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2000/10/12 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 選挙制度に関する特別委員会 第5号
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2000/10/12 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 選挙制度に関する特別委員会 第5号

#1
第150回国会 選挙制度に関する特別委員会 第5号
平成十二年十月十二日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十月十一日
    辞任         補欠選任
     亀井 郁夫君     日出 英輔君
     脇  雅史君     長谷川道郎君
     石井 一二君     佐藤 道夫君
 十月十二日
    辞任         補欠選任
     日出 英輔君     岩城 光英君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         倉田 寛之君
    理 事
                小山 孝雄君
                鴻池 祥肇君
                森山  裕君
                森本 晃司君
    委 員
                阿南 一成君
                入澤  肇君
                岩城 光英君
                岩瀬 良三君
                木村  仁君
                斉藤 滋宣君
                鶴保 庸介君
                仲道 俊哉君
                長谷川道郎君
                林  芳正君
                日出 英輔君
                吉村剛太郎君
                若林 正俊君
                弘友 和夫君
                益田 洋介君
                佐藤 道夫君
   国務大臣
       自治大臣     西田  司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        入内島 修君
   参考人
       中央大学法学部
       教授       清水  睦君
       駒澤大学法学部
       教授       前田 英昭君
       京都大学大学院
       法学研究科教授  大石  眞君
       日本大学法学部
       教授       田中 宗孝君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○公職選挙法の一部を改正する法律案(片山虎之
 助君外四名発議)

    ─────────────
#2
○委員長(倉田寛之君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を開会いたします。
 公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人の方々から御意見を承ります。
 午前は、中央大学法学部教授清水睦君及び駒澤大学法学部教授前田英昭君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、参考人の方々からお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、まず清水参考人からお願いいたします。清水参考人。
#3
○参考人(清水睦君) 清水です。
 私は、法案の内容、骨子ということになりますが、それから法案の立法化手続、そのプロセス、扱い方について、二点について意見を述べさせていただきます。
 法案の骨子、第一点は定数の削減の問題であります。それからもう一つは、比例代表制を前提としました拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるという、これが法案の骨子ではないかと思います。
 最初に、定数削減のところについて簡単に意見を申し上げさせていただきます。
 これまで多くの政党は、削減に賛成、前向きの意見を持たれているようです、パーセンテージについては違いはありますけれども。しかし、現状維持を主張する政党とか議員の方もおられるわけです。今回の改正案は、鹿児島県と三重県、この逆転区をなくすという、そういう点は実現するように思われますが、私の意見では反対でございます。
 私は、本来参議院の定員はもっとふやして三百人にすべきであるという意見を持っております。それは、常任委員会がおよそ二十ほどあります。平均しますと一つの常任委員会に十五人の議員は必要であると思われるわけです。参議院の活動にそのくらいは必要なのではないか、余り人数を少なくするというのは飾り物になってしまうおそれがあると思います。少なくとも現状維持ということで踏みとどまるべきではなかろうか、このように思っております。
 それでは、第二点の法案の内容の点での立法化、拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるというその改正論点でございます。
 私は、参議院の比例代表制にはもともと反対でございます。もちろん、今日の国政選挙に政党がかかわるということはこれは避けられないことでありますけれども、衆議院と比較してなるべく政党化、政党のニュアンスを少なくする方がよいというふうに思っております。
 それで、比例代表制は廃止するということで、得票率と議席率をなるべく同じにするということが望ましい。したがって、今では、前に資料に載っているものとちょっと意見が変わっておりますが、三百人の定員を十から十一のブロックに分けて大選挙区でやるのがよいのではないか。そうしますと、政党に所属しない無所属の候補も当選する可能性があると、こういうふうに思います。無所属議員が多くなる、一匹オオカミ的な議員が少なくとも二十人から三十人いるということが参議院の特色を発揮することになるのではないかというふうに思います。
 以上のお断りをした上で、次に、拘束名簿方式から非拘束名簿方式に改正する点についての問題点について意見を述べさせていただきます。
 本改正案の場合は、政党は名簿を作成しますけれども、その名簿に載せられた候補者の順位は定めないということでございます。これはベルギーの下院の選挙制度における場合と異なっております。ベルギーの場合には順位を一応定めております。
 それから第二は、名簿登載者の個人名を自書する。ただし、政党等の名前を書くということも認めておりますが、これは法案の体裁からいきますと、並列的ではなくて個人名を自書するというのが原則となっていると思います。ただし書きで政党名等を書くことも認めるということであります。
 ベルギーの場合においては、政党名を書くということがこれが原則のように思われます。二次的に個人名を書くということが認められる。つまり、有権者が個人名を書いて順位を変えるということが可能であるという、そういうふうに思われます。ルクセンブルクの議会の場合はまさしく並列型でございます。フィンランドの議会の選挙制度を見ますと、個人名だけを書くということになっておりますから、本案の改正点はフィンランド議会の選挙の非拘束名簿方式によく似ているのではないかと思います。
 それから、名簿上の当選順位は得票数の多い順からというふうになっております。個人の得票は政党の得票になるわけでございます。したがって、政党が背後にあって個人を際立たせている、こういう案ではなかろうかと思います。本来、政党が表に立つのがこれが拘束名簿方式であります。それではなぜ個人を際立たせるようなこういう非拘束名簿方式が提案されているかといいますと、その理由とされているものは、政党色が薄まり参議院にふさわしい。有権者は政党より個人への投票を好む、候補者の顔の見える方が有権者にとっては投票の場合に張り合いがある、したがって有権者の選挙への関心が高まるという、そういう意見でございます。三番目が、有権者の選択が広がり、有権者が当選人を決めることになるんだということですが、私はこういうふうな理由については次のように考えるのでございます。
 まず、個人の得票であってもそれは政党の得票になるわけです。個人は政党の枠に入って行動をする。したがって、政党のいわゆる政党色が薄まるということにはならないのではないかということです。そして、有権者は政党よりも個人に投票したがるというそういう点でありますが、それにあやかるといいますか、そういう有権者の動向というふうなものを、悪く言うと利用するというのは、政党のあり方としては本末転倒ではないか。比例代表制というのは本来政党本位のものでありますから、この制度をとる限り、政党と有権者が密着すべきものではなかろうか。個人を際立たせないと政党の得票数がふえないというふうな考え方があるとすれば、それは政党のあり方として疑問に思われるわけでございます。
 それから、個人の得票によって順位を有権者が変更するということは、これは有権者の資質の高いことが条件でありまして、また政党がどんな候補を名簿に載せるかということにもかかわってまいります。
 目下、世間でいろいろ取りざたされているような、スポーツ界の人とかテレビタレントなどが名簿に登場するとすれば、有権者の中にその能力ではなくてムード、情感で票を投ずる、それを政党が自分の政党の票とするという構図になってしまうのではないかと思います。これはやっぱり政党の本来あるべき姿ではないのではないかというふうに思います。
 極言しますと、有権者のそういうムード選挙、そういうものを、政党がそれを利用するというふうなことは政党の本来のあり方ではなかろう、政党は政策を掲げてその支持を訴えるのが筋なのではないか、むしろそうすることこそ一面では政治家が持っている国民の政治意識を高めるという責務にこたえることになるのではないか、政治家はそういうプライドを持つべきではないかと、こういうふうに思うわけでございます。
 以上からしまして、私は、非拘束名簿方式がそのねらいどおりであるとすれば、それは比例代表制を前提とする限り特にそれに異を唱えるものではございませんけれども、日本の状況ではこのような建前どおりのような長所が発揮できるかというと、そうではないのではないかと。
 むしろ、全国区制のときの宮田輝氏のような場合、その他近年スポーツ選手等から名簿に登載される方が出ておりますが、そういう例から見ますと日本では時期尚早ではないか。こういう形にしてしまうと、有権者も政党も、ちょっと言葉は悪いですが、資質が向上しないということになってしまうのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 ですから、拘束名簿方式から非拘束名簿方式に切りかえるということは日本においては時期尚早である。これはいかなる場合においてもすべきではないという考えではございません、時期尚早であると、こういうふうに思うわけでございます。
 次に、最後の法案の立法化手続について、扱い方についてでございます。
 参議院選挙制度改革に関する協議会報告書、平成十二年二月二十五日によりますと、抜本的改革は当面無理だから現行の基本的枠組みを維持して改革すべき余地があるかを検討すべきであると、こういうことでまとまっております。
 もちろん、拘束名簿方式、非拘束名簿方式の長短の指摘はなされておりますが、あの報告書が、その点は当面は動かさないということでありました。ただ、定数是正問題については積極的な発言がありまして、速やかに措置をとるべきであるという、そういうことだったと思います。
 にわかにこういう改正案が浮上したのは、久世公堯金融再生委員長の国務大臣辞任問題にかかわったケースのように思われます。これはマスメディアが共通して指摘している点でございます。
 李下に冠を正さずという言葉がございます。選挙のルールは公正につくられなければなりません。あるルールの改正が一つの立場から非常に不利であるというふうに考える立場があるとすれば、そのルールの改正を主張する立場は反対する立場を説得する、公正であるというならば説得するのに必要な時間というものを考える必要があるのではないか。現在、そういうふうな時間をかけられているというふうには私には判断できないわけであります。
 しかも、拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるということについては、客観的に見て緊急性がございません。緊急性がないにもかかわらず、これを一つの立場からルールの改正を行うということは、言葉はよくない、きついかもしれませんが、フェアではないのではないか、そのように思います。国民の中にも、やはりこれはフェアではないという意見もいろいろあるようでございます。
 したがって、時間をかけてじっくり、この問題は与野党がなるべく一致できるような、そういう方向を見出す努力がなされるべきではなかろうかと思います。
 以上をもちまして、私の意見を終わりたいと思います。失礼いたしました。
#4
○委員長(倉田寛之君) ありがとうございました。
 次に、前田参考人にお願いいたします。前田参考人。
#5
○参考人(前田英昭君) 駒澤大学の前田英昭でございます。
 今回、参議院に提出をされました公職選挙法の改正案について、私の率直な意見を申し上げさせていただきます。
 参議院の選挙制度につきましては、これまで各党の間でいろいろ協議をされ、まだ結論を得るに至っていないと承知しておりましたところ、急遽最近、現行の拘束名簿式比例代表制を非拘束に改める案が浮上してまいりまして、先ごろ参議院に改正案が提出されたところであります。参議院の比例代表制廃止論が多かった最近の動きの中で、比例代表制が廃止されなかったことは、私はまずはほっといたしたところであります。
 衆議院の選挙というものは政権選択ということだと思います。そういう意味から、政党中心になるのは私は当然だと考えておりまして、それに比べて参議院は、衆議院に代表されなかった民意をも国政に反映させることができる比例代表制がいいと私は思っておりました。比例代表制は、御承知のように得票率に議席率を比例させることを目的とした制度でありまして、民意を正確に国政に反映させる、国民の縮図を国会の上につくり上げるという点においては最もすぐれた制度でありまして、これによって参議院を衆議院とは違った組織にし、二院制の妙味を発揮することができるだろうと思います。
 また、比例代表制がよかったのではないか、その結果だと思いますけれども、民意の変化に対して敏感だったということは、参議院の選挙の結果というものがその後の衆議院の選挙の結果を予想させる、つまり衆議院の選挙結果を占う先行指標としての役割を果たしたということに見ることができるわけであります。
 一般に、人の病というものは早期発見そして早期治療ということが必要だと言われております。同じように、制度の欠陥というものが露呈しましたときにはできるだけ早く対応策を私はとるべきだと考えております。
 前々回、前回の参議院選挙におきまして、比例代表名簿の順位をめぐって不祥事件が起こりました。いずれも現職の参議院議員にかかわるものであり、金によって名簿順位が決められたのではないかという疑問が投げかけられたのであります。こういう疑惑が今回の改正法を早期に成立させようとした、その端緒になったというふうに私は伺っております。したがって、今回の改正は、私の見るところでは抜本的な改正ではなくて対症療法的というか、そういった見方をしているということでございます。
 こういう疑問が出てきたとき、早期に対応策を考えるという点でどういうふうな対策があるか。私は三つのものが考えられると思います。
 一つは、順位の決定過程の明朗化、民主化ということであります。
 ドイツでは、比例選挙の場合に名簿は党幹部が作成いたしますが、最終的には党の支部の党員によって秘密投票で決めております。政党法のない我が国ではそこまでは規制できないと思いますけれども、九四年の政治改革の際に、順位決定の透明化を図ったということを私は見てとることができるのであります。
 公職選挙法の八十六条で、これは今までは立候補が中心でありましたけれども、政党推薦というふうに原則を変えました。出たい人よりも出したい人をという、そういう原則を前面に出しまして、これは我が国の選挙制度では画期的なことであります。そして、八十六条の五で、政党は議員の候補者の選定及び選定の手続を定め、その旨を自治大臣に届け出なければならない。それを受けて自治大臣は、その候補者選定手続を告示しなければならない。公開することを義務づけました。
 さらに、二百二十四条の三で、候補者選定の権限がある者、つまり政党の幹部だと思いますけれども、決定に当たってわいろを受け取ってはならない、受け取った場合は三年以下の懲役と罰則規定まで設けているわけであります。これは衆議院にのみ適用になっておりますけれども、これを強化して参議院の方にも義務づける、それが私は対応策の一つであると考えております。
 衆議院の場合には、官報によりますと候補者の決定は総務会となっておりますが、参議院議員久世先生の御論文によりますと、平成十年のときの順位決定機関は、選挙対策小委員会、選挙対策本部、総裁、幹事長、総務会長、政調会長、参議院議員会長、参議院幹事長、幹事長代理、総務局長、各派閥事務総長等となっております。私は、定かではありませんけれども、こういっただれが決定権を持っているのか、さらにどういう基準で決めるのかをここに書いてほしい、それが法の精神だと思います。
 久世先生は、順位決定基準として、後援会の名簿三百万ないし五百万とか、それから党員、党友のことについて書いておられます。どれが正確か私にはわかりませんけれども、つまり、国民から見れば名簿に登載する順位というものがどういう基準で設けられたかということをオープンにしてほしいということでございます。
 なお、久世先生はこういうふうなことも書かれております。こういった条件をクリアすることは極めて過酷なことであり、候補者にとって、順位争いが旧全国区制以上に厳しいところから、旧全国区制を改善して戻すべきとする意見や比例代表名簿を非拘束名簿にすべしとする意見等、改革論議が常に存在していると、こういうふうに書かれております。
 第二の対応策は、イギリスに見られるものでございますけれども、政党への候補者の献金を禁止するということでございます。全面的に禁止されているかは、法律で決める国ではございませんから定かではありませんけれども、少なくとも一定額以上は候補者は党に対して寄附を、特に多額の寄附をしない、こういうことになっているということでございます。
 お金というものは魔性を持っておりまして、わいろではなくてもわいろ的効果を伴いやすい。ですから、党費納入の公正を確保するためには、肩がわりではなくて本人が納入する、あるいは銀行口座扱いにする。私は、政界では現金の授受はぜひ禁止する、まあ禁止と言わないまでも、そういうことをしない慣行をつくり上げていただきたいということでございます。
 第三の対応策は、名簿順位というものは、政党が決めたことによって疑惑が生じたら、政党が決めないようにすることでございますね。つまり、国民に決めさせるということでございます。これが今回提出されました非拘束名簿式だと私は考えております。
 アメリカでは、候補者の決定、比例代表制ではございませんけれども、最初は政党のコーカス、いわば幹部が決定したわけでありましたけれども、密室で行われるというものでよくないという批判から予備選に変わって、今日のような有権者が参加するような制度になっております。
 日本では、名簿順位を政党に任せておけないということで、その決定権を主権者に決めさせる、政党は候補者を推薦して名簿に掲載しますけれども、だれを議員に選ぶかは有権者が決めるというふうに改める、この点で今回の公選法の改正は私は理解ができるのであります。そして、拘束名簿式に対する批判として言われました、顔が見えないということに対して、この非拘束の制度は顔が見えるようになる、こういうふうな対応策にもなるわけでございます。
 衆議院と参議院の選挙制度は最近よく似てきたと言われておりますけれども、小さな違いがありまして、その小さな違いを運用次第では大きくすることができる。比例代表制について、衆議院の場合には全国十一ブロックであり、参議院は全国規模である。さらに、名簿登載できる人を衆議院の場合は党員に限定しておりますけれども、参議院の場合には党員に限定していない。この二つの点を特色として、その上に、政党が候補者名簿を作成する際に、参議院の性格を考えて政党人にとらわれない、広く学識経験のある者というふうな者を名簿に推薦するというふうなことをなされば参議院は特色のあるものになることができる、こういうふうな可能性を秘めているわけでございます。
 今回の改正は、この可能性を全く否定するというわけではありませんけれども、集票能力がなければ上位にランクをされても当選の見込みがないということで、いわゆる良識の人と言われるような人は排除されることになるのではないのか。したがって私は、党の名簿には順位をつけ、得票順に当選者を決めますが、余剰の票については、当選に至らなかった者の上位から当選者とする、そういうふうな案が望ましいのではないかと思うのであります。政党として、自分たちが推薦する推薦者の中で、政党としてもこの人が望ましいということについてやはり意思表示をするということが必要だと思っております。
 参議院の場合、候補者推薦制というのがよく問題になります。候補者推薦制では、一番民主的なのは政党が推薦するというふうなことで、やはり政党が責任を持って推薦するということが大事なことだと思っております。
 それから、金がかかるとか全国区の再来だと言われる問題です。
 これは、金をかけない人もいらっしゃいます。市川房枝さんであるとかあるいは青島幸男さんですとか、選挙になると外国へ行かれてしまうという、考えようによっては大変私どもはばかにされているようなことであるわけでございますけれども。要するに、選挙というのは、激戦だとなれば、あるいはまた投資効果があれば、いろいろな規制の網をくぐりまして、私どもよくは存じませんけれども、水面下ではいろいろな工夫をなさる、こういうふうな知恵を使ってやられるわけで、私としては制度の問題ではないのかなという感じがするのでございます。
 かつて平成三年ごろ、現在の斎藤議長が幹事長時代に比例代表制一本の選挙制度をつくられたことがございます。これは大変評判がよかったわけではございますが、選挙運動に関しては国営と表現されたことで多くの反発を招いたのでありますけれども、内容はいわば公営選挙というものを強化するというふうなことではなかったかと私は思っております。例えばラジオ、テレビの政見放送、討論会、新聞広告、選挙公報などを拡充強化して行うという趣旨であって、連呼行為中心の騒がしいお願い選挙を静かな選挙にして、有権者に判断材料をマスメディアを通して提供すると、こういうふうなことが御趣旨だったんではないかと言われております。金がかかるかかると言いますけれども、実際どのくらいかかるのか、確たるものではないのでございますね。私は、実情がどうか、一度公的な調査をされてはいかがでしょうか。
 イギリスでは、一八八三年の腐敗違法行為防止法というものが制定されて、その前の一番腐敗したという一八八一年の選挙に政府が公式に各選挙区でどうだったかという実情調査をしています。その実態に国民が驚いて、これは大変だということで、かなり一八八三年の腐敗違法行為防止法を制定する端緒になったというふうなことを聞いております。
 それから、比例代表制の選挙にも連座制を適用したこと、私は当然であると考えております。
 それから、非拘束の比例代表制が違憲だという意見もございますけれども、私はそうではないのだ、比例というものはそういう性格のものではないのかなという感じがします。イギリスにも比例代表制というのがございまして、現在ジェンキンス委員会、ブレア内閣で報告書が出まして、小選挙区制の一五ないし二〇%というものを比例代表制にしようというふうなことがありますけれども、この場合にもそういったようなことが問題になっていないということであります。
 一体、現在提出されている法案がいいかどうか、賛成したらどうかということになりますと、やはり比較してみたいのでございますね。党利党略と言います。ですけれども、これは比較のしようがないのでございます。大体、選挙制度というものは、あるものを出しますと、それは党利党略だというふうに言われるものでございます。それぞれきょう御出席になっていない各党からも出していただけると、比較ができて、私どもはやはりこっち側の方がより党利党略的だなとかいうふうなことが判断できるので、そういう点では非常に残念に思っております。
 政党というものは、対案を具体的に出して国民の見ている前で選択肢を提供してくださる、国民がそれを判断して決める、政党というものはよく国民の政治的意思決定の協力者であるとおっしゃっているわけでございますので、そういったことをしてほしかったと思っております。
 次に、時間の関係もございますが、一つ申し上げたいのは、当面の問題で大事だというのは、九月六日に最高裁判所の一票の重みについての判決がございました。これは五人、三分の一の判事が違憲とするということでございました。
 これまで逆転現象を指摘されておりましたが、平成四年の選挙について、最大六・五九、これを違憲状態だと判断したと。これも初めてのことでございます。前回の場合の四・九八については、これは合憲だといたしました。その判決について国民から大変厳しい批判が出てまいりました。ジャーナリズムでも批判があったところでございます。平等ということは一対一でなければならないわけです。衆議院の場合には大体許容が三倍程度、そして参議院の場合にはいわば六倍と、この差はどこから出てくるのか、国民は当然奇異に感ずるものでございます。
 最高裁の考え方としては、やはり参議院の特殊性と言うわけでございます。ただ、特殊性を言いましても、憲法の精神からそうなるのでございますけれども、国民はなかなかそれが理解できない。現実に参議院でやっているものはどこが特殊性なんだ、どこが衆議院と違うんだということになるのでございまして、そういった意味で、国民の不満というものは裁判所から今度は国会の方に向けられてくるのではないのかと。国民の目に参議院が憲法の要請しているような特殊性あるいは衆議院と違ったことをやっているんだということをわかるような行動を起こしてくださることが必要だというふうに考えております。
 それから、定数削減の問題でございます。
 今回十名削減されております。これは、逆転現象をなくしたという点では理解できるのでございますけれども、今の一票の重みの関係で言えば、こういう削減のときに、あるいは削減しないとかそのほかの方法をとりながら、国民から批判されている一票の重みについての理解を得るような、そういう是正措置の方に向けられてほしかったというふうに思うのでございます。
 裁判所は合憲だとしまして、それは合憲だとするけれども、国会の裁量の範囲内の、国会が決めたからだということになるわけでございまして、その国会がやっていることが今度は不満だと、つまりボールを国会に投げられたわけでございますが、国会側がそれにこたえるような努力をなさって、国民の満足を得るような、そういうふうなことをしてほしいというふうに思うのでございます。
 時間になりましたので、最後に一言。
 今まで与えられた時間で全部を申し上げることはできない、意を尽くすことはできなかったのでございますけれども、法案審議に一言触れさせていただきますと、現在、野党席の状況を見ますと空でございます。これはまさに異常だと思われるのでございます。ですけれども、参議院にはよき先例がございまして、委員会というものに出てこられないということであれば、非公式にして、打合会にして野党の方に出席していただくとか、あるいはいろいろな先例がございます。そういったよき先例というものを尊重されながら、やはり参議院は参議院としての独自の、そして自主的な運営をしてほしい、そういうことこそ参議院の議事運営にふさわしいものだというふうに考えております。
 野党の主張が正しいのか、野党の欠席戦術が正しいのかどうかということについては、これからすぐ結論が出るのでございますけれども、現在のような異常な状態を続けていては、国民の参議院離れは進み、参議院の権威は落ちるばかりだと私は心配をいたしております。それは今回の法改正の趣旨に反するものだと思います。
 私は、最後にドイツのことわざを思い出したのでございます。ドイツのことわざに「手術は成功した、だが患者は死んだ」というものがございます。これはあり得ないことでございますけれども、野党のいないこういう状況で審議が行われるというときにこんな心理になるものだということで、私の意見開陳にかえさせていただきます。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(倉田寛之君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 なお、参考人にお願い申し上げます。
 御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 それでは質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○日出英輔君 自民党の日出でございます。
 私は比例の方でございますので、殊さらに今回のこの法改正につきましては関心を持っている一人でございます。
 きょう、この参考人質疑、限られた時間でございますので、なるべく質問の方は短く私もしたいと思っておるのでございますが、まず清水参考人に伺いたいと思います。
 大変率直なお話を伺ったわけでございますが、事務局の方からいただきました清水先生の冊子を読ませていただきましたときに、先ほどお話しになりました、比例代表制に反対で三百名を十ないし十一に分けた大選挙区でというふうにお話しになったように思いましたけれども、いただきました前の資料では、百五十二人については地方区というか選挙区で、それから百人についてはかつての全国区ということでしょうか、というふうなお話をしていたようでございますが、少しきょうの御提案が違っていたところを御説明いただきたいと思います。
#8
○参考人(清水睦君) お手元の資料では、論文に書きましたときに、今質問いただきましたような、そういうことでございました。
 実は、全国区制ということにすると、要するに政党に所属しない一匹オオカミ的な候補者が参議院議員として活躍できる場ができる、こういうふうに思ったわけでございますけれども、全国区制は銭酷区制というふうに言われるくらいで、四億円なら落選、五億円でないと当選しないというふうに、この比例代表制に切りかえられるころにはそういうことが言われていたようでありますので、やはり全国区制にすると、族議員という言葉がありますが、その族議員についてはいろいろ評判が悪いわけでございますが、そういう族議員の活躍舞台が非常にまた広がってくるというふうな、そういう点も考えまして、いっそのこと大選挙区制に全部の定員を切りかえて、それでも無所属の候補は当選できるのではないかと、そういうふうに思ったからでございます。
 以上です。
#9
○日出英輔君 先生の先ほどのお話でもそうでございましたし、この論文の中にも一匹オオカミ的な議員が必要だというようなことをお書きになったようでございます。私もこの問題についてはなかなか非常に考えさせられるお話だと思っております。
 私も、議員になりましてから、参議院の独自性といいますか自主性につきまして、先輩の議員やリーダーの方々が、どういうふうにこの参議院の運営をしていったら独自性なり自主性が発揮できるかということについて腐心をしている姿をこの二年間見てきたわけでございます。一方で、平成二年の第八次選挙制度審議会答申でこの非拘束名簿式が出てきましたときに、政党化ということが自主性をそぐ要因ではないかと、ちょっと言葉が少し違いますが、そういったような趣旨が書いてあるわけでありますが、ただ私どもが活動していくときに、無所属ではどうにもならない。政策を達成していきますときに、政党を通じて民意を反映していくということはやっぱり基本ではないかというふうに私は考えるわけでございます。
 一匹オオカミの議員が二、三十人集まっても、やはり一匹オオカミが二、三十人いるだけじゃないかというような感じがいたしまして、先生のこの論文にも書いてございますが、参議院の非政党化ということについて、短い時間でお話しいただくのは恐縮でございますが、やはり私は限界もあるし、また現実もあるという感じもするわけでございますが、少しこの論文を読ませていただきまして、参議院の非政党化は程度問題だとお話しになって実に上手におっしゃっているのでありますが、もうちょっと付言してお話しいただければありがたいと思います。
#10
○参考人(清水睦君) 国政選挙でありますから、政党の舞台が否定されるということはあり得ないわけであります。参議院の政党化の問題というのは衆議院の場合と比較して考える必要があると思うんです。衆議院の場合にはまさに政党が専ら活躍するという、そういう舞台であっていいと思います。したがって、政党本位の選挙、比例代表制というのが衆議院の場合には一番適切ではなかろうか、こういうふうに思っているわけです。ところが、参議院の場合には、もし政党化が衆議院と同じであれば参議院は要らないというふうな、そういう声が説得力を持つことになるように思われます。
 非政党化という、そういうファクターをどういうふうに議員の選挙の中に入れていくかということが一つの問題になるわけですけれども、その場合に、政党が選挙にかかわってはならないということを決めるのは、これは無理だと思うんです。しかし、政党に所属しない者が選挙に出て当選できるという、そういう舞台は十分しつらえられるべきではないか、そういうことであります。
 個人名を出して甚だ恐縮でございますが、中山千夏という人が前に参議院議員でおられまして、私はこの人はかなり特色を持たれた議員であったと思います。この方は、比例代表制に全国制が切りかえられたときに、確かに東京都から地方区選出ということで選挙に出たんですが、落選しました。その後は選挙に出なくなりましたけれども、こういう方が私は参議院の場合には必要なのではないかと。この方は政党に所属した方ではなかったというふうに思います。
 そのほか、政党に所属しない方あるいは非常に少数の会派というふうなものでそれぞれ独自の行動をとられている方がおられます。二院クラブ・自由連合の方も、やはりこの議員の定数などについては意見がいろいろ分かれているようでございますから、仮に無所属の方が会派を便宜的につくっても、非常に緩い会派というふうなことであれば参議院としてそういう方々が特色を発揮できる、そういう可能性は十分あるのではないかなと、こういうふうに思います。
#11
○日出英輔君 今の政党に所属しない人が議員になれる道をということをお話しになったことについて、私も考えさせられる点があると思いますが、なかなか旧全国区復活というのはそれなりにまた非常に難しい問題をはらんでいるのではないかという気がしたわけでちょっと伺ったわけでございます。大変率直な意見を伺わせていただいてありがとうございました。
 次に、前田参考人に伺いたいと思っています。
 大変恐縮でございます、けさお配りいただきましたのは、枚数は少ないのでありますが、かなり分量がございまして、申しわけありません、全部目を通さなかったのでございますが、私は、前田参考人がお話しになった、比例代表制が民意を反映させる手法としてはすぐれている手法だというのは極めて論理的、理性的なお話ではないかというふうに思っております。
 私は、この非拘束名簿式の採用によりまして、政党に所属する人間が一応当選した後、これはやっぱり百万とか百五十万とか、少なくても七十万、八十万でございましょうか、こういう方々の、書いていただいたという背景がありますので、私はそれなりに当選者の発言力が当然増すであろうし、あるいはその方たちがいろいろなことを言ってくれますと、今やや批判がございます一律的に党議拘束をかけるといったあたりも、ある程度手直しといいますか修正といいますか、そういうことも期待できるだろうし、あるいは議員活動もそれに伴って活発になってくるだろうし、なかなかに妙手だというような気も私も実はしております。ただ、実際に走る馬からしますと大変なのでございますけれども。そういう意味で私はこういうことはいい、なかなかよく考えた話だろうというふうに思いますが。
 ただ、先生のお話の中で、先ほど名簿には政党としても順位をつけるとちょっとお話しになりましたですね。そこがちょっと理解できなかったのでございますが、ここをもう少しわかりやすく、恐縮でございますが。
#12
○参考人(前田英昭君) ちょっと最初のことで、直接の御質問ではございませんでしたけれども、そういうユニークな方々が参議院に出られることは私は大歓迎でございます。政党推薦、政党の名簿に載りましても自分のカラーを出せるような、またそういうたくさんの票をとってこられることはそれなりの重みがあると思います。ただ、いざという場合に政党の党議拘束がかかってくる、これが参議院の会派だけの拘束であればよろしいのでございますけれども、重要な問題になると衆議院の党の拘束ということ、したがってそれには従わなきゃならないだろうというふうなことになる、これがどうも従来のケースであって、そういうふうになってほしくないということを私は願っております。
 例えば、公明党がかつて、今もそうでございましょうか、比例代表で出る場合に、党員でない方を当選させまして、我が党は党議拘束をしないと言ったのでございますけれども、実際に党議拘束というか、党で決めたことに対して反対の意思表示をされるというのは大変少ない。中西珠子先生でございましたか、一回か二回、あるいは大事なときには、どういうことでございますか、ちょうど外国に行かれていて反対の票を投じられなかったということがございまして、したがって、そういうのを見ておりますと、なかなか難しいんだなと。ぜひ参議院としては、そういうふうに衆議院とは違った新しい方を抱えて自由に、参議院としていろいろ意見を交えながらいい結論を出して、そういう方々が当選されたことを歓迎し、新しい参議院をつくることに努力をしてほしいなと思います。
 それから、後の方の問題でございます。
 それは、つまり余剰の分ですね、それを下へ回すよりも、なぜ政党が推薦したか、政党もまた推薦するだけの権限があるし、一般的に認められている、ならば政党としてどういう方がふさわしいか。あるいはタレントの方がいらっしゃるかもしれない。タレントの方でもこの方はこうこうの理由で大事なんだとか、あるいは現在の参議院議員の方でも議長さんを初めとして立派な方がいらっしゃると思います。それをやはり順序にしまして、場合によりましたらトップに持ってきても、トップというか、それは一番、二番はないわけでございますけれども、落選するということもございますね。
 それからもう一つは、かつてのように大学の総長をやられた方々を仮に推薦した場合でも、いわゆる集票能力がないとすればそれは落選ということになる。政党としては、この方は党員でなくてもいいからぜひ我が党に入ってこういう政策をやってほしいと願って推薦しても、政党は責任を持って当選させることができないということが出てくるんだろうと思います。
 そうなりますと、やはり政党の責任というか、政党というものの存在があり、政党中心にして、私は参議院もそうだと思う、ただ衆議院の政党と私はできるだけ一緒にならないでほしいと思っているのですけれども、そういう一人で活躍するということは大変難しいことです。ですから、会派とかそういうグループをつくる。その一つが政党である。ですから、政党をおつくりになるときに、どういうふうになりますか、その責任の所在を明らかにする、政党はこういうふうな方々を特に重視しているんだという意味で順位をつけられる、そしてその方の票に、そっちの方に回して、上から票を回すわけですね、そして当選者ができるという方法はないだろうかということでございます。
#13
○日出英輔君 ちょっと時間がありませんのであれですが、先生の今のお話の余剰があればと、その余剰という言葉を使ったんですが、そこがちょっとわからなかったのでございます。
#14
○参考人(前田英昭君) 三百万票とりますね、そうすると八十万票で当選すれば二百二十万、これはその人であるけれども、その人はその政党に所属しているがゆえに集まった票だと考えれば、それは政党に投票されたものとして上から順番に、上からというよりも党で決めた、この人がぜひ欲しい、政治家としてこの方は、例えば外交ばかりやっていて選挙運動はできなかったけれども、この人にはぜひ当選させてほしいと、そういうふうな意味でございます。
 例えば、日本でありますと大臣が落選しますとそれっきりでございますね。ところが、イギリスあたりは大事な大臣が落選したら、決してそれは何か批判されるようなことで落選したわけじゃないというふうになりますと、ほかの選挙区、小選挙区制ですから、ほかの議員にやめてもらうわけですね。そうすると、補欠選挙ですぐ立候補して当選すると。そういうふうなことで、これはドイツにおいても同じでございます。大事な政治家はそれだからこそ重複であって、小選挙区で落ちた場合に比例で出てこれるようなそういう保険がかけてある。その辺が日本とやや違う。
 そういうふうな意味で、私は、政党として大事な人といいますか、ぜひ欲しい人、この方は政治家として、参議院議員としてふさわしい人なんだというふうな意味で順位をつけられること、これは大事なことだし、そしてそういう人から票を回すべきではないかというのが私の考えでございます。
#15
○日出英輔君 清水参考人、前田参考人、大変貴重な、かつ率直な御意見を伺いました。ありがとうございました。
 終わります。
#16
○森本晃司君 きょうは両参考人の先生方、突然のことではございますけれどもお見えいただきまして、またいろんな貴重な御意見を聞かせていただいておりますこと、大変感謝申し上げる次第でございます。
 率直な御意見を述べていただきました。私も、私の感ずるところもまたございまして、先生方の御意見を聞かせていただきながら、また今後のいろんな我々のあり方について考えてまいりたいと思っているところでございます。
 私は、選挙制度とまたこの参議院のあり方というのは、これはともに関連しているものではないかというふうに思っております。実は、私は衆議院の選挙も経験してまいりまして、そして参議院の比例区で今この場におらせていただいておるわけでございますけれども、衆議院時代とまた参議院へ自分が籍を置いてからと、自分自身でも確かに物の見方というのは随分変わってきたなと。両院を経験させていただいて、私にとって非常にありがたいことだし、それを国民の負託にこたえるものに変えていかなければならない、こう思っているところでございます。
 選挙制度の改革ではございますけれども、まず先生方に衆議院と参議院との異なる部分、参議院のあり方について御意見を伺うことができればありがたいと思っております。清水先生、そして前田先生、両先生にお答えいただきたいと思います。
#17
○参考人(清水睦君) 私は、先ほど述べたことと重複しない部分から意見を述べさせていただきますと、参議院は、一つには閣僚を出さないようにするという、それがやはり衆議院とは非常に異なるというそういう条件をつくることになるのではないか。
 つまり、政府の閣僚になりますと、やはり政府の意向というものに、与党が完全にその意向の枠の中で行動せざるを得ないようになるわけでございます。ところが、閣僚を出さなければ同じ与党であっても相対的な独自性というものを持つことができるのではないか。ですから、参議院は政府と一定の距離を置いて活動するということが、これが衆議院と異なったスタイルの活動になるわけであり、それでこそ両院制の存在理由があると、こういうふうに思うわけであります。
 参議院に特色を持たせるために、最高裁判所の裁判官を、参議院だけがそれについてかかわりを持つようにしたらどうかとか、あるいは条約についてとか、そういう国会が衆議院、参議院で現在憲法上行使している権限を、部分的には参議院だけが分担する、いわば分業システムを導入したらどうかというふうな意見もありますけれども、そういう国会としての権限行使の場合に何でもかんでも分けていくというふうなことは望ましくないように思われるわけでございます。
 やはり参議院が理性の府として衆議院の行き過ぎを是正するということで、私は戦後の国会運営の中で参議院の果たした役割は大きいと思います。もちろん参議院で乱闘などが行われたこともありますけれども、総じて見れば、参議院は憲法の期待する両院制の目的を十分果たす、そういう役割を担ってきたし、またそれは実行されてきていると、そういうふうに思っております。
 ちょっと十分ではないかもしれませんが。
#18
○参考人(前田英昭君) 簡単にお答えできる問題ではございませんけれども、一つには、清水先生からお話があったような、やはり政府にどの程度協力するかという問題ですね。
 やはり参議院というものが自主的な活動をするためには、政府との一定の距離を置かなければならない。それは大臣とか、これから副大臣とか、そういったようなもの。さらには、私は、党としても党の総裁選には加わらないということでなければ何にもならないし、憲法からいいますと、総理大臣指名選挙においては衆議院議員と参議院とにおいては一票の重みが違います。党に行きますと同じでございます。ですから、やはり参議院議員は大臣、閣僚にならないとか、あるいは党のそういう選挙権を有しないとか、そういうようなことは大変お困りになるような、反対されると思いますけれども、そうであることによってある程度距離を保つ。距離を保ったところで、参議院の自主的な活動はできるのではないか。
 やることは同じことでございます。よく役割分担といいますけれども、やることは国政ですからいろんなことがある。ただ、やることを同じようにやってほしくない。例えば代表質問一つとっても、同じようにやらない。それは、例えば向こうは代表質問であれば、参議院において政党を代表する人はそういるわけではございません。ですから、参議院の第一回の国会のときにやられたように専門質問、それぞれ各党から代表者を一人出すんです。外交問題はだれだれ、ある党からは二人出して、ある者は文教問題ですね。社会党から出るなら社会党の議員会長に外交問題をやってもらっても適当でないという方があれば、北海道問題を出してもらうとか、教育問題。そういう専門的な立場からするというふうな形で、今までといいますか、参議院の初期のころやっておりましたけれども、そういう違う質問のやり方。例えば何か事件が起こったときに、災害についての報告を求める。同じ日にやっても同じ回答しか返ってきません。ですから、そうしましたら、一週間後には、一週間するとそれだけの情報が入ってきますからね、そういうふうなこと。
 あるいは、委員会における質疑も衆議院と同じようにやらない。つまり、参議院はある程度政党を離れてやれるというのは、個々人が中心になれるように、そして大会派中心でなくて、これは議員それぞれ平等でございます。ですから、発言時間は議員、例えば十分なら十分。ある大きい政党がその何倍かを持つというのは、それは人数が多いから。質問なさる方が十分しなかったら、それを全部一人の人が独占できるんじゃなくて、皆それぞれ十分、そうするわけですね。質問しない方があったら、それは平等でございますね。例えばそういうふうにするとか、いろいろ考えられる。
 例えば、参議院では逐条審議をやると。逐条審議というのは、法案というのは、衆議院では政治的な論争ばかりやっております。だから、参議院に来ると逐条審議、逐条審議というのはとても普通の方はやれるわけではないし、それは政治的に興味の持てない問題かもしれない。そうしましたら、それは法制局とか、それぞれ事務局に、常任委員会にいろいろとそういう質問をつくってもらいまして、そして専門員にしゃべらせると。私は最近「国会と政治改革」という本を書きまして、昭和二十五年、アメリカへ行って学んできました国会の報告書の中にそのことが書いてあるんですね。委員長は専門員を活用する、専門員に委員会において質問させなさいと報告しています。
#19
○森本晃司君 御意見を賜りましてありがとうございました。
 ちょっと時間がなくなってまいりまして、内容についてもう少しお伺いをさせていただこうと思っておりましたのですが、次の点だけについてもう一度私の考え方も同時に述べさせていただきたいと思うんです。
 清水先生のお話の中で、協議会で決められたことがさも決定事項であり、それをきちんとやらなかったのはいけないじゃないかという御意見を賜りましたが、実はあれは、協議会というのは各派代表者懇談会のもとにございまして、そこでいろいろ意見を集約したもので、あれは最終決定でないということを、ちょっと先生のお話の中でございまして、大変恐縮でございますが、ちょっと私の考え方として申し述べさせていただきたいと思っております。
 そこで、お二人の先生から、清水先生からは、緊急性はない、フェアではないじゃないかと今度のこの状態をおっしゃっていただき、また前田先生からは、党利党略だといろいろ言われるけれども欠席の人たちにも比較するものを出していただければいいじゃないかという御意見を賜りました。
 私も、今欠席されている方々について、やはりこの場に出ていただいて、そしてしっかりと御意見を述べていただくのが一番のあり方ではないかと思っておりますが、先生方、大変お答えいただきにくいかもわかりませんが、野党の今欠席されている状況についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
#20
○参考人(清水睦君) 恐らく、野党の議員さんが出席されないのは、出席しますと結局この法案を通されてしまうという、そういうふうなことを危惧されるからではなかろうかと思います。しかし、多数決というのは、これは民主主義の原則というふうに私は必ずしも思っておりませんけれども、意見が対立している場合には多数決という形式的な技術がやっぱりやむを得ないという、そういうことになろうかと思います。
 ただ、その多数決の原則が適用になる条件というものがあるわけでございまして、それは、緊急やむを得ないようなそういう事態に対処するために、いろいろ反対意見があっても多数決で事柄を処理するというふうな場合は、これはやむを得ないけれどもそれは認められてよいと思うんです。しかし、緊急性に欠けるような場合には時間をかけるということが多数決の原則が適用される前提になると思うんです。
 ですから、時間をかけるというふうな対応をされれば、恐らく出席しない、審議拒否というふうな態度に出られるかどうか、その点はやはり出席される可能性の方が高いのではないかなと。この国会でということになりますと、審議拒否というふうなそういう対応をとらざるを得ないということになるのかもしれません。
 ただ、問題にはいろんな考え方がございまして、いかなる場合においても審議拒否をすべきではない、審議拒否をしないで堂々と反対なら反対の意見を述べて、仮に法案が通った後においてもそれを選挙民に訴える、そして将来においてその自分たちが間違っているという法律を改正する、改正できるようなそういう方向に政党として努力していく、それも一つの選択肢だと思います。
 ですから、今御質問いただきました点につきましては、私は審議拒否はもう当然であるというふうにも思えませんし、また、対案を出して一応数の上では敗れても、次に将来を期するというのも一つの考え方になるというふうに思います。
#21
○委員長(倉田寛之君) 簡単にお願い申し上げます。
#22
○参考人(前田英昭君) 私は、審議拒否とか出席しないということは、いかなる場合もとは言いませんけれども、ほとんどの場合、原則はこれは認められないです。国会は審議する場でございます。しかも審議というのは野党のためにあるような、つまりいろんなことを言って情報を国民に提供する機関でございますから、野党として戦術はマイナスでございます。
 野党というのは少数党でございますから、少数党が議会制民主主義、多数決の上で少数党が勝とうとするのは誤りであります。多数党が勝つのは当たり前でございます。ただ、少数党が勝つことがあるとすれば、それは今の選挙で選ばれてきた人たちのそのときの世論と変わってきている、国民を味方につけて国民が支持するような、国民と結託して世論を味方につけたときに勝つことができるので、少数者が無理に何とかすれば勝つという制度は、制度というかそういうことを考えることはよろしくない。つまり、審議はいかなる場合でもまず出てくる、そのかわり少し時間は延ばしてもらうとか、そういうふうに自民党が野党のときにも少しおやりになったようなことがございましたけれども、五五年体制が終わったわけでございますからこういうのはやめていただく。
 議会の先進国は一つもございません。審議ストップするとか混乱するのは隣国の韓国とか台湾とかそういうところに一部見られますけれども、先進国はございませんので、ぜひこういう慣行だけは、どなたが野党になられてもそういうことはないように、この席で、国民の見ている前で議論をしてほしい。
 やはりスポーツと同じでございます。リングの外でけんかをされては困ります。けんかはよろしゅうございますけれども、この公開の場では国民の見ている前で議論して我々に判定させるような情報を提供してほしい、そういうふうに考えております。
#23
○森本晃司君 ありがとうございました。
 終わります。
#24
○佐藤道夫君 二院クラブの佐藤と申します。
 先ほど前田参考人は、野党議員の姿が一人も見えない、極めて異常であるということをおっしゃいましたが、私は少なくとも与党には属しておりませんので野党という立場でございます。どうか御認識を改めていただきたいと思います。
 そこで、先ほどの清水参考人の御発言の中から、本法案の提案はまことに時期尚早であるというお言葉、それから提案の仕方がいかにもフェアではない、アンフェアであるということ、私、これ大変高く評価したいと思います。多くの国民、やっぱりそういう感じを持っているのではないかという気がいたします。
 これは前にも委員会で申し上げたんですけれども、私、この問題が出てから周辺の人たちに、一般市民でありますけれども、非拘束名簿という言葉を知っているかと、大体が知らない。中身、意味は全然わからない、国民が全然関心を持たない、知識もないようなことをいきなり提案して走り出すというのはいかがであろうかということを、私、大変不信の念を持っておるわけであります。
 もう御案内と思いますけれども、昭和四十七年、田中角栄内閣のときに、田中首相が突然のようにして小選挙区の導入ということを言い出されました。当時、自民党はもう三百近い議席を持っていたんですけれども三分の二には達していない、やっぱり小選挙区を導入して憲法改正を実現しようというのが当時の保守政界の多年の悲願と。田中さんは人気絶頂、おれがやろうということでそれを言い出された。
 これに対して野党が腰を抜かさんばかりに驚きまして、突然そんなことを言い出されても困る、慎重に議論をしようと。マスコミもどちらかというと野党サイドに立ちまして、これだけの大問題はみんなが真剣に議論していくべきではないのか、数に頼って押し切るというのは議会制民主主義に反するということで、マスコミも野党も一体となって猛烈な反対の論陣を張った。
 そのときに、大変おもしろいんですけれども、衆参両院議長があっせんに動き出したんですよね。当時の衆議院議長は中村梅吉、参議院議長は河野謙三、両名ともこれは自民党員なんですね。このお二方が、このままの状態では法案が提案されたら今と同じように野党の姿は一人も見えない、そういう形で選挙法の改正が進んでいく、こんなことは許容されない、院の議長として何とかしなければいけないということで、お二人が話し合われたんでしょう。
 そして、お二人が内閣に対して、提案は慎重に考えてほしい、できるなら見合わせてほしい、そうして時間をかけてこの問題を議論していこう、それだけ大きい問題だからということを申し入れまして、さすが衆参両院議長の申し入れですから、内閣も重く受けとめてこの提案は見合わせたという歴史が残っております。そしてその後、与党、野党、この小選挙区制度について時間をかけて議論をして、つい何年か前にようやくにして実現した。
 これがいいのか悪いのか、結論は私は何も言いませんけれども、そういう経過があるわけでありまして、今回のように、何しろこっちは数が多いんだ、出せばいい、嫌なら出てこなくてもいい、結論を、見え透いているから採決で決めようやと。私、こういう事態になりまして、衆参両院の議長が一体何をしているんだろうかと。
 中村議長、河野議長のあの骨身を削るような、本当にもう国の将来を憂えてああいう行動に出た。これは実は大変非難もされたんですね、立法府の議長がそんなことをやっていいのかと。政治の問題に口を挟む、権限の逸脱だということまで言われたわけですけれども、いやここは我々の出番だということでお二方が出られたということにつきまして、お二方の参考人の御感想を承りたいと思います。
#25
○参考人(清水睦君) 議長が現在の国会の状態について打開を何か考えるべきではなかろうかという、そういう御意見のように思われますけれども、衆議院の運営、参議院の運営、それぞれ議長は責任を持っているわけでございます。ですから、審議が停滞したり挫折するというふうな場合に、議長がいろいろあっせんをして一定の役割を果たすということは当然議長としてのあるべき姿ではないかというふうに思います。
 私は、参議院の過去の審議において河野謙三議長が非常にはたから見ていて尊敬に値する議長としての役割を果たされたという、そういう記憶を持っております。それは与党、政府法案のいわゆる議事運営、これは数で押し切れば押し切れるというふうな場合、野党の議員がいろいろそれに抵抗をするというふうな場合には……
#26
○佐藤道夫君 簡単で結構です。
#27
○参考人(清水睦君) はい。
 やはり一応妥協という、そういう線を探られたと思うんです。妥協ですからどちらにも満足ではありませんが、しかし片方がゼロ、片方が一〇〇%ということはない。そういう形で時間を置いてもめた法案が参議院で通るという、それがまた衆議院にもいい影響を与えるということがあったと思います。議長の役割はやっぱり期待してよいのではないかと思います。
#28
○参考人(前田英昭君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
 議長としては、ぜひこういうときにお出まし願いたかった、少し何かやることが性急過ぎやしないかなという感じがします。
 先ほど申し上げたように、多数派は勝つわけでございます。ですから、勝つ方が少し妥協してもらうような雅量を持って、議長のお出ましを願ってうまく調整し、それで参議院というものが批判されないようになさる、これが議長として当然でございます。
#29
○佐藤道夫君 ただいまの両参考人の発言を両院の議長、特に参議院の斎藤議長がくれぐれも重く受けとめまして、この状態を何とか自分の力で、微力を尽くして解決したいというふうな気持ちを奮い立たせるように、参考人の方々もいろんな機会にそういうことを述べていただければと思います。
 それから、時間がなくなりましたけれども、比例代表制というのはそもそもが政党政治だと思います。ですから、選挙について立候補者をだれにするか、順位をどうするか、これは政党の責任で厳正公平に決めるべきことだと思います。ところが、それをやろうとするとすぐ金が絡まる。一体AとBのどっちが優秀かは我々はわからぬ、じゃ金で決めようや、党員を多く集めた者のそれで、順番で行こうやと。そういうことで久世問題が起きたり、いろんな問題として激しく非難されている。それのすりかわりのようにして、じゃ決定は国民にさせようと。これは、私は政党の責任の重大な任務違背だと思うんですよ。
 自分たちのやることを自分たちでやるとすぐ金が絡んでくるから国民にやらせようや、そうだそうだと。顔の見える選挙と言いますけれども、昔の全国区で国民が急に言われましても、自民党の候補者のうち、だれもほとんどわからないでしょう。その順番をどうやってつける。君たちがつけてくれと言われたってつけようもない。これは当たり前のことだと思うんです。
 ですから、党大会でも開いて大勢の党員を集める、あるいは選考委員会を五百人単位ぐらいのものをつくりまして、その中で候補者を呼んで議論をし政策を発表させまして、党員が厳正公平に投票をいたしまして順位を決める。これぐらいのことは政党として当然の責任だろうと思うんです。
 自分たちがやることをやらない、自分たちがやるとすぐ金が動く、じゃやっぱり国民にやらせようというのは、私、これは重大な責任の回避ではないか。比例代表制の、政党政治の趣旨に全く反していると思いますが、この点いかがでしょうか。
#30
○参考人(清水睦君) 今の御意見、私は賛成でございます。
 非拘束名簿方式に比べれば、拘束名簿方式の方がまだよいのではないかと思います。政党は責任を持ってやっぱり順位を決めるべきであり、その順位の決め方がおかしいというふうな国民の批判があれば、それは次の選挙あるいは選挙の間における国民の批判というものを受けて、それでまた政党が考えればよいことであると思います。
 国民が名簿で選ぶといっても、有権者に十分議員としての適格性を判断する、そういう力があるのかどうかということになりますと、私は、芸能人とかスポーツ選手だった人に議員としての適格性がないというふうには断定できません、立派な人もいらっしゃるわけですけれども、しかしそれは何といっても数が少ないのではないか。だから、宮田輝さんのときに言われたような票を集めるパンダだというふうな、そういう言葉がこの非拘束名簿方式を採用することによって再びこの選挙批判の中で出てくるという、そういうことを危惧するものであります。
 以上です。
#31
○参考人(前田英昭君) おっしゃるとおり政党の責任は重いし、そのようになることを私は期待しておりますが、今のところの政党の実態というのはそういう党改革ができないであろうと。そうなれば、次善の策といいますか、当面、何とかして名簿順位の問題を回避するためには国民に選択させるのもやむを得ないのではないのか。そして、これが参議院の場合で、衆議院とは違うものでございますから、そういう点でこれが絶対いいということではなくて、当面やむを得ない措置として、もしほかにいい案があればそれを私は参考にする、そういうふうな趣旨でございます。
#32
○佐藤道夫君 今の両参考人の御発言をどうか与党の方々、重く受けとめて、対応を真剣に考えてもらいたい、こういう思いがいたします。
 以上でございます。
#33
○委員長(倉田寛之君) 現在のところ御出席を得られていない会派があり、参考人に予定していただいておりましたお時間に余裕があるようですので、これより自由に質疑をしていただきたいと存じます。
 質疑を希望される方は挙手をしていただき、委員長の指名を待って御発言願います。
#34
○斉藤滋宣君 自由民主党の斉藤滋宣でございます。
 きょうは両参考人に大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。
 先ほど前田参考人の方からはこの異常な委員会の御指摘をいただきました。佐藤先生以外の野党の先生方が出ておらない状況を御指摘いただきました。恐らく委員長も同じ気持ちだと思いますけれども、委員長に成りかわりましておわび申し上げたいと思います。(「僣越だ」と呼ぶ者あり)僣越でございます。
 それでは、両参考人にお聞きしたいと思いますのは、清水参考人におかれましては定数の方の問題でございますけれども、三百人ということをお話しされておりますし、先ほど前田参考人の方からは、今回の改正案の中で十人削減という問題につきましては、今一票の格差を言われているときでもあるし、かえってこの一票の格差にこの十人の定数を割り振りをして、そして一票の格差の縮小に努めるべきだという御意見だと思うんですけれども、この定数につきまして両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
#35
○参考人(清水睦君) 三百人というふうに申し上げているわけですが、これにつきまして、政党会派の方からはもっとふやせというふうな積極的な意見は余り見当たらないように思われます。総じて、五%から一五%ぐらい削減するのはやむを得ないのではないか、公務員の定員削減が行政の合理化というふうなことで考えられているから国会も協力すべきだ、衆議院の場合も五百人から四百八十人になったという、そういうふうなことだろうと思いますが、そういう考え方は私はどうも妥当ではないのではないかと思います。
 やっぱり会議体、合議体とも言いますが、それが会議体として十分な活動ができるためには一定の数が必要であります。先ほど、常任委員会の数、それに大体割り当てられる平均の数を十五人というふうに考えたわけでございます。それで三百人というふうな定数を私は妥当ではないかと思っているわけですけれども、これは、憲法が期待している両院制というものを期待どおりに政治の中で定着させていくためには現在の二百五十二人で果たして十分なのかどうなのか、その点、私は疑問に思っているわけでございます。ふやせという意見は全然それはユートピアであるということであるならば、現状維持というふうなことでやむを得ないのではないかというふうに思っております。
 以上です。
#36
○参考人(前田英昭君) 憲法ができたとき、最初の案では三百でございましたね、参議院は。それが二百五十になりまして、憲法ができたときに二百五十、そして沖縄が入りまして二百五十二、衆議院の方は四百六十六でございます。これが憲法ができたときの衆議院と参議院のバランスなんです。衆議院はその後ふやしました。参議院はふやしておりません。したがって、憲法の精神からいえば、衆議院はもとへ戻しつつある、参議院はちっとも変わっていないわけでございます。特に減らす必要は私はないと。ただ、協力的なといいますか、一般的に姿勢を示すんだということであれば、今回のことはやむを得ないというふうに思っております。
 それから、もう一つ気をつけなければいけないのは、参議院はもっと減らしてもいいという考え方の方が多いということでございます。つまり、参議院が無用であれば減らしてもいい、こういうことにつながるわけでございますから、安易にそれに乗っからないといいますか、減らすことをお進めにならないで、むしろ逆に必要だと、こんな仕事をしているというふうなことをよくPRして、よく参議院の活動を周知せしめるという、そういうふうなことの方が大事ではないか。二院制とはそういうものでございます。
 ですから、少なくなればいいというものじゃない。もし少なくなるならば、全体の予算を確保しておいて、そのうち、議員数は少なくなるけれども、秘書とか、議員に割り当てられるそういう諸費用というもの、予算というものはとってもらえる、そういうふうなものを私は考えております。つまりアメリカの上院のようなものでございますね。参議院は少ないから、第二院だから少なくていいという、そういうふうなことには簡単には考えられないというふうに思っております。
 やはり憲法のときの大体のあれを基準にして、将来憲法改正の際にどうするかということはまた改めて考えるべきだと思っております。
#37
○斉藤滋宣君 私も安易に定数を削減するということに対しては反対の立場であります。やはり参議院議員として、また院として職責をどのように全うするかということが問われるのであって、その数という問題ではないんではなかろうかというふうに考えているわけであります。
 そこで清水参考人にお伺いしますけれども、私どもがいただきました資料が前の資料でございますから、ちょっと今の清水参考人とお考え方が違うのかもしれませんけれども、その論文を読ませていただきますと、今回のその定数三百名という御主張の中に、各国との比較と同時に、いわゆる常任委員会の数の問題で御意見をお書きになっておられますけれども、その中で、やはり常任委員会というものは省庁、事項別に委員会をつくって二十ぐらいが妥当ということをお書きになっているわけでありますけれども、御存じのとおり、いよいよ省庁再編成ということになりますと一府十二省ということで省庁が縮まっていきます。そうしますと、二十という数が今度は事項別で考えた方がいいのか、もしくは常任委員会のあり方として省庁別ということの方がいいのか、その辺のお考えをお伺いできければありがたいと思います。
#38
○参考人(清水睦君) 中央省庁の再編、これがいよいよ来年の一月から実施されることになるわけですけれども、しかしそれを見ますと、何か再編と言っても、今までのものをくっつけたり離したりしたというそういう印象を免れないように思います。したがって、省庁別というふうなことに振り回されないで、事項別ということでいくのがよいのではないか。
 ですから、常任委員会のいわゆる政府のいろんな部門との対応についても、衆議院よりは参議院の方が私は妥当性が強いのではないかと、そういうふうに思っております。
#39
○斉藤滋宣君 それから、清水参考人にお伺いしますけれども、先ほど日出委員からの御質問のときに大選挙区制のお話がありまして、十ブロックに分けるということでありますけれども、私ども考えるに、大選挙区制にした場合に、先ほど有権者の資質というお話がございましたけれども、今の選挙区域を広げたときにやはりどうしてもまた著名人だとか、スポーツだとか芸能界の方が決して資質が劣るという意味ではありませんけれども、どうしてもそういう著名な方が選ばれる傾向に大選挙区になるとなるのではないのかなという懸念をするわけですけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。
#40
○参考人(清水睦君) そういう傾向を完全に防ぐということはそれはできないと思います。有名人というものについて、そういう方が参議院議員としての適格性に欠けるというふうなことは一概に言えません。ですけれども、そういうもし適格性に欠ける方が出てきた場合には、それはその次にはいろいろ批判を受けて淘汰されていくというふうなことは十分考えられるわけでございます。
 ですから、完全になくするということはできませんけれども、私としては無所属の方が参議院に数をふやすというそういうことを考えると、この十か十一ぐらいのブロック制にすると議員定数是正というのはまさに抜本的な改革として実現できるのではないかと、そう思ったわけでございます。
#41
○斉藤滋宣君 私もやはり参議院のありようというのは、いわゆる衆議院の議論をさらに深めていき、そして衆議院との差異をつけることによって参議院の独自性を出していく、政党色を薄めていくとか、そういう中に参議院の存在価値というものがあろうかと思います。
 そこで前田参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど、今回の法改正そのものはベストではないけれども次善の策としてというお話がございましたけれども、私は今回、その拘束名簿式から非拘束にすることによって、今までは政党名というのが限定されてあったわけでありますけれども、参議院のありようを考えたときに、先ほど来清水参考人がおっしゃるように、一匹オオカミ的な議員だとかそれから無所属の議員だとかそういう人の数を多くすることが一つ特色として、参議院の特色をあらわにする一つの要因になってくるのかなと思うわけですけれども。
 そこで、今回せっかく非拘束にするわけですから、いわゆる政治団体要件を緩和していく、無所属の方でも立候補するような、そこまで踏み込むとさらにそういう特色ある議員がふえてくるのではないのかなと。特に、前田参考人はジュリストの中にもそういう御意見をお書きになっておられますけれども、私もそのような仕組みに、今回せっかくやるのであればそこまで踏み込んだ方がよかったのではないのかなと。そのことが、逆に言えば参議院の独自性を大きく一歩踏み出すことになるのではないのかなというふうに考えているわけですが、前田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
#42
○参考人(前田英昭君) 現行であれば、十人集まるという、そういうあれでございますね。それはこれからも出てくるし、そういった方々が大いに出やすいように環境整備をする。そのためには、やはり供託金の問題だろうと思います。これをもう少し下げるというふうなことでできないだろうか。なかなか一人だけでというのは難しいのでございまして、それで十人ということであれば、それだけの集まった一つのグループだということで、そういうふうな方々がむしろ出やすいような環境整備が必要だと。
 それから、ジュリストに書かせていただきましたのは、立候補しなくても参議院の場合は押し出す。あの人ならいいということで、たまたま多くの方が票を入れて当選されてしまった。それはそれでいいだろうと。アメリカの場合にそういうふうなことをやられているというのを知ったものですからそれを提案させていただいた。それは一つに、権利の関係からいえば、政党が選んだ人しか選挙民は選ぶことができないというのは、これは問題ではないかという権利の問題としてあるわけでございます。
 そういうことからいきますと、アメリカでもそういう考え方がありまして、今のように立候補しないというか、政党が推薦した、そして投票の場合には、名簿というのか、名前を印刷されていますから、印刷されていないところに自分の好む人を書くことができる、それは自分の選挙権と一票の行使の仕方だろう。その人は普通であればなかなか当選はしないけれども、少なくとも選ぶ権利は認められるべきだという、そういうふうなこと。そして、そういうことが一般にドイツあたりでも、あるいは他国においては言われている。つまり、選挙権というのをもう少し積極的なものに考えるべきではないか。そうしますと、日本の場合はどうもそうではないと。
 そこら辺から、今おっしゃったようなことに賛成でございまして、あわせてジュリストに書かせていただいたのは、立候補しない人も、そういうことは参議院をユニークなものにする。参議院をユニークなものにするのは、一つは、芸能人のものにするということではなくて、衆議院とは違ったものに、そして先ほどから申し上げているように、衆議院と同じような運営の仕方をしないで、なるほど違ったことをやっているという、そういうふうな認識を国民にぜひ持ってもらうような、そういう活動を衆議院よりももっともっとやっていただきたい。そのためにいろんな改革をしていただきたい。参議院はよく改革しておる。衆議院より先にやっておるわけですね。
 これはイギリスでも同じでございます。上院というものは批判されます。いろんな改革は上院の方が先にやるのでございます。例えばテレビの導入でございますね、これは日本でも参議院が先にやりました。イギリスでも上院が先にやっているのでございます。そういうふうなことをこれからおやりになって、いわばそれを衆議院が追随していくと。いいことであればどんどんまねしていくような、そういう活躍をしてほしい。そのために、先ほど申しました最初の選挙のところは、おっしゃることは私も同感でございます。
#43
○斉藤滋宣君 どうもありがとうございました。
#44
○委員長(倉田寛之君) 他に質疑を希望される委員はございますか。
#45
○益田洋介君 両先生、お忙しいところきょうはありがとうございます。大変に意見陳述の段階から既に参考になる御意見をいただきましてありがとうございます。
 先ほど清水先生は、今回の非拘束式にした場合でも、やはり個人名を書いた票も最終的には政党の得票の中に組み入れられるので、結局は、その政党色を薄くしようという一つのねらいでございますが、今回の法案のその目的は達成できないのではないかと、こういうふうな御意見であったと拝聴いたしました。
 一方で、前田参考人は、比例代表制そのものがなくなるという心配はなくなったので非常に安心しておりますと。比例代表制は、国民の、主権者の民意を反映させる意味では非常にいいといいますか、最も有効な方法であるというふうに考えますとおっしゃいました。さらに前田参考人は、参議院というのは良識の府であるとかあるいは理性の府であるという前に民意の府であるべきであると、こういうふうなことをおっしゃっております。
 そうした御意見の違いといいますか、あるいは類似している点もあるのかと思いますが、前田参考人にお伺いしたいのは、清水先生がおっしゃった、政党色が今回の非拘束式の導入によって薄らぐということはないのだということ、それから政党色を残しておくこと、また逆には、個人の名前を書くという今回の一つのやり方で、これは過渡的なものだというふうに前田参考人はさっきおっしゃいましたが、そのことによって議員としての個人色が前面に打ち出されるのか、そのことと、さらには党議拘束を参議院でもかける、このことが今言ったこととの相関関係においてどのように作用するのか、その辺の御意見をお伺いしたいと思います。
#46
○参考人(前田英昭君) 一つには、でき上がった後、選ばれた人を集めたその政党がどういうふうな態度をおとりになるか、あるいは参議院で集まられたそういう方々が新しいことをおやりになろうと思っても、衆議院の方からどれだけクレームがつくか。やはり衆議院との切断というのは難しいので、そういったようなことが一つあると思います。
 その最初の出発点においては、できるだけ個人とか政党色の薄らいでいる人を選ぶような方法がないだろうか。そういう発想でいきますと、今回の個人を選ぶということ、それからまた従来の比例代表制が全国規模であるということは、やはり全国的な支持を得られる人が出るとか、そういった意味でやはり衆議院と変わった人が出やすい。それが政党色をどの程度薄めるか。それは、政党というものが、政党の中に入りまして衆議院でやっているようなものとやや違った形で運営される。人が変わればグループ全体としても変わっていく。
 そういうふうな意味で、まず一番最初のところでいろんな人が出やすいような、いろんな人というのは、参議院にふさわしい人あるいは政党的な背景の薄い人でも出てきやすいような、そういうふうなことにする選挙制度が私はいいということで、何かほかにいい制度があればよろしいのでございますが、まずはやはり比例代表制であり、それが全国的な規模であるというふうなこと。今回はそれが改正されましたけれども、比例代表制ですから、ある程度残るだろう。
 そういうふうにして選ばれた人たちが変わるか変わらないか、あるいは変わらないようなどこからかの圧力がかかるか、それはわかりませんですけれども、そうでないように期待する。運用を私は見守る以外にないと。そして、その方々は、参議院というのはこういうものだということを御理解の上で動いてほしいなと。あわせて、衆議院からのいろんな御要請があると思います、そういったものに参議院としてどれだけ自主的な態度を保持できるかどうかでございますね、そんなことを考えております。
#47
○益田洋介君 ありがとうございました。
 次に、清水先生にお伺いしたいと思いますが、「法学新報」九七年の十一月号を読ませていただきました。その中で先生は、国政監督権の充実ということにお触れになって、現況の制度においては、国政調査権の行使というものは一つの壁に突き当たらざるを得ないんだと。それは議院証言法の五条三項における内閣の声明の部分で、特に例として五四年の造船疑獄事件を挙げておられました。この壁を、行使が必要な場合に無力になってしまうようにさせる壁を除去しなければならない。その上では、行政上の秘密を政府の自由裁量に任せておくのではなくて、現行の議院証言法は早目に改正すべきである、このように提言をされておりますが、この点、若干敷衍して、具体的にどのように私どもは働きかけたらいいのか、国会で立法していったらいいのか、その辺のポイントを御教示願いたいと思います。
#48
○参考人(清水睦君) これは、一般的には情報公開の問題にかかわりますけれども、しかし国政調査権の行使の場合には、政府から情報を求めるという問題を国民のレベルで考えなければならないということはないと思います。つまり、国民よりもっと政府情報の機微なところにやっぱり接近できるということでなければならないと思うんです。
 そのためには、政府が国政調査権の行使によって情報を明らかにするとすれば、それが国民に知れてしまうというところで抑えるという、そういう便法を何とか防ぐということで、国政調査権の行使の場合において、それは委員会で行われる場合が多いと思いますけれども、その場合には、インカメラ方式といって非公開、つまり国政調査権を行使する委員会の委員には知られるけれどもそれ以外のものは接近できないような形で、政府が秘密にしておきたい情報を委員会が入手して、それでいろいろ判断する、適切な権限を行使するという、そういうことが一つは考えられるのではないかなと、そういうふうに思っております。
#49
○益田洋介君 この点に関しまして、第五回の参議院制度改革検討会が平成七年十二月六日に行われました。清水参考人、そのときも御出席いただいていまして、我が党の先輩であります猪熊重二議員が国政調査権についておもしろい観点から発言をといいますか、清水先生に御意見を求めています。
 それは、国家公務員が職務上知り得た機密を漏えいした場合は国家公務員法、さらに地方公務員の場合は地方公務員法によって守秘義務というものが設けられていると。しかし、これは雇用上の契約関係だと。国と国家公務員、地方公共団体と地方公務員との個別の雇用契約関係だから、これが国会議員の持っている国政調査権を妨害するものではない、拒絶の根拠となるものではないと考えると。そういうことで、法律論といいますか、形式論を展開しております。職務上の機密を漏えいすれば雇用契約上あるいは刑法上処罰されるだけのことであって、国政調査に対する拒絶の根拠となってはならないのではないかと。
 これについて、突然の質問だったので、当日、清水先生は十分な答えではないかもしれないがということでお答えをなさっておりますが、その後何かお考えが進展されましたでしょうか。
#50
○参考人(清水睦君) その点についてその後深く考えておりませんので、ここでそれ以上のことを申し上げることはちょっとできません。
#51
○益田洋介君 ありがとうございました。
 次に、前田参考人にお伺いしたいんですが、先ほど、一八八一年のイギリスでの下院選挙の後に、相当、選挙費用についてでございますが、かかったのではないかという公的調査が行われた結果、国民を唖然とさせるような結果が開示されたということをおっしゃっていますが、その後はさまざまな規制法ができてよくなっているようではあるというふうにおっしゃっておりました。
 私の旧来の知人であるサー・ジェフリー・アーチャーという人が、先週の金曜日、公判廷における偽証の教唆罪ということで起訴されまして、第一回の公判がオールドベーリーで持たれたわけでございますが、これは一つは、現職の下院議員の時代に先物取引の違法行為で嫌疑をかけられて議員を辞職した後に起こした女性問題、トラブル、これが要するに名誉毀損罪に相当するということで訴を提起しまして、この際はジェフリー・アーチャーが勝訴したわけでございます。
 ジェフリー・アーチャーという人は、「ケインとアベル」とか「百万ドルをとり返せ」とか、そういった世界的なベストセラーを書いた作家でもありますが、最初の先物取引の後に議員辞職した後も保守党の副幹事長、選挙対策の担当ということで活躍をしておりまして、相当やっぱり金はかかるという話を私にしておりました。ですから、その後のイギリスの現状というのは法律で縛りをかけることによって果たして是正されたというふうにお考えでしょうか。
#52
○参考人(前田英昭君) 私も実態は存じませんけれども、日本と比べればはるかにきれいになっているということでございます。
 一八八三年というともう十九世紀の終わりでございますね。そういった事件が起こったときにそれなりの規制をして、例えば今日、我々といいますか、先生方にとっては大変厳しい連座制の強化というのが一八八三年に既に実施されていたわけでございまして、それがそういうふうな厳しい対応でなければ何とかならないという、そこまでやってしまうということでございますね。そういうふうなことをやり、それでもなお何か問題があれば、例えば大臣の場合の、先ほど先物とおっしゃいましたが、大臣の場合の株取引の問題、そういったようなものが大臣についての規制をかける、行為規範を厳しくするというふうな、それぞれの事件が起こったときにそれなりの厳しい対応をして今日まで来ているという、これが大事なところでございます。
 私は先ほど、今回のこの法案というものについてやむを得ないというような意味での賛成の趣旨を申し上げましたのは、例えば名簿登載の決定について疑いがあったら、これは何とか手を打つという、これが政治ではないのか、一つでも二つでも。そして、協議会でいろいろ議論されているそういうような抜本的な改革はどうぞおやりくださいと。その過程で何か起こったら、それはそれなりに一つずつ処理をしておく、だめだったらまたやる、さらにもっと大きな手術をしなければならないならば抜本的なことをまたやっていただくという、そういうふうなことの繰り返しがイギリスで行われているというふうに思っているわけでございます。
 そういうふうなことの中で、今おっしゃった例でいいますと、いや、まだ割に金はかかっているんだよとおっしゃれば、それはかかっていると思います。ただ、日本と比べると個人で使う金が少ないという、これだけは事実でございます。それは政党というものがしっかりしておりますから、政党がすべて前面に出て、政党が個人的な候補者の活動を支え、例えば立候補したいということなら、全部お金を持ってくださるというわけではないけれども、ほとんどそういうふうな形でやってくださる。ですから、個人が金を使わない、調達する必要がないとすれば、個人が腐敗といいますか買収とか、そういうふうなことを起こす可能性はずっと少なくなるという点で大きな違いがあるだろうと。
 例えば、我が国で連座制が導入されて以降、一九九四年から導入されて大変厳しく、何件か裁判の例がございます。イギリスの場合にいきますと、最後の場合が一九二三年、それ以後ないと。だから、日本で勉強に行かれましても、その担当の方が、いや、どうだったかななんて手続を調べなきゃならないというふうな話を聞くたびに、日本と大きく違っている、そういう傾向だけは看取できるので、日本と同じだというふうにごらんになるのは、私とはちょっと意見が違う。
 それぞれイギリスにも、それからドイツでも、この前のコールさんのああいう問題でございますね、いろいろ出ている。これは、政治というものはなかなか難しい、金との縁は切れないものだなと思いつつも、それぞれに問題が出てきたときに一つずつ適切、後では適切でないかもしれないが、そういうふうな手を打ってくる、これを政治としてやっていることを私は教訓として学んでいるわけでございます。
#53
○益田洋介君 最後に一問だけお願いいたします。
 前田参考人、ジュリストの二〇〇〇年の五月号にお書きになった中に、昭和五十七年、拘束名簿式の制度が比例選挙に取り入れられるようになって期待されていたのは、資金力や組織力を持っていない有為な人材がどんどん当選してくる、全国的規模で、というふうなお考えが、しかしながら実際選挙を経てきた結果として、名簿上有為な人材というのは若干名に限られて載るようになってしまった、だから当初意図していた所期の目的とは全く違う方向になってしまっていると。それが今回の非拘束名簿導入によって改善されると、そのようにお考えでしょうか。
#54
○参考人(前田英昭君) これは私が政党の幹部であればぜひそうしたいと思うのでございますが、また一学者でございますから何ともわかりませんけれども、五十七年の比例代表制を導入したときの当初、今の方は忘れられておりますけれども、衆議院と参議院の選挙は同じだというふうにお思いになる方々は多うございます。ですけれども、当時制定された、現在に至る公職選挙法の参議院の比例代表制を見ますと、確かに非党派の人を載せるということ、これは何の意味があるんだろうかと。
 今申しましたように、出たくない人でも、推薦するから出てください、選挙運動しなくていいですよ、一番に持ってきますと。そうすると出るんです。今度は出られないですね。自分は何もしませんじゃだめですから、票を持ってこなきゃならない。だから、そういった意味で五十七年の当初の期待が事実上裏切られた。
 その陰には、先生方を前にして大変申しにくいことでございますけれども、やはり党員以外のそういう方々を名簿に載せる、候補者として持ってくることは、いわば現政治家の既得権を奪うことになるわけでございます。例えば、一人であればいいですけれども、じゃ十人の非党派の方を持ってきてやったらいいじゃないかと。十人の現職議員というか、この次の立候補予定者の中から下へ下がってきて落選するということも、これはやはり政治家として大変難しい問題に逢着する。私から見ると、政党とはやむを得ないのかなと思いつつも、そういうふうな運用の仕方をされてきて全然なくなってきたというその過去の経過を見ますと、今回も残念ながら成功するとは思わないのでございます。
 ただ、じゃ、ほっておいたらいいのか、何にもしなくていいのか。そうではなくて、やはり手を打ってだめだったらまた手を打ちましょうと。そういうふうなことを含めて、今回は急だったわけでございますが、急でもとにかくやってみましょう、だめならまた変えると。
 それから、一票の重みについても、どうも国会側は鈍いのでございます。こういった問題も何とか一つずつやっていく、そのやっていく姿に国民が、何となくやっていてくれるという安心感、あるいは一票の重みが、衆議院と違っていても、ああそうか、我々のところとは考えるところが違うけれども何となく動いているという、そういう気持ちが国民を安心させる。その安心がやがては納得になる。そして、我々が選んだ参議院議員のことならまあ大丈夫だろうという、そういうふうな感覚、意識に変わってくることを期待したいし、そういうふうに政治家、選ばれた人たちはしてくださるような私は義務があるのではないかというふうに思っております。
 ですから、必ずしも成功するかどうかわかりませんですし、やはり無理ではないかなという気がしていますけれども、だからといって何もしないというのは政治ではないと思います。やはりやってみる、だめなら変えてみる、そういうことでございます。
#55
○益田洋介君 終わります。
 ありがとうございました。
#56
○木村仁君 せっかくの機会でございますので、時間が限られておりますが、一問だけ御質問をさせていただきます。前田先生にお願いをいたします。
 前田先生は、この名簿作成過程の透明化、民主化の第一の対応策として、名簿作成過程の届け出制あるいは罰則、そういうものについて、公職選挙法八十六条の五を引用されました。今回の制度改正後は順位を決める必要がないからこれほどのことが必要でないということであろうかと思いますけれども、平成二年に審議会が答申していただいたこの内容が今回も入っていないわけでございますけれども、私は、この問題が起きましたときの最初の私の感じは、ああ自民党で予備選挙か何かやって順位を決めて出すのかなと思ったんですが、長年顔の見える選挙をしたいという願望がありましたからこういう形になっております。
 しかし、やはり四十八人まで今度は出すのが一番効率的なのか、もう少し減してお金をかける方が効率的なのかわかりませんけれども、枠は四十八人まであると。したがって、余裕はあるからそれほどの必要がないのかもしれませんが、実は私自身まだ、もっと多くの候補者を政党内で党員に選んでもらって順位のつかない名簿をつくるということも可能ではないかなと考えておりますし、またその策定過程も、法律上届け出等の義務を課せないとしても各政党が公表して、こういう形でやっておりますということをしっかり国民に公表していくということが大変有意義ではないかなというふうに考えておったのでございますが、その点について御感想をお聞かせいただきたいと思います。
#57
○参考人(前田英昭君) 二点あったと思います。
 後の方は全くそのとおりといいますか、予備選挙になるのがですね。公開の手続をきちっとされるということ、これはやはり政党として大事である。日本の政党というものがほかの国の議会の先進国の政党と比べると近代化していない、旧態依然だというふうに私は考えているわけでございますけれども。
 候補者を出す、言ってみれば政党は候補者を育て、そして政治家として一人前にさせる責任がある。ほかに政治学校はございません。政党が政治学校なんです。そして私は、議会というものはトレーニンググラウンドだというふうな考えを持っております。それは若い人が当選されて、やがては大臣になり、世界の政治家と対等にやっていく、そういうふうなところでございますね。だから、そういう最初のところの、政治家としてどういうふうな人たちを候補者として選ぶかというそのところは大事だと思います。そして、そのことをきちっとして候補者名簿に入れるということですね。これは全く同感でございます。
 それから、もう一つは、その定数いっぱいということでございますか、それ以上載せたらどうかというような意味も含めてでございますか。
#58
○木村仁君 私の理解で、四十八人までで制限があるから、ゆとりがあるから、名簿に載っかるか載っからないかで争うということは余りないのかもしれないけれどもということを前提としてです。
 もう一つの質問は、この八十六条の五が参議院議員には準用されておりませんし、今度も新たに立法されておりません。しかし、将来、やっぱり順位の定めない名簿でもこういう手続が、八十六条の二には少しありますけれども、必要であろうかという御質問でございます。
#59
○参考人(前田英昭君) 政党の決めることでございます。必要でございます。それは名簿のどなたかを政党が責任持って推薦する、それはどういうふうな基準に従ってだれが決めるのか、これをはっきりさせる必要があります。これは、今の公職選挙法に九四年に入ったというのは大変貴重なことなんです。これは衆議院だけではなく参議院にもぜひ適用するような改正をお願いしたいというふうに思っております。政党としては衆議院も参議院も同じでございます。
#60
○木村仁君 終わります。
#61
○委員長(倉田寛之君) 他に御発言もないようですので、以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたします。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後一時から委員会を再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#62
○委員長(倉田寛之君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 午前に引き続き、本案の審査のため、参考人の方々から御意見を承ります。
 午後は、京都大学大学院法学研究科教授大石眞君及び日本大学法学部教授田中宗孝君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議事の進め方でございますが、参考人の方々からお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、まず大石参考人からお願いいたします。大石参考人。
#63
○参考人(大石眞君) 大石でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 ちょっと時間的な関係で、金曜日の夜にこういうお話が参ったものですから、レジュメをつくるのが容易ではありませんで、ようやく先ほどこのような形でレジュメを用意いたしました。ごく簡単なものでございますが、お目通しをいただきたいと思います。補足しながら話を進めてまいりたいと思います。
 私の方は、この次に田中先生、非常に選挙制度にお詳しいお話があろうかと思いますので、選挙制度の技術的な論議に立ち入るというのではなくて、むしろ憲法論として考えるべき要点というのをお話しさせていただきたいというふうに思います。
 その場合にどういうスタンスで選挙制度を考えるかということで、まず「基本的な考え方」というふうに題しまして三点ほどまとめております。これはもう御承知のことでございますから釈迦に説法ということになりますけれども、とかく見落とされがちな要素がありますので、あえて三点ほど挙げておきました。
 まず第一は、両院の関係ということですから、両院制の趣旨、あるいは二院制といいますか、そういうものの趣旨に照らして、各議院、各ハウスの組織、権限及び手続といういわば三点セットという形で有機的に関連させて考える必要があるだろうと思いますが、参議院のあり方につきましても、それ自体としてではなく、常に衆参両議院の関係を意識しながら、組織、権限などの問題を議論する必要性を感じております。
 二点目ですが、そういうふうに憲法が両院制、二院制を採用しているという趣旨からいたしますと、両議院はそれぞれ独自の機能を果たすことが望ましい。そうすると、そのためにはそれぞれの組織法といいますか、組織法というのは要するに議院の選挙法ということですが、それぞれの組織法、議院選挙法もできるだけ異なった原理に立つことが望ましいということになるんだろうと思います。
 今回の選挙制度の改正案をめぐっては、いろいろな考え方があろうかと思います。政治的な状況の問題もあろうかと思いますが、ここではそういう方面には私は一切立ち入らない。ですが、ただ、公職選挙法の定める現行制度を前提とした議論の場合と、必ずしもその現行制度にとらわれない議論とがあり得るというふうに考えるわけであります。
 そこで、以下では、第三の大きな項目のところに書いてありますように、こういう一応の場合分けを前提としながら、私なりの考えを述べさせていただきたいと思います。
 そこで、第三の今回の改正案についてということでございますが、大きく分ければ今回の改正案というのはポイントは二つ、一つは参議院議員の定数削減問題ということ、もう一点は非拘束名簿式比例代表制の導入という問題でありまして、この二点に大別されるであろうと思います。
 その第一点の方から、以下(1)、(2)、その具体的な説明をもう少し詳しくしてございますが、まず先ほど言いましたように、公職選挙法が定める現在の制度というのを前提とした場合にどうかという議論でございますが、現在、先般改正されました衆議院の議員定数四百八十というのは、憲法とかを研究している立場の方からいいますと、人口との関係を見てみると、諸国と比べてかなり少ない部類に属するわけです。アメリカの場合は連邦制でちょっと独特ですが、ヨーロッパでは一般的に言えば人口約十万人に対して議員一人というのが常識的でございます。この点から、先般の衆議院議員定数の削減というのはやや問題だというふうに考えるものでありますが、この状況を前提とする限り、参議院の議員定数までさらに削減しようというのはやや賛成しかねるというのが率直な気持ちでございます。
 ただ、こういうふうに選挙区選出議員を二名ずつ三県にわたって六名削減するということでありますが、この削減の方向というのは、いわゆる一票の格差の問題、議員定数不均衡の問題というものが片方でございますので、それに対応するというものとしてはやむを得ないというところがあろうかというふうに思っております。
 しかしながら、そういう点ではやむを得ないと思っておるわけですが、これによって二人区がまたふえるということになります。このことは、一回の通常選挙の場合でいいますと、比例代表制と小選挙区の組み合わせということになりまして、結局のところ衆参両院の組織法というのは非常に似通ったものになるという結果になります。
 そうなりますと、これはいわば小手先の議論という印象がありまして、これでは常に、つまり定数不均衡という問題を意識しながら削減問題、削減のみに限りませんが増減問題を扱うということになりますと、いわば常に国勢調査と最高裁判所判決との対応に追われるということになってしまいまして、根本的な解決にならないのではないかというのが率直な印象でございます。
 そうすると、現行制度にとらわれない場合にどう考えるかということが当然浮かび上がってくるわけでして、これが(2)のところでございます。
 ここでも幾つか、そこでは二点ほど加えておりますが、もう少し補足しながら話を進めますと、両議院の権限関係、衆参両議院がどういうお互いに権限を持つかという、あるいはその効力がどちらが上回るかという関係として考えますと、憲法上は御承知のとおり、いわゆる衆議院の優越という形で明文で固定されているわけでございます。しかも、衆議院の組織法というのは、これは諸国で言えばいわゆる下院に相当するものでございまして、議会制度そのもののいわば公理、アキシオンといいますか、これ自体としては認めざるを得ないというような要素がありまして、当然に、したがって広く国民によって選出される直接選挙制でなくてはならないということがありますし、さらにその議員の数というのも相当数以上あるということがやっぱり予定されているように思います。
 先ほど、ちょっとヨーロッパの例を言いましたけれども、必ずしもそこにぴったり合わせる必要はございませんけれども、その議員数も相当数あるということは、例えば憲法が予定しているところだろうと思います。この意味からしますと、衆議院の場合には先般の改正前、すなわち五百でも実は少ないぐらいだろうという印象を私は少なくとも持っているところでございます。
 さて、これに対して参議院の組織法、つまり参議院議員の選挙制度につきましては、そういう意味での議会制度の公理、これは前提として認めなくてはならぬという要素は、統一的なものはないように思います。
 そこで、参議院につきましては、思い切って異なった選挙方法に切りかえるということも考えるべきでありまして、最高裁判所の言葉をかりれば、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国会、国政とも言っていますが、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国会に反映させること、すなわち公正かつ効果的な代表ということを説くその最高裁判所もそういった思い切った選挙方法の切りかえというのを否定するわけではないように思います。
 その上で考えますと、理論的にはいろいろ議論がございますが、参議院議員の場合には、いわゆる間接選挙制とか複選制、あるいはその間の準間接選挙制といったものも憲法上は認められるというふうに思います。もちろん、これに対して、学説の上では直接選挙でなくてはならぬという強い主張もございますけれども、一方で間接選挙も理論上は可能だという説も相当に強い流れとしてございます。もしそれが現代の選挙民の感覚あるいは政治に携わる者の感覚として難しいと、あるいは無理だということだとすれば、思い切ってその地域代表的性格を徹底するという方向も一案であろうと思います。
 例えば、各府県一律に三名とするといったことなども考えられようかと思います。ただ、これはしっかりした基礎があるわけではなくて、ある程度私の思いつきみたいなところがありますが、二人ですと小選挙区になってしまうので困る、三人ということを考えております。このときに、三人ということになりますと裏表で困るではないかということも考えられますが、ブロックで分けるということも当然考えられるわけですね。だから、ある区では三人来年の七月に一挙にかえる、その三年後には今度は別のブロックの府県で選挙をすると。三人一緒にするということになりますが、いわばある意味でのいわゆる中選挙区の方式をとるということも考えられようかというふうに思います。
 ただ、これは以上申しましたように、現行制度にとらわれないということを前提としている話でございますので、その程度にお聞きいただければありがたいと思います。
 さて、もう一点の今回の改正のポイントというのは、非拘束名簿式比例代表制の導入という問題でございますが、これにつきましても、現行制度を前提にした場合とそうでない場合ということで少し私なりの考えが違ってまいりますので、やはり場合分けにして考えてまいります。
 まず、現行制度を前提とした場合のことですが、この非拘束式という制度を導入することによって個人本位という要素が強まることになることは確かであります。
 このことは、以下に述べますような観点から見て(2)、現行制度にとらわれない場合のところに実質的には書いてございますが、その点から見て望ましいというふうに考えております。
 無論、この点につきましては、旧全国区の復活となる、あるいは選挙資金の面でも非常に大きな負担になるといったような批判などがあり得るということは承知しておりますが、このこと自体は法律論の問題というよりも、むしろ政治的な決断の問題であろうというふうに私としては考えております。
 さて、その現行制度にとらわれない場合ということですが、実は実質的ないろいろ述べたい理由がございますけれども、衆議院が内閣を形成する機能を持つ政党中心のハウス、議院であるということであれば、参議院はそれに対する抑制その他の別の機能を期待されているというふうにひとまずは考えることができる。ここで参議院に期待される機能というのは、少なくとも日本国憲法が予定する議院内閣制のもとでは、政党を中心として政権を形成し、あるいは維持する、あるいは支持するという衆議院に対して、そういう政党政治の論理とは異なる観点からこれを抑制するということでありましょう。
 また他方、参議院というのは、半数改選制ということによって、全部入れかえ制をとります衆議院のように一度の選挙で大きく勢力分野が変わるということが必ずしもないという点があります。そういう意味で、いわばよい意味での保守性といいますか漸進性といいますか、あるいは人によっては継続性という言葉を使う方もいますが、そういうことを持つこともやはり期待されているのだろうというふうに思います。アメリカのようにこれが三分の一ずつ改選ですともっと、フランスもそうですが、三分の一ずつということになりますと、もう少し緩やかな変動ということになるんだろうと思います。
 さて、そういう機能の違いがあるとすれば、それを明確になるようにするためには、その組織法を、あるいは議員選挙法というのをはっきり違った形のものにするべきであるというふうに考えられます。そこで、衆議院組織法、衆議院議員選挙法につきまして政党中心の比例代表制、それを加味した小選挙区制を採用するということでありますなら、参議院の組織法としては政党中心になるような選挙制度というのは避けるべきでありましょう。したがって、現行制度を前提とした場合でも、個人本位の要素が強まるということは基本的に賛成であるということになるわけで、そのことは先ほど申し上げました。
 参議院につきましては、今言いましたように、できるだけ個人本位の選出方法を考えることはやはり望ましいと私は思いますし、先ほど述べましたように地域代表的、その選出単位としては地域代表的性格を徹底するというのも一案ではないか、そのように考えている次第であります。
 もう少し時間的な余裕、この場の時間ではございませんで、私、実は先週から学会等で七、八、九東京、それで十、十一、十二また東京というふうに机の上でじっとしている時間がございませんで、いわば必要な機材もそろっておりませんで、こういう雑駁な話になって大変申しわけないんですが、以上の程度で私の意見の陳述というふうにさせていただきます。
 どうもありがとうございます。
#64
○委員長(倉田寛之君) ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人。
#65
○参考人(田中宗孝君) 日本大学法学部の田中でございます。
 大変重要な法律案の審査に際しまして意見を述べる機会をいただきまして、まことに光栄でございます。倉田委員長を初め、関係の皆様に心より感謝申し上げる次第でございます。
 なお、先ほどお伺いいたしましたところでは、本日の委員会には野党各党の委員はほとんど出席されていないとのことでございます。与野党の各委員が出席されている委員会において意見を申し述べることができますことを期待していたのでありますが、本日の委員会がこのような状況にありますことはまことに残念でございます。
 議題となっております公職選挙法の一部を改正する法律案について意見を申し上げます。
 参議院議員の選挙制度の抜本的な改革を行おうといたします場合には、参議院そのものの役割やあり方を明らかにした上で、それを前提として選挙制度のあり方が論じられるべきものであると存じますけれども、今回の法律案はそのような前提のもとに立案されたものではないようにお見受けいたしますので、恐らくは、抜本的な改革をしようとするものではなく、現行の選挙制度を前提としながら、必要な範囲において手直しをしようという趣旨のものであろうと理解いたします。
 なぜこのようなことを申し上げるかでございますけれども、比例代表制は政党中心の選挙を行う仕組みであります。このことは、現行の絶対拘束名簿式比例代表制でありましても、それからまた今回の法律案で提案されている仕組みでありましても、基本的に異なることはないのであります。参議院議員の選挙制度として比例代表制を採用するということは、参議院議員の政党化、すなわち参議院の政党化に直ちに結びつくものであります。これは参議院の役割やあり方と密接な関係のある問題であります。したがいまして、参議院議員の選挙制度の抜本的な改革について論じるのであれば、参議院の政党化や比例代表制採用の適否の問題を避けて通ることができないのでありますが、先ほど申し上げましたように、今回の法律案は現行制度の部分的な手直しをしようとするものであると理解いたしまして、本日はそのような問題につきましては言及しないことといたしたいと考えております。
 そこでまず、比例代表制の仕組みについて申し上げますと、言うまでもなく、比例代表制は各政党が得票率に比例した数の議席を獲得するという考え方を基本とするものであります。この限りにおきましては極めて単純明快なのでありますが、それにもかかわらず、諸外国で採用されている比例代表制の仕組みを比較してみますと、国ごとにそれぞれ異なった仕組みとなっているのでございます。それにはさまざまな原因があると思いますが、主なものといたしましては、各政党が獲得した議席に対応する当選人をどのような方法で決定するのか、言いかえますと、当選人の決定に有権者の意思をどのように反映させるのかについてさまざまな考え方や仕組みがあり得るということを挙げることができると考えます。
 現行制度と今回の法律案で提案されている仕組みとの違いは、ただいま申し上げました当選人決定の方法にあるわけでありまして、各政党があらかじめ定めた順位によって当選人を決定するという現行制度も一つの合理性のある仕組みだと存じますけれども、有権者が名簿に登載された候補者の中からいずれかの候補者を選択して投票することができるようにすることによって、当選人の決定に有権者の意思を反映させようとする改正案もまた合理性のある仕組みであると言えるものと考えます。
 このように、改正案におきましては当選人の決定に有権者の意思が反映される仕組みとされているのでありますが、この場合、留意する必要があると存じますことは、改正案におきましても、比例代表制であること自体につきましては何ら変更が加えられていないという点であります。
 比例代表選挙の名簿は各政党が作成して届け出るのでありますし、候補者名が記載された投票は政党名が記載された投票と合わせて各政党ごとに集計され、これらの得票数に基づいて各政党の獲得議席数が計算されるのであります。さらに、名簿に登載されていたけれども当選しなかった人は、六年間にわたって、同じ名簿から当選した議員が欠けた場合には繰り上げ補充により参議院議員となる可能性が残されております。このように考えてみますと、改正案による比例代表選挙におきましても、現行の比例代表選挙と同様に、各政党は政策及び候補者の選定について有権者に対して大きな責任を負っているというふうに言うことができると存じます。
 政党がこのような大きな責任を負う選挙におきましては、選挙運動もまた政党が中心になって行うこととすることが必要であると考えます。今回の法律案では、政党が行う選挙運動は、新聞広告、政見放送及び選挙公報にほぼ限られており、その他の選挙運動は候補者が行うこととされておりまして、選挙運動は政党が中心になって行うのだという考え方が明らかにはされていないように感じられます。
 これと関連して、いま一つ留意する必要があると存じますことは、かつての全国区制に係る経験をどのように生かすかであります。
 旧全国区制を比例代表制に改める公職選挙法一部改正法案が成立いたしましたのは昭和五十七年の第九十六回国会でありますが、同年七月十六日の参議院本会議で行われた討論において、自由民主党・自由国民会議の中西一郎議員は次のように述べておられます。すなわち、全国区制について、「立候補する側にとっては、多くの場合、全国的な政治活動に膨大な資金と過酷な肉体的負担を余儀なくされ、大きな組織や団体に頼るか、またはテレビなどを通じて名前が売れていないと出られないというのが実態となっております。こうした個人本位の選挙では有為な人材は出ようにも出られないということとなり、参議院にふさわしい人物がより出やすくなるように制度を改めるべきことは、かねて各方面から指摘されてまいったのでございます。」と述べられており、また、同じ討論の別の箇所におきましては、「ごく特定の例を除きまして、」、中略でございますが、「全国区候補者が選挙の前から北海道から沖縄まで後援会の組織づくり、報告会等に走り回らなければ当選がおぼつかないことになり、経費が膨大になっているのもこれは皆さん御承知のとおりでございます。制度としては国家的に有能な人材がより立候補しやすくすることが求められていると言わなければなりません。」とも述べられています。
 今回の法律案の提案理由説明におきましては、旧全国区制のときの選挙運動よりも大幅に抑制することとしている旨述べられておりますし、旧全国区制の当時よりも参議院議員選挙の選挙期間が短くなっているという事情もありますけれども、候補者名による投票の多寡によって当落が決まるということになります以上、各候補者ごとの全国的な政治活動の展開やこれに伴う過酷な肉体的負担、大きな組織や団体に頼るか、テレビなどを通じて名前が売れていないと出られない、さらには膨大な選挙資金が必要になる等々のような旧全国区制当時の状況が再現されるおそれが大きいのではないかと考えられるところでありまして、この点について危惧の念を抱いているところであります。
 次に、参議院議員の定数の削減について申し上げます。
 参議院議員の定数につきましても、本来は参議院の役割やあり方についての議論を前提として考えるべき問題であろうと存じておりまして、そのような前提なしに、単純に議員数は少なければ少ないほどよいと考えるものではありませんけれども、参議院の意思としてこの際多少の定数削減をしようということであれば、もとよりこれに反対する理由はないものと考えております。
 ただ、若干の意見を申し上げますと、選挙区選出議員の定数配分につきまして、今回の法律案に盛り込まれております各都道府県ごとの定数は、何らかの一定のルールに基づいて計算した結果として得られた数値ではないもののように見受けられます。今後の問題として、選挙区選出議員の定数配分について何らかのルールを定め、五年ごとあるいは十年ごとの国勢調査の結果による人口が明らかになった段階で各都道府県ごとの定数が自動的に定まるようにされることが望ましいものと考えておりますので、ぜひ御検討いただきますようお願い申し上げたいと存じます。
 最後に、特に申し上げておきたいと思いますことは、選挙と申しますものは、主権者たる国民が主権者としての権利を行使するほとんど唯一で最大の機会でありまして、したがいまして、選挙制度は主権者としての権利行使の方法を定めるものであるということであります。
 そこで、国民の一人としてお願いしたいことがあります。それは、選挙制度を改正しようという場合には、今なぜその改正が必要なのかについて国民に対してわかりやすく説明していただきたいということであります。私は、本日この委員会におきまして意見を述べますために各種の資料を参照したのでありますが、今なぜこの改正が必要なのかについて、責任あるわかりやすい説明に接することができませんでした。
 インターネットで拝見いたしましたところでは、自民党内での議論の中で、なぜこの時期の改正なのか理解できない、国民に説得力ある説明が必要だなどの問題点の指摘があったとのことであります。また、参議院公明党内でも、国民には唐突感があるのではないか、国民にわかりやすい説明が必要だなどの意見が出されたとのことであります。
 これらの問題点の指摘や意見にもかかわらず、国民に対してわかりやすい説明がなされていないのはなぜなのか、理解に苦しむものであります。このような状況のもとで、国民の側でやはり党利党略なのではないかというふうに受け取ったとしても、それをマスコミのせいにすることはできないのではないでしょうか。
 御参考までに申し上げますと、例えば民主党のホームページでは、これまでの経過やこの法律案の問題点などについてそれなりにわかりやすい説明がなされていました。
 さらに言えば、国会において与野党間で白熱した論議が展開されれば、国民はマスコミによる報道等を通じて法律改正の必要性や問題の所在を知ることができます。しかし、国会の現状から見て、現段階ではそれも望めないことのように思われます。
 誤解のないように申し上げておきますと、私自身は党利党略による法律案ではないということを信じたいという立場の者でありますが、特に与党各党におかれましては、党利党略によるものでないこと、そして、今なぜこの改正が必要であるのかを主権者たる国民に対して明確に説明されることが与党各党に対する国民の信頼を維持するという見地からもぜひとも必要なことであろうということを申し上げまして、私の意見の陳述を終わらせていただきたいと存じます。
 ありがとうございました。
#66
○委員長(倉田寛之君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 なお、参考人にお願い申し上げます。
 御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 それでは質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#67
○入澤肇君 お二人の参考人、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
 我々が期待していた、もう少し我々を弁護してくれるような、擁護してくれるようなお話かと思いましたけれども、若干消極的なので、がっかりはしないんですけれども、幾つかお尋ねしたいと思います。
 まず、大石参考人にお伺いしたいんですけれども、定数削減の問題とそれから非拘束名簿式比例代表制の導入問題につきまして、「現行制度を前提とした場合」、「現行制度にとらわれない場合」と並列的にお書きになっていますけれども、現実的あるいは具体的可能性という観点からしたらどちらに重点を置いて先生でしたら御主張されるか、お伺いしたいと思います。
#68
○参考人(大石眞君) どうもありがとうございます。
 私の説明が至りませんで、言葉が足りませんでした。
 現行制度にとらわれないというのは、実は憲法制定の過程のときにさかのぼるわけですけれども、憲法で権限、手続をある程度定めた、その場合に、本当はどういうふうにハウスを組織するかという選挙方法についてまで踏み込んで書かないことには、せっかく憲法で掲げた権限、両議院の関係というのが実は元も子もなくなってしまうというおそれが十分にあるわけです。
 その点から私が申し上げたのは、一たん戦後の憲法が制定され、その後選挙法がしばらくして今のような形になりました。それがずっと前提となって、この枠組みでしか考えられないのではないかという点を何とか打破したいという気持ちがございまして、その上での現行制度にとらわれないということでございます。
 現行制度にとらわれないということは、現在の公職選挙法にとらわれないという意味と、それから、思い切って例えば、どういうふうに展開されるかわかりませんけれども、憲法のこの部分を改正してこうした方がいいではないかと。先ほどちょっと申し上げましたように、組織の問題を憲法に明文化しないということになりますと、せっかく憲法で予定している両議院の関係というのがかなり違った形になるというおそれがあるものですから、多くの国では、権限の問題を定めるなら当然に憲法に組織の方法も定めるというのが出てきているわけでして、その二つを含んだものでございます。
 もちろん、なかなか憲法改正という問題はどう動くかわかりませんが、まず現実的な現在の可能性はないわけですね。したがって、公職選挙法の全体の仕組みといいますか、考え方をできるだけ大きくいじらない形で変えるということも現行制度にとらわれないということに含まれるんですけれども、それもかなり現在の時点では難しいということであれば、とりあえず現行制度を前提とした場合にこの改正について評価をするということになろうかと思うんです。
 その点につきましては政治状況によっていろいろな御批判があろうかと思うんですけれども、要するに、余りに議員の定数を少なくするということには私は基本的に賛成できないということは第一点として申し上げました。
 ただ、とらわれないということに随分私自身とらわれておりますのは、やっぱりセットとして考えないと、衆議院でこういう選挙制度を採用した、そうすると今度は参議院ではどうしようかという別の動きがまた出てくるというのは、どうしても全体の仕組み、憲法的な仕組みを考える上で好ましくない傾向だと思いますので、あえて申し上げたわけです。
#69
○入澤肇君 私も、現時点で衆参両院で憲法調査会で憲法論自身は議論していますけれども、憲法改正ということを前提にして公職選挙法を含めて組織論、権限論、手続論を議論することは現実的でないと思います。しかし、憲法改正ということを前提にしなくても、現行の公職選挙法を見ますと、きのうも実は発議者に質問したんですけれども、一点どうしても気にかかるところがある。
 それはどういうことかといいますと、衆参両院の性格を明確にする、参議院の独自性を主張する一つとして、任期制とか何かはともかくとして、被選挙権、これが三十歳以上になっているわけですね。これは、公職選挙法ができたときには人間の寿命は、日本人の平均寿命が五十か六十というところでございましたけれども、今は世界一の長寿国になっているわけであります。衆議院は二十五歳、参議院は三十歳というこの年齢制限、これは組織論として見た場合に独自性を打ち出すだけの意味がある制度であるのかどうか、これについて大石先生、田中先生御両者から御意見をお聞きしたいと思います。
#70
○参考人(大石眞君) お答えいたします。
 私も、五歳程度の被選挙権の違いがどれほどの意味を持つかというのは非常に疑いを持っております。ですから、思い切って、ほかの国ではそういう例があるんですが、例えばある程度の知識、経験を重んじる。そういう意味での、我々の生きてきた知恵を重んじるという意味では、これは思いつき的な要素もありますが、自分自身の生き方を振り返ってもそうなのでして、例えば四十歳以上というふうにするならある程度の違いが出てこようかと思うんです。
 ですから、おっしゃるとおり、現在の制度では何のためにそういう区別を設けているのか私にはよく理解できないということでございます。
#71
○参考人(田中宗孝君) 大石参考人がおっしゃいましたように、二十五歳と三十歳で十分な独自性が発揮されるという年齢の違いではないように存じます。いっそのこと両方とも二十歳にするとか、従来の枠にとらわれないで新しい発想に立ってお考えいただければよろしいのではないでしょうか。
#72
○入澤肇君 私は、今御質問しましたように、現時点で、社会経済情勢の発展、歴史の流れの中で、現実的な妥当性ということを念頭に置いて議論するとすれば、今の年齢制限の問題であるとか、それから任期制の問題とか、ここら辺についてやはり検討して、新しい制度に移行するようなことを考えていいんじゃないかと実は思っているわけであります。
 そういう中で、先ほどからもう一点重要な議論なんですけれども、定数是正、削減の問題がございます。この定数是正の問題の背景には一票の格差の問題があるわけですね。一票の格差というのは、今のような過密過疎の状況がずっと続いていくとすれば、いつまでたってもこれは是正できない。どうしても不満が残るわけであります。
 最高裁は四・九八倍の一票の格差というのは憲法違反ではない、しかしそれ以上になった場合にはまた別な判断があり得るというふうな判決を下していますけれども、一体どこまでが妥当性があるかというのがよくわからない。
 そこで、制度として、仕組みとしてこれを直すためには、先ほど地域代表制というお話がございましたけれども、地域代表制というのをどのように考えて導入するか。あるいは地域代表制というのを、ブロック制というのではなくて、例えば複数の都道府県にまたがって票をお互いに交換し合うといいますか、密度を高めると。非常に低い、要するに人口が少ないところと多いところを一緒にして平等性を高めていく、追求する、そういうふうなことも考えられるんじゃないかと思うんですけれども、まずこの地域代表制をとった場合においても一票の格差の問題はあるので、これを是正するための具体的なお考えがありましたら御両人から意見をお聞きしたいと思います。
#73
○参考人(大石眞君) 技術的にはなかなか難しい問題を含んでいるように思いますが、とりあえず理念的な面で申し上げますと、私などが漠然と考えていますのは、いろいろな意味での地方分権といいますか、そういう動きが各所で出てきているわけです。
 衆議院をできるだけ小選挙区一本でいくか、あるいは比例代表にするかという問題も衆議院ではあるんですが、いずれにしてもある程度人口に即した形で下院は組織されるというのはどこの国でも常識的であろうと思うんです。
 それに対して、上院といいますか、日本の場合は参議院ですが、では一体どうやってそれを組織、構成するかという場合に、機能の違いを発揮させるというためには、やはり衆議院組織法の原理とは違った原理を採用すべきであるという中でいろいろな考え方が出てき、あるいは候補者の推薦制だとか、過去いろいろな制度が提案され検討されてきました。
 その中で、地域代表制的な性格という言葉は最高裁判所自身もお使いになっているわけですけれども、それは各都道府県にとりあえず最低二を配して、後は順次人口的な要素を加味しながらプラスしていくということがあるものですから、どうしてもそこに人口的な要素を加味するというポイントから不均衡問題というのは必然的に発生する。したがって、この問題は、人口的な要素を加味するというその角度といいますか、その気持ちをずっとお持ちになるのでしたら、永遠にその数字の問題というのはつきまとってまいります。ですから、ある意味でイタチごっこになるわけですね。
 ことしの九月六日の大法廷判決でも、最大格差一対四・九八ですか、その前は一対四・九九で合憲ですから合憲という結論は当たり前だという気がするんですけれども、こういうことで常にいかざるを得ない。先ほど申し上げたように、そうすると、要するに国勢調査と最高裁判決との対応にずっと追われる形になるだろうということになるんです。
 そこで私が注目したいのは、最高裁自身、その要素がほかの仕組み、要素をすべて上回って唯一尊重されるべきだということは何も言っていないということなんです。つまり、現在の配分された参議院議員の定数、それからその他の仕組みを前提とすると、ある程度人口の基準というのは唯一ではないにしても重要な要素になり得るという考え方をとっております。
 そこで地域代表的ということになるんですが、私が先ほど申し上げましたのは、全体の地方分権といった流れも一つ踏まえ、しかも、アメリカ式に割り切るというわけではございませんけれども、要するに人口の多いところだけが何かしら膨らんでしまうということに対しての、私自身は九州の田舎の生まれでありますから、どうしてもそういうことを考えざるを得ない。
 そうすると、各都道府県、都の特別区についてはちょっと別の考慮が必要かもしれませんけれども、各府県等について一応みんな同じ価値を持つんだ、人口にかかわりないということをはっきり哲学として打ち出した上で、そこに統一的な、先ほど一律に例えば三人ということを申し上げましたが、要するにそういう意味での地域代表ということにもう絞り込んでしまう。そこでは、ですからもともと人口に比例するといったような不均衡問題を発生させる余地をなくすという意味合いを含んでいるんです。
 もちろん、これについては強い抵抗があろうかと思いますけれども、衆議院が少なくとも、学説は一対二限度、最高裁によりますと一対三限度というようなことで、いずれにしましても人口比例ということをかなり重視した形で組織するんだとすれば、それとは違う組織の原理を取り入れるのが妥当だろうということでございます。
 ちょっと長くなりましたが、申しわけございません。
#74
○参考人(田中宗孝君) ただいまのお尋ねの中で、一つは大きな府県とその隣の小さな府県を一緒にしてというようなお話がございましたが、選挙区のつくり方といたしまして、全国を一本にするとか、あるいは全国を数ブロックに分けるとか、そういうことならまだしも、大きな県とその隣の小さな県を一緒にするということは私は適当ではないと思っております。
 やはり四十七都道府県がそれぞれ伝統と沿革を持ちまして一つの性格を形づくりながら地域社会として今日まで歩んできておるわけでございますから、たまたま隣の大きな県と小さな県で一緒にされたら小さい方がいわば吸収されてしまうというようなことでございまして、それは社会的な実態から見て適当ではないであろうと思います。
 それから、そういう中で、例えば都道府県を単位とする選挙区を設けて、その中の定数配分をどうするかにつきまして、一定のルールを定めていただく方がいいのではないかと先ほど私は申し上げました。その意味は、ただいままでのところでは、お尋ねにございましたように、一対四・九ならいいとか四・八ならいいとか五・三ならだめだとか、そういう一回ごとの最高裁の判断を仰がなければいけないということになるのはできれば避けたいということを私は言いたいのであります。
 一つのルールをつくりまして、そのルールに従って配分をする。それから、その基礎になる数字が変わったらルールに従って変える。そこで仮に最高裁判所の判断が求められたときに、最高裁判所がそのルールを合憲と判断するか違憲と判断するか。残念ながら違憲と判断されたら、それはまたルールを変えなければいけませんけれども、一たんルールを決めて、それでそれが合憲であると判断されれば後は安心してルールどおりに進めていく、こういう考え方がよろしいのではないかと私は申し上げたつもりでございます。
#75
○入澤肇君 大変ありがとうございました。
 できますれば、ルール、これにつきまして論文でもお書きになりましたら読ませていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#76
○森本晃司君 公明党の森本晃司でございます。
 きょうは両参考人の先生方、大変御多忙の中お見えいただきまして、先ほど来いろいろと御意見を聞かせていただいておりますこと、感謝申し上げる次第でございます。
 そこで、最初に両先生にお伺いしたいんですが、私は午前中にも伺わせていただきましたんですが、先生方、せっかく参考人としてお見えいただいております。今、こうして席、先生方御意見を述べていただくのに空白が目立っています。野党の方で佐藤道夫先生のみがずっとこの審議に加わってくださっているわけでございます。先ほど田中参考人のお話を伺っていましたら、田中参考人も、ぜひここで与党も野党も一緒におるところで意見を述べたいとおっしゃっていただきました。それからまた、参考人のお話の中で、各党のホームページを開いてみると、民主党さんの中に、なぜ反対なのかということもホームページの中に書かれていたとおっしゃっておりました。
 私はその意見を聞きながら、ここでもっと国民がわかりやすい議論を与野党伯仲してやればいいなということを思いましたし、同時にまた、ホームページで、我々が、発議者の皆さんが提案されたものに対するいろんな意見が党として載っているんであれば、なぜこの場に出てきてそういう御意見をお述べにならないんだろうか。反対だからといって審議拒否だという形では、私は果たしてこれは、殊に良識の府であります参議院としての機能、あるいは国民から選ばれた者としての役割を果たしていないんではないかなというふうに思います。
 両先生、大変恐縮でございます。この場に臨んでいただきまして、野党の方の、佐藤先生を除いて審議拒否をされている姿を、きょうこの場に臨まれてどう考えていらっしゃるか、御意見をお伺いしたいと思います。
#77
○参考人(大石眞君) なかなか率直な印象を申し上げにくい要素もございますが、私が小さいころからこういう場面をテレビ等で随分拝見しておりまして、今おっしゃったとおりでございまして、やっぱりそのきっかけがどうであれ動機がどうであれ、言論人は言論を通じて闘わないといけないと。しかも、それは隠れた形ではなくて、公の場で意見をぶつけ合うということが基本であるというふうに思っております。
 参考人の意見ということで打診がございましたときに、できれば皆さんそろっていただきたかったという思いはありますし、きのうの夜もファクスをいただいたんですが、何とか御出席願った上で、私は私なりの考え方を申し上げますし、それに対して大いに御批判をいただきたかったという非常に残念な思いはしております。
 以上です。
#78
○参考人(田中宗孝君) 院の運営に関する事柄でございますので、本日の私の立場においてお答え申し上げることが適当かどうかちゅうちょするものでございますけれども、せっかくのお尋ねでございますのでお答え申し上げます。
 思い返しますと、平成五年でございますが、百二十六回国会の当時、これは宮澤内閣の当時でございますけれども、自民党から政治改革関連法案が提出されました。社会党、公明党から共同して同じく政治改革関連法案が提出されましたけれども、両者の案の内容は極めて異なったものでございました。政治的にも、それから実際的にも非常に大きな隔たりがあったと思います。しかしながら、それにもかかわらず、最終的には衆議院で廃案になりましたけれども、衆議院の委員会におきましては与野党が出席された中で審議が続けられ、それから参考人質疑でございますとか、あるいは公聴会でございますとか行われました。
 第百二十八回国会における政治改革関連法案、これは細川内閣提出の政治改革関連法案と、それから自民党提出の政治改革関連法案でございまして、与野党の立場は百二十六回国会と逆になっておりましたけれども、このときは衆議院、それから参議院、さらには両院協議会まで参りまして、いろいろ紆余曲折はございましたけれども、両者と申しますか、各党が参画されまして大変な大議論がございまして、最終的には大多数の議員が賛成されまして選挙法の改正あるいは政治資金規正法の改正が成立したわけでございまして、当時の政治改革関連法案は、紆余曲折はあったとはいうものの、最後のでき上がりは大変いい状態ででき上がったものと私は理解をいたしております。
 ただいま審議拒否についてのお尋ねがございましたけれども、それは一方で、審議拒否をするということはいいことではないということはもちろんそのとおりであろうと思いますけれども、しかし連立与党のお立場からすれば、やはり粘り強く与野党ともにこの法案の審議をするというような環境をつくっていく努力をされることも大変大切なことではなかろうかと思います。
 したがいまして、私は、審議拒否がいいかどうかというその部分だけを取り上げて尋ねられても困るのでありまして、参議院としてあるいはこの委員会として、与野党が意見は違っても大いに議論を闘わせると、そういう場をつくった上で御審議いただくのが本来のあり方であろうというように申し上げたいと存じます。
#79
○森本晃司君 ありがとうございました。
 大石先生にお伺いさせていただきたいと思います。
 私たち、発議者の皆さんが提案された法案を議論しているわけでございますが、新聞等々を見ますと、全国区の再来かという形での見出しがよく躍っていたりするわけでございます。よくよく中を読んでみますと、決して全国区のあの当時の再来ではないと私は思っています。
 それは、先ほど来、御意見の中にもありましたように、各都道府県に選挙区制度を残している。それから比例区制度も残している。それから、お金の問題について、銭酷区と言われている問題等々については、発議者の皆さんがいろいろと議論していただきまして、そして、かつての旧全国区よりも経費が少なくかかるように御尽力をそれぞれいただき、また、それをみんなで守っていこうとしているわけでございます。
 先生方、この法案を見られまして、旧全国区の再来かという批判に対して、大石先生、それから田中先生も恐縮でございますが、御意見を述べていただきたい。これは本当に再来なのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
#80
○参考人(大石眞君) 全国区の復活ではないかという批判を至るところで目にすることは確かでございます。現に私も先ほどそういうことを言葉を引用して申し上げたわけでありますが、従来の全国区からあるところで、昭和五十八年にかなり大きな改正をしたと。制度がある程度似ている要素があるからといって、あれは昔と同じだという議論をすることが私はまず賛成できないんです。我々が生きている環境も違いますし、それから議員、先生方の心理も恐らく違いましょう。いろいろな要素が絡まって、銭酷区といいますか、変な言い方だと思いますけれども、そういう状況が生まれていると。必ずしも制度一本だけの問題ではないように私は思うんです。
 ですから、有権者の意識もそうですし、もろもろの要素が合わさって、大変な選挙運動をおやりになって、体も酷使されるし、資金の面でも非常に大変であったというようなことはわかりますけれども、今回、今まさに改正されようとするものがそれをそっくり再現するというようなことになるかというと、それはそう断言できるものではなくて、やはり我々有権者自身も試されているところがありますし、これは国会両議院、参議院議員の先生方の心理にとってもそうでありますし、そういう一回試金石を経た上での我々のお互いの行動になるわけですから、再来だ、あるいは復活だと言って、いたずらにその批判面だけを取り出して反対をあおるというのは必ずしも私は賛成しないところでございます。
#81
○参考人(田中宗孝君) 先ほども申し上げましたが、全国区制とは制度の仕組みは異なっております。しかしながら、全国区制で起きた弊害と同種の弊害が起きる可能性があるということを懸念していると、私が先ほど申し上げたとおりでございます。
#82
○森本晃司君 ありがとうございました。
#83
○佐藤道夫君 二院クラブの佐藤でありまして、そのたった一人の、何回も引用されておりますけれども、たった一人の野党議員でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 先ほどから参考人の話を聞いておりまして、特に田中参考人の話、各党のホームページを見ても全然、なぜ今この非拘束名簿方式を導入するのか、それの説明がなされていない、わからない、新聞を見てもわからない。自分がわからないくらいであるから、国民はなおのこと何もわからないだろうと、これはごもっともなことだと思います。
 実は、私自身も非拘束名簿方式という言葉を初めて知ったのはこの騒ぎになってからであります。多分この国会議員の、何人おられるか、半数近く、あるいは半数以上の方も私と同じだろうと思います。ましていわんや国民はいかなる関心も持っていない。
 私も気になるものですから、周辺にいる学生、サラリーマン、家庭の主婦、いわゆる一般市民にどうだと、こういうことを聞いてみましたら、彼らも何も知らないと。何か国会でもめているようですけれども、そんなことは国会で解決してくださいという程度の話であります。
 参考人お二方は、もう大学で法学専門の学生を相手にして講義をしておられるわけでありますから、当然教室の中ではこの問題が沸騰して、これは問題だ、自分はこういうふうに考えると。いや、おれは与党の立場を支持する、先生どう考えますかと、大変な議論が沸き上がっていることは間違いないと思いますけれども、今の学生の関心の度合い、知識の度合いはいかがでございましょうか。どうぞ、お二方。
#84
○参考人(大石眞君) 佐藤先生は私の大学の大先輩でございまして、先回の有識者懇談会でも貴重な意見を賜りまして、またこの場で御尊顔を拝するといいますか、そういう機会に接しましたのはありがたいことでございますが、別なんですね。
 この問題に限らないんですが、現代の若い、私もまだ若いつもりでいるんですけれども、学生からしますと、現在政治でどういう問題があるか、それについて議論し、それについて自分のスタンスを決めるという雰囲気そのものが非常に欠けております。もともとそういう雰囲気でありますから、殊に選挙制度の問題というのはなかなか盛り上がりに欠ける部分が潜在的にございまして、環境からいいますと、いろいろ説明が足りないとか、国民に対するアピールが足りない、理解してもらうという努力が足りないという御意見は当然あろうかと思うんですが、この選挙制度の問題というのはやはり技術の問題を含みますので、正面からの若い人の、あるいは国民一般の関心を引きにくいところがあるんです。
 もちろん私などは、要するに選挙を、選挙法あるいは議院組織法というのは憲法そのものだということで、非常に重要視しているんですけれども……
#85
○佐藤道夫君 簡単で結構ですから。
#86
○参考人(大石眞君) その点での理解が足りないというのは一般の雰囲気として当然あるんだろうと思います、私自身はいら立ちを覚えておりますけれども。申しわけございません。
#87
○参考人(田中宗孝君) 学生の中でこの問題について議論が沸騰しているということはございません。
#88
○佐藤道夫君 この委員会にも委員の半分以下しか集まっていない、それが現状であります。それから、法律専攻の学生の間でも今、参考人のお答えのように、全然いわば議論されていないと。
 これは参議院のあり方、ひいては国会のあり方を決める大変重要な法案だと思います。これをどうしても今実現する必要があるということは、やはり提案する与党がきちっと国民に説明して、国民の理解が足りないと思えば多少時間をかけましても各方面を回って説明して歩く、これは当たり前のことでございましょう。そして、国民の間に知識を喚起する、関心を呼び覚まして議論をしてもらって、その中から各党が自分の方針を決めていって、最後にはこの国会で議論をする、これが民主主義というものだろうと私は思います。
 民主主義というのは結果ではなくて、そこに至る過程が大事だと、こういうふうにも言われております。要すれば、結果だけならば、むしろ独裁者の方がぱっと決めてしまうわけです。かつてのスターリンとかヒトラーあたりは、これでいこうと、それで決まっちゃうわけです。それではしかしいけない。やっぱり一人一人が主権者として議論をしていく。その議論が足りないと思えば、それはどうすればいいかということをむしろ水を向けていくことを考えるのが民主主義国家における政党のあり方だろうと思うんですけれども、そんな努力は全くなされていない。こういう状況で、実はあしたにでもこれを採決して、参議院を通過して衆議院に回そうかという話、新聞報道もなされているくらいでありまして、果たしてこれでいいんだろうかと。先ほど田中参考人おっしゃられましたけれども、なぜ緊急に今やらねばならないのか、その説明を全く私は聞いておりませんし、聞いても恐らく理解できないと思います。
 田中参考人は自治省におられたということなんで、よく御存じと思いますけれども、田中内閣のときに、昭和四十七年、小選挙区制を導入しようということを言い出しまして、あのときは三百近い議席を持っておったと。もう何が何でも数を頼りにやっていくんだというときに、もちろん野党は猛反対、マスコミもこういう大事な問題はじっくり議論すべきであるということで反対の意向を示した。そのときに、衆参の両院議長、これはみんな自民党の人たちですよ。やっぱりこういうことは民主主義の破壊につながると、もっとじっくりと議論をしてから国会に提案してもらう、そうあるべきだということで、衆参両院議長が連名で内閣に申し入れをした。まことに異例な事態だったと、こういうふうにも批判されましたけれども。
 今現在、参議院議長は何一つやっていないんですよ。しようがない、出てこないやつらが悪いんだと、冷ややかにそういうことを言っているだけでありまして、自分が、支配という言葉はちょっと語弊がありますけれども、自分が差配している国会の中の委員会の状況がこうだということにつきまして何の感想もコメントもない。これが果たして議長の資格があるのかと。余り言いたくないんですけれども、つい本当のことを言ってしまったということでお許し願いたいと思いますけれども。
 許されないことだと私は思うんですよ。自分たちの先輩が血を流し汗を流して、あのとき小選挙区のときにああいう調停をしたと。そして、それが踏み台になりまして、それから二十年近く議論が闘わされて、ついに数年前に小選挙区制が導入されたと、こういう経緯もあるわけでありまして、こういうことについて、先生方、憲法あるいは法律学の専攻者として、この参議院のあり方、もっと端的に言いますと、参議院議長のあり方と、こう言ってもいいと思うんですけれども、どうお考えになるのか、端的にひとつお答え願えればありがたいと思います。
#89
○参考人(大石眞君) おしかりを受けないように端的に答えたいと思いますが、その議長の姿勢といいますかあり方というのは、私はここで行われる、あるいは内外で行われる水面下のことはよく承知しておりませんので、直接にコメントすることはできないと思います。
 ただ、与党の説明が足りないということももちろんあるんでしょうけれども、それ以外にやっぱり委員会審査を通じて問題を発見する、あるいは明らかにする、国民の前にアピールするという機能も十分あるわけでして、もともとそれはイギリスでもバジョットの昔から議会が持っている国民に対する教育機能というのはあるわけですから、ぜひこの場でやっぱりいろんな問題点を明らかにしてほしかったという思いはございます。
#90
○参考人(田中宗孝君) 議長がいかなる行動をおとりになるべきかにつきまして、私はコメントは御遠慮申し上げたいと存じますが、いずれにいたしましても非常に異常な事態であるというふうに理解をいたしております。
#91
○佐藤道夫君 そういう異常な状態のままに、仮にあす整理する、あるいは近日中に整理するということになりますと、むしろ学者というよりは国民の一人として、こういう状況について、日本の民主主義を考える上からどういう感想をお持ちなのか、お聞かせ願えればと思います。
#92
○参考人(大石眞君) それは先ほど来お話が出ておりますように、学者と国民とを何か分けるのは自分の立場として難しいんですけれども、やっぱり外から見ている者としては、十分に説明がされ、あるいはお互いに議論を尽くし、多少の乱闘はあるのかもしれませんが、十分時間を尽くしていただきたいという気持ちはもちろんございます。
#93
○参考人(田中宗孝君) 十分に議論を尽くした上でしかるべき結論が得られるものと期待しております。
#94
○佐藤道夫君 ただいま両参考人の結論的なお話を、実は与党の方々が重く深く受けとめまして、今後の審議に反映させていただければと思います。
 国民サイドから見ておりますと、一体何をやっているんだ、与党も与党、野党も野党だと、国会なんてあんなものだ、あんなところは相手にするなというふうな感想を持ち出しているんじゃないかと。こういうおそれすら私は抱いておるわけでありまして、やはりきちっと説明をしていく、国民にも議論に参加してもらう、それだけの資料を国民にも提供していく、これが本当の民主主義だろうと私は信じておりますので、このことを申し述べて、私の方は終わりにしたいと思います。
#95
○委員長(倉田寛之君) 現在のところ御出席を得られていない会派があり、参考人に予定していただいておりましたお時間に余裕があるようですので、これより自由に質疑をしていただきたいと存じます。
 質疑を希望される方は挙手をしていただき、委員長の指名を待って御発言願います。
#96
○仲道俊哉君 自由民主党の仲道でございます。
 きょうはお二人の参考人、大変忙しい中をこのようにお集まりいただき意見をお聞きいたしましたことを大変感謝し、お礼を申し上げたいと思います。
 先ほどから出ておりますように、両参考人とも、異常なこの委員会で、野党の皆様方が出てからのというような本当に率直な御意見をお聞きしましたが、私は実はきょうは出てくるだろうと思ったんです。
 と申しますのは、せっかく外部からこのように参考人をお呼びしておるわけですから、良識の府としての参議院は、私は野党の皆様方もそれだけの良識があるだろうと。少なくともきょうは来るであろうというふうに思っておったわけでございますが、残念ながら同僚議員、国会議員として、参議院議員として、お二人の参考人には大変申しわけなく、失礼をしておることを本当におわび申し上げたいというふうに思います。
 それから、先ほどから佐藤委員の方からもお話がございますが、私は一つ大事な点が抜けておる、今までの論議の中で。マスコミ等によりますと、今回のこの委員会について、自民党の党利党略である、または横暴であるというようなことがかなり報道されておるんですけれども、このことが一つも報道されていないんです。
 まず、この委員会を設置するのに議院運営委員会を実は開いたんです。そして、議院運営委員会を開きまして、そこで民主党と共産党が反対討論を申しました。この委員会設置については反対であるということで、委員会の席上で堂々と反対意見を申したわけですね。そして、そこで議院運営委員会で多数決をとり、多数でこの委員会設置を決め、そしてその後引き続き午後、本会議を持ちました。その本会議のときにも与党、野党両方が集まったんです。出席したんですよ。
 このときに自民党だけが出席をして、そして自民党だけで多数決でこの特別委員会を設置したのであれば、先ほどからいろいろ出ておる意見が私はさもありなんと思うんですけれども、立法府の最高機関であるところの本会議の席で議長からの提案によって、議運の委員会でこのように決まった、いかがですかということで、与野党出席の中で起立多数でこの特別委員会が決まり、そしてその後、特別委員会に対するところの委員の名簿を提出ということになりまして与党三党が出し、そのときには民主党も実は名簿を出したんです。
 ですから、そのときにはこの特別委員会の設置ということは決まっておるわけですね。しかし、その後は、せっかく出した民主党の委員が、今度はいよいよこの特別委員会に出すときに野党の皆さん方と共闘いたしまして出てこない。そういうような経緯があるわけで、このことはほとんど新聞に、マスコミに知られておりませんので、あえて私はこの席で参考人の皆さん方を通して国民の皆様方にこの事実をはっきりお知らせいたしたい、そのように思います。
 それからいま一つ、先ほど議長の問題がいろいろと出ておりました。議長は、十月二日の日に各会派の代表者を集めて懇談会を開きたい、このことで何とか今の不正常を正常化したいということで、実は議長はそれだけの努力をいたしました。それで、十月二日十六時に各派代表者の招集をいたしたわけでございますけれども、残念ながら十五時五十分に代表者の方が、我々としては出席できませんということで、権威ある議長の招集に対しても、その懇談会に出席できなかったという、こういう事実もあるわけでございます。
 私は、議長の権威にかけて、先ほどからいろいろ議長の問題が出ておりますので、そのことも私は皆さん方にお知らせをしておきたいというふうに思います。
 そういうような経緯がございますものですから、ぜひ御理解をいただきたい、そのように思います。
 それでは早速質問に入らせていただきたいと思います。
 まず大石参考人でございますが、参議院は政党よりも議員個人が重んじられなければならないということが持論のようでございます。
 大石参考人も委員を務められた参議院の将来像を考える有識者懇談会が、本年四月二十六日、斎藤議長あての意見書にも議員個人中心の活動を促進して云々と、そのように書かれております。そこで「議員立法の発議要件を緩和する。」、そして「本会議における質疑は議員個人中心のものとする。」といった提言がそのときになされております。しかし、現実には衆議院と余り違わない選挙制度のために政党化が進み、もはや数の論理を避けては通れない現状になっているのは御承知のとおりでございます。むしろ、政党化を回避すべき参議院において衆議院よりも早く政党に投票する比例区が導入された現実を参考人はどのように評価いたしますか。
 また、政党化した参議院を個人中心に戻すために党議拘束を外すべきとの意見が根強いわけですが、参考人はこの党議拘束についてどのように考えるか。この党議拘束については、せっかくですから田中参考人の方にも御意見をお聞きいたしたいというふうにも思います。
 以上です。
#97
○参考人(大石眞君) 報道されていないいろいろな経過についてお教えいただきまして、ありがとうございます。
 議員個人を中心とした活動を期待するということでございますが、この将来像を考えるという言葉からもわかりますように、今直ちにそういうスタイルに変えていくというのは、法制度の整備、改正も必要でございますし、すぐにはできないだろうということは私どもも、私どもと言ってそれを代表して悪いんですが、私自身も重々承知しております。
 先ほど来私がお話し申し上げておりますように、憲法上のある程度権限関係を前提とし、それなりの二院制の趣旨を生かすということであれば、一体、下院と上院と一般的に言われるもの、そこにどういうめり張り、違いをつけておのおの活動していくのかというところから議論を出発させているわけでございます。
 いわゆる党議拘束の問題がございますが、要するに、例えば政権をつくっている衆議院で議院内閣制のもと党議拘束をかけるというのは、これはどこの国でも見られることでありますし、そんなに不思議なことではないと思います。ただし、あらゆる問題についてかなり前の段階で党議拘束をかけて、発言というのがある程度制約されるということになりますのは言論の府にとってはやはりどうかなという思いがしております。
 下院は、衆議院というのは政権与党でありますから、そういう意味ではある程度の拘束はやむを得ないとしても、先般、臓器移植法案についても見られましたように、問題によっては外すとかそういう方向もあり得ましょうし、下院の場合でもそうでありますし、いわんや参議院の場合には、ある程度の政党を単位とした動きというのは私自身やむを得ない面があると思っておりますけれども、できるだけ個人単位にするということであれば、その個人の良心なり内面に照らして自由に判断し、行動できる余地が広がることがぜひ望ましいというふうに考えております。
#98
○参考人(田中宗孝君) 党議拘束についてのお尋ねでございますが、一般的に申し上げまして、ただいまの大石参考人のお話にもございましたように、脳死問題でありますとか、党議拘束を外すという案件がふえるということはあるいは望ましいことであろうかとも思いますけれども、しかしながら現在の議院内閣制のもとにおきまして、それからまた参議院と衆議院において法律の制定につきましてはほとんど同じ権限を持っているというような状況の中で、政府として、内閣提出の法律案の中で極めて重要な法案について内閣が提出した法律案が参議院で否決されて成立しないというようなことは議院内閣制のもとにおいて耐えがたいことであろうと想像するわけでございまして、党議拘束を外すというのは一つの理想論かもしれませんけれども、現実には現在のその他の仕組みをあわせ考えてみますと大変難しい問題があるのではないか、このように理解をいたしております。
#99
○仲道俊哉君 大変ありがとうございました。明快なる御答弁、本当に大変参考になりました。
 次に、大石参考人にお聞きをいたしたいと思いますが、今回改正しようとしております従前からの参議院比例区の我が党の名簿登載者が職域団体や各種団体の推薦によっているという事実ですが、これは野党が労働組合や支持団体を背景にしているのと私は全く同じだというように思うわけです。また、職域団体等の規模が名簿順位に影響を与えることは、野党においても背景となるそれぞれの労働組合等の規模の影響を受ける事情と全く同じであると思います。にもかかわらず、野党や一部マスコミが我が党の支持母体のみをあたかも利権団体のように言うのは事実無根、不公平きわまりない意見だと思うのですが、見識の高い参考人の公平な御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
#100
○参考人(大石眞君) 私は、その点については余り詳しい情報を持っておりませんで、個々具体的な支持母体が具体的にどういう、言葉はちょっとあざといんですが、利権関係を持っているかというのは必ずしも私よくわかりませんので、その程度にさせていただきたいと思います。
#101
○仲道俊哉君 それでは、田中参考人に引き続きお聞きいたしたいと思いますが、今回の改正に当たりまして、また野党や一部マスコミは自民党は有名人を立てて云々と批判をしておりますし、有名人を立てる立てないというのは条件は野党でも同じはずでございます。
 また、現に野党は平成十年の参議院選において某有名解説委員やテレビ出演の多い某弁護士などを擁立しておりまして、こうした批判は的外れだと思うんですが、先ほど田中参考人の御意見の中に、一部そういうマスコミ等また有名人が出るおそれがあるし、非常に危惧をしておるというような御意見を先ほど申されておりましたが、こういう点についていま一度参考人の御意見をお聞きいたしたいというように思います。
#102
○参考人(田中宗孝君) 先ほど私が申し上げましたのは、もちろん自民党に関して申し上げたわけではございませんで、一般論として申し上げたわけでございます。
 それから、私が申し上げましたのは、旧全国区制の当時に、テレビで名前が売れているとかあるいはよほどお金があるとか、そういう特別な方でないと出られない、もっとほかに国家的な有能な人材が出られるようにするにはどうすればいいかという議論があり、あるいはまた弊害もあったということを申し上げたのでございまして、今回どうなるかにつきましては私は特段申し上げたつもりはございません。
#103
○仲道俊哉君 引き続き田中参考人にお伺いいたしたいと思いますが、職域代表や各種団体代表を中心とする比例区は知恵を出し合う良識の府として最もふさわしいというように思っております。
 参議院議員には良識の府にふさわしく、事務次官や局長経験者などの政策通、また大学学長や教授、法律家、医師などの専門家、地方政治の重鎮等々、既にそれぞれの分野において功をなした老巧の士が少なくなく、しかもこれらは比例区において顕著でありますが、御承知のとおりだと思います。職域団体や各種団体が、信頼できる見識の高く即戦力となる人材をみずから代弁者として推薦するのは当たり前の話でありまして、それが結果として政策に熟練し国会の仕組みに通じた族議員となるのは、最初から縄張りや割り当てがあったわけじゃないわけでして、自然にそうなったというふうに思うわけでございます。
 つまり、現在の参議院は、特に今与党三党の人材については側面から非常に重鎮が多うございまして、知恵を出し合う良識の府にふさわしい姿になっておると思うのですが、田中参考人、これまでの経験を生かしまして、そういう参議院に対する御見解をお聞きいたしたいというように思います。
#104
○参考人(田中宗孝君) 選挙制度を論じます場合に、最近は余り言われないのでございますけれども、一昔前は職能代表制の選挙制度をとるべしという議論が非常に広く行われた時期がございます。どうやって職業別に有権者を区別するのかというのは極めて難しい問題であろうかと思いますので、そういうことは現実に少なくとも我が国でとられたことはございませんし、諸外国においても私は寡聞にして知らないのでありますけれども、議論としてはそういうことがあったと。
 それから、参議院の旧全国区の採用されましたときの議論におきましても、職能代表制にかわるものとして全国区制がとられたという経過があったものと理解をするものでございます。
 仮に職能代表制ということになりますと、農業を代表する人もおられましょうし、それから例えばお医者さんを代表する方もおられましょうし、いろいろな職域から代表を選ぶというようなことになるんだろうと思いますけれども、それにかわるような仕組みとして全国区制が採用され、あるいはそれ以後、現在の比例代表制においてもそれに近いような立場の方あるいはそのものかもしれませんけれども、そういう立場の方々がお出になっているということは、私は、別段全く不思議なことではなくて一つの候補者の選び方だ、このように理解をいたしております。
#105
○仲道俊哉君 それでは、最後に大石参考人にお聞きをいたしたいと思います。
 今回の改正によって非拘束名簿となり、同じ党の上位者が五人分、十人分のけた外れの票を獲得すれば、これは極端でございますけれども、わずか数千票や数百票で当選する者が出てくるとも限りません、これは結果で見ないとわかりませんが。
 これは基本的には政党に投票する比例制においても国民感情に反しないかどうか。また、同じ党内または異なる党間で一票の格差の問題が出てくると思うんですが、比例区において憲法問題は出てこないかどうか。また、有権者はA候補を投票させる意思があったのに、結果としてBに投票の効果を付与するといういわゆる票の横流しは憲法違反であるという一部の憲法学者の意見が週刊誌あたりにも出ておるわけですが、この点について参考人の御意見をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
#106
○参考人(大石眞君) 結果として非常に少ない者が当選することがあり得るというのは、それは名簿式をとることの必然の結果でありまして、ですから、先ほどちょっと政治的な決断の問題だと申し上げたのはそのこととも実は関連しておるわけです。
 要するに、一方ではある程度政党中心の考え方でいかざるを得ないところがある、現行制度では。他方で、しかし、やはりその議員個人の個性といいますか、その個人的な魅力というのもやっぱり捨てがたいものがある。そういうことであれば、その要素を加味した形で今度行おうというわけですので、ある程度のそういうばらつきが出てくるといいますか、それは制度として持っているいわば宿命でございまして、その点、もともと私は先ほど申し上げたように政党を前提にした比例代表制そのものについて多少の疑いを持っておりますけれども、少なくとも現行制度のもとではやむを得ないことだというふうに考えております。
 票の横流しというのは、言葉として比喩的に言うとそういう余りエレガントでない表現になろうかと思うんですけれども、それが直ちに憲法違反になるというような問題では私はないと思っております。
#107
○仲道俊哉君 ありがとうございました。
#108
○鶴保庸介君 片肺ではございますが、一生懸命御質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど来のお話を聞いておりまして、私もなるほどなと思う部分もあるのでありますが、納得できない部分といいますか、これまでの議論、我々のこの審議の中でしてきた議論とややそごがあるなというようなところも感じました。特に、この今回の提案について緊急性が欠けるじゃないかというくだりでございます。
 田中参考人のいただきました資料にも書いておりますが、これまで、平成二年の第八次選挙制度審議会でありますとか、あるいは平成六年の参議院議員検討会ですか、といったところでもこれからの参議院の将来像については議論をされておられた。そしてまたその中で、昨日弘友議員もおっしゃっておられましたが、いよいよ国民にもっと近い選挙制度の改革をしなきゃいかぬのではないか、平たく言えば非拘束名簿式といったことも議論に上っておったと。これをするかしないかのことについて緊急性がないと言っておられるのかなというふうにも思ったりするんですが、こういう一連の議論を通じて、田中参考人、緊急性がないと思われた、その御主張されておられるところをちょっと詳しくお話をいただきたいと思います。
#109
○参考人(田中宗孝君) 私は、緊急性がないと申し上げたつもりはございません。
#110
○鶴保庸介君 そうしたら、大石参考人、いかがでしょうか。
#111
○参考人(大石眞君) 私は、一つの法案の中身について御意見を申し上げているので、それに至った経緯がどれほど例えば緊急性があるか、必要性があるかということを直接にコメントするということは差し控えたいというふうに思います。
#112
○鶴保庸介君 先ほど来のお話とちょっと違ってきているような気がするのでありますが、私は、今回のことについて審議するタイミングについて、議論することに、今まさにそういうタイミングが合っていいんではないかというふうに思うんです。
 一つは、例えば私自身も自由党時代、野党でありまして、この法案審議についていつどのタイミングでするか、提案をしてそして審議を持っていくかということについては、提案者、今回は与党でありますが、のある種立場もあるわけであります。
 そしてまた、きょうは午前中の参考人のお話にもございましたが、問題が起こったときに可及的速やかにその問題に対処しなければいけない、そしてそのことをスパイラルに繰り返していくことによって漸進的に新たな制度に、よりよい制度になっていく、これがイギリスの例でもありますというような、きょう午前中の参考人のお話もございました。私はそのとおりだと思う。
 また、例えばきょう入澤議員が先ほどおっしゃいましたけれども、これからの参議院の将来像を考えたときに、こんなふうにしていかなきゃいけないんじゃないかというようなことをいろいろこれまでもずっと議論されておられた。参議院が被選挙権を四十歳以上にしなきゃいけないんじゃないかなんという話をされておられましたが、私なぞはそうすると退場せねばならぬというようなことでございまして、そういう議論はしかしいつするか。ただただ言っておるだけではいけないわけでありまして、そして今回は久世問題といいますか、直接の引き金になったのはさまざまな問題があったわけでありますが、そういったことをタイミングに今このことについて議論をしておるわけであります。
 こういったことについて大石参考人にもう一度お伺いをしたいんですが、党利党略という批判もありますけれども、党利党略というのは、その改革をすることによって国民に負担を強いるものであるということがあって初めて党利党略であり、そしてそのことを判断するのは、選挙あるいはそういった一連の国政の場で有権者の力で明らかになるものであると私は考えますが、大石参考人、緊急性の判断についてもう一度お伺いをいたしたいと思います。
#113
○参考人(大石眞君) 余りにもそっけないことを申し上げましたので失礼したかと思うんですが、先ほどからも私が申し上げましたように、要するに選挙制度の問題というのは憲法そのものでありますから、常々これを見直し検討することが望ましいという立場です。
 しかもその場合に、必ずしも憲法を変えるというのではなくて、従来の公職選挙法の枠組みの中で考えるべき、それだけの問題なのか、もう少し視野を広げていろいろな制度を取り入れるという方向でのいわば一般的な検討の方向というのはぜひ必要ではないかという立場であります。
 ですから、昭和五十八年に比例代表とかを取り入れられまして、そのときから私などは批判的な立場なんですが、そういう問題は、恐らくこの中でも問題について考えている方はたくさんいらっしゃって、ずっと以前から、やっぱり選挙制度の問題というのはこういうふうに変えるべきだ、あるいはこういう点を改めるべきだというのは、つまり潜在的にずっとあると思うんです。そういう潜在的な、不満とは言いませんが、改革の意見というのをどこかで集約する形で選挙制度を思い切って抜本的に改革するような、あるいは別の方向に進むような形でぜひやっていただきたいという思いは十分にあります。
 問題は、そのことと、今出てきております当座の改正案というのがどう接続するかなんです。当座の問題の解決としてその悪いところを改める、そのたびに修正をしていくということ自体は言葉の本当の意味での保守性でありまして、漸進主義でありまして、そのこと自体は私は全く否定しませんし、むしろ賛成の方なんです。
 ただ、一般的な方向といいますか、先ほど言いましたように、公職選挙法を一たんつくったその制度の枠組みでのみあれこれ考えるというだけのことではおさまらないのではないかという思いがあるものですから、そういう視点から見ますと、今回の改正案について、先ほど場合分けをして述べましたように、必ずしも一義的でない思いが出てくるわけでございます。
 以上です。
#114
○鶴保庸介君 この一点においても議論し始めたら本当に時間がかかってしまいますので、次の問題に移りたいと思います。
 そういったことで、私は検討するに値するし、今ここですることについて党利党略であるという批判は私は当たらないというふうに考えております。
 ただ、問題は、そんな緊急性がないとかフェアではないとか、そういったことの問題よりももっと大きな、本当に内容の問題であります。お金がかかるんではないか、あるいはこれから組織ぐるみ的選挙になってくるのではないか、またあるいは政策本位の有為な人材が求められないのではないかと、大きく分けてこういった問題があるのではないかというふうに思うんです。
 ぐるみ選挙、組織選挙というのはお金がかかるということとまた表裏一体ではあるんですが、職能代表を求めるという意味からしても賛否両論あると思います。それは価値観の問題、長所短所があるというふうに考えるとして、お金の問題と政策本位、有為な人材が集まらないのではないかと、人気取りの方がより得票しやすくなる制度ではないかというあたりで、時間もございませんので、もうまとめてお二人の参考人にお伺いをしたいんですが、何か具体的なアイデアといいますか、こうしたらどうだろうかと。
 例えば、お金がかからない選挙にするために我々提案を、提案といいますか議論をずっとしておったのは、もっとインターネットでの選挙活動を許可していくとか、あるいは選挙用ポスターについての、証紙を張ったりするのをもう少し手間を省けるように考えてみたらどうだというような個別議論もあるわけでありまして、お二人にこういったことについて、参考人に二つの質問があるわけですが、何かアイデアがありましたらそれぞれちょっとお答えをいただけたらなというふうに思います。
#115
○参考人(田中宗孝君) お尋ねの点につきまして私が最初に意見として申し上げましたのは、選挙運動の方法は、やはり政党中心の選挙であるという比例代表制の基本的な仕組みからいたしまして、さらに政党中心の選挙という面でお考えいただく方がよろしいのではなかろうかというような趣旨を申し上げたつもりでございます。
 それから、インターネットなどについての今お尋ねがあったと思います。
 インターネットを通じて選挙運動をする、これは参議院議員の選挙だけではなくて、衆議院議員の選挙もそれからまた地方選挙も同様だと思いますけれども、インターネットで選挙運動をすることを許してもいいのではないか、もっと広く認めていいのではないかという御議論があることは私も承知をいたしております。
 それは一つの考え方だと思いますけれども、ただ私がそういう質問を受けましたときに常々お答えすることにいたしておりますことは、インターネットで例えば第三者が候補者のホームページによく似たホームページをつくるとか、そこで虚偽事項を掲載するとかさまざまな弊害が起こってくる可能性がございます。それからまた、政党でありましたり候補者でありましたりがまじめに自分の政策なり経歴なりをお載せになったホームページに第三者が侵入をいたしましてそれを書きかえるという心配もございます。それらについて、取り締まり当局に、今変なことをやられたからさあ取り締まれと言われましても、短い期間の中で恐らく取り締まりをすることは到底できないことではなかろうかと思いますので、そういうことがあってもやむを得ないと、そういうことの危険も負担した上でインターネットによる選挙運動は解禁すればいいというような御議論になるならば、それはそれで大いに結構なことではないかと思います。
 ただ、そういう問題点があるということを理解しないまま、単純にインターネットで選挙運動がやれるようにしたらいいというだけのことではちょっと危ないのかなと、こういうことを申し上げておきたいと思います。
#116
○参考人(大石眞君) 二点ございましたが、その国家有為の人材をぜひ国政の場に送り出したいと、それをうっかり間違うと人気投票的なものになるという御指摘でございますが、これについてのベストアイデアというのもグッドアイデアというのも全然私思い浮かびません。やはりその時々の国民の状況もありましょうし、一つの制度をつくり上げたときに必ずその功罪といいますか、光と影というのはあるというのが常でございますから、我々としてはその光の部分をできるだけ生かし、影の部分があれば、先ほどもお話に出ましたけれども、そのたびにそれなりの対処をしていくということしかないんじゃないかと思うんです。一般的に制度というのはそういうものだと思います。
 多額の金銭がかかってどうしようもないということも実はそういうことでありまして、今、田中先生の方から例えばインターネットという、質疑を受けてのお話がございましたが、いろんな広報という意味ではいいんでしょうけれども、それに伴うやっぱり影の部分がございます。それに対してうまく対処するというのは、事前にわかっているところは対処が非常にしやすいんですけれども、どうしてもいろいろな、言葉は悪いんですが手口がありますので、やっぱりそれが出てくればそれはそれなりに謙虚に受けとめて改めるということが必要じゃないかと思うんです。
 私なんかが思いますのは、やっぱり旧全国区と言われるものも、もともとを言えば国家有為の人材を全国規模で求めるという意味合いでつくられたものですから、それがそのとおり運用されていれば、いわゆる芸能人といいますか有名人が出たからその制度の趣旨がなくなったとまでは私申し上げませんけれども、そういう面があるにしても、できるだけ、全国的に見てすぐれた人材をぜひ出す制度だということを粘り強く国民に説得するというその努力をした方が、非常に地道ですけれども大事なことじゃないかというふうに存じております。
#117
○鶴保庸介君 貴重な意見、どうもありがとうございました。
 質問を終わります。
#118
○長谷川道郎君 自由民主党の長谷川道郎でございます。
 両参考人には本日大変貴重な御示唆をいただきました。まことにありがとうございました。
 まず、大石参考人にお伺いをさせていただきます。
 定数削減でございますが、今回の定数削減は不均衡是正に対応したものでやむを得ないが、一般的に定数削減には賛成ではないという御意見でございました。実は、私感じとして申し上げますと、私どもはそれぞれ三つないし四つの委員会に所属をいたしております。私も三つないし四つの委員会に所属をいたしておりまして、私の部屋にはもう百冊ぐらいのファイルがあるんです。個別に全部対応するとなるともう大変なんです。極めて詳細にフォローできないというのが現実でございまして、感じとしては量的にやっぱり議員の数は少ないなと、質はともかくといたしまして。
 したがって、今、定数削減の動機が何であるか。単に経費削減で定数を削減するということであれば、それは私は歳費を半分にすればいいと思うんです。歳費を削減すればそれでいいことであって、私は国会議員はボランティアであってもいいと思うんです。したがって、私はどうも定数削減の必要性、論理性というのがやや納得できない。
 したがって、先生にお伺いいたしたいのは、定数削減になぜ賛成できないのか、それから定数削減というのはどういう論拠で今議論されているのかということで、まず第一点お伺いいたします。
#119
○参考人(大石眞君) 先ほども申し上げたことですが、両院制の場合に、片方の議院、ハウスだけを取り上げて議論するということを少し考え直したらどうかというのが基本的な趣旨でございます。
 私は、ある程度人口規模との関係も調べましたけれども、やっぱり日本の衆議院というのは議員定数が少ない方だろうと思います。ですから、これをやっぱりできるだけもう少し多くすべきだろうという意見を持っております。単純に、先ほど申しましたヨーロッパでは、イギリス、ドイツ、フランス等では約十万人に一人ということになりますと、一億二千万以上いるわけですから千二百人のハウスということになるんですが、それは考えられない。そうすると、できるだけそれを多くしながら、そこで生かされなかった国民の利害や関心というものをいかにほかの院で吸収していくかということが課題になるんだろうと思います。
 ですから、衆議院がもっと多くするというのなら、やはり国民の中のいわば知恵の部分を出すという意味で参議院の議員をうんと削減して、そういう権威のある、パワーよりもオーソリティーでもって国民に対する説得を行う、あるいは討論を行う場として位置づけるというのも一つの考え方ではないかと思っております。
 本来はそうなんですが、衆議院の場合さらに削減するということでありますと、それに伴って単純に経費削減ということだけで物事が動いているかどうか私は存じませんが、一方で削減し、両方とも削減するというのは、国民の中にある多様な利害や関心を反映するという意味ではそのチャンネルを狭くすることになるんだろうと思うんです。ですから、余り賛成できないという趣旨でございます。
#120
○長谷川道郎君 ありがとうございました。
 それでは大石参考人、もう一点でございますが、先ほどのお話で地域代表制の徹底というお話がございました。実は私も前々から仲間内では、例えば四十七都道府県、これは奇数だとさっき先生のおっしゃるとおりちょっと選挙は難しくなりますので、裏表四人、百八十八人、プラス比例五十ないし百、二百八十八ないし二百三十八の定数でやろうではないかというような話をしていることがございます。ただ問題は、きょうもいろいろお話がありましたが、一票の格差に対抗できるかどうかという問題でございます。
 先ほど先生は、人口に関係ない定数の哲学を打ち出すべきであるというお話がございました。ちょっと短い間ではお話しになれないかもわかりませんが、一票の格差論に対抗できる哲学の片りんをお示しいただければありがたいと思います。
#121
○参考人(大石眞君) うっかり哲学というような言葉を使ったものですから随分な議論になりましたけれども、要するに、私どもとしては法律屋の癖ですが、最高裁判所の判決というのはやっぱりかなり重みを持つわけです。その中で言われていることは、一つは国民の中にある利害や関心というのを公正かつ効果的に代表する、あるいは国政に反映させるということを考えなきゃいけない、それが選挙制度の役割だろうと思うんです。
 その上で考えますと、衆議院の場合、人口比例というのは、最高裁の言い方によれば、それが唯一ではないけれども非常に重要な基準になってくる。実際にもその線で判例等も動いていますし、学説もそういう形で固まっているわけです。
 それに対して、参議院の選挙制度が問題になった件というのは、昭和五十八年から数えても既にことし九月六日の最高裁判決を加えても七件ほどになるわけでありますが、要するにそこで言われていることは、現在の公職選挙法が定めている選挙制度を前提にするとこうなるのだと。つまり、その中での人口の問題を、つまり定数不均衡の問題を扱っているにすぎないわけです。もちろん、最高裁判事の中にはその点をはっきりおっしゃる人もありまして、人口の要素は加味していないスタイルの選挙制度なのだということを打ち出すなら、それで何も問題はなくなる。
 今の制度はそのほかの要素が入っている、地域代表的性格があると言いながら、ある程度二名を基礎として四、六というふうに加算するという形になっておりますから、そこでどうしても不均衡の問題というのは外から見ると出てくるわけでして、その点をすっきりさせるというのは、一つは全国一区の比例代表制にすれば何も問題はないんですが、これはとんでもない話になるわけです。したがって、そうならない、しかも国民からの直接選挙というある程度の要請にこたえるというためには、先ほど先生がおっしゃいましたように、思い切って都道府県一律にということがあろうかと思うんです。
 ただ、一点つけ加えますれば、表裏だから必ず偶数でなければならないということは私はないと思うんです。先ほど申し上げましたように奇数でも可能なわけでして、それはフランスでも現に行われていますけれども、要するに、ブロックを分ければいいんですよね。全国都道府県の、ことしはどこどこでやる、三年後にはどこどこでやるというふうに区分けをすればいい問題でありますから、技術的にはそれほど難しい問題ではないというふうに考えております。
#122
○長谷川道郎君 ありがとうございました。
 最後のお話、人口を加味しないシステムを構築するというお話、さっき田中先生のお話にもございました。もしも時間があればお伺いいたしますが、田中先生、先ほど冒頭のお話で、参議院の政党化の問題を避けて通れないというお言葉がございました。それについては深くお触れになりませんでしたが、政党化の是非、政党がどういうものであるか、政党の機能が何であるかという問題になるとまた難しくなるんですが、先生がおっしゃった政党化の問題を避けて通れないというお言葉がございましたが、政党化の是非について先生の御意見をお伺いいたします。
#123
○参考人(田中宗孝君) もちろんこれは憲法上の問題になるわけでありますけれども、憲法で国会議員、もちろん衆議院議員、参議院議員それぞれを国民が直接選挙するということを一応前提にいたしますと、個人が立候補する選挙制度といたしましてもあるいは比例代表制といたしましても、おのずから同様の政策を持つ人たちが一つのグループをつくるとかあるいは選挙で協力し合うとかいうことは、これは避けられないことでなかろうかと思います。
 したがいまして、国民が直接選挙をするというその前提を壊さない中で政党化はしちゃいけないということを言ったとしても、現実には非常に困難ではないかと私は考えております。
#124
○長谷川道郎君 ありがとうございます。
 それでは終了させていただきます。
#125
○委員長(倉田寛之君) 他に御発言もないようですので、以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたします。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 しばらくそのままお待ちください。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#126
○委員長(倉田寛之君) 速記を起こして。
 ただいま議題となっております公職選挙法の一部を改正する法律案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本法律案に対する意見を聴取いたします。西田自治大臣。
#127
○国務大臣(西田司君) 本法律案の提出に当たられました議員各位の御努力に深く敬意を表するものであります。
 政府といたしましては、本法律案については特に異議はございません。
 以上でございます。
#128
○委員長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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