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2001/03/15 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第2号
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2001/03/15 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第2号

#1
第151回国会 法務委員会 第2号
平成十三年三月十五日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月十四日
    辞任         補欠選任   
     小川 敏夫君     小川 勝也君
 三月十三日
    辞任         補欠選任   
     小川 勝也君     小川 敏夫君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
                福島 瑞穂君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩崎 純三君
                大野つや子君
                佐々木知子君
                竹山  裕君
                小川 敏夫君
                竹村 泰子君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
   国務大臣
       法務大臣     高村 正彦君
   副大臣
       法務副大臣    長勢 甚遠君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  大野つや子君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       堀籠 幸男君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   竹崎 博允君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革審
       議会事務局長   樋渡 利秋君
       警察庁長官    田中 節夫君
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房司
       法法制部長    房村 精一君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (平成十三年度法務省及び裁判所関係予算に関
 する件)
 (福岡地方検察庁前次席検事による捜査情報漏
 えい等に関する件)

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 この際、高村法務大臣、長勢法務副大臣及び大野法務大臣政務官から発言を求められておりますので、これを許します。法務大臣高村正彦君。
#3
○国務大臣(高村正彦君) 委員長を初め委員の皆様方には平素から法務行政の運営について格別の御支援をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 昨年十二月の就任後、三カ月余りでございますが、法務行政が抱える諸課題はかつてと比べると質量とも飛躍的に大きくなっており、二十一世紀という我が国社会の大きな変革期の始まりが法務行政にとっても大きな変革期であることを実感しております。
 今、急激に変化していく時代の要請を踏まえつつ、法秩序の維持と国民の権利の保全を通して国民生活の安定向上を図るという法務行政の基本的使命をよりよく果たすため、従来の制度や方式にとらわれることなく、幅広い視点に立って必要な改革を進め、国民の期待にこたえられる法務行政の実現を目指して全力を尽くしてまいる決意を新たにしている次第ですので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
#4
○委員長(日笠勝之君) 法務副大臣長勢甚遠君。
#5
○副大臣(長勢甚遠君) このたび法務副大臣に就任いたしました長勢甚遠でございます。
 内外に重要な問題が山積しておりますこの時期に法務行政を担当することとなり、その職責の重大さを痛感いたしております。
 急激な社会変革の時代にあって、国民のニーズに的確にこたえ、社会が直面する種々の困難な問題を迅速かつ的確に解決するために、高村法務大臣を補佐して、大野大臣政務官とともに、国民にわかりやすい法務行政を実現し、国民の期待と負託にこたえてまいりたいと考えております。
 委員長を初め委員の皆様方からより一層の御指導、御支援を賜りまして、重責を果たしてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
#6
○委員長(日笠勝之君) 法務大臣政務官大野つや子さん。
#7
○大臣政務官(大野つや子君) このたび法務大臣政務官に就任いたしました大野つや子でございます。
 時局柄大任ではございますが、高村法務大臣、長勢法務副大臣のもとに、よき補佐役として、時代の要請にかなった法務行政の推進のため誠心誠意努力してまいりたいと存じます。
 委員長を初め委員の皆様方の御指導、御支援をよろしくお願い申し上げます。
    ─────────────
#8
○委員長(日笠勝之君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に司法制度改革審議会事務局長樋渡利秋君、警察庁長官田中節夫君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房司法法制部長房村精一君及び法務省刑事局長古田佑紀君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#10
○委員長(日笠勝之君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。
 まず、法務行政の基本方針について、高村法務大臣から所信を聴取いたします。高村法務大臣。
#11
○国務大臣(高村正彦君) それでは、所信の一端を述べさせていただきます。
 私は、現在、法務行政の抱える多くの新しい課題の中でも特に重要なものは、司法制度改革、経済構造改革に関連する民事、刑事の基本法制の整備、人権擁護の推進の三つであり、さらに出入国管理行政の充実強化も緊急に対処を要するところであろうと考えております。
 まず第一に、司法制度改革について申し上げます。
 司法は近代国家の基本である法の支配を現実のものとする役割を担う国民生活にとって極めて重要な基盤となるべきものでありますが、二十一世紀の我が国社会においては、透明なルールと自己責任に貫かれた事後監視・救済型社会への転換が加速する中で、これを支える司法の役割がより一層重要なものとなると考えられ、政府全体として、行政改革等の諸改革の推進とあわせて、司法機能の質的、量的な充実強化を図るための司法制度改革を推進することが急務であります。
 本年七月には司法制度改革審議会の最終意見が予定されておりますが、私は、今年を司法改革元年と位置づけ、司法制度を所管する法務省の責任者として、国民的議論の動向を踏まえつつ、司法制度改革に本格的かつ真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、今国会においては、これに関係するものとして、裁判所の人的体制の充実を図るため判事等の増加を内容とする裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を本年二月十六日に、また国民の多様な法的ニーズにより迅速的確にこたえるため弁護士事務所の法人化を可能とするための弁護士法の一部を改正する法律案を本月六日にそれぞれ提出したところであります。何とぞ速やかに成立させていただきたいと考えております。
 第二は、経済構造改革に関連する民事、刑事の基本法制の集中的整備についてであります。
 二十一世紀という大変革と大競争時代にあって、さきに申し上げたとおり、我が国が、事後監視・救済型社会への転換、経済構造改革の推進等を図ることにより、自由かつ公正な経済社会を構築し、国際競争に勝ち抜いて大いなる発展を遂げていくためには、時代に即応した経済活動を支えるにふさわしく、かつ国民にわかりやすいものとするための民事、刑事の基本法制の集中的整備を早急に行うことが不可欠であります。
 そのため、法務省においては、昨年十一月から、平成十七年までを目途に特別な体制を整えて、全力を挙げてこれに取り組んでいるところでございますが、私としても、その一層の体制の充実を図り、断固たる決意でこれを推し進めてまいります。
 まず、民事法の分野では、株主総会のIT化やストックオプション制度、株主総会と取締役会の権限配分、純資産額規制及び出資単位規制の見直しを含む株式会社法制の抜本的見直しを行うべく検討を進めるほか、民法における契約法制や担保法制、いわゆる建物区分所有法などを現代社会に一層適合させるよう所要の法整備を行うとともに、破産法等の倒産法制について全面的見直しを行い、さらに、民法、商法について平仮名・口語体とする作業を進めたいと考えております。
 また、刑事法の分野では、クレジットカード等の支払い用カードを不正作出し、あるいは電磁的記録の情報を不正取得するなどして悪用する事件が多発している現状にかんがみ、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するため、今国会において、こうした行為に対する罰則の整備を行うべく、刑法の一部を改正する法律案を本月二日に提出いたしました。IT革命の推進に資するための法整備の一環であり、速やかに成立させていただくようお願い申し上げます。
 このほか、倒産犯罪や民事執行、民事保全の妨害に関する犯罪等を含む経済関係犯罪に対する罰則の整備、コンピューターネットワークに関する捜査手続の整備、ハイテク犯罪に対する罰則の整備等についても鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
 第三は、人権擁護の推進についてであります。
 人権の世紀とも呼ばれる二十一世紀を迎え、真に国民一人一人の人権が尊重される社会を実現するためには、従来にない新しい視点に立ちつつ、人権擁護行政のより一層の充実強化を図っていく必要があるものと考えております。
 私といたしましては、既にいただいている人権擁護推進審議会の答申及びさきの臨時国会で成立した人権教育及び人権啓発の推進に関する法律にのっとり、人権啓発を推し進めていくとともに、現在、人権擁護推進審議会において行われている人権救済制度のあり方についての調査審議の結果等を踏まえ、政府全体として、二十一世紀という新たな時代にふさわしい人権救済制度の確立のための施策の実現を着実に図ってまいりたいと考えております。
 第四は、出入国管理行政の充実強化についてであります。
 近年の我が国においては、国際化の著しい進展等を背景として、年間の出入帰国者の総数は約四千六百万人に達しており、その迅速かつ厳正な出入国審査を行うとともに、IT等の専門的技術を有する外国人の受け入れについて検討することや、約二十八万人と推定される不法滞在者対策を強力に推進することが政府全体の喫緊の最重要課題の一つとなっており、これらをつかさどる出入国管理行政の果たすべき役割はますます重要なものとなってきております。
 殊に、これら不法滞在者はそのほとんどが不法就労活動に従事しているものと推定され、これらの者の一部による凶悪犯罪や組織的犯罪も増加するなど、我が国社会にさまざまな悪影響を及ぼしている実情にあります。そこで、厳正な入国審査に努めて不法入国者の上陸を阻止するとともに、関係府省との密接な連携のもとに、不法滞在者の積極的かつ効果的な摘発を推進し、その着実な減少を図る必要があります。
 私としては、このような現状にかんがみ、各般の御理解を得て、可能な限り出入国管理行政に携わる人的、組織的体制の拡充に努めるとともに、より一層の創意工夫を重ねてこれらの課題に適切に対処してまいりたいと考えております。
 以上が緊急に取り組むべき当面の重要課題でありますが、法務行政の基本的使命に治安の確保及び法秩序の維持があることは改めて申し上げるまでもなく、その重要性は一層増しているところであります。
 我が国はこれまで主要先進国の中にあって比較的良好な治安を享受してきましたが、最近における犯罪情勢を見ますと、刑法犯の認知件数が増加傾向にあるだけでなく、被害者が多数に及ぶ凶悪殺傷事犯、悪質巧妙な強窃盗や路上犯罪等が頻発するなど、法秩序維持に対する国民の信頼を揺るがしかねない状況が続いております。私は、このような犯罪情勢を的確に把握しつつ、変動する時代の要請にこたえ得る検察体制の一層の充実を図り、各種犯罪に厳正に対処し、国民が安心して暮らせる安全な社会の確保に努めてまいりたいと考えております。
 とりわけ、組織的犯罪は国民の平穏な生活に極めて重大な脅威を及ぼすものであり、国際的にもその撲滅のための対策が強く要請されておりますので、このような情勢を踏まえ、いわゆる組織的犯罪対策三法等の適正かつ効果的な運用を図り、また昨年十二月に我が国が署名を行った国際組織犯罪条約の批准に向けた検討を行い、犯罪に対する国際社会の取り組みに引き続き貢献してまいりたいと考えております。
 また、近時、酒酔い運転等を伴う悪質重大な業務上過失致死傷事件が後を絶たず、被害者やその遺族の方を中心に、その量刑や法定刑についてさまざまな指摘がなされていること等にかんがみまして、刑法改正等の検討を含め、交通関係事犯の刑のあり方について検討を進めてまいります。
 さらに、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づいて三年間の観察処分に付されているオウム真理教につきましては、同教団が依然として麻原彰晃こと松本智津夫を絶対者とする教義を維持しつつ活発に活動を展開していることにかんがみ、今後とも公安調査庁において観察処分に基づく調査を進め同教団の活動状況を継続して明らかにするとともに、適切に関係地方公共団体に調査結果を提供するなどして、公共の安全の確保に寄与してまいりたいと考えております。
 以上のほか、今国会においては、民事訴訟における公文書の提出範囲に関する規定の整備を行うための民事訴訟法の一部を改正する法律案、公益も営利も目的としない中間的な団体に法人格を取得する道を開くための中間法人法案を本月十三日に提出いたしました。何とぞ速やかに成立させていただきたいと考えております。
 また、当面の大きな課題として、外国人受刑者の円滑な社会復帰等を目的とする受刑者移送制度の実施に必要な国内法整備、犯罪者の適切な処遇のための矯正・保護行政の充実強化、電子認証制度の運用などIT社会のための施策の推進、国等が関与する訴訟の迅速化及び情報公開法の施行に伴う関係訴訟への対応を含めた訟務事務の強化などが山積しております。
 もとより、行政改革を初めとする諸改革が推進される中で、情報技術を駆使した事務の効率化を行うべきことは当然でありますが、法務行政を進める上で最後によるべきところは人でありますので、私としては、各種業務における人的体制の充実にとりわけ力を注ぎ、体制を整えて適切にこれらの課題に対処し、国民にとって実り多き二十一世紀となるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 この機会に、特に福岡地方検察庁前次席検事山下永壽による捜査情報漏えい問題について申し上げます。
 この問題につきましては、過日、最高検察庁から調査結果の報告を受けましたところ、山下前次席検事の行為は被害者の方の実情を含む事件の全体像を把握していない段階で罪証隠滅防止のための適切な措置を欠いた極めて独善的かつ軽率な行為であり、被害者の方に多大の御迷惑をおかけするとともに、検察と裁判所が癒着しているのではないかとの国民の疑惑や不信を招き、司法に対する信頼を著しく失墜させたものであるものと認めました。
 そこで、山下前次席検事については、懲戒処分として六月間の停職処分としました。また、山下前次席検事の直属の上司である福岡地方検察庁検事正渡部尚については、情報告知を行う前後にわたって山下前次席検事から報告を受けていたにもかかわらず、いずれの機会にも適切な指示を行わなかったことが明らかになりましたことから、検事正としての職務上の義務を怠ったものと認め、懲戒処分として一月間の俸給の月額百分の十の減給処分としたほか、福岡高等検察庁検事長豊嶋秀直及び同庁次席検事佐竹靖幸については、渡部検事正及び山下前次席検事に対する指揮監督が万全でなかったと認め、監督上の措置として、検事総長から厳重注意処分としました。
 本件が長年にわたって築き上げてきた検察及び司法の公平性への信頼を深く傷つけたことについては、検察に関することを所管する法務大臣として極めて遺憾であり、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。
 今回の事件を契機として、国民から検察官に対しさまざまな批判がなされておりますが、国民の検察に対する信頼を回復するためには、これらの批判を真摯かつ謙虚に受けとめ、検察官の意識改革を図る必要があると考えるに至りました。
 そこで、関係部局に対し、検事を一定期間市民感覚を学ぶことができる場所で執務させることを含む人事・教育制度の抜本的見直しを検討することに加え、幹部を含む検事が犯罪被害者の心情や一線の警察官の活動等に対する理解を一層深めるための具体的方策を検討すること、部内研修等の充実強化を通じて検察官としての基本的あり方についての教育を徹底することを命じたところであります。
 また、今回の事件に関連して検事と裁判官の関係のあり方が問われておりますが、法務省においても、当省への出向者が裁判官に偏っている現状を改め、裁判官以外からも広く人材を受け入れるための方策を検討してまいりたいと考えております。
 さらに、公訴権の行使や検察運営に関し民意を反映させることは、検察が独善に陥ることを防ぐとともに、検察に対する国民の信頼と理解を得る上で大きな意義があり、具体的には、検察審査会の一定の議決に法的拘束力を与えることに加えて、検察審査会が検察事務の改善に関し検事正に対して行う建議、勧告の制度を充実、実質化することなどの制度改革が重要であると考えております。
 この課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員の皆様の一層の御理解と御指導を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていくことが私の使命であると考えております。
 長勢副大臣、大野大臣政務官とともに全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
#12
○委員長(日笠勝之君) 次に、平成十三年度法務省及び裁判所関係予算について、順次説明を聴取いたします。長勢法務副大臣。
#13
○副大臣(長勢甚遠君) 平成十三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は六千百十四億三千九百万円であり、登記特別会計予算額は一千八百二十一億八千三百万円でありまして、そのうち一般会計からの繰入額が七百六十九億千八百万円でありますので、その純計額は七千百六十七億四百万円となっております。この純計額を前年度当初予算額七千八十億三千五百万円と比較しますと、八十六億六千九百万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、平成十三年度の増員は、新規三百一人と部門間配置転換による定員化一人を合わせ、合計三百二人となっております。
 その内容を申し上げますと、一つ、治安、法秩序の確保のため検事三十人を含め二百二十一人、二つ、基本法制度等の企画立案機能の充実のため三十四人、三つ、出入国管理業務の充実のため二十四人、四つ、人権啓発活動推進体制の充実のため一人、五つ、アジア諸国等への法整備支援の充実のため四人、六つ、国民の権利保全のため十八人となっております。
 他方、平成十二年七月十八日の閣議決定に基づく平成十三年度定員削減分等として五百二十六人を削減することとなっており、増員との差し引きにより、前年度定員と比較いたしますと純減二百二十四人となります。
 次に、主要事項の経費について御説明申し上げます。
 第一に、法秩序の維持確保につきましては、三千八百二十七億三千七百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと四十二億九千九百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず検察関係では、検察活動の充実を図る経費として千六十二億五千四百万円を計上しており、この中には、特捜・財政経済事犯対策経費、少年事犯対策経費等が含まれております。
 矯正関係では、刑務所等矯正機能の充実を図る経費として二千五十六億九千四百万円を計上しており、この中には被収容者の増加に伴い必要となる食糧費等の経費等が含まれております。
 更生保護関係では、保護観察活動の充実を図る経費として百八十九億六千六百万円を計上しており、この中には更生保護施設における処遇体制の充実、保護司活動の充実を図るための経費等が含まれております。
 入国管理関係では、出入国管理業務の充実を図る経費として三百二十九億二千百万円を計上しており、この中には出入国管理業務のコンピューター化経費、不法滞在外国人対策の強化経費等が含まれております。
 第二に、国民の権利保全の充実につきましては、登記特別会計を含め二千五十七億五千万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと十億三千二百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず登記関係では、登記事務処理の適正迅速化のための経費として、登記事務のコンピューター化経費を中心に千八百二十一億八千三百万円を計上しております。
 民事法律扶助関係では、法律扶助事業費補助金等の拡充を図るための経費として二十五億八千万円を計上しております。
 さらに、人権擁護活動の充実を図るための経費として四十六億四千九百万円を計上しております。
 第三に、アジア諸国等への法整備支援につきましては、国際民商事研究等の充実を図るための経費として二十六億九千百万円を計上しております。
 第四に、施設の整備につきましては、東京入国管理局を初め老朽狭隘化が著しい法務省の庁舎及び施設を整備するため、法務省施設費として二百七億二千七百万円を計上しております。
 以上、平成十三年度法務省所管の予算の概要を御説明申し上げました。
#14
○委員長(日笠勝之君) 続いて、竹崎最高裁判所事務総局経理局長。
#15
○最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) 平成十三年度裁判所所管歳出予算要求額について概略を御説明申し上げます。
