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2001/12/03 第153回国会 参議院 参議院会議録情報 第153回国会 共生社会に関する調査会 第4号
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2001/12/03 第153回国会 参議院

参議院会議録情報 第153回国会 共生社会に関する調査会 第4号

#1
第153回国会 共生社会に関する調査会 第4号
平成十三年十二月三日(月曜日)
   午後二時三十二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     岩本  司君     鈴木  寛君
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     田嶋 陽子君     大田 昌秀君
 十一月二十八日
    辞任         補欠選任
     大田 昌秀君     田嶋 陽子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         小野 清子君
    理 事
                有馬 朗人君
                清水嘉与子君
                田浦  直君
                羽田雄一郎君
                渡辺 孝男君
                吉川 春子君
    委 員
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                大野つや子君
                小泉 顕雄君
                後藤 博子君
                段本 幸男君
                山下 英利君
                岡崎トミ子君
                郡司  彰君
                小宮山洋子君
                鈴木  寛君
                平田 健二君
                弘友 和夫君
                山本 香苗君
                林  紀子君
                田嶋 陽子君
                高橋紀世子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   参考人
       日本弁護士連合
       会子どもの権利
       委員会幹事
       東京弁護士会子
       どもの人権と少
       年法に関する委
       員会委員
       弁護士      磯谷 文明君
       国立小児病院・
       小児医療研究セ
       ンター小児生態
       研究部長     谷村 雅子君
       大阪府中央子ど
       も家庭センター
       所長       萩原總一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (共生社会の構築に向けてのうち児童虐待防止
 に関する件)
○継続調査要求に関する件
    ─────────────
#2
○会長(小野清子君) ただいまから共生社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十一日、岩本司君が委員を辞任され、その補欠として鈴木寛君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(小野清子君) 共生社会に関する調査を議題といたします。
 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事、東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員、弁護士磯谷文明君、国立小児病院・小児医療研究センター小児生態研究部長谷村雅子君及び大阪府中央子ども家庭センター所長萩原總一郎君に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 参考人の方々から、「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関して忌憚のない御意見をお述べいただきまして、調査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めさせていただきたいと存じます。
 なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていただきたいと存じます。
 また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。
 それでは、磯谷参考人からお願いいたします。磯谷参考人。
#4
○参考人(磯谷文明君) 弁護士の磯谷でございます。
 私は、日弁連子どもの権利委員会や東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会に所属しておりますほか、児童相談所などの機関から児童虐待問題をめぐる法律問題について日々相談を受けたり、代理人として訴訟を行ったりしております。また、社会福祉法人子どもの虐待防止センターの幹事もしており、民間団体の運営にもかかわっております。
 このたびは、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 まず、総論的に申し上げまして、児童虐待防止法の成立は大変よかったというふうに考えております。虐待問題が深刻化する中で、我が国の立法府が正面から虐待問題について議論をして、その努力が一つの法律として結実したということは大変喜ばしいものだというふうに思っております。
 ただ、私を含めて、虐待問題にかかわる実務家や関係者の多くが、当初から児童虐待防止法を十分なものであるとは考えていなかったこともまた事実であります。施行後、約一年が経過しておりますが、その間、実際にこの法律を使わせていただいてみて、改良を期待したい点も出てまいりました。
 本日は、法律実務家としての経験を踏まえまして、特に児童虐待防止法において改正を希望する点について、これを中心にお話をさせていただきたいと思います。あらかじめレジュメをお配りさせていただいておりますので、おおむねそれに沿ってお話を申し上げたいと思います。
 まず、児童虐待の問題は児童相談所を中心に対応されることがほとんどでありますので、児童相談所を中心としたものからお話をしたいと思います。
 まず第一点は、対象児童の年齢の問題であります。
 子供は二十になるまで親の親権に服するものとされて、親権の乱用の危険にさらされているわけですけれども、児童福祉法や児童虐待防止法は対象児童を十八歳未満としておりまして、十八歳以上二十未満の子供たちを保護する手だてがございません。これにつきましては、児童福祉法及び児童虐待防止法の対象児童の年齢を二十未満まで引き上げていただきたいというふうに思っております。
 二つ目は、誤って虐待の通告をした場合の免責の問題であります。
 誤って通告をした場合や、あるいは通告をしたけれども結果的に虐待だという立証ができなかった場合、その場合に通告者が法的な責任を問われる可能性がありますと、発見者が通告をちゅうちょして、結果的に必要な通告がなされないという可能性がございます。こういったことを考慮しまして、誤って通告した場合等についても免責をするというふうなことが考えられるわけで、虐待防止法成立前の審議においてもその点議論されたやに聞いておりますけれども、その際、無責任な通告を助長するおそれがあるんではないかというふうな懸念から盛り込まれなかったと伺っております。
 しかし、本来、過失責任を免除するというものでありまして、故意責任を免除するという趣旨ではございません。少なくとも虐待防止法五条において早期発見努力義務を課せられている者たちについては、虐待かどうか判断できないという理由から通告をためらうことが少なくありませんので、通告の促進のためにも免責の規定を置くことが必要かと考えております。
 三つ目は、児童相談所の安全確認努力義務に関してであります。
 児童虐待防止法の八条は、通告を受けた児童相談所長は速やかに児童の安全の確認を行うよう努めることとされましたけれども、その期間が明確ではありません。もともとこの安全確認義務ですら努力義務でありますので、さらに確認の期限もあいまいであるということですと実効性が損なわれるかと思います。この点、既に審議にも出ておりましたと思いますが、四十八時間などの時間制限をしていただくのが適当かというふうに考えております。
 四つ目は、児童相談所の調査権限と関係機関の協力義務についてであります。
 児童相談所が関係機関に対して児童虐待事件に関する情報提供を求めるということが少なくありませんが、必ずしも法的な整理が十分できていないため、関係機関としてもどこまでの調査に応じてよいのかわからず、結果として児童相談所が十分な情報を収集できないという現状にあります。この点、特に関係機関が児童虐待という認識があれば児童福祉法二十五条の通告義務の枠内で情報提供ができますけれども、その認識がない場合、特に問題になっております。
 御承知のとおり、自治体におきましては個人情報保護条例を有しているところがあり、保有する情報を機関外に提供することについて一定の縛りがあります。この点、法律できちんと児童相談所に対する情報提供、これを含めて協力義務をはっきりさせておけば、関係機関も協力がしやすいというふうなことが考えられるわけです。これは、現在係属中の事件は当然ながら、終了した事件についても情報提供を求めることができる、そしてそれに協力しなければならないという規定を設けておくことが必要だと思います。
 最近、児童相談所は、結果的に命を救えなかった子供たちについて、どうして救えなかったのかということを検証、調査しようという動きが実際に出ておりますが、こういったときに関係機関から十分な情報が得られないと、その原因がはっきりできないということになっております。
 五つ目は、立入調査権に関してであります。
 現行の立入調査権については、罰金の限度でしか強制力がなく、保護者が家屋内への立ち入りを拒んだときには、正当防衛などが認められる例外的な場合を除いて、児童相談所職員は立ち入ることができないというふうに解されています。実際に中で虐待が起こっていることが明らかであれば、それは立ち入ったとしても違法性が阻却されるということになるのでしょうが、周辺事情からどうも虐待の可能性が高い、しかしその確証は得られない、こういう段階で立ち入ろうとしたとき、保護者の拒否があるといかんともしがたいという現状にございます。
 したがいまして、この点については、立ち入らなければ児童の安全が確認できないとき、あるいは児童を保護できないときは、児童相談所は裁判所の許可を得るなどして立ち入ることができるものとして、その際には閉鎖された戸を開くなどの必要な処分はすることができるというふうに定める必要があるかと思います。
 六つ目は、面会、通信の制限に関してであります。
 児童虐待防止法十二条は、児童福祉法二十八条の規定により施設入所等の措置がとられた場合にのみ、保護者との面会、通信を制限できるというふうにしておりますが、これでは一時保護やあるいは親権者等の同意による施設入所等の措置がとられている場合に面会、通信を制限できないとも解釈し得る状況になっております。しかし、実際には一時保護や同意入所による施設入所等の措置がとられている場合でも、保護者による面会、通信が児童の心身に著しい悪影響を与えることも少なくありません。
 したがいまして、こういう点については現行の十二条を改正して、児童相談所長または児童福祉施設の長は、児童の福祉に反するときは保護者との面会、通信を制限できるというふうにすることが必要だというふうに考えます。
 次に、親権制度について意見を述べたいと思います。
 親権制度の基本的な枠組みは明治時代以来変わっておりません。昨今の児童虐待の急増に制度自体が対応できていないという批判は、このところかなり聞かれております。その中で、まず象徴的なものがこの親権喪失宣告の申し立て権者の問題であります。
 民法は、親権喪失宣告の申し立て権者を子の親族と検察官というふうに定めておりまして、さらに、児童福祉法の中で児童相談所長もそれができるということになっておりますが、この三種類の人たちのみ申し立て権が与えられております。しかし、いずれも必ずしも申し立てに積極的ではなく、また十八歳に達した子については児童福祉法上児童ではないということになりますので、児童相談所長も申し立てができないというふうに解されております。こういったことが親権喪失宣告制度が機能しない一因というふうになっております。特に、最大の利害関係人であるはずの子供自身に申し立て権が認められていないということから、子供が自力で親権の乱用から免れることができない状況にあります。
 したがいまして、親権喪失宣告の申し立て権者にぜひ子供本人を加えていただきたいというふうに考えております。ただ、子供も年齢が小さいときには意思能力が否定されることがございます。したがいまして、弁護士法一条で基本的人権の擁護、社会正義の実現を使命としております弁護士会の会長をこの申し立て権者に加えていただきたいというふうに考えております。
 親権に関する二つ目は、親権の機動的な一時停止または一部の停止ができるようにしていただきたいという点でございます。
 現実、親権喪失宣告の制度は大変重量級の制度だというふうに認識されておりまして、申し立て件数も、また認容件数も極めて少ないという現状にあります。この点、親権喪失あるいは停止がより機動的にできるようになりますと、子供の保護、あるいは親の影響を断つということがより容易になるものと考えております。
 三つ目は、懲戒権の問題であります。
 民法には懲戒権の定めがありまして、親は子供を「懲戒場に入れることができる。」という規定も置いております。いかにも時代錯誤的な内容になっております。実際にこの懲戒権というのは、わざわざ法律に書いておく必要性は見出しがたいばかりか、親が虐待の弁解をするときに使われたり、あるいはその懲戒権の行使だという弁解を恐れて、児童相談所が介入をためらったりするというふうな弊害があらわれております。
 本来、懲戒というものは親子間の信頼において行うべきであって、法律上規定を置かなければならないものだとは思えません。したがいまして、懲戒権の規定は全部これを廃止していただきたいというふうに考えております。
 その他、必ずしも法律問題に限りませんけれども、児童虐待をめぐる問題として、例えば児童相談所や児童福祉施設のスタッフ不足、施設の貧弱さ、こういった問題もあります。ぜひ、今後もさまざまな意見をお聞きいただいて、この児童虐待防止について、より使いやすい、より実効性のある制度をおつくりいただきたいというふうに考えております。
 以上でお話を終わらせていただきます。
#5
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 次に、谷村参考人にお願いいたします。谷村参考人。
#6
○参考人(谷村雅子君) 国立小児医療研究センターで子供を取り巻く問題について研究しております谷村でございます。本日は発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 私どもは、児童虐待につきましては全国の小児科を対象に毎年調査を行っております。また、現在は、日本の児童虐待の実態把握を目的として関係機関の全国調査を行っておりますので、この二つの結果をもとに、現状と課題について、レジュメとそれから追加資料に沿ってお話しさせていただきます。
 児童虐待は、最近は毎日のように報道されておりますし、確かにふえているとは思いますが、実は昔からどの国にもあって、人間社会の普遍的課題であると思います。
 民話や文学には、皆様御存じのように、児童虐待が登場する話がたくさんございます。追加資料の一ページに少しまとめましたが、ドイツの民話を集めたグリム童話の一割に虐待が見られます。「シンデレラ」のようなまま子いじめが多いのですが、期待に反する実の子供への虐待や「ろばの皮」のような性的虐待など、現代と同様の虐待が描かれています。近代の文学でも、「にんじん」では気に入らない息子へのいじめ、有名な「次郎物語」では乳母のもとから実家に戻った次郎への虐待がリアルに書かれております。
 これらのことは、人間は、通常は子供を慈しみ育てますが、ある条件下では虐待行為に及ぶ特性を持ち合わせていることを物語っていると思います。現代と異なることは、虐待要因が当時の社会背景を反映して貧困、飢餓、母の死別などが多いことで、社会背景に即した虐待対策が必要であることを示唆していると思います。
 では、レジュメに戻りまして、現在の実態調査結果を御報告申し上げます。
 虐待対応にはいろいろの機関や職種がかかわっておりまして、個々の機関の調査はありますが、全貌を把握する必要がありますので、平成十二年度と十三年度の厚生科学研究で、保健、医療、福祉、教育、司法、警察、民間虐待防止団体などの全関係領域にわたって統一の実態調査を企画いたしまして、現在、地域の全関係機関の悉皆的調査と主な機関の全国調査の二本立てで行っております。
