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2001/11/13 第153回国会 参議院 参議院会議録情報 第153回国会 財政金融委員会 第9号
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2001/11/13 第153回国会 参議院

参議院会議録情報 第153回国会 財政金融委員会 第9号

#1
第153回国会 財政金融委員会 第9号
平成十三年十一月十三日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月九日
    辞任         補欠選任
     松井 孝治君     大塚 耕平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山下八洲夫君
    理 事
                入澤  肇君
                林  芳正君
                若林 正俊君
                円 より子君
                山本  保君
    委 員
                上杉 光弘君
                尾辻 秀久君
                清水 達雄君
                中島 啓雄君
                溝手 顕正君
                山下 英利君
                大塚 耕平君
                勝木 健司君
                櫻井  充君
                峰崎 直樹君
                浜田卓二郎君
                池田 幹幸君
                大門実紀史君
                平野 達男君
                椎名 素夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        石田 祐幸君
   参考人
       慶應義塾大学経
       済学部教授    池尾 和人君
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      岩原 紳作君
       全国銀行協会会
       長        山本 惠朗君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(山下八洲夫君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る九日、松井孝治君が委員を辞任され、その補欠として大塚耕平君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(山下八洲夫君) 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、参考人として慶應義塾大学経済学部教授池尾和人君、東京大学大学院法学政治学研究科教授岩原紳作君及び全国銀行協会会長山本惠朗君、以上三名の方々の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々にごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、池尾参考人、岩原参考人、山本参考人の順序で、お一人十分程度でそれぞれ御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。
 また、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 なお、参考人の意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず池尾参考人からお願い申し上げます。池尾参考人。
#4
○参考人(池尾和人君) 御紹介いただきました慶應義塾の池尾と申します。本日は、意見をこのような形で述べさせていただきます機会をお与えいただきまして、大変感謝いたしております。
 それでは早速話をさせていただきたいと思いますが、法案の内容そのものに直接かかわる形の議論は次に岩原先生がなされると思いますので、私はやや、何というんですか、背景といいますか、バックグラウンド的なところについての少し考えを述べさせていただきたいというふうに思います。
 それで、お手元に、ちょっと変なタイトルですが、「産業銀行からの脱却」というふうな見出しをつけたレジュメを用意していただいていると思いますので、それをごらんいただきたいと思いますが、銀行というのは、ある意味では最もありふれたタイプの金融機関であるというふうに考えられますが、もう一歩立ち入って、銀行が実際に果たしている機能とか役割というのを考えてみますと、実は国々とか時代によってかなり大きな違いがあるというふうに考えられます。
 日本の国内だけを見渡しておりますと、日本の銀行はしばしば、何というんですか、横並びでよく似ているというふうなことが言われるくらいでありまして、日本の中で銀行というのを見ておりますと、どれもある程度似ているので、我々は銀行というのはこういうものだというイメージを抱きやすいというふうに思うんですが、国際的に比較してみた場合に、日本の銀行の姿というのは決して一般的とは実は言えなくて、日本の銀行の姿自体がかなり世界的には特異といいますか、少し変わった姿をしているというふうに思われます。
 それは現状においてもそうでありまして、御参考のために二枚目にごく簡単な各国の主なといいますか大きい銀行の比較の簡単な表をつけさせていただいておりますが、日本の代表として四大グループの中で東京三菱銀行を選んだのは別に他意はございませんで、ニューヨークにも上場しているということで数字が非常にとりやすいという、それだけの理由で選んだわけですが。それで、通常、銀行を比較する場合に資産の大きさとか財務面のデータが専らよく引用されるということでありまして、そういうよく引用される財務面のデータを見ますと、近年は欧米でも金融機関の統合とか合併が進んでおりますからかなり規模の大きな金融機関が出てきているということで、日本の金融機関と欧米の金融機関、大手銀行同士を比べた場合、資産規模においても比較可能な大きさということなんですが、この表で私はわざわざつくってきて見ていただきたいと思いますのは、上のそういう資産のデータではなくて、下の方の従業員数とか支店数というふうなデータをむしろ見ていただきたいと思うわけです。
 例えば、一番上にロイズというイギリスの銀行がありますが、これは資産規模で申し上げますと東京三菱銀行の半分しか資産規模はないわけですが、実は従業員数は東京三菱銀行の二倍の従業員数を抱えているということでありまして、それから支店の数も国内だけで二千四百という支店を持っている。あるいは、ロイズはイギリスの銀行ですが、下の方のアメリカのバンク・オブ・アメリカと東京三菱銀行を比較しますと、総資産規模はほぼ同じでありますが、やはり従業員数とか支店数は大きく違っていて、従業員数は約四倍の従業員数であるということでありまして、これを見ていただきますとわかりますが、ここに挙げた表の中で東京三菱銀行が最も従業員数が少ない銀行であり、最も支店数が少ない銀行であるということがあります。要するに申し上げたいことは、日本の銀行というのは資産規模に比べて従業員の数も少ないし支店数も少ない、そういう銀行であるということで、これはむしろ少し国際的に見ると変わった姿をしているというふうなことであります。
 戻っていただきまして、こういう変わった姿をしているということを含めて、やはり日本のこれまでの銀行のあり方というのは、日本の産業化の歴史といいますか、経済発展のプロセスと大きく結びついた銀行の姿であったというふうに思います。
 そういう、何というんですか、イギリスよりもおくれて産業化したような国の銀行というのが、我が国のみならずヨーロッパ大陸諸国のドイツ、フランスなどもそうですが、そういうややおくれて産業化を開始して資本市場が当初未成熟であった国々における銀行というのは、イギリスで見られた商業銀行とはかなり違うスタイルをしておりまして、短期の運転資金だけではなくて長期の設備投資資金も銀行が実質的に融資し、それから本日の議題にかかわるわけですが、融資先の企業の株式も保有してコーポレートガバナンス上も重要な役割を果たすという、こういう銀行の姿は英米では余り見られない銀行の姿でありまして、こういう銀行の姿を一言で産業銀行というふうな呼び方ができると思います。日本で申し上げますと、長期信用銀行と呼ばれた銀行はもう典型的なといいますか、ある意味で純粋の産業銀行であったと思いますが、都市銀行とか地方銀行も、基本は商業銀行でありますが、極めて産業銀行的色彩の強い商業銀行ということだったと思います。
 こういう産業銀行型のあり方というのは、これまでの日本の経済発展の中では非常に意味のあったあり方なわけですが、追いつき型の経済発展を既に我が国が終了してから四半世紀余りの時間がたつわけですが、そういうプロセスの中で、開発過程で意味のあった銀行のあり方が、現状の日本経済の発展段階とは適合性をむしろ欠くものになってきており、金融の機能を再度活性化する点でも、銀行のビジネスモデルそのものを現在の日本の経済発展段階に即したものに改めていく必要があると。その中で、かつての産業銀行として融資先の企業と強い取引関係を維持し、その一環として株式を保有してきたという、そういう銀行のあり方を改めていかなければいけないということで、株式保有制限の問題というのは、銀行のリスク管理という問題の側面は当然持つわけですが、それを超えて、いわば日本の銀行のビジネスモデル全体の転換をいかに図っていくかという、そういう問題の文脈の中で議論されるべきことではないかというふうに思います。
 銀行がビジネスモデルを転換していくということについて、基本はもちろんその銀行自身の自助努力ということになると思うわけですが、ただ銀行自身に任せておくだけでそういう問題が済むのかということがもう一方ありまして、やはりこれは、銀行のビジネスモデルの問題であると同時に、冒頭から申し上げましたように、いわば日本の経済発展のあり方そのものと深くかかわってきた問題でありますので、日本の経済全体の仕組みを変えていくということと非常に密接に関連した課題であるという点で、単に銀行に任せておけばいいという問題ではなくて、ある種の政策的な関与の必要性というのがあるのではないかというふうに考えております。
 ちょっと時間が来てしまいましたので、取りとめがありませんでしたが、以上で一応終わらせていただきます。
#5
○委員長(山下八洲夫君) ありがとうございました。
 次に岩原参考人にお願いいたします。岩原参考人。
#6
○参考人(岩原紳作君) 先ほど御紹介にあずかりました東京大学の岩原でございます。本委員会にお招きいただきましてこのような意見陳述の機会を与えていただきましたこと、大変光栄に存じております。
 私は、この法案の起草のベースになりました金融審議会の銀行の株式保有に関する報告の取りまとめに当たりましたので、その経験からこの法案の考え方について意見陳述をさせていただきたいと存じます。
 この金融審議会報告、そして本法案は、お手元にございますレジュメの最初に引用いたしました本年四月六日の政府の緊急経済対策の方針に基づいて作成されたものでございます。すなわち、この方針によりますと、銀行の保有株式の価格変動リスクを抑制して銀行経営の健全性を損なわないために、銀行の保有株式を自己資本の範囲内とし、それを超えて保有する株式は一定期間内に処分する、その放出株式を吸収するために公的枠組みを用いた一時的な株式買い取りスキームを設けることとするとされておりまして、これに従って審議をし、法案の作成に至ったわけでございます。
 そこで、2の株式の保有規制を必要とする理由でございますが、この緊急経済対策にうたわれておりますように、銀行の株式保有規制の主眼は、銀行の財務が株価変動リスクに振り回されることがないようにしようという銀行のリスク管理にございます。このほかに先ほど池尾先生が御指摘になりましたような非常に大きい問題もありますが、主な当面の主眼はこのリスク管理にございます。しかし、現代の金融理論からいたしますと、このリスク管理というのは、銀行のあらゆる資産全体について総合的に行うべきであって、株式といった一つの資産だけを取り上げて規制を行うというものとはされておりません。
 このレジュメの3のAに引用いたしましたように、金融審議会の議論におきましてはこのような疑念が強く出されたところであります。なぜ銀行の株式保有のみを取り上げた規制を行うのか、これが本法案を議論したときに一番大きな問題になったところでございました。
 確かに、総合的なリスク管理を行うことが望ましいと思われます。しかし、残念ながら現時点でそのようなリスク管理の手法はいまだ完成しておりません。また、株価変動リスクは、例えば金利リスクと通常は相殺し合う関係にありますけれども、経済環境が著しく悪化して銀行が危機に陥るような場合を考えますと、両者が同方向に動くことが見られます。
 これらのことを考えますと、各種の資産のカテゴリーごとにリスク量をコントロールすることが合理的と考えられます。いわゆるBIS規制もそのような考えに立っております。そこで本法案もそのようなことを考えたわけであります。
 それでは、各種の銀行資産の中でもなぜ株式保有のみを取り上げたかと申しますと、我が国の銀行は、他の主要国の銀行に比べて、資産の中に占める株式の割合が特に大きく、かつ、その簿価が時価と比較して非常に高くなっておりますために、株価変動リスクが銀行財務に与える影響が著しく高くなっているという我が国特有の事情があるためでございます。
 後でも御紹介いたしますように、株価変動リスクは株式保有規制ではなくBIS規制で対処すればよいという意見もございましたけれども、レジュメで引用いたしましたような、近く恐らく導入される予定のBISの先進的ないわゆる内部格付手法で保有株式のリスクを計測してみますと、いわゆる主要都市銀行九行だけで数兆円から十兆円といった自己資本の積み増しが必要になります。これは株式保有をほとんど禁止するのに近いことになりまして、株式市場に与える影響等から見てすぐに実施するということは極めて困難であります。また、リスク管理の技術的な面からも、そのような手法のリスク管理をすぐ全面的に導入することには困難がございます。
 そこで、より簡易、明確な基準によって株式保有そのものに限度を設けるという形でリスク管理を行う、しかも、放出されました株式を吸収する取得機構を設けることによって株式市場へのインパクトを和らげてスムーズにこのような株式保有リスクの削減を実現していこう、それによって将来の新しいBIS規制の導入に備えようということがこの法案の考え方と理解しております。
 なお、このレジュメの4に引用いたしましたように、現時点におきましては、我が国には銀行の保有する株式について総量規制をするという規制はございません。したがいまして、銀行が株式を保有することによる全体のリスクをコントロールする規制はございませんので、そこで本法案が起草されたというわけでございます。
 次に、3といたしまして、株式保有規制の論点でございます。
 以下、金融審議会におきまして取り上げられました論点の中の主要なものを御紹介させていただきたいと思います。それが@からEでございます。これはいわば根本的な問題から順に並べたものでございまして、この中でAについては先ほど御説明しましたし、Dあるいは特にEですが、Eにつきましては先ほど池尾先生からお話がございましたので省略させていただきまして、Dもいわば中心的な論点ではございませんので後で御質問があればお答えすることにしてここでは省略し、@、B、Cについてのみ御説明させていただきます。
 @の、銀行の自主的な持ち合い解消にゆだねるべきであって、一律の法規制は企業の経済活動の自由への不当な介入になるのではないかという論点は一番根本的な論点でございますが、決済機能を担い、経済全体に大きい影響を与える銀行が、健全性確保のために法規制の対象になる。法規制である以上、どうしても一律になる側面が出てくるわけでありますが、これはやむを得ないところではないかと思われます。
 確かに、銀行も持ち合い解消に大変努力されておられます。しかし、現実には相手方企業との関係などから容易に進まない事情もございます。そこを法規制を導入することによって後押しをしてあげようというのが本法案の意義ではないかと考えております。
 二〇〇五年の導入を目指しております新しいBIS規制の成立を待って株式保有のリスク管理を行うべきだという意見もございました。これがBでございます。これは確かに合理的な意見でありますが、我が国の銀行の状況は非常に厳しいものがあり、世界の我が国銀行を見る目も非常に厳しいものがあります。新BIS規制の成立を待ってから株式保有リスク対策を行うということでは世界各国の理解が得られませんし、何よりも市場が許さないというふうに思われます。しかも、急に導入しようとしてもそれだけの体制ができていないという問題があります。
 そこで、一律の法規制であって、若干の甘さも残るかもしれませんが、可能な規制からまず導入して、それを新BIS規制につなげていくということが賢明かと思います。本法案は、そのようないわば一種のつなぎの意味を持つものと考えております。
 Cの我が国銀行の最大の問題はその収益性の低さにあるというのは、そのとおりであります。しかし、我が国における株式の投資収益率は一般的に非常に低く、また株式保有のリスクの大きさを考えますと、本法案のような総量規制は合理的な内容ではないかと考えられます。
 ちなみに、レジュメの4にありますように、諸外国は我が国の銀行よりも株式保有リスクの問題は小さいのでありますが、いずれも株式保有規制を行い、特にアメリカの規制は大変厳しいものでございます。
 最後に、5の銀行等保有株式取得機構につきまして、これは金融審議会では議論をしておりませんので詳しいことはわかりませんが、これは株価支持のための制度ではなく、株式市場の混乱なしに銀行の株式保有規制をスムーズに実現させるための制度と理解しております。
 機構の制度設計に当たりましては、いわゆる二次ロスを政府がどこまで負担すべきか、逆に将来、取得株式に値上がり益が生じた場合の帰属をどうするかといった点が、公正で国民の理解を得られる制度になるか否かのポイントだと思います。参加銀行の拠出金の義務や国への納付金の制度等を考えあわせますと、その点への配慮はなされているというふうに思われます。
 法案に規定されてはおりませんが、機構が保有する株式の議決権の行使方針や保有株式処分の方針も、制度の公正さを確保する上で重要と思われます。議決権行使につきましては、株主価値最大化の方針で行使するということが定められるであろうと聞いておりますが、MアンドAの対象になったとき、あるいは役員の責任等が問題になったときの対応など、具体的な場面でいろいろと問題が予想されますので、今後具体的な詰めが必要と存じます。
 最後の結びでございますが、本法案が成立して、それが銀行のリスク管理の前進という本来の意義を発揮することを祈りまして、意見陳述の結びとさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(山下八洲夫君) ありがとうございました。
 次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
#8
○参考人(山本惠朗君) 全国銀行協会長を務めております富士銀行の山本でございます。
 本日は、私ども銀行の保有している株式に関連する法案を御審議いただいております本委員会にお招きいただき、意見を述べる機会を設けていただきましたことに対して、厚くお礼を申し上げたいと思います。
 それでは、御審議いただいております銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案につきまして、意見を簡単に述べさせていただきます。
 本法案の第一の柱であります銀行等による株式等の保有の制限、いわゆる株式保有制限に関しましては、金融審議会の場で規制の是非も含め議論が行われてきたところでございますが、私どももその審議会の場等でさまざまな意見を述べさせていただいております。
 まず、株式持ち合いの問題について申し上げますと、私は、この問題は我が国金融・資本市場の発展過程と関連づけて理解すべきであると考えております。この点は、池尾先生から先ほどお話があったところと同じでございます。
 銀行による株式保有は、まず終戦直後の産業資本が枯渇していた時期に、さらには一九六〇年代の高度経済成長期におきまして、企業の旺盛な資本需要にこたえる形で増加してまいりましたが、この当時は資本市場が未整備であり、銀行による産業資本の供給に大きな意義があったと考えているものであります。また、株式の持ち合いという慣行自体につきましても、一九八〇年代の米国等におきまして、安定的取引の維持、長期的視点に立った経営という観点などから、積極的に評価された時期もあったわけであります。
 ところが、一九九〇年代以降、企業の自己資本の充実、金融・資本市場の発展、個人金融資産の蓄積などによりまして株式持ち合いの意義が低下する一方で、株価の長期低迷、時価会計の導入等の要因も加わり、銀行、企業の双方にとって多額の株式保有を維持することが経営上の問題点に変化してきたということであります。昨今の持ち合い解消の動きは、こうした歴史的な環境変化を踏まえた構造変化であると認識しているところであります。既に銀行も企業もそれぞれの経営判断により持ち合い解消を進めておりますが、特に銀行の場合には、財務の健全性を確保する観点から、株式保有リスクの適切なコントロールがより重要となっております。
 そうした観点からは、今回の株式保有制限の政策意図は、我々の経営判断と同じ方向を目指していると考えております。
 ちなみに、私が属しておりますみずほフィナンシャルグループの例で申し上げますと、一九九八年度から二〇〇三年三月期までの五年間に総株式保有額の三分の一、約三兆円に相当しますが、この保有株式圧縮を計画しておりまして、この九月末時点で既に二兆円強の圧縮を実施済みでございます。本計画が予定どおり達成できますと、その時点で、私どもみずほフィナンシャルグループの保有株式残高は自己資本にほぼ見合う水準となる見込みであります。
 ただ、お取引先の株式を売却することによって、そのお取引先の株価や私ども以外の株主の動向、ひいてはお取引先の資本政策にも影響を及ぼす可能性もあります。したがいまして、保有株式を売却する場合には、事前にお取引先に対し十分な説明をし、御了解をいただくことが必要となります。
 私ども、民間銀行として、お取引を継続しつつ持ち合いの解消を短期間に進めていくということは、それほど容易ではないことということも事実であります。
 保有株式の総額や自己資本との比率、これは金融機関ごとに異なっておりまして、それゆえ、各金融機関の保有株式圧縮のスピードや方法は、個々の銀行の戦略、判断にゆだねることが望ましく、その意味で、一律の保有規制は、経営にとって大変厳しいものがあると受けとめております。
 ただ、繰り返しになりますけれども、本法案のねらいであります株式保有リスクを縮減するという点につきましては、多くの銀行経営者が目指している方向と同じものであるということを再度申し上げておきたいと思います。
 次に、法案の第二の柱であります銀行等保有株式取得機構について意見を申し述べます。
 法案では、取得機構は、株式保有制限の実施に伴う銀行等による株式の処分を円滑に進めるために創設されるものであるとされております。
 我々銀行界は、これまでも自己責任のもとで保有株式の圧縮を懸命に進め、着実に実績も積み上げてまいりました。こうしたことから、取得機構創設が緊急経済対策に盛り込まれた本年四月の時点では、銀行救済の色合いがあるような取得機構のアイデアに対しては、銀行界として必ずしも積極的な姿勢を示していなかったわけであります。
 しかしながら、その後、政府から、個人投資家の市場参加を促すための証券市場の構造改革プログラムや、個人投資促進税制等の証券市場活性化策が打ち出されました。これらの諸施策や政府の御説明、法案等を承った限りでは、今回の取得機構は、株式持ち合い構造を解消し、我が国証券市場の構造改革を早期かつ円滑に進めていく上での緊急措置、一時的な受け皿と位置づけられるものと理解しております。その観点から、今回の取得機構案というものは銀行界としても評価できるものと考えております。
 法案の中に盛り込まれております取得機構の二つの機能のうち、まず第一の機能であります短期の買い取り・媒介、いわゆる一般勘定については、銀行の保有する株式を、個人を主たる最終投資家としますETFや投資信託に直接移転することを想定しております。政府の証券市場活性化策のような個人投資家を株式市場に招き入れるための環境整備が進行する中で、機構のこの機能は、銀行セクターと個人セクターをより直接的に結びつける触媒的な役割を果たすものと評価できると考えております。
 また、機構の第二の機能であります政府保証つきの長期の買い取り、すなわち特別勘定につきましては、時々の株式市場の状況や会員のニーズ等を勘案して臨時・緊急的に発動されるセーフティーネットと位置づけられております。この方法で買い取った株式につきましては、最終的にはその大部分が市場に売却されることになりますが、この長期買い取り機能は、さきに述べました政府の証券市場活性化策の効果がより一層浸透し、個人投資家が株式市場の主役になるまでの時間的なギャップを埋めるための措置と理解することができます。
 また、市場との関係では、不測の事態に対応できるようなセーフティーネットをあらかじめ設けておくことによって、一定の安心感を与えるという効果も期待できるのではないかと考えているものであります。
 いずれにいたしましても、法案では、民間側が主体となって機構を立ち上げ、当局の認可をいただく手続となっております。私としましては、法案の成立を待って、金融システムの一つのインフラを構築していくという観点から、全銀協会長として金融界を取りまとめてまいりたいと考えているものであります。
 以上で私の冒頭の意見を終わります。
 ありがとうございました。
#9
○委員長(山下八洲夫君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○勝木健司君 座ったままで失礼させていただきます。
 民主党・新緑風会の勝木でございます。よろしくお願いします。
 まず、山本参考人にお伺いしたいと思いますが、参考人は、衆議院の参考人審議の際も、保有株式の売却は順調であるということで、銀行等保有株式取得機構を利用する予定はないという意見を表明されたというふうに聞いております。
 法案審議におきましても機構の必要性についてさまざまな議論が行われてきたわけでありますけれども、銀行業界にとってこの取得機構というものが本当に必要か否かがまだ明らかにされていないんじゃないかというふうに思っておりますので、そこで、銀行業界にとりましてこの取得機構のメリットはどのようなものがあるのか、またその必要性について、あるいは役割をどういうふうに認識をされておるのか、御意見をお伺いしたいということが第一点でございます。
 そしてまた、第二点は、実際に特別株式買い取りが利用される場合、どのように、またどの程度の利用が考えられるのか、あわせてお伺いをいたしたいと思います。
#11
○参考人(山本惠朗君) 今の御質問、二つの点につきまして順番に申し上げます。
 まず、先生から最初に御指摘がありました衆議院の参考人としての発言にかかわることでございますが、私は、衆議院の参考人発言のときに、取得機構の利用につきまして、先ほど一般勘定、特別勘定と二つ申し上げましたが、一般勘定につきましては可能な限り積極的に活用をしてまいりたいと考えており、また二つ目の特別勘定につきましては、これに頼ることなくまずは市場で売却する努力をしたいと申し上げたつもりでございます。言葉が十分でなかったとしましたら、お許しをいただきたいと存じます。
 それから、二つ目の、銀行にとってメリットは何かという御質問でございます。やや長くなりますが、二つに分けてお話を申し上げたいと思います。
 まず第一に、先ほど御説明しました機構の第一の機能であります短期の買い取り・媒介、いわゆる一般勘定につきましては、銀行の保有株式を減らす方法といたしまして、生の株式を市場に売却すること以外に、ETFあるいは投資信託という形でこれを実現する手法を加えることになるわけであります。このことは処分手法の多様化という観点から大いに意義のあることだと考えております。また、まとまった株式を一度に処分するという点でもメリットがあるというふうに考えております。
 二番目の特別勘定という機能、この特別勘定による買い取りは、株式市場構造改革を進めていく上でのセーフティーネットというふうに位置づけられておりまして、万一の場合にこれが機能し金融システムの安定につながるということであるとすれば、銀行にとっても意義のあることであると考えております。
 ただ、この機構への株式の売却は時価で行われることになっておりまして、市場に売却するかわりに機構に売却するということにつきましては、価格に限って言いますと、経済的インセンティブが銀行側にあるということではないということであります。
 次に、どの程度使うのかという御質問についてでございますが、二番目の特別勘定による買い取りにつきましては、これは一般的な算術の話で恐縮でございますが、市場売却と同じ条件でありますと、八%の売却時の拠出金を拠出するということがございます。そういう意味では、市場に売却することが優先されるということでございます。
 ただ、臨時・緊急のセーフティーネットが発動されるような環境のもとでなお各行の規制を達成するということについての状況、そういったものがどうなっているのかということは、その段階でなければ、個別の事情がかなり反映いたしますので何とも申し上げられませんが、セーフティーネットというものが市場の不確実性を考慮して設けられるということだと思われますので、そうした機能が必要とされる状況は十分に想像できるというふうに私は考えているものであります。
 以上でございます。
#12
○勝木健司君 池尾参考人に対しても同様に、この銀行等保有株式取得機構がどの程度有効に機能しワークするかという見通しを持っておられるのか、お伺いしたいというふうに思います。
#13
○参考人(池尾和人君) それは、言いかえますと、我が国の株式市場自身の能力といいますか、株式市場の機能をどれだけ高く評価するかということと裏腹の問題だと思います。だから、日本の株式市場が十分に厚みがあり深みもあるような市場であれば、一時的に大量の売りが出てもそれをこなしていけるはずなわけですね。しかしながら、市場としての厚みとか深みに若干の問題を抱えているとすれば、一時的に大量の売りが出た場合に、価格形成が十分自然な形で行われないというふうな事態があり得るということになります。
 残念ながら、私は、日本の株式市場を初めとして日本の資本市場全体を考えた場合に、必ずしも胸を張って、日本の資本市場は完璧な十分な市場であって、厚みも深みも十分あるんだというふうに言い切れる自信はないというのが率直なところでありまして、そうした場合に、私としては、本筋は、本来的には日本の資本市場そのものの機能を高めていく、日本の資本市場自体を鍛えていくという政策をとっていくことが必要なことだと思います。
 したがって、それが本筋だ、王道だと思うわけでありまして、保有機構といった措置はあくまでもつなぎ的な一時的な措置としてであれば許容はされ得るものであるけれども、これをつくったがゆえに、むしろ、本来の資本市場それ自体を鍛えていく、発展させていくという政策が十分にとられないということであれば、逆効果になってしまうおそれがあるというふうな形で考えております。
#14
○勝木健司君 いま一度山本参考人にお伺いしたいというふうに思います。
 本来、銀行の保有資産は、株式のみならず貸付金とか債券等各般にわたっておるものだと思いますが、リスク管理の立場から銀行の資産配分のあり方を議論するとしますと、各資産のリストを包括的に、トータル的に算定して自己資本の範囲内に抑制していくというのが銀行経営を進めていく常道であろうというふうに思うわけでありますが、その意味で、株式保有額を自己資本の範囲内に規制するという今回の方法につきましては、銀行のリスク管理体制の実情を必ずしも反映したものとは言えないんじゃないか、そういった意味で甘い規制であると思うわけでありますけれども、参考人はどういうふうに考えられておるのかお伺いしたい。
 そしてもう一点は、二〇〇四年に導入されます新BIS規制の導入に向けて、銀行業界はリスク管理体制の高度化に向けた取り組みを続けておられると思うわけでありますけれども、その現状もあわせてお聞かせ願いたいと思います。
#15
○参考人(山本惠朗君) 御質問は二つに分かれると思いますが、順番にお答え申し上げます。
 まず、甘い規制ではないかという御質問でございます。
 株式保有規制の水準につきましては、さきの金融審議会の場でもさまざまな意見が出たというふうに聞いておりますが、株式の持ち合いが形成された歴史的経緯、あるいは現実に銀行が多額の株式を保有しているという事実、また規制が導入された場合の株式市場への影響などさまざまな要素が考慮され、最終的に自己資本の範囲内という水準が提言されたというふうに理解をしているものであります。
 自己資本の範囲内という規制の水準について言いますと、私どものみずほフィナンシャルグループに限った話ということで申し上げますと、先ほどもお話し申し上げましたとおりの状況でございますが、現実には自己資本の一五〇%を超える株式を保有している銀行もあるというふうに聞いているものであります。
 規制が導入されますと、保有株式の残高の圧縮に時限が切られることになりますので、銀行にとって自由度はかなり制約されるわけであります。また、銀行によって保有残高の状況は異なりますし、今後の株価動向にもよりますが、規制が導入されるということは現実の銀行経営にとって大変に厳しいものになるというふうに受けとめております。
 次に、リスク管理体制の高度化に向けた取り組みがどうかという御質問でございますが、御指摘のとおり、新BIS規制におきましても銀行のトータルなリスク管理が要請されておりまして、私どもではリスク管理体制の高度化に努めているところであります。
 例えば株式につきましては、価格変動リスクのある資産でありますし、日々のリスクを内部管理モデルで評価しつつ、いわゆるポートフォリオ管理を行っております。株価の変動によって評価損が発生することから、ワーストケースの損失額を想定する統計的なリスク管理手法を活用しつつ、経営として許容できる水準というものを見きわめているものであります。グローバルに展開する日本の金融機関も、価格変動リスクにつきましてはほぼ同様のリスク管理手法を用いております。
 以上が現状でございます。
#16
○勝木健司君 ありがとうございました。
 次に、岩原参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
 岩原参考人は、金庫株の解禁の際、浮動株の少ない日本の株式市場が改善されそうなときに金庫株の導入は、この流れに逆行する、そして持ち合い株式の受け皿なら自社株取得で十分だというふうにコメントをされておるわけでありますが、この株式取得機構におきましても政府が持ち合い株式を塩漬けにするものであろうかというふうに思うわけでありまして、金庫株と同様の効果を持ち、参考人が懸念する市場構造改革のおくれにつながるのではないかというふうに考えられるわけでありますが、この点につきまして参考人のお考えをお伺いしたいと思います。
 あわせてもう一点、日本の証券市場を参考人はいびつな構造と指摘をされておるわけでありますので、コーポレートガバナンスの専門家の立場から、この構造改革をするためには何が必要か、御所見を簡単にお伺いしたいというふうに思います。
#17
○参考人(岩原紳作君) まず、第一点についてお答えいたします。
 確かに、金庫株について私はそのような懸念があるということを申し上げました。一般的に言えば、株式市場に介入してそこでの自由な取引に介入するような規制というのはなるべく望ましくないというふうに私は考えております。ただ、現在提案されておりますこの法案におきます取得機構による株式の取得というのは、いわば銀行の株式をそういう形で吸収することによって銀行の財務の健全性を確保するためのものでありまして、金庫株の場合、いわば株式市場全体を一種のそういう塩漬けにするような制度のもとに置くということになるわけですけれども、本法案の取得機構の場合はいわば目的が限定されておりまして、銀行のあくまで健全性を確保するためのものであり、かついろんな意味での制約を課した中で行うということになっております。
 しかも、もう一つ言えることは、先ほどの第二の御質問にかかわることでありますけれども、持ち合い株式を解消していくという、いわばコーポレートガバナンス全体にとってはプラスになる効果を持つものでありますので、そういう意味では、本来これに頼ることは無論極めて好ましくないと思いますけれども、一種の一時的な緩和をし、かつ銀行の健全性を確保するという目的に限るという意味では何とか許されるものではないかというふうに考える次第であります。
 第二点のコーポレートガバナンスでありますが、これはある意味で言うと我が国の一番大きい問題であり、最も日本の経済あるいは金融がうまく機能していない大きい問題であるというふうに考えております。
 これを改善するのはまさに一朝一夕でやれることではなくて、少しずつ全体の構造を改革していくしかない。そのためには、一つは持ち合いを解消していくということも非常に大きい問題であり、かつそれ以外に商法、会社法等、あるいはそれ以外のところで、従来の証券市場をより株主の顔の方を向いた市場にする、株主の権利がちゃんと守られて、従来の持ち合い体制のもとで経営者がいわばマーケットや株主からの監視を受けずに経営をしていくという状況を改めていくことが、日本のコーポレートガバナンスを改善し、それが経済全体の構造の改革につながっていくというふうに理解しております。
#18
○勝木健司君 ありがとうございました。
 最後に、池尾参考人にお伺いしたいと思いますが、池尾参考人は、金融不安の原因の一つとして銀行の低い収益性というものを挙げておられるわけでありますが、銀行業界はこの収益確保の必要性は認識しておられるようでありますけれども、実際に収益性の向上にはつながっていないんじゃないかということで、この理由は先生は何であろうというふうに思っておられるのかお伺いしたい点が一点です。
 もう一点が、先生は常々、国際的に見て貸出金のGDP比が依然高いということで、残高の削減が必要だということも述べられておるわけでありますが、貸出金の削減を銀行が行いますと、中小企業を中心に倒産や経営不安が相次ぎ、実体経済に悪影響を及ぼすという意見も根強いわけでございます。
 そこで、先生の、二十一世紀の金融業のあり方、特に間接金融から直接金融への転換、あるいは中小企業への円滑な資金供給の具体的な方策についてどのような考えを持っておられるのか、あわせてお伺いしたいというふうに思います。
#19
○参考人(池尾和人君) 二点御質問いただきましたが、いずれも非常に大きな問題で、簡単にお答えすることは困難なんですが、一点目の銀行の収益性の問題に関しましては、しばしば指摘されておりますが、一言で申し上げて、ビジネスモデルそれ自体の転換がなければ難しいというふうに考えております。
 そういう思いもありましたので、本日最初に意見を陳述させていただいたときに若干の比較表のようなものをつけたわけですが、あれをもう一度見ていただきますと、要するに日本の銀行はこれまで従業員数に比べて貸出額が多いというのは、やはり大口の例えば大企業向けの貸し出し等を中心にやってきたという姿だと思うんですね。もっと中小企業だとか個人相手の貸し出しに注力していくとすれば、もっと人手が本来は要るはずでありまして、一人当たりの貸出額とかはそれほど大きい数字を望んでいくことはできないと思うんですね。そういうことを考えますと、むしろ、人員をカットしていくのがリストラだという考え方は、ちょっと方向性として実は違っているんではないか、もっと根本のところで銀行の今後の事業モデルを考え直していくことが収益性改善につながっていくことではないかというふうに思っております。
 それからもう一点は、私はやはり、八〇年代に発生した信用膨張が、九〇年代を経て既に二〇〇〇年代を迎えた現状においても解消されていない、八〇年代に発生した信用膨張がそのまま残っているという状況が基本的にはあると思っております。そうした信用膨張をいかなる形で解消していくかという課題に依然として我が国は直面しているわけであります。
 質問の中で御指摘ありましたように、信用膨張が残っているからただただそれを圧縮すればいいというふうな対応をとった場合には、そのプロセスで非常に大きな問題をむしろ副作用として引き起こしてしまうということもあるわけですから、しかしながら、中小企業にせよ過剰債務を抱えたままずっといればいいという話には絶対ならないわけですから、銀行のバランスシートの圧縮は企業の過剰債務の削減ということと裏腹の問題でありますから、妙案が私にあるわけではありませんが、それは課題として厳としてあるという認識だけは申し上げておきたいというふうに思います。
#20
○勝木健司君 お三方、ありがとうございました。
#21
○浜田卓二郎君 浜田です。よろしくお願いいたします。
 まず、山本参考人にお伺いいたしますが、先ほどの御報告ですと、三兆円の保有株式の削減を既にもう二兆円達成しておられて、目標達成後は自己資本の範囲内におさまるということでありまして、これは要するに、自力で十分新しい規制にも対応していけると、そしてマーケットに対しても無理なくといいますか、つまり銀行が問題なく解消していけるという、そういう見通しというふうに受けとめさせていただきましたけれども、これは銀行界全体についてもそういう感じで理解をしてよろしいんでしょうか。
#22
○参考人(山本惠朗君) 先ほど私の属しておりますみずほフィナンシャルグループを例にとって申し上げたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、現時点で自己資本の一五〇%以上、二〇〇%に近いような株式を保有している銀行もございます。したがいまして、個別銀行のところまでおりますと、機構に頼らないで期間内に規制の水準を達成できるかどうかということについては私はちょっと具体的にお答えはできないわけでございますが、政府がお考えになったのは、そうしたものを含めて、また先ほど申し上げました市場の不確実性というものを考えますと、どういう事態が起こるかわからない、そのためのセーフティーネットを用意したと、こういうふうに理解をしているわけであります。
#23
○浜田卓二郎君 きちんと株が処分できるかどうかというのは、マーケット全体のあり方としてあるいは相場全体の行方として心配するというのは全体的な立場ですけれども、それ以上に、できるだけ損をしないで処分をしたいというのは、これは当然それ以上に強烈な銀行の動機だと思うんですね。私は、今用心深く物を言っていらっしゃいますけれども、本当に、保有機構があって、そして当面二兆円ですか、そういう取得枠みたいなものがあって、そうでなければ心配だという話なのかどうか。若干その辺のニュアンスが、私にはそうじゃないんじゃないかというふうに思えるんですけれども、全銀協の会長として銀行全体を見ておられるお立場でもう一言おっしゃっていただきたいと思います。
#24
○参考人(山本惠朗君) 先ほど、具体的にほかの銀行のことを責任を持ってお答えできないものですから私どもの例を申し上げたわけでございますが、マーケットの中で実際に、ではこれから出てくるものを全部消化できるかということになりますと、先ほど申し上げましたように、マーケットの状況というのは予想外の変化をいたします。そうした中で本当に銀行が期限内に消化できるのかということになりますと、不確実性はかなり高いというふうに見ておく必要があるので、そういう場合にこうした機構がその機能を発揮しますと、規制が順調に達成できるということであろうというふうに考えているわけであります。
#25
○浜田卓二郎君 この機構の構想というのは、私の記憶ですと、株式マーケット緊急対策というような議論があって、一種のPKO、プライス・キーピング・オペレーションですか、そういうものをやるツールとしてつくろうというような、そういう思惑があった時期があったと思うんですね。そのころの問答ではたしか金融庁の方もかなり否定的な感じだったんですけれども、それが今回の保有制限と絡めてセーフティーネットというような言い方を考え出されて、それで何とか辛うじて説明をしながら提案をしてきたなという感じが私自身はするわけで、これはちょっと賛否の立場とは、まだ決めかねておりますので別なんですけれども、どうもそういう感じがしてならないんですね。ですから、私も本当に、緊急事態になって特別勘定を発動しなきゃならないようなマーケットであるとすれば、何でたった二兆円なんだというのも疑問でありまして、それだったら、四十兆も皆さん株を持っていらっしゃるんですから、四十兆と言わないけれども、少なくとも十兆や二十兆の枠を準備しないと本当のセーフティーネットにはならないんじゃないかなどという気もいたしますけれども、それはそのぐらいにいたしますが。
 それで、その関連で池尾さんにちょっとお伺いをさせていただきますが、先ほど日本の株式マーケットはまだ厚さもそれから深みも足らないとおっしゃった。だから機構が必要だというふうに議論をされたような気がいたしますけれども、日本の株式マーケットというのは、これで世界で第二位ぐらいのマーケットなはずですね。ですから、運営によっては厚みも深みも私は大いに出てくるマーケットじゃないかと思うんですがね。
 ところが、これは評判悪いんですね、世界的に見ますと。私の外国人の友人のうちの何人かが同じ意見をよく言うんですけれども、日本のマーケットぐらい信頼のできないマーケットはない、何かがあると行政が出てくると言うんですね。昔は、まだ大蔵省が元気なころは、よくマーケットの規制を行政でやっていましたよね。何か取得制限みたいなのが法律には書いていないんだけれどもいつの間にか出てきて、外国人はこれ以上取得しちゃいかぬとかですね。だから、絶えず日本のマーケットはいじられているというような印象を多くの外国人投資家が持っている。
 その原因は何かというと、やっぱり護送船団という言葉で象徴されるように日本のマーケットに対する行政の過剰関与みたいなものが歴史的にあって、これが今だんだんなくなりつつあるわけですけれども、私は、それでは厚さや深みというものをカバーするためにたった二兆円の資金規模の取得機構を位置づけるという先生のお考えがよくわからないんですけれども、その辺はどうでしょうか。
#26
○参考人(池尾和人君) 先ほど私が申し上げた趣旨は、日本の株式市場を厚みがあり深みのあるマーケットにすべく、本来の政策をとることが本筋であると。しかしながら、当面そうした成果がすぐに上がるわけではありませんので、そうしたときに、つなぎとしてこういう措置を設けることには私として理解を示すことができるという程度でありまして、私個人がこの取得機構について非常に賛成であるという意見を持っているわけでは率直に言ってありません。といいますか、私は、個人的には理解を示すのが精いっぱいかなというふうにこれについては思っている立場であります。
 だから、先ほどもちょっとちらっと申し上げましたが、こういう取得機構をつくることによって、本来の株式市場を健全に発展させるための努力が滞ることになるとむしろ逆効果であって、好ましくないというふうに考えております。
 日本の株式市場の一つの問題、厚みとか深みが場合によって乏しくなる原因は、やはり市場参加者の同質性が高いということが非常に大きな原因だと思うんですね。いろんな異質な、いろんな特性を持った市場参加者が多様に存在して取引が行われるというその多様性の欠如が、やはり深み、厚みに十分つながらないところがあると思うんですね。
 要するに、金融機関が主要なプレーヤーであるというふうな状況が問題の一つでありまして、株式取引に関する主要なプレーヤーの座から銀行におりてもらうということは、そういう意味では長期的な日本の株式市場の発展のためにも資する側面はあるというふうに思っております。
#27
○浜田卓二郎君 先生、重ねてお伺いしますけれども、今、郵便貯金が自主運用になったんですね。ですから、私もこの委員会で何度かこの問題を申し上げてきたんですけれども、二百五十兆もの資金を総務大臣が自主運用するという仕組みが日本にあるわけですよ。だから、これはもう巨大ファンドというか、化け物ファンドみたいなものが日本の金融マーケットにあるんですね。
 それから、そういうこと以外にも、絶えずプライス・キーピング・オペレーション的な発想が出がちな習慣が残っているんですね。あしき習慣が残っているんですよね。
 そういうことがずっと私は日本の株式マーケット、金融マーケットの大きな問題だなと思ってきたわけでありまして、それを正常化していく、世界から、日本のマーケットは本当に深みも厚みもある、しかも余分な介入が時々出てくるようなマーケットじゃないという信頼をかち取っていくには相当長い時間がかかるんだろうと思うわけですが、今回、ほんのちっちゃな規模とはいえ、また政府はこんなものをつくり出してくるのかということになりませんかね。
 だから、先生の御心配は私はごもっともだと思うので、むしろその心配を言い立てることの必要性の方が今私は大事なんじゃないかというふうにも思いますけれども、もう一度聞かせてください。
#28
○参考人(池尾和人君) 今、議員が御指摘になりましたことは全く賛成でありまして、この取得機構の設立だけしか政策が打ち出されなかったとすると、それは非常に評価を下げるおそれがあるというふうに思います。ただ、証券市場の活性化に関しましては、税制の面の改革を含めて対策がとられようとしておりますので、その全体の中での位置づけということを明確にしていかないと、やはり懸念すべき事態も考え得るというふうに思っております。
 私は実は、行政といいますか、政府が果たすべき役割は大きいというふうに考えております。ただ、需給に介入するという形での役割は果たすべきでは全くないわけですが、株式市場において公平な、公正な取引が行われるように担保する、制度的に不正のないように監視をするというふうな面での役割というのは本来政府に期待されているところであり、その面ではむしろもっと注力が必要ではないかというふうに考えております。
 それは、証券取引等監視委員会の規模を、よくこれも指摘されますが、アメリカのSEC等と比べたときに、非常に率直に言って貧弱な体制で臨んでいる、こういうところを充実させるような対策をとっていくんだという方向性をはっきり示す中で、つなぎの措置としてこういうものが考えられるんだという形にしないと、やはり難しい問題を引き起こすというふうに思っております。
#29
○浜田卓二郎君 岩原参考人は、今、私と池尾参考人と若干やりとりさせていただきましたけれども、この論点について先生の御意見も。
#30
○参考人(岩原紳作君) 私も浜田先生の御意見に全く賛成でありまして、日本の場合、常にPKO的発想が出てくるわけでありまして、この取得機構も、さっき御指摘のとおり、最初はまさにそういうPKO的な発想で出てきた。そのときは私はもう大反対だったわけでありまして、先ほど金庫株の話でも出ましたように、基本的な発想としてそういうのが出てくるのは非常にまずいというふうに思います。
 ただ、幸い、その後いろいろもまれました結果、案が次第に筋のいいものになっていって、最低限のやむを得ないもの、確かに私も、全面的にマーケットに任せればすべてうまくいくというものでもないということは十分承知しておりますので、若干のセーフティーネット的なものがあり得るのは、これはしようがないと。したがいまして、いろんな弊害がなるべく出ないような形で抑えた上での最小限のものであれば、まさに池尾先生の表現で言えば理解できるということで賛成している次第であります。
#31
○浜田卓二郎君 最後に山本参考人にもう一度伺いますけれども、全く問題は別ですが、最近、不良債権処理を急ごうと。これも、私も基本的には不良債権の問題から早く金融機関が脱却してほしいというふうに一番願って議論をしてきた一人だと思っておりますけれども、最近の状況の中で、どうも急がなきゃいけない、特別検査もある、そういうことで、少しその第一線では行き過ぎが来ちゃっているんじゃないかと。
 そうすると、私は一〇〇%実態を知っているわけじゃありませんけれども、心配する中小企業者とか、そういうおやじさんたちがよく、そのレベルの話かもしれませんけれども、金利をちゃんと払っているんだよなと。ところが、もとは元金も払っていた、それを、元金は少し払えなくなって、今金利だけは辛うじて払ってこの期間を何とか乗り切ろうとしていると、だけれどもだんだん基準が厳しくなって、そういうところまでいわば整理の対象になってきちゃっているんじゃないかと。だから、不良債権処理というのは非常に今の不況に拍車をかけるし、倒産、失業というようなことにつながっていく面の方が心配だという声を最近物すごく聞くんですよね。
 私は、お聞きしたいことは、金融庁、金融担当大臣が一生懸命むち打って、早く整理せよ早く整理せよという話が、若干そういう、何というんですかね、本来金融機関が考える貸付先の育成なり管理なり、そういうものに無理な、しゃくし定規なやり方を促していないか、そういうふうになる懸念が出ているんじゃないか、どう受けとめていらっしゃるか。
 不良債権は処理しなきゃいけない、それはだれよりも一番お考えになっているのは金融機関、当事者だと思うんですね。だから、全体に早くしろ、一定の期限を切れという話がそういうひずみをもたらしちゃうというのは、現下のこのデフレ的な状況の中では非常に大きな問題になりつつあるんではないか、私はそういうことをちょっと懸念するものですから、第一線で、協会長になるともう第一線じゃないかもしれませんけれども、金融を御担当になっている立場で、今の行政のあり方、あるいは我々も含めてかもしれませんけれども、そういう処理のあり方について御感想を伺いたいと思います。
#32
○参考人(山本惠朗君) 現場の率直な感じということでお聞き取りいただきたいと思いますが、御指摘のように経営不振に陥る企業が大分ふえております。そうした企業の置かれている状況、それから経営不振の理由、これも実にさまざまでございます。
 よく議論されますように、中国の影響というものは日本の産業構造、中小企業も含めて大きな影響を与えつつあります。不況の一つの要因というのもそういうところにあるわけでございます。仮に、そうした背景、今後の業績回復ないしは再建の見込み、そういったものを一切しんしゃくすることなく、一律にすべてを不良債権ということで処理してしまうということになりますと、そもそも間接金融が持っている特徴というものを否定していくことにもなりますし、また仮にそういった方向でスピードを上げて一律にやりますと、雇用の問題とか、あるいは景気にもマイナスの影響を及ぼす可能性は否定できないというふうに私は思っております。
 また、不良債権処理を進めていく中では、地域経済に与える影響なども含めまして、私どもでは、債務者の置かれた状況を個別に実態把握に基づいて検証しつつ、不良債権の処理をまさに個別に判断をしていくというのが実際にやっているところでございます。
 そういう意味で、この不良債権処理というものの影響が大きいものでございますので、経済状況とのバランスを見ながらいかに迅速にこの問題を処理していくかと、この辺が現場では大変に苦労をしているところでございます。
 不良債権につきましては、不良債権の存在が景気悪化の主因であるというような議論がこの春以降支配的であったわけですが、これは記者会見でも私は申し上げておりますが、実感とはどうも違うと。我々は、むしろ景気が悪くなると不良債権がふえるという方が我々の実感には合う、そこは違うのではないかと。
 昨今、不良債権が減らないということについて御指摘、御批判もあるわけでございますが、現実に私どもがバランスシートから落としていく金額と新たに発生する不良債権の金額というものはほぼ同額になっているのがこの一年、一年半の状況でございまして、不況型の不良債権がふえるという状況下では、なかなか目に見えるような不良債権の額の減少というものは実現が難しいというのが率直な状況でございます。
#33
○浜田卓二郎君 終わります。
#34
○大門実紀史君 日本共産党の大門です。きょうは、お忙しいところをありがとうございます。
 山本参考人に先にお伺いしたいんですが、先ほど御意見を言われた中で少し気になったことがありますので先にお伺いしたいと思いますが、この機構について、当初は銀行救済的な色彩が強いので余り積極的な姿勢ではなかったといいますか、だったと。これは、公的資金による担保がされているという点が銀行救済的というふうに御判断されて当初はそう思われたんだと思いますが、それはよくわかりませんけれども、政府の説明をもろもろ聞いた後で、銀行業界としても評価をするようになったというふうに先ほど言われましたけれども、私は、評価という言い方がどうなのかと思うんですよ。これは銀行業界そのものが当事者でありますし、国に面倒を見てもらうというような法案ですから、これを何か人ごとのように、評価というふうなことではないんじゃないかと。
 むしろ、当事者として衆議院でもはっきり、はっきりといいますか、いろいろ御意見言われたように、この機構そのものが必要なのか、それとも自助努力でやれるのかと。当事者ですから、そこのところをきちっと意見としてお聞きしたい。
 つまり、当初に疑問を抱かれた銀行救済的な色彩というのは何も解消されていないという点と、当事者として評価するとかしないとか、そういうことでよろしいのかどうかというふうに疑問を抱いたものですから、まずその点、お伺いしたいと思います。
#35
○参考人(山本惠朗君) 先ほどの冒頭の御説明にかかわるお話だと思いますけれども、保有規制の問題、それからさらには包括的な株式市場の活性化策、そういったものがパッケージとして提出されました。これにつきまして私どもは、そういう方向について私どもとしては納得できるということを申し上げているわけでありまして、銀行としては、自助努力で最大限のことをやっていきたいということで、株式保有残高の圧縮に努力をしてきていると。そういうところから、当初、銀行救済ということだけでこうした取得機構が入ってくるということであれば、それは私どもとして積極的に受け入れるということではないということを申し上げたわけであります。
#36
○大門実紀史君 わかりました。
 この機会ですので、今の日本の銀行のあり方といいますか、私は今、根本的に問われているときではないかというふうに思うんですが、その点について山本参考人の御意見を伺いたいと思いますけれども。
 私、この委員会でも質問したことがあるんですが、日本の銀行の自己資本が、実際には公的資金と税金の繰り延べ資産でかさ上げされていると。これは日銀もそういう指摘をされているわけなんですが、日銀の速水総裁の試算によりますと、アメリカの基準でやるともう七%ぐらいしか日本の銀行は自己資本がない、ところが、今申し上げた公的資金と繰り延べ税金資産でかさ上げされて、見かけは遜色のないところになっている、それが現状だというふうに指摘されて、私もそう思うんですけれども、その上に、今回、株の買い取り、またこれからRCCの機能拡充ということで、それは両方とも公的資金で担保されていくといいますか、場合によっては注入されると。
 何といいますか、手とり足とりといいますか、私は率直に言って、こういうことばっかり続けていると、日本の銀行というのはもう世界の笑い物になるんじゃないかという気が非常に強くしているんです。実際に今、日本の銀行の国際的な格付というのは大変低いわけですし、市場の評価といいますか、国際的な評価という点では、こういういろいろ手とり足とりやっていくということがどう見られているのかという点では、非常に情けない状況にあるんじゃないかなというふうに思うんです。
 グローバル化とかいろんなことを言われますが、だからこそ自助努力で、自分の力で競争に勝ち抜いていくということを本当にやらないと、こういうことを続けていけば続けていくほど本当に日本の銀行というのはだんだんだんだん評価が下がって、いつまでたっても市場評価が低いということに私はなるような気がするんですけれども。つまり、護送船団方式という話が先ほどありましたけれども、結局それが直らないと、幾らグローバル化されても、金融ビッグバンが進んでも、そういう状況にある日本の銀行の状況について、山本参考人に伺いたいし、できれば池尾先生にも、その辺どう思われるか、今の認識を伺いたいというふうに思います。
#37
○参考人(山本惠朗君) 日本の銀行がふがいない、情けないという御指摘でございますが、私どもは、日本の銀行というものが日本の実体経済の大きさに十分貢献できるようなものでなければならないというふうに思っておりまして、金融機関が大きな構造改革のただ中にあるということを踏まえて、私どもは新しく、三つの銀行一緒になって、この新しい時代の競争に勝てるような戦略的あるいは組織的な対応をしようということでやっているところでございます。
 率直のところ、先ほど申し上げましたように、不良債権の問題、それから株式保有の問題、それからさらには、ビジネスモデル論にありますように、この構造変化の中で新しい収益力の強い銀行あるいは金融機関をつくるという点で大きな課題がある、こうしたところにつきまして、いかにやっていくかということで日夜努力をしているところでございます。
 そういう点で、手とり足とりという政府の御支援というふうなお話もございましたが、株式の買い取り機構の問題、今議論されておりますこの機構について申しますと、私どもは、銀行の救済というふうなことではなくて、今、池尾先生のお話もございましたし、私も申し上げましたが、株式の保有構造というものが大きく転換をする、転換をさせる必要がある、そういう時期であるという大きな枠組みの中で、銀行株式を早期に円滑に外していくということがマーケットで、あるいは我々の経営的な要請であるわけでございまして、これは非常に多額のものがマーケットに一時に出てくるということでございますので、それに対して株式市場の観点からいろいろな手を打とうというふうに理解をしておりまして、これが、銀行救済のための仕掛けであるというふうには私どもは理解をしていないところでございます。
 重ねて申し上げますが、情けないという御評価に対しまして、現状はいろいろ御指摘があることは承知しております。一生懸命努力をして世界的に日本の銀行が信頼を受け、日本経済に貢献できるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#38
○参考人(池尾和人君) 委員御指摘になりましたように、私も日本の銀行の自己資本ベースは実態としてはやはり脆弱だというふうに思っております。日本の銀行部門の自己資本ベースをいかにして強化していくかということが、したがって当面する課題としてあるというふうに思っております。そのときに、自己資本ベースが脆弱だからということで、しかしながら、だからといって、じゃ再度公的資本を入れればいいというふうな、そういう発想はとるべきではないというふうにも考えておりまして、自己資本ベースの増強は、まず第一に銀行自身の努力によってなされるべき筋合いのものであり、そのための努力を銀行にしてもらうということが一義だと思うんですね。
 しかしながら、同じことですが、自己資本ベースをふやすためには、みずからの努力でふやすためには増資をしなければいけないわけですが、増資を可能にするためには収益性を上げなければいけないということになりまして、経営革新に取り組んでもらわなければいけない。そういう経営革新に取り組んでもらうように、いわばむしろ圧力をかけていくことが必要だと思っております。
 それで成功して、ちゃんと資本ベースを増強することに成功する金融機関ばかりであればそれはハッピーでいいんですが、問題は、そういう努力をしていくように要請してもそれをなし切れない金融機関が出た場合にどういう対応をとるかということでありまして、私は、既に我が国においては早期是正措置等の制度が法制化されているわけでありますから、十分に努力の成果を上げられないで自己資本不足に陥った金融機関が出た場合には、粛々と早期是正措置の枠組みに従って対応をしていくと。その際に、場合によっては預金者保護等の目的で公的な支援が必要になるケースも考え得るのではないかというふうに思っております。
#39
○大門実紀史君 ありがとうございました。
 山本参考人にまた伺いたいんですけれども、私、今銀行のあり方が問われているという点で、もう一つは、銀行の公共性と営利性といいますか、そのバランスをどうとっていくかという問題も今ちょうど問われているんじゃないかと思うんです、今の収益性との関係でもですね。
 会長は、十月の二十三日に会見をされたときに、これからの銀行業務のあり方として、先ほど浜田議員からもありましたけれども、いわゆる中小企業への貸し出しも含めた伝統的な預金・貸出業務の必要性はなくならないけれども、資本の論理からすると、そこに余り資本を多く割かないで、もっと別のところに大きな収益機会を求める必要があるというふうなことを述べられております。それの例として、例えば投資信託の販売など挙げられているわけですけれども、ただ、銀行がそういう資本の論理だけで、収益至上主義といいますか、それだけを求めてやっていくと、結局またバブルの失敗を招くとかいろんな危険性もあるわけですし、そういう反省に立つならば、収益性ももちろん重要なんでしょうけれども、それだけを追い求めていきますと、会長が言われた伝統的な預金・貸出業務のところがおろそかになっていくと。
 今本当にそういう方向に突き進もうとされているというのは、私、ある銀行の支店長会議の資料を見せていただいたんですけれども、すごいんですよね。個別銀行ですから名前出しませんけれども、大口をエクセレントというクライアントに位置づけて、中小企業はもうスモールビジネスと。非常に区分をはっきりして、これからは大口のクライアント、お客さんを、顧客をどう開発するかと。スモールビジネスクラス、中小企業にはできるだけ効率的な、手間のかからない、時間のかからない対応をすべきというのを支店長会議でもやっている銀行があちこちにあるぐらいで、収益性、営利だけを追い求めていくという方向に非常に今特化しているんではないかという危惧を抱いているんですけれども。
 こういうことを進めていきますと、銀行法一条にある公共性が一体何なんだろうというふうなことが問われてくると思いますし、例えば、大手銀行がこれからは大企業の金庫番になって、あるいは国際的な市場を中心にやっていくということであるのならば、これは民間企業としてはどうぞ御自由にやられたらいいと私は思うんですが、そうなると、もう公共性というものではなくて、純粋な一巨大民間銀行、融資会社というふうになるんでしたら、それこそ公的資金で面倒を見てもらう理由がもう何もなくなってくると、もう一民間企業ですからね。民間大企業ですから、好きにやるかわりに公的資金も受けるべきではないというふうに、言えばなってくると思うんですね。
 そういう方向が今問われているときだというふうに私、実態からいって思うんですけれども、山本さんとしてはどうお考えですか。
#40
○参考人(山本惠朗君) 銀行の伝統的な預金・貸出業務と新しい金融サービスとの関係についての御質問だと思いますが、私は、銀行のコアのビジネスというものは、「伝統的な」という言葉がついておりますけれども、預金・貸出業務である、それに付随した決済業務であるというふうに考えておりまして、これが銀行の銀行たるゆえんであるわけであります。
 ところが、昨今は、規制緩和のもとで金融サービスというものが非常に多様になってきております。預金に対するものとしては、例えば投資信託というようなものが個人の金融資産の選好の中で大きなウエートを占めつつあると、こういうふうな状況でございます。
 そういう意味で、コアのビジネスの成長力というものが見劣りするようになってきているということから、私どもとしては、収益性という観点から、新しいそうしたマーケットあるいは利用者のニーズに合ったビジネスの分野に力を入れていく必要があるということを申し上げたわけでございまして、他方で、先ほど大企業の例をおっしゃいましたが、大企業は資本市場にどんどんファイナンスの源泉を移しておりまして、むしろ大企業の預金・貸出業務というものは縮小する傾向が明らかにあります。ここ数年、特にこの辺、傾向が顕著でございまして、預金、貸し出しというような間接金融の分野についていいますと、むしろ中小企業、個人、これは先ほど池尾先生もちょっと触れていらっしゃいましたが、この分野が非常に重要なコアのビジネスであるという位置づけをしているわけでございます。
 ただ、記者会見の記録をお読みの上での御質問と思いますが、これからの収益性を高めていくという場合にどこに力点を置くのかということになると、先ほど申しましたように、利用者の選好の変化というところから、例えば投資信託というようなものを売っていくというようなこと、これはもう個人のお客様が中心でございますけれども、そういったことにウエートを移していきたいということでございます。
 それから、中小企業向け貸し出しにつきましては、これは、中業企業向け貸し出しを含む健全な取引先に対して信用供与の拡大を図ることは社会的な使命であると認識しておりまして、全銀協としては、引き続きこの点については最大限の取り組みを行ってまいりたいというふうに考えております。
 例年、年末になりますと金融庁から、あるいは金融担当大臣から直接に、年末の中小企業に対する金融の円滑化についての周知徹底ということの依頼がございまして、全銀協会長名で会員のそれぞれの代表者あてに通知をし、この点の徹底を図っているということでございます。本年度につきましても同様の対応をする予定でございます。
#41
○大門実紀史君 終わります。
#42
○平野達男君 自由党の平野達男でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、山本会長にお伺いしたいと思います。
 きょうの冒頭の御説明の中でも、銀行は自己資本率の確保に向けて相当の努力をしておるんだと。特に、みずほにつきましてはもう自己資本のティア1に相当する株の保有の制限まで達成する見込みはできたというような御説明がございました。恐らく、銀行によってその努力の傾注の仕方あるいは株の売却の仕方、そのスピード、いろいろ違いはあると思いますが、全体としてはやはり銀行はかなりの危機意識を持って株の売却に努力をしているんじゃないかというふうに思います。
 そういう中で、あえて今法律でもって国が株式の保有制限をかけるということについての評価について、いま一度ここでちょっとお伺いしておきたいと思います。
#43
○参考人(山本惠朗君) 株式保有規制の水準につきましては、金融審議会の場などでもいろいろな意見が出されたようでございますが、先ほど申し上げましたように、この株式の持ち合いが形成された歴史的経緯、それから現実に銀行が多額の株式を保有しているという事実、さらには規制が導入された場合の株式市場への影響など、さまざまな要素が考慮されて自己資本の範囲内という提言がなされたというふうに考えております。
 実際に、先ほども申しましたように、みずほフィナンシャルグループの例では、比較的この圧縮が進んでいるグループでございますが、現実には自己資本の一五〇%を超えて株式を現に保有している銀行があるというふうにも聞いております。
 そういう意味で、規制の影響というのは個別の銀行によって異なっているわけでございますが、それぞれの銀行はそれぞれのやり方で同じ方向に向かって、つまり圧縮をする方向で動いているということで、この今回の規制の方向というのは一致しているということでございます。
 ただ、実際に規制が導入されますと、取引先との交渉など非常に難しい問題が現実にございます。そういった中で時限を切られるということの苦しさということがございますが、こうした政府の明確な意思のもとでお客様との交渉などもさらに進めやすくなるということも否定できないわけでございまして、そんな意味から、私どもとしては大変に厳しい時限制のもとでやることになりますが、方向が一致しているというところから、この法律による規制も意味があるというふうに考えているところでございます。
#44
○平野達男君 時限的に大変厳しいというお話がございましたけれども、過去の大手銀行の保有株式の売却の状況を見ますと、大体三兆程度で推移しているというような実態がございます。そして、今回の想定では約十一兆分がティア1の額を超える額であって、これを売却しなければならない、これを三年間で売却するんだというようなスキームになっております。それを前提としております。例外として、銀行によっては一、二年の猶予を設けるというような形になっておりますけれども。
 この今までの売却の実態から見て、本当にこれは期限を設けることがそんなに厳しい状況なんでしょうか。もし厳しいということであれば、その厳しい理由というか、どういう意味で厳しいのかということを少しわかりやすくちょっと御説明いただければありがたいんですが。
#45
○参考人(山本惠朗君) 厳しさということは、一つは、銀行によってそれぞれ顧客との折衝がある。これは、非常に大量に持っている場合はお客様の資本政策にも影響を与えるわけでございまして、そうした点から、個別に見ますと相当に時間を要するものが出てくるということが一つございます。
 それからもう一つは、私どもも過去二年半やってまいりましたけれども、マーケットの状況で容易に売却できる場合とそうでない場合もございます。先ほど申しましたように、マーケットというのは非常に大きな不確実性を抱えておりますので、そういう意味で、先のことはわからないと。その中で実際に規制を円滑に入れるということになりますと、どうしてもどこかで何がしかの、今回御提案のあるようなセーフティーネットというようなもので支える臨時的なものがあるということは、この規制の円滑な導入という意味で意味があるというのが私どもの考え方でございます。
 三兆円の実績というのも、先ほど申しましたように、マーケットの状況でスムーズにいくとき、いかないときというものがございますものですから、単純な算術ではおっしゃるとおりのことかと思いますが、そのとおりにいくかどうかというところが問題であるというふうに考えております。
#46
○平野達男君 個々の取引によっては売却について非常に問題が生じる場合があるというお話だったと思うんですが、先ほどの岩原先生の法案制定経緯の中にも御説明ございましたけれども、銀行の株式放出が短期的には株式市場の需給と価格形成に影響しということで、これが今回の株式取得機構の設定の理由だというふうな、そういう説明になっていたかと思います。
 今の山本会長のお話によりますと、個別のミクロ的な取引によって大変だからという話がございましたけれども、株式市場の需給と価格の形成に影響するということの説明は、きょうの冒頭の山本会長の説明にもございませんでしたし、今の御説明にもなかったと思うんですが、こういった御説明を聞いて、岩原参考人にお尋ねしますけれども、ここの意味合いというのはどういうことなんでしょうか。
 もっと言えば、十一兆という株式、まあ年間で三兆ぐらいなんですが、東証の第一部売買の株の取引を見ますと、十一年では百七十八兆円、十二年では二百四十三兆円。株式の市場に厚みがないというお話ではございましたけれども、非常にパイとしては大きい。その中で三兆六千億という、しかもかつてにおいては三兆というもので吐いてきた。そういったプラスアルファとすれば年平均六千億という状況の中で、こういう株式市場の需給と価格に影響をするということの、どういう考え方でこういう考え方に結びつくのかということの御説明をちょっといただければありがたいんですが。
#47
○参考人(岩原紳作君) マクロの意味で株価への影響を与えるかどうかと。これは一種の推測の問題ですから、私も確信を持って言っているわけではございませんが、当然、株式市場の状況による。先ほど、大体毎年三兆の処分がされてきているといいますが、これは特に昨年度、二〇〇〇年は株式市場の状況がよかったということも非常に大きいわけでありまして、その時々の状況に影響される。
 さっき池尾参考人からお話がありましたように、やっぱり全体として見ると日本の場合は厚みが薄いということがありまして、確かに上場株価の総額は非常に大きいけれども、今までいわば持ち合いのもとで浮動株として取引される部分はその中では非常に少ないものですから、状況が悪くなると一遍に株価に大きい影響が出るということがあり得るわけでありまして、現にことしになって非常に悪くなっておりますし、マクロとして見ても今後日本の経済ははっきり言って非常に厳しい環境にあると思いますので、そうなりますと、実際株式市場でトレードされる分についていえば、三兆ぐらいの取引であっても決して少なからないインパクトを与える可能性はあり得ると。はっきり言って、かつての平成九年のときのようなマーケットの状況がまた来たとすると、これはそれだけでも大きい要素になり得るということが私はあり得ると思っています。
 あと、規制の必要な理由としては、確かに三兆ぐらいずつ処分してきていますが、それはいわば処分しやすいところからしてきているわけで、持ち合い等に関する経営者の意識というのはそれほど変わっていないところがございます。これはもういろいろな実証研究からも示されておりまして、そうしますと、残るのは、いわば岩盤に当たる部分に今後はぶち当たっていくわけでありまして、そういうところの処分もスムーズにいくようにするためには、こういう法規制で後押しをする必要が出てくるんじゃないかというのが私どもの考え方であります。
#48
○平野達男君 先般の日経新聞に、朝日生命が五千億の株を放出するんだというようなニュースが出ておりました。これは一社とすれば相当の株で、これはたしか三年ぐらいで処理するんだというような計画だったと思うんですが、法的な強制力はないんですけれども、新聞にあのように五千億売却しますよということを公開しながら株の売りをやっていこうとしているわけです。
 実体の経済を見ますと、私は株のことについては実はよくわからないんですけれども、そういった大量の株が出てきたり、売り買いするということについては、これは少なくとも三年、今回の場合五年という猶予もありますから、その中で自然にはける数字ではないかという感じがするし、また、さっきの朝日生命の例にもありますように、一挙に株が出てくるというようなことは、巨大な大きなパイの中ではそんなに珍しいことではないんじゃないかという気もするんですが、そこはどうでしょうか。
#49
○参考人(岩原紳作君) おっしゃるように、私も、通常の状態でいけば別にこういった買い取り機構などを活用しなくても進んでいくと思っております。私も、買い取り機構というのは、ある意味でいえば使われなければ一番いいと。
 しかし、さっき申しましたように、日本の経済環境、将来非常に厳しい予想もあり得ますので、そういうときに、まさにセーフティーネットという言葉を使ったのはそういう意味だと思っていまして、できれば使わずに済めばいい、いわば保険のようなものでありまして、しかし、万が一そうなったときにも、日本経済全体の構造の望ましい姿からいえばやはり銀行の株式の放出は続けてもらわなければいけませんので、いわばそのための担保としてこういう制度をつくっておくというふうに私は理解しております。
#50
○平野達男君 それじゃ、もう一度山本会長にお尋ねしますけれども、三年ないし五年をかけてはけない株というのはどういう株になるんでしょうか。これは素人にもわかりやすくちょっと説明いただけるとありがたいんですが。
#51
○参考人(山本惠朗君) お答えする前に、先ほど私ども、みずほフィナンシャルグループ、二年半やってきましてと申し上げましたが、三年半の間違いでございましたので、訂正させていただきます。
 どんな株が残るのかということでございますが、いい会社、悪い会社というようなことではなくて、株式の資本政策あるいは株主構成についての企業の考え方というのは非常にばらばらでございます。
 例えば、個人の株主にたくさん持ってもらう、そのことで自分の会社のマーケットシェアを上げていくというようなねらいを持ったところは、むしろ銀行から放出を早くしてほしい、一定の比率で毎年放出してほしいというような御要望がございます。他方、そうしたものではなくて、もう少し安定的な株主が必要である、長期投資をやっていくというような観点で安定的な株主を一定のシェアで持ちたいと。これはいろいろなケースがございます、安定株主であることの意味というのはございますが、そういったことを考えている企業もございます。従来ではどちらかというと後者の例が多かったんですが、最近は、例えば海外での知名度を上げるために海外に上場するので銀行の持っていた株を放出してほしいとか、持ち合いをもう少し少なくしたいとか、いろいろなことがございます。
 いずれにしましても、そうした前向きに持ち合いを解消していきたいという企業と、そうではない、むしろコアの株主として引き続き持ってもらいたいと。これは例えば投資信託だとか年金基金なんかでも安定的な株主になり得るわけでございまして、それと同じような意味で、機関投資家として持ってもらいたいという要請がございます。
 こうしたところを銀行取引との関連で我々が我々のそろばんで判断をしていくというようなことで、これはなかなか時間がかかる作業であると、こういうことでございます。
#52
○平野達男君 つまりは、持ち合い株を解消するときに株を売却して、その受け取り側で信頼の置ける人がいるかどうかわからない、その信頼の置ける人が見つかるまでの一時的な待避所として今回の場合は特別勘定みたいなものを使うという、そういう御説明でしょうか。
#53
○参考人(山本惠朗君) いや、特別勘定を使うかどうかというのは、先ほども申しましたように、特別勘定に買い取ってもらう場合には八%の拠出金が要ります。そうした意味で、マーケットで売却できる方が銀行としては経済的にメリットが大きいわけであります。ただ、非常にマーケットが異常な状況にある、あるいは一時に大量の特定の会社の株式を放出するということが容易でないというような状況では、その拠出金を払っても機構に売却をするというようなこともあり得ると、そういうふうな状況でございます。
#54
○平野達男君 時間もなくなってまいりましたので、最後にちょっと池尾先生にお尋ねしたいと思います。
 先ほどの勝木委員の御質問にもございましたけれども、池尾先生は、自己資本率の、健全財政の確保のためには貸出額をやはり抑制すべきだというようなニュアンスのことを、この間いただいたんですけれども、資料の中で書かれております。一方で、それは貸し渋りにつながるんではないかというような私も懸念はちょっと持っておるんですけれども。
 もう一つ、日銀が今、当座預金の量をずっとふやして、文字どおり、日銀総裁の言葉をかりますと、じゃぶじゃぶの状況にしている、それが実体経済になかなか伝わっていかないというようなことを言っておりまして、今はそういうBISという規制が一方にあって、その片方で当座預金量をどんどんふやしておいて、それで景気の今のデフレの脱却を図ろうとしているという、そういうスキームにあるわけですけれども、どこか二律背反のような感じがするんですが、池尾先生から見られて、どのような感想、見方をされておるか、最後にちょっとお聞きしたいと思います。
#55
○参考人(池尾和人君) 私は、銀行側の自己資本が制約になって十分な貸し出しが行われないという状況は基本的にはないんではないかというふうに思っております。もちろん、個別的な例というのはいろいろ考えられますから、一切そういう例が一件たりともないというふうな話はもちろんできませんが、基本的には銀行の自己資本が制約になっているという状況は余りないように思っております。
 問題は、企業側から見てみますと、例えば売上高に対する借入金の比率でありますとかそういうものを考えますと、従来の時期よりもやはり随分、何というんですか、経済活動の規模に比べて貸出金が過剰になっているということは企業側から見ても否定し切れないことだと思うんですね。そういう意味では、やはり全体として借入金、貸出金が多くなり過ぎているという状況が基調としてはあると思うんですね。そのことと、日々の資金繰りの強弱という問題は若干区別して考えなければいけない問題でありまして、この株式の問題に関しても、一時的な流動性という問題と基調的な需給のバランスに影響を与えるというのはやはり違う話であります。
 私は、だから、やはり基調としては借り過ぎ、貸し過ぎという状態が日本にはあって、それを構造としては解消していかなければいけない。そのことと、日常的な資金繰りに支障を来さない形でそれをやっていくにはどうしたらいいかという非常に難しい問題を解かなければいけないんですが、やはり構造としての問題の解決という意識といいますか、認識は持っている必要があるんではないかというふうに考えておる次第です。
#56
○平野達男君 どうもありがとうございました。
#57
○椎名素夫君 皆さんがいろいろ質問をしてお答えがありまして、もう余り聞くことはないんですけれども、今度の法案をめぐる問題ですが、せんだってからどうも見ていると、またきょうのお話でもありましたけれども、四月ごろから話がずっと続いている。あのころの様子を見ると、大変に声の大きな人たちがいて、何かやれというようなことで緊急経済対策というのが出てきたんで、それの最初のところでは、要するに、銀行を救えというのと、PKOみたいなニュアンスと、両方ありましたね。
 きょう伺ってわかったんですが、最初はそんなことなら反対だというような感じが非常に強かったんだろうと思うんですね、大体評判の悪い話でしたから。しかし、まあやらなきゃということにどこかで決まって、政府もそう思ったんでしょうけれども、やろうということになったら、まあしかし何か理屈つけなきゃというので、さっき御紹介があったようないろんな論議が、一から六まで書いてありますけれども、まあしようがないかというような感じがどうも強いような気がしてならないんですね。
 山本会長のお話を聞いても、持ち株を減らしていくという方向はいい、それはもう同じなんだと、だから自分でもやっているし、将来的にはそのほか銀行全体の経営のバランスを考えながらやっておられるというお話を伺って、まさにそうあるべきだと思うんですね。しかし、二〇〇五年が迫ってきていて、ほっておくと大変なことになりますよ、これはやっぱり考えなきゃいけないねという話が一方にはあって、それはまあそうなんでしょう。
 そうすると、これは法律にして規制をするという格好に、法律というのはそういうものになっちゃいますから、格好になっていますが、規制をかけたらやっぱりその見合いとして何かやっておかないといけないというのでこのセーフティーネットという話が出てきて、この機構というのができたというでき上がり方のような気がしてどうもしようがないんですね。
 しかし、私からおか目八目で見ておりますと、これは法律ですから規制なんでしょうが、元来、頭からかぶせたという話じゃなくて、二〇〇五年には相当リスクファクターを大きく見ろというようなことになりますよというのは、何も先生方がおっしゃらなくても、政府が言わなくても銀行自身がよくわかっておられることで、そのときにがたっと急に来たら大変だということはもう十分にわかっておられるはずだと思うんですね。むしろ、切迫感というのは政府なんかよりもあるかもしれない。しかし、それはまた、全体の経営の中での一部でしかないという面もある。それは承知の上でやっておられるということに、どうして政府が出てこなきゃいけないのかというのが、私には基本的によくわからないんです。
 これはちょっと伺いたいんですが、山本会長は今、銀行協会の会長をやっておられるので、よその銀行のこともお考えにならなきゃいけないという立場みたいになっちゃっている。そうすると、銀行はショックでつぶれちゃいけないというのが基底にあると、やはり自分のところではこれだけやっているけれども、よそでは大変に大量の株を抱えているところもあるようだしというようなお話が来るんですが。
 それを伺っていて私は思うんですけれども、昔は旧大蔵省が金融行政を丸抱えにして、そして銀行は一行もつぶしませんと言って力んだことがございましたね。しかし、そうはいかなくなった。けれども、その話がずっと脈々として地下では続いているという感じが漂うと、随分いろんな市場に、特にいい影響でもないし悪い影響でもないかもしれないけれども、ばんそうこうをそこらじゅうにべたべた張るということがやりたくなっちまうんじゃないか。そのあたり、どうお考えになるんでしょう。
 本当の意味でのコンペティションをやるというのだったら、よそで何かつまらない株を抱え込んで困っている銀行がいるけれども、それは知らないと、人のことであっておれのところはちゃんとやるというような話に欧米だとなるんだろうと思うんですが、やはり全体のことを考えて、うちはいいけれども隣じゃ随分困っているようだからというような話が続くというのは、これはやっぱり将来ともそういうぐあいに考えないと御商売できないということなんでしょうか。
 まず、その点を山本会長に伺いたいんですが。
#58
○参考人(山本惠朗君) 大変に全銀協会長として難しい立場のところでの御質問でございまして、なかなかお答えしにくいところでございますが、今回の株式の保有規制についての議論は、先ほど申し上げましたように、我々銀行界全体として株式のポートフォリオを圧縮していこうという方向感で一致しておりまして、その点では、それぞれ具体的な進め方についてはいろいろな差がございますけれども、方向としてはその方向であると。
 実は、この問題の議論の複雑さというのは、今先生の御指摘のように、銀行を救済する、つぶさないための仕掛けであると、こういうふうに認識をいたしますと、これはなかなかこの機構の設立というようなものも理解しにくい話だろうというふうに思うんです。
 今、株式の保有構造を変えていかなきゃいけない、株式市場を活性化していかなきゃいかぬ、個人の資金を市場にもっともっと吸い入れなきゃいけないというような、そうした株式市場、証券市場の構造を変えていこうというふうな大きな戦略的な意図があって、その中でどうしていきますかというのが一番今回のこの問題の自然な流れだろうというふうに思っております。
 当初の議論が銀行救済的な議論であったために話が少し変な道筋をたどってきたというふうに思いますが、私はこれは、先ほど経済の発展段階というようなことを申し上げましたけれども、池尾先生も同じような御説明ございましたが、その変化を促進するための規制であるというふうに考えておりまして、そういう意味で株式の保有規制をし、その改革を後押しするということと、もう一つは、市場の厚みという議論がございましたが、何分、個人投資家が余り入っていない、主要先進国の中では特異な市場でございますので、この市場を早く欧米型の個人のリスクマネーが入ってくるものに変えていこうという動き、そうしたものと一体となってこの仕組みが効力を発するわけでございまして、一方的に売却だけを急がせて、それについて受け皿がないからどこかにプールするということでは本当の改革にならない。最終の受け皿が外国の投資家ということもございますけれども、何といっても日本にある個人の金融資産、これを株式市場に呼び込んでいって欧米型の保有構造に変えていくということが一緒に動いていかないとこれが成功しない。そのために、一時的にマーケットの混乱を避けるためにいわゆるセーフティーネットとしてこの機構が機能するんだと、こういうものであろうというふうに理解をしております。
#59
○椎名素夫君 ありがとうございました。
 岩原先生に伺いたいんですが、セーフティーネットという言葉は割に安易に使われておりますが、これは救われるのはだれなんですか。銀行を救うんじゃないというお話だし、そうすると何でしょうか。よく言われる日本の金融システムがセーフティーネットにどんと落ちてくるという話なんですか。何なんでしょう、これ。
#60
○参考人(岩原紳作君) 確かに、この取得機構についてセーフティーネットという言葉を使うのは、正確かどうかはちょっと疑問があり得ると思っておりまして、どういうレベルの意味で使ったのか私もよく知りません、取得機構については金融審で全然議論しておりませんので。
 あえて推測しますと、まず第一には、恐らく株式市場のセーフティーネットということをあるいはお考えなのかもしれません。先ほど御質問ございましたように、一時に大量に放出された場合に、現在の日本の証券市場の厚みから言うと、場合によっては市場自身がうまく機能しなくなるおそれがある。そこで、そういうのを一時的なクッションを置いて市場の機能麻痺を防ぐということを多分一つはお考えになって、あとは恐らく銀行制度全体の健全性を守るという意味でセーフティーネットという言葉を使ったのではないかというふうに推測しております。
#61
○椎名素夫君 わかりましたと言いたいけれども、よくわからないけれども、まあしようがない。
 池尾先生に伺いますが、日本の資本市場の厚み、深みのお話が出ましたが、一時的に大量に放出されて、確かに株価がどんと下がるということはあり得るんだろうと思うんですが、その場合、底が抜けるということはあるんですか。底を打ったということになれば反発が起こる。その場合、株式というのは、何も全体の東証の平均株価をみんな買っているんじゃなくて個々の株を買うわけでありまして、底が抜けるのもあるかもしれないけれども、底を打つのもあるかもしれない。底が抜けるようなものを、底をつくったような格好にするというのは余り健全な話じゃなくて、今もよく私にはわからないんですが、額面をはるかに割ったような株がまだ東証一部で上場されているというようなああいう話というのは、一体日本の取引所というのはどうなっているのかというのは全然わからないんですけれども。
 それで、私の感じを言えば、底が抜けるということは、システムとして、ないんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
#62
○参考人(池尾和人君) 先ほども少しちょっと申しかけたことがあるんですが、市場における基調としての需給バランスに影響を与えるという話と、それから一時的な流動性という話は区別されるべきでありまして、一時的な流動性とここで申し上げておりますのは、例えば、あしたになったら払える能力はあるんだけれども、きょうたまたまお金がないというふうな資金繰りの話を流動性というふうに呼んでおるわけですが、その流動性危機というのは各国の資本市場において起こり得る潜在的可能性はありますし、実際起こったこともあるわけだと思います。
 一番極端なといいますか、大規模な流動性危機ということでいえば、例えばアメリカでのブラックマンデーというふうなものが一九八七年でしたか、ありましたが、あれはある種の流動性危機だったと思いますが、そういう事態に対する対応ということとしては、ブラックマンデーのときは特にそうでしたが、アメリカの中央銀行であるFRBが必死に流動性を供給することによってマーケットを守ったということでありまして、そういう事態はあり得るというふうに思います。
 ただ、ブラックマンデーみたいな事態まで行くということではない、もっと手前のところでの流動性の問題というのは、当然日本のマーケットでは懸念として現実的にあり得る問題だというふうに考えておりまして、そういう一時的な資金繰りの困難さに対応するということであって、あくまでも需給を支えるとかそういうふうなことは目指すべきではないということで、二兆円という規模が小さいのではないかという御指摘もさっきありましたが、需給に影響を与えるということであればそれは小さいですし、むしろ需給に影響を与えるということは、PKO的発想はいけないという議論もございましたが、すべきではないと私も考えておりまして、あくまでも一時的な資金繰りの困難さからマーケットが壊れるということを防ぐという意味であります。その際にはこの取得機構だけがその役割を全部担うセーフティーネットであるというのも考え方としてやはりちょっとおかしいところがありまして、当然そういう事態になれば日本銀行が株式市場に対して流動性を供給するという対策をとるべきだというふうに思います。
 だから、そういう危機的な状況においては、あらかじめ対応が機械的に予定できるものではなくて、かなり柔軟な対応をとらざるを得ないという面があるんだと思いますが、そういう一つの装置として取得機構というのが考えられるかなというふうなことを私も思うということであります。
#63
○椎名素夫君 時間がなくなりましたから、もうやめます。
 ありがとうございました。
#64
○委員長(山下八洲夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様方に御礼のごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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