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2002/04/10 第154回国会 参議院 参議院会議録情報 第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第4号
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2002/04/10 第154回国会 参議院

参議院会議録情報 第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第4号

#1
第154回国会 国民生活・経済に関する調査会 第4号
平成十四年四月十日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    理 事
                魚住 汎英君
                鶴保 庸介君
                内藤 正光君
                日笠 勝之君
                西山登紀子君
                島袋 宗康君
    委 員
                太田 豊秋君
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                山東 昭子君
                鈴木 政二君
                伊達 忠一君
                中島 啓雄君
                藤井 基之君
                松山 政司君
                朝日 俊弘君
                榛葉賀津也君
                辻  泰弘君
                本田 良一君
                松 あきら君
                畑野 君枝君
                森 ゆうこ君
                山本 正和君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        村松  帝君
   参考人
       株式会社ウェブ
       ハット・コミュ
       ニケーションズ
       代表取締役社長
       立教大学大学院
       ビジネスデザイ
       ン研究科兼任講
       師        高柳 寛樹君
       シンクタンク・
       ソフィアバンク
       代表
       多摩大学大学院
       教授       田坂 広志君
       一橋大学イノベ
       ーション研究セ
       ンター教授    米倉誠一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済に関する調査
 (「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制
 の緩和及び起業促進に当たっての課題について
 )

    ─────────────
   〔理事内藤正光君会長席に着く〕
#2
○理事(内藤正光君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。
 本日は、勝木会長が所要のため、調査会に出席できないとのことでございますので、あらかじめ委託を受けまして、私、内藤正光が会長の職務を行います。よろしくお願いいたします。(拍手)
 国民生活・経済に関する調査を議題とし、「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制の緩和及び起業促進に当たっての課題について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社ウェブハット・コミュニケーションズ代表取締役社長・立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師高柳寛樹君、シンクタンク・ソフィアバンク代表・多摩大学大学院教授田坂広志君及び一橋大学イノベーション研究センター教授米倉誠一郎君に御出席いただき、御意見を承ることといたします。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様におかれましては、御多用のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制の緩和及び起業促進に当たっての課題について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、まず高柳参考人、田坂参考人、米倉参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、二時間半程度、午後四時三十分までの間、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 この質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行いたいと存じます。
 また、時間が限られておりますので、質疑、答弁とも簡潔に行っていただくようお願いいたします。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、高柳参考人からお願いをいたします。
#3
○参考人(高柳寛樹君) ただいま御紹介にあずかりましたウェブハット・コミュニケーションズの高柳と申します。本日はよろしくお願いいたします。(OHP映写)
 スクリーンにも映っておりますけれども、こちらのお手元の紙の方もごらんいただいて、同じものですので、お聞きいただければと思います。
 私は、いわゆる二十代の経営者ということで、しかもITベンチャーの経営者ということで、実務、実際の現状はどうなのかというところを中心にお話をさせていただければと思います。本日の題目が「若い起業家と起業風土 自らの経験を中心に」というところでお話をさせていただきます。
 それでは、まず一ページ目、ごらんください。
 まず、私どもの会社の概要なんですが、一九九九年の九月に設立しております。今年の秋で四期目に入ります。従業員が十二名程度、これは非常勤の従業員も含みます。ですので、ベンチャーといっても小さい方のサイズのベンチャー、零細企業ということになってくると思います。
 事業内容は、これもちょっと横文字で恐縮ですが、ASPの企画開発並びに事業化というのを行っています。このASPというのは、インターネット上のサーバーにソフトウエアを乗っけまして、いろんなところからいろんな人がインターネット経由でそのソフトを共有して使うことができるというようなシステムです。例えば、例で挙げますと、今、私どもがやっているのがアルバイトのシフト管理。昭和六十年以降から急激に準社員雇用というのが増えておりまして、その人材を管理するのがいろいろな企業で中心的な課題になっております。それにこたえるべくASPを開発してそれを今事業化をして売っているというところです。
 次のページに参ります。
 まず、会社の沿革をざっと九九年の九月からお話ししたいと思います。
 資本金は一千万円で、株式会社として創業しています。当時、ITバブルの最後の方でしたが、ベンチャーキャピタルから出資を受けようと思えば幾らでも、幾らでもというか、一億、二億ぐらいであればすぐに集めることができたんですが、私はこれを断っております。それで、自己資金であえて起業しております。この辺りも後で中心的な争点になると思います。
 二〇〇〇年の一月に、パートナー的な役員ですが、COO、最高執行責任者としてある大企業から一人呼びました。これは私の大学時代の同期でもありますので友達という感じですね、友達を呼んだという形になっています。
 最初の一年半ですが、資本金一千万というのははっきり言ってすぐになくなってしまいますので、これは何とかしなきゃいけないと。元々、先ほど申し上げました、アイデアをASP化して事業化していくというのがメーンのやりたかったことなんですが、最初、給料を払わなきゃいけない、じゃ何をしようかというところで、大手企業がいろんなインターネットのシステムを開発する際に外注しますが、その下請をとにかく営業で取ってこなしてまいりました。本来ですと、ベンチャーキャピタルから出資を受けていればこの部分はやらずに、すぐに自分たちがやりたい開発に入れるんですが、あえてこの下請というのを一年半ぐらいやりました。
 当時はまだ仕事が、下請も一杯ありましたので、二〇〇〇年の八月の決算は、一期目は黒字になっております。この黒字、余ったお金あるいはためたお金をフルに使って、二期目から自分たちのやりたかったASPの事業あるいはそのASPの開発というところにお金を落とし始めます。
 今までの受託開発、社員が十二名しかいません。エンジニアがこのうち六名から七名ですが、その社員でやりたいことをやっていくと二つのことは並行してできないんですね。ですから、自分たちがやりたかったASPというものを開発するに当たって、今までの受託開発を一切やめます。この時点で収益はゼロになります。ですから、今、ためたお金あるいは銀行からの借入れで回していかなきゃいけないということになってきます。繰り返しますが、ベンチャーキャピタルから最初から出資を受けていればここの苦労はしなくて本来はいいわけですね。
 二〇〇一年の八月、ちょうど去年ですが、ASPが完成しまして、その事業化というものを行ってまいりました。当然、非常に魅力的なものあるいはいいものができてきますと、会社を買収したいという大手の要望ですとか、あるいは事業を売却しましょうとか、あるいは資本を入れさせてくださいと、様々なお話が参ります。私自身、そういったお話にすべてCEOである私が答えることができるかというと、何分そういうふうにもまいりませんので、昨年の十一月に財務担当役員としてCFOを招いております。これは経験者を招くというふうに括弧で書いてありますが、ここにある意味、経験者を招くということが、後でちょっと争点にしますけれども、重要な一つの問題となってきます。
 この時点で第三者割当てを一回行っておりまして、資本金がちょこっとですけれども増えています。これを念頭に置いて次のページを話したいと思います。
 次は、私の個人の略歴になりますが、一九七六年の六月、東京の板橋に生まれています。現在二十五歳です。今年の六月で二十六になります。立教大学の社会学部社会学科というところで、元々ジャーナリズムをやりたくてそこに入っていました。私自身、エンジニアではありませんので、そこで初めて、大学に入ってインターネットと触れ合って、ああ何かこれは面白そうだなということで、卒論でインターネットを取り扱って書いたりしていました。
 そこの興味が、どんどん興味がわいてきまして、大学二年ぐらいのときからですか、九七年ごろからITビジネスごっこを始めています。これは要するに株式会社、有限会社にしないで、自分が個人事業主となって、その辺にたけた連中を集めてビジネスっぽいことをやり始めたということですね。このころ、やり始めてくるとなかなか、当時はまだインターネットのことに詳しいグループあるいは人材がいないもので、意外と大手の企業さんからお仕事をもらえたりとかいうことがありました。
 私が一番力を入れたのが、このときにいろんなIT業界の方々と人脈を作っていくということを専念しまして、人の人脈を広げていったということです。このとき同時に、稼ぐこと、ひいては売上げを立てるということの難しさを体験しています。
 何でここを強調したいかというと、多くのインターネットベンチャーがどっとなくなりましたけれども、去年、おととし辺りなくなりましたが、ほとんど売上げが立ってないんですね。つまり、いいものを作るというプロポーザルを出してベンチャーキャピタルやいろんなところからお金を集めてくる、それで資本金は何億、何十億になるんですけれども、売上げが立たないんですね。実際、売るところに関しては全く、お金を入れているベンチャーキャピタルもあるいは本人、その会社当事者も、ほとんど力を注いでいない、できないというのが現状でした。
 ですから、私があえてベンチャーキャピタルからお金を入れずに、自分たちで売っていく方法を探って一年半嫌な下請をやったというのはそういうところで、とにかく売上げを上げること、ここを、商売というのはそれが基本ですから、そこを会社全体として身に付けようというのが先ほどの投資を受けなかった理由でもあります。
 話は九九年の四月ごろに飛びますけれども、そのまま私は大学院に進みました。元々社会学という領域の中でインターネットのテクノロジーとビジネスの分野をやっておりましたので、そういったことをやって、さらに、アカデミズムとビジネス両方においていろんな方々と知り合っていくと。そして九九年の九月、これは大学院の修士課程の一年のときですが、今までやっていたITビジネスごっこを株式会社ウェブハット・コミュニケーションズとして創業しております。
 それでは次のページです。私がここで申し上げられることの一つとして、大学院のときに起業している、大学という組織の中にいながら起業していますので、大学と学生、あるいは大学と起業、学生と起業という関係で次のスクリーンでお話しさせていただきたいと思います。幾つかエピソードを挙げます。
 最初のエピソードですが、これはある大学の教授から私が言われた言葉です。ビジネスをやっているときに言われた言葉です。高柳君、研究者は清く貧しく生きなさいと。これは、含蓄のある言葉かというと実はそうでもなくて、大学の中で、学問をやるところでビジネスをやるとは何事だとこのとき怒られたんですね。つまり私は、大学で身に付けている専門、ある一定の専門性のある知識を使ってビジネスをして、また現場に出ていろんな人から話を聞いたり、ビジネスを通して得た経験を論文に還元したりしていたんですね。それに関してこういうことを言われました。
 これは、私一人だけではなくて、多くの若い、大学院にいながら起業している経営者ですとか人たち、仲間は同じようなことをどこでも言われています。私は私立の文系の大学でしたけれども、国立の理工学系の大学でも言われている人たちがいます。
 この辺り、比較ということで、学内における起業、特にビジネスに関しての起業、日本とアメリカはどういうふうに違うのかなというのが私の今の考えていることでもあり、実際、アメリカの法人の役員もやっておりますので見てきていますが、かなり違う部分があります。この辺りは割愛させていただきますが、そういう比較をしていくことは重要だろうと思っています。
 そういうことを考えておりますので、学問の中から起業した、成功した起業家というところにもいろいろコンタクトを取っています。
 今は東証二部に上がっていますが、理研ビタミンの前の社長で曽根博さんという方がいらっしゃいます。彼は農学博士でありまして、研究者から起業家になって会社を二部上場まで持っていった方ですが、すべて否定して掛かれ、非常識でいろと彼から言われたんですね。大学というのはある一定のレールの上で物事を進めていくので、そういうふうに大学の先生が言うのはしようがないと、それを否定してあなたが頑張っていかなきゃいけないんだよというふうに言われたのが印象的です。
 じゃ、何でそういうふうに大学というのはそういうところなのかなというふうに考えていくと、東大の名誉教授でいらっしゃる教育学の佐伯先生という方が、意外なこと、予想外のことを受け入れられないんだよねというふうに私に言いました。正に、自分が当時大学院の学生でありながら起業したときに、ああ、本当にそうだなというものを経験しております。結果、今の日本の若い起業家、あるいは大学の中から起業しようとしたときに、目的達成型のスタティックな静的な考え方をしてしまうと。かなり異端を排除する力というのが働いているな、異端は駄目だと、ある一定のレールに乗っていないといけないと。これが、結果として創造性の欠如になってしまって、ベンチャーがいまいち元気のない現状になっているんじゃないかなというふうに感じています。
 最後に、状況というところで書きましたが、まじめに夢を抱く人は異端になってしまって、さらに、ちょっと成功してヒーローになると、ヒーローを称賛しない、出るくいは打つ社会ですけれども、ヒーローを称賛しない社会と。これはやはり物事を起こそうとしたときにモチベーションの低下を招いてしまうと。これは何も大学だけの話ではなくて、やはり小中高校の教育の中においても非常に大事なことなんじゃないかなと思っています。
 次に、ちょっと象徴的な数字があったのでちょっと引用します。
 OECDの去年出たサイエンス・アンド・テクノロジー・イン・ザ・パブリック・アイというレポートですけれども、これは結構有名なレポートですが、最初のものが、上から二番目に日本があります。この表は、諸問題における関心度を示す指数、問題意識ですね。左から、新しい科学技術とか、イノベーションとテクノロジーとか、環境汚染とかありますが、見ていただくと日本の数字が一番関心度が低いです、物事に対する。次のページに行きます。次は、市民の科学分野における知識という表ですが、日本は下から二番目にいます。そのまま次に行きます。科学と技術に対する注目度という表です。OECD十四国中、日本は最下位です。次、四枚目に行きます。科学と技術に対する一般的な考え方、これも日本が一番低い、最下位にいます。やっと日本が上から三番目に来るものあるんですね。それは何かというと、見てみますと、基礎科学研究に対する国家予算がかなり付いていると。にもかかわらず、その問題意識が非常に低かったり興味が低かったりすると。
 これはある一定の矛盾が存在するんじゃないかなと思いまして、この表を見たときに、私が大学の中で体験した、先ほどしゃべらせていただいた経験がわき出てきたというか、これが一つ問題の一端なのかなと思いました。
 最後のページになるんですが、幾つか、三点ほど、今までお話しさせていただいたことをまとめさせていただきます。
 まず、若い経営者ですね、二十代の経営者、私の場合二十代の経営者ですが、が考えなくてはいけないことは何かなと。まず一つに、資本あるいは資本金ではなくて売上げを、イコール、虚ではなく実をというふうに書きましたが、先ほど申し上げたとおり、私の知人でもおりましたが、こういうビジネスモデルがあります、こういう技術があります、それに対して物すごいお金が集まると。ただ、そのベンチャー企業はつぶれてしまう。どうしてかというと、だれも売ることを考えていない、あるいはうまく売れないんですね。そこの売上げを立てる、商売の基本ですけれども、ここが一番今の日本のベンチャー企業に欠けているところなんではないかと思っています。
 もう一つは、自らの人脈で実のあるブレーンの組織を構築していかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。私も、今私一人でできることというのは小さいですので、役員としていろいろ、先ほどCFOを呼んだと申しましたが、彼は経験者でありまして、ずっと大手の証券会社あるいはアメリカの証券会社で、MアンドAとか事業売却あるいはIPOをやっておりました。自分でも日本でITベンチャーを立ち上げて、実際数十億で売却したりとかということで、売上げを上げることもできると。そういう経験のあるブレーンを外から自分の人脈で呼んでくるというのが一番大切なのではないかなと思っています。
 これが、経験のないブレーンが集まると大変なことになります。言いたいことだけ言って売らないという構造が生じてきてしまいます。そうすると、最終的には、社長、あんたが悪いんだからあんたが責任取りなさいといって会社が一杯つぶれていってしまう。やはり、ブレーンを集めたりお金を入れてもらうのであれば、少なくとも売れる人たち、売上げを立てられる構造を作っていかないといけないのだなと思います。
 もう一つは、誠意ある失敗とそれを許容する社会づくりをしましょうということを思います。これは、やはり若い起業家は必ず失敗すると思います。私もこれから多分失敗するんだろうなと思っています。ただ、一度失敗すると、例えば借金を一杯抱えて新たに事業が起こせないとか、いろいろな社会の風潮、慣習上事業が起こせないとか、意外と日本はリスタートが難しい国だなというふうに感じています。ただこれも、合理的に考えれば、失敗を多く積めば積むほど失敗しなくなるわけですから、そういったところを理解した、例えば銀行の融資の制度でもそうですね、そういったところに具体的には落とし込んでいって、そういう誠意ある失敗であれば許容できるような構造づくりができるといいなというふうに思っています。
 これもエピソードになりますが、私が先ほど二期目にお金がちょっと融資を受けないと数か月難しいなというときに銀行に相談したんですけれども、二十五歳の私が相談に行くと、支店長が、担保はとまず言うんですね。それでは話にならないなとほかのところからお金を集めましたけれども、全くそういう意味では地元の銀行が、あるいは都市銀の支店がそういう意味で機能していないと。ベンチャー育成とはいいながらも、末端の部分でなかなか機能していかないというような現実があると思います。
 二番目ですが、これからの社会に期待することと。構造の改革と当事者の意識改革というのが必要じゃないかなと思っています。
 大学に関して言いますと、先ほど申し上げたとおり、大学の役割というものをもうちょっと考えていかないといけないんじゃないかなと思います。
 もう一つは、教育という部分ですね。大学を含めた教育と、それからアントレプレナーシップという部分を考えていく必要があると思います。何かまじめにやろうとすると、友達が白けるとかその程度であれば問題ないと思いますけれども、私の場合、教員ですね、自分の上にいる指導されている教員に白けられてしまいましたので、これは右も左も行けないわけですね、その構造の中では。少なくともそういったところをうまく何らかの形で国立大学も私立大学も構造化できないかなと。
 これもある人の言葉ですが、素人が玄人の世界をかいま見る楽しさを体験させてあげたいというのがあります。これは小中高大、全部そうです。日本の大学はインターンが物すごく少ないですね。小中高に関しては、ほとんど学校内での学問だけで回っていると思います。そうではなくて、もうちょっと社会を、素人が玄人の世界をかいま見る楽しさを、私も元々それから始まりました。いろんな人と会って、ああ、あの人すごいな、あの人、格好いいな、ああいう考え方すごいな、そういうところから起業に至っています。そういった経験をさせてあげられるような構造を作った方がいいんじゃないかと。例えば学校の、中学校の先生から社会人経験のある人を多く採用するとか、あるいは外から人を呼んでくるとか、そういったところで十分だと思うんですね、最初は。そういったことをやることによってその部分も変わってくるのかなと思います。
 それから最後に、もう時間も来ていますので最後になりますが、インキュベーターの役割ですね。
 企業、若い企業を育てようとかあるいはベンチャー企業を育てようという人たち、制度であったり国であったり自治体であったり銀行であったりベンチャーキャピタルであったりすると思うんですが、まず、やはり我々が中にいて感じることは、本質的なビジネスモデル、つまり、何度も繰り返しておりますけれども、売上げを上げられるような構造あるいはそのサポートをしてあげられるその能力をインキュベーターの方が持っていないといけないんじゃないかなと。ただお金を集めてくる、あるいはただ技術がいいからそこにお金を落とすとか、そういう判断であればそんなに難しいことじゃないと思うんですね。それを売るというところ、ここが一番重要であって、難しいところなんではないかと。そこをサポートしてあげられる構造が必要だと思います。
 それからもう一つ、センスを育てると書きましたが、やはり経営は私はある一定のセンスが必要だなと思っています。そういった部分を育てられるような構造があるといいと。
 最後に、これ一番重要だと思うんですが、過保護は禁物だと思います。何でもかんでもやってあげちゃったら、これは絶対に裏目に出る可能性があると思います。例えば、先ほど言いましたが、最初に私はなぜ投資を受けなかったかというと、必要なお金は自分で集めたかったから投資を受けなかったんですね。やはり余り過保護にしちゃうと何にもやらなくなってしまう、何にも考えなくなってしまうということが生じてきて、私もそういうベンチャーを一杯見てきましたので、過保護は禁物であると。
 ただ、じゃ、今の現状でいいかというとそうでもないので、適正な支援、これは難しいですけれども、かなり議論をしていく中でこの適正な支援というところを構築していくのがこのインキュベーターの仕事なんではないかと思います。
 具体例で、ある民間のインキュベーション施設の例なんですけれども、間貸しだけをしているんですね、オフィスの。自由に電話を引いて自由にインターネットを引いて、いろんなベンチャーが集まっていますし、そこの本部にはいろんな経験のある先輩の起業家の方たちが一杯いて、ただ、お金を入れたりとか、ああしろこうしろということは一切言わない。間貸しだけをしているんですね。例えば、そういったことをやれば、必要になれば隣の部屋にいるあの人に会いに行こうとか、あるいはこういう人にアプローチしたいんですけれどもどうしたらいいですか、こう聞きに行けるわけですね。そういうソフトなインキュベートというのも非常に重要なんではないかなと思っております。
 少々、二、三分長くなってしまいましたが、以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
#4
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 次に、田坂参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(田坂広志君) 田坂でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に「産業インキュベーションのビジョンと戦略」という資料がございますので、それをごらんいただければと思いますが、時間も限られていますので、要旨については、実はこの本の論文がお手元に別途配られております。配っていただいております。「この国を良くするために、今やるべきこと」と、この本はしばらく前に出版したものですが、竹中平蔵大臣、現大臣、それから中谷巌さん、そしてこちらにいらっしゃる米倉誠一郎教授、あと伊藤元重さん、大田弘子さんなど、アカデミアのメンバーで集まって、この国をよくするためにどういう政策的な手を打つべきか、それぞれの立場で論じたものです。
 私自身、この中で一つの章を割いて産業インキュベーションということを申し上げていますので、今日はいただいた時間の範囲でこの産業インキュベーションのビジョンと戦略についてお話し申し上げたいと思います。
 お手元の資料の説明に入る前に、私自身のバックグラウンドを一言御説明申し上げておきますが、民間のシンクタンク、日本総合研究所というところに一九九〇年、この設立に参画いたしまして、十年間、シンクタンクのビジネスをやってまいりました。ただ、シンクタンクというよりも、むしろドゥータンクだと自負してやってまいりました。シンク、調査、分析、予測、評価、提言というデスクワークだけやっていても世の中余り大きくは変わることはないだろうと、むしろ新しい事業を生み出していけるようなドゥータンクになっていこうという考えの下に、一九九〇年から十年間、新しいインキュベーションの動きを作ってまいりました。
 今日は、インキュベーションというのが一つのテーマになると思いますので、もう少し申し上げますと、手法というものは従来なかった手法を取り入れております。シリコンバレーなりアメリカでも余り取られていない手法ですが、異業種連合という方法を使った新しい新事業開発というのを十二年前、現在から見れば十二年前に始めたわけです。十年間に二十個のコンソーシアム、異業種連合を作りまして、その中で新しいベンチャービジネスなども生み出してまいりました。
 異業種が集まって新しい新事業開発を行う、どうしてこんなことを考えたかというと、もう十年以上前から民間企業の中で共通の認識があります。分かりやすく申し上げれば、自社一社では新事業が生み出せないと、どれほど優れた企業でも自社一社ではなかなかもう新事業が生み出せない時代になっております。その理由についてはまた数分後にお話し申し上げますが、その辺りを深く感じたこともありまして、異業種が集まって新しい仕組みを作ろうということで、ベンチャーなどを作ってきたわけです。
 幾つか御紹介申し上げますが、やはり十二年前に作ったベンチャー、ISVジャパンというベンチャーがありますが、これは当時の通産省から十二億円の補助金をいただいて実証実験などをやって立ち上げてきたベンチャーですが、汚染した土壌、今、実は日本全国いろんな工場がありますが、大変恐縮ながらほとんどの工場には土壌の汚染があります。これは、今まだ暗黒大陸のようになっておりまして、最近また新聞で少し取り上げられるようになっておりますが、これはもうますます大きな問題になってくる、そんな状況にあるんですが、この汚染した土壌をクリーンアップする技術をアメリカから導入して、日本で通産省の補助金をいただいてベンチャーの立ち上げをやりました。これは、おかげさまで現在もう事業として軌道に乗りつつあります。
 それから、二番目に立ち上げたベンチャーがFESCO、ファースト・エナジー・サービス・カンパニーという会社を立ち上げました。これは省エネのサービスをやるベンチャーですが、これも異業種十二社が集まって事業化を検討し、最終的には八社が集まってベンチャーを立ち上げました。分かりやすく言えば老朽化したビルの省エネ対策をするベンチャーなんですが、それぞれに個別の省エネ技術は持っているんです。ただ、単品で売りに行っても売れない状況がずっと続いてきました。何をやる必要があったかといえば、老朽化したビルのオーナーの方にトータルソリューション、どういう技術を組み合わせれば省エネが最も適切に進められるかという、一種の省エネ診断のようなものをやらない限りマーケットのニーズは動かないという判断から、それぞれ個別の商品は持っている企業でしたが、みんなで集まって協力してトータル診断というものを、コンサルティングを最初にやるという形でベンチャーを始めたわけです。これもおかげさまで随分売上げが伸びてまいりまして、何年か前にはニュービジネス大賞環境賞をいただいております。
 それから、三番目に立ち上げたベンチャーがエンバイオテック・ラボラトリーズと、これはやはり環境ビジネスに近い分野ですが、環境ホルモンなどを分析する技術、こういうものを日本で今普及しようということで活動しておりまして、このベンチャーもその発祥は、異業種が集まったいろいろな環境ビジネスの検討、特にバイオテクノロジーを使って環境問題を解決できないだろうかという検討からスタートしたベンチャーです。これもおかげさまで昨年、中小企業長官賞をいただきました。さらに、その直後に東京都のベンチャー大賞をいただいております。
 特に賞をいただくことがベンチャーの目的ではありませんが、ちょっと脱線いたしますが、これからの時代のベンチャーというのは社会にどう貢献していくかということもかなり重要な眼目になってくるだろうと。単に収益を上げ、IPOに一刻も早く到達することがベンチャーの本来の目的ではないだろうと。実際、今、ビットバレー、渋谷の周辺のベンチャーの若い方々とお話しておりましても、決してIPOだ、お金を稼ぎたいというお気持ちの方は必ずしも多くはありません。むしろ、やはり自分たちのビジネスを通じて社会に貢献したい、環境問題を解決したいとかエネルギー問題を解決したいというような志を持った若いベンチャーの方々が今、日本にはたくさんいらっしゃいます。そういう意味では、新しい基準でのベンチャーの評価、そして育成ということも時代のテーマだろうと思っております。
 ちょっと自己紹介が長くなりましたが、私自身は実は、先ほどの高柳さんのおっしゃったことと関連すれば、ある意味で新しいタイプの日本型のインキュベーターを目指して十数年活動してきた人間でございます。そのことを申し上げた上で、お手元の資料二ページ目にお入りいただければと思いますが。
 まず最初に、なぜ新しい産業が生まれてこないのか。これほど長く不況が続き、経済的な低迷が続いておりますから、官民どこもやはり新しい産業が生まれてこないだろうかと考えております。にもかかわらず、なぜ生まれてこないのか。これにはいろんな原因がありますが、今日一つ申し上げたいのは、これから生まれてくるべき新しい産業というのは従来の産業とは全く性質を異にした産業であるということを御理解いただければと思います。
 例えば、今、識者にアンケートでも取られると必ず出てくる、新産業待望論の中で出てくるものですが、情報産業、それから高齢化社会であるがゆえにシニア産業、そして少子化時代だから教育産業が大切だ、やはり地球環境問題が大きな問題だから環境産業が大切だと。こういう産業ビジョンというのはよく語られるんですが、これらの産業というのは実はこれまで日本の政府が戦後育ててきた産業とは根本的に違ったタイプの産業です。
 私は、戦後の通産省を始めとする政府の産業育成に対する貢献については高く評価するものでございますが、これまでの産業というのは、実は企業の側がどのような商品を、製品を開発するかという、これをシーズと呼んでおりますが、どういうシーズを世の中に提供するかという観点から分類された産業です。例えば鉄鋼業とか石油業とか電力業、繊維業、食品業、住宅業と、いずれもどのような製品を世の中に提供するかという観点から分類された産業です。これは、今も株式欄などをごらんになられるとこの分類が目に付きます。そして、現在は、経済産業省の廊下を歩かれても、それぞれの部署の名前は比較的このシーズ分類になられている行政の体系になっております。
 ところが、今申し上げた新しい産業、生まれてくることが期待される産業というのは、例えば情報産業においていえば、人々が情報を手軽に入手し、また手軽に世の中に自分たちの声や意見を伝えたいという、そういうニーズに対してこたえる産業として今生まれようとしております。シニア産業については、幸せな老後を過ごしたいという根本的なニーズにおこたえしようという産業です。教育産業は、豊かな心の子供を育てたい。環境産業は、快適な環境で過ごしたい。いずれも生活者の根本的なニーズにどうこたえ得るかという観点から期待されている産業です。これらの産業というのは、先ほどの産業、これをシーズ型産業と呼べば、その逆のニーズ型産業とでも呼ぶべき新しい産業であることは明らかだと思います。
 したがって、今何が求められているか。従来、縦にずっとシーズ型産業ということで、どのような製品を供給するかということで分類されてきた産業を横断する形、横に切る形でこのニーズ型産業というのが生まれてこなければならない、その時代を迎えているんだと、このことが本日一番申し上げたいことの一つでございます。これは、そのまま政府の産業育成政策のとらえ方を根本から改める必要があるということです。
 例えば、経済産業省においては、今から申し上げることは決して批判的なことでもございません。私自身も経済産業省の産業構造審議会の新成長部会の委員も務めております。政府の立場からの政策立案もやっている立場ですので、決して批判という意味ではございませんが、従来の国の政策というのは、どちらかというとシーズ型産業をどうしたら育成できるかという観点で施されてきた政策でございます。むしろ、これから必要なのは、ニーズ型産業を育てるための新しい政策パラダイムが求められております。では、どのような政策パラダイムかと申しますと、先ほどの話です。異業種を集めて、顧客なり消費者、生活者のニーズにこたえるビジネスが生み出せるかということが今問われています。
 例えば、先ほどのシニア産業というものを例に取ってみますと、シニア産業の一つの典型が、恐らくはシニアコミュニティーと呼ばれるようなものが今期待されているだろうと思います。これは、そのコミュニティーにおいて、高齢者の方々が幸せな老後を過ごせるコミュニティー、例えばこういうものがニーズとして明確にありますが、これを実現しようと思えば、もう簡単に想像していただけますとおり、地域を開発するディベロッパー、そしてそこに例えばシニアマンションを造るゼネコンさん、さらにはその中にバリアフリーの家具を入れる必要もあるでしょう。人材派遣も介護という観点から必要かもしれません。健康食品、それからさらには生涯教育のようなもの、それ以外に紙おむつのような雑貨まで必要かもしれません。
 いずれにしても、このシニア産業、シニアビジネスというものを立ち上げるためには、今申し上げたようないろいろな異業種が横に結び付いてこの生活者のニーズにトータルにこたえていくという仕組みができなければ需要の喚起ができません。単品だけ売りに行って、紙おむついかがですか、若しくはバリアフリーの家具どうですかだけでは産業は生まれてこない構造をしていると、そのことが一番申し上げたいことです。
 そして、もしそのことを御理解いただけるならば、これからの国の政策も、従来の個別のシーズ型産業、シーズ型の企業を支援するという考え方を超えて、いかに異業種を集めて生活者のニーズにトータルにこたえられるパッケージ商品とかトータルサービス、そういうものを育てられるかということがテーマになってきます。先ほど御紹介申し上げました、私どもが育ててまいりました三つのベンチャーも、実はこのニーズにこたえるタイプの異業種連合によるベンチャー育成だということを申し上げておきたいと思います。
 今申し上げたことが、実は私自身が十数年やってまいりました日本型インキュベーションと呼ばれるものです。これは、必ずしもアメリカ、シリコンバレーで行われているインキュベーションと同じものではありません。私は正直、信念に懸けて申し上げますが、やはり日本には日本独自の社会的風土、歴史的経緯がございます。この中で生まれてくるべきインキュベーションのスタイル、戦略というものは、やはり日本的な条件を考慮したものであるべきだろうと考えて、このようなやり方をしてまいりました。
 さて、そのことを申し上げた上で、まだ数分時間がありますので、一、二点申し上げますが、今、高柳さんもその分野にいらっしゃると思いますが、ITベンチャー、またネットベンチャーと呼ばれるこのビジネスをどう見るか、この一点を申し上げておきたいと思います。
 世の中、バブルが崩壊した、もうネットベンチャー、ITベンチャーは終わりだというような議論もたまに見受けられますが、私は実はこのネットビジネス、ITビジネスと呼ばれるものには非常に重要な歴史的な使命があると思っております。それはどういうことかというと、インターネットの世界でのビジネスというものをじっと見ていると、先ほどから申し上げたことを非常に見事に体現したビジネスが生まれてきております。
 ちょっと御専門の方がいらっしゃるかどうか分かりませんが、ちょっと専門用語になって恐縮ですが、例えばネットビジネスでよく使われるポータルサイトというところがあります。これは、インターネットのサイト、そこにアクセスして、そこでどういう情報が提供されているかを見ると、実は個別の企業の商品を売ろうとするサイトよりもニーズにこたえていろいろな商品とかサービスが並んでいるようなサイトが非常に多いです。これは、例えば自動車を売っているような、例えばカービューとかオートバイテルというようなサイトへ行かれますと分かりますが、従来のカーディーラーのようなものを超えて、カーライフを楽しみたいという方にいろんな情報を提供する、もちろん自動車も販売しますが、中古車の紹介もする、カーアクセサリー、カーナビ、さらには保険だローンだまでトータルに提供するような、そういうビジネスが実はネットビジネスの中で多々生まれております。
 これは何が起こっているかと申し上げれば、元々ビジネスの最も消費者、生活者中心の姿というのは、一つのニーズに対して関連する商品とサービスが手軽に簡単に届けられるという構図が一番理想であったのですが、これまでは残念ながらそれをやろうとすると非常にコストが掛かったんです。ところが、インターネット革命によって、このお客様にそういう情報を提供するコスト、情報伝達コストというのが、一つの学説によれば千分の一に下がったと言われております。この千分の一以下が実際にどれくらいかは別として、かなり大幅に下がったことが背景にあって、多くのネットベンチャーというのは、顧客のニーズに関連する商品とサービスを取りそろえて届ける、そういう新しいビジネスに向かっております。これがアメリカで言われてきたニューミドルマンという新しいビジネスです。
 これは、オールドミドルマン、すなわち過去の中間業者というのは生産者の方を向いていた。生産者の商品を販売代理をするというのが古いタイプの、オールドミドルマン、中間業者だったわけです。ところが、ネットビジネスの中で生まれているのはニューミドルマン、これは逆を向いております。消費者、顧客の方を向いて、その方々が望まれるニーズに関連する商品とサービスをすべて取りそろえて提供する。これは古いタイプのミドルマン、オールドミドルマンのやってきた販売代理ではなく、その全く逆、購買代理という新しいビジネスモデルをひっ提げてこのマーケットに今やってこようとしているわけです。
 確かにいろんな歴史的な経緯から、日本ではネットベンチャー、かなり苦戦をしておりますが、少し長期的な視点で見れば、このITビジネス、ネットビジネスというものは、こういう顧客中心、生活者中心のビジネスを育てていくという観点からは、やはり政策的にも支援をしていくべきだろうと考えております。分かりやすく言えば、このネットベンチャー、ITベンチャーというのは産業構造の転換、先ほど申し上げたシーズ型産業という縦のものを横に貫いてニーズ型産業を生み出していくというようなある種の触媒的な機能を持っているんだということを申し上げたいと思います。
 その上で、産業インキュベーションという政策パラダイムについてもう一言申し上げたいと思います。
 産業インキュベーションという言葉はビジネスインキュベーションという言葉よりも大きなビジョンとして申し上げております。ただ、不思議なもので、現在の世の中のマーケットというのは、情報化が進めば進むほど、不思議なことですが、心理的性質が非常に強まっています。そして、なぜかマーケットが動くときというのは小さく仕掛けたときではない、大きなビジョンを掲げて仕掛けた方が動きやすいという時代になっていることは事実です。これは民間企業においては共通の認識になっています。
 したがって、今求められているのは、個別のビジネスアイデアが百、千と出ることだけではない。やはり新しい産業ビジョンというものを、あえて申し上げますが、言霊力、言葉にやはり大きな力、影響力を持ってそれが語られることが今マーケットで求められているんだろうと思います。そういう意味で、あえて産業インキュベーション、仕掛けるべきは新しい産業のインキュベーションであるということが十二年前からの私の主張でございますが、その眼目は五つございます。
 一つは、先ほど申し上げたシーズ型産業からニーズ型産業への転換、そして二番目が政府主導から民間主導への転換、そして業界団体、同業種が集まった団体からむしろ異業種が連合するという方向への転換、大企業中心からベンチャー企業中心への転換、間接金融から直接金融への転換という、この五つの視点の転換を行いながら、新しい産業育成のビジョンを国も民間も今掲げるべき時代になっていると考えております。
 そのことをもう少し別な角度から申し上げたいと思います。
 アメリカでのインキュベーション、これはシリコンバレーを中心にかなり新しいベンチャーが次々と生まれるということはもうよく知られていることです。そして、日本の多くの自治体がこのアメリカのシリコンバレーでベンチャーが生まれてくる姿を見て、日本にもシリコンバレーを作りたいと思って積極的にいろんな活動をしてこられました。
 ところが、先ほどやはり高柳さんのお話の中にありましたように、日本でこういう形で作られたインキュベーターがなかなか新しいベンチャーを生み出せないということがずっと続いております。その理由というのは非常に明確な理由があります。アメリカのシリコンバレーでいろんなベンチャーの育成が起こる、それを米国型インキュベーションと呼びますと、これを学んですぐに日本で同じことをやろうとするわけです。ところが、それがうまくいかないんです。どういうことかというと、アメリカのインキュベーションを見ていると五つの要素というふうに考えられています。
 一つがまず優秀なアントレプレナー、起業家を見付ける。彼が持っている新しいビジネスプランなりビジネスモデルを評価する。そして三番目に、このモデルが良ければ、そこにベンチャーキャピタルなどを紹介して投資をする。さらに、オフィスとラボを安く貸す、貸与、レンタルするということですね。そして、ビジネスコンサルテーション、いろいろな法務や財務などのアドバイスをする。この五つをやると、新しいベンチャーが、ベンチャーの卵がふ化する、インキュベーション、生まれてくると言われているわけです。
 ところが、実際にこれを日本でやろうとすると、自治体の方々は残念ながらこの中の四番目の部分にどうしても力が入ってしまう。オフィスやラボを安く、箱物行政という言葉がしばしば使われますが、そういうものはかなりしっかり作られるんですが、ほかの部分についてはなかなか手が回りません。そのことが実は日本でインキュベーションが進まない理由です。多少のベンチャーキャピタル的なお金は準備する、同時に箱物、入居できるオフィスやラボも準備するけれども、ベンチャーは生まれてこない。これがなぜ起こるのかということを今深く考えてみるべきかと思います。
 この理由は、別な言葉で言えば、日本ではシリコンバレーに存在するある大切なものが存在していない、若しくは存在しても非常にプアであるということが原因です。一言で申し上げれば、ビジネスエコシステムです。
 これはアメリカのシリコンバレー、スタンフォード大学などでよく使われる言葉ですが、ビジネスの生態系、今申し上げた五つのファクターの周辺にもっといろいろな深みのある仕組みが存在しています。これは、シリコンバレーにおいてはビジネス生態系ということで、もう長くこれが形成されているんです。
 どういうことかというと、お手元資料四ページ目にお入りいただければと思いますが、日本と米国の違い、先ほどの五つに合わせて申し上げますが、日本と米国では起業家の人材の層の厚みが圧倒的に違います。よく御存じのように、アメリカではハーバードだスタンフォードだを出るような優秀な学生がベンチャーを起こして社長になろうと考えられる、そういう文化があります。また、アジアから移民してこられた方々も、そのシリコンバレーのCEOの四〇%はアジア系移民と言われるような仕組みがあります。これは、海外からも優秀な起業家、人材も受け入れているということです。これに対して日本では、どうしても優秀な学生の方はいまだに大企業志向、寄らば大樹という傾向があります。また、大企業の中では、そこで新しい事業を取り組ませていただけるかといえば、長きにわたって、厳しい表現ですが、囲い込み、飼い殺しとでも呼ばざるを得ないような状況の中に置かれてしまう傾向がありました。
 二番目の、ビジネスモデル、ビジネスプランという意味でも、米国はかなり戦略的にビジネスモデル、プランを立てる文化があります。日本の場合には、比較的まだアイデアビジネスのような段階を超えていないということがあります。
 三番目は、ベンチャーキャピタルの問題ですが、アメリカではリスクキャピタル、まだ非常にリスクの大きい段階でのキャピタル機能が存在しています。いわゆるエンジェルと呼ばれるような、過去において功成り名遂げたアントレプレナーが自分のポケットマネーのような感覚で数億円を投資するというようなこともアメリカでは行われます。ただ、日本ではリスクキャピタルと呼ばれるハイリスクの段階での投資をしてくれる企業は少ない。むしろ、IPOが目の前に見えてきたときに、寄ってたかって投資させてくださいというようなベンチャーキャピタルが日本では非常に多いというのが現実かと思います。
