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2000/11/21 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 農林水産委員会 第6号
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2000/11/21 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 農林水産委員会 第6号

#1
第150回国会 農林水産委員会 第6号
平成十二年十一月二十一日(火曜日)
   午後二時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         太田 豊秋君
    理 事
                金田 勝年君
                岸  宏一君
                郡司  彰君
                須藤美也子君
                谷本  巍君
    委 員
                岩永 浩美君
                佐藤 昭郎君
                鶴保 庸介君
                中川 義雄君
                森下 博之君
                若林 正俊君
                小川 勝也君
                高橋 千秋君
                谷林 正昭君
                羽田雄一郎君
                鶴岡  洋君
                渡辺 孝男君
                大沢 辰美君
                石井 一二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山田 榮司君
   参考人
       全国農業会議所
       専務理事     中村  裕君
       北海道農民連盟
       書記長      北  準一君
       兵庫県氷上郡柏
       原町農業委員会
       会長       小松 忠重君
       横浜国立大学大
       学院国際社会科
       学研究科長    田代 洋一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○農地法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(太田豊秋君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、参考人として全国農業会議所専務理事中村裕君、北海道農民連盟書記長北準一君、兵庫県氷上郡柏原町農業委員会会長小松忠重君及び横浜国立大学大学院国際社会科学研究科長田代洋一君に御出席いただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方について御説明いたします。まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、中村参考人からお願いいたします。中村参考人。
#3
○参考人(中村裕君) ただいま御紹介いただきました全国農業会議所の中村でございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。
 御審議をいただいております農地法の一部を改正する法律案につきまして、私は賛成の立場から意見を申し述べたいと存じます。なお、時間の関係もございますので、ここでは特に農業生産法人制度に関連いたします意見についてのみ申し上げますので、よろしくお願いをいたします。
 先生方の御尽力によりまして、昨年の七月に食料・農業・農村基本法が施行されました。そしてまた、ことしの三月には、この基本法の基本理念とその施策の方向を具体化した食料・農業・農村基本計画が策定をされたところであります。この実現に向けまして私ども最も重要だというふうに考えておりますのは、だれがこれに当たるのかということであります。いわゆる農業生産、農業経営、そして地域社会の担い手の量と質の問題ではなかろうかというふうに考えております。
 私ども農業委員会の系統組織は、農業経営の法人化につきましては、前の古い基本法ができます以前、昭和三十二年からタッチをしてきております。このきっかけとなりましたのは、御案内かと思いますけれども、徳島県のミカン農家が農業経営の合理化ということで有限会社の届け出をしましたところ、法律違反で認められないということでございました。
 それ以降、この支援をしてまいりました。私どもは、農業経営の自主性あるいは主体性、すなわちみずから判断と行動ができる農業経営、この実現を目指したい、こういう観点からこれを支援してまいりました。そして、昭和三十七年、御案内のように、農地法あるいは農協法の改正によりまして、有限会社、合資、合名そして農事組合法人に限り、農地の権利取得が可能な農業生産法人制度の実現を見たところであります。
 現在、私どももまだこの支援を続けておりまして、実は私どもの同じフロアにございますが、社団法人の日本農業法人協会というのが平成十一年の六月二十八日に設立をいたしました。その前の、平成八年八月に全国農業法人協会をつくりましたが、これを社団法人としてきちっとした組織にしたいということで、その面倒を今見させていただいているということでありますし、また昭和三十年終わりから四十年にかけまして、それぞれ部門別に、養鶏経営者会議だとかあるいは養豚経営者会議、あるいは稲作経営者会議、あるいは農業青年会議所、あるいは観光農業経営者会議等の、部門別の大きな農家、これは法人農家が中心になりますが、そういう農家の方々の面倒を見させていただいてきているということでございまして、この点につきましては今も続けておるところであります。
 特に、これからの農業経営は、言うまでもないことでありますが、単なる生産だけではなくて、加工、販売あるいは消費者等との交流などの事業展開が不可欠になってこようというふうに考えておりますし、また農外からの意欲ある若者が就農希望をしております、大変増加をしております。これらの受け皿として農業法人が大変な役割を果たしているということもございます。
 それからさらに、市場経済への対応ということでどういう農業形態がよかろうかという点につきましても、法人経営の態様ということが一つ考えられますし、またそういう方向で今、法人の設立がされてきているということでもございます。
 それから、これからの農業経営の継承、次代へどういうふうに渡していくかという場合、いわゆる農地と経営が一体的に次の世代に渡っていくということを考えなければいけないというふうに考えておりまして、この次代への経営の継承ということについても法人経営が有効ではなかろうかというふうに考えておりまして、このような状況等今後を考えますと、農業経営の法人化はますます重要な農政課題ではないかというふうに考えているところであります。
 今回の改正法案は、農業生産法人の一形態として株式会社を認めるなど農業生産法人制度の四つの要件を見直すというものでありますが、この改正の内容は、従来と同様に、農業生産法人が家族農業経営の延長線上にあるという制度の基本を変えているものではないというふうに理解をしておりまして、農村地域においても共存できる経営形態であるというふうに思っております。
 先進国における農業経営のあり方を見ましても大宗は家族経営でございますし、今後ともそういう方向で変わりはないというふうに考えておりますが、時代の変化に対応して法人経営についても新たな展開が必要だというふうにも考えているところでございます。
 基本的にはこういう視点に立ちまして、要件の見直しについて、次に意見を申し上げたいと存じます。
 第一点は、事業要件の改正であります。
 これまでの事業に加えまして、幅広い事業の展開が可能となります。このことは、農業所得の増大あるいは労働力の拡大あるいは周年雇用、そして農機具の有効利用等につきまして、また新たな農業経営の展開もさることながら、農林業の持ちます多面的な役割の発揮という地域社会の期待にもこたえるものではないかというふうに思っておりますし、農業法人の方々からもこの事業要件の拡大につきましては強く望まれていた点でもございます。
 第二点は、構成員要件の緩和でありますが、農業関係者以外につきましては、現行の構成員に加えまして、地方公共団体それから法人と継続的取引関係にある者、例えば食品加工だとかあるいは生協、あるいはスーパーなどの参加を可能にしております。この点は、農業経営の成否にかかわります加工あるいは流通への参入でもありますし、また資金の調達あるいは人材の確保、あるいは消費者や都市住民の方々との連携等も図れますし、このことが農業の国民理解にもつながるというふうに考えております。したがいまして、これは農業経営の強化発展と同時に、食料自給率の向上にも寄与できるんではなかろうかというふうに考えております。また、この点につきましては、この事業要件と同様に現在の法人経営者からも強い要望があるものでございます。
 それからさらに、環境問題と関連いたしまして、耕種農業の法人とそれから畜産農業の法人との連携によります資源循環型の農業経営の成立といいますか確立といいますか、そういうものも容易になるだろうというふうに思っておりますし、そういう事例も出てきております。
 それからもう一つ、地方公共団体が参入する、参加をするということでございますが、私どもは、公益的な機能を持った農業生産法人というものが登場するということは、特に担い手が絶対的に不足をしております中山間地域におきまして、耕作放棄地の解消だとか防止、あるいは新しい農業経営の展開ということに大きな期待ができるんではなかろうかというふうに考えているところであります。
 以上、二点のこの点につきましては、一つは事業要件でございますが、これは農業関連事業が過半を占めるということでチェックされております。また、事業内容につきましては、農地を取得するとき、あるいは経営の途中段階で農業委員会がこれまたチェックをするということになっております。また、構成員の拡大問題につきましては、農業関係者以外の出資について議決権数は現行制度と同様の制限を加えるという措置がとられるのは御案内のとおりでございます。
 それから、三点目の法人形態要件についてでございますが、このことについて、一時期農村現場で混乱が生じたということ、農村現場だけではなくて、混乱が生じた時代があったかと思います。これは、この理解が、株式会社一般に農地の取得を認めるということではないのかという、ある意味で誤解がそういう混乱を招いたのかなということが過去にあったということは記憶しておりますが、資本の利益を優先する株式会社に農地の取得を認めるということは、投機的な取得あるいはその農村現場での土地利用の秩序に混乱を来すんではないかという懸念からそういう問題が生じたということでございます。
 しかし、今回の改正法案では、この事業要件、そしてまた構成員の要件を満たした上に、さらに株式の譲渡制限、そして農業関係者以外の出資につきましては、従来どおり全体の四分の一、そして構成員一人当たり十分の一以下というふうに限定をされておりまして、農業関係者以外の支配を抑える仕組みが整備されたというふうに考えております。したがいまして、従来から心配をしておりましたような不特定多数の株主が出現するという点は排除できるんではなかろうかというふうに考えておるところであります。
 それから、第四点目でありますが、業務執行役員要件の改正でございます。これは、役員の過半が農業に常時従事する構成員である、かつ、そのまた過半が農作業に従事するということになっております。さらに、法人の代表者は農業が営まれる地域に住んでいなきゃいかぬ、住んで農業に従事する構成員ということになっております。こうしたことから、従来からの地域に根差した農業生産法人という性格は維持されるものと考えているところであります。
 しかしながら、農村現場では、このことによりまして、法人要件の緩和ということによりまして、農地の投機的な取得あるいは農村の水利あるいは土地利用に混乱をもたらすのではないかといった懸念があるのも事実でございます。したがいまして、この各要件の適合性をきちっと担保する措置が十分に配慮されなければならないというふうに考えております。
 とりわけ、農業委員会による農地の権利取得段階での要件のチェック、あるいは立入調査などによります活動状況の把握、要件を欠いた場合の指導あるいは勧告、農地の譲り渡しのあっせん、このような法律に基づくものはもとよりでありますけれども、日常的にしっかりした対応が重要だと考えるところであります。
 今後、農業委員会が、措置されましたこの対応策を実効あるものにするために、私どもも一層の組織としての取り組みを強化していく所存ではございますけれども、農業委員会の体制並びに都道府県農業会議の支援体制の強化につきましても特段の御配慮をいただきたいというふうに思っておりますし、さらに、国と都道府県の農地行政につきましても毅然とした態度で対応するようにお願いをいたしたいと考えているところでございます。
 ちょうど時間でございます。十分に申し上げられませんでしたけれども、以上をもって私の意見とさせていただきます。今国会でぜひともこの成立をお願いを申し上げます。
 どうもありがとうございました。
#4
○委員長(太田豊秋君) ありがとうございました。
 次に、北参考人にお願いいたします。北参考人。
#5
○参考人(北準一君) ただいま御紹介いただきました北です。
 今回、参議院の委員会にお招きいただいて意見を述べる機会をいただきましたことを厚く御礼を申し上げたいと、このように思います。また、委員の皆様には、日ごろ農業問題、農政対策その他で多大な御尽力をいただいておりますことも御礼申し上げたいと、このように思います。
 私は、北海道農民連盟書記長という立場にありますけれども、農民の一人でありまして、私の経営は稲作中心、北海道のいわゆる稲作地帯、ど真ん中でありますけれども、奈井江町というところで、今現在十五町歩ぐらいの経営をいたしております。
 私の立場として、農民のいわゆる現場にいる立場として、これらのかかる案件について意見を述べたいと、このように思うところであります。
 今、中村専務さんの方からも、今日を取り巻く情勢のお話がございました。私も同じ認識に立っておるところであります。特に、制定されました新しい基本法、このことが持つ意味、特に自給率の向上あるいは生産の増強、これらはもちろんでありますけれども、特に主要な視点として、農業・農村の振興、あるいは機能の維持といいますか、この点の位置づけが今回の農地法改正とどういう関連を持っていくのかなと、こういうところを私の視点として位置づけしているところでございます。
 そういう中で、私も今回の提案された改正内容については十分承知はいたしておりませんけれども、しかし、今、法人等の今後の要件、あり方、これらについて私の見解を申し上げながら、二点、三点の課題等について私どもの考え方、こういうことがしっかり反映され改正法案の中に位置づけされるとすればそれでよろしいわけでありますけれども、そうでないとすると改正法には非常に賛同しかねる、こういう考え方を持っているところでございます。
 そのまず第一点でありますけれども、いわゆる今お話がありましたような、法人の中に株式形態というものが、いわゆる認識不足かもしれませんが、しかし現場の我々としては、いわゆる株式資本等が、この後、農地というものへの関与、あるいはあり方、あるいは地域社会、農村社会等に及ぼす点、こういう点を非常に危惧いたしておりまして、投機等ということは、これは今の状況ではあり得ないのかと思いますけれども、しかしこれらの経済性の追求の中から、いわゆる先ほど申し上げましたような農地の持つ多面的な公益的な機能、あるいは循環機能、農業が果たす地域社会の形成機能だとか、こういう点での影響低下、こういうおそれというものを非常に危惧していると、これが受けとめ方であります。
 そこで、改正案のいわゆる要件の中で、今お話もありましたけれども、例えば事業要件あるいは構成員要件、それから役員の要件、これらの要件の見直しの中で、いわゆる構成員要件、これは御論議されておりますけれども、営業あるいは言えば商業ベースという、そういう資本も参入できるというところがありますし、また役員の要件の中に、いわゆる農作業、今日までのいわゆる法人の役員要件の中での農作業に従事する者のいわゆる規定といいますか、過半の者が農作業に従事すると。しかし、今回はこの部分が基本的には四分の一という、こういう枠組みになっていると、こういう点であります。
 当然、この新しい手段、手法が入ると、展開としてはプラスの要素ということも若干予測はできると思います。しかし、この農作業要件の中に、いわゆる二分の一から四分の一と、いわゆる生産に携わる役員構成というものが非常に縮小して、いわゆる商ベースの部分あるいは農業に関連する事業等のウエートが非常に大きい。
 逆に言いますと、それらの経営の追求の中から、いわゆる生産というもののあり方、あるいはその部分が非常にしわ寄せあるいはコスト的な追求、こういうことを受ける。加えて、いわゆる農業生産の現場におる者として、いわゆる農業の持つ機能、これらが果たしていく役割を考えれば、やはり地域性あるいは協業性、そういう部分、あるいは水系的な問題、かなりそういう部分があるわけでありまして、いわゆる地域性を持った農業の振興、農村地域の振興という点で非常に危惧される面があると、こういう視点に立つわけであります。そういう観点から、この役員要件については四分の一でなくて二分の一、ここに戻すべきだと、こういう考え方でございます。
 それから、構成員の中に保有合理化法人がありますが、ここも今、農地というものの耕作維持、御存じのように耕作放棄、こういう部分が非常に多い。しかし、この合理化法人の今後果たしていく役割は非常に大きいわけでありまして、その法人が果たしていく役割の中で、いわゆる法人に対する出資あるいは農地の供与、供与といいますか譲渡の中で、非常に価格あるいは評価の中でギャップが出てくる、そういう問題がございます。
 これは法人に限らず、今、個人経営の中でもこの問題が非常に大きく取り上げられて、いわゆる収支、経営が成り立つ、こういういわゆる貸付要件、あるいは合理化法人のあり方、ここらが検討されなければならない。せっかくよき法人の体制ということであれば、これらの点の整備がぜひ必要という考え方でございます。
 それからもう一点は、今お話がありました、これらの要件を満たすかどうか、あるいはおそれがないか、今申し上げたような、こういう点でのチェック機能の部分であります。中村専務の方からいろいろ申し上げておられましたので、私もその点については同感でございます。いわゆるこの法案、制度の中で、それらの権限、制度というものがしっかり位置づけられているかどうかというところが一つございます。
 それからもう一点は、小作料の設定の問題でありますけれども、今回の出された改正案の中では、定額金納制の廃止という、こういうところがございます。このことにつきましては、情勢の変化ということもありましょうけれども、しかしこの小作料、まあ小作という言葉自体が非常に古いかなと思っておりますけれども、しかしこのことは現に今、小作契約等々の中で、この小作料というものの考え方が、農地の集積、あるいは農業を続ける、あるいは離農していくという段階で非常に大きな問題に実はなっております。
 このことについては、物納あるいはその他の手法、いろんな支払いの可能性を今あらわしているようでありますけれども、これはやはり金納制といいますか料金で支払っていくと、やっぱりこの原則は曲げるべきでないと。このことが、いわゆる一定のルールの中できちっとそのことが定められる、こういうルール化が必要であろうと思っております。今日までの標準小作料、それらには一定のルールがあるわけであります。しかし、そのルールどおりのいわゆる小作料金に今なっているかというと、果たしてそうなっていないと。耕作側からすると非常に経営収支のとれない小作料という中身になっておりますけれども、しかし貸す側の立場ということも、これ、一つありでありますから、この問題についてどう対処するかと。これは次の問題でありますけれども、法人の中での処置としては、小作の納め方についてはこれは金納制を継続すべきと、こういう考え方であります。
 そこで、私の申し上げた今の三点について、そういう視点での法制度の定め方、ここが必要であると、こういう考え方でございます。
 実は、もうちょっとお時間をいただいて、この小作料等についてちょっとお話ししたいわけでありますけれども、私の参考資料の中に経営の実態調査というものが入っていると思うのでありますが、北海道における規模拡大型経営の調査でありますけれども、恥を忍んで私自身の過去二十年間余りの収支実績を実はお持ちしたわけでありますが、もう一つは、数字は非常に細かい数字で恐縮でありますが、拡大型経営調査結果表というところにあります。
 一番上の表でありますが、水稲部門の道内の主要地区約百戸の経営の集積でありますが、面積は一番下の欄でありますが、水稲部門の十一年、平均が十五・三ヘクタールという、そういう規模層になっている。ずっと行きまして、真ん中辺に差引所得というものがありますが、ここは四百六十九万ということであります。償還金が三百六十万、差引所得が百九万という、こういう実態であります。
 私が申し上げたいのは、この所得の中、これは収入と費用を単純に引いたものでありますから、この所得でそれではいわゆる小作契約あるいは農地集積等ができていくのかどうか、この点であります。今の農地法の中でこの小作料等々の論議、このことは十分このことを踏まえて論議をしていただきたいと思うところであります。
 単純に言うと、所得四百六十九万は十アール当たり単純に言いますと三万円の所得ということであります。ここから生活費が費やされるわけでありますから、ほとんどここの経営は赤字、会社で言えば倒産状態。こういう中で、それでは農地のあり方、集積のあり方というものがしっかり論議されなければならない、こういう視点がこの農地法の中に今課題としてあると。
 こんなことを申し上げて、私の今の農地法の改正での、特に法人の関係、それからこの後の農地制度のかかわり、小作料も一部取り上げましたけれども、こういう現場の考え方を申し上げて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(太田豊秋君) ありがとうございました。
 次に、小松参考人にお願いいたします。小松参考人。
#7
○参考人(小松忠重君) 私は、兵庫県の柏原町の農業委員会の会長を務めております小松と申します。
 私の町は丹波という地域で、兵庫県の中部にあるんですけれども、今農水大臣をされている谷さんと同じ選挙区の一角にございます。非常に小さな町なんですけれども、農業委員会に二十代から出していただきましたからもう三十数年になりますが、その間いろんなことについて感じてきておりまして、特に今回農地法改正が出てきました段階で私たちの農業委員会もいろいろ意見がありまして、そこで出てきた意見なども紹介しながら、日ごろ思っている点で発言をさせていただきたいと思います。
 今回の農地法の改正について、今それぞれお話がございました。特にその中でもいわゆる株式会社という形態の農業生産法人が存在してくるという点で、いろいろこれまでから関係の農業団体では極めてこれに抵抗してきた経過がございます。しかもなお、今日も当然そういう立場でいろいろ今回の改正が論議されているところだと思うんですけれども、農業委員会へのいわゆる定期報告であるとか、あるいは立入検査などの規制はかけるとしても、いわゆる農業生産法人の要件を緩和するということが非常に大きな柱になって今回改正をされておりますことを見ますと、私たちの農業委員会のメンバーもいよいよ来たなという、そういう思いが非常に強いです。大多数の農業関係者もその点では非常に大きな不安と危惧を感じて、いわば警戒の目で見ているといいますか、そんな雰囲気だと思います。
 来年、農地法の五十年の記念の企画を今考えたりしておるんですけれども、私が初めて農業委員会に出していただいたころは、各地で協同化であるとか法人化の動き、先ほどもありましたが、ありまして、いわゆる農業生産法人が法制化をされておりました。しかし、農地は耕作者みずからが所有することを最も適当と認めてという、ここのところはやっぱり非常に大事なポイントであって、農地の取得であるとか耕作者の保護であるとか、農地の有効利用や耕作者の地位向上という点をしっかりやっぱり守って、それで農業委員会の活動もしてこなきゃならぬということで、当時いわゆる自作農主義と言われていたのをしっかり守ってきました。
 その後、あの例の四十五年改正などもありましたから、この間いろいろ利用増進法から現在の農業経営基盤強化法ですか、強化事業になってきているんですけれども、そういう中でも、いわゆるみずから所有することを最も適当とするという、ここのところの原則はしっかり我々も守りながら今日まで来たというふうに思います。それが今日、私たちは村の農地は村で守ろうやという思いで一致させて、そうしていろんな取り組みをしているところです。
 高度成長であるとかバブル期であるとかいろんな経過もございましたけれども、そういう中でこの農地法と農業委員会が果たしてきた役割といいますか、これは非常に私たちも大きかったと思いますし、企業の乱開発によるいわゆる環境破壊などについて、私たちは精いっぱいその地域の環境を守り、公害を防止するために一生懸命頑張ってきたつもりでございます。
 ところで、今回の改正ですけれども、今ある農業生産法人のいわゆる要件緩和ということだから、すぐだっと大会社が村へ入ってくるというようなことはないというふうに言われていると思いますし、そうだと思うんですけれども、問題は、その次の段階が非常に危ないのではないかという不安をみんなが持っているというところだというふうに思います。もしそうなると、これは家族農業がもう業として成り立たなくなるんじゃないか、村の中で非常にそういう企業と家族経営との間にいろんなあつれきが生じないかという不安、そういうものを農業者のほとんどが持っているというふうに思います。
 提案されている側は、やっぱり国際競争であるとか規制緩和であるとかそういう立場で進めておられますので、余りあけすけのお話はないと思うんですけれども、これはもともと経団連や財界の皆さんなどがいろいろ提言をしてこられた経過もありますだけに、いよいよそういう方向に風穴があくという思いはやっぱり全国ほとんどの農家の皆さんが持っているんじゃないかというふうに思っているところです。
 私の町は、山林が七五%で、農業振興地域内の農用地が大体三百三十町歩という非常に小さな町ですが、現在、県営や団体営の圃場整備などを含めまして大体二百五十町歩ぐらい整備をしてきました。問題は、この農地をどう有効にこれからも将来にわたって生かしていくかという点で、やっぱり集落と家族農業を守るということが担い手確保の基本だというふうに思っております。
 それぞれの集落にはいろんな事情がありますから、それぞれの事情に沿って、私たちも担い手をどう確保し、農業経営を維持し、また農地を有効利用するかということで今一生懸命取り組んでおるんですけれども、そういう中で、やっぱり株式会社とか法人化とかというような思いは私の町ではいささかもと言っていいほど、ほとんどないと言っていいというふうに思います。全国の市町村、大きなところは知りませんけれども、農業地帯などはともかくとして、ほとんどの地域は、私たちの中山間地のようなそういうところとほぼ同じような状況ではないかというふうに思います。
 私の町も含めまして郡内の六町で広域のいわゆる担い手センターですね、いわゆる農地を荒らさないようにどう活用しようかということで、農地の流動化を広域的に図っていこうという目的の組織をつくっていたんですけれども、今年度で廃止の方向を出しております。もちろんいろんな理由があるんですけれども、そこにはやっぱり村の農地は村で守ろうと、外部からのいろんな入り作なども、やっぱり村の機能を維持しようとするとそれはできるだけ排除したいという思いがあって、それでやっぱり村で守っていこうやということからそんなに農地が広域的に流動化しないということだと思いますし、ずっと通作距離なんかについても緩和されてはきていますけれども、実際には機能しなくなっているので、もう実績もないから解散しようということになっているというふうに思います。また、そういうことが今の農業を守っているんだというふうに思うんです。
 今私たちは、それぞれの集落の実情に合わせまして、一定規模の農家で後継者のいるところに利用権設定をして、そこに農地を一定の集積を図るとか、あるいは農作業だけを請け負うようなそういう組織をつくるとか、それぞれの実情に応じていろんな取り組みがなされているところですけれども、やはり先ほどから何回も言うように、入り作をできるだけ防いでいこうと、そうしなかったら集落の機能が非常に混乱するという思いが非常に強いと思うんです。
 これは、そういう言い方をすると何か閉鎖的なように聞こえるかもわからないんですけれども、やっぱり村というのは、私たちの小さな村ではやっぱり農業が何だかんだといっても中心になっておりますし、共通の話題という点からいってもやっぱり農業が中心に座っております。したがって、例えば、おまえのところのあの田んぼ、ちょっと虫がついておるんじゃないかとか、おまえのところ、もうちょっと、今ごろもうええかげんに種をまいたらどうかとか、水があたっておるぞとか、いろんなそういう話がずっとつながることで集落がもっていると私たちは思っています。そこのところが非常に大事なのであって、いわゆる企業形態の組織が入ってきますとこれは当然利潤追求というようなことになりますので、その点では非常に問題だなというふうに思います。
 私たちが一番困っているのはやっぱり四割近い減反ですし、四割も減反をかぶってまで農地の集積はしたくないというような、意欲を持つ農家でもそんな思いをしているという現状にあります。
 それから、もっと言えば、担い手がいろんな事故や病気で挫折することがあるんです。私の町で、小さな町ですけれども、ここ五年ほどの間に五人、そういう交通事故や病気で亡くなられました。そんなことになるともうてんやわんやになって、村の農地をどうしようかということで一生懸命やるんですけれども、だからといってそのときに、担い手の法人化へというような声はもう全然出てこないんです。やっぱりみんなで、定年退職者なんかが力を合わせて作業班をつくろうというようなことであるとか、それぞれの地域に合った取り組みをやっている。むしろそれを支援するような施策が欲しいというのがまた私たちの思いです。
 特に最近困っていることの一つに、競売で他の地域に住んでいる人が競落してくる。例えば、高速自動車道で農地が買収されたんでそれの代替というような格好で、相当のお金が入ったのを新しい農地の取得で入ってくるんですけれども、えてしてそういう場合に、相当遠くの人たちが来ますから、あぜ草刈りもろくにできないというようなこともあったりしていろいろ問題になっているところです。
 時間が来ておりますから、農業委員会の問題にちょっと触れておきたいと思うんですけれども、今回の改正で農業委員会の役割というのが非常に強調されております。私たちもそうだろうということで責任を感じているわけですけれども、例えば、農業委員というのは、私の町でも二十五の集落で十六人です。今、私どものところでは合併が問題になっていますから、万が一合併にでもなれば、二百集落ぐらいのところで二十五、六人ぐらいの農業委員さんになると思います。その場合に、選出する母体は各集落で持ち回りの、いわゆる一期三年ごとに持ち回って推薦されてくるというような例が非常に多いので、私のようにもう長いことずっと出ているという人は非常に少ないという、そういう状況にあります。
 それからもう一つ、農地主事の問題ですけれども、これは、いろいろ調査や勧告する場合に、そういう能力を持った、あるいは権限を持った、そういうのが要るんですけれども、実際には町長のいわゆる任免権に基づく枠の町長部局の職員が兼務しているという状況が全国の市町村の実態だと思います。その際に、私もそういうことがあったんですけれども、町長が勝手に、これまでずっとやってきた課長を住民課にぱっと回すというようなことがあって、何をするかと言ったら、血相が変わっておったんでしょうけれども、抜かぬでくれと言うから、いやもうこい口に手をかけていると言って笑ったことがあるんですけれども。そういうふうにいわゆる勝手に町長の権限で動かすことのできない、農地の問題については絶対に専門的に役割が果たせるようなそういう農地主事は、さきの一括法で必置規定がなくなりましたけれども、私は、そういう制度があるなしにかかわらず置かぬとあかんのじゃないかというふうに思うんです。
 今もちょっとお話をしていましたけれども、農業委員の報酬というのは大体、私も議員をしておりますが、議員の一カ月分が一年の報酬ですから。ちょっとそこのところ、これらのものを全部チェックせよというんですけれども、これはもう恐らく機能しないんじゃないかという心配は非常にしております。
 いずれにしましても、やっぱり一定の権限を持った、しかもそれがきちっと保障された、そういうものでなければならない。ところが、予算はむしろずっと削減される方向にありますから、その点は非常に重要なポイントじゃないかと思います。
 以上ですけれども、地域農業を考えますときに、やはり家族農業が基本ですし、農業委員会の系統においても今日までずっとそれは主張してきているところです。三十数年委員会の活動をやってきまして得た教訓というのは、やっぱり耕作する者みずからが所有することを最も適当とするという、この農地法の基本理念をしっかりとやっぱり持って、農村の自立あるいは健全な文化という、そういうものの源泉になっている点ですから、ここのところを非常に大事にしなきゃいかぬのじゃないかと。また、農地の転用許可を審議しておりまして、厳しければ厳しいほどええなんということは思っていませんけれども、やっぱり心を鬼にして決断をしたときにはそんなに間違いはないけれども、多少でも、言葉は悪いですが、仏心を出すとそこに落とし穴があるときの方が多いなというのがこの三十数年のものです。
 ですから私は、もとになっている法律改正という点では、私はこれからもよほど慎重にしていかなきゃならないと思いますし、そうした点で、法人の要件緩和というのは、結局企業による家族農業と村の環境を破壊するんじゃないだろうか。結局、自然を相手にしたいわゆる自然農業と狭い農地を隅々まで活用したいということで頑張ってきているそういう食料生産だとか自給の向上だとかという課題から見ますと、そうしたことを一層困難にしないかというふうに心配をしているところです。
 以上です。
#8
○委員長(太田豊秋君) ありがとうございました。
 次に、田代参考人にお願いいたします。田代参考人。
#9
○参考人(田代洋一君) 御紹介にあずかりました横浜国立大学の田代です。
 今まで三人の参考人の方々が大所高所から見解を述べていらっしゃいますし、私の職業は教師であり研究者ということでありますので、やや細かな点についてお話をさせていただきたいと思います。
 日本の農業といいますと三世代直系家族を規範とします家農業でありまして、それもやっぱり、家農業というのは強みもあると同時にやはり後継者やそれから女性の自立の点では弱みもあるというふうに思っています。そういう点では、農業生産法人は、こういう慣習的な制度の弱みに対しまして制度をもって補強する、そして家農業の近代化を図るという点では非常にやっぱり有力な手段であり、条件の整った農家が法人化を図っていくということは、今後の明るい農家、明るい農村をつくる上で非常に大切なことでありますし、そこで農業生産法人制度の使い勝手が悪いという点があればやはり改善していくことが必要かと思います。
 しかし、今回の改正案は、ありていに申しますと、こういう線上で農業生産法人制度の発展を図るというよりは、むしろ端的に申しまして農外からの株式会社の農業参入要求、これに端を発した問題でございまして、それに対しまして農業生産法人制度がよって立つ農地耕作者主義、これとのぎりぎりの折り合いをつけようとされた農政当局の苦心の作というふうに私は見ております。言ってみれば、アクセルを踏みながら同時にブレーキを踏もうというそういうことでありまして、関係者の御努力に深く敬意を表したいと思います。
 しかし、そのような経緯にかんがみますと、私は今回の改正のポイントは、現実論だとかメリット論というよりはむしろ理念論に、理念といいますか、将来に対する影響にあるのではないかというふうに考えております。
 農外からの参入といいますのは、今いろいろお話がありましたように、あったとしても例えば有機認証だとか加工原料の確保だとか農業のおいしい部分をとるということにとどまるだろうと。それよりも問題は、今回の改正が戦後農政の根本理念であります農地耕作者主義のこの範囲内にとどまるものなのか、それともそれからはみ出していく一歩になってくるのか、そこのところが最大の問題ではないだろうかというふうに考えています。その点では、ほかの参考人の方々と同じように、やはり私としては懸念を持たざるを得ないということであります。
 なお、私がこれから申します農地耕作者主義といいますのは、みずから額に汗を流して大地を耕作する、こういう方々のみが農地の権利を取得できる、こういう理念を指しております。
 その懸念の第一点目でございますけれども、まず農業生産法人の形態要件、これにつきましては、株式譲渡の承認制つきで株式会社形態を認めるということでございますけれども、しかしながら我々の経済学の立場からいいますと、株式会社といいますのは、第一番目に、やっぱり株式の自由な購入と自由な譲渡、これを通じて投資のリスクを回避する、そのことによって大衆的な零細な資金を大量に集積してやっていくというところに本質があるわけでございます。しかるに、この株式会社の譲渡制限をするということは、言ってみれば首根っこのところを押さえちゃうといいますか、本質的な機能を取り上げてしまうということでございますので、皆様方の御努力はよくわかりますけれども、言ってみればやっぱり不自然な措置であって、永続性に疑問なしとしないということでございます。
 それから、株式会社の第二の本質は、これは言うまでもなく所有と経営と労働を分離して効率性を高めるということでございますけれども、農地耕作者主義はむしろ所有と経営と労働との一体性ということを目標としてございますので、その点でもなじまない点があるのではないかというふうに考えています。
 二番目に、先ほど御議論ありましたけれども、事業要件でございますけれども、主たる事業が農業であればいいということでありまして、従たる事業についての範囲を問わないということでございます。この点についてはいろいろな技術的な難点があったかと思いますけれども、しかしこれは規制の緩和というよりも規制の撤廃でございまして、やはり技術的な困難を超えるような問題がそこにあるのではないかというふうに考えております。
 二点ございまして、第一点目に、改正は法人が何を兼業してもいいと、言ってみれば従たる事業としては何を兼業してもいいということであって、これは言ってみれば第一種兼業農家、第二種兼業農家の法人版という、こういうことになってくるわけであります。しかし、いやしくも日本農業の担い手の最前線でもってこの法人が頑張ろうというときに、何をやってもいいということになりますと、果たして国民の農業に対する理解が十分に得られるだろうかと。多面的機能ということを非常に強調しております新基本法、これにむしろ即応して、農業関連事業なり附帯事業の幅を法人の持っている生産手段あるいは生産物、これを利用したすべての分野に広げる。言ってみれば、農機を持っていればそれで土木作業からそれから除雪作業までできる、あるいは自分のつくった農産物を使ってレストランから民宿までやるという、そういう今日的に事業を拡張するという方向でやはり事業は特定する方がよろしいのではないか。聞くところでは、フランスの新農業基本法でもやはり農業活動の定義は明確にしつつ拡張しているということでございます。
 二番目に、ここが問題でございますけれども、主として農業をしているか否かということの判定は売上額で行うということになっております。ところが、売上額の経済的実質的な意味といいますのは、売上額に対する所得率の割合あるいは経常剰余率の割合によって大きく異なります。したがいまして、たとえ売上額では農業が主でありましても、実質的には第二種兼業法人になる可能性があり得る。例えば、先ほど例がございました畜産でございますけれども、畜産の売上額は非常に大きいけれども所得率は非常に低い。こういう畜産経営が土地利用型経営の複合経営を行っていて、かつ農外事業を兼営するということになりますと、実質的には第二種兼業法人、これによる農地耕作や権利取得が可能になってくる可能性があるのではないかという懸念がございます。結局だれが農地の権利を取得してもいいということになりかねなくて、企業の農地取得に口実を与え、言ってみれば、やっぱり農地法の撤廃にまでつながる問題を内包しているのではないかということでございます。
 それから、構成員要件でございますけれども、「物資の供給又は役務の提供を継続して受ける個人」というふうになっておりましたものが、今回はどうも個人及び法人というふうにされる予定のようでございます。これだと、例えば農業法人から米を買う生協等々だけでなくて卸だとか小売資本、加工食品メーカー、こういう営利法人も構成員になれるということでございまして、四分の一ないしは十分の一という限定された出資額、そのいかんにかかわらず、むしろ少ない資本でもって農業法人を支配するというようなことも起こり得るだろうということでございます。
 第四点目に、業務執行役員の要件でございますけれども、私は今回の規制緩和はこの点が一番大きな規制緩和じゃないのかなというふうに思っております。先ほどもお話ありましたけれども、これまでは農作業に主として従事する者が過半を占めるということでございましたけれども、その点が三つばかり緩和されております。一つは、農作業を農業、農業といいますのは、これは農業関連事業や企画管理労働が含まれてきますけれども、そういうものに緩和するということでございますし、二点目に、農作業に主として従事ということが農作業に一定日数以上従事すればよろしいという形で緩和されている。三点目に、農業に従事する者が、先ほどの北さんのお話でもございましたけれども、二分の一以上から四分の一以上という形に緩和されてくるという三重の規制緩和が行われているのではないか。
 要するに、役員の四分の三までは農業に主として従事しない者がなれるということでございまして、具体的に考えてみますと、農作業に主として従事するということは、これは位置を特定された土地でだれが農作業を実際にやっているかどうかということは、これは我々は目で見ることができるわけでございます。しかし、農作業ではなくて農業ということになってきますと、これはマネジメントだとかマーケティングだとか、こういう頭脳労働が入ってきます。この頭脳労働といいますと、だれの頭をかち割ってみてもその人が何を考えているかということはちょっと目に見えない。または特定の土地から離れるということができますので、非常にやっぱり判断が難しくなってくるのではないか。極端な話、東京都心の高層ビルの最上階の社長室でも農業経営に思いをめぐらすというふうにおっしゃれば、それはやっぱりそういうふうにやっているのかなということになりかねないということでございます。
 今、農作業に主として従事するということが耕作者の定義だとしますと、その耕作者が経営の主体たることが確保されない改正でありますと、やはり農地耕作者主義をこの点では逸脱する可能性なきにしもあらずというふうに見ております。
 問題は、農地耕作者主義に穴があくと次はどうなるかという問題でございまして、農地法三条、これは農地の権利取得に際して農地耕作者主義を規定しているわけでございます。要するに、みずから額に汗を流して耕作する者のみが農地の権利を取得できるということであります。そのことは、言いかえれば、農地はあくまでも農地として耕作すべきだということでありまして、そのことが農地の転用は統制されるべきであるという次の転用統制の理念を生んでくるんだろうというふうに思います。
 ちょっと難しい言い方ですと、農地法三条の農地耕作者主義のその上にやはり四条、五条の農地転用統制があるというふうに私は理解しています。両者は言ってみれば親ガメと子ガメの関係でありまして、親ガメすなわち農地耕作者主義が株式会社の導入によってこけてしまいますと、子ガメすなわち転用統制もこけてくる可能性があるんじゃないか。結局、だれが農地を持っても、農地を何に使ってもいいということになってくるという点で、理念的にはこの点がむしろ私は怖いなということでございます。これは五年後、十年後、二十年後の話かもわかりませんけれども、そういう点を心配いたします。
 そうは申しましても、大勢からしてやはりこの法律が通っていくとするならば、それはやはり政府も非常に重い責任を負うことになるのかなというふうに考えていますので、最後にその点をお願いしておきたいと思います。
 すなわち、今まで参考人のお話にございましたように、懸念払拭措置が十分にとられることを前提としてやろうじゃないかということでありまして、まさにブレーキを踏んでいるわけでありますけれども、このブレーキを踏むその主役としてはやはり農業委員会がなっていらっしゃる。今の小松参考人のお話でも農業委員会は、小松さんは非常にお力ありそうですけれども、全体としては既存の業務で手いっぱいであると。その上、こういう高度の専門的な知識、それから監査能力、さらに一定の裁量性、こういうものを有する任務を農業委員会が全うするということになってきますと、私は特に、農業委員さんの若返りだとかそういうこともありますけれども、最大の問題は、農業委員会事務局、この体制のやっぱり抜本的な充実が必要だろうと。私が農業委員会にお伺いしても、大体農業委員の職員さんは一年、二年、三年ぐらいでおかわりになってしまうとすると、果たして長期にわたってこういう監視する力がどれだけあるだろうかという点が不安であるわけであります。
 私としては、やっぱり農業委員会の事務局体制の抜本的な充実、それからそこに専門家として長期に頑張るそういう職員の確保、それからやっぱり農業委員の若返り、あるいは農業委員さんには若手、特に、お年寄りを別に軽べつするわけじゃありませんけれども、やはり働き盛りの方がいないとなかなかこういう監視は難しいだろうということでございます。
 しかしながら、他方で、農業生産法人自体は地域普遍的に展開するとしても、問題のあるような農業生産法人はこれはレアケースだろうと、またそうであってほしいというふうに願っております。そうしますと、一方でやっぱり農業委員会事務局体制の抜本的な全国一律的な充実という、そういう課題とともに、果たして全国一律にそういう充実する、具体的なその抜本的な拡大を図っていくという、そういう財政的な条件があるかというと、その点もやはり問題である。
 こういうふうに考えますと、こちらには、中村参考人、それから小松参考人、言ってみれば末端の農業委員会の方と、それからトップに立つ会議所の方がいらっしゃいますけれども、私はそういう、一方ではやっぱり抜本的に人的な充実を図らないとだめだけれども、しかし現実的にはそれが余りにも、必ずしも現実的でないとしますと、やはりこの農業委員会の系統組織として、言ってみればやっぱり全国農業会議所、それから農業会議、これがいつでも遊軍的に農業委員会をサポートできるような、こういうがっちりとした体制をつくっていく必要があるだろうと。中村さんにややごまをすれば、そのためにはやはり政府としても農業委員会系統に対する一定の財政的な支援ということが不可欠ではないだろうか、そういうふうに考えております。
 以上でございます。
#10
○委員長(太田豊秋君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの御意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○鶴保庸介君 保守党の鶴保でございます。
 自民党・保守党の会派を代表して質問をさせていただきたいと思いますが、今お話をお伺いしておりまして、各参考人の資料を事前に読ませていただいて、私なりにこんなことかなということもちょっと用意してきた質問もあったんですが、今お話をお伺いしていて、二、三、ああそうなのかと、これはちょっと確認をしておかなきゃいかぬなと思うことも多少出てきましたので、先に、ちょっと脈絡がなくなるかもしれませんが、その辺のお話をちょっとしてみたいと思います。
   〔委員長退席、理事金田勝年君着席〕
 せっかく、現場で頑張っていらっしゃる小松参考人のような方もいらっしゃっていますから、感想を交えておっしゃってくださいました。率直に言って、株式会社化的なものが進むと家族経営的なものが破壊され、またそういうものは我々の土地柄から考えても望んでおられない、全く望んでおられないというようなお話をされておられましたが、望まないものを無理にすることは我々政治家としても非常にこれは考えるべきことでありまして、その辺の事情についてはいろいろまた意見があろうかと思うんですね。一部地域によってはそういうふうなところもあるかもしれない、またそうでないところもあるかもしれない。
 それについて、小松参考人にはお話を聞きましたので、他の参考人について、若干の感想で結構です、これはもう統計的なものじゃありませんから。中村参考人いかがでしょうか。中村参考人、北参考人、お二方にとどめておきたいと思いますが、それについてどんな感想をお持ちでしょうか。
#12
○参考人(中村裕君) 特に株式会社でありますね。我々は、先ほど申し上げましたように、一般の株式会社が農地を取得して農業に参入するということについては反対でありまして、それの原因は、先ほど田代先生からもお話がありましたが、農地法の根幹であります耕作者主義、これが守れるかどうかというところにあろうと思います。
 今回の株式会社の参入は、そのことがクリアできているというふうに我々は理解いたしまして、認めてもいいのではないかと。ただ、懸念の事項についてはチェック機能をちゃんと働かせるということでありますし。
 それから、感想も含めてということでございますので申し上げますと、多分、一般の株式会社が農地を取得して農村に入ってくることは余りあり得ないというふうに思います。先ほど北さんからもお話がありましたように、株式に配当ができるような果たして経営が成り立つかどうか、多分成り立たないだろうと思います。したがって、まず一般の株式会社が新規に入ってくることについてはいかがなものかなと。多分私はなかろうというふうに思っております。
 むしろ、外部からの圧力ということも経過上あったと思いますけれども、我々はそういう見方をしていまして、むしろ、今この農業生産法人の、有限会社が多いわけですが、これが事業拡大あるいは雇用の周年雇用という点あるいは機械の償却を考えまして、そういうことを含めて事業拡大しなきゃいかぬ、あるいは人を雇わなきゃいかぬということで、あるいは資本の調達をしなきゃいかぬということで、農家の生産法人の有限会社が株式会社化する、生産法人として株式会社になる、こういうことになるんではなかろうかと。また、しっかりした家族経営があるところには多分入り得ないんじゃなかろうかというふうに思っております。
#13
○参考人(北準一君) 農村現場でこういうこと、いわゆる株式形態というものが必要かどうかという、そういう問いかけかと思いますけれども、端的に言って、私はそんなに大きなウエートを占めないんだろうと思っています。
 今現在も、先生も御承知でしょうけれども、全国でも五千六百、法人体といいますか、率で言いますと〇・二%。北海道でも一%台、総農家数からいうと一・二%ぐらいですね、今、法人という形態は。この後の展開で可能性の追求という点ではいろいろ出てくるかもしれませんが、しかし、これが歓迎されてどっと行く、農民もそういう構成をどんどんやっていこうという、そういうことには私はなっていかないんでないかなと。逆に、例えば株式形態をとった場合の、いわゆる農業の本来持っている、今日まで我々が続けてきている生産という部分がどういう形で、いわゆる経営論理あるいは経済論理の中で凝縮され、あるいは影響を受けるか。そういうところが、何といいますか、自分の利益ばかりじゃなくて、非常に農業を維持する、地域を維持するという観点で危惧しているというのが現状だと思っています。
 以上です。
#14
○鶴保庸介君 よくわかりました。
 今後のことも含めて将来の展望も幾つかお話をしていただきましたので、小松参考人、せっかくです、お話の中に、今は現状、今お二人の参考人がお話をなさった中で、将来的にもそれほど、ウエートの部分ではどうなのかなと。確かに、きちっと農業経営が進んでいるところについては参入もそれほど来ないのではないかというお話もありました。また、それが必要なところに、これからそういうものが必要な場所に広がっていくべき筋の、こういう法改正は必要なんだというお話だったというふうに私は思うんですが、小松参考人はお話の中で、次の段階が問題なんだというお話をしましたね。その次の段階、どういうことをおっしゃっておられるのか、また、これは意地悪な質問なんですが、もしも皆さんの仲間の農家の方々が法人形態で農業経営をやりたいというような、今はないというお話でございましたが、農業委員会に相談をなさってきたような場合、どう対応されるおつもりか、その辺いかがでしょうか。
#15
