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2001/03/27 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第4号
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2001/03/27 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第4号

#1
第151回国会 法務委員会 第4号
平成十三年三月二十七日(火曜日)
   午後一時十一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十七日
    辞任         補欠選任   
     尾辻 秀久君     海老原義彦君
     魚住裕一郎君     木庭健太郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                江田 五月君
                福島 瑞穂君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩崎 純三君
                海老原義彦君
                大野つや子君
                岡野  裕君
                佐々木知子君
                竹山  裕君
                小川 敏夫君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                木庭健太郎君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
   衆議院議員
       発議者      佐藤 剛男君
       発議者      杉浦 正健君
   国務大臣
       法務大臣     高村 正彦君
   副大臣
       法務副大臣    長勢 甚遠君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  大野つや子君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中山 隆夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革審
       議会事務局長   樋渡 利秋君
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房司
       法法制部長    房村 精一君
       法務省民事局長  山崎  潮君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
〇裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
〇下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
〇土地の再評価に関する法律の一部を改正する法
 律案(衆議院提出)
〇金融機関等が有する根抵当権により担保される
 債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する
 法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、魚住裕一郎君が委員を辞任され、その補欠として木庭健太郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(日笠勝之君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革審議会事務局長樋渡利秋君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君及び法務省刑事局長古田佑紀君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(日笠勝之君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○千葉景子君 きょうは裁判所定員法の一部を改正する法律案と下級裁判所の管轄区域等の改正の法律案を一括してということでございますので、簡単なというとおかしいですけれども、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の方をまずちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。
 今回の改正は、中身は簡単なことでございまして、埼玉県で市町村合併が行われましてさいたま市というのが誕生することによる管轄区域、それから裁判所名等を整理するというものでございます。この下級裁判所の名称につきましては、原則として所在地の市町村名が名称として使われているというふうに私も承知をさせていただいているところです。今回はその原則をちょっと、例外的な形になるのでしょうか、大宮市というのがなくなってしまいましたので、これまで大宮簡裁という名前で、大宮市にある大宮簡裁ということだったんですけれども、さいたま市にはなりますが、そのまま大宮簡裁ということで簡裁名を継承するということのようでございます。
 どうなんでしょうか、原則として所在地の市町村名が使われるということではありますけれども、この大宮簡裁のような今回のケースはその例外のようなものなのか、それとも、これは私もちょっと細かくわかりませんけれども、大宮町とか何かそういう所在地があってその名称をつけたという趣旨なのか、それから全国的に見てその所在地名以外が付せられているような例外等があるのか、あるいは合併などによって名称を整理する際にはどんな考え方に基づいて名称が付せられているのか、その辺をちょっと御説明いただければありがたいと思います。
#7
○政府参考人(房村精一君) ただいま委員から御指摘のありましたように、裁判所の名称を定める場合に、これは法律上特に原則というようなものは定められておりませんが、利用者の便宜を考えまして、原則として所在地の市町村の名称を冠するということとしております。したがいまして、現在、浦和市に置かれております裁判所については、浦和地方裁判所、浦和家庭裁判所あるいは浦和簡易裁判所というような名称が用いられているわけでございます。
 しかし、例えば、今回もそうでありますが、市町村の合併によりまして同一の市町村内に二つ以上の裁判所が所在することとなったような場合、こういう場合には、地元自治体とか関係機関の意見も踏まえまして、適当と認められる場合には旧市町村の名称をそのまま使用するという場合もございます。そのような例といたしましては、昭和四十二年に玉島市と児島市が合併をいたしまして倉敷市になりました。このときに、そういう地元の御意見等を伺いまして、名称は玉島簡易裁判所、児島簡易裁判所、そのままで残してございます。そういう例がございます。
 今回の大宮簡易裁判所につきましても、地名としての大宮市はさいたま市になりますので、そういう市区町村の名前としての大宮というのはなくなったわけでございますが、地元からの御要望等もございますし、そういう意見を踏まえまして、現在まで親しまれております大宮簡易裁判所の名称をそのまま存続するということといたしました。
 また、そのほか、例えば広島の可部簡易裁判所がございますが、これは可部町が広島市に合併をいたしまして安佐北区となりまして、その際にやはり従前の可部の名前をそのまま使っております。そのほか、国民に親しまれているという観点から、例えば八丈島簡易裁判所、これは町名ではなくて、島の名前の方が親しまれているということから島の名前を簡易裁判所の名前に使っていると。
 このような、それぞれどのような名称が国民にとって一番わかりやすいかという観点から、常に市町村ということではなくて、最も適当と思われる名称を使用しているという実情にございます。
#8
○千葉景子君 わかりましたというか、利用者にとってもなじみやすい、わかりやすい、あるいは地元の自治体等の意見なども踏まえて、原則は所在地の市町村名ではあるけれども、柔軟な名称のつけ方になっておると、こういうふうに理解をすればよろしいのでしょうか。今回の大宮もそういうことであろうかというふうに思います。そう承知をさせていただきまして、この法案について対応してまいりたいというふうに思っております。
 さて、今回もこの裁判所職員定員法の一部を改正する法律案が提案をされました。
 この定員法の改正というのは毎年恒例のように行われておりまして、多分この委員会の会議録などを繰っていただきますと、その都度、一体定員とは何ぞやとか、あるいは裁判所にとってどの程度の職員の規模あるいは裁判官の規模、こういうものが適切なんだろうかとか、あるいは今非常に裁判官も手持ち事件も多く、極めて忙しい環境の中で仕事をしておると。これはひいては利用者にとっても時間がかかる、あるいは本当にじっくり聞いてもらっているんだろうかという、そういう懸念にもつながる。こういう中で、裁判所の規模のあり方、そういうものを少し将来像を描いて、そして定員というものをきちっと定めたらどうかというような論議もたしか毎年のように行われてきたような気がいたします。
 私もそういう意味では司法のあるべきこれからの姿みたいなものが大変重要だというふうに思いますが、そういう中で、今、司法制度改革、これは司法制度改革審議会のもとでも積極的な論議がされておりますし、それからさまざまな分野でも司法に向けての意見が提起をされている、こういう状況でございます。
 今こういう環境のもとにある中で、今回の定員法というのはどういう意味を持っているんだろうかということをちょっと考えてみたいわけです。
 司法制度改革審議会の中間報告の中でも、人的基盤の充実あるいは法曹の質と量の拡充、そしてとりわけ裁判所、検察庁の人的体制の充実が指摘をされておりますし、その中で「裁判官、検察官の増員の必要性については異論がないところと言える。」、こういうことも指摘をされております。私もそのとおりではないかというふうに思っておりますし、先ほど言いましたように、これまでもこのような議論がたび重ねて行われてきていた。また、法曹が社会のニーズに的確に対応することの実効性を確保するためには、関係職員についても適正な増加を図っていくことの必要性がやはり指摘をされております。
 そして、今、国家公務員の総数については、行政改革等の考え方も念頭に置きながらむしろ削減をすることが求められている時代ではありますけれども、この司法制度改革は、行政改革のある意味ではスリム化をする、そのかわり自由競争やあるいは事後チェック、こういうものの観点からむしろその行政改革の基本理念とも合うものであるということから、この充実については他の行政分野とは異なる取り扱いをすべきだと。片方ではある意味では合理化を図っていくけれども、司法の分野はそれとは違って、むしろこれからは大きく充実をさせていくことが必要だということがこの司法制度改革審議会の中間報告でも明確に指摘をされているということでございます。
 こういう論議が進んでいる中で、今回のこの定員法の改正というのは、そういう大きな流れというものを意識して、あるいは念頭に置いてなされているものなのかどうか、そこをお聞きしたいと思うんです。判事として三十、職員が九という純増でございます。これが本当に今のこういう時代の流れの中で理解し得るものなのか、私もちょっと疑問に思いますし、そういう意味で、本来は司法制度改革の先頭にみずから立つべき、そういう姿勢が必要なのではないかというふうに思うんです。
 どうでしょうか、こういう今の司法制度改革、それから司法制度改革審議会などでのさまざまな指摘、こういうことが今回の定員法と関係があるのかないのか、あるいは念頭に本当にあるのか、意識されているのか、その辺、どのように私どもは受けとめたらよろしいんでしょうか。その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
#9
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答えいたします。
 裁判所としましても司法制度改革審の中間報告や審議経過には大きな関心を持っているところであり、司法制度改革審議会では今も委員御指摘のような問題意識からさまざまな議論がなされているところでございますが、最終意見がこの夏にも出て、新しい裁判所の人的体制あるいは裁判官制度の枠組みというものが定まってくれば、それを担っていくための必要な人員の確保に努めなければいけないのはこれは当然のことだろうと思います。
 一つの例を申し上げますと、例えば判事補について外部派遣制度というものが検討されておりますけれども、大ざっぱな言い方で、御説明で恐縮でございますが、今判事補は各期百人おります。この各期百人を全員外部派遣するということになりますと、いわば裁判所の戦力はそれだけ低下するということになりますから、百人の増員、さらにそれは増員だけにとどまらず、それを埋める、充員というところができなければできないということになるわけでございまして、最終報告を受けた段階でこういった中長期的な観点に立った人員政策というものを考えていかなければならない、こういうふうに思っているところでございます。
 今回の定員法とこの司法制度改革審議会の関係でございますけれども、最終意見の出ていない現段階におきましては、昨今の事件数の増加に対応するために必要な要員の確保という観点から増員をお願いしているものと、こういうふうに御理解いただければと思います。
#10
○千葉景子君 多分、必要性は意識はなさっているようでもございますし、そうだとは思うんですけれども、司法制度改革審議会の結論が出て、さてと、やると言ってもなかなかそれは一気にできることではない。それから、これまでも、先ほど指摘をさせていただきましたけれども、決して裁判所の人数が、職員の人的な基盤がこのままでよろしいと、もっとやっぱり充実せいという話は別に今初めて出てきたわけじゃないんですね。ずっと議論をされてきた。
 こういう中で、しかもある意味では追い風、応援団といいますか、社会全体がそういう意味では裁判所の応援団みたいなものですから、そういう状況があるにもかかわらず、考えてみると、これは全然、これまで毎年毎年の改正の仕方と何ら変化がない。本当にこれでいいんだろうか。だから、どうもこの司法制度改革とか裁判所のある意味では充実ということにむしろ裁判所が一番消極的なんじゃないか、後ろ向きなんじゃないかという指摘も私はされるんじゃないかというふうに思うわけです。
 そういう意味では、私は、こういう状況の中で例年どおりというのが大変残念なといいますか、何かそういう意欲とか意思があらわれていないというのが本当に残念な気がいたします。ぜひ裁判所が後ろ向きであるという指摘がなされないように、その辺も認識をしておいていただかなければいけないのじゃないかというふうに思います。
 こういう状況ではありますけれども、これまでも多少なりとも、裁判官の給源の多様化あるいは多元化、こういうものに対応していこうという取り組みもなかったわけではありません。そういう中で一つございますのが弁護士の任官制度です。これがこれまで取り組みをされてまいりました。
 私は、司法が人的にも量的にも充実をしていくとともに、市民に開かれた、そして市民の生活あるいは社会の状況を的確に把握できるような法曹のありようということを考えたときには、よく言われますように、今これは議論にはなっておりますけれども、法曹一元と言われるような考え方も私は一つの大きな視点ではないかというふうに思っております。きょうはその議論をやることはいたしませんけれども、具体的な方策として弁護士の任官制度というふうなものも取り入れられてまいりました。そこで、せっかくこういう制度があるわけですので、ちょっと実情をお尋ねしておきたいというふうに思っております。
 弁護士任官、この実情はどんなものでしょうか。これまで申請をされた数、そして採用されて裁判官として職務についている数等、ちょっと実情をまず御報告いただけませんでしょうか。
#11
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 最高裁では従来から、弁護士からも適任者であれば多数裁判官に任官していただきたいというふうに考えておりまして、昭和六十三年の三月に判事採用選考要領というものを策定いたしまして弁護士任官を募りました。その結果、この選考要領に基づきまして判事八名の任官がございました。その後、平成三年十月にはその選考要領を改定いたしまして、任期とか採用条件についても柔軟に対応するということにいたしました結果、この新しい選考要領に基づいては、これまでに判事三十三名、判事補八名、合計四十一名、年間平均にすると四名弱ですが、の任官がございました。
 なお、任官者の申請数ということでございますが、これは正式に選考の申し込みをするというものから、そういう正式の申し込みをする前に事前に相談ないし打診をするという段階までいろいろな形態がございます。そういう事前の相談ないし打診というのは、手を挙げやすいようにということで弁護士会側から要請があってできた手続のようですが、と聞いておりますが、こういうものがございまして、そういうものを含めた統計というものはとっておりませんので、ちょっと申請数というお尋ねの件については資料がないわけでございます。
#12
○千葉景子君 今お話があった、相談をしたりあるいは打診をしながら正式に任官の手続をとるということなんだと思うんですけれども、そうすると、多分申請をするには申請書とかそういう手続があると思いますが、正式に申請を受けて採用されなかった、そういう数というのはどのくらいあるんですか。あるいは、今言った相談とか打診等で、数はこれは今わからないということですが、どうもこれはだめだとか、さっきおっしゃいました適任者じゃないというようなことでやんわりとお断りになるとか、そういうケースというのは相当あるんですか。
#13
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 事前の打診、相談というやり方ができたこと自体が、ある程度、絶対的になるという強い希望でない場合もありまして、そういう意味で、こういう段階でどうかなと、ちょっと難しいんじゃないでしょうかというお答えをして、それで取り下げられたといいますか、その希望の表明を撤回されたという例は私が実際経験しただけでもある程度の数はございます。
#14
○千葉景子君 どうも何か話がはっきりしないんですけれども、さっき言ったように、そもそも適任者であれば受け入れていくということですが、その採用基準といいますか、適任者であるということの採用基準みたいなものは何か明確に持っておられるんですか。
#15
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) これは裁判官の採用、任用一般でございます。必ずしも弁護士からなられる場合だけではないんですが、裁判官に必要とされる資質、能力というのは非常に幅が広うございます。まずは法律家としての力量、力が相当レベル以上でなければならないという点があると思いますし、それからそのほかでも、お人柄その他から健康というふうなこともございますし、いろいろな観点からこの方なら裁判官として十分活躍していただけるだろう、そういう判断をするわけでございまして、例えば一つ一つ項目を挙げた基準というふうなものは現在つくってはおりませんけれども、そういった能力、人物等を総合して決めるという考え方で判断をしております。
#16
○千葉景子君 どうもそのあたりが裁判所の何かこう閉鎖的といいましょうか、そういうことにつながっているんじゃないか、それからある意味ではそう見られる一面をあらわしているんじゃないかというふうに思うんですね。
 というのは、今さまざま議論をされていることは、裁判自体に幅広く市民的な考え方、そして市民の常識、こういうものを盛り込んでいかなければいけないということが指摘をされて、いわゆるキャリアシステムのようなものでいいのかということがむしろ疑問が呈せられているわけですよね。
 そういう中で、どうもよくわからない。相談や打診でどうもいかがかというのもあるようですし、それから採用基準というのも何かいま一つ不明確ですし、適任者って、それは法律的な素養といいますか、法律を適用して仕事をするわけですから。ただ、これは弁護士ということになれば、司法試験なりを合格して在野で仕事をしてきたということでもありと。
 そういうことを考えますと、弁護士任官につきましても、何か裁判所が使いやすいといいますか、どうもそういう観点で採用を決定しているのではないかと。わかりませんよ。ただ、そうこちらでは疑わざるを得ない、あるいは考えざるを得ないような形態になっている。この辺ももう少し幅広い法曹、法源、あるいは裁判官のすそ野を広げていくような、こういう努力というのは必要なんじゃないかというふうに思うんです。
 新聞等の報道などでも、せっかく裁判官に弁護士から任官をしようという希望を持っていたにもかかわらず、なかなかそれがかなわなかったと。何で裁判官として採用されないのか、その理由がいま一つ御本人もわからないんだと。今は弁護士会がやっている、過疎地域などの公設事務所などで仕事をしているなどという報道等もありました。
 こういうことを見ると、意欲がある、そして日本の裁判をよりよいものに、市民にとっても身近な利用しやすいものにしていこうと意欲のある在野の法曹も、何かそういうケースなどを見ると、やっぱりどうせだめだという気持ちにもなってしまうし、そして今の議論にも何か水を差すような、そういうことになっているのではないか。裁判所というのはどうも閉鎖的で、自分たちの都合のよい人だけ採用するという御指摘が本当に事実のものとして受けとめざるを得ないようなことにつながってしまう。
 どうでしょうか、こういうせっかくある弁護士任官制度のようなもの、これからの司法制度改革審議会の結論とか、あるいは司法制度改革の最終的な取りまとめ等はこれから出るとしても、せっかくあるこういう制度をより積極的に活用していく、そういう意欲のある人を大いに裁判所としても受け入れて、そして市民にとっても納得のいくわかりやすい裁判というものをつくっていこうという姿勢をやっぱり持つべきではないかと思いますが、いかがですか。
#17
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 弁護士から任官していただく意義というのは、委員が御指摘のように、いろいろな経験を持った方が裁判官になって裁判官の多様性が確保される、そういうところにあるわけでございまして、その点は御指摘のとおりだと思います。
 ただ、お話の中にありましたように、法律家としての能力というものがやっぱり大事だということもございまして、現実に弁護士からなられた方の中で、その後裁判官として仕事を続けていかれる上でなかなか難渋といいますか、判決とか、それからその前提として事件についての決断をしていくとか、そういう点で非常に苦労されている方が多いということもまた事実でございます。
 そういう点につきましては、今回、司法制度改革審議会に提案いたしました弁護士任官の推進策として、例えば専門的分野、知的財産権であるとか、家庭裁判所の事件であるとか、そういう専門的分野で経験、知識が深い方がそういう分野で活躍していただくためになっていただくとか、あるいは弁護士任官者の研修を充実するとか、あるいは弁護士任官者を部総括した部で最初やっていただくとか、そういう方策も提案しておりまして、そういう形をとれば、今申し上げましたようなところも少しは任官しやすさが出てくるんじゃないかというふうに考えております。
 それから、もう一つの手続の点でわかりにくいと。何分、今までは最高裁判所に与えられた下級審の裁判官の任命のための指名の権限を行使する、それを決めるときに、最高裁の中の手続になっておりまして、外から見えにくいという御批判がありましたので、そういう点は直していくことが必要じゃないか、裁判官に対する信頼というものを高めるためにはその任命手続についてそういう透明性を高めるということがやはり必要だということで、これも司法制度改革審議会の方へ、裁判官指名諮問委員会を設置して採用とか再任とかをかける、これはもちろん弁護士からおなりいただくときでもそういう諮問委員会にかけまして透明な手続で決めていく、諮問をして意見をいただいて決めていく、こういうことを考えておりますので、その点も御指摘の点については改善を図っていきたいと考えている次第でございます。
#18
○千葉景子君 後ほどお尋ねをいたしますけれども、これからは国民の司法参加、本当に一般の市民が裁判手続にも関与をして適切な判断を出していこうということまでもが論じられ、あるいは具体化をほぼしようとしているもう状況でございますね。そういう意味では、少なくとも現在すそ野としては、司法の中でも幅広くというこの制度というのは本当にもう少し透明化を図り、そしてできるだけ任官しやすい、あるいは意欲をそがぬようなそういうことを積極的に考えていただきたいというふうに思います。
 さて、裁判所の充実という意味では、今回この定員法の中でも職員の問題もございます。これは冒頭言いましたから、本当にいかにもという、一体何のための増員なんだろう、どういう意味があるのかなという、本当に率直に言ってそう思うんですね。
 その中の例をちょっと挙げさせていただくんですけれども、例えば家庭裁判所の調査官、これは今、家裁というものの機能というのがある意味では非常にまた求められ始めております。成年後見の問題などもありますし、少年法の問題あるいは女性をめぐるいろいろな問題等も含めて、やっぱり家裁の機能の充実というのは私は一つの大きなテーマではないかというふうに思っているんです。
 そのときにその家裁調査官というのがどうなっているのかというと、せっかくの機会ですので、これも実情をまずお聞きしたいと思うんですが、今、家裁の調査官というのは総数でどのくらいいるのか。それから、全国の家裁の数でそれを割ればいいんですけれども、おおよそ各家裁で配属になっている人数というのはどの程度になるものでしょうか、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
#19
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答えいたします。
 現時点で家庭裁判所調査官は全国で千五百二十八人でございます。各家庭裁判所の本庁及び主な支部に配置されているわけでございますが、御承知のように各庁の事件数の動向というものは必ずしも一様でございません。したがって、例を申し上げますと、最も規模の大きい東京家裁本庁では約百二十人、規模の小さい庁では七人程度というのが実情でございます。
#20
○千葉景子君 今回は、それに対して、どうもこの定員法というのもわかりにくい法律ですけれども、五人の増員という形になるわけですね。総数として、そして配属が小さいところでは七名という、本当にこの数で幅が広がっているさまざまな事件に十分に対応し切れるか、あるいは緻密な、十分な調査に対応できているのかという心配もありますけれども、それを基礎にしながら考えると、五人の増員というのは一体どういう意味があるのか。
 それは減らすわけじゃなくてプラスするんですから、プラスするだけまだましといえばそれまでなんですけれども、五人というのは、全体の千五百二十八人を考えて五人、各家裁の数を考えてみたって、それは本当にどういうことなのかなと率直に言って思うんですが、この五人の意味というのは何ですか。
#21
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 五人は五人なのでございますが、少しく長期的な傾向というものをちょっと御説明させていただいた方が御理解いただけるかと思います。
 家裁の事件動向につきましては、大きく見まして家事事件は増加傾向にありますが、他方で少年事件というものは少子化の影響もありまして大きな減少傾向にございます。少年事件には一般保護事件と交通関係事件がございますが、その一般保護事件だけについて見ましても、ピーク時の昭和五十八年と比較して、現在は十万件、約三割が減少しているという状況でございます。さらにここに交通関係事件を加えますと、大きな減少傾向にございます。そういったことから、この間、裁判所におきましては、所の人員の範囲内で事務の分担等を見直す、具体的には少年から家事へのシフト、そういったことを基本に据えて事件の対応をしてまいりました。
 そこで、裁判所としては一応の適正な事件処理ができてきたわけでございますが、今御指摘のように成年後見という新たな制度が発足し、そういう中で家事事件の増加傾向は依然として継続してきており、また少年事件も内容的に複雑困難なものがふえてきつつあります。そこで、昨年度、家裁調査官の五人の増員をお願いし、ことしもまた五人の増員をお願いしたわけでございますが、これをお認めいただければ、これまでの既存の人員と合わせて適正な事件処理ができるというふうに考えているところでございます。
 以上です。
#22
○千葉景子君 私はよくわかりません。
 というのは、少年事件は多少減少傾向にあるけれども、複雑化、非常に重いものがふえています。それから、家事事件は増加傾向で、そういう中で五人ふえることによって適切な対応ができるという、どうもそこの意味が、聞いておられる皆さんもわかるのかなと思うんですけれども、確かに先ほど言ったように、徐々にふやしていくということが決して私は悪いとは言っているわけじゃないんですね。ただ、やっぱりこれまでの裁判のありようとか、それから求められている質とか、そういうことを考えますと、これまでよりふえたからじゃなくて、むしろこれまでの質を倍にもある意味では機能強化をしなければいけない、そういう中で本当に五人という増員で事足りる話なのか、こういうことを私は言いたいわけですね。
 だから、それはふやすことを別に否定はしませんけれども、先ほどから言っているように、裁判全体の機能強化とかあるいは充実ということを考えたときに、何かこんなに遠慮がちにせずに、家裁の機能を充実するという意味で思い切った増員をするとか、そういうことを私は裁判所の側から国会などに大いにアピールしたり提起をしたらよろしいと思うんですよ。どうもそういう姿が見えない、そういうところに私はどうも消極的な姿勢が見え隠れするように思えて仕方がないわけです。
 今このような司法改革、司法制度改革審議会の方で積極的な御議論が継続をされておりますけれども、きょうは改革審の事務局長にもおいでいただきました。ありがとうございます。
 ちょうど三月十三日は国民の司法参加ということをテーマに御議論がなされたというふうに伺っております。当然、今言われております裁判員制度などの検討がなされたかと思うんですけれども、この三月十三日の国民の司法参加のテーマに基づく審議状況など概略をちょっと御紹介いただけませんでしょうか。
#23
○政府参考人(樋渡利秋君) 国民の司法参加に関します司法制度改革審議会における審議状況につきましては、司法の国民的基盤を強化する見地から、司法制度全体の中で国民の司法参加を拡充していくことが必要であるとの中間報告を昨年十一月に公表いたしました後、刑事訴訟手続への新たな参加制度につきまして本年一月に二回の審議を行った上、先ほど御指摘のありました去る三月十三日の審議におきまして、この参加制度の骨子について基本的に了解が得られたところでございます。
 この骨子としましては、今までに了承を得られたと思われますところは、一つが、対象事件は刑事訴訟事件のうち法定刑の重い重大犯罪とすること、二つは、参加する国民を仮に裁判員としておりますが、その裁判員は裁判官とともに評議に基づき有罪・無罪の決定及び刑の量定を行うこと、三つは、裁判員は選挙人名簿から無作為抽出した者を母体として具体的事件ごとに選任されることというようなことなどでございます。
 裁判員の具体的な数につきましては、さまざまな意見が出されましたが、評決方法とも関連する面がありまして、現段階の取りまとめとしましては、裁判員の主体的、実質的関与を確保するという要請と評議の実効性を確保するという要請とを踏まえ、適正な数を定めることというふうにされたところでございます。
 今後も、本年六月に予定しております当審議会の最終意見の内閣への提出に向けまして、この制度をも含めまして鋭意審議が続けられるものと存じます。
 以上でございます。
#24
○千葉景子君 時間がもうありませんので、余り論ずることができないんですけれども、裁判員制度、この導入の方向についてはおおよそ方向性が出たということでございます。その員数等については、これからその適切な数をということになっていこうかというふうに思いますけれども、私は、この裁判員制度が導入されるに当たる経過、それからその趣旨から考えますと、やはり市民が自律性を持って裁判に対するさまざまな検討を加え判断を下されるという趣旨を生かすためには、数は裁判官の数より倍以上の数を裁判員として採用といいますか、裁判員とするべきではないかというふうに思います。やっぱりそれがあって初めて、裁判官に誘導とかあるいはされずに市民が自分の考えに基づいて自律的な評価を下せる、そういう数になるのではないかというふうに思いますが、これについてはまた今後の検討に私もいろいろな形で参加をさせていただきたいというふうに思っております。
 もう最後になりますが、きょう限られた時間でしたので十分に議論できませんでしたけれども、どうもこの司法の改革については、この定員法だけではかれるわけではありませんけれども、その当事者たる司法といいますか、裁判所あるいは検察、法務省の側が最も消極的といいますか、何か自分の城を守ろう守ろうというようなことがあるんではないかという感じがいたします。そういう指摘もなされていないわけではないわけですね。
 こういう状況を踏まえながら、そして今の司法改革に向けた社会全体の機運、こういうことを考えたときに、大臣、どうでしょう、司法に携わる法務省、あるいは裁判所はちょっと管轄とはいきませんけれども、むしろ先頭に立つ、積極的にみずからの門戸を、胸を開いていく、それからこれまでの慣例にとらわれない問題提起をみずからもしていく、こういうような姿勢が私はやっぱり必要なんではないかなというふうに思いますが、その点について大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
#25
○国務大臣(高村正彦君) 委員御指摘のとおりだと私は思っております。
 法務、検察におきましては、私を初めちょっと慎み深過ぎる人が多いので、なかなか今まで十分なことができませんでしたが、応援をいただきましたし、これから司法制度改革審議会の最終答申、これは大きな追い風になると思いますので、それをまつまでもなく、また世間全体で追い風が吹いているというのも委員御指摘のとおりだと思いますので、その方向で私としても努力させていただきたい、こういう気持ちでおります。
#26
○千葉景子君 終わります。
#27
○橋本敦君 本案は裁判官の増員ですが、私は法曹養成に関連をして極めて重大な問題だと思っていることがありますので、質問をいたします。
 まず、最高裁に伺いますけれども、司法修習生の修習で自衛隊に体験入隊をする、こういったことが行われるということを私は知りまして、日本の平和憲法理念のもとで、憲法擁護の最大の責任を負う裁判官を含む法曹養成について、一体そういうことが妥当なのかどうか、合理性があるかどうか、憲法理念から照らしてどうなのか、最高裁たるものがそういう司法修習の実務修習をやってよいのかという重大な疑念を抱かざるを得ません。
 まず、最高裁に伺いますが、いつごろからどういう実態になっていますか。
#28
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 司法研修所が把握しております限りでは、釧路地方検察庁及び熊本地方検察庁における実務修習中に自衛隊での隊内生活体験を実施した例があると報告されております。
 なお、このほかに、社会修習といたしまして、自衛隊で概況説明を受けたり、施設見学を行うなどといった、庁会として司法研修所が把握しているものといたしましては、平成十一年度に採用された五十三期の司法修習生については浦和地方検察庁等の十の地方検察庁と広島弁護士会がございます。
#29
○橋本敦君 全国で五十庁ぐらいあるという話もあるんですが、実態は完全に把握していますか。
#30
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ただいま申し上げましたとおり、司法研修所で把握しているのは申し上げたとおりでございまして、もしそのほかに何かあるとすれば、あるいは社会修習としてではなくて何か別個の形で見学等のことが行われたということはあり得るのかもわかりません。報告を受けているのは先ほど申し上げたとおりです。
#31
○橋本敦君 全部調べるということを要求しますが、調べてくれますね。
#32
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 司法研修所に聞いてみたいと思います。
#33
○橋本敦君 調べてください。
 そこで、平成十一年度から行われているということですが、これが行われるようになったということの具体的理由と根拠は何ですか。
#34
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 社会修習というものが数年前から取り入れられました。これは、司法修習生が公共あるいは民間の施設等での活動を見学、体験するなどして、法が対象としている社会の実相に触れる機会を与えるための研修でございまして、その目的は、社会の現実の姿に触れることを通じて社会に対する視野を広めるとともに、そこに存在するさまざまな法的問題や法的ニーズを理解し、またボランティア活動等を通じて法曹に必要な資質である公共精神、奉仕精神を養うことにあるというふうにされておりまして、この自衛隊の体験もその一環として行われたものということでございます。
#35
○橋本敦君 最高裁はその一環として自衛隊体験入隊を実務修習でやることは容認しているんですか。
#36
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今、申しましたような社会修習の趣旨から申し上げまして、自衛隊での社会修習というものも幅広く社会を見るということの一環として自衛隊の実情を認識する趣旨で検察庁、弁護士会において実施されたものと思われますけれども、この自衛隊での社会修習というものが社会修習の趣旨を逸脱としているというふうには考えておりません。
#37
○橋本敦君 冗談じゃないですよ。弁護士会は広島一カ所で、ほとんど検察庁がやっているんだ。そして、最高裁が決めた司法修習生指導要綱の一番最後の「第五節 その他の修習」というところで、今あなたのおっしゃった「社会の実相に触れさせる機会を付与する。」とある。社会の実相に触れることは法曹の市民感覚を養う上で必要です。そのことは否定しません。
 しかし、その問題は、今社会の隅々あるいはさまざまな階層で起こっている、市民が直面しているいろんな問題、教育もあれば介護もあれば倒産もあればあるいは農業の問題、いろいろあるでしょう。そういう社会の実相に触れるということについて自衛隊の体験入隊が、これがその中の一つとして必要だというのはどういう必要ですか、最高裁、言ってください。自衛隊へ行って何を学ぶんですか。
#38
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) もちろん社会修習は自衛隊だけではございませんで、いろいろなところへ行っております。自衛隊の体験というものも、これは広く社会を見るという観点ではその一環として意義があるものと考えております。
#39
○橋本敦君 冗談じゃないですよ。自衛隊に体験入隊することが社会の実相の一環だということで昔から行われていますか。つい最近、平成十一年からでしょう。司法修習生の修習が始まって五十年を超えていますよ。いいですか。突然最近、十一年から始まったんです。まさに周辺事態法があり、あるいはPKO法があり、そしてまた自衛隊の海外派兵という問題が社会問題になってくる。改憲論が出てくる。いろんな社会情勢の変化の中で、それこそ裁判所が公平中立に保たねばならない憲法理念との関係で、この問題はそういう社会的な意味からいっても重大な問題があるという認識をなぜ最高裁は持てないんですか。それで最高裁が正しい憲法判断をするという信頼が国民からどうして得られますか。
 具体的に聞きます。
 今あなたがおっしゃった熊本及び釧路の一泊二日あるいは二泊三日の体験入隊、どういうことをやりましたか。内容を言ってください。
#40
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 釧路地方検察庁において行われた自衛隊の隊内生活体験につきましては、陸上自衛隊帯広駐屯地におきまして平成十一年七月、一泊二日で実施されまして、オリエンテーションの後、地図判読、基本動作、野外行進、終礼等の体験や自衛官との座談会、装備品の説明等が行われたということであります。
 また、熊本地方検察庁で行われたものにつきましては、陸上自衛隊健軍駐屯地におきまして平成十一年八月と十二年九月、いずれも二泊三日で実施されまして、基本動作、体育、登山、終礼等の体験や自衛官との座談会、装備品の説明等が行われたということでございます。
#41
○橋本敦君 もっと具体的に言えば、今、山へ登るという話がありましたが、その修習では、二泊三日で自衛隊に入隊して、三日間を通じてどんな服装でやったか知っていますか。戦闘服をちゃんと着て、編み上げブーツも着用して、その服装で登山をやり、千五百メートルを走り、ジープとトラックの荷台に乗せられて移動する、そういうこともやっているんですよ。そしてさらに、朝と夕方、基地内で宿泊しますから、日の丸掲揚、格納時には君が代が流される。修習生も直立不動で日の丸の方角を遙拝するということが実際に行われているんですよ。こういう実態があることをもっと正確に報告しなさい。
 それだけではありません。それからさらに、またもう一つの問題で言えば、体験入隊をした際に、自衛隊基地内の外来用自衛隊宿舎に泊まって、自衛隊の戦闘服を修習生全員が着用して、自衛隊の車両、兵器の見学はもちろんやる。隊列を組んで号令をかけるなどの軍事教練、それにも参加をし、実際の行軍、戦車の試乗、これも行われておる。まさに軍事教練の体験ですよ。社会教育の体験どころじゃないですよ。こういう自衛隊の研修が将来日本の憲法判断をする法曹を担う、その人たちの養成の司法修習として最高裁が責任を持って行うということが、こんなことが許されてよいとどうして考えるんですか。
 今、日本の憲法状況について最高裁はどういう判断をしていますか。はっきり聞きますが、最高裁、言ってください。自衛隊は合憲であると明確な判断を下した最高裁判決はありますか。
#42
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 事務総局としては、自衛隊が合憲であると判断した、述べた判決は承知しておりません。
#43
○橋本敦君 ないんですよ。今の憲法体系のもとで自衛隊が合憲であるという、民間ではあるいは学界ではいろんな意見がある、もちろん違憲であるといういろんな意見もある。しかし、このことが違憲判断権を持つ最高裁において自衛隊が合憲であるという判断を下した判例は一件もないんですよ。そういう状況の中で、あなたが言ったようなことを平然と体験入隊ということでやるなんということは許されますか。
 御存じのように、砂川事件では、この砂川事件の最高裁判決ではどう言っていますか。憲法九条二項が「戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためである」ことを言って、「従って同条二項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり」、つまり我が国が主体となって指揮権、管理権を行使する軍隊、そういうものは、これは自衛権があるということの論議はあるけれども、憲法の九条二項から見て許されないということを基本にして判断しているんですよ。
 それからさらに、有名な長沼事件判決がありますね。これでは、第二審判決は極めて明白に自衛隊の存在についてどう言っていますか。自衛隊は「その設定された目的の限りではもっぱら自衛のためであることが明らかである。そして自衛隊法で予定された自衛隊の組織、編成、装備、あるいは現実にある自衛隊の組織、編成、装備が」「一見極めて明白に侵略的なものであるとはいい得ない」、一応こうは言っても、しかし「右のとおりであるから、結局自衛隊の存在等が憲法第九条に違反するか否かの問題は、統治行為に関する判断であり、国会及び内閣の政治行為として究極的には国民全体の政治的批判に委ねらるべきものであり、これを裁判所が判断すべきものではないと解すべきである。」、こう長沼事件の第二審判決は言い、最高裁もこれを支持して、自衛隊が合憲かどうかはいろいろ意見がある、一審判決では明白に違憲と判断した意見もある、しかしこれは高度の統治行為に属する問題だからということで明白に違憲か合憲かの判断を最高裁は避けてきた。違憲判断権を私はみずから制約したと思います。
 そういう意味で、私は最高裁は違憲判断権の放棄だと批判をしているんですが、いずれにしても、こういう状況で我が憲法に照らして自衛隊が合憲だと明確に判断した判決が最高裁でないんですよ、あなたがお認めになったとおり。だから、学界でも国民世論でもこの問題については非常に大きな論議があるんですよ。
 まさにそういう論議があるときに、将来、法曹を担って裁判官になり違憲判断権を行使する立場にある人、あるいは検察官になって憲法擁護義務を負いながら秩序を守るべき人、あるいは法曹として弁護士として社会正義を実現するということで同じように憲法を守らねばならないという立場で仕事をする人、そういう人たちがいろんな事件で憲法判断をしなきゃならないんですが、特にこの自衛隊についてはいろいろ論議があるでしょう。ましてや、今どういう状況にありますか。
 今、憲法改正論がいろいろ言われている中心課題は、まさに憲法九条の改正に向けられた、そういう方向に向かっているという社会状況があるじゃないですか。そういうときに、将来、裁判所に憲法判断が持ち込まれたときに、修習生の時代に、違憲の疑いがあると我々は考え、違憲であるという判断さえした裁判所がある、そういう自衛隊に体験入隊をして、そして戦闘服を着、戦車にも試乗し、そして武器の装備も説明を受け、そして君が代あるいは国旗を掲揚する、そういうところの隊列に入って、まさに自衛隊とともに生活をするという体験を経て、本当に公正に憲法判断がこの問題についてできるということを国民が信頼できますか。裁判に対する国民の信頼というのは、本当に公正、廉潔が社会的にも実際にも保たれなきゃ保持できませんよ。
 こういう問題について、その他私が言ったように、いろんな社会施設の見学は結構ですが、最近、平成十一年以来、こういうような自衛隊への体験入隊を最高裁が司法修習の実務修習の一環として容認しているということは今の憲法体系から見て私は断じて許せぬと思うんですよ。もっと謙抑の姿勢を持たなきゃだめですよ。
 最高裁が自衛隊は合憲だと判決しているならそういう言い分もあるでしょう。社会見学という名において、重大な、国論を二分する、違憲かどうかという重大な判断があるときに、まさに公正中立を厳格に守らなきゃならない法曹を養成するのに、自衛隊に体験入隊させる。いいですか、そこで違憲の話が出るわけじゃないですよ。ある教官は、違憲というような議論があるかもしれないが、そんなことを言わずに自衛隊をよく見てくれと、こういう話をしたとも聞いていますよ。それは自衛隊に行けばそう言うでしょう。
 本当に将来法曹を育てる上でこのような体験入隊という問題は私は断じて許せないと思いますよ。そういった問題について、裁判官の憲法に対する忠誠、そして裁判の公正、そういう法曹を養成するという立場から見て、こんな体験入隊というようなことはやめるべきですよ。何で平成十一年になって突然やったんですか。断固としてやめるという方向で検討してください。そのことを強く私は指摘せざるを得ない。もう一度答弁を求めます。
#44
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 自衛隊と憲法との関係につきましては、学説その他でいろいろな議論があるということは承知しておりますが、そのことと社会修習の先として、そのことのゆえに社会修習の先として不適当であるというふうには考えておりません。
#45
○橋本敦君 それが問題ですよ。何ということを言うんですか。問題の本質をわかっていませんよ。
 いいですか。まさに自衛隊が憲法に違反するという、そういう問題が大きく国民的論議になる。憲法改正論が出てくる。現に一審判決で憲法違反だという判決がある。最高裁はそれを受けて統治行為論だということで判断を避けた。しかし、合憲だと明確に言っていない。合憲だと言っていない、違憲の疑いがあるところに将来の法曹を体験入隊させる。それが一般社会の実情を知る上のあり方の一つだというのは、まるで質を本質的に取り違えている判断ですよ。最高裁がそういう姿勢である限り、国民は最高裁の憲法に対する忠誠性を信頼できませんよ。裁判の公正を信頼できませんよ。そういう問題がかかっているんですよ。あなたの答弁は全く認識を欠いている。憲法に対する忠誠さと正しい感覚という裁判官の重大な任務を欠いている。
 裁判所には違憲審査権があるんですよ。違憲審査権がある裁判官を養うのに、憲法違反の実態を持つ自衛隊に行って、憲法違反の論議なんか一切ない、自衛隊は合憲だと言う人ばかりが集まっている、そういう集団に行って、そこで社会的経験をして、どうして公正な憲法判断ができるんですか。ほかに行くところはいっぱいありますよ。何で十一年から自衛隊へ行くようになったんですか。それでは、今までなぜ行かなかったんですか。司法修習制度が始まってから五十何年たっていますよ。重大な問題なんですよ。まさに社会の反動的改憲論が動いていく、そういうことの中に最高裁が加担していると言われても仕方がない問題ですよ。この問題は私は絶対に一歩も引けない。本当に裁判所が日本の憲法に忠実に違憲判断を正しく行うという、そういう自覚と精神を持つなら、こんな修習はやめるべきですよ。
 平和憲法は一体どういう意味を持っているか。二十一世紀に向かって世界の平和の先頭に立って、世界の平和を進めるという上で日本憲法が世界にまれな先駆的意義を持っているということは世界的にも評価されている。このことを変えようとする憲法改悪を私たちは絶対許さないが、それは国民的にはこれから大きな闘いになるでしょう。
 そういう中で、最高裁ともあろうものが自衛隊に体験入隊を修習生にさせている。これは国民から見て、最高裁の憲法感覚と公平性、これに対する重大な疑義を抱かざるを得ません。やめるべきですよ。あなた自体が判断できなければ、最高裁へ持って帰って検討すべきですよ。どうしますか。検討してください。もう一度答弁を求めます。あなたに本当に憲法感覚があるかどうかも問われる、そういう質問ですよ。
#46
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 社会修習というのはできるだけいろいろなところへ出かけていろいろな体験をさせることが重要でありまして、そういう観点から、社会修習のあるべき姿、内容の豊富化ということについては今後とも十分考えてまいりたいと思います。
#47
○橋本敦君 いろいろじゃないよ。この自衛隊に対する体験入隊について検討するということを一遍真剣に考えるかどうかと聞いているんです。考えるか考えないか、もう一遍言ってください。いろいろなほかのことはいいんですよ。私の質問、わかるでしょう。
#48
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ただいま申し上げましたように、社会修習のありようは、そういういろいろな観点から、多様性を図るというふうな観点から検討すべきものと考えておりまして、行き先につきましてはいろいろ今後も検討していくということは当然あり得ることと思います。
#49
○橋本敦君 それでは、私がきょう指摘した問題も含めていろいろ考えるというように理解してよろしいか、私が指摘したことは一切考えないという意味か、そのことをはっきりしてください。
#50
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 先ほどから申し上げておりますように、自衛隊について憲法との関係でいろいろ議論があるということは、社会修習の行き先として不適当であるというふうにすぐになるものではないということは先ほど申し上げているとおりでございます。ただ、社会修習のありようについては、いろいろ今後当然のことながら検討はされていくということを申し上げているわけでございます。
#51
○橋本敦君 納得できませんよ。私がきょう指摘した問題も含めて今後検討すると、いろいろな意味を含めて。そのいろいろな意味の中にきょう私が指摘した問題も含めて考えるという、そういう意味と理解してよろしいかと、こう聞いているんですよ。
#52
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 先ほどから申し上げておりますように、憲法上議論になっているからそこは外すべきだという前提のお尋ねでしたら、それはそういう前提ではありませんが、派遣先についてはいろいろな観点から今後も検討されるということでございます。
#53
○橋本敦君 絶対納得できませんが、いろいろ検討すると言うから、私のきょうの質問も検討の一つとして検討するというように理解していいのか、そういうように理解したら困る、引き続きやるということについては何の検討もしないということなのか、はっきりしてください。その答弁いかんによっては私は事務総長あるいは最高裁長官を呼びたい。
#54
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 行き先についていろいろ検討するという場合には、当然それは今御指摘の自衛隊の隊内経験というふうなものが適当かどうか、つまりほかにもっといいところがあるかとか、そういう観点から議論されるということは十分あり得ると考えております。
#55
○橋本敦君 憲法問題について考えるという姿勢がないのは驚くべきことですよ。私はこんな最高裁というものは全く知りませんでしたね。
 今後ともこの問題は追及します。しかし、一応考えると言いますから、これで終わります。
#56
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 私は、今、司法修習で自衛隊に体験入所していることを初めて知りまして、非常に驚きました。合憲ということが判決で出ていないにもかかわらず、なぜあえて自衛隊に体験入所をしているのか。
 レベルは全然違いますが、判検交流も似たようなところがあると思います。NGOに出向しないで、なぜ主に法務省ばかり、あるいは役所にばかり裁判所は出向しているのか。法務大臣がおっしゃるように、いろんな立場に出向するというのであればわかります。しかし、NGOやいろんなところには出向しないで、役所、しかも国の代理人になるようなところばかりに出向しているという片面性がある、偏っているというところはぜひ今後も検討していただきたいと思います。
 きょうは公証人制度と横浜事件についてお聞きをします。
 公証人の内訳は、判事出身者三〇%、検事出身者四二%、法務事務官出身二八%で、現役の法務官僚や公証人OBで構成されている公証人審査会で決まるケースが多いと言われています。
 公証人法を見ますと、試験、資格、第十二条は資格という原則をうたっております。しかし、この試験は一度も行われておりません。現在、公証人は女性が一人もおりません。全員男性です。平均年齢六十三・八歳という異常な構成になっております。女性が一人もおりません。
 法務大臣、この公証人法に基づいて資格試験を復活させる、条文にはそうなっているわけですから、それについてのお考えを教えてください。
#57
○国務大臣(高村正彦君) 御指摘のとおり、現在、公証人法第十二条に基づく試験は実施をしておりません。これは、同条の試験を実施することといたしますと、同法第十三条で法曹有資格者を任用していることからも明らかなように、司法試験と重複したものにならざるを得ないことから効率的でないと考えたからであります。したがって、同条の試験を実施することは現在のところ考えていないわけであります。
 それから、公証人に女性が一人もいないとおっしゃいましたが、今までいなかったんですが、昨日一人任命をいたしました。
#58
○福島瑞穂君 昨日一人でよかったと思いますが、公証人法は十二条が資格試験と書いてありまして、十三条が資格の特例です。原則は十二条なわけです。
 つまり、例えば弁護士になるのもそうですが、普通は司法試験ですが、大学教授を何年間か務めれば弁護士になれるという例外はあります。しかし、原則は資格試験なわけですから、年齢が高いとか、あるいは限られた人しか公証人になれないということは、公証人法、法律に違反しているわけです。しかも、決定的におかしいと思うのは、法律に資格試験と書いてあるにもかかわらずそれが一度も行われていないという異常なことです。これは公証人法違反であると思いますが、いかがですか。
#59
○国務大臣(高村正彦君) 公証人法第十三条でしかるべき有資格者を任用して、それで現在足りておりますので、わざわざ十二条をやっても司法試験と同じような試験とならざるを得ないということでありますから、私はそれでいいと、こういうふうに思っています。
#60
○福島瑞穂君 いや、それはおかしいですよ。
 次の質問とも関連するんですが、例えば超党派で提出を考えておりますDV防止法、家庭内暴力防止法は警察あるいはDV防止センターによる報告書か公証人役場における公証人の面前での宣誓供述書を要求しております。公証人は非常に重要な役割を家庭内暴力防止法の中で果たすわけです。
 私が危惧するのは、年齢も非常に高いですし、女性が一人きのうできたということなんですが、という中で、公証人制度の例えば公平性とか、そのことがやっぱり社会から問われてくるというふうに思います。足りているか足りていないかということでいえば、これからは足りなくなる可能性が十分にあります。
 そして、同じような試験をするというのであれば、資格試験をやればいいじゃないですか。これはこの法務委員会でも中村敦夫委員が当時、二〇〇〇年三月二十一日の法務委員会で、要するに判事、検事、法務事務官の定年後の天下り先になっていると指摘をしております。
 大臣、きょうは食い下がりたいのですが、資格試験をきちっとやるべきではないですか。
#61
○国務大臣(高村正彦君) 同じ御質問ですから答えも同じにならざるを得ないんですが、現在のところ考えておりません。
 ただ、判事、検事あるいは法務省の職員、それだけというのは私は本当に望ましいことだとは思っておりません。規制緩和推進三カ年計画において、公証人の任命に当たり公証人法に基づく試験を実施する、仮にその試験が司法試験と重複するものとなる場合には少なくとも公証人法第十三条ノ二所定のいわゆる特任公証人に民間の企業法務に携わった者を任用する道を開くとされているわけでありますから、こういった点については私は大いに開いていかなければいけない、こういうふうに考えているところでございます。
#62
○福島瑞穂君 大いに開いていくということは、これから資格試験をなさるということですか。
 というのは、検察官、裁判官、検察事務官以外の人で公証人に例えば四十歳でなりたいとか、三十代でなりたいという人は絶対いると思うんですよ。そういう人たちに明らかに法律に違反して門戸を閉ざしている。だれも十二条に基づいて公証人になった人はいないわけです。
 DV防止法案に基づいて公証人の面前での宣誓供述書が必要ではないかというのは役所の側です。それで、公証人制度で賄えるのかというふうに聞きましたら、法務局で代替することも考えられるということでした。
 公証人はこれから必要とされます。十二条に基づく試験を絶対にやらない限り公平性ということでは信頼を確保できないと思いますが、いかがですか。
#63
○国務大臣(高村正彦君) 十二条の試験というのが司法試験と重複せざるを得ないような状況に私はなるのではないかと思います。ですから、司法試験を受かった弁護士が例えば四十歳でなりたいといった場合に、私は道を閉ざすいわれはないと、こういうふうに考えております。
#64
○福島瑞穂君 十二条の試験が司法試験と同じようになるというのはちょっと違うと思うんですね。司法試験に合格した人でなければ十三条に行けないというのもおかしいと思います。
 この点については、大臣、もっと前向きの答弁をお願いします。
#65
○国務大臣(高村正彦君) 私が今申し上げたことだけで事務方が用意した答弁書よりはるかに前向きな答弁をしているつもりでございます。
#66
○福島瑞穂君 いや、大臣、もっと前向きにお願いします。
#67
○国務大臣(高村正彦君) 現時点で公証人は十分足りているわけでありますし、そして十三条ノ二に基づく方たちもおられますけれども、そういう中に民間の法律事務をやった人も入れていきたいと思っています。
 それから、既存の規制緩和推進三カ年計画の中には入っておりませんけれども、法曹の中で、裁判官、検察官だけでなくて、弁護士の人も、希望者がおられればの話でありますが、それはなっていただいて十分いいんだろうと思います。そして、そういう中で、若い方が希望されて、あなたは若いからだめだといってはねるというようなことは私はないことだろう、こういうふうに考えております。
#68
○福島瑞穂君 事務方が準備されたより前向きの答弁でありがたいのですが、十二条が資格試験としているのは、年齢や性別、経験に関係なく試験を受ければ公証人になれるということを法律が真正面から保障していることに意味があると思います。経歴に関係なく、法曹資格者に関係なく、あるいは今まで民間で法律事務をしていたかに関係なく、だれでも一念発起して試験に通れば公証人になれるという制度を法律は設けているわけです。
 ですから、きょうは前向きの答弁をしていただきましたが、この法律にのっとってぜひ試験をやっていただくように、これからも法務委員会で質問したいと思います。
 次に、横浜事件について御質問いたします。
 現在、戦中最大の言論弾圧事件と言われている横浜事件の第三次再審請求が行われています。この事件では、一九四二年から四四年にかけてジャーナリストや研究者など六十から七十名の人が逮捕され、過酷な拷問を受けています。その結果、四名の人が獄死、一人が出獄直後に死亡しています。
 現在、この事件の被害者と遺族の方は、事件は特高警察のでっち上げであり、事件は戦争に反対、批判的な良心的な人々の声をつぶすために仕組まれたものであるとして再審請求をしております。事件はもう半世紀以上前のことで、被害者も次々に亡くなっています。第三次再審請求は一九九八年八月十四日に行われております。そのとき、再審請求人は八名でしたが、そのうち被害者二名の方が再審請求後亡くなられ、現在、被害者の方は一人、八十三歳になっておられます。
 そういう意味では、非常に早急に解決しなければならない問題だと思いますが、横浜事件、この再審請求されている事件の判決及び訴訟記録はないと言われておりますが、なぜないのでしょうか。
#69
○政府参考人(古田佑紀君) この横浜事件に関する記録につきましては、おっしゃるとおり、その判決書きあるいは記録が存在しない部分があるようでございます。ただ、しかし、その理由につきましては現時点では判明しておりません。
#70
○福島瑞穂君 第一次再審請求事件における木村さんに対する第一審決定はこう述べています。「当裁判所の事実取調べの結果によれば、太平洋戦争が敗戦に終わった直後の米国軍の進駐が迫った混乱時に、いわゆる横浜事件関係の事件記録は焼却処分されたことが窺われる」となっております。
 これは、戦災によって消失したものなのか、あるいは焼却処分によって焼却したものなのか。どうなんでしょうか。
#71
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまお尋ねの点につきましては、その廃棄された経緯あるいは廃棄の方法がどういうものであったかなど、今確実なことを申し上げるような資料は残念ながら持ち合わせておりません。
#72
○福島瑞穂君 自治大学校史料編集室作成、昭和三十五年十二月五日、山崎内務大臣時代を語る座談会というものが、昭和三十五年九月六日、行われております。その資料によりますと、公文書は焼却するという事柄が決定的になり、「内政関係は地方総監、府県知事、市村長の系統で通知するということになりました。これは表向きには出せない事項だから、それとこれとは別ですが、とにかく総務局長会議で内容をきめて、陸海軍にいって、さらに陸海軍と最後の打ち合わせをして、それをまとめて地方総監に指示する」、「十五日以後は、いつ米軍が上陸してくるかもしれないので、その際にそういう文書を見られてもまづいから、一部は文書に記載しておくがその他は口頭連絡」をして焼却するということの話し合いがなされたということの書面があります。それなどをもとに第一次再審請求事件の第一審判決は焼却処分にされたことがうかがわれるというふうにしたと思います。
 当事者にとってみれば、再審請求をする際に判決あるいは訴訟記録がないわけです。自分の責任に全くよらずに、恐らく裁判所も認定したように焼却処分に、戦後の中で焼却処分、だれかが焼いちゃったんだろうという中で、本人の再審請求の権利というものについてはいかがお考えでしょうか。
#73
○政府参考人(古田佑紀君) 一般的にお答え申し上げますけれども、終戦前後のいろんな混乱期で裁判の記録というのが外地における裁判も含めて紛失、なくなっているものというのはかなり数多くございます。そういう場合でありましても、何らかの方法で裁判が実際にあったというふうなことが認められるというふうな場合につきましては、これはやはり刑事訴訟法上の再審なりそういうものについて、できるだけそういうことが実現するように検察当局としても努めているものと承知しております。
#74
○福島瑞穂君 有名な吉田巌窟王事件など、訴訟記録が存在しないけれども判決があるケース、これは戦火や保存期間の満了によりたまたま訴訟記録が紛失しているケースですが、その場合には再審請求がちゃんと行われています。しかし、この横浜事件については、再審が棄却あるいは第三次請求は今遅々としてなかなか進まないという、そんな状況です。
 検察庁法四条は検察官は公益の代表者というふうに規定をしております。むしろ、検察官の方が本人たちの訴訟記録がないというようなことを越えて積極的に再審請求へ向けて訴訟追行をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
#75
○政府参考人(古田佑紀君) 一般論としてお答えいたしますと、もちろん検察官は再審請求の理由があると考えるときには積極的に再審請求をみずから申し立てて、誤った裁判の是正に努めているところでございます。
 ただ、いずれにいたしましても裁判自体の存在あるいは記録の喪失その他でおよそ資料がない、そういう段階で検察官が再審請求の理由があるというふうなことを認めるということは、これは現実問題としては非常に難しいことであろうと考えております。
#76
○福島瑞穂君 ただ、ほかの人の資料をもとに判決文を再現をしたりとか、再審請求の人たちは努力をしているわけです。
 例えば、拷問による自供を再審請求人の木村さんは文書にしておりますけれども、拷問による自供は無効として再審請求を認める、そういうことはできないのでしょうか。
#77
○政府参考人(古田佑紀君) 個別の具体的な事件を前提にしてのお尋ねについてはお答えを差し控えたいと存じますけれども、先ほども申し上げましたとおり、検察官といたしましては刑事訴訟法の定める再審の理由があると判断する場合にはみずから再審請求を申し立てるという運用に努めているところでございます。
#78
○福島瑞穂君 ポツダム宣言を受諾するのは八月十四日なんですが、それ以降も治安維持法に基づいて裁判が行われております。九月十五日にも治安維持法違反で懲役二年、執行猶予三年の判決などがずっと出ておりますが、国体の変革に伴って治安維持法そのものが失効していた当時の判決に瑕疵があった、問題があったということは言えないのでしょうか。
#79
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま委員御指摘の点につきましては第三次再審請求の理由とされていると承知しておりまして、具体的な事件の内容にかかわることでございますので答弁は差し控えたいと存じますが、いずれにいたしましても、当時、治安維持法で八月十五日以降も若干の裁判があったようには認められます。
#80
○福島瑞穂君 私は、きょうなぜこの質問をしたかといいますと、やはり当事者にとって余りに不利益な裁判であったのではないかと思うことです。治安維持法が当時の明治憲法に違反したのではないかというふうにも思いますし、仮に治安維持法の有効性を認めたとしても、これは無罪となるべきケースではないかという気もいたします。特高警察の人三名は拷問をやったことで有罪判決も戦後受けておりますし、もう少し何が客観的事実であったのかということがなされてもいいのではないかと思います。
 アメリカで、戦争中に日系アメリカ人の人たちがキャンプに強制収容される、あるいはその前の段階として夜間における外出禁止令が出ます。そのことについて、当時それに違反して逮捕され刑務所に行った日系アメリカ人の人たちが戦後再審請求をアメリカで行います。
 そのときに、アメリカではきちっと事実調査をし、日系アメリカ人に対するそのような処置は当時の偏見である、戦時下におけるヒステリーで、日系人に対する偏見からそういう日系人に対する夜間外出禁止令あるいはキャンプへの収容が行われたと。よって、夜間外出禁止令に違反して逮捕された日系人の有罪判決は無罪、要するに再審請求の結果、無罪であるということで名誉の回復も行われました。
 例えばスミソニアン博物館の中に「日系アメリカ人とアメリカ憲法」などという展示もありますけれども、そういう形で、戦争中に行われたこと、随分前に行われたことでも客観的に真実は何だったのか、それによって汚名を着せられた人の名誉回復や無罪判決をきちっとかち取っていくというようなことは日本においても非常に必要ではないかと思って質問をしました。
 ぜひこの再審請求がアメリカにおけるのと同じようにきちっと進むことを期待しますし、他の再審請求についてもぜひ公益の代表者として頑張ってくださるように期待して、私の質問を終わります。
#81
○委員長(日笠勝之君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#82
○委員長(日笠勝之君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として海老原義彦君が選任されました。
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#83
○委員長(日笠勝之君) これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#84
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、江田五月君から発言を求められておりますので、これを許します。江田五月君。
#85
○江田五月君 私は、ただいま可決されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、「国民の信頼にこたえる司法」を実現するため、次の諸点について格段の努力をすべきである。
 一 近時、急増を続け、また、複雑多様化する各種紛争事件の適正・迅速な処理を図るため、裁判官及びその他の裁判所職員を大幅に増員するとともに、裁判所の施設の整備、拡充を図ること。
 二 福岡における捜査情報の漏えい問題等により、裁判官、検察官に対する国民の信頼が大きく揺らいでいることは極めて憂慮すべき事態であり、国民の批判を真摯に受け止め、関係者の職業倫理の保持、法曹三者の交流の在り方等につき、国民に開かれた司法を実現し、その信頼を回復するための措置を講ずること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#86
○委員長(日笠勝之君) ただいま江田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#87
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、江田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、高村法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。高村法務大臣。
#88
○国務大臣(高村正彦君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえまして今後とも努力を重ねてまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
#89
○委員長(日笠勝之君) 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#90
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#92
○委員長(日笠勝之君) 土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 まず、土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案について、発議者衆議院議員佐藤剛男君から趣旨説明を聴取いたします。佐藤剛男君。
#93
○衆議院議員(佐藤剛男君) 衆議院議員の佐藤剛男でございます。
 何とぞよろしくお願いいたします。
 ただいま議題となりました土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者を代表いたしまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 土地の再評価に関する法律は、商法の特例といたしまして、法人が所有している事業用土地の適正な時価による評価を行うことができるようにし、再評価差額を貸借対照表に計上し、資本の増強を図るとともに、株式消却を容易にできるようにすることにより金融の円滑化及び企業経営の健全化を確保するため、商法監査特例法人等を対象として時限法として制定されたものであり、今月三十日で期限切れになっております。
 御高承のとおり、最近の株式の動向によりまして株式の含み損が増大いたしまして、金融機関の自己資本に影響を与えかねない状況になっております。また、新しい企業会計基準が導入される中で、各法人が資本を充実する必要が高まっております。このため、平成十四年三月三十一日まで延長の強い要請がございます。加えて、その適用を受ける対象法人を証券取引法に基づき監査を受けている法人に拡大する要請がございます。
 つきましては、第一に、商法の特例であります本法の期限を延長し平成十四年三月末までとし、二決算年度に適用できるようにするとともに、第二に、適用法人を拡大いたしまして、本法の対象法人に商法上の大会社には当たりませんが証券取引法に基づき監査を受けている法人を加えることといたしております。
 これらの措置により、法人の財務内容の健全化、経営体質の強化につながるものと期待しておるところであります。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
 よろしくお願いいたします。
#94
○委員長(日笠勝之君) 次に、金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について、発議者衆議院議員杉浦正健君から趣旨説明を聴取いたします。杉浦正健君。
#95
○衆議院議員(杉浦正健君) 衆議院議員の杉浦正健でございます。
 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
 この法律は、平成十年八月のいわゆる金融国会におきまして、金融再生トータルプランに関する議員提出四法律案の一つとして提出され、同年十月成立した法律でございます。
 この法律の要点は次のとおりでございます。
 第一に、金融機関等が根抵当権により担保される債権を整理回収機構、サービサー等の債権回収機関に売却しようとする場合において、債務者に対し売却する旨及び新たに元本を発生させる意思を有しない旨を書面により通知したときは、民法の定める元本の確定事由に該当するものとみなすこととしております。
 第二に、これにより元本が確定した場合の登記は、根抵当権の移転の登記とともに申請する場合に限り、債務者等の根抵当権設定者と共同で申請しなくても、根抵当権者のみで申請することができることとしております。
 この法律は本年三月三十一日までの臨時措置法でありますが、本日御審議いただきます法律案はこの法律の適用期間を平成十五年三月三十一日まで二年間延長しようとするものでございます。
 以下、適用期間の延長の必要性について御説明申し上げます。
 第一に、さきの通常国会においてペイオフが一年延長されるなど、我が国のより強固な金融システムを構築するために預金保険法等の改正など所要の措置が講じられております。
 第二に、金融機関等においては償却・引き当てや債権流動化などにより不良債権の処理を行っておりますが、ペイオフ解禁までの間に不良債権の処理を一層推進していく必要がございます。
 第三に、既に破綻を表明した金融機関等の処理が予定されており、平成十三年四月以降においても破綻金融機関等からの買い取りを行う必要がございます。
 また、行方不明者等への通知など、平成十四年三月末までに譲渡手続が終わらない場合も考えられることなどから、延長期間を平成十五年三月三十一日までの二年間としたものでございます。
 以上がこの法律案の趣旨及び概要でございます。
 委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 以上でございます。
#96
○委員長(日笠勝之君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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