 四番目ですが、コンサルテーション、コンサルティングという意味でも、日本ではベンチャーに対する知恵を提供する機能は弱いです。シリコンバレーでは、電話を一本掛けると、もう日本でもよく知られているような功成り名遂げたベンチャービジネスの成功者、アントレプレナーの先輩たちがいろんな知恵をかしてくれる、そんな場が存在していますが、日本の場合には、コンサルタント一つでも、比較的、机の上で学問してきてコンサルティングをやられる方も比較的多い。どうしても、ベンチャーを成功させた体験からくる知恵を提供できるようなコンサルタントが少ないという面もあります。
 そして、インフラの部分で言えば、この部分だけは、日本は箱物は大変しっかりしていますけれども、実はオフィスとかラボが安く使えるだけではベンチャーは立ち上がってこない。例えば、シリコンバレーでベンチャーが立ち上がる一つの理由というのは、分業というのがマーケットでしっかり行われています。例えば、ファブレス企業というのがございますが、製造の部分は自分たちでやらずにほかの企業にやってもらう、そういう形でベンチャーを立ち上げる企業がありますけれども、ファブレス企業が存在するということは、ファブリケーション、製造だけを専門にやる企業が一方にあるということです。こういうマーケットの中での分業という仕組みが日本ではまだ十分にない。これもまたインフラという意味では弱い部分です。
 いずれにしましても、今申し上げたことに対する解決策を見出していくこと、その中で日本には日本的なビジネス生態系を可及的速やかに育てていくことが日本での新しい産業育成のためには極めて重要なテーマになっていると思います。
 そのための打ち手は何通りもあろうかと思いますが、本日最初に申し上げた私自身の経験に即して一つの方向、あくまで幾つかあり得る中の一つの方向を申し上げますが、日本でビジネス生態系を育てるためにはやはり異業種企業が集まってベンチャーを支援するような仕組みが必要だろうと思っています。
 最後に、その観点から五つの発想転換を申し上げて締めくくりとさせていただきますが、お手元資料、五ページ目。
 日本ではアントレプレナーの人材が少ない。これは、やはり長期にわたって、大学を出て若い方がベンチャーにチャレンジするような文化を応援していかなければならないと思いますが、現時点でもう一つ打つべき手は、大企業の中に囲い込まれている人材がベンチャーに取り組めるような仕組み、これを私はイントラプレナー、社内起業家と呼んでおりますが、大企業が支援してその社内から起業家を輩出していくような取組が必要かと考えております。
 先ほど申し上げた三つのベンチャーは比較的大きな企業、日本総合研究所という企業の中で社員として働いていた方々が社長として今立派にベンチャーの社長を務めております。こういうささやかな事例ではありますが、そういう流れもこれから必要になってくるだろうと、これが一点です。
 二点目は、ビジネスプランというものはこれからは複合的なビジネスモデルが必要になります。私自身、コンビニエンスストアの企業の社外役員も務めておりますが、今コンビニエンスストアで新しいEコマース、電子商取引の場になってくると言われますが、それを本当に実現しようと思えば、単にコンビニの店頭での商品を提供するというモデルだけではビジネスは生まれません。当然、これはデリバリーそれから決済、様々なビジネスモデルが組み合わさらない限り新しいサービスが生まれてきません。そういう意味では、これから複合的なビジネスモデルの開発をやるような場というものをどう作るか、これも異業種連合ということの一つの眼目ではありますが、大きなテーマかと思います。
 それから、ベンチャーキャピタルについては、日本ではIPO直前に寄ってたかって投資するというキャピタルは十分にあるような気がいたしますが、むしろリスク段階からのリスクキャピタル的な機能、さらにはむしろ後半の、まだ公開していないけれども未公開株を交換するような場というものもまた重要。そして、やはり融資という形での資金の提供も当然日本では健全な形で育つ必要があります。あくまでベンチャーキャピタルという狭い意味での機能にとどまらず、必要な段階で必要な形で資金が得られるキャピタルネットワークというものがこれから求められるだろうと思っております。
 四番目は、ビジネスコンサルテーションということに関連してですが、これからのインキュベーターがベンチャーの方に提供すべきは、法務、財務の知識はもちろんですけれども、アライアンスコーディネーション、戦略的提携の支援、今ベンチャーの方が求められているのは、いろいろな異業種企業の顧客チャンネル、時には大企業の顧客チャンネルなどを使って自社の商品を売ってもらいたいというニーズもあります。こういう方向でベンチャーの方がいろんな異業種企業と連携していけるようなアライアンス・サポート・コーディネーションのような機能がこれからのインキュベーターには求められてくるだろうと思っております。
 そして最後に、レンタルオフィス・ラボというようなテーマももっと広がりを見せております。今ベンチャーでなかなか立ち上がりが苦しい企業がすっと立ち上がっていくときに、一つの例としてメディアが取り上げるというときがあります。最近私、あるテレビ番組のお手伝いなどをしているんですが、テレビ番組であるベンチャーの商品を紹介してあげるだけで電話が殺到する、いろんな企業からの提携の申込みなどがあるということもあります。そういう意味では、これからはネットの時代、そしてメディアの時代です。これからのインキュベーターというのは、このネットワーク、メディアをうまく使って、ベンチャーがほかの企業とうまく結び付く場を提供できるか、さらには消費者、生活者にその優れた商品をお知らせすることをお手伝いできるか、そんなことも新しいインキュベーターの役割になってくるだろうと考えております。
 手短に申し上げましたが、日本型インキュベーションということを改めて申し上げたいと思います。この言葉は産業インキュベーションという言葉と同義語と思っていただいて結構です。日本という国においては、単にシリコンバレー、アメリカの猿まねをするのではなく、日本の風土に合わせた新しいインキュベーションの戦略というものを考えていく必要がある。大きな産業ビジョンを掲げながら、一方で、先ほど申し上げた五つの発想転換をする。単なるアメリカの機能のまねではなく、日本的な新しいベンチャー支援の仕組みが生まれてくるだろうと考えております。
 私自身のささやかな取組ではございますが、皆様方の今後の検討の御参考にしていただければと考え、あえてこれまでの経験を御報告申し上げました。
 私の御説明、以上でございます。
#6
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 次に、米倉参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(米倉誠一郎君) こんにちは。一橋大学の米倉です。
 私が言いたいことは二つで、新しい産業支援、ベンチャー支援は国家戦略の一つに位置付けるべきだということと、それはシステム対応ですからかなり精緻なシステムとして考える、アドホックな対応はできないというこの二つです。
 多くのところはちょっと話が長い田坂参考人とほとんど一緒なんですが、最後の部分は大きく違いまして、日本型という前に、我々はもっと謙虚にアメリカで起こっているシステムワイズなロジックを学ぶべきだと。それをやれば必然的に日本型になるんで、あえて今ここで日本型というと結局進歩を妨げるというふうに私は思います。
 なぜベンチャー支援が国家戦略かというのが私のレジュメの一番始めに書いてありますが、一つは、グローバルなコンペティションの、要するに、グローバルな競争をやっていると大企業が雇用創出力を必然的に失っていく、ですから雇用を作るという必然性が出てくる、それは大企業以外からしか生まれないというロジックがあります。これは後で説明します。
 もう一つは、新しいビジネスフロンティアはかつてに比べて物すごく不確実性が高い。今、田坂さんが言われたように、ニーズオリエンテッドですからニーズは非常に変わります。どこに何があるかも分からない、テクノロジーもどうなるか分からない、そういう中で起業するんですから不確実性が高いと。これにはある種特殊なシステムが必要であると。
 二つ目が、これが、今日是非皆さんにお考えいただきたいのは、ベンチャービジネス支援というのは小さな企業を創出することではない、五年から十年の間にグローバルな百社に入るような大企業を創出するということが基本的な眼目なんですね。そこでは、特に国会議員の皆さんにお願いしたいのは、ベンチャー支援策と中小企業支援、それを混同されないことだと思うんですね。
 私の参考資料の一番最後に追加資料が付いておりますが、これは二月二十六日の世界ランキング企業です。一番上の左側がニューヨーク・ストック・エクスチェンジ。これの時価総額で見ますと、GEがトップに入って、二位がエクソン、三位がウォルマートとなっていますが、同じくナスダックの方では、マイクロソフト、インテル、シスコ・システムズ、オラクル、デル・コンピュータと、この十年から二十年の間にできた企業がこれだけいますが、ここを見ていただければ分かりますように、ナスダックではこの十年から二十年の間に出た企業がグローバルな全世界の百社に入る企業をこれだけ輩出していると。
 それに比べて、日本を見ていただきますと、NTTドコモに始まりまして最後のセブン―イレブン。NTTドコモはグローバルランキングでまだ二十六位なんですね。ところが、我々で、日本で数少ないベンチャーと言われるソニーと本田はやっぱり九十一位と百十七位に入っていますから、そういう点では日本にも短期間に成長したすばらしい企業がいるんですが、重要なポイントは、このナスダック、右の上のマイクロソフト、インテル、シスコ、オラクル、デル、アムジェン、アプライド・マテリアルのような企業を短期間に作り上げて、国際競争力のある国あるいは企業を育て上げるということがベンチャーの基本的な眼目である、小さな企業をぽつぽつ育てることではないということを是非御理解いただきたい。
 次のポイントは、なぜグローバルコンペティションが出てくると大企業が雇用創出力を失うかというと、競争が世界規模になるんではなくて、一番重要なところは、競争に必要な経営資源、人、物、金、情報が世界規模で調達されなければならない。これがグローバルコンペティションの原則です。そうすると、人、物、金、情報の中で一番重要なのはお金ですが、資金が世界規模で供給されると、資金が世界規模で供給された場合にどういう状況が起こるかといいますと、その資金を有効活用するためのグローバルなスタンダード、これは日本語なんですが、それが必要になってくると。残念ながら、世界国際経営機関とかいうのはありませんから、国際標準を決定する機関はないので、実質的にスタンダードを取るという意味ではデファクトスタンダードなんですが、それを取ったのは今のところアメリカ型の経営であると。アメリカ型の経営の何が取ったのかというと、株主を非常に重要視する経営スタイルというのが今世界のグローバルなコンペティションをやっている企業の基準にもうなりつつあると。
 なぜそういうことが起こるのかといいますと、例えば、ソニーという会社は、約四六%を外国人が持っています。ところが、全株主数に占める外国人の比率は九%です。九%ということは、わずか九%の人間が半分近い株を持っている。そうすると、この人たちの正体というのは機関投資家なんですね。機関投資家というのはどういう人たちかといいますと、決してジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットという人たちではなくて、実は我々なんですね。我々というのは、普通に勤めていた人間が、退職金、それをまた、老後の年金をもらうために積み立てているお金を世界じゅうで最も効率的な企業に投資していく、これが機関投資家の本当の姿です。
 そうすると、我々もう既に残念ながら年金が破綻していますから、近いうちに四〇一kプランに移行していくわけですが、私が一生懸命積み立てている年金をどう有効的に活用していただけるかというのが全国民のこれ真剣なる希望になるわけですね。そうすると、そういう人たちのエージェントとなっている機関投資家は、やっぱり世界で一番株主を大事にしてくれるところに投資をしていく。これを集めないと実はキャピタル界の大企業は資本調達ができなくなっているという構造をお話ししたいんですね。
 そうすると、例えばソニーのような会社が、うちは従業員が一番で株主は二の次ですよと言うと、株の半分が売られてしまう。ソニーの株は暴落する。トヨタ自動車も二〇%、松下も三〇%、既に外国人が持っている。こういう巨大企業は、次のページに行きますが、残された選択というのは非常に限られてくる。
 それは、皆さんがよく御存じのジャック・ウェルチが提唱しているような選択と集中、資本効率を最も上げる分野に選択的あるいは集中的に資本投下をしていくビジネスを展開する。そのプロセスでリエンジニアリング、リストラクチャリングとかキャッシュフロー経営に努めていくというのが、実は非常に世界的な大企業の取らざるを得ない方針になってくる。そうすると、皆さん御存じのようにジャック・ウェルチはすばらしい経営者です。GEもすばらしい会社ですが、あそこから、あそこの利益の五〇%は既にGEキャピタルというノンバンクから来ているわけですね。ということは、GEが新しい産業を創造する、新しい事業分野を新たに開拓するという可能性はほとんどないです。
 同じようにいえば、松下とか日立とかNECが全く不確実な分野に、しかも二十年も掛かるような、リターンを生むのに二十年も掛かるような分野に出ていくということは構造的にできにくくなっている。むしろ、事業分野を絞り込んで、人を絞り込んで、キャッシュフローを高めて利益率を上げていくという方向に行きますから、もし日本経済が良くなるとどういうことが起こるかというと、雇用なき回復が起こると思います。経済が良くなるけれども雇用は生まれてこない。それを一体じゃどういう企業が雇用を作っていくのか。
 その一つはサービス産業、これは大きいと思いますが、サービス産業だけではいずれ飽和するのは間違いないですから、今、田坂さんがおっしゃったような新しい産業を作らざるを得ない。新しい産業が今どういうところにいるかといいますと、次のページにありますように、技術が物すごく不確実でマーケットニーズもほとんど不確実なところにいる。
 例えば、コンピューターでも技術的には三か月に一回変わってしまうとか、皆さん、先ほど田坂さんが最後に、あるいは高柳さんがおっしゃったように、IT、インターネット、非常に重要ですが、インターネットのスタンダードアイゼーションというんですか、標準化はまだ全然できていないんですね。我々、多分二十一世紀はインターネット家電を使うだろう。しかし、そのインターネット家電であるテレビの裏側が一体何につながっているんだ。光ファイバーなのか、あるいはデジタルで空から降ってくるのか、あるいはもう電線に直接つなぐのか、あるいはADSLが進化していって電話線の上でまだ行くのか、その技術すらも決まっていないんですね。
 それから、マーケットニーズでも、一九九三年に産業構造審議会そのほか、通産省が立派なものを出しましたが、一九九三年の中でインターネットのイの字もないですね。ノーマークでした。もちろんその中にはコーヒーチェーン店も古本屋も、更に言えば千九百八十円のフリース屋さんも伸びる産業とは書いていなかった。でも、現実に伸びているのはスターバックスコーヒーであり、ブックオフという古本屋であり、ユニクロという洋服屋さんなんですね。
 これは、ニーズというのはほとんど予測不可能である。人がどこへ行くのか、これを探り当てていく、あるいはテクノロジーも一体次に何が来るのか、これを探り当てるという努力は、技術がいいから伸びるんじゃないんですね。
 皆さん御存じのように、私もマッキントッシュというのを使っていますが、多分マッキントッシュはウィンドウズの百万倍賢かったと思います。でも、デファクトを取ったのはウィンドウズなんですね。技術がいいからデファクトを取れるとは限らない。NHKのプロのカメラマンはほとんど皆さんベータを使っています。でも、実質的に標準を取ったのはVHSです。
 市場を席巻する、あるいは国際競争力のある企業になるというのは、テクノロジーがいいからとは限らない。ということは、そこを何とかビジネスにしていくという力が必要なんですね。そのことを、言いたいことはこういうことなんです、事前に予測することはほとんど不可能である。
 事前に予測することが不可能であるならば、次は何が必要なのか。ここが次に、六ページに書いてあるように、数を打つということが非常に重要なんです。要するに、たくさんのトライアル・アンド・エラーを重ねるということが新しい産業を掘り当てる唯一の道だというふうに理解していただくことが重要で、シリコンバレーというのは場所の名前ではなくて、不確実性の中で数を打つということをシステムにした、システムの名前だというのが私の長年の主張であります。
 国会議員の皆さんが宝くじをお買いになるかどうかは知らないんですが、宝くじを買ったことがある方、おられますか。──おお、いいですね。じゃ、ついでにお聞きしたいんですが、この中で一億五千万円当たった方というのはおられますか。──これはどんな広いところでやってもそうなんですが、宝くじを買った方というのはたくさんおられるんですが、めったに三億円当たったという方に、僕は一度もまだお目に掛かっていませんから、本当に会わないんですね。
 人はなぜこんな不確実な行為をするのか、これが非常に重要なポイントなんですが、あの宝くじが一本三百万円だったらば絶対にこういうことは起こらないんですね。あれが一本三百円であるということが非常に重要。同じ三百円であっても、当たりくじが、一等賞金が一万五千円でもこういうことは起こらないんですね。あれが一億五千万円あるいは三億円という一等賞金にしているから、この不確実な中でも試行錯誤が起こるわけです。
 重要なポイントは次なんですが、いかにローエントリーリスク、リスクを物すごく低くしてあげてリターンを高くするかということを、そういうゲームを作ってやると参加者が物すごく増えると。
 そのローエントリーリスクなんですが、ここでの問題は、日本の教育で一番間違っているのは、非常に早い段階からベンチャーキャピタルはリスクマネーだと教えることなんですね。
 起業家にとってみれば、一番のリスクマネーは銀行融資です。銀行からお金を借りて返さなくていい人というのは非常に限られていますから、多くの我々一般ピープルは、銀行からお金を借りたら絶対に返さなければいけない。返せない場合は担保を取られ、抵当を取られ、まあ身ぐるみはがれる。先ほど言いましたように、非常に不確実性の高いところで事業を起こすときに、銀行融資というのはあり得ない選択なんですね、リスクが高過ぎて。ということは、間接金融はあり得ない。直接金融以外あり得ないということです。
 その中でもベンチャーキャピタルというものが最もローリスク。要するに、日本のベンチャーキャピタルには個人保証を取ったりするのがいますが、基本的にはそのビジネスのアイデア、モデル、そして人、物、金、情報、すべてを注ぎ込んでそれを物にするというのがベンチャーキャピタルですから、基本的にはリターン、保証金とか担保は取らないと。そうすると、エントリーリスクは低いんですね。起業家にとってベンチャーキャピタルが付いたということは、非常にローリスクマネーをいただいたと。
 もう一方で、簡便な公開市場。これが先ほど右の上にありましたナスダックという、とても透明性が高くて、流通量が多くて、上場基準が緩い。これは、上場基準が甘いということではなくて、緩いということは、前歴、要するに過去の経験を大きく問わないということなんですね。こういうしっかりした市場を作ってやると、例えばネットスケープのように千倍とか、そういうリターンが生まれることがあると。
 私の後輩である三木谷くんも、一時、千二百倍という株価が付きましたが、千倍というのはどういうお金かといいますと、百万円投資すると十億円になるというお金です。これはもう想像のように、物すごく大きなリターンですね。
 こういうものを作ってあげると参加者が増えると。問題は、この参加者の質で実は国の競争力が決まると。おれは勉強も嫌いだし、一発ベンチャーで当てるぞと言っているようなビットバレーお兄ちゃんたちが参加していると、実は日本の国の競争力がこの辺で決まると。
 しかし、先ほど来出ているスタンフォードとかMITとかハーバードで、こいつはできると。例えばサン・マイクロシステムズのビル・ジョイという人は、二十四歳、大学院生、バークレーの大学院生のときに、ほとんどの同僚、先生、後輩がこの人はもうこのままバークレーのコンピューターサイエンスの教授になるんだと思い込んでいたぐらい優秀な人間が、一万ドルでサーバーを作るっておもしろいねと言って、このゲームに参加してくるんですね。そうすると、国の競争力はここで決まると。いかにこのゲームに競争力を増やしていくか、それが多分今話題になっている大学発のベンチャーをどうやって作るかということだと思います。
 この取組がやっぱりアメリカは非常に早くて、次のページにありますように、一九四六年、アメリカ発の本格的なベンチャーキャピタル、アメリカン・リサーチ・アンド・ディベロプメントのラルフ・フランダースという人が、アメリカのビジネス、アメリカの雇用、アメリカの国民の繁栄は、自由な企業体制の下で新しい企業が続々と生まれてくることで保証されると。将来にわたって既存大企業の成長だけに依存することはできない。新しい力、エネルギー、才能を求める新しいアイデアのために、莫大な機関投資家資金の一部を投資するための仕組みを作らなければならないと。これは昭和二十一年、一九四六年という早い段階から、この種の仕組みを作らないとアメリカはあり得ないと。このアメリカという文字を日本に変えていただいても全く同じことが言える、これはもう明らかだと思うんですね。
 先ほど言いましたように、ベンチャー支援の五つの前提というのは、まずお金がなければ話は始まりませんから、豊富な資金。
 豊富な資金は一体何なのかといいますと、これは先ほど言いましたように機関投資家の一部なんですね。要するに、機関投資家資金というのは我々の年金。例えば、皆さんもそうですが、我々国家公務員あるいは地方公務員の全年金の残高、あるいは要するに運用している資金、ばらつきがありますけれども、大体四十兆ぐらいあるんですね。それに普通の民間企業の資金を合わせると、百五十兆とか二百兆ぐらい。そういうお金が実は日本の中にも機関投資家資金としてあるんですね。それの一〇%でも新しい産業に向かう仕組みを作ると、二十兆の規模が常に新しい企業、この試行錯誤に回るというシステムができると。
 それをアメリカの場合は、一九七九年、八〇年のERISA法、エンプロイーズ・リタイアメント・インカム・セキュリティー・アクトの改正をして、それを自由にしたと。是非この辺の改正を、もう既に実は起こっているんですが、もっと大きな声で、年金基金あるいは機関投資家の資金を新しい産業に向けましょうと。そのためのいろんなインセンティブを国が作るというのは非常に重要だと思います。
 ハイリターンも、一九八二年にナショナル・マーケット・システムというコンピューターを非常に整備してナスダック市場を良くしたために、物すごい量の資金量、しかも日本みたく百万円とかそんな単位ではなくて、一万円とか五千円から投資ができるような仕組みを作ったと。
 同じように、リスク分散型組織であるベンチャーキャピタルの組織を整備して、二重課税を避けるような半ゾーン型の組合型のシステムを整備したと。ここには、いわゆるゼネラルパートナーであるベンチャーキャピタリストに物すごい大きなインセンティブを与えています。
