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2001/11/19 第153回国会 参議院 参議院会議録情報 第153回国会 共生社会に関する調査会 第2号
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2001/11/19 第153回国会 参議院

参議院会議録情報 第153回国会 共生社会に関する調査会 第2号

#1
第153回国会 共生社会に関する調査会 第2号
平成十三年十一月十九日(月曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月十六日
    辞任         補欠選任
     鈴木  寛君     神本美恵子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         小野 清子君
    理 事
                有馬 朗人君
                清水嘉与子君
                田浦  直君
                羽田雄一郎君
                渡辺 孝男君
                吉川 春子君
    委 員
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                大野つや子君
                小泉 顕雄君
                後藤 博子君
                段本 幸男君
                中原  爽君
                山下 英利君
                岡崎トミ子君
                神本美恵子君
                郡司  彰君
                小宮山洋子君
                平田 健二君
                弘友 和夫君
                山本 香苗君
                林  紀子君
                田嶋 陽子君
                高橋紀世子君
   副大臣
       内閣府副大臣   松下 忠洋君
       文部科学副大臣  岸田 文雄君
       厚生労働副大臣  南野知惠子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   政府参考人
       内閣法制局第一
       部長       阪田 雅裕君
       内閣府政策統括
       官        江崎 芳雄君
       宮内庁次長    羽毛田信吾君
       警察庁生活安全
       局長       黒澤 正和君
       文部科学省生涯
       学習政策局長   近藤 信司君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省スポ
       ーツ・青少年局
       長        遠藤純一郎君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (共生社会の構築に向けてのうち児童虐待防止
 に関する件)

    ─────────────
#2
○会長(小野清子君) ただいまから共生社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十六日、鈴木寛君が委員を辞任され、その補欠として神本美恵子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(小野清子君) 共生社会に関する調査のうち、「共生社会の構築に向けて」を議題といたします。
 本日は、児童虐待問題に関する件について、内閣府、文部科学省、厚生労働省から順次説明を聴取し、その後、質疑を行うことといたします。
 なお、御発言は、説明、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず内閣府より説明を聴取いたします。松下内閣府副大臣。
#4
○副大臣(松下忠洋君) 内閣府副大臣の松下忠洋でございます。私は内閣府で青少年の健全育成について担当しております。
 児童虐待問題に関する内閣府の対応等について御説明申し上げます。
 言うまでもなく、子供が親などの保護者から虐待を受け、その生命や身体が危険にさらされるということは、青少年の健全な育成を図る観点からも極めて憂慮すべき問題であります。最近においても、子供が死に至るような重大な事件が後を絶たず、児童相談所への相談処理件数も急増しております。児童虐待問題は、このように大変に深刻な状況にあると認識しております。
 このような問題の背景としては、近年、都市化、家族形態の変容等によって地域社会のつながりが弱まり、家庭の内外において人間関係が希薄になってきた結果、家庭や地域社会における子育ての機能が低下しているということが挙げられると考えております。周囲から孤立した家庭の中で、保護者が育児不安に陥ったり育児に負担を感じる場合が生じ、そのようなときに家庭内外から適切なサポートを受けられずに児童虐待に及んでしまうこともあると考えております。
 政府におきましては、国の青少年行政の基本方針等を盛り込んだ青少年育成推進要綱、平成十三年の二月に策定して十月に改正いたしましたけれども、策定をしておりまして、先ほど述べたような認識のもとで、児童虐待問題等への対応の推進を当面特に取り組む課題の一つとして位置づけております。
 この中では、児童虐待問題を初めとする家庭の子育てに関する問題については、予防対策及び早期の発見、早期の適切な対応が重要であり、そのための地域ぐるみの体制整備を緊急に進める必要があることを踏まえ、一つには、国レベル及び地方レベルでの関係機関等の連携の強化、児童虐待市町村ネットワーク事業の推進、乳幼児健診時の育児不安相談の充実、地域子育て支援施策の展開等の各種児童虐待防止施策の一層の充実を図ること、二つには、主任児童委員の増員による地域での積極的な活動の推進を図ること、三つには、児童虐待事件の解明及び厳正な対処を行うことなどを盛り込んでおります。
 また、青少年育成推進要綱の重点推進事項の一つであります家庭への支援の充実におきましては、一つには、親等を対象とする学習・相談機会等の充実、二つには、子育て支援ネットワークづくりの推進、三つには、家庭の育成機能に対する支援・補完を盛り込んでおります。
 具体的には、この後、文部科学省及び厚生労働省からの御説明があります。
 さらに、内閣府においては、毎年十一月を全国青少年健全育成強調月間として定めており、関係省庁、民間団体等と連携を図りつつ、集中的に各種広報啓発活動を実施するなどの取り組みを行っておりますが、その実施に当たっては、児童虐待問題への対応の観点も含め、家庭への支援の充実にも重点を置くこととしております。
 内閣府としましては、引き続き、青少年育成推進要綱に沿った関係施策の推進や効果的な啓発活動の実施等により、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との緊密な連携を図りつつ、青少年の健全育成を総合的に推進してまいる所存でございます。
 今後とも、よろしく御支援のほどお願い申し上げます。
 終わります。
#5
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 それでは、次に岸田文部科学副大臣。
#6
○副大臣(岸田文雄君) 文部科学副大臣、岸田でございます。
 私から文部科学省におきます児童虐待への対応について御説明をさせていただきたいと存じます。お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、資料に基づいて御説明をさせていただきます。
 資料の一ページ目、大きな一番でありますが、児童虐待の防止等に関する法律の趣旨等についての学校教育関係者や社会教育関係者への周知の状況につきまして御説明をさせていただきます。
 文部科学省では、児童虐待については、従前から、都道府県等を通じて学校教育関係者や社会教育関係者に対して児童相談所への通告義務等について周知してきたところです。特に、昨年十一月、児童虐待の防止等に関する法律の施行後は、通知の発出や各種会議等を通じて、関係者に対して、一つは児童虐待の早期発見、早期対応に努めなければならないこと、さらには児童虐待を受けた児童を発見した者は速やかに福祉事務所または児童相談所へ通告すること、さらに被害を受けた児童等の適切な保護が行われるようにすること、また児童相談所等の関係機関等との連携の強化に努めること、こうした事柄につきまして周知を図っているところでございます。
 次に、大きな二番でありますが、文部科学省におきます主な児童虐待関係の施策について御説明をさせていただきます。
 まずは、文部科学省における児童虐待関係の施策のうち、家庭、地域社会における取り組みについて御説明をさせていただきます。
 一ページ目の社会教育法の改正についてでありますが、児童虐待の深刻化の背景の一つとして、都市化、核家族化、少子化や地域における地縁的なつながりの希薄化などに伴い、親が子育てについて相談する機会が減少していることなどにより、子育てやしつけに悩みや不安を持っている親や、子供への接し方、教育の仕方がわからないといった親が増加しているなど、家庭の教育力の低下が指摘をされています。
 このため、さきの通常国会におきまして、家庭教育の向上のための社会教育行政の体制整備等を図るため、社会教育法の改正を行っていただいたところであります。
 二ページ目に入りますが、社会教育法の改正における家庭教育関係の内容といたしましては、第一としまして、教育委員会の事務として家庭教育に関する学習の機会を提供するための講座の開設等の事務が明記をされたことであります。また、第二としまして、社会教育委員及び公民館運営審議会の委員、こうした委員として、子育てサークルのリーダー等の家庭教育の向上に資する活動を行う者を委嘱することができることになったということであります。そして、第三として、国及び地方公共団体が社会教育行政を進めるに当たり、家庭教育の向上に資することとなるような必要な配慮を行うことということであります。
 次に、家庭教育支援のための主な事業について御説明をさせていただきますが、二ページ目の子育て学習の全国展開につきましては、より多くの親が集まる機会をとらえて家庭教育に関する学習機会を提供するという趣旨で今年度から実施している事業であります。
 具体的には、小学校入学前の子供を持つ親が集まる就学時の健康診断や、一歳六カ月児や三歳児などの乳幼児の健康診断の機会等を活用した子育て講座を全国的に開設するとともに、思春期の子供の問題行動に悩む親向けの子育て講座をモデル的に実施しております。
 平成十四年度の概算要求では、この就学時健診等の機会を活用した子育て講座の全国的な実施、これは引き続き進めていくわけでありますが、それに加えて、新たに、妊娠期にある親を対象とした子育て講座を全国的に開設する経費を要求しているとともに、先ほど申しました思春期の子供を持つ親のための子育て講座、これは先ほどはモデル的に実施していると申し上げましたが、今度は、十四年度概算要求においては全国的に開設するという経費を予算に盛り込んでおります。今年度より、合わせて約一億七千万円増の四億九千万円を要求しているところであります。
 資料の三ページ目に入りますが、子育て支援ネットワークの充実ということにつきましては、昨年度から、子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親に対して、気軽に相談に乗ったり、きめ細かなアドバイス等を行う子育てサポーターを市町村に配置し、公民館等における読み聞かせや子育て相談等のさまざまな交流事業を実施するなど、地域における子育て支援ネットワークの充実を図っているものです。また、父親の家庭教育への参加を促進するため、父親の役割を考えるフォーラムや、企業等の職場で家庭教育に関する講座を開設したり、子供が職場参観をする、こうした事業を実施する市町村に対して補助を行うというようなこともしております。
 平成十四年度の概算要求では、子育てサポーターの配置市町村数を全国で九十四市町村から百八十八市町村に拡充するということを図るとともに、子育てサポーターへの助言や親へのカウンセリングを行う家庭教育アドバイザーを新たに全国で百八十八市町村に配置する経費など、今年度より約八千万円増の約五億六千万円を要求しております。
 そして、続きまして、家庭教育手帳、家庭教育ノート等の作成、配布ということにつきましては、平成十一年度から行っているわけですが、親が家庭を見詰め直し、自信を持って取り組んでいく契機となるよう、家庭教育手帳を母子保健の機会を通じて乳幼児を持つ親に配布するとともに、家庭教育ノートを小中学校等を通じて小中学生等を持つ親に配布するということを行っております。今年度配布しております家庭教育手帳、家庭教育ノートにおきましては、新たに、感情に任せてしかることとしつけとは違うといったような内容を児童虐待に関する項目として盛り込んだところであります。
 平成十四年度概算要求では、家庭教育手帳、家庭教育ノート、これらの作成、配布に加えまして、思春期の子供を持つ親を対象とした家庭教育ビデオの作成をし、全国の中学校等に配布する経費を要求しております。
 四ページ目に入ります。
 子供や親のための二十四時間電話相談に関する調査研究につきましては、平成十一年度から、いじめ問題や性の問題、自分の生き方や家族・友人関係等で悩む子供たちや、子育てやしつけに悩みや不安を持つ親の相談に、電話等により二十四時間いつでも対応できる相談体制を整備するため、調査研究を都道府県に委託しているものであります。
 平成十四年度概算要求においては、相談体制を整備するための調査研究の委託を引き続き行うこととしております。
 これ以外に、人権教育総合推進事業として、平成九年度から、人権教育に関する指導者の資質の向上を図るための研修事業、公民館等の社会教育施設を拠点とした学級・講座の開設、住民相互の交流活動など人権に関する学習活動を総合的に推進しております。
 また、昨年度から、人権感覚育成事業として、日常生活において態度や行動にあらわれるような人権感覚を身につけるため、参加体験型の学習プログラムの開発を市町村における実践的な学習活動の成果を踏まえながら行っております。
 次に、学校における取り組みについて御説明を申し上げます。
 幼稚園教育のあり方についての実践的調査研究でありますが、幼児教育の専門機関である幼稚園が、地域の幼児教育のセンターとして地域における子育て支援の機能を発揮し、子育てに関する不安や悩みを持つ保護者などを積極的に支援していく役割を果たすため、総合的な活動を推進するための調査研究を実施するものであります。平成十三年度は十二地域を指定して実施しております。
 具体的には、教育の専門家による子育て相談、子育てシンポジウムの開催、未就園児の親子登園、園庭・園舎の開放、子育て情報の提供、高齢者やボランティア団体等との地域交流、子育てサークル等の支援、預かり保育等の活動を総合的に実施し、子育て支援活動の一層の展開を図っております。児童虐待の防止のためには、これらを通じて子育てに不安や悩みを持つ保護者が子育てについて気軽に相談しやすい環境を整備するということに努めております。
 平成十四年度概算要求では、具体的な実践研究の成果を全国的に普及・活用し、幼稚園における子育て支援の充実を図る必要があるため、引き続き要求してまいります。五ページ目に入りますが、また、本年三月に策定した幼児教育振興プログラムにおいて、各都道府県で一地域以上実施されることを目標に実施することを明記しております。
 また、体験活動に関しては、さきの通常国会において、小中高等学校等における社会奉仕体験活動等の体験活動を充実させることなどを内容とする学校教育法の改正を行っていただきました。来年度は、こうした学校教育法の改正を踏まえて、豊かな体験活動推進事業として、子供たちの社会性や豊かな人間性をはぐくむため、各都道府県百地域の体験活動推進地域を指定するとともに、一千校の推進校を指定し、保育体験活動、介護体験活動を含む豊かな体験活動の展開を図ることとし、約七億二千万円を要求しているところでございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、厚生労働省を初め、各関係省庁あるいは関係団体と緊密に連携をとりながら児童虐待の問題に対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
#7
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 次に、南野厚生労働副大臣。
#8
○副大臣(南野知惠子君) ありがとうございます。厚生労働副大臣の南野でございます。
 これから御説明させていただきます。資料を、少し分厚いものを御用意させていただきましたので、これに沿いながら御説明申し上げたいと思っております。
 近年、児童虐待の相談件数が増加するとともに、児童の痛ましい死亡事例も頻繁に報道されております。児童虐待は、児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、次の世代に引き継がれるおそれもあり、その防止策が喫緊の課題となっております。このため、厚生労働省といたしましても、昨年十一月に施行されました児童虐待防止法を踏まえまして、児童虐待の発生予防対策の推進、虐待の早期発見、早期対応に向けた体制の充実、児童の保護と保護者等への指導体制の充実などに取り組んでまいりました。
 お手元の資料に基づいて説明させていただきます。
 児童相談所におきます児童虐待相談件数の状況、厚生労働省における児童虐待防止対策の概要、児童虐待防止に係る政府広報の状況についてでございます。なお、参考資料といたしましては、児童虐待防止法の概要及び現在国会で御審議されております児童福祉法改正案の関係資料を最後に添付いたしております。
 まず一ページをお開き願いたいと思います。
 これは、十一月十四日に公表いたしました昨年度の児童相談所におけます児童虐待相談処理件数について取りまとめたものでございます。平成十二年度の虐待相談は、統計をとり始めた平成二年度の十六倍に増加し、前年度と比較いたしましても一・五倍の一万七千七百二十五件ございました。児童虐待防止法が成立、施行され、広報啓発などの対策に積極的に取り組んだことなどから、相談、通告が促進されたことが大きいのではないかなというふうに考えております。
 二つ目の表、真ん中の表でございますが、児童虐待相談についてどのような経路で相談があったかを分類したものでございます。十二年度の主な相談経路といたしましては、家族が二一%、近隣知人が一四%、福祉事務所が一三%、学校などが一三%という状況で、これら四つの経路で全体の六割を占めているところでございます。
 三つ目の表におきましては、児童虐待防止法で定義されました児童虐待を身体的虐待、それと保護の怠慢ないし拒否、いわゆるネグレクトでございます、それと性的虐待、心理的虐待に分類したものでございます。十二年度につきましてはネグレクトの割合が増加していることが特徴的でございまして、児童虐待としてのネグレクトの理解が地域住民や関係機関、児童相談所に浸透しつつあるとうかがえるものであろうかなと思っております。
 二ページに参ります。
 主たる虐待者を分類した表でございますが、実母による虐待の割合が大きくなっており、十二年度は六一・一%でありました。なお、子供と一緒にいる時間が一般的に父親と母親では違うことも考慮する必要があるのかなと思っております。
 次の表は、虐待を受けました児童の年齢構成でございますが、ゼロ歳から三歳未満児と三歳から学齢前児童を合わせた、いわゆる就学前児童の占める割合が十二年度では約五割となっております。
 次の表は、児童福祉法第二十九条及び児童虐待防止法第九条に基づき児童の居どころなどに立入調査を行った件数でございますが、十二年度は九十六件でありました。児童虐待防止法で児童虐待のおそれがある場合には立入調査が行えることが明確化されたことを受けまして、積極的な運用がなされたものと考えられます。
 次の表は、児童福祉法第三十三条による一時保護の件数であります。相談件数が急増した結果、保護者からの分離が必要な事例も増加しておりまして、十二年度は六千百六十八件となっております。
 三ページに参りますが、最初の表は児童相談を受けた後の対応でございます。十二年度におきましては、施設入所が一四・三%、面接指導が七六・五%、里親委託が〇・五%となっております。
 次の表は、児童福祉法の規定に基づきまして家庭裁判所の承認を得るための手続をとった件数でございます。保護者の意に反して施設入所をするための家庭裁判所への申し立ての件数は、十一年度の八十八件から増加し、十二年度は百二十七件となっております。
 最後の表は、まことに心が痛む数字でございます。虐待による児童の死亡事例で、何らかの形で児童相談所のかかわりがございました事例の件数でございます。十二年度は十一件となっており、改めて亡くなられたお子さんの御冥福を心よりお祈りしたいと思う次第でございます。
 厚生労働省としましては、地方自治体に対し、迅速な対応、子供の安全確保の優先など、児童虐待への対応の基本原則の周知徹底を繰り返し求めるとともに、これから御説明申し上げますような児童虐待防止対策の一層の推進を図ってまいりたいと思います。
 四ページに移らせていただきます。
 児童虐待への対応は、発生予防から早期発見、早期対応、保護・指導、さらにアフターケアのそれぞれの段階におきまして、この図にございますように、児童相談所を初めとする保健、医療、福祉、教育、警察などの公的機関や民間団体などが数多く関係いたしております。
 厚生労働省関係の施策の大まかな流れといたしましては、左から順にまいりますと、発生予防につきましては、保健婦、助産婦等の活動や乳幼児健診など母子保健分野の役割が大きく、また、保育所の地域子育て支援センターなどがございます。
 早期発見につきましては、地域住民や関係機関による発見や児童相談所への通告などを促進するため、市町村の関係機関及び関係団体のネットワークづくり、電話相談の充実、児童委員活動の強化、乳幼児健診のフォローなどがございます。
 早期対策につきましては、虐待相談や通告に対しまして、中核機関としての児童相談所が警察やネットワークの関係機関の協力、援助を得ながら調査、診断などを行い、その後に続く保護・指導の方針を立てます。必要に応じ一時保護も行います。
 保護・指導からアフターケアにつきましては、在宅で親子の指導ケアを行う場合のほか、親子を分離し、子供を児童養護施設などで里親に入所委託した上で親子の指導ケアを行う場合がありますが、単に親子を分離すれば済むということではなく、最終的には親が虐待をすることがなくなり、家族がともに暮らせる状態とすることを目指すものでございます。
 五ページに移らせていただきます。
 発生予防からアフターケアに至ります各段階の課題と、十二年度、十三年度予算、さらに十四年度概算要求における厚生労働省の新規など施策を取りまとめた表でございます。
 発生予防につきましては、今年度、乳幼児健診時の相談体制の充実や地方交付税上の保健婦等の増員などに取り組んでおり、十四年度の概算要求におきましては、育児不安の増大や育児の孤立化に対応するため、子育て中の親子が気軽に集い交流できる場を提供するつどいの広場事業の創設を要求いたしております。
 早期発見につきましては、今年度は児童虐待防止市町村ネットワークや児童家庭支援センターを拡充し、主任児童委員を約一万四千人から二万人へ増員するほか、十四年度の概算要求におきましては、子ども家庭支援員が訪問などによる育児相談支援などを行う家庭訪問支援事業の創設や児童家庭支援センターの拡充などを要求いたしております。
 早期対応につきましては、今年度は、児童福祉司の任用資格の通信教育を実施いたしまして、児童虐待防止法を受けて来年四月に予定されております任用資格の強化に備えますほか、一時保護所の充実、地方交付税上の児童福祉司の増員、現場職員の資質向上を図るための虐待・思春期問題情報研修センターの整備などに取り組んでおります。十四年度概算要求につきましては、児童虐待対応機関の連携強化といたしまして、児童相談所や保健所などの機関が、地域で共同で対応するためのマニュアルづくりや地方交付税上の児童福祉司の増員と児童相談所の精神科医の常勤配置などを要求、要望いたしております。
 保護・指導からアフターケアにつきましては、今年度は児童養護施設への被虐待児個別対応職員の配置、児童福祉施設への心理職員の配置の充実、児童相談所における保護者へのカウンセリングの強化などに取り組んでおりますほか、十四年度概算要求につきましては、里親制度の充実として専門里親制度の創設や里親支援制度の創設、また施設の個別対応職員の配置の拡充などを要求いたしております。
 六ページに続きますが、関係機関などの概要をまとめたものでございますので、適宜御参照いただきたいと思います。児童相談所の児童福祉司につきましては、四角い枠で囲んでございますが、自治体にも御協力いただき、近年配置数が拡大いたしております。
 七ページでございます。
 関係機関及び関係団体のネットワークでは、国レベル、都道府県・指定都市レベル、市町村レベルでそれぞれにございます。特に今後の課題といたしましては市町村レベルのネットワークの拡大がございますが、先般全国の状況を調査し、現在、結果を取りまとめ中であります。おおよそのところでは五百前後の市町村で虐待防止の機能を持つネットワークが設置され、三百前後の市町村で設置の計画があるというふうに承知いたしております。
 八ページ及び九ページは、十四年度の厚生労働省の概算要求の概要に要求額が入った資料でございます。厳しい財政状況ではございますが、総額約三十四億円を要求いたしております。
 続く十ページ及び十一ページは、十二年度と十三年度の児童虐待防止に関するテレビ、ラジオ、刊行物などを通じた広報の実施状況を関係省庁の御協力もいただきまして一覧表にまとめさせていただきました。
 最後に、参考資料でございますが、現在、参議院で御審議されております児童福祉法の改正案におかれましては、児童委員活動の活性化にかかわる内容が含まれております。児童虐待の防止にも深くかかわる重要な法案であると考えております。
 簡単ではございますが、いろいろな御説明を終わらせていただきます。
 厚生労働省といたしましても、今後とも児童虐待防止法の円滑な施行、関係機関との連携によりまして児童虐待防止対策の一層の推進、未来を担う子供たちを大切にはぐくむ社会の形成に努めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
#9
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○小泉顕雄君 自由民主党の小泉顕雄でございます。
 時間が十分あるわけではございませんので、三ないし四点につきまして厚生労働省並びに警察庁に質問をさせていただきます。
 スタートして間もなく一年を経過しようとしているこの二十一世紀ですが、心の世紀であるとか環境の世紀であるとかいろいろな表現がされていますけれども、いずれにしてもこの世紀は前の二十世紀から非常に多くの負の遺産を引き継いだままスタートした、どちらかといえば出発の時点では大変不幸な世紀のように私は思っております。
 そういった多くの負の遺産の中で、児童虐待現象というのは、二十世紀の多くの負の遺産を解消するまさに主人公として、二十一世紀を担っていく子供たちの命、さらには家庭や地域社会の教育力にかかわる非常に深刻な社会問題の一つであるということは言うまでもありません。
 二十世紀の後半から、本来あってはならない、また健全で秩序ある人間社会においては到底想定することさえできないこの児童虐待、それも実の両親から子供が命にかかわる虐待を受けるという痛ましい現象が頻発するようになりまして、昨年の十一月には新たな法律も施行をされたわけでございますけれども、とにかく二十一世紀のこの早い段階でこういった現象の発生を防止し、そして世代間の共生を図り、安定した社会状況をつくり出し、さらには家庭や地域に本来の豊かな教育力というものを取り戻す仕組みをつくり上げるためにも、この問題がこの調査会において取り上げられたということは私は大変大きな意義があるというふうに思っております。
 さて、子供のしつけというのは本来親の義務でありまして、そのしつけの手法につきましては厳格な親もありますし、また非常に優しい親もあるでしょう。さらに、少々手荒な方法を行使する親もあれば、常に優しい笑顔で接しながら子供をしつける親もあると思います。要するに、しつけの手法というのはさまざまでありますし、いずれの場合にしましても、親の側からすれば子供の将来を考えて正当に親権を行使しているんだという、そういう認識に基づいて日ごろのしつけを行っているんだというふうに思っております。
 ところが、例えば法律の第十四条では、親権のゆえをもってしても暴行などの虐待についての責めは免れないとしています。これは確かに当然のことでありますけれども、この法律の施行によって、親はしつけと思いながら、しかもみずからにとっては正当な親権の行使であると思いながら、子供に対して加えた行為に対しまして法律が及んでくるということが想定をされるようになりました。
 また、現在では虐待という言葉が余りにも前に出てきましてひとり歩きするような状況の中で、若い親たちの間では虐待としつけというものとの違いというものが必ずしも明確ではなくて、自信を持ってしつけあるいは子育てということに当たることができない、あるいは積極的にしつけをしようとしている親に対して、むしろ不安とかあるいは混乱を与えるという状況も想定をされるのではないかというふうに考えております。
 先ほど文部科学副大臣の御発言もあったわけですけれども、確かにしつけと虐待ということにつきましては明確な線引きをするというのは難しいことなのかもしれませんけれども、今申し上げましたような混乱を起こさないようにするために、やはりしつけと虐待ということについての定義が明確にされる必要があるかというふうに考えております。
 そこで、まずこのしつけと虐待ということにつきまして、両者の定義あるいは相違というものにつきまして政府としての御見解をお伺いしたいと思います。
#11
○政府参考人(岩田喜美枝君) しつけと虐待は全く別のものでございまして、反対の方向を向いたベクトルだというふうに思います。しつけは保護者が児童を健全に育成するために行うものでありますし、一方、虐待は子供の心身の成長や人格の形成に深刻なマイナスの影響を与えるものであるというふうに認識をいたしております。
 先生も今引用なさいましたが、昨年十一月に施行された児童虐待防止法の第二条で虐待とは何かということを四つの類型に分けまして明確に定義をされた、このことが大変事態をわかりやすくするのではないかというふうに思います。また、同じ法律の十四条では、児童の親権を行う者に対して、児童のしつけに際しての親権の行使が児童虐待とならないよう適切な行使に配慮すべきであるという旨も規定されております。
 したがいまして、例えば子供を死に至らしめるとか子供の身体に傷害を負わせる、あるいは心理的な外傷を与えるといったような、これらは児童虐待の定義に合致するわけでございますけれども、これらの行為は親の主観的な意図とは離れてしつけとして許されるものではないということは明らかでございますので、今後ともしつけとして許されないもの、児童虐待というのはこういうものであるというような、児童虐待防止法の定義を中心といたしまして、その法律の内容を国民の皆さんによく周知をしていくということが大変大事ではないかというふうに思います。
#12
○小泉顕雄君 ありがとうございました。
 極端な現象の場合には、明確に虐待であり、明確にしつけであるということも言えると思うんですけれども、非常に私はグレーゾーンが多いかなというような気持ちがしておりますので、先ほどの質問をさせていただいたわけです。
 虐待ということになりますと、暴行とかあるいは傷害などの犯罪行為にもなるわけでして、虐待と認定されれば警察力が行使をされるということになります。今言いましたように、私の感覚としてしつけと虐待の間では必ずしも明確に判断ができない非常に大きなグレーゾーンがあるという中で、十四条との関係の中で、警察におきましては、しつけの領域を超えているという認定をされた場合に、あるいはそれを認定される場合にはどういうような根拠でもって判断をされるのか、またその判断をもとにして警察としては具体的にどのような対処をされるのか、お伺いをしたいと思います。
#13
○政府参考人(黒澤正和君) 両親等がしつけとして児童に体罰を加えた場合には、その行為というものが懲戒権の行使として社会的に相当な範囲内で行われたか否かによりまして、暴行あるいは傷害罪の成立が問擬されるべきものと考えております。
 具体的には、個々の事案ごとに被害者に与えられた苦痛の有無、程度、行為の目的、行為当時の状況等を踏まえまして、当該行為が社会生活上相当なものであるか否かを総合的に勘案した上で厳正に対処しているものと承知をいたしております。
#14
○小泉顕雄君 どうもありがとうございました。非常に難しい言葉が続きまして、後ほどゆっくり勉強したいと思います。
 次の質問に移らせていただきますが、ある調査によりますと、児童虐待事件というのは、平成十年度に比べて平成十二年度ではほとんどの都道府県で三倍近く、あるいはそれ以上の増加を示していると言われております。昨年十一月の法の施行後でありましても、減少するどころかむしろ増加する傾向があるとも言われております。
 このような傾向を事実としてお認めになっておられるのか、事実とすればなぜこのような状況になっているのかということにつきまして、先ほど南野副大臣は法の積極的運用のあらわれという形で表現をされたわけですけれども、法律の施行との関連、特に法律の施行前後の状況を踏まえながら、今の状況というものをどのように分析しておられるのか、再度御見解をお伺いしておきたいと思います。
#15
○副大臣(南野知惠子君) ありがとうございます。
 小泉先生、片っ方では住職様のお心でございまして、心の師とも、または悩める人の魂の導師でもあられるということであり、虐待という問題については大変御心痛であろうかというふうに思います。我々もともに心を痛めておりますことを申し添えながら、虐待の件数が上がってきているということについては、先ほども申しましたが、やはり家庭内の問題として今までは水面下にあった、それが虐待対策の推進または児童虐待の防止などに関する法律が成立し、それが施行されていくことによって、自分の家庭は当然のことながら、地域住民の方、または関係機関の方々が子供たちに向かって認識するようになってきたのではないだろうかな、そういう意味からも相談件数が増加してまいりました。
 政府としましては、法律の効果であると評価しているということは先ほども申しましたが、同時に、子供が置かれている極めて深刻な状況が浮き彫りにされたのかなと、これはDV法等も同じであろうかなというふうに思いますが、そのような状況が子供の虐待ということにもあるのではないだろうかと。
 このような状況を踏まえながら、我々厚生労働省といたしましては、虐待の予防から早期発見、早期対応、さらに虐待を受けた児童の適切な保護に至るまで総合的に児童虐待防止施策の一層の努力、充実してまいりたいと思っております。
#16
○小泉顕雄君 どうも過分なお言葉をいただきまして、ありがとうございました。残念ながら私、大変生臭でございますので、十分御期待にこたえられるか自信がありませんが、法律の立法の趣旨あるいは法律の精神の浸透について、再度南野副大臣の御所見をお伺いしようと思いましたが、時間もありませんので次に移らせていただきたいと思います。
 次に、虐待の加虐者、被虐者、要するに当事者の特性ということについて教えていただきたいというふうに思います。
 言うまでもありませんけれども、私は、児童虐待という現象は決して一般的な社会現象の範疇に属するものではなくて、明らかに何らかの特殊性とかあるいは異常性というものを胚胎しているんではないかというふうに考えております。ですから、虐待が生じる要因というものを明確に分析することが今後の対策を立てる上で不可欠の要素にもなると思いますけれども、加虐者と被虐者それぞれが持っている何らかの特性のようなものにつきまして御見解をお伺いしたいと思います。
#17
○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童虐待の要因はさまざまでございまして、その家族を取り巻く社会的な要因、経済的な要因、あるいは家族の構成員の心理的な要因、精神医学的な要因、こういうようなものが相互に複合的に絡み合って生じているというふうに一般的に考えられると思います。
 それを少し分解してみますと、一つは親側の要因でございまして、親が情緒的あるいは社会的に未成熟であるというような問題もあろうというふうに思います。例えば、子供の甘えとか子供の依存をしっかり受けとめてやれないといったようなケースでございます。これらが親側の要因だと思います。
 子供側の要因としましては、やはり親が否定的な感情を抱きがちになったり、育児の負担感を感じやすい子供というのはおります。いわゆる育てにくい子供ということなんですが、よく泣く、なだめても感情がおさまらないといったような子供がそうでございますし、また、未熟児で生まれたり障害を持ったお子さんの場合には子育ての負担感が大変大きいものがございますので、そういうお子さんもハイリスクであるというふうに考えられております。
 そして三つ目は、家族全体の環境といいましょうか、家族の状況でございますが、例えば、その家族が経済的な困難さに直面しているとか、夫婦の関係その他家族関係が非常にストレスの多いものになっている、あるいは地域や血縁から孤立をしているといったような、そういう家族の要因などがあろうかというふうに思います。
 こういった要因がいろいろ重なり合いまして、ケースによってどの要因が最も重い要因であるかというのはいろいろあろうかというふうに思いますけれども、我々がこれまで経験したことを総合いたしますと、今申し上げましたような親側の要因、子供側の要因、そして家族全体の構造的な要因、それらが相互に複合的に関係しているというふうに理解しております。
#18
○小泉顕雄君 どうもありがとうございました。
 虐待を受ける側の子供が、例えば精神的な障害であるとかあるいは肉体的な障害というものを持っていて、その子供たちがさらに虐待ということで大変悲惨な状況にあるということは本当にもう言葉にあらわせないような悲惨なものだと思います。特にその辺の対策は今後も十分お願いをしたいと思うわけです。
 いずれにしましても、児童虐待というのは決してあってはならないことなわけですから、法律の施行というだけではなくて、先ほど来、内閣府にしても文部科学省にしても厚生労働省にしても、それぞれから御説明もあったわけですけれども、特に今、社会教育あるいは学校教育における諸施策というものをなお一層充実をしていただきますようにお願いをいたしますとともに、政府では、この四月から厚生労働省の方に虐待防止対策室というのを設置されました。せっかくの対策室の設置でございますので、この機能を有効に発揮させるためにも対策室を虐待防止対策の政府の窓口として活用をしていただきまして、この窓口を中心として関係各省庁の連携を強めていただきますとともに、十分な関連予算の獲得をしていっていただきますように、私もまたお手伝いをさせていただくことを表明をいたしまして、時間少々残りましたが、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#19
○後藤博子君 自民党の後藤博子です。このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。小泉先生の後に続きまして、多少わくわくどきどきしながらでございますけれども、よろしくお願い申し上げます。
 私は、二人ではありますけれども、子供を育てた経験を持つ母として、児童虐待を何とかなくしていきたい、そんな思いを込めて質問をさせていただきます。
 昨年の十一月二十日に児童虐待防止法が施行されましてきょうがちょうど一年目になります。この法律が施行されてから少なくとも三十五人の児童が虐待によって死亡という衝撃的な事実を読売新聞のことし八月十九日の社説が取り上げております。
 この記事によりますと、これらの中には、「児童相談所などが関与しながら対応の遅れや判断の甘さから子供を死なせてしまったケースが七件もある。」とのことです。また、今回、厚生労働省よりいただいた資料によりますと、同類のケースが平成十二年度は十一件に達しているとのことでございます。
 救えるはずの幼い命が守れなかった、それはなぜなのか。児童相談職員の対応の甘さや判断のおくれを指摘することはたやすいことではございますけれども、それよりも幼い命を守れなかった原因が検証され、それによって既存の施策が改善されていかなければならないと考えております。
 そこで、その原因が児童相談所の職員の不足によるものなのか、職員が的確に判断するための研修や教育の不足なのか、あるいは現行法のどこかに当初予測し得なかった法制上の不備があったことによるものなのか、いろいろな原因が、要因が考えられると思いますけれども、厚生労働省としてそれらの検証がなされているのかどうか、そして今後どのように対応されようとしているのかを、まず恐れ入りますが南野厚生労働副大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
#20
○副大臣(南野知惠子君) 後藤先生、今までの幅広い御生活の経験または国を越えた御生活の経験の中からいろいろな御体験をお示しになっておられます。また、子供の育児について、または死生観についても先生の厳しい、深いお考えがあるのではないかなと、そのように考えております。
 今お尋ねの問題でございますけれども、児童相談所がかかわりながら、十一人もの児童の命を救えなかったことは本当に残念でございます。亡くなられた方々の御冥福をお祈りしたいという気持ちでいっぱいでございますが、そういった児童対策を一層推進していかなければならないという大きな大きな決意になったとも思っております。
 この十一件につきましては、個々の事例や被害児童の年齢、家庭環境、発生した地域や児童相談所の状況に違いがございます。一概に共通する背景や要因を見出すということは、これはなかなか難しいことであろうかなというふうには思います。例えば、初期対応の段階で発生した事例だけでなく、施設退所後の在宅指導中に発生した事例、そういったこともあります。安全確認などの初期対応を適切に行うことはもちろんでございますが、援助計画に基づきながら、関係機関と密接に連携をとりながら継続的に対応することが重要であろうというふうにも思っております。
 さらに、厚生労働省といたしましては、児童相談所の実施体制の強化、そういったものを図りながら、また職員の資質の向上、または虐待の対応機関の関連強化などを含めながら、児童虐待防止対策の一層の充実に努めて悲しいケースをなくしていきたいと、そのように思っております。
#21
○後藤博子君 ありがとうございます。
 ぜひ続けていただきたいと思います。私も国会議員の一員としてぜひ頑張ってまいりたいと思います。
 次に、新聞のタイトルなんですけれども、自分もたたかれて育ったとか、大人になり切れない親とか、殴って死なせ捨てた、これはことし八月に兵庫県であった小学一年生が両親の虐待で死亡した事件を報道した新聞が掲げたタイトルでございます。この言葉を聞いて南野副大臣はどのようなことをお感じになられますでしょうか。多分私と同じに感じられると思いますが、あえてお尋ねをいたしたいと思います。率直な御感想をお伺いいたします。
#22
○副大臣(南野知惠子君) 本当に先生と同じ意見だというふうに思いますが、自分もたたかれたからそれを返していこうというようなことは、本当にまだ子育てをするときの未熟性があらわれているのではないだろうか。自分が大人になっていくときに母親の後ろ姿を見て育つわけですが、それがいかにして逆の育ち方をしたのかなというふうにも、つらい思いをいたしております。
 先生の御指摘いただきました死亡事例につきましては、改めて児童虐待の社会的背景、その複雑さというものを痛感いたしているところでございます。また、このようなことの再発を防ぐためにはどのようにしたらいいのかな、親が本当に大人になってほしいというようなことを痛切に感じるところでございます。
#23
○後藤博子君 ありがとうございます。
 本当に一つ一つがもっともなことだと思います。私がなぜわざわざこのようなことをあえて副大臣にお聞きしたかと申しますと、このタイトルの示しているメッセージに一つは注目をしていただきたいと思ったからでございます。
 大人になり切れない親たち、厳密に大人とは何かということもあります。また、子供がいなければ大人ではないと言うつもりは毛頭ありませんが、あえて単純に子供の親を大人と考えますと、人の親になることの自覚のないまま結婚し、当然のこととして子供をもうけることになる結果として、自分の思いどおりにならない子供に対し虐待をすることになる。極めて粗っぽい言い方であり理解ではありますけれども、この現実は親の心の荒廃、とりわけ母性の欠如をさきの新聞はメッセージとして示していると考えられるのではないでしょうか。
 そして、特に母親に顕著にこの傾向があらわれることは厚生労働省の資料、主たる虐待者の統計にあらわれております。虐待を受けている児童に対して的確に行政として対応していくことはもちろんであり、その施策は今回いただいた資料にあふれております。しかし、そのことと同等に重要なことは、虐待した親への対応ではないかと考えております。
 今、自分の子育ての経験を振り返ってみましても、主人の母と同居という比較的恵まれた環境の中での育児ではありましたが、それでも育児に疲れたときなど、ふと泣きじゃくる自分の子供が本当に疎ましく思えることさえありました。相談する人がそばにいた私でさえそうなるのですから、身近に育児の悩みや苦労を相談したり聞いてもらう相手のいない若い親にとって、子育ての苦労は想像をはるかに超えるものがあろうと私は思っております。
 そこで、実際に虐待を受けている子供を救う手段の一つとして、緊急避難的措置として、親と子供を引き離さなければならないことがあるということは資料を読みますと理解をいたします。しかし、私がより重要なことと考えますのは、壊れた家族を本来の温かい愛情あふれる家族へ戻すこと、すなわち荒廃した親の心を回復する施策が同時並行して行われなければならないのではないかと考えております。
 難しいことではございます。本当に難しくても、親として心の回復のための指導、虐待した親の心のケアに取り組まなければならないのではないか。その取り組みの現状及び対策はどうなっているのか。
 また、親がそのような指導を受けることを拒否したときには、第十一条に都道府県知事の勧告制度の規定もありますけれども、具体的にはどうなのか。
 さらに、第一線の現場から、指導を拒否する親への強制力のない勧告制度への対策についての声が上がってきているのかどうなのか。そのとき、どのような指導をされているのか。
 少し多いかもしれませんが、以上四点について厚生労働省岩田雇用均等・児童家庭局長にお伺いを申し上げます。
#24
○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童虐待の解決は、先生おっしゃいますように、最終的にはまたもとの家族にお子さんを戻して家族を再構築するということが最終目的、最良の解決策だというふうに思います。しかしながら、親に対する指導、カウンセリングすることなく子供をもとに戻しますと、これはもう再発することは目に見えているわけでございます。
 そこで、児童虐待防止法においても、保護者に対する指導の措置がとられた場合において保護者が児童福祉司などから指導を受ける義務を有する、こういう趣旨のことが書かれておりまして、保護者は児童福祉司の指導を受けなければいけないということになっているわけでございます。
 また、保護者の中には御自身が心の問題を抱えているケースが少なからずあるわけですから、こういう指導を児童福祉司などが行うときに、さらにそれをサポートするために、今年度から、地域の精神科医の協力を得て親に対するカウンセリングをしていく、そういう体制をとったところでございます。
 また、この法律には、保護者がその指導を受けないときは、都道府県知事は保護者に対して指導を受けるよう勧告することができるということになっております。この勧告は、地方自治体からの報告によりますと、平成十二年度については活用したケースはまだないようでございます。
 勧告自身について、拘束力がない、強制力がないということについては、私どもとしてはまだ大きな問題になっているという認識ではございませんで、例えば勧告に従わなかった場合に、罰則などはついておりませんけれども、実質的にやはり非常に実効性のある手だてが法律上規定されております。
 それはどういうことかと申し上げますと、子供が児童養護施設に入所措置をされていてそれを解除して家庭に戻すときに、都道府県知事は児童福祉司の意見を聞かなければならないということになっているわけですね。この児童福祉司というのが保護者に対する指導を行っているわけでございます。ですから、都道府県知事の勧告も無視して指導を受けないという親のケースは、子供さんの入所措置の解除について児童福祉司が意見を言うときに、こういう状態では家庭にまだ帰せないというような意見を申し上げることになると思いますので、そういう法律全体の仕組みを考えていただければ、この勧告制度というのは有効に機能するのではないかというふうに思います。
 まだ法施行後十二年度だけの統計でございますので、活用したケースは出ておりませんけれども、この勧告制度もうまく活用しながら保護者に対する指導が進みますように、自治体にも必要な助言をしてまいりたいというふうに思います。
#25
○後藤博子君 ありがとうございます。
 なかなか、統計の結果を見てからという、そういうことも大事かと思いますが、そうしながら日々虐待が起こり子供たちが亡くなっているわけですし、それにあわせて親も非常に悩んでいるわけでございますので、統計をとりながら、さらに今おっしゃったことも進めていただきたいと思っております。
 時間が迫ってまいりましたので次に行きますが、今回質問の機会をいただきまして、関係省庁より配付された資料を読んで気がついたんですけれども、見落としているかもしれません、なかなか読み込んでいないところがあるので間違っていたら申しわけありませんけれども、どこにも母性という言葉がちょっと見当たらなかったんです。主たる虐待者の中でも、実母が占める割合が六一%あるというデータが厚生労働省の資料にありました。兵庫県の事件を報じた新聞のタイトルにも示しますこのことを踏まえれば、明らかに母性の欠如が児童の虐待を招いていると言っても過言ではないと思います。
 我が子を無償の愛で慈しむ母性の回復というようなことは施策として考えられないのでしょうか。南野副大臣に御意見をお伺いいたします。また、これまでの質問に補足されることがございましたら、あわせて御意見をちょうだいできればと思います。よろしくお願いいたします。
#26
○副大臣(南野知惠子君) 本当に先生がおっしゃるように、親が教育されているのかな、自分が親にふさわしい親として子供に恵まれているのかなということも一つ考えられなければいけないと思います。
 そういう意味では、子供は親を選べないんです。そのときに親がどのような形で子供に対するケアをしていくかということを考えなきゃいけないんですが、若い人たちは兄弟がいませんから子供をタッチしたことがありません。また、ケアをしたこともありません。そういう意味で、知らないまま大人になっていく。自分が子供が欲しいと思って子供を抱くときにはお人形さんであってほしいという期待感がある。飲んだり食べたりおむつをかえたりという、そういう手間というものは、その母親がまだ未熟な母親であれば、そういう実態を理解せずに母親になってしまうケースもあるのかなと。そのようなことを痛切に感じますが、母性というものの、その虐待の要因というのはさまざまなものがあるのではないかと思っております。
 そのほかに、身近で相談できる人がいない、核家族のままで来ている、自分の母親、いわゆる子供にとってはおばあちゃん、おじいちゃんたちとのかかわりというものもなかなか今、核家族の中では与えられていない、そういうことも一つの要因かなと思っております。そういうためには、思春期の児童に対しましても、保育所などにおいて子供に触れ合うチャンスというものも我々は提供していかなきゃならない。
 それから、妊娠、育児中の母親に対して、今、母子健康手帳というものを見直そうとしております。さらに、母子健康手帳の中では、母親がおなかの中の赤ちゃんに訴えかけるコメントも中に入れておりますが、私は、さらに父親になる人も自分のコメントもそこに入れて、母と子で母子家庭をつくるんじゃなく、父親も入れた形で家族というもののきずなをつくってほしいというのが切なる願いでございます。
 そのような形で母性、父性を育てていく、家庭のきずなを強めていくというのがこれからそういった不幸な子供を生まないところに発展していくのではないかなというふうに思っております。そういう意味では、父親にも子供を、産むのは母性ですけれども、育てる喜びを知っていただきたい、そのようなことを痛切に感じます。思春期から子育てに至るまでさまざまな施策を通じまして我々も検討していきたい、そのように思っております。
 それから、学校教育の中では、文部科学省にお願いしたいんですけれども、学校の養護教室における養護婦さんたちの、養護教諭のあれも認めていっていただきたい、そのようなことを思いながら日々暮らしております。
 ありがとうございます。
#27
○後藤博子君 ありがとうございました。
 本当に母性の欠如ということで、父性というか父親の愛、ということはやっぱり家族の愛というものが本当に非常に大切になってくる。この現在の希薄化された家族のあり方をもう一回問い直す時期が今来ていると私も思っております。児童虐待だけではなく、家族のあり方をもう一回この共生社会で認識をできればうれしいと思っております。
 時間が来ましたので、最後、文部科学省にお尋ねいたしますけれども、質問の答えの時間がなければそれで結構でございますので、ただ質問のみさせていただきます。
 厚生労働省の資料に基づく被虐待児童の年齢別割合を見ますと、平成九年から十二年で見ましても小学生の割合が三分の一強を占めております。さらに、虐待を受けている児童がみずから保護を求めようとするのは中学生からで、小学生などはたとえ虐待を受けて傷やあざがあったとしても、子供は、自分が悪い子だからお父さんやお母さんが自分のことをしかるのだ、決していじめられているということは思っていないという小学生の言葉を聞くことが先日ありました。その意味では周囲が注意深く見ていかないと虐待に気がつかないことが多いと思われます。
 そのためにも、教職員は無論のこと、保健室における養護教諭の役割や、さらには子供の心を開かせ、時にはいやすようなカウンセラーの派遣なども重要と思われます。こういうことをいろんな面で、あわせて文部科学副大臣にお尋ねしたかったんですけれども、時間が来てしまいました。また次の機会にお答えをいただければありがたいと思いますが、一言何かございましたらお願い申し上げます。
#28
○副大臣(岸田文雄君) それでは手短に。
 先生御指摘のように、児童が十二分に自分の気持ちやその状況を言葉にあらわすことができないというケースが随分あると思います。だからこそ、学校においては担任ですとか養護教諭が、子供たちの表情とか態度とか、それから不自然な傷とか身体的なサインをいかに読みとって早期発見するのか、これが大変大切なことだと思いますし、それから相談に乗って精神科医等の専門家にいかに橋渡しをするか、これが大変重要だというふうに認識しております。
 そういった認識から、例えば精神科医を逆に学校に送り込むというような支援体制を行うとか、それから養護教諭の資質、カウンセラーとしての資質向上のために研修を行うとか、それからこうした専門家のレベルアップももちろんですが、学校においては教員全体で協力してこうした体制に取り組む、こうした体制を組む協力体制というものが大変重要だと思っておりますので、教職員一般に研修会を通じてこの問題の重要性を認識してもらう、このことによって学校全体でこうした問題に取り組むことを努めてもらう、こういったあたりに力を入れてさまざまな支援を行っております。
 以上です。
#29
○後藤博子君 ありがとうございました。
#30
○平田健二君 民主党・新緑風会の平田健二です。どうぞよろしくお願いします。
 まず、児童虐待というようなことを議題にしてこういう議論をしなきゃならぬということをとても残念に思っておりますし、また児童虐待防止法なんという法律をつくらなければならないというこの世の中のことを大変私は嘆いております。
 これは質問通告にございませんけれども、南野副大臣にお尋ねしたいんです。
 私たちが小さいころ、近所の餓鬼大将が集まったり子供が全部集まって、広場に集まってみんなで遊ぶ、そこにはもちろん身体的な障害のある子も知的な障害のある子もみんな一緒になって遊んでいた。また、障害を持っている子を持つ親御さんたちも、そこの広場に行って遊んでおれば、あそこに行っているから安心だということで家業ができたりいろんな仕事ができた。そういう時代だったと思うんですね、私たちが育った時代は。
 今どうしてこんな児童虐待とかいう時代になってしまったのか。私たちの子供の時代というのは、私は田舎ですからそうだったのかもしれませんが、友達みんなで集まって遊んで、そしてちょっと体が悪かったり知的障害があった子はみんなで守って遊んであげたという時代でした。
 今どうしてこんな世の中になったのか、大臣、どうお考えなのか。質問通告にございませんけれども、感じで結構ですのでお答えいただければと思います。
#31
○副大臣(南野知惠子君) 大変難しい質問でございますが、やっぱりそれぞれの生い立ちというのがあったのかなと。
 私たち、兄弟げんかもしましたし、戦時中でございますので、食べ物なども、ようかんなどもそんなに食べたことはございませんが、親からお土産でいただくと、物差しではかりながら兄弟で分けたりしたようなこともございました。それから、けんかするときにはぶつかり合ってやりましたので、そういうスキンシップ、痛みということも覚えることができたのかなと思っております。
 私は引き揚げてきておりますので、引き揚げてきた当時は多少いじめがあったのかなと自分自身思いますが、それは国が違うところで、今までの生い立ちの中からともに生活し合うという段階では価値観の相違ということも中にはあっただろうと思いますが、それはそれで相手を認めていけるというところが子供心にあれば、それはけんかとかいじめとかということには感じなくて済んだのかな、そのようなことを思っております。
 そういう意味では、子供がどんどんと相手に対してお話をしながら自分の価値観というものを認めていただく、そういう場面というのがないのかなと。何でもかんでも同じであったらいいという、今の教育と言ったら悪いですけれども、育ち方というのがもう一つ、競争心、調和心、融合心というものを植えつけていないのかなと。運動会でも手をつないで渡りましょうでは、これはお互いをいいとして認めることができない。クラスの中でも、あの人はいい、この人はよくできるという、そういったところも、やはり他者を認める、いい部分と悪い部分をみんな人間は持っておりますので、そういう価値観を認め合える環境というものを大人がつくっていかなきゃいけないというふうに思っております。
#32
○平田健二君 確かにそう思いますね。
 法律ではありませんので質問が重複すると思いますけれども、ぜひまたお答えいただければと思っております。
 まず、先日、先ほども質問がございましたけれども、報道もされました。児童相談所に相談があったにもかかわらず十数名の児童が虐待で亡くなったということが報道されておりました。これは報道ですので事実はわかりませんが、厚生労働省がコメントを出しておるんですね、三点ほど。通報後の初期対応が不適切だった、あるいは複数の機関が関係しておって責任の所在が明らかでなかった、適切な援助計画が立てられなかったというようなことを発表されているようですが、印象としては、所管をする省としては何となく第三者的な評論家のようなコメントを発表されておるわけですね。
 先ほどちょっと報告がありましたけれども、適切な保護を行わなければならない、関係機関との連携強化をしっかりするんだというようなことも言っておりますし、そう言いながら、コメントは、実はそうじゃないんだよということを発表されているような気がしたんですが、いかがでしょうか。
#33
○副大臣(南野知惠子君) それは、そのようにもしお受けとめなされたんだったらまことに申しわけございませんが、我々といたしましては一つの件数件数が自分たちのものとして受けとめなければいけないというふうに思っております。そういう意味では、物事の軽重というものはない、その先に見えるのは人の命であろうというふうに思っております。
 そういう意味では、さらにまたそういった分野については心して受けとめさせていただく体制を取り直さなければならないのかなというふうにも思っております。
#34
○平田健二君 確かにそうですけれども、これだけ世間ではマスコミを通じて児童虐待がもうほとんど連日のように報道され、新聞に載り、国民、私どももそうですけれども、テレビを見るのをこの問題になったら消すんです。ほとんど避けて通ります。
 そういった状況の中で、今ちょっと言いましたように、これは子育ての問題ですから国がとか自治体がということじゃありませんが、そういった法律をつくって児童虐待を防止しようとする主管省庁がこのような対応で果たしてどうだったのかなということは、私は国民がそう思っていると思いますよ。何かございましたら。
#35
○政府参考人(岩田喜美枝君) 先生が今取り上げておられる死亡事件十一件でございますが、これは十二年度に児童相談所が何らかの形でかかわったにもかかわらずお子さんが亡くなったケースでございまして、南野副大臣がきょうも何回も言われましたように、本当にその一件一件、お子さんの命が救えなかったということは本当に残念で、申しわけないという気持ちでいっぱいでございまして、その経験をすべての自治体でどういうふうに生かしていただくか、そのことについての役割が厚生労働省にはあるのではないかというふうに思っております。
 したがいまして、こういう重大な事案が発生しましたときは、自治体とよく協議をしまして、自治体の児童相談所の関与の仕方、関係する行政機関との連携のあり方も含めてですが、どこが改善の余地があったかというのをケースごとに非常に丁寧に見ております。そして、その中から得られる教訓をさまざまな機会に全国の自治体にまたフィードバックする、こういうことを日常的にやっているわけでございます。
 先生の目からごらんになると、新聞の記事は第三者的というふうにおっしゃいましたけれども、これは厚生労働省がコメントを公表したというよりも、新聞記者の取材に対して担当者が答えた中身でございまして、答えた中身は非常に適切で、この十一件の事案から私どもが何を学ぶべきなのか、それをどういうふうにすべての自治体に還元すべきなのかというような観点からコメントしたんだというふうに思います。
 この裏には、私たちも本当に心を痛めて、何とかしたいという気持ちはいっぱいでございまして、そこが文字にならなかったのは残念でございますけれども、南野副大臣がおっしゃった気持ちのとおりです。
#36
○平田健二君 内閣府にお尋ねをいたします。
 先ほど、厚生労働省の調査での児童相談所への相談件数が一万七千七百何がしでしたけれども、その他の関係省庁、関係機関全体で、平成十二年度といいますか、相談件数はどのくらいあったんでしょうか、お尋ねをいたします。
#37
○政府参考人(江崎芳雄君) 児童虐待の防止等に関する法律の規定によりまして、先生御質問のような数字は、児童相談所、ここで最終的に保護を要する児童虐待の件数は集約されるという仕組みになっておると承知をしております。したがいまして、先ほど、厚生労働省の発表によりますと、平成十二年度中の相談件数一万七千七百二十五件という話がございましたが、これが全体の数字であるというぐあいに考えてよろしいのかと考えております。
#38
○平田健二君 児童虐待の相談というのは児童相談所だけですか。例えば、端的に言えば、学校なり幼稚園なり警察なりそれぞれの福祉事務所なり、いろんなところに相談があるんじゃないでしょうか。
 例えば、警察庁のまとめでは、昨年、虐待による死亡事故は四十四人となっておるわけですね。厚生労働省、児童相談所が把握したのは十一名。もちろんその集計の仕方のずれがあると思いますけれども、ちょっと数字が違いますね。いかがですか。
#39
○政府参考人(江崎芳雄君) 今御指摘の数字でございます。
 一つは、厚生労働省の数字は十二年度、年度で御集計をされておられます。これに対しまして警察庁の数字は平成十二年と、一月―十二月で集計をされておる、そういうところが一つあるんだろうと推測をしております。もう一つは、非常に不幸にして子供さんが亡くなった場合でございますけれども、こういうときには児童虐待の防止等に関する法律、これは対象といたしまして保護を要する児童ということになっておりますので、そのあたりの通告がなされていないのかなということも考えられようかと思います。
 ただ、いずれにいたしましても、先生御指摘のように、きちっと全体としてどういう数字になっておるのかというのがかかる悲惨な事件、事象を解明いたしますには大変重要でございますので、内閣府といたしましては、青少年育成推進会議でございますとかほかの協議会を持ってございます、こうした場を通じまして関係各省に働きかけをしてまいりたいと考えてございます。
#40
○平田健二君 いや、警察庁調べで児童虐待による死亡件数が四十四人、児童相談所の調査した死亡件数が十一名。年度と年と違うと言いますけれども、数カ月じゃないですか。ですから、もっと実態は違うんじゃないか、もっと相談件数はいろんなところを含めたら多いんじゃないか、一万七千七百二十五件じゃなくて、児童相談所の件数じゃなくて、もっとほかにたくさんあったんじゃないんだろうか、そういったことは掌握していませんかということを聞きたいんです。
#41
○政府参考人(江崎芳雄君) 相談件数でございますけれども、これは先ほど御説明いたしましたように、法律の規定によりまして児童相談所に最終的には集約されるということになっておりますので、そういう仕組みで動いておるんだろうと思います。
 ただ、実際問題、途中で例えば何らかの行き違いで数字が集約されない、そういうことがございますれば、そこは確実に数字がきちっと集約されるというぐあいにするべき必要があるのは言うまでもございません。
 内閣府としましては、推進会議等の場で関係各省に先生から御指摘のありましたような事象、説明をいたしまして、きちっとした数字が集約されるという方向に向けて働きかけをしてまいりたいと、かように考えてございます。
#42
○平田健二君 数がどうだこうだということじゃなくて、そういった児童虐待による死亡事故等含めて、すべての機関と言いませんが、関係省庁がしっかり掌握をしているかな、数字が違うじゃないですかということですよね。そのことをちょっと聞きたかったんで、もうこれ以上言いませんが、ぜひ一度しっかりその辺を調べていただかないと、四十四と十一の差は何なんだということになりますのでね。いかがですか。
#43
○副大臣(松下忠洋君) 平田先生のおっしゃっていることはあると思います。
 法律の相談所、法律に従って通告できて集計するということだけではなくて、いろんな身近な人に相談していたり、あるいは学校の先輩に相談していたり、あるいは学校に行ったり、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんのところに行ったり、いろんなことでの話はもっとたくさんあると思います。
 これはまた、おっしゃっている意味はよくわかりますので、よく相談しながら正しい数字が集まるようなことはしなきゃいかぬ、こう思います。
#44
○平田健二君 数字は正しいと思いますけれども、ぜひひとつよろしくお願いします。
 それから、もう一点厚生労働省にお聞きしたいんですが、平成二年から平成十二年までの相談件数、先ほどお聞きしましたら十六倍になったというふうに報告がございました。そこでお聞きしたいんですけれども、相談件数は平成二年から十二年までの間に十六倍に膨れた。じゃ、それに対応する養護施設ですとか、あるいは児童相談所の相談員だとか児童福祉司とか心理担当の職員とか、どのようにふえたんですか、ふえていったかどうかをお尋ねします。
#45
○政府参考人(岩田喜美枝君) 先生が今列挙されたすべての職種についての数字は手元にございませんが、一番関係が深いのは児童相談所に置かれております児童福祉司でございますので、児童福祉司を例に御報告させていただきたいと思います。
 平成二年度には全国で千六十八人でございました。これが平成十一年度には千二百三十人となり、そしてこのころから、虐待防止法の施行を控え、あるいは施行のタイミングに合わせてさまざまな政府広報、周知のための活動も行われましたけれども、そういう中で、平成十二年度には急増する相談件数に対応するために千三百十三人となり、十三年度には千四百八十二人と増強されております。
 平成二年度との比較でいいますと、平成十三年度には約一・四倍ということでございまして、件数の倍数にはほど遠いものがございますけれども、各自治体、大変行財政状況の厳しい中でそれなりに増員の努力はしていただいたというふうに思っておりますし、またさらなる体制の充実について私どもも自治体にお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
#46
○平田健二君 これはちょっと質問通告していないんですが、こういった専門職ですよね、この専門職の皆さんをやっぱり養成しなきゃいかぬわけですね。養成する機関というのはあるんですか、この福祉司。
#47
○政府参考人(岩田喜美枝君) 福祉司は児童福祉法で任用資格が決まっておりまして、どういう資格を持っている方、あるいはどういう職務経験、実務経験のある方が委嘱されるかということで、まず任用の資格がございます。それに加えまして、配置をされた後、その資質の向上を図るためにさまざまな研修が基本的には各都道府県の責任で行われているところでございます。
 これでは不十分な面も多々ございますので、十三年度の予算で虐待・思春期問題情報研修センターを設置するための予算を措置していただきまして、今、横浜市に建設中でございますが、これが十四年度から事業が開始できると思います。この中で児童相談所などの専門職に対してまたさらに専門的な研修をするというのがこのセンターの事業の中核になろうかというふうに思いますので、ここを中心に研修がこれから展開されていくというふうに期待をいたしております。
#48
○平田健二君 養成機関というのは特に国としてつくっておるということじゃないんですね。
#49
○政府参考人(岩田喜美枝君) 現在、養成機関と言えるようなものはございません。ただ、通信教育を受けて児童福祉司として任用される資格を取得するための講座が今年度から初めて、これは全国社会福祉協議会というところでその講座を開始したところでございます。
#50
○平田健二君 どうしてしつこくお聞きしたかといいますと、相談件数が非常に急激にふえているのに、それに対応する職員の皆さんが非常に、少ないという言い方はおかしいですけれども、相談件数に比較すると伸びが少ない、それはやはりそういう特殊な技能を持っている方たちなので養成に時間がかかる、そういったことかと思って聞きました。
#51
○政府参考人(岩田喜美枝君) 一点、先生、修正させていただきます。
 先ほどの私の答弁で、養成機関はなく、今年度から初めて全国社会福祉協議会で講習が始まったというふうに申し上げましたけれども、養成機関はございまして、全国に三校指定をされております。国立秩父学園附属保護指導職員養成所というところと、そして国立武蔵野学院附属教護事業職員養成所、さらに上智大学の中にもそういうコースがございます。
#52
○平田健二君 南野副大臣、虐待防止法ができた途端に急にがっと相談件数がふえているんですね。これはどういうふうにお考えですか、この現象は。
#53
○副大臣(南野知惠子君) 急に件数が法律ができた途端に出たということよりも、今までのたまっていた部分が表に出てきたというふうに私は解釈いたします。今までは水面下で、余り表に出てこの人は虐待を、これはこうじゃない、いやそうかなというような段階だったのが、やっぱりそうだったねと。では、こういうふうな形でこの法律ができたんだからその中で救われていこうかというような気持ちの方たちも出てきたのではないかな、そのように解釈いたします。
#54
○平田健二君 これも先ほど報告がございました。子供を虐待した親に対するアフターケア、面接指導等で七六・五%の人に面接指導をしておるというふうに報告がなされましたけれども、具体的にはその虐待をした親に対する面接指導というのはどういった内容でアフターケアしておるんでしょうか。
 それともう一つは、養護施設へ子供を入れますね、親から隔離して。入所期間は大体平均するとどのくらいの期間入っておるんでしょうか。問題は、親が七六・五%、面接した親が、自分が虐待をしているという認識がなければ幾らケアしてもこれはケアにならないんです。本人が虐待した、子供を虐待したという意識があって初めて、ケアを受けたらああそうかということになると思います。ちょっとその辺が気になるものですから。
#55
○政府参考人(岩田喜美枝君) 虐待を行った親への指導は児童相談所の方で行っておりますが、児童相談所の児童福祉司あるいは心理療法を専門に行う専門職もございますが、こういう職員が対応いたしております。親に対する指導計画を策定いたしまして、家庭訪問をしたり逆に親に児童相談所まで来所してもらって面接を重ねるということをやっておるわけでございます。
 先生御指摘のように、親にその自覚がなければ改善するということもないわけでございますし、改善の目標を親も理解できる、認識できる、ここまで直そう、こういうふうにしようというその改善の目標も、親と児童相談所が一緒になって目標を立てて、それに向かってさっき申し上げましたような専門職の方が回数を重ねながら指導しているということでございます。
#56
○平田健二君 平均的な入所期間。
#57
○政府参考人(岩田喜美枝君) 失礼いたしました。児童養護施設に入っております児童の平均入所期間でございますけれども、平成十年の養護施設入所児童等調査がございますが、その結果によりますと、平均在所期間が四・八年ということになっております。
#58
○平田健二君 四・八年。一時保護や、今平均四・八年の養護施設への入所がございましたけれども、入所はいいんです。退所、一時保護から親元へ戻す、養護施設から退所する。いろんな判断があると思います、親御さんのケアの問題を含めて。どういった判断基準で退所させるのか、そういった基準があるのかどうか。もちろん個々のケースで一人一人違うと思いますから、虐待の種類が。ですから、ある一定の基準があるのかないのか。
 例えば、先ほども御質問がありましたように、兵庫のケースでは、本来ならば退所させたらいけないのにもかかわらず両親が強引に退所させて悲惨な事件が起きた。これは、見方によると、養護施設の方の判断基準が甘かったというふうに判断できるわけです、ある見方をしますと。
 ですから、そういった基準があるのかどうか。親御さんがここまで改善できたとか、それは数字で出るわけはありませんけれども、そういった判断基準は、例えば何人かのそういう専門家がこの親御さんはもう大丈夫だというふうなことの判断をして出すのか。そこらをちょっと、あればお聞かせいただきたいと思います。
#59
○政府参考人(岩田喜美枝君) 施設入所をさせるときの判断は、都道府県、具体的には児童相談所がやるわけでございますが、同じく施設入所がもう必要ないというその判断も最終的には児童相談所でやるわけでございます。
 その際に具体的な統一的な基準はございませんけれども、児童の回復の状況、そして児童の回復の状況は児童養護施設が一番よくわかるわけでございます。また、親に対する指導をしておりますのは児童相談所でございますから、親がどのくらい変わってきたかということは児童相談所が一番よくわかるわけでございますので、必ず児童養護施設と児童相談所が協議しながら、個別のケースごとに慎重に判断をしているということでございます。
 また、先生が今おっしゃいました一時帰宅、兵庫県のケースは一時帰宅でございましたけれども、これはまだ最終的に施設から出すという判断をしたわけではないんですけれども、親子関係をなるべく回復するために面接を、親子の面接をさせたり外出を許したりということはその過程で有効である場合もございます。しかしながら、同時に危険を伴うということもありますので、児童養護施設の方が児童相談所と協議しながら具体的に慎重に判断するということにいたしております。
 そのために、そういう画一的な基準はございませんけれども、どういうケースについて一時保護をするかとか、どういうケースについて入所させるとか、どういう場合について面会や一時外泊といいましょうか、一時家庭に戻すということを認めるかということについては、厚生労働省としてもマニュアルといいましょうか、「子ども虐待対応の手引き」というものを専門家のお知恵をかりながらつくっておりまして、それを参考にしていただいて児童相談所や児童養護施設で対処していただいているということでございます。
#60
○平田健二君 終わります。
#61
○弘友和夫君 ちょっと警察の方、今の答弁にちょっと関係あるので、通告していなかったんですが、いいですか、残ってもらって。警察の方。じゃ、副大臣が答えていただけるのならいいですけれども、今の答弁の関係なんですけれども。
#62
○会長(小野清子君) 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#63
○会長(小野清子君) それでは、速記を起こしてください。
#64
○弘友和夫君 今、平田議員の質問で、四十四件と十一件の違いの話があったんです。私の理解しているところでは、四十四件というのは、要するに児童虐待に遭って死亡された方が四十四件、十一件というのは、後で質問しますけれども、児童相談所に相談をしたけれどもその途中で家に帰されたなんとかということで亡くなったと、四十四件というのは児童相談所に相談していなかったりいろいろ、要するに虐待で亡くなったというのが四十四件じゃないかと思うんですけれども、そこら辺はどうなんですかね。
#65
○政府参考人(江崎芳雄君) 厚生省でおまとめの数字は厚生省から詳しい御説明があろうかと思いますが、先生御指摘の警察の四十四人という数字でございますが、私ども承知しておる限りでは、警察において児童虐待を把握した場合でございますが、児童相談所に通告をすると。ただ、非常に不幸にして児童が死亡した場合、こういう場合には、当該児童についてはもはや保護の必要性がないということで通告はされないというようなことが運用上起こっておるようでございます。
 ちょっと警察がおられませんので、正確さに若干欠けるかもしれませんが、内閣府として承知しておるのはそのような事情でございます。
#66
○政府参考人(岩田喜美枝君) 冒頭、南野副大臣の方から御説明いたしました資料の一ページをごらんいただきますと、一ページの表の二でございますが、「虐待の経路別相談件数」がございます。その表の右から三番目に「警察等」という欄がございまして、十二年度では警察から千百九件の通報がございました。
 このように、今の内閣府の御説明にもありましたけれども、通常ですと、警察が把握した児童虐待の事案についても児童相談所の方に通報があるというのが通例でございますが、もうお子さんが亡くなってしまったようなケースについてはその後の児童相談所の関与の余地がございませんので、そういう場合には通報されないというふうに認識しております。
#67
○弘友和夫君 ちょっとわかりやすく答えて。
 要するに十一件というのは、後で質問しますけれども、児童相談所に相談があって、あったけれども残念ながら亡くなったと。途中で自宅に帰してしまったとか。四十四件というのは、相談をした部分もあるかもしれないけれども、全然なくて、結果として児童虐待で亡くなっている、そういうのを含めて四十四件じゃないですかということを聞いているわけです。
#68
○政府参考人(江崎芳雄君) 警察の数字につきましては、先生、今おっしゃいましたようなことであろうかと承知をしております。
#69
○弘友和夫君 もういい。もう結構ですよ、どうぞ。
 それで、文部科学省、岸田副大臣にお尋ねしたいんですけれども、これは直接児童虐待には関係ないかもしれません。ですけれども、先日、埼玉県内で中学三年生の女子生徒二人が飛びおり自殺をやったと。本当にこの若い二人が亡くなったというのは痛ましい限りですけれども、これを私がちょっと疑問に思ったのは、先ほど来からいろいろ論議をやっておりますけれども、この二人は、報道によりましたら、学校の中で相談室に行って二年生のときから相談をしていたわけですよね、相談していた。要するに、何らかの自分のSOSというか、いろいろなものを発信しながら相談をしていたのが、そのまま教室にも帰らなくて二人で飛びおり自殺をしたという、こういうことだと思うんです。
 私、学校が悪いとか先生が悪いと言っているんじゃないんですけれども、相談に行っていて、それがどうしようもなかったというところに、何のための相談室なのかというふうに思うんですけれども、それについてちょっと。
#70
○副大臣(岸田文雄君) 先生御指摘の事件でありますけれども、埼玉県内で中学生、女子生徒二人が飛びおり自殺をしたこの事件ですが、埼玉県教育委員会からの報告によりますと、自殺した二人の生徒、ともに一年生のころから欠席が目立つようになり、今、先生御指摘のように、二年生のときから継続的に相談室に通っていたという報告を受けております。
 この当該相談室には、県の単独事業としまして、さわやか相談員という相談員が一名配置され、またその市の単独事業としてふれあい相談員という相談員五名が配置されておりました。こうした体制で当該相談室、相談に応じていたわけでありますが、その報告によりますと、当該生徒から日常的な相談はあったものの、悩みや不安、ましてや自殺の核心に触れるような相談は受けていなかったという報告を得ております。
 このさわやか相談員、一名ですけれども、具体的には二十三歳、女性、大学卒、認定心理士の資格を有する、そして相談員としても二年目の経歴を持っているというような資質等を持っておったわけでありますが、結果としてそれを把握できなかった。また学校全体としても、こうしたさまざまなサインを受け取らなきゃいけないのに受け取ることができなかった。そういったさまざまな面で大変残念な結果だというふうに思っております。
 文部科学省としては、そういう認識を持ち、これに対してどうあるべきなのか、資質向上等、また検討していかなければいけないと考えております。
#71
○弘友和夫君 先ほど副大臣は、学校全体として協力体制を組んで云々という御答弁をされておりました。私、そのとおりだと思うんですね。
   〔会長退席、理事清水嘉与子君着席〕
 今話がありましたけれども、そういう市の単独事業だとか県の単独事業だからとか、それは関係ないと思うんですよ、当事者にとってみたら。これは何の事業でやっているからここまでですよ、県の事業だからここまでしか相談乗りませんよとか、そんなことは何も関係ないわけでしょう。子供にとっては、そこに行けば何らかのあるいは対応してくれるんだという思いでやはり行っていたと思う。ここまでしか相談に乗りませんよということでは、何のためにそういう相談室があるのかということになると思うんですよ。ですから、そういうことをしっかりと、学校全体で。
 何か話によりましたら、あそこは三年D組かなんか、要するにクラスがない、C組まであって、D組というのはその相談室のことなんだとかというふうに報道されておりましたよ。だから、あの子たちはそこに行っているからといって、ほかのあれは受け入れないというか、そういうことになっているみたいな、そういうことじゃいかぬのじゃないかなと。やっぱり校長先生初め全部がぜひ帰したいという思いで全体的に取り組まないとだめじゃないかと思いますので、ひとつ。
 それに関連して、先ほど来の児童虐待死亡件数、十一件の、十一件という数字が大きいか小さいかと、私はこれ大変な数字だと思うんですよ。というのは、全然何もわからないところで起こったことじゃないわけですから、それは相談があって、家庭にもう帰していいと判断して死亡した、そういうケースでしょう。子供にとってみたら、そういう能力というかあれがないわけですから、片一方は行っていて、相談されて、途中で帰らされたら殺されるわけですからね。こんな惨めな話はないわけですよ。
 だから、これは本当に、先ほど児童福祉司が意見を言えるんだと、勧告制度があるんだと、こういうふうに局長は。それだったら、それできっちりもう安心できるまで何らかの方法でしておった方がいいんじゃないかと思うんですけれども、この十一件に対する受けとめ方、どういうふうに思われているか。
   〔理事清水嘉与子君退席、会長着席〕
#72
○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童相談所が何らかの形でかかわりながら十一人の子供の命を救えなかったということは、本当に残念で申しわけないということは先ほども申し上げたとおりでございます。この十一件というのは、事件の背景、事情さまざまでございますので、一括して御説明はすべきではないというふうに思いますが、例えば、やっぱり初期の対応の段階で発生してしまったというケースもございます。それから、初期の対応はうまくいったんだけれども、一たん一時保護をした後それを解除したり、あるいは一たん児童養護施設に入所措置を講じた上で退所をさせた後で発生した事例が少なからずございます。
 これらから言えることは、もちろん安全確認など、とりあえず、いかに子供の命や安全を守るかという、その初期の対応を適切に行うということは大変大事なことですが、それだけではだめで、やはり一人一人の子供について援助計画をつくって、関係機関が協力をしながら、いつ戻せるか、最終的には家庭に戻して家族が再構成されるということが大事なことですから、いつかの時点ではお戻しすることになるわけですが、そのタイミングを過つことがないように、やはり子供の安全確保ということを最優先で、関係機関でよく協議をしながら慎重に帰すタイミングというのは判断すべきだというふうに思っております。
#73
○弘友和夫君 それと、これも先ほどの平田議員の質問で、一万七千件以上あるんじゃないかと。これは全部児童虐待だ、児童相談所を通しての集計だから一万七千ですという先ほど答弁があっておりました。
 局長は、ほかの省庁に対する質問だから言われなかったと思いますけれども、この「時の動き」という中で局長自身がこう言われているんですよね。「児童相談所が把握したものが約一万九千件、それ以外の関係機関で把握したものも合わせると約三万件ぐらい。また、その網にもかかっていないケースがその外にあるということですから、虐待は相当の数に上っている」と、こういうふうに言われているわけです。
 だから、先ほど、よその省庁、わざわざ訂正というか、そういうことではないかもしれませんけれども、議員の聞きたいことは、一万七千件以上あるんじゃないですかということを聞いているわけですから、そういうふうに思われておるのだったら、一万九千件は児童相談所に相談があった件数ですと、だけれども網にかかっていないのを含めて大体三万件ぐらいあるんじゃないかと思っておりますというぐらいな答弁はされていいんじゃないんですかね。どうですか。
#74
○政府参考人(岩田喜美枝君) 申しわけございません。
 どういう形で把握するか、やっぱり三層あると思うんですね。一つは、児童相談所が現にしっかり把握している件数。これが今相談の処理件数ということで、平成十二年度については一万七千七百二十五件ということで御報告を申し上げたところでございますが、それ以外に、児童相談所は把握していないケースも含めて、福祉、保健、医療、教育、警察、司法などさまざまな関係の機関が把握をしているというケースがあるわけでございます。
 平成十二年度から十三年度にかけて、児童虐待の実態把握のための調査を今委託いたしまして実施をしているところでございますが、十二年度におきましては、全国の幾つかの県や政令市、市を選びまして、そこで約四十の関係機関にアンケート調査をいたしました。その結果を日本国全体に復元しますと、推計で約三万件という数字が出るわけでございまして、推計でございますから若干の幅を持って考えていただければと思いますが、全国のさまざまな関係機関がキャッチしている件数が大体三万件くらいではないかと。そのまた外側に第三層として関係の機関がキャッチできていない件数もあるだろうというふうに思われますが、これは測定のしようがないということでございます。
#75
○弘友和夫君 ですから、別に責めているわけではないんですけれども、親切に答弁をしていただきたいなと思います。
 関係機関が四十機関ぐらいあるということで、やっぱりそこら辺を調整しながら、本当に連携を密にしてやっていかないとなかなかこれは難しい問題だというふうに思います。
 時間が余りありませんので、いろいろ質問したいと思ったんですけれども、最後に里親制度の抜本見直しというか、里親制度、今まででも本当に受け入れの方も非常にいい結果が出ているわけですけれども、これに対して、今回、専門里親制度の創設だとか、それからまた短期里親制度、またボランティアとのかかわり方云々とございますけれども、里親制度の抜本見直しと充実について、最後になりましたけれども、南野副大臣、お願いしたいと思います。
#76
○副大臣(南野知惠子君) 本当に子供は親を選べない。そういう苦しい環境の中でいかにして家庭の平和をつくっていただけるのかという、子供側からすればそういう問題があります。さらに、自分の実の両親はありながら、でも、そこから虐待を受けて、もう一人の育ての親を迎えなければならないのか、それを生みの親より育ての親と昔から言われている、そういう環境の中では、子供にとっては幸せなのかどうなのかというのは後ほどでないとわからないだろうというふうに思いますが、今は世間的には評価のいい里親制度というようなことも実際展開されております。里親の家庭の中で養育する、その中で健全な育成を図っていただける、そういう里親がおられることは大変うれしいことだなというふうにも思っております。
 厚生労働省といたしましては、平成十四年の概算要求で専門里親制度の創設を要求しております。おおむね十歳以下の被虐待児童などの養育を専門的に援助技術を持った方がやっていただける、これもやはり二年程度と、余り長いというのもどうかな。その間に母親が母親らしく、父親が父親らしく回復していただく、こちらの分野というものもちゃんとしなければいけませんが、そういう早期家庭復帰ということも我々は願っているところでございます。
 また、専門里親につきましては、児童福祉司または里親経験、そういったものの豊富な方々、心理学的な専門者というようなことも考えたりいたしておりますが、要は、こういう能力を備えた方が人間的な人格を持った方であってほしいということを願うわけで、その人の人間性が悲しい子供たちを温かく包んであげられる人かどうかという、そこら辺も私は大いに検討しなければいけないというふうに思っております。
 そういう意味では、これから私の私見になりますけれども、御高齢の方々または定年以後の方々が少し家庭の中でゆとりが持てたら、その方たちが逆にそのゆとりの中で他人の子供様を育てていただく、そういうゆとりがあればもっと豊かな育児環境になるのではないだろうか。そして、親御さんたちとその御高齢の方との話し合いがあればもっともっと世代間の交流がそこでもできるのではないかなと、そのように思っております。
#77
○弘友和夫君 あとスキル、教育の問題とかいろいろお聞きしたかったんですけれども、時間が参りましたので、また別の機会にやりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#78
○吉川春子君 子どもの権利条約が日本で批准されて十年たちまして、子どもの権利条約は、子供たちに文化の面でも環境の面でもいろんな面で最良のものを与える、こういう内容になっているわけですけれども、子どもの権利条約の国連の委員会で日本に対して、子供たちが大変ストレスの多い教育制度のもとで教育を受けているという注意もあったわけですが、そういう中で、児童虐待ということは本当に痛ましい限りで、原因は複雑で多岐にわたっていると思いますけれども、何とかこういうものを防いでいくために国会としても方向性を生み出していけないかと、こういう問題意識を私たちは持ってこのテーマを選んだわけなんです。
 大人にとっても大変生きにくい時代で、自殺者が三万人をもう何年も超えているとか、失業者が多いとか、女性は働き続けるのに大変な困難を強いられるとか、家庭にいる主婦は核家族で、あるいは地域も崩壊していて育児の悩みも自分一人で抱え込まざるを得ないとか、いろんな原因があると思いますが、いかなる理由があってもそういう幼い者たちに対する虐待ということは許されないわけで、これは本当に社会全体の問題として解決していかなくてはならないと考えております。
 それで、先ほど弘友議員の質問に対して、大体三万件くらい児童虐待が発生しているかな、アンケートの調査を推計すればという答弁がありましたが、処理件数と発生件数の間に大きな差がありますね。この原因は何だとお考えでしょうか。
#79
○政府参考人(岩田喜美枝君) これは年度をまたがって、タイムラグだというふうに思いますが、相談を受理した時点と、それからさまざまな調査をしたりしながら、どういう措置をとるかということを判断するまでに数カ月かかるということが少なからずありますので、そういったタイムラグ、これが年度をまたがっているからということではないかというふうに思っております。
#80
○吉川春子君 発生件数が三万件くらいあるというふうに推定されるわけですね、アンケートに基づいて。それとの処理件数との落差の原因は何だと思いますか。
#81
○政府参考人(岩田喜美枝君) 三万件とそれから実際に児童相談所が処理をした件数の落差という点につきましては、まだまだ関係機関の間で児童虐待について児童相談所に通報するというルールが徹底をしていないという面も大きいというふうに思います。
 さまざまな機会を通じて、関係機関のネットワークづくりなどを進めておりますので、これからは児童相談所がもっと関与していけるようになるのではないかというふうに思っております。
#82
○吉川春子君 ですから、いろいろな施策を講じて、最大限こういうことをぜひつかむような努力をしていただきたいというふうに思うわけです。
 それで、私は懲戒権と児童虐待の関係についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、民法の八百二十二条は、「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。」と、こういう規定があります。親は、子に対して暴行や傷害を加えてもよっぽどのことがないと刑法の処罰を受けないわけなんですが、こういう懲戒権が児童虐待を深刻なものにしているのではないかという推測もあるんですが、この辺についてどうお考えですか。
#83
○政府参考人(岩田喜美枝君) 昨年十一月に施行されました児童虐待防止法については、第二条で児童虐待の定義が明確になりました。そのことで、しつけと虐待の違い、言葉をかえて申し上げれば適正な懲戒と虐待の区別、そういうことについて国民の理解がこれからは進んでいくのではないかというふうに思います。
 きょうの小泉先生の御質問に対してもお答えしたところでございますけれども、そういうことで懲戒権というのは親が子供を適正に教育、養育するために行うべきものでしょうから、子供の身体に傷害を負わせたり、最悪の場合には死に至らしめたり、心理的に虐待を加えるといったような児童虐待に当たる行為というのが懲戒権としてその行使が許されるということでないということははっきりしているというふうに思いますので、児童虐待防止法の施行を契機に、適正な懲戒というんでしょうか、懲戒権の乱用の問題というのは児童虐待の定義との関係で明らかになったというふうに思いますので、その理解を国民に浸透させるというのが今の課題ではないかと思っております。
#84
○吉川春子君 もうなくなりましたけれども、例えば尊属殺とか尊属を傷つけるような行為というのは特別に日本の刑法は重く罰していましたけれども、例えば子供を道連れにして自殺する、自殺未遂とか、そういうような問題についてはほとんど例外を除けばおとがめなしという形で、何か子供というものが一個の独立した人格というよりは親の附属物で、親がある程度自由にできると、それほど明確なものじゃないんだけれども、何かそういう思想的なものがあって、愛のむちとかいう言葉もありますけれども、やっぱり子供をぶったりたたいたり、ぶったりたたいたりぐらいはどの親もするんですが、私もしましたけれども、思想として何か所属物みたいな形がこの懲戒権という、民法の八百二十二条にあるのかなと、これは全く私が個人的に思っていることなんですけれども。
