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2002/11/27 第155回国会 参議院 参議院会議録情報 第155回国会 共生社会に関する調査会 第3号
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2002/11/27 第155回国会 参議院

参議院会議録情報 第155回国会 共生社会に関する調査会 第3号

#1
第155回国会 共生社会に関する調査会 第3号
平成十四年十一月二十七日(水曜日)
   午後二時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     中原  爽君     椎名 一保君
     神本美恵子君     郡司  彰君
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     岡崎トミ子君     小川 勝也君
     郡司  彰君     広中和歌子君
     千葉 景子君     山本 孝史君
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     小川 勝也君     辻  泰弘君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         小野 清子君
    理 事
                有馬 朗人君
                清水嘉与子君
                橋本 聖子君
                羽田雄一郎君
                山本 香苗君
                吉川 春子君
                高橋紀世子君
    委 員
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                大野つや子君
                小泉 顕雄君
                後藤 博子君
                椎名 一保君
                段本 幸男君
                山下 英利君
                小川 勝也君
                鈴木  寛君
                辻  泰弘君
                広中和歌子君
                山本 孝史君
                風間  昶君
                弘友 和夫君
                林  紀子君
                福島 瑞穂君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   参考人
       日本社会事業大
       学社会福祉学部
       福祉援助学科教
       授        佐藤 久夫君
       東洋英和女学院
       大学人間科学部
       人間福祉学科教
       授        石渡 和実君
       全国自立生活セ
       ンター協議会代
       表        中西 正司君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (共生社会の構築に向けてのうち障害者の自立
 と社会参加に関する件)

    ─────────────
#2
○会長(小野清子君) ただいまから共生社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十日、中原爽君及び神本美恵子君が委員を辞任され、その補欠として椎名一保君及び郡司彰君が選任されました。
 また、昨二十六日、岡崎トミ子君、郡司彰君及び千葉景子君が委員を辞任され、その補欠として小川勝也君、広中和歌子君及び山本孝史君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(小野清子君) 共生社会に関する調査を議題といたします。
 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科教授佐藤久夫君、東洋英和女学院大学人間科学部人間福祉学科教授石渡和実君及び全国自立生活センター協議会代表中西正司君に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございました。
 参考人の方々から、「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件に関しまして忌憚のない御意見をお述べをいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、参考人の方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べをいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えをしていただく方法で進めさせていただきたいと思います。
 なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていただきたいと存じます。
 また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。
 それでは、佐藤参考人からお願いいたします。佐藤参考人。
#4
○参考人(佐藤久夫君) 佐藤久夫でございます。
 この機会をいただきましたので、今日は四点ほどお話をさせていただきたいと思います。(スライド映写)
 一つは、最近、世界保健機関で制定されました国際生活機能分類、ICFといいますけれども、これに基づく障害施策の見直しをという点であります。スライドで八枚目までがこの関連のスライドになっております。
 二番目は、障害者福祉の根拠法の在り方ですけれども、現行の縦割りの制度を改めて総合的な障害者福祉法の制定をということであります。これについては、九枚目から十三枚目までこの関係のスライドになっております。
 それから、十四から十七まで障害者差別禁止法の制定をということでお話をさせていただきたいと思います。
 そして最後に、最後のスライドなんですけれども、来年からの新・新長期計画というのが間もなく策定されようとしておりますけれども、その中で実態調査をきちんと行って評価をして、必要な軌道修正をしながら新しい計画を進めるという手法が必要なのではないかという、その四点についてのお話をさせていただきたいと思います。
 世界保健機関は一九八〇年に国際障害分類というものを発表しました。それから二十一年ぶりに新しいものに改正されました。直訳すれば、生活機能と障害と健康に関する国際分類というタイトルになりますけれども、国際生活機能分類というタイトルで厚生労働省からの翻訳が最近出されております。ICFというふうに略されております。
 一九八〇年版の障害の見方というのは、この国際障害分類の概念モデルというのは、まず病気やけがが起こり、そのために手足の麻痺、機能障害が起こり、歩けないというような能力障害が起こり、就職できないというような社会的不利が起こるというような、こういうモデルを作り出しました。従来の病気の分類ではなくて、障害の分類を作ったということで非常に大きく影響を与えておりました。
 しかし、障害者団体などから、我々が就職できないのは我々の障害のせいであるのではなくて、我々を受け入れない社会の環境にあるというような批判も出て、あるいは知的障害、精神障害の領域などでは、自分たちの分野の細かい項目が余り用意されていないというような批判も出て、九〇年ころから改正の取組が始まって、二〇〇一年にタイトルも変えられた新しいものが出されました。
 それがこのスライドですけれども、現象を三つのレベルで見ようという点に変わりはありません。ただ、プラスの表現をしようということで、心身機能・構造、活動、参加という、それぞれの三つのレベルがあると。そして新たに環境というものを取り入れております。病気やけがだけでなくて、加齢とか妊娠中とかいうようなことも含めて健康状態というふうにして、人間のだれでも持っている三つの次元の生活機能が、一方では健康状態と、他方では環境との相互作用によって問題を抱えた状態を障害と言おうというふうな考え方になりました。環境はすべての生活機能に影響を与えているということがこうした矢印で示されています。
 例えば、私は眼鏡を掛けていますけれども、目の視覚機能に問題がありまして、それを眼鏡という環境によって補って見る活動を回復しているというふうに理解することもできます。
 全体で千四百余りの細かい項目が分類されておりますけれども、その分類の面からも、新たに環境の分類をこの中に統合してよりバランスの取れた、医学的なものを中心としたものだけでなくて、環境などを含めたよりバランスの取れた分類になっていると言うことができます。
 これは、ある知的障害を持つ人が通所授産施設に通っていて、グループホームで暮らしているわけですけれども、一人で買物ができないという状況であったので、施設職員が千円札を持って買物をする練習をしてあげて、地元のマーケットの協力も得て、つまり環境が変わり、本人の能力をちょっと高めて、それによって週末には千円札を持って自分の好きなジュースやお菓子を買いに行くことができるというふうになったという、日常的にどこでも行われていることですけれども。こういう環境と人間の相互作用というふうな考え方をより計画的、意識的に取り入れることによって、よりいい援助ができるというふうに期待されております。
 同時に、この十五年間の日本政府の精神保健福祉政策の発展過程の中でも、病気と障害のいろんな違ったレベルに対応して違ったアプローチをやろうということで発展をしてまいりました。それまで、精神障害というのは病気なんだから病気の治療だけしていればいいという時代があったわけですけれども、能力障害あるいは活動制限に対してはリハビリテーション的な訓練を、それから社会参加のためには福祉施策をということで、この十五年間に発展して現在に至っています。こうした政策の基礎として、八〇年版の国際障害分類が政府の文書などにも使われております。
 このように人間と環境との相互作用として障害をとらえるということ、それから、病気、けがだけでなくて、妊娠中や加齢というような健康状態に伴って生活機能が、また環境の障壁にも伴って生活機能が困難な状態になったということを障害と見る、つまりすべての人の問題だということを描いているという点、そして、この関連図の中のいろんな要素にアプローチをする必要があるということを描いているという点、本人の心身機能や病気を治したり、あるいは環境を変えたり、あるいは補装具によって活動の能力を高めたり、サービス、環境ですけれども、そういうものによって参加を高めたり、いろんなアプローチを総合的に行って障害者の社会参加を高めようという、そうした武器としてこれを活用することができるのではないかなというふうに思います。
 しかしながら、今、政府の方で進めている新しい障害者基本計画に関する懇談会に先ごろ提出されました新障害者基本計画案というのがありますけれども、これは、明日までをパブリックコメントの締切りとして、あさっての最終懇談会でもう決めてしまおうとしているわけですけれども、このICFの活用に関しましては非常に部分的にしか取り上げていないという問題点があります。
 こうした人間と環境の相互作用というものを今後の共生社会を考える上での、そして新長期計画を考える上での基本的な考え方に据える必要があるのではないかというふうに思います。
 それから、二番目の総合障害者福祉法ということに関連する話ですけれども、これは日本の年齢別、障害種類別の縦割りの福祉法を示したものです。歴史的な経過もあってこういう縦割りになっているわけですけれども、先進国はもちろん、遅れて出発した韓国やタイなどでも総合的な障害の種別を統合した根拠法を設けるようになってきています。
 日本でも、三つの法律、それぞれ違う目的で出発したわけですけれども、この十年来の法律の改正で、いずれも自立と社会参加という目的を共通して掲げるようになってきています。そして、来年からは福祉の実施も市町村をベースにして一元的に行われるという時代を間もなく迎えようとしております。
 こういう中で、私も理事をやっております日本障害者協議会では、総合的な福祉法の試案というのを出して関係者に送ったりなんかしているところであります。その幾つかのポイントをこのスライドと次のスライドで紹介しております。
 この新障害者基本計画案の中では、基本方針の中で総合的かつ効果的な施策の推進という項目を設けておりますけれども、その中で施策体系の見直しの検討という項目が設けられて、施設サービスの再構築など適宜必要な見直しを行うという表現にとどまっております。法律の統合というふうなことは掲げておりませんし、その検討すら掲げていないという非常に消極的な姿勢にとどまっています。
 この統合的な障害者福祉法というのは、身体障害、知的障害、精神障害の福祉サービスの格差をなくすということがまず第一の意義だろうと思います。第二の意義としては、谷間の障害をなくすということで、高次脳機能障害とか肝臓機能障害だとか発作性頻脈だとか、いろんなタイプの機能障害が除かれているわけですけれども、そういうものへの対応。それから三番目に、これが一番大きい意義かと思いますけれども、リハビリテーションや治療によって本人を変えるということを主眼にしたそういう仕組みから、本人を変えるんでなくてサービスと環境を整えるという、サポートを中心にした施策への転換ということが非常に大きいかと思います。グループホームだとかホームヘルプだとかデイサービスだとかガイドヘルプだとか、そういうようなもの、サポートを中心にした、行く行くは高齢者と障害者との区別もなくすような、そういう仕組みにしていく。
 もちろん、リハビリテーションなどをきめ細かくやる必要はありますけれども、基本はサポートにするということで、そのことによって共同利用の地域型の歩いていけるような距離でのサービスを受けられる、あるいは家庭訪問でサービスを受けるというふうな、そういうものにしていくということだと思います。
 それから、市町村行政にとっても、障害者本人や市民にとっても分かりやすい制度になる。縦割りで手続も複雑で、診断書の様式なんかもいろいろ違ったりするというようなことでは、とても小さな自治体で職員がサービスを提供するということが難しくなってくるのではないかというふうに思います。
 新障害者基本計画案では非常に消極的な取上げ方しかなされていないわけですけれども、既に数年前に、国では障害保健福祉部ということで行政機関を統合しております。それから障害関係の審議会も統合して、先ほど言いましたように法目的も共通のものになり、具体的なサービスメニューも、非常に三障害似通ったものになってきております。それから、市町村での一元化ということも、もう来年の四月には完了するということになっております。したがって、次の十年では本格的に法律そのものの統合ということを検討課題にする必要があるのではないかというふうに思います。
 それから三番目の課題は、障害者差別禁止法の制定ということです。
 この表は一部ですけれども、発展途上国まで含めて多くの国々で既に障害者差別禁止法を設けるようになってきています。四十か国を超えていると聞いております。
 アジア太平洋地域でも、オーストラリア、ニュージーランドはもちろんのこと、このスライドにあります香港、それからインド、スリランカ、フィリピンなどでも障害者差別禁止法が設けられております。スリランカでは、法律は六年前にできたけれども、その施行規則ができないのでまだ実施に入っていないというふうなことを、悩みを言っておりましたけれども。
 これは香港の障害者差別禁止条例ですけれども、本人だけでなくて、配偶者、家族、友人なども守られ、差別だけでなくて嫌がらせというようなものも対象となるということで、機会均等委員会で調停をするということで、裁判に直接持っていくものではないですけれども、必要であれば裁判にも持ち込むというような仕組みになっています。
 EUでは、EUひっくるめて遅くとも二〇〇六年までに障害者差別禁止の、雇用と職業の分野ですけれども、設けられようとしております。
 この点に関しましても、新長期計画案の中では非常に抽象的に、人権が尊重される社会の実現を図るというような表現にとどまっており、きちんとした法制度の確立を考える必要があるのではないかというふうに思います。
 四番目に、新しい二〇〇三年からの長期計画の中には評価活動を組み込むと。今のところ、五年置きに知的障害と身体障害についての実態調査をされていますけれども、精神障害まで含めて、難病まで含めた総合的な生活実態調査、ニーズ調査を行って、それを二〇〇三年の出発時点と中間見直し、それから最終年に行うということが必要なのではないかというふうに思います。
 ちょっと二、三分オーバーしてしまいまして、大変失礼しました。
 以上です。
#5
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 それでは、石渡参考人にお願いいたします。石渡参考人。
#6
○参考人(石渡和実君) 石渡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、障害がある方の自立と社会参加ということをテーマにということです。
 私が社会参加をしましたのが二十年ちょっと前になるんですけれども、福祉を実践する場で、障害がある方の働くこと、暮らすことというのを支援する立場で十年ほど働いておりました。ですので、私、今日、レジュメ、「共に働くこと」の意義というようなサブタイトルの何枚かのレジュメを皆さんのお手元に配付していただいているかと思うんですけれども、そういう実践の場の声という辺りから、働くことを中心にお話をさせていただこうというふうに思っております。
 今、佐藤先生の方から障害者福祉のこの二十年くらいの流れについて御説明をいただきましたけれども、来年、新しい長期計画がスタートするに当たって、今地域で暮らす、そして、その暮らすときに働くということがやはり重要な要素になってきますので、働く場の確保という辺りをいかにきちんと位置付けていくかという辺りが論議されているということですけれども、そのレジュメに沿ってお話をさせていただきますと、まず、佐藤先生もおっしゃっていましたが、日本の障害者福祉は、身体障害、知的障害、精神障害と三つの障害に分けているわけですけれども、身体障害はそれなりに歴史もあり、サービスも充実してきていると思いますが、知的障害に関してはようやく地域の暮らしというのが大きなテーマになって流れが動いてきた。そして、精神障害の方については、まだまだ福祉サービスというところでは課題が大きいわけです。それが働くことにとても顕著に表れているというふうに思うわけです。
 レジュメの一ページ目のところに、日本の働くことを支える制度がどう変わってきたかという大まかなところを紹介しているんですけれども、最初に、法律としては一九六〇年に身体障害者雇用促進法という法律が制定されるわけです。今は精神薄弱という言葉は一九九九年の改正で使われておりませんが、この当時は精神薄弱者という言葉が使われていて、ちょうど同じ年、一九六〇年、昭和三十五年に精神薄弱者福祉法も制定されているわけです。
 精神薄弱者福祉法がこの一九六〇年に制定されたときは、御存じのように、親亡き後の暮らしの場を確保するということで入所施設中心で支援が進められていて、今現在も約十三万人の方が、知的障害児も含めて施設で暮らしている。この方たちをどう地域の暮らし、働くことへと移行していくかという辺りがこれからの大きな課題になってくるわけです。
 働くことに話を戻しますと、そこにありますように、身体障害ということで日本の就労支援は始まっているわけですね。このときに既に知的障害や精神障害の方も含めて法律を制定すべきだというのは国際的な流れにもちろんなっていましたし、日本でもそうすべきだという声はあったと聞いておりますが、実際のところ、身体障害の方だけを対象にして、この後辺りで日本は高度経済成長に入っていくわけですが、そういう高度経済成長を支える担い手ということでは身体障害の方が一番支援がしやすかったということもあるかと思いますけれども、このときは身体障害の方の支援のみということで一九六〇年に法制度がスタートするわけです。
 これが大きく変わったというのが一九七六年、昭和五十一年に改正されて、これまでは一・三%、従業員の一・三%に当たる障害者の方たちを雇用するように努めるという努力義務だったわけですが、法律の御専門の方もたくさんいらっしゃるところで大変恐縮ですけれども、これが、雇わなければならないという雇用義務に変わった、七六年。
 そして、八七年になって、身体というふうに限定されていた法律が障害者の雇用の促進等に関する法律というふうに変わりまして、身体障害、今でしたら知的障害、精神障害の方に対して総合的にサービスを提供するというふうになってはいるんですけれども、いまだに、この八七年の時点でも雇用しなければならないという義務が課せられているのは身体障害の方のみだったわけです。
 それが、八八年の改正が一部行われましたときに、知的障害の方も職場で雇用していれば、雇用率が一・六%ということに変わっていますが、この一・六%の枠の中に入れてよいということになったわけです。これがようやく、もう二十世紀も終わりに近づいたときに、この審議会の中で知的障害や精神障害の方の雇用を進めていこうということが議論された中で、知的障害に関しては法定の雇用率の中にカウントするという義務化がなされて、これが九八年から具体的に施行されるわけです。
 雇用率も、知的障害の方が義務化されたというところで一・六%から一・八%に変わっていきますし、知的障害の方たちを雇用しやすいようなシステムということで、特例子会社ですとかが作りやすくなりますし、雇用支援センターなどというものも新たに設置されていくわけです。
 ただ、この時点でも精神障害の方については雇用率の中に雇用義務が課せられないままということで先送りになってしまいますし、今現在、精神障害の方については雇用を義務化するという方向性は見いだされていないと言わざるを得ないと思います。このように、日本の雇用に関しましても非常に障害種別による格差というのが顕著である。
 次の、障害のある方の働く場ということでは、雇用という範疇で考えられる一般就労と福祉的な就労というふうに分かれて、立場も非常に違ってくるわけです。
 厚生労働省というふうに二〇〇一年から厚生省と労働省が合併しましたところで、この福祉的就労という立場で、障害者だけの働く場といいますか訓練の場といいますか、そういう方たちを雇用に結び付けていく支援というのがスムーズに行われるようになったのではないかということで期待が持たれていたわけですけれども、大きな変化というのは残念ながら見いだし切れないなというふうに思っております。
 こういう流れの中で、日本でもこの十年くらい、一ページの一番下にございますが、サポーティッドエンプロイメント、訳しますと援助付雇用とか援護就労というような言い方をされますけれども、皆さん御存じのように、ジョブコーチと言われる方が実際に働く場で知的障害や精神障害の方を支援していくことで、今まで雇用に結び付かなかった方が結び付いてくるというような実績が上がってきているわけです。
 その辺につきましては、ちょっと二枚ほどめくっていただきました四ページと書き込んであるところに新聞記事がございます。これは先ほど申し上げた一九九八年に知的障害者の方についての雇用義務というのが課せられたときに制度が変わってきたということを紹介する新聞、朝日新聞の一九九八年の十月の記事です。
 ここに、真ん中ににこやかにほほ笑んでいる、ほほ笑んでいるというか、笑っている知的障害の方がいらっしゃいます。この方の笑顔を見ますと、私はとても心が痛む体験をしているんですね。と申しますのは、私、この方が十五年ほど前、養護学校に在籍していたころに進路についての相談を担当したのが私なんです。その当時、十五年前ですが、成田さんとおっしゃるこの方は、てんかんの発作等もございまして、非常に病状も厳しい状況だったんですが、私はこの方に関してはとても企業で働くというようなことは不可能だというふうに当時判断をいたしました。
 言い訳をさせていただきますと、その当時の判断としては私の考え方というのはそう的外れではなかったと思います。ところが、ここにございますように、この方、今現在しっかり働いていらっしゃいます。それはやはり、先ほど紹介しましたジョブコーチの活躍というのが非常に功を奏して、今生き生きと働いて、いろんな新しいチャレンジをしているというのがこの方です。
 このサポーティッドエンプロイメントにつきましては、まだ日本でははっきり制度というところにまで位置付いてはおりませんが、現実にいろんなところで支援が広がっていて、知的障害がある方、そして精神障害がある方についても、雇用主の理解等もあって働く場を確実に広げている非常に有効な手法ということが言えると思います。
 このジョブコーチによる支援というのが功を奏したというのは、先ほども佐藤先生おっしゃいましたけれども、御本人を変える、以前でしたら手に職をというような技術を持って働くということが強調されていたわけですけれども、職場の理解ですとか、働く環境等を変えることによって障害がある方が働く場を得ていくという、本人ではなくて環境の、あるいはその支援の在り方という辺りを強調することで就労につながるという、そういう新しい支援の成果でもあるというふうに思うわけです。
 二ページの方にちょっと行っていただきまして、これは事前にお配りした私の資料でも強調しているところですけれども、こちらが共生社会ということを全面に出していらっしゃる、共に暮らす、共に働くということが今まで障害がある方にとって非常に意味があるんだというところが強調されていたわけですけれども、実際に一緒に働いている立場の方たちは、障害がない人にとっても大きな意味があるということをいろんなところでおっしゃるわけです。
 ここで、知的障害の雇用というところに日本で本当に初期の段階から取り組んでいらっしゃる、川崎にあるチョークを作っている会社ですけれども、日本理化学工業の大山さんという方の言葉を紹介しています。本当に、障害がある方、知的障害の方も精神障害の方も、身体障害の方は改めて申しませんけれども、働くことというのが本当に暮らしの中で大きな位置を占めているんだ、本当に働くことにいかに前向きに取り組んでいるかというようなことは、私も、グループホームのアルバイトなどを学生がやっておりますが、その学生たちも、本当にこの方たち働くことに対して前向きで、私たち教えられることが多いというようなことをアルバイトやボランティアに行っている学生がよく申します。
 本当に働くことがこの方たちにとっていかに大きな意味があるかという辺りを、大山さんは四つの幸せのうちの三つが確保されるというような言い方をされていますし、その次のところで、障害者雇用を担当する企業の方たちがよくおっしゃる言葉で、本当に職場が変わって予期しなかった成果が上がったというようなことがしばしば言われます。
 そして最後の、二ページの下の方に、大阪にあります雇用支援センターというところで支援をやっていらっしゃる栗原さんという方の言葉を紹介しているんですけれども、共に働くということで障害を持っている御本人も変わって力を付けていくし、職場も変わる。そして、何より地域の方たちが大きく変わっていくという辺りを強調されていること、これが正に共生というところの本質、ノーマライゼーションの実現というようなところに大きな意味を持っているということを共に働いている方たちはどなたもおっしゃるわけです。
 最後の三ページのところに、さっとですけれども、改めてノーマライゼーションというのを考えるときにバンク・ミケルセンを引き合いに出すまではないんですが、佐藤先生と同じ大学でやっていらっしゃる大橋謙策先生がよくおっしゃる、今まで生産性ですとか経済効率というところを強調してきた、そういう価値観の下では障害者や高齢者ははじき出されてしまう社会だったけれども、この価値観をどんなふうに変えていくか。それには御存じの北海道の伊達市、ノーマライゼーションの町と言われている、そこの小林さんという中心になって活動している方がよくおっしゃる、一番最初の、町に慣れる、町が慣れるという言葉ですね。先ほどから申し上げています、佐藤先生も強調されていた社会の支援の在り方を変えていくことで、障害がある方がいろんな可能性にチャレンジできて、そういう中で社会の方だれもが住みやすい社会になっていくというようなことを強調しているところを改めて確認をしていただければというところで、こんなレジュメを作ってみました。
 ちょっと私も時間をオーバーしてしまいまして、申し訳ございません。以上で終わらせていただきます。
#7
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 次に、中西参考人にお願いいたします。中西参考人。
#8
○参考人(中西正司君) お呼びいただいてありがとうございます。身体障害者としてここで発表させていただけるのを感謝しております。
 私ども、自立生活センターですけれども、調査会の皆様、バークレーの自立生活センターに訪問をいただいたということを伺いまして、感謝しております。我々、自立生活センターの日本版というところで、全国自立生活センター協議会というのを形成しております。現在全国百十か所で、北海道から沖縄まで自立生活センターができております。
 バークレーの自立生活センターは一九七二年にスタートしておりますけれども、そこで我々が得た理論というのは、重度障害者であっても地域の中で暮らしていっていいんだ、施設の中でなく地域の中で介助を受けながら暮らしていっていいんだと。我々は今までリハビリテーションの理論の下、僕も大学三年の交通事故で中途障害なんですけれども、リハセンターへ入りますと、自分でズボンを履けなきゃ駄目だと、それからトイレも自分でできなければここから出れないよというようなことで、かなりしごきに近い訓練を受けたわけですけれども、できない人たちもいるわけですね。重度障害者で自分で洋服を着れない、トイレへ行けない。僕自身も、トイレの便座に座って一時間、六時間ほったらかされておいて、自分で上がってこいというんだけれども、上がってこれないというような訓練を受けました。
 確かにそういうことをやってできる人はいるけれども、それよりも設備をきちんと整えて、トイレと車いすの高さを一緒にすれば、もっと簡単に乗り移れたんじゃないかと。それ以上に、介助の面で、僕が二時間掛かって洋服を着るよりも、五分間で介助を受けて、地域社会でこうやって自立生活センターで社会貢献した方が社会的に有益ではないかという理論が自立生活運動の理論なわけですね。
 我々、皆さんパンフレットをお回ししましたけれども、この裏側に四つのサービスを提供すること、それから自立生活センターは運営委員の五一%が障害者であること、それから代表事務局長は障害者であること、できれば福祉サービスのユーザーであることですね。
 それから、介助サービス、ピアカウンセリング。
 介助サービスは分かりますね、自分たち自身が介助者を提供する。うちのセンターの場合ですと、七百名の登録介助者がおりまして、年間七万時間の介助サービスを身体障害者、知的障害者にも提供しております。そのような介助サービス。
 それから、ピアカウンセリング。これは障害者が障害者に対して行うカウンセリングです。従来の専門家が、医者がクライアントに対してやるものではなくて、我々がお互いの生活経験を分かち合いながら話を聞いてあげられる。それが障害者にとって、あなたの本当の希望は何なのということで、本当は子どもを持って結婚して暮らしたいというふうな希望を今まで家族にもだれにも打ち明けられなかったと。障害者は希望や夢を語ることを禁じられてきたと。これはよく言うんですけれども、家族は、もしもそういう要求をすると嫌な顔をする、困った顔をする、その顔を見るのが嫌なので夢や希望は語らないでおくということなんですね。ワールドカップのサッカー見に行きたいなんということは言っちゃいけないことだと、それを言っちゃうと親や兄弟が困った顔をすると。そういうことで、我々は、ピアカウンセリングの中では何を言っても構わないよと、自立生活センターで介助者を配慮して、それを、夢を実現してあげるよというふうに言います。これがピアカウンセリング。
 それから、住宅サービスは、改造した住宅はなかなか借りられません。これを、我々が不動産屋と提携して、障害者でも安心して改造して大丈夫ですよ、我々自立生活センターが保証しますということで、不動産屋さんは今物件を紹介してくれるようになりました。
 それから、自立生活プログラム。これは、障害を持つがゆえにいろんな困難を感じます。それは一つは、介助者をどう使っていったらいいかと。
 知的障害を持つような方なんかは特に大変ですね。洗濯機が回っている四十分の間に一体何の用事を考えたらいいんだろうと、考えるだけでパニックを起こしちゃう。こういうふうなことは、作業所へ行っている間に本当はホームヘルパー入ってもらって勉強しておけばよかったのにと言うんですけれども、彼女なんかも六か月たっていて自分でいろんなことが分かるようになってもう大丈夫だよと、自分でどういうふうにホームヘルパーさんに用事頼んでいいか分かるようになったというふうになっているわけですけれども。
 身体障害者の場合でも、介助者が毎回毎回遅れてくると、どういうふうに注意したら怒らないで相手を説得できるのかと。こういうようなことを、グループディスカッション八名ぐらいで、リーダーが入りましてロールプレイをやりながら、リーダーが、怒らないように説得するにはまず相手を、日ごろのことを感謝を言うんだよと、その次に、遅れてきたために自分がトイレを我慢してどんなに苦労したか状況を説明しなさいと、それから相手に二度と遅れてこないでねというお説教をしなさいというふうなクラスをやったわけですね。
 こういう生活経験をともに分かち合いながら地域で暮らす訓練をしています。これが自立生活センターの働きです。
 介助サービスだけあれば暮らせるじゃないかと思われるでしょうけれども、施設で二十年、三十年、親元で三十、四十まで暮らした方は地域で暮らすときにはそういうような自立性の訓練が必要です。対人関係をどうやって作るのか、それは先輩に聞かないとなかなかできないし、車いすの女性が子どもを産むとなったら、やっぱり健常者の方に聞いても分からない。車いすに乗った女性の先輩に、どんなことが起こるのということを聞かなきゃいけないというような意味では、ピアカウンセラー、当事者の経験を持つことの意味というのは非常に大きいと思います。
 こういうような自立生活センターを我々作り、そしてこれが、私のセンターが第一号なんですけれども、日本の、バークレーに似た。一九八六年にスタートしております。八王子でやりまして、そこで、自立生活プログラムマニュアルを作ったり、ピアカウンセリングプログラムを作ったり、介助サービスのコーディネーターシステムを障害者用に作り直したりというようなことでシステムを作り上げました。
 それで、今、全国自立生活センター協議会でそのシステムをマニュアル化しまして、五千ページぐらいの、このぐらいの本があります、四、五十センチあるような。そのマニュアルをみんなに配って、職員や障害者に勉強していただいて、運営の仕方、人事管理の仕方、ピアカウンセリングや自立プログラムの運営の仕方というようなことを教えます。また、インターネットでも通信教育をやっておりまして、地方にお住まいの方は、我々が質問を出します、自立生活の理念とは何かというふうな質問に対して五百字で答えよというふうな問題を出して、それを勉強していただいているわけですね。そういうようなことで、全国百十か所のセンターはかなり平均的な力を持つセンターとして今成長しつつあります。
 そういう意味で、福祉サービスの我々は今まで受け手だったんだけれども、担い手に変わるということで、サービス提供者としての役割を重度障害者自身が果たそうとしております。ある意味でこれは就労の場であります。私のセンターでは今二十名の職員を雇っておりますけれども、半数は障害者です。その方々がピアカウンセリング、自立プログラム、それから介助サービスのコーディネートの応援などもやっております。
 そして、もう一つの意味というのは、自立生活センターは事業体であり、運動体です。ただ、サービスを、国の事業の孫請をやっているだけではなかなかサービスのレベルとかが改善いたしません。
 そこで、自立生活センターでは、障害者が、ここに呼吸器を付けた二十四時間介助の人が暮らし始めるということになると、その方のサービスを当該市では週十八時間しかやらないと、一日二十四時間にしてくださいという要求を市町村の行政に我々自立生活センターは一緒に持ち上げていきます。今までサービスの改善ということについてはなかなか進まなかったわけですね。なぜかというと、地域にそういう実態がなかった。我々は二十四時間にしてください、みんなが暮らせるようになりますよと言っても、そういう人は地域にいないでしょう、ニーズがほかに上がっていませんよと、実際にそういう方が生まれたらお越しくださいということになるわけですね。ところが、実際にはサービスがなければその地域には暮らせないわけですから、結局施設にみんな入っていると。自立生活センター百十か所の所長も全員昔は施設出身です。ほかに住む場所はなかった。
 でも、今は地域にサービスができて住めるようになってきたために、それでサービス供給があり、地域での生活が可能になるという時代を迎えているという意味では、当事者主権の時代と私書いたんですけれども、当事者主体というのは、やっぱり客体があって主体があるという意味ではいつも客体扱いしていて悪かったねと、だから今度は主体扱いしてあげるよというふうな意味で主体なので、やっぱり主権という意味で我々自身がサービスのオーガナイザーになり、サービスのシステムを作り、サービスの供給を我々が果たしていくというふうな時代に今入りつつある。それで、施設から在宅への方向を具体的なサービスメニューを持ちながら変えていこうというふうな運動体でもあるわけです。
 そして、運動体として認められまして、一九九六年、十年後に市町村障害者生活支援事業という相談事業が国に制定されました。このときに私のところへ電話が掛かってきて、国の制度に自立生活センターのサービスがいいのでやろうと思うと、それならば三つの条件をのんでくださいと。
 一つは、無認可団体である、社会福祉法人を持たない自立生活センターを認めてください。これは、社会福祉法人というのは施設や箱物を造らないと駄目なんですね。我々、箱物は造りたくない。箱物を造ると定員を満たすために障害者狩りをされてしまうんで、あれは本当は地域でばらばらに、マン・ツー・マンの介助でいきたいんだということで、我々は無認可団体でいく、それに助成金を入れてください、オーケーだと。それから、ピアカウンセリングと自立プログラム、これはもう必須のものであって、介助だけでは障害者は暮らせません、これを生活支援上のメーンメニューにしてください、オーケーだということで。
 それから、障害者はピアカウンセラーという専門家ではあるけれども、国家資格を持たないと。社会福祉主事とか大学に、僕自身は途中で退学しちゃいましたから行けなかった、卒業資格持っていない人多いですね。そうすると、何の専門性も持たないが、でも、実際に地域で支援するときには一番役に立つ専門家であるという意味で、新たな専門家として我々を認めてくださいということで、ピアカウンセラーなども社会福祉司等という言葉でカバーされて国の給料を取れるということになりました。画期的な変更をしていただいて、当事者がこの福祉の中のサービスの実施主体になっていけるという時代を今迎えております。
 支援費制度の中でも、今、自薦ヘルパーという、我々が介助者を自分で選んでその人を市町村に登録するということをやってきたわけですけれども、そのような形が継続できるようなシステムを何とか続けてくださいということで今考えていただいているのが生活支援の方のホームヘルプサービスですね。こういう長時間の介助ができるようなサービスをやっていただけるというふうになった。それから、ホームヘルパー制度についても、我々の介助者は学生やフリーターの方が多い。というのは、主婦の二、三級ヘルパー取った方は百二十時間の研修が必要で、学生はとても百二十時間もそういう研修を受けてくれない。ということで、我々なぜ学生必要かというと、重い体を担ぎ上げておふろへ入れてもらわなきゃいけない。
 それから、我々が主体者として、彼らがサポーターとして我々の指示を聞いて介助をやってもらわないと、今日どこへ行きたいということを実際に自分で相手に伝えながら生活をしていきたいわけですね、生活の主体者として。高齢の場合は、やってもらう方でいいわけですけれども、割に生活経験がある。我々、生活経験がないから、雨の日に一回外へ出てみてぬれて帰ってきたら、やっぱり今度は雨の日は出掛けるのやめようと、そこで学習しながら成長していく。失敗する経験ができる場が若者には必要だということで、そういう介助もと。そうすると、やはり資格があるのが困るということで、資格制度の今ない形で、経験のある方はすべて市町村に登録すれば我々の介助が継続できるというふうな制度を作っていただいたという意味でも、一歩成長かと思います。
 我々、こういうふうな制度を活用しながら地域で暮らしていく、そのことによって多くの障害者が社会参加して、地域の町の中へ出ていくと。そういう結果として、電動車いすで大勢の人が町に出歩けるようになった。この十数年で町はすっかり変わりました。そして、バリアフリー法もできて駅のアクセスが良くなってきました。これは、自立生活センターがあって地域で重度の障害者が暮らせるようになった。その結果として、駅に電動車いすに乗って行くようになったわけですね。だから、本来施設にみんないた人たちです。自立生活センターがなければバリアフリー法の改正もなかったと思います。そういう意味では底辺を作り上げてきた。
 そして、この十月にDPIの世界会議札幌会議を開きまして、百九か国から三千名の障害者を集めてDPI障害者インターナショナル日本会議を開けるまでに当事者の力を付けてきました。DPIの基本的メンバーは自立生活センターの連中が主です。このDPIは、アジアの障害者の十年を日本会議から提唱しまして、ESCAPで認められて、この十月の大津会議で新障害者の十年が継続されることになりました。そして、十年継続する目標というのは障害者差別禁止法を作ることである、国際的な差別禁止法を作ろうと。それから、日本政府には国内の障害者差別禁止法を作ってもらおうと。
 これによって、今まで我々は解決できなかった二つの問題、教育の問題、就労の問題、これは差別禁止法がなければ解決しないんですね。アクセスの問題、環境は禁止法がなくても解決してきました。でも、これは国民の意識を変えなきゃいけない問題なんです。就労の問題は国民すべてが障害者を職場に受け入れる意識を持ち、そして、教育の問題は親御さんたちがみんなが障害児を普通学校に受け入れる意識を持たなきゃいけない。そういう意味では、差別禁止法がなければなかなか進展しないだろうというのが我々の今のターゲットです。
 アジアの障害者についても、今、アジア障害者開発センターというのをJICAが作っていただいて、二〇〇四年からそこで自立生活センターを作るための職員研修とか運営の研修とかも行えるようになります。そういうふうなことと、介護保険絡みの問題では、我々は高齢者の高齢協会と今提携しようとしています。彼ら、百七十団体の介助派遣サービスを今やっております。我々が来年には百六十団体ぐらいになりますので、協調して、高齢者と障害者がユーザーユニオン、福祉のユーザーユニオンを形成して、アメリカに高齢者の協会があるわけですけれども、これは二千万票を持つAARPというのがあります。こういうふうな福祉サービスユーザーユニオンを日本の中に形成していきたいというふうに思っております。これによって、福祉を本来のニーズオリエンテッドのものに変えていきたいというのが我々の希望であり、今後の方向です。
 自己消滅系のサービスについては、後ほど時間があればまた説明したいと思います。
 ありがとうございました。
#9
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取を終わります。
    ─────────────
#10
○会長(小野清子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、小川勝也君が委員を辞任され、その補欠として辻泰弘君が選任されました。
    ─────────────
#11
○会長(小野清子君) これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時半をめどとさせていただきます。
 なお、質疑者及び参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言くださいますようにお願いをいたします。
 また、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきたいと思います。
 質疑のある方は挙手を願います。
#12
○林紀子君 今お話を聞いて、なかなか全部頭の中で整理ができたわけではないんですけれども、やはり障害者にとって働くことというのがどんなに大きい意味があるのか、すばらしい意味があるのかというのがよく分かりました。これは、人間がそもそも働くことの意味というのをそのまま問い直すような問題なのかなという気もするんですけれども。ですから、今、石渡参考人の方からも、中西参考人の方からもお話伺いましたけれども、障害者の働くということが、国民の意識が変わらないとなかなか完全にはならないだろうということなんですけれども、その意識を変えるということを待つのは非常に掛かるという気もするわけですよね。
 今のような社会の中では、それは障害者だけではなくて女性にも感じるところなんですけれども、いかに効率よくコストを下げてやっていくのかというのが最大の命題になっているような気がするんですね、企業で。そういう中では、非常にスピーディーに仕事ができないとか、そういうような者はいつも邪魔者。女性も妊娠したら休みを取るなんというのは、それは企業にとってはプラスにはならないというような、いまだにそういう考え方というのがあるということもあるので、そういう意味では、今の一・八%のその雇用率というのをもっと厳しくしながら、全部罰則も付けたあれにしていくというようなことしかないのかなというふうにも思うんですけれども、その辺はどう考えたらいいのか。
 先ほどお話にも引いていただきましたけれども、アメリカ、カナダに回ってまいりましたけれども、そのとき、アメリカではその雇用法定率というのは決めていないというんですね。健常者も障害者も同じような資格があるならば同じように競争して当たり前なんだから、かえって雇用法定率なんというのは決めるのは差別なんだと、こういうふうなお話があって、確かに考えてみればそうなんだけれども、じゃ、今、日本でそれを外してしまったらますます職場から締め出されるんじゃないかと。その辺をどういうふうに変えていったらいいのかという、名案というのはすぐにはないのかもしれませんが、方向がありましたら、三人の先生にそれぞれお話聞かせていただけたらと思います。
#13
○参考人(石渡和実君) それでは、今、林さんおっしゃってくださいましたように、日本のように雇用率というのを定めて企業に義務を課しているというところは非常に世界的に見ても少ないですね。ただ、日本の場合は、このやり方がそれなりに成果を上げたというふうに考えられますし、このシステムはしばらくは必要だろうなというふうに思います。
 そして、今、女性や高齢者の場合も、なかなか企業が雇うというところにまで、現実この厳しい情勢の折、難しいんじゃないかというお話をいただきましたけれども、それは、障害がある方、あるいは女性や高齢者もそうだと思うんですけれども、その方たちの持っている力とか、こういう可能性があるんだというところを全く見ないままにそういう評価をしてしまうということが多々あったんじゃないかなと思うわけです。やはり、環境が整い、そしてその方をじっくり見詰めていくと、この方にベストの仕事とは何だろうというのが見えてきたりするわけです。本当に、障害がある方、お年寄りもそうだと思いますけれども、この仕事だったらば障害がない方以上にやれるというようなものを持っている方が非常に多いわけです。
 例えばというところで、なかなか働くことが難しかった自閉症という障害の方なんかいらっしゃいますけれども、今ちょっと注目されている仕事にお墓の掃除というのがあるんですね。お墓のように限られた区画のところをあるパターンでお掃除をするということに関しましては、障害がない方よりもはるかに質の高いお仕事をやってくださったり、それぞれの方の特性というのをどう見極めてその力を引き出すかということが専門家に求められますし、共に働く方はやはりそういうところを理解していただいて、ちょっとした支援を提供していただければその方たちが力を発揮できる可能性というのはまだまだたくさんあるなというふうに思います。
#14
○参考人(中西正司君) この仕事のことについては僕はちょっと違った考えを持っていまして、就労、就労というのは最終目的になっちゃうわけですけれども、ところが、重度の知的の方とか身体障害の重度の人、それが就労を言われると、結局作業所の中でボール紙の箱作りをやるとか、何かボールペンのしんをくるんで作るとか、そういうふうな作業を何か一年じゅう、何十年もやらされるというようなことが起こるわけですね。
 本人たちが本当に楽しんで人生を送っているのかといったときに、やっぱりある意味で親の満足というようなところがあって、我々、その人たちに本当にそれをしたいのともう一度聞いてあげる必要があると思うんですね。本当の意味で本人たちが生き生きと、伸び伸びと社会の中で暮らしていくことが一番重要なのであって、就労を余りに強制しないでほしいなと。
 その間に、さっき言ったような生活の訓練、普通は日常生活がきちんと自分で送れるようになってそれから仕事だというのが健常者なんですけれども、障害者の場合は日常生活も送れないままに就労に先に追いやられてしまうという問題点が非常に大きいと思いまして、かえって、地域福祉サービスがこれからいろいろ地域で展開していきますけれども、その中で彼らがピアカウンセラーとして地域で暮らした経験を障害者に伝えていくというような、そういうような別なタイプの仕事、彼らが誇りを持ってできるような仕事に僕は就けてあげたいなというふうに思っております。
#15
○参考人(佐藤久夫君) 障害者雇用率の制度というのは、どちらかというと障害者の能力に焦点を当てるというよりは、その障害者を人数分雇わなければいけないという、余り企業の方もその人の持っている能力に期待して雇うということでなくて人数合わせみたいな面が出てきてしまって、そういう点では就職はしたものの余り期待されないというようなことになっても、何というか、まずいなという感じがするんですね。
 そういう点から、幾つかの国では雇用率制度というのは余り評判が良くないということで、むしろ差別禁止法、能力を生かすと、能力のある者を雇用しないというのは、障害を理由として採用しないというのは差別だということで禁ずるという、そういうアプローチを取っているような面があるわけですけれども。
 ただ、この二つはそんなに対立するものかなという感じを実は持っていまして、イギリスでは九五年にその雇用率制度をやめて差別禁止法に切り替えたわけですけれども、先ほども言いましたように、EUではすべてのEU加盟国で障害を含む差別禁止法を二〇〇六年までに作ろうということでやっているわけで、この中にはかなり、六%とかいう高い障害者雇用率を設けているドイツだとかフランスなども含めて、イギリスの場合には余り雇用率制度がうまく機能していなかったということもあったわけで、ですから、間もなく雇用率制度と差別禁止法を両立する国が出てくるんではないかと。既にインドはそういう二つのやり方をやっているわけで、日本でも男女雇用機会均等法のような機会均等的なアプローチと障害者の割当て雇用というか、両方やっているわけで、障害者の方にも雇用差別禁止というのを導入することは可能なんではないかなというふうに思います。
 機会均等、差別禁止の方だけだと、やっぱり働く能力の十分ある障害者しか救われないといいますか、もう一回り重度の障害者も含めて、企業が社会連帯で多くの人たちに働いてもらう場をみんなで提供しましょうということをやるためには、やっぱり機会均等法、差別禁止法だけでなくて割当て雇用制度が、両方必要なのかなという印象を持っております。
#16
○清水嘉与子君 中西参考人に、せっかく御用意くださいましたので、この自己消滅系のサービス、このところをもう少し御説明していただきたいと思います。
#17
○参考人(中西正司君) 中西です。ありがとうございます。
 この自己消滅系というのは、福祉サービスというのは自立生活センターを含めて非常に特殊なものであると。だから、本来、社会が平等な社会であって、何も障害者が苦労しないで地域で暮らせるんであれば自立生活センター自体なくていいものだと、そういうことなんですね。
 施設についても、施設自体は本来特殊なものであって、本来、地域でみんな暮らしていくべきものであると。ところが、施設という箱物を造った途端に、今度はその定員を満たすために施設から出そうとしなくなる。ところが、本来、施設は外へ出すための機能を持っていくべきで、施設から自立させたということは職員の報奨になって、十人いた施設が半分になれば職員の給料は倍になって、そして最終的には給料が頂点を迎えてだれもいなくなるというふうな、モチベーションが職員にわきながら一生懸命自立のためにみんな頑張ろうと。頑張った結果、施設はなくなって、その人たちの職場はなくなるといっても地域の中で新たな職場ができるわけですね、支援の場が。ですから、そんなことを心配せずに、元々そのシステム系の中にきちんと消滅するようなモチベーションを組み込んでおくべきだと。自立生活運動は障害者をエンパワーメントして地域で暮らせるようにやることを目的としておりますから、地域でみんなが暮らしてしまえば自立生活センターは消滅すると、我々は消滅することを目指しているんですけれども。
 そういうふうな、余り自分の作ったものにしがみつかないでいいんじゃないか、福祉サービスというのは元々なくなるべきものだったんだというふうに考えれないかなというのが僕の考えなんですけれども。
#18
○吉川春子君 今の質問に関連して、自己消滅系とは何だろうなと思っていまして、よく分かりました。
 それで、その下にジェンダー運動と自立生活運動という項目があるんですけれども、やっぱり障害者運動の中にもジェンダーの視点というのが必要なんだろうと思うんですが、障害者問題とジェンダーの視点というのがちょっと私不勉強で結び付かないものですから、この点について中西参考人、そして女性の立場から石渡参考人にお伺いしたいと思います。
#19
○参考人(中西正司君) 障害者も女性も、ある意味で社会の中で差別を受けてきた存在であるわけですね。この差別を克服するために、女性の場合は機会均等法を作ってやっていこうというような方向を取ります。ところが、機会均等法ができると、現実には五〇%、五〇%で男女が雇われればいいわけですけれども、ところが有能な女性だけ雇われて、ほかはパート労働者としてしか雇われないというような現実を迎えちゃうわけですね。制度を自分たちで作ったんだけれども、現実には機能しなくなっていくと。
 自立生活センターの場合も、我々も今制度を作ろうとしているわけですね。自立生活センターの生活支援事業というのができたんですけれども、現実三百か所あって、そのうち自立生活センターが運営しているのは二十数か所であると。一割に満たないぐらいになっちゃうわけですね。そういう意味では、制度化された途端に理念が希薄化しちゃうというふうな問題があって、制度化する問題、そして我々がそれを克服して更に前進していくにはどうすればいいかと。
 女性運動と我々とは非常に共通性があるねということで、社会学者の上野千鶴子さんと同じ経験をしていますねということで、我々の経験は女性、ジェンダー問題で役立つんじゃないですかと、我々も、ジェンダー問題で起こった事実というのは次に我々に起こる事実だろうから、それを勉強しながら一緒にやっていきたいということで、今、当事者主権という本を一緒に書こうということになっているんです。それをまた読んでいただければいいかと思いますけれども。
#20
○参考人(石渡和実君) 今日のテーマである社会参加というのを考えてみますと、私も女性としてその難しさというのを随分体験いたしました。この辺は、中西さんたちと二十年くらい前にお会いして、中西さんたちが一生懸命自立、社会参加、何だろうというのを模索しているときの思いととても通じ合うものがあって、おっしゃったように、ジェンダーの視点で女性の今置かれている立場というのを考えることと障害がある方の問題を考えることにはとても共通点が多いなというふうに一つ考えます。
 ですから、そういう意味で、お互いに協力し合うところでヒントをいただけるものというのはたくさんあるなということを感じますのと、これは女性の障害者の立場に置き換えますと、よく女性の障害者というのは女性である差別と障害者である差別という二重の拘束を受けているということでダブルバインディッドなんという言葉が使われます。そして、そういう中で、障害がある女性がいかに厳しい日々を生きてきたかという辺りは、私と同年代の女性の障害者の方とお話をすると、その方たちが何度も自殺未遂を繰り返したりというようなお話を聞くたびに、その置かれていた状況の厳しさというのを感じます。
 ただ、最近改めてそういう方たちの生き方というのを見ていますと、むしろそういう厳しい状況に置かれていただけに、社会通念ですとか、こうなければいけないというような一般的な規範というのからもう全く解き放たれて、本当に御自分らしい生き方というのをとことん追求されているなという方たちにもお会いできるようになってきました。本当に、男性の障害がある方以上にむしろ自分らしく生きているというふうに思える方もたくさんいらっしゃって、そういう時代が少しずつですけれども実現してきている。いわゆる、そういう方たちから、社会規範的なところではない、本当に自分らしい生き方というのがどうあったらいいかというのをとても学ばせていただけるなという、そんな時代には入ってきているなということを感じます。
#21
○段本幸男君 中西参考人にちょっとお伺いしたいんですが、中西参考人は先ほど教育と就労が課題だとおっしゃった。就労、かなり出ていたんですけれども、私の場合も前回ちょっとこの共生調査会で各省庁に対する質問のときも言ったんですけれども、教育というのがやはり社会参加の差別をなくすという意味では非常に重要なところにあるんじゃないかと思っているんですね。
 私自身が田んぼの学校みたいなものをやって、そのときに盲学校の生徒と一緒にやらせたら、むしろ一般生徒の方が非常に学んだというようなケースがあって、やはりそういうものを通してきちっと社会参加の前提を整えていかなきゃいかぬ。
 この前、たしか宮城県だったと思うんですが、障害児を一般校で受け入れるというふうなのを試験的にやっていくんだというふうなことが出ていたと思うんですけれども、やはりそういうものをきちっとやっていく必要性というのを私自身はすごく感じているんですが、いろいろな問題点あろうかと思うんですが、その辺についての考えをお聞かせ願えればと思います。
#22
○参考人(中西正司君) ありがとうございます。
 教育問題については、我々、今地域で統合化が図られるように、介助を付けて学校に行けるように、学内での介助が受けられるようにとか、教育委員会からお金が出て介助者を派遣したりとか、もうしております。そういうふうな配慮だけではなかなか解決しない問題があるわけですね。これはスウェーデンなんかでは、言葉が分からない人には日本語の通訳が付いて教育を受けられるというふうな意味では、障害を越えてそこで対等な情報共有ができるようなシステムができるわけですね。
 こういうことをやるとだれが反対するかというと、結局進学校であれば親御さんが一番反対するから文部科学省も教育をできないと。これは国民の問題であって、やっぱりそこに差別禁止法があって、統合化しなければ罰せられますよという法律が必要になると思っているわけです。
 これは法律で縛らないとなかなか国民の意識というのは変わらないんだろうなというふうに思っていることと、それから統合化することによってみんなの生徒さんの意識が変わるということは、やっぱり障害者は能率と効率から一番疎外された存在ですね。現代資本主義社会の中では最底辺にあるマージナライズドパーソンなんですけれども、この人たちから出た自立生活運動の自己決定、自己選択の理論というのは、彼ら自身が選び、そして選択する。これは健常者にとっても、企業が腐敗を起こしたときに自己決定を自分でして、これは間違えているんじゃないかとやっぱり主張しなければいけない。そういう日本人を作らなきゃいけないと思うわけですね。
 障害者の場合は、自分で施設から出たいということを、周りの施設も親も先生もみんな反対する中で自分がそれを主張しなければ施設に放り込まれるわけですから、自己主張というのをきちんとしなければ暮らせない存在ですね。そういう意味では、我々はきちんとするんですけれども、健常者の方がかえってしなくてもだらだらと生きていけるという意味では、そこに対する効果というのは非常にあるんだと思っております。
#23
○段本幸男君 ありがとうございます。
#24
○参考人(佐藤久夫君) ありがとうございます。
 学校教育などを充実して障害児とそうでない子供が一緒に勉強できるような、一緒に触れ合う、一緒に活動するような機会をうんと増やすということが障害者理解を高める上で非常に重要だということは、私も全くそのとおりだなというふうに思うんですけれども、障害者に対する国民の理解とそれから国が行う政策というのは結構関係があるんだろうと思うんですね。二つの関係があると思うんですけれども、国民の理解が十分得られないから施策が十分進まないという、住民の反対運動などでグループホームなどが作りにくいという面ももちろんあるんですけれども、その逆の関係というのが非常に大事なんではないかなというふうに思うんです。
 つまり、例えば精神病院の中に三十三万人くらいの人たちが今入っていますけれども、社会的な受け入れの条件が整えばすぐにも退院できる人が何万人もいながら、ずっともうそのことは二十年も前から国の調査で分かっていながら十分な施策をこの二十年間やってこなかったというようなことがあるだろうと思います。知的障害者の領域にしても、一部屋に三人とか四人で、ほとんどプライバシーもないような状況の中で入所施設をいまだにまだ増やし続けているというふうなことを現実に我が日本の社会はやっているわけで、こういうことを社会的に政府も含めてやっていることを放置しておいて、障害者は人間として立派な尊厳のある存在なんですとか同じ市民なんですというふうに一方で国民に言ってもなかなか説得力はないんだろうと思うんですね。プライバシーなんかなくてもいい人たちなんだ、社会で生活する権利のない人なんだというふうに国民は思ってしまうんではないかなというふうに思います。
 そういう意味で、もうあさっての懇談会で決まってしまうわけですけれども、これからの新長期計画の中で、地域で生きられるような条件作りを本格的にやるというようなことを盛り込むことが非常に大事な時期になっているのかなというふうに思いました。
#25
○吉川春子君 さっきちょっと申し遅れました。共産党の吉川春子と申します。今日はどうもありがとうございます。
 障害者雇用率の問題でちょっとお伺いしたいんですけれども、私も労働委員会に数年所属しておりまして、障害者を就労の場にもっともっと受け入れるための雇用率を引き上げるべきだ、そしてそれを守らない企業にはもっときちっとペナルティーを科して、あることを実現すべきだというような観点から質問をしたことが何遍もあるんですが、先ほど佐藤参考人のお話で、非常に障害者差別禁止法と法定雇用率の関係が分かりまして興味深かったんですが、私は、一つはもうちょっと企業が社会的責任に目覚めてもっともっと積極的に障害者を受け入れる、いろんなレベルの障害者を受け入れて、そのための会社の施設の整備なども行っていくということが非常に必要だと思うんですけれども、それをもっとさせるためにどういうことをして迫っていけばいいか、法的あるいは政府の行政指導を含めてですね、その点について御提案があればお聞かせいただきたいと思います。
 それと、やっぱり障害者差別禁止法というものが多くの国であるのに、日本にはないと。そしてまた、EU指令でもこういうことが近々すべての加盟国でそういう体制が整うという話を聞きまして、本当に日本ではこういう施策が遅れているなと思うんですが、日本で障害者差別禁止法を作るために何が今欠けているとお考えなんでしょうか。それぞれの参考人のお立場から御提案、御意見があれば伺わせていただきたいと思います。
#26
○参考人(佐藤久夫君) はい、ありがとうございます。
 障害者雇用促進法それ自体の中に雇用率を守らせるための幾つかの条項がありますよね。例えば雇用率を、計画が十分ない場合にはきちんと何年でどういうふうにして雇用するのかという計画を作らせるだとか、職業安定所からの指導をするだとか、それがうまくきちんと守られているかどうかをチェックするだとか、それでもなおかつ十分守っていない場合には、最後の手段として企業名を公表するとか、幾つかのそういうものがあって、何度か、厚生労働省になってからはまだないかと思いますけれども、労働省時代に二回ほどそれを使って、その都度〇・二%ぐらいの雇用率の上昇を見てきた経過があったわけで、やはり企業の社会的な責任としてみんなが働けるような職場を提供しましょうということを法律で決めているわけですから、それを守らない、単に守らないだけでなくて、ほとんど努力もしていないというようなところに対してはやはり企業名の公表とか、法律がきちんと書いていることを実施するということが大事なんだろうと思いますけれども。
 もう一つは、北風と太陽路線じゃないですけれども、非常に積極的に障害者雇用に取り組んでいる企業をもっとマスコミを含めて公表して、そのノウハウなんかもほかの企業が活用できるようにするような、そういうプラスの面での公表ということもどんどんやる必要があるのかなというふうに思います。
#27
○参考人(石渡和実君) 私は、差別禁止法というようなことも含めて、障害がある方をどういうふうに見るかという障害者観を変えていく、やはり心のバリアフリーというようなところを着実に広げていくという辺りのところが雇用促進に当たっても根源的な課題かなというふうに思うわけです。
 先ほど教育についてのお話がありまして、やはりそれは教育の段階のところからともに学ぶということを実現していかないといけないということをつくづく思います。そういうところからも、障害がある方が非常に弱い、守られるべき存在ということが、逆に、働くという場においては力のない役立てない存在というような評価になってしまうのではないかな。
 この辺、社会的な責任ということで、今雇用促進法の中で位置付けられているいろんな規定を強化するというようなこともあるかと思いますが、私は、むしろ太陽路線でいきまして、本当に、むしろ企業などにはボランティア活動などを積極的にやっていただく中で、障害がある方の理解を進めていくみたいなことの方が現実に効果があるように幾つかの企業の実践を見ていて思います。やっぱりボランティアを課すという辺りで障害がある方と触れ合う、あるいは企業が地域のそういう活動に出向いていくという中で、障害がある方と触れ合ったことというのが雇用につながるというような企業を随分見てきていますので、罰として縛りを掛けるよりは、やっぱり現実に動くのは、そういう障害がある方の理解を変えていくところで雇用できるというところを、自信を持ってそちらに移行するというような企業の方が多い。
 そういう意味でも、ボランティアとか、福祉教育という言葉は批判もありますけれども、障害がある方との触れ合いという辺りをいかに当たり前にしていくか。そのためにも教育の大切さという辺りは強調しておきたいなというふうに思います。
#28
○参考人(中西正司君) 権利法には人権法と経済社会法とありまして、皆さん今雇用率のことをお話しされているのは経済社会法の領域なんですね。ところが、今ジュネーブに人権委員会があるんですけれども、人権法としてこのものを作らなきゃいけない。
 人権法はどういうことかというと、居住の場は自由に選べると、これは施設じゃなくて。現実にこれは選べなきゃ駄目なんですね、選択肢として地域に暮らせるような状況を作らなければ選んだということにならない。それから、移動の自由。これもどこでも自由に本人が行ける。これはもちろん移動手段を全部確保してやらなきゃいけないわけですね。それから、介助を受ける自由。これも介助者が適切に配慮されなければならない。コミュニケーションを十分受けれる自由。これはここに点字版のデータがないわけですけれども、そういうものをそろえなければ会議が開催できないというような義務を課していくことなんですね。
 こういうような義務法というのが日本の中にないんですね。福祉関係で唯一義務法というのは障害者プランだけなんですね。これは、市町村は障害者プランを作成しなければならないと、ならない義務法なんですね。それ以外に福祉関係で義務法はない。やはり権利法というのは義務をきちんと履行できるようにしなければならない。でも、現実に移行措置ができない。
 お店に入って、点字の例えば商品の値札がない、値段が点字で読めないというようなことは、これはリーズナブルアコモデーションという妥当的な配慮をすればいいと。だから、店員が出てきて、これはどういう色の商品で、値段は幾らですよと値札を読んであげればいいと。そういうふうな配慮を義務付けることなんですね。それをすることによって、現実にできない状態でもそれができるようにする。バスが運行できないなら、小型のミニキャブを走らせて、その路線にアクセスをしてしまうというふうなことをやらなければいけないという義務を課すことですね。
 そういうふうな権利法というものをきちんと整備しなければならない時期に来ているんだろうなと思います。
#29
○参考人(佐藤久夫君) 吉川委員の先ほどの、障害者差別禁止法を日本で作るためには何が必要かということに関してお答え落としてしまいましたので、ちょっと付け加えさせていただきますけれども、中西さんたちのDPIジャパンも障害者差別禁止法の法案を既に準備して、いろいろ各方面に呼び掛けておりますし、日弁連もそういうものを昨年でしたか作って議論をするというふうなことになって、国内的にもかなり機運が盛り上がっているのかなというふうに思います。
 先ほども言われたように、国連が障害者権利条約を作るための作業委員会というのを作ってその準備をしていますので、あと数年でちょうど子どもの権利条約と同じようなものが国連で採決されると。それを日本の国会で批准するということになれば、それも差別禁止法としての力を持つことになると思うんですね。
 しかし、今の政府は人権擁護法案というのを国会に出していますし、その中に障害というのも、障害者差別を禁止するというのも入っているので、これを基本に考えたいというのが日本政府の今の立場なんだろうと思うんですけれども。
 そういうことで、どういうものがいいのかということの議論が今ずっと行われるような時期になってきているというふうに思います。ただ、法律が通ったから世の中がすぐ変わるというものではないと思いますので、もっと民間レベルで、政府でもそうですけれども、実際に何が障害者差別で何が障害者差別ではないのかというようなことを、もっと細かいガイドラインを各業種別とかいろんなところで作ってそういう検討をする、実践をするということがないと、全く素地のないところに、法律ができたからあしたからやりましょうということは無理だろうと思うんですね。
 ということで、例えば障害者団体と企業家の連合体で、障害者雇用に関してこれは障害者差別だからやってはいけない、これはいいというようなそういうものを作る。大学では、大学の入学試験に、どういう場合に障害者の入学試験の受験を拒否してもいいのか、何がいけないのかというようなことをきちんとするというような、あるいはデパート業界はデパート業界で、また自分たちのデパートとしてはどうするのかというようなことを作る必要があるんだろうと思います。
 例えば、町の小さなコンビニで車いす用のトイレを付けないのはこれは障害者差別だと言われても、小さなところでとてもそんなトイレは付けられないというようなことがあったりすると思いますので、結構、人権擁護法案にはそういう定義が全くないので実効性がほとんどないんだろうと僕は思っているんですけれども、そういうことを詰めた実践をやらないと、法律だけ作るというわけにはいかないのではないかなというふうに思います。
#30
○有馬朗人君 自民党の有馬でございますが、先ほどの吉川委員のお考えに近いものがあるんですけれども、私も理化学研究所の理事長や何かをやっていて、まず第一にこういう障害のある人を雇おうとするときに一般の人の意識が非常に低いということですね。そこで、一・六%、今それを一・八にすると、こういうふうなことがあるんだけれども、まず第一にお聞きしたいのは、どのくらいこの一・六なり一・八なりパーセントが充足されているか、この点が一つ。
 一つ我々の方にというか、人を雇う責任者の方の問題は、どんな障害を持っている人がどのくらいいて、そして例えば私の場合ですと、理化学研究所なり東京大学なりにどのくらい役に立つのか、こういうふうなことの情報が少ないんですね。自分の方から求めようということはまずないです。まず企業側が、大学も企業なんだ、企業側が自ら世の中にどんな人がいるだろうと探すことはまずない。これは現実ですね。ですから、やっぱりこういうすばらしい、身体障害あるけれども、こういうすばらしい能力があるんだとか、あるいはこういうふうなことに大変使えるんじゃないかと、こういう面からも、単に罰則だけじゃなくて、そういう面からも少し宣伝をしていかなきゃならないんだろうと思います。
 私の場合は、一人、いろんな反対ありましたけれども、研究者を一人、恒久的に理化学研究所で所員にしました。かなり反対がありましたけれども、能力があるので、それを見て一人採りましたけれども、なかなかその能力を見極めることができないし、それからまたどんな人がいるかが分からない。こういう点でやはりもう少し努力をすべきではないだろうかと思います。それが二番目ですね。この努力に対して、どういうふうな努力をしたらいいかということを参考にお聞かせいただければ幸いです。
 それから三番目に、具体的にやっていてやはりこのように経済が難しいときに単に罰則だけでは動かない。やはり障害がある人を雇うことによってある種のメリットが、有利な点が企業なり大学なりに出てくるような方向へ持っていかなきゃならない。例えば、その会社なり大学なり名誉を与えるとか、何か世の中でああいう努力をしているところはすばらしいんだという雰囲気に持っていかなきゃいけないだろうと、こういう点について何かいい方法があればお聞かせいただきたい。要するに、罰則だけではとても動かないと思うんですね。
 最後に、今日、大変すばらしい御意見をいろいろ賜りまして、ありがとうございました。御礼を申し上げます。
#31
○参考人(石渡和実君) まず、一・八%に対して、民間の企業は一・四九%というのがここ三年間変わらない実雇用率ということで、厚生労働省が発表している数字です。ですから、一・八%にはまだ大分遠いと言わざるを得ません。
 ただ、この実雇用率というのは、私、多分に数字のマジックがあるように思います。ここ二十年くらいの雇用率の変化を見ていますと確実に上がっていて、一度ちょこっと下がったことはあるんですけれども、常に上昇カーブか、今は三年フラットの状態ということなんですけれども、これは制度が変わって、その雇用率にカウントできる人の幅を広げるみたいなことで急場をしのいでいると言ったら申し訳ないんですが、マジック的なところがあるので、現実は非常に厳しいものがあるというふうに思います。
 数字に関してはその辺を押さえていただいて、二つ目にどういう人がいるかという、やはり言うなれば売り込み的なことをどうやっていくかということだと思います。これは本当に企業と障害がある方だけでそういうことをしていくということではなくて、やはり仲立ちをする支援機関ということで、もちろん職業安定所もそうですし、それから障害がある方については、前は労働省の外郭団体だったわけですけれども、日本障害者雇用促進協会というようなところがあって、そこで地域に、県に一つずつくらいで障害者職業センターというのを作って、こういう障害がある方がいて、この方はこういう力を持っていらっしゃるからここの企業だったらというような、そういう専門職の支援でもって企業と結び付けるという努力はしているわけですけれども、現実になかなか障害がない方も解雇される時代ですので厳しくなっていく。そういう中で、そういう仲立ちをする機関やいろんな支援、情報提供についてはかなり尽くされているんじゃないかというふうに私は考えています。
 そうなったときに、企業を変えていくという辺りで、今この厳しい、非常に失業率の高い時代にワークシェアリングということが盛んに言われていますが、障害者雇用に関してももう二十年くらい前からワークシェアリングということは言われていまして、一人の方が働くことを独占するのではなくというような、そういう意識をこの社会の中に広げていくということが、やはり私は現実の問題として非常に、それは障害がある方の働くことだけではないというところでとても大事になってくるのではないかというふうに思います。
