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1950/11/28 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 通商産業委員会 第3号
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1950/11/28 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 通商産業委員会 第3号

#1
第009回国会 通商産業委員会 第3号
  公聴会
――――――――――――――――
昭和二十五年十一月二十八日(火
日)
   午前十時四十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○鉱業法案(内閣送付)(第八回国会
 継続)
○採石法案(内閣送付)(第八回国会
 継続)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(深川榮左エ門君) 只今より通商産業委員会の公聴会を開会いたします。
 本日の議題は、鉱業法案、採石法案についてでありますが、尚開会に先立ちまして公述人のかたに一言申上げます。本日は御多忙のところわざわざ御出席下さいまして有難うございました。本日の公述は、鉱業法案並びに採石法案の全部についてでございまするが、公述に際しましては、各公述人の立場と両法案に対する賛否を明確にされまして、それぞれ御意見を御開陳願います。発言の時間は、特別の場合を除きまして、原則といたしまして十五分程度にして頂きたいと存じます。非常に短時間で十分意には満たないと思いますが、何分本日一日でございまして、各立場の方々から公平に意見を聴取する関係もございますので、御了承の上御発言をお願いいたす次第でございます。
 次に委員各位に申上げまするが、公述は午前と午後に大体分れておりまするが、公述人の方々の都合もありまするので、午前の分が終了しましてから一遍と、午後の分が終了しましてから一遍というように、それぞれ二度に分けまして質問するようにいたしたいと存じまするから、さよう御承知をお願いいたします。
 それでは福岡県鉱害被害者組合連合会副会長栗田数雄君にお願いいたしたいと思います。
#3
○公述人(栗田数雄君) 私は福岡県における鉱害被実者の代表栗田数雄でございます。
 石炭鉱業によつて起る地上の被害が如何に大きいか、悲又惨であるかは、第七国会衆議院本会議において神田代議士外三十四名の方々の提案にかかる鉱害に関する決議文の中に、鉱害のため美田は変じて泥海と化し、住宅は日夜倒壊の危険に脅かされ、交通通行は杜絶し、祖先の墳墓は水底に没する等、その惨澹たる実情は、路傍の人もなお正視するに忍びないものがあると、述べられております。かかる残酷な被害は、石炭採掘と共に日々進行を續けておりまするが、これらの鉱業被害に対して如何なる措置がとられておるかを顧みますれば、戰前では我が国における大資本家がおおむね鉱山の大部分を所有経営せられておつた関係から、石炭事業は不景気でも、重工業、銀行、商社等の利益を以てしてでも、会社の名誉にかけて一応被害者の納得の行く程度に原状回復の工事を施行せられ、福岡県においても昭和十七年までに千百三十四町歩の耕地復旧を完了した事実もあります。然るに第二次世界大戰勃発以来、資材及び労働力の不足、加うるに敗戰の結果として財閥の解体となり、炭鉱経営は困難且つ鉱害復旧の彈力性は失われたのであります。かかる理由で復旧事業は一頓挫を来して実行が不可能となりました。その後プール資金の制度によつて約十一億円、續いて第七国会で成立ちました特別鉱害臨時措置法で、今後五ケ年間に五十億程度の復旧が可能となりまするが、現存の被害量及び日ごとに増加する量から見ますれば、その五分の一程度にも及ばないかと思われます。かかる状態では、当然被害民の不安を来たし、結果として思想の混乱は免れないのであります。これらの事実は、他のもろもろの原因結果もありましようが、私共被害民としては、現行法規の不備欠陥がここに至らしめたことと思います。従いまして今回の法令改正に当りましては、被害民の立場から率直に意見を開陳いたしますると、法第百一條より百六條に至る土地の使用及び收用に関する條項中、鉱さい又は灰じんの置場の設置、鉱業に従事する者の宿舎若しくは保健衞生施設の設置まで適用範囲を拡大したことは、農民の職業を奪うは勿論、我が国のごとき農耕地の狭小且つ食糧不足の現状においては、修正削除すべきものである。
 法第百十一條、鉱害の賠償については、原状の回復を以て原則となし、止むを得ざる場合は金銭賠償の方途を認めることに改められたい。何となれば、前に申上げましたごとく、金銭賠償を建前としておることは、鉱業権者に鉱害復旧の誠意、熱心を欠く結果と相成ります。何となれば、耕地のごときは、目下の公定価格は、私の地方で反当り賃貸価格の四十倍に七を乗じた額、約五千円で、極めて安きに失しまする。炭鉱経営の困難、特に労働問題や資材調達に汲々たる際、何で十分の賠償の誠意が示されましようか。例えは炭鉱名物のピラミツド型ボタ山が空高く積上げられておる。その真近に美田が水沒して溝のようになつております。これらはボタ捨に竿頭一歩を進めて坑内から直ちに陥落の地にレールを延長することによつて、復旧の第一歩を踏出し、耕地復旧を安く、迅速に完遂し得る事実もあります。次に、賠償を金銭で受けても、その人がこの金を原状回復に使おうとせず、他に流用したこと、特に耕地のごときは、集団被害であるために格人々々の復旧工事が絶対不可能であります。更に金銭賠償では、対価僅か五千円程度であり、これに対して復旧費は私の地方で反当十五万円程度であるから、差額の十四万五千円は被害民の犠牲となる結果となります。而して現在の技術では、石炭を掘れば採掘深度に比例して地上に相当の被害を及ぼすことは明瞭であり、この明瞭な事実を以てすら、尚無過失賠償として地上権者に損害を負わしめて行くことは、まさに私共の財産権を侵すところの憲法の違反となることを主張いたします。金銭賠償を主張する人々は、世界各国の法律では、ドイツを除き他の国々は金銭賠償主義であるから、我が国もこれに倣えと言われまするが、日本のごとき挾隘なる国土に厖大な人口を收容し且つ又鉱害被害が集団的に一村一部落を壊滅せしめておるがごとき、外国にその例がありましようか。日本で行われる法律は日本の国に適応する法律でなければならんと思いまする。本問題は鉱業法の改正委員であつた平田博士は、病床死の間際まで私共と同じ主張を續けられたことと承わつております。昭和二十二年六月、商工省鉱山局鉱業法令改正準備室において上申されました法案は、原状回復を原則としてありまする。以上の諸点よりして、私の主張は正当であると確信いたします。
 法第百十四條、損害賠償の打切は、制度として認めてはならん。何となれば、前に述べましたように、賠償金が正当に使用せられずして、他に転用せられた過去の実例も少くありません。殊に耕地の原状回復、国土保全、食糧増産等の原則より見ましても、私共の地方では地下百尺近くの石炭の累層があること等を考慮するとき、この制度は絶対賛成できません。法第百六十五條、地方鉱害賠償基準協議会の機構は、民意を尊重したものでなければならん。鉱業被害の原因結果は千差万様でありまして、一定の基準を決定するに当つては、相当の学識と多年の経験を持つておる人でも尚至難とされております。それにもかかわらず転出、異動常に行われてその態実を十分に掴み得ない行政機関の職員にこの重要決定権を與えることは無暴であり、従つて加害者も被害者も納得の行くところの基準はでき難いことと確信すると共に、本案は民意を尊重せざる戰時中の官僚独善時代に逆行する結果として反対をいたします。
 以上極めてあらましを申述べて、私の被害者の立場を主張して御審議の参考に供したのでありまするが、これを要するに、鉱害賠償問題は全国民を主とする被害者すべての生活権を左右する重大問題であり、施策を一歩誤れば由々しい社会問題を惹起するに至るであろうことは火を見るよりも明かであります。従つて被害地方の住民は、今回の鉱業法の改正の成行きを注目しており、すでに政府の原案に対する不満は、一部に不安動揺を来たしておる事実のあることをこの際率直に甲述べる次第であります。私共は鉱害地は必ず原状回復を行い、民生の安定の実を法案に明示すべきことを主張いたします。併しながら土地等の原状回復を主とする賠償を鉱業権者のみに強制することは、我が国の石炭鉱業の立地條件及び基礎産業としての経済的特殊性を考慮せざる措置でありまして、被害者といえども原状回復を望む余りに、炭鉱に重圧を加えて鉱業の破綻を来たすがごとき方策には反対せざるを得ません。よつて今回の鉱業法改正を機会に、先に衆議院が決議せられました国土計画の一環として鉱害対策を取上げる方法を具体化し、既往の鉱業及び今後発生の場合においても、その復旧については国費の応分の支出を行い、鉱業権者には従来とり来つた負担程度を課するがごとき措置によつて被害地の原状回復が実施せられるよう、法の改正を主張するものであります。
 私は鉱業法改正審議委員として鉱業の発展は地上権者の援助なくしては絶対遂げられない点からして、各委員と協議研究を重ね、以上申述べた諸点については、終始一貫した主張の下に広大な被害の復旧による農民救済に併せて、今後の発生を予想せらるる問題の根本的解決策として提案し一歩も退かなかつたのでありまするが、少数意見として取上げられなかつたことを誠に遺憾としておるのであります。幸いにこのたびの公述の機会に併せ中添え、被害者の立場を主張した次第でございます。
#4
○委員長(深川榮左エ門君) 次に、八幡市長守田道隆君にお願いいたします。
#5
○公述人(守田道隆君) 八幡市長守田道隆でありますが、市町村側を代表いたしまして、鉱業法に対して、法案についていささか修正の意見を持つておる次第であります。新しい鉱業法案の内容を通覽しますと、立案者の改正要点として説明されておりまする鉱物の合理的開発と、一般公益並びに他の産業との調整の面で、現行法に比して強化することを目標とされており、いわゆる民主的運営として勧告制度、聴聞制度など鉱業運営について諸種の改正など、誠に被害関係者として感謝するところでありまするが、長年待ちに待つた改正法案としては、法案全体を流れておりまする精神において、尚旧態依然たる感を深くせざるを得ないのでありまして、この点甚だ遺憾に堪えないのであります。曾て戰争酣わの時代に、石炭の一塊は血の一滴としてあらゆるものが犠牲にされ、農家は陥沒によつて祖先伝来の美田を失い、都市はために崩壊に瀕せんとするような実情であつて、石炭増産命令の前には、何ものをも顧みられなかつた時代を過ぎて来たのであります。この惨澹たる結果は、今日尚炭鉱地方至る所に見られる実情でありまして、戰時中寵兒でありました重工業都市としてその災禍の少かるべき八幡市を一例に挙げましても、八幡製鉄所、日本化成、旭硝子、曹達、安川電気等の重工業を初め、中小工場六百を数える我が国再建の基礎産業の工業都市でさえ、これらの工場は戰時中に鉱業権が設定せられました日炭高松、大正鉱業、八幡炭坑並びに小倉炭坑の鉱区に囲繞されており、最近地下掘進に伴う地盤陥落による鉱害に脅やかされつつあります。重工業の生死の鍵を握る工業用水並びに八幡、戸畑、若松三市の水道水源である日本化成の瀬板貯水地その他養福寺、畑等の貯水池、及び遠賀川よりの送水官及び浄水施設はことごとくこれら鉱区の掘進によつて危殆に瀕する状況にあります。果して新鉱業法案には、言われるごとく鉱業の合理的開発と一般公益並びに他産業との調整が強化されておるでありましようか。ただ單なる現行法規の漸進的改正では、到底救うことのできない過去と現状であることを先ず深く銘記して頂きたいのであります。
 先ず地表重要施設の保護につきましては、法案第十五條に鉱区禁止地域の設定、第三十五條に、鉱業出願の不許可の條項が謳つてありまして、一旦許可された鉱区なども、他種産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反するようになつたと認めるときは減区又は鉱業権の取消しができることになつておつて、一応は保養が徹底したかに見えるのであります。併しながら新鉱業法案の、かような規定によつて保護を受けまする軍要施設の大部分は、すでに現在鉱区の上に存在する実情でありまするから、すでに鉱区となつている地域にも禁止区域を設定し得ることを明示し、将来更に他の重要産業の利益を害し、公共の福祉に反するようになる慮れがあると認めるときは、その重要度を勘案して、事が起つてからでは遅いのでありまするから、事前に鉱業権の取消し処分を行い得ることを明示されたいのであります。あらゆるものが新憲法の下に価値を変えつつある中に、例えば農地法の改革と対照して、鉱業法のみが既得権と称して公共の福祉をさえも犠牲にして晏如たる現状は誠に不可思議であります。国家的利害から言うならば、一回限りの石炭の採掘と永久の都市の発展と工業の生産といずれをとるべきかという問題であります。鉱山保安法第二十三條には、特別掘採計画によつて、鉱業権の取消しに至らずして地下採掘を制限して鉱害を最小限に止め、鉱業と地表重要施設との両立を図ることができるようになつておりまするが、その運用において二つばかり希望いたしたいのであります。その一つは、その特別掘採計画を定むべき地域の指定については、法案立案者の目標とされておりまするいわゆる民主的運営によつて、関係市町村長の意見を聞かれるように願いたいのであります。その二は、告示された認可基準を見るに、現実地表に現われている鉱害を考え合せて、地表保護に不十分な点を見受けますので、更に認可基準を再検討願いたい。併しながらこれは一応の基準であつて、個々現実の事案については、愼重に地表保護のため公正な制限を定め得ることを明示されたいのであります。次に、鉱業権認可の場合には県知事に協議することになつておりまするが、更に当該地域の事情に最も明るい自治体の責任者でもる市町村長にも協議することを法文に明記されたいのであります。禁止区域の設定、減区又は鉱業権の取消しにつきましても同様であります。鉱業法は法案にも明示されておりまする通り、地下資源を開発するための法であると同時に、地表における公共の福祉と国家的に重要な施設とを保護するための法でなければなりません。この意味において官庁の職権のみによらず、重要施設の所有者、管理者、公共施設の利害関係者の納得の行く処置が欲しいと思われます。
 次に、鉱害の賠償について申上げたいと存じますが、改正法案は、原状回復賠償でなく、金銭賠償主義を採用しております。ただ賠償金額に比して著しく多額の費用を要しないで原状の回復をすることができる場合に限り、被害者は原状の回復を請求し得るということになつております。これは誠に切捨御免の思想であります。法案百十一條にある通り、損害は、公正に、且つ摘切に賠償されなければならないのでありますから、原状に回復することを建前とせられたいのであります。この問題及び打切り賠償の問題につきましては、前の栗田公述人から詳しく述べられましたので、時間の都合上、私は省略いたします。ただ農村において農耕地を回復することなく、利益計算によつて金銭賠償をなすがごときことは農家を滅ぼさんとするに等しいのであります。我が国の農業が今日ありまするのは、決して損益の計算の上に残つたのではないからであります。改正法においては、石炭鉱業権者は、当該鉱区に関する損害の賠償を担保するために、最高石炭トン当り二十円を供託しなければならないことを明示せられましたが、果してこの金額を以て完全な賠償を行い得るのでしようか。この辺にも切捨御免の精神が現われておるようでありまして、賠償の額を制限する必要はないのであります。却つて與える損害のほうを制限すべきであります。世の中に人を傷つけるのは勝手だが、見舞金には限度があるということは常識ではありません。災害が大き過ぎて原状回復ができなかつたり、賠償価格が高過ぎてその負担に応じきられないような場合は鉱区を消すなり、鉱業権を取消すなり、適宜の措置を講じ得るように定められたいのであります。むしろ監督官庁は、予想される損害を賠償するために十分な金額の供託を命じ得ることとし、利害関係人は、その金額の増加を要求して、万一の災害に対する賠償を確保し得る方途を講ぜられたいのであります。
 尚法案の詳細に亘りましては、幾多の疑点を感ずるのでありますが、限られた時間でもありまするし、上述の一、地表重要施設の事前保護と、地下資源との調整について、二、特別掘採計画の運営、鉱業権の認可その他重要な処分について、市町村長その他関係者の意見を徴せられること、三、認可基準について、四、鉱害の賠償について、原状回復を建前とすることと、供託による賠償金額の限度を撤廃すること等、最も重要な諸点につきまして意見を開陳いたしましたが、従来長年地下資源開発の犠牲となつて来ました地方自治体並びに地表重要施設関係者の血の叫びをお聞取り願いまして、法案に盛り上げ、今更申上げるまでもなく、国家的重要産業であります鉱業と共に発展するの途を開かれるため、この絶好の機会を逃がされぬよう所つてやまない次第であります。
#6
○委員長(深川榮左エ門君) 次に、農林事務官山添利作君。
#7
○公述人(山添利作君) 鉱業法の中におきまして、鉱業の発達ということと、それから農林業その他の方面との利害の調整ということが一番大きな問題でありますことは申すまでもございません。そのために禁止区域の設定でありまするとか、或いは鉱業権の設定等の場合に、農林業等との利害の関係を公平に考慮して、全体の福祉の立場から決定をする、こういうような規定が設られてありまして、いろいろ配慮をされたことはわかります。で、いろいろ問題があるわけでございまするが、その中で、只今前二人の公述人のかたからも申されました土地の使用及び收用に関する事柄と、それから損害の賠償、その賠償の仕方ということにつきまして、その二点につきまして意見を申述べたいと思います。
 土地の使用及び收用につきまして、私の意見は、その範囲を限定すべしということでございまして、百四條に、これこれの場合に土地の使用を認めるということが書いてございまするが、その一番おしまいの第八号に、鉱業用の事務所又は鉱業に従事する者の宿舎若しくは保健衞生施設の設置という項目が入つております。私はこの第八号は削除すべきである。こういう意見でございます。元来鉱業を経営しまするために、土地の使用なり、又は收用を認める根拠はいずこにあるかということを考えて見ますると、これは申すまでもなく、土地の使用、收用を強制的に認めまするのは、原則として公共の事業、公益事業に限るわけであります。鉱業権のごときは、その範疇には入らない、やはり普通のプライベート・エンタープライスと申しますか、私的の企業であると思います。然るにかかわらず、特に土地の使用、收用権が認められておりまする理由は、一つは、鉱業が非常に国全体の経済の発展のために重要なる地位を持つておるということによるでありましよう。併しこれは重要な産業と申しますれば、幾多あることでありまして、ひとり鉱業に限つたわけではない。そこで本当の理由は、この法律にも書いてございまするごとく、他の土地を以て代えることが著しく困難である。土地にどうせくつ付いておるのでありますから、外の土地を以てしては、その目的を達しない、こういう理由があるからであります。そういう意味から、この土地の使用、收用の権利が認められたのでありますが、この使用、收用の権利を認めることが、それではどういう作用をするかと考えで見ますると、実際の動きとして、いきなり使用、收用をするのではなく、当然当事者間の協議によつて事を運ぶ、ところが協議がまとまらない場合のまあ何といいまするか、止を刺すという意味における強制権でございまするが、併し問題はそれだけではなく、最後の止を刺す権利を與えられておるということは、すでに協議をいたします場合に、鉱業権者のほうが非常に優越なる地位に立つておる、交渉いたしますのに、非常に有利な地歩に立つて交渉をするという権利を、権利といいまするか、経済上の地位を持つわけでありまして、最後に止を刺すということと、それを背景としての交渉上の有利と、こう二つの点があるわけでありまするから、これは公共事業にあらざる鉱業のために、他の土地では間に合わないので、その土地以外には使えないという理由のために、特に認められたのでありまして、そういう理由から申しますれば、この土地の使用、收用の権利は、必要の最小限度にとどむべきことは申すまでもございません。従つて第百四條の一号から七号までに掲げてございまする坑口又は抗井の開設等、こういうような事業自体につきまして直接必要な事柄、即ち鉱業の経賞プロパーをなすような施設につきましては、その権利が認められます理由はわかるのでございまするけれども、これとやや離れた地位に立ち得るところの鉱業用の事務所でありまするとか、或いは鉱業に従事する者の宿舎若しくは保健衞生施設の設置というようなところまで及びますことは、これは行過ぎであると思います。これは両方、鉱業権者のほうから申しますれば、事務所がなければ仕事ができぬじやないかとか、或いは宿舎がなければ仕事ができぬじやないか、こういうような御議論が出るかと思いまするが、成るほどそういうものがなければ仕事はできません。併しながらこれらのことは、おのずからその土地でなければならんというような厳密なる意味における非代替性を持つておるわけではないと思うのでありまして、一番わかりやすく申しますれば、例えば鉄道におきまして用地の收用をすると、この場合に軌道敷地でありまするとか、或いは駅を建てますもの、これは当然收用の対象になる、併しながら従業員の宿舎まで使用、收用の対象にする必要がありや否やということになりますると、おのずからそこに明確なる区別があるべきはずであると、かように思うのでありまして、使用、收用の権利につきましては、即ち第百四條につきましては、鉱業の経営に不可欠の施設であつて、且つその施設をするのに必要な土地でなければならん、他に代替するものがないと、こういう限度に限定すべきである、従つて第八項のごときものは、これははみ出しておる、よつてこれを削除すべしと、こういう意見でございます。
 その次には、損害賠償の問題でございます。これも前二者の公述人のかたから申されました点でございまするが、私もお二人のかたと同様に、損害の賠償は原状回復を原則とすべしと、こういう意見でございます。元来、損害が起らないように鉱業経営をやつて頂くことが望ましいことは申すまでもございませんけれども、恐らく将来におきましてもいろいろ土地の陷沒その他の問題が起ると思います。その場合にこの改正法案、これは今までの法律案においても同様でございまするけれども、損害の賠償は、金銭を以てする、ということが原則になつております。ところが実際の問題といたしまして、これは個人的に申しましても、又国民経済の立場、或いは社会的に申しましても、原状回復ということが望ましいことは、これは申すまでもない、議論の余地のないことであると思います。そこで金銭賠償、單に個人と個人との間柄であるならば、金銭賠償ということが法律上の一般原則ではないかということは言えるのでありまするけれども、元来この鉱業経営につきましては、その損害の発生ということも、個々の場合に生ずるというよりも、土地等につきましては、当然これは集団的、起るのが常態でございまして、その回復をするという事柄自体におきまして、又個人的なことではなくつて、集団的に土地の原状回復をしなければできません。又鉱業におきまして、先ほど申しましたような使用、收用というようなことを認めますることも、これは鉱業の見地から全体の必要性のために、そういう権利を認めるのでありまするが、飜つて全体の見地という点から言えば、又公共の福祉に合致するところの原状回復ということを原則的な義務にするということは当然だろうと思うのでありまして、これは理屈の上からも、又事業の上からも、損害賠償は、原状回復を原則とするというのが正しいと思います。この法律案によりますると、お前はそういうふうに言うけれども、実際におきましては百十一條第二項但書の「損害の賠責は、金銭をもつてする。但し、賠償金銭に比して著しく多額の費用を要しないで原状の回復をすることができるときは、被害者は、原状の回復を請求することができる。」と、こういうふうにしまして、被害者のほうから、相当とする場合においては原状の回復を請求することができるから、原状回復主義ということも入れておるではないかという御意見があるかも知れませんが、又第三の点からいいますれば、これは鉱業権者の側からいたしまして、「賠償義務者の申立があつた場合において、裁判所が適当であると認めるときは」、即ち金銭賠償の原則にかかわらず、「金銭をもつてする賠償に代えて原状の回復を命ずることができる。」、こういう規定もある。併しこの第三項は、鉱業権者の側から見まして、原状回復のほうが便宜である、若しくは多くの人は、一定の集団の土地がありまして、多くの人の要求等によつて原状回復をする。その中に挾まつている土地の所有者の意向如何にかかわらず、原状回復をする、まあこういうような場合に適用があるのとは思いますが、それはそれといたしまして、問題はこの第二項にあるわけでありまして、被害者の側から原状の回復を或る範囲におきまして、即ち多額の費用が要らないというような場合において、原状の回復を請求することができると、即ち裁判上そういう途が開かれているじやないかという議論は、実際に適さないと思うのでありまして、單純な、といいますか、嚴密な法律論から申しますれば、金銭賠償が原則であるけれども、被害者のほうから見れば、原状回復を請求することができる、だからそこの決定は裁判所がきめるのだと、従つて裁判所の意見によつて、どちらにでもなるんだから、その賠償に関しては両方の途が開いてあるので、別にいずれを主とする主義でもない、こういうような理窟も言えるかと思います。併し実際の動きを以てしますれば、金銭を以てすることを原則とするということでありますると、被害者のほうは原状回復を主張する場合には、裁判所に訴えを起さなければならん。その訴えを起すということは、私は訴訟をやつたことはないのですが、ともかく非常に面倒だと思うのでありまして、これは金銭賠償ということになつているんだからと言われますれば、或いはそういう原則が一般社会に容認されているこの法律上の主義であるということになりますれば、原状回復を主張する、主張したい、請求したいというような場合におきましても、自然泣寢入りになつてしまう場合が多々あろうと思います。大体裁判をするなんということは、誰でも嫌いでありますから、よほどの場合でございませんと、これは金銭賠償を以て片付けられる、こういうことになるのであります。そこで私の意見は、農林業者個人の立場からいたしましても、又国全体の立場からいたしましても、損害賠償は、原状回復ということが望ましい、従つてこの條文の規定におきましても、原状回復を原則とする、而して但書で原状回復ということが実際上できない場合でありまするとか、或いは不相応に費用がかかる場合には、金銭賠償でもよろしいと、こういうふうに原則を引つくり返して貰いたいと思うのであります。尤もこの点につきましては、委員会におきましても、私はそういう意見を出したのでありますが、その意見は容れられなくて、この第二項を、今のようなことで、多数の意見でおきめになつたのでございまするが、そういうことになつております。そういうふうに原則を引つくり返して貫いたい。
 尚この際関連して申上げて置きたいことは、そういうふうにすれば、併しながら鉱業権者の負担を非常に重くして、鉱業の円滑なる経営、発達を阻害するではないかという慮れ乃至懸念が生ずると思います。従つてその場合には、先ほどもお話がありましたように、或る一定基準以上の費用を要するとかというような場合におきましては、国がその原状回復に対して一定の助成をするという方途を講ずればよろしい、現在鉱害の復旧についての国の補償はどういうことになつておるかと申しますると、九州等に起りました特別鉱害の復旧につきましては、先ほど来お話がありました通りであります。それを除きまして、国の扱いといたしましては風水害等の災害につきましては、御承知のように公共事業費を以ちまして、国は復旧の助成をいたしておるわけでございまするが、鉱害につきましては、原則として、これは鉱業権者のほうが復旧をする義務ありという建前上、国は助成をいたしておりません。併しこれは原則論でございまして、そういう鉱業権者が見当らない場合、又その鉱業権者がありましても、事実上これが鉱人権者の力のみを以てしては不可能だという場合におきましては、個々の場合を審査いたしまして、損害の復旧について助成をいたしております。この事柄を、炭鉱法でも制定願いまして、明確に独立法としてそういうことを規定して頂く、そうして鉱業権者の負担も経営が成立も得る範囲にする、足りないところは国が補助をする、こういう原則を、特別法を作つて頂いて、この鉱業法における損害賠償は、先ほど申しまするような、原状回復を原則と干る、こういうことに引つくり返して頂きたい。これが私の意見でございます。
 以上二点につきまして御参考までに申上げた次第であります。
#8
○委員長(深川榮左エ門君) 次に、東京大学第一工学部教授青山秀三郎君。
#9
○公述人(青山秀三郎君) 学識経験者として意見を申上げたいと思います。
 我が国におきまして鉱業に関しまする立法といたしましては、現行の鉱業法はすでに四十数年の長い歳月を経て参つておるのであります。その間幾つかの興廃があつたのでありますけれども、これに対しまして、敗戰後昭和二十二年九月であつたと思うのでありますが、新鉱業法の制定に対していろいろ準備が進められて参つたのであります。昨年鉱山保安法が御承知のように公布になりました。鉱業の関係といたしましては、只今の新鉱業法案並びに採石法案は、鉱山保安法と共に我々の最も渇望いたしておるものであります。一日も早くこれが制定されることを熱望いたしておるのであります。すでに今申上げましたように、三年近くを経過いたしておりますので、その間いろいろの事情があつたとは思うのでありますが、特にこの際、私共といたしましては現在の鉱業界の事情から見ましても、それに即した鉱業法が早く制定されるということを特に希望しておるのであります。鉱業法そのものは、どの国でもいろいろ事情がありまして、我が国といたしましては、やはり我が国の事情に適合した性格に合つた鉱業法が欲しいのであります。例をスウエーデンにとりますれば、スウエーデンの中部或いは北方には御承知の世界的な鉄鉱があります。これはスウエーデンの国の財政から見ましても重要なものでありますので、非常に特殊な性格を持つております。我が国は御承知のように地下資源といたしましては、外の国に見ないいろいろな天然の異つた事情もあるのであります。従いまして鉱業法の内容もよくその点を考えたものでなければならんと思うのであります。今度の鉱業法案に盛られております法定の鉱物でありますが、今回は石灰石、ドロマイトその他約七種の新鉱物がこれに含まれております。こういう鉱物も我々といたしましては、早く鉱業法の中に入れて欲しかつたものであります。なお例えばアルミニウムの鉱石のごときものは、国家的な資源の重要なもの、又現存の産業の発展の段階といたしましても、又一方技術の水準から見ましても、これは鉱業法の鉱物とすべき資格はあると思うのでありますが、たまたまその存在の状態が他の鉱物と違つた特殊の事情があるので、今日まだそれに盛られておらないのであります。なおその限界におきましては、ここにいろいろな議論があることと思うのでありますが、只今のところ七種が加えられて、やがては又新らしい法定鉱物が考えられる時期もあろうかと考えまして、私は今日の新鉱物の追加の程度で止むを得ないという感じを持つておるのであります。又慨して我が国では金属性の鉱物に対しては相当考慮されておるのでありますが、卑金属のものに対しては、或いは一般の工業の上で重要なものも相当考えられるのであります。これはアメリカなどでは工業鉱物に対する法的処置が相当私は現段階においても進んでおると想うのでありますが、この意味におきまして、そういう新鉱物に対して今後は更にその視野を拡げて行く必要がありはしないかと、こう思われるのであります。或いは経営の規模の大小によりまして、そういう必要がないという意見があることも考えられるのでありますが、やはり国家的にはそれぞれの産業の発展の基礎となる鉱物については考慮すべき必要があるのではないかと思うのであります。今回の採石法におきましても、いろいろな岩石がとられております。又二、三の鉱物も、学問上の鉱物もこれに含まれておりますが、この採石権の設定ということは、同様の意味で私共は今回の制定を喜ぶものであります。
 それから鉱区の形その他の問題でありますが、現在はかなり不規則な形で鉱業権の対象となる鉱区の形が定められておるのであります。これはそういう不規則な形であることが、鉱床の実体を必ずしも一致しないのではないかと思われるのであります。併し今度の新法案におきましても、鉱業に関する勧告、或いは協議のこれが原因となつておる。又租鉱権の一つの問題の素因となるということも考えられるのでありますが、これは今更その形を直すことは容易ならぬことであろうと思うのでありますが、せめてこの場合、この試掘権或いは採掘権の行われます範囲を少し拡めて置いたほうが、幾らか合理的ではないかと思つておつたのでありますが、今回の試掘権、採掘権の鉱区の範囲が大体従来の鉱区に比べまして、この鉱区の大小の問題は無論小に失しますと合理的な開発ができない。又余り大きくするというと、一方鉱業独占の弊というようなことも考えられておつたのでありますが、この大きなほうの制限はここに多少緩和の途もあるので、これは問題はないと思うのでありますが、少くとも今回の範囲の面積は私は是非とも必要であろうかと思うのであります。少し大き過ぎるというような意見も多少あるように伺つておりますが、今回の範囲については、それ以下の部分は、現状から見ますと極く僅かな件数であろうと思われますので、私は少くとも今度の法案に出ております範囲は、これを認むべきであろうと思うのであります。
 又その鉱区の鉱業権の存續期間でありますが、これは登録の日から二年といたしまして、申請によつてはもう二年延長することができるという問題でありますが、これは地域的に或いは資源の状態によつては、必ずこの期間において十分な調査を完了することもできるのじやないかというようなことも考えられないこともないと思いますが、この期間を余り長くとるということは、却つて採掘権そのもの或いは鉱床の調査そのものに対する進行を阻害するのではないかと思われますので、一応私はこの四年の期間において、その可否を検討する必要があるのではなかろうかと思うのであります。又採掘権のほうは、従来は無期限であつたのでありますが、今回これを三十年と定めました。人生にとれば五十年でありますが、併し五十年経つたからもう生存権はない、それで跡始末をするというわけでも決してなかろうと思います。一応の基準として三十年をとられておる。恐らく鉱業の施設を行います場合にも、その償却の期間を考える場合に、一応の限界として二十年、三十年をとられておる例が多いのでありますから、やはり鉱業の上におきましても、採掘権の場合に一応の基準を三十年程度にとるのは適当でないかと思うのであります。只今もお話のありました鉱害の賠償問題、これはいろいろな立場によつて意見もあろうと思うのでありますが、私は地下資源の採掘というその性格から見まして、できるだけ地表に與える影響を少くするということは、業者みずから大いに考え、又努むべきことであろうと思います。例をドイツのルール炭田にとりますと、かの地方は我が国の北九州に比べまして、一層地表に與える影響或いは地表の沈下等を許さないところにおいて、而もドイツとしては最も重要な石炭の採掘を行わなければならない宿命的の状態にあるところであります。従いまして地下作業の上におきましても、事実上必要な考慮が拂われておるのであります。採掘の後の充填等に対しましても、恐らく採掘に対する経費に匹敵するほどの経費が充愼のために使われておるというほどであります。従いまして地表に対する影響は極度にこれを防ぐということが事実上要望され、又実行されておるのであります。我が国の現状はまだ必ずしもその域に達しておらないので、今後これをできるだけ少くするということは、その立場から考うべきでありますが、止むを得ず地表のこうむりました損害、これについてはどこが最もその損害が著しいかということは、おのずから或る程度考えられるのであります。その地表の耕作地或いは建造物に対しましても、それらの使用の価値が極度に失われるということは甚だ痛むべきことでありますが、その地表の影響を原則として原状にまで戻すということが果して事実可能なりやいなや、又それは望ましいことであろうかとも思われますけれども、そこまでしなければならないことだろうかというところに私は問題があると思うのであります。影響そのものを最小限度に止めるということは必要でありますが、一度生じたその損害を賠償する場合に、私は原則としてはやはり金銭の賠償を以て主体とすべきものであると考えるのであります。それは賠償金額の問題も関連することでありますが、国として産業の立場から考えて、又地下鉱物を採掘する鉱業の特殊なる性格を考えまして、国の方針としては、むしろ私は主体を全般賠償に置いて、若し原状への回復が可能な場合、或いはそれによつて両者の立場が、鉱業と地表のいろいろな産業との立場が許される範囲であるならば、私は原状の回復をする範囲をそこに限定するということが適当ではないかと思うのであります。要は金銭賠償といたしましても、これが確実に履行され、実際に行われる、賠償されるという方策をここに十分講ずるということだけは、是非この際要望して置きたいのであります。なお今回の新鉱業法におまましては、土地調整委員会の設定が掲げられているのでありますが、鉱区の禁止地区の指定とか、或いは通産局長の裁定を行なつたものについて問題があるというときに、この土地調整委員会の機能によつてその国家的な調整を進めるということは、これは是非今後の措置としてはとつて貰いたいと思うのであります。
 なお採石法につきましても、その事務機関といたしまして、原案は通産局長にあるのでありますが、これは県知事が適当であるという意見も耳にするのでありますが、地下資源の開発を目的とする事業であり、その性格から見まして、その行政はむしろ統一したほうが適当であろうと思うのであります。
 以上極めて大体でありますが、私は原案の趣旨に賛成をしたいと思うのであります。要はこれらの法の運用にかかつていると考えるのであります。枝葉或いは実際の問題につきましては、なお考慮する点が無論あろうかと思うのでありますが、趣旨としては私はこれに賛成したいと思うものであります。
#10
○委員長(深川榮左エ門君) 東京大学法学部教授我妻榮君にお願いいたします。
#11
○公述人(我妻榮君) 私は法律を勉強している者でありまして、特に企業者側とか、或いは被害者側という立場がありませんので、鉱業法一般について意見を申述べよということでありますと、全部について意見を申述べなくちやならないようになつて困るのでありますが、時間の関係もありますから、最初に今度の鉱業法と採石法というものの全般的な構想についてお話いたしまして、それからあとで重要だと思われる数点について意見を申述べようと思います。
 第一に、この今度の鉱業法と採石法という構想は、地下資源と申しますか、石炭、石油、金銀等から建築石材、或いは土砂などすべてのものを含みまして、これを利用する場合を凡そ三種類に分けているわけであります。第一種は重要性のある鉱物、これは鉱業法による。第二種は建築石材及び重要性の少い鉱物、これは採石法による。砂利とか、土砂とか、普通の粘土というようなものは、これは民法の所有権その他一般法による。この三本建で行くわけでありますが、第一のもの、即ち重要性のある鉱物は、これは国の支配に属するものとして、その土地の所有権から外してしまう。そうして特に鉱業権の設定を受けなければ採取できない。かように土地所有権から外れますから、これを採取する鉱業権者は、土地の所有者から、それは自分の物だから石代を拂えということを言われる心配はない。又その事業を行うのに必要な土地の使用権とか、或いは收用権を認められるというような特権を持つのでありますが、同時に他方国家から相当大きな監督や指導を受けるということになるわけであります。
 又第二のもの、即ち建築石材や重要性の少い鉱物、採石法のものは、これはそれらの石を土地所有権から外しませんで、土地所有者のものとして置く立場をとつているわけであります。従つてこれを採取する者は、原則として土地所有者から権利を取得しなければならない。但し自由契約で権利の設定ができないときには、或る程度の強制的な設定をして貰うことができる。併しその場合でも石の代金は拂わなくちやならないというのが第二の採石法の観念であります。従つて採石権というものは、鉱業権に比しては遥かに弱い権利でありますけれども、それを稼業するためには、必要な土地所有権を有するというような多少の特権があり、又それに対して公共の利益を害しないように軽い程度の監督を受けるということになつております。
 そうして第三のものは、これは專ら民法の規定に委ねられているのでありまして、更に自由な契約で採取ができる。従つて採取する者は、何らの特権がない限り、又国家から特別の監督なり指導を受けない。そこに自由放任ということになるわけであります。なお鉱物、岩石などをかような三種に区別いたしますのは、その区別は絶対的なものではなく、社会の経済の変遷や科学の発達によつて変つて来るだろうと思います。即ち第二のものが第一のものに移される場合もあると思います。又第一、第二に新たなものが追加されることもあろうかと思います。さてかような仕組、即ち従来の法制に比べました場合に、第一の鉱業権のほうには従来の鉱業法と全く同じ建前であるけれども、鉱物の種類を増した。それから第二の種類のものは全然新らしく作られた制度である。この三本建の制度は、我が国の従来の法制及び経済状態から見て極めて適当なものだと考えます。GHQの斡旋で来朝されましたダンカン氏の構想は、全然これと違つておつたのであります。ダンカン氏の考えによりますと、以上すべてのもの、即ち土砂、砂利までも含んでこれを国家の独占とする。そうしてこれを採取するには国家と個別的な契約、即ちリース契約をしなくちやならん。国家は採取の権利だとか、義務だとか、そのやり方を鉱害の賠償というようなあらゆる点に亘つて個別的な定めをする。即ちこの鉱業法や採石法に規定してあることは、すべて個別的な契約の約款として定めよう。そうして一亘契約で定まつた以上は、国家はこれに対して何らの干渉はしない。こういうのがダンカン氏のいわゆるリース契約の思想であります。これはいうまでもなく極端な自由主義であります。かような行き方も勿論一つの行き方でありまして、或いはそれで行けるならば一層結構であろうと言うべきであるかも知れません。住宅や耕地に損害を及ぼす虞れがあるときに、そのリースの契約で完全に補償するという約款を作ることも可能でありましよう。そうすると、企業者は住宅に近い所で企業をしようと思えば、負担が非常に重くなるから、そろばんをとつてそれはやらないことになるだろう、そういう結果になるだろうと思われます。これがアメリカのようなところでは、そういう自由放任の行き方でもよかろうと考えられるのでありますが、併し日本では事情が全く違いまして、いわゆる耕やして山嶺に至るという国でありますから、宅地の下までも掘らなくてはならないし、耕地の下までも掘らなければならん。而も農耕地を確保するということは、即ち食糧を確保するということは、我が国の絶対的必要性のあることであります。併し同時に地下資源を採取するということも、経済の自立のための至上命令であります。この絶対的な必要と、経済の至上命令とをどう調和させるかということは、我が国のまさになさねばならないことでありまして、その点でアメリカとは全く事情を異にしておるのだろうと私は考えるのであります。かように考えて参りますと、鉱物を採取するということと、農耕地を確保するということとは、共に單に当事者の私的問題ではなくて、鉱業と農業、林業その他の産業との両立を図るという国家的立場から取扱わなければならない問題であるということになるのであります。言い換えますと、例えば賠償の問題にいたしましても、單に加害者と被害者という問題として取扱わないで、鉱業と農業、林業その他とを如何に調和させるかという点で考えねばならない。従つて若し農業を犠牲にしては困る。併しその犠牲を絶無にしようと思えば鉱業が成り立たないというような場合には、問題を国家的立場で取上げて、国家の力、言い換えれば納税者全体の力で損害を復旧しなくてはならんということも考えねばならんと思うのであります。又鉱業権者が鉱業を営むという問題につきましても、自由放任の立場をとつて、お前たちのいいようにやれ、若し失敗したら、損をしてやめるだろうといつて放任するわけには行かぬ。国家はいわゆる鉱利保護の立場から適当なる監督もしなければならないということになるだろうと思われます。かようなわけでダンカン氏の構想は我が国の実情に適しないということを、私も委員の一人として当時相当検討し、議論を重ねたのであります。ところが幸いにもダンカン氏はそれを了解されたようであります。それで私は法律家の一人といたしまして、必要以上に英米法化することを残念だと思つておるものであります。日本の法制に多くの欠陷のあることを十分認めております。それを改めねばならんとも考えております。併し多くの点においてそれを改めることは、我が国の従来の法制に即してそれを改善することが可能だと思つております。直ちに英米法の主義をとるということは、單に実効なきのみならず、我が国の法律関係を混乱に陥らせる虞れがあると考えておるものであります。かような立場をとつておる者としまして、この鉱業法の改正に当つて、リース制という根本的に違つた制度をとらずに、我が国の従来の鉱業法を採用して行くという方法をとることができたことは、非常に喜ばしいことだと思つております。そうしてその意味におきまして、そういう努力をされた政府当局を大いに賞讃したいと思いますと同時に、これを理解せられたGHQの関係官に対しても敬意を表したいと思うものであります。この点は議員諸君もこの法案を御審議なさる際に留意せられてよろしいかと考えます。
 以上が全体の構想についての意見でありますが、次に重要な点を指摘して参りますが、第一に追加鉱物でありますが、地表に近い鉱物を鉱業法の鉱物にするということは所有権の侵害であつて、憲法違反ではないかという詮があります。併しこの点は今回の御審議では余り問題になつておらないようでありますから、詳しく申し述べることは差控えますが、結論だけを申上げますと、私は憲法違反にはならないと思つております。憲法二十九條の第二項におきましても、財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定めるということになつておるのであります。そうして近代における土地所有権というものは、十九世紀の初めに考えられたように神聖不可侵とは考えませんので、地表の利用が十分にできればそれでいいというのが所有権の本体だと私は考えております。従つて利用を妨げたことから生ずる損害は十分に賠償する義務があるのでありますが、それ以上そこから採取した鉱物は俺のものだから、その物の代金をよこせということを主張し得るものではない。鉱業法にそれと違う規定を置いたからといつて、憲法違反になるものではないと考えております。
 次に鉱業権についてでありますが、試掘権の期限を二年について一回だけ更新して、結局四年ということになつたのに対しては、これを延長するという改正意見があつたようであります。その理由としては、積雪地帶などでは到底四年では駄目だという主張と、それから予備鉱区として実際上重要な意義を持つておるというような主張があつたようでありますが、併し私はこれは原案通りでいいと考えております。成るほど積雪地帶では困るということもあるかと思いますけれども、併し御承知の通り試掘権のままで独占しておつて開発をしない弊害が非常に大きいということも隠れなき事実であります。その利害を相殺いたしますと、原案ぐらいが丁度いいだろうと考えるのであります。但し石油についてだけは事情が違いますので、これは多少延長しても止むを得ないかとも考えられます。併しこの試掘の問題は、御承知の通り沿革のある問題でありまして、非常に議論を重ねた結果原案ができたのでありまして、原案を維持するのが至当と私は考えております。
 次に採掘権を三十年にいたしましたときは、今青山教授から鉱業開発の立場からの賛成の御意見がありましたが、私も三十年にするのが至当だと考えるのであります。殊にこの点はダンカン氏がアメリカ式のリースという制度をとれば、必ず有期でなければならないということを強く主張された点であります。私はいわゆる法律論としては必ずしも有期でなければならんとも考えないのでありますけれども、併し国家が独占した鉱物を、或る特定の人にこれを採掘する権利を與えるのでありますから、もともと国家の独占したものを或る人に與えるのだから、その與えるものは無期限であるよりは有期限であるほうが、理論として筋が通るかも知れない、かような意味で三十年ということは結構であろう。そうして更新することができるのでありますから、鉱業権者の立場としても、必ずしも不都合はないのじやないかと考えるのであります。
 次に鉱業権の問題としまして、交換、売渡、鉱区の増減等について政府が勧告をするという規定が設けられておるのでありますが、勿論それはいわゆる官僚的な勧告になつてはならないのでありますけれども、最初に申しましたように、我が国の鉱業は企業者の自由放任ということは到底できない立場にあるのでありますから、国家が助長し監督することが必要なのでありますから、それらの点から見て至当な制度である。要はその運用を十分民主的にするということにあるのだろうと考えます。
 第四に租鉱権の制度について申上げます。租鉱権という制度は必要であろうと思います。御承知のことと思いますが、戰争前は実際上は租鉱権が行われまして、大審院は斤先掘契約として生じたときは無効だということを繰仮して言つたことであります。それは大審院がなぜ無効と言つたかと申しますと、租鉱権のような斤先堀契約は、現実に稼業する者に対しての監督が十分に行かないということを理由としたようでありますが、併し我が国の実際上必要であるということは認められておることでありますので、重要鉱物法でこれを立法化したのであります。そしてこれを法案にとり込みまして、一方において監督をするが、併し一定の範囲ではこれを合法的な制度として認めるということにしたのでありまして、これは適当な制度だと思います。これに関連いたしまして、鉱害の賠償責任が問題となつておるように伺つております。即ち租鉱権者は資力が乏しいので、租鉱権者が鉱害賠償の責任者になると、被害者のほうが十分でない。従つて租鉱権者と鉱業権者とに連帶責任を負わすべきだという御主張があるやに伺つております。これは私の專門としておる民法の七百十七條を思い出させるものであります。これは一種の考えであろうかと思いますが、併し仔細に考えて見ますと、この七百十七條と、今の連帶にしようという考えとの間には相当大きな違いがあるように思われます。七百十七條と申しますものは、土地工作物の設置又は保存に瑕疵があつて、他人に損害を加えたときは、その工作物の占有者が損害賠償の責任を負う。
 但し占有者が損害発生防止に必要な十分の注意を怠らなかつたときには所有者が責任を負う。例えて申しますと、家屋の塀がいたんでおりまして、その塀が倒れて往来の人を怪我させた場合に、占有者、即ち借家人が先ず第一に損害賠償責任を負う。但し借家人がその塀を倒れないように注意をするとか、十分の注意を拂つておつたときには、今度は所有者、家主が責任を負う。その場合無過失責任、これは七百十七條の規定でありますが、これを只今の鉱業権者と租鉱権者は連帶であるべしという規定と比較いたしますと、第七百十七條の占有者が第一次の責任者であつて、所有者は第二次の責任者となるのであつて、決して両者が連帶責任となるのではないのであります。第二に七百十七條では、占有者には、損害の発生を防止するだけの注意を怠らなかつたならば責任を免れるという免責條件があります。無過失責任を負うのは所有者だけなのであります。従つて連帶責任とはおのずから違うのであります。第三に殊に重要だと私が考えますことは、七百十七條の所有者が無過失責任を負うということは、損害を與えるような危険なものを所有することの責任であります。従つて單にそれを借りておる占有者の責任とはおのずから異なることになるのであります。これに反して鉱業法におけるいわゆる無過失責任は、鉱業権を行使する、即ち稼業するということの無過失責任なのであります。従つて七百十七條は所有するところの責任であるのに対して、これは稼業するところの無過失責任である。そうすると、稼業するのは租鉱権者なのでありますから、租鉱権者が責任を負うということになるのであります。七百十七條のアナロジーを以て連帶ということにはならないのでありまして、又実際上から考えましても、連帶にするということはいささか無理だろうと私は考えるのであります。但し最初に申しましたように、租鉱権者が一般に資力に乏しい者であつて、十分な賠償ができないということも、実際問題として考えねばならんことでありますから、従つて先ず租鉱権者が責任を負う、そして租鉱権者が資力が乏しいために十分な賠償を負うことができないときに、鉱業権者が第二次的に責任を負うというぐらいにするのが限度であろうかと考えるのであります。第五に、鉱業権者の土地使用收用権であります。この点に関しましては、御承知の通り企業者側ではもつとその権限を拡張してくれという主張をなすつておるのであります。それに対して又農林当局或いは被害者側と申しますか、一般人の立場からは、これを縮小せよと言つておるのであります。何も私は中間をとるということではありませんけれども、原案はそう考えられますから、原案が適当であろうと思います。なお一言いたしますと、ダンカン氏の意見では、この鉱業権者の土地使用收用権を拡張するということについては、極度の警告をしておるのであります。尤もアメリカ式リースで行けば、特権を伴わないのが当然でありましようが、併し我が国では先ほど繰返して申上げておりますように、一方国家が将来法制上監督、干渉するというのに対して、他方特権を認めるということになりますので、さような立場から考えて、原案が丁度適当だと言い得るのじやないかと思うのであります。第六に、鉱害賠償の問題ですが、ここでも企業者側と一般の立場とその意見が相対立しておることは御承知の通りであります。
 結論だけを申上げますと、常に原状回復をすべしという主張は行き過ぎかと思います。従つて原案の百十一條は、只今農林当局からも御説明がありましたように、一定の範囲で原状回復請求権を認めておるのであるから、この制度を十分に運用すれば、それで結構ではなかろうかと私は考えております。一体飜つて考えますのに、金銭賠償と原状回復ということは、先ほどは世界各国の民法或いはドイツの民法のことを引用して御説明になつたようであるが、一体原状回復と金銭賠償とは被害者にとつては余り違いがなかるべきはずであります。金銭でも十分賠償して貰うべきであつて、金銭賠償と原状回復とは、被害者から見ては大して違いがある筈ではないのであります。従つて若し非常に違うならば、金銭賠償が十分でないとむしろ言うべきだと私は考えます。被害者としては、金銭賠償を十分に考えればいい。ただ諸般の事情を考えて、百十一條二項の但書に規定しておる限りの原状回復を認めていいじやないかと思います。ただ被害者側ではなく、日本全体の立場から見て、被害者は金銭で満足するであろうが、日本全体の立場では、やはりそこで幾ら金をかけても耕地にして耕して行かなければ、日本の食糧政策から不満というどきには、被害者の意思を無視して、原状回復もあり得るということがむしろ私は理論の筋であろうと思います。併しその場合は国家の力を以て復旧するということをせねばならない。こういうのであります。又損害賠償については、いろいろ問題がやかましいようでありまして、百十四條の予定賠償というのに対しても反対が多いようであります。併しこの制度を打切り賠償という言葉で呼ばれておるようでありますが、私はこれは余り適当な言葉ではないと思います。何故かと申しますと、打切賠償というのは、十万円の損害を生じたけれども、それを値切つてしまつて、八万円に切つてしまつたという感情を抱かせるので、打切賠償という言葉は不適当だと思います。百十四條は決してそういうことを規定しておりません。これはあらかじめ損害賠償の額を予定するのでありまして、両当事者が相談して、どれくらいの賠償額がいいかといつて、その協定の結果成り立つことをいつておるのであつて、予定せられた賠償の額をいつておるのであつて、決して額をあるところで打切るとは言つておらない。そして百十四條の一項は、これは民法の四百二十條と本文は同じでありまして、ただ但書が違いますが、住いますということは、これは新らしい民法理論でも、このほうが至当だというようになつておるのでありまして、格別不思議な規定ではないのであります。第二項は又しばしば問題にされるようでありますが、これは例えば家屋がだんだん傾いて行くというときに、現在までの損害ではなく、この家屋が何年か修繕しながら使つて行つて、そして最後にそれが倒れるというまでの全損害を両方で協定して賠償してしまつた以上は、それからあとで、その家屋を買つた人に対して改めて賠償する必要はないと、こういう規定なのでありますが、これも常識的に見ても当然なことであろうと思います。その家屋についてすでに損害賠償をとつておりまするならば、家屋そのものも値段は安くなつたわけであるから、その家屋を他人に売るなら安く売らねばならない。或いは高く売るならば、すでに受取つた損害賠償の一部分をくつ付けてやらねばならないというのが、理論の当然であろうと思います。ただそういう制度を無制限に認めますと、人が不慮の損害をこうむる虞れがありますので、これをはつきり第三者にわかるような公示の方法をとりまして、そうして一応第三者に警告しながら、今の常識的な理論を貫いて行こうというのが二項の規定でありますから、これも当然のことだと思います。もう一つ伺いましたところによりますと、鉱害発生の予定地に所有者が建物を建てるような場合には、鉱害の予防或いは防止の立場から、何らか鉱業権者と協議する機会を設けるというような趣旨の規定を置いてはどうかというような御意見であるように伺いました。これは純理論的に見れば極めて御尤もなことだと考えます。この御趣旨は想像いたしまするのに、だんだん地盤が沈下して行くところに建物を建てようとする人は、先ず鉱業権者と相談する。そうして普通のところに建設するよりはもつと強固な建築をする。その代り余計にかかる費用は鉱業権者から出して貰う。それにもかかわらず、なお損害を生じたときには、又当然賠償して貰うというようなことをあらかじめ相談して置くということは、單に将来の紛争を避けることができるだけじやなくて、損害の発生自体を少くすることができるのでありますから、極めて結構なことだと思いますけれども、併しこれを法制化するということは相当困難ではなかろうかと思います。法制化と申しますのは、或る一定の土地に家屋を建てる者は、必ず鉱業権者と話してしなくちやいけない、必ず協議しなくちやならない、そうして若し協議をしなかつたときには、これだけの損害賠償は取れないというような、不利益を受けるというようなことを法規で規定するといたしますと、若し鉱害の発生の虞れがある土地というものを誰が指定するのか、その指定が相当明瞭でなければならんが、相当困難であろう。又協議をして、協議が例えば整わなかつたときに、その問題をどう取扱つて行くのか、又協議をしなかつたときには、どんな不利益を受けるということにするのか、これらの点を法律的に正確に規定しようとすればするほど困難になりまして、これを余り又正確に規定いたしますと、建築をするのに非常に手間取りまして、所有権の不当な制限となる虞れもあると思うのであります。従つて趣旨においては極めて尤もなように感ぜられますけれども、法制化をするには相当困難であろうと私は予想するのであります。尤も單に協議することができるというだけの規定にいたしまして、そうして協議が成立したときには、その協議はただ普通の場合の損害賠償額の予定というだけの効力しか持たない、そうして協議しないでも何ら不利益はこうむらないというくらいの規定なら、これは格別不都合もないものと考えられます。大変長くなりましたが、もう一、二申上げまして終ります。
 第七に、土地調整委員会という制度が設けられました。これはダンカン氏の勧告の線に沿うものでもありますけれども、併しそれを離れて客観的に見ましても、相当意味のある制度であろうと考えます。ただかような制度は、ともすると気休めになる虞れがあるのであります。率直に申しますと、戰後いろいろな委員会が設けられました。併しその委員会が果して最初設置されたような目的に副うような活動をしているかどうかは相当疑問ではなかろうかと思うのであります。その意味で委員会を設けたということが、民主的にしたということの一つの気休めになる慮れがあると考えられます。併しこの土地調整委員会は非常に重要なフアンクシヨンを営んでおるのでありますから、その委員の人選に愼重でなければならんことは申すまでもないのでありますが、殊に事務局の内容を充実して、そうして鉱業と農業、林業その他の産業との調和を、科学的な根拠のあるものにするという仕事を十分営み得るように、率直に申しますと、どうも鉱害の問題では、企業者側と被害者側とが、それぞれ自分のほうに有利な主張をして、そうして両方の中間がおのずから定まつて行く、もつと露骨な言葉で言いますと、力と力との折衝による線が定められるというような状態にあるやに想像するのであります。併しそれは最初申上げましたように、日本全体から見て非常に遺憾なことでございまして、その点に科学的な根拠のある解決を望まなければならんと思うのであります。そうしてその科学的な根拠のある解決をするには、十分科学的な調査が必要なのでありまして、土地調整委員会当面の目的は、そのことにはないのでありましようけれども、折角土地調整委員会というものを作るならば、それに十分陣容の整つた事務局を與え、そうしてそれだけの大きな目的に寄與することまで考えて設けることが必要であろうかと思うのであります。
 以上大変と長くなりましたが、一通り申上げました。
#12
○委員長(深川榮左エ門君) 時間が大分経過いたしましたが、公述人のかたで、特に山添、青山、我妻の三君が、午後は出席が不可能だと思います。それでここで質問がございましたら、一応質問を終了いたしまして、午後は又一時半からでも開会いたしたいと思いまするが、一応午前の公述に対して委員各位の御質問がございましたら、御質問をお願いいたします。
#13
○西田隆男君 私青山先生に先ずお伺いいたしたいのでございますが、青山先生の御意見を聞いておりますと、ドイツのルール地方の問題と、我が国の石炭鉱業の問題を比較対照されてのお話がありましたが、鉱業権者としては、地表に被害を及ぼさないように十分の考慮を拂うことは勿論でありますが、先生の技術的な方面から御判断になつて、日本の現在の炭層の状態において、どういうふうな、地表に被害を及ぼさないであろうというような技術的な方法をお考えになつているかどうか、この問題を一つ御説明願いたい。
#14
○公述人(青山秀三郎君) 北海道はさておきまして、一番私問題になりますのは九州その他であろうと思いますが、従来はかなり地表に近いところが多く採掘されておりまして、その影響も特に著しかつたのであります。それからいろいろな経営上の問題もありまして、採掘したあと十分始末したり、充愼をしたり、又採炭法そのものももつと考慮したいという問題もあつたろうと思うのであります。それがなかなか思うほどにできなかつたという事情は私十分想像されるのでございます。採炭法にいたしましても、今日では長壁方法のような採炭方法をとつておりますが、前の採炭法でありますと、その採堀後の充填などもなかなか困難なところも多かつたのであります。今後それが採炭法が改良され、又充填法が相当に必要なところに実行されるようになりまと、又採堀個所もだんだん深くなつて参りますから、従つて今後の採炭に対する地表の問題は、従来のようには天然條件から見ても激しくないのではないかということもあるのであります。従いましてまだ水とか、いろいろほかの問題もありますけれども、地表の変更ということについて考えますと、今後は技術者のほうで、そういう技術上の努力をいたしますれば、よほど軽減し得る可能性はあるのじやないかと思います。ドイツはもう今日、初めは地表から浅いところをやつておりましたが、平均いたしまして七百メートル、或いはそれ以上深いところへ下に向つて進んで行かなければならない。それで従来はよほど日本と似ておつた事情もあるのでありますが、今後は地表の問題につきましても、そういうような努力も今までやつて来ましてが、だんだん今後はますますその問題は荷が軽くなるのではないか。日本もやはりそれから見ますと、天然條件から見れば似て来る。技術上は今のような方法で努力いたしておりますが、相当地上損害をできるだけ少くするということには、私はむしろ明るい見通しを持つておるのであります。
#15
○西田隆男君 私は青山先生とは却つて逆な考え方をしておるのですが、日本の今までの石炭の採掘は、御承知のように層が十暦も十五層もある。而も採掘の費用の点で現在上層から大体掘つて行つておるというような実情から考えまして、若し深い層をこれから採掘をして行くということになれば、上のほうが計画的に充填しておらなくても、ウオーター・ブラツシングの形で以て溜つている水を引落して採炭して行くことによつて、その水が減水し、陥落することになる。だから充填が完全に行われていない場合において、地上の被害は一層激化されることとなつて、地上に非常に大きな変化を来すような虞れが日本の炭鉱では多分に懸念されるのではないか。その場合に先生のお考えのように、地上に成るべく被害を少くする、技術的に特殊な方法が考えられれば、これは別だと思うのですが、そうでない場合においての鉱業の被害に対する、これらの採掘者の負担というものは莫大な金額になる慮れがあるのではないか。従つて我妻先生のおつしやつておつたように、どうでもこうでも鉱害の復旧に対しては、囲が権利を付與するという建前から考えても、これから先は国が或る程度の補償をするということを考えない限り、鉱害賠償の問題は、私は完全に行かぬのではないかというふうに非常な懸念を持つておりますが、この点に対してもう一遍御意見を伺いたいと思います。
#16
○公述人(青山秀三郎君) 今充填法の問題を伺いましたが、この充填法そのものも、今日の充填法はウオーダー・ブラツシングが行われておる所もありますが、或る所では多く硬などで以て部分的な充填をいたしておる。これを完全充填にするということが今の経営、或いは経費の上でなかなかできない。或いは材料を坑内に上るということにも問題があると思うのです。それで私は水の始末の問題もありますが、全般から見まして、坑内が深くなるということは、これはもういなめない事実であります。それに対しての充填法を、只今のような充填程度、これをもう少し強化する乾式充填、即ち空気充填等もだんだん考えられているので、そういうことで実行して行くならば、これはどうも反対の意見を申上げるようで甚だ恐縮でありますが、私は今後の地上に対することは、経費の面においては、充填に対する経費は、さつきドイツの例を申上げましたが、日本ももつとかけなければならんことになると思うのでありますが、地上に対する損害或いは影響につきまして、技術的に解決する希望はやはりあるのではないかと依然思うのであります。
#17
○西田隆男君 我妻先生に一点お尋ねいたしますが、先生のお話を承わつておりますると、鉱害の賠償は金銭賠償で十分ではないか、金銭賠償でなければいかんという点は、金銭賠償かつ十分行われておらぬから、金銭賠償でないといかぬという考え方ではないかという御所見に伺いましたが、そういたしますと、先生のお考えになつている金銭賠償の額というものは、仮に耕地の点で考えますと一採掘したために耕地が陥落をしたと、従つて一反歩で十俵とれておつたものが八俵しかとれない、ですから二俵分だけ金銭賠償すればよいじやないかという答弁が、政府当局からはたびたびされておるのですが、その程度の賠償とお考えになつておるのか。私の考えでは、仮に耕地が陷落したために、二俵だけ減收したならば、二俵分の減收を賠償するだけでは十分でない。何となれば農家が先ず考えることは、農地の地方を保持するということで、若し金銭賠償の二俵という額であれば、その二俵分の額は耕地の地方を回復する額であるかどうかということが先ず問題にならなければいかん。そういうことが問題の対象になつて、金銭賠償の効果がある。仮に二俵でなくて外の金額で決定された場合には、この農家は耕地の地方を回復するためには、結局は埋立を行わなければならん。埋立を行なつて、そうして耕地が確かに回復するまでの金額の補償を恐らく農家は要求するだろうと思うのですが、先生のお考えでは、十俵が八俵になつた場合に、二俵分だけを金銭賠償するという金銭賠償のお考えであるのか。或いは私が後段に申上げたように、農地の地方が回復するまで、その間の経過も含めて金銭で以てこれを賠償しなければならんというふうにお考えになつておるのか、その点をお伺いいたしたい。
#18
○公述人(我妻榮君) 一家の私経済の立場から、耕地が陥落したために收入が減つたところを賠償すれば、金銭賠償としては足ると考えておるのです。あなたの後段で言われたように、原状回復をどつちがやるかということだけになるのでありまして、原状回復ではなく、それによつて收入が減つたことの賠償だと私は解釈するのです。従つて地方を回復して、又十俵とれるようにするという前提で、それに十分な金というならば、これは原状回復だと私は思います。
#19
○西田隆男君 勿論私が申上げておりますのは原状回復なんです。先生の金銭賠償が十分でないから金銭賠償というのはいかぬのだというようなお話がありましたので、御意見を伺いましたのですが、今の御意見で先生の御意見はわかりましたが、そういたしますと、日本の炭層の賦存状態から考えまして、必ずしも山岳地帶とか、或いは海底とかいうものだけを将来掘るとは考えられぬのですが、日本の耕地の面積から考えましても、耕地の復旧は不可欠の要件であると考える。農林事務次官のお話では、国家が援助をするというお考え方のようでしたが、私はこれは国家が援助をするという考えではなくして、我妻先生が総括的な総論でおつしやつたように、国が何らかの方法で補助をするという建前をとらない限り、日本の耕地の復旧は完全に行われないというふうに考えておりますが、損害の賠償が一応されれば、それで賠償は済んだのだと、それだからその外のことは団が補償する必要はない、それだけでよいというふうにお考えになつておるのか、もう一遍伺いたいと思います。
#20
○公述人(我妻榮君) 私は私経済の立場と国家的な立場と、その意味で分けたつもりだつたのです。つまり私経済の立場では、十俵とれたものが八俵しかとれなければ、あと二俵分の補償をして貰えば、私の経済としてはそれで十分ではないか、それを地方を回復して十俵とれるようにすることは、それは害を受けた農民の純個人的な立場を超えて、日本の農業生産をみずから担つておるというような気持がそこに現われておるから、そういうことになるのだろうと思うのです。そこで私経済の立場では、減つた部分を金で十分補償して貰えばそれでいい。併し国家全体の立場から見て、そうすると、日本中に金で満足して米の生産を減らしておるお百姓さんが沢山出て、米の生産全体が減つて来る。それは国家的立場から見て忍びないということになれば、それは国家的な立場でそれを回復するという必要が生じて来る。併しそのときに、国家的立場と申しましたけれども、それはその費用を全部国家が負担するかどうかということになると、これは非常にむずかしい問題になると思うのです。農業も鉱業も全部国家が経営するということになれば、理論的には問題は簡單になると思うのですけれども、とにかく私の議論は、ここの議論も、現在の資本主義的な経済、或いは現在の法制の根本を維持したその枠の中で議論しておるのですから、従つて企業者が利益を受けるときには、企業者がその負担をしなければならないという問題が入つて来まして、どつちがどれだけ負担するということは、各場合によつて非常に困難な問題になると思います。併し大局的な立場から見て、この場合国家が国家的な問題として取上げて、自分はどれだけ負担するか、当該企業者にどれだけ負担させるか、或いは場合によつてはお百姓さんにもどれだけの負担を忍んで貰わなければならんということになつて、解決して行くことになるだろうと思います。
#21
○西田隆男君 お話はよくわかりましたが、もう一遍先生の御意見をお伺いいたしたいと思う。今先生の御意見を聞いておりますと、個人々々の問題が主として取上げられておつたようですが、鉱業の特殊性から考えまして、一ケ町村に鉱区を設定いたしまして、そこを採掘いたしますと、その一村全体の耕地は、先生のお考え方から言いますと、金銭賠償は一応できたけれども、最後においてはそこの農民は耕地を全部捨てて、自分の居住すらも変えなければいかん。そうして、折角農民として働き得るすべての條件を備えておるにもかかわらず、農業から離れて他の職に転職をしなければならないというような実態が、将来日本の国には起つて来る場合が多々考えられる。こういう場合に、ただ先生のようなお考え方で個人々々の場合に賠償できたら十分ではないかというような立法措置で、果して日本の鉱業が完全に採掘するというような段階に持つて行けるかという点について、私は非常な懸念を持つている。従つてこの鉱業法の中に、そういうふうな意味合いにおいて、何らか日本の国土を荒らさない程度の條文を挿入するか、或いはさつき農林事務次官が言われたように、特別立法においてそういう点の解消されるような考慮を、鉱業法の立案当時の審議委員会でお考えになつたことがありますかどうか。そういう御意見が何かあるのかどうか、もう一遍お伺いします。
#22
○公述人(我妻榮君) 鉱業法の委員会で随分長いこと論議いたしましたので、その間に今言われました御意見のような話合いはしよつちゆう出ておつたのであります。ただそれが具体的な條文とするというところまでは参りませんでしたけれども、しよつちゆうそういう話は出て来ておつたと思います。従つて御意見御尤もだと思いますが、鉱業法の中にそれをどういう形で入れるか、これ又相当困難な問題だと思います。併し適当な形で入れられるなら、そういう規定を置くということ自体には私はむしろ賛成したいと思うのであります。ただ立法として相当困難だ、つまり只今申しましたように、何と言つても資本主義経済の枠の中で問題を処理するわけでありますから、相当一般的な法律を作ることは困難だろうと思う。或る特殊の鉱害が生じましたときに、その問題を具体的に取扱うということは比較的容易にできても、一般的な法律を作るということは相当困難だろうと考えます。
#23
○栗山良夫君 私、青山、我妻両先生に一点だけお伺いしたい。試掘権の問題につきましていろいろ説明を伺つたのでありますが、原案に大体御賛成であるという御趣旨は、徒らに長期の試掘権を設定いたしますと、実際に業者におきまして、試掘が行われない。そうして折角の天然資源が開発されない。こういう意味において適当であろうという御所見のように承わつたのでありますが、この中で特に石油鉱業についてどういうお考えをお持ちになつているか、伺いたいわけであります。青山先生にお伺いをいたしたいことは、石油の探鉱から始まりまして、実際に原油を突きとめ、そうして試掘をいたしますることの相当困難な事業であることは、御專門でありますのでおわかりになつておると思うのでありますが、これにつきまして先生が只今石油鉱業にお触れにならなかつたのでありますが、どういう御意見をお持ちになつているかお伺いしたい。
 それから我妻先生にお伺いをいたしたいのは、積雪地帶に対する考慮の必要のないことを御発言になりますと同時に、石油鉱業につきましては若干考慮してもよかろうというような御発言があつたようでございますが、只今提案されております鉱業法に、石油鉱業について格段の措置をとつたほうがいいとお考えになりますか。この原案のままで、ただ将来にその考慮を保留する。こういうようなお気持でありますのか、その点伺いたい。
#24
○公証人(青山秀三郎君) さつき申上げようと思いまして、時間の関係で省略いたしたのでありますが、石油は御承知のように、あのボーリングをいたしますそのことが、すでに将来の仕事の段階にもなつており、形式でもあります。又資源のあります位置、まあ日本では深いと申しましても、アメリカその他の例に比べますと、まだそれまでに至つておらない。曾ては三千メートルも掘つたこともありますが、今日は大体二千五百、二千メートルぐらいのところで仕事をいたしておるのが、深いほうであります。それにいたしましても調査をするのに、やはり四年で資源として価値があるかどうかということ身決めることは、石油の場合には私は多くの場合無理だろうと思うのであります。従いまして、石油だけはやはり今度の新鉱業法案にも盛られておりまするように、期間を少し長くとるということがむしろ当然ではなかろうかと思うのであります。
#25
○公述人(我妻榮君) 私の申上げようがはつきりしなかつたかと思いますが、私も石油については、この法律は改正することがむしろ至当なのじやないか、こう考えております。それからその外のものについては予備鉱区にするとか、或いは積雪地帶では非常に困るという御意見もあつて非常に御尤もと思います。併し又試掘権を長くして置くということも弊害があると思いますから、それを両方考えて、石油以外のものについては原案でよろしい、そういうふうに考えます。
#26
○栗山良夫君 重ねて我妻先生にお尋ねいたしますが、この法律で試掘権の石油に関する分は延長したほうが適当だ、こういう工合におつしやつたのでありますが、あなたの大体お気持で結構でありますけれども、どのくらいに延長したほうが適当であるとお考えになりますか伺いたい。
#27
○公述人(我妻榮君) 私は鉱業法の專門ではありませんので、鉱業の実際のことは余りよく存じませんので、その点はむしろ青山教授から御意見を伺つて、つまり余り長くしちやうといかんという私の気持は青山さんと全く同じなのでありますから、その気持に立つて技術的にどのくらいだと、青山先生がおつしやれば、私はそれに賛成していいと思います。
#28
○栗山良夫君 それでは青山先生に技術的な御観点からお答えを一つ頂きたい。
#29
○公述人(青山秀三郎君) 大体この南方資源開発のときにもそういう話も出たのでありまするが、日本の石油技術者が相当南方に行きまして、相当指導的になれると思いましたところが、なかなか却つて向うのほうが優れていたというような話もあります。現在においても掘る技術を見ますと機械はアメリカから輸入いたしておるのであります。いろいろな事情で、地表の、例えば道路法の関係もあると思うのであります。例えば千メートル、或いは千五百メートルの井戸を掘る場合、日本ではまあそれが一年、或いは二年もかかつたこともあるのであります。今日は大体それがだんだん早くなりまして、この電撃さく井という言葉も出ておるほどであります。従来の半分ぐらいの期間で井戸を掘り得るというところまで伸びつつあります。それにいたしましても、やはり二年の間に或る広い地域の可否をきめるということは井戸の数も相当になりますし、なかなか今の状態では、進んだ状態でもまだ無理だろうと思います。少くとも四年ぐらいは與えて置かなければ、その最後の段階でも決定を下し得る時間的余裕がないのじやないかと思つております。
#30
○吉田法晴君 遅くなりましたけれども、午後いらつしやいませんそうで、是非お尋ねをいたして置きたいと思います。山添農林事務次官にお尋ねをするのでありますが、この休会中の委員会であつたと思うのでありますが、委員長からの代表質問に対しまして、資源庁の徳永鉱山局長の答弁の中に……徳永局長だつたと思いますが、この予定賠償、或いはいわゆる打切り補償と言われております問題について、両当事者がそれを希望しながら……、その前の過去において得ておつたもの、先ほど西田さんが、過去において十俵得ておつたのが八俵しか取れなくなつた、その差額の二俵、こういう過去において得ておつたものを年々賠償する。こういう農民の立場といたしますならば、仕事もなくなつてぶらぶらと賠償金だけを貰つて年々暮しておるということは、必ずしも本意とするところではない。賠償金をまとめて貰つて、それを元手に適当にやり甲斐のある仕事を他に見つけるということも、農民側から要求されることが当然予想される。これは両当事者がそれを希望しながら法律的な裏付けが不十分なために、円滑に行われないというような憾みが過去においてあつたわけでありまして、その点を何とか合理的に解決するために努力しようではないかということで、新法におきまして或る程度の代行というものを認めることにいたしたわけでございます。尚この制度は被害者の不利になるということは、審議会におきましても農林省その他の関係官も出ておつたのでありますが、局長、次官も出ておられたわけでありますが、全然そういう不安を持つておつたわけではございませんと、こういう答弁になつているのであります。前のほうの補償を貰つたために、仕事もなくぶらぶら補償金だけ貰つて年を暮しているという実情があるかどうかについては、これは後で被害者代表にお尋ねをしたいと思いますが、この答弁で見ますと農林省の局長、本官も出ておられて、そうしてこの制度を椿えることについて被害者の不利になるということは考えられない。そこで農林省としても不安を持たず養成されたという印象を持つのでありますが、そういうように審議会で言明せられましたかどうか。或いは従来のも合わせてでありますが、賠償につきましてこの打切り賠償その他を貰つて、農民の諸君が如何ような実態にあつたかということについて、農林省として見ておられた実態或いは印象について伺つて置きたいと思います。
#31
○公述人(山添利作君) 只今御質問になりましたのは第百十四條の損害額を予定した場合の規定でございますが、いわゆる予定額を以て打切る。これは民法の原則によりますれば損害の額を予定すればそれで打切りというのでございますが、この第百十四條に書いてあります事柄は、その額が著しく不相当である場合、これは損害を必ずしも予見することはできませんので、あらかじめ約束して置きましても損害の状況如何によりまして、その額が不相当である場合には、この増減を請求することができると、こういうような民法の例外規定をいたしたのであります。従つてそういうふうな増減請求とか、事情に応ずるような変更の請求権があるということであればそれでよろしいと思います。だが出席しておりました場合に問題になりましたのは、この第百十四條の第二項に関する規定でございまして、あらかじめそういうふうに予定をされております場合に、土地なら土地、建物なら建物の所有者が変る。かような場合に、いろいろむずかしい問題が起るわけでありますが、その関係について如何に取扱うか、先ほども我妻先生のお話の中に出ておりましたが、損害額は貰つてしまつた。ところがその家屋なり土地なりを取得いたしました人は又損害の補償が得られるがごとき考え方を持つているということになりますと、そこに非常に面倒な問題が起るわけでありまして、そのような予定額の登録ということによつて明らかにする。そういうことであればあらかじめ定めて置いた損害額というものが後の土地なり家屋なりの権利を取得した者について効力を持つて行くということは、これは合理的な制度であり、それに賛成をいたしておる。かようなわけであります。両実際現地における損害の補償が円滑に行われているかどうかということにつきましてはこれは私も必ずしも事情に精通をいたしているわけではないのでありますが、凡そ現在問題になつておりますのは、戰争中の濫掘の結果によるところの大きな損害を復旧する問題でございまして、これはいろいろな事情から事業の進行が遅れております。遅々としていることは非常に遺憾といたしております。又先ほど農民がただ金を貰つて年々ぶらぶらしているというお話がございましたが、これはぶらぶらしているかどうかは、そういうことは私なかろうと思いまするが、賠償のやり方そのものにつきましては、これはもつと合理的に問題を処理して行く方法について考えなければならんという印象を持つております。先ほど二斗損害が起つた場合に、その二斗の金を年々補償して行くのか、それをキヤピタリゼーシヨンしたものを補償して行くのか、或いは土地を低して、二斗を一斗の限度にとめるようにむしろ土地の状況を面して行く。後の一斗分は補償を受ける、金銭の補償にするとか、いろいろこの鉱害の賠償につきましては尚今後合理的に考えて行く余地があると考えております。
#32
○吉田法晴君 時間も遅うございますし、実は第百十四條に関連しまして予定賠償、或いはいわゆる打切り補償の制度について、農林省がこれに賛成せられるという点について疑義があつたのでございます。尚本法案について審議します時間もございますわけですから、本委員会の席上で改めて政府委員として来て貰つて御説明を聞くことにして、一応農林次官に対します御質問は打切つて置きたいと思います。そういう工合に御了承を願いたいと思います。
 尚もう一ついでに我妻先生に二点だけお尋ねをいたしたいのであります。租鉱権の点につきまして先ほど触れられたのでございますが、過去においてはお話の通りに斤先掘契約として認められなかつた、そのことが如何に実態に合わず、無理があつたということ、それからそれについての慣例、法理論等も伺つて参つたのでありますが、それが戰争のために使用権ということに相成りまして、更に租鉱権ということに、はつきりそこで物権ということになつたわけでありますが、これに関連いたしまして、先ほど御指摘のように或いは租鉱権者が小資本のものが多く、鉱害賠償が十分期待されないといつたようなこともあります。或いは又そもそもそういう小規模の祖鉱権による開発を、これは産業政策上助長すべきかどうか。日本のこの地下資源の開発の方法と申しますか、或いはこれは国の産業政策とも関逃して参ると思うのでありますが、そういう意味からいたしまして物権としての租鉱権を認めるがいいか、使用権程度のものがいいかということについては、これは立法技術上と申しますか、或いは政策的にも相当議論があるかと思います。或いは考えなければならんかと思いますが、そういう点から考えまして、従来の経緯を拔きにしまして、我妻先生の御意見を承わりたい。それから……。
#33
○委員長(深川榮左エ門君) ちよつと、只今青山先生は急用があるらしいですから、青山先生の御退席を……、どうぞ。
#34
○吉田法晴君 もう一つは土地調整委員会の問題でございますが、これは我々よりも先生のほうが鉱業法改正の審議にずつと参画せられましたので、経緯についてはお詳しいと思うのでありますが、先生がこの鉱業法改正準備会と申しますか、その委員になられます直前にはこの鉱害賠償につきましても原状回復主義が一応出ておつたように承知するのでありますが、その際に一応鉱業委員会という考え方が出ております。それから我々が貰いました資料を見ましてもその後我々は鉱業委員会とか、或いは調整委員会とか、いろいろ審議の経過に従つてこういう委員会がいろいろな形を採つておるようであります。そして出て来ました案では公益或いは土地、民情その他との矛盾の調整、土地使用收用の問題について中央に土地調整委員会があり、それから地方にはこの鉱害賠償の基準問題について基準委員会を置くという、こういう二本建になつておるようでありますが、何と申しますか、條文から言つてもすつきり一貫していない点もありますし、それから二元化され、或いは運用面でどうかと考えられる点もございます。経緯がよくわからんからその点私共断定的に意見を出しかねるのでありますが、むしろもう少し一元化して、そして狙われた民主的な形態として完備したというか、或いは一貫したものが考えられるのではないか。こういう疑問を持つのでありますが、その点について我妻先生の御意見を承わりたいと思います。
#35
○公述人(我妻榮君) 最初の点は、租鉱権というものは御指摘の通り弊害も考えられたのでありますが、現在のところではこの案では相当監督をして租鉱権者にやらせることは一般の鉱業経営ということからは不都合のないようになつておると思います。併し実際この制度を非常に利用したほうがいいか悪いかということになりますと、私の個人的な意見といたしましては成るべく租鉱権者というものを利用しないで、大きな資本を持つておる経営者自身がやるほうがいいだろうと思います。併し租鉱権制度をそんなに利用することは余り賛成でないといたしましても、だからこれを物権とするのは行過ぎだろうと、こうは言えないだろうと思います。つまり使用権とするか、或いは物権とするか、どつちにするかということになると、観念的には非常に強くなつたようにお考えになるかも知れませんが、併し物権と申しましてもその内容によつていろいろ違うのでありますから、租鉱権が物権だといつたこと、その一事からそう強いものとして非常にこれが大きな意義を持つものだとお考えになる必要はないと思います。結局物権であるということで第三者に対抗する効力があるかどうかということくらいなんでありますから、物権にするということで租鉱権が非常に強くなつて、租鉱権制度を助長することになるという御懸念はないと思います。
 それから第二の点でありますが、これは経緯を私も今そうで全部覚えているわけでありませんし、資料を見てお答えする時間もありませんが、簡單に結論だけ申しますと、地方にも民主的な委員会を置いて、そうしてそこで鉱害の賠償についての仲裁をするというようなものがあつたほうがいいかと私は思います。併しいろいろな経緯で、結局こういうことになつたのでありますが、さてでき上つた制度を見ますと、御指摘の通りすつきりしないということになるかも知れませんが、併し運用の面において相当効果を挙げ得るのであつて、このでき上つた案で大きな欠陥があるとは考えません。
#36
○小松正雄君 我妻先生にお尋ね申上げたいと思いますが、さつきのお話の中に、租鉱権者が採掘の場合に万全を期して事業をやつてしまつた。そのあとで被害が発生した場合は、鉱業権者の責任であるといつたようなお話でありましたが、万全を期するというのは、どの程度までが万全を期しておつたのかということをお伺いしたいのであります。
#37
○公述人(我妻榮君) ちよつとそれは……、私はそう申上げません。七百十七條という民法の規定が引合いに出されながら、租鉱権者と鉱業権者との連帶というお説が一方にあるやに伺つたがという点でございます。七百十七條そのもの通りにいたしますと、今おつしやるように、租鉱権者が注意を怠らなかつたら鉱業権者にあるということになるであろう。そういうことをただ申上げまして、そうしてそれがそうなつて来ると困るということを私は申しました。従つて私は結論といたしましては、租鉱権者も鉱業権者も、いわゆる昔通り賠償の責任はある。その責任が連帶になるのか、それとも全然租鉱権者だけになるのか、どつちかといえば私は連帶は行過ぎである。それからこれはこの案のように租鉱権者だけにするのも成るほど被害者にとつて不利益かも知れません。そうしてそこで私は第一段に、租鉱権者が責任を負つて、若し資力が十分でないために被害者に十分な満足を與えることができないときに、第二段に鉱業権者にしようということであります。その責任條件というものは、これは両方とも昔通りと考えるのであります。
#38
○小松正雄君 その中に、採掘をする場合に租鉱権者が万全を期して掘つた場合のあとに起つたことに対しては、鉱業権者は責任を持つべきだと、こうおつしやられたように聞きましたので、御質問申上げた次第であります。
#39
○吉田法晴君 時間がなくて大変恐縮ですが、もう一点簡單にお伺いをいたして置きます。これは賠償問題につきまして、従来と申しますか、我妻先生が委員になられます前まで原状回復主義が出ておつたというように聞きますし、その案文についても見たりするのでありますが一どちらから規定をいたしましても、金銭賠償主義を原則として、原状回復主義を例外にするか。原状回復主義を原則として、金銭賠償を例外とするか。表現の方法は裏腹で大した違いはないように思いますが、強理論として、これは先生ですから法理論として、その点につきましてどういう理由で前の原状回復主義中心がひつくりかえつたかという点につきましての何と言うか、御意見をちよつと承わりたい。
#40
○公述人(我妻榮君) 法理論と申しましても、どつちでなければならんという法理というものがあるわけはないのでありますけれども、金銭賠償ということが非常に便利であり、問題が早く片付くというので各国がそういう原則を取つておるのであります。最初の案はそうではないと言われますけれども、最初の案というものは私が関係しまして正式に委員会が審議を始めましてからは、金銭賠償によつておるのであります。その前に原案とでも言うべきものが、どういう経緯でできましたか余りよく存じませんが、私たちはそれは全くの原案で、一応そうきまつたとは考えません。従つてむしろ現行法を改める必要ありや否やという立場から問題を考えて、そうして現行法のようにいわゆる金銭賠償を原則として、特別の場合に原状回復で行くという現行法を改むべきや否やという点を私たちは考えた。そうしてそれを改める必要はなかろう、こういうふうに考えたのであります。
#41
○委員長(深川榮左エ門君) それではこれで一旦休憩いたしまして、午後は二時から再開いたしたいと思います。
   午後一時十一分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時二十一分再開
#42
○委員長(深川榮左エ門君) 休憩前に引續きまして公聽会を再開いたします。
 尚あらかじめお断りして置きますが、石炭協会会長高木作太君、日本鉱業協会会長岡部楠男君の両公述人は所用のため途中で退席いたしたいとの御申出がありますので、御両君に対する御質問は御両君の公述が終つてからいたしたいと存じます。さよう御了承お願いいたします。日本石炭協会会長高木作太君。
#43
○公述人(高木作太君) 鉱業法は申すまでもなく鉱業に関する基本法でございまして、地下資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄與することを目的といたしますことは、日本坑法以来一貫した変らざる法の精神であると信じます。従つて経済界の変動に伴つてしばしば改正を要する法令等と異なりまして恒久的性質を持たなければならんと存じます。現行法は明治三十八年制定以来数次の部分的改正は行われましたが、半世紀に亘り我国の鉱業の発展に寄與したものでありますことは御承知の通りであります。政府におかれましては、重要鉱物増産法の失効を機会に同法中の所要の規定を本法中に取入れることと同時に、砂鉱法を同法に合併し、法の整備を行うため、今回鉱業法改正案を国会に提出されました事情は了解いたしまするが、先にも申述べましたように伝統ある恒久法の改正は、現今のごとき事情下においては極めて愼重に行うことが肝要であつて、伝統の精神を濫りに改変するがごときは嚴に愼まなければならんものと存ずる次第であります。かかる意味合いにおきまして法案を仔細に検討いたしますると、私共の納得いたしかねます事項が数ケ所ございますので、條を追つて簡單に修正の要望と、その理由を開陳いたしたいと思います。
 第一点は、石炭鉱区の最小面積を十五ヘクタール、従来の五万坪程度とすることであります。法案第十四條第二項は石炭鉱区の最小面積を三十ヘクタール、約十万坪と規定いたしておりまするが、従来五万坪の企業單位で何らの不利、不便なく稼行して参つたのでありまして、特にこれを三十ヘクタール、十万坪に拡大せねばならん理由は認められません。のみならず鉱床の関係よりする鉱区の交換分合は、勿論鉱業行政上の鉱区の整理統合にも少からざる支障を来たすものと考えます。よつて従来通り五万坪程度を最小面積とされんことを希望いたします。
 第二点は、試掘権の存續期間を従来通り四年とし、一回の延長を認め得ることであります。今後試掘を要する地域はおおむね深部に属し、地表よりの探査極めて困難であり、且つ多くの試錐その他精緻なる科学的探鉱を行うことを必要といたしまするし、或いは立地條件に支配されて、試掘期間の半ばを必然的に空費せしめられ、又資金、資材並びに技術陣容等にいたしましても、我が国の現状は既往の実情に徴しましても、試掘期間は四年以上必要といたしますので、法案第十八條の試掘期間は是非四年間と修正せられたいのであります。
 次に試掘作業を減衰に継續中のものにつきましては、更に一回の延長は鉱業の発達助長の上からも当然と考えるのでありまするから、これ又四年間の期間の延長を認むることに御修正を願いたいと思います。尚改正鉱業法が施行されます際、現行法によつて設定され、現に存する試掘権の期間のことについてでありますが、この点は本法案には何らの経過規定が見当りませんので、或いは鉱業法施行法案中に規定されるかとも存じまするが、改正法律の施行の際、旧法によつて設定された現に存する試掘権については改正法施行の際、改正法によつて試掘権が決定されたものとみなし、期間の計算も改正法に従うことにされることを希望いたします。御承知の通り現存する各種鉱物の試掘権は、戰時中千要鉱物増産法の規定によつて、鉱種別に期間が延長され、現在極めて混乱しておりまして、取扱の上からも改正法によつて簡明ならしめる必要があると存じます。尚右のごとき取扱は昭和十六年式堀権制度改正の際の先例もあり、既得権存續の趣旨から申しましても、極めて当然と存じます。
 第三点は、採掘権は従来通り水久権とすることであります。法案第十九條は採掘権に期間を付してありますが、これは採掘事業の本質を弁えざるも甚だしきものであります。由来採掘鉱区は、一応採掘事業の成立する鉱量の埋蔵は推定されまするが、掘進の進展に俘つて埋蔵量を確認し、経営方針を立てるものであつて、鉱区面積、企業規模等によつて相違はいたしまするが、埋蔵量によつては数百年の長きに亘り事業を営みつつある例に乏しくないのであります。若し予測に反し、鉱況不振の場合はたとえ権利は永久権でありましても、内容の空虚な権利でありまするが故に、権利者は当然これを放棄いたしまするから、この面からの弊害は考慮の要はないと思います。又企業の安定、永續性、資材、技術の合理的活用の見地よりいたしますれば、一事業所の終掘に備え、予備鉱区を保持することは必要且つ当然のことであり、尚又同時に一定期間内に限り成る鉱物資源を採掘せしむることは、国家百年の計より見て、必ずしも本法案の目的とする公共の福祉の増進に寄與するゆえんではないと思います。かかる見地からいたしまして採掘権は期間を附せず、確乎たる永久権として、投資の安全性を保持せしめ、鉱利を保護することが鉱業政策上当然と考える次第でございます。
 第四点は、事業着手の義務の期限を一年とし、休業の認可を届出とすることであります。法案第六十二條第一項は、事業着手を鉱業権の設定又は移転のときから六ケ月に義務付けておりますが、我国の現状は資金、資材はもとより、技術陣容を一時に動員することの困難は勿論のことでありまして、土地の使用の手續、その他相当の準備期間を必要といたします。又立地條件の支配を受け、積雪期に許可又は移転を受けた鉱区等については、法律は不可能を強いる結果と相成りまするので、現行法通り着手義務は一ケ年と修正されんことを希望いたします。同條第二項、第三項は休業について従来の届出制を許可制に改めましたが、従来届出を以て何ら支障なく運営されて参りましたので、特にこれを認可制とする必要は認められませんので、理由を明記して届出とすることに修正せられたいと思います。
 第五点は、租鉱権についてであります。法案第三章の租鉱権は、従来の使用権制度を踏襲したものでありまして、権利内容も使用権と大体同様であり、残鉱の採掘、その他鉱区の一部における鉱物の経済的開発を行い、遺利なからしめることを本旨といたしますものと存じまして、本制度の存續に賛意を表するものであります。併しながら一部には租鉱権者の鉱害賠償の責任は、全面的に鉱業権者と連帶すべきものであるという説をなされる者がありまするが、法案第百九條第三項の規定による損害発生後に租鉱権を設定した場合、及び租鉱権者が損害を発生せしめた後租鉱権が消滅した場合は、両者連帶して損害賠償の責任を負うことになつておりますので、被害者の保護には欠くるどころがないと存じます。若し租鉱権者の稼行中も全面的に連帶といたしまするならば、未採掘地域即ち地山を租鉱権者が開発し現に稼行中であつて、責任の帰属が極めて明瞭なものまで鉱業権者が連帶することになり、理論上の矛盾はもとより延いては租鉱権制度創設の趣旨に背反することになる懸念もありまするので、鉱業権者の責任は原案通りとしなければならんことを希望いたします。
 第六点は、土地の使用、收用についてであります。鉱業の実施に際し最初に逢着する問題は鉱業用地の問題でありまするが、実状は鉱業用地の使用は鉱業法による通商産業局長の許可に基き、上地町有者と協議することのみによつては、土地の使用ができません。更に農地調整法によつて府県知事の農地使用の許可を受けなければなりませんので、手續の煩瑣はもとより、急速なる土地の使用が困難で、事業経営上支障が少くありません。法案によりますれば土地の使用、收用の申請があつたときは、通商産業局長は関係都道府県知事と協議すると共に、鉱業権者又は租鉱権者、並びに土地に関して権利を有する者の出頭を求めて、公開による聴聞を行うこととなり、従来より極めて公正、且つ民主的な形式が採用されておりまするので、炭地調整法の重ねての適用の必要はないものと信じます。よつて農地調整法の適用を除外する明文を挿入し、急速に土地の使用、收用のできますよう修正せられんことを希望するものであります。
 第七点は、鉱害賠償についての所見であります。鉱害の賠償に関する規定は、昭和十四年に追加されたものでありまして、以来十ケ年の歳月を閲しましたが、その間事変、戰争が介在しましたので、遺憾ながら正常の歩みを續けたとは申しかねます。即ち事変、戰争中国家の要請に基いて鉱害の発生を無視して強行採炭を行いました結果、異常なる鉱害が発生したのでありまして、これにつきましては先般の国会におきまして特別鉱害復旧臨時措置法が制定されまして、一応の解決を見ましたことは、誠に御同慶の至りでありまするが、前に申述べましたように、鉱害賠償の規定は制定後日尚浅きため、今回の鉱業法の改正に当りましても、原則的に現行規定がそのまま移行され、僅かに必要規定の一、二ケ條の追加にとどまりましたことは誠に時宜に適した措置であると存じます。然るに一部には今回の鉱業法改正の機会に、賠償原則を変革し、金銭賠償と原状回復に置き代えることの要望があるのでありまするが、賠償は民法の原則に従い、金銭を以てその損失の補填をなすことを本旨といたしまするが故に、損失補填以上の賠償義務を法定いたしますることは、理論上の矛盾があるばかりでなく、限度ある鉱業権者の負担力を度外視するものでありまするから、この賠償原則は従来通り金銭を以てこれを行うことといたしますことが当然と信ずるものであります。尤も鉱業権者といたしましても、適正賠償額に国家その他の出捐を加算いたしまして、鉱害の原状回復を行いますことにつきましては大なる関心と希望を持つものであります。よつて政府におかれましては、前国会の衆議院の決議の趣旨を尊重せられ、一般鉱害の復旧に関し速かに施策を考究せられますことを切望いたします。
 尚現行法より改正法案が踏襲いたしております供託金制度につきましては、その効果に鑑み、これが存置につきこの際再検討を加えられんことを希望いたすものでございます。これを要しまするに、鉱業権者に苛酷な負担を法律を以て強制いたしますことは、石炭鉱業の破滅を君旅するものでありまするから、鉱業権者の責任限度は飽くまでも金銭を以てする適正賠償にあることを法文上明らかにいたして置く必要がありますことを重ねて申述べる次第でございます。
 次に、今回追加されました第百十四條の規定の予定賠償は当時者相互の便益を考慮されたものと存じます。即ち賠償そのものの対価以上に上廻ることは考えられませんので、鉱業権者は対価を提供し、将来の賠償責任の免除を受けますことはこれ又当然と考えますし、紛議を未然に防止し、双方の利益となるものと固く信するものであります。
 尚鉱害賠償に関連いたしまして一言いたしたいことは、鉱害発生の予見されまする土地の鉱業権者に連絡しなかつた建物、その他の工作物を設置することによつて無用の鉱害を惹起する場合がありまするので、これが防止の方法を講ずることであります。即ち卑近な実例といたしましては、近き将来当然土地陥落の被害発生の予想されます土地に、新制中学校の校舎を新設しようといたしまして地ならしに着手いたしました際、鉱業権者がこれを知りまして、協議の上他の安全地帶に敷地の変更をいたしましたので、鉱害を未然に防止し得たのであります。かような事例は枚挙にいとまがありませんが、かくのごとき場合は事前に鉱業権者に協議することの一ケ條の條文挿入によつて、鉱業権者及び相手方双方の損害を未然に防ぎ、多大の利益となるものと存じます。この点につきましては、先刻他の公述人の方からお話がございましたが、鉱業権者といたしましては是非こういうふうな條文の挿入をして頂きたいと存ずる次第でございます。よろしく御諒察を願いたいと思います。
 御清聴有難うございました。
#44
○委員長(深川榮左エ門君) 日本鉱業協会会長岡部楠男君。
#45
○公述人(岡部楠男君) 私は日本鉱業協会会長の岡部楠男でございます。金属鉱業界を代表いたしまして業界の新鉱業法案に対する意見の要旨を申述べたいと存じます。
 この法案は昭和二十一年以来本日まで長い間研究に研究を重ねられて成案を得たもののように承つておりますが、業界といたしまして、尚不満の條項も少くないのであります。以下業界として改正法案に対する意見を、時間の関係上主要事項だけにつき申述べたいと思います。
 第一は試掘権の存續期間を現行法通り四年とすることで断ります。法案の第十八條関係、試掘権を二年に短縮しようとする政府当局の意向は、試掘権にて採掘を行なつておる業者に対する反感と、試掘事業の強制による早急な国内資源の開発との二点にあるのではないかと推測いたします。
 試掘権で採掘を行うことは、これまでの試掘権が優先継續出願権を認められていたこと並びに重要鉱物増産法による期限の進行が停止せられておつたために実際上長期間に亘り存續することができたからであります。併しながらこの法案も現在では試掘権は本来の姿に帰り、本年一月頃から満期消滅しつつあるのであります。又改正案は、原則として二年間に試掘を強制しておりますが、現在の試掘鉱区は山間避地の不便の地に多く、積雪その他自然的障害により一年のうち探鉱期間は約半年以下であります。実際問題といたしまして北海道、東北地方は現に一年のうち仕事のできるのは漸く半年に過ぎません。又探鉱に要する資金、機械、器具の入手も今相当困難な状況にありますので、二年間の探鉱は実際的に困難であります。更に鉱業政策的見地からいたしましても、我が国のごとき資源の少い国では、一つの鉱床は、成るべく一人に集中して採掘せしめる方が適当であろうと存じます。何となれば、そのほうが無駄がなく、能率も上り、採掘の効果も多くなつて国家資源の有効活用となるからであります。かかる見地からしても試掘権は原則として四年とし、特に特殊事情のあるものに対しては改正案のごとく更に二年の延長を認めることが適当であろうと存じます。
 第二には、改正法施行当時現存の試掘権についても一回二年の期限の延長を認めることであります。法案の第十八條追加としてです。現在の試掘鉱区は、全国で約四万余と推測されますが、それらを一時に探鉱することは人員、経費の関係よりも不可能であります。鉱業界の現況は新規鉱区の開発よりも戰時中荒廃した採掘鉱山の復興が先決であります。従つて改正法施行当時現存の試掘権の存續期間は現行法によると共に、一回延長を認めることが鉱業界の現状よりも必要であると存じます。
 第三には、採掘権の存續期間を無期限とすることであります。採掘権の存續期間を三十年に区切られることは理解に苦しむものであります。金属鉱業のごとく鉱況の変化の多いものについて、地下埋蔵鉱量をその事業開始のときに把握することは不可能であります。又鉱物は一定有限のものであり、必ず掘り盡されるものでありますので、自然的に有期限となるのであります。正常経済下では鉱業会社の全資産の約五〇%は固定資産であり、即ちかような莫大な固定資産を地上に設備いたしておるのでありますが、それに対してこの基本的権利を三十年で区切ることは、企業に対して非常な圧迫を與えるのであります。尚採掘権の存續期間の迫つたものはその担保価値を減じ、融資上も著しく不利となるのであります。以上の理由によりまして、採掘権については埋蔵鉱量による自然的期限に任せ、法律的期限を設ける必要は全くないものと存じます。
 第四は、土地使用並びに收用の目的を拡張することであります。法案の第百四條、第百五條関係であります。鉱業にとりまして、重要事項である探鉱、即ちボーリングその他各種の科学探鉱は一般に地表より行われておるのでありますが、これを改正法案第百四條の一号に含めることは無理のように思われますので、土地使用の目的として探鉱のための設備を一号追加する必要があります。同條第四号は、抗木、火薬類、燃料が列記せられておりますが、鋼材、カーバイト等の重要資材が落ちておるので、これらを一括して生産資材置場として追加願いたく、尚海岸近くの鉱山は船積施設を必要としますので、同條第六号に港湾等の輸送施設を追加して頂きたいのであります。第百五條の收用については、採鉱施設、船積施設が列記されておりませんので、是非追加をして頂きたいのであります。
 第五は、鉱業出願人の名義変更を認めることであります。法案第四十一條の関係、鉱業権登録出願中は権利が不確定であるために、讓渡の対象とならないという趣旨のようでありますが、登録の手續上からも出願中の名義変更のほうが簡便であり、先願権の取引上の注意は当事者に任すべきであります。又出願は鉱業権の既得権として財産権と見られるものであつて、鉱山開発の見地からも鉱山発見者を保護するために、現行法通り出願人の名義変更を認めるべきものと存じます。
 第六は、鉱業権と採石権との調整の問題であります。鉱業における採鉱は、脈石、母岩等と一緒に採掘しなければできないのであります。地下の採鉱については従来より地上権と関係なく鉱業権の内容として岩石を採掘しており、たまたまそれら岩石等が経済的価値のある場合は、販売しておるのであります。地下における採掘は地表所有権では利用外であつて、その所有権の行使に何ら差支えるものでなく、鉱業権による採鉱に附随して採掘せられる岩石は鉱業権の内容の一部であつて、別に採石権を得る必要はないものと存じます。つきましては鉱業権により採掘される岩石の採石は、採石法より除外すると共に、鉱業権と採石権が同一地域に重複設定せられた場合、両者の作業に関する調整規定を設けることがこの際是非とも必要であると考えます。
 第七は、試掘権より採掘権に転願のものは、採掘の許可、不許可の通知のある日まで試掘事業を認めることであります。採掘権の許可には従来相当の期間を要する状態であります。採掘出願中試掘権の存續期間の切れた場合は、操業を中止して待機の止むなきにいたるので、従業員の転換とか失業等の問題も生じますので、法律上許可、不許可が決定するまで試掘権者として操業を認めると共に、鉱業法、税法上その他鉱山保安上の法的責任を負わすようにするほうが実態に適応すると考えます。
 第八に、鉱業権の交換又は売渡し及び鉱区の増減施業案の変更についての勧告であります。法の第八十八條関係、自由経済の下におきましては、企業は業者の創意と責任とにゆだねるべきで、官庁の干渉は好ましからざる規定であり、国家の資源開発上真に止むを得ざる場合にのみ発動すべきで、いわゆる官僚統制的意識による適用は排除すべきものと考えます。
 第九に、鉱害担保供託金の積立についてであります。法案第百十七條第三項で、石炭以外の鉱種についても鉱産物販売額の百分の一以内の金銭積立を命じ得る事になつておりますが、金属鉱山の鉱害は、石炭、亜炭のような土地の陷落問題はなく、採掘量に関係のない坑内選鉱等の排水又は製錬所の鉱煙だけでありますので、金属鉱業としては、鉱業法施行四十五年の実績に鑑みましても、全然その必要がないものと存じますので、除外せられるよう要望いたします。
 最後に、鉱害賠償責任の消滅時効に関する規定であります。法案第百十五條では損害の発生又は鉱害の進行の止んだときより二十年となつておりますが、金属鉱山の鉱害である坑内排水等の進行は、いつ止んだか実際上不明でありますので、結局永久ということになります。鉱業権消滅のものは、その消滅後十年間損害が発生しない場合、第百十九條第二項で担保供託金の取戻しを認めておりますし、加うるに鉱業権が消滅しても、仮に二十五年という賠償責任を認めても、鉱業権者の所存や責任等の範囲が不明となりますので、鉱業賠償責任も消滅のときより十年とすべきであります。
 以上改正法案に対する金属鉱業界の主要希望意見を申述べましたが、その他の事項につきましては、お手許に差上げました新鉱業法案に対する意見書を御覽願いたいと存じます。
 御清聽を有難うございました。
#46
○委員長(深川榮左エ門君) 先程も申しました通り、高木、岡部両君は時間の都合上退席いたしたいとの申出がありましたので、両君に対する御質問がございましたら、御発言をお願いいします……。
 それでは次に、香川県香川郡直島村産業振興組合長花岡圭治氏にお願いいたします。
#47
○公述人(花岡圭治君) 私は鉱煙害関係被害者側の立場から、新鉱業法案中鉱害の賠償に関する規定について意見を申述べたいと存じます。
 先ず賠償を金銭賠償とするか或いは原状回復をするかという問題でありますが、鉱煙害の賠償は、被害が農作物、林木等いわゆる立毛に対するものでありまして、土地に対しては影響ありませんので、毎年被害高に応じて賠償を要求することにより、問題を解決して行けばよく、私の長年の経験から申しましても、原状回復を要求する必要に迫られたことはなく、将来も又原状回復を要求することはないのではないかと考えられます。直島村の場合においては、鉱煙により主として農作物が被害を受けており、その賠償は毎年被害高に応じて当事者間の折衝により賠償金額を決定いたしておりますが、問題を後に残すというようなことはありませんので、新鉱業法案第百十一條の規定については別に異議はありません。尚、話に聞けば炭鉱方面の鉱害についでは、その復旧に対しては相当国庫の支出がなされて、被官者を救済せられている模様でありますが、金属鉱山方面についても、災害復旧等により同様の国家的救済がとられて可なりかと思われますから、関係方面の方々の御房方により是非とも救済の途を講じて頂くよう念願いたします。
 次に、損害賠償に関する争議は、事業者及び被害者双方の損害の見積額が大幅に相違することが主なる原因となつて発生するものと思われますが、新鉱業法案第百十二條においては、通商産業局長は地方鉱煙害賠償基準協議会に諮問して、損害賠償の範囲、方法等についての公正且つ適切な一般的基準を作成、公表する旨規定されていることは大いに期待が持たれる次第であります。争議発生の主要原因と思われます損害見積額の相違は、損害の調査が各別個の方法により行われる場合に多く、従つて双方調査資料を持ち寄つて折衝して見ても、見解の相違によつて損害が相違するのであるとの結論を得る程度に終つてしまい、相互に誤りを是正して公正な損害額を決定するに至らず、結局互いに自己の調査損害額を強く主張するところから種々紛争を生じているものと思われますので、本規定により一般基準が公表せられますことは誠に結構なことと思います。併しながら右基準の作成に当つては飽くまで科学的根拠によるべきことは勿論、十分民間人の意見を聽取し、荀くも実情と遊離したものとならないよう、即ち折角の機関が十分活用せられるよう切望する次第であります。鉱煙害補償に関して争議が生じた際には、通商産業局長に和解の仲介を申立て得る規定が第百二十二條以下に規定されていますが、これは一応当を得たものと思われます。併しながら当事者が互いに誠意を以て折衝をなし、尚且つ円満解決の方途を見出せない場合において初めて本規定により公正なる第三者の仲介を受けるのでなければその効果は期待できぬのではないかと思われます。蛇足ではありますが、私の経験から申しますと、事が円満に解決するかしないかは双方の誠意の如何にかかるものであり、例えば事業者側においても、実際損害があれば飽くまで良心的に損害額を適正に見積るぐらいの誠意は必らず必要であると考えています。
 尚御参考までに附言いたしますが、私は直島製錬所煙害問題に関しては長年被害者側の代表の一員として折衝に当つて来ましたが、最近特に問題が円満に解決して参つております理由として、左の諸点を挙げることができます。先ず第一に会社側の主張、即ち被害量算定に当つては飽くまで科学的に行わねばならないとする主張に対し、被害者側の心ある人々は尤もなりとして調査方法が基本的には一致するに至つたことであります。次に、会社側においてはひたすら煙害問題のみに限らず、地元農村の農作の改良向上に資するため、会社の農事試験場において種々研究、実験を行い、新らしい技術の普及に努力する一方、被害者側においても会社側の誠意を認めて相協力した結果、特に米作の増産に寄與するところ大なるものがあり、相互協調の実が拳つたことであります。更に煙害に対して従来誤まつた観念を有していた被害者が相当あり、このため農作の改良向上を阻んだのみならず、水田の荒廃をも招来して、将来を憂慮された際、前述のごとく双方協調することにはり、煙害についての認識を新たにすると共に、増産意欲も向上して村内が非常に明朗となり、問題を円滑に解決せんとする機運が盛り上つて来たことであります。
 以上種々申述べましたが、要するに木鉱業法案中の鉱害賠償に関する規定は、被害者側といたしまして概ね満足し得られるものと存じます。甚だ簡單でございますがこれを以て終ります。
#48
○委員長(深川榮左エ門君) 石炭石鉱業協会会長芳賀茂内君。
#49
○公述人(芳賀茂内君) 石灰石鉱業協会の芳賀でございます。改正鉱業法に対する意見を申上げます。
 主として追加鉱物の面から申したいと存じます。石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土を鉱業法上の鉱物に加えることについては、関係業界多年の願いでありましたところ、政府におかれては四年来の審議を盡された結果、第八国会にこれら追加鉱物を含む鉱業法案を提案されましたことは、我々業界の喜びに堪えないところであります。何とぞ国会におかれては愼重御審議の上、速かに本件を御可決下さいますよう、ひとえにお願い申上げます。つきましては業界の意見を申述べまして、御審議の資料に供したいと存じます。その資料としましては、三つございまして、第一には石灰石の重要性、第二は法定鉱物追加要望の要点、第三は、鉱業法案に関する意見、この三つございます。第一から申上げますると、石灰石は現在では日本の地下資源のうちで最も重要なものの一つでありまして、その埋蔵量の多いこと、而も産額の大なること、品質の良好で市場価格の低廉であること、用途が多方面に亘ること、こういうことが特質でございます。これを例にとりますと、セメントをはじめカーバイト、化学肥料、石灰、ソーダ灰、硝子、人造繊維の原料として、製鉄用或いは精錬用副原料として、又製紙、製糖用中和剤として、或いは又土建用として広く用いられ、昭和二十四年度においては生産量が一千万トンに達し、今後逐年増加の趨勢にあります。戰後我が国が重工業から平和産業に転ずるに及んで、低廉な原料である石灰石はいよいよその用途と使命を増し、従来無機化学の範囲を出なかつたものが化学の進歩につれ、輓近有機化学の領域に進出し、その勢いは年を逐うて隆盛になつているようなわけであります。かくのごとく石炭石は産業上原料として重要であるばかりでなく、製品として、又原石として輸出される量も少くありません。これが第一の資料でございます。
 第二、法定鉱物追加要望の要点。そのうちの第一、採掘権を確保し、事業の安定を図る必要があります。その理由としましては、みずから所有し、又は賃貸している石灰石鉱床に対し、他人が他種鉱物の試掘権を出願し、ために現に採掘している区域又は予備区域であつても、計画的に苦しめられた事例が従来少くなかつたのであります。事業者の一部ではこれら妨害を防ぐため、自己の鉱床に対し他鉱種の試掘権を設定し、無駄な費用と労力を拂つているものもあるような次第であります。
 第二、鉱物の掘採又はこれに伴う必要な施設のために土地の使用又は收用が許され、事業の安定を図る必要があります。その理由としましては、従来搬出積出用地、引込線用地、又は索道鉄柱その他必要施設用地等に不当な対価を要求され、ために事業の遂行が妨げられ、又は既設積出用地の賃貸契約を解除され、事業経営が脅やかされた等の事例が少くなかつたのであります。第三、採石料に関し土地所有者から不当な価格が要求され、事業の安定が脅やかされることを防止し、公正且つ健全なる経営と企業の安定を図る必要があります。その理由としましては、一、採石料の公正且つ事業の負担限度を超える増額要求がここ数年各地に行われ、ために年余に亘つて妥結のつかなかつた事例が相当あつたのであります。法定鉱物に追加されることにより、第二條に規定してありますように、まだ掘採されていない鉱物についてはこれを掘採し又は取得する権利の賦與は国家にあるので、従つて採石料は無償であるべきことが明確化されなければならんと存ずるのであります。そうして不当な摩擦を除き、鉱業の育成を図られることを期待するものであります。理由の二、従来から採石料を支拂つておるものについては当然補償をすることは吝かではありません。併しながら経過措置においてその補償額が無制限且つ無期限でなく、適当な基準と年限が定められ、不必要な摩擦を予防されることを期待するものであります。これについては後日施行法の際に申述べることにいたしたいと、意見を留保したいと存じます。
 第四、石灰石鉱業に対する税体制を明確にし、且つ現在一部において行われておるごとき悪税を廃止されて、以て企業の安定を図る必要がある。理由一、現在は事業税を課され、或いは近い将来これに代る附加価値税が課されようとしておるが、法定鉱物となれば将来鉱産税を課せられることとなり、鉱業としての税体制を明確化されることを期待するものであります。理由の二、現在福岡県、和歌山県及び北海道の一部において石灰石鉱業に対し事業税の外に、トン当り二円乃至十五円の石類税を課せられておるような有様であります。或いは福岡県の一部のごとき鉱産税と同率の石類税を課せられておるところもあります。昭和二十四年秋には東京都の一部町村長会議においてトン当り三円の石類税新設を決議せられたことがありまして、これを従来の法定鉱物について見ますると、鉱産税が課せられているが、これと併せ、いわゆる鉱石税のごとき課税はされていなかつたのであります。ひとり石灰石鉱業がこの種二重課税せられておるのは甚だ了解に苦しむところであります。
 以上のような次第で国会において愼重に税制審議が行われても、いわゆる法定外独立税として市町村限りで二重課税的な市町村民税を課せられることは苦痛に堪えないところでありまして、この点から法定鉱物に指定されることにより鉱産税一本とし、税制の公正化を図られることを期待するものであります。
 第五、法定鉱物の追加が遅れたために、鉱業者又は土地所有者の既得権が不当に侵害され、思わぬ混乱を惹き起す虞れがあります。速かな実施を必要といたします。理由、新鉱業法案についてはすでに四年に亘り各方面の意見を聞き、政府で用意されたものでありまして、その内容は広く知られており、その近き実施が期待されておるのでありますが、実施が遷延しておるためにその時期的ズルに乗じ、現に某採掘場においては土地所有者から二十年に亘る賃貸契約を解除し来り、或いは某採掘地に対し既売却者たる農民が農地法により買收運動を起したるがごとき、又は現に掘採中の某事業場が近く契約更改期となるので、爾後の契約に応じない態度を示しているごとき、その一例でありまして、いずれも事業者の稼行必至を見越して法施行前に既得権を一時中断し置き、本法案上の土地所有者の権利を確保し、以て経済的交渉を有利に因ろうとしておるものでありまして、或いは又反対に、ためにする者が土地所有者の利益を侵害することもあり得るわけであります。これが二の項目であります。
 それから三、鉱業法案に関する意見。
 一、法案の中に土地調整委員会という何がありますが、これは業界からもこの委員会には参加せしめられたいことを希望しております。
 二、法案第四十條、四十七條、九十一條及び百六條の聴問に関する通知及び公示期限を二週間前とすること。理由、法案においては一週間前までにこれをしなければならないこととなつておりますが、鉱業権者側では本社所轄事務所及び採掘事業所等の連絡と準備等の都合もありまして、原案の期日では不工合であります。
 第三、法案第六十二條の事業着手期間を一ケ年以内とすること。理由、事業着手のための諸般の準備は六ケ月では困難であります。
 四、法案第百四條の使用目的に港湾を追加し、法案第百五條の收用目的に露天掘りによる鉱物の掘採及び港湾を追加すること。河川及び海面の使用に関しては法案第百八條水の使用に関する権利と同様に土地の使用に関する規定を準用すること。
 五、法案第百十五條の損害賠償責任の消滅時効は鉱業権消滅のときに限り消滅のときより十年とすること。理由、鉱業権矛の所在、責任等が不明となり、又は経済能力の著しき減退の場合も予想される。
 六、鉱業権による採掘に附随して採取される採石は鉱業権の内容として認めらるることとし、鉱業権と採石権との調整を図る。
 以上であります。
#50
○委員長(深川榮左エ門君) 次に日本石材振興会会長上山元市君。
#51
○公述人(上山元市君) 私は石材振興会の会長上山元市でございます。本日ここに公聴会をお開きに当りまして、公述人としてお招きを頂きまして発言の機会をお與え下さいましたことを厚くお礼を申上げます。先ず以て石材をいま一度見直して頂きたいので冒頭駄弁をお許し願いたいと存じます。
 およそ天地の間で何が多いと言つても石ぐらい多いものはないと思います。多ければ平凡であるから人はこれに関心を持たんであろうと思います。又およそ石ほど広く科学的にも思想的にも愛蔵されたものは稀であろうと思うのでございます。文化の初めは石からであると言つても過言でないと思います。古代人からの生活と石との関係、その用途の有様、その日常生活の道具類についてみましても、幾多のものが数えられまするがごとく、建碑、造庭についても石に意味を発見して大自然につないで味うなど、日本的文化の理想の一つの到達点でもあつたことと思われまするが、又日本的な建築で我が国独特な発達と完成をされたもので、江戸城、大阪城、姫路の城、名古屋の城等すべてが大きな石垣が築かれて、豪壯な気分がただようておりますだけでもなく、又攻撃と防禦というだけでなく、永久不滅という考え方が強く表現せられておるのであります。現にエジプトにおけるピラミツドや、スフインクス、更にギリシア建築、北支、又朝鮮慶州の仏国寺などの石造の大美術等は、いずれも千数百年以前のものが残されておる現状でありまして、又現代建築といたしましても、赤坂離宮、本国会議事堂を初めといたしまして、日本銀行、勧業銀行、明治、第一生命ビルなど、幾多堂々たるものが現存しておるのでございます。かように大は建築資材である石材その他法案第二條記載の岩石で化学資源である各種岩石の類に至るまで、ことごとく国家重要な欠くことのできないものでありまして、その使用せられる数量も厖大なものであると同時に、戰災の復興とその体験から見ての防火建築に重きを置くときには、莫大な石材の必要と重要性が認識されることであろうと思うのであります。
 特に申述べたいことは、道路、港湾の築造、鉄道の改良、耐火耐震建築にはセメント、コンクリートを理想とせられておりまするが、その骨材としての石材は又不可欠のものでありますと同時に、そのセメント製造に先刻からもお話を伺いましたが、青山先生と委員さんの御質疑応答があつた通り、今後一層貴重である石炭を大量に必要とするセメントは、石材の結合材として、又セメントでなければならんところへ使用して、その貴重な石炭はよろしく化学資材に利用して、そのセメントを使用するところへ地下資源の無盡蔵であり、燃料、電力を要しないで済む石材をふんだんに利用することが国策として極めて重要であると思うのであります。
 以上申述べましたごとく、重要な使命を持つておる石材の生産業が発達し、大成し得ないでこのまま推移すれば、熟練技術工を失い、我が国のこの豊富な地下資源である石材の生産が皆無になるときが来るのでないかと憂慮に堪えぬものがあるのであります。
 これについては原因はいろいろありましようが、この石材採掘業に対しては、その権益に関し何ら国家の保護が與えられていないのであります。我が国におきましては、鉱業、砂鉱業を初めとして、農林、水産、その他各種の産業についてはいずれもその業法を制定せられ、更に補助金の支出、育成までせられておるにも拘わらず、ひとり重要なる石材業に対してはこれがなく、従つて石材の採掘に関する権利が法律上認められず、業者の正当なる権益を擁護すべき途も開かれず、ために往々にして採掘に関し土地所有者は契約期限満了を機会に転貸、又は回收してみずからその経営に当る等のために、採掘、生産業者は漸くにしてその採掘場の開拓せられたものを放棄するの止むなきに至る等、常に不利益な立場に立ち、多大の損害を蒙つたこともしばしばあつたのであります。従つて土地所有者、鉱業権者、その他との間に紛議を生じ、而もこれを訴うるに途なく、常に不利益な立場に立ち、かような実情の下において斯業者の当然の権利が擁護せられないのみならず、企業家が資本を投下せんとする場合にも法律上の保護のないことに不安を感じ、進出を躊躇し、石材業の発展は期し得られないのみならず、むしろ廃退の外はないことを恐るるものであります。この種法令はアメリカを初め諸外国にはすでに特別の法律を制定せられて合理的開発を図つておるのみならず、ドイツでは一九三五年から一九三六年に斯業救済、技術向上発展の意味で彼のベルリンのオリンピツクのスタジアムのごとき大施設に驚くべき大量の石材を使用して、斯業興隆を図り、又イタリーでも群小大理石採掘業者を合同せしめて半官半民的のものとして、モンテコチーネにこれを当らしめる等の例もあつたのであります。
 ここにおきまして、我が国石材業者のためのみならず、世人をして安んじて資本を投下するを得しめることによつて石材業の振興を促し、敗戰日本の再建途上にある建設工事に要する基礎資材を欲するところに豊富に供給して、我が国復興工事の促進と併せて斯業の振興に寄與せしめることは国策として緊急のことと思われるのであります。
 今、石材採掘業の現状を申上げてみますれば、全国の業者数は法人で三百七十社、個人経営で三千六百三十人、計三千、従業員技術士が二万七千三百人から三万二千人を往復しております。平均年齢が四十六歳、輸送、廃止その他の従業員を入れると、約五万人以上であります。最近三ケ年間の需要量は、昭和二十一年進駐軍が百二十九万八千九百五十五トン、官民百三十八万五千五十トン、計二百六十八万四千五トン、当時価格も安うございました。約三億円、推定が三億円であります。二十二年には五百十六万六千六百七十七トン、金額にしまして、十億九千八百九十五万二千百九十七円、二十三年は六百六十万五千三百五十八トン、金額にして、三十四億六千百二十万七千五百九十二円、二十四年は、五百四十五万一千五百四十トン、金額にして二十八億六千四百七十六万七千四百二十四円であります。
 以上の現状でありまして、港湾、河川、道路、観光施設建築の増大急を要するために需用も又恐ろしく激増の傾向にあるのであります。特に目下関西方面では台風災害復旧に間に合わないで困つておる現状であります。この業の健全な発達を念願するために、法律の制定方の熱望、企図、発意、請願いたしましたのは、遠く大正九年十二月から大正十年一月でありまして、香川県の知事佐竹義父氏へ要請いたしまして、石材事業調査費として香川県では予算の計上を見たのであります。更に昭和十一年香川県石材組合で建議、請願、決議をいたして県参事会議員大森康守氏を通じて請願いたしました。昭和十八年六月全国的運動を起すために上野精養軒において全国連合会を結成いたしてその運動を起すことにいたしました。
 昭和二十一年業界で実行委員結成と同時に起動を開始いたしまして、漸くにして石材の重要性を認められ、政府商工省の指導に入り、漸次業態の認識を得ることとなりました。今日に至るまで異状な発達を来たし、業者又訓練が積まれつ業態も面目を新たにすると共に、重要性を確認せられることになりましたのでございます。爾来総理大臣、参衆両院議長、所管大臣、関係官庁へ請願、陳情二十数回、この間進駐軍天然資源局にも数回陳情いたしました。又現場、採掘場を関係当局に御視察、実情調査を願つたことも十数ケ所でございます。
 以上申述べましたごとく、採掘法の制定が緊急事であることを幸いに政府当局でもお認めになりまして、前々議会及び前議会に提案されまして、その内容も極めて実情に適した法律でありました。全面的に至極結構であると存じます。先刻我が国の法律の最高権威者であられます我妻先生と青山先生の全面的御賛成の御高説もありました。それが目下継續審議中で、先般酷夏の最中にも拘わらず親しく参議院の通産委員各位の実情御視察を賜つて、いよいよその制定発布を見るのも間もないことと拝承いたし、邦家のため喜びに耐えんのであります。どうか御審議の上本議会を通過せしめられまして、発布せられますようひたすらお願い申上げる次第でございます。
 最後に申添えて置きたいことと、お願いいたしたいことを二、三申上げたいと存じます。土地所有者は本法が制定せられますと、農地法のごとく解して不利であるがごとく申されることを聞きますが、石山のあるところは殆んど荒蕪地でありまして、石を採掘することによつて荒地が畑となり、立木が客土の関係か却つて木が繁茂し、発育がよくなるのでありますから、土地がよくなるのであります。又採石権の設定により地価が高騰を見るのであります。従つて双方惠まれることになるのであります。又仄聞いたしますのに、この法律の執行事務を地方庁へ委讓せらるるとかの意見もある由でありますが、鉱業権者とも密接な関係もございますので、その鉱業法の執行に当られる当局の御監督を受けることが極めて便利であると共に、この法律制定の事情と斯業に理解のある本省の一貫した指導を受けることが望ましいのであります。従つて地方委讓は反対であります。鉱業権と重複あるときを慮り、調整規定を設けて頂きたいのであります。第八條の原状回復は止むを得ないが、不可能と不必要の場合もありますので、金銭賠償にして表現を適当な文字にして頂きたいのであります。
 以上でございます。
#52
○委員長(深川榮左エ門君) 秩父市武甲森林組合加藤吉兵衞君。
#53
○公述人(加藤吉兵衞君) 私は本邦屈指の石灰石の山塊たる秋父武甲山麓にある森林組合連合会を代表して出席いたすものであります。
 戰後我が国の貧弱なる経済面からして、国家再建を図るには埋没している資源を十分に活用することが目下の急務であり、又我々としてもこれが採掘には何ら反対するものではございませんが、併し石灰石は御承知の通り地表に露頭しているものでありまして、他の鉱物と全然その趣きを異にしているものであります。従つてこの石灰石を他の鉱物と同一視することは極めて不合理であると考えるものであります。即ち現在の石灰石の採掘方法を以てしては他の鉱物のごとく坑道掘鑿にあらざるいわゆる露天掘りでありますが故に、表面から全面的に採掘をしておるのであります。従つてその上にある樹木は全部取去られてしまうのであります。曾て数年前森林業者は農地調整法と同様の法律が施行せられみのではないかと懸念されまして、全く造林意欲は極度に減退いたしました。その結果は伐採する一方で造林は全然放棄してしまつたのであります。故に全国の山林はことごとく空坊主になつてしまいました。それがため各地に例年大洪水を来たして、その惨害は実に戰慄すべき状態にあつたのであります。最近漸く政府が治山治水の政策に意を用いると同時に、明らかに山林の個人所有権を尊重して緑化運動を盛んに喧伝し、森林業者も又これに呼応して、水を治めるには山を治むべしという意欲に燃え立つて、造林も又その緒に着いたのでありましたが、その矢先にこの鉱業法が設立されるに及んでは再び造林意欲が抹殺されるのではないかと深く憂慮されるものであります。尚参考に申上げますが、石灰石のある地帶は造林には極めて好適であります。委員各位におかれましては、この意味を十分に御賢察の上、新鉱業法の審議に当られるに際しては、左の諸点について公正なる法律を制定せられることを切望するものであります。
 一、石灰石等は概ね地表に露頭しておる関係上、他の埋蔵鉱物と本質的に異つて、採掘によつて土地の原形は逐次消滅して財産の価値がこれに附随して消滅してしまいます。
 三、石灰石、苦灰石は官有財産の処分法においても土石を以て一種の産物と認め、既定鉱物と異なり地表より順次採掘するものでありますが故に、社会的慣習によつて量又は年契約で物件としてこれに対価を支拂つておりました。この対価の支拂いによつて事業家の事業経営に寸毫も痛痒を感じていないということを私共は確信しております。
 三、本法案の中に石灰石等を挿入した趣旨を案じまするに、事業家が一、二の所有者の補償料の改訂條件を誇大に喧伝した結果と考えるのであります。曰く、絶えず不当なる石灰石所有者の原石の値上げによつて事業の経営が不安定であると申します。果してこの事実が不当でありますかどうかは別に後に申上げます。尚、事業経営云々ということは、去月の二十六日に衆議院の通産委員会に提出せられました石灰鉱業協会の提出意見書によります。
 結論といたしまして、本法施行令第十三條に、これに対する相当の補償をするということが明記してありますが、これは鉱業法に指定された全鉱物に全部同じに施行されるものと解されますが、石灰石、苦灰石に限り既存契約を尊重して時期に適した代価の調整をするため左の條項を第二項として加えて頂きたいのであります。石灰石、苦灰石は施行令第五條若しくは第六條に該当するものの既存契約は本條の第一項の規定に拘らず土地所有者と協議の上永續的に補償の義務を負うものとするように挿入して頂きたいと思います。
 尚、先程申上げました石灰石の代金が非常に不当であるという実例について、ここに表がありますがそれを読上げます。私共の近隣の森林組合で契約しておる実例を一つ申上げます。昭和九年を基準にいたしまして以下申上げます。昭和九年にセメントのトン当りの市価は二十円であります。そのときの原石の契約代金は六銭、それから昭和二十年にセメント代が百五十円いたしましたときに原石代は九銭、ずつと飛びまして二十四年、昨年度に至りましてはセメント代は五千円、原石代は僅か一円四十銭、昭和九年のセメント代と原石代を一といたしますと、二十四年にはセメント代が五千円でありますから二百五十倍、原石代は当時六銭でありまして現在一円四十銭でありますから二十三倍、こういう大きな開きがあるのであります。以上を以ちまして原石代が不当に高いというようなことは寸豪もないということを申上げまして私の公述を終りたいと思います。
#54
○委員長(深川榮左エ門君) 鉱山調査業大島憲君。
#55
○公述人(大島憲君) 私は今度この鉱業法ができますにつきまして大賛成でございます。ただこのうちの中に是非地方におります方々のために露頭を発見した場合にこれを出願させるという一項を入れて頂きたい。これは地方の山々におります方々が方々歩いていろいろな露頭を探しても試掘権に抑えられて自分達は何らの恩惠に浴さない、これは誠に気の毒なことだと思います。これは特に営林署関係の方々、それから樵夫、こういう方がこういう鉱業の大体試掘の本体であります。鉱業が発達するということは結局露頭の位置を的確に確認させるということになりますが、地方の不幸な方々が是非惠まれるように今次の鉱業法で改正いたして頂きたいということを念願いたしております。
 それからもう一つは、試掘権の二年が短いとか長いとかちよつとお話がありましたがこれは二ケ年が適当と思います。それで新陳代謝を図る、それには金を持つておる人達は或いは不賛成を唱えるでしよう。併し私はそれが適当ではないかと思われるのであります。その理由といたしましては、今まではいい加減なことを書いてそうしてこれで延期をすればいくらでも延期はできる、こういつた甘い考えでこの試掘権を扱つておりました。この試掘権が鉱業法の一番先祖でありますから、この試掘権をはつきりと認識させることがなければいろいろな片手落ちが沢山出て来ることと私は見ております。それで今後試掘権を二ケ年とし又それを延長するならば、必ず常時五人ぐらいな人間を使つて一ケ年間は確かにやつたと、そういたしますと二百円ぐらいが給料といたしましても約三十万円ぐらいの金は使わなければ鉱業を営むことはできないということになりますから、それぐらいな資力がなければこの試掘権は持つていられないのですから、そういうような方々のためには継續さしてもよいが、ただ試掘権を持つてこれを金を拂わないで金とりといつたような形の甘い考え方で試掘権を持たせることは今度の改正ではこの二ケ年として断行して頂きたいと、こう私たちは考えます。それはこの試掘権をそういうような立場で見ますと、露頭の方の関係は今までは試掘権を取るときには露頭の位置を入れても入れないでもただ手續さえすれば試掘権が取れたのです。又書けとは言つているけれども、実際のところただ五万分の地図を伸ばして、そうしてそこへ持つて来ていい加減なところへいい加減なものを入れてやつておりましたが、今度こういうふうに鉱業法が改正されるならば、分析表と鉱物を取つた位置というものを明確にしてやらなければいけないのじやないかと思うのであります。そうして若しその鉱物がないならば、位置がはつきりしないならばそれは試掘権は與えない。こういうことをこの鉱業法によつて規定して頂きたいと思うのであります。それには行つて見なければ鉱山の仕事は分らないのですから、行つて見るということに対しましては、今度は鉱山監督局の役人の方に必ず試掘権を許可するときには出張をして貰う。若し政府に予算がないならばこれは確実に自分たちが出費をして委託を申請しまして、そうして案内をしその許可を促進さして頂こう。但しこの場合に今までは半年も一年も一年半もこの試掘権が下りないから、これはそういうふうに的確になりましたならば約三ケ月ぐらいのうちには必ず試掘権が許可されるように、こういつたような建前からこの試掘権を非常に大事に扱つて頂く。その大事に扱う試掘権が出て来る基は露頭の位置でありますから、これは東京の真中におつて金を持つた人はいろいろな手段を使いまするが、実際は山の中で奧地で働いている人が見付けて来てそれを皆提供して来ているのでありますから、それを提供する人に対しては小さな範囲で何らかの方法を以て出願権を認めてやる。それは試掘権が許可になるときは或いは金銭を以てこれを替えてやる、そうして皆に均霑させる、こういうような私は考えでおります。これは営林署の役人の方は木を一本々々鋏むのですから山のどんな奧にも入る、又岩石の沢山壊れているような所へ行つてちよつと拾つて来るから露頭の位置は五万分の地図にちやんと入るのであります。そういう方々は常に機会があるのでありますから、そういう方々に與えたならば露頭の位置もはつきりと早く、又監督署の役人のひともそれに續いて露頭を調査し、そうして若し費用がないならば直ぐ出願者の方で費用を出してでもこれを許可を早く與えるということにいたしましたなら、この試掘権の仕事が早くなりますから、鉱物の増産の他いろいろな場面が非常に助かることが多いのじやないかと思います。
 それからこの試掘権、採掘権の中に異種鉱物というものがありまして、この石炭の中から天然ガスが出る、或いは硫黄の山から金が出たり、或いは亜炭が出たりする。こういつたようなことが随分行われております。同じ面積で同じ位置でその中に金、銀があり、硫黄あり、石炭がある。或いはそういう馬鹿なことがあるかどうか、実際問題としてはただ県ではどうにもならない。こういつたようなことが随分行われておるようでありますから、こういうようなことは今のように鉱石の露頭を採り、分析をしてそうして拾つて行つたならば、こういう異種鉱物なんという問題は少くなるのではないか。但し石炭のごとくに石炭の鉱区の中に天然ガスが出る場合には、異種鉱山ですからこういうことが行われましよう。併し石炭と硫黄と金、銀とが一緒に約一万町歩程度の中に共存するかどうかということは、相当考えなければならん問題じやないかと思うのでありますが、そういうことがたくさんございますから、私はこの異種鉱物に対しましては、とにかく露頭をはつきりと図面の中に表わすということが一番大切なことじやないかと思います。
 それから大体この鉱業法、採石法ができますことは大変結構だと思います。内容は先程もちよつと反対な方もあるようですけれども、あれはやはりいろいろなことにとらわれてのお考えだろうと私は考えて聞いておりましたが、例えば租鉱権とか或いは鉱害というような問題でも、結局自分達が仕事をしないで、そうして責任を逃がれて、というような考えのように私は聞いております。それは大体が自分が鉱区を持つておる斤先掘をさせるのですから、責任は自分が持たなければならんのが本当だと私は思うのですが、それは仕事をする方が持つのだ、それでは頭をはねてやつておる仕事にはならないじやないか、こういうふうに私は考えております。これは自分は余りこういうところでは申上げたくないのでありますが、そういうことは自己の田に水を引くように考えているのじやないか。
 それから鉱害問題でも、例えば先程どなたかがおつしやいましたが、金銭がいいのではないか、こういうお話がありますが、金銭なんというものはあとの話で、実際は例えば亜炭山など畑の下を二十尺も三十尺も掘つて、十年もすれば落つこちるということがはつきりしておるものをそのままで行つてしまう。そういうようなことは結局充填をすれば何でもないことなのです。成る一定の費用を與えないで、そういう充填の作業をしろなんということはとんでもないことである、今の経済に間に合わないじやないか、こういうことを言われますけれども、これは保安上の問題からいつたら重大な問題です。だから今畑の下を掘り、田の下を掘つてした場合はそういうことが言えますが、山の中の場合は掘りつ放しですから、利益を返せと言つたつて迚も返す人はありはしない。これは言うべくして行われないことではないか、私はこれをただ金銭に代えるということは、結局お互いが話合によつてうまく片付くことで、お役所の方で鉱業法を編んだ精神は、これは金銭を言わない方がいいのじやないか。金銭は結局どうせ金銭になるでしよう。ただ実際山地はいいけれども、畑、田圃では実際何らかの方法を用いてやらないと、その土地が使えなくなるということが昨今往々にしてあります。これは今の鉱業法では私反対をいたしませんでむしろ金銭ということの方を反対をいたします。
 こういうことでもう一つ、この鉱業法ができた、鉱物の種類とか、それから採石法ができた、岩石の種類、この中で特に同じ岩石の中でも非常に金になるものがあるといつたようなものが現在の科学、将来又進んで行く科学には起り得るのです。例えば原子力の問題などが起きますときの鉱石には必ず單価が何十万円というようなことになりますから、これは岩石で扱う、鉱物で扱うといつたときに、二つのこの法案は、ちよつと鉱石の種類がどういうふうに入れるかということに迷う問題が起るのじやないかと思つております。これはこの際科学が進歩する日本でありますから、入れて置かなければならんということを提唱したいと思つております。大体私はこれだけで以て話を終ります。
#56
○委員長(深川榮左エ門君) 以上で公述は全部終了いたしました。議員の方の御質問がございましたら御発言をお願いいたします。
#57
○小松正雄君 花岡組合長さんにお尋ね申したいと思います。尚御説明をお願い申上げたいのです。私は福岡県の選出であります。お聞きの通りに私共の県内には相当この鉱業法案に対しまするところの鉱害という点に対しましては大きな関心を以てここに代表的に参られて、本日も少くない鉱害という問題につきまして八幡市長さんなり或いは組合代表である方から申されておりましたことでありますので、私が申上げるまでもなくよく御了承と思いますが、花岡組合長さんは鉱害は金銭賠償によつてなすべきだ、こうおつしやられたので、この点に対しまして同じ鉱業法案が設定されるのに当りまして、鉱害に対して花岡さんに限つて金銭賠償を指定することが妥当だとおつしやられたことと同時に、私共の県からおいでになつておる方々の申されておることは、現地について原状回復することが妥当だとこう申されておるので、委員としてどちらを選ぶか、かように考えまするときにお尋ね申上げたいことは、鉱害の種類がどういう点にありまするか、或いは又被害の面積等はどんなにあられるかということをお尋ね申したいと思います。
#58
○公述人(花岡圭治君) 御説明申上げます。私のところの場合は先刻申上げましたように精錬の場合でありまして、非常にその鉱害というものが認め得難いのでございます。従つて煙の害という方の面が非常に多いわけなのでありまして、なお且つ農作物或いは草木というふうなことにあつて、その農作物、草木というものは立毛に現われて来るというふうなことを種々考えております。故に先刻申上げましたように、鉱害というよりか煙害という方面が多い関係上、そのつどそういうことについて双方誠意を以て話合をすれば結局円満に治まつて行くというふうに考えております。
 なお金銭の補償ということを申上げたのは、決して原状回復を無視した話ではありません。原状回復をするにしても必ず附帶するものは金銭である。こういうことを考えて金銭で解決付けたらいい、こういうふうに申上げた次第であります。
#59
○小松正雄君 只今のお説を拜聴いたしましたので了承するところもありまするが、願わくは只今申されまするところによりますると、精錬による少くとも鉱害とは言いながらも煙害だと言いたいというようなお説でございまするならば、少くともこの鉱害という点を煙害ということにお直し願えれば幸いだと私は考えるものであります。
#60
○公述人(花岡圭治君) 煙害というだけには私の方では申上げかねます。それは鉱害というものも技術面或いは科学的に調べたらあるかも分らん。併しその鉱害であつても、結局原状に復するものは必ず金銭でなければならない、こういうことを考えておりますから、私の場合はこれは金銭でその賠償をすればいい、こういうふうに考えでおります。
#61
○吉田法晴君 栗田さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、私共先国会に出ました原案と、それから多少のいきさつしか今まで資料を貰つておりませんので、今までのいきさつというのが分りません。追つて政府の方から詳しく承わりたいと思つております。今日も青山、我妻両先生からも述べられたのでありますが、鉱業法案改正に参加せられました一人として、特に被害者を代表された栗田さんとして、今後あなたの関知せられました鉱業法案改正の途中における鉱害賠償の原状回復主義が否かという点についてはここでお尋ねする以外にないと思いますので、その点をお尋ね申上げたいのであります。
 さつきの我妻先生のお話では、原案の中には、或いはそういうものがあつたかも知れんけれども、それは正式に出て来たものにはない、こういうお話で洩れ聞いておりますところでは、途中でそれがいつ頃で、どういう段階であつたかということは明らかでございませんけれども、原状回復主義が出ておつたという話も聞くのであります。その段階での法案の実情、それからそれが現在に変りましたいきさつ、及びそれについてのあなたの御意見というものをお伺いをいたしたいと思います。
#62
○公述人(栗田数雄君) 只今御質問の点でございますが、鉱業法が改正されるということは私共は当時は余り関知しておりません。ただ私が福岡県の農調委員に多年関與しておりました関係上、どうしても特に原状回復という法案にしなければ、福岡県の特に農耕地は助からないという観点がら、この鉱業法改正の機会に原形復旧にして貰いたいという希望を持つており、それで上京の都度、それらのことがどういうふうに行われるかということを関心を持つておりました際に、昭和二十二年頃商工省の鉱山局の鉱政課で審議室ができまして、一応の草案ができておるということを洩れ承わりまして、私はそちらの方にお伺いして、そうして見せて頂きましたのが、この手許に持つております印刷物でございます。この中に一応原形復旧の主義がとられまして、多額の金銭を以てせなければならんという、いわゆる経済効果のないような原形復旧ではございません。厖大な金を使うというようなことを我々は要求するものでないので、いわゆる効率復旧といいますか、効果復旧といいますか、言葉はいろいろございましようが、そういう線が現われて来ておるから、鉱業権者も復旧に誠意を持つて貰えるものと思つて喜んでおつたのが、いつの間にか金銭賠償の方になりそうだということを聞いたわけでございます。それで私共としては驚きまして、是非ともこれを草案にありますところの原形復旧にして頂かなければならんということを審議して、そのため私は駈けめぐりました。その結果商工省の方から福岡県知事をして関係の者二名を推選せよということで、知事は私と農地委員の浦野君と二名を推選いたしましてお取上げになつて私共委員になつたわけでございますが、何分にいたしましても遠隔の地でございまして、この審議会が開かれる御通知を得たときはすでにもう審議会がある日にちだとか、或いは汽車で駈けつけても間に合わん際が往々ございまして、私がこれに出席する機会は非常に少うございました。但し私は前述のような御意見を申上げましたけれども、当時私の気持は先程農林次官の山崎さんのおつしやつたように、やはりその考え方は平田さんの意見と間違いないのであります。少くとも現行のこの鉱業法に対する專門的に御勉強願つたのは私は平田先生だと考えております。先程も我妻先生と食後お話申上げたのでありますが、自分は丁度内科医のようなもので民法という全体の線は調べているけれども特殊のいわゆる耳鼻咽喉とか、眼科というようなものでないからとこうおつしやつていたのであります。私もそう考える。それで私は平田先生の原形復旧主義が本当だ、日本の鉱業の現実に私は即しておるとこう考えた。それが私は端的に申上げますならば、現在の鉱業が原形復旧の線で参りまするならば経営ができない。それは御尤もでございます。私共やはり鉱業地帶におりますから石炭鉱業がどういう実態にあるかということを承知しておりますから、あの厖大な被害を今鉱山業者に全部負担せしめるということは、現在の要するに筑豊の石炭鉱業はもうやめろというようなことになることはよく承知いたしておりますけれども、大体においてこの責任は鉱山が負担して、そうしてその負担し得ないものはこれを認可、許可した監督権のありまするいわゆる国家が、私に言わせれば、青山先生のおつしやるように充填その他に十分の誠意を持つた技術を以てするならば、現在のような悲惨な鉱害は起つていない、又起らない。それを監督せずして今日まで放任しておるということからいたしますならば、私はその認可許可をし、監督の任にある政府が当然それを負担して被害者にかけてはならない。その面から行きましても、私はこの法案は原形復旧にすべきものだと思います。又そのいきさつは、いつ頃から変つたとかそういう実態は私は存じませんけれども、先程この一応草案と変りましたのは、現実の鉱山の経営が困難だという極めて貧弱なる現実の気持で置き換えられたものと私は信ずるのであります。
#63
○吉田法晴君 そうしますと、お尋ねをいたしました点ははつきりしなかつたわけでございますが、どういうことで初め原状回復主義が出ておつたか。或いはどういう案であつたかという点もつい明らかにならず、大体最初の鉱業法改正審議室にはそういう案があつた。その後文字通りの原状回復主義では鉱山がたつて行かんということで、現在のような原案になつたのだろう、こういうふうなお話のように承知したのであります。
 もう一つは原形復旧というようなお言葉でございましたが、原形復旧という点について、文字通りのそういうものについては概念的に変更があり、或いは最近原状の効用回復という言葉がございますが、そういう言葉或いは概念については大体機械的な原状回復を主張するのではなくして、原状の効用を回復する、こういう点においては被害者としても大体今日異議がないんだというようなお話に聞いたんですが、その最後の点はそういうふうに理解してよろしゆうございますか。
#64
○公述人(栗田数雄君) 今の損害賠償の原状回復を以てするという当時の草案の百九十六條そのものの解釈でございますが、私共は必ずしも炭鉱の採掘によつて二十尺下つた、その下つた場所が例えば極端な例で申しますと原野であつた。そういうものを又昔の原野をそこに小山を作れというようなことを決して申すわけではございません。又二十尺下つて耕地が要するに田がなくなる畑がなくなる、併しながら当時は二十尺上にあつたけれども現実は十尺上げれば畑になり、田になるとするならば私は十尺で結構だと思う。いわゆる今までやつておりました、我々が持つておつたところの耕作の要するに効率の上る土地にしてもらいたい。又我々が先祖を祀つております墓地のごとき、それが沈んだら必ずしもその土地に墓地を何十尺と築けというような私は解釈は持ちません。願わくばそれで結構で、絶対それでなければなりませんけれども、これは国家的に見ましてそういうべらぼうなことをすることはなく、必要な場合にはその墓地の場所を移転いたしましてやれば、祖先を崇拜するに足るだけのやはり原状回復をして頂けばいいとかように考えておるのでありまして、あなたのおつしやるように私共はその線に副つて結構だと考えます。
#65
○吉田法晴君 もう一つこれはお晝過ぎに農林次官に尋ねておりました点でありますが、農林次官のほうはあとの機会に尋ねることにいたしましたが、これは言葉を断片的に引きますことは或いは誤解を生ずるかも知れませんけれども、先程申しました本委員会で前回資源庁の局長から答弁のありました中に、賠償の従来の実際、特に予定賠償或いは打切り賠償に関連して述べられたのですが、まあ言葉をそのまま引きますと多少極端でありますけれども、農民の立場といたしますならば仕事もなくてぶらぶら賠償金を貰つて年々暮しておるというようなことは必ずしも本意とせられるところではなくて、一括して更生し得るような資金が貰えるならばという、こういうお言葉なんでありますが、そういう点についての賠償金を貰つた場合の農民の実際の姿、特に予定賠償と申しますが、いわゆる打切り補償の場合の実際の場合についてお伺いをしておきたいと思います。
#66
○公述人(栗田数雄君) 私は現地と東の考え方が大変違つておることを常に遺憾としております。それで過去において行われた金銭賠償なり、打切り補償といいますか、それらのものは放任されておりませんけれども、一応打切り補償というのは相当行われております。その行われた動機は二つあると思う。一つは被害者自体がどうぞこの土地は、この家は被害にかかつたが、金で以て一つ買取つて貰いたいというように申向けるものが一つございます。一つは炭鉱経営の実態からして年々賠償をやるということになれば、到底将来の経営が成立たんということで、被害者自体が多少これは言い過ぎかも知れませんけれども威嚇されて、このくらいの金で承知しないと年々賠償は将来しないぞというようなことから、止むを得ずやらせられておる面があるわけであります。そういうことになりますと、いずれにしましても、要するに被害者自体から言つた場合には、自分の私経済の関係から申向けたので、原状回復というような本当のことをやらない結果、非常にこれは金を貰いながらその実際をやつていないから、これは耕地のごときは特に附近が迷惑するわけでございます。又金銭賠償で先程申しましたように、この程度で承知せよというようなことで受けましたところによりましては、まあしようと思つても自発的に自分がもうけたものでないから、私共承知しておる範囲では家屋のごときが金を貰つたからしようと考えておつたところが、御承知のように農家のごときは建築をします時期がございまして、田植とか稻刈時期には建築をすることができない。従つて春先や秋の暇のあるときに家の復旧をしなければならんというようなことで、置いておつたものがだんだん金がなくなるとか、或いは経済情勢によつて当時貰つた金では到底復旧のできないというようなことになりまして、それが放置されて参りまして、結果においてはそこに非常に悲惨な犠牲者が出るか、若しくは折角炭鉱が出した金が死にものになるということで困つております。それから何か被害者が金を貰つてぶらぶらしているということは、大分東京で流行しておる言葉のように考えます。私は最も遺憾と考えます。今農林省をやめられております田辺農地部長が私共に対して、お前らそう騒ぎ廻るよりむしろ補償金貰つた方がいいじやないか、こういうことをおつしやつたことがある。私は非常に猛烈に食い下りました。それは昔は地主というものがございましたけれども、要するに農地改革によつて全国的では一応一町歩の保有で、福岡県では八反、農業被害の多い、私の村のごときは七反の保有面積しか認められておりません。現在の農地はあらゆる農耕者に分散している。それが昔の何十町歩も持つておつた時代の補償そのものが現実に行われておつて、被害者は大きな金を貰つてぶらぶらしているというようなことをこともあろうに、農地部長がそういう言葉を言われる。まして私はこの農地に余り関係のない通産省の要するにお役人の方々が言われることは無理からんと考えております。これは農地改革のない昔の夢であつて、いわゆるポツダム宣言によつて占領政策によつて農業政策は変革している、それにも拘わらず、そういうことを行えといつて実行することを命じたところのお役人が、まだ昔の姿のままにあるという考え方、これは私は非常に勉強が足らぬと思う。そういうものは決してありません。どうぞそういう実情の下に私は御審議を願いたい。
#67
○吉田法晴君 もう一つお尋ねいたします。実はこれは高木さんのおられるところでお聞きした方がいいのですが、いらつしやいませんので、実情だけを栗田さんにお尋ねするのでありますが、特別鉱害という問題が起ります前の話、いわゆる従来の金銭賠償主義の下においても、或る程度原状回復がなされて来た。これは法律の点はとにかくとして、最近の情勢からしますならば、従来の法の枠の中でも多少、私はどの程度という点をお尋ねするわけでありますけれども、若干原状回復が行われて来たと信じております。その実際の模様について概括的でよろしうございますから、お話を承わりたいと思います。
#68
○公述人(栗田数雄君) 私公述の冒頭において申上げましたように、公共土木に関しまする河川の堤防或いは道路というようなものは、これは完全に戰前では復旧がなされております。それから家屋のごときも特別経営の悪いといいますか、鉱業権者が無茶をやる、まあ小さい鉱業権者、そういう人が乱暴に放つたらかされたものが極く僅かな面にあつたと思いますけれども、大体において大きい資本家でやつておられますものは、家屋等も完全に私は復旧して頂いていると申上げて差支えない。農耕地におきましても、だんだん採掘をして鉱害が及んでいるところは、いわゆる鉱害がだんだんと起つているところの復旧はなされておりません。併しながら一応この線で安定したというものに対しましては、千百三十四町歩は福岡県においてやつております。戰争がなかつたならば、私共としましても相当量の復旧をやつておられる。それで問題は以前の鉱業法が金銭賠償であつて被害者が何も文句がないじやないか。それを今度こう改められる際に、何で被害者がやかましく言わなければならんか、こういうふうな議論が私共被害者仲間でも起るのですが、それは御承知のように過去ではそういうふうな金銭賠償の方でやつたけれども、実際においては原形復旧がなされておつた。又鉱山業者が探鉱を開始される際には、あなた達百姓には決して迷惑かけぬぞということを不文律ながら、いわゆる契約している。紳士條約ができております。それで迷惑はかけない。又迷惑をかけて頂いておりません。そういうことで安心しておりましたけれども、これ又公述いたしましたように、財閥が解体になりまして、石炭業が石炭業として立つて行かれない、而も北海道や常磐のように、いわゆる鉱害のないところに対して、鉱害のある鉱山は経営に非常なハンデイキヤツプが付いて参りまして、困難であるということになりますから、これは将来は到底こういう大きな鉱害は復旧し得ないということをはつきり申されておる鉱山がございまするので、私共としては今回の法令の改正に当つて、やつきとなつて、こういうように多数の今日も傍聴者が見えております。市町村長始め被害者は皆様方にお願いをしておるのでございます。その点私は過去においては、全体の数から言えば原形復旧が全部なされておつたと申しても過言ではない、かように信じております。
#69
○小松正雄君 一言附け足しまして、栗田さんにお聞き申上げたいと思うのであります。しばしば今申されました中にありましたように、少くとも鉱害を受けておるところが、大資本家のなされておる鉱区内でありますならば、とにもかくでありますが、福岡県下でも相当租鉱権が認められて、この採掘に当られ、且つ又中小炭鉱でありまする小資本によつて経営をなされておる炭鉱も相当あるのでありまして、この鉱業権内の中で被害を受けておるものも相当あると思います。さつきも申されたように、その間まだそういつた被害を受けておりながら、鉱害の賠償その他が解決していない部分があるという御説のように、私はここでこの法案を成立いたしまするために危惧することは、中小炭鉱のその圏内にある鉱害が、果して幾年か先、例えばその鉱区内を採掘してしまつた、そうしてその幾年か先鉱害が発生した。鉱害か発生したときに、その鉱業権者に代弁を迫らんといたした際に、さてそのときはすでに時遅く、その鉱業権者は破産、倒産をしてしまつたということに相成るときには、その中小炭鉱の被害に会つたそういつた農民或いは住民各位の御迷惑をここに想像いたしまするときに、少くともそういう見地から、そういう中小炭鉱のその鉱区内で被害の起つた場合に対しまする補償制度と申しまするか、そういつた点を強く皆さんから政府に要望をして置く必要がありはせんかということを、福岡県の私として附言申上げる次第であります。
#70
○公述人(栗田数雄君) 私の先程の説明が足りなかつたので、更に申上げますが、私はこの中小鉱業の被害が非常に少いと申しておりましたのは、戰争前の昭和十七年前のことを申上げたのでございまして、戰争の始まりまして後には、この中小炭鉱によつての被害が非常にお説のように増加しておりますが、特にこれは戰争中なり、戰争後におきまして、いわゆるその筋から日本再建のために石炭を掘れと言うて、臨時の汽車を仕立てて、増産命令ではございませんけれども、生産督励をなされた。いわゆる戰後においても非常な強硬な増産督励があつた。その際にはいろいろ労働問題等もありまして、大きい炭鉱よりも私は中小炭鉱の技術の優れたといいますか、特別の出炭場所の方がパーセンテージが上つているというようなことを、私は素人でございますが、そういうことを聞いております。そういうことから斤先掘といいますか、中小炭鉱に期待を持たれたということで、増産はできましたが、その結果として非常な被害を受けております。御質問の通りに、私の郡で申しますならば、木屋瀬町とか、西川村というのは、一村に三十乃至七十の炭坑木がある、而もそれらの町村は厖大な被害を受けながら、現実では資力がないために殆んど復旧は勿論のこと、賠償も行われておらないという悲惨な状態が事実起つております。それで私共としましては、先程申しまするように、私の説明が昭和十七年前のことを申上げて甚だ遺憾でございましたが、私共としては、その後に今申しまするような理由で、非常な被害者が塗炭の苦しみをしております。これは前に申しましたように、これを認可し、許可し、督励されたところの私は政府がそれらの面については、これは弁償、補償、補助でなくて私は当然それらの救済の施策をとつて貰わなければ相成らぬということを、強くお願いする次第でございます。
#71
○山川良一君 大変遅くまでお待ち願つて恐縮でございますが、八幡市長さんちよつと……。先程市町村を代表してと仰せになりましたが、それは代表意見として承つてよろしうございますか、或いは市町村の中にお話のような御意見があるという意味で承つてよろしうございますか、八幡市長さん……。
#72
○公述人(守田道隆君) 別に市長会或いは町村会で話合つたわけではございません。ただこちらの方で御招集を受けましたときに、市町村側の被害者を代表してということを言われましたので、そういうことでお届けになつておるようでございますから、私そういうことを申上げたのでございます。決議によつたわけでも何でもございません。
#73
○山川良一君 それから先程お話の中に、たしか法の精神が旧態依然としておるというふうな意味のお話があつたようでございますが、それは先程我妻教授からお話になりましたような、法の精神そのものに納得できないということでございますか。或いはその根本の精神、考え方はいいのだけれども、その細部について少し意見があるのだというふうに解釈してよろしうございましようか、どういうことでございましようか。
#74
○公述人(守田道隆君) 先程から我妻教授のお話を承わりましたが、現場におりまする私共の立場から申しますると、現在のまあいろいろな法律でございますが、鉱業法によりまするその被害者の救済ですが、それ程不徹底なものは今日までないと私共は考えております。先程からたびたびお話がございますように、これは戰時中の、ああいう増産に次ぐに増産を以てするというような事情の影響では無論あると思いますけれども、もうよく御承知の通りに、福岡県におけるこの被害者の状況は実に悲惨であります。で本日こちらでお話がいろいろございましたが、大学の先生方の批評を申上げるのじやございませんけれども、先程西田委員からお尋ねにしばしばなりましたように、現実の問題として非常に、これは市町村の公共団体そのものもありまするし、又農村などの個人などから申しましても、又他の企業家から申しましても、非常に困つた問題であります。而も法律はございますけれども、絶えずその保護につきましては、さつきもお話がございましたが、一つのアツサンプシヨンを設けまして、鉱業法はこれでよかろう。あと足りないところは国で補償したらよかろうというようなお話がございました。これは非常に重大な仮定でございまして、それならばあの法を立案をなさいました国の当局としては、果してどの程度まで鉱業家の足りないところをカバーしてやるつもりで御立案になつたかということをお尋ねしたい。私共としては、苦しい鉱業家から是非頂かなければならんということはございませんので、国家からそれをカバーして頂きますれば、お互いはどつから出ましても、とにかく現代を救つて貰えば差支えないのでありますが、とにかくそういう重大なアツサンプシヨンがそこで殆んど確実なことが聞けないというようなことにつきまして、これは以前の鉱業法と同じように、やはりそういう点にたくさんの未解決の問題が残つておるというような感じがいたすのであります。それからこれは又事情を申上げて甚だ失礼でございますが、先程の或る公述の方の御意見では、鉱害の生ずるようなところに建物を建てるやつがいけないというような話を承わりました。立場が違えばこうまで違うかなと、私は非常に痛感したのであります。都市の重要なこれは土地であります。そこに建物を建てるのに、それは鉱業権は無論設定されてはございますけれども、それを利用するほうが間違つておるのだというようなお話であつたようでありますが、そういう考え方から申しますならば、今日の民主的な時代に、こういう考え方の法律は一つもない……ほかにはないと私どもは考える。鉱業の重要であるということは先程私の公述でも申しましたが、それはよく承知しております。併しその上におりまする被害者の上も併せて考えるのが民主的な法律ではないか。ああいう話が堂々とされましたり、又先程申しましたような重要なアツサンプシヨンが、仮定がされまして、そういうことでそのまま適されるようなことは、我々としては忍びない。そういう意味で申上げたのであります。当初に公述いたしました通りに、相当進んだ法案であるということは承知しておりまして、その点はお礼を申上げて置きますが、併しなお足りない点は今申上げるような点であります。よろしくどうか。
#75
○山川良一君 もう一言、それは大体分りましたが、只今地上の建造物のことを……そのことを公述された側も、ただ鉱業家の都合のいいようにしろというようではなかつたように聞いておりますが、そこで先程のお話の中に、八幡市の水の関係でどうも困るので、その分の採掘を止めるような措置ができるようなことをまあ希望されたようでありますが、私は、御関係の所の鉱区ですと、そこの生産が減ること、或いは止まることが直接八幡の製鉄所ばかりでなしに、日本の製鉄に非常な影響が及ぶので、その又影響の及ぶ製鉄所が八幡市の中にあるのに、その生産を抑えるような措置に持つて行かれたいというので、多少疑問を持つのでありますが、只今のお話で大体分りましたけれども、まあ国家等の応援を得てやろうにも、そう急速に解決ができないとなれば、八幡としても困るけれども、一応採掘を止めるより外ないのだというような御結論で、そういうお考えになつたのではないかと思いますが、如何でございますか。その点。
#76
○公述人(守田道隆君) 瀬板貯水池の問題についてお話でございましたが、お話の通りに、あの区域は優良なガス用炭の区域であります。このガス用炭は八幡製鉄所は大量に必要といたしますので、お話のようにその区域も多少影響するわけであります。併しそれを掘鑿いたしまして、八幡製鉄所にそれを供給いたしますその区域の下だけの問題でありますが、それだけを供給することと、外国からそのガス用炭が輸入ができぬことでもないと私は承知しております。そういうようなことから考え併せまして、いずれが重大であるかというようなことをいろいろ検討されておるのであります。御承知の通りに、今鉱害がどの程度起るかということにつきまして、技術の調査団ができておりまして、最近にその結論が大体出ることになつておるようであります。そういうことにつきまして、いろいろ結論が出ますれば、或いは通産局長などからお話があるのじやないかと思つておりますけれども、そんなことでまだ解決をいたしておりません。私共としては必ずあそこで貯めなけりやならんということを申上げてもおりませんし、續行してよろしいということも言つてもいないのです。ただ私共がはつきり言えることは、北九州は御承知の人口七十一万ございますが、その七十一万の五市の鉱業都市の中で一番今不自由をしておりまするのは水であります。水は外国から輸入ができませんので、これには一番不自由をしております。二十年間県或いは市でいろいろな調査の費用を設けまして、あちこち調査いたしましたけれども、結局遠賀川の水系からとるという以外に望みがないのでありますが、その遠賀川が旱魃のときになりますると、役に立ちませんような実情であります。そうすると、ダムサイトが必要になるのであります。このダムサイトがない。それに対して瀬板貯水池は有力なダムサイトでありますので、これが水の上から言うと、絶対に必要な所であるということだけは言える。ただそれと先程お話がございましたガス用炭との問題がどういう関係になりますか。そういうことにつきましては、私共としては今何とも結論を得ていないわけであります。これは私の所轄内にありまするので、私共も非常に頭を悩ましておることで、どういうことでこの処置をしようかと心配をしておるわけであります。大体そういう実情にございます。
#77
○山川良一君 最後にもう一言。今のガス用炭が外国からいつでも必要なだけ入つて来るという前提に立たれることは、少し私は賛成できかねるのでございますので、現在がすでにそうでございます。でございますので、私は更に拔本的の解決方を更に御研究下さいますように、これはお願い申上げて置きます。私共及ばずながらできるだけのことはいたします。
#78
○西田隆男君 栗田さんに一言お尋ねいたします。あなたのさつきの御答弁を聞いておりますと、昭和十七年頃までは大体に金銭賠償の下で完全に原状回復はできた。併し終戰後は経済界の変動と、もう一つは財閥の解体によつて、炭鉱企業者の資本力が非常に薄弱になつたので不安心だと、こういう御意見の開陳が吉田君の御質問に対しましてありました。小松君の質問に対しまして、あなたは国家が当然補償すべきだと、こういう御答弁がありましたが、どちらのほうが大体あなたの本当の御意見であるのか、仮に財閥解体後の炭鉱企業資本家の資本が、非常に薄弱になつたがために不安心だということが、若しあなたの御意見であるならば、今度の鉱業法案の中に盛られておりまする供託金の制度、あの金額を増すことによつてでも、あなたの御意見に対する御不安は或る程度解消されるかとも私考えます。それから小松君への御答弁に対する考え方が、あなたの本当のお考え方であるとするならば、この法案の中に国家補償による損害の賠償ということの規定を挿入するか、若しくは特別法を作ることによつて、そういう意味のことを充足する以外に方法はないと考えますので、この二つの御意見を承わりましたので、どちらが福岡代表としての御意見であるか、もう一度お答えを願います。
#79
○公述人(栗田数雄君) 私は先程から申しましたように、今までの大資本家のやられたものと、中小炭鉱の過去のあり方とが非常に錯綜したように、別個の意見を申上げたように、お聞きとりを願つたのは、私の申上げ方が悪かつたと思いますけれども、少くとも現在の私は石炭業界の真相は知りませんけれども、あの厖大な被害を現在の大きい炭鉱でも背負われることは不可能だろうという推定ははつきり付きます。それで私どもはよく承知しておりますることは、要するに戰争中の鉱害は、一応特別鉱害臨時措置法でできましたけれども、これ又以て九十八億程度の特別鉱害が、一応政府ではつきり認定されながら五十億に抑えられた。そういう面から申しましても、まだ特別鉱害として残つておるものも半分ありますし、又戰争中のみを対象とされますけれども、私が知つておる範囲では、戰争後も占領軍のほうから、先程申しまするように、臨時列車を出して、戰時中に劣らず強行採炭をさせられておるのでございまして、而も石炭が足らずして、相当の炭価で売れる際には、基礎産業だという面から炭価を国が抑えて、それで炭鉱の、要するにこれらの復旧賠償のいわゆる資力は失われて、ようように石炭が相当でまして、安定するということになりました今日、自由競争でおつ放かされておる。これは私は炭炭鉱業者でないけれども、まさしく政府が、要するに復旧或いは賠償を阻止したことでございますから、特別に私は中小炭鉱の、まあ非常に悪い事例を申上げたのでございまするけれども、全体の地区における、或いは福岡県におけるこの鉱害というものは、私が公述申上げましたように、原形復旧のほうになりましても、現在の鉱山のあり方、又過去の、私が申しまするように、戰後においても、国が復旧賠償のできないような政策をとつておる。でありまするから、当然私は大資本炭鉱であろうと、中小鉱業であろうとを問わず、それを認可、許可し、現在までやつておるものに対しては、現実の補償金程度にいわゆる任して、それ以上のものは当然国家に負担して貰うということを主張するものでございまして、とくに中小炭鉱の苦しいいわゆる悲惨な状態と、申し方が二つに分れたようでございますけれども、私の考え方はまあ一貫しておるわけでございます。さようお聞きとりを願いたいと思います。
   〔委員長退席、島清君委員長席に着く〕
#80
○吉田法晴君 折角西田委員から御質問があつたところなんですが、その問題につきまして、確かにさつきのあの栗田さんの御説明には誤解を受けるような表現があつたように思うのでありますが、私の尋ねました趣旨から言いましても、例えば戰争前において或いは戰争後において、先程お話のような公共事業或いは家屋を除きまして、一番問題になるのは農地ですが、そういうものについて、どの程度に原状回復が行われておるか、これは数字を以て御説明を頂くと一番はつきりして参るのじやないかと思うのですけれども、そういう点の数字はございませんでしようが、実情をそこで大綱御説明を頂けませんかということを申上げたわけであります。西田委員の質問に関連いたしまして、その辺の概略を御説明頂ければ明らかになるのではないかと、私もその辺をお聞きしたいのですが……。
#81
○公述人(栗田数雄君) 私は今の数字は推定でございますが、戰争前では大体において六千町歩ぐらいの被害は受けておりますけれども、水沒等の悲惨な状態のところは僅かだつたと思います。それに対して、先程申しまするように、千百三十四町歩の復旧がなされておりますから、この不毛田、水没田に対しては相当程度の復旧がなされておる。戰争を契機といたしまして、戰後もやはり強行採炭が行われましたが、それらによつて下つたものは、推定福岡県で一万三千町歩になつておりまして、戰争前の倍以上でございまするけれども、昭和十七年後においては、少くともプール資金で僅かの面積の復旧はできましたけれども、大体において復旧はなされていないということを申上げて差支えないと思います。
#82
○委員長代理(島清君) 各委員にお諮りをいたしますが、今までの公述人の方々との質疑応答を承わつておりますと、石炭関係のみに集中されておりますので、今日の公述人の方々に、その他の公述人も見えておられますので、成るべく一つそこらを按配して御質問をして頂きたいと思います。
#83
○西田隆男君 栗田さんの大体の御意見分りましたが、私がお尋ねしておりますのは、
   〔委員長代理島清君退席、委員長着席〕
鉱業法の本質の問題でございまして、午前中も私我妻教授とお話をしましたように、金銭賠償で解決の付く方法があれば、それでもよろしいというお考え方であるのか、金銭賠償だけではいかぬのだ、いろいろ不安があるから、どうしても原状復旧を目標とした国家補償の原則をとつて行くのか、この二つのうちのいずれかにあなたの御意見がまとまらざるを得ないかと思うのですが、今のあなたの御意見を聞いておりますと、両方併用しておるようなお話にも受取れますし、二つ併用しておるようにも受取れますので、法案の審議の上から、県から出ております私は、県民諸公の御意向をしつかり掴んで法案審査に当りたいと考えておりますが、できましたならば、簡潔にどちらであるか、或いは両方併用で行つてもよろしいというお考えであるのか、この三つの点をもう一遍お伺いしたいと思います。(「同感」と呼ぶ者あり)
#84
○公述人(栗田数雄君) 私は原状復旧の線を出しております。それで公述の結論に出しておりますように、現実にそれの実際の今の石炭業界から言つて、これができない相談であるから、これは是非とも国家補償の特別の制度を立てて頂きたいということを申上げておりますから、結論を申上げますと、これは国家が責任を以て、又法の上においては原状回復をやつて頂きたい、こういうふうに考えております。
#85
○委員長(深川榮左エ門君) 本日は大分時間も経過いたしましたが、この辺で本日の公聴会を閉会いたしたいと思いますが、如何でございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#86
○小松正雄君 閉会に先立ちましてお願い申上げておきます。農林事務次官の山添さんを次回委員会に出席させて頂くことをお願い申上げておきます。
#87
○委員長(深川榮左エ門君) 承知しました。さよう取計らいます。
 それでは本日の公聴会はこれで散会いたします。
   午後四時五十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長    深川榮左エ門君
   理事
           古池 信三君
           廣瀬與兵衞君
           栗山 良夫君
           結城 安次君
   委員
           上原 正吉君
           小野 義夫君
           松本  昇君
           小松 正雄君
           島   清君
           吉田 法晴君
           高瀬荘太郎君
           山内 卓郎君
           山川 良一君
           駒井 藤平君
           境野 清雄君
           西田 隆男君
  公述人
   福岡県鉱害被害
   者組合連合会副
   会長      栗田 数雄君
   八 幡 市 長 守田 道隆君
   農林事務次官  山添 利作君
   東京大学第一工
   学部教授    青山秀三郎君
   東京大学法学部
   教授      我妻  榮君
   日本石炭協会会
   長       高木 作太君
   日本鉱業協会会
   長       岡部 楠男君
   香川県香川郡直
   島村産業振興組
   合長      花岡 圭治君
   石灰石鉱業協会
   会長      芳賀 茂内君
   日本石材振興会
   会長      上山 元市君
   秩父市武甲森林
   組合      加藤吉兵衞君
   鉱山調査業   大島  憲君
ソース: 国立国会図書館
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