 昨年は、日本人口の一二%に相当する九地域を選定しまして、虐待に対応している約四十種類、合計一万八千の機関や職種を対象として調査を行いました結果、十二年度前半に把握された虐待及び疑い例、千九百八十例が報告されました。この数から、社会的介入を要する児童虐待の年間発生頻度はゼロ歳から十七歳までの小児千人のうち一・四人、全国で年間約三万例と推定されました。
 事例のほとんどは治療やケアを要する状態で、一割が重症例で、死亡や生命の危険あるいは受療を要する状態でした。八割に発達のおくれや行動問題、軽傷、心理的問題がありました。したがいまして、虐待によって心身に傷を持った子供と虐待者の治療及び親子関係の修復には相当の規模の対応体制、治療体制が必要であることがわかります。
 子供の年齢は、乳幼児が五五%、小学生三三%で、つまり自分では訴えられない年齢の子供が多いので、子供の小さな異状に気づくことができるような周囲の人々の温かい心がけが必要であることを示していると思います。虐待者は、実親が八六%で、継父母は一〇%にすぎませんでした。転帰は、一七%が施設入所、一〇%が親戚の同居や親戚宅での養育で養育環境が改善されておりますが、六五%はもとの家庭での養育が継続されておりました。養護施設の充実はもちろんですが、在宅で養育が続けられる虐待家庭への長期的な援助と見守り体制も再発防止のためにはぜひ整備していただきたいと思います。
 追加資料の二ページ目に地域調査結果の概要をお示ししましたが、左の表にありますように、地域の多くの機関や職種が虐待に対応していることがわかります。児童相談所事例は全体の三七%で、つまり通告が余りなされていないということを示しています。
 右のグラフには虐待像を機関別に示しましたが、機関によって対応する虐待像が異なっています。例えば虐待を把握したきっかけは、保健機関、保育所、学校、医療機関では子供や虐待者や家族や知人からの相談、職員による発見などが多く、子供に日常接する機会の多い機関の発見機関としての重要性が示されています。年齢は、当然、保健機関と保育所は乳幼児が多く、学校は学齢児で、それに伴って虐待の種類も異なっています。また、親からの相談の機会が多い保健機関の事例には比較的軽度のものもあり、保育所や学校のように子供の異状から気づくよりも、早期に把握できていることを示していると思います。児童相談所や福祉事務所は、市民や他の機関からの通告例が多くなっております。
 このようなそれぞれの機関の性格を活用した連携体制の強化と専門的な研修で、早期発見、早期対応の効果がかなり期待できると思います。また、虐待背景には地域差がありまして、各地域の実情に応じた対応システムの構築が必要であることが示されました。
 次に、レジュメに戻りまして、小児科調査の結果を報告させていただきます。
 この調査は、全国の主な病院の小児科を対象として一九八六年から毎年行っている調査です。小児科で発見される事例は、治療を目的として受診した症例ですので、虐待の中では比較的重症な事例を見ていることになります。
 地域分布は、発生率は都市部の方が郡部より高い傾向がありますが、島でも結構発生しておりまして、全国どの地域でも発生し得ると考えて対策を講じる必要があると思います。
 追加資料の三ページ目に概要を示しましたが、きょうだいの中で一人だけを対象とした事例が多く、対象児の六割は、多胎児、低出生体重、先天性疾患や慢性疾患などの医学的問題を持ち、また一五%が親類や施設などで養育されたことがありました。虐待者は、しつけと主張したり、受容できない、育て方がわからない、懐かない、泣き声がうるさい、育児負担などのため子供を愛せないと訴えておりました。
 虐待の結果、中枢神経障害が四割、成長障害が五割と、生命や後遺症の危険が生じている例が少なくなく、また無表情、おびえ、過食、攻撃性、過敏など、行動異常や情緒障害が七割に生じておりました。予後は悪く、一割が死亡し、家庭に戻っても再発がなかった例は二割弱のみでした。早期発見、本当は発生予防が重要であります。また、再発がなかった例では、親類の同居、再婚、保育園の利用など共通して人の援助を受けておりまして、人による精神的、物理的援助が虐待の予防、再発防止に有効であることを示唆していると思います。
 きょうだい中で一人のみが対象となる場合ときょうだい全員が対象となる場合とでは、発生機転が異なって対応も異なります。
 医学的問題や親から見た育てにくさを持つ子供のみが対象となった場合は、虐待者は病児の育児不安や育児疲労、他のきょうだいと比較して愛情の希薄を供述しており、このような家庭では出生初期から児の問題に特化した育児指導が効果的であると考えられます。
 他方、親や家庭が育児に支障を来す問題を持ってきょうだい全員が対象となる場合は、親の精神疾患や知的障害、夫婦不和、経済的不安定、孤立家庭などが多く、また最近では泣き声などの乳児特性を受容できない親も出現しております。
 十五年間の動向を見ますと、きょうだいともに虐待を受けた例、出生後早期の虐待が増加しており、若年の親、望まぬ妊娠、育児能力欠如など親自身が問題を抱える例が増加してきました。今後もこの傾向が強まると思われます。
 レジュメの二ページ目に戻りまして、以上の実態から対応策を考えますと、まず現代の日本の児童虐待は少子、核家族、地域の人間関係の希薄を背景に、育児の伝承の途絶、孤立化から育児不安や育児負担感が高じて虐待に至る例が多いので、表にありますリスク因子を持つ家庭、特に複数の因子を重ね持つ家庭の予防的援助が効果的であると思います。また、右の図のように、虐待の多くは育児不安や子供への否定的感情から軽度の虐待が始まり、さらにたたかずにはいられないというような日常的な虐待に進行しますので、段階に応じた対応が効果的であると思います。
 児童虐待対策の具体的課題としましては、レジュメ五に書きましたように、児童虐待防止法新法によって関係者や市民の関心の喚起、早期発見、早期対応による重症化の防止効果が期待されますが、さらに新法の周知、特に発見機関や職種への周知と研修、虐待の各段階における各機関の役割の明確化と機能強化によって成果が上がると思います。
 次の大きな課題は被虐待児の治療と健全育成のための養育環境の提供で、被虐待児、虐待者、親子関係の治療方法の確立と治療体制の充実、それから親子分離後の子供の治療と施設や里親制度など養育環境の充実が急務の課題であると思います。これにつきましては、次の萩原先生から詳しくお話があると思いますので省略させていただきます。
 虐待防止法では、虐待の発生を減らすことは余り期待できないと思います。虐待の発生を減らすには、発生予防のための体制を構築する必要があります。周産期からのハイリスク家庭の把握と地域の育児支援体制を構築して、保健婦などによる専門的育児指導の体制を整備して育児不安を軽減することで虐待への進行をかなり予防できると思います。現在、虐待の疑いがある場合には守秘義務に優先して機関連携が許されておりますが、ハイリスク段階における守秘に配慮した機関連携のあり方も検討していただきたいと思います。
 比較的年齢の大きい子供につきましては、養育者や養育環境が変化したときの見守り体制、例えば離婚、再婚、養育者の罹病、死亡、失業、転居、きょうだいの誕生などのときに子供への否定的感情を抱くことがありますので、このようなときに親子を見守って助言できる体制があるとよいと思います。
 また、行政サービスを受けない、または対象外の子供の健全育成の見守り方はぜひ御検討いただきたいと思います。例えば未入籍児、乳幼児健診未受診児、外国人、転入家庭の把握、支援には多分民生委員や児童委員さんなどの協力が必須であると思います。ぜひ御検討をお願いいたします。
 以上でございます。
 御清聴ありがとうございました。
#7
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 次に、萩原参考人にお願いをいたします。萩原参考人。
#8
○参考人(萩原總一郎君) 大阪府中央子ども家庭センター所長の萩原でございます。
 本日は、本調査会にお招きいただきましてありがとうございます。
 私は、大阪府における児童虐待の取り組みと子ども家庭センターの現状と課題を中心に、レジュメに沿って説明させていただきます。
 まず、お手元の資料一をごらんいただきたいと存じます。資料一には、大阪府子ども家庭センターの組織、職種別構成、各課の業務内容についてお示しいたしております。
 一ページをごらんいただきたいと思います。大阪府では、今年度より新たに虐待対応課を七カ所の全子ども家庭センターに設置いたしました。また、子ども家庭センターに名称を変更しました平成六年四月には、地域支援を積極的に行うため、地域育成課を設置しております。
 それでは続きまして、児童虐待相談の状況について資料二で御説明いたします。
 資料二の一ページに児童虐待対応の仕組みを参考までにお示ししております。ただ、児童虐待防止法の関連条項が記載漏れになっておりまして、この点御容赦いただきますようお願い申し上げます。
 資料二の二ページをお開きください。平成十二年度の虐待に関する統計をお示ししておりますが、相談処理件数の推移をごらんいただきますと、大阪府では、これまで全国の一割近くの件数で推移してきております。これは大阪が虐待が多いのではなく、子ども家庭センターの虐待ケースの把握率が高いのではないかと、こんなふうに考えております。経路別相談、内容別相談、年齢構成では、ほぼ全国の傾向と同じ傾向を示しております。
 次に、法的対応では、立入調査を七件実施いたしました。いずれも職権により保護をいたしております。二十八条の申し立てでは、三十件の検討をいたしましたが、申し立てに至ったのは四件で、うち三件の承認を得、一件は保護者の同意を得て取り下げております。申し立てに至らなかった二十六件につきましては、いずれも保護者の同意を得て施設入所等の措置を行っております。
 続いて、一時保護についてでございますが、被虐待児童の一時保護は増加傾向にあります。一時保護所には非行などの問題を抱えた児童も多く入所しておりまして、これらの児童をいらつかせたり、試し行動を繰り返すなどにより、不安定な集団生活を余儀なくされております。
 三ページをごらんください。三ページには児童虐待防止法施行前後の相談受け付け件数を月別に示しております。法の施行前と後では、およそ二倍の増加になっております。
 四ページをごらんください。四ページには、この四月から半年間の相談受け付け件数を示しております。この半年間では、身体的虐待よりもネグレクトの方が多くなっております。
 五ページをごらんいただきたいと存じます。施設入所につきましては年々増加傾向にありまして、特に児童養護施設における被虐待児童の在籍数は毎年百人の増となっておりまして、在籍の比率も三〇%を超えております。
 引き続きまして、大阪府における児童虐待の取り組みについて説明させていただきます。
 六ページをごらんいただきたいと思います。平成十二年四月から、中央と堺子ども家庭センターに虐待対応を専任で担当する福祉職をそれぞれ一名増配置し、さらに法施行後、三名の福祉職を増員いたしました。そして、今年度四月に十二名の増員を図り、七カ所の子ども家庭センターに虐待対応課を設置するに至りました。虐待対応を専任する課を設置したことで、格段に緊急対応がスムーズとなりました。また、安定的に指導が可能になればそれぞれの担当課につなぐということにしております。
 御承知のように、虐待対応では、保護者と対立してでも子供の安全を確保する場合がある一方、将来子供を家庭に復帰させるには、保護者との対立をできるだけ避けて家庭調整を円滑に行う必要があり、両方の取り組みを進めるジレンマがございました。しかも、この親子分離と家庭調整を行うセクションや福祉職が同一であり、スムーズな対応がしにくいという状態でございました。このため、初期の行政権限の執行を中心に行う虐待対応課を新設し、家庭復帰等の家庭調整を行うセクションとの機能分担を図り、円滑な虐待対応を進めることといたしました。
 次に、法施行後に児童虐待の危機介入援助チームを設置いたしました。これは、弁護士や医師などの専門家に御協力いただきながら、法的対応や医療的対応を的確に行うことを目的としたもので、今年度は弁護士三十名、医師十三名が登録されており、適切な助言をいただくなど大いに成果を上げております。
 さらに、保健所と子ども家庭センターの連携による虐待対応の強化を図ることとしました。保健と福祉が一体となって、適切な判断のもとに虐待の危険度評価、いわゆるリスクアセスメントが実施できるよう検討するとともに、育児不安の高い保護者の心のケアをモデル的に実施しているところでございます。
 また、大阪府警本部におきましては、十二年十一月に十三名の警察官によるチャイルド・レスキュー・チームを設置し、チャイルド・レスキュー一一〇番で虐待の通報の受理とその対応に当たっております。子ども家庭センターといたしましても大変心強く思っておりまして、本チームとの連携を緊密にとり、安全確認や立入調査などにも御協力をいただきながら取り組んでいるところでございます。
 続きまして、児童福祉施設への対応でございますが、児童養護施設等への入所が増加したため、四施設二十二名の定員枠を拡大いたしました。
 さらに、平成十四年度には、大阪府では二カ所目の情緒障害児短期治療施設の開設を予定しております。また、施設の心理療法担当者と子ども家庭センターの心理職で構成する施設心理士ネットワーク会議を設置し、研修などを通じて、被虐待児童の心のケアの充実に努めております。
 緊急対応としての電話相談の状況につきましては、次の七ページにお示しをしております。二十四時間対応を可能にするため、児童養護施設の御協力をいただいております。
 次に、児童虐待問題についての課題でございます。
 深刻化する児童虐待問題に関して、中核的な役割を担う児童相談所の相談体制及び援助システムの確立が重要かつ緊急の課題であると認識しております。特に、児童虐待は迅速かつ的確に対応する必要があり、初期対応を充実させる必要がございます。加えて、虐待の再発防止のため保護者への指導、援助と、子供の心のケアの充実が今後の大きな課題になると考えております。
 それでは、レジュメに戻っていただきまして、法施行後の現状と課題から御説明いたします。
 虐待の定義につきましては、大阪府におきましても広報啓発活動を積極的に行っているところでございますが、しつけでやっているという保護者が多く、虐待についての理解がまだまだ行き渡っていないのが実情でございます。また、ネグレクトや心理的虐待については、機関によりまして定義の受けとめ方に差異が見られ、しばらくの時間が必要かと考えます。
 通告受理機関の体制整備については、通告受理機関が児童相談所と福祉事務所となっておりますが、市町村福祉事務所については通告の受理に関して、人的にも物的にも体制整備されていないのが現状でございます。大阪府におきましても、家庭児童相談室が未設置の福祉事務所もかなりございまして、未設置の福祉事務所では通告の経由機関の役割しか果たしていない状況にございます。このため、児童相談所はもとより、市町村福祉事務所の相談体制の整備充実を図る必要があるのではないかと考えております。
 次に、介入型ケースワークについては、虐待の通報、通告に対し迅速かつ的確に介入し、場合によっては保護者と対立してでも子供の生命、権利を守る必要がございます。しかし、権限行使により保護者の反発を招き、後の指導、援助が大変困難な状況になり、信頼関係を再構築していくには相当の時間と労力を必要とする場合も多く、さりとて従来の信頼関係を軸にしたケースワークでは対応し切れないことから、対立を避けることなく、同時に保護者に対する継続的な指導に結びつける援助技法を確立していくことが大きな課題となっております。
 子供の心のケアと保護者の指導については、大阪府におきましても虐待の対応でおくれている一番の課題でございまして、子供の心のケアや保護者に対するカウンセリング等の援助を十分行える体制、システムを構築していく必要があります。このため、職員の専門性の向上はもとより、治療プログラムの開発が急務であると考えております。
 児童養護施設等の整備充実の必要性については、多くの被虐待児童が入所していることから、施設においても子供の心のケアと保護者に対する指導により、親子関係の改善をより効果的に行えるよう、ハード、ソフト両面において整備充実する必要があると考えております。
 ここ一、二年でございますが、子供の問題行動など集団生活での不適応が目立ってきております。特に、夕刻以降の時間帯に甘え行動や試し行動といった不安定な状況が見られると聞いております。夜間の勤務体制を十分整えて、個別的な対応が可能となるよう改善する必要があると思われます。
 次の課題といたしまして、二の関係機関との連携の強化について御説明いたします。
 児童虐待の問題は、一機関のみで必要な援助を完結することは到底不可能なことでございます。このため、援助の総合化を図るためにも、関係機関との連携と地域における虐待防止ネットワークづくりが重要な課題であると考えております。
 資料二の八ページをごらんください。
 大阪府では、現在、二市一町を除いた市町村において虐待防止のネットワーク会議を実施しているところでございます。市が事務局を担っているのは九市のみであり、今後は全市町村が事務局を持ち、連絡会議から一歩進んだセーフティーネットワークとして機能するよう支援していく必要があると考えております。