 そして最後に、罰則ではなくていかにこのメリットがあるかというところ、これは先ほどからも申し上げているんですが、なかなか理念なり単なる情報提供として企業にお伝えしただけでは動き切れない。本当に雇用していただいて、あるいはそういう障害がある方と正に共に何かをするということがあった中で、では雇ってみましょうというところに動いていくというのが現実ではないか。そのためにもやはりいろんなところで障害がある方、ない方が交流する場というのをいかに地域の中に作っていくかという辺りが現実に企業を動かすことになるのかというふうに、私はいろんな支援を見ていて感じています。
#32
○参考人(佐藤久夫君) これまでの実雇用率の推移をずっと見ていますと、今、石渡参考人が言ったように、過去三年間は平行線というか余り伸びていないわけですけれども、企業名を公表したりして、これはうちの企業もちょっと本腰入れないとまずいぞ、社会的に批判を受けるぞというときに若干伸びるということもあったわけですけれども、先ほど言いましたように。
 それと別に、たしか一九八〇年、八一年くらいの国際障害者年の前後のとき、障害者理解が高まって、企業で活躍している障害者がテレビなんかでも紹介されるとか、そういうようなときに結構普段の伸びよりも高い伸びで障害者実雇用率が伸びるというふうなこともあったので、やはり政府にしろマスコミにしろ、そういう意識を変えるというような取組というのも表彰みたいなプラスのものとともに必要なことなのかなというふうに思います。
#33
○参考人(中西正司君) 僕は障害者の所得保障を考えることからやっていった方がいいと思うんですね。年収三百万で、僕が考えるのは負の所得税というような形で、生活保護を取らなくても、百万稼いだら二百万は税金として還付されてくるというようなシステムを作って、生活保護を切っちゃえば一挙に三百万稼がなきゃいけないというのは苦労な話ですね。ですから、障害者は体力によっては週二日、三日という方もいらっしゃいますから、その範囲で働けると。うちの職場もそういう働き方をしているわけですけれども。
 そういう形で保障をすることと、職場で職員の方に介助を受けなくてもいいように介助者を設置してあげて、一緒にその人が介助して、トイレ介助も受け、生活できると、仕事ができるというような場の設定ですね。これは雇用促進法の中で職場介助というのは許されてきておりますので、職場については三分の一ぐらいの負担をすればできるというような形もあります。周辺の整備をすることがまず第一かなというふうに思っております。
#34
○山下英利君 三名の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。
 お話を伺って、先ほど有馬委員が御質問になったことと幾分重複するかもしれません、障害者と雇用という問題についてちょっとお伺いをしたいんですが、実際、私も企業に勤めておりまして、同僚にやはり障害を持った方がいらっしゃったと。いらっしゃったというか、仲良くやっていたわけなんですけれども、やはり企業が雇用をする際のリクルートという、要するに就職、採用活動のところで、じゃ、今度障害者の雇用をどうやって進めていくかという問題になったときに、企業がどの程度網を張っているかというところが非常に私自身の関心もあるわけです。
 関心と申しますのは、やはり障害の程度、自分の会社のやっている仕事においてどういった障害の方だったら仕事で適応してもらえるんだろうかと、その辺のところというのは、実際雇用を担当している担当者にしてもよく分からないという部分があると思うんです。企業が、確かにバブル期には非常に好調な景気のときは、要するに社会活動にかなり力を入れまして、ボランティアであるとか盛んに広告宣伝活動の一環としてやっていた時代というのも確かに私はあったと思うので、だけれども、今こういった景気が停滞して非常に厳しい状況になってくると、そういったところというのは一番最初に削られていくと。
 ですから、お聞きしたかったのは、一つは、そういったリクルートというか採用活動、障害者側から企業に対する採用活動ということもあれば、それは言ってみれば企業の担当者がどの程度理解を深めさせるような手だてが、今、現状あるのかということと、それから罰則ということではないんだけれども、やっぱりある程度の縛りがないとなかなか企業が採用には出てこれないということに対しての考え方なんですけれども、今、現状、これだけ不景気続いてきて、やはり相当リストラも進んできています。その中で、いわゆる障害者の方と、それからいわゆる健常者の方、この辺のところのリストラの影響というのはどうなのかと。
 率直に言うと、要するに、言ってみれば差別につながっているような状況というのが本当にあり得るのか。それは、要するに雇用の条件というところもあると思うので、企業が例えば障害者の方を採用する場合の雇用の条件というのが健常者を採用する場合の雇用の条件と同じなのか違っているのか、その辺のところは私も分からないので、実態なり、もし御存じだったら教えていただきたいと思います。
 それともう一つは、さっき中西参考人がちょっとお話をされておりました自己消滅系という、自己消滅系のサービスという話ですね、あれ、非常に私も印象深かったんです。これは、障害者の皆さんがやっている作業所、ございますよね。最近、よく私が聞く話は、これだけの不景気が、一番波が押し寄せるのが作業所であると。今までは取引ももらえていたのに、一番先に取引というか仕事がなくなってきているというふうな声も聞くわけなんですけれども。
 その辺のところ、要するに総合して、先ほどからお話が出ている差別という問題を私ももう一回整理したいなと思って、もし御存じのところがあれば教えていただきたいと思います。
#35
○会長(小野清子君) どなたにしましょうか。
#36
○山下英利君 まず、石渡参考人からお願いします。
#37
○参考人(石渡和実君) まず、最初にリストラの影響という辺りですけれども、これは、先ほどから申し上げている実雇用率というのは一・八%という数字に該当する、今たしか五十六人以上だったと思いますけれども、五十六人以上の企業であれば一・八%がお一人ということになるので、その規模の企業ですと雇わなくてはいけないということで、雇用率の数字に反映されてくるわけですね。
 ところが、例えば本当に家族経営的に五人でやっている小さな事業所で障害がある方を雇っているという場合はあの数字には出てこないわけで、実際のところそういう企業がこの不況の影響をもろにかぶっていますので、各県の労働部単位くらいでその辺の数字をお聞きしてみると、昨年度の二倍というような、ですから、平成十二年度の二倍くらいの解雇があったというようなことを割と県の労働部レベルではお聞きします。本当に障害者にこの不況がもろに影響を及ぼしているというのは厚生労働省の数字には出てきませんけれども、現実のところでは非常に大きな被害を被っていると言わざるを得ないと思います。そこら辺も踏まえて、どういうふうに企業が雇用していくか。
 先ほど企業が網を張るという言葉をお使いになりましたけれども、むしろ企業に網を張ってもらうというのは非常に難しいことで、逆に、障害者の方の就労を支援している専門機関がいかに網を張っていくか。むしろ私は企業に入り込んでいって、そこの企業の仕事を考えたときに、この障害がある方がどんな仕事ができるかというようなことをやっていく、それが先ほどお話ししたジョブコーチの役割でもあると思います。
 それで、そのジョブコーチと言われる方はむしろ企業の中に入っていって、そこの仕事ですとか、本当に専門性に基づいた職務分析等をして、こういうふうな環境を変えたり仕事の手順を変えればこういう障害者の方を雇うことができるというようなことにつなげていくわけですので、本当に、そういう企業が網を張るのではなくて、むしろ支援者が飛び込んでいった中で職域開拓を、より職場を広げていくというようなことをやることの方が現実だろうなというふうに思います。
 そういう意味で、やっぱりジョブコーチという辺りをきちんと制度化して、それなりの仕事をしていることに対してジョブコーチの立場というのが保障されるような、そういう制度なり事業なりというのはきちんと位置付けることが必要だろうなというふうには思います。
 そんなふうに考えてきたときに、最後のところでおっしゃったのがやはり障害がある方への意識というような辺りですね。
#38
○山下英利君 言ってみれば、雇用条件。
#39
○参考人(石渡和実君) 雇用条件、ちょっと考えていたのですけれども、済みません、ちょっとどなたかに譲っていただいて、その間にもう一度整理をさせていただければ。
#40
○参考人(佐藤久夫君) 真っ先に障害者が首を切られるというようなことはよく聞く話ですけれども、統計的に一体どうなっているのかというのは私もよく分かりません。
 ただ、厚生労働省が五人以上の規模の事業所を対象にして、たしか五年置きだったと思いますけれども、障害者雇用実態調査というのをやっていて、そういうものの数字だと、平均の給料が一般の勤労者に比べて大分低いということだとか、労働条件の面でかなり不利な状況にあるんだなということを予想させるようなデータが出ていたことを記憶しております。それと、非障害者は全員正社員だけれども、障害者は全員嘱託で一年契約だなんというような企業の話もよく聞くので、そのほかの雇用条件の面でもかなり不利な状況なのかなという感じもします。
 最低賃金法の適用除外というのがあって、職業安定所に申し出ると障害者は最賃を満たさなくてもいいという規定があって、それをそのとおりに使って、職安に申請をして認められて低い賃金で雇っているという例は余りないんだろうと思いますけれども、全くないことはないと思いますけれども、ただ、そういう制度があるということを利用して職安に届け出ないでかなり低い賃金のままに置いているなんというような企業の話もよく聞くので、この辺、きちんと調べないといけないなというふうには思います。
 それと、リクルートのお話ですけれども、一般の求職者とは別に障害者は特別な登録というので職安に届け出ておりまして、個別の事情を担当者が詳しく聞いて就職指導なんかをやることになっているわけですけれども、必要とあらば都道府県に一か所の障害者職業センターに適職の判定などでお願いして、この人はこういう点は難しいけれどもこういう点は能力があるというふうな、きちんとそういう評価をする、それを使って就職指導なんかをするというふうにはなっておりまして、都道府県に一か所ずつ重点職業安定所で、障害者関係のそういうデータを全部集めて広域的にやるという職安が定められてはいるわけですけれども、そこで得られる障害者の能力に関する情報が十分ではないのか、その辺、きちんと調べないといけないなと思いますけれども。また、そういうのがあることを余り企業の方々が知らないで十分活用できていないということもあるのかなというふうに思いますけれども。
#41
○参考人(中西正司君) 雇用の場で今起こっていることというのは、聴覚障害者の方が大分リストラされていますね。企業の方も、大分雇用を進めてくると、コミュニケーションの困難より、もう肢体不自由者でトイレとかを作ってやれば普通に働けるので、肢体障害者の方が雇用は楽だというふうな、大分企業も知恵を付けてきたという意味では、ある意味で分かってきたわけですね、障害のことが。それで、見た目は非常に聴覚障害者は良く見えるんだけれども、仕事の場での経験とかそういうコミュニケーションのことで非常に困難を感じていらっしゃる。そういうサポートが今必要になっているんだと思いますね。
 それから、作業所については、僕はこれはある意味で親のレスパイトではないかというふうに半分は思うんですけれども、作業所の内容でやはり仕事がなくなってきていることは事実ですね。自分たちでやっぱりセルフエンプロイメントというか、仕事を開拓して、自分たちに合ったペースで生産ができた方がいいわけですね。委託事業の場合、千個やらなきゃいけないと期日が決められると、結局作業所の職員が半分はやっているわけですね。夜なべして職員が働くことになる、障害者はそれほど能力が急に上がらないわけですから。そういう意味では非常に無駄なエネルギーを皆さん使っているなという感じはするんですね。それで、アジア諸国なんかでもインカム・ジェネレーション・プログラムとかスモールファンドを与えて、自分自身で企業経営をしていくという方が障害者にとっては自分の能力に合わせて働けるという意味でも有利なわけですね。
 僕自身も、今、所長なわけですから、職安へ行って障害者を雇用する立場なんですね。そうすると、随分企業側は有利な条件で人を雇っているなと。実際、理由なく解雇しても、一か月分だけ付ければ大丈夫みたいなというふうな、やはりこれは簡単にリストラされてしまうなと思うんですけれども。
 そういう意味では僕も雇用者側と被雇用者側の立場は分かるんですけれども、自立生活センターならば、そこで午後から出てきてもいいよとか週三日でいいよというふうな本人の働き方、体力に合わせた働き方をさせていけるということとか、また本人の職に合わせたような配慮が、介助者を付けていることとか、それから仕事の内容でも、書類を作るのはだれかに応援してもらいながらほかの仕事で本人の能力を発揮できるものをやってもらうというふうな配慮ができるわけですね。
 やはり、そういうふうなきめ細かな配慮をやってくれるような企業を育てないと、今の雇用率達成の中でやる限り、すべて完璧にできる者しか雇われないということでは、重度障害者への配慮ということでは、作業所から始めて、今の自立生活センターが社会との接点ぐらいになって、それから実際に企業で働きながら半分自立生活センターの支援も受けてというふうな段階を経て、そして正規な雇用の段階というふうな、もう少しきめ細かなシステムを作っていかないと、雇用か非雇用かみたいな、全く雇用されないかというふうな、今、作業所か職場かというふうな分け方なんで、もうちょっとグラデーションを持って支援してあげたいなと思いますね。
#42
○参考人(石渡和実君) 済みません、ちょっと補足をさせていただいて。
 最後に作業所のことを指摘されたのをちょっと私忘れていたんですけれども、この作業所に関しては、作業所という言葉からとても誤解をされることが多いというのは作業所関係の方たちがよくおっしゃることです。
 作業所は、障害が重い方に、本当に非生産的な仕事をするだけの場ではないということですね。現実のところ、障害がある方のこれからをどうしていっていいかということを、正に自分たちの身近な地域で、地域のいろんな立場の方の協力を得ながら運営している、正に社会福祉法が改正のときに言った地域福祉の推進というものの本当に小さな拠点になっているところだという理解がなかなかされないということを作業所関係の方たちはよくおっしゃいます。
 そして、本当にボールペンを組み立てて壊すみたいなことをやっているところもないわけではありませんけれども、やっぱりその方の正に社会参加というところで、いわゆる生産性というようなところにかかわらないその方の生きがい活動的なことをやったりとか、次のステップとしてどういうところが目指せるか、そのためにはどんな力を付けていったらいいかという、作業以前の社会生活力といいますか、自立生活センターでやっている自立生活プログラムのようなことを実践していることをメーンとしているような作業所もあるわけで、だから、そういうところを作業所という言葉で一くくりにされてしまうというのは非常に納得がいかないという声はやっぱり利用する側からも運営している側からもよく聞く話で、作業所というのはそういう多様な目的に応じて、本当に地域に根差した障害がある方の支援をしているんだという辺りのところは再確認をした上で、これから作業所というような法外の施設がどう地域の中で役割を果たしていくか。その場合、作業所の方たちも作業所の特性なり役割というのを明確にした上で、地域のいろんな機関とどうつながっていくかというようなことを考えているので、作業所というのを特定のイメージだけでとらえることは是非しないでいただきたいなというふうに思います。
 そんなところで、作業所は作業所のこれからの新しい時代の新しい役割というのを非常に今模索しているというようなところは是非御理解をいただきたいというふうに思いますし、そう考えたときに、先ほどの雇用の条件ですけれども、罰則を科すというだけではなくて、先ほど有馬さんが称号を与えるみたいな御提案もしてくださいまして、そういうものが効果を発揮するのかどうかはちょっと分かりかねるのですけれども、障害者の雇用促進法の中でも、やはり雇用している企業に対しての援助というのはきちんと位置付けられているわけで、いろんな調整金ですとか報奨金ですとかという、そういう物理的な支援というのが法律の中では位置付けられていますし。
 そういう物理的、経済的な支援以上に、やはり日々の障害がある方の働くこと、暮らすことをどう支えていくかという辺りが企業にとってはもっと深刻な問題で、最近よく言われるのは、就労支援という職場での支援とともに、その方の職場から帰った後の生活支援というのがきちんとできていないと、今までは企業がすべて、もう二十四時間、三百六十五日、暮らしの場のところも支えた中で障害者雇用というのが何とか継続されていたというところがあるので、やっぱり就労支援と生活支援というところをきちんとそれぞれの支援者が地域の中で役割分担しつつ連携しながら、そこら辺をシステムとして確立していくというようなことがないと、現実に雇用を促進すること、継続するということは難しい。
 改めて、働く場だけではなくて、暮らしの場との連携みたいなところが、むしろ企業に積極的に情報提供していくことで、雇用というのを一歩踏み出せる企業というのも出てくるのではないかと思います。
#43
○山下英利君 ありがとうございました。
#44
○辻泰弘君 民主党・新緑風会、辻泰弘でございます。御苦労さまでございます。
 先ほど、佐藤参考人の方から障害者の法定雇用率についての未達成企業の公表というような御指摘もあったわけでございますが、ちょうど今朝の新聞複数に出ておりましたけれども、内閣府の情報公開審査会が二十二日付けで障害者雇用促進法で定められている障害者の法定雇用率を達成できない企業名を公表するよう厚生労働大臣に答申したというのが出ておりまして、後ればせではございますけれども、前進しているのかなと思うわけでございます。
 私、お伺いしたいポイントは、厚生労働省が障害者雇用促進協会に委託して実施している障害者雇用機会創出事業、いわゆるトライアル雇用、三か月間の試行雇用をしてというやつがございますが、これの実際どう機能しているか、うまくいっているのかといいますか、その辺の状況について御存じでございましたら教えていただきたいと存じます。
#45
○参考人(佐藤久夫君) 正確な数字はこの中のどこかにあるんですけれども、これは先ほど言いました新しい障害者基本計画に関する懇談会の五回分の議事録なんですけれども、この中でその関係の委員が、トライアル雇用でたしか七割か八割くらいの定着率で三か月後もうまく就労が続けられているというふうに書いてあったんですけれども、正確な数字ではなくてちょっと申し訳ありません。
 そういうようないろんなこの不況の中で、厚生労働省として幾つか手を打っていることが結構効果的に使われているというような報告でした。
#46
○林紀子君 先ほど最初にお話を伺ったときに、精神障害者というのはずっとこう置き去りにされているというか、作業所なんかでは精神障害の方たちもそこで仕事をしているというお話を聞くんですけれども、その精神障害者というのはやっぱりいろいろ難しいところがあるんだと思うんですけれども、置き去りにしないようにするにはどうしたらいいのか。
 それから、最初に佐藤参考人からICFという考え方というのがあるというお話がありましたが、それがこうなかなかぱっと理解できないところもあるので、例えばこの精神障害の方たちはこのICFということを考えて当てはめるとどうなるのかということも含めて、ちょっとお話を聞けたらと思います。
#47
○参考人(石渡和実君) 精神障害の方の雇用が進まないというのは、やはり障害特性によるところと、それから精神障害の方への差別によるところと両方があると思います。
 差別のところはちょっと置いておきまして、障害特性ということでは、やはり精神障害の方というのは非常に体調に波があって非常に、働くことに支障がなく取り組めるというときと、気分的にも非常に落ち込んでしまったりとか、体力的にも厳しい状況になって働けないというような波があるというのが、企業にとっては雇用するときの一番踏みとどまってしまうところで、それはやっぱり障害特性というところですから、そこを配慮してどうするかといった場合は、まずはやっぱり医療関係者ときちんと連携して、その方の医療的なケアというのを確実にしておくというところが求められると思います。
 ただ、なかなか地域に出て暮らし始めた精神障害の方というのは、またその病院にかかわるという辺りを非常に嫌ったりとか、服薬がきちんとできるという辺りがまず地域生活の基盤ですけれども、そこもなかなかお一人ではやり切れない。ですから、今ホームヘルパーの派遣等でその辺をカバーするというようなこともあって、先ほどお話しした生活を支えるというようなところが精神障害の方の場合は特に大きな要素になってくると思います。
 そして、その波があるという辺りは、これはもう前提としたときにちょっと私も触れているんですが、これは厚生労働省なども事業として打ち出しているんですけれども、グループ就労というような形で、何人かの精神障害の方がグループでこの企業で働きます、そのときに今日はAさんがここのところ調子がいいからこの時間は働いていただくとかというような、一人との雇用ではなくてこのグループ、ですから、そういうことを作業所の支援をしている方なんかと連携していったら雇用につながるというようなことは出てくるんじゃないかというふうに思います。
 それから、やっぱり時間帯として午前中というのが非常に苦手で、午後だったらば割と体調がいいとか、そういう障害特性に配慮した支援というのをやっていくこと。そして、先ほど作業所では働いているんだというふうにおっしゃいましたけれども、やっぱり作業所もそういう、今日は出てこられる、でも先週は三日しか、三日も来れなかったわねみたいなところをやっぱり分かった上で作業所の利用というのをやってくださっているという辺りが、精神障害の方の支援ではとても大事になってくるんだろうなと思います。
#48
○参考人(佐藤久夫君) ありがとうございます。
 先ほどのこの五ページ目のスライドの資料を見ていただければと思うんですけれども、ICFの心身機能と障害の分類は全部で八百ぐらいに細かく分かれているわけですけれども、その第一レベルといいますか、大分類としては八つに分かれていまして、その第一章が精神機能なんですね。第二章が感覚とか、あと第八章が運動機能だったですか、そういうような形で精神の障害と、それから身体の障害、内部臓器の障害など、大きなものがその八つに分かれて、全部平等に並んでいまして、ですから、まだ国によっては身体障害だけしか福祉の対象にしていない国なんかはこのICFによって知的障害や精神障害も同じような障害者として扱わなければいけないというようなことで、政策へのインパクトがかなりあるんだろうと思うんですけれども。
 それで、例えば精神分裂病というような病気は健康状態のところに当たるだろうと思います。そうした例えば精神分裂病というような病気に伴って心身機能・構造の面では幾つかの精神機能、物を考える機能だとか集中する機能だとか、いろんな点で問題というか弱点があって、それと伴って活動のレベルでは対人関係で緊張してしまってぎくしゃくしてしまうだとか、疲れやすくて一日八時間の仕事はとても無理で三時間ぐらいでへばってしまうとか、そういう個人の活動能力の低下が起こって、同時に環境因子の中では、精神病の薬飲んでいる人はうちの企業でとても雇えませんとか、怖くてとかというような意識、態度の障壁、環境因子が作用して、参加の面で就職できないとか、スポーツサークルに入れてもらえないだとかいろんな参加の障壁が起こるということで、ですから、身体障害と精神障害もどちらもこういう共通の枠組みの中で理解をすることができるということだろうと思います。
 そのために人々の態度を変えるだとか、特に精神障害に多いわけですけれども、障害を理由とした資格制限、欠格条項などの環境上の障壁をなくすだとか、身体障害の場合の階段のところにエレベーターを付けるだとかというのとはまた違った形での環境の対応が必要になってくるという、そういう違いはありますけれども、同じ概念の枠組みの中で取り上げることができるのではないかなというふうに思います。
#49
○参考人(中西正司君) 三障害を比べますと、身体障害は非常にサービスが良くなってきました。知的障害者もようやくホームヘルプサービスができて、生活保護を取ってホームヘルプサービスで地域で暮らすような道筋ができました。ところが、精神障害についてはまだこれ支援費制度の中に組み込まれてもいないわけですね。それで、障害保健福祉部の中で福祉課に属さないでサービスがまだ行われているという意味では異例のものなんですね。
 なぜそうなってきているかと。私も国のケアマネジメントの委員会に出て、三障害合同委員会で、精神の方も入られ、知的の当事者は私というふうな形で入ったんですけれども、なかなかやはり精神のお医者さんたちの非常に力が強くて、当事者たちが会議に出てくる機会というのはないんですね。東京都の委員会でも同じようなことです。
 我々や知的の当事者の意見は聞かれるけれども、精神当事者の意見はなかなか聞かない。これは生活支援事業という国の事業においても、私どもは幾つか受託はできているけれども、今、精神の生活支援事業で受託しているのは全部精神病院か精神保健センターのようなところですね、民間団体が受託しているところはゼロに近いです。そういう意味では、地域でのサポートシステム、相談システムが当事者サイドにおいては皆無である。医療畑からしか支援システムができていないというところが問題です。
 それから、公営住宅においてもまだ知的障害者、精神障害者においては単身入居を認められておりませんので、こういう面でも住宅も確保できないというふうな問題。また、飛行機の搭乗なんかも精神障害者の方はお断りしますということをいまだに航空会社が言ったりして、非常に偏見を受けているわけですね。彼らが本当に必要とするのは地域の中で家事援助とか、そういうつらいときに支援してもらうこともあるんですけれども、やはり必要なときに相談に乗ってくれる人、それが必要なんですね。
 だから、うちのセンターなんかでも十分置きか三十分置きぐらいに本人が何十回も電話してくることがあります。順番に、みんな疲れるから交代に受けようねというようなことで話を聞いて、でも本人が、いや、今はとても忙しいから十分だけねと言えば、分かった、忙しいから十分だけでというようなことで、彼らは地域で支えられて生きているわけですけれども、そういうふうな支援されるシステムが医療機関以外にやはりないと暮らしていけない状態にあるんだと思います。
#50
○有村治子君 今日は貴重なお話をありがとうございます。三人の先生方にお伺いさせていただきたいと思います。自由民主党の有村治子です。
 先日、私自身もアジア太平洋障害者の十年、政府レベルのハイレベル会議というのに仲間に入れさせていただきまして、そこで中西参考人と御一緒させていただきました。
 そこで日本人の障害者の方々ばかりでなく、アジアの各国を代表するような、頑張っていらっしゃる、輝いていらっしゃる障害者の方々とお目に掛かって非常に勇気付けられました。それとともに、前回私たちがこの調査会で勉強した中で、鈴木委員がおっしゃったチャレンジドを納税者にという竹中ナミさんたちのグループで、私もちょっとお仲間に入れていただくことがありまして、いろんな方々とお話をさせていただくうちに私がちょっと感じましたことは、やっぱり納税をするということが、実は障害者の方々が所得を得て税金を納めるということだけではなくて、受動態から能動態へという主体性を復帰するという、ある意味では象徴的な、シンボリックな納税者、タックスペイヤーになるというような大事な意味を持っているんじゃないかなということを思い始めています。
 そういう意味では、やはり石渡先生がお書きになっていらっしゃる論文の中でも、今まで施設や学校では障害者の方々が見せたことのなかったような生き生きとした表情を職場で見せられるというのは、人の役に立っているということを本人たちが実感していらっしゃるんじゃないかというようなことをお書きになっていらっしゃるのを見て、私もこの部分というのは、人の尊厳ということをそれぞれの立場の人が回復するという意味でもすごく大事なんじゃないかなということを思い始めています。
 だとすると、やはり金額の多寡は別にして、障害を持った方々が所得を得てそして所得税を国に払っていただく。それとは別の形で、就労支援もそうですし、また生活支援もそうですし、それにかかわるような経済的なサポートあるいはアシスタントは別の形にして、でも所得税はしっかりと払っていただくという方がお互いにとって少しでも、本来持つべき自尊心というか尊厳ということが回復できるのかなというふうにも思い始めているんですが、この辺の経済的な所得に関する考えがありましたら、是非お教えいただきたいと思います。三人の先生方にお伺いしたいと思います。
#51
○参考人(佐藤久夫君) そうですね、もっともっと多様な働く形というのを日本でも開発する必要があるんではないかなというふうに思います。
 たしかスウェーデンだけでなくて幾つかの国でもやっていると思いますけれども、半分年金をもらって半分働くという。一日八時間労働では体がきつくて参ってしまうけれども、かといって年金暮らしだけでは先ほど言われたような生きがい感だとか社会参加が弱くなってしまうというふうなことで、体力的にも可能で、かつ生きがい、社会的なつながりを保障する年金と雇用の半々の仕組みだとか、あるいは補助金雇用ということで事業主に賃金の七割とか六割くらいを払って、税金で払って働いてもらうと。その分だけ年金を払わなくてもいいわけですから、余り国の財政としてはそんなに違いがない。しかも活躍してもらえて、本人の生きがい感とか社会参加が保障されるとか。
 もっともっとそういうことを柔軟に、あるいは一つのポストを、先ほど石渡さんも言われていましたけれども、一つのポストを三人、四人でグループで就労して、具合が悪くなったときには休めるようにチームで働くだとか、いろんな形での就労の形を持つと。それは単にお金の問題だけでなくて、大きな財産を社会に生かすことになるんではないか、全く同じ、お考えに賛成したいと思います。
#52
○参考人(石渡和実君) 今、とても大事な御指摘をいただいたと思って、納税という視点からおっしゃられましたけれども、人としての尊厳を回復するというところが私はやっぱりポイントになってくるんだろうなというふうに思うわけです。
