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2001/06/05 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 厚生労働委員会 第14号
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2001/06/05 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 厚生労働委員会 第14号

#1
第151回国会 厚生労働委員会 第14号
平成十三年六月五日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月三十一日
    辞任         補欠選任   
     木俣 佳丈君     吉田 之久君
 六月一日
    辞任         補欠選任   
     宮崎 秀樹君     武見 敬三君
     吉田 之久君     木俣 佳丈君
     大森 礼子君     山本  保君
     林  紀子君     小池  晃君
 六月四日
    辞任         補欠選任   
     木俣 佳丈君     齋藤  勁君
 六月五日
    辞任         補欠選任   
     齋藤  勁君     木俣 佳丈君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         中島 眞人君
    理 事
                亀谷 博昭君
                斉藤 滋宣君
                柳田  稔君
                沢 たまき君
                井上 美代君
    委 員
                阿部 正俊君
                大島 慶久君
                狩野  安君
                田浦  直君
                武見 敬三君
                南野知惠子君
                川橋 幸子君
                木俣 佳丈君
                長谷川 清君
                浜四津敏子君
                山本  保君
                小池  晃君
                大脇 雅子君
                西川きよし君
                黒岩 秩子君
   国務大臣
       厚生労働大臣   坂口  力君
   副大臣
       厚生労働副大臣  桝屋 敬悟君
       厚生労働副大臣  南野知惠子君
   大臣政務官
       厚生労働大臣政
       務官       田浦  直君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        川邊  新君
   政府参考人
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       厚生労働省労働
       基準局長     日比  徹君
       厚生労働省年金
       局長       辻  哲夫君
       社会保険庁運営
       部長       冨岡  悟君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○確定給付企業年金法案(内閣提出、衆議院送付
 )

    ─────────────
#2
○委員長(中島眞人君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 まず、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 確定給付企業年金法案の審査のため、本日の委員会に法務省刑事局長古田佑紀君、厚生労働省労働基準局長日比徹君、厚生労働省年金局長辻哲夫君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(中島眞人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(中島眞人君) 次に、確定給付企業年金法案を議題といたします。
 本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○大島慶久君 おはようございます。自民党の大島慶久でございます。
 近年、公的年金の保険料を納付しないいわゆる未納の問題だとか、あるいは厚生年金を民営化すべきだと、こんな意見をよく耳にいたしますけれども、公的年金の役割とか意義というものが当然あるわけでございますけれども、ややもすればそういったことが忘れられてしまったような話として伝わってまいります。
 きょうは、そういった意味で、確定給付企業年金法案の審議の日でございますので、先般の本会議場でも既に質問がなされておりますが、もう少し細かな部分に至りましていろいろ質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 とにかく、年金というのは老後の生活のこれは基盤になるもう大切な部分でございます。あくまでも基礎的な部分は公的にしっかりと支えていくと、こういったことが必要であるというふうに考えておりますけれども、高齢化が進む中で、高齢者の生活を支える年金制度の役割はますます重要になってきております。既に現在でも、年金の給付が自分の所得の半分以上と、こういう高齢者は高齢者全体の七割以上になっております。ほとんどの高齢者にとって年金は老後生活の主柱になっており、またこれから高齢者になられる国民にとりましても、年金なしでの老後の生活設計をするということはまず不可能ではないかと言っても過言ではないと思います。
 そこで、公的年金の役割あるいは意義について幾つか質問してまいりたいと思います。
 最初に、先月、厚生労働省で国民年金の加入者の実態調査結果が取りまとめられ、前回の調査に比べ未納者が増加をしていると大きく報道されておりました。加入者の三割が保険料を納めておらず、このような制度はとてもやっていけない、こんなことも我々は耳にするところでありますが、こういった話を聞いた国民の不安は小さなものではないと思います。
 そこで、本当のところはどうなのか、加入者の三割が保険料を納めておらず、制度は維持できるのかどうか、これはもう素朴な疑問でございますが、明確なお答えをいただけたらと思います。
#6
○国務大臣(坂口力君) 大島委員から御指摘をいただきました国民年金に対します保険料の問題でございますが、先般もその数字につきましては発表をさせていただいたところでございます。
 保険料を納めていない者が約三割いるというふうに言われている点につきましては、これは自営業者等のいわゆる第一号被保険者、この第一号被保険者に対する未納者、未加入者、そして保険料免除者、この三者の占める割合のことでございます。しかし、免除者につきましては、これは納付が国庫負担によりまして保障されておりますし、未納者、未加入者と同一に論じることは少し適当でないというふうに思っております。
 また、保険料を納めていない人の割合は、これは今申しましたとおり第一号被保険者に対する割合でありまして、二十歳から五十九歳までの全国民に対する未納者、未加入者の割合ではございません。全体で見ますと、未納者や未加入者は基礎年金を支える方々全体の五%にとどまっております。さらに、社会保険方式をとっていることによりまして、いわゆる未加入未納期間分と申しますか、未加入者の未納期間分の年金支給というのはこれはないわけでございます。すなわち、平たい言葉でいいますと、ただ乗りというのはないわけでございます。
 このようなことから、現在の未納者の増加によりまして公的年金制度がつぶれるという状況にはないというふうに思っておりますし、加入者の三割が保険料を納めておらず制度は持続できないというのは、少し誇張された言い方ではないかというふうに思っておる次第でございます。
 しかし、この国民年金の未納者それから未加入者がふえているということも、これもしかし我々といたしましては放置のできない問題でございますから、一人でもやはり多く納めていただけるように我々はこれは努力をしなければならないことは事実でございます。
 とりわけ、学生の皆さん方がなかなか入っていただけない、加入していただけないというので、この皆さん方に国民年金の手帳をお送りするということをしているわけでございますが、そういたしますと、お送りはしたのですけれども支払いがなかなかしてもらえない、加入はしていただいたことになりますけれども、未納者にそれがなるといったようなことで、今まで未加入者が多かったのが未加入者は減ってまいりましたけれども、その分、今度は未納者がふえてくるといったようなこともございまして、その辺のところをどうするかといったようなこともございますし、納めていただいていない一般の皆さん方に対するやはり思いというものをもう少し明確にしないといけないというふうに思います。
 ただ、自分の将来のためだけに年金を納めているのではなくて、やはり相互扶助、現在の高齢者のために自分は役立っている、その皆さんのために掛けるんだ、それで自分たちはまた将来若い人たちの厄介になるんだと、そういう世代間の問題をもう少し理解していただけるようにやはり我々も努めなきゃならないのではないかというふうに思っている次第でございます。
#7
○大島慶久君 大臣の御答弁をいただいておりますと、私なりに理解ができるわけでございますが、とにかく法律を改正するということは、やはり国民の利益に資することでなければならないはずでございますので、さらなる努力をいただいて、そういう数字がひとり歩きして国民の皆さん方が不安に駆られることのないように、今の大臣の御答弁のようにこれからもしっかりやっていただきたいとお願いするところでございます。
 国民年金の制度は、保険料を負担することが難しいいわゆる低所得者の方には保険料を免除するという仕組みがございます。低所得者で保険料が払えない方はこの免除の仕組みを利用すればいいわけでございますけれども、よく保険料が高くて払えない、こういう言葉を我々は耳にすることがありますが、本当にそうなのかと、またこれ素朴な疑問を感じております。
 保険料の未納者はどのような理由で未納になっているのか、保険料を納める能力は本当にないのかどうか、そこら辺はどうお考えなんでしょうか。
#8
○政府参考人(冨岡悟君) 最近取りまとめました平成十一年度国民年金被保険者実態調査によりますと、未納者の方の多くは、未納の理由といたしまして、保険料が高くて経済的に支払うのが困難、これを六二・四%の方が挙げておられます。また、国民年金を当てにしていないと答えている方が一二・二%おられます。二十歳代後半から三十歳代にかけての方が、この当てにしていないという回答が多くなっております。
 一方、未納者の方の世帯の所得の実態を見ますと、未納者は納付している方に比べまして世帯の所得が若干未納者の方が低いといった傾向はございますが、所得の分布状態を見ますとそれほど顕著な差とはなっておりません。また、未納者の半分以上の方が生命保険などに加入しておりまして、相当の額の負担をしておられます。
 以上のことを踏まえますと、国民年金の保険料を未納となっておられる方は、納付者と負担能力に大きな格差があるといったことよりも、むしろ年金制度に対します理解が浅くて、その個人の方の所得を使う優先順位が低いのではないか、そのように考えております。
 以上でございます。
#9
