くにさくロゴ
2001/05/24 第151回国会 参議院 参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第7号
姉妹サイト
 
2001/05/24 第151回国会 参議院

参議院会議録情報 第151回国会 法務委員会 第7号

#1
第151回国会 法務委員会 第7号
平成十三年五月二十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十七日
    辞任         補欠選任   
     本田 良一君     竹村 泰子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
                福島 瑞穂君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                佐々木知子君
                斎藤 十朗君
                竹山  裕君
                中川 義雄君
                吉川 芳男君
                小川 敏夫君
                千葉 景子君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                平野 貞夫君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    横内 正明君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中川 義雄君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       内閣法制局第一
       部長       阪田 雅裕君
       警察庁長官官房
       総括審議官    吉村 博人君
       警察庁刑事局長  五十嵐忠行君
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房訟
       務総括審議官   都築  弘君
       法務大臣官房司
       法法制部長    房村 精一君
       法務省民事局長  山崎  潮君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       法務省入国管理
       局長       中尾  巧君
       公安調査庁長官  書上由紀夫君
       文部科学大臣官
       房審議官     清水  潔君
       厚生労働省医政
       局医事課長    中島 正治君
       厚生労働省健康
       局長       篠崎 英夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (司法制度改革に関する件)
 (民事・刑事の基本法制の整備に関する件)
 (最近の不法入国事件及び不法入国者等の防止
 対策に関する件)
 (「らい予防法」違憲国家賠償請求事件判決に
 関する件)
 (人権救済制度の在り方に関する件)
 (選択的夫婦別氏制度導入に関する件)
 (矯正施設における接見交通権に関する件)
〇刑法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十七日、本田良一君が委員を辞任され、その補欠として竹村泰子さんが選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(日笠勝之君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に警察庁長官官房総括審議官吉村博人君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、法務省入国管理局長中尾巧君、公安調査庁長官書上由紀夫君、文部科学大臣官房審議官清水潔君、厚生労働大臣官房審議官伍藤忠春君、厚生労働省医政局医事課長中島正治君及び厚生労働省健康局長篠崎英夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(日笠勝之君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○久野恒一君 おはようございます。自民党の久野恒一でございます。
 私は、法律には全く無知と言っていいくらい素人でございます。したがいまして、きょうの質問も多少ピントがずれるかもわかりませんけれども、一般国民という立場でもって、私、そういう視点でもって質疑をさせていただきたい。多少質問がずれましたらば御容赦願いたいと思いながら、国民の立場で大臣もお答えになっていただきたい。そういう気持ちでもって質問させていただきます。
 十七日、大臣が所信表明の演説をなさいました。その中でもって、重要施策説明の中で、まず第一に、我が国社会が事後監視・救済型社会へ急速に転換する中で、政府全体として、行政改革等の諸改革の推進とあわせて、司法機能の質的、量的な充実強化を図るための司法制度改革を推進することが急務であると述べられました。この点は私も全く同意見でございまして、来月には司法制度改革審議会における最終的な意見が取りまとめられ内閣に提出される予定とのことでございます。これを受けとめ、さらに新たな時代の司法制度の実現に向けた取り組みが進められていくものだと思います。
 そこで、司法制度改革について幾つかお尋ね申し上げたいと思います。
 司法制度改革につきましてはさまざまな課題が指摘されているところでございますけれども、国民は裁判が遅いということに強い不満を持っていると思います。民事事件、刑事事件を問わず、迅速な裁判の実現が司法制度改革の中で最も重要な課題であると私は思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
#7
○国務大臣(森山眞弓君) 先生おっしゃるとおり、適正かつ迅速な裁判を実現するということは非常に重要な課題でございます。これまでも逐次所要の措置がとられてまいりまして、前に比べれば少しずつよくはなってきているのでございますけれども、なお刑事の一部の重大事件や民事の一部の複雑困難な事件などに関しましては審理に長い期間を要しているという場合があるのでございまして、迅速な裁判に対する国民の期待は極めて大きいものがあると思います。
 迅速な裁判を実際に実現いたしますのは、おっしゃいますとおり、司法制度改革の中でも一番重要な、また一番わかりやすいことではないかというふうに思うわけでございまして、国民が納得できる合理的な期間の間に裁判を行っていくということが大変重要だと、全く同感でございます。
 法務を所管する大臣といたしまして、司法制度改革審議会の審議結果も踏まえまして、より適切かつ迅速な裁判の実現に努めてまいりたいと思います。
#8
○久野恒一君 ぜひ迅速な裁判をとり行っていただきたい、そういうふうに願うものでございます。
 訴訟の運営のあり方、これを改善するようないろいろな方策が考えられていると思いますけれども、しかし最も重要なのはそのための人的体制の充実強化ではないでしょうか。まず、諸外国に比べて大変少ない法曹の人口を大幅に増加する必要があろうかと私は思っております。その上で、裁判官、検察官はもちろん、裁判所や検察庁の職員も大幅に増加する必要があるのではないかと思うわけでございます。
 司法に関連する分野の人的基盤の充実強化を図っていくことが必要不可欠だと思うわけでございますが、この点について大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#9
○国務大臣(森山眞弓君) 御指摘のとおり、迅速な裁判を実現して、国民の期待にこたえるためには、その司法を構築する人的な基盤というものを充実させなければいけないということはもう申すまでもないことでございます。そのためには、諸外国に比べまして非常に少ない法曹人口を大幅に増加させなければならないと思います。裁判官とか検察官だけではなくて、それを支える裁判所の職員や検察庁の職員などにつきましてもより一層の充実強化が必要であるというふうに思います。
 法務省といたしましても、司法制度改革審議会でも大変このことを心配していただいておりますので、その最終意見を踏まえまして、このような司法の人的充実、人的基盤の充実強化に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
#10
○久野恒一君 そこで、六月には、司法制度改革審議会の意見が提出された後の問題ですけれども、いよいよこれを実現していかなければならない段階に入ってくると思います。司法制度改革を速やかに実現していくためには、政府全体がこれを後押しして進めていく必要があろうかと思います。
 政府において、そのための強力な推進体制をつくってこの改革実現に取り組んでいただく必要があると考えますけれども、この点について大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#11
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、司法制度改革というのは一法務省の手に負えるようなものではございませんで、政府を挙げて、みんなに協力をしていただき、実行していただかなければならないというふうな面が多々あるわけでございます。司法制度改革審議会の最終意見は六月の中旬に出るという予定でございますが、その御意見を十分に尊重いたしまして、全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
 その意見をいただいた後の改革実現のための体制のあり方につきましては、この検討の結果をも踏まえまして政府全体で検討していくべきことでございますけれども、法務省は、当然、政府の一員といたしまして、非常にまた深くかかわっている責任のある官庁といたしまして、最大限の努力を傾注していきたいというふうに思っております。
#12
○久野恒一君 ありがとうございました。ぜひそうお願いしたいと思います。
 次に、民事、刑事基本法制の整備についてお伺いいたします。
 民事、刑事の基本法制の整備は、透明なルールと自己責任の原則に貫かれた事後監視・救済型社会の実現に不可欠な基礎基盤として、基盤形成として極めて重要であります。我が国が国際競争に勝ち抜いていく、大きな発展を遂げていくためには決定的な要素となるのではないかと思っております。
 大臣は、この変革期にあって、時代に即応した経済活動を支えるにふさわしい、かつ国民にわかりやすい民事、刑事基本法整備を行う必要があると重要施策説明に強調されておられました。具体的には民事法制、刑事法制についてそれぞれどのような問題があり、それぞれについてどのように改革していこうとなさっておられるのか、お尋ね申し上げます。
#13
○副大臣(横内正明君) 私からお答えをさせていただきます。
 委員御指摘のように、民事、刑事の基本法制の整備は大変に緊急の課題でございまして、非常に力を入れて取り組んでいるところでございます。
 概要を申し上げますと、まず民事の基本法制についてでございます。
 特に、商法関係につきましては、国際化を初めとして企業を取り巻く環境が非常に大きく変わっている、そういう中で関係各界から改正について大変に強い要望が行われております。そういう中で、法務省としては有限会社法を含む会社法制の大幅な見直しということに現在取り組んでいるところでございまして、法制審議会の会社法部会で審議を行いまして、ことしの四月に中間試案を公表して関係方面の意見を聞いているところでございます。なお、ストックオプション制度の改善、株主総会の招集通知の電子化等につきましては早急に検討を進めまして、このための商法改正案を秋の臨時国会にも提出をしたいというふうに考えております。
 次に、最近、企業や個人の倒産が相次いでいるという状況から、倒産法制の整備が必要だと考えております。既に、民事再生法の関係の整備はできたわけでありますけれども、引き続きまして破産法についての手続の簡素化、合理化、あるいは会社更生法も含めて倒産実体法規の見直しなどを検討しております。
 民法につきましても、抵当権その他の担保権の執行手続等に関する法制の見直しとか、あるいは区分所有建物、マンションの建てかえの円滑化をするための区分所有法の改正というようなことも検討をしております。このほか、民法、商法が片仮名でございますので、全面的な平仮名、口語化についても課題になっております。
 また、刑事基本法制につきましては、現在、経済関係の罰則の見直し、整備を進めておりまして、法人処罰あるいは倒産犯罪や民事執行等の妨害に関する罰則の整備といったことを現在検討中でございます。
 また、世界的なIT革命の推進の中にあって、ハイテク犯罪に的確に対処する必要がありますので、コンピューターネットワークに関する捜査手続の整備とか、あるいはハイテク犯罪に関する罰則の整備等について現在検討を進めているところでございます。
 なお、当面の問題でありますが、クレジットカード等の偽造事案が多発をしておりますので、これに対する罰則の整備を行う刑法一部改正法を今国会に提出しているというのが今検討中のところでございます。
 以上でございます。
#14
○久野恒一君 ただいま伺ったところ、覚え切れないほどお答えになられて、本当に広い範囲だなと。コンピューター関係につきましては後でもってまたお聞き直しいたしますけれども、本当に事務量もこれは相当なものになるのではないかなというふうに思うわけでございます。非常に多岐にわたり大変な作業であるなというふうに今改めて感じました。
 法務省においては、平成十七年度をめどとして集中的にこれに取り組んでおられるということでございますけれども、実際にはいつごろまでをめどに整備してできるようになるのか、それを大臣にお伺い申し上げます。
#15
○副大臣(横内正明君) 委員の御指摘のように、大変膨大な事務量になるわけでございまして、法務省としてはこの検討をするために相当な人員の充実を図っております。法務省はもちろん、他の省庁からの協力をお願いしたり、あるいは期間雇用で民間からも採用したり、そうやって優秀な人材を相当に集積いたしまして、作業班をつくって現在、鋭意検討をしているところでございまして、できるだけ早くこの民事、刑事関係の基本法の整備を終えたいということで作業を進めておりますが、見通しとしましては、ことしの四月から五年程度の期間を見込んで作業を進めているというところでございます。
#16
○久野恒一君 ことしの四月から手をつけ始めて、五年間程度でということでございます。何せ、先ほど聞いたように膨大な事業でございますので、なるべく早期に決着をつけていただきたいなと、そういうふうに御苦労のほどを察し申し上げる次第でございます。
 ところで、最近、話は変わりますけれども、携帯電話等による出会い系サイトの、あるいは伝言サービスなどを利用して知り合った者同士が犯罪の加害者、被害者になる事件が多発しております。御承知のように、新聞等でもって東京高裁の村木判事が携帯電話のそうしたサービスを利用して知り合った少女に対して幼児買春をしたということが報道され、また逮捕されたと報ぜられておりますけれども、そこでまず、村木判事による児童買春の概要というものを法務当局としてどういうふうな経過になっているのか、お教え願いたいと思います。
#17
○政府参考人(古田佑紀君) お尋ねの事件に関する被疑事実の要旨を申し上げますと、被疑者は平成十三年一月二十日、川崎市内のホテルにおいて、当時十四歳の少女に対し、同女が十八歳未満であることを知りながら、現金二万円を供与するなどして児童買春をしたというものでございまして、東京地方検察庁におきまして、警察から事件送致を受け、現在、鋭意捜査中でございます。
#18
○久野恒一君 このような事件が発生したことは極めて遺憾でございます。この事件につきましては今後も引き続いて検察当局において事実の真相を解明すると思われますけれども、適切に対処されるようお願い申し上げる次第でございます。
 罪は憎んで人は憎まずという言葉がございます。私は、村木判事の件は許されざる問題ではあろうかと思いますけれども、このような事件が起きるというのも、もともとはこういう出会い系サイトなるものがある、そういうことに私は端を発しているのではないかなというふうに考えるわけでございます。
 いわゆる迷惑メールといいますか、私もiモードを持っておりますけれども、このメールに一日三回も四回もかかってくるんですね。これが、聞くところによりますと、持っている者の方の支払いになってしまうと。そういうこと、お答えは必要ないですけれども、本当にこういうものを何とか取り締まっていただけないものかなというふうに感ずるわけでございますけれども、これはなかなか野放しにしていると、こういう犯罪が、中には出会い系サイトでもって行き会って、後ろを振り向かれたら刺されちゃったなんという事件もございますので、そういうものを含めまして、何か取り締まりの対策を立てていただければなという気持ちで質問するわけでございます。
 こういう出会い系サイトについて、そのほかの加害者、被害者となる事件が発生していることが報道されておりますから、私、全部調べておりませんもので、いわゆる出会い系サイトなどが利用された事案としてどのようなものがあるのか、刑事局長にお伺い申し上げます。
#19
○政府参考人(古田佑紀君) 私どももすべてを把握しているわけではございませんが、把握している事例を御紹介いたしますと、平成十三年に検察庁が受理した事例の中で、一つは警察官が出会い系サイト等を通じて知り合った十五歳の少女に対して現金十万円を供与する約束をして児童買春をした事件、出会い系サイト等において強盗を行う者を募集し、その者と共謀をしまして実際に強盗をしてしまったというふうな事件、十八歳の少年が出会い系サイト等を通じて知り合って交際していた主婦を殺害するに至った事件、会社員が出会い系サイト等を通じて知り合った十九歳の女性を殺害した事件などがあると承知しております。
#20
○久野恒一君 そういうような事件に対しまして、法務・検察当局におかれましては、この種事案に対しまして適切に対処されるようお願い申し上げる次第でございます。
 次に、先ほど申し上げました、電子メールのやりとりについて今触れましたけれども、次にコンピューター関係、ネットワーク関係にかかわる諸問題について幾つかお伺いさせていただきたいと思います。
 IT社会あるいは高度情報通信社会の進展に伴って、コンピューターネットワークに対して攻撃を行う犯罪とか、コンピューターネットワークを悪用して犯罪が増加するのではないかと、ネットワークがどんどん広がってくればそういう犯罪がだんだんふえてくるんじゃないかなと、そういうふうに危惧するものでございまして、この関連した罰則の整備という観点では、刑法においてはコンピューター犯罪に関する規定の整備、あるいは不正アクセス禁止法云々の制定などは措置がとられているものと認識しておりますけれども、今後はさらに大規模なサイバーテロというものも入ってくるのではないかなと。
 実は、私、宮脇磊介さんという人が書いた「サイバー・クライシス」という本を読ませていただいて本当に驚いてしまったことでございますが、国家のための通信傍受は世界では常識だと、こう言っているんですね。本当に国家機密に関しましても、軍事的なものは本当にもうサイバーテロでもってどんどんとハッカーが侵入してくると、そういうことが言われております。
 そういう中で、こういうハイテク犯罪に対する罰則の整備とか、コンピューターネットワークに対する捜査の手続の整備に関する法務省の取り組み状況、法務省当局にお伺い申し上げます。
#21
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど副大臣からも御答弁申し上げたところでございますけれども、委員御指摘のとおり、いわゆるインターネットを中心とするコンピューターネットワークの進展というのは目覚ましいものがございます。そして、経済活動、あるいは今、委員御指摘のような問題も含めて、そういうネットワークの上にいろんなことが成り立っていく社会に今転換しつつあることはもう間違いないわけでございます。
 そういう中で、コンピューターネットワーク社会というのは非常に大きな特徴がございまして、一つには国境が意味をなさない、それからまたいろんなことがデータ処理で瞬時に行われると。そういうふうな問題から、大変これまでの犯罪あるいは犯罪捜査とは違った側面が出てくることは間違いないわけでございます。
 そういうことから、今後のそういう高度情報化社会に対応するために、さまざまな刑事上の制度というのを整備していく必要があるという認識を私ども持っております。実際に、何らかの結果が起これば犯罪として処罰できる部分というのは現行法でも相当広範囲にはなっておりますけれども、それで十分かどうかというふうな問題が一つあるわけで、そういう点を考えなければいけないと考えております。
 もう一つは、実際の犯罪捜査で、先ほど申し上げましたようなコンピューターネットワークの特徴から、これまでの捜査のやり方ではなかなか難しい点がたくさん出てきております。その一つには、情報ですべていろんなことが動いていくと。その情報がどういうふうに、いつ、だれから発信されたか、そういうふうなことをいわば追っていくというのが大変難しいことになっております。また、こういうことを的確に行うためには国際的な協調体制というのも必要になってくるわけでございます。そういうことから、このような特質を踏まえました捜査手続についてもこれは早急に整備をする必要があると考えております。
 また、実際にさまざまな国際的なフォーラムでこういう問題について議論が進んでおりまして、先ほど申し上げましたとおり、国際的な協調体制というのが大変重要ですので、その議論も十分踏まえながらこういう問題については対応していかなければならない、そういうふうに考えております。
 現在、そういうことで、先ほどお尋ねのありました経済活動に関する基本法制の刑事に関する整備の一環としてこの問題を鋭意検討しているところでございます。
#22
○久野恒一君 これは本当に確かに難しい問題が含まれておりまして、例えば新幹線のダイヤのコンピューター、それにハッカーが入り込みまして、あるいは空港のコンピューター制御、成田空港なんて五分に一本ずつ出入りしていますから、離発着しておりますから、そういうところにサイバーテロでもって入られますと、本当にこれは何を要求されてもやらざるを得ないかなということもございます。
 そういう意味では、物すごいサイバーテロというものを意識して対応していく必要があるのではないかなというふうに私自身思うわけでございます。また、それについて、これから今後検討して十分やっていくという御回答をいただいたわけでございますので、ぜひその方向に進んでいってほしいと思います。
 また、高度情報通信社会の進展に伴いまして、インターネットの利用者を含めて多くの国民がコンピューターネットワークを利用するようになりまして、無数の電子メールがやりとりされていると思います。このようなメールを傍受することにより、通信の内容を容易に知ることもできると言われております。
 コンピューター通信を違法に傍受する行為に対してどのように対処するのか、刑事局長にお伺いいたします。
#23
○政府参考人(古田佑紀君) お尋ねの件につきましては、現在の我が国の法制上では、違法にコンピューター通信を傍受いたしますと、有線電気通信法あるいは電気通信事業法上の通信の秘密の侵害罪になるという場合が通例であろうと思われます。
 ただ、この問題につきましても、先ほど申し上げましたとおり、国際的にもいろいろ議論がされているところでございまして、そういうことも踏まえて、今後こういう問題についての罰則の整備というのも検討していくこととしております。
#24
○久野恒一君 私は映画の見過ぎなのかもわかりませんけれども、あのCIAのやつですね、これなんかはもう本当にアメリカの何だか地下の隠れたところでもって、ここにも書いてございますけれども、本当に専門にハッカーをやっているんですね。
 先ほども申し上げましたように、もう本当に新幹線のダイヤを狂わすぐらいは簡単であると、そういうふうに言われておりますので、外国はそれが常識になっているそうでございますので、日本もそれに対応してやっていいとは言っておりませんけれども、何とぞそういう点を少しでも国際対応できるようにお願い申し上げる次第でございます。
 次に、人権擁護の関係についてお尋ね申し上げます。
 先日、所信表明で大臣は、今世紀は人権の世紀であると強調されておられました。五月十八日の新聞を見ますと、国内初の代理出産の報道がございました。
 この報道によりますと、不妊の夫婦のために別の女性が、借り腹といいますか、例えばこの新聞の事例は、姉妹おりまして、お姉さんの方が子宮を摘出してしまったと。それで、どうしても子供が欲しい、そういう要望がございまして、卵巣は残っていますから、卵巣の卵子を取り出しまして夫の精子と体外受精をして、妹が同意してくれたので妹さんの子宮にそれを移植したと。それでもって子供ができたというので、今までは、旧厚生省の組織している科学審議会専門委員会の報告では禁止されているはずなんですね。産婦人科学会でもこれは禁止されているはずなんです。
 ところが、そういうものができたと。できたのはいいんですけれども、子供さんの人権にとってはこれは非常に後々禍根を残す問題ではなかろうかなと私は危惧しているわけでございまして、こういう問題に対しまして、日本のことわざに生みの親より育ての親という言葉がございます。が、しかし、これは生みの親も育ての親も一緒になっちゃうと情がわいてきちゃいますね。痛みを伴って産んだ子供を、痛い思いをして産んだ子供に対しては愛情がこもっちゃう。それを遺伝的にこちらのあれだからといってお姉さんの方に子供さんをとっちゃうと、これは子供の人権というものも非常に複雑な精神状態になるのではなかろうかなというふうに思うわけでございます。
 そういう意味におきまして、代理母の問題は厚生省マターではございます。が、しかし、今回生まれた子供の人権という観点におきましては、人権擁護行政を所管する法務大臣としてどうお考えになるのか、この代理母の問題についてお伺いいたします。
#25
○国務大臣(森山眞弓君) 今お挙げになりました事例がどのようないきさつであったか、新聞の記事しか私も承知しておりませんけれども、厚生省あるいは医学界等において非常にいろいろな議論が巻き起こされているようでございます。
 これはまさに医学的な問題であるわけですが、しかしその親子関係あるいは生まれてきた子供の法律的な地位というようなことまで考えますと、法律上も大変難しい問題になってくるのではないかというふうに心配されるわけでございます。当然、生まれてきて育ち、一人前になってきた人間としてはほかの人々と同様に人権を尊重されるべきであり、その人権を、いろんな意味で特に配慮すべき問題がいろいろあろうかと思いますので、そのような問題について関係者、十分に注意をして配慮していくことが必要であろうというふうに思うところでございます。
#26
○久野恒一君 確かに、今の時代というのは、自分で子供を産んでおいて育て方を知らなくて、子供さんを、赤ん坊を床にたたきつけて殺しちゃったとか、おっことしたとかなんとか言っていますけれども、実際にそういう事犯もありますし、お母さんがパチンコをやっていて、子供を車の中に残して、本当に車の中で高熱でもって死んじゃう子供もおります。そういう母親として最も信じられないようなことをやっておるのが実情でございますので、子供さんの人権というものをどうぞ大事に考えてやってほしいと思います。
 法整備にはございませんけれども、この新聞報道によりますと、同じ新聞で、このお医者さんにも責任がある、禁じられているものをやってしまったわけですから。だから、それに対して今のところ法整備はございません。が、しかし、ある程度やっぱりペナルティーはあってもいいんじゃないかなとは思うんですけれども、今のところそういうものはございませんので、あえて質問はいたしませんけれども、やはりこの人は待っていたら何も変わらないということでもって、小泉総理みたいにどんどんどんどんやっていっちゃう。これでもっていいのかどうかわかりませんけれども、とにかくこれを正当化、自分がやったからその行為を正当化しようとして一生懸命そう言っているんだろうと思いますけれども、やっぱり法治国ですから、日本は。
 そういう意味では、ぜひ何かしらのそういうペナルティーというものを設けていただければなと。禁止行為に対して、それを破った者に対してはある程度、でないとクローン人間だって何だって禁止してもどんどんやってくる人間が、研究者が出てくると思いますよ。そういう意味では、大変な問題にまで発展していくんじゃないかなというふうに私、感じたもので、質問をさせていただいたわけでございます。
 ただいま大臣からも教えていただいたように、これからも子供の人権というものを大事にしていくというお答えでございました。
 次に、人権擁護推進審議会の問題について触れさせていただきたいと思います。
 先日、大臣は、法務省が取り組むべき重要課題の一つとして人権擁護行政の充実強化というものについて述べられました。その中で、人権救済制度のあり方について協議、審査しているということでございますが、人権擁護推進審議会の答申が今月下旬、二十五日、あしたあたり出るんだろうと思いますけれども、これが出ましたら、大臣が述べられたように、人権の世紀と言われる二十一世紀において人権擁護行政の実施強化を図っていくことは極めて重要であると私自身も考えております。
 人権問題に関する最近のあれでは、ハンセン氏病がきのう総理が上告せずということでもって決着がついたようでございますが、これまたいろんな問題が噴出してくるのではなかろうかなというふうに私は考えてはおりますけれども、いずれにいたしましても、これはこれとして総理が決めた問題でございますから、我々もともにこれからの人種差別というものに対して考えていかなければならない問題が多々あろうかと思います。
 また、マスメディアですね、報道や取材によって犯罪被害者の方々がこうむっているプライバシーの侵害等、今後解決すべき重要な課題として考えてみますと、私は、こうした人権侵害の被害に適切に対応するために実効性ある人権救済制度というものを整備することが国の責務だと思っております。その意味では、人権擁護推進審議会において提言されている新しい人権救済機関の創設に私は大変期待を持っておるわけでございまして、そこで重要な点となりますのが人権救済機関の組織のあり方でございます。
 人権救済機関が中立公正な立場で救済を行うことができる体制を整えてほしいなというふうに思うわけでございまして、人権救済機関の整備に当たっては政府から独立性が不可欠であることを考えますけれども、この点について法務大臣としてはどういうお考えをお持ちなのか、お尋ね申し上げます。
#27
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃいますように、人権擁護推進審議会においては、これを大変大きな課題の一つとして議論していただいてまいりました。十一月に中間取りまとめを発表されまして、その中で、政府から一定の独立性を有する人権救済機関の設立を提言しておられるようでございます。
 審議会では、この中間取りまとめ、発表されたものに対しまして一般の方々からの御意見もいただきまして、それらを踏まえまして慎重にその後の調査審議を進めてこられました。そして、あしたにも人権救済制度のあり方についての答申をいただけるものと聞いております。
 法務省といたしましては、人権擁護推進審議会の答申を最大限に尊重いたしまして、人権の世紀と言われる二十一世紀にふさわしい被害者救済制度の確立に努めてまいりたいと考えております。
#28
○久野恒一君 どうぞよろしくお願いするわけでございます。
 ただいま大臣から述べられたように、人権救済制度の整備に当たってはもう一つの重要な点が私はあろうと思います。人権救済にかかわる国際的取り組み、国際的な潮流を踏まえて実施していくことが大切ではなかろうかなというふうに思うわけでございまして、諸外国の人権救済制度について目を向けますと、近時、各国で人権救済をその重要な責務の一つとする政府によって設立された機関、これを国内人権機構と言うようでありますが、そうした機関が整備されて、しかもその整備の国際的指針も国際機関によって示されていると聞いております。
 したがって、人権の世紀にふさわしい人権擁護行政を展開していくためにはそうした国際的潮流を十分踏まえることが必要であると考えるわけでございますが、この点につきましては大臣のお考えはどうでしょうか。
#29
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、人権問題というのは非常に大きな国際問題でもございます。我が人権擁護推進審議会におきましては、人権救済機関のあり方について、いわゆるパリ原則というのがございますが、その原則や国連人権センター作成のハンドブックなど、国際的な取り組みにも十分配慮した調査審議が行われたものと承知しております。
 法務省といたしましては、答申をいただきましたら最大限にこれを尊重いたしまして、人権救済制度の確立に努めてまいりたいと考えております。
#30
○久野恒一君 ありがとうございます。ぜひそのようにお願いいたしたいと思います。
 次に、入国管理関係についてお尋ね申し上げます。不法入国者対策と不法滞在者対策ですね。
 これについて、去る五月一日に金正男氏が、そう見られる人物ほか三名が不法入国いたしました。一部報道では、これは五月十九日の新聞報道でございますので、読売新聞でございますけれども、これは月刊朝鮮という韓国の雑誌だそうでございますが、この雑誌にその目的、その金正男氏らしき人物はメールでもってアメリカの某氏と連絡をとり合って、日本でもって五月上旬に会おうということがこの月刊朝鮮に書いていると報道されておりました。その目的は、武器売買のために来たと。これは新聞報道ですからどの辺まで本当かどうかわかりませんけれども、武器売買のために来られたんだとするとこれは容易ならざることであるなというふうに思います。幸いなことに、パスポート偽造でもって捕まって送還されてしまったから事なきを得たわけでございますが、そのほか金正男氏は過去三回来たことがあるというふうにも聞いております。
 こうしたことを考えますと、不法入国者を水際で防ぐ、これに対しては厳しく対処することが最も重要でありますけれども、不法入国防止のために今後どのような対策をとられるのか、入国管理局長にお尋ね申し上げます。
#31
○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、不法入国者を水際で防止することは極めて重要なことと考えておるところでございます。不法入国により退去強制をとった者の数につきましては、五年前の平成八年には四千八百人ぐらいでございましたけれども、昨年は九千二百人と大幅に増加しておることでございます。このうち、偽変造旅券等を行使する航空機による不法入国者は約六千八百人と過去最高に達しているのが現状でございます。残りの約二千四百人が船舶による不法入国者でございます。その態様につきましても、コンテナに潜んで不法入国をはかるなど、非常に巧妙、悪質化の傾向が進んでおるわけでございます。
 このような現状を踏まえまして、当局といたしましては、関係諸機関と緊密な連携のもとに、不法入国者の防止対策を積極的に推進しているところでございます。特に、飛行機による不法入国者対策といたしましては、成田空港支局及び関西空港支局に偽変造文書対策室を設置いたしまして、偽変造旅券等を行使する案件に対しまして摘発強化に努めているところでございます。
 今後も、偽変造文書鑑識機器の増配置はもとより、主要空港におきますパトロールや海港におきます船内サーチの充実強化等、所要の体制整備を努めながら、水際での不法入国事案の防圧に努めたいというふうに考えているところでございます。
#32
○久野恒一君 ぜひ、不法入国者対策はしっかりとやっていただきたいなというふうに思うわけでございます。
 不法滞在者につきましては、先日、大臣も二十六万人いると言われておりましたが、このような不法滞在者の一部は最近は凶悪犯罪をやったり組織犯罪にかかわったりいろんな事例があります。我が国の治安にも悪影響を与えております。見過ごしできない状況に陥っているのではなかろうかなというふうに思うわけでございまして、大臣は所信の中で、二十六万人と推定されている不法滞在者等の対策を積極的に推進していくことが国民から強く求められていると述べられましたけれども、私は、まさにそのとおりで、この国民の強い要請にこたえていく必要があると考えております。
 そこで、不法滞在者の対策、積極的な推進のためにどのような方策をとろうとしておられるのか、大臣の御所見をお願いいたします。
#33
○副大臣(横内正明君) 入国管理局では、この不法に入国をする者を水際で防止するということと同時に、既に国内に入ってしまった不法滞在者を摘発してこれを減少していくということを仕事といたしておりまして、そのために入国事前審査とか上陸審査あるいは在留審査を厳格に行っていく、さらには関係機関、警察等と緊密な連携をしてこの摘発の強化に努めてきたところでございます。
 しかしながら、今、委員の御指摘にありましたように、不法滞在問題というのはますます深刻化をし、また増加をしているという状況でございまして、このためには従来以上に強力な、また総合的な不法滞在者対策を推進していくことが必要だというふうに考えております。
 とりわけ、入管行政の体制では、特に人員面と機材面の非常に不足が目立つわけでございます。とりわけ、人員の面では、諸外国と比較いたしましても不足の状況にあるわけでございます。例えば、隣国の韓国と比べますと、韓国の金浦空港は出入国者数が千六百万人、それに対して入管職員が五百人いるわけでございます。それに対して我が国の成田空港は、出入国者数が二千四百万人と大体五割増し多いわけでありますが、入管職員は三百五十人と三割方少ないと。そういうふうに諸外国と比べても人員の体制というものが非常に不足しているという状況でございます。
 したがいまして、我々といたしましては、この人的な体制それから物的な体制の充実強化というものが緊急の課題だというふうに思っておりまして、そういう点、努力をしていきたいというふうに思っております。
#34
○久野恒一君 確かに、行革の問題でもって人数をふやすということは非常に難しい問題があろうかと思います。しかし、その少ない中でもってこれをやっていかなければならないつらさというものも多々あろうかと思います。そういう決められた人数でもってやらなければならないこの日本の情勢というものを本当に悲しいことであるなと思いながら、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 実は、私、この法務委員会に入りまして、二度目でございますが、三度目になるわけでございますが、国会がですね。そういう中で、二回ほど私、いろんな箇所に視察に行きました。とりわけ、また私が医者でございますので、医療少年院、ここへ行ったときに、人員が少ないんですね。お医者さんが九名、看護婦五名、それで二百人の人を診ている。これは何というか、もう病院ではないんじゃないかなと。そこをお聞きしたらば、そこの九名の、院長先生の一人が、二人ぐらいいたのかもわかりませんけれども、その人がいわく、病気になったら外の病院へやるからいいんだよと、こういうような発言でございます。
 しかし、中を見学して歩きますと、中は薄暗く、その中で本を読んでいるんですね。我々が視察しているからみんな一生懸命本を読んでいるのかどうかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、あんな暗いところで本なんか読んだらかえって目が悪くなるし、病気になっちゃうんじゃないかなと。医療少年院のところでもって病気になっちゃうと、そういうような印象を受けたもので、私はこれについてぜひ御質問したいというふうに考えております。
 この人的な、また物的な、建物ですね、この整備について法務当局といたしましてはどのように考えておられるのか、お尋ね申し上げます。
#35
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 委員御承知のとおり、医療少年院というのは心身に著しい故障のある非行少年を収容いたしまして、医療的な治療とともに教科教育あるいは生活指導といった教育的な処遇を行っている施設でございまして、病院として指定されていることも事実でございます。
 ただ、一般的な病院と比較した場合に、一つには、身体の疾患を有する少年につきましては成人と比べまして、例えば悪性新生物とか心筋梗塞と、そういった重症疾患を有する者が比較的少ないと。それで、もし特殊な手術の必要がある場合につきましては外部の病院に入院させまして、そこで術後の看護等についても病状が安定した段階で戻すと、そういったような取り扱いもしております。
 また、もう一つの特色ということではございますけれども、比較的精神的に障害のある者が収容されることが多いということもございます。これにつきましては、医療部門と教育部門とが連携して対応しているところでございます。さらに、スタッフ的に見ますと医療関係者、すなわちお医者さんとか看護婦さんのほかに教官が多数配置されておりまして、少年の全生活、生活全般に深くかかわっておりまして、昼夜を問わず動静等を把握する体制になっておりまして、病状に変化があるといったときにはすぐ医療関係職員に連絡するといったような対応もできるように一応なっておるわけです。
 そういったいろいろな点を考えますと、一般の病院と同じような人的体制を整えなければ適正な医療ができないという、必ずしもそういうわけではないという側面もございます。
 ただ、しかしながら、さはさりとて医療少年院の人的体制につきましては、このような現状に甘んずることなく、例えば看護スタッフの共助とか、また臨床心理ですか、そういうところの専門的な資格を有しております少年鑑別所の心理学の派遣とか、いろいろな点を検討いたしまして人的体制の充実に努めてまいりたいと思います。
 それから、物的体制について申し上げますと、少年の疾病傾向もいろいろあるわけですが、そういった点を踏まえながら検査・治療機器を中心に順次更新してきましたけれども、引き続き努力したいと思いますし、また建物の整備につきましても矯正施設の全体の計画というのもあるわけですので、そういった点を踏まえながら、これについても計画的にその促進を図っていきたいと思います。
 ちょっと答弁が長くなって恐縮ですが、一つだけ、先ほど関東医療のお話がありましたので若干付言させていただきたいと思いますが、昨年十一月に当委員会で御視察をいただきました。委員御指摘のとおり、非常に暗いのではないかといったような御指摘がございました。その後、調査いたしましたところ、日本工業規格に定める照度基準を一部満たさない箇所等があるということがわかりましたので、少年の読書等に支障が生じないように、採光というか光を入れることの障害になっておりました庁舎わきの樹木の剪定をするとか、あるいは照明施設の貸与ということで、できる限り明るい環境で生活できるように改善したことだけ申し添えさせていただきたいと思います。
#36
○久野恒一君 大変いろいろと配慮なさっている様子はわかりました。が、しかし、私はもう少し、もう建物が古いですから建てかえてほしいなということを要望したいと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
#37
○政府参考人(鶴田六郎君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、矯正施設の建物の整備、これは少年院も刑務所も全部含まれるわけですが、老朽化の著しい施設につきましては、これまで順次、改築整備を図ってきたところでございますが、医療少年院につきましても計画的に施設整備の促進を図ってまいりたいというふうに思います。
#38
○久野恒一君 ぜひとも、財源が恐らく足らなくてできない面もあろうかと思います。
 そこで、きょう、先生方に配付した参考資料をごらんいただきたいと思います。
 少年院の場合は、この間、改正少年法が四月から実施されるようになりました。それでもってこの表を見ていただきますと、十五歳までは年少扶養控除額ですね、サラリーマンだと扶養控除額が大体三十八万円控除されることになっております。それで、大学にかかっていくようになりますと、特定扶養控除額六十三万円がサラリーから控除されるようになっております。それから、二十三歳から六十九歳までは三十八万円と戻ります。七十歳以上、これはまた後で触れたいと思うんですけれども、何と寝たきりの人は百三十三万円も年間控除されることになっております。
 まず、この年少扶養控除を本当に、これを少年院に数年間行っている間は、本来であるならば親は扶養控除とか扶養手当とか、大体三十万近くサラリーマンあるいは公務員などは扶養手当が別についております。それが大体一人約三十万円年間つきますと、控除と手当とで合わせると六十万前後のものがその親に行っていると。そういうところで、少年犯罪を起こして少年院に入ったその間は親は扶養していないわけでございまして、扶養控除あるいは手当を取り除いて、それで親のペナルティーとしてそれを余分に税金として納めていただければそういう建築資金の方に充てられると思います。
 これはこの前の委員会でも私、質問、前の前だったですかね、質問したんですけれども、これ財務省の方でこの質問はちょっと問題がありということで差しとめられまして質問しなかったんですけれども、きょうはあえて質問させていただきました。いろいろと行政改革をなさっていく内閣でございますので、こういうところも改正していただきたいなと。
 大体、扶養控除とか扶養手当とかというのは子供が正常に、健常に成長していくための報償金みたいなものでございますから、それが親のしつけの悪さあるいはそれは教育の悪さですね、それでもって少年院に行くような事犯を起こした場合はこの扶養控除というのは取ってしかるべきだと。なかなか事情によっては取れない場合もあろうかと思いますけれども、原則として取るべきだというのが私の考え方でございまして、これに関して、そういうものに関しては何らかお考えになっているでしょうか。親に対するペナルティーですね。そういう扶養控除、手当を取り除くというものを法務省としてはどういうお考えなのか、ちょっとお聞かせ願えればありがたいと思います。
#39
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 現在の申告納税制度のもとでは、扶養親族である少年が矯正施設に収容されたことは、少年の親から申告がない限り判明しないと思われますので、御指摘のような不公平も、差が生じるかもしれないということはあり得るかもしれません。
 しかしながら、他方で、矯正施設に収容された少年やその親の情報を税務署や、源泉徴収ということもありますので、少年の親の勤務先に開示するということにつきましては、個人情報の保護といった面からやはり問題がないとは言えない点もありますし、また技術的にもさまざまな問題がございます。
 いずれにいたしましても、私どもとしても、今後多角的な観点から研究していきたいというふうに考えております。
#40
○久野恒一君 大体時間も過ぎたようでございますが、あと二分ほど残っておりますので、これはもう全く法務関係とは関係ないことを申し上げます。
 先ほど申し上げました七十歳以上、百三十三万円年間控除されるということにつきまして、私の病院でも介護施設も病院も持っております。そういう職員もその施設に入ります。在宅にいるときは寝たきりの人というのは百三十三万円、何回も申し上げますけれども、扶養控除があるわけでございまして、これが在宅にいるときはそれでいいんですけれども、一たん重病になりますと病院に入ります。病院に入って、慢性になって、療養型病床群に行って、有料老人ホームに入るとか、いろいろ入ります。
 そうしますと、扶養している手間とかいうものが省けるわけでございます。家族が手間が省ける。ところが、施設に入っちゃうと一生涯その人はずっと施設にいるということでございまして、それで手間が省けるから、ボランティアでもって介護休暇をもらって、どこか手伝いに行くとかなんとかという、うちの病院ではそういうのを見て知っておりますので、実際、職員が施設に入っているのでよくわかっていますけれども、事務方に聞いたら、そこで源泉徴収やっているのかと、源泉徴収というか扶養控除削減しているのかと、四十八万まで削減できるわけですから、同居していなければ。そうすると、その差八十五万円ですか、これが、実際には施設に預けて、その施設に預けた家庭、扶養者がそのまま黙っていて申告しないんですね。病院側としても、本人が申告しないから、これはあなたのところはこうしているからカットするよというぐあいにはいかないもので、やらないわけでございます。現実にこれだけの年間、施設に入っている人たちが大体八十五万円は得しているということになるわけです。
 ですから、こういう点を、医療がだんだん膨らんでくる、介護費用も膨らんでくる。だから皆さん、国民にも負担をしていただきたいと、こうおっしゃるんだったら、この辺のところをちゃんと決められた法律があるわけでございますから、ぜひともそういうところを見直していただければ、恐らく二兆円かあるいは三兆円になるかわかりませんけれども、そのくらいの数字が行くと私は思っております。
 そういうことを、法務大臣とは関係ございませんけれども、何とかそういう法律を守ればもっと税収が上がる方法があるんだということを御認識いただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#41
○小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。
 昨日、ハンセン病訴訟に対して控訴しないという政府の決定をされたそうで、大変にいいことだと思っております。冒頭からその問題に関して法務大臣と厳しい論議になるのかなと思っておりましたが、控訴しないということで、厳しい論議にはどうもならないで済みそうだと思っておりますが、法務大臣としてこの訴訟に対する所感、もういろいろな機会で聞いておりますが、それから控訴しないということになったこの時点を踏まえて、この判決に関するあるいはハンセン病に対する賠償問題も含めて、所感をお聞かせいただきたいと思います。
#42
○国務大臣(森山眞弓君) このたびのハンセン病問題につきましては、昨日、小泉総理大臣の歴史的な御英断によりまして全面解決への道が開かれました。
 判決の言い渡し以来、元患者さんの方の苦しみとそして法務大臣としての職責との間で悩んでまいりました私といたしましてもほっとしているところでございます。高く御決断を評価したいと思っております。
 この判決はハンセン病問題の重要性を改めて国民に明らかにしまして、その解決を促したという点で大変意義が深いと思います。
 その一方で、この判決には、現行の法制度、判例の枠組みにおいて、憲法、国家賠償法、民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点などが幾つかございます。このように法律上の問題点のある本判決に対しましては、法秩序の維持と国を当事者とする訴訟の統一的かつ適正な処理を任務とする法務大臣といたしましては受け入れることが非常に難しいというふうにも感じまして、これらの問題点については上級審の御判断を仰がなければならないのではないかというふうに考えたこともございます。
 しかし、我が国においてかつてとられたハンセン病患者に対する施設入所政策が多くの患者の人権に対する制限、制約となったこと、また一般社会において極めて厳しい偏見や差別が存在していたというのが現実でございまして、本判決の指摘するとおり極めて深刻な事態でございました。
 本件は、立法府が立法した法律と、その法律に基づく行政の施策によって国みずからが引き起こした極めて特殊な事案でございまして、現時点でできるだけ早く解決をしようと、その必要があるということを考えますと、極めて異例な判断といたしまして、今回の事案に限り、国として今申し上げたような法的問題点に対する態度を明らかにした上で、本判決に対する控訴はしないで、政府として早期の統一的、全面的解決を目指すのが相当であるという考えに達したのでございます。したがいまして、本判決につきましては控訴をしないということで、二十五日、内閣において最終決定をいただきまして、控訴しないということにいたしました。
 その後、けさの新聞その他の反響を拝見いたしましても、これは党派を超えて国民の大多数の方に歓迎され、また了承されているように思われまして、改めてこの政治的な決断というものの意味を深くかみしめているところでございます。
#43
○小川敏夫君 それで、この熊本地裁の判決に関して、政府の方としては受け入れがたい法律的な判断部分があるということでございましたが、これは私も報道でしか知らないので、正確を期したい意味で、どの点が政府として受け入れがたい部分だったのか、具体的にお示しいただければと思います。
#44
○国務大臣(森山眞弓君) 官房長官が記者会見で説明しておられる声明の中に、官房長官のステートメントの中にその主要なものが書いてございます。
 その第一は国会議員の立法不作為ということでございますが、国会議員の立法不作為につきまして国家賠償法上の法的責任を認めたというのが一つでございます。もう一つは、民法に規定があります損害賠償請求の除斥期間の適用を事実上排除している点などでございまして、現行の法制度、判例の枠組みなどにおきまして法解釈の根幹にかかわる、国民全体に大きな影響を及ぼし得る問題点であるというふうに思っております。
#45
○小川敏夫君 そうしますと、判決が示した厚生行政の違法性、これはその判決をそのまま承認するということでよろしいわけですね。
#46
○国務大臣(森山眞弓君) 細かく申せば今申し上げた二つの点以外にもいろいろ問題点はございますので、これから急いで精査をいたしまして、その点についての意見も発表したいというふうに考えております。
#47
○小川敏夫君 そうですか。どうも国会議員の立法不作為と除斥だけが不服だというと、どうも厚生行政の違法性を認めたかと私、思って確認したんですが、ちょっと違う御答弁だったので残念に思っていますが。
 私、この訴訟の判決を受けて思った感想というよりも現時点で思うのは、これだけはっきりした事案についてなぜ判決まで待たなくてはいけなかったのか。むしろ、判決を待つまでもなく、提訴、提訴を受けなくてもいいわけですけれども、積極的に賠償責任に応じて被害者に対する救済を講ずるべきではなかったのか。私はそういう意味で、判決を受けて控訴しないということは、そのこと自体大変に評価しておるんですが、判決までそもそもこの賠償を含めた救済の措置を講じなかったというこれまでの政府の施策が誤っていたのではないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#48
○国務大臣(森山眞弓君) この問題の深刻さということを考えますと、そしてその重大性といいますか、長年にわたる人権じゅうりんが解決されることなく放置されて、そのために大変苦しんでいる方がたくさんいらっしゃるということを考えますと、おっしゃるようなことも考えられないことはなかったと思いますが、やはりこのたび熊本地裁において法律的な判断が下されたということが大きなきっかけになったというふうに解釈しております。
#49
○小川敏夫君 では、次の問題に行きまして、金正男氏と思われる人物の不正入国問題でございます。
 この点について細かく聞いていきたいと思うんですが、そのために、まずこの事案の概要を一通り、簡単で結構ですが、説明していただきますようお願いいたします。
#50
○政府参考人(中尾巧君) 本件はことしの五月一日に発生した事案であります。五月一日に成田空港で、シンガポール便に乗ってきた男女、幼児一名を含めまして四名の入国審査に当たって本件の不法入国が発生したものでございます。
 この関係につきましては、従来からドミニカ共和国という中南米諸国の査免国の偽造旅券が悪用されている事例が多くあったという事情が背景にございます。
 当日、入国審査に当たって、四名からの上陸申請がございましたが、いずれも、四名ともアジア系の外国人であったにもかかわらず、所持していた旅券が中南米のドミニカ共和国旅券であったということで、まず不審点が見受けられたわけであります。なおかつ、四名ともどもいわゆる五月雨式に団体といいますか、一緒になって上陸申請したというような不審な点が見受けられた等々のことから、四名につきまして口頭審理に付し、その口頭審理の過程におきまして女性二名が朝鮮語を話しておったというような事情もございました。
 所持した旅券について偽造の疑いがそういうような事情から見受けられたものですから、鑑識に回しまして、鑑識の結果、三名につきましては偽造旅券ということが判明いたしました。一名につきましては不正取得の疑いもございましたけれども、最終的に当該所持しておった女性がドミニカ共和国国籍であるという認識がないということでございますので、基本的に発給事実がないという推認が働くということで、偽造ということで、いずれも、四名につきましては有効な旅券を所持していないということで退去強制、不法入国という容疑で退去強制手続に付されまして、最終的には退去強制事由を四名とも認めたということで、本人らが希望いたします中国に送還手続をとりまして送還することに相なりまして、五月四日に送還を完了したと、こういうことでございます。
#51
○小川敏夫君 この金正男と思われる人物というふうに言われているわけですけれども、これは金正男なんですか、それともそうじゃない別人なんでしょうか。
#52
○政府参考人(中尾巧君) 委員のお話の金正男氏ではないかというふうに思われている人物につきましては、私ども、金正男氏であるということは確認するに至っておりません。
#53
○小川敏夫君 確認してはいないけれども、思われるという程度の、確認というのはおかしいか、金正男と思われるという推測は働くだけの人物ではあるわけですか。
#54
○政府参考人(中尾巧君) いろいろマスコミ等で報道されている事実もございますけれども、私どもとしてはそういう人物であるかどうかを確認できていないという限りで申し上げるしかないと思います。
#55
○小川敏夫君 そうすると、金正男氏ではないと断定したわけでもないわけですね。
#56
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 断定する断定しない、どちらとでもないということでございます。
#57
○小川敏夫君 だから、どちらでもないというのは、要するに金正男氏とも断定しないけれども、金正男氏ではないとも断定しないと、こういうことですよね。
#58
○政府参考人(中尾巧君) その点についても、断定できるわけではないというふうに承知しております。
#59
○小川敏夫君 何かつまらない言葉じりのやりとりかもしれないけれども、金正男氏と断定できない、金正男氏じゃないと断定できないと。それ以外の可能性は何かあるんですか。
#60
○政府参考人(中尾巧君) 少なくとも当該男性につきましては金正男氏とは別の名前が当該本人の本名であるというふうに申し立てておりますから、私どもとしては少なくとも本人が申し立てる名前の人物であるという前提で所要の手続をとった次第でございます。
#61
○小川敏夫君 しかし、本人が申し立てる名前が正しいというふうには断定できていないわけですね。
#62
○政府参考人(中尾巧君) 私どもの退去強制手続におきましては、これは行政手続でございますから、委員御案内のとおり司法手続ではございません。刑事手続等で本人の人定を確定するということまでの必要性はない手続でございます。
 少なくとも私どもの退去強制に必要な限り、本人が申し立てる本名がその者の本名であるということで手続を進めざるを得ませんので、その者であるという前提で手続を進めたと、こういうことでございます。
#63
○小川敏夫君 この金正男氏と思われる人物の退去問題につきましては、成田の入管だけの判断じゃなくて、法務大臣あるいは総理大臣の方に処分の決定前に事情報告をしてその判断を仰いだのではありませんか。
#64
○政府参考人(中尾巧君) 委員御案内のとおり、私どもの大臣にも経過を説明いたしましたし、総理の方にも秘書官を通じまして御報告をさせていただきました。
#65
○小川敏夫君 通常の事務の取り扱いで、個々の強制退去処分について個々具体的に法務大臣の処分を仰ぐ、あるいは秘書官を通じて総理大臣に処分を仰ぐということはあるんでしょうか。
#66
○政府参考人(中尾巧君) それはございません。
#67
○小川敏夫君 そうしますと、本件について法務大臣に処分を仰いだ、あるいは総理大臣にも処分を仰いだというその事情は何ですか。
#68
○政府参考人(中尾巧君) 本件事案発生以後に、私どもの方に、成田空港署で収容いたしました四名につきまして、その中の一名につき、金正男氏ではないかと、そういう人物が含まれているのではないかという未確認情報が私どもの方に寄せられましたので、私どもといたしましては、未確認とはいいながら、そういうことが仮にでも、万が一にも確認された場合には、種々の、つまり北朝鮮という私どもの方が、我が国が承認していない国の重要な人物であるという疑いのあるという未確認情報を得た以上、これはそういう観点から私どもの大臣あるいは総理の方にその情報を入れるべきだというような形で御報告をしたと、こういうことでございます。
#69
○小川敏夫君 その未確認情報というのは、具体的にどういう筋からどのようにしてもたらされた情報ですか。
#70
○政府参考人(中尾巧君) その情報源あるいは情報の相手等については申し上げるわけにはまいりませんので、御理解をお願いいたしたいと思います。
#71
○小川敏夫君 そういう情報に接して、法務大臣あるいは総理にという措置をとったということは、その情報が単なるデマ、憶測ではなくて、やはりそれなりの重要性がある情報だと判断したからそのような外務大臣に処分を仰ぐ、総理大臣にという、そういう措置をとったと、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
#72
○政府参考人(中尾巧君) 外務大臣とおっしゃいましたけれども、私ども法務大臣にということでございますが、この点の情報の確度の点につきましては、私ども自身はいわゆる捜査機関でもありませんし、諜報機関でもありません。一行政目的に携わる、入管行政に携わる者でありますので、その辺の確度の点については甚だ自信はございませんけれども、私どもなりに、その辺のところの確度があるのかないのかはともかくといたしまして、情報として上げるのが私どもの務めだということでやった次第でございます。
#73
○小川敏夫君 この不正入国しようとした人物について、警察庁から告発するようにという要請を受けたという報道があるんですが、この点はいかがですか。
#74
○政府参考人(中尾巧君) 本件につきましては、警察庁も含めましてさまざまな意見があったことは事実でございます。さまざまな意見がございましたけれども、最終的には退去強制手続で退去強制させるということに相なった次第でございます。
#75
○小川敏夫君 そのさまざまな意見というのは、具体的には警察庁から告発して刑事手続をするようにと、こういう意見ということですね。
#76
○政府参考人(中尾巧君) 先ほど申し上げたとおり、さまざまな意見はさまざまな意見ということでございます。
#77
○小川敏夫君 私は、さまざまな意見があったかどうかを聞いているんじゃなくて、警察庁からこの不正入国をしようとした人物について刑事告発をしていただきたいという要請、それがあったのではないかと聞いておるわけです。
#78
○政府参考人(中尾巧君) 先ほど来申し上げておるとおり、さまざまな意見があったということで御理解いただきたいと存じます。
#79
○小川敏夫君 私は、さまざまな意見があったかどうかを聞いているんじゃないんで、告発の要請があったかどうかを聞いているわけです。
#80
○政府参考人(中尾巧君) 先ほど申し上げているとおりでございます。
#81
○小川敏夫君 そんな答弁納得できません。質問に答えていない。
#82
○委員長(日笠勝之君) 再答弁、中尾局長。もう少し丁寧に。
#83
○政府参考人(中尾巧君) その点の関係につきましては、これは警察庁の捜査の一環での話でございますので、私どもの方でその点について直接お答えするのは適当ではないと思いますので、先ほど来申し上げているようなことで、さまざまな意見があったということでぜひ御了解をお願いしたいと存じます。
#84
○小川敏夫君 了解はできませんけれども、さまざまな意見があったのであれば、そのさまざまな意見を全部披露してください。
#85
○政府参考人(中尾巧君) この点につきましても種々の角度からそれぞれの省庁の担当者が、官邸の関係者も交えまして各省庁で協議した内容でございますので、私どもの方から、どこの省庁がどうだああだというようなことは申し上げるのは適切ではないというふうに考えておる次第でございます。
#86
○小川敏夫君 では、ほかの省庁ではなくて、あなた方の省庁、つまり入管ですか、において自主的に刑事告発をしようという検討はしなかったんですか。
#87
○政府参考人(中尾巧君) 私どもといたしましては、基本的には本来の業務であります退去強制手続を通常の形で進めていくということが本務でありました。その関連で告発云々ということは、検討するということは、検討を始めたことはそのとおりでございます。
#88
○小川敏夫君 行政処分として退去処分にするということもあるけれども、一般に刑事告発するということもあるわけですね。その場合に、まずその人物がどういう目的で入国しようとしているのかとか、さまざまな事情を調査して、そして判明した事実をもとにそれを判断することになると思うんですが、この人物の場合、金正男と思われる人物が使っていたパスポートですと過去三回の入国歴があったということですが、この点はどうなんですか。過去三回、実際に入国歴があったんですか。
#89
○政府参考人(中尾巧君) パスポート、本人が所持しているパスポート上は過去三回、つまり平成十二年度中に三回の我が国への出入国証印が押されておりましたので、当該偽造旅券上は三回の出入国歴があるということは確かでございますけれども、それ自体が、当該本人がその旅券で三回我が国に出入国したということまでは確認できておりません。
#90
○小川敏夫君 では、当該人物が過去三回入国しているかどうか、そのパスポートに記載の、入国が当該人物であるかどうかについて調査はしたんですか。
#91
○政府参考人(中尾巧君) 必要な私どもの手続の範囲内での調査はいたしました。
#92
○小川敏夫君 どのような調査をしたんでしょうか。
#93
○政府参考人(中尾巧君) 調査の具体的な方法、内容については事柄の性質上、申し上げるわけにはいかないと存じます。
#94
○小川敏夫君 どうして調査の方法についてここで答弁することができないのでしょうか。
#95
○政府参考人(中尾巧君) 調査の内容、方法等について申し上げることは、私どもの本来、この種事案の処理に当たっての具体的な今後の対応について支障が出るおそれがあると考えているところでございます。
#96
○小川敏夫君 具体的に聞きますが、パスポートに記載された入国、出国の記録があるわけですね。そうすると、それに伴う入国カード、出国カードが保存されているのではないですか。
#97
○政府参考人(中尾巧君) いわゆるEDカードと申し上げますが、いわゆる出国入国カードでございますけれども、このカードにつきましては現在マイクロフィルム化しておりまして、マイクロフィルム化すると同時に廃棄処分をしておりますので、そのものの原本といいますか、EDカードの原本は廃棄されて、ございません。
#98
○小川敏夫君 先回、民主党で事情を聞いたときにはカードがあるというふうに審議官から説明を受けておったんですが、それは事実じゃないんですか。
#99
○政府参考人(中尾巧君) 若干その辺の御理解の方法が、私どもの方の説明が十分でなかったかもしれませんが、とにもかくにも、そういう一般的には出入国EDカードというのがあるということで、民主党の関係で御説明したと思います。ありますけれども、時期が来てマイクロフィルム化が済めばそのものが廃棄される、こういうことでございます。
 本件につきましても、昨年のことでございますので、昨年あるいはことしの初めごろには廃棄になっているはずだと思います。
#100
○小川敏夫君 いや、なっているはずだと思うというのじゃなくて、事実をはっきりしてくださいよ。
#101
○政府参考人(中尾巧君) ございません。現時点では、ございません。
 ただ、廃棄の時期については、先ほど申し上げたように、そこは私の方で確認がとれておりませんので先ほどのような答弁をさせていただきましたけれども、現時点ではそれは廃棄されて、ございません。
#102
○小川敏夫君 しかし、私どもが審議官からお話を聞いたときにはあるという、五月十日の時点ではあるということで、今の段階ではいつ廃棄されたかわからないけれども、ないというと、じゃ、何か最近慌てて廃棄したのかななんという疑いも持ちたくなるんですが、いつ廃棄したんですか。
#103
○政府参考人(中尾巧君) 五月十日の時点でもうないということは、私どもは確認しております。
 ただ、廃棄の時期につきましては先ほど申し上げたようなことで、マイクロフィルム化した直後に廃棄するということに、取り扱いになっておりますので、去年中の関係でございますので、遅くともことしの初めぐらいに廃棄されているだろうというふうに私の方で考えておるところでございますが、委員の方でそういうことで御不信ということでありましたら、廃棄の時期につきましては後ほど調査して御報告させていただきたいというふうに存じます。
#104
○小川敏夫君 調査して報告していただきたいと同時に、であれば、五月十日の説明の際に間違った説明を私にしたことになるので、その点についてもきちんと説明していただきたいと思います。
 ただ、質問を進めますけれども、マイクロフィルム化しているということは、現物はなくても当然マイクロフィルムとしてその出入国カードが再現できる状態にはなっておるわけですね。
#105
○政府参考人(中尾巧君) マイクロフィルム化しておりますので、不鮮明ながらそのものの概要がわかるようにはなっております。
#106
○小川敏夫君 そうすると、通常、入出国カードは本人自署のサインがあるわけですが、今回も入国をしようとしたわけですから、本人自署の入国カードの署名があると思うんです。この署名は対比したんでしょうか。
#107
○政府参考人(中尾巧君) 一応、対査いたしました。
#108
○小川敏夫君 その対比した結果はどうなんですか。
#109
○政府参考人(中尾巧君) 同一のものかどうか、判然といたしません。
#110
○小川敏夫君 もう少し具体的にしていただきたいんですけれども。明らかに別の字体、全くこれは別人であるとその署名から断定できたんですか。
#111
○政府参考人(中尾巧君) 詳細な点についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、結論的に申し上げれば、その辺のところがはっきりしないと、こういうことでございます。
#112
○小川敏夫君 署名の点をはっきりしないと言われても、例えば共産党さんが例のあの古川内閣官房副長官ですか、筆跡鑑定つきの署名で似ている、似ていると言っても政府の方はそれは認めていないというような事情もあるわけですから、余り抽象的に断定できないと言われても納得できない。むしろ、相当同一人物と判定できるだけの類似性があるんじゃないかと私どもは推測しているんですが、どうでしょう、その点は。
#113
○政府参考人(中尾巧君) 先ほど来申し上げているところでございますが、私どもの退去強制手続は送還という形で終了しておりますので、その手続の終了するまでの間に所要のことをしたということでございまして、もう既に手続は終わっておるわけでありますので、今のところ、それ以上のことを考えておるわけではございません。
#114
○小川敏夫君 ちょっと今の答弁はあれですけれども、そうすると、これは強制退去処分をする前には過去の三回の入出国記録の署名との対比、これはやらなかったということですか。
#115
○政府参考人(中尾巧君) 送還が終了までの段階で済ませております。
#116
○小川敏夫君 その現物は、マイクロフィルムの現物と、それから入国しようとしたときに入国カード、これはその当該人物は提出したわけですね。その現物は現在あるわけですね。
#117
○政府参考人(中尾巧君) 現時点ではあると思います。
 これは逐次逐次、マイクロフィルム化しておるわけでありますので、私どもは今の時点ではあると認識しておりますけれども、手続が終わり次第、どんどんどんどんルーチンワークで物事が進んでおりますので、その辺はちょっと、きょう時点あるかどうかと聞かれますとちょっと心もとないことでございますが、それも確認させていただきたいと存じます。
#118
○小川敏夫君 現物もなしに似ているの似ていないの、これ議論しても始まりませんから、そのマイクロフィルムとその当該人物が署名したと思われる署名をぜひ対比して調査したいと思いますので、委員会の方でその資料を提出するよう私の方で要求いたします。
 じゃ、その点は質問中にまた、質問の末尾までにいたしてもいいですが。
#119
○委員長(日笠勝之君) 理事会で協議します。
 ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#120
○委員長(日笠勝之君) 速記を始めてください。
#121
○小川敏夫君 では次に、署名の点は別にしまして、強制退去で行政処分で済ますか刑事手続に移行する、告発するかということについては、やはりその入国目的ということが、過去の前歴もあるでしょうけれども、入国目的ということも相当大きな要素だと思うんですが、観光目的ということですが、その観光目的が事実であるかどうか、これについて調査はしたんでしょうか。
#122
○政府参考人(中尾巧君) 観光目的につきましては、私どもの手続のできる限りの範囲内で、その辺のところの目的がどうであったかということの調査はしております。
#123
○小川敏夫君 新聞報道によりますと、ディズニーランドに行くつもりだったということですが、滞在日数が予定日数が七日間ですから、幾ら興味があっても七日間ディズニーランドということはないでしょうし、そこら辺本当に、その本人がディズニーに行く観光目的だからということだけでそれをうのみに信用していいとは私は思わないんですが、一つのポイントとして、ディズニーランドにそれだけずっと行くのであれば、恐らく通常であればディズニーランド周辺のホテルに宿泊するでしょうと思うんですが、この当該人物一行は、国内の滞在先についてはどのように申告していたんでしょうか。
#124
○政府参考人(中尾巧君) 滞在先等につきましては、この場でお答えするのは適当でないと思います。
#125
○小川敏夫君 滞在先について確認はしたんでしょうか。
#126
○政府参考人(中尾巧君) その点につきましても、調査の内容、方法等にかかわる問題でございますので、お答えするのは差し控えさせていただきたいと存じます。
#127
○小川敏夫君 少し、調査だから答えを差し控えると言ったんじゃ、私どもの議員が持っている国政調査、行政に対してさまざまな事実を知った上での意見を言うこともできないので、やはり基本的には答えていただかなくちゃ困るんですけれども。
 じゃ、具体的にその滞在先について確認したかどうか、これを答えるとどういう弊害があるんですか。
#128
○政府参考人(中尾巧君) これは、その当該滞在先等の営業その他、そちらの立場に配慮せざるを得ないと、私どもはそういうふうに考えておる次第でございます。
#129
○小川敏夫君 それは、要するにホテルということですか。
#130
○政府参考人(中尾巧君) そういうふうに御理解していただいて結構でございます。
#131
○小川敏夫君 そのホテルに実際に予約はあったんでしょうか。
#132
○政府参考人(中尾巧君) この点につきましても、先ほどから申し上げているとおり、その辺は調査の中身でございますし、先ほど来ぜひ御理解いただきたいのは、私どもの方は、これは退去強制手続ということで、刑事司法手続でもありませんし、私どもは捜査官でも捜査官憲でもございません。
 特に、入管法上、参考までに申し上げれば、刑事手続と非常に大きな違いは立証責任が転換されているということでございます。刑事手続の場合は、訴追する側が当該犯罪事実について立証する責任を基本的に持ちますが、この不法入国案件に関しましては、当該容疑のある者が不法入国でないということを主張し、それを立証しない限り不法入国ということで、私どもの認定に服さざるを得ないという形になりまして、立証責任が転換されるということになっております。本人が不法入国事実を認めて、送還を希望すれば速やかな送還を行うというのが入管法の建前でございますので、その範囲内での必要、所要の調査、審査、こういうものを行っていると、こういうことでございます。
#133
○小川敏夫君 私が聞いていないことをいろいろ答えられても困るんですけれども。
 不正入国をした者が全員強制退去にしなくてはいけないというのじゃなくて、強制退去にする例が多いにしても、しかし中には、その事実関係からこれは刑事告発しなければいけないというケースに関しては刑事告発するわけですね。
#134
○政府参考人(中尾巧君) 私どもの通常の取り扱いで申し上げますと、不法入国案件については、できるだけ警察に通報する取り扱いになっておりまして、通報いたしまして、大体その後、告発するかどうかという形の検討に入るのが通常でございます。
 本件につきましても、五月一日に所轄の方に私どもの成田空港支局から必要な通報は済ませておるわけでございます。
#135
○小川敏夫君 私の質問とはちょっと筋が違った答弁をいただいたんですが、要するに私が言っているのは、単に強制退去してしまえばそれで済む事案か、それとも刑事告発をすべき事案かについては、やはりきちんとした調査をした上で対応しなければならないと。
 この件について調査をしたのかどうか、あるいは調査したことから本来なら告発すべきであるのに、そうではなくて異例な取り扱いをしたのか、そうしたさまざまな観点からの疑問を抱いている。これは私個人じゃなくて、多くの人が抱いているわけで、その点を明らかにするために私は質問しておるわけですけれども。
 例えば、これが本来単に強制退去すべきではなくて、刑事告発すべき事案でもあったんだけれども、法務大臣あるいは総理大臣の政治判断でそうしなかったんだというのであれば、それはそれでそうした政治判断の問題ですから、あなた方のことについて事細かにそれ以上聞く必要もないわけですけれども、どうですか、その点は。
#136
○政府参考人(中尾巧君) これは、私どもが取り扱っております従来の処理例と比較いたしましても、告発相当とする事案でないということは言えるのではないかと存じます。
 と申しますのは、従来、告発をしている案件について実務上申し上げれば、昨年告発した案件は不法入国事案を含めまして二十一件ございます。その中で偽造旅券を所持して不法入国案件で告発したのが十六件か七件、ちょっとこれは不正確で申しわけありませんが、そのぐらいでございますが、そのうち五件につきましては麻薬所持に係る案件でございまして、これは先に警察が逮捕いたしまして、その後に告発をしたという形になっております。それ以外の主なものを申し上げますと、いわゆるトラフィッキングと申しまして、不法就労目的で偽造旅券を所持して不法入国をし、かつ、それにまつわるブローカー等が背後にある、こういう事案と、それから日本旅券の偽変造案件でございます。そういったものが重立ったものでございます。
 そういう過去の取り扱い例からいたしますと、本件の場合にはそういうものに当たらないというふうに一応考えられるところでございます。
#137
○小川敏夫君 目的で、不法就労が目的だというけれども、政治活動目的であるとするならもっと犯情が悪いんじゃないですか。あるいは、先ほどの久野理事からの質問の中で雑誌の記事として紹介されましたけれども、武器売買の商談をするためだというようなことであればこれは相当犯情が悪いわけです。
 そうした入国目的という問題も犯情が悪いのではないかということが相当疑われると同時に、過去三回やっていると。これ自体も相当犯情が悪いということを基礎づける資料だと思いますし、四回も来るので、短期間にそんな四回も来るのであれば、観光目的ということについてもこれはやはり疑問を抱かざるを得ないというような事情があると思うんです。
 そういった事情がありながら、そういったことについて調査を遂げないで、全く単なる一回限りぽっと来た不正入国者と同じ扱いはできないと思うんですが、どうですか、その点は。
#138
○政府参考人(中尾巧君) まず、偽造旅券上三回の出入国歴があるというそういう案件につきましては、従来でもほとんどのケース、退去強制手続に乗せており、告発するということはほとんどないのが従来の取り扱い例でございます。
 目的の点で申し上げれば、議員がおっしゃったような政治目的とか武器の売買というようなことが私どもでわかっておればまた別の話でございますけれども、その点については、そういう目的とは私どもの方は断定できなかった、そういう目的であったというふうには判断していないわけでありまして、先ほど来申し上げているようないろいろな事情と従来の取り扱い例に比して告発相当というところまでの判断に至っていないわけでございます。
#139
○小川敏夫君 この件について法務大臣に指揮を仰いだ、あるいは秘書官を通じて総理大臣にということですが、では、それに対してどのような指揮が総理大臣あるいは法務大臣からあったんでしょうか。
#140
○政府参考人(中尾巧君) まず、五月一日に御報告した折の状況から申し上げますと、法務大臣の方から適正にやりなさいということでございますし、総理の方からも秘書官を通じまして、法に従った手続にのっとって手続を進めてもらえばいいという当座のことでございまして、その翌日以降は、また調査の経緯等々含めまして大臣等に私どもの方からしかるべく報告をして御判断を仰いだということでございます。
#141
○小川敏夫君 それは、一般の不正入国者と同じような扱いで強制退去にしていいと、こういう意味の指示ですか。
#142
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 手続が始まった段階での御報告でありますので、結論までの御指示はいただいているわけではございません。
#143
○小川敏夫君 この件を特にそうした法務大臣、総理大臣に報告したということは、当該人物が金正男と思われるという情報が入ったということですが、では、その当該人物が金正男であると思われるということについて、特にそれ以上の調査もしなくていい、普通の一般人の不正入国と同じように扱った取り扱いをしろと、このような指示だったんでしょうか。
#144
○政府参考人(中尾巧君) 事件発生の翌日の五月二日に、内閣官房の方の招集で関係当局の関係者が集まっての会議が二日の午後二時ごろとその夜と二回にわたってありました。そのときの協議の経過を踏まえて、最終的に私どもの大臣にも報告をいたしましたし、その経緯等については総理官邸の方から総理の方に連絡が行っておるものと承知しております。
 したがいまして、委員御質問の関係につきましては、そういう関係当局間の協議を踏まえて、私どもの方で退去強制手続を進めるという方針が確認されまして、それに従って外務省の方で送還先との外交チャネルを通じての調整が始まり、そういった状況を私どもの大臣に御報告をいたしまして、退去強制手続を最終的に進めて中国への送還の準備を始めたと、こういうことでございます。そういうことで御指示をいただいて、その後の手続を進めたと、こういうことでございます。
#145
○小川敏夫君 この退去のために使った全日空機ですけれども、この運賃はどこが負担したんですか。
#146
○政府参考人(中尾巧君) 本人、四人ともこれは自費出国でございます。本人らが所持した航空券を使って中国に送還になったと、こういうことでございます。
#147
○小川敏夫君 その四人を送還する飛行機は二階席を四人だけにして、他の旅客をその二階席には上げなかったというふうに言われているんですが、その点はどうですか。
#148
○政府参考人(中尾巧君) その点につきましては、私どもの方は関与しておりませんのでお答えする立場ではございませんけれども、私どもの知る限りでは、外務省の方でしかるべく手配をしていただいたと承知しております。
#149
○小川敏夫君 それから、その飛行機に政府の役人といいますか、政府の関係者が同乗したというふうに言われていますが、その点はどうですか。
#150
○政府参考人(中尾巧君) 私どもは、三名の入国警備官が職務上同乗いたしました。あと政府の関係者ということで外務省の方が三名同乗したことは承知しておりますけれども、それ以上の詳細は存じ上げません。
#151
○小川敏夫君 三名の警備官が同乗したというと、普通の一般の強制退去を普通にやっただけだというのとはとても違う事情だと思うんですが、それはどういう事情からですか。
#152
○政府参考人(中尾巧君) この件はマスコミで取り上げて、非常な一種のフィーバーということになりまして、最終的に入国管理官は送還を確認するという、送還の終了を確認する送還業務を持っておりますので、通常のそういうトラブル、混乱等が発生するおそれのない場合には入国警備官は同乗することはなく、全く過去に例がないというわけではございません。いろんな関係で必要な場合には入国警備官が同乗して送還先まで同行するということをやっております。
 これは、受け入れ国の方が気が変わって、じゃ帰っていただきたいというときには連れて帰らないけませんので、そういうことも含めまして、確実な送還を完了するためには、その必要性のある案件につきましては、その時点で入国警備官を同行させて送還業務に当たらせるのが通常でございます。
#153
○小川敏夫君 どうも金正男と思われるという人物で言葉を押し通していますけれども、やはり金正男なんだと、そして特別な扱いをしたんだというふうに思えてならないんですが、押し問答してもしようがありませんので。
 最後に一つ。そうすると、不正入国した際に、当然本人の顔写真は撮り、一般の扱いと同じようにすべて指紋はとったわけですね。
#154
○政府参考人(中尾巧君) 法令に基づいて、写真、指紋両方とっております。
#155
○小川敏夫君 その採取した指紋等から今後追跡調査すればいずれ金正男氏本人かどうかわかると思うんですが、そういった調査は入管当局、法務当局としてはやる立場じゃないからもうやらないと、こういうことですか。
#156
○政府参考人(中尾巧君) 入国管理局といたしましては、それ以上の調査をやる法的な権限もございませんし、法的根拠もございませんので、一応完了しておりますので、その間の事務は終了しております。他の関係機関がどのようにおやりになるかどうかは私どもの承知するところではございません。
#157
○小川敏夫君 大分時間を費やしてしまいましたが、どうもすっきりとした納得できる状況が解明されたとはとても思えませんが、ぜひ出入国カードの署名を対比した上で、また事実関係をさらに詳細に質問、質疑等をしたいと思います。
 警察庁の方にお尋ねしますけれども、警察改革、昨年初めごろを中心として大変大きな警察不祥事が頻発したと。そういうことも踏まえて警察改革を行うということが実際に約束され、実施されていると思うんですが、その状況について御報告いただけますでしょうか。
#158
○政府参考人(吉村博人君) お答えを申し上げます。
 御承知のとおり、昨年の七月に、警察刷新会議から国家公安委員会あてに緊急提言が出されました。国家公安委員会と警察庁ではそれを重く受けとめまして、国民からの厳しい批判を反省、教訓といたしまして、昨年の八月に、警察が当面取り組むべき施策を警察改革要綱として取りまとめたところは御承知のとおりかと思います。
 この改革施策につきましては、法律改正を要するもの、あるいは予算措置を必要とするもの、組織改正などを要するもの等に分けられるわけでありますが、このうちの法律事項につきましては、公安委員会の管理機能の強化等を図るための改正といたしまして、さきの臨時国会で警察法の一部を改正する法律が成立をいたしました。監察の指示等に係る規定は既に三月一日に施行になっておりますし、また警察署協議会あるいは苦情処理の規定はこの六月一日に施行予定でございまして、現在、その諸準備を行っているところでございます。また、法律事項以外のものにつきましても、監察体制あるいは公安委員会の補佐体制の整備も行われたところでございます。
 以上のように、改革に向けましていろいろな施策を一つ一つ推進しているところでございます。
 警察庁といたしましては、改正警察法の施行に万全を尽くすことはもとよりでございますが、警察改革要綱に盛り込まれました各種の改革施策を積極的に推進いたしまして、今後とも新たな治安情勢に対応した警察改革に積極的に取り組んでいくことによりまして国民の信頼回復に努めてまいりたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
#159
○小川敏夫君 私どもの方からぜひよろしくお願いしますと逆にお願いして、国民の信頼をぜひ高めていただきたいと思います。
 通信傍受の実施状況について、この春に、その春の段階では一度も実施していなかったという報告を国会あてにいただいておりますけれども、昨年十一月の法務委員会で、私がその時点で実施状況を尋ねたところ、捜査上の支障があるということで御回答いただけなかったということがありました。しかし、実施例がゼロということでありますと、捜査上の支障なんか全くなかったのに、そのときは答弁いただかなかったということになるので、大変心外に思っているんですが、その点、振り返って、ちょうど刑事局長同じ方ですので、御説明いただきたいんですが。
#160
○政府参考人(五十嵐忠行君) ただいまお話ありましたように、昨年の十一月二日の参議院法務委員会におきまして、先生からの御質問に対しまして、私の方から、この法制度が対象としている犯罪は組織的かつ密行的に敢行されるものであり、捜査についてもひそかに行う必要がありますと。したがいまして、八月十五日の施行後間もないことや、お尋ねの都度、実施状況を説明した場合に、現在内々に捜査中の事案について傍受が実施されているのではないかといった捜査実態を犯罪者に推測されて内偵捜査の妨げとなるなど、捜査活動への影響少なからざるところがありますことから答弁を差し控えさせていただくことに御理解いただきたいということと、なお傍受の実施状況につきましては、法で定められた国会報告において御報告をさせていただきたいと思いますと。こういった内容の答弁をいたしたところでございます。
 国会報告につきましては、二月十六日に国会報告をいたしておりますが、今、先生の方から、昨年中の実施例がなかったんだから、当時その旨答弁しても捜査上支障なかったのではないかという趣旨の御質問だと思いますけれども、結局、実施していない場合に、実施していないということを答弁すると、要するに実施の有無について、していないときにはしていないと言ってしまった場合、実際にしているときに、捜査上の支障が生じているという場合に、実施しているということはこれは当然言えないわけでありまして、そのときにほかの言い方があるかということなんですね。
 実際、実施していないときにしていないと言ってしまうと、実施しているときにしていないとは言えないし、しているとも言えないし、じゃどうするんだといった場合に、それは言えません、答弁は差し控えさせていただきますということにならざるを得ないと思うんですけれども。それはどういうことかというと、それは実施していますよと言ったのと同じ結果になってしまう。
 そういうことを考えまして、通信傍受の実施の有無については捜査上の支障があるので答弁を差し控えさせていただきたい、こういった旨の答弁をいたしたところでございます。
#161
○小川敏夫君 今ここに議事録があるわけじゃないから言葉じりをとらえてもしようがないけれども、私は質問したとき、その時点で実施しているかどうかという現在進行形のことを聞いたのではなくて、実施例はあるかと聞いたわけですから、いわば過去のことを聞いたわけでして、具体的に捜査中のことがあればそれは確かに捜査に差し支えるから答弁しなくてもと思うけれども、ないのであれば具体的な捜査の支障がなかったので、そうすると、どうも具体的な捜査の支障がないのに、ただ捜査という名前を挙げれば国会の答弁が何でも拒否できるというのではこれは余りにもひどい話なので、やはり具体的な捜査に支障がないのに、そういう一般的なという話で答弁をしていただかなかったというのであることがわかったので、これは大変ゆゆしき国会軽視だというふうに思っております。
 そういった点を踏まえて、十一月の時点に戻って答弁しろと言うわけにはいきませんから、今後そういうことがないように誠実に国会の質疑には対応していただきたいということを申し述べて、また委員長にもそのように要望いたしまして、その点の質問は終わります。
 最高裁の方にお尋ねするんですが、最近、東京地裁のベテランの裁判官が自殺したというような事件もありました。これは自殺ですから、余りプライベートなことに関しては私も一切干渉する気はないんですが、場合によって、例えば裁判官の職務が激務で、いわゆる過労自殺だとかあるいは職務の重圧だとか、そういったことがあればこれはやはり裁判所の職務の執務体制として問題だと思うんですが、プライバシーに触れない範囲でそのような問題点があったのかどうか、最高裁のわかっている範囲でお聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。
#162
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 三月の初めに東京地裁の商事部の裁判長が水死体で発見されまして、自殺と警察では判断したというふうに聞いております。その原因ということでございますが、裁判所としては、その原因について判断はしかねているところでございます。
 この裁判官が裁判長を務めておりました民事八部という商事部ですが、ここは私も前におりましたので承知しておりますけれども、社会の耳目を引く事件が多くて、心労の多いところではございますが、裁判官の増員もいたしまして、そういう事件の状況が直ちにその原因に結びつくものかどうかという気がいたしております。その直前までは非常に平常な勤務を続けておられた、職場の周囲の人たちも特段変わった点には気がつかなかったというふうに述べておられます。プライベートの面での原因というふうなことについては、裁判所としては判断ができないところでございます。
#163
○小川敏夫君 本当に裁判官が持っている職務、これは大変に国民のため、あるいは社会のため、非常に重要な職責を担っているわけでございます。今で言えば、ハンセン病の問題も、熊本地裁の判決によって政府が賠償に動いたということも考えれば、司法の持っている意味、これは本当に重要でありますから、その点を担う裁判官についてもやはり厳正公正な裁判をしていただかなくてはならないと思うわけですが、その一方で、裁判官も一人の人間として健全な精神や肉体が損なわれるような、そうした執務環境にあってはこれは決してならないと思うんです。
 これを結びつけることは関係ないと思うんですが、高裁判事による児童買春事件と、これも一体どういうことかと、怒りよりも何か悲しくなってしまうような事件もあるわけですけれども、これは結びつけることはないと思うんですが、裁判官の執務体制というもの、仮に裁判官が一人の人間として自由な時間がとれないほど忙しいとなればどんどん積極的に増員を求めるなり、そうした執務体制を築くことが必要だと思います。
 一人一人の裁判官がそうした意味で心身ともに健全でなければ、いい裁判、公正な判決というものはできないわけですから、ぜひ最高裁においても、裁判官が一人一人の人間であるということを踏まえた健全な執務体制をとれるような体制を当然とっていただけると思いますので、答弁は要りませんが、ぜひまた鋭意努力していただきたいという希望を述べさせていただきます。
 司法制度改革審議会について若干御意見を賜りたいと思います。
 この司法制度改革審議会というものが発足したその法律の審議も踏まえて、私、個人的な感想を言わせていただければ、当初余り期待していなかったんですけれども、どうせ政府寄りというか、現状をそんなに変更するような案は出てこないのではないかと個人的な予想をしておったんですが、実際に中間報告とか、あるいは近々出そうな意見の原案等を見ますと、私が当初予想していた以上に非常にいい改革案が出るというふうに私は思っております。
 私が非常にいい改革案が出るんだというふうに思っているくらいですから、逆に法務当局や最高裁の方は、これはやり過ぎじゃないかというぐらいに思っているんじゃないかと私は個人的に思っているわけですが、そうした点から、基本的に法務省、最高裁に、この改革審議会の意見についてそれを実現するように向けて最大限に尊重していただきたいと、当然尊重していただけると思うんですが、その点についての考えをここで法務大臣と最高裁、それぞれに御披瀝いただければと思います。
#164
○国務大臣(森山眞弓君) 委員おっしゃいますように、今、中間報告の段階で、間もなくあと一月ぐらいで最終段階になるわけでございますが、その中間報告の内容を拝見いたしましても、相当思い切った改革案がいろいろと提言されているように私も思います。
 法務当局はむしろやり過ぎだと思っているのではないかとおっしゃったわけでございますが、そういうことはございませんで、現に司法制度の真ん中にいていろいろと壁にぶつかり、何とかしなくてはということを日常感じている私どもでございますので、非常にその問題点を明らかにしていただいて、具体的な現実的な提案をしていただけるという見込みであるのはありがたいことだと期待しているところでございます。
 したがいまして、最終意見が出てまいりましたときには十分にこれを尊重して、その実現に全力を挙げてまいりたいと考えております。
#165
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 司法制度改革審議会は、ただいま最終意見の内閣への提出を目指して審議中であるというふうに承知しておりますが、審議会は国民各層から選ばれた委員が我が国の司法制度全般について利用者である国民の立場に立って二年間調査審議をしてこられたということでございまして、裁判所といたしましても資料を提供いたしましたり、その求めに応じて裁判を運営する立場からいろいろ御意見を申し上げるなど、その審議に全面的に協力を申し上げてきたところでございます。
 審議会の最終意見では、我が国の司法制度の全般にわたって大きな改革の方向性が示されるものと考えておりますけれども、裁判所といたしましては審議会の意見を十分に尊重し、二十一世紀にふさわしい司法の実現に向けて努力していくべきものと考えております。
#166
○小川敏夫君 それで、いずれ意見が出された後、その実現に向けて政府の方は取り組んでいただけると思うんですが、その取り組み体制、これはやはり法務省の担当ということではなくて、政府全般にわたることですので、政府直轄、内閣ですか、直轄でその推進体制というものを築いていただけるというふうに漏れ聞いておるんですが、この審議会の意見の推進あるいは実現体制についてどのような予定でいるのか、法務大臣に御説明いただきたいんですが。
#167
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃいますように、この司法制度改革は非常に大きな範囲をカバーしているものでございますし、関係するところが大変大きいものですから、法務省だけでは当然賄い切れないものでございます。したがいまして、政府全体として取り組んでいただくように私どもも期待しておりますし、内閣においてもそのつもりでやっていただけると期待しております。
#168
○小川敏夫君 実際に推進体制ですけれども、これはやはり内閣の直轄で、その推進を進める部局といいますか、組織体を築いて進めることになるんでしょうか。
#169
○国務大臣(森山眞弓君) 今のところ、まだ私、確たることを承知しているわけではございませんのでお返事いたしかねますけれども、そのような意見で協議が行われているということを聞いております。
#170
○小川敏夫君 今回のその審議会がいわゆる法律専門家だけでなくて、国民の各層からということの意見を集約したことがまた非常に前向きな意見が出てきたというふうに私は思っておるんですが、そうした意見を推進するに当たっても、やはり各省庁の方だけでなくて、具体的に言えば、法曹の問題ですと当然、日弁連ということもあります。また、それにとどまらず、司法を利用するという意味で、国民の各層という方もぜひ推進体制のその中に入っていただいて、委員会をつくるのであれば委員の中に、それからそうでなくて、実際の作業を行う部局においてもそうした各界の方に入っていただいて国民的な推進体制を築きたいと思っておるんですが、こうした考えについては大臣にも賛同していただけると思うんですが、いかがでしょうか。
#171
○国務大臣(森山眞弓君) そのようなやり方も非常に貴重な方法だと思いますので、そのことも考慮に入れながら新しい体制をつくっていきたいというふうに思います。
#172
○小川敏夫君 今度の審議会の意見、まだ出されたわけではないんですが、原案等を見てみますと、法改正を必要とするものもありますけれども、法改正をしなくてもできる、あるいは今からでも現行の法制度によっても推進できるというような部分もございます。
 例えば、現制度の司法試験の合格者、これを三年以内に千五百名ぐらいにふやしたらというような提言もされるような状況でございます。これは法改正をしなくてすぐに法務当局あるいは最高裁のお考えもいただいて実行できることだと思うんですが、こうした点について、司法試験合格者の増員ということについて、法務大臣、法務当局はどのようなお考えでしょうか。
#173
○国務大臣(森山眞弓君) 御指摘のとおり、司法制度改革審議会では、現行の司法試験合格者の数を平成十六年には千五百人に増員させるということを目指す方向で審議されていると聞いております。
 司法試験合格者が千五百人程度の増加ということにつきましては、本年三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画の中でも、早急に結論を得て所要の措置をとるようにということになっておりますので、法務省といたしましては、司法制度改革審議会の審議も踏まえまして、司法試験合格者の千五百人の増員に向けて最大限の努力をしてまいりたいと思います。
 現に、平成十三年は一千名程度でございますが、来年は千二百人ぐらい、十六年には千五百人ぐらいと段階的に増加させる方向で検討されて、自民党の司法制度調査会でもそのような提案を検討されているようでございますので、法務省としてもこのような増加ペースが現実的かなというふうに思っております。
#174
○小川敏夫君 司法試験合格者、現制度ですと、増員すると司法修習生の受け入れ体制という問題も出てくるんですが、最高裁の方はその点の準備といいますか、計画はいかがでしょうか。
#175
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 合格者がふえます場合、それに対応して司法修習の受け入れ体制を整備しなければならないわけでございまして、当然これはやってまいる所存でございます。
 司法修習は、御承知のように、司法研修所における集合研修と各地で行っております実務修習とから構成されておりますけれども、これの受け入れをふやすということになりますと、人的な面、物的な面で体制の整備をする、あるいは修習の方法について工夫するということが必要でございまして、そういうことで修習生の増加に柔軟に対応していきたい、こう思っております。
#176
○小川敏夫君 法務大臣にお尋ねいたしますけれども、審議会の意見で、裁判官の任用のあり方あるいは裁判官の給源の多様化とかいうような意見が付される方向と聞いておりますけれども、検察官の任用のあり方、あるいは検察官の今の制度については特に制度をいじくるという意見は盛られないというふうに聞いておるんですけれども、しかしやはり検察官についてもさまざまないい人材を任用する、あるいは検察官の職責を全うしていただく、あるいは独自性を持っていただくというような方向性があってもいいと思うんですが、これからの検察官のあり方等について法務大臣としての考えをお聞かせいただきたいんですが。
#177
○国務大臣(森山眞弓君) 検察官の任用のあり方というのも確かに今までのままでいいというわけではございませんが、現に既にいろいろと工夫をする努力がされておりまして、意欲と適性のある方が検事に、例えば弁護士さんの中から任官されるというようなことは非常に意義があるのではないかということで、そう数は多くございませんけれども、今までにも何人かそのような例がございます。したがいまして、司法制度改革審議会において特別に言及はございませんけれども、そのようなこともこれからさらに進めていくのがよろしいのではないかと私も考えております。
 弁護士さんの中から検察官に入っていただくというようなことになりますと、これからお願いするはずになっております弁護士法の改正などによって弁護士法人化というのが進みますと、もう少し交流がしやすくなるのではないかということも期待されると考えます。
#178
○小川敏夫君 そのほか、人権擁護推進審議会等の質問もする予定でしたが、久野理事の方から先にありまして、重複してもとも思いますので、本日の質問はこの程度で終わらせていただきます。
#179
○委員長(日笠勝之君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十六分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#180
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に内閣法制局第一部長阪田雅裕君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#181
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#182
○委員長(日笠勝之君) 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#183
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。質問をさせていただきます。
 昨日、このハンセン病の問題につきまして、控訴断念ということで大きくメディアに取り上げられたところでございますが、これも追って御質問をさせていただきたいと思っております。司法に関連していろんなことがニュースになってきておりますが、この間、余り大きな扱いになっていなかったが、しかし新聞社によれば朝刊の一面トップにあった「東京高裁判事を逮捕 十四歳少女買春容疑」という、そういう案件がございました。
 ことしの正月明けですか、いわゆる福岡事件というのがあって、次席検事の問題あるいは高等裁判所の判事の態度といいますか、そういうことが大きく問題となったところでございますが、少女買春というともうちょっと信じられないという状況でございますが、まずこの概要につきまして説明をしていただけますか。
#184
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お答えを申し上げます。
 まず、今回の事件は遺憾のきわみというほかないことでございまして、国民の司法に対する信頼を傷つけたということにつきまして深くおわびをしたいと存じます。
 現在の状況でございますが、現時点におきましては、報道によって承知しているという点は別といたしますと、裁判所が直接確認しておる事実関係は、村木判事が児童買春行為によって逮捕、勾留されたという事実にとどまりまして、それ以上の具体的な事実関係については裁判所の方で資料を入手できておりません。現在、捜査中でございますが、捜査の支障にならないようにして、早急に村木判事本人から事情聴取をするなどいたしまして、その調査の結果明らかになった事実関係をもとにできるだけ早く厳正に対処していきたい、こういうふうに考えております。
#185
○魚住裕一郎君 どういう対処方針かというのもお聞きしたいんですが、もちろん、新聞報道等によれば、辞職というんですか、そういうことを弁護士を通じて言っておられるようですし、また訴追のことも考えているというようなことも報道されておりますが、この対処に対する方針はいかがなものでしょうか。
#186
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ただいま調査をしているところでございまして、その結果が出ましたら、本人の処分等につきましては、東京高裁から報告を受けまして、最高裁の裁判官会議で処置を決めていただくということになります。本人から辞表が出たということも報告を受けておりますが、その本人の処分が終わるまではその点は受理されないことになろうかと考えております。
#187
○魚住裕一郎君 今回、十四歳ということで、児童買春、児童ポルノ処罰法違反という形で逮捕されておりますけれども、これは児童虐待防止というか、そういう配慮からももちろん立法されているわけでありますが、これは単にわいせつ行為とかそんなものじゃなくて、児童の人権、少女の人権、これを守るためにこういう児童・少女買春ということを処罰しているわけであるというふうに私は認識をしておりますが、この裁判官の人権意識というのは一体どういうふうになっているのか、国民は本当に怒りを持っているのではないのかなと。
 職務に関して、これは福岡事件の場合は、家族の中で裁判官としての任務とそれから容疑者の夫という立場、何といいますか、情と職務との板挟みで大変苦しんだなということはよくわかるわけでありますけれども、これはサイト系云々というのはいろいろありますけれども、本来人権をしっかり守るという、そういう裁判官。私も司法研修所にいたときに、裁判官になれと、人権を守るのが裁判所なんだと、そういうふうに教官から言われたことがありますけれども、これじゃまるで何をやっているのかなというふうに怒りを覚えるんですね。
 裁判官の人権教育というのはどうなっているんですか、裁判所における。
#188
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) まことに御指摘のとおりで、今回の事件はその児童買春という犯罪行為そのものであるわけでございますから、こういうことをすべきでないということはもう人として当然のことでございまして、裁判官の倫理や人権以前の問題ということは申し上げるまでもないことかと思いますが、人権問題に関する裁判官に対する研修につきましては、これまでも司法研修所でいろいろやっております。
 例えば、被疑者、被告人の身体拘束に関連する令状事務、これに関する共同研究とか、少年事件に関する手続の運用をめぐる諸問題についての共同研究などを実施しておりますが、その過程で当然、人権の問題が出てくるわけでございますし、国際人権規約、それからセクシュアルハラスメント、それから今回の事件にもかかわりますけれども、児童の人権などの人権問題をテーマにした講義なども実施しているところでございます。
#189
○魚住裕一郎君 本当に効果が上がっているのかなというふうに言わざるを得ないんですが、この委員会の中にも江田先生とか小川先生とか裁判官御出身の本当に人権感覚がすぐれた方が多いわけでありますけれども。
 これは要するに、携帯電話云々で出会い系サイト云々と、出会い系サイトという匿名性といいますか、そういうのが特色ですね。だから、隠れたところであれば何でもやるのかと。それは職務上はしっかり人権と言うよと。というようなことになって、もちろん裁判官という以前の、あるいは社会人としての常識かもしれませんけれども、そういうことをもっとしっかり教育していく必要があるのではないか、そんなふうに意見を申し上げたいと思っております。
 法務大臣、新聞を拝見させてもらったらコメントが出ていまして、「けしからん」という言葉だけだったんですけれども、さらにこの事件に対する御感想といいますか、御所見がございましたら、一言お願いをしたいんですが。
#190
○国務大臣(森山眞弓君) 私、児童買春・ポルノ禁止法の立案者の一人でございますので、各党皆さん代表を出していただいて、全党一致で提案し、そして成立させていただいた法律でございます。ですから、格別の関心を持っておりまして、この法律がどのように運用されているか、どのような効果が上がっているかということには人並み以上の多大の関心を持っているわけでございます。大きな新聞の紙面の隅の方にちょっとでもこの法律に違反して逮捕されたという記事がありますと、大抵目にとまるのでございます。
 そのたびに、この法律の成果が上がったことを喜んでいいのか、こういう人がこんなに次々出てくるのは困ったことだというべきなのか、いや、やっぱりもし法律がなければこういうことが放置されてしまったかもしれないのでやっぱり法律はつくってよかったのかと、いつも自問自答をしているのでございますが、この間のこの件に関する新聞記事を見ましたときは、ただ唖然とするといいましょうか、情けないといいましょうか、本当に恥ずかしいという気持ちでいっぱいでございまして、本当に言語道断だというふうに思いました。単にこの人個人の問題ではなくて、司法全体への信頼を著しく失わせる結果に結びつくわけでございまして、本当に遺憾のきわみでございます。
#191
○魚住裕一郎君 これはもう社会人だれでもこんなことをやってはいけないということで、ただ、裁判官だからこそもっと高い人権感覚、倫理感覚というものを持ってもらいたいということで申し上げたところでございます。今、六月半ばを目指して司法制度改革の審議会で一生懸命議論をし、法曹養成ということになると思っておりますが、どうも法曹養成というとロースクールをどうするかとか、そういうことばかり議論の中心になりますが、やはり裁判官にしてもあるいは検察官にしても弁護士にしても、幅広い社会的な知識、素養、また人権感覚をどう磨いていくのか、その資質向上が一番大事ではないかなというふうに思っているところでございますが、法務大臣、この人的な資質向上につきまして何か御所見ございましたらお願いをしたいんですが。
#192
○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革審議会は今一生懸命その最終の審議を詰めていただいているところでございまして、その中にやはり司法関係者の量質ともの向上ということを考えていただいて、いろいろ御提案をしていただく予定でございます。
 数が足りないということはよく、先ほどの御質疑にもございまして、お答えしたのでございますが、現在、非常に国民が使いにくいといいましょうか、もっと使いやすく、さらに身近なものにしていくというためには、司法関係の法曹の数をまずはふやしていただくということが重要でございます。数がふえても質が下がったのでは困りますので、質を下げないで数も増加していくというのは大変難しゅうございますけれども、その養成のプロセスについてもいろんな工夫を今検討していただいておりますので、そのようなコースを通じて、今以上の全人格的な、より社会的な見識のある立派な法曹の方々がたくさん生まれてまいりますように願っているところでございます。
#193
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 さて、ハンセン病についてお尋ねをしたいと思いますが、先般、理事会に法務大臣にお出ましをいただきまして、判決に対して控訴はもう断念をしていただきたい、そういう旨の各党各会派の思いというものを述べさせていただきました。もちろん、法務省あるいは厚生省、もちろん総理大臣の御判断で今回、控訴断念という形になって、私としても非常に高く評価をするところでございます。ただ、先ほども若干出ておりましたが、官房長官のこれは記者会見ですか、別記ということで「本判決の主な法律上の問題点」というような形で二点ほど指摘がされております。
 この読み方といいますか、どう考えたらいいのかなと思っておるんです。今回の判決は、立法行為、特に国会議員につきましてはいわゆるらい予防法ですか、この新法の廃止をしなかった、放置した、少なくとも昭和四十年以降はもう違法、違憲状態だという判断になっているんですね。もちろん、その前にいろいろな事情がある、国際会議もある。少なくとも昭和四十年以降そういう違法状態、国家賠償法に基づく違法状態に入っている。もちろん、立法内容が違憲ですから違憲状態になっていると。そういう論理構成だったと思うんです。
 そうしますと、今、昭和で言えば七十六年ですか。二十五年、四半世紀たった場合でもこのコメントにあるような「本判決は、故意がない国会議員の不作為に対して法的責任を広く認めている。」云々と、三権分立上問題だというような言い方になっているんですが、二十五年、四半世紀でそういうような判断されるのかと。じゃ、一世紀放置したらどうなんですかね。(「三十五年」と呼ぶ者あり)三十五年か、三十五年でもそういうようなコメントを出されるということなんですが、じゃ五十年放置したらどうなんだ、あるいは百年間放置しても三権分立上問題ですよとおっしゃるのか。その辺のメルクマールというのはどういうふうになるんでしょうか。これは法制局、お見えですか。
#194
○政府参考人(阪田雅裕君) 今のお尋ねは、国賠法の適用がいかなる場面でと、具体的にその不法行為として認識されるのはどういう場面であろうかということなのかと思いますので、ちょっと私どもとしては国賠法を所管もしておりませんし、なかなかお答えするというわけにはまいらないので、お許しいただきたいと思うのですが。
#195
○魚住裕一郎君 いや、だからこの判決に対するコメントとして、「本判決は、故意がない国会議員の不作為に対して法的責任を広く認めている。このような判断は、司法がそのチェック機能を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、三権分立の趣旨に反するので、認めることはできない。」というコメントになっているんですね。
 それは「過度に制約する」というふうな表現になっているんだけれども、昭和四十年以降ほっぽらかして、三十五年たっても過度に制約をすることになるよというふうになるわけですから、じゃ百年ではどうですかという質問なんです。
#196
○政府参考人(阪田雅裕君) 今御指摘のコメントは、専ら法的問題については法務省それから厚生労働省を中心に検討されたと思いますし、私どもは特に関与をしておるわけではございませんので、直接それについてコメントすることは差し控えたいと思うのですが、一般論として言いますと、先生御承知のように、最高裁の何度かの判決がございます。
 例えば、名誉毀損について言いますと、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法または不当な目的を持って事実を摘示するとか、あるいは虚偽であることを知りながらその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認め得るような特別の事情があることを国賠法の適用上は必要とするんだというようなのが最高裁の考え方であるというふうに承知しております。
#197
○魚住裕一郎君 そういう立場からすれば、これは踏み出し過ぎだという趣旨ですか、三権分立の趣旨に反すると。でも、そこまで内閣の方で出すのも変だなという気もするんですが、じゃ、今引用のこの最高裁というのは、国会議員が個別の国民の権利に関する法的責任を負うのは、故意に憲法に違反し国民の権利を侵害する場合に限られるというその部分ですか。ちょっと確認ですが。
#198
○政府参考人(阪田雅裕君) たしか昭和六十年の更生保護法の改正を怠ったというものについての判決と、それから平成九年の九月でありましたでしょうか、委員会における発言が個人の名誉を傷つけたといって争われた事件と、二つあろうかと思いますが、どちらもほとんど趣旨は変わらないというふうに承知しております。
#199
○魚住裕一郎君 ちょっと整理で教えてほしいんですが、その今の発言、委員会における発言云々とありましたが、この読み方なんですが、この問題と免責特権とはどういう関係になりますか、憲法五十一条。
#200
○政府参考人(阪田雅裕君) ちょっとまた最高裁の判決内容についてコメントすることも、政府の立場ではどうかというふうに思うんですが、私どもの解釈としましては、免責特権、憲法五十一条は、国賠法等の適用の関係においては主に二項の問題、すなわち国賠法一条二項ですね、個々の公務員に対する国の求償権の問題としてとらまえられるべきなのではないかと。したがって、国賠法の適用そのものは、むしろ国会という機関の特殊な機能といいますか、直接個々の国民と向き合っているわけではないという、そういう特別な活動の形態みたいなもので、一条の適用の範囲というのが普通の公務員の行政執行と同じようには論じられないというような考え方を最高裁はとっておられるんだと思います。
 今御指摘の免責特権との関係は、これは最高裁の判決は直接触れているわけではありませんけれども、多分、国がそうして国賠法に基づいて損害賠償をした後に、個々の公務員、すなわちこの場合は国会議員でありますが、個々の国会議員に対して故意あるいは重大な過失があったとして求償するかどうかという問題であって、そこは五十一条との関係で原則としては求償しないんだ、できないんだというような解釈が妥当なのかなというふうに思っております。いずれにしろ国賠法そのものは法務省の所管でありますので、ちょっと法務省の御意見も聴取していただければありがたいと思うんですが。
#201
○魚住裕一郎君 いや、例えば国会議員が個別の国民に対して権利を侵害することを委員会の質問等で行ったような場合には国の賠償責任はあるんですか。そのときに五十一条はどうなるかという、求償の問題じゃなくて。
#202
○政府参考人(阪田雅裕君) 先ほども申し上げましたように、国会議員の院内の発言等についてその損害賠償責任が問われるというのは、平成九年の判決では、職務とかかわりなく違法または不当な目的を持って事実を摘示しと、これは職務行為ではないということですから、そもそも国賠法が登場する場面がないだろうと思うんです。あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、これは職務行為として行うということは当然あり得る、その場合には国賠法の適用があるということを判決は述べているわけですが、こういった場合など、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解すると。
 これはなぜこのように理解をしているかというのは、先生も御指摘の憲法五十一条との関係でこのように理解をしているのか。もちろん、その前段に五十一条についても言及しておりますから、五十一条の趣旨が全く入っていないというふうには私も思いませんが、それよりは、むしろ国会が個々の国民に具体的に行政処分をやったり、あるいは何か強制執行をしたりというような執行をやっていない。要するに、多数国民の意見を代表してここで発言をされ討議をされ、その成果を法律等として制定されるという、そういう機能の特殊性に基づいて、むしろ国賠法の適用範囲というのがそんなに広大にはならないんですということを述べているのかなというふうにも思うわけであります。
 いずれにしてもそれは判決の考え方の問題でありまして、明示はされておりませんので、しかとしたことは申し上げられません。
#203
○魚住裕一郎君 特殊、異例な事案といいますか、故意にあるいは虚偽をもって云々といった場合にはというお話でございますので、その場合には五十一条の適用がないといいますか、その射程外だなというふうに、そんなふうに今答弁を受けとめたところでございますが、なるほど、わかりました。
 次に、国内人権機関といいますか、人権救済機関に関してちょっと質問をさせていただきます。
 近々、人権救済機関に関する人権擁護審議会ですか、この答申というのが出る予定でしょうか。そして、大体その審議経過といいますか、簡略に御説明をお願いいたします。
#204
○政府参考人(吉戒修一君) お答え申し上げます。
 実は、人権擁護推進審議会でございますけれども、あした二十五日の午後に第六十五回の会議を開催する予定でございます。その際に、今、委員御指摘のとおり、人権救済制度の在り方に関する答申、これを採択し確定すると、それで公表する運びになっております。
 この内容そのものは、あしたのことでございまして、事務当局の方から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、内容的には、昨年十一月にこの審議会の中間取りまとめを策定、公表いたしまして、そのことは御説明申し上げたと思いますけれども、その中間取りまとめの基本的な方向性を維持しつつ、残されておる宿題等につきまして詰めたというのがごく大まかな内容でございます。
#205
○魚住裕一郎君 そうなりますと、その中間取りまとめでざっと項目だけ見てみますと、人権侵害態様に応じていろんな救済手法といいますか、措置を練っていただいているというふうに理解をするところでございます。たしかパリ原則でしたか、国内人権機関のあり方に関していろんなことを国連の方で提言されておりますが、政策提言機能といいますか、あるいは人権教育に関する機能、取りまとめでは、最後の一項にそういうふうなものが入っていたと思いますが、今回の答申もそういう扱いになるんでしょうか、その二つの機能は。
#206
○政府参考人(吉戒修一君) 今、委員御指摘のとおり、政策提言機能あるいは人権の啓発・教育に関する所掌事務というものが新しくできる人権救済機関の所掌事務であるということは中間取りまとめに書いてございまして、その線はあしたの答申でも維持されるものというふうに承知しております。
 内容的には、今御紹介がございましたように、パリ原則あるいは国連人権センターのハンドブック等々を踏まえまして、国内人権機構の独立性、中立公正性を持った委員会組織であるべしと、そのためには必要な調査権限あるいは救済手法を備えるべきであるというような内容になろうかと思います。
#207
○魚住裕一郎君 今そこに座っていただいてずっと質問を聞いていただいたと思いますが、先ほどの高裁判事の少女買春、これは人権問題だと私はとらえて質問させていただきましたが、やっぱり裁判官の人権教育ということは非常に大事ではないか。
 あるいは、今、ハンセン病、やはり違憲だと。これはハンセン病で苦しんでいる方の人権を考えた場合に、やはり地裁で御指摘があって、国民の皆様が本当にそのとおりだという思いでこの報道を見てみんな思って、今回、控訴断念となったわけでありますが、人権救済機関、これが本当にがっちり機能していけばもっと早くいろんな手を打てるといいますか、教育にしてもあるいは政策提言、これは人権白書云々という文言もあるようでございますけれども、立法作業も含めてやってくださいねと、国会のけつをたたくといいますか、そういうことも期待されていいのではないかというふうに思うんですが、そういう点はいかがですか。
#208
○政府参考人(吉戒修一君) まず、裁判官に対する人権教育の点でございますが、これは先ほど最高裁の方から御答弁されたとおりでございます。それに加えまして、実は私、人権擁護局長も司法研修所の方に参りまして、年に数回程度、裁判官に対しまして人権について講義をいたしております。そういう形で少しお手伝いをさせていただいております。
 同じようなことは新しい人権救済機関におきましても、国民一般あるいは公務員に対する人権の教育、人権の啓発ということでしょうか、これは所掌事務としてきちんとやっていくものと思います。
 それから、もう一つのハンセン病の判決の関係でございますけれども、今回のらい予防法が憲法違反であって、それについて是正をしなかったことは違法であるというようなことでございますけれども、実は人権救済機関と申しますのは、人権侵害の事件をなるべく早い段階で解決をするという機関でございまして、被害者の方が裁判の方の解決を選択されるというような場面になりますと、ちょっと私どもの力の及ばないところになろうかと思います。
 とりわけ、先生御指摘のとおり、ある法律が違憲であるとか、あるいは立法の不作為があるというような非常に重大な判断は、現にもとてもできませんし、新しい人権救済機関でもそこまでの調査、審理というのは恐らく無理ではなかろうかと思います。
#209
○魚住裕一郎君 多分そういう答弁だろうなとはもちろん思うんですが、それは、ただ法務大臣の諮問に対する答申の中で議論してきたからそうなるんだろうと僕は思うんです。
 だから、僕が言っているのは、人権救済機関というよりも国内人権機関だったらもっと違ってくるのではないか。要するに、人権オンブズマンみたいな形になっていけばいろいろな権能を付与できるのではないか。もっとそういう幅広の、人権のことはとにかくこの機関に行けばいろいろなことが窓口になれるんじゃないか、そういうことを期待しているんですけれども、私は。また、国民もそうなんじゃないだろうか。
 今回のハンセン病の問題にしても、もっとそういう権威のある、とにかく人権機関としても、人を得れば、その人の言葉というのが大変重くて立法作業にも大きく影響を与えると。これが諸外国の例であるようでございますけれども、そういうことを本来期待してしかるべきではないのかな、もっとそっちの方に踏み込むべきじゃないかと。単に、人権擁護局の組織を横滑りで事務局をつくるみたいなそんなちっちゃいのではなくて、もっと独立性を持たせていくべきではないかというふうに私は思っています。
 もう一度、ちょっとその政策提言につきましてコメントをいただけますか。
#210
○政府参考人(吉戒修一君) 審議会におきましては、現在の法務省の人権擁護機関の取り組みが実効性に欠けるところがあるということで、組織なり権限を相当程度拡充した新しい人権救済機関を設置すべきであるというような方向性での御議論ですので、委員の御指摘のような方向で仕事をしていくと思います。
 その際に、政府への政策提言機能あるいは助言機能というものが盛り込まれるものと思いますけれども、いずれにせよ、きょうの段階で余り答申の内容に踏み込みまして申し上げてもどうかと思いますので、明日、答申が出ましたら、これを最大限尊重いたしまして、国民の期待するような人権救済機関というものをつくるために努力してまいりたいというふうに考えております。
#211
○魚住裕一郎君 あしたの答申を楽しみにしておきたいと思っております。
 次に、名誉あるいはプライバシーの侵害に対する民事救済につきまして若干質問をさせていただきます。
 先般、衆議院の方で我が党の冬柴幹事長が質問をさせていただいたことに関連をするんですが、まず平成十三年度予算で四百四十八万九千円、この民事的救済に関する調査研究費というのが入ったと思うんですが、この執行状況をかいつまんで御説明をお願いします。
#212
○政府参考人(山崎潮君) ただいま着実に着手をして進めているというところでございますが、具体的には、世界の損害賠償制度、あるいは金銭賠償以外の救済方法等につきまして研究をするということで、研究の委託をするということで人選を進めているという段階でございます。
 その受けられる方の予定の問題もございますけれども、なるべくことしじゅうには一応の報告をいただきまして、それをもとにまた研究をしていくという段取りで考えております。
#213
○魚住裕一郎君 この間の衆議院の方の議論も、何か慰謝料の相場みたいなのがあって、百万円ルールみたいな、どうしても損害賠償額、さらに高額にしていくべきではないか、そんな趣旨での質問だったというふうに理解をしておりますが、私も全くそのとおりだと思います。裁判所の方の御答弁の中で判例タイムズ千五十五号という引用もございましたけれども、確かにそのコメントの中で、名誉毀損に対する損害賠償額が低調に過ぎると名誉毀損の加害者に不当な利益を得させ、名誉毀損行為を促進する機能を持つことになり、社会的にも不当、違法な結果を誘発しているというような、そういう指摘も見られるところであって、さらにこの額のあり方というものもしっかり見ていかなきゃいけないなと思っております。
 あの質問の中でも、また私も前に取り上げたことがありますが、いわゆる懲罰的損害賠償。あのときの御答弁の中で、やはり民事それから刑事という大きく体系を分けた中でのあり方でなきゃいけないというような御趣旨の答弁だったと思うんです。
 ただ、名誉毀損に苦しんでいる人をどう救済するかという観点からしてみれば、やはりその体系の見直しといいますか、そういうことも考えていく必要があるのではないか。刑事の方を考えてみたら、組織的犯罪等を考えた場合に、不当な利益、利得というか、そういうものを取り上げる、アメリカでいえばRICO法みたいなものもあるわけであって、それはもう民事、刑事両方動員をして犯罪行為を抑えるというような発想だと思うんです。
 民事、刑事、二千年前はいざ知らず、分離してきたというのが歴史の正しい発展かのように見えてしまいますが、ただそれだけにこだわっていても、やはりこの救済というのは得られないのではないか。
 だから、この懲罰的という言葉はどうしても刑事的響きになってしまうけれども、しかしそれではどうしようもできない人権侵害、あるいはマスコミ等によって名誉を毀損されてしまえば社会的に抹殺と同様な行為になってしまう。そんなことを思えば、やはりそこはいわゆる懲罰的損害賠償ということも考えられていけばいいのではないか、そういうふうな方向もぜひ調査研究をしてもらいたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#214
○政府参考人(山崎潮君) 先ほどちょっとお答えした中で、ことしじゅうと申し上げましたが、本年度中というように訂正させていただきたいと思います。
 ただいまの御質問の点についてでございますけれども、確かに私ども、現在我が国の体系は民事と刑事を峻別していると。そういう中にどういう位置づけができるかということ、大変難しい問題ではございますけれども、この研究の成果を踏まえて、どういうような方法があり得るのか。ただいま委員御指摘のようなRICO法、あるいは日本でいえば新麻薬法と俗に言われておりますけれども、そういうような発想と民事と刑事が合体したような発想がございますけれども、そういうものの可能性等についても研究をしてみたいというふうに思っております。
#215
○魚住裕一郎君 質問内容を変えまして、この間の金正男ですか、らしき人間が日本に入り、そしてまた強制送還といいますか出国されたわけでありますけれども、出入国管理体制というか、人的、物的な体制をきっちり整備していかないと、また大変なことになるのではないかというふうに思っておりますが、その辺の取り組みはいかがになっていますか。
#216
○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおりでございまして、私どももその辺のところは十分認識いたしまして、これまでも適正な出入国管理体制の充実をさせるために努力してまいったわけでありますけれども、現状を申し上げますと、入国管理局、全国の職員数は総数で二千五百四十五人であります。このうち、出入国審査や在留審査を行います入国審査官の数は全国で千百九十六人でございます。不法滞在等の摘発等に従事する入国警備官の数は一千十二人という状態でございます。
 こういう状態にありながら、平成十二年には、日本人、外国人の我が国への出入国、帰国者数総数は合計約四千六百万人にも達しておる状態でございますし、いわゆる不法滞在者につきましても依然として約二十六万人という数に達しておるわけでございます。
 当局といたしましても、このような現状を十分踏まえまして、出入国管理体制の強化のために、関係各省庁の御理解を得ながら、人的・物的体制の充実強化に最大限の努力をしていきたいと思っておりますし、そのつもりで頑張っておるところでございます。
#217
○魚住裕一郎君 来年ですか、ワールドカップが開催になります。ヨーロッパでやると何か暴動が起きたり、暴動と言わないのか、フーリガンというんですか、大変な状況が出ているようですが、それも当然予想されるところだろうと思うんです。もちろん、日韓友好、韓日友好、この機にさらに深めていきたいと思っておりますし、成田の飛行場と仁川の飛行場で往復しても大変だと。だから、特別に羽田と金浦のシャトル便まで出した方がいいんじゃないか、そんなことも具体的に提案されているところでありますけれども、そうなると羽田の体制を考えた場合に大変なことになるなというふうに思っております。
 昨年も概算要求のときに、私たちも、警備官にしても審査官にしても人員をさらにしっかりふやしていかなきゃいけないのではないかというふうに申し入れをしてきたわけでございますけれども、法務大臣、この部門の充実といいますか、喫緊の課題になると思うんです、ワールドカップを考えた場合。その辺の御決意といいますか、お聞かせいただきまして、質問を終わります。
#218
○国務大臣(森山眞弓君) 出入国管理体制の充実強化につきましては最近非常に御関心をいただいておりまして、総理も力を入れて拡充強化するようにということをおっしゃっていただいております。
 今、その方向で一生懸命努力しておりますが、どのような具体的な方法になりますか事務的に調整中でございますけれども、魚住先生初め先生方のどうぞ御支援をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
#219
○魚住裕一郎君 わかりました。
#220
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 熊本地裁のハンセン病判決に控訴は行わないという政府の判断がきのう発表されました。熊本判決を聞いて、これでやっと普通の人間に戻れると喜んだのもつかの間、もし控訴されるようなことがあったら、元患者の皆さんは、自分の人生は再びやみに閉ざされてしまう、本当に自分の命をかけて控訴はしないでと訴え続けてきましたが、その原告団とそれを支持する人たちの声が政府に届いたものだと、私もこの控訴はしないという判断を評価するものです。
 法務大臣は、所信表明におきまして、二十一世紀は人権の世紀だというふうにお述べになりました。人権救済を所管する大臣として、それではきのう発表のありましたこの政府声明、「ハンセン病問題について」というところをどういうふうに今後実行していくのかということをお聞きしたいと思います。
 この「ハンセン病問題について」という文書では、「一般社会において極めて厳しい偏見、差別が存在してきた事実を深刻に受け止め、」というふうに書いておりまして、具体的な対応として「名誉回復及び福祉増進のために可能な限りの措置を講じる。」と書いております。そして、「名誉回復のための啓発事業などの施策の実現について早急に検討を進める。」ということも述べているわけですが、大臣はその所管の大臣として、この問題、どのように今後取り組んでいこうと思っていらっしゃいますでしょうか。
#221
○国務大臣(森山眞弓君) この判決は、今、林委員が御指摘のように、ハンセン病問題の重要性を改めて国民一般に明らかにしたという意義が非常に大きいと思います。その控訴を取りやめた後の問題が実際には重要でございまして、今おっしゃいましたように、具体的にはどのようにしたらいいか、これから鋭意具体策は検討するわけでございますけれども、この判決自体が非常に大きな啓蒙的効果があっただろうと思いますし、それに対して政府が、いろいろな問題はあるけれども、それらの問題にもかかわらず、控訴を思いとどまって具体的な名誉回復その他のことをしていくということを決心いたしましたそのことも、多くの方に、この患者さんを初め、それを取り巻くさまざまな人権じゅうりんや差別問題というものがいかに深刻であったかということを知っていただく大きな機会になったと思います。
 これらをもとにいたしまして、一層社会全体の意識を高めていただき、我々も、もし具体的な人権じゅうりんあるいは差別の事態がございましたときには救済できる方途を構築していきたいというふうに考えております。
#222
○林紀子君 確かに、この控訴をしなかったということそのものが、本当に多くの国民に対してひどい実態というのを謝らなければいけないというメッセージを発したというふうに思うわけです。
 そこで、人権擁護局長にもおいでいただいておりますのでお聞きしたいというふうに思います。
 この政府声明は、ハンセン病の施設入所政策がそもそも多くの患者の人権に対する大きな制限、制約となったというふうに言っているわけですけれども、この施設に入所させるという政策というのは、らい予防法、ここから生まれていたわけですね。それで、このらい予防法のために差別、偏見、国民の中に本当に大きく植えつけたのではないかというふうに思うわけです。
 局長も御存じのことと思いますけれども、私も今まで原告の皆さん、元患者の皆さんにいろいろ伺いましたけれども、無らい県運動などということで、その県には一人でもらい病の患者は置いてはならないということで、まさにあぶり出すように、こういう表現が使われておりますけれども、患者を見つけ出して、そして強制収容をした。
 それで、患者の住んでいたところは徹底的に真っ白になるまで消毒をされた。この菌というのはそんなに強力な伝染をするような菌ではないのに、もう見せしめのように徹底的にそういう消毒がされて、患者を療養所に入所させるときには、らい患者移送中というんですか、そういう張り紙というか看板までつくって、そこには一歩も人が近寄れないようにした。そういうのを見たら、だれでも本当にらい病、ハンセン病というのは恐ろしい病気だというふうに思うようになるのは当然だと思うんですね。そういうことをやったのが、まさにこのらい予防法であったというふうに思うわけです。
 きょうのこの控訴せずの吉報を聞いてということで、大谷藤郎元厚生省の医務局長、証言にも立たれたということですけれども、国の誤った長年の政策で受けた屈辱を粉砕し、人権を回復することが急務だ。国の責任が断罪されるといえば抽象的だが、結局は人間一人一人の過ちだ。行政の各部署でもう一度反省してほしい。さらに、約九十年にわたる隔離政策の歴史でだれがなぜ間違ったのかを検証しなければならないというふうにコメントを寄せていらっしゃるわけですけれども、人権擁護局長にお伺いしたいのは、この九十年の隔離政策の歴史で、だれがなぜ誤ったのか。人権擁護の立場から法務省としてこれを検証していって、再びこういうことが起こらないようにする、そういうお考えはありますでしょうか。
#223
○政府参考人(吉戒修一君) お答えを申し上げます。
 ハンセン病に対します非常に根強い偏見、それからそれに基づきます患者本人、それから家族に対します深刻な差別につきましてはまさに委員御指摘のとおりでございます。こういうふうな偏見、差別につきましては、法務省の人権擁護機関におきましてもかねてから非常に重大な人権問題の一つであるというふうな認識をしてきたところでございまして、これまで取り組みといたしましてハンセン病患者や家族に対する偏見や差別を除去するために、関係の機関と連携しながら具体的に啓発活動、これを積極的に推進してきたところでございます。
 ただいま御指摘いただきましたので、また昨日の官房長官の談話もございますし、今後一層関係の機関と協力、連携しながら、ハンセン病患者の方や家族に対します偏見、差別を除去するために、さまざまな機会をとらえましてポスター、リーフレットの作成、配布、その他の積極的な啓発活動を今後展開してまいりたいというふうに考えております。
#224
○林紀子君 そういう意味では、今申し上げました歴史の検証ということもあわせてお願いしたいというふうに思うわけですけれども、私がきのう、このことをお聞きしたいということで、一体人権啓発の予算というのはどのくらいあるのかということをお伺いしたんですが、もう夜も遅くて、なかなか幾ら幾らというのは出していただけなかったんですけれども、法務省の人権啓発予算というのは何千万円の単位にもならないんじゃないかというような印象を受けたわけなんです。
 それははっきり伺わなかったんですけれども、やはり今までやってきたような啓発活動ということだけじゃやっぱりこれは済まないんじゃないかというふうに思うわけですね。ですから、そういう意味では特別にきちんとこの部分で予算をつけるということも考えてほしいと思いますし、人権回復のやっていくそのスケジュールということにつきましても、特に急いでこういう計画も立てていただきたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#225
○政府参考人(吉戒修一君) 実は、先ほど申し上げました人権擁護推進審議会、これが平成九年の五月から二つの諮問につきまして調査審議しておりまして、最初の諮問第一号、これは人権教育・啓発のあり方に関する諮問でございまして、この答申が平成十一年の七月に出ております。この答申を受けまして、平成十二年度の人権啓発予算が約二十五、六億円に大幅に増加したということもございます。
 これを踏まえまして、十三年度予算もまたそれを増額していただいておりますけれども、そういう予算をこれから効率的に使って、委員御指摘のようなハンセン病患者の方、あるいはほかにも人権課題はたくさんございますけれども、世間一般に人権の啓発につきましてさらに充実した事業を展開していきたいと思っております。
#226
○林紀子君 今、局長がお答えくださいました二十五億円から二十六億円あるというのは、それは地方に対して委託という形で事業をしてもらっている、それも含めてなんじゃないかと思うんですね。そして、その地方の方に委託をする金額が二十四億円だというふうにお聞きいたしました。そうしましたら、一億円か二億円はじゃあるのかと、本省の方にということになるのかなというふうに思っておりますが、数千万円よりも多かったということはわかりましたけれども、大部分はやはりそういう意味では地方に委託をしているという形になるんだと思うんです。
 私は、地方でそれぞれどういう人権問題で委託をされているかというのが、十分ではないんですけれども、ちょっと見せていただきましたら、同和問題には一八・五%そのうちのお金が使われている。私も非常に関心のある女性問題では、ぐっと減りまして四・三六%。子供の人権擁護ということでは二・三五%というふうに伺っているわけです。一番多いのがその他人権一般という項目だというふうに伺っているんですね、七二・三%。
 ですから、このその他人権一般というのが何を指すのか、この項目を見せていただいただけではよくわからないんですけれども、ぜひそこの部分も、ハンセン病のこのひどい偏見、差別をなくしていくためにということで大いに活用していただきたい。地方分権ということで、委託事業にしてしまうわけですから、法務省の方からああやれこうやれということを言えるのかどうかということもあるわけですけれども、しかし地方がみずから計画を立ててハンセン病の差別をなくしていくということは非常に大きい意味があると思うんです。
 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、無らい県運動というのは、それこそ地方自治体がみずからの仕事として、一人一人どこの村にどこの町に患者がいるかというのをあぶり出して見つけ出して、そして療養所に送り込んだという歴史があるわけですからね。
 本当に、そこでそういう人たちにまたふるさとに帰ってきてもらいたい。もう高齢の方が多いわけですから、本当にふるさとに帰れるような方がいらっしゃるのかどうかということもありますけれども、もう気持ちとしては村も町も本当に挙げて、こういう判決がきちんと出たんだからぜひ我が町に帰ってきてほしいと、そういうようなことが言えるようになるような、そういう啓発をしていただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
#227
○政府参考人(吉戒修一君) 人権の啓発事業は、委員御指摘のとおり、かなりの部分が地方委託という形でさせていただいております。具体的には、都道府県と政令指定都市に人権の啓発事業を委託いたしております。
 ただ、これは法務省の方から地方に予算をぽっとつけるということではございませんで、各都道府県、それから政令指定都市からあらかじめその年度における啓発事業の事業計画を出させまして、これを法務局、そして法務省の方で査定いたしまして予算をつけていくという形でございますので、十分に私どものコントロールがきくといいましょうか、考えは尽くせるものと思っております。
 したがいまして、今回の判決を契機にいたしまして、私どもも、非常に重大で深刻な人権侵害ではございますし、委員の御指摘のような形で今年度の執行を考えていきたいというふうに思います。
#228
○林紀子君 ぜひそれはお願いしたいと思いますし、人権回復のスケジュールというのもきちんと立てながら、きのうのきょうですから、こういうことが立てられましたということにはもちろんなりませんけれども、急いでそれをやっていただきたいということをお願いしたいと思います。
 そして、再び大臣の方にお願いがあるわけですけれども、人権擁護局では今のような対応をしてくださるということなんですけれども、これは元患者の皆さんの声も十分聞きながら、そういう計画も立てていっていただきたいと思うんですが、大臣には今すぐにでも取り組んでいただきたいし、取り組んでいただけるんじゃないかということも含めて御提案をしたいということがあるんですが、それは、関係閣僚と連名で入園者とその家族の皆さんに対して、この政府の声明ですね、この内容に沿った形でのお手紙を出していただけないかということなんですね。それにももちろん費用はかかりますけれども、一人一人にそのお手紙を出すということはやはり受け取った患者の皆さんは、そうだ、本当にここで人間回復ができたんだということをきちんと受けとめられると思うんです。
 本当は家族の皆さんにも全員に出していただきたいと思うんですが、残念ながら今までの経過を見ましたら、その家族とも音信不通になっていて、先ほど申しましたように、もうとことん恐ろしい病気だということをみんなが、周りの人たちが思って、家族もそこにいられなくなって、散り散りばらばらになって今どこにいるかわからないという、そういう方もたくさんいるということを聞いたわけですから、家族に出せといっても全員出せるかどうかわかりませんが、でも少なくとも、今度の控訴をしないということを聞いて、私もその家族ですということを名乗り出てきた方もいらっしゃるわけですし、そういう方も含めて、関係大臣、関係閣僚とも御相談の上、こういう方策をすぐにでもとっていただけないかということをお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#229
○国務大臣(森山眞弓君) 御提案のようなやり方は相当の効果があると思いますし、なかなかいいアイデアだなと思いますが、おっしゃいますように、関係大臣とも相談いたしまして、連名でやりますかあるいは総理が代表していただくか、具体的な方法につきましてはみんなと相談して決めたいと思います。
#230
○林紀子君 ぜひお願いしたいと思います。
 そして、ちなみに申し上げますと、一九九七年、らい予防法が廃止された翌年なんですけれども、そのときちょうど厚生大臣は小泉さんだったんですね。そのとき、衆議院の予算委員会で我が党の委員が、ぜひ、今のように、らい予防法が廃止されたから小泉大臣に手紙を出してほしいというお願いをしたんですね。そうしましたら、そのとき、「ハンセン病に対する正しい知識の啓発活動、この活動にもより一層努力を続けていきたいと思います。」と当時の小泉厚生大臣はお答えになりまして、手紙はどうですかということに対しては、「今後、この対応によっておこたえしていきたいと思います。」ということで、結局お手紙は出していただけなかったんですけれども、このときお手紙を出していただけたら、もうちょっとまた違った状況にもなっていたかなとも思うわけです。しかし、また一歩、今状況は違って前進をしたわけですから、ぜひ今、森山大臣がお答えいただきましたような形で対応していただけたらというふうに思うわけです。
 そして、もう一つなんですが、今国立の療養所は十三ありますけれども、もう各大臣大変お忙しいのはわかっておりますが、これも関係大臣と御相談いただいた上で、その一つ一つに足を運んでいただいて、やはり今の政府声明の本当に謝罪をするというところも中心に、その場で皆さんにじかにお伝えいただきたい、そういうことも思っているんですが、手紙と一緒にそのことも御相談いただけないでしょうか。
#231
○国務大臣(森山眞弓君) それもできればいいことだろうとは思いますが、実際問題としてどのようなやり方がよろしいか、これもあわせて検討、相談させていただきたいと思います。
#232
○林紀子君 それはぜひよろしくお願いいたします。
 この控訴をしないというのを聞いた原告団の一人が、ハンセン病への偏見を是正するために国を挙げて啓発運動をしてほしい、私たちも小学校や中学校での講演活動などを始めており、差別を受けたことをどう世の中に知らせていくか今後も模索していきたいと、みずからの決意も語っておりますので、本当に原告の皆さん、元患者の皆さんもその意気込みで頑張っていらっしゃいますので、よろしくお願いしたいと思います。
 そして、政府声明にありました「本判決の主な法律上の問題点」というのは私はこれは不必要なものだというふうに思っておりますけれども、原告団の皆さんの願っている真相究明、人権、名誉の回復、再発防止、これをまさに国を挙げて取り組んでいただきたい。そして、これはもう本当に何度も言われているわけですけれども、もう時間がない。皆さん高齢になっておりますので、急いでやってほしいということもあわせてお願いしたいと思います。
 それでは、余り時間がなくなりましたが、次の質問をさせていただきたいと思います。
 民法改正の問題なんですが、衆参の両院に民法改正の野党共同提案というのを行いました。選択的夫婦別姓は、森山大臣、個人的にはというふうにおっしゃりながらも賛成であるというふうに表明をなさっていらっしゃいますので、この民法改正を求める世論というのがますます今チャンスだということで高まっているわけですけれども、法制審答申から五年たちました。
 閣法が出ない中で、野党案を本当に早期に成立させたいという思いで私もいっぱいなわけですけれども、先日、官房長官が法改正に先立って通称使用を運用しやすくするという指示を出したという報道を見ました。これ自体は今の通称使用をしたい、別姓がなかなか進まないからということで否定するものではないんですけれども、しかし政府として行うということは、運用の改善にとどまるんじゃなくて、あくまでも法改正というところに進んでいくべきではないかというふうに思いますが、森山大臣、いかがでしょうか。
#233
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃいますように、これは価値観多様化の時代、その他少子化の時代、民法が今のような形になった時代とは全然様子が変わってまいりましたので、検討して法改正をぜひしたいと私は個人的にそう思っておりますが、しかし法律改正いたしますのには少々時間も手間もかかりますので、もう今にもすぐ不便で大変不利益をこうむっているという方もいらっしゃるということを知って、官房長官ができることから、法律改正しなくてもできる方法からやって少しでも不便をなくしていこうではないかというお気持ちであのような提案をされたんだと思います。
 ですから、それと法改正と別に矛盾するものではないというふうに思っておりますので、現実の必要を満たすためにできることはまずやってみようという姿勢は評価するべきだと思いますし、しかし基本的な解決は法改正ということにあるということもまた真実でありますので、そのような方向に向かって私もできるだけ努力したいと考えております。
#234
○林紀子君 私も、通称使用ということでいろいろな方からいろいろなお話を聞きまして、それがなるべくスムーズにいくようにということで努力はしているんですが、先日、大学の先生から、私立大学で採用する、また大学院設置の際の教員の選任について印鑑証明が必要だということになったと。そのために、大学事務の現場では戸籍名でしか採用できないというふうに言ってきて、もし本当に採用を希望するのならペーパー離婚をしてくれというようなことまで言われたということなんですね。
 しかし、文部科学省の科学研究費の申請にしましても、大学で本人の確認ができればいいということで、今年度からは通称での申請も可能にするというお答えもいただいているわけです。ですから、文部科学省に対しては、採用などにつきましても通称使用の運用の改善を図って各大学に徹底するようにというお願いもしているわけなんです。
 私は、やはりたくさんの方が民法を改正してほしい、選択的別姓をしてほしいということでいろいろファクスなども送ってくださっているんですけれども、その中でこういうことを言ってきてくださった方がいて、なるほどなと思ったんですけれども、今、IT化というのはどこの会社も大変進んでおりますね、IT、ITというかけ声でやっているわけですけれども。そうしますと、データベースが一元化される。今までは各部がばらばらにやっていたので、そこでは通称使用ができたんだけれども、データベースが一元化されて通称と戸籍名の使い分けが逆に大変困難になっているということなんですね。
 データベースの設計者というのは、二つの名前を持った社員なんというのは全然念頭に置いていないわけですね。ですから、結婚で改姓しましたと言ったら、もうそのままその社員はすべて自動的に改姓、姓は変わったものという形で打ち込まれてしまう。もしそれを変えようと、データベースを変えようということになったら、何千万円もの投資が新たに必要だということなんですね。そうなりますと、なかなか通称使用のために何千万円を個々の企業が出すなんということはないわけですね。職場での通称使用を普及させるという方法はもう現実的ではなくなってきているというお便りを寄せていただきました。
 それ以外にも、人事異動、社内の表彰、特許の譲渡契約書、自家用車の車検、昇格試験、それから海外の企業との打ち合わせというのは通称使用はだめだと言うんだそうですね。どうしてかというと、先方は通称そのものが理解できないというんですよね。だから、悪くしたら偽名を使ったなんというふうに言われかねないし、今、アメリカとの間でいろいろな特許の訴訟なんかが起こっておりますけれども、そういう場合に備えた場合には全部戸籍名でなければだめだと。
 だから、女性が本当に職場でいろいろ進出していろいろな分野で活躍しようと思えば思うほど通称使用じゃもうだめだというのがこれで明らかだと思いますので、ぜひ法務省の方としても、大臣としても急いで急いでこの民法改正というのに取り組んでいただきたいということを最後にお願いしたいと思います。
#235
○国務大臣(森山眞弓君) 今おっしゃいましたことは十分私もよくわかります。これは、やはり社会全体の認識も進めていただく必要があるわけで、例えば法律をつくっていこう、あるいは改正していこうという場合には、やはり国民全体の理解が相当程度なければ、受け入れられないということになるのでは意味がないわけですので、社会の皆様、国民全体に理解をしていただくように、その方の努力もしなければいけないと思います。
 選択的夫婦別姓という言葉で今、私ども承知している者の間ではすぐわかるんですけれども、一般の国民の方の中にはまだすべての人が別姓になるのかと誤解していらっしゃる方もあって、それはちょっとというのでためらっている、反対しているという方もないわけではないらしいので、皆さんに実際のところを理解していただく努力もこれから少し続けなければいけないのではないかと思っています。
#236
○橋本敦君 続きまして、私も質問をさせていただきますが、きょう私は被告人、被疑者と弁護人との接見交通権の問題についてお伺いをしたいと思います。
 まず法務省の刑事局長並びに矯正局長に、基本的な認識として、わかりきったことですが、確認的にお伺いいたします。
 この自由交通権あるいは秘密交通権と言われる被告人、被疑者と弁護人との接見交通権は、憲法並びに刑事訴訟法に基づく基本的な被告人、被疑者の権利であり、弁護人の弁護権の核心をなす重要な権利であるという、この認識は変わりませんね。
#237
○政府参考人(古田佑紀君) 委員御指摘のとおり、弁護人との秘密接見交通権は憲法上の弁護人選任権を実質的に保障するための重要な権利であると保障しております。
#238
○橋本敦君 したがって、この権利を不当に侵害することがあっては絶対にならない、これを尊重するという立場は、法務省の行刑行政、弁護人あるいは被告人、被疑者の扱いについても最大限尊重するという姿勢を貫いて行政として行うべきだということは、矯正局長、考え方として当然のことですね。
#239
○政府参考人(鶴田六郎君) そのとおりでございます。
#240
○橋本敦君 ところが、私は看過できない事件が起こっているということで質問するんですが、ことしの二月に仙台の拘置所で、弁護人が接見に参りましたら、その拘置所の接見室に実はミラーが取りつけられていて、そしてそのミラーから様子が監視されるという状況であることがわかり、しかもその後ろで刑務官がビデオの隠し撮りをしていたと、そういう疑惑が生じたということが大きく新聞にも報道され、弁護士会でも問題にいたしました。
 さらに続いて、ことしの五月の段階ですが、多くの新聞は、仙台だけではなくて全国の多くの刑務所や拘置所において接見室にマジックミラーが設置されている、容疑者やあるいは被告人、弁護人の接見が監視をされている、そういう重大な疑惑があるということを多くの新聞が報道いたしました。私は、これは接見交通権とのかかわり、憲法とのかかわりで大問題だと思うんです。
 こういう接見室のマジックミラーというのは、一体全国の施設の中でどれぐらいつくられているんですか。
#241
○政府参考人(鶴田六郎君) 全国で三十九庁でございます。
#242
○橋本敦君 その三十九庁というのは、本所、支所、いろいろありますが、本所及び支所を合わせて今おっしゃった数だというんですけれども、例えば札幌刑務所、函館少年刑務所、府中刑務所、横浜、三重、京都、神戸、広島、長崎、こういった本所があり、支所としてはそのほかに随分全国でたくさんあるわけですが、これはいつごろからやられているんですか。
#243
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 ただいま委員が御指摘になりました三十九のうち、本所と申しますか、本所施設が九施設、あとは残りは支所ということで、これが三十庁ということです。
 これについて、いつごろからマジックミラー、あるいは普通のガラスにマジックミラーのようなフィルムをつけたという、視察窓にそういう設備を施したのは、古いところでは昭和五十年の半ばごろですが、一番新しいところでは昨年までと、その期間にそれぞればらばらという形で設置されているということでございます。
#244
○橋本敦君 昭和五十年ごろから始まったというんですね。
 こういうミラーを設置するということについて弁護士会は全然知らなかったと思うんですが、何の通知もない、これは間違いないですね。
#245
○政府参考人(鶴田六郎君) このいきさつにつきまして申し上げますと、特に接見室の視察窓の構造につきまして、マジックミラーあるいはそのようなたぐいのものを取りつけるということを特に本省の方から指示して全国一律にしたというわけではございません。建物を新築するといったようなときに各施設の判断でやったということでございますので、それぞればらばらになっておりますし、その際、弁護士会と御相談したかどうかというのはちょっと、通知はしたということはないというふうに思います。
#246
○橋本敦君 弁護権、接見交通権に重大なかかわりのある弁護士会に何の通知もしないで、しかも本省の統一的な指導ではなくてばらばらにつくったというんですから、こういう法務行政というのは一体本当に正しいんだろうか。
 そうしたら、聞きますけれども、弁護士会に対して回答を寄せて、全国三十九カ所の設置場所はこれは最近通知をされたんですが、それは間違いありませんね。
#247
○政府参考人(鶴田六郎君) この件につきましては、ことしの三月だと思いますが、日弁連の方からマジックミラーの敷設状況について全国の施設名等々につきまして照会がございましたので、それについては、私の方から正式に日弁連の方に三十九庁の具体的な名前等も含めまして回答したところでございます。
#248
○橋本敦君 だから、その設置している場所についてはもはや秘密でも何でもないということであるわけですが、何の必要があってこういうことをやったんですか、端的に言ってください。なるべく簡潔に、必要性について。
#249
○政府参考人(鶴田六郎君) なかなか一言でちょっと申しにくいものですから……
#250
○橋本敦君 何を意味しているんですか。
#251
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えさせていただきますけれども、全国の拘置所あるいは拘置支所におきましては、私の承知している限り、すべてにつきまして弁護人の接見室については視察窓というものを設けているわけでございます。
 この視察窓というものは、監獄法百二十七条一項ただし書きにおきまして、刑事被告人とかあるいは刑事被疑者と弁護人との間の接見については立ち会いはできないというふうになっておりますけれども、その場合におきましても、同じ条文の二項で、逃走、不法な物品の授受または証拠隠滅その他の事故を防止するための必要な戒護の措置を講ずべしという規定がございます。その規定の関係からそういう視察窓というものをつくったというふうに理解しております。
 具体的にどうしてそういう必要があるのかというと、例えば弁護人の方も、接見が終わった後、退室されるときに職員に連絡なしに退室される方もおられることもありますが、その場合は接見室に被収容者が無戒護の状態でそのままになっていると。そういうことですと、戒護の責任を、またその職責を負っております施設といたしましてはそのまま放置できませんので、例えば接見が長時間に及んだ場合の接見の進行状況を確認するという必要があります。
 それからまた、被収容者の中には精神状態が不安定のために自傷行為等のそういった行為に及ぶ場合もないとは言えませんが、そういったときにはこれを制止する必要がございますので、その動向を視察する必要もあります。
 そのほか、監獄法百二十七条二項で規定しているようなことについても防止する必要がございますので、そういった観点から職員が視察窓から接見内容の、被収容者の動向等を確認しているという実情にありますが、先ほども冒頭に述べましたように、被告人の接見交通権ということは重要な権利であるということを十分承知しておりますので、こういった視察窓からの視察ということに関しましては、必要がある場合に一瞬にして行うというようなことでやっておるということでございます。
#252
○橋本敦君 視察窓の話じゃなくて、マジックミラーまで取りつけている。弁護人は見られていることがわからない、被告人も被疑者も見られていることは意識できない。プライバシーの侵害も甚だしい。甚だしいだけじゃなくて、そういう施設があること自体が自由交通権、秘密交通権を侵害するおそれがあるんですよと。マジックミラーを何でつけるということ、何の回答にもなっていない。
 例えば、あなたが言われたように、自傷行為等のおそれがあると。そんなことが、弁護人との接見の際に自傷行為を行った例が一件でもありますか。私が聞いている限りないですよ。あるかないか言ってください、まず。あるかないか。
#253
○政府参考人(鶴田六郎君) 現時点ではちょっと把握しておりませんが、先ほどの答弁についてちょっと。
 なぜマジックミラーを施設がつくるようになったかということについてお答えしたいと思いますけれども、確かにマジックミラーは職員の側だけしか視認できないと。ですから、弁護士さんの方からはそれがわからないということがあるわけですが、これをなぜ設置したかということになりますと、一瞬とはいえ、やはり視察窓から顔をのぞかせて見るということになりますと、接見中の弁護士さんの方に例えば気が散るようなことで御迷惑をかけるようなことになるというようなことで、その点を配慮したということだというふうに承知しております。
#254
○橋本敦君 見られるよりも秘密に見る方がいいというような、そんな理屈ありますか。プライバシーの侵害甚だしいじゃないですか。そうでしょう。
 しかも自傷行為という事例はない。証拠隠滅だとか物品を渡すなんというのは、あの施設の中でできるわけないじゃないですか。外国の施設と違って、日本の接見室というのは、直接に物品を渡したり交通とかできないようにちゃんとなっていますよ。何の必要もないんだよ。何の必要もない。にもかかわらず、そういうことをやっている。
 しかし、本当に合理的に必要であり法律上の根拠があるなら、設置するところがあり設置しないところがあると、そんなばらつきがあること自体おかしいですよ。
 こういうミラーを設置できるという法律上の根拠ありますか。何条に基づくんですか。
#255
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 直接的な規定はございません。
 ただし、先ほど申し上げました、監獄法と私、申し上げましてちょっと間違えました。監獄法規則の百二十七条二項に一応の根拠を有しているのではないかというふうに考えております。
#256
○橋本敦君 それは根拠になりませんよ、そこに書いてあることはきちっとガードされているんだから。根拠にならない。あなたがおっしゃっている明白な法律上の根拠ないんですよ。
 だから、まさに憲法上の権利にかかわるこの問題について、本当に合理性があり必要性があり法律上の根拠があるんだったら、全国の施設の中で四割足らずのこれだけがつくられてほかにはないというような、そんなおかしなことないですよ。
 全国百八十九施設の中でこういうマジックミラーがあるのは、今あなたが答弁されたようにわずか三十九ですけれどもね、そうでしょう。法律上の根拠をあなた、やるべきですよ。ないんですよ。ないから適当にやっているんですよ。やめるべきですよ、こういうことは。
 だから、日弁連もこの問題を真剣に取り上げて、この問題については全面撤去を要求するという態度を明らかにしておりますし、例えば学者でも、大阪国際大教授の井戸田先生は、弁護士以外の立会人の有無だけではなく、だれにも知られず自由に接見できることが、これが大原則なんだ。内容以外にも、接見の様子も秘密でなければならない、そういう大事なものなんだと。第三者が監視できる構造が問題なんだと。まさに、接見交通権を尊重するという考え方に立てばこういうことなんですよ。
 だから、日弁連は、この問題については重要な問題ということを考えまして、接見室のドアに設置されたマジックミラーを通して行う接見室内の監視は、その監視が戒護上の理由を超えて接見の内容を探知しようとするものであるか否かを接見当事者が把握できず、どういう目的でやっているのか何かよくわからない。事実上、秘密交通権の確保を妨げるおそれがあるから、こういう状況は放置することができない。憲法原則の上に立って、これらの撤去について法務省と、近く申し入れをして話をするという方針を出しているのは当たり前だと思うんです。
 法務大臣、日弁連のこの見解について、私は、当然しっかり受け入れて、こういった秘密に監視ができるマジックミラーなどは当然設置を取りやめるというようにすべきだと思いますが、日弁連との協議を誠実に法務省としてもよく胸襟を開いてやっていただくということを約束していただきたいと思いますが、いかがですか。
#257
○国務大臣(森山眞弓君) 接見室の視察窓、それがマジックミラーのようなものになっているというお話でございますが、接見室はもちろん必要な場所であり、視察窓というものも必要があってつくっているようでございますが、そのマジックミラーになっているというのも、今話を聞きますと、善意から、弁護士さんの目ざわりになってはいけないという気持ちから始まったことのようでございますが、今のような誤解が招かれませんように多くの方の御意見を伺いまして、日弁連の皆様とも意見を交換し、また現場の意見も聞きまして適切に対処したいと存じます。
#258
○橋本敦君 時間が来ましたから、撤去を要求して、質問を終わります。
#259
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 国会の立法不作為が違法であるという判決が出ましたが、私は、きょうはまた別の意味の立法不作為をお聞きしたいと思います。
 私は、国会の中の立法不作為の非常に大きな問題は、やはり民法改正の問題だと思っています。私の周りにもたくさんいますし、手紙もたくさんもらいます。メールももらいます。
 民法改正の集会があったようですね。夫婦別姓を待って二十年たちました。だんだん年になってくるといろいろと問題など出てきて、ああ、もう待てないなと思うようにもなってきました。次の方は薬剤師の方なんですが、職場では上司がかわるたびに言葉を尽くして理解を求めながら旧姓のまま働いてきました。薬剤師として働いております。転職のときは、薬剤師免許を旧姓のままで使用するために、当時の厚生省や保健所に何日もかけてかけ合いました。しかしながら、十五年は余りにも長く、このまま改正されなければ上記のような理解が得られ続けるのかと本当に不安な毎日ですという、非常に長い間待っていると。しかも、多くの女性の方は、妊娠年齢などもありますので、一体どうしようかというふうに思っている方も多いです。
 国会の中でも、野田聖子さんと鶴保庸介さんの結婚で、野田さんも鶴保聖子には余りなりたくない、鶴保庸介さんも野田庸介ではなく鶴保庸介でやりたいと。つまり、二人とも結婚の意思もあり、大事にしているんだけれども、結婚届を出すとどちらか一方が必ず姓を変えなくてはいけないので、結婚の意思もあり、気持ちもあり、幸せになりたいと思っているのに結婚届が出しにくい、出せないという、そういう問題が実際に起きています。
 御存じのとおり、今、国会議員の中には通称使用、あるいは事実婚という形の人たちもどんどんふえておりますし、秘書の方、スタッフの人たちの中にももちろんそういう人たちが出てきております。
 今、二十代、三十代の人たちがそういう悩みを抱えていらっしゃることについて、大臣、どうお考えでしょうか。
#260
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほどにもお話が出ましたように、この民法の規定ができた時代と今はすっかり様子が変わってきておりまして、価値観は多様化いたしますし、家族のあり方も違ってまいりました。ですから、以前のままでそれをどうしてもみんな守っていけというのは余りにも無理があると。今の事例もそのうちの幾つかだと思います。
 やはり、多様な価値観を認めて、それぞれ自分なりの生活を過ごしていくということを尊重していくという今の私どもの考えからしますと、この法律もできるだけ早く見直しをして改正をしていかなければならない重要な課題だと私自身は思っておりますが、先ほども申し上げましたように、やはり国民全体の理解がある程度進んだということを見きわめなければ法改正に着手するというのは難しい面がございますので、近く、たしか九月のころにと聞いておりますが、内閣府でも世論調査をすると。五年ぶりの世論調査をして最近の動向を把握したいと思っているようでございますので、それらの結果も参考にし、また議員の皆さん方の議論も踏まえまして慎重に検討していきたいと思います。
#261
○福島瑞穂君 国民の理解が必要だというのはもちろんそのとおりだと思います。しかし、現に困っている人がいて、幸せになりたい、あるいは本当に困っているという状況が日々日々生じているのに、それを放置することはやはりおかしいのではないかと思います。
 通称使用のことについてこれからちょっとお聞きをしたいと思いますが、例えば大学でも、大学本部の事務局と話してみたのですが、別姓が法律で認められていないので認められない、これは何とか大学の方針ですと言い切られ、ぐうの音も出ませんでした。これが現実でした。がっかりです。
 それから、私は東京都の小学校で教員をしています。この春、結婚をする予定で、学校での旧姓使用について交渉中なのですが、なかなか話がまとまりません。公的には認められないそうなのですが、校長の判断で使用可能という返事が初めに来ました。しかし、前例がない、そういう面倒なことはやめた方がいいと言われ、このまま押されてしまいそうな状態ですという。
 それで、お医者さんなどからも大変たくさんいただきます。今、女医さんが大変ふえておりまして、厚生省の方にお聞きをいたします。結婚をして名前が変わった場合、医師免許などはどうなるのでしょうか。
#262
○政府参考人(中島正治君) ただいまの御質問でございますが、医師免許証につきましては、免許証を所持しておられる方が免許を受けられました本人と同一人物であるということを間違いなく確認できるものである必要があるわけでございます。そういった趣旨を踏まえまして、厚生労働省で管理しております医籍におきましては、現在の戸籍上の記録に基づいた事項を登録して管理をしているわけでございます。
 また、免許証につきましても、円滑で迅速なその確認作業ができるように現行の戸籍上の姓名に基づきまして発行しているところでございまして、現在、旧姓におきます免許証の発行は行っておらないわけでございます。
#263
○福島瑞穂君 では、もう一回重ねて、例えば福島瑞穂がお医者さんをやっていて、結婚して伊集院瑞穂になるとしたら、伊集院瑞穂に医師免許証を書き直さなくちゃいけないんですか。通称使用は可能でしょうか。
#264
○政府参考人(中島正治君) これは、現行制度におきましては、戸籍上の変更があった場合にはそれを届け出ていただく必要がございますが、免許証につきましては、一たん旧姓で免許証が発行されておった場合には、必ずしもそれを変更しなければならないとはなっておりませんで、変更することができるという規定になっております。
#265
○福島瑞穂君 つまり、どの段階で結婚したかによって免許証を書きかえる必要があるかどうかということは生ずると思います。
 次に、別のお医者さんのメールを御紹介します。
 私は女医ですが、それまで十年以上仕事をしていたこともあり、患者さんの混乱を避けるためにも婚姻後旧姓を使用しておりました。最近になり、事務の方から法律上問題に当たると指摘され、診断書、カルテのサイン、表向きの広告などは戸籍名にするよう指導されました。それが嫌なら医師免許証を旧姓に書きかえろとのことです。大学の教育は通称使用で問題ないのですが、診療上はやはり変更するしかないのでしょうかというのがあります。
 ですから、問題は、私が例えば医者をしていて途中で結婚すると医師免許証を書き直さなくちゃいけないという問題もありますし、医師免許証は書きかえなくて済んだ場合でも、あるいは医師免許証を書き直したとしてもカルテや診断書や広告を通称でできるかどうか。現場ではなかなかできなくてとても困っているというのがあります。厚生省管轄のさまざまな免許の問題で、この通称の問題点が出てきています。
 今、企業では、例えば連合女性局が一九九八年に加盟労組を対象にした調査では、認めている範囲にはばらつきがあり、名刺や名札などは八〇%を超えているが、給与明細や振り込み口座までとなると二〇%と低いと。九八年の連合女性局の調査では、旧姓使用を認めていない場合の今後の対応を尋ねている。その結果、最も多かったのは、法律の改正がなければ認めないで、五二%になっています。つまり、法律が改正されない限り、あなたが今までの名前を使うことはできないですよと言っている企業が五二%もあるわけです。
 それで、大臣はもちろんこういうことは実は御存じだと思いますが、戸籍とパスポートが身分証明で使いますが、それが主に戸籍名です。それから、住民票と印鑑証明が連動しているので、印鑑証明は戸籍名ですから、印鑑証明を使う部分は必ず戸籍名になります。ですから、登記簿謄本や、あるいは取締役になるとか、不動産登記簿謄本も含めて全部これは戸籍名でないと、印鑑証明と合わせなくちゃいけないわけですから困るわけです。
 それから、今は銀行などが違う名前、偽名の口座を開設することを嫌いますから、会社で仮に少しでも通称使用ができても振り込み口座は戸籍名とか、生まれたときからの名前と戸籍名の間で、その二つの名前の使い分けでみんな本当に悩むわけです。
 こういう通称使用の本当に具体的な実態でいろんな人が苦労しているということについて、大臣のお考えをお聞かせください。
#266
○国務大臣(森山眞弓君) 今いろいろな例をお話しくださいましたが、私のところにも同様のメールやファクスや手紙が参りまして、私もそういう声を聞いております。
 何とか希望する者が別姓を名乗ることを許される道というものを開きたいというふうに、私個人は強く感じております。
#267
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。そう言っていただくと本当に心強く思います。
 でも、きょう質問通告をしているのでちょっとまた言いますと、裁判官が判決書を通称で書いている例はありますか。
#268
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 裁判官につきましては、戸籍上の氏名以外の通称を判決、決定等に書くということは承知しておりません。
#269
○福島瑞穂君 では、検察官が検面調書を作成する場合に、通称で行っている例はありますか。
#270
○政府参考人(古田佑紀君) そのような例はないと承知しております。
#271
○福島瑞穂君 ですから、例えば検察官などの女性で名前を変えたくない場合は事実婚、結婚届を出さないという形で子供を出産しております。つまり、やっぱり戸籍名、公文書を戸籍名でだめじゃないかとか、まだ例がないということで自分から事実婚で子供を産むという例が検察官などの場合には出ております。それはやっぱり本末転倒ではないかと。事実婚の場合にやはり問題なのは、例えば法定相続人にならないとか、配偶者ビザが取れません。ですから、結婚届を出さないで名前を変えないで頑張ろうといっていても、外国に行く場合は配偶者ビザが取れない。
 さまざまな問題が生じますが、こういう問題について、大臣、いかがでしょうか。
#272
○国務大臣(森山眞弓君) 必ずしも専門的な職業についておられない方でもそのような支障が出てきているということを考えますと、先ほど来申しておりますように、新しい今の時代の生活に合うような法律にできるだけ早く変えなければならないのではないかというふうに思います。
#273
○福島瑞穂君 どうも本当にありがとうございます。
 夫婦別姓選択制を導入した場合に一体何が問題なのかということが実は私はよくわからないんですね。弁護士としては、夫婦同姓で仲の悪いカップルをたくさん見てきたので、夫婦同姓で一体感が持てるとかというのは、もうそれでうまくいくんだったらだれも苦労はしないというふうに思います。あるいは御存じのとおり、国際結婚の場合は、例えば私がトム・クルーズと結婚しますと、ちょっとずうずうしいのですが、すごいずうずうしいんですが、そうすると私、クルーズ・瑞穂でもいいわけですし、福島瑞穂でトム・クルーズと一緒でもいいわけです。現に、国際結婚のカップルは別姓、同姓選べるわけですし、その場合に、あなたは別姓だから、夫と名前が違うから家族が壊れるとか一体感がないというのは物すごく失礼な話ではないかというふうにも思っております。
 森山大臣、具体的に別姓選択制にすると本当に何か問題が生ずるのでしょうか。
#274
○国務大臣(森山眞弓君) いや、夫婦の仲がいいか悪いかということと、それから姓が別姓であるか同姓であるかというのは直接の関係はないと思います。
#275
○福島瑞穂君 私もそのとおりだと思います。
 では、法制審議会が五年間審議をしてくださって、法務大臣に答申が出たのが一九九六年です。法務省はずっと努力をしてくださっていると思いますが、現在、法改正に向けたどのような活動を具体的にしていらっしゃるのか。大臣は、先ほど国民の中の支持を得ることが極めて重要だというふうにお答えになられましたけれども、法務省として、法制審議会で優秀な学者を集めて五年間やって結論を出したわけですから、本当に頑張って当時一九九六年の段階で答申を出しているわけですから、法改正に向けた活動についてよろしくお願いします。
#276
○国務大臣(森山眞弓君) 九六年、つまり平成八年のときに法制審議会の答申が出まして、私も非常に画期的な答申だということで驚いたくらいでございますが、そのとき法務省の担当者は非常に熱心に説明もしてくださいましたし、いろいろな場に出て広報活動もされたわけでございますが、まだ余りにも先進的だったせいでしょうか、一般の国民にはちょっと突然だったこともありまして、理解しがたかったのかもしれないというふうに思いますし、なお答申の内容が非常に多岐にわたっておりました。私個人の感想を申しますと、そのとき法務省の担当者は、それを全部網羅した総合的な改正を一度にやりたいというふうに思っておられたようでございまして、そういう角度から熱心に努力しておられたんです。
 しかし、私は、それぞれの項目、一つ一つみんな大事ではありますけれども、このAは賛成だけれどもBはちょっとと、またCは難しいんじゃないかとか、いろいろ感じ方がそれぞれありまして、全部一遍にというともう非常に難しくなるのではないかとその当時、私、私に説明してくださった法務省の担当者にもそんな感想を言ったことを記憶しておりますが、これは一つ一つそれぞれみんな大事ですから、一つずつやっていった方がいいのではないかなと今、私は思っております。
 選択的夫婦別姓の問題については、先生方も大変御熱心に取り組んでいただいて、議員立法の提案もしていただいたりしておりまして、この問題は少し動きが、今までもずっと続けてやっていただいてきたかなと思いますし、ここへ来ていろいろな方からの御意見も活発に出てまいりましたので、少し順序をつけて少しずつやっていった方が結果的にはうまくいくのではないかなと、これは私の個人的感想ですが、そう思っております。
#277
○福島瑞穂君 議員立法が衆参あわせて御存じ出ておりまして、民主、社民、共産、無所属の一部の方の議員立法が出ております。そして、公明党はずっと十数年前からこの夫婦別姓選択制などについては非常に熱心に賛成の政党です。
 ですから、国会の中でも一体何が障害になっているのか個人的にはわからないと。だって、現に自民党のプリンセスではありませんが、野田聖子さんなども困っていらっしゃるわけですから、具体的にもうみんなが困っている中でなぜ、これから結婚される方もいっぱいいらっしゃるわけですから、一体何が障害になっているんでしょうか。
#278
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、具体的な障害というものがはっきり私にも理解できないんですけれども、与党の中にも、特に自民党の中にもおっしゃったような例がございますし、関係の女性議員は非常に熱心にやっておりますので、できれば野党の先生方が提案していただいた議員立法の案、それも材料にして、皆さんで話し合ってみていただいたら一つの方向が見出せるかもしれないというふうに思っております。
#279
○福島瑞穂君 小泉総理は改革断行内閣というふうに言っていらっしゃいます。聖域なき構造改革なわけですから、だとすれば、結婚のほんのちょっぴりの規制緩和がなぜできないのかというふうにも思っております。改革断行内閣とやりながら、どうして若い人たちの結婚、幸せになろうとするのを邪魔するのか、本当の意味での改革断行内閣なのかという意見も出てきておりますが、いかがでしょうか。
#280
○国務大臣(森山眞弓君) 私は個人的には、何回も申しておりますが、福島委員とほとんど違わない意見を持っております。しかし、大臣として、あるいは内閣提案の法案として提出するということになりますと、自分だけが賛成であるとか自分だけがこうしたいと思うというだけでは十分ではありませんので、いろいろと手順が必要でございますから。
 小泉総理も恐らくいろいろやりたいことがたくさんおありでしょうけれども、総理大臣として手をつけていくとなりますと、それなりの手順やみんなと協議するということも必要だということであろうかと思いますので、改革断行したいという気持ちは大変お強いし、できるところからやっていこうという考えもしっかりと持っていらっしゃいますので、必ず理解していただけると思っております。
#281
○福島瑞穂君 世論調査のことなんですが、世論調査は前と同じくやった方が統計的価値があるというのは実によくわかるのですが、世論調査の質問の立て方でやはりちょっと変えてほしいと思う部分があります。
 例えば、一例を挙げますと、婚外子、両親が結婚届を出さないで生まれてきた子供である婚外子の問題に関して、正式な夫婦となる届け出をしないというふうに、正式な結婚というふうに質問項目で書かれております。正式の結婚と正式でないという言い方そのものは非常に問題があると思いますし、一つの価値観が含まれていると思います。
 質問項目、さっき大臣は、夫婦別姓選択制というのはやはりわかりにくい言葉だと。例えば、別姓も選べると言うと普通の人にはわかりやすいと思うんですが、質問項目の微妙な立て方によって非常に結果が変わってくると思いますし、正式な結婚と正式でない結婚という言い方はもうおかしいと思いますが、いかがでしょうか。
#282
○国務大臣(森山眞弓君) 質問の立て方についてはいろいろと工夫の余地があるかと思いますが、しかし意味が違ってしまうような内容になると前と比べることができませんので、そこはよほど慎重に検討しなければいけないと思います。調査をされる当該機関によくお話ししてお願いしたいと思います。
#283
○福島瑞穂君 きょうは本当に前向きの答弁ありがとうございました。国会も夫婦別姓がみんなの当事者の問題として議論できるようになったことは本当によかったというふうに思っています。
 立法不作為が問題になっているわけですから、私はやっぱりこの立法不作為、犠牲者が出始めていて、もし破談になったらだれが責任とってくれるんだとは言いませんけれども、やはり結婚はしたいんだけれども名前を変えたくないというこの問題を当事者たちが抱えている。もう自分は結婚しないにもかかわらず、そんなのは家族が壊れるとか言うのは余りにもおかしいのではないかというふうに本当に思っています。
 ですから、大臣は極めて前向きなので、法務省とそしてぜひ男性の国会議員が女性の味方で頑張ってくださるようにということを強くお訴えしたいと思います。
 私は、実は十年間他の弁護士と一緒に、国立大学の教授が通称を認めてほしいと。彼女は大学院時代に結婚をして、夫も研究者でした。彼女は名前を変えて、私立大学ではいわゆる旧姓が使えたのですが、国立大学に助教授として入った途端に名前が使えなくなり、職員録もデータベースも講義もシラバスも科研費も、今、科研費は変わっておりますが、そういうものが全部使えなくなりました。十年間裁判をやって、和解で物すごい数の名前を、戸籍名が使える部分、通称が使える部分、通称括弧戸籍名が使える部分、戸籍名括弧通称の部分と全部割り振っていくのに二年ぐらいかかりました。それはもう名前というのはあらゆる局面で使うので、本当にそういう苦労を、ハンセン氏病の方たちとは比べ物にはならないかもしれませんが、具体的に日々名前は使いますから、苦労しているということをぜひ知っていただきたいと思います。
 では、次に司法制度改革の敗訴者負担の問題についてお聞きをしたいと思います。
 今、司法制度改革審議会で議論しておりますが、中の問題で一番私は問題だと思う一つは敗訴者負担の問題です。これは今どういう状況でしょうか。
#284
○政府参考人(房村精一君) 委員おっしゃっております弁護士費用の敗訴者負担制度につきましては、現在、司法制度改革審議会において議論が進められております。
 司法制度改革審議会の中間報告においては、勝訴しても自己の弁護士費用を負担しなければならないために訴訟に踏み切れなかった当事者にとって訴訟が利用しやすいものになるということなどから、基本的に導入する方向で検討されているということで、現在そういう基本的方向を示した上で、中間報告におきましては、敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれがある一定種類の訴訟はその例外とすべきであり、例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取り扱いのあり方等について検討すべきであるとされております。
 なお、現在、最終報告に向けてこの敗訴者負担制度についてもさらに議論が尽くされていると承知しております。
#285
○福島瑞穂君 日本弁護士連合会やさまざまな商議団体、さまざまなNGOは反対の意思を表示しておりますが、反対の意見はどれぐらい来ておりますか。
#286
○政府参考人(房村精一君) 司法制度改革審議会事務局あてにこの敗訴者負担の問題についてさまざまな意見が寄せられている。特に、訴訟を萎縮させるという点から慎重に考えてほしいという種々の意見が寄せられているということは伺っておりますが、具体的な数等についてはちょっと承知しておりません。
#287
○福島瑞穂君 裁判は起こすときは負けるか勝つかわからないわけです。当たり前ですが、絶対に勝つ裁判というのはわからないわけで、そうしますと、例えば弁護士の立場で相談を受けたときに、負けた場合には相手方の弁護士費用も持たなくてはいけませんと言うと、一般の人、普通の人、お金の余裕がなければ、裁判を起こすと自己破産まではいかないかもしれませんが非常に多額の負債を抱え込むということでちゅうちょすると思いますが、いかがですか。
#288
○政府参考人(房村精一君) この敗訴者負担の考え方といたしましては、基本的に訴訟に勝てば自分が払った弁護士費用を相手方に負担してもらえる、逆に、負ければ相手方が払った弁護士費用を自分が負担しなければならないということですので、もちろん負けた場合に相手方の払った弁護士費用を負担しなければいけないということを懸念する場合には訴訟を起こすことにちゅうちょすることになりましょうし、また逆に、自分が払った弁護士費用についても勝訴した場合には相手方に負担してもらう、相手方から取れるということになれば弁護士費用の心配をすることなく訴訟を起こすという方向に働く可能性もあるわけでありまして、そこのところは一概にどちらに、萎縮するのか促進するのかということはある意味では双方の効果があり得るということではないかと思っております。
#289
○福島瑞穂君 いや、裁判を起こすときは勝つか負けるかわからないわけですから、例えば労働事件やセクシュアルハラスメントの裁判などだと、例えば起こす時点で勝つかどうかわからないわけですから、敗訴者負担で痛まないのはお金の心配をしなくてもいい行政か大企業だと思います。
 負けたときにお金の負担があるということが提起を非常に萎縮させるというふうに思いますが、最高裁は以前、林委員が質問したときに、乱訴のおそれがある場合などがあるのでという旨、話をされたと思いますが、乱訴のおそれ、乱訴というのはどういう場合を乱訴とおっしゃるんでしょうか。
#290
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 乱訴の点でございますけれども、意味が一義的に明らかにはなっていないわけでございますが、判例等によりますと、例えば原告の主張する権利または法律関係が事実的、法律的な根拠を欠くものであり、かつ原告がそのことを知りながらあえて訴訟を提起する、そういう場合とか、同じ根拠を欠くにもかかわらず、原告が不法、不当な目的に基づいて訴訟を提起するような場合、あるいは一つの紛争について裁判所の公権的な判断が既に示されているにもかかわらず、不当な目的で訴訟を繰り返し提起して訴訟の蒸し返しをするような場合などのように、実質的に見まして正当な権利行使とは言えないような訴訟提起、これを乱訴と言うというふうに一般に解されているのではないかと思っております。
#291
○福島瑞穂君 不法に、例えば証拠を偽造したり非常な問題がある場合は不法行為として判決を出すときに弁護士費用を、ひどいケースなどの場合は弁護士費用を慰謝料の中、損害賠償請求の中に入れて判決を出すということは現在も可能なわけです。
 今の最高裁の意見ですと、非常に危惧を感ずるのは、例えば私は最高裁で婚外子の差別撤廃の裁判は全部今のところ負けております。もう確定している判決はたくさんあるわけですね。そうしますと、確定した判決があったら、今度、婚外子差別撤廃の裁判を国に対して起こしたら、それは乱訴なんでしょうかと本当に思います。今までさまざまな憲法訴訟でも、負けても負けてもやってきたとか、それで政策形成訴訟を実現してきた面もあります。それは本当にできなくなるのではないかと思います。
 ただ、私は三十一分までなので、その敗訴者負担の問題についてはかようにいろいろ問題があると思います。司法制度改革はうさん臭いと思っておりましたが、うさん臭さの極致がこの敗訴者負担にあらわれているのではないか、やっぱり財界、経済界寄りの司法制度改革という面がこれに出てきているのではないかと思います。もし出される法案の中にこの敗訴者負担が入っているのであれば、国会の中で断固反対し、絶対に成立させないように頑張りたいというふうに思っております。
 きょうは、コーランを焼き捨てた事件と、それからクルド人の難民の問題を聞きたかったんですが、このような人権問題、新聞によりますと、コーランが焼き捨てられた事件でイスラームの人たちが今集結して非常に抗議をしているという事件については、最近、外国人排斥を訴える街頭宣伝活動が繰り返されていたという記事があります。そうだとすると、やはり人権啓発などが非常に必要ではないかと思います。
 時間が来ておりますので、以上で終わります。民法改正は、ぜひ法務省頑張ってください。頑張ります。
#292
○平野貞夫君 参議院の田中眞紀子さんの後の質問というのは非常にやりにくいのでございますが、きょうは、政府のとった措置が非常によかったという問題と非常に悪かったという問題、二つを取り上げてみたいと思います。
 まず、昨日の夕方、ハンセン氏病の判決に対する控訴断念ということが発表されたわけでございますが、私、本当によかったと。そして、森山法務大臣がその間大変御努力されて、また相当苦しまれたと思います。大変だったと思います。高く評価するものでございますが、ゆうべからけさにかけての新聞、テレビ等を見てみますと、何か一つ、私よかったんですけれども、一つひっかかるものがあります。
 それは、総理は極めて異例な判断だったという話だったんです。それから、森山法務大臣も同じような趣旨のコメントを出された。森山法務大臣がそういうコメントを出されるのは私はわかりますよ。けれども、総理が極めて異例な判断だったと言って、何か山崎拓自民党幹事長に言わせれば、超法規的な行為だったと彼は言いましたよね。それから、テレビ、新聞もあれが超法規的な判断だったというトーンで報道しております。
 ああいう問題は、決してそういう感情的なそんな論理で解決できる問題じゃないと思いますし、そんな性格の問題じゃないと思いますが、大臣、あれは超法規的な措置ですか。
#293
○国務大臣(森山眞弓君) ハンセン病の判決につきましては大変先生方にも御心配をおかけいたしてまいりましたが、昨日、小泉総理の御決断によりまして御存じのような結論となりました。
 判決の言い渡し以来、元患者の皆さんのお苦しみを思い、また法務大臣としての職責ということを考え、大変悩んでまいりました私としましてもほっとした気持ちで歓迎しております。
 それで、お尋ねのように、超法規的であったかということでございますが、控訴しなかったことは法令に違反するというわけではございませんので、超法規的措置というのは正確ではないと思います。山崎幹事長のお言葉も、いわば超法規的措置というふうにおっしゃっているようでございまして、判決を正面から否定したとか法律にないことをやったとかというのとは全く違いますので、極めて異例な判断というのが最もふさわしいのではないかというふうに思います。
#294
○平野貞夫君 わかりました。
 私は、小泉総理から、これは当然の措置をやったというふうに言ってほしかったと。これは私の希望です。
 それから、新聞とかテレビの報道によりますと、政府関係者はこの問題の措置について和解のために控訴するという構想があったというふうに何度も何度も報道されたわけでございます。
 先週の木曜日でしたか、日笠委員長の御見識というか、理事会で法務大臣に我々がいろいろお願いをしたときに、終わって後、江田先生と私は、ああ、この法務大臣の姿勢なら断念してくれると僕らはもう直観したんです。そうしたら、次の日あたりから何か政府の方がおかしくなっておったんですが。
 法務省として、和解のための控訴というような構想を持ったことがありますか。あるいはそういうことにかかわったことがございますか。
#295
○国務大臣(森山眞弓君) 大変これは難しい課題でございましたので、どうすればいいかということはみんなが知恵を絞り、ああでもないこうでもないといろんな議論がされました。ですから、その中にはそのような考え方もあったと思います。
#296
○平野貞夫君 森山法務大臣の立場は、人権擁護という立場と、それからやっぱり国の訴訟といういわゆる対立した立場ですし、いや、本当に悩んだと思うんです。
 実は、どうもこれは流れは控訴だぞというような流れになったときに、私は国会の廊下で江田先生と、これは万が一控訴になったら関係者のところへ火炎瓶を投げに行くかと言いましたら、江田さんが、あんたはすぐそういうことを言うから冗談にも言っちゃだめだ、断念はあり得るからよく見てみようとたしなめられたんですが、大臣の今の答弁で、いわゆる法的な判断であったという、超法規ではないということと、それからやっぱりいろいろ悩まれたということはよくわかりました。
 そこで、もう一つ聞きたいのは、政府声明をあした出すというふうに聞いておりますが、その内容には法務省はかかわっていますか。
#297
○国務大臣(森山眞弓君) 政府声明を出すということは総理の発表の中にもございまして、そのようなつもりで今作業が進んでいると思います。当然、法務省もその中で意見を聞かれていると思います。
#298
○平野貞夫君 当然、熊本の地方裁判所の判決の中身の吟味といいますか、あるいは法的議論になる部分の指摘は当然あると思います。それは我々も別に、しちゃいかぬとは言いませんが、ただあの判決の意義というのは、これはやっぱり否定するような政府声明は出してもらいたくない。僕は、立法の不作為行為というものが司法権によってこういうふうな形で問題提起されたことは、これはやっぱり二十一世紀になったという、非常にそういう意味の感動を覚えておりますので、その点は大臣にくれぐれもお願いをしておきます。いかがでございましょうか。
#299
○国務大臣(森山眞弓君) 私はその政府声明というものを今まで余り見たことがないものですから、どのような形になるのかよくわからないのでございますけれども、政府声明とあわせて総理大臣談話というのも公にするというようなことを聞いております。あの御決断をされた総理の真情を吐露された談話が多分出てくるのであろうというふうに思います。
#300
○平野貞夫君 それから、政府声明の効果というのはこれは法的効果はございませんね。今後、いろいろこういう訴訟が起こったときの裁判官の心証に影響はあるかもわかりませんけれども。そういうふうに理解してよろしいですか。
#301
○国務大臣(森山眞弓君) 厳密に言えば、法律ではございませんから法的な効果はないと思いますが、おっしゃるように、いろいろな意味でいろんなところに影響を、参考になっていくだろうと思います。
#302
○平野貞夫君 問題が解決した後、私どうしてこんなしつこいことを言うかといいますと、ちょっと私ごとを申し上げて恐縮でございますが、大臣も御存じのように、「小島の春」という、これは昭和十三年に愛生園の小川正子女医さんが書いたノンフィクションの記録なんでございますが、昭和十五年にこれが映画化されて、夏川静枝さんが主演で、中村メイコさんが子役で出た。私は、小学校一年のときにこの映画を見た記憶があるんです。
 実は、この本はいわばハンセン病患者を収容する話なんです。ですから、患者さんにとってはこれは大変問題の本だと思いますが、批判もありましょうが、それなりにそのときの状況がわかるわけでございます。実は、この本の内容は、小島、いわゆる愛生園に来れば春になる、そのまま暮らしていたら秋あるいは冬だと、こういう意味の本でございまして、この本の半分は土佐の秋という、土佐というのは高知県の秋という、そして後半が小島の春となっておるわけなんです。
 ここのページの中に、私がなぜこのことにこだわるかというと、実は私の生まれた場所のこと、強制収容のプロセスが書いてあるんです。ちょっとそのところを簡単に読ませていただきますと、「十五歳の少年は三崎という西南の海辺の村から、お父さんに連れられて八日の正午に家をでて、夜中の十二時まで歩き通しでやっと中村署に着き、」、これは四万十川のある中村市なんですが、中村署というのは中村警察署です。「その晩は署に泊められた。」と、こういう形で収容されるわけなんです。
 実は、私はこの三崎の生まれで、この判決が起こったときに私は知らされたんですが、私の先祖もそういう病気をしていたと。私の父が明治四十年の終わりごろ医者になるわけですが、それはおじいさんの遺言でハンセン病を治療しろということで明治の終わりごろから開業しまして、死んだのが昭和四十六年ですから、ちょうどらい予防法の中で生きていたわけなんです。
 私は、おやじの辞世の俳句に「往診や 月のこの道 五十年」という俳句がありまして、「月のこの道」という意味がわからないんです。この判決でいろいろ考えてやっとわかったんです。時々、子供のころ聞かされていた話なんですが、要するに収容を手伝ったり、収容されないように抵抗したり、そういう悩みの中にあったようなんですが、余り病状が出ていないハンセン病患者はそれは行きたくないわけですから、そういうところに医者が往診に行くときに夜行ったというんですよ。ですから、「月のこの道」というのはやっぱりハンセン病患者のところへ往診に行くときの話だという、それで五十年暮らしてきた、生きてきたということだと思いますが、これがやはりきのうの判断で月の道でなくなった、太陽の道になったというふうに僕は理解して非常にこだわっているわけなんです。
 実は、私も国会職員として三十三年いまして、そして国会議員として九年いるわけですが、立法の不作為、個人的にもあるいは公人的にも一番その責任を感じなきゃいかぬのがこの私だと個人的に思っておりまして、実にその方たちに相済まなかったということを、きょうは、国会がなかなかそういう話を進めませんものですから、とりあえず個人として、会議録に載るように、まことに申しわけありませんでしたという、ハンセン病患者だった方あるいは御家族の方におわびを申し上げたいと思います。
 この次は、ちょっと政府の措置が非常にまずかった話に移りたいと思いますが、それは例の金正男さんと見られる人物の入国、出国の問題でございます。
 大臣、数日間の事情聴取をした後、国外退去処分を決定されたわけですが、これは大臣の責任で、大臣の判断で決められたと思いますが、小泉総理の判断はこれに入っているでしょうか。
#303
○国務大臣(森山眞弓君) これは御存じのとおり偽造旅券を行使した不法入国事案でございまして、退去強制事由に当たりますので、入管法の規定に従って手続を進めて本人らを中国に向けて送還したものでございます。
 この案件の処理に当たりましては、内閣官房関係者など関係省庁との情報交換及び協議を行いまして、進行中の退去強制手続を進めるという法務省の当面の方針が確認されまして、それを受けて、外務省が外交チャンネルを通じて送還先となる中国側と受け入れの手続、打ち合わせを行い、内閣官房長官もこの方針を了承されたわけでございます。
 私は、この報告を入国管理局から受けまして、法務大臣として当初の方針どおり退去強制手続を進めていくということを最終決定いたしましたが、この方針は官房長官から総理大臣にも報告され、総理大臣も了承されたと承知しております。
#304
○平野貞夫君 総理大臣が了承されたということは、総理大臣の判断というか責任もそこにかぶさる、こういうふうに認識します。
 これは入管局長がいいでしょうか。
 この人物が日本に入国するという事前情報というのはあったんでしょうか。
#305
○政府参考人(中尾巧君) お答えいたします。
 金正男氏と見られる人物が日本に入国するという事前情報があったかというお尋ねでございますけれども、私どもはその事前情報は入手しておりません。
#306
○平野貞夫君 公安調査庁長官、この日、JALの七一二便が成田に到着する直前、公安関係者それから千葉県警の警備担当者、相当の人が空港に異常に集まってきたという報道がありますし、それをまた見た人から聞いたんですが、公安調査庁としては事前の情報は収集されていましたか。
#307
○政府参考人(書上由紀夫君) お答え申し上げます。
 個別の事柄に関する情報の有無、入手の有無等につきましては、これを明らかにいたしますと、私ども公安調査庁の今後の業務の遂行にも支障を及ぼすという面もございますので、従前と同様に答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
#308
○平野貞夫君 大変立派な答弁でございます。それだけ答弁してもらえれば実態はわかります。要するに、知っていたと私は推定いたします。
 きょうあたり、毎日新聞がその特集を組んでやっていますね。ですから、私も党の幹部から余り厳しい質問をするなと言われていますけれども、これはやはり日本の治安、公安の基本だと思いますので取り上げるわけですが、入管局長、偽造旅券を所持していたということでしょう、その方は。そして、過去数回、大臣も三回入国という、その人かどうかはわからぬけれども、その旅券でですね。当然、犯罪の容疑があるという前提で事情聴取が行われなけりゃならぬと思いますが、そういう対応で事情聴取されましたか。
#309
○政府参考人(中尾巧君) 本件、その男性の偽造旅券でありますけれども、これは身分事項欄のページが全ページ差しかえられているものでございます。したがいまして、その差しかえられた時期がいつなのかということが確定、私どもの方ではできませんので、旅券上に過去三回の入出国の証印がありましてもその差しかえられた時期がどこに挟むかということもわかりません。したがいまして、当該旅券を一体だれが所持して入国したものかどうかもはっきり申し上げますと確定、確認できないわけであります。
 そういう前提でございますし、過去にもそういう偽造旅券で退去強制手続をとった案件につきましては、そのあたりのことは私どもの方の退去強制の関係からいたしますと、その辺までの調査は及んでいないと。それだけの余力もないし、捜査官でもございませんので、そういう形で今回の場合にもその限りの確認だけをしておる次第でございます。
#310
○平野貞夫君 わかりました。
 その報道によりますと、大量の円札とドル札を持っていたということですが、これが事実とすれば、当然かの国ですから、それがにせ札か本物かということが非常に重要な問題になると思いますが、そういうチェックはしましたか。
#311
○政府参考人(中尾巧君) 報道では大量の円札とかドル札というお話なんですが、実際のところ金額を申し上げるのは差し控えたいと思うんですが、そんなに大量の円札とかドル札ではないという感じを、私どもといたしましては四人が休暇という旅行目的で我が国に七日間いる場合にふさわしい金額かどうかという観点から申し上げましたら、そんなに極めて多いとかというほどでもないという感じでございましたものですから、特にその辺のところのにせ札かどうかのチェックはしておりません。
#312
○平野貞夫君 チェックしなかったということですね。わかりました。
 それから、きょうの毎日新聞の報道によりますと、五月二日ですか、一日に入国しているわけですから、次の日ですね、田中外務大臣はマスコミに知られないように隠密裏に追っ払え、退去してもらえと。いわゆる、そういう日本に入った事実がないんだというふうにしろという指示を外務省の幹部にしたというふうなことを外務省の幹部が証言したという記事があるんですが、そのことについては法務省は掌握していますか。
#313
○政府参考人(中尾巧君) その辺のところは承知しておりません。
#314
○平野貞夫君 あなた、外務省から出向していると思いますけれども、そういう連絡は全くないわけですね。
#315
○政府参考人(中尾巧君) 私は、前任が金沢地検の検事正でございまして、最近は検事が局長をやっておりますものですから。
#316
○平野貞夫君 わかりました。大変失礼しました。
 公安調査庁の長官、国外退去後、少し報道は減るかと思ったらだんだんだんだんいろんな報道がされておるんですが、訪日の目的が、例えば北朝鮮兵器の輸出や代金の回収であったとか、それから日本の某国会議員と会っていろいろ取引をする約束があったとか、そういうような報道がずっと今月中なされておるんですが、その辺のことについては知っていたか知らないかというやぼな質問はしませんが、そういう報道に基づいて、そういうことがあったかどうかという調査は公安調査庁としてなさっていますか。そういう情報、報道されていますからね。それは無関心じゃあり得ないと思うんですよ、その点は。
#317
○政府参考人(書上由紀夫君) お答え申し上げます。
 この点もまことに恐縮なんでございますが、私どもがどういうことに関心を持ってどういう調査を進めようとしているかということを、先ほどの情報の問題と同様に、今後の私どもの業務の遂行上、支障が生じるということも十分考えられますので、この点についても答弁は差し控えさせていただきたいと思いますので、御理解を賜りたいと思います。
#318
○平野貞夫君 そうすると、こういう報道に、けさの毎日新聞なんかは非常に詳しく追跡しているんですが、関心はあるんですか、ないんですか。
#319
○政府参考人(書上由紀夫君) 関心がないと言えばうそになろうかと思います。
#320
○平野貞夫君 結構でございます。それでもう十分でございます。
 それと、これは答えられるんじゃないかと思うんですが、これは報道でございますが、これは公安関係者の話ということで報道されておるんですが、この人物はシンガポールの前にオーストラリア、その前にも北朝鮮以外の別の国にいたと、要するに世界旅行をしていたと。各国の情報機関はこの人物を追尾しており、泳がせており、日本の入管で拘束された時点でこの人物のウオッチ、金正男と見られる男のウオッチは終わったと。要するに、日本が刑事告発せずに国外退去処分にしたことによって日本には何の情報も入らずに各国だけが貴重な情報を入手したことになるということを公安関係者の話として報道なさっていますが、この報道についてどういう感想をお持ちでございますか。
#321
○政府参考人(書上由紀夫君) 委員が御指摘のような報道がなされていることは重々承知しておりますが、おっしゃったような見方も考えられないではありませんけれども、また別の見方もあり得るのではないかということで、率直に言いまして、果たして世界各国のそういった機関がどういうふうに見ているかという評価の点はちょっと私どもで判断つきかねるわけでございます。
#322
○平野貞夫君 それでは、この金正男と見られる人物じゃなくて、実際の金正男さんという北朝鮮の人物は公安調査庁としてどういうふうに、北朝鮮の中での地位とかあるいは役割をどういうふうに理解されているでしょうか。
#323
○政府参考人(書上由紀夫君) これも委員御案内のとおりでございまして、あのお国は大変わかりにくいお国でございます。
 私どもが一般的に承知しておりますのは、金正男氏という方につきまして、金正日総書記の長男に金正男という人物がいるということ、あるいはこの金正男氏について朝鮮労働党中央委員会組織指導部の幹部であるとか、あるいはIT事業関係の責任者を務めていると。さらには、金正日総書記の将来の後継候補と目されているといった情報が、報道あるいは研究者の著作物等からそういった情報が伝えられているということは十分承知しているのでございますけれども、何せ先ほど言ったようなことでございまして、果たしてこれらが真実なのかどうなのかということについては確たる確認ができないという状況であろうかということでございます。
#324
○平野貞夫君 これで最後にしますが、この種の出来事というのはこれからも何度もあるんじゃないかと思います。過ぎたことをこれ以上批判しませんが、あのような措置ではやはり日本の本当の公安あるいは秩序が保てるかどうかというのは非常に私は疑問だと思っています。それは、大臣もこの問題に当たっていろいろ板挟みになったと思いますが、どうかひとつこれを反省のもとにして、適切な措置だったと言わざるを得ないと思いますが、政府の方は。私は適切な措置じゃなくて最も誤った措置だと思っているんですが、どうかひとつ国益を守るためにも、特に北朝鮮という国、これは健全な国家になってもらいたいのでございますけれども、そうでない面がありますので、公安調査庁長官もしかり、しっかりとひとつ職務に奮闘されんことをお願いして、終わります。
#325
○委員長(日笠勝之君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#326
○委員長(日笠勝之君) 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。森山法務大臣。
#327
○国務大臣(森山眞弓君) 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 クレジットカード、プリペイドカードなど、コンピューター処理のための電磁的記録を不可欠の構成要素とする支払い用カードは広く国民の間に普及し、今日では通貨、有価証券に準ずる社会的機能を有するに至っておりますが、近時、これら支払い用カードの電磁的記録の情報を不正に取得してカードを偽造するなどの犯罪が急増しており、国際的な規模で、また組織的に敢行されることも少なくない現状にあります。
 ところが、現行法上、このような偽造カードの所持やカードの電磁的記録の情報の不正取得などの行為が犯罪化されておらず、この種事犯に対し適切な処罰を行うことが困難な状況にあるほか、その現に果たしている社会的機能の共通性にもかかわらず、適用される条項はカードの種類によって区々であり、その内容も有価証券等に関する罰則との均衡を欠くに至っているなど、これら支払い用カードに対する不正行為に的確に対応できる法整備が必要となっております。
 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するため、刑法を改正し、所要の罰則整備を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、クレジットカードなど、代金または料金の支払い用のカードを構成する電磁的記録を不正に作出し、供用し、譲り渡し、貸し渡し、輸入し、または所持する行為を処罰するものであります。法定刑は、不正作出、供用、譲り渡し、貸し渡し及び輸入については十年以下の懲役または百万円以下の罰金、所持については五年以下の懲役または五十万円以下の罰金としております。
 なお、預貯金の引き出し用のカードを構成する電磁的記録についても、いわゆるデビットカードの普及の実情等にかんがみ、支払い用カードの場合と同様に取り扱うこととしております。
 第二は、支払い用カード電磁的記録の不正作出の用に供する目的で、その電磁的記録の情報を取得し、提供し、または保管する行為及び器械または原料を準備する行為を処罰するものであります。法定刑は、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金としております。
 第三は、国外犯処罰規定を設けるものであります。
 その他、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#328
○委員長(日笠勝之君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト