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2002/05/15 第154回国会 参議院 参議院会議録情報 第154回国会 本会議 第23号
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2002/05/15 第154回国会 参議院

参議院会議録情報 第154回国会 本会議 第23号

#1
第154回国会 本会議 第23号
平成十四年五月十五日(水曜日)
   午後零時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十四号
  平成十四年五月十五日
   正午開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(瀋陽総領事
  館事件に関する報告について)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の報告に関する件(瀋陽総領事館事件に関する報告について)
 外務大臣から発言を求められております。発言を許します。川口外務大臣。
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(川口順子君) 五月八日に発生した瀋陽総領事館事件について、私から、議員各位及び国民の皆様に対し、事実関係の報告及び今後の対処方針について御説明したいと思います。
 まず、今回の外務省の対応ぶりにつき、種々御批判、御叱責等をいただいていることにつきましては、謙虚に反省しております。特に、今回の調査結果にもあるとおり、総領事館においては、危機意識の希薄さ、指揮命令系統・警備体制の不備等の問題がありました。議員各位及び国民の皆様の外務省に対する信頼を回復していくためにも、こうした問題点については厳しく反省した上で、今後、必要な改善策等を早急に講じていく考えです。引き続き、皆様の御理解、御支援を心よりお願い申し上げます。
 本事件は、現地時間八日の午後二時ごろ、北朝鮮出身者と見られる幼児を含む男女計五名が我が国の在瀋陽総領事館への入館を試みようとしたところ、中国側武装警察が、我が方の同意を得ることなく総領事館敷地内に立ち入り、最終的に同五名を連行したものです。
 本事件発生後、我が国からは中国側に対し累次ハイレベルで申入れを行い、私自身も十日、武大偉在日本中国大使に対し、本件は、領事関係に関するウィーン条約に規定される領事機関の公館の不可侵に反するものであるとして、五名の速やかな引渡しを強く求めるとともに、本件に関し、中国側の陳謝、再発防止の保証を求めたところです。
 中国側は、その後、外交部報道官談話を発表し、武装警察による総領事館敷地内への立入り及び関係者五名の連行について、総領事館側の同意があった旨主張しております。
 これに対し、外務省としては、事実関係を徹底的に解明するため、今回、現地に小野領事移住部長ほかを派遣の上、事実関係の調査を行い、中国側が指摘するような事実はないことを改めて確認しました。
 今回の事件につきましては、中国との間で事実関係の確認及び再発防止を含め、毅然と対処していく考えです。他方、中国側に連行された五名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要です。すなわち、何人であれ、いかなる場合においても、自らが迫害を受けるおそれのある国・地域に送還されてはならないとの要請が満たされることが何よりも重要であると考えます。こうした観点からも、今後の中国政府の対応を、我が国を含む国際社会全体で注視していくことが重要と考えます。
 我が国としては、引き続き、国際法及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えです。引き続き皆様の御理解を心よりお願い申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(倉田寛之君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。山本一太君。
   〔山本一太君登壇、拍手〕
#6
○山本一太君 私は、自由民主党・保守党を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる瀋陽事件に関する外務大臣報告に対し、総理及び外務大臣に一問ずつ質問をさせていただきます。
 先般、中国遼寧省の瀋陽市にある日本総領事館で発生した北朝鮮住民五名による亡命未遂事件は、国際社会に大きな衝撃を与えました。総領事館の入口で泣き叫ぶ女性、おびえて立ち尽くす小さな女の子の姿をとらえたショッキングな映像は、連日、世界に向けて報道され、多くの日本国民に怒りと驚きを与えました。
 言うまでもなく、総領事館はウィーン条約三十一条で不可侵が定められております。日本政府が、中国の行為は重大な国際条約違反、主権侵害行為であるとして抗議を繰り返し、中国政府に対して陳謝と再発の防止、さらに五人の身柄の引渡しを求めているのは当然のことと考えます。
 これに対し、中国側は、これは総領事館の安全確保のための措置であり、条約には違反していないと反論しています。しかしながら、背中に幼女をおぶった女性を含む今回亡命を図ったグループが、総領事館に危害を加えたり、テロ行為をもくろんでいたとは到底考えられず、中国側の説明は全く正当性を欠いていると言わざるを得ません。
 中国側が国際法上のルールを踏みにじっていること、また人道上の観点等から考えれば、日本政府が毅然とした態度で対応すべきことは当然です。中国当局に連行された五名については、水面下で第三国への出国について折衝が行われるといった一部報道もありますが、まずはきちんと日本側への身柄の引渡しを求め、間違っても北朝鮮に送還されるような事態を招かぬよう、最大限の努力を要請したいと思います。
 今回の事件についての総理の基本認識を伺いたいと存じます。
 さて、今回の事件では、武装警官の館内立入りに際し、日本側が同意を与えたか否かについて日中間の主張に相違が見られます。最も大きな問題は、総領事館側が武装警官に対し、明確に立入りを拒否しなかったと見られかねないような緊張感を欠いた対応を取ったことだと思います。
 同様の駆け込み事件が続き、こうした事態の可能性が想定されていた状況の中での、この領事館の危機意識の欠如、外交官の人権感覚は厳しく問われなければなりません。緊急時における在外公館の対応を見直すと同時に、外務省の指揮命令体制の強化、徹底、警備体制の見直しなどに早急に着手すべきことは言をまちません。
 しかしながら、今回の事件は更に大きな問題を日本社会に投げ掛けました。それは日本という国が、今後、難民や亡命者に対してどのような対応を取っていくかということです。こうした事態が増加する可能性、さらに、国際法において、難民条約等で、人道上の観点から難民や亡命者の保護を明確にしているという状況を踏まえ、加えて、世界が日本の対処を注視する中で、いかなる判断を行っていくのか、この点に関する外務大臣の御所見を伺います。
 今回の問題は、国家主権や人道問題に絡む問題です。毅然とした態度で臨むという総理の言葉どおり、日本政府の立場を貫く必要があります。
 他方、この秋の日中国交回復三十周年に向け、日中の相互信頼関係を深めていかなければならないことも事実です。日本政府が、この亡命未遂事件全体について、日本国民に対し引き続き明快な説明を行うとともに、中国政府に対し毅然とした態度で、しかし冷静かつ戦略的に日本政府の立場を示し、一刻も早くこの問題の解決を図ることを重ねて強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山本議員にお答えいたします。
 瀋陽総領事館事件に対する基本認識及び人道的解決の実現についてのお尋ねでありますが、中国側に連行された関係者五名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要であると思っております。こうした観点からも、今後の中国政府の対応を、我が国のみならず国際社会全体がともに注視していくことが同時に重要ではないかと考えております。
 我が国としては、国際法及び人道上の観点から、冷静に毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、早期の解決に全力を尽くしていく考えであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(川口順子君) 日本政府が難民、亡命者に対し国家としてどのような対応をしていくつもりかという点についてのお尋ねでございますが、我が国における難民の受入れに関して、難民認定は法務省の所管ですが、同省においては、難民条約にのっとり、個別に審査の上、適正に難民の認定を行っているものと承知しております。
 いわゆる亡命については、一般国際法上確立された定義があるわけではありません。しかしながら、外国人が我が国の在外公館に庇護を求めてきた場合の取扱いについては、関係者の人定等の事実関係や希望等を確認した上で、当該者の身体の安全確保等の人道的観点や関係国との関係を総合的に考慮し、具体的対応を検討することが必要と考えます。
 今回の事件を契機として、いわゆる亡命について、我が国の在り方について幅広い議論をする必要があると考えます。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(倉田寛之君) 木俣佳丈君。
   〔木俣佳丈君登壇、拍手〕
#10
○木俣佳丈君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま川口外務大臣より報告がありました瀋陽総領事館事件について質問をいたします。
 質問をしようと思ったんですが、総理、このような重大な日中間の問題に、今のような質問、そしてまたこの答弁、全く緊張感ないじゃないですか。あなたは、だから、そういう大変な何か問題になっておるにもかかわらず、全く私は緊張感が感じられない。当事者能力がないならば、お辞めになったらどうでしょうか。怒りを本当に私は禁じ得ない思いであります。
 質問に移ります。
 ビザを出してもいいですか、この日本の外務省へあてた電報の返事、ビザを出してもいいですか、この返事は、外務省から来たものは、正規の手続ができない者にビザを出してはいけないというそっけないものでありました。ビザを発給しユダヤ人の命を救うべきか、命令に従って外交官としての輝かしい道を守るべきか、氏は悩み、そして一つの答えを出したのでした。
 これは何の話だか、総理、外務大臣、お分かりでしょうか。イスラエル建国の恩人、諸国民の中の正義の人と呼ばれ、六千人の命のビザとして知られる杉原千畝のやり取りでございます。
 それに引き換えて、今回の瀋陽総領事館めぐる日本政府の対応はどうでありましょうか。最近の日本外交の余りにも顕著な、無責任極まりない、緊張感が全く感じない、ずさんな、それゆえ国益を損していることこの上ないこの日本外交の現実を深刻に受け止めるのは私一人ではないと思います。
 我が国の国益と国民の利益を守り、それを増進させることが外務省に課せられた最大の任務でありながら、最近は自分の利益や身を守り、増進させる機関となったようでございます。
 まず、冒頭申し上げたいのは、疑惑のデパートのあの方についてであります。
 公設秘書や二人三脚とまで言われた外務官僚が相次いで逮捕されながら、疑惑を一切晴らさず、国会でも昨日なぜかしら辞職勧告決議案の上程が自民、保守の横暴で再度見送られました。本院の三月、予算委員会で総理が約束された支援委員会の調査も何ら出ておりません。我々は、この鈴木宗男問題について、御自身からの明快な説明なくして国会の威信回復はないと思いますが、総理はそうは思われないんですね。総理、答えてください。
 さて、瀋陽総領事館事件で世界に流れたこのテレビ映像によって、世界の人々は日本をいかにイメージしたでしょうか。総領事館の敷地内から女性を引っ張り出そうとする中国人武装警官、これに懸命に抵抗して門にしがみつく女性、その傍らには悲しそうに立ちすくむ幼い少女、やがて現れた総領事館職員の現場の状況とは余りにも懸け離れた傍観者的な対応、総領事館侵入の証拠ともなる武装警官の帽子を拾い渡す姿、この映像が世界に流れたのであります。しかも、この映像が事実を伝えるすべてであるとは言えないようでもあります。
 今朝の報道の中で、事件の四時間前、阿南大使は、大使会議で、大使館会議で、ともかく来たら追い返せ、仮に人道問題になっても面倒に巻き込まれるよりはましだ、必ずおれの方で責任を取ると、との記述があり、仰天しました。外務大臣、このことは事実ですか。
 そして、与党の中からさえも外務省調査に隠匿があったとの声がありますが、なぜ隠匿したのか、これは大変な問題です。責任を取るというのならば、調査にうそがあったら責任を直ちに取っていただきましょう。そしてまた、引責をもって大臣も当然御辞任をするべきだと思います。
 また、亡命希望者から手紙が渡っていたとも記されておりますが、これが本当なんですか。
 中国側武装警官が拘束した五名を警察詰所から出そうとしたとき、査証担当領事からの電話連絡に対し、北京の日本大使館公使及び瀋陽総領事が連行やむなしとの指示を出したようでありますが、これらの経緯はどうであったのか、これでも指示が適切であって、調査報告書に偽りがないと言えますか。外務大臣、判断をお聞きいたします。
 映像自体、マスコミがNGOからの情報を事前に入手し、用意周到に撮影したもののようでありますが、どうして日本政府瀋陽総領事館は事前にこうした情報を入手することができなかったのか。在外公館の重要な機能の一つは情報の収集であります。今回の事件に遭遇して、また外務省の情報収集体制の欠陥があらわになりました。情報収集体制はどうなっているのか、外務大臣にお伺いをいたします。
 今回の事件に関しては、その後、北朝鮮住民による亡命目的の駆け込みであり、国際条約に反して武装警官が無断で総領事館深くに立ち入り、二人の人を強制連行した事実などが明らかになるに従い、我が国の対応がいかに外交のイロハさえもわきまえない行為であったか、人権外交重視と唱えながら、実際には人権尊重のかけらも見えない日本外交であったかが残念ながら白日のものになりました。
 世界の人々は、これが日本の外交であるとイメージしたのであります。それだけに、今回の事件は我が国外交上の大失態であります。様々な意味で我が国の国益を著しく損なったことは明らかであります。日本外交に対する世界の信頼は完全に地に落ちました。一度地に落ちた国際的信頼の回復は並大抵のことではございません。
 総理、外務大臣は、我が国外交にとって、ひいては国際社会における日本の地位といった観点から、今回の事件をいかに受け止め、今後、国際社会における我が国の信頼回復をいかに図っていかれる御決意か、しっかりと国民に向かってお述べいただきたいと思います。
 今年は日中国交三十周年、記念すべき年でございます。今回の事件がこの祝賀ムードに水を差す結果にならないよう願うものでありますけれども、そのことと、我が国として今回の事件に毅然たる態度で対処し、我が国国民が納得のいく解決を図るべきこととは全くの別問題であります。中国の武装警官が我が国の同意を得ることなく総領事館に立ち入ったという国際法上の違法行為、我が国の主権侵害、極めて明確である以上、我が国が中国に対して原状回復と謝罪を求めるべきは余りにも当然であります。中国側がこれにどうしても応じないというのであれば、我が国として何らかの対抗措置を講じてもおかしくはないくらいでございます。
 いずれにせよ、私は、外交は決して黒か白かの決着を付ける営みではないことは承知しておりますが、今回の事件に限って言えば、さきの外務大臣の報告に基づく限り、責任のすべては中国側にあることになるのであります。我が国の主権が侵害され、我が国の名誉にかかわる今回の中国側の行為につき、今後いかなる外交交渉を進め、その回復を図っていくつもりか、総理、外務大臣の明確な姿勢をお示し願います。
 言うまでもなく、今回の事件の解決に当たっては、北朝鮮住民と思われる五人の取扱いが外交上最も重要な問題であります。現在、身柄が中国側にあるため、我が国は関係者の詳細を知り得ない立場にあろうと思いますが、現時点で中国側からはどのような報告、連絡を受けているのか、詳しく国民に明らかにしていただきたいと思います。
 また、解決に当たって重視すべきキーワードは人道であります。いかなる理由があろうとも、五人の生命、自由が脅かされるおそれのある国、特に国籍国に追放、送還されるようなことがあっては絶対にならないのであります。中国側も、この国際法上のノン・ルフールマンの原則に当然従うものと期待しますが、我が国としては、中国が、五人を絶対に北朝鮮に追放、送還するようなことがないよう、監視を怠らず、また中国側に強力に働き掛けていくべきであります。そうすることこそ、今や完全に地に落ちた日本外交ができるせめてもの信頼回復への道であることを為政者は知る必要があります。総理、外務大臣の決意を伺います。
 ところで、五人が仮に日本への亡命を希望してきたら政府はどう対応するのでしょうか。これこそ日本外交の最大のウイークポイントであります。過去にも在外の日本大使館や総領事館、あるいは日本国内で亡命を求めるケースがあったと承知しますが、我が国は亡命の受入れに消極的であり、国内に限って難民申請を認め、ケース・バイ・ケースで人道的観点から在留を認めるというのがこれまでの対処方針であったと理解します。
 亡命を認めるか否かは正に外交政策上の大原則であり、非常に難しい判断を迫られるところでありますが、この問題をないがしろにしたままで在外公館の職員を幾ら叱咤してみても、それでは出先公館が困惑するばかりであります。
 この際、亡命問題に関する我が国の明確な基本方針を法務大臣に、また在外公館における具体的な対処方針を外務大臣にお伺いいたします。
 総理、今、有事法制という国民に大変な制約を課することとなる法案を提出しています。今の外務省、そして内閣に一体国民のだれが信頼を寄せるのでしょうか。外交を担い、国益を追求し、確保すべき最も重要な職責にあるプロ集団であるはずの人たちが国益を著しく損なってしまったのであります。
#11
○議長(倉田寛之君) 木俣君、時間が超過しております。簡単に願います。
#12
○木俣佳丈君(続) 国民の信頼を得ていない中で、本当に国民の力強い下支えのある有事法制となり得るとお考えなのですか。
 信なくば立たずと政治哲学の中心に持っていらっしゃる総理、日本外交に信はなくなりました。外務省は解体すべきであります。同様に、現政権も信がなくなりました。総理には勇気ある二つの御決断があります。退陣若しくは解散しか残っていないがいかがかを最後の問いにし、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#13
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 木俣議員にお答えいたします。
 鈴木議員についての質問でございますが、およそ国会議員たるもの、疑惑を持たれたときはこれを重く受け止めて、進んでその真相を国民の前に明らかにしていくべきものと考えております。
 今回の瀋陽の事件についての受け止め方と、我が国の信頼回復に対する取組についてでございますが、今回の中国側の行動は国際法及び人道上の観点から極めて問題であると考えております。
 我が国としては、本事件に対し、冷静に毅然として対応しつつ、早期の解決に全力を尽くすことにより、内外の信頼回復を図っていく考えであります。
 同時に、在外公館の体制作りや情報収集の一層の改善が急務と考えております。
 今後の中国政府との外交交渉についてでございますが、本件については、今後、今回の調査結果を踏まえ、中国側武装警察官の総領事館立入り及び関係者五名の連行について、日本側が同意を与えたとの中国側の主張に引き続き反論していく考えであります。
 いずれにせよ、我が国としては、国際法上及び人道上の観点から、冷静に毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の解決に全力を尽くしていく考えであります。
 五人を北朝鮮に送還しないよう中国側に働き掛けていくべきとのお尋ねでありますが、連行された関係者五名の処遇をめぐっては人道上の観点が配慮されることは当然だと思っておりますし、なおかつ重要だと考えております。我が国としては、中国側との協議を通じ、このような観点から本事件の早期解決に全力を尽くしたいと考えております。
 有事法制の整備についてでございますが、武力攻撃事態対処法関連三法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものであります。多くの国民から理解を得られることができるように、全力を挙げて取り組んでまいります。
 私、小泉内閣の退陣と解散についてのお尋ねがありますが、改革を推進して実績を上げて、来るべきときに信を問うべきものであって、今の時点で退陣や解散は毛頭考えておりません。
 残余の質問は、関係大臣に述べさせます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(川口順子君) 情報収集を含め外務省の体制等についてお尋ねがありました。
 外務省としては、様々な緊急事態に対処できるような体制作り、情報収集に努力してきたところですが、今回の事件につき結果として事前に情報を入手することができなかったこと、これを重く受け止めなければならないと思っています。
 今後とも、緊急事態に十分対処できるように情報収集能力を見直し、必要な改善を早急に講じていく考えです。
 今回の事件についての認識と、今後の我が国の信頼回復に対する取組に関するお尋ねがありました。
 今回の事件では、総領事館の対応について、意識面、指揮命令系統、警備面等について種々問題があったことは明らかでありまして、こうした問題について厳しく反省することが必要です。
 他方、中国側の武装警察の行動は、国際法及び人道上の観点から極めて問題であると考えています。こうした点をきちんと主張し、冷静かつ毅然として対処しつつ、早期の解決を図ることこそ、日本外交の姿を国際社会にしっかり示すことになると考えます。
 関係者五名が連行される際の在中国大使館公使及び総領事の指示についてのお尋ねがありました。
 在中国大使館公使は、最終的には連行されても仕方がない旨述べ、また、この間、総領事からも同様の連絡があったものと承知しています。これは、現場の状況が緊迫の度合いを増す中で、武装警察にこれ以上抵抗して物理的に押しとどめることができないとの判断をしたためです。
 今後の中国政府との外交交渉についてのお尋ねがありました。
 本件について、今後、今回の調査結果を踏まえ、中国側武装警察官の総領事館立入り及び関係者五名の連行について日本側が同意を与えたとの中国側の主張に引き続き反論していく考えです。
 いずれにせよ、我が国としては、国際法上及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じて本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えです。
 関係者五名の身元調査についてのお尋ねがありました。
 中国側は、五名の身元につき調査中であると承知していますが、我が方に対して具体的な情報提供があるわけではありません。
 関係者五名についての今後の扱いにつきお尋ねがありました。
 関係者五名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要です。すなわち、何人であれ、いかなる場合においても、自らが迫害を受けるおそれのある国・地域に送還されてはならないとの要請が満たされることが何よりも重要であると考えます。
 我が国としては、引き続き、国際法上及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じて本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えです。
 今回の事案における五名が亡命を希望した場合の対応と、亡命問題に関する在外公館の対処方針につきお尋ねがありました。
 我が国の在外公館は、亡命希望者への対応として、個別の事例に応じて本省の指示に従って対処することとしております。一般的には、申請者の人定事項等の事実関係や同人の希望を確認し、身体の安全が適切に確保されるかどうかといった人道的観点や関係国との関係等を総合的に考慮して対応を検討することとしています。
 仮に、御質問の五名について我が国への亡命希望があれば、このような方針に基づき対応を検討することとなります。
 阿南大使の発言についてお尋ねがありました。
 阿南大使が御指摘のような指示を行ったという事実はなく、発言を隠匿しようとしたこともありません。五月八日午前の大使館内定例会議において、在北京の外国大使館、外国公館への脱北者の侵入が相次いでいる事態を踏まえて、特に五月初めから北京の大使館地区における警備体制が強化されたため、同館でも警備の強化措置を取ったとする警備担当官からの報告を受け、阿南大使からも、いったん館内に入った以上は人道的見地からこれを保護し、適切に対処する必要があるが、大使館の警備を一層厳重にすべきことは当然であるとの考えを示しました。
 今後の中国政府との外交交渉についてのお尋ねがありましたが、我が国としては、中国側の主張に引き続き反論するとともに、国際法上及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の解決に全力を尽くしていく考えでございます。
 調査の内容につきお尋ねがありました。
 本事件の発生後、日本側としては、直ちに事実関係の解明に取り組み、中国側に抗議を行いました。今般の調査結果は、その後の中国側の反論を踏まえ、一番中心となる我が方が同意したかどうかという点を中心に、総領事館員等から事件発生当日の対応等につき直接の聞き取り調査を行った結果を取りまとめ、外務省として慎重な検討を行って作成したものでございます。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(森山眞弓君) 木俣議員にお答え申し上げます。
 亡命問題に関する我が国の基本方針についてお尋ねがございました。
 亡命という用語につきましては、難民のような確立された定義はございませんが、例えば、在外の日本国公館で我が国にいわゆる亡命を求めた者がある場合について申し上げます。
 我が国の在外公館においては、現在、難民認定手続を行える体制にはなく、また、現行法上も難民認定申請は本邦において行うこととされております。実際には、我が国に亡命を求めた者が当該在外公館で渡航証明書等の渡航文書を得て我が国に入国し難民認定申請をした場合には、個別に審査の上、その者が人種、宗教、政治的意見等を理由に迫害を受けるおそれがあるときは難民として認定しております。このような条約上の難民に該当しない場合でも、人道的観点から短期滞在等の在留資格を付与すべき者と認められるときには、本邦での在留を許可することとしておりまして、出入国管理及び難民認定法、難民条約等により適正に対処してきております。
 今後とも、難民等受入れの在り方については、国の内外における人道、人権に関する意識の動向に十分配慮しつつ、政府全体として考えていくべきものと考えております。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(倉田寛之君) 山口那津男君。
   〔山口那津男君登壇、拍手〕
#17
○山口那津男君 私は公明党を代表して、去る五月八日、中国瀋陽の日本総領事館において発生した事件について、以下のとおり質問をいたします。
 本件の解決に求められるべきことは、事態を直視した冷静な解決の姿勢であります。
 折から、日中国交回復三十周年の佳節に当たり、日中友好の歴史に水を差す結果とならないよう賢明な対応が求められます。
 そこで第一に、国民も国際社会もこぞって注目するところは、中国側に身柄を拘束された五人の人々の人権と自由を保障した人道的解決がなされるか否かであります。
 抑圧から逃れようとした人々が抑圧の国へ戻されることは断じて阻止しなければなりませんし、そうすることが日中双方が加入する難民の地位に関する条約の精神にも合致するからです。
 また、本件の後に発生した米国総領事館やカナダ大使館に保護された人々が韓国など第三国への出国を実現しつつあることと対比すると、これらと異なる結果が出ることは身柄の確保ができなかった日本の対応への非難も免れないものと考えます。
 さらに、こうした人道的解決を図ることは、今日の国際社会において、日中双方の国益にかなうものと確信してやみません。
 そこで、何よりもまず総理はこのような人道的解決を早期に実現することに最大限の努力を尽くすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 あわせて、いわゆる亡命について我が国の在り方を検討し直すときが来ていると考えますが、総理の御所見を伺います。
 次に、領事関係に関するウィーン条約第三十一条について、公館への侵入に同意を裏付ける事実があったか否かで日中間の主張が対立しておりますが、日本側の主張を毅然と訴えることは当然としても、問題は、日本側の行為が黙示の同意や追認を争う余地を残してしまった点であります。少なくとも、日本の調査結果は、中国側の主張に比べ具体性に乏しく、主張が後手に回っている感を否めません。
 こうしたトラブルの余地をなくすために、立入りの拒否や退去の求め方についての言動の在り方を準則化し、徹底した教育訓練をなすべきであります。
 中国側が一九九八年に起きた東京の中国大使館事件を挙げて反論していることは、逆の意味で、明示的同意がない場合の侵入の解決について問題提起しているととらえるべきであります。
 これらの点について外務大臣の見解を伺います。
 最後に、外務省改革の一環として、再発防止策を講じよということであります。
 調査結果によれば、瀋陽が緊張状態にあることを認めながら、我が国総領事館の危機意識は比較的希薄であったとは信じ難いことです。むしろ反対でなければならないはずです。しかも、総領事館の副領事らの初動の対応のみならず、指示を仰ぐべき北京大使館や本省の対応もその当否や一貫性に問題が残ります。
 設備や人員配置の見直しはもちろん、外務公務員の使命感、士気高揚の点も含めて、再発防止に全力を挙げるべきであります。
 このたび、新たな職員の逮捕者を出したことは誠に遺憾であります。そのようなときだからこそ、本件に関する問題の再発防止についても外務省改革の一環として、是非、川口外務大臣のリーダーシップの下にやり遂げていただきたい。その方策と決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#18
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山口議員にお答えいたします。
 人道的解決の早期実現に関するお尋ねでありますが、中国側に連行された関係者五名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要だということでありますが、同感であります。
 我が国としては、国際法上及び人道上の観点から、冷静に毅然として対処しつつ、対応を、中国側との協議を通じて本事件の早期解決に向けて全力を尽くす決意であります。
 いわゆる亡命について我が国の在り方を検討すべきではないかとのお尋ねでありますが、外国人が我が方在外公館に庇護を求めてくる場合の具体的な対応は、個々の事案ごとに異なりますが、一般論としては、申請者の人定事項等の事実関係や同人の希望を確認し、人道的観点や関係国との関係などを総合的に考慮して対応を判断することとしております。
 いずれにせよ、今回の事件を契機として、いわゆる亡命についての我が国の在り方について、今後幅広い議論をしていきたいと考えます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(川口順子君) 中国側武装警察官の公館への侵入に対する日本側の行為についてお尋ねがありました。
 中国側武装警察官の最初の総領事館敷地内への立入り、また、査証待合室に到達した二名を連行するための総領事館内への立入りのいずれについても、日本側が同意を与えたとの事実はありません。
 一方、中国側は、武装警察官の総領事館への立入りについて日本側の同意があったとしていますが、今回の日本側の調査結果を踏まえ、引き続き中国側の主張に詳細に反論していく考えです。
 日本の主張が後手に回っている感が否めないとのお尋ねがありました。
 本事件の発生後、日本側としては、直ちに事実関係の解明に取り組み、中国側に抗議を行いました。今般の調査結果は、その後の中国側の反論を踏まえ、総領事館員等から事件発生当日の対応等につき直接の聞き取り調査を行った結果を取りまとめ、外務省として慎重な検討を行って作成したものです。
 在外公館職員の教育訓練についてのお尋ねですが、今回の事件では、危機意識が希薄であったこと等に加え、警備面でも不十分な点があったことは確かであり、深く反省しています。二度とこのようなことを繰り返さないよう、私は、在外公館が様々な緊急事態に十分対処できるよう、在外公館の警備マニュアル等を根本から見直すとともに、いざというときの対処ぶりを日ごろから館員に周知徹底する措置を早急に講じていきたいと思います。
 九八年五月の在京中国大使館の事件との関連につきお尋ねがありました。
 九八年の事件では、日本側の行為につき、中国側からは、現場では何ら異議申立てなく、侵入者の身柄を確保したこと自体には理解が示されたと言えます。一方、今回の事件では、日本側の制止にもかかわらず、訪問者を中国側の公安部門へ連行したものであり、両事件は全く性格の異なるものであり、これらを比較することは不適当であると考えます。
 瀋陽総領事館事件の再発防止に関するお尋ねがありました。
 今回の調査結果により、総領事館の対応についても、危機意識の希薄さ、指揮命令系統の不備、警備体制の不備などの問題が明らかになりました。
 また、今般逮捕者を出したことを心から厳粛に受け止めており、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。
 国民の皆様の信頼を失わないためにも、そうした問題点について厳しく反省した上で、今後、必要な改善策等を早急に講じていく決意でございます。(拍手)
    ─────────────
#20
○議長(倉田寛之君) 小泉親司君。
   〔小泉親司君登壇、拍手〕
#21
○小泉親司君 私は、日本共産党を代表して、中国瀋陽総領事館事件の外務省報告について質問をいたします。
 今回の問題では、事件の本質的な部分で日本側と中国側の説明が食い違っており、事実の解明が必要であります。そこで、幾つか事実関係をただしたいと思います。
 昨日、総理は、我が党の質問に対し、本年三月以降、北朝鮮から脱出する者の事案が頻発していることも踏まえ、これらの者が在外公館に侵入した場合を念頭に対処を準備し、関係公館に伝達していたと答弁されました。侵入というのは、押し入るという意味でありますが、これへの対処というのは受入れ阻止の措置を取るということではないのですか。もしそうでないというなら、どういう対処措置を取るように指示していたのですか。明確にしていただきたいと思います。
 現に、阿南中国大使は、不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようという場合には侵入を阻止すると述べています。もし、そうでないというなら、どういう対処措置を取るよう指示していたのか、説明すべきであります。
 また、総理は、難民認定申請について個別に審査すると述べました。ということは、その人物が不審な侵入者かそうでないのかを個別に判定するということになります。しかし、一般的に侵入者として受入れ阻止をしながら、どうやって個別審査をするのですか。また、これまで日本の在外公館に北朝鮮からの脱出者が何人来たことがあるのですか。そのうち、何人受け入れたのですか。この際、明らかにしていただきたいと思います。
 外務大臣は、領事館の門扉が少し開いていたことに関して、閉めておけばよかったと記者会見で述べています。ということは、今回のケースのような場合、一切門を閉ざしておく、つまり一切受け入れないというのが日本外務省の方針なのですか。
 また、北朝鮮脱出者五人のうちの一人が警備担当副領事に手紙を渡したが、副領事はその手紙を読んだ後、本人に返したことが明らかになっています。この手紙には脱出者の希望が書かれていたはずです。それを返したということは、事実上受入れ拒否の意思表示をした、もっと言えば、手紙ごと中国側に引き渡したということになるではありませんか。しかも、この重要な事実が外務省報告ではなぜか記載されていません。それはなぜなのですか。答弁を求めます。
 川口外務大臣も、十三日の記者会見で、北朝鮮からの亡命希望者に対する対応策について、対処ぶりあるいは考え方ということは作ってある、関係の公館にはそれを伝えてあると述べています。
 外務省は、この文書を公表しないということですが、なぜ公表しないのですか。外務大臣はどのような対応を指示してきたのですか。この中には、北朝鮮から脱出した人々についての対応が含まれているのですか。瀋陽総領事館の今回の対応は、この考えに明確に沿っていたものなのですか、それとも違った対応であったのですか。併せて答弁を求めるものであります。
 次に、中国側警察官が総領事館に立ち入ることに日本側が同意していたのかどうかの問題であります。
 最初の立入りについて、外務大臣は昨日、中国側警察の総領事館立入りの際、我が方総領事館員は、いずれもそのことを明確に認識しておらずと答弁しました。なぜ立ち入ったと認識しなかったのですか。政府は、中国側警察官が公館敷地内に入り女性ら三名を敷地外に連れ出した今回の行為が、領事関係ウィーン条約第三十一条の不可侵の規定には入らないと解釈するのでしょうか。あるいは査証待合室まで立ち入れば条約違反と考える見解なのでしょうか。説明していただきたいと思います。
 さらに、中国側警官が敷地内を通って査証待合室にまで立ち入り二人の男性を連行する際、総領事館員はどういう対応をしたのかという問題であります。
 報告書では、中国側警官は副領事の横をすり抜け、副領事が言葉を発する間もなく査証待合室から門外に連れ出したと説明しています。
 しかし、男性二人が座っている間、あるいは査証待合室から玄関までの約三十メートルの間連行されていく後を追ったにもかかわらず、副領事は本当に一言も抗議の声を発しなかったのですか。時間的ゆとりがあったはずなのに、警察官に抗議を行い、引渡しを要求することを全くしなかったのですか。説明を求めるものであります。
 最後に、日本は難民の受入れについて、国際的に最も門の狭い国として、時代後れと指摘されております。今回の事件からの教訓として、このような現状を打開する必要があります。
 総理は、難民条約の適正な運用に配慮するということに終始していますが、難民問題や他国からの出国者問題については一切見直しをしないというのですか。この点についての総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#22
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小泉議員にお答えいたします。
 今回の事件に関連し、不審者立入りへの対応についてでございますが、我が国は、在外公館の機能を保全する観点から、入館しようとする者についてはしかるべく警備上のチェックを行っており、身元が確認されていない不審者を安易に入館させることは行っておりません。
 他方、北朝鮮から脱出した者の扱いについて一般論を申し上げれば、関係者の人定事項等の事実関係を確認し、同人の希望等を聴取した上で、当該者の生命又は身体の安全が適切に確保されるか等の人道的観点や関係国との関係等を総合的に考慮し、具体的な対応につき検討をすることになります。したがって、あらゆる場合に受入れ阻止の措置を取るということではありません。
 難民認定の審査についてでございますが、出入国管理及び難民認定法によれば、難民認定申請は本邦にいる外国人から行われることとなっており、その審査も我が国国内において実施されています。今後、我が国において難民申請を希望する者の入国の問題を含めて、難民受入れの在り方については、国の内外における人道、人権に関する意識の動向に十分配慮しつつ考えてまいりたいと思います。
 なお、北朝鮮からの脱出者の人数等に関するお尋ねについては、本人たちの身の安全にかかわる問題であり、お答えすることは差し控えたいと思います。
 難民認定や他国からの出国者の審査についてでございますが、難民認定申請については、従来より、国際的な取決めである難民条約等にのっとり、個別に審査の上、難民として認定すべき者は認定していると承知しております。
 今後、我が国において難民申請を希望する者の入国の問題を含めて、難民受入れの在り方については、国の内外における人道、人権に関する意識の動向に十分配慮しつつ考えてまいりたいと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(川口順子君) 瀋陽総領事館の門扉の開閉に関するお尋ねですが、在外公館の正面ゲートは通常閉じた上で、門扉内側に配置された警備員が、来訪者につき訪問目的と身分証明書等を確認した上で個々に入構を認める方法を取るように指示しています。
 脱北者につきましては、中国へ不法入国している者が多いわけですが、いったん館内に入った以上は、人道的見地からこれを保護し、第三国への移動等、適切に対処する必要がある。他方、大使館としては、昨年来、テロに対処するという観点からも、警戒を一層厳重にすべきことは当然であって、不審者が大使館敷地等に許可なく入構、侵入しようとする場合には、規則どおり、門外で事情を聴取するということでございます。
 中国側に連行された関係者の手紙についてお尋ねがありました。
 警備担当の副領事は、武装警察詰所で関係者五名のうちの男性一名から、英語でタイプ打ちされたメモ二枚を見せられましたが、内容が理解不能であったため、そのまま本人に返しました。
 同副領事は、武装警察詰所から関係者が連行されようとした際に、両手を大きく広げて入口をふさぎ、武装警察の動きを制止しており、また、関係者五名が連行された直後に公安当局等に出向き、抗議するとともに引渡しを求めています。
 また、先般、公表しました調査結果は、我が方と中国側で事実認識が異なる点、特に、総領事館敷地内への立入りと連行に際しての同意の有無という基本的な事実関係を中心に記述したものですので、同メモについては同調査結果では言及しませんでした。
 北朝鮮からの脱出者に対する対応策に関するお尋ねがありました。
 脱北者に関する対処ぶりの内容は、関係者の生命にかかわることであるので、公表は控えたいと思います。
 公館の不可侵の侵害という問題は、脱北者の扱いとは異なる問題ですが、いずれにせよ、在瀋陽総領事館では危機意識が比較的希薄でした。
 外務省としては、今回の事案を踏まえ、今後の対処ぶりについて関係在外公館に指示したところです。
 中国の武装警官の総領事館立入りについてのお尋ねがありました。
 査証担当副領事が正門付近に到着したころには、武装警官らは門にしがみついている女性を引き離そうとしており、その時点で、副領事は、敷地内に立ち入っていたという認識はありませんでした。武装警官が敷地内に立ち入っていたという認識はありませんでした。また、副領事が正門付近から査証待合室に戻る際、五、六名の武装警官が背後から入ってきたため、彼らには気付きませんでした。
 中国側の武装警察が我が方の同意なく我が方総領事館に立ち入ったこと、女性ら三人を含む関係者全員を中国側公安へ連行したことは、領事関係に関するウィーン条約三十一条及び人道上の観点から極めて問題であると考えています。
 男性二人が待合室から連行された際の抗議に関するお尋ねがありました。
 男性二人が待合室から連行された際には、調査結果にあるとおり、現場にいた副領事から抗議を行う時間的余裕はありませんでした。
 いずれにせよ、関係者五名が連行された直後、警備担当副領事が中国側公安当局に赴き、国際法違反に対する抗議と関係者の引渡しにつき申入れを行いました。
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#24
○議長(倉田寛之君) 田村秀昭君。
   〔田村秀昭君登壇、拍手〕
#25
○田村秀昭君 私は、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して、瀋陽総領事館事件に関する外務大臣報告に対して、日本外交の基本的問題点を含めて質問をいたします。
 まず冒頭に申し上げたいことは、鈴木宗男議員の疑惑を解明しようとしない自民党の体質や佐藤前外務省主任分析官逮捕に見られるように、政治と官僚の国家意識の欠如が根底にあると言わざるを得ません。
 明治四年、岩倉具視が特命全権大使として欧米に出発したときの三条実美のはなむけの言葉を申し述べ、昨今の我が国政府の外交案件に対する基本的姿勢について質問をいたします。
 三条実美は、外国の交際は国の安危に関し、使節の能否は国の栄辱にかかわると申されております。外交官は、特に国の安危にかかわる重大な使命を帯びていることを自覚すべきであり、今回の事件は世界に恥をさらしたと言わざるを得ないのであります。
 さらに、私が百四十一回の国会の代表質問で申し述べましたように、我が国が国家としての体を成していないところにこの事件の対応に関する基本的問題が存在するのではないかと思います。
 つまり、國という字は矛等の武器を持った兵士に囲まれた領土という意味で、国家が国として存続するためには、国内治安を維持するための警察と、国外からの侵略に対処するための軍隊を具備することが不可欠の要件であるにもかかわらず、いまだに軍隊であるようなないような自衛隊を擁して、戦後五十有余年を経ても防衛庁の省昇格もせず、やっと有事法制の議論に入ろうとしている国家が国と言えるでしょうか。小泉内閣総理大臣の所見を伺いたいと思います。
 次に、外務大臣報告について、以下の三点に絞って川口大臣にお伺いいたします。
 まず第一は、中国側武装警察官が最初に総領事館敷地内に立ち入った際は、日本側が同意を与えた事実はないと述べています。しかるに、幼児を含む女性三名を総領事館敷地内から警察官が引きずり出す状況を見て、傍観に近い態度を取り、警察官の帽子やボールペン等を拾っているテレビ映像を見れば、中国武装警察官側に協力的態度を取ったと見られるのは至極当たり前であります。中国側武装警察官のこれら女性に対する行為は明らかに過剰であり、制止するのが人の道というものではないでしょうか。
 また、阿南大使の亡命者は館外に押し出せという報道もあり、川口外務大臣は政治責任を取るべきであります。川口大臣の見解を求めます。
 第二に、男性二名の総領事館査証待合室からの連行について、日本側が同意を与えたとの事実はないとのことであり、武装警察官は副領事が言葉を発する間もなく連行したとのことでありますが、本当に言葉を発する間もなかったんでしょうか。副領事にウィーン条約第三十一条「領事機関の公館の不可侵」の認識があれば、男性二名の逮捕、連行を阻止できたのではないでしょうか。このように、公館の不可侵を命懸けで守るという決意が全く感じられない事件で、副領事を始め館員に国家主権が侵害されているという認識もなく、ウィーン条約すら理解していなかったのではないんでしょうか。
 一連の不祥事が続き、多数の逮捕者を出している今日の外務省は腐敗の極みに達していると言わざるを得ず、早急に外務省は解体的出直しをすべきであろうと考えます。川口大臣の答弁を求めます。
 第三に、指揮命令系統の問題点について伺います。
 当時、総領事は航空機事故関連の業務のため大連に出張中であったとのことでありますが、総領事不在時の次級指揮官はだれなのですか。警備担当副領事なのですか、査証担当の副領事なのですか。問題は、指揮官たる総領事が不在のときに、次級指揮官を明確に指名し、指揮権を委譲していたかどうか、さらには、その次級指揮官が適切な命令指示を与えていたかどうかということであります。
 さらに、理解に苦しむのは、副領事ともあろう人が出張中の総領事や中国大使館の公使や、更には外務省本省まで電話連絡をして指示を仰いだということは信じられないことであります。報告することは必要でしょうが、現場で最善と思われる措置を取った上で報告するのが当たり前のことであり、何のために総領事を配置し、副領事まで配置しているのでしょうか。川口大臣の答弁を求めます。
 最後に、小泉総理大臣に伺います。
 総理は、我が国の在外公館の警備についてどのようにお考えでしょうか。在外公館の安全確保は我が国の主権と直結しております。一体どこの国がその安全確保を外国人の警備にゆだねているんでしょうか。日本の主権は日本人が守る、この主権国家では当たり前のことがなぜできないのでしょうか。公館の敷地内に他国の官憲が侵入するに至って、黙認することは主権を放棄したことにほかなりません。総理に答弁を求めます。
 また、総理は外務省に対し冷静に毅然と対応しなさいと指示されたと聞いておりますが、どのように毅然と対応するんでしょうか。現場の総領事館は毅然として対応を取っているとは到底思えない状況で、最高指揮官である総理が毅然とした対応を取れと言われても、国家意識の希薄な、公に奉仕する精神のかけらも見られない現在の外務省としては困り果てているというのが実態ではないでしょうか。
 小泉総理の所信をお伺いするとともに、往年の杉原領事や七田特命全権公使、別府総領事のように、公館の不可侵を命懸けで守り抜いた先輩外交官に見られるような姿勢は、残念ながら今回の事件を通じて、外務省にも政府にも、外務大臣にも小泉総理自身にも全くと言っていいほど見られなかったことは誠に残念であり、世界の中における日本の将来を最も憂うものであります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
#26
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 田村議員にお答えいたします。
 有事法制の整備と国家についてでございますが、いずれの国家も、自国の平和と独立を守り、自国民の安全を確保することをその目的とすることは言うまでもありません。国家の緊急事態への対処は独立国家として最も重要な責務であり、政府は、今般、武力攻撃事態への対処を中心に、国の基本的な危機管理体制の整備を図ることとしたところであります。
 在外公館警備についてでございますが、公館警備は、我が国の尊厳と大使館等の安全を守る大変重要な任務と認識しております。
 中国側武装警察官の敷地内への立入りについては、決して黙認したわけではなく、立入りに同意を与えた事実はありません。日本側の同意なくして侵入したことこそが問題であり、その旨中国側に強く抗議してきております。
 毅然と対応することについてのお尋ねでございますが、今回の中国側の行為は、関係の国際法及び人道上の観点から極めて問題であり、遺憾であると考えております。こうした考え方に基づき、私からも外務省に対し冷静に毅然と対応するよう指示したものであり、具体的には、関係者の速やかな引渡し、中国側による陳謝、再発防止の保証を求めてきております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(川口順子君) 警察官の女性たちに対する過剰な行動を制止するのが人の道ではないか、また、私の責任についてのお尋ねがございました。
 あの夜、テレビを見て、子供の表情を見て胸をつかれた国民は多かったと思います。私も胸が痛みました。もう少し違う対応をと思われた国民の方も多かったと思います。
 現場にいた副領事らは、当時、査証事務に関連したトラブルが発生した可能性が高いということを念頭に置きまして、事態の正確な把握に努めようとしていたものでございます。
 一方、この対応につきましては、危機意識が希薄であるとの御批判も受けかねず、こうした点については、率直に反省し、今後、改善を早急に講じていきたいと思います。
 また、本件問題につきましては、国際法及び人道上の観点から、毅然かつ冷静に対処しつつ、問題を早期に解決することが私の第一の責任であると考えております。
 総領事館員が連行を阻止できなかったのはウィーン条約を理解していなかったのではないかとのお尋ねがありました。
 現場にいた査証担当副領事は、中国の武装警察官が背後から入ってきたこと、また言葉を発する間もなく武装警察官が男性二名を連行したため、現場での連行を阻止することはできませんでした。
 中国側が公館の不可侵を定めたウィーン領事関係条約に違反したことについては、瀋陽総領事館より地方公安当局に対し、また在中国大使館より中国外交部に対し、強く抗議をしてきております。
 外務省の解体的な出直しとおっしゃいましたが、この点についてはリーダーシップを取って改革を進めていきたいと考えております。
 総領事館の指揮命令系統についてのお尋ねがありました。
 総領事が管内出張の場合の指揮命令系統は、総領事が総領事館内にいるときと変わりません。
 瀋陽総領事は、八日午後、瀋陽総領事館の管内である大連で七日夜発生した航空機事故の関係で現場に向かっていました。本件についての第一報を受けた後、瀋陽に戻り、事後の対応に当たりました。現場で対応した査証担当副領事は、突然のことであったため、まず、事態の正確な状況を把握することを最優先にいたしました。その後、まず、上司である総領事に連絡の上、在中国大使館公使にも連絡しました。
 今回の調査結果にもあるとおり、総領事館の対応については、指揮命令系統を含め種々の問題が明らかになりましたが、猛省するとともに、早急に改善をしていきたいと考えております。(拍手)
#28
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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