○参考人(小松忠重君) もともとこの話というのは、いわゆる株式会社という形態の法人が農業の分野に参入する問題についてどこから出てきているかと。皆さんもう専門ですからよく御存じと思うんですけれども、やっぱり財界からそういう問題が出て久しくなるんですね。
 同時に、そういうことから、農業委員会はもちろんですが、JAの系統等も含めて非常に警戒心をずっと持って、今日なお持って、いろんな歯どめをかけぬといかぬということでずっと来ているということが一つの証明だろうと思うんです。
 もちろん、その次の段階がいつ来るか、どんなものになるかというのはわかりません。わかりませんが、少なくとも株式会社という形態の法人が農業の分野に参入するという、風穴があいてくると非常にまずいという思いが村の中に非常に強いと思うんです。
 例えば、私の村で十年後の農業を考えようということでアンケートをとったことがありまして、この際ちょっと紹介しておきたいと思います。
 農業を続けていてよかったと思うことについて三つで答えてくれと、こう言ってとったことがあるんです。そうしたら、設問だけちょっと言いますと、親の代から継いできたものだから続けるのは当然だ、それからもう一つは、村の生活で農業は共通の話題だから大切だ、それから三つ目は、自然の中で農作業は楽しくて健康にもよい、あるいは、どんな時代が来ても食料を自分でつくっていると心強い、農業は退職後の生きがいになるから、物をつくることは楽しいし多少でも収入になるから、余りよかったと思わない、その他と、こういう設問をしたんですね。
 ずっとそれぞれあるんですけれども、やっぱり一番多いのは、どんな時代が来ても食料を自分でつくっていると心強いというのが、これが一番大きいんですよ。なるほどと。これが今の農業を守っているし、将来もここのところが、非常に厳しくても自分の農地を守って食料生産を続けようという思いのそういう意欲の根源がここにあるのであって、これを大事にせぬと、法人化、企業化という方向だけで担い手を考えるという、そういう選択肢はいかがなものかというのが私たちの見解なんですけれども。
#16
○鶴保庸介君 もう一点、じゃ、もしもという話ですが、確かにそういう思いでやっていらっしゃることはよくわかるんですが、経営形態は非常にやっぱり厳しいものがある、また国の財政状況も非常に厳しい、こういう状況の中で、やはり法人形態で農業経営をやりたいという方ももしかしたらこれから先出てくるかもしれない、こういう仮定の設問ではありますが、そういう場合、農業委員会に相談された場合、どういう対応をされるかということをお尋ねします。
#17
○参考人(小松忠重君) 私のところにも新規参入をしようというような、いわゆる新規就農ですね、をしようとする若い人たちが問題を出してきたことがありました。しかし、実際には成功しませんでした。もともとこれは難しいという思いを持っておったんですけれども、難しいと思うよりも、むしろ非常にちょっと疑うような側面を持っておったんですけれども、結局やっぱり農地の取得を図ろうとしてなかなかうまくいかなくて、そのほかいろいろあったんですが、これから新規参入しようとしてもなかなか成り立たない。
 今、中村さんもおっしゃったように、それは、すぐ今企業が入り込んできて、それで利潤を上げてやれるかというとそうではありませんから、すぐ私たちも大企業が農村に入ってくるということはありませんし、私たちの町にも、小さな町ですからない、恐らく耕作条件は余りよくありませんので入ってくる心配はないと思いますけれども、全国を規制する法律がそういう余地をあけると、将来非常に問題を持ってくるんじゃないか。集落との関係では、非常に企業経営と集落の関係とではやっぱりあつれきを生じることはあり得るというみんなの心配があるということは言えると思います。そんな論議は非常に広く行われています。
#18
○鶴保庸介君 かなり厳しいお答えだなというふうにも思う次第ですが。
 田代さん、先ほどちょっと席を外されておられましたので、同じような質問なんですが、耕作者主義に反するというお話をされておられたときに、それは先ほど中村参考人の方からも、いろんな立場、考え方があろうかというふうに私も思います。ただ、そういう立場に立っておられる田代参考人は、今、小松参考人にお聞きしたようなこと、やっぱり状況が厳しいからこそこういう新しい法律を出して夢を持ってやっていただこうということになってきたわけであります。
 基本的なことをお伺いします。農業経営を発展させていくために農家の方々がそれこそ農業経営を法人化していくということは、やはりある種有効な手段ではないかというふうに私は考えておりますが、この点についてお考えはいかがでしょうか。
#19
○参考人(田代洋一君) 私は舌足らずの面もあったかもわかりませんけれども、私は、農業生産のこれはどんどんできるところから、条件の合うところから導入していったらいいんじゃないか、そういうふうに思っておりますので、そのことについて懸念があるわけでは全くない。ただ、今回の制度は、いわば農業者以外のそういう人たちが入ってくることについて、株式会社の形態との関連でもっていろんな将来的な理念上の懸念があるというふうに申し上げたわけであります。
 一つだけつけ加えますと、この改正によってどんどんと農外から農業生産法人の形態を活用して入ってくるということは恐らくないと思うんですね。それは仕込んでもがっちりと制限されておりますので、歯どめがかかっておりますので、そう簡単に入れるわけでもないし、入るメリットもない。ただ、問題は、だからそういうがんじがらめに縛っているから入れないんだ、こういう口実でもってもっとこれを、もっとさらに縛りを緩めてくれという要求をしてくるのではないのかなというふうにも思いますので、やはりここが最後のぎりぎりだろうと。
 私、今回、耕作者主義に反したとも言いませんし、反していないとも申し上げていないんですけれども、踏ん張るとしたらここが最後の踏ん張りどころではないのかなということは明確にしたいというふうに念じております。
#20
○鶴保庸介君 よくわかりました。御心配の節、向きがいろいろあるんだということでしょうね。
 北参考人、今お話をお伺いしておって、小作定額金納制ですか、のお話をされたのは参考人だけだったような気がいたしますが、このことについていわゆるきっちりルールをつくっていかなきゃいかぬというお話をされておられました。
 具体的にもう少し、どんなルールをつくってといいますか、何かお考えがおありであれば、もともと厳しいものでありますから、そのルールをつくることで解決ができるものであるならばそういうこともお話を、アイデアをお伺いしておきたいな、せっかくの機会ですからお話をしていただければと思います。
#21
○参考人(北準一君) 今現在の小作料設定といいますか標準小作料の設定の根拠といいますか、それはあるわけでありまして、それはいわゆる収益性、収入、費用を引いてそれに労働費等々を含めて、それが小作料としての基本といいますか、になっている。私はここはこれでいいと思っている。
 ただ、中身に、いわゆる家族労働の評価というか位置づけ、これはこの資料によりますと、時給千円ちょっとぐらいのいわゆる家族労働費の位置づけと、ですからそういう点ではそこは農業をしていく場合の対価としてどうなのかということがあります。しかし、それはベースとしてはこういう要素でいいだろうと。
 しかし、今、金納制じゃなくて自由な形態での支払いと。ですから、行って作業をやってやったとか道具を出してやったとか、おまえのかわりにこれをしてやったとかといういろんなものが出てくる。ですから、それは求める者も、側もあると思いますけれども、しかしここが何でもありだということになった場合に、これは借りる側、貸す側、このことにいろんな混乱やら不安を残すのではないかと。
 今、実態では、府県の場合は六〇%、七〇%近くが金納制で、北海道の場合は九十数%という数字でありますけれども、そういう実態だと聞いておりますけれども、しかしここは、そのめどというか一定のルールというものはやっぱり明確にすべきだ、こういう考え方です。私は、金額ベースできちっと透明性を持った方がいいだろう、こんなように考えております。
 なお、家族労働の見積もり等については、これは私は農政上の、何といいますか、埋もれた課題だったなと、このことがやはり今、例えば生産費調査における部分でも、政策決定における労働費の扱いにしても、経営を維持継続する、あるいは農民の生活をある程度補てんする、補償する、そういう視点からはかなりかけ離れた点での扱いだったと。このことが今日、我々も皆さんも抱えている農業の大きな、何といいますか、重たい要素になってしまったな、こういう認識でおります。
#22
○鶴保庸介君 ありがとうございました。
 家族労働についてもいろいろと、労働の明確性といいますか、そういうことも考えていかなきゃいかぬなということでございます。
   〔理事金田勝年君退席、委員長着席〕
 もう時間がございませんので、最後に、一連の議論を含めて、私は私なりに思うところはあるんです。あるんですが、中村参考人、耕作者主義云々ということも議論になりました。そしてまた、これからの農業に向けてのまた展望といいますか、そういう期待を込めてこういう法改正がされておるというふうに私は理解をしておるんですけれども、議論の今までの経緯を見ておりますと、農業団体等々は農地法改正について当初反対していたところ、現在賛成の側に立っておられるというふうに聞いております。
 当初議論されておったのとどういうふうに変わってきて、またそれが賛成になってきたのかということを明らかにしながら、今までの議論をちょっと総括していただけませんでしょうか。
#23
○参考人(中村裕君) 当初反対を、顧みますとちょうど平成八年の秋ぐらいからでしょうか、そういう議論が規制緩和を通じて出てまいりまして、我々が一番心配しましたのは、いわゆる経済団体から言われていましたのは一般の株式会社についてでございまして、これはどうしてもだめだと。
 それは、先ほど田代先生からありましたように、我々は最終的にはやはり農地法の根幹、耕作者主義はこれを堅持しなきゃいかぬということを思っておりまして、それが堅持されれば、今までありました有限会社等の農業生産法人、農業生産法人はいわゆる耕作者主義に基づく法人でありますから、それに要件が合えば株式会社を排除するあれはないということでありまして、今まではそれがなかなか合わない、要件が合わないということもありました。ただし、かなりの点で懸念がされるということがありまして、それが今回は農業委員会だけでも法律で五点でチェックをするということになっております。それが確保されれば、担保されれば認めてもいいんではないかと。
 また同時に、先ほど来申しましたように、今の有限会社の農業生産法人がさらに株式会社になりたいという希望が非常に強いということで、むしろ外部よりも内部でありまして、外部からはそれほど入ってくるとは思えません。そういうことでございます。
#24
○鶴保庸介君 ありがとうございました。
#25
○小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。
 田代参考人から、今回の一部改正が非常に当局の工夫が見られるという、そんなお話がございました。私もなるほどそのとおりだなというふうに思っておりましたが、逆にもっとひどい言い方をしますと、非常に当局はコウモリ的な使い分けをしたなというふうに思っております。
 それは、先ほど来お話が出ております農地の流動化あるいは参入を求めてくる財界側に対しましては、皆さんが要求しているとおり規制を少しずつ緩めてまいりましたよ、こういう改正を行いますよという説明ができる。そして、農業に携わる方々からは、農業外参入が非常に懸念の材料であるし、あるいは株式会社化ということに対しては非常に神経質になっておられた。そこに対しては、株式会社が認められても、大体は農業の内部からだ、現在農業生産法人をやっている人たちが株式会社化するぐらいだから大きな問題はないよと、こういう二面性がうまく使い分けられてきたのではないかなというふうに思っております。
 今回の改正それ自体は、今のやりとりにも見られましたように、大きな変化をもたらすものではないというふうに私も考えますが、将来を考えたときには非常に大きな懸念が残ってしまうな、そんな率直な感想を持っております。
 そんな私の感想を持ちながら、各参考人にお伺いをしてまいりたいと思います。
 まず最初に、中村参考人にお伺いをいたしますが、今までのやりとりに重なる部分もあるかもしれません、あるいは冒頭の陳述に重なることもあるかもしれませんが、もしその場合は簡潔に御答弁をいただきたいというふうに思います。
 当初、この農地法の一部改正あるいはその意味するところに慎重な立場から、現在は賛成の立場をとっておられるというふうにお伺いをいたしました。また、先ほどの陳述の中では成立を求めてまいりたいと、こんな表現もございました。
 今回の改正に求めるものは何か、どんなメリットを享受しようと考えておられるのか、まずお伺いをしたいと思います。
#26
○参考人(中村裕君) メリットにつきましては、先ほど申し上げましたように、一つは事業要件が拡大するということであります。これまでの農業経営の一つの問題点は、単につくるだけ、そこで終結してしまうという問題がありまして、いわゆる付加価値の部分が自分は持てなかったということがあろうかと思います。
 したがって、加工なり流通の面まで農業経営として抱えていけるということで、今まで取得できなかった利益を自分のものにできるというメリットが一つ事業の拡大を含めて出てくると思いますし、それから経営となりますと、今、私のところで、先ほどちょっと申し上げましたが、日本農業法人協会がございますが、そこのメンバーでも売上高五十億程度のものがあります。従業員も百五十名、パート五十名という経営になってきますと、これは労働管理だけでも大変な仕事になりまして、まさにたたき上げの農家でありますから百五十人の人事管理をどうするか、むしろそういうところが経営として問題である。
 そういうものも含めまして、やはり経営が非常に多角化もできるし、それからそういう意味では構成員についても少し新しい血も入れなければいかぬということでありますし、彼なんかは新規就農者を何名か採りまして、その方たちが四、五年すると分社化といいますか独立していくと。ほとんど彼たちは利益を得ないままそういう後継者を地域につくっていくという仕事までしておりまして、これはやはり法人でないとできない、彼はまた、それは法人の役割だというふうにも言っております。
 したがって、今は有限会社の生産法人でありますが、できれば人の調達、人の管理含めて株式会社にしていきたいという希望を強く持っているということでありまして、当初我々反対ということでは、農業生産法人としての株式会社に反対をしているわけではありませんでして、それは耕作者主義が担保できる有限会社と同様の家族経営の延長線上にある株式会社についてはそれを排除するものではないということで、そこは変わりはないと思います。
#27
○小川勝也君 もう一問、中村参考人にお伺いをいたしますが、これは確認なんでありますけれども、先ほど田代参考人から、今回の一部改正が耕作者主義に穴があいてしまうのではないかという懸念がある、こういう説がございました。この点についてお答えをいただきたいと思います。
#28
○参考人(中村裕君) この点が今回の改正の根っこでございまして、それが担保できなければ我々は賛成するわけにはいかないということであります。
 これは理論的にも、先生おっしゃられましたけれども、農地法の三条、四、五条というのは連動しておりまして、三条が、耕作者主義が崩れた場合には転用問題、農地の確保もできなくなる、こういうことでありますし、不特定多数の人が株式会社に参入、株を持って、その方たちが結果的に農地所有ができるということであれば、それは認められない。今度はそこはできないということになっておりますから、そういう担保の上で我々としてはいいんじゃなかろうかと、こういうふうに考えておって、ここは田代先生と理論的には同じであります。
#29
○小川勝也君 続きまして、北参考人と小松参考人にお伺いをしたいと思います。
 今、中村参考人からメリットのことでお話をお伺いいたしました。例を出して、引いていただいた件に対しては、私もなるほど、そういうメリットはあるなというふうに思うわけでありますが、北参考人、小松参考人、それぞれ身近なところで今回のこのメリットを享受しそうな農業グループあるいは生産法人がどのぐらいあらわれるだろうか、そのことについてお話をお伺いしたいと思います。
#30
○参考人(北準一君) どのぐらいこのメリットを発揮するグループができるかと、私もちょっと今の段階で予測できませんが、しかし可能性は、先ほど鶴保先生ですかのお答えの中に私は可能性が薄いと言ったのは、株式での部分でという、参入というところでありましたので、法人を立ち上げて、いわゆる今の内容の中でもできる流通・販売あるいは情報、そういう部分で主に営業等々あるいは販売、あるいはその過程のノウハウ、こういうところではまだ取り入れていくことができていくんだろうと、そこは期待を持っているところであります。
 しかし、それじゃ、今現場の見通しでそれがどおんといくのかなというところは、ちょっとすっと見えないというところがありますね、今の段階で。
#31
○参考人(小松忠重君) 私の感じでは恐らくない、ないという感じがします。
 私のところの状況からいいますと、もともと今回の農地法改正というのは農地の有効利用をどうするかと。それから、全国的にも食料の自給をどう高めようかというところでいろいろ法改正、御苦労いただいていると思うんですけれども、その際に有効利用、それを支えるためには何としても担い手がないといかぬと。担い手が専業では成り立たないと。とにかく二種兼に行かぬように、一種兼で、今も田代先生が言われたように、一種兼のところで何とか、一種兼業法人というものでいこうというところのようなんですけれども、問題はやっぱりこう、どういいますかね、事業要件の拡大がされて、さあこれはどうなるかなと。私たちのところでも、私の地域ではないんですけれども、ちょっと離れたところをいろいろ見ますと、例えば通年作業をしなきゃならぬということで冬場の仕事をどう確保するかと、土建業をやると。ダンプやユンボを持って、ブルドーザーで暗渠排水や何かという、そういう土木事業をやるというようなことをやったりしてくると。あるいは機械の修理をやると。でも、修理だけではいかぬから、自動車も直したり、自動車工場ではないんですけれどもやっていくというような、ずっと広げようと思ったら何ぼでもずっと広がってくるということに大体なるだろうなと思うんですけれども、さあ私の地域でそういうものを目指しているという、そういううちはちょっと今のところ見えないですね。
#32
○小川勝也君 同じく北参考人と小松参考人に短くお答えをいただきたいわけでありますが、耕作放棄地の問題が非常に重要な問題だと思いますが、今回の農地法の一部改正が耕作放棄地の解消にどのぐらい資するとお考えになっておられるか、北参考人、小松参考人にお伺いしたいと思います。
#33
○参考人(北準一君) 先ほどちょっと申し上げたんですが、構成員の中に合理化法人があるわけでして、いわゆる農地集積というのは、何といいますか、今の農地の価格だとか農業経営での収益性ですか、こういうものが非常に大きくウエートを持つものですから、単純に言って今の経営の農業が置かれている市場あるいは経営の私が先ほど示しましたような中身の中ではこれは進まない、もう本当にストレートに現場にいて進まないんです。ここはバンザイしていますね。ですから、ここはやはり政策として合理化事業が法人にもあるいは個人の経営にもどれだけいい効果をあらわすか。簡単に言いますと、農地負担のない形で耕作の継続ができるかと。これは、基本法にも絡めてそのところがポイントだと思っています。
#34
○参考人(小松忠重君) 恐らく、法人は整備田などの耕作条件のいいところをねらってきますから、耕作条件の悪いところは結局集落が後始末をしなきゃならぬという形になる。だんだん集落の農業は疲れてくるというような方向に行かざるを得ないのじゃないかなと。だから、耕作放棄というのは圃場整備をしたような優良農地じゃなくて、むしろ耕作条件の悪いところがずっと放棄地になってきていますから、この法改正で耕作放棄地が減少するとかそういうことではないと思いますね。やっぱり隅々まで農地を活用するのは集落農業だと思っています。
#35
○小川勝也君 続きまして、田代参考人にお伺いをしたいと思います。
 私の懸念の中で、今回の生産法人がもし株式会社化した場合、あるいは生産、経営、流通、販売など、生産から販売までの間にさまざまな分野の方々が存在するかと思います。例えばの話、株式会社に流通や小売の資本が入った場合に、最初の始まりはよくても、その段階を追うごとにあるいは年数がたつごとにいわゆる資本がある人あるいは販売力のある人の発言力が強くなっていってしまうんではないかなというふうな懸念を持っております。
 その辺について御見識がございましたら、お話をお伺いしたいと思います。
#36
○参考人(田代洋一君) おっしゃられるように、出資の制限だとか議決権の制限だとか、それはそれとしてやっぱりこれで歯どめをかけていらっしゃるんだと思いますけれども、ただ、それと実態としての経済力という点では、これはどんな法律をもってしてもなかなかチェックできないところはやはり残るんだろうというふうに思っております。
#37
○小川勝也君 もう一点、田代参考人にお伺いをしたいと思います。
 すぐさま大手資本が農地に参入するということにはならないだろうというふうにお答えをいただいたわけでありますけれども、今回の改正と直接関係ありませんけれども、都市部において都市計画法と農地法の問題がございます。特に、これからもまだあろうかと思いますけれども、将来宅地化しそうな土地、市街化調整区域というんでしょうか、その部分での農地を株式会社が保有をしていって将来の利益を得ようと、こういう場合にはさまざまな作戦が練られるであろうと思うんですが、その辺の御懸念に関してはどんな感想をお持ちでしょうか。
#38
○参考人(田代洋一君) きょうは農業生産法人制度の勉強で手いっぱいだったわけでございますけれども、やはり今おっしゃられた点につきましては当然懸念がございますし、特に市街化調整区域あるいは農用地区域で塩漬けになっているこの農地を何とか開放してくれという、こういう要求は潜在的にあるんだろうと思います。
 しかし、この点につきましては、特に農振制度、それに農用地区域、さらに農地法の改正でもって農用地区域については農地の転用ができないと、こういう形でもってきちっと歯どめをかけておりますし、あと残るのは、これは地方分権ということもございますけれども、やはり国と地方自治体が一体となって農振地域、農用地区域をみだりに短期にこれを変更するというようなことがないような、そういう努力ということでこれはやっぱり守っていくしかないだろうという感じでございまして、今回の農業生産法人制度とはやはり少し切れてくるのではないかなというふうに思っています。
 ちょっと機会をいただきましたので、先ほど御質問のあった、これ皆さんのお手元に、全国農業新聞、何か会議所の宣伝のようでございますけれども、これで「消費者が法人の経営に参加」という、これは私どもの神奈川県の私の知っている人間でもございますけれども、やはりこういう形で、一般の市民、消費者あるいは生協等が今回の改正をきっかけとして耕作放棄地の、むしろやっぱり市民が一緒に耕そうじゃないか、こういうメリットもあり得るんではないのかというふうに思っております。
 これはつけ足しでございます。
#39
○小川勝也君 今回は大きな地殻変動は起きないだろうけれども、将来的に少し不安だと、こんな感じだと思いますけれども、最後に北参考人、小松参考人、それぞれにお伺いをしたいと思います。
 先ほど、やはり田代参考人の方からさまざまな形で歯どめをつくっていくためには農業委員会と農業委員会事務局、これを充実させるのが一つの手段ではないかという御意見が出ました。その御意見に対する御感想をお二人の参考人にお伺いしたいのと、そのほかに運用や歯どめという意味で御提案があればお伺いをしたいと思います。
#40
○参考人(北準一君) 歯どめ策と今私どもがとらえているのは、関与する農地法等、十分そこらが関与する。私ども現場でもやはり町の委員会が中心になってそこらの対応はやっておりますんで、やはりそこはその責任を委員会が持っていった方がいいんではないかと。
 ただ、その中でもうちょっと、町の中でも、こういう構成要素、法人の構成要素の展開の中で、もうちょっといろんな見識あるいは対応できる構成も、委員会としては、こういうものを審議していく委員会としてはあってもいいかなと、基本的にはそう思っております。
#41
○参考人(小松忠重君) 直接私の町ではそういう法人がまだありませんからどうこうということではないんですけれども、兵庫県下ではやっぱり数社あるんですね。やっぱりそこが定期報告を受けて、またいよいよ調査に入ってというようなことになると、恐らくその段階というのはもう相当、手おくれと言ったらなんですけれども、そういうふうになっている場合があるかもわからぬと思うんですけれども、私は、それはそれとして、農業委員会の機能というか事務局の権限といいますか、つまり農地主事の制度、これはきちっと生かしたいというふうに思うんです。町長が勝手に配置転換をして異動させるんじゃなくて、農業委員会の会長がだめだと、農地主事として置いておきたいということであれば置けるような、そういう権限を与えたいと思うんですけれども。
#42
○小川勝也君 とても参考になりました。ただし、将来に対する不安が払拭をされたということでは全くなくて、これからの農地法改正を審議するに当たって、その辺の将来的にどうなってしまうのかということを真剣にこの委員会で議論しなきゃいけないなというふうに痛感させられました。
 本当にありがとうございました。
#43
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。
 きょうは参考人の皆さんから貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。
 今までも、今回の法改正に関して心配な点、それからプラスの面、さまざまな御意見が出て、いろんなお話を聞かせていただきましたが、私としても、一番困ることは担い手、本当に意欲のある方は一生懸命農業を守りながら何とか続けていきたい、また環境も守っていきたい、そういうことで一生懸命取り組んでいらっしゃる。しかし、全体的に見ますとやはり担い手が不足しているというのは、これはもう現実の問題でありまして、そしてまた耕作放棄地もあるんだということで、これをどうしようかというところでやはり新たな担い手が必要だと。新たな担い手に何とか参入していただいて、その大事な農地あるいは大事な農業を守ってもらいたい。しかし、新たな者が来ることに対してはやはりいろんなさまざまな不安があるので、本当に農業を守るためになるのであればという、そういう条件がついているわけでありまして、今までもいろんな不安が出ているわけでありますけれども。
 私は、まず中村裕参考人にお伺いしたいんですが、いろんな不安の中で、どれぐらいの規模ならば、どういう農業生産法人ならば許せるということでこういうある程度条件が来たんだと思うんですが、その辺の条件を決めるためのいろんなやりとりの中でここにおさまってきたんだというその点を、御苦労も含めましてちょっとお話を聞かせていただきたいなというふうに思うんですけれども。
#44
○参考人(中村裕君) 今のお話は農業経営の大きさの問題でしょうか。
#45
○渡辺孝男君 生産法人の条件ですね、いろんな経営体の。その点です。
#46
○参考人(中村裕君) 条件につきましては、三十七年の改正のときに、いわゆる有限、合資、合名、それから農事組合法人、これが認められたわけです、生産法人として認められた。これは、いわゆる農地法で今まで出ております耕作者主義が実現できる、だから経営としても家族経営の延長線上である、それから人的な結合の会社であるということで認められてきた経過がございまして、その条件に合えば我々も生産法人としていいよという話はしてきているわけです。
 したがって、今度の株式会社の問題もそれが同じレベルに並んだということでありまして、四つの要件がございますが、それぞれの要件がその思想に合うということで我々としてはそれを認知するということでございます。
#47
○渡辺孝男君 次に、北参考人にお伺いしたいんですが、新しくそういう農業生産法人が入ってきますと、地域とうまく、地域農業を守っていくためにきちんと働いてくれるのかどうか、地域の農業と関係なしにいろんな事業を展開したり活動するんじゃないかというような不安があると思うんですが、そういう意味では、地域における協議の場といいますか、を今度新しく設けて、そこでしっかり、この地域はこういう今までの伝統文化もあるし、こういうものを重要視しているんだということを新たにそういう参入する農業生産法人の方に御理解いただくような、そういう協議の場が非常に大事になってくる。それでもって、やはり受け入れられるものといろいろ交渉しなきゃならないものというのが出てくると思うんですが、そういう地域の協議の場というものをどういう形でしていけば、地元の方にも受け入れられ、また新しく参入するそういう農業生産法人にも地域に溶け込んでやってもらえる、そういう点で何かアイデアというようなものはございますでしょうか。
#48
○参考人(北準一君) 私自身も自分で法人化あるいはそういう形態というものをちょっと念頭には置いたことはあるんですが、私の町にもいわゆる個別法人あるいは三、四個の法人、有限も実はあります。大方はいわゆる生産者でつくっている形態ですから、ここは地域と何もこだわりない、あるいはその問題は何も出ていないわけなんですが、今、これからそういう資本あるいは構成メンバーがということにした場合に、何といいますか、またそれをどうやってクリアするかという、融合していくかという知恵というものは、これは、そこの法人がやはりその地域での生産あるいは農業の形態だとか、そういうことに目を向けて理解しながら、その法人体が、少なくとも我々の法人でこの地域の農業の再生あるいは活力を開こうという意思が仲間になければ、これは疎外といいますか、何あいつやっておるんだという、結局そこにしか行かないと思うんです。
 ですから、そこで協議会だとかというものができるという一つの構想はありますけれども、やはり構成メンバーがそういう意思でやるかやらぬかというところが非常に大きい。また地域の者もそういう目で、何といいますか、展開を求めていく、こんなことも様相としてはあるんじゃないかと思っています。
 私も実際に法人というところで自分も経験しておりませんので、今の私の町では特に法人とのそんな過大な問題は出ておりません。
#49
○渡辺孝男君 農業生産法人にもいろんな分野で事業展開ができることになると、そういうことでありますけれども、もし私がそういう農業に新たに参入していってやっていく場合に、やはり今問題になったのは、利益追求だから農業を破壊してしまうようなことも起こり得るんじゃないかというような懸念もあるわけですが、私自身がもし参入するとすれば、利益を上げる部門と、逆に今度は利益の上がらない部分にも企業としては、企業といいますか、そういう生産法人としては環境保全みたいなもの、なかなか利益として上がらないものも一緒になってやっていく、そういうことでないとなかなか住民の、今まで農業に従事していた方々からは理解をされないんではないかというふうに思うわけですが。
 そういう意味で、プラス面だけ追求するのではなくて、そういう環境保全のためのいろんな事業も展開でき、あわせて、プラマイゼロとはいきませんけれども、経営が成り立てるようなものに努力するような、そういう前向きな農業生産法人というのも当然出てくるのではないかなというふうに私は思っております。
 例えば、介護事業にノウハウを持っている人がいるので、そういう人も含めて地域に貢献しましょうかと、そういう新しい意味での農村に活力をもたらす、そういう面を一面では期待しているわけです、マイナスの面だけではなくて。
 そういう意味で、今、私たちはなかなかこういうことはできないんだけれども、農業生産法人、今回の新しくなったものではこういうこともできるんではないか、こういう理想的な姿を見ればこういうこともできて農業・農村の活性化にもなるんではないか、そういうプラスの面が描かれるものというものを中村参考人の方で、今までのいろんな法人等を見ていて、こういうのは非常に理想的だなというようなものがもしございましたら教えていただければと思うんですけれども。
#50
○参考人(中村裕君) 私も余り農業生産法人そのものをつぶさに見るという機会はないんですが、先ほど申しました、うちに日本農業法人協会というのがございまして、これは名簿でございます。これだけの、千四百名おりまして、この方々がしょっちゅう、きょうも来ておりますが、有楽町の事務所に参ります。
 話を聞いておりますと、今おっしゃるように、会社形態で従業員も使ってやる、あるいはよそから人も来るということになりますと、地域とどうなじんでいくのかということが大問題だということもございまして、例えば排水溝の掃除等は社員が積極的にやるということ、あるいは常に会合を持ちながらその地域になじむ、あるいはその従業員にいわゆる体の悪い方を採用していくとか、そういうことで協力するものはしていくということもしながら地域との接点を見出していこうという法人も出てきておりますし、またそうでないと地域にはなじまないというふうにも言われております。
 それから、先ほど申し上げました非常に大きい百五十人も職員を持っておる法人も、そういういわゆる地域とのつながりについては、もう農地はほとんど借りておりますからそういうつながりは農家とはありますけれども、農家以外の方とどういうふうになじんでいくかということでは、いろんな行事だとかそういうものを通じてやっていくということで、いわゆる営利だけではない、ほかの部門も持ちながら地域との接点をつくっていくというふうなのもありますし、それから特に環境問題についての配慮とか、休耕田の景観としての保持だとか、そういうことも間接的にはやっていくというふうな話も聞いております。この新聞なんかも、多分一つはそういうこともあるんだろうと思います。都市近郊でですね、こういうこともできると。
#51
○渡辺孝男君 最近では、やはり新たに農業に従事したいという若い人方なんかもふえてきている。また、転職して途中から農業に参加したい、しかし意欲はあってもやはりなかなかノウハウがなかったり農地を持っていない。今までなれてきた会社組織みたいなところであるとなれているので、そういうのが受け入れ先としてあればやってみたいとか、そういういろんな希望もあると思うんです。なかなか新たに行く場合にはその土地の風習等もなれなくて、やっぱり耕作者主義という大事な観点があるわけですが、それになかなか一致しないような、そういう新規参入を希望される方もあると思うんですが。
 小松参考人にお伺いしたいんですけれども、そういう新たに入ってくる人たちがどういう形であれば自分の希望を受け入れて農業に従事できるか、今までの代々農家をやってきたような形で、同じようなスタイルでやれるのか、それともまた違った新しいスタイルでやった方が受け入れやすいのか、その点どうなんでしょうか。新しく参入しようとする人にとっての希望とか、働きやすい場をつくるためにはこういう新しい農業生産法人というのがあった方が選択肢が広がっていいような気もするんですが、その点いかがでしょうか。
#52
○参考人(小松忠重君) 今、中村さんがおっしゃったように、全国で多くの法人が今いろんな活動をされていますね。私たちも幾つか見ている限りでは、非常に地域にどうなじむかという努力がされている法人が多いと思っています。
 ただ、今回の法改正で、例えばこれまで大企業などのいろんな重要な部門を担当してノウハウを蓄積している人たちがいわゆる企画管理部門などに入ってくる、そのことが求められているというふうに言われていますので、それがいわゆるこの農業生産法人の中枢を握られるときには、もちろんその人の能力や資質やいろいろなものがありましょうけれども、やっぱり結局その人が非常に重要な役割を果たすことになってくると思うんです。
 今おっしゃるように、農業というのはいろんな地域の環境、水利から何から、実際には集落に溶け込まなければできない産業ですので、そういう努力はいろいろされると思いますし、そういう立場というのをしっかり踏まえて、他産業で頑張ってこられた人でも、よし、これに生きがいをかけようというときにはそうされると思うんですけれども、さあ、いわゆる企画管理部門という重要なところを他のところで経験した人たちが入ってきて、ここの法人をどうしようかというようなときには、背に腹はかえられぬという事態が起こったりするんじゃないだろうかという思いはあるんです。
 そこのところが非常に危惧されているところで、それは危惧だといえば危惧ですけれども、何か農業の場合は、これまで公害や何かいろいろ問題になっていますから、大企業が入ってきたということになると、それだけでちょっと、あっと身を構えるというような雰囲気はないわけじゃないと思いますから。
 今の農業生産法人は非常に努力されて、なじむ努力はされているということは私たちも認めます。
#53
○渡辺孝男君 今の話は、小松参考人ですけれども、新規参入するような方々で農地も何もない、だけれどもこの地域が非常に気に入って、こういう中山間地でも一生懸命やってみようかと、なかなかでも現実として自分に合ったような受け入れ先がない。ただ、そういうものを提供してもらえるような、そういう都市部の人でも来てもうまく働けるような、そういうものを提供する役割みたいなものも今後担ってもらえればなという期待もあるわけですが、そういう事例というものは小松参考人は余りないですか。
 ほかの参考人の方でそういうのがあれば、若い人方を受け入れているというような、そういう何か事例的なものがあれば教えていただきたいと思います。
#54
○参考人(中村裕君) 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、新規就農者の受け入れと同時に、いわゆるそこに就職をする、今、日本農業法人協会も就職する方の募集をやっております。これは就農相談会と言っておりますが、去年も、十一年度でも東京、大阪で四回、会社が、これは三十社ぐらいの農業生産法人が来まして就職説明会をやりましたし、ことしも一月から三月、東京、大阪、それから仙台、福岡、六政令都市でやっておりまして、約三千名ぐらいの希望者が来ておりまして、その中のかなりがやはり大卒で就農していくということです。
 これは、ずっとそこに就農するかというと、特に東京あたりで大卒の方は何年かしていわゆる分社化するということで、彼たちにとれば、非常にコストだけかけていいときに出ていってしまうということはあるんですが、何かそういうことをちょっと制度的に援助できないか、税制面とかほかの面でできないかという要望はありますが、ただ、それはやはり法人としての経営者の役割でもあるということで、そういう仲間ができるということはいいことだということで、そこは惜しまずにやっている、そういうのが一つありますし。
 それからもう一つは、こういうアグリビジネス塾というのを開いておりますが、これも毎年やっております。これは法人メンバーのうちに一年ぐらい滞在をして訓練を受けるということで、経営能力が半分、それから技術が半分ということでやっておりますが、これにも相当人数が集まってくる、こういうことでございまして、そういう意味で法人も役割は果たしているということはあると思います。
 それからもう一つは、新規就農ガイドセンターというのを私ども有楽町に設けておりますが、相談員が常時三名ぐらいおりまして、年間通して受けておりますが、かなりの人数が、十三年ぐらいたちますけれども、延べでは四万人近い相談者が来まして、そのうち就農されている方も二千名近くおります。
 ということで、そういう窓口を今農業委員会を通じまして農地の情報あるいは受け入れ情報、そういうふうなものをコンピューターでやりとりしながら紹介をしているという事業としても私どものところと、あるいは普及もやっておりますが、そういう対応もしておりまして、かなり盛況であるというふうに感じております。
#55
○渡辺孝男君 最後に一言だけ。
 田代参考人に一言。やはり農業経営も今度いろいろ勉強していかなければならない。こういう法人等が入ってきますと、またいろんな情報も入って、現地の今までの農業を営んでいる人にも新しい刺激になって勉強していって、こういうこともやれるんだなという、そういう参考にもなるんじゃないかと思うんですが、そういう期待というのはあるんじゃないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
#56
○参考人(田代洋一君) 私も、この農業生産法人という制度が例えば新規就農者の受け入れだとか、例えば最初は労働者として雇用していて、だんだん構成員メンバーにしていって将来にはやっぱり経営をしていただくだとか、そういう形での役割を果たす。
 特に、それから、例えばちょっと口、言葉はちょっとあれですけれども、精神に障害のあられるような方ですね、こういう方をこの生産法人が雇用して農作業をやってもらうことによって非常に、もう一度病院に戻る率が低くなったとか、そういう農外の雇用者を入れて活用をしていき、さらにその人にもプラスになるという、そういう面でもこの農業生産法人の持っている役割は非常にやっぱり大きいものがあると思うんです。
 特に、やはり新しい血を入れなければならないといいますか、もう自分の家の後継ぎはいない、こういう人、こういう経営が何とかその経営を継続していこうとする場合に、農業生産法人の形でもって新しい血を入れていくとか、それから、そういう労働力の面の確保でありますとかあるいは社会保障の充実でありますとか、こういう面で非常に大きなメリットがあるだろうということは私も否定するものでは全くありません。
 しかしながら、今日の問題は、そういう農業生産法人のメリットは今の形では、今の法人の形では生かせないのかという、そこがポイントだと思います。株式会社形態、形態要件もやっぱり変えていかなきゃならない、そのほかの事業要件等々の緩和もしなければなかなかだめなのかという、そこが本日のポイントだと思いますので、今御指摘のいろんな点は、例えばそういういろんな御指摘の点につきましては今の農業生産法人の形でも私は対応できるのではないのかというふうに考えています。
 特に、御指摘のこのノウハウだとかマネジメントだとか、これは確かにずっと一生農業をやってきた方よりはむしろ農外の産業で頑張ってこられた方の方がやっぱり強いという面はあろうかと思います。その辺は、これはやっぱりいろんな研修制度だとかいろんな形でもって他人の、外部の人を入れてそれでということで、やっぱり農業者みずからがそういう経営感覚を磨いていくという方向の方が正道ではないのかなと。そのためにはやっぱりいろんな機会を設けていただきたい、こういうふうに考えております。
#57
○渡辺孝男君 ありがとうございました。
#58
○大沢辰美君 日本共産党の大沢と申します。
 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 最初に、田代参考人さんにお聞きしたいと思うんですけれども、先生が理念を最初に述べられたと思います。私も賛同するものでございますけれども、その中で、耕作しない者が農地を取得してそして農地を農地として使わない、これは耕作者主義の否定になる、農地転用統制の否定に行き着くのではないかと、そういうふうに指摘されているわけですけれども、その点をもう少し詳しくお聞きしたいんですが、よろしくお願いします。
#59
○参考人(田代洋一君) 何といいますか、我々も教科書で学ぶところでありますけれども、やはり戦後の農地改革ということを考えますと、戦前、みずから額に汗を流して耕作しない人間が農地の所有をしている、農地の権利を取得していると、これが戦前の日本農業のやっぱり最大の不幸であったといいますか、害をもたらした。そのことにかんがみて、農地改革でもってそういうみずから額に汗を流して働かない人間が農地を所有し権利を取得するのはやめようじゃないか、こういう形でもって戦後の日本農業が出発したんだというふうに私は理解しております。
 今日では、単に額に汗を流して働くかどうかがポイントではなくて、やはり広く農業経営をやっていればいいんじゃないか、むしろ農地耕作者主義というより農地経営者主義というか、そこまで概念を拡張してよろしいのではないかと、あるいは、農業だけにこだわるのはちょっとその多面的機能という点から考えてまずいんじゃないか、もっとやっぱり多面的機能を発揮するためには、市民が農地を耕作するとか、こういうことがあってもよろしいんではないかと、いろんな御議論があろうかと思います。
 しかし、私は、その中核になるのは、やはりこの農業という産業を考えますと、単に頭の、頭脳の産業ではやはりないだろう、みずからが額に汗を流して大地を耕す人間が中核を占め大宗を占めるというこの形がやはり大切ではないのか、それ以外の形はいろいろ言ってみてもなかなかその判断がつきにくいのではないかというふうに思っている次第であります。
 また、先ほど申しましたように、農地をみずから耕作しない人が農地を持ってもよろしいということは、逆に言えば、やっぱり農地を別に農地として使わなくてもいいということになってきますし、農地の転用統制も外したらいいんじゃないか、こういうふうになってくる可能性があるんじゃないか。今回の法制度がそういう邪悪なことを考えてこういう制度を仕組んでいるなんということは全く思っておりませんけれども、しかし、世の中にはそういう論理を展開してくる人がやはり出てくるのではないのかと。
 また、先ほど申しましたように、これで結果的にやっぱりその株式会社形態が余り採用されないとなると、これはおまえたちが狭めているから我々が入れないんだ、もっと広げてくれと、こういうことも懸念されるので、やはり慎重であるべきではないかと、こういうことを先ほど申し上げた次第でございます。
#60
○大沢辰美君 次に、小松参考人にお尋ねいたします。
 今回の改正によって、今までも述べましたように農業生産法人の事業範囲が農業以外にも拡大されると、農業生産法人の構成員要件が緩和されるわけですから、農業生産法人の要件緩和がさらに行われると。
 衆議院の論議のときに明らかになったわけですけれども、構成員要件の緩和については、三年間安定的取引契約が明記されていればほとんどどんな企業でも歯どめはないことが明らかになっています。
 これは、私は極端に言ったら、多国籍企業も含めてあらゆる大企業の生産法人の参入を可能にすると思うんですよ。だから、農業生産法人に大手の食品流通企業だとか加工メーカーだとか本格的に参入を進めてきたとしたならば、本当に農業・農村にどのような影響があるのか。今、小松参考人の地域ではまだ入っていないわけですけれども、今後の思いですか、影響の心配などを少し述べていただきたいと思います。
#61
○参考人(小松忠重君) まだ私たちは直接経験をしている分野でないだけに、ちょっと的確な私の見解を述べると言える段階にはないと思っているんです。
 ただ、先ほどからもいろいろ言っていますように、やはり村に企業の資本が入ってきたときにどうなるか。これまでいろいろ畜産の関係、養鶏やその他でもインテグレーションやなんかいろいろありました。つぶれていった経過もありますし、いろいろあるんですけれども、実際、今度は農地のいわゆる土地利用型農業と言われている分野に企業が入ってくる。もちろんそれがいわゆる業務をずっと拡大していくと。
 一面では、いわゆる雇用の場であるとか、その他いろいろ期待もあるかもわかりませんけれども、しかし問題は、担い手を確保しようというところから出発をしたこの農地法改正だと思うんです。つまり、先ほどからもいろいろ言われているように、休耕農地の荒廃が非常に広がっている、将来の食料の自給ということを考えると何としてもこの農地を守らぬとあかん、だれが守るか、その担い手をどう探すかというところから出発している課題だと思っているんですけれども、それが、だんだんだんだんそうでない、先ほども言っていましたような、田代先生も指摘されたいわゆる第二種兼業法人といいますか、そういう方向にずっと進んでこないかと。
 農村全体が、どういうんですかね、法人によって支配、支配されるという表現は適切かどうかわかりませんが、非常にこれまでの集落と家族農業をきちっと守ってきた分野との間にあつれきが生じないかと。先ほど指摘したような、企業はやっぱり優良農地を確保するというところでいきましょうし、結局、あと残った不整形であるとかいわゆる耕作不便地が地域で守られなきゃならぬというところに大きなギャップが生まれるというような点で非常に心配をしています。
 確かに、ここで言われているようないわゆる食品加工だとかそういうメーカーがずっと入ってきたときにどうなるかということは、余りきちっと私は想像ができていないんですけれども、恐らく村の人たちは賛否がばっと分かれる問題ではないか、そんな感じがするんですけれども。
#62
○大沢辰美君 ちょっと家族経営の問題について田代参考人さんにお聞きしたいと思いますが、私は、日本農業にとって家族経営は中核として位置づけられてきたと思いますし、位置づけられるべきものだと思っております。耕作者主義は日本農業の家族経営を守る柱となってきたと思うんですね。
 新農基法は、農業経営の大規模化、法人化推進を強く押し出してまいりました。今回の法改正でも、農業経営の株式会社の農地所有を認めようとしているわけですけれども、このことは、耕作者主義、家族経営を基本としてきた農政のあり方を大きく変えてしまうものではないかと心配をしております。
 ですから、今回の法改正によって家族経営への影響をどのようにお考えでしょうか。新農基法や今回の農地法改正が、法人化、企業化促進のみ重点を置く方向についてどのようにお考えか、お尋ねします。
#63
○参考人(田代洋一君) 私も大沢先生と全く同じ考えでありまして、やはり家族経営が日本農業の大宗を占めていくべきでありましょうし、日本農業だけじゃなくて、世界の農業の恐らく大勢を現実にもやっぱり占めているというふうに思っております。
 農業生産法人制度も全体としては、私は、家族経営といいますか、農家の集合体としてのそういうやっぱり農業生産法人という、これが制度の本来の趣旨であるかと思うんです。
 今、いろいろ質疑がございましたけれども、どう多国籍企業が農業生産法人のメンバーとして入ってこようと、やはり株式の四分の一という、それから十分の一という、この歯どめはかかっているわけですね。しかしながら、問題は、多国籍企業が農業生産法人の農産物を全部買い取ってあげるよというようなことになってくると、やはり株式の数では表現できない非常に経済的な、圧倒的な力というのはやっぱり出てくるという、そういうことはむしろ懸念されてくると思うんです。
 ですから、そういう点について、やはりこういう農外の人を認めてくると、懸念は払拭し切れないところが法の枠を超えてやっぱりあり得るのではないかというふうに感じられるわけであります。
 その場合、やっぱり懸念されますのは、実態として、先ほど多国籍企業とおっしゃいましたけれども、大きな会社が支配している、あるいは加工食品メーカーが支配しているような、こういう農業生産法人が村の中に入ってくる。そうしますと、今、農水省農政が全力を挙げてやっておりますいわば認定農業者といいますか農業の担い手といいますか、こういう方々の確保すべき農地面積を蚕食していくといいますか、そういう点でも懸念される点がやっぱりあるのではないのかなというふうに思っております。
#64
○大沢辰美君 次に、農業委員会の問題についてお聞きしたいんですが、これも田代参考人にお尋ねしたいと思うんですが、農水省は、農業生産法人が要件を欠くような事態になった場合、農業委員会による是正勧告を行って、従わなければ国による農地買収措置となり得る、そして大企業による投機的土地取得や農業支配の懸念はないと言い切っております。しかし、国による買収はこれまで一回しか発動されていませんね。これらの措置が本当に歯どめになるとお考えになるのでしょうか。そして、転用規制が緩和される中で、国による農地の買収に至る前に転用が進められてしまう可能性も私はあるんじゃないか。国による買収が歯どめとして機能するのかどうか、そういう点もちょっとお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
#65
○参考人(田代洋一君) やはり、何といいますか、農業委員会によるいろんな監査をし、細かく、本当に売上額の過半を超えていないのかとか、そういうことをチェックしていく機能というのは、私、率直に申し上げまして、今のすべての農業委員会が普遍的に備えているというふうにちょっとやっぱり考えにくいということでありますので、先ほど申しましたように、もしもこういう形でやるならば、やはり農業委員会の系統としての、特に会議所だとか、中村さんのその会議所だとか、それから各都道府県の農業会議ですね、これははっきり言って職員は一、二年でかわりますけれども、中村さんなんか何十年もやっていらっしゃるということで恐らくあるでしょうし、そういうやっぱり都道府県や全国の職員の方はほとんどかわらずに一生そこでお勤めになるわけでありますから、そういうベテランの方々が直ちにいろいろな農業委員会のサポートに入れるような、こういう仕組みをつくっておかないと、これはやっぱりなかなかたえがたいのではないのかというふうに考えています。
 もう一つの、最後に国家買収ということでございますけれども、これについては私は答えるちょっと能力はございません。なかなか伝家の宝刀というのは抜くのも難しいし、抜いたら終わりというところもございますので、それはむしろ農政当局の御覚悟を確かめていただきたいというふうに思っております。
 そういう点で、何といいますか、構えは非常にきちっと伝家の宝刀まで含めてつくったかと思いますけれども、実効性という点ではやはり多々問題があるので、もしもこれをやるならば、抜本的な補強といいますか政府の助成といいますか、そのことがやっぱり必要になってくるのではないのか。なかんずく、スペシャリストの養成は非常に重要であるというふうに考えております。
#66
○大沢辰美君 農業委員会の実務に長年かかわってきました小松参考人にお聞きしたいのと、中村参考人さんにお聞きしたいと思うんですけれども、これらの適合性の確保措置を機動的に発動させるには、農業委員会が常時農業生産法人を把握しておかないといけない、要件適合性の判断を的確に行わないといけないと思うんですね。今の実態から見て、こういう担保措置が本当に一手に農業委員会にかかってくるわけですけれども、そういう実態の中で可能なのかどうか、要件の適合性確保措置が本当に実効性があると言えるのかどうかという点で、実際にかかわっている小松参考人と中村参考人にお尋ねしたいと思います。
#67
○参考人(小松忠重君) 私たちのような小さな町の農業委員会で、もしそういう法人がこういうことに直面をして、資格要件を欠くんじゃないかというような問題が起こったときという想定ですけれども、今の農業委員会の体制等で見ますと、先ほどから言っていますように、なかなか難しいというふうに言わざるを得ないと思います。
 と申しますのは、例えば、今、認定農業者なんかに対する支援などについても、なかなか、経営状況について相談を受けるというのは、本当にもうどうにもならぬというような状況になったときにとか、あるいは要件を欠くおそれのある場合、こういうんですか、おそれのある場合というのはどの段階になるかなという思いがするんです。定期的に報告があって、それを分析してということになるんでしょうけれども、恐らく法人の側からいうと、背に腹はかえられずに、いわば要件を欠くということをも承知の上でやらざるを得ないと。きつい勧告でもすると、それでお手上げになって解散でもしたらかなわぬという事態のところで調査に入ってどうしようかということになっても、今度はそこで農地は買い上げだと、こう言っても、買い上げた上で今度はその農地はどうするのかなと、だれがどう面倒を見るかというような問題なども含めて、なかなか今の農業の状況は難しいと思います。
 だから、田代先生おっしゃったように、確かに伝家の宝刀も含めてきちっと規定されているということは、法律上はそうでしょうけれども、実際にそれをそうしたからといって地域の農業が守れるか、次の担い手をしっかりと確保できるかというような確信はやっぱりないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。
#68
○参考人(中村裕君) 現状で申し上げますと、現在の農業生産法人につきましては、これは台帳を農業委員会がつくることになっておりまして、これは毎年確認をしております。その段階で一応チェックをするという仕組みにはなっておりまして、その台帳の整備はされております。これは我々も今確認をとっておりますが、台帳整備はされているということでございます。
 今回の、要件を欠くような場合をいつ見つけ、いつ農業委員会が指導するか、またその指導体制があるかという問題でございますが、確かに農業委員さんの数は今六万人ぐらいでございますね、各集落に一人というわけにはなかなかまいらないわけで、今私どもは、このことも含めまして、十二月に農業委員会にそれぞれ検討していこうというふうに、組織をどういうふうに、生産法人の問題もございますので、来年の春に向けて意見の集約、積み上げをしようということで今その案をつくっている最中でございまして、どういうふうに農業委員会が対応できるのかということ。
 これは、これだけじゃございません、地域の農地の活用の仕方、担い手のあり方を含めて農業委員会がどういうふうに関与できるか、あるいは数の少ない農業委員の中で、例えば協力員的なものを置いて、生産法人についても常に見ることができるという体制を整えていきたいというふうに考えて、その今制度についてみずからも検討をしようということになっております。
 それから、先ほどの、農地を途中で、今度は勧告して、要件を欠きそうな場合、農業委員会がいろんな条件をつけられることになっておりますが、特に我々もなかなか国家買収という最終的手段は非常に難しいということもあろうかと思いますので、そこまで行く前に農業委員会がしかるべき担い手にその農地をあっせんするということを入れてくれということで、これは法律上それを入れていただいているはずでありまして、そこに行く前に認定農家なり地域の農業者にその農地が渡るような手段をとっていただいておると、法的に、そういうことをやっていただいておるということでありますので、その辺は体制を整えながら、投機的な土地取得はもちろんこれはできないわけでありますけれども、そうならないように、また国家買収に至る前にしかるべき農業者に渡るようなことを農業委員会は担当してまいりたいというふうに思っておりますし、そういうふうにお願いをして、そういう制度を仕組んでいただいております。
#69
○大沢辰美君 終わります。
#70
○谷本巍君 社会民主党の谷本であります。
 初めに中村参考人にお伺いいたします。
 農業生産法人制度の見直しに伴う懸念払拭のための措置だけを見ただけでも、農地の権利取得段階、農業生産法人の活動段階、要件を欠いた場合のあっせん事業等々、大変な業務量になると思われます。スタートした当初はまだそうふえることはなかろうと思いますが、やがてふえていく可能性が私はかなり強いと見ます。果たして、現在の農業委員会を見て、そういう業務がうまくこなせるのかどうなのか、ここのところは疑問なしといたしません。
 今回の法改正に伴い、農業委員会の機能の強化、それから系統組織の今後のあり方についてどうお考えになっておるか、また、そのために行政への注文等がございましたら御意見を承りたいのです。
#71
○参考人(中村裕君) 先生おっしゃるとおり、このことを担保に、我々も耕作者主義が家族経営の延長線上として、またその耕作者主義が守られているということで株式会社化することについて了としているわけでありますが、いずれにしましても、これのチェックが確実にできなければこれはだめなわけでありまして、そういう意味で私どもの今農業委員会がそれに対応できるかどうかということだと思いますが、現在のところはそれほど多い、一町村に一つとか二つとかというような数ではまだございません。したがって、町村で果たして幾つ生産法人ができるかという問題もあります。それほど、面積から見ましても、一町村に十とか二十とかというものはできないんじゃなかろうか。少なくとも一つか二つか、大きい町になりますとわかりませんが、今でも五千程度でございますから、一つか二つであって、そこに目が届かないというような、乱立をするという状況にはならないというふうに考えておりますが、いずれにしましても、我々は今、先ほど申し上げましたけれども、新しい基本法の中で、この基本計画の中では、農業委員会は優良農地の確保と、それから農地利用、それから担い手の確保と育成、これをやるんだということを言われております。
   〔委員長退席、理事金田勝年君着席〕
 したがって、四百七十万ヘクタールを四百九十万ヘクタールに使う、一〇五%、これもどうするかという役割がありますし、それから担い手も法人も含めてどうするかということで、この担い手の問題につきましては既にやっておりますが、もう一つのこれは法人でありますが、特定農業法人、これは集落農場であります。これを担い手のない地域で一農業委員会一つずつつくろうではないかということで今進めております。
 それと、今回のこういう問題もございますので、今先生の御指摘のような、どういうふうにみずからもしなきゃいかぬかということを考えておりまして、まず内部で何ができるかということについて、十二月の中旬には全農業委員会におろして意見の集約をしたい。
 それに基づきまして、さらにまた政策的要求をするものが出てくればそれはしなければいけないというふうに思っておりますし、それから、先ほど来出ておりますように、農業委員会段階だけでは対応できない問題も出てくるんだと思います。したがって、これも既に農業会議所の中では数カ月前から事務的検討に入っておりますけれども、いわゆる経営の指導のあり方、これは法人も含めて、それからチェック機能も含めて何ができるのかということ。
 これは、一市町村になかなか一人置くというのは難しい問題であります。いろんな経験者をお願いするということはできると思いますが、これを農業会議段階でどうできるのかということについてノウハウの開発を今急いでおりまして、これもできるだけ来年の五月ぐらいまでには方向を定めて実行できるような段階に持っていきたいということでございまして、今鋭意検討中ということでございます。
#72
○谷本巍君 耕作者主義が守れるか守れないか、農業委員会次第とも見ることができるのでありますから、そこのところはしっかりとお願いをしておきます。
 続きまして、小松参考人に伺いたいと存じます。
 農地利用がうまくいくか、いかないかの基本というのは、一つは農地行政というのがありますけれども、やはりより基本的には地域農業のあり方がどうなのか。つまり、相互扶助的農村社会の協同、協力の関係が農地利用にうまく生かすことができるかどうか、ここのところが私は重要だろうと思います。
 そういう意味では、非常に大ざっぱな申し上げ方ですけれども、複合的なところは割とうまい。ところが、単作、専作化して競争が地域で、農家間の競争が激しくなっているところは非常にぎくしゃくした関係が出てくるというような状況を間々見受けることができます。そんな状況の中で、これから先の地域農業づくり、私はやはり集落営農システム、これが基本だろうと思うのでありますが、その辺のところについて御所見がございましたらお聞かせいただきたいことが一つ。
 それからもう一つは、新しい法律では、地域協議会、株式会社も何も入れてつくることにしておりますが、それの運営問題について御意見がございましたらお聞かせいただきたいのです。
#73
○参考人(小松忠重君) 集落にはいろいろ事情がありますから、大きい集落、小さい集落もありますし、人口、農家の構成上の問題もありますから、どういうやり方をとるかという点ではいろんな模索がされていると思うんです。
 私たちのところでも、実際、先ほど申しましたように、いわゆる利用権設定によって担い手の後継者を持っている農家に渡しているという場合もありますし、ところがその場合でも、いろんな事故があった場合に村じゅうがてんやわんやしなきゃならぬという事態が起こる。あるいは、集落営農という形で集落がまとまってやるということでやって成功しているところもあるんですけれども、しかし同時に、その場合にいろいろ問題になってきますのは、税金であるとかいろんな問題のところまで発展しているところもありますし、まだそこまで行かない場合もあるんですが、いずれにしても、今の農産物の価格は非常に不安定だというような問題、米価もどんどん下がってきている。一方で、輸入もずっとふえてくるようなそういう状況のもとで、村でどうして農地を守るかという意識以外には、ここで何か農業所得を増大させてという点ではなかなかやっぱりリーダーの問題やなんか、いろいろ問題があるんです。
 私のところでは、そういう視点では、みんながとにかく自分の農地は自分で守ろうという、その点で、しかも兼業農家も含めて、もうとにかく作業班をこしらえてというのが大体成り立っている。
   〔理事金田勝年君退席、委員長着席〕
しかもその場合に、農地を持っている農家から作業料金をいただいて運営しようかという以外には、そこでとれた産物を出荷して、あるいは加工してというようなところまでなかなか行かぬと思いますし、またそういうところまで行っても非常に経営そのものが不安定だということもあって、集落農業というのはそれぞれのところでどういうふうに組み立てるかというのは、相当の能力とそういう取り組みなしにはいかないと思っているんですが、少なくとも今の農業情勢、どうやってもこれはなかなか頭が痛い、もうどないもならぬなという思いが非常に強いですね。
#74
○谷本巍君 次に、北参考人にお伺いいたします。
 農地法の一部を改正する法律案の参考人関係資料、この中に出ておりますが、小作料ガイドラインの問題、これは先ほどあなたのお話の中にも出てまいりました。
 価格が上がっていく時期にはこれは賃借人にとっては何ということはないんですけれども、現在のように価格の低落期の状況になってきますと、これは小作料の高低というのは経営に非常に響いてまいります。
 例えば米価でいいますと、一〇%価格が落ちたという場合、所得率五〇%にしますというと、所得は二〇%の下落ということになるからであります。小作料が払えるか払えないかという状況になりますね、米価でいえば一〇%下がっただけで。
 そういう状況の中で、北さんの言うガイドラインとはどんなものを想定してのことなのか。時間もありません、済みません、簡潔に教えていただきたい。
#75
○参考人(北準一君) 今の経営の収支で小作料が先ほどのルールにあるような形で支払いできるかというと、私はもう不可能だと思っております。
 そこで、しかしこれから法人なり個人が、離農者、あるいはもうおれはつくれぬという人はたくさん出るわけですから、それをどのように吸収していくかというところで、この小作料というものの今後のあり方が非常に農地制度あるいは流動の中で大きな問題だととらえております。
 ただ、私どもがこういうガイドラインといいますか、金納制じゃなくていろんな手法で小作料を納めてもいいですよという、ここは非常に不明確といいますか、現場でもいろんな強弱あるいはいろんな弱さ強さの中で、ここが少し乱れるというか、いいかげんなことになっちゃうんじゃないかと、ここを指摘しているのでありまして、こういう手法でというところはこの中には持ち合わせていません。しかし、耕作者がやはり経営者として成り立つような、貸し手もこれあるわけですから、ここもきちっとやっぱり認めたあり方というものはぜひ必要だという考え方です。
 今の状況では、貸す側もどうもならない。あるいは委員会でも、私の町でも二万円、一万六千円、一万円と定めておりますけれども、大半が二万円です。だけれども、これを借りて払うという経営者はめったにいないというか、もう嫌々払っている状況です。仕方ない、つくってやらなきゃならぬ、委員会に頼まれてつくってと。ですから、もうこれは経営は成り立たないということです。
 しかし、これは大きな問題だと。私も頭の痛い問題です、現場にいて。
 以上です。
#76
○谷本巍君 そうすると、北さんが言われているガイドラインというのは、例えば価格なり所得なり、その変動率に合わせてひとつ小作料も考えていくようにしようと、こういうようなことでしょうか。
#77
○参考人(北準一君) もちろん、何といいますか経営、耕作していくという前提がやっぱり最優先されなければならぬという私は考え方を持っております。ですから、そこの収益性の中、それは個人のところではなくてやはりその地域、あるいは北海道でいえば北海道、あるいは空知でいえば空知地域、そういうやっぱり尺度が要るんだろうと思っておりますけれども。
 以上です。
#78
○谷本巍君 田代参考人にお伺いいたします。
 先ほど来、田代先生からもお話がありましたが、農業内部からの株式会社というのはよろしいと。これは今度の改正法の特徴であります。農業内部からの株式会社化はいいんだということは、長持ちするかどうかということを先生は先ほどおっしゃっておりました。とうとうたる規制緩和のあらしの中で、これはもたせるのは容易なことじゃないというぐあいに私も思います。
 それと同時に、先生、農業生産の形態というのがかなり今激変期に来ている。価格はどんどん低落していくという状況の中で、農家間の競争がまたしのぎを削らされるような状況になってきた。つまり、地域社会で農地をどう守っていくかという体制が崩れつつあるという状況が一つあると思うんです。
 さらにもう一つは、そういう状況の中で、地域によりますけれども、既に外部からの農業参入が始まっていますね。土建屋さんですよ。あっちの農地を買い、こっちの水田を買い、そして一定量に達するというと交換分合をやっていく。そして、かなりコストの安い米をつくるというようなことをやっている例も今ふえ始めてきております。
 現行法の中でそういう状況でありますから、今度の法律改正でその種の動きというのがどうもぐっとふえてきやしないかという不安感を私は感じております。そういう点等々を含めて先生の御見解を伺いたいのです。
#79
○参考人(田代洋一君) なかなか厳しい現実の御指摘でございまして、まず、農業内部からの株式会社化は結構という言い方を農業内部からしますと、では何で農業外部から入ってはいけないのという論理は必ず出てくるかと思いますので、やはりその辺に対する警戒心が農政としても必要じゃないかと思っております。
 それで、またちょっと委員の御質問から外れますけれども、先ほどずっとこの議論を伺っていると、我々もちょっと農業委員会が弱体じゃないかとか、こういう言い方をしますと、次に出てくるのは、ではその弱体な農業委員会をもうちょっと広域合併したらどうなのという、こういう議論も出てくるというか、ああ言えばこう言うという、こういう議論も次から次へと出てきますので、やはり非常にすべての点での警戒が重要であって、我々としても理論武装も重要じゃないかというふうに考えております。
 また、先ほど御指摘のような、既に農業外部からの参入が始まっているとか、今の制度を利用した形で。これは、やっぱり個々の農家であればこういうことも全く排除されるわけじゃないということになってくると思いますけれども、であればこそ農業委員会の方でもって、今農地の取得ということでもこれは第二種兼業農家等々がやってもいいということじゃないと思いますので、やはりその辺は厳しくチェックをしていくということがますます農業委員会の力にかかってくるだろう。そういう点では、広域合併などをするともうそういう力はなかなかできなくなってくる。今、農協が広域合併して地域から離れちゃうということがありますので、農業委員会まで離れたら、もう日本農業はほぼ終わりだということかと思います。
 それと、御指摘の北海道等々で非常に競争が激化しているという、こういう側面はあるかと思いますけれども、同時に北さんなんか、あるいはほかの組織も伺っておりますと、やっぱり農民の間、農家の方々の団結もまた非常に強まっているんではないのか。ただ、いろんな要求の違いがありまして、例えば償還金の免除といいますか償還金の延長のみに要求を絞る方と、米価の下落に対して歯どめをかけろという要求をされる方と、いろいろと北海道の中でも農民の団体自体が分かれておりますので、その辺、やっぱり大同団結をしてやっていくということも必要でしょうし、また、ここまで来ますともう集落が、今回のセンサスでも四%ぐらい減っているという中で、なかなか集落営農といってもバラ色ではないと思いますけれども、やはり集落で守っていこうよという力も非常に強まっておりますので、ゆめゆめ、外部から異分子が入ってくるということではなくて、やはり村のそういう共同体としての力を何とか保っていって、仲よくというのは変なあれですけれども、やはり競争と同時に共存共生を図るということは追求していただきたいというふうに私は思っております。
#80
○谷本巍君 終わります。
#81
○石井一二君 石井一二でございます。
 ちょっとこちらへ出かけよりましたら、よんどころない陳情客が参りまして、テレビで四方の御陳述を聞いておりました。特に、兵庫県から来られた小松さんのお話を聞いておりまして、谷農林水産大臣の地元から来たと言われて、私は大沢さんの名前が出るかなと思って耳を澄ませていたんですが出ませんで、これはひょっとしたら何でも農林水産省のことは是とする偏った参考人かなと、そう思いながら聞いておったわけであります。
 さて、非常に重要な法案を我々は審議しておるわけでございますが、小松さん、あなたの御意見は、今後農業の発展のために主張をされておるのか、農地所有者の既得権益を保護するという観点からの御主張をされておるのか、どちらが大事だと思っておられますか。
#82
○参考人(小松忠重君) 私は、農業、いわゆる農地を守って食料生産をどう続けられるかというところで集落が一生懸命になって頑張っているのを支えていかぬとあかんという立場で物を言っているつもりなんですけれども。
#83
○石井一二君 きょうの日経新聞を見ておりますと、「農産物の緊急輸入制限 発動視野に調整開始 農水省」とありますが、要するに、九州地区を中心として野菜の値段が非常に安くなったと。このために報復措置を覚悟の上で何とかせなきゃならぬのかというようなことにみこしが上がりかかったわけですが、中国という国は二十一世紀においてはあの人口と巨大な国土をもってして日本を食料属国としようというような考えを持っております。
 そういう観点で、あなたのビジョンは、農地を守るという一つの村的な感覚から見て、こういう世界的な潮流に対してどのようなビジョンをお持ちなんですか。
#84
○参考人(小松忠重君) 食料はもともと国内でしっかり自給ができるような体制をとるというのが一番大事なところだと思うんです。今、言われる食料属国ですか、そういうのが当たっているのかどうか私はよく知りませんけれども、少なくともやっぱり日本の国民の食料はできるだけ日本のいわゆる大地でといいますか、土地でつくっていくようにせぬとあかん、そのために自給力をどう高めるかということだろうと思うんです。
 だから、その点で、農地の利用も含めて私たちは何とか、村の農業が守れなくなったらこれは大変なことになるという、先生の指摘は、おまえはヨシの髄から天井を見ておるというふうに思われているのかもわかりませんけれども、そういう側面はないわけではないと思います。非常に視野は狭いかもわかりませんけれども、しかし私たちは少なくとも村の農地、町の農地は村で守らぬとあかん、ここのところがやっぱり農業の出発点ではないか、そのことによって日本の食料を何とか確保したい、こういうのが私たちの思いです。
#85
○石井一二君 あなたのおっしゃることはまさに正しいんです。我々も同じ考えなんですが、悲しいかな、WTOとかいろんな世界的な国際会議があってそれが必ずしも許されないところに、今ミニマムアクセスみたいなもので余分な米を輸入したり、苦渋の選択を強いられるわけでありまして、おっしゃることは正しいけれども、だがしかし世界に目を向けて考えなきゃならないというところが一つポイントであると思います。
 そこでお聞きしますが、四人の方一つずつですが、現在の小作料を高いと思っておられますか、今のままでちょうどだと思っておられますか。先ほど北さんは地域による尺度でも違うように言われましたけれども、全体的に見て小作料についての御所見があれば一人ずつ御披瀝願いたいと思います。
#86
○参考人(中村裕君) 私どもは今、農業委員会で標準小作料を決めておりまして、これはその地域の農業委員会が生産費を含めて決めることになっておりますので、リーズナブルなのかなというふうに考えております。
#87
○参考人(北準一君) 農業をやっている立場としては、耕作をしていく立場としては、やっぱり今の小作料、私の町では先ほど申し上げた中身ですけれども、それは支払っていくのは大変だと。経営に圧迫といいますか、自分の生活を、身を削っていくという状況ですよね。
 実際からいうと、今二万ぐらいの小作料は経営上支払い不可能と、私は経営しながらそう思っています。高過ぎるといいますか、それが相場として、何といいますか、農業の経営の今収支がこんな悪化ですから、だから小作料自体は二万が云々というその部分と、経営の中から払われないという部分ですから、経営的に言えばそれは高いということですよ。
#88
○参考人(小松忠重君) 私たちも、いわゆる土地残余方式と言われる方式に基づいていろいろ数字をはじいて、結論的には私たちの町では一万二千円、一万円、八千円という水準です。
 石井先生も御存じのように、県北の豊岡やあちらのところでは大体二万円前後という標準小作料の水準のようですけれども、私のところでは一万円でもなかなかつくり手がないという状況にあります。ですから、恐らく、一万円の小作料を払ってそれでしますが、そこから何らかの形でまた戻されているような状況が実際にはあるというところじゃないでしょうか。
#89
○参考人(田代洋一君) 研究者としてはなかなか難しい御質問でございまして、やはり階層によって地代負担力が違ってきますので一概に高い安いということは言えないということと、やはり地域によって非常に違いますし、それから標準小作料と実勢小作料とがまた違っているという点もあろうかと思います。
 そういうことはいろいろあれです、もう時間がありませんので、一つは、標準小作料が下がっていくにつれてやはり全体の実勢地代も下がっていっておりますので、先ほどガイドラインというお話がありましたけれども、標準小作料制度をなお一層現実に即して活用していくということが一つ重要だと思います。
 今日の問題は、はっきり申しまして、米価の下がる速度よりもむしろ標準小作料の改定の三年に一度という、これはやっぱりおくれぎみであって、ですから、今回改正でもって物納も結構という形態、定額金納制の廃止ということはむしろ農家は喜ぶというか、米価は下がっていますので、むしろ米何俵でやっておいた方が米価の下がるのにつれて実態としての小作料も下がるという、こういうところに来ているんですね。
 したがいまして、標準小作料、ところによっては、農業委員会で一応金額は決めてあるけれども標準小作料を改定したら地代の契約も変えましょうよということをやっているわけです。これは私は非常にいい制度だというふうに思っています。
 それから、先ほど谷本委員の御指摘のあった北海道等々を考えてみますと、やっぱり借りている方ももうこれ以上下げたら貸し主がかわいそうだなと。なぜならば、土地改良の償還金の支払いがあっていて、これはやっぱり二万円を払うためには二万円以下には下げられないという、こういう事情がありますので、こちらの方の手当て、償還金についての一定の手当てをしながら、小作料はしかるべき標準小作料で下げていくという、こういう手当てが必要じゃないかなというふうに思っております。
#90
○石井一二君 どうも説明が長くなりますと、私たちの脳みそがついていかないのでちょっとわからない面もありましたが、大体わかりました。
 ところが、悲しいかな、国際的な観点で、特に食料自給率を上げようと思うと、穀物の値段がどうだというようなことになってまいりますと小作料は下げなきゃならない宿命があるように、私は方向としてはあるんじゃないかと思います、できるかできないかというのはまた論ずるとして。
 そこで、先ほど小松参考人が、自分は議員とそれから農業委員と両方やっておるとたしかおっしゃったと思いますが、農業委員の報酬について今高過ぎると思っておられますか、どうですか。これから機能がだんだん大事になりますから、四名の方、一言ずつおっしゃってください。
#91
○参考人(小松忠重君) 私の感じでは少ないと思っています。
#92
○参考人(中村裕君) この点は我々もいつも、組織問題でございまして、仕事の割にはその報酬が少ないのではないかということを直接現場で言われます。
 ただ、なかなか、これは予算の問題がございまして、六万人ほどの委員さんがおられますが、何とか少しでも引き上げようと考えてはおるんですけれども現実はそぐわないということで、先ほどおっしゃられましたが、大体各地そのような水準でございまして、大変我々もボランティアで気の毒だなと思っておりますが、こういう今度の問題もございますのでいろいろ手だてはとっていきたいと思っておりますが、非常に難しい問題でございます。
#93
○参考人(北準一君) 私は農業委員をしておりませんけれども、農業委員さんの農地にかかわる、あるいはこれから集落だとか、まだまだ今まで以上の、何といいますか、視線で物を見ていく。だから、私どもの地域の農業委員さんも常にそういう視点で物を見ていますよね。ですから、そういう点で、今私らのところで恐らく四十万程度だと思うんですが、これは低いと、単純に低いと思っています。
#94
○参考人(田代洋一君) これについては中立といいますか、なかなか、たくさんもらえば世の評判が高まるというわけでもなくて、やはり私は、農業委員会のスローガンは貧しく清く美しく、これがやっぱり世の中から信頼を受ける全体の奉仕者としての役割かというふうに思っております。
#95
○石井一二君 農業委員の機能がだんだん重要になってまいりますと、私は、もう少し高くして本当にいい人にやってもらいたいと思うんですが。
 これは小松さんにおしかりを受けるかもわかりませんが、先ほど町の人事にも口を出すんだと言われましたけれども、町長に対して文句を言うんだとあなたは言ったでしょう、農業委員等の……
#96
○参考人(小松忠重君) 人事。
#97
○石井一二君 ええ。
 それで、私は、農業委員というのにだれがなっておるんだというようなことを聞いてみますと、一生懸命働いている専業農家は案外なっていない、兼業農家で半分ポケットに手を入れておってもいいような方がなっていて、やや、小作料を上げろ上げろと、そういう方は小作料を払って自分で必ずしもやっていないという傾向があるんじゃないか。それと、地域から嫌々割り当てで出てきたような状態になると、一握りのボスがすべて支配して、むしろ農業委員会が機能が強くなればなるほど存在が非常に国際的な、長期的な観点から見てマイナス的な要素を占めるんじゃないかと思うんですね。
 そういう面で、例えば年齢制限をするとか多選禁止をするとか、どんどん回転率をよくすべきじゃないかと思うんですが、特にこれは小松さん、あなたはどんなお考えですか。
#98
○参考人(小松忠重君) いや、一概にはそういうふうには思っていません。
#99
○石井一二君 今のお答えは、人によると、私は公明正大に天下国家のためにやるという決意を込めてのお答えであろうと思いますので、一応それを受けておきたいと思います。
 その次に、これは現実的な事実ですから、公には否定されると思いますが、外国人労働者がかなり園芸なんかで入っておりますが、将来的に見て、株式会社化との関連で将来的な傾向としてはどんどんふえてくると思うんですが、このことについて四人のお方のお考えをちょっと聞いておきたいと思います。
 どうですか、中村さんから。
#100
○参考人(中村裕君) おっしゃるように、今、農業の部面もかなり外国人労働者が入ってきております。時々不法就労みたいな新聞記事等がございます。我々はそういうことがないように、特に法人経営でありますので、今、実習の制度を設けまして資格認定をいたしております。それによってちゃんと研修して帰っていただくということで、そういう受け入れ体制をうちで今、農業会議所として体制を整えてそのことをやっておりますし、今後も多分ふえてくるだろうというふうに考えます。
#101
○参考人(北準一君) 私の身近なところでなかなかそういう外国人労働者との接触、あるいは法人がそういうものを受け入れてと、余り身近にないわけですね。道内、それはそれぞれそういう取り組みをしているところはありますけれども、余り体感的にないというものです。
 そういうことが将来的にできれば、できればといいますか、チャンスがあればそういう世界的な交流だとかそういうものも含めて考える部分ではないかな、こんなように思っていますが。
#102
○参考人(小松忠重君) 私の地域も余りないんですけれども、やはり研修、交流はあり得ることだと思っているんですけれども。
#103
○参考人(田代洋一君) 私は、研修制度等々で外国人の方が来られて、いろいろと勉強して、帰ってやっぱり日本の技術を伝えていただくというのは非常によろしいことではないかというふうに思っております。
#104
○石井一二君 研修、実習というのは美辞麗句で、それが口実で、だんだんその方々が主流になって耕作をするという時代が私は来るんじゃないかと思うんです。少子社会で、どんどん株式化して大規模化してきた中で、だから、臭い物にふたするより研修、実習だからええんだと言っている間はいいですけれども、北海道ではそういうのは余りないと言われましたけれども、僕は時代の趨勢としてはそういう時代が来るような気がしてならないんですね。
 だから、それに対しては法律の整備とかいろんな違う観点から論議をする必要があると思いますけれども、特に、先ほど来小松参考人に申しましたが、農地の所有者の権益を守るためじゃなしに、日本の農業全体を考えた場合、外圧的にどうしても起こってくることは起こってきますから、そういう中で我々は先手先手といろいろなことを考えていかなきゃならない、その中の一つが今回の農地法の一部改正案であると考えております。そういう面で、いろいろ御苦労も多いかと思いますが、第一線で御奮闘いただいて、二十一世紀には日本の食料率も上がって我々が食料の心配をせぬで済むようにひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 最後に、まだ若干時間がありますので、系統農協と言うと失礼ですが、まあまあ一応それに一番近い中村さんにお伺いいたしますけれども、北朝鮮へ今度米を五十万トン出すということがございますね。
 それで、一応、系統農協は、減反とか何かにやや抵抗しつつ、余り生産調整にはできたら協力したくないという姿勢で、米が余っちゃったと。今度は、決議しているでしょう、全農で。五十万トンを出せ、百万トンを出せという決議をした。僕はややこれは国賊的な発想だと思うんですね。しかも、一千二百億円というのは大きな金ですよ。
 それと、日本の政府は、これをWFPで換算するとたった百七十五億円にしかならないんですよ、世界の穀物市場で換算すると。しかも、それだけのものを送っておきながら、国連で計算すると、ODAには日本のカウントはゼロなんですね。そうすると、何のために一生懸命つくってきたかということにもなりかねません。だから、農政全体が狂っている一面があるんです、こういうことについて。
 だから、系統農協としても、今後いろいろな面で御反省もいただかなきゃならないし、長いビジョンに立ってまたいろいろ頑張っていただかなきゃいけませんが、こういったことに対して御意見があれば承りたいと思います、関連事項として。
#105
○委員長(太田豊秋君) ちょっと速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#106
○委員長(太田豊秋君) 速記を起こしてください。
#107
○参考人(中村裕君) 突然の御質問でちょっと戸惑っておりますが、私は個人的には、やはり食糧事情が悪いと聞いておりますので、援助することについてはやはり我が国の責任でもあろうかというふうに考えております。
#108
○石井一二君 今から五年ほど前の文芸春秋ですが、そこに金容淳という対日外交責任者が、日本が米をやると言うけれども、謝罪の意味で出すと言うからもらってやっているんだということを言っている記事もあるんですよね。だから、僕は、必ずしも食糧危機という実態が正しくないように思っておりますが、これについてはまた別の機会に論議いたしますので。
 いろいろありがとうございました。以上で終わります。
#109
○委員長(太田豊秋君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして一言御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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