 レジュメに戻らせていただきます。
 大阪府の子ども家庭センターでは、被虐待児童の台帳を作成するとともに、保護決定アセスメント指標と危険度判断基準をクロスすることによってリスクアセスメントを行っております。家庭復帰のためのリスクアセスメント指標については、現在検討を急いでおります。今後、これらのネットワーク会議の中で、リスクアセスメント指標を市町村保健センター、保育所、家庭児童相談室など、広く地域の関係機関で共有化できるよう進めていく必要があると考えております。
 最後に、発生予防の視点でございます。
 児童虐待は極めて多様、多岐にわたる問題を抱え、かつその背景やメカニズムも複雑でありますが、近接領域から申し上げれば、地域における子育て支援施策や母子保健施策の充実が大切であると考えております。
 例えば、地域の子育て支援センターなどの機能を有効に活用して、子育ての不安や負担感を軽減し、あわせて地域からの孤立化を防ぐことで、また市町村保健センターでは、乳幼児健康診査時に保護者からの相談を受け、きめ細かく対応するとともに、未受診者への家庭訪問を実施するなど充実を図ることで相当多くの虐待が未然に防げるものと考えております。また、虐待防止のための広報活動や地域フォーラムなどによる啓発活動を継続的に実施していくことも、発生予防の観点から重要な取り組みであると考えております。
 虐待は、起こってからの迅速、的確な対応はもちろん大切でございますが、起こらないことが子供にとってもその保護者にとっても望ましいことは明らかでありますので、再発防止とともに未然防止についての施策の充実が望まれるところでございます。
 以上で、私の説明を終わります。
#9
○会長(小野清子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取を終わらせていただきます。
 これより参考人に対する質疑を行います。質疑は午後五時三十分をめどとさせていただきます。
 なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただきますようにお願いをいたします。
 また、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。
 質疑のある方は挙手を願います。
#10
○段本幸男君 ありがとうございます。大変、皆さんからいろんな問題点の指摘を受けて、勉強になりました。
 その中で、磯谷弁護士にお尋ねしたいんですけれども、一番最初のところで、対象児童の年齢について、十八歳から二十歳未満に引き上げることが非常に必要ではないかというふうな御提案をなさっているんですが、私個人から見ると、できれば今はむしろ年齢を引き下げる方向にいろんな社会全体が働いている。その中で、十八歳から二十歳までの間で、この児童虐待防止法を適用することによって救われる人が多いのか、むしろ違った、法制度上のいろんなものがありますから、そういった方で救済していくのか。
 そういう年齢層にこの児童虐待防止法の適用年齢を下げることによって救われるような人たちが、先生のいろんな今までの御経験の中では相当あるとお考えになっているその根拠をちょっとお尋ねしたかったんですが、よろしくお願いします。
#11
○参考人(磯谷文明君) 今の御質問ですけれども、確かに児童福祉法や児童虐待防止法の対象年齢を二十歳未満にするのか、あるいは一般に成年の年齢を十八歳に下げるのかというところはなかなか難しい議論があるだろうと思います。私は、児童虐待防止対策という立場からしますと、いずれでも構わない。とにかく親権に服する時期と、それから守ってあげられる時期を平仄を合わせていただきたい、こういうふうなことです。
 今の御質問の中で、現行の児童福祉法や児童虐待防止法のもとで救えない子供たちがいるのかというふうな御質問ですけれども、まさにそれはおります。実際に十八歳を超えてしまいますと、児童相談所は、もう既に対象の年齢を超えていますので児童ではないということになる。そうすると、児童福祉法上の施策が打てないということになるわけなんです。その結果、そういう子供たちを保護するところもまたありませんし、仮に第三者が保護した場合でも親権者からの引き取り要求を拒むことができないという現状になっております。
 東京でいいますと、十八歳を超えてしまうと、男の子の場合は暴力団の組事務所の電話番をやるか、女の子の場合は歌舞伎町に行くかと、そのぐらい居場所が少ないという状況になっております。ですから、ここのところは大変重要な課題だと認識しております。
#12
○段本幸男君 ありがとうございました。
#13
○吉川春子君 共産党の吉川春子です。
 続いて磯谷弁護士にお伺いいたします。
 懲戒権の問題について詳しくお述べいただきまして、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と、これの問題点について御指摘になったと思います。そして、懲戒権は必要ない、廃止すべきだという御提言でして、私もそこは非常に賛成でございます。そういう方向に行かないとやっぱり児童虐待というのはなくならないのではないか、思想的に、というふうに思いまして共感を覚えました。
 そこで質問なんですが、参考人はほかのところで子供の人権を中心とする親子関係法をつくるべきだと、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、この具体的な内容についてお示しいただけますでしょうか。
#14
○参考人(磯谷文明君) 子供を中心とした親子関係法の構築というのは大変重要だと思っております。現在の親権法というのは、親権に子供は服するんだというふうな考え方がとられております。その象徴的なのは、八百十八条一項に「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」という言葉が書かれているわけです。
 しかも、この親権というものは明治以来から、むしろ重要なのは義務なのだ、親は子供を育てる義務があるのだと。ただ、義務だけでは十分にその責務を全うできないので、一定の権限を与えるというような形でこの権限の権という字が残っているんですけれども、実際にはこの親権という言葉は権利の権だけ残ってしまっているんですね。
 その中で、先ほど御指摘いただいた懲戒権の規定が八百二十二条にあるわけですけれども、この中では、親権を行う者は、「家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。」というふうな規定がまだ残っておるわけです。これは、現行法上この懲戒場というものは存在しておりません。にもかかわらず、こういう規定が残っておる。
 むしろ重要なのは、子供の権利を中心とした形で親子関係法を再構築する必要があるのではないか。この細部については今ここで申し上げるだけの内容を持っておりませんけれども、今は親の権利を中心として規定されていますけれども、そもそも、強い者のための権利ではなくて、弱い子供のための権利、子供の権利を中心として再構築すべきだというふうに考えております。
#15
○吉川春子君 済みません、ちょっと補充で簡単に。
 と申しますと、民法の改正ということが念頭にあるんでしょうか。私は独立した子供の人権を中心とする独立立法を提案されているのかと思いましたが、その辺をちょっと補充的にお伺いいたします。
#16
○参考人(磯谷文明君) 具体的に独立した立法にするのかどうかというところはまだ詰めておりませんけれども、いずれにしても民法が親子関係の基本を定めておりますので、そこに手を入れないということでは無理だと思います。ですから、そういう意味では民法の親権の規定を何らか変えなければならないだろうというふうには考えております。
#17
○清水嘉与子君 お三人の先生方、ありがとうございます。
 時間が制限されていますもので、萩原参考人にお伺いしたいと思いますけれども、この資料で拝見いたしますと、虐待の経路別相談件数というのを見ますと、一番多いのが家族ですよね。家族というのは、つまりお父さんが子供を虐待しているのをお母さんが相談に来るとか、逆の場合もあると思いますけれども、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
 つまり、そうなりますと、これはもう家族、家庭内のドメスティック・バイオレンスにもかかわるような、子供もあるいはお母さんもお父さんから被害を受けているというふうなことのあらわれであるのかなという感じもするんですが、仮にそうだとすれば、子供に対してもですし、その両親、いじめる人、いじめない人に対してそれぞれ働きかけをしなければいけないと思うんですけれども、そういう対応をどうしていらっしゃるのかということ。
 それから、通報があってその子供をどうしようかというのは割合に対策を随分教えていただきましたけれども、例えば児童施設に入れた、それを今度家庭に戻すときの対策というのはすごく難しいんだろうと思うんですね。そのときにうまくいきませんと、せっかくセンターがいろいろ介入しながらもまた不幸な結果になってしまうというふうなこともあると思うんですけれども、少し具体的なもし例でもありますれば、またそこでいろいろとお考えがございますれば教えていただきたいと存じます。
#18
○参考人(萩原總一郎君) お答えいたします。
 資料の中で家族からの相談が多いということでございますが、この中には、実際に自分は子供をたたいてしまう、あるいは悩んでいるというような御相談がございまして、必ずしも家族からの相談というのは厳しい状況は余りないわけですね。むしろ、ほかからの通報、通告の方が虐待の状態というのは厳しゅうございます。それだけまだ積極的にみずから相談をしようという者が残っておりまして、これは逆に言えば大変いいことだと、そんなふうにも考えております。
 それから、実際に家族からの御相談があった場合に、具体的に言いますと、いろいろお話を聞かせていただいて、その悩みの中身を受けとめ、一緒に考えていこうというような気持ちで対応しているところでございます。中には、御相談を受けた後、実際にはさらに厳しい状況が裏に隠れておりまして、施設入所というようなことになるケースも少なくないと考えております。
 それから、施設に入ってから家庭に引き戻す、帰すということは、これは大変難しゅうございます。先ほどの資料で御説明いたしましたように、だんだん施設の方に在籍児童数がふえているということは、逆に言えば家庭引き取りがなかなか難しいということでございます。
 ただ、先生御指摘のように、どうなれば家庭へ帰れるのかということでございますが、これは虐待のおそれがなくなったときと、こうしか言いようがないんですけれども、非常に難しいのは、申し上げますと、まず親御さんの生活環境と生活態度が改善されているかどうか、ストレス要因になっているようなものが軽減されているかどうか、親子関係だとか養育態度が改善されているかどうか、地域での受け入れ等見守り体制みたいなのがあるかどうか、それから私どもの子ども家庭センターの職員との信頼関係があるかどうか、子供のトラウマの回復がなされているかどうか、これだけは必要なんですけれども、まず完璧にこれだけはありません。
 したがって、ある程度問題を抱えながらも地域に戻っていき、そこから通所指導なり、家庭訪問指導なり、地域の皆さん方の支え、見守りによって地域で子供たちが親御さんと一緒に生活していると、こういう状況になっております。
 以上でございます。
#19
○林紀子君 引き続きまして、今のことと関連してなんですけれども、児童相談所で被害児童の対処と、それから今の、家庭に引き戻すというか引き取りということで親の方の対処、その両方を一緒にするのが、これは人数の関係もあるのかもしれませんが、大変難しいというお話を児童相談所の方から直接伺ったんですけれども、子供の方は児童相談所で何とかやります、親の方はほかといいますか、適切なところでやってもらうことはできないのかというようなお話だったと思うんですが、その辺をどう考えたらいいのかということ。
 それから、今六項目、家庭で引き取るときの最低の基準みたいなものだと思うんですが、お話しくださいましたけれども、親に対して養育態度とか立ち直っていくためのプログラム、それが教育プログラムということになるのかどうかわからないんですが、そういうようなものというのはどれくらい開発をされていて、どうなっているのか、その辺について伺えたらと思います。
#20
○参考人(萩原總一郎君) お尋ねの最初の方でございますが、実は、先ほども若干御説明いたしましたように、親の対処と子供の対処、これは子供の安全を確保しようと思えば、ある意味では親権に逆らうというんですか、親の反発を招くということで、極めて後の指導が難しくなる。親の方を中心に考えますと、児童相談所は何をしているんだ、生ぬるいではないかということで、場合によったら、子供の死亡なんかがもしございましたら大変たたかれる。
 その辺のジレンマというのが、実は子供の虐待を担当している機関の宿命でございまして、平成十一年度は、私どもの方では同じ職員が子供と親の対処をしてまいりました。そして、それではやはり非常に難しいということが少しずつわかってまいりまして、十二年度に入りまして、虐待を専任で担当する主査を置いたわけでございます。そのときに、複数で対応できることと、それから初期対応の行政権限を行う者とそうでない者を分けたということで、非常にケースの運びがよくなった。
 こういう経過がございまして虐待対応課というのを設置したわけでございますが、私たちの子ども家庭センターの中でもこの権限行使と後の親御さんの対処についてはやはり分けた方がいいのではないかというような職員もおります。実際に分けた方がいいのではないかと考えながら、ではどこでやるのかということになれば、今のところはどこもないと。したがって、子ども家庭センターあるいは全国の児童相談所でしかやるところがないというような状況がございます。
 ただし、もっと医療機関とか民間のクリニック等連携をし、活用というと言葉はおかしいですけれども、連携していってそこら辺の指導なり治療なりを引き受けていただくようなシステムがこしらえられれば、それはうまくいくのではないかと、こんなふうに考えております。
 以上でございます。
#21
○田嶋陽子君 今の質問と同じことになるかと思うんですけれども、萩原さんにお伺いします。
 子供本人が訴える場合はこの四ページのところだと約〇・九%とありますけれども、子供本人が訴えて、それが、質問は二つあるんですけれども、一つは大体訴えたとおりですか、それとも違うと判断されることはどのくらいの割合であるんでしょうか、それが一つ。
 それからもう一つは、例えば、子供本人が訴えた場合、親族、家族とか近所の人とかが訴えた場合はまだましだと思うんですが、子供本人が訴えた場合、この子が施設に入ったりあるいは施設から帰ってきたり、いろんな状況でもう一度家庭に入って一緒に暮らす場合、親のいじめ方として、おれを裏切っただろうみたいなことだとか、おまえが親の恥をさらしただとか、そういういじめというのは親がまた少し気が緩んできたときに絶対あると思うんですね。この子供がまた家族と統合するというのは、子供本人が訴えた場合だけでなくても非常に難しいと思うんですね。
 親が変わるということは、よっぽど親に対する子供への人権教育が徹底していないと、これは私の感じではほぼ不可能に近いというぐらいに思っているんですが、その辺はどんなふうに考えておいででしょうか、二つ質問です。
#22
○参考人(萩原總一郎君) お答えいたします。
 まず最初の、子供本人からの訴えにつきましては年齢によって随分違うんじゃないかなというようなことも思いますけれども、私どもの基本的な態度といたしましては、子供の訴えについては全面的に子供を守るという立場で対応をしております。
 特に二つ目の本人が訴えた場合、先ほど先生の御指摘のとおり大変難しゅうございます。これは時間をかけて保護者の方に対応していく、そして子供自身の話も、訴えも十分聞いていきながら少しずつ改善していくという方法をとりますが、ほとんどの場合は施設でお預かりしながら、一たん離してその調整を行っているところでございます。
 ただ、再統合を図っていくというのは随分時間がかかりまして、例えば親御さんの虐待の認識だとか、先ほど言いました態度の変容、親子関係の改善なり、そういうものが認められない限り、家庭復帰というのは難しゅうございます。
 以上でございます。
#23
○有村治子君 今までの議論に関連した質問をさせていただきます。
 虐待を防止ではなくて再発を防止するというのは、実は清水先生からも御指摘がありましたけれどもなかなか簡単なことではないと思うんですね。やはり夫婦関係、夫婦仲よくしなさいとおつむではわかっていてもできない、きょうだい仲よくしなさいとおつむでやっていてもできない。親も一度手を上げてしまうと、自我を忘れたようにどんどん子供にストレスが行くということで、やっぱりなかなか成功しないという中で、それでも成功していらっしゃる。虐待を防止するということができたというのは、先ほど谷村参考人からお知恵をいただきましたが、例えば入院をするとか再婚するとか親戚が入るという形で、新しい人の援助で再発防止をしているということを学びました。
 そこでお伺いしたいんですけれども、数少ない、本当にうまくいった、防止ができた成功例、この成功例に学んで、私たちがそれを公の知恵として各都道府県で対策にしていくというような、その数少ない成功例から学んで公の知にしていく、知恵にしていくというような動きはあるのかどうか、そしてそれについて私たちが教えていただけるようなことがあるのかどうか、お教えいただきたいと存じます。
 以上です。
#24
○参考人(谷村雅子君) 厚生科学研究での補助金をいただきまして、成功例を集めてどのような方法がいいかということを検討しております。
 本当に治療方法が難しい、まだ世界的にも確立されておりませんで、試行錯誤の段階でおりますので、どのような方法がよかったということの知恵を集めることが今、一番大切であると思います。
#25
○渡辺孝男君 谷村参考人にお伺いしたいんですが、先ほど児童虐待の発生予防に関しては、ハイリスクの児童に対しての守秘義務、家庭のプライバシーを守りながらそういうハイリスクの児童に対していろんなチェックをするといいますか、そういう体制が大事だというお話なんですが、なかなか微妙な問題が絡んでくると思うんです。これをうまくやっていくための何か知恵といいますか、そういうものがありましたらちょっと教えていただきたいんですが。
#26
○参考人(谷村雅子君) 小さい子供のリスク因子、リスク家庭は周産期に見つけることができます、大体、保健とか医療機関で見つけるわけですけれども。それを地域につなぐ場合にはどうしてもその守秘の問題が出てくるわけです。
 それで、保健所とかこういうところに行くと相談に乗っていただけますよというような、そういう助言をすることで地域につなぐ方法が今のところは一番よろしいのではないかと考えております。つまり、育児相談先をリスク家庭に知らせるということ。
 そういうことで、できればそのときに、保健機関にもそのことを連絡していいですかというインフォームド・コンセントがとれれば一番スムーズにいくのではないかと思っております。
#27
○平田健二君 民主党・新緑風会の平田です。
 磯谷先生にお尋ねいたしたいんですが、おくれてきて申しわけありません、多分、先生の御説明でお話があったと思いますが、この資料の三ページ目の一番最後、「第三 その他の問題」というところに先生が触れられておるんですけれども、先日、この調査会でも説明がございました。昨年、平成十二年度に児童相談所に相談をしながら十一件の死亡事故が発生したという報告があったわけですけれども、この二番目にありますように、「国が中立的な調査機関を設置して、十分な調査を行い、」云々とございますが、こういった調査機関というのは全くないんでしょうか、国には。また、中立的な立場で過去の死亡例等を調査したことがないのかどうか、この点についてお尋ねをしたいということ。
 それから、この三番目の「その他の問題」というのを見ますと、どうも先生から見たら、今のこの児童相談所や児童福祉のいろんな制度ではまだまだ児童虐待はなくならないぞというふうにお考えだと思うんですが、その辺のことについてちょっと教えていただきたいと思います。
#28
○参考人(磯谷文明君) まず調査機関ですけれども、私はそういう機関の存在を承知しておりません。
 このところ厚生労働省が、児童相談所がかかわっているにもかかわらず死亡したケースを公表しておりますけれども、一体それらのケースで具体的に何が問題だったのか、どこで何ができたのかということを詳しく検証するということは少なくとも国レベルでは行われていないと思います。自治体の方で一部そういうふうな検証の動きはありますけれども、児童相談所が中心になっております。それは、ないよりはあった方がよろしいんではございますが、いかんせん中立的な機関ではないですね。やはり行政としてどうしても突っ込みが不足するところがあるかと思うんですね。
 この点、私がここで申し上げたいのは、子供が命を失ったケースをぜひ新しい制度あるいは実務の運用に生かしていただきたいということ。そして、その際にはやはりそれを調査できる権限をきちんと認めてあげないと十分な調査ができない。ですから、そういうふうなシステムをきちんとつくってあげる必要があるというふうなことです。
 それから、二つ目の御質問で、今の児童相談所や児童福祉施設ではなかなか虐待はなくならないんではないかというふうな御指摘で、もう率直に申し上げて、そのように思っております。
 これは、なかなか公式な場では出てきませんけれども、今児童相談所はもうあっぷあっぷの状態です。まじめな児童福祉司さんほどそのケースに振り回される。一つのケースでも、やはり子供と会い、親と会い、関係機関と会いというと大変な労力を費やされるわけですね。しかし、それを十分にやれるだけの人的な支援がないというのが現状であります。これはもう近くにおりますとよくわかります。
 それから、児童福祉施設も大変問題があります。
 私が以前かかわったケースで、性的な虐待を受けた子供を、裁判もやりまして、保護したということがございました。そして、やっと保護して児童養護施設に入れた、そうしたら施設の中で性的な虐待を受けてしまったというふうなケースがあります。これは職員からではありません、施設の中に入っている子供の間での問題ですけれども。要するに、目が届いていないということ。
 それから、非行性のある子供、さまざま子供にも問題のレベルがあります。そういう子供をみんなひっくるめて児童養護施設に入れている。しかも、そこの中の人口密度は大変高いものであります。そういう状況で、子供が安らいで心の傷をいやすというのは非常に困難であろうというふうに考えております。
 この点はどうしてもお金の問題を申し上げざるを得ないんですけれども、もっとこの子供の問題に十分な予算を割く必要があるんだろうと。
 若干御質問のあれを外れるかもしれませんが、この児童虐待と少年非行、犯罪とのかかわりが最近指摘をされております。法務省の法務総合研究所で、少年院に今在籍している子供たちの半分以上が児童虐待を受けてきていたというふうなデータが最近公表されております。虐待を受けてきて、そして何らケアを受けないで成長した子供が非行に陥りやすいというのは、決して日本だけではなくて諸外国でも同じような研究結果が出ております。
 ですから、そういう意味で、ぜひこの児童相談所そして児童福祉施設を予算的にも充実していただきたいというふうに思います。
#29
○参考人(萩原總一郎君) ただいまの御質問で、大阪府の取り扱いについて若干御説明しておきたいと思います。
 死亡事例等の調査につきましては、先ほど御説明しました危機介入援助チームが子供の人権にかかわるような事案につきましては調査をし、行政ないしは子ども家庭センター等の機関に関して必要な措置を講じるような助言、指導が行えるようになっております。
 また、そういう死亡事例が起こった場合には都道府県の児童福祉委員会に必ず報告するということになっておりまして、死亡事例に関しては極めて慎重に、また徹底して調査を行い、なぜ救えなかったかということにつきましてその都度議論をするようになっております。その都度、あってはいけませんが、その都度議論するようになっております。
 以上でございます。
#30
○岡崎トミ子君 ただいまの磯谷参考人のお話にありましたように、児童相談所、まじめに一生懸命やればやるほどその悩みが多いし人数が足りないというのは、どこに行ってもその話がこの間聞かれてきたというふうに思うんですね。そして、今のようなわずかな量的な拡充だけでは対応できないというのが現状で、もう限界だというふうに思うんです。
 そして、早期発見、早期対応の方針が浸透すれば浸透するほど微妙なグレーゾーンというケースへの対応がふえてくると思うので、萩原参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今回の児童虐待防止法では、虐待の行為に着目した枠組みで白黒はっきりさせるということが必要なわけで、そうすると早期発見、早期対応というのは困難となってくると思うんですね。本来はグレーゾーンで、一生懸命に調査をしなくちゃいけないわけなんですけれども、この事実関係をはっきりさせるということは、どちらかといえば家庭との信頼関係をきちんとしていくということの方が大事だと思うんです。
 この大阪府の子ども家庭センターの組織と職員数というので、ほかのところより大変充実した課が設けられていると思いますけれども、この中で、家庭との信頼関係をつくっていく児童相談所にかわるようなところは家庭支援課でしょうか、健全育成課でしょうか。そしてまた、こんなふうにしていい信頼関係がつくれているというようなことがございましたら、教えていただきたいと思います。
#31
○参考人(萩原總一郎君) お答えいたします。
 虐待対応課をつくりまして早期発見なり早期対応のための安全確認なり立入調査なり保護なりというのは、先ほど申し上げましたように極めてスムーズになっております。
 ただ、先生おっしゃるように、家庭との信頼関係をつくっていくというのが、行政権限を行使しましたら大変難しくなってまいりまして、その後の手だてというのが私どもの方でも大きな課題になっているところでございます。
 ただ、基本的には従来の信頼関係をもとにしたケースワークというものを中心に置いておりますので、その場合には御指摘のように家庭支援課、あるいは市町村におきましては家庭児童相談室というのが在宅ケースで随分かかわっていただいておりまして、あるいは子育て支援センターなり児童家庭支援センターなりで指導も行っておりまして、私どもの方で難しいという場合には市町村のさまざまな機関に御協力いただきながら援助を行っているところでございます。
 ただ、なかなか信頼関係を構築していくというのかつくっていくというのは、虐待をされる親御さんはもともと人間関係が持ちにくい、難しい方が多うございますので、随分時間がかかります。例えば半年単位あるいは一年単位というような時間がかかりまして、時間と労力は大変なものがございます。
 以上でございます。
#32
○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司と申します。おくれて参りまして、十分に御意見をお聞かせいただくことができませんで、恐縮でございました。
 多分、谷村参考人の関係になるかと思いますけれども、実は自分自身のことも含めてなんでありますが、虐待といいますか、親の方にトラウマといいますかそういうものが蓄積されていたり、重い軽いはあるにしても何かしらある、それでそれが出てくるというようなことも考えられると思うんですね。
 それで、数字等見させていただきますと、実母の方が大変にウエートが高いというようなことがあったりして、そういうことからいうと、私は自分で産んだことがないのでよくわかりませんが、例えば母親教室などのようなところで、そういうことも皆さんの中に潜在的にあるかもしれませんが、こういうことを気をつけていただくことだけでも相当違いますよというようなこともなされているのかどうか。
 それから、もしなされているとすると、そういうことに関しては専門家のような方がいらっしゃってそういうことをなさっているのか。もしないとすると、こういう場合には今後はどういう形でかそういうものを行う必要性もあるのかなという感じがいたしますけれども、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
#33
○参考人(谷村雅子君) 今の親のトラウマとおっしゃいましたのは、子供のころに虐待を受けたという意味のトラウマですか。
#34
○郡司彰君 済みません、質問がわかりにくかったのかもしれませんが、必ずしも虐待ではなくても、必ず子供の時代を経てきたわけですから、何がしかの経験が積み重なっているんだろうと思うんですね。そういうものが自分が子育てをするときに、例えば望まない妊娠だったりとか、あるいはほかの子供さんと比べて心身の何かの面で差があったりするというようなことが、そういうものも含めて出てくるような可能性があるような気がいたしまして、トラウマということでの、虐待を受けただけではなくて、自分の中に子育てに対するあるいはコンプレックスのようなものも含めて、そういう形のもので結構でございます。
#35
○参考人(谷村雅子君) 御指摘のように、そのようなことが虐待につながっていくことが多いと思います。
 現在、直接相談する方もいらっしゃいます、その場合には保健婦さんとかが一番多いと思いますけれども。それから、直接対面で相談しにくい場合には電話相談が随分利用されています。それから、お母さん同士で結構そういう気持ちを話し合う場が最近は提供されていますので、そのようなものがもっと普及していくといいと思います。
#36
○後藤博子君 私もおくれて来て、申しわけありません。
 少し具体的なことになるかと思いますが、お尋ねしたいんですけれども、児童虐待の中に占める割合の中では性的虐待が二%で、非常にパーセンテージは低いんですけれども、なかなか外傷等もないものであるし、発見がしにくい。ましてや刑事法では、ちょっとこれは間違っていたら悪いんですけれども、被害者の告訴があって初めて罪に問えるというふうなこともあるのかなと思うんですけれども、子供もなかなかそういう性的なものは自分から言いにくいとかいうこともあって、また外傷もないし見えない、いろいろな方が見てもなかなか本人が言わないと見えないという、そういう性的な虐待に対することを少しお話をお聞かせ願いたいと思います。
#37
○参考人(萩原總一郎君) お示しのように、外傷がなくて発見が大変難しいというのはそのとおりでございます。私どもの方で御相談を受けながら子供を保護した後、性的虐待があったということがわかるケースもございます。これは、一時保護をいたしましたり、施設への措置を行った場合がございますし、それから学校の先生が、子供からこういうことがあるんだというお話を聞かれまして、私どもの方に通告をされるというような場合がございます。
 ただ、これはやはりある程度年齢が大きくないと実際に自分がされた行為についてなかなか言えないこともございますし、ちゃんとお話ができないということもございまして、こういう自分がされた行為についてきちっとしゃべることができる子は発見ができるわけでございます。
 ただ、小さい子だとか自分の行為についてお話ができないような子供さんにつきましては、例えばお人形さんを使ってどんなふうにされたんだというようなことで確認をとったりはいたしておりますが、やはり家庭内で起こることでございまして、なかなか保護者の方も認めず、この性的虐待を行っているという核心部分に触れるというのは大変難しゅうございます。
 以上でございます。
#38
○小宮山洋子君 三分間で三人の方にコンパクトに伺いたいと思います。
 磯谷参考人は大変この虐待防止法見直しのためにいろいろ論点を整理していただいて、本当に参考になって、ありがとうございます。
 二点伺いたいんですが、一つは、先ほど余り時間がなくて触れられませんでしたが、その他の三番のところに全国共通ダイヤルのホットラインということがございますけれども、これは何か公設のものを言っていらっしゃるのか。今、NPOなどでチャイルドラインとかありますよね、ああいうものを有機的にネットワークしていくことの方が今の行革の時代の中いいのではないかと思うんですが、それが一つ。
 先ほどおっしゃった子供の権利についての親子関係法ということございまして、新しいのをつくるのももちろん必要だとは思うんですが、今児童福祉法の改正の中で、必ず子供の権利を盛り込む形に変えたいという議論がずっとありまして、保護の対象ではなくて権利の主体としてという、それも一つの方法ではないか。その中に虐待も項目としてあると思いますので、その二点を伺いたいと思います。
 そして、谷村参考人には、先ほども親の側に問題があるケースがふえているというお話がございましたが、この共生社会調査会でDV防止法をつくっているんですけれども、やはり親が暴力を受けているとその子供が虐待を受けるケースというのが、せんだってのWHOの日本も参加した調査の中でも明らかになっているので、そうしたケースの具体的な数字があれば伺いたいと思います。
 そして最後に、萩原参考人には、大阪府はいろいろ充実していて、この地域虐待防止のネットワークの設置も全国平均よりかなり進んでいると思うんですね、未設置が二市一町というのは。大体、市町村は今半数ぐらいしか設置されていないと思うんですが、それでもあえて最後のところに、住民に身近な市町村を主体としたネットワーク、それが機能するよう働きかける必要があるとおっしゃっているのは、まだまだ実態として不十分ということなのか、その心を伺いたいと思います。
#39
○参考人(磯谷文明君) 今の御指摘のホットラインですけれども、私が申し上げようとしたのはちょうど一一〇番や一一九番などに類するような公設のものでございます。
 といいますのは、虐待を見つけたら通報してくださいというふうに呼びかけても、自分のところを管轄する児童相談所の電話番号は一体何なのかとか、あるいはここにはどういうNPOがあるのかとか、そういったことを一から考えなければいけないのではなかなか通報はふえないだろうと思うんですね。ですから、全国共通のダイヤルで通報すれば、管轄の児童相談所に一番つながるというようなものが必要だろうというふうに思っております。
 それから二つ目の、児童福祉法に子供の権利を守るということを書く点についてですけれども、まさにおっしゃるとおりでございまして、先ほど親権法を改正するとかあるいは親子関係法を新しいものを構築するとかということもお話し申し上げましたけれども、それはある意味では理想でありまして、恐らくさまざまな問題からなかなか難しいんだろうと思うんですね。そういう中でやはり児童福祉、これが子供の権利を擁護するんだということをまず最初に打ち出して、そこからすべて構築をし直していくということもまた非常にいいことだろうというふうに思っております。
#40
○参考人(谷村雅子君) DVが背景にある虐待の統計はございませんが、かなりの割合であると思います。散見されます。
#41
○参考人(萩原總一郎君) 連絡会議等のことでございますが、実は平成六年から私ども、地域支援ということで虐待防止のネットワークづくりに取り組んでまいりました。その結果、全国的には少し早いんじゃないかと思いますが、これまでは子ども家庭センターがリードしてというのか、コーディネートしまして地域の虐待防止ネットワークづくりをしてまいりました。その結果、現在では九市が実際に市町村で事務局を持ちながらきめ細かなネットワークづくりをしております。
 当初は、ネットワーク会議という会議から始めました。大変未熟で連絡会議みたいなものでとどまっておったものが、だんだんと実際に虐待の事例について検討するというような、あるいは検討し必要な対策を立てていく、場合によっては役割分担をし自分のところがきちっとできることをしていくというような、援助していくというような、そういうシステムが少しずつでき上がっております。
 まだ一部におきましては連絡会議だけのレベルでとどまっている市町村がございまして、またあるいは地域の健全育成の会議と一緒になって虐待防止のネットワーク会議を一緒にやっているというところもございまして、まだ独立した地域の虐待防止ネットワークづくりというようなものが一部の市町村ではでき上がっておりません。
 そうした意味で、今後はもっと身近なところできめ細かなネットワークづくりをすることが、実は早期発見にも予防にも、要するにセーフティーネットワークと言われる見守りにも効果が発揮できるようになるんではないか。そういうことができ上がらないと、親の養育態度の改善だとかそんなことを言っても、実際には退所後三カ月ぐらいが非常にリスクの高い期間と言われておりまして、きちっとした見守りができるような体制づくりを今後していかないと家庭復帰は難しいと、こんなふうに考えております。
#42
○田嶋陽子君 三人の方に、私も小宮山議員にならいましてコンパクトにお尋ねいたします。
 まず、萩原さんにお伺いします。これは基本的なことで、ちょっと知らないことなのでお伺いします。
 夕刻後の試し・甘え行動というのは具体的にどういうことで、どういうことにつながっていくんでしょうか。それからもう一つ、日本では余り聞きませんが、虐待をする親の集団カウンセリングみたいなものは試みられているんでしょうか。これは大変効果があるので、どうかなとお伺いいたします。
 それから、谷村さんにお伺いいたします。
 例えば、ここの三ページの資料を見ますと、虐待者の供述で、しつけが二〇%、子どもを愛せないというのが五一%ですね。すると、世間で言われている母性というものとは、全く虐待と母性の有無とかそういうことはもう関係がないというか、母性そのものが幻想なんじゃないかと思わせられるわけですけれども、谷村さんはそのことに関しては臨床の場でどんなふうに感じていらっしゃるのか。また、御自身はいわゆる母性と言われているものをどんなふうに考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
 それから、谷村さんに対してもう一つの質問ですが、虐待をする母親のうち、パート労働についている人、それからフルタイムについている人、それからいわゆる無職の人、専業主婦ですか、その人たちの割合は数として出ているんでしょうか。ほかの二人の方ももし出ていたら教えてください。
 それから、磯谷さんにお伺いします。
 私は、磯谷さんのおっしゃった親権喪失宣告の申し立て者に子供とか弁護士会長ということは大賛成で、私もそういう考えを持っています。それから、懲戒権の規定を全廃せよという、これも私も同じ考えを持っています。
 きょう新しかったのは、親子関係法をつくるべきというのはこれは本当に新鮮で、私も本当にそれができたらいいなと思うんですが、それをつくるに当たってか、あるいはこれまでの民法の中でか、そこをどうしたらいいのかわかりませんが、性的虐待をした親の場合は子供をいつも親から隔離して施設に入れるんですが、親の男の方を家から出すという、そういう法律は日本であるんですか。それとも、磯谷さんは考えていらっしゃいますでしょうか。そこが大事なように私は思います。
 お願いします。
#43
○参考人(萩原總一郎君) お答えいたします。
 一時保護だけではなくて、施設もそうなんですが、親子分離を図りますと、実際には退行現象みたいなものを起こしまして赤ちゃん返りをしているような行動が出てきます。それから、虐待を再現するような、自分をどれだけ愛してくれているのか、あるいは構ってくれているのかという試し的な行動というのがどんどん出てきまして、それに対応するというのが非常に大変な状況でございます。
 こうした甘え・試しの行動が一方であり、一方では非行の子供が一緒に一時保護所におりますと、一時保護所の中で、虐待を受けた子供が実は非行の子供からいじめの対象になってしまうというようなことがございまして、これを守っていくということが大変重要でございます。虐待を受けて一時保護をして、あるいは施設に行って、そこでまたいじめなり施設の職員から虐待を受けるなどということになれば、安定した生活を必要とする子供たちにとっては非常に問題がある、こんなふうに考えております。
 それから、集団カウンセリングでございますが、実際、児童福祉指導をするときに、個別的な指導、それからグループ指導、あるいは家庭訪問というような形態をとりまして親御さんの指導を行っているところでございます。
 ただ、先生御指摘のように、グループ指導につきましてはまだまだこれからの課題でございます。実際には、大阪府の子ども家庭センターの一子ども家庭センターと保健所で今一緒になって親のグループカウンセリングを進めている。それはモデル的に進めているということでございまして、ただ、これは育児不安の高いお母さん方の集団でございます。
 そのほかに、例えば、難しいんですけれども、身体的な虐待を繰り返す親御さんだとかネグレクトの親御さんだとか、さまざまなそういうグループがもしできれば、大変治療につながっていっていいんじゃないかと思います。
 ただ、そうした親御さんの治療に関する指導を行っている職員、これはかなり専門性が高く要ると思います。そういう意味では、精神科のお医者さんが中心になって心理職あるいは福祉職が援助する、カバーしていくというようなチーム対応が必要になってこようかと考えます。
 以上です。
#44
○参考人(谷村雅子君) 母性とか、あるいは父親から見てもそうですけれども、子供を慈しむ気持ちというのは子供とつき合っていく中で育っていくものであると思います。私たちがあやしても何も反応してくれない、子供が反応してくれませんとちょっとがっかりしますが、あやしたときに反応してくれるととてもうれしく、そしてそのようにしてだんだんに親子関係ができていくものだと思います。
 子供を愛せないという供述が非常に多いんですけれども、最初のうちは一生懸命やっていたんだけれども、うまくいかない、思うようにいかない、疲れてしまった、そしてノイローゼになってしまったという例がかなりございます。そこで、適切な助言や援助が効果的であると思います。
 それから、母親のパート、フルタイム、これは統計はとっておりません。
#45
○参考人(磯谷文明君) まず、性的虐待のときにそれをやった父親の方をむしろ出すべきだというのはまさに正論だと思います。そういう接近を禁止することについては、現行の民事保全法の中の仮処分の可能性は一応ありますけれども、しかし、きちんとした制度というものはやはりありません。今、先生がおっしゃったように非常に重要で、設けていく必要があるだろうと思います。
 それから、この性的虐待ですけれども、意外と母親の方が、子供から打ち明けられて、それを否定するというふうなことが少なくありません。そんなばかなことを言うんじゃないとか、そんなはずはないというふうな形で否定をする。そうすると、本当に子供は次に救いの手を求めることが難しくなります。
 母親の方が今度、それで危機感を持って何らかをしようとする場合には、この性的虐待の立証という壁にぶつかることになります。特に離婚の裁判等の場合にこの立証は非常に難しい。
 何が難しいかといいますと、まず一つは後に残りにくいということ、それから子供自身が否定をしやすいということです。この子供が否定をするのも幾つかパターンがありまして、やはり子供にとっても恥ずかしいこと、言いたくないことということがございます。それから、父親が子供に口どめをしているということもあります。それから三つ目は、父親の方が否定をするということです。
 こういうふうな大変難しい壁にぶち当たるわけですけれども、その中で、アメリカに以前視察に行きましたときに、フォーレンジックインタビューという方法を見たことがあります。これは心理の専門家の方が子供からインタビューをする、これが大変洗練されておりまして、また研究をされておりまして、そこで子供がその性的虐待の話をしていく。そして、後から、父親からそれはファンタジーであるとかそれはうそだというふうな弁解に対しても、きちんと対応ができるようにしています。もちろん、これが完成された制度かどうか私存じておりませんけれども、少なくともそういう試みが行われているということを実際に見ております。
#46
○渡辺孝男君 磯谷参考人と谷村参考人にお伺いしたいんですが、磯谷参考人からの前の資料で、病院が一時保護委託を受けたような場合、親が引き取りに来た場合にいろいろトラブルが起こる可能性があるというようなこともありました。また、医療チーム側も恐らくいろいろな意味でかなりの労力を要しながら治療に当たると思うんですね。そういう場合に、最近はそういうトラブルがうまく整理されて少なくなってきたのかどうか、磯谷参考人にお聞きしたいんです。
 それから、谷村参考人には、そういう場合の病院側の負担に対してどのような費用の支援、労力に対する報酬といいますか、支援というものが実際上あるのかどうか。小児科チーム、なかなかなり手がなくなって、大変苦労ばかりが多くて困っているということも聞いておりますので、そういう面での報酬というのは評価されているのかどうか、お伺いしたいと思います。
#47
○参考人(磯谷文明君) 病院に対する引き取り要求で最近どの程度解決されているのかというのは私もよくわかりませんが、しかし、児童相談所が病院に子供がいるまま一時保護委託というふうな枠組みで措置をする、そうしますと、病院は児童相談所からお預かりしているんだ、だから帰せないんだというふうなことを言えるということがあります。
 ですから、児童相談所の方で速やかに一時保護委託をしていただくと、病院は少なくとも法的なレベルではある程度対応ができるだろうと思います。ただ、今度それ以上の事実行為になってまいりますと、まだまだ病院の御苦労は多いだろうというふうに思います。
#48
○参考人(谷村雅子君) 医療機関では子供の治療とそれから判断だけですので、その後のことにつきましてはいろいろな機関に相談しなくてはなりません。その後、連絡をとるにつきましても、また集まって相談する時間につきましてもボランティアです。
#49
○渡辺孝男君 いろいろ子供さんに対するそういう心のケアみたいなものをすることになると思うんです。また、親が来たときにやっぱり分離しなきゃならないとか、そういう苦労があると思うんですが、そういうものは、そういうカウンセリングみたいなもので評価はされるシステムになっておりますでしょうか。
#50
○参考人(谷村雅子君) 子供へのカウンセリングは、親がもともと連れてきたものですので大抵の場合はできますけれども、親に対するカウンセリングは、親は何でもないと主張しているわけですから、できません。そこがネックになっております。
 それから、通告したことで個人的にいろいろ後でトラブルになることが結構ございます。それからもう一つは、マスコミで発表されるときに、医療機関から連絡があったというふうに報道されることがあると思うんですけれども、そうしますと、結局、通告したことは守りますというふうに書いてありますけれども、医療機関からの通告があったというのがわかってしまうわけですね。だから、その辺も報道の際には気をつけるようにしていただきたいと思っております。
#51
○清水嘉与子君 この法律ができましてから一年たちまして、急に児童虐待の数がふえたんじゃないかというような感じがいたしますけれども、これはやはり行政機関がこうした法律ができますことによっていろいろ手を打ったことによって顕在化してきたんだというふうに思うわけです。そのために、やはり実態を知るということがまず大切なことで、谷村参考人がこうした調査をしてくださったこと、大変よかったんじゃないかというふうに思うわけです。
 私も、たしか新聞だと思いますけれども、六、七割の子供たちが、多胎だとか低出生体重だとか先天性異常、こういったものが非常に原因になっているんだというようなことを読みまして、そうなのかというふうに思ったことを思い出しまして、そういう意味ではもう少しこの児童虐待の実態がよく知られる方が必要だと思うんです。
 たまたまこの谷村参考人がなさいました調査を拝見いたしますと、たくさんの調査をされているわけですけれども、この中で、私は、一番こういうことに直接かかわっております児童福祉施設の職員だとか医師とか保健婦とか弁護士だとか、そういう方々が非常に関心を持ってくださって、やっぱりこういう問題を、実態を知らせてくださるのがいいと思っているんです。
 この調査結果を見ましても、一番回答率の悪いのが弁護士さんですね、五%しかないというようなことがあって、それから、あと医療機関ですよね、医師、直接かかわる。この質問書がどんなのか私もわかりませんけれども、しかしこれを見ますと、何かちょっと意外な気がしてならないんです。
 そこで、磯谷参考人と谷村参考人に、やはり弁護士さんたちもお医者さんたちももっとこういうことに対してオープンに、いろんな情報を出してくださる方がいいんじゃないかと思うんですけれども、組織の中ではどんなふうにこういうことを扱っていらっしゃるのか、その辺をちょっと教えていただけたらと思います。変な質問ですけれども。
#52
○参考人(磯谷文明君) この弁護士の回答率の悪さは、もうただただ恥じ入るばかりでございます。正直に申し上げて、弁護士の中でも児童虐待の問題に関心がある人はかなり少ないというのが本当のところです。多くはこんなことがあるということもよく知らない。
 しかし、弁護士会の方ではこの虐待問題については、例えばいろんな単位のブロック会で研修やあるいはシンポジウムなどを行ったり、私自身も弁護士会の研修の中で講義をしておりますけれども、そんな形で周知を図っておるところであります。
#53
○参考人(谷村雅子君) 医療機関への啓発は重要ですので、この調査を行うときにも主な診療科の学会の代表の方に入っていただきまして、そうすることによって、その学会でも虐待の問題を取り上げていただくということを期待してそのようにいたしまして、実際にいろいろな学会、医学会で取り上げられておりますので、だんだんに周知されるようになると思います。
#54
○小泉顕雄君 ありがとうございます。
 私自身も、大変身近に虐待を受けた子供の実態を知っております。例えば食事を、全くということはないですが、与えないとか、あるいは衣類も十分に与えない、何よりも家族の中に入れないというようなことで、大変小さい時分から虐待された事実を知っているんですけれども、結局、その子供は成長するに従って小学校で問題行動を起こすようになりまして、学級崩壊の原因をつくるような行動にも走りましたし、最終的には刑事事件を起こして今も少年院に入っているという状況なんです。
 その子供が成長するに従ってそういうふうに変わっていくであろうということを地域にしても学校にしても十分予測をしていて、そしていろいろな働きかけをしたわけですけれども、しかし、他人が家庭の中に入っていくことの限界を感じて、皆がどうしてもあと一歩踏み込むことができなかった。そして、このままでは大変なことになるだろうということを予測して、そして結局そういうことになって、最後には地域の無力感といいますか、そういうようなものだけが残ったわけです。大変悲しいことだと思うんですけれども。
 要するに、こういうことが未然に防げるようにするために昨年法律ができたわけですけれども、その子供は法律ができるまでにそういう結果になったわけですが、法律ができることによってこういう不幸が少しでも未然に防げるような可能性というものはどのようにお考えなのか。
 それから、大阪府の方ではいろいろお考えをいただきまして、虐待防止ネットワークを構築するんだというお話なわけですけれども、実際に地域にしても学校にしても、今申し上げました子供をめぐりましていろいろなところに相談もかけたわけです。しかし、公的機関にいろいろ御相談をしてもなかなか十分な反応をいただけないままに事態は悪くなるばかりであったということを反省したときに、もう少し何というか、次元の低いところで親身に相談をしていただけるような組織づくりといいますか、地域づくりというようなことが私はあるべきだというふうに思っています。いわゆる駆け込み寺的なものが必要じゃないかと思うんです。
 子供は自分で、自分がこういう虐待に遭っているという事実を訴えていくということはなかなかしにくいという話は聞くわけですけれども、しかし、そういう子供たちが飛び込んでいけるような場所をつくってやる。あるいは、自分が虐待を受けたときにはこういう解決の手段があるんだ、こういう場所があるんだというようなことを積極的に誘導してやるようなネットワークづくりというものがむしろ必要なわけで、行政のかなり高いレベルでの話じゃなしに、もう少し虐待を受けておる子供たち、あるいはその家庭がもっと親しく話をできるような仕組みづくりをすべきだというふうに私は思っているわけです。
 そういう具体的な、もう少しレベルを下げていただいた仕組みづくりについての何かアイデアを持っておられるか。さらには、そういうような取り組みをしておられるところが既にあるのかどうか。
 以上のことにつきまして、萩原参考人の方から御意見をいただきたいと思います。
#55
○参考人(萩原總一郎君) お答えいたします。
 今の御指摘のように、身近なところで気楽に相談ができるような仕組みをつくりたいということで、地域の虐待防止のネットワークづくりを進めてきたわけでございます。
 ただ、確かに敷居が高いとかいろいろございます。電話で相談するのがやはり一番手っ取り早いし、顔が見えないところで相談できるということがございまして、先ほど資料七で御説明しましたのは、子供からの電話相談ということで設定しております。もちろん、親御さんも御相談をこの電話にされます。実は、子供からの相談というのがもう半数以上ございます。
 もう一点、私たちの方で相談の敷居が高いということになれば、民間の児童虐待防止協会というのがございまして、虐待ホットラインというのもつくっております。民間のところに電話相談をしていただくようになっているわけですけれども、その中で、どこどこの機関がこの相談について対処した方がいいという判断をその虐待防止協会のホットラインの方でしていただきまして、今度は公的な機関につないでいく、それをまた地域のさまざまなきめ細かな民間団体につないでいくというようなことで、大阪府では公私が協力してというんですか、公民が協力して対応に当たっている、そんなふうな状況でございます。
 ただ、先生おっしゃるように、もっともっと身近なところで支えていくというようなシステムづくりがこれから必要でないかと考えております。
 以上でございます。
#56
○大仁田厚君 参考人の方々、どうも、きょうは。
 私なりにちょっと考えてみたんですが、私、プロレスもやっていまして、プロレスにもルールが、目は突いちゃいけない、首は絞めちゃいけないというルールが一応あるんです。
 これはいろんなケースがあると思うんですが、あるテレビで、アメリカのベビーシッターが虐待をしているということで隠しカメラを置いておいて、そういった映像が流れてきたときに、ああ、こういったこともあり得るんだなと。託児所とか、そういったところでのいじめというのもあるじゃないですか。
 それで、一つ考えたのが、やっぱり親子、他人から虐待を受けるよりか親から虐待を受ける方が僕は精神的に子供というのはダメージが大きいと思うんです。
 考えてもらいたいんですが、ある種、子供を産むこと自体がファッション化してしまった現代、ある部分僕はファッション化だと思うんですよ。それと、非常に難しいのが親とのコミュニケーション、親との関係。子供は産んだときにどうやるんだということを親は必然的に、自然に、流れ的に教えてきたわけです。それが、親と子の関係が断裂した時代によって、コミュニケーションがなくなったことによって、そういったことが自然に伝わらなくなったわけです。
 子供を産むわけですね、彼と結婚して。それで、実態、子供ができるわけです。だけれども、子供を育てるときにどうしていいかわからない、思っていたより手がかかる、結婚したわ、だけれども、自分の時間は持ちたい、遊びたいということになるわけじゃないですか。そうでしょう、先生方。それで、自分の時間は欲しいということがぼんぼんたまって、いらいらがたまるわけですね、それによってやっぱりつい手を出してしまう。
 先ほどプロレスを例にとりましたけれども、ほら、そうじゃないですか。プロレスもそうですけれども、暴力だと見る人もいる。だけれども、それはルールのもとに、人間的ルールのもとにしつけなのかという、非常に違う部分があると思うんですよ。しつけならば他人がそれを指摘することはなかなか難しいものであっても、じゃ暴力ならばそれはだれかが、だれか調査機関ないしがやっぱり僕はしなきゃいけないと思うんです、何らかの処置を。
 そこで、一つ質問なんですけれども、僕は、ある種の刑罰を、きちんとした刑罰を立てなければこの児童虐待というのは減少していかないような気がするんですが、参考人の方、ちょっとお聞きしたいんですけれども、僕はきちんとした刑罰を科さなければ減少しないと思うんです。
#57
○参考人(谷村雅子君) 法的な意味での刑罰のことは私は専門外でわかりませんが、確かに虐待、このように毎日報道されますと、みんなやっていますよねと言う親が出てくるんです。みんなやっているから許されるんだということを言う親が確かにいますので、いけないんだということを広める必要はあると思います。
#58
○大仁田厚君 いじめというのがあるんですけれども、暴力というのは、自然の範囲内の中で人間対人間が培ってきてこう殴ったらこうなるというものが従来あったわけです。そうですよね、磯谷先生。こう殴ったらこうなるというのがあって、暴力でもそうですけれども、親も子に伝授したように、けんかの仕方というのが伝授されていたんです。
 だけれども、今まさに何も振るったらだめだというのを規制してしまうと非常に難しい。しつけ自体が腐敗してしまう部分があるんです。非常に難しい接点なんですけれども、これ、僕の言いたいのはわかっていただけるかな、わかっていただけますかね。
#59
○会長(小野清子君) 大仁田厚君、どなたに質問を。
#60
○大仁田厚君 いや、どなたでも僕は構わないんですけれども、わかる人に答えていただければ。
#61
○参考人(谷村雅子君) しつけと虐待につきましては、アメリカのナショナル・センター・オブ・チャイルド・アビューズ・アンド・ネグレクトから出ていますベーシックマニュアルの中に、医療を必要とするようなけがを負わせるようなものはしつけの範囲を超えているというふうに明記されております。日本でも大体この目安が使われているのではないかと思います。一般には虐待としつけの違いは広まっておりませんが。
#62
○吉川春子君 ちょっと関連して。
 先ほどの懲戒権を廃止するということとも絡むんですけれども、我が子であろうとも、暴力を振るい、傷害を与えということは暴行罪なり傷害罪になると刑法で定めているのですが、それがしつけということを口実にしてやられているし、民法上、懲戒権があるものだからそれがなかなか刑法的な処理に行かないでいるという現実があると思うんです。
 それで、さっき弁護士の参考人がおっしゃられたような問題があると思うんです。先ほど家庭との信頼関係が非常に必要なんだ、だから余り通告もできないというようなこととも関係あると思うんですが、私、磯谷参考人にお伺いします。
 調査室から事前に配っていただいた先生の論文によりますと、「虐待をする親に対して刑事責任を問うことについては、特に医療関係者から否定的な声が聴かれる。」と、「むしろ治療的なアプローチが必要であるというのが理由である。」と。「他人の子どもにすると処罰される行為を、自分の子どもにしても処罰されないという事態は、法秩序として到底容認できない」と述べられておりまして、私も今のこととの関係でそのことは同感なんです。
 なぜ医療関係者からこういう意見が出てくるのかと私が推測すれば、恐らくここは、我が子は自分の延長、附属物というような考えがまだ残っているから、だから犯罪行為に類するようなことも容認されるのではないかと私は考えるんですが、こういうものをなくすためには、子供を一個の存在として人権を尊重するという立場からやっぱりとらえなきゃならないし、そういうことが出てくるとすれば、医療関係者の方にもそういうさっきおっしゃった子供の人権ですね、子どもの権利条約の立場をもっともっとわかっていただく必要があるんじゃないかと。
 その点、さっきの先生の質問と関連してお伺いいたします。
#63
○参考人(磯谷文明君) 今の、虐待に対して処罰的なアプローチをするのか、あるいは治療的なアプローチをするのかというところで、医療関係者皆さんと言うつもりはありませんけれども、医療関係者の方と私ども法律家とある程度ニュアンスが違うところがあります。
 ただ、今、先生がおっしゃったように、親だから何をしてもいいという理解では必ずしもなくて、むしろ今の刑罰を与えるというのが根本的に児童虐待の解決につながるのかどうかというところで、恐らく医療関係者の方は非常に否定的な考えを持っているんだと思うんです。
 といいますのは、児童虐待は病理である、家族病理であるという言い方があります。親自身が子供のころ虐待やあるいは不適切な養育を受けてきている、そしていざ自分が子供を育てるところでどういうふうにしていいのかわからない。あるいは、そういう殺伐とした親子関係しか経験していない、こういうふうな中で児童虐待が起こるとすれば、それを解決するのは親を刑務所に入れるのではなくて、むしろケアが必要なんではないか、こういうふうな理解だと思うんですね。
 ただ、しかし、そうは言いましても一方でまさに今、先生おっしゃっていただいたように、他人の子供にしたら処罰されるものを、自分の子供にしたらケアを受けるだけなのかというふうな根本的な問題がございます。ですから、ここのところは私はどちらかが正しい答えだというよりも、治療と刑罰、処罰というものをいかに融合させていくのかというところがむしろ重要なのだろうというふうに思っております。今の刑務所では、虐待をした親が将来虐待をしなくなるということにはなかなかつながらないだろうというふうに認識しております。
#64
○林紀子君 今のことについて私もお聞きしようと思っていたんですけれども、処罰の中で治療的アプローチということは児童虐待だけではなくて、この共生社会調査会の前段でDV法をみんなで検討したときにも、やはり加害夫に対して治療的アプローチをするような処罰が必要ではないかという意見が出たんですけれども、それはそういう法体系というのが日本の中にはないということで、それを刑罰の中に織り込むのは無理だという話になってしまいまして、DV法ではそれが実っていないわけなんです。
 ですから、今のお話を一歩進めてといいますか、ただ刑務所に入れるという刑罰だけでは解決しないような問題というのは、今いろいろなところで出ているんじゃないかと思うんですね。これは先生の御専門かもしれませんけれども、少年事件では触法の精神病者ですか、そういうことをどうするかというのも非常に今社会的な問題になっていると思うわけですね。
 ですから、具体的にはどうしたらいいというのはなかなかこれから難しいかと思うんですけれども、刑事罰というか、罰則の中にそういう体系をもっと組み込んでいく必要がいろいろな部分であるんじゃないかと、そのことが今求められているときなんじゃないかという気がするんですが、その辺についてはどうお考えになりますでしょうか。
#65
○参考人(磯谷文明君) 今おっしゃっていただいたのと私も全く同感でございまして、しかし、今の刑罰の体系の中でそういった治療的なかかわりが不可能であるというような理由は私はちょっとよくわからないです。それは、そういうことが有効であり、必要であるとすれば変えていくことに何ら問題はないだろうというふうに思っています。
 しかし、恐らく大きくこれまでの考え方を変えていくことにはなるでしょうから、十分な議論が必要ではあろうと思いますけれども、もちろん不可能なことだとは思っておりません。
#66
○山下英利君 自由民主党の山下でございます。きょうは三名の参考人の皆さん、本当にお忙しいところありがとうございます。
 御説明を伺って、そして各先生方の質問を伺っていて私、ファクトとしてお聞きしたい部分というのがありまして、これは主に谷村先生にお伺いをしたいんですが、谷村先生の資料の中で、先ほど小宮山委員の方からちょっとお話ありましたように、弁護士さんの回答とそれから医療関係の回答、全般的に低いという数字がここに並んでおります。先ほど谷村参考人の方から、要するに守秘義務ですか、やはりマスコミ等の報道が出た場合のそういった患者さん、あるいはいわゆる依頼人というか、相談を受けた方に対する守秘義務というのをやっぱり全面にとらえられると思うんです。
 言ってみれば、谷村先生の御報告によれば乳幼児、小学生でもって八〇%以上の数字が出ていると、それで、そのうちの虐待者が実に八六%が親であると。そういう事情にかんがみたら、そこのところをどうやって問題解決に向けて割って入らなきゃいけないのか、あるいはこれは家庭のことであるから割って入れないのか、そういったところで私も非常に悩ましいなと思っている部分なんです。
 きょう、今ちょっとお聞きをしたいのは、この数字で出ている、例えば回答率が弁護士さん五・五%というのは、これは先ほど磯谷参考人の方からお話ありましたように、興味がないということじゃなくて、そういった法的な規制によって縛られているということであるのか、あるいは回答率は低いけれども、実際に児童相談所なりにきちんと相談が行っているのかどうか。この谷村参考人の資料を拝見しますと、児童相談所への事例は全体の三七%です。ということになると、お医者さん、医療関係の方あるいは弁護士さんが実際に事前予知ということで、予防の観点からどれだけの行動をされているのか、その辺が見えないんですよ。そういったところをちょっと両参考人からお聞かせいただきたい。
 それで、今度、萩原参考人からは、医療関係あるいは弁護士さんの方の対応というのがどうあったらいいのか、ちょっと御意見を聞かせていただければなと思うんです。
#67
○参考人(谷村雅子君) 弁護士さんの方についてお答えさせていただきたいと思います、弁護士さんからのお返事は私の方がいただいておりますので。
 それで、回答から読み取れることは、弁護士は虐待に関しては親権問題のときに初めてかかわるもので、予防や早期発見には無関係と思っていらっしゃる方が多いようなんですね。私どもが調査を企画しました段階では、弁護士さんは家庭のいろんな離婚や何かの問題にも立ち会っていらっしゃるので、早期発見される立場でもあると思って調査させていただいたんですけれども、そういう早期発見に関する自覚は余り持っていらっしゃらないということをこの結果は示していると思います。
#68
○参考人(磯谷文明君) そもそも、弁護士の中でこういった家事事件をやる人というのがまずどれぐらいいるのかという問題がございます。それから、例えば離婚裁判等の中で、どうも自分の依頼者の方が虐待をしているかもしれないと思った場合に、弁護士としてどういう行動をとるべきなのか、ここは実は大変難しい問題があります。私が理解している限りですけれども、アメリカでも弁護士はそういう場合に通告義務は負っていないと思います。やはり、それは弁護士の仕事としての特殊性なんだろうと理解しています。
 そういうことで、幾つか弁解はさせていただきましたが、しかしやはり弁護士会の中できちんと対応をするということは非常に重要なことです。現状は、一部の弁護士が大変精力的に活動しているというのが現状でございます。先ほど萩原参考人の資料でも、大阪で三十人の弁護士が登録をして児童相談所と御協力をしているというふうなお話がございました。東京でも類似の制度がありまして、複数の弁護士が登録をしております。そういった形で一部の弁護士が大変頑張っておりますが、しかし、それがなかなか広がっていかない現状にある。
 その理由の一つは、そもそも児童虐待の問題にかかわっていて収入がどのぐらい得られるのかというふうな現実的な問題もあります。ボランティアとしてかかわるのはいいけれども、しかし、これが仕事としてやっていけるのかどうか。このあたりは議員の先生方からは何を勝手なというふうにおしかりを受けるかもしれませんが、しかし、弁護士としては日々これで、こういった事件で生計を立てておりますので、やはりそれが仕事として結びついてくるのかというのは大変重要なことでございます。
 私としては、行く行くは弁護士が、この児童虐待問題でお金をもうけるということはあり得ませんが、しかし、これをやっていてもちゃんと食べていける、事務所維持ができるような仕組みになればなというふうに思っております。
#69
○参考人(萩原總一郎君) お答えします。
 お医者さんの方ですけれども、医療から見たら小児科と精神科が子供の虐待にこれまでもかかわってきていただいておりまして、当然その辺の報告例の数字もやはり上がってくるんじゃないかと思います。
 ただ、あとのさまざまな会につきましてはまだまだ児童虐待の御認識がひょっとしたら十分でなかったり、あるいは御認識があっても余り積極的に相談を受けるなり通告するというような格好での取り上げ方がなかなかなされないのかなというようなことも思っております。
 一部お医者さんには、小児科のお医者さんは、本当は児童虐待にかかわりたくないんだと、大変なんだというような気持ちを正直におっしゃっていただいた人もおりますし、整形外科のお医者さんでは、骨ばっかり診て人間を見ていなくて虐待を見逃してしまうとか、さまざまな御意見がございまして、医療関係のところではもっともっと関心を持って虐待のことを見ていってほしいなという気がいたします。
 それから、弁護士さんにつきましては、実際にこれは民間の防止協会などで相談を受けていらっしゃる弁護士さんではないかなとは思っているんですけれども、例えば大阪弁護士会に入っている方なんかは非常に相談を受けていただいていまして、こんな数ではないわけですね、私どもだけで。
 だから、そういう意味で私は、弁護士さんにつきましては大変御協力いただいて、これからもよろしくお願いしますと、こんなふうに申し上げたいなと思います。
 以上でございます。
#70
○岡崎トミ子君 三人の方にお伺いしたいと思いましたが、萩原さんが今少し触れてくださいましたので、磯谷さんと谷村さんにお伺いしたいんです。
 通告に関してなんですが、被害児童を発見した者すべての人が通告するというその義務を持っているんですが、これは専門家だけについて言いますと、例えば小児科のお医者さんが本当にささいな被害のところで発見して、そしてそれを通告すればよかった、けれども残念ながらそれが大変深刻な被害になってしまって、前に何らかの介入をするということは実は本来は期待されていたのにそれができなかったという、そういうことを、つまり見過ごしてしまったことが実際には非常に多くあるということですよね。
 そして、磯谷さんが書かれた文章でも、ある調査によれば、虐待に気づいた病院が通告するのは四割程度だと、通告にちゅうちょする理由としては、自信を持って虐待の診断ができないこと。これは、通告段階では確定診断は不要であることを前提に、医療の側で虐待の診断基準を設けて徹底する必要があろうと。もう一つは、通告によって親から抗議を受けるおそれがある。後者に関しては、万一通告を知られた場合であっても、通告者を児童相談所は明らかにしないということになっているんだということなんです。
 お医者さんが通告しなかった、学校医が通告しなかった、カウンセラーが通告しなかったというのは、子供の権利の擁護ということで権利を侵害してしまったという点からいえば、私は罰則規定を論議することは必要ではないかなというふうに思うんですね。何か十分それができなかったということで見過ごしてはならないので、そのことがきちんと研修を受ける義務化、専門家が研修を受ける義務、これを義務づけることもこの罰則規定を設ける前段としては大変必要なのではないかなと思います。
 お医者さんの立場からと弁護士さんの立場から、この辺現場サイドの論議をもっとしっかりと行っていって、次の法改正まで、持っていけるかどうかは、まだ早いのかどうかわかりませんけれども、それを始めるべきではないかなというふうに思うんですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
#71
○参考人(磯谷文明君) その一定の人たちについて、故意に通告を怠った場合に罰則を科すというふうな議論は、この児童虐待防止法制定の中でも恐らく議論はされたんだろうと思うんですね。
 これは、アメリカではそういうふうな制度をとっておりますけれども、私ども弁護士会の方で以前お医者様方に調査させていただいたところ、回答のあった中ですけれども、四割程度は罰則はやむを得ないというふうにお答えいただいたんですね。これはむしろ大変驚きました。やはりお医者さん方も罰則があると、自分はこれは通告しないと罰則を受けるんだということで、親に対してきちんとエクスキューズ、弁解ができるというふうなこととか、それからやはり子供を救うためにはこのぐらいはしようがないんだというふうな御意見がありました。
 私、今回のレジュメの方には盛り込みませんでしたけれども、行く行くはやはりこういうふうな罰則の導入というのも必要だろうというふうに思っております。ただ、恐らくいろいろな利害関係等あるようですので、急いでそれをというふうにはここでは申し上げませんでしたけれども、必要なことであろうというふうには思っております。
#72
○参考人(谷村雅子君) 医師の自覚という意味では、怠った場合に罰を与えるということは大変効果があると思いますけれども、現在、どんなに虐待している親でも、ほとんどの親はなぜか医療機関に子供を連れていきます。それが、医療機関がすぐ通告してしまうということになると、それでも連れていってくれるだろうかというのが少し心配です。虐待に気づいたそぶりを見せますと病院に来なくなってしまう例が結構ございます。
 ですから、医師の罰則規定につきましては広く議論する必要があると思います。
#73
○岡崎トミ子君 ありがとうございます。
#74
○田嶋陽子君 大分県の井上小児科の院長先生によると、いろんな症状があって、繰り返し殴られたりほうり投げられていることで生後七カ月で白内障になったりとか、火ばしを耳に突っ込まれて聴力障害になったとか、平手でたたかれて耳の鼓膜が破れたとか、繰り返しの骨折で足がもう変形してしまった子供とか、それからおふろに沈められて何か知的障害になったとか、そういう例がいっぱいあるんです。虐待によって死亡する子供もいるんですけれども、一方で死ななくても障害を負う子供たちもふえているわけですよね。
 先生方、特に谷村先生は、現場の手ごたえとして、二つ質問があるんですけれども、そのことに関してどのように感じていらっしゃるのか。それからもう一つは、厚生労働省に問い合わせても虐待を受けた後遺症として障害を負った子供の人数とか障害種別の数は出ていないんですね、まだ。ですから、虐待によって障害を負った子供たちは、障害者施設と児童虐待の後遺症へのケアというんですか、それとのはざまにいるような、そういう状況も一つあると思うんですけれども、虐待によって障害を負った子供に対するケアを充実するにはどうしたらいいのか、どんなふうにお考えでしょうか。
 もし、お三人の考え方、時間があって聞ければ一番いいんですけれども、とりあえず谷村先生からお願いいたします。
#75
○参考人(谷村雅子君) 御指摘のように、ひどい例はかなりあります。後遺症が残る例はちょっと今統計を持っておりませんが、死亡のほかに二割ぐらいあったと思います。それで、おっしゃいましたように、障害者施設に入ることが多うございます。障害児施設に入る子供が多いです。
 それから、それを防ぐ方法はもうとにかく早期発見、早期対応であると思います。
#76
○参考人(萩原總一郎君) 私の方でも、死に至らなかったけれども辛うじて助かった、しかし重い障害を残してしまったという例は何例かございます。中には、いわゆる重症心身障害児施設という、知的にも身体的にももう重度の状態で、寝たきりの状態になった子供さんもいらっしゃいまして、やはり非常に重い気持ちを持たざるを得ないケースもございます。今も谷村さんがおっしゃっていましたように、こうしたことを防ぐにはもう早期発見、早期援助しかございません。
 ただ、赤ちゃんの場合には、一撃でやられてしまうというんですか、命が助かってもひどいダメージを受けてしまうというのがございますので、特に乳幼児に関しましてはやはり早く対応するというのが我々の方で原則にしております。
 以上でございます。
#77
○参考人(磯谷文明君) 今の後遺症の点につきましては、両先生にお話しいただいたことに特につけ加えることはございません。やはり、できるだけ早い段階で子供を救うということ以外になかなか方法はないんだろうというふうに思っております。
#78
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。
 今の件と関係があるんですけれども、先ほど磯谷参考人の方から、児童虐待の防止に関する法律では十八歳未満までが対象だと、一方、親権に服するという者は二十歳までだということで、二歳のギャップがあるということでありました。障害を持っているがゆえに親から虐待を受けてしまう、あるいは虐待によって障害を持ってしまうということで、その子でも大きくなっていくわけですね。
 それで、十八歳から二十歳の間でも親から何らかの支援を得ないと、障害を持っている子供が支援を得ないといけないような状況も当然あると思うんですが、十八から二十の間にまた虐待を受けてしまうというようなことも当然起こり得ると思うんです。
 その点で、萩原参考人にお伺いしたいんですが、実際上、そういう年齢のギャップによって非常に困った状況にあるというような子、年齢の高い子供さんですけれども、問題は起こっているんでしょうか、大阪でも。
#79
○参考人(萩原總一郎君) 今のところ余り目立ったものはないかと思います。ただ、恐らく性虐待なり、どこかの部屋に閉じ込められてしまいまして監禁されているような状況になったり、あるいは暴力がひどくて、普通だったら逃げられる年齢でございますけれども、逃げられない状態の中で虐待を受けているという方がひょっとしたらいらっしゃるんじゃないかなと思います。
 そういう意味では、磯谷さんがおっしゃっているように、十八歳から二十までの人たちを救うものがないというのはまさにそのとおりだと、こんなふうに思っております。
 以上でございます。
#80
○参考人(谷村雅子君) 実態調査の中で、二千人の中で十八歳以上が百名ぐらいおりましたので、やはりその年齢群についても考えていただきたいと思います。
#81
○林紀子君 谷村参考人にお伺いしたいんですけれども、今までのいろいろお話を伺っていましても、本当に虐待が発生しない前にというのがいかに必要なものかということで、随分長い間研究をなさって児童虐待リスクマーカーという、こういうところに手を差し伸べたら随分虐待が発生する前に防止できるんじゃないかというような、こういう指標というのができているんだと思いますけれども、それじゃこれを実際に、こういうリスクのあるところにどういう手だてをしていったらこれが防げるかというのがやっぱりその次の手だてだと思うわけです。
 ここのところに児童虐待対策の課題ということでいろいろお書きいただきましたけれども、「虐待の発生予防のための体制の構築」というふうに書いてくださっておりますが、例えば保健所なども今の現状では以前よりだんだん減らされていっているんじゃないかと思うんですね。そうしますと、せっかくリスクマーカーが研究の積み上げによってここまで到達しているのに、それをきちんと受けとめて、そして実行に移すその場というのがどういうふうになっていって、研究をなさった立場からすると、それをどういうところに投げかけて実行に移すということになっているのかなというふうに思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
#82
○参考人(谷村雅子君) 例えば、双子で生まれたお子さんがいらっしゃるということがわかったら、地域の保健婦さんが訪問していろいろ育児支援したり、それからいろいろな援助機関を紹介することで随分育児負担が軽くなると思います。そのような訪問とかあるいは育児相談を受けるような場を本当は保健機関で広げていただきたいんですけれども、おっしゃいますように高齢者向けのサービスの方が今は多くなっているのが現状だと思います。
#83
○田嶋陽子君 先ほどいただいた資料の方だと思いますが、三角の「虐待の進行と対応」のあるページで、リスクマーカーですね、そこで妊娠、望まぬ妊娠、それから望まぬ出産というのがありますね。そこのところなんですが、あと児の因子として、多胎で特に子供の間の差が大きい場合とか、低出生体重児ということが書いてあります。
 ほかの一ページ目のところで、レジュメの方だと思いますが、三番の二のところで児童虐待の六割から七割は子供が医学的問題や親から見た育てにくさを示すということで、やっぱり低出生体重の子供のこととかも挙げてあります。
 私のところで調べたところでは、乳児院の話なんですけれども、乳児院にいる子供の親についてよく見ていると、子供に対して最初の虐待はおなかの中にいるときから始まっているという、そういう場合も結構ある。ということは、望まない妊娠の場合ですね。おなかを締めつけたり、飛びおりたり、それから子供を流産させようとしていろんなことを試みたりして、その結果生まれた子供というのは低体重だったり。あるいは、普通赤ん坊というのはにこやかな顔をしていることが多いわけですけれども、難しい顔をした子供になってしまうとか、病気しやすかったりするとか、そういうことが書いてあります。
 こういうことを考えると、やっぱり幼児虐待をなくすには、この六割から七割というのは非常に多いですよね、こういう生まれながらの問題を持っている子供に対する虐待というのは。そうすると、やっぱり望まない妊娠をなくすようにしたりとか、何かそういう望まぬ出産をなくしたりとか、そういうことをやっていかなきゃいけない。すなわち、児童虐待というのは暴力の連鎖と同じで、やっぱりこれも連鎖なんだなということをつくづく感じるんですけれども、お三人の方々、そのことに関してはどんなふうにお感じになるでしょうか。
#84
○参考人(谷村雅子君) 望まぬ妊娠の中で割に多いのは、相手の気持ちをつなぐためというものなんですけれども、そのほかに子供を産まなくてはいけないという周囲からの圧力というのもあります。そういう風潮はやはり消していかなくてはいけないと思います。本当に子供が欲しい御家庭で子供が生まれることが望ましいわけですから。
 そのために、思春期からやっぱり性教育をやっていくことが大事だと思います。
#85
○参考人(磯谷文明君) この児童虐待は本当にさまざまなところで発生していると思いますけれども、やっぱりこういう望まない妊娠や出産であるといった問題が一つとしてある。これについてはやはり直していかなきゃいけないというか、対策を打たなきゃいけないというふうなことだと思います。
 ただ、一つだけ御理解いただきたいのは、決してそういうふうなことだけではなくて、非常にいろんな問題の中でこれは発生してくるものでして、例えば社会的には立派な方で、もう名士で通っているような方による子供に対する性的虐待というふうなこともあります。これは虐待問題に対するときに、どんなところでも起こり得るし、それからその形にだまされてはいけなくて、やはり広い視野で対策を打っていかないとなかなか難しいかなというふうには思っております。
#86
○参考人(萩原總一郎君) 私どもの方でも、望まない出産ないしは期待と違う、もっとかわいくてというような親の期待に沿うというようなことを期待されながら御出産される方につきましては、非常に危険度が高くございます。場合によったら死亡に至るまでの虐待が起こってしまうというようなことがございまして、極めて注意をしながら、病院あるいは保健所、保健センター等とも連携をとりながら対応をとっているところでございます。
 以上でございます。
#87
○有村治子君 自由民主党の有村です。
 今行われました林先生と田嶋先生の質問に関連してなんですけれども、三人の参考人の方々に二つ質問をさせていただきます。御意見がある方にお答えいただければ大変幸いに存じます。
 一つは、私も、児童虐待リスクマーカー、谷村先生が出してくださった資料を見ているんですが、私どもこの共生社会の研究をしているときに、文部科学省の方から御説明を賜りまして、やはり母親教室とか一歳児定期健診なんかで虐待がないように周知徹底していくというようなことを伺ったんですけれども、このリスクファクターを見ていると、実際に母親教室とか一歳児定期健診とかに来てくださる人は本当に虐待の情報を必要としている人なのかどうか。
 これを見ていると、例えば家の因子でアル中とか、薬物中毒とか、知的障害、夫婦の仲が悪い、外国人、未入籍で子供が入籍されていない、受刑中などの人たちはそもそも母親教室なんかに来ないんじゃないかということを思いますと、一番心の叫びというか、虐待について助けを欲しい人たちに、私たちがホットラインはこういうのがありますよとか、そのコミュニケーションのルートとして一番欲しい人たちに実際にこういう知恵が、私たちの持っている知恵というのが伝わっているのかどうか。伝わっていないとしたら、どういうルートが本当に実効性があるのかということをぜひお教えいただきたいと思います。
 二点目なんですけれども、私たちは、今起こっている虐待の対策とともに、これから生まれてくる子供たちに対しても未然の対応をしていくということも大事なことだと思っています。
 例えば、日本の中には進学をするときに受験の準備をしたりとか就職するときに就職セミナーとか、人生の大きな岐路に立つときに、例えばセミナーとかオリエンテーションという形で心の準備、それから実際にはどうやってそれを戦略的に攻めていけばいいのかというような教育をされるわけですが、親になるために、どうやったらいい親になるかというようなオリエンテーションというのは、残念ながら公的な機関ではないと私は認知しています。
 そんな中で、この間、私が共生社会の中で、アメリカにはプランド・ペアレントフッドという、準備していく親権というんですか、心づもりをして社会的にいい親になっていこうというような団体がありまして、そこでは例えば避妊とか、どうしたら避妊してほしいということをボーイフレンドに切り出していくかというようなこととか、あるいは、女性特有の病気から自分の体を守っていくにはどうしたらいいのか、こういうことに気をつけなきゃいけないのかとか、あるいは親になるということの心の準備ということを、本当に廉価で、あるいはただで教えてくれるようなところがあるんですけれども、そのことを言いましたら、複数の一般の方から、これについてもっと教えてほしいというような、共生社会に関する調査会の会議録を読んだ人からアプローチがありました。
 そこでお伺いしたいんですが、こういう親になる前の人たちに対して私たちが何かすることというのは日本の社会の中で有効なのかどうなのか、それが実際できるのかどうなのか、その辺の私見をお教えいただければ幸いに存じます。
 以上です。
#88
○参考人(谷村雅子君) まず、親となる前のことでできるかどうかということですが、まず思春期のころから、このごろは大分試みられておりますが、赤ちゃんやそれから育児中の親子等の触れ合い経験を持つということが試みられていまして、とてもいい効果があるというふうに言われております。
 それから、病気の子供を退院させる前に親子で入院させて、それで病気の子供の育児をしっかり覚えて、自信を持ってから退院するという試みもなされております。保健機関の方では、親用の合宿も必要なんじゃないかという声も出ております。
 そういうことを通して親が自信を持てれば、虐待とか、もう全く否定的な感情に進まず、健全育成が行われていくのではないかと思います。
 それから、行政サービスを受けない方々についてなんですけれども、これはレジュメの二ページ目の下の方に書かせていただきましたが、ここのグループが一番やはりリスクが高いと思います。未入籍児、乳幼児健診未受診児とか、それから外国人、転入家庭の把握とか支援ですね、その方法が、私は行政の仕組みのことがよくわかりませんが、多分民生委員さんとか児童委員さんなどの協力が効果的なんではないかと思いますが、ぜひ御検討いただきたいと思います。
#89
○有村治子君 ありがとうございます。
#90
○参考人(磯谷文明君) 私の方は、こういうふうな虐待を防止する、予防するというところは大変重要だというふうに思っておりまして、先ほどの先生のお話もそのとおりだと思っております。
 ただ、少しお話はずれるかもしれませんが、一方で、そういう行政サービス的なやり方では対応できないというところがやはりふえておりまして、まさに先生のおっしゃった、健診に来てほしい人が来ないという現実もあるわけですね。こうなると、いかに介入をしていくかということを一つ考えざるを得ない。
 私は、児童虐待というのは福祉と警察の中間ぐらいなものだというふうに思っております。従来のニーズに合わせてサービスを提供するというような福祉的な対応だけではこれはできない。それは親が拒否をするからなんですね。確かに親は子どもの権利条約にも第一義的に子供を育てる責任を負っているということになっておりますけれども、しかし、その次はやはり社会も責任を負っているというふうなことになるんだろうと思うんです。そうすると、どこかで社会として介入をしなきゃいけない。
 問題は、この介入をどこからするのかというところなんですね。ある裁判官の発言で、養育に問題のある家庭なんかはごまんといるというふうな発言をされた裁判官がいらっしゃいました。まさにそれはそのとおりかもしれません。しかし、その中で我々は、どこまで介入をして、どこまでは何とか在宅でやっていくのか、こういうところを本当に議論をしなきゃいけない。その議論をするには、きょうお話しさせていただいたさまざまな手だてを使ってできるところまでやって、そしてその中で一つ一つケースを調査して、このぐらいの場合にはこのぐらいの対応がうまくいくとか、そういったようなことを蓄積していく必要があるんだろうと思うんです。
 しかしながら、児童相談所はそれに対応できるだけのまだ武器は持っていない。やはり児童相談所がフルに活動ができる手だてをまず与えていただいて、それで、それを十分に生かしていないのは問題ですけれども、それを生かした上で、じゃどこまでやるのか、あるいはどういう方法をとれば効果的なのかという議論が始まるんだろうと思います。
#91
○参考人(萩原總一郎君) 最近、厚生労働省の委託研究で、増加要因の中には谷村さんがおっしゃいましたように、乳幼児の世話の経験のない親の増加がやはり一つ考えられております。それから、孤立、引きこもりの親が増加している、あるいはいらいら親、要するに家庭機能の低下というんですか、養育機能の低下があるというようなこと。それが一部、親の虐待要因の中での増加要因であると。
 もう一つは社会的な要因がございまして、地域のネットワークがちゃんとできたり、啓発広報が展開されたり、マスコミの影響があり、もちろん児童虐待防止法の制定があって、そういうことが社会的要因の増加要因として挙げられるということが言われておるわけでございます。
 その中でも、孤立、引きこもりの親の増加を考えますときに、やはりデイケアの場の提供というのですか、そういうようなものがやはり大事ではないかなというようなことを考えます。それは保育所を活用したり子育て支援センターですね、できるだけ身近なところで整備していく、そういうことが非常に大事じゃないかなと思います。
 私は、基本的にはやっぱり男女が共同して子育てできる社会を目指して、子育ての負担をできるだけ少なくしていく、そして子育てに対して社会全体が応援していく、こういうことが基本的な考え方として大事じゃないかなと、こんなふうに考えております。
 以上でございます。
#92
○有村治子君 ありがとうございます。
#93
○渡辺孝男君 もう時間も大分なっておりますが、一つだけお伺いしたいんですけれども、萩原参考人は先ほど児童虐待に関しての連絡ネットは少しずつ構築されている、問題は救済ネットができなければいけない、連絡を受けたけれども救済ができなくてはもう全然問題にならないと。磯谷参考人からは、児童相談所長は速やかにというのを、時間も入れなさいということで、四十八時間以内の対応をしなさい、そういう御主張でありました。
 今、二連休から三連休等も多くなってきたんですけれども、実際に萩原参考人はいろいろ大阪でやられておりますけれども、この四十八時間対応というのは、連休が多くなっていますが、これは可能なんでしょうか。あるいは、そのためにはどういうところを充実させなければいけないか、その点お伺いをしたいと思います。
#94
○参考人(萩原總一郎君) 現在、大阪府でとっている対応としましては、時間外勤務のときあるいは休日につきましては児童養護施設等に御協力いただきまして、緊急対応が必要な場合はそこから一時保護所の方に連絡が回りまして、一時保護所から、各子ども家庭センターの一人は必ず一週間携帯電話を持っているというようなシステムをとっておりまして、緊急な場合にはそこの携帯電話に入って、態勢を整えて子供の保護に当たるというシステムをとっております。しかし、それで十分対応できるかといったら、そうでもございませんでして、窮余の策でございます。
 幸い、平成十五年度には一時保護所の改築を目指して今検討しているところでございまして、十五年の一時保護所の移転、改築によって、一時保護所で二十四時間対応がちゃんとできるような、電話で通報、通告を受け、きちっと対応できるようなシステムをこしらえていきたいと。しかし、それをこしらえるには相当職員がまだ要りまして、この点については大きな課題になっております。
 現在のところは、四十八時間といえば四十八時間まで待ってもいいのかというような逆の話もございますので、わかれば速やかに家庭訪問等をしております。ただ、いろんな機関から情報を得て、その上で複数対応しておりまして、情報に時間がとられる場合もございます。そういう意味で、情報を提供していただく、そういう協力はいろんな機関なり府民の皆様から御協力いただければよりスムーズにできるんやないかなと、こんなふうに考えております。
 以上でございます。
#95
○吉川春子君 萩原参考人には大変貴重な御指摘をいただきまして、やっぱり男女が共同して子育てに当たれるようなそういう環境をという御意見でございまして、本当に私もそのとおりと思います。
 事前にいただきました論文を読ませていただきましたら、これは児童の権利に関する条約の批准前の論文だと思うんですけれども、「わが国が「児童の権利に関する条約」を早期に批准することを期待したい。」とお述べになっているんですが、この児童の権利条約も批准して十年近くたつんでしょうか、この批准によって子供の虐待の問題が変化したのか、どの点が改善されたのかという点を一つお伺いしたい。
 もう一つ、谷村参考人、先ほど文学作品などもお示しいただきまして、私が子供のころ熱中して読んだ本の多くの中に児童虐待のテーマを扱ったものがあると。下村湖人の「次郎物語」などはまさにすさまじい児童虐待でございまして、これは祖母が中心になってたしかやったと思うんですね。ただこれは、心の傷はその文学作品の最後の方を読みますと、次郎には心の傷が残っていなくて立派な大人として成長していったんですけれども。
 しかし、先ほどの報告で、少年院に入っている少年の半数は児童虐待を受けた経験があるという報告もありましたが、形に残る傷ではなくて、ストレスですか、PTSDというんでしょうか、そういうものが子供の心の中に残っていくということが非常に深刻だと思うのですが、医学的な見地から、こういう子供たちに対するケアがどのようになされたらいいのか、御提案がありましたらお聞かせいただきたいのと、現状はどうなっているのか、その点についてお伺いします。
#96
○参考人(萩原總一郎君) お答えします。
 子どもの権利条約が批准されまして、特に子供の権利についての意識がさまざまな子供の機関において少し変わってきたなと。特に、子ども家庭センターにおきましては子供の権利保護機関である、そういう位置づけをいたしました。その点ではやはり随分認識が変わったなというのが一つでございまして、特に虐待についての認識が大阪府では随分変わりました。やはり、このころから積極的に子供の虐待の問題について取り組むようになってまいりました。
#97
○参考人(谷村雅子君) 行動や情緒障害はもう小児科の症例の中でも七割に発症しておりまして、これはなかなか治らないんですけれども、精神科的な療法あるいは心理療法で長期的にかかわっていく必要があります。現在は、情短施設、あるいはいろいろな養護施設でも専門家がかかわっているんですけれどもなかなか大変で、やはり専門家の養成が必要と言われております。
 もう一つ、「次郎物語」、それから「にんじん」もちゃんと成長をしていくんですけれども、それは、「次郎物語」ではお父さんやおじいさんが、あるいは学校の先生、友人がかばってくれる。それから、「にんじん」の場合はお父さんが息子にいろいろアドバイスをしているんですね。それが現在の日本の弱いところで、核家族であるためになかなか守ってくれる人がいないんです。家庭の中で虐待されていても、地域や学校や何かで自分を受け入れてくれる人がいる場合には結構真っすぐに育っている方もいらっしゃいます。
 ですから、治療はとにかく難しいんですけれども、子供を取り巻く人々が子供をなるべく受け入れるような、受け入れることが大事であるということを知って、そのように接していただきたいと思っております。
#98
○参考人(磯谷文明君) 今のケアに関連してちょっと申し上げたいと思います。
 まず第一に、子供の心の傷をケアができる専門家の方が大変少なく、都会では比較的それでも確保できるかもしれませんが、全国レベルで見るとどうしても少ないというのが現状です。
 それから、二つ目は、じゃ子供にケアが必要だとして、だれが受けさせるのかというふうな問題です。特に、親はこういった問題に抵抗をします。
 例えば、児童養護施設に子供が入った場合に、これはやはりケアが必要だということで児童養護施設の方でケアを受けさせようとする、しかし親はそれに対して徹底的に反対をすると。そうなりますと、一体親の親権がどこまで及ぶのかといったまた難しい問題が出てきております。保護した後でも、親権喪失をさせない限り親の親権の問題というのはいつまでも尾を引くというのが現状です。
#99
○吉川春子君 ありがとうございました。
#100
○田嶋陽子君 今の「次郎物語」なんかの話はおもしろかったんですけれども、例えば今、谷村先生がおっしゃったことは、アリス・ミラーなんかが言う見届ける証人ということの考えと同じでしょうか。要するに、例えば駄菓子屋のおばさんでも、それからお寺のお坊さんでも、何が起きているかをずっと見ていてくれる人、さっきおっしゃったそばに連れ添っている人がいることでトラウマとかそういうものは軽減されるというか、それがあっても成長していくというような、そういうことと関係があるのかどうかということをちょっとお伺いしたい。
 それから、きょうのお話を聞いても、とにかく予算が要るんだろうなということ、人材が不足しているということ、施設が不足しているということ、ちょっと絶望的な気になるんですけれども、こっちが絶望的な気持ちになっちゃいけないんで、頑張らなきゃという気持ちが一つあります。
 それと、一つ、私がもし子供だったら、こんな目に遭っているのにどこに行ったらいいのかわからない。駄菓子屋のおばさんがいい人だったらいいんだけれども、お寺のお坊さんが話を聞いてくれたらいいかもしれないんだけれども、でも何か行けない。お父さんを裏切っちゃいけない、お母さんを裏切っちゃいけないというときに、今の子供たちは携帯電話をみんな使っているわけですから、私としては、よく使っているその携帯電話に宣伝番号を入れることはできないんだろうか、何かあったときにここに電話しなさいという優しい言葉で。それはドメスティック・バイオレンスのときもそうかもしれないんですけれども、何かそういう、これもまた予算が要ることだから大変なんですけれども、そういう工夫は公的に何かできないのかどうか、それを疑問に思います。
 どなたでもお答えいただければ、時間のある限りお願いします。最初の話は谷村先生でしたね、アリス・ミラーのことでは。あと、萩原先生、お願いします。
#101
○参考人(谷村雅子君) 子供が安心していられる場を提供することが大事だと思います。それはやはり親にとっても同じで、虐待している親も、自分の気持ちをわかってくれる人がいるということが心を和ませて、だんだんによくなっていくきっかけになると思います。
 それからもう一つの件で、先ほど磯谷先生の方からも統一の番号でという御提案がありましたけれども、私も賛成で、それは虐待に限らずいじめでも何でも一緒でいいと思うんですけれども、子どもSOSのようなもので、一一〇番のようなもので何かがあるといいなと思います。
#102
○参考人(萩原總一郎君) 私も同じ意見でございます。
 ただ、もう一つ、例えばインターネットというかホームページでもっとアクセスできるような、自由にできるようなそんなシステムもひょっとしたら必要ではないかなというようなことを考えております。
 以上でございます。
#103
○田嶋陽子君 フランスで四歳の子供が電話をとって、お父さんが変なことするのと電話するんですよね。そのとき、どうしてその番号を知っていたのかなと思うんです。その四歳の子供はインターネットはやるんですかね、四歳の子供でも電話ができるようなそんなシステムがあったらというふうに思うんですけれども。萩原先生に。
#104
○参考人(萩原總一郎君) 物すごく難しい質問で、どう御答弁していいのかわかりませんが、確かに三歳、四歳の子で携帯電話を今興味を持って使っているというようなことがございますね。私の孫も興味を持って携帯電話をいらっておりますけれども。
 そういうときに、例えば今私どもが取り組もうとしているのは、できるだけ電話を広く知っていただくというような、そんなふうなことはもう当然必要でございまして、子どもと家庭電話相談室の電話だとか、こういう大阪府のチラシみたいなもので、できるだけ目につくところに置いておいてくださいとか、場合によりましたら母子健康手帳を交付するようなときに何らかの形でお知らせするような方法だとか、そんなふうなことをしていきたいと思います。
 ただ、四歳の子供につきましては、ちょっと難しくて、ようお答えできません。
#105
○田嶋陽子君 いえ、私が言うのは、ボタンのゼロを一つ押したらそれが出るとか、あるいはさわっているうちに自然とそこに到達するとか、何か電話上での工夫ということで、こういうパンフレットを見るというのは、字も読めないし、まだちっちゃい子はとか思うんですけれども。
 何か電話で自然に押したら出てくるという、そういうあれです。どうしたらいいんですか、何か工夫があると思うんですけれども。SOSでもいいですよ、押したら出てきたとか。何かそういう工夫です。
#106
○参考人(萩原總一郎君) 今後、厚生労働省とも御相談しながら検討してまいりたいと思います。
#107
○会長(小野清子君) 質問も尽きないようでございますけれども、予定の時間も参りましたので、以上で参考人に対する質疑を終了させていただきたいと思います。
 参考人の諸先生には、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御発言につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#108
○会長(小野清子君) 速記を起こしてください。
    ─────────────
#109
○会長(小野清子君) 継続調査要求に関する件についてお諮りをいたします。
 共生社会に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますけれども、御異議ございませんでしょうか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#110
○会長(小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成及び提出の時期につきましては会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#111
○会長(小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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