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2002/02/27 第154回国会 参議院 参議院会議録情報 第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第2号
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2002/02/27 第154回国会 参議院

参議院会議録情報 第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第2号

#1
第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第2号
平成十四年二月二十七日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         勝木 健司君
    理 事
                魚住 汎英君
                北岡 秀二君
                鶴保 庸介君
                内藤 正光君
                日笠 勝之君
                西山登紀子君
                島袋 宗康君
    委 員
                太田 豊秋君
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                山東 昭子君
                鈴木 政二君
                伊達 忠一君
                中島 啓雄君
                藤井 基之君
                松山 政司君
                朝日 俊弘君
                榛葉賀津也君
                辻  泰弘君
                本田 良一君
                松 あきら君
                畑野 君枝君
                森 ゆうこ君
                山本 正和君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        村松  帝君
   参考人
       株式会社日本総
       合研究所調査部
       主任研究員    山田  久君
       日本労働組合総
       連合会総合労働
       局雇用労働局長  中村 善雄君
       日本経営者団体
       連盟労務法制部
       次長       松井 博志君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済に関する調査
 (「真に豊かな社会の構築」のうち、雇用環境
 の変化とその対応について)

    ─────────────
#2
○会長(勝木健司君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。
 国民生活・経済に関する調査を議題とし、「真に豊かな社会の構築」のうち、雇用環境の変化とその対応について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社日本総合研究所調査部主任研究員山田久君、日本労働組合総連合会総合労働局雇用労働局長中村善雄君及び日本経営者団体連盟労務法制部次長松井博志君に御出席いただき、御意見を承ることといたします。
 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、御多用のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「真に豊かな社会の構築」のうち、雇用環境の変化とその対応につきまして忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、まず山田参考人、中村参考人、松井参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、二時間程度、午後四時ごろまでの間、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 この質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行いたいと存じます。
 また、時間が限られておりますので、質疑、答弁とも原則一問一答形式で簡潔に行っていただくようお願いをいたします。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、山田参考人からお願いいたします。
#3
○参考人(山田久君) 日本総合研究所の山田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、資料をお配りいただいている、二枚、文章で書いたもの、それと図表が三部ございます。切り離して見ていただきますと分かりやすいかと思います。
 最初に、雇用情勢の足下から御説明をさせていただこうと思います。
 御承知のように、かつてない失業率の上昇ということに今、日本経済は直面しているわけでございます。いわゆる完全失業率が直近五・六%、現行統計始まって以来の高さでありますし、それからスピードが非常に、上昇スピードが極めて速い。大体過去景気後退期の失業率というのは年率で〇・五ポイントを上回ることはなかったわけですけれども、九七年の夏以降、それから更に今般の景気後退の始まりました二〇〇一年の初め以降、その倍に近い、ほぼ一ポイント近い、年率一ポイント近いスピードで上がっている、そういう面で、水準のみならずスピードから見ても非常に雇用情勢が悪化しているという現状でございます。
 この背景にあるものを探っていくときに、現象面からしていきますと三つの大きな特徴が生じております。
 一つは、その図表の一をごらんいただきたいと思います。性別の失業率の推移というものを載せてございます。
 八〇年代以降の日本の失業率、性別の失業率の特徴といいますのは、大体男性の方が女性よりは失業率が低かったということでございましたが、足下、その状況が崩れておりまして、年を追って女性の失業率の方が男性を下回る状況が定着してきております。こういう変化がなぜ起こっているかというのはまた後で御説明を申し上げます。
 それから、二つ目の特徴としまして、次の図表の二をごらんいただきたいと思いますが、企業規模別の雇用の状況でございます。
 過去、景気後退期におきましては、大手企業が実は、終身雇用ということは言われておりますけれども、事業所ベースで見ますとかなり大企業が人員を削減してきております。それが、ただ、過去を見ますと、丸でくくっておるところですけれども、例えばオイルショックの後、七〇年代の後半であったりあるいは八〇年代の半ばの円高不況のときであったりですが、中小企業がむしろ雇用を増やす形で全体の失業率を低く抑えてきているというのが特徴でございます。
 これは、いわゆる転籍あるいは出向といったものも含めて経済全体で雇用を維持してきたというところであって、最終的には中小企業が正に雇用の受皿になってきたことが日本の失業率を低く抑えてきたファクターであったわけですが、その状況が九七年の秋以降崩れております。中小企業がむしろ雇用を吐き出す側になってきている、そういう変化が生じております。
 それから三つ目の大きな変化といたしまして、次の、図表でいきますと図表の三というのがございます。これをごらんいただきたいと思います。
 かつては、建設業あるいはデリバリー産業とレジュメの方に書いておりますが、これはいわゆる流通あるいは通信あるいはエネルギーといった様々な物・サービスの流通にかかわる、デリバリーにかかわる産業ということで一まとめにしてこういう言葉を使っておるわけですけれども、そういうところがかつては不況期に雇用を吸収してきたという特徴がございました。
 ところが、九〇年代後半以降、その構図が崩れてきております。特に足下では最終的なこれまで受皿でありました建設業がむしろ雇用を吐き出す側に回ってきている、それから製造業に関しましても急速に雇用を減らすという状況が足下で目立ってきております。
 以上が現状の一種の現象面であるわけですけれども、その背景にあるものを見ていきたいと思います。
 雇用問題を考えるときに、この問題というのをどういうふうにとらえればいいのか、私自身としては産業と雇用と家族という、家族モデルあるいは生活の在り方、そういう三つの要素の三位一体の中でとらえていくという視点が重要ではないかと考えております。
 戦後の日本経済、日本が言わば低失業の状況にあったというのは、まず製造業が非常に競争力がある中で、その製造業にとって非常に経済合理性のある雇用モデルというのが長期雇用であります。長期的な労使関係の下で技術の蓄積をするというのが非常に雇用モデルとしては合理性があったわけですけれども、そういう中で正社員中心型の雇用モデルが作られてきた。ただ、その裏側で言わば正社員、多くの場合は男性であるわけですけれども、男性正社員が言わば生活時間の多くを、あるいはその生活に掛かるいろんな精力を仕事に投入していくということが一般的にあった社会であります。それは、実はその裏側で専業主婦が家事を支えるというそういう家族モデルが前提になっているわけでありまして、そういう産業、雇用、家族という三位一体の中でこの低失業のモデルが作られてきたということであります。
 かつて、不況期になりますと大手企業、いわゆる終身雇用ということで極力その雇用調整を避けてきたわけですけれども、最終的には、先ほど資料で御説明しましたように、不況が深刻化しますと転籍、出向という形で雇用を外に出す、しかしそれは最終的には中小企業が受けてきたと、そういう構図があったわけであります。
 それからもう一つの低失業の背景としまして、正にこの家族モデルと関連しているところですけれども、男性が世帯主、男性が正社員で雇用が安定している、その一方で女性がパートという形で、景気が良くなって労働需要が逼迫するときには働くわけですけれども、それが不況期になりますとパート雇用の中断等によって言わば離職するわけですけれども、ただ、生活上、主人が雇用が安定しておりますんで、もう一度専業主婦に戻る形で、言わば労働市場から退出する形で失業率が上がってこなかったと、そういうメカニズムがあったわけです。
 ところが、このモデルが成立する背景というのは三つの要因がございました。環境変化というふうなところですけれども、一つは、日本が欧米諸国に対するキャッチアップ過程にあったと、製造業に非常に強みがまだあったというのが一つの要因です。それから二つ目として、市場メカニズムというものをある程度制御できた。いわゆる規制、あるいは企業の間のいろんな慣行もありましたけれども、そういうものでもって市場メカニズムを適切に、適当に制御してくると、そういう環境にあったわけです。それから、豊富な若い労働力があるということで、年功制、いわゆる年功制というものがコスト負担にならなかったと、そういう三つの要因があったわけです。
 ところが、これがオイルショックを経て八〇年代、さらには九〇年代に掛けてこの要因が崩れていきます。まず、東アジア諸国が急速にキャッチアップをしてくる、あるいは市場メカニズムが強まる中で規制改革、あるいはこれまではいろんな保護政策でもって倒産ということを抑えてきたわけですけれども、最近はそういうこともできなくなってきている。それから、人口構成が少子高齢化が進んでいくということで、言わば戦後型の低失業モデルの成立基盤が完全に変わっていってしまったということであります。
 そういう中で、冒頭述べた特徴がどうやって生じてきているかというメカニズムでありますけれども、まず東アジアのキャッチアップということで、物づくり基盤がどんどん縮小していきます。それが正に足元の製造業の雇用の急減につながっております。それから、市場メカニズムが強まることによっていろんな合理化の圧力が掛かる。特に非製造業、先ほど申し上げました建設であるとかデリバリー産業というところはいろんな形で保護されてきたわけで、効率化の余地があるということで、そこで逆に、効率化というのは逆に雇用面からいうと雇用の吸収力が落ちていくという現象が生じているわけです。その正に裏側にある問題として、大企業の雇用吸収力が低下してくる、そうすると、正社員から、正社員を減らして非正規社員を増やすという今ことが生じているわけですけれども、正社員は大体男性、非正社員、パート等は女性という大体関係になっておりますので、男女間の失業率の逆転ということが今生じているということであります。
 それからもう一つ、見逃してはならないことというのは、先ほど申し上げましたように、最終的に日本の失業率の低さを守ってきたというのは中小企業の活力、中小企業で雇用の受皿になっていたということだったわけですけれども、これがどんどん活力が失われていったということであります。キャリアルートの保守化という言葉を使っておりますけれども、言わば一つの戦後のライフサイクルというのか、成功モデルというのがまあ大手企業あるいは官僚等に、比較的安定したところに入っていって、そこで昇進していくということが非常に大きな成功モデルと、人生の成功モデルという形で社会的にこれが一般化したわけですけれども、そういう中で多くの有能な人材がそういう形に行く、その結果、中小企業には、なかなか、人材不足の問題が深刻化してくるということが背景にあったということかと思います。
 以上が今の日本の雇用情勢の悪化の背景にある問題でございます。
 じゃ、これからどうすべきかということで、次のレジュメで二ページ目に移らしていただきます。
 欧米諸国からは、この問題を考えるときに、日本の今後の雇用再生に関して考えるときに、欧米諸国の経験を少し見てみたいと思います。
 欧米先進国、大体オイルショックの前というのは低失業、三%程度の低い失業率であった社会です。しかしながら、これが七〇年代、ほとんどの欧米諸国が高失業に悩みます。ところが、八〇年代を経て九〇年代に掛けて、はっきりと諸国によって格差が生じてきます。一つのグループは、アメリカあるいはオランダのような賃金は比較的低いんだけれども雇用が生まれてきた社会、それからドイツ、フランス型のような高い賃金だけれども失業率が低いと、失礼しました、雇用の量が少ない、そういう社会に分かれてきたわけです。
 もちろん、これは一つの選択肢でありまして、日本が、例えばドイツ、フランスにしても非常に失業者に対して手厚い雇用保険とか失業扶助の手当てがございますので、こういう社会の選択というのも一つの選択肢であるわけですけれども、財政赤字の問題等考えますと、現実問題としてはそれは難しい。やはり雇用をできるだけ多く生んでいく社会というのが必要なんではないか。
 そういう中で、アメリカ、オランダがなぜ高い雇用を実現したか。その要因として三つ挙げております。
 一つは、産業構造がサービス化、ソフト化していったということでございます。それを積極的に進んでいったというのが一つの要因であります。
 それから二つ目として、「雇用システムのフレクシビリティー」と書いておりますけれども、言わば働き方の多様化が進んでいった。いわゆる正社員だけではなくて、正社員というのか、フルタイマーである、かつ正社員というのは日本では基本的にはそれが一般的というのか、それがいろんな形で最も望ましい形、働き方ということは位置付けられているわけですけれども、それがアメリカあるいはオランダ、アメリカの場合ですと、就業形態が非常に多様化してきております。インディペンデント・コントラクターというような自営業といわゆる企業の雇用者のあいのこのようなものも出てきておりますし、あるいは派遣労働者も伸びております。それから、オランダに関しましてはパートタイムを積極的に推進してきているということで、そういう中で、労働形態、働き方の多様化が進んできているというのが二つ目の要因でございます。
 それから三つ目の問題として、「家族モデルの多様化」というふうに書いておりますけれども、いわゆる女性の社会進出が積極的に進む中で、いわゆる男性片働き社会から男女の共働き社会に変わっていっている。そういうものがアメリカあるいはオランダに共通に見られる特徴でございます。
 そういう面で、基本的にはやはりアメリカ、オランダにしろ、日本が今直面しているような同じような問題、成熟先進国として新興工業国のキャッチアップに遭っている、あるいは高齢化が進んでいる、あるいは市場メカニズムの強まりに対応していかなきゃならない、そういうものに対して積極的に対応していったのがこれらの国であったということかと思います。したがいまして、これを参考に、今これから日本の雇用を中心とした経済のシステムを全般的に変えていく必要があるんではないのかなということでございます。
 具体的には、四の「ポスト戦後型雇用創造モデルへの課題」というところでございますけれども、項目が三つございます。一つ目は、産業構造を転換していく。当然製造業をより高度化していくということは必要でありますけれども、全体としてサービス化が進んでいく、そのためには規制改革あるいは競争政策を通じて新しいサービス産業が、あるいはソフトといった新しい産業が生まれてくるような環境整備をしていく。それから、正にその付加価値の源泉であります研究開発あるいは知的所有権というのを適切に保護をしていくということかと思います。
 それともう一つ重要なのは、アウトソーシングというキーワードで呼ばれるところでございます。これは二つの意味合いがあります。一つは、ホワイトカラー部門をアウトソースしていく。例えば、アメリカではソフトウエアあるいは人事のアウトソースの会社等、これまで企業内で行われたようなホワイトカラー業務が徐々に独立企業が営むように変わってきております。そういうことで、新しい雇用の受皿が生じている。それからもう一つは、言わば家事のアウトソースと言われるところであります。これはオランダでも生じていることですけれども、女性が社会進出しますと、それに伴う例えば保育であるとか介護、そういったものを新しく産業として支えていくということになってくるわけです。そういうことが重要でございます。
 それから二つ目の大きな柱として、労働市場の整備ということでいや応なしに産業構造の転換に伴って労働移動が必要になってくる、そういう中で転職支援であるとか再就職の支援サービスということを民間の力をかりながら、しかも公的サービスも充実していく。それから二つ目として、当然、労働移動を円滑に進めるためには社会の横断的な職業資格制度ということが必要になってくるということかと思います。それから三つ目として、当然新しい産業に移るためには新しい能力が必要であるということで、産業教育システムの、失礼しました、職業教育システムを充実していく。アメリカのコミュニティーカレッジといったものが一つの参考になってくるということかと思います。
 それから三つ目として、生活保障の在り方として、例えば社会保障に関しては、これまではどちらかというと男性が外に働いて女性が家庭にいるということを前提とした制度を作ってきたわけですけれども、これを就業形態あるいは家族モデルに中立的な制度に変えていく。さらには女性の社会進出を積極的に支援していく。例えば、企業内託児施設などに対して助成を行っていくとか、始まっております介護保険の制度、必ずしもまだ十分ではございませんので、これをより使い勝手のいい形に変えていく。
 それから、さらに基礎的な生活コストの引下げということで、例えば非常に今大きな特に中高年の負担になっている、生活費の負担になっています養育費に関して奨学金を拡充していくとか、あるいは住居コスト引下げのために中古市場を整備していく。そういった全般的な課題が必要になるというふうに考えております。
 以上、どうもありがとうございました。
#4
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(中村善雄君) 連合の中村でございます。
 お手元のところに資料の束で、最初のところで今回の主張したい点を一枚表裏で書いたものでございます。その以降のところがチャートが二枚ほど入っておりまして、その後ろに「二十一世紀を切り開く連合運動」、二十一世紀連合ビジョンというので、これは正しくこの表題のものを昨年の連合の定期大会で確認をしたものの本調査会で要請のありました事項についての関連部分を抜粋をしたものでございます。基本的な考え方はこのペーパーに尽きるというふうに思っております。
 まず、一言だけ申し上げますと、二十一世紀連合ビジョンということで、これが私どもが今ある社会からこういう社会が望ましいということを労働組合、働く者の立場からして望ましいものというふうに考えた内容でございます。これは当然ながら、現在進んでおります様々な社会構造上の変化ということを前提にして、労働組合運動の進むべき方向ということで提起したものであります。なお、本資料のところでは、いわゆる第二章で、「私たちがめざす社会」というところを抜粋をさせていただいております。
 このほかには、当然ながら労働組合としての運動の方向性ということを中心に考えてきた資料でございましたので、当然労働組合運動としてどういうことが望まれるか、あるいは労働組合としてはどのような活動をやっていくべきかということをまとめたものでありますが、その中で当然社会的、政策的な視点ということも重要であるということで、主に関連する部分、政策的な部分の関連するということで私どもが考える望ましい社会の在り方とそれに関連する必要な政策的なものということを紹介をさせていただいております。
 もう直面する現実ということは、このチャートの方、一枚目のチャートも含めて御案内のとおりでございます。特に、現在非常に雇用が不安定になっている。さらには、経済全体が不安定になっているということの中で、正しく雇用に対する不安が拡大をしている。この流れは、産業構造の変化ということの中で起きてきた部分もあるし、それに対応してそれなりの新たな労働社会の仕組みを作らなければいけないといったようなこともあります。
 また同時に、今まで過去数十年間、いわゆる個別企業内の個別労使を中心に作り上げてきた安定的な労使関係の仕組み、さらにはそれを基にしたいわゆる産業の成長力の強さ、基盤、そういったものが現在の状況下で進められている様々な諸政策とかなり大きな食い違いを起こしているのではないかということで、私どもの言葉では一言で言うと市場万能主義というふうな表現で労働組合的には整理をしておるものです。
 よく規制緩和、規制改革ということがここ数年常に叫ばれております。当然、新たな産業が成長するために様々な制約となるようなことについての規制の改革、それがネックとなっているものであれば、それを取り除く、改良していくということは当然のことでありますが、現在、どうも労働者側の目から見て、進められ、言われている規制改革あるいは構造改革と言われるものは、どうも労働者個人に安易に市場というものに、しかもいまだ余り整備がされていない労働市場というものをかなり全面的に虚構的に信頼をして、そういったようなところをすべて市場競争にさらせばすべて効率化するんだといったような、かなりバーバリーな論調が世論を風靡をしている。そういうことが、やはり今後の社会を考える上で非常に私どもの立場からすると危険な方向にあるのではないかという危機感が背景にありました。
 さらにもう一言付言をいたしますならば、現在の不良債権処理等の問題も含めてでありますが、非常に企業経営に対する評価というものが短期業績志向的なものになってきている。もちろん私どもの諸先輩を含めて作られてきた労使関係というのは、当然ながら企業の成長力、生産性ということを眼中に置きながらも、ある程度中長期的な中で、いわゆる企業が従業員ともに永続的に発展をしていくというベースを互いに協力しながらどういう仕組みを作っていくかということを、仕組みを正しく営々と作ってきたというふうに思っているわけでありますが、昨今の風潮は短期的に企業のバランスシートがどうかといったようなことも含めて、それのみで評価をされる。また、むしろ現在の経営環境においては、そういうことのスピードに対応しなければなかなか生き残れないのだというようなことが言われているわけであります。
 特に甚だしきは、これは悩ましい問題ですが、金融の不良債権処理の問題と絡んで、金融機関の融資の見方の問題も始めとして、短期的に企業のバランスシートが改善するようなことのみで判断をしようとする。極端な場合には、短期のバランスシートを改善するためには人件費を削ってください、人を辞めさせてくださいということの視点のみから様々なことが強調され、その中では当然当該の労使の、いかにしてこの企業として中長期的に成長するような形でやっていくか、そういったような協議の視点もばさっと、そうは言っても目先これではいけないといったようなことも含めて閉じ込められてしまうといったような事態が起こっております。これは、かなり世間全般の動きとして、さも当然である、それが正しく痛みであるというような形で、その結果その後どういう姿で労働者の世界、国の世界がなるかということは一切明らかにされていないということでございます。
 それに対して、私どもが目指すべき社会は、やはり孤立した個人を激しい市場競争にさらすことが解決の道だというようないわゆる市場万能主義ではなくて、(2)で書いてございますように、労働を中心とする福祉型社会、要するに働くということに最も重要な価値を置いて、すべての人に働く機会と公正な労働条件が保障される、しかも安心して自己実現に挑戦できるセーフティーネットがはめ込まれたような社会。
 現在働いている人の八割は、実はもう雇用労働者であります。これは、産業構造の変化が進んでいるということで、長期的な就業構造の中で起こってきておることでございまして、当然ながら産業構造が変化をする中で一つの企業が永遠に行くということはなかなか難しいわけであります。したがいまして、どういったような形でその働く人の立場に立ってみるとキャリアを形成をし、またキャリアというものは実際に仕事をする中で身に付くという性格が多分にございまして、単なる知識とか資格とか、そういうものだけでつながるというものではございません。
 そういったようなものが、そういうキャリアを積み重ねながら、生涯にもしかしたら一社か二社かというようなことになるかもしれません。そういう形の中で、生涯の生活の安定を作れる枠組みをどう作るかということも含めて、セーフティーネット、更には能力開発の社会的な仕組みということが整備をされた社会、何よりも働いているということがいわゆる家族、社会あるいは子供等にとっても、正しく働くということはどういうことなのかということを尊敬を持って、尊重を持って理解をされ、お互いに連帯がしていけるような社会が、作っていかなければならないのではないか。
 これがまず基本的なこれからの労働を中心とした福祉型社会という私どもが申しておることの意味でございまして、そのおおよそのイメージは二枚目の「めざす社会」のチャートのところに記載をさせていただいておるものでございます。個人尊重・社会連帯型の社会、生活の質の改善が図れる社会、その中でバランスの取れた経済成長が図れるということでございます。このためには、やはりいわゆる人間的な労働と生活の枠組み、これをセーフティーネットとともにきっちりと作っていくということが非常に、特に雇用面で重要なことだということでございます。
 (3)のところでおよそ視点は五点ほど、私どもの連合として考える基本的な視点というのをとりわけ労働分野に限って指摘をさせておいてございます。
 そのうち最後の、持続可能な福祉社会の構築、これは非常に重要な観点でありますが、今般、ちょっと雇用、労働にかかわるということでございますので、そういう重要なアイテムがあるということだけの紹介をさせていただきたいと思っております。
 まず、やはり何よりもいわゆる完全雇用という政策がすべての基本になってくるということでございまして、現在の雇用は、産業は縮小傾向にある、もちろん新たな新規産業の創出を行っていかなければならないということでありますが、国民生活に結び付く福祉、医療、更には環境、そういったような分野というのは、実はまだまだフロンティアの部分であります。これは、そういうことのところに資源を重点配分することによって成長の道も大きく開けるということも含めて、この分野に積極的に資源の重点配分を行って雇用創出を図っていく。
 従来、日本を支えてきた製造業を含めて生産性の高い産業は、国際的な市場競争の中で人員的にも縮小をたどる。もちろん、付加価値の稼ぎでは当然中心になるわけですが、そういう意味では更に合理化を図っていかざるを得ない。そういった中で、やはりこういったような福祉型分野を中心にして、むしろ政策的に新たな雇用を創出、更には新規産業の育成を図っていくということを中心として完全雇用を作っていくということが重要である。
 当然、その際には人の移動ということが起こらざるを得ないわけでございまして、やはり失業なき労働移動を支援をする施策、並びに移動が不利にならない、処遇、賃金等の処遇も含めて不利にならない社会的なシステムづくりということは正しく完全雇用政策とセットになって考えられねばならない。
 更にそれを申し上げますと、やはり社会的な能力の評価をしていくようなシステム、あわせて、更には従業員のキャリアということも含めて能力開発について、これをもっともっと支援をしていく。現在置かれている失業者の再就職のためだけではなくて、ふだん働いている人たちが主体的に自らの能力を高めるような仕組み、これは従来はいわゆる個別企業の中で企業の戦略、人事戦略等々やってきたわけでありますが、これはやはり、更に労働者の主体性といったようなことも加味をして、更には企業だけではなくて社会的にそういったような能力開発というのを支援していくような仕組みというのを作っていく必要があるのではないかということであります。
 それから、二つ目の重要な政策的な点は、やはり雇用と労働をめぐる社会的なルール、労働基準法とかそういう法律も含めて雇用と労働を律するルールの明確化の問題であります。
 当然ながら、個別の実態に応じた部分等々につきましては、いわゆる現場の労使の協議ということを含めて実態的な解決が図られるということは当然でありますけれども、広く社会一般として透明な社会横断的で明確なルールといったようなものが、中小あるいは労働組合のないところも含めて明確に分かるルールというようなものをより明確化していくということが、働く人たちにとっての安定ということをもたらす基本的なフレームワークの部分であるというふうに思っております。
 その中で、一つの焦点はやはり、軸はやはり生涯を通じて安定した雇用、必ずしも一社だけとは限りませんが、そういったような安定した雇用を基本としながら、労働者に様々なニーズがあります、に対応して多様な働き方を選択できるような部分ということでありまして、これを具体的に現在の状況で置き換えますと、やはりパートタイマーあるいは派遣労働者といったような、もちろん働き方としては多様な働き方があるわけですが、正直言って、労働条件あるいは雇用期間が短期にとどまりがちである、不安定であるということも含めて、真に労働者のニーズに立って、例えば短時間であって働きたいというような局面が来たときにそういう働き方を選択できるといったような仕組みで、そういうニーズから中立的に選ばれるような最低限の枠組みを作っていくということが非常に重要なのではないかということであります。
 最後に、三点目は、いわゆるソーシャルパートナーシップの確立ということで書いてございます。
 このような働き方のルールあるいは変更といったようなことにつきましては、基本的には労働者と使用者側の対等な協議といったようなもので作られていくということが中心になるというふうに思います。しかしながら、現在の我が国のところは、いわゆる労働組合のあるところは個別的な企業労使ということが中心になってそういうルールを作ってきているわけで、それが社会的にも波及をしてきておるわけでありますけれども、やはりこれだけ産業構造が変化をしてくると、一企業の、一企業内労使のところでは、どうしても市場競争ということの中でなかなか限界が出てくる部分がある。そういうことではなくて、国、産業あるいは地域も含めてどういったような安心した働き方の枠組みが作れるかといったようなことを、その多くのレベルで、いわゆる労使、あるいは公、政労使、公労使といったような社会的な合意形成の仕組みといったようなものを実態的に作っていくということが特にこれからは求められていくのではないかということであります。
 以上のような観点を中心にしながら、労働、現在の厳しい状況を克服をし、新しい働き方を構築をしていくということが現在問われているということであるというふうに思っております。
 レジュメの方では「当面の労働政策課題」というふうに書いてありますが、今申し上げたようなことを軸にして当面のことを考えると大体こういったような論点があるのではないかなということでございますので、基本的な考え方ということで以上のような御紹介をさせていただきます。
 ありがとうございました。
#6
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 次に、松井参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(松井博志君) 日経連の松井でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは、ちょっとお手元に資料を何点か多めに出さしていただいております。レジュメと更にもう一つ、この労働問題研究委員会報告というものもお配りして、更には春季労使交渉の手引きなるものもお配りさしていただいております。もう一つリーフレットとして、私どもがエージフリー社会に対して取り組むその一例として、こういった資料もお配りさしていただいております。
 それでは、レジュメにほぼ沿いながら、他にお配りしました資料も含めて目を通しながら、私ども使用者の側の考え方をお話し申し上げたいと思います。
 今、もう日本総研の山田さんからはマクロの雇用の問題、経済問題も含めてお話もございました。その意味で、私は当面の今、足下の状況にスポットを当ててお話をさせていただきたいと思っております。
 御承知のように、今我が国の企業労使は春季労使交渉、組合側からいいますと春闘あるいは賃闘といろいろ言い方もあるようです。今は生活改善闘争という言い方をしているようですが、この中で、私どもといたしまして今提案申し上げておりますことは、まず働き方の諸制度を総合的に見直す場であると位置付けてございます。
 と申しますのは、新聞紙上等では、賃上げがゼロだとかベアゼロだとか賃下げだとか、そういう中にあっては労使交渉の意味がほとんどないのではないかという指摘も時たまなされておりますけれども、私どもといたしましては、賃金がもしかして凍結される、あるいは引き下げられる、そのような中であればこそ、それぞれに置かれた企業労使がその状況を確実に把握し、情報を交換し、情報を共有して、その危機を乗り切る対応が非常に重要なのではないかと考えております。
 その意味では、賃上げがあれば組合があって当然だということを私は考えておりません。こういう時代にこそ、労働組合があるならば、その労働組合と真摯な話合いを通じてその企業がどのような形で今後も健全に運営していかれるか、それを労使共々に話し合うのがこの春季労使交渉の場であろうかと考えております。
 私どもの基本に据えておりますことは、やはり企業が存続することが重要であります。その意味では、その支払能力に基づいた総額人件費の管理をする。その場合のもう一つの重要な視点としまして、このような高失業の時代でありますので、企業の中でできる限り雇用を維持できる仕組みや何か、それをやはりお考えいただきたい、そういうことを提案申し上げている次第でございます。
 では、ちょっとデータで見てみますと、どのような状況があったか、過去を見てみたいと思います。
 お手元の資料、レジュメの後ろに書いてございます。これは労働分配率と賃上げ率の推移ということで、バブル崩壊後約十年間の推移を見たものでございます。労働分配率は、これは四半期ベースで見ておりますけれども、傾向的に上がってきております。労働分配率というのは、御承知のように企業が生み出した付加価値を、給料、賃金、役員報酬も含まれておりますけれども、働いた人たちに配分していくものでございます。他方、賃上げ率はどうかといいますと、御承知のように低下傾向にある、これが実態でございます。
 中にはこの賃上げすらできなかった企業が多いという例証、事実をお知らせするために、下の図の二をごらんいただければと思っております。これは私どもの団体でなくて中小企業団体中央会の資料で、中小企業における賃上げを実施しない企業の割合の推移の数でございます。
 したがいまして、まだ賃上げがなされている企業はまだまだましな方だというのが実態でございまして、賃上げをしない、この中には賃下げも含まれていると私どもとしては認識しておる次第でございます。
 先ほど、山田さんの方の御説明の中でも、かつて中小企業は雇用の受皿としての機能が十分あったということがございましたけれども、中小企業においてまだそういう人を必要とする企業もたくさんあるのが事実でございますけれども、他方、なかなか吸収し得ない、事業を存続できないような状況が続いている、こういう例も多く見られるのが実態であろうかと思うところです。
 それでは、またレジュメにお戻りいただきまして、お話を申し上げたいと思います。
 私どもといたしまして、雇用問題についてどのように考えているかといいますと、やはり当面の短期の措置と中長期の措置というものに分けて対応すべきという考え方を持っております。
 お手元の資料といたしましては、この「労働問題研究委員会報告」の雇用問題を扱っております三章のところをちょっとごらんいただければと思います。ページといたしましてはその一枚目というか二枚目の二十八ページのところでございますけれども、「雇用のセーフティネットの充実を」と書いてございますが、まず雇用問題については、今申し上げましたように、短期・当面の対処と中長期の観点から対応すべきである。基本的に今現在重要なことは現下の深刻な雇用失業情勢に対する雇用対策を打つべきであると。中長期的には少子高齢化の進行あるいは勤労者の就労ニーズの多様化などに対応する仕組みを考えていく、こういう必要があるということであります。
 私どもといたしまして、いわゆる雇用のセーフティーネットはどのようなものかと考えておりますと、ここの三つ目のパラグラフに書いてございますように、やはり一番重要なことは@にありますように雇用の維持、創出であります。二番目に勤労者の職業能力の向上、片仮名で言いますとエンプロイアビリティーの向上ということになろうかと思います。三番目にそれを支える大きな仕組みとしての政府の雇用対策あるいは雇用保険、社会保障の充実、この三つが相まって雇用のセーフティーネットを支えていくものと理解をしております。それぞれがそれぞれに与えられた役割を担ってこそこのセーフティーネットが確実なものとなると理解をしております。
 一番目の雇用の維持、創出であります。それについてはやはり民間企業、経営者の責務が重要であります。政府におかれては、事業規制となっているもの、それをできる限り取り払っていただいて、民間が自由な活動ができ、そして雇用の維持、更には創出ができる環境条件を整えていただく、そういうことが重要だと思っております。
 二番目に、勤労者の職業能力の向上については、やはり今まで企業が基本的には丸抱え的に従業員の教育に責任を持ち対応をしてきた、これが実態でありましたけれども、やはりこれからは従業員の方にもより自らを磨く努力を続けていただく、そこに対して企業なり政府あるいは地方自治体などが支援していく、こういう仕組みがより重要なのではないかと思っております。
 三番目に、そのような対応をしたとしても、やはり今の現状を見てみますと、失業者が大量に発生している事実がございます。そういう方々に対する支援がやはり欠かせないということは言うまでもないことかと思っております。
 私どもといたしましては、そのような考え方に立ちまして、お手元のもう一つのページをごらんいただければと思いますが、昨年八月、日経連といたしまして緊急雇用対策プログラムを策定いたしました。先生方の御協力もございまして、これは昨年の臨時国会、秋の臨時国会においての第一次補正予算の審議がなされました。私どもの考え方が基本的には取り入れられ、それが今政策に、実行に向けてまだ進んだばかり、やっと始まったばかりのところがございますけれども、私どもといたしましてはそれが確実、着実に実行に移されることを期待しておるところでございます。費用制約がある中、なかなか新たな予算というものを組み込むということは非常に難しかったかと思っておりますけれども、この場をかりまして改めて御礼申し上げたいと思うところでございます。
 私どもといたしまして、更に民間でできることがいかようなものかと考えたところが、次の三十一ページのところでございます。ここでは、「柔軟なワークシェアリングの実践」と小見出しを付けておりますけれども、当面の措置としまして、失業増大の回避のために雇用の維持確保、更には総額人件費の抑制を両立するための緊急避難的なワークシェアリングが必要なのではないかと考えております。
 ワークシェアリングにつきましては、今、政労使という場面においても様々な議論が展開されております。さらには、企業側の中でも、これは生産性の低下につながるのではないかということで、かなり危惧する向きもございます。私どもといたしましては、そのような危惧が少しでも払拭されるべく、どのようなワークシェアリングの導入の仕方があり得べしか、それを今現在、連合さんともいろいろ協議を進めながら議論をしているところでございます。
 ここのワークシェアリングについては、次のページに書いてございますように、大きく分けて四種類あるだろう。これは厚生労働省の研究会の報告に基づいて書いたものでございますけれども、私どもといたしましては、この四くくりというよりももう一つ少ないくくりで、当面の措置と中長期的な措置、そういう考え方で対応すべきではないかと考えておるわけであります。
 それは、三十三ページをごらんいただければと思います。繰り返しになりますけれども、そこの三十三ページの二つ目のパラグラフ、「とりわけ当面」というところでございますけれども、過剰雇用と人件費負担に苦しむ企業においては、緊急避難措置として、労働時間を短縮し雇用を維持し、賃金、賞与など、これはどの部分について対応していくかはやはり現場のそれぞれの労使が工夫をして決めていただければということで、総額人件費を少しでも負担の少なくなる方法を考えてほしい、そういう提案をさせていただいております。
 ここの部分については様々な議論が行われておりまして、企業のそれぞれの取組、やはり置かれた状況が違うようであります。全社的に行うもの、あるいは生産ラインの一部だけ行うもの、様々のようであります。その場合に、私どもといたしましては、ワークシェアリング、この緊急避難的なワークシェアリングというのはどのようなものかということの考えは、その最後のパラグラフに書いてございます。今までの我が国の企業労使というのは、やはり企業の実情に応じて、不況時には採用抑制、配転、出向、あるいは残業規制、一時休業等々で、厳しい状況になってくればやはり希望退職の募集、整理解雇ということになってこようかと思います。
 こういう様々な雇用調整施策を講じ、雇用安定を図ってきたわけでありますけれども、やはり先ほど山田さんからのお話もあったように、雇用の受皿が非常に少なくなってきているという実態がございます。その意味で、今もし雇用を支え、そしてそれが企業経営としてもマイナスにならない、そういう状況であるならば、今までの取ってきた雇用調整施策にもう一つ加えた選択肢の一つとしてこういったものも取り入れていただけないものかということで、私どもとしましては会員企業に向けて発信しておるところでございます。
 私どもといたしましては、このワークシェアリングの問題については、基本的に雇用、賃金、労働時間を多様かつ適切に配分する仕組みであると理解をしております。これは中長期的にも、短期のみならず中長期的にも雇用の維持創出が図られる仕組みであると理解をしております。
 次のページをごらんいただければと思います。
 「雇用ポートフォリオの実践」、「雇用多様化の推進」と書いておりますけれども、二つ目のパラグラフに書いてございますように、これからやはり企業として必要な人材を確保するためには、勤労者のニーズに即した多様な雇用形態あるいは就労形態を用意をしまして、従業員の方の働き方の選択肢を増やす工夫が必要と考えております。その工夫をしていく中にありましても、やはり経営効率の向上あるいは生産性が低下しない仕組みと雇用コストのバランスを図っていく、同時に図っていくことが重要であろうかと思います。これは、日経連が従来から提唱してまいりました雇用ポートフォリオをより一層企業の実情に合った形で進めていただければと考えているところであります。
 雇用ポートフォリオにつきましては詳しく御説明申し上げませんが、お手元の「春季労使交渉の手引き」というところの五十五ページにその概要を紹介させていただいております。ここに書いてあるものは、一番下のところ、長期蓄積能力活用型グループ、これはいわゆる今までの正社員のグループ、そして真ん中の箱の高度専門能力活用型グループ、これは高度の専門能力を持った契約社員みたいな方々をイメージしております。一番右上の箱の雇用柔軟型グループは、場合によっては派遣労働者あるいはパートタイム労働、このような方々を想定しているものでございます。私どもは、柔軟なワークシェアリングに加えて、このような雇用ポートフォリオをうまく活用して、企業の運営に合って、そして更には従業員のニーズに合ったものを作り上げていっていただければと考えておる次第であります。
 それは、またこのコピーでお配りした資料にお戻りいただきたいんですけれども、三十五ページに書いてございますように、今後、少子高齢化が進んでいく、そして労働力が減少していく中にありまして、今、足下の企業における雇用判断というのは非常に厳しいものがございますけれども、やはり今後の中長期を見定めたときに、対応ができ、今からも準備していかれる企業が、人材獲得競争が仮に構造改革がうまくいった三年後、四年後に起きたときには、やはり企業として確実に人材獲得競争というところでは生き残れると私どもとしては認識しておる次第でございます。その意味で、今から可能な範囲でこういう方向で取り組んでいただきたいと考えておる次第でございます。
 お手元の資料といたしまして、そのためにはやはり企業として行わなくてはいけないことは何か。それが三十八ページのところに「人事・賃金制度の改革を進めよう」という形で書いてございます。
 基本的には、ここの二つ目のパラグラフに書いてございますように、仕事と責任の差に応じてやはり成果を適切に評価していくと。年齢、勤続、学歴など属人的な要素が重視されがちであったのが今までの日本における賃金制度の実態でございましたけれども、その属人的要素が企業に対する貢献あるいは成果に結び付いていない場合にはその要素を除いていく努力、それが重要であろうと考えてございます。
 時間が参ったようですので、最後にもう一言だけお話し申し上げておきたいと思います。
 次のページの三十九ページ、「労働市場改革の推進」でございます。
 労働市場がやはり経済のグローバル化に合わせた形での対応をしていかないと、やはり日本としても国際競争に打ちかっていかれないと考えております。その意味で、キーワードとしましては、ここの四つにありますように、移動性、柔軟性、専門性、多様性が生かされる仕組みを構築していくことが重要かと思っております。
 私どもといたしましては、例えば多様性という意味合いでは、日経連の中にダイバーシティ研究会というものを設けまして、いかに多様な人材を活用していくか、それが企業の今後の命運を制するものであるという命題の下、議論を進めている最中でございます。
 柔軟性等につきましては、やはり労働力需給制度に対する規制をより撤廃をしていっていただくことが必要かと思っております。
 それは、具体的には四十ページの二つ目のパラグラフに書いてございます。人材派遣事業における派遣期間の諸制限の撤廃等、あるいは物の製造の業務、医療関係業務への派遣の禁止が今現在なされておりますけれども、その部分についても派遣事業ができるような仕組みの構築が必要だと考えております。さらには、雇用期間の原則一年となっているものを五年に延長する、あるいは労働時間規制そのものにつきましても、いわゆる工場労働者のみを想定した今の労働時間規制については、ホワイトカラー層、そして知識で、知恵で勝負していく日本の企業の競争力を決めていく、そういう労働者が増えている中にありましては、その方々の労働時間管理についても適切な見直しをしていただきたいと考えております。
 時間が参りましたので、私からは以上とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#8
○会長(勝木健司君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑はおおむね午後四時ごろまでをめどとさせていただきます。
 なお、時間が限られておりますので、原則一問一答形式で、質疑者お一人当たりの発言時間は五分程度までに収めていただきますようお願いをいたします。
 質疑を希望される委員は、挙手の上、会長の指名を待って質疑を行うようお願いをいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
#9
○辻泰弘君 民主党・新緑風会、辻泰弘でございます。
 まず、山田参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
 まず第一問は、小泉改革についてどう評価されるかというのを総括的にお伺いしたいのが第一点。それから、不良債権とデフレということが優先順位という議論がございますが、その因果関係といいますか、そのことについて御見解をお伺いしたい。
 中村参考人につきましては、ワークシェアリングが検討されているわけですが、今の検討の現状と、また政策、現時点で結構ですが、政策としてどういうサポートができるのか、そのことについて。それと、セーフティーネットの具体策。また、労働移動においての不利にならない社会システムづくりというのがございますが、この点についての具体的なことがあればお聞かせいただきたい。中村さんについては三点でございます。
 それから、松井参考人につきましては、ワークシェアリングについて日経連会長が財政的な措置、すなわち助成金的なものは不要であるというふうな御見解を出されたと思いますが、その点についてのお考えをお聞きしたいということと、説明資料もございますけれども、終身雇用、それから外国人労働、このことについての日経連としてのお考えをお伺いしたいと思います。
#10
○参考人(山田久君) 御質問二点に関して。
 まず最初、小泉改革に対する評価でございますけれども、今の日本の経済の置かれている問題、言わば失われた十年という形でのいろんな形の構造調整、必要な改革というのか、というのが事実上この過去十年にわたって先送りにされてきたことはやはり認めざるを得ないと思います。そういうものを進めていくという基本方針に関しては全く評価されるべきだと思います。
 ただ、その進め方に関して、ある部分、今の議論は後ろ向きの議論、当然不良債権、あるいは財政再建ということは当然必要でございますけれども、その一方で新しい日本の全体像、特に今不足しているのは、恐らく国民の非常に大きな不安、雇用不安に代表されるそういう部分というのは、国民がどういう形で、環境が変わっていった中で、自分たちの不安を解消していって前向きに生活していくかというところが見えてないところに非常に一番大きな問題があると。
 それは、実は産業の問題はそうなんだけれども、産業だけじゃなくて我々の生活の在り方、あるいはもっと言いますと家族の在り方みたいなものも含めた見直しというのが実は必要になってくるわけですけれども、その辺の、そうすると例えば社会保障の在り方であるとか、私が先ほどの資料で最後に説明した、最後の生活保障の見直しという全般の話にかかわるところなんですが、その辺の議論がまだ十分されてないなと。逆に国民のそういう前向きに生活していくというところに対して、その不安を解消するにはこういうところの議論をもっとやらないとだめなんだなと。
 それから、当然新しい産業をどう興していくのか。これが議論、抽象論としてはあるわけですけれども、それを具体的にどういうふうにやっていくのかという議論はまだこれからやらないとだめだという、その産業のところと、新しい産業を興すというところと生活保障をどうするかというところがやっぱり重要なんだと思います。
 それから、デフレと不良債権の因果関係に関してですけれども、これは大枠言ってしまいますと、デフレというのが一番大きな日本の今抱えている象徴的な問題だと思います。当然、不良債権、過去に起こってしまった問題としてこれは当然処理していかないとだめなわけですけれども、その結果としてはいろんな問題が生じているのは事実なんでしょうけれども、ただ不良債権自体も、スピードの問題はありますけれども、徐々に進んできているのは事実でありまして、そういう面で、もちろんこれスピードアップする必要はあるわけですけれども、デフレがやっぱり根底の問題としてあると。
 ですから、ただデフレに対して、じゃ我々はどういう形で対応できるのか。もちろん例の今金融政策でもって一種の調整インフレに近い形で解決しようという議論もあるわけですけれども、私自身としては、今のデフレというのは基本的に、先ほど冒頭の中で発言させていただきましたように、アジア諸国のやっぱり工業化、そういう中で日本の高コスト体質というのが、やはり基本的にそういう問題がある。
 ですから、ある部分、名目の成長率みたいなものがなかなかプラスになってない、こないというのはこれ仕方がないというのか、そういうところを前提として、要はいかにスムーズに新しい産業を興していく、あるいは低コストで生活できるような環境を作っていく、それは正に今の議論だと思いますけれども。それから、労働移動をどうやって円滑に進めていく、そのところの議論をすべきなんじゃないのかなと。なかなか現実問題としては金融政策でもってインフレを起こすというのは難しいんじゃないのかなというふうに考えております。
 ちょっと長くなりました。申し訳ございません。
#11
○参考人(中村善雄君) 一点目のワークシェアリングの問題でございます。
 先ほど松井参考人の方から考え方一部披瀝されましたが、基本的には短期の緊急避難型のワークシェアリング、それから中長期のワークシェアリングの課題ということについてまず考え方を整理をしようということで、それぞれ政労使、現在考え方の整理を行っておるところであります。一応政労使は三月中旬ぐらいまでに一定の方向性を出そうということで議論が進められておるところでありまして、まだここで披瀝できるような結論といったような方向は出ておりません。
 ただ、まず緊急避難型ワークシェアリングの問題については正直言って個別の労使、様々な考え方があります。現在マスコミで出ているような比較的労使関係が成熟をしているようなところの事例では、それはそれなりに労働時間を一定の短縮をして、しかもそれは雇用を守るためですね、一定の期間を限って、雇用を維持するために、ある程度の所定時間を減らして、それに見合う賃金減収分、本来は労働者にとっては所定労働時間を働いてその分の対価をもらうということが自らの生活そのものの糧、しかもそれ以外にはほとんどないということでありますから、仮に所定時間が減ったとしても、それに伴ってその分だけ減ってもいいよということでは必ずしもないわけでありまして、現在労使で協議をされているところは、やはりそういうことを、措置がなされるに伴ってきちっとやはりそれで生活が立つのかということを労働組合は労働組合として組合員の意見をきっちりと聞きながら確認をしつつ、そうはいっても当面の措置としてやはりやむを得ないといったようなことで出てきているような対応がいわゆる緊急避難的ということだと思います。
 しかし、それだけではなくて、非常に厳しい、正しく少々労働時間を短縮しても、本当にこれで大丈夫なのかいねというところの一杯出ているところでありまして、そういったようなところがワークシェアリングをきちっとやれば本当に当面の雇用を維持ができるのかどうか。あるいは逆に、単に賃金コストだけ減らすためだけのワークシェアリングということがしばしば提案されがちでありますから、まず緊急避難型ワークシェアリングということについて、その考え方について余りにも過度な逸脱が起こらないということを前提に整理をする必要があるのではないかなという、ほぼそういう考え方で、具体的な、労働時間を減らして賃金どうするかという細かい議論までは、現実には個別の労使ということになると思いますが、基本的な議論の整理を少なくとも三月中には何とか出せるのではないかと。これは松井参考人のニュアンスとは違うが、基本的な方向としてはそういうことだというふうに理解をしております。
 政策としてのサポートについてですが、現在、地方自治体ベースのところではそれを様々なそういう促進するための枠組みを作ろうといったような政策的な支援を基金のような形で考えているところも出てきてございます。ただ、いわゆる今言った緊急避難型という部分についてどういったような政策のサポートがあり得るか、一定の減収分の補てんがあり得るかどうかということについては、今はこれからの議論ということで具体的にまだ確定的な方向は出ておりません。
 それから、二点目のセーフティーネットの具体策の問題でありますが、現在の非常に雇用情勢が厳しいということについて、やはりまず何よりも失業者の再就職、生活の支援と再就職をきちっとするための仕組みの整備だろうということだと思います。
 説明の部分ではありましたが、私の説明資料で「当面の労働政策課題」の一点目の雇用対策の抜本強化の中で、やはり失業者の再就職支援、これも職業紹介をきちっとできる、しかも能力の再開発と結び付いてできるような仕組みを現場でどういったように作っていくか、この部分が非常に重要な問題だろうということを思っておりまして、やはり能力のミスマッチを含めた様々なミスマッチが失業長期化の要因になっておるわけでございまして、実際にその方に適合するような職をどうやって見付けてくるか、マッチングさせるか、さらには、そういう方にはすぐマッチングということはなかなか難しいわけでありますから、どういったような能力開発をきちっとフォローしてあげればちゃんと安定した再就職に結び付くのかということが非常に重要な部分でございまして、これは実は戦後の労使関係が作ってきたように、実は非常にノウハウの問題だというふうに思っておりまして、ただ単に今、役割上、分担でそういう仕掛けがありますという窓口を作るだけではなくて、そういったような仕組みをいかに具体的に現場で作っていけるか。これは正に国とそれから雇用開発を担う都道府県並びにそういう現場の使用者ももちろん、労使ということの枠組みで、先ほどコミュニティーカレッジという話も一部ございましたが、本当にノウハウとしていかに作っていけるかということがやはり非常に重要なポイントだろうと。まあ現実にやっているところも出てきておるわけでございます。
 それに対して、連合としては予算的な部分でやはり当面六十万人を含めて二兆円程度の特別の基金を作って、少なくともそういうモデル的なプロジェクトをきちっと作って、それをきちっと全国的に展開できるようなノウハウの波及の仕組みというのは、これは非常に重要なことだろうというふうに思っております。
 不利にならない仕組みづくりということでありますが、これも今の話と関連するわけで、先ほど私、あらゆるレベルにおいてソーシャルパートナーシップの確立体制を本当にシステムとして作っていくことが必要だということをお話をさせていただきましたけれども、これはやはりその業界、それから労使、そういったような部分のところでのお互いの情報の公開をしつつ、なおかつどういったような能力が必要かというような客観化をスタンダードに作っていく。さらには、労働移動ということにつきまして、必要な情報、能力がどういったようなものがあるのかといったような拾い出しの提供というのをまずは先行できる、とりわけ物づくり分野の、地域を中心にした物づくりの分野、さらには、それと産業、労使がクロスをした分野、そういうところから実態的に作っていくということが非常に重要だろうと思っておりまして、お国の方でも、雇用・能力開発機構の方でかなり精緻な能力の評価というような仕組みがモデルとして二、三、開発をされております。こういったようなモデルを核にしながら、労使がその参画の中でこのモデルを様々な業種単位で作っていくということがやはり非常に重要な仕組みづくりの一つである。
 それからもう一つは、日経連さんからはちょっと、資料の中にございましたように、いわゆる年齢ということのみで一律に排除をしない、やはりその人の能力をきちんと見る、そういったような仕組みをまず個別の労使を含めて徹底をさせていくということが非常に重要なことだろうと思っております。
 少々長くなりましたが、一応そういうような考えであります。
#12
○参考人(松井博志君) それでは、ワークシェアリングについての、特に助成のところについてのお話をさせていただきます。
 お手元の資料の、レジュメの後ろに付いております三枚目をごらんいただければと思います。これ、私、今、私どもが作成したものでございまして、連合さんあるいは政府の意見がこのようなものかどうかは、私どもの目から見たものでございます。その点だけ、資料については御了解願えればと思います。
 そこの「当面の措置」のBの「政府の助成措置」のところに書いてございます。結論的には、私どもとしてはまず「不要」と書かさしていただいております。それはなぜかといいますと、先ほど冒頭にも申し上げましたように、今企業においては賃金凍結あるいは賃金を引き下げなくてはいけないような企業も多数あると。その中にありまして、仮にワークシェアリングで労働時間を短縮して賃金を引き下げる企業に仮に助成をする場合に、単に賃金を引き下げた企業、労働時間の短縮なしに引き下げた企業に対してなぜ助成をしないのかと。その社会的公平性を担保する理屈はどのようなものがあるのか、その点をやはり私どもとしては非常に重視してございます。より厳しい状況に置かれているのはどちらかということをお考えいただければ、先生方に何も申し上げるまでもない結論だと私どもとしては理解しております。
 それからもう一つ、助成金を付けるという場合に様々な要件を付する必要があろうかと思います。私どもがもう一つ懸念しておりますことは、ワークシェアリングの具体的な取組に当たっては、個別の様々な企業の実態によっていろんなバリエーションがあるだろうと考えております。そういたしますと、変な助成金のための要件が付されることがそれぞれの企業労使において最適な仕組みを作る阻害要因の一つになりはしないかと、そういうことを心配しております。
 ここには書いてないんですけれども、もう一つありますことは、助成金を行う場合、じゃ財源はどこに求めるのかということをきちんと議論していかなくてはいけないと考えております。今、こちらの中村さんもそれに関係してきたわけでありますけれども、昨年来から先生方の御協力も得て、さらには、厚生労働省の審議会のレベルにおいて様々な助成金の統廃合を行っているという実態がございます。それを廃止する、あるいは統合することについては、かなり労働組合側からも反対等がございました。私どもといたしましては、今の厳しい雇用情勢で、雇用保険の本体給付、失業給付部分の資金が枯渇しそうな状況にあって、更にこれをもっとよこせというのが本当にいいのかどうか、その点も含めて対応をしていかなくてはいけないと考えております。
 ただ、もう一つ、もし社会的にそれが許されるという考え方を私どもとして一つ考えておりますのは、仮に、この人たちが失業するよりも失業しないで支えたんだから偉いんだと、そういう企業はどこなんだと、そういうことを多くの人たちが納得のいく仕組みで要件を設立あるいは設定ができるならば、私は、ワークシェアリングあるいはワークシェアリングでなくても賃下げをしたところへの補償、助成というのもあり得るのではないかと考えております。これがまずワークシェアリングの助成のところでございます。
 それから、一点、中村さんがおっしゃられたところでありますが、いろんな形で期待がされている政労使のワークシェアリングの検討の会議の結論なんですけれども、様々な今状況によりまして三月中には結論が得られない、単に日程がうまく合わないという理由も一方にはございまして、三月中にはちょっと出そうにないだろうというのが私の知るところの最新の情報であります。
 次に、終身雇用についてはという御質問がございました。
 私ども、先ほど雇用ポートフォリオの図表をお示ししまして簡単に考え方を述べさせていただきましたが、これは一九九五年に提案をさせていただいたものでございます。その当時、あるいはその後のフォローアップ調査ということでいたしましたところ、やはりこの長期蓄積能力活用型グループ、いわゆる正社員のグループは、将来小さくはなるだろうけれども、まだずっとマジョリティーにあると。当時のその後のフォローアップ調査でも、少なくなってもまだ七割くらいはいるだろうというアンケート結果が出ております。その分、ほかの部分が膨らんでいる事実もございます。
 一つの考え方といたしましては、これはいろんな考え方がございますけれども、雇用柔軟型あるいは専門能力活用型グループが増えることによってこの正社員のグループである部分の終身雇用は守られるという、そういう図式も考えられると思います。
 併せて行われるべきことは、その正社員のグループの人たちにおいて、やはり成果に応じた処遇制度を徹底することによりまして、企業側からするとちょっと払い過ぎであるという人を外に押し出したいという、そういう気持ちをやはり少なくしていく賃金制度の構築が一部で行われていかないと、私は終身雇用という形のものが守れないと思います。
 もう一つ重要なことは、やはり技能形成という観点からいたしますと、短期にすべて成果が出し得る技術、技能ばかりではございません。最近の朝のNHKの七時四十分前後の番組で、熟練の人をいかに生かしていくかという番組がニュース番組の中で取り入れられておりますけれども、他方、やはり日本だからこそできる、大量生産のものはもう日本で維持することは非常に難しくなってきておりますので、熟練が生かせるという仕組みもやはり重要であります。
 そういう場合には、やはり長期で雇って、その人たちの長期に雇ったものを企業に長い間でリターンとして返してもらう。これは日本として、やはり捨ててしまうと、本当の意味での生存、済みません、製造の基盤がなくなってしまうことは大変危機的なことになり得ると考えております。
 したがいまして、結論を申し上げますと、終身雇用、あるいは終身雇用というよりも長期雇用という言い方の方がよろしいかと思いますけれども、その部分は相変わらず残っていくだろうと。それはすべてなくなるということではなくて、やはり量的には減っていかざるを得ない、それが不可避である。もう一つ、それは働く方の側が長期雇用を望まない方々も増えていく、これも実態であろうかと思います。
 最後に、外国人雇用の御質問があったかと思います。
 まず、外国人雇用について、私どもとしまして、多様な人材を生かすという観点から、やはり必要な外国人の方には日本の産業を支えてもらうためにより活躍していただかなくてはいけないというのがまず考え方の一方でございます。
 他方、もう一つ、いわゆる不法就労という方々の対応をどのようにしていくかというのは別の観点からの対応が必要だろうと思っております。と申しますのは、やはり日本で稼ぎ出す賃金というのは、例えば中国の人からしますと、まあ三年くらい稼げば、家に、母国に戻って家が建つくらいの状況であります。経済学的には、そういう方々のこちらに来る圧力は止められません。止められないならば、そういう方々をきちっとした形で処遇していくものがやはり必要なのではないかと思っております。
 以上です。
#13
○藤井基之君 自由民主党の藤井でございます。非常に参考になるお話を三参考人の方から聞かせていただき、ありがとうございます。
 私、山田参考人にちょっと、主としてお尋ねしたいんですが、といいますのは、山田参考人のレジュメの中の、これは時間的な問題もあったと思うんですが、最後の方のところで、「ポスト戦後型雇用創造モデルへの課題」のところの一番最後に社会保障制度の抜本的な見直しをと、こういうふうなお話をレジュメに書かれている。ただ、残念ながら時間的な制約もありまして、説明が非常に不足したんではないかと思います。
 それで、お尋ねしたいんですが、「就業形態・家族モデルに中立的な制度へ」と、こういうふうに書かれている。これは山田参考人のほかの書物等を見ますと、例えば個人単位の社会保障制度を構築する問題であるとか、それからナショナルミニマムを、例えばそれは税方式とでも申しましょうか、そういったことを導入するやり方というのが新しい時代に対応するのではないかという、こういうようなお説を唱えられているようで、その辺りについて少し説明をしていただけませんでしょうか。
#14
○参考人(山田久君) 本質的な部分はもうおっしゃっていただいた、基本的には個人ベースという考え方ですね。
 今の社会保障制度というのはいわゆる社会保険方式になっているわけですね。それと、もう当然、年金でいきますと、基礎年金、国民年金と併存しているわけですけれども、この社会保険方式というのは基本的にこれ工業化社会が生んだ形態ですね。要は企業で個人が雇われるということを前提にした社会なわけですね。ところが、当然それ以前というのは、自営業というのは、そういう時代じゃなくて、家族というのか自営業全体として社会保障してきた。
 ある部分、今、例えばアメリカの状況なんかを見ていますと、先ほどちょっと御説明したんですけれども、インディペンデント・コントラクターという人たちが出てきている。ある部分、これも一種の業務委託なので余りポジティブに評価し過ぎるのも問題なわけですけれども、ただ、中にはやっぱり専門的な力を使いながら、自立した、自営業的に働いている人も増えてきているわけですね。恐らく、これというのは一種の産業構造の転換、製造業からサービス業というのか、サービスとかソフト、言わば工業化社会から情報化社会という昔から言われている議論でしょうけれども、ある部分それが徐々に進行してくる中で新たに生まれてくる雇用形態だと思うんですね。そうすると、これから当然、企業に個人が雇われるという形態は当然残るんですけれども、必ずしもそればかりじゃなくなってくる。
 例えばアメリカで一つの、これは一つの例ですけれども、若いときは派遣労働者で働いて、それからテンプ・ツー・ハイヤーといいますけれども、正社員としてなっていく。ある程度の年齢になるとインディペンデント・コントラクターとして自立していくというふうになってくると、今の社会保険の仕組みだと対応できないというか、非常に煩雑な形になってきているわけですね。ですから、就業形態に中立的というのはそういう意味合い、そういうことを想定する。
 それから、女性もこれから働いてくるし、共働きが恐らくより一般的になってくると、いわゆる第三号被保険者の問題というのは当然これから出てくるわけで、そうするとベースとしてやはり基礎年金で必要最小限のところはやる。ところが、その上の部分というのが、どういう企業に勤めるかによって非常に優遇が違っているわけですね。
 だから、これは一つの極論なわけですけれども、私自身が考えるのは、厚生年金なんかは徐々に徐々に民営化していって、税制優遇というところで一律に、自営業の国民年金基金とかあるいは厚生年金基金、それから新しく出てくる四〇一k型というのも一つのくくりにしていって、最終的にはそういう方向に到達するように、ただ、これはすぐやっちゃいますといろいろ混乱がありますから、徐々に進めていくということがやっぱり重要なんじゃないのかなということで、ちょっと長くなりました。申し訳ございません。
#15
○藤井基之君 どうもありがとうございました。
#16
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。御苦労さまです。
 松井さんと中村さんにお伺いをしたいと思います。今、非常な失業という状態が起こっているわけですけれども、二点お伺いします。
 先ほどの御説明で、松井さんの方から経済のグローバル化に対応して国内の労働市場も変容を迫られているという御説明があって、一から四まで御説明があったんですけれども、私は、日本の労働者の働きようというか働かせられようというか、それは本当にこのグローバルな水準にあるのかどうかということが大変疑問に思っているんですね。
 例えば、その例に挙げますと、残業、違法なサービス残業、これは連合さんの調査でも五三・七%の人がさせられているというような調査がございますね。それから、残業も非常に長期の残業、年間三百六十時間を上回る長時間の残業が常態化している。それから、年休の完全取得率というのも四九・五%ということで五割を下回っていると。こういう状態は、これはやっぱりグローバルな水準にはほど遠い状態ではないかというふうに思います。
 この問題について中村さん、松井さんのお考えを一つお伺いしたいのと、それから今、雇用の創出ということでいろんなワークシェアリングの検討がされておりますし、私たちもそういう方向を一つの方向としては出しておりますが、しかし今すぐにでもできることといいますのは、この現行法とかあるいはこの判例を厳格に適用していけば、今申し上げましたサービス残業の解消だとか年休の完全取得だとか、残業を削減するということによって三百万人以上の雇用が拡大できるんじゃないかという、いろんな試算がございます。
 ですから、今これだけ失業者がたくさん三百三十七万人、もっと潜在的にあると言われている状況の下では、まずそこのところに手を付けるということが雇用の拡大という点からも最も手を付けなければいけない早道、確実な道じゃないかというこの点です。
 その二つの点について中村さんと松井さんにお伺いをしたいと思います。
 それから最後に、これは三人の参考人にお伺いしたいんですけれども、私は、今確かに失業率が非常に戦後最悪という状態なんですが、この日本の場合、単に失業者が増えているというだけではなくて、自死遺児という言葉が最近、自死遺児というのは自殺をした子供、保護者が自殺をしたその遺児ですね、その数が非常に増えているということなんです。これは非常に大変気になる数値が出ておりまして、保護者が自殺をされた遺児の高校生の奨学生、奨学生というのは奨学金をもらっている子供が三年前の八・五倍に増えているとか、こういう数が非常に出ております。二〇〇一年度ですけれども、自殺死遺児の保護者の原因を、遺書が残された方の原因を見てみると、これはあしなが育英会の調査なんですけれども、主な原因、動機が、リストラ、倒産、失業など仕事上の問題が二八・一%もあると。それから、借金苦など経済・生活上の問題一九・一%で、両方合わせれば四七・二%と約半数を占めておりまして、しかもそれが前年度比二〇・一%ということで非常に増加していると、急速に増加しているということで、非常に私は異常な事態ではないかというふうに思います。
 このような生活苦といいますか、そういう仕事に関連する問題で急速に自殺者が増えるというような、これはやっぱり私は、政府の政策上、産業再生法などでリストラを応援してどんどんやらせるというふうなことだとか、あるいは不良債権の最終処理ということで中小企業を倒産に追い込んでいくというような、私は背景としては政策の誤りが背景にあるというふうに思うんですけれども、その点で、この異常な自死遺児の急増という問題について、三人の参考人の皆さんはどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
 以上です。
#17
○会長(勝木健司君) この際、参考人にお願いいたします。御答弁もお一人五分以内でおまとめいただけますようにお願いを申し上げます。
#18
○参考人(山田久君) じゃ、私は自死遺児だけですね。これは、確かに深刻というのか、アメリカでもこれは七〇年代後半から八〇年代に掛けて、いわゆるダウンサイジング・アメリカということで非常に問題になったことですね。
 私は、これは一つの解決というのは、カウンセリングとか、あるいはアメリカによくある一種のセラピストとか、そういう分野というのが少なくとも喫緊な課題になってきているんだと思うんですね。非常に、日本自体も失業に弱い社会ですから、その辺の整備、特に、例えば失業者を支援していくときにカウンセリングというのはこれは非常に重要だ。要は、最初にそのショックをどうやって立ち直らしていくかということで一種の心理カウンセリングをやるわけですけれども、そういう人材の数も少ないし、まだ公的な、例えばハローワークのところでそういうことができているかというとできていない、あるいは公的な機関でもそういう仕組みができ上がっていないというところがあるわけで、そういうカウンセリングをどうやって社会的に充実させていくのかということが喫緊の課題なんじゃないのかなというふうに感じています。
 以上でございます。
#19
○参考人(中村善雄君) 自殺者の遺児の問題、非常に大変な問題だと思います、等については、先ほど私が、市場万能主義がやはり社会連帯を軸とした社会を目指すべきであるという基本トーンで、今の現在の雇用失業情勢というものは非常に弱い方たちの方にしわ寄せが寄っている。やっぱりそこのところはきちっとケアをできる体制を作っていかなければいけないというのが基本だろうというふうに思いまして、何よりも政策の軸はやはりそういう社会の在り方、温かい社会連帯ということを重視した政策を考えていただきたいし、労働組合としても努力をしたいというふうに思います。
 それから、これも一点目の御指摘のサービス残業、長時間、年休という問題、これも労働組合として非常に努力をしなければいけない部分がある。これも一面の事実でございます。
 ただし、いわゆるこういう働き方を変える、いかに変えるかというのがやはり今日の私の言いたかった点の一つでございまして、働きを含めたことを変えるということは、実は、今日はお示しをしませんでしたが、新しい労働運動としても自ら一生懸命やるということでございますし、先ほどちょっと出ました、いわゆるワークシェアリングの考え方より中長期の考え方の整理ということについても、現在のような働き方が、やはり暮らし方、働き方のバランスを含めて、働き方というのを社会的にもきちっと、社会的な合意というのをきちっと作っていこうじゃありませんかと。
 そういう意味では、ワークシェアリングというのは短期緊急避難的な雇用問題に対応する面もありますけれども、やはりそこのところの基本を政労使できちっと議論する場ということで、これは短期の結論ということではないかもしれません。もう少し時間を掛けて、きちっとこれは非常に国会でも含めて相当大きな枠組みで議論をして、新しい社会を作る起爆剤に是非していく方向にしていただきたいというふうに思います。
 すぐこのことを、雇用創出を今すぐできるということで、確かにこの部分のところを指導の厳格化というのはこれは当然のことだろうと思いますし、労働組合も、そういうことを安易に許してはいけないということも当然のことだろうというふうに思っております。その部分は、これは大きなそういう働き方を変えるということで特に重点的にやっていかなければいけないし、実は今度の春季生活闘争の中においても、実はその点検活動を一斉にやりましょうということで、その運動の提起をして今取り組んでいただいているところでございますし、まして、今、賃上げの労使交渉の中でやっているところは、まず時間管理の徹底の在り方ということについて、これを個別の労使の協議で十分実態に即して検討しながら突っ込んでいただいているというように理解をしております。
 ただ、それでも、この雇用情勢の中で、削っても、マクロ経済的に総労働供給、いわゆる労働時間と人数とそれをやっぱり適切にコントロールしていかなきゃいけない。その仕組みをどう作るかというのは中期的に非常に大きな課題だと思っています。その一つのやり方がワークシェアリングの議論の中で正しく、いわゆる様々な場での、レベルでの合意形成という形で、その種をきちっと作っていくということがやはり中長期の一つの核だろうというふうに思っていますが、短期の局面で行くと、やはり非常に厳しくなっているところで、例えば残業を減らす、あるいは、そういうところはもうほぼ恒常的に労働時間が落ちてきているというような実態ですから、それでも苦しいというところに対して、やはり労使の知恵の中でいかにしのいでいくという枠組みを作り、それを支援をしていく。当然ながら、こういうことをやるということは、労使がやるということは、当然サービス残業とか長時間労働とかいうこともなくて、要員管理をきちっとどれだけ詰められるかということが、やはり現実的な緊急避難ワークシェアリングといってもそれができることの大前提だろうというふうに考えております。
#20
○参考人(松井博志君) 五分と限られているので、賛成すべきところは、中村参考人の趣旨に基本的にまず賛成です。
 やはり、いわゆる私どもとしましてはサービス残業というものを言葉そのものを認めているわけではまずございませんが、労働時間管理の適正化はまず重要であるということ。それから、グローバルスタンダードというのは、どこをグローバルと見るかによって恐らく変わってくるであろうということです。
 今のいわゆる統計上で見る時間でいきますと、日本の製造業の生産労働者の労働時間というのは、フランスやドイツよりは圧倒的に長いけれども、イギリスとほぼ同じくらい。そして、アメリカと比べると日本の方が短いという実態がございます。これは先生方の御努力並びに労使の知恵の絞った結果、法定労働時間が短縮したことに加えて、それに対応する努力、さらに、今は不況であるということで短くなってきているのも事実かと思います。
 もう一つ重要なことは、欧米あるいはフランス、ドイツでもホワイトカラー層では物すごい働いている人たちもいます。したがいまして、本当に働いている時間がどのようなものなのかどうか。サービス労働、サービス残業ということを言いますと、私もここに呼ばれるためにいわゆるオフィス以外のところでもいろいろ頭を巡らせているのが実態です。これは、先生方はより国会にいる、あるいは議員会館の中にいらっしゃる以外のところでも様々なお考えをしながら職務を進められていると思います。そういう働き方をする労働者がやはり日本の中には増えてきておりますので、そういう方々にはそういう点に合った労働時間管理の方式がまずお願いできないものかというのが先ほど申し上げたところでございます。
 年休の問題につきましても、今の方式だと取得がしにくい。というのは、今、ドイツなどと比べますと、ドイツなどは例えば企業側が指定をして年休を取得させる仕組みになっておりますけれども、日本の場合は計画年休制度といっても年間五日は最低限残しておかないとできないという法律上の仕組みも一方であるのかと思います。さらに、病気のときのために残しておこうという人たちもいらっしゃいます。そういうことで、消化が進まない実態、さらには、中村さんがおっしゃられた要員管理上の問題もあろうかと思います。
 自殺の増加の問題については、私ども奥田会長も、失業率が増加するに伴って自殺者が増えている、こういう失業に脆弱な体質にあると、日本の構造は、その点については大変懸念をしておるところでございます。
 昨年の十月から施行されております雇用対策法の中では、大量失業者を出したところには再就職援助の支援、そういう計画を立てなくてはいけない、そういう仕組みになってございます。もちろん、大量でない企業もそういうことを行うということが法律の中に定められております。
 私どもといたしましては、その部分について、よりもう少し周知を図って企業に取組を進めていただくのが一つと、さらには、先ほど山田さんからもございましたけれども、ハローワークではカウンセリングという形にはほとんどなされておりません。それができるのは、今行われているのは再就職支援会社でございます。そういうところの活用をより進めて、やはりソフトランディングをしてもらう、そういうものがより活用される道を図っていく、それが重要なのではないかとも思っております。
 以上です。
#21
○魚住汎英君 自由民主党の魚住です。
 今日は、参考人の皆さん、御苦労さんであります。
 いろいろと御説、お伺いをしておりまして、皆さん方も大変、何といいますか、悩みの多い問題で頭が薄くなったり白髪が生えたりということで御苦労だなと思っておりますが、私も全く同じようなものでありまして、実際、経営者として人を何百人から雇用しておるんですが、本当に頭の痛い問題ばかりなんです。
 そこで、実は先週でありますけれども、この調査会で研修をいたしまして、ハローワークや何かのところで実際自分が失業者となった場合にどれぐらいの雇用があるのかなということで、案内をしてくれた人の指示に従っていろいろとテストしてみたんですが、ゼロでありました。六十二歳、男性、製造業ということでやりましたら、全くゼロでありました。もう帰りに自殺しようかと思ったんですけれども、そういうわけにもいかぬものですからまあこの場におるんですけれども。
 そういう中で、ここで松井参考人にお願いを、お尋ねをしたいと思いますが、この緊急雇用対策で補正予算を作りましたね。そのときに、皆さん方の団体からもそれなりの御要望をいただいて、それに沿うような線で緊急雇用対策というのを確立をし、予算措置をしたわけでありますけれども、その中において、ハローワークに行きましたときに、そこに何名かの私どもと同じような年格好の方がお見えいただいておりましたんで、どういうことですかということで、立ち話で、四、五人の方と立ち話をしました。私と同じような年齢層でありましたから、まず私が今申し上げたような形でテストしてみたら全然ゼロでしたよと、それよりも、それぞれまあ境遇は違ったんで、過去の経歴も違ったんですけれども、どういうものがいいですかという話をする中で、ああ、これは我々がせっかく補正予算を組み、なおかつ緊急雇用対策ということで施策を立案をしてやっておるにもかかわらず、これはいわゆる新規の緊急雇用対策の事業というのは都道府県がやるんですね。ハローワークや何かにはつながってないんですね。
 ですから、私は、そこの廊下で皆さん方に、こういうものがありますから、病院から退院をされてしばらく体力を回復させるためにしたいという人がその中に一人いたんですけれども、その方には、今申し上げた昨年の補正予算の中で緊急雇用対策というものを予算を付けて、実はこういう形でやっているんですよと、こういう説明をして、むしろハローワークでやられるよりも、体力が十分に回復するまでに、ぜひひとつそちらの方で何らかの仕事を見付けながら体力を回復されるようにされたらいかがでしょうかと、こういうようなお話を申し上げたんですが、皆さん方がこの計画を作り、なおかつ最初の構想は基金であったと、こう思っておるんですが、そのときに具体的な方法論として、具体的な方法論としてどういうものが欲しかったかということをひとつ、後語りになるんですけれども、お知らせをいただければ、今後の政策立案の中においても、また現場の実際の実体経済の中においても、そういうようなことが検証できるんじゃないかなと、こういう気持ちでおりますので、お尋ねをしてみたいと思います。
 いろいろと論理はあるんですけれども、実体の経済の中で、いわゆる特にもう四十六歳を過ぎた人たちに対する雇用というのはほとんどないんです。これが実態でありますから、今度の緊急雇用対策辺りは特にそういうところに私は目を向けて、やっぱりここしばらく世の中の経済の全体の推移を見守る時間、いとまというのが必要じゃないかと。
 そういうような観点から、こういう問題は、若年層もさることながら、私はやっぱり中高齢者のための一つの大きな力になり得るように、本当に政策を国民の皆さん方に分かってもらえる、そういうことをしなきゃならぬのじゃないかな、こういう思いでおりますので、ひとつ最初に立案された段階での皆さん方の基本的なプログラムがあれば、お知らせいただきたいと思います。
#22
○参考人(松井博志君) 繰り返しですが、この補正予算を通してくださいましてありがとうございました。
 私ども、まず、基金という形にしましたのは、よく国の予算ですと、年度を越えると使えないとか、越えてしまうと使えなくなるから無駄に使ってしまうという、そういうものをまず排除してもらうために基金という形にしたらどうかということだけでございます。ただ、今回の交付金も三年間でやればほぼいいということですから、そういうことがあり得ないということですから、その点はクリアされていると思います。
 もう一つ私ども考えましたのは、今までのかつての交付金制度の中で、具体的な取組で個別の地域において面白いものがございました。私どもといたしましては五十五、今日、本来お付けしようと思ったんですけれども、長過ぎると事務局から言われましたので付けておりませんけれども、五十五の短期雇用創出の事例も出しました。それを私どもといたしましては関係各方面、さらには私どもの傘下の地方経営者協会を通じて、それぞれの地域でより具体的にうまく取り入れられるものは取り入れてほしいというお願いもしてございます。
 そしてもう一つお願いを今しておることは、それぞれの企業でうまい、済みません、それぞれの地域でよりうまい取組をしているならば、それぞれのところで、例えばホームページ、あるいは私どもの中の情報を共有できるところがございますので、そういうものの情報を共有していく中でより良いものを広めていってほしいと、そういう考え方に立っております。
 もう一つ、年齢の問題でいいますと、私どもは、先ほど終身雇用がいかにというお話がございましたけれども、その部分の一つの大きな要因といたしまして、日本における多くの企業の賃金・処遇制度がほぼ年齢に応じて決められている、あるいは年齢によって処遇をしなくてはいけないであろうという考え方がかなり強く出ているのが実態かと思います。そういたしますと、その部分をやはり変えていくことを企業の方々にお願いをしていく。恐らく貢献してくださる度合いに応じてそれを、それに対して企業として支払っていくならば、年齢はどのようなものかというものは一番の要素ではなくなるのではないかと思っております。その意味で、私どもといたしましては、こういったパンフレットも用いまして、雇用対策法に盛り込まれた年齢制限を付けない雇用、募集、採用の在り方についてやはり理解を広める努力もしておるところでございます。
 簡単ですが、以上です。
#23
○内藤正光君 民主党・新緑風会の内藤正光でございます。
 一つ質問をさせていただきたいんですが、今、世の中、雇用の流動化、雇用の流動化ということで、そちらの方向へ進んでおりますが、私、正直言ってそれは避けられないんだろうとは思うんです。しかし、長期雇用というものを考えてみますと、これは戦後、やはり日本が生きていく道は物づくり技術にあるんだということで、この物づくり技術を育て上げるために、例えば国としては税制、そして会社としてはいろいろな社員サービスを充実させる中で長期雇用というものを作り上げていったんではないかなというふうに思います。
 こういったことを踏まえて考えてみますと、今そういった雇用の流動化へどんどん進んでいこうとしているわけなんですが、日本がこれから何を大事に育て上げていくのかという戦略性がちょっと見えてこない。そういった中で、目先のことにばかりとらわれて一気に雇用の流動化へばあっと流れてしまうと、これは私は大変なことになってしまうんだろうと思います。
 そこでお尋ねをしたいのは、これから日本は何を強みとして生きていくのか、何を育て上げていかなきゃいけないのか、そういったことを踏まえて、それを育てていくためにふさわしい労働環境とは何なのか、さらにまた、そういった労働環境を作り上げるためのやっぱり税制を始めとした社会制度、いかなるものが、いかなるものへとしていかなきゃいけないのか、こういったことをお三方それぞれのお考えをお伺いできればと思います。
#24
○参考人(山田久君) 非常に大きな問題だと思いますけれども、雇用流動化と能力開発というところは、これは非常に大きな問題で、当然専門家の間でも議論が分かれているところだと思うんですね。
 ただ、おっしゃいましたように、私も同じように、流動化というのはこれは避けられないと。むしろ私自身は、正におっしゃいましたけれども、何を重視するかというと、恐らく日本に、これはどういう社会でもそうだと思うんですけれども、個人の能力ができるだけ発揮できる社会を作っていくということに尽きるんだと思うんですね。そういう面でいうと、流動化の中でどうやって能力を開発していくのかというふうな、そういう問題の立て方をしてやっていかないと駄目なんだと思うんですね。
 それは実は、大きくとらえるとそうなんですけれども、細かく言うと例えば業種によって違う。企業の、済みません、職業能力といったときに、私は三つの要素があると思っています。それは、一つは専門能力ですね、正に蓄積していくような能力、それと二つ目は変化へ対応していく能力、それから三つ目はネットワークの能力なんですね。その三つが相まって初めて一つの能力になる。
 これまでは製造業というのは、一つの企業内でそれを集積していくのというのは非常に合理的だったわけですね。ところが、恐らく結果的に、そのサービス化というのは進んでいかざるを得ないと、特に変化への対応能力というのが必要になってきて、そうすると結局企業内だけではうまくいかなくなる。ところが、そうかといって蓄積されているところがなくなってくるかというとそうじゃなくて、一つの職業という形での連続性というのは当然続いてくるわけですね。
 それから、一つの恐らく仕事というのは、大体三年ぐらいあれば固まった能力というのは付いてきます。その次はむしろ、これまでも日本はそうだったわけですけれども、三年ぐらいたつとローテーションするわけですね。そうやって新しい能力の開発につなげていく。それとまた、ポジションが変わることでネットワークが付いてくるという。ですから、ある部分、能力開発イコール長期雇用だという考え方は恐らく一面的な理解だと、私はそういうふうに考えています。ですから、状況状況に合った形で能力開発というのは当然できるという最初の前提なんですね。
 そういう中で、じゃ日本はどこに強みがあるかというと、これはやはり製造技術というのはどうしても捨てれないですね。そこはやはり日本の強みですし、私も最近いろいろ大田区を中心に実際の調査をやっておりますけれども、非常に高い技術を持っている。ただ、そうはいうものの、非常に大きな賃金格差の中で、標準的なというのか、平均的な技能というのはもう結果的に外へ出ていかざるを得ないわけですね。そういう面で、製造業の技術をどんどんどんどん高度化していって、一つの産業の中核に製造技術はこれまでもなっていくと思いますし、そのためのいろんな施策というのは必要だと思いますけれども、その一方で、結果として、やはり雇用受皿を作っていこうということになりますと、サービス化を進めていかざるを得ないわけですね。
 そのときに、日本というのはやはり世界一の高齢化国なんですね。ここにもう一つの何かがあるんじゃないのかなと。例えば、高齢化ということに対していろんな介護のサービスというのは幾らでもあるわけですし、そこにバイオとかというものをつなげていって医療と何かを作って、それはこれから生んでいくものではっきり言えませんけれども、そういう、重要なのは環境を見ていってそれに適応していくということですから、むしろ環境変化というのは、それをチャンスというふうにとらえていって、高齢化の中でそれをどう生かしていくのかという視点ですね。
 そうすると、どういうシステムを作るかというのはもう最初に私は申し上げております。そうしますと、当然、先ほどの議論からありましたように、エージレスでなければならないし、ジェンダーレスでなければならないし、能力主義でないと駄目だし、企業をお好きな人でなければならないというそういう社会。要は、最終的にそういう環境の中で自分の、個々人の能力がどんどんどんどん育成できる社会というのをどうやって作っていくのかということだと思います。
#25
○参考人(中村善雄君) 雇用の流動化ということについて、非常に誤解を招く部分が一杯あると思っていて、まずそれを第一に記入しております。
 要するに、今言われている雇用の流動化というのは、いわゆる排出の、自由にもう要らない人は出ていきなさいと、しようがないんですよといったような意味での流動化といったような部分がございます。現実に、産業構造の変化の中で離職を余儀なくされる人たちがございますし、その方たちの再就職を含めた円滑な転換をいかにし、図っていくかの仕組みを作るというのは非常に重要なことでありますが、それを超えて、安易にあなたは要らないですという、労働者にとって生活の糧を奪われるようなことも含めて雇用の流動化といったようなことを促進すべきだという考え、風潮には、私の今日のお願いで申し上げたとおり、これはきちっとやらなければ、ルールを作らなければいけない。
 そういう意味では、退職、解雇に係るルールの在り方というのは非常に重要な問題であると。特に、雇用の面で働く者の生活、雇用を守るという意味では非常に重要なことであります。それが整備されて初めて、やはり産業構造の変化に対応して雇用が様々な移動ということに対してセーフティーネットとして機能し得るような枠組みになるんだろうというふうに考えております。
 それからもう一つは、短期の経営志向の中で、そういう必要な人材を外部の労働市場でどんどんどんどん入ってきて専門的にやってもらう、そういう仕組みを作らなきゃいけない、それが一つの流動化だと言われている側面があります。
 これは、確かにそういう側面が短期的にはあるんですが、問題は、そういったような高度な技能あるいは能力を持った人たちをどうやって育てていくのか、どこから見つけて、国全体として見つけてくるのか。今まで一つは個人の努力ということはあるんですが、それで個人の努力プラス会社の経験でやってきた人をお互いに引き抜くとか奪い合うような形でやっていくのか。しょせん外部労働市場というのは、しょせんそういうものでしかあり得ないんだろうと思っています。
 したがって、これは成長力の部分のところの源泉では、暗に雇用の流動化をやったら進むんだといったようなことについてはやはり慎重に検討すべきことがあるし、それによって不利益というか生活を大きく脅かされるということも全体のルールの中で考えていく必要がある。もちろん、日本は人材しかないわけでございまして、その正しく能力を高めた部分をいかに世界市場も含めて打っていくかという側面しかないわけで、それはもうはっきりしているわけであります。
 したがって、その人材育成ということについて、これは社会的な仕組みについてどういうノウハウをきちっと付けられるかどうか。それがなければ正直言って、どんどんどんどん空洞化等が進んでいくんだろうということでありまして、非常に特殊的な技能、それも発展する技能ということは、いろんな技能があるということは具体的な部分のところで出てきているところであります。
 問題は、先ほど松井さんが言った、こういう雇用ポートフォリオ論なるものにしてもあるんですが、社会、いわゆる働く者のルールとして、これは当然経営者が、物が一方的にそういう部分で、あなたはこっちのタイプです、どうこうという議論にはなり得ないはずなので、雇用流動化、私が言う意味での職業生涯を安定させるために幾つかの移動できるネットが張れる流動化という意味は、やはり様々な働き方、労働時間の短さ長さの選択も含めて、更にはどういったような技能形成ができるのか。現実にその技能形成を行っていくために個人が主体的に選べるやつを、それは現実の企業の中でしかそういう具体的な実務能力というのは身に付かないわけですから、そういったような配置等の部分も含めて、産業内の民主主義の仕組みをきっちりと作っていけるか。
 これは、従来の企業内労使関係で作ってきたパターンとかなり密接に、かなり職場に近いような形に組合運動としても展開をしなきゃいけない部分は出てくるかと思いますけれども、やっぱりそこの部分をきちっとやっておかないと、単に市場任せでその場しのぎではやはり日本の戦略としては、先生のおっしゃられたように、全く戦略性がないとしか言わざるを得ないんじゃないか。
 やっぱりそういう人的形成、ネットワークも含めて能力開発、更には主体的に自らのために能力ができるような、それと労務管理の中での調整をどこでやるか。それは正しく産業内の民主主義をどうやるかということであって、現実の知恵はそれぞれの個別の中で出てくるんだろうと思いますが、やはり個々人というのは御案内のとおり非常に弱い立場にあるものでございますから、やっぱりそういう方たちがきちっと自らの自己実現を図るために話し合っていくような仕組みという、枠組みを作るということが非常に重要だろうと考えております。
#26
○参考人(松井博志君) 雇用の流動化ということを考えるその前提として、先生御指摘のように、避けられないとおっしゃられたと思います。それは流動化のその前に、やはり日本の企業が今のこの人件費コストの中でどれだけ生き残っていかれるかがまずその前になくてはいけないと私どもとしては考えております。
 先ほどの御説明申し上げたことの繰り返しになりますけれども、日本の企業がまず生き残れる仕組みとして、私、終身雇用がなくなるとは申し上げませんでした。これは重要なところで、技能形成がやはり長期に行われないとできない部分があると。ただ、そういうものばかりではない、それならばより身軽になった形でやはり対応していくのがまず重要であろうと。その部分は進んでいかないと、まず企業が生き残れないというのは私どもの認識でございます。
 更に重要なことは、中村さんからは企業側がやればそのようにできるんだというような言い方がありましたけれども、これは働く側のニーズがないと、幾ら企業側がそういうことを希望したところでマッチングするわけがございません。ですから、私どもといたしましては、派遣をより自由化するとそこにばかり人が増える、特に切りやすい労働者が増えるとか労働組合は常におっしゃいますけれども、そういう条件で働きたいという人たちが増えないと、私はいかに自由化しても増えるとは思っておりません。その意味では、派遣で働く人たちがそれで満足するような処遇を企業側が提供していくとか、それが一方であって初めてそのマッチングが結び付くと思っております。私自身、その派遣の問題は九四年からやっておりまして、この分野では自分としてはかなり自負しているものでございます。
 それで、連合さん、更には民主党さんを始め、この部分について賛成してくださる方もいる中にあって、他方、これは正社員を切り崩すあしき労働であるという断じて議論をされる方がございます。今現在、私が担当している審議会の中で政令二十六業務、専門的業務の拡大の議論を行われておりますけれども、組合側の代表は、言うことは慎重にと、これは不要ではないかと、そういうこともおっしゃいますけれども、私どもとしましては、今の派遣法一つを取ってみましても、これは派遣先で一年という規制でございますので、人が入れ替わってもあるいは従業員が入れ替わっても、その職場ではネガティブリスト化された業務については一年しかできない。その一年を超えることの可能なケースといたしましたら、派遣であった人がそこで雇われなくてはいけない。
 他方、そのヒアリングの中では、派遣社員で一生あなたはそれでやりたいんですかという、お二人派遣スタッフの方のヒアリングを行ったわけですけれども、お一方は、私は派遣でずっとやりたいと。少なくともそういうことをおっしゃる方に対して、今の派遣法は対応できる仕組みにはなっていないということだけは申し上げられると思います。
 その意味で、最終的には雇用の流動化は基本的には避けられない方向でありますけれども、そういったところに適正な条件を企業側が一方で提示していく中で、そこの従業員側の多様な就労ニーズに対応していく、これが一方でないと、なかなか流動化といっても進まないのではないかと思っております。
 以上です。
#27
○山東昭子君 自由民主党の山東昭子でございます。
 まず中村さんにお伺いしたいんですけれども、最近の労働環境の変化によって、好きな仕事を短時間やって、そしてあとは自由に自分の時間を使いたいと考えているような労働者、それから能力別の給与の査定ということについて賛成をしている人たちというのは年代別にどのような傾向なのか、お知らせいただきたいということ。
 それから、山田さんにお伺いしたいんですけれども、欧州で、イギリスを除いてフランス、ドイツ、イタリアなどはもっともっと日本より悪くて九%台の失業率のようでございますけれども、その内容は、日本との比較の問題。それから、中にイギリスが割合健闘しているようなんですけれども、その具体的な成功率というんでしょうか、それをお伺いしたいということ。
 そして最後に、松井さんにお伺いしたいことは、最近ちょっと下火になりましたんですけれども、サマータイムについて、いろいろ環境あるいはエネルギーの見地から、今の日本に果たして必要なのかというようなことを含めて、このお三方にお伺いしたいと思います。
#28
○参考人(中村善雄君) 先生の御質問ですが、まず好きな仕事に就いて短時間をしたいといったような方がいらっしゃるだろうということは思っていますが、どの層なのかというのはよく分からないんですが、まずそもそも、現在のところの、そういう希望がある、意思としての希望があるということは様々な考え方があるので持たれているんだろうと思います。
 ただ、現実に好きな仕事が今どこにあるか、どういう市場状況になっているかと。現実は、雇用情勢が、とにかく仕事がしたくても仕事がほとんどないというのが地域の仕事をできない方の実態でありまして、そういう意味では非常にそういう制約があるということだろうというふうに思っています。
 あと、問題は、好きな仕事をやって、それに就いて、多分、先生のおっしゃられたのは長時間ではなくて短時間というような形の部分のところをしたいということだろうと思いますが、それが現在のところ、今パートタイムのような形、もしかしたら今、派遣ということでなさった話はそういう形になるかもしれませんが、現実の問題は、例えば短時間のところで働いて得られる賃金とそれからいわゆるフルタイムで働く賃金との間には単に時間差以上のものがある。でも、それでもなおかつ、短時間である、そういう仕事を選ばなければいけないというのが今の働き方というか労働市場で提示をされている条件だろうというふうに思っておりまして、ある程度余裕、余裕があると言ったら語弊になりますか、という方たちはそれでも短時間で就労選択をしたいという方があるだろうというふうには思います。思いますが、それにはやっぱりそれなりの仕組みが必要だろうと。
 先ほど、先生のところの議論で、いわゆる男女片働きから男女共働き世帯ということの議論がございました。これは、実は産業構造が非常に変化をしていって、一つの企業の中で安定した、雇用の安定、更に言うと生活収入の安定が非常にリスクにさらされている。これは産業自身、構造変化でかなり構造的なものとして見なきゃいけない。
 そうすると、そういうところに何が必要かというと、実は世帯単位での家庭内でのそういったようなリスクのシェアをどういう仕組みを作っていくかということでありまして、逆に言うと、短時間共働き世帯、様々な時間の組合せの中で、どういったような収入、生活の安定を図れるかということの仕組みだろうということがありまして、要するに、時間選択ということについて、これは単に好き嫌いということでなくて、生活上のニーズ等も踏まえて、いわゆるその時々のニーズで弾力的に選べるような仕組みというのをこれは作っていかなきゃいけないというのは社会の要請でもう現実にあるだろうということでありまして、ただ時間的に短いのが当面いいからその部分で枠組みを作るということから、更にもっと視野を大きく広げて、今は男女共働き世帯、自由な、ニーズに応じて働き方が選べるような社会、そういう位置付けをきちっとしたルールの下に作っていくということが現在の流れということであろうというふうに考えております。
 それから、査定の問題が一点ございましたけれども、これ実は各様々に、いわゆる査定はどういったような形で行われるのか、そもそも能力の評価基準は何か、そこが非常に重要な問題でございまして、この部分のところは実は職場における労使のワークルールの問題、現実でいうと、いかに能力の基準ということが明らかにされ、必要な能力要件がはっきりしなければ労働者自身も自らの能力の開発のしようがないわけですから、それをまずきちっといかに明らかにしていくか。それに伴って、それの評価である、あるいはそれの対価である処遇に絡む部分との査定の仕方の中身についてどういったような基準が透明的であるのか、そういうようなことがはっきりしてくる中でやはり社会的にも横断的可能な現実的な能力の評価的なシステム、そういったようなことが初めて出てくるんだろうというふうに思います。
 そういう部分では、いわゆるそういう能力についての要件をきっちりとさせていただきたいという方は、もちろんそういう能力評価基準のルールの仕組みづくりがどれぐらいきちっとなされているかということによって現実には様々評価が分かれてくるわけで、そういう仕組みができている、できるということを前提としてお話をするならば、やはりこの先々のキャリア形成を考えたいといったような方の、当たり前ですけれども、期間の長い、逆に言うと若年の方ほどやっぱりそういったような部分の透明化を望む声ということは非常に大きいだろうと思いますし、やっぱりそこの部分の、とりわけ中堅層の部分の能力評価の仕組みの透明化あるいは社会化といったようなことはやはり重要であるというふうに思います。
 さらに、それ以降の中高年層の失業の問題は、先ほど魚住先生のお話にもございましたが、やはりこれは現実を現実として踏まえて、まずやっぱりきちっとその場の対策を積み上げていくしかない。同時に、中堅の部分を含めた評価の透明性とかそういったような問題について構造的な手をきちっとやっていく。やっぱりそういう、まあ別の意味の短期と長期という話になるかもしれませんが、枠組みの対応が必要だろうというふうに思うんです。
 派遣の方も、松井参考人の方から考え方のお話が出ましたが、様々な人がいるんです。そういったようなことの中で、現実の実態をやっぱりきちっと評価をしながら議論を、社会的合意を作っていく必要がある。
 例えば労働市場の分野自身、産業自身が縮小傾向をたどっていて合理化自身がばんばんばんばん起こっているような分野に、そこのところに派遣的なものが仮に入るとしたら、これは派遣制度、中立、理論的に、入れたら常用代替が起こるとか起こらないとか、そういう議論というのは結構不毛な議論でありまして、現実的には、市場が縮小しているときにそういう形態の派遣が入ったときにそこで何が起こるかということだろうと、その評価をどうするかということだろうと思いますし、逆に言うと、市場が成長している、その中で高度な専門的な能力が必要であると、その場合、当然、派遣というような形の中で企業としても非常に人材のニーズがある。そういったような入ってきたところで派遣をやると、逆に言うと、産業全体としてはそこのボトルネックの解消になるわけで、産業は伸びていくわけですね。雇用も全体的には伸びていくわけです。
 そういったような部分のところを、やはり労働市場政策的な観点ということが実は派遣制度の、どういうような部分を考えるかということは非常に重要な問題だというふうに思っておりまして、一概に抽象的に派遣がいいとか悪いとか、働き方を制約するとか、そういうような議論でなくて、もう少し実質的な議論ということで様々な今後ワークルールの議論をお考えいただければ有り難いというふうに思います。
#29
○参考人(山田久君) ドイツ、フランスとイギリスの違いというお話だったと思いますが、三つのポイントがあると思います。項目だけ最初に申し上げますと、一つは就業形態の多様化に関する問題、それから二つ目は産業構造の問題、それから三つ目は失業保険ですね。
 順に申し上げますと、私の方から御説明のために配付させていただいています資料の一番最後のページに図表の五、ちょっともう時間の関係からこれの説明をしなかったわけですけれども、イギリスはちょっと載っておりませんけれども、大体オランダとか日本に近いというふうに見ていただけばよろしいかと思いますが。要は、賃金と雇用というのは一種の当然ながらトレードオフの関係にあるわけですね。イギリスは、そういう意味で、賃金が非常に低いけれども雇用が生まれてきた。ところが、ドイツ、フランスは、例えば非常に解雇法制とかあるいは賃上げをずっとやってきたとか、そういうことがあって失業者がどんどんどんどん滞留していったという、そういう雇用。
 しかも、その雇用形態に関しましても、最近で、八〇年代後半以降、パート等も積極的に進めておりますけれども、それまでというのは基本的には正社員というのか、フルタイマーというのを理想の形ということで、それ以外の雇用の多様化に対しては極めてマイナス、ネガティブな態度を取ってきた。その一方で、イギリスというのはいろんな雇用の多様化の形態があります。そういうのが一点目ですね。
 それから二つ目は、産業構造に関して、フランスは八〇年代というのは一種の社会主義に近い形でいろんな国営企業がたくさんあったんですね。そういうことで、産業構造がずっと、何というのか、固定された形で来ていましたですね、まあ、最近は変わってきていますけれども。それから、ドイツもやはり似ているんですね。例えば鉄鋼とか石炭というのは非常に衰退産業なんだけれども、いろんな補助金をやってきて守ってきている。その一方で、イギリスは、かつてはかなり労働組合等強いというようないろんなものがありましたけれども、徐々に、特にビッグバンとかそういうもので、どちらかというと環境に適応したような形で産業構造の転換を進めていったと。そういう違いがあったということですね。
 それから、失業保険も、ドイツ、フランスでは物すごく手厚いですね。フランスはたしか最長五年。ドイツも、ちょっと数字具体的に忘れましたけれども、失業扶助といって事実上雇用保険が切れても補助してくれるような制度があります。ところが、イギリスはそれは短いわけであって、もちろんこれどちらがいいのかというのは価値判断はありますけれども、事雇用量ということでいいますとそういう違いによって生まれてきている。
 もう当然イギリスなんかは所得格差の問題もありますし、賃金が低いという問題は当然あります。逆に、ドイツ、フランスというのは高賃金ですし、失業しても比較的手厚い保護がされるというところの違いはありますけれども、メカニズムだけ説明しますとそういうことかと思います。
#30
○参考人(松井博志君) サマータイムの御質問だったと思います。
 産業界といたしましては、やはり日本が決めております京都議定書の批准に向けて、様々な取組が重要であるということは十分認識しております。ただ、サマータイムの議論が、特に先生方の御提案でいろんな形で具体化しそうなケースがかつて何度かあったと思いますけれども、それぞれその業界等の意見を聞いてみますと、より稼働時間が長くならざるを得なくなるのではないかという心配をしている業界が結構多うございました。運輸関連ではそういう御意見が強うございました。
 翻って、私、個人的な経験で申し上げますと、イギリスに留学したこともございます。それから、ILO総会というところに代表の一人として何回か行っております。そのときはスイスのジュネーブに六月、一番ヨーロッパでは季節のいい時期でございます。そこの六月あるいは七月、八月のヨーロッパの気候風土と、それと日本の七月、八月あるいは九月の状況を考えますと、仮にサマータイムで一時間早くなったとして、日本の特に大都市に通勤する人、勤労者にとっては一時間早まったところで何をやるのかどうかと、そこについて素朴な疑問を感じるところであります。戻ってすぐゴルフでもできるわけではありません。
 他方、ヨーロッパですと、夜、場所にもよりますけれども、十時、十一時、十二時まで明るい。その夜の時間を十分使える。一時間早くするメリットは十分あろうかと思いますけれども、日本ですと、仮に、余りよろしくないのかもしれませんけれども、早く終わって飲み屋に行くのがせいぜいなどと言うとおしかりを受けてしまいそうな気がしますけれども、私の行動パターンを考えるとそんなふうになりはしないかという。それは消費が増えるという言い方もあります反面、長い目で見ると医療費が増える方向になるかもしれません。
 そういうことを考えますと、本当の意味でのサマータイムを入れたときのメリットはいかなるものかということをやはり慎重に考えて対応していただいた方がよろしいのではないかと思います。もう一つ、皆様方の、先生方の御家庭でもそうだと思うんですけれども、一時間ずらすための時計が家の中に何個あるかと考えますと、私は自分で全部直せないところもありまして、非常に大変なのではないか。
 イギリスにいたときにも、イギリスと、もう一つ細かいことを言いますと、イギリスとアイルランドとそれと大陸の方とサマータイムの入る時期がまた違っております。そういうときには必ず何か事故が起きやすかったり時間を間違えたりという、そういうこともあります。それに慣れてしまえば大丈夫なのかもしれませんけれども、個人的にはそのメリットというのは余り日本では大きくないのではないかと考えております。
 以上です。
#31
○山東昭子君 ありがとうございました。
#32
○島袋宗康君 時間も随分ないようですので、山田先生に一点だけお伺いしたいと思います。
 我が国は高失業率という時代に入っておりますけれども、昨年、総合雇用対策及び改革先行プログラムが策定され、二〇〇一年度補正予算、二〇〇二年度予算を通じてセーフティーネットが整備される方向になっています。これは、新緊急地域雇用対策交付金や転業訓練期間中の失業手当を拡充する等によって公立学校の臨時教員や駐車違反取締りの支援要員、森林作業員などの雇用期間の六か月程度の臨時雇いを増やすというものであります。長期安定的な雇用の確保というにはほど遠いものがあるんじゃないかというふうに思っております。
 これに対して、例えば毎年、ごみ処理施設や廃棄物処理施設の建て替え、新規導入に一兆円ずつ十年あるいは十五年計画で進めたらどうかと。安定した雇用も生まれ、廃棄物処理技術の技術開発も進み、戦略産業となるなど雇用増につながるとの意見がありますけれども、この辺について山田先生の御意見を承りたいと思います。
#33
○参考人(山田久君) 公的雇用の是非論というのか、という議論かなと思うんですけれども、公的雇用は日本は余り、戦後すぐ失対事業というのか、そういう反省がありましたが、やってこなかったわけですけれども、それを事実上は公共事業をやってきたということでしょうが、それがもう限界に来ていると。
 欧米は、御承知のとおり、特にヨーロッパは積極的にやってきたんですが、八〇年代の評価というのはほぼかなりマイナスの評価ですね。ただ、九〇年代に入ってちょっと役割は変わってきているんですけれども、若手、若手というのか、若年失業の問題が極めて深刻になってきていますから、言わばその働く、何というのか、習慣を付けるという意味合いで今それはやってきているんですね。
 そういう面じゃ、いわゆる公的雇用というのを八〇年代型のヨーロッパという形でやってしまうとこれはかなり問題あるなと思うんですが、ただ、そこを全体の一つの理念ですね、今の議論というのは、残念ながら、余り、これは作られた方に失礼ですけれども、私自身として、どれぐらいはっきりした哲学を持ってやっているのかというのがはっきり私自身はよく分からない。
 そういう面でいうと、実際、基本的には民に任せていかないとだめなんだけれども、基本的に公で公的にやっていくべきところというのも当然あるわけですね。例えば、教育にしても、今は初等教育、中等教育の先生というのは非常に不足、実際不足しているんだと思います。そういうところはもっとやっていいと思いますし、それはだから臨時教員というレベルじゃなくて。それから、警察官もある面やっぱり不足してきているんだと思うんですね。そういう意味で、それはいわゆる通常の採用枠でやっていくという議論だと思うんですね。
 そういう面で、先ほど先生のおっしゃったごみ処理というのも一つのこれは提案だと思いますね。公的に、ただそれを政策評価なしにあいまいにどんどんどんどん増やしていくというのは問題であって、むしろ本当に必要なものを中期的にやっていくという視点を入れていって、公的なところで、事実、本当に必要なものということを厳選していってそこで持続的に雇用を生んでいくという観点でしたら評価できるんじゃないか。
 ただ、あくまでやっぱり雇用というのは民間の活力というのが主体ですから、そこの議論はやっぱりベースとして持っておかないとだめだ。場合によると、例えばPFIとかによって民間に、例えば今回の御提案のごみ処理にしてもPFIで使えるんだったら、そっちを使った方がやはり全体として活力を回復させるという意味ではその方がベターかなと思います。
#34
○島袋宗康君 ありがとうございました。
#35
○本田良一君 民主党の本田良一です。
 この今日の調査会の参考人に対する雇用環境の変化とその対応ということですが、ちょうど雇用労働者と申しますか、連合のいわゆる組合をまとめるセンター、それから経営者をまとめる日経連、お二人がお見えでございますから申し上げたいと思いますが、この雇用環境の変化ということは、これに対して労使が私は対応がもう少し基本的なところで間違っているんではないか、あるいは間違いというよりも基本的なところで感じておられないと、こういうことを申し上げたいと思います。
 中村さんの中にも、安定的な労使関係で今日までやってきたと、こうありますが、それはそれで立派なことですね。しかし、この安定的な雇用関係、労使関係で雇用もあるいは福利厚生も賃金も労働時間もすべて労使でやってこられました。ところが、今言います雇用環境の変化、ここに至って、まだ労使が自分たちのプライドと申しましょうか、企業と労働組合のプライド、それで表に出さない、そしてあくまでもまだ自分たちで解決をしようと、こういう考えが労働組合の中に、それぞれ労使の中にあるような感じがします。
 だから、もう雇用環境は本当に変わったんだから、やっぱりこれは表に出すべき。今までは安定的な労使関係で来られたからそれはそれでいいんだけれども、私はヨーロッパに、先ほどのセーフティーネットをするにしろ、雇用を創出するにしろ、特にセーフティーネットで後れを取ってきた原因はそこにあると思いますね。もっとこれを表に出しておったら、特に表に出すというのは政治の舞台、政治の舞台に出しておったらセーフティーネットはもっと早くできたんではないか、整備されてきたんではないかと、こう思います。
 それで、ヨーロッパでは特に政権党であれば副大臣が必ず雇用問題を重要な任務としてやっていきます。ところが、日本では雇用問題というのはまだまだ政治の舞台では扱われない。やっと日産のあの大きな雇用問題が起きたときにこれが初めて政治の舞台に出てきました。
 私は、安定的な労使関係は、昔は街頭に出てデモをやったりストライキをやったりという、以前はありましたけれども、今はそういう関係はほとんど見られない。成熟をした労使関係であるからこそ、今政治の舞台に出していいんですよ。そうすることによってセーフティーネットをより良くこれからは作り上げていくということですから、私は、連合さんも日経連も悪いんじゃないですよ、まだそこまで各会社の労使が上げてきていないという面が一杯あると思います。
 だから、積極的に両者はそれぞれの企業に対して雇用問題について重要な調査をやったり、そういうことをやって常に把握をしておく。そして、それをいつでも政治の舞台に上げることができるようにしておくことが私は雇用問題の環境づくりにこれから対応できるんではないかと思いますから、山田さんも入れて三人、お答えをいただきたいと。
 それから、一つ、これは非常に小さなことだけれども、この雇用問題で一つの職種だけをとらえてちょっと申し上げますが、ここには薬剤師の方もおられますけれども、今薬剤師が非常に劣悪な労働環境の中におります。優秀な人たちが世の中に出て、これからますます、今度の共通一次は特に薬剤師が多い状況になりましたが、大変ドラッグストアあるいは医療、いろんな分野でこの薬剤師だけが労働環境からだれも手を付けられずにおります。これをしっかり、特に日経連は頑張って把握をして改善をしていただきたいと。これについてもお答えを。
 以上です。
#36
○会長(勝木健司君) まだ質問希望者の方がお三方おられますので、答弁、参考人に申し上げますが、できるだけ簡潔にお願いをいたしたいというふうに思います。
#37
○参考人(山田久君) 私は直接関係、あれなんですけれども、情報開示というのか、そういう議論で少しずれるのかもしれませんけれども、そういう労使ともにデータの問題もあるんですが、ちょっとお話をそらすような形で恐縮なんですが、情報開示ということで、違う論点で一つ申し上げたい。今の御質問に対しては恐らくお二人の方の御回答の方があれだと思いますから、私はちょっと違う論点を申し上げたいと思うんですけれども。
 政策評価というのは非常に日本は弱くなっているというのか、いろんな情報開示、例えば先ほどの公的雇用にしても、やったときにどれだけ効果があったのか、あるいは助成金をやったときにどういう効果があったなんということは、なかなかできていないという問題があります。ですから、そういうものも含めて、それは労使だけじゃなくても、行政府のところでもそういうことは是非やっていただきたいなと、そういう話であります。
 それから、薬剤の話は私もちょっと専門外というのか、あれですけれども、この問題というのは、ある部分、いろんな形で日本の今抱えている問題なのかなというのは、一つの職業に対する自負とかという問題というのか、そういう職業倫理とかという問題があるのかなと。それはある部分、これまで日本の社会というのは、職業というよりも、ある集団に対して帰属していくというふうなことでアイデンティティーを持ってきた社会ですけれども、恐らくこれが難しくなってきている。そこの帰属意識というものが揺れてきておりますので、なかなか倫理というのがなくなってきているわけですけれども、それを新たに職というものを中心にアイデンティティーを確立していく。
 例えば、イギリスなんかにNVQという制度がございまして、これは一つの職業ごとにいろんな職業能力を認定していくような制度があるわけですけれども、それが幾つかの職業能力のレベルでもってステップアップしていくというような制度があるんですけれども、そういうものを作っていくということが一つの職業に対するアイデンティティーを強めていって、しかも将来のステップアップということも明示する形で職業倫理というものを国民レベルで根付かせていくということの一つの解決になってくるのかなという気はいたします。
 ちょっと御質問いただいたそのとおりの答えにはなっていないかもしれませんけれども、以上でございます。
#38
○参考人(中村善雄君) 先生の御指摘のいただいた部分でちょっとずれるかもしれませんが、基本的に連合の考え方は冒頭御説明をさせていただいたとおりで、あらゆるレベルでのいわゆる合意形成の仕組みというのが今の中で重要になってくる。逆に言うと、個別労使の中では解決し得ない問題が非常に大きくなってきている。この問題で一番大きいのはやはりワークルールの問題だろうというふうに思っています。
 多分、個別に抱えてということで御指摘をいただいた点は、ある意味では現実に即しているんですけれども、やっぱり社会的に透明なルールとしては、例えば組合のないところも含めて、そういう方たちのところになかなかうまくいかないではないかというようなことを含めて、そういう議論をきっちりしたいということだろうということでございまして、そういう意味で、政策要求も含めて、とりわけワークルールの問題、それから特に今回のやつはいわゆるパートタイマーの方とか、いわゆる非典型の方の組合員、非典型の方の労働者の方々、これは実は組合員にも切って切れない非常に重要な問題でありまして、正しくこの部分を整備をするということは、やはり一組合に組織をされた者と使用者との関係ではなく、非常に重要な基本の問題だということで理解をしておりまして、是非この点も、最初申し上げた、是非きちっと枠組みを作っていただき、労働組合としても私どもの考え方を申し上げます。よろしくお願いしたいというふうに思います。
#39
○参考人(松井博志君) 私ども確かに政治の場では連合さんよりも弱いというのは事実でございます。御承知かと思うんですけれども、五月には大手町の団体と統合することになりまして、今後は先生方にもいろんな形で私どもの声を伝え、政策実現していただけるものについては御協力をお願いしてまいりたいと考えております。
 個別労使では解決できない問題につきましては私ども審議会レベルで様々に検討してもございますし、政労使のワークシェアリングの問題についても、政府の役割はいかなるものかということを連合並びに私どもの会員企業の声を聞きつつ対応して、政策実現に努めてまいりたいと考えております。その節はひとつよろしくお願いしたいと思います。
 それから、薬剤師の問題については、私は実態が非常に不案内でございますので回答を避けたいんでありますけれども、薬剤師以外にも様々に余り労働条件が良くない方もいらっしゃるのではないかと思います。今、医薬分業という形で進められて、専門性についてそれが正しくまだ評価されていない部分があるのかなと考えております。
 さらには、御承知のように、介護保険がスタートしまして介護労働者が増えたわけでありますけれども、介護労働者についても、私の知る限りにおいてはなかなか良い処遇、条件ではないということを聞いております。そういった様々な問題につきまして、私どもなりに対応できる、そして実態については把握するように努めてまいりたいと思います。
 以上です。
#40
○日笠勝之君 公明党の日笠勝之でございます。
 ワークシェアリングについて三人の参考人の方々にお伺いしたいと思います。
 まず、松井参考人の資料の中に、横書きで「ワークシェアリング検討における主張点対比」ということで、日経連、連合、政府と、この三者の、政労使の三者のそれぞれの論点の立場を抜き書きされておりますが、この中で松井参考人と中村参考人にお伺いをしたいと思います。
 まず、この論点の中で、「時間短縮と賃金減額」というところがございまして、これは笹森連合会長も二月二十四日の日経のワークシェアリングについてのインタビューの記事の中で、給与総額の縮減は認めるけれども、時間当たりの賃金引下げは断じて認められないと、こういうふうにおっしゃっておるわけでございます。日経連の方はそれもあり得ると、こういう、もちろん個別労使の事情次第ということでございますが、それぞれ理由をお聞かせ願えればと思います。
 それからもう一つは、「政府の助成措置」でございますが、これも日経連さんの方は一応不要ということでございました。これは理由をお聞きしましたから結構でございますが、連合さんの方はそうじゃなくて、賃金の助成であるとか社会保障負担軽減であるとか、こういうことが必要だろうと、こういうふうにおっしゃっておりますが、その理由をお聞かせ願えればと思います。
 それから、「中長期的課題」の中の均等、括弧して均衡ともありますが、均等及び均衡処遇でございますが、これについてやはり日経連さんは一律のルールを当てはめることは困難であると、法制化は混乱を招くと、こうおっしゃっておられますが、連合さんの方はルールが不可欠だと。それぞれの理由を、また政府の方は法制化を含めて検討と、こうなっておるわけですが、それに対する御感想と。
 これが、松井参考人と中村参考人に対比についてそれぞれの理由をお聞かせ願いたいと思いますが、最後に、三人の参考人の先生方に、私が考えるワークシェアリングというものの個人的な御見解でいいですが、お答えをいただければと思います。
 少なからず私個人はオランダ型かなと、いろんな環境を整備した上でのオランダ型がいいのかなとは思っておりますが、三人の参考人の先生方にもそれぞれ私が考えるワークシェアリングをお聞かせ願えればと思います。
 以上です。
#41
○参考人(松井博志君) 恐らく、政府助成のところは先ほど御説明申し上げましたので省略をさせていただければと思います。
 均等待遇あるいは均等処遇あるいは均衡処遇のところでございますけれども、私どもとしましては、今企業が様々な形での人事、賃金制度見直ししている中にありまして、まず考えるべきことは、正社員の賃金水準はそれでいいのかというところをまずスタートとして考えなくてはいけないと思っております。そこを考えていく中で、やはりきちっと解決していかなくてはいけないという立場に立っております。重要なことは、どうしてそのような処遇にするのか、それはより透明性を持った明らかな基準で示していく、これが求められていると思います。それがまだまだ今の現状では十分なされていないのが実態だと思います。
 もう一つ申し上げますと、例えば均等、均衡、どちらでもいいんですけれども、今、労働組合からの要求もあり、更には企業もそれにこたえるべく雇用延長、定年六十歳以降の雇用延長も行っている企業が多うございます。では、その中に同じ仕事をし続けながら実は処遇が物すごく下がって雇用延長をしているケースもございます。そういたしますと、均等とか均衡以前の問題も一方で日本の企業が抱えているのが実態かと思います。
 それからもう一つ重要なことは、企業として、六時間で働いてくれる方と八時間で働いてくれる方、場合によって価値がその時間差以上に重要なケースもございます。教育訓練投資の回収についてもその方が早く回収できるとか、あるいは通勤費等、その他様々な福利厚生を含めて考えますと、全く時間比例でいいかというと、決してそうではない。そういう点も十分考えた上で対応をお願いしたいということが私どもの主張でございます。
 したがいまして、日本の基本的に年功あるいは勤続に多く依存した賃金処遇制度の実態を考えますと、均等という待遇というのは非常に難しいのではないか。本当に組合側が均等でいいと言うならば年齢別の最低賃金などというような要求は理論的には出てこないと思うんですけれども、年齢別の最低賃金、ミニマム賃金の要求というのは連合傘下の組合は常にしております。そこの部分は私は、理論的にそれもやめるということを言うならば私は正しい主張だと思いますけれども、その点がきちっとなされていないというのが私どもの考えであります。
 それから、五分過ぎてしまいました、済みません。最後に、私の考えるワークシェアリングということですが、オランダモデルよりもより柔軟なものでなくてはならないと考えております。
 先月、オランダのFNVという組合が来て、私と、あと連合の龍井総合労働局長が日本労働研究機構のシンポジウムに呼ばれました。そこでオランダの方がおっしゃられたことは、一・五モデルというのはモデルであって、そのとおりのケースではない、いろんな仕組みがあると。その意味でいきますと、私は、日本の人たちにおけるワークシェアリングというのは、二・〇モデルであっても一・〇でもその真ん中のいろんな数値があって、それぞれがそういう人たちが選択してそういう結果になっている、そういう社会を構築することが一番重要なのではないかと思っております。
 以上です。
#42
○参考人(中村善雄君) 時間短縮の部分の賃金引下げは認める、認めないという議論のところです。
 基本的な考え方はちょっと先ほどのお話のところで申し上げたとおりでありますが、そもそも、いわゆる雇用を維持するためにどういったような施策を取るかということが大前提でありまして、したがって、いわゆる雇用を維持するための賃下げとよく分からない賃下げとどこがどう違うんですかと。逆に言うと、そういったような部分のところの理屈が全くはっきりはしない。
 したがって、いわゆる少なくとも労働時間短縮をした部分についてのベースのところということについては労使間の合意ができる部分があるし、逆に言うと、今のところでこの雇用状態を考えるならば、それぐらいのことも積極的に踏み出さないと今の日本全体の雇用というのは緊急避難的に守れない。そういう判断で、笹森連合の会長としてもやっぱり現状を踏まえて突っ込んだことだろうというふうに思います。
 したがって、それを更に輪を掛けて、じゃ、そういうことも働き方の縮減も関係なくコスト削減のみでやってそれも維持できればいいではないかということまでを、いわゆるワークシェアリング、雇用と労働時間と働き方も含めた最適な部分のところの議論としては認めようがないというのが基本的な考え方だと思います。
 それから、二点目の助成措置の関係なんですが、私、個人的な考え方ですが、現在の緊急避難型ワークシェアリングというやつは基本的には雇用調整の広義の中の一類型でしかあり得ない。でもそれを、やっぱりこの日本経済全体ががたがたになっていて、雇用がどんどんどんどん排出されて非常に失業率が高くなって大変な状態になって、そういったような部分の、これ以上失業を出さないということも含めて、それを今この時点、時限的な措置として雇用を維持するということについて政策的なウエートを認めるという立場に立てば、いわゆる広い政策的な、社会政策的な視点からとしての緊急避難的な雇用維持というワークシェアリングについて何らかの支援をするということは重要なのではないか。
 逆に言うと、現在の非常に厳しい雇用対策に対して、政策としてきちっとそういうことをやるということの意思表示を含めて、政労使の全体の体制の中で雇用の維持安定、更に言うと社会の安定を図っていきましょう、そういうメッセージの有力な手段として、短期的なこういう政策手段としては必要だろうと。
 同時に、先ほど申し上げましたように、中長期的な働き方、先生はオランダ型も御推奨という話もされましたけれども、正しくそこの部分の選択できるような働き方、自由な労働時間選択ができるような働き方を含めて、共稼ぎ型も含めて、そういうできるシステムを作っていく。そういう部分のところとして、ワークシェアリングということについて整理をするということもこれまた重要なことだろうというふうに思っていまして、私の思いはモデル的にオランダ型にかなり近い、多分、笹森の発言も、普通聞かれると大体オランダ型に近いイメージをされていると思いますし、連合内の議論でも、中長期的な在り方では大体そういったような、これだと決定はしていませんけれども、おおよそのニュアンスというのはそういうことの議論があります。
 ただし、形でどうかというのは最終的な全体の動きの中で落ち着くものなんで、非常に連合として重要だと考えておるのは、何よりも、オランダ型の意味でも均等待遇も重要でありますが、それに至る社会的な合意形成のシステム、そういったのは、オランダの場合は個別あるいは産業別含めて様々な、とりわけ労使の関係、政労使含めた中で合意形成が成されている中で積み上げてできている。そういう社会的な仕組みを作っていくということが、いわゆるどういう形の姿のワークシェアになるかは別として、今の雇用問題だけでない、様々な今後労働力の人口構成の変化とか国際競争やいろんなものが出てくるだろうと思います。それはもうどんな相手かまだ具体的にそのときになってみないと分かりませんけれども、そういうものに対応できるような柔軟ないわゆる労使、社会的な合意に基づいて対応が打っていけるようなシステム、こういったようなものについてやる、考えるというのは、私どもなりのワークシェアリングについて中長期的な考え方も含めての考え方だろうなというふうに思っています。
 均等処遇の問題、均等というかいわゆる労働時間の差に、働いている労働時間の差によって、やっぱり基本的にはその差に応じたものによって処遇がきちっとされるべきであろうというようなことがまず考え方の基本的なベースとして、これは正しく働き方のルールとして社会的に作っていくような仕組みがやっぱり必要である。
 一応、現行のパート法に何なりにしても、一応原則は定められておりますが、結局そういうことをどういうふうに展開したらいいかということについて非常にあいまいもことしておる。なおかつ、実際のそれに伴う行政、政府としての指導なりそういう誘導なりということも、実は正直言って今まで弱かった面がある。
 そういったようなところで、なおかつ、そういう中でパートの方が二割から三割まで出てきているという状況の中でそういう部分のところについてきちっと考え方をはっきりとさせて、なおかつ社会的にも透明、明確なルールをきちっと出して作っていきましょうと。そういうことについては正しくそのことについて賛成でありますし、政府も、ここでは政労使、法制化も含めた検討が必要といったようなことで、まだするというふうな提案では別にないわけですけれども、ただ、少なくとも今のままほっておいたんでは何にも物が進まないだろうという危機感が少なくともこの今回の政府のパート研の報告には出ておりまして、これを法制化という形で受けるかどうかは別として、連合は法制化した方がいいという方針を持っていますからそう取るんですけれども、これは前向きに、どういう着地点があるか、これは労使の関係、国レベル、日経連さんとの関係も含めて、どう進めるんだというようなことがきちっと姿勢として出ないと、やっぱり姿勢が、要するに社会的な構成員としての姿勢が問われるんだろうと思います。
 一律に法律どうこうという議論じゃなくて、そういう問題点をクリアしながら、いかにそれをルールでできるか。法律が嫌だからサボって何にもしないということではもちろんないとは思いますけれども、そこの部分のところをいかに社会的にきちっと作っていくかということが重要だろうと思っています。
#43
○参考人(山田久君) ワークシェアリングに関してはいろいろ議論があって、結論から言うと、私自身はワークシェアリングというのはかなり限界のある議論だと思っています。
 というのは、私の理解ですと、ワークシェアリングというのは、いろんな分類ありますけれども、大きく二つ分かれる。一つは八〇年代までのドイツ・フランス型。既存の特に正規社員というものの間で労働を分けていこう、まあフランスの場合は失業者を増やしてから正社員を増やすという形でありましたけれども、基本的には正社員という枠組みの中で雇用のパイを増やしていこうという一つの在り方。そしてもう一つはオランダですね、オランダの正にパートタイマーを増やしていこうという、そういう二つの在り方があるんだと思うんですね。
 それで、ドイツ、フランス、八〇年代ドイツ、フランスというのは、これは効果、雇用維持ということでは意味があったと思いますけれども、雇用を、最終的に今の日本の状況に対してはやはり極めて限定的な効果しかない。全く意味がないとは思いませんけれども、緊急避難的な意味しかない。
 じゃ、オランダが適用できるかといいますと、これは地理的な環境がかなり違うと思いますね。オランダは正にドイツ、フランスが横にあるわけで、そういう中で、生産性が実はオランダって、一人当たりですけれども、生産性って、八、九〇年代、極めて低いんですね。ところが、日本というのは中国とか東南アジアと競争している社会ですから、生産性の議論はやっぱりやっていかざるを得ない。でないと生活水準を下げないと維持できないわけですね。
 ですから、そもそも私は、やっぱり雇用の問題というのは生産性の議論と生活価値という二つの議論があって、生活価値のところでワークシェアリングは考えていいと思うんですけれども、生産性の議論は別途やっぱりしないと駄目。
 そういう面でいうと、いわゆる成果主義とか、もちろん今いろんな見直しがあって、この今のアメリカの、アメリカ自身も実は理解されているだけのいわゆる弱肉強食じゃなくて、チームワークとかあるいは能力開発ということを最近非常に見直してきているわけですけれども、そういうアメリカも含めた生産性を上げていくための賃金決定の在り方、あるいは雇用システムの在り方、組織の在り方という、そういうところは一方で絶対にやらないと駄目な議論なわけですね。
 そこで、生活価値を、何というか、創造していくということでワークシェアリングがオランダの、というのは意味があるんだと思うんです。それは一つの生き方の多様化というのか、家族モデルを多様化していく。
 要は、これまではだんなさんは仕事一本やり、奥さんは家庭にいる、そういうものをバランスしていく。場合によっては共稼ぎというケースもあるし、あるいは仕事よりも一種のNPOみたいな活動に精を出す人も出てもいいわけですから、そういうところの多様化ということを見越したときにどういう制度設計ができるのか。
 それは一つは、同一価値労働同一賃金というのは原則にやっぱりあるんだと思いますね。それはすぐにはできない。
 それと、ただ、これは必ずしも時間給が同じじゃないんだと思うんですね。時間給というのは言わば一つのブルーカラー的な発想であって、実際変わってきているんです。要は同じような職種だと、今パートと同じ職種でも同じ仕事をしていても賃金格差というのはこれは存在していますから、そういうものをどうやって是正していくかという議論。
 それともう一つは社会保障ですね。これはもう先ほど長々と説明しておりますから割愛しますけれども、そこに正に政府がやっていく役割があるんじゃないのかなと思います。
 以上でございます。
#44
○森ゆうこ君 国会改革連絡会、自由党の森ゆうこです。今日はどうも長時間にわたりましてありがとうございます。
 政労使の役割分担についてそれぞれの方にお答えいただきたいんですが、特に労働組合を代表している中村参考人には、本当に組合の役割も今非常に大きな転換期を迎えていて、大きいと思うんですね。特にオランダモデルなんかの構築には労働側の譲歩ですとかいろいろなものが働いてあのオランダモデルができたということで、山田参考人の言葉をお借りすればポスト戦後型雇用創造モデル構築のためのそれぞれの役割ということについてお願いいたします。
#45
○参考人(山田久君) これまでの低失業社会、先ほどの話でいきますとポスト、ポストじゃなくて戦後日本型の失業社会の中での雇用をめぐる役割分担というのは、企業とその労働組合というのが非常に密接な関係の中でそこが物すごくいろんな役割を果たしてきて、政府というのが余り、臨時的に、最終的に例えば公共事業をやるとかということではあったわけですけれども、生活保障の在り方に関しては一歩退いた形でやってきていたという実情ですね。
 例えば、正社員の賃金に対して例えば生活給という考え方は非常に強かった、その中で扶養、家族手当等あるいは住居手当等を手厚くやってきたわけです。ところが、これはもう世界の先進国の中では残念ながら少数派になってきている。そういう中でここは後退せざるを得なくなってきているわけですね。
 ですから、企業というのはあくまで本質は産業を活性化していく、その結果として雇用機会を生んでいくというのが企業のやっぱり基本的には役割なんだと思うんですね。そういう中である程度後退せざるを得ないところを国がどうやって、じゃ、それを補てんしていくのかという議論になってくるんじゃないのかと思いますね。
 それから、労働組合というのは、当然これまでは正社員だけだったんですけれども、働き方というのは多様化していますから、全体の労働者、労働者全体の中での均衡待遇をどうやっていくのか、そこの生活の正に家族モデルとか生き方の多様化に中立的なものをどうやって作っていくのか、あるいは、能力開発というのは非常に重要なんだけれども、これをどうやって企業に対して要望していくのかという、労働者全体の質の向上、生活の向上を正社員だけじゃなくてすべての代弁者としてやっていくという、そういう役割分担になるんじゃないかなと思います。
#46
○参考人(中村善雄君) 今、先生のおっしゃられたとおりに尽きると思うんですけれども、現実の労使のところで進められる部分というのはそれはそれなりにやっていくしかないし、今の雇用問題ということにやったら、まずそこがきちっと頑張るしかないです。どんどん出ている問題は、まず、組合員のあるところでは産業別の労働組合がきちっと頑張るしかないし、移動の仕組みについても、それは産業別というレベルで労使協議し、産業別の労使というものの役割がこれからますます重要になっていくように作っていかないといけない。
 それから、社会的な仕組みということについて、特に連合中央は、社会的な仕組みと、それから、やはりいわゆる組合員ではなくて労働者、組合員以外の労働者、未組織の労働者の方たちも含めてそういう人たちのネットをいかに作る枠組みをやるかということがナショナルセンターとしての重要な課題だろうというふうに思っております。
 実は、産業別の組合も含めて、いわゆるそういう社会的な労働者を代表する仕組み、そのための運動ということについて、従来の反省も含め、いかに取り組む体制をやっていくかということが実は二十一世紀連合ビジョンの、今、連合が組織的に大きく議論しているところの眼目ということでございます。
 その環境を含めて政府は適切なリード役、特にやっぱり最低限のルールの設定ということについて政府の役割は大きいと思いますし、あと、未組織という部分でいけば、組合も非常に努力をするんですが、例えば連合で雇用相談とか何とかをやると、あるいは職安のヒアリングとかをやるとすると、ほとんど、出てきて、そこへ来て、一番困っているのはやっぱり労働組合がなかったという人たちなんです、ほとんど。電話の相談なんかでも、労働基準法というものがきちっとありながら、それでもきちっとそのとおりに守られていない、もうあってなきがごときみたいな法律で、もう堂々とした違法な行為がまかり通って、それで解雇を含めて泣いている人が一杯いる。
 そういったような実態にあるわけでございまして、そういうのをきちっと組織化して、最低限の下支えをきちっとやっていく、指導の徹底も含めということで現在のところは非常に重要な役割があるんだろうというふうに思っていますし、特に産業別、これは対応する経営者の団体も含めて業種別、産業別、それから、先ほど基金の問題で地域のお話では松井参考人の方から話がありましたけれども、正しくそういう地域レベルの地方の経営者協会、それから自治体、それに更に言うと、連合で言うと連合の地方連合会、そういったような部分が一緒にジョイントしてきちっとできるような仕組みというのを今後とも作るということも含めて、正しく政労使という枠組みの中で仕組みを作るということが非常に重要になってくるという役割だと思っています。
#47
○参考人(松井博志君) 中村参考人が御発言された最後の点は私も一緒ですので、その部分は省略いたします。
 まず、民間の役割ということは、まず、政府の役割は民間が事業をしやすい環境を整えてくださる、その一言に尽きると思います。先ほど、雇用のセーフティーネットの中で雇用の維持、創出のためにまだやるべきことはたくさんあるだろうというのが私どもの認識でございます。
 公的雇用の問題については、私どもは、事実としてつなぎの状況になり得ない、それでしかあり得ないということは認識しておりますけれども、その中でも民間に委託できるものは民間に委託するという考え方もあろうかと思いますし、今まで予算制約の中でできなかったものをやはり公的部門で地方自治体が工夫をしつつ予算を更に必要なものについては付けていく、そういうきっかけにもなり得るのではないかと思っておるところであります。
 それから、そういう公はやはり限られた役割を担っていただきたい、そして、民間が雇用を創出する、すき間をどうにか埋めていただきたいというのが今の私どもの考え方であります。
 それから、民間は労使ともやはりその置かれた立場をよくわきまえ、その中でできる最大限のことをやっていただく、それは基本的には企業が存続し得る仕組みを現場の労使が知恵を絞って対応していただく、これでしか私はあり得ないと思っております。
 賃金の問題でいきますと、私どもからすれば地域別最低賃金さえあればよくて、それ以上のものは不要であるという考え方を持っております。
 先ほど日笠先生からの御質問に回答していなかったので一言だけ申し上げますと、冒頭申し上げましたように、賃金も引き下げなくてはいけないような厳しいものがある、厳しい企業が多いという実態がございます。恐らくワークシェアリングの議論とは区別して賃金を引き下げなくてはいけないのであるならば、それは議論してということを別の表現で私どもとしてはあの紙に書いてある、そういう趣旨でございます。
 以上です。
#48
○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。
 参考人の皆さん、ありがとうございます。もう時間が迫ってまいりましたので、中村参考人と松井参考人、お二人に伺いたいと思います。
 まず、リストラ問題との関係で、私は雇用を守る、そういう企業の責任、とりわけ社会的に大きな役割を担っていらっしゃる大企業の社会的責任ということが大事になっているというふうに思います。そういう点で、私はルールづくりがやはり個々の企業に任せるのでなく必要だというふうに思うんです。
 例えば、日経連の奥田会長さんが便乗リストラについて厳しく批判をされております。アメリカでは利害関係者法というのもできまして、株主の利益だけでなく従業員や地域社会などの利益も考慮に入れていいという法律も作られておりますし、ヨーロッパではEU指令もございます。そういう点からどのようにお考えになるかというのが一点です。
 それから二つ目に、先ほどサービス残業根絶のお話がございましたが、連合の資料の中にも、通達である労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準についての徹底が言われております。全労連なども取り組んでいると思いますけれども、この徹底を図る上でどのようにされていくか、状況などあれば伺いたいと思います。
#49
○参考人(松井博志君) 奥田会長が至る所で申し上げていることは、やはり雇用の維持というのは経営者の責任であると。私どもとしましては、それをやはり広く会員企業にできる範囲内で実行に移していただきたい、そのように考えております。それが維持できないのは、やはり経営者としてもう少し責任を取る対応をしてほしいということは常々お願いしているところでございます。
 最終的にそれぞれの企業の御判断によって雇用調整をせざるを得ないところにまでは、私どもとしてはそれが駄目だということまでは言えないという点は御理解願えれば有り難い、それが一点です。
 それから、サービス残業、労働時間の管理でございますね。労働時間の管理は、先ほど申し上げましたように、必要な範囲のものについてはやはりきちっと適正に対応していかなくてはならないと思っております。
 他方、最近、長時間労働の人について産業医にちゃんと状況を把握させなくてはいけないというような通達が出ている点がございます。私どもとしましては、その趣旨については反対しないものではない状況にありますけれども、かなり時間が必要な人もいらっしゃるという中で、産業界の中では一方、その点についてはもう少し対応してもらえないものかという意見が出ているのも実態でございまして、実態を申し上げたということでございます。
 以上です。
#50
○参考人(中村善雄君) 雇用を守る企業の責任ということは当然のことだろうと思いまして、これは何よりもいわゆる労働者との間の労働関係、過去の信頼関係を含めたベースとしてきちっとやるというのは労使間のルールの中でも当たり前のことだろうというふうに思います。
 特に、こういったような状況の中で、やはりマスコミ的にも影響力のかなり波及効果のあるような、そういったようなところの労使の対応ということについて、これはそれぞれの責任を感じて、奥田会長もそうです、懸命に努力をされているということだというふうに思うし、そういう努力はやっぱりきちっと打ち出していくという労使の姿勢が非常に重要だろうということでありまして、一概に大中小とかそういう考え方ではなくて、要するに日本のリーダー、リーディングインダストリー、リーダーシップとしての自覚と責任という立場でやってもらいたいというふうに思います。
 ルールづくりが必要ということでは、これは先ほどの繰り返しになりますが、やはり現実に労働組合ができているところは恵まれているところです。そうでないところが一杯ありまして、この中に特にしわ寄せが寄っています。
 そういう意味では、やはりいわゆる合理的な解雇の理由も含めて、いわゆる退職、解雇に係るルールというのをもう少し社会全体の議論の中でもっと大きくクローズアップする必要があるし、現実の法制着手まではもう少し慎重な議論、非常に精密な議論が必要だと思います。これは差別の問題も含めていろんな論点があります。
 ただ、少なくともそういうことが大切だということをきちっと社会的に議論ができるような仕組みというのは、やはり今の状況の中でやっていくことが非常に重要なことだろうというふうに思います。何よりも大事なことは、そういう行政の通達を受けてみんなこれだけ大変だというのは、個別の労使あるいは日経連さん等も含めて、地域の労使団体含めてそういうことが必要だと。
 現実、電話を受けて、不当に解雇をされたとかいうことも含めてやってきて、経営者の方は、うちで行って話を聞くと、いや、自由に解雇していいんだというようなことが、基準法上で一定の予告さえすれば自由に解雇できるんだと思われている方がかなり多くて、そういうことも含めて、そういう、そうじゃないんだと、解雇には基本的に合理的な理由が必要だということを、社会のルールとしていろいろあるんです、判例も含めてあるんですということもやって、そういうことがやっぱり出るということは、やはり雇用維持、さらには全体への波及ということについて非常に重要なことだろうというふうに思っております。
 サービス残業というか、要するに全体の労働時間管理の徹底ということと、それからやはり職場単位でも時間管理というのをきちっとできるかどうかというのが、いわゆるサービス残業という部分をいかに抑えられるかということの基本的な論点だろうというふうに思っていまして、ここでもやっぱり悩ましいのは、そういう職場の管理ができないような立場、端的に言うと労働組合がなかったり、そういったようなことの部分にやるというのは、要するに経営者の自覚に頼るしかないという部分が非常にありまして、これはもう少し社会的な仕組みとか宣伝あるいは経営者団体の指導、特に中央会さんを含めてそういう指導を是非私どもはいろいろお願いをして、使用者の方にもお願いをしているわけですけれども、言うことは必要だし、実は連合等の組織労働者の使命としてもそういうことを社会的にできるようなキャンペーン的なものというのを、これは労働者、組織労働者の責務としてきちっとやるようなアピール行動というのも、単に組織内だけの運動ではなくてやっていくということについて、実はいろんな行動の仕方についてまだ表に出すことに至っていませんが、議論しておるところであります。
#51
○畑野君枝君 ありがとうございました。
#52
○会長(勝木健司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 山田参考人、中村参考人及び松井参考人には、御多用の中、本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。
 本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の私どもの調査の参考にさせていただきます。本調査会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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