 同じように、そこに向かうためにはある種の優遇が必要ですから、優遇。まず、例えば今言ったリミテッドパートナーシップであるベンチャーキャピタルの出資組合には法人税を掛けないと。法人税を掛けない代わりに、キャピタルゲインが生じたときだけに税金を掛けますよという、二重課税を回避してそういう組織を作りやすくする。あるいは、先ほど田坂さんがおっしゃったように、非常に初期の危険なときにポケットマネーで一千万とか新しい産業を起こすために投資した人には、それが破綻した場合には所得控除をしてやるというエンジェル税制とかですね、これらが重要で。
 五つ目はチャプターイレブン。チャプターイレブンは本当はベンチャーには余り必要ないんですが、基本的なことは先ほどの宝くじと同じで、全員が当たるわけがないと、失敗の方が多いという前提ですね。失敗をいかにうまく傷を少なくさせるか。日本の場合は、失敗、要するに倒産が物すごく重いために、倒産に至らないために非常に高利貸しに走ったり粉飾決済をしたり、いろんなことをやって傷を深めるんですね。チャプターイレブンは、早い段階で手を挙げさせて、ちょっと今の状況は難しいと、一回そこで損切りをして、その同じ人間がまた経営再建に当たれるとか、いろんな失敗を非常にポジティブにする法律をやったと。
 もう一つ、今、日本でも話題になっていますが、大学、大学が非常に重要な役割を果たすと。これも一九八〇年のバーチ・バイとボブ・ドール、この二人の上院議員が、フェデラルで使っているお金、要するに連邦資金で研究したものに対してはそれを何とか市場に還元しようじゃないかと。出てきたアイデアが大学や研究所という非営利組織に特許権を持たせる、その特許を販売してもいい。それがTLO、テクノロジー・ライセンシング・オフィスだと思います。このことをシステム化したおかげで非常に大学の中でもビジネスに直結しようという雰囲気が出てきましたし、TLOもプロが育っています。
 日本の場合は非常に問題なのは、いいアイデアを文部省とか経産省は時々持ってくるんですが、アイデアだけで人を付けないんですね。どういうことが起こるかというと、これをやりなさいと。それを研究者がやる。研究者がやると、研究者は本当は研究しなきゃいけないのに、研究の時間を割いてこういう書類を作ったりする。
 そのために是非こういう、国の政策で一番重要なのは、大学支援の場合はいいアイデアに対してプロフェッショナルを付けていただくということが大事だと思います。それはアドミニストレーターの拡充です。例えば、ここにあります白川英樹氏、ノーベル化学賞学者ですが、彼は、日本の大学と欧米の大学、そんなに差はないと、研究レベルに。一番の差は何かというと、欧米の大学では大体一人に対して一人のアドミニストレーターあるいは補助者が付くと。日本の場合は八人の研究者に対して一人しか付かない。その非生産性ですね。要するに、効率の悪さがやっぱり研究者の研究レベルを下げている。
 ですから、大学の中身を、先生たちの競争心を高めるのも重要ですが、システムを拡充していく。実はこれが雇用を生むと。要するに、教育産業に投資をするということは一番今重要なことです。
 我が愛すべき文部科学省はすばらしいアイデアを思い付きまして、この四月から我々の初等教育の三割を削減するという、一体どこから出てきたかと思うぐらいすばらしいアイデアを言ってくれたんですが、今、日本が考えるべきことは、みんなが百点取れるように三割を削減するのではなくて、今の教育内容を要するに倍にしても、今までの労力の半分で子供たちが覚えられるイノベーションをどうやって作るかということなんですね。それは一学級に担任が一人なんてあり得ない。一学級に担任が七人とか十人付く。大学も先生に対して補助者が付く。要するに、教育の生産性を上げるということなんです。これは物すごい雇用を生むのでありまして、言いにくい話ですが、北海道とかだれも通らない道路を造るよりもはるかに重要な公共政策だと思います。
 十ページは、これはベンチャーキャピタルのシミュレーションなんですが、要するに、ベンチャーキャピタルは、六年とか八年の間に十倍の価値あるいは二十倍の価値を生まない限りは投資はしないということなんですね。それが分かっていると、何が重要かというと、販拡期とか上場準備期、売上げが何十倍も立っていくときに一番必要な人材は経営者だということですね。
 次のことに書いてありますように、シリコンバレーの創業者の七割は六年から八年後のIPOあるいは企業売却の時点で社長を辞めています。辞めるという理由は、自分はチーフサイエンティストになりまして、基本的にはプロのCEO、経営者が入ってくる。私の知っているテクノロジーベンチャーは社長が交代する確率は九二%、八%しか残らないんですね。なぜかといいますと、先ほど言いましたように、ベンチャー企業を支援するというのは、五年から十年の間にグローバルトップ、世界ランキング百に入る企業を作るということですから、百に入る企業を作るためには、それは大学の先生とかエンジニアが企業を経営できるわけがないわけですね、何万人規模の経営を作るわけですから。そうすると、それはプロだと。プロの経営者というのは二つの道から来る。一つは大企業からの人材流入であり、もう一つはビジネススクールの拡充であります。
 最後に言いたいことは、今までお話を見て分かるように、アメリカの大体コアコンセプトが固まるのが八〇年代です。それが花開くのが九〇年代の半ばですから、十五年ぐらい掛かると。ということは、日本も今からこれに本気で取り組んで、多分、今から早くて五年後あるいは十年後に花が開くということですから、是非今から真剣な取り組みをすると。
 もう一つは、今ばらばらと幾つものものがたくさん出ていますが、それを統合化するということが政策的には非常に重要だと思います。
 たくさん出ているベンチャー支援策を中小企業育成あるいは雇用問題とは切り離して、五年から十年以内に国際的な企業を数十社生み出すというターゲットにすると。年金改革とか直接金融、これもすべてそのために必要な手段。あるいは上場・公開市場の整備もそのリターンを大きくするという意味だと。それから、大企業のリストラ、ワークシェアリングを支援するなんてもうとんでもない話だと。ワークシェアリングとかいう後向きな話じゃなくて、リストラ、リエンジニアリングをやって企業競争力を高めている企業にインセンティブがわくように。むしろ、リストラされた人間が、リストラをとどめるんではなくて、リストラされた人間にセーフティーネットを作ると。彼らが次のところに移転するような教育制度にお金を払う。あるいは大学発ベンチャーも、基本的には大学発ベンチャーをやって、それを最終的に大企業にしていく、そのための支援の一環だと。
 こんなことを、点在している力をやっぱり一つのものにしていかないと、日本の第二次世界大戦のように戦線拡大して敗退するというパターンですから、幾つか新産業を作る、新企業を作るということに焦点を絞って、点在するものを一点に集中していくというような本格的な対応が必要だと思います。
 もう一つ言えば、多分、ITはなくても人間は生きていけると思います。生きていけないのは、環境と食糧とそれからエネルギー。この三つの重点分野に是非資金を徹底的に投入して、そこからいろんなトライアル・アンド・エラーが出てくるということが重要だと思います。例えば、すばらしいアイデアだった地域振興券に日本国は七千七百億円使ったわけですが、あれだけのお金を新エネルギー開発あるいは環境開発に、例えば九大、筑波あるいは東大に集中的に資源配分をしていれば、多分日本の研究状況は変わったと思います。
 同じように、今回非常に面白いと思ったのは、政府の役割の中で、直接のあれはないんですが、購買というのは非常に重要で、公用車をハイブリッドカーにする、このおかげで三百台が七千台になったと。七千台になりますと一車種当たりの単価が下がりますから、より普及すると。
 これと同じように、例えば、小中学校は昼間しか使わないので、小中学校は光発電にすると。そういう国家プロジェクトをやって、そのうちの一定量を中小企業あるいはベンチャー企業から購買すると。これは三つのいいことがあると思います。全国の小中学校を改装するわけですから公共需要が発生します。これは景気回復に役立つと。二つ目は、太陽光パネルが大量発注されるので安くなりますので、民生利用が進む可能性がある。三つ目がもっと重要なんですが、多分、中国、インド、そういうところの人口過大国から大量の観察屋が来ると。日本型の新しいシステムはどういう形で運営されているのかと。この分野で実はデファクトを取っていくということが日本の新企業の、あるいは新産業育成の非常に重要なポイントだと思います。そういうところに我々の貴重な税金が向けられることを祈っております。
 以上です。
#8
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑は午後四時三十分までをめどとさせていただきます。
 なお、時間が限られておりますので、質疑者お一人当たりの発言時間及び各参考人の答弁ともに、それぞれ三分程度までにおまとめいただきますようお願いいたします。質疑を希望される委員は、挙手をもってお知らせくださるようお願いいたします。また、質疑は会長の指名を待って行うようお願いをいたします。
 それでは、質疑を希望される方は挙手をお願いいたします。
#9
○山東昭子君 いいお話を本日はありがとうございました。
 諸外国を歩いておりますと、日本は、かなり優秀な国だと自負している割には、国家戦略というものが全くと言っていいぐらいない国だというふうに変な意味で感心をいたしております。民間のシンクタンクはたくさんあるんでございますけれども、どうもそれぞれ違う道を歩いているというような感じで、今まで、ある意味では官僚主導型であったために何か別のシステムを作ることが困難であった、あるいは何かそういうものが必要なかったというようなことがあるんでしょうか。
 しかし、二十一世紀、本当に世界の中で日本が生き残っていくためには、防衛、外交、教育あるいは福祉、経済はもちろんでございますけれども、あらゆる分野で、全く官僚あるいは政治家、そういうものとは別の観点でそうした、いろんな専門家が集まってきちんとそうした長期的なものを作っていく、作り上げていく、それがやっぱり国民の求めている、日本がどういう国になっていくのか、あるいはならなければいけないのか、そのために国民はどういう行動をしていくのか、そういうことが明確に打ち出せる、そういうものを何か国民は求めているんじゃないかなと思っております。
 そのためには、私は思い切って、例えば経済の上でも、もう本当に世界的なマーケットの中で、腕のいいファンドマネジャーが国家予算の中から十兆円、二十兆円、思い切って投入してやれば、本当に日本にとってプラスになるんではないかなと、経済の面でも。そんなことを考えているんでございますけれども、総合的なそうしたものというものをそれぞれの参考人の方々、どんなふうにお思いか、お聞かせ願いたいと思います。
#10
○参考人(高柳寛樹君) 私が答えるのがいいかどうかあれなんですが、まず、やはり私なんかがやっていて思うのが意識の改革と、先ほどの中でも書いたんですけれども、そういったところからのものも重要なんではないかなと思っています。
 例えば、教育の問題が米倉先生も挙がっていらっしゃいましたけれども、教育の問題というのはそれは極めて重要だなと思っています。私は、実は母校、中学校、高校なんかに呼ばれてしゃべったりとか、あるいは今でも中学の先生方と話をする機会が多いんですが、いろんな理由から多いんですが、やはり彼らが感じていることと私が思っていることの温度差というのは物すごくありますね。いや、こうこうこうだからこうでしょうという話をすると、ああ、そうだねと、それは理解されるんですけれども、やはり肌で感じられていないので、なかなかいろんな、アントレプレナーを育てるとか教育の生産性を上げるという面で、言われているほど実態が伴っていないという部分をもうちょっと何とか力を入れてやっていけないのかなというふうには思っています。
#11
○参考人(田坂広志君) 大変大きなテーマを投げ掛けていただきましたので、山東先生に、私の観点から一、二点お答えいたしますと、日本が本当の一流国になっていくためにやるべきことは多々あるかと思うんですが、一つ私、申し上げたいのが、教育の問題はもうすぐに出てくるテーマですが、初等教育、大学教育は、もちろん後でまたいろいろ議論があると思いますのでこれは後回しにしまして、非常に気になるのは日本における知の在り方。知というのは知識、知恵の知ですが、知の在り方が少し偏っていないだろうかと。
 これは、日本というのは東洋の国ですから、知行合一という言葉が昔からあるはずなんですが、いろんな知識を論じる方と現実に責任を持って行動する方とが分離している例が非常に多いように思います。例えば、先ほどから話題になっているベンチャービジネスも、アメリカのスタンフォード大学では盛んに、教授がベンチャーの社長をやったり学生が社長をやったりしてどんどんアントレプレナー人材が生まれると言っているんですが、日本では大学発ベンチャーと大騒ぎしている割には、大学の先生で現実の、例えば民間企業での製造の現場なり、例えば実際のマーケットでの現状なりを身体的に理解されている方はほとんどいらっしゃらない。むしろ、学問上、勉強をしてこられた方はたくさんいらっしゃるんですが、そこが私は非常に気になります。
 例えば、日本での新しい大学発ベンチャーを生み出すのであれば、アメリカにもよく見られるように、大学の先生でももう会社をどんどん経営したり、そこで失敗して経験されることもよろしいかと思います。
 そういう意味で、知の現場、例えば経営学を教える現場にいらっしゃる方と経営そのものを現実になさっている方とが人的に交流する、経験的にもその両方をやっていけるような仕組みを作らないと、日本という国はどうもその知と行ですね、知行が分離している傾向が非常に強い。
 これは、アメリカのシンクタンクを一つ例に取っても、先生の御指摘のとおりで、アメリカには非常に優れた政策シンクタンクがある。日本にはなぜ民間の政策シンクタンクが生まれてこないのかというのは、いろいろな理由があると思いますが、一つは、アメリカの政策シンクタンクというのは大統領が替わると一緒に入閣するぐらいの動きをされるわけですね。今回、竹中平蔵大臣というのが生まれましたが、過去にも何人かそういう知の領域から現実の行政に、政治に、政策に責任を持たれる立場に動かれる方はいらっしゃるんですけれども、やはりアメリカに比べると、こういう現実の政策に責任を持って、単なる評論ではなくてきちっとした意思決定をしていくような経験を積んで、そして政策の現場に戻る、また、政策の現場で非常に深く見識を深めてまたその現実に戻っていくというような人材の行き来が非常に弱い。
 非常に抽象的な言い方になってしまったかもしれませんが、私がこの日本という国の人材戦略を考えるときに一つ気になるのは、アメリカの方がよほどその知と行、知行の合一ということが行われているように見えます。日本という国はいつの間にか専門化、分業化が進んでしまって、私、考える人、あなたは実行する人、私、評論する人、あなたは責任を取って意思決定する人という分離がやや強く生まれ過ぎているのではないかと、あえてその一点を申し上げたいと思いますが。
#12
○参考人(米倉誠一郎君) 私も、日本に国家戦略を作る機関がなかったかというとそんなことはなくて、多分、通産省とか彼らが代替していたと思うんですね。今、それがキャッチアップ型から本当に政策に密着した形で必要になってくるので、やっぱり各政党がきちっとした政策シンクタンクを持つということが重要だと思います。
 それは、アメリカの共和党がある種の幾つかの政策シンクタンクを持っていて、民主党が違うものを持っていると。それが必要なんですが、今、僕も珍しく田坂参考人と意見が一致しましたが、人材流動は非常に重要だと思います。
 例えば、我が母校であるハーバード大学は、今、ラリー・サマーズが帰ってきました。ラリー・サマーズが帰ってきて、物すごいリーダーシップで今、ハーバードを正に二十一世紀、もうワンランクアップするということでいろんなことをやっていますが、この種の、彼は経済学でも神童と言われた人間で、ハーバードでも三十幾つのときにもうプロフェッサーになった人間ですが、この種の人間がやっぱり財務長官をやって、そしてまた要するにプレジデントとして母校に戻ってきて采配を振るうと。こういうような人材がやっぱり流動して、彼らが一つの明確なポリシーを持ってどちらかの政権にきちっとくみしていると、こういうような政策シンクタンクと学者たちの集団、この人材移動。
 今起こっている経済諮問会議も、あれは本来であれば首相直結というよりもずっといろんな段階、早い段階から各党が持っていて、シャドーキャビネットの中でこれができ上がったらすぐにでもこういう政策を出せるというパターンを作っていなければいけないものだと思いますので、そういう政策シンクタンクをこれから本気で作っていくということが重要ですし、それはただ単純に自民党あるいは民主党あるいはそういう共産党の子飼いであるだけではなくて、やっぱり知識がそこに大量に流入して、同じ意見を最も持っている人間であればそこに自由に入ってきて自由な意見陳述をしていくと。
 かなり本当に政策を論じる団体としての政策シンクタンクが日本にきちっと生まれてくる必要性は、私も非常に強く感じております。
#13
○島袋宗康君 私は、国会連絡会の島袋宗康でございます。
 今日は三名の先生方、大変貴重な御意見を承りましてありがとうございます。
 まず、米倉参考人の方からお伺いします。
 米倉参考人は、週刊東洋経済二〇〇一年三月十日号で、「IT革命の進展によって、公共事業等のネット調達や効率的な社会運営がオープンかつフェアに行われるようになれば、日本の高コスト体質は大きく改善される。」と述べておられます。そして、その高コストの一例として成田空港を挙げておられます。つまり、「成田空港は、さまざまな規制や天下り事業団あるいは公共投資の仕組みによって世界でも極めて高コストな国際空港である。」と述べておられます。
 そこでお伺いしたいんですけれども、もし米倉参考人が成田空港の高コスト構造を改善する立場に立たれましたらどのようなことをまずなさいますか、お教えいただきたいと思います。
 それから、田坂参考人にお伺いします。
 我が国の自治体や民間企業がこの米国型インキュベーションの手法の五つの要素を表面的にまねてもベンチャービジネスがなかなか育たない。我が国においては、日本固有の歴史的、社会的諸条件を考慮しつつ、日本独自の方法、ビジネス生態系の形成を促しつつ、ベンチャービジネスの創発を促すという日本型インキュベーションの手法を生み出さなければならない。そして、日本型インキュベーションの手法のポイントは異業種連合を結成することであると先ほども話されておりました。この論を展開されておりますけれども、最後に民間主導ということを強調されて、政府が新しい産業を育成してくれるという幻想を捨てなければならないと結んでおられます。
 誠にごもっともなことで同感いたしますけれども、一方では、政府の役割は一体何なのかという疑問が生じてまいりますが、田坂参考人はその辺のところについてお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
 次に、高柳先生にお願いします。
 放送番組を文化資産としてとらえる考え方が法制度的側面でも事業者や市民の意識の面でもまだ成熟していない日本とアメリカの違いを指摘されております。そして、そこには著作権などの諸権利を始めとする非常に複雑な問題や日本のドネーション文化の税制の違いなどを始め、かなり奥深い問題があると言っておられますけれども、アメリカ流でない日本型のベンチャー育成の在り方に対する高柳先生の御意見を承りたいと思います。
 よろしくお願いします。
#14
○参考人(米倉誠一郎君) 私はゼネコンじゃないんで何とも言えないんですが、多分、いろいろな意味で民営化あるいは競争入札、そういうものをやっていくと。既得権を持った団体に一切の管理を任せるということをしないで、毎年毎年競争入札をしていくというような形で、最も安くて最も実績のあるサービスを提供した者に事業が行くというような仕組みを取り入れると。そのときにも、実績を重視するんではなくてパフォーマンスを重視する。実績主義をやりますと必ず固定化しますので、新規参入が入るように実績ではなくてパフォーマンスを要求して、そのパフォーマンスに対して結果を、責任を取っていくと。事前チェックから事後チェック、そういうようなシステムを導入すると。
 もう一つ大きな方法論として面白いのは、羽田を国際空港化するということを前提に、二つの空港が競争するというような状況も成田空港を活性化するには非常に有効な手段ではないかと思います。
#15
○参考人(田坂広志君) 御質問をいただきましたことについてまず申し上げたいのが、政府が産業を育成してくれるという幻想を持つべきではないということは、必ずしも政府に対して失礼なことを申し上げた意味ではございません。私自身、政府と一緒にいろいろな取組をしてまいりました。例えば、九六年の段階で日本でインターネット革命とEコマースの革命がやってきたときに、電子商取引実証推進協議会というものを当時の通産省と御一緒に民間の立場で作り、その運営委員を務めたりしております。
 そのプロセスで非常に感じたことを率直に申し上げますが、国としては新しい電子商取引の事業を育てるべきだということでいろいろな政策的な手を打たれます。そして、その政策的な手というのは、多くの場合、最後に補助金という形になります。こういう手を打たれることそのものは決して間違っているわけではないんですが、民間の側に、何か国がそうやってお金を出してくれて、例えば研究開発でも助けてもらえるというような甘えが生まれてくると、結果として、先ほど高柳さんがおっしゃったんでしょうか、過保護の形になってきまして、民間の側にいるとよくそれが見えてきます。民間は本当に自力で、自己責任において新しい事業を立ち上げようという気持ちがむしろ少しうせてしまう、黙っていても国から補助金が何百億といただけるということになると、逆に民間の、本当のぎりぎりの退路を断って自分たちで事業を起こすという、そういうスピリットが失われてしまっているような気がします。
 これは長く護送船団方式というような言葉で、例えば金融業界などについても言われたことで、実際に国としては非常に善意、前向きな気持ちでなさっている施策が、結果として民間の自立心を妨げている例は残念ながら多々ある。このことに対して、まず民間に対して私が物を申し上げたかったのは、余り国にこうしてもらいたい、ああしてくれればと考える前に、まず自ら、自分たちで新しいビジネスを立ち上げるんだというしっかりとした考え方を持つべきだと。そのことが実は論文のタイトルに掲げた理由でございます。
 その上で、では国は何をなすべきかについては、率直に申し上げますが、今、大きな時代の流れの中で、小さな政府、大きな政府という議論があります。これはどちらがいいかというのはまたいろんな政策論の議論なんですが、あえて申し上げたいことは、ここでいう大きな政府と言うときの大きなというのは、もちろん職員の数というような意味合いもあろうかとは思いますが、それも含めて、究極、予算規模の大きさというような意味において使われてくる言葉と思います。私は、これからの時代に政府の役割は、大きい政府であるか小さい政府であるかということよりももっと大切なことがある、それは、率直に申し上げますが、賢い政府であるべきだと。
 どういうことかと申しますと、国民に対していろんなお金を使っていろんな施策を打つこともまたもちろん必要ではありますが、きちっとした知恵を提供できる、示せる。例えば国家のビジョン、戦略、市場に対する新しいやはり考え方、こういうものをやはり深く理解されて、いろんなメッセージを発信されるということが非常に重要になってきていると思います。むしろ、そこのところの検討はおろそかにして予算だけばんと付けるという形の政治の在り方が、今の国をややいびつにしてしまったんではないか。先ほどの山東先生の御指摘にもあったように、やはり国は、そして政党の方々も、政策立案能力、それ以上に国家のビジョンをきちっと語る、しかも説得力と魅力を持って語るような力を付けられるべきではなかろうかと。
 むしろ、民間は民間の自助努力でお金も組織も人材も頑張ってやっていくと思いますが、やはり国の持つ言霊力というのがあります。かつて通産省を始め政府というのは、そこで掲げたビジョンが民間の産業を大きく鼓舞した時代はありました。今、国において失われているのは、先ほどちょっと申し上げましたが、言霊力、語られるビジョンとか政策がやはり民間の、そして一般の生活者の心を打つような、そういう政策なりビジョンを語られる力がどうしても衰えてしまっている。これは恐らくは、政党ごとに申し上げればシンクタンクという議論もあろうかと思います。それから、かつて日本の中央官庁は、日本でも最高のシンクタンクと言われた時代があります。
 この辺りを、もう一度原点を見詰め直されて、国は本来国民に対して提供すべきは予算である前に知恵であると、更に申し上げれば志であると。この辺りをやはり改めて政府に、国にお願い申し上げたいと思います。
#16
○参考人(高柳寛樹君) 先ほどの御質問ですが、一番私がこの文書の中で強調したかったのが、六ページの一番左下になりますが、この放送博物館というか、放送番組、動画を、いろんな権利の複雑なものを乗り越えて保存していくというベンチャーというか、そういう組織を作るに当たりいろんな問題が出てくるんですが、一番重要なのが、アメリカと比較して分かったのが、官民学が重層的か否かというところだと思うんですね。
 ある、私が加盟している学会であった出来事なんですが、産業からの人、それから大学側、学問側からの人が来て、学生のインターンだとか、あるいは今後両方協力してある一つの目的を達成しましょうよという話合いの中で、結局そのシンポジウム自体は決裂に終わるんですね。どういうことかというと、産業は産業の方の主張をして、学問、大学、アカデミックな方はアカデミックの主張をして終わってしまうというようなこと。ですから、一つの目的を挙げたときに、産学とそれから官が目的合理的に動かないという気が非常に日本の場合しています。目的を達成するためにはそこの産官学というふうにあえてセクションを切ると、それぞれがある一定の権限を越えても協力していかないといけないというふうに思うんですね。
 この放送のアーカイブ、放送の博物館を作るという意味においても、アメリカは非常にすんなりいっている。例えば、どういうことかというと、著作権の問題があるんですが、大学に関してあるいは研究機関に関しては著作権がフリーになる部分が一部あります。その部分に関しては、じゃ大学がやりましょうと。じゃ、どこがお金を集めるのというと、じゃ民間がやりましょう。そうすると、その民間が集めたお金をそこに投下した場合にどうするのとなったときに、今度は官が出てきて、じゃ、そこは免税しましょうと言ってくるんですね。それでドネーション文化がうまく回っていくんですけれども。そういった協力関係というのがアメリカを見ていると、この例でいうと非常にダイナミックに、動的に思えるんですが、日本を見ていると極めてスタティックですね、静的に思えると。そういった部分を、横ですね、横のつながりを強くできないものかなというのが思っています。それがひいては、最終的にベンチャーというか、このベンチャーというのはアントレプレナーですね、起業家の育成あるいは起業を促進する一つのかぎになってくると思っています。
#17
○加治屋義人君 参考人のこの資料等もよく読ませていただいて、先ほど講演もいただいて思いますのが、非常に分かりやすく易しくお話ししていただいているのがよく分かるんですけれども、ただアメリカと日本を、日本が非常に後れていることもよく理解ができました。日本とアメリカの言葉が出てくるとすぐ私は中央と地方という、置き換える、そういう思いにすぐ立つんですけれども、二十一世紀、この地方分権あるいは地方の時代づくり、進めるわけですけれども、やはり今、地方が本当に求めているのは、今日御講演いただいたこの新しい企業、ビジネスづくり、地方が求めている最大のものだと、そういうふうに思っているんですけれども。
 私は南の、最南端、鹿児島に住んでいるものですから、自分のところを想像してみますときに、情報に非常に乏しい、あるいは経済面でも非常にハンディがあると。また資源に乏しいというんでしょうか、農林水産業、第一次産業が中心だ。そういう、例えば道路にしても鉄道にしても社会資本が大変地方というのは後れている。もう一つ、残念なことに、私は、県民性、地方の県民性というのもあるのかなと思っているんですが、私が、自分がそうであるようにのんきな性格、そういう中から経済人がなかなか育ってこないと。
 こういうもろもろのことを考えたときに、この、最初申し上げた地方の企業、ビジネス、新しいものを作っていく、そういうものの促進をするための何か知恵を教えていただければ大変有り難いなと、心強いなと思ったものですから、質問させていただいたところであります。
#18
○理事(内藤正光君) どなたにお尋ねでしょうか。
#19
○加治屋義人君 できれば三人、簡単で結構ですから、示唆だけ与えていただければ結構です。
#20
○参考人(米倉誠一郎君) 非常にこれ難しい問題だと思うんですが、私はちょっと発想を切り替えた方がいいと思うんですね。地方もすべて都会のようになるという発想をやめて、日本はカリフォルニア州しかないわけですから、もしカリフォルニア州に五十二人の知事がいたら我々は笑うと思うんですね、何考えているんだろうと。ということは、日本はやっぱり道州制みたいにもう少し広域な行政範囲で考えざるを得ないと。そうしないとペイしないんですね。
 やっぱり日本は一種、高度成長期の中に幻想を抱かしまして、すべてみんな同じようになるんだと。地方都市もみんな画一的な開発をした結果が、何の魅力もない都市がたくさん生まれてしまったと。やっぱり広域行政で、道州制みたいな割合の中で、九州エリアだったらばやっぱりどこか一個強いコア、これは福岡を物すごく強くしていくと。そこが物すごいから、そこが、一千万人とは言いませんが、それぐらいの規模の、巨大化して集中して、非常にアジアに対しても魅力のある都市になってくれば、その周りはいろんな形で生き残れるんですね。やっぱりクオリティーライフを提供できるとか、リゾートとして生きるとか。ですから、我々は資源を満遍なくばらまくことによって非常に魅力のない都市を大量に作ってしまったので、東京対その他になってしまったと。
 じゃ、東京対その他をどういうふうに解決するかというと、東京対五十二ではないんですね。多分、東京を幾つかのコア、五つぐらいのコアに分散して、その周りはその周りで生きていくというような発想をせざるを得ないと。そういうことが鹿児島県民の同意を得られるかどうかは別ですが、ある種そういう形で展開しない限り、資源は有効ですし、日本が生きていく産業活力も五十二に分けることはできないので、ちょっと違った発想をする必要があるんではないかなと。
 県民性について言えば、余り日本は道州制とか言うと、いやもう山形県と富山県は仲が悪くてとか、アメリカじゃなくて、イギリスじゃなくて、フランスとドイツって僕は知る限り最も仲の悪い国だと思うんですが、あそこがユーロっていう物すごい大胆な取組に参加しているということから考えれば、やっぱり日本国内で起こっているチャレンジというのは余りにもひ弱だと思います。そんな県民性云々の前に、我々はもっと大きなチャレンジ、あるいは今回のワールドカップを契機に日韓共通貨幣を発行するとか、そういう大きなチャレンジをすることによって、日本の小異を捨ててもっとグローバルなプレーヤーになっていくということを考える必要があるような気がいたします。
#21
○参考人(田坂広志君) 御指摘の問題は、やはり日本の地方自治の最も大切な、重要な部分を御指摘になられているので、非常に簡単な答えは申し上げられないんですが、少なくともまずインキュベーションという、新しい新事業を起こすという一点で見ると、今日申し上げたようなやはり工夫が必要ではなかろうかと。
 先ほど、最初に申し上げたように、アメリカのシリコンバレーを表面的に見てきて、インキュベーターみたいな施設を作って、それで新しい産業が生まれる、事業が生まれるというお考えはやや安易に過ぎるだろうと。多くの場合、サイエンスパークとかテクノパークという形で、一説によれば全国八十以上の構想が動いているそうですが、現実に行われることは、上物行政、あとちょっとした補助金かベンチャーキャピタルかよく分からないような資金の準備がされるようなことで新しい事業が生まれるという、やや安易なとらえ方はもう卒業されるべき時期だと思います。
 よく企業誘致ということも、やはり施設を造ってどうぞと言ってみても、先ほどのビジネスエコシステムがその地域になければ、長い目で見て新しい地域産業が生まれることはないんだと。したがって、今日申し上げた産業インキュベーション若しくはビジネスエコシステムを育てるという考え方は、それぞれの地域においても全く同じテーマを申し上げたいと思っています。
 私自身、このテーマではいろんな地方自治体にお招きいただきまして、そういうサイエンスパーク、テクノパークなどを運営している方々に同じことを申し上げています。
 そのときのポイントというのは何か。あえて申し上げれば、まず企業誘致とかあれこれおっしゃる前に二つのことをしっかりなさるべき。一つが、情報のセンターになられるべきだと思います。この情報のセンターというのは何かというと、地域は元々やはり東京に比べれば地方にありますので不利です。ただそのときに、情報のレベルでいえば、かなり今ネットとかメディア、ブロードバンド等普及してきていますので、分かりやすく言えばおもしろいビジョンとかアイデアとか場、ネットの上での場を作ると、それなりに消費者、生活者更には企業、集まってくれる可能性はあります。
 したがって、この関連で問われるのは、よくあるんですけれども、地方の個人の方が運営しているインターネットのサイトに物すごくアクセスが増えるというようなことは結構あることで、当然どこにいるかは余り関係ない。そこで語られているビジョンとかコンセプト、その場の面白さ、そこに集まる人々たちの持つ知恵の豊かさ、こういうもので実は企業や人は集まってきますので、それが決定打だとは申し上げるつもりはありませんが、地方の立場で、やはり先ほど申し上げたことと同じことなんですが、お金を準備し施設を準備して、企業来てくださいとか地域の産業生まれないかと考える前に、実はインキュベーションの本質というのは、繰り返しになりますが、どのような新しいビジョンを示し得るか、戦略を提案できるか、それがいろいろな企業にとって魅力的に見えるかという知恵の勝負の時代に入っています。時代はもうよく御存じのようにナレッジキャピタリズム、知識資本主義と呼ばれる時代ですので、単に資本があるだけでは事業は生まれてこない。やはり地域にどのようにしてその知恵というものを結集していくか。これは別に東京にいらっしゃる方の知恵も、そのやり方によっては集まっていただくことは十分にできます。
 したがって、最初に申し上げたいのは、情報のセンター、正確に言えば知識と知恵のセンターにどうやってなっていくかというところからスタートされることが結果として王道になられるだろうと思っています。
 その上で、もう一点申し上げれば、その知恵というものを提供し、魅力的なビジョンを語り、人々がそこにまず情報のレベルで集まってくるという場づくりはやはり人間がコアです。したがって、その地域における人材育成というのはその地域ごとの大学なり教育施設がたくさんおありかと思いますので、そこでその地域にとどまって新しい動きを作るような若い人材をどう育てていかれるかという人材育成論にやはり必然的に戻ってまいります。
 余り決定的な解決策というのはない段階ですが、私は少なくともその情報のセンターになるということ、そしてその地域にやはり愛着を持ってそこで日本全体にいろんなメッセージを発信し、いろんな人々の知恵と関心を集めていけるような、やはり知恵を持った人材というんでしょうか、そういう方を育てることが遠回りのようで一番近道だろうと考えておりますが。
#22
○参考人(高柳寛樹君) 正に田坂さんが今おっしゃったとおりでして、実は私どもの会社もエンジニアリングの力が一番重要な会社なんですが、今、福岡にいる個人と、それから仙台にある会社に発注をして共同開発なんかを行っております。
 これはどういうことかというと、その地域は、ネットはもう言い尽くされたことなんですが、場所は関係ありませんので、地域も関係なくなってくるんですね。そうすると、私たちは何で、じゃ仙台と福岡にお願いしているかというと、仙台にある会社が優秀なんですね。福岡にいる人が優秀なんです。それによっていろんな仕事が、私どもからの発注だけじゃなくていろんなところから大手の仕事も受けていますし、やっていらっしゃると。その福岡の個人というのはここのところで、福岡で今度起業をする、会社化してベンチャーを起こしてやっていくんですね。
 やはり人材というところをいかにその地域で作っていくかというのは物すごく重要だと思いますし、東京のいわゆるベンチャーが集積しているところで仕事をしていても、全く地域関係なくそういったことが進んでいく。発注なり一緒のパートナーシップを組んでやっていくということはあり得ると思うんですね。
 あと一つは、福岡で起業するその方が言っていたのは、ちょっと情報が少ないというのはやはり言っていました。やはり東京で起業するよりもハンディが多いと。別に東京に遠いとか商業圏が違うとかそういうことではなくて、情報が少ないというのはやはり彼らが起業する際に身にしみて感じていることのようです。
#23
○辻泰弘君 民主党の辻泰弘でございます。
 まず、お三方に共通してお聞きしたいことでございますが、それぞれ起業、実業、またそれらに対する研究に従事されてきたわけですけれども、その過程で、起業、業を起こす場合の妨げとなっている規制というものを感じられたことがあるのか。すなわち、それぞれの方々から見られて、緩和すべきあるいは改革すべき規制というのは何か、このことについてお伺いしたいのが第一点。
 それから第二点は、二つ目は米倉参考人にお伺いしたいんですけれども、先生のお話の中で、間接金融の方がリスクが高くて直接金融の方がいいんだということで御指摘がありました。なるほどと思うんですが、直接金融をしからばどのような形で充実、拡大させていくのかと。日本の場合、ストックオプションの税制とかあると思うんですが、現実に、日本の場合のベンチャーの育成に、ストックオプションだとかあるいはエンジェル税制というのが効果を持っているのかどうかということをお聞きしたいことが一点。
 それからもう一つは、年金資金の運用といいますか、そのベンチャーへの流入ということを御指摘があったと思うんですが、その意味するところは、日本に当てはめると、公的年金の積立金をそういうリスクがあるかもしれない分野につぎ込んでいくということになるかと思うんですが、現在は特殊法人を通じて、信託を通じて株も運用できるということになっているわけですけれども、その間に間接的にしたいわけですが、直接的にそういう部分にも入っていくべきだと、こういうことになる、御主張になるのかということを、そのことをお聞きしたいと思います。
#24
○理事(内藤正光君) 一つ目の質問はどなたに。
#25
○辻泰弘君 お三方共通でございます。
#26
○理事(内藤正光君) では、まず一つ目の質問はお三方共通ということで、高柳参考人の方からお願いをいたします。
#27
○参考人(高柳寛樹君) 規制という面で緩和してほしいというふうに思った規制ですね、公的な規制というのは直接的にはこれといって今申し上げることはないんですが、ただ、非常に泥臭い話で大変恐縮なんですけれども、昨年、融資を受けた際に個人保証をしますよね、基本的に。幾らその銀行の支店長なり本部の人にビジネスモデルの説明をしてこうなんだこうなんだと言っても、だれも理解してくれないわけで、そのときに当然個人保証も押して借りるわけですけれども、ああいった部分というのが極めて我々にとっては障害になってくるのかなと思います。
 どうやって解消していくかというと、やはりビジネスを理解してくれる方々が身近にいるかどうかという問題なのかなと思います。例えば、ベンチャーキャピタルなんかですと結構理解をしてくださるところありますけれども、なかなかそれでも本質的な理解をしてくれる方というのはごく限られています。ベンチャーキャピタルというのは限られているなと思うので、そういった部分を何とか改革していくということが重要なのかなと思います。
 私の感じでしかないんですけれども。
#28
○参考人(田坂広志君) 税制等についてはもう言われている部分多々あると思いますし、恐らく米倉さんの方からもいろんなまた深い見識を語られるかと思いますので、あえて貴重な機会ですので、私がいつも思っている、日本では思い切ったこの規制と呼ぶか仕組みを変えられてはいかがかと思うことを申し上げます。
 私はアメリカのシンクタンクに何年かいたんですけれども、バテル記念研究所と呼ばれるところですが、世界的に有名な業績でいえば例のゼロックスを開発したような研究所で、世界で今一万名ぐらい研究員がいて、四研究所があります。これは民間のシンクタンクなんですが、御存じの方がいらっしゃると思いますが、実はアメリカの国立研究所を現在三つ運営しております。これは、私自身も初めて着任したときには驚きだったんですが、分かりやすく言えば、日本の民間のシンクタンクが例えば日本原子力研究所を運営しているようなそういう仕組みです。
 これはアメリカではもう昔からやられていることで、国立研究所はすべて民間が運営をするというやり方で何年かに一度公開でビットが行われまして、分かりやすく言えば、社名を出すのはあれかもしれませんけれども、日本原子力研究所については民間のA社、B社、C社が応札してきたと。いろんな審査をした結果、これから五年間はこのA社に運営を委託しようと。五年間なら五年間たったときに見直しをして、パフォーマンスを評価して、また公開でほかの今度はB社が勝つということもある、また継続で勝つこともある。幸い、バテルの記念研究所というところはもうずっとパシフィック・ノースウェスト国立研究所と呼ばれるところをもう何十年にわたって運営を継続している、毎回ちゃんと審査を受けていますが、というようなことが行われております。
 これは規制と呼ぶべきか何か分かりませんが、思い切って日本の国立機関というものを民間に運営をゆだねるということを私はなさるべきだと思います。
 といいますのは、なぜ日本の技術の国際競争力が弱いか。いろんな理由があります。
 よく短絡的に考えるのは、日本でもノーベル賞が出せる人間を育てようとなさるんですが、それはもちろんやられてもいいですけれども、競馬に例えて言えば大穴を当てるようなことを議論されているんで、むしろそうではなく、むしろテクノロジーマネジメントの水準を高めることをなさるべきです。
 今、国立研究所を一つ見ても、大変失礼な表現かもしれませんが、やはり予算の使い方一つでも効率性は欠く、出てきた成果についてのきちっとした評価が甘い、客観性が弱い。こういう中で、どうしても国立研究所のマネジメントをなさる方々というのは、余りマネジメントの専門の方ではない。むしろ、素人と言ってもいいような方々がなさっているわけです。
 アメリカのようにドラスティックに民間企業に、もちろん守秘義務契約等物すごい厳しいものがありますので、これもやろうと思えばできます。ドキュメンテーションもきちっとした体系があります。セキュリティーチェックなど、私ももう銃を構えたガードマンに何度チェックされたかというようなことをやっていますけれども、そういうことはきちっとできますので、民間にきちっとゆだねて、民間のテクノロジーマネジメント能力を国の技術開発の根幹の部分に使われるような仕組みを作られるべきかと思います。これはもちろん、また十年の計で効果が現れるようなことではありますが、今のままでは、どれほどノーベル賞級の学者を増やそうとか研究費を増やしてみても、効率的に使われない。
 むしろ、アメリカのように、テクノロジーマネジメントで私が非常に感心したのは、非常に高名な学者がその研究所に移るといううわさを聞いて、あの学者はすごい、もう功成り名遂げた方だから、これは是非来ていただいたらいいんじゃないかと人事に話をしたら、そのバテルで、あっさり言われたのが、審査をしたと。彼は採用しないと。どうしてですかと。いや、彼はもう過去すばらしい業績を上げたけれども、今もう下り坂だと。うちの研究所で雇っても、もうこれから大した成果は出ないだろうと。なかなかに厳しいですけれども、そういう形で人件費一つでもきっちり審査して使っていく。優秀な若い可能性のある人に投入していく。お金の使い道も、やはり優れた技術開発をしたところにはどんどん投入していくけれども、そうでないところはきちっと縮小していくという、このめり張りの利いたマネジメントというのは、もちろん民間企業でもまだまだ甘いんですけれども、国に至ってはほとんどノーチェックという感じが私はしています。
 ですから、思い切って、民間にも頑張れという意味も込めて、民間が国立研究所を運営するということは決して荒唐無稽な発想ではありません。アメリカではもう何十年にわたってそれがなされ、それこそがアメリカの国立研究所なり国の科学技術関係の予算の効率的な活用につながっているんだと。このことを、せっかくの機会をいただきましたので、規制緩和という、ちょっとテーマはずれますが、一度先生方に御検討いただければと思います。
#29
○理事(内藤正光君) ありがとうございます。
 質問は三点ほどあったかと思いますが、米倉参考人、まとめてお願いいたします。
#30
○参考人(米倉誠一郎君) まとめてですか。
#31
○理事(内藤正光君) まとめてというか、一点、一点。
#32
○参考人(米倉誠一郎君) 田坂参考人とまた期せずして国立研究所に勤める人間として意見が一致してしまったんですが、一つだけ、私が実際に体験した規制緩和で非常につらい思いをしたのは、我が同僚に中谷巌という立派な先生がいたんですが、彼がソニーという世界で、日本で最もグローバルな会社の社外取締役になるといったときに、文部省から反対されまして一橋大学を辞めざるを得なくて、何と田坂さんがいる多摩大学の今、学長をやっております。ということは、私はあれは国立大学にとって物すごい損失だったと思いますし、一橋大学にとっても損失でした。これが規制の一番悪いところですが、何か知らないうちにこの四月一日からもういいよと突然文部省も言い出してだれでもなれるようになったんですが、こういうアドホックな対応が実は国立大学の競争力を落としていると。
 したがって、どういうことが必要かというと、やっぱり国立大学も民営化するんだろうなと。独立法人行政化、是非お願いしたいと思います。
 先ほどの直接金融ですが、ストックオプションなり、非常に重要です。しかも、先ほど、銀行というのは非常に重要なんですけれども、不確実な場所で不確実なビジネスを立ち上げるには向いていない資金なんですね。そのことを言えば、やっぱり直接金融でやらざるを得ないと。
 しかし、日本に直接金融の資金がないかというと、そんなことないんですね、一千四百兆の民間金融資産がありまして、そのうち六百兆円が〇・一%とか〇・〇一%の貯金に寝ているわけですから。〇・〇一というのは、百万円預けていて千円ですから、千円じゃない、百円ですから、とんでもない無駄が起こっているわけですね。そのうちの何割かを直接金融に回すと。そのためにインセンティブを与えるということは、国として十分できることだと思うんですね。例えば、ドイツだと、二百万円株を買った瞬間に二十万円還付されると。ということは、その瞬間に一〇%リターンが生まれるというわけですね。それぐらい支援をして、何とか民間が持っている資金を間接金融、銀行から株式市場に移そうとしていると。
 これ、そんなことできるかしらと言われるかもしれませんが、日本人は貯金が好きだから貯金をしているわけではなくて、貯金を好きになるようなインセンティブを明治以来ずっとやってきたわけですね。うちの母親も僕の名前でもうちの犬の名前でも貯金していましたが、それはなぜかというと、マル優という貯金を優遇するシステムがあって、そこで集めたお金を、財政投融資を通じて日本のインフラに作っていくというすばらしいシステムをずっとやり続けてきたから日本の中でこれだけのインフラが整ったし、この間接金融が生きてきたと。それが変わったんですから、それに代わるようなインセンティブを国が用意して民間の貯蓄を直接金融に回すとか、いろんなインセンティブシステムを作ることは十分可能だと思います。
 それで、ストックオプションの整備ももっともっと簡潔にやるべきだと思いますし、今多くの人間が行使する前から税金を取られて、たくさんの人間が訴訟していますが、先ほどから一貫して言っていますように、これは国として新しい産業を作るのは非常に重要なことなんですね。重要な場合は、それに対してインセンティブを与えていくという考え方が大事だと思うんです。それを今、税制の方でも言っていますが、中立性とか公平性という名の下で、新しい試みに対してみんなネガティブになっていると。新しい試みに対してはインセンティブを与えるというのが重要な政策的な課題でありますから、そういう施策を是非取っていただきたいと思います。
 年金基金が直接ベンチャー資金に回る、これはあり得ないと思います。ベンチャー投資をするというのはかなりの高度なスキル、熟練を要しますので、やはりベンチャーキャピタルを通じてキャピタリストらが主宰する、先ほど言いましたようにリミテッドパートナーシップ、要するに投資組合、そこに日本の年金基金の一部が提供されて、そこに物すごいスキルを持った人間がそれを投資していくというシステムが一番いいと思います。
 直接やるというのは、先ほども田坂さんが言いましたが、地方の方で使われている──まあ話は変わりますが、私の友人で一番起業家精神のない人間が地銀と地方公務員になりました。それが今何をやっているかというと、地方でベンチャー担当とかいっているんですね。こんなミスマッチはないわけですから、絶対にそういう人間が直接金融の資金を扱うなんということは避けるべきだと思います。
#33
○理事(内藤正光君) ありがとうございます。
 質疑を希望される方は挙手をお願いいたします。
#34
○鶴保庸介君 今お話をお伺いをしておりまして幾つか疑問点がわいてきました。これは主に田坂参考人と高柳参考人にちょっとお伺いをしたいんです。まあ米倉さんにもお答えをいただいても構いません。
 地方と都市の問題のお話があったときに、ITの集積ということ、集積といいますか、地方であっても都市と遜色なく仕事ができるんだという話、そんなところから知恵者が出てくれば地方でもまだまだ復活の可能性はあるというお話でした。
 ただ、アメリカなどで見ておりますと、やはりワシントン周辺地域のIT関連のソフト産業が集積している。まあ日本でもまたホームページビルダー、ホームページのソフト会社などというのは東京に集積している。現実を見るとなかなかそうはいっていないんじゃないか。
 この間アメリカへ視察しに行ったときに、ワシントン北部にこういったソフト会社が物すごく集積しているのは何でですかと言いましたら、二つ理由があって、一つはベンチャーを育てるエンジェルでありますとか、そういう資金市場みたいなものがそばにあるということ。それから、何といっても大きいのは、そのソフトのニーズがある地域に集中しているからなんですと。それはまあありていに言うと政府なんですと、アメリカの場合は。ワシントン周辺の政府がこういうソフトを作ってほしいとか、あるいはこういうものを作ってほしいというようなことをニーズとして挙がっている。主にアメリカの場合、そのときに言ったのは、ペンタゴンですという話が多かったですけれども、アメリカでは現実にそんなふうになっている。
 こういった状況を田坂参考人、高柳参考人、どういうふうにお考えになるか。まあ恐らくこれからIT関連のインフラというのは地方にもこれから伸びていくでありましょうけれども、現実にはなかなか地方と都市の問題を解決するまでには至らないんではないかという危惧を私は持っております。
 それからもう一つ、米倉参考人のお話で、これちょっとやや技術的な興味もあるんですが、日本とアメリカとの大きな違い、国立大学の中、内部の研究者一人に対して、日本は研究者八人に対して一人のアドミニストレーターがいると。アメリカの場合は一人一人、ワン・バイ・ワンだという話でありましたけれども。じゃ、具体的に八人に一人という日本の状況を克服するには、アドミニストレーターそのものをどうやって育てるか。また、それがどういった働きをしていくかということを具体的に検証をしなければならないんではないかと思います。
 また、国立大学であればそういったことを具体的にできるかもしれませんが、民間企業のまあ高柳さんのような方が、じゃどうやってこういう、こういった方、ビジネスマーケットを、チャンスをつかんでいくか。高柳さんのお話では自ら人脈を作りながらやっていかれたという特異な存在は、特異なといいますか、チャンスに恵まれたという、努力をされたという部分もあろうかと思いますが、こういったところはどういうふうにお考えになるか、御教示いただければと、二点お願いをいたしたいと思います。
#35
○参考人(田坂広志君) 最初の問題を特にお答えしたいんですけれども。もう御指摘のとおりで、シリコンバレーがなぜシリコンバレーであるかというのは、やはり地域的な、距離の近さというのはもうよく言われることです。
 ビジネスエコシステムと呼ばれるものも、本質的にはもう電話一本で顔を合わせてやり取りができる、まあ人間同士の顔を合わせてやり取りができるということそのものが非常に重要なビジネスインフラになっているのは事実ですね。その一点から考えれば、地方というのは確かに不利な状況にあると思います。どこまでブロードバンドとインターネットが普及しても、現実にちょっと顔を合わせて飯食いながら、まあここだけの話だけどといってやり取りするというのはもうビジネスの実は一番重要なコミュニケーションの場面ですので、これがインターネット、ブロードバンドによって代替できると申し上げるつもりはありません。
 ただ、あえて先ほどの答えを申し上げたのは、地域の不利はもう明らかに不利、これはもう残念ながら認めざるを得ない。とはいえ、そこで手をこまねいて不利だ不利だと言っているだけでは能がない。だとすれば、どのような打ち手があるか。
 その意味でもう一度申し上げますが、やはりこのインターネット革命、ブロードバンド革命のようなものをいかにうまく利用されるか。
 それから、遠いといっても距離的に見れば、先ほど米倉さんがおっしゃったようにカリフォルニア州ぐらいの大きさですので、アメリカでいえばそれほど遠い距離を移動することでもない。場合によってはかなり頻繁な人のやり取りまで、行き来まで地方でのトランスポーテーションを整備してでも工夫される余地もあるかとは思います。
 それから、当然、東京でのリエゾンオフィスと呼ばれるものも、従来のように単なる、まあ何というんでしょうか、派出所みたいなイメージで作られるよりも、思い切って地方にいらっしゃりながらある種のブレーン的な機能を東京に置いてしまうという考え方もあろうかとは思います。
 いずれにしても、例えば私が先ほど勤めておりましたアメリカの国立研究所というのは、実はパシフィック・ノースウェスト国立研究所と重なっておりましたので、シアトル、アメリカのワシントン州のシアトルから飛行機で一時間余り飛んだところにある砂漠の真ん中のほとんど田舎町の中にあります。そこで現実にはアメリカでのセンター・オブ・エクセレンスの機能が果たせていますので、知恵がそこに集積されているんです。実際、トラベルは非常に、ビジネストリップは非常に多いですけれども、決して遜色のない、そこにありとあらゆる情報と知恵が集まるということは現実にはアメリカではよくなされています。ロスアラモスにもまたセンター・オブ・エクセレンスがある。
 したがって、日本ではもちろん多少条件の違いはありますが、地方にいながら知恵の集積、そこには情報が集まる、人もまたかなり頻繁に行き交いするということは十分にあり得るだろうという、あくまで前向きな考え方から申し上げた提案でございます。
 私からは以上です。
#36
○参考人(高柳寛樹君) 先ほどのソフトのニーズが一極集中しているという問題もあるという部分なんですけれども、これは多分ビジネスレイヤーによると思うんですね。例えばマイクロソフトのワードが売れる売れないというのは、やはりオフィスなり企業が集積しているところで売れるということだと思います。で、私どもがいる、ちょうど私の会社がいるドットコムの企業の中でのマーケット、数百億のマーケットですけれども、そこに関して言うと、実は東京、東京ももちろんそうなんですけれども、もう地方のマーケットというのは物すごい大きいんですよね。
 例えば、昨日も私神戸に行っておりましたけれども、私どものソフトウエア、つまり店舗系の人ですとか、あるいは外食系の人あるいは人材派遣系の人たちが使うソフトウエアですが、こういったものに関しては地方がかなりメーンのマーケットになってきます。
 あともう一つ、先ほど田坂さんがオールドミドルからニューミドルへのお話で購買代理というお話しされたと思うんですけれども、例えばBツーCのポータルサイト、いわゆる直接消費者に売るポータルサイトの経営主体、経営母体というのはどこにあってもいいと思うんですね。逆に、であれば原価が安い地方にあった方がいいという考え方があってもいいぐらいで、ですから、それもビジネスレイヤーによって違うと思います。
 少なくとも私どもがいるようなドットコムの企業に関しては、マーケットはニッチなマーケットですね、ニッチなマーケットは地方に十分存在し得ると思っていますし、先ほどのBツーCのポータルサイトですとかそういったものに関しては、その経営母体が地方にあっても何の問題もないと思います。
 ちょっと言い過ぎの部分はありますが、そう思っています。
#37
○参考人(米倉誠一郎君) 始めの方の、どういうアドミニストレーターを増やすのかと。これはもうかなりプロフェッショナルな人間だと思います。それは民間人がいいと思います。国家公務員を幾ら増やしても国家公務員というのはディシプリンを受けていませんから、みんな国家公務員試験を受けてそのまま入っていますから、彼らはいかに生産性を高めるかとか、与えられたコストに対してどれだけのパフォーマンスが要求されているのかという訓練を受けていませんので、これから新しい人間を増やしていくときには民間人の採用は十分あり得ると思います。特に、松下、富士通、NECが一万五千人とかそういう規模で人を切っていますから、そこら辺で培われた人間を大学の事務補佐というかアドミニストレーターとして雇うという手は非常に重要な観点だと思います。
 もう一つは、やっぱりプロフェッショナルの育成で、例えばアメリカにはケネディ・スクールといって地方自治体とか大学の管理運営あるいはノンプロフィット・オーガニゼーションのためのプロもいますし、多くのMBAもノンプロフィット・オーガニゼーションあるいは病院なんかをいかに経営的に効率良く運営するかという人が増えていますから、例えば日本の大学にMBA、たくさんのMBAが来てより効率的な仕組みをもたらしていくと。
 先ほど田坂さんが言いましたけれども、MBAも非常に純粋にプロフィットを追求する人間もいますが、ノンプロフィット・オーガニゼーションあるいはNGOで、今与えられたこれだけのアフガン支援の資金をより有効に使うために何ができるかというそのソーシャルアントレプレナーもすごく増えているので、彼らの活用あるいはそういう人間が訓練されるというような場所を作っていくことが非常に重要だと思います。
 二点目の質問の趣旨がよく分からなかったんですが、国立大学ではできるが民間の何、どういう意味だったんでしょうか。
#38
○鶴保庸介君 先ほど例に出されたのが研究者の一人に対して一人にという、これは大学の中での話だと承りましたから、民間企業、企業人が起業されるときに、じゃどういうアドミニストレーターを使っていくか、こういった問題というのはあるんじゃないかということなんです。だから、それは考えとしてどうですかという話を今日はお伺いしたいということです。
 つまり、大学の中での研究をビジネス化するときにはそういったアドミニストレーターみたいなものが大学が引っ張ってくればいいわけですよね、これ。ところが、民間の場合はそれはできない、アイデアがあってもですね。そういうときにはどうされますかということ。
#39
○参考人(米倉誠一郎君) それはもう欲の皮の突っ張っている人たちが行くしかないと思うんですね。ですから、それがその役割を果たしたのがベンチャーキャピタリストであって、このアイデアだと思ったら、人、物、金、情報、すべてを付けるわけですから、それはやっぱりそこが一番有効に生きるんだと思います。
#40
○理事(内藤正光君) ありがとうございます。
 あと、この後七名の方が質問することになっております。この調査会、四時半に終わる予定でございます。どうか質問をされる方、答弁される方、この辺のことを念頭に置いてやり取りしていただきたいと思います。
#41
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
 今日は三人の参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
 まず、お三人の方に共通して一点お聞きをいたします。
 この当委員会は三年掛かりで「真に豊かな社会の構築」を目指してというのが大きな調査テーマになっております。三年掛かりの調査会です。かなりスタンスが長いということなんですが、そこで八〇年代以降ですが、日本は経済大国と言われるようになってきたんだけれども、国民が本当に豊かさを感じることができないという、そういう状況が長く続いています。そこで、それは一体なぜなのかということと、それからこれからの将来、日本の未来の社会が本当に真に豊かさを感じることができる、そういう社会にしていくについて、それぞれの参考人の皆さんがその豊かさ、本当のこの人間社会の豊かさとは何か、これから日本の未来社会の豊かさとは何かということについて、何かお考えがあればお聞かせをいただきたいというのが一つです。
   〔理事内藤正光君退席、理事鶴保庸介君着席〕
 それから、私ずっと今、経済産業委員をしているんですけれども、このベンチャーというのは随分日本経済の言わば活性化の一つのキーワードのようにしてベンチャー、ベンチャーということがはやり文句のようにずっと使われてきた嫌いがあります。
 中小企業の、法律でいえば、創造的事業活動の促進に関する臨時措置法という長い名前のベンチャーの法律ですが、これができましたのが九五年、平成七年の四月に施行されて、何度か改正がされているんですが、高柳さんにお伺いしますけれども、とてもお若い方で、実は私の息子と同じ年です。それで、こういう参議院の調査会にお越しいただきまして、とてもうれしい気持ちです。もっと政治には若い人の力が必要だと思っています。
   〔理事鶴保庸介君退席、理事内藤正光君着席〕
 そこで、いろいろお伺いしましたけれども、自己資金を自分で集めたというようなことをおっしゃっていますよね。それで、今までいろんなベンチャーに対する法律をいろいろ改正してきてやってはきているんですけれども、もう五、六年たつんですけれども、若い高柳さんのようなベンチャリストといいますか、そういう方が今本当に日本のそういう法律の中で、制度の中で、これは役に立ったぞというものはどんなものがあるでしょうか。また、こういうのはちょっとまずいからこういうふうにしてほしいというようなことがあれば、是非お聞かせいただきたいと。
 私も最近取り上げました、経済産業委員会で最近取り上げましたのは、例えば新事業創出関連保証という制度があるんですけれども、実はその制度は自己資金、ちゃんとした自己資金が持っている枠の範囲内しかお金の保証をしないという制度になっているんです。そこで、一件当たり調べてみますと、大体五百六十三万円ぐらいのところの保証しか大体されていないということで、そういうのでいいのかな、元々そういうお金を持っていないと保証が受けられない、一千万近い保証が受けられないというようなことに、一千万じゃない、五百万。五百万持っていれば五百万ぐらいの保証しか受けられないという、併せると一千万ぐらいの資本金で新しい事業を計画しなきゃいけない。
 私はもっと自己資本の比率を下げてもいいんじゃないかというふうな問題意識は持っているんですけれども、高柳さん、若いベンチャリストとして今の日本の法律や制度の中でもっとこういうふうにしてほしいんだと、もっと自由にやっていくためにはこれをというような御提案があればお聞かせいただきたいと。
 それから、米倉先生に一点お伺いしたいんですが、女性の起業家の問題なんですけれども、アメリカでは中小起業家の三分の一は女性だということで、私も女性起業家の問題でいろいろ取り上げてきたことはあるんですが、大変日本じゃまだまだ、まだまだ少ないどころか、まだ萌芽も見えていないような状態じゃないでしょうか。これから二十一世紀の日本は女性の起業家という形で、女性が職場に出るということはかなりこの間、率としても高くなってはきているんですが、自分自身がいわゆる企業主として、社長として自分の思いを社会にこういうビジネスをやっていこうというときに大変なまだまだ日本じゃ難しい障害がたくさんあります。それで、アメリカとか欧米なんかで女性起業家をサポートしているようないろんな施策があれば、それをお教えいただきたいと思います。
 この三点。
#42
○参考人(高柳寛樹君) まず、真に豊かなという方ですけれども、非常に大きな質問で難しいなと思っているんですが、やはり自分のことだけを、起業家のお話ですけれども、自分のことだけを考えているとうまくいかないというのがありました。それは合理的な意味で言うと、先ほど田坂さんがおっしゃったように、一つの会社だけで大きくなっていくのは難しくて複合的にやっていかなきゃいけない、パートナーシップ、アライアンスを組みながらやっていかなきゃいけないというのは物すごく私も感じているところなんですね。
 そうすると、よく我々若い起業家の間であるのが、とにかく人を紹介したりとか、自分のネットワークを相手に与えていくというようなことというのは日常茶飯事行われていて、非常にそれが重要だなと思っているんですね。
 ですから、いろんな意味で起業家、アントレプレナーという人たちは自分の利益追求、それは一番重要なことなんですけれども、それ以外の部分、全体を見てやっていくということが非常に重要なんじゃないかなと思っています。
 もう一つですけれども、こうあってほしいという制度なんですけれども、先ほど資本金の保証ですかのお話があったと思うんですが、まず私の場合は多分特異だと思うんですが、ビジネスごっこを、先ほどプレゼンテーションでお話しさせていただいたビジネスごっこをしている段階で一千万ためてしまったんですね。それで起業していますので、なくなってもいいと思っていますので、その時点では何とも思わないで投資をしていたんですね。
 ただ、リスタート、つまり失敗して再度やり直すときに、それがゼロになるのと五百万残っているのだと全然違うと思うんですね。お金がなくなっちゃってリスタートできない人たちって私の周りに一杯います。もうにっちもさっちもいかないわけですね。そうすると、そのときに、五百万といわず三百万でもいいのかもしれないんですけれども、残っているというのは非常にリスタートが切りやすい、失敗しても立ち直りやすいというのが一番重要かなと思っています。
 以上です。
#43
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
#44
○参考人(米倉誠一郎君) 豊かさに関しては二つあると思うんですね。
 精神的な面でいいますと、本当に豊かだというのはチョイスの多さだと私は思うんですね。やっぱり、ポケットに百万円持っていても、フランス料理しか食べれないとか、ラーメンしか食べれないというと非常に豊かじゃないですから、やっぱりいろんなものが、タコ焼きも食べれるし、そういう可能性がある。
 その点でいうと、日本のチョイスはすごく少なくて、私、学生が持っている例えばチョイスなんて本当に挙げてみさせると三つぐらいなんですね、大企業に行く、大企業に行く、大企業に行くと。そんな形で、もっといろんな生き方があるのになという点では、日本が用意しているシナリオが物すごく少ないですから、働いてみて、四、五年働いてみたら、もう一回、ロースクールへ行くとか、ビジネススクールへ行くとか、メディカルスクールへ行くという、大学院の充実とか、ピースコーみたいな形で青年海外協力隊に行けばそれだけ就職が有利になるとか、いろんなチョイスを取ることが実は非常に豊かな人生を歩めることだし、それは都市の選択もそうなんですね。
 我々の友人でも、だれもニューヨークに住みたいなんて言わないんですね。あるやつはシアトルに行きたいし、あるやつはニューオーリンズに行きたいし、やっぱり僕はボストンがいいとか、都市も選択肢に入っていると。うちの学生で、卒業したらどうするかと聞いて、大阪に行きますというのももういなくなってきましたね。もうみんな東京なんですね、チョイスは。そういう点では、やっぱりチョイスをいかに広くするかというのは精神面の一つ。
 もう一つは、やっぱり中国もベトナムもみんな一国二制度になったように、コストパフォーマンス。日本では、僕は決して日本貧しくはないと思います。去年、ルイ・ヴィトンは史上最高の売上げを上げたそうですから。山手線に乗って、ルイ・ヴィトンのバッグが各車両に三つ以上あるという国は日本しかないと思うんですが。
 そういう点から考えると、お金はあるんだと思うんですね。だけれども、そのお金のコストパフォーマンスが悪いと。こういうものに使っているのに対して得ているものが、あるいは税金もそうなんですけれども、それから、いろんな公共施設でもコンサートでも、みんな高過ぎるんですね。それはなぜかというと、非常に非効率な運営をし続けてきた。そういう点では、もう一回、ある種、お金に対する投資効果を考えた資本主義の貫徹化というものが必要かと思います。
 女性起業家に関しては、今更女性、男性ということを差別すること自身がおかしくて、女性も男性も同じ能力なんだということから考えれば、半分出てきてもいいと思うんですね。ただし、僕は二つの点で女性にとって有利な状況が出現していると。
 それは、一つは、テクノロジーが、インターネットとか携帯電話とか始めとして、コミュート、会社に通うということをしなくても非常に知的な参加ができるというインフラストラクチャーが整ってきたんで、女性のチャンスが物すごく増えていると。
 ある有名な翻訳家は、東京から高松に移ってほとんど同じ仕事をし続けているんですが、引っ越したことすら知らない。なぜか。電子メールも携帯電話も全く変わらないからですね。で、吉祥寺で二十万円のマンションを借りていたんですが、一万二千円の一軒家に今住んで、同じ仕事をし続けているんですね。何にも変わらなかったかというととんでもない話で、彼女には十八万八千円の可処分所得が増えているんですね。物すごく豊かな生活をしていると。そういう点では、能力がある女性が非常に仕事をしている。
 もう一つは、先ほど田坂さんが言いましたけれども、今はマーケットに近い人間がいろんなアイデアを出せる時代なんですね。消費という点からいいますと、女性は一番消費に近いので、そこからのアイデアが非常に報われると。そういう点では、女性に対して大きなチャンスが生まれているんですが。
 アメリカが体系的に女性をプロモーションしているかというと、いろんな女性のためのファンドとかありますけれども、特に女性を超優遇したというんではなくて、むしろ女性がある種、女性として差別をしないということが女性が三分の一、本来は半分こなきゃいけない。ただし、半分これない理由は、やっぱりハンディキャップがありますね、子育てとか家庭とか。その軽減が今どんどんされているということですね。
 テクノロジーをどうやって整備するか、あるいは女性のネットワークをうまく利用して、お互い互助組織を作るか、そんなことが重要で、国がどうこうするというほどのことはなかったような記憶にありますが、私自身は余りよく知りません、女性のための起業施設というのを考えたことも。
#45
○西山登紀子君 ちょっと、クリントンがちょっと優遇策を取っていたもんですからね。
#46
○参考人(田坂広志君) 大変大切なやはりテーマを投げ掛けていただきまして、一言で答えられない大切なテーマだと思いますが、やはりあえて申し上げたいと思います。
 豊かな国ということを我が国が考えるときに、絶対に忘れてはならないことが一つあると思います。といいますのは、日本というのは、今経済的な意味でどこまで豊かになれば納得がいくのか、これは一回考えてみるべきテーマだと思います。
 最近、電子メールの世界ではやったメールで、これは本にもなりましたが、世界がもし百人の村であったならばという、あの本が随分ブームになりましたけれども、一言で言えばこういうことだと思うんですね。
 あの本読まれたら分かると思うんですが、日本人おしなべて、極めて世界の中では最も豊かな部類に属している人間の集まりであると。分かりやすく言えば、もう戦後五十年どころじゃない、長く平和の中にあり、そして経済的にも世界で二番だ何番だというぐらい豊かな国にあり、ほとんどの人が高度な教育を受けることができ、そして健康という意味でも、なかなかにしっかりとしたサービス、医療サービスもある。まだまだという、上を見れば切りがないですが、こういうふうに並べ上げたときに、今この地球上に存在する人類と名の付く方々の中で、日本人というのは、どう考えても、上位から数えて少数派に属するほどの豊かな人々だと思います。
 そして、私は、もし、人間というものの生き方に豊かな生き方があるとするならば、自分たちよりも恵まれない方々に対する深い思いを持って生きていく方が心の豊かな方だと思います。
 であるならば、国家においても同じだと思います。世界全体を見渡して、もっともっと日本に比べて恵まれない国はたくさんある。この国の方々に対する思いというものを持って日本人がやはり生きていく、そのことを考えていくという、その文化が生まれたときに、日本という国は心の豊かな国になるんだろうと。
 私が非常に懸念しますのは、まあアメリカと比べればまだまだ経済力、衰えているかもしれませんが、どこまでも上を目指して、世界の富の大半を使い尽くして豊かさを目指すという、経済的豊かさを目指すという、その国の在り方は、本当に心の豊かな在り方なんだろうかと。
 私は、むしろ、ここは逆を見詰めてみるべきではないかと。もちろん、その後出てくる政策論というものは、非常に細やかな、多様な議論があろうかと思いますが、まず、ものを見詰めるときの原点は、私の好きな言葉ですが、ノブリスオブリージェという言葉があります。
 日本人は、どう見ても、今、世界全体の人々の中では最も恵まれた部類に属する国民になっている。この国民には、ノブリスオブリージェとでも呼ぶような使命があるんだと。世界に対してどのようにこの日本という国は貢献していくんだという、その使命感を国民全体で議論するような文化が生まれたときに、私は、この国は豊かな国になるんだろうと、そう信じております。
 以上です。
#47
○理事(内藤正光君) はい、ありがとうございます。
 あと、質問者はあと六名でございます。一人当たり八分で終わるような質問の仕方をお願いをいたします。
#48
○日笠勝之君 公明党の日笠でございます。
 じゃ時間が、質問時間が短いようですので、端的に申し上げますので、端的にお答えいただければと思います。
 田坂参考人にお伺いいたします。
 異業種でベンチャーを立ち上げると、異業種連合と、こういうふうなお話がございました。全くそのとおりだと思います。この経営形態はどういうことをイメージされていますか、また、どういう経営形態が期待されるのか。例えば、株式会社、有限会社、NPO、それから企業組合というのもございますし、労働者協同組合、ワーカーズコープというのも最近はやっておりますですね。どういう経営形態を期待されますか。
 それから次は、米倉参考人にお伺いしたいと思います。
 ベンチャーキャピタルにつきましては、要は、投資家教育というものがなされないと、いきなりローリスクのハイリターンですよと言ったって、なかなか日本人というものは、損失補てんだ、リクルートだ、何だかんだ言うて、株式のことを株屋なんてまだ言っている時代でございますから、この投資家教育が大事じゃないかと、こう思いますね。そういう意味では、いかが思われますか。
 それでもう一つは、千四百兆円の個人金融資産があるということですが、六〇%は六十五歳以上の方が持っておる。このお年寄りが、なかなかそういうベンチャーキャピタルの方へ行きづらいと。教育もされていない、先祖からの遺言で株には手を出すなとか、そういうしきたりと言いましょうか家訓というか、あるようにも思いますが、いかがでございましょうか。
 それから、同じくエンジェル税制、それからTLOに関する税制、いろいろこれ問題があるんじゃないかということでございますが、例えばエンジェル税制も、つい先日の新聞見ますと、この五年間でわずか、個人にいたしますと二百二十六人で、投資先企業は十五社、投資総額は四億円だったということで、余りこのエンジェル税制というものが実際は活用されていないというようなことも言われておりますが、いかがでしょうか。
 それから、TLOに関しましても、特許を取得する場合は、海外での特許は一千万ぐらい弁護士さんの費用踏まえて掛かるわけですが、これに対する税制というものもいろいろ言われております。
 以上、エンジェル税制、TLOに関する税制、何か御要望というか御指摘というものがあればお聞かせ願いたいと思います。
 最後にちょっと、米倉参考人にちょっと申し上げますが、言いにくいことでございますが、先ほど地域振興券のことをおっしゃいましたが、これを作った由来ですね。いわゆる橋本内閣のときに二%の消費税を上げた、その分を還元しなければ消費拡大にならない、日本の景気回復、経済再生にならないという趣旨でやったわけでございまして、後ほど、当時、経済企画庁は、減税より効果があった、〇・一%のGNPを押し上げる効果があったということも検証しております。それを契機にNHKは、「エンデの遺言」という、エンデさんという方の本だとかテレビの特集をずっと組みまして、これからは地域通貨、地域通貨が大事だと。その地域通貨というのは、地域に限定であり期限付だと。そういう意味では、地域振興券はその、何というんですか、地域通貨のいわゆる露払いであったと。これ加藤寛さんもおっしゃっておられましたけれども、是非その点は御理解いただきたいと思いますし、七千七百とおっしゃいましたが、決算では六千六百億ということでございます。
 そのことは、私の方から地域振興券は申し上げておきますが、以上、御質問いたしますので、お願いいたします。
#49
○参考人(田坂広志君) 時間も押しておりますので、手短に申し上げます。
 もちろん、異業種連合、いろんなケース・バイ・ケースありますので、新しいベンチャーの作り方というのは御指摘のようないろんな選択肢があろうかと思います。ただ、あえて一つ選べと、若しくは強く推薦せよと言われるならば、私はバーチャル・コーポレーションという方式を一つお勧めいたします。
 これは何かというと、ネット上で、実際に一か所に集まることなく、ネット上で結び付き合って、それぞれの企業の社に籍を置きながら仮想的な企業を作って活動するという形態があります。実際に、先ほど紹介申し上げましたファースト・エナジー・サービス・カンパニーはこのバーチャル・コーポレーション方式でスタートいたしました。
 その理由は、決してその方がオフィスコストが掛からないという意味ではなく、そのメリットもありますが、むしろ異業種連合の魅力というのはそれぞれの参加した企業の経営資源がうまく使えるということです。したがって、ベンチャーの一か所に集まってしまうと、多くの場合、元の社との情報的なチャンネルなりいろんなチャンネルが切れてしまう傾向があります。むしろ、その社に籍を置いたまま、その社の情報チャンネル、経営資源をうまく活用できる、そういう形で企業が動くことが今後の新しいスタイルの一つだろうと。特に、異業種連合の強みを生かすときにはこのバーチャル・コーポレーション的なベンチャービジネスの在り方が一つの面白い切り口になろうかと思っております。
#50
○参考人(米倉誠一郎君) まず投資家教育、これは本当にそのとおりで、まず完全に国民の多くが拒絶感を持っていると。これをどういうふうにやっていくか。
 教育もそうですし、それから、今まで非常にある種いい加減なビジネスをしてきた証券業界、これは本当に反省しなければならないと思います。でも、そのために、野中ともよさんが理事長になった日興コーディアル、何でしたか、フィナンシャル・インテリジェンスが投資教育を始めたり、野村も非常に若い段階から投資教育を小中学生からやっていくとか、そういうことがスタートしてきております。こういうことを地道にずっと続けるしかないんだと思うんですね、急に変わるという。
 でも、ただ、政府としていろんなインセンティブを付けたり投資教育をするということは必要だと思います。特に、六十五歳以上が大量に六〇%持っている、これは彼らが行くということは非常に難しいんですね。期間限定、先ほどのエンデの話じゃないですが、期間限定の譲渡税のゼロというのをやってみるのも面白いかもしれないと思います。
 いずれにしても、死んだときに取られるか今取られるかということですから、今、譲渡税をゼロにして、若い世代、要するにお金が一番必要なところに所得移転をしてやって、最終的にはどうせ相続税で取れるんだからということにしまして、今、三年間で所得移転をして、一番お金が必要な三十代、四十代に無税で渡すと。そのときは当然、親と子でいろんなネゴシエーションをして、一家が二世帯住宅を造るとかいろんな条件闘争をすればいいのであって、多少抜け穴が出る可能性もあるんですが、それぐらい大胆なことをやって、所得移転、それからそれが直接金融に結び付くとか、そういうことを考えていったりする必要が重要だと思います。
 エンジェル、TLOは、これ残念ながら、始まってまだ二年ぐらいですから、重要なポイントは、アメリカの事例を見ても、一九八〇年、もうちょっと言うと七五年ぐらいから本当に徐々に徐々にスタートしてきたのですから、我々、日本を見て非常に、八〇年代前半まで日本人は非常に長期的だというふうに賞賛されてきたんですが、ここに至って突然短兵急になってベンチャーうまくいっていないじゃないか。二年しかやっていないのに、何でうまくいっていないかと。これはもう本当に十年、二十年を見なきゃいけないものなのに対して非常に成果を求め過ぎているという点があるので、僕は、整備をどんどんしていって、パブリックリレーションをしっかり持って広告を打つということで、エンジェル税制、TLO、それからTLOがよりうまくワークするようにと。完璧な制度はないんですよね。ですから、やりながら直していくと。正に今必要なのは、朝令暮改で新しいものに進んでいくということが重要だと思います。
 地域振興券に関しましては、いろいろ議論があると思うんですが、国の形ですね、税制というのは国の形ですから、間接税、消費税二%上げたらば、あそこでやらなければいけないのは、間接税に移行していくんであるんですから、所得税を変えなきゃいけなかったんです。所得税の累進課税を逆、質として広く浅く取るというような方針に、こういう国はこういう国になって、あるいはこの国はこういう一生懸命働いた人に対しては非常にインセンティブを与えて、働かない人に対してはもっと働きなさいと、もっといいことをしなさいというような国の形を決めるのが税でありいろんな国の施策だと思うんですね。それに関してはやはりもう少し考える。消費税を二%上げたからこれが必要だったかというと、その国の形を決めるという点ではもう少し議論がなされてもよかったお金の使い方ではなかったかと思います。でも、これは議論のいろんな考え方があるところですから、それは私がそういうふうに思っているところであります。
#51
○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。
 三人の先生のお話、非常に面白いお話を伺いまして、ありがとうございました。時間限られましたので、私の質問ですね、済みません、米倉先生に限って質問させてください。
 先生、最初にこのベンチャー支援は国家戦略であるということからお話をスタートされたわけですが、私もそのとおりだと思って、先生、ほかのところでいろんな著作で書かれていることも大いに啓発されるところがあるんですが、今日のお話で一つだけ、もう少し説明をいただけたらと思うのが一点あります。
 それは何かといいますと、私もこういう意識は余り持っていなかったんですが、ベンチャービジネスの育成は小さな企業を創出することではなくて大企業を作ることだと、こうおっしゃられているんですね。私も何も、ベンチャービジネスが立ち上がるとき、これが中小対策でやるべきだなんて思っているわけじゃ毛頭ないんですけれども、やはりその最初のスタートといいましょうか、それはやはり元々小さいものではないかと思うんですよね。そしてそれが、マーケットとか技術のそういう未来がはっきりしないから、たまたまその商品が大きなマーケットを構成する要素に非常に適合すれば、それは企業というのは大きくなってくると。
 ここで先生、私聞きたいのは、先生、これ、大企業と言われたこの大企業の意味がどういうのを想定、イメージされているかということ。というのは何かというと、先生は追加資料で、私どもにいただいている中で、私の、たまたま私の個人的な知見で非常によく知っているところが幾つか入っている。ナスダックの六番にアムジェンというのが、これ世界のランクで五十何位だという。でも、このアムジェンだって、かつてのアメリカで雨後のタケノコのごとく出てきたバイオベンチャーの生き残りの一つ、もう本当に残った一つだと言っていいかもしれない。だから、これが大きくなったのは、元々バイオのリサーチベンチャーで起こっていて、ここは途中から結果として医薬品製造業に変わってこれだけの大きさになっていると私は思うんですね。
 この辺のこともありますので、是非、先生の最初の、小さな企業創出じゃなくて大企業を作ることだということをもう少し説明していただけたらと思うんですが。
#52
○参考人(米倉誠一郎君) 多分全く同じことだと思っているんですね。数を打つということは、まず小さい企業を大量にいろんなトライアル・アンド・エラーをやると。それで終わりなんではなくて、そこから将来有望に育っていく、要するに、この中でいえば、日本でいえばソニーとかホンダに匹敵する企業をあと十年以内に作るんだと、そのためにありとあらゆる施策を打つ。その始めは小さい企業をやるんですけれども、今の問題は、ベンチャー支援というと何しろ小さい企業どんどん出なさいと、それに対して五百万円保証金ただで付けますよ、一千万円付けますよというと、巨大な企業に成長して、世界のある種デファクトを取るような企業ではなくて、パン屋さんをやるのもいいじゃないですかと、ベンチャーですねと、ラーメン屋さんやるのもベンチャーですねと。そういう地域における経済振興と、本来やらなければいけない、本当に競争力のある企業を体系的に育てていくというものを混同してしまうと、僕自身が、例えば中小企業庁がやった三十兆円近くのお金、あれももっと体系的なこういう意図を持ってやれば、もう少しいろんな企業に使えたのが、かなり地方のつなぎ融資に使われて、結局それが不良資産になっていっているケースも見られると思うんですね。
 ですから、その辺の峻別をしていただきたいという意味で、あえて日本のベンチャー支援というのは、何でもいいから数を打ちなさいではなくて、非常にこれから有望な成長産業の中に世界的な企業を作るんだと、そのための試行錯誤を援助するという資金に限るというような意識を持った方が重要ではないでしょうかということを言いたかったんですね。
#53
○本田良一君 私は、まずお三人にいろいろ、米倉先生も、私は二年、三年前でしたかね、一回講演を聞いて、多分質問が、こういう問いをされたと思いますが、アメリカに企業は今どこに集まっているかと、私がデンバーと言ったら、先生はシアトルだと、覚えていますか。
#54
○参考人(米倉誠一郎君) アメリカの重要な都市ですね。
#55
○本田良一君 そういう質問をしたことがあるんですが。
 だから、何を言わんとするかといえば、二〇〇〇年から先生も著書でベンチャー企業をずっと言っておられる。新しい産業を起こすためにこうしたらいいと、今のTLOとかエンジェル税制とか、いろんなことをやるための障壁を学者の皆さんから私たちはこの四、五年ずっと聞いてきました。学者の皆さんだから、政治家に対してこういうことを、今ここに書いてある、今話されたようなことをやったら必ず将来新しい産業が起こって、日本が経済再生ができますよと、こういうことを聞いてきたんだけれども、先生方は非常にそういう意味では、もう私、ある人なんか十年間これを言ってきたけれどもまだだと、ジレンマに私たち陥っているということを政治家の前でおっしゃいます。だから、私たちもそのことを聞いて、こうしなければならぬということで、エンジェル税制を二年前からやったとか、この間、特許法と弁理士の改正をやったり、こうやってきたんだけれども、私たちも実を言うとジレンマに陥っているんですよ。
 小泉首相の構造改革はあるんだけれども、構造改革で一気にやっていくということも一つのやっぱり手法でしょうね。ところが、本当に政治が、皆さん、先生たちが政治家に対して今ずっと障壁を言われたことをぐっとやるためには何を政治に求めるのか、それをちょっとお尋ねしたいですね。
 それからもう一つ、高柳さんは若くて本当に、私があなたの年のときにはそれくらいしっかりとしたみんなの前で話ができたかなと思うのは、さっきから考えながら、あなたは大したもんだなと、こう思って、感心していましたけれども、いずれにしろ、特にあなたに、今のような質問の中で、私の政治が、何、どうすれば皆さんが言うことをぐっとやれるか、そのことをひとつ勇気を与えていただきたいと思いますね。
#56
○理事(内藤正光君) 確認ですが、質問は米倉参考人……
#57
○本田良一君 三人です、三人。
#58
○理事(内藤正光君) はい、分かりました。
#59
○参考人(米倉誠一郎君) 確かに、本当にたくさんいいものがそろってきました、日本の中に。我々がずっと言ってきたようなTLOもそろいましたし、エンジェル税制もそろいましたし、ナスダック・ジャパンもできましたしと。ですから、これがきっと統合化に向かっていくんだと、あと、大学がシーズになっていくような、これが統合化に向かっていくんだろうなと思いますから、実は結構楽観的なんですね。
 ただ、一番大事なのは、スピードと何しろやるということなんですね。例えば、税制改革でも今中立性ということが問題になっていますが、やっぱり中立性、まあこういうふうに言って、何しろ、ある種完璧でないものでも新しいものを一つ一つやっていくと、そうするとインバランスが生まれて、そこをまた何とかしようということで次々新しいことが起こっていくんですね。
 今の日本で必要なのは、ほとんど制度は整ったと、あとはどんどん次から次にしていくことだと思うんですね。今回、上海に先週行ってびっくりしたのは、上海のタクシーはもう既にICカードですね。それはもう電話でも地下鉄でも使えると。あの中国が、タクシーを降りると中国人がみんなICカードでぽんとタッチして降りていくと。上海空港から上海までリニアモーターカーが来年できるためのもう敷設工事が始まっていると。リニアモーターカー、一体日本は何年実験しているんだろうかと。もう十五年は最低していると思うんですね。でも、何も新しいことが起こらない、タクシーも新しい近代化が起こらない。
 そういうことから考えると、やっぱり世界のテンポからすると物すごく遅いんで、例えば独立法人行政、行政独立法人、独立法人行政化ですかに大学を民営化すると、これもあと五年も議論していたら絶対意味がないんですね、来年やるとか、そういうような形のスピード、あるいは税制改革もこれから五年やりましょうじゃなくて、来年やるとか、その種のスピードが出てくると、僕は日本は大きく変わる、それだけの制度は整ったと思います。
 ですから、大事なのは政治におけるリーダーシップで、非常に小さな、残念ながら今ワールドカップを前に、先ほども言いましたけれども、日韓共通貨幣とか日韓共通市場なんということを考えていれば、今のような国会の姿はあり得ないと思うんですね。そんなスキャンダルみたいなことは違う場でやればいいんで、日本国がこれからどういうリーダーシップをアジアの中で取っていくかという議論になったと思うんですね。
 ですから、そういう点では、僕が政治に期待したいのは、本当に政治あるいは政策、この国がどういう国に行くのか、どういう形の税制を取って、どういう国民を創出していくのかというような議論をしていただきたいと。そういうことをすれば、おのずとこういう制度がどういうふうに生きていくかというのが明らかになっていくと思うんですね。
#60
○参考人(田坂広志君) 手短に申し上げますと、いろんな制度を整えるということは、ある意味でベンチャーとか新しい事業、産業が生まれてくるときのインセンティブを整えようという考え方だと思うんですね。やはりみんながそういう評価に向かっていろんな努力をするようなインセンティブの場を作っていこうと。これは、ある意味では非常に重要なことで、制度的にはかなりもう議論もされ、手は打ち始められていると思うんですね。
 最近、いろんな議論の中で出てくるのが、インセンティブだけじゃ恐らく何かが欠けているだろうと。やっぱり大切なのはもう一つあるということでよく言われますのが、プロジェクトですね。つまり、場として何かそういう新しい事業を生み出すことが非常に魅力的に見えるような場づくり、インセンティブの場を作るのはマクロな経済学的に見ても非常に重要なことなんですけれども、やはり人間というのは単なる抽象的なインセンティブの構造の中だけで動くわけではない。やはりわくわくするようなプロジェクトが動いているときに、そこに新しいアイデアが集まり、人が集まり、情熱がそこに生まれてくる。例えば、一昔前でいえば、ケネディがあの六〇年代に月に人を送り込むというプロジェクトを打ち上げたときに、結果として宇宙開発の中でかなり多くの技術的なイノベーションが起こり、いろんなプロジェクトマネジメントのノウハウなども蓄積された経緯があります。最近、テレビで「プロジェクトX」などというのがはやるのも、ある意味ではそういう今我々の心の中の求めているものを裏返して示しているんではなかろうかと。
 もし政治に一つお願いできるとすれば、やはり本当にビジョンにあふれるプロジェクトというものを本来は今打ち上げるべきと。ただし、それは間違ってもしばらく前から続いているような役人の作文に基づいて国のお金を投入するけれども何か魂の入らない大型のプロジェクトというような意味では全くございません。やはり、民間企業も国民も何か胸がわくわくしながら見詰め、取り組んでいけるようなプロジェクトというものがやはりこのインセンティブ、制度づくりの次に求められているテーマのような気がしております。
#61
○参考人(高柳寛樹君) やはり、何を目指しているかという目的がはっきりするということが一番大事かなと思っています。
 ちょっと私のスクリーンで御説明したところに、まじめに夢を抱く人は異端でヒーローを称賛しない社会で、当然そうなってくると起業しようなんというモチベーションはどんどんどんどん低下してしまうと。じゃ、モチベーションを上げるためには何をしたらいいかということを考える、あるいはそういう方向性を明確に打ち出していくというのが大事なのかなと思います。
 例えば、私が先ほどのエピソードで、高柳君、研究者は清く貧しく生きなさいなんて言われることは、これ自体ちょっとおかしいというか、こういうことがまかり通ってしまって、それに、そのとおりにしちゃってはいけないんですけれどもね。こういうことがあってはいけないなと思います。
 もう一つは、例えばインターネットの標準化の問題で言うと、結果として今アメリカが提唱したTCP/IPというプロトコルが採用されているんですけれども、その標準化の議論の中でも、やはりアメリカがやってきた標準化の議論というのは極めて長年、長期のスパンでそれでクリアにやってきたと。当然、政治、政策的な関与も物すごく大きかったんですね。ただ、一つだけ日本やヨーロッパがやってきたことと違うことは、物すごくオープンにやってきたということがあります。結果として、それが物すごい今インターネットが、アメリカがイニシアチブを取ったというのはそれが出たと。
 ですから、長期的なスパンでクリアにやってだれでもが参加できるという、そういうインフラを作っていくと、これは産業面においてもだと思うんですけれども、かなりアントレプレナーが参加しやすい、あるいは一般の国民、市民が参加しやすい基盤ができるんではないかと思っています。
#62
○榛葉賀津也君 長時間、本当に御苦労様でございます。
 高柳参考人には私よりも更に若い世代ということで大変刺激を受けました。このパワーポイントの資料で、一兆円の資本金というのを見てちょっとびっくりしたんですけれども、お話を聞いて、一千万ということで安心をいたしました、あ、一千億です。それは余談ですけれども。
 私、先月、イスラエルに一週間ほど行ってまいりました。インキュベートセンターというベンチャーと、そしてシビルディフェンスという民間防衛の勉強に行ったんですけれども、そこで大変感銘をいたしましたのは、イスラエルというのは大変小さな国ですけれども、いわゆるITを中心としたインキュベートシステムが大変産学官の中で有機的に組織立っていると。突き放さず甘やかさずということで大変に連携を取っているんですけれども、各大学には必ずインキュベートセンターがありまして、民間の会社とかベンチャーがどんどん集まって新しいものをイノベートしようとしているんですね。学生も学校の先生も何とか一発当ててやろうとか、お金もうけをしようといういろんなものがあったりして、御承知のとおり、我々のコンピューターに既に入っているインテルなんというものは数人のイスラエルの学生が作ってそれをシリコンバレーに売って、今ほとんどの世界のコンピューターに入っている、インテルインサイドなんかも有名であるわけでございますけれども。
 そのような中で、その以前に、我々はこのメンバーで九州に視察へ行ってまいりまして、九州大学のベンチャー育成の制度を見てまいりました。大変、イスラエルの制度と日本の制度、正直を申し上げまして格差があるなという実感をいたしたんですけれども、アメリカの大学等ででは九か月給与というような形で、残りの三か月分は大学の先生は自分たちで何かして給与を稼いでこいというような制度があるんですけれども、このように産学官の連携を随所に促す制度がアメリカだけではなくて世界各国あると思うんですね。
 今、日本が大学革命ということが議論されているんですけれども、これから大学発の、学発のいわゆるそういったインキュベートを増やす観点というのではどのような改革が必要になってくるのかなというふうに思います。これを、済みませんけれども、三名の方に簡明に、簡単にお伺いしたいと思います。
#63
○参考人(米倉誠一郎君) いや、これが本当にまず大事だと思うことですよね。それで、いろんな今、TLOのあれとか、あとアドミニストレーターをいかに増やしてその専門の委員をたくさん作っていくか、産官学の連携をシステマティックに行えるような制度を整える、これが重要なんですが、やっぱり特に危機感を持つのは、イスラエルもそうでしょうし、我々が行った復旦大学という、上海の復旦大学、重点大学の、六重点大学の一つですが、そこではもう二百五十社が創業して沿岸部のソフトウエアの最大の売上げを誇っているとか、清華大学の学生ベンチャーであるPCはIBMチャイナの売上げを抜いたとか、もう現実にそういうことがどんどん起こっているわけですね。
 そうすると、しかもそこで大事なのは、やっぱり中国という中の、本当に科挙に匹敵するような厳しいシステムで選抜された少数のかなりできる人間がこのフロンティアに挑んでいると。それに比べると、やっぱり日本はもう少しこのフロンティアに挑むレベルをいかに上げていくか、上げていくかといっても口で言っても上がらないので、制度的なところが大分整ってきたので、これから先はやる人ですよね。だから、次はやっぱりベンチャーキャピタルを本気で養成することでしょうね。そういう人たちを見付けて、それに人、物、金、情報を徹底的に追求できるという、そういう機関に対する巨大なインセンティブを与えるとシーズの掘り起こしが始まるんではないかと思います。
#64
○参考人(田坂広志君) 大学がどのようにしてインキュベーションのセンターとしての力を発揮し得るかという御質問と受け止めましたが、先ほど申し上げたことがまず一点あります。大学の教授と名の付く方々、若しくは大学人の方々がやはり民間でのいろんな経験を積まれて人的交流が進むということは、最低限の条件として最初に申し上げました。
 したがって、この場面ではもう少し別なことを申し上げたいんですが、大学というものの役割がこれから根本的に変わっていくんだということを大学人が御理解されるべきだと思います。
 しばらく前から、大学というのは、象牙の塔という言葉が昔からありまして、大学の中に最高の知恵が集まっているという考え方をしてきました。事実、大変すばらしい学識者が大学の中にいらっしゃった時代はあったわけです。そこに学費を払って人々がやってきて、授業を聞いて大切な知恵を授かって帰っていくという古いモデルというのがずっとあったんですけれども、もう今、ブロードバンド革命がやってきてメディアも普及し、インターネットもどんどん使える、この時代に大学というのはその中に知恵があるんだという考え方をされるべきではない。
 むしろ本当に大切な知恵はこの社会の隅々にあるんだと。例えば実業の世界で年を取られるまで一生懸命現場で働かれた方の中に、最近のはやりの言葉で言えば、暗黙知と呼ばれる言葉にならない深い知恵があります。これは地域で活動されているNPOの方々だったり、ボランティアの方だったり、職人の方だったり。
 やはり今、元々そうなんですけれども、日本を広く見渡してみればこの国の隅々にすばらしい知恵と知識があるんだ、それをネットワークして多くの人たちがそれを享受できるような場を作るのが大学の役割なんだと。これを私は、オープン・ナレッジ・ユニバーシティーという構想として申し上げております。参考までに、多摩大学はそういうビジョンを掲げて中谷学長の下で今活動をしておりますが、知恵はこの社会の中にあるんだ、大学はその知恵をネットワークしながら多くの方々がその知恵の恩恵に浴せるような場をつくるんだと、こういうオープンなイメージを持たれないと、大学というものを今までどおり象牙の塔のような考え方でとらえている限りは本当の意味でのインキュベーションの場にはなりません。
 私は、インキュベーションの本質というのは、キャピタル、お金のやり取りでも何でもない、その本質はナレッジマネジメントです。人々の知恵というものがうまく結び付いたときにすばらしいビジネスが生まれてきます。その知恵のマネジメントというものがインキュベーションの本質であるならば、大学というものがインキュベーションセンターになるためには、先ほど申し上げたオープン・ナレッジ・ユニバーシティーという考え方に向かっていかれるべきだと思っております。
 以上です。
#65
○参考人(高柳寛樹君) 大学発ベンチャー千社計画というのを打ち出されて、私は、千社なんで株式会社だとして一千万掛ける千社の予算があればできるのかなと思ったんですけれども、千人は社長はいないと思うんですね。ですから、大学がもし千人の社長を生むというのは物すごい大変なことだと思いますので、決してそれは絶対いないと思うんですね。そういう意味で言いますと、やはり人材育成、大学がインキュベーションセンターとなるためには人材を育成するだけの知が集中しないといけないなというふうには思います。
 それともう一つは、先ほど、もう何度も繰り返すんですけれども、高柳君、清く貧しく生きなさいという話なんですが、理研、理化学研究所ですね、今、特殊法人の理化学研究所の歴史を調べるとこれは面白いことが分かりまして、一八〇〇年代後半、一九〇〇年代に入ってからできてきて、最初のうち、かなり理研の中からビジネスが一杯出てきます。例えば、先ほどの私の中から、プレゼンテーションでお話しさせていただいた理研ビタミンさんなんかは理研から出たものですし、ビタミンAの研究なんかは理研から出たもの。米倉先生の前でちょっとこんな話をするのはお恥ずかしいんですが。ただ、当時は、理研の研究を産業化して、それをどんどんまた基礎研究にフィードバックしていって、それをやった主任研究員という人がヒーロー扱いされるんですね。そういったことをやっていったと。
 そこで、なぜそれが今まで続かなかったかというと、国の機関あるいは国に関係する機関、あるいは財団法人がビジネスをやっていいのか悪いのかという議論がなされて、それでつぶれていってしまうんですね。百年前とは言いませんけれども、数十年前に起こって議論され続けてきていることが今になっても全く変わっていないと思うんですね。全然変わらないわけですね。それは何かもっと根本的な問題、それは政策的な問題なのか何だかはちょっと私には分かりませんけれども、根本的な問題があるんじゃないかなと思っています。そういった部分を大学から改革していくということは重要なのかなと思っています。
#66
○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝です。長い時間ありがとうございます。
 私の質問は一つだけなんですが、三人の参考人の皆さんに伺いたいと思います。それは、起業に当たっての支援の在り方について、先ほどからも出ておりますけれども、加えて何かあればということでございます。
 先ほどの議論の中でも、消費者が一体今何を求めているかというお話ありました。例えば、私も環境問題とか食の安全性の問題とかいろんなお話を聞くわけですね。それで、中学生の今年の新しい教科書などを見ますと、もう環境問題とかインターネットの使い方なんてもう出ている。私なんかの子供の時代と全く違う子供たちの状況になっていると思うんです。
 それで、今後、本当に新しい問題に取り組む場合に、やはり新たな開発とかそれから安全性の追求とかいうとやはりコストが掛かると思うんですね。そういったもののコストの問題を、例えば消費者は必要だけれども、そうはいっても買える、財政的な問題があるとかいろいろあると思うので、そういう問題をどういうふうに解決していったらいいのかとか、それから先ほどITの自己資金の話も議論になりましたし、女性の起業家だけでなく男性の起業家にとっても、そういう社会保障の問題とかそれから社会生活や家庭との両立というのを、前の調査会ではテーマになりましたけれども、そういうのが問題になってくる時代が二十一世紀来ていると思うんですね。それから、障害者にとっての欠格条項の見直しとか、そういうものもありますので、起業に当たって、やはり消費者のニーズは何かというようなノウハウの問題とか、それから事業展開によってはいろんな相談できる問題とか、それから資金や税制問題とか、国や自治体もそうなんですが、そういったものも含めて、こういうものがあれば更に起業しやすいということで加えて御意見があれば伺いたいと思います。
#67
○参考人(米倉誠一郎君) 特に目新しいことは、もう言い尽くしたので、ないんですが、一つ言い忘れていたのは、購買はかなり重要だと思うんですね。ですから、国会の何かいろんな資材調達のうちの一〇%は従業員五十人以下の中小企業から買うとか、アメリカでも国防省予算のうちの何%は小さい企業から買うとか、そういう単純に支援をするだけではなくて、その支援の成果物、先ほど売るというのを高柳さんは非常に重要だと言っていたんですが、売上げを助けると。あるいはグリーン購入でもいいんですけれども、非常に環境にいいことをやっている小さな企業があれば率先してそこから購入する、購買するというようなことは、この支援策に加えて新たな市場まで提供するということですから、かなり一貫した支援になるような気がします。
#68
○参考人(田坂広志君) 本当に時間ももうあと残り少ないので、実はそれに少し関連するんですが、直接のお答えになりませんが、大切なことを申し上げます。
 今ネットベンチャーのような方々がなさっていることの本質は何かということの一つの切り口なんですが、アメリカではしばらく前からインターネット革命がもたらしたものは何かと。バイヤー・セントリック・マーケットであると言われているんですね。これは購買者中心市場。つまり、インターネット革命とかEコマース、電子商取引の場というのは、単に商売が非常に効率的にできるようになったということではないんだと。むしろ、その本質というのは情報主権の革命なんだと。今までどう考えても大企業の方が一方的に情報を握っていて、消費者はもう断片的な情報しか得られない。その中で、もう限られた情報の中で仕方なくある選択を迫られていた。それが今、Eコマースが普及することによって消費者の側に情報がどんどん自由に届くようになった。いろんな商品を比較して購入できるという、主権が移りつつあるんだと思うんですね。
 実は、ネットベンチャーの方々、先ほど申し上げたニューミドルマンというビジネスの本質は、その消費者主権の動きを加速するような動きをされています。もちろん、個別にはやっぱり収益を上げたいというようなお気持ちでなさっているベンチャーも当然いらっしゃるんですが、実は深いところで見ると、このネット革命がもたらした市場の構造の根本的な転換、今まで大企業中心であった、大企業に情報主権があったこのマーケットの構造を、生活者、消費者主権のマーケットに変えていくという歴史的な役割を持って今ネットベンチャー、ITベンチャーが活動されていると思います。したがって、その観点からこのベンチャーを支援していくという、その視点が一つは必要だろうと考えております。
 あえて申し上げますが、ネット革命の本質というのはパワーシフトであると。これは、もしかしたら、例えば国と生活者の関係においても、今、自治体などでも、今までは議会の議事録などなかなか手に入らなかったのが今簡単にネットで手に入る。そういう意味では、今まで情報が得られない立場にあった情報弱者の方々が今、正にその主権を握られつつあるんだと。この観点からベンチャーの支援ということもお考えいただければと思います。
 以上です。
#69
○参考人(高柳寛樹君) 支援ということですと、やはり売上げを立てるところ、売るところの支援をお願いしたいというのはありますね。
 それは具体的にどういうことかといいますと、私が起業して一年半のときに、某大手の電話会社さんと仕事をすることがありました。ただ、私どもが起業して一年半という理由で、お仕事できませんでした。それは数百万円の小さな仕事だったんですけれども、できませんでした。それから半年たって、ある著名な方にお手伝いいただいて口を利いていただいて、やっとお取引をすることができたということがあります。動いてみると、何のこっちゃないです。うちの会社が三人でできることは彼らは二十人でやっています。成果物はまるっきり一緒ですね。
 ですから、そういうところで合理性を導き出せるようなサポート、支援をしていただけるとベンチャーは非常に有り難いし、売上げが立つんじゃないかなと思います。
#70
○畑野君枝君 ありがとうございました。
#71
○森ゆうこ君 三人の先生方、大変ありがとうございました。私が一番最後だそうですので。
 質問をしたいことは大体出てしまいましたのであれなんですが、実は私の父が、どちらかといえばベンチャーというんでしょうか、戦後、結構ベンチャーがたくさんいたと思うんですけれども、いろいろな事業を起こしてやってきたんですけれども、この間、話をしていましたら、今のこの社会の状況だと、むしろ面白い、チャンスがたくさんあるというふうに自分は感じるんだけれども、ただ、非常に今の若い人たちがこの状況の中でチャレンジしていくには相当勇気が要るだろうなと。しかも、安定した生活を送ってきたという、そういう経験があるのでなかなか難しいだろうなということを言っておりました。
 最後に、それぞれの参考人に是非、まだ言い足りないところをお聞かせ願いたいんですけれども、先ほどから政治の役目というふうなお話がありましたけれども、そういう意味では、この不確実な社会だけれども、みんなでチャレンジしていこうというふうな、そういう国民の気持ちを守り立てるというか、そういうことを政治が率先してやっていかなきゃいけないんだなと改めて思いましたが、今日のこの調査会、最後に一言ずつもし加えることがありましたら、お願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
#72
○参考人(高柳寛樹君) やはり、失敗を許容できるような構造を作ってほしいというのが一つはあると思います。やっぱり、そうしないと、若い起業家に関して言いますと、失うものがないという面からいうと、何回失敗してもいいやというのはあると思うんですけれども、リスタートが切れないというのは、これは非常に怖いんですね。ですから、そこの部分があえて言うならば一つあると思います。
#73
○参考人(田坂広志君) 確かに、これからしばらく日本という国全体が大変厳しい時代に入っていく、それはもうだれしも火を見るより明らかだと思われていると思います。ただ、若い方々含めて、今多くの国民の方々に申し上げるべきこと、これは私自身が自分自身に言い聞かせることでもありますが、一人の人間が一つの困難な時代を迎えたときに、一体何をそこに残していくのか考えるんですが、やはり振り返ってみれば、皆様もそうだと思いますが、苦しい時代、困難な時代というのは、振り返ってみればその時代に最も人間として成長できたというこの現実があると思うんですね。
 私は、これからの時代、確かに我々が過去に怠ってきたことのとがかもしれませんが、いろいろな困難がある。しかし、それを、過去を振り返ってみてとやかく言うべきもう場面ではない。むしろ、これからやってくるこの困難な時代というのは、それを前向きにくぐり抜けていくことによってやはり我々国民一人一人が大きく成長できるんだと、精神もまたひとつ成熟していけるんだという、その前向きな思いを持たれるべきだと思います。
 そして、あえて政治に申し上げたいのは、やはり先ほどの豊かな国ということともつながりますが、やはり国民一人一人が一人の人間として大きく成長していけるということ、一人の人間として自立し成熟した精神へと向かって深まっていけるということがやはり政治における隠れた大切な役割なんではないかと思います。
 そういう意味では、私自身も大学でもいろんな場で多くの方々にそのメッセージをお伝えしていますが、これからの時代、確かに大変な時代がやってきますが、逆に、我々一人一人が鍛えられる時代、やはり成長できる時代なんだということをやはり政治の方々にもおっしゃっていただきたい、私自身もまたそのことをメッセージとして申し上げ続けたいと思っております。
 以上です。
#74
○参考人(米倉誠一郎君) おっしゃられたとおり、日本人は起業家精神がないどころか、僕は本当にすごいと思うんですね。一八六八年に岩倉具視使節団が欧米に行ったときに、岩倉具視氏はこういう公家結いですよね、すごいはかまをちゃらちゃらと着ていって、ほとんどの欧米人はこんな人間に近代化なんかできるわけがないと思ったと思うんですね。しかし、それから二十二年後の一八九〇年には、日本の綿糸輸出量は輸入を凌駕するんですね。
 当時、日本のテキスタイルというのは最もハイテクなあれですから、日本はテキスタイルについて二十年でキャッチアップして、その後戦争を重ねるんですが、日清戦争でも絶対に起こしてはいけないチャイナとやって、しかもそこで得たお金を、正に米百俵なんですけれども、アジアで一番初めの製鋼一貫製鉄所、八幡製鉄所に全部つぎ込むんですね。それが一九〇一年。それから、日露戦争を経て、戦争に行ったのは不幸な出来事ですが、重化学工業化はできまいといったのを、第一次世界大戦でドイツからの輸入が途絶えたときに、ほとんど自力で重化学工業化を行っていく。
 それで、日本、世界広しといえど原爆を落とされた国というのは日本だけなんですね。しかも、二つも。多くの人はこれでこの息の根は止まったろうと。しかし、あれから自動車、コンピューター、半導体、液晶、全部の分野で返ってきたのはやっぱり日本なんですね。そういう点では物すごいエネルギーを持っている国民だと私は思います。ただ、それが過去の成功体験で、ここのところそういう勇敢にチャレンジするということを忘れていると。ですから、そういう今制度を一杯整えたら、やっぱりそういう気分を高揚させていくということが重要なんですね。
 先ほど購買が非常に重要だと言いましたけれども、皆さん福岡に出張するときはスカイマークに乗っていますか。北海道に行くときはエア・ドゥに乗っていますか。僕は、日本の国会議員が、おれたちは出張するときは、福岡に行くときはスカイマークだと、僕は北海道に行くときは絶対エア・ドゥだと、こういうふうになったらこの国は変わると思うんですよね。ああ、国会議員ですら新しいチャレンジをみんな認めようとしているんだと。あえてJALなんか乗らないと。
 吹野さんという私の先輩がデル・コンピュータという会社をやっているんですね、日本の。デル・コンピュータというのはマイケル・デルという十九歳の大学中退者が作った会社なんですが、この間非常にいいこと言ったのは、米倉君、知っている、デル・コンピュータを作ったのはマイケル・デルじゃないんだぜと言うんですね。えっ、だれなんですかと言ったら、ほかに創立者がいたんですかと言ったら、違うよと、アメリカ人なんだと。
 なぜそういうふうに彼が言ったかというと、日本でいろんなアンケートを取って、おたくのコンピューターどうですかと。使いにくい、サービス良くない、大して価格もまけない、ソフトウエアの変換も悪いと。じゃ新しいコンピューター会社と取引しますかと聞くと、みんなノーと言うんですね。それは今までお付き合いしてきたNEC、富士通、そことずっとやってきたからだと。これじゃ変わらないと言うんですね。安くて良ければ実績があろうがなかろうがいい会社と取引をする、それをやったアメリカ人がいたからデルはできたんだと言うんですね。
 同じように考えてみると、実はホンダとソニーを作ったのはもしかしたらアメリカ人だったかもしれないんですね。あんな敵国、ジャップが作ったものでも安くていいんだから買おうじゃないかと言ったのはやっぱりアメリカ人だったんですね。
 同じように、新しくていいものを作っていたら、正に国会議員あるいは我々学者でもこれはいいじゃないか、面白いじゃないか、やってみようじゃないかという、こういうきっかけが物すごく重要で、そういう点では正に皆さんはシンボライズされた存在ですので、何を使っているんですかと言ったらば、名もない日本の企業のこういうものを使っているんですよ、車は何に乗っているんですか、ベンツじゃなくてプリウスに乗っているんですよ、何か新しいことをやっている、新しいものを使っている、NTTじゃなくてヤフーBB使ってADSLやっているんですよ、こういうことがやっぱり日本を変えていくと思うんですね。
 ですから、シンボライズされた皆さんが率先して新しいことをやっている人たちのバックアップをする、新しいものを使うというようなことをやっていただけると、何かみんなが高揚した気分になってくるような気がいたします。
#75
○理事(内藤正光君) ありがとうございます。
 まだ御質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。
 高柳参考人、田坂参考人及び米倉参考人には、御多用の中、本調査会に御出席いただき、誠にありがとうございます。(拍手)
 本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査の参考にさせていただきます。本調査会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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