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2002/05/07 第154回国会 参議院 参議院会議録情報 第154回国会 法務委員会 第14号
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2002/05/07 第154回国会 参議院

参議院会議録情報 第154回国会 法務委員会 第14号

#1
第154回国会 法務委員会 第14号
平成十四年五月七日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         高野 博師君
    理 事
                市川 一朗君
                千葉 景子君
                日笠 勝之君
                井上 哲士君
    委 員
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                三浦 一水君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                福島 瑞穂君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   参考人
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      岩原 紳作君
       株式会社UFJ
       総合研究所理事
       長
       多摩大学学長   中谷  巌君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会司法制度調査
       会商事経済部会
       部会長      本渡  章君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
 法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
    ─────────────
#2
○委員長(高野博師君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、本日の委員会に東京大学大学院法学政治学研究科教授岩原紳作君、株式会社UFJ総合研究所理事長・多摩大学学長中谷巌君及び弁護士・日本弁護士連合会司法制度調査会商事経済部会部会長本渡章君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(高野博師君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(高野博師君) 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、まず岩原参考人、中谷参考人、本渡参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、岩原参考人からお願いいたします。岩原参考人。
#5
○参考人(岩原紳作君) 本日は、商法改正法案の審議にお招きいただき、大変光栄に存じております。商法研究者として、また本法案要綱の法制審議会におきます審議に加わった者として、本法案につき意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
 法制審議会におきまして、本法案の基の要綱の検討を始めましたときは、私どもの最大の問題関心は、我が国企業の経営の在り方、いわゆるコーポレートガバナンスの改革が必要ではないか、改革によって我が国企業の競争力を強化しない限り、我が国経済の活性化はないのではないかということでございました。構造改革が言われておりますときに、どちらかといいますと政治的には公的部門の改革が取り上げられておりますが、我が国経済の活性化を図るために何よりも必要なのは民間企業のコーポレートガバナンスの構造改革ではないか、我が国企業の経営が言わば官僚化し硬直化したことが企業の活力を失わせ、経済の回復を困難にしているのではないかという問題関心から作業を始めたわけでございます。
 我が国では、なお株式のいわゆる持ち合いというものが残りまして、取締役は株主の代表というよりは従業員の中の最も出世した人たちであって、言わば取締役になるということが出世の目標になっているのが現実であります。そのため、取締役の数が膨れ上がって、大企業ですと三十人から五十人というようなことになっておりまして、取締役会は本当に経営の意思決定のできるような組織ではなくなっているという問題がございます。
 しかも、取締役はほとんどが従業員の中から社長が引き上げて指名した人でありまして、代表取締役社長の指揮命令を受ける使用人兼務取締役や業務担当取締役の方が大部分であります。社長の後任は、あるいは次期取締役は現在の社長が決めるのが現実であります。また、取締役の報酬も社長によって決められるのが通常であります。そのような取締役でもって大不況の言わば時代に対応する経営革新や柔軟な意思決定ができるとは考えにくいところがあります。そこから一方では、常務会なり経営会議で実質的な意思決定が行われるなど取締役会の空洞化が進み、また総会屋への利益供与ですとか粉飾決算といった言わば会社の私物化の問題も表面化しているところであります。
 今までの商法改正は、日本企業の経済的なパフォーマンスは良いということを前提に、そういった不祥事の発生を抑制するということを主に念頭に置いて改正を行ってまいりました。したがって、会計監査及び違法性監査のみを担当する監査役制度の強化が主に図られてきたわけであります。
 しかし、今や我が国の企業のパフォーマンスはかなり落ちておりまして、我が国企業経営の意思決定の質に疑問が付いているわけであります。現在の経営体制、取締役会の在り方で本当に果断な意思決定ができ、そしてグローバルな競争の中で勝ち抜いていけるのかどうかということが問題になっていると思われます。
 今回の商法改正法案は、正に会社の経営の意思決定を行う取締役会制度の改革を目指したものでございます。そこで、法案におきましては、大会社につき各会社が選択によって委員会等設置会社となり、いわゆるアメリカでモニタリングモデルと呼ばれておりますアメリカ型のコーポレートガバナンスを取ることができるようにしたものでございます。
 すなわち、アメリカでも会社業務の実際の運営が取締役会の手を離れてCEOですとかCFOなどのいわゆるオフィサー、日本では執行役員と呼ばれる人たちの手に移ったにもかかわらず、執行役員が株主や取締役会の十分な監督を受けることなく不適切な経営を行っているということが問題になったわけであります。そこで、取締役会は会社の経営にむしろ当たる機関ではなく、実際に経営に当たるのは執行役員であるということを正面から認め、取締役会は執行役員を選任し、解任し、そして監督する機関であるとして、業務執行機関である執行役員と監督機関である取締役会を明確に分離する、業務執行と監督の分離を明確にするという考えがアメリカでは取られたわけであります。
 具体的には、取締役会の過半数を社外取締役で構成し、社外取締役のみから成る監査委員会が業務の監査を行い、それに基づいて執行役員の業績を評価し、取締役会が執行役の、役員の人事を行うという体制になっております。取締役の人事を執行役員から実質的に独立させるということを図るために、社外取締役が過半数を占める指名委員会で取締役候補者を決めるということになっております。
 このようなアメリカでモニタリングモデルと呼ばれるような経営体制は、一九九〇年代に業績の悪い大会社のCEOが社外取締役を中心とする取締役会に解任されるといったことが相次いだことから非常に高い評価を得るようになりまして、また九〇年代にアメリカ企業が著しい業績回復を実現したこともあって、国際的に高い評価を得るに至ったわけであります。このモデルがイギリスその他の国々に広がっております。
 そこで、今回の商法改正法案におきましても、法案の商法特例法二十一条の五以下に規定しております委員会等設置会社に関する特例におきまして、このアメリカのモニタリングモデルに倣って規定したものでございます。すなわち、業務執行は基本的に取締役会が選任した執行役が行うこととされまして、取締役会によって選任され、過半数が社外取締役で取締役によって構成される委員会がこの執行役のモニタリングに当たるわけであります。
 すなわち、従来の監査役に代わって過半数の社外取締役及びそれに準じる者によって構成される監査委員会が会計監査、業務監査を行い、また指名委員会が取締役候補者の決定を行い、報酬委員会が執行役及び取締役の報酬の決定に当たるわけであります。また、利益処分権限が株主総会から取締役会に移される代わりに、取締役の任期を一年に短縮することによって取締役に対する株主の監督を確保するようにしております。
 また、法案におきましては、この委員会等設置会社以外の従来型のコーポレートガバナンスを取る会社につきましても、ガバナンスの向上を図っております。そのような会社につきましても、社外取締役を最低一人は設けるということを当初の案では予定していたわけでありますが、これは反対意見などもあって撤回されましたが、しかしなお法案の商法特例法一条の三以下におきまして、社外取締役が一人以上いる取締役会は、その下に重要財産委員会を設け、重要財産の処分等をこれにゆだねることができるとしまして、言わば社外取締役を加えて監督機能を強化した会社については、取締役会の意思決定権限の一部の委任を認めることによって会社経営の効率化を図っております。
 これらのガバナンスに関する改正が主な改正でありますが、それ以外の点といたしましては、株主総会の特別決議や社債権者集会における定足数要件の緩和があります。これは、株式持ち合い体制が揺らいできたことや外国人株主の増加などによって定足数の確保が困難になっているということに基づくもので、言わばやむを得ない措置であります。
 また、総株主が同意した場合の株主総会招集手続、あるいは決議方法の簡素化などの合理化が図られております。
 ガバナンス関連以外で重要なものといたしましては、第一に、数種の株式制度の多様化を更に進めまして、定款に定めれば種類株主総会決議で一定数の取締役又は監査役を選任、解任することを可能にしております。これは、ベンチャー企業やあるいはジョイントベンチャーなどにおきましてガバナンスの在り方の設計をより自由なものにするものでありまして、それによってベンチャー企業設立などを容易にしようとしたものであります。
 また、株券失効制度を設けて、株券を喪失したときの処理を、従来のように裁判所に行って公示催告の手続をしてもらわなくても、発行会社に株券喪失登録をすれば済むようにして合理化を図っております。
 同じように、手続の合理化を図って、実務、特に会社法務の実務のニーズにこたえようとするものに、所在不明株主の株式売却制度の導入等がございます。
 会社の計算開示関係につきましては、資産評価や配当可能限度など計算に関する規定を削除し、法務省令に委任することを法案の内容としております。これは、会計ルールの変更に柔軟かつスピーディーに対応できるようにしようとしたものでございます。また、連結計算書類制度が導入されるということになっております。このほか、外国会社の営業所設置義務を撤廃して外国会社の負担を軽くするといったことも法案の内容になっております。
 以上、法案の内容を概観いたしましたが、この法案のポイントを要約すれば、我が国企業の経営の効率化、そして競争力強化のために、言わばアメリカ型の経営システムの導入を可能にすることに最大のポイントがあると思われます。もちろん、最近のアメリカのエンロン事件に見られますように、アメリカ型の経営システムが即ベストであるというものではございませんし、また従来型の我が国の経営システムが即良くないものだというものでもございません。いずれも適切な運用がなされるように実務的な努力が必要ですし、制度的な改善を積み重ねていく必要があります。しかし、本法案によって従来型と異なる言わばアメリカ型の経営システムを導入することを可能にすることは、我が国の企業に経営改革の手段とチャンスを与えることになるものであると考えております。また、従来型の経営の企業と新しいアメリカ型の経営の企業が切磋琢磨し競争するようになることによって、我が国企業全体の経営に刺激を与え、そして革新をもたらすことになるのではないかと考えております。そのような意味で、本法案の成立を強く願うものでございます。
 以上でございます。
#6
○委員長(高野博師君) ありがとうございました。
 次に、中谷参考人にお願いいたします。中谷参考人。
#7
○参考人(中谷巌君) 中谷でございます。
 今、岩原委員から今回の商法改正の要点を非常に詳しく御説明いただきましたので、私は、経済学を研究してきた立場から、コーポレートガバナンスの強化、改革というのはなぜ日本で必要とされているのかということを中心にお話をさせていただきたいと思います。
 基本的に、現代の資本主義社会におきましては、所有と経営が分離しているというのが通常の姿であります。つまり、企業のオーナーとそれを経営をする、その執行をする人間の間に大きな情報の断絶が発生しておりまして、そのために、株主、所有者が望む本来の経営の姿から、場合によっては著しく乖離した経営が行われるということがしばしば見られるようになりました。
 例を挙げますと、例えば利益を無視してシェア競争に走る、あるいは成長至上主義でどんどん拡大することのみを目的とするような企業行動、例えばその結果、不要な部門、セクターに資本や労働が集中してしまって、効率な資本や労働の配置ができないと、こういうことが現実になってきたように思います。
 そのために、恐らくその結果だと思いますけれども、日本の大企業、公開企業の資本に対する収益率、収益性というものは、この十数年の間に著しく低下しております。例えば、よく言われております株主資本に対する利益率、ROEと通常呼ばれておりますが、この統計指標を見てみましても、日本の公開大企業におきましては、近時におきましては二%若しくは三%という極めて低い水準に低下しております。しかし、同じような指標を欧米企業に求めますと、アメリカにおいては十数%、ヨーロッパにおきましても一〇%程度の収益率というものが確保されております。
 つまり、出資者の立場を無視した経営を続けた結果、売上高あるいは成長というものを重視し過ぎた結果でもありますけれども、資本に対するリターンという点で非常に大きなマイナスの効果が出てしまったというのが今日の日本企業の低迷の一つの原因であろうというふうに考えられるわけであります。
 従来におきましては、日本におきましてメーンバンク制というのがございまして、間接金融中心の時代におきましては、こういったメーンバンクが企業に対して一定のモニターの役割を果たしていたというふうに考えられております。企業は銀行からの借入金に頼らないと経営拡大ができませんので、銀行はそういったバーゲニングパワーの強さというものを利用いたしまして、企業に対して一定の影響力を持っておりました。したがって、企業の経営がある程度以上悪化いたしますと、融資の打切りを武器にする、あるいは役員を派遣する、こういったことである程度以上経営が悪化するということに対して一つの歯止めを掛けていたと。そういう意味で、メーンバンク制というものが機能しておりました一九八〇年代半ばぐらいまでにおきましては、それなりに日本企業もガバナンスというものが存在したということが言えると思います。
 しかし、御存じのように、バブルの崩壊、不良債権問題の発生等々によりまして、我が国における系列あるいはメーンバンクシステムというものは大きく崩れ始めておりまして、もはやメーンバンクによる大企業に対するモニタリング機能というのはかつての姿を維持し得ない状態にある。つまり、現時点におきましては、多くの大企業においては、だれもその企業の経営を外からチェックする、そういう役割を担う機関若しくは個人が存在しないという極めていびつな状態が現出しているということが言えると思います。その結果、日本企業の収益率というものも大幅に落ちてきました。また、数々の不祥事も発生するようになったというふうに考えられます。
 そういう中で、一方、経済は急速にグローバル化いたしまして、日本の大企業の中にも外国人株主の比率というものはどんどん高まっております。そういったところで、日本企業が持っておりますガバナンスの構造、先ほど岩原委員からも御指摘ありましたけれども、要するに社内で育った経営者が社内の人間だけで経営を行う、それに対して形式的には監査役制度のようなものがございますけれども、しかし残念ながら現実にはそれはほとんど機能していないというふうに考えられます。こういうふうに、インサイダーのみによる経営の私物化と言いますと経営者は怒るかもしれませんけれども、一部にそういった経営の私物化というようなものが起こると。いったんその会社のトップ、社長、経営者になってしまいますと、そのデシジョンに対して異議を唱えることは必ずしも容易ではないと。そういう状態に対しまして、こういったコーポレートガバナンスの改革の必要性というものが生まれてきているのではないかというふうに思うわけであります。
 特に、こういう資本市場そのものもグローバル化してまいりました。収益率が高いところに世界の資本は流れていくということであります。日本企業の著しい、国際的に見まして著しい低収益体質というものが続きますと、日本から外国に対して資本は流出していきます。海外からの資本は余り低収益体質の日本企業には入ってまいりません。こういうことがこれからますます起こってくる可能性があるということ。
 それから、外国人の株主が増えてきまして、おとなしい日本の株主と違いまして、彼らは企業の経営の中身、情報開示、透明性の確保あるいはアカウンタビリティーというものを要求するようになってきておりますけれども、現時点におきます日本の商法の枠の中におきましては、企業にそのようなことを強制する力はないというふうに考えられます。
 そういう点にかんがみまして、今回の商法改正の方向性というものに対しては私も基本的に賛成したいというふうに思っております。
 ただ、今回の商法改正の方向性は私は基本的には正しいと思いますけれども、従来型のガバナンスをそのまま温存するという選択肢も残されております。そのため、日本の大企業経営者の意向次第によりましては、大多数の日本企業のガバナンスが従来と余り変わらない、改善できないと、こういう可能性が残されているというふうに思います。
 もちろん、アメリカ企業と日本企業では企業に対する考え方等々、かなりの差異、相違がございますので、そういった違いというものを無視して急速にすべてをアメリカ型に持っていくということがいいというふうには私も考えませんけれども、少なくとも長期的に日本の大企業、公開企業のコーポレートガバナンスがどういう方向に行くべきかということを指し示すような将来に向けての方向性というものを何らかの形で今回の商法改正の中で担保できないのかという気はいたしております。
 岩原委員も御指摘ありましたけれども、エンロンの事件に見られますように、アメリカ型のコーポレートガバナンスが完全でないことは明らかであります。また、日本型のガバナンス構造の中でも、例えばトヨタ自動車の例に見られますように、非常にすばらしい経営を実践している日本企業も現存しております。こういうふうに考えますと、だからアメリカ型のコーポレートガバナンスを日本に導入する必要はないんじゃないかと、こういう議論もあり得るかなとは思いますけれども、しかしこの議論については私は注意を要すると思っております。
 というのは、例えば法律というものがあったとしても、それをかいくぐっていろんな違法行為をする、すき間を縫っていろんなことを工夫して法律をないがしろにするということはいつの場合も可能であります。一方、法律がろくになくても、非常に善行を行う人も世の中にはいるわけであります。つまり、法律というものは万能ではない。法律があっても悪いことをする人はするし、なくてもいいことをする人はいると。だからといって法律が不要かというと、そんなことは絶対ないということでありまして、今回のコーポレートガバナンスの方向性を変えていくという商法改正の議論というものは、私は絶対必要だと。
 そういうことで、そういった商法が改正されたとしても、今後ともこういったコーポレートガバナンスに絡むいろんな問題というのは出てくることは避けられないと私は思いますが、やはり法律があって、それが一つの指針となってそれを守るという、そういう高い倫理観というものがあるかどうかということがこの法律の有効性というものを決めていくわけでありまして、そういう意味で、できるだけ人々の行動に対して良い方向を指し示すことができるような商法改正というものをこれからも志向し続ける必要があるというふうに思っているわけであります。
 私自身、幾つかの会社に関係しております。もっとも、私が国立大学の教授であったときにそういう話がございまして、国立大学の人間が民間企業の社外取締役をやってはいけないという、そういう法律に触れまして私は国立大学を辞職せざるを得なかったわけであります。こういった商法改正をやっても、社外取締役になるようなそういう人材というのは日本にいるのかどうかということで、反対なさる方はそういう人材はいないというふうに言われるわけでありますけれども、そういう制度がなかったからいないのではないかと私は思います。こういう制度ができることによって社外取締役というものの社会的な存在意義というものが認められるようになれば、当然それにふさわしい見識を持った方々というものが次々に生まれてくる、そういうふうに考えるべきではないかと思います。国立大学もやがて独立法人化されまして、恐らくその中ではそういった社外取締役として適切な人材というものも生まれてくるんではないかというふうに思います。
 いずれにいたしましても、今回の商法改正のみで日本企業を取り巻く様々なガバナンスの問題すべてが解決するというふうには私は考えません。しかし、日本企業がグローバル経済の中で激烈な競争に直面していると、そういう中で本当に効率的な経営というものを行っていくと、そういう上でコーポレートガバナンスの構造的な改革というものが強力に推し進められる必要があるということについては、私も岩原委員と全く同意見でございます。
 以上、陳述させていただきました。
#8
○委員長(高野博師君) ありがとうございました。
 次に、本渡参考人にお願いいたします。本渡参考人。
#9
○参考人(本渡章君) 弁護士の本渡でございます。
 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
 それでは、私は、岩原参考人及び中谷参考人の高邁な意見陳述の後に、個別にちょっと日弁連意見書で書いたところを踏まえながらお話しさせていただきたいと思います。
 まず、委員会等設置会社を作ろうという法案になっておりまして、それについては企業の競争力を強化したいとか効率的にするとかいうことで、やはり会社というのは利益を上げないといけないものですから、それに資するためには会社の統治を、コーポレートガバナンスをどのようにすればいいのか、そういう観点から委員会等設置会社、要するにアメリカ型の統治機構を持ったものを作ることには賛成しております。
 それで、基本的には今回の商法改正案については一定の評価をしておるわけですが、一つ、細かい点ですけれども、まず日弁連意見書で、監査委員会に常勤の監査委員を置かない場合、現実に業務監査の実効性が上がるのか疑問があることから、常勤一名を義務付けるべきであるという意見を述べさせていただきました。
 これは何が言いたいかといいますと、監査委員会、これも一応、監査委員は取締役であって妥当性監査もやるんだということでありますけれども、ただ、何というか、この委員会等設置会社の議論を聞いておりますと、監査委員がただ取締役会に出席し、年に、年にというか月に一回程度ですかね、多くて、あと監査委員会にも当然出席はするでしょうが、その程度のことで実際に監査ができるのかどうか、そこら辺が少々疑問だと思います。
 ということは何かといいますと、大体、監査というのはただ聞けばいいというものじゃなくて、自分から出ていって、それでいろいろ質問をしながらやっていかないと、大体耳障りの悪いことというのは余り話題にならないことが多いものですから、現在行われている監査役会においても常勤監査役がおりまして、それで大体、支店とか各部署に聴きに行っていろいろ調査をしながらやっているというのが実際で、そういうことをやって初めて監査の実が上がるんじゃないかというような気がいたしております。ただ、何というんですか、監査役スタッフを多くして、そこから上がってきたものをただ聞いて、それでちゃんと監査ができるかと、ちゃんと執行役又は代表取締役の行為について監視がきちっとできるのかというと、少々疑問があるなと。
 そういうことから、一応この法律案におきましても、「監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして法務省令で定める事項」というものがあって、内部監査システムは法務省令で一応定めるということになっていると思いますので、でき得ればその監査システム、要するに内部監査システムを作る場合に、監査委員のうち一名以上は常勤で、ちゃんと各支店及び関係先を回って聴かないといけないというような監査システムを作るようなことにしていただきたいなということが弁護士会、弁護士会というか日弁連で書いた意見書の趣旨でございます。
 やはり、コーポレートガバナンスというのは、要するに会社というのはお金を、要するに利益を追求するものですから効率的にやらないといけない、競争力も高めないといけない、活性化もしないといけない。これは当然のことでありまして、それがないといけませんが、しかし不祥事が起これば、これはもう、ちょっと効率的にやったとかそんなような問題じゃなくて、社会的に悪影響というのはかなり大きいものですから、やはり不祥事防止という観点からこういう監査委員の選任というか、そういうところもかなり気を遣わないといけないと考えております。
 次に、第二点といたしましては連結計算書類の点なんですが、連結計算書類を今度、大会社については作成しないといけないということになっております。これは法律案でそうなっておりますが、これは企業情報をより積極的に開示するということから非常に必要なことですし、また実際、大会社というのはもう単独の計算書類だけでは実態は把握できない状況になっていると思います。というのは、もう子会社、関連会社が数十社、多ければ何百社もあるような会社が多いわけですね。そうなると、やはり連結計算書類がなければ実態は把握できないと。したがって、企業情報を積極的に開示するためには連結計算書類がどうしても必要でございます。したがって、今回、連結計算書類を作成しないといけないということに法律案でなったことは大賛成でございます。
 ただ一点、連結計算書類につきましては、連結監査報告書を会計監査人及び監査役、まあ監査役会又は監査委員会で監査しないといけないことになっております。しかし、この法律案を見ますと、連結計算書類は取締役又は執行役が作りまして、それを、何というんですか、定時総会の招集通知に添付するということになっておりますが、しかし連結監査報告書につきましては総会の場で報告すればいいという法律になっております。しかし、やはり計算書類ですから、監査を経た計算書類でなければ完全ではありません。したがって、でき得ればですけれども、招集通知に連結計算書類と一緒に連結監査報告書も添付させるべきであろうと、これが理想でございます。
 しかし、それができないとしても、まあ事務手続上できないかもしれませんが、少なくともそういう場合には、総会が終わった後に株主に対して連結監査報告書を事後的に送付するとか、少なくとも不適法意見あるいは相当でない旨の意見が提出された場合に限ってはその旨を通知するというような制度を付加する必要があろうかと考えております。そうすることによって、やはり監査を経た連結計算書類が株主の元に届くということになり、正確性が担保されるんじゃないかと考えております。
 次に、第三番目で、これはかなり弁護士の間においても意見の違いがありまして両論があったわけですが、計算関係規定の省令委任につきましてやはり反対ということになっております。
 これはどういう意味かと申しますと、法務省令に計算関係書類をすべて、会社の財産とかそういう評価の基準をすべて法務省令に委任しちゃおうということで、それ自体はすごくそのときそのときの状況に応じて、グローバルスタンダードというんですか、そういうようなものに合わせて省令を簡単に改正できるという点は便利であると思います。しかし、便利だけでは困るので、少なくとも、この会計基準を法務省令に委任することによって配当限度額及び中間配当限度額の各算定についても法務省令によって定められてしまうことになると、これは根本的な株主権の一つである利益配当の内容について商法本則から導き得ない結果となるので問題だということで、少なくとも基本的なこと、会計基準だとか、あと利益配当限度額の算定については商法本則に規定してもらいたいということがかなり強い意見としてあります。
 それで、それは何でこういうことを言うかと申しますと、省令というのは簡単に改正できて便利であるということは、裏返しにすると、省令を改正するのは簡単だということは、少なくとも弁護士にとってはどういう改正がなされたかがよく分からない、知らないうちに改正になっちゃったというような事態もありますので、できれば法律で改正することにすれば、今回のように、まあ参考人として出るかどうかは別として、弁護士会においても一応妥当かどうかについて、何というんですか、検討ができますし、ああ、こういう改正になるのかということが分かりますのでいいのかなと。
 それで、あと財産の評価。会社というのは財産をどう評価するかで利益が出たり出なかったり、又はちょっとした改正でも計算が違ってくれば今まで黒字になるだろうと思っていたのが大赤字になっちゃうとかいうこともあるわけで、会社にとってはかなり大きな問題だと思います。したがって、商法改正も去年三件ですか、改正があったように、大体一年ぐらいたてば改正はできるんじゃないかと。したがって、これはだからもう絶対、今回の法律は駄目だというわけじゃないですが、できれば商法本則できちっと規定してもらいたいなという意見が弁護士会の会でも少々強かったと。省令委任でいいんだという意見もありますが、そういう意見もあったということでございます。
 以上でございます。
#10
○委員長(高野博師君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○柏村武昭君 参考人の皆様、こんにちは、御苦労さまでございます。自由民主党の柏村武昭と申します。
 今日は、大変三人の先生方、勉強になる話をありがとうございます。本日は、商法等一部改正法案等に関連して皆様に幾つか質問をさせていただきたいと存じます。
 私は、前回の法務委員会におきまして、今回の改正法案のうち、主に委員会等設置会社制度に関連した論点を中心に、会社の機関と計算、そして株式の関係の三分野にわたっていろいろと質問をさせていただきました。とりわけ、今回の改正の大きな柱である委員会等設置会社制度につきましては大きく時間を割いたのでございますが、本日は法曹界からは本渡先生、学界からは岩原先生がお見えになっているほか、学界のみならず、我が国有数の国際的企業の社外取締役として経営実務の最前線で御活躍中の中谷先生がお越しになっておられます。そこで、本日はこの貴重な機会を生かしまして、参考人の先生方より大いに学ばせていただくつもりで幾つかの論点につきお伺い申し上げたいと思います。先生方、どうぞよろしくお願いします。
 まず、中谷先生にお伺いしたいんですが、先生が一九九九年にソニーの社外取締役に御就任されたときに、ちまたでは専ら国立大学の教官と営利企業の役員との兼任が禁止されている不合理を指摘することにのみ議論が集中していたかのようなそういう記憶があるんですが、そのときから早いものでもう三年がたつわけでございます。この三年間を振り返られて、社外取締役として、外部から企業経営を監督するということについてどのような感想をお持ちになっていらっしゃるでしょうか、またどのような発見があったんでしょうか。中谷先生の御専門である経済的な観点に限らず、率直なところをお聞かせいただけましたら幸いでございます。
#12
○参考人(中谷巌君) 今の御質問でございます、確かに社外の人間、その企業の経営について詳しい情報を持たない人間が大きな企業の社外取締役になるということが一体どの程度役に立つのかという議論は、社外取締役制度の是非をめぐって常に出される論点かと思います。
 ただし、この社外取締役の役割といたしまして、やはりその取締役会の中で大きな投資決定を例えば行うというようなときに、社内の人間だけで行う場合と私のような社外の独立取締役が入って行う場合とでは、かなり質的な差があるんじゃないかということを実感しております。
 といいますのは、多くの会社におきましては、取締役会に上がってくるときに執行役員だけによる例えば経営会議というものがございまして、そこで主要な投資決定について十分議論を積み重ねてきているわけであります。ただし、その社内の人間だけでやっていると見えない論点、例えばある事業から撤退すべきかどうかというような議論があったときに、社内の人間はどうしても温情的になると申しましょうか、つまり自分の友達があそこの事業部長をやっているとか、あるいは自分を引き立ててくれた先輩、OBがその事業を作ったとか、いろんな社内的な事情、私はこれを組織の論理と呼んでおりますけれども、こういった組織の論理によって、資本の効率性という観点から見ると明らかに早期に撤退してより将来性のある部門に経営資源を集中した方がいいと思われる場合でも、社内だけで議論しておるとどうしても撤退ということに対して甘くなるというケースが多々あるように私は実感しております。
 そういうことで、社内の人間だけで議論し上がってきた案件につきまして、外から見て本当にそういったデシジョンというものが正しいデシジョン、効率的なデシジョンであるかどうかということに対して、こちらは場合によってはかなり異なった観点からの意見を述べることはしばしばあります。逆に言いますと、そういうことが予想されるがゆえに、社内で議論されるいろんな問題についても社外の人間がオーケーをしてくれるかどうかということが前提になります。つまり、ロジカルに積み重ねて、社内の論理だけでなあなあでこれでいいだろうというようなところで止まらないで、これをきちっと外部にも説明するアカウンタビリティーというものが確保できるかどうかということが社内の社長さんあるいはCEOといった立場の方々に非常に強力な一つの牽制力として働いているなということをしばしば感じます。
 ソニーという会社では、アメリカ人の社外取締役あるいはヨーロッパからの社外取締役なんかがおりまして、ある意味では私以上にもっと強烈に社外から見た論理というものを展開される方が何人かおられますので、そういう場合と、全くそういう人間がいない、社内だけでやっている場合とでは、いろんなところで意思決定に相違が出てくるんじゃないか。それがもしいい方向に向いているとすれば、やはり社外のチェック機能というものを持った方がいいという結論になるんじゃないかというふうに思っております。それは私の実感でございます。
#13
○柏村武昭君 ありがとうございました。
 続きまして中谷先生にお伺いするんですが、先生はソニーのほかにも急成長著しいことで有名なアスクルという会社の社外取締役に御就任されております。片や世界的に名高い電機メーカー、片や新興の若々しい流通企業、タイプの異なる二つの企業の経営に携わっていらっしゃるわけですが、またお若いころには日産自動車にもいらした、そういういきさつから、これまでに国内外の様々な企業とその経営というものを実際にごらんになってこられたと思います。
 その御経験から、今のような元気のない日本経済をいかにして回復させるかという、これに盛んに御発言を今までされておりますが、国際的な競争に打ちかっていくことのできる活力に満ち満ちたたくましい企業を増やしていくために、またそうした企業を更に発展させていくような経営を行っていくためには今後、法制面でどのような対応が必要であるとお考えでしょうか。商法に限りません、どうぞお聞かせください。
#14
○参考人(中谷巌君) 大変難しい御質問でございますけれども、本日問題になっております、要するにコーポレートガバナンスの問題というのは、私は非常に大きな役割を持っているだろうというふうに感じております。といいますのは、やはり社内の論理だけでいろんなデシジョンメーキングをしておりますとどうしてもゆがみが発生してきていると。言ってみれば、株主からのチェックが全然利かないというようなそういうガバナンスの状態が続きますと、どうしても経営者は資本の効率性あるいは雇用している労働の効率性というものから離れて、もっと居心地のいい共同体としての企業というものに安住したくなるという傾向が、いろんなところで私、経験しておりますけれども、そういう傾向というものはどうしても払拭できないと。
 日産自動車というお言葉がございました。残念ながら、あそこはカルロス・ゴーンさんが来てから急激に業績を回復しておりますが、正にあの事例に見えますように、やっぱりコーポレートガバナンスというものが回復しただけで日本企業というのはあれだけ元気になり得るんだということですね。
 それまでは、本当に経営者がいたんですけれども、それぞれの事業をやっている人たちが何かをやろうとするとみんな反対だということで、それぞれの事業部のエゴというものを丸出しにしてやるものですから、戦略的な決定ができなかった。これは、ゴーンさんという人が来て後ろにルノーという資本が付いて、それで強力にある一定の目的に向かって進むということになった途端に、確かに一時的にレイオフ等々で社会的な問題を惹起させたことはさせたんですが、しかし長期的には、日産自動車というものが競争力を回復することによって、かえって雇用問題等々についても逆にプラスになってきているというふうに私、認識しておりまして、そういう意味では、やっぱりコーポレートガバナンスの構造というものをどうやって本当の意味で変えていくのかということが非常に大きな意味を持っているというふうに思います。
#15
○柏村武昭君 ありがとうございました。
 次に、岩原先生にお伺いしたいんですが、平成の時代に入りましてから商法の改正が度々行われてまいりまして、この背景には情報化あるいはIT化の流れに応じた法整備を求める経済界からの強い要請があったと思います。今回の改正法案における株主総会手続の簡素化あるいは株券失効制度などもそうしたものの一つであると思うんですが、経済的な効率を追求する一方で、株主の権利保護の面で心配な点はないのか、少々気になるところでございます。いつも熱い議論が交わされておりますが、こうした租税政策以前に大事なことは、株主であること、また株主となることに魅力を感じさせるような仕組みを作ることではないかと思います。
 そういう意味で、度重なる改正を経た商法における株主の地位や権利保護、こういった現状につきまして岩原先生はどのように評価されていらっしゃるんでしょうか、お聞かせ願います。
#16
○参考人(岩原紳作君) お答えさせていただきます。
 ただいま柏村先生御指摘のとおり、株主にとって魅力のある会社になっていくことがその会社を強くし、正に中谷参考人がおっしゃいましたように、競争力も強めていくということになると思います。度々商法改正が行われまして、そのときに、確かに株主の権利を充実させるということがスローガンとしては言われるわけなんですけれども、中には、スローガンはそうでありながら実質は必ずしも株主の利益に沿ったような法改正の主張でないものがいろいろ見られることは事実であります。
 確かに一面、余りに株主の権利を表面的に強くし過ぎると会社の効率を落とすというようなことも中にはありますけれども、やはり長い目で見れば、株主の例えば知る権利を強くしたり、あるいは違法な行為を行った取締役に対する株主からの責任追及などをやりやすくする方が、長い目で見れば正に、さっき出たように、経営者の言わば私物化というものを防ぎ、株主そして市場からのモニタリングが働くようになって会社を強くしていくというふうに考えますので、私は長い目で見て、むしろある意味で経営者に厳しい株主を、力を充実するような法改正の方が会社にとってもいいし、経営者にとってもいいんじゃないかというふうに考えております。
 その意味では、今まで、最近の改正の中で、確かにプラスになる改正もありますが、中には少し問題のあるようなものもあったのではないかというふうに考えております。
#17
○柏村武昭君 続きましてお伺いしたいんですが、商法のIT化に関連しましては、バーチャル役員会でありますとかインターネット株主総会でありますとか、これまでにない新しい試みがなされているようですが、このようなITを活用した新しい仕組みを導入することについてはどのようにお考えでしょうか。
 例えば、これは海外の話ですが、先月末、フランスの総合メディアグループであるビベンディ社の株主総会では、無線を使った電子投票システムが外部からの不正電波によって妨害された。この背景には経営陣の内紛があったとも言われ、なかなか興味深いんですが、こうした電子化あるいはIT化を進めるに当たっては、それらの技術の悪用に対する備えというものも欠かせないと思うんですが、そうした面にも触れていただきながらお聞かせ願いたいんですが、いかがですか、岩原参考人。
#18
○参考人(岩原紳作君) 確かに、新しいインターネットなどによって技術的に株主総会等をより株主が参加しやすいものにするといったような効果はあるわけですが、同時に、おっしゃる、御指摘のようなマイナス面も出てくることは確かでございまして、フランスの事件につきましては、新聞報道などで見ただけでございますので詳しいことは私にはちょっと分からないんですけれども、確かにそういった悪用が行われる可能性はあり得ます。
 そういう場合、じゃ、どうやって対応したらいいか。
 一つは、当然のことながら、ITを利用するときのセキュリティーを高めることが何よりも重要でありまして、電子署名その他の手段を使ってなるべく安全なシステムを作ることが第一であります。ただ、それでもなおそれをくぐり抜けてそういった不正行為が行われたときは、正に、先ほど柏村先生御指摘のように、株主の利益を守ることを第一に法制的に対応するべきだと。
 そういう形で株主の意思がきちんと反映されないような株主総会であれば、それは当然、株主総会の効力は否定されざるを得ないと思いますし、そういうことが必要なのではないかというふうに考えております。
#19
○柏村武昭君 続きまして、日弁連の本渡先生にお伺いいたします。
 最近は雪印事件とかあるいは全農事件といった有名企業による反社会的な不祥事が立て続けに明らかになっておりますが、これら一連の事件では、これまでと違って責任者の辞任だけでは事が済まされず、最終的には企業そのものが解体を余儀なくされるに至りました。
 こうしたことが起こる背景には、企業の法遵守の精神といいますか、法を守る心構えが全く欠如していた、そのような指摘ができるんじゃないかと思うんですが、そういった観点から、これらの企業経営には外部の経営専門家としての社外取締役とともに、外部の法律専門家としての弁護士の役割というものが大変重要になってくるんではないかと私は思います。
 この点、最近はコンプライアンスの問題として盛んに議論されておりますけれども、日弁連を代表して、あるいは一法律家として本渡先生はコンプライアンスの問題についてどのようにお考えでいらっしゃるんでしょうか。
 また、連結計算書類制度との絡みでも、アメリカのエンロン事件が明るみに出たことで企業会計に対する不信感というものが国内外で広まってきたように思いますが、こうした企業会計に関する情報開示において法律家が果たすべき役割についてちょっと見解を聞きたいんですが、いかがでございましょうか。
#20
○参考人(本渡章君) お答えいたします。
 まず、コンプライアンスの問題につきまして考えておるところは、まず会社というのはもちろん利益を追求する必要があります。しかし、その利益はやはり正当な営業活動によって正当な利益を追求するんだということですね。そして、会社は、会社と取締役との間は委任関係にあります。それで、その委任というのは、委任の本旨に従って職務を執行しないといけないわけですが、委任の本旨というのは何かというと、それは会社の正当な営業活動によって正当な利益を得ることが委任の本旨であって、違法行為をして違法な利益を得ることが会社から委任されているわけではないということを、まず一生懸命会社の経営者及び従業員の方たちにお話をする必要があるんじゃないかと。まず、そういう基本的な倫理観を話さないといけない。
 ですから、この「監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして法務省令で定める事項」ということがありまして、内部の監査システムだとか統制システムなんかを作るについても、そういう、まず精神的な面で月に一回とか年に数回とか、そういう話を倫理、いや、弁護士会においても倫理研修なんということもやっていまして、五年に一度ぐらいは倫理研修でいろいろやらないといけない。弁護士倫理はどんなものかというのを議論していますが、そういうことを会社においてもやるようなシステムを作るということが必要じゃないかなと思っております。もちろん、システムを作って形でやっていかないといけないと思いますが、まず精神と形ですね。
 あと、エンロンで何か企業会計について不信が出てきたということですが、先ほど柏村先生がおっしゃったように、私は、監査役、社外監査役とか、社外取締役も今回あればそうなんですが、やはり物事というのは事実を見てそれを理解できないとそれに対して判断し行動することができません。したがって、私が言うのもなんですが、法律の専門家である弁護士がそういう事実をきちっと見て、それで判断して、これは違法じゃないかとか、これはちょっとおかしいんじゃないかということが言えるのが必要じゃないかということで、会計についても、公認会計士の方が悪いとは全く言いませんし、また計算に関しては公認会計士が専門家ですが、それがいいのか悪いのかの判断、そういうものはやはり弁護士の方が優れているんじゃないかと思いますので、社外監査役とか社外取締役に弁護士がもっと進出した方がいいのかなと考えております。
 以上でございます。
#21
○柏村武昭君 日本の企業は利益を上げるためには何をしても構わないという風潮が最近感じられますが、その大きな歯止めになっていただきたいと期待しております。
 今日は、三人の先生方より大変有意義なお話、ありがとうございました。以上で私の質問を終わらせてもらいます。
#22
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 今日は、参考人の先生方、貴重な御意見、ありがとうございます。
 私も、あるいは民主党も、コーポレートガバナンスの導入、あるいは今回の商法改正にはこれを支持する基本的な考えでおるんですが、私が一つ疑問というんではないんですけれども感じているところは、どれだけこの委員会制度というものを導入したことによってコーポレートガバナンスの機能がうまくいくのかなと。
 これまで参考人の意見の中にもありましたけれども、今の会社の実情というのは、社長に人事権を含めて実権は集中していると。そうすると、委員会制度を作ってもその委員会の方が社長の実際上の指揮系統の中にある、あるいは社外取締役が導入されても、社長に選任された社外取締役が日本のこの義理人情の風土の中でどれだけ社長を中心とする執行陣に対して批判をできるかと考えますと、どうも、制度としては前向きに評価できるんだけれども、実際上の機能の面で、特に日本的なこの風土の中でどれだけ実効性があるのかなというふうに思うんですが。
 どうでしょう、社長の実権が非常に強いというこの日本的な企業経営の風土の中で、これをより実効性を高めるという意味で何かいい考えがございましたらアドバイスいただきたいんですが、こうした面で参考人の方、お三方に意見をお伺いしたいと思いますが。
#23
○参考人(岩原紳作君) 大変ポイントをついた御質問で、私もいい知恵があったら先生から教えていただきたいんですけれども。
 確かに、法律で決めることができることには限度がございます。法律というのはあくまで外から形でもって一定の要求をするだけでありまして、この法案も社外ということで会社の関係者を外すという言わばマイナスの方のチェックを果たすだけで、それ以上のことはこれは法律の本来的な限界からできないわけです。一番確かに欲しいのは、さっきちょっと出ましたけれども、独立した取締役だと思いますね。単に社外というだけでなくて、独立した取締役が欲しい。
 確かに、外国を見ますと、これは法律で要求しているわけではありませんが、いろいろなそういった点でのチェックをかませているようなところも見られますし、例えばなるべく利害関係のない者にするということで、経済的な利益が絡んでいない人とか、あるいは親戚その他非常に近い関係の人は除くとか、そういうことは当然考えられますし、今後、制度の改善として少なくとも外形的な基準としてはそういったことを少しずつ入れていくことが必要かなと。
 まず今回は、取締役を指名する、言わばそのキーになる指名委員会の取締役が過半数が社外だというところまで今回規定したわけですが、それは非常に大きい進歩だと思うんですけれども、それを今後、制度的に言えば、社外性から言わば独立性に持っていくために制度改正を少しずつ行っていく。
 しかし、それもさっき言いましたように、法律でやれることには最後は限度があると思っておりまして、最終的にはマーケットの力というか、ディスクロージャーを通してこういう人が社外取締役として入っているんだ、こういう信頼できる人が社外取締役になっている会社だから投資の対象として安心できるんだというようにマーケットが動いていくようにしていくということが非常に大切ではないかと思っていまして、そのためにはディスクロージャーの充実が重要ですし、それから恐らく投資側の改善、私は、これはむしろ法務委員会の問題ではないかもしれませんけれども、アメリカのERISA法のように、言わば投資する機関投資家の方の質を改善して、よりその投資する企業を選択する目をシビアにしてもらうということが可能になるような法整備をしていくことが今後必要ではないかというふうに考えております。
#24
○参考人(中谷巌君) 今御指摘の問題というのは、本当に日本のコーポレートガバナンスが実効性を持ち得るのかどうかという決め手になる非常に重要なポイントだと思います。現時点におきましては、これを理想的に行っている会社というのはほとんどないのではないかというふうに認識しております。
 今回の商法改正によりまして、そういった委員会制度というものを導入して、過半数の人間が例えば指名委員会とか報酬委員会を社外の人間が占めるというようなことがもし行われた場合でも、そこにいる社外取締役が社長若しくは経営陣のかいらいであれば何の意味もないということになります。したがって、究極的には、その会社の経営陣、社内の経営陣自体が本当にどういうことを期待しているのか、どういうことを望んでいるのかということが決定的に重要になると思います。世間体がいいように形だけちょっと先進的なものになぞらえて、これでどうだということでは、恐らくほとんど意味がないと思います。
 私も社外取締役にならないかということをソニーという会社から言われたときに、お飾りだったら私は国立大学の職を棒に振る気はありませんと。ただ、社長さん、当時の社長さんは、いや、そうじゃないと。もし、イエスマンで自分の思っていることを堂々と言わないんだったら、なってもらう必要はないと。本当にまずいと思ったことを堂々と言えるということがもう前提だというふうにおっしゃったので、これは少し意味があるかなというふうに思いました。
 それでもまだ、社外取締役、過半数いるわけではありませんし、マイノリティーなんですね。したがって、私自身の考えでは、ソニーのコーポレートガバナンスすらまだ改善の余地があるというふうに思っておりますけれども。
 ただ、ソニーのように非常にグローバルな会社になってまいりますと、要するにグローバルな評価というものが非常に利いてくるんですね。今、岩原参考人がおっしゃったように、どういうガバナンスの構造を持っているのかというようなことが常にクエスチョンされているような状態で、著しく会社の業績が悪化し続けているのに取締役会は何も決めれないと、例えばCEOの交代も決められないとか、そういう会社であればみんなその会社の株は売ろうとか、あるいはグローバルに資金調達をやろうとしても調達コストが非常に高くなってしまうとか、そういうチェックがグローバルな会社になればなるほど働いていることは事実ですね。
 ですから、確かに外部の人間が入ってきて、余り気に入らない決定をどんどんやられるのは嫌だという気持ちは正直言って社内の人間にはあるんじゃないかと思いますけれども、しかしそういうことをやり続けていると今度はグローバルなマーケットの評価がどんどん落ちていくと、こういうジレンマ、トレードオフの関係が実は存在しているなというふうに思います。しかし、長期的には、したがってだれから見てもこの会社の経営のアカウンタビリティーは物すごく高い、情報開示、透明性もすばらしいと、そういう形になることが理想だということはグローバルカンパニーの経営者ならだれでも思っていることなんですね。したがって、こういう商法のような後ろ盾のようなものが私は必要なんじゃないかと思っております。
 自力で本当に社内の支配体制から社外の人間がある程度の発言権を持って、もし自分が経営を二年、三年続けて失敗した場合にはひょっとしたら解任されるかもしれないという、そういう恐怖感を持てるような制度を導入する勇気があるかどうかということなんで、そこまで法律で押し付けることはできないにしても、それをサポートするような物の考え方を商法の中に組み込むということはやはり意味があることではないかと。こういうのが実態ではないかと思います。
#25
○参考人(本渡章君) お答えいたします。
 日本は、戦後、高度成長期にありまして、社長を中心にして追い付き追い越せで一生懸命やってくると。そういう時代においては、社長に権限が集中して、それで従業員が自分の周りにいてどんどん業務執行をやっていくという体制は非常に良かったんだと思っております。しかし、今日に至りまして、それではやっていけないということが大体分かってきておりまして、それで公開会社においては、新聞報道によりますと、社外取締役がもう三割から四割の会社で導入されているということでございます。それで、私が聞いた話では、やはり仮に友達でも社外の人がいると取締役会は引き締まる、みんな緊張しているというようなことを聞いていますので、やはり社外の人がいるといないではかなり違ってくるのかなと。
 それで、今回、何というんですか、こういう委員会等設置会社ができてこういう選択肢もあるよということになれば、余り業績が振るわないとか、ちょっとあの社長は能力がないんじゃないかとか、そういうようなことになれば、機関投資家とか一般の株主さんがこんなんじゃ駄目だから委員会等設置会社になりなさいというような圧力を掛けることもできますので、かなり違ってくるのかなと。それで、取締役候補者を社外取締役が過半数である指名委員会で指名できるということになれば、これはもう下手すると社長であっても次期は取締役に選任されない可能性もあるわけですから、この委員会等設置会社になればもう現在とはかなり違う、社長の権限というのがかなり違ってくるんじゃないかなと考えております。
 以上でございます。
#26
○小川敏夫君 ありがとうございます。
 続けて同じ質問、岩原参考人、中谷参考人に同じような趣旨の質問ですけれども、例えば中谷参考人がソニーで社外取締役をされている、中谷参考人御自身はソニーとは全く関係がなかった意味で純粋な社外取締役だと思うんですが。ただ、今の商法の規定ですと社外性について、自分の会社、子会社の役員、従業員でなかったというだけで、少し社外性の要件が緩過ぎるんじゃないかと私は思っているんですが、そこら辺、より完全な形の、独立した職務を行えるような、言わば義理人情のしがらみがないような、現経営者とですね、そういう方を社外取締役になってもらってその職務に徹底してもらうという意味で、その社外性の要件に関してはどのようにお考えでしょうか。岩原先生と中谷先生にお尋ねしたいんですが。
#27
○参考人(岩原紳作君) お答えさせていただきます。
 先ほど申し上げましたように、本来望ましいのは独立した取締役でありますので、なるべく社外性の要件を厳しくしていって、独立取締役に近い人が就任してもらえるようにするということは私も望ましいとは思っております。
 現在の案は、先生御指摘のとおり、当該会社とその子会社の関係者だけを除外することになっているわけで、例えば親会社関係者などは除外されていないわけでありますけれども、これは、今後この制度がスタートしてみて、実際その問題が出てくるようであれば、それをまた見直していくということにするのが望ましいのではないかと考えております。
#28
○参考人(中谷巌君) この問題も非常に難しい問題でございまして、日本の場合は特に今まで系列というものが非常に多かったわけであります。したがって、例えば三井系の会社が社外取締役をどこかから採ってきたいというときに、三井系のグループ会社からですと、これは仲間だから駄目だということになりますし、じゃ三菱から採ってこれるかというと、これは競争相手だから駄目だということになるわけでございまして、まあ大学の先生か弁護士はいいと思うんですけれども。最近、これは私の友人から聞いた話です。したがって、最近、社外取締役を採用したいという会社が増えてまいりましたが、しようがないので外資系に勤めている人が非常に口が掛かるという話があります。これなど、やや日本的な特殊要因だと思いますけれども。
 現時点におきましては、したがってそういった本当の意味での独立した社外取締役を十分な数、用意できるかどうかという問題が存在していると思いますけれども、これは時間の問題ではないかと私は思っております。といいますのは、だんだん系列というものも崩れてきておりますし、もう最近の合併なんかを見ましても、どこどこの系列の会社同士だから合併したとかしないとかということがほとんど意味を成さなくなってきておりまして、それぞれの会社がかなりの独立性を持つようになってきておりますので、やがてそういった、一応の経営の経験もあるようなそういった社外取締役にふさわしい独立取締役の人材のプールというのがこういう法律をきっかけにどんどんできてくるんではないかというふうに期待しております。
 以上です。
#29
○小川敏夫君 ありがとうございます。
 あと、そうした制度の充実と同時に、日本の会社は株主総会がまた経営に対するモニタリングの機能が果たしていないんじゃないか、いわゆる形骸化でして、いわゆる上場会社で株主総会が人事に関して現経営陣を更迭したような話は全然聞いたこともない。古い話で、三越で社長交代劇といってもあれは取締役会のレベルの話でして。株主総会の形骸化、これはただ、一人一人の株主のまた権利行使あるいは責任の問題もあるから、一言で言うのは簡単でも実際には非常に難しい問題だけれども、この株主総会がより形骸化しないでより自主的に機能すれば、またそれがいい意味で企業統治の方向に行くんではないかと思うんですが。
 岩原参考人、中谷参考人、株主総会の形骸化をより、今度は株主総会を実質化するための何か御提案等がございましたら、またお伺いしたいんですが。
#30
○参考人(岩原紳作君) お答えさせていただきます。
 株主総会の形骸化という場合に二つの面があると思います。株主総会というのは、一つは意思決定機関であって、そこで株主が本当にきちんとした意思決定をする、自主的な意思決定をしているかという問題。もう一つは、株主総会という場は経営者と株主が言わばコミュニケートする場でありまして、そこで会社側が会社の情報をきちんと株主に提供して、株主がきちんとそれに対して質問をして会社のことをよく知ることができるようになる。この二つの機能を持っていると思います。日本の場合は、その両方ともうまく機能していなかったという問題があると思います。
 株主総会の形骸化というのは必ずしも日本だけの問題ではなくて、これはもう世界的な問題でありまして、ただ、まず外国が日本と違う点はその後者の方ですね、経営者と株主との間のコミュニケーションという点では十分機能している。日本は、最近はちょっと改善されてきましたけれども、しばらく前までは十分、二十分で終わる株主総会が多くて、コミュニケーションの場としても機能していなかったわけでありますが、アメリカなりヨーロッパの国の株主総会を見ますと数時間というのが当たり前でありまして、コミュニケーションの場として十分機能させている。それは、一つは制度的にコミュニケーションを実質化させるような法制があるのと、もう一つは、やはり経営者もそういうコミュニケーションの場として非常に重要だということを認識して、嫌がらずにというか、そこで辛抱強くというか、質問に答え、情報を開示する。日本もそれを育てていくことが大事だと思っておりまして、その点では最近は少し改善が見られてきているのではないか。これは総会屋が減ってきたということが大きくかかわっていると思います。
 もう一つの方は、これは株主の構成が日本の場合は株式持ち合いということがあって、もう株主総会を開く前に会社側、経営側が多数を握っているということが分かっていますから、これはもうだれてしまうのは当たり前で、意思決定の場として余り機能しないということは当然だったわけですね。外国は、日本のような持ち合いというのはございませんけれども、違った意味でやはり意思決定の場として余り機能していないところが多うございます。一つは、委任状を集めるというような形で、経営者が委任状を集めて実質的なマジョリティーをあらかじめ握ってしまうというようなことがある。
 この面でも今後は私は変わっていくのではないかと思っておりまして、まず株式持ち合いが崩れてきていることはこれは確かであります。特に、さっき出ましたソニーのような国際的な大企業になりますと株主の多分四割ぐらいはもう既に外国人株主になっていて、持ち合いということはかなり落ちてきていますから、その点での状況は変わってきております。
 それからもう一つは、これはむしろ外国、特にアメリカなんかで見られるところでありますが、機関投資家の方、アメリカも、委任状と、それと機関投資家が多くなることによって経営者支配が強くなっちゃったんですけれども、最近では機関投資家も言わば活動する機関投資家になってきている。これは、さっきも申しましたように、一つはERISA法などの、そういう機関投資家を規制する法律が厳しくなり、かつ世論の目が厳しくなって、機関投資家もちゃんと自分のバックにいる本当の投資家を守っているのかと。例えば、信託会社ですとかそういうところ、あるいは投資信託なんかは受益者の権利をちゃんと守っているのか、受益者の権利を守るためには投資家としての権利をきちんと行使しなければいけないはずだと。株主総会でもちゃんと発言をし、きちんとした判断をして議決権の行使をする。それがだんだん厳しくなってきて、活動する機関投資家が増えてくることによって、株主総会の意思決定の場としての機能も再び活発化してきているところがあります。
 日本も今後はそういう方向に持っていくべきではないかというふうに思っておりまして、さっき申しましたように、むしろ機関投資家に関する法制等を充実して、本当にその受益者であるところの、最終的な受益者である一般の投資家の人たちの利益を代表して機関投資家が行動するようにその制度を持っていくことが意思決定の場としての株主総会を活性化させることになっていくのではないかというふうに考えております。
 以上です。
#31
○参考人(中谷巌君) 株主総会を実質的なものにするという問題は非常に難しい面があると思います。特に、非常に多数の、何十万人という株主に対して会社の経営の実態、中身を正確に伝えるということは恐らく何百ページのレポートを書いてもでき得ることではないと。つまり、情報の非対称性というものが物すごく大きく存在しているということがあると思います。したがって、実質的に何千人という人が集まった株主総会において役に立つ議論をするということはほとんど不可能の状態、それが実態であろうかと思います。
 そういうことで、経営陣の顔を見たい、経営陣がどういう発言をするか、どういうことを考えているのかを知りたい、そういった、今、岩原参考人がおっしゃったようなコミュニケーションの場という意味の株主総会というのはこの数年、日本においても相当改善されてきたように思います。普通の商法上の決議事項をやる株主総会の後に株主懇談会というものを設けまして、そこでインフォーマルな形で経営者と株主の皆さんがかなり自由濶達に議論をするということで、これまで総会屋が牛耳っていた日本の株主総会とは相当大きく、たった数年の間ですけれども、非常に大きく変わってきたと。これは非常に健全な方向に来ているのではないか。しかし、だからといって、ギリシャ時代の直接民主主義制じゃありませんけれども、全員が集まったところで何か一つの議題を議論してとか、そういうことはとても現実的に言ってあり得ないことだと思います。
 ただ、最近はオンブズマンの方々とか発言する株主の方々がだんだん増えてまいりまして、この方々がいろんな活動をされることによって株主総会自体がある程度緊張感を持って執り行われるようになる、そういう方向に動いているのではないかと思います。あるいは、インターネットによって決議事項に対する電子的な投票を行うと。これはセキュリティーの問題いろいろあるんですけれども、こういうものがだんだん問題がなくなってきた段階では、やはり経営者の提案する議決事項に対する説明責任あるいは透明性という点で別の意味での、何というか、圧力、改善の圧力というものになり得るんじゃないか。余り具体的な改善案はアイデアとしては浮かばないんですけれども、そういう方向に動いていることは確かだというふうに思っております。
#32
○小川敏夫君 ありがとうございます。
#33
○浜四津敏子君 今日は三名の参考人の皆様、大変お忙しい中、ありがとうございます。それぞれ御専門のお立場から、短い時間で大変ポイントを凝縮した中身の濃い御意見をいただきました。公明党の浜四津敏子でございます。よろしくお願いいたします。
 今回の商法改正案は、日本企業の競争力強化のため、また経済活性化のために民間企業のコーポレートガバナンスの構造改革が必要という問題意識からの改正であります。現在、政治改革あるいは行政改革あるいは教育改革等々、あらゆる分野の改革が迫られている中で、すべての改革に共通するものがあるという思いで御意見を伺わせていただいておりました。その中で、経済改革の大きな柱として企業のコーポレートガバナンスが位置付けられているということでございます。
 今回の改革のポイントで、大規模の企業がアメリカ型のコーポレートガバナンスを選択できるという改正でございます。従来型の日本型のコーポレートガバナンスが経営革新がなかなかできない、あるいは柔軟な意思決定ができない、こういうマイナス面から取締役会の空洞化あるいは企業の私物化と、こういうものが表面化してきた、マイナス面が強く出てきたという指摘でございます。これに対してアメリカ型は、一九九〇年代、アメリカの企業の業績回復にこのモニタリングモデルというのが大変大きく資するところがあったということで、各国に広まっているというお話を伺いました。
 いずれにいたしましても、従来型とアメリカ型、いずれもプラス面、マイナス面両方持っているということであろうかと思います。その中で、まず岩原先生、それから中谷先生にお伺いしたいと思います。
 岩原先生のお話では、今回の改正で新しいアメリカ型コーポレートガバナンスを導入することによってアメリカ型のコーポレートガバナンスを選択する会社と、また従来型のガバナンスを選択する会社が切磋琢磨して活性化していく、改革が図れると、こういう御指摘でございましたが、本当に切磋琢磨する状況が生まれるのかどうか、アメリカ型のガバナンスを選択する大企業というのがかなりの数に上ると予測しておられるのか、お伺いしたいと思います。
 また、中谷先生は、今回の改正では従来型がそのまま温存する選択肢が残されているところが問題であるという御指摘だったかと思います。中谷先生にも、このアメリカ型を選択する大企業というのがどのぐらいに上るという予測を持たれておられるのか、また将来に向けての方向性を担保すべきであるというお話でしたが、具体的にどのような担保方法をお考えなのか。
 まず、岩原参考人、中谷参考人、順次お教えいただければと思います。
#34
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 確かに、この法律が成立したとして、どれだけの企業がこの委員会等設置会社の形態を取ってくれるかということは大きい問題でございまして、経済界の中にはこんなものを採用するところはほとんどないだろうというふうにおっしゃる方もいらっしゃるんですが、確かに当面、多数派にはちょっとなり得ないというふうに思っておりますが、一方で、この委員会等設置会社形態を取ることに興味を持っているというか、既に考慮している企業はかなりあると私は考えておりまして、実際、私のところに御相談にお見えになった大会社も幾つかございまして、私の希望では、さっき出ましたソニーなんかはまず既にある面、アメリカ型を取っているわけですけれども、そういうところは速やかにお取りになるのではないかと期待しておりまして、それから従来、そういったアメリカ型的な経営を取ってなかったところでも、これを機会に正に経営革新をしたい、あるいはそれを示したいということで、これに非常に興味持って御相談にお見えになる会社もあるわけでありまして、確かに少数派で出発せざるを得ないと思いますけれども、そういうところが出てきて、そういうところが実際に実績を上げていく。さっきの日産のゴーンさんの例でありませんけれども、それによって、そういうところを取らないところが正に逆に、じゃ、おまえはどうなんだということを問われることになっていくわけでありますので、そういうことで徐々に日本の経営の革新全体につながっていくのではないかというふうに期待しているわけであります。
 両者の選択について、一応そういうことであります。
#35
○参考人(中谷巌君) 今の御質問でございますけれども、私も当初はアメリカ型の委員会等設置会社になるという選択をする会社はかなり少ないだろうというふうに思っております。
 といいますのは、やはり今までは経営者が内部の人間だけでかなり自由にと言ったらなんですけれども、何を発言するか分からない外部の人間は一切いないところで、楽しくと言ったら申し訳ありませんけれども、自由に経営なさっていたわけで、それを今回の委員会等設置会社になれば劇的にそういった権利というものを放棄しなきゃいけないということになります。
 今まで二十年、三十年、そうでない従来型のシステムに慣れ親しんでこられたトップ経営者の方々がいきなりそういうデシジョンに傾かれるというのはよほど大きな圧力というものが、これはマーケットからの圧力であるか、あるいは株主からの圧力であるかは別としまして、大きな圧力を感じている会社でないとなかなかこういうことはできない。特に、外部の人間、独立した取締役にある程度の実権をゆだねるというようなことになりますと、自分の会社の内部について、あるいは経営実態について相当自信がなければ、これいきなり開示するというのはなかなか難しいのではないか。開けてみたらもうあちこちうみがたまっていて恥ずかしいというような状況があるならば、そういった委員会等設置会社に転換するということは相当困難を窮めるのではないか。
 したがって、初めの私は二、三年の間はごくごく少数の会社だけがこういったアメリカ型のコーポレートガバナンスに移行し、その間にだんだん世論というものが固まってまいりまして、例えば同じ業界の中であの会社が移行したけれども自分たちはまだ移行していないと、しかもその両者の間にはっきりした業績の差のようなものが出てくるならば、ある時間の中で、横並び志向というのがかなり強いところがございますので、ある瞬間に相当数の会社が怒濤のごとく他の方に移行するという事態になるんじゃないかというのが私の予想でございます。したがって、初めの二、三年は余り移行しない、しかしその後かなりの程度の移行というものが急速に行われると、こういうことになるのではないかと思っております。
 それから、将来を担保する改正の方向性を示す必要があるということを申し上げたんですけれども、アメリカ型が万能かというと、エンロンの例にありますように、それをやったからすべてが改善するということではございません。実際に、アメリカ型とヨーロッパ型ではコーポレートガバナンスの中身につきましてもかなり変わっているといいますか、差があるというのも実態でございまして、こういったそれぞれのタイプのガバナンスのいいところと悪いところを緻密に点検しまして、日本型のいいところと悪いところも重ね合わせて、新日本型といいましょうか、どこかのシステムに完全にまねをするという形ではなくて、我々自身が本当に株式会社制度の本質というものをうまく活用したような、そういう新しいタイプのコーポレートガバナンスの体系というものを自分たちの手で確立していくという、そういうことが必要ではないかと思っております。
#36
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 改革につきましては、今のお話を伺いましても、恐らく、一方で余りに急進的な改革、急進過ぎるのでもなく、また一方で遅過ぎるのでもなく、急進的なものと漸進的なものとバランスの取れた改革が必要なのかなという思いで聞かせていただきました。
 ところで、今もお話に出ましたが、先般、アメリカのエネルギー最大手のエンロンが倒産いたしまして、大きな衝撃と話題を呼びました。それは、アメリカ史上最大の企業破綻であるということに加えまして、インサイダー取引の疑惑あるいは会計監査法人との癒着、政界工作など様々なスキャンダルが取りざたされたことでも話題になったわけでございます。アメリカ議会の調査報告では、エンロンは社外監視制度などコーポレートガバナンスの面で高い評価を受けていた、そのエンロンの取締役会が機能していなかったことが原因の一つとして挙げられているということでございます。
 今回の改正によりまして日本もアメリカと同じ制度を選択できることになるわけで、エンロン事件というのは人ごとではないという思いがいたします。大きな示唆を含むものと考えられますが、このエンロン事件の発生原因をどうとらえておられ、またこうした事態を防ぐための対応策についてどうお考えか。殊に、これからアメリカ型を導入しようとする日本の大企業が注意すべき点について、岩原先生、中谷先生に御意見を伺いたいと思います。
#37
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 エンロンにつきましては、今、正にアメリカでいろいろ調査が進んで発表されてきているところでございまして、私もつい最近、エンロン社の取締役会の下に作られました調査委員会が作った二百ページを超える報告書を手にして読み始めたところで、まだ細かいことをよく存じませんけれども。
 少なくとも、報道されていることなどから聞く限り、まず第一の問題は、このアメリカ型のシステムというのは、まず外部の公認会計士による監査がきちんとしていて、企業のパフォーマンス、財務について正確な情報がきちんと取締役会に上がってきて、取締役会は過半数が社外取締役で、言わばその当該会社の経営についてはアマばっかりなわけですけれども、そういうアマの人であっても、そういう外部の公認会計士による信頼できる財務情報に基づいて経営の状態がきちんと判断できるということを前提に機能するシステムだと思うんですね。
 ところが、今回のエンロンの事件で分かったことは、その一番の根本である外部の公認会計士による会計監査がきちんと機能していなかった。しかも、その手段として、特別目的組合とかあるいは会社と言われる、SPEと言われるものをいろいろ使ってかなりいかがわしいことをやり、かつ、そのSPEの活動についてエンロン本社が保障をしていたにもかかわらず、それがきちんと会計情報として伝わっていなかったり、あるいはその問題の重要性を取締役会が認識できていなかったといった点に大きい問題があるように思いまして、アメリカ型の経営システムというのは、そういう外部監査、公認会計士監査がきちんと機能し、かつ、そこの情報、例えばSPE等に関する情報を取締役会のメンバーが、たとえ素人であってもそういうことについてはきちんと判断できるということを前提にしていると思うんですね。
 例えば、アメリカのニューヨーク・ストック・エクスチェンジの実際のルール等によって監査委員会には必ず会計の専門家が入るということになっていますから、本当はそういうことも理解できていたはずなのにそれがきちんと機能していなかったということでありまして、これはアメリカ型のモデルそのものが悪いというよりも、アメリカ型のモデルが前提にしていたところが実はきちんと必ずしも確保できていなかったということだと思うんですね。
 したがいまして、日本でもこれに倣ってアメリカ型を導入する以上は、アメリカがモデルの前提にしていたところを実は必ずしもきちんと確保できていなかった、それを日本でもそういうことにならないようにするということが一番重要ではないかというふうに思っております。
#38
○参考人(中谷巌君) エンロンのケースでございますけれども、人によっては、これは九月十一日の同時多発テロ以上に大きな衝撃をアメリカの資本主義社会に与えたと言われております。これはある意味でデモクラシーに対する挑戦のようなものでありまして、社外取締役が株主の利益を代表していろんな情報に接する権利があると、そういう正しい情報ディスクロージャーがあった上で初めて判断というものが可能になるわけでありますけれども、もし経営者の方にそういう正しい情報を教えたくないと、教えないという悪意というものが存在するならば、これを防ぐ方法というのはほとんどないというのが現実なんじゃないでしょうか。
 したがいまして、例えば政治の世界におきましても、選挙をするというときに、やはり投票する人間がどの人に投票するかということは、前提として正しい情報というものがある程度開示されているということが前提になるわけですが、もし候補者それぞれについて何の情報も知らされていなければ正しい選択は絶対できない。これと全く同じことなんですね。
 ですから、じゃ、そういうことがあるからデモクラシーというのは意味がないかというと、欠陥はあるんだけれども、それしか方法がないと。
 私は、エンロンの事件は正にそういうことでありまして、社外取締役が余りチェック機能を果たせなかった、それはそれで非常に問題なんですけれども、逆に言うと、社外取締役に対して、CEO、経営トップの人々がどの程度意図的であったかどうかというのは私、つまびらかに存じ上げませんけれども、その正しい情報というものが正確に知らされていなかったと。多数の投資組合というものを会社の傘下に作りまして、そこが膨大な損失を発生していたんだけれども、そこの投資組合の情報というものが上に上がってこなかった。したがって、社外取締役の人は、まずい大きな損失が出ているという情報を全く知らないまま、いろんなデシジョンをしなきゃいけない情報に置かれていたということで明らかに欠陥があったわけでありますけれども。
 一つだけ言えることは、じゃ、社外取締役制度があったからこういうことが起こったのかというと、そうではない。社外取締役制度は少なくとも悪用はされているわけじゃない。ただ、その社外取締役が本来、一般株主の利益を代弁するように行動しなきゃいけないときに必要な情報がうまく伝達されなかったというところに問題があるわけで、そこのところをどうやって改善するのかと。したがって、ディスクロージャーに対する規定をもっと厳しくするとか、ディスクロージャーの義務を怠った場合の経営者に対するペナルティーをどの程度大きくするのかと、そういった法律の強化というようなものは恐らく必要でしょうけれども、しかしどんなにやっても、どんなにすごい法律を作っても、それを違反してやろうという悪意があればいつでもそれを破ることはできるというのは、どの社会においても残念ながら避けることはできないということだと思います。
 したがって、そういったリーダーたるべき人間にしかるべき志とか倫理観とかそういうものが確立しているかどうかということがそういう問題の発生する頻度というものを決めるということだと思うんですけれども、そういう意味でこのエンロンの事件というものは、一体どういう法律の体系にし、どういうペナルティーの構造にすればそういったことが起こる頻度を最小にできるか、そういうことを考える大きな素材を与えてくれたというふうに考えております。エンロンのような事件が起こるから、じゃデモクラシーは否定されるべきであると、社外取締役制度もやらないで、いやインサイダーだけいろんなことを決めればいいんだと、そういうことには私は決してならないというふうに認識しております。
#39
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 最後に、本渡先生にお伺いいたします。
 社外取締役と顧問弁護士との関係についてでございますが、社外取締役として弁護士を選任している会社も幾つかあると伺っております。これから増えることが予測されると思いますが、顧問弁護士という立場と社外取締役という立場を兼ねるということについては不適当ではないか、はっきりと物が言えないのではないか、むしろまずは顧問契約を解除した上で社外取締役になるべきではないかという指摘もあると伺っておりますが、どのようにお考えでしょうか。
#40
○参考人(本渡章君) お答えいたします。
 顧問弁護士の仕事というのは、会社がこういう契約を結びたいけれどもどうだろうかとか、こういうことをやりたいけれどもどうだろうかというような質問に対して、それはちょっと法律に触れるんじゃないかとか、これはちょっとやめておいた方がいいよとか、そういうような回答をするということで、社外取締役の職務とかなり一致する部分が多いと思います。したがって、顧問弁護士であれば社外取締役になれないというような解釈は私は取っておりません。
 あと、顧問弁護士をやりながら社外取締役ができるかということですが、それは、顧問弁護士として月に幾らとか報酬をもらい、また社外取締役として月に幾らというような報酬をもらうという、何もしないで顧問弁護士としても報酬をもらって社外取締役としても報酬をもらってもいいのかなというような、ちょっと個人的にですけれども、全然公式のあれじゃないですが、気はいたしますが、しかしそれが違法だとまでは言えないのかなと考えております。
 以上でございます。
#41
○浜四津敏子君 終わります。
#42
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、三人の先生方、本当にありがとうございます。
 最初に、岩原先生にお尋ねをいたします。
 著作の中、「商事法務」を読ませていただいたんですが、会社法の改正の留意点として、経済の効率化、競争力の向上への貢献ということを挙げた上で、それとともに公正や適法性も追求されなければならないことを強調したい、公正で適法な経営が、健全で競争力のある企業を育てることにもなるんだと、こういうふうに言われております。大変同感であります。
 その上で、我が国の実態に即した慎重な検討が必要だと述べられまして、特に会社法のアメリカ化の主張に対して、やはりアメリカの法制や社会にはそこから生じる弊害に対処できるような別の仕組みが備わっているんだということを強調されております。そして、アメリカの制度をつまみ食い的に参考にするのでは全体としてはうまく機能しないおそれもあると、こういう指摘もされております。
 今回、アメリカの仕組みを取り入れていくわけでありますが、ここで指摘されていますアメリカと日本の法制、社会の背景の違い、仕組みの違いについてお答えをお願いしたいと思います。
#43
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 一つは、企業の在り方そのものがかなり違っているというところは確かにございます。さっき、コンプライアンスの問題なんかが出ましたけれども、アメリカの企業の場合ですと、企業の内部自体にコンプライアンスの仕組みを作っているというところは昔からあったわけです。それを前提に監査委員会が機能する、それを監査委員会が更に上の取締役会の方にいろんなことを上げていくということになっているわけで、そういった点が日本でも当然やっぱり充実していかないと、アメリカと同じように機能しないということは出てきます。
 それから、さっき申しましたように、このモデルは外部監査、公認会計士監査が非常にうまく機能して、それによって取締役会に財務的な正しい数字が上がってくるということが非常にこのモデルが機能するために大きい条件になっているわけでありますので、そのディスクロージャーを充実し、かつ会計監査に関するいろんな意味での広い仕組み、会計ルールを含めてですね、それが充実していくということがこの制度がうまく機能していく大きい前提になると思います。
 その意味で日本で従来、それからもう一つ言えば、さっきから出ている問題として、本当に社外取締役として活躍してくれる人材の供給がどれだけあるのかということもやはり実質的なバックグラウンドとしてある問題であります。そういったことがすべてうまく機能したときに、アメリカ型のモデルというのもうまく機能していくということはかなり確かであります。
 先ほどからここで議論されておりますように、現時点の日本ですぐ日本の企業全体がアメリカと同じような形で機能できるかというと、まだそういった、そういう前提になるいろいろな言わばインフラの部分で必ずしもそうはなっていないということは私は事実だと思います。アメリカでさえさっき言ったようにいろんな問題が出ているわけでありますし、ましてや日本ではまだそういった点が必ずしも十分でないことは確かだと思います。
 そういう意味で、私も、日本全体がすぐアメリカ型のところに一〇〇%飛び付いていくということはとてもできないことだというふうに考えておりまして、そういった体制ができたところから順次そういったものも取り入れ、そしてそういった企業がさっき申しましたようにうまく成功するところが出てきてもらって、そしてそれによって日本のシステム全体がそういったアメリカ型のインフラが機能するようなものに移っていくということが一番望ましいのではないかというふうに考えている次第です。
#44
○井上哲士君 七〇年代以降の商法改正を見ておりますと、企業の不祥事が起こるたびに監査役制度の見直しが叫ばれて、その権限の強化とか社外監査役の導入などが行われてきました。去年の臨時国会でも監査役の強化ということが行われたわけですが、この間の一連の不祥事でありますとか経営破綻ということを見ておりますと、この問題は引き続き日本経済にとって大変重要なことだと思います。
 今回のアメリカ式の委員会制度の導入に当たっては、日本の監査役協会などは、一部自己監査になるとか、それから監査委員会が常勤とされていないなど、現行の監査役制度よりも監査品質が低下するんじゃないかと、こういう懸念が出されておりますが、岩原先生と本渡先生、それぞれこの指摘についてどのようにお考えか、お願いをいたします。
#45
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 確かに、監査役協会が御指摘のように、少なくとも制度の表面を見ますと、監査委員というのは監査役と違って常勤者を必ずしも要求していない、あるいは独任制を監査役は取っているのに対して、監査委員会の場合は独任制でないというような違いもあります。
 ただ、少なくとも今回の法案について言えば、今の常勤のところはある面大きい違いではありますけれども、それを除けば、比較的従来の監査役と比較して、今回の社外取締役によって構成される監査委員会がそれほど大きく制度的に引けを取るものになっているとは私は考えておりません。むしろ、ある意味で言うと、やや監査役の制度に引きずられたものになってしまっているのかなという私は印象を持っております。
 監査委員会の場合は、やはり一番決定的に違うところは、社外取締役が過半数を占め、しかも社外取締役の選任過程が、さっきから出ております指名委員会によって、言わば経営者の影響力をなるべく排除したところから選ばれてくるということを前提にしているわけで、それが本当にうまく機能してくれれば、監査委員会であっても十分にむしろ独立した判断ができるがゆえにその機能を果たしてくれるんではないかというふうに考えております。
 なお、常勤の問題について言えば、なぜ常勤になっていないのか、私も詳しいことはよく分かりませんけれども、一つは、さっき言いましたように、根本的な考え方の違いがありまして、アメリカ型のモデルは、さっきから出ていますように、外部監査による会計的な数字を前提にそれを判断して、現在の経営者がきちんとやっているかどうかということを判断すると。
 言わば、素人であっても機能し得る、ただ、その代わりその素人の中に会計の専門家なんかを入れろというのはアメリカの考えですけれども、そういうものとして作られているために、日本的な言わば実査ですね、言わば、さっきちょっと本渡先生が御指摘になりましたけれども、監査役が実際にそれぞれのセクションのところを回ってみて、そこの伝票を見てチェックするというところまでは考えていない。むしろ、公認会計士監査がきちんと機能することを前提に、そこから上がってくる数字を言わば大所高所的に判断するという制度として監査委員会というのは考えられているために、そういう発想が余りなかったんではないかというふうに考えております。
 以上です。
#46
○参考人(本渡章君) お答えいたします。
 まず、一部自己監査になるという点につきましては、委員会等設置会社は執行役が業務執行をし、また大部分の業務執行の決定もいたしますので、執行役の職務について監査するのが中心になります。もちろん、取締役の職務の執行も監査いたしますが、この程度のことは余り問題にする必要はないのかなと考えております。
 次に、常勤の監査委員がいないという点ですが、それは先ほど意見陳述でも述べましたとおり、やはり監査委員自身がある程度、支店だとか事業所、部、そういうところを回って直接、従業員の人から、どうなっているのか、そういう調査をしてそういう事実を把握する、また従業員とのコミュニケーションを図るということが事実を認識するためには必要じゃないかなと考えております。
 したがって、この法律案ではもちろん常勤の監査委員が必要だとは書いてありませんが、法務省令で、内部監査システムを作るモデルですね、を作るときには常勤の監査委員も必要であるようなモデルを作っていただきたいなと考えております。
 以上でございます。
#47
○井上哲士君 次に、中谷参考人にお伺いをいたします。
 株主利益とともに企業統治を考える場合に、従業員や顧客、取引先、地域社会、環境など、こういう問題に対する外部からのチェックということも大変重要だと思うんです。
 ちょっと前になりますが、九二年に文芸春秋に、当時、ソニーの会長だった盛田さんが「「日本型経営」が危い」という論文を書かれまして、当時、大変話題になりました。六点ほど、日本企業の活動について世界に通用しないということを盛田さんは挙げておられます。
 一つは、従業員との関係で、労働時間の格差が欧米と比べて大きい。二つ目に、従業員に対する成果の配分、これは賃金の問題ですが、これが欧米と比べて大変悪い。三つ目に、株主の配当が低い。四つ目、取引先、下請企業との関係が対等、平等でない。五つ目、日本の企業は地域社会の貢献に積極的とは言い難い。六つ目、環境保護及び省資源対策に十分配慮しているだろうかと。こういう六つのことを挙げられまして、こういうものを解決しないと、幾ら良い製品を安く作っても世界からはルール破りだとたたかれるだけじゃないかということを、外国に行かれた感想として盛田さんは書かれました。
 これは、ソニーの社内でこの論文というのはどんなふうに、中谷さんが取締になられたのは随分後ですけれども、受け止められて議論がされたんだろうかということと、中谷さん自身の感想といいましょうか、企業統治の関係でこういう意見をどう生かしていくのか。その点お願いいたします。
#48
○参考人(中谷巌君) ただいまの御質問でございますけれども、その盛田さんが書かれた論文に対してソニーの社内でどのような議論がなされたかについては、私は申し訳ありませんが、存じ上げません。私自身の感想を代わりに述べさしていただきたいと思います。
 ここで盛田さんが述べられたことのうち、言ってみれば、これは普通、ステークホルダーに対する配慮を企業はすべきである、単にストックホルダーだけではなくて、ステークホルダーも考えなきゃいけないという議論であります。
 結局、世界じゅうのいわゆる優良企業と呼ばれるものを考えてみますと、その多くは実は株主利益を追求しているのみならず、こういったステークホルダーに対してもある程度の配慮というものをしている、これが優良企業の定義だというふうに思います。
 私が考えておりますのは、やはり企業がここに今述べられました六つの配慮というものをそれぞれ改善していく、このために何が必要か。これは、実は限られた資本やあるいは労働力というようなものに対していかに効率的にこれを活用し、それぞれの能力を発揮できるようなそういう企業環境を作るかということだと思うんですね。結局、仮に、いや、我が社は従業員を絶対大事にしますという企業があったとしても、それ自体はすばらしいことであるにしても、もしこの企業が経営がうまくいかなくてどうしても利益が出せないというようなことになりますと、もちろん労働者に対する賃金配分もうまくいきませんし、あるいは地域に貢献するとかそういうきれい事もうまく思うようには実行できないということになります。
 したがって、今回議論されておりますコーポレートガバナンスの問題というのは、やはりいかに限られた資源の下に企業がダイナミックに発展できるか、そういうことを可能にする統治のシステムというのはどういうものであるべきかという、そういう観点から議論されるべきことだと思うんですね。そういうことが可能になれば、自動的に高い賃金も払えるかもしれませんし、あるいは従業員を重視するというような人事政策も当然可能になるでしょうし、やはり経営効率が非常に悪いような状況を温存したままで、そのほかの、ここに書かれているいろんな問題、地域社会への貢献であるとか環境への配慮でありますとか、そういうことだけやりなさいといっても、実力的にこれはできないわけですね。
 そういう意味で、こういったステークホルダー全体に対する適切な配慮というものが可能になるという、そういう目的のためにも、日本のインサイダーだけによるコーポレートガバナンス、現在のガバナンスの欠如という状態を何としてでも是正していかなきゃいけない、そういう状況にあるのではないかと私は認識しております。
#49
○井上哲士君 ステークホルダーへの配慮ということでありますが、七〇年代の日本の、これは岩原先生にお伺いをいたしますが、七〇年代の商法改正の議論の中でやはりこの企業の社会的責任という問題が議論になりまして、例えば商法総則の中に民法の一条に類似をした社会的責任原則を置くというような議論もあったかと思うんですね。
 それで、アメリカをちょっと見てみますと、八三年にペンシルベニア州において会社法の中に社会的責任を明記をしたというものができたとお聞きをしております。取締役に対して、会社の最大の利益を検討するに当たって会社の従業員、供給者、顧客、会社の事務所又は施設のある地域社会及び他のすべての適切な要因を考慮することができると、こういうことが入れられて、その後、九〇年代にかなりの州でこれが広がったと。私、九四年時点で二十八の州にこういう取締役の社会的責任規定ができたということを見たんですが、アメリカでこういうものが、できるという規定なわけですけれども、こういうものが九〇年代に広がっていったその背景と、そして日本でもこういうものを規定するという点では、例えば法制審などではどのような議論がされてきたのか、その点お願いいたします。
#50
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 アメリカでこういった、今、先生がおっしゃったようなタイプの社会的責任に関する規定が広がった背景、細かく調べたわけではございませんけれども、私の印象では、これは一九八〇年代から九〇年代に掛けてMアンドAのあらしが吹き荒れたときに、経営者が株主の利益を言わば制限する形でMアンドAに対する対抗措置を取ることを認めるための根拠規定として使われた。今、先生おっしゃったとおり、正に考慮することができるでありまして、考慮しなければならないではないんですね。言わば、経営者が自分に都合のいい、はっきり言えば自分の地位を守れるように、MアンドAに対抗できる措置が取れると。その理由として、例えば地域経済を守るとかあるいは従業員の雇用を守るとか、そういったことを理由に、つまり乗っ取られるとあそこの工場は閉められるぞ、あるいは売っ払われるぞといって、それに対抗することは正に従業員の雇用や地域経済等を守るための正当な行為であり、そういうために対抗措置を現経営陣が取ることは適法だということを言わば認めさせる手段として使われた立法が多かったように私の印象ではございます。
 ですから、ここで重要なことは、私も、企業がおっしゃるようなステークホルダーの利益を守るという意味での社会的責任を果たすべきだというのは私もそう思うんですけれども、ただ、そういった規定を設けることは非常に注意しなければいけない。今申しましたように、表向きは非常に美しいことが書いてあるけれども、実際は現経営陣が自分の地位を守るために使うというふうな危険が十分あるわけでありまして、そこで言わばそういう一般規定を置くということは、ある意味で一面で危険性があるわけなんですね。
 ですから、本当は、むしろそういったステークホルダーの利益を適切な範囲で守らなきゃいけないということは、むしろ個々の問題ごとに法律の中で規定していくのが一番望ましいのではないか、むしろ一般規定は下手をするとそういう危険があると。むしろ、個別の問題ごとにそういったことを認めていく、それを法律の中で書いていく、それが私は望ましいことだというふうに考えております。
 以上です。
#51
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。今日は本当にありがとうございます。
 社外取締役についてはいろいろ御教示していただいたのですが、中間試案では大会社には社外取締役の設置を義務付けたらどうかということが盛り込まれていたにもかかわらず、今回は御存じのとおり選択的というか義務付けにはならなかったわけです。将来的には、大会社には社外取締役の設置を盛り込むとか上場の条件にするなどした方が風通しが良くなるというふうに思うのですが、岩原さん、さん付けで済みませんが、岩原さん、中谷さん、本渡さんの御意見はいかがでしょう。ごめんなさい、言い直します。岩原参考人、中谷参考人、本渡参考人の御意見はいかがでしょうか。
#52
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 私も個人的にはそういうふうに考えておりまして、正に、法制審議会の中でそういった、委員会等設置会社でない会社についても最低限、社外取締役の人を一人入れるというような形で風通しを良くして、言わば外の目が会社に入る方が望ましいということを私は申し上げたわけです。
 外国を見ましても、確かに社外取締役が過半数を占めるというのは言わばアメリカの大企業でありまして、ヨーロッパを見ると必ずしもそうではない。ただ、ヨーロッパはもうそれぞれコーポレートガバナンスの改革に非常に力を入れておりまして、イギリスは従来の伝統的な日本の経営タイプとアメリカの言わば中間でありまして、これはシティーコードと呼ばれる言わば証券取引所の自主規制ルールの形で入っているんですけれども、イギリスの場合ですと、大体、取締役会のメンバーの数が十名ぐらいですけれども、そのうちの三分の一あるいは三名以上は社外取締役を入れるというのがイギリスのシティーコードの行き方、これはコンバインドルールと現在は呼ばれておりますけれども、の行き方でありまして、これは言わば必ずしもアメリカみたいにマジョリティーまで行かなくても、一定数の社外取締役が取締役会メンバーとして入ることによって言わば違った考え方、違った見方、さっき正に中谷参考人がおっしゃったように、そういったものが出てくるようにすべきだという考えで、イギリスではそういうのが取られている。
 日本も、私は、アメリカ型を取らない、委員会等設置会社にならない会社も、できれば長期的にはそういった方向に行くのが望ましいと思ってそういうふうに主張したわけでありますが、ただ経済界等からは、少なくとも日本の現状はそこまで行っていないというような強い御指摘もあり、社会改革というのは一遍にできるものではありませんし、また確かに、さっき中谷参考人がおっしゃったように、トヨタのように従来型でうまくやっているところもあるわけで、そういうところに何で無理やりそういったものを強制するのかという疑問が出てくることも確かですから、社会改革は徐々にやっていくしかない面もありますので、まずできるところからということでこういう法案になっているし、両タイプのが言わば共存し、お互いに競争してもらうことによって将来的には結果を出してもらいたいというふうに思っている次第です。
#53
○参考人(中谷巌君) お答えいたします。
 私は、社外取締役を導入するというのは一種の保険ではないかという考え方なんです。つまり、確かにトヨタ自動車はそういった日本的なガバナンスの中で非常に優れた経営をしている会社ですね。そういう会社は幾つか日本にもあるわけですが、仮にこういった一般の公開会社が何らかの経営上の失敗を犯してしまったというときに、社外の人間は一人もいなかった、すべてインサイダーだけでいろんなことを決してきた結果、とんでもない落とし穴があったんだと、そういうことが発覚したときに、やはりこれはガバナンスの問題だというふうに指摘される可能性が非常に強いんではないかと思うんですね。
 やはり、もちろん社外の人間を入れても失敗はいろんなところで起こり得るわけですけれども、考えられるすべてのケースを想定して、いろんなチェック機能というものを我が社は取り入れていますと、そういう形の上でのガバナンスの構造を作り上げるかどうかという経営者の判断で本来行うべき改革だと思うんですね。したがって、理想論からいえば、強制的に法律で決めて社外取締役は何名以上必ず入れなさいというのは、ある意味ですごく情けないことではないかと思っております。
 本当は、たくさんの一般株主を抱えている一般公開会社が、どういう形で経営のスタイルというものを決していけば理想的な経営ができるだろうかということを考えて、そこからあるべきコーポレートガバナンスの在り方というものを考えていくと。そういうふうに、その結果、いや、うちの会社はどう考えても要らないというのであれば、じゃ、それでやってくださいということでいいんではないかと私は思うわけですが、しかしこれはあくまで理想論でありまして、そういうことを、本当にあるべき姿を考えた上でそういうふうにやっているのではなくて、ただ単に、アウトサイダーが会社の中に入ってくると非常に異物が入ってきたようでややこしい、自分たちの好きなことができない、そういうことのために、強制されるのは嫌なんだという会社も率直に言って結構たくさんあるんではないかなというふうに思います。したがって、次善の策としましては、やはりある程度の規定というものを導入すべきではないかというふうに思っております。
 これはあくまで次善の策として申し上げているわけですけれども、それが私の考え方でございます。
#54
○参考人(本渡章君) 大会社に社外監査役を一名以上義務付けようという案に対しては、日弁連の意見書においても賛成しております。それは、やはり取締役会に社外の目を入れるということは、やはり社内だけだと見えないものというのがあるわけですから、ほかの人の目で、これはちょっとおかしいんじゃないかとか、一般の社会の常識と外れているんじゃないかとか、そういうことがありますので、社外取締役がいた方がいいということで、社外取締役の選任義務化には賛成しておりまして、現在でも仮に法案になればそれには賛成すると思います。
 しかし、現実に社外取締役を入れた方がいいんじゃないかという考え方は、公開会社ですか、日経新聞なんかによりますと、三割から四割の会社はもう実際に社外取締役が入っているということなので、何で経済界がこれだけ一生懸命反対したのかというと、社外取締役を一人義務化するということは、二人ぐらい入れておかないと、仮にその方が事故でもあった場合には臨時株主総会を開かないといけないとか、そんなことまでちょっと考えたのかなというような気もいたします。したがって、社外取締役を入れた方がいいよということは、ある程度コンセンサスができつつあるんじゃないかなと思います。
 あと、この重要財産委員会というのが、今度、重要な財産の処分及び譲受け等、多額の借財をする場合には三人以上の取締役で作れるということになりましたが、そのときには社外取締役が一名以上、取締役会に入っていないといけないという規定がありますので、そういう点からも社外取締役を重視している法案ではなかろうかと考えております。
 以上でございます。
#55
○福島瑞穂君 社外取締役の要件については先ほどもありましたが、顧問弁護士はどうか、あるいは親会社の役員はなれるのに子会社の役員はなれないのはどうか、取引先の役員は禁止すべきではないかとか、いろいろ議論がこの法務委員会でもありました。
 社外取締役の要件等についても、今後の運用状況を踏まえて、その在り方について引き続き検討すべきではないかと思いますが、岩原参考人、いかがでしょうか。
#56
○参考人(岩原紳作君) お答え申し上げます。
 先ほどのいただいた御質問の答えで申し上げたように、私も、これはあくまで第一歩としての立法でありまして、実際の運用を見て、乱用的な社外取締役の利用などが出てきた場合には、速やかにその要件の見直しを図っていくべきだと思います。
 ただ、最初から想像できることをすべて考えて全部、禁止禁止ということにしていきますと、正にさっきから出ておりますような、どれだけ社外取締役の供給があるかというような問題もありますので、取りあえずはこういうもので始めていきますけれども、できればむしろ、さっき言いましたように、マーケットなどの力で実質的な淘汰がなされていくのが一番いいんですけれども、制度的にもそういった弊害的なものが出てきたときには速やかに要件の見直しをしていくべきだというふうに考えております。
#57
○福島瑞穂君 執行役なのですが、これは任期が一年と短いということについてどうかということと、それから取締役予備軍である執行役員に、例えばサムスン、これは韓国ですが、サムスン電子で六七%、SKテレコムで八〇%が四十代という新聞記事がありました。日本でこの制度を導入したときに、執行役が本当にばりばりの人たち、三十代、四十代が本当になるのかどうかということなども思ったりしているのですが、実際どんな感じになるんだろうかということについて、中谷参考人、いかがでしょうか。
#58
○参考人(中谷巌君) お答え申し上げます。
 四十歳代の人間が企業のリーダーになり得るかどうかということなんですけれども、実は日本の大企業におきましては大体六十歳前後ぐらいにならないと企業のトップにはなれないということが実は国際的に考えますと異常な事態でございまして、四十歳代が企業のリーダー、CEOであるというケースは外国の場合は非常に多いですね。
 そういうことで、日本は年功序列制度という日本独特な制度で徐々に役職が上がってきて、ようやく退職するころに社長になれるという、そういう状況にあるわけなんですけれども、実はグローバルに激しい競争をしている企業のトップの方々に聞きますと、もう正直言って六十歳になってから社長をするのは非常につらい、なぜかというと、外国の企業とハードなネゴシエーションをするときに、相手は四十代で、三日、四日、もうほとんど寝ないでもいいからどんどん議論しようということを言ってくるんだけれども、こちらは六十歳なので、一晩ぐらいは何とか我慢できても、それ以上はもうとてもじゃないけれどもできないということで、これは笑い事じゃなくて、多くの日本の大会社のトップは、日本の中ではしようがないから六十歳、六十五歳になって社長になっていきますけれども、できれば四十歳代で社長を出したいという気持ちを持っている会社トップが非常に多いですね。
 そういう意味で、私は、四十歳代、そういった年功序列ということじゃなくて、本当に資質がありリーダーシップのある人が出てくるような、そういう企業の人事制度というものを作っていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
 それから、執行役の任期が一年ということをおっしゃいましたけれども、これは、取締役会で執行役の執務態度を見ていて、業績を見、明らかに瑕疵があるというような場合には、今までのケースですと、年功制で普通の執行役員だった人が次の年に常務になるとかならないとか、そういう順番という考え方が非常に強かったんですけれども、やはりしっかりやった人とそうでない人の区別をきちっとするために、余り長期間、終身雇用的な保証を与えない方がいいだろうという、そういう考え方からすれば、別に必ず一年ごとに交代させるということではもちろんないわけですから、問題は発生しないんではないかというふうに思っております。
 それから、執行役の到達点が取締役というのが実は違うんではないかと。つまり、職務が全然違うわけで、普通のサラリーマンの経営者というのは執行ですので、そこが実は到達点だと。取締役というのはそういう経営者がやっていることの妥当性とか適法性というものを監督する立場にありますので、全く違うプロフェッショナルなんだという考え方をした方がいいのではないかというふうに思いますが。
#59
○福島瑞穂君 エンロン事件が議論になっていますが、例えばアメリカでは、不正行為に手を染めた企業の最高経営責任者を公開企業の幹部にすることを禁ずる新規立法などを提案だとか、英国に、イギリスにおいては取締役の資格剥奪などもあります。非常に厳しいとも思いますが、一方で強い権限を持つと同時に、このような責任も一方で議論されるべきだと思いますが、岩原参考人、いかがでしょうか。
#60
○参考人(岩原紳作君) おっしゃるとおりだと思います。
 先ほども、エンロンで早速、取締役会の下に作られました調査委員会が二百ページを超える調査報告書を出したというふうに申しましたが、アメリカと日本の大きい違いは、さっき中谷参考人が強調されましたように、どちらでも不正はあるんですね。アメリカみたいな制度を取っていても不正は必ず出てくる。人間がやっている以上出てくるんですね。問題は、不正が出たときに、後のアフターケアというか、それがどうなっているかということが重要だと思います。
 日本の場合、従来、不祥事なんかがあっても、そういった不祥事をきちんと検討してどこが悪かったのかということをはっきり突き止める報告が出る例が極めて少ない。わずかに山一の倒産のときなんかは関与された弁護士の方が報告書を出しておられますけれども、そういった例は非常に少なくて、それ以外にも、破綻に至らない例でも、例えば大和銀行の例の事件がありましたけれども、ああいったときにきちんと、何が一体悪くて、一体原因がどこにあったかというのを突き止めるきちんとした報告書が出てこないですね。アメリカの場合は、こういった大きい事件が起きますと必ず出てきます。それを、出てきた後でそれによってまず責任追及をちゃんとやると。無論、過大な責任追及はやるべきではないと思うんですけれども、必要な責任追及は必ずやる。それによって、かつ反省をして制度の見直しをやっていくと。
 むしろ、もしか問題が起きたら、必ずそれに対するペナルティーがあり、かつ、それによってその反省点を制度の中に生かしていく。それができるかできないかが両方の大きい一番違いだと思いますし、また民主主義というものはそういうものだと思いますので、それを日本でもやっていくと。だから、きちんとした原因の追求とそれから責任の追及、これが必ず行われていくといった体制を作る、これが一番大事だろうというふうに考えております。
#61
○福島瑞穂君 労働組合等のコーポレートガバナンスについて、岩原参考人はどうお考えでしょうか。
#62
○参考人(岩原紳作君) 適切な回答者だとは思いませんけれども、やはり労働組合も法人であり組織でありますから、会社と同じような共通する問題を多分抱えているはずだと思います。これは、労働組合だけでなくて、それ以外のいろんな組織体に常にある問題で、私は中間法人法の立法なんかにも関与しましたし、そういった公益法人とか、そういったものでもあらゆるタイプの組織に常に共通してある問題であって、このコーポレートガバナンスとして議論されている問題のかなりはそういったいろいろな組織についてもやはりあり得るし、そういう目での検討が必要じゃないかと思っております。
#63
○福島瑞穂君 社外取締役については、なかなかいい人がいないのだという回答もあるわけですよね。だから、鶏と卵で、育成をどうしていくか、あるいは研修をどうしていくかということは今後の課題だと思うのですが、その点について、中谷参考人、いかがでしょうか。
#64
○参考人(中谷巌君) 例えば、地方分権を進めるべきだという議論をするときに、いや、地方の自治体の要するにお役人のクオリティーは低いからそんな重要な決定を地方に任すことはできないんだ、優秀な人材は中央に集まっているんだと、例えばそういう議論が時々なされますけれども、これも同じことで、地方自治というものを実行に移せばそこに責任と権限が移り、そこでうずもれていた人たちが能力を発揮するようになりますし、あるいは優秀な人がそこに行くようになるかもしれませんし、鶏と卵と、正におっしゃったとおりで、私は社外取締役の問題も、今までそういう責任を課せられたことのない日本人が急に、じゃ、あなた、能力を発揮しなさいといってもこれは無理ですよね。
 ですから、こういう制度が定着して、そういう職務というものがちゃんと社会的に認知されるようになってくれば、当然それにふさわしい見識を持った人たちが輩出してくると、こういうふうに考えるべきではないかと思っております。
#65
○福島瑞穂君 では、本渡参考人にお聞きをいたします。
 所在不明株主の株式売却制度の創設があるわけですが、これについては、株式売却が権利の侵害ではないか、これで妥当かどうかという議論も出ているのですが、いかがでしょうか。
#66
○参考人(本渡章君) お答えいたします。
 私は、この所在不明株主の株式売却の制度は適当な制度であり、評価できると考えております。
 確かに、本人が知らないうちに株式が売られてしまうということはありますけれども、しかしそれはちゃんとお金としては取ってありますし、あと、もう五年も全然どこに行ったか分からない、配当金も受け取っていないという状況ですので、もうそれは会社の株主管理の費用等勘案しますと、こういう制度の下に売却していいと考えております。
#67
○福島瑞穂君 どうもありがとうございました。
#68
○委員長(高野博師君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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