 それが、障害がある方というのは、今までの福祉ですと、弱い、守ってあげなくてはという、与えるだけだったわけですけれども、そうではなくて、やっぱり障害がある人もこんなにいろんなことを社会に返せるよという役割というのをどう位置付けていくかということで、それは働くことであったり、納税という形であってもいいと思いますが、中西さん先ほどからおっしゃっているように、働くこと以外でも、本当にあなたの存在がこの地域に必要なんだ、この組織の中でなくてはならない存在なんだというところをどう位置付けていくかというところがむしろ大事になってくる。そして、その一つとして働くことを選択される方もいらっしゃるでしょうし、障害があるという立場でいろんな地域への働き掛けをしていくという運動というような立場を取る方もいらっしゃると思います。
 それから、最近の流れの中で、先ほど教育の話も出たんですけれども、総合学習なんていう時間ができた中で、障害がある方が学校等へ出掛けていって、自分たちについて理解を深めてもらうというようなことを子どもたちに働き掛けるなんていう役割をする方も随分増えてきました。
 最近、共に生きるというのがノーマライゼーションという考えからインクルージョンというような視点に変わってきているという辺りはもう中西さんがお詳しいんですけれども、そのときにインクルージョンというのは何を強調しているかといったら、盛んにお二人がおっしゃっていた縦割りを廃してやっぱり地域で生きる一人の人間としてその方を見ていく、それは障害とか高齢というわけではないはずだという辺りが一つあると思いますし、インクルージョンが盛んに強調しているのは、それぞれの方がきちんとその地域の中に地位がある、居場所があるということ。これはいじめの問題なんかにも通じてくると思うんですけれども、それはやはり居場所があって、その方が認められていて、ただ与えられるだけではなくて、その方が発信するいろんな役割というのをキャッチできる社会であるかどうかというところが、むしろその社会の在り方が問われているんだろうなというふうに思うわけです。
 そういうキャッチできるような社会になってくると、本当に重い障害の方、言葉がない方でも地域できちんと役割を果たしているというのはあるわけで、そういう役割をきちんと位置付けられるような社会であるか。そして、そういう中でもう一つ関係性ということを強調するわけですが、やっぱり人は人の中で生きていくんだという辺りを再確認していって、それはおっしゃったその人の尊厳というのをどういうふうに社会が見ていくかというところに尽きるというふうにも言えるんじゃないか。
 そういう意味で、働くことも強調したいんですけれども、現実にそれがとても難しい方というのはいらっしゃるわけで、そういう方たちがその地域の中でどんなふうに役割を持てるかという辺りが私はこれからまたとても大事になってくるんじゃないかと思います。
#53
○参考人(中西正司君) 今日、いろいろ質問いただいたんですけれども、やはり雇用の問題に集中してきてしまったなと。障害者の問題は雇用の問題を中心に考えると間違えると思っているんですね。
 実は、人権の問題とか、人間の尊厳の問題とか、そちらのベースの問題から考え始めないと、雇用の問題は現代の社会のやはりシステムですから、このシステムに障害者を合わせようとしても駄目ですね。システム全体を障害者システムに変えていかないと駄目だというのが今の状況だと思います。
 そのために、僕は、NPO法人、非営利民間団体があり、そして企業があり、そして行政のサービスがありと。行政のサービスはどうもうまくいっていないようだと、企業のサービスにおいてはやはり営利追求で優しいサービスはなかなか難しいぞと。非営利民間団体というのがあって、ここでは単なる物の生産をするだけではなくて、社会の環境を良くしていこうとか、自然を保護しようとか、それから障害者やそういう人たちの運動体を育てていこうというふうなことをやり、そしてアジアのことも考えようと。こういうふうなNPO団体というのが社会を構成する三つの要素としてやはり今まで欠け過ぎていたんではないかと。この非営利民間団体の活動というのを社会の中でもっと評価すべき、企業の活動ばかり評価していては社会が成り立たない時期に今来ているんじゃないかと。
 その中で、我々は最も非能率的、最も効率の悪い障害者なわけですね、企業の論理でいけば。やはり能率が悪い、効率が悪いというふうな人間が尊重される社会でなければいい社会にならないという意味では、我々は、最も重度の障害者が自立生活センターで最も有能な職員になるんだというシステムを作り上げたわけですね。
 我々の中では、健常者というのはどこでも雇用できるというか、幾らでもいるわけなんですけれども、重度の障害者が地域の中ではほとんどいないんです。この人たちを私のところで雇用すると、私のところへ来た障害者の人たちは、あんな重度の、呼吸器を付けて二十四時間介助の人がこのセンターでは働いて暮らしているんだと、それなら自分は当然暮らせるじゃないかと。ですから、彼を置いておくことはうちのトレードマークなわけですね。ですから、一番いい給料が取れるのは彼であると、健常者はいつでも首を切ってもいいと、どこでも雇用される場はあるし、我々にとっては重度の障害者こそ貴重な宝と。こういうふうに価値の逆転できるということは、彼が多くの人たちに与えるものがいっぱいあるわけですね。彼の経験は僕のような軽い障害、彼から見れば軽いんですけれども、そういう者にとっては、彼が暮らせる知識を持ってすれば僕は十分暮らせる。
 ですから、どんな最重度障害者がこの地域で暮らしているかということは、その市民の民度を表すものですね。それだけのサービスを提供して彼らが暮らせるように社会を構成しているんだと、それはもちろん駅のアクセスを良くしなきゃいけないし就労の問題もあろうし、すべての問題が解決するわけです。
 ですから、重度の障害者をまずターゲットにして、その人たちの問題を解決していけば、今話されている雇用の場での平等とかそういうものは当然解決されていてしかるべきものだと。やっぱり、そこの部面を解決しないでおいて、雇用だけ平等にしましょうと言っても、社会の差別とかそういうものを全く無視して、その中であなたは働いていきなさいということを強制することに近いというふうに思います。
 ですから、我々が考えているのは、やはりより重度の人、最重度の人を地域の中でまず定着させて暮らさそうと、それは大勢じゃなくていい、たった一人でいいんだと。だから、ロールモデルが一個できればその人のためにあらゆるサービスが必要になりますね。これはもう教育にしろアクセスにしろ、すべて必要になるわけです。高齢者の問題を解決するよりはるかに、移動の問題あり、教育の問題あり、すべてのサービスレベルを最も重い人に合わせていけば、社会はみんなが暮らしやすくなるんだというふうに思っておりますので、是非、雇用だけでなく、障害者の自立問題を今後は研究していただきたいと思っておりまして、よろしくお願いいたします。
#54
○会長(小野清子君) ありがとうございます。
 どうしましょう。不足分ですか、今の。
#55
○有村治子君 関連ですけれども。
#56
○会長(小野清子君) じゃ、ちょっと不足分を。
#57
○有村治子君 ありがとうございます、申し訳ございません。
 関連なんですが、石渡先生にお伺いしたいと思います。
 先ほど、ノーマライゼーションじゃなくてインクルージョンに移ってきたというふうにおっしゃっていただいたんですが、前回ここで私も質問させていただいたんですが、この分野というのは非常に片仮名が多いと。やっぱり片仮名が多いということは海外からかりてきた概念で、それに言葉を当てるから片仮名が、かりてきた外来語が多いと思うんですけれども、ノーマライゼーションという言葉を一般の方々がぱっと聞いて分かるかというと、私はちょっと疑問を持っているんですね。
 それで、そのときに聞いた省庁のお答えは、やっとノーマライゼーションという言葉を定着するために一生懸命皆さんが努力してきたのでこの言葉を変える気がないというようなコメントを前回いただいたんですが、今のお話を聞くと、ノーマライゼーションがインクルージョンに変わってきていると。そのインクルージョンというのも一般の方々がぱっといきなり包含とか、より含める意味というのがすぐ分かるかというと、なかなか分からないんじゃないかなというふうに思います。
 ですから、質問と、かつ是非お願いというか提案なんですけれども、私たちが、一般の方々が賛同してもらえるような仲間を増やしていくためにも、日本語でできるような、感覚が皆さんと共有できるような言葉を、積極的な意味付けの言葉を作っていただきたい、可能性があるのかどうかということと、インクルージョンというのが本当に定着するような言葉としてシフトしているのかどうか、ちょっとその辺の確認をさせていただきたいと思います。
#58
○参考人(石渡和実君) 私もインクルージョンという言葉はなるべく使わないように心掛けています。やはりノーマライゼーションが浸透してきたとはいっても、大体調査をすると二割ぐらいの人しか一般市民は知らないというのがノーマライゼーションのまだ現実です。
 ですから、ノーマライゼーションの考え方が発展してきて、専門家に言わせると新しい片仮名語のインクルージョンを使うよということで、私もなるべく片仮名語は使わない主義でいきたいと思っているんですけれども、ただそれを日本語にしてしまうと、非常にやっぱり誤解をされたりとか、考え方がぴったり目指す本質をついていないというようなことになってしまうことというのは多々あって、この辺は私たちは私たちなりに頭をひねって、本当に抵抗なく多くの方に分かっていただく言葉遣いをしていきたいと思っていまして、そうすると、やはり共に生きる共生という辺りになってくるのかなというふうには思うんですが、そこら辺はちょっと私どもでは案が出し切れないところがありまして、是非その言葉遣い、用語についてはいろんなお立場の方の御提案というか、助言をいただきたいなというふうに思っています。
#59
○福島瑞穂君 お疲れのところ申し訳ありません。今日はありがとうございます。
 今提案されている人権擁護法案では、例えば雇用の部分が全くありません。私は立法機関にせっかく来ていただいているので、もちろん現行法でどこまでできるか、運用でどこができるかというのもさることながら、佐藤参考人がおっしゃったように、できれば、DPIの世界会議で障害者差別禁止法の採択が宣言されましたが、立法機関としてどこまでできるか頑張りたいと思っております。
 ですから、さっき佐藤参考人の御説明の中で障害者差別禁止法もちょっと出てきたのですが、お三方、三人ともでもいいですし、あるいはお一人でもおっしゃっていただける方がいらっしゃれば、是非、障害者差別禁止法の、例えば反対という方もいらっしゃるかもしれないんですよね、いろんな方がいらっしゃるかもしれないので、率直に、そういう男女共同参画社会基本法的な障害者の点についての、そういうきちっとした差別禁止法を作ることについての是非みたいなことについての御意見をお聞かせください。
#60
○参考人(佐藤久夫君) その是非はもうほとんど決着済みで、そういうものは絶対必要だと既に世界で四十か国を超える、その理念だけでなくて、実際にその障害者差別の定義だとか手続などを決めた法律を、発展途上国も含めて、アジア太平洋諸国も含めて設けているような時代で、かつ日本政府がESCAPの総会で今年の五月に、権利に根差した障害者のための社会の次の十年ということを提案しているわけで、アジア太平洋には権利に根差した社会ということを提案しておきながら、日本の国の中ではそういう法的な整備がなされないということはちょっと非常に恥ずかしいことだろうと思いますので、政府も含めて、国連自体が権利条約を今準備していますので、もうそれは必要だということだろうと思います。
 ただ、議論としては、障害だけを単独に取り上げた差別禁止法はいかにいいものであっても障害者を特別視することになるので好ましくないというような考え方を、ヨーロッパの国ではそういう考え方が結構多いらしくて、特にデンマークなんかでは政府も、それから民間団体もそういうものはよくないという考え方を取っているというようなことを聞きましたけれども、しかし、そういうヨーロッパの国々も障害者権利条約を作るということに関して今では賛成しているということなので、日本の国の中で、どういう形のものか別として、統合的なものか障害者単独のものかは別として、障害者差別禁止法は必要なんだろうというふうに思います。
#61
○参考人(中西正司君) DPI日本会議と世界会議は国際的な障害者権利法の制定を目指して動き始めたところです。
 それで、国際的な権利法については今ニューヨークで議論されておりまして、メキシコ案と中国案が出てきたわけですけれども、さらに今度DPI案というのも提出する予定で、今準備作成中です。
 この国際法的な障害者権利法を進めるためには、まずこれを経済社会委員会のあるECOSOCのニューヨークからヒューマン・ライツ・イシューを扱うジュネーブの国連にこの問題を移して人権法としての成立を今目指したいと思っておりまして、そして、中国で国際権利法のアジアブロックのESCAPの会議が四月に開かれることになりまして、その中でそのような提案がなされ、そして五月のアドホック委員会で、ニューヨークでそのことが提起されていく、それで九月の国連総会で決議されていくというふうになっていくわけですけれども、まだまだこの行程は長くて、七年近くは掛かると言われています。
 そして、日本の内閣府も、もしも国際的な障害者権利法ができたら、日本政府はそれに従うのかといって聞きますと、その内容によるんですけれども、実際的に、今各国政府が合意できるような内容でしか国際法というのは作れないと思うんで、その中では恐らく国内での障害者差別禁止法を制定することということが義務付けられてくると思います。そういう義務付けがされた段階で、日本政府の障害者差別法というのが制定されてくる段階になると思うんですけれども、我々としては、これは今、職業の問題と就労の問題と教育の問題を解決していくためには不可欠なツールだというふうに思っております。
 このような義務的な法律、差別を禁止する義務法を制定することが今必要で、日本にはその法律体系が今までないものですから、非常に抵抗を呼ぶわけですけれども、これを作っていくことが次の社会の、僕は完全参加と平等という言葉が好きでして、インクルージョンというのは中に入れてやるよというんですけれども、完全参加というのは、我々はフルパーティシペーション、対等に参加できるんだと、そして平等であるんだと、主体者であるという意味を象徴しておりますので、フルパーティシペーションでいきたいなと思っております。
#62
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 質疑も尽きないようでございますけれども、予定の時間も参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了させていただきます。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして大変貴重で有意義な御意見をお述べをいただきまして、誠にありがとうございました。ただいまお述べをいただきました御発言につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 次回は来る十二月四日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。
   午後四時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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