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2001/03/05 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 国際問題に関する調査会 第4号
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2001/03/05 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 国際問題に関する調査会 第4号

#1
第151回国会 国際問題に関する調査会 第4号
平成十三年三月五日(月曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十七日
    辞任         補欠選任   
     高橋 令則君     戸田 邦司君
 二月二十八日
    辞任         補欠選任   
     戸田 邦司君     高橋 令則君
 三月二日
    辞任         補欠選任   
     本田 良一君     藤井 俊男君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         関谷 勝嗣君
    理 事
                佐々木知子君
                山本 一太君
                今井  澄君
                高野 博師君
                井上 美代君
    委 員
                入澤  肇君
                亀井 郁夫君
                田中 直紀君
                松谷蒼一郎君
                山内 俊夫君
                山下 善彦君
                木俣 佳丈君
                佐藤 雄平君
                広中和歌子君
                藤井 俊男君
                沢 たまき君
                緒方 靖夫君
                高橋 令則君
                島袋 宗康君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        鴫谷  潤君
   参考人
       防衛研究所第二
       研究部長     高木誠一郎君
       京都大学大学院
       法学研究科助教
       授        中西  寛君
       読売新聞社論説
       委員       山岡 邦彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「二十一世紀における世界と日本」のうち、
 東アジアの安全保障について)

    ─────────────
#2
○会長(関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る三月二日、本田良一君が委員を辞任され、その補欠として藤井俊男君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(関谷勝嗣君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会の調査テーマである「二十一世紀における世界と日本」のうち、東アジアの安全保障について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、防衛研究所第二研究部長高木誠一郎参考人、京都大学大学院法学研究科助教授中西寛参考人及び読売新聞社論説委員山岡邦彦参考人に御出席いただいております。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。
 本日は忌憚のない御意見を承りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、高木参考人、中西参考人、山岡参考人の順でお一人三十分以内で御意見をお述べいただいた後、午後四時三十分ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、意見、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、高木参考人から御意見をお述べいただきます。高木参考人。
#4
○参考人(高木誠一郎君) どうもありがとうございます。
 本日はこのような機会を与えていただきまして、大変光栄に存じております。
 私に与えられましたテーマは東アジアの安全保障状況ということでございます。
 まず、冒頭にこの地域における安全保障問題の大まかな見取り図を示して、その後中国と台湾の関係、それから中国の国内の政治的安定性に話を進めてまいりたいと存じます。これからお話しいたしますように、朝鮮半島の問題も大変重要でございますが、山岡参考人がこの専門家でいらっしゃいますし、時間の制約もありますので、全体の見取り図の後では中国のことを中心にお話ししてまいりたいと存じます。
 東アジア地域の安全保障上の最大の問題は、申すまでもなく朝鮮半島の状況と中国、台湾の関係でありますが、この二つの問題はいわゆる冷戦の産物でありまして、一九九〇年代の初めに冷戦が終わったときに、それにもかかわらず残っている冷戦の遺物であるというような表現がよくなされました。
 このような言い方をする前提には、冷戦が終わった以上これらの問題も解決すべきである、あるいは解決して当然であるという考え方があったのではないかと思いますが、私は、確かにこの二つの問題は冷戦の産物ではあっても、冷戦の終えんによって当然比較的容易に解決するというようなふうに考えるのは事態の本質を見失うものであろうというふうに考えております。
 と申しますのは、冷戦というのは決して固定的な時期ではございませんで、冷戦の間にもこの二つの問題には重要な変化が起こっておりまして、冷戦の終えんは問題の複雑化をもたらしこそすれ、問題の解決を容易にするものでは必ずしもないというふうに考えております。
 具体的に申し上げます。
 まず、朝鮮半島の問題ですが、最近の情勢については先ほど申しましたように山岡参考人にお任せしたいと思いますが、冷戦期に二つの重要な変化が起こったというふうに私は考えております。
 すなわち、韓国で七〇年代から八〇年代にかけて急速な経済成長があり、そしてそれを背景に八〇年代の後半以降民主化が進んだということであります。他方、朝鮮民主主義人民共和国、以後北朝鮮と呼ばせていただきますが、この北朝鮮におきましては、中国及びソ連に対する依存が深化したということと、独裁的な政治体制が非常に硬直したものとなったということがあったと思います。
 このような状況を背景に、八〇年代の末から九〇年代の初めにかけて冷戦が終えんするわけですが、冷戦の終えんに伴ってこの地域にどういうことが起こったかと申しますと、韓国と東ヨーロッパ、ソ連、そしてさらには中国との外交関係が次々と樹立されたということであります。
 他方、北朝鮮の方では、ソ連の経済困難によってソ連から受ける経済援助が急激に減少したということ、それから中国が市場経済化への歩みを強めたことによって、中国との貿易においてもいわゆる友好価格と呼ばれる優遇的な貿易関係が終えんしたということであります。もちろん、ソ連が一九九一年末に解体したことによって、北朝鮮の対外的な経済関係がさらに悪化したことは申すまでもありません。
 このような事態を背景に、冷戦後の朝鮮半島問題というのは、基本的に北朝鮮の国際的な孤立化と国内における経済困難を背景に出てきたものだというふうに考えてよいものだと思います。このように考えますと、冷戦が終えんしたことによってこの半島の問題が簡単に解決するものではないということも容易に御理解いただけるのではないかと思います。
 次に、中国、台湾の問題でございますが、これも中国共産党と国民党との内戦がいわば冷戦によって固定化されたという形で問題化したわけでございますが、この問題に関しましては、冷戦の後期、すなわち一九七〇年代の初めに大きな変化が起こっております。と申しますのは、言うまでもなくアメリカと中国との冷戦が解消し、そしてまた中国が国連での代表権を獲得するという形で国際社会に登場したことであります。
 これによりまして、国際的な側面を見てみますと、中国共産党と国民党との内戦は中国共産党の勝利に終わったと言ってよろしいわけであります。しかしながら、この勝利はいわば不完全なものでありまして、中国にとりましてはアメリカとの国交樹立が一九七九年までおくれたということ、そしてその国交樹立に際しましても、米国は台湾関係法というものをつくりまして台湾の安全保障にコミットしたということで、台湾を中国に統一するという問題は依然として残ったわけであります。
 このような状況を背景に、台湾に重要な変化が生じます。すなわち、一九七〇年代以降台湾は急速な経済発展を遂げまして、いわゆるアジアの四つの小さな竜という表現で言及されますアジアNIES、新興経済発展諸国ですね、アジアNIESの一国となったわけであります。そして、そのような変化を背景に、やはり台湾におきましても一九八〇年代の後半以降徐々に民主化が進んでまいります。
 そして、この民主化を背景に、台湾の人口の大部分を占める台湾に一九四五年以前に移り住んでいたいわゆる本省人と言われる人たちの政治的影響力が向上してまいりまして、それとともに台湾独自のアイデンティティーというものが認識されるようになります。
 このような状況を背景に一九八〇年代末から九〇年代の初めに冷戦が終えんするわけですが、この冷戦の終えんはこの問題をさらに複雑化いたします。
 特に、中国との関係におきましては、冷戦の終えんに先立って一九八九年の六月に天安門事件があったということが大変重要であります。この天安門事件は、申すまでもなく我が国に対しても非常に大きな衝撃を与えましたが、米国に対しても非常に大きな衝撃となりまして、米国におきます対中国関係を良好に維持しようというコンセンサスがこれによって破壊されました。また、冷戦の終えんによってソ連の脅威が消滅したということで、ソ連に対するカウンターバランスという言葉を使いますが、平衡重量といいますか、あるいは対ソカードとしての中国の重要性が低下いたします。
 他方、台湾の民主化は九〇年代に入りましてもさらに進展いたしまして、九一年には台湾における権威主義体制の法的な根拠となっておりました反乱鎮定時期の特別条項というものが廃止され、九二年には立法院の全面的な改選が行われます。
 このような状況を背景に、アメリカは台湾の安全保障にコミットしていた状況から、台湾の安全保障に対するコミットメントが民主主義国の擁護あるいは民主主義のチャンピオンとしての道義的責任という色彩を帯びてまいるようになるわけであります。
 さらに、一九九二年、中国が急速な経済成長を遂げたことによって事態はさらに複雑になりまして、アメリカは市場としての中国を一方で無視することはできなくなりますが、同時に、中国が急速に経済成長を遂げ、そしてその一環として軍事費を一九八九年以降毎年一〇%以上増大させていたということから、中国脅威論という考え方が出てまいります。このような文脈の中で台湾問題がさらに複雑化したということでございます。
 以上、申し上げましたように、冷戦によって生み出された二つの問題は、冷戦期の変動と冷戦の終えんを根源にして非常に現在は複雑な様相を呈しているということでございます。
 さらに、この地域の安全保障問題として最近とみに重要性が高まっていると思われますのは、国内政治の安定性に問題のある国が多いということであります。これは基本的に二つのパターンがあると思います。
 一つは、経済成長を遂げた権威主義体制のもろさということであります。
 これにつきましては、お配りしたレジュメのVの1に「ハンティントンの公式」ということが書いてございますが、このことをここの部分で御説明したいと思います。
 ここに書きましたハンティントンは、ハーバード大学教授のサミュエル・ハンティントンでございまして、冷戦終えん後、文明の衝突というテーゼを提起して世界的に注目された方なんですが、この人が一九六〇年代に発展途上国における政治的不安定性につきまして、非常に私としては重要だと思う考え方を提示しております。
 ハンティントンは、発展途上国の政治的安定性の非常に重要な規定要因となるのは社会的動因という現象であるというふうに指摘しております。社会的動因につきましては複雑な定義があるわけですが、かみ砕いて申しますと、旧来のしがらみから解放されて新しい物の考え方や行動様式を受け入れるようになる、そういうふうに人々の心理状況が変わるということでございます。このような変化は、都市化でありますとか教育水準の向上でありますとかコミュニケーションの増大、マスメディアとの接触の拡大ということを背景に起こるものでありまして、その根底にはさらに経済成長がある場合が多いわけであります。
 この社会的な動因状況にある社会において経済成長の急速な鈍化が起こりますと、あるいは経済成長の後退が起こりますと、これに対してさまざまな不満が当然生じてくるわけですが、社会的不満が生じてくるわけですが、その不満を持った人々が新しいやり方で自分たちの要求を表現しようとします。それによって政治参加の爆発的な拡大が起こるわけですが、権威主義体制はその爆発的に拡大した政治参加を吸収するメカニズムを持っていないということで、ここにその体制のもろさが具現して非常に政治的、社会的に不安定な状況が現出する、こういう考え方であります。アジア通貨危機以降のインドネシアの状況はまさにこのようなものであったと私は考えております。
 また、もう一つ、この地域の国内政治の安定性に対する大きな問題となるのは、分離主義の問題であります。
 発展途上国における国家の形成というのは往々にして極めて未成熟でありますが、その一つの要因はこの地域の国境が植民地体制によって現地の状況を無視して敷かれているということでありまして、同じいわゆるエスニックグループと呼ばれる民族的な集団が国境の両側に存在していたり、あるいは一つの国境の中に複数のそれまでそれほど一体感を持っていなかった民族が存在するというような状況で国家建設を始めるわけであります。したがいまして、このような国々の国家建設の基本的考え方は、民族国家、いわゆるネーションステートということでありますが、現実は、ネーションがあって国家ができるのではなくて、国家をつくってからネーションをつくろう、ステートネーションであるというようなことが政治学者によって指摘されております。
 このような状況もやはりアジアで往々にして見られ、これもまたインドネシアの状況でありますが、アチェとかイリアンジャヤにおける分離主義の運動の根源的な原因になっているというふうに考えております。
 さらに、この地域にはいわゆる非伝統的な安全保障問題というものも近年重要性を増しております。すなわち、国境を越えた汚染であるとか非合法的な移民であるとか、あるいは麻薬の取引であるとかあるいは海賊の問題というようなものでございます。これらにつきましては、時間の関係で詳しく触れることは省略させていただきます。
 そこで、残りました時間の中で中国と台湾の関係、それから中国の国内的な政治的な安定性の問題に簡単に触れてまいりたいと思います。
 まず、中国と台湾の関係ですが、この問題の本質はどこにあるかと申しますと、中国と台湾の関係が中国の国内問題であるという中国の立場を理解し尊重するというのは、我が国が日中国交樹立の共同声明で述べていることでございますし、大方の関係諸国も基本的に同じような立場をとっております。しかし、台湾海峡は国際的な海峡でありまして、主要海上交通路であります。そして、中国は台湾の統一に武力行使の選択肢を放棄しておらず、他方、米国は台湾の安全保障にコミットしているということから、事態の進展によってはこの問題が地域安全保障上の重要な問題になることもあり得るというのが問題の基本的な構造であると思います。
 このような状況は、申すまでもなく、一九九六年三月の台湾海峡危機、すなわち台湾の第一回目の総統選挙に際して中国が三回に及ぶ軍事演習によってこれに圧力をかけようとし、アメリカがこれに対して二個の空母機動部隊を派遣してにらみをきかせるという状況によって如実に認識されるものとなりました。
 この中国と台湾の関係は、一九九七年十月の江沢民国家主席の訪米のころから徐々に改善しまして、中国と台湾との対話が進展してまいりました。しかし、一九九九年七月、台湾の李登輝総統が、中国と台湾との関係は特殊な国と国との関係であるという発言をしまして、これが中国の激しい反発を呼んだわけであります。遅浩田国防相はこの発言を分離主義の危険を冒すものであると、そしてそのような危険に対しては人民解放軍はいつでも対応する用意ができているという非常に恐ろしい発言をして世界の懸念を高めたということがございました。しかし、この問題につきましては、九月に台湾で大地震があって以降、中国の軍事演習の実施というものが中断されたということで一たんは鎮静化いたします。
 しかし、昨年の三月、再び第二回の総統選挙が行われまして、ここで民主進歩党という台湾の独立を標榜する党の候補である陳水扁氏が当選したということで、さらに緊張が激化することが懸念されました。しかし、陳水扁はその就任演説で独立を宣言しないというようなことを明言しまして事態の鎮静化に努めておりまして、現在のところ中国は、陳水扁政権の間は、陳水扁が独立の宣言をしない限りは何とか交渉の道をあけようとし、そして台湾の独立に明確に反対する諸党派との関係を強化することによって陳水扁への圧力を高めるというアプローチをとっておりますので、現在のところ武力行使の危険が高まったというような状況にはなっておりません。
 このような展開を遂げておる中国、台湾の関係でございますが、中国が台湾に対して強制力を行使するということがもしあるとすれば、それはどのような場合であろうかということを簡単に御紹介したいと思います。
 これについては、中国自身の発言と状況の判断から五つの可能性が指摘されております。
 まず第一は、申すまでもなく台湾が独立を宣言することであります。第二は、台湾が核武装をすることであります。第三は、台湾内部に騒乱状況が発生するということ。そして第四は、外国の軍隊が台湾に直接介入してくるということ。それから最後に、これは中国が昨年三月の台湾の総統選挙の前に発表しました台湾白書の中で新たにつけ加えた条件なんですが、台湾が中国との統一交渉を無期限に延期するということがあれば、武力行使の可能性があるというようなことを言っております。
 それでは、中国が台湾に対して強制力を行使するとするとどのような形態があり得るかということなんですが、これは専門家の間でしばしば指摘されるのは三つの可能性であります。
 第一は、言うまでもなく武力侵攻であります。台湾に攻め込んでここを占領しようということであります。第二は、武力侵攻には至らないけれども、ここにミサイルの攻撃をかけて威嚇し、台湾を屈服させようとするということであります。第三は、海上封鎖によって台湾を経済的に困難におとしめようということであります。この三つの可能性のうち最も蓋然性が高いと考えられているのは第三の海上封鎖であります。
 台湾の問題につきましては、アメリカの関与の仕方が極めて重要な規定要因となるわけですが、アメリカの基本的政策は、この中国と台湾の関係については戦略的あいまい性というアプローチをとっているというふうに言われております。
 これはどういうことかと申しますと、中国に対しては、台湾に対して武力行使をした場合には必ずアメリカが介入して、しかも武力で介入してこれを阻止するということを信じさせ、他方、台湾に対しては、無謀な独立宣言などをした場合は、独立宣言などをして中国から攻撃を受けた場合は必ずしも米国は武力によってこれを防衛するということはしないということを信じさせる。そのようなことによって独立の宣言と武力の行使をともに抑止して、平和的な交渉によって双方に納得できる解決を見出すことを促すということであります。
 ところが、先ほど申しました一九九六年三月の空母機動部隊二個の派遣によって、この戦略的あいまい性の度合いが下がったということが指摘されておりまして、すなわち、アメリカはやはり台湾を防衛するだろうということが考えられたわけであります。
 ところが、一九九八年六月にクリントン大統領が訪中しました折、上海でいわゆる三つのノーということを申しました。これは、台湾の独立を支持しない、それから一つの中国、一つの台湾、あるいは二つの中国を支持しない、それから第三に国家であることを資格要件とする国際機関への台湾の加盟を支持しない、この三つのノーでありまして、これを表明したことによってアメリカの政策は中国寄りになったというふうに考えられました。つまり、このあいまい性が中国に有利な形で減少したというふうに考えられたわけであります。
 これに対する反発もあってか、一九九九年の中ごろからクリントン政権は三つのノーということを余り言わなくなりまして、むしろ対中政策の三つの柱ということを言っております。すなわち、一つの中国、それから両岸の対話、それから平和的解決であります。
 ことしの一月、ブッシュ政権が発足したわけですが、ブッシュ政権は三つのノーということを一切言っておりません。そして、国家安全保障担当の大統領補佐官になったコンドリーザ・ライスという人は、どのような理由で台湾が攻撃されようともアメリカは台湾を防衛するというようなことを言っております。また、パウエル国務長官は、台湾の独立を支持しない、あるいは一つの中国がアメリカの基本政策であるということを表明しておりますが、クリントン政権に比べればかなり台湾擁護に近くなったというのが現在の状況であると思いますが、これにつきましては後ほど中西先生の方からさらに詳しい御説明がいただけると思います。
 最後に、中国の政治的安定性について簡単に申しますと、先ほど申しましたハンティントンの公式が中国の一九八九年の天安門事件に極めてよく当てはまるということが言えると思います。すなわち、中国は一九七八年の末に改革・開放に踏み出すわけでありますが、七九年から八九年の十年間を見てみますと、明らかに中国におけるメディアとの接触の拡大、都市化、教育水準の向上といった状況は見られまして、八九年ころには中国の人たちの物の考え方は、かなり旧来のしがらみから開放された新しい考え方を受け入れるようになっているという状況があったと思います。
 そして、一九八八年から八九年にかけて中国経済は急速な成長率の低下を経験し、しかも激しいインフレを経験します。また、このころ官吏の汚職という問題も非常に深刻化しておりまして人々の不満は急速に高まっておりまして、これが背景となって一九八九年四月以降のいわゆる民主化要求デモというものの急速な拡大があったわけです。まさに政治参加の爆発的拡大でございます。これに押されて政権側はやむなく武力行使、武力鎮圧に至ったわけで、まさにハンティントンの公式で示唆しているような政治的な不安定状況が生じたと言ってよいと思います。
 現在の状況はどうかと申しますと、一九九二年以降、中国は数年にわたって一〇%を超える経済成長を記録しておりますが、九〇年代後半から徐々にこの成長のスピードが鈍化しております。しかし、現在までのところ、このスピードの鈍化は非常に緩慢なものでありまして、一九八八年から八九年に見られたような急激な低下ではございません。
 時間もありませんが、簡単に数字を申しますと、一九八八年の経済成長率は一一・三%、八九年は四・一%であります。これは中国の公式発表された統計でありますが、九二年は一四・二、九三年が一三・五、九四年が一二・六、九五年が一〇・五というふうにじわじわと現在に向かって低下しておりまして、きょうの新聞でも今年度の計画では経済成長見通しは七%にしているということでありますが、十数%から非常に緩いカーブで低下しておりますので、八九年のような状況はそういう意味ではありません。
 しかし、他方、一九九九年、一昨年の四月にいわゆる法輪功事件というのがあったことを御記憶だと思いますが、これは法輪功という気功と仏教を合体させたような肉体修練と精神修養の運動を実践している人たちが政府の弾圧に抗議して、中南海という中国の指導者が住んでいる地域を取り巻く一万人の無言のデモがあったという事件であります。
 これは非常に中国の指導者にとっても驚くべき事態でありまして、先ほど申し上げた社会的動因という状況を見事に示している事象であると思いますし、また、この法輪功を実施している人たちが電子メールで相互の連絡をとり合っていたということで、まさに新しい時代のコミュニケーション状況を反映しているものと思います。こういうことで、社会的動因という状況は再びあらわれてきていると思いますが、経済成長の鈍化は極めて緩慢であると。
 それから、この政治体制の硬直性ですが、中国では徐々に農村で民主化の実験が行われておりまして、この動きが拡大するのと政治的不安定状況の危険が高まるのとどちらが先かという、いわば追っかけっこの状況が出てきているのではないかと考えております。このような点から考えますと、ことしに実現されると思われます中国のWTO加盟によって、国内の産業に非常に大きな衝撃が与えられるということがどういう事態をもたらすのかというところが極めて注目されるところであろうと考えております。
 私は、中国に必ず大きな国内的な騒乱が起こるという予言をしようというものではありませんが、現在の状況から判断しますと、そのような可能性も一つの台風の進路図の一番端っこの方の可能性として考えておくということも、我が国のこの地域に対する対外政策を立案する上で重要なことではないかというふうに考えている次第でございます。
 時間が参りましたので、これで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
#5
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。
 次に、中西参考人から御意見をお述べいただきます。中西参考人。
#6
○参考人(中西寛君) ありがとうございます。
 本日はこのような場にお招きいただきまして、ありがとうございました。
 私は、アメリカ、特にことしの一月に発足をしましたブッシュ新政権の東アジア政策、特に東アジアの安全保障政策という観点からお話しさせていただきたいと思います。
 アメリカのことですので、新聞、雑誌、テレビあるいはインターネット等で御列席の方々もよく御存じのことだと思いますけれども、私なりに調べたところをお話しさせていただきたいと思います。
 まず具体的な政策的な分析に入る前に、新しく発足しましたブッシュ政権の性格ということについてお話をしておきたいと思います。
 ブッシュ政権は、御存じのとおり、かつてのブッシュ大統領の息子でありますジョージ・ブッシュ氏が大統領になったわけですけれども、まずブッシュ大統領、あるいはブッシュ政権の性格を見る上では二つの視点があるんではないかというふうに思っております。
 第一の視点は、いわばたいまつは次の世代へというふうにいいますでしょうか、世代的な問題でありまして、ブッシュ新大統領は一九四五、六年生まれですからクリントンと同い年でありまして、彼と大統領選を争いましたゴア氏もほぼ同じ世代であります。こうした世代によって大統領選が争われたということは、アメリカの政治指導の世代というのが五十歳代の世代、あるいは太平洋戦争を知らずにむしろベトナム戦争の時代に移ったということをはっきりと確定したということではないかと思います。
 そして、後ほどお話をいたしますように、ブッシュ新政権を固める閣僚のうちの主要な人たちは、新大統領よりは年上の人たちでありまして、かつての共和党政権、この最近三十年間で、クリントン政権の八年間とカーター政権の四年間、合わせて十二年間を除くと共和党政権が続いておるわけですけれども、このかつての共和党政権の遺産といいますか資産といいますか、そういった人々が閣僚を固めるということであります。
 したがいまして、このブッシュ新政権の第一の性格といいますのは、新しい世代、クリントン、ブッシュ・ジュニア世代に共和党がそれまでの培った資産を継承していく。まず最初の四年間で、そうしたシニアな閣僚がブッシュにさまざまな政治教育を与え、四年後の選挙に勝って新しい世代に共和党のリーダーシップを移していくということが基本的な性格であるというふうにまずは理解できるのではないかというふうに思われます。
 第二の視点は、この共和党、民主党というのがアメリカの二大政党で基本的な政治的バランスを構成しておるわけですけれども、その中で、それぞれ両党の結束、一致といったようなものは、この二十年あるいは三十年ばかりの間、それほど強いものではありませんでした。共和党、民主党の中にそれぞれ幾つかの流れがありまして、その間の対立関係というのは比較的強いものだったわけですけれども、このブッシュ新政権においても、共和党の中のいわゆる共和党保守派というグループと共和党中道派というグループの間の潜在的な対立、路線の違いというのはいまだに継続しているというふうに理解できるということであります。しかし、レーガン政権以降のいわゆるアメリカの保守革命を受けまして、この二つの路線の対立、中道的な路線と保守的な路線の対立というのは次第に性格を変えつつあるように思われます。
 そこで、共和党としては、この八年間、最初の四年、さらにはその後の四年を展望しておるわけですけれども、その間に共和党が一つのまとまった路線、中道と保守を融合したような路線をつくっていくということを考えていく。そのために、アメリカのブッシュ政権下での内政、外交政策を考えているということではなかろうかと思います。
 このような二つの視点を踏まえた上で、先ほど申しましたように、少なくとも、このたび発足しましたブッシュ新政権においては、特に外交・安全保障問題については比較的経験の少ないブッシュ新大統領よりはそれまでに外交・安全保障について長い経験を有する共和党のメンバーたちが主導権を握ると思われるわけですが、それらの人々について簡単に見ておきたいと思います。
 まず、公的な地位において一番高い地位にありますのはチェイニー副大統領でありまして、アメリカの副大統領の地位というのはさまざまに変わりますけれども、このブッシュ新政権については、チェイニー副大統領の地位はかなり高いというふうに考えられます。彼はブッシュ前政権の国防長官であります。
 それから、国防長官になりましたラムズフェルド氏は主要な閣僚の中でも一番年齢が高い六十八歳ということになりますけれども、このチェイニー副大統領の前任者としてフォード政権における首席補佐官をしておりましたから、この政権の中でも最も発言力の高い一人というふうに考えられます。
 それから、国務長官には湾岸戦争のときによくテレビにも出てきましたパウエル元統合参謀本部議長が就任をいたしました。彼は六十三歳でありまして、政治的にはどちらかといえば彼は中道に近いと目されております。かつて大統領選、大統領候補にも擬されたときがありましたが、そのときも共和党か民主党かというのがはっきりしないというふうに考えられていた人でありまして、そういった意味では、チェイニーやラムズフェルドはどちらかといえば共和党保守派に近い存在であるのに対してパウエル氏は中道に近い。
 この両者の違いというのがどれほど重要なものであるかということについては注意を要するので、しばしばアメリカの政権内で考え方の違いというのはあるわけですから、この違いが決定的にあるというふうに考える必要はないと思いますけれども、ややニュアンスの違いがあるということは留意さるべき点ではなかろうかと思います。
 こうしたチェイニー、ラムズフェルド、パウエルという三人が一番シニアなレベルであるというふうに考えられますが、そのほかに若い世代として、国家安全保障会議、NSCを担当する大統領補佐官に任命されましたコンドリーザ・ライス氏という、スタンフォード大学で教授をしていた女性の方がおられます。彼女はロシア問題の専門家でありますが、一九五四年生まれでありまして、主要閣僚の中では数少ないブッシュ氏よりも年下の世代であります。
 そこで、恐らくこのブッシュ政権の基本的な発想としては、フォーマルな国務、国防あるいは副大統領といったようなラインが実際の政策の中心に当たり、ライス氏が主轄するNSCはスピーチをつくるであるとか、あるいは長期的な政策を練るといったような場所として使われるということではないかと思います。
 このNSCには、ライス氏のもとにトーケル・パターソン氏という、国防総省に以前、日本部長として勤めていて、日本語もよく知っているという方が上級アジア部長という肩書で就任することがほぼ予定されておりますので、彼がNSCにおける日本問題あるいは東アジア問題での主たる責任を負うということが予想されます。
 しかし、実際面での対日あるいは対アジア政策についての中心は、フォーマルな省庁のトップの下にいる人たち、例えば先日国務副長官に任命されましたアーミテージ氏、彼は国防、もともとは海軍士官、海兵隊にいた人でありまして、軍事にも詳しい人でありますが、彼が国務副長官、それから彼と同じ年齢、五十五歳のウォルフビッツ氏が国防副長官ということになりまして、この二人、それにアーミテージ氏の下になりますけれども、ジム・ケリー氏という、これも海軍出身の方ですが、彼が国務次官補になる予定でありまして、こうした人たちが実務を担当していって、先ほどのパターソン氏、あるいはUSTR、通商代表部の代表に任命されましたロバート・ゼーリック氏、ゼーリック氏も四十七歳と若い人ですが、あるいは経済問題担当の大統領補佐官になりますリンゼー氏といったような若い世代と組んでアジア問題などを扱っていくというふうに予想されます。
 次に、議会との関係でありますけれども、御存じのとおり、大統領選は史上まれに見る接戦でございましたから、そのことにかかわって民主、共和両党の対立意識というのはやや高まったということになります。それを反映しまして、議会との関係がこのブッシュ政権についてもとりあえずは重要な政治問題であるということは言うまでもございません。
 議会の構成を考えますと、上院においては共和党が五十、民主党が四十九ということでありまして、ほぼ拮抗しております。それから、下院につきましても、共和党が二百十七、民主党が二百八ということでありますから、票差は九でありまして、やや共和党が上回っておりまして、共和党優位ということではあるんですけれども、議会との関係はそれほど盤石なものではないということになります。
 同時に、ブッシュ大統領個人に対する世論の支持率は今のところそれほど、これまでのアメリカの歴史から見ると高いものとは言えませんで、この段階での世論調査で五五%ぐらいの支持率ということで、大体六〇%ぐらい普通はありますものですから、それに比べるとブッシュ氏個人の威信というのはやや低いということになりますので、この点からも議会との調整が重要な問題になる。
 このことは、対外政策においても、特に問題となるような軍事的行動を行うときに民主党が反対をする、拒否的な行動をとるという力が比較的強いということを意味しているように思われます。それほど、特に米国民に犠牲、リスクが及ぶようなものでなければ、例えば先日のイラクに対する空爆のようなものであれば大統領の裁量のうちで行うことが可能でありましょうけれども、人道的あるいはその他の理由での軍隊の派遣といったようなことについては議会の説得というのはより困難なことになる。共和党政権自身がそれに対してやや消極的であるというふうに言われておりますけれども、議会との関係からいっても、対外的な介入、アメリカの国家に対して負担の大きい介入については消極的になるもう一つの要因ではないかというふうに思われます。
 次に、このブッシュ新政権の東アジア安全保障政策の基本方針ということについて、今までのところからわかる範囲で触れておきたいと思います。
 ただ、最初に申し上げておかなければいけないのは、ブッシュ政権が発足しましてまだ二カ月弱でありまして、その間、ブッシュ政権の基本的な対外政策における力点というのは、軍事・国防問題についての見直しをするという方針を明らかにしたこと、そしてクリントン政権の末期から重要なイシューになっておりました中東における和平問題に力をかけるということでありまして、東アジア問題についてはまだそれほど具体的な政策を提示しているというわけではないということであります。したがいまして、先ほど触れましたようなアーミテージ氏、ウォルフビッツ氏が本格的に仕事を始める今ごろの段階からだんだんと具体的な性格が見えてくるだろうということなのでありますけれども、そうした限定を置いた上でブッシュ政権の東アジア安全保障政策について見てまいりたいと思います。
 まず第一の要素は、このブッシュ政権がいわゆる国家ミサイル防衛構想、NMDというふうにレジュメでは書いておりますが、この問題については比較的強いコミットメントを示しているということであります。これは、アメリカ本土を弾道ミサイル、大規模なものではなくて比較的小規模な弾道ミサイルの脅威から守ろうという技術的、戦略的な計画であります。
 この問題は、一つには軍事的な理由から、ミサイルの拡散、第三世界、発展途上国に対する拡散が広まってきたという軍事的、戦略的な理由から重要であるという意見がございますし、もう一つはレーガン政権のいわゆるスターウオーズ構想、SDI構想以来、共和党、民主党、あるいは左派と右派を分ける非常に重要な政治的イシューでもあるという点でありまして、この点で、NMDを重視するというのは共和党右派がこのブッシュ政権の中で主導権を握っているという政治的なメッセージでもあるわけであります。
 そして、このNMD問題との関連で一番最初に問題になりますのは言うまでもなくロシアとの関係でありまして、一九七二年にアメリカとソ連の間で結ばれましたABM条約という条約がございまして、この条約によって両国はミサイル防衛についてのシステムについての配備についてはかなり厳格な制限を相互に了解しております。したがって、NMDについて本格的にこれを配備するということになればABM条約との抵触というのはほぼ避けられない事態であります。
 そのことからしまして、アメリカとしては、NMDを推進するに当たりましてABM条約を一方的に廃棄してロシアとの関係を無視する、あるいはロシアとの関係が悪化することを踏まえてABM条約を廃棄するのか、それともロシアに何らかのインセンティブを与えてABM条約の修正に応じるように持っていくのかということが大きな選択になるのでありまして、これは共和党の右派と中道派の間でやや考え方の分かれるところではなかろうかというふうに思われます。
 いずれにせよ、このロシアとの関係という関連から東アジアにもこのNMD問題というのは影響を及ぼすのでありまして、NMDを推進する理由の重要なものとして挙げられているのが発展途上国、特に北朝鮮のミサイル開発であります。
 したがって、ロシアとしては、特にプーチン政権はABM条約を維持するということを重要な課題として掲げていますので、北朝鮮に影響を及ぼして、そのミサイル開発計画を何らかの形で抑制することによってアメリカにNMDを推進するような口実を与えないということを目標にしておるわけであります。したがって、その意味からロシアは近年、朝鮮半島政策を重要視している一つの理由でありまして、この点については山岡参考人の方が御専門だと思いますのでまたお話があるかもしれませんけれども、この観点からもロシアと東アジアの安全保障の問題というのは注目さるべき問題ではなかろうかと思います。
 次に、第二点目としまして中国・台湾政策に移りたいと思います。
 先年十一月、ブッシュ大統領が投票が終わりましてまだ確定をしていない段階でありましたけれども、そのときに行ったブッシュ演説というのがこれまでのところのブッシュ政権の外交政策の基本方針を述べたものというふうに理解されておりますが、その中でブッシュ大統領は、中国は競争相手であり戦略的パートナーではない、悪意を持たずに接することは必要だが幻想を抱いてはならないという表現を述べまして、従来のクリントン政権が中国について戦略的パートナーというふうに呼んだ政策を変えたというふうに一部では理解をされております。
 それほど明白に変化があったかどうかということについては留保が必要でありまして、例えば先ほどのライス氏などはその前に書かれました論文においては、中国をパートナーとしてではないけれどもやはり経済的には重要な存在、そして経済的な変化を通じて中国の政治体制が変化を遂げるといういわゆる関与政策的な議論はしておりますので、その意味では変わっていないということも言えるわけです。ですから、この点でもアメリカの対中政策が固まったというふうには言えないだろうと思いますが、ただ幾つかの点で脅威としての中国というのを強調する側面が出てきていることは確かであります。
 そうした根拠としては、三つぐらい中国の脅威というのを考えているように思われるわけですけれども、まず第一は、中国が核保有国、一定の核能力を持つ国家としての脅威でありまして、これはNMDあるいは日本などとのTMDの関係でも問題になることでありますが、これはなかなか厄介な問題でありまして、アメリカとしては中国をNMDの対象として考えるということは公式にはまだ言っておりません。当然のインプライされた、示唆された内容としてはそういうことがあるわけですけれども、中国は核不拡散条約でも核保有を認められている国でありますし、戦略的安定を重視するか、あるいは核の脅威を与える国として扱うかというのは微妙なぐらいの核能力を持っている国でありますので、この点はアメリカとしても扱いをまだ決めていないという点だろうと思います。
 二番目の中国の脅威は兵器拡散国としての中国でありまして、例えば先日もイラクに対して空爆をアメリカがイギリスとともに行いましたときに、中国がイラクにおいて地下光ファイバーの建設を支援しているといったようなことを中国の大使に正式に警告をしまして、中国側はそうした事態があるとすれば善処するといったような回答は米政権に寄せているようであります。これは従来、アメリカが重視しております中東関係の、あるいは武器の拡散問題などに関しても中国の、兵器拡散国としての中国としての側面を重視するという点で、この点ではブッシュ政権の中に基本的なコンセンサスがあるのではないかというふうに思われます。
 第三の視角は台湾との関係でありまして、これについては先ほど高木参考人から詳しい御説明がありましたのでそうした前提のお話は省略をさせていただきたいと思いますけれども、近々予定されておりますのは、毎年四月に行われます台湾に対する武器供与の問題についての、武器売却問題についての合意でありまして、ことしは台湾に対して艦艇、いわゆるイージス艦と呼ばれる艦艇を供与するかどうかというのが大きなイシューになっております。
 イージス艦は、TMD、ミサイル防衛に使えるものでありますから、中国としても台湾がイージス艦を持つかどうかというのは非常に注目しておるところでありまして、現在のところ、ブッシュ現政権はことしについてはイージス艦の売却は行わずに別の形の駆逐艦あるいはレーダーシステム、ミサイル等を供与するというような報道がなされておりますけれども、私が知る限りでは最終的な決定ではありません。少なくとも現政権は、台湾について、あるいは台湾海峡において軍事バランスを保つ、そうしたことによって中国が台湾を武力によって威嚇することは抑えようとするのではないかと思います。
 このことは、議会においても比較的有力な共和党系議員の中にいわゆる親台湾派という人たちが多いということからも一つの背景があるのではないかというふうに思われるわけですが、その意味で、クリントン政権が戦略的あいまい性といいながらやや中国寄り的な姿勢を示したように受け取られる場面があったとすれば、ブッシュ政権は少なくともその当初においてはそのように受け取られることはないということをはっきりさせようというふうに考えているということは言えるのではないかと思います。
 次に、朝鮮半島政策でありますけれども、これはクリントン政権下で行われてきましたいわゆる九四年の枠組み合意、アメリカと北朝鮮の間の枠組み合意のもとでの政策というのを継承するかどうかということがイシューになろうかと思います。
 例えば、パウエル国務長官は就任の際の議会証言で、基本姿勢として、ミサイルの開発、輸出、韓国の脅威となっている戦力配備の問題を根本的に改善しない限り人道的な食糧支援以外の見返りを与えないでありますとか、クリントン政権の関与政策を続けることには問題はないが性急な関係正常化には走らない、日本や韓国との協議を重視し現実的かつ非常に慎重に対応するというふうに語っておりまして、これは、クリントン政権の基本路線は否定はしないけれども、北朝鮮の出方、特に実質的な意味での安全保障上の変化というのが見られない限りはアメリカが早急に動くことはないというふうな姿勢を示したというふうに理解できようかと思います。
 その意味で、アメリカとしては同盟国重視、日本及び韓国との協議のもとで対北朝鮮政策については融和的であるよりも警戒的、あるいはウエイト・アンド・シーといいますか、待機的という政策をとりあえずとろうというふうに考えているというふうに理解できますが、その点で問題になりますのはアメリカと韓国との関係であります。
 韓国の金大中政権は、御承知のとおり、いわゆる太陽政策で北朝鮮との和解、融和というものを一つの基本路線としておりました。先日、プーチン・ロシア大統領が韓国を訪れたときにも、プーチン大統領が太陽政策に対して支持を与え、金大中大統領が金正日総書記のロシア訪問を歓迎するといったような交換がなされましたけれども、こうした意味ではプーチン大統領のロシア、そして中国、さらに北朝鮮、金大中政権下の韓国といった国々が朝鮮半島の緊張緩和にある意味で政治的ステークを持っているのに対して、アメリカの政権との間にややそごが見られる雰囲気もあるわけです。したがいまして、金大中大統領が訪米を近々するはずでありますけれども、このときに、アメリカ、韓国の関係がどのようになるかということが注目されるわけであります。
 次に、大分時間もなくなりましたけれども、日米安保関係について簡単に触れたいと思います。
 日米関係につきましても、まだブッシュ政権が発足して以降まとまった政策表明というものはなされていないというふうに思われます。そのこともありまして、昨年十月に発表されましたアメリカ国防大学の国家戦略研究所の報告がアーミテージ・レポートというふうに呼ばれまして、重要視されております。皆さんのお手元にある資料の中にも翻訳が抄訳ですけれども入っております。
 このアーミテージ・レポートというのは、先ほど触れましたアーミテージ国務副長官、あるいはウォルフビッツ国防副長官、そしてパターソン氏なども、あるいはジム・ケリー氏なども入っておりまして、他方で、民主党政権と関係が深かったジョセフ・ナイ氏であるとかカート・キャンベル氏なども入っておりますバイパーティザンの、超党派の対日方針報告というふうに位置づけられておりまして、選挙期間中に出されたものですから共和党政権の政策報告書として考えるべきではないというふうに思われますけれども、一つの指針にはなる報告書だろうと思います。
 この報告書自身は、政治、安全保障、情報、経済、外交といったような広範な問題について扱っておりまして、安全保障に特化したものではなく、その点は日本の読者がこの報告書を理解する点で注意すべき点だと思いますが、ここでは安全保障についてのみ若干触れておきたいと思います。
 しばしば新聞でも取り上げられますように、この報告書の中ではかなりはっきりと、集団的自衛権の問題につきまして、これは日本が決めることであるけれども、日米同盟の運用のためには集団的自衛権を日本が行使しないという方針が障害になっているというふうに述べております。その理由についてはっきり書いておりませんけれども、恐らく二つの理由があるだろうと思います。
 一つは、オペレーショナルといいますか、実際的な側面でありまして、新ガイドラインのもとで日米安保が機能するということになった場合に、集団的自衛権については行使をしないという日本の基本的なスタンスは、部隊を運用する場合に非常にやはり困難を生じる可能性があるという点であります。
 それから二番目は、政治的な問題でありまして、新ガイドラインを含めまして一九九六年の日米の安保についての共同宣言にありますように、冷戦後の日米安保の基本的な政策は地域的な安全保障のためにこの関係が基礎となるということでありまして、その意味ではオペレーショナルな面を超えて、日本が地域的な安全保障のためにいかなる貢献をなすかという点が日米安保の基底にある哲学になるわけであります。その点で、日本の武力、軍事力は自国を守るためには使われるけれども地域のためには使われないんだという基本的なスタンスを表明するものとして、集団的自衛権は政治的障害でもあるというふうに考えているのではないかと思います。この点からしますと、例えば日本が、集団的自衛権の個別の問題ではありませんけれども、国連の平和・安全保障活動などにもより積極的になるべきであるというこのアーミテージ・レポートの中の言葉は平仄が合ってくるわけであります。
 次に、TMDの問題でありますが、この問題は先ほど言いましたようにアメリカの文脈での政治的側面がございますので、このアーミテージ・レポートではごく簡単に、従来の日米間の合意が推進されるべきであるというふうにしか触れておりません。しかし、これまでお話をしてきたようなブッシュ政権の性格、特にラムズフェルド国防長官のNMDに対するステークといったようなものを考えますと、TMD問題もやはり重要な焦点の一つになるであろうというふうに考えられます。
 そして、この問題は日本にとりましては、日本はイージス艦を持っておりますけれども、そのイージス艦に配備され得るような形での海上でのミサイル防衛システムを構築することになるかどうかということが一つのかぎであろうかと思います。
 そのことは、一つには、台湾海峡における防衛の問題、台湾海峡のミサイル脅威について日本あるいは日米間で運用されるTMDシステムが関与するのかどうかという問題をもたらしますし、もう一つは、朝鮮半島との関係で北朝鮮のミサイル脅威をどのように考えるか、あるいは韓国は従来TMDに消極的な姿勢を示しているんですけれども、日韓間の安全保障上の問題ということの可能性もあるわけです。そうした点から、アメリカが推進するであろうと思われますTMD問題について日本は改めて考え直す必要があるということではなかろうかと思います。
 最後に、基地問題について触れたいと思いますが、このアーミテージ・レポートの中でも沖縄についてわざわざ別枠が設けて記述してありまして、アメリカ側が沖縄を中心とする在日米軍基地問題について重要な関心ないし懸念を持っているということは明白であります。そして、大枠としましては、そうした対日関心のことが一つと、もう一つは、ラムズフェルド国防長官のもとでアメリカの国防政策あるいは軍事的な兵力配備の問題について基本的な見直しが行われるであろうということ。その二つの要因から、いわゆるクリントン政権下で提唱されましたアジアにおける十万人体制というのが見直しされる可能性は比較的高いものではなかろうかというふうに考えられます。
 ただ、問題は二つありまして、一つは、先ほど言いましたように、台湾海峡あるいは朝鮮半島の問題でブッシュ政権は協調的であるというよりは強固であるというイメージをつくりたいものでありますから、沖縄における海兵隊の兵力削減といったようなものを具体的に考える際にも、それが中国、北朝鮮に対してどのようなメッセージを送るのかという観点を抜きにして考えることはできないだろうという点。
 それから第二番目に、アメリカの全般的な兵力配備見直しあるいは軍事政策の見直しの一環として在日米軍問題も扱われることになるわけでしょうから、その際に、日米安保体制というのが、世論あるいは周辺国に対する配慮から兵力を減らすのではなくて、新たな安全保障上の理由から兵力を再配置するのであるという形をとらないと、日米間でスムーズな基地問題についての重要な政策変更というのも行われがたいということになるのではなかろうかと思います。
 そういったことでありまして、恐らくブッシュ政権はそろそろ、特に金大中大統領の訪米をきっかけにして東アジア政策について何らかの考えを明らかにしてくる段階だと思われますけれども、この一、二カ月あたりがそういった面ではブッシュ政権の東アジア安全保障政策については注目されるべき期間ではなかろうかというふうに考える次第であります。
#7
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。
 次に、山岡参考人から御意見をお述べいただきます。山岡参考人。
#8
○参考人(山岡邦彦君) 本日は、国際問題に関する調査会で発言する機会を与えていただいて、光栄に思います。
 与えられたテーマは東アジアの安全保障についてですけれども、私は、朝鮮半島情勢の変容とそれに対する日本の対応という観点から私の見解をお話しします。
 最初に、朝鮮半島情勢について、昨年の六月、北朝鮮のピョンヤンで史上初めての南北首脳会談が開かれたわけですけれども、東西冷戦の終えんから現在に至る十年ちょっとの時間の幅でこの首脳会談の意味合いというものをとらえて、それから、半島情勢にどのような潮流が起きているのかについて私の所見を申し上げたいと思います。
 次に、朝鮮半島をめぐるここ十年ほどの動きの中で最も大きな役割を果たしたのは、アメリカの北朝鮮政策であると考えます。アメリカでは、一月にジョージ・W・ブッシュ新政権が発足しました。八年ぶりのこの共和党政権は、今、対北朝鮮政策の再検討作業を行っています。そこで、アメリカの対北朝鮮政策のポイントは何か、それについて考えを述べるつもりです。
 そして最後に、日本の役割、日本の対応で留意すべき点は何かについてお話ししたいと思います。
 ざっとその順序で報告します。
 まず、朝鮮半島の和解の潮流というものが起きています。これは昨年六月、ピョンヤンでの史上初めての南北首脳会談開催以降なんですけれども、それからちょうど九カ月近くがたちました。今、過去九カ月というものを振り返ってみますと、北朝鮮と韓国の和解と交流に向けたプロセスというものが依然もろさというものを内包しているということを認識せざるを得ません。その理由は何かというと、やはり朝鮮半島においてはまだ軍事的緊張緩和というものが起きていないからであります。
 昨年六月、分断以降初めて、半世紀の間で初めて南北の首脳同士が会って共同声明というものを発表したわけですけれども、その後、北と南の軍事的対峙の状況にどんな変化が起きたかというと、具体的に変化は全く起きていないわけです。北朝鮮はおよそ百万人の軍隊というものを韓国との境界線に近いところに前方配備しています。そして、長射程の火砲、それから多連装砲、こうした強力な火砲というものを前方展開しているわけです。つまり、北朝鮮はいつでもソウルを火の海にし得る、そうした軍事的配備状況というものを依然続けているわけです。南北間で和解と交流が本格的に進む上で、このような状況というものが残されたまま和解と交流が進むということは非常に考えにくいと思います。
 もっとも、軍事的緊張緩和に関係した問題というものが全く動きがなかったかというと、そういうわけではないわけです。
 例えば、現在、北朝鮮と韓国、この間には交通路というものがどのようなものがあるかというと、定期的には海の航路というものがあります。東海岸あるいは西海岸を使って船舶が就航しています。それから、不定期的ではありますけれども、航空機の便があります。先月、南北離散家族の首脳会談以降通算三回目の相互訪問というものが行われましたけれども、このときも飛行機を使って双方の離散家族百人ずつがピョンヤンとソウルを往来しているわけです。
 今度、そこに鉄道を通そうという動きが首脳会談以降起きています。京義線と言われる鉄道です。ソウルと北朝鮮の新義州を結ぶ全長およそ五百キロ、その路線をずっと先へたどれば中国に至るわけですけれども、この五百キロほどの鉄道が南北の軍事境界線で分断されたまま半世紀たっています。ここのレールが取り外された区間というのがおよそ二十キロメートルほどあるわけですけれども、これを再連結して将来の南北の物流のルートにしようという動きが出てきているわけです。
 朝鮮半島は、御存じのように東西二百四十八キロにわたる軍事境界線、これは朝鮮戦争の休戦協定に定められて東西分断しているわけですけれども、この軍事境界線を挟んで南北に二キロメートルずつの非武装地帯というものが設けられています。京義線、この連結工事、復旧工事というものは主として非武装地帯で行われることになっています。
 ところが、この非武装地帯というものを管理するというのは、南側では国連軍がやるということになっています。北の方は北朝鮮の朝鮮人民軍が管理する。じゃ、この非武装地帯で工事するためにどういうことが必要かというのでいろいろ複雑な話し合いというものが、まず在韓国連軍が韓国側に対して、この工事区間において管理を委任するというようなことの取り決めをやりました。それを受けて南北の軍事実務者同士の接触というものが行われて、どのような形で作業をするのか、非武装地帯の中で工事をするという、これはもう半世紀、前代未聞の工事をこれからやろうというわけです。
 もちろん、大量の地雷というものが埋設されていて、この地雷を除去する。それを除去する過程で当然大きな爆発音が起こります。そのような爆発音というものが決して攻撃ではないんだということを、相手側に安心をさせるために工事の日取りというものはそれぞれが通報し合うとか、いろいろな取り決めの手続を話し合っていたわけですけれども、これが大方合意を見ていると、それによって本格的な工事というものを今後進めていこうという作業が進められています。実際にこの鉄道というものが連結されるということになれば、これは分断されていた南北というものが半世紀を経てようやく一つにつながれるという象徴的な意味合いを持つことになるだろうと思われています。
 ところが、この軍事的緊張緩和ということで一番重要なのは、何といっても朝鮮休戦協定というものが過去半世紀にわたって朝鮮半島での戦争再発を防止する一つの歯どめになっていたわけですけれども、これから先、朝鮮半島において南北が和解と交流を進めていくという新しい段階になったときに、朝鮮半島に恒久的な平和というものを定着する上でどのような取り決めというのが必要になってくるのかどうか、これは今後の課題ということになっています。
 南北の間で交流が過去九カ月いろいろなレベルで進んでいます。昨年六月、南北共同宣言、北朝鮮の最高指導者の金正日総書記と韓国の金大中大統領はお互いに署名して、南北の将来の統一に向けて幾つか共同して努力していこうという合意事項を発表したわけです。
 一つは、人道的問題の速やかな解決。これは離散家族の問題とかを含むわけです。それから、経済交流とかあるいはスポーツ交流とか、そのような形で南北間の交流を進めていって信頼関係というものを固めていこう。この中には経済交流というものも含まれています。それから第三に、そのような合意というものを履行するために政府間対話というものを定期的にやっていこう。現在、閣僚級会談というものが南北間で続けられているわけです。
 ただ、昨年六月、首脳会談直後、非常な熱気というものを私たち感じたわけですけれども、その後の九カ月の動きを見ていますと、南北の和解と交流に向けた動きというものは、そのペースは当時期待されていたよりはおくれているのではないかと思われます。
 例えば、昨年六月、最も注目されたのは、ピョンヤンで首脳会談をやった、じゃ次はソウルだということで金正日総書記のソウル訪問ということが約束されたわけです。時期については適切な時期というふうに言われていました。昨年九月、金正日総書記の側近である金容淳書記がソウルを訪れて韓国側といろいろ話し合いをやって、金正日総書記のソウル訪問の時期を近い将来という言い方にして、より前向きな表現にしたわけです。
 当時、昨年の九月ごろ、韓国政府当局者はその時期、具体的には恐らくことしの三月、四月ごろだろう、つまり今時分、金正日総書記のソウル訪問というものが行われるであろうという見方を強調していたわけですけれども、今この時点になってそこまで具体的かというとそうはなっていません。プーチン大統領が先ごろ韓国を訪問しましたけれども、今度は金正日総書記がロシアを訪問するという予定になっています。これが四月に予定されていて、四月のロシア訪問が終わってそれからのことだろうと言われています。したがって、首脳会談二回目がソウルで行われる時期については、今のところはっきりした具体的な日取りというものは設定されていません。
 今回の南北の和解の潮流というもの、これは過去半世紀の南北関係を見てみると全く前例のない出来事というわけではありません。第一、第二、第三、第四と、大きな南北和解の波がこれまで四回起きています。最初の波というのは一九七二年、ちょうどニクソンの劇的な中国訪問ということが行われた年ですけれども、そのとき南北双方の特使がお互いに相互訪問して、その結果、七月四日に南北共同声明というものを発表しています。これは一年ほどで動きがとまりました。
 それから第二の波というのは、一九八四年に韓国の全斗煥大統領が日本を初めて公式訪問した時分に韓国が大きな水害に遭いまして、そのとき北朝鮮が救援物資を送るという提案をやって、これを韓国側が受け入れたのをきっかけに救援物資が北朝鮮から韓国に届けられると、それをきっかけに経済会談とかあるいは赤十字会談、国会会談、スポーツ会談、さまざまな南北会談というものが連続して開かれたわけです。これは二、三年続いた、ソウルオリンピックの前まで続いていました。
 それから第三の波というのは、これは一九九〇年から九二年まで。このときはちょうど東西冷戦というものが一九八九年に終わったと宣言されて、その翌年からの動きになるわけですけれども、二年間の間に韓国と北朝鮮はお互いの首相を団長とする高位級代表団というものをソウルとピョンヤンに派遣して、都合八回にわたって会談を開いています。
 その成果として、二つの文書というものがまとめられました。一つが南北基本合意書と言われるもので、この中には相互不可侵あるいは和解と交流といったようなさまざまな具体的な提案が盛り込まれています。それからもう一方は、朝鮮半島の非核化に関する共同宣言というもので、朝鮮半島は核を持たない地域とするというようなことを取り決めた合意文書というものが発表されています。
 問題は、その後、これを履行する過程というものがストップしたままになったということです。それで現在、第四の波というものが起きてきているわけです。第四の波が果たして過去三回ほどあった南北交流の動きと同じようにストップしてしまうんだろうかどうだろうかという問題があります。
 私は、これは初めて双方のトップがコミットした、しかもそれを双方がトップが署名した文書というものを発表しているという意味からして、今回の和解の潮流というものは、若干の停滞ということはあるにしてもこれで中断したりあるいはほごにされてしまう、そういった性格のものではないのではないかと思います。したがって、現在の流れがいろいろなテンポ、遅くなったりということはあるにしても、しばらくは続いていくんじゃないかと思っています。
 それはなぜかというと、もう一つの理由があって、やはり朝鮮半島を取り巻く国際環境の大きな変化、意味ある変化というものが起きているからだと思っています。重要なのは、とりわけ九〇年代以降の変化です。
 まず、九〇年から九二年にかけての南北対話、南北交流というものは、これは東西冷戦の後、ソ連と中国との、それから北朝鮮との関係というものが非常に冷却化した時代に行われていました。当時は日朝交渉も八回行われて、南北が同時に国連に加盟するという動きがありました。一九九〇年にはロシアと韓国が国交を樹立して、一九九二年、中国と韓国が国交を樹立したわけです。今から振り返ってみると、九〇年から九二年にかけての南北交流というのは、北の立場から見れば、ソ連が韓国と国交を正常化したその危機感の中で始まって、中国が韓国と国交を正常化したということをもって終わったという流れがあったと思います。
 その後、重要な進展というものがあったのは、九三年に北朝鮮がNPT、核不拡散条約からの脱退を宣言して生じた朝鮮半島のいわゆる核危機、これを契機にアメリカと北朝鮮の政府間交渉が始まって、九四年にアメリカと北朝鮮の合意された枠組みというものが成立した、そういう重要な米朝の交渉という新しい局面というものが生じています。その後、第四の波というものに来ているわけです。
 国際関係の変化という点でいえば、北朝鮮がアメリカと関係を持つようになったという大きな変化があります。現在の第四の波においては、北朝鮮の金正日総書記は南北首脳会談の直前に中国を訪問しました。これは、金正日総書記が金日成国家主席の死後、最高指導者になって以来初めての首脳外交ということで注目されたわけです。さらに南北首脳会談の後には、プーチン・ロシア大統領がロシアの国家元首ということでは史上初めて北朝鮮を訪れたわけです。
 それで、ことしの一月、金正日総書記は再び中国を訪問して、江沢民国家主席にぜひ北朝鮮を訪問してくださいと招待したわけです。これを受けて、きょうから中国では全人代が始まっていますけれども、この全人代が終われば江沢民国家主席が訪朝する可能性があるのではないかと見られています。金正日総書記は、さらに四月にはロシアを訪れることになっています。このように、非常に首脳外交を活発にやっているという背景の中で現在の南北和解の潮流というものが動いていることに注目したいと思います。
 では、最近の北朝鮮をどう見るか、特に九〇年代以降の北朝鮮をどう見るかということについてなんですけれども、まず北朝鮮は九〇年代に入って体制の大きな危機を迎えました。これは言うまでもなく、例えば東西冷戦の終えんということで劇的な変化というものが経済面に起きたわけです。九一年には、ロシアがそれまで非常に安い友好価格で小麦を売っていたやつを売らなくなった、さらに中国からも安い石油というものが入らなくなった。そういう中で北朝鮮は、社会主義経済市場の崩壊ということに直面して、自分たちの体制生き残りのためにさまざまな動きを始めるわけです。
 その後、先ほど申し上げたように、米国との交渉、核危機を転機として米国との交渉を始めて、その過程の中で最高指導者が、過去半世紀唯一の指導者だった金日成主席が死亡する。さらに、政策の失敗により農業が非常に疲弊していたわけですけれども、そこへ自然災害の追い打ちがかかるということで、九〇年から九五年、九六年にかけて未曾有の危機に直面していました。その結果、北朝鮮は危機に陥ったわけですけれども、危機であるということを認めて、国際社会からの支援というものを受け入れるという立場を表明したわけです。もっとも北朝鮮は、だからといってこれまでの政策というものを転換したわけではありません。少なくとも国内で従来の政策を明示的に転換していたわけではありません。北朝鮮で物が入らなくなったことによって、食糧危機が起きたことによってどのような変化があったかというと、国内でかなりの変化が生じました。
 例えば、北朝鮮国内では人の移動とか物の移動というものは非常に制限されていたわけですけれども、配給制度というものが崩壊した結果、各地方の裁量に任せて食糧危機というものを乗り切るということを指導部は黙認せざるを得なかったわけです。したがって、ある地方では地元でとれた魚を、トラックを調達して燃料を調達して中国の方まで売りに行くと。売りに行って、そこで食糧と交換して持って帰るなりさまざまな工夫をして、調達をするということをやったわけです。北朝鮮が九〇年代以降経験している一つの変化というものは、北朝鮮が抱える危機的状況ゆえに生じた変化、それに対応するために、国内で人々がいろいろな動き、人間が移動して、それから外国からいろんな物が入ってくる、それをNGO等が分配する、そういう人々が出会う、そのような変化というものが起きています。
 もっとも、北朝鮮はそのような変化というものが国内で起きているわけですけれども、次に対外的な変化ということでいえば、当然北朝鮮の核兵器それからミサイル開発というものにどのように対処すべきかというのが九〇年代における最大の国際的な問題となっているわけです。
 核兵器の問題でいえば、九四年の米朝の合意された枠組みによって一つの歯どめというものができたわけです。それまで北朝鮮は核兵器を開発するのではないかという非常な危機と疑いを持たれていたわけですけれども、この合意によって少なくとも北朝鮮は、核開発というものを検証可能な形で、つまり国際原子力機関、IAEAの監視のもとで従来の黒鉛減速炉システムの稼働というものを凍結させている状態になっているわけです。ところが、この枠組み合意というものは、ミサイルの開発ということに対応するだけの内容を持っていませんでした。そこで北朝鮮はミサイルを輸出して、その拡散という観点から、クリントン政権にとってはそれに有効に対応するためにどうすべきかということを迫られたわけです。
 それで、ペリー元国防長官を政策調整官に任命して一九九九年に発表されたのがペリー・プロセスです。このペリー・プロセスというものは、もう皆さん御承知のとおり、北朝鮮の核兵器というものの凍結を維持しながら、あわせてそれまで何ら対処というものができていなかったミサイルの問題についても、ミサイル関連技術輸出規制、MTCRの制限を超えるミサイルの実験、製造、そして配備というものを完全かつ検証可能な形で終わらせて、そのミサイル等関連技術の輸出を完全に停止させる、そういうものを目標にした交渉ということを北朝鮮相手に行うべきであるということを示したわけです。
 ペリー・プロセスというのは二つの道という路線を打ち出していますけれども、つまり北朝鮮がアメリカが求めるような核及びミサイルの廃棄に向けて前向きの動きを示せば、将来はアメリカや日本、韓国との関係改善というものを進めて、北朝鮮にとってさまざまなメリット、正常化を通じた国際社会との関係改善、そのようなメリットというものを約束する。ただし、北朝鮮がそれに応じなかった場合には抑止体制というものをきちんと用意しておいて、それは避けるべきであるけれども、北朝鮮がきちんとした前向きな対応を示さなかった場合の危機管理にきちんと当たるという方向性を打ち出したものです。
 このペリー・プロセスというものは日本や韓国との話し合いというものを重ねながら作成されていったわけですけれども、三カ国の調整、日本とアメリカと韓国の政策調整、それを緊密化するということがこの過程で行われたわけです。一九九八年八月にテポドンの発射がありましたけれども、九九年四月に三国の高官レベルによる三国間の調整監視グループというものが初会合を持って以降、北朝鮮に対応していくときに、日本、韓国、アメリカがそれぞれの政策優先順位というものを調整しながら北朝鮮を望ましい方向に誘導していくためにどのような対策をとるべきか意見交換を進めていく場というものができたわけです。
 現在、この三カ国の調整作業というものが続いているわけですけれども、ちょうど私はこの調整作業というものを今再構築する機会ではないかと思っています。一つは、アメリカが新しい政権になって、現在北朝鮮政策の再検討というものを行っているためです。それから、韓国も現在過去九カ月の南北交流を振り返ってみて今後どのように進めていくべきなのか、その進める上で何が不足していて、それを調整するためにどうすべきなのか、国内の再調整というものが必要になっているからです。
 そして、日本にとっても、アメリカがこれから北朝鮮政策というものをどのように見直していくのか、それに応じて日本として対北朝鮮交渉、日朝国交正常化交渉が昨年来二回行われましたけれども、大きな進展のないままストップしているわけです。そのストップしている機会を利用して、これから先、北朝鮮との関係というものをどう構築していくべきかを考え直す、再構築するための時間が現在与えられているのではないかと思います。
 ちょっと時間もせっぱ詰まってきましたので、日本にとっての目標あるいはその役割ということについては御質問の中で答えるようにいたしたいと思います。
#9
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 本日も、各委員から自由に質疑を行っていただきます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
#10
○山本一太君 大変参考になるプレゼンテーションをいただきまして、ありがとうございました。
 まず、山岡参考人に一言お聞きしたいと思います。
 今、「選択」という雑誌で日米往復書簡というリレーエッセーをやっておりまして、私も参加しているんですが、この間三回目の日米往復書間を書きました。
 私の問題意識は、このブッシュ政権下において日米そして韓の三カ国の連携が実は試練を迎えているんじゃないかということだったんですけれども、ブッシュ政権は、先ほど中西先生の方からもお話がありましたが、東アジアの安全保障の面では同盟重視ということで日本と韓国を重視する姿勢を鮮明にしておりまして、ブッシュ政権になるともう既に自動的にこの日米韓の連携が深まっていくような感じがするんですが、実は私はこの日米韓の関係、それぞれバイの関係がこれから試練を迎えるんじゃないかという問題意識を持っています。
 まず、日韓関係については、御存じのとおり教科書問題、これはもう随分前から心配していたんですが、教科書問題とか、あるいは実はまだ表面に余り出てきていませんが、農産物のセーフガードの問題、さらには金大中大統領の支持率が非常に下がってリーダーシップが低下しているということもあって、これから日韓関係はかなり大変だと思っております。
 米韓についても、例の朝鮮戦争時代の老斤里事件の話とか、あるいは基地の協定の話なんかは一段落したような感じがしますが、やはり対北朝鮮政策をめぐる温度差というものがあって、これをしっかり調整していかなければいけないというようなこともあると思います。
 そこで、山岡参考人にお聞きしたいんですけれども、私もこのブッシュ政権というのは三カ国の連携を強めていく非常にいい機会になるし、日米同盟を深化させる機会にもなると思っているんですが、こうした難しい状況の中でどうやってこの三国間の連携というものを現実的に進めていけばいいのかということについて御意見をいただきたいと思います。
 そして、中西先生にお聞きしたいんですが、その日米関係の話なんですけれども、きのう、アメリカのシンクタンクの友達が訪ねてきまして言うには、昔はジャパンバッシングだったと。その後、日本を無視するジャパンパッシングになったと。最近、ワシントンではジャパンウイッシングと言っているそうで、つまりブッシュ政権が対日戦略を非常に重視する、しかしそれは逆に言うと、日本に対する期待が非常に大きいウイッシングであると。
 果たして、日本がこの憲法の制約の中でかなり厳しい自己抑制を強いられてきた中で本当にこの期待にこたえられるのか、こういう状況が日本の対応が不十分だというためにかえって日米関係が危険にさらされるようなことはないのかという点について先生にお聞きしたいと思います。
 それから、もう一つだけ簡単に。
 NMD、TMD。私は、TMDに参加するということは、技術的にこれがフィージブルかどうかという議論は別にして、外交の抑止をつくり出すという点では日本の国益にかなっていると思いますが、これについての先生の所見を伺えればと思います。
 最後に、高木参考人に中国の経済の話をお聞きしたいと思うんですけれども、WTOの加盟は中国の今の経済状況や中国の産業に深刻な影響を及ぼす可能性もあるとおっしゃいましたが、そこら辺のところをもうちょっと具体的に付言いただければと思います。
#11
○参考人(山岡邦彦君) どうもありがとうございます。
 御指摘のとおり、日米韓三カ国の関係、調整作業について試練を迎えている、その指摘は私も全く同感です。日韓関係、教科書問題が起きています。それから、金大中大統領のリーダーシップの問題等あります。大変だと言われるのはそのとおりだと思います。
 ところが、九八年の十月に金大中大統領が日本に見えた時分、金大中大統領の訪日というものは地域の安定という観点からすると非常に大きな出来事だったんじゃないかと思います。テポドンの発射の後だったわけですけれども、金大中大統領の訪日、そのときの小渕総理との日韓首脳会談を契機に日韓関係というのは非常に改善が進んだわけです。現在、共通の目標について幾つかの共同作業というものを続けている。それによって日本の安定、繁栄というものが非常に強い形で確保されてきているのではないかなと思います。だからこそ、日韓関係の揺るぎない関係というものを維持していく必要があると思います。
 アメリカと韓国との関係、温度差の調整ということ、これは韓国が国力を非常につけてきて、地域の問題における発言力、行動力というものが従来に比べると大きくなっていく過程の中では、どんな国でもそうだと思うんですけれども、やはりさまざまな温度差の違い、温度差というか政策優先順位の違いとか、そうしたものが起きるのは避けられないんだろうと思います。
 問題は、相互にいろいろな摩擦なり問題が生じたときに、これを調整して解決して、共通の目標というものをはっきりと見据えて、そうした違いというものを克服しながら互いの国益に沿うものを形として取り込んでいく、その姿勢が必要なんじゃないかなと思います。
 したがって、非常に難しい状況ではあるけれども、どうやってこの三カ国の調整を進めていくか。これは、一つは北朝鮮あるいは北東アジアの将来というものをどう考えるか。将来の望ましい北東アジア地域の関係というものが日本、アメリカ、韓国にとってどのような形であれば望ましいものになっていくのか。そのような共通のゴール、共通の政策目標というものをきちんと設定して、そのために必要な手段、必要な政策、とるべきことは何か、これを繰り返し協議していく、そうした姿勢が重要なのではないかと考えます。
#12
○参考人(中西寛君) ありがとうございます。
 山本委員からジャパンウイッシングであるというようなアメリカのシンクタンクの方のお話を紹介していただきまして、私、この表現を知りませんで、大変興味深く拝聴しました。
 山本委員がおっしゃっていた懸念というのは私も持つところでありまして、日本に対する期待といったようなものが、ない物ねだり、英語で何と言うか私、存じないんですけれども、アメリカが同盟国として日本に対して期待をして、それが果たされないものになるというときに生じる失望感というものは確かに懸念さるべき問題ではなかろうかと思います。
 その点、アーミテージ・レポートでも、具体的な日米の外交、広い意味での外交関係に入る前に、政治という一節がございまして、そこでは、フリーな民間のレポートであるということからでしょうけれども、かなりはっきりと日本の政治が問題であるというふうに言っているというふうに読むことができるだろうと思います。
 すなわち、国会の場ではありますけれども、現在の日本の政治の状況を見れば、アメリカを含めてどの国も日本という国が信頼に足る国であるかどうかということについて若干の懐疑を持たざるを得ない。それはいわゆる知日派と呼ばれるような人たちにおいてすら、あるいはそういった人たちにおいてより一層そうであるかもしれないという状態であります。
 そうはいっても、政治は政治のロジックで動くものでありますからなかなか状態を変えるということは難しいのでありまして、その場合に考えられることは幾つかあろうかと思いますが、二つばかり申しますと、一つは、政治におけるリーダーシップというのは、もちろん一番望ましくは強い内政的、国内的な基盤がある政治的リーダーシップが存在するということですが、それはしばしば起きないことであります。
 そういったときに、外交に携わる政治的リーダーシップを持つ人が個々の問題を、英語でプット・インツー・パースペクティブと言いますけれども、広い視野の中でそうした問題を位置づけるということでありまして、例えば日米間で大きな問題になっております潜水艦事故の問題がございまして、この問題、事故に遭われた当事者あるいは行方不明になっている方々の御家族の御心痛は非常に大きなものがあるだろうと思いますし、政治家の方々がそうした感情に十分に配慮することは望ましいことであるだろうと思いますけれども、しかし私が国際関係に興味を持つ一日本人として聞いておりましても、この一つの不幸な事故、日米関係というパースペクティブの中でどのように位置づけるのかということについては、残念ながら日本の政治家の方々から大きなメッセージが聞こえてこない。日米の同盟、安保関係というのは基本的に重要であって、この不幸な事故を乗り越えて強固にしていかないといけないというのが恐らく従来の日本の基本的な路線であっただろうと思われるわけですが、そうしたことについて世論の怒りが激しいときには余りはっきりしたことを言わないというのでは、残念ながらアメリカの日本の友人も失望せざるを得ないということがあるだろうと思いますので、この点はやはり考えておかれるべき問題ではないか。
 第二点は、こうした困難な政治的状況のときにありましても実務的な問題の解決ということについて政治が果たすべき役割はあるのでありまして、この点は山本委員の全体の御質問であります日米韓の連携といったようなことについても言える。
 とりわけ、私の見るところ、米韓関係というのは現在一つの岐路に立ちつつある。米韓の間でうまくいくかもわからないですけれども、やや問題が続く可能性もあるわけです。その場合、日本としては、日米韓の連携がいろいろな意味で続いていくということが恐らく望ましいことでしょうから、米韓の間を調整することを、日本なりにできることはあるはずだと思うわけです。そうしたことについて、アメリカのブッシュ政権が本格的に問題をとらえて活動する前に日本からアドバイスをして動いていくということはできるはずでありまして、そうしたような実務的な問題解決というのは沖縄の基地問題などについてもできるはずでありますし、さまざまなことでできるだろうと思います。そうした点から、アメリカの日本に対する期待というものに漸進的にこたえていくということが、ブッシュ政権との関係ということに限らず、日米関係の長期的な意味では重要ではないかと思います。
 それから、お尋ねの第二点のTMDの問題でありますが、TMDそのものとしては、技術的な実現可能性は別にして、日本にとっては恐らく抑止力を加えるものとして有利ではないかという点が山本委員の御質問の御趣旨だったかと思いますけれども、基本的に私も同意いたします。
 ただ、TMDというのは、あるいはミサイル防衛構想全体が技術的にどういう形をとるのかというのは非常にまだよくわからないところがありまして、例えばTMDというふうにいった場合に、地上配備型の、湾岸戦争のときに有名になりましたパトリオット型の対ミサイル防衛システムをつくるという形でいくのか、それとも海上配備型でいくのかというようなことについてもまだはっきりとした結論は出ていません。日本の場合、TMDという場合には海上配備型を重視するということで、パトリオットについては従来のシステムの更新という形でいくのではないかというふうに考えられているようであります。
 そうしたいろいろな選択肢の中で考えていきますと、ミサイル防衛というのを最も重要な問題として位置づけると、いわゆるミサイル防衛というのはパッシブディフェンス、消極的防御というふうに言われるたぐいのものでありまして、つまり撃たれたミサイルを途中で撃ち落とすということになるわけですけれども、ミサイル防衛が本当に重要だということになると、純軍事的には、一番効率がいいのは、撃たれる前にその基地を攻撃できるような能力を持つ、そうした点で抑止力を持つというのが一番効率的ということになってしまうわけです。そうすると、日本のいわゆる専守防衛の防衛政策の基本方針との間での整合性ということが問題になりますし、それはアメリカがミサイル防衛、TMD、NMDを含めたミサイル防衛を重視すればするほど、そのあたりのそごということは起きてくるかもわかりません。
 これは緊急の問題ではなくて、ミサイル防衛というのが真剣に配備を検討する段階になると重要な問題になってくることだろうと思いますし、その場合に日本がどういうふうな政策をとればいいかということは私はちょっとまだわからないんですけれども、現段階ではミサイル防衛についての研究の段階でありますから、その段階について日本がこの計画に加わって将来に一つのオプションを残しておくということは日本にとって有利なことだろうというふうに考えております。
#13
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 山本委員の御質問にお答えする前に、TMD、NMDの問題について一言、私の補足的私見を述べさせていただきたいと思います。
 最後に中西参考人がおっしゃいましたように、TMDはまだ現在技術研究の段階でありまして、この開発あるいは配備についてはまだ何ら決定をしておらないのが日本政府の立場であると私は理解しておりますが、そのTMDの配備に意味があるかどうかということとは別の問題として、私は、TMDの技術開発に非常に大きな意味があって、最後に中西参考人がおっしゃいましたように、オプションをオープンにしておくということの意味は非常に大きいだろうと思います。そして、その一つの帰結として、TMDの開発能力を有しながら、それを交渉のカードとしてミサイル脅威の削減に向かうような軍備管理交渉をするというのも一つのオプションであり得るのではないかということをつけ加えさせていただきたいと思います。
 私の報告に対する御質問ですが、私の理解するところによりますと、WTO加盟というのは基本的に貿易の自由化の推進ということでありまして、これの中国に対してもたらすメリットが大きいことは言うまでもありません。
 しかし同時に、非常に大きなコストを伴うということは中国人自身も非常によく認識しておるわけですが、その一番根本的なところは、言うまでもなく中国の産業が国内市場においても激烈な国際競争にさらされるということでありまして、その結果、少なくとも短期的には、非常に生産性の低い国有企業、あるいは郷鎮企業と言われる農村工業のさまざまな部門が非常に過酷ないわゆるリストラを強いられることになるのではないかと予想されます。そのようなリストラはもちろんより高い生産性への過渡期の現象ではあるのかもしれませんが、政策運営を誤るとこの過渡期を乗り越えるのが非常に難しくなることもあり得るだろうということであります。特に、先ほど申しましたように、中国の経済の成長というのは徐々に鈍化しつつありますし、失業の問題も年々深刻さを増しております。
 こういう状況の中で、さらに急激なリストラが行われるという事態に直面した場合に、中国の政府が事態をうまく乗り切れるかどうかということは必ずしも保証はないのではないかと。もちろん、私は不可能だと言い切るつもりで申しているわけではございません。
#14
○高野博師君 最初に、高木参考人にお伺いしますが、簡潔に答えていただいて結構です。
 中台関係なんですが、中国が台湾に対して武力行使の可能性を捨てていないということなんですが、これはいずれやるだろう、今は軍事的優位に立っていないからやらないだけで、中国は歴史的にも軍事的優位に立ったら必ずやるということが言われている。
   〔会長退席、理事山本一太君着席〕
 したがって、今の段階ではまだやらないけれども、台湾も相当の軍事力を持っていますから、しかしこれはやるだろうという見方があるんです。これについてどうお考えか。李登輝元総統が、日本の円借款によって道路をつくり、鉄道を敷き、港湾を整備するのは困る、これはミサイルを台湾海峡近くに配備されるからだと、こういうことも言ったそうですが、いずれにしてもこの辺の可能性についてどう思われるか。簡単で結構でございます。
 それから、中西参考人には、先ほどジャパンウイッシングという話がありましたが、僕はジャパンディマンディングじゃないかと見ているんです。期待というよりも応分の負担を求めてくる、役割分担だということがアメリカの日米同盟強化の本質的なところじゃないかと見ているんですが、日米同盟の強化と日中友好というのは私は矛盾しないと見ているんですが、その辺をどう考えておられるか。
 いずれにしても、日本は米中のはざまにあって埋没してしまわないかということを心配していまして、これははっきりと物を言わない、日本は。日本の立場をきちんと主張するということが重要なんじゃないかと。対立や摩擦を避けてきた、それに全力を注いできた、これがかえって信頼性を損ねているのではないかと私は思うんですが、この辺の日米関係、日中友好の、簡単で結構ですのでお答えください。
 それから、山岡参考人にお伺いしますが、北朝鮮がこの一、二年でミサイルを百基ぐらい新たに配備したという新聞情報がありましたけれども、この南北の和解というのは本物じゃないんじゃないかと私は見ているんですが、軍事力による瀬戸際外交、あるいはこういう今までのやり方は本質的には変わっていないんじゃないか。その辺をどう思っておられるのか。もう一つは、拉致問題については山岡参考人はどういうふうに位置づけておられるのか。この二点だけ、簡潔で結構ですのでお願いします。
#15
○参考人(高木誠一郎君) 簡潔にとおっしゃいましたので、なるべく短くお答えします。
 中国が台湾に対して軍事的優位に立ったら必ず武力行使をするかどうかということですが、私は必ずやるとは言えないと思います。
 もちろんその可能性は排除できないわけですが、武力行使をした場合の中国のコストというのも非常に高いわけであります。もちろん台湾の人心が離反する、台湾が大変荒廃するということもありますが、それ以上に対米関係、対日関係に非常に大きな衝撃をもたらしまして、中国として得るところは非常に少ないと思います。
 ですから、もし中国が武力行使をするとしても、それは単に軍事的優位に立ったというだけではなくて、何らかの誤算によって、あるいは非常に追い詰められたような状況の中でやることではないかと思います。円借款によって道路建設、港湾建設が進んでミサイルが運搬しやすくなるというような御指摘があるそうなんですが、私、中国の軍事力の強化というのは円借があろうとなかろうと進行するものだろうと思います。
 問題は、そのような中国が国際環境の平和の維持に利益を感ずるかどうかということでありまして、より多くの利益を感じさせるような形で円借を通じて中国の経済発展に協力していくというのが私は日本のとるべき道だと思います。
 以上です。
#16
○参考人(中西寛君) 私もできるだけ簡潔にお答えしたいと思います。
 日米同盟と日中友好は矛盾しないのではないかという高野委員のお話でしたけれども、その結論に私も同意いたします。
 そこで、その矛盾しないようにする手段といいますか、そちらの問題なんですけれども、何が問題であるかというときに、対立や摩擦を避けて自己を主張しないようにしてきたことが日本外交の問題であるかどうかというと、半々ではないかというふうに私は思います。
 つまり、確かに日本の外交というのは、協調とか仲よくしましょうということをアメリカ、中国に限らずどこの国とも申してきまして、しかもここ二十年ばかりはお金持ちになって、お金を使って仲よくしましょうということで、やや上品でなくなったところにマイナスがあるような気がいたしますけれども、いずれにせよ、仲よくすることはもちろんいいことですけれども、そのことだけを考え過ぎてきたという点はいささか問題ではなかろうかという気がいたします。
   〔理事山本一太君退席、会長着席〕
 ただ、そうすると、問題は、協調をやめて自己主張をすべきだというふうになると、今度は外交としてはやはりまずいのでありまして、みずからの主張と相手の主張を理解した上でどういうふうに折り合いをつけるかというのが外交の基本であります。
 日本の場合には、摩擦や対立というのが表に出かかったり、出たときにどうやって仲よくするかということをやってきたんですけれども、基本的に外国、例えばアメリカ、例えば中国が何を目指し、そして日本の国益は何であるかということについて考えることが余りない上で、とりあえず仲よくしましょうということをやってきたのがいかぬのでありまして、その意味では、例えば日本は、対中政策や対米政策について外務省を中心に考えてきておりますけれども、日米中という枠組みで米中関係がどうあるべきか、あるいは日本がどういう位置を占めるべきかということについては、議論はするんですけれども基本的な政策というのは余りないように思います。
 そういったことをまず考える、その上で自己の国益を追求するという姿勢が重要なのでありまして、短絡的に自己主張をしなかったからまずかったんだというふうに言う、そういうおつもりではないと思いますけれども、そういうふうに言うのであれば、自己主張をすればうまくいくのかということになってしまいまして、それはやはり国際関係というのはそれほど甘いものではないというふうに考えます。
#17
○参考人(山岡邦彦君) どうもありがとうございます。
 南北の和解は本物ではないのではないか、北朝鮮の瀬戸際外交は変わっていないんじゃないかと。
 私も南北の和解はまだ本物ではないと思っています。南北の和解の動きというものが非常に壊れやすいものであるという認識を持っています。北朝鮮の外交のやり方、これは瀬戸際に立っておどしをかけながら交渉を進めていく。そのスタイルというものはそのまま北朝鮮らしさというものが出ていると思いますけれども、果たして北朝鮮が今何を求めてそれをやろうとしているのか、そこを認識することが重要ではないかと思うんです。
 北朝鮮は、やはり何といっても自分たちの体制の弱さ、脆弱性というものをここ十年間非常に強く認識しているだろうと私は思っています。その弱い体制というものをできるだけ自分たちの指導部がコントロール可能なペースで対外的な交渉というものを進めて、最終的には体制の保障というか、生き残りというものを図ろうとしている、そういう過程ではないかと思います。したがって、まず南北の和解が本物かというと、これは本物ではない。
 しかし、現在、北朝鮮は少なくともその交渉のスタイルを続けるということは続けていると思います。その交渉の過程の中で、例えばアメリカとの間で米朝交渉が続いている間はミサイルを撃たないということも文書の形で確約したわけです。あるいはテロ活動というものはこれはやらないということも言っているわけです。
 そのような北朝鮮側の約束というものを取りつけながら、南北の和解のやはり最終的な望ましいゴールというのは、私は、南北の平和共存、それによって朝鮮半島というものの平和が定着していくということが重要ではないかと思うんです。少なくとも朝鮮半島での戦争の再発というものは避ける。最終的には和平というものが定着していく、そういう過程が南北和解の潮流というものではないかと思っているんです。
 したがって、そのような形の中で、現在本物でない南北和解というものをできるだけ本物に近づけていく、そのための努力が必要なのではないかなと考えています。
#18
○井上美代君 井上美代です。
 参考人の貴重な御報告、ありがとうございました。
 参考人も言われたんですけれども、ブッシュ政権になって早くもさまざまな変化が出てきております。
 ブッシュ政権は中国との関係を戦略的なパートナーから戦略的競争者に変化をさせました。また、ブッシュ政権がNMD計画を明らかにしたことは先ほどから言われているとおりです。このNMD計画は欧州各国でも波紋を呼んでおりまして、アメリカが七百億ドルもかけて推進しようとしている計画で、例えばイギリスのノースヨークシャー州のフィリングデイルズ基地の通信施設を早期警戒基地に拡張する計画が含まれ、そして英国内や欧州各地で反対の声が上がっていることは御存じと思います。
 一方、東アジア地域を見ますと、このNMD計画との関連で、防衛庁の防衛研究所の、三月一日に出されました、「東アジア戦略概観二〇〇一」というのが発行されましたけれども、この四十八ページで、アメリカのNMD構想について、「二十から三十発程度の弾頭を迎撃できる限定的なNMD計画であっても、中国に対し深刻な影響をもたらす。中国は、対米抑止力を維持するために、ICBMの増強や、既存のICBMのNMD突破能力を強化せざるを得ない。」というのがここに述べられております。
 このように、NMD計画は、東アジアの平和と安全に寄与するどころか、軍拡に拍車をかける危険性があるものだと、私たちは反対です。 参考人はどのように考えられるのか、三人の参考人にお聞きしたいんです。
 私はあと二つ短く質問をいたしますが、二つ目は、ブッシュ政権の変化の中で、再びならず者国家という規定が復活したことなんです。報道でも、このならず者国家は北朝鮮、そしてイラク、イラン、リビアを指しているようですけれども、東アジアとの関連で見ますと、北朝鮮をならず者国家と限定して脅威を強調する、そのことによって、アメリカは日本に戦域ミサイル防衛、TMDの推進を勧め、日本の軍事的役割の増大を求め、これに日本がこたえる、これが日本との関連で軍拡に拍車をかける要因となり、そして悪循環になるものと思いますけれども、これについてどのように参考人は御意見を持っておられるか、それをお聞きしたいと思います。
 そして三つ目には、調査室が作成してくださいました黄色い表紙の資料、ナンバー三十二ですけれども、「東アジアの安全保障(新聞報道・論調)」という資料をいただきました。この中に、米国防大学の国家戦略研究所の特別報告書、十九ページなんですけれども、ここに「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している。この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる。」と、こういうふうに書いてあります。
 日本は憲法で集団的自衛権を禁止しております。その禁止されている集団的自衛権を解除してまでと、解除という言葉を使ってありますが、これは解除ではなくて、憲法を踏みにじってというふうに私は読みたいのですけれども、そういうことですが、このようなことをしてまでより緊密かつ効果的な安保協力をすることは、周辺事態法がつくられた今、日本周辺での紛争に日本が巻き込まれる、協力、参加させられるという、日本国にとって平和と安全を脅かされるものになることはもう明らかだというふうに思います。
 絶対に集団的自衛権を行使できるようにしてはならないと私は考えております。参考人のこれについての見解もぜひこの機会にお伺いしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
#19
○参考人(中西寛君) それでは、ブッシュ政権についての御質問であったと思いますので、私からお答えをさせていただきます。
 三つ井上委員の方から御質問がありましたけれども、できるだけ手短にお答えをしたいと思いますが、まずNMDの問題でありますけれども、井上委員がおっしゃったように、ヨーロッパにおいてこの計画についてかなり強い懐疑があるということは事実であります。
 特に大陸諸国、フランス、ドイツ、イタリアなどでは懐疑は強いんですけれども、これは幾つかの理由があって、一つは、やはりヨーロッパについての基本的な問題というのは東ヨーロッパあるいはロシアの問題でありましたから、ABM条約が一つの要素をなしている米ロ間の戦略的安定というのを非常に重視しているという点でありまして、NMDが意図しているのはせいぜいのところ中国程度、あるいはより小さいレベルでのイラク、北朝鮮あたりの核の脅威、潜在的なものも含めて核の脅威でありますから、そういったものについてはヨーロッパの関心はやや薄いということも一つの背景にある。
 したがって、ヨーロッパの意見が普遍的なものであるかどうかは別でありますけれども、客観的に見て、NMDというのが世界の平和のためにプラスであるのかマイナスであるのかというのは確かに難しい問題であります。簡単には答えが出ない問題でありますけれども、ただ、今、井上委員がおっしゃったように、軍拡競争を進めるものだからやってはならないというふうには私は思わないのであります。
 というのは、軍備がNMDがなしでもふえていることは確かでありまして、例えば中国の近代化、核兵力の近代化計画というのが推進されていることは間違いありません。新しいタイプの長距離ICBMの実験をしていることは事実であります。したがって、NMDが配備されるということにもしなりましたら、確かに引用をされた文献のように、中国が核兵力を増加させることに拍車をかける可能性は否定はできません。しかし、それがなければ軍拡競争が起こらずに、中国にしてもそのほかにしても、核能力あるいはその他の軍事的能力をふやさないかといえば、それは現実にはそうなっておらないわけであります。
 したがってNMDを、あるいはTMDを含めて、それを配備する方が平和に貢献するかどうかというのは非常に厳密に考えられなければならないことでありまして、NMDをやれば絶対に悪くなって、それがなければ平和であるというふうにはいかないだろうと思います。
 二番目のローグステート、ならず者国家についても基本的に同じお答えでありまして、これについても井上委員は軍拡の悪循環をもたらすというふうな御指摘をなさいました。私はその可能性が絶対にないとは申しません。軍拡を促進する危険性がゼロではないだろうと思います。
 しかし、にもかかわらず、それがなければ軍備を拡張しないのかということになりますと、例えば北朝鮮がノドンミサイルを開発、配備し、テポドンミサイルを、というふうに西側で考えられているものを実験したのは、ミサイル防衛網の発達といったようなものを念頭に置いたものというふうには考えられません。むしろ、基本的な軍事力の近代化計画の一環としてそうしたものを行ったというふうに考えるのが正当であろうかと思います。
 したがって、軍事的な危険性を減らすということを目標とするならば、そうした軍拡のインセンティブをいかに減らすかということが重要なのでありまして、それに役立つかもしれないし、逆にその危険性を増すかもしれないというのがこのミサイル防衛システムの構想でありまして、やがてこれが現実にもう少し可能性があるものになれば、日本もアメリカもその他の国もそのリスクとメリットについて厳密に考えないといけない段階が来るだろうと思いますが、現時点でそれらの研究を推進することが軍拡を増すというふうには考えません。
 それから、三番目の集団的自衛権の問題でありますが、これについては長くなりますから申しませんけれども、私の理解するところでは、日本国憲法の一つの解釈として集団的自衛権の行使は許されないというふうに出されているのは、内閣法制局の一定の権威のある解釈ではありますけれども、憲法の唯一正当な解釈であるというふうには言えないところがあるだろうと思います。
 つまり、憲法典というのは日本国の最高法規ではありますけれども、国際社会はさまざまな政治と法のシステムのもとに成り立っているのでありまして、日本国憲法典といえどもその一部を構成しているにしかすぎないわけであります。日本国憲法が最初に作成されたプロセスには国連憲章というのが十分に機能するという前提があったわけですけれども、戦後世界の現実はそれがそうではないということを示しましたし、それは冷戦後でも基本的には変わっておりません。ですから、日本国憲法を最も厳密に解釈することは国連憲章が機能していない状態では難しいだろうというふうに思います。
 したがって、特に冷戦後、地域の安全保障の問題が重要な問題になっているときに集団的自衛権の問題について行使をしないという政府の解釈は、ややもすれば外国から見れば日本がエゴイスト、危険を避けて重要な安全保障問題についてノータッチで経済的に利得だけを求めているというふうにとられかねない準則でありますから、そうした憲法九条の原則が、よい点があるということは私は十分認めますけれども、集団的自衛権の解釈に関する限りこの行使をしないというのは政治的判断の問題でありまして、それを変えることは直接憲法に違反するものになるというふうには私は考えません。
#20
○参考人(高木誠一郎君) 今、中西参考人のおっしゃったことにほとんど私は賛成でございますので、補足的な発言ということになろうかと存じます。
 まず、NMDの問題ですが、我が防衛研究所の刊行物を引用していただきまして大変光栄に存じます。
 御指摘のように、確かに今、中西参考人もおっしゃったように、アメリカがロシアとのバランスということをこれによってぶち壊そうとしているわけではないわけですが、必ずしも中国を対象とはしていなくても、アメリカの配備する可能性のあるものによって中国の対米抑止力が減殺されるということは十分にあろうかと思います。ただ、だからといって中国が対米報復的攻撃力を維持するためにさらなる軍拡に走るかどうか、それは必ずしも断定できないことではないかと思います。
 このNMDと申しますのは、かつてスターウオーズ計画と別称されたレーガン政権期の戦略防衛構想、SDIの現代版という側面があるわけですが、ソ連がそれと対抗しようとして軍拡を進めたがためにむしろ崩壊に至ったということを中国はよく認識しておりまして、アメリカとの無益な軍拡競争に走ることによって国内経済を疲弊させるということの危険もよく認識しておりますので、中西参考人が指摘されましたように、軍備の近代化を今後とも続行するとは思いますけれども、経済的なダメージを無視してまでそれを遂行するということはないのではないかと思います。中国のNMDに対する反対にはそのような懸念も含まれているものだろうと私は理解しております。
 それから、第二のならず者国家の問題ですが、確かにラムズフェルド国防長官が議会の承認を得るために行った演説ではこの点が非常に強調されておりまして、アメリカにとっては非常に大きな問題であるということがそこから読み取れるわけでございます。
 このいわゆるならず者国家と言われる国々は、今までアメリカの安全保障政策の重要な一環をなしておりました相互核抑止、いわゆる相互確証破壊と言われる、お互いに相手の国民を人質とすることによって相手から攻撃される脅威を減殺するという、この計算がきかない相手だというふうにアメリカは認識しているわけですね。つまり、どんなことがあっても攻撃するときは攻撃すると。いわゆる車に爆弾を積んで自殺的な攻撃をするテロ集団が時々ありますけれども、このような行動傾向を持った国家として認識しているわけで、そうだとすると、報復のおどしによっても抑止できない脅威があり得るというのがその認識の根底にあるだろうと思います。そうだとすると、これはなかなか周りの国の懸念表明によって変えられるものではないだろうと思います。そして、その程度のNMDの配備が果たして軍拡競争をもたらすかどうかというのは、中西参考人がおっしゃったように、必ずしもそうとばかりは言えないというふうに私も考えております。
 また、このNMDの問題に関しては、今申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが、じゃそれに対する代替案は何かというと、結局、相互確証破壊しかないということになるわけですが、これはかなり人情の自然に反する面があるわけです。すなわち、自分を相手の攻撃に対して脆弱なままにしておいて、お互いにそういう状態を維持することによって相手からの攻撃がないということの保証を得ようというわけで、やはり頭の上に何か降ってきたらそれを取り払おうというのが人間の本能であるとすると、それを否定することになるわけですね。そういう面でなかなかこれにだけ頼ることは難しいという面がございまして、NMDのような構想というのは、浮き沈みはあると思いますけれども、常に出てくることがあるということを我々は認識しておかなくてはいけないと思います。
 それから、第三の集団的自衛権につきましては、私の理解では、現在の政府の解釈は、これは国の固有の自衛権として認められているものではあるけれども、憲法の理念を尊重する立場からこれを行使しないという政治的な決定をしているということであろうと思います。これに固執する限りアメリカとの安全保障上の協力において問題が出るということはやはり否定できないことでありまして、同盟関係というのは一方で確かに巻き込まれの危険というのを伴うわけですが、他方で見捨てられる危険というのもあるわけでありまして、その危険のどちらをより多く判断するかということが問題のかぎになろうかと思います。
 現在の日米関係においては、私は必ずしも巻き込まれの危険というのをそれほど重要視する必要はなくて、むしろ日本に対する期待が裏切られたという形で日本が見捨てられる危険という方を重視しなくてはならないのではないかと思います。
 以上です。
#21
○参考人(山岡邦彦君) ならず者国家、私はこの呼び方というものについては同意しているわけではないんですけれども、問題の所在というのは、やはり北朝鮮が現在ミサイルを開発して輸出している、それにどう対応するかということではないかと思います。
 私は日本が、軍備を拡張して軍拡競争をやってそれで北がそれに対応しているんではなくて、むしろ北朝鮮がミサイルを輸出するとか、あるいはミサイルを開発して地域の脅威という要素をつくっていることが問題だと思います。
 それで、ミサイル防衛システムというものが果たして可能かどうかは技術的にもわからない。現在のところはそうかもしれませんけれども、ミサイルというものをこれからどう解決していくか、そのための対応手段としてこのような研究を進めていくというのは当然ではないかと思います。
 それから、集団的自衛権の問題ですけれども、固有の権利、ただそれを行使しないという現在の解釈というものは、私はよくないと思っています。日米同盟のそのような立場というものが日米同盟を制約しているという立場です。日本が同盟関係、地域の安定と繁栄という上できちんとした日米同盟というものを維持発展させていく上でこのような制約があるということは、日本が成熟した同盟関係を築いてアメリカに対して言うべきことは言うというときに、逆に日本の政治的立場というものに制約を与えるんではないか、私はむしろそのように思っています。
 それから、先ほど高野理事からの御質問、一カ所、拉致問題でどう考えるかという質問を私お答えしていなかったので、この機会にお答えしてよろしいでしょうか。
 私は拉致問題というものは、この問題を今のままにして日朝国交正常化ということはできないと考えています。日本がこの問題の解決というものを強く北朝鮮に主張し続けているということは、これからも重要だと思います。
 それから、アメリカにもこの拉致問題の解決というものが重要であるということをかねがね主張しているわけですけれども、それによって北朝鮮の国際テロ支援国家リストからの解除という問題に当たって、この日本人拉致問題というものの解決の重要性というものがアメリカを通じて出てきているということ、これは三カ国の調整作業の中での一つの成果ではないかと考えています。
#22
○山下善彦君 自由民主党の山下です。
 三人の参考人の皆さん、きょうは本当に御苦労さまでございました。お話を伺っておる中で、北朝鮮の対外交政策というんですか、そういうものには比較的冷戦後は積極的な姿勢が見えるよというようなお話を伺っておりました。
   〔会長退席、理事山本一太君着席〕
 特に、昨年ASEAN地域フォーラム、これに北朝鮮が参加をされたということで、その発言の趣旨なんですが、アジアの平和と安定に積極的に貢献していきたい、こういうような発言をされたということを伺っているわけですが、今日まで北朝鮮は基本的に対米政策、対米関係を中心とした二国間外交というんですか、そんなものを中心として外交を展開してきたわけです。このASEAN地域フォーラムというこのステージですね、多国間外交の場ということになろうかと思いますが、ここに参加をして積極的にそういう発言をしてきておるということは大変な今までにない大きな変化であると思うわけです。
 参考人の皆さん方にそこでお伺いしたいんですが、今後このASEAN地域フォーラム、北朝鮮が参加をしていく中でどのような姿勢で北朝鮮が臨んでいくかどうか、この辺をまずお伺いしたいと思います。
 また、我が日本もこの同じステージの中でどんな働きかけをしていけばよいのかなと、こんなことを思いますが、その点についてもあわせて伺いたいと思います。
#23
○参考人(高木誠一郎君) 北朝鮮は私の守備範囲の真ん中というよりはむしろ端っこの方でありまして、懸命に走ってもボールがキャッチできるかよくわからないんですが、北朝鮮がASEAN地域フォーラムに参加したということは私も承知しておりますが、果たしてこの場でどれだけ大きな役割を果たしていくかということは、もちろん依然として未知数だと思います。それ以前に、まずASEAN地域フォーラム自体がこの地域の安全保障のメカニズムとして今後どの程度の役割を果たしていくかということも未知数であると言わざるを得ないと思います。
 ASEAN地域フォーラムは、信頼醸成、予防外交、紛争解決という三つの段階を経て深化していくべきものということになっておるわけですが、一九九三年に発足が決まって以降、もうかなりの時間がたつわけですが、まだいまだに信頼醸成から先へ進めないでおりまして、予防外交も議論はするけれども何ら実効的な措置がとれないでいるという状況にあるわけです。
 もちろん、この予防外交の段階になりますと、加盟国の主権の問題が大きな障壁となるわけですが、この点、中国と並んで多分、北朝鮮も非常に今後大きな障壁となっていくのではないかということが私には懸念されます。
 日本がどのような役割を果たしていくべきかということですが、私は、今後とも、この信頼醸成でもいいですから対話の習慣を維持するために、あくまでこの機構を重視していくべきだと思いますが、これだけで地域の安全が図られるというような幻想に陥ってはならないと思います。やはり、しっかりとした日米同盟体制あるいはほかの同盟国との友好関係というものが根底にあって初めてARFのようなものが有効性を増していくことができるのであって、ここだけにすべてを頼るということは非常に危険であろうと思います。
 以上です。
#24
○参考人(中西寛君) 次の山岡参考人が御専門だと思いますので、私は簡単に申したいと思います。
 まず第一に、北朝鮮がASEAN地域フォーラムに参加したということは、ほかのことも含めまして、やはり北朝鮮の基本的な外交姿勢が昨年あたりからは変わったということの一つの証拠ではあるというふうに言えるかと思います。これは、協調的になったとか政治体制や対外的な脅威感が変わったということでは必ずしもないんですけれども、外国とつき合うということを積極的にやっていく方が得になると判断したという意味では、かなり大きな変化であったというふうに言ってよかろうかと思います。
 ただ、やはり今、高木参考人からもおっしゃられましたように、ASEAN地域フォーラムそのものの重要性というのには若干留保がつくのでありまして、重要な組織ではありますけれども、アジア太平洋の安全保障問題についてASEAN地域フォーラムが果たせる役割というのはいまだ限定的であります。
 特に、北東アジアにおきましては、日米安保ですとか中国、ロシア、そして南北朝鮮の軍事的対峙といったような問題について、ASEAN地域フォーラムは従来実質的な役割を果たすことは残念ながらありませんでしたし、近い将来もそういうことにならないだろうと思います。その意味では、北朝鮮がASEAN地域フォーラムに入ったということはある種のシンボリックな意味はありますけれども、これをもって大きな変化というふうには言いがたいところがあるというふうに思います。
 そこで、日本が何ができるかということでありますけれども、一つ目は、今申したことの裏返しでありまして、北東アジアにおける安全保障の多国間対話といったようなことについて日本は知的な準備をすることはできるだろうと。例えば、今、南北朝鮮、それからアメリカ、中国で四者対話というのが何年か前から行われていて、これは実際のところは余りうまくいっておりません。ですから、それに日本が加わったりロシアが加わったりする六者対話ということが時々言われまして、それが言われるたびに多分うまくいかないだろうというふうに専門家は言うわけであります。恐らく専門家の見方は正しいのでありますけれども、しかし流動的でかつさまざまな思惑が絡んだ地域でありますから、そうした六者対話が場合によっては機能しないとも限らない局面があるかもしれないと思うわけです。そうしたときに備えて日本は知的準備をしておくということは意味があろう。準備をしてタイミングがよければ、そうしたフォーマルなものでなくても、何らかの形で北東アジアにおける多国間の実質的な対話を促進する当事者になるということが一つあり得ることであります。
 もう一つは、やはりそれかということになるかと思いますが、日本の経済力のことでありまして、やはり朝鮮半島における緊張緩和の重要な要素として北朝鮮の経済の安定ということは一つの重要な要素であろうと思います。それに関しては日本が余裕がある一番大きな国であるということでは間違いないわけでありまして、ただ、改めて言うまでもなく、日本と北朝鮮の間には拉致問題ですとかミサイル問題ですとかさまざまな二国間の問題がありますから、なかなか北朝鮮に援助しましょうといっても国内政治上通らないということも明白でありまして、そのバランスをどうとるかということ。つまり、北東アジアの安定のために日本の経済力を何らかの形で使う必要が生じてくる可能性が高いということと、日朝間の懸案がかなり難しい問題でありまして、なかなか解決をしないであろうということのバランスをとる上において、多国間の組織、例えばARFもその一つでありますけれども、アジア開発銀行ですとかあるいはKEDOの枠組みといったようなものを使っていく方策というのを考えるということがあろうかと思います。
#25
○参考人(山岡邦彦君) ARFについては既に高木参考人、中西参考人の方から御指摘のあったとおり、またアジア太平洋地域の安保についての役割というものは限定的であると私も思います。
 それで、問題は、やはり北朝鮮の役割というものは、北東アジア地域の安定に果たして北が前向きに出てくるのだろうかと。出てくることが今後非常に重要になってくると思います。ARFそのものに参加していく、つまり国際社会のいろいろな場に北朝鮮が関与していくという姿勢そのものは非常に望ましい方向ではないかと思います。北朝鮮がそのような国際社会から全く孤絶して歩むよりは、少なくともそういう場に接していく、その過程の中で北朝鮮なりにさまざまな今後の役割というものを考える上での参考になることを学習する場として成り立ち得るのではないかなと思います。
 ASEAN地域フォーラムに限らず、北朝鮮、最近はさまざまな多国間外交の場に出てきていますけれども、ARFそのものについて日本がさあどんな働きかけをというより、もっと広い、そのようなさまざまな多国間外交の場での役割という観点からすれば、将来的にはアジア開発銀行における日本の影響力をどのように行使していくかという問題とか、あるいは将来は世界銀行とかIMFの融資の問題というのがアメリカを中心に長い将来、先には出てくるのかもわかりませんけれども、そのようなときに日本が北朝鮮の望ましい経済復興の将来にどのような処方せんがあり得るのか、そのようなことを、考え方というものを提示していくことというのは、将来北朝鮮が前向きの対応を出してくるときには当然日本として用意すべき問題ではないかなと思います。
#26
○高橋令則君 私は、中台問題についてお話をいただきたいわけですが、中西先生とそれから高木先生、お願いします。
 私は、昨年の十一月に陳総統とお会いしたんですよ。そして、私の雰囲気では、非常に抑制的で非常に慎重だったんですよ。総統選挙後のいろんな議論を聞いていますと、かなり違うなという雰囲気を持っています。それで、私はこの中台関係問題を、緊張感を増すということはないのかなと思っていたんですよ。そういう見方でいいのかなという気持ちが一つあります。
 それから、その一つは、陳総統は国内問題が非常に大変なんですね、今、御承知のとおり。国内問題イコール外交問題というのもありますから、逆になるかもしれません。でも、私は慎重だなというふうに思っておりました。それから、中国自体も国内問題も多々あるな。そういう意味で、中台ともに当面の問題については緊張感をもたらすというようなことはちょっと考えられないなという気持ちがあるんですけれども、そういう判断がどうかなということです。その中で台湾がイージス艦の供与を要求したわけでしょう。それはどう考えるのかなと思って、ちょっと面食らっているんですけれども、これだけお聞かせをいただきたいと思います。
#27
○参考人(高木誠一郎君) 今、高橋委員のおっしゃった状況判断は、基本的に私も正しいと思っております。陳水扁氏が昨年の三月総統選挙に当選した後、中国は、その言を聞きその行いを見るという態度を表明したわけですが、とりあえずまず焦点になったのは、五月の総統就任式の就任演説であります。この就任演説の準備に当たって、陳水扁氏は、中国に台湾攻撃の口実を与えないということ、それからアメリカを満足させること、国際社会を満足させることというようなことを基本方針として提示しておりまして、実際、陳水扁氏が行った演説はそのようなものになっていたわけですね。
 先ほども証言のときに申しましたけれども、台湾の独立は宣言しない、国家統一綱領は変えない云々の五つのノーで中国のむしろ安心感を高めるような表現をしております。同時に、中国に対してくぎを刺しているのは、中国が台湾を攻撃しない限り独立宣言はしないと。逆に言いますと、中国がもし攻撃したら独立宣言をしますよということでくぎを刺すという、非常によく練られた演説をしております。そして、その後の国内情勢は、おっしゃったように原子力発電の問題ですったもんだしておりまして、国内の政治状況が非常に厳しい。特に議会では陳水扁の民主進歩党というのは少数与党でありまして、野党の方が多数を占めておりますので、なかなかその政策運営は難しいところがございまして、対外的に冒険的な行動をとる余裕はないだろうと思います。
 また、中国の方も国内の問題もありますし、それから対米関係もありまして、台湾に対して余り強硬な対応をとる姿勢は今のところ見せておりません。現在のところ、中国は一つの中国の原則を認めさえすれば何でも話し合えると、とにかくこれを認めて話し合おうではないかということを台湾に呼びかけておりまして、一方でその呼びかけのソフト路線のもとで台湾の民主進歩党以外の勢力をなるべく自分の側に引き寄せるということを今試みているようでありまして、特に武力でおどしをかけようという傾向は今のところ見せておりません。これは多分九六年の教訓を学んだという面もあろうかと思います。
 台湾のイージス艦購入希望なんですが、今までの申し上げたことと多少矛盾するかもしれませんが、一方でそういう姿勢を見せながら中国は台湾の対岸にミサイルの配備を依然として増強しておりまして、台湾としてはこれが非常に不安なわけであります。そういうところからイージス艦の購入をアメリカに強く要望しているわけでありまして、それを差しとめるべく近々銭其シン副首相がアメリカを訪問すると思いますが、どういう相互了解がこれによって成り立つのかを注目すべきだと思います。
   〔理事山本一太君退席、会長着席〕
#28
○参考人(中西寛君) 高木参考人が一番の専門家でありますから、私として事実関係について高木参考人のおっしゃったことに何ら違う観点は持ちません。
 ただ、若干私なりの観点を申しますと、高橋委員のおっしゃった一番目の中台関係が緊張感を増すことはないんではないかという御自身の御判断と、それから二番目に台湾、中国ともに内政がどうもしっかりしないということは、若干理論的には矛盾し得るわけでありまして、中国も台湾も内政がはっきりしないからどっちかといえば強く出る、少なくともレトリックの上で強く出てしまって、それで後に引けなくなるという可能性はある。特に中国については、政治的に一党独裁体制でありますから、軍部、人民解放軍がかなり大きな影響力を持っているということもありますし、台湾問題というのはある種のイデオロギーなり信念の問題というところがありますので、そこで強く出てしまって引けなくなるという危険性はあるんで、内政が混乱しているから緊張が高まらないというものでは必ずしもないと思います。
 同時に、台湾の問題というのは、本質的に中国と台湾の主張が対立していることは否定できないことでありまして、平和的にこれを解決しようと思うと、中国と台湾の間でお互いでやることは神経戦ということになるんですね。ですから、余りにも海峡が平和になってしまうと、どっちかが得になってどっちかが損になる。特に中国にとっては、平和になり過ぎると結局台湾が独立することを黙認するということになりかねないという恐怖感は常にありますので、緊張感がゼロになってしまうということはやっぱりないんじゃないかというふうに思うわけです。
 それからもう一つは、国際関係の問題で考えても、中国、台湾をどう扱うかというのはやはり国際社会がほっておけない問題でありまして、具体的な例としてはWTOの加盟問題があります。中国がWTOに加盟するのは割と早いんではないかというふうに昨年は思われていたんですけれども、どうもことしに入って、昨年の後半からことしにかけて余りペースがよくありません。これはいろいろな複雑な問題があるんですけれども、そのことと台湾がWTOに入るタイミングとの問題があるんですね。中国は、台湾のWTO加入は認めるけれども中国よりも先であってはならないというのを言っておるわけですが、それが中国のWTO加盟が遅くなると台湾の方から不満が出てくるということが起こり得まして、そういうふうな国際社会との関係ということからいっても緊張を生む種はあるんで、それが軍事的に表面化する可能性は少ないと思いますけれどもゼロとは言えないということで、それがイージス艦の要求、台湾としてはいい兵器を持てば持つほどアメリカとの関係を強くできるという考慮があるわけでしょうから、必ずしも台湾側もイージス艦を供与してもらえるというふうには信じていないような気もいたしますけれども、そういうふうな要求はするということではないかと思います。
#29
○佐藤雄平君 佐藤雄平です。
 中国と北朝鮮についての情報を高木さんと山岡さんにお願いします。
 去年の十月に中国に行ったんです。それで、帰ってきた。我々が帰ってくる、そして自民党の野中さんが北京に行ったということで、その北京に行ったということは北朝鮮のことでお願いに行ったんですけれども、ちょうどその後こういう新聞の記事を見たんです。野中幹事長が行って朱鎔基と江沢民と会談をして帰ってきた次の日に、北朝鮮の金首相が行って朱鎔基と江沢民と会談をしたと。そのときに外務省が、北朝鮮から金首相が行くというのが全くわからなくて、場合によっては北京飯店に野中幹事長と金さんが一緒に泊まっていたんじゃないかと。そんな中でも何で日本の外交の情報が入らなかったんだろうと、そんな話があって、正規なルートではそれがたしか入ってなかったと思うんですけれども、しかしながら情報というのが一番外交の中で大事なわけですから、この辺の原因、理由というか、やはり北朝鮮の情報、中国のいわゆる本当の情報の欠如というのはどの辺にあるか、高木さん、山岡さん、おわかりになったら。
 あれ、ちょうど新聞の記事になって私もやっぱりおかしいと思った。本当に前日、野中さんと会って、中国もある意味ではしたたかだなと思ったのは、朱鎔基と江沢民と会談して、次の日、北朝鮮の金首相と彼ら二人が会談しているわけですから、この辺何か参考になるようなことがあれば。
#30
○参考人(高木誠一郎君) 外務省がどうしてこれをキャッチし得なかったかということについては私はよくわかりません。多分機密費の使い方が正しくなかったこともあるのかもしれません。
#31
○佐藤雄平君 私もそう思った。
#32
○参考人(高木誠一郎君) わかりませんが、ただ一つ、外務省に対して同情的なことを申しますと、多分、金正日の訪中というのは土壇場になって決まったことではないかなとは思います。と申しますのは、ちょうどあの時期が中国の旧正月の直前に当たっておりまして、特別列車を仕立てたりするのは非常に難しい時期でありまして、前々から慎重に準備されているというようなものであったらそういう時期は選ばないだろうと思うんですね。ですから、かなりばたばたと決まったことではなかったのかなというふうに思われます。
 そうだとすると、なかなか第三国がその動向をキャッチするのは、中国とよほど太いパイプでも持っていない限り難しいのかなというふうに感じております。それ以上、私も特に情報は持っておりませんので、わかりません。
#33
○参考人(山岡邦彦君) 私も内実というものをどこまで、どういうことが起きたのかわからないんですけれども、中国と北朝鮮の関係というのは普通の国家関係とは違うと思います。これは中国と北朝鮮の共通項というものがどこにあるかというと、いずれも基本的に一党独裁ということで、党が国家を主導する体制で北朝鮮と中国というものは成り立っているわけです。したがって、中国と北朝鮮との間の首脳外交、首脳往来というものは、通常の国家間ですと外務省同士、外務省のチャンネルを使ってやると思うんですけれども、北と中国との間では明らかに党のレベルでやっていると思います。
 では、どのような形で首脳の往来というものがあり得るのか。昨年十二月だったと思いますけれども、北朝鮮の党の国際部長が中国を訪れています。それから、最近では中国の党の対外連絡部副部長北朝鮮担当という人がピョンヤンを訪れて、そこで金正日総書記に会っていると。恐らくはこの党レベルの部長クラスの幹部が首脳外交の下準備、設営というものに当たっているのではないかなと思います。
 日本の外務省に対して中国がそれを事前に説明するということはしないんではないかと思います。一月の金正日総書記の訪中というものが一体どのくらいの準備期間があったのかについては、私はよくわかりません。直前でやったのか、あるいはもう昨年のうちに、時期の最終的な確定というのはないにしても、一月にあり得るということでの話が進んでいたのか、そこらのところはよくわかりませんけれども、北朝鮮と中国は昨年来長い間疎遠であった首脳同士の往来というものを復活させたことによって、次第にこれからも頻度高い交流というものが党間レベルで進んでいくのではないかなと思っています。
 ただし、中国の側から見ると、党同士の信義ということでの継続、それが持つ政治的意味合いというものは重視すると思うんですけれども、事経済関係ということに限って言えば、中国自身が非常にこれまで経済改革というものを大変な思いでやってきていると思います。北朝鮮の経済体制というものはまだとても中国の市場経済レベルにまで達していないわけで、そこの間に、中国と北朝鮮との間でのギャップというものは当然八〇年代と比較すると今非常に大きくなっているのではないかなと考えます。
#34
○島袋宗康君 御三名の参考人の方々、大変御苦労さまです。二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。
 まず、中西参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどのお話によりますと、ブッシュ政権になってから二カ月で、東アジアの政策的なことはまだあと二、三カ月かかるというふうな中でも、沖縄の基地問題というのはかなり見直しがされるだろうと。その中で海兵隊の削減というものがあり得るんじゃないかというふうなお話がありましたけれども、これについては、実は去る二月二十一日の川村亨夫参考人も同じように、海兵隊の削減が進むのではないかと。いわゆるグアムに新しい基地建設をしてかなり受け入れ準備をされているというふうなお話がございましたので、もし中西参考人が、これ具体的にアメリカにおいて軍事、十万人体制といいますかそういったものが見直されると、特に海兵隊の沖縄からのいわゆる削減というふうなものが具体的になされるかどうか、その辺についてもし御意見があれば承っておきたいというふうに思います。
 それから、これは先ほどもお話があったんですけれども、実はきのうの新聞にこういうことが書かれています。中国大使館で行った記者会見で、米国の台湾への武器売却が米中関係にとって最も破壊的と警告し、長期的に米国の利益にならないというふうな牽制をしたと。その中でまた、中国の目下の関心は四月の米台軍事協議でどんな武器が売却をされていくのかと。イージス艦だけはやめてほしい、これが本音ではないかというようなことと、それから戦域ミサイル防衛、TMD構想の一翼を担うイージス艦供与は、単なる武器売却だけではなくして、台湾が米国の防衛システムに組み込まれる発端になると見ているというふうな警告みたいな記事が載っておりますけれども、その二点についてまずお伺いして、あとまた別の方々にお伺いしたいというふうに思っております。
#35
○参考人(中西寛君) 最初の海兵隊の削減についての具体的な動きということでしたけれども、これについては私は特に存じ上げません。先ほど御紹介があったグアムの基地建設が進んでいるということも私ははっきりとは存じませんでしたので、このことについて具体的にどうこうということはありませんけれども、どういう形で進むか、海兵隊のような精強で若い部隊を沖縄という土地に置いておくのは、どうも根本的には政治的に難しい問題があるというふうには、例えばアーミテージ、ウォルフビッツのような日本の状況を知っている人たちにはアイデアはあるんではないかと思います。ただ、海兵隊が沖縄にある、まとまってあるということは軍事的にもやはり無視し得ないことでありますから、これを変えるということについては、簡単に日米関係から考えて減らした方がいい、グアムにある程度配備できるということですぐ済むということではなくて、政権のかなり上のレベルで議論をしないとならないということだろうと思います。
 一つ歴史的な観点から言えるのは、そうした問題について、例えば沖縄の施政権の返還の問題について、日本の状況をよく説明してアメリカの政府を説得してくれたのはやはり大使が大きかったわけであります。近々フォーリー現駐日大使は帰国されるようでありまして、次にハワード・ベーカー氏の名前が挙がっているようでありますけれども、いずれにせよ、そうした日本の状況について広い視野からアメリカの政府を説得できるような人がいるかどうかと。そして、日本が特にこの海兵隊の問題については軍事的、政治的なインプリケーションが大きいのでありまして、その意味でも地域の安全保障について日本がどういうふうに考えるのかということがなければなかなかうまくいかないのではないかというふうに思います。
 それから、米台関係の問題でありますけれども、これは先ほど来お話が出ておりますし、高木参考人の方が御専門だと思いますので私は余り新たに申し上げることがありませんけれども、中国としては非常にイージス艦というものをある意味でシンボリックに問題にしているということだろうと思います。
 ただ、イージス艦を仮にアメリカが売ったとしても、先ほど来申していますように、TMDにしてもNMDにしてもまだ机の上のプランですから、実際に動くかどうかはよくわからないわけです。だから、台湾が高い買い物をして、既存の駆逐艦とかそういったものでできるようなシステムよりちょっといいぐらいを買ったということになりかねないのでありまして、いずれにせよ、中台関係、あるいは台湾海峡において軍事的なバランスを台湾に不利にしないということがブッシュの基本政策であるということは、イージス艦を売る売らないにかかわりなく当面はそういうふうになるだろうと思います。その点で中国は、恐らくアメリカのブッシュ政権について不満を持つでしょうけれども、それで決定的に対立することは損であるというふうに判断するのではないかというふうに思います。
#36
○島袋宗康君 次は、山岡参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど北朝鮮、いわゆる朝鮮人民共和国の拉致事件の問題で、それを日朝の国交正常化に向けてのカードにすべきじゃないかというふうなお話がありましたけれども、実は私は一昨年北朝鮮に行ってまいりましたけれども、向こうとしては、行方不明者ならわかるけれども、拉致事件というふうに明らかに朝鮮が拉致をしたというふうなことの問題については非常にこれは困るというふうなことを言っておりました。私は真偽のほどを知りませんので、その辺の拉致事件というものがかなり確証を得た上での問題であるのか、うわさによる問題であるのか、その辺の日本側の立場としてどういうふうなことで我々理解すればいいのか、この一点お伺いします。
 それから、御三名の方々にちょっとお尋ねしたいんですけれども、いわゆる東アジアの安全保障という場合、我が日本だけの安全保障でないのは当然でありますけれども、この地域に現存する各国が共存共栄をしている条件を探求することだと私は思っております。現在この地域に存在する緊張関係は、南北朝鮮関係、中台関係、日ロ、日朝、日中関係及びこれらのすべてにかかわる米国の世界戦略から生じているわけだと思っております。特に重要なことは、我が国の周辺諸国が我が国の政治姿勢に敏感である点と米国の過剰な介入ではないかというふうに私は思っております。
 そこで、二十一世紀を通じてこの地域に平和と安定を築いていくためには、日米両国の自制とリーダーシップが欠かせないと思うわけであります。私は、我が国が平和憲法を堅持すること、我が国に存在する米軍の軍事力を大幅に削減することが必要不可欠であるというふうに考えております。三先生方の御意見を拝聴したいと思います。
 以上です。
#37
○参考人(山岡邦彦君) 北朝鮮による拉致の疑いがあるのは七件、十名であるという立場は、日本政府が、たしか九七年三月だったと思いますけれども、そのときに出しています。
 それで、先ほどおっしゃられたとおり、日本側の提議に対して北は常に、拉致というのは言いがかりである、行方不明者としてなら調査するという言い方をしているのはそのとおりです。実際に日朝国交正常化交渉の場においても、日本側から引き続きリストを提示して行方不明者の調査を続けてくれという依頼をして、それが続いていると承知しています。
#38
○島袋宗康君 拉致事件というのは単なる、九七年の三月に外務省ですか、日本政府か。
#39
○参考人(山岡邦彦君) いや、政府答弁で出たと思いますけれども。
#40
○島袋宗康君 その程度のことですか。具体的にはないと。
#41
○参考人(山岡邦彦君) それは警察の調査等を踏まえたものと承知していますが。
#42
○島袋宗康君 あと、さっきのお話。
#43
○参考人(高木誠一郎君) 先ほど米台の兵器売却の問題で私の名前を挙げていただきましたので、中西参考人のおっしゃったことにちょっと追加させていただきたいんですが、確かに中国はこのイージス艦の問題は非常にシンボリックにとらえていると思いますが、同時に、これが台湾にTMD配備の期待を抱かせ、その期待が台湾の独立志向を強めるということを中国としては恐れていると思います。
 しかし、アメリカがまだどういう決定をするか私は存じませんけれども、たとえ台湾にイージス艦の売却を決定したからといって、それが直ちにTMDの台湾への配備ということにはならぬだろうと思います。
 また、確かにイージス艦は海上配備のTMDのプラットホームになり得るわけですが、そうしなくてもイージス艦には大きな防衛上の意味があるわけでありまして、台湾の安心感を高める上ではそれなりに大きな役割を果たすだろうと思います。
 ただ、もしブッシュ政権が台湾にイージス艦の売却を決定したら、多分、これは私の想像ですが、台湾の性急な独立志向にはかなりはっきりとした歯どめをかけるだろうと思います。もちろん公式に行うことはないと思いますが、私的にあるいは非公式にかなりブレーキをかけた形で行うのではないかと思います。
 それから、二つ目の御質問は非常に大きな御質問ですので、すべてにお答えしていると私一人で時間をとってしまうことになってしまうかもしれませんので、二点だけ簡単に申し上げたいと思います。
 一つは中台の問題なんですが、先ほど中西参考人が、この問題は基本的に中国と台湾の立場が全く相反するところにあるというふうにおっしゃったわけです。確かにそういう面があるわけですが、中国の人は、台湾の方も含めてですが、概念を操作するある意味じゃ天才的なところがありまして、もう十年ぐらい前になりますけれども、私のアメリカの友人が冗談で、中国から見れば統一が実現した、台湾から見れば独立が実現したという、そういう公式、フォーミュラが見つかればそれが一番いいんだがなと言っていたことがあります。彼はこれを冗談として言ったわけですが、私は、もしかしたら中国と台湾の方に任せておけば、そして武力行使の可能性を排除するということに中国が腹を据えれば可能ではないかと思います。
 と申しますのは、中国は今、社会主義市場経済なる、わけのわからぬと言っては失礼なのかもしれませんが、非常にユニークな概念を国家体制の基本に据えているわけでございまして、これは一昔前では想像もつかない考え方であります。こういうようなことを考えられる人たちは、もしかしたら先ほど申しましたような思いがけない公式を考えるということも十分あり得るのではないかと思います。
 それからもう一点は、日米両国の自制とそれから米軍であろうかと思いますが、大幅な削減ということをおっしゃったんですが、もちろん私はそれが可能になる事態が到来すれば非常によいことだと思いますが、削減はあくまでこの地域の脅威の削減に見合ったものでなくてはならないと思います。やみくもに削減すれば、それだけ平和になるというものではないのではないか。むしろ、削減の可能性を一つの交渉カードとして中国や北朝鮮の軍備の拡張に歯どめをかけるということが行われれば、それは一つの行き方だと思いますが、ただ削減するだけではかえって危険ではないかと思います。
#44
○参考人(中西寛君) 今、高木参考人がおっしゃったことに全く賛成であります。
 それから、東アジアの安全保障なり平和なりということは大変大きな問題でありますけれども、そのときに日本の信頼感が不足しているであるとかアメリカの過剰介入の危険といったようなことが一つの要素であるということは確かにあろうかと思います。
 最初の日本の問題については、戦争責任とか歴史の問題とか、そういうことがしばしば取り上げられますけれども、確かにその点で日本が賢明でない行動をする場合があるということはありますけれども、問題は、やはり外国が日本は本当に何であるかということを判断するときに戦争のときの記憶しかないというところが問題でありまして、将来の地域とか世界に対して日本が一体どう考えているのかというのは、きれいな言葉はいろいろ出てくるんですけれども、ほんまかいなと思わせるようなことが外国からいうと正直に言って多いことが問題ではないかと思います。
 そういう意味では、やはり政策というのは言葉だけではなくて実行によって裏づけられないといけないわけでありまして、そうしたことを日本がどういうふうにやっていくかということが問題で、その意味で集団的自衛権とか地域の安全保障への具体的なかかわりとかいうことは考えるべき問題ではないかというふうに思います。
 それから、アメリカの問題ですけれども、確かにアメリカに時に過剰介入なり一方的な思い込みにおける行動というのが時々起こる癖であるということはあるのでありまして、アジアについては、日本はその点では時にはアメリカの行動を抑制するようなアドバイスをするということも必要であろうかと思います。
 ただ、軍事力の配備という問題とは直接は関係がない問題でありまして、近代的な兵器のことを考えれば、アジアからアメリカが仮に軍事的に撤退しても介入をしようと思えばできるのでありまして、いわゆる前方展開というものとは直接関係がない。
 それから、前方展開の現在の十万人体制というのは、何をもって基準とするかによりますけれども、例えば在韓米軍なんかでも三万とか四万とかいう数でありますから、百五十万人北朝鮮と韓国の兵力があるということに比べれば四万人というのは象徴的な意味でありまして、この四万人が戦争に巻き込まれればアメリカの全体的なコミットメントがあるというシンボルでありますから、その意味では、現在の十万人体制であってもアメリカの存在がオーバープレゼンスであるというふうな判断はしにくいのではないかというふうに思います。
#45
○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。時間もありませんので、一点だけお尋ねしたいと思います。
 私、言うまでもなく東アジアの安全保障ということになりますと、どうしても朝鮮半島の問題と中国、台湾という問題になりますけれども、朝鮮半島の問題、北朝鮮の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。
 私、数年前に北朝鮮に行きましてピョンヤンから金剛山をずっと回りましたけれども、つくづく感じましたのは、朝鮮民主主義人民共和国とは呼びますけれども、これは本当に朝鮮民族主義人民全体独裁国というような感じでして、本当にすごいなという感じがしたわけであります。だから、二千万人余りの人口を持つ大きな宗教団体だというふうに理解すると全部理解できるし、会社でいえば、同族会社だと理解すれば理解できるかなというような感じがいたしましたけれども。
 感じましたのは、金日成が亡くなった後、いかにして金正日体制をつくっていくかということに非常に苦労をしているなという感じが私自身はしたわけであります。そういう意味では、なかなか金正日、今では総書記になりましたけれども、当時はなかなか姿をあらわさない、演説もしないし人にも会わないということで、ベールに隠したまま何か偶像をつくっていこうとしているなという感じが私は率直にいたしましたし、会う人会う人お話ししましても、日本の言うなれば戦争中以上の団結心を持ってみんなが対応しているという感じがしたわけです。
 こうした中で、特に最近では、南北首脳会談だとか、あるいはアメリカのオルブライト国務長官の訪朝だとか、あるいはまたイタリアとの国交回復と外交問題についても非常に大きな動きを示してきております。そこの中で日本ともいろいろこれからやらなきゃいけないわけでありますけれども、その大きな課題は何といってもミサイルの開発、配備の問題、それからもう一つは拉致問題があると思うんです。
 ミサイルの問題については、三月二日の読売新聞を見ますと、ノドンミサイルという小さいやつを百基も生産して配置したとか、あるいはまたテポドン二号についてはエンジンの噴射試験を三、四回やったとかいう格好で、日本のことは余り関係なしにいろいろやっている状況でございますから、こうした中で日朝問題をどうやっていくかということになりますと、率直に言って、金正日体制が崩壊しなければうまいこといかないんじゃないかというような極端なことさえ考えられるわけでありますけれども、こういった極端な北朝鮮の独裁体制というものがそんなに続くものだろうかなという気もせぬでもない。
 特に、いろんな国との国交を回復して交流していくとやはり変わってきて崩壊するんじゃないか、崩壊したときがチャンスだということになるんじゃないかなという感じがするんですけれども、北朝鮮のこうした政治体制というものが長く続くものだと思っておられるかどうか。これは非常に難しい問題かもしれませんけれども、三人の参考人にちょっとお聞きしたいと思います。
#46
○参考人(山岡邦彦君) ありがとうございます。
 北朝鮮の政治体制がどのくらい続くのか、私もわかりません。恐らく北朝鮮自身もわからないんじゃないかと思います。
 問題は、今後そのような北朝鮮というものが崩壊した方がうまくいくんではないかというふうなお考えなんですけれども、私は北朝鮮が崩壊するという意味合いというのはもうちょっといろんな意味合いがあるんじゃないかと思います。崩壊の定義というものは人によってさまざまなんですけれども、では、崩壊した後、その受け皿となり得べき体制というものがあり得るのか。
 一つの国家、政治体制というものが崩れた後、さまざまなことが起きます。非常に無秩序になる場合もあるわけです。どこへその権力というものが行くかわからない。したがって、外国から見るとこれほど危険なことはないわけです。しかも、北朝鮮の場合、非常な軍人国家であってたくさんの武器というものがある。こうしたもののコントロールというものが、もし仮に現在の政治体制というものが突然崩壊してしまって受け皿がない場合には大変なことになるわけです。
 そうすると、現在北朝鮮が置かれている、そういう北朝鮮をもって私たちが見ている北東アジア情勢というもの、今の政治体制というものが崩壊してその先に何も姿が見えてこない場合の北東アジア情勢というものは、現在よりもはるかに危険になって、しかもコントロールが不可能になる。その中で何を相手にこれから秩序というものを回復していけばいいのか、膨大な作業というものが生まれてくるんじゃないかと思います。
 したがって、現実的には北の政治体制というものがどこまで続くのか、これはもう北朝鮮自身の努力にかかってくる問題だと思うんですけれども、現実の中で私たちが対処すべきは、今の政治体制というのは交渉の相手としてあり得るわけです、ある程度予見性というものを見ることができる。その中でこれを維持しながら現在の脅威というものの要因を減らしていくというのが最も現実的アプローチじゃないかなと考えます。
#47
○亀井郁夫君 わかりました。
#48
○参考人(高木誠一郎君) それでは、今の山岡参考人のおっしゃったことに賛成しつつ、二点補足的なことを発言させていただきます。
 第一点は、いつまで続くかというお話ですが、こういうことの予測は非常に難しいということでございます。
 私、一九八九年の十一月下旬に東ベルリンを訪れる機会がありまして、たまたま私たちのグループが当時のハンス・モドロウ首相にお会いすることができたんですが、そのときに東西ドイツの統一の問題をお聞きしましたところ、これは非常に長期的な過程であるというようなことをおっしゃっていたわけですが、何とそれから一年もたたないうちにドイツの再統一が実現してしまったわけです。つまり、一九八九年の中ごろに、間もなくドイツの再統一が実現するなどということを言うと何をたわ言を言っているというふうに言われたんだと思うんですが、そのような予測の難しさというのは政治の世界ではよくあることではないか、これはちょっと皆さんに申し上げるのは釈迦に説法かもしれませんが、という気がしております。
 それから第二点は、もし先ほど御紹介したハンティントンの政治的安定性の考え方が正しいとすると、北朝鮮の体制が崩壊するのは北朝鮮の経済が回復して成長し始めた後だろうと思います。
 九〇年代の半ば、先ほど山岡参考人から御紹介ありましたように、ソ連や中国との関係の援助の減少とか、それから水害等によって北朝鮮の経済は非常に大きな打撃を受けたわけですね。その当時、北朝鮮の体制崩壊説というのが随分、特にアメリカを中心に唱えられたと思うんですが、御存じのように北の体制は決して崩壊しなかったわけであります。そういうような状態では、むしろ人々はあすの食事のことを考えるのに精いっぱいで、この政治体制のどこがおかしいとか、そういうようなことを余り考える余裕はないでしょうし、また、限られた食糧も人民を抑圧する機関には十分に配分されていたでしょうから、余りその体制の崩壊というのは望めないんだと思うんですが、今後北が多少でも対外開放をし、そして経済が回復していった後には、先ほど申し上げましたような社会的動因という状況が出てくるだろうと思います。そうすると、これは体制崩壊の一つの重要な素地ができるということになるのではないでしょうか。
#49
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
#50
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。
 今のことに関連して、私は山岡先生にお尋ねしますけれども、ペリー報告を私も読んでみて、やはりこの報告というのはなかなかよくできていると。非公開の軍事対応部分はわかりませんけれども、やはり願望から出発するんじゃなくて現実から出発する、そしてなかなか賢明で理性的なそういう方向があると思ったんです。それと、金大中大統領の太陽政策と相まって、日本も含めて三国で進んだと。ただ、日本は、アメリカ政府も韓国政府も言っていましたけれども、その点ではやはり足を引っ張った、あるいはおくれたという側面が確かにあったんじゃないかと思うんです。
 そこでお尋ねしたいのは、日本政府の対北交渉、ちょうど先ほど時間がなくて述べられなかった部分、その点について端的な先生のお考えをお伺いしたい、それが一点です。
 それからもう一点は、高木先生、中西先生にお伺いしたいんですけれども、東アジア安保の枠組みとアメリカとの関係なんですが、私が非常に注目したのは、ASEANプラス3のたしかマニラの会議、九九年の十一月だったと思うんですが、その会議で共同声明が出たんですね。唯一出た共同声明なんですが、その中で政治・安全保障という項目で、わずか二行のそういう項目があって、東アジアにおいてこの分野で共有する関心事項に対処する上での協力を強化すること、そういうことが書かれてあるんです。私は、これ非常に注目したんです。つまり、アメリカ抜きにこうしたことをASEANプラス日中韓が合意しているということは、初歩的であっても、あるいは実質的な意味を現時点で持たないとしても、これは端緒的に非常に興味ある動きではないかと思ったんです。
 そこでお尋ねしたいのは、一つは、アメリカのリアクションが恐らくあったはずなんですね、これについて。快く思わないことは間違いないわけだし、またそんな話も伺ったことがあるんですけれども、その点について、アメリカはどうその辺について考えているのかということと、この辺の行方、それについてお尋ねできたらと思っております。
 以上です。
#51
○参考人(山岡邦彦君) どうもありがとうございます。ペリー報告、私も本当によくできていると思います。
 それで、新しいブッシュ政権の政策見直しというものがどういう結果になるかはわからないんですけれども、北朝鮮の核の問題それからミサイルの問題、これを解決する上で有効な文書というのは、合意された枠組み、その基礎の上にペリー報告では新たにミサイルの問題を解決していくんだということ、この流れというものは僕は基本的に踏襲されるんだろうと思います。
 それで、日本の対北交渉なんですけれども、私は日朝国交正常化の意味合いというのは三つほどの意味があるんではないかと思います。一つは、やはり地域の安定それから繁栄、これに資するものであるということ。それから二点目は、それと関連するんですけれども、望ましい形というのは、国交正常化を通じて日朝関係というもの、とりわけ北朝鮮における対日感情というものが望ましいものであるということがやっぱり期待されるわけです。それから三点目は、やっぱり過去の清算ということの意味合いがあると思います。
 今現在では、日朝国交正常化というものが直ちに可能かというと、そういう状況にはなっていないと思います。幾つか日本としても、ミサイルの問題あるいは拉致疑惑の問題、こうしたものについて進展がない、そのような状況で国交正常化は無理だし、この国交正常化にはやはり相当の経済協力というか、ゴールの部分ではそれを伴うことになると思うんです。
 ところが、最近、欧州連合諸国を中心に北朝鮮との国交正常化は相当ふえてはいるんですけれども、日本と北朝鮮の国交正常化の意味合いというのは、それと比較すると全然違う側面があると思います。それは、やはり何といってもお金の問題というものがどうしても伴うからです。
 北朝鮮の軍事的脅威、私たちが見るそのような軍事的脅威をそのままに日本としてはそういうことはできないだろう、そうした問題の解決というものが日朝国交正常化の最大のテーマになってくるんだろうと思います。
 したがって、今現在、北もそれほど直ちにやりましょうというふうな形になっていないし、状況もそういう形になっていない。ただ、日本とすれば、これがやはり地域の安定と繁栄というものに寄与するというゴールはしっかりとらえながら正常化交渉というものを淡々と進めていくよりほかにはないんだろうと思います。
 北朝鮮も、この北東アジア地域において真に安定して、韓国との平和共存あるいはアメリカとの国交正常化、そうしたものを獲得する上で日本を全く度外視してそのようなことが成り立つというふうに判断しているわけではないと思っています。したがって、日本とすれば今現在立ちおくれているというふうに私自身は思っていないんです。
 ただ、これから、ペリー報告にもありますけれども、問題は北朝鮮が前向きの対応をしたときに日本あるいは韓国、アメリカというものは、北朝鮮にとって、国際社会の仲間入り、責任ある一員として、それにふさわしいさまざまなプラスになる面というものを日米韓は用意するんだというふうな方向性を出しているわけです。正常化がもたらすメリットというものについて、日本がこれからもう少し具体的に真剣に考えていく、もちろん片一方でそれがうまくいかなかった場合、きちんとした抑止というものをやっておかないと、日本の安全に直結するわけですからそれも重要ですけれども、やはり北にとって日本との関係を深めていくことがプラスになる、そうした側面というものをこれから強調することが重要だろうと思います。
 国交正常化、ゴールインする以前にも幾つか可能な面があると思うんです。北は、例えば人道的な救援というか、人道的な面で、食糧支援の問題が今までもありましたけれども、医療という点では非常に今劣悪な環境にあるということは広く知られているわけです。将来、そのような医療活動とか医療救援というような形で日本がある程度北との関係というものを、何らかのチャンネルを使って北の医療体制の充実というようなこと、軍事活動に直結しないと思われるそうした問題について積極的な役割というものを模索していくことは十分可能ではないかなと思います。
#52
○参考人(中西寛君) ASEANプラス3についてのお尋ねでありまして、私、これについて詳しく調べ直してくる余裕がなかったものですから、はっきりしたお答えはできないんですけれども、確かにASEANプラス3については、現在のところ金融とか通貨の問題が中心に動いておりますけれども、かなり包括的な共同声明がなされていた記憶はございます。
 アメリカの反応でありますけれども、これについてもかなり憶測ということになってしまうんですけれども、クリントン政権の基本的な考え方は、やはりアジア通貨危機のときに日本が提唱したアジア通貨基金について冷淡な態度をとったということがどうもまずかったんではないかという反省があって、こういうASEANプラス3のような場であっても日本が積極的に地域で行動するということは基本的にアメリカの利益に反しない、あるいは正面からそれを否定するような行動はプラスにならないというふうに考えているんではないかと思います。ですから、正面から反対する行動はとりあえずクリントン政権では避けていたということではないかと思いますし、特に政治、安全保障関係については、項目に挙げられていても具体的な動きとしてはまだ実態はないというのが現状であろうかと思いますので、何か具体的な動きがあればそれに対して反論をするであろうと。
 この点では、ブッシュ新政権は、かつてのブッシュ・シニアの政権のときにベーカー国務長官が中心になって、EAECのようなアジア太平洋を分断するような体制というのは好まないということをはっきり申していたので、そういう姿勢をまた明らかにするかもしれないですけれども、そこはやはり当時と現在ではアジア太平洋の状況も違っておりますので、たくさんあるシステムの一つとしてアメリカの東アジア政策と矛盾をしないものであれば認めていくという可能性はあろうかと思います。
 ただ、ASEANプラス3というそのものが、ASEAN十カ国、それに日中韓という三つが加わったもので、具体的に安全保障の問題で機能するというのはアメリカの問題を抜きにして考えてもなかなか難しいだろうと思いますので、アメリカとしては懐疑的ながらお手並み拝見という姿勢をとりあえずとるのではないかと思います。
#53
○参考人(高木誠一郎君) 私も今の中西参考人のおっしゃったことに基本的に賛成でございまして、また補足的な発言となるわけですが、このASEANプラス3というのは、中西参考人がちょっと触れましたEAEC、あるいはその前身であるEAEG、マハティール首相が提唱した東アジア経済グループといいますか、これと基本的に同じ構成になっているわけですが、EAEGのころはアメリカは確かにこれに非常に反発したわけであります。
 当時は、もちろんアメリカがこの地域から排除されるということを非常に懸念していたんだと思いますが、現在の時点ではアメリカとしてはそういうようなことをほとんど心配する必要がないという状況にあって、これに対してそんなに神経質な反応はしていないと思います。もし、この声明が一九九六年の日米安保体制の再確認の前に出ていたら、アメリカは相当反発したんではないかと思いますが、この後に起こったことですから、これによって日米安保体制が弱められるとかあるいは薄められるというようなことを懸念する必要はアメリカは一切ないわけでありますから、そういう状況の中では、地域にある幾つかの協力の一つのメカニズムというとらえ方でそんなに深刻に懸念しているとは思えません。もちろん、今後のアメリカの地域に対する関与の展開のあり方によってはこれが非常に大きな意味を持ってくる可能性も排除できないとは思いますが、現在のようなあり方が続く限り、このグループがこの地域の安全保障に大きな役割を果たすということはまずないでありましょう。
 もちろん、中国はそういう方向に多分持っていきたいとは思いますが、現状では、韓国でもあるいは東南アジア諸国もアメリカのプレゼンスに非常に依存しているといいますか、これを支持しているわけでありますから、これ自体が大きな存在になっていくということは、安全保障の面では少なくともないと思います。
#54
○緒方靖夫君 ありがとうございました。
#55
○会長(関谷勝嗣君) 予定した時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な質疑を行うことができました。
 参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼のごあいさつとさせていただきます。長時間にわたりましてありがとうございました。(拍手)
 次回は三月七日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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