 平成十三年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は三千百九十七億八千五百万円でありまして、これを前年度当初予算額三千百八十六億六千六百万円と比較いたしますと、差し引き十一億一千九百万円の増加となっております。
 次に、平成十三年度歳出予算要求額のうち主な事項について御説明申し上げます。
 まず、人的機構の充実、すなわち裁判官、書記官及び家裁調査官の増員であります。
 増加し、かつ複雑困難化している民事関係事件等の適正かつ迅速な処理を図るため、裁判官三十人、書記官四十人、家裁調査官五人、合計七十五人の増員及び振りかえによる書記官二百人の増加をすることとしております。
 他方、平成十三年度の定員削減として三十六人が減員されることになりますので、差し引き三十九人の定員増となるわけであります。
 次は、司法の体制の充実強化に必要な経費であります。
 裁判関係経費の充実のため、庁用図書等の裁判資料等の整備に要する経費として八億七千六百万円、OA機器整備等の裁判運営の効率化に要する経費として二十四億九千三百万円を計上しております。
 また、裁判所施設の整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百四十億九千三百万円を計上しております。
 以上が平成十三年度裁判所所管歳出予算要求額の概要であります。
 よろしくお願いいたします。
#16
○委員長(日笠勝之君) 以上で法務大臣の所信並びに平成十三年度法務省及び裁判所関係予算の説明聴取は終了いたしました。
 法務大臣の所信に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 次に、福岡地方検察庁前次席検事による捜査情報漏えい等に関する件について最高裁判所から報告を聴取いたします。堀籠最高裁判所事務総長。
#17
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 昨日の最高裁判所裁判官会議におきまして、いわゆる福岡の問題につき最高裁判所調査委員会による調査結果の報告がされ、了承されました。
 このたび参議院法務委員会においてこの問題について集中審議がされることとなりましたが、その審議に先立ちまして、調査委員会の委員長を務めました私から調査結果の概要について説明させていただきたいと思います。
 調査報告の結論は報告書の冒頭に掲げた三点にまとめられております。これを読み上げますと、
 一 古川龍一判事の妻古川園子を被疑者として、福岡簡易裁判所に対し、平成十二年十二月十三日、十二月二十二日、平成十三年一月九日、一月二十九日、一月三十一日の五回にわたって各種の令状請求があり、各回について裁判所部内で令状請求関係書類のコピーが取られたが、令状請求のあった事実を含めてこれらの書類の内容が古川判事に漏洩した事実はない。
 二 司法行政上の目的から、本件令状請求に伴い裁判所部内で伝達された情報が許容される必要最小限度を超えていた点に問題があり、さらに令状請求関係書類のコピーを取って伝達したことは、不適切であったといわざるを得ない。
  これらの問題点については、司法行政上速やかに再発防止策を講じなければならない。
 三 古川判事が、妻古川園子の刑事事件に関する証拠を隠滅したと認めるに足りる証拠はない。
というものであります。
 本件の令状請求関係書類のコピーの問題に関連して、裁判部門から司法行政部門への情報伝達のあり方について若干御説明したいと思います。
 裁判部門は独立してその職権を行使するものでありますから、裁判部門の情報は原則として当該部門内にとどめられるべきものであり、みだりに司法行政部門に開示することは裁判の公正を確保する見地から許されないものと考えます。しかし、同時に、司法行政部門は裁判が適正迅速に行われるようこれを支援するためにあるものでありますから、このような目的を達するために、合理的な必要がある限りにおいては、裁判部門から司法行政部門に対して情報を伝達することも許されると解すべきであります。この場合においても、令状請求事件については、捜査の密行性の要請がとりわけ強いことなどから、このような情報提供が許されるのは例外的な場合に限られるものと考えられます。
 司法行政上の措置を必要とする場合として通常想定されるのは、一、当該令状請求事件の裁判を担当する裁判官を初めとする裁判関係者や、宿舎、庁舎の警備が必要となる場合、二、忌避、回避の問題を生じて、裁判官の配置を変更したり、担当事務に変更を加えることを考えなければならないときなど、当該事件の裁判の公正性、適正性に対する信頼を確保するために必要な場合、三、極めて例外的でありますが、裁判官本人及び裁判官の妻子が犯罪の被疑者として捜査の対象となっているときのように、公正な裁判の遂行に対する差し迫った障害があり、当該裁判官がそのまま裁判事務を続けることが相当かどうかを検討しなければならない場合などがあります。このような場合、司法行政部門が司法行政上の手段をとる前提として、裁判部門から司法行政部門に情報が伝えられる必要があり、必要最小限の範囲でそれが許容されるものと考えられます。
 本件では、調査の結果、令状請求に伴い裁判所部内で伝達された情報が許容される必要最小限度を超え、さらに令状請求関係書類のコピーをとって伝達したことが不適切であったとされたのでありまして、今後に向けて再発防止策を立てることが重要であると考えます。
 本件において結果的に不適切な処理がされたことについて考えてみた場合、本件が裁判官の妻を被疑者として令状請求されたという希有な事態であったとはいえ、よるべき準則もなく、日ごろの職員の指導にも本件のような事態に対処できるだけのものが欠けていたことが原因の一つとして考えられます。この点は率直に反省しなければならないと思います。
 早急に検討すべき再発防止策は、令状請求があった場合において、それに関する司法行政部門に伝達する際の取り扱いについての準則を定めることであります。調査委員会は裁判部門から司法行政部門への情報伝達のあり方を検討しておりまして、これを参酌して、可能な限り限定的で明確な準則を設けるのが相当であるとの提言をしているところであります。どういった形で準則をつくるかにつき、関係部局において直ちに検討に入ることといたします。なお、この準則を定めるに当たっては、捜査機関との協議も必要であろうと思われます。
 次に、関係者の処分について説明いたします。
 昨日の調査結果報告が了承されたことを受けて、関係者の処分の手続に着手しました。まず、最高裁判所事務総長の権限に係るものとして、コピーに直接かかわった渡辺福岡地裁首席書記官と松元福岡地裁事務局長に対し、いずれも懲戒処分として戒告することが決定され、処分手続が進められています。
 その他、本件と関係のある裁判官としては、古川判事のほか、福岡高裁の青山長官、土肥事務局長、さらには福岡地裁の小長光所長が考えられるところであり、昨日、裁判官会議において福岡高裁に分限申し立てをするかどうかの検討をしてもらうこととなりました。これを受けて、昨日の福岡高裁の常置委員会においてこの四名について裁判官分限法に基づく懲戒の申し立てをすることが決定されたとの報告を受けました。
 裁判官の懲戒は一般の公務員とは異なり裁判手続で行われますが、福岡地裁の小長光所長は福岡高裁の五人の裁判官による合議体で、福岡高裁の青山長官、土肥事務局長、古川判事については最高裁の大法廷において、いずれも分限裁判がされることになります。その結果、懲戒すべきか否かが審理され、決定により結論が示されます。したがって、裁判官については直ちに処分結果が出るものではありませんが、結論が出次第、公表いたします。
 報告の骨子は以上のとおりであります。
 このたびの一連の出来事は捜査ないしは調査によって一定の結論を得たわけであり、裁判所からの捜査情報の漏えいはなく、古川判事においても証拠隠滅の事実を認めるに足りなかったわけではありますが、いずれにしてもその過程で国民からさまざまな疑惑の目を向けられてもやむを得ない結果となったことはまことに遺憾であり、裁判所としては、このたびの件を重い教訓として受けとめ、平素の検察庁や検察官との関係においても厳格に襟を正していくべきものと考えております。これから司法の信頼回復に向けて努力してまいりたいと思っております。
#18
○委員長(日笠勝之君) 以上で報告の聴取は終了いたしました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#19
○石渡清元君 自由民主党の石渡清元でございます。
 いわゆる福岡地検前次席検事による捜査情報の漏えい等に関する問題でございますけれども、これは聞けば聞くほど前代未聞の内容でございまして、この捜査情報の漏えい、これもただ単なる検察だけでなくて、公正公平でなければならない司法全体に対する国民の信頼を失った、損ねた非常に深刻な事件であったと私は理解をしておるわけでございまして、大臣から早速この問題の対応についてみずから最高検の捜査及び調査の結果を公表され、また関係者の処分、本日の所信でも法務大臣が率直に国民に対して謝罪をされ、また一日も早く国民の検察に対する信頼回復するための批判を真摯かつ謙虚に受けとめられた。特に検察官の意識改革を図る、そういうことは非常にいいことではないか。この詳細な調査報告書を公にしたということは非常に私は評価すべき点だと思います。
 また、今御報告ございましたけれども、きのう最高裁判所調査委員会の報告書も提出をされたところでございますけれども、第一問、まず全体的にこの問題をどう認識されているか、いわゆる司法内部からの不祥事でありますので、この問題について、大臣、そして最高裁判所、どうお考えになっているかをお伺いいたします。
#20
○国務大臣(高村正彦君) 極めて独善的で軽率な行為を前次席検事がしたということで、検察に対するといいますか、ひいては司法全体に対する国民の信頼を揺るがせたというか傷つけた、このことについて大変憂慮しているわけであります。憂慮していると同時に、検察を所管する大臣として大変申しわけない、このように考えております。
#21
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判所職員の国家公務員法違反につきましては、捜査当局により嫌疑不十分とされ、また古川判事及び裁判所外への捜査情報の漏えいはなかったものと認められたわけでありますが、令状請求関係書類をコピーして報告したという不適切な行為によって裁判所の執務のあり方に強い批判を招いたことはまことに遺憾でありまして、深く反省するところでございます。
 裁判所といたしましては、まずは、先ほど調査結果の概要説明でお話し申し上げましたように、再発防止策を早急に策定していくことを考えております。
 また、古川判事の行為につきましては、裁判所と検察庁との癒着が原因ではないか、証拠隠滅があったのではないかといった非難がなされ、国民の司法に対する信頼が大きく損なわれる結果となったわけであります。証拠隠滅の点については、捜査機関による捜査の結果、嫌疑不十分とされたところでありますが、この問題が裁判官のあり方や組織としての裁判所と検察庁とのあり方に投げかけた問題は重大かつ深刻でありまして、裁判所としてはこれを真摯に受けとめる必要があると思っております。
 公正、廉潔は我が国司法がこれまで培ってきた伝統でございますが、今回の事件により、私たちは、これが伝統によって守られるのではなく、基本的には裁判官個人の自覚、すなわち倫理の問題であることを改めて確認し、高い職業倫理を保持するため意識の覚せいが必要であることを肝に銘じ、裁判官の間で徹底していかなければならないと考えているところでございます。
#22
○石渡清元君 ぜひひとつその高い職業倫理のもとに意識改革を浸透させて組織内に広まるように、この努力をお願いしたいと思います。
 それでは、報告書等々に基づきましてお伺いをいたします。
 最高検も広い意味では今回の事件の当事者であるように思われますけれども、この捜査の姿勢、体制というのはどういうふうになっているのか、組織としてどうかかわってきたのかということでございます。どうしても組織内でやりますから身内が身内をかばうんじゃないかという、国民は単純な目で見られますけれども、今回の調査についてどうかかわってきたか、お伺いをいたします。
#23
○国務大臣(高村正彦君) 最高検察庁におきましては、この問題が司法に対する国民の信頼を損ねかねない憂慮すべきものであって、また国民の信頼を回復するためには真相を解明し、これを国民に対して明らかにすることが必要である、こういうことを考えたわけであります。
 そして、最高検察庁総務部長の指揮のもとに、検事九名、検察事務官十五名による、まさに異例ともいうべき調査・捜査チームを編成いたしまして、他の検察庁からの応援も得まして検察庁、裁判所等の関係者を取り調べ、関係資料を十分徹底的に分析するなど、厳正かつ公平に捜査、調査が行われてきたところであり、その過程において身内意識が働くことなどなかったものと確信をしているわけであります。
 今、委員がおっしゃったように、どうしても国民の目から見ると身内が身内を調査するあるいは捜査するということでなかなか難しいこともあるのでありますが、できるだけ調査報告書なども詳細に、例えばマスコミではこういうふうに報道されていますね、そしてそのうちこれはそのとおり、報道のとおりですね、ここは必ずしもそうでもありませんねと、そういうようなことを一つ一つ国民の疑問に答えるような形で整理をするようにということを私の方から指示いたしまして、かなり詳細な、これでもまだ十分と言えるかどうかわかりませんけれども、かなり詳細な報告書を出させていただいたつもりでございます。
 また、こういう場で誠実に答弁をさせていただくことによって国民の信頼が少しでも回復する方向に向かえば大変ありがたいことだと、こういうふうに思っております。
#24
○石渡清元君 さらに具体的にお伺いしますのは、深刻な事件の割にはなぜ強制捜査に及ばないのかという声もかなり批判の中には多いわけでございまして、こういうケースというのは必ずしも強制捜査によるような内容でないという御判断なのかどうか。やや細かいことですが、お伺いをいたします。
#25
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の点につきましては、一般的に申し上げまして、証拠関係あるいは本人の状況等を考慮いたしまして、罪を犯したと疑うに足る相当な理由があるかどうか、あるいは罪証隠滅や逃亡のおそれがあるか、そういうふうな観点から強制捜査が必要かどうかを判断するわけでございます。
 本件におきましては、山下前次席あるいは古川判事ともに捜査に非常に協力的で、取り調べにももちろん積極的にいろんな事情を述べる、そういうふうな事情等も考慮いたしまして、捜査の段階で強制捜査ということには至らなかったというふうに承知しております。
 ただ、いわば厳しく調べるべきである、そうしないと真相が本当は出てこないのではないか、こういうふうな御疑問もそれはあろうかとは思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、両名とも積極的にいろんな事情を供述しておりますし、一方、その供述は本当かどうかと、これについては、御指摘のような批判が起こらないように、ほかの関係者、あるいは残っておりますいろんな捜査の過程での資料なども詳細に分析いたしまして、その真偽のほどは十分確認したということでございます。
#26
○石渡清元君 厳しく調べる、それもそうですけれども、やはり法のもとで公平公正な調べ、捜査、これが私は必要だと思います。
 それでは、漏えい情報の問題についてお伺いをいたしますけれども、山下前次席が古川判事に対してどういうような情報を漏えいしたのか、また捜査情報というのは関係者、特に被疑者やその密接な関係のある人に対して漏らすということは一般的なんですか。
#27
○政府参考人(古田佑紀君) 山下前次席から古川判事に伝えた内容は、この古川判事の妻が携帯電話によるストーカー行為で告訴されている、この点については確実な証拠があると。その事案の内容は、平成十二年九月から被害者に対する電話やメールが数百回に及んでおり、そのほかに被害者の夫の勤務先にも数千回電話をかけている、この犯行の背景には男女関係の特異なもつれがあるというものであるというようないわば事案の概要に属すること、それから被害者夫妻の住所、氏名、勤務先電話番号等、古川判事の妻と被害者との共通の交際相手の氏名、住所等、それから犯行に使用された三台のプリペイド式携帯電話の番号でございます。
 このような情報というのを被疑者に近い者に捜査段階で知らせることがあるのかというお尋ねでございますけれども、一般的に申し上げますと、捜査を実施していく過程で、いろいろな段階で、被疑者の周辺にある人でも信頼が置ける方がいれば、その方にある程度の情報を告げて、そして捜査の協力を得るということは、これは時として行われていることでございます。
#28
○石渡清元君 そして、今回の批判の中で多いのが、証拠隠滅について、携帯電話の廃棄だとか逮捕直前のパソコンデータの廃棄等々、そういうのが行われたのではないかという、新聞も含めてこういう疑念、批判というのが非常に多いわけでありますけれども、この点についてはいかがなんでしょうか。
#29
○政府参考人(古田佑紀君) 最高検で行いました捜査及び調査の結果によりますと、今御指摘があったうち、携帯電話の廃棄の点につきましては、山下前次席から古川判事に告げられた情報がその妻に伝えられた結果、犯行に用いられたプリペイド式携帯電話三台のうち少なくとも二台が廃棄されたという疑いは濃いというふうに認められるわけでございます。
 それから、パソコンデータに関しましては、これは、御指摘のような報道があったことは事実でございますけれども、ハードディスクあるいはフロッピー等に関しまして、いずれも本件に関連があると認められるような、そういうデータが消去されたというふうな事実は証拠上認められないということでございます。
#30
○石渡清元君 そういう隠滅はないというお話でございますけれども、それでは守秘義務違反という、この漏えいが義務違反になるのか。ならないということになっていますけれども、その守秘義務違反との関係、これがないから不起訴になったんだと、こういうような報告ですけれども、その辺の不起訴の理由というのをもう一度御説明いただきたいと思います。
#31
○政府参考人(古田佑紀君) 前提として若干御理解をいただきたいことがあるわけでございます。
 御存じのように、捜査と申しますのは、捜査機関がいろいろ収集した証拠あるいは情報、これをいろんな形で関係者に示しながら進めていくという面があるわけでございます。また、そればかりではなく、先ほども申し上げましたけれども、捜査への協力を確保する、あるいは事件処理が妥当な形で行われる、そういうことを実現するために必要な情報を関係者にいわば開示いたしまして、それによって協力を得ながら進めていくというところがあるわけでございます。
 したがいまして、捜査関係者は、事案の内容あるいは捜査状況に応じまして、先ほど申し上げたような円滑かつ妥当な捜査処理を図るというその目的に違反しないと申しますか、その目的に資する限度で捜査情報を開示するということは、これは一般的に許容されているわけで、こういうケースは正当な理由があるということからもちろん守秘義務違反というふうなことにはならないわけでございます。
 本件の場合につきまして、山下前次席は、古川判事の職業倫理等に対する信頼、これがいささか過度であったというふうな点では問題があったと言わざるを得ないわけですが、その協力を確保するということによりまして、その妻である被疑者に犯行を認めさせ、犯行の継続を防止するとともに、プリペイド携帯などの証拠を確保する、そして被害者におわびをして示談等の措置を講じる、そういうことによって事件についてのいわば妥当な解決を得られるということを考えて、古川判事にそれのために必要な限度での情報を告げたと、そういうことでございます。
 その意図としては、被疑者の処罰を不当に免れさせるとか、あるいはもちろん証拠を隠滅させるというような意図はなかったわけでございます。ただ、残念なことに、携帯電話がその結果として廃棄された疑いが濃厚であるという点につきましては、これは事実だと思われますけれども、これをもちろん意図して、あるいはそういうことになるということを予想して行ったということは認められないわけで、結局、古川判事に対しまして捜査に対する協力を得て事件をいわば適切に解決しようとしたことが完全に裏目に出てしまったという、そういう性格のものであるというふうに認められるわけです。
 そういうことだといたしますと、山下前次席がこの捜査情報を古川判事に告げた目的は、結局、適切な捜査処理を図るということで捜査の利益のために行ったということでございまして、その際、証拠隠滅の防止のために必要な指示等を刑事の裁判官であるということから具体的に古川判事に指示をしなかったというような点で多々いわば落ち度というような点はあるということは事実ではございますけれども、そのことが犯罪としての守秘義務違反にまで至るとは認めがたい、そういうことでございます。
#32
○石渡清元君 意味はわかるんですけれども、結局その被疑者が裁判官の妻だというので批判がいろいろ起こってきていると私は思うんです。
 それでは、検察官が被疑者に対して示談を勧めたりあるいは弁護士を紹介したり、これは一般的にあり得ることなのか。検察官の職務に照らしてこういうことまでは許されるのか、また本件でこうしたことを行う必要があったと判断されてやったのか、それはなぜなのか、その点についてお伺いをいたします。
#33
○政府参考人(古田佑紀君) 実際の事件処理におきましては、一般的に申し上げまして、検察官は関係者の状況あるいは事案の内容等を考慮いたしまして、いたずらに厳重処罰ということだけではなくて、いわば関係者の間で納得がいく妥当な処理を図るということもその職責の一つであるわけでございます。そういう意味で、当事者間で話し合いがそれなりにつくというふうなことも考えられる事件につきましては、場合によっては示談をすることを勧めたりすることもしばしばございます。
 それから、弁護人の紹介、弁護士の紹介でございますけれども、これは事案の内容や被疑者の希望等によって弁護人を選任することを勧めたりあるいは弁護士会、当番弁護士などの紹介をするということもございます。また、直接被疑者からということは余りないと思いますけれども、被疑者の親兄弟とかそういう近親者からの要望が強い場合には、場合によってはこういう弁護士さんがいるよというふうなことを教えてさしあげるというふうなこともないわけではございません。
 本件におきましては、山下前次席が、古川判事の妻による脅迫等の事件が先ほども申し上げましたとおり非常に特異な男女関係に起因する事案で、それに裁判官の妻の犯行ということも加わって非常に話題性のあるものになり、被害者等がいずれも御家族がありお子さんもいる、そういうふうな環境の中でこういう事件が非常に関係者の精神的な打撃にもなりかねない、さらには裁判所のスキャンダルということも言われかねない、そういうふうなことを懸念して、犯行をやめさせた上で示談による解決を図ることができないか、そういうことを考えたということでございます。
 そういう点から、このケースにおきまして山下前次席が、携帯電話の証拠保全や被害者への謝罪、示談交渉、こういうことをするに当たって、古川判事が自分では動けないということから弁護士の助けをかりるということを希望しておられたようですので、それで御紹介をしたと、こういう事実であったように承知しております。
#34
○石渡清元君 この報告書を見ますと、私の感じかもわかりませんけれども、弁護士なんかを紹介するのは余りよくないことのように感じるんですけれども、弁護士を紹介することは別にどなたに対してでも私は問題ないと思いますし、また弁護士が証拠隠滅しろとか、そんなことを言うはずがない、そういうふうにやれば弁護士自体が処罰されるわけですので、それについては余り報告書に言うほど大変なことではないと思います。
 そして、次の質問でありますけれども、被害者への配慮が欠けていたのではないか、また警察の意向を確認しないで一方的にやった、極めて独善的だと。それでなくても警察と検察は対抗意識が強いとか、そういうことがちまたで言われておるわけでございまして、そういう点について、やはり捜査のやり方について地域の方々は余りよくわからないんですね。それを国民に理解できるような説明をお願いいたします。
#35
○政府参考人(古田佑紀君) 本件の行為に及びました山下前次席の意図は先ほど申し上げたとおりであるわけですけれども、しかしながら被害者の方も、こういういろんな背景のある事件で警察に告訴をされる、それには非常に深刻な思いがあることは間違いないわけで、そういうような点について十分やはり検察官としては思いをいたさなければならないと。それで、一方的に示談で解決をするのがもう最善であるというふうに決めつけて動くというようなことは、やはりこれは被害者の心情等がどうなのかということを見きわめながらすべきだという意味では独善のそしりを免れないというふうに考えられるということでございます。
 それから、警察、特に捜査担当の警察官との関係では、やはりこれは警察が内偵中の事件でありまして、第一次捜査機関として捜査を進めているものでございますから、そういう警察に対して全く断ることなくこういうことを自分の判断だけでやるということは、その捜査担当者との信頼関係という意味では非常に大きな問題があると言わざるを得ないわけです。そういう点につきまして、この山下前次席の行為については、種々行うべき手順を尽くしていないと思われるような点とか、多々非難されてもやむを得ない点があるということでございます。
 警察と検察は対立的な面があるのではないかというふうなお話もございますけれども、一般的に申し上げますと、個々の事件の証拠価値の判断とか、そういうことで警察と検察との間でいろんな意見の相違が出る、それでその調整をして進めていくという場面があるのはこれは事実でございますけれども、全体として見た場合にそういうような基本的な対立関係があるというものではございません。
#36
○石渡清元君 よくわかるんですけれども、今回の捜査における警察と検察、この信頼関係はやっぱり修復、さらに強めていただかないといけないと思う。ということは、警察と検察は所管が違いますので、そういう面で法務大臣のこの問題に関する決意をお願いいたします。
#37
○国務大臣(高村正彦君) 警察との関係で本件がもたらした問題点でありますけれども、これは福岡地検だけでなくて検察全体として今回の事件の反省に立って、幹部を含む検察官が捜査現場の第一線で汗を流している警察官の活動等に対する理解を深めるための具体的な方策を検討していく、そういったことが重要であると考えておりますし、その具体的方策をどうするんだということの検討もするように既に指示をしたところでありますが、今後とも私も適切な指導に努めてまいる所存でございます。
#38
○石渡清元君 次に、懲戒処分の適否についてお伺いをいたしますけれども、先ほど、前次席については六カ月間の停職処分、直属の上司、検事正については一カ月間の俸給月額の百分の十の減給処分等々が科せられて、これは厳しいという人もいれば、身内に甘いと、こういう評価が分かれるところでございます。
 厳しいといえば、先ほど裁判所の報告がありましたけれども、書記官がコピーにかかわって、あんなのは、書記官については結構厳しいかなというふうに私は聞いておったんですけれども、守秘義務違反の刑事責任云々ということは別としても、今回の場合は検察官と裁判官の癒着とかそういったようなことが非常に不信を増幅させているような気がしてなりません。
 そこで、今回の処分について法務当局がどういう評価をし、見解を持っておられるか、御説明願いたい。
#39
○政府参考人(但木敬一君) 委員御指摘のような御意見があることも承知しております。
 山下前次席の行為、これは被害者あるいは警察に対する配慮を欠いた行為であって、極めて独善的かつ軽率であった。その結果も、罪証隠滅を招いたという点でその責任は重大である。さらに言えば、検察あるいは司法に対する国民の信頼を損なったという点においてもその責任は重いと考えております。
 ただ、国家公務員法上の懲戒処分といたしましては、停職は極めて重い懲戒処分でございます。この上は懲戒免職しかございません。懲戒免職はほとんどの場合、犯罪を構成するような行為に対して行われる懲戒処分でありまして、現に検事に対する懲戒免職事案といたしましては、取り調べ中の二名の参考人に暴行を加えて、一人に対して三週間の傷害を負わせ、他にも傷害を負わせたというような事案で、これは逮捕、起訴された事案でございます。また、電車内において強制わいせつをしたということで逮捕されたような事案、これも懲戒免職になっております。このようなことを考えますと、本件について次席検事を懲戒免職にするということはやはり重きに失するのではないかと私たちは考えたわけでございます。
 また、渡部検事正につきましては減給処分といたしました。これは、山下次席から事前に古川判事との接触の了解をしていたというようなことがございまして、その際にきちっといろいろ指示をすべきであったのに、詳細については相手がベテラン検事であるということで明確な指示をしないままに了承してしまったというようなことから職責を問うているわけでございまして、これにつきましてはやはり減給処分相当であろうというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、この両名の行為につきましてはもちろん責任は重いわけでありますが、ただこれは両名の個人的な問題だけに帰せる問題ではなくて、やはり両名がそのような行為に走ったのには長年にわたる検察の体質から出ているところがあるのではないか、このように考えたわけであります。
 したがって、責任のかなりの部分は検察全体もまた負わなければならない、こういうふうに考えたわけでございまして、この点から法務大臣が我々に対して、先ほど所信の中で述べましたような検察の意識改革ということを指示されたわけでありまして、懲戒処分だけでなく、やはりそうした総合的なこの問題に対する検察あるいは法務の取り組み方といたしましてはそれなりに御理解をいただけるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#40
○石渡清元君 そういう説明になりますと、それでは処分対象者の上で指揮監督する立場の検事長とか高検次席検事等々についてはどういったような形で処したんでしょうか。
#41
○政府参考人(但木敬一君) 高検の検事長並びに次席検事は、事後報告は受けておりますが詳細報告を受けておらず、したがって警察に無断であるとかあるいは古川判事にどんなことを告知しているかとか、そういうことについては一切知らないという立場でございます。しかしながら、そうした事案が起きているということを知っているわけでありますので、やはり監督責任者として万全の監督をしていたとは言いがたいということで、検事総長から両名に対して厳重注意処分をいたしました。
 なお、これは懲戒処分ということではございませんが、次席検事並びに検事正からは辞職願が既に提出されて、これを受理して両名とも辞職いたしております。また、検事長からは、事後処理が終わった段階で人心を一新するために身を退きたいという申し出がございまして、大臣はこれを了としているという状態にございます。
#42
○石渡清元君 わかりました。
 それでは、この事件以外で、近年の検事が懲戒免職とか停職処分とかそういう例があったらお示しをいただきたいと思います。
#43
○政府参考人(但木敬一君) 停職以上の処分となっております者につきまして御説明申し上げます。
 先ほども申しましたが、懲戒免職となりましたものは二件最近ございます。一つは、平成五年に発生いたしましたが、検事が取り調べ中の参考人二名に対して胸部等を足げにして約三週間等の傷害を負わせ、特別公務員暴行陵虐致傷罪で逮捕、起訴された事案であります。もう一件は、平成十二年の事件でありますが、走行中の電車内において女性に対して痴漢行為を行ったということで、強制わいせつ罪で逮捕された事案でございます。
 検事が停職となりました事案といたしましては、平成六年に発生いたしました、酔余、女性記者に対してその胸をわしづかみするなどした事案、それから取り調べ中の参考人に傷害を負わせた事件、これが二件ございます。
 これらが停職以上の処分となった最近の事例でございます。
#44
○石渡清元君 それでは次に、検察全体の問題改善策についてお伺いをいたします。
 とにかく問題の徹底解明と再発防止、これに万全を期していかなければいけませんし、また国民はそれを期待していると思います。
 そこで、最高検が行った調査の結果、検察全体のあり方にかかわる問題としてどのような点に問題があったのか、またどのようにしてその問題改善のために取り組んでいくのか、法務大臣の御意見をお伺いいたします。
#45
○国務大臣(高村正彦君) 山下前次席検事は、脅迫等の刑事事件が警察において内偵捜査中でいまだ検察庁に送致されていない事件であり、かつ事案の全体像及び証拠関係を十分に把握していなかったにもかかわらず、警察と協議することなく、被害者の被害の実態や処罰意思を十分に確認しないまま被疑者の謝罪と示談を前提とした事件処理を目指して古川判事と接触したものであって、その行為は極めて独善的であったものと考えております。経験豊富な幹部検事がそのような独善的判断に至ったことや、その上司である渡部検事正も適切な善後策を講じることができなかったことに照らしますと、本件は、山下前次席検事個人の問題ではなくて、検察全体のあり方にかかわる問題であると認識しているところでございます。
 法務・検察当局といたしましては、今回の事態を重く受けとめ、検察官の意識改革のための具体的方策を検討することとしております。また、私としては、公訴権の行使や検察運営に民意を反映させるための検察審査会制度の改革を実現すべく、司法制度改革審議会の審議も踏まえて所要の措置をとってまいりたいと考えております。
#46
○石渡清元君 今回の事態について大臣が非常に厳しく受けとめられているということはよくわかりまして、その改善策をどのような形で具体的に展開し意識改革につなげていくか、こういうことになろうかと思います。
 改善策のお話の中で、検察審査会制度の改革ということでございますけれども、検察審査会制度といってもなかなか一般地域社会ではなじみの薄い言葉でございまして、具体的にどのような改革を行おうとしているのか、御説明をいただきたいと思います。
#47
○国務大臣(高村正彦君) 検察官には起訴、不起訴を決する強大な権限があるわけでありますが、公訴を提起した場合には裁判所によってその当否を判断されるのに対しまして、不起訴処分の場合には検察官は検察審査会の判断のいかんにかかわらず不起訴処分を維持することが可能でありますので、不起訴処分の当否に対するチェックは必ずしも十分と言えないわけであります。
 そこで、検察審査会の一定の議決に法的拘束力を与えそのチェック機能を強化することは、公訴権の行使に民意を反映させ、検察が独善に陥ることを防ぐとともに、検察に対する国民の信頼と理解を得る上で大きな意義がある、こういうふうに考えております。
 また、検察審査会が検察事務の改善に関して検事正に対して行う建議、勧告の制度でありますが、検察運営に民意を反映させることができる点で大きな意義があるんですけれども、現状では必ずしも十分に活用されていないわけであります。これをより充実、実質化する必要があると考えております。
 そのための具体的方策といたしましては、例えばの話でありますが、検察審査会の建議、勧告に対する検事正の回答義務を法律に明示したり、その建議、勧告とこれに対する検事正の回答の各内容を原則として公表する、そういったことが具体的に考えられるのではないか、こういうふうに考えております。
#48
○石渡清元君 それでは、判検交流についてお伺いをいたしますけれども、今回の問題が検察官と裁判官の癒着である、こういうふうに言われ不信を招いているわけであります。
 私は判検交流が癒着の温床になっているとは思いませんけれども、やはりどうしてもそういったような目で見られ、この問題についても避けて通れませんので、この判検交流について、今後も継続していく必要があるかないか、あるいは現行制度でどういったような問題に注意をしていかなければいけないか、いかなる改善を図っていくべきか等々、これは官房長と裁判所、両方から御回答をお願いします。
#49
○政府参考人(但木敬一君) 法務省の所掌事務の中には、司法制度に関する法令、それから民事、刑事の基本法の立案、あるいは訴訟事件の遂行、これらの事務がございまして、これらの事務を適正に行うために、法律に精通して民事の裁判あるいは刑事の裁判を現にやっておられた裁判官にこれらの職をやってもらうことにはそれなりの相当な理由があるというふうに思っております。
 また、歴史的に見ますと、検事の数も非常に限られた中で検察事務が非常に多忙であったこと、それから弁護士から検事に任官することを期待することが非常に法曹人口が少ない中では無理であったこと、検察官に民事に習熟させるような機会をたくさん設けることは先ほど申しましたような理由でなかなか難しかったこと、いろいろな歴史的な事情もございまして現在のような交流が行われ、それによって法務省が抱える諸課題も円滑にできてきた、また一方では、裁判官にとっても裁判事務以外の事務を経験できるという意味では視野を広げることができた、いろいろなメリットももちろんあったわけでございます。
 ただ、二十一世紀の司法を考えたときに、果たしてこのままでいいかどうかというのはかなり問題があろうと。特に、今度の事件の中で判検交流というのは非常に問題ではないかという指摘が多くなされました。
 そういう状況の中で考えてみますと、判事から検事に一方通行の判検交流というのはやはりバランスを失しているのではないか。いわゆる法曹三者と言われている裁判官、検察官、弁護士はそれぞれの立場に立ったときはそれぞれの立場に立った者として全力を尽くすというのがその職業倫理でありますので、交流自体が悪いとかそういうことではないと思いますけれども、二十一世紀の問題としては、弁護士さんから検事になり、あるいは法務省のポストにつく、あるいは弁護士さんから裁判官になり、裁判官から検事にもなり、また検事からも裁判官になるというような新しい展開を考えるべきではないか。
 その点については、司法制度改革審議会で現在審議をしていただいている最中でございますが、二十一世紀をにらんで、やはり多角的な交流というものによってお互いの視野狭窄というのをそれぞれ違う世界を見ることによって視野を広めて、国民の感覚に近い感覚を持ちながらやっていくべき時代に入っているのではないかというふうに考えております。
#50
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 御指摘のように、本件の背景として、裁判所から検事に出向して仕事をする、いわゆる判検交流というものの問題点が指摘されておるわけでございます。
 ただいま法務省の方から詳細な説明がございましたけれども、現在、司法制度の改革が論議されます中で、裁判官が多様な経験を積む必要があるということが指摘されておりますし、他の法律職の経験を経ることが非常に有益である、弁護士や検察官の経験のある人が裁判官になるということや、あるいは検察官の方でも他の法律職の経験を積むことが望ましいといった見解も有力であるというふうに聞いております。
 今後、法曹が互いに交流をして経験の多様化を図ることを目指すということでありますならば、その反面としてそれぞれの職責の厳しさをますます認識してその節度を厳格に守るというけじめがこれまで以上に必要である、その点を明確にする必要がある、そのことによって国民からいささかも疑念を持たれることがないように努めなければならないというふうに考えているところでございます。
#51
○石渡清元君 人材というのは広く求めるべきだと私も思います。そして、事が起こった場合、裁判所とか検察というのが無謬神話、これにとらわれずに特に迅速に処理する、そして透明な処理の仕方をするということが私は一番肝要なことだと思います。
 最後に、大臣にお伺いいたしますけれども、国民の検察や司法に対する信頼を回復していくに当たっての大臣の決意をもう一度お伺いをして、質問を終わります。
#52
○国務大臣(高村正彦君) 一番大切なことは検察官の意識改革の問題だと思います。このことについては、今具体的にどういうことをやるのかということを私も考えておりますし、事務当局にも今詰めさせているところでございます。
 それともう一つは、先ほど申しました外部チェック、検察審査会の制度の改革によって何らかの法的拘束力を持たせる、そういったことを含めて外部チェックもきちっとやると。
 そういったことが相まって、二度とこういうことを起こさないということが信頼回復に一番つながることでありますから、そのために全力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っております。
#53
○委員長(日笠勝之君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時三十二分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#54
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、福岡地方検察庁前次席検事による捜査情報漏えい等に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#55
○江田五月君 御苦労さまでございます。
 午前中、ごあいさつに引き続いて、法務大臣、それから堀籠最高裁判所長官代理者事務総長から福岡の事件についての調査の報告をいただきました。所信の質疑は後刻ということで、きょうはそのいわゆる福岡事件についての集中審議でございます。
 この通常国会、経済の方もどうもなかなか大変な状況で、株価もきょうまた大変下がってくるというような事態ですが、同時に、我が国の統治構造といいますか、国の三つの機構、司法、行政、立法、これがそれぞれどうも疑惑まみれになってしまっておる。我が国の社会の根幹である三権に対する国民の信頼が今大きく揺らいで、経済関係と同様にどうも危機的状況にあるのではないかという気がしてなりません。
 三つの疑惑事件というのは、言うまでもなく立法府たる国会、特に参議院でKSD事件、参議院というのが舞台になった、代表質問までが金にかわった、これは自由民主党という我が国の政権政党に対する疑惑でもありますが。それから、行政府、これは外務省機密費詐欺事件。いやいや、とられたのは官房報償費の方か。いずれにしても、行政府全体がどうもおかしいぞと。そして、司法府は大丈夫かなと思っておりましたら福岡事件というわけで、この通常国会で可能な限りこの三つの疑惑事件の真相を解明して、国民の信頼を一歩でも二歩でも取り戻して再発防止策を講じていく、国民の信頼回復に努める、これをやらなきゃいかぬと思っております。
 高村大臣は今や次期自民党総裁候補の一人とも言う向きもあるような有力政治家でございまして、また外務大臣としてもらつ腕を振るわれてということになりますと、三つの疑惑すべての当事者とも逆に言えば言えるわけで、福岡事件に絞って質問をいたします。
 まず、法務大臣、今回のこの福岡事件というのは国民の皆さんからどういうふうに見られているとお思いでしょうか、お答えください。
#56
○国務大臣(高村正彦君) 今回の問題につきましては、国民から検察に対しまして、山下次席検事は厳正公平であるべき検察権の行使をゆがめ、判事の妻を特別扱いしたのではないか、あるいは検事と裁判官は仲間意識があり、癒着しているのではないか、被害者の立場を無視しているのではないか、市民感覚からずれて独善に陥っているのではないかなどといった厳しい批判がなされているわけでありまして、これらの批判は真摯かつ謙虚に受けとめる必要があると考えております。
 今回の問題でありますが、検察と裁判所が癒着しているのではないかとの国民の疑惑や不信を招き、司法に対する信頼を著しく失墜させたものと認識しております。検察を所管する法務大臣として、極めて遺憾でありまして、国民に対して深くおわびを申し上げます。
#57
○江田五月君 かなり国民の皆さんもがっくりきたと思うんですよね。とにかく、司法はせめて信用していきたい、司法は信用できる、もうそう思いたいというような気持ちさえあったところへこういう事件で、これは私は本当に国民の国の統治機構そのものに対する信頼をかなり深いところで傷つけてしまったという気がして仕方がありません。
 法務大臣に今、法務行政の最高責任者であると同時に政治家というポストですが、伺いましたが、法務省官房長、行政官の立場でどういうふうに国民に見られたと思っておられるか伺います。
#58
○政府参考人(但木敬一君) このたびの事件で国民からさまざまな観点から非常に厳しい見方をされているというふうに考えております。
 最大の問題は、国民から見た場合、最も厳正公平であると期待し、また信頼していた司法という場において、検察官が裁判官との仲間意識に基づいて不公平な取り扱いをしたのではないか、この点について国民が極めて大きな怒りを持ったというふうに受けとめております。
 第二に、被害者あるいは第一線で苦労して捜査している警察官、こういう人たちの考え方を顧みることなく、自分ひとりで正義はこれだと決めつけてそこに走っていった中に、非常に権力者として独善的ではないかという御批判をいただいていると思っております。
 第三番目に、記者会見等を通じまして、反省の色が見られず、かえって自分の主張を正当化しようとしたというようなところに市民感覚との大きなずれを感じさせてしまった、このような厳しい御批判をいただいているというふうに考えております。
#59
○江田五月君 最高裁にもぜひ御認識を伺います。
 裁判所がこの事件で国民にどう見られたというふうに認識をしておられるかと同時に、裁判所だけではなくて検察なども含めて司法全体、検察を司法に含めるかどうか、それは講学的にはいろんな議論がございますが、国民の一般の目から見て最も信頼されるべき司法、これをどう今国民が見ておるか、どう認識をしておるかを伺います。
#60
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 本件では、裁判所と検察庁との癒着が原因ではないかとか、あるいは古川判事の行為に証拠隠滅があったのではないかといった批判がなされ、国民の司法に対する信頼が大きく損なわれる結果になったというふうに考えております。
 この問題で裁判官のあり方や組織としての裁判所と検察庁とのあり方に投げかけられました問題は重大かつ深刻であって、裁判所としては、これを真摯に受けとめる必要があると考えているところでございます。
#61
○江田五月君 皆さんそれぞれ問題点、国民がどう見ているかということを認識していただいていると思います。
 ある新聞に「法曹一家のなれあい」、こういう記事が載ったというんです。あるいは、NHKの「週刊こどもニュース」というのがあるんですね。これは子供用にかみ砕いて話しておるんですが、事の本質はひょっとしたら大人用のニュースよりももっと子供用のニュースの方がずばりついているかもしれない。
 その「週刊こどもニュース」は、裁判官も検察官も弁護士も司法試験に合格したエリートで仲がいいからこんな事件になったという意見もあるんだよ、なるほどと、こういうことがあると。弁護士は別枠だ、弁護士はこの事件では疑われていないという見方もあるけれども、そうでもないよと。どうも弁護士も一緒に法曹一家でなれ合いで、自分たちの中だけでうまいぐあいにやって、悪いことは全部隠して国民に見えないようにして、まあ、あの皆さんですよねという、そういう見方をされておるわけです。
 そういう中に、幸いと言っていいんでしょうか、警察はどうやら今回はむしろ被害者的立場にいたように見えているのかもしれませんが、きょうは田中長官もお見えいただいていますが、この事件、警察の方として国民からどう見られておるか、御見解をお聞かせください。
#62
○政府参考人(田中節夫君) 今回の福岡地方検察庁の次席検事に絡む一連の事案につきまして、私ども、関係者でございますので、この具体的な問題につきまして我々としてのいろんな意見を申し上げることについては差し控えるべきだとは存じますけれども、基本的に我々、現場におりまして仕事をする場合におきまして、検察庁と相協力しながら刑事訴訟法の定めるところによりまして法の実現を求めていくという姿勢でございますので、そういう意味で、これからも今回の事案につきましては我々としてもこれを一つの教訓として進めていかなければいけない、こういうふうに考えているところでございます。
#63
○江田五月君 この一両年といいますか、例えば警察についてもいろんな不祥事がございました。みずから省みて、じくじたるものもあって、そんなにおれだけ正しいといって批判ができる立場にいるとは思っておりません。
 私は御承知のとおり堀籠さんの一期下、実は大学に入ったときはクラスが一緒でちょっと追い越されてしまっているんですが、一期下の法曹で裁判官十年弱、九年二、三カ月やったりして、決して立派なことをやってきたとは到底思っていないんですが、それでも人から、裁判官だったんですってね、さぞかし公明正大な判断をされるんでしょうねなどと言われると恥ずかしさに顔が赤くなる気もしますが、同時にやっぱりそれなりに誇らしい気持ちも持っていた、これは事実でございます。
 今でも裁判所の昔の友達連中とは大変仲よくつき合ってもいるし、彼らと友達であることを誇りにも思っている。しかし、どうもそんな仲間意識といいますか、誇らしさというか、こんなことではどうにもならぬという事態に今来ているような気がするんですね。
 キャリアの皆さんが行政の場であれほどおかしくなってしまっておる。大蔵省、厚生省、ずっと顧みますと建設省などなどいろんなところ、それが警察にも、雪見酒とかいろいろそういうものがあって、裁判所だけはキャリアとして裁判官を養成する制度が何の問題もなく動いているとは到底思えない。思い上がりであるとかあるいは仲間のかばい合いであるとかいろんなことがあるに違いないと。ここは、自分のふるさと、あるいはふるさとの御親戚、ごく近いところでも、そして友だちを失う、そんな心配があっても、あえてきついことも決して自分が偉いわけではないけれども言わなきゃいかぬと思っていろいろ質問もしてまいりましたが、この事件に出会って、やっぱりと、これはよほど鋭いメスでうみを出さないといかぬ、そういう思いにとらわれたわけでございます。
 そして、先日、九日に法務省の方の調査の結果が発表されて、昨日、最高裁の調査の結果が出された。昨日の最高裁の調査の結果が私の手元に届いたのがかなり夜分になっておりまして、十分まだ読みこなせていない、かなり大部のものであったわけですが、この法務省、そして最高裁調査結果は国民にどう見られておるか。おっ、さすがやっぱり法務省、最高裁、しっかりした調査をしたな、もう胸がすっきりした、これで疑惑がすべて晴れた、こういうふうに見られているのか、そうでもないのか。そのあたりをどうお感じですか、まず法務大臣。
#64
○国務大臣(高村正彦君) 今回の事件が検察に対する国民の信頼を深く傷つけたことにつきましては深刻な事態であると受けとめておりまして、この調査結果を公表したことだけで国民の疑念を払拭し、それで信頼が回復できたなどということは毛頭考えておりません。
 今回の事件は山下前次席検事個人の問題にとどまらず検察全体のあり方の問題でもある、こう認識しているわけでありますが、今後、検察官の意識改革のための具体的な方策を検討するとともに、検察が独善に陥ることを防ぐため、公訴権の行使や検察運営に民意を反映させる検察審査会制度の改革に向けて所要の措置をとるなど、法務・検察当局が一丸となって再発防止に取り組むことで国民の信頼を一日でも早く回復できるよう努めてまいりたいと思っております。
 調査結果を公表しただけで、もうそれで一件落着などと毛頭考えておりませんが、ただ今までの例に比べてできるだけ詳細に、できるだけ国民にわかりやすく調査結果をまとめようと努力したことだけは事実でございます。
#65
○江田五月君 私も、法務省、検察庁の皆さんが一生懸命この今の危機的状況を認識して努力をして、詳細に調査もし、その結果も一生懸命公表されている、その気持ちはわからないわけじゃありません。ただ、やや甘いかなと思うのは、これが信頼回復の一歩になるというように国民が見てくれるかと思うと、必ずしもそうでもないのかもしれない。
 私もこの点は本当に国民の皆さんの素直な、普通の常識的な判断を聞きたいなと思っておるところなんですが、法務省の報告書を私の地元のある弁護士さんに送ってみました、ちょっと通読して感想を聞かせてくれと。
 この弁護士さんが非常に問題意識が旺盛な方であるからかもしれませんが、その反応、まあぱたぱたっとメールで書いているので、細かく注意深く書いている文章じゃありませんから人の名前までは出しませんが、一言で要約すれば、貧弱な事実と長ったらしいが説得力皆無の言いわけですと。こういう反応もあるんですね。
 組織ぐるみの行為を山下次席の非行とそれに対する上司の監督問題にすりかえていると。検察は実に多くの情報を漏らしている、これは裁判所ないし裁判官への配慮から出てきていることは明白だ、そしてこれは常識の問題だと。コモンセンスがない者がこの事態をいろいろ見ると、なるほどそう説明するのか、福岡の地検、高検、ここがいかに腐っていたかを証明したが、そういう事態に直面して最高検とか法務省とかが常識にかなった措置をとれば福岡の問題で済んだかもしれないけれども、最高検、法務省は御丁寧にも自分から検察全体、少なくともトップ全体が腐っていることを天下に証明してしまった、余り頭がよ過ぎて常識をきれいに忘れているんじゃないか。こういう反応もあるんですね。
 私は後からもう少し事実について詳しく聞きますが、こういう反応について法務大臣はどう思われますか。
#66
○国務大臣(高村正彦君) 専門家の方がその報告書を読んだ上でそういう反応をしておられるということでありますから、それについては真摯に受けとめなければいけない、こういうふうに考えております。考えておりますが、ただそれではその一人の専門家の方の反応がすべてそのとおりかどうかということは、これはまた別問題であろうかと。
 我々もそれは一つの反省材料とさせていただきますが、やはり一番大きくこの問題についての考え方が分かれる点といいますか、何で起訴できなかったんだということが一番大きいと思うんですが、これはまさに法律解釈の話であって、例えば、一応理論的に法と証拠の上で刑は成立するんだけれども起訴猶予にしようとか、そういう話じゃないわけで、犯罪が成立するかどうか、公訴を維持するに足り得るだけの証拠があるかどうか、こういうところでまず判断をしたわけであります。そこについて、一人の専門家がそうでないだろうと、こう思えばまた随分違った厳しい意見も出てくるだろうと思うんですが、私としては、この点については検察の判断は相当なものであったろうと、こう考えているわけであります。
 それはそれとして、今申し上げましたように、起訴するに足り得る法解釈並びに証拠、それがあったかどうかは別として、極めて独善的、拙劣な方法、本人の目的を達するためにも拙劣な方法でやったということは、これは確かなことでありますから、こういった点について検察全体の問題として受けとめて、今後、検察の意識改革、それから外部チェックの問題についてもきちっとしていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
#67
○江田五月君 一人の専門家だけのことを私は今申し上げたわけですが、その一人の専門家だけの判断がすべてではない、これは当たり前です。ただ、そういう見方もある。その見方が特異な見方なのかというと、どうもそうでもないのかもしれない。
 今、私の手元にあるのは西日本新聞という福岡の地元の新聞一紙だけですが、その見出しだけを見ても、「前次席に刑事処分を」、これ括弧でくくって、「訴追回避の動き市民ら怒り 「幕引き許さぬ」」、「刑事告発は不起訴 法相「独善的な行為」」と、これは法務大臣が独善的と言われたということですからいいんですが、「検事権限最大に解釈 司法関係者の特権容認」、社説では「身内への切れ味なぜ鈍る」、「身内意識不信上塗り 「警官ならば逮捕」 司法の自浄能力見えず」。「幕引きも「特別扱い」 市民「なぜ裁かぬ」 当事者沈黙雲隠れ」、「漏えい報告書なお残る疑問点」と。
 法務省、検察庁はよくここまで調べて公開したというようなことは残念ながら全然出てきていない。なかなか大変な事態だと。信頼回復がこれで一歩前へ進んだと言えるかどうかは、本当にさらに今後どうするかにまさにかかっているんではないかという気がします。
 最高裁の方、私はまだけさの新聞も十分見ていないんですけれども、最高裁のこの調査報告書、これを私もぱらぱらと拝見して、むしろ法務省のものよりもさらに愚直に、よく細かな事実まで踏み込んでいろんなことをしっかりと書いておられるという感じはいたします。しかし、よく見ると、やっぱりいろんな疑問がどうも出てくる。調査の方法はこれでよかったのか、またその判断はこれでいいのか。
 これはぜひ長官にお伝え願いたいんですが、最高裁長官は三権分立の建前から国会に出てくるのは控えようと。しかし、きょうは、事柄が事柄だけに、長官の代理として事務総長がおいでくださって説明、報告をいただき、質疑にも答えていただくということで、それはそれで一つの仕切り方かなと思いますが、しかし司法の権威、これは権威というのはあぐらをかいていちゃいけないんで、やはり権威を持つ者、権威を求める者はその権威に伴う説明責任も十分果たさなきゃならぬし、日ごろ権威の維持のために最大の真剣な、真摯な、まじめな努力をしなきゃいけない。
 昭和三十二年の四月二十五日には、最高裁判所の田中耕太郎長官が国会、衆議院法務委員会にお見えいただいているんですね。裁判所法の質疑ですが、この会議録にして二十七ページにもわたる長い長い質疑に本当に丹念に長官がお答えになっているわけです。
 私は田中耕太郎先生に直接教えてもらったことはありません。御高名と著書ぐらいしか知りませんが、その後の横田喜三郎長官とか横田正俊長官とか、ああいう当時の長官は今考えてみると偉かったなと、今の長官も大変偉いと思いますけれども。
 やはり国会という場、三権の一つで最高裁判所と対等である、それも一つありますが、同時に、国権の最高機関で、国民に向かって物を言うとしたら、この国会というのがやはり一番国民に話をしたという場としてふさわしいのではないか。これは、余りこっちがのぼせ上がってはいけませんが、客観的にもそう思いますし、また国会の場でいろんな批判、反論、そういうものにさらされることによって説明責任が尽くされるということもあるので、ぜひとも事務総長、最高裁長官に国会に出てこられたらどうでしょうかと言っておったということをお伝え願いたいんですが、伝えていただけますか。
#68
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 委員の御意見は御意見として私ども承った上、長官に伝えることにいたしたいと思います。
#69
○江田五月君 さてそこで、この事案の解明の仕方なんですが、その前に裁判所の方にもう少し伺わせてください。
 調査結果は、これはきのうの裁判官会議に報告をされたと聞いておりますが、裁判官会議がいつあって、どういう裁判官が出席をして、だれが報告をされたのか、これをお聞かせください。
#70
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 昨日の裁判官会議は水曜日の定例の裁判官会議でございましたが、午前中に開かれまして、健康上の都合の裁判官一人を除く十四名が出席されました。その席上、調査委員会の委員である所管の人事局長が調査報告をいたしまして、報告については了承された、こういうことでございます。
#71
○江田五月君 人事局長の報告が了承されたと。
 そこでは裁判官の皆さんの議論はあったんでしょうか、ないんでしょうか。
#72
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 報告の中には、口頭で各関与者の責任の問題等も報告し、いろいろな議論が出たわけでありますが、その内容はここで述べることは許していただきたいと思いますが、かなりいろいろな議論が出たということはあるわけでございます。
#73
○江田五月君 議論があったと。まあそうだろうと思いますね。
 これは私もよく研究していないので教えていただければ幸いなんですが、最高裁の裁判官会議というのは議事録というのはつくられるんですか、つくられないんですか。
#74
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 議決された事項については議事録はつくりますが、一々の会議録というような、国会のいわゆる質疑応答というような議事録は現在のところつくっていないという状況でございます。
#75
○江田五月君 裁判官会議、逐語の議事録、会議録をつくるかどうかは別として、裁判官会議の議事録はつくってならないというような理由というのはないですよね。
#76
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官会議について議事録をどの程度つくるかということも、私の認識するところでは、各裁判官会議の自律権の範囲の問題であるというふうに認識しているところでございます。
#77
○江田五月君 なるほどね。
 それぞれの裁判官会議、司法権の独立との兼ね合いということもあるかもしれません。裁判体が行う合議、これは秘密だということですが、しかし最高裁の場合には裁判官の国民審査の関係もあるから、だから最高裁判所の裁判官については各判決に対して持つ意見というのは公にされるわけですね。当然これは国民審査のときの資料になる。同時に、私は、例えば本件のような場合に裁判官会議でどういう発言をし、どういう態度をとられたかというのは、これは最高裁判所裁判官の国民審査のときに大変有益な資料になると思うので、これはそういう場合に、最高裁の裁判官会議の議事のあらましのようなことは国民主権のもとの裁判所ということを基礎づけるためにも公開をされたらどうか、公表をされたらどうかと思いますが、お答えはできませんかな。どうでしょう。
#78
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 先ほども申し上げましたように、裁判官会議の議事録をどの程度にするかというのは各裁判官会議における自律権の問題であるという認識に立っておりますので、事務当局としては、こうであるべきだという意見を申し上げるのはいかがかと存じます。ここで委員の述べられた意見というのは当然議事録に載るわけで、それは認識されるところであろうというふうに考えているところでございます。
#79
○江田五月君 事務当局としてこうするああするという範囲に入ることではないと、裁判官会議の自律権の問題だというのは全くそのとおりだろうと思います。しかし、その裁判官会議でこの事件についてこの判事はこういうことを、こういう態度をとられたというのは国民審査で本当に重要な資料になると思いますので、ぜひ最高裁長官あるいは裁判官会議を構成される裁判官の皆さんにそういう意見があったことをお伝えいただきたいと思います。
 さて、この調査の方法なんですが、私はどうも今回の調査方法を見ていて一つ腑に落ちないことがある。それは、検察は検察あるいは法務省を含めて、最高裁は最高裁、もう一つ警察の方は警察、何かそれぞれが全部まるで独立国のように相互不可侵で、検察の方は裁判所へ行かない、裁判所も検察に行かない、警察の方は警察の方でおれの方は入ってくるな、こういうような感じがあって、縦割りで見事に切られていて、そしてそれぞれの部内の調査を何の矛盾もなく全部きれいに仕上げておられる。結果が見事に一つの事実として出ている。
 しかし、世の中というのは、なかなか過去の事実を後から証拠を見ながら認定するのにそう簡単にきれいに仕上がるものじゃないんですよ。証拠関係がいろいろ錯綜して、これはどうしても矛盾するというようなことが、真実は一つだから証拠は矛盾するはずがないといったって、そんなことはないので、矛盾する証拠なんというのはいっぱい出てくるんです。
 私は、そこで、これは参考になるなと思うのは、ハワイで今行われている例のえひめ丸沈没事件のアメリカ海軍の査問会議のやり方。おもしろいですよね、いろんな立場の人が、いや、あそこが悪いんだ、いや、そうじゃない、ここが悪いんだというので、いろんな証拠を出しながらかんかんがくがくやる。それを国民も見ている。報道も伝える。世界じゅうにそれが、世界じゅうといったって、日本のことで日本に伝わるほどほかの国に伝わっていることはないと思いますが、しかしみんなが見ている、そういう中で次第に事実が浮かび上がってくる。
 あるいは、アメリカの大統領選挙のてんまつも、あれも非常におもしろかった。憲法調査ということでこの参議院の派遣でアメリカへ行かせていただいたんですが、そのときにどういうふうに皆さんおっしゃるかというと、皆一様に、いや、あれでいいんだと。つまり、連邦と州、あるいはいろんな裁判所、あるいはそれぞれの国の機関、これが全部フル回転してそれぞれの役割を全部果たして、その間、矛盾はいっぱいある。いっぱいあるけれども、結局、最後にそういうものがぐっと収れんして事を解決して、そしてアメリカ民主主義の危機を見事に乗り越える。初めからちょきちょきと盆栽を切るみたいにきれいにつくり上げて、はい、できましたというのはなかなか納得されないという、そういうアメリカ民主主義のダイナミズム、これは私たち、学ぶと言うとどうも気持ちは悪いけれども、やっぱり素直に頭が下がるなという思いがいたします。
 法務省、最高裁の調査を読んでみると、どうも自分たちの狭い内部の調査だけをしている。お互いがぶつかり合うということが全然ない。
 例えば、一つだけ。一月三十一日、容疑者逮捕の日なんですが、福岡地検は古川判事の事情聴取をしているんですね。これは最高裁の調査報告書の中に書いてある。事情聴取の最中に自分の妻が逮捕されたことを知ったと、知らされたというのかな。ところが、法務省の方の調査結果にはこのことの記述は全くないんですが、これはなぜないんですか。
#80
○政府参考人(古田佑紀君) その御指摘の点につきましては、山下前次席の行動、その問題点を明らかにする上では特段必要がないと考えたということでございます。
#81
○江田五月君 最高裁の調査報告には、だれに聞いたかというところまで全部ちゃんと書いているんですね。ABCというような書き方もありますけれども、事情聴取をした関係者をずっと書いておられる、法務省の方にはそういう記述はないんですが。
 そして、伺うと、この調査結果というのは、これは要約でも概要でも何でもない、これが調査結果のすべてである、こういうお話ですが、だれに調査をされたかというような、判決でいえば証拠の標目の部分でしょうか、そういうようなものはもう明らかにされないんですか、刑事局長。
#82
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま委員御指摘のとおり、法務省で調査結果として発表いたしましたことは、これはあの事件の捜査の部分、その部分も並行して行われて、その結果も反映したものですけれども、その結果認定されたことをもう一つ申し上げますと、関係者のプライバシーを著しく侵害するようなこと、あるいは現在公判が行われる、裁判が今度行われることになる事件の捜査、公判、そういうような問題も考えて、そういうような配慮もしながら認定した結果を可能な限り公表したというものでございます。
 そこで、今、委員御指摘の、それをどういう根拠で認定したのかということでございますけれども、これは当然関係者その他の供述というのが中心になりますし、それだけではなくて、捜査結果等を示すいろんな資料等が検察庁の中にも残っているわけでございますが、そういうようなものをすべて分析したものでございます。それをすべて記載するということは非常に一面では膨大になるという面もございまして、その辺については記載をしなかったということでございます。
#83
○江田五月君 何だかさっぱりわかりません。
 調査によって得られた認識だけでなくて、捜査の結果も参考にしながらこういう調査結果をおまとめになったと。それはいいですよね。
 そして、私は、今のお話、なぜそのすべてをちゃんと書けないかというお話、やはりつらつらと聞くと、ふむ、なるほどなと、それでいいのかもしれませんが、ちょっと落ちついて考えてみると関係者のプライバシー、これはあると思いますよ、容疑者の犯罪によって被害を受けている皆さん、その家族の皆さんのプライバシー。それから、容疑者が起訴されたわけですから、この公判を維持するために今の段階ではまだ出せないということ、それもあると思います。しかし、普通、いや、それは捜査の関係ですからぜひ御勘弁をと、まあそれはそうですねというのとちょっと違うと、今回。
 検察の捜査そのものが公正に行われているのかどうかが国民から不信の目を持って見られているわけで、その不信というのは、これはこの事件に即して、やっぱり本当に不信の部分があれば、その部分はメスで切り裂いてうみを出さなきゃいけないし、不信の思いは抱かせたけれども実はそうじゃないんだというところはちゃんとそういう説明をしなきゃいけないし、いや捜査のことですからといって、捜査はちゃんとするんだろうから、いろんな追及はそこで立ちどまって、あとはもう捜査の公正を信頼してお任せをしようと、そうはいかないというところだと思うんですよ。
 ですから、捜査の場面に踏み込むところであれ、あるいはいろんな人事行政などにかかわるようなところであれ、可能な限り国民の前に明らかにしながら国民と一緒に信頼を回復していく努力をしなきゃいけないと思うんですが、この古川判事に事情聴取をして、そこから得られた古川判事の認識というのはこの法務省の調査結果に反映しているんですか、していないんですか。
#84
○政府参考人(古田佑紀君) 基本的な考え方として、私どもといたしましても、この調査結果及びそれについてのいろんな御疑問等については可能な限りお答えするということで考えているわけでございます。
 ただいま御指摘の古川判事の調査に対するいろんな事情聴取その他の結果は反映しているかというお尋ねですが、これはもちろんのことでございます。
#85
○江田五月君 一月三十一日に福岡地検が古川判事の事情聴取をした。それ以外にこの調査に関して古川判事から事情を聞かれましたか。
#86
○政府参考人(古田佑紀君) 一月三十一日に古川判事から事情聴取をしたのは脅迫事件に関する捜査のためと承知しております。もちろんそれ以外に、私ども今回発表いたしました調査結果、この調査をするための、あるいは告発事件等もございまして、その観点からの事情聴取ももちろんしております。
#87
○江田五月君 法務省の調査結果ですと、十二月に、いつでしたかね、なかなか複雑なので日にちがよくわからないんですが、福岡西署か福岡県警が福岡地検にストーカー事件だということで相談に来た。そのときに、任官二年足らずの女性検事が担当というか窓口として相談を受けた。その女性検事は、これは事案の概要からしてストーカーではないよ、脅迫ではないのということで、以後、脅迫ということで事件の処理が流れていった。そういう調査結果でよろしいんですね、それは。
#88
○政府参考人(古田佑紀君) 大きな流れとしてはそのとおりでございます。
 もう少し細かく申し上げますと、そのストーカー事件についての相談の窓口を担当していた検事は、この事件がストーカー規制法上の構成要件に当たらない疑いがあるので別な他の事件で立件を検討してほしいということを言っているわけです。その他の事件というものの例示といたしまして今御指摘のあった脅迫ということがあるわけですが、最初のその段階では上司と相談して決めるということで、具体的に脅迫ということまでは警察の方には言っていなかったように承知しております。
#89
○江田五月君 それでは、検察部内でストーカーではなくて脅迫だという判断をされたのはいつですか。
#90
○政府参考人(古田佑紀君) 福岡西署から事件の相談がありましたのが十二月二十六日でございますが、先ほど申し上げたようなことを一たん警察の方に窓口検事が回答いたしましてから、その後、刑事部長及び次席検事と相談して脅迫で立件するというふうに警察に話をするということが決まったと承知しています。
#91
○江田五月君 その刑事部長と次席とが話をしたのは十二月二十六日の後ですが、それほど後じゃない。二十六ですか、二十七ですか。
#92
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま申し上げましたように、この事件は脅迫で立件を考えるべきだと決めたのは二十六日でございます。
#93
○江田五月君 ですね。
 ところが、古川判事はずっとストーカー事件だと思っていたんじゃありませんか。
#94
○政府参考人(古田佑紀君) 古川判事のこの点についての認識は、ストーカー行為というふうなことを言われたという認識であります。次席検事は脅迫ということを言ったと言っておりますけれども、これは全体を考えてみた場合にどちらが正しいかというと、にわかには断定ができないものの、当時は少なくとも警察の方でストーカー規制法違反で捜査をしていて、そういうチャート図を持ってきていたということがありまして、ストーカー行為ということで捜査が行われているというふうに言った可能性は高いと思います。
#95
○江田五月君 山下次席は、古川判事は刑事の裁判官で刑事事件について精通をしておる、したがってこういうこれこれのことをお伝えして、事件をこうこうこういう処理にしてくれるだろうという、そういう信頼でお話をしたというようなことですよね。それはお互い法律家同士の話として成り立つようなストーリーになっているんですが、そうすると、ストーカーなのか脅迫なのか。
 ストーカー規制法に規定する事実の基本的なところでちょっと欠けている部分があると、恋愛感情なんとかですかね。それから、あれだけ繰り返し繰り返しの脅迫というと、これはもうストーカー行為の枠を超えて刑法の脅迫に当たる事実になっていると。こういうあたりは、法律家同士が議論するときには、結構法律的にもおもしろい議論であるからそんなに頭からすぽっと抜けるということがないはずなのに、そして二十六日にはもうそういう結論を、脅迫として立件しようという方針まで出ているのに、二十八日に古川判事を呼んでお話をするときにストーカーということで話をされたと。古川判事は、その後もずっと後までストーカーという嫌疑がかけられているという認識を持っておったと。そのあたりのところはどう解釈していいのか。
 この法務省の調査結果の中で、山下次席はこういう意図でこういうことをやったと認定されているところに無理があるんじゃないか。ストーカーか脅迫かなんということは余り実は考えていなかったんじゃないか、そこのところは、古川判事との関係では。そんな感じがするんですが、どうですか。
#96
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げましたとおり、山下次席は、脅迫等で告訴状が出ているというふうに古川判事に話をしたというのが非常に強固な記憶としてあるわけです。ただ、古川判事の方でストーカー行為ということの方の認識しかどうもないという、そういうこともまた現実問題としてある。この辺については、私どもも、なぜそういう食い違いが起こるのかということは必ずしも確定的に申し上げるだけの材料は残念ながら得られませんでしたけれども、少なくとも当時ストーカー行為等で告訴状が出ているということを、そういう事実を山下次席の方は古川判事に告げている、これは恐らく間違いない事実。そうなりますと、現実問題として、ストーカー行為等で告訴状が出ている、そういう言い方をした可能性というのもこれはかなりあると考えざるを得ない、そういうことを申し上げたわけです。
#97
○江田五月君 よくわかりませんね。
 この調査結果に認定されている山下次席が古川判事にいろんなことをおっしゃった中身、そして動機、これがいかにも無理があるということの一つだと思うんですが、さらにその部分をもう少し詳しく言いますと、まず警察から相談が来た、相談窓口の検事はそれを受けて、これはストーカーとちょっと違うなということで刑事部長、次席と相談をされた、脅迫で立件の方向ということになった、それが二十六日。そして、二十七日に検事正と次席と事務局長がお話し合いをされましたね。このところのてんまつを、私も九十分というのは随分長い時間いただいたなと思ったらもう六十分が過ぎようとしているんですが、ちょっと簡単にお答えいただけますか。
#98
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま御指摘のことは通常ミーティングということでやっている話だと思うんですが、二十七日のことでございますか。
#99
○江田五月君 二十七日と聞いたんですが、違いますかね。毎朝なのでしょうか。検事正と次席と事務局長でいろんな事務の打ち合わせをされると。そして、その事務の打ち合わせをして、事務局長が席を外された後に、検事正と次席とで本件について、どちらが言い出したか、これはまあ次席が言い出したんでしょうが、ともかく話し合いをして、そしてこういう処理方針というので次席の方が古川判事にお伝えをして、この証拠の保全とかあるいは示談の交渉とか、あるいは被疑者にそういうことをやめさせるように説得をするとか、そういうことをちゃんとやろうという、そんな話ができたということじゃないんですか。これは二十六ですか、二十七ですか。
#100
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまの話が出ましたのは、私どもの調査結果では二十八日の朝でございます。それで、そのときの話としては、このいわゆるストーカー的行為……
#101
○江田五月君 もういいです。
#102
○政府参考人(古田佑紀君) よろしいですか。
#103
○江田五月君 はい、短く。もうそこはいいです。
 二十八日朝にそういう話があったと。その前日の二十七日に主任検事が決まったんじゃありませんか。
#104
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、この事件の主任検事は二十七日に決められたと承知しております。
#105
○江田五月君 それはどういう立場の検事ですか。私から言いますと、刑事部の本部係といったか何か。どういう立場の人ですか。
#106
○政府参考人(古田佑紀君) この主任検事は任官十二年目のベテラン検事で、今御指摘のような本部事件のような事件を、要するに重要事件を担当している検事でございます。
#107
○江田五月君 そうすると、本件については福岡地検の内部ではその主任検事が捜査の権限を持っているのであって、もちろん検察官はそれぞれ検察官という立場で捜査権を持っているでしょうけれども、やっぱり事務の分掌としてはその主任検事に捜査権がある。次席はどういう立場で捜査権があるんですか。
#108
○政府参考人(古田佑紀君) 主任検事の制度と申しますのは、その事件について責任を持って捜査処理を行っていく立場の者でございまして、主任検事が決まったからと申しましても、ほかの検事の捜査権とかそういうものがなくなるというわけではもちろんないわけです。ただ、もちろんほかの検事が勝手にやるということは、これは組織上許されないことでありますが、御存じのとおり、次席検事という立場は主任検事に対して指揮監督をし、または決裁官としてその事件の処理にそれなりの責任を持って関与する立場でありまして、そういう立場で次席検事が、これは一般論でございますけれども、主任とは別に自分でその事件の関係者の取り調べなどを行うという例もこれは時々あることでございます。
#109
○江田五月君 二十七日に主任検事が決まったと。もちろん、主任検事を監督するあるいは相談に乗る、そういう権限は次席にはあるでしょう。検察官の一人として次席も一定の捜査権というのをそれは抽象的には持っておるでしょう、あるいはもう少し具体的にあるかもしれません。
 しかし、次席の捜査権というのは、主任検事と何の相談もなく、任されもせず、被疑者の御主人を呼んであれこれいろんなことを指示するという、そこまでの捜査権があるんですか。
#110
○政府参考人(古田佑紀君) 捜査権という法律的なレベルだけで申し上げればそれは可能でございます。ただ、そういうことが一般的に適切なことかどうかということになれば、これはまた別論でございます。
#111
○江田五月君 私は、法律的に一般論でというのではないだろうと思うんですよね。そういう話ではない。やっぱり検察官ですから、捜査権は法律的に言えば一般的にある。だけれども、もう具体的に事件が特定されていて、それがまだ送致はされていないけれども警察から相談が上がってきて、主任検事が決まっておって、それでその主任検事を飛び越して次席がいろんな捜査権限があって、それの行使がどうもちょっと独善であったとかなんとかという話じゃないだろうと思いますよ。そういう主任検事の捜査権を無視してまでこの次席が何かをやろうというのは、やはりそこに単に捜査の目的というもの、捜査の目的上それは行き過ぎた点はあったにしても、捜査の権限の行使の範囲内に入るというものを超えた何かがあると。
 被害者と十分話し合いをしたらどうですかと。もし捜査官が、電話何千回でしたか、そういう被害を受けている女性がいて、その被害を受けている女性の立場を考えなかったといったって、検察官が立場を考えないということはない。その女性の立場も考えずに示談したらどうですかと。示談に応じるかなというようなことぐらい考えるのが当たり前で、そういう女性のことも考えずに示談という、そのときの山下次席の動機というか目的というか、それはこの事件を適正に処理をしようということではなかったんじゃないですか。そこは矛盾があるんじゃないですか。
#112
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど法律的には権限があると申し上げましたのは、一般論を申し上げているわけではなくて、主任検事が決まっても、それは次席という立場でその事件について必要に応じて捜査することはあり得るという、それは法律上あり得るということを申し上げたわけでございます。
 ただいまお尋ねの件につきましては、やはり被害者の気持ちを無視したと。これは私ども申し上げているわけでございますけれども、それは一方的に、いろんな背景のある事件なのでその方が被害者にとってもかえっていいのではないか、そう考えてしまったというところにいわば独善があるということを申し上げているわけでございます。
 したがいまして、委員御指摘のような何かほかの目的があったんじゃないかというようなことではないと私どもとしては考えております。
#113
○江田五月君 もう一つ、警察の立場もあるんですよね。
 警察も、まだこれは送致前ですから警察は当然事件の捜査をしている。その警察に連絡もなく、相談もなく被疑者の御主人を呼び出したと。それは、いや捜査の適正のために、捜査の遂行のためにやったんだというにしては余りにも重要なところが抜けていますよね。
 やっぱりこれはこの調査結果に言われる、証拠を確保し、こういう行為をやめさせ、示談をさせということにしては余りにもお粗末、そういうことではとても説明がつかない。そうではなくて、相手が裁判官の奥さんであるということを考えた行為であったと。そして、しかも警察にいろんな補充捜査を命ずる、あれこれのいろんな理由をつけて。もちろん、それは警察よりもさらに公判維持という責任を負って捜査にかかわるという上で捜査の重要な責任を負っている検察の立場、その立場からすると、被疑者の弁解を崩す、あるいは被疑者の特定をする、そういうためにそういうことが必要だったと。そういう理屈はあるのかもしれませんが、もう警察への連絡もまるで忘れて、検事正との打ち合わせの後、自室に戻ってすぐ古川判事に電話をしてというのは、やはりこの説明では到底これは皆納得のできないところだという気がします。
 時間がどんどんたつので余りそういう細かなことばかり聞いちゃいけませんが、細かなことはこれ一つのことだけではないんです。ほかにもいっぱいあるんです。その一つのことだけとってみても、それだけ釈然としないことが出てきているわけです。
 パソコンのことをひとつ教えてほしいんですが、これは最高裁に、ちょっと事実関係の細かなことですから。堀籠事務総長が委員長で、そして事実関係の細かなことを全部担当されたのは調査委員会の中のどなたですか。
#114
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 調査委員会は事務総長である私が委員長になりまして、そのほかの委員としては総務局長、所管局である人事局長、それから刑事局長及び広報課長で構成されております。
 それで、福岡に行きまして、具体的に事情聴取したのは総務局長と刑事局長でございます。
#115
○江田五月君 主管局は人事局ですよね。ですから、人事局長は細かなことがわかっていると。もちろん事務総長もおわかりだと思いますけれども、ちょっと細かなことを聞きたいので、人事局長にちょっと伺いますが、パソコン関係、細かな事実を最高裁で認定されて、パソコンの操作に古川判事はおかしなところはなかったという、こういう結論をお出しなんですが、パソコン三台が押収されたときにフロッピー一枚だけ押収されていないんですね。これはどうしてか古川判事に聞かれましたか。
#116
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今ちょっと報告書の該当の箇所を申し上げますと、もうお読みかもしれませんが、パソコン関係のことは報告書の十九ページ以下に記載がございます。
 パソコン関係で、古川判事から聞き取りまして、これは認定上必要な事実であると認められたものはここに書いてあるところでございまして、今御指摘のフロッピー一枚の点は、その点は具体的に事情聴取をいたしましたのは刑事局長でございます。そのときにそういう話が出たかどうか、その点までは私自身はちょっと聞いておりませんが、少なくともこの報告書に記載する段階ではその点は確定されておらないということでございます。
#117
○江田五月君 一月の何日だったかな、警察がパソコン三台を押収するんですよね。そのときに、何かフロッピーが一つだけ押収されずに、後に、二月の十三日だったかな、検察庁に任意提出されるんですね。そのフロッピーは、この古川判事が本件ストカー行為と書いてあるそのままで言うと、そういう関係のこと専門に使っていたフロッピーだったというので、その一つだけが押収を免れていたというのは、何かその事情等あたりははっきりさせてもらわないと、パソコンをいじって証拠隠滅したことはなかったという認定だという、これは法務省も最高裁もそうなっているんですけれども。
 警察の方は、新聞報道によるとというので、新聞報道が間違っていれば別ですが、警察の方はデータの一部が消されていたことは確認した、事件にかかわる内容ではなかったが云々というのが新聞に書かれているんですが、警察庁長官、これはおわかりですか。
#118
○政府参考人(田中節夫君) 委員御指摘の本件に関するパソコンのデータが消去されていたのではないかとの報道があるわけでございますけれども、福岡県警察からは、本件に関するパソコンのデータが消去された事実は確認されなかったとの報告を受けております。
 なお、パソコンのデータを確認する際に、慎重な注意を払いながら複数の手法を順次試みていくのが通例でございますが、その過程で、手法によってはデータが確認できない、そういうものがございますので、それをもってデータが消えたということとは考えてはいないというふうに思っております。
#119
○江田五月君 本件は、私の方はこれまでのところ主として法務省と裁判所からいろいろ説明を受けていて、警察の皆さんから説明を聞いていないんですが、法務省の説明だと、例えばパソコンについても、どうも警察が最初にパソコンを押収していろいろやってみたら何か消された跡があるとかいうふうに判断して、これは証拠隠滅のおそれありというように言ったが、それは警察のミスだったのか誤解であったのか、警察の方の責任だったんだと。
 あるいは、取り調べの検察側から、この犯人の特定あるいは供述の信用性、そういうことからして、もっと周辺を洗ったらとか、まず先に被害者の夫のところでしたかね、捜索したらとか、いろいろ捜査についてあれこれ言われたが、これは検察の側からすると、当然そういうあたりのところが難しい事件だからというので指示をしたんだが、警察の方としては、どうもその辺をちょっと、判事の奥さんのことだから検察の方がいろいろ警察に無理難題を吹っかけてきているというように誤解をしてしまったんだとかいうような説明をするんですが、警察庁長官は福岡県警からこの事件について報告は受けておられますか。
#120
○政府参考人(田中節夫君) 委員御承知のように、一般論として申し上げますと、事件の捜査を行うに当たりましては、警察は検察庁とも当然協力をしなければいけませんし、必要に応じて協議を行っておるところでございます。
 検察庁は、先ほど委員のお話がございましたように、公訴の提起あるいは公判の維持という観点からいろいろ御意見がございますので、こうした協議の過程におきましてさまざまな意見が出てくるということは当然であるというふうに考えております。
 御指摘の今回の事件の捜査に対しましても、福岡県警察と福岡地方検察庁との間でさまざまな観点からいろいろな協議が行われたというふうに報告を受けております。しかし、一たん捜査方針が決まりました場合には粛々と捜査をやるということでございまして、本件事件につきましても、相互に連携して所要の捜査を遂げ、警察といたしましてはこれを送致し、そして起訴に至ったというふうに承知をしておるところでございます。
#121
○江田五月君 容疑者、ここで容疑者というのは例の脅迫事件の容疑者のことなんですが、その容疑者の捜査が行われて最終的に公判請求ということになったという、それはよろしいんですけれども、その容疑者だけではなくて、そのほかにもいろんな被疑事件、告発事件があって、それは全体の捜査の過程で、むしろ警察の方は被害者的立場と言うとどうもぐあい悪いですけれども、新聞の印象というのはそういう印象が伝わってくるようないろんな報道があるんですが、そして同時に、この法務省の調査報告でも、被害者のことともう一つは現場で必死に汗をかいている警察官のことと、そういう皆さんについて検察官というのが十分な理解がなかったのではないかと。この理解をもっと得るようにいろんな検察官の教養について、検察官の教養と言っていいのかな、努力をしなきゃいかぬ、改善をしなきゃならぬというようなことを書いておられるので、やっぱり警察としてはこの全体について何か言い分があるんだろうと思うんですが、そうしたことの報告は受けておられませんか。
#122
○政府参考人(田中節夫君) 先ほど申し上げましたように、具体的な事件の捜査に当たりましては、委員も御指摘のように、検察庁の方からは公訴の提起あるいは公判の維持という観点から、割合厳しい御指摘とかあるいはいろんな指導を受けることもございます。その過程で、私どもといたしましても、私どもの立場から、あるいは先ほどお話がございましたように被害者の立場ということを含めまして、ともに捜査を進めるという観点からいろいろ御意見を申し上げるということはございます。その中でいろいろ意見が異なる場合がございます。その異なることをもって一方的にどちらかの意見が通るとか、あるいは通らないかというようなことでは私はなかろうかと思います。
 いずれにいたしましても、お互いに協力をし合いながら、法の定めるところに従いまして社会正義の実現を図っていくという観点でそれぞれ仕事をしていると。私どももそのような気持ちで第一線は仕事をしているというふうに思っておりますし、今後ともいろんな場面で検察庁のいろいろな御協力、御理解も得なければいけないと思いますし、私どももそういうふうに努力をしなければいけないというふうに考えておるところでございます。
#123
○江田五月君 国会でお話しされるということになるとそういうふうになってしまうのかもしれませんが、現場の警察官がどういうふうに思っておるかということ、これはやっぱり現場で苦労して必死に事件を追いかけている、そういう立場に立って十分聞いてあげてほしいと思いますね。
 司法制度改革審議会の事務局長さん、この二つの調査報告は司法制度改革審議会としても報告を受けられた、あるいは受けられるわけですか。簡単に御報告ください。
#124
○政府参考人(樋渡利秋君) 福岡地検の捜査情報漏えい問題に関しましては、三月十三日に開催されました第五十一回会議におきまして法務省但木官房長より説明を受けております。これは二月十九日の第四十八回審議会におきまして、裁判官制度の改革について法曹三者からのヒアリングを行った際に、同官房長から一連の捜査、調査が終了した段階で当審議会にも結果を報告する機会をつくってほしいという旨の要望がありまして、審議会も司法のあり方にかかわる問題と考え、これを了承したところであります。
 なお、最高裁の方からも同日の審議会におきまして同様の要望がございまして、法務省につきましては三月九日の調査結果公表の後に十三日の審議会で報告したいとの申し出があったものですから行われておりますが、最高裁の調査結果につきましては来週の十九日に報告、説明を受けるということになっております。
#125
○江田五月君 今、司法制度改革審議会では国民の司法参加についていろいろな議論が行われていると聞いております。委員の皆さんがこの事件について関心を持って報告を求めたということは妥当なことだと思うんですが、私は、もし仮に、仮にの話をしちゃいけないかもしれませんが、山下次席が公判請求されたらだれが裁くのか。古川判事が高裁で合議体の一員を構成しておられて、忌避の申し立てがあって、これは忌避裁判所が忌避を、認容の決定をした。珍しいことではあるんですが、その中で判事が検察に負い目を感じた。これではやっぱり公正な裁判は期待できない。
 そして、この事件、今二つの調査報告がこのとおりであるかどうかなんですが、全体にやっぱり裁判官なりあるいは裁判所が検察官あるいは検察庁に負い目を感じるような、そういうある種の、俗な言葉で言うとなれ合い、そういうものがあったとしたら、これは検察官の犯罪は裁判官は裁けませんよね。裁判所全体が忌避ですよね。日本じゅうの裁判所が全部忌避、仮にそういうような気持ちが国民の中に起きているときに、だれが裁くかということになったら、私は今後そういうことはあり得る話だと思うので、ぜひとも国民の司法参加という形の中で職業裁判官を外した裁判の方法、正確には陪審ということになるんでしょうか、どこかにやはりそういうシステムもつくっておくべきではないかと思いますので、これは事務局長に聞いてもしようがありませんが、ぜひひとつ委員の皆さんにそういう意見があったということをお伝えいただきたいと思います。
 最高裁の方に伺いたいんですが、分限裁判の申し立てですか、なされることが決まった。もうなされたのかな。いずれにしても、分限裁判の結果が出るまでは古川判事の辞職願は受理できない。さてもう一つ、裁判官についての処断というのは弾劾という手続があって、これは訴追委員会が行動を起こすわけですが、訴追委員会がもし仮に調査を始めたということになったら、この辞職願はどうなるんですか。
#126
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 訴追請求を最高裁がいたしました場合には、これは辞表を受理しない取り扱いになると思いますが、そのほかの場合については特に規定したものはないというふうに承知しております。
#127
○江田五月君 最高裁の調査結果によると、弾劾の手続までは必要がないという認定になっておられるんですが、しかしこの最高裁の調査結果がそのままでいいのかという問題があるので、国会として訴追委員会がこれからどうされるか、それは私は担当じゃないので知りませんが、そこはひとつ電光石火、分限裁判をやって辞職を認めて、あとは国会がどうしようがはるかかなたに行ってしまったというようなことになったらいいのかどうか、これは問題だと、問題の指摘だけをしておきます。
 あと、判検事交流のことなどもいろいろ伺いたかったんですが、同僚委員で伺われる方もおられると思いますし、お任せをいたしますが、法務大臣、今、私やや細かなことをあれこれ言いましたが、率直に言って、事実認定がかなりきれいにでき過ぎているというか、やっぱり、うん、そうなの本当にという、余り説得力がないんですよね。
 また、ここで挙げられている問題以外に、例えば何の権限もないのにストーカー規制法上の警告というものを行ったとか、それは結局は警告じゃないんだろうと思いますが、警告だったんだとかいうようなことをマスコミに言っているとか、あるいは今の警察との連絡協議をしなかったこととか、記者会見で虚偽の発言をしたとか、法務大臣発言要旨の中に処分理由としてはそういう具体的記述がありませんけれども、そういうことは記述はないけれども処分の理由にはなっているんでしょうね、法務大臣。
#128
○国務大臣(高村正彦君) 当然のことながら、処分の軽重を決めるときにそういうことを十分考慮いたしました。
#129
○江田五月君 法務大臣もおっしゃっていますし、但木官房長もおっしゃっていますが、ただ一人、山下次席のちょっとのりを越えた、配慮に欠けた独善的な行為という個人の問題じゃなくて、これは組織の問題、体質の問題、自分たちは悪いことをするはずがないという批判を受け付けない体質、そうしたもの全体を変えていかなきゃならぬということで言われておりまして、私は本当にそのとおりだと思います。
 最高裁の調査結果を見ますと、いろいろたくさん調べておられるけれども、最高裁の関係の人は一人も調べていない。そして、最高裁にはコピーをとったということは何にも伝わってきていないということを念入りに書いておる。何か人為的な感じがするんですよね。
 これからもこの問題はさらに引き続いていろいろ検討させていただく、そして国会も含めて、みんなでもう一度、この崩壊した司法の信頼をつくり直すために、お互い洗いざらいいろんなことを言い合いながら努力をしていきたいということを申し上げ、法務大臣の決意を伺って、私の質問を終わります。
#130
○国務大臣(高村正彦君) 委員が最後に指摘されたこと、極めてもっともなことだと思いますので、私としても、検察官全体の意識改革、あるいは検察審査会制度等を改善することによって外部からのチェック体制、そういったこともいろいろ考えながら、検察が独善に陥らないようにいろいろ注意をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
#131
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ただいま私が答弁いたしましたところで、ちょっと訂正をさせていただきたい部分がございます。
 ちょっと規定を確認せずに申し上げましたが、罷免の訴追を受けた場合には、願い出があった場合でも、その裁判があるまでは免ずることはできないということで、それ以外は規定がないと訂正させていただきます。
#132
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 この福岡事件というか福岡問題というか、一連のいろんな事件が次から次へと出てきて、先ほど江田理事からもお話がございましたけれども、もう国民の皆様もうんざりしている。最後のよりどころが司法の部、ここだけは信用できるんだとみんなそう思っていた、思いたい。そういうような中で、何かなれ合いというような形で癒着というかそんなことが出てきてがっかりしているというのが国民の皆様の思いではないかな、そういうふうに思い、また私も憤慨をするところであります。
 昨日、またその前ですか、法務省と最高裁の方から調査報告書をいただきましたが、ずっと読ませていただいて、本当に日常の執務をしながら大変なことも起きて、古川判事も大変だったなというような、ある意味では同情せざるを得ないんですが。
 これ裁判官として、周りにいろんな、当然家族もいるし友人もいる、そういう中で、法律専門家だしいろいろの相談事もあると思うんですね。裁判官としてどこまで答え得るかということを知りたいんですが、要するに、息子、娘から、お父ちゃん、この点どうなのみたいな話を聞かれた、あるいは親戚から例えば土地の遺産分割の事件でちょっと相談に乗ってというような話があったとか、あるいは友人の銀行員から相談事があった、そういう場合に裁判官がどこまで答え得るのか、ちょっとお示しをいただきたいと思います。
#133
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 一般論として申し上げますと、裁判官の公平中立を疑われるような行為は慎むべきであるというふうに考えられているところでございます。
 法律相談といいましても、だれから持ちかけられるのか、一般的な客観的判例、学説状況の説明で足りるのかどうか、あるいは具体的事案に即して分析し相談者に有利な対策を助言することまで要するのかなど、さまざまな態様が考えられるところでございまして、一概に申し上げることができないことはお許しいただきたいと思います。
 裁判官の実情は、法律相談でも、多少とも紛争の中身に立ち入るようなものの場合には弁護士に相談するように言っているのではないかというふうに思われるところでございます。
 このような点につきましては、研修においてテーマとして取り上げて議論し合うこともあるというふうに聞いているところでございます。
#134
○魚住裕一郎君 弁護士の場合は、結構、弁護士倫理違反というか、あるいは刑事事件等に発展するような案件もありますが、そういう関係上、結構いろんな事例を取り上げて弁護士倫理の研修というのを定期的にやってきつつあるといいますか、もちろん司法修習という段階でもやってきているわけでありますが、今おっしゃった公平中立を旨とした裁判官としての職業倫理、それから家族でありますとか友人とかの情の問題、そこの板挟みというような問題が出てくるんだろうと思うんですね。
 逆に言えば、そういう場に身を置かないというのが、うまく避けていくというのが、それ以上は個別問題は弁護士に相談してねというのは、まさにそういう利益なり感情なりが相反するような部分からみずから避けるというか、そういうことが大事なのかななんて自分は思っておるんですが、今、事務総長は研修というふうにおっしゃいましたが、具体的には、人事局長、この倫理の研修というのは裁判官としてはどういう形で、どんな間隔でやっておられるんでしょうか。
#135
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 司法研修所におきまして、毎年四月に、昨年からは十月でございますが、新しく任官しました判事補に対する導入研修というのをやっております。
 そのときに、法律実務に関する研修だけではなくて、裁判官のあり方についてとか、そういった形でのカリキュラムで裁判官倫理をテーマとして取り上げて討論をするというふうなことをやっております。
 そのほかのいろいろな形の一般的なテーマのカリキュラムでは、やはり法曹倫理に関することがいろいろ出てまいりますので、そういった法律実務以外の面での研修のカリキュラムというのはそういう形で取り上げられているということでございます。
#136
○魚住裕一郎君 それで、ちょっと見方を変えて、この山下次席の問題ですが、これは何で守秘義務違反で訴追をしないのかというのがよくわからないんですが、簡潔にわかりやすく説明をお願いできますか。
#137
○国務大臣(高村正彦君) 捜査関係者が捜査を円滑迅速に進める上で、関係者に対し一定の捜査情報を告げることが必要な場合があること、例えば取り調べの相手方の記憶を喚起するために証拠の内容を告げるとか、あるいは被疑者の家族に捜査への協力を求める際、被疑者が疑われても仕方のない状況にある旨を具体的に説明するなどといったことは一般にもあり得ることだと、こういうふうに思います。
 このように捜査関係者は事案の内容や捜査状況に応じて円滑適正な捜査処理を図る目的で、その目的に違反しない範囲内において捜査情報を関係者に告げることが一般に許容されるところでありまして、その場合には正当な理由のある行為として守秘義務違反には当たらないと解されているわけであります。
 山下前次席の場合でありますが、古川判事の職業倫理等に対する信頼が過度であった点で問題があったわけでありますが、その協力を確保することができれば、同人が被疑者を説得し、被害の継続、拡大を防止し、証拠を保全し、被害者への謝罪、示談等の措置を講じ得るものと期待して、円滑適正な捜査処理を図る、そういったことを目的として捜査情報を告知したものであって、いわゆる事件つぶしといいますか、被疑者の処罰を不当に免れさせることを意図したものではなかったと認められたわけであります。
 このように、山下前次席が捜査情報を告げた目的は、目的だけからいえば円滑適正な捜査処理を図ることにあり、その際、証拠隠滅の防止のための配慮を欠くなどした点で極めて軽率かつ極めて不適切であったと指摘されるとはいえ、これらが捜査の目的に違反していたとまで認めることはできなかったことから、守秘義務違反については嫌疑不十分と判断され、不起訴処分とされたものと承知をしております。
#138
○魚住裕一郎君 山下次席の目的等、感情としては何か理解できるような気がするんですが、また今、大臣のお話の中で、過度に高度の職業倫理に期待したという表現があったわけでございますが、ただこれ普通の、そうしますと被疑者の夫が判事ではなければ、いや判事補でも結構なんですが、そういう法律専門家ではなければこういうことは告げなかったというふうに理解していいんですか。
#139
○国務大臣(高村正彦君) 被疑者の夫が判事であったということが重要な要素の一つになっているのではないかと思います。ただ、それは被疑者の夫が判事だからその事件をつぶそうとかそういうことでは必ずしもなかったと。ただ、まあ過度の信頼を置いたこと自体を身内意識と言えばそうは言えると思いますが、身内意識ゆえ事件をつぶそうとまで考えたのではなかったというのが検察の判断であったと思いますし、法務省の調査の上での判断でもあった、こういうことでございます。
#140
○魚住裕一郎君 この調査報告書のこの「告知の目的」というところの中で今御答弁いただいたような内容が出ているわけでありますが、事件処理に関する専門的知識・経験を有する、その協力を得て公平中立な立場から説得をするというか、事実関係を問いただして犯行を認めさせる、あるいは証拠保全措置を講ずる、あるいは謝罪等して示談を行うというようなこと、もちろんそのほかにもエスカレートしないようにというような目的があったということなんですが、ただこれは相手は判事ですから、先ほどお聞きした公平中立を旨としていくという職業倫理と個別的なアドバイスがどこまでできるのかという問題、板挟みになるわけですね。つまり、自分の女房から実は警察で捜査されているのってアドバイスを求められたその古川さんはどう判断するだろうかというふうに思うわけです。
 アメリカだとホームアドバイスとかなんとか言うんでしょうか、どこまで裁判官が許されるかという問題が実はあるんですが、山下次席におかれては余りにも過度に裁判官という立場も無視した形での捜査協力を求めたのではないのかという思いがあるんですが、いかがですか。
#141
○国務大臣(高村正彦君) 余り深く考えたことが今までなかったので、私の現時点での率直な感じを申しますと、裁判官が、身内の犯罪にそういう事実があったと明らかに認められる場合に、正直に話しなさいとか、謝って示談しなさいとかいうアドバイスをするのがいけないということが言えるのかどうかという、一般論として余り具体的事件に立ち至ってアドバイスしちゃいけないということが言えるにしても、そういうようなアドバイスをすることはいけないと言えるのかどうか、私は余り深く今まで検討したことなかったので、確定的なことはお答えできませんけれども、今の私の気持ちとしてはそういう気持ちはございます。
#142
○魚住裕一郎君 先ほど最高裁事務総長の方は、一般的な話はアドバイスできても、個別具体的になっていけば弁護士に相談しなさいよという言い方をされました。多分、僕は裁判官の職業倫理としてはまさにそれが正しいんだろうなというふうに思うわけでありますが、それを超えてさらに何か示談まで持っていきなさいよということを山下次席が古川さんに期待したというのは余りにも酷だなという感じがするんですが、その点、刑事局長、どうですか。
#143
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、なかなか裁判官という立場で示談交渉とかそういうのをするのは難しいということは山下次席も感じていたようでございまして、そういうようなこともあって弁護士を紹介する、その弁護士にその示談交渉とかそういうのをやってもらうようにするということで弁護士を紹介した、そういうことだと理解しております。
#144
○魚住裕一郎君 いや、そうじゃなくて、あに図らんやI弁護士のところに行ったわけですが、自分の中でも、結局、妻が否認をして、いろんなコンピューターで書面をつくる、反論ということまで出てくるわけであって、そういうことに山下次席が古川判事を追い込んだとも言えると思うんですね。
 この何か板挟みに遭った状態というのは、例えばこの最高裁の調査報告書の十ページの下のところにあって、全然自分は知らなかったけれども、もっと早く知らせてくれれば、「妻の携帯電話はあったのであるから、はっきりとではなくてもそれとなく匂わせてくれれば、その携帯電話を押さえることができ、白黒はっきりするところだったのにと思う。でもそんなことはやっぱりできないだろうなと思う」と。物すごく裁判官の気持ちで板挟みに遭って揺れているというのがよく出ている供述になっているんですね。そこに山下さんはその判事を追い込んだ。
 それで、なぜ守秘義務違反じゃないかという中で、事件つぶしじゃないよ、それはわかるんだけれども、捜査の目的達成のために相当な手段、方法で告知することが許されるんだと。だけれども、その目的達成のためとしても、余りにも裁判官の立場を無視した形での板挟み状態に置いてまでも目的達成を遂げようということ自体が、何というんですか、山下次席の目的の前提条件を欠くんじゃないのかなと。要するに、裁判官というのはそういう立場ですから、板挟みに置かれたらどうしようもないじゃないですか。
 この点はどうですか。その倫理を超えてもやれというようなことを山下さんは言ったということなんですか。それは、そういうふうになれば、それでも守秘義務違反ではないという考えですか。
#145
○政府参考人(古田佑紀君) 山下前次席は、この古川判事がそれまでの刑事裁判官としてのいろんな経験あるいは倫理ということから、妻を説得するとして、必要な証拠保全等もしてもらえるということを原則として考えてはいたわけですけれども、一方で、裁判官という立場だと、奥さんがどこまでどういうことを言うかと、その辺にもそれなりの配慮はしておりまして、そういうような問題もあることから、先ほども申し上げましたとおり、弁護士を紹介しているというふうに認められます。
#146
○国務大臣(高村正彦君) 具体的事件について一切アドバイスしてはいけないということは必ずしもないのではないかと。
 アドバイスの内容でありますが、私、今、小声で事務総長に聞いてみたんですが、そういうことをやっているのなら正直に言えよというアドバイスは決して裁判官の倫理に違反しないでしょうし、それから示談交渉そのものに立ち会うとかそういうのはいかぬかもしれないけれども、やっているのならちゃんと示談しなさいよという、それは裁判官の職業倫理には違反しないでしょうと、こういうことを隣で私が聞いたら言っていただきましたので、私もそれはそうだなと、ずっと思っていたことにそれほど違いはないなと、こう思ったわけであります。
 ただ、そういうふうに判断したことがいいかどうかといえば、過度の信頼を置いた、まさに過信でありまして、非常にまずいことをやったことはこれは間違いないんですが、そういうふうに事実を認めさせる、あるいは示談して事件がスムーズにいく、そういうふうに思ったこと自体が裁判官の倫理に反することをやらせようとしたということには私はならないのではないかと、目的自体としてですよ、実際にどうなったかは別にして。そういうふうに思っております。
#147
○魚住裕一郎君 職業倫理の問題って物すごく微妙で難しい問題でありまして、いいという場合もあるでしょうし、やはりそこまではということもあると思うんですね。だけれども、具体的な行為規範としてきちっと倫理上截然と区別できないというような部分があって、それは山下次席も同じ法曹として教育を受けてきているわけですから、当然理解した上で行動をしているわけなんですね。だから、それは余りにも過度だなというふうに思ったもので、ちょっと質問をさせていただきました。
 それから、懲戒免職はやっぱり考えておかなきゃいけないんじゃないか。先ほど来、電車の中で痴漢行為をした人間と取り調べ中参考人を殴ったというやつ、そういう事件では免職になったと。ただ、検察への国民の信頼を大きく裏切ったという点ではこの山下次席の行為ももっと大きな影響があったと思うんですが、この点はいかがなんでしょうか。
#148
○国務大臣(高村正彦君) 検察への信頼という意味で非常に大きかったことはこれ事実でありますが、今までの事例からいうと、刑事的な犯罪が成立するような場合でないと原則として懲戒免職にしてこなかったもろもろの事例がありますので、まあ非常に結果は大きいことでありましたけれども、国公法による秘密漏えいに当たらないという判断が出た、それを前提とした上で懲戒免職というのは判断として酷であろう、こういうふうに思ったわけでございます。
#149
○魚住裕一郎君 今度はまた見方を変えて、先ほど江田理事の方からこの本件事件、ある問題に対して国民はどのように認識しているかということで問いかけがありましたけれども、この脅迫事件の被害者の女性から見て今回の行為はどういうふうに思っていると認識をしていますか。
#150
○政府参考人(古田佑紀君) 私どもの立場で被害者の女性の方がこういう気持ちを持っておられるということを申し上げるというのは適当ではないように思いますけれども、私どもの判断として申し上げますと、こういう一連のいろんな問題があったことは一層精神的な苦痛を増したものであろうと私どもとしては考えているということです。
#151
○魚住裕一郎君 調査報告書の中では被害者感情の無視とか軽視とかいろいろ書いてありますが、本来、被害者保護をどうするかとか、あるいは検察官は公益の代表とも言うが、しかし被害者を、やはりその思いを代弁するというようなそういう立場だというふうに私は検事というものは理解をしているんですが、そうなると、今回の一件は、脅迫事件の被害者の女性から見れば検察庁の裏切り行為ではないか、そう思われても仕方がないのではないかと思うんですが、いかがですか。
#152
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げましたとおり、私どもの判断として、やはり精神的苦痛をかえって、それなりの御負担をかけたと、そういうことは間違いないと思っているわけで、その点についてはまことに申しわけないと考えている次第です。
#153
○魚住裕一郎君 今回の件は新聞から発覚というふうなことが出ておりますが、新聞記者も一生懸命頑張って、スクープだななんというふうに思うわけで、よくやったとも言えるんですが、これは検察の組織内でも、やはりこういう組織内からきちっとその辺を正せ得るような装置というか、できないのかなというふうに思うわけですね。
 去年、警察の問題がいろいろ言われて、内部監察とかいろいろあったわけでありますけれども、検察の中はその点はどうなっているんでしょうか。具体的な監査というか定期的に回っているとか、そういうのはあるのかどうか、あるいはそういうことをつくっていこうというふうに考えませんか、法務大臣。いろいろ御提案がこの中で出ていることは承知をしておりますが。
#154
○国務大臣(高村正彦君) これからいろいろ考えていかなければいけないと思いますが、一番大きな問題は検察全体の意識改革だと私は思っております。
 というのは、この件、まあ山下前次席がやったことではありますが、事実として、事後報告ではあっても、警察に知らせないままにこういうことをやったということを検事正も知っていたわけです。知っていた上でしかるべき措置がとられなかった、上に報告が上がってこなかったというのは、これはまさに検察全体の意識の問題だと思いますので、私は、一番大切なことは、まあ巡回させるのがいいかとかいろいろあるわけですが、その意識改革のために何をするかということが今一番大切なことではないか、こういうふうに思っております。
#155
○魚住裕一郎君 私どもも一緒に考えていきたいと思っております。
 時間がなくなってきましたが、最高裁、今回コピーというのがえらい大きくクローズアップされたんですが、これ何でコピーをとったか。慌てふためいたからという、そういうようなことだけで、本当はそうなのか。
 前、テレビか何かで裁判官の人事の問題で何かいろんな情報を集めているみたいな、そういうことが特集された。一年か二年か三年ぐらい前ですかね、そういうことがありました。しかも、古い人事カードみたいのが引っ張り出されてきて、そうなんだなんというふうにテレビでやっていたんですが、何かこれもコピーがあるということが人事局長まで行っていたかいないかという、その辺、報告書は注意深く書かれておりますが、やはりこの人事行政上の情報というか、そういうことも常にやっているんじゃないかというか、そんな感じで見受けるんですが、この点はいかがですか。
#156
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 本件で古川判事の妻についての令状請求があったという事実は最高裁まで報告されましたが、コピーをとったということは報告されておりません。
 なぜそういう報告をしたかと。まずは地方裁判所、それから高裁、この段階で報告したかということになりますと、この点は報告書にも記載いたしましたけれども、やはり公正な裁判をするために、事件担当者の問題であるとかそういう問題がまず問題になるということで、一般的な人事のための情報をとるということが目的だったというわけではございません。一般的な人事の情報で、家族の関係とかそういうものは異動のために必要でございますので、本人の方から第二カードという形で家族の状況は書いてもらいますけれども、それで今は十分なことでございまして、今回は違う事情でございます。
#157
○魚住裕一郎君 終わります。
#158
○橋本敦君 今回の件について、法務大臣は所信の中で、山下前次席検事の行為は罪証隠滅防止のための適切な措置を欠いた極めて独善的かつ軽率な行為であったこと、それから検察と裁判所が癒着しているのではないかとの国民の疑惑や不信を招き、司法に対する信頼を著しく失墜させたものであると認めた、本件が長年にわたって築き上げてきた検察及び司法の公平性への信頼を深く傷つけたことについては大臣としてもまことに遺憾であるという意見を表明されました。
   〔委員長退席、理事石渡清元君着席〕
 私はこれは大臣として真摯な反省の上に立った責任ある見解だと思いますが、まずそういう大臣の真摯な意見を尊重しながら、この問題について私はさらに解明をしていきたい、こう思うわけであります。
 私も二十年余り法務委員会に在籍させていただいておりますが、このような残念な事件について質問せざるを得ないというのは法曹の一員としてまことに痛感のきわみに思います。
 まず第一の問題として、山下次席検事は、相手が同じ法曹の古川判事の妻に係る、つまり古川判事に係る問題ということでなかったらこのようなことはしなかったのではないか、私人の友人の関係する事件であればこのようなことは恐らくしなかったのではないか、全く常識的に私はそう判断できると思うんですが、その点はどう判断されますか。刑事局長でも大臣でも結構です。
#159
○国務大臣(高村正彦君) より詳しい説明が必要であれば刑事局長からさせますが、判事の妻が容疑者であったということは事実を判事に告知したことの重要な要素の一つにはなっているだろうと思います。
 ただ、それが、だから事件をやみからやみへ葬る事件つぶし、いわゆる事件つぶしということでは必ずしもなくて、先ほども他の委員にお答えいたしましたが、判事だから適切な措置、証拠隠滅防止とか、あるいは事件をやめさせてくれるだろうかとか認めさせてくれるだろうとか、過度の信頼を置いたといいますか、そういうことであったのではないか。それが身内意識と言えば身内意識である、こういうふうな感じを私としては持っております。
   〔理事石渡清元君退席、委員長着席〕
#160
○橋本敦君 私は今の大臣の答弁はまじめなお考えの答弁だと思いますよ。
 古川判事じゃなくて自分の私人、親友、それに関する事件だったとしたら、私はそれは論外だと思うんですよね。やっぱり古川判事だからということで、あといろいろ事件をつぶすつもりはないとおっしゃったけれども、つぶしようがないことはいいです。古川判事だからこの問題が起こったという、その本質が大事なんですよ。だから、国民は判検癒着ということを疑問として持たざるを得ないわけで、大臣の反省でもそのことは重大な疑惑を招いたとおっしゃっているわけですからね。
 だから、法務省の報告の五ページでも、「本件行為がその外形からして、検察官が同じ法曹仲間である裁判官に特別の配慮をしたものと受け止められるとともに、裁判官の公正さを疑わせることとなるおそれが明らかであったのに、これに対する配慮を欠き、極めて軽率かつ安易に本件行為に及び、その当然の結果として、検察や司法全体の公平性に対する国民の疑惑・不信を招いたものであって、極めて遺憾である。」と調査結果でこうおっしゃっているのは私は正しいと思う。だから、まさに基本的には相手が古川判事である、同僚裁判官であるということから出発しているということはまず認識の問題として大事だと思うんですよね。
 それから第二番目の問題として、その結果、事実を伝えた結果、山下検事が期待していたようなことになったのかといえば、そうではなくて、この調査結果でも、「園子の否認、犯行に使われた携帯電話の廃棄など山下次席の意に反して進んだため、警察へ事実を伝えかねたまま、一か月近くが経過してしまったものである。」と、こう書いてあります。そのとおりですよ。だから、仮に山下検事の意見が円満に示談等でおさめたいということであったにしても、全く違うところへいったわけですね。
 次席検事までやる検察のベテランを歩いてきた方が、将来の判断について、こういう結果になりかねないということを認識もしないでやったという軽率さは、私は、軽率さというよりも、検事の資格そのものを欠く重大な軽率さだと言わざるを得ない軽率さだと思いますよ。私はその点についてこの問題は極めて重大であると思う。
 そして、携帯電話の廃棄という問題が起こったことも認められております。この問題について刑事局長に詳しく聞きますが、実際にプリペイド式携帯電話は園子によって廃棄された疑いが強いという判断をされているわけですね。
#161
○政府参考人(古田佑紀君) そのように考えております。
#162
○橋本敦君 この犯行はプリペイド式携帯電話によってなされた。このプリペイド式携帯電話というのは、これは廃棄されてしまえば、そのものをだれが所持して電話をしたかということの具体的な事実関係の究明については決定的な証拠隠滅になってしまうんですよ。捜査の常道としてはそれは当然です。
 だから、そういう意味で、このプリペイド式携帯電話が廃棄されたということは、最も重要な証拠に対する証拠隠滅だというように私は見なきゃならぬ重大問題だと思いますが、刑事局長、どうですか。捜査の観点から当たり前でしょう。
#163
○政府参考人(古田佑紀君) このような電話を使った事件におきましては、これは非常に重要な証拠物であるということは御指摘のとおりです。
#164
○橋本敦君 だから、山下検事の話から古川判事を通じて妻に伝えられ、最も重要な証拠が廃棄されると、これが大事ですよ。だから、そういう意味では事件つぶしの意図はなかったと言うけれども、結果的に事件つぶしに近い結果をもたらしたということになれば、山下次席検事の責任はこれまた重大になるということは明白ですよ。
 そして、その次の第三の問題として私が指摘したいのは、法務省の報告書によれば、園子がその行動を整理して記載したものを、これを想定問答ということで新聞は言いましたが、想定問答とは言わなくても、園子の行動を整理して記載したものを持っていたと。そして、「想定問答のようなものではないものの、いずれにしても、山下次席の本件行為が、園子に種々弁解するための準備をさせる結果となったことは、否定できない。」と。それはそうでしょう。だから、まさに捜査の妨害になったんですよ。
 捜査の妨害になった、間違いありませんね。
#165
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、いろいろ弁解を準備させる、そういうことになるということは捜査に対して支障を生ずることでございます。
#166
○橋本敦君 だから、山下検事の行為がいかに重大な結果を捜査上、事件つぶしではないとしても起こしているかということを深く認識する必要があるという意味で聞いているんですよ。そうなってきたわけでしょう。
 そして、もう一つの問題としては、山下検事はこういう事態を深く認識したのかというと、まるで認識していない。記者会見でどう言っていますか。この報告書でも記載されているように、事実を正確に言うどころか自分を合理化する、そして自分の判断に誤りはなかったなどと言って、「自分の非を認めなかったばかりか、あえてストーカー行為等の規制等に関する法律四条の警告の趣旨を援用して自己の行為を正当化するなど、その態度は極めて不適切なものであった。」と書いてあります。そのとおりです。極めて不適切です。
 ストーカー規制法の今言った四条の警告の趣旨を援用してというのは、これをやるのは警察ですよ、ストーカー行為の警告をやるというのは。警察が捜査をしているときに警察に連絡もしないで、次席検事がこういったことでストーカー行為をやめさせるための警告の趣旨だと言ったって、これは余りにもごまかし、ひど過ぎるじゃありませんか。こんなことは通用しない。通用しないから、そういうような趣旨を援用して自己の行為を正当化するなど、その態度は極めて不適切であると。法律家としても許されないし、検事としても許されないし、警察の捜査を遂行していくということにも障害が及ぶし、自分の権限乱用だと言わねばならぬ。
 刑事局長、どう思いますか。ストーカー行為をやめさせるというのは権限乱用じゃないですか。
#167
○政府参考人(古田佑紀君) もちろん御指摘のとおりで、ストーカー規制法による制止は、これは警告は警察、あえて申しますれば、それを意識して趣旨をということを述べたようには理解できます。
#168
○橋本敦君 はっきり答弁しないけれども、警察がやることを自分がやったということでは、法の立場からも違うし、弁解もひど過ぎるじゃないかと、こう聞いているんですよ。こんな弁解が通用しますか。通用しないでしょう。はっきりこの報告に出ている。
#169
○政府参考人(古田佑紀君) いずれにいたしましても、この段階でストーカー規制法ということを引き合いに出しまして、それによって自己を正当であるという主張をしようとしたことは非常に問題のある行為だというふうに考えております。
#170
○橋本敦君 非常に問題な行為で、報告書にはっきりその態度は極めて不適切なものであると書いてある。そのとおりでしょう。本当にひどいんですよ。
 そして、この問題については、一つは国公法百条秘密漏えいに該当する行為ではないかということが論議され、調査もされましたね。その点についての報告もあります。この点については、「警察が内偵捜査中の未送致事件であったのに、被害者や警察の意向確認もせず、また、証拠隠滅防止のための特段の配慮もせずに被疑者の夫である古川判事や弁護士への捜査情報告知に及んだもので、不適切なものであったというほかなく」と。不適切であったというほかはないという厳しい指摘でしょう。そのとおりですよ。
 証拠隠滅防止の特段の配慮もせずにと、配慮もしなかったから、さっき言ったように、プリペイド式携帯電話は見事に処分されて、そして証拠が隠滅されているんですから、責任重大たるやもうひどいものですよね。だから、不適切なものであったというほかはないというのは極めて厳しい批判だと受けとめていいんですが、これは不適切なものであったというほかはないというのは、極めて遺憾である、許しがたい、極めて正しくない、そういう厳しい評価としてここに書かれていると理解してよろしいですか。
#171
○政府参考人(古田佑紀君) おっしゃるとおりでございます。
#172
○橋本敦君 したがって、今言ったように、「結果的には園子のプリペイド式携帯電話の廃棄を招いた疑いが濃い点、電話番号の告知については、必ずしも事実確認や証拠保全という目的に不可欠ではない点」、こういうことに加えて、本当に行き過ぎた行為があったということは明白なんですよね。これは私は当然なことだと思います。
 そこで、この捜査上の秘密の漏えいという問題について最大の問題がここにあるんですよ。国公法百条違反の問題であります。ところが、これについて今のように厳しい指摘をしながら、結論的には、山下検事については秘密漏えい、国公法百条違反の責任は問わないという結論になったのは、私は理由と結論には大変なそごがあると思いますね。ここではこう言っています。「捜査機関としては当然行うべき配慮を欠いた著しく不適切な行為ではあるものの、捜査の目的に違反して告知したとは認められないので、結局、本件においては、正当な理由がないのに職務上知り得た秘密を漏らしたとは認められず」と。正当な理由がないのに職務上秘密を漏らしたとは認められない。正当な理由はないじゃないですか。正当な理由はないということを今私は論証してきた。
 しかも、不適切な行為ではあるということは認めた上で、不適切な行為ではあるが捜査の目的に違反して告知したとは認められないと。捜査の目的に違反したとは認められないと言うけれども、捜査を妨害しているじゃないですか。
 いいですか。事件つぶしの意図がなかったと。結果的に捜査の妨害になったんですよ。そういう重大な結果責任を、捜査の最高の責任者の一人である次席が自覚しないでこういうことをやったということの責任が極めて重大である。しかも、捜査の秘密を漏えいしていることは事実なんです。何でこれが百条違反にならないのか。国民は納得できませんよ。どう説明しますか、刑事局長。
#173
○政府参考人(古田佑紀君) 山下前次席の考えておりましたことは、古川判事に被疑者の説得及び証拠の保全、それから被害者への謝罪、示談、こういうことを進めてもらう、そのことによってこの事件の迅速妥当な処理を図る、こういう目的であったと私どもとしては考えているわけです。そのために必要な情報の範囲で古川判事に捜査情報を教えたと。
 そのような証拠保全あるいは説得、謝罪、示談、こういうふうなことをするということを協力依頼する、これが捜査としてその許容範囲を超えているのか、事件の捜査処理のあり方として許容範囲を超えているのかということになりますと、それはやはり許容範囲を超えているとは言えないということになると思われるわけです。
#174
○橋本敦君 それが身内意識、身内かばいだという批判を国民から受けますよ、今の答弁は。いいですか。早く知らせて、そしてプリペイド式携帯電話の証拠となる番号も教えて、被害者の電話も教えて、何回脅迫的、ストーカー的電話をやっているかと教えて、捜査の秘密の全容に近いことを教えているんですよ。何でそんなことを教えたかというと、事件を早く示談で解決して、願わくは古川判事の妻が逮捕されずに事件が早く円満に落着するということを期待してやった可能性が強いんですよ。捜査つぶしとまで言わないけれども、そういう意味ですよ。だから、警察の方が捜査つぶしと受け取ったこともやむを得ないと報告書で言っているじゃないですか。そんなことを次席検事がやっていいなんてことは絶対ないですよ。
 警察庁長官にお越しいただいているので、配付した資料を見ながら伺わせていただきますが、「警察官による犯歴データ漏洩事件、捜査情報漏洩事件等いわゆる情報漏洩事案の発生・検挙状況及び処分の状況(過去三年間)」を警察庁からいただきました。この表のとおり事実は間違いございませんね。
#175
○政府参考人(田中節夫君) 今、委員御指摘の資料は「警察官による犯歴データ漏洩事件、捜査情報漏洩事件等いわゆる情報漏洩事案の発生・検挙状況及び処分の状況(過去三年間)」と題するものでございまして、平成十二年十月二十九日現在のものではございますが、間違いございません。
#176
○橋本敦君 検察は秋霜烈日、厳格な捜査を遂げると言いますが、警察においても捜査というのはまさに治安確保のために非常に重大な問題であり、捜査情報の漏えいなんということはよほどのことでない限り許されない。そういう重大な問題だということは当たり前ですよ。
 だから、この表を見てください。いいですか、この表を見ていきますと、一番上では懲戒免職。今度は懲戒免職にもなっていないですよ。諭旨免職、これも免職ですよ。戒告という軽い処分がこれ一件あるだけ。その次は、これは退職後逮捕されて懲役二年、裁判所は判決で懲役二年の判決していますよ。諭旨免職。懲戒免職、懲戒免職、それで裁判を全部受けて懲役三年、懲役一年、裁判所に起訴されていますよ。それから続いて、懲戒免職、それでも懲役二年の判決を受けていますね。その次は減給という一件がある。さっきの戒告と減給とたった二件。次は懲戒免職、免職だけじゃなくて、起訴されて、裁判を受けて懲役二年六カ月のこれは実刑ですよ。その次は減給ということであります。これは減給ということでありますが、これで三つ。その次は懲戒免職、これも裁判を受けて起訴されていますよね。
 だから、ここにある十二件のうち、今言った三件を除いて、全部免職、諭旨免職、それから起訴されているんですよ。だから、検察官は、この事件の送致を受けて厳粛にしっかり受けとめて、警察庁は免職処分、懲戒処分をするし、それから検察庁は起訴ということに踏み切って公判請求をして厳格にやっているんですよ。
 警察官にはこういうような捜査情報の漏えいに対しては厳しくやっているのに、検察庁の大幹部である次席検事の、今、私が指摘したようなこの問題について、処分は停職六カ月にとどまり、免職処分にしないばかりか、国公法百条の秘密漏えいで起訴するということをしないという検察の態度は、まさにこれは身内をかばう身内意識の問題として厳しく批判されますよ。
 一つの例をお話ししましょう。三月十日付の毎日新聞で元最高検検事の土本武司帝京大学教授はどう言っていますか。「不起訴処分の最大の理由は国家公務員法(守秘義務)違反を認定しなかったことだが、その理由はいずれも疑問を持たざるを得ない。」と。私が指摘したとおりですよ。疑問を持たざるを得ない。「強制捜査の迫った事件について「捜査の円滑な遂行」などのため、送検先の次席検事が、親族に捜査情報を漏えいしたのに立件しないのはどう考えてもおかしい。」と。これは国民の声ですよ。これで果たして検察の厳正が守られるのか。この事件を通じて国民の信頼は回復できるのか。
 大臣がさっきおっしゃった、国民の信頼を回復するためにこの事件はまことに遺憾であって深く反省するという態度をとるなら、検察庁はまさに機密漏えい事件としてこの次席検事を徹底的に調べて、そしてその意図が円満に示談ができたらいいとかなんとかいうことじゃない、重大な捜査機密を次席検事が漏えいする、警察も知らない間に古川判事に漏えいする、その結果として捜査妨害の事実も行われてきた。そういう重大な結果に及んでいるときに、警察官が捜査機密を漏えいした事件と比べて余りにも軽いじゃないですか。こんな不均衡は許されると思わない、こういうことをやっていればまさに身内意識ということにならざるを得ない、これで国民の信頼が回復されると思わない、私はこう思います。
 この点について、法務大臣、私の今までの指摘を踏まえてどうお考えか、もう一遍答えてください。私は断固としてこれは起訴すべきだと思いますよ。
#177
○国務大臣(高村正彦君) 国公法の秘密漏えいの罪の構成要件ですが、正当な理由なくしてという、文字には書いてありませんが、その正当な理由なくしてということが当然の解釈としてなされているわけであります。それで、では正当な理由というのはどういうことかといえば、正当な事件処理のために告知することはあり得るということは、先ほどから私、ほかの委員の質問にお答えしたところでございます。
 私は、少なくとも山下前次席検事の主観的意識とすれば、正当な理由ということがあったんだろうと思います。まさに委員今御指摘のように、客観的に正当だったかどうか、結果として何をもたらしたか、こういうことと、もう一つは、山下前次席検事の主観的意図、これは構成要件として正当な理由がない限りということであるとすると、その主観的意図がないということだと、これは故意を欠くということに理屈の上で、刑法上の理論からいってなるのではないか、私としてはそう思いましたので、今の私の言ったような理屈をすぐ国民の皆さんが納得するかどうか、これはまた別問題でありますけれども、そういうことはこれから刑法学者等々によって、私たちは、事実は、委員も今指摘されたように山下次席検事についても非常に厳しい点をも出しているわけでありますから、そういったことで、これからしかるべき方々の御批判にさらされて考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
#178
○橋本敦君 今の大臣の答弁からしても、確信を持って正当な理由があって不起訴が当然だという、そういう確信のある答弁じゃないんですよ。
 正当な理由というのは本人の意図がどうであったかということで今おっしゃいました、本人の意図がどうであったかと。そうでしょう。本人の意図は、事件つぶしをするものじゃない、こう言っていると。そうですね。そして、早く円満に解決すればいいということで言ったと、こう言っていますよ。そのこと自体がいかにも軽率で、結果としてそういう意図と反して、事件つぶしとまでは言わないが捜査を困難にする状況をつくり出しているという結果が出ているんですから。
 その結果の責任をきっちり明確にしなきゃならぬのと、それから正当な理由なくして秘密漏えいしてはいけませんから、正当な理由というのはよっぽど厳格に法要件として解釈するのは当たり前ですよ。正当な理由をいいかげんに、本人がこう思ったからということで認容するようなことではだめで、その正当な理由がなかったということを客観的に私は論証してきたわけですよ。そんな甘い判断でこれは許されませんよ。
 仮にこの問題がこれから批判を受けるとなれば、私は国民は大きく批判をすると思う。検察審査会への申し立てがあると思うんです。そして、今後の問題として、この問題は検察審査会に移るかもしれませんが、検察審査会でどう判断されるか。
 再発防止の一環として検察審査会の議決に一定の拘束力を持たせるという、そういう大臣の所信表明もありました。私はこれは大事だと思いますよ。だから、そういうことで、検察審査会の今度の改善について、検察審査会の国民が入った議決に一定の拘束力を持たせるということはこの事件にとってますます大事だと思う。
 国民が入ったら、あなたのような答弁そのままで納得するかどうか保証はありません。国民はもっと厳しく判断して、起訴すべきだという判断をする可能性があります。そういう場合に検察審査会が一定の拘束力を議決について持つという方向に改善するというのは私は一定の方向だと思いますが、そういう意味で、検察審査会の今後のあり方について最後にもう一度重ねて、この所信に書いてありますが、具体的に意見をお聞きして、質問を終わります。
#179
○国務大臣(高村正彦君) 検察審査会の話の前に私一言申し上げておきたいのは、法務大臣も自信を持ってこの起訴、不起訴の処分を決めたわけではないとおっしゃいますが、私が不起訴にしたわけではなくて検察においてしたわけで、私はそれなりに了として、指揮権を発動して起訴しろと言う気はなかったと、こういうことでございます。
 そして、国民がどう感じるかというと、まさに先生おっしゃったように、客観的に非常に悪い結果を招いているわけでありますから、私はすとんと腑に落ちるとは思っておりません。思っておりませんが、刑法理論からいって、もし正当な理由というのが構成要件である、こう認められるのであれば、それについての故意も必要であろうと。その故意というのはまさに山下前次席の主観的理由でありますから、そこを見た処分が刑法理論上間違いだと検察に対して決めつけるつもりは毛頭ない、こういうことを申し上げているわけであります。
 それから、検察審査会の話でありますが、私は、検察審査会というのは検察に対する外部チェックの一つの方法として法的拘束力を、全部についてじゃありませんけれども、例えば起訴相当となったような場合にはそれは必要ではないかなと、現時点で私限りでありますが、そういうふうに思っております。
 ただ、そうなった場合に、公判維持を検察官に当たらせるのが適当なのかどうかとか、いろいろその付随的なことも考えていかなければいけない話だと、そういう意味で司法制度改革審議会で御論議いただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。
#180
○橋本敦君 委員長、終わりますが、一言だけ言わせてください。
 法務大臣のそういう御意見も、構成要件理論解釈が出ると思ったから私は刑法学者の見解もあらかじめ示して質問をしたということを理解しておいてください。私の独断ではありません。
 以上で終わります。
#181
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 最後になされた脅迫行為は十二月二十八日午前十時二十分ということでよろしいですか。
#182
○政府参考人(古田佑紀君) 電話による脅迫行為は御指摘の日時だったと記憶しております。
#183
○福島瑞穂君 山下次席検事が古川判事に面談をしたのは十二月二十八日の十一時過ぎと最高裁の報告書でなっておりますが、それでよろしいですね。
#184
○政府参考人(古田佑紀君) おおむね十一時過ぎであるということでございます。
#185
○福島瑞穂君 つまり、十二月二十八日十一時以降の脅迫は全くないわけです。先ほど橋本委員の方から、プリペイド式携帯電話三台が廃棄されて重要な証拠がないという指摘がありました。それと同じように、山下次席検事が古川判事に面談をした以降、脅迫行為がぴたっとその時点からとまっているわけです。これはどういうことかというと、もう現行犯逮捕はできないということです。御存じ威力業務妨害罪やさまざまなものは電話をしているところを見て現行犯逮捕で発見されるということもあるわけです。つまり、山下次席検事が古川判事に面談をした結果、見事にその携帯電話もなくなり、それから現行犯逮捕も全く不可能になったということです。
 一番それで私も違和感を感ずるのは、なぜこれが守秘義務違反に問われないのかということです。報告書の九ページに、「捜査の目的に違反して告知したとは認められないので、」「守秘義務違反は認められない。」という旨の記述があります。しかし、正当理由というのは違法性阻却事由か構成要件阻却事由であって、主観的違法要素ではありません。目的がなければ守秘義務違反にならないということはあり得ない。つまり、客観的に守秘義務違反をしたかどうかということが問題であって、違法性か構成要件阻却をするということでなければ、それは正当な行為とは認められないわけです。主観的違法要素ではありませんから、違法性阻却事由ともなりません。
 したがって、本人が、相手方がきちっと漏らさないだろう、あるいは適切に行為をしてくれるだろう、あるいはちゃんと言ったとおり示談をしてくれるだろうといったところで、それが守られるか守られないかに関係なく、情報を漏えいしたことそのものが守秘義務違反であるわけです。
 この山下次席検事は丁寧にもプリペイド式携帯電話の番号も全部言っております。こういうことを言えば、それが重要な証拠だと思わない人間はいないわけですから、結局、彼は、主観的な意図がどうであったかは全く関係なく、明らかな捜査妨害以外の何物でもないことをしたわけです。これがなぜ守秘義務違反にならないのかというふうに思います。自分が相手が適切にやってくれると思ったから守秘義務違反にならないということがこれから通用するというのでしたら、本当におかしいというふうに思います。
 次に、担当の検察官が漏えいの事実を知ったのはいつですか。
#186
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま正確に記憶しておりませんが、本年の一月の初めであったように思います。
#187
○福島瑞穂君 警察官、そして担当の検察官の頭を越えて重要な捜査情報を被疑者、あるいは容疑者と言ってもいいかもしれませんが、その人に漏えいするというのは言語道断で信じられません。担当の検察官が全く知らないわけですよね。
 次にお聞きいたします。
 山下次席検事はどういう事情からこの容疑事実を知ったんですか。
#188
○政府参考人(古田佑紀君) ちょっと聞き落としたのかもしれませんけれども、こういう事件で捜査が行われているということを知った理由ということでございますか。
#189
○福島瑞穂君 はい。
#190
○政府参考人(古田佑紀君) これは、十二月の二十六日にこの事件を捜査をしている西署の捜査担当者がこの種の事件の相談窓口になっている検事のところに相談に参りまして、その検事からの報告によって知ったものです。
#191
○福島瑞穂君 地検の刑事部長が山下次席検事に容疑事実を報告したというふうに私も聞いております。なぜ刑事部長は山下次席検事に情報を漏らしたんですか。
#192
○政府参考人(古田佑紀君) 検察庁の組織から申し上げますと、この窓口担当の検事は刑事部に属しておりますからまず刑事部長に報告するわけです。そして、その場合に、刑事部長がみずから次席のところにさらに必要を認めて報告に行くか、あるいはその検事を報告に行かせるか、それは両様の場合があるわけで、このケースでは刑事部長が年末で非常に多忙であったために、その窓口担当の検事を次席のところに報告に行かせたというふうに承知しております。
#193
○福島瑞穂君 刑事部長はなぜ山下次席検事にこういう情報を漏らすことができるんでしょうか。
#194
○政府参考人(古田佑紀君) 御存じのとおり、刑事部長は次席検事の指揮監督下にあるものでございます。したがいまして、次席に対して事件を自分の判断で報告すべきものは報告するというのは、これは当然のことでございます。
#195
○福島瑞穂君 ストーカーの相談窓口というのはあるんですか。
#196
○政府参考人(古田佑紀君) 福岡地検におきましては、ストーカーの相談窓口となる検事を指定していたと承知しております。
#197
○福島瑞穂君 先ほど江田委員の質問に対する答えで、十二月二十七日に主任の検事が決まったというふうに聞いております。つまり、それまでは若手の女性検事が相談窓口と言うか担当と言うかは別にして担当をしていて、二十七日に担当がかわったということでよろしいですか。
#198
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま申し上げましたように、その検事は警察から相談があったときにまず第一次的にそこで受け付けるということを職務としているわけです。
 検察庁におきまして主任検事と申しますのは、これはその事件ごとに別途指定される者でございます。
#199
○福島瑞穂君 十二月二十六日、西署が福岡地検と捜査方針を協議し、担当の女性検事が脅迫容疑での立件を指示し、年明けの強制捜査、逮捕、家宅捜索の方針を確認という事実はありますか。
#200
○政府参考人(古田佑紀君) 二十六日だったと記憶しておりますけれども、年明け以降に脅迫罪で立件、着手という方向で捜査を進めてもらいたいという連絡をその窓口検事からしております。
#201
○福島瑞穂君 極めて重要だと思います。
 つまり、初めは女性の、窓口と言うか担当と言うかわかりませんが、若い女性検事が担当していて、二十六日の日に脅迫容疑で立件をする、年明けに強制捜査をするという方針を警察と福岡地検のところで出したわけです。ところが、二十七日に被害者の女性が告訴状を提出した。そうすると、それを地検の刑事部長は見るわけですから、そして山下次席検事に話をする。そうすると、山下次席検事は検事正やほかの人たちと相談をして、二十八日の日に裁判官に言うわけです。そして、なぜか二十七日の日に男性の検事にかわっているわけですね。
 つまり、二十六日の日に来年はこういう方針で行きましょうということになって、それで二十七日に男性の検事にかわる。だから、すぐに逮捕とか家宅捜索とならない。その重要なときに、二十六、二十七、二十八の三日間の間に大転換が行われているわけです。そのきっかけとなったのが検察庁の動き、とりわけ山下次席検事の動きです。これはもう本当に捜査方針を検察庁がねじ曲げたというふうに言えるんじゃないですか。
 ところで、記者会見で山下次席検事は私の単独ですということを繰り返し言いました。約四十分間の会見で漏えいは独断であることを十回も強調した。しかし、事前に実は彼は相談を全部しております。渡部地検検事正と佐竹福岡高検次席検事に相談をしている、それから豊嶋福岡高検検事長とも話をしている。どんな話をしているんですか。
#202
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまのお尋ねにお答えする前に、警察に対する指示のことについて若干申し上げますと、年明け以降に脅迫で着手と、その指示は山下次席も了解しております。しかし、それだけではなくて、着手する前にもう一度改めて証拠を検討するようにという、こういう指示もあわせてしているわけですが、その後者の指示が、ちょっと年末の多忙とかいろんな事情がありまして、これは言いわけにはならないんですけれども、伝わっていなかったと。それで、その主任検事が指定されて、証拠を検討して補充捜査がかなり必要だという認識がはっきりした、そういう事情でございます。
 それで、ただいまのお尋ねの点について申し上げますと、まず渡部検事正につきましては、ストーカー事件というのはエスカレートするおそれがある、これは年末年始を控えてやめさせなければならない、自分が古川判事に話をして措置を、やめさせようかと考えていると、そういうふうな相談をしたわけで、渡部検事正はこれに同意をしたわけです。ただ、そのときには山下次席はそれ以上詳しい話はしておりません。また、渡部検事正の方は警察に当然相談をしてからやるものと考えていた、そういう状況でございます。
 それから、高検に対しましては、古川判事に対する告知につきましては、これはその告知をした後に、古川判事に情報を告知して示談を勧めるように話をした、そういうことで弁護士を紹介したということを報告しているということでございます。
#203
○福島瑞穂君 山下次席検事が判事に事実、捜査情報を漏えいしたためにプリペイド式携帯電話はなくなっているし、それから現行犯逮捕もできない状態になった。しかも、年末に、来年強制捜査に踏み切るという方針をきちっと立てながら、その間に、担当の検察官は一切知らないまま、一切知らされないまま検察庁の上部の方で話をつけようとしているわけじゃないですか。それはやっぱり事件のつぶしですよ。だって、強制捜査に着手するという立件をしているわけじゃないですか。方針を決めておきながら、なぜそこで話をするのか。
 もし山下次席検事が守秘義務違反であれば、上司だってそれは同じですよ。裁判所も、もちろん報告書を見て、いろいろ疑問な点もあります。ただ、分限裁判には上司たちも全部かかるわけです。ところが、検察庁の場合は山下次席検事だけだと。これはおかしいというふうに思います。だって、みんな事前に秘密の漏えいについて了解をし、承認をし、全部知っているわけですよ。担当の検察官も知らないことも、担当の警察官も知らないことも全部知っている。山下次席検事と全く同罪です。にもかかわらず、なぜ山下検事だけなのか。しかも、記者会見でなぜ彼は自分の独断でやったと十回も言うのか。
 この報告書の中には、二ページ、「独り山下次席個人の問題ではなく、検察及び司法全体の在り方が問われており、本件が永年にわたって築きあげてきた検察及び司法の公平性への信頼を深く傷つけたことは、極めて遺憾である。」と書いてあります。しかし、これに対する明確な回答はこの報告書の中にはありません。
 機密費の問題などもそうですが、ひとり個人の問題に終始をして、ほかの全く同罪の人については厳しく指弾されていない点がやはり非常に問題だというふうに思います。
 警察の方にお聞きしますが、先ほど江田委員の方からもあったんですが、パソコンのディスクのデータなんですが、これは警察でうっかり消えちゃったんじゃないかという説もあるんですが、これはいかがでしょうか。
#204
○政府参考人(田中節夫君) 先ほど江田委員の御質問にお答えいたしましたけれども、今、委員御指摘のようなパソコンのデータにつきましては消去された事実は確認されない、要するにデータは残っていたということでございます。
 一部報道でそういう委員御指摘のようなことがございましたのは、パソコンのデータを確認する際には、委員も御承知と思いますけれども、複数の手法を順次試みていくのが通例でございます。その過程で、手法によってはデータが確認できない、そういうこともございますので、それが誤ってそういうふうに伝えられていったのではないかというふうに思います。
#205
○福島瑞穂君 先ほど同罪ではないかという点で、ちょっと一つだけ補足します。
 確かに「上司の責任」という事項が報告書の中にはあります。しかし、事前に了解をしていたこと、それからその捜査情報を流すということについて知っていたこと、もし彼が私個人の責任で独断でやりましたという記者会見をやったのであれば、上司としては、そうではない、これは自分たちが了解してこういう形でやっていたのだということをきちっと言うべきではないかというふうに私は思います。
 次に、裁判所の方に一つお聞きをいたします。
 私は、今回の件でちょっと驚いたのは、簡裁、地裁、高裁、最高裁と情報がばっと流れていっている。最高裁にはコピーは来ていないということのようですが、情報がもう瞬時に伝わっているということに非常に驚きました。これについて問題はないんでしょうか。
#206
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 本件におきまして、古川判事の妻について令状請求があったという事実は、これは裁判所の関係者の事件でございますので、それと深い関係にあるような人が事件を、同一の事件でまた令状請求などもある可能性があるわけでございます。その場合に、そういう関係のある人が担当するということになると、これは裁判の公正にかかわってくる。本件では古川氏と縁戚関係にある判事も地裁におったわけでございますが、そういうことで、司法行政当局として、部門の者としてそういう令状請求があったという事実を把握しておかないと後の裁判で公正さを保っていくことができない。司法行政部門というのは裁判の公正さを含めて裁判をサポートしていく役割でございますので、そういう情報を把握する必要がある。高裁はそういう司法行政を適正に進めていくために地裁を指導監督する役割を持っておりますし、最高裁もそういう点では同じでございます。
 そういう点で、そういう情報が報告されたということ自体、これは情報の範囲とか方法については報告書に指摘いたしましたような問題点はございますけれども、最小限の情報でありましたならば、そういう情報が報告されるということはこれは許される、むしろ必要なことであるというふうに考えております。
#207
○福島瑞穂君 ほかのケース、一年に何件なんというのはなかなか言いにくいかもしれませんが、最高裁は司法行政上必要があると考えて、例えば現場の裁判官、職員でそういうふうに情報を入手するというのはこういう形で、同じ事案はもちろんないと思いますが、どれぐらいあるんでしょうか。
#208
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お尋ねが非常に広い範囲のことで、情報の種類を限定いたしませんと何件ということはちょっとお答えいたしかねるかなと存じます。
#209
○福島瑞穂君 そうしたら、犯罪に関係するような事案に関して裁判官本人あるいは家族からこういう形で情報が上がってくるということはあるのでしょうか。
#210
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) そういうお尋ねでございましたら、まさに本件のような事例というのは極めて特異な事例でございまして、私の記憶する限り、ほかに例は、これと同様のものというのはないというふうに思います。
#211
○福島瑞穂君 答えにくいかもしれませんが、ちょっと抽象的な質問で済みませんが、最高裁としては割とこういう地裁、高裁、最高裁を通じてこういう裁判官の個人情報を入手するというのはよくやっていらっしゃるんでしょうか。
#212
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 裁判官に関する個人情報といいますのはいろいろあるかと思いますが、人事上どうしても必要な情報というのはございます。これは異動、配置ということがございますので、例えば家族関係の状況、本人の健康の状況、これらは個人情報でございますが、こういった情報は当然必要でございます。
 そういう情報はどうやって入手するかといいますと、これは本人にそういう情報を申告してもらう。具体的には、毎年、第二カードというものを書いてもらいまして、そういう事項を報告してもらっておりまして、それが基本でございます。それは一回だけではなくて、例えばいろいろ事情が変わったりして、介護を要する家族が出てきたとか、そういう異動に関係するような情報が出てまいりますとその都度報告があるというようなことはございますが、そういった実情でございます。
#213
○福島瑞穂君 次に、判検交流についてお聞きをしたいと思います。
 私は、この事件の背後には、やはり裁判所と検察庁が非常に身内意識を持ちやすいというところ、構造的な問題がその根っこにあるというふうに思っています。
 百四十人裁判所から出向しておりまして、法務省に対しては百人というデータもいただいております。
 午前中の石渡委員の質問に法務大臣は前向きな答弁をされましたけれども、この判検交流について大臣としてどういうふうに考えられるか、前向きにお願いします。
#214
○国務大臣(高村正彦君) 判検交流自体が私はそんなに問題があると思っていないんです。
 ただ、今、法曹三者、法曹三者だけじゃなくても、人事交流というのはお互いの立場をよく知るということで悪いことではない、こう思っているんですが、人事交流が判事と検事、特に判事から検事へということに非常に偏っているという点で私は問題があると。判事と検事が交流すること自体が問題なんじゃなくて、ほかが余りなくてその部分だけが非常に多いということに問題がある、こういうふうな考え方を持っております。
 法曹というのは、それぞれの方が、今まで弁護士をやっていた方が裁判官をやってもきっちりできるし、検事をやってもきっちりその立場でやるし、裁判官だった人が検事になっても、そういうふうな理念に立脚していると私は思っておりますので、判検交流そのものが悪いんではなくて、判検交流に偏った人事交流が問題ありと。そういうことを思っておりますので、こういった点についても今司法制度改革審議会の中でもいろいろ御検討いただいているということでありますから、その結果を尊重してやってまいりたい、こういうふうに思っております。
#215
○福島瑞穂君 ただ、百四十人裁判官が出向しています。よくあるのは、やはり訟務検事、裁判官が法務省に出向して国の代理人をやる、それからその裁判官がもとの裁判所に戻って行政裁判をやったりいろんな事件の裁判官となって審理をするという、そういう問題があります。
 百四十人という、裁判官は数が少ないですから、百四十人もの裁判官がこういうふうな形で出ていくということに関して、やっぱりこれは早急に改善をしなければ。高村法務大臣は偏っているというふうにおっしゃいましたけれども、これは私自身は二つしかないと思うんですね。本当にこの百四十というのをほかのところにもバランスよくいろんなところからやるようにするようにするか、あるいはそれが今の時点で難しければ判検交流そのものをやはり批判の強いところですからやめるしかないというふうに思っています。
 ところで、法務省の本省の「課長クラス以上の職員一覧表」というものをいただいて検討しました。官房長や課長、参事官といったさまざまなポストで五十九あると思うんですが、そのうち検察官が占めているのは四十三、充て検と言われるそれ以外の人たちは十六です。つまり、これを見る限り、法務省の中で検察官以外のプロパーの人たちが課長やそういうポストに非常につきづらい。特に刑事局長のもとでは課長などは一人もいないわけですね、民事局も。
 ですから、私は、なぜ裁判官を法務省が欲しがるのかといいましたら、民事行政などでやっぱり裁判官のノウハウが欲しいんだろうと思うんですね。でも、むしろそれは裁判所から引っ張ってきて持ってくるのではなく、法務省のプロパーの人たちを育成するとか、そういう形で解決していただくのがやはり王道だと思いますが、いかがでしょうか。
#216
○国務大臣(高村正彦君) プロパーのいい人材を育てるということももちろん大切でありますし、それが主流になることはもちろんでありますが、また各方面からしかるべきいい人材を供給するということも私はそれはそれで意味があるのではないか、こういうふうに思っております。
 法曹三者がそれぞれ垣根を高くしてそれぞれの中でやるということの方がやはり独善的になりやすいということもあるわけで、例えば今、判事の供給源を判事補だけでなくていろんな幅広いところからやろう、こういうようなこともある。まあ法務省の幹部職員と判事とは全く同列に論じられるとは私思っておりません。思っておりませんが、それぞれのところがそれぞれ垣根を高くしてやる、そのことが独善に陥りやすいということと、いろんな観点があるから幅広く考えていかなければいけないのではないか、こう思います。
 委員のお考えも一つの参考とさせていただきます。
#217
○福島瑞穂君 私は、幅広く人材を広げることが数の上でなかなか難しければ、今の時点では批判の強い判検交流を一たんやめてみることも、首をかしげられましたが、一つの方法だというふうに思っております。
 ぜひ今後、毎年この判検交流の実態については数字が出ますので、早急に改善がなされるように要望して、私の質問を終わります。
#218
○委員長(日笠勝之君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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