 こういうところまでやっぱり実は踏み込まないと、児童虐待というのはいけないものなんだ、親といえども子供の人権をもっと尊重して教育に当たらなくてはならないんだという、そういう思想が確立できないんじゃないかという気がするんですが、今おっしゃられました児童虐待防止法の規定とこの懲戒権というのはどういう関係にあるんでしょうか。もうちょっと具体的に聞くと、この懲戒権を制約する、そういう法的効果を持っているものですか、そういう条文ですか。
#85
○政府参考人(岩田喜美枝君) 民法の解釈については私の方から御説明する立場にはありませんが、そもそも懲戒権というのは乱用があってはいけないわけで、適正な懲戒権というのはおのずからこういう範囲のものというのは児童虐待防止法があろうがなかろうがあるというふうに思います。
 一方、児童虐待防止法の中で、虐待というのはこういうケースを言うんですよということを明確に類型化して示しましたので、それに該当するような行為は適正な懲戒権の行使としてはあり得ない、許されないということは国民の目にもわかりやすく示すことになったというふうに思っております。
#86
○吉川春子君 そうすると、懲戒権に対するある種の制約を明示的に法律の条文でこういうふうに規定されたというふうにも受けとめられるわけですか。
#87
○政府参考人(岩田喜美枝君) 懲戒権との関係を法律的に整理したというふうには言っていいのかどうか、必ずしもそういうふうに御説明できるかどうかということについてはお答えを少し、私の立場からお答えするということは控えさせていただきたいというふうに思いますが、親の懲戒権といったって何でもいいんだということではない、こういうのは虐待なんだということがわかるようになったということは効果としてはあったのではないかというふうに思います。
#88
○吉川春子君 文部省にお伺いしますが、教師が生徒に対して体罰を加えてはならないということがありますよね。これも愛のむちとかいって戦前はいろんなことをやられたんでしょうが、現在は教師の体罰というのは厳しく禁止されているのではありませんか。
#89
○副大臣(岸田文雄君) 教師の体罰につきましては、まずもって学校教育法で禁止されておりますし、現実の教育の場においても体罰というものを厳に慎む、禁止する、これはしっかりと守っていかなければいけないことだと認識しております。
#90
○吉川春子君 教育基本法とかそういうものは戦後、新しい憲法のもとでできた法律で、家族法も新しい民法のもとで多少、多少というか根本的に変わったんだけれども、やっぱり戦前の古い家族制度というか、夫婦別姓なんかもそうだし、非嫡出子の相続分の二分の一なんていうのもまだ引きずっている部分があるんですけれども、私はこの懲戒権についてもそういうものを思想として引きずっていて、昭和二十一年、憲法が新しく国民に発表された時点ではまだそこまで国民の認識は至らなかったのかなという印象がするんです。
 いずれにしても、私は、そういう子供の人権を守るために、親のしつけであろうと教師が子供に対する教育指導についても、やっぱりそういう暴力というのは絶対いけないんだと、そういう思想が国民の間に広く行き渡ることが必要だと思うんですが、その点について、突然の御質問ですが、南野副大臣、いかがお考えですか。
#91
○副大臣(南野知惠子君) おっしゃるとおりだと思いますが、そこにはやっぱり親御さんと教師との間の話し合いというようなことも必要になってくるのではないでしょうか。
 子供に対して教育の方針、家庭の親が子供に対する教育の方針というのがあれば、それもやっぱり学校の先生方とお話をされるというところで、どのレベルということにもなってくるのではないかなと思います。
#92
○吉川春子君 要するに、教師が子供を教育するにしても親が子供を育てるにしても、そういう暴力的なことはいけない、子供の人権をきちっと守りつつ行われるんだという思想が徹底されなくてはならないと思います。
 その点、どうでしょうか。
#93
○副大臣(南野知惠子君) それはもうおっしゃるとおりだと思います。
#94
○吉川春子君 先ほど御説明いただきました資料の、虐待を受けた児童への対応、発生予防の第一に、市町村保健センター、保健所というものが非常に大きな役割を果たしますよと図に示されているわけです。
 私も、もうそのとおりだと思うんですが、こういう重要な役割を果たす保健所、保健センターが全国で何カ所ぐらいあるのか、数をお示しいただきたいと思います。
#95
○政府参考人(岩田喜美枝君) 全国の設置数ですが、平成十三年四月一日現在、保健所は五百九十二カ所、市町村保健センターは類似施設を含めますと三千五百二十四カ所となっております。
#96
○吉川春子君 これは児童一人当たりに直すと、何人に一カ所ぐらいの数になるでしょうか。通告していませんでしたけれども、わかりませんか。
#97
○政府参考人(岩田喜美枝君) ちょっとすぐには計算ができませんので、お許しください。
#98
○吉川春子君 そうですか。
 保健所は、例えば人口十万人に一カ所ずつとか、そういう形でつくられています。今、大分これは崩れていっていると思うんですけれども、そういう形で、こういう重要な役割を果たす施設については児童の数を把握しながら増設と充実を図っていっていただきたいと思います。
 時間がないので、その点とまとめて答弁いただきたいんですが、もう一つ、児童相談所の役割が多いんですけれども、これも人口対比でどれぐらいの児童相談所が全国で設置されているんでしょうか、その数をお示しいただきたい。
 その二つの質問をいたします。
#99
○政府参考人(岩田喜美枝君) まず保健所の関係でございますけれども、特に保健所、保健センターの中でこの問題に関係してくるのは保健婦さんであろうかというふうに思います。
 児童虐待の発生予防あるいはその早期解消において重要な役割を担う専門職の保健婦さんでございますが、この保健婦さんは、地域であわせて、児童虐待の問題以外にももちろん老人保健ですとか介護予防、精神保健、福祉などなどさまざまな分野でそのニーズが拡大しているというふうに思っております。
 そういうことで、母子保健も含めてでございますけれども、保健婦さんに対するニーズが拡大しているということで、増員について関係省庁と協議をいたしておりまして、平成十三年度の地方交付税の措置におきましては保健婦を千三百五十五人増員する措置を講じていただいたところでございます。引き続き、都道府県、市町村において保健婦を適切に配置していただけるように私どもも働きかけてまいりたいというふうに思っております。
 もう一方の、児童相談所における児童福祉司でございますけれども、これも地方交付税の算定基礎におきまして標準団体当たりの児童福祉司の人数を計上させていただいておりますが、平成十二年度には前年から一名ふやしまして十六名から十七名に、そして十三年度には十七名から十九名へと増員したところでございます。
 児童虐待の相談処理件数、近年、顕著な増加を見ておりますので、来年度に向けましてもさらに増加をさせることができるよう、総務省の方と今御相談をさせていただいているところでございます。
#100
○吉川春子君 終わります。
#101
○田嶋陽子君 まず、この児童虐待問題について厚生労働省がお出しになったこの中に母性という言葉を一言も使っていないと先ほど後藤さんが指摘なさいまして、大変鋭いと思いますが、それはすばらしいことだと思います、後藤さんと私は反対の立場で。
 やっぱりその原因は母性の欠如でもなければ、先ほど小泉さんがおっしゃった特殊性だとか異常性の問題でもないんですね、この児童虐待というのは。言ってみれば、インフルエンザの菌に感染したようなものでして。ですから、病気としてその虐待する加害者は治療しなくちゃいけない、そのぐらいに思ってこれに対応してくださらないとどうしようもないと思うんです。やっぱり物の考え方が大事だと思うんですね。そういう意味で、私はまず母性という言葉を使っていなかったことを大変評価します。
 ですけれども、一方で母子手帳とかなんとかという言葉は使ってありますね。これ言葉、変えていただけませんか。今、親業という言葉がはやっていますね。これを親手帳でもいいですし、それで中で、例えばお乳をくれるお母さん、お父さんも近ごろ人工のお乳つくって上げている人もいますけれども、その中で母子とか父子とかもし分けるんなら分けていただいて、手帳の名前は親手帳、(「親子手帳」と呼ぶ者あり)はい、親子手帳、それがいいと思うんですよ。そんなふうに変えていただきたいと思います。それでないと、やっぱり母性の欠如という言葉はとても母親を追い詰めてしまいますよね。そのことを一つ申し上げたいと思います。
 親業訓練という言葉が近ごろはちまたでもはやり出しておりますし、ぜひ厚生労働省でもその言葉を入れていただきたいなと。その辺に関しては、どうでしょうか。
#102
○政府参考人(岩田喜美枝君) 後で南野副大臣からお考えの御披露があるかもしれませんが、今母子手帳の様式、内容の見直しを行っておりまして、それについて副大臣、大変強い御関心をお持ちで、私どもにいろいろ御指示をされております。
 名前を変えることについてはちょっと考えさせていただきたいというのが私の当面の答弁でございまして、というのは、母子手帳というのは子供の養育の記録だけではなくて、まず女性が妊娠中の記録を書くというところがあるわけですね。それはもう女性特有の分野なんです。子供が生まれた後の養育のところは母親だけではなくて父親も参加するということでございまして、そのことについては先生のお考えと全く同じでございます。
 そして、今やっておりますことは、母子手帳の、子育てというのは父親、母親両方でやるものだという観点から今総ざらいをして、母親の多くの方が働きながら出産、育児をするという現状も踏まえて、その内容を今見直しているところでございます。
#103
○副大臣(南野知惠子君) 今、岩田局長がお答えになったとおりでございますが、その中にも父親もコメントを書けるのをというのを先ほど申しました。そして、健康手帳の表には母の氏名、子の氏名となっているんです。もし夫婦別姓であれば、また父親のところも書いていかなきゃならないなと。そういうものも含めて今検討いたしておりますので、できばえを見ていただきたいと思っております。
#104
○田嶋陽子君 ぜひ意見を取り入れてほしいと思います。
 次に、私のもし意見が揚げ足取りになったら言ってください。私は聞いたとおりのことでお聞きします。
 さっき岩田局長は、最終目標は子供を家族に戻すこと、これが最善だとおっしゃいましたけれども、私はこの考え方はおかしいと思います。子供が幸せを感じて暮らせる状況が一番だというふうに考えるんですね。ですから、実の親でもいいというふうに思うんです。その意味で、もし家族に返すのが一番だというふうに思っていたら、じゃ養子縁組をした親はどう思うんだと。困るじゃないですか、寂しいじゃないですか。それから、里親だって、自分たちが本当の親と思ってもらえないで里親を二年間、しかも二年間なんて限界つきですよね。これも私はどうかと思うんです。
 だから、あくまでも子供を中心にして、このことをさっき吉川議員もおっしゃっていたと思うんですけれども、子供が一番幸せを感じる場所はどこか、そこをきちんと見きわめるシステムをつくってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
#105
○政府参考人(岩田喜美枝君) 家庭に戻すのが最終目的であるというのはもう少し丁寧に御説明すべきだったと思います。
 多くの場合は、家庭に戻して親子の関係が再構築できるのであれば、それは願ってもないことであるというふうに思いますけれども、それが難しいときには、それにかわる家庭的な育成の環境をどういうふうに子供の幸せのためにつくっていくかということでございまして、その結果、里親の力をかりるとか児童養護施設で責任を持って養育するとか、さまざまなやり方があろうかというふうに思います。
 また、専門里親についても、二年間というふうに申し上げましたけれども、これは比較的軽度な虐待児、あるいはせいぜい中程度の虐待児で、本当に重い子供はなかなか難しいというふうに思います。そういうことで、比較的軽いか普通程度の子供であるということと、二年というのは一応の目安でございますから、それまでの子供の回復の状況ですとか親の変わりぐあいなんかを見て、そこは弾力的に運用したいと思います。
#106
○田嶋陽子君 考え方ですから、基本を今申し上げています。
 それで、先ほど副大臣がおっしゃったことで、子は親を選べない、これはそのとおりだと思います。生みの親より育ての親なのかどうかは時間がたたないとわからないとおっしゃっているんですが、幼児虐待が起きているということは、生みの親でさえもいい親になれるかどうかは時間がたたないとわからないということですよね。そこのところをもう一度考えていただきたいと思います。
 里親が人間的人格を持ってほしいと、かどうかは大いに検討しなきゃわからない。こうだったら親だってわからないわけですから、これは今度里親の立場に立ったときに、やっぱりそこのところはもう少しきちんとした視点に立ってほしいなと私は思いますけれども、いかがでしょうか、副大臣。
#107
○副大臣(南野知惠子君) それは私の希望を述べたところでありまして、すべてが整う人間がいればそれが一番望ましいと。だから、大人は大人らしく社会的に成長してほしいとも思っております。
#108
○田嶋陽子君 私は、その大人らしくとか親らしくのらしくがいろんな問題を起こしているように思います。揚げ足取って申しわけございませんが、揚げ足じゃなくて本当なんですね。私らも女らしくしなさいとか言われると死にそうです。そうでしょう。男の人だって男らしくしなさいと言われればもうみんな大変でしょう、しゃっちょこばっちゃって。
 だから、その親らしくが、私はある意味では親たちに幼児虐待を引き起こさせる一つの心理的な親に対する虐待にもなっていると思うんですよね。そこのところを、いかがでしょうか。
#109
○副大臣(南野知惠子君) らしくというのを使っている人間は多分年をとった人間かなというふうにも思いますので、先生との年齢のギャップがあるのかもわかりませんが、やはり他の動物と比べて人間というような生き方をやってほしいと思います。
#110
○田嶋陽子君 私はいっぱい聞きたいことがあるんですけれども、あと数分しかありません。七分です。
 そこで、先ほど局長さんが三つのこと、これはお名前忘れましたけれども、平田議員だと思いますが、新聞からのあれで、初期対応が悪かったとか複数の部がまじっていたとか、要するに児童虐待で死なせてしまった子供の場合ですね、あと適切な援助計画がなかったとか、その三点を挙げて、これはあいまいとなっているとおっしゃいましたけれども、私もこれは大変あいまいだと思うんですね。
 そこで、神戸の事件を例にして、私は神戸の事件は裁判記録がみんなに渡っていると思うんです。ここにちょっと持ってこなくて悪いんですけれども、皆さん新聞でお読みになったと思うので、その神戸の事件を一々どこが悪かったか、児童相談所と施設の長、その人たちの判断がどこでどう間違ったか挙げていただいて、そして今度、この十三年の十一月十九日にできたこれ、それをどうここに生かしているか、指摘してほしいと思います。
#111
○政府参考人(岩田喜美枝君) 神戸の事件については、やはり一番の問題は、最終的な退所ではありませんでしたけれども、一時帰宅をさせるというその判断のタイミングだったというふうに思います。
 私どもは、「子ども虐待対応の手引き」というのをつくっておりますけれども、その中でも、一時帰宅をどういう形で認めるか、親との面会や外出をどういう形で認めるかということについては子供を預かっている児童養護施設だけの判断ではなくて、必ず児童相談所、この児童相談所の方が親を指導しているわけです。親をカウンセリングしているわけですから、児童相談所の方とよく協議をして決めてほしいということを示しておりますけれども、これが必ずしもできなかったというところが一番まずかったのではないかというふうに思います。
#112
○田嶋陽子君 済みません、質問の途中なので申しわけないんですけれども、私の手元にあるのは、まず十日間の一時帰宅を許可したときに、県の規定では八日以内ならセンターとの事前協議が必要となっているがとあるんですけれども、事前協議をまずしていないんですよね。それから、恭一君は家に帰るときに帰るのを嫌だと言って涙ぐむんですね。ここで恭一君の声を聞いていないんです。一番肝心の本人の声を聞いていないんですね。
 それからもう一つは、八月四日、土曜日です。いいですか、大体日曜日に事件は起きるんです。それなのに、土曜日に知子被告から尼崎学園に、もう学園には帰さぬと興奮した電話が来たときに、尼崎学園は驚いて児童相談所に連絡するんですね。そうしたら児童相談所は何と言ったかといったら、週明けに訪問すると告げるんです。でも、普通の常識でも事件は家族団らんのときに起きるわけで、案の定、五日、翌日に殴ったりけったりの事件が起きて、七日、脳内出血ですよね。
 これ、私はここの相談所そのものは責めませんけれども、行政の視点からどのように反省なさいますか。これは殺人を無視したというか見ないでおいたというか、それぐらいひどいことのように私自身は憤っているわけですけれども、行政の視点からどんなふうにここをごらんになりますか。
#113
○政府参考人(岩田喜美枝君) まず、法制といいましょうか、仕組みがどうかということにつきましては、例えば児童養護施設から一時退所させる、これは法令上の用語でいいますと措置の停止ということになるわけですが、措置の停止を行う場合には児童養護施設が児童相談所に事前に届け出をするということになっておりますので、仕組みとしてはそういう形でできていたわけでございます。
 八日間以上の外泊の場合にどういう手続をとるといったような、そういうレベルのことについては、これは兵庫県の中でのルールでございまして、国全体のルールではございませんけれども、いずれにしろ、国の児童福祉法あるいはその施行規則も含めてですけれども、その体系の中で子供を一時帰宅させるときのルールをどうするかということについては体系ができておりましたし、また県レベルでも体系はできていたというふうに思いますが、それがしっかり履行できなかったというところが問題だと思います。
 また、おっしゃるように、事件というのか、事態の変化が週末に起こるときにどうするかということについては、組織としての意思決定というのはなかなか週末はしにくいというところがございますけれども、週末には児童相談所の担当者が危険性がある場合にはしっかり判断をして、その判断をした上で事後に、週明け早々の組織としての検討会議に、ケース会議に報告をして、それを確認するというふうに指導いたしておりますし、そういうルールをさらに徹底したいというふうに思います。
#114
○田嶋陽子君 もう時間がないので必死なんですけれども、要するにこの尼崎学園は、その母親が子供を帰さないと言ってきたときに不審に思って児童相談所に家庭訪問を依頼するんですね。ですけれども、児童相談所は何と言ったかといったら、母親が直接来たのにすぐ行くのもどうかと迷いって、これ、世間体とか何だか知らないけれども、虐待する親に対するきちんとした所見も見識もなくて、単なる人間関係で動いているように思うんですね。そして、二、三日中に訪問すると言っていたんだけれども、もうそのときには殺されているという、そういう状況ですよね。
 だから、私がここで言いたいことは、もう結論を言ってしまいますと、ここでは施設の人たちは必死なんですけれども、施設の人たちに対して相談員の人たちがきちんと対応しない。その一つ、それは私が思うには、まず施設の人たちがこの児童虐待法に関しても無知だし、それから児童虐待とは何かに関してもきちんとしたトレーニングを受けていないということですよね。これって致命的だと思うんです。だから、本当に私はこれをやる気だったらきちんと講習を受けさせて、さっきの相談員のことも、二年ぐらいで資格やったって、こんな大事な人の命にかかわることはすぐ対応できることじゃないですよね。だから、私はきちんと予算をつけて真剣にやってほしいということが一つ。
 それからもう一つ、児童相談所の相談員たちはもしかしたらバーンアウトしている。もう、一人が百件以上の件を抱えさせられて、非常に大変なところでみんな燃え尽きちゃっているという話もよく聞きます。すなわち、そういう人たちがこうやって何でも出足がおくれるというのが一つの証拠ですよね、私の素人から見たあれでも。ですから、そのバーンアウトするような状況を国レベルできちんと変えていく施策をしないとどうしようもないんじゃないかなというのが一つあります。
 それからもう一つ、提案です、もう時間がないので。
 子供たちの教育、文部省の方にお伺いしたいです。この児童虐待を受ける子供たちに対する教育はどんなものをなさっていらっしゃいますか。児童虐待を受ける子供たちへの教育なんといったって、児童虐待、だれが受けるかわかんないんだから。だから、児童虐待を受けそうになったときにどう対応するか、どんなふうな教育をしていらっしゃいますか、文部省。
#115
○会長(小野清子君) 時間がありませんので、簡潔にお願いをいたします。
#116
○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童相談所のバーンアウトのことを先生おっしゃいましたのでお答えしたいと思いますが、私どもも、児童相談所が児童虐待問題に果たす中核的な役割を考えましたときに、まずその職員の数も含めて体制をしっかり充実すること、それから質ですね。研修プログラムを拡充いたしまして、引き続き研修については意を用いたいというふうに思っております。
 そして、既に御答弁の中で申し上げたんですが、今年度から横浜市に虐待・思春期問題情報研修センターを設置しておりまして、来年度からは本格的な研修が始まるということでございますので、こういうセンターも活用してぜひ質の向上も図ってまいりたいというふうに思っております。
 冒頭、当初、神戸のことでおっしゃいました、親が来ているんだから家庭を訪問するというのはもういいんじゃないかというふうに言ったという児童相談所の話がございましたけれども、おっしゃるように、ややもすると保護者との関係、保護者を指導して保護者に変わってもらわないといけないということで、保護者との関係を非常に児童相談所は気遣うという、このことは大変大事なわけですが、そのことの結果、子供の安全の方が後回しになっちゃうということもございますので、もう何よりも子供の安全確保を前面に出した児童相談所の運営にしたいというふうに思っております。
#117
○副大臣(岸田文雄君) 先生、虐待を受ける子供に対する教育ということ、要は子供が自分で自分の身を守る教育、そのことを御指摘だと思うんですが、これは大変重要な教育だと思っております。
 例えばアメリカで生まれたCAPプログラムというのがあります。ディスカッションとかそれからロールプレーイング、こういったものを通じて暴力に対して子供がどう対処するか、これを学ぶ方法、プログラムでありますけれども、こうしたプログラム、日本においては民間団体等がこの普及、紹介に努めておりまして、事実、学校においては一部これを取り入れている学校がございます。大変、文部科学省としても今注目しております。この状況につきまして引き続き注目していきたいと思っております。
#118
○高橋紀世子君 家庭内暴力について、私はちょっと違うことからアプローチしていきたいと思います。
 あらゆる差別を認めないこと、個人の尊厳と基本的人権の精神は、まさに人類普遍の原則です。共生社会の精神そのものだと思います。なぜなら、すべての個人の意思及び人権が尊重されない社会は、人に何かを強制する方の強制社会であり、ともに生きる真の共生社会とは言えないと思います。この共生社会のビジョンは私の心をときめかせます。
 そこで、すべての人が人生に心をときめかせ、豊かさと喜びを分かち合いながら、ともに生きるすべての人が互いを尊重し合い、互いに助け合うことは人生の喜びを大きく広げていく社会です。私はそんな本物の共生社会を樹立するために、あらゆることを努力していきたいと思っています。
 この共生社会の礎である個人が尊重されるという精神は、私たちの憲法、この十四条第一項に、文章の中に宿っています。私は、家庭内暴力の問題を含め多くの社会問題が、この憲法の普遍的な精神に反した私たちの社会制度に端を発したものと考えられます。健全な精神は健全な肉体に宿ります。今必要とされているのは、私たちの社会生活におけるあらゆる事件をあらゆる面で、この普遍的な精神を形にしていくことだと思います。
 そこでお尋ねしたいことがあります。あらゆる差別を認めないとする憲法十四条の精神は共生社会を実現する上での最も重要な考え方の一つであると思いますが、その視点についてどうお考えでしょうか。
#119
○会長(小野清子君) どなたに御質問されますか。
#120
○高橋紀世子君 副大臣にお願いします。
#121
○会長(小野清子君) 文部副大臣ですか。
#122
○高橋紀世子君 はい。お願いします。
#123
○副大臣(岸田文雄君) 憲法十四条と共生社会の関係につきまして御質問をいただきました。
 共生社会というものに対する認識、重要性、先生のお話伺いまして、大変同感をいたします。ただ、この共生社会の範囲あるいはそのための努力、大変広範囲にわたるものでありますので、当然のことながら憲法十四条と深いかかわりがあるものというふうに考えます。
#124
○高橋紀世子君 憲法第十四条の精神と私たちの現在採用している象徴天皇制の関連について質問します。
 憲法第十四条に、門地による差別を認めないとして、貴族、華族制度の廃止を宣言しながら、皇室だけを例外とする根拠はどんなことでしょうか。
#125
○政府参考人(阪田雅裕君) 憲法十四条と天皇に関する規定の整合性についてのお尋ねというふうに承りましたけれども、御案内のように、憲法は、その第一条におきまして天皇の地位を日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると定め、またその第二条におきましては、こうした天皇の地位が世襲されることを定めているところであります。
 したがいまして、今御指摘の法のもとの平等を定めました憲法第十四条も、あくまでも同じ憲法のもとで、今申し上げましたような天皇の制度が設けられているということを前提として、要するに両方が調和のある形で理解をされるべきものであるというふうに考えております。
 いずれも憲法上の規範でありまして、どちらが優先する、優越するというような関係にはないということを御理解いただきたいと思います。
#126
○高橋紀世子君 しかし、私たち大衆が憲法十四条の精神を、やはりそれは憲法ではありますけれども、一つの理想として胸に抱いている場合に、それと矛盾した制度、矛盾した天皇の制度が同じところにあるというのは、やはり私は、私たち大衆の気持ちを何か不安定にさせる要素ではないかと考えています。
 それは確かに憲法に天皇のところは別だと書いてありますけれども、やはり私たちは十四条のことをある程度、ある程度というか理想として心の中に抱いておりますのに、それと違う意味合いが同じ憲法にあるということは、やはりそういうフラストレーションがあると思いますけれども、そのことについては何かお考えがありますでしょうか。
#127
○政府参考人(阪田雅裕君) 今御指摘の点はすぐれて立法政策にかかわる問題だというふうに考えますので、私どもの立場からそれが適当である不適当であるというようなことを申し上げることは適当でないと思うのですけれども、今私が申し上げました憲法十四条と象徴天皇制との関係につきましては、制憲議会におきましても同じような議論があり、金森国務大臣が、今私が申し上げましたように、いずれも憲法であり、その両方の規定が調和をもって理解されるべきものというふうな答弁をされておられることを申し上げたいと思います。
#128
○高橋紀世子君 私は、そういうことのあいまいさというか、両方に違う精神が書かれたりしているということがやはり私たちの気持ちを少し不安定にしていると思うし、そういう心の中のストレスみたいなものが家庭内暴力ということにも何らかの形で関係していると思います。
 憲法第十四条の精神と私たちが現在採用している皇室典範のことが余りにも関連性がないということは、私にとっては問題があると思います。憲法第十四条に性別による差別を認めていないと宣言しながら、皇室典範では男性と女性を差別しています。男性と、性別を差別しています。具体的には、男系の男子だけは天皇に即位すると皇室典範では規定されていますが、その根拠は何でしょうか。また、女性だけが婚姻によって皇族となることができると書いてあります。この辺の矛盾も少し大きいと思います。
 何かおっしゃっていただけますでしょうか。
#129
○政府参考人(羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。
 現在の皇室典範では、先生今御指摘ございましたように、その一条におきまして、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」、こうなっております。そのことについてのお尋ねだと存じます。
 皇位継承制度でございますけれども、これは従来から申し上げておりますように、やはり皇室の歴史あるいは伝統、そしてそれらを踏まえました国民の皇室に対する気持ち、こういったさまざまな背景によって現在のような形になっておるわけでございます。
 したがいまして、この皇位継承制度のあり方の問題ということにつきましては、先生お挙げになりました男女平等という、非常に大事な観念だと思いますけれども、そういう観点だけではなくて、またそれだけで議論していい問題かどうかという点についてはやはりいろいろ慎重に考えなければならない点もありますし、国民の間での意見もいろいろあると思いますので、そういった観点から幅広く考えるべき問題であろうというふうに考えております。
 また、今お話のございました、いわゆる女性の場合に皇族男子と結婚をなさると皇族になられる、しかし男性の場合は皇族女子と結婚されてもそうならないと。こういうことについても同様の観点からのお尋ねでございましたけれども、これにつきましてもやはり先ほどの皇位継承についての問題でありますとか皇族のあり方などの、範囲の問題と同様に、皇室の制度と密接に関連をするということだと思いますので、やはりそれは男女平等という観点だけではなくて、皇室の歴史、伝統、そしてそれらを踏まえた国民の皇室に対する気持ちといったような観点から幅広く考えていかなければならない問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#130
○高橋紀世子君 伝統的とおっしゃいました。伝統によってそうなっていると。ただし、私の勉強不足であれではありませんが、女性が天皇になる時代はあったのではないでしょうか。それが、女性が天皇にならないのが日本の最初からの伝統ではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
#131
○政府参考人(羽毛田信吾君) 御指摘のように、歴史の中でいわゆる女性天皇が、おられた方が八方十代ございます。八方十代と申しますのは、お一人の方が二度なさったことがございましたから八方十代ございますけれども。
 それは、その一つ一つをひもといてみますと、皇嗣、つまりお世継ぎがまだ大変年齢がお若くていらっしゃる、そういったようなことで天皇の地位につかれるにはやや幼少過ぎるというようなことから、いわば例外的に、特別の事情があった場合に例外的になられているということでございまして、やはり伝統という意味では古来から男系の男子が継いでおられるというのが基本的には伝統であろうというふうに観念をいたしております。
 そのことにつきましては、今申し上げたようにいろんな議論はございますけれども、やはりいろんなそういった幅広い議論が必要ではなかろうかということを申し上げているわけでございます。
#132
○高橋紀世子君 私たち市民の社会でも本当の男女平等を追求することはなかなか、基本的には大事なことですけれども、難しいことだと思うんです。それが日本の大事な皇室の制度の中で、その男女の両方が、どちらが上とか下とかはありませんけれども、差別があるということは、これは私は、私たち大衆の生活にも大変大きく影響しているし、いろんな意味でまだまだ私たちこれからやっていかなければならないのに、この皇室がそのまま憲法の精神と違うことをしているというのは私は大変問題があると思います。
 これが私のきょうの終わりです。
#133
○会長(小野清子君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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