいたします。
 先ほど、先生の御説明の中に、アメリカは国連決議がなくても独自に制裁行動に出るとか、つまり国連の、国際法というものが大国には通用しないという趣旨のお話がございましたけれども、その問題について国連ではどのような話合いがなされるんですか。それから、アメリカの国内の法律学者とかそういう人たちはどういう論議をされているんですか。
#69
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 アメリカは、残念なことに、国連について言いますと、アメリカ自身の安全のために国連を頼りにはしておりません。アメリカは自分の力を唯一の頼りにしているというのが政策でございます。
 問題は、その場合に自分の国の安全ということを理由に、国連憲章で定められている加盟国の義務を侵してまで、違反してまで軍事行動を取るアメリカ、これは一体どういうことなのかというのが御質問の趣旨かと存じます。
 その場合に、アメリカはやはり、恐らくアメリカの憲法秩序の方が国連憲章よりも大きな意味を持っているというのがアメリカの法律学者のほとんどの人の認識だと思います。アメリカの憲法よりも上に国連憲章があって、国連憲章は国として従わなければいけないという、そういう認識をしている法律学者というのは残念ながら現在は余り多くないというのが状況でございます。
 かつては状況が違いまして、アメリカが国連を作り、そして国際秩序もかなりアメリカの影響力の下に第二次大戦後作られてまいりまして、言ってみると国際秩序はアメリカの考えに従って作られていた。そこでは、ある意味でアメリカの秩序と国際秩序というのは矛盾しないで一体化していましたので、その下でアメリカの法律家の言っていたことは余り矛盾しなかったわけです。国内の憲法秩序の下での法律論を言えば同時に国際社会の秩序論にもつながったということがございました。
 もう一つは、第二次大戦後のアメリカの国際法、とりわけ私が専門にやっております国際法の学者の多くが、実は第二次大戦中にヨーロッパで迫害された、特にナチス・ドイツあるいはオーストリアによって迫害されたドイツ系あるいは東欧系のユダヤ人の人がアメリカに来て国際法を大学で教えるということをやりまして、この人たちはやはり視点が非常に違っていまして、国際社会全体を見渡しての国際法秩序、それにはアメリカも従わなければいけないという考えを持っておりまして、こういう人たちの考え方は私どもも非常に共感するものがありましたが、ここへ来て、そういう人たちはもうほとんど活躍していない、あるいはもう亡くなっているということで、アメリカの中で育ってきた、アメリカ法を中心にした法律の専門家が全体を支配する状況になってきておりまして、今のような傾向が出てきていると、こういうふうに認識しております。
#70
○大田昌秀君 ありがとうございました。
#71
○委員長(松村龍二君) それでは、これより自由質疑に入ります。
 質疑を希望される方は、挙手の上、委員長の指名を待って御発言いただきたいと存じます。
 また、多くの委員が発言の機会を得られますよう、委員の一回の発言時間は答弁を含めておおむね五分以内でお願いいたします。
 なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
#72
○齋藤勁君 民主党・新緑風会の齋藤勁でございます。
 他の議員の質問の関係もありますので、私は山内参考人に一点お尋ねさせていただきます。
 山内参考人の各種様々な紹介されています文献、資料等についても拝見させていただきましたが、とりわけ八月二十五日付け毎日新聞に報道されました「時代の風」、「アラブ世界の「貧困」」、ソフトパワーの充実という見出しの中で、六月、「国連開発計画の協力のもとに「アラブ経済・社会発展基金」が刊行した長大な「アラブ人間発展報告」の分析」、このことについて御紹介がございます。
 そこで、お尋ねさせていただきますが、かつてこの種の報告書というのはなかったのかどうかということ。そして、このことを基に国連がどういう受け止め方をしているのかどうかということや、国連がどういうようなことをまた着手をしようとしているのか。そして、主体的にアラブ世界がこのことについてどう受け止め、あるいはどう対応するのか。そして、我が国は、最もこの部分については私は拝見させていただきまして重要視して、我が国の外交政策、様々な外交を中心にした様々な施策にしてこのソフトパワーを充実させる意味での協力支援関係というのを作っていくべきではないかという立場に立って、国連、そしてアラブ世界、そして我が国についての対応策につきましてお聞かせいただければ有り難いと思います。
#73
○参考人(山内昌之君) 私の文章をお読みいただいてありがとうございました。
 今の議員の御発言、全く私そのとおりで同意見でございます。また、最後の御提言も、そのとおり私は日本が取り組むべき課題だという点で心強いお考えを伺った次第でございます。
 お尋ねについて全体としてお答えいたしますと、もちろんアラブの中においてこの種の青写真というものは従来もありました。しかし、かなり今回のものは包括的なものでありまして、しかも、エジプトを中心としたアラブ人の研究者自身の手によってかなりまとめられて出されたということ、しかも、インターネットというこの新しい手段によって世界じゅうに、どこでも読むことができるようになったと、この二つの点において、今回のこの報告書は私は従来ないものだと思いまして紹介したわけでございます。
 アラブ世界の中においては、しかしながら、この種の現実的な対処法に関して、すべての支持を得られるかというと、なかなかそこが難しいところであります。アラブの世界においては、今の社会的な発展の遅れあるいは国際関係において置かれている彼らの苦しい状況、こうしたものが米国主導、孫崎参考人がしばしば述べられるところのイスラエル要因、イスラエル・ファクター、こうしたものによるゆがみ、あるいはもっと強い言葉を使いますと、陰謀とさえ解釈する傾向もあります。
 したがって、そういうようなところに問題の本質を求めようといたしますと、社会的な内部におけるこの種のひずみを、中からの視点で、下からの見方で解決しようという点が弱くなります。したがって、前者のような立場に立つ人からすると、この種の報告書というのは余り歓迎されないという面があります。
 しかし、最後に、既に日本においても恐らく、私のこれは解釈ですが、関係各官庁あるいはNGO、学界などにおいてこの報告書の精読、精査が行われておりまして、来年辺りにかけまして幾つかの催しが行われるというふうに私は聞いております。国会などにおいても、皆さんの下で積極的なこういうことに対する御理解はいただいて、何よりも日本の得意な領域、ソフトパワーと平和貢献というこの領域においてアラブの市民たちと直接かかわっていくという大変重要なこれは視点でありますので、また今後とも御支援いただければと思っております。
#74
○齋藤勁君 ありがとうございました。
#75
○福島啓史郎君 アメリカがイラクを攻撃する事態になったときに、私は、その波及はイスラエルとパレスチナの関係に影響が及ぶことが大きいと思うわけでございます。
 それで、まず孫崎参考人にお聞きしたいわけでございますが、前回の湾岸戦争のとき、フセインはミサイルをイスラエルに撃ち込んだわけでございますが、イスラエルが自制をしたわけでございますが、今度は、一発だったんで自制は利いたんだろうと思いますけれども、フセインは今度は相当数のミサイルを撃ち込む可能性が高いんじゃないかと思いますね。そうした場合に、引き続き前回の湾岸戦争と同じようにイスラエルは自制できるだろうか。仮にできないとすれば、イスラエルがイラク攻撃なりに乗り出すとすれば、そこはまた新たな力関係への再配分を伴う、つまり、サウジアラビアあるいはヨルダンあるいはシリア等が今のアメリカに対して言わば協力的な立場あるいは中立的な立場を変える可能性が高いと思うんですが、その点についての御意見が一つでございます。それをお聞きしたいと思います。
#76
○参考人(孫崎享君) イラク攻撃が起こったときに、イスラエルの反撃がなくても、ただでさえアラブ社会、イスラム社会に不安定を持ってくるわけです。これに対してイスラエルが反撃、何らかの形で反撃すると、入ってくるということになれば、これ大変なことになるという危険はアメリカは重々承知しております。
 したがって、現在も私は、アメリカがイスラエルに攻撃に参加をするなと、基本的には自分たちがありとあらゆることをやってあるから、イスラエルに出てくるなということは現在も説得中であると思いますし、私はこの説得が功を奏するのではないかと思っております。
#77
○福島啓史郎君 山内参考人にお聞きしたいんですが、十一月十一日付けのウォール・ストリート・ジャーナルに出ているんですが、アメリカが考えているシナリオというのが出ているわけですね。フセイン崩壊後の、失脚後の短期間の米軍の直接統治、それからそれに引き続く国際的な文民統治機関による暫定政権ですね、それからさらに、その間に憲法制定あるいは総選挙等を通じて二年後あるいはそれ以上、二年程度後に新しい政権を作るということが出ているわけでございますが、そうしたアフガニスタンの例を頭に描きながらシナリオを練っていると思うんですが、そうした今申しました直接統治、米軍の直接統治、それから国際的な文民統治機関による統治、暫定的なですね、それから恒久的な政権という、その三段構えのシナリオについて、山内参考人はどういうふうに考えておられますか。
#78
○参考人(山内昌之君) 仮に、これもやはり仮定ということで前提にさせていただきますが、もしそういう攻撃が行われた場合、イラク国内の、国内のいろんな解体の仕方によっても変わってくると思います。つまり、混乱というものが今のイラクの国の枠組みといったようなものを残したまま推移するか、あるいはイラクという人工国家の枠組みそのものさえも危うくなるような形で混乱が深まるか、これによってそのシナリオ、今、議員がおっしゃった、先生がおっしゃったシナリオにいろんな微妙な差が出てくると。
 そういうことを前提に申し上げますと、しかしその場合でも、多少なりとも今おっしゃったようなコースをたどらざるを得ないんではないでしょうか。つまり、やはり混乱を収拾し、それを収めていくためのやはり強い力としての軍事力。ただし、この軍事力が専らアメリカ軍という、これは仮定でございますが、だけかどうか。これは、さっき申した国の混乱と解体のレベルにもよりますが、例えばイラクの親衛隊、共和国親衛隊という、こういう部分がどういう形でこの戦争にかかわってくるのか。これがある意味ではアメリカの方にくみしていくというような可能性を全く排除できないという説もあるわけですから、そういうことになりますと、力そのものの中にイラクの中の力も入ってきますから、決してアメリカだけではないということもあるかと思います。
 しかしながら、もちろん中期的には当然民政移管していくであろうと。そのプロセスに関して言うと、今御指摘になったような段階というのは一般論としては私は取り得るコースではないかと思います。
#79
○小泉親司君 先ほどお聞きできなかった点について、質問をさせていただきます。
 まず、山内参考人にお尋ねしたいんですが、いわゆる日本外交がどうあるべきなのか、この時期、この点で。特に我々が何をすべきなのかという問題ですが、私たちは、既に中東諸国に対しまして、緒方靖夫参議院議員の国際局長を中心としまして調査団を送りまして、イラク攻撃反対というふうな世論を、国際的な世論を起こそうということで、中東諸国を訪問してイラク攻撃は反対だという点で一致さしてまいりました。やっぱり今度の問題というのは、アフガニスタンのテロの報復戦争とは違うと、性格は私は全く違うと思いますし、今度の問題というのは、特にイスラエルでの戦争が続いているような状況などから勘案しまして、軍事的な脅しや威嚇じゃなくて、国連憲章及び国連決議の枠内で平和的な解決が図られるべきだというふうに私たちは強く思います。
 その点で、先ほど先生がお話しになったことも含めまして、私自身は、やっぱりこの点では、日本政府がアメリカに対して、先ほど言いました平和的な解決の立場をはっきりと言うべきだというふうに思いますが、もう少し、この点で日本政府がどういうふうにすべきなのか、その点、少し先生の御意見があったら、付け加えることがございましたらお聞きしたいのが一点。
 もう一点は、横田参考人にお尋ねしたいんですが、先生のを先ほどお聞きしまして、どうも感じだけで、感覚だけで申し上げて申し訳ないんですが、例えばアメリカの軍事行動のためには更に授権決議が必要だと。しかし、アメリカがやる場合があると。そうするとだれも止められないと。幾ら言ったって止められない、止まらないじゃしようがないじゃないかという議論に私はなっちゃうようなどうも気がしまして、アメリカに国連の憲章の枠で平和的に解決すべきだと、その国際ルールをしっかりと守ってやるべきだというふうな世論を私たちはすごく起こす必要があると思いますし、私も、ちょうど六七八決議が行われたときに、ちょうど赤旗の特派員でアメリカで国連決議、取材しましたけれども、このときとはやっぱり状況が違う側面があるわけですね。
 例えば、今度は中仏ロの共同声明という、要するに常任理事国三か国が共同声明を発出しまして、武力行使についてはいかなる自動性も認められないという一四四一の共同声明などを発表しているというのは、これは今までの湾岸決議その他の国連史上についても、私はかつてないことがありまして、そういうやはりアメリカの国連の枠内でのルールを破ろうとする動きに対して、大変国際政治の場では抵抗の動きが私たちは出ているというふうに思いますので、この点で少しやはり、平和解決を図るためには今どういうことが必要なのかという点を少し、もう大国の違反行為には無力という国連の限界というだけでは私はちょっと済まないんじゃないかなというふうにちょっと感じておる。非常に感覚的に申し上げまして申し訳ないんですが、その点で何か先生の少し御意見がありましたら併せてお聞きしたいと思います。
 以上でございます。
#80
○参考人(山内昌之君) 先ほどの中断されたところでのお尋ねと今のお尋ねを併せて少し考えてみたいと思いますが、イラクに対する軍事行動の根拠としてテロリズムの問題に直接結び付けていくことには、私は根拠が、今の段階ではエビデンス、具体的な証拠に照らして大変これは乏しいと思います。したがって、現今のテロ特措法は、アフガニスタンとの関係において、そして国際テロリズム、アルカイダとの関係において成立しているわけですので、この部分に関して私の専門的な地域との関係、地域性との関係で申しますと、イラクに対して直ちにこれが発動されるということは私としては理解しがたいと、こう思います。
 日本が、それではアメリカに対して何を言えるのかというと、これはイラクに対するのと同じでございまして、今、日本も政府特使が中東各地に派遣されたところでございますけれども、何よりも双方に決議一四四一、これの確実な実行と、一四四一のイラクによる履行を忍耐強く、しかし厳格に注視するように関係者に求めていく。特にこのスタンスは両方に対して不公平であってはいけないわけでありまして、安保理決議の権威と、それから全会一致で行われたというこの重み、これをアメリカにも徹底して理解してもらおうと。これが日本の外交の今の対米関係における基本的立場ではないかと思います。
 日本は何をできるのかということになりますと、これは非常に限られてまいりますが、特にこれは軍事行動が行われる行われないにかかわらず、実際に周辺諸国に難民が出る。そして、その難民の数というのは非常に大量にわたる可能性が高うございます。こうした周辺諸国に対するやはり必要な支援、さらに人道援助、こうしたような日本の、人間の安全保障という日本外交の一つの大きな柱であり、議員の皆さんにおいても非常に熱心に取り組んでおられる課題というのは、やはり今の段階においても、私たちとしては差し当たって重要な課題として念頭に置くことはできるのではないかと思います。
 あとのことは、これは実際に武力の発動という不幸な事態を招いた後のことになりますので、今の段階ではこのぐらいでお答え申し上げたいと思います。
#81
○参考人(横田洋三君) 小泉先生からの御質問につきまして、私の考えを述べさせていただきます。
 アメリカが単独で行動する可能性はいずれにしてもある。その場合に国連の枠組み、国際法の枠組みは、仮にそれが違法だと言ったところでそれ以上の行動が取れないということを申し上げました。それに対しての御質問が、それだけだともう何もできなくて非常に無力感に襲われるわけですけれども、そうではなくて日本として何かできることがあるのではないかという御質問だったと思うんです。
 おっしゃるとおりだと思います。日本ができることが限られていることは事実ですが、だからといって何もしなくていいということではない。私は、現在の小泉内閣、川口外務大臣のレベルでもできるだけ平和的に解決するようにということと国連決議を踏まえるようにということはメッセージとしてきちっと出していると思いますので、それはよろしいんですが、今の状況は、恐らくアメリカは日本を含めて国際社会からのプレッシャーに耳を傾ける状況にはないんだと思うんです。逆に国際社会に、外へ出ていって働き掛けて支援を求めるということをやって、かなり精力的にブッシュ大統領も動いておりますし、そういう意味では、しかもそれでかなり支持を得ている部分もあります。
 私は、まず第一に一四四一決議、これは決して、イラクに相当の厳しい条件を加えていますが、イラクがこのとおりできるかどうかは本当に心配なんですが、しかし他方で、できなかったときに国連決議として武力行使を容認はしておりません。だから、もしアメリカがやるとすればこの決議にはない根拠で武力攻撃をせざるを得ない。これはアメリカの選択としてはやはり国際世論を味方に付けられませんし、アメリカの国内にも、御存じのとおり、アメリカという国のこれが一つのいい面なんですけれども、今のブッシュ政権に対する反対の意見、実は現在国民の世論調査をやりますとブッシュ政権の強い姿勢に対しては支持が強いんですが、他方でやはりそれに対する非常に根強い反対意見もございます。そういうところに対しては、新たな決議なしに軍事行動をアメリカが一方的に取った場合には、その人たちからの反発は明らかに出てくると思います。
 で、私のアメリカの政策に対する一番効果的なアプローチの仕方というのは、やはりアメリカの世論を盛り上げて軍事行動に対しては枠を付ける、とりわけ安全保障理事会の決議を採って国際社会の行動の一つとしてアメリカも行動すると、そういう道筋をやはり取るようにする、この考え方は私はアメリカの良識ある人たちの中にはかなり支持されると思います。今のこの非常に熱した状況では難しいんですが、それは可能だと思います。
 もう一言ちょっと付け加えますと、今回非常に残念なのは、事柄が中東、アラブの国、イスラム教国を対象にした、本当は違うということは先ほど山内参考人がおっしゃられたとおりですが、しかし一種の文明の衝突的、宗教的な衝突的な側面がありますために、特にイスラエルの問題が絡んでおりますために、アメリカの主要新聞が余りアメリカのブッシュ政権の行動に対して強い反対の立場を取っていないということなんで、これが世論に影響を与えています。私はその点、日本政府はもうちょっとクリアな立場を取ってアメリカのジャーナリズムにもいろんな形で働き掛けをしていくということも考えられる、アメリカの場合には中から反論が出てこないとなかなか政府は動かないという感じがしております。
#82
○小泉親司君 ありがとうございました。
#83
○榛葉賀津也君 民主党・新緑風会の榛葉賀津也でございます。
 数点お伺いをしたいと思います。九・一一のテロ以降、大変不幸な出来事で我々に大きな衝撃を与えたわけでございますけれども、その中からも我々は何らかのことを得なければいけないということであるとするならば、私は、初めて日本の世論、そして日本という、日本の政治というものが初めて真剣にあのイスラムという社会、アラブという社会、そして中央アジアも含めたあの中東という社会に真剣に向かい合い始めたということにおいては大変重要な時代の変わり目にいるのかなというふうに認識をいたしております。
 ただ、よく日本は中東に手がきれいだから中立的な立場で関与ができるといったような、一見もっともな、そして大変理想に燃えた話も出るわけでございますし、私もそれを決して否定するわけではございませんけれども、私はまだまだ日本が中東においてできることは現実問題として限られているというふうに思っております。現実は手が汚れ切ったやはりアメリカがイニシアチブを持ってこの中東では唯一関与できる国と、現実はそうなんだろうなというふうに思っております。ただ、その中で、そのような状況においても何が我々ができるかということを模索していかなければならないというふうに思います。
 イスラムの社会は、先生方御承知のとおり、中東、アラブに多いわけではなくて、実際はそのほとんどがアジアに潜在をしているという状況でございます。その中で昨今、アジアでのテロが大変、イスラム原理教、タリバン、アルカイダ等を含めましたテロがアジアでも大変多くなってきている。アジアでのテロにおいて日本の果たす役割、日本ができることというのは、私大変多いのではないかというふうに思っておるんですけれども、山内先生にお伺いしたいんですけれども、このアジアの中で起こっているテロに日本がどう対処していったらいいのか、どう向かい合っていったらいいのかということを一点お伺いしたいと思います。
#84
○参考人(山内昌之君) 今年の日本外交の大きな成果は、一月だったと思いますけれども、小泉総理の東南アジア歴訪によってシンガポール宣言が出されました。その際に、東南アジア諸国と日本との関係につきまして多角的な、特にテロリズムに対する共同的な取組、更に明示的にシーレーンという言葉はなかったと思いますが、日本は何といいましても石油エネルギー資源を中東から運んでくる際にマラッカ海峡を始めとして東南アジアを通って資源エネルギーを日本に運んでおります。したがって、東南アジア諸国との友好なしには日本はいかなる意味でも国が成り立ち得ないわけです。
 その中で、やはり反テロリズムということに関しては、もうここで政府あるいは国会で一致した意見として東南アジアに対しても日本がかかわっていくというその点においてはもう異論がないと思いますが、やはりその基盤としての、社会基盤、基本的なそのインフラストラクチャー、そうしたテロをなくしていくような基盤づくりに関して、やはり依然としてODAの意味とか経済支援の意味というのがあります。
 したがって、ODAなどに関して余り短期的にこの削減といった方向だけではなくて、常に日本の長期的な見通しの中で、我々の言わば輸送やシーレーンといったものを沿岸においてセキュリティーを守ってくれているような諸国に対する友好の大きな枠の中でやはりそういう問題も考えていくということで、例えばODAなどという問題も、アドホックに開発ということだけではなくて、全体としてふだんからの日本がそういうテロルを避けられている、そしてシージャックとかパイレーツと呼ばれるような集団とテロが結び付く可能性を排除しようとしている国々の努力ということについて、我々は意識しておく必要が常日ごろからあるのではないかと思います。
#85
○榛葉賀津也君 引き続き、先生にもう一点お伺いをしたいと思います。
 アラブ諸国、イスラム諸国において、これから大きな、私重要なポイントになってくるのが教育ではないかというふうに考えております。決して、イスラムという教えが現代にそぐわないというわけでは決してございません。ございませんけれども、現実問題としてコーランを中心とした文言だけでは、今の複雑化、情報化した社会に対して、若者を中心としたイスラム教徒、アラブの若者に様々な問題が説得できにくくなってきているということが問題にあろうかと思います。決して日本の教育であるとか西洋の教育を押し付けるわけではなく、彼らの価値観というものを尊重しながらどのようにこれからイスラム社会が教育改革というものに取り組むべきかという点について、ちょっと大きな問題ですけれども、お伺いをしたいと思います。
#86
○参考人(山内昌之君) 大変大きな問題ですが、これもまずアフガニスタンの例からお話し申し上げたいと思いますが、アフガニスタンの復興支援のほとんど第一段階を切って日本は、外務省が動く以前かもしれません、あるいは同時ぐらい、文部科学省が積極的にアフガンの教育支援に取り組む姿勢を見せ、その後も様々な形で取り組んでいます。さらに最近では、大学自体のイニシアチブとして、例えば五つの女子大学が提携して女性の教員をかの地に派遣して、女性教育に日本は積極的に役立ちたいと、こういうことを現実に行っております。
 したがって、これは官のレベルだけではなくて民のレベルにおいても、アフガニスタンにおいて多重的に進行しております。こういう営みを成し得ている国というのは世界的に見てもごくまれでございまして、こうした取組は今後アラブ諸国にも敷衍されてよろしいかと思います。もし不幸にして、イラクにおいて不幸な事態が起きた場合、やはりその復興のプロセスにおいては同様な形で、日本が教育支援という正に我が国の平和外交にふさわしい柱として実現していくということは言うまでもないと思います。
 その際、非常にこれは私どもが有り難いことだと思っていますが、今、先生おっしゃったように、中東において日本は手を汚していないというのは、これはいい意味での方でも事実なのであります。いい意味の方だけで取っていきますと、悪い意味で取りますと何もしてこなかったというふうにも取れますが、現実にはしかし中東というのはやはり日本の植民地経験、それから歴史的な負の遺産がない地域でございまして、そこにおける日本人に対する無償の信頼感、我々に対する、やはり白人やヨーロッパ人と違う、そういう存在に対する、宗教もキリスト教というのは全体としてイスラムとの関係では、十字軍以来、やはり西側の支配者の宗教という形で入ってきました。そういう世界史にひとつ縁のないところで日本が存在するという意味は大きいと思います。
 そういう遺産を踏まえて、私は、教育という場にもニュートラルな形で支援ができるというふうに考えております。今の先生の御指摘のとおりだと思います。
#87
○榛葉賀津也君 ありがとうございます。
#88
○広中和歌子君 三人の参考人の方々、本当にありがとうございました。
 今日のこの参考人質疑というのは、私ども、前回行いましたテロ特措法の二度目の延長が閣議決定されたことに関して参考人の方々に御意見をお伺いしようと、そういうことで設定されたものなのでございますが、まず孫崎参考人にお伺いしたいんです。
 このテロ特措法でございますが、昨年の九・一一のあのテロをベースにして作られた法律でございますが、アメリカなどはテロとイラクとのかかわりをいろいろな形で指摘しているわけで、もしこれが安保理などで関係付けられた場合には、テロ特措法が今後あり得るかもしれないイラク攻撃に対して援用される可能性があるのかということをお伺いします。
 それから、先制攻撃という言葉が非常によく聞くわけでございますけれども、あるアメリカの人に聞いたんですけれども、先制攻撃の意味なんですけれども、それは要するにあり得る災害なり戦争なり攻撃なりに対して準備をするということであるというような言い方をしているんですね。ただ、非常にアメリカはその準備というのを真剣にやりますから、場合によって例えば北朝鮮から譲歩を引き出すというようなことも結果として起こりますし、それからイラクに対しても国連決議一四四一に持っていくようなプレッシャーを掛けていくというようなことで、なかなか面白いなと。面白いという言い方はよくないかもしれませんけれども、こういったような非常に力の外交というものに非常に関心あるわけですけれども、先制攻撃の意味についてちょっとお話しいただけたらと思います。
 それから、何人かの同僚議員も触れているんですが、山内先生の中東シルクロード外交というのは非常にイメージとしても分かりやすいし、大変日本がそういうことをできたらばすばらしいと思いますし、横田先生も国連の無力に代わる新たな行動のイニシアチブとして日本がするべきこともあるんではないかというようなこともおっしゃっておりますけれども、日本なりほかの国、国連、UNDPも含めてですけれども、することは十分あるにいたしましても、やはりアラブの国々、その中からの力というものが出てこないと駄目ではないかなと思うんです。
 この時代の風、ソフトパワーの充実をというふうにおっしゃっていますけれども、良質なアラブの知識人の層、そういう人たちがイニシアチブを、つまりアラブ社会をより豊かな、より国際社会と共存できるような体質に変えていくためのイニシアチブを取れるような状況というのはあるのかどうかということを教えていただければと思います。これは山内先生にお伺いいたします。
#89
○参考人(孫崎享君) 国連の方がテロとイラン、イラクの関係が明確になれば、テロ特措法の適用というのは何の問題もないであろうと思います。
 ただし、私は、冒頭申し上げましたように、今回のイラクに対する決議は、国連の安保理全部で、全会一致でやっているということ、それから国際社会がイラクに対して大量破壊兵器をなくするという圧力を更に強化していく必要があるということ、この点からいけば、国連の安保理を受けて日本の国会がどういう形で対応するか、新たな法案を出すことがいいのかどうかということはお考えになっていただいた方が国連、国際社会の平和貢献に役立つのではないかと、このように思っております。
 次に、テロと先制攻撃の方なんでございますけれども、テロの関係者から見ますと、明らかにこれは武力的な手段で排除することを考えております。九・一一の後、余りにも打撃が激しいということ、そしてこれを予防する、水際で予防するというのは非常に難しい作戦でございますから、したがって前でもってこれを排除する、物理的な手段で排除するということは、テロの関係者からは出てきた発想だと思います。ただ私、この考え方が、先ほど申し上げましたように、中間的な国、イラン、イラク、北朝鮮というような国に対して抑止が、抑止の効果が働かないかというと、私は、ここは働く可能性があって、もう少し理論的に考えてみる必要があるんではないかと、このように思っております。
#90
○参考人(山内昌之君) 御指摘のことについて申しますと、アラブの世界にやはりそれは良質な知識人はいるわけでございまして、何とか欧米、ひいては日本との対話などを通して自分たちをもっと更に客観化しようとする人たち、そういう人たちはやはりいらっしゃいます。
 例えば、日本とのかかわりについて申しますと、私も関係しましたけれども、今年の三月に、例えばバーレーン、湾岸諸国の一つであるバーレーンにおいて、日本とアラブの間の一種の文明の対話、アラブ諸国プラスイランも含めましてそういう知識人あるいは、プロパーの政治家の方はいらっしゃらなかったと思いますが、そういう人たちと日本からも人が出掛けていきまして議論しました。そういうところでは日本の経験あるいは日本が期待していることなどについての意見が向こうからも寄せられました。引き続きそれは今度の、来年の三月の上旬に今度は東京で行われることになっております。
 こういう種の対話の努力というものは常に行われておりますし、そういう中から、今、先生御指摘のような知識人の輪の広がりと、それだけではやはり駄目なのでありまして、そういう知識人や、私たちのような教師などのかかわりで多くの若い世代、何といってもやっぱり次の世代を担う若い人たちにそのバトンをタッチしていかなければいけませんから、そういう考え方や理念というものを幅広く学生などに、あるいは若いボランティアたちに広げていきたいと、こういうふうに思っております。
 また、ささやかながらそうしたことに、一部ですが、取り組んでいる者たちが日本の方にも多いということでございます。
#91
○山下善彦君 どうも今日はお忙しい中、参考人の皆さん方、出席いただきまして本当にありがとうございます。時間も限られた時間でやっておりますので、簡単にお伺いしてみたいと思います。
 いろいろのお話が出ておりましたが、私の方からはポスト・フセイン体制という角度で参考人の先生方に伺ってみたいと思います。
 イラクがこの国連決議一四四一号を守らなかった場合、こういう場合には、少なくとも今いろいろアメリカのマスコミ報道、テレビ等も、CNNを見ておりましたりしている中で、米国は間違いなくイラク攻撃を開始するんではないかと、私はそういうふうに思っております。その場合に戦略目標といたしますのが、間違いなくフセイン政権を倒してイラクに親米政権を樹立するんではないかと、こういうふうに思うのでありますが、しかし、イラクという国、先ほどもお話の中に出ておりましたが、国内的にイラクの状況を見ておりますと、シーア派とかスンニ派が混在するだけではなくて多くのクルド人を抱えておると、こういう状況、このために国家としての求心力はほとんどない状態、国民国家としての基礎というものが欠けておるんではないかと、こういうふうに見れるわけでございます。
 こうした国が一つにまとまっていくためには、善かれあしかれ強力なリーダーが必要と思われますけれども、ポスト・フセインを考えた場合、イラクをまとめていける人物というのは、一体どのような条件を備えていることが必要なのであろうかという点、また、ポスト・フセイン体制ができ上がって、これが不安定になったり、また再び大量破壊兵器などの開発を始めてしまったりすることなく、本当にこの中東に自由と平和と安定をもたらすものとなり得るのであろうか。その点について伺いたいと思います。孫崎参考人からお願いいたします。
#92
○参考人(孫崎享君) ポスト・フセイン体制の不安定に関しましては先生とほとんど同じ感じを持っております。私は、イラクの情勢は、宗教的、民族的からいってかなりの国内のまとまりというのが非常に難しいというところがございますし、かつアメリカに対して全面的に国民が協力をするという雰囲気になるかということについても若干の不安を持っております。
 したがいまして、軍事行動があった後、特に二年、三年と西側諸国が軍事力でイラクをコントロールしているという事態では不安定は勃発しないと思うんですけれども、いずれにしろ、中長期には西側諸国の武力はイラクから出ていきますでしょうし、そのときにはイラク情勢はやはり不安であると。そのイラク情勢の不安というのは中東のその他のところに影響を与えていくということで、私はポスト・フセイン体制についてはやや悲観的に見ております。
#93
○山下善彦君 では、同じ質問で、山内先生。
#94
○参考人(山内昌之君) ポスト・フセインのシナリオも、これもやはり何度も申しますように仮定のことが入りますので御容赦いただきたいのですが、私は、いろいろな受皿ということが議論される際に、やはり基本的には軍の問題ではないかと思います。
 今、イラクは不安定な国家だという御指摘、そのとおりでございますが、それが辛うじてやはり一つの人工国家としてまとまりを持ってきたのは、残念ながら、やはりこれは上からの力、とりわけ善きにつけあしきにつけ軍事力による強制力、これをある程度持たないと、これまでのです、これまでのイラクという人工国家はもたなかったという現実が一方であるわけです。
 その際に、今もアメリカが接触しているというふうにも言われておりますが、結局、最強の軍事力である先ほど申しました共和国親衛隊、大統領親衛隊、リパブリカンガードと呼ばれる部分、この部分に対してアメリカはかなり接触や神経戦を挑んでいると、一方では。つまり、そのままもし兵舎から出てこなければ、戦わなければ、それは温存する、それを基礎にしてイラクという国の再建もあり得るといったようなことを流しているということも聞いております。これが事実かどうかは私はここで全く保証するすべはないのでありますが。
 言わんとするところは、何らかの形での軍事力、特にイラクの側における軍の指導部の中からどういう人物が出てくるのか、この辺りが現実的には受皿を考えていくときには私は大事な要因の一つ、すべてではありません、一つではないかと思います。
 よく、ロンドン等における亡命者の在り方、人たちのことが報道されますが、本質的に言うと、その部分よりも、今むしろ我々に見えない部分であるイラク国内のそういう力、実際に存在している力、ここがフセインとの関係でどういう動きをしていくのか、それを注視していきますとただいまの先生お尋ねの件がやがて少し見えてくるんではないかと思っております、というふうに少なくとも私は今の時点で考えております。
#95
○参考人(横田洋三君) 私は、もしアメリカあるいはアメリカとともに行動する幾つかの国がイラクに対して軍事行動を取った場合、どのくらい掛かるか分かりませんけれども、軍事的にはアメリカの側が勝利するというのは、これは力のバランスで恐らく間違いないと思います。ただし、イラクはこれまでのそういう状況に比べればかなり手ごわい相手ですので、若干それは手をこまねく可能性はある。しかし、究極的には一応軍事的には勝利するだろうと、こう思います。
 そういうケースでこれまであったのを見ますと、例えば、コソボについてNATOが攻撃を加えた、それから東チモールについてはオーストラリアを中心に多国籍軍がまず行動を取った、それからアフガニスタンではアメリカを中心に多国籍軍が行動を取った。いずれも軍事的に割合短期間で勝利します。その後はどうなるかというと、政治的混乱をそのまま置いて軍が引き揚げるというわけにいきません。そこで、軍がある程度そこにプレゼンスがあるわけなんですが、それだけでは何も出てこないわけで、そこで大体起こっている現象というのは、国連が何らかの形の平和維持活動をそこに展開すると。選挙監視なり軍事要員の非武装化とか、あるいは市民生活への再統合とか、あるいは教育の促進、ベーシックなインフラの整備、こういったようなことをPKO活動の一環として行っていく。最近、平和構築とかピースビルディングということが言われていますが、大体そういうフェーズに入っていくというのがシナリオになります。
 果たしてイラクの場合にそういうことが想定されているのかというと、今のところはまだその準備はないと思います。したがいまして、その辺をどうするかというのが一つ課題なんだろうと思います。
 その場合に、じゃイラクでできるかという問題があるんですが、これまでもコソボ、東チモールというような非常に小さな国に対してそういう平和維持活動を展開した場合にはある程度うまくいく可能性がありますが、アフガニスタンでは御存じのとおり、もうかなり手間取って、もう今果たしてこのまま順調に平和構築が進むかどうか、岐路に立っていると思います。アフガニスタンよりももっと強固な政権の下にあるイラクが崩れた場合にどうなるかということを考えますと、それを立て直すための国連の活動は相当に規模が大きくお金も掛かることです。これまで展開しているいろいろな平和維持活動に加えてこれをやるということは、現在の国連では資金的にも能力的にも、できないとは申しませんが、極めて難しい。
 そういうことを考えますと、私はイラク攻撃の後の国づくりの部分というのは非常に難しい。とりわけ、イラクというのはやはり歴史の長い国で、イラクの人たちにはそういう意味での自分たちに誇りがあります、民族に対する。ほかの国もあるんですけれども、とりわけイラクにあると思うんです。したがって、だれでも国連軍として来ればいいということではなくて、非常にどういう構成で行くのか、それから事務総長特別代表をどういう国のどういう人にするのか、こういう選定が物すごく難しくなるという気がします。
 この点を含めて考えますと、私にも明確なシナリオはありません。多分国連の平和維持活動しかないと思うんですが、しかしそれは非常に難しいというのが私の意見でございます。
#96
○山下善彦君 ありがとうございました。
#97
○山本一太君 なるべく短くあれしたいと思うんですけれども、山内先生に一言お聞きしたいと思います。
 先ほど三人の参考人の方々から、アメリカのイラク攻撃の可能性は残念ながら五〇%以上あると、こういうお話がございました。イラク攻撃が十二月にあるのか一月にあるのかは分かりませんけれども、イラク攻撃が万一行われた場合、日本政府の対応を考えてみると、恐らく総理がかなり早い時点でアメリカに対する政治的な支持を表明する、さらにはアフガニスタンのときのように、日本が今の状況でできる貢献のパッケージを同時にタイムリーに発表するということになるのではないかと思います。
 私自身はイージス艦を今回は出す必要はないのではないかと思っておりますが、議論の中でも出ましたけれども、アフガニスタンに対するオペレーションを強化することによって、言わば一種の役割分担という貢献をアメリカ側にアピールをする、例えば艦船に対する給油を今の米英から更に広げるということも恐らく表明すると思いますし、また参考人の先生方からも出ておりましたけれども、ポスト・フセインをにらんだ復興援助の分野とか、あるいはその地域、周辺地域の安定化のための経済協力とか、こういうことも恐らく総理のパッケージに含まれてくるんではないかというふうに思っております。
 私の質問は、もしイラク攻撃が起こって、日本がかなりタイムリーにアメリカの支持表明をする、イージス艦は出さなくても、かなり目に見える形で今回のアメリカのイラク攻撃、アメリカのと言うのが正しいのか、国連決議に基づいてやるとすると国際社会のと言えるのか分かりませんけれども、それの支持を表明をすると。場合によっては、周辺諸国にもしかすると政府特使みたいなものを出して今回の米英を中心とした作戦に対する理解を求めるようなこともするかもしれない。
 こういう中で、やはりアフガニスタンと違うのは、山内先生も先ほどいろいろおっしゃっていましたが、日本は中東で手を汚していない、非常に中立的な立場で欧米とは違った信頼感があるというお話がありましたけれども、今度日本がこのイラク攻撃を支持するという立場を取った場合、当然憲法の制約で軍事行動には参加できないし、もちろん日本はできないことをやるべきではないと思いますけれども、少なくとも同盟国であるアメリカをかなり強力にバックアップする、さらには復興支援あるいは艦船に対する給油の拡大のようなことで支持を表明すると。これに対してアラブ世界がどう反応するかということを私は大変懸念をしております。
 例えば、アフガニスタンのケースと違って、今回日本がこの国連決議に従って行われるであろう攻撃に対して支持を表明した場合に、アラブ諸国、アラブ世界から日本に対するテロの可能性というものが現実的なものになるのではないかという懸念もあるわけなんですが、先生にお聞きしたいのは、そういうときに日本外交は何を気を付けたらいいのか、そういう事態を引き起こさないためにアラブ世界に対して、イラク攻撃については、これは恐らく日本の国益上から考えても、小泉、ブッシュのこれまでほとんどなかったような首脳間の信頼関係から考えても、これは支持を非常にタイムリーに表明せざるを得ないという状況の中で、日本外交は最悪の状況といいますか、アラブ世界との決定的な対立を避けるためにどういうことに留意をすればいいのかというのを山内先生にお聞きしたいと思います。
#98
○参考人(山内昌之君) 時間がありませんので、山本先生のお尋ねに全部お答えできないと思いますが、一つはアメリカの行動という御指摘でしたが、それはどういう形を取るかということも随分違いがあると思います。一四四一だけで自動的に行われるのか、あるいは一四四一の後にもう一度確認されることによって行われていくのか。すなわち、国連の言わば受任ともいうべき、あるいは国連によるラティフィケーション、そういう承認といったようなものが更にあって行われていくのか。すなわち、国際世論が全体として、今回シリアが、アラブ諸国で最も強硬であったシリアさえも含めて安保理が全会一致で採択したと、こういうようなことが再び行われるということになりますと、これはアラブの世論のバックアップも受けているということになります。したがって、これは国際世論そのものの動きになりますから、そこに日本がかかわるということについては、これは問題はないと思います。
 それから第二に、日本の対応に関しては、アラブ側においては、日本の対応に関して事細かにフォローしているというようなことは、地元のメディア等々においては残念ながらほとんどないというのが現実です。私たちが日本においてアル・ジャジーラを始めとするアラブの様々なメディアについてモニターしていると、こういったレベルと同じように日本についてアラブの世界がモニターをし、かつアラブの世論が日本の動向を注視しているということは、私たちが考えているほどにはないということです。したがって、日本の行動などを子細に検討してそれで反日というふうに行くかどうかということについては、やや私は懐疑的であります。
 何よりも日本が、今、先生も御指摘になったように、ただ単に武力行使に伴う後方支援であるとか、あるいは言わば湾岸戦争のときのような財政支援とか、そういうことだけで議論するのではなくて、戦後復興をパッケージした、特に日本が、アラブ地域の先ほどから触れているソフトパワーの問題も含めてそうした戦後復興、それからPKO、人道援助、さらに周辺諸国に対する様々なレベルの援助、こういうものを具体的な戦略として、これが中東シルクロード外交のかなめということになろうと思いますが、パッケージとして事前に提示していくということが前提になるわけです。
 したがって、その場合に日本は、やはりほかの国よりも先んじて平和構築や戦後復興ということに関して関心のある国として中東において認識されると思います。この面を日本が強調していくということによって、今、先生御心配のようなことについては懸念が最小化されるのではないかというふうに私は思っております。
#99
○委員長(松村龍二君) 予定の時刻が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 この際、一言お礼を申し上げます。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表し、厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   正午散会
ソース: 国立国会図書館
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