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2001/03/22 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第3号
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2001/03/22 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第3号

#1
第151回国会 法務委員会 第3号
平成十三年三月二十二日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
                福島 瑞穂君
    委 員
                岩崎 純三君
                大野つや子君
                岡野  裕君
                佐々木知子君
                小川 敏夫君
                竹村 泰子君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
   国務大臣
       法務大臣     高村 正彦君
   副大臣
       法務副大臣    長勢 甚遠君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  大野つや子君
       外務大臣政務官  桜田 義孝君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中山 隆夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       人事院事務総局
       人材局審議官   潮  明夫君
       警察庁長官官房
       国際部長     島田 尚武君
       警察庁生活安全
       局長       黒澤 正和君
       警察庁刑事局長  五十嵐忠行君
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房司
       法法制部長    房村 精一君
       法務省民事局長  山崎  潮君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       法務省入国管理
       局長       中尾  巧君
       公安調査庁長官  木藤 繁夫君
       外務大臣官房審
       議官       天野 万利君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
〇平成十三年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
 送付)、平成十三年度特別会計予算(内閣提出
 、衆議院送付)、平成十三年度政府関係機関予
 算(内閣提出、衆議院送付)について
 (裁判所所管及び法務省所管)
○法務及び司法行政等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
〇裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
〇下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 去る十九日、予算委員会から、本日三月二十二日の一日間、平成十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査の委嘱がありました。
 本件を議題といたします。
    ─────────────
#3
○委員長(日笠勝之君) この際、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 委嘱審査のため、本日の委員会に警察庁刑事局長五十嵐忠行君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省入国管理局長中尾巧君及び公安調査庁長官木藤繁夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(日笠勝之君) 平成十三年度裁判所及び法務省関係予算につきましては、去る十五日に説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○佐々木知子君 おはようございます。自民党の佐々木知子でございます。
 午前中は治安についてお伺いいたしたいと思います。
 これは今月十八日の新聞各紙に大きく載っていることでどなたも御承知のことかと思いますけれども、内閣府が十七日に発表いたしました社会意識に関する世論調査によりますと、日本の現状について、治安や教育が悪い方向に向かっていると感じている人が一九九八年の前回調査より大幅にふえたということが出ております。日本を誇りに思うことでも、前回トップだった治安のよさが四番目に転落、内閣府は少年犯罪を含め最近の凶悪犯罪の影響ではないかと見ているそうでございます。
 悪い方向に向かっている分野と聞いたところでは、これは複数回答ですけれども、トップは景気、四六・九%ですけれども、前回よりこれは一七・一%減少しております。ところが、治安につきましては二六・六%、ちなみに教育は二六・二%なんですけれども、それぞれ前回時に比べますと七・八%、九・一%の大幅増になっているという現状でございます。
 日本の国や国民について誇りに思うこと、これも複数回答ですけれども、治安のよさは三〇・〇%で前回時より八・七ポイント減、前はトップだったんですけれども。今回のトップは歴史と伝統、そして二番目が美しい自然、三番目が文化と芸術、いずれもすばらしいことではございますけれども、いかんせん治安のよさがトップから転落したということについて私は非常な問題ではないかというふうに考えております。
 三年前というのは、御存じのようにサリン事件ももう起きた後でございました。それから、神戸の少年A事件に代表されるように、少年の凶悪化ということも随分指摘されたときでございました。そのときですら治安のよさというのは日本の中でよいことのトップに挙げられておりましたのに、それから三年後、今やそれはもう四番目になっている。そして、治安が悪化していると言う人が圧倒的にふえている。これは私はもう日本国としてはゆゆしき問題だろうというふうに思っております。
 まず、警察庁にお伺いしたいんですけれども、実際に治安は悪化しているのかどうか。犯罪の発生件数の推移などについてまず御指摘くださいませ。
#7
○政府参考人(五十嵐忠行君) 戦後の警察における刑法犯の認知件数でございますけれども、かつては百二十万件から百六十万件の間を推移してきたわけでありますけれども、昭和四十八年に約百十九万件と最低となった後は、多少の変動はございますが、ほぼ一貫して増加傾向にありまして、平成十年に二百万件を超え、平成十二年には窃盗犯や粗暴犯の認知件数が大幅に増加したことにより過去最高の約二百四十四万件となっている状況にございます。
#8
○佐々木知子君 確かに発生件数がふえているということはございますでしょうが、私が感じているところでは、どうも検挙率が随分落ちているというふうに感じております。
 私がかつて刑事政策を習ったときには、日本の検挙率というのは六九%あるいは七〇%、これは交通事犯を含めての検挙率でございますが、もう世界断トツのトップだと、これは非常に誇れることだというふうに習った記憶がございます。それからずっと落ちてきているという感じがあるんですけれども、実際に検挙率の推移というのはどのようなものでございましょうか。
#9
○政府参考人(五十嵐忠行君) 全刑法犯の検挙率でございますけれども、かつては五〇%台から六〇%台でしたが、平成元年に初めて五〇%を割り込みまして、平成十一年には三三・八%、十二年には二三・六%ということで、非常に下がってきております。
 これを殺人、強盗、放火等のいわゆる重要犯罪について見ますと、平成元年に比べ昨年の認知件数は約二・一倍に増加しております。これに対しまして検挙人員は約一・七倍、検挙件数も約一・六倍と増加しているわけでございますけれども、認知件数の伸びが非常に大きいために検挙率は相対的に低下し、平成元年には八〇・三%であったものが平成十二年には六〇・四%となっております。
 殺人と強盗について見てみますと、殺人は、平成元年と十二年を比べてみますと、認知件数、検挙人員、検挙件数、いずれも約五%程度の増加でありまして、その検挙率も平成元年が九五・九%に対しまして平成十二年が九五%ということで、それほど大きな変化はございません。
 これに対して強盗について見ますと、同じく平成元年と十二年で、認知件数は約三・三倍に増加しておりまして、検挙人員も約二・六倍、検挙件数は約二・四倍とそれぞれ増加しているのでございますが、これも認知の伸びが大きいために相対的に検挙率は低下いたしまして、七五・九%から五六・九%という状況になっております。
 犯罪の増加に検挙が追いつかず検挙率が低下する、こういった傾向はほかの罪種についても見られるところでありますが、このような検挙率の低下の要因といたしましては、重要犯罪などの認知件数の増加によりまして初動捜査への捜査力の投入が非常に増大しているということ、あるいは重要犯罪など新たに発生した事件の早期検挙にどうしても重点を置かざるを得ない状況になっておりまして、認知あるいは検挙の関係で八割ないし九割近くを占めております窃盗等で検挙した被疑者の余罪の解明率がなかなかそこまで伸びていかないということがございます。また、外国人等の組織的犯罪が増加して捜査が困難化している、こういったことがあると考えております。
#10
○佐々木知子君 検挙率が落ちている、殊に重大犯罪で落ちていると。国民はそれによって非常に治安に対する不安を感じるというのは非常に納得できることで、その原因についてもお答えいただきましたけれども、犯罪はふえている、そして外国人の組織犯罪がふえている、犯罪も非常にまた巧妙化しているだろうし、社会のお互いの意識というのも都市化に伴って薄れてまいりますし、いろんな意味で検挙も難しくなるだろうと思うわけですけれども、これについてどういうふうに対処していけばいいと警察庁の方ではお考えでしょうか。
#11
○政府参考人(五十嵐忠行君) 今申し上げましたように、非常に認知件数がふえていると。特に重要犯罪については、先ほど申し上げましたように検挙人員もあるいは検挙件数も、それなりに頑張っているわけですけれども、要するに、それ以外の例えば非侵入盗、万引きとか自販機荒らしとか、あるいは自転車盗とかこういった乗り物盗、こういうものについてはなかなかそこまで手が回らない、どうしても一般の国民の方が不安を感じるところに先に捜査が行ってしまうという状況にございます。
 それで、いろんな対策なんですが、警察としては限られた警察力をいかに効率的に使うかということが非常に大きな課題でございます。その場合に、非常に国民が不安を感じる犯罪とそれほどでもない犯罪、これを金太郎あめみたいに一律にやるわけにいきませんので、どうしても重点的にある程度はやらざるを得ないということがございます。
 それにしましても、やはり捜査力のアップということは考えなきゃいかぬわけでございまして、科学的な装備資機材、こういうものを充実することによって科学捜査力をアップするとか、あるいは捜査員の練度、能力を教育訓練によって上げて、一人一人のマンパワーをアップさせるというようなことによって捜査力を充実強化させるということもございます。
 それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、限られた捜査力を効率的に運用する、こういうこと等いろいろ考えまして、できる限り精いっぱい頑張っていきたい、このように考えております。
#12
○佐々木知子君 ぜひ人的、物的な施策を拡充させることによって治安の維持に努めていただきたいと切に要望しておきます。
 次に、法務大臣に対しまして、この社会意識に対する世論調査の結果をどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。
#13
○国務大臣(高村正彦君) 最近の犯罪情勢でありますが、刑法犯の認知件数が増加傾向にあるわけでありまして、殺人、強盗等の凶悪犯罪が増加するとともに、薬物や銃器の大量密輸入事件などの組織的犯罪も多発している反面、その検挙率が低下をしております。我が国の治安が悪化しつつあるのではないかと懸念される状況にあって国民の皆様にも社会秩序に対する不安が広まりつつあるわけでありまして、ゆゆしき事態であると深刻に受けとめているわけであります。
 治安を確保し法秩序を維持していくことは国民が安心して暮らせる社会を築く上で不可欠の事柄であり、法務行政に課せられている基本的な使命でありますから、その責務を果たすべく、いわゆる組織的犯罪対策三法等の各種法令を整備し、その適正かつ効果的な運用を図るとともに、検察官の増員など体制の整備を図っているところでありますが、今後とも我が国の治安維持という法務行政上の重大な責務を果たすため、引き続き必要な努力を続けてまいりたいと考えております。
#14
○佐々木知子君 ありがとうございます。
 今、お答えの中で組織的犯罪対策三法ということが出てまいりましたけれども、これは施行されてある程度たっているわけですが、この運用状況についてお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま御指摘の組織犯罪対策三法のうち、組織的犯罪処罰法と通信傍受法につきまして御説明申し上げます。
 組織的犯罪処罰法の運用状況につきましては、昨年施行されて以来、いわゆる加重処罰規定、組織的な犯罪に対する処罰規定でございますが、これの適用例としては七件ございます。それから、不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為の処罰規定、これを適用した例が一件ございます。さらに、いわゆるマネーロンダリングの処罰規定を適用した事例が三件ございます。
 次に、傍受法につきましては、これは慎重にいろんな要件を検討した結果、昨年は傍受令状の請求等をした事例はなく、したがって傍受等を実施した例もないというふうに承知しております。ただ、いずれにいたしましても、通信傍受は有効な手段であるということは間違いないわけでございますので、今後その適正な活用に努めてまいりたいと考えております。
#16
○佐々木知子君 大臣の所信表明の中に、昨年十二月、日本が署名を行った国際組織犯罪条約についてということが出てまいりますけれども、その内容については恐らく外務省の管轄なんでしょうけれども、国内法の整備に当たっては法務省が取り組むことになろうと。
 法務省の取り組み、今どういうふうに取り組んでいるのか、問題点などもございましょうけれども、そこについてお伺いいたします。
#17
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の組織犯罪対策条約は、この種のいろんな犯罪に対応するために非常に重要な条約であると認識しておりまして、法務省といたしましても、それをできるだけ早く批准ができるように国内法制のいろんな検討をすることを考えており、現在、外務当局とも、その条約の内容、それと現在国内法制で足りない部分は何かというふうないろんな検討作業をしているという状況でございます。
#18
○佐々木知子君 ちょっとどういうところが問題点になるか、幾つかお教え願えませんか。
#19
○政府参考人(古田佑紀君) 幾つかあるわけでございますけれども、一つの問題として、組織的な犯罪に対応するために、犯罪集団を結成しあるいはこれに参加する行為を処罰することとするほか、あるいは重大犯罪の共謀を犯罪とすると、こういうふうな規定がこの組織犯罪対策条約の中にあるわけでございます。
 これにつきましては、現在、日本では共謀罪というのがありますけれども、犯罪集団の結成とかそういう犯罪類型はないわけで、こういうような条約上の義務づけを我が国の国内法制上どういうふうに整理して位置づけてそれに必要な国内法制を準備するか、例えばこういうような点が一つの重要な問題ということでございます。
#20
○佐々木知子君 恐らくこの条約はかなり英米法に基づいてできているものだろうと推察されまして、大陸法系の日本において国内法を整備するのは問題点が多々あるだろうと思いますけれども、国際組織犯罪対策というのは世界じゅうの大きな問題になっておりますので、ぜひ真摯な取り組み方を期待したいと思います。
 最後に、公安調査庁にお伺いしたいんですけれども、これも大臣の所信表明の中にオウム真理教についての御示唆がございました。
 その活動状況と実際の調査体制について、今どのような体制を組まれておられるのか、今後どういうふうに取り組みを継続するなり拡大するなりされるのか、その点についてお答え願います。
#21
○政府参考人(木藤繁夫君) お答え申し上げます。
 オウム真理教は現在もなお麻原こと松本智津夫を崇拝するということでございまして、その影響を大きく受けておる現状にあります。依然として本質的な危険性を内包していると見ておりますし、その閉鎖的な、また欺瞞的な性格にいささかの変化も認められないと考えておるところであります。
 組織の面でも、全国各地に多数の信徒と施設を擁しておりますし、活動面でも、一連の事件被害者に対する補償を名目といたしましてパソコン関連事業を展開するとともに信徒の指導を強化するなど、組織延命に向けた動きを活発化させております。こうした教団の動きに対する国民の不安感、また警戒感というものはいまだに払拭されていないものと認識しております。
 そういうことを踏まえまして、当庁といたしまして、同教団に対する調査につきましては、地下鉄サリン事件以降、当庁の最も重要な調査課題の一つととらえておりまして、現在もそのために必要な調査体制を組んでおるところでございます。
 その体制の詳しいことについては当庁の業務の性格上お答えを差し控えさせていただきたいと存ずるわけでございますが、例えば立入検査におきましても、対象施設の規模や対象物の内容に応じまして必要な十分な人数の調査官を派遣するなどいたしまして検査の実効性の確保に努めておるところでございます。
 当庁といたしましては、引き続き観察処分の実施とかその他の調査活動を通じまして、教団の組織、活動の実態を迅速的確に把握するための努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
#22
○江田五月君 裁判所予算の執行状況について伺います。
 いわゆる福岡事件について三月十五日にいろいろ伺いましたが、その前日の夜、最高裁判所の調査報告書をいただいたものですから十分な質問はできておりません。
 そこで、この調査報告書についてですが、平成十二年十二月十三日、福岡県西警察署からの令状請求の際に福岡地裁でとられたコピー、紙のサイズと枚数、これを令状と捜査記録のそれぞれについてお教えください。
#23
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 昨年十二月十三日にコピーされた令状請求関係書類というのは、令状請求書そのものと令状請求の際に提出された捜査資料、疎明資料全部ということでございますが、こちらで現在把握しておりますのは疎明資料が二十三通あるということで、今お尋ねのそのサイズでありますとか、そこまではちょっと現在こちらでわかっておりません。
#24
○江田五月君 令状の請求書、これは請求書と被疑事実がありまして、多分二枚ですかね。そして、捜査記録が全部で二十三通というのは、一通ごとに何枚かになっているから、これはかなり大部のものですね、違いますか。
#25
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ある程度といいますか、かなりの分量があるものだというふうに聞いております。
#26
○江田五月君 捜査記録というわけですから、そうすると、例えば捜査報告書であるとかあるいは電話聞き取り書きであるとか、その他もろもろ一切合財、つまりこの令状請求の際につけられた捜査記録、これを全部一人で一時間以上かけてコピーされたと。こういうことなんで、私もさらさらと読んで、令状関係の要所要所だけコピーしたのかと思ったら、ずっと一連の、二十三通ですからね、捜査報告書をすべてコピーされている、しかも一人で、時間をかけて。かなりというか、奇異な感じがしますね、確かに。
 十二月二十二日、それから今年になっての一月九日、一月二十九日、一月三十日、三十一日について、これはそれぞれ何枚ずつ、あるいは何通ずつですか。
#27
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) その後の令状請求におきましては、既に十二月十三日のときにつけられておったものが再度疎明資料としてつけられていたものがあったようでございまして、それを除く形でコピーをしたようでございまして、十二月二十二日は疎明資料が十八通、一月九日は四通、一月二十九日は三通、それから最後の逮捕状のときには逮捕状と捜索差し押さえ許可状の請求、両方があったようでございまして、疎明資料が三十二通ついていて、これをコピーしたということでございます。
#28
○江田五月君 さっき私ちょっと感想めいたことを言いましたが、この二十三通とか三十二通とか、これは捜査記録の、したがって今のちょっと申し上げた捜査報告書その他かなり大部のものになるとやはり異常だと。人事局長、これはそういう認識でよろしいですか。
#29
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) このコピー、捜査資料をコピーまでしたのは不適切であったという判断を調査報告書でも、このたびの大法廷の決定でもしておりますが、やはりここまで含むのは感覚的にも非常に異例の感じを与えるというふうに思います。
#30
○江田五月君 異例と言うと言葉はいいけれども、私はやっぱり異常だと思いますね。
 調査報告書二十五ページの下段、「なお、例えば、被疑事実が複雑であるなど特別な事情がある場合に令状請求書の被疑事実の部分のコピーを取ることが一切許されないとは言えないにしても、」と書いてありますが、本件の場合、これは被疑事実の部分のコピーのことだけですが、この特別の事情がある場合にこれは該当するんですか。
#31
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 該当しないと思います。
#32
○江田五月君 そうですね。
 同じところで、「捜査書類のコピーをとって報告資料とすることは、極めて例外的な場合に限られるであろう。」とありますが、本件の場合は極めて例外的な場合に当たりますか。
#33
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 本件で、この捜査資料全部をコピーしたということは不適切であって、そこまで許される範囲に当たらない、そういう意味ではここで言っている例外的な場合にはもちろん当たらないということでございます。
#34
○江田五月君 例外というのは、それは世の中例外が全くないというのはなかなか難しいですけれども、しかし令状請求のときにその令状請求に添えられた疎明資料をすべてコピーするというのは、これはやはり相当異常で、しかも今の特別な事情あるいは極めて例外的な場合でもないと。そうすると、本件は、分限及び国家公務員法、これは準用ですかあるいは適用ですか、行政上の措置をとられたということになりますが、守秘義務違反の方についても、やっぱりこれはちょっと当たるんじゃないかと。
 守秘義務違反に当たるか当たらないかの判断というのはどこに聞けばいいんですかね。最高裁は当たらないような判断をしているようですが、最高裁としてそういう判断をする立場にあるんですか、ないんですか。
#35
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 刑事事件として国家公務員法上の犯罪が成立するかどうかにつきましては、一義的には捜査当局において御判断されることだと思います。
 行政的に、これが司法行政的に適切かどうかという観点から最高裁の調査委員会は判断をしたわけでございます。
#36
○江田五月君 そうですね。
 ちょっと質問通告していないかもしれないんですが、この裁判所の関係の皆さん方の守秘義務違反、秘密漏えいに当たるかどうかの判断というのは、これはどういう判断になったんですか。嫌疑不十分で不起訴ということになったんですか。
#37
○政府参考人(古田佑紀君) 結論的な事件処理としては、嫌疑不十分ということでございます。
#38
○江田五月君 そのことについては報告されて、報告というのは、つまり世間にあるいは国会にあるいはマスコミに報告はされていないですよね。法務省の調査結果にはそのことは触れられていないですよね。
#39
○政府参考人(古田佑紀君) その調査報告書は山下次席の問題についての調査報告でございますので、そこで裁判所の関係する部分についての事件処理については触れてございませんが、裁判所の関係の問題についての事件処理については、これは検察庁の方で記者会見をして発表しております。
#40
○江田五月君 検察庁でそれは刑事事件の処理として発表されているということだと思いますが、やはりどうも縦割り風の、裁判所のことは裁判所だけで、法務省のことは法務省だけでというので仕切りがきっちりできて、相互のチェックといいますか、相互乗り入れの調査というのがないんですね。
 私は、秘密がこれ以上漏れないようにという配慮だと言うんですが、しかし一人で時間をかけてコピーをこっそり、本当にこっそりとったとか、あるいは後でシュレッダーにかけて全部消したとか、これはやっぱり守秘義務違反というのをどこかで心の痛みを感じながらやったからそういうことをしたんじゃないかと。逆に、今度はシュレッダーにかけたことが証拠隠滅になるんじゃないかという、そんな感じさえ持ちます。
 膨大な量の捜査記録が三部コピーされ、二部は地裁事務局長、高裁事務局長が長期間持っていた。重大な問題で、今後もこれは検証をしっかりしなきゃいけない。
 とにかく信用を回復しなきゃいけないんですから、検察にしても、特に裁判所というのは信用だけが命ですから。裁判所は後ろに、それは強制執行のときの警察権限を活用することができるとかなんとか言ったって、そこに頼っていたんじゃ裁判なんというのは成り立たないんですから、信用だけが命なんですから、その信用を回復するためにはやはりきれいごとで済ませちゃいけない。国民の皆さんに、黙って聞いておけ、おまえら文句は言うなという態度であっては、これは信用は回復しないと思います。もっとしっかりと検証をしていきたいと。
 さて、この三月十四日の夕方に議員会館の部屋に最高裁からの調査報告書が届けられて、その翌日だったと思うんですけれども、三月九日の法務省の調査結果は、これはちゃんと法務省のホームページにも登載されている。そこで、最高裁の方はどうするのか。
 どうもそのつもりがないというので、まあそのつもりがなぜないのかということも聞きたいんですが、まず法務省の方に、これもちょっと突然になるかと思いますが、ホームページにこの調査結果を登載されていますね。その目的は何ですか、簡単に答えてください。
#41
○政府参考人(古田佑紀君) この調査結果は報道機関にも配付したわけでございますが、非常に国民の関心を引いたものでございますので、やはりできるだけ広い国民からアクセスが可能になるようにした方がいいという判断でございます。
#42
○江田五月君 調査結果の著作権は法務省にあるんですか。
#43
○政府参考人(古田佑紀君) こういう公用で作成したものの著作権というのがどうなるのか、ちょっと私は直ちにはわかりませんが。
#44
○江田五月君 余り著作権なんということを考えずにやっているということですよね。国民の皆さんに広く伝えようという、そういう気持ちの方がむしろ先に立ってちゃんとやっておられると。
 それはそれでいい。別にこれで著作権だなんといってどこかから金を取ろうとか、法務省がこの調査結果をどこかへ出したら幾らか金をよこせなんということを考えないのは全く妥当だと思いますし、またホームページに載せられているこの調査結果をどこかがリンクで張ってもっと広く国民の皆さんに見せるようにいろんな人が努力をしている、それに対して差しとめ請求なんということはもちろん考えられませんよね。
#45
○政府参考人(古田佑紀君) いずれにいたしましても、法務省として作成した公文書でございます。それで、公開しているものでございますので、ただいま御指摘のような問題にはならないと思っております。
#46
○江田五月君 さて、そこで最高裁ですが、私、最高裁に、最高裁の方がお出しにならないんだったら私のホームページに載せるから、この調査報告書は電子情報になっているだろうからEメールで送ってほしいと言いましたら、送れないと言うんですね。では独自にこれをスキャナーか何かで読み取って私のホームページに載せてもいいですかと言ったら、まあ最高裁に著作権があるんでしょうから了解を得ようと思ったら、それはだめだと言うんですが、これはなぜだめなんですか。
#47
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 最高裁の調査報告書の方は、お読みいただいておわかりと思いますけれども、関係者の行動とか供述等の事実関係を非常に詳細に記載しておりますので、その取り扱いについては、この事件が非常に一部では興味本位に取り上げられたというふうなこともありまして、インターネットの場合には子供まで容易にアクセスできるとか、そういう面もありますところから、そういう点で、その取り扱いについてプライバシーへの配慮が必要である、そういうところからそのように申し上げたということでございます。
#48
○江田五月君 この事件が一部興味本位に取り上げられた、ホームページは子供もアクセスできる、だからプライバシーの関係上だめだと。これ、理屈になりますか。本当にそれでいいんですか。
 既にこの調査報告書はマスコミにも配付をされておる。我々国会議員にも配付をしているんですよ。自分たちが好ましいと思うところだけは配付するが、興味本位のものは近寄るな、子供は見ちゃいかぬと。
 この中に、私もざっと見たんですが、プライバシーといったって何のプライバシーですか。裁判所職員が裁判所職員として仕事をしていることがプライベートなことなんですか。今の説明、それでいいですか。
#49
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 子供云々というのは、関係者の子供に対する配慮、例えばいじめの発生などといったことも心配したようでございます。
 ただ、そういうことで、この報告書はマスコミに公表いたしましたし、国会議員の方々にも配付したわけでございまして、その際にはプライバシーに配慮した扱いをお願いしたところでございますが、ただ事柄の重要性にかんがみまして、国民に対して十分に御説明をするという観点からホームページへの掲載の可否についても検討は進めてきておりまして、仮名処理などプライバシーの配慮にも十分な配慮を施した上で近いうちにホームページへの掲載を行う予定を持っております。
#50
○江田五月君 私がそこまで言ったからそういうことになってきたんだろうと思いますけれども。
 これは私も本当に残念に思っている。それは職員の子供の学校でのことというようなことはあるかもしれません、確かに。だけれども、事の重要性にかんがみ、これはやっぱりそういうことはそういうことでいろんな配慮をしながらマスコミにも公表している、国会議員にも配っている。いや、公表と公開は違います、そんなむちゃな話はないと思いますよ。
 いろんな処理もいいですけれども、さっき法務省の方は、著作権のことなんか別に考えずに、大いに国民の皆さんに自分たちに困ることも公表して、そして国民の批判を仰ぎながらこういうことで信頼回復に努めておるという努力を国民に見せようという態度を示されたわけですが、最高裁の方はそれについてどういうお考えですか。著作権をやっぱり主張されるんですか。
#51
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 私も著作権の関係が詳しくわかるわけではありませんが、今問題にしておりますのはそういうことではございません。
#52
○江田五月君 違いますよね。
 私も一国会議員として、これは自分の手元に別に秘密でもらったわけじゃありません。職務上知り得た秘密とかじゃなくて、ちゃんと最高裁が調査報告書というものをまとめられて世間にマスコミも通じて発表する、国会の審議にも資するようにというのでこういう報告書をいただいているわけですから、これを国民の皆さんに私どももお示しをする、国民に皆知ってもらっていろんな批判を仰ぐ、これは我々国会議員としても当然の職責だと思うので私のホームページに載せたいと思いますが、いかがですか。
#53
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 私もちょっと技術的なことはよくわからないんですが、最高裁でインターネットへ載せた場合にはそれにアクセスしてほかの人が使えるようになるようにも聞いておりますので、その辺はもう御自由かと思います。
#54
○江田五月君 その辺はの後がちょっとわからぬ。聞こえなかった。
#55
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今度インターネットの方へ載せることを検討しているということを申し上げたわけでございますが、そのものにつきましては仮名処理などのプライバシーへの配慮などもいたしますので、それはインターネットへ載って差し支えないだろうというふうなものになるということでございますので、それについては、いろいろな方がアクセスされて、自分のホームページですか、そういうところへ転載されるというんでしょうか、いろいろな活用の方法はあるのかもわかりませんが、そういうことは御自由なのではないか、こういうふうに申し上げたところでございます。
#56
○江田五月君 人事局長をいじめても仕方がないんですけれども、最高裁の事務総局、あるいは一番責任があるのはやっぱり裁判官会議ですよね、司法行政全体をつかさどっているわけですから。司法行政は司法の独立の範囲に入るので、我々も余りそこをせんさくすることは控えなきゃならぬことはよくわかりながら申し上げるんですが、差し支えないということじゃだめなんですよ。
 情報公開をするということは差し支えがあるんですよ。だけどやるんですよ。それでなければそれは情報公開の意味がないので、行政が本当に透明性を高くして国民の皆さんのいろんな批判も得ながら進んでいかなきゃいけない、裁判所の行政だけは別ということはない。裁判は別ですよ。別ですが、裁判所の行政だけは別だということはないと思う。
 これも人事局長はちょっと答弁される適任者じゃないかもしれないので恐縮ですが、裁判所は情報公開ということをどう考えておられるのか。
 行政の情報公開法は間もなく、この四月一日から施行になりますよね。その法律では裁判所は対象機関になっておりません。国会はいろんな形で情報公開をやっております。地方自治体も既に情報公開条例ができて、しかも日々これをさらにいいものにしようといろんな努力をしています。最高裁の司法行政は情報公開ということについてどういう態度でおられるのか、もしお答えできれば答えてください。
#57
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 所管でございませんので私から適切なお答えはできないかもしれませんが、情報公開は、情報公開法もできまして、裁判所の方でもそういう流れの問題については十分意識をして研究しておりますし、しかるべき対応をしていかなきゃいけないというふうに考えていると承知しております。
#58
○江田五月君 この司法の関係の行政事務についての情報公開をやろうと思うと、やはりこれは最高裁判所規則でしょうね。ぜひともお伝えください。最高裁判所規則で情報公開規則をおつくりになってはどうでしょうか。提案をしておきます。伝えていただけるかどうか。
#59
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 江田委員のただいまの御意見については伝えたいと思います。
#60
○江田五月君 せっかくホームページをつくっているんですから、そして裁判所のお金といったってしょせん国民の税金なんですから有効に使ってもらわないと。国民から取るものは取ったけれども、あと国民に知らせるのは自分たちに差し支えあるものは知らせないという、そういう態度ではやはり司法の信頼は回復しない。
 この調査報告書も、最高裁がお出しになる過程の中で仮名処理などあるとは思いますが、しかし余りそんなことを言われていると、本当にその過程で、ああまたいろいろ手を加えたな、国民に都合の悪いところは消したなというふうに思われるんですよ。それだけ信頼が傷ついているんだということをわかっておいていただきたいと思うんですね。その上でこれからのことを間違いなくやってほしい。
 私は、何度も繰り返すように、これはもう既に公表されたわけですから、これをどういうふうに受け手がホームページに載せようが何をしようが、そこに変な加工があっちゃいけませんけれども、これがそのまま載るということについては、それは当たり前の話だと。情報公開時代、そんなことは裁判所があれこれ言うような話ではないと思います。強くそのことを申し上げておきます。
 さて、もう時間が余りありませんが、同じように国民の司法への信頼を損なう問題として、先日、公証人問題が報道されました。
 我が国の公証人の数、そのうちの判事出身、検事出身、法務事務官出身者、それぞれ何人ですか、法務省。
#61
○副大臣(長勢甚遠君) 平成十三年三月一日現在の公証人の合計数は五百三十五人でございますが、うち判事出身者は百五十八人、検事出身者は二百二十四人でございます。
#62
○江田五月君 残りが法務事務官等百五十三人ということですね。
 公証人法十二条の試験合格者の任命はゼロで、いやゼロどころか制度始まって以来いない、いやそれどころか、そもそも試験の法律も規則も、試験制度そのものがないと、こう聞いているんですが、それでいいんですか。
#63
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘のように、試験制度、法律上は規定されております。これが省令に委任されているという形になっておりますが、それの省令はできておりませんし、試験を実施したこともございません。
#64
○江田五月君 私もびっくりしました。省令ができていない、試験をやったことがない、しかし法律ではちゃんとそういうことになっていると。国会が法律をつくっても何もならない、ばかにされたということかなという気がいたします、ばかにしているんじゃなくていろいろお考えなんでしょうけれども。
 何か聖域として税務調査ができなかったが最近国税庁が調査した、公証人十人が申告漏れ、追徴課税、それが全員判検事OBだった、判検事OBの公証人には高額の再配分制度というものがあって云々といろいろ報道されています。
 この報道についてどう思われますか。
#65
○政府参考人(山崎潮君) この新聞報道の件につきまして、大変お騒がせしていること、おわび申し上げます。
 現在、私ども鋭意調査を始めているところでございます。ただ、この問題につきましては、税法上守秘義務という問題もございまして、どれだけ客観的に調べられるかという問題がございます。しかし、我々としては、やはり公証人の品位とかそういう問題にもかかわるということで、現在、調査を命じているところでございます。まだ結果が出ておりませんので、しばらく御容赦願いたいと思います。
#66
○江田五月君 調査をして必ず報告をいただきたいと思います。
 公証人がこういう状態というのは、これはもう国民からするとある意味では青天のへきれきですね。しかし、中の人間からすると、まあそんなもんだなということなんですよ。もう皆さんもよく御存じのとおりで、これは法務大臣もぜひわかっておいてほしいんですけれども、関係する人間はよくわかっているんですよ。
 つまり、人事の関係で、そろそろこの人は外へ出した方がいいなというようなのを、ちょちょっと早目に肩をたたいて、早ければ公証人のポストがあるよと言って送るんですよ。そして、合理化といいますか、いやいや、検察官には天下り先がないから、裁判所にも天下り先がないからと。裁判官は民事もやれるけれども、検察官で長くやった人はとても民事で食っていけないから公証人でというようなことが、ちまた、その関係の中の人間の間ではもう当然のごとく言われているので、だから試験制度で外から採ってくるなんていうのはとんでもない話だというふうになっていたんだと思いますよ、今まで。
 法務大臣、これを改める気はございますか。
#67
○国務大臣(高村正彦君) 公証人につきましては、現在、原則として、公証人法第十三条に基づいて任命資格を有する者のうちから公正中立に公証事務を行う者として適任と認められる者を任命しているわけであります。同法第十三条ノ二に基づいて、公証人を任命する場合は公証人審査会に公証人に任命することの当否を諮問し、同審査会の答申を得た上で行っているわけであります。
 このように、公証人として任命するにふさわしい者を選考することが今できているわけでありまして、現在の選考方法はそれなりに適切であると考えておりまして、公証人法第十二条に規定する任用試験を実施する等の予定は現在のところありません。
 また、過去に弁護士出身者を任命したことがありましたけれども、最近は弁護士で公証人任用希望を申し出た者がないというふうに承知をしております。
#68
○江田五月君 高村法務大臣、ペーパーをお読みにならないときはなかなか、我々もなるほどと、信頼できる法務大臣だなというようなことをお答えになるんですが、今のような答えをされますとちょっとがっかりいたします、本当に。
 公証人の問題というのはあるんです。そうでなきゃ十人もの判検事OBというのが税務調査で追徴課税なんかされるはずがないと思いますよ。やっぱりこれは問題があるという認識だけは持ってほしい。どうやるのがいいのかというのは、これはなかなか難しいです、確かに。しかし、そういう認識だけは持ってほしい。
 きょうはもう時間がありません。福岡事件、これがストーカー規制法違反だったのか脅迫事件だったのか、あるいは山下次席があれこれやったとき主任検事は何していたんだ、一月三十一日の容疑者逮捕のときの家宅捜索でフロッピーディスク、これが見つかっていない、それが後に地検に任提、これが何だったのかと、いろんな問題がございます。
 法務省であるいは検察庁であるいは最高裁で調べました、調べた結果はこうでした、国民の皆さんどうぞ我々を信頼して御安心いただきたいという、その我々を信頼してというところが今崩れかけているわけですから、危機感を持ってほしい。そして、そのいろんな調査の過程もひとつ国民の皆さんにちゃんと検証してもらわなければ信頼は回復しないんだという、そこのことをぜひわかってほしい。それをしっかりやらないような予算だったら、これはもう予算を使う資格がないということを申し上げて、質問を終わります。
#69
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 この予算の審査の委嘱を受けて質問をさせていただきますが、平成十三年度予算編成に際して、法務省として一番大きなところは何か、これはやはり定員法の中で人材をどれほど確保するか、そういうことが最大の眼目だったんではないかなというふうに承知をしているところでございます。特に近年の国際化の流れの中で不法滞在者もどんどんふえている、そういう出入国管理の体制というものを人的、組織的に拡充させていかなきゃいけない、そういうふうに保岡前大臣にもお話を伺ったことがございますが、まず半年前からここ数年の不法滞在者の推移、あるいは不法就労者もいるんだろうと思いますが、その犯罪傾向といいますか、ちょっとその辺をかいつまんで御説明をお願いいたします。
#70
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 我が国におきます不法残留者につきましては、平成五年に約二十九万九千人のピークに達した後に年々徐々に減少傾向にございますが、依然として約二十数万人台で推移しているのが現状でございます。平成十二年の一月一日現在におきます不法残留者数は約二十五万二千人に上っております。これに加えまして、約三万人とも見られる不法入国者がいるものと推定されております。この数を加えますと、我が国におきます不法滞在者の外国人は約二十八万人に上っている計算になるわけでございます。
 ところで、平成十一年におきます入管法違反で立件された事件の数を申しますと、約五万五千件に上っております。このうち約四万四千件、ざっと八〇%程度でございますが、不法残留による入管法違反事件でございます。また、不法入国による違反事件につきましては約九千三百件に上っておるのが現状でございます。
 警察庁統計によります犯罪動向ということになるわけでありますけれども、平成十一年度に在日外国人犯罪で検挙された者のうち約六〇%が不法滞在者による犯行だと言われております。特に凶悪犯罪に限って申しますと、その半数がやはり不法滞在者による犯行だというふうに言われているところでございます。このように、不法滞在者の存在は我が国の社会、治安に非常に脅威をもたらす状況だというのが実情でございます。
#71
○魚住裕一郎君 それを受けて、出入国管理について人的、組織的拡充ということが課題になっておったんですが、本年度予算では職員の手当てはどの程度ふえたと考えたらいいんでしょうか。
#72
○政府参考人(中尾巧君) ちょっと手元にデータはございませんが、この十数年来で八百人ぐらいの職員の増加を見ております。千七、八百人台が現在二千五百四十一人ということでございます。一・五倍ぐらいにふえておりますけれども、業務量そのものは七倍、五、六倍にふえておりますので業務量に見合う体制にはなっておりませんけれども、膨大な不法滞在者の存在が先ほど申し上げたように非常に我が国の各分野に影響を与えているところでございますので、この問題については喫緊の課題として私どもは対処しておるところでございます。
 平成十三年度におきまして、入国警備官につきまして二十四人の増員を図るとともに、首都圏における摘発体制の強化及び機動的摘発体制の充実などの経費といたしまして十九億四百万円を計上しているところでございますけれども、先ほど申し上げました入国警備官二十四人につきましては計画削減の十九人がございますので、純増としては五人にとどまっておる状況でございます。
#73
○魚住裕一郎君 業務量はもう七倍になってきているというお話がありましたし、さらに国際化というような状況になっていくと思うんですね。
 今どんどん時代が進展していく中で、例えば羽田の飛行場をワールドカップのときにエアバスみたいな形でどんどんできないかということが検討されるであろうというふうに思いますが、そういう場合、この入管の業務も大事になっていくと思うんですね。あそこは、羽田はまだ平家建てといいますか、そういう状況ですから、施設自体が狭いということがありますが、そういうワールドカップでどんどん人の往来が来るようになってくると、この点はどのような手当てを考えておるんでしょうか。
#74
○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおり、二〇〇二年のワールドカップ日韓共催の大会には、我が国に来日する大会関係者を初め多数の観客が成田、関空、大会会場あるいは地方空港等を利用することが予想されるわけでありますし、羽田空港も有効利用ということでたくさんの入出国者の増加が見込まれるところでございます。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、海外と我が国との円滑な人の移動に対応するために、関係CIQ各機関とも密に連絡をするとともに、羽田空港を含めまして出入国管理体制の整備を図っていきたいというふうに考えております。
#75
○魚住裕一郎君 だから、特に羽田はどういうふうに考えているかということなんですが。
#76
○政府参考人(中尾巧君) 羽田の問題につきましては、私どもだけでなく、税関、検疫等、CIQそれぞれが協力し合いましてその体制の整備に努めたいというふうに考えておるところでございます。
#77
○魚住裕一郎君 国際国の日本として、その辺も私どももしっかりやっていきたいというふうに思っております。
 今、不法滞在者がこれだけたくさんおります。あるいは犯罪者もこれだけいる。さらには、不法な密入国というか、そういうこともふえてきていると思っておりますが、大臣、これは国別によってかなり近いところから入ってくる人も多いと思うんですけれども、やはり当該国に対してきちっと法務大臣として言うべきことは言っていくべきじゃないのかなと思うんですね。もちろん、今まで法務当局でやってこられたことだと思いますけれども、その辺の諸外国との連携も含めて、大臣としてどういうふうにお考えになっておりますでしょうか。
#78
○国務大臣(高村正彦君) 委員御指摘のとおり、不法入国者の上陸を阻止するためには関係国との協力が必要不可欠であると考えております。
 法務省といたしましても、関係省庁と連携しつつ、領事当局間協議等の国際会議において、中国を含めた不法入国者の出身国等に対する不法出国防止等の申し入れを行うとともに、毎年、主としてアジア各国の出入国管理行政当局の幹部を我が国に招聘して、出入国管理セミナーや偽変造文書鑑識技術者セミナーを開催するなどして、関係各国との協力関係強化を図ってきているわけであります。今後とも、関係諸外国との協力を推進し、不法入国者の防止に取り組んでまいりたいと考えております。
 私自身も、外国等へ行ったときにはしかるべき人にそういうことを外務大臣時代もお願いしてきましたし、法務大臣として参るときもそういうことをお願いして協議をしていきたい、こういうふうに考えております。
#79
○魚住裕一郎君 ぜひよろしくお願いしたいと思っております。
 それと、この出入国管理に関して、IT社会推進本部の方でもかなり、世界的な人材にしっかり日本に入ってきてもらって日本の中で働いてもらうべきではないかという観点から、出入国管理の業務の見直しというか、そういう点が要請されるんだろうというふうに思っております。
 アメリカの経済を引っ張ってきたITの問題も、シリコンバレーとか言われましたけれども、今はシリコンバレーならぬICバレーと言うらしいんですね。ICというのは、インディアンであり、またチャイニーズであると。インド人、それから中国人がどんどんシリコンバレーの中で活躍をしてさらなる発展を期しているというふうに伺っているところでございますが、これからこのIT関連技術者の入国について検討するというのは、それは言葉としてはいいんですけれども、もっと早くやるべきではないかなというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
#80
○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおり、IT技術者につきましては、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が決定したいわゆるe―Japan戦略においても、専門的、技術的分野の外国人の受け入れが進むよう、受け入れ関連制度を早急に見直すこととされております。
 私どもといたしましても、委員先ほど御指摘のインドのIT技術者資格を取得している者につきまして入管法上の取り扱いについて見直し等々を進めているところでございます。
 とりあえず、取り急ぎ実施したところを申し上げますと、その資格の上位、これをDOEACCと言いますが、上位三つのレベルの者につきまして、大卒と同等以上の学位に相当する者と認められることから、地方入国管理局等に対しまして、先般、技術の在留資格に係る上陸許可基準に適合する旨、通達を発したところでございます。
 また、いわゆるIT関連技術者につきましては、通常、先ほど申し上げました技術の在留資格を付与して入国していただいているところでございますが、近年、いわゆるIT関連業務は必ずしも理工系の技術、知識に限られることなく、文系の知識を含む広範な分野の知識を必要とする業務となっている状況にありますので、こういった状況を踏まえまして、私どもといたしましても、この種在留審査におきまして、在留資格の技術の対象とされております自然科学の分野に属する技術等を必要とする業務に仮に当たらない場合でありましても、人文科学の分野に属する知識を必要とする業務への該当性を極力検討して、人文知識・国際業務という在留資格で入国できるかどうかを判断するよう、本年二月二十六日付をもちまして関係地方入国管理局長あてに通知、徹底させたところでございます。これによりまして、例えば人文科学分野の大学の学部を卒業してシステムエンジニア等の業務に従事する外国人につきましては、人文知識・国際業務の在留資格を取得できることになるわけであります。
 今後は、さらに我が国の情報処理技術者試験やこれと同等の試験として相互認証された外国の試験の合格者につきましても、学歴や実務経験年数にかかわりなく我が国に入国できるように、早急に上陸許可基準の見直しを検討していくこととしております。平成十三年度中に、できるだけ早い時期にこれらの問題につきまして結論を得て、所要の措置を講ずることとしておるところでございます。
#81
○魚住裕一郎君 今のお話を伺っていますと、ほとんど技術者だと思うんですね。学歴とかあるいは何か専門資格等がある場合、もちろんそういう方が外形的事実で入国資格というのがよくわかるんですが、ではビジネスマンといいますか、それで商売をやろうとするといいますか、まさにITのこのビジネスチャンスをどう生かすかといいますか、そういうノウハウを持った人がいっぱいいると思うんですが、そういう場合はどこで拾うわけですか。やはりその中で活性化していくというのが一番大事ではないのかなと思うんですが。
#82
○政府参考人(中尾巧君) 在留資格としていろいろあるわけでございます。企業内転勤とか先ほど申し上げました国際業務というようなところ、あるいは投資・経営という在留資格等もございます。そういった資格で入っていただけるようになっております。従来、その場合の要件等につきましても、できるだけ入国に支障がないように、各種要件については見直しを徐々に進めているところでございます。
#83
○魚住裕一郎君 それでは、ちょっと話を変えまして、外国への法整備支援という予算がついておりますが、平成十三年度はどこにどのような法整備支援をしようという計画になっているのか。
 それから、中国との関係では、いろいろ貿易上あるいはビジネス上の紛争もやはり貿易額の拡大とともにふえているんだろうと思いますが、この中国に対する法整備支援というのは今年度はどういう形になるでしょうか。
#84
○政府参考人(但木敬一君) 御指摘のように、インドシナ三国、中国、モンゴルあるいは旧ソビエトの地域、これらの地域におきまして急速な市場経済化が始まっております。しかし、残念ながら法整備が万全でないということから、これらの国々では喫緊の課題として民商事法の制定という課題に取り組んでいるところであります。
 そこで、我が国におきましてはこれらの国々に法整備支援をいたしているところですが、平成十三年度におきましては、法務総合研究所に国際協力部という部を設置させていただきたいということで予算の審議をいただいているところでございます。この部を中心にいたしまして、インドシナ三国あるいはアジアの各国に対して法整備支援を図っていきたい、こういうふうに考えております。
 ちなみに、十三年度の計画といたしましては、約八十名ぐらいの関係国の人々を招いて、立法に携わっている人々を招いて研修をやりたい、それからそのほかに法務省の職員も各国の要請に応じて各地に長期間滞在させて法整備支援をこれからもしていきたいというふうに思っております。
 それから、中国の関係についてお尋ねでしたけれども、中国の関係では現在非常に重視されているのが刑事司法の関係でございまして、この関係では十三年度、特別に中国刑事司法高官特別研修コースというのを行う予定になっております。そのほかに多国間の法整備支援の研修がございますが、この国際民商事法多数国研修に中国からそういう人を招聘するつもりでおります。
#85
○魚住裕一郎君 終わります。
#86
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 私はきょうは女子差別撤廃条約選択議定書の批准についてお聞きしたいと思います。
 まず、この意義について大臣にお伺いしたいと思うのですが、女子差別撤廃条約の選択議定書は九三年にウィーンで開かれた世界人権会議で勧告され、九九年十月の国連総会で採択されました。そして、昨年の十二月に発効して、既に十八カ国が批准をしております。
 この選択議定書は条約の実施の効果的担保を図る上で重要な意義のある制度だと思いますが、いかがでしょうか。
#87
○国務大臣(高村正彦君) 女子差別撤廃条約選択議定書に規定されている個人通報制度につきましては、条約の実施の効果的担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であるとは考えております。
#88
○林紀子君 とは考えているということですけれども、この選択議定書の個人通報制度というのは国民の人権を守れなかった場合の人権救済として大変大きな意義を持つものだと考えるわけです。しかし、我が国は批准していないわけですよね。
 この条約の第四条第一項は、個人通報制度を利用する要件として、「委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。」というふうに述べているわけですから、これは各国の主権を侵さない、主権を極めて尊重している、こういう原則だと思いますが、いかがでしょうか。
#89
○国務大臣(高村正彦君) 今御指摘の文言だけを見ますと、確かに主権を尊重する趣旨が盛られている、こう思うわけでありますが、実際の運用状況等を検討してみませんと、本当に司法権の独立を含め、司法制度との関連で問題が生ずるおそれがあるのかないのかわからない点もあるわけであります。
 一部聞いている話だと、必ずしも国内救済措置を尽くしていない中でも実際に個人通報制度で通報がされて、そしてそういうことが取り上げられているという例もあるやに聞いておりますが、そういう運用状況等もよく見た上で真摯に検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
#90
○林紀子君 今、大臣がおっしゃったのは、その第四条第一項の後半の部分なのかと思うんですね。「ただし、かかる救済措置の適用が不当に引き延ばされたり、効果的な救済の見込みがない場合は、この限りでない。」というのがつけ加わっております。
 しかし、運用ということですけれども、このただし書き以下というのも人権救済の立場ということでは当然のことじゃないかなというふうに思いますけれども、それはいかがでしょうか。
#91
○国務大臣(高村正彦君) 今のただし書きはそれはそれで一定の意味がある、こういうふうに思っております。思っておりますが、本当にそのただし書きにあるような状況、不当に引き延ばされたような状況の中でしか個人通報が取り上げられていないかどうか、そういった運用状況の実態を日本政府としても見た上で、私、決してこの問題について後ろ向きではありませんが、真剣に考えていきたい、こういうふうに思っております。
#92
○林紀子君 後ろ向きでないというのは大変うれしい御答弁なわけですけれども、しかしこの運用の状況で、不当に引き延ばされたりというのは、今これはこれで認めるべきことだということなんですけれども、日本の裁判の状況というのを見てみますと大変長期にわたっている、これはもう各国でも有名なんじゃないかと思います。これは臨司のころからもう遅い、長いということが言われておりますし、今の司法制度改革審議会でもこの点は非常に大きな問題となって取り上げられているわけですね。
 ですから、不当に遅延されるということなんですけれども、やはり裁判そのものが遅延されるということはそれ自身が人権侵害になるということもあるんじゃないでしょうか。十年も二十年も三十年もかからなかったら判決が出ないというのは、その間救済されないわけですから。その辺はどうお考えになりますか。
#93
○国務大臣(高村正彦君) 私もよくいろいろなところで、裁判の遅延は裁判の拒否に等しいなどという言葉を使いますけれども、日本の国内制度の中で裁判がもっともっと早く行われるべきである、そういうふうな制度を整えていかなきゃいけない、運用もそうしていかなきゃいけないと思っていますが、ただ裁判が長いということだけでその条項に当たるかどうかということについても総合的に、日本の裁判が長い、その中で取り上げる。今、日本の場合は取り上げられないわけです、これは入っていないわけですから。外国でもうこれを批准したところについての実態についてよく見ていきたい、こういうことを申し上げているわけであります。
#94
○林紀子君 今お答えにありましたように、日本はまだ批准していないわけですから、これを通報した人はいないわけですね。ですから、日本の裁判は日本のところできちんと見ていかなくちゃいけないわけですから、外国の例をいろいろ調べましても、それは一つの参考にはなるかもしれないけれども、そこのところで延々研究をしていくということではないんじゃないかというふうに思うわけですね。
 この不当な遅延だけではなくて、今まで大臣が当委員会であるとかまた衆議院の委員会で日本共産党の議員の質問に対してお答えになった中で、司法権の独立ということに関係がある、これを侵すんじゃないかというところを心配されているというお答えもあったわけですけれども、それはどういう意味か。私は何度読んでもよくわからないんですけれども、司法権の独立を侵すというのはどういうことでしょうか。
#95
○政府参考人(房村精一君) 司法権の独立の関係でございますが、御指摘の個人通報制度に基づいて、ある個別の事案につき条約に基づき設置された委員会が公式の見解を示すということになりますと、当該事案またはこれと関連する事案に関する裁判官の自由な審理、判断等に影響を及ぼすおそれがあり、司法権の独立との関係で問題が生ずるおそれがあるということを考えております。
 なお、個人通報制度と司法制度の関係としては、司法権の独立のほかにも、我が国では適正かつ効果的な国内救済手続が整備され十分に機能している、そういう国内救済手続の体系を混乱させるおそれもないわけではないということも挙げられようかと思っております。
#96
○林紀子君 今お話を聞いてもやっぱりわからないし、ますますわからなくなってしまうわけなんです。といいますのは、女子差別撤廃委員会の意見や勧告というのは政府に対してなされるわけですね。最高裁に対してするものじゃないんですよね。だから、裁判批判をして、最高裁が出した判決はいかぬ、そういうようなことを言うわけではないわけですね。これには法的拘束力もないわけです。
 では、こうした制度がどうして司法権の独立の侵害ということが言えるのですか。
#97
○政府参考人(房村精一君) 委員会の見解が裁判官を直接に拘束するものでないことはただいま御指摘のとおりでございますが、やはり条約に基づく国連というようなそれなりに権威のある機関が公的な見解を同一事案について示すということは、その事案について裁判をする裁判官の自由な審理、判断に影響を及ぼすおそれがあるということを懸念しているわけでございます。
#98
○林紀子君 そこがどうもやっぱりおかしいと思うんです。
 裁判所に言うわけじゃなくて政府に言うわけですから、政府の方が、例えば総理が、高村大臣がその勧告に従って最高裁に対して、こういうことを言われたからこれをやらなくちゃおかしいなんていうことを言いましたら、それこそ三権分立にもかかわる、司法権の独立を侵すわけですけれども、そういうことじゃないわけですね。勧告を受けて、国としてちゃんとそれをやりなさいということを言われるわけですから、これはどうしても司法権の独立というのを侵すということにはならないと思うんです。
 それではお聞きいたしますけれども、この司法権を侵すという理由で批准をしていない国というのはあるんですか。日本以外にないんじゃないでしょうか。
#99
○政府参考人(房村精一君) この選択議定書の批准をしている国は現在十五カ国でございますので……
#100
○林紀子君 十五ですか。
#101
○政府参考人(房村精一君) 十五カ国が批准をしております。
 例えばアメリカとかイギリスは批准をしていない国に含まれておりますが、その批准をしていない国がいかなる理由に基づいて批准をしていないのかということについては、各国それぞれの事情に応じた判断をされているものと考えられ、我が国としてこれを承知する立場にはございません。
#102
○林紀子君 それはまさに研究はしていないんじゃないかというふうに思うわけですけれども。
 これはジュリストに載っておりますが、東京外語大学の西立野園子先生が「個人通報制度を受け入れる国は着実に増えているが、受け入れていない国においても、「司法の独立」をその理由とする例は他に存在しない。」ということをおっしゃっておりまして、例えば今挙げられたドイツ、それからイギリスなどは確かに批准をしていませんけれども、これは個人通報制度のより強力な手段として、個人が欧州人権裁判所に対して人権侵害を訴えることができる、こういうところを利用しているから国連のここを利用しなくてもいいということで批准をしていないという話は聞いているわけですけれども、そういう意味では、ちゃんとこういうことも調べて今お答えをくださったのですか。
#103
○政府参考人(房村精一君) ただいま申し上げたとおり、それぞれの国がそれぞれの御判断でされているということだろうと思っております。我が国としてそれを公式に承知する立場にはないということを申し上げているわけでございます。
#104
○林紀子君 いろいろなところを研究するということは先ほどおっしゃったわけですけれども、こういう肝心なところは調べていらっしゃらないということだと思うんです。
 東京高検の検事の多谷千香子さんという方が今女子差別撤廃委員会に日本の代表として入っていらっしゃいます。この方がおっしゃっているのは、司法権の独立、最高裁が終審なのは日本の憲法に限ったことではない、だけれどもこれはもう政策判断でできる問題じゃないかと。まさにそこに派遣されている当事者がこういうことを言っているわけなんです。この辺については大臣はどう思われますか。
#105
○国務大臣(高村正彦君) 私も司法法制部長も先ほどから言っているのは、司法権の独立をストレートに侵すということまで言っているわけではないわけであります。司法権の独立を含め司法制度との関連で問題が生ずるおそれがある、こういうような言い方をしているわけで、ストレートに司法権の独立を侵し憲法違反である、そういうことまで申し上げているわけではありません。
 ですから、そういうおそれがある中で実態の運用がどうなっているかを見ながら、まさに政策判断としてあり得る、そういう立場で真摯に検討してまいりたい、こういうことを申し上げているわけであります。
#106
○林紀子君 そのおそれがあるというのは、やっぱり司法権の独立ということから考えたら、今の御説明ではわからないわけですね。運用の面につきましても、今、各国と日本の状況は違うわけだから、各国の状況を幾ら見ても、それでずっと研究しているというわけにはならないだろうということを申し上げているわけです。
 そもそもこの女子差別撤廃条約の選択議定書に先立っている国際人権規約B規約の第一選択議定書というのもまだ日本は批准をしておりませんよね。これは一九七九年に政府が批准を、その本体の方、国際人権規約の方は批准したけれども、そのときに、では選択議定書もどうして一緒に批准をしなかったのかといったら、二十一カ国が批准していないで個人が訴えるというシステムが十分作動するかどうかが疑問だ、それで締結しないと。やはりずっと研究するということを言っていたわけですけれども、しかし現時点で批准国は九十八カ国になっておりますし、通報件数が九百三十六件、そのうち三百四十六件の意見が採択されている、運用をきちんとされているということが明らかになっているわけです。
 最初のときにこういうふうに批准をしなかったけれども、次の第三回報告書の審査の際に、政府は、乱訴のおそれがある、それから司法の独立を侵すおそれがあるということを批准しない理由に挙げていて、その次の第四回の報告書ではこの乱訴のおそれというところは除外されて、司法権の独立を侵すおそれがあるということだけを批准できない理由に挙げているわけです。
 日本が七九年にこの本体の方を批准してからでも、もう二十二年にわたってずっと批准してきていないわけですよね。しかも、この理由というのがだんだん落ちていっている。こういう理由を掲げていたけれども、これはちょっと国際的に見てもまずいんじゃないか、恥ずかしいんじゃないかということでだんだん落ちていって、今言っているのは司法権の独立ということだけになっているわけですけれども、では司法権の独立ということについて、おそれがあるというので二十二年間も検討してきたわけですね。運用はどうかということも、女性の差別、人権だけでなくて、もっと広い自由権の部分でどうかというのをずっと研究してきたわけですね。
 これから考えますと、大臣から本当に前向きに検討するというお答えをいただいたわけですけれども、女子差別撤廃条約の選択議定書もこれから運用状況を見る、司法権の独立というのが心配だということで、まだ二十年も三十年も検討をし続けるおつもりなんでしょうか。
#107
○国務大臣(高村正彦君) 真摯に検討してまいりたいと考えております、こういうことを申し上げているわけであります。先ほど裁判の遅延は裁判の拒否に等しいと申しましたが、行政も同じことだろうと思っております。
#108
○林紀子君 それでは、真摯に検討する、遅延は裁判の場合と同じようにやはりいけないことだというふうにおっしゃったわけですから、最後に一言、いつごろをめどにどんなふうに検討を始めるのかということまでお答えいただかないと、今まで真剣に検討しますというのはずっとお答えいただいているわけですから、それと同じお答えではちょっとあれなので、どうするのかという、もうちょっと具体的なところを最後にお話しいただきたいと思います。
#109
○国務大臣(高村正彦君) 先ほど申し上げましたように、この制度が現実にどういうふうに運用されているかということを具体的に検討、状況を見ていくわけでありますから、いつまでにということはちょっと今申し上げられません。
 申し上げられませんが、私は外務大臣時代にもこのことについて答弁した記憶があるわけでありますが、事務方が最初持ってきた答弁書には慎重に検討するという言葉が書いてあったのを私は真剣にと変えさせていただいたということで、この問題に対する私の基本的立場は御理解いただけるだろうと思います。
 本当に真摯に検討してまいります。
#110
○林紀子君 最後に、本当にこれは政策判断なんだというところをぜひとらえていただいて、その真摯にという言葉を私の方も真摯に受けとめますので、ぜひ前進をさせていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
#111
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 私はきょうは刑務所の中の処遇の問題についてお聞きをしたいと思います。初めに厳正独居の問題、後で医療の問題についてお聞きをしたいと思います。
 厳正独居拘禁とは、規律、秩序を害するおそれがあるとの理由で、受刑者を工場に出さないで、作業は狭い房内で行う特別の処遇である。作業以外の運動や入浴も一人だけで行う。所内のレクリエーションなどに出席することも認められておりません。房内では、作業中だけでなく日課外の時間であっても、就寝時間前は座った姿勢が強制され、立ち上がったり、壁に寄りかかったり、足を崩して伸ばすこと、立てひざなども禁止されております。
 こういうことで、衆議院の同じく社民党の植田至紀さんが厳正独居の実態について質問をしました。それは本当に驚くべき実態だったのですが、全受刑者の四%以上、数にして二千人以上が独居拘禁となっております。最長で三十七年間。三十七年間、一度も工場に出ないで人に会わず、運動も入浴もレクリエーションもすべて一人でやっている人がいると。十年以上が二十八人、五年以上が六十五人に達しております。
 ところで、拷問及び非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止欧州委員会の一九九九年十一月五日の一般報告書のパラグラフ五十六では、例えば
 独房に類似した状況にある刑事被拘禁者に特別の注意を払っている。
  本人に非常に有害な結果に至るステップである独房型の拘禁は、その必要性と実施の間の衡量の原則が必要である。独房拘禁は、場合によっては非人道的または品位を傷付ける取扱いとなる。いずれの場合においても、あらゆる形態の独房拘禁はできるかぎり短期間としなければならない。
となっております。
 短期間となっているにもかかわらず、日本の実態では、最長三十七年間ずっと看守の人を除いては一切コンタクトをほかの人と持たない人がいるわけです。三カ月おきにチェックをしているというふうに法務省の方から聞いておりますが、この点の改善についてお考えをお聞かせください。
#112
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 行刑施設における独居拘禁でございますけれども、これは施設内の規律及び秩序を維持するための隔離の必要がある、そういった場合のほか、処遇上その他の必要から他の被収容者から分離して処遇を行うものでございます。雑居拘禁とするのか、あるいは独居拘禁にするのかということにつきましては、監獄法令の定めるところによりまして、個々の受刑者の行状とか心身の状況、他の受刑者との関係、それから居房数やその収容状況とかいうその施設における実情等を考慮して総合的にこれを判断して行っているというのが実情でございます。
 独居拘禁に付されます期間は、委員も御案内のとおり、六カ月以内ということになっておりまして、特に継続の必要があると認められるときは三カ月ごとに更新ができることとされております。継続の必要については、個々の受刑者の行状とか心身の状況が他の受刑者に与える影響、またトラブルとかそういうのを発生しないかどうか、そういった点をその都度綿密に審査しているところでございまして、ただいま委員の方から御指摘がありましたように、やむを得ず独居拘禁の期間が長期にわたっている受刑者もごく少数ながら存在しているわけですけれども、私どもとしましてはこれも必要かつ適正な範囲で運用がなされているものというふうに考えております。
 いずれにしましても、今後とも独居拘禁の運営に当たっては引き続き適正な運用を図るよう努めてまいりたいと思います。
#113
○福島瑞穂君 これではできる限り短期間でなければならないとなっているにもかかわらず、一度も工場に出ないで三十七年間あるいは十年以上ずっと一人の人がいるわけです。もっと前向きに、なかなか雑居は難しいかもしれないんですが、厳正独居に閉じ込めることでますますコミュニケーションを持ちにくくなるということがあると思います。その点についてはぜひ善処をお願いします。いかがですか。
#114
○政府参考人(鶴田六郎君) 御指摘のような考え方も十分あると思いますが、他面、施設の運営に当たる者としましては、他の収容者との間の関係でいろいろな事情、心身の事情あるいは過去の行状等から雑居で集団処遇に適さないということもかなりあるわけでありまして、いずれにしてもその辺を考慮しながら、実際の審査に当たっても、単にその処遇に当たっている担当者だけではなく、分類調査を行っている心理の人あるいはお医者さんとか、そういう方々と多角的に、先ほど申し上げました更新の要否というのも検討しております。そういったところで今後とも適正を期していきたいというふうに考えております。
#115
○福島瑞穂君 ぜひこの期間が短縮されるようによろしくお願いします。
 次に、医療のことについてお聞きをします。
 私は受刑者の人からよく手紙をもらうのですが、きょうはその中で医療についての苦情のお手紙を持ってまいりました。たくさんあります。これはすべて刑務所内の医療の処遇に関して、こうしてほしい、こういう悩みを持っているという手紙です。
 それで、私はどうして刑務所の中の医療が十分でないかと思ったときに、法務省で全部やるのではなく、今、国民健康保険の適用がありませんけれども、厚生労働省の管轄にして国民健康保険の適用を例えばちゃんとやると。つまり無料で、ただでというふうに思われているからなかなか歯の治療とか十分やってもらえない。でも、保険の概念ですと、十分手当てをしなければ保険がもっと負担が膨らむわけですから、例えばある程度の給料を賃金として払うことにして国民健康保険などの適用というふうにきちっとやる、そして厚生労働省との管轄で医療はきちっと行うというようなことなどをぜひ思い切ってやっていただきたいのですが、いかがでしょうか。
#116
○副大臣(長勢甚遠君) 刑務所内の医療の実行につきましては、改めてまた御質問があるかもしれませんが、できる限り民間等も活用しながら適正にやろうということで努力をしておるところでございます。
 今、厚生省でやればどうかとか、あるいは賃金等も体系的に考え直したらどうかという御提案でございますが、刑務所の行刑という役割との関係をどういうふうに考えるかとか、根本的な問題もあろうかと思います。
#117
○福島瑞穂君 ただ、やはり受刑者の人は医療について大変不安を持っていて、十分治療が受けられないと。普通の社会にいてもそう思うわけですから、なおさらそう思っているわけです。このためには、もう抜本的に何か踏み出して改正をしない限りだめではないかと思います。
 先ほど申し上げました拷問及び非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止欧州委員会は、一九九九年十一月五日の一般報告書において、例えば医療については「各患者について医療記録ファイルを作成し、診断、現在の患者の状態、受けた特別な検査について記録しなければならない。」というようなものもあります。
 カルテの開示や、ファイルをきちっと一人ずつとって丁寧にそれを見せるというようなことは現時点でも考えられないでしょうか。
#118
○政府参考人(鶴田六郎君) 現在、刑務所等の医師が診療を行った際には診療録を作成しまして、また投薬等の措置を行った際には診療録にその旨の記録を残しているところであります。
 そしてまた、例えば出所後に継続的な治療が必要だというようなことがありました場合には、出所者本人に対しまして、病状、投薬内容等を記載した書類を交付し、医療機関での受診を指導するとか、また出所者が治療を受けている医療機関の主治医の方から個別的に照会を受けた場合には刑務所等における治療の具体的内容も回答するというようなことも行っている、そういった対応をしているところです。
 今御指摘のございましたカルテ等の開示ということですが、カルテないし診療録というのは個人情報に属するものである、したがいまして本来これは公にすべきものではないのではないかといったこともあります。したがいまして、これらの開示についてはより慎重に考えていかなきゃならない問題だろうと思いますし、カルテの取り扱いに関しては一般社会においてもいろいろ御議論もあるところでございますので、そういった動向も踏まえながら今後研究していきたいと思います。
#119
○福島瑞穂君 カルテについては一般でもカルテの情報開示が議論になっておりますので、刑務所の中でもそれはお願いします。
 薬、自分にどういう薬が処方されているかわからないという訴えもあるんですが、それはきちっと教えているんでしょうか。
#120
○政府参考人(鶴田六郎君) 先ほどもちょっとお答え申し上げましたけれども、出所後に継続的な治療が必要だというふうに刑務所の医師が認めた場合には、時としてではありますけれども、本人に対して病状とか投薬内容を記載した書類を交付して、出てからですが、医療機関での受診を受けなさいといったような指導をしている例もあるというふうに聞いております。
#121
○福島瑞穂君 私は出所後のことを聞いているのではなく、受刑者である間に自分にどんな薬が処方されているのかというようなことはきちっと教えてもらえるのでしょうか。
#122
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 必要に応じまして、刑務所の医師の判断で教える場合もあるというふうに聞いております。
#123
○福島瑞穂君 抜本的な改正も必要だとは思うのですが、今の運用上もいろいろ改善できることがあると思います。私は、どんな薬が処方されているかわからないとか、みんな非常に不安がっているので、そういうことは本人が望めば全部基本的には開示していくということが必要だと思います。
 また、さっきの一般報告書の中には、「医療チームは毎日の健康記録を保管しておき、患者に関する特別な事項を記録しておくべきである。」というものもあります。こういうことも、別に法律改正をしなくても現時点ですぐできることだと思います。
 最後に、年金のことについてお聞きをいたします。
 これは前にもお聞きをしたんですが、御存じのとおり、御存じのとおりと言うのも変ですが、適用除外の扱いになって、申請免除の手続さえすれば、受刑中年金を払えなくても空白期間をカウントすれば服役後一部ですが給付を受けられるということがあります。
 ただ、この間、先日、免田栄さんに会ったところ、彼は無年金だと言っておりました。つまり、申請免除の手続をすればいいんだけれども、まだまだ受刑者の人たちにそれが浸透していなくて、刑務所を出た後、高齢者になって無年金になるという人たちも多い実態があります。
 これは努力を法務省はされているというふうに聞いておりますが、この年金の申請免除の手続の告知とか、取り組んでいらっしゃることを教えてください。
#124
○政府参考人(鶴田六郎君) 正確なお答えができるかどうか、ちょっとその点は若干正確を欠く部分があるかと思いますけれども、年金の問題についてはこれまで国会等でも委員が今御指摘になったような点の質問を受けた経緯がございまして、そういった意味から、今御指摘されたような事項、受刑中は免除になるけれども後で受給資格はあるというような趣旨のことを告知する必要があるのではないかということで、最初に刑務所に入ってきたときに、入所時といいますか、オリエンテーションがございますので、その段階でそういった点を告知するほか、各房内には房内のしおりというものがございますので、そういうところに今御指摘のあったような年金の問題も記載しまして、受刑者がそれを認識できるようにしておるところでございます。
#125
○福島瑞穂君 きょうは厳正独居と医療の問題について質問しました。ぜひ改善をしてくださるように強く要望して、私の質問を終わります。
#126
○平野貞夫君 山形県の酒田市内にあります福祉作業所のつくしんぼう、ここの所長と指導員が一昨年、知的障害者ら利用者に対して大変不幸な事件を起こして、それが一たん山形地検で不起訴になっていたのが最近起訴ということになったという話を聞いたんですが、この事件の概要とそうなった経過と理由について、刑事局長、御説明していただきたいんですが。
#127
○政府参考人(古田佑紀君) 御質問の事件は、心身障害者通所小規模作業所、これを経営していた被告人らが、その作業所の通所生であります被害女性に対し、売春をしなければ食事を与えないなどと脅迫いたしまして、売春させた上その対価を受け取っていた、こういう事件でございます。
 ところで、この事件につきましては、当初、山形地検の酒田支部におきまして、警察から、人を困惑させて売春させその対償を受け取ったという事実で事件送致を受けました。そこで、酒田支部で捜査を当時したものの、関係者から必ずしも十分な供述が得られなかったという事情がございまして、どうも起訴をするに足りるほどの証拠の収集ができなかったようでございます。
 そこで、平成十一年の十二月二十八日、不起訴処分としたわけですが、酒田検察審査会がこの事件につきましてその後不起訴不当の議決を行ったことを踏まえまして、さらに捜査を尽くすということから、酒田支部ではなくて山形地検の本庁に事件を引き取りまして、本庁で所要の捜査体制を整え、改めて関係者から丹念にさまざまな事情聴取等を行ったわけでございます。
 その結果、この作業所におきますふだんの生活状況などの新しい事実を含め事案の全容というのが解明できまして、その結果、これは被害者を困惑させて売春させたというのではなくて、やはり脅迫して売春をさせて、そしてその対価を全部受け取っていたというふうな事実を認定することができるようになりましたことから、本年の三月九日、被告人二名を売春防止法で起訴するに至ったと承知しております。
#128
○平野貞夫君 地方で起きた大変不幸な事件でございますが、私これをなぜここで取り上げたかといいますと、福岡地検の山下さんなんかのいろんな問題があって、検察庁、検事の方たちが大変意気消沈しているんじゃないかと思っているんですが、この山形のつくしんぼう事件の一たん不起訴にしたものを改めてまた、事件名は違うかもわかりませんが、起訴にしたこの行為は私は検察庁の歴史の中で非常に画期的なことじゃないかという思いを持っておるわけでございます。
 中央の新聞なんかには紹介されなかったと思いますが、やはりいろいろ批判されている中で、大体、国会で検察、警察の話をするときには褒められることはないと思いますが、まさにこれこそ検察の正義といいますか、知的障害者という極めて気の毒な立場にある人たちの人権がこういう形で守られるということは、不起訴のものを起訴にするということは刑法上なかなか難しいことだと思いますが、私は非常にこの場で、国会の場で御紹介する価値があると思って取り上げたわけでございます。
 そして、今も刑事局長の説明にもありましたように、酒田の検察審査会の機能が非常によかったと。検察審査会といえばそんなに大きな権限を持っているところじゃないんですけれども、そういう意味で検察の司法権の中にこういうような動きが出てきたことを高く評価するものでございますが、どうかひとつこういう考え方を深めていっていただきたいということを大臣にお願いいたしますが、ちょっと大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
#129
○国務大臣(高村正彦君) 知的障害者などが被害者となった事件は、被害者から的確な供述を得ることが困難であったり、そもそも供述を得られない場合もあって、本件のように、本来被害者を援助、介護すべき施設においてその経営者や職員等によって犯罪が行われる場合には目撃者も得られない場合が多いなど、事案の真相解明の上で大きな障害がある場合もありますけれども、このような事案は自己の権利を防御することの困難な被害者の弱みにつけ込む極めて悪質かつ卑劣な犯罪であることから、検察当局においても所要の体制を整えて捜査に当たって、事案の全容を解明して厳正に処理すべきことは当然であって、これまでもそのような方針で捜査処理に当たっているものと承知をしております。
 今後とも、検察当局においては捜査に万全を尽くし、事案の解明に努め、加害者が不当に処罰を免れたまま放置されるようなことのないよう、厳正な処理に努めるものと思っております。
 委員御指摘のように、検察審査会が機能して、それに検察がこたえてきっちりやったということで、本当に検察はよくやってくれたと、こういうふうに思っております。
#130
○平野貞夫君 時間がちょっとありますので、質疑通告していませんが、多分答えられることだと思いますので。
 きのうからきょうあたりの新聞を見ていますと、例のKSD、どうも幕引きじゃないかという報道がずっとなされておるんですが、議員をやめられて逮捕された方はきょう起訴されるんですか、どうですか。
#131
○政府参考人(古田佑紀君) お尋ねの点につきましては、昨日起訴をしたと承知しております。
#132
○平野貞夫君 それで捜査は大体事実上終わったという報道は正確なものでございましょうか。
#133
○政府参考人(古田佑紀君) 個別具体的な事件でいろいろお答えすることは差し控えますが、いずれにいたしましても、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものについては所要の捜査を尽くすということでございます。
#134
○平野貞夫君 検察の正義を褒めたばかりで、まことに私は問題だと思うんですが、いずれこの問題については法務委員会でも集中的にやらにゃいかぬ問題だと思っていますが、私、昨年の十一月二日に刑事局長と珍問答をやりました。自民党の幽霊党員、この問題について、刑事事件、いわゆる刑事問題として立件すべきでないか、する方法があるんではないかということを議論したんですが、これは国民的に非常に注目している問題でございます。
 実は、私、昨日の予算委員会で不良債権問題を取り上げたときに、経済の不良債権だけではなくて政治的不良債権というのがある、それは直接償却が始まったということを言いましたら、議員席からそれは森政権のことかというやじがあったんですが、私は、いや、森政権のことじゃなくて、このKSDのことでございまして、いわゆる幽霊党員、党費が十四億とも言われているんですが、この問題こそ政治的不良債権の最たるものだと思っているんです。個別な事件でございますのでこれ以上申し上げませんが、この問題が立件できないとすれば、非常にやっぱり残念だというか大きな問題がある、私たちはそういうことがないように期待しているということを申し上げて、終わります。
#135
○委員長(日笠勝之君) 以上をもちまして、平成十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#136
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#137
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に人事院事務総局人材局審議官潮明夫君、警察庁長官官房国際部長島田尚武君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、法務省入国管理局長中尾巧君及び外務大臣官房審議官天野万利君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#138
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#139
○委員長(日笠勝之君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#140
○佐々木知子君 午前に引き続きまして質問させていただきます。
 午前に治安の状況について伺ったんですけれども、その中で外国人犯罪がふえているのではないか、殊に重大凶悪な外国人犯罪がふえているのではないか、このことが治安を悪化していると国民が感じる一つの要因になっているのではないかという指摘もあったようなのでございますけれども、警察庁に対しまして外国人犯罪の現状というのをお伺いしたいと思います。
 外国人犯罪は、検挙しないと外国人なのかどうかというのがわからないという意味では、発生件数とか認知件数というのは恐らく把握は無理でございましょうから、検挙件数、殊にどういうふうな重大な事犯だとか耳目を引く事犯、凶悪事犯、そういうのが指摘できるかということなどについてお答えいただきたいと思います。
#141
○政府参考人(島田尚武君) 平成十二年中の来日外国人の検挙件数、刑法犯及び特別法犯でありますが、十年前の平成二年と比較すると、検挙件数では約四・九倍、検挙人員では約二・七倍に急増しております。その件数は三万九百七十一件、人員では一万二千七百十一人であり、そのうち不法滞在者が六千八百二十八人と過半数を占めております。
 特に近年、来日外国人によるいわゆるピッキング用具を使用した侵入盗犯が都市部を中心に大幅に増加する傾向にあります。平成十二年における来日外国人による侵入盗犯の検挙は六千三百九十六件、六百七十四人で、五年前、平成七年に比較して約二・五倍と増加しており、いわば国民が身近に強い不安を感じる犯罪がふえている状況にあります。
 また、平成十二年中における来日外国人の殺人、強盗、放火、強姦等の凶悪犯の検挙は二百四十二件、三百十八人となっており、五年前と比較してそれぞれ三七・五%、五八・二%増加しており、凶悪化の傾向が認められます。
 また、平成十二年中の刑法犯検挙件数をいわゆる共犯形態別に見ますと、複数犯が、日本人の場合には一六・七%であるのに対し、来日外国人の場合には四九・五%と、検挙件数の約半数が複数犯となっているのも特徴的であります。つまり、来日外国人による犯罪は組織的に行われる傾向が強いと言えようかと思います。
 このような来日外国人犯罪に対し、警察においては何と申しましてもこれを徹底的に検挙する、これが第一であります。そのためには、体制の強化、捜査能力の向上を図る必要があります。
 さらに、不法滞在者を減少させるため、検挙はもとより、入国管理局、海上保安庁、税関、厚生労働省等関係機関と連携を強化して、不法滞在、不法就労の防止や摘発を促進すること、そしてさらに、既に徐々ではありますが着実に成果を上げつつあるところの外国の捜査機関との協力、なかんずく中国捜査当局との協力、これを一層緊密にするなど、警察の総力を挙げた総合的な対策の強化に努めてまいるところであります。
 以上であります。
#142
○佐々木知子君 ありがとうございました。
 どんなふうに取り組むのかをお聞きしようと思いましたら、それまでお答えになってしまいましたので、次に行かせていただこうかと思います。
 いずれにせよ、外国人犯罪が非常にふえているというのは私も実感しておりまして、例えば中国人の組織的なすり犯罪というのもひところ随分言われました。今はピッキングというのを皆さんが非常に恐れているような状況にあると。ですから、警察は一つ一つ丹念にそれを摘発して強制送還、最終的に強制送還になりますけれども、処分するということに努めていただきたいというふうに思っております。
 摘発した場合に、外国人が受刑者になる場合が多々ございます。外国人受刑者の動向についてお伺いしたいんですけれども、その数がふえているのかどうか、そのようなことについてお答え願いたいと思います。
#143
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 いわゆる来日外国人、これは日本の国籍を有しない外国人のうち、永住者とか特別永住者、あるいは米軍関係者、在留資格不明者を除いたそういう外国人でございますけれども、その来日外国人受刑者の数は平成十二年末の時点でございますと二千七十七名となっております。統計をとり始めた三年前の平成九年末が千百三十二人でございましたので、それと比較いたしまして約二倍にふえているということです。
#144
○佐々木知子君 ありがとうございました。
 実は矯正の分野では分類処遇というのがございまして、余り一般には知られていませんけれども、F級というのがございますね。F級というのはフォーリナーというところから来ているんでしょうか。ただ外国人というだけではなくて、外国人であるがために日本人と異なる処遇が必要な人という形での分類だと思いますが、その外国人の中でF級と分類されている受刑者の数というのがふえているのかどうか、どういう形で、どこの刑務所なりそういうところに処遇されているのか、そこら辺についてお答え願いたいと思います。
#145
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 F級受刑者というのは、先ほど御説明しました来日外国人受刑者のうち、日本語の理解力もしくは表現力が不十分なこと、それから日本人と風俗、慣習を著しく異にすることにより処遇上特別の配慮を要する者というのを委員が今御指摘になったF級受刑者というふうに呼んでおります。
 このF級受刑者は、先ほど申し上げました来日外国人のうちのほとんどがそうでございまして、同じ平成十二年末の時点でその数は千九百二十二名というふうになっております。これも三年前と比べますと約三倍弱くらいにふえておりまして、十年前と比べますと約七倍ということになっております。
 F級受刑者は、当初、府中刑務所あるいは大阪刑務所といったところで、大きな刑務所ですが、そこで主に処遇するということになっておりましたけれども、だんだん数がふえてまいりましたので、それ以外の、例えばこの近辺ですと横浜ですとか黒羽ですとかあるいは名古屋、そういった大きな施設にも今多少分散して処遇しているという実情にございます。
#146
○佐々木知子君 何分にも日本語が話せなくて、そして日本人と処遇が異なる、風俗とかが違うので処遇が異なる人だということですから、処遇する側も非常に気を使うだろうと思われるわけなんですね。例えば食べ物もそうですし、それから通訳というのも要るでしょう。だから、医療問題というのが午前中にも出ましたけれども、があった場合にも日本人と異なる、またいろいろな気の使い方が必要だと思うんですけれども、その処遇に配慮を要する点というようなものはどのようなものがございますでしょうか。
#147
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 F級受刑者の処遇ですが、今御指摘になりましたように、例えば食事の面ですと食習慣の違いというものもございます。また、宗教上の理由によりまして、例えば豚肉とか牛肉が食べられないという者もおります。そういったF級受刑者に対しましては鶏肉等を用いた食事を給与するといったような配慮もしております。また、そのほか宗教面でも、各自の信仰する宗教の方式にのっとった礼拝とか、経典、数珠などの礼拝用具の使用も認めているというようなところで配慮しております。
 ただ、一番難しいのは、率直に申し上げまして、F級受刑者の処遇を適切に行うためには職員との間で十分な意思の疎通が行われることが不可欠でございますけれども、今日のように収容人員が大変ふえてきますと使用される言語も大変多岐にわたってくるわけでありまして、そういう状況下のもとで十分な意思疎通を図ることが必ずしも容易でないといったところに大変問題があります。
 各行政施設においては、職員の語学研修、そういったものを強化するなどしておりますが、そのほかにも、大使館とかあるいは関係機関等の協力を得て外国人被収容者と意思の疎通に努めているほか、また組織面におきましては、先ほど申し上げました府中刑務所とか大阪刑務所に国際対策室を設置いたしまして、行刑施設を初めとする全国行政施設に対する翻訳等を中心とした外国人受刑者の処遇の支援体制を整えている、そういうのが現状でございます。
#148
○佐々木知子君 ありがとうございます。
 処遇をする目的というのは、応報というのもございますけれども、その反面、犯罪者を矯正することによって平たく言えば真人間にして、そしてもとの社会に戻すということが矯正の基本的な役割だというふうに思っております。
 その意味で外国人というのは、来日外国人ですけれども、あくまでその後は強制送還されてその国で暮らすべき人であって、どうも日本がお金を非常にかけて矯正してやるという意味が、応報という意味だけならいいんですけれども、もう一つの意味ではもう余り意味がないというか、はっきり言うとむだじゃないかと言っている人も結構いると。私もそれについてはあながち絶対おかしいとも思わないわけなんですね、それがむだだと言っている意見に対して。
 私は、本来受刑者というのは、移送してその本国に戻してそこで真人間にするなりそれなりの矯正をすべきではないかというふうに思っておりまして、御存じのようにそれをやっている国というのもたくさんございます、私の知る限り。二国間条約を結んでもとのところ、本国に戻すということをお互いにやっているというような国もございます。日本では私の知る限り今のところそういう条約を結んでいないと思うんですけれども、将来的には私はそれをやるべきだと、前の委員会でも申しましたけれども、思っております。
 そういう取り組みについては今どのような状態にあるのか、それをお聞きしたいと思います。
#149
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 矯正処遇に当たりまして、今、委員から御指摘がありましたように、受刑者の社会復帰を図ることが大変重要であるということはそのとおりだろうと思います。そういった観点から、外国人受刑者の場合は、社会復帰する先は本国というか母国でございますので、そういうところに移送して処遇するという方が刑事政策的に見て意義があるということは全くそのとおりだろうと思います。
 私どもも、そういった観点から、国際受刑者移送制度につきまして、外国人受刑者の円滑な社会復帰等を目的といたしまして、本人の同意、両国の、両国というのは裁判国と執行国になりますが、そこの同意といったような一定の要件のもとにその者を母国に移送して刑の執行を行うことを内容とする、そういった国際受刑者移送制度について検討を進めているところでございます。
 この制度は、言語、習慣、生活様式、また先ほど申し上げました宗教といったような面でいろいろ相違がございますし、親族との接触の欠如というようなことから、外国人受刑者の受刑生活上の困難を除去しまして、その改善更生及び円滑な社会復帰を果たすというものでございますので、法務省といたしましては、先ほどの繰り返しになって恐縮ですが、刑事政策的な観点から意義があるということで、いろいろこの件に関する諸外国の法制、その運用について調査いたしました。その結果、我が国が欧州評議会の条約、正式に申し上げますと、刑を言い渡された者の移送に関する条約ということになりますが、そういうことを、加入することを前提に条約の実施に必要な国内法整備を行うため、現在、国内法の具体的な条文案をもとに関係機関と鋭意検討を進めているところでございます。
#150
○佐々木知子君 欧州評議会条約を批准されるのかどうかはわかりませんけれども、欧州評議会ですから、日本に来ている来日外国人で犯罪を犯しやすいというか、実際検挙されている人というのは、主にどちらかというとアジア系だというふうに私は認識しているんですけれども、この条約に批准したとしても、そこら辺のところはまだ漏れがあるというか、まだ今後考えないといけないと、そういうことでございましょうか。
#151
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 御指摘がございましたように、欧州評議会の受刑者移送条約の加盟国は、主にヨーロッパそれからアメリカを中心にした国が加盟しておりまして、アジア諸国はそこに加盟しているところはないわけでございますけれども、先ほど申し上げました受刑者移送の刑事政策的な意義というものを考えてみますと、これはできる限り多くの国との間で受刑者移送を行うのが望ましい、これにこしたことはありませんし、現在収容人員の多いアジアの諸国も対象として行うということは相当意義のあることだとは思います。
 ただ、しかしながら、そのためにはまず受刑者移送制度の円滑な導入ということが必要となってくるわけでございます。したがいまして、当面の政策としては、移送に必要な条件につきまして必要な調査を既に終えた国が多く加盟し、かつ国際的にも最も標準的な条約として安定した実績を上げておる欧州評議会の条約に加入することで、そのことによりまして、また国際受刑者移送制度の経験を踏まえた上でその対象を拡大していくということで制度の効果的な運用を図る方がよいのではないか、そのように考えております。
#152
○佐々木知子君 ぜひ今後とも前向きに取り組んでいただきたいと思います。
 次に、出入国管理行政の充実強化についてお伺いしたいと思います。
 これはちょっと午前の魚住議員の質問とも一部関連するというか重複することになろうかと思いますけれども、平成十三年度の法務省所管予算説明によりますと、出入国管理業務の充実を図る経費として三百二十九億二千百万円が計上されておりまして、この中に出入国管理業務のコンピューター化経費、不法滞在外国人対策の強化経費等が含まれております。
 所信表明の中にもございましたけれども、年間の出入あるいは帰国者の総数が約四千六百万人に達していると。随分多くなったなというように思うんですけれども、そうなりますと、出入国の審査というのは迅速でないとこれはもう滞ってしまう、それはもう当然のことなんですけれども、一方、不法入国者の上陸を阻止するためには、ただ迅速にやれば済むという問題でなくて、やはりそこはそこで適正な出入国審査が必要になってくると、この二律背反しそうなところをうまくやらないといけないということになりますけれども、現在どのような施策というのがとられているのか、それについてお伺いしたいと思います。
#153
○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおり、入国審査に当たりまして、そういった不法入国者をできるだけ排除する方策も考えざるを得ないところでございます。
 近年は海からよりも空から我が国に不法に入国する者の割合がふえている傾向にございます。そういうわけで、水際における厳正な出入国管理を行わざるを得ない状況下にあります。特に、近年は偽変造旅券等、いわゆる偽変造文書等を使いまして我が国に不法入国する事案がますます巧妙、悪質化してきておりますし、そういった偽変造の手口も精巧さを増しているのが現状でございますので、それらの発見につきましてはかなり十分なる対策を講じる必要があると考えているところでございます。
 こういう観点から申し上げますと、まずもって成田空港支局と関西空港支局におきまして、関西空港あるいは成田空港に来日する外国人につきまして偽変造文書の関係での対策室を設置しております。この対策室におきまして精緻な鑑識を行う体制を構築しているところでございます。偽変造旅券等を行使して不法入国をはかる者への対応の強化に努めているところでございます。
 そのほか、旅券偽造読み取り装置によるチェックを行いまして、要注意外国人を排除すべく厳格な入国審査を実施しております。
 さらには、最近、審査中の入国審査官の死角をつきまして不法入国をはかる、いわゆるすり抜け事案というものが横行している状況にかんがみまして、審査台にミラーを設置してその排除に努めているところでございます。もちろん関係機関あるいは航空会社との協力関係の強化を図ることも重要だと考えております。
 さらには、空港におけるパトロール体制を整備充実させることもこれらの不法入国の防圧に非常に効果があると考えておりますので、そういった面からの対応も今後進めていきたいと思っております。
#154
○佐々木知子君 パスポートの偽変造、確かに本当に精巧なのがたくさんあるというのは私もよく知っているんですけれども、これが多い国というのはどこら辺ですか。それと、これによって年間の上陸拒否をしている数というのはどれぐらいでしょうか。
#155
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 まず、パスポートの偽変造、これは変造も含めて申し上げますが、パスポートの本体そのものの偽造から、パスポートに押捺する証印とか査証等の偽造、変造というものもございます。
 入国審査において発見されましたそういった偽変造文書は、平成十一年におきましては二千百三十一件に上っております。偽変造の精巧さでだんだん発見が難しくなっている関係上、昨年には若干減っておりまして千八百七十八件にとどまっております。
 これらのうち、偽変造旅券本体につきまして発見したものが、平成十一年では千八十一件、昨年でこれも減ってまいりまして八百六十七件ということでありますけれども、全体的に見ましても半数がパスポート本体の偽造というゆゆしき事態になっております。
 御質問のありました国別の関係で申し上げますと、これは年度によって変動がございまして、平成十一年は中国が一番、二番手にタイ、三番手にイランという順番だったわけでありますが、昨年になりますとイランが一番、中国が二番、タイが三番と。いずれにいたしましても、この三国で大体半数を占めている状況でございます。これらにつきましては、原則といたしまして上陸拒否あるいは強制退去手続をとっているところでございます。
#156
○佐々木知子君 そういう国に対してこういう人たちを送らないでくれという、そういう申し入れみたいなことはなさっておられるんですか。
#157
○政府参考人(中尾巧君) 最近、ちょっと手元に資料がございませんけれども、中国政府に対してはこの辺の関係での申し入れをしております。その他のところにつきましても、私の記憶で約六カ国ぐらいございますけれども、領事間協議をいたしまして、その当該二国間におきましてそういった申し入れをやっているわけでございます。
#158
○佐々木知子君 午前中の質疑の中にもありましたけれども、外国人犯罪をとめるためにはオーバーステイだとかそういうものの潜在的な数というのを減らすということが基本的にあろうかと思います。
 今、成田空港と新関空のことを述べられましたけれども、空から入ってくるというのは今各地の空港で、いわゆる国際空港ではないにしても、いろんなところから結構入ってきます。それから、日本は島国ですから、港からでもやっぱり入ってまいります。そういうのを全部水際で食いとめるというのは非常に大変なことだろうと思いますけれども、それはやはり鋭意努力をして、できるだけ水際で上陸をまず防ぐというところからぜひやるべきだというふうに思っておりますので、今後ともお取り組みをよろしくお願いしたいと思います。
 午前中の魚住委員からも指摘がございましたけれども、どうも入国警備官というのが足りないのではないかと私もずっと思っております。この中に二十四人の増加要求がございましたけれども、どうも朝聞きましたら計画削減が十九人あって、実際の増員はたった五人だけだと、ここ十数年で八百人ぐらい増加しただけだというふうに伺ったわけですが、一方、不法滞在者というのはもう飛躍的に何倍という数でふえていて、とてもこれではネズミをとるのに猫が足りないという、そういうような状況で、これでは私は間に合わないのではないかと。
 今いろんな意味で経費削減しろとか言っておりますけれども、国民は必要なところに予算を使うことについてだれもそれは非難しないので、要らないところに、何に要らないとははっきり申しませんけれども、そういうようなところに使うことについて批判をしているのであって、私は使うべきところにはやはり使わないといけないというふうに思っております。入国管理行政をしっかり強化するということはやはり警察をしっかりすることと相伴うぐらいに大事なことだというふうに国民に認識があると思います。
 どうも人数が足りない、この人数を要求していくというような、もっと欲しいとか、そういうような率直な御意見についていかがでしょうか。
#159
○政府参考人(中尾巧君) 私どもの本音を申し上げれば、我が国の入国審査体制あるいは出入国管理体制の人的、物的体制というのは国際的に見ましても非常に脆弱であることは否めないことでございます。
 例えて申し上げますと、国際空港が一つしかありません香港におきまして大体五千人を超える入管職員がおります。我が国はその半分の二千五百ぐらいでございますので、そういった面でも絶対的に少ない体制で精いっぱい私ども努力をしておるところでございます。
 どういった形で体制整備を図っていくか、今後とも関係の皆様方のお知恵をちょうだいし、あるいは関係諸機関と連携をとりながらその辺のところを真剣に考えていきたいというふうに思っております。
#160
○佐々木知子君 これは産経新聞の今月十六日の記事ですけれども、「法務省 不法外国人収容能力を倍増 摘発強化しても焼け石に水」であると。不法滞在外国人の摘発を強化するため、港区に新庁舎を建設、収容能力を四百五十人から八百人にほぼ倍増する。しかし、東京入国管理局に平成十一年に寄せられた約六千三百件の情報提供に対し、摘発できたのは約二割だと。東京入管に言わせると、収容施設はいつもいっぱいなので、摘発しても収容できないと。そういうようなことが出ているわけなんです。
 これではとても日本の治安は保たれないのではないかというふうに思われるわけなんですけれども、このような物的な施策についてはどのようにお考えですか。
#161
○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおりの状況ではございますけれども、私どもといたしましては、これに対応するために平成五年以降順次入国者収容所等の整備を続けているところでございます。平成五年には東日本入国管理センター、平成七年には西日本入国管理センター、平成八年には大村入国管理センターを順次整備いたしましたし、その後も各センターの収容施設の拡充等を行っているところでございます。
 現在のところ、全国の収容施設の定員は合計約二千四百人ということになっております。特に首都圏を中心といたしまして収容施設等が不足しておるような現状でございますので、先ほど委員御指摘のとおり、新しくできます東京入国管理局の新庁舎によりまして定員が四百五十のところから八百人ということでふえるわけでございますけれども、今後も鋭意収容施設の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
#162
○佐々木知子君 実際、摘発してから送還までの時間というのはどれぐらいかかるんでしょうか。私たちなんかは摘発したらすぐ送還したらいいじゃないかというふうに思うんですけれども、もしそれが早く送還できないんだとしたら、その理由とかについてお答え願いたいと思います。
#163
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 退去強制令書を発付された者につきましては、法律上も速やかに送還するということにされているところでございますが、実際に送還に当たりましては、被退去強制者の中には、帰国のための費用が準備できない、あるいは帰国に必要となる旅券を所持していない等々の理由から送還に時間を要する者が少なからずいるのが現状であります。
 したがいまして、速やかな送還が困難な場合がございますが、私、手元に資料がございませんが、記憶するところによりますと、大体二週間前後で基本的には送還されているのが実情かと思います。もちろん当局といたしましては、帰国費用の準備が不可能と判断された場合には国費によって送還を実施したり、旅券を所持しない場合には相手国政府と折衝いたしまして旅券の早期発給を受けるなど、極めて迅速な送還に努めているところでございます。
#164
○佐々木知子君 不法上陸ないし密入国というのは水際で防ぐのが肝要であると。日本は島国だし非常にそれは大変なんですけれども、そうなると税関なり海上保安庁なりの関係諸機関の有機的な連携というのが必要だというふうに考えておりますが、どういう施策というのをとられておりますでしょうか。
#165
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、密入国の防止を図るためには関係諸機関との連携は不可欠であるというふうに認識しておるところでございます。こういうような観点から、種々の連携施策をとっているところでございます。
 まず、その一つでございますけれども、船舶による集団密航事犯につきましては、私ども入国管理局と警察庁、法務省刑事局、それから海上保安庁との間で効果的な防圧を図るための対処方針を取り決めまして、こういった事案について適切かつ有効的な検挙に向けて努力しているところでありまして、それなりの成果が上がっているところでございます。
 その二は、警察庁、海上保安庁のほか、検察庁、外務省、財務省及び厚生労働省の七省並びにこれらの地方機関の実務担当者によります入管法違反事犯の防止及び摘発対策協議会を開催しております。こういった協議会を通じまして、有機的にそれぞれの関係機関が情報交換をしております。さらには、私どもと警察等の関係機関との間で毎年合同摘発を実施して、効果的に摘発を行うように努力をしているところでございます。
 今後ともさらなる連携を密にして摘発に向けて努力したいというふうに考えております。
#166
○佐々木知子君 ありがとうございました。
 次に、司法制度改革に移りたいと思います。
 大臣の所信表明にもございましたけれども、大臣はことしを司法改革元年と位置づけておられるということでございます。そのしょっぱなに、福岡事件と称されておりますけれども、ああいうような検察、それから司法の威信を失墜するような事件が起きて、非常に大臣も心外だろうというふうに思います。私も元検察にいた者として非常にこの事件は深く受けとめざるを得ないものでございます。
 同僚議員からも前回から、きょうもそうでしたけれども、いろいろと御質疑があったとは思いますけれども、私もいろいろと関心もございますし、聞かせていただこうというふうに考えております。
 司法制度改革というのはいろんな側面というのがありますけれども、要は国民にとって司法が使い勝手のいいものであること、アクセスがいいものにしようというようなことが基本にあるのだろうと思います。国民の司法参加ということでよく論じられますけれども、法曹の意識というのが国民と違うところにあったのではいけない、できるだけ国民と近いものであって、要するに常識が通じるような社会であって、そしてということなんです。
 国民の司法参加といえば、一般的にはよく陪審制、参審制を導入するかどうかというような次元で論じられておりますけれども、今回の福岡事件などを見ておりますと、まさに検察や裁判所の感覚がどうも国民の常識というのか意識と遊離しているのではないかということを如実に見せつけたという意味において私は深刻だと思っている次第でございます。
 私は、この事件が、最初は朝日新聞二月二日のスクープということでございましたけれども、明るみになったときに、以前検察に奉職していた者としてまず思ったことは、検事正は何をしていたのだと思いました。次席検事はもちろん検事正のもとにあるものでございますから、検事正が事前報告を受けていなかったはずはないし、もし事前報告を受けていれば適切な指示をしたはずであるし、もし事後報告だったとしてもその時点で適切な指示をしたはずだと、それがまず浮かんだことなんです。
 実際に、これは調査報告にもございますけれども、事前にやはり報告を受けていた、ただその指示というのが中途半端な指示であった、事後にも適切な指示をしなかったと。かつまた、実際に国民の不評を買ったのはあのインタビューの内容で、かなりうそをついていたということで、検事がうそをつくんだったら被疑者はもっとうそをついていいのではないかというふうに思うのではないかと思うんですけれども、そういう意味でも非常に検察の威信を失墜させたと。インタビューをやらせたというのは、もちろんこれは検事正が容認していたことであるだろうし、指示であるだろうしということで、どうしてこういうことになったのだろうかと。
 今回、次席検事につきましては六カ月の停職処分、これでも軽いと言う方もおられますけれども、私はそれは非常に厳しい内部的な処分だっただろうというふうに思います。解せないのは、検事正が、こちらはもちろん懲戒処分を受けているんですけれども、次席よりもはるかに軽い処分であったと。
 こういう組織的なものとしては、ヒエラルキーにある者として、例えば工場長が実際の現場の責任を負っていたとしても、だからといって社長は報告を受けていて何もしなくてもよかったのか、それで工場長よりも軽くていいのか。私はとてもこれは組織として成り立たないのではないかというふうに思っているわけなんですけれども、これについて、法務大臣、何か御所見がございますでしょうか。
#167
○国務大臣(高村正彦君) 渡部前検事正はみずから積極的に被疑行為を行ったものではなく、部下職員を指揮監督すべき職務を怠ったというものでありまして、渡部前検事正としては、山下前次席はベテランの検事であることから、警察の意向等の確認を指示するまでもなく、当然、山下前次席において行うものと考えていた等の事情が認められるわけであります。これらの事情に加え、これまでの懲戒処分例を総合的に判断して、渡部前検事正に対して一月間俸給月額の百分の十の減給処分にしたものであり、その職責に応じた適切な処分をしたものと、そういうふうに考えております。
 警察に言わないで私だけが勝手にやりますよと、こう報告したわけじゃなくて、常識からいって当然、送致前の事件で警察と相談した上そういうことをした、検事正は少なくとも事前にはそう思い込んでいた、こういうことであります。それでも、その時点でしっかりと、ちゃんと警察と相談してやれよとか、被害者の意識を確かめろよとかすべきであったといえば言えるわけでありまして、その点も問題にしているわけでありますが、さらにその後、どうも山下次席検事が警察と相談もなく独自にやったらしい、そういうことが渡部検事正がわかってからもそれに対して適切な措置を事後的に言わなかった。そこを特に重く見まして、全体として一月間俸給月額の百分の十の減給処分、これは全体の今までの処分例から比べれば決して軽きに失するということは私はない、こういうふうに思っております。
#168
○佐々木知子君 前例とか申されるんですが、これは前例がなかった事件のはずでございまして、それに合うような前例は恐らくなかったのではないかと思いますけれども、今、法務大臣も言われました福岡高検検事長と次席検事の処分については、この調査結果を精査いたしますと、どうも山下次席が当然警察ともあらかじめ協議して、その了解を得た上で告知に及んだものと理解しているから許されるのだというか、いいというのか、警察と協議をしたはずだということがどうも理由になっているんです、としか読めないんですよ。
 となると、警察と協議をしていさえすればいいのかというのは、私は多分、私がもし検事であれば多分そうだったというふうに思ったかもしれませんが、今はちょっと離れた立場になって国民の目から見た場合に、ではこれは、一般の方が言うのは法のもとの平等に反しているというふうに皆さんが言われるんですね。実は私もそう言われるまで余りそういう認識がなかったというのはちょっと恥じなければいけないんですけれども、これは判事の妻だったから要するに警察と協議をすべきだというふうに考えられるわけで、もしそうじゃなければ警察と協議して云々というふうにならないと。
 そういうことにおいて、これは国民の意識からすると判事の妻だから特別扱いをしたということであって、やはりこれは余り理由にはならないのではないかと、大臣、そういうふうには思われませんでしょうか。
#169
○国務大臣(高村正彦君) 判事の妻であったということも一つの要素になっているわけでありますが、さらにより大きな要素として、非常に特異な事件、ある意味で非常にセンセーショナルな、関心を呼びやすい事件、こういうものについていろいろな当事者あるいは関係者、そういった者が結果として名誉を害されるおそれがあるというようなこともあって、そういうことについて被害者の感情等もきっちり確かめないでやったこと、これは非常に悪いわけでありますが、それは警察と協議するということと密接な関係があるわけでありまして、そういったことで今後さらに被害が拡大することを抑える、あるいは示談を進める、あるいはまさにこれも直接捜査情報を告知した相手が裁判官であったというある意味での身内意識でありますが、一方では高い職業倫理観に期待してとか、そういうもので証拠保全をしてもらいたいとか、そういったことも含めて事件の適正な処理という考えというのは必ずしも身内意識だけあるいは適正な目的がなかったと、こう言い切れるかというと、必ずしもそうでもないんだろうと思います。
 あのときに警察ときっちり協議をし、あるいは警察はそのときに被害者感情などをある程度つかんでいたわけだと思うので、そうしていれば私は全体としても余り変なことは起きなかったんだろうと思いますが、その時点でこれについて警察と協議した上でそういうことを、被疑者の妻に一定限度の情報を告知して被害の拡大を防止する、そして示談をした上で事件を適正に処理する、こうしたことをあながち捜査目的に反していたと断ずるには私はちゅうちょを感じます。
#170
○佐々木知子君 反論したいこともございますけれども、時間の関係もありますので次に進ませていただきます。
 法務大臣の発言要旨の中で、検察官の意識改革を図らなければと。まさしく私もそうだと思いますけれども、具体的にどのようにされるおつもりでしょうか。
#171
○国務大臣(高村正彦君) 検察官の意識改革を図る方策といたしましては、検事を一定期間市民感覚を学ぶことができる場所で勤務させることを含む人事・教育制度の抜本的な見直しを図る必要があると考えております。その具体的な勤務場所としては、弁護士事務所や民間企業等を考えております。
 また、幹部を含む検察官が犯罪被害者の心情や第一線で汗を流して活躍している警察官の活動等に理解を深めるために、例えば警察官との意見交換会を開催することなどを考えております。さらに、部内研修等の充実強化を通じて、検察官が独善に陥ることを防ぐとともに、検察官としての基本的あり方についての教育を徹底することも必要であると考えております。
 今後、これらの諸方策については関係機関と協議しつつ、その具体的内容等について検討してまいりたいと考えております。
#172
○佐々木知子君 ぜひ検察官の意識改革に努めていただきたいと思います。それだけの権力を持っております、非常な権力を担っているわけですから、それ相応の意識というのを自戒して持っていただく、一人一人に持っていただくことが司法制度改革の一つの道だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、裁判所ですけれども、今国会で裁判官三十人の増員を要求しておられます。裁判官というのは、刑事もそうかもわかりませんけれども、民事事件になりますと一人で二百件も三百件も抱えて、よくまあ間違わずにこの事件はこうだというふうに把握できるものだと感心するぐらいな忙しい裁判官がたくさんおられるのを私もよく知っているんですけれども、そうしますと、記録をうちに持って帰ってずっと読んで、土、日もずっと判決書きをやっていってと、それだけに追われているのでは、到底私は、やはり人間としてもかなり、バーンアウトと言うんですか、燃え尽き症候群みたいになってしまって、まともな感覚を維持する時間とエネルギーも与えられていないのではないかというふうにずっと憂えていたものなんです。
 古川判事の事件につきましても、これ典型的なまじめな裁判官だというふうに思っている方も多いと思う。私も実際、これは典型的な裁判官なのではないかというふうにも思うんですが、これでは実際本人も不幸ですし、それに、裁かれるというか、関係者もきっと不幸だろうというふうに思うわけで、人手が足りないというので、実際に余裕がないということについて、今回、裁判官三十人の増員ですけれども、こんなので本当に足りるのかどうか、どこの部署にどれだけ配属するかというようなバランスなんかもあると思いますけれども、裁判所にちょっと御意見をお聞きしたいと思います。
#173
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 裁判所といたしましては、これまでも事件動向等を踏まえまして着実に裁判官の増員を続けてきておりまして、平成八年から十二年度までの五年間で見ましても百五十五人を増員しております。これらを東京等の大都市の繁忙庁に重点的に配置するなどの手当てを行ってきたところでございます。
 一般に、裁判官の忙しさという観点からは、お話にありましたように、地方裁判所の民事訴訟事件がよく取り上げられますが、地方裁判所の民事訴訟事件はバブル経済の崩壊以降、急速に増加いたしまして、特に繁忙でありました東京地裁では一時は裁判官一人当たり手持ち件数が二百件台の後半にまでなってかなり繁忙な状況が見られましたけれども、その後、着実な裁判官の増員を続けてまいりました結果、東京地裁でも一人当たりの手持ち件数は二百件程度までに減少してきている状況になってきております。その意味では、現在ではかつてほどの大きな負担がなく処理できるような状況になっていると思います。
 今後もより一層、適正迅速な裁判の実現を図っていくために、司法制度改革審議会での審議や事件の動向等も踏まえまして、裁判官の増員、適正な配置等に努めてまいりたいと思っております。
#174
○佐々木知子君 先ほど大臣に検察官の意識改革というふうに伺ったんですけれども、裁判官もぜひ意識改革をしていただかないとというふうに考えておるものでございます。
 今回、ストーカーで有名になりました桶川事件で、どうも裁判官がいつも居眠りをしているというので被害者の方が訴えておられましたけれども、実はずっと裁判に携わっている私などにしてみれば、特に高裁で右か左の裁判官がしょっちゅう寝ているというのはいつも見なれた光景でございまして、右か左かどちらか寝ているので、要するにどっちかが起きているのであの人が判決を書くんだよねということがわかるということを言っていたというぐらい、もちろん中には非常にまじめな裁判官もたくさんおられるんですよ、でもそうじゃない方もやはりかなりおられるのが事実ではないかと。
 ただ、それは本当に被害者というか当事者にとってみれば非常に失礼なことでして、彼らにとってはもう一生に一度か二度かあるようなないような事件で、当事者の裁判官が、いかに判決を書かないにしても、やはりじっと起きているということはもうそれは最低限大事なことで、それが守られていないということも一つ裁判官の意識が普通からは離れていっていることではないかというふうに思うわけなんです。
 裁判官の意識改革は、若い裁判官を新聞社に出したりとか、いろいろ会社に出したりとか、いろんなところで研修させているということもよく知っておりますけれども、いろんな意味での意識改革については裁判所はどのようにお考えでしょうか。
#175
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 御指摘のようなことが報道されまして大変残念、遺憾なことだと思っております。
 あの報道の件はちょっと本人の健康状態等の問題もあったようでございますが、いずれにしてもそういうことがあること自体、非常に裁判の信頼に対する影響があることだというふうに思って残念に思っております。
 お尋ねの意識改革ということでございますけれども、裁判官が先ほどお話にありましたような常識を備えた者でなければならない、最近では市民感覚という言葉をよく使われるようでございますけれども、単に事件処理に直接必要な専門的知識、能力だけではなくて、それは当然として、社会の実情一般に広く通じる広い視野、高い見識というものを身につけるということがますます強く求められていると。こういうことは一義的には本人の日々の努力、自己研さんということだと思いますけれども、裁判所の司法行政サイドでもこういうものを、自己研さんを助けるという方策を充実していかなきゃいけないと思っております。
 お話がありましたように、裁判官を裁判所外に出してそこで生きた社会現象に接してもらって、裁判所を外から見てもらう、そういうことが一番やはり我が身を振り返るということで非常にいいことだと思いまして、民間企業へ出しましたり報道機関へ出しましたり、あるいはほかの行政省庁へ出したり、それから留学して海外から見るということもまたそのような観点から有益だろうと思います。司法研修所でも、単にそういう裁判実務のことだけではなくて、法律以外のいろいろな観点、社会一般の問題について研修を充実するようにしております。
 今後とも裁判官がそういう広く社会一般の実情について関心を持って、いわゆる市民感覚というものからかけ離れることのないように努めていく、そういう意識を涵養するように私どもの方でもいろいろと配慮をしていきたいと思っております。
#176
○佐々木知子君 ちょっと漠然とした感じで、具体例としてよくわからなかったんですけれども、ぜひ意識改革というか、市民感覚、常識を持った人が裁判官でいられるように、任官のときからの問題もございましょうし、その後の教育の問題もありましょうし、余り管理体制で締めつけみたいなのもきっとよくないことだろうと思います。
 いろいろな意味で日本の司法というのは、ほかがいろいろと権威が落ちている中で唯一と言っていいぐらいまだある程度は権威が保たれていたところではないかと思いますが、こういうような事件が起きてみて、本当に失墜したものを取り戻すというのは、失墜させるのは簡単ですけれども、非常に難しいことだと、これからの不断の努力というのがこれまでにも増して求められていることだと思いますので、ぜひ努めていただきたいというふうに思っております。
 時間の関係で、検察審査会というのは、日本では陪審制も参審制も今のところとられておりませんので、ある意味じゃ唯一の国民の司法参加と言っていいのではないかというふうに思われるわけですが、その権限を今回強化する方針というふうに伺っております。これは具体的にどういうことでございましょうか、大臣にお伺いしたいと思います。
#177
○国務大臣(高村正彦君) 検察審査会の一定の議決に法的拘束力を認めることでありますが、公訴権の行使に民意を反映させ、検察官が独善に陥ることを防ぐとともに、検察に対する国民の信頼と理解を得る上で大きな意義があることから、これを導入することが相当であると考えております。
 この点を含め、検察審査会制度の具体的なあり方につきましては、現在、司法制度改革審議会において御議論されているところでありますが、例えば審査機能の充実を前提とした上で起訴相当の議決に直接公訴提起の効力を認めることなどが考えられるところだろうと思っております。
#178
○佐々木知子君 審査会の判断に拘束力を持たせるというのはそれは結構なんですけれども、そのためには審理の強化というか充実というか、それが正しい審理の内容でないといけないと思うので、その担保方法などは考えておられますか。
#179
○国務大臣(高村正彦君) 検察審査会の審査機能の充実、適正化のための具体的方策といたしましては、例えば検察審査会が公訴に至る効力のある議決をする場合には必要的に検察官から意見を聴取しなければならないとすること、同審査会の適正かつ充実した審査に資するため、検察官において証拠評価や不起訴処分の理由等を説明することが必要であると考えた場合には会議に出席し意見を述べることができるものとすること、同審査会に法律専門家をリーガルアドバイザーとして配置し適切な助言を行わせることなどが考えられると思います。
#180
○佐々木知子君 ありがとうございました。
 民事、刑事の基本法制の集中的整備ということも所信表明の中にございました。
 簡単にお伺いしたいんですけれども、民法や商法というのもまたこれも非常に古い法律でございまして、平仮名ですら書かれていない、文語体であるというのが、全部というわけではないですけれども、一部に残っているわけですね。そうなると、国民がちらちらと開いても、何を書いてあるのかよくわからない。特に最近の人たちは国語力も落ちておりますし、そんなものは読めないというような人がほとんどというぐらいございますから、これは少なくとも平仮名なり口語体にして、一般国民が読んでまず何が書いてあるかというのがわかるような、私は特に基本法というのはそうじゃないといけないというふうに思っております。
 平仮名・口語体作業をやるということを書かれておりまして、もっと前から本当はやってほしかったなというふうに思うんですけれども、この見通しというのはどのようなものでございましょうか。
#181
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘の点につきましては、私ども自分の所管の法律を使う立場におきましてもかなり理解が難しくなってきている、特に若い方はそうだろうという感じがいたします。その必要性につきましては私ども十分承知をしているところでございます。
 民法につきましては、第一編から第三編はまだ片仮名でございますけれども、平成三年から五年間かけまして研究会の報告として取りまとめているところでございます。それから、商法につきましては、平成五年から研究を始めているんですが、相当分量も膨大、それからしょっちゅう改正になるという点もございまして、まだ研究続行中ということでございます。
 なるべく急いでこの現代語化をしなければならないというふうに私ども承知しておりますけれども、最近、社会経済構造改革に伴いましてさまざま実質的な改正が次から次へ求められております。まずはその改正をきちっと仕上げまして、その後なるべく可及的速やかにこの作業に着手したいというふうに考えております。そういう点で、我々としても喫緊の課題だということでございますので、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
#182
○佐々木知子君 あと、酒酔い運転等による業務上過失致死傷事件についての刑法改正の見通しなどについて伺いたかったのですけれども、時間が参りましたのでお答えは結構でございます。
 いかんせん、刑法ができたのは明治四十年代と、もう九十年以上の昔になりまして、あの当時、交通事故による業務上過失致死傷というのは恐らく刑法典をつくった人の頭の中にない、そのころはそんな車というのがなかったような時代ですから。だから、酒酔い運転だとか、危険を承知で乗っているような行為について、もともとあれは適用があるようなものではなかったと思います。社会の要請も非常にありますので、できるだけ早いうちに適正な立法行為ができるように、当局の方としては努力していただきたいと思います。
 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
#183
○竹村泰子君 大臣は所信の中で、人権擁護の推進についてということで、二十一世紀は人権の世紀だというふうにおっしゃっておられます。人権擁護、人権救済制度の確立のための施策の実現を着実に図っていきたいと言っておられます。
 そこでお伺いいたしますが、この間、定住外国人の地方参政権法案の成立が難航しております。その関連から、日本では両親が外国籍であれば三世、四世、五世になっても外国籍であり続けるという国籍法と現状の矛盾の問題が提起されております。
 きょうは、今日までの帰化制度の問題点を、三月八日、九日に国連欧州本部で行われた人種差別撤廃条約の委員会による日本政府の報告書審議と、三月二十日、同委員会が採択した日本への懸念、勧告に関連して質問したいと思います。
 条約委員会による政府の報告書審議の目的というのは、締約国に委員会の経験を提供して、そして締約国がこの経験を活用して国際的義務を果たせるようにするための締約国政府代表との建設的な対話だというふうに言われております。それですのに、日本政府は報告書において現実を隠ぺいしと言うと変ですが、言葉が強いかもしれませんが、覆い隠し、そして委員会でも事実を述べなかったと私には思える部分が多々ございます。その端的な例が帰化の際における名前の変更であります。
 折しも朝日新聞に「イルム」という、大臣もごらんになっていると思いますが、「名前(イルム)」という特集が毎日大きく組まれている。私たちは名前を例えばちょっと一字間違って書かれたりしてもとても不愉快に思いますけれども、名前というのは事ほどさようにその当人にとっては大事なものであると思います。
 政府の報告書は、五十一段落のところで、「在日韓国・朝鮮人の中には、その本名を名乗ることによって起こる偏見や差別を恐れ、日常生活において日本名を通称として使用する場合もみられる。政府では、このような人類平等の精神に反する誤った偏見、差別意識が依然として一部に存在することを憂慮している」と記していらっしゃいます。しかし、戦前、朝鮮人の名前を日本式氏名に変える同化政策を考え出し、そしてそれを半世紀以上にわたって進めてきたのはまさに政府であります。
 私は質問主意書を何回かこの問題でも出しておりますけれども、昨年の第四〇号の質問主意書への七月十四日の回答では、日本人らしくない氏名を使用することにより我が国社会に日本人として定着する上で支障が生じるおそれがあるとの考えから、帰化行政において帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するよう指導していた時期もあったが、一九八三年からそのような指導は行わないこととしたとしていらっしゃいます。
 九八年九月十八日、八月十日提出の質問書にもそのようにお答えになっていますが、なぜそれをそのように正直に記述なさらなかったのでしょうか、国連への報告書に。
#184
○国務大臣(高村正彦君) いわゆる人種差別撤廃条約の締結国は、この条約に基づき設置されている委員会による検討のため、この条約の諸規定の実施のためにとった措置に関する報告をすることになっております。
 平成十一年の我が国の報告におきましては、帰化後の氏名に触れていないのは御指摘のとおりであります。かつては帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するよう指導していた時期もありましたが、これは在日韓国・朝鮮人に限らず、帰化の申請をする外国人一般に対して行っていたものであります。
 また、現在の我が国の帰化実務においては、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するような指導は行っておりません。今、委員もおっしゃったように、昭和五十八年以来こういう指導を行っておりませんので特に必要ないと思ったわけでありますが、過去にさかのぼってしていたと書いた方がよかったかどうかちょっとわかりませんが、少なくとも現在はしていない、こういうことでございます。
#185
○竹村泰子君 現在はしていらっしゃらないのはわかるんですけれども、これまでは敗戦後ずっとそういう指導をしてきたということ、そして最近おやめになって、そういう指導はしていらっしゃらないんですけれども、八三年からですね。それまではしておられたんですよね。
 そこで、国連の人種差別撤廃委員会では、ロドリゲス、ディアコヌ、デクート、ソーンベリー各委員がこの問題を指摘したのに対して、政府は帰化による日本国籍取得に当たって日本式氏名の変更を行う必要はないと答弁しておられます。
 九三年十月の規約人権委員会の第四十九会期でも、帰化に際して日本風の氏名に改めなければならないという法律上の規制もないし、法務省として日本風の名前を使うようにという指導はしていないと答弁しておられます。
 では、なぜ一九五二年以降に、帰化により日本国籍を取得した在日韓国・朝鮮人のほとんど、これは二十四万人ぐらいになると思いますけれども、ほとんどが名前を日本名に変えているのでしょうか。
#186
○国務大臣(高村正彦君) 現実に帰化者が帰化後の氏名として日本人らしい氏名とすることが少なくない現状にあるということは御指摘のとおりだと思います。これは在日韓国・朝鮮人の方がその本名を名乗ることによって起こる偏見や差別を恐れることもあるかもしれません。あるとすれば、そういう状況というのは非常によくないことだと思っております。
 また、帰化する以前から在日韓国・朝鮮人の方は通称名、日本名を名乗っていることも多いわけでありまして、日本人らしい氏名とすることが社会生活上便宜であると考える場合が多いことなどによるものではないか、そういうふうに思っております。
#187
○竹村泰子君 やっぱりちょっとよくわからないんですけれども。
 それでは、現在、各地方法務局が作成、配布している帰化許可申請の手引というのがございます。帰化後の氏名欄、通称名欄を維持して、その記入例では帰化許可申請者の姓名と帰化後の氏名を一〇〇%違ったものにしている。していますか、どうですか。
#188
○副大臣(長勢甚遠君) 御指摘のように、帰化許可の手引中の提出書類、帰化許可申請書の記載例には帰化前の氏名欄と帰化後の氏名欄に異なる氏名が記載されておることになっております。
#189
○竹村泰子君 それはなぜなんですか。
#190
○副大臣(長勢甚遠君) これは、帰化許可申請者の大半が、先ほど来お話がありますように、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用することを希望しておるというのが大半であるという実情に合わせてこのようにしているだけのことでございます。この手引におきましても、帰化後の氏名は自由に定めることができるということをわざわざ明記もしておるわけでございまして、日本人らしい氏名を誘導しようとか、そういう意図があったり、そういう指導をしておるということは全くございません。
#191
○竹村泰子君 その手引で、帰化後の氏名の文字は従前の通称名をそのまま用いても任意に新しい氏名を用いても差し支えありませんと、これは那覇法務局の戸籍課の帰化申請の手引ですけれども、そういうふうに書いてあるんですが、なぜ民族名の変更を前提とした記述をしているのでしょうか、これは。
#192
○副大臣(長勢甚遠君) そういう趣旨は全くありませんで、その前段の方に、いずれも自由に定めることができるということを明記しておるわけでございますので、そういうつもりでこのように定めておる次第でございます。
#193
○竹村泰子君 外国、欧米諸国、主要国で結構ですけれども、帰化申請をするときにどういうふうになっているのか、お教えいただきたいと思います。
#194
○政府参考人(山崎潮君) 本日、突然の御質問でございますが、私どもちょっとその正確な調査は現在手に持ち合わせがございません。余り不正確なことを申し上げるのも問題がございますので、若干お時間をいただいて、幾つかの国、調べられる範囲で調べてみたいというふうに思っております。そういう点で、お許しをいただきたいと思います。
#195
○竹村泰子君 私、けさ早く申し上げましたけれども、そんなに時間がかかりますか。欧米五カ国ぐらいの主要国の帰化申請の手続のときに名前をどうしているのかというのがそんなに時間がかかりますか。
#196
○政府参考人(山崎潮君) けさちょうだいいたしまして、大使館の方、若干調査はいたしました。ただ、正確にどういう条文があり、どういう背景がありというところまで調べたわけではございません。大体どのような様子になっているかということを電話で確かめたという程度でございます。
#197
○竹村泰子君 その電話でお確かめになったことで結構ですから、どうぞ。
#198
○政府参考人(山崎潮君) 不正確だったらお許しをいただきたいと思いますが、調べた国はアメリカ、イギリス、ドイツ、韓国でございます。その各国の国民らしい氏名にする必要はないという扱いをしているようでございます。
#199
○竹村泰子君 そのままでもいいんですね。竹村泰子がフランスへ行って竹村泰子と申請してもいいわけですよね。そうでしょう。どうして日本はそういうふうに、通常と違って、日本名を帰化後の氏名として本来の名前と違うようにあらわして、表現して、そしてあたかも日本名にしなきゃ国籍が得られないよみたいな指導の方法をするんですか。
 大臣、どう思いますか。
#200
○国務大臣(高村正彦君) あたかも日本名としなければ帰化を受けつけないというようにしているという意識は私たちには毛頭ないわけであります。
 先ほどから私自身あるいは副大臣がお答えしているように、日本人らしい名前にするようにという指導は昭和五十八年以降行っていないということでありまして、変えなくとも一向に差し支えないわけでございます。
#201
○竹村泰子君 私の質問書に対しても、「日本人らしい氏名を使用しなくとも、必ずしも我が国社会に日本人として定着することが妨げられるものではないとの考えから、検討結果がまとまった昭和五十八年から、日本人らしい氏名を使用するよう指導することを行わないこととした。」と。八三年まではずっと指導があったということですね、これは。
 その辺の理由もお伺いしたいけれども、これは確かにおっしゃるとおり、日本人らしい名前にしたいという人もいると思うんです、中には。申請者の方で、私は日本の国籍を取るんだから、日本人らしい名前にしたいと。何だか太郎とか、そういう名前にしたいという人もいると思います。けれども、そうじゃなくて、本当にもう自分の名前を失うのはとっても嫌だけれども、でも事情があって日本人にならなきゃならないからどうしても日本的な名前にしたという人も八三年までにはたくさんいらっしゃると思うんですね。
 これは本人の選択なのではないでしょうかね。本人が選ぶことであって、国がそういう窓口で多分そういう指導があったと。私、現場に全部いたわけじゃないからわからないですけれども、恐らく国籍を取得するんだったらやっぱり日本人らしい名前にしなきゃだめですよというふうな指導を五十八年まではしていたんじゃないかと思うんですね。
 なぜそのようにしているのか、なぜ国籍取得と名前の変更をセットにしているのか。日本国籍を取得した者が民族名を日本式の名前に変えたければ、後で戸籍法第百七条一項により、名前について第百七条の二により家庭裁判所に申請するのが筋ではないんでしょうか。それで十分できるわけですよね。違いますか。なぜセットにしているのか。
#202
○副大臣(長勢甚遠君) 我が国に帰化された方については日本国民としてその氏名を定める必要がありますので、どの氏名をお使いになるかということをお決めいただくということでございまして、先ほど来たびたび大臣からも御答弁いただいておりますように、日本人らしい名前に変えるようにという指導はやっていないわけでございます。
 今、家庭裁判所のお話もございましたけれども、既に我が国に帰化された方についても戸籍法の条文によりまして家庭裁判所の許可を得て氏名を変更できるという制度がありますから、これによって氏名を変更するということも状況によっては可能ではないかと思います。
#203
○竹村泰子君 今回の人種差別撤廃委員会の最終見解は次のように記しています。「朝鮮民族が日本の国籍を申請する際、彼・彼女らの名前を日本人名に変えるという行政的、法的要求はすでにないことに注意しつつ、委員会は、当局が、」「申請者に対し、名前の変更を促し続けており、朝鮮民族は、差別を恐れてそうせざるを得ないと感じていることに懸念を表明する。個人の名前は文化的、民族的アイデンティティを基本的に表象するものであることを考慮し、委員会は締約国がこうした実践行為を防ぐために必要な手段をとることを勧告する。」というふうに勧告をしております。
 この勧告に基づきまして、従来の行政指導により不本意ながら日本式氏名に改めた人々、特に八三年以前、もとの民族名を回復する簡易的な手続、回復措置を導入する気がおありになるでしょうか、どうでしょうか。今、副大臣がお答えくださいましたが、戸籍法第百七条が定める、やむを得ない事由による氏の変更は煩雑な家庭裁判所への申請が必要で、一定の費用と時間がかかり、このような措置とは言えないと私は思いますけれども、何らかの形で簡易な手続による回復措置を導入するおつもりがおありになるでしょうか、どうでしょうか、勧告されておりますけれども。
#204
○国務大臣(高村正彦君) 氏名は人を特定するためのものでありまして、原則としてみだりにその変更は許されるべきものではないと考えております。
 一方で、現行法におきまして、今、副大臣が答えましたように、戸籍法第百七条第一項及び第百七条の二の規定により家庭裁判所の許可を得て氏名を変更できるという制度が設けられております。既に我が国に帰化した方についてもこの制度により氏名を変更することが可能ですので、特にこれらの方について簡易に氏名の変更ができるとする制度を設けることは適当でないと考えております。
 この勧告の趣旨も別にこういう簡易に氏名の変更ができる制度を設けるということを必ずしも書いているわけでないと思いますし、また「当局が引き続き申請者に氏名を変更するよう求めており、」というところは、「伝えられるところによれば、」と、こういう必ずしも断定したということでもないような書き方であります。当局が引き続き申請者に氏名を変更するよう求めるということがあればこれはとんでもないことで、私たちは昭和五十八年以来やってはいけない、やらないということを決めているわけでありますから、もしそういうような事例が本当に引き続いてあるということであれば、それに対しては適切な措置をとらなければいけない、こういうふうに思っております。
#205
○竹村泰子君 直接的な事例があるのかないのか私も全部調べたわけじゃありませんし、それから後ほどお聞きしますが、そういう調査はされていないんですね、特別に。
 この勧告は先ほど大臣はそういうふうに言っている勧告ではないとおっしゃいましたけれども、これをよく読みますと、「朝鮮民族は、差別を恐れてそうせざるを得ないと感じていることに懸念を表明する。」と、そして「個人の名前は文化的、民族的アイデンティティを基本的に表象するものであることを考慮し、委員会は締約国がこうした実践行為を防ぐために必要な手段をとることを勧告する。」と言っているんですね。
 先ほども、繰り返しで恐縮ですが、戸籍法百七条が定める氏の変更は物すごく大変な、家庭裁判所における煩雑な手続が必要で、費用と時間が物すごくかかるということから、何か簡易な回復措置を導入する気がありますかどうですかとお聞きしたんですが、今のお答えですと、そんな気はないということですね。わかりました。
 そうすると、勧告にまた次の報告を国連にしなきゃなりませんけれども、どのようにお答えになるでしょうか。まだ先の話ですから今から言うのは変かもしれませんが、こういった勧告を受けて、そして何らかの手段をとることを勧告すると言われていて、それに対してはどのようにお答えになるでしょうね。
 そのようなことを強制しているわけではないから、今のお答えでいきますと必要ない、簡便な措置をとる気は全くない、勧告には従う必要はないというふうなことになりますね、今のお答えだと。どうですか。
#206
○国務大臣(高村正彦君) 全くという言葉は私は使いませんでしたけれども、今のところありません。
 勧告に従う必要はないと必ずしも言っているわけではありませんで、「伝えられるところによれば、当局が引き続き申請者に氏名を変更するよう求めており、」と。私はそういうことはないと思いますが、もし現実にそういう例があるとすればとんでもないことだと思いますので、そういう事例がもしあるのであれば私はそれに対して適正な措置をとりたい、こう思います。
 それからもう一つは、「韓国・朝鮮人は差別を恐れ、そのようにせざるを得ないと感じていることに懸念を表明する。」と。私もそういうことは全然なくはないかもしれないと思いますので、こういうことについては社会全体の意識を変えていくように、こういうことがないようにしなければいけない、こういうふうに思っております。
#207
○竹村泰子君 余り意欲的に回復措置をとるつもりはないというふうなニュアンスとお聞きいたしますが、それは今後、次の報告を出すまでに、恐らく勧告をどのように受け入れて、どのように実践したかという問いかけがまたありますよね。それで、そのときにもまたお伺いしたいと思いますが、その委員会の勧告に従って日本における朝鮮民族の日本式氏名の使用状況に関する調査、私が今お聞きしましたけれども、そのような調査を多分したことがないと思うんですけれども、必要を感じているでしょうか、どうでしょうか。
 政府が本当に帰化の際に、大臣が今おっしゃったように、日本名が強制されているようなことがあったら大変だとおっしゃいましたが、日本名への変更を促さないという政策に変更したことを示すためには、法務省の年間統計項目、帰化の前後で名前を変えた者あるいは変えなかった者の統計を取り入れて、その数字を示す必要があると思いますが、そうした項目を来年度から加えることは可能でしょうか、どうでしょうか。
#208
○副大臣(長勢甚遠君) 繰り返し答弁申し上げておりますように、現在、我が国の帰化実務において帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するようにという指導をすることは行っておりません。したがいまして、在日韓国・朝鮮人の方々の日本名の使用状況について調査をするという必要もないと思っておりますし、またなかなかやり方も難しいかなと、このように思っておる次第でございます。
#209
○竹村泰子君 国連の委員会からの勧告を受けているわけで、従来の政策が変わったことを周知徹底する。まだわかっていない人もいると思うんですよね。やはり帰化するときには日本名にしなきゃだめなのよねと私も実際に聞かれたこともありますし、わかっていない人もいらっしゃいますから、強制にわたるとの誤解を生ぜしめないように留意して、そして従前の氏名を使用することを希望する者については、無理強いをするなというふうな趣旨であることをわかってもらうためにも、名前を変えた人も変えなかった人も一応そういう年間統計項目にきちんとそれを入れて調査をするおつもりがおありですかとお聞きしているんですが。
#210
○副大臣(長勢甚遠君) 先ほど申し上げましたように、韓国名をお使いになろうが日本人らしいお名前に改められようが御自由なことでございますので、そのことに関心を持って調査をするという必要はないのではないかと思います。
#211
○竹村泰子君 法務省の年間統計項目に加える、項目を加えるようなことは全く必要がないというお返事でよろしいですか。
#212
○副大臣(長勢甚遠君) はい、結構であります。
#213
○竹村泰子君 国連の勧告、それから私たち人権問題、帰化問題をいろいろ扱っている者にとっては非常にかたい否定的な態度であるとしか申し上げようがないんですけれども、政府の姿勢はわかりました。
 三月二十日の人種差別撤廃委員会の最終見解では、日本が民族別の人口統計をとっていないことを懸念し、次回以降の報告書で詳細なデータを提示するよう勧告されているんです。いるんですよ。ここでも朝鮮民族の人口が問題にされています。この勧告に対してどのようにお答えをなさいますでしょうかね。
#214
○政府参考人(山崎潮君) 今、御指摘の点は、日本の国民ではありますが、民族がどのような構成になっているかということを把握すべきではないかと、こういう御趣旨でございますか。
#215
○竹村泰子君 これから聞いていきますので、では後ほどお答えください。
 日本政府の報告書では、朝鮮民族の人口として外国籍者として生活する者の数しか記してありません。いわゆるコリアンジャパニーズと称すべき日本国籍を持つ朝鮮民族、この人たちは帰化によって日本国籍を取得した者とその子孫、あるいは父母いずれかが日本籍者で出生によって日本国籍あるいは二重国籍となっている人を合算すれば、一九九九年度現在、約三十六万七千人いらっしゃるわけです、こういう方たちが、これは推算ですけれども。これらの人々については一切記述がない。つまり、日本民族なのか朝鮮民族なのか、どこに一体いらっしゃる方なのか、どこに存在がある人なのか、日本の政府の報告書としては一切記述がないんです。この点について三月八日の委員会でディアコヌ委員から質問がありました。
 政府はこれらの人々を朝鮮民族と認識しているのでしょうか。第一回、第二回政府報告書にこれらの人々に関する記述がないのは、帰化により日本国籍を取得した者は名前まで変えて民族的にも日本民族になったとの認識というふうに答えておられるのでしょうか。こういう認識を持っておられるんでしょうか。つまり、帰化したらもう日本民族なのだということで考えておられるのでしょうか、どうでしょうか。
#216
○国務大臣(高村正彦君) 国籍と民族という概念は全く別のものだと思っております。国籍とは政治的に組織された共同体である国家の構成員としての資格を意味するものでありますので、言語、宗教、思想、風俗等の文化を共通する人々の共同体を意味する民族という概念とは異なるものであると思います。したがって、帰化は民族に影響を与えるものではない、こういうふうに理解をしております。
#217
○竹村泰子君 民族ということはさておいて、民族ということはちょっと触れることはしないで、どちらの民族に属するというふうなことは考えずに、つまりカウントしないでということなんですね、今のところ。そういうことですね。
 三月九日の委員会で、尾崎人権人道課長は、国勢調査における民族的統計の実施については、記入の報告者負担、政策的需要を考慮して今後検討したいとおっしゃっております。外務省、おいでになっていますでしょうか。
 どのような記入の報告者負担あるいは政策的需要、どのように考えておられるんでしょうか。尾崎さんがおいでになっていないとは思いますけれども、お答えいただけますか。
#218
○大臣政務官(桜田義孝君) 担当は総務省だと思うんですが。
#219
○竹村泰子君 いやいや、違います。国勢調査は総務省ですが、このときには尾崎人権人道課長が政府の代表としてこの委員会でそのようにお答えになっているんです。それで、どのようなことをなさるおつもりですかとお聞きしているんです。そのようにレクしてありますよ。
#220
○委員長(日笠勝之君) 外務省ですか、先生。
#221
○竹村泰子君 外務省。
#222
○委員長(日笠勝之君) 外務省は来られていますか。
 ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#223
○委員長(日笠勝之君) 速記を起こしてください。
#224
○大臣政務官(桜田義孝君) では、改めて調査をしてお答えさせていただきたいと思います。
#225
○竹村泰子君 調査をしてじゃないでしょう。これはあなたたちの、外務省の代表が言っているんですよ、こういうふうに。記入の報告者負担と政策的需要を考慮して今後検討したいと。まあまだ終わったばかりですから、終わっていないのかな、まだやっているのかな。ただ、三月九日の委員会でそうおっしゃっている。この間の三月九日ですよ。おっしゃっている。
 そのことにちゃんと、どのように政策的需要をなさいますか、記入の報告者負担をなさいますかというふうにお聞きしてあります、きのう。その後の国勢調査に関しては私は聞かないことにいたしましたが、ここまではきちんと答えていただきたいと思います。
#226
○委員長(日笠勝之君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#227
○委員長(日笠勝之君) 速記を起こしてください。
#228
○大臣政務官(桜田義孝君) 竹村先生の御質問については、私の方でよく調査をして後日お答えさせていただきたいと思いますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
#229
○竹村泰子君 今答えろと言っても、御準備がないわけですね。それでは、後日答えをいただけますでしょうか。
 次に、朝鮮学校生徒への暴行事件についてお伺いしたいと思います。
 人種差別撤廃委員会では、ほとんどの委員が人種差別それ自体を処罰する国内法制定の必要性を指摘し、三月九日、これに回答した法務省の代表は、既存の法律で十分担保されている、暴力行為の動きが理不尽な人種差別であれば刑が重くなるというふうに回答しておられます。
 ただし、九四年に生じた朝鮮学校生徒への暴行事件は、朝鮮総連の統計では百六十数件ですが、そのうち検挙に達したのは三件。また、私の質問主意書に対する政府答弁書によりますと、これらの事件の容疑者の処分結果は、罰金十万円に処するとの判決、保護処分に付する必要がない旨の判決、公訴を提起しない処分、つまり有罪はたった一件なんですね。また、九八年に起こった同様の五十七件の事件のうち、警察が認知したのは六件、検挙はゼロ件であります。これでは、理不尽な人種差別があれば刑が重くなるというふうな法務省の代表の回答はまさにおざなりとしか言いようがないと思います。
 一方、九七年十月に愛知県小牧市で起きました二十数名の日本人男性によるブラジル人少年襲撃集団暴行殺害事件では、リンチに加わった日本人二十七名のうち、逮捕されたのは十一名、刑事裁判にかけられたのは六名、判決は最も重いものでも懲役五年が二名でありました。
 この民族的憎悪に基づく傷害致死事件において、十六名は全く逮捕さえされず、逮捕者の刑罰が軽かったということ。これは、さきの非常に重い人種差別があったら、理不尽な人種差別があったら刑が重くなるというふうな法務省代表の委員会における回答とは大分違うのではないでしょうか。法務大臣、どのようにお考えになりますか。
#230
○国務大臣(高村正彦君) 我が国においては人種差別に由来する暴力行為のみを取り出して処罰する法律はございませんけれども、このような暴力行為については、刑法に定める殺人罪、傷害罪、暴行罪、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等により処罰の対象とされており、人種差別撤廃条約第四条が規定する人種差別に基づく暴力を犯罪とする義務には違反しておりません。したがって、こうした暴行事案に対処するために人種差別自体を処罰する立法をする必要があるとは考えていないわけであります。
 それぞれの事案において、どういう動機によってしたかということは当然裁判所でその悪性がどの程度のものであるかということで量刑に影響があるわけでありまして、悪質な人種差別ということでやったということであれば、それは当然裁判所の量刑に影響を与えるだろう、こういうふうに思います。
 また、検察が起訴、不起訴を決めるような場合でも、起訴あるいは起訴猶予にするとかそういうことを決める場合でも影響するだろうと、一般的にそういうふうに思っておりますが、具体的な事案について外形的にこれが重かったとか軽かったとか法務大臣が申し述べる立場にはちょっとないのではないかなと、こういうふうに思っております。
#231
○竹村泰子君 いや、そんなことを言ってくれと言っているのではなくて、もうその罪の大きさからいえば、民族的嫌悪感とか差別とか、そういったことからやられている集団的リンチですよね。そういうことに対して、軽いと思いませんかとごく一般的な御所見をお伺いをしたので、法務大臣として個別にこれが軽かった重かったと言ってほしいと言ったわけではございません。
 ただ、三月二十日採択された最終見解でも、大臣もお読みになっていると思いますけれども、「人種差別を非合法化する特定の法律を制定する必要がある。」と。それから、「人種差別それ自体が、刑法において明確かつ適切に処罰の対象とされていない。条約の規定を国内法規において充分に反映し、人種差別の刑罰化を確保するとともに、人種差別行為に対して、審理権を有する国内法廷その他の国の機関を通じて、効果的保護、救済へのアクセスを確保する。」、今のは十二項ですが、十四項は「委員会は朝鮮民族、特に子ども、児童・生徒に対する暴力行為に関する報告、およびこの問題についての当局の不適切な対応について懸念し、政府がこうした行為を防ぎ、それに対抗するために、もっと解決につながる手段をとるよう勧告する。」と。十六項目は「委員会はコリアン・マイノリティに影響を与えている差別について懸念している。委員会は、特に朝鮮語による学習が承認されていないこと、朝鮮学校生徒が高等教育機関へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることを懸念している。締約国に、この点における朝鮮民族を含むマイノリティの差別的な取扱いを撤廃するための適切な手段を実施し、日本の公的な学校で、マイノリティ言語でも教育が受けられるよう確保することを勧告する。」と。
 こういう教育面における勧告も含めまして、これはこれから国際化していく中で、やはり非常に多民族国家というふうな風潮がどうしてもこれからはふえていきますけれども、そういう中で、日本に滞在するあるいは存在する外国籍の民族のいろいろな差別的な処遇、教育、そういったことについて広く勧告をしております。
 私は非常に的確な指摘を勧告はしているというふうに思うわけですけれども、これらの勧告をお聞きになって、大臣は、これは通告しておりませんけれども、御所見は、御感想は、どのようにお思いになりますか。
#232
○国務大臣(高村正彦君) 例えば教育の問題そのものは私の所管でないので、そこをどうするかというふうなことを申し述べる立場にないと思いますが、問題は、例えば在日韓国・朝鮮人に対していまだに偏見、差別意識が一部に存在するということは私としても憂慮をしているわけであります。引き続き、学校、社会教育の場における人権教育の充実に努めるとともに、関係機関、団体等に対し指導、啓発活動を行っていきたいと考えております。
#233
○竹村泰子君 勧告をどの程度重く受けとめるか、そしてどう生かすか、そしてまた次の委員会に対してどのような回答をする、報告をするのかというふうなことがこれからあると思います。もちろん勧告に法的拘束力はありませんけれども、やはりこれは対話、議論を、国会でももちろんですけれども、一般の世論の議論、対話をきちんと、もちろん在日の方たちとの対話もきちんとこれからしていく必要があるのではないかと思いますので、一言申し上げておきたいと思います。
 最後に、二〇〇〇年十二月、東京都内の赤羽署と別の一署が「中国人かな、と思ったら一一〇番」、「建物内で中国語で話しているのを見かけたら一一〇番」などと記した防犯チラシを管内のマンション管理人や町内会役員、交番に合計七百枚配布した。それから、神奈川県神奈川署が二〇〇〇年九月に五百部配布した地域安全ニュース、「ピッキング窃盗団にご用心」、これはおもしろいんですよ。おもしろいんですよと言っちゃいけませんね。バッグや旅行かばん等を所持している中国系外国人がいる、この「ピッキング窃盗団にご用心」というところの項目です、かばんを持っている中国系の外国人がいたら知らせろと。二、三人の中国系外国人がマンションの階上の方に上がっていった、付近で見たことのない中国系外国人が人を訪ねてきた、中国系外国人が携帯電話で話を、携帯電話で話もできないんですね。中国系外国人が運転する車が駐車している等を見かけたときはすぐに神奈川警察署へ電話をお願いしますと広報するなどした件について、人種差別撤廃委員会で三月九日このことが問われているんですね。それで、尾崎人権人道課長は今後このようなことがないよう指導を徹底していくと回答されました。
 政府のどの機関が政府の一省庁である警察庁の行為を監視し、人種差別撤廃条約の違反性を判断し、指導が行えるのでしょうか。まず、外務省からお聞きしましょう。
#234
○大臣政務官(桜田義孝君) 条約について解釈権を有するのは外務省でありまして、御質問の事項については、人種差別撤廃条約に違反するかどうかを判断するのは一義的には外務省であります。
#235
○竹村泰子君 第一義的に解釈するのは外務省でありますと。それはまあそうですね。
 私の質問していること、おわかりでしょうか。これもちゃんとレクしてございますけれども、そのように尾崎さんがお答えになった、指導を徹底していくとお答えになった。第一義的に解釈をしているのは外務省だから、外務省が指導をしていくという意味でしょうか、今のお答えは。
#236
○大臣政務官(桜田義孝君) 外務省としては、御指摘の防犯ビラ等は、中国人を犯罪者あるいは不審な者として警察に通報するように受け取られ得るものであるならば不適切な内容のものであると。警視庁及び神奈川県警は、本件ビラの表現が配慮に欠け、不適切であったとして、直ちにこれを回収し、または破棄したと承知しております。したがって、警視庁及び神奈川県警において、当初から、中国人に対する差別を助長しまたは扇動する意味はなかったと判断されます。
 それから、人種差別撤廃条約につきましては、締約国に一定の措置をする義務を課しているところでありますが、国または地方の公の当局または機関の行為においても、人種差別助長の意図を有さずに行われた場合は同条約の対象とはならないと解されておりまして、本件は同条約の対象とはならないと考えております。
#237
○竹村泰子君 ちょっとよくわからないんですけれども、私。これは条約に違反していないとおっしゃるわけですか、これらのこと。「ピッキング窃盗団にご用心」とか「中国人かな、と思ったら一一〇番」とか、これ条約に違反していないですか。
#238
○大臣政務官(桜田義孝君) 一時的にはしていると思います。
#239
○竹村泰子君 一時的には違反していると。一時的というのはどういう意味なんでしょうか、私、ちょっと頭が悪いのでよくわからないんですけれども。その時点では違反しているということですか。
#240
○大臣政務官(桜田義孝君) それ自身は違反だと思いますが、直ちに回収しておりますので、そういったことについては改善の余地があると思っております。
#241
○竹村泰子君 回収すればいいんですか。
#242
○大臣政務官(桜田義孝君) 回収するということは、悪意な意図があったというふうには解釈しておらないということであります。
#243
○竹村泰子君 では、これは悪意じゃなく善意でまかれたということなんですか。ごめんなさい、絡むようで申しわけないんだけれども、条約に違反していないと言われると、やっぱり言わざるを得ないですね。
 これは条約に違反しているので、非常に人種差別的行為であったので回収されたんじゃないんですか。一時的にはそうだったかもしれないけれども回収すればいいという、今のお答えはそうですよ。一時的にはそうだったけれども回収すればもう罪は消える、そういうことですか。
#244
○大臣政務官(桜田義孝君) そうは言っておりません。そうともまた思っておりません。
#245
○竹村泰子君 ここで禅問答をしてもしようがないのであれですが、皆さんがどういうふうにお聞きになったかわかりませんが、あなたの答えからいうと、やっぱり確かにそのときは悪かった、失敗した、だから急いで回収したと、しかし条約違反ではない、総体的には条約違反ではない、回収したからもうそれでいいんだと、こういうことですよ、あなたが今おっしゃったのは。違いますか。
#246
○大臣政務官(桜田義孝君) 違反は違反だと思います。ただ、扇動する意図はなかったというふうに理解しております。
#247
○竹村泰子君 扇動なんかされちゃ大変なんですよね。
 では、警察に聞きましょう。どうなんですか、これは。
#248
○政府参考人(黒澤正和君) 御指摘のチラシでございますけれども、ピッキング犯罪の実態にかんがみまして、犯人検挙と犯罪防止の観点から管内住民に注意喚起を呼びかけようとするものでありまして、およそ来日している中国人一般を対象としているものではございません。
 人種差別撤廃条約の解釈についてはお答えする立場にはございませんが、私どもといたしましては、このチラシの内容につきまして配慮に欠ける不適切な表現があったということで遺憾に思っておりますし、このようなことがないよう都道府県警察を指導しておるところでございます。
#249
○竹村泰子君 これ、警察が出しているチラシですよね。警察としてこれは反省があるんですか。
#250
○政府参考人(黒澤正和君) ただいま申し上げましたように、このチラシの内容につきまして、警視庁、神奈川県警におきましても、また警察庁といたしましても、この内容につきまして配慮に欠ける不適切な表現があったということについて遺憾に思っておるところでございまして、このようなことがないよう今後とも都道府県警察を指導してまいりたい、かように考えておるところでございます。
#251
○竹村泰子君 今のお答えからは、深く深く反省をし、このようなことが絶対に二度と起こらないようにというふうな気持ちは余り私には伝わってこないんですが、警察としても非常に深く重く受けとめているということですね。もう一度。
#252
○政府参考人(黒澤正和君) この事案の内容につきましては、もちろん御指摘のとおり受けとめておるところでございまして、繰り返しで恐縮でございますけれども、やはり表現において配慮に欠ける不適切な表現があったということを遺憾に思っておるところでございます。
 今後こういうことのないように指導を徹底してまいりたいと思います。
#253
○竹村泰子君 最後になりますが、大臣、今お聞きになっていて、警察庁のことではありますけれども、外務省の政務官のお答えもございましたけれども、担当大臣として、こういった一連のこと、これは七百枚と二千枚でとめられたわけですけれども、何万枚もまかれることもまだこれからも起きるかもしれないし、こういう差別感覚、差別意識が根強く日本の中にあるということについての御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#254
○国務大臣(高村正彦君) 作成された経緯やビラの具体的内容等を十分承知しているわけではありませんが、一般論で申し上げれば、公的機関であると否とを問わず、外国人に対する偏見を助長する内容と受けとられかねないような表現をできる限り避けるべきであることは言うまでもないことであります。
 今後とも積極的に外国人に対するいわれのない差別をなくし、その人権が尊重されるよう啓発活動等に努めてまいりたいと考えております。
#255
○竹村泰子君 法務省の中に人権擁護局というのがありまして、外務省にも人権人道課というのがありますけれども、やはり人権を総括的に扱う、担当しているのは法務省であります。私たちは、それではいけない、独立した機関をと言っているわけですが、しかし現在のところまだ法務省の中にあるわけですから、こういったことには本当にきちんと対処していただきたいと強く希望して、終わります。
#256
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 今、先行の竹村委員の質疑を伺っておりまして、私も国内人権機関というのをずっと言ってきているところでございますが、やはり今法務省で人権擁護推進審議会で人権救済制度のあり方、そういうことをしっかり議論をされておりますが、救済のみではなくして、教育あるいは政策提言というようなものまで含めた、法務省とは独立した国内人権機関というものが必要だなということのさらなる認識が深まったところであります。
 さて、そういうような人権教育とともに、法教育というものがこれからますます大事になっていくのではないかなというふうに思っております。昨年十一月二十日の司法制度改革審議会の中間報告では、国民の司法参加の拡大ということがうたわれておりました。市民が統治主体の意識を持って司法とかかわっていくということが今後ますます求められることになろうかというふうに思っておりますが、そういう状況の中でやはり法教育の必要性も増大している。中間報告自身も司法教育の充実というような項目まで立てているところでございますが、さらに法化社会、そういう中で求められていくのが初等教育等も含めた法教育ではないかなと、そんなふうに思うところであります。
 そういう指摘は、これは特にアメリカの方から法教育というのが提唱されて拡大してきたようでありますが、これは一九五〇年代からいろんな国民や政治家の危機的な状況、例えば極端なマッカーシズムでありますとか、あるいは人種隔離政策を違憲としたウォーレン判決への扇動的な対応、さらにはウォーターゲート事件のようなもの、また一方では子供とか学校を取り巻く不安定な要素、麻薬の問題であるとかあるいは少年犯罪等でございますが、そういうような事態を踏まえて、かなり法教育というものが全米社会科協議会あるいはアメリカの司法省、アメリカの法曹協会などで一生懸命取り組んできたという経緯があるようでございます。
 日本においても一九九〇年代を中心に、特に日弁連の方でも司法に関する教育の充実を求める決議というのをやっておりまして、日弁連はもとより各単位弁護士会でもいろんなことをされてきている。
 例えばどういうことをやっているか簡単に御紹介をいたしますと、講師派遣、中学生、高校生に対して学校への講師派遣をする。その中で、例えば消費者教育というのもかなり早くからやっているようでございますが、子供の権利の問題でありますとか、そういうことを教えているようであります。また、模擬裁判というものをやってみたり、さらには出前授業とか社会科の副読本をつくってそれとあわせて講師派遣をやっている、そんなこともやっているようでございます。
 そのほか、法廷ウオッチング、法廷傍聴会というようなものもやっているようでございます。かなり東京の会でも充実をしてきているようでございますけれども、この裁判の傍聴会というような、傍聴会システムというふうに東京の弁護士会では言っているようでございますが、これに対応して九九年は千二百八十六人の傍聴人というようなことのようでありますが、これに対応して裁判所としてはどのような対応をしているか、ちょっとお聞かせをいただけますか。
#257
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
 裁判所といたしましても、裁判の傍聴をしていただき裁判所の生の姿に触れていただくということは裁判全体に対する理解と認識を深めることにつながりますし、また現在、委員御指摘のように、国民の司法参加ということが述べられている折から、その現実化の前提としても、その重要性というものはますます増してきているというふうに考えております。
 御承知のように、裁判所はだれでも事前の手続なしに自由に傍聴できますものですから、裁判所に一体どのくらいの方が傍聴に来られているかということははっきりしませんけれども、団体傍聴というのがございまして、小学校、中学校、高校、大学、それぞれから事前に申し出があるということがございます。その数は把握しておりますけれども、これを見てまいりますと、団体傍聴、こういった学生の方々が来られているのは昨年一年間で約七万七千ということでございました。これは下級裁だけでございます。また、そういった折には、せっかくの機会でございますので、私が例えば東京地裁におりましたときには、検察官、弁護人にも残っていただき、裁判の後にいろんな質問を受ける、そして疑問にも答えていく、こういうようなこともしていたところでございます。
#258
○魚住裕一郎君 ああ、それでわかりました。これ、弁護士会の「自由と正義」に載っていたんですけれども、だから一生懸命、東京弁護士会の場合においては、裁判所には必ず広報を通じて傍聴予定事件を連絡するようにしているし、検察庁にも場合によっては事前連絡をしていると。これを引用しますと、「時々裁判官や検察官によっては、裁判後、法廷内で裁判官が法服を脱いで壇上から降りて生徒たちと質疑応答をすることもあり、弁護士と話す以上に感動したという感想を多く聞く。」と、こういうような記述もあったところでございますけれども、これは本当に大事なことだなというふうに思っているところでございます。
 これは、実際多くの生徒を集めるとかになると、裁判所がみずから来てくださいよというのも大変でしょうけれども、弁護士会が主体となってこういうシステムをつくっているんですが、その辺の連携というのはどういう形でやっているんですか。
#259
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 弁護士会がそのような企画を立てられて実践されているということはこちらも承知しておりますし、そういったことに対してまた今後ともどうぞというような形をお勧めもしております。
 また、裁判所の方ではインターネット上に最高裁のホームページがございまして、そこに各地の裁判所からのお知らせというコーナーを設けておりますけれども、そこでも、東京とか大阪とか、大裁判所によってはそこに詳しく裁判の傍聴のあり方、やり方というものを書き、皆さんに積極的に裁判所にぜひとも来ていただき身近なものとして感じていただきたい、こういうようなページもつくっているところでございます。
#260
○魚住裕一郎君 それから、先ほど御紹介をした中に出前授業とか講師派遣ということがあったんですが、これはなかなか実務家ということ、それからまた立場もあるでしょうけれども、裁判官あるいは検察官はこういう講師派遣についてどういうふうにお考えなんでしょうか。弁護士会の場合、自由ですから、講師として派遣されたり、あるいは模擬裁判をやって、裁判というのはこういうふうにやるんだよということを生徒の前でやるということが多いんですが、裁判官あるいは検察官の講師派遣について、それぞれ御当局からお聞きしたいと思います。
#261
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 裁判所におきましても、従来から十月一日の法の日週間などの際には行ってまいりましたが、司法制度改革審議会の議論が進む中で、率直に申し上げまして裁判所に対する国民の理解、認識というものは必ずしも十分ではないということを私どもの方も相当強く痛感いたしました。現場の裁判官も同じでございます。
 そこで、例えば東京地裁の裁判官などでは、自分たちからそういった小学校、中学校、高校にみずから赴いて、裁判所というのはこういうものなんだということをわかりやすく説明しよう、こういった企画を立てられ、昨年来、出前講義ということを行っているわけでございます。昨年一年間、途中から始まりましたけれども、先ほど件数を調べましたところ、約二十件行っておりました。また、この三月までにも九件さらに予定されているということでございます。その場合には、事前に生徒の皆さんから質問事項をいただき、それを必ず講義の中に含めて説明するとか、現実に法服を持って赴き、それを着ていただいてと。また、どうしてそんな黒い服を着るんだというような質問も受けているというのが実情でございます。
 おおむね好評に受け取られておりますし、私どもとしてもこういった東京地裁の実情等を各庁にお知りいただいて、各庁がそれぞれ自発的発意のもとに、その裁判所の発意のもとにこういったことがより広がりを見せていけばよろしいな、そういうふうに考えているところでございます。
#262
○政府参考人(古田佑紀君) 検察庁におきましても、従来から法の日などに学校に講師を派遣するというようなことはあったわけですが、それに加えまして、一昨年、平成十一年からでございますが、社会科の授業等ということで小中学生の見学を受け入れる、あるいは検察庁の方から検察官を学校に派遣いたしまして、主としてこれは検察の仕事がどういうものかということを中心に説明するわけですが、そういうようなことを積極的に行うという措置をとってまいっております。また、法廷傍聴につきましても、そのプログラムをつくって便宜を図るというふうなことをやっております。
 学校の方からおいでいただくのは件数としてかなりございますが、こちらの方から出かけていくというのは年間、毎年徐々にはふえてきておりますけれども、まだ十件台という状況で、今後とも拡充を図っていきたいと思っております。
#263
○魚住裕一郎君 これはもう積極的にどんどんやるべきじゃないかなというふうに思います。
 これは弁護士が模擬裁判等でやったアンケートにのっとっているんだろうと思いますが、弁護士に対するイメージで多いものは三つだというんですね。それは、一つは性格がかたくて暗そう、二つ目は頭はよいのだろうが冷たそう、三つ目は高い弁護料を取って金もうけばかりしている、こういうようなイメージなんですが、いろんな学校に行って接すると、大半の生徒たちは、何だ弁護士も普通の人じゃんというようなイメージに変わってきているというような報告があるわけです。裁判所も検察官も、福岡事件等もありましたけれども、どんどん法教育に資するという意味で学校現場に出ていけるようにしていきたいし、積極的にかかわっていきたいなというふうに思っております。
 次に、きのうですか、法務大臣が、記者会見ですかね、悪質交通事犯に対する刑罰の見直しというようなことをコメントされたやに記憶しておりますが、時代がどんどん進展してきて、また今まで考えられないような手段によって甚大な被害も及ぶということもございます。
 厳罰化というふうに、そういう一定の方向性を決めて考える必要はないんですが、刑罰のあり方といいますか、その辺も再度見直す時期に来ているのではなかろうかなというふうに思っておりますが、悪質交通事犯に限らず、その辺の刑罰のあり方論について御所見をまずお聞きしたいと思います。
#264
○国務大臣(高村正彦君) まず、悪質交通事犯から申し上げますと、飲酒や無免許運転等を伴う悪質、重大な交通関係事犯の刑のあり方につきましては、その量刑や法定刑についてのさまざまな御指摘がなされ、厳罰化を求める多数の署名の提出を受けるなどしました。
 法務省といたしましては、処罰の対象とする悪質、危険な運転行為の範囲や処罰規定の内容等について、事案の実態や欧米など諸外国の法制、警察庁と共催で開催している交通関係問題意見交換会における意見等を踏まえた検討を現在、鋭意行っているところであります。
 それで、この問題は国民に広く普及している自動車等の運転に伴う国民生活に密接した重要な問題であり、現にこのような事犯が後を絶たない状況にあること、さらには被害者や御遺族の方々から早期に法整備を行うようにとの強い要請を受けていることなどを踏まえ、法務省といたしましては、刑法改正等の検討も含めて早期に結論を得て、この秋に臨時国会が開かれるようであればこれを目途として所要の法整備を行いたいと考えているわけであります。
 一般論として申し上げれば、各種犯罪における刑罰のあり方については、刑罰というのは国家が加える最も厳しい制裁であるわけでありますから、いたずらな厳罰化は避けるべきだと思っております。その罪の罪質や他の罪の刑との均衡、その犯罪によって起きる被害の内容や程度等、種々の角度から総合考慮した上で決められるべきものであって、事案の内容に応じて適切な刑罰を科し得るものでなければならないと考えております。その観点から、社会経済事情が大きく変化したときはこれを踏まえて刑罰体系を見直すことも必要であると考えております。
 現在、法務省におきましては、現行の刑罰制度及びその運用状況全般について調査分析を行うとともに、諸外国との比較調査、研究を行っているところであり、その結果を踏まえて所要の見直しを行っていく所存でございます。
#265
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 まさに刑罰というのは国家の最大の権限というか権力行使であるわけですが、ただ私刑、私刑というのは要するにリンチですが、それが禁止された上での国家の刑罰権ということなんですから、これはやはり根底には応報思想といいますか、目には目をの世界は当然あるだろうというふうに思うわけであります。ですから、被害感情といいますか、そういうこともしっかり踏まえていかないと社会的な納得のいく刑罰体系にはならないんではないかなと思っております。
 今、社会がどんどん変われば見直す必要があるということでございますが、例えばこれだけ近接社会、さらにITをどんどん進めるという状況の中で、例えば名誉毀損という問題があるんですね。名誉毀損というのは、昔であればいわゆるマスメディアといいますか、せいぜいチラシぐらいだろうと思うんですね、一般的には。
 ただ、今インターネットでぽんと発信すれば全世界に行くわけですね。だから、ひどいのは、つき合っていた女の子がこっちに振り向いてくれないからつき合っていたときの裸の写真を載っけちゃうというような、そういうようなこともあるわけで、これはわいせつ物陳列罪どころのそんなたぐいではない、もっともっとしっかり処罰してくれなきゃ困るんじゃないかというのが感覚だと思うんです。しかも、今まで口頭で言っていた侮辱とか名誉侵害ではなくして、そういう個々人がそのような物すごいツールを持つという時代、社会になってきたものですから、そういうことにも刑罰はしっかり対応する必要があると思いますが、この点はいかがでしょうか。
#266
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど大臣からも申し上げましたとおり、社会の事情が変化いたしますとそれに伴ってやはり犯罪の被害というのもいろいろ変わってくるということはおっしゃるとおりだろうと思うわけでございます。
 したがいまして、現代社会の中で、ただいま御指摘のありましたようないわばインターネットなどの情報メディア、こういうふうなものを利用したいろんな社会的に問題になる行為、こういうふうな問題も含めましてどういうふうな刑事的な規制が必要なのかということについて、今後、基本法制整備の一環の問題として検討してまいりたいと考えております。
#267
○魚住裕一郎君 予算の委嘱は終わったんですが、平成十三年度は刑罰制度のあり方についての調査費がつきましたよね。それを確認、まず。
#268
○政府参考人(古田佑紀君) 情報化社会あるいは現在の経済状況、こういうふうなものに合わせた刑事に関する基本法制の整備のためのプロジェクトを現在発足させて検討を始めているところでございます。
#269
○魚住裕一郎君 その中では死刑制度についても検討をされるんでしょうか。
 各委員の目の前に置いてあるいろんな資料の中で、衆議院予算委員会要求資料の十一ページに法務省の「死刑制度の存廃に関する国際比較」というのが載っておりますが、これを見ると、存続させておる国というのはだんだん減ってきているんではないか。事実上の死刑廃止国あるいはすべての犯罪についての死刑廃止国、あるいは通常の犯罪のみについての死刑廃止国というような、だんだん死刑を存置しているのが少数派になってきつつあるのかなと。しかも、主要国ではかなり廃止してきている部分があるなというようなことを踏まえて、この死刑の問題についても今のプロジェクトの中で検討されるんでしょうか。
#270
○政府参考人(古田佑紀君) 死刑の存否につきましては、大変重要な問題で、国民世論にも十分配慮しながら、実際に起こっているいろんな事件、こういうふうなものをよく見た上で考えなければいけない問題だろうと思っているわけです。現状におきましては、世論の動向及び犯罪の状況から考えますと、やはり非常に重大な凶悪事犯を犯した者については死刑を科することもやむを得ないというふうに考えております。
 ただ、いずれにいたしましても、刑罰体系につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これをかなり幅広い角度で現状分析及び諸外国の法制及び運用との比較、こういうふうなことを行いまして、その中で必要な法整備を図っていきたいというふうに考えているということでございます。
#271
○魚住裕一郎君 もう一つ、刑罰制度の中で終身刑というのはお考えになりましょうか。
 終身刑というのはどういうふうにとらえたらいいのか。無期が終身刑、でも出てきちゃうぞということもあって、詳しいことはよく知りませんけれども、アメリカ等では懲役三百年とかというのが出ますよね。人間そこまで生きていないけれども、だけれどもそれで宣告しちゃうというようなこともあるようでございます。本当に極刑を望むといった場合でも終身隔離しておくということもあり得るのかなと思いますが、この終身刑についてはどのようなお考えでしょうか。
#272
○政府参考人(古田佑紀君) いわゆる仮釈放を認めないのが終身刑とのお尋ねだと思うわけですが、こういう刑につきましては刑事政策的にはいろいろ批判があるところでございます。
 どんな批判があるかと申しますと、最も代表的なものは、一生拘禁されることによる受刑者の人格、これが完全に破壊されてしまうというようなことでございますが、そういうふうな刑事政策上はかなり批判のある刑でございまして、実際にこれを採用しているところももちろんございますけれども、アメリカ合衆国の連邦あるいは一部の州など、比較的少数にとどまっていると考えております。また、実際、過去に採用して廃止した国もあると承知しております。
 この問題につきましては、現在、与党三党のプロジェクトチームにおいても御議論がなされていることは承知しておりますが、当局といたしましては、やはりいろんな批判のある刑でもあることから、さまざまな観点から慎重な検討をする必要があると考えている次第です。
 こういうふうな問題につきましても、先ほども申し上げました刑罰体系全般についての調査の中の一環として、諸外国の状況なども調査したいと考えております。
#273
○魚住裕一郎君 確かにおっしゃる意味もよくわかります。
 私たちの党内においても、終身刑というのは逆に過酷な刑じゃないのかななんと言う人もいるわけでありますが、ただ国家が人を殺すなと言いながら死刑をするというのはちょっとやはりおかしいなという部分もあって、ぜひ私たちもしっかり議論をさせてもらいたいというふうに思っております。
 それから、先ほどちょっと、甚大な影響を与える名誉毀損もよく見られるようになってきたということで、刑事罰だけではなくして、やはり民事的な救済というのも議論をしていかなきゃいけないなと思うわけで、懲罰的損害賠償ということも含めて民事的救済ということをしっかりやっていくべきではないかというふうに思っておりますが、たしかこの辺の、民事的救済についての調査研究費もついたと思っておりますが、この辺の見通しはいかがでしょうか。
#274
○政府参考人(山崎潮君) 法務省といたしまして、平成十三年度の予算要求でこの調査研究について要求をさせていただいているということでございます。御承認が得られれば、この十三年度におきまして、海外の調査も含めまして、まず名誉毀損に関して損害賠償以外の救済方法、これについてもどういう有効な方法があるのか、これも調査したいと思います。
 それから、先ほど委員から懲罰的損害賠償のお話が出ましたけれども、仮にそれでなくても、損害賠償の額の多寡、これが世界的にどのようになっているかとか、それからどういう工夫で損害賠償額を妥当なものに持っていくかとか、そういうようないろいろな研究をして一定の成果をなるべく早く得たいというふうに思っております。
#275
○魚住裕一郎君 終わります。
#276
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 午前に続きまして質問をさせていただきます。
 まず、女性の検事任官の問題についてお聞きしたいと思います。
 人事院に来ていただいておりますのでお聞きしますが、男女共同参画基本計画では、女性国家公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発を一層推進する、その際、各府省が計画的に着実に推進するための指針を人事院が早期に策定する、こういうふうになっておりますが、この指針は国家公務員のすべての職種、行政職、専門職、あらゆる職種で女性の採用、登用を包括的に進めるものだ、こういうふうに理解してよろしいですね。
#277
○政府参考人(潮明夫君) お答え申し上げます。
 人事院では、昨年の八月の報告の際に、女性の採用、登用の拡大に向けまして積極的、計画的に取り組む必要があるということを申し上げたところであります。女性の採用、登用の拡大につきましては、例えば刑務官等、一定の配慮の必要な職種はもちろんありますものの、公務全体において着実に進めていく必要があるというふうに考えております。
#278
○林紀子君 基本計画ではこれを民主主義の要請の課題であるというふうに位置づけているわけですね。ところが、分野ごとに見ると、まだまだ女性の採用、登用に本当に積極的に取り組んでいるのかと、こういうふうに思わざるを得ないようなところもあるわけです。検事任官もその一つだと思います。
 そこで、法務省にお聞きしたいのですが、この間の検事への女性の登用状況について資料をいただいておりますけれども、確かに十年前の、四十六人検事に任官したけれどもそのうち女性はたった四人、こういう状況と比べますとふえてはいますけれども、九二年ごろからその率は横ばいです。二〇〇〇年度は二回任官がありましたが、百四十三人中二十六人が女性、一八%という割合です。司法修習生全体では女性がふえているわけですから、四人に一人、あるいは三人に一人が女性になっている。しかし、この割合では検事はふえておりません。また、裁判官任官の女性登用状況と比べても検事への女性登用は少ないと言わざるを得ないわけです。
 女性の希望者はふえているのに、採用しないんだという声が上がっております。司法修習の際、検察教官が、女性検事は使いにくいとか女性検事は取り調べに向かない、こういうことを発言されているということなんですね。そんな考え方で司法修習生の教育に当たっているのか、本当にそんな発言をしているのか、お聞きしたいと思います。
#279
○政府参考人(但木敬一君) 平成十二年の十月四日に第五十三期司法修習生有志から請願の文書が出ております。この中では、多数の男性検事が、女性検事は使いにくい、使えない、女性検事は取り調べに向かないなどと口外することが日常茶飯事だと書かれております。それから、一部報道機関では、現職の検事あるいはOBの検事が、暴力団の調べなどには女性は向かないんだというようなことを言っておるというような記事が出ております。
 ただ、御指摘の修習生の教官、これは、御趣旨は多分、研修所の教官という意味ではなくて各実務修習地での教官という御趣旨なのか、教官がそういうことを言ったということについては私は承知はしておりません。
 ただ、いずれにいたしましてもそういうようなことを言っている検事がいるのではないかという御指摘で、私もそのすべてが、そんな人は一人もいませんと言うつもりはございません、やっぱりそういう長い間男性中心の職場であったことは否めないわけでありまして、そういう意味では、そういう意識でいる検事もいなくはないだろうなと思います。
 ただ、そういう時代は確実に終わろうとしているというふうに思っておりまして、現に今、若い女性が随分検事に任官されて、いろいろな部署で活躍をされています。東京地検の特捜部にも女性検事が何人も輩出しましたし、あるいは本省で働いている女性検事も随分ふえてまいりました。また、被害者の声を重視する検察ということが皆さんからも求められている時代に、女性が被害者である事件について、第二次的な性的暴力と言われている取り調べを女性検事がするということは非常に大事なことだろうと思っておりますし、別にそういう性別にかかわらず、普通の事件を男女区別なく、能力ある人にやっていただく時代にもう既に到達しているというふうに思っておりますので、そのような向きが全くないとは申しませんけれども、それは大きな時代の流れでいえば、そういう時代は終わったんだというふうに認識しております。
#280
○林紀子君 そういう時代はもう終わろうとしている、終わったんだという力強い御答弁がありましたけれども、先ほどお話のありました検察官任官における「女性枠」を考える会という方たちが要請を出したということなんですが、ここでちょっと資料を配付していただきたいと思います。
#281
○委員長(日笠勝之君) 資料を配付してください。
   〔資料配付〕
#282
○林紀子君 この資料によりますと、昨年、司法修習生から検事任官に女性枠というものが事実上存在しているんだと、女性は任官希望者が多くても、一クラスに原則一名しか採用されていないという実態が指摘されました。今お配りしておりますのが彼らが手作業で収集したデータなんですけれども、特に四十九期以降というのは女性任官は一クラスに一名、多くても二名。しかも、複数の女性の修習生がこれまた検察教官から女性の採用はクラスで一人だと告げられているということなんですね。この採用実績というのを見るとまさにそのとおりだなと、多くても二名なわけですから。女性任官の狭い枠というのをつくって、実質的な女性差別が今まではあったと言っても過言ではないと思うんですね。
 今、官房長の御答弁がありましたので、それではもうこういうことはしないということですね。
#283
○政府参考人(但木敬一君) 私が申しましたように、性別を問わず適性のある人が検事になるべきだというふうに思っております。この枠問題というのは、実は数字を見るとそうではないかというふうに大分疑われて追及されておるんですが、法務省としてそういう枠をつくったつもりは全くございません。
 教官からそういう発言があったということもありまして、大分心配して司法研修所の教官にも聞いてみたんですが、そういうような意識はないと思っております。現に司法研修所の教官の中にも女性の教官が既におりますので、研修所の教官がそういう意識を持つということはないだろうというふうに思っております。
#284
○林紀子君 それでは、今後、この数字を見ても確かにそうだなと思えるような数字があらわれないように、それでもって、やはりこういう枠というのはなくなったんだということを天下に知らせていただきたいと思うわけです。
 そして、先ほどお話にありましたけれども、やはり今、国際的にも女性に対する暴力の問題、性暴力やドメスティック・バイオレンスなどに積極的に取り組んでいく動きというのは大変活発になっておりまして、その中で司法の分野にも大いに女性を登用していくということが求められていると思います。
 政府が行った昨年の男女共同参画社会に関する世論調査というものによりますと、女性に対する暴力をなくすための対策として一番要望されているのが、被害女性のための相談機関や保護施設を整備する、四六%、そしてそれに次いで多いのが、二番目、捜査や裁判における担当者に女性をふやすなど被害を受けた女性が届けやすいような環境をつくる、これが四二%なわけです。こうしたニーズに比べて女性検事は圧倒的に少ないわけですから、大臣からも最後に一言御決意をお聞きしたいと思います。
#285
○国務大臣(高村正彦君) 男女にかかわらず有能な方はどんどん採用していくべきだと思いますし、そういうふうに考えております。
#286
○林紀子君 有能なということで、本当に女性の中にも有能な方はたくさんいるわけですから、しかし数は圧倒的に今少ないわけですから、積極的にふやしていく、そこのところをぜひお考えいただきたいというふうに思うわけです。
 次の問題、質問させていただきます。
 司法制度改革審議会は、中間報告で弁護士費用敗訴者負担制度を基本的に導入するという方向を打ち出しました。「費用の負担が重くなり、事件の種類によっては、かえって訴えの提起を萎縮させる結果となるおそれがある」というふうには指摘しているんですけれども、一部負担とか合理的な金額といって導入しようとしている。これは大変な問題だと思うわけですね。
 さまざまな裁判の現状から見ますと、経済的弱者にとっては利用しやすくなるどころか反対に訴訟ができなくなる、こういう事態なのではないかと思います。例えば医療過誤訴訟の場合、患者や遺族側の勝訴率はおよそ三割だと言われております。通常の民事訴訟の勝訴率がおよそ八割以上というのと比べても、原告が勝つことが大変難しい裁判です。
 このような勝てる見込みの低い裁判は、相手方の弁護士費用まで負担させられるということになりましたら、提訴はやめておこう、できないと、こういうことになってしまうと思うのですけれども、いかがでしょうか。
#287
○国務大臣(高村正彦君) 弁護士費用の敗訴者負担制度につきましては、法によって認められた権利の実現を求め、勝訴した場合でも自己の依頼した弁護士の報酬を負担しなければならないなどの理由により、訴訟に踏み切れなかった当事者に勝訴した場合に相手方から自己の弁護士費用を回収することを可能にする点で訴訟を利用しやすくするものであること等から、司法制度改革審議会の中間報告において、基本的に導入する方向で考えるべきであるとされております。
 しかしながら、他方で、訴訟を提起して敗訴した場合には相手方の弁護士費用まで負担しなければならなくなることから、訴えの提起を萎縮する場合があるとも指摘されており、中間報告においては、敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれがある一定種類の訴訟はその例外とすべきであり、例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取り扱いのあり方等について検討すべきであるとされているわけであります。
 いずれにいたしましても、今後、司法制度改革審議会におきましてさらに弁護士費用の敗訴者負担制度についての審議が行われるものと承知しておりますが、法務省としては、その審議に引き続き協力するとともに、その審議の結果等をも踏まえて検討をしてまいりたいと考えております。
#288
○林紀子君 提訴を萎縮させるという、医療過誤について今お話しいたしましたけれども、これはあくまで試算ですけれども、例えば医療過誤の裁判を起こすとき、弁護士費用を仮に日弁連の報酬基準で試算をいたしますと、患者遺族が病院に一億円の損害賠償を求めた訴訟では、必要な費用は、印紙代の約四十二万円、弁護士への着手金に三百七十万円、計四百十万円。遺族が敗訴した場合はこういうことになると思います。
 しかし、敗訴者負担制度になりますと、病院側の弁護士費用まで敗訴した場合は払わなくちゃいけない。これも試算で千百万円。そうしますと、合計一千五百万円の支払いをしなければいけないということになるわけですね。そういう可能性も生まれるわけです。
 それで、原告が裁判をして病院に訴えようとする背景には、死亡したり重い後遺症を残したりしているのに病院がなかなかミスを認めない、あるいは隠ぺいする、こういうことでどうしても許せないということでやむにやまれぬ思いで提訴するという、こういうケースが非常に多いと思うわけですね。
 しかし、実際、今裁判を起こしております原告の一人は、提訴するに当たっては私どもは弁護士費用という大きな壁が一番の悩みでしたと。これは自分の方の弁護士の費用ですよね。それで、現在も裁判が長引いて八年目に入ろうとしています、裕福な家庭ではないので費用については頭を抱えるばかりです、でも費用がないといってこのまま引き下がるわけにはいきません、もしもこの敗訴者負担制度というのが導入されると私の今の強い意思は少し傾いてしまうかもしれません、とても不安です、導入されてほしくありませんというふうに言っているわけですね。
 医療過誤裁判は裁判の専門性が高い、原告の立証責任が重い、裁判の長期化など、本当に大変高いハードルがあるわけですけれども、どんなに医療過誤にやり切れない思いを持っていても金銭的に余裕のない者はもうあきらめて泣き寝入りするしかない、こういう事例がふえてしまうんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
#289
○国務大臣(高村正彦君) 今、委員が御指摘のような事例というのはあり得ることだと思っておりますし、そういったことも十分検討しなければいけないことだと思っております。
 一方で、例えばマスコミによる名誉毀損事件で何年もかかって訴訟をやって、そしてやっと勝ったらその慰謝料は自分が払った弁護士費用にも満たなかった、そういうようなこともよく伝えられているところでありますし、最初からそういうことがあるということでやってもしようがないやと泣き寝入りしている人たちもたくさんいるというふうに聞いております。
 そういったことをバランスよく検討しながらまさに司法制度改革審議会の中で御論議いただいているところだと、そういうふうに承知をしているわけでございます。
#290
○林紀子君 バランスということをおっしゃったわけですけれども、この中間報告では、政策形成訴訟、そういうこともやはり訴訟を萎縮させるという部類に入るんじゃないかということも言っているわけですが、ではこの政策形成訴訟というのはどういう訴訟を指しているのかというのも非常に難しいわけですね。
 九四年に製造物責任法が成立いたしましたけれども、それ以前に人命が失われた幾つもの訴訟があった。私もその判例を見ましたけれども、例えばダンプカーの荷台が落下してきてダンプカーの運転手が死亡した事件では、自動車メーカーを訴えましたけれども、製造段階で欠陥があったとは推定できない、証拠がないということで原告は敗訴してしまった。また、赤ちゃんが階段から落ちないように防護するさくに生後一年三カ月の赤ちゃんが首を挟んで窒息死してしまった。メーカーを訴えたけれども、構造的欠陥はない、使用上の注意表示がないことを過失とは言えないということで原告がまたまた敗訴してしまった。
 日弁連の会長もおっしゃっておりますけれども、こうした痛ましい事故、その訴訟とそして敗訴の判決の積み重ね、その上にようやく製造物責任法というものが成立したということなんですね。
 しかし、最初に訴訟を起こすときに、それがこの政策形成訴訟という形で本当にこういう立法に結びついていくのかどうかというのは全然わからないわけですね。ですから、訴訟を類型化して、これは敗訴者負担制度を適用除外するからいいじゃないかとか、そういう話も出ているわけですけれども、それではやっぱりこういうことはもう泣き寝入りで提訴をしないということになってしまうんじゃないかと思いますけれども、この辺についてもいかがでしょうか。
#291
○国務大臣(高村正彦君) それぞれのケースでそれぞれどちらがいいかということがあり得るわけで、ですから、現時点でも別に弁護士費用の敗訴者負担制度というのがなくても場合によっては裁判の中でこういうことを認めていることがあるわけでありますが、それはそれとして、ある程度制度としてした方がいいのか、そうでないのか、どっちが全体的により公平、妥当な結論になるのか、それをまさに司法制度改革審議会の中で今御論議いただいているところでありますから、私もその論議の趨勢を見させていただきたい、こう思っているわけであります。
#292
○林紀子君 実例をいろいろ申し上げているわけですけれども、私は、もう一つ、行政訴訟の勝訴率というのがこれまた大変低いということもぜひ申し上げておかなくちゃいけないと思うんですね。国民が国や行政庁を相手に訴訟を起こす場合の勝訴率というのは、九九年、民事、行政、税務合わせてわずか四・三%にすぎないということなんですね。国は、今までも問題になりましたけれども、判検交流もやりながら国側が敗訴しないように構造的に対処しているわけです。家永教科書裁判などは提訴二十八年で敗訴をいたしました。
   〔委員長退席、理事石渡清元君着席〕
 負けた側が弁護士費用を持つということになりましたらこの行政訴訟というのも起こせなくなってしまうのではないか、こういうふうに思わざるを得ないわけですね。これもただ見守るということでしょうか。
#293
○国務大臣(高村正彦君) 現時点では司法制度改革審議会の議論を見守ってまいりたい、こういうふうに思っております。
 行政訴訟で原告側の勝訴率が低いということはおかしいではないかという御意見でありますが、見方によっては日本の行政がそれだけ適正に行われているということも言えるのではないかと。いろんな見方があり得ることだと思っております。
#294
○林紀子君 それから、最高裁にもお聞きしたいんですけれども、大手企業の顧問弁護士などの集まりである経営法友会というところが司法制度改革審議会に意見を出しておりますけれども、この中でこういうふうに言っているわけなんですね。敗訴者負担制度は乱訴の歯どめとして有効であり、支持したいと。勝てる確率が低い案件でも訴訟に及んだ場合など、弁護士にも責任があると認められる場合は弁護士に連帯債務を課す必要性についても検討すべきだということまで言っているわけですね。これは大変な問題だと思うわけですね。
 この乱訴の歯どめとして有効だということなんですけれども、勝てる確率が低い案件で訴訟に及んだ場合、こういうものを乱訴というふうに思っていらっしゃるんでしょうか。先ほど申し上げましたように、勝てる確率が低いという問題を今いろいろ並べ立てましたけれども、こういう問題は本当にやむにやまれぬ気持ちで提訴をしているわけですけれども、こういう問題を乱訴というのだったら大変な問題だと思うわけですが、最高裁の御見解はいかがでしょうか。
   〔理事石渡清元君退席、委員長着席〕
#295
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 御指摘の乱訴でございますけれども、その意味が一義的には明らかになっていないわけでございますが、我々が考えますのは、例えば原告の主張する権利または法律関係が事実的あるいは法律的な根拠を欠くものであり、かつ原告がそのことを知りながらあえて訴訟を提起するというような場合、あるいは同じくそういう根拠を欠くにもかかわらず原告が不法あるいは不当な目的で訴訟を提起するような場合、または一つの紛争について裁判所の公権的な判断が既に示されているにもかかわらず不当な目的で繰り返し訴訟を提起するような場合、こういったような場合で、これが客観的に見て正当な権利行使とは言えない、こういう訴訟を乱訴というふうに言っているのではないだろうか。単に勝訴の確率が低いとか高いとかいうことだけではないだろうというふうに考えております。
 そういうものを乱訴というといたしますと、これは実務を担当する裁判官の話などを聞いていますと、やはり裁判官として仕事をしていく過程でそういう乱訴を経験するということはほとんど皆さん例外なくあるということのようでございます。
#296
○林紀子君 乱訴を経験するというのは、勝てる見込みがない裁判だということではないですよね。もう一度。
#297
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 今申し上げました客観的に見て正当な権利行使とは言えないような訴訟提起、こういったものを乱訴というふうに我々は考えておりますので、そういう趣旨でございます。
#298
○林紀子君 勝敗見込みに関する検討が事前に慎重にこの敗訴者負担制度というのを導入したら行われるんだ、だから訴訟前の準備が充実するんだというようなことも言われているんですけれども、しかしこれは、ですから勝訴の見込みがなかったら乱訴だなどということではないというお答えもいただきましたし、やむにやまれぬ裁判というので、積み重なって法律もできてきているということも、ぜひ真実、事実を見ていただいて、この問題というのはまさに国民の裁判を受ける権利というのを非常に縮めてしまうものだというふうに思うわけなんですね。
 尼崎公害訴訟原告団団長の松光子さんは、この制度でもし敗訴をするようなことになれば、尼崎の公害裁判では十億円を超す弁護士費用を支払わなければならなかったんじゃないか、それぐらいのお金が支払いを求められたんじゃないか、公害訴訟を不可能にする絶対許せない制度だ、こういうふうに訴えているわけですね。
 三月の十日には、弁護士費用の敗訴者負担に反対する全国連絡会、医療事故とか消費者団体の方たちとか環境を守るとかそれから公害の問題を考えるとか、そういうたくさんの団体の方たちが参加をしてこの敗訴者負担というのに反対するというアピールを出されたわけですけれども、その弊害で挙げているのは、泣き寝入りが強要されるものだと。弱者をくじき強者を助けるような裁判になってしまう、社会の改善を妨げるものだということを挙げて、まさに悲鳴とも言えるような思いで絶対にこの敗訴者負担というのを導入しないでほしいということを訴えているわけです。
 今、司法制度改革審議会でも論議をされている司法というのは、司法制度へのアクセスの拡大ということが一つ大きな柱になっている。それなのに、この敗訴者負担制度というのはこれに真っ向から反する、逆行するものじゃないかと思います。
 最後に大臣にもう一言、ぜひ御見解を聞かせてください。
#299
○国務大臣(高村正彦君) 委員が今御指摘になったことを私も聞いておりまして、それなりの理由があると思っております。ただ、その反対のケースもあると私は思いますし、そういったいろいろなケース、全体的にどうなのか、そういったことを司法制度改革審議会の中で御論議いただいている。その御論議の中には、当然、委員が今おっしゃったようなことも含めて検討されているというふうに承知をしております。
#300
○林紀子君 この敗訴者負担制度につきましては、私もその部分に関する議事録を見せていただきましたけれども、本当にあっという間に、ほとんど論議がないうちに、これは必要だろうみたいな話になっているんですね。今、大臣がおっしゃったように、本当にここのところを慎重に論議をするということでなければ、本当に国民のための裁判というのは実現しないということを申し上げまして、私の質問を終わります。
#301
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 民主党の竹村泰子さんが人種差別撤廃委員会の最終所見、勧告について質問されました。私もそのことを中心に質問をしたいと思います。
 それについてのパラグラフ十三、これはオリジナルが英語なので翻訳がちょっと違うかもしれませんが、
  委員会は、条約第四条(c)の違反である、高い地位の公の役人による差別的な性格の発言、およびとりわけ、結果として(権限ある)当局によって行政的もしくは法的措置がとられなかったこと、そして、こうした行為は人種差別を扇動し促進する意図がある場合にのみ処罰されるという解釈に懸念を持って注目するものである。
ということを言っております。
 お聞きします。「高い地位の公の役人による差別的な性格の発言」、この委員会ではだれの発言が問題になったんでしょうか。外務省でも法務省でも結構です。
#302
○政府参考人(吉戒修一君) お答え申し上げます。
 具体的な高官のお名前まで申し上げられませんけれども、よく御存じの方の御発言というふうに聞いております。
#303
○福島瑞穂君 これは議事録がきちっと出るわけですから、今のようなことをおっしゃっても困ります。具体的にどういう議論になったか教えてください。
#304
○政府参考人(天野万利君) お答えいたします。
 これは石原東京都知事によるいわゆる三国人発言を指すものと考えております。
#305
○福島瑞穂君 私はその発言が人種差別撤廃条約に反するのではないかと思うものですが、この勧告が重要な点は次のことにあります。「行政的もしくは法的措置がとられなかった」、つまり石原都知事の差別的発言に対して当局によって行政的もしくは法的措置がとられなかったこと、それを共有すべきだというふうに勧告が言っていることだと思いますが、この措置が何もとられなかったことについて、この勧告を受けてこれからどうされようとお考えでしょうか。
#306
○政府参考人(天野万利君) まず、今回のあの最終見解に対して日本政府としてどう対応するのかという一般的なお話があるかと思うのでございますけれども、最終見解が公表されるに先立ちまして、二週間ほど前でございますが、ジュネーブで審査というのがまずございまして、その審査で委員会に対して必要な情報を提供いたしまして、我が国における人種差別撤廃条約の実施状況について説明をしたところでございますが、時間の制約等もあって必ずしも十分に委員会側の理解が得られなかった点もあるかと考えております。
 今回示されました委員会の最終見解、前半でございますけれども、それにつきましては、今後、関係省庁においてそれぞれ所管事項について十分に検討をいたしまして、政府としてまた意見を提出する機会もございますので、必要であれば書面による意見の提出といったことを行うなど適切に対処していきたい、これがまず前半のお答えでございます。
 後段の石原東京都知事の発言についての措置ということでございますけれども、その前提といたしまして、まずこれが条約に違反するのかどうかという点が問題なんだと思うのでございますけれども、この人種差別撤廃条約の解釈をする権限を与えられた外務省といたしましては、この発言は条約で言っておりますところの「人種差別を助長し又は扇動する」という、そういう意図で行われた発言ではないというふうに考えておりまして、したがいまして人種差別撤廃条約の四条の(c)という、これが公の公務員といいますか者が行った行為に対する条文でございますけれども、その部分には違反をしていないというふうに考えております。
#307
○福島瑞穂君 委員会の勧告は違う解釈をとっております。つまり、
 条約第四条(c)の違反である、高い地位の公の役人による差別的な性格の発言、およびとりわけ、結果として(権限ある)当局によって行政的もしくは法的措置がとられなかったこと、そして、こうした行為は人種差別を扇動し促進する意図がある場合にのみ処罰されるという解釈
には懸念を持つというふうに言っているわけですね。
 つまり、厳密に言えば条約四条(c)の違反かどうかというのはもちろんあるわけですが、この人種差別撤廃委員会が言っていることの重要なことは、別に人種差別を扇動し促進する意図があるかどうかではなくて、とにかく差別的な性格の発言、それも高い地位の公の役人が言っていること、それに対して何ら当局によって行政的もしくは法的措置がとられなかったということを重要視しているというふうに思えるのですが、いかがでしょうか。
#308
○政府参考人(天野万利君) 御承知のように、委員会は十八名の選挙された委員によって構成されておりまして、さまざまな御意見をお持ちになるわけでございますけれども、必ずしも日本政府の見解というのとは一致をしないことも多うございまして、そういう点では、今お読みになりました意見については、先ほど申し上げましたようなことが私ども日本政府の見解ということでございますので、ややそこには隔たりがあるかというふうに存じます。
#309
○福島瑞穂君 委員にさまざまな人がいるのは事実ですが、勧告はその中の合意としてでき上がっているものです。
 では、日本政府にお聞きをいたします。
 こういう勧告が出たことを踏まえて、少なくとも行政的もしくは法的措置がとられなかったことを共有化して、私たちはこの勧告を生かす必要があると考えますが、日本政府としては今後どうやっていこうとお考えでしょうか。
#310
○政府参考人(天野万利君) これは先ほどのお尋ねにも戻るわけでございますけれども、最終見解が出されましたのが日本時間で一昨日の未明でございまして、かなり大部のものでございますので、必ずしもまだ詳細に読み込んでいないところもございます。まず第一に、あの見解の中にどういうことが書かれているかということをそれぞれの役所、部署部署で十分に検討いたしまして、それに基づいて先ほど申し上げましたように何か意見を出す、あるいは何か必要ならば措置をとるといったことはまたこの先の問題になるかと存じます。
#311
○福島瑞穂君 それでは、今後どういうふうに取り組まれるか、ぜひ期待をしております。
 ただ、行政的もしくは法的措置がとられなかったことが問題であると言われたことについては現在どうですか。
#312
○政府参考人(天野万利君) また大変に詳細なことになって恐縮でございますけれども、四条(c)ということにもし違反するかどうかということが問題であった場合には、これを認めないことというのが条約に書いてあるわけです。認めないというのはどういうことかというふうに考えるに、こういった発言あるいは行為が社会的に認知をされることのないようにというふうな行為が予定、想定されているわけでございます。
 ですが、石原都知事の発言に関しましては、都知事御自身でそれについての説明をされておる、またそれを説明した文書を表明しておられるということでございますので、その点についてはそういうことでもう終わっているかというふうに理解をしております。
#313
○福島瑞穂君 それはこの委員会が期待していることとは違うと思います。委員会は十三条で次のように述べています。「こうした出来事が将来起こらないように適切な措置をとり、」ということを言っております。「とりわけ公の役人、法執行官、行政官に、人種差別につながる偏見をなくす目的で、適切なトレーニングを行うよう要請される。」、つまり条約第四条(c)違反かどうかは別にしても、人種差別撤廃条約の趣旨に照らしてよくないことは確かなわけですから、日本政府は取り組めと言っているわけですよね。それでいかがですか。
#314
○政府参考人(天野万利君) 御質問の趣旨を取り違えたらば大変申しわけございません。
 一般に公務員等に関する教育という意味ではおっしゃるような指摘がございますし、それにつきましては、それぞれの部署で研修であるとか、それから研究会とかいろんな機会があるかと思うのでございますけれども、そういう機会を通じまして人種差別を撤廃する目的あるいは趣旨に沿った研修プログラムをつくるといった形で各行政官庁が実施をしておる、今後もそういったことをしていくというのがお答えになるかと思います。
#315
○福島瑞穂君 日本は人種差別撤廃条約を批准して、国内において人種差別がなくなるように努力をすべきなわけです。ですから、高い地位の公の役人が差別的な性格の発言をすることはこの趣旨には明確に反するわけですから、にもかかわらず行政的もしくは法的措置がとられなかったことが問題であると言われているわけですから、とられなかったことを私たちは共有化し、今後どういう措置をとるべきかということを一緒に考えたい、あるいは政府が前向きに今後どうされるかをぜひ期待をいたします。
 次に、帰化の問題、先ほど竹村さんも聞かれましたけれども、私もそのことをお聞きしたいと思います。
 パラグラフ十八、「委員会は、朝鮮・韓国人が帰化に際して日本風の氏名に改めなければならないという行政上ならびに法律上の規定がないにもかかわらず、当局が帰化者に対しそうした変更を強く指導しつづけていること、朝鮮・韓国人が差別を恐れるあまり強制されているように感じていることに対して懸念を表明する。」とあります。
 先ほど、一九八三年に適用が変わったというふうに説明がありました。
 お聞きします。例えばシンという人たちは辛ですればいいんですか。キムさんは金のままなれますか。それから、チェさん、崔と書きますが、そのままなれますか。再度確認します。
#316
○政府参考人(山崎潮君) 日本で使われる常用漢字、そういうものに該当していればそのまま使えるということでございます。
#317
○福島瑞穂君 なぜこんな勧告が出るのでしょうか。
 実はたまたま私の知り合いにシン・スゴさんという女性がいます。辛という字に、淑に、玉と書いてシン・スゴと読みます。彼女は一九八七年ころ帰化の申請をしたそうです。そうしたら、当用漢字のものを使ってくださいと言われて、見たら辛も淑も玉もあったと。だからそのまま、日本の戸籍には振り仮名はありませんが、では、これから辛淑玉として使いますので、そのままお願いしますと言ったら、よき日本人になろうという意思が感じられないとして帰化の申請は認められませんでした。だからこそ、こういう勧告が出るのだというふうに思います。
 個人名を言って申しわけないんですが、例えばシン・スゴさんはそのまま辛淑玉で帰化になれるわけですね。この運用は間違っているわけですね。
#318
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘の事件、ちょっと私、具体的に承知していないわけでございますけれども、私どもとしては五十八年にきちっとした通達を出して周知徹底してやっているつもりでございまして、そのような事実はないと確信はしております。
#319
○福島瑞穂君 申しわけありませんが、私は周りに、やはり名前のことで帰化の申請をする際にいろいろ言われたという例を聞いているんですよね。彼女はその名前でそのまま使いたかったけれども、やっぱりそれは変えてほしいというふうに言われたと。
 こういう勧告も出ておりますので、今後としては、先ほどの竹村さんの質問ともちょっとダブりますけれども、そのままで全然問題なくなれるのだということの徹底を今後もぜひ強くしていただきたいというふうに思います。それはそれでよろしいんですね。
#320
○政府参考人(山崎潮君) 従前の通達の趣旨を徹底するようにしたいというふうに考えております。
#321
○福島瑞穂君 はい、徹底してくださるということで、意を強くいたしました。
 先ほどもありましたが、人種差別禁止法をつくるようにという旨の勧告も出ておりますが、例えば今、小樽では、ロシア人の人たちが銭湯に入ろうとすると、外国人お断りという張り紙があったり、御存じのとおり、静岡の方でブラジル人のジャーナリストの人が宝石店に入ったら、外国人は出ていけと言われて、裁判で彼女は慰謝料請求が認められるというのもあります。あるいは、ゴルフの会員権で在日韓国・朝鮮の人たちはゴルフの会員権を認めないというのは私人間適用で慰謝料請求が認められたりいろいろしておりますけれども、まだまだ具体的には、いろんなサービスを受ける、あるいは雇用の場で、住居を探す場合、いろんな場合に差別を受けるという報告をたくさん受けております。
 人種差別禁止法は日本において必要だと考えますが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。
#322
○国務大臣(高村正彦君) 必ずしも今すぐ人種差別禁止法という法律が必要だという考えがあるわけではありません。いろいろ御指摘を受けて、今後、私個人としてもいろいろ考えてまいりたいと思いますが、法務省として今、人種差別禁止法というようなものをつくるということを検討はしておりません。
#323
○福島瑞穂君 勧告が出ましたので、ぜひぜひよろしくお願いします。
 次に、パラグラフの二十なんですが、「委員会は、国内の救済法が互恵主義に基づいてのみ救済を与えていることを懸念している。これは条約第六条に合致しない。」というのがあります。日本は国家賠償法におきまして、第六条、相互保証をとっております。「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。」と。つまり、日本で外国人が国家賠償請求訴訟をしようと思う場合には、この相互主義がなければだめなわけですけれども、これはパラグラフ二十で批判が出ております。合致しないとあります。大臣、いかがでしょうか。
#324
○政府参考人(山崎潮君) 国賠法の関係でございますね。
#325
○福島瑞穂君 はい。
#326
○政府参考人(山崎潮君) この点についていろいろな考え方が主張されている点は承知はしておりますけれども、現時点においてこれを検討するということは直ちに考えていないということでございます。
#327
○福島瑞穂君 勧告が出ておりますので、ぜひ前向きに取り組んでくださるようにお願いします。
 アイヌの権利をさらに促進するような措置をとること、あるいは複合差別についての取り組みなど、さまざまな提言があります。ことしは八月に南アで人種差別撤廃の国際会議も開かれますし、日本の報告書もまた同じように国連でも審議されるわけですから、ぜひよろしくお願いします。
 次に、三月八日からジュネーブで開催されているILO理事会に提出された条約勧告適用専門家委員会の二〇〇〇年度報告で、委員会は、日本の戦時慰安婦と戦時産業強制労働に関して、一九九九年に続いてILO二十九号条約違反として取り上げました。ILOに違反するということがたびたび出ているんですけれども、これを踏まえて、例えば私はこの法務委員会で、供託金がそのまま、賃金がそのまま供託をされ続けていると。それは塩漬け状態でおろしもできないし、そのままということについてなど質問をしてきました。
 戦争中における強制労働に関しては、当時日本も批准していたILO条約違反であるというのは国連でもはっきり言われているわけですから、ぜひこういうことも踏まえて、塩漬けというか氷漬けになっている供託金をおろすとか何かの対応をぜひ法務省にお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
#328
○政府参考人(山崎潮君) 供託につきましては、もう委員御案内かと思いますけれども、法の根拠があって受け入れをし、払い渡しをするということになるわけでございます。
 ただいま御指摘の点につきましては、法の根拠ということではなく外交上の配慮でというように私は理解できたわけでございますけれども、そういうことでありますと、今未払いの賃金等をそのまま流用するというような形は難しいというふうに理解をしております。
#329
○福島瑞穂君 ただ、このような勧告も出ており、日本政府としては何かをすべきではないか。法律上ということが難しいとおっしゃるのであれば、この法務委員会で質問したように、供託の要件を満たしていたかどうかという、逆にこちらも法律のことを言いたい面もあるんですが、それはちょっとさておき、政治的に供託金があって、それを返すべきという議論は十分成り立つと思うのですが、ILO条約違反というこのような勧告をたびたび受けた後、政府としてやれることがあるのではないか。この勧告を受けてどうなさるおつもりなのか、お聞かせください。
#330
○政府参考人(山崎潮君) 政府全体の話になろうかと思います。直ちに私、今ここでどうこうするというお答えを申し上げることはちょっとできませんけれども、今、委員御指摘の点を含めまして、一つの問題点として、どういう結論になるかは別として考えてみたいという感じでございます。
#331
○福島瑞穂君 戦後もう五十五年たちまして、実はもう当事者の人たちがずっと言ってきて、全く取り残されてきた問題で、きのう、きょう始まった問題でもありません。委員会でも、私以外の方たちも恐らくいろんな委員会で質問していると思うのですが、ですから戦後補償のテーマでも多分いろいろ少しずつ事案が違っていたり解決困難なこともあるかもしれません。しかし、今、現に例えば和解なり英断をして供託金をおろして配るとか、いろんなことはできると思うのですが、いかがでしょうか。
#332
○政府参考人(山崎潮君) 先ほどもお答え申し上げましたけれども、これは法務だけの問題ではないわけでございまして、政府全体あるいは政治全体の話かというふうに私ども理解をしておりまして、現在、私がこの立場でお話を申し上げるのはちょっと控えさせていただきたいというふうに思います。
#333
○福島瑞穂君 それでは、実力者の法務大臣にお願いします。
#334
○国務大臣(高村正彦君) 法務局に供託されている供託金は関係法令に従って適切に取り扱うべきものであると考えておりますが、委員の御質問の趣旨が、それをどうしろと言っているのか、ちょっと私よく理解できなかったもので、申しわけありませんが、もう一度おっしゃってください。
#335
○福島瑞穂君 私の言いたかったのは、ILO条約違反だと言われていること、二つ目は、いろいろ立法的なことはあるにしろ、供託されている供託金があるわけですから、それを例えばわかっている人に配るとか、そういう措置は今からでもできるのではないかと。ですから、こういう勧告が出たことも踏まえて、供託金をおろすなり分配するなり具体的な解決方法というのはとれないものだろうか。例えば、法律的にとは別に政治的な決着でも結構です、法務省としてできないものかと思って質問をいたしました。
#336
○国務大臣(高村正彦君) 供託されたお金とそれを受け取る人の関係が明確な場合と、そうじゃなくて、そのお金をおろして一般的に補償に充てるということをおっしゃっているんでしょうか。
#337
○福島瑞穂君 供託の場合は名前がわかっておりますので、もちろん遺族ということもあるでしょうけれども、基本的にその本人たちに返すということが筋ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#338
○政府参考人(山崎潮君) 名前が仮にわかっているということでその人の請求権だと仮にいたしまして、それは物によって時効消滅しているものも当然あるわけでございます。そういう関係等もございまして、大韓民国の関係で申し上げますと、請求権協定あるいはそれに基づく法律、こういうことで消滅をしているというさまざまな法的な問題点がございます。そういう点も全部踏まえて考えざるを得ないということで、直ちに今ここでどうこうと言うことはできないというふうに考えております。
#339
○福島瑞穂君 時効とおっしゃいましたけれども、時効を主張する側が援用しなければ時効の主張にはならないわけですし、私は、法律の問題もさることながら、お金があり、それをだれに返すべきかという本人がわかっているわけですから、これは政治的決着として返すのが筋だと。そういうふうにして一つ一つ問題を解決していかない限り、ただお金は供託してあります、これは塩漬けでだれも手をつけられませんという状況はやはり不誠実、あるいはもう少し何とかならないかということを強く思います。
 また今後もぜひお話し合いを続けたいと思いますので、よろしくお願いします。
 後は、死刑の問題についてお聞きをいたします。
 ヨーロッパ評議会の調査団が日本に来日し、法務大臣にお会いをして、東京拘置所への見学を希望し、ただ死刑確定囚の人とは面会ができなかったわけです。
 御存じのとおり、EU、ヨーロッパ評議会に加盟をするためには死刑を廃止しなければなりません。ですから、トルコも事実上死刑の執行をやめました。日本はヨーロッパ評議会のオブザーバーです。加盟国でなくオブザーバーだからいいのだということではなく、日本もヨーロッパ評議会のオブザーバーなわけですから、死刑廃止へ向けての議論を始めるとかということは必要ではないかというふうにも思いますが、高村大臣、いかがでしょうか。
#340
○国務大臣(高村正彦君) トルコがEUに入るために死刑をペンディングにしているんですか。
#341
○福島瑞穂君 はい。
#342
○国務大臣(高村正彦君) そういう状況であるから、日本もオブザーバーであるそういう状況で、EUの共通の制度である死刑廃止、それをするというのは、私はそういうことなのかなとちょっと疑問に思います。
 日本は主権国家として日本の中で決めていく問題であると思います。もちろん国際的な潮流がどうだというのは一つの重要な判断ではあると思いますが、EUのオブザーバーとしての地位と関連させて、EU側がだから日本もしなさいよというのは一つ論拠があると思いますが、我々がオブザーバーとしての地位だから、それを主たる理由でどうだという話とはそれはちょっと違うのではないかと。
 最近の世論調査を見ましても、やはり死刑はやむを得ないと考えている人が日本国民で圧倒的に多いわけでありますし、最近の犯罪等の状況を見ても、直ちに死刑を廃止する、そういうような状況ではとてもないと私は考えております。
#343
○福島瑞穂君 それでは、ヨーロッパ評議会が将来日本に対して勧告をしたらどうですか。
#344
○国務大臣(高村正彦君) 勧告は勧告として受けとめますが、最終的決定権は主権国家たる日本が決めていく、こういうことでございます。
#345
○福島瑞穂君 死刑確定囚の人たちの処遇については法務委員会で何度も質問してきたのですが、かつてはいろんな人たち、友達、ジャーナリストなど、いろんな人たちと自由に会えていたのが、あるときから家族、そして弁護士だけになってしまいました。ですから、国会議員ももちろん、外国の国会議員も今の時点で死刑確定囚とは会えない、友人も会えないということになっているのですが、なぜそういうふうに劇的に変わったのでしょうか。
#346
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 過去のいきさつについてはちょっと今はっきりわかりませんが、いずれにしても死刑確定者との接見、面接につきましては、昭和三十八年に出されました局長通達によりまして、一つは死刑囚の身柄の確保を阻害しまたは社会一般に不安の念を抱かせるおそれがあるか否か、二点目には当該死刑囚の心情の安定を害するおそれがあるか否か、三番目にはその他施設の管理運営上支障が生ずるか否かといったような点を判断してその許否を判断することにしておりまして、その場合において今申し上げたおそれ等がある場合にはおおむね許可を与えないという取り扱いをしておるところでございます。
#347
○福島瑞穂君 今、例えば私たちも死刑確定囚に会って処遇の状況がどうかということを聞こうと思っても、文通しようと思っても、それはできないわけですよね。中の状況も、本当にどういう状況で一人一人がどういう状態でいるのかも実はわかりません。
 私自身は、やっぱり死刑確定囚の処遇の問題、死刑についてはいろんな意見があるかもしれません。しかし、確定囚の処遇についてはもう少し改善されてもいいというふうには思いますが、いかがですか。
#348
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 死刑確定者の立場と申しますか地位というものを考えてみますと、死刑判決の効果といたしまして、その執行を確保するために社会一般から隔離されて拘置されているわけですが、それと同時に、死刑を待つ身であるためにささいなことでも大きな精神的動揺と苦悩に陥りやすいことが十分に推察されるわけでありまして、それだけに自殺とか逃亡等の不測の事態を起こす危険が多いわけであります。そういった意味で、その処遇に当たってはその心情に格別の配慮を要することが大変必要だというふうに考えて対応すべきものと考えております。
#349
○福島瑞穂君 ヨーロッパ評議会の調査団が気の毒だったのは、死刑確定囚の人から会いたいと言ってもらっていたにもかかわらず会えなかったということなんですね。つまり、本人が会いたいと言っても会えないということそのものが今問題だと思います。ぜひこの点の改善をお願いします。
 それから、人種差別撤廃条約の審査について勧告が二十日に出て、ほやほやのところで聞いた点はちょっと済みませんが、ぜひ前向きにいろいろ一緒に取り組んでいくことができればと思います。
 ありがとうございました。
#350
○平野貞夫君 お知らせしました質疑項目に入る前に、非常に大事なことですので大臣に確認をしておきたいんですが、大臣は、今の森政権、森首相の状況、事実上退陣を表明されているというふうに認識されているか、あるいは全く普通の状態とお思いか、ちょっと御認識をお答えいただければと思います。
#351
○国務大臣(高村正彦君) 森総理がおっしゃったのは、九月まで自由民主党総裁としての任期があるわけでありますが、その総裁選を前倒ししても結構ですよということを党の執行部、多分五役だと思いますが、の人におっしゃったと。そして、前倒しをいつするか、あるいはどういう形でするかということはこれから総裁を含む党執行部で御相談されると、そういうことを表明されたというふうに承知をしております。
 それと同時に、今、予算、予算関連法案、その他重要法案を最善の努力で国民のための政策実現をしていくと、そういうことをおっしゃっているというふうに認識をしております。
#352
○平野貞夫君 大臣が三月六日の火曜日に閣議後の会見で、あのころは大臣は事実上退陣の表明をしたというような認識のもとに会見されたんじゃないかと、その会見の内容は非常に筋の通ったものだというふうに私は理解していたんですが、今のお話を聞きますと、三月六日のお話を変更されたというふうに理解してよろしいですか。
#353
○国務大臣(高村正彦君) 私が記者会見で申し上げたその時期は森総裁が党執行部の人たちにお話をする前のことであります。
 あのとき聞かれたのは、自民党の都道府県連のアンケート調査を某新聞が行ったところ、過半数の人が、具体的にはどういうことだったか、どういう言葉を使っていたか忘れましたけれども、支持しないと言っているのか、そういうようなことになっているがどう考えるかというような聞かれ方をいたしました。それで、私が申し上げたのは、森総裁は九月まで任期があるんですよ、民主主義というのはルールと手続が大切であるから、自民党の党則の中に途中で総裁をかえるというようなルールもなければ、手続もありません、だから、よく森おろしなどということが言われるけれども、森おろしができるのは森首相御自身しかいないんですよと、そういう意味のことを申し上げたわけであります。
#354
○平野貞夫君 なぜ私がこういうことを申し上げたかといいますと、いずれにせよ今はやっぱり森政権というのは非常に安定していないと思います、そういういろんな流れの中で。といいますと、政権が非常に不安定だというときに一番大事なのは秩序、治安、法を預かる法務大臣の責任というのが非常に大事じゃないかと思っております。しっかりとその役割をやっていただきたいという思いで申し上げたわけでございます。
 さて、大臣の所信表明の中でちょっと御説明していただきたい用語があるんですが、事後監視・救済型社会への転換という言葉が数カ所入っていますが、私、初めて聞く言葉で、どういう意味なのかということを御説明いただけないですか。
#355
○国務大臣(高村正彦君) これも比較的どっちかという話でありますけれども、今まで日本はどちらかというと官僚の裁量行政型、事前規制型の社会であったと思います。そういう裁量行政、事前規制というのをできるだけ少なくする、そして透明なルールをつくって国民一人一人が自己責任によって行動をすると。
 ただ、幾ら透明なルールで自己責任といっても、それをだれもそのまま放置しておいたんじゃ無秩序社会になりかねないわけでありますから、その透明なルールに反してそしてだれかが被害をこうむったような場合は、それはきっちり事後監視といいますか、事前規制ではなくて事後監視、その被害が救済されるような社会にしよう、そしてその事後監視、救済する機関というのはいろいろあるわけでありますが中心は司法ですねと、こういうようなことを申し上げたつもりでございます。
#356
○平野貞夫君 わかりました。
 次に移りますが、御承知のように、衆参両院で憲法調査会が一年間活動したわけでございます。衆議院でもそうだと思いますが、参議院ではここのところ国の機構ということを中心にいろいろ専門家からお話を承っておるところでございます。一方、その中でやはり司法権の将来の、二十一世紀のあり方ということが時々議論に、話題になっていまして、片方で司法制度改革審議会が積極的にいろいろ司法改革についての議論をなさっておる。
 ただ、この審議会をつくる法律のときに私なども申し上げたのですが、二十一世紀の司法制度ということになると、現在の憲法の見直しも含めて、これは悪い意味でなくて真剣な意味で、やっぱり憲法の枠を超えて司法制度のあり方というのを議論すべきじゃないかという意見を申し上げたのですが、なかなかそれは政府としては取り上げられなかった、こう思うわけでございます。
 したがいまして、本当は憲法調査会に法務大臣に来てもらってお話を承って、将来の日本の司法制度のことを議論したいんですけれども、ちょっといい機会ですので、憲法調査会でいろいろ話題になっている幾つかの問題点について、これは大臣としてはなかなかお答えにくいかもわかりませんが、意見を聞かせてもらえればありがたいんです。
 例えば、憲法裁判所を設置して、これは構想はいろいろあるんですが、行政裁判なんかも憲法裁判所で一括して、そういう分離した方が司法の効率化、しかも司法の民主化に当たるんじゃないかという意見がありますが、その辺について、個人としてでも結構でございますから、法律家高村としてでも結構ですが、聞かせていただければ。
#357
○国務大臣(高村正彦君) よくわかりませんが、憲法裁判所という意味が、憲法が絡むような司法を解決するための裁判なのか、あるいは例えば法律が憲法適合性があるかというような、そういう一般の司法と離れてそういうことをする特別な裁判所なのかということでもまた違ってくると思います。
 ただ、私自身余り深くこのことを検討したことがないので、今の憲法の範囲内で考えておりますので、個人としても私の見識で言えばこうだということを今お答えできないのが大変申しわけなく思っています。
#358
○平野貞夫君 イメージとしてはドイツの憲法裁判所をイメージしているんですが。わかりました。
 それから、現在、最高裁判所の長官とか裁判官の国民投票をやっていますね。あの制度は機能していると思いますか、現行制度の中では。
#359
○国務大臣(高村正彦君) 機能しているというのが、意味がなかなか難しいことでありますが、ああいう制度は、私は、今機能していないね、だからなくていいということではないんだろうと、こう思っております。
 国民の審査によって任命行為が完成するということではなくて、あれは解職の制度でありますから、普通の場合にはそれはいいんだけれども、何十年に一遍かあるいは百年に一遍かわからないけれども、国民から見たらともかくとんでもない人間がなっているよというような場合があって、その場合に全く解職する制度がないというのはいけないわけでありまして、そういう異例の事態にそういうことが威力を発揮する制度というのは私はあっていいんだろうと。そして、そういう事態が今まで起こっていなかったということは国民にとって私はむしろ幸いなことであったと、こういうふうに思うわけであります。
#360
○平野貞夫君 大臣の立場で憲法問題なんかを聞きまして失礼いたしました。
 実は私の支援者から刑法の改正についてちょっと検討してくれないかという、こういうものが来まして、私は法律の専門家じゃございませんので、この機会に、刑事局長でも結構ですし、場合によっては大臣の御見解をいただいても結構ですが、ちょっと一、二点教えていただきたいんです。
 御承知のように、性犯罪、刑法の百七十六条からある性犯罪なんですが、これが親告罪になっているわけでございますが、親告罪になっていることによる今日的状況の中で非常に不都合があると。例えば近親者による性的虐待が処罰できないとか、あるいは告訴の取り下げ交渉が横行して犯人が非常に野放しになるとか、あるいは被害者の名誉を保護する法の整備が若干できたというようなことで、これを非親告罪化することについて法務省としてどのようなお考えなのか、お聞きしたいと思います。
#361
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、御指摘のように、性犯罪について、今は親告罪とされておりますものを非親告罪にすべきではないかという御意見もございます。
 この問題につきましては、昨年、刑事訴訟法の一部を被害者保護という観点から改正をお願いしたわけですが、そのときに、それまで告訴期間が六カ月であったものを、これの期限をなくしたわけでございます。
 そういうふうな改正に至るまでの法制審議会等の中で、やはり非親告罪にするということはどうかという議論もあったわけでございます。そこで、いろんな角度から議論いたしましたけれども、やはり非親告罪といたしますと、これは被害者の意思にかかわらず、捜査機関が言ってみればその事件を取り上げて起訴をするなり、もちろんその前は捜査がある、そういうことができるようになるということになるわけです。そういたしますと、やはり被害者の保護という面から見るといかがなものか、いきなり非親告罪化するというのは適当ではないという意見が多数を占めたものでございます。
#362
○平野貞夫君 そうしますと、これは将来も非親告罪化することは難しいという見通しになりますか。
#363
○政府参考人(古田佑紀君) その点につきまして、これから未来永劫というようなことは、それは到底申し上げることはできないわけです。もちろん、今後の被害者の方々の意識の変化がどうなるかとか、そういう世の中の受けとめ方がどうなるかとか、そういうふうないろんな問題があると思います。しかし、今直ちに非親告罪化ということは先ほど申し上げた理由からやはり問題があるだろうと考えているところでございます。
#364
○平野貞夫君 これは立法のことですから我々の責任でもあるんですが、親告罪か非親告罪かという二者択一のものでなくて、何かやはり親告罪にしている弊害を是正するような知恵をひとつ法務省でもお考えいただきたいと思います。要望をしておきます。
 それからもう一つ、凶器準備集合罪というのがございますが、これが最近の暴走族とかそういう凶悪犯罪の多発に伴って、二人以上で集合しないと凶器準備集合罪にならない、これを一人でも、単独で凶器を持っている場合でも処罰できるような、こういう改正が必要ではないかという意見を聞いておるんですが、その点についてはいかがでございましょうか。
#365
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまのお尋ねにお答えする前に、親告罪の問題について一言補足いたしますと、実際、事件になりましたときには、もちろん告訴をどうするかということがいろいろあるわけですが、やはり告訴の取り消しを考えての本当に真意に基づくものなのかどうなのか、そういうような点につきましては十分配意してやっております。
 ただいまのお尋ねでございますけれども、現在の凶器準備集合罪というのが、昔、要するにやくざ同士の縄張り争い、そういうのが頻発をいたしましてたくさんの人間が集まると。その中には凶器を、刀とかけん銃とかを持っている者もいる。しかし、それを持っていない者も一方でいるわけです。そういうふうな形で何人もの人間が集合して、いわば非常に危険な状態ができる。これにつきましては、そういう事情がわかって集合した全体の人間、これをいわば犯罪として取り扱うことが非常に難しかったわけです。そういうことから、現在の凶器準備集合、凶器が準備されていることを知って集合する、そういうふうな新しい犯罪類型がつくられたわけです。
 もともとはと申しますと、単独の場合には、例えばけん銃のようなものでありますとか日本刀のようなものでありますとか、こういうものを持っておりますれば、これは銃砲刀剣類所持等取締法違反ということになるわけで、そのほかにも一定の大きさ以上の、あるいは携帯のナイフでありますとか、こういうものもやはり取り締まりの対象になっているわけでございます。
 そういうふうなもともと性質上危険なものについては、そういう点で現在も取り締まりが可能になっているわけでございます。それを超えて、例えば竹の棒とか、こういうふうなものまで一般的にということは、これはかなり困難な問題だと考えております。
#366
○平野貞夫君 これらの問題についてはこれからやっぱり勉強、研究をしてみたいと思いますので、よろしくお願いします。
 ありがとうございました。
#367
○委員長(日笠勝之君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#368
○委員長(日笠勝之君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 まず、両案について政府から趣旨説明を聴取いたします。高村法務大臣。
#369
○国務大臣(高村正彦君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を適宜一括して御説明いたします。
 初めに、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官につき、判事の員数を三十人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件及び倒産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官の員数を増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を九人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件、倒産事件及び民事執行法に基づく執行事件並びに家庭裁判所における家庭事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所書記官等を二百四十五人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を簡素化し効率化すること等に伴い、裁判所事務官等を二百三十六人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を九人増加しようとするものであります。
 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 この法律案は下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について所要の改正を行おうとするものでありまして、以下、簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の名称の変更であります。すなわち、裁判所の名称はその所在地の市町村の名称を冠するのを原則としておりますので、埼玉県浦和市、同大宮市、同与野市を廃し、その区域をもってさいたま市を置く処分に伴い、浦和地方裁判所の名称をさいたま地方裁判所に、浦和家庭裁判所の名称をさいたま家庭裁判所に、浦和簡易裁判所の名称をさいたま簡易裁判所に変更しようとするものであります。
 第二点は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表の整理でありまして、市町村の廃置分合等に伴い、同法別表第二表ないし第五表について必要とされる整理をしようとするものであります。
 以上が両法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#370
○委員長(日笠勝之君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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