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2000/11/28 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 文教・科学委員会 第6号
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2000/11/28 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 文教・科学委員会 第6号

#1
第150回国会 文教・科学委員会 第6号
平成十二年十一月二十八日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任
     阿南 一成君     吉川 芳男君
     小宮山洋子君     本岡 昭次君
     益田 洋介君     福本 潤一君
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     井上 吉夫君     仲道 俊哉君
     吉川 芳男君     阿南 一成君
     小林  元君     小宮山洋子君
     林  紀子君     橋本  敦君
 十一月二十八日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     林  紀子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         市川 一朗君
    理 事
                岩瀬 良三君
                亀井 郁夫君
                佐藤 泰介君
                松 あきら君
               日下部禧代子君
    委 員
                阿南 一成君
                有馬 朗人君
                佐藤 泰三君
                中曽根弘文君
                仲道 俊哉君
                松村 龍二君
                水島  裕君
                小宮山洋子君
                佐藤 雄平君
                本岡 昭次君
                福本 潤一君
                畑野 君枝君
                林  紀子君
                田名部匡省君
   国務大臣
       国務大臣
       (科学技術庁長
       官)       大島 理森君
   政務次官
       科学技術政務次
       官        渡海紀三朗君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       科学技術庁研究
       開発局長     結城 章夫君
       文部省初等中等
       教育局長     御手洗 康君
       文部省学術国際
       局長       遠藤 昭雄君
       厚生大臣官房審
       議官       堺  宣道君
       農林水産技術会
       議事務局長    小林 新一君
       通商産業省基礎
       産業局長     岡本  巖君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(市川一朗君) ただいまから文教・科学委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十四日、益田洋介君及び小宮山洋子君が委員を辞任され、その補欠として福本潤一君及び本岡昭次君が選任されました。
 また、昨日、林紀子君、井上吉夫君及び小林元君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君、仲道俊哉君及び小宮山洋子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(市川一朗君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案の審査のため、本日の委員会に科学技術庁研究開発局長結城章夫君、文部省初等中等教育局長御手洗康君、文部省学術国際局長遠藤昭雄君、厚生大臣官房審議官堺宣道君、農林水産技術会議事務局長小林新一君及び通商産業省基礎産業局長岡本巖君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(市川一朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(市川一朗君) ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○水島裕君 自民党の水島裕でございます。
 私が議員になりましてから、科学技術あるいは先端医学と倫理が絡んだ法案が三つございまして、最初は脳死移植、それから感染症予防法、そして今回のクローンでございます。大変いずれも高度の医学、科学技術と倫理が絡んで大変な法案だと思いましたけれども、私は国会は十分責務を果たしてきたと思っておりますし、今回のクローン法案でも、この間の参議院の本会議の質疑を聞いておりまして、民主党の質問、それに対する大臣のお答えを聞いていまして、本当に科学技術、医学の面からも立派だと思いましたし、また倫理も十分入っていて、ああいう質疑が行われ、また議事録が残るということ、私は本当に国会として責務を果たしているのではないかと思います。
 時間も多少ございますので、この機会に少し先端医学、医療、それから科学技術、倫理が絡んだことについて少し私の意見を申し上げたいと思います。
 日本は、御存じのように、終戦後まれに見る復興をなし遂げたわけでありますけれども、それは主として私は科学技術によるところが大きかったと思います。
 一方、先端医療の方はどうかと申しますと、ちょっとこれはお粗末なところがございまして、三十年以上前になりますけれども、どう考えても倫理面で問題があった和田さんの行った脳死心臓移植、脳死移植のおかげでその後の臓器移植が一つも進まなくて、少なくとも十年から二十年は日本は外国におくれてしまって日本の国民に非常に損害を与えたということでございますので、私はやはりこういうことをやっていく上に倫理というのが非常に大切であるということを医学者、科学者はよい勉強をしたと思っております。
 しかし、ある人が何か問題を起こしてそれで全体の国民が被害を受けるというのは、これはやはりおかしいわけでございまして、それで今度の脳死移植法案というのが議員立法でできたというのは、これは大変私は国会としてはよかったことではないかと。そういう問題はあったけれども、そういうことをクリアしてやはり日本でもちゃんと臓器移植が受けられるようにと。もちろん意見が違う方もいらっしゃらないわけではないですけれども、そういうことは非常に結構な話ではなかったかと思っております。
 それから、第二番目の感染症予防法、これは今、日本にもないような恐ろしい感染症、これは新感染症と言いますけれども、それが日本に入ってきたときにどうするかということで、対策が一つもとられていなかったのを、これは政府提案でございますけれども出てまいりまして、私そのときはたまたま野党の筆頭理事をさせていただいておりまして、そのときも責任を感じまして随分修正もさせていただいたし、それから附帯決議もつけさせていただきました。
 と申しますのは、もちろん専門家の委員会でよく検討なさって出てきた案ではございますけれども、意外とそういう方々は自分の殻に閉じこもって、全体から見るとか国民の立場からという点が、たまたまでしょうけれども欠けているところもございましたので、そのときは新感染症の定義とか分類というところまで私どもの案を示して、結局専門家の方々もその方が正しいだろうということで、国会でそういうところから直していただいたということもございますので、今回のクローン法案もぜひ参議院でも正しい形でこれを審議して、私はこれは一刻も早く成立させた方がよいと思いますので、御協力いただければという立場でございます。
 新感染症のときの反省点といたしましては、法律はよかったんですけれども、その法律のときに、例えばちょっと難しいですけれども、ラッサ熱とかエボラ出血熱とか、そういう非常に恐ろしいものが入ってきたときに、日本で検査も研究もできるようにP4施設というのをきちっとつくるようにということだったんですけれども、もうそれから二年近くたつのにまだ日本では、施設はあるんですけれどもいろんな条件で稼働していない。時々私も委員会でいろいろ申し上げますけれども、それが一つ。
 それから、依然として日本ではそういう病気、感染症予防法のときに一番大切だったのは、新型感染症をちゃんと診断できるかどうかと。ところが、そういうことを診断できる医者は今でも日本にほとんどいない。数年前、ラッサ熱がたしか一人入ってきたときにもうみんなてんてこ舞いして、これは本当にそうかというので、最終的に診断はついたわけですけれども、そういうものもきちっと勉強するということだったんですけれども、それが十分できていないということでございますので、一つぜひ政府の方に申し上げたいのは、法律ができたらそのフォローアップをきちっとやっていただくということをこの感染症予防法では学んでいただきたいと思います。
 それでは、今度のクローン法案ですけれども、衆議院の方の附帯決議あるいは修正というのは私もこれでよろしく、むしろこの法律がこれで充実したと思っておりますけれども、せんだっての参考人の意見を入れた委員会の結論はもう一つかな、まだ理解が十分できていないのかなという印象を受けました。
 例えば、ある参考人が、この法律ですとヒト胚を売り買いしてもいいんじゃないかとか、それから外国にこんな何でもできそうな法律はないじゃないかというようなことが出てきまして、何かそれに対する反論も説明もないまま委員会が終わってしまったわけで、後でその辺は申し上げますけれども、やはり国会では、これは幾ら難しい法律案でも皆さんがよく理解していただいて、合っていることは合っている、おかしいことはおかしいというふうに判断なさって法律ができるなり、またはできないなり、そういうふうにならなくちゃいけないんじゃないかなという印象を受けました。
 それで、いよいよ問題のクローン法案に入りますけれども、やはり誤解があったり理解が十分わからなかったりということもあるかと思いますので、すごく簡単に申し上げますと、クローンというのは、同じ性質、同じ遺伝子を持ったものがたくさんできるというのが大体一般的にクローンと言うんですけれども、ここで言うクローン技術というのは、人の体細胞、体の細胞、皮膚とかそういう細胞を人間の卵の中に入れてそれを子宮に入れてふやすと。
 ところが、普通の皮膚の細胞というものは皮膚にしかならないはずなのが、つまり皮膚になる遺伝子はあるんだけれども、ほかの遺伝子は全部眠っていてそういう遺伝子は一切絶対に目を覚まさないというのが科学の常識だったわけですけれども、それが何とちょっとおまじないを、詳しいことは抜きにしまして、おまじないをかけましたら眠っている遺伝子まで全部生き返ったと。
 ですから、遺伝子まで生き返ったからそれを生殖、胎児に育つ卵細胞の核、もともとその核は別なものですけれども、その核とその目を覚ました遺伝子を入れかえちゃいますと、例えば私のクローンの遺伝子をそこに入れると私と全く同じ遺伝子の性質を持った子供が生まれてしまうというのがクローン技術であります。
 この法案を、まずこの法律の題が「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」ということになっております。今のクローン技術というのが、今の技術ですけれども、ここに「等」というのがついている。「等」というのは何だというふうに皆さんがこの法案を見ますと、法案の一番最初に「クローン技術ほか一定の技術(以下「クローン技術等」という。)」と、つまり一定の技術を含めたものをクローン技術等と。
 その一定の技術が何かというのはこの法律を読む限りは余りはっきりしてこないんですけれども、これは法律の性質上ある程度しようがないんですけれども、やはり私は誤解を防ぐ意味で、これから出される指針とか、あるいは私は感染症予防法のときもお願いしてつくっていただいたんですけれども、わかりやすい解説書とか、そういうものをつくってそういうものをはっきりしていただくといいんですけれども、第一問としましては、今の「一定の技術」というのは、この法律で言う禁止あるいは指針に従えという第三条、第四条に出てくるいろいろの胚のことを指しているということでまず間違いないわけですね。それをまず結城局長にお尋ねいたします。
#7
○政府参考人(結城章夫君) この法案の第一条の目的規定の中に「クローン技術ほか一定の技術」という表現がございます。ここで指しております技術というのは三つございまして、一つは特定の人と同一の遺伝子構造を有する人、今、先生おっしゃいましたまさに体細胞クローンでございますが、人クローン個体というものをつくり出す技術、あるいは人と動物のいずれであるか明らかでない個体、これは交雑個体と言っておりますが、こういうものをつくり出す技術、それから三番目に、これらに類する個体の人為による作成をもたらすおそれがある技術という、この三種類の技術を「クローン技術ほか一定の技術」と言っておりまして、この法律では規制の対象としておるわけでございます。
 具体的には、先生おっしゃいましたとおり、第四条に掲げてございます九種類の特定胚を作成する技術を指しておるわけでございまして、その九種類の特定胚については、第二条におきまして具体的、詳細な定義がなされております。確かにわかりづらいところがございますので、これから第四条に基づいて指針をつくっていくわけでございますが、その際には、不明確な部分が生じないように十分配慮して指針に書き込んでいきたいというふうに思っております。
#8
○水島裕君 ぜひそのようにしていただきたいと思います。
 それからもう一つ、解説書をつくられるんですと、このクローン法案のすぐ周辺に何があるかといいますと、一つが生殖医療があるわけでございますね。それからもう一つは、ES細胞その他を使いました再生医学あるいは細胞治療というものもございますので、それがどういう関係になっているかと一目見ればわかるようにしていただいて、つまり、特にこの間、民主党の非常に立派な案をつくられたのを見ましてもヒト胚を重視せよということでございますので、私ももうそれは当然だと思いますけれども、そういうものを中心に置いた全体の枠のうちどの部分がこの法案で、どの部分が生殖医療に属していて、どの部分が再生医療に属していて、そういうことをはっきりして、ここは法律で禁止、ここはもう既にガイドラインがあるとか、そういうふうにしていただかないとこの法律が生きてこないということをまず申し上げたいと思います。
 それから次に、この間の参考人の意見の中でも三年半、正式にはあれが二月でしたから三年九カ月たっているわけでございますけれども、ドリーができてから三年半ぐらいたっているんで随分遅いじゃないかと。だから、どうせならあと一年ぐらいよく検討してという意見が出ましたけれども、私はもうそうではなくて、今が本当にちょうどいいタイミングだと思います。
 というのは、非常にオリジナリティーのある研究というのはいろんな医学雑誌とか科学技術の雑誌に出るんですけれども、そういうのはしばしば間違っているんですね。例えば、生化学で一番権威のあるJBCという雑誌がありますけれども、それをある人が本当に追試して本当かどうか調べたら、ある報告によると五〇%ぐらい追試できない、おかしいんじゃないかと。ドリーが出てきてもほかの人がやったらできないということがありましたので、ある画期的な発表があるとそれを本当かどうか調べたり、周りはどうか、じゃ後ろはどうかと、そういうのにどうしても一年ぐらいはかかる、一年以上はかかるわけでございまして、ちょうどこの検討を始めたのが、そういうものがどうも確からしいということがわかって科学技術会議で検討を始められたというので、またしかも国会にも、前の通常国会の後半でしたけれども出てきて、今回これを上げようというのは非常にタイミングとしてはタイムリーではなかったかと思います。
 それでは、なぜ急がなくちゃいけないかということで二つ質問させていただきますけれども、私も今もある大学の割合と大きな研究所の顧問所長みたいなのをやっておりまして、実際に実験も研究もいろいろ計画を立ててやっております。そこはこのライフサイエンスができるところでございますので、産婦人科の人を一人ぐらい巻き込めば、もう来年早々にでもクローン人間をつくろうと思えば、つくりませんけれども、つくろうと思えばできると思っているんですけれども、科技庁の認識も同じようでございましょうか。
#9
○政府参考人(結城章夫君) 科学技術会議の生命倫理委員会の報告によりますと、人クローン個体の産生には、高度な施設設備や巨額な資金は必要でなくて、一定水準以上の技術を持つ医師や研究者であれば比較的容易に実施し得るというふうにされております。
 また、この分野の関連の研究者によりますと、顕微鏡や培養器などの器具は大体二千万円程度で必要なものがそろうということとか、技術的には約半年間の訓練で条件さえ整えば比較的容易にクローン胚を作成できるといった見解を示しているというふうに聞いております。
 一番困難なのは、クローン胚等が移植される母胎を提供する代理母の確保であると考えられますけれども、それが何らかの手段で確保される場合には、技術的には先ほどのようなことでございますので、人クローン個体などが産生されることも不可能ではない状況となるというふうに考えております。
 したがいまして、一刻も早くこの法案を成立いただき、人クローン個体などの産生を厳罰をもって禁止していくことが重要であるというふうに考えております。
#10
○水島裕君 先ほどから申しているように、国会は私は着々と責務を果たしていると思っておりますので、仮にこれ法案が通らなくて来年早々でもどこかで、すぐ生まれるというわけじゃないですから、生まれるのは大分先になりますけれども、そういうことができたらやはり国会としