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2002/07/16 第154回国会 参議院 参議院会議録情報 第154回国会 厚生労働委員会 第19号
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2002/07/16 第154回国会 参議院

参議院会議録情報 第154回国会 厚生労働委員会 第19号

#1
第154回国会 厚生労働委員会 第19号
平成十四年七月十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 七月十一日
    辞任         補欠選任
     櫻井  充君     今泉  昭君
 七月十五日
    辞任         補欠選任
     今井  澄君     谷  博之君
 七月十六日
    辞任         補欠選任
     草川 昭三君     山本 香苗君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 正俊君
    理 事
                田浦  直君
                中島 眞人君
                朝日 俊弘君
                柳田  稔君
                沢 たまき君
    委 員
                狩野  安君
                久野 恒一君
                佐藤 泰三君
                斎藤 十朗君
                鶴保 庸介君
                中原  爽君
                藤井 基之君
                宮崎 秀樹君
                今泉  昭君
                谷  博之君
                辻  泰弘君
                山本 孝史君
                草川 昭三君
                山本 香苗君
                井上 美代君
                小池  晃君
                西川きよし君
                森 ゆうこ君
                大脇 雅子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        川邊  新君
   参考人
       財団法人日本食
       生活協会会長   松谷 満子君
       高知医科大学医
       学部看護学科地
       域看護学講座教
       授        甲田 茂樹君
       中央社会保障推
       進協議会事務局
       次長       相野谷安孝君
       日本医師会常任
       理事       櫻井 秀也君
       健康保険組合連
       合会常務理事   対馬 忠明君
       全国町村会会長
       添田町長     山本 文男君
       日本労働組合総
       連合会事務局長  草野 忠義君
       全国労働組合総
       連合事務局長   坂内 三夫君
       日本高齢・退職
       者団体連合会長  西田 八郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○健康増進法案(内閣提出、衆議院送付)
○健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(阿部正俊君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十一日、櫻井充君が委員を辞任され、その補欠として今泉昭君が選任されました。
 また、昨十五日、今井澄君が委員を辞任され、その補欠として谷博之君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(阿部正俊君) 健康増進法案を議題といたします。
 本日は、本案について三名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
 参考人の方々を御紹介申し上げます。
 財団法人日本食生活協会会長松谷満子さん、高知医科大学医学部看護学科地域看護学講座教授甲田茂樹さん、中央社会保障推進協議会事務局次長相野谷安孝さん、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用のところ、また台風襲来の中、いろんな御不便をなさって当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、最初に参考人の皆様からお一人二十分ずつ順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの御質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁とも、発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず松谷参考人から御意見をお述べいただきます。松谷参考人。
#4
○参考人(松谷満子君) 松谷でございます。
 こうした意見陳述の機会を与えていただいたことに対して、心から感謝申し上げます。
 私ども財団法人日本食生活協会は、昭和三十一年から食生活の改善を始めとする健康づくり活動を進めている団体でございます。活動を一緒に担っているのは食生活改善推進員、愛称、最近はヘルスメートと呼んでおりますけれども、ボランティアの方々であり、全国で二千七百八十八市町村で約二十二万人の推進員が食生活を中心とした健康づくり活動を日々取り組んでいるものでございます。ちなみに、食生活改善推進員とは、昭和四十五年に全国組織を作りました際に、私どもは、食生活改善や生活習慣の改善を進める人という形で私どもの活動の目標をその名称にしたわけでございます。
 食生活改善推進員は実践者であって旗振り役ではございません。生活習慣が生み出す無自覚な沈黙の病気を減らすこと、健康の向上を通じてより心豊かな生活の実現を目指して、三十余年にわたって地区組織活動を進めております。
 この活動の特徴は、上から下へ何かを教えるということではなくて、「私たちの健康は私たちの手で」をスローガンに、推進員として食生活や健康づくりについて学んだことを自分の家庭で実践をして、さらにはその知恵をお向かいさん、お隣さん、そして友人、知人、そして地域の人々へ、小さな単位の活動を原点に、同じ目線の高さで実践につなげる学習活動、あるいは調理の実習、コンクールの開催、そして郷土料理の掘り起こし・展示、親子料理教室、また男性・高齢者の自立に向けた料理教室、そして在宅介護食に関する講習会や独り暮らしの高齢者に対する給食サービスなど、地域で活動を進めております。
 その活動の実績は、一年間、一人一人の推進員が活動記録を付けているわけですけれども、大体四百八十万回、二千六百万人を対象に私どもの活動は地域ごとに展開しているわけでございます。
 最近では、平成十二年から健康日本21がスタートしたのを受けて、私たちはヘルスサポーター21事業を推進しているところでございます。ヘルスサポーターの育成は、健康日本21の趣旨に賛同して、自分の生活習慣を一つでも改善するという意欲を持つ者に対して、ヘルスメートが中心になって十時間程度の学習を行い、自分の健康のレベルや生活のスタイルに応じて自ら指標を設定して、その指標を達成するための方法を身に付けてもらいます。ヘルスメートは女性を中心に結成されたものですけれども、ヘルスサポーターは男女の区別なく、しかも生活習慣がある程度固まる中学生以上を対象にだれでも参加できるようにして、毎日の健康づくりを実践するヘルスサポーターの輪を広げていく事業でございます。
 健康日本21で取り上げている九分野全体、健康づくり全般にわたる事業として推進しております。食生活改善推進員一人が三人から五人のヘルスサポーターを育てて、全国で三年間に百万人の仲間づくりを目標にしています。私たちはこのヘルスサポーターを健康日本21の起爆剤にしたいと考えております。
 そして、健康増進法案に対する私たちの考え方なんですけれども、改めて申し上げるまでもなく、高齢化が進む中で、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病対策が急務となっております。したがって、これからは疾病の早期発見、早期治療に加えて、一人一人が食生活や運動、休養、喫煙、飲酒、歯科保健など、日々の生活習慣を見直し、病気にならないように健康づくりを進めることが重要になっております。
 従来は、健康づくりといえば保健や医療分野の専門家の方たちによる活動でございましたが、これからは健康づくりは自分自身の健康観に基づいて日々それぞれ実践していくものであること、そして健康づくりを通じて、より豊かな生活が実現できることを男性女性を問わず、あらゆる年齢層に草の根的に広げていかなければならないと考えております。
 ところが、これまで健康づくりは大切だと言われながら、健康日本21の根拠は、旧厚生省の通知だけしかございませんでした。私たちボランティアが少しでも広い層に健康づくりの大切さを訴えようとしても、そのよりどころになるものがはっきりしていないのが現状でございます。
 今回の健康増進法案は、健康づくりに初めて正面から法的な基盤、根拠を与える法律でございます。国権の最高機関である国会において、健康づくりは国を挙げてその支援に取り組むべき重要課題であるということを法律という形で明確にしていただければ、より多くの方々に健康づくりの大切さが分かってもらえるものと思います。是非とも早期の成立をお願いいたしたく存じます。
 また、健康増進法は、健康づくりの関係者相互の連携や協力の重要性も位置付けになるなど、行政だけでなく私たちのような民間のボランティア団体についても健康づくり運動の担い手として位置付け、社会全体で個人の健康づくりを支援していくという理念に基づいております。こうした法律のできることによって、私たちも住民としての役割というものを自覚し、もっとやらなくてはならないなという気持ちが起こってくるし、また市町村と役割分担して、仲良く協力し合いながら一層自信を持って活動できるものと期待しております。
 健康づくりにおいては身近な市町村の果たす役割は大きいのですが、全国で活動する推進員の声を聞いてみますと、各市町村の力の入れ方は地域によって大きな差がございます。その原因としては、これまでの経緯とか住民の考え方とか、地域固有の事情もいろいろあって、健康日本21に法的な根拠がない、だから首長さんを始め市町村の中でも健康づくりに対する理解が得にくい、そのために進まないというところがあるのではないかと思います。
 今回、健康増進法が成立し、市町村の健康増進計画などにもきちんとした法的根拠ができれば、こうした状況も大きく変わると期待しております。
 また、市町村の計画策定が単なるお役所の机上の計画では、地域の健康づくり運動は盛り上がりません。計画策定に当たっては、住民の参加を得て進めるよう、各自治体に国の方からも呼び掛けてほしい。私たちも計画策定作業には積極的にかかわっていきたいと考えております。
 健康づくりは生活の様々な場面にかかわる大変大きな課題であり、省庁の枠にとらわれていては実効ある活動を推進することは難しい。私どもの団体も、平成十三年から始まった健康日本21推進全国連絡協議会に参加して、様々な分野の団体と情報を交換している中でいろいろとヒントをいただき、例えばウオーキング協会と共同でセミナーを開くなど新しい活動に取り組むきっかけとなっております。
 したがって、健康づくりを進めていく上で、省庁ごとの所管事務の壁をどのように乗り越えていくかという点は一つのかぎになるのではないでしょうか。一例を挙げると、子供の肥満が増えているとか、家族で食卓を囲むことが少なく、子供だけで食事をするいわゆる孤食の問題が顕在化しているなど、子供の食をめぐっての様々な指摘がございます。
 これに関連して、一昨年公表された新しい食生活指針は、当時の厚生、文部、農林の三省が、厚生省は健康の視点から、農水省は食料需給や食品の廃棄物の点から、そして文部省は食生活を通じた教育や文化という点からそれぞれがかかわって策定され、閣議決定されました。この結果、地域の活動は非常にやりやすくなりました。
 今回の健康増進法には、厚生労働大臣が関係行政機関の長と協議して健康づくりに関する基本方針を策定するとの規定が盛り込まれており、こうした省庁間の連携をより大きな枠組みで総合的に行おうとするものと理解いたしております。基本方針という形で省庁間の連携の枠組みができれば、私たちの活動においても、横の連絡、連携を一層強化していくための良い契機になると期待しているところでございます。
 率直に申し上げれば、今回の健康増進法の制定に伴って栄養改善法が廃止され、栄養という名前が法律から消えることへの寂しさが、当初、わずかながらあったことは事実でございます。しかし、栄養改善法は、食料事情が悪く、栄養の欠乏が最大の課題であった昭和二十年代に制定された法律である。制定以来半世紀を経た今日、豊かな時代の中で独り栄養改善の分野だけの法律を護持することはなく、運動、休養・睡眠あるいは飲酒、喫煙、歯の健康などの生活習慣全般に関して健康づくりを支援する法律へと脱皮しなければならないのは時代の要請であり、当然のことかもしれません。
 以上、いろいろと意見を述べさせていただきましたが、もちろん法律ができただけで国民の健康増進が実現するものではございません。国民一人一人の自覚と取組、そしてそれを支援する国、地方公共団体、保険者、医療機関、また私ども民間の団体などの連携協力という実際の活動が伴わなければ、絵にかいたもちに終わります。
 先生方には、是非とも、まずは健康増進法という法的な土台の早期成立に御尽力をお願い申し上げますとともに、その土台の上に国民の健康という花を咲かせていくことができるよう、健康づくりの分野への更なる理解、御支援をお願い申し上げ、陳述を終わらせていただきます。
 これ、一応終わりましたけれども、先生方、皆様方のところに私はお配りしております、適正体重を測るこの物差しをお配りいたしました。
 ヘルスサポーターは、学習して、自分の生活の実感の中から私は何をするかという目標を立てて行動するわけですけれども、御承知のように、今は肥満というものが糖尿病を始めとするすべての生活習慣病の根源のところにございます。ヘルスサポーターは、自分の問題として、自分の実践するものを何から始めていくかということをちゃんと認識して、決意して実践をするわけですけれども、自分の実践の間を通して、地域の方々の会話、あるいは職場においてもこういう問題を話し掛けていくということも、私は広がりを持たせるためには非常に大事じゃないか。
 そこで、ヘルスサポーターの教育のときにはこれを全員にお配りいたしております。そして、機会あるごとに適正体重、あなたの適正体重は幾らかというような形を話ししながら健康づくりの問題を話題にしていただきたい。私たちは、BMIという、今、これは身長掛ける、メーターなんですけれども、掛ける身長掛けるの二十二というのが一番生活習慣病にかかりにくいと言われている適正体重なんですけれども、それを、BMIを社会常識に持っていきたいという思いでこれを全部に配っているところでございます。
 今日はこれも添えまして、私の陳述に代えさせていただきました。
 ありがとうございます。
#5
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 続きまして、それでは甲田参考人にお願いいたします。甲田参考人、どうぞ。
#6
○参考人(甲田茂樹君) 高知医大の甲田と申します。
 私の専門は衛生学、公衆衛生学でございます。その中でも特に産業保健という分野を中心に大学で今まで仕事をしてまいりました。私の同僚、先輩には、もちろん大学で教鞭を執っている者もいれば、産業保健という分野で産業医又は産業看護職という形で勤労者の健康問題というものを考えてきた者が数多くおります。今回は、その産業保健、すなわち勤労者の健康という観点から健康増進法案に関して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。
 なお、私の意見の補足の資料といたしまして二枚つづりのものをお配りしております。それを見ていただきたいと思います。
 我が国の国民は保健サービスという観点から便宜的に年少人口、生産年齢人口、老年人口というふうに分けられております。この中でも最も多いのは生産年齢人口でございます。この生産年齢人口は老年人口の手前にあることから、将来の老年人口の予備軍ともなっています。さらに、生産年齢人口の多くが勤労者であることを考えれば、勤労者、特に中高年齢の勤労者の健康状態の良しあしというものは十年後、二十年後の日本の高齢者の健康状態の良しあしにつながります。極端に言えば、日本人の平均寿命、健康寿命をも左右しかねないと言えます。
 しかし、現在の勤労者の健康状態が良いかといいますと、ノーと言わざるを得ないと思います。ここ数年長引く不況は、勤労者の労働条件、労働環境を悪化させていると報告されております。リストラが進行している会社で社員に対して健康には十分気を配ってくださいよと言われても、これはかなり難しい注文ではないでしょうか。事実、中高年齢の男性の自殺はここ数年増加傾向にあります。企業におけるメンタルヘルスの問題というのは深刻な事態になっております。また、大企業では不採算部門の合理化の名の下に、先ほど紹介しました産業看護職は本来の仕事をさせてもらえない、又は最悪のケースではリストラの対象となり、健康問題を抱えている社員は相談の窓口さえ失っている状況だと思います。
 ここで、勤労者の健康状態を示す資料を、統計を二つごらんください。先ほどの資料でございます。一つは業務上の疾病の発生状況の推移というもの、そしてもう一つは定期健康診断の有所見率というこの二つでございます。
 業務上の疾病というのはここ十年ぐらいのスパンで見ても一貫して減少してきております。ただ、その業務上の疾病の中でも最も多い、赤の線ですけれども、負傷に起因する疾病の減少によるところが大きく、例えばじん肺、中毒など古典的職業病は横ばいの状態にあります。また、定期健康診断の有所見率では、一九九〇年に健康診断の項目が増えたため有所見率が一気に上昇しておりますが、この上昇は、そのほとんどが血液中の脂質、俗に言う総コレステロール、中性脂肪、ここの項目の異常率が影響しているというふうに言われています。
 ですから、この二つの統計から、職域においては、例えば労働災害、業務上疾病などの問題というのは既にもう解決し、生活習慣病こそが緊急の課題であると評される方もおると思いますが、事実はそうなんでしょうか。その辺を検証してみたいと思います。
 次の資料をごらんください。
 これは、アメリカCDCが二十一世紀に掛けて重要となる十の作業関連疾患というものを一九八八年の段階で提案しております。ここに書いてある疾患群は、古典的職業病以外にも、仕事によって悪化してくるような病気、これをいわゆる作業関連疾患というふうに言いますけれども、そういうものも挙げられております。
 例えば、その中で高血圧、それから冠動脈疾患などに代表されるような心臓血管障害というものに注目したいと思います。高血圧、それから冠動脈疾患、俗に言う例えば狭心症だとか、その最たるケースが心筋梗塞ということになりますが、そういったような病気というのが、例えば勤労者の仕事の仕方という点から見ていきますと、労働時間、非常に長くなってくるような労働時間、それから休憩の例えば取り方、休暇が取れないというようなこと、そして仕事の性質によって様々起こってくる対人ストレスなんかの問題、こういう仕事の特性というものがかなり影響しているというふうに考えられております。
 ですから、そういう仕事の特性というものを考慮してこれらの作業関連疾患に対応するということが勤労者の健康問題を考える場合には重要だというふうに言われております。基本的に、勤労者は一日八時間最低働いております。その意味では、仕事から受ける健康に対する影響要因というものは当然配慮されるべきだと私は考えております。
 本国会に提案されております健康増進法案ですが、これは私の読み方が足りないのかもしれませんけれども、勤労者の健康状態というものを国民栄養の問題、それから食生活の改善という点だけに力点を置いてしまうと職場ではなかなか受け入れられないかもしれないと私は思っております。とはいえ、現在の、現段階での勤労者の健康状態に問題があるのは事実であります。保健サイドが健康づくりを支援する活動をやはり強力にしていかなきゃいけないということも事実であると思います。
 次の資料にもお示ししたように、これは安全衛生法からの抜粋でございますが、安全衛生法によりますと、第三条ですけれども、労働者の健康を確保するのは事業者の責務であるというふうに定めております。また、健康増進についても、事業者は必要な措置を継続的にかつ計画的に講ずるように努めなければならないとも定めております。
 このように、勤労者の健康づくりを支援していくためには、労働安全衛生法の中では、御存じのとおり、産業医、衛生管理者等のスタッフの整備、選任ですね、安全衛生委員会等の体制の整備を呼び掛けてきております。
 しかしながら、これらの制約というのは、常時労働者を五十人以上雇用する事業所に限られたもので、今現在、日本の大多数を占める中小企業又は零細企業ではその対象義務となっていないということになります。さらには、高知県のように、自営業だとかそれから農業というように、いわゆる労働基準法にも該当しない勤労者という者がかなりいる部分では労働安全衛生法がどのくらい効力を発揮するのかというと疑問になってくるというふうには思います。
 そこで、私ども高知県では、うちの大学と県の方が相談いたしまして、勤労者の健康づくりを支援していく環境を整えていこうではないかということで、その次のページになりますけれども、産業保健と地域保健が連携できないかということを今まで模索をしてまいりました。先ほど述べたように、そこにもありますが、高知県では、その産業構造が、卸・小売、そういうサービス業が非常に多い、中小・零細企業も多い、それから農業、自営業というようなところも多いということで、いわゆる労基法に該当しない勤労者もかなりおります。こういう状況を反映して、そういう人たちに専門的に産業保健サービスを提供するような機関、人材というのも育成されてこなかったことも事実であります。
 ですから、こういう事情をかんがみますと、その次のグラフにありますけれども、高知県の勤労者、これは勤労者だけではございません、全体の全年齢の死亡状況を一九八七年から九六年までにちょっと合算してみたものなんですけれども、これで見ていただければ、ゼロの基準のところが全国平均値、プラス、上にいけば過剰死亡ですからたくさん人が死んでいる、下にいけばマイナスですので死んでいる人が少ないという状況です。
 このグラフを見ていただいて特徴として分かるのは、七十歳代、八十歳代というのはグラフが下にいっておりますから、高知県の場合、高齢者のこれは死亡状況ということですけれども、全国に比べると非常にいい状態にある。それに反して、三十から上がっていますけれども、特に四十歳代、五十歳代、黄色のところというのは上に飛び出しておりますので、中高年齢男性の勤労者の死亡は全国平均に比べて過剰であるというような結果になっております。
 この原因については調査されておりまして、今問題になっているような生活習慣病ということであれば非常に分かりやすいのですけれども、この当時、この十年間で見ると、何がこういうふうに死亡を増加させているのかということになると、第一位は自殺でございます。ですから、こういう状況を何とかしたいということで、県と大学の方で、先ほど言いましたように、産業保健のスタッフというのが非常に少ないですから、地域保健のスタッフが何とかそういう勤労者の健康を支援していけないかということで今まで取り組んでまいりました。
 それがそこの資料にあります保健所というところを中心に、健康づくり支援、保健サービスを提供できないかということで考えている内容です。この事業自身は五年ぐらい前から保健所のスタッフに勤労者の健康づくりが支援できる能力というものをトレーニングした上で、昨年から保健所自身が事業化して現在に至っている。そういう意味では、かなりのトレーニングを積んで職域の保健または勤労者の健康づくりに対応できるような下地を作ってきたということでございます。
 そのサービス内容は、そこにありますように、例えば働く環境を診断しよう、または健康づくりの支援をサービスしていこう、今これに取り組んでいる最中でございますが、そのほかの保健サービスとのリンクなどというものを考えております。
 将来的には保健所がこういう健康づくりのメニューというものを各勤労者に提供できていけば、高知県のように資源の非常に限られているといいますか、専門スタッフが非常に少ないところでも勤労者の支援、健康づくりを支えていけるんじゃないかと期待しております。
 その保健所のスタッフの職域支援サービス、職域保健サービスを身に付けていただくさなか、やっぱり遭遇してきた課題として一つ上がってきたのが、やはり保健所の職員の意識改革、そういうものをどういうふうに確保しなきゃいけないのかということです。彼らが言いますものは、そもそも勤労者の健康管理というのは事業者責任のはずであると。先ほど安全衛生法で取り上げた部分です。ですから、保健所の職員がなぜ勤労者の職員の健康管理に手出しをするのかというのがやはり根強くありました。
 それが、先ほどもありましたように、今回の健康増進法によって払拭できれば非常に一気に地域保健のスタッフが勤労者の健康管理に支援に回れるというふうに思うんですけれども、よく話を聞いてみると、やはり根底にあるのは、先ほど言った第三条、事業主の責任というところで、根本のところがなかなか変わらないと、本格的に地域保健のサービス、地域保健サービスとして勤労者の健康を支援していくというのは、実際立ち上げていくのはかなり難しいのかなというような感じを持っております。
 そしてもう一つは、今まで地域保健の中で働いてきた、動いてきたわけですから具体的なノウハウというものが分からないということですね。それが先ほど私どもが言いましたような、実際の研修、実地の研修、これは三年間掛けてかなり綿密にやってきたつもりですけれども、そういうものをやっていただく。そして実際、勤労者の間に入って健康づくりの支援等をやっていただく自信を付けてもらうというようなことですね。こういうことをしないと、多分全国的にもこれは無理じゃないかというふうに思います。
 ですから、そういう意味では、かなり人材の育成には時間が掛かるということを念頭に入れておいていただければというふうに思います。
 そして、そのようなさなか、昨年度から厚生労働省のモデル事業として生涯を通じた健康づくり支援事業というのが高知県の方に下りてまいりました。ここでは、保健所だけではなく、市町村を巻き込んで勤労者の健康づくりを念頭に入れた、先ほどちょっと出ました健康日本21を念頭に入れた事業を検討できないかということを依頼されました。
 その中で上がってきた問題二つが、健康情報標準化、そして具体的、地域、職域で共同でできる健康づくり事業を開発してくれというこの二つでございました。
 先ほど、第一点目に述べた健康情報標準化というのは、具体的に申しますと、各種法律で実施されております健康診断データというものを合わせて一つのデータベースにして、それを今後の地域住民、勤労者を巻き込んだ地域住民の健康づくりに活用できないかというような御注文でございました。時間的な制約もありましたので、高知県では、一つの健診機関をチョイスして老人保健法、そして労働安全衛生法で得られた健康診断を両方を合わせて活用するという試みをいたしましたが、実際、これが全国的に運用されるとなると、これに政管健保だとかいうようなほかの健康保険法で規定される健康診断のデータ、ないしは今度は健康診断を取る方も非常に複数の健康診断機関、ないしは開業医がやられている場合もありますので、またがってまいります。そうすると、これらの健康診断の情報を合わせること自体にはかなり困難が予想されます。もしデータベースとして一つに合わさったとしても、そのデータベースを一体だれが管理していくのかという問題です。健康診断の情報というのは、やはり私は個人情報、非常に重要な個人情報だと思います。ですから、そういう健康診断の情報が集まったデータベースをだれが管理してだれがアクセスする権利を持っているのかということがやはり大きな問題ではないかというふうに思っております。
 そして、その次の地域と職域の健康づくり支援事業、これをやるときには、やはり問題として出てくるのは、先ほど言った、先ほどは県の職員の教育をしたんですけれども、今度は市町村のそういうスタッフの教育というものをしていかなきゃいけない。ここでもやはり人の教育というものがかなり大きな問題として出てまいるのではないかと思っております。
 この事業をやるときには、先ほど合体されたデータベースを活用したい、それが効率的だというふうに考えております。そうすると、やはり合体するデータには個人の名前等が、少なくとも年齢ぐらいがないと引き出せないわけですから、その条項を残してデータベースを作るときにはやはり問題があるのではないかなというふうに思います。
 この健康増進法案に関連していいますと、基本方針の第八条と九条の中で、先ほど出ました都道府県、それから市町村の健康増進計画等の策定という問題ですね、ここがかなり練られていない。ないしは、実際の都道府県、市町村に経験だとか自信といいますか、そういうものがないとやはりうまくいかないんじゃないかなというのが一つ。
 それからもう一つ、健康管理手帳という形で個人のデータを手帳にして持たせるということなんですけれども、私は衛生学、公衆衛生学の専門なんで、すぐ老人保健法の健康手帳だとか労働安全衛生法の健康管理手帳を思い出します。この二つは、健康管理手帳であれば基本的には特殊健康診断が受けられる、健康手帳であれば老人医療が受けられるという大きなサービスが受けられるというのが担保されております。今回提案されている健康手帳にそれに見合うような担保があるのかどうなのかということで成功するかしないかが決まってくるような感じがあります。事実、今まで事業所、健保組合、いろんな形で健康手帳を作ってきましたが、聞くところによると、うまくいかなかったケースというのがかなりあるというふうに聞いております。
 ですから、私の意見といたしましては、基本的にこの健康増進法を市町村なり都道府県なりに下ろしてうまく運用するときに、どこまで運用できるのかというところをしっかり御議論していただいて、先ほど言ったような解決すべき問題又は幾つかのハードルを越えていただいて、実効性のある法律にしていただければというふうに考えます。
 つたない意見でございましたけれども、以上、運用上の課題について若干意見を述べさせていただきました。
 ありがとうございます。
#7
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 それでは次に、相野谷参考人にお願いいたします。相野谷参考人。
#8
○参考人(相野谷安孝君) 中央社保協で事務局次長をしております相野谷と申します。
 本日は、貴重な国会の審議時間に意見の陳述をさせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 私ども、社会保障推進協議会、略称社保協というふうに申しますが、社会保障の充実拡大を願って運動を進めている協議会でございます。
 全国段階では、全労連、全建総連などの労働組合、また全国商工団体連合会や全国保険医団体連合会など四十の団体が加盟しておりまして、一九五七年にかつての総評の肝いりで結成をされまして、以来四十五年間運動を続けてまいりました。現在では、四十七都道府県すべてに県の組織ができておりまして、各市町村単位の地域社保協も広がっているところでございます。
 私たちが運動として願う社会保障の充実は、健康で安心して暮らし続けることができる制度の拡充だというふうに思っておりますが、残念ながらこの間、社会保障費用の抑制を目的とする諸制度の後退が続いておりまして、こうした状況にはそのたびに危惧を表明し、反対の声を上げてきたところであります。
 こうした立場から、今回の健康増進法案にも重大な関心を持っております。健康増進法案が高齢者の完全定率一割あるいは二割負担、あるいは健康保険本人の三割負担など同時に審議されております健康保険法等の一部改正案とセットで提出されているというところに問題があるのかなと思っております。
 先日も、この本委員会で田浦先生が、負担増によって受診の機会を抑えることになり、医学的には必ずしもいいことではないという意見を述べていらっしゃいました。私もこの先生の御意見に賛成でありまして、健保の改定案によって負担増が生まれますと、国民の受診が抑制され、正に健康を破壊するということにつながりかねないんではないかというふうに考えております。そういう法案と同時に健康増進というふうに名付けられた法案が審議されているというところに若干の危惧を感じるわけであります。
 そもそも、健康で長生きしたいというのは、これは人類の共通の願いだというふうに思いますし、政府統計でも、健康は最大の関心事となっております。国民各個人は、その自助努力を強調するまでもなく、自ら健康であるための努力を最大限に行っていると言ってもいいんではないかというふうに思うんですが、この間の相次ぐ社会保障制度の後退の中で、民間生命保険会社であるとか損保会社が提供しているがん保険あるいは入院・通院保険といった商品がこの数年間契約件数を大幅に伸ばしています。また、今回の法案とも関係しますが、サプリメント商品などもかなり普及が広がっているという実態があるというふうに思いますが、こういう点を見ても、国民はかなり防衛的な自助努力をしっかり行っているというのが現在の実態ではないかというふうに思っています。
 そもそも、国民の健康増進を阻害する因子としましては、職場や労働の実態、今、甲田先生もおっしゃられたような背景があるというふうに思いますし、生活全般の背景の問題、それから社会的なストレス、環境、そしていざというときの備えなども考慮されなければならないのではないかなというふうに思っています。社会的なストレスを生まないためにも、やっぱり安心ということをどれだけ国民が享受できるかということが大きな要因になるのではないかというふうに考えておりますが、この点で、もうごらんになったかと思いますけれども、最近興味ある調査がありまして、六月二十五日の日本経済新聞の世論調査ですが、今現在と将来への不安というのを表明する方が、不安だという方で半数を超える五二%ありました。少しは不安だという方を加えますと何と九〇%という高率が日経新聞の世論調査で出ておりました。国民の多数が不安社会の中にいるという数字ではないかと私は推察いたしました。
 こうした国民の不安の解消に政策的努力をいただくということが一番大事な課題ではないかというふうに思いますし、そうした安心を回復するための環境を作る国の政策努力を是非求めたいということですし、健康増進法というものを創設するのであれば、この安心回復の環境整備を目的とする、そういう是非法案の中身にしていただけたらというふうに思っております。
 こうした視点から今回の法案を見てみますと、まず、どうも個人の自助努力ということのみが強調されている法案のように見受けられます。今述べたような安心を得る環境整備への国の責務が後退をさせられているという点を危惧せざるを得ません。
 本法案は、第一章の総則、第一条から六条で法制定の趣旨や目的などが書かれていますが、第二条で「生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」と「国民の責務」というものを強調しています。そしてその次に、第三条で「国及び地方公共団体の責務」というふうになっていて、私はこれは順番が逆ではないかなというふうに思います。また、後ろに置かれております「国及び地方公共団体の責務」の内容なんですが、知識の普及、情報の収集、人材の養成など、極めて限定的なものにされておりまして、国や自治体の社会保障に対する公的な責任が欠如しているという内容ではないかというふうに思います。
 述べるまでもないんですが、憲法二十五条は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としています。ここに言う公衆衛生とは、日本公衆衛生協会の「衛生行政大要」によりますと、疾病の早期診断と治療のための医療と看護サービスの組織化、及び地域社会のすべての人に健康保持のための適切な健康水準を保障する社会制度であると規定されておりまして、こうした公衆衛生の向上のためには、国、地方公共団体などの公の責任において必要な条件、つまり、人、予算、組織、制度などを整える必要があるというふうにされております。この健康増進法の三条を見る限りでは、こうした公の責任を十分に果たし得ないのではないかという点を危惧をいたしております。
 第二に、こうして公の責任は後退させながら、国民には自助努力で健康に努めよというふうに責任を押し付けているんではないかと思います。
 これはWHO憲章前文の、到達し得る最高水準の健康を享受することは、経済的又は社会的条件によらず、万民の有する基本的権利の一つであるというふうに前文では規定しておりますが、こうした健康観、あるいは健康権と言ってもいいと思いますけれども、こうした視点からも脱落するものではないかというふうに思います。
 第三に、健康増進法の内容が生活習慣病の予防に重点を置かれているという点にも問題を感じ得ません。
 法案は、法令としては多分初めてだと思いますが、生活習慣病という呼称をある意味では何の定義もなしに用いています。病気は自己の責任、原因において起きるという一面的な疾病観に基づいて、疾病の自己責任を押し付けているという感がぬぐえません。
 元々、生活習慣病は成人病あるいは慢性疾患というふうに呼ばれていましたが、この生活習慣病という呼称が登場するようになったのは九〇年代になってからです。九六年十二月の公衆衛生審議会の意見具申を受けて九七年版の厚生白書に初めて登場したというのがこの生活習慣病の名前だったというふうに思います。また、今年四月に行われました診療報酬改定では、診療報酬の項目として初めて生活習慣病の名前が登場するに至っております。こちらも何の定義のないまま採用されています。
 今から十五年前の一九八七年に、当時の厚生省国民医療総合対策本部が中間報告を発表していますが、この中で、自らの健康は自分で守る、自分の病気は最終的には自分で治すというセルフケアの観点を重視する方向で今後改革を行っていく必要があるというふうにされておりまして、この文脈からいきますと、生活習慣病の呼称を使うことは、自らの生活態度が悪いからなった病気、だから自己責任で自分で治しなさいというような意図に結び付くのではないかというふうに思います。私の解釈違いであったらお許しいただきたいというふうに思います。
 また、先ほどの公衆衛生審議会の意見具申の中でも、こうした生活習慣病という概念を導入するに当たっては、ただし書がありまして、「但し、疾病の発症には、「生活習慣要因」のみならず「遺伝要因」、「外部環境要因」など個人の責任に帰することのできない複数の要因が関与している」と、そうしたことから「「病気になったのは個人の責任」といった疾患や患者に対する差別や偏見が生まれるおそれがあるという点に配慮する必要がある。」と指摘しております。本法案にはこうした配慮がないというふうに考えられます。
 また、国民の健康問題で、単に個人を対象に生活習慣の自己管理を迫る方法では、圧倒的多数の国民の健康問題が放置されるおそれがあり、全体として国民の健康水準が低下するおそれがあるのではないかというふうに思います。
 四番目に、第九条で「健康診査の実施等に関する指針」という項目が定められておりますが、この中では「厚生労働大臣は、」「健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針を定めるもの」とされておって、この指針が諸法律、健康保険法や学校保健法、母子保健法、労働安全衛生法、老人保健法等々の諸法律に基づいて行われる保健事業全般がこの厚生労働大臣の定める指針と調和の取れたものでなければならないとしております。
 このままで考えますと、保健予防事業の国による一元的な管理や、あるいは前段で危惧をいたしました公的責任の後退、自己責任の押し付け、自己負担の拡大といったような、すべての保健事業にこういう事態が及ぶおそれを禁じ得ません。
 次に、現在、国民生活がもう既に健康を破壊されているという実態を少しですが御紹介をさせていただきたいというふうに思います。
 長崎県にある診療所ですが、昨年秋に治療を中断されている方に、二千人にアンケートを取りました。三百人の方から回答がありまして、内容は、具合は良くないが病院、診療所に行かず我慢しているという方が二五%、四人に一人でした。売薬で済ませているという方が一〇%ありました。三人に一人が状態が良くないのに通院を我慢しているという実態が浮かび上がっております。
 また、全国の医療現場からは、とてもやるせないという患者さんの実態が多く寄せられています。吐血や下血があって今すぐ入院が必要なのに、医療費が心配だから入院できませんという患者さんがいたとか、自分の手術のことより手術代が心配で夜も眠れないという入院患者さんの話、あるいは外来でも、会社に病気を知られたくない、だから自費で診療をしていくというサラリーマンがいたなど、長引く不況とリストラ、合理化の下でこうした事例が多発しております。
 もう一点、これに関連をして、私ども中央社保協は、去る六月二十六日から二十八日に掛けて福岡市と北九州市の国民健康保険の実態について調査を行いました。この調査は、現在、御承知のとおり、一昨年の国民健康保険法の改正によりまして全国的に資格証明書及び短期保険証の発行が増えています。私ども社保協の調査では、百万世帯を超える方々が資格証明書あるいは短期保険証を渡されているという実態でありまして、国保加入世帯のおよそ五%が正規の保険証を持っていないという実態があります。また、広範に保険証の未交付だとか未加入といったような実態も報告されておりまして、既に守るべき日本の皆保険制度が空洞化しているのではないかと危惧をいたしております。
 そうした点から、この資格証明書がかなり出ております福岡市、北九州市の調査を行ったわけなんですが、この調査の中で、経営していた設備会社が倒産、前年の収入に応じて決まる国保料が四十数万円にもなり、失業中でこの保険料を払えず無保険になってしまった、国保に入っているが保険証がもらえない、パートの仕事も辞めてくれと言われ、もう本当に仕事がなくなった、具合が悪いが病院にも行けない、もう死ぬしかないなどの具体的な方々の声を聞くことができました。生命保険を解約したり、あるいはサラ金やカードローンで国保の保険料を払っているというような方もいらっしゃいました。等々、既に国民の生活というか、国民の健康状態はかなり今の社会状況の中で悪化しているのではないかというふうに思います。
 先ほど甲田先生も中高年の健康状態はノーだというふうにおっしゃいましたが、ここに対する施策が求められるところですし、この点で、健康増進法の第十条が、これまで栄養改善法にあった栄養摂取と経済負担の関係を明らかにするという国民栄養調査の目的から経済負担の部分を削除しているという点も重大な問題だろうというふうに思っています。
 以上のような諸点から、私はこの健康増進法案には反対をさせていただきたいというふうに思います。増進法を創設するのであれば、更に審議を深めていただき、真に国民の健康増進にとって実りある法律内容となるよう大幅な修正を求めるものであります。
 最後に、本法案と併せて審議されている重要法案である健康保険法等の一部改正案について、予定される大幅な国民負担増は国民の受診を妨げることになると、これはもう明らかだと思います。これこそ国民の健康増進に寄与しないばかりか、国民の健康破壊につながる改定と言わなければならないんではないかというふうに思います。
 私たち社保協にも、このような法案が通ったら生きていかれなくなる、年寄りは死ねと言っているようなものだなどの悲鳴が寄せられております。改悪に反対をする、この法案をやめてくれという署名は医師会の五百万、歯科医師会の四百万と合わせて二千六百万筆に達しております。寄せられた声の一部は既に冊子として皆さんのところにお届けしておりますが、是非こうした声に耳を傾けていただいて、この法案を廃案としていただくよう切に併せてお願いをしたいというふうに思います。
 また、宮路厚生労働副大臣の問題がこの間大きくマスコミで取り上げられております。こうした状態で誕生した医師などによって医療費の押し上げにも影響を与える要因ではないかというふうに思いますし、マスコミの報道以来、こうして生まれた先生には掛かりたくないねというような声も出ております。医療の信頼性や当該大学の威信にもかかわるような問題でありますので、この点については国民の一人として、一人の要望として、この問題の是非徹底解明を図り、こうした要因のなくなる対策を立てられることを希望するものであります。
 以上をもちまして私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
#9
○委員長(阿部正俊君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。
 三人の参考人の先生方、本当に貴重な意見提示をありがとうございました。これからの審議の際に是非活用させていただきたいと存じます。
 質問時間が限られておりますので、早速質問をさせていただきたいんですが、御案内のように、この法案の第五条におきましては、国、都道府県、市町村、健康増進事業実施者、医療機関その他の関係者は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るため、相互に連携しながら協力するよう努めなければならないという協力規定というものが条文化されているわけでございます。
 先ほど参考人からボランティアの方々の果たす役割は非常に大きいのだという御指摘ございました。私もそのとおりだと思っております。行政が率先して事業を行う、これも非常に大切ですけれども、民間の有効な機関であるとか組織、人材を活用して、あるいは民間を実施主体とした事業を支援していくようなこと、このことも健康日本21を国民運動として高めていくために極めて重要なことであると考えます。
 沖縄県の宜野湾市が、健康日本21事業の一環としまして、昨年の六月から生活習慣改善まちかど相談所というユニークな民間への委託事業を開始したということを伺いました。疾病に関連しているそういう生活習慣の問題でありますとかお薬の服薬の管理など、これらの問題でアドバイスが必要な患者さんたちに対しまして、薬局の薬剤師さんが患者さんの居宅を訪問したりあるいは薬局に来ていただいていろいろと指導をすると、そういったような活動だそうでございます。健康を損なっている理由が生活習慣の問題に起因していると想定される場合には、必要に応じてその関連職種の方々の御指導が受けれるように橋渡し役もやると。生活習慣全般の相談役としての機能が求められているんだというようなことでございます。
 御案内のように、薬局というのは、言うまでもありませんけれども、一般の市民の方々の健康と日常的に非常にかかわりが深いわけです。地域の市民の日常生活に密着しているわけでして、市民の側から見ると、逆に、いわゆる敷居の低い、相談のしやすい医療関連施設とも言えるのではないかと思います。
 また、これは糖尿病の患者さんと医療とか栄養の関係者で構成する日本糖尿病協会、福岡と佐賀の支部の方々が五年以上前に独自に地域の糖尿病の療養指導士という仕組みを作られたそうでございまして、お医者さんだけではなくて、薬剤師さんとか看護師さんとか管理栄養士さんなど、もう五年間で二百名以上の方々がそういった資格認定を受けられて患者さんの生活指導をされているそうでございまして、このシステムはもう既に現在では全国レベルのものまでになっているというふうに伺っています。
 そこで、松谷参考人にお伺いしたいんでございますけれども、先生の豊富な御経験の中で、ボランティアの方々と市町村との協力といいますか、あるいは共同の事業というもので大変うまくいっている例、あるいは特に印象に残っている例があったら御紹介いただきたいと思います。
 また、そうしたいわゆる先生の考える良いモデルと、こう思えるような活動の形態あるいは実態というものを全国規模で広げるためにはどのようなことが重要だとお考えでしょうか、御意見を伺いたいと存じます。
#11
○参考人(松谷満子君) 地区組織活動というものには優劣というのは非常に付けにくいものなんです。地域の文化というのか、地域の状態に合わせて最高のみんなの求めるところに視点を当てて活動しておりますから。ですけれども、例えば長野県辺りでは、今、医療費というか、平均寿命も非常に長いし、そして医療費も非常に少ない県としていつも言われておりますけれども、その中で食生活改善推進員は非常に大きな役割を持ってきております。
 例えば、中野市辺りに参りますと、総合学習で学外講師としてもう中学校のころにみんな入っていってやっておりますし、それから郷土の食文化の伝承だとか地産地消のような感覚でもって地域の中できめ細かい活動をしております。
 それから、今度は同じ長野県の中でも駒ケ根市辺りになりますと、もうはっきりと市も、食生活改善推進員等のボランティアの皆さん方の減塩活動というものを通して、そして非常に薄味の食事習慣ができることによって高血圧、脳卒中、そういうものが減り、医療費も少なくなってきているということを市が認めてくれているような活動もございます。
 それで、長崎県辺りになりますと、そこの佐々町というのがございますけれども、そこでは、保健と福祉のドッキングの問題で、食生活改善推進員がその中にボランティアとして参加する部分と、それからその中で今度は高齢者対策の中とかいろんなところでもって一つの活動の場、要するにボランティアとして働く部分とそれから一つの職業としてそこの中にずっと定着する部分、だけれども一人が仕事を独占するんじゃなくて、常に交代をしながら、週に例えば二日行ったならば、あと三日は今度はボランティア活動をやるというような流れの中でローテーションを組んで非常にうまくやっているところもございます。
 今日は富山市辺りでは、今日はお天気がこんな中どうなりましたか、ヘルスサポーターさんももう百人近くできております。食生活改善推進員と一緒にヘルスサポーターが一緒になって栄養運動会を開催して、地域の中でいろいろな健康づくりの輪を広げていく活動なんかも実際にもう既に進んできております。あの県都と言われるような富山市のような市の中でもそういうような活動というのが草の根の活動として進んでおります。
 それで、佐賀県のお話がございましたけれども、西有田なんかの問題だとか、あるいは東与賀町だとか、そういうところも非常にうまくいっている例が幾つもございます。
 今日は限りなくあるものの中から一部を申し上げましたけれども、実際にたくさんございますので、また何かのときにお話しできるかと思います。
#12
○藤井基之君 ありがとうございました。
 今日、実はこの話がお三方の先生方からあるかと思ったら、なかったんであえてお聞きしたいんですが、実はこの法案の中に、二十五条にいわゆるたばこ対策の問題が条文化されているわけですね。職場や人の多く集まる場所について、いわゆる受動喫煙防止の規定というのが設けられている。具体的には、その二十五条に「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」、こういう規定なんですね。
 言うまでもありませんけれども、長年にわたりまして、WHO、世界保健機構から指摘もあったわけでして、喫煙のその健康影響を考えますと、たばこ対策というのはこの健康づくりに極めて重要な課題だと私は考えているんです。
 ただ、この問題というのは、御案内のように、禁煙派の方もいれば喫煙派の方もいらして、なかなかその立場立場があって議論が深まりづらいといいましょうか、合意形成が難しいテーマでもあるかもしれません。このことに関しまして、まず松谷先生は、この健康づくりの第一線でたばこ対策についてもかなりの活動をされているというふうに伺っておりますので、そのお立場から今回のこの規定をどのように見ておられるかということをお話を伺いたいと思います。
 そして、加えまして、時間限られておりますので、甲田先生にも、労働衛生というふうに限る問題じゃないと思いますけれども、このたばこの問題についてどのようなお考えかということをお聞かせいただきたいと思います。
 以上、お願いいたします。
#13
○委員長(阿部正俊君) じゃ、お二人の参考人から、時間も限られていますので簡潔にお願いいたします。まず松谷参考人。
#14
○参考人(松谷満子君) 私たちは、十数年来、未成年、次の世代を産みはぐくむ若い女性の禁煙ということをずっと取り上げた地域活動をやっております。ですけれども、このたばこの問題については総論賛成、各論反対というような問題の中で、非常に地域の住民、一人の住民としての活動というのはしにくいと思うところがございます。
 私個人といたしましては、実は長年にわたりまして、子供に無煙環境を推進する協議会がございます、これNPOの団体なんですけれども、そこの役員を務めております。ですから、次代を担う子供たちがたばこの煙にさらされないように、また未成年者がたばこに染まらないように啓発事業を中心に活動している、そのような立場から言えば、今回の法案で受動喫煙防止の条文がいわゆる努力義務という形になっていることについて、率直に申し上げて物足りなさを感じているというのが現実でございます。
#15
○委員長(阿部正俊君) じゃ甲田参考人、よろしくお願いします。
#16
○参考人(甲田茂樹君) 私は、非常勤で高知市役所の産業医をやっておりまして、そこの市役所を禁煙にするか、また分煙にするかで議論しました。やはり禁煙にするというのは非常に、禁煙を持ち込むというのは非常にやはりコンセンサスがないとできないことだろうと思います。
 ただ、この法案を見て、非常に重要な問題であればこそ、健康増進法の中の第二十五条のただ小さな項目として取り上げるんではなくて、正面切っていただいて法律作って国民的議論を巻き起こしていただかないと、これだと見落としてしまう人が多いんではないかなという感じがして、是非この問題を大きく取り上げられてやった方がよろしいんじゃないんでしょうかと思います。
#17
○藤井基之君 ありがとうございます。
#18
○朝日俊弘君 おはようございます。民主党・新緑風会の朝日でございます。
 まず冒頭に、大変悪天候の中を御出席いただきました三人の参考人の皆さんに心からお礼を申し上げたいと思います。とりわけ、高知から台風を東京に連れてきておいでいただいた甲田先生には心から感謝を申し上げたいと思います。
 そこで、そんなこともございまして甲田先生に絞って質問をさせていただきます。
 今回の健康増進法を、私は当初、地域保健、学校保健、産業保健、そしてまた地域保健、こういう様々なこれまであった保健活動に関する個別法というか各論法、これを横に束ねてといいますか、通則法的に、言い換えれば健康基本法的な中身で作り出されるのかなと期待をしていましたら、残念ながら健康増進法ということで、その焦点は健康日本21、概念的には生活習慣病にスポットを当てた法律の構成になってしまってきていまして、いささか期待外れだなと思っているんですね。だから、例えば、じゃメンタルヘルスケアのことはちゃんと書いてあるのかというと、実はこの中にはほとんど出てこないと。こんな問題を感じていまして、いささか不十分さを感じつつ、しかし、せっかくこの法律ができるという中で私一番関心があるのは、産業保健と地域保健との連携がどう進むのかと、そのことについてこの法律がどう役に立つのかという点が一番関心があります。
 ただ、その点について言うと、どうも健診、健康診査のデータのところに着目し過ぎていて、健康情報をどう標準化するかとか、あるいは健康手帳を交付して一貫した健康情報を持って歩けるようにしようとか、どうもそこのところにとらわれ過ぎているような感じがする。本当に必要なのは、この法律に基づいて、地域保健の実施主体であり、あるいは産業保健の実施主体であり、それぞれの事業者がきちんと連携できる基盤をどう作るかが一番大事だというふうに思っていたんですが、どうもそこのところが余りよく見えてこない。
 先生のところでは厚生労働省のモデル事業にも取り組んできておられたということでいろいろやっておられるようですが、どうもちょっとその健診、そして健診データというところに問題意識が行き過ぎているのではないかという気がしてならない。そこはどんなふうにお考えでしょうかというのが一つ。
 そのことと関連して、先生も先ほど御指摘がありましたけれども、個人の健康情報、診療情報を取り扱うとすれば、相当にセンシティブな個人情報ですから、その扱いについては、私は、何らかのルールというか、場合によってはそれぞれの自治体における条例とか、あるいは個別健康情報あるいは個人診療情報に関する法制度も含めてきちんとルールを作る必要があるのではないかと思っているんですが、この点について先生のお考え、この二点お尋ねします。
#19
○参考人(甲田茂樹君) 先ほど御質問にもありましたように、保健の統合が図られるんではないかというのは、私も非常にそれを実は期待しておりました。今日お話ししたのは、産業保健、職場の健康問題ですけれども、地域保健、それから学校保健、それぞれの保健が特有の実は問題を抱えていて、構成員がそれぞれ特有の健康問題を抱えているわけですね。もちろん、生活習慣病という一つの課題というのは共通するのはありますが、それ以外の課題というものは置き去られているような感じが非常にいたします。
 連携が非常に進むのかということなんですけれども、実際問題からいいますと、地域で見ていきますと、地域保健、産業保健を比べますと圧倒的に地域保健の方の人の数の方が多いわけですから、地域保健の方が産業保健を形としてはのみ込んでしまうという形、先ほど言いましたように、地域保健が勤労者の健康問題に手を出すというようなのがやっぱり実際なんではないんでしょうかと思います。これは高知県、人材少ないですけれども、例えば東京、大阪、産業保健のスタッフかなりおりますけれども、それでも地域保健に比べれば、かなりそちらの方が多いわけですから、地域保健が職域に出張っていって健康管理をするというのが現実だろうというふうに思います。
 健康診査のデータというものをいわゆるリンクさせるということを実際やっておりますが、実際健康診査の中で上がってくる問題というものは、例えば年齢、血圧だとか、そういう血液のデータ、例えば心電図の所見だとか、そういうようなものがメーンとなっておりますが、実際、それだけでは語られない、要するに勤労者の健康問題を表す情報というものはかなりあります。それは、今までの産業保健では個別、かなり産業医が面接をして話を聞いて健康相談とか、また職場を見たりだとか、そういうところで蓄積されてくるデータというのが欠落してしまうと、健診データだけで歩いてしまうと勤労者の健康の全体像というところからは少し離れるのかもしれないというふうに危惧をしております。
 そして、二番目の個人の健診情報を取り扱うということのルールづくり、これは非常に大きな問題だろうというふうに私自身思っております。実際、今回、高知県の東部でやったときに、安芸市というところですけれども、そこは市が独自に個人情報の管理に関して一定のルールづくりを持っていました。それが今回の内容と合うのかといったら、若干合わないところが出てきたり、要するに個人の住民の今まで市町村との信頼関係の中で健康診断をやってきたりというような、それぞれ特異性、特性がありますので、一挙に全国的に健康診断の情報を合わせてそれをいざ使おうかとなると、まだまだ地域で話をしておいていただかなきゃいけない課題だとか、それから、先ほどちょっと言いましたけれども、データベースの管理にはかなり人と物と技術を投入しないと、今こういうIT社会とはいえデータがかなり簡単に盗まれるような時代ですから、それこそ慎重にしていただかないと、個人情報がほかに漏れてくる可能性というのは非常に危惧しておりますので、この辺は現実的に、高知県で起こっている事例は後で厚生労働省に報告いたしますが、全国でも十分に審議していただければと思っております。
#20
○朝日俊弘君 是非、具体的なモデル事業の結果を正確に御報告いただければと思うんですが、あと一点だけ、ちょっと気になったのでお尋ねします。
 実際的には、地域保健の側がというか、メンバーがかなり産業保健の方に入ってくるというか、力をおかりするというか、そういうことに、形になりがちだということなんですが、ただ、かなりそれぞれのノウハウというか発想法というか、あるいは問題の所在の見付け方というか、それが違うんじゃないかと思うんですね。だから、地域保健の側の論理なり発想で職場に入ってきていただいても、なかなかうまく問題解決につながらないのじゃないかとやや危惧するんですが、その辺は実際どうなのか、そしてそこを克服するためには何が必要か、その点をちょっとお尋ねします。
#21
○委員長(阿部正俊君) じゃ、甲田参考人、簡潔にお願いします。
#22
○参考人(甲田茂樹君) はい。
 最初の保健所のときの研修で地域保健サイドが事業所に行って、例えば生活習慣病の教育をしたいとかいう話になっていきますと、例えば二十分、三十分教育させてください、これは事業所ではほとんど不可能な話になってくるわけです、労働者が勤労時間を割くというのは。
 ですから、そういうことから始まって、かなり実際のノウハウをトレーニングしていかないと、保健所なり市町村のスタッフがそういう事業所に入っていって健康支援をするというのは私は難しいと思っております。
#23
○沢たまき君 公明党の沢たまきでございます。
 お三方の先生には本当にありがとうございました。御苦労さまでございます。
 私は、松谷参考人に集中して伺わせていただこうと思っております。
 私も、この健康増進法を読んで、栄養法がなくなった、転換しているようなものだなと思ったんでございますが、しかし、食は命をつなぐものでございますので、大変に大事なものであろうかと思います。殊に私は、このごろ子供さんあるいは大人にも大変アレルギーが多いということで、食べ物ということはもう大変に重要であろうと思っておりますが。
 そこでお伺いいたしますが、健康づくり運動のポイントは、各個人が知識として身に付けたものをどうやって実際の行動の変容につなげていくかということではないかと思っておりますが、例えばもっと野菜を取りたいなと、野菜を一杯取ると生活習慣病の予防に良いと、もう知識では知っていますけれども、そうではなくて、実際主婦があるいはメニューを作る際に野菜料理をもう一皿増やそうという実際の行動に結び付く、そして実践につながる働き掛けが大変重要だろうと思うのですが、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 また、そのためには、現在行政が行っている健康づくり関連の様々な事業とか施策についてどのような工夫が加えられれば、より有効なものになるとお考えでしょうか、併せてお聞きしたいと思います。
#24
○参考人(松谷満子君) 私たちは、野菜の問題のお話がございましたけれども、先日、三百グラムから三百五十グラムと五十グラムの野菜の摂取を深めたいということで量が多くなってまいりました。三百五十グラムと言われても、緑黄色の野菜を百二十グラム、何がこうと言われても、普通の人はなかなか分かりません。ですから、アメリカでもってファイブ・ア・デー運動というのがございますけれども、一日に五種類というか五皿ぐらいの野菜を食べようじゃないのという形の具体的な、例えば五皿の中で三皿は野菜で、あとの果物が一個ずつあればそれを二皿と考えてもいいというような、非常にそういう易しい方法でもって皆さんが野菜等を取っていくような形をこれから教育の方法として考えていかなくちゃいけないんじゃないだろうか。
 それから、食べ物についての何を食べたかということを絵でもってかいてもらって、それで主食、主菜、副菜をそろえているところで、このお皿のところが全くなくなっているわよねと、これは何なんだという形でもって考えていただくやり方で野菜の摂取を入れるとか、それから、一日三十食品ということが随分と前のときから食生活で言われました。あれは、私たち、食生活改善推進を地域でやってきて、そしてごろ合わせのように三十とやりましたけれども、それは知識があれば十五でも二十でもできるんですけれども、がん予防のために見たら同じ食品を繰り返し食べないということと、食事は楽しむものだと、そういうような形の中から私たちは三十食品ということを指導していましたけれども、そういうものを頭の中に入れながら、三十食品でも、あるいはさっき言ったように野菜、果物、それ五皿分ぐらいを毎日取ろうとかという具体的な指導をこれからしていけるといいんじゃないかと思います。
 そして、地域で生産される新鮮で安全でそれからおいしい野菜、彩りのいいそういうものをやっぱり食べる努力をしていくと、これはスローフード運動にもつながるわけですけれども、そういうような運動もこれから展開していくと、私は野菜等の摂取はうまくもう少しは伸びていくんじゃないかと思っております。それから、それは今度の新しい食生活指針を実行するということにもつながるわけなんですね。
 それから、後の問題につきましては、縦割りをというか、各行政それぞれ縦割りでやっております。食生活指針のときは厚生省と文部省と農林省の三省がいろいろと、健康の立場、あるいは食料の需給の立場、それから文化の立場でやってまいりましたけれども、そのことの結果として非常に地域でもってやりやすくなりました。
 それで、農林水産省は、食生活指針だけではなくて、健康日本21の目標値を指標として、食料の生産、流通、輸入にまでその計画を取り入れるようになってまいりました。文部省は、子供たちの教育を食生活の面から見直そうという運動で、家庭と地域と学校とでこの問題解決というようになりました。ですから、そういうような、縦割りでやるんじゃなくて、これを一体になってやっていくという形でやると非常に成果が出るんじゃないかと思っています。
#25
○沢たまき君 今子供の話が出たので、私もいつでしたか、先生とそれからもう一方、小児科の先生だと思いますが、NHKのラジオの対談を聞かせていただいて、そのとおりだと思ったことがございます。
 昔はとにかくしゅんのものを、そして一里四方で取れるものを食べていれば健康にいいんだというふうに私たちは育ったわけでございますが、私も、子供たちが食生活の乱れで、孤食というのもございますけれども、とにかくお勉強の合間、あるいはまた勉強から塾に行く間、とにかくファストフードでおなかだけ一杯にしてしまえばいいという、これはもう大変危険だろうと思っております。硬いものをかまないとか、そういうのも本当に困りますので、せめて給食のときには、さっきおっしゃったように、地産といいましょうか、その地場のもので、そしてお百姓さんのところにも見に行ってという、畑も自分たちで作ってとか、そういう思いがあるのでございますが、こういう現状を改めるためには、例えば学校などで、身近な場所で野菜などの食材を育てて、それを子供自身が調理して食べる機会を持つとか、地域の特産物を献立にのせることによってその地方の文化を学ぶ機会、さっき先生もちょっとおっしゃいましたけれども、食を通して子供が心身ともに成長できるきめ細かい配慮が、行政の縦割りがなくなれば工夫ができるんだろうと思いますが、参考人御自身の御体験からいい例として御紹介いただけるものがございましたら是非お話をしていただいて、併せて子供の食をめぐる現状をどのようにお考えになっているか伺わせていただいて、質問を終わらせていただきます。
#26
○参考人(松谷満子君) 今ちょうど夏に、これからなんですけれども、私たちは親子料理教室というのをずっと続けております。これ二十年以上も続いているんですけれども、これはもう自主的に地域でもって広がりを持っております。
 子供たちに食べるということはどういうことなのか、食べられる幸せというものを考えようじゃないの、そして料理というものを作る喜びを、作ったものをみんなが一緒に食べる楽しみを、食卓をみんなで囲むところの皆さん方の満足感、そういうものを、親子料理教室をやりまして、子供たちに料理をさせて、お母さんは手を出さないというやり方でずっと続けてまいっております。その子供たちが、小学校だった者が中学校に行き、地域の食生活改善推進員たちと交流しながら、今ヘルスサポーター運動の中にも入ってくるようになりました。
 ですから、そういうような形でもって、私どもはやっぱり子供たちに作ることへの参加、作るということの楽しさを教えていく。はしの持ち方、そういうことも、弱火、強火というのはどういうものなのかというのも体験させながら、ただ危ない危ないで避けるんではなくて、そういうこと、実践活動。
 それから、埼玉だとかそういういろいろな地域の私どもの仲間では、農場を借りて野菜を作って、そしてずっと管理をして、一緒に料理をして食べるということの運動も随分とやってきております。
 学校給食辺りでは、地域の推進員を中心として、あるいは地域のお母さん方が自分たちの作った野菜をできるだけ学校に持っていって、子供たちに新鮮な、おいしい、安全な野菜を食べさせてやろうと、こういう運動もうんと全国的に展開されておりますので、だんだんとその辺を支援してあげながら伸ばしていければいいんじゃないかと思っています。
#27
○沢たまき君 終わります。
#28
○井上美代君 私は、健康増進について非常にやっぱり保健所の役割が大きいというふうに思います。しかしながら、今日、保健所の統廃合が進んでおりまして、保健所は減ってきているんですね。これは、平成八年、一九九六年の三月三十一日で八百四十五か所ありました保健所が、今年になりますと四百五十九になっているんです。これは三百八十六か所減っていることになります。非常に大きいというふうに思います。
 地域では、やはり保健所を統廃合しないでくれという要求が強く出ているわけです。全国的にいろんな動きがありますけれども、私は横浜市の話を聞きました。ここでも、もう本当に困ると保健所側も言っておりますし、地域の人も言っているんですけれども、今年の一月四日に区役所の機構改革が行われまして、保健所と福祉事務所を統合したんですね、一緒に。そして、福祉保健センターにしてしまったんです。福祉事務所も保健所も区役所に入れてしまいました。そして、保健師を、今まで区分分担だったんですけれども、業務別の分担にしてしまっているんですね。だから、もう保健所の名前も消えてしまったということなんです。
 そうした中で、予防接種の担当と子供の担当とが違うというのでもう本当に迷っているというようなお母さんの話、担当地域が膨大で一つの地区だけではもうやれないよという、そういう訴えも出ているわけなんです。
 私は、やはり本体の公衆衛生と逆行している、公的責任を放棄しているという、この健康増進法と同じような現象が出ているということを大変心配いたします。公衆衛生をやはり弱体化するものではないかなということを現地の話を聞きながら思っているところです。
 時間がありませんので手短にお願いしたいんですが、保健所のこうした統廃合等の問題について三人の参考人に一言ずつお聞きしたいと思います。
#29
○委員長(阿部正俊君) それでは、松谷参考人からお三方、お願いします。
#30
○参考人(松谷満子君) 今、地域保健法に基づいて市町村がその役を担うというような方向に変わりました。指定都市のああいう大きいところでは保健所というのは残りました形なんですけれども、今度は区単位に保健センター的なものを置いてやっていくようになっているようでございます。
 確かに、私は、でも健康は自分で作る、みんなで支えるというような感覚の中で活動しておりますので、保健所の数が大変少なくなるということについてはいささか問題がございますし、それから人的な配分も、市町村まで十分に人材がいるわけじゃありませんので、困った問題も出てくることもよく知っております。ですけれども、そういう状態の中で、できれば保健所を残していただきたいという住民の声もよく聞いております。
 この問題につきましては、住民へのサービスは市町村がやるということの中でそれが今の形になっているような感じを持っております。いましばらく静観したいと思っています。
#31
○委員長(阿部正俊君) それじゃ、続いて甲田参考人。
#32
○参考人(甲田茂樹君) 先ほど私が高知県の取組を紹介いたしましたのは、地域保健法によって保健所の機能が見直しされたときに一つの選択があったわけで、そのときに保健所が先ほど言った産業保健、学校保健という業務をやろうということで、高知県では保健所をそれほど廃止しないようにしようというのが一つの経過だったわけです。
 いろいろな法律が変わる中で、市町村に業務が下りてきます。そのままでいきますと、保健所が従来の業務がだんだんだんだん減ってくるわけで、先ほど出たような福祉と統合されるというような話になってきたり、本来のヘルスの問題ができないということになってくるんじゃないかと思います。
 ですから、例えばこういう健康増進、非常に多くのフィールドにまたがるようなところで保健所がリーダーシップを取れるような形というのは非常にベストだと思うので、そのためには、やはり今の流れ、又は幾つかの課題をクリアしていかないと保健所はなかなかよみがえってこないだろうと思います。
 この前、保健所長会で話をしたときに、高知県の事例を紹介したときに、ほかの県では、なかなか今うちではそこまでできないというふうにはっきりと保健所長会の所長さんに言われました。
#33
○委員長(阿部正俊君) では、続きまして相野谷参考人。
#34
○参考人(相野谷安孝君) 地域の公衆衛生並びに健康増進という点で考えましても、専門家による学習、教育ということが極めて重要だろうというふうに思います。その点では、この保健所の存続ということは非常に重大な課題になっていまして、正に地域に密着した健康づくりの拠点という意味でも、これが後退している、少なくなっているという点は私は問題だろうというふうに思いますし、健康増進法案の方にも人材の養成ということがあるわけで、こうした専門家をもっとやっぱり地域でフルに活用できるような方向が求められているんではないかというふうに考えます。
 以上です。
#35
○井上美代君 ありがとうございます。
 私は、健康増進法の施策の進め方について、厚生労働省のある局長が言われているんですが、自分である程度の費用負担もしていただく、そういうことは必要だろうと思っていますというふうにおっしゃっているんですね。
 このことについて相野谷参考人にお聞きしたいんですけれども、これでは本当に公衆衛生無料の原則を切り崩すことは明らかだというふうに思うんですね。これ以上の国民負担にもう私自身賛成できないというふうに思っておりまして、参考人の御意見を是非お聞きしたいと思います。
#36
○参考人(相野谷安孝君) 私も同意見でございます。やはり公衆衛生、先ほど途中でも紹介させていただきましたように、現在、地域の健康状態、本当に悪くなってきている。そして、リストラであるとかあるいは首切り、その中で倒産、それから仕事がない、再就職口がない、そういう経済的な条件から健康を害している方々も多くいますし、またお金の問題で、先ほども紹介いたしましたが、医療に掛かれないという方も増えていまして、ここまで築いてきた公衆衛生の無料の原則は何としても守っていただきたいというふうに思いますし、どうもこの法案でいきますと、途中危惧もいたしましたけれども、健診事業等々を通じて、厚生労働大臣の指針に基づいて有料化というような方向も打ち出されてくるんではないか、その辺を一番危惧しているところであります。
#37
○井上美代君 もう一つ相野谷参考人にお聞きしたいんですけれども、今やはり非常に食生活が崩れているというふうに私は思っております。コンビニなどのおにぎりだけで済ましている若い青年たちがいらっしゃるんですね。とても心配しております。
 食料の六割を外国から輸入に頼っている日本では、基準の、この間出たばかりですが、二百五十倍の中国産の冷凍ホウレンソウとか、そういう問題もありますし、BSEにかかわる問題もありますし、いろいろな遺伝子組換え食品の問題、ダイオキシンに汚染された食べ物の問題、いろいろありますけれども、やはりこれが健康破壊につながっているのではないかということを大変心配をしているところなんです。
 このように決して個人の努力ではどうにもならない問題というのが非常に多いというふうに生活の中で感じているんですけれども、こうした問題との関連でどのように考えておられるかということをお聞きしたいのですが。
#38
○参考人(相野谷安孝君) 食の安全性という問題も非常に重要な問題で、この法案の中でも、あるいはサプリメント関連の問題も出てきておりますけれども、先日報道されたように、中国からのやせ薬で亡くなられる方が出たり、それから添加物の問題なども相次いで大きな問題になっておりまして、やはり食べる物の安心をきちっと確保する、そしてその輸入食品にしても、ちょっと今手元に資料がないんですが、それを管理するところの人員がこの間大幅に削られたりしておりますので、そういう意味では非常に心配な状況が起こっているのではないかなというふうに思っております。
#39
○井上美代君 参考人、ありがとうございました。
 終わります。
#40
○西川きよし君 皆さん、御苦労さまでございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私は、松谷参考人にお伺いしたいんですが、健康食品についてお伺いいたします。
 先週末には、先ほども出ましたが、中国製の健康食品が肝障害を起こすということで、厚生労働省より商品名の公表がございました。先日も薬事法改正審議の際に政府側に私は質問をさせていただいたのですが、言うまでもなく健康食品とはあくまでも一般食品であるわけですから、例えば特許申請という分野では何々治療剤とか何々調整剤という名称で許可が下ろされまして、これを商品名に書かれているというケースがございます。
 もちろん、薬事法上の問題はあるわけですけれども、消費者からいたしますと非常にこれは紛らわしい。そしてまた、インターネット等の普及でなかなか自治体の監督なりその取締りというのが本当に難しいようでございますけれども、この辺りの健康食品の現状をどのようにごらんになっておられるのか、また併せて規制の在り方について御意見がございましたらお伺いをいたしたいと思います。
#41
○参考人(松谷満子君) 西川先生のおっしゃるとおりで、私も、日本の食の文化が壊れているというのか壊れ掛けているというのか、本当に残念に思います。
 食育というものの大切さが最近よく言われるんですけれども、子供のときから、母親が子供に対するところの最高の愛情は、手作りの料理を、しかも家族が顔をそろえていただくというところがもう原点のところにあるんだろうと思います。そういうような姿を体験していない人たちが非常にたくさん出てきていて、コンビニ等でただそういう食生活にしていく人が非常に多い。
 それともう一つ、健康食品の問題というのは、厚生省としては特定保健食品、特保と言っておりますけれども、そういうようなもので一応一つの基準のものをマークを付けて出しているわけなんです。でも、ないものでもああやってどんどん通販だとかそのほかに出てきて、そしてそれが、今言ったように、ちゃんと検査されたものでなくて後からいろんな症状が出てきているということ。この問題は、本当に限りなく広がっていっておりまして、今いろんな事件が起こったことによって、これから新しい方向に進むんじゃないかと思っております。
 私どもは、ただ単に加工食品を否定する団体ではございません。今みたいに生活様式が変わって、そういうものをほどほどに上手に使いながら、そして手作りの心を入れながら、地域で生産されている野菜等を入れながら、何か調整していただくということはやっぱりこれから先の食生活というものの中には必要なことでございましょうから、それを否定はいたしませんけれども、この問題については、やっぱりみんなが、それを買わないというのか、ちゃんと表示を見て買うとか表示をもう規定するという形をやっていけば、少しは解決できるんじゃないかなと。
 それから、やっぱり今までは食品産業というのは地域の我々の目が見えるところで小さな人たちがいろいろと作っていたんですけれども、大企業、大産業になり、更に言ってしまえば商社がどんどん物を買ってきて、食に対するところ、食べるということ、食品というのは安全でなければいけないんですけれども、その辺の考え方がまだ十分にない人たちがどんどんとそれを輸入してそのまま売っていくという傾向がございますから、その辺をやっぱりみんながよく考えて、発言をして、どうにかしていくということについて、今一番大事なときに来ているんじゃないかと思っています。
 食品の安全の問題については、農林省と厚生省とが表示の問題で今検討しておりまして、三十日の日にある程度の方向が出ることになっておりますので、そういうものを見極めたいと思っております。
#42
○西川きよし君 ありがとうございました。
 本当に、BSEしかり、そしてうそのシールを張ったり産地をごまかしたりということが、いろいろ諸先生の話をお伺いいたしましてかえって不安な気持ちにもなりましたし、またそういう意味におきましては本日は大変すばらしい委員会ではないかなというふうに感じます。
 次は、甲田参考人にお伺いをしたいと思いますが、地域と職域の連携を図っていくための問題をちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば健康項目でありますとか精度管理など、健康情報の標準化の問題がこれ指摘されておるわけですけれども、この点、今回の法案では厚生労働大臣による健康診査の実施等に関する指針、この策定が盛り込まれております。
 ここは非常に重要な問題であると思うんですけれども、この点の今後の対応の在り方について、先生のすばらしい、良い御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
#43
○参考人(甲田茂樹君) 先ほども出ましたけれども、健康診断の標準化、いわゆる健康情報の標準化なのか健康診断の標準化なのかというようなところが一つは問題になるんですけれども、一つ一番簡単な健康診断の標準化ということを取っても、先ほどちょっと話をしましたけれども、老人保健法でやられている健康診断、それから政管でやられている、要するに保険法、各種保険でやられている健康診断、労働安全衛生法でやられている健康診断、それから、これからリンク等の対象になるかもしれません、学校保健法なんかでやられている健康診断というようなもの、これは職域は関係ございませんけれども、そういうものを合わせるということは、具体的にデータベースを合わせるということは、これ簡単そうでなかなか難しいと。
 健診機関が違えば数値が違ってくる、正常値が違うとは申しませんけれども、一律に評価できないような状況が出てくる。それから、問診というふうにいいますけれども、例えば、先ほどの食生活でいえば、辛い物を食べますかという設問に対して何通りで答えさせられるかというようなかなり具体的な内容も異なってまいりますので、そういうものを、健診業者ないしは開業医がかなりおりますので、すべて合わせるということになってくるとこれは技術的にかなり困難が出てくるだろうと思います。健診機関によってはそういうデータをもちろんコンピューターに入れているというところもありますが、コンピューターの保存方式だとかテクニック的な話ですけれども、そういう問題もあって、実際にどのくらいのデータが集まってくるのかというところは非常に問題がありますし、標準化だけの話ですとかなり技術的なところでお金と時間を掛けないとできてこない可能性があるんじゃないかと危惧しています。
#44
○西川きよし君 ありがとうございました。
 引き続きお伺いいたしたいんですけれども、今度は産業保健についてお伺いしたいんですけれども、これまで大きな課題の一つとして、小規模そしてまた中規模の事業場の対応策が不十分になりがちであると、こういった問題がございます。
 この点で、例えば産業医の選任基準の問題等々規制の強化を図るべきではないかという意見と、また一方では、規制の強化ではなく、中小ならではのメリットを生かした対応策を進めるためにもっともっと支援体制を強化するべきではないのかなと、こういった意見もあるわけですけれども、この辺りのお考えを甲田参考人にお伺いして、時間が参りましたので終わります。
#45
○委員長(阿部正俊君) では、甲田参考人、簡潔にお願いします。
#46
○参考人(甲田茂樹君) 中小・零細企業の労働者の健康問題を解決するための施策というのは今まで旧労働省が大分やられてきました。先ほど五十人という話をしましたけれども、三十人に引き下げようという経過がありました。ただ、経済団体から反対があったと聞いております。
 それで、連携する支援ということで地域産業保健推進センターを作ろうという形でスタートいたしました。もう五、六年になるかと思います。ただし、現実的にはなかなかうまく動いていないというふうに聞いております。それは、余りにも中小・零細事業所が多過ぎるのに対して支援サービスするのが少な過ぎるという、圧倒的なマンパワーのアンバランスというところがあります。ですから、そういう支援体制を組むのであればもう少し発想の転換をする、それが私、高知県なんかでやっている地域保健サイド、マンパワーおりますので、そういうところが関与できるように法整備というか、整えていただければ少しは変わってくるのかもしれないと期待しております。
#47
○西川きよし君 ありがとうございました。
#48
○大脇雅子君 今日は、参考人の方々に貴重な御意見をいただきまして、御礼を申し上げます。
 まず、松谷参考人にお尋ねをしたいのですが、松谷参考人は先ほど孤食の顕在化ということをおっしゃいました。食事のお皿の中から改革してそれを国民に広げていくという、この思想と運動には大変敬意を表させていただくんですが、このごろはコンビニのお弁当というのがあふれております。それから、ファストフードももとより、デリバリーだとかテークアウトとか、そうしたコンビニやデパートの食品売場のあふれ返るような加工食品というものがやはりこの孤食の顕在化を支えているのではないか、そしてせっかく素材を生かして、添加物のない、減塩をしていくという食の改善を根底から今揺るがしているんではないかということを危惧いたします。
 こういうのに対してどのようにこれから取り組んでいったらいいとお考えなのか、お尋ねします。
#49
○参考人(松谷満子君) 食品というのは、これから先そういう、今お弁当も含めてですけれども、栄養価の表示だけではございませんで、表示の色の問題が今規定付けられております。そのときに、大体中に含まれている材料を全部入れ、添加物については何が入っているかということも書くようになってきております。
 ですから、そういうような形で皆さん方がちゃんとそれが読み切ることができたならば、ある程度の情報はそこで手に入れることができるんじゃないかと思っております。
 ですから、その表示がやっぱり非常にこれから先検討されて、そして皆さんが納得するというか、何を、どういう表示を求めるかということを整理していきながら、だけれども情報が多過ぎるとまた皆さんに分からないというところもございますから、その辺のバランスを取りながら、どういう表示というものが、正しく皆さん方に情報を提供できるような方向に持っていくように私どもは期待しているところです。
 もう一つは、日本の今のような食生活というのか、ファストフードですね、座ればすぐに出てくるようなそういうようなものを求めるんじゃなくて、私は、やっぱりもっとゆっくりと食事をしようというスローフードのようなそういう考え方をこれから入れていかないといけないと思う。
 スローフードというのはイタリアの小さな町から起こってきた運動なんですけれども、今、世界的な運動になりつつあります。スピードに束縛されて、習慣を狂わされ、家庭のプライバシーにまで侵入し、ファストフードを食べることを強制されるファストライフというウイルスに感染していますと、それをイタリーのそういうスローフードの団体はそれを宣言して、世界に向かってそのことを言っております。
 それで、その中身を見ていましたならば、消えていくおそれのある伝統的な食材や料理、質の良い食品、特にワイン等、あそこは、イタリーはブドウ酒の産地ですから、を守っていこう。それから、質の良い食材を提供する小生産者を守るということ。それから、子供たちを含め消費者に味の教育を進めていく、味の教育をするという、そういうようなことから、子供のときから良い習慣を作っていこうという形で言っております。
 ですから、日本のスローフードの場合でも、子供たちへの教育という点が重点的にこれからしていかなければならないんじゃないかと思っていますけれども、学校給食でも栄養のバランスを十分に与えた昼食を取っていますけれども、しかし、食にとって大事なのは、栄養だけではなくて、それこそ地域ごとの食文化だとか地域ごとに収穫される食材に対する知識だとか、あるいは調理方法を学ぶ機会を持って理解していくことがスローフードを実践していくんじゃないか。
 ですから、私たちは食生活の問題を原点から今もう一遍考え直したいという運動をやっているわけですけれども、どうぞそういう運動について先生方も支援していただいて、一緒になってそういうものを日本の中に新しい風潮を、元の風潮でしょうか、日本の、それに介していただきながら、みんなで健康を、よりよい健康を確保できるようにしていきたいと思っております。
#50
○大脇雅子君 スローフードの運動は本当に注目すべき運動だと私も思います。
 甲田参考人と相野谷参考人に、お二人にお尋ねしたいのですが、この健康増進法が様々な地域計画を作って進展していく中で、いわゆる健康診断のデータベース化がやっぱり一層促進されると思います。
 先ほど、管理はだれがするのかと、アクセスの権利はどうしたらいいのかと。健康情報が標準化するために必要不可欠なデータベースですけれども、他の情報とのマッチングとかになりますと、大変今大きな問題になっております住基ネットの問題にも入ってくる。
 こういう健康診断のようなセンシティブな情報の在り方についてお尋ねをいたします。
#51
○参考人(甲田茂樹君) ルールづくりに関しては、今審議している真っ最中ですので、ただ、こうしたらいいというような案を持っているわけではございませんけれども、これに関与する団体としては、先ほど言ったように、県ですね、都道府県、それから市町村というのが基本的にはまず入ってくるだろうというふうに思っています。それから、協議会の中では医師会の先生方もいらっしゃいます。医師会の方からも、そういうデータベースができるんであれば日常診療の中で過去の健康診断のデータがどうだったのかというのをやはり参考にしたいというかなり強い御希望があります。そうすると、医師会、一般開業医の先生方がそういう形でアクセスしたいという形で手を挙げられてきております。
 そうすると、そういうデータベースをどこに置くかということになりますと、例えば保健所だとか市役所だとかそれから町役場だとか、それから少し離れますと、先ほど言ったような病院みたいなところ、かなり参加する、それのデータベースをやっぱり活用したいという人間が増えてくるとかなり複雑になるのは事実だと思います。
 ですから、当面は市町村、都道府県で、各地域が持っている個人情報の保護の考え方というものを十分に参考して、もちろんそれを住民に十分説明してやっぱりルールづくりを進めていかないと無理があると思っています。
#52
○参考人(相野谷安孝君) 私は、その分野では特に専門ではないんですけれども、やはりデータベースとして活用できるようになれば、全体の健康や医療活動の前進にも大きく寄与することができるというふうに思います。
 ただ、今、甲田さんが再三危惧されたような個人情報の問題であるとか、そのデータをどういうふうに相互に活用し合うのであるとか等々という点に関しては、しっかり論議もし、かつ、やっぱり住民の納得の下で進めていくシステムづくりというようなことが必要ではないかなというふうに考えております。
#53
○大脇雅子君 甲田参考人にお尋ねいたします。
 先生たちのグループが書かれた日本公衆誌の中で先生の方が、ILOが提案するアクション型チェックリストを用いた参加型の研修方式というものを重視されて、職域保健活動に精通するための職域保健トレーニングマニュアルというのの作成ということを言っておられまして、非常に興味がありますので、ちょっと御説明をしていただけると有り難いと思います。
#54
○参考人(甲田茂樹君) 簡潔に話したいと思います。
 先ほど言ったように、保健所、市町村の職員が勤労者の健康づくりをするときには、職場にやっぱり入っていって、いろいろな要因を理解した上でアドバイスするというのが非常に大切になります。ですから、その意味では、座学では非常に分かりづらいところというのはかなりあります。そういう意味で、先ほどお話しになったILOの参加型の研修というのは、実際に現場に行って、実際自分がやはり見て介入してみるということを経験するということなんで、これがかなり効果的であったというふうに私は思っております。それで、大体一年間に二十人ぐらいの地域保健のスタッフを教育できるだろうというふうに、限られた人材ですけれども、思っております。
 ですから、教育方法、先ほどノウハウを身に付けていただくのはかなり工夫が必要だというふうに思っておりますので、それを取り上げました。
#55
○大脇雅子君 ありがとうございました。
#56
○委員長(阿部正俊君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、御質疑にも応じていただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。
 それでは、委員会は午後一時まで休憩といたします。
   午前十一時五十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#57
○委員長(阿部正俊君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、草川昭三君が委員を辞任され、その補欠として山本香苗さんが選任されました。
    ─────────────
#58
○委員長(阿部正俊君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案について六名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
 参考人の方々を御紹介申し上げます。
 日本医師会常任理事櫻井秀也さん、健康保険組合連合会常務理事対馬忠明さん、全国町村会会長・添田町長山本文男さん、日本労働組合総連合会事務局長草野忠義さん、全国労働組合総連合事務局長坂内三夫さん及び日本高齢・退職者団体連合会長西田八郎さん、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ、また台風の中、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十五分で順次御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の御答弁とも、発言は着席のままで結構でございますので、そのように心得ていただくようにお願いを申し上げます。
 それでは、まず櫻井参考人から御意見をお述べいただきたいと思います。櫻井参考人。
#59
○参考人(櫻井秀也君) 本日は、参議院の厚生労働委員会参考人ということで意見を述べさせていただくことに感謝いたします。日本医師会の常任理事の櫻井と申します。
 それでは、意見を述べたいと思いますが、最初に結論を申し上げるとすれば、現在提出されております健康保険法等の一部改正案には断固として反対いたします。
 お手元に参考資料として私の述べたいことの要約が書いてありますので、ごらんいただきながらお聞きいただければと思います。
 そういうことを最初に申し上げた形で申し上げるわけですが、その反対の理由を述べます前に、現在の日本の医療保険制度について、基本的な考え方について二点だけ、まず述べさせていただきたいと思っております。
 現在の医療保険制度につきまして、述べたいことは実は物すごくたくさんあるわけですけれども、時間もありませんし、二点、特に今回の問題に関連の深いところに絞って二点だけ申し上げたいと思っております。
 まず第一点でございますが、今までというか現在の日本の医療保険制度というのは、経済的に見てというか財源的に見てというか、対GDP比というのは、御存じのように、七・一%とかそういう程度でございまして、国際的に見て、他の国、つまり国民の経済力との比率ということの国際的な比較からいえば極めて安い費用で行われております。
 これも、もう皆さん御存じのことで言うまでもないことですが、例えばアメリカであればほぼ倍の率を持っておりますし、我々は、ドイツ、フランス程度と比べるのがいいのではないかというふうに思っておりますが、それにしても、その対GDP比は、ドイツ、フランスでは我々の国の一・四倍とか一・五倍という比率でございます。
 そのように国際的に見て極めて安い費用でどういう結果が得られたかといえば、これももう皆さんに言うまでもなく、世界で一番の高寿命国でございますし、また乳幼児死亡率、これは世界一低い、これはもうはっきり出ているわけで、健康寿命というような意味でも、WHOが先般発表しましたように、世界一、総合健康評価でもWHOは世界一ということで発表しておるとおりでございまして、簡単に言えば、すばらしい成果を上げていると思います。つまり、これは世界に冠たる優れた医療保険制度である、まずそのことを忘れてはならない、それが第一の考え方でございます。
 したがいまして、この医療保険制度を改革していく、そういうことを考えるときには、今申し上げましたような世界に冠たる優れたという、その長所を伸ばして更になお一層発展させる、そういう方向で考えるべきであって、せっかく優れた制度であるものを破壊してしまうような改悪案、そういうものには強い憤りを感じるものであります。
 次に第二点ですが、これも皆様よく御存じのとおりですが、日本の医療保険制度は、財源的に見れば保険料と公費と患者負担の三つによって運営されています。医療保険制度というのは、保険制度というように、文字どおり保険制度ということで考えれば、その財源が不足してきたら、第一義的に、第一番にどうやって補うかといったら、保険料のアップによって対処すべきものであると考えます。
 これはある意味では常識だと思うので、ほかの保険であります火災保険であろうと生命保険であろうと自動車保険であろうと同じことで、給付の分に不足が生ずれば保険料のアップでそれを補ってきているわけです。例えば、同じ公的年金保険である厚生年金保険を例に取れば、二十数年前には、これは政府管掌基準ですが、千分の七十六ということで健康保険料の保険料と同じものであったのが、厚生年金の給付が必要だということで、今やそれの二・三倍ぐらいの千分の百七十三・幾つとかいうような数字になっているわけです。それはその必要によって保険料をアップしてきたわけですから、当然、健康保険にあってもそのように対処すべきであると考えます。
 また、日本の医療保険制度が社会保障と、そういう、社会保険と言われるように社会保障の役割を果たしている、これも事実でありますから、そのことから考えれば、財源が不足したときに次に考えるべきは公費負担のアップであろうと思います。
 公費負担のアップという意味では、まあそういう言い方をしていいかどうか分かりませんが、銀行を助けるために公費を導入したものの何分の一かを導入してもらえば全く問題はないわけですし、あるいは、これも時間があればゆっくり申し上げたいですけれども、たばこ税等のアップによって幾らでも公費を補う道は残されていると我々は考えます。
 もう一つの患者負担の問題ですが、国民全員が健康保険料というのを払って、健康を害したときには安心して医療の提供を受けられる、これが先ほど申しました世界に冠たる日本の国民皆保険制度であるわけですから、そうであるためには、財源の不足を患者負担によって補おうとする考えは、全く日本のすばらしい医療保険制度に対して本末転倒の考え方であると考えます。
 よく、患者負担を受益者負担と、そういうふうに言う人がありますけれども、元気なときには保険料を払って、健康を害したときには医療保険によって給付を受ける、それが患者さんなわけですから、これは決して受益者ではなくて、私は、むしろ受難者であろうと思います。
 先ほど例に取りました火災保険でいえば、火災保険料を払っておって火事に遭ったときにその給付を受けるのが火災保険でありますが、医療保険というのは全く同じことで、元気なときに保険料を払っておいて病気をしたらその給付を受ける。何で火事に遭った人が受益者でありましょう。どう見ても受難者であろうと私は思います。つまり、患者負担の増加というのは受難者に対する負担を強いるわけで、これには強く反対をしたいと思います。
 以上の基本的な考えから、今回の健康保険法等の改正案に反対でありますが、特に以下の二点について断固として反対をいたしたいと思っております。
 まず第一点でありますが、それは老人保健法の一部改正による高齢者の入院外自己負担定率化及び高額医療費化、更に還付方式化と言ってもいいと思いますが、そのような問題があることと上限額の引上げ、その点に反対をします。
 入院外、特に在宅の医療における高齢者の負担は極めて重い負担になり、高齢者が安心して医療の提供を受けることができなくなる可能性があります。また、還付申請方式というのは、これはもう我々でもそう思いますが、高齢者にとっては極めて煩雑で、恐らく申請をし忘れるとかいろいろな問題が起きて、確実かつ適正な運用がなされるとは思われません。
 また、日本の高齢者の一部にはある程度金銭的な余裕がある、したがって高齢者にある程度負担をさせるべきだという意見も確かにあります。しかし、たとえ余裕があるにしても、健康を害したときに重い負担を掛けるこういう制度を導入すれば、その余裕のある高齢者も、もし健康を害したとき、介護が必要になったときどうしようと考えて、そのときに備えるために平生の経済活動、それを抑えてしまっていると思います。健康を害したとき、介護が必要なときには安心して医療が受けられるよと、そういう制度を作れば、正に余裕のある高齢者の経済活動は活発になり消費も進むでありましょうし、あるいは高齢者の方々の海外旅行等も活発に行われる。日本の経済の立て直しのためにもプラスに働くものと考えます。
 いたずらに、健康を害したときには重い負担を掛けるぞ、正に脅迫とも思えるやり方は日本の経済の低迷に更に拍車を掛けるものでありまして、むしろ経済活性化の観点から見ても今は逆方向の改悪案が進んでいるというふうに考えます。
 次に、第二点の反対理由ですが、それは健康保険法の一部改正による被用者保険本人の三割負担の導入、よく言う社保本人の三割負担の導入について反対をいたします。
 保険料負担の軽度の増加、つまり健康保険料率を少し改正するというようなことでこの被用者保険本人の患者負担三割導入は十分に回避が可能でありまして、何か初めに三割負担、そういう考えの法案には強く反対をしたいと思っております。
 被用者保険本人の患者負担三割が、この被用者保険家族、分かりやすくすると、社保本人と社保家族、それから国民保険、国保の方、その患者負担と比較して、同じ三割で公平だと、そういう意見を言う人がいますが、しかしその考えは全く違っております。日本の医療保険制度における負担の公平というのは、保険料の負担と患者負担の両者を合算して、両方合わせて考えるべき問題であります。例えば、被用者保険家族、つまり社保家族、被扶養者ということですが、は実質的には保険料の負担をしておりません。被保険者が保険料を払って、そこの家族として保険料の負担をしていません。したがって、被用者保険本人、つまり被保険者よりは高率の三割の患者負担、それをすることが公平で、今までそのような制度として運用されてきたわけです。
 また、国民保険についていえば、これは全体で見ますと国民保険の中の保険料負担分というのは、これもう皆さん御存じのように非常に少なくて、国民保険の財源の中にはほぼ五〇%の公費が注入されております。したがって、保険料負担とのその少ない分、それを三割の患者負担として補うことが公平である、そういう考えで運用されてきたのであります。被用者保険本人の患者負担の三割という導入は、このような日本医療保険制度の負担の公平の考え方を根底から覆すものであると考えます。
 初めに三割負担ありきではなくて、保険料負担も含めて、根本的な負担の在り方を考えなくてはならないと思います。つまり、単なるつじつま合わせの財源確保策ではなくて、根本的に日本の医療保険制度の在り方を考えた上でどういう負担をするかという改革が必要なのであって、小泉首相が大好きな米百俵の趣旨からいえば、目先のことにとらわれずに将来を見通せということだと思いますので、そのためにも今度のつじつま合わせの改革案は反対をしたいと思っております。
 以上、一番最初に申し上げましたように、結論として今回の健康保険法等の一部改正案には断固として反対をしたいと思っております。
 最後にもう一つだけ意見を述べさせていただきたいことがあります。
 現在、日本の経済状態は低迷して、はっきりいえばそれゆえに今回のような患者負担の増加によって医療費財源を確保しようと、そういう法案が提出されているものと考えます。しかし、現在の日本経済の苦境は、これは経済界自体の失態によるものであって、少なくとも医療分野にその原因があるものではありません。にもかかわらず、その解決策、それを医療分野、特に患者負担に求める考え方には全く納得がいきません。やや世俗的な言葉を使うことを許していただければ、経済界の失態を医療分野でしりぬぐいするということは大変遺憾な問題であると思います。むしろ、国民に安心と安全を保障する社会保障制度の充実こそが日本経済の立て直しのためにも必要なんだというふうに考えます。
 今のような考え方、そういうことでこの法案が通っていくことだとすれば、我々は重大な決意を持ってこれに対処する必要が生じるのではないかというふうに考えております。良識のある参議院議員の先生方、是非賢明なる判断をしていただきますように強く期待をして、私の意見とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#60
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 次に、対馬参考人にお願いいたします。対馬参考人。
#61
○参考人(対馬忠明君) 新日鉄健保組合理事長代理の対馬でございます。
 本日は、健保実務に携わっている立場を含めて、健保連の意見を申し上げる機会をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。
 まず、私どもの基本的な立場ですけれども、医療制度改革を速やかに実現していきたい、そのためには改革につながる本法案を是非成立していただき、引き続き抜本改革に一日も早く着手していきたい、こういうことでございます。
 法案の内容について意見を申し上げる前に、健保財政がいかに待ったなしの状況に置かれているか、十分御理解を賜っているとは思いますけれども、私どもの意見の基盤、背景でありますので、簡単に触れさせていただきたいというふうに思います。
 恐縮ですけれども、資料を配付してございますので、ナンバー1でございますが、財政状況が真ん中辺り、網掛けのところにございます。平成十三年度、これは予算ベースですけれども、マイナス四千八百八十三億円、十四年度、これはマイナス二・七%の診療報酬改定織り込んでおりますけれども、マイナス五千七百三十一億円、予算規模六兆円に対しまして約一〇%の赤字率ということであります。なお、この下に書いていますけれども、赤字組合は九一%であります。財政悪化が年を追って深刻化して、待ったなしの状況にあることが一目瞭然であろうかというふうに思います。
 この原因は、保険料収入の伸び悩みなどもありますけれども、その主因とでも言うべきものは拠出金の大幅な増加であります。この資料の下から二行目の網掛け部分ですけれども、平成十二年度から十三年度、十四年度に掛けますと、毎年一千億から二千億円規模で増えております。保険料収入に占める割合も、その下ですけれども、平成十四年度を見ていただきますと四四%、約半分にも及ぶような状況でございます。これは平均値でございますので、その次のページに割合別に出てございますけれども、右側のところですけれども、保険料収入に占める割合が五〇%以上、つまり半分以上拠出しているという組合が二五%、約四分の一であります。既にもう過重というような段階を超えていまして、今や健保組合自身が老人医療費拠出組合に変質しつつあると言っても過言ではない状況でございます。
 組合財政の逼迫によりまして、いわゆる自主解散に追い込まれる組合が毎年二けたに上ってございます。そういったことで、また一ページ目の一番上のところですけれども、逐年、組合の数が減少していまして、平成十四年度、一番右側ですけれども、四十二組合が減っております。つい四、五年前までは千八百組合と、皆さん御存じかと思いますけれども、言われていましたのが、今や千七百を切りまして千六百九十六組合という状況でございます。正に後のない、こういう状況で改正案を迎えたわけですけれども、賛成の理由を三点に絞って申し述べたいというふうに思います。
 一点目は、本法案は、端的に申し上げまして、私ども健保財政の財政に寄与するということでございます。
 平成九年、十二年、十三年、法改正のたびごとに私どもは財政の逼迫と法案の早期成立をお願いしてまいりました。御尽力による法改正効果もありまして、これまでは大多数の組合は何とかしのいでまいりました。財政状況の再説は避けますけれども、現在置かれている状況は、これまでのように、赤字組合が増えたとか、このままでは医療保険制度が危ないと、こういった段階とは既に次元を異にしております。医療保険制度の終わりの始まり若しくは崩壊の過程と、こういったものが目の前の現実として私どもに返答を突き付けている、こういった状況でございます。
 法改正による財政効果を申し上げたいと思います。
 平成十五年度が健保全体で二千億円ございます。ちなみに、私どもで六億円でございます。これは、十九年度では五千億円、私どもが十五億円と試算されております。仮に法改正がないということであれば、五年間累計で一兆数千億円という巨額のコストが加わります。十三年、十四年度の二年間の赤字、先ほど申し上げましたけれども、単純に合計しますと約一兆円、これに法改正がないとしますと一兆数千億円が加わります。更に今後とも医療費増分がのし掛かってまいります。
 保険料の問題が議論されますけれども、今そういった経済環境にはないわけですけれども、仮に万やむを得ず何がしか引き上げざるを得ないと、こう腹固めをしたところで焼け石に水といった状況になります。十四年度改革に期待し、歯を食いしばって維持してきた私どものような責任者、それから事業主、こういった方々も、もう重荷は振り捨てて解散しよう、政管健保へ行こうという大きな動きが起きてまいります。これは、単なる図式論とか推論ではございませんで、私どもが身近に見聞する事実でございます。
 解散組合の動きが加速、増幅され、政管健保に国から交付される補助金、御承知のとおり、一般医療費で一三%、老人医療費で一六・四%でございますけれども、これもまた大幅に増えていくという負のシナリオが現実化し、悪循環を招来することになります。
 私ども健保運営に責任を持つすべての者が、これは事業主、経営サイドも含めてですけれども、この財政効果をのどから手が出るような思いで望んでいることがお分かり願えるのではないでしょうか。
 二点目は、この法案の中には、高齢者の完全一割負担や公費の五割投入など、改革につながる多くの項目、内容が盛り込まれていることであります。
 第一は、高齢者の完全一割負担でございます。
 平成九年改革では、ワン、ツー、スリー、ワンは高齢者の一割負担、ツーは若人の二割負担、スリーは薬剤の三割負担でございますけれども、このワン、ツー、スリーが標榜されたことは御記憶されていると思います。それから五年たちまして完全一割負担がようやく法案となりました。なぜ一割負担が必要かということについては多弁を弄するまでもないと思います。
 一点だけ申し上げますと、若人の方が二割から三割へ負担増となる、これは私どももやむを得ない苦渋の選択ではないかというふうに思うわけですけれども、これは高齢者の医療費を賄うための財政対策という側面もあるわけでございます。高齢者のために若人が一割も負担増となる中で、肝心の高齢者自身も幾ばくかの負担増は甘受する、これは若人の理解を得るためにも必要な対応ではないでしょうか。
 おしかりを顧みずにあえて言わせていただきますと、完全一割負担というのはむしろ遅過ぎたというのが私どもの実感でございます。きめの細かい合意形成、政策的配慮というのは分からなくもありませんけれども、そのためにここ数年来、複雑な制度改正、単価改定を繰り返してきたことが果たしていかがであったかというふうに思料いたす次第でございます。
 第二は、高齢者に対する公費の五割投入であります。
 拠出金を始めこれまでの老人保健制度の矛盾点を内蔵したまま、その枠組みの延長線上で対象者を七十歳から七十五歳に引き上げるという手法は極めて問題でありますし、引き続き新しい高齢者医療制度検討の中で根本に立ち返った議論が必要と思います。
 ただ、公費を三割から五割に引き上げることについては、国家財政が大変厳しい中でよく御決断されたと敬意を表する次第でございます。このことによりまして、高齢者を対象とする年金、医療、介護という社会保険制度の公費投入割合の足並みがそろってまいります。高齢者医療制度を検討する際にも大きな柱となることは間違いないと思います。
 第三は、老人医療費の伸びを適正化するための指針が盛り込まれたことであります。
 毎年、老人医療費は七、八%伸びておりまして、この抑制が大きな課題であることは何人も異存のないことでございましょう。今後、指針がどのように具体化され、実効ある制度として機能するのか注視していきたいというふうに思います。
 今申し上げた三点以外にも、特定健保組合制度や継続給付、任意継続、こういった改善項目が多岐にわたって盛り込まれております。内容に触れるのは、細かくなりますので割愛させていただきたい。
 特筆したいのは、健康保険法を平仮名書き・口語体に改めることであります。私事で恐縮ですけれども、数年前、健保組合に異動になったときに、片仮名書きで文語体の健康保険法に大変驚いた記憶がございます。国民の最大の関心事の一つである医療・健康分野について、できるだけ分かりやすくして国民に目線を合わせていきたいというメッセージ性について高く評価いたしたいと思います。
 賛成理由の三点目になります。新しい高齢者医療制度など、抜本改革に速やかに着手して早期に成案を得たい、こういうことでございます。
 法案の附則には、医療保険制度の在り方など、抜本改革事項が盛り込まれております。これらはいずれも非常に大きなテーマでもありますし、合意形成が容易ではないということは私どもも十分承知しております。しかし、これらはいずれも先送りされた結果でございまして、本来は既に粛々と実施していたか、少なくとも今回の改正法案には盛り込まれていたはずのものでございます。
 本法案を成立させ、後顧の憂いなく、全力を挙げて抜本改革の具体的検討に着手する必要があるのではないでしょうか。附則には十四年度中に基本方針策定と明記されております。既に四か月を経過して、残りはあと八か月でございます。抜本改革は広く国民に大きな影響を与えるものでありまして、できる限り早急にお示しいただきたいというふうに思います。
 私どもが改革の中心として考えているのは、高齢者医療制度の創設であります。拠出金の重圧の実態、その不合理性については再三申し上げましたので多くは申しません。拠出金は廃止すべきでございます。若人世代の支援が不要だということではございません。コントロールタワーが存在して、透明性が確保され、しかも効率性が担保されると、そういう前提の下であれば必要な保険料はきちんと負担したいと、こういうことでございます。
 健保連といたしましても、改革論議に参画して積極的に主張もいたしますし、また共通点、接点を見いだす努力も併せて行っていきたいというふうに思っております。これも、いずれにせよ健保法案の速やかな成立が改革の前提となるわけでございます。
 千七百の全組合がこの法案の審議を注目し、その成立を切望してございます。日夜を分かたない御努力に重ねてのお願いで恐縮ですけれども、法案の速やかなる可決、成立を心からお願いして、陳述を終わります。
 どうもありがとうございました。
#62
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 次に、それでは山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
#63
○参考人(山本文男君) 全国町村会長で、私は福岡県の添田の町長の山本でございます。
 平素、町村の行政につきまして種々御高配を賜っておりますことに対しお礼を申し上げたいと思います。
 なおまた、今日は意見を申し上げる場を設けていただきまして誠にありがとうございました。お礼申し上げます。
 この機会に、国民健康保険を運営をいたします市町村の立場から、かねてより主張し続けております医療保険制度の一本化の必要性、そして一本化実現までの当面の措置として健保法改正案の早期成立について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に、医療保険制度の現状でございますけれども、医療保険制度は国民皆保険制度を採用しておりまして、全国のすべての国民がいつどこでも平等に医療機関において医療を享受できる体制が取られておりますことは御承知のとおりです。この制度は世界的に見ても非常に優れたものであります。国民皆保険制度を堅持することは国民の総意であります。
 我が国の医療保険は、自営業や無職者などを対象とする市町村国保と、それから政管健保及び組合健保などから構成されております被用者保険に二つに分けられると思っております。このような状況の下、国保には全人口のおおむね三七%が加入しております。その財政運営は危機的な様相を呈しております。さらに、無職者、低所得者の増加、毎年一兆円規模で増加している老人医療費など、多くの課題、問題点を抱えています。
 したがって、これらの各種の問題点を解決するためには医療保険制度改革が急務であり、医療保険制度の一本化なくして皆保険制度は維持できないものと考えております。
 次に、国保の現状を申し上げたいと思います。
 平成十二年度の市町村国保の財政状況は、法定分の一般会計の繰入金が三千九百五十三億円と併せて、法定外負担繰入金として三千百九十七億円もの巨額が投入されているのにもかかわらず、千二十九億円の赤字となっております。保険者の六割余が赤字運営となっておりまして、最終的な単年度の実質赤字はおおむね約四千二百億円を超えております。これは毎年度恒常化しております。国保事業については特別会計が組まれており、住民のことを第一と考えればこそ、制度を維持するために市町村の一般会計から毎年多額の法定外繰入れを行っております。それでも赤字収支となっている現状を考察いたしますと、もはや国保事業は破綻している状況にあると言っても過言ではありません。
 国保の保険料、これはもう保険税とも言っておりますけれども、この収納率を見ますと、平成十二年度の全国平均は九一・三五%で、町村部は九四・八〇%であります。毎年低下傾向にあるものの、九〇%を超える収納率を維持してきたことは市町村の努力の結果でございます。しかしながら、今日の厳しい経済情勢及び介護保険制度の導入に伴い、国保加入者にとって負担感が増大し、今後一層の収納率の低下が生じることも予想されます。
 また、近年多く見られますのが、失業等により所得のない加入者が増加をし、これが大体昨年で百五十万人くらい国保に加入をしております。結果といたしましては、未納者の増加が出てくるということになりまして、したがって、こういう現象は収納率を低下させることになります。
 制度を維持するためにも、穴の空いた金額を市町村が一般会計より更に補てんをするという悪循環が生ずることになります。一般会計から法定外の繰入金を投入するということは、本来、市町村が行うべき事業に予算が回らないで、各種の福祉施設あるいはその措置、あるいはまた行政サービス等に阻害を与えているということになります。また、このことは国保加入者のみならず、間接的には他の被用者保険加入者を含めた全住民が国保の負担をしていることにもなるのであります。
 その次でございますが、国保と他の保険組合との比較を申し上げたいと思いますが、国保、政管健保、組合健保の各制度を比較いたしますと、加入者の年齢構成や年間所得等に大きな格差が生じております。
 そこで、この三つのそれぞれの平均年齢は、国保が五十一・七歳、政管健保は三十七歳、組合健保は三十三・九歳でございます。
 老人の加入割合でございますけれども、国保は二六・二%、政管は五・六%、組合健保は二・八%でございます。
 月収でございます、所得でございますが、平均ですが、政管健保は、これは標準でございますが二十九万円、それから組合健保は三十六万円余でございます。これを一世帯当たりに直してみますと、国保は、国保の一世帯当たりの年間の所得は百六十八万円でございます。政管は二百四十四万円程度、それから組合健保は三百八十万程度でございます。これを一世帯に直しますと、国保は十五万三千円、それから政管健保は十五万、それから組合健保は十六万ということになっております。
 ところで、診療費、医療費としてどれぐらい使っているかといいますと、国保が十六万三千円、政管健保が十二万一千円、組合健保が十万二千円でございます。年間所得を基にした保険の料率を見ますと、国保が九・一%、政管が六・一%、組合健保が四・二%という割合になる。
 さて、国保の組合員、被加入者の状況を見てみますと、昭和四十年には農林水産業の人が四二・一%、自営業の人が二五・四%、被用者が一九・五%、その他六・四%、無職の人は六・六%でございました。それを現在はどういう状況かといいますと、全く逆転しておりまして、農林水産業の人が二・五%、それから自営業の方が二〇・九%、それから被用者が一八・四%でございます。それから、その他が一・二%になっておりまして、無職の人が五七・一%の加入と、そういう状況でございます。
 こういうような状況でございますので、どうぞひとつ御認識をいただきますようお願い申し上げますと同時に、各医療保険制度の法定給付率を見ますと、政管健保及び組合健保ともに本人及び家族の入院が八割ということでございまして、国保はすべて七割となっているところでございます。それにもかかわらず、他の制度の一・五倍程度の、負担割合を高くしておるのが国保の現状でございます。
 さて、その次は医療保険制度の一本化の実現について申し上げたいと思います。
 負担と給付の公平化のためにも、我々市町村国保保険者はかねてから医療保険制度の一本化を主張し続けてまいりました。各種の医療保険制度を一本に統合することにより、負担と給付の統一化が図られることになります。現時点において黒字を維持している保険者も、多くは数年のうちに赤字に陥ってしまうことが推測されます。国民が安心して医療を享受できる体制を整えることが必要ではないでしょうか。
 昨年十一月二十九日に政府・与党社会保障改革協議会において取りまとめられました医療制度改革大綱では、医療保険制度の一元化について具体的な検討を開始し、一定期間内に結論を得ると記述されております。一定の評価を私どもはしておるところであります。しかし、大切なのは、医療保険制度の一本化を有力な考え方とするだけでなく、最終的な将来の方向性として明確に位置付けることであります。一刻も早くこの実現のために取り組むことが必要ではないでしょうか。
 さて、その次ですが、健保法の改正案の早期成立について申し上げたいと思います。
 これは先ほども申し上げましたが、残念ながら国保は既に破綻状態にございます。現状のままでは持続するほどの体力は市町村には残っておりません。一本化実現までの当面の延命措置として健保法改正案を成立させる必要があると考えているところであります。
 法案には被用者保険の七割給付が盛り込まれております。給付率の安易な引下げは好ましいものではないと考えていますけれども、結果として制度間の給付が統一されることになり、負担と給付の公平化の第一歩につながるものと認識をしておるところであります。
 次に、老人医療費の拠出金の算定方法の見直しについてでありますが、具体的には、老人の加入率の上限の撤廃、あるいは退職者に係る拠出金を退職者医療制度で全額負担をする、そういった内容についてでございますが、これらについては、高齢者や退職者を多く抱え、負担が偏重しており、かねてからの要望でもあります。老人医療費を全国民で公平に負担するという老人保健制度の趣旨を踏まえれば、是非ともこれを実現をしていただきたいと考えておるところであります。
 第三に、国民健康保険の財政基盤の強化に関してでございますが、国保は一般会計からの繰入れで辛うじて運営されております。その財政運営が危機的状況であることなどから、医療保険制度が抜本的に改正されるまでの臨時的な措置としてどうしても必要であります。早急に実施する必要がございます。そうした意味で、低所得者を多く抱える市町村の負担を軽減する保険者支援制度や、国保財政を安定させるための高額医療費共同事業の拡充・制度化は評価できるものと考えております。
 以上、いろいろ申し上げましたが、医療制度、医療保険制度の在り方は国民生活に直結する重大な問題であります。しかしながら、国民健康保険を始めとする医療保険財政は各制度とも逼迫をし、崩壊状況にございます。このような状況を踏まえれば、当面の対策として、国民健康保険の財政基盤の強化のため、直ちにこれらを実施することが必要であります。法案の早期成立を望むものであります。
 以上、極めて簡略でございますけれども申し上げまして、意見とさせていただきます。
 終わります。
#64
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 それでは次に、草野参考人にお願いいたします。草野参考人。
#65
○参考人(草野忠義君) 連合事務局長の草野でございます。
 本日は、参考人としてお招きをいただきまして、大変ありがとうございます。
 健康保険法等の一部改正に関する法律案に関しましての意見を述べさせていただきたいと思います。
 今回の健保法等の改正法案につきましては、単なる患者、国民への大幅負担増による当面の保険財政対策でしかない、このように考えております。したがいまして、連合といたしましては、抜本改革が実施されないままでの今改正には絶対に反対であるという結論をまず述べておきたいと存じます。
 一九九七年九月の大幅負担増は、二〇〇〇年度に医療・医療保険制度の抜本改革を行うことを前提に先行実施されたものでございました。当時の与党三党は、抜本改革の実施は平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施することを国民に公約したわけでございます。したがって、連合は医療制度の抜本改革に向けた審議会等へ積極的に参画をいたしまして、保険料を支払う側、医療を受ける患者の立場からその実現を強く求めてきたところでございます。
 しかしながら、一九九七年から今日まで行われてまいりましたことは、改革の先送りと国民への負担増でございます。国民医療費が膨張し財政赤字が拡大した責任は、抜本改革を先送りし小手先の財政つじつま合わせに終始してきた政府にある、このように考えております。したがいまして、今回の改正は、このツケを国民に転嫁するものでしかなく、到底容認できない、このように考える次第でございます。
 しかも、国民、患者への負担増は、景気の低迷を更に長期化させるばかりか、社会保障制度への信頼という点からも大きな問題があると考えております。
 九七年の負担増は、景気低迷に拍車を掛けた要因の一つとされております。現在、五月の完全失業率は五・四%と悪化し、デフレ経済の下で国民は雇用と生活、将来不安を高めております。このようなときに大幅な負担増は行うべきではない、このように考えているところでございます。
 また、社会保障制度への信頼という点からも大きな問題があると考えます。そもそも医療保険制度とは、労働者など被保険者が病気などのリスクを支え合う短期保険として出発をしていると考えております。その被保険者の医療費の増加で保険財政が赤字であるのなら負担増はやむを得ないのかもしれません。しかし、昨今の保険財政の赤字は、老人医療費拠出金などの増加によるものであります。保険者が支払う全拠出金は保険料収入の四割を超えるに至っております。今回の三割負担や大幅な保険料アップなどの負担増は、拠出金を賄うために行われるものであり、一体だれのための保険かという不満が高まっているということを御理解をいただきたいと思います。
 老人医療を支えていることを否定しているのではなくて、支え方の仕組みに合理性、納得性が失われているのではないか、このように考えておるわけでありまして、このことが医療保険制度に対する不信の大きな要因となっていると思っておる次第であります。
 加えまして、政管健保における違法な脱退、医療事故・ミス、医療機関側のカルテ改ざんや情報隠し、医療費の不正請求など、様々な課題が山積をしております。今回の東京女子医科大学病院の事件や前厚生労働副大臣の帝京大学医学部入試での口利き問題は、医療や政治への不信を更に強めることになりました。前厚生労働副大臣の辞任は国民の目から見て当然のことだと考えますが、辞任のみで失われた信頼はなかなか回復されるものではない、このように考えます。
 医療をめぐるこれらの問題の根本的な解決や抜本的な制度改革を先送りし、負担増を繰り返すのであれば、いよいよ社会保障制度全体の空洞化を招くことになる、このように考えるわけであります。
 次に、今回の改正法案に対して意見を述べさせていただきます。
 第一は、自己負担額を二割から三割へ引き上げることについてであります。
 政府は、三割負担は公平であると述べております。公平な負担とは、自己負担だけではなくて、保険料負担とのトータルで考えるべきであります。自己負担だけ公平というのは論理としておかしいのではないでしょうか。そもそも、自己負担が三割というのが公的保険制度と言えるかどうかという疑問もあります。
 連合は、三割への引上げが若い人たちの薬剤一部負担金の廃止と引換えであるのなら、薬剤一部負担金は残すべきであると、このように考えております。
 また、一九八四年に定率一割が導入されてから二割への引上げには十三年間を要しております。それをわずか五年で三割に引き上げるとすれば、制度への不信が強まることは間違いありません。三割負担は撤回すべきである、このように考えております。
 厚生労働大臣は、大きな病気になるほど負担は軽くなる、自己負担については上限の付いた三割が一つの限界であると述べられたと聞いております。また、三割が導入されても、高額療養費制度があるため実効負担率は低くなり、実際の負担はさほど大きくないと答弁したと聞いております。
 しかし、これは高額療養費制度の自己負担限度額を今後も引き上げないという前提でしか成り立ちません。限度額を引き上げれば実効負担率は大きく変化をいたします。大臣の説明については納得できませんと、このように申し上げたいと存じます。
 第二は、総報酬制の導入、政管健保の保険料率の引上げについてであります。
 私たち連合は、総報酬制に関しましては、年間総収入での格差是正という観点からは反対ではありませんが、今回は保険料引上げだけを目的としており、到底納得できない、このように考えております。
 そして、政管健保の保険料率は、総報酬制で現行の七・五%を八・二%に引き上げるとしております。これは引上げ率で言いますと約一割のアップと過去にない大幅な引上げでございます。厚生労働省の試算では、五年間平均で単年度五千七百億円の負担増になるとされております。五年間であれば、掛け算をすれば二兆八千五百億円の負担増となるわけであります。
 政管健保には中小・零細企業の労働者が加入をいたしております。保険料を支払う労働者の生活が厳しい状況に置かれている中、とても容認できるものではなく、最も取りやすいところから取ろうとしているとしか思えないわけであります。
 さらに、保険料算定に当たっての標準報酬月額は通勤費まで含めていると聞いております。総報酬制を導入するのであれば、算定対象の範囲を見直すべきではないでしょうか。
 そして、政管健保における国庫負担の問題がございます。
 国庫補助は一六・四%から二〇%の範囲で政令で定めるとなっていると聞いておりますが、九二年に政管健保の保険料率が引き下げられたときに、一般医療給付費への国庫補助が一六・四%から、附則で当分の間、一三%に引き下げられました。負担増の前に政管健保の一般医療給付費への国庫補助を本則の一六・四%に戻すべきだと考えるわけであります。
 厚生労働大臣は、保険料率は一〇%が一つの限界と考えると答弁しておられます。保険制度である限り、保険料が財源の中心であることは言うまでもありません。急速に進む少子高齢化社会にあって医療費の増加は避けられず、私どもは保険料の一定の引上げはやむを得ないものと考えております。しかし、それはあくまでも医療・医療保険制度の抜本改革の実施が前提であることを強く主張しておきたいと思います。
 第三には、薬剤の一部負担金の廃止についてであります。
 御案内のとおり、薬剤一部負担金は九七年九月に導入されました。薬剤に係るコスト意識の喚起、薬剤使用の適正化効果が現れ始めていたにもかかわらず、九九年七月に実質廃止をされました。
 効果が現れていた制度を廃止する理由が私どもには全く理解できません。何よりも、廃止に至る決定プロセスが不透明だったことが政府に対する大きな不信となっていることは言うまでもないというふうに考えております。若い人たちの薬剤一部負担金の廃止によって生じる財源確保として三割の引上げがあるとしたら、本末転倒だと考えるわけであります。抜本改革までの間、制度の存続を求める次第であります。
 第四については、高齢者医療についてでございます。
 私どもは、老人医療費のみの抑制策ではなくて、医療費の総額抑制策を導入するべきであると主張してまいりました。ところが、昨年九月の厚生労働省の試案で老人医療費の伸び率管理制度の導入が盛り込まれました。その後、具体的な内容が示されるものと思っておりましたが、伸び率管理制度は政府・与党の医療制度改革大綱において後退し、今改正案では単なる指針での助言と全くの骨抜きとなっていると言っても過言ではない、このように思います。政府提案の老人医療費の抑制策は一体どうなったのかと考えている次第であります。
 今回、老人への様々な負担増が提案をされております。老人医療の対象年齢の引上げは、介護保険制度との整合性などから慎重な検討が必要だと考えます。
 問題なのは、七十歳以上で一定以上の所得者は二割負担にするということであります。お金持ちのお年寄りはより負担すべきであるという意見は多くの人の支持を得やすいかもしれません。しかし、これらの人は既に応分の保険料を負担しており、一定以上所得者は二割とすることは、負担は所得に応じて給付は公平にとする社会保険の原則に反することになるのではないでしょうか。高額療養費制度における上位所得者を突破口に、近い将来、六十九歳以下のところにも同様な仕組みが導入されるのではないかという強い懸念があります。
 さらに、老人医療費拠出金、退職者医療制度の見直しは、一定以上の所得者に係る医療費は公費の対象としないことと相まって、拠出金を増加させる要因になると考えております。
 現行の老人保健制度を存続した上での部分改正は、単なる改革の先送りでしかありません。老人保健制度の抜本改革が実現するまでは小手先の改正など行うべきではないと考えます。改正案を撤回し、早急に若人の五倍掛かると言われております老人医療費を欧米諸国並みの三倍程度に引き下げる具体策の実行と新たな高齢者医療制度を創設すべきだと、このように考えております。
 第五は、高額療養費制度における自己負担限度額の引上げについてであります。
 高額療養費制度は、患者の医療費負担を軽減し生活を安定させるという重要なものであります。二〇〇〇年秋の臨時国会で社会保険の原則を崩す制度改革が行われました。今回、限度額を更に引き上げようとしておられます。本来の姿に戻すことなく限度額を引き上げることには賛成できかねます。
 厚生労働大臣が言う実効負担率は、高額療養費の自己負担限度額の上限設定によりどうにでも変化するのではないでしょうか。上位所得者一%条項を廃止し、本来の姿に戻し、限度額の改定は政令ではなく法律で規定することを強く求める次第であります。
 第六に、附則について述べたいと思います。
 政府は、抜本改革の内容は法の附則に織り込んだと説明をしています。しかし、附則の実効性の担保が総理大臣や厚生労働大臣の決意だけで実現できるとは思えません。
 九八年に国民健康保険法等の一部改正が行われた際に、医療制度の抜本改革は平成十二年度に実施する旨の附則が規定をされました。しかし、政府自らがその附則をほごにしたと思います。附則の実効性が担保されないことはそのことが既に証明をしているのではないでしょうか。
 さらに、附則には医療提供体制の重要な改革課題が触れられておりません。別途厚生労働省が示した医療提供体制の改革スケジュールを見ますと、各課題の実施時期、実施スケジュール、完成時期が不明であったり、時間が掛かり過ぎていたり、我々からは抜本改革がいつ実現するのか全く分かりません。せめて、国民に約束してきた医療・医療保険制度の抜本改革の実現と負担増とはセットで示すのが政治の責任ではないでしょうか。
 国民が長期不況に苦しむ中にあって、経済情勢を悪化させるような大幅負担増は行うべきではないと考えます。最近発表されましたメディアの調査によりますと、大多数の国民が健保法改正に反対しております。政府が今行うべきことは、雇用対策の強化、医療保険制度を始めとする社会保障制度への信頼を確実なものとし、国民の生活不安を解消することだと考えております。
 連合は、改正法案の内容が明らかになってから、全国で安心の医療制度への抜本改革を求め負担増に反対する署名活動や街宣、宣伝行動を展開してまいりました。署名は七百九十万人の署名を集約し、衆参両院議長に提出をしたところであります。
 私たちの声を是非とも受け止めていただき、負担増ありきの健保法等の改正法案は廃案とし、医療・医療保険制度の抜本改革の断行を重ねて要望を申し上げまして、意見陳述にさせていただきます。
 ありがとうございました。
#66
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 次に、坂内参考人にお願いいたします。坂内参考人。
#67
○参考人(坂内三夫君) 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。全労連の坂内でございます。
 私も医療の労働組合の出身ですが、本院の厚生労働委員会の先生方には医療の専門家がたくさんおられます。国民の命と健康にかかわる重要な法律改正が、政局や国会運営の事情もございましょうが、日本の社会保障制度、医療提供体制、さらには日本経済や社会の将来にとってどうなのか、徹底した審議と本委員会の高い良識を反映した判断が示されることを心から期待するものであります。
 小泉総理大臣は、今回の改正案について、患者は窓口負担増という痛みを受ける、労働者は保険料の負担増という痛みを受ける、医療機関は診療報酬引下げという痛みを受ける、三方がそれぞれ痛みを受けるのだから、これは三方一両損であると国民に説きました。しかし、この論法は大岡裁きの三方一両損とは大分意味が違うのではないでしょうか。
 大岡裁きとは、金太郎が三両入った財布を拾って熊五郎に届けてやった、江戸っ子の熊五郎は一度落とした財布は受け取らない、金は受け取らないと突っ返した、金太郎も人様の落とした金は受け取れないと言って押し問答になった、そこで大岡越前が自分の懐から一両出して金太郎、熊五郎に二両ずつ分け与えて丸く収めたという話であります。つまり、庶民同士のもめ事について、第三者であるお上が知恵を絞り、本来は関係のない自らの負担を拠出することによって解決をする、それが大岡裁きの三方一両損であります。
 ところが、今回の改正は国の政策の失敗が招いた犠牲を庶民に転嫁するものにほかなりません。
 国民は、一九八四年の健保本人十割給付の廃止以来、度重なる改悪で既に一両も二両も三両も負担増を泣く泣く耐え忍んでまいりました。一方で、国民医療費に占める国庫負担率は、一九八〇年の三〇%から九八年には二四%に、六%引き下げられました。九八年の国民医療費における六%は、金額にして一兆五千億円に相当いたします。厚生労働省は、今回の改正による国民の負担増は一兆五千百億円と試算しているようでありますが、国の負担を丸々国民の負担に移し替えたというのであって、これは三方一両損ではなく、政府の三両丸得論と言うべきお裁きだと思います。
 財政赤字という病気を治すには、その原因を検査し、正確な診断を下し、正しい処方をしなければなりません。健保財政赤字の最大の原因は、保険料収入が減ったことにあります。なぜ減ったのか。一つは、リストラや倒産などによって保険の加入者が減少し、さらに保険料算定の基礎である賃金、標準報酬月額が下がったからであります。
 政管健保の加入者は、平成十年の一千九百六十八万人から平成十二年の一千九百四十五万人、三年間で二十三万人減りました。賃金も三年連続ダウンし、標準報酬月額は二十九万二千四百九十二円から二十九万四百七十二円、二千円以上ダウンしております。これによって、政管健保の保険料収入が千六百七十三億円のマイナスになった。平成十二年度の政管健保の赤字が千五百六十九億円ですから、ほぼぴったりの数字であります。
 また、政府が直接運営している政管健保は、先ほど連合の草野事務局長もおっしゃいましたように、健康保険法第七十条三項の本則に従えば、労働者に給付した医療費の一六・四%から二〇%を国が補助することになっております。ところが、政府は、平成四年、政管健保の財政が大幅な黒字にあることを理由にして、これを一三%に引き下げました。その際、財政が悪化したら元に戻すと約束しましたが、これが今日実行されていません。この引下げによる国庫負担の削減額の累積は約一兆六千億円になると思います。今回の改正による国民負担の増額分一兆五千百億円とこれまたぴったりという計算になります。
 健保組合の赤字についても同じことが言えるのではないでしょうか。国が老人医療費への国庫支出を四四・九%から三一・五%に引き下げ、逆に健保組合から老人医療費への拠出金を三三%から四〇%に増やした。同時に、企業のリストラによって大幅な健保組合加入者の減少が発生し、併せて賃金の引下げによって収入減となったことによるものであります。
 もう一つの健保財政の赤字の原因に医療費の増加が指摘をされています。高齢化社会の到来、医学の進歩などに伴う医療費の伸びを一概に悪と決め付けることには賛成できませんが、高過ぎる薬の値段の改善は必要だと考えています。
 医療費に占める薬剤費の比率は、日本の場合、二一・二%。アメリカの九・四%、ドイツの一二・三%、イギリスの一六・五%と比べても群を抜く高さであります。新薬、新しく認定される薬の公定価格が高く決定されることから、日本の場合、新薬を使う比率が非常に高いと言われます。全国薬業労働者連絡会、全薬連の試算によりますと、可能な部分をできるだけ安い価格の薬に切り替えれば一兆円の医療費の削減になると言われております。
 また、今回、健康保険法の改正と連動して診療報酬の引下げが行われました。全労連は、国民の医療、健康を守るために頑張っている医療機関の懸命な努力に水を掛けるものだという異論を持つものであります。
 今の診療報酬がどういう水準にあるのか。先生方よく御承知のように、国立病院の経営が診療報酬に加えて一般会計から一一・九%の予算措置によって運営をされている、多くの自治体立病院も一般会計からの支出なしには経営できないということ、このことは現行の診療報酬ではまともな医療経営が困難であることを示すものではないでしょうか。
 要は、国の経済力、GDPに占める社会保障の給付割合が、スウェーデンでいえば三八・五%、ドイツ二五・三%、イギリス二一・一%、アメリカ一五%、これに対して日本は一一・九%にすぎないというこの問題を国の在り方の問題としてどう考えるかにあると思います。
 したがって、医療保険制度を将来にわたって継続可能な揺るぎない制度にするために今やるべきことは何か。赤字になったから保険料を上げる、患者負担を増やす、そういう場当たり的対応の繰り返しでは根本的解決にならないと考えます。抜本的な政策転換が必要だと思います。
 第一に、雇用対策をきちんと確立をして、労働者の雇用と生活を安定させることによって保険料収入の基盤を維持すること。第二に、政管健保に対する国庫負担率を法の本則どおり一六・四%に直ちに戻すこと。第三に、高過ぎる薬価にメスを入れること。第四に、病気予防、早期発見のシステムを拡充して、医療費の膨張を抑えること。それが、医療関係者を始め国民の努力によって築き上げ、国際的にも高い評価を受けてきた我が国の医療保険制度を将来にわたって維持発展させる土台であり、多くの国民の合意が得られる方向だと考えます。
 今回の改正案の提出には、与党内にもいろんな議論があったと伝えられました。労働組合は、先ほど連合の草野事務局長が明確に表明されたように、一致して反対であります。医療を提供する日本医師会の御意見も、先ほど断固反対との意見表明がありました。歯科医師会、薬剤師会、看護協会も抜本的な修正なしには反対だと伺っております。反対署名には既に二千六百万人の国民が署名をしております。テレビ朝日の世論調査によりますと、五七・八%の国民が反対をしている。賛成は二三・四%にすぎない。政府が重要四法案と言う有事関連法案、郵政関連法案、個人情報保護法案、ほかの三つの法案に比べても最も国民の反対が強く、賛成が少ないのが本改正案であります。
 その上、宮路前副大臣のいわゆる口利き疑惑というものが明らかになりました。往々にしてあることで、悪いことだとは思わないが、この法案への影響を避けるために辞任をするという、そういう感覚の副大臣が責任者の一人として国会に出したこの法案、もう一度出直せというのが国民の声であり、当然の責任ではないでしょうか。
 政局の都合で、何らの修正もなく、仮にもこの国会でこの法案の成立などということは、政治の信頼、我が国の民主主義にとってもゆゆしきことだと考えます。良識の府である参議院の、しかも医療について深い見識を持たれる厚生労働委員会の賢明なる判断を多くの国民がかたずをのんで見守っております。
 この国は今、どこかで何かの歯車が狂い始めているのではないか、そんな気がしてなりません。目を覆い耳をふさぎたくなるような少年犯罪、未成年者の売春、学校を卒業してもままならない就職、三百七十五万人を数える完全失業者、年間二万件を突破する企業倒産、平均寿命を押し下げるほどの中高年の自殺、ショービジネス化した政治、利権と腐敗、政治と金にまつわるスキャンダルの津波、砂上の楼閣のように崩壊する金融機関、偽の考古学的発見をする考古学者、犯罪を取り締まるべき警察官の悪事、フィクションではなく現実の目の前にこうした事態があります。
 この先、労働者が額に汗してどんなにまじめに働いても、賃金は上がらない、いつ倒産に遭うかもしれない、いつ解雇されるかもしれない。競争だけがすべての物差しとなり、他人を出し抜いてでも競争に勝つことが美徳とされる弱肉強食の論理が大手を振ってまかり通っております。逆に、健康保険料、介護保険料、年金掛金、年間四万円、五万円という負担増だけが待ち受けている、こういう事態は何としても避けなければならないと思います。
 社会の土台を支える労働者や中小企業の意欲をそぐような改正、多くの良心的医療機関の努力を無にするような改正、国民の痛みに塩をすり込むような改正案は廃案とすべきである、このことを申し上げて、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#68
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 次に、西田参考人にお願いいたします。西田参考人。
#69
○参考人(西田八郎君) 日本高齢・退職者団体連合の会長をいたしております西田八郎でございます。
 本日は、健康保険法等一部を改正する法案に対しまして意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 意見を述べるに先立ちまして、日夜国民生活の向上と国民の福祉の増進のために委員長始め各委員の先生方大変御苦労をいただいておりまして、この際、敬意を表しておきたいと存じます。
 私たちの組織は、先ほど意見陳述されました日本労働組合総連合会、いわゆる連合を構成する各組合の退職者で組織をされております退職者の会、あるいはOBの会と称しているところもありますが、それらの二十八の団体で組織しておりまして、会員の総数は現在約七十余万名であります。また、全国四十七都道府県にもそれぞれ同様の連合会を組織しております。
 主な活動といたしましては、まず第一に安心と信頼の社会保障を確立すること、二番目に国連における高齢者に対する五原則、すなわち自立、参加、ケア、自己実現、尊厳の実現と達成のための活動、三番目に会員同士の助け合い運動、四番目に地域におけるボランティア活動、五番目に国際的な連帯などであります。多少誤字がございますので後ほどお直しいただきたいと思いますが、的が敵になっております。何しろ年寄りがワープロを打ってきたものですから、多少の間違いがあるかも分かりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 そのために、私たちは社会保障制度を充実するために、年金、医療、介護等の保険を含めた社会保障制度そのものについて重大な関心を寄せてまいりました。そして、今日までにも幾度となく政府並びに行政機関に要請してまいりました。本日お見えの斎藤先生にも、議長をしておられたときに陳情に上がったことがございます。今回も百九万余名の署名を持って衆参両院議長に請願書を提出いたしております。
 そこで、本論に入りますが、私たちは今回の改正案は反対であり、廃案とされることを望むものであります。
 その第一の理由は、今回の法改正は、私たち高齢者のみならず現役世代の人たちにも大きな負担を課すもので、絶対に認められません。
 第二に、今回の法改正は、我が国の医療体制をどうするかという、そうした基本的な考え方というよりも、むしろ保険財政の収支の見通しから考えられたもので、少子高齢化時代における医療体制を構築するための抜本的な施策は見られません。のみならず、患者の負担増で数字のつじつまを合わせようとするもので、そのような改正を認めることは断じてできません。
 第三に、この改正によって果たして従来言われてきたいわゆる薬漬け、検査漬けが解消されるのでしょうか。私は解消は難しいというふうに思います。これを解消するためには、やはりインフォームド・コンセントの確立や診療所等における領収書の発行等を義務付けることが必要かと考えます。病院や医師側に言わせれば、とにかく患者の数が多過ぎて診療時間が短いので十分な説明による診療は無理だというふうに言われます。医療体制全体の見直しを示唆している、このことはそれを示唆しているのではないでしょうか。三時間待ちの三分診療、あるいは一時間待ちの二分診療と言われる現状の打破こそ、医療制度の抜本的見直しの必要を求めているものではないかと思います。
 第四としては、介護保険によるゴールドプランによる老人施設等が整備されていないために、いわゆる患者の病院のたらい回しや社会的入院の数も減少するとは考えられません。私の知り合いでは、慢性的な病気であるからということで三回病院を替えさせられました。そして、最後はついに命をなくしていかれました。
 第五の反対の理由としては、この改正で負担に耐えかねて受診することを避け、自らの健康を害する人が出てくる可能性さえ考えられるわけであります。これはいわゆる高齢者の診療抑制につながるものではないかと思います。
 仮に今回の改正案でどれぐらいの負担増になるかを単純に試算しますと、最低で四千円、最高で一万円の負担となります。一年で四千円や一万円ぐらいの負担増は大したことないじゃないかと言われるかも分かりませんが、負担の限度額も引き上げられますし、さらに、窓口で一括払いをして後ほど返ってくるわけでありますから、その間、何万あるいは何十万という金を用意しなければならぬわけであります。とてもそれは高齢者にできる問題ではありません。しかも、返ってくるのは二か月ないし三か月後になる、場合によっては半年後れということもございます。そういうときに、年金のみで生活している人や年金額が月額で十五万円にも満たない人、これは特に長生きをすると言われている女性に非常に多いわけであります。こういうことを考えますと、この額は相当の負担となるわけでありまして、しかも、この数字は単純に平均を出しただけで、個々の患者についてはもっと負担が増すものと思われます。
 また、私たちの負担が国民健康保険料だけであれば、それは大した負担でないかもしれません。しかし、このほかに県・市町村民税や介護保険料等の負担もあります。さらに、自治体によっては介護保険料、国民健康保険料の引上げを考えているところもあるようでありますから、相当な負担になることは否めないところであります。心理的な不安も増大しております。そうした点からも、医療の在り方そのものを抜本的に見直すべきときだと思います。
 小泉総理は、この改正案を称して、三方一両損、痛みはお互いに分かち合う、そうした下での医療制度の将来像ができたのであると自画自賛されておりますが、果たしてそうでありましょうか。確かに、医師と製薬会社は報酬制度とあるいは薬価基準の引下げ等で、それぞれ一両損とはいかなくても多少のマイナス面があると言えるかも分かりません。しかし、被保険者、特に国保や政管健保の被保険者や患者は一両損では済まされないのであります。
 それで、政府はどうかといえば、結局、保険財政の収支を合わすということで、ほとんど負担を感ぜられない、これは先ほど各参考人からも申し上げたとおりであります。坂口厚生大臣も当初は患者に大きな負担を課すことは忍び難いとメディアに語られていたこともありました。しかし、今、与党三党ということでこの原案を賛成されたものと思います。
 小泉総理の改革路線は確かに歴代内閣の中でも異色の面がたくさんあります。しかし、本当に改革しなければならない行政改革や金融制度の改革が遅々として進まない中で、弱い者いじめとも言うべき健保法の改正が重要三法案の一つに挙げられていることは、高齢者や職場で働く労働者、特に中小企業に働く労働者の側に立った改革とは到底言えません。いわゆる国民的改革とは言えないのであります。
 現在、年金等で生活している高齢者のほとんどは、青少年時代、お国のためにとある者は戦場に駆り出され、ある者は徴用で軍需工場に駆り出された経験を持つ人が大部分、そして敗戦後の青春時代も日本の復興と経済の立て直しに昼夜をいとわず、家庭さえも顧みずに頑張り続けた人たちであります。そのために世界じゅうが目をみはるような高度成長を成し遂げられていることは、私はそのために成し遂げられたと私は信じてやみません。
 そのような人たちに全く目を向けることなく、保険財政の収支面だけを見て、病に苦しむ人たちや平均以下の年金で細々と生活しておる人たちを見殺しにするといえども決して過言ではないと思います。
 特に、人はだれしも現役時代は元気にしていても、定年という年を迎えますと、そして職場から去りますと、がたっときて、心理的、肉体的な病気になりがちであり、そうしたことが国保に掛かっていくわけでありますから、国保財政が苦しくなるのも肯定できるところであります。
 また、現在職場で働く人たちも、雇用不安におののき、賃上げどころかむしろ賃下げの脅威にさらされつつも、孫子のために、社会のためにと頑張っている人たちばかりであります。
 こうした悲壮な決意で働いてきた人、また現在働いている人たちに過酷とも言える今回の改正案は、私は多くの高齢者や退職者、さらにはそれを支えてくれている多くの人たちのためにも、賢明な先生方の御判断でこの法案を廃案にされ、国民に安心と信頼の社会保障制度を構築し、そして、そのためには予防医学を始め、最近日進月歩の医療機械の発展、それらに合わせたいわゆる適切な診療体系の整備を図り、抜本的な将来、二十一世紀に向けた改革に一層御努力賜らんことを心からお願いを申し上げまして、私の陳述を終わりたいと存じます。
 ありがとうございました。
#70
○委員長(阿部正俊君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対しまして質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#71
○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。
 今日は、参考人の先生方、天候の非常に悪い中をお運びいただきまして、ありがとうございました。貴重な意見を伺いましたので、これからの審議に是非参考にさせていただきたいと存じます。
 限られた時間でございますので、質問が限られた先生にしか当たりませんけれども、お許しいただきたいと存じます。
 まず、櫻井先生にお尋ねいたします。
 かなり明確な意見主張をしていただきまして、ありがとうございました。ただ、これちょっとお伺いしたいんですが、先ほど実は坂内先生もちょっとお話しされたんですが、医師会の御意見というのは非常に分かったんですが、医療関係団体といいますと、ほかにも例えば日本歯科医師会とか薬剤師会という、そういった医療に関係する専門団体があると思うんですね。それで、これは当然、医師会の先生方と医療関係団体でお話合い等持たれていると思うんですが、医師会以外の団体の御意向が分かりましたら、ちょっと簡単に教えていただきたいと思います。
#72
○参考人(櫻井秀也君) 櫻井でございます。
 今の御質問に対しては、あるいは藤井先生御存じかと思いますけれども、衆院の問題が、通過というか、非常に、強行採決されたと。今、先生のおっしゃった医師会、歯科医師会、薬剤師会、三師会というふうに我々呼んでいますが、三師会共同でこれに対して断固反対ということの声明をきちっと出しておりまして、我々も協議をしておりまして、私がここで申し上げるのは本当は僣越ですが、三師会は全く意見が一致しているというふうに申し上げてよろしいと思っております。
#73
○藤井基之君 ありがとうございました。
 先般、国際医療福祉大学の副学長の開原先生が次のような御講演をなされていまして、ちょっと要旨だけ申し上げますと、日本の保険医療というのは、保険診療と私費診療の二つを同時にやってはいかぬと、こういういわゆる混合診療の禁止の制度があると。この制度のために、新しい診療技術が開発されても、皆保険の日本ではなかなかそれが医療保険に採用されるまで普及しないんだと。例えばその例として、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌法という、これはもう欧米では当然のごとくやられていて、欧米では時間的に、開原先生の調査では一九九四年から九六年にもう通常の治療法として確立していると。で、実施に移されて成果を上げているんだと。ところが日本では、保険適用が二〇〇〇年の十一月になって初めて適用されたと。だから、実際にここでは、実は日本の患者さんは四年以上のタイムラグを生じてしまっているんだと。つまり、こういうことだと、それこそ皆保険で世界に冠たる保険制度と言っているのに、どうもその質において、新しい技術というものの導入が遅れてしまう心配があるんじゃないかということで憂えていらっしゃるわけです。
 この関係で申し上げたいんですが、二十一世紀というのは生命科学の時代になると言われておりまして、特に医療技術の進歩でもすばらしいものがあるわけですね。ライフサイエンスとかゲノム科学が進展して、いずれ近い将来には、例えば再生医療であるとか遺伝子治療とか、あるいは個人の遺伝子の解析によって最も有効な薬剤を選択するいわゆるテーラーメード医療とかという、個々人のための医療というものが実現すると言われているんです。こうしたある意味で先端的医療にかかわる負担の問題というのが新たに発生すると思うんです。現行の医療保険制度では、一般化していない高度先進的な医療というのは、保険診療を併用する形で認めるとしても、特定療養費の枠というのが先生御案内のとおりあるわけです。この特定療養費の枠を広げていこうという流れがあるわけです。
 これは、医療の質を向上させて保険の硬直性を和らげるという観点からすばらしい動きかとは思うんですが、一方において、先端医療が結局自己負担の増額という負担の問題にもまた跳ね返るんではないかというふうに言われている。
 この問題につきまして、櫻井先生それから対馬先生にお考えありましたら簡潔にお伺いしたいと思います。
#74
○参考人(櫻井秀也君) それについてお答えするには本当は時間がたくさん欲しいんですが、簡潔に言わせていただければ、先ほど申し上げましたように、日本の医療費というのは国際的に見ても非常に低く抑えられておりまして、先ほどちょっと申し上げましたように、簡単に言えば、ドイツ、フランス並みであれば今の三十兆は約四十兆の費用が必要だというのが我々の考えです。そうすれば、今、先生のおっしゃった分、財源的に言えばもっともっといろんなものが医療保険に取り入れられる余地が簡単にあるわけですけれども、それが許されていないというところに一つ問題があるし、それからヘリコバクター・ピロリの問題は、これは学問的な議論をしていたという部分があるわけで、必ずしもそれで遅れたとは言えませんし、確かにいろいろ遅れる部分はあるけれども、それは国民皆保険制度というものに入れていくためには少しのずれはある程度やむを得ないというふうに考えています。でも、先生おっしゃったように、少しは遅れたけれども、それも入れられましたし、例えば内視鏡による外科手術も、最初は保険で認めていなかったのが今は認められるし、だんだんに入っています。
 だから、一方では予算の確保がきちっとできればそれが進むだろうということと、学問的根拠がきちっと積み重なれば医療保険制度に入れていかれる。ただ、とても入れ切れなくなるだろうということは我々も思っていますが、それは、先ほど申し上げましたように、少なくともドイツ、フランス並みの、現在で言えば四十兆とか四十五兆の国民医療費を考えた上で、その先の問題で考えるべきだというのが私たちの考えです。
 まだ言いたいことは一杯ありますけれども、時間がないようですから、簡潔に申し上げました。
#75
○参考人(対馬忠明君) 私どもは、いわゆる基礎的な医療の部分は、アメニティーの部分はちょっと別ですけれども、やはりそれなりに慎重であるべきであろうというふうに思います。どんどんどんどん保険診療から外していくというのはいかがなものかというふうに思うわけですね。
 ただ、先生おっしゃるとおり、かなり高度な分野が次から次に出てきていますので、それを従来のままで、そのままで本当にいいのかといったところはいささか疑問もありますので、やはり個別具体的に一つ一つルールを作りながらやっていくべきであろうと。余りすべて野方図に拡大していくというのもちょっといかがなものかという感じがしますし、逆にまた今の範囲だけに固執するのもいかがかなと。一歩一歩具体的にと、こういうふうに思っております。
#76
○藤井基之君 ありがとうございました。
 医療費全体は、ある意味で特筆するのも問題であるということで、医療費抑制ということで今回の健保法改正の財源問題というのが大きな議論を呼んでいるわけですが、各論的になりますけれども、その中の一部で、お薬の使い過ぎという問題がよく議論されておる。今日も参考人の方々何名かから御指摘がございましたが、この薬剤費の抑制策の一環としまして、今、国の方ではいわゆる後発医薬品というんでしょうか、特許の切れた場合の安いお薬といいましょうか、そういったお薬を使ったら医療費が安くなるじゃないかということで、現在既に厚生労働省、文部科学省が国立病院とか国立大学病院に対してその後発品の使用の促進を指導する通達をもう既に出している状況でございます。
 しかし、御案内のように、実際、どの患者さんにどのお薬をお使いになるかということは、これはお医者さんの医学的な判断に基づいて処方されるわけです。だから、単純に安いとか、国が使えと言ったから使うというそういった性格でもないような感じはするわけです。
 現在、我が国では後発品の使用が世界各国と比べて非常に低いんだということも指摘をされております。国立病院での後発医薬品の使用率、厚生労働省の調査ではまだ数%だということなんですね、使用の数的なもので。
 これは医療の担当であります櫻井先生にお尋ねしたいんですけれども、お医者さんが我が国において後発医薬品を処方することが国際的に見て非常に少ないという理由を、どのような理由によってそういう状況になっているのか。また、後発品をもしも国の言うように使用の促進というふうな観点に立った場合、どのような対策を取ればこの後発品の使用というのは増えるのか、どうお考えか、その辺についてお伺いしたいと思います。
#77
○参考人(櫻井秀也君) まず、日本の医療費の中で薬剤費の部分が多いという部分は、確かに比率的にはそうですが、むしろそれは比率の問題でありますから、先ほど申し上げましたように、もし、例えば、何回も同じことを言いますけれども、ドイツ、フランス並みの医療費ということで、今の三十兆が四十兆であれば薬剤の部分は増える理由はないんですね。なぜならば、医師の技術料とかほかの職員のための費用とか、そういうものの部分は物ではありませんから、それが低いわけですから。例えば三十兆分の二〇%というものを四十兆分の二〇%といえばまあ国際的には合う話になるということがまず根本にあるということを忘れてはいけないんですね。
 それから、後発品の問題と薬価の問題は、これもまたいろいろ言いたいことはあるんですが、薬価については透明性が増しましたけれども、増したとはいいながら、決め方が、新しい薬が出ると類似薬品方式といいまして、簡単に言いますと似たものと同じに決めるわけですけれども、似たものの薬というのは、元々どうやって決まったかがはっきりしていませんので、透明化されたといっても不透明のままであるということが根本にあることと、それから後発品と呼ばれる部分については、一応確かに厚生労働省が認可してというか薬価基準に載せた場合にはそれは同じなんでしょうけれども、現実にはいろいろな問題として、現場では、どうもこの薬、同じ内容なはずなのにちょっと違うなとかいうところがあるところがまだ医師に信頼感を得ていないというのが大きな問題だと思います。
 まだほかにもありますけれども、一応このくらいにしておきます。
#78
○山本孝史君 民主党・新緑風会の山本孝史でございます。
 参考人の皆様にはお忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございました。
 早速ながら、櫻井参考人にお尋ねをいたしたいというふうに思います。
 民主党は櫻井参考人の本日の御主張に全面的に賛同をいたします。
 ところで、衆議院の審議で、同じ日本医師会の青柳副会長は、法案の修正を条件に賛成との立場から発言されましたが、本日も与党推薦で御出席の櫻井参考人は、改悪案には強い憤りを感じる、断固反対と意見を表明をされました。
 この間、どのような経緯があったのでしょうか、教えてください。
#79
○参考人(櫻井秀也君) 全く変化はないと私は思っております。これははっきり青柳参考人も私と同じことを述べてあったんですが、それがもうある意味では間違って報道された部分があるとかいろんなことがありますので、今度は間違われないようにはっきり申し上げただけでございまして、元々の考えは変わっておりません。
 我々としては、例えばこれを病気に例えれば、この法案の中にはがんが二つ潜んでいる、そのがんを取り除けばいいぞとあの青柳先生は言ったんだと思うんですけれども、取り除かないままにそれをやったら問題があるということを私は口を替えて分かりやすくもうはっきり申し上げました。
#80
○山本孝史君 櫻井参考人、日本医師会の医療制度改革検討委員会で医療提供体制の検討を御担当されておられます。民主党は、最善の医療サービスの体系や医療の質の確保をどうするかという観点を棚上げにしたままに、財源主導で診療報酬改定を行って政策誘導することは間違っていると考えております。
 そんな手荒な厚労省に結果として手をかしているのが自民党だというふうに思います。自民党に猛省を求めるべきだと思いますが、そのようなお立場には立たれませんか。
#81
○参考人(櫻井秀也君) 大変鋭い御質問なんですが、先ほども申し上げましたように、このような法案とかこのような考えがこのまま進むのであれば、確かに今まで我々は、三師会と申し上げました歯科医師会、薬剤師会も含めて政府・自民党を応援してまいりましたが、場合によってはそれをやめざるを得ないという覚悟もしております。
 もっと具体的に言えば、もうこんなことがまかり通っていくんならば選挙でも応援しませんよというところまで覚悟を決めなきゃならないところに来ていると私は思っていることをはっきり申し上げます。
#82
○山本孝史君 覚悟を決めていただきたいというふうに思います。
 西田参考人にお尋ねをいたします。
 今回の法案の改正によって、高齢者の窓口での負担が所得で異なるということになります。同じ治療を受けた仲よしの高齢者が、支払金額が異なるということで仲が悪くなるのではないだろうかと、そんな心配もしてしまいます。
 そもそも、日本の社会保険は、負担は所得に応じて、給付は所得にかかわりなく一律としてまいりました。介護保険もこの原則は貫かれております。高額の所得者はそれなりに税負担をお願いをするということが筋であって、今回の改正のように、社会保険の上で所得によって大きな負担差が発生をするということをどのように受け止めておられるでしょうか。どのようにお考えになっておられますか。
#83
○参考人(西田八郎君) 西田です。
 お伺いしていただきました仲間割れということはまずないと思います。ということは、それぞれ自分たちで負担をしてきた、あるいは現在負担している中でのことでありますから、十分理解はできていると思います。
 中には、ようけもらっているやつは多少ようけ出しおってもいいじゃないかという、そんな意見もないことはありませんけれども、私どもの組織の中ではそういう問題が大きく取り上げられたということは現在のところございません。
#84
○山本孝史君 ありがとうございます。
 草野参考人にお尋ねをいたしたいというふうに思います。
 平成九年改正時の改革の約束が守られないままに負担増だけが求められる、しかも最も取りやすいサラリーマンのところから取っていくという今回の法案になっておりますけれども、たくさんの御署名もお集めになりました。多くのサラリーマンのお声を聞いてこられたと思います。
 今回の法案又は日本の社会保障制度について、今働いている人たちがどのような思いを抱いておられるのか、端的にお答えをいただければというふうに思います。
#85
○参考人(草野忠義君) 簡単に申し上げたいと思いますが、私どもやっぱり、この医療の問題につきましては、不正請求の問題等々、大変大きな話題になってまいりました。
 そこで、変な話ですけれども、私どもが行かないような高級なすし屋はどうか知りませんが、私どもが行くようなすし屋ですと、何を何貫握ったかというのは全部明細書をくれるわけですね。お医者さんに行ったら、やっぱりきちっと領収書をもらいましょうと。その領収書も、診療費で幾ら掛かったのか、お薬で幾ら掛かったのか、それから初診料は幾らだったのか、こういうことをやっぱりみんなでちゃんとお互いに理解し合おうよということで、お医者さんに掛かったら明細書の付いた領収書をもらいましょうという運動を展開をいたしました。
 当初は、やっぱりいろんな問題ございました。時間がありませんので申し上げませんが、大分怒られたり、そういうものを出せと言うんなら幾らかよこせとか、お金を取られたとか、いろんなものがございまして、ホームページにそのコーナーを設けたある産業別組織では、一万人を超す方からいろんな御意見が出されましたが、最終的にはかなりの人たちがやっぱりこの運動に協力をしていただいた。それだけ非常に関心が高かったというのがまず一つ挙げられると思います。
 二つ目には、先ほど連合として七百九十万人の署名を集めさせていただいたということを申し上げました。署名といいましても、これなかなか大変でございまして、私どももかなりの重要な課題についてのみに絞って実は署名活動をやっております。七百九十万が多いか少ないかは人が評価することでありますが、連合始まって初めて七百九十万という大変な数字を集めることができました。これも正に、非常に組合員、あるいは職場、家族の方を含めた関心の高さを示しているのではないか、こういうふうに思っております。
 それから三つ目でありますが、やはり今も不安が幾つがございますけれども、特にやはり健康に対する不安、特に老後の不安の中の大きな問題が年金と医療でございまして、いろんな集会あるいはアンケート調査をやりましても、ここに対する関心が極めて高いというふうに思っております。
 そういう意味では、今回の医療の改正の問題もそうでありますが、社会保障全般、そして税制度を含めた全般をどういうふうにしていくのかという次の日本のビジョンというものをやっぱり政治の場でしっかりと提示をしていく必要があるんではないかと。そうしないで、とにかく今財政が困ったから負担をしてくれよというのでは、やっぱり国民の皆さんは理解、納得はできないんではないか、こういうふうに思っております。
#86
○山本孝史君 全くそのとおりだと思います。
 最後の質問で、健保連の対馬参考人にお尋ねをいたしたいというふうに思います。
 資料を送らせていただきましたけれども、厚生省が健保組合の今回の改正による保険料の負担増は五年平均で一千億円というふうに推計をしております。それは、二割の組合が保険料を引き上げるという前提になっておりますけれども、このような厚生省の財政見通しは正しいとお考えなのでしょうか。
 私は、甘い予測で更に負担増となれば、社会保障制度への信頼が更に薄れることを心配しております。拠出金が減るからということで賛成をするという安易なことではなく、私は、すべての組合が賛成を待ち望んでいるということが本当にそうなのか、若干疑問に感じるところも正直ございますけれども、こうした厚生省のこの推計、そしてまた社会保障制度への信頼という点でどのように受け止めておられますでしょうか。
#87
○参考人(対馬忠明君) 私ども、拠出金等の問題については先生とそんな認識は違わないんじゃないかなと、こう思います。
 ただ、私ども、この中に六人おりますけれども、その中で、やや今日のお話ですと四対二ということですけれども、これはやっぱり、私どもそれから山本先生は、実際の実務といいますか、運営を預かっている、そういう立場でございますので、その辺りがやはり今回の法案に対する賛否に出ているのかなと、こういうふうに思います。
 それから、御質問の一千億の問題でございますけれども、私どもも厚生労働省の方からその試算結果はいただいてございます。政府管掌よりもっと悪い組合、それ以上悪い組合について政府管掌並みに恐らく上げるんじゃないかなと、そうすると一千億ぐらいになるんじゃないかと、こういう試算ということで聞いてございます。
 試算自体は、前提なりいろいろやられるわけでして、特に健保組合の場合難しいのは、政管のように一律的ということじゃなくて、各健保組合独立してございますので、しかも、その保険料を上げるかどうかの判断といいますのも各健保が独自にやっていきますので、それをどのように見積もるかというのはこれは大変難しい話であろうかというふうに思うわけですね。
 ただ、そう外れていないのかなというふうに私ども思いますのは、先ほど私申し上げましたのは、十四年度、十五年度で約健保組合は四、五千億の赤字だということを申し上げました。それは予算ですから、決算段階になりますと、合理化努力等で大体一、二千億ぐらいは減るのかなということになりますと、三千億ぐらいになりますね。それで、健保組合の今回の法改正の影響というのは、十五年度で約二千億と言われているんですね。そうしますと、三千億、四千億に対して二千億、そうすると残りの差が一千億、二千億と、こういう感じになりますね。それから、それ以上に医療費もどんどん膨れていくわけですけれども、法改正効果もまた効果が効いてまいりまして、平成十九年度、これは健保組合全体では約五千億と、こう言われておりますので、今申し上げたようなことからいうとそんなに的外れではないのかなという感じはいたします。
#88
○山本孝史君 時間になりました。ありがとうございました。失礼いたします。
#89
○沢たまき君 公明党の沢たまきでございます。
 六人の参考人の皆様、本当にありがとうございました。
 私は、この中で櫻井参考人にちょっと伺わせていただきたいと思っております。
 今、与党の参考人として御出席いただいて、断固反対とおっしゃっていらっしゃいました。私は、本委員会でも取り上げたんですが、アメリカの医療制度と比較しても、我が国の医療制度のすばらしさを論じさせていただきました。また、先生も、大変安い、そして、だけれどもすばらしい医療を提供しているとお話しいただきました。
 私は、この医療制度改革を考えるに当たって何よりも重要なことは、世界に、WHOでも本当にもう一位と言ってくれているこの皆保険制度を断じて崩壊させてはいけないと、このことがまず大事だろう、最重要だろう、堅持することが大事だと思っております。
 先進諸国に例を見ないスピードで高齢化が進んでおりますこの状態の中で、将来にわたって国民皆保険を維持していくためには、保険料と公費と患者負担を適切に組み合わせて医療保険財政を持続可能なものにするほかはないと私は思っております。
 先生は、第一次的には保険なんだから保険料を上げればいいと。たばこ税、私も喫煙しておりますので、たばこ税とか上げていただいてもいいなと思っておりますが、それから火災保険などの例もお引きになりました。
 保険料というのがまず第一に上げるべきではないかという御意見でございましたけれども、私は、今回の健保法等の改正案には医療保険財政の安定を図るために様々な措置が盛り込まれております。例えば、老人医療についてその対象年齢を七十歳から七十五歳までにとともに、国の財政が極めて厳しい中で公費負担の割合を三割から五割、引き上げました。各保険者にとって重荷になっております老人保健拠出金の負担を軽減するとされております。また、国民健康保険制度についても各種の財政基盤強化策が盛り込まれております。また、保険料の負担についても、保険の公平を図る観点から総報酬制度の導入などの措置も盛り込まれておりますところでございます。
 櫻井参考人にお伺いしたいんですが、実はもうこの中で賛成討論といいましょうか、もう私、公明党の私だけのような気がしておりますが、自民党の先生もそうでございますので、もう一生懸命私は言わせていただきますが、この国民皆保険や医療保険制度の持続可能性ということについてはどのようにお考えか、お聞かせいただければと存じます。
#90
○参考人(櫻井秀也君) 持続可能なということについては、正に財源論的に言えば、先ほど申し上げましたように、幾つでも工夫はあるというのが私の意見で、それをまた一つ一つ申し上げるのもあれですから、絶対反対と言ったことについてどう考えるかということについての疑問についてお答えすれば、先ほども例として申し上げましたように、この法案を病人と考えれば、がんがあるんだからがんを取り除けばいいんだと言ったわけですから、がんを残したままやれば、せっかくほかにいいところがあっても結局死んじゃいますから、それで意味がないから断固反対だと申し上げたことを是非御理解いただきたいということなんですね。
 持続可能にするためには、もうさっき言いましたように、これ細かいこと言い出しますと、保険料についても、私はもう前からの持論なんですが、これまた言い並べますると問題広がりますが、厚生年金保険料と、これ政府管掌レベルですけれども、健康保険の保険料というのは二十数年前には千分の七十六で同じだったんですよ。この二十数年間で厚生年金の方は千分の七十六から千分の百七十三・五と、さっき言いましたように、二・何倍に保険料を上げた。ところが、健康保険は二十数年で千分の九しか上がっていない。むしろ一時は下げたりしているわけです。そんなことをやってきたら財源が健康保険で不足するのは当たり前なんです。経済が上り坂にあったときにその対応をしないで来たわけですから、それを今になってしわ寄せするのはけしからぬということを申し上げているわけで。
 それから、健保連さんなんかも拠出金のことをおっしゃいまして、これは根本的に改正しようというのは我々も同じ意見なんですが、四〇%の拠出金が問題ならば、厚生年金というのは一〇〇%拠出金ですよ。今、若者たちは自分のために厚生年金を払っているんじゃありません。現在もらう高齢者のために払っているんだから、一〇〇%拠出金です。一〇〇%拠出金が健康保険料より倍以上多いんですよ。なぜそれに文句を言わないで健康保険料がこれ以上上げられないと言うのか、私は非常に疑問だと思っていると、そういうことだけ申し上げておきます。
#91
○沢たまき君 それでは、日本の医療費は対GDP比で見ますと世界的に低い水準でありますし、患者負担だけ取り上げて高いとするのは適切な比較ではありません。
 例えばドイツを見ると、患者負担は低くても保険料は高いという状況にありますし、イギリスやスウェーデンのように、患者負担はほとんどありませんが国民から徴収する税金により医療費を賄っている国もあります。社会保障負担率と租税負担率を合わせた国民負担率は、一九九九年には日本で三八・三%であるのに対して、ドイツでは五六・七%、イギリスで五〇%、スウェーデンで七五・四%と大変大きく日本を上回る国民負担率となっております。したがって、患者負担のみを強調するのは国民に誤解を与えるのみでありまして、制度改革に当たっての適切な判断はできないと考えます。
 今後、更に高齢化が進行する中で、医療費の増加それ自体は避けられません。こうした事態に対処するために、医療費に対するどのような租税源を考えておられるのか、消費税を引き上げろとおっしゃっているのか、その具体的な財源の在り方について明確なお考えを伺いたいと思いますので、坂内参考人にお答えいただきたいと思っております。
#92
○参考人(坂内三夫君) 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 日本の国民医療費が高いという議論も一方でございますが、私は決してそうは思っておりません。日本の医療費の、日本の経済の力、国内総生産、GDPに占める割合というのは、OECDに加盟している二十九か国の中でもたしか二十番目だと思います。そういう意味では、国民医療費は決して高くないんではないかというふうに思います。もちろん、先ほども申し上げましたが、国際的に見ても非常に高い薬の値段の問題とか、あるいは医療機械が外国に比べると非常に高く、独占をされているという問題などがありますが、そういう問題の適正化というのは必要だと思いますが、国民医療費は決して高くない。
 その医療費をそれぞれがどういうふうに負担をするかという問題、先生の御指摘だと思いますけれども、国民医療費を財源別にだれがどれだけ負担をしているかというのが結局問題になるだろうというふうに思いますが、この二十年間、我が国の国民医療費を財源別にだれがどれだけ負担をしてきたかという推移を見ますと、国の負担、国庫負担は二十年前の三〇・四%から二四・四%に減りました。それから事業主の負担も二四%から二二・七%に減ったと思います。これに対して、地方自治体の負担の割合は五・一から七・八%に増えて、被保険者、つまり労働者や事業主、被保険者の負担は二九・二%から三〇・二%に、そして患者さんの負担がこの二十年間で一一%から一四・八%に増えているというのが統計的に見た数字ではないかと思うんです。
 私は、健康保険にしろ国民健康保険にしろ、老人医療にしろ退職者医療にしろ、我が国の医療保険制度というものが保険制度という仕組みの中で支えられていくということは全く異論がございません。しかし、その財源別の負担をどうするかということを考えた場合に、この間減らし続けてきたいわゆる国庫負担というものを厳しい財源の中でも予算の組替えによって十分手当てをすべきだという考え方を持っております。
#93
○沢たまき君 終わります。
#94
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 今日お聞きして、六名の方のうち四名が疑問の余地なく反対ということをおっしゃったことを大変心強く思いますし、この声を無視して強引なやり方をすることは許されないと、もう今日の参考人でかなり決着がついたのかなと、そんな思いがいたします。とりわけ、与党推薦で来られた櫻井参考人が法案に断固として反対と明言されたことは心から歓迎をしたいというふうに思います。
 そこで、お聞きしたいんですが、公費負担を増やすべきだとおっしゃったその中身なんですけれども、銀行の問題も言われましたが、私たち、日本の歳出構造がやはり大きく見ると公共事業偏重なんではないか、国と地方を合わせて公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円と言われていますが、これはやっぱりヨーロッパとは逆なんではないかと。長い目で見れば、この日本の歳出構造にメスを入れていくことなしに日本の社会保障を再生していく道はないのではないかというふうに考えているんですが、その点いかがでしょうか。
#95
○参考人(櫻井秀也君) 何かお褒めをいただいたようで恐縮しておりますけれども、正直申し上げて、小池先生と私は意見が全く同じというわけにはいきませんが、一部同じ部分があるということは認めざるを得ませんので大変結構だと思います。むしろ公共事業費の問題も我々もそういう主張を、大変小池先生に近い主張もしております。
 むしろ、でも、もっと積極的な意味で、先ほど申し上げましたように、現在において、特にお年寄りの方とかを含めて、国民に安心とか安全を保障してあげた方が経済が活性化するんだよということを言いたいわけで、今は何かむしろ脅迫して、なるべくもう何か静かにして、じっとして我慢してろということで、よく言われるような、国民が持っている財産、何か千四百兆とか、数字は私、間違っているかもしれぬけれども、たくさんあるお金はみんな使われないでどこかへしまい込まれちゃっているわけですから、それをみんなが安心して使えるような社会を作れば、その方が日本の経済もますます伸びていくんじゃないかということを申し上げたいということで、今のお答えにさせていただきたいと思います。
#96
○小池晃君 私の方は、おっしゃるとおりだというふうにお聞きいたしました。
 ちょっと続けてお伺いしたいんですが、診療報酬の問題です。これは坂内参考人にも併せてお伺いしたいんですが、この診療報酬の問題はやはり健康保険法改正とセットの問題だと私ども思うんです。初めてのマイナス改定で大変な影響が出ております。中身を見ると、医学的根拠が全くないのではないかと思われる部分も多々あります。この点について、櫻井参考人は再改定すべきだというふうにお考えなのか、そのことをお伺いしたいと思います。
 それから、坂内参考人には、この診療報酬のマイナス改定が勤務体制や医療の安全性という点で医療労働者にどういう悪影響を及ぼすことになるか、この点についてお話し願いたいと思います。
#97
○委員長(阿部正俊君) それじゃ、先に櫻井参考人。
#98
○参考人(櫻井秀也君) 診療報酬の改定の問題については我々も非常に問題があるというふうに認識しておるんですが、今日は健康保険法等の改正案についてという意見を述べろということだったので全く触れないでまいりましたが、今、小池先生から関連があるというお話で質問されましたから。
 正にそれは関連があることで、診療報酬改定の内容についても、一つ大本的にはマイナス改定、これも御指摘のように、ある意味では歴史的に初めてのマイナス改定をのんだということについては、非常にそのこと自体がもう既に問題なんですけれども、それをどのように配分するかということが診療報酬改定の内容になっていますので、そこに配分ミスがあったとすれば再改定をすべきだと思うんです。
 これは、いろんな数字がこれから、実際どうなったかが出てまいりますし、それからもちろん、おっしゃるように、理論的に、例えば手術の基準の問題とか、全く科学的根拠のないままに導入されたような部分は、その数字が出るまでもなく反対、反対というか改定をするべきだと考えているということで、その辺もまた小池先生と同じで大変よろしいかと思っております。
#99
○委員長(阿部正俊君) それじゃ、次に坂内参考人。
#100
○参考人(坂内三夫君) ありがとうございます。
 最近、大学病院、国立病院、自治体立病院、それから民間病院を問わず、非常に重大な医療事故といいますか、医療ミスが発生をしております。私は、これは医療労働者の労働条件がどうあろうが、あるいは診療報酬体系がどうあろうが、決してあってはならないことであって、やはり医療経営者やそこの医療の労働組合や行政の関係者や患者団体などが協力し合って、医療ミス防止のための万全の対策を早急に確立しなければならないということを第一に思っております。
 同時に、患者にとって安全、安心の医療をどう提供するのかというのは診療報酬体系と深くかかわっているという考え方も持っております。診療報酬が担保すべき医療労働者、医療従事者の人員配置、要員配置や労働条件が日本の医療や看護水準、医療ミスに非常に深くかかわっているんだということを是非強調させていただきたいと思うんです。
 日本の病院の数というのは欧米に比べてもそう遜色はない、むしろ多いと思います。日本の場合、人口一千人当たりの日本のベッド数は十三・一床ぐらいになるかと思うんですが、これはドイツが九・三、フランスが八・五、イギリスが四・二、アメリカが三・七ぐらいですから、病院の数、ベッドの数はそれなりに満足されていると思うんですが、ところがベッド数百床当たりのドクターの数、医者の数は、ドイツは三十七・六人、フランスは三十五・二人、イギリスは四十・七人、アメリカは七十一・六人配置をされていますけれども、日本の統計で見ますと、これは百床当たり十二・五人というのが医師の配置人員であります。
 看護職員の数も同じようでありまして、ベッド百床当たりの数は、日本は四十三・五人でありますが、アメリカにいきますとこれは二百二十一人、百ベッド当たり看護婦が配置をされているという状況がございます。
 医療提供体制の仕組みが違うという問題はあるにしろ、医者や看護師の数が欧米の三分の一、四分の一という数は余りにも少な過ぎるということ、患者さんの病気というのは朝も昼も夜もありませんから、医療従事者の場合にはこれを三交代で看護したり治療に当たるわけですから、実際、八時間労働、一日三交代というふうに考えるとすれば非常にやっぱり医師や看護師の配置人員が少ないということが言われると思います。
 同時に、医療というのは、これは労働集約型産業でありまして、病院経営などの五〇%は人件費に充てざるを得ないという宿命を持っております。したがって、診療報酬が引き下がるとか抑えられるということは、当然ながら一番最初に削減の対象となるのは医療従事者の数でありまして、診療報酬が低く抑えられるということは患者の安全や安心にとっても重大な影響を与えるものだというふうに私は考えております。
#101
○小池晃君 最後に、草野参考人と坂内参考人にお伺いしたいんですが、老人医療費の国庫負担が四五%から三〇%台に削減をされた、その分が患者負担あるいは拠出金という形で補われてきている。それから同時に、退職者医療の拠出金もかなり急増していて、一九九七年から五年間で四〇%増えております。
 こういうふうに、国庫負担を減らしながら現役の労働者に押し付けていく、負担させていくやり方についてどのようにお考えか、最後にお伺いしたいと思います。
#102
○参考人(草野忠義君) 先ほど申し上げましたように、老人医療に対するやっぱり拠出というものが今の組合健保を含めまして大変な負担になっているということはもう否めない事実だろうというふうに思っております。したがいまして、私ども、過去の経過におきましても、この拠出金の引上げについては労働組合として反対をしてきた経緯がございますが、結果としては今のような状況になっている。
 そこで、連合といたしましては、新たな高齢者医療の制度を作るべきだという主張に立っております。時間もありませんので詳しくは資料もありますからお届けをしたいと思いますが、基本的には私どもは突き抜け型という方式をやるべきである、すなわち被用者としては、その被用者OBも含めたところで全体を通じた高齢者の医療システムを作る、これが今最もリーズナブルであり、負担の公平さにもつながっていくんではないかと、こういうふうに思っております。
#103
○参考人(坂内三夫君) 私は、医療保険制度、保険制度である限り、これは医師会の櫻井委員も申し上げましたが、いわゆる被保険者負担と国庫負担と患者負担というこの三つの土台から成り立っているという仕組みそのものに合理性があるということは認めたいと思います。さらに、老人医療や退職者医療を現役労働者の健康保険料を含む保険全体の制度として支えていこうということをあえて否定するものではありません。
 しかし一方で、私、何度も申し上げましたが、老人保健法が制定されたのがたしか一九八三年だと思いますが、この当時、老人医療費に対する国庫負担の支出、国庫負担率というのは、四四・九%で当初発足をしたのが、これが昨年、二〇〇一年には三一・五%、一三・四%国庫負担が減っているという問題、これを国の在り方の問題として、先ほど西田さんもおっしゃいましたけれども、戦後の日本経済の成長を支え、日本社会を支えてきた高齢者に対する物の見方の問題、国の在り方の問題としてどう考えるのかということが非常に大きいと思います。削減された一三・四%というのは金額にすると一兆四千億円ぐらいに当たるわけで、やっぱりこれは直ちに国庫負担を復元すべきだということを強く主張したいと思います。
#104
○森ゆうこ君 国会改革連絡会(自由党)の森ゆうこでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、対馬参考人、山本参考人、草野参考人にお尋ねいたします。
 制度の一本化についてでございますが、先ほど山本参考人の方から、もう国保は事実上破綻しているというお話がございました。私も一年前まで町議会議員をしておりましたので、実感としてその山本参考人のお言葉は理解しております。
 制度の一本化については様々な問題点があると思うんですけれども、この一本化についてどのようにするべきか、それぞれの立場でお答えいただきたいと思います。
#105
○参考人(対馬忠明君) 制度の一本化ということですけれども、制度の一本化、響きは非常にいいわけですね。ですけれども、私どもは本当にそうなんだろうかと。制度の一本化というのは、結果的には国が全体をやっていくということですから、ある意味では昔の国鉄とJRの関係、国鉄は一本で日本全国やれば非常にきれいな形ですけれども、実態的には効率性というのは働かなかった、これは、私が言うまでもなく、先生方十分御承知のとおりですけれども。
 やはり、幾つかの保険者が分立していってその中で競い合う、そこでインセンティブを持ちながら努力していくという形でありませんと結果的には自己規律が失われてしまうと。すべて、大変言葉は悪いかもしれませんけれども、親方日の丸的な体質になっていくということで、私どもは反対の立場でございます。
#106
○参考人(山本文男君) 私どもが一本化を申し上げているのは、医療保険というのは、これはもう一つであるのが当然なんです。これは理論的に正しいと思います。ただ、やり方を申し上げているのであって、例えば国民健康保険の場合はこの医療費が西高東低になっているんです。したがって、全国一本化をして同じ保険料でやるということは不公平を生むことになりますから、したがって県単位で一本化をやってほしいと。
 そして、実質の一本化は県単位でやって、運営上連合を組んでやると。これを行政がやるのではうまくないと。今の時代にちょっと反抗するようなことになりますけれども、できればその運営の一つの機構を作ると。そして、今の国保、国民健康保険の連合会みたいな形になるんですけれども、そういう式でやればいいのではないかと。したがって、東日本の方では保険料も安いと、もちろんこれ医療費も安いわけです。西側になってきますと、高いところもたくさんありますし、それから安いところもあります。したがって、そういうようなものをコントロールしながら県単位の一本化を図っていくことが一番望ましいと、こういうことです。
 そこで、更にもう一歩それから進んで、この健康保険組合との一本化は、これは非常に難しいだろうと。難しいけれども、今から十年後にいわゆる一本化すればいいじゃないかと。その前に、まず国保がそういうことで一本化ができたときに政管と一緒になるべきじゃないかと。政管というのは、御承知のように、社会保険庁が所管しておりますから、同じような母体じゃないかと、こういうことなんですね。したがって、政管の方がそういうようなやり方、まあ政管自体が考えて、一つは一本化を進める、最小限県単位でまとまっていくということをやればいいと。
 そうすると、国保と同じようなやり方をしますと、言い換えると県で二つのものができる、これまた連合で一つに一緒にしていくと、こういうことでして、それで更に業績が、実績を積んでいって、最後に、民間が主体ですから、この健保組合というのは。それでこの健保組合との統合ができれば一番いいんじゃないかということでございます。それを十年後、いわゆる健康保険組合との統合が、最終的に医療保険の一本化ができるのを十年後というふうに私どもは目指しているわけです。ですから、まず国保の一本化をやってほしいということをお願いしているところです。
 以上です。
#107
○参考人(草野忠義君) もういろんな意見が出ておりますので、一言だけ申し上げたいと思います。
 理念として一本化というのは当然考え得ることだし、場合によっては、でき上がった姿を見てみなければ分かりませんけれども、結構いい制度だなということになるかもしれませんが、現実には、地域保険、それから組合保険との歴史の違い、あるいはその所得捕捉の違いだとか、ある意味じゃ、今これから進められるでありましょう地方主権の問題等絡めて考えますと、そう一筋縄ではいかないのではないかなと。
 したがって、やるとすれば、今、山本参考人もおっしゃったように、一つの絵姿を描きながら、じゃ、そこへのアプローチが皆さんの合意が得られるかどうかという具体的な提起をしながら議論をしていくべきではないかなというふうに思っております。
#108
○森ゆうこ君 それでは、櫻井参考人に伺います。
 その制度の抜本改革と併せて医療提供体制側の改革というものも求められていると思います。しばしば、医療には経済効率性の追求は、医療とその経済効率性の追求ということは相入れないというふうなお話もありますけれども、私は、その経済効率の追求とは、いかにもうけるかということではなくて、いかに低コストでいかに良質なサービスを提供できるかということの追求だと思います。それが結果として医療の安全性、ひいては医療への信頼性を高めるものだと思っておりますけれども、そういう意味でその医療の提供側の意識改革、そしてその提供体制そのものの改革が必要だと思いますが、この点についてのお考えをお願いいたします。
#109
○参考人(櫻井秀也君) ある意味ではもうおっしゃるとおりだと思うんですね。そういう意味で申し上げたんで、その経済的な効率性からいえば、一番初めに申し上げたように、世界で一番安い費用で一番いい結果を得ているというのは、いかに効率が良い医療が今行われてきたかという証拠なんですね。絶対的な証拠なんです。少なくとも、例えば、それがすべてとは言いませんけれども、寿命で比べていただければ、アメリカは日本の倍以上のお金を使って、寿命は日本人より五年も短いんですよ。だから、それが行われてきたことは事実なんです。
 ただし、それは非常に低い医療でそれを実施してきたためにひずみが生じてきたことも認めざるを得ないから、それを直していくための抜本改正が必要だというふうに我々は信じているんであって、医療の効率性は、だから医療の経済的効率性だけ追求されたら、一番うまくいっているというのはマクロ的に出ていると私は信じます。
#110
○森ゆうこ君 少し、私の考えと多少違うかなと思うんですけれども。
 では、先ほど草野参考人は明朗会計というお話をされました。おすし屋さんでの明朗会計というお話をされましたが、それに関連しまして、私たちがお医者さんに行ったときに、その明朗会計は今あるかもしれませんけれども、逆に言うとメニューがないんですね、お客さんの側として。この医療を受けるときにはこれぐらい負担が掛かって、でもここまでの治療は私たちは必要ないんじゃないかと思うとか、そういう判断、その医療を受ける側の判断する材料がないと。
 今後このようなことも考えていかなければいけないと思うんですが、草野参考人と、そして坂内参考人がうなずいてくださっていましたので、一言ずつよろしくお願いいたします。
#111
○参考人(草野忠義君) 全く御指摘のとおりだろうというふうに思います。基本的には医療の供給体制をどういうふうに整備していくかということに尽きるんではないかと思います。その中に情報の開示というものが基本的には大事になってくる。
 アメリカとかヨーロッパでよく言われるそうでありますが、いわゆるホームドクターといいますか、そういう制度。そこで相談をしながら、大きないわゆる病院の方に治療を受けに行って、更に高度な治療、あるいは場合によっては違う科に行くとか、いろんなルールがあると思いますが、そういう納得のいく治療を受ける。そして、情報提供によって、その自分が行こうとするあるいは相談すべき道筋がはっきり分かる。そして、これだけの情報化時代でありますから、いわゆる保険証、カルテを全部ひっくるめたICチップを含めたカード制、それによって自分の病歴といいますか、診察歴といいますか、検査歴といいますか、こういうものが分かると。いわゆる私流にいえば、医療供給体制をいかに整備していくかということにすべてが含まれるんではないかと、こういうふうに理解しております。
#112
○委員長(阿部正俊君) じゃ、坂内参考人、簡潔にひとつお願いします。
#113
○参考人(坂内三夫君) 先生、医療のメニューとおっしゃいましたけれども、例えば、あらかじめ盲腸を手術する場合には幾らだよと、この病気なら幾らだよというメニューがあるという、そういう制度はアメリカにはたしかDRG、医療標準という制度がございまして、ただ、私は日本にそれを導入するのはいかがかなという意見を持っています。
 つまり、あらかじめ値段が決められて、どんな治療内容をしようが、病気によっていわゆる治療費が決まってしまえば、当然、治療を行う側はその決められた定価の中で、何というんですか、経済効率を追求して十分な医療ができないということもよく考えられるということで、DRGという医療標準の導入には慎重な検討が必要だというふうに思っております。
#114
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
#115
○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。
 本日は、様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 医師会の櫻井参考人にお尋ねしたいと思います。
 私も今回風邪を引きまして掛かり付けのお医者さんへ行きましたら、あなた厚生労働委員会の委員でしょう、早く治して戻っていったらどうだ、そんな大したことないんだからと言われまして、私どもも現場で頑張っていますとおっしゃって、私もお医者さんに励まされたの初めてでございまして、びっくりしておりました。
 今日、御意見を伺いまして、なるほどなと思ったわけでございますが、もしこの健康保険法が採決されてしまった場合に、現場で患者側に、そして医師側に一体どういう影響が波及するのかということを少し具体的に先生のお考えをお聞かせいただけると有り難いんですが。
#116
○参考人(櫻井秀也君) 現場ではということで、特に今度の患者さん負担の増加ということが一番問題点だと我々は思っているわけですから、正にそのことの影響が出るだろうと思っています。それは先ほどたしか、どなたでしたか、西田参考人でしたか、高齢者の方の受診抑制があって健康を害することが出てくるんじゃないかという、高齢者のお立場からもそういう意見がありまして、我々も全くそのとおりのことが起きるんでないかということで非常に危惧しているわけでございます。ですから、正にその部分の問題が一番起きやすい、それが一番だと思っております。
#117
○大脇雅子君 草野参考人にお尋ねをいたします。
 草野参考人は、先ほど今般の改正における本人三割負担に反対する論拠の一つとして、若人の薬剤一部負担金の廃止との関連で、それは本末転倒であり、むしろ残すことが制度的にも合理性があるという御趣旨だと理解いたしましたが、もう少し詳しくお聞かせくださるでしょうか。
#118
○参考人(草野忠義君) 薬剤費の一部負担の趣旨につきましては、先ほども申し上げましたように、薬剤費の抑制であるとか、薬剤数の適正化であるとか、コスト意識だとか、こういうものがあるというふうに理解をしてきております。
 制度導入後、現実に薬剤数が減少して効果が出てきたというデータが出てきているというふうに思っております。しかし、その後、基本的には九八年に老人のみを薬剤一部負担金を廃止しました。そして九九年分につきまして医療保険制度の抜本改革までのつなぎの措置として、臨時特例措置としてたしか千二百七十億円の予算が計上されたと、こういうふうに聞いております。情報によりますと、この九八年当時、老人それから若人のすべてを廃止するという案があったようでありますけれども、じゃそのときに財源どうするかと、このときに三割負担という財源が上がってきたと、こういうふうに聞いておりまして、そういう意味では、ある意味ではセットで議論をされてきた経過があるのではないかと。
 こういうふうなことから、私どもとしては三割の引下げよりも薬剤一部負担金を残す道を取るべきではないかと、こういうふうに主張しているところであります。
#119
○大脇雅子君 従業員五人以上の場合に、政管健保加入義務があるのに手続をしない例がございます。また、あるいは保険証書の書換えを理由に保険証を集めておきながら手続をせずに結果として国保の範疇に入る例が増えていると聞いています。健康保険組合を解散して政管健保に入っていくという数も増えていると言われているとき、このような問題をどのように草野参考人はお考えでしょうか。
#120
○参考人(草野忠義君) 先ほどちょっと触れましたように、今また先生も御指摘のように、従業員五人以上の事業所は強制適用になっているわけでありますが、現実的には脱退するという事件が三年ぐらい前から表面化をしてきております。そうなると無保険者ということになるわけでありますし、一番ひどいのは、保険料は取っていながら入っていなくて、それを事業費に充てたり、あるいはちょっとこういう席でこういう言葉を言っていいのかよく分かりませんが、夜逃げをして、気が付いてみたら自分は保険に入っていなかったと、こういうような事例が散見されました。
 私ども連合としては、あれは何年前だったでしょうか、ちょうど三年ぐらい前に、こういう事態について徹底した行政としての指導をすべきだという主張を申し入れたこともございますし、こういうことはもう全くあってはならないことだというふうに理解をいたしております。
#121
○大脇雅子君 山本参考人とそれから対馬参考人にお尋ねをしたいのですが、健康保険組合にしろ国保にしろ、高齢者の拠出金、高齢者医療に対する拠出金と退職者の給付金に対する拠出金が非常に財政を圧迫しているというのはもう貸借対照表等を見ればこれは明らかなんですけれども、これについて将来あるべき方向、賛成を表明しておられますけれども、これについては何か御意見ございますか。
#122
○参考人(山本文男君) 退職者の人とそれから離職者の人が多数入っていること、国民健康保険に入っていることは事実ですね。国民健康保険は、さっき最初にも申し上げましたように、市町村の負担が非常に大きいわけなんですよ。これは法定外の負担ですから一般財源から出しているわけですね。ところが、御承知のように、今のような状況になりましたから、恐らく小さな市町村はこの負担に耐えかねるということになる。だから、六割強の市町村がそのために財政破綻を来すということや、それからやらなければならない事務事業を抑えてこれに負担をしていくということになりますから、言い換えると、全町民、全村民、全市民が国保を負担をしているという言い方になるわけです。実質はそういうことになっていくわけです。
 ですから、この退職者の人あるいは離職者の人たちが入ってくることに対して、国側がこれらについてはやっぱり支援をしてあげないと、国保側では到底、受け入れざるを得ないんですけれども、財政上持ちこたえられないということでございますから、これをどうしてくれるかということでしょうね。これが一つの大きな国保運営上の課題に新たにこれはなってくるだろうと思います。
#123
○参考人(対馬忠明君) 高齢者それから退職者に対する拠出金の問題ですけれども、陳述でもちょっと申し上げましたけれども、今の拠出金制度というのは保険者がいない、つまり共同事業の形になっているわけですね。ですから、一体だれが運営責任、財政責任を負っているのかと。例えば、来年、再来年、一体拠出金のレベル、どのぐらいになるかと、こういったのは一切分からないわけですね。そういう中で、私ども、今回二兆数千億ですとこう言われるわけですけれども、やはり保険者がきっちりしていて財政責任を負うような形になっていまして、しかも保険料、今の拠出金というのは掛かった費用の総割り勘みたいなものなんですね。そうではなくて最初から保険料は幾らですよ、その範囲でやりましょうということであれば随分違ってくると思うんですね。
 例えばアメリカ、メディケアですけれども、高齢者のための保険料率というのは決まっていまして、二・九%を経営者の方と被用者各々一・四五ずつ分けていくわけですね。そして、そういった中でやると、もちろん高齢者の方にも御負担いただくわけですけれども、制度を運営していくと、こういうような仕掛けが一つ頭の中にあるといいますか、一つのターゲットになるんじゃないかな。
 いずれにせよ、掛かった費用の総持ち合い方式というのは極めて問題じゃないかなと、こういうふうに思っています。
#124
○委員長(阿部正俊君) そろそろ時間でございますが。
#125
○大脇雅子君 はい。
 私はそうした矛盾があるということも承知の上で、やはり今回の改正はつじつま合わせの改正だという四人の参考人の方々の御意見に賛成するものでございます。信頼と安心の医療を求めて、やはり本当に真剣に私どもは議論したいというふうに考えております。
 どうもありがとうございました。
#126
○委員長(阿部正俊君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 それでは、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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