○大島慶久君 ただいまのお答えの中で、保険料を納めていない人でも生命保険や個人年金に加入をされている、そちらの方の保険料は納めていられる方が結構おありだなと、そういう実態がわかりました。私の周りの若い人たちの中でも、個人年金に入ったり自分で貯蓄をした方が公的年金に入るよりも有利だと、こんな意見を持たれる方が結構おみえになります。
 そこで、個人年金や貯蓄で公的年金のかわりが本当にできるんだろうか、そういったところがやはりかみ合っていないためにそういう報道が結構目につく、こういう今の説明を聞いておりましても実態とは随分違うところもあるんだなということでありますけれども、この点についてのお考えですね。もう一回申し上げますけれども、個人年金や貯蓄で公的年金のかわりになるんだろうか、ここら辺の御見解はいかがでしょうか。
#10
○国務大臣(坂口力君) 保険料を納め始めます二十歳から年金を受け始めます六十五歳まで四十五年間あるわけでございます。平均寿命まででありますと、八十歳といたしますと六十年という長い期間があるわけでございます。このような長い期間に社会経済が大きく変わりますことは当然でありまして、例えば今六十五歳、私ぐらいな人間が二十歳ぐらいなときでございますと、そのときにはホワイトカラーの給料というのは約二万円ぐらいでございました。現在、約で申しますと約三十万。すると、二万でありましたものが三十万になっているわけでございますから十五倍にこれで膨らんで、膨らんだと申しますか変化をしているわけでございます。
 しかし、年金の場合にはそういう前からずっと掛けてまいっておりますけれども、その掛金のそれぞれのところで、二万のときもありますでしょうし、四万のときもありますでしょうし、十万のときもあるというふうに思うんですが、しかし現在三十万であればその三十万を基準にしてこの年金が出されるということでありますから、これに匹敵するものはほかにはそう存在しないというふうに思います。
 そうした意味では、非常にこの公的年金というのは他に比べることのできない有利なものである。しかも、現在三分の一国庫負担があり、そして今また二分の一にこれを引き上げることが検討をされるというようなことになってまいりますれば、特にまた、一般の自分で預貯金をするというのとはかなり有利になることは間違いがございません。
 個人の段階で見ましてもそういうことがございますし、それに加えて、この年金は、先ほど申しましたように、今のお年寄りに出し、そして自分たちはまた次の若い世代から負担を受けるというお互いの相互扶助、世代間の扶助によって成り立っているという双方のことを考えていただければ、これはこの年金にまさるものはない。
 したがいまして、私の友人なんかを見ておりましても、生命保険に入ってほしいというふうに言われると、簡単にそれじゃもう年金やめて入るよと言う人がいるわけでありますけれども、こちらはそんな簡単なものではないわけでありまして、みんなで入ろう、そしてつくろうというふうにつくり上げたものでございますから、その辺のやはり十分な理解を、先ほども申しましたが、していただくということが大事でございますし、そして本当にきちっと見ていただければ、どちらが有利かということを見ていただいても、それはこちらの方が有利というふうに思っております。
#11
○大島慶久君 ありがとうございました。
 公的年金と個人年金の大きな違いは、社会全体で世代間扶養により支え合う仕組みということにあります。これが大切なんだという点は、今の大臣の御説明をいただいておりましてもよくわかります。しかし一方では、我が国の年金は給付と負担のつながりのある社会保険方式で運営されていることは事実でございます。よく、支え合うというなら保険でなく税金でやればいいじゃないか、こんなことも耳にいたしますが、保険なのに自分の掛けたものが今の高齢者の年金で使われてしまうというのは納得がいかない、要するに将来自分たちが本当に受け取れるだろうかという不安ですね、これは。
 私自身は、税金で高齢者に一律の年金が出るようなシステムがもしあるとすれば、これは国民の国家への依存を高めることだけが先行いたしまして決していいやり方ではないと、個人的にはそう思っております。支え合いを税金でなく給付と負担のつながりのある社会保険の仕組みで行うことの意味というのは一体どこにあるのか。これもできるだけ国民の皆さんがわかるような言葉で説明をいただきたいと思います。
#12
○政府参考人(辻哲夫君) まず、我が国の年金制度は世代間扶養を基本とした社会保険方式で運営されているわけでございますけれども、これは現役時代に働いて得た収入から現役時代に保険料を納付することによって、その当時の高齢者をそれで支えていると。この実績が記録されまして、将来、自分が高齢者になったとき、かつて保険料を納めて高齢者に対して貢献した度合い、それはすなわち社会保険料納付記録に基づく保険料納付実績でございますけれども、この実績に基づいて年金が支給されるという仕組みでございます。この仕組みは、現役時代に働いて収入を得、その中から保険料を納めるという自助努力を行う者に対して、その自助努力に応じてあるいは応じてのみ年金給付を行うということを基本としておりまして、自助と自律の精神を基本とする我が国のあり方にふさわしい方法と言えると考えております。
 逆に、税金による支え合いの場合は、負担が上昇いたしますときに負担をしなければそれに対応する給付が個々人において受けられないという今の負担と給付の連動した社会保険方式と異なりまして、まず給付が個々人に約束されて出ることが決まっている、その上で個々人の給付と負担のつながりのない形で税負担というものを引き上げていかなければならないという仕組みでございますので、急速に少子高齢化が進む中で増大する給付に必要な巨額の財源を確保できるか、そういったところに疑問があると考えます。
 また、少子高齢化に伴って給付と負担が増大することは避けられないわけでございますけれども、この過程において、給付と負担のつながりのない税を財源とするがゆえに今申しましたような困難性が伴い、所得制限の導入が行われ、支給額の一部削減や受給対象者の絞り込みが行われる可能性がございます。この場合、結果として、基礎年金は低所得者向け老後給付、救貧的な給付に変容するわけでございます。これはすなわち、現役時代に努力した者ほど給付を受けられないという仕組みになるわけですが、それはそもそも年金制度ができた、いわば老後への予防措置というゆえんに沿わないものであって、国民の期待にこたえられないのではないかと。
 こういった考え方を背景にいたしまして、基礎年金の給付費は、現在十五兆円、二〇二五年には平成十一年度価格で二十二・九兆円という巨額に達しますために、保険料財源を基本といたしまして税負担を組み合わせていくことが最も安定的な運営であるというふうに考えて仕組まれております。
#13
○大島慶久君 通告の中に、若い世代へのPRとか、この年金に対する、それから未納・未加入者の解消への努力、この点を質問させていただく予定にしておりましたけれども、どうも時間が足りなくなりそうでありますので、もし時間が余れば改めて質問をいたしますけれども、二問飛ばしまして次の質問に入りたいと思います。
 経済財政諮問会議の厚生年金民営化報道についてお聞きをしたいと思います。
 ここまで公的年金の意義や役割について質問をしてまいりましたが、一つここで気になる動きがございます。先週であったかと思いますけれども、経済財政諮問会議において示される予定の基本方針において、公的年金の民営化が盛り込まれているという報道がございました。公的年金の民営化につきましては、厚生年金の報酬比例部分を企業年金や個人年金などに移すという内容が検討をされているように報じられておりますけれども、そもそもこのようなことが可能なのかどうか、私には極めて疑問でございます。また、今回提案されております企業年金や確定拠出年金は、厚生年金に置きかわるものとして考えておられるのでしょうか。もうそこら辺は極めて私も疑問でありますので、お答えをいただきたいと思います。
#14
○国務大臣(坂口力君) 私も先日、マスコミにおきまして、この厚生年金の民営化の記事を見たわけでございます。先般、私も臨時議員として出席をする機会がございましたので、経済財政諮問会議におきまして、我々厚生労働省としては厚生年金二階建ての部分を民営化するつもりはないことをはっきりと申し上げたところでございます。
 特にサラリーマンの場合には、退職によりまして収入が大きく減少することから、報酬比例部分の給付が大きな意味を持っております。仮にこの報酬比例部分を民営化した場合には、公的年金のように賃金や物価にスライドすることによりましてその時々の生活水準に対応する水準の給付を保障することはそうするとできなくなってしまうわけでございます。この二階部分が企業年金や個人年金だけということになりますと、企業年金を実施できない中小企業の従業員に対して二階部分は保障ができなくなります。したがいまして、この報酬比例部分の民営化は、サラリーマンに対します保障の範囲でありますとか水準とも大きく後退させるものとなることから、不可能と考えております。
 また、今回御審議をいただいております給付型の年金にいたしましても、あるいはまた次の拠出型の年金にいたしましても、この二階部分の厚生年金は公的年金を維持するという前提の上に立って御審議をお願いしているわけでございますから、我々といたしましては、この二階建ての年金部分というのはやはり公的年金でいくところに意義があるということで今後もここは進めたい、ここは我々の考え方を貫く決意でおります。
#15
○大島慶久君 新聞報道がそのままであるとすれば、これは大変なことだなと思っておりましたけれども、今、大臣の御答弁で、そうではない、本当の考え方というものを今お聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 それでは次に、今回議題となっております確定給付企業年金法案について幾つか質問をさせていただきます。
 企業年金制度は公的年金に上乗せをするという形で企業が独自に行うもので、その代表的なものとして適格退職年金と厚生年金基金がありますが、これらの制度はいずれも昭和四十年前後に相次いで創設されたもので、現在の制度の骨格はこの昭和四十年代にでき上がっているわけでございます。今回の確定給付企業年金法案と衆議院でただいま審議中の確定拠出年金法案の二つの法案は、我が国の企業年金制度を創設以来四十年ぶりに大きく改革するものであると言えると思います。
 今回の法案によりますと、改正後の新しい企業年金の姿として、一つには本法案による確定給付企業年金と厚生年金基金といういわゆる確定給付型の企業年金、それともう一つは新たな公的年金の上乗せとしての確定拠出年金の、大別して二つの制度体系に再編することになるわけでございます。
 そこで、今回の改革では確定給付企業年金と確定拠出年金のこの二つのタイプが創設されることになるわけでありますけれども、その二つのタイプをつくる意義、それからその二つのタイプをつくるメリットは一体何なのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#16
○副大臣(桝屋敬悟君) 今のお尋ねは、確定給付企業年金、それから確定拠出年金は今衆議院段階でもう議論が始まっておりますが、この二つのタイプをつくる意義、さらにはメリットをというお尋ねでございました。
 その前に、今、大臣からもお答えを申し上げましたけれども、今盛んに議論されておりますが、今回の確定給付企業年金あるいは確定拠出年金、いずれも公的年金二階部分までを、この役割というものをきちっと位置づけした上でさらにそれを補完するという位置づけで、今、委員から上乗せというお尋ねをいただきましたけれども、まさにそうした二つのタイプを今提示させていただいているわけであります。
 まず、確定給付企業年金のメリットでございますが、今審議をいただいているわけでございますが、将来支給される給付があらかじめ決まっているという制度でございまして、老後の生活設計がより容易である、容易に老後の生活設計を考えることができる、それから長期間同じ職場に勤務するなど勤務形態の安定した職種あるいは企業に適しているのではないかというメリットがあろうかと思います。
 それから、これに対しまして確定拠出型年金のメリットでございますが、勘定が個人単位で分けられている、いわゆるポータビリティーがあるということでございまして、転職の多い職種あるいは企業に適しているということがございます。それから、積み立て不足ということがないわけでありますから、中小企業にも導入しやすい制度であるということが言えるだろうと思っております。
 この確定給付企業年金そして確定拠出年金、場合によっては一つの企業であわせて実施するということも可能でありまして、各企業の実情あるいは多様化する雇用形態に応じまして最適な企業年金のプランをつくることが可能になるというふうに考えているところでございます。
#17
○大島慶久君 次に、適格退職年金からの移行についてお伺いをしたいと思います。
 今回の企業年金改革において、適格退職年金などにおける受給権保護が大きな課題になっております。法案では、適格退職年金は受給権保護の仕組みが不十分であるため、十年を期限として廃止するということになっております。このため、現在適格退職年金を実施している企業は、それまでの間に受給権保護の制度が整備された新企業年金などへ移行することになるわけでございます。
 それで、まず、適格退職年金を廃止し、新しく新企業年金に移すというのはなぜそういうことになるのか、その理由についてお伺いをしたいと思います。
#18
○政府参考人(辻哲夫君) 確定給付型の企業年金といたしましては、従来から厚生年金基金と適格退職年金があるわけでございますけれども、近年の経済環境のもとで企業倒産の際に年金資産が十分に確保されていないといった事例も出てきておりまして、特に適格退職年金につきましては積立義務がないなど、受給権保護のための整備が必要となってきております。このため、確定給付企業年金法を制定いたしまして、積立基準の設定など、受給権保護を図るための措置を定めることとしております。
 この場合、適格退職年金につきましては、これまで税制上の根拠を持った制度でございまして、現行の税法の体系の中では受給権保護のための措置を講じることは困難であることから、今回、新制度に移行させることとしたものでございます。
 新制度におきましては、積立義務の設定、受託者責任の明確化、情報開示などの措置が講じられておりまして、適格退職年金から新制度に移ることによりまして受給権の保護が強化されるものと考えております。
#19
○大島慶久君 今回の法案では、受給権保護のための仕組みとして、積立基準の設定、受託者責任の明確化、情報開示の三点を盛り込んでおりますが、そのうち積立基準は企業の積立金の拠出のあり方に関するものであり、受給権保護の仕組みの中心になるものと思います。
 法案では、企業年金に積立基準に従った計画的な積み立てを義務づけ、定期的にチェックを行い、その結果不足がある場合はその穴埋めを企業に義務づけるという仕組みになっております。これにより、企業年金に加入している従業員にとっては老後の給付が受けられるという安心感が増すことになると思います。
 しかし、ここで忘れてならないのは、適格退職年金を実施している企業の大部分はこれは中小企業であるということであります。例えば平成十一年の数字で申し上げますと、全契約件数八万一千六百五件のうち加入者百人未満のものが六万三千二百三十一件、これは率にいたしますと七七%を占めているわけでございます。それにさらに三百人未満まで合わせますと実に九三%と、圧倒的多数が中小企業と言っていいわけであります。
 そして、その中には、積立金不足を埋めるための資金的な余裕がない、そういった企業も現実問題としては非常に多いであろうということが推定をされます。したがって、適格退職年金を実施していた中小企業にとって積み立て不足をきちんと解消していくということは、従業員のためには当然のことなのでありましょうけれども、現在の経済状況のもとにおいては実際問題としてなかなかこれは大変なことであり、やむにやまれず企業年金をやめようかという話も出がちになるわけであります。そういった点が私は非常に心配であります。
 そこで、適格退職年金から新企業年金への移行を円滑に行うための措置がこれは不可欠でございます。この点については、先日行われました趣旨説明に対する質疑において、経過措置を講じていく、こういう簡単な御答弁がございましたけれども、きょうは委員会でございますから、適格退職年金からの円滑な移行のための措置の内容について、もう少し具体的にわかりやすく説明をいただきたいと思います。
#20
○政府参考人(辻哲夫君) 適格退職年金を実施している企業では、これまでに給付を約束する企業年金ということで確定給付型であるわけでございますから、できるだけその確定給付型の内容を新たな確定給付企業年金法に移行していただくようにすることが望ましいと考えております。
 しかしながら、新制度は受給権保護のために積立義務があり、新たな給付設計の基準が加わるなど、適格退職年金ではこれまで導入されていなかったいわばこれまでよりも厳しくなる面があるわけでございますから、この円滑な移行のために、まず十年間の移行期間を設定する、そしてその移行期間の中で、積み立て不足の解消や給付設計等新しい基準に合致するような見直しについて一定の経過措置をさらに講じるという考えでございます。
 具体的には、積み立て不足の解消は、厚生年金基金同様、原則として二十年以内に行うことと考えておりますが、適格退職年金から移行してくる新企業年金につきましては、特例としてさらに十年程度延長をして最長三十年間でゆっくり積立義務を果たせるように措置を講ずるということ。
 それから、給付設計に関しましては、新企業年金制度におきましては、例えば受給資格期間が二十年以上の者については年金を支給しなければならないと。いわば、今までは受給資格期間を二十年よりもっと長くしているという例がございましたけれども、やはり老後の年金という観点から二十年以上の者についてはもう年金を支給しなければならないという新たな基準が加わっておりますが、移行時に既に適格退職年金に加入している方につきましては、これが直ちに当てはまると厳しくなるわけでございますので、可能な限り従来どおりの受給資格について適切な経過措置を設ける、従前の例のものを残すといった形で、急に厳しくなるために移行できないことがないように細かな経過措置を講ずることとしております。
 また、御指摘のとおり、適格退職年金には中小企業が多うございますことから、中小企業を対象として簡易な財政再計算の方法を示すといったことも配慮いたしております。
 これらのことを講じることによりまして、適格退職年金から新たな企業年金に円滑に移行が行われるように努めてまいりたいと考えます。
#21
○大島慶久君 細かく説明をいただきました。
 この制度を本当に継続しようという気がありましても、積立金が用意できない、そういう中小企業が困らないように、今申されたような措置をさらに御検討いただいていろいろと御配慮をいただければと、こんなふうに思います。
 適格退職年金から新企業年金への移行が円滑に行われるかどうかは今回の改革の成否にかかわるだけではなく、中小企業の従業員の老後の所得保障にかかわるこれは極めて重要な問題でございます。
 最後に、新企業年金への円滑な移行について、ただいま局長から答弁をいただきましたけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
#22
○国務大臣(坂口力君) 新企業年金への円滑な移行につきましては、今、局長から具体的には御答弁を申し上げたとおりでございます。いずれにいたしましても、この企業年金があらゆる階層の皆さん方、とりわけ企業の大きい小さいにかかわりなく、やはりそれが享受できるような社会をつくり上げていかなければならないというふうに思っております。
 これから日本の国の中に第三次産業がだんだんと大きくなってくるであろうというふうに思いますし、第三次産業はどういたしましても人の出入りが激しいところでもございます。一度やめて次のところに移れば前に掛金をしていたことがそれが何の役にも立たないというようなことではいけませんし、また小さな企業でありましても、同じようにそうした企業年金というものの恩恵に浴することができるようにもしていかなければならないというふうに思っております。
 新しい時代に対応した年金体制をつくりますためには、どうしても、今、局長が申しましたようなところをやはり整理をしながら円滑にいくようにさらに努めていかなければならないと決意をしているところでございます。
#23
○大島慶久君 終わります。
#24
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 まず最初に、今回の法案の基本的な性格についてお聞きをしたいと思います。
 九八年十月九日の年金審議会の「次期制度改正の個別検討項目についての考え方」、この中で「企業年金が安定的に機能し、高齢期の所得保障の一翼を担うに足る制度となるためには、厚生年金基金以外の制度も含めて、受給権の保護を中心とした共通の基準の設定を内容とする企業年金に関する包括的な基本法の制定が必要である。」と言っております。
 さらに、昨年二月二十三日の社会保障制度審議会は「企業年金制度全体の在り方について検討を加え、包括的な法的整備を早急に行うべきである。」と答申しております。
 この企業年金に関する包括的な基本法の制定、これは一体どのようになっているのか、大臣にまずお聞きしたいと思います。
#25
○国務大臣(坂口力君) 今、小池委員から御指摘をいただきました企業年金基本法についてでございますが、適格退職年金と厚生年金基金とでいわゆる受給権保護などの制度の仕組みに違いがありますため、受給権保護などを図る観点から、確定給付型の企業年金に関する包括的な基本法の制定を検討すべきというふうにされていたものというふうに思います。
 今回の法案は、この方向性に沿いまして、確定給付型の企業年金について受給権保護などを図ります観点から、積立基準でありますとか受託者責任の明確化でありますとか情報開示でありますとか、こうした点について統一的な枠組みのもとに制度整備を行うこととしたものでございます。
 企業年金基本法の考え方としてはこの考え方に沿ったものだというふうに思っておりますが、しかし、内容が基本法というにはやや具体化したものである、基本的な問題だけではなくて、かなり受給権保護の措置の問題でございますとか、あるいは確定給付企業年金制度の内容でありますとかその移行の問題でありますとか、こういう具体的な問題をたくさん含んでおりますので、基本法というのにはやや問題があるといったようなことから、基本法という名前をとらせていただくことができなかった、こういうことでございます。
#26
○小池晃君 私は、やはり基本法の制定が求められていたと。基本法であるならば、やはり米国のERISA法で定めているような受給権保護、受託者責任、情報開示、さらに支払い保証制度や年金のポータビリティー等も含めてきちっと整備をすべきであるにもかかわらず、本法案は、ちょっとこれから議論をしていきたいと思うんですが、いずれも私は不十分である、あるいは全く欠落している部分もあるのではないか。そういう点では、かつて求められていた企業年金基本法ということとは似て非なるものなのではないかというふうに思っておるんですが、その具体的な問題について次に議論をしていきたいと思うんですけれども、まず、受給権保護の問題であります。
 受給権を保護する上で基本となるのは、必要な年金資産がきちっと積み立てられているか、あるいは積み立てられていなければ不足が生じていないかどうか、不足が生じているとすればその解消をどういうふうに指導するのか、これが厚生労働省に求められていることだと思うんです。
 現状の厚生年金基金の決算報告の審査というのは一体どこで行っているのか、そのスタッフの数は今何名か、お答え願いたいと思います。
#27
○政府参考人(辻哲夫君) 現状の厚生年金基金に対する審査等につきましては、厚生労働省の年金局において十名強、地方厚生局において三十名弱、こういった体制で行っております。
#28
○小池晃君 地方厚生局三十名弱というのは、すべてが厚生年金基金の決算報告の審査に加わっておるんですか。
#29
○政府参考人(辻哲夫君) 地方厚生局はその他のさまざまな窓口の受理事務といったことも行っておりますので、決算審査のためだけの仕事ではございません。その他の仕事も行っております。
#30
○小池晃君 これだけ膨大な企業年金、厚生年金基金の決算報告の審査に本省で十名、地方厚生局は兼務で三十名ということですから、これは恐らく帳簿上の帳じりを見るだけで、実際に積み立てられている資産の中身までチェックするなんというのはとてもできないと思うんですね。
 アメリカでは、年金給付保証公社、PBGCだけで七百人以上の体制をとっている。中身を見ても、経営の専門家や公認会計士、年金数理人、こういった人たちがチームをつくって指導しているんだと。日本はこれから適格年金も含めて厚生労働省で見ていくんだと。八万を超える適格年金がここに加わっていくと、この積み立てについての監視や指導を今のような体制でやっていけるというふうにお考えですか。
#31
○政府参考人(辻哲夫君) まず、今御指摘のアメリカの組織、数百人の体制と聞いておりますけれども、若干この点との違いをまず御説明申し上げておきたいと思います。
 アメリカの組織は、支払い保証をいわばみずから行っているという機能を持っておりまして、支払い保証の発動などに当たりまして企業年金の資産、負債額などについて相当詳細な調査が必要となる、こういった点、全くそういう機能に当たる相当なスタッフが必要である。あるいはアメリカの場合は各基金の資産運用はインハウス運用、自分で運用しているといった点もございまして、そういうことについての直接のチェックが必要だということでございます。
 我が国の確定給付企業年金につきましては、支払い保証は今後の検討課題とされているというのとあわせまして、運用は基本的には外部機関、生保、信託等となっておりまして、これはきちっとしたそれぞれの業法でチェックされておりますので、まずこの点の仕組みの差がございます。それにいたしましても、新制度導入に伴う体制の整備につきましては、法案の成立を受けまして今後検討していかなければならないと考えております。
 ただ、あわせまして、さまざまな私ども効率化のための努力もいたしておりまして、まず、新制度の承認等に係る提出書類の簡素化を相当図りまして実質のところがよくチェックできるようにすること、あるいは実施企業の大半を占める中小企業を対象とした簡易な財政再計算の方法を示して、いわばパターン化することによって中身を審査しやすくできるようにすること、こういった効率化を図りますとともに、毎年度の決算書類など年金数理に係る書類につきましては、これは法律に定められておりますけれども、年金数理人の確認を経て大臣あて提出することとされておりまして、そうした民間の専門家を活用することにより行政事務の効率化を図る、こういったさまざまな工夫をしております。
 いずれにしましても、円滑な運営が確保されるように、必要な体制の整備につきましては今後検討してまいりたいと考えております。
#32
○小池晃君 アメリカの制度との違いはよく承知をしておるわけでありまして、その問題をこれからちょっと議論したいと思うんですが、それにしてもけた違いに違うわけで、幾ら簡素化、合理化を図っても、抜本的にやっぱり体制を強化しなければ積み立て不足の解消のための必要な監視や指導なんというのはとても難しいのではないかという危惧を持つわけであります。
 アメリカとの違いの問題でありますけれども、その中身に入りたいんですが、しかもこういう非常に薄いスタッフでやっている上に、日本のシステムというのは、今度の提案でも、報告に基づく行政指導、財政状況の公開、それから労働組合の監視だけであります。アメリカの場合は労働省、DOL、年金給付保証公社、PBGCの関与と、それにあわせて内国歳入庁、日本の国税庁に当たるわけですが、IRS、この三者が監視をしている。最低拠出義務と追加拠出義務を課している。この拠出義務を果たせないと、不足分に対しては一〇%のペナルティー課税も行われる。納税額は損金扱いできないことになっている。
 非常に厳しい拠出義務を課しているわけでありますけれども、日本でも企業年金の信頼性、安定性を高めるということであれば、やはりもっと強制力のある体制、アメリカのようなこういうきちっと拠出義務を守らせるようなことがなければ絵にかいたもちということになるんじゃないでしょうか。
#33
○政府参考人(辻哲夫君) 我々、これまでも厚生年金基金でいわば積立基準に沿う内容をチェックいたしまして、それについて的確な指導を行う、そして積み立て不足というものが相当解消されてきておるという実績を今まで持ってきておりまして、まずこれに沿った体制を整備することを含めまして作業を着実にやっていきたいと考えております。
 一点、御指摘の措置のうち、いわゆる積み立て不足があったときに、いわばペナルティー的といいますか、罰則的に課税措置を用いるというアメリカの方式、これにつきましては、我が国の現状に照らして考えますと、事業主に対する積み立て不足解消のインセンティブになるという一面があることは事実でございますけれども、我が国の現状におきましては非常に厳しい措置であって、そもそも確定給付型の企業年金を続けていこうというインセンティブといいましょうか、こういう気持ちに対してマイナスに働くんではないかと。
 とりわけ、特に我が国の仕組みのもとにおきましては、その企業の従業員や受給者との関係で積み立て不足が問題になるのを、なぜ課税当局の国庫歳入とする形でこれらに対して行政的な効果をねらった措置をとるのかということが我が国ではなかなか大きな問題となると考えておりまして、その点までの措置、いわばペナルティー的な課税措置によって担保するといったところまで我が国では導入は現在考えていないところでございます。
#34
○小池晃君 いろいろおっしゃいましたけれども、最後の問題、ちょっと議論をしたいんですが、税制上の問題でペナルティーを科すのは制度にそぐわないというふうにおっしゃる。しかし、言ってみれば、税制適格年金でも厚生年金基金でも税制上の優遇による誘導をこれまで行ってきたわけであります。そういう形で税制を使って政策誘導してきたにもかかわらず、なぜペナルティーになるとここで税制の出番ではない、税制ではそぐわないというふうにおっしゃるのか、そこはちょっと納得できません。
#35
○政府参考人(辻哲夫君) これは税当局の御所管にかかわることでございますので、私どもが申し上げることが適切かどうかと思いますが、基本的には、国税なら国税の税収を上げるという目的によって収納するという目的の範囲内で、いわば一定の場合に時には政策的な判断でそれを緩和するという体系が見られるところでございますが、さらにアメリカのような類型のタイプで税収を図るという一つの目的の枠の中を一つ超えたような積極的な目的での体系というものは現在ないものと承知いたしております。
#36
○小池晃君 私は、政策誘導で税制を使っているのであれば、こういう積立義務をきちっと課す目的で税制を使うアメリカのやり方には一定の合理性があるというふうに考えるわけであります。
 それからもう一つ、今おっしゃったように、余り厳しくすると確定給付に入ってこないんだというのは、これは大変私は矛盾した言い方だと思うんですね。一方で受給権保護をきちっと確立するんだ、今回の法案はそういうことを目的としているんだというふうに言いながら、一方で厳しくすれば確定給付年金に入ってこない、出ていってしまうんだと。これは大変矛盾だと思うんです。
 今まさに企業年金に対する信頼性が揺らいでいる、そういうときにやるべきことというのは、やはりきちっと積立義務を企業に守らせる、そういう義務を果たすような企業こそ社会的に認知されていくんだと。また同時に、国民から見れば、公的年金の給付水準を引き上げた上でやっぱり企業年金、受給権保護をきちっと確立して信頼できる制度にする、それこそがやはり将来不安を解消していく道であると私は思うんです。
 年金に対する信頼が揺らいでいることは、日銀の二〇〇〇年度の貯蓄と消費に関する世論調査、これを見ても、老後の生活を心配している、あるいは多少心配しているという方を合わせて七九%。これ若い人ほど多いんです。三十歳代が最も多くて八九・二%です。四十歳代は八七・七%と続く。言ってみれば、我々の世代が最も不安を持っていて、約九割の人が年金制度に対する不安を持っている。
 さらに、この日銀の調査を見ると、公的年金や企業年金で老後の生活を賄えるか、こういう点では、年金だけではゆとりがないと答えている人は、世帯主が七十歳以上の世帯では四四・八%。それに対して三十歳代では八二・四%、四十歳代では八〇・一%。特に、若い層では年金支給額の切り下げ、支給開始年齢の引き上げ、こういったものに対する不安が大変強いわけであります。この数年間に行われてきた公的年金の給付水準の切り下げというのがやはり特に若い層を中心に将来不安をかき立てている、これは間違いないと思うんですね。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、これはやはり給付の不確実性に対する私は不安だと。公的年金は支給水準をどんどん切り下げてきた、企業年金は受給権が今のようなままでは非常に脆弱であるということで、私は年金に対する不安というのは解消するどころかますます増幅する一方だと。やはり、私はこの受給権保護というのは、やはりアメリカの制度というのは一つのモデルになると思うんですが、きちっと確立することが企業年金に対する信頼を回復する、そして同時に、これは公的年金もきちっとしなければいけませんけれども、それこそがやはり私は将来不安にこたえていく道ではないか。何か厳しくすれば入ってこないから、そこのところはある程度ちょっと抜け穴をつくっておくんだというようなやり方では、私は今の年金に対する国民の不安を解消することにはならないのではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
#37
○政府参考人(辻哲夫君) その前に、技術的なことでございますけれども、この法案の位置づけについて申し上げたいと思います。
 もともと、受給権保護が図られていない、あるいは不足であるという税制適格年金という膨大な今の実態がございまして、これはあくまでも企業の任意でございますし、その点、税法以外で何のかかわりもなかった制度でございます。これをまず積立義務のあるものに移行していただこう、我が国の現状はその段階であると。そういう段階のもとでむしろ積立義務を講じた、そしてまた、より明確な年金制を明らかにするような給付設計をお願いするというふうに変えた。いわばこういう経過的な、我が国における企業年金の生々発展の歴史から見ればまだ経過的なそういう時期にあるという意味で、先ほど私御答弁申し上げたような考え方でございまして、やはり今の段階におきましては、一歩一歩。しかしながら、この企業年金につきまして多くの国民が強い関心を寄せられるようになりまして、国民の目も深まりましょうし、それから企業にお勤めになるときも、企業年金がしっかりしているのかどうか、それについて情報開示されているのかどうか、これは企業にいわば就職するときの非常に大きなこれからは視点にもなり、そういったことを一歩一歩積み重ねて、現時点においては企業年金というものを形成、確立していく、こういう時期における措置であると考えております。
#38
○小池晃君 適格年金に比べれば積立義務の点で前進しているというのは、それは確かだと思いますけれども、私は、制度全体に受給権保護といいながら、やはりグローバルスタンダードと一方で言っているわけですから、それに照らしてみれば余りにも受給権保護の点でもいろんな意味で抜け穴が大きい、非常に問題がまだまだ残っている法案ではないかというふうに私は思うんですが、大臣、やはりこの点で、企業年金に対する信頼という点から見れば、やはり受給権保護をきちっと明確にしていくことは極めて重要ではないかと思うんですが、大臣いかがですか。
#39
○国務大臣(坂口力君) 企業年金にとりまして受給権保護というのが非常に大事なことはもう御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、受給権保護というものを確実にしていくのに時間をかけながら、しかしその方向にひとつ向けていこうというのでその努力をする仕組みをこの中につくり上げているわけでございます。我々は、これからも受給権保護というものをさらに守っていくように心がけていかなきゃならないと思います。
   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕
 それは御指摘のとおりだと思いますが、今までありました企業年金から新しい企業年金へと移行をいたします中で、一度にこれを確立するということもなかなか難しいわけですから、そこが移行がうまくいけるように努力をしながら行くというふうにしていかざるを得ないというふうに思っております。しかし、最終的にそこが大事だということは、十分に認識をいたしております。
#40
○小池晃君 さらに、積み立て不足の解消の手段として、拠出や運用成績の向上による年金資産の増加、あるいは給付の引き下げによる年金債務の抑制ということにいかざるを得ないと思うんですが、この加入者の給付を引き下げられる場合というのは一体どういう場合なのか、それから受給者の給付を引き下げることができるのかどうか、そしてそれはどのような場合なのか、説明していただきたいと思います。
#41
○政府参考人(辻哲夫君) 現行の厚生年金基金制度において説明申し上げたいと思います。
 現行の厚生年金基金制度におきましては、まず引き下げのケースと申しますのは、母体企業において退職金規程等が変更される場合と。一番極端な場合はもう退職金規程を廃止するといった例もありますけれども、そういった退職金規程そのものが変更される場合。それから、母体企業の経営が悪化している場合、あるいは掛金負担が逆に困難な場合、これ以上引き上げにどうしても合意が得られないという困難な場合、あるいは合併に伴って給付水準を変更する場合、こういった場合に、もとより労使合意のもとでそれぞれの今言った事情に沿って給付を引き下げることも、これは現実的にいわば選択した、あるいは突きつけられた選択肢の中の一つであると考えております。
 また、受給者との関係でございますが、受給者の給付の引き下げにつきましては、基金の存続のためにやむを得ない場合に、全受給者に対する十分な事前説明などを行った上でそれを可能としております。
 ただし、重要なことでございますが、この場合にありましても、受給者が引き下げ後の年金受給を希望せず一時金での一括払いを希望したときには、引き下げ前の給付に見合う一時金を支給するということで、実質的にその水準を受給者については確保するといった措置となっております。
#42
○小池晃君 今の御説明でもあったように、経営の困難などを理由にして給付が切り下げられると。二〇〇〇年には百七十七もの基金で給付の切り下げをやっています。労使の合意があれば加入者の給付の引き下げはできると。既裁定年金についても、受給者の三分の二が同意すれば引き下げられると。
 これもやはりアメリカの制度と比べると、アメリカではもう受給権が発生している給付については、これは引き下げは制度上許されない。それから、企業年金は給与の後払いという考え方が定着をしているわけであります。既裁定分について下げるなんというのは、とんでもないという制度であります。
 私は、既裁定分、受給者の分について、あるいは過去分については、給付の引き下げというのはこれは当然契約違反ということになりますので、これは禁止すべきでないかと。今おっしゃったように、三分の二の同意を得た場合に、受給者でも給付現価で一時金を出すことができる、それとも減額された年金給付かという選択ができるからいいんだというふうなことをおっしゃったけれども、このこと自体、私は受給者にとってみれば既得権の侵害だと、やはり契約違反だと思うんですね。これが選択できるからいいなんてことにはならないと思う。幾ら三分の二の同意を得ても、これは正当化できるものではないというふうに考えるんですが、いかがですか。
#43
○政府参考人(辻哲夫君) 例えば、今御指摘のように、三分の二以上ということで引き下げというのは受給者についても行えるのは事実でございますけれども、ただ日本の企業年金というのは各企業で任意で実施すると。そして、これまでの企業年金の生い立ちというものが、退職金等の雇用慣行、そういったものとの関連においてこれが生まれてきたという実態のもとにおきまして、希望する者については最低積立基準額に相当する額を一時金として、これはいわば年金ではございませんけれども、最低積立基準額に相当する額というものを保証するという歯どめをつけて、今申しましたように、これまでの雇用慣行や退職金制度のバランス上生じたこの制度において認められる一つの考え方、道であると考えております。
#44
○小池晃君 私は、任意の制度だから仕方ないんだということにはならないんじゃないかと。これは、終身の年金として既に退職給付を受給している、そういった人の給付水準を給付が始まってから引き下げることができるなんというのは、これはどう考えてもおかしいなと。これではやはり契約違反だということに私はなると思うんですよ。その点で、今の制度も含めてですけれども、大変問題が大きいと思うんです。
 我が国も国際会計基準の問題が今取り入れられつつあるわけですけれども、国際会計基準では、退職金や企業年金は退職給付債務として計上されることになっている。賃金の後払いという性格が明確に原則になってきていると思うんですね。私は、やはりこういう受給権が発生したものがさらに切り下げられるとか、あるいはもう受給が始まっているのにさらに切り下げるなんということは絶対あっちゃいけないことだと思いますし、そういう点では、やはり賃金の後払いなんだということを明確に位置づけて受給権を保護するということが必要になっているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#45
○政府参考人(辻哲夫君) 繰り返し一点だけ確認をいたしたいことは、受給者につきましては、受給者が希望すれば引き下げ前の給付に見合うものを一時金として支給するということで、ここにいわゆる既得権についての一線というものが画されているということと、それから今の賃金の後払いという性格に徹するべきではないかというお考えでございますけれども、いわば企業年金制度や退職金制度、その性格についてはさまざまな考え方があるのが現状でございまして、現時点における我が国の考え方は、必ずしも企業年金、退職金、賃金の後払いの考え方が定着しているというふうには理解いたしておりませんで、私ども、現実としての企業年金の位置づけにつきましては、我が国の雇用慣行や退職金制度等の現状とのバランスを踏まえて、実態に即した取り扱いを行っているところでございます。
#46
○小池晃君 私どもは、いわゆるグローバルスタンダードというのは弱者の切り捨てになるということで肯定しているものではありませんけれども、でも、こういう労働者の保護になるようなところはグローバルスタンダードといいながら取り入れないというのは、私は御都合主義だと言われても仕方ないんじゃないかというふうに思うんですよ。
 さらに、加入の条件の問題でありますけれども、この法案では年金給付の受給資格期間、これは二十年を超えてはならない、二十年までの間に資格が発生するということになっています。加入期間が三年以上の者は脱退一時金を支給することになっている。
 これもアメリカでは五年勤務すれば一〇〇%の受給権が発生するわけです。それから、勤続三年で二〇%、以降一年ごとに二〇%ずつふやしていって勤続七年になったら一〇〇%受給権を与える、このどっちかを選んでいいと。あるいは、このいずれかよりももっと寛大な方法でもいいと。さらに従業員が拠出した分については、これは一括かつ即時に受給権を付与するということになっているわけですね。
 この点から見ても、日本は二十年だと。これはやはりもっと短くすべきではないかと思いますし、従業員の拠出分についてはこれは一括かつ即時に受給権を付与するということが私は当然ではないかと思うんですが、いかがですか。
#47
○政府参考人(辻哲夫君) まず、二十年の問題でございますが、現在、厚生年金基金の上乗せ部分におきましては、受給資格期間が余り長くなりますと老後の年金を確保するという点からいかがかということで、受給資格期間が二十年を超えないということで余り長い受給資格期間を定めないようにしておりますが、適格退職年金につきましては、退職金の振りかえの過程で、長期勤続の優遇というような思想から、むしろ適格退職年金におきましては二十年未満としてはならない、二十年以上の長期の者に出すということでなければ適格退職年金ではないと、こういった実情があるわけでございます。このようなことから、現実問題として、現行の企業年金におきましては、労使の合意のもとで二十年という受給資格期間を設定している例がかなりあるということでございます。
 そういうことから、確定給付企業年金における老齢給付の受給資格期間については二十年以上としてはならないと。したがいまして、これは労使が話し合えばもちろん短くなるわけでございますが、二十年以上としてはならないというのは規制でございまして、規制としてはこれが限度で、これ以上もっと短くしなくちゃいけないということは難しいと考えております。
 それから、本人拠出分について何らかの受給権を付与すべきという御指摘でございますが、この前提といたしまして、新制度では三年以上加入すれば脱退一時金が、例えば二十年と受給資格期間が認められたときに、二十年に満たなくても脱退一時金が支給されなくてはならないとしておりますが、三年未満の場合には必ずしも脱退一時金が支給されなければならないとなっていないと。
 この点につきまして、本人拠出分については何らかの受給権を付与すべきというふうに御指摘されているものと考えるわけでございますが、これにつきまして、そもそも確定給付型の企業年金は加入者間における相互扶助の仕組みでありまして、本人拠出分についても基本的にはそれを運用して自分に戻ってくるというんじゃなくて、相互扶助のためにまず拠出されたものだということ。それから、本人拠出を設ける場合でありましても、実際は拠出するかどうかは本人の選択で、今は企業拠出が基本でございます。
 このようなことから考えますと、今言いました三年未満のときに本人拠出分を必ず支給しなければならないという規制まで行っておりません。
 ただ、個別の企業年金において労使が合意いたしまして、老齢給付金や今の脱退一時金の三年につきましてももっと短い受給資格期間を定めて、あるいは本人拠出分は必ず返しますというルールにする、こういったことは、労使合意があればこの新制度において何ら妨げるものではございません。
#48
○小池晃君 すべて労使合意で、規定はないわけですね。本人拠出分について法律上その定めすらないというのは、私はこれは法の欠陥だと思います。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。
 それからさらに、支払い保証制度の問題なんですけれども、現行の厚生年金基金の問題でちょっと見ていきたいんですが、厚生年金基金の支払い保証制度、これは八九年から全基金参加の任意の共済事業としてやっているわけです。これは加算部分について保証するんですね。
 これ、代行部分は一体どうなるのかと。今まで代行部分を割り込んで、結果として最後まで割り込んで解散した基金はなかったわけですけれども、今後その代行部分を割り込んで解散するような基金が出てくることだって十分考えられると思う。代行部分を割り込んだ場合はどうなるんですか。
#49
○政府参考人(辻哲夫君) 代行部分につきましては、もとよりこれは厚生年金制度の代行として、当然これはもう本体と同様に代行部分は行わなければならないものでございまして、支払い保証制度の対象とはなっておりません。
#50
○小池晃君 いや、当然積み立てておかなきゃいけないってそういう原則論だけで言うけれども、例えば九四年に日本紡績業厚生年金基金が解散した、このとき代行部分の積み立て不足があったわけですね、十三億円。それを中小企業の方たちが拠出して何とか補ってという経過があったわけです。実例はあるんですから、これは代行部分を割り込んだ場合どうするのか、全くそういったことを想定していないということでいいんですか。
#51
○政府参考人(辻哲夫君) 私ども、代行部分につきましては、これは今言ったような例があったのは事実でございますが、これにつきまして、これを割り込んでいることさえも想定してこの制度を運営するというのは、そもそも厚生年金基金の制度のあり方そのものにかかわることでございまして、私ども、この代行部分については、経済の状況によって一時割り込んだという例のあるものがあるわけでございますが、これは必ず不足を補っていただくように法律を運用する考えでございます。
#52
○小池晃君 代行のところは制度上そういったことを想定していないと。しかも、代行部分の上乗せ部分、加算部分についても、代行部分の三割までしか保証しないわけであります。
 実態を見ると、基金の上乗せ給付の水準というのはもうはるかに超えているわけですね。例えば四割未満の上乗せというのは百九十二基金にすぎません。まして、三割というところはもう一割にも満たない。十割以上を上乗せしているところが七百十基金もある。これは積み立て不足で基金が解散した場合の扱いとして、九割以上の基金の労働者というのは給付の切り下げになる。約束されていた加算部分の年金の三分の一か四分の一しか皆もらえないということになるわけですね。これでは基金に支払い保証制度があるといっても大変不十分だと。私はこれは保証を厚くすべきではないかと思うんですが、いかがですか。
#53
○政府参考人(辻哲夫君) この支払い保証制度につきましては、もとより企業がおのおのみずからの責任で企業を経営し、労使でその企業の年金について話し合っていくという現状のもとで、いわば企業の消長ということを含めましてまず企業責任で企業があり、その中での企業年金である。こういったことから、いわば企業が苦況に陥ったときにそれを補てんする相互扶助の仕組みにつきましては、どこまでやるべきか、やるべきであるか、やらないであるかということについても、相当我が国においては幅の広い立場があるのは現状でございます。
 そんな中で、厚生年金基金につきましては、これは支払い義務を負うた制度でございますので、いわば相当そういう助け合いの合意の土壌があるということから、これは全基金の総意に基づく任意の事業として実施されているものでございます。そして、任意で行うものの合意として、いわば給付における共通のベース、設立認可要件である代行給付の三割相当分を持たねばならないという上乗せのその部分を保証範囲とするということで支払い保証制度が合意されたものでございます。
 したがいまして、これをさらに保証を拡大するかどうかということにつきまして、今言ったような背景から、厚生年金基金関係者の自主的な判断を尊重するということが必要であると考えております。
#54
○小池晃君 支払い保証制度があるという厚生年金基金でもこの程度だ、任意の制度だからしようがないんだと。しかも、この法案で出ている新企業年金にはこの支払い保証制度がないわけであります。この点でも欠陥法案だということを申し上げたいと思います。やはりこの点でも、アメリカは企業の従業員の年金給付の支払い保証制度がある、こういったことに倣って支払い保証制度を私はつくるべきだというふうに考えます。
 それから、基金連合会の問題ですが、この積み立て不足をどう見るか、基金連合会の積み立て不足が最近の数字で幾らになっているか、これは一体だれが補てんする仕組みになっているのか、御説明願いたいと思います。
#55
○政府参考人(辻哲夫君) まず、積み立て不足と申しますか、年金債務に対する年金資産の額は、約二千億円不足しているという現実でございます。
 これにつきましてどのようにそれを補てんするという形になっているのかということでございますが、厚生年金基金連合会の財政運営上、積み立て不足が生じた場合には企業が穴埋めを行うような仕組みとはなっておりません。通常の企業年金であれば企業が追加拠出を行うわけでございますが、厚生年金基金連合会はそのようになっておりません。
 しかし、一般の企業年金と異なりまして、リストラ等による加入者の大量脱退によって急激に給付が発生する、あるいは積立金が減少する、こういったことはなく、いわゆる解散あるいは中途脱退者が、着実にという表現は不適切でございますけれども、コンスタントに加入してくるということで、より長期安定的な運用が可能であるという枠組みを持っております。
 そうしたことから、厚生年金基金連合会は長期的な収益目標を立てて、それを達成できるように債券や株式などの各種資産の資産構成割合を定めて運用しているところでございまして、このような長期的な運用によって、長期的には不足金を回収することが十分可能であると考えております。
 なお、短期的に見ましても、現在の連合会の給付は七千億円程度でございまして、資産規模四・六兆円に比べまして相当小さなものでございまして、そのような意味で運営に不安がよぎるということはございません。
 現在の連合会の給付は七百億円、失礼しました、七百億円ということで資産規模四・六兆円に比べて大変小さなものでございますので、いわば今、そういう運用状況のもとで厚生年金基金連合会がどうこうなるということはありませんで、今言いましたような観点から、長期的な運用によって回収できるものと考えております。
#56
○小池晃君 しかし、現実に積み立て不足が生じているわけであります。制度上これを補てんするものがない、制度がないと。やはりここは制度の欠陥だということを指摘しておきたいというふうに思うんですね。
 さらにお聞きしたいのは、厚生年金基金を厚生省が天下り先として利用してきた面もあるんじゃないか。お聞きをしたいんですけれども、厚生年金基金の連合会と各基金にどれぐらいの厚生労働省の職員が天下りをしているか、お示しいただきたい。
#57
○政府参考人(辻哲夫君) 厚生年金基金に在職している厚生労働省関係OBといたしましては、平成十年十一月現在で千八百十九の基金について、常勤役員として本庁、本省から八十八人、地方庁から六百三十一人が就職しており、また厚生年金基金連合会に在籍している厚生労働省関係のOBとしては常勤役員四名が就職しております。
#58
○小池晃君 この厚生年金基金関連だけで七百人を超える職員が天下りをしている。大臣、こういう実態をお聞きになってどう思われますか。やはり厚生行政の一部門ですね、厚生年金基金という、そこにこれだけ多数の天下りが行われているということは私は異常ではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
#59
○国務大臣(坂口力君) 天下りの問題は、この問題に限らず我々が一度検討し直さなければならない問題だというふうに思っているわけでございます。したがいまして、それは中には本当に請われて、この人でなければもうできないというようなことがあって請われて行くという人もそれは中にはあるというふうに思いますが、押しかけでとにかく何が何でもここにはこの次にはこの人だというふうに押しかけて役所の人間が次々に行くということは、これはやはり自重しなきゃならないことだし、それは新しい年金制度にしましても、こういう新しい制度をつくり上げていきますときに決してプラスになることではないというふうに思っております。
#60
○小池晃君 最後に、年金の空洞化の問題についてお伺いをしたいんですけれども、実態調査が報告されました。加入者百万人ふえているのに、納付者が五十万人減っている。完納者は百万人も減っていると。完納者は九百二十四万人ということですね。第一号の未加入者が九十九万人おりますので、本来第一号被保険者となるべき人数は二千二百十七万人、これは納付者と完納者をこれらとの比率で見ると、納付者は五〇・三%、完納者に至っては四一・七%。
 先ほど大臣は、これは国民年金だけ見れば五割という数字になるけれども、年金制度全体で見れば五%なんだとおっしゃったけれども、これは私はちょっと無理のある議論だと思うんですよ。だって、やはり事業所を通じて徴収している被用者保険も含めて見せるというのはこれはおかしい。やはりそれぞれが個別に年金を納入する第一号の対象者から見てどれだけ納入しているのかということが、これがやはり納入率だというふうに見るべきだし、それが五割に至っている事実をやはり深刻に受けとめるべきだというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょう。
#61
○国務大臣(坂口力君) 先ほど大島委員にお答えを申しましたとおり、第一号被保険者、この分野におきまして未納者、未加入者が非常に多いということは、これは御指摘のとおりでございます。
 これは決して私たちはこのことをやむを得ないというふうに思っているわけではございませんで、このことを何とか一人でも少なくしていく努力をしていかなければならないというふうに思っているわけでございますが、その中をいろいろと検討をしてみますと、やはり公的年金というものに対する認識というものが十分に御理解をされていない。中には、経済的な理由でどうしても支払いのできないという方もおみえでございますけれども、しかしそういう人ばかりではなくて、むしろそうではなくて、経済的なゆとりはあるけれども、公的年金に対してもう関心がないと申しますか、公的年金に自分はもう入らない、ほかの個人的な個人年金等でもうやっていくというような方がかなりおみえになるわけでございます。
   〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕
 その皆さん方には、個人の立場としての年金とそして相互扶助としての年金と、両方との意味合いでひとつ御理解をいただくということをこれからもっともっとやっぱりやっていかないといけないというふうに思っております。
 これはかなり精力的にやらないといけませんので、今まで以上にひとつ新しい皆さん方に対する働きかけをしていきたいと思っているところでございます。
#62
○小池晃君 もう時間ですので質問はしませんけれども、今の認識は私は一致しません。
 公的年金に対する認識の問題だとおっしゃるけれども、実態を見れば、三十歳以上は全部国民年金を当てにしていない理由として、保険料が高く経済的に支払うのが困難だというのがもう六割、七割超えているわけですね。二十代を見ても、これちょっと低いんですけれども、逆に学生であり親に負担をかけたくないという人が大変多いわけです。やはり未納者が約半分にも達している最大の理由は、私はこの保険料の高さだと、それから給付水準がどんどんどんどん切り下げられていることだと、それに対する不信感だと。
 今回の企業年金法も、じゃそれに上乗せする部分で本当に信頼性のあるものかというと、先ほど来議論してきているように、受給権保護という点では数々の問題点が私はあると。やはり年金に対する信頼性を高めるというのであれば、公的年金の給付水準をしっかり国が支える、同時に企業年金については、企業の社会的責任を守らせて受給権保護、支払い保証がきちっと整った制度にしていくということが必要であるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
#63
○西川きよし君 どうぞよろしくお願いいたします。
 私の方からは、まず、今回の新しい企業年金が果たす役割についてお伺いしたいと思います。
 今回の企業年金の分野で新たにこの新企業年金とそして確定拠出年金という二つの新しい制度が提案されたわけですが、このうち確定拠出年金につきましては、これまでの一時期、産業界また金融界から過熱した期待が持たれたように私自身感じております。
 一方、この確定給付型年金につきましては、どちらかと申しますと確定拠出の陰に隠れたとでも言いましょうか、例えば本屋さんなんかに参りましても、確定拠出年金関係の本は多いんですけれども、一般向けから企業向けいろいろ所狭しと並べてあるんですけれども、これに比べてこちらの方はほとんど目にしないというようなことが実感であります。国民の関心がやっぱり低いのかなというふうに、こんなにも格差があるのかなというふうに感じるわけです。
 しかし、中身を見ますと、この受給権の保護を図る、あるいは代行の返上にいたしましても、従業員そしてまた企業側の双方にとってかなり重要な問題が含まれている、こう思うわけですけれども、この新しい確定給付型年金が従業員や企業のそれぞれにどのような役割を果たしていくのか、まず冒頭、大臣にこの御答弁をいただいて進めてまいりたいと思います。
#64
○国務大臣(坂口力君) 現行の確定給付型の企業年金についてでありますが、厚生年金基金、それから適格退職年金が今までございました。近年、経済環境が非常に悪化をしましたり、そうした状況の中で、企業倒産の際に年金資金が十分に確保されていないなどの事例が出てまいりました。受給権保護のための制度整備というものをどうしてもやらないといけない、新しい制度というものを考えていかなければならないということになってまいりました。
 このために、従業員にとりましては、積立義務の設定、受託者責任の明確化、それから情報開示、これらのことの措置を統一的に定めることによりまして受給権の保護を図らなければならないということになったわけでございます。一方、企業にとりましては、厚生年金基金の代行返上が可能となりますなど、個々の実情に応じた企業年金制度が選択できるようになりますし、企業合併等の構造改革にも資するものとなっているわけでございます。
 このように、確定給付型の企業年金を国民により信頼される制度として再構築する今回の法案は、従業員、企業それぞれにとってメリットとなるものであるというふうに考えております。今までの企業年金のマイナス面を補いまして、そして新しい時代に対応できる年金制度へ移行をさせるために、一方におきましては確定給付型の年金、それからもう一つは拠出型の年金、双方を並べて、そして選択制もふやし、そして国民の側から見ましてもどれかには入ることができる、中小企業の皆さん方もどれかは選択ができる、そういった方向に持っていきたいというのが今回の年金改正の趣旨でございます。
#65
○西川きよし君 ありがとうございました。
 私も、質問させていただきますときには、できるだけ生活者の皆さん方が日々の生活の中で感じておられる行政だとか法律に対する不安であるとか矛盾、そういったものをこの場で皆さん方にお伝えをし、質問をさせていただいて取り組んでいる、そういうことを日々私も心がけているわけです。大体おはがきとかお手紙とかそういったものをいただいてこちらの方で質問をさせていただくように僕はいたしておりますけれども、そういったお便りの内容を見ておりますと、年金に関する御相談は大変たくさんございます。
 でも、不思議なことに、企業年金ということになりますと、非常にといいますかもうほとんどないといいますか少ないわけでございますけれども、その背景には企業年金というものが会社の従業員の福利厚生の一環と申しましょうか、そういう部分であって、会社ごとに違うんだということで、家庭でいえば他人の家のことをとやかく言うのはよくないんじゃないかというような、そんな感じにも感じるわけですけれども、そういう思いが皆さんあるかもわかりません。
 しかし、理由はそれだけではないと思うわけです。今までの企業年金制度のシステムというものが非常に複雑で難解だということが実態だというふうに思うわけですけれども、本当にわかりにくい難しい問題であります。国民年金や厚生年金については毎回のように国民的な議論へと発展をするわけですけれども、国民の皆さんは年金に対して決して関心がない、無関心ではないと思います。
 そこには政府としても、国民に対して説明でありますとか呼びかけでありますとか、少しはそういった呼びかけ等々に対する問題があるのではないかなというふうに私は感じますが、もっともっと国民的な議論へ発展をさせていくというような方策も考えていただきたい、必要ではないかなというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。
#66
○国務大臣(坂口力君) これまで企業年金につきましては、企業の方も余り説明してこなかった経緯もあると思うんです。もちろん大きい企業で労働組合等がきちっとしているところは、労働組合の幹部の皆さん方にどういう状況であるかといったようなことの御説明は多分してきただろうというふうに思うんですが、そうではない企業におきましては余り説明もしてこなかった。したがって、自分が勤めている企業が企業年金に入っているかどうかも御本人は知らないといったようなケースも多かったと思います、自分がそこで掛金をするわけではございませんから。そうしたこともございまして、関心も薄かったのではないかというふうに思います。
 そして、今までは経済もどんどんと右肩上がりでよくなっておりましたから、企業年金が非常に重大な状況に陥るというようなことも今までなかったものでございますから、余り騒がれることもなかった。しかし、最近、経済もこうした状況になってまいりまして、企業そのものだけではなくて、企業年金も財政的に非常に破綻に近い状況になってくるといったようなところもあったりいたしまして、皆さん方の最近関心を呼ぶようになった。
 そうしたこともございますので、本当は積み立てをきちっとしておかなければならなかったにもかかわらず積み立てがされていなかったといったようなケースも多いわけでございますので、今回そうしたところをきちっと整理もして、そして積み立てはちゃんとしなければならないようにするとか、そうしたことも改めるべきところは改めて今回出させていただいた、こういうことでございます。
#67
○西川きよし君 これまでの大臣の御答弁の中でも、中小企業に対してのお考えはたびたび述べられておられます。
 いろいろお話をお伺いいたしまして、企業年金なんかは大きな企業のサラリーマンの人の話で私らには余り関係ありませんとあっさりと言う方も決して少なくないわけですけれども、中小企業で働く皆さん方が入りやすい、企業の皆さん方が導入しやすい企業年金をどのように整備をしていくのかということがこれまでの大変大きな課題であったと思うわけです。
 今回の新しい企業年金の仕組みにおいて、こうしたこれまで企業年金、いわゆる三階部分の恩恵を受けることが難しかった方々に対してどのような対応をされるおつもりなのか、あわせてお伺いしたいと思います。
#68
○政府参考人(辻哲夫君) 御指摘のとおり、確定給付型の企業年金は中小企業での実施が難しく、普及が十分進んでいないという状況にあるのは事実でございます。
 まず、この三階というものを中小企業にどのように普及するようにしていくのかという意味では、現在、企業年金の多様な選択肢の一つとして確定拠出年金を導入するための法案を提出させていただいておりますが、これはまずもって中小零細企業にも普及しやすい、また転職の際の年金資産の移しかえ、すなわちポータビリティーが十分に確保されて労働移動に対応しやすいといった特徴があり、中小企業の皆様からも現に期待が大きいというふうに聞いております。この確定拠出年金制度の導入によりまして、中小企業におけるいわば三階部分の年金の普及を図ることができると考えております。したがいまして、何とぞ早期導入に向けて早い成立をお願い申し上げたいと思っております。
 また、確定給付型の企業年金につきましても、今回の法案におきましては、できる限り柔軟な給付設計ができるように、すなわち企業の実情に応じた給付設計ができるように配慮するとともに、中小企業につきましては簡易な財政再計算の方法をセットするといった配慮を行っておりまして、こういった点を十分広報、周知いたしまして、中小企業を含めまして、この確定給付型企業年金も一層普及されるように努力してまいりたいと考えております。
#69
○西川きよし君 ありがとうございます。
 これまで衆議院の御議論を通じまして、院内の中継とか、そしてまた議事録、いろいろと勉強させていただいたんですが、本日改めて厚生労働省のお考えをお伺いいたしたいと思います。
 まず、適格退職年金から新企業年金への移行問題ですけれども、例えば、そもそも今回の企業年金制度の新たな枠組みは本当に必要なのかどうか、あるいは中小企業の経営者が費用のかかる年金積み立ての財政検証を行わなければならないといった新制度への移行を嫌がって、場合によっては企業年金そのものをやめてしまう可能性はないのか、また、移行の期間を政府は十年と提案するが、その間に本当に企業内に新企業年金制度へ移行する必要があるとの認識が高まるのかどうか、こうした意見が出されていたと思います。
 この適格退職年金から新企業年金制度への移行問題ですけれども、これまでの議論でどのような整理がされたのか、局長にお伺いしたいと思います。
#70
○政府参考人(辻哲夫君) まず、この新たな枠組み、やはり適格退職年金については受給権保護というものをより強化することが必要だと。したがって、どうしてもこの新しい枠組みというものを必要とし、かつそれに移行させなければならないという認識のもとで、この十年間の移行期間のもとでどのように配慮を行うかということでございます。
 まず、積み立て不足の解消、これは厚生年金基金同様、原則として二十年以内に行うことを考えておりますけれども、この適格退職年金から移行してくる新企業年金については、特例として最長三十年間ぐらいかけてじっくりと解消していただく、しかしながら解消していただくということ。それから、中小企業を対象とした簡易な財政再計算方法を示すといったこと。それから、今までの雇用慣行といった中で生まれてきた適格退職年金を移行させるわけでございますから、給付設計に関しましても、新制度において、例えば受給資格期間が二十年以上の者については年金を支給しなければならないという新しい枠組みがかぶせられるわけですけれども、やはり今言ったような背景から、移行時に既に適格退職年金に加入している方につきましては、可能な限り従前どおりの受給資格期間について認めまして、そしてそのようなことにより無理なく移行できるようにする、こういったことを考えております。
 また、あわせまして、移行先につきまして、基本は適格退職年金に移るということが望ましいと考えておりますけれども、企業の実情によりましては、新制度のほかに、今御指摘ありました確定拠出年金あるいは中小企業退職金共済制度、こういったことも移行が可能なように法的手当てがそれを選択できるようにされております。
 これらのことによりまして、企業に過重な負担がかからないようにしながら、適格退職年金からの円滑な移行が図られるものと考えております。
#71
○西川きよし君 ありがとうございました。
 時間が短いものですから、次に、支払い保証制度についてお伺いしたいと思うんですけれども、今回の法案にはなぜ支払い保証制度が盛り込めなかったのか、私自身も大変大きな問題であるというふうに感じております。
 この点につきまして、これまで例えば厚生年金基金連合会には支払い保証制度があるのに新年金ではなぜできないのか、あるいはモラルハザードが起きる可能性については、例えばアメリカやイギリスは支払い保証制度を持っているわけですけれども、諸外国でできてなぜ日本にはできないのかなというふうに素朴な疑問を抱きます。この支払い保証が創設されないままで果たして受給権保護と言えるのか、こうした意見が非常に強かったように思うわけです。
 この支払い保証制度については今後の検討課題との御答弁を繰り返し勉強の中でも伺い、議事録の方も見せていただいたわけですけれども、いかがお考えでしょうか。
#72
○政府参考人(辻哲夫君) 現在の我が国の企業年金、すなわち確定給付型の企業年金につきましては厚生年金基金がございますけれども、適格退職年金が税法上設けられて長く続いておるといったように、いわば発展途上にあるという状況にあろうかと思います。この発展途上におきまして、今お話ししました厚生年金基金の方は積立金もかぶっておりますので、不足はあってもわずかでございます。一方、適格退職年金からの移行グループは相当な積み立て不足があるのは事実でございます。
 このように相当格差がある中で相互扶助制度である支払い保証制度を導入することについて、これは一種の保険制度でございますので、我が国の今の現状においては合意が得られないといったことで支払い保証制度が導入されず、今後の検討課題とされた次第でございます。
#73
○西川きよし君 よろしくお願いいたします。
 次に、代行返上についてでございます。
 この点につきましては、現物返上された株式などが厚生年金全体に与える影響、新企業年金制度が導入された後の厚生年金基金への影響、こうした点に対する懸念がある、こう思うわけですけれども、この代行返上についてのそれぞれの影響をどのように考えているのか、これを最後の質問として終わりたいと思います。局長、よろしくお願いします。
#74
○政府参考人(辻哲夫君) このたび厚生年金基金からの代行返上が認められるという改正内容を含んでおりますが、この際、代行返上に伴って、特に返上を受ける側の公的年金の運用に悪影響があるのではないかという御指摘がございます。
 この点につきまして、現物資産で行うということによってその御懸念があるわけでございますが、公的年金の積立金は、現在、現に債券も株式も持って、現金でじっと持っているのではなくて、さまざまな資産の運用によっていわば成り立っております。その運用方針に沿ったもののみ、いわばもともと自分が持っているのと同じ状態による場合のみ代行返上を現物で認めることにしております。したがいまして、これによって公的年金の運用に悪い影響が出ることはないというふうに考えておりまして、代行返上につきまして、あらかじめ今言った考え方で、決められたルールに基づいて適正に行われるようにしっかりと執行してまいりたいと考えております。
#75
○西川きよし君 終わります。
#76
○黒岩秩子君 今までの御議論にもありますように、今回のこの問題というのは、中小零細企業にとってのことが一番大きな問題だと考えております。適格退職年金というのは名前のとおり退職金であるという考え方が中小零細企業では多くあり、その退職金を分割払いしているという考え方がこれらの企業では多いと聞いております。
 今回、この適格退職年金にかわる新企業年金制度として確定給付企業年金ができたわけですけれども、今度の確定給付企業年金は年金と考えてよろしいのでしょうか、それともやはり退職金ということなのでしょうか。
#77
○政府参考人(辻哲夫君) 適格退職年金は、御指摘ありましたように、その名のとおり年金制度として出発したことは事実でございますが、その多くが退職一時金の一部を切りかえる形で実施されたという経緯がある面も事実でございます。
 したがいまして、この法律に基づく新企業年金は適格退職年金から移行してくるための受け皿となることを想定しておりますので、適格退職年金同様、年金制度であると同時に、退職一時金の一部を切りかえる形で実施されることを踏まえた、そういった両面を持った、あくまでも年金でございますけれども、今言った経過を内包した仕組みであると考えております。
#78
○黒岩秩子君 実は、年金か退職金かということには大変大きな違いがありまして、退職金というのは法的に整備されているわけではないので、懲戒解雇というような事態になった場合には退職金は払われないのが普通だと思います。しかし、年金という考え方でいけば、懲戒解雇とかあるいは自発的退職というような、退職事由のいかんによって減額されるというようなことがないわけですので、確定給付企業年金を運用するに当たっては、退職事由によって受給額の減額が起きないように政令とかガイドラインなどで整備をするというお考えはありませんでしょうか。
#79
○国務大臣(坂口力君) 大変、一つの急所と申しますか、この法律、この年金制度の持っております問題点を的確につかれたというふうに思います。
 現在の企業年金制度ですとかあるいは退職一時金制度の実態を見ますと、懲戒解雇等の場合に支給を行わないことですとか、あるいは自己都合の退職でありますとか会社都合の退職で給付額が異なるものが非常に多くなっております。また、このような取り扱いは退職金規程などに明記しておけば法的にも認められているところでございます。
 このような現状を踏まえまして、この法案におきましては、懲戒解雇ですとかあるいは自己都合退職による減額には規制を設けていないものでございますが、政令などに規定するまでもなく、労使合意に基づきましてこのような場合にも給付額に変更はないという取り扱いをすることは当然可能であるというふうに思います。そこのところを御理解いただきたいと思います。
#80
○黒岩秩子君 しかし、今労使協定と言われましたけれども、多くの中小零細企業においては労働組合がありませんから、そういうところでそういうことが行われない、そして小さければ小さいほど労働者の立場は弱いわけですから、そこでこのような政令とかガイドラインなどで今の問題を労働者の側に立って考えるようにしていっていただきたいと思いますが、そういう方向性は出ないのでしょうか。
#81
○政府参考人(辻哲夫君) 今、大臣が仰せになったような形でこの法案の性格あるいは実施を考えているわけでございますので、私ども、今度は厚生労働省の方でこの企業年金を所管させていただきますし、また今までの税法上の根拠を持った優遇措置のためだけのものではなくて、さまざまな諸権限を持って運用するものでございます。そのようなことから、企業年金を実施する事業主に対しまして指導する立場にございますので、今の御指摘を十分念頭に置きまして、指導という面で今の大臣のお考え方をよく普及させたいと思います。
#82
○黒岩秩子君 そのような方向でよろしくお願いいたします。
 今度は次に、確定給付企業年金の積立金を事業主が従業員の合意なく取り崩したりして、その後また再積み立てを行わなかったというような場合に、この事業主は背任などの犯罪に問われるのでしょうか。
#83
○政府参考人(古田佑紀君) 背任罪と申しますのは、御案内のとおり、人のためにいろんな事務を処理している者が自分やあるいはほかの人間の利益を図るためにその任務に背いて損害を与えたということになるわけでございます。
 ところで、今お尋ねのような問題につきましては、これはある特定の制度の中で起こってくる事柄について一般的な刑法はどういうふうに適用されるかという問題でございますので、具体的な事実関係によることが非常に多いわけでございます。例えば、今お尋ねのような事態が生じた場合のその積立金の処分がどうなったかとか、そういうふうなことに照らして判断されるということになると思います。
#84
○黒岩秩子君 いろいろな場合があるということはあり得ると思いますけれども、企業というのは事業主が持ち主なわけではないので、その企業主にとっては積み立てが行われないという状態というのは労働者に対する保障ができないことになるわけですから、企業主に対する背任ということになると考えるのですけれども、どうでしょうか。
#85
○政府参考人(古田佑紀君) この制度の中で、企業主はどういう形でどういうことをしなければならないかという問題と、それが刑法上の例えば背任でありますとかあるいは業務上横領でありますとか、こういうものにその特定の行為が当たるかどうかというのは、やはりちょっと違った問題でございます。
 したがいまして、先ほども申し上げましたように、何らかの刑法上の犯罪が成立するかどうかということは、どういう事情でそういう行為が行われ、あるいはどういうふうなぐあいにお金が使われたのかとか、そういう証拠関係を総合した上でなければ、何か特定の刑法上の犯罪に直ちに当たるとか当たらないとか申し上げることはこれは難しいということを御理解いただきたいと存じます。
#86
○黒岩秩子君 確かに難しいことだと思います。ただ、事業主に対して、そのようなことというのがいかにひどいことであるかということについて徹底していっていただきたいと思います。
 次の問題に移ります。
 事業主が行うこととされている従業員への情報開示について、偽りの内容を伝えた場合に、これは犯罪になるのでしょうか。
#87
○政府参考人(辻哲夫君) この確定給付企業年金法の七十三条におきまして、事業主等は業務の概況について加入者に周知しなければならないこととされており、さらに衆議院における御審議の結果、同条第二項に受給者に対して周知に努める義務を追加する修正がなされたところでございます。
 これらの規定の趣旨でございますが、加入者につきましては、企業年金の運営に参画しているため意思決定に不可欠な情報提供を義務づけるという趣旨でございますし、また受給者につきましては、運営には参画しないものの、受給権保護の観点から同様の情報提供を行うことが望ましいため事業主等に努力を促す趣旨でそれぞれ置かれたものでございます。
 いずれの場合も情報の内容は当然正確なものでなければならないということでございますが、この情報開示につきましては、内容に偽りの疑いがある場合、この制度といたしましては、厚生労働大臣は報告を求め、立入検査を行うことができます。これに対して、報告をせず、または虚偽の報告をした場合は六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金に処することとされております。
 この結果、偽りであると認めるとき、厚生労働大臣は事業主に対し改善命令を行うことができますし、この命令に違反したときは百万円以下の過料に処することとされております。さらに、規約の承認取り消しや基金の解散を命ずることもできます。このほか、厚生労働大臣は、規約の変更命令、基金の役員の解任命令も行うことができまして、このような法体系のもとで、偽りの情報開示が行われないように担保しようといたしております。
#88
○黒岩秩子君 わかりました。そのようなことでよろしくお願いいたします。
 質問を終わります。
#89
○委員長(中島眞人君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午前十一時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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