くにさくロゴ
2002/10/22 第155回国会 参議院 参議院会議録情報 第155回国会 本会議 第2号
姉妹サイト
 
2002/10/22 第155回国会 参議院

参議院会議録情報 第155回国会 本会議 第2号

#1
第155回国会 本会議 第2号
平成十四年十月二十二日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  平成十四年十月二十二日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る十八日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。千葉景子君。
   〔千葉景子君登壇、拍手〕
#4
○千葉景子君 私は、小泉総理の所信表明演説に対し、民主党・新緑風会を代表して、総理始め関係大臣に質問いたします。
 改革断行内閣、改革なくして成長なしを掲げてきた小泉政権が発足から一年六か月。改革は進んだのでしょうか。経済は成長し、国民生活に反映されるようになったのでしょうか。いや、実態はその逆で、改革も成長もない状態が続き、小泉デフレスパイラルを招いています。
 経済が失速寸前の中で、広がり続けるリストラや失業という不安、介護や年金など将来に対する不安、そして健康や安全など暮らしに対する不安。いや、不安は今や失望と落胆へ、更に恐怖心へと変わっていると言っても過言ではありません。自殺する人の数は三年連続三万人を突破していることがその何よりの証左です。人々が人間としての尊厳も持てず、生きる場をも奪われてしまっているのです。
 小泉総理、あなたはこの国を、いや、この国に生きる人々をどうしようとするのですか。あなたの言う改革には人間の心や姿が見えず、将来の夢や希望のかけらも感じられません。人々は皆必死に痛みに耐えています。しかし、それは頑張れば実現できる夢や希望があればの話です。夢や希望に向かって一人一人が個性豊かに生きることのできる社会、それを国や社会がしっかり支えるシステム、このような社会を作ることが改革の先に見えてくるはずだったのではないでしょうか。
 しかも、そうした国や社会の基盤を成す政治、その政治への信頼も小泉内閣になってからますます地に落ちています。小泉政権の下で、金や利権にまつわる政治家の不祥事が続出しましたが、総理は常に、出処進退は政治家が自ら決めるものと、まるで他人事のような発言を繰り返すばかりでした。
 今、七つの衆参補欠選挙が行われておりますが、うち二つは秘書の口利きという政治と金にまつわる辞職に伴うものです。
 自民党の地方への利益誘導、公共事業依存型の政治の本質は何ら変わっておりません。赤字路線でも構わずに地元に道路を引き込んで、関連業界から政治献金を受け取り選挙の支援まで仰ぐという構図、こうした政官業の癒着構造は何一つ是正されておりません。まず改革しなければならなかったのは自民党という政官業癒着システムなのです。自民党をぶっ壊すと豪語されていた小泉総理、一体どうなっているのでしょうか。
 国民が政治に信頼をなくした国の未来を考えると背筋が寒くなります。現在の小泉内閣は不安・不信増幅内閣でしかありません。総理、これでもまだ改革改革と空念仏を唱えて国民を惑わし続けるのでしょうか。それとも、改革の挫折を認めて自ら座を退く勇気をお持ちでしょうか。この一年半をどのように総括しておられるのか、総理の見解をお伺いいたします。
 このようなさなか、さきのスキャンダル国会に続き、またしても秘書による口利きという政治と金をめぐる疑惑が報じられています。総理、自民党総裁として何と情けないことか、国民に対して恥ずかしいとお思いになりませんか。
 報道では、大島農水大臣の政務秘書官が大臣の地元青森の公共事業に関する口利きで六千万円受け取ったとされています。事実であれば、さきの国会で議員辞職された井上元参議院議長の問題と全く同じ構造です。
 大島大臣は、スキャンダル国会となったさきの通常国会では自民党の国会対策の責任者であり、鈴木宗男衆議院議員の秘書が逮捕されたときには、議員には秘書の監督責任があると強く批判しておられました。当然のことです。大島大臣、疑惑の秘書官を先日解任されましたが、それは疑惑が事実であったことの証左ではありませんか。であるならば、秘書は辞めさせて御本人は大臣職にとどまっていていいわけはありませんね。議員には秘書の監督責任があるのですから、速やかに進退をお決めになるべきではありませんか。大島大臣の見解を伺います。
 また、総理が大島大臣を任命されてわずか三週間余りでこのような問題が明らかになった。総理の任命責任が厳しく問われると考えますが、総理の見解を求めます。
 民主党は、この問題の徹底した真相究明を求めていくことを明らかにしておきます。
 さて、このたびの内閣改造についてお尋ねします。
 総理は、九月三十日、政権発足後初の内閣改造を行いましたが、今回の内閣改造ほど不可解なものはありません。一内閣一閣僚という原則を貫くと豪語しつつ、他方で六人も大臣を替えたことは、全く説明が付かないではありませんか。この点、総理の説明を求めます。
 今回の内閣改造は、総理や各大臣の責任が具体的に問われることもなく、なぜこの人が大臣にふさわしいかの説明もありません。総理は、柳澤氏が公的資金投入への消極姿勢を変えなかったため更迭し、竹中経済財政担当大臣を兼任させました。しかし、ここまで日本経済が落ち込み、財政が破綻寸前の状況にあることを直視すれば、まず竹中大臣の責任や能力を厳しく問うべきであり、その大臣に金融担当相を兼任させるような人事は到底納得できません。総理の見解を伺います。
 また、私たちがBSE問題等の責任を問い、辞任を求めてきた武部農水大臣が今回交代になる一方で、東京電力原発検査記録の不正記載等で原子力安全・保安院など国の責任が問われる中、平沼経済産業大臣は留任、さらに、防衛庁長官は交代で外務大臣が留任というのも理解に苦しみます。結局は従来からの自民党の順送り人事にしかすぎないと思いますが、総理、内閣改造の目的、各大臣をなぜその担当大臣とされたのか、明確に説明していただきたい。
 経済問題についてお尋ねします。
 今、日本経済は小泉内閣の経済無策によりデフレスパイラルという底なし沼の状態に陥っています。一体景気はどこまで悪化するのか、全く予想が付かない状態です。失業者やホームレスがあふれ、企業倒産が続いて、自殺に追い込まれる人が後を絶ちません。将来に対する不安で人々は消費を控え、それでますます景気が落ち込むという悪循環に陥っています。就職の夢は絶たれ、若者は未来に希望が持てない苦しみに直面しています。高卒で就職できるのは二人に一人との調査結果が出ています。日経平均株価が一時期八千円台前半にまで下がったことは、日本経済の危機が計り知れないほど深刻であることを示しています。
 こうした経済状況に直面し、総理は、過去の政策についての総括も反省もなく、なし崩し的に政策転換を行っています。小泉内閣はペイオフ凍結解除の再延期を決定しましたが、これは、ペイオフは予定どおり実施するとの方針を表明し続けた内閣の重大な政策転換です。総理は、これまで金融システムは健全であると言い続けてきました。仮にそれが事実とすれば、ペイオフ延期などあり得ないのではないでしょうか。また、それが事実に反するならば、なぜ政策転換をしたかについて国民にはっきり説明責任を果たす必要があります。総理の答弁をお聞きしたい。
 また、不良債権処理についても、総理は、大臣の首まですげ替えて不良債権処理を急ぐとのメッセージを市場に送りました。ところが、総理がデフレ対策も講じないまま、はっきりした理由も示さず過去の方針を翻したため、日本経済は大混乱に陥っています。これらの政策転換について、総理は国民に分かるような説明を行うべきではありませんか。また、政策転換をするのであれば、その政治責任をどう取るのか、具体的に示すべきです。これは政治の基本であり、いい加減な答えでは国民は到底納得できないと思います。総理より明快なる見解をいただきたい。
 日本経済は非常事態に突入しています。今臨時国会は、デフレから脱却し、国民生活を立て直し、日本経済を再生させるための対策を早急に策定し、実行するための国会と位置付けるべきだと考えます。
 なぜ日本経済がここまで低迷し、国民生活は危機に瀕しているのか。その答えは極めてはっきりしています。小泉総理が進める構造改革が偽物であり、口先だけのものだからです。総理は単なる破壊者であり、新しい社会へのビジョンもない、日本を再生させる根本的な政策が欠落しているからではないでしょうか。
 民主党が主張する構造改革は、口先だけの小泉改革とは違い、長期的なビジョンに立ち、未来に対する安心、安全を取り戻し、国民生活を根本から立て直すことを目的としています。以下、小泉改革との違いについても触れつつ、民主党の主張する経済対策を提唱させていただきます。
 第一に、小泉内閣は、自らが約束した国債三十兆円枠に縛られ、小手先の景気対策でその場をしのごうとしていますが、私たちは、長期的な視野に立った安心、安全のシステムを作ることこそ基本だと考えています。
 年金制度の抜本的改革、健保、介護の保険制度の根本改革を進めるとともに、雇用保険の給付期間や給付額の拡充、受給要件の緩和などの対策を急ぐべきです。将来年金がもらえなくなるのではないか、失業したときに雇用保険は受け取れないのではないかという不安を除去しない限り、冷え切った消費や投資を回復することはできません。
 第二に、小泉内閣は、我々が要求した予算組替えを聞き入れず、旧態依然とした土木型公共事業にこだわり続けていますが、私たちは、環境、福祉、新エネルギーなど、新しい時代のニーズにこたえる産業を育て、多くの雇用を作る未来志向の発想を持っています。
 また、NPOを始めとした非営利団体の活動を促進し、新しい形の雇用を作るべきです。民主党を始め野党提出のNPO支援税制法案を早く成立させるべきです。
 第三に、小泉内閣は、大銀行、大ゼネコンを救済し、国民や中小企業を切り捨てる政策を取っていますが、本末転倒と言わざるを得ません。民主党の経済対策は、あくまで生活者、中小企業を生かすことを基本としています。
 民主党が主張する不良債権処理は、あくまでも金融機関が本来の姿に戻り、地元の中小企業に積極的に融資を行えるようにすることが目的です。そのためには、金融アセスメント法を策定するとともに、中小企業に対する金融上のセーフティーネットを確立することが絶対条件です。大企業の借金は棒引きにして、中小企業への融資を止める政府のやり方とは正反対です。
 その他、住宅・教育ローンの利子減税などを断行すべきと考えます。
 第四に、政府は内向きの継ぎはぎ政策に終始していますが、民主党は、国際ルールや国際競争力を重視した政策を提言しています。
 日本版SECを創設し、公正取引委員会を強化し、自由で透明な経済市場を確立すべきと考えます。また、地域の活力を生み出すためには、現在出されている小手先のメニューを集めただけの特区構想にとどまることなく、権限とともに税財源を大幅に地方へ移譲するなど、大胆に分権を進めることが必要です。
 小泉総理の所信表明演説を伺っておりますと、具体的な経済対策にはほとんど触れておられません。本気で、本年をデフレ脱却元年とし、日本経済を再生させる気があるのでしょうか。これでは小泉スパイラル、竹中クラッシュを更に加速させるだけではないでしょうか。
 総理は、私たちの提言を真摯に受け止め、政治決断によって実行に移すべきです。この国会で何を実現するのか、具体的にお答えをいただきたい。とりわけ、野党提出のNPO支援税制法、金融アセスメント法の策定はすぐにでもできることです。この点も含め、総理の答弁を求めます。
 ところで、去る八月八日、人事院は、今年度の国家公務員給与を平均二・〇三%引き下げること、一時金を〇・〇五か月削減することなどを中心とする勧告を行いました。勧告始まって以来、初のベースダウンで、年間給与も四年連続してマイナスとなるなど、極めて厳しい内容でした。
 給与水準にかかわる勧告内容は、深刻な民間給与実態、経済・雇用状況を反映したものと認識しております。しかしながら、このような民間給与実態を招いた責任は、自民党を中心とする政府の経済失政にあることは明白です。また、官民格差の是正を理由に、官民相互に勤労者の給与所得をいたずらに抑制することにつなげることは、国民経済の観点からも問題が多いのではないでしょうか。特に、勧告の具体的な実施方法については慎重な検討と冷静な労使協議を期待したいと思いますが、不利益不遡及の原則を変更する内容が含まれていることについて、総理の見解を求めます。
 先週十五日、北朝鮮に拉致された方々のうち五名が待望の帰国を果たされました。御本人はもとより、御家族の皆様にとって、どれほど長い道のりであったことか、この間の心労はいかばかりであったことか、察するに余りあるもので、言葉には到底表現し得ない思いです。五名にとっての一日一日積み重ねられた二十四年、その歳月の重さを考えるとき、生活を急激に変えることはなかなか容易なことではないかもしれません。まずはゆっくりと心をいやしていただきたいと思います。
 さて、この帰国の契機になった九月十七日の日朝首脳会談は、国民にかなり唐突なものであったことは否定できません。確かに、北東アジア地域全体の安全と平和の促進を考えたとき、日朝間の長きにわたる不正常な関係を解消することは、米国、韓国、中国、ロシアとの関係の発展、協調とともに不可欠な条件ではあると思います。しかし、この時期に首脳会談が持たれることになったのはどのような判断に基づくものだったのか、総理に伺います。
 この日朝首脳会談において、北朝鮮は、国家による拉致を認め、拉致被害者の八名もの方々が死亡という衝撃的な内容を伝えてきました。総理は、この事実を知らされたとき、どれほど事の重大さを認識したのでしょうか。
 国と国の対立の中でいつも人々は翻弄されてきました。我が国が植民地支配の反省と償いを忘れてはならないと同様、自国の国民がその生命と人権をないがしろにされ、我が国の主権を侵されたことにどれほど強く抗議したのでしょうか。金総書記は口頭で謝ったと伝えられていますが、正式文書の日朝平壌宣言には拉致のラの字もありません。このように、国による人権侵害という重大な事態が明らかになっても、あらかじめ用意した宣言案をそのまま署名したのはなぜでしょうか。総理の政治的判断の明確な説明を求めます。
 その後、拉致問題について北朝鮮から日本政府が聞き出してきた情報は、死因や埋葬等について真偽のほどさえ疑わしく、御家族始め国民の不信感は募るばかりです。そもそも、拉致被害者、御家族に対して直接の謝罪はあったのでしょうか。今後、被害者や御家族への謝罪と補償がなされ、安全が確保され、完全な解放と帰国という具体的で誠意ある対応が取られるべきです。
 政府は、厳しく毅然とした態度で北朝鮮と向き合い、まずは拉致問題の全容解明に向けて徹底的な再調査がなされなくてはなりません。そして、調査結果を踏まえ、全面的な解決への道筋を付けるべきです。
 政府は、今月二十九日には国交正常化交渉を再開するとしています。そのように決めた理由は何でしょうか。拉致問題の全面解決なくして国交正常化なしと発言されてこられたのですから、その際の拉致問題に対する交渉の方針及び展望はいかなるものなのか、総理並びに外務大臣に伺います。
 さらに、北朝鮮が今月初めの米朝高官協議の際、核兵器開発を進めていることを認めたことが判明いたしました。一体、日朝首脳会談で署名された日朝平壌宣言は何だったのでしょう。総理は、首脳会談前に米政府から北朝鮮の核開発に関する情報を知らされていたということですが、会談では核開発について北朝鮮側からいかなる説明があり、どのような話合いがなされたのか、総理、明確に御説明ください。
 核開発は、米朝枠組み合意だけでなく他の国際約束にも反し、我が国を含む東アジアの安全保障上の脅威となるもので、看過できるものではありません。何としても国際社会による厳格な査察の実施、開発等の停止を北朝鮮に確約させなくてはなりません。
 再開するとしている国交正常化交渉において、拉致事件の徹底的な真相究明と核開発問題が交渉入口での最重要課題であり、交渉進展の条件になると考えますが、交渉に臨むに当たっての姿勢及び交渉のプログラムを総理及び外務大臣に御説明願います。
 次に、イラク問題についてお伺いします。
 昨年十月七日の米英軍によるアフガニスタン攻撃から一年がたちました。日本は、九月十一日の同時多発テロの大惨事を受け、国際社会とともにテロとの闘いに取り組んでいくことを明確にし、様々な面で米国に協力もしてきました。
 しかし、現在、私が憂慮するのは、米国がアフガニスタンにおける戦争の舞台をイラクに移そうとしていることです。ブッシュ大統領は、九月二十日の国家安全保障戦略の発表から、フセイン政権の打倒を主張し、場合によっては単独での先制攻撃も辞さないとしています。さらに、武力攻撃を念頭にした安保理決議案の提出、米国の上下院による武力行使容認の決議案採択など、危険とみなせば単独での武力行使をしてでも他国の政権をすげ替えるという米国の姿勢を総理は支持されるのですか。総理の見解を伺いたい。
 いやしくも武力行使を主張する以上は、その正当性を国際社会が承認することが不可欠です。慎重かつ冷静な検討もないままに、自由と人権の理不尽な抑圧につながる事態が生ずるのみならず、イスラム世界をも巻き込んだ国際的な紛争に拡大することを私は強く懸念いたします。
 このイラク問題に対し、政府としてどのように取り組んでいくのか、また武力攻撃を主張する米英両国に対して我が国としてどう対応していくのか、総理及び外務大臣に改めてお伺いしたいと思います。
 他方、アフガン難民問題をきっかけに、我が国の難民認定、難民支援制度の見直しを求める声が国内外で強まっています。国連からも難民問題に関する我が国の姿勢は厳しく指摘を受けています。緒方貞子さんが国際社会で果たされてきた足跡を私たちは受け継がなくてはなりません。
 世界のあらゆる人の自由と尊厳を守る先頭に立ち、国際社会と共生し、尊敬される国になるためにも、難民認定申請者が長期にわたり収容されているような実態は改める必要があり、民主党も検討を進めておりますが、難民認定に関する審査機関の在り方、六十日ルールの廃止などについて、総理、法務大臣はどのように考えておられるか、お伺いいたします。
 さて、国民生活において不安を募らせている問題について、以下、伺います。
 まず、東京電力など電力会社による原発のトラブル隠しをめぐる問題です。
 今回の電力企業による点検記録の改ざん問題は、電力会社首脳の総退陣にまで発展すると同時に、国の原子力政策を揺るがしかねない事態になっています。大変深刻な問題です。原発に対する国民の理解を得るためには、国と電力会社は情報の公開、説明責任を果たさなければなりません。トラブルを会社ぐるみで隠ぺいし、国民の原子力発電に対する信頼をおとしめた企業の責任は当然のことながら、経済産業省の原子力安全・保安院など、国の管理体制も厳しく問われなければなりません。
 国の検査体制の甘さや不十分な説明など、総理はどのように認識し、原発の信頼回復のために今後どのような方針で取り組むお考えか、答弁を求めます。
 今回の事件を契機に、保安院を中心とした原発の安全管理体制に対して疑問の声が出ています。民主党は以前から、保安院を完全に独立させ、内閣府に移すことを主張しており、二〇〇〇年三月には原子力安全規制委員会設置法案を提出しております。自治体や経済界等からも推進体制とチェック体制との分離を求める声が出ています。保安院の内閣府への移行について、総理の見解をお尋ねします。
 さらに、保安院の規模及びその専門的能力について伺いたい。
 日本の体制は、原発約五十基に対して保安院に二百六十人、内閣府に約百人の人員が配置されています。これに対し米国では、原発百基に対し、原発安全規制機関であるNRCに二千九百人の職員が配置されております。つまり、原発一基当たりで見れば、米国には約三十人の職員がいるのに対し、日本はわずか七人にすぎません。
 今後、日本の原発の経年劣化が進んでいく中、米国のわずか四分の一の陣容で本当に十分な安全対策を確保できるのか、総理の見解を求めます。
 次に、食生活の不安について伺います。
 牛海綿状脳症、いわゆるBSE問題の発生から一年が経過しました。BSEに対する一定の安全確保体制は整備される方向に進んでいるとは思いますが、BSEの原因や感染経路についてはいまだ明らかになっていません。総理、これらの究明はその後どうなっているのか、明確な答弁を求めたい。
 また、農水省が法律による肉骨粉の使用禁止を見送ったことや、EUから日本におけるBSE発生の危険性を指摘されながら何もしてこなかった政府の対応などは明らかに失政ではなかったのか。これらについて、総理はいかがお考えですか、お答えください。
 また、大手企業による牛肉偽装問題が発覚したとき、武部前農水大臣は企業に対し厳しい処分を求めましたが、そもそもBSE問題発生時に農水省自身が取った態度はどうだったのでしょうか。問題発生時に高級官僚だった農水省幹部は、八千数百万円の退職金を受け取り、畜産関連団体に天下りしようとしていた。逆に、BSE発生以来、牛肉関連企業は業績を急降下させ、そのために職を失った方々や失いかねない人々もたくさんおられます。政府の失政の被害を受けた方々に政府はどう対応したのでしょうか。身内には優しく、働く人々や消費者には冷たい農水省の態度は全く解せません。総理の見解を伺います。
 次に、個人情報保護法案について質問いたします。
 個人情報を保護するための法律の制定は急を要する案件だと私も思いますが、自己情報に本人が関与する自己情報コントロール権が確保されることが最低限必要ではないでしょうか。この点について、総理の御所見をお伺いいたします。
 また、政府提出の個人情報保護法案は、憲法二十一条が保障している言論、表現、出版などの自由を侵害するおそれが大です。時の主務大臣の判断によって罰則規定が適用されることになり、その基準のあいまいさが以前から強く指摘されるところで、大臣による恣意的介入が懸念されます。これでは、本来ジャーナリズムが監視する権力が、逆にジャーナリズムを監視するということになりませんか。主務大臣が関与するという仕組みではなく、欧州諸国のように行政から独立した第三者委員会を設置すべきではないでしょうか。総理の御所見を伺います。
 私は、個人情報保護法案はOECDの八原則に基づいた明確なものにしなければならないと考えておりますが、政府案には多くの問題点があり、欠陥法案と断ぜざるを得ません。政府の個人情報保護関連法案は撤回し、新たな法案を再提出する以外に選択肢はないと考えます。この場で総理の決断をいただきたい。
 この際、重大な欠陥があるために継続審議となっている人権擁護法案についても具体的に質問します。
 まず、人権擁護法案では、人権委員会を法務省に置くとしております。国連からも強く指摘されているように、人権委員会の独立性を確保するためには、人権委員会は法務省ではなく内閣府に設置すべきです。権力を背景にした暴力、虐待、人権侵害が問題となっている刑務所や出入国管理施設を所管しているのは法務省なのですから、法務省が人権委員会を所管することは不適切です。
 また、地方にも人権委員会が必要です。
 第二点目は、報道機関の過剰な取材方法による人権侵害について人権委員会が介入できる点です。報道機関も社会の一員であり、人権侵害は許されませんが、国家権力が報道へ介入することは民主主義に不可欠な自由な報道への悪影響が懸念されます。直接介入するのではなく、報道機関に対し自主的救済の仕組みを作ることを義務付けるべきではないでしょうか。
 これらの点を修正することについて、総理から明確な答弁をお願いします。
 次に、二十一世紀の最重要課題、男女共同参画社会実現に向けて質問します。
 現在、日本人の平均寿命は男性七十八・〇七歳、女性八十四・九三歳と延びています。こうした長寿社会では、男女ともに多様なライフスタイルを選択することのできる社会システムを確立することが不可欠と考えます。
 また、内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査によれば、夫は外で働き妻は家庭を守るという伝統的な家庭観について、男性の賛成は五一・三%、反対が四二・一%という結果になりました。しかし、二十代から四十代では、男女いずれも反対派が半数を超え、賛成派を大きく上回っています。若い世代が持つ家庭観を重く受け止めるべきではないでしょうか。
 この調査報告の結果を踏まえた施策を含め、男女共同参画社会に向けた政府の基本姿勢を総理からお伺いします。
 このような社会の変化の中、選択的夫婦別姓の導入が叫ばれて久しくなります。多くは申しませんが、機は熟しており、導入に向けた総理の決断あればという状況です。改革を唱える総理であるならば、このようなときこそ本領を発揮すべきではないでしょうか。そうでなければ総理御自身が抵抗勢力と評されることになります。総理の決断の一声をお聞かせください。森山法務大臣も多分期待されておられるはずです。
 さらに、社会制度も、多様なライフスタイルに適合し、男女共同参画社会にふさわしい性に中立性を持った制度にすべきではないでしょうか。税制、年金については、世帯単位から個人単位の制度に変えていくべきではありませんか。基礎年金は全額税方式にする、年金負担は個人単位に切り替える、配偶者控除、配偶者特別控除は廃止して、子育て支援などは歳出の方でしっかり手当てをする、こういう施策が必要ではありませんか。総理から明快なる答弁を求めます。
 もう一つ、二十一世紀、公平、公正な社会を支えるものとして期待される司法制度改革について質問いたします。
 我が国は、欧米諸国と比べ、弁護士や裁判官など法曹の数が圧倒的に不足しており、国民の人権擁護、紛争解決に支障を来しています。民主党も、既に司法制度改革に関する提言として「市民が主役の司法」を取りまとめ、法曹を現在の五倍の十万人に増やすことを主張しており、そのためには、中核となる法科大学院、いわゆるロースクールの創設が非常に重要だと考えています。政府も今国会に法科大学院を創設する法案を提出されております。
 そこでお聞きします。民主党は、法科大学院をこれまでの法学部の二の舞にしてはならないと考えています。市民に信頼される法律専門職業人の養成に特化した機関としての教育内容・方法を確保すること、入学者が法学部出身者に偏らないよう適性試験、学部成績、社会人としての活動実績等を総合的に評価すること、設置認可、監督、評価などは文部科学省から独立した第三者機関で実施することなどが必要と考えます。これらについて、法務大臣のお考えをお聞かせください。
 司法による社会の公正の担保が重要であることを指摘させていただきましたので、最後に最近出された二つの司法判断に関連してお尋ねします。
 小泉総理の地元神奈川県は、御存じのとおり、沖縄県に次ぐ基地県でもございます。この米軍基地に関連して過日二つの第一審判決が出されました。一つは十月七日に言渡しがあった基地従業員の石綿じん肺訴訟判決、もう一つは十月十六日に言渡しがありました厚木基地騒音訴訟判決です。いずれも国の責任を厳しく問う内容でした。
 じん肺訴訟において判決は、国は雇用者としての立場、地位協定締結当事者としての立場から、米軍が安全配慮義務を十分に尽くしているかどうかを不断に調査、監視し、必要な措置を講ずるよう働き掛ける義務があるにもかかわらず、それを十分に尽くしていなかったとしており、基地騒音訴訟判決においては、国の防音対策は抜本的な解決になっていないとして抜本的な対策の必要性を指摘し、あわせて、日米合同委員会での協議、交渉という手段があり、国が被害の発生を回避する可能性が全くなかったということはできないと不作為の責任を問うています。
 基地の存在には、周辺住民の協力、基地機能を維持するための優れた技術力などが必要です。だとすれば、これらにかかわる人々の安全、安心、人権を守ることは国としての義務ではないでしょうか。
 国民の信頼なくして日米同盟関係に基づく基地の存続はあり得ません。これからも日米両国が対等の良きパートナーシップを発展させていこうとするのであれば、この際、住民や働く人々の安全、安心を求める声にこたえ、司法が下した判断を率直に受け止め、抜本的な対策を講ずるべきと考えますが、いかがでしょう。総理の答弁を求めます。
 じん肺訴訟の原告は、戦後の日米関係の発展、我が国の復興を支えてきた人々ですが、今や高齢化し、亡くなる方も出ています。時間はないのです。また、厚木基地周辺住民が静かな夜を返してと最初の訴訟を提起したのは一九七六年。それから既に三十年近くの時がたっているのです。
 じん肺訴訟については、国はほぼ判決を受け入れましたが、一部を控訴しました。しかし、いずれにしても、これ以上国が訴訟を長引かせることは避けるべきです。長年にわたる市民の痛みを和らげるために、ここで一つでも総理の温かい心を示されてはいかがでしょう。問題を最終解決するための総理の決断を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 千葉議員にお答えいたします。
 この一年半をどのように総括しているかとお尋ねでございますが、私は、内政にあっては構造改革を断行し、外交にあっては国際協調を基本に主体的な役割を果たすなど、揺るぎない姿勢で、就任以来、山積する内外の課題に取り組んでまいりました。
 小泉内閣の改革に協力しないのであれば、私は自民党をつぶすと言ってきました。今、いかに皆さんよく協力してくれるか、よく見てくださいよ。自民党、公明党、保守党の協力によって着実に政策実現に努めているじゃないですか。私は自民党を変えると言って出てきたんです。変わらなければぶっつぶすという考えには変わりありません。
 道路公団の民営化にしても、郵政改革の民営化にしても、あるいは医療改革関連法案にしても、今までの自民党だったら一部の反対に引きずられて法案にも出すことはできない。それを最終的には自民党は、全体を考えて、良識を発揮して協力してくれて、全部法案に、改革に協力してくれるんです。そこが自民党のいいところなんですよ。自民党は着実に変わっているんです。変化に対応できない政党は生き残れない。自民党は変化に対応しようと思って努力している。
 外交面におきましても、米国を始めとする各国首脳との信頼関係を築き、私は各国との協調関係を強化してまいりました。
 新しい体制の下、私は、改革なくして成長なしとのこの改革路線を確固たる軌道に乗せて日本経済の再生を目指すとともに、官から民へ、国から地方への流れを一層加速して、活力ある民間と個性ある地方が中心となった経済社会を実現してまいりたいと思います。
 政治と金の問題、大島大臣の元秘書官の問題についてでございますが、政治と金の問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない問題だと思います。大島大臣に対しましては、農林水産大臣としての職務に全力を尽くすとともに、事実関係を明らかにし、疑惑を晴らすように指示しております。
 内閣改造の目的についてでございますが、私は、かねてから一内閣一閣僚ということを言ってまいりましたが、大臣が頻繁に交代することは今でもいいことではないと思っております。今回の改造は、私の改革路線を更に確固たる軌道に乗せるための改造でありまして、各閣僚の任命に当たっては適材適所の考えに立ったものであります。
 ペイオフに関してお尋ねがありましたが、不良債権処理の加速により構造改革の加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要でありまして、このような観点から、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施することとしたものであります。これは不良債権処理の加速という構造改革を強化するものであります。改革なくして成長なしという基本方針は全く変更しておりません。
 不良債権処理と経済対策についてのお尋ねでありますが、不良債権の処理は、従来から、他の分野における構造改革とともに実施することにより、デフレの克服及び我が国経済の再生に必要なものであり、このため、政府、日銀と一体となって総合的な取組を行う必要があります。今般、こうした基本的な認識を変更することなく、日本経済の再生に向け、平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの基本方針を示し、不良債権処理をこれまで以上に加速することといたしました。
 現在、金融担当大臣がその具体策について様々な観点から検討を行っておりますが、この問題につきましては、あわせて、デフレ克服に向けて、不良債権処理の加速を含む金融安定化策とともに、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用、中小企業に対するセーフティーネット策を含む総合的な対応策についても今月末に取りまとめることとしております。
 なお、御指摘のあったNPO法人に対する支援税制については、NPO法人の実態等を見極めた上で、平成十五年度税制改正の中で検討してまいります。
 また、民主党が提案している金融アセスメント法案についても御指摘がありましたが、金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、民主党提案のように、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価することについては慎重に考えるべきものと思います。
 公務員給与についてでございますが、国家公務員の給与は常に社会一般の情勢に適応するように見直しが行われるものとされており、今回の給与水準の改定も、民間における給与実態を踏まえて公務員給与の引下げを行うべきとする人事院勧告を受けたものであります。現下の厳しい経済情勢の下において官民の間に生じた給与水準の格差を是正することが必要と思い、国会に法改正の審議をお願いしたところであります。
 また、今回の国家公務員の給与改定法案は、年間給与について民間給与との均衡を図るとの観点から十二月期の期末手当の額の調整を行うものであり、給与を遡及して減額するとの御指摘は当たりません。
 日朝首脳会談を行うとの判断に関するお尋ねですが、日朝首脳会談は、七月末の日朝外相会談及び八月下旬の日朝局長協議の結果を踏まえ、私が金正日国防委員長に対して日朝間の諸懸案の解決について直接働き掛けを行い、先方の政治的意思を引き出すことにより局面の打開を図るとの観点から決断したものであります。
 なお、米国、韓国、中国、ロシアに対しては、首脳会談の前後にしかるべく通知、説明を行っており、いずれの国も今回の首脳会談を支持すると言っております。
 日朝首脳会談及び拉致問題についてでございますが、拉致された方の安否に関して北朝鮮から示された情報は誠に悲惨な内容でありまして、残念であり、また厳しい決断を迫るものでありました。政府としては、北朝鮮に二度とこのような痛ましい事件を起こさせてはならないと思っております。
 日朝首脳会談における金正日国防委員長の発言は、拉致問題への北朝鮮の関与を認めた上で謝罪と再発防止の決意を明確に示すものでありました。私は、交渉を通じて日朝間に横たわる深刻な懸念を払拭することが我が国の国益にかなう選択であると判断し、日朝平壌宣言に署名しました。
 日朝国交正常化交渉に関するお尋ねですが、拉致問題を始めとする諸懸案の解決のためには、国交正常化交渉の中で北朝鮮に対して日朝平壌宣言に従って誠実に対応するよう強く求めていくことが最も効果的と考え、国交正常化交渉を再開させることとしました。特に、拉致問題及び核問題を含めた安全保障上の問題については、これを最優先課題として日本の立場を明確に主張し、問題の解決に向け最大限の努力を行う考えであります。
 北朝鮮の核開発問題と日朝首脳会談に関するお尋ねですが、先般の日朝首脳会談においては、その時点で得ていた情報も踏まえ、金正日国防委員長に対し核問題を取り上げ、責任ある行動を取るよう強く求めました。これに対して金委員長は、関連するすべての国際的合意を遵守すると言いました。
 米国の対イラク政策についてのお尋ねですが、イラクの大量破壊兵器開発問題は国際社会共通の問題であります。重要なのは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきであります。この点について、我が国と米国及び英国の意見は一致しており、我が国は国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。
 難民認定の審査についてでございますが、この問題については、国の内外における人道、人権に関する意識動向や国際社会における日本の役割も視野に入れて幅広い視点から議論を重ねた上、適切に対応してまいります。
 原子力発電に関する国の検査体制についてでございますが、原子力発電所の不正記録問題については、国においても安全規制を見直し、事業者の適正な安全確保への取組を促していくことが必要と考えております。今後は、自主検査の法定化や抜き打ち検査の実施等により検査の実効性を向上させ、原子力安全行政の信頼の確保に努めてまいります。
 原子力安全・保安院の内閣府への移行に関するお尋ねですが、原子力安全規制については、経済産業大臣が一次規制を実施し、原子力安全委員会が客観的、中立的立場から再度安全性を確認するという現在のダブルチェックの体制が最も有効に機能するものと考えます。今般の事案が原子力の安全に対する信頼性を損なったことを重く受け止め、再発防止策として何が必要かについて総合的に検討してまいります。
 原子力安全規制の実施体制にかかわる規模についてですが、米国原子力規制委員会は、安全研究の要員も含むなど、その業務や組織構成は日本の行政組織とは異なるため一概には比較できません。我が国も、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の規制関係職員のほかに、安全研究等を実施している人員を勘案すれば、十分に安全対策を確保できると考えておりますが、今回の事案を踏まえ、更に検討してまいります。
 BSEの原因究明でございますが、BSE発生以来、肉骨粉などの輸入国について、加熱処理が行われていたかどうか、感染牛の配合飼料に肉骨粉が混入していなかったかどうかなど、あらゆる角度から調査を行い、原因究明に全力で取り組んでいるところであり、その進捗状況については農林水産省から随時公表しているところであります。今後とも、専門家の協力を得ながら、原因究明に全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
 BSE問題への対応についてですが、牛には肉骨粉がほとんど使われていなかったことなどから、農林水産省が肉骨粉等を牛に使用しないよう行政指導により対応したものと承知しております。また、結果的にはBSEの発生を見たことからすれば、EUの指摘も踏まえて、発生時の対応の在り方等について検討を行っておく必要があったのではないかと考えております。今後、食品安全委員会の設置等により、食の安全、安心の確保に全力を尽くしてまいります。
 BSEの発生により影響を受けた牛肉関連企業に対する政府の対応についてでございますが、BSE発生により深刻な影響を受けた食肉関連事業者等に対しては、昨年十月以来、関係省庁の連携により、低利資金の融通やセーフティーネット保証等を措置してきたところであります。今後とも、各省の連携により、関係事業者の経営の安定に努めてまいります。
 個人情報保護法案についてでございますが、個人情報保護関連法案は、IT社会が進展する中、個人のプライバシー等の侵害を防止し、国民生活を守るための基盤整備として不可欠なものであり、一日も早い成立が必要なことについては野党におかれても認識をともにされているものと思われます。
 本法案では、事業者による個人情報の取扱いに対する本人の関与を制度化することとし、開示、訂正、利用停止等の具体的な規定を盛り込んでおります。表現の自由に関しては、報道機関の報道活動について義務規定の適用が除外され、主務大臣を置かない仕組みとなっております。第三者機関の設置については、既存の行政機関に屋上屋を架すこととなり、責任関係が不明確になるおそれがあるものと考えております。
 いずれにせよ、本法案においては、プライバシーの保護と表現の自由を両立させる観点から万全の措置を講じたと考えておりますが、野党からも建設的な御議論をいただければ検討してまいりたいと思います。
 人権擁護法案についてですが、委員会を内閣府に設置すれば委員会の独立性が確保されるかのような御指摘は必ずしも当たらないと考えます。
 法案の定める人権委員会は、いわゆる独立行政委員会として、その構成と運営に関し高い独立性及び第三者性が確保されております。また、報道機関の取材活動に対しては、報道機関の自主的な取組の尊重を明記するなど、報道の自由に十分に配慮した内容となっております。
 政府としては、国会における審議を通じて国民の幅広い理解を得られるよう努めてまいります。
 男女共同参画社会に向けた政府の基本姿勢についてですが、男女が互いに責任を分かち合い、性別にかかわりなく各人の個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、社会全体にとって大きな利益をもたらすものと認識しております。今後とも、男女共同参画社会の実現に向けて、いろいろな関係施策を積極的に進めてまいります。
 選択的夫婦別姓についてでございますが、この問題は、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題であり、いろいろ議論のあるところでありますが、社会の変化を踏まえ、国民の意識動向に注目しつつ、各党各会派の御議論をいただき、対処する必要があると考えます。
 男女共同参画社会にふさわしい税制、年金等についてでございますが、税制における配偶者控除等の見直しについては、あるべき税制の構築に向け、男女共同参画の観点も踏まえつつ検討を行ってまいります。
 なお、我が国の個人所得課税制度は、所得を稼得する個人ごとに課税を行う個人単位課税を採用しております。
 年金制度については、社会保険方式を前提に、どの程度個人を単位とする考え方を貫くかについて、年金改革に向けた検討の中で、女性の社会進出等の変化に対応できる仕組みとすることを基本に幅広く国民的議論を行ってまいります。
 また、少子化対策については、多様な保育サービスの充実を図るとともに、働き方の見直しや地域における子育て支援など、総合的な取組を一層推進してまいります。
 じん肺訴訟及び厚木飛行場における騒音訴訟についてでございますが、じん肺訴訟については、判決を真摯に受け止め、今後このようなことのないよう、駐留軍の労働者の安全対策に万全を期してまいります。
 また、厚木飛行場航空機騒音問題が深刻な問題であることは十分承知しており、周辺住民の方々の理解を得るための施策の充実、推進に尽力してまいります。
 騒音訴訟への対応については、判決内容を慎重に検討した上で判断したいと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣大島理森君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(大島理森君) 千葉議員の御質問にお答えを申し上げます。
 秘書官の交代についてのお尋ねでございますが、大臣政務秘書官の職務は、大臣職と政務の調整でございます。例えば、スケジュール調整等があると思います。報道以来その職務に彼が全力で集中して仕事ができる環境と状況でないと判断いたしまして交代させることとしたものであります。
 まずは事実関係を明らかにし、説明することが責務と考えております。今後とも、身を律して職務に当たりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(川口順子君) 日朝国交正常化について私にお尋ねが二つございましたけれども、相互に関連をいたしますので、まとめて併せてお答えをさせていただきたいと思います。
 総理がお答えをなさいましたように、拉致問題を始めとする諸懸案の解決のためには、交渉の中で北朝鮮に誠実な対応を求めていくことが効果的であると考えておりまして、十月中に日朝国交正常化交渉を再開するという日朝平壌宣言にのっとりまして二十九日に交渉を再開することといたしました。
 この交渉におきましては、これも総理がお答えをいたしましたように、日朝平壌宣言の精神と基本原則に従って北朝鮮側が諸懸案の解決に向け誠実に対応するように働き掛けてまいる所存です。特に、拉致問題及び核問題を含む安全保障問題の解決に、この問題につきましては最優先課題として取り上げ、問題の解決に向けて最大限の努力をしていく考えでおります。
 イラク問題についてのお尋ねがございましたが、これにつきましても、総理がお答えいたしましたように、重要なことは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れて大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理の決議を履行することであります。このために必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきだと考えます。この点につきまして我が国と米国及び英国の意見は一致をしております。我が国は国際社会と協調しながら外交努力を継続してまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(森山眞弓君) 千葉議員にお答えいたします。
 まず、難民認定申請者の長期収容、難民認定に関する審査機関の在り方及び六十日ルールの廃止などについてお尋ねがございました。
 これらの問題に関しましては、総理が述べられました視点に立って取り組んでおります。そのうち、六十日ルールなどにつきましては、私の私的懇談会であります出入国管理政策懇談会の下に設置されました難民問題に関する専門部会におきまして検討していただいており、できるだけ早い時期にその検討結果を報告していただく予定となっております。
 なお、難民認定申請者の収容に関しましても、適切かつ柔軟に対応してまいりたいと考えております。
 また、選択的夫婦別姓についてお話がございました。
 この問題は、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題であります。社会や国民意識が著しい変化をし始めているということも先生御指摘のとおりでございますが、各党各会派におきまして議論を進めていただき、なるべく早く結論を得る必要があると考えております。
 法科大学院についてのお尋ねがございました。
 法科大学院については、法曹養成のための中核的な教育機関として入学者選抜における多様性を確保するとともに、その教育内容を充実させることが重要であると考えております。
 また、国による法科大学院の設置認可等に当たりましては法曹を始めとする学識経験者の意見を十分に反映させるとともに、法科大学院に対する評価については第三者機関によって実施されることが適当であると考えております。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(倉田寛之君) 青木幹雄君。
   〔青木幹雄君登壇、拍手〕
#10
○青木幹雄君 私は、自由民主党・保守党を代表して、小泉総理大臣の所信表明演説に対し、現下の重大な課題である北朝鮮問題やデフレ・金融問題に絞って総理に質問をいたします。
 まず、大変明るいニュースとして、今年のノーベル物理学賞に小柴昌俊東大名誉教授、化学賞に島津製作所のライフサイエンス研究所の田中耕一主任のお二人の受賞が決定し、科学技術創造立国を目指す我が国にとって大きな勇気付けられる快挙となりました。三年連続四人の科学研究者、特に若い企業研究者が受賞されたことは、受賞者の御研さんのたまものでありますが、日本の技術創造力や企業の底力を示すものであります。閉塞感が漂う中で、国民に自信と希望を与えるすばらしい業績として、共々お祝いを申し上げる次第であります。(拍手)
 さて、小泉内閣が聖域なき構造改革を掲げて発足してから早くも一年半がたちました。この間、世界じゅうを震え上がらせた同時多発テロや、長引くデフレを始め、BSE感染牛、武装工作船、瀋陽領事館事件等が発生し、このところ株価の低迷等、内外にわたり多事多難であります。
 このような中にあって、小泉総理は、先般、北朝鮮の金総書記と首脳会談を行われ、困難な課題が多い日朝間の重い扉を開かれたのであります。これは歴史的な決断として内外から高い評価を得ておりますが、拉致被害者の多数死亡という北朝鮮が示した誠に痛ましい情報に接し、その御家族の方々はもちろんのこと、国民は大きな衝撃を受けております。この余りにも過酷な拉致事件、その被害者御家族の言いようのないお気持ちを思うと、国が国民の生命と安全を守ることがいかに大切なことか、改めて肝に銘じ、政治の責務の重大さに決意を新たにしているところであります。
 十五日、生存者五人の方々の御来日により御家族と二十四年ぶりに喜びの再会がかないましたが、これを第一歩として、拉致問題の早期真相解明に真正面から取り組んでいかなければなりません。
 さらに、容易ならざる事態として、最近の株価は、十九年ぶりに九千円の大台を割り、低水準に低迷しており、総理の日本発の金融危機は起こさないという方針に沿って、時宜を失しない対応が是非とも今必要であります。
 世界的な株安傾向の中で、日本が世界経済の足を引っ張るようなことは断じてあってはなりません。我が国がデフレの悪循環に陥れば、国民の生活や企業が破壊され、今までの構造改革の取組も台なしになってしまうからであります。
 小泉内閣発足以来、総理は全力を挙げて、特殊法人改革を始め、行財政改革等、幅広い取組をなされ、多くの改革は今緒に就きつつあると思います。しかし、国民は将来の姿が明確に見えず、いまだ不安を感じています。また、改革のやり方について率直に申しますと、トップダウンにしても、その一方的に過ぎる手法に批判が出ていることも否めないことであります。
 この一年半の大きな情勢の変化や世論の動向等を踏まえ、スピードを重視し、直ちに実施すべき改革と、経済社会情勢等を勘案し、何年かの時間を掛けて軌道に乗せた方が出血も少なくスムーズにいく改革に分類すべきだと考えております。このような観点から、一つ一つの改革を峻別して、でき上がった姿と、それまでの道筋を国民に分かりやすく説明する必要があると私は思っております。
 所信表明演説では、総理は、今直面する最重点課題は日本経済の再生であると位置付けておられます。そのためのペイオフ延期や減税規模等に触れられてはいるものの、デフレ・金融対策の具体策として触れられてしかるべき政策の内容が乏しいと私は思っております。これからは、構造改革の一辺倒から脱皮し、経済対策にも強い総理のリーダーシップを発揮されんことを強く望むものであります。
 改造前の内閣においては、ペイオフの問題や不良債権の処理に伴う公的資金の投入問題などについて、関係大臣の間で見解の相違が見られ、それが経済や市場にマイナスの影響を与えてきました。総理は構造改革については強い指導力を発揮されておりますが、今までの経済問題への対応を振り返ってみても、総理が指導力を発揮されてきたとは決して考えられません。むしろ、改革に対する強引とも言うべき姿勢に比較し、総理に一番欠けていたのは経済問題に対するリーダーシップではなかったかと思います。今、正に求められているのは、デフレ・金融対策に関しての指導力、リーダーシップであります。私は、それができ得る総理であると固く信じております。
 先般改造された内閣の新たな陣容の下で、これから、我が国の総力を結集し、このような内外、未曾有の難局を乗り越えていくため、経済、金融や北朝鮮との交渉等、現下の最重要課題についてどのように指導力を発揮し、国民の理解と協力を求めていかれるのか、内政、外交の取組の基本姿勢について、国民の皆さんに分かりやすく御説明を願います。
 この臨時国会は、五十七日間という短い会期であります。継続審議となっております有事法制や個人情報保護法案については、総理は、できるだけ多くの議員や国民の皆さんの理解を得て、修正を含めて広く十分な議論をすることが必要と言われておりますが、この法案の重要性から見て私も全く総理と同じ考えであります。現状では法案修正をめぐる具体的な議論が何ら進展しておりません。
 したがって、これらの法案については、もう少し時間を掛けて、与党、野党の皆さんが修正を含めて真剣に協議を進めていくべきであると考えております。この国会の審議は、むしろ経済・金融対策等、緊急の問題に集中的に取り組むべきであると考えております。
 デフレ対策については、もっと以前から国会で腰を据えて取り組むべき問題でありましたが、御承知のとおり、昨年の臨時国会では同時多発テロ関連の法案審議に重点が移りました。これは国際社会の一員として当然のことだと理解をいたしております。前通常国会は、続発する政治家や企業の不祥事件の問題で経済関係の審議が手薄とならざるを得ませんでした。残念であります。今国会こそ経済・金融国会と位置付けるべき国会であると考えております。
 総理は、この重要な時期、臨時国会の審議にいかなる決意を持って臨まれるのか、お伺いをいたします。
 次に、日朝国交正常化交渉について伺います。
 先月の日朝首脳会談は、二つの点で長く国民の記憶にとどめられることとなった、そのように私は受け止めております。
 その一つは、両国の正常でない関係に終止符を打つことが我が国の国益及び北東アジアの平和と安定に欠かすことができないと、大局的な観点から交渉再開を決断されたことであります。その一方で、八人死亡と伝えられた拉致事件に国民皆が深い傷を受けたのもまた事実であります。
 北朝鮮が関与した拉致事件は、明らかに国家的テロ行為であり、断じて許されるべきものではなく、徹底的にその真相解明を図らなければなりません。
 それゆえに、今月末に行われる正常化交渉は、拉致問題を最重要課題として位置付け、その全容解明に手を尽くし、国民、何より拉致被害に遭われた御家族の方々が納得のいく解決を導いていくことが肝要であります。その過程で、拉致問題の解明はもとより、責任者の追及、実行犯の引渡し、補償まで毅然とした態度で主張すべきであります。
 振り返ってみますと、拉致事件は、その大半が二十数年前の事件にもかかわらず、政府が拉致と認定したのは九七年であります。それまで政府は打つべき手はすべて打ってきたのか。私自身も、官房長官を務めていた経緯もあり、この問題に対し率直に反省すべき点があったと考えております。
 また、北朝鮮が米国に対して核兵器開発を継続していることを認めたことから、安全保障上大きな問題が発生をいたしました。交渉では断固たる態度で核兵器開発の即時中止、早期の核査察を求めていくべきであると考えております。
 先月中旬の日朝首脳会談以降、今日までの短期間のうちに、多数の死亡者の情報が伝えられたことを始め、生存者の一時帰国や核開発の問題などが立て続けに起きており、二十四年ぶりに帰国された五名の方々は、今、全く環境の違う状況におられます。このようないろいろなことが集中的に起きたため、国際的にも国内的にも、また国民感情も、一種の今興奮状態にあります。さらに、北朝鮮の出方がどうなるか、予想せざる変化も考えなければならず、私は、一定期間、これらの状況や問題を冷静に判断することが最も大切なことであろうと考えております。拉致問題にせよ安全保障問題にせよ、国際世論や国内世論の動向を慎重に見極めつつ、的確に対応していく必要があります。
 そのような中にあって、総理が国の進むべき道を冷静に正しく判断していくのが国家の最高指導者としての責任であると考えております。
 そこで、以上の点を踏まえて、今後の日朝国交正常化交渉にいかに取り組んでいかれるのか、その基本方針について改めて総理にお伺いをいたします。
 先日明らかになった北朝鮮の核兵器開発は、明らかに米朝枠組み合意等に違反しているものであり、このような国際的な背信行為を行う交渉相手に対しては、米韓と連携しつつ、我が国として、米朝枠組み合意、日朝平壌宣言を遵守するよう強く求めていくべきであります。
 政府として、核開発問題を含め安全保障について、今後の交渉を通じ、いかに実効を確保していくか、総理に対処方針をお伺いいたします。
 次に、経済・金融問題について伺います。
 私は、デフレを早期に克服し、日本経済が危機的な状況に陥ることを回避するために残された時間はないとの認識に立っております。
 この秋に入ってから、世界景気の先行きを懸念する声が強まり、世界同時株安の危機も高まっていることから、不良債権が足かせになって、いつまでも景気、金融仲介機能が回復しない日本へ海外からの風当たりが厳しくなっています。国際通貨基金やG7では、日本に対し不良債権処理を強く迫ってきております。
 このような情勢の中で、総理は、平成十六年度には不良債権問題を終結させることを所信表明で明確に打ち出されております。私も、日本経済が低迷状況を脱するためには不良債権処理を早急に進めていくことが重要ということについて異論がありません。不良債権問題の処理方法を誤れば、国民の間に大きな混乱を招くのではないかという不安があることも事実であります。これから不良債権の本格処理に伴い、貸出し先の強引な整理が進むのではないか、それにより企業倒産や失業者が増加し、デフレの悪循環に陥るのではないかと大変心配され、これが株価の低迷の背景になっております。
 貸出し先の経営事情は様々であり、再建の可能性の残っている企業が淘汰されたり連鎖倒産が起きたりすれば景気の底割れを招く危険性もあり、不良債権処理の加速は何のためにあるのかという根本のところを間違えてはならないと思うのであります。
 言うまでもなく、不良債権処理は、産業に対し資金を流す金融仲介機能を担う銀行システムを健全化すると同時に、日本経済を担う産業、企業の再生をしていくことにねらいがあり、それが構造改革に資するものではないかと考えております。この際、新たなビジネス育成対策により、産業、企業の再生をてこに入れることが構造改革につながることになります。
 日本経済の構造改革の推進や産業、企業の再生のために不良債権問題にどのような方針で対処されるお考えか、お伺いをいたします。
 不良債権の本格的処理に伴うセーフティーネットの充実強化、特に中小企業金融を始めとした金融の円滑化やいろいろなケースに即応できる雇用の拡充対策等を始めとする総合デフレ対策を早急に実施することが強く要請されています。
 その対策内容がいまだ不透明で、市場が過敏になっているときに、大き過ぎてつぶせないとは思わないとかいう担当大臣の発言が報道されて、市場の不安が膨らみ、株価が急落したり、政策の内容、規模等をめぐる閣僚の見解が様々で、政府が総力を挙げて強力なデフレ対策を打ち出すという期待感がしぼみかけている状況であります。
 総理は、状況認識や政策の基本的な枠組みについて、閣僚間で食い違いが生じないよう十分御注意いただくとともに、閣僚の皆さんも自分の発言について、その影響を考え、十分配慮すべきであると私は考えております。
 所信表明では、経済情勢に応じて柔軟かつ大胆な措置を講ずると述べられておりますが、総理は以前にも同様の考えを表明され、金融の危機を起こさないためにはあらゆる手段を講ずると言明をされております。
 柔軟かつ大胆な措置や総合的な対策、総論的、抽象的な文言が目立ち、公的資金の投入や補正予算について何の言及もまだいたしておりません。本来ならば、十八日の所信表明の中で総理の口から国民に明確に打ち出されるべきであったと私どもは期待しておりました。
 しかし、現在、総合デフレ対策が検討過程にあるため、それができなかったということも私は善意に解釈いたしておりますが、それなら月末までに発表のデフレ対策の中で、公的資金の投入の方法、補正予算の在り方については、はっきりと国民に分かりやすく明示すると約束、総理できるでしょうか。この点を確認しておきたいと思います。
 一年前、私は代表質問で、政策のフリーハンドを持って新たな情勢に対応すべきと強く申し上げましたが、今この金融非常時において、今までのように三十兆円の枠にとらわれる必要は私は全くないと考えております。
 多くの国民は、総理が財政再建に真剣に取り組んでこられたことを十分に理解しつつも、なおデフレ対策の強化を切望いたしております。このため、セーフティーネットの大幅拡充を始め、生活の安定確保に不可欠な事業等の財政出動も含め、思い切った対策を早急に決断され、総力を挙げて実行していただきたいと思います。
 総理の総合デフレ対策への取組の基本的な考えをお聞かせ願います。
 先般、日銀が中央銀行としては極めて異例の措置である、銀行の保有株の直接購入に踏み出し、何としても金融システムを安定化させようという明確な姿勢を打ち出しました。そして、日銀の立場から、不良債権処理に公的資金を投入する政策提言を公表いたしました。
 これから重要なことは、金融危機予防のため、政府と日銀が一体となってどれだけ迅速に政策対応ができるかということであります。
 今回の内閣改造においては、経済財政担当大臣と金融担当大臣とが兼務となりましたが、これは財政と金融を明確に分離してきた金融の行政改革の経緯から見ると大変思い切った人事であり、不良債権処理促進、公的資金投入への総理の強い意向によるものでないかと受け止めております。
 ところが、担当大臣は、少人数の民間専門家が参加するプロジェクトチームで公的資金投入の在り方を集中的に検討されているようでありますが、ここでの結論だけで金融行政が展開された場合、その影響が大きいだけに、結果責任を一体だれが取るのか、検討の様子が伝わってこないだけに、どうなっていくのか不安が拡大しております。
 総理、このようなプロジェクトチーム中心の検討方法で的確な不良債権の本格処理が円滑に行われるのかどうか、その見通しについて御答弁をお願いいたします。
 今、強く要請されていることは、不良債権処理の加速化によって、金融システムの動揺が起こらないよう、あるいは地域の金融仲介機能が麻痺することのないよう、予防的な対応も含め、総合的な検討がなされ、金融機関への公的資金投入が、早急に金融仲介機能の再生に大きな効果を発揮するようにしていくことであります。
 経済の活性化のため、幅広くデフレ対策を推進するには、税制面の対応も急がれ、景気対策的な意味合いからは、投資減税等や贈与税の軽減が不可欠でありますが、長年の地価の下落による資産デフレに対しては、土地の流動化や有効利用のため、土地税制の抜本的見直しもまた必要であります。土地の価格の下落、担保価値の低下が続くと不良債権の発生に歯止めが掛からないことも重視していかなければなりません。
 これら一連の対策以外にも、経済・金融政策は多様に及び、本年に入って、与党や自民党から数回にわたりデフレ対策が提案され、政策のメニューは大方出そろっております。
 参議院自由民主党も、地域や職域の意見を集約しつつ、税制見直しや地域の活性化等に関して提言を行うとともに、景気・中小企業対策についてプロジェクトチームで意見を取りまとめております。その中で、都市再生、環境など需要追加対策や中小企業向け融資保証の充実、活性化のための税制措置を始め、多岐にわたる提案を行っておりますので、是非御参考にしていただきたいと考えております。
 政府においては、経済財政諮問会議を中心に総合的な取組がなされておりますが、与党から申し入れているいろいろな経済対策はいまだ余り政府の政策として形を成し、実行に移されていないような印象を私は持っております。
 要は、生き物の経済に対し手後れにならないよう、各地の状況を踏まえ的確に診断し、できるだけ効果的な処方を施すことはどうするかの問題であります。したがって、霞が関の議論だけでなく、政策を具体化する段階から経済界を始め関係分野や地域の関係者等と十分意見交換をし、協力体制を整えておく必要があります。それによって初めてスピーディーで効果的な対策の実行が可能となります。
 特に雇用等のセーフティーネットは、現場の実情に合った工夫や情報提供等、地域や関係機関の支援が必要であります。これら対策の推進の体制作りにどのように取り組んでいかれるのか、お聞かせを願います。
 最後に、我が国の政策決定の在り方、特に審議会等の扱いについても一言述べておきたいと思います。
 私は、率直に言って現在の審議会等の在り方を考え直すべきときが来ているのではないかという感じを持っております。
 御案内のとおり、審議会はかねてから行政の隠れみのとして批判も強かったことから、既に整理縮小も進められ、運営面でも情報公開等の改革がなされております。しかし、いまだその数は百を超す多くの審議会が存在しております。さらに、各省におかれては私的諮問機関等が多数設けられております。
 もちろん、私は有識者の考えを政策に反映していくという手法そのものに反対するものではありません。外部の意見を取り入れていくことは、硬直化した日本の行政を考えると、そこに風穴を空けるものとして非常に有効であるとは考えております。しかしその一方で、一部のマスコミに後押しされた特定の民間の人の方々の意見が連日のようにテレビ等の各種メディアでもてはやされ、その結果、それによって政治の流れ、経済の流れが作られていく現状には大きな不満を持つものであります。
 国民の皆さんの声に真摯に耳を傾け、その声を国政に反映させる責任を持つ我々国会議員が審議会や私的諮問機関の意見に比べて軽視されている現状は、議会制民主主義の危機であると言っても過言ではないと考えております。特に、比例区という職域を始め国民各層のお考えを代表する多くの議員を持つ参議院として、この問題は与野党を挙げて議会として今後考えていかなければならない問題であると考えております。
 よって、総理、一つの提案でありますが、今ある審議会、諮問機関等をすべて一度白紙に戻して、その必要性、役割等の見地からも、人選も含めて見直してみるのも一つのやり方かと思っております。選挙等で選ばれたわけではなく、また、結果責任を負うこともない方々の意見が重要な国策、国民の未来を左右するというのは、その成り立ちから見ても問題であると考えておりますので、この点、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 この国会は十二月十三日まででありますが、衆参の補欠選挙もあり、実質的な審議は大変タイトな日程となっておりますので、最優先課題であるデフレ対策、金融安定化対策に集中して、この困難な事態を早急に乗り越えていかなければなりません。
 金融非常時において国民の最大の要請はデフレ経済の早急な克服であり、思い切った政策を進めるべきであります。その際、政策転換であるとか、いや政策強化であるという、そういう議論によって経済が良くなり、デフレが解消するものではありません。総理には思い切って君子豹変し、必要な政策を断固実行するリーダーシップを私は強く望むものであります。
 小泉総理、あなたはデフレの退治という大きな方針の前では頑迷、頑固であってはなりません。新しい総理官邸ができ上がりました。総理、あなたはその官邸の主であります。天に向かって伸びる未来への挑戦の象徴として新官邸の中庭に植えられたあの凜とした孟宗竹の青さ、みずみずしさ、それを思いはせるのであります。竹を剛ならず、柔ならず、草でもなく、木でもなくと表した言葉があります。時々刻々と移り変わる多難な事態を乗り越えていくためには、あの竹のような強さと柔らかさを併せ持ったしなやかさ、その姿勢こそが総理にとって必要ではないかと思っております。竹が真っすぐに天に向かって伸びていくように、日本の再生に懸けるその信念も貫いていけるものだと確信をいたしております。
 現在の経済、金融等の深刻さへの理解、認識は与野党を問わず共通のものとなっており、その克服は全国民の願いであります。でありますから、総理にはデフレ対策挙国一致体制を取っていただき、不退転の決意で事態に臨まれんことを心から期待するものであります。
 我々参議院自由民主党は、公明党、保守党の皆さんとともに総理を全力を挙げて力強く支持することをお約束申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#11
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 青木議員にお答えいたします。
 質問に加えまして率直な御意見、激励を賜りまして、誠にありがとうございます。
 内政、外交の取組の基本姿勢についてでございますが、私は、就任以来、内政にあっては構造改革を断行していく、外交においては国際協調、これが一番大事だと、それを基本に主体的な役割を果たすという揺るぎない姿勢でやってまいりました。この考えに今までも今後も変わりありません。
 今日の経済の低迷は、言うまでもなく、今まで成功してきたいろんな制度とか機構、これが必ずしもうまくいっていない、この新しい時代にどうしてうまく機能させるような改革が必要か、そういう視点からいろいろな改革に取り組んできております。言わば、根本的な原因、根本的な構造にメスを入れない限り日本の経済は再生はないという観点から、今後も改革を進めていきたいと思っております。
 もちろん、改革を進めるに当たっては、雇用問題、中小企業対策、セーフティーネット、これについては万全を期してまいります。
 外交におきましては、北朝鮮の問題、またテロとの闘い、イラクの問題、誠に難問山積でございます。しかし、私は、これまで各国首脳との間に築きました信頼関係を基に、各国との揺るぎない協調関係を築きながらも、日本としていかに世界平和と安定に資するか、こういうことを常に念頭に置きながら日本の役割を果たしていきたいと思います。
 現在の日本の経済におきましては、構造改革の途上にありまして、厳しい状況が続いているということについては否定いたしません。確かにそのとおりだと思います。しかしながら、私は、日本経済の持っている本来の潜在力、これについては余り悲観的に見る必要はないと。この今までの多くの先人が築いてきた潜在力をいかに発揮させるか、これが政治の大きな役割だと思っております。悲観主義に陥らず、日本人の持っている本来の素質というもの、力というものを信じて、希望を持って改革に立ち向かっていくことが必要だと思っております。
 臨時国会に臨む決意でございますが、この臨時国会においては、継続審議になっております案件について与野党の協議を進めながら対応していくということも大事だと思っております。単に与党だけの観点からということよりも、やはり国益を中心にして、野党の意見でも参考にすべきは参考にすると、協力求める場合は協力を求めるという、そういう立場で進めていくことが重要かと思っております。
 ペイオフに関する制度の整備、構造改革特区、中小企業のセーフティーネット、特殊法人改革などは、今臨時国会に成立させなきゃならない問題もあります。そういう点も含めまして、構造改革を推進するために緊急に必要な重要課題についてはできるだけ速やかに審議していただき、成立をお願いしたいと思います。
 日朝国交正常化交渉についてでございますが、二十九日に再開する方針に変わりありません。いろいろな情報が行き交っておりますが、日朝平壌宣言の原則と精神が誠実に守られることが交渉進展の大前提であります。核開発問題を含めました安全保障等の問題につきましても、そういう考えに立って、日本だけで進めるのではなく、アメリカ、韓国との緊密な連携協力の下に、この解決を北朝鮮側に働き掛けていきたいと思います。
 不良債権問題については、日本経済を取り巻く不確実性を除去し、政府、日銀一体となって総合的に取り組むことが必要であります。平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの基本方針を示し、不良債権処理をこれまで以上に加速し、政策を強化することを決定したところであります。
 この指示に基づきまして、現在、金融担当大臣が不良債権処理の加速の具体策について様々な観点から検討を行っております。今月中に取りまとめることとしておりまして、これを踏まえて判断していきたいと思います。
 あわせて、雇用や中小企業に対するセーフティーネット対策を含む総合的な対応策を今月末には取りまとめたいと思います。
 なお、産業再編、企業の早期再生の支援策の施策も強化してまいります。
 今回のデフレ対策の内容及び取組の基本的な考え方についてでございますが、これは民間需要主導の持続的な経済成長を実現していくことが何よりも重要である、そういう観点から、政府は日銀と一体となって総合的に取組を進めていきます。
 不良債権処理の加速を含む金融システム安定化策、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用、中小企業対策などの問題につきましても、今月末には取りまとめることとしておりますので、今の時点ではまだ明らかにはできませんが、もうしばらくの時間をおかりしたいと思います。
 御指摘になった公的資金の投入については、公的資金まず投入、これがありきではございません。不良債権処理の加速の結果として議論されるべきでありますが、いずれにしても、金融担当大臣が不良債権処理の具体策について今検討しておりますので、それを踏まえて対応しなきゃならない問題であると思います。
 なお、今回の対応策に伴いまして、今国会に補正予算を提出することは考えておりません。もとより、経済というのは生き物であります。無用な混乱、また金融危機を起こしてはならないという観点からは大胆かつ柔軟に対応いたします。
 不良債権処理の検討体制についてでございますが、私の不良債権処理をこれまで以上に加速するとの指示に基づき、金融担当大臣の下に民間有識者を含む金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームが設置され、これまで資産査定の厳格化、自己資本及びガバナンスの強化等について専門家の意見も取り入れた幅広い検討が行われておりまして、具体的な加速策につきましては、この議論も踏まえながら政府において決定する考えであります。
 経済対策に関しまして、経済界や地域の関係者との意見交換、協力体制の構築及び審議会の在り方について、いろいろ御意見も踏まえお尋ねがございました。
 審議会につきましては、先般の中央省庁等改革において、政策決定を内閣又は国務大臣の責任で行うことを明確にするため、政策を審議する機能を原則として廃止するなど、全般的な見直しを行ったところであります。
 こうした中発足して私が議長を務めております経済財政諮問会議におきましては、学界、産業界の有識者や地方の意見のほか、関係大臣を通じて広範な関係者が参画する審議会等などで集約された提言、考え方等が報告されておりまして、それらも十分に踏まえた検討を行っているところであります。
 政府としては、今後とも、与党の関係者も含め、多くの関係者の幅広い御意見をしっかりと受け止め、適切な政策運営に努めてまいります。(拍手)
#12
○議長(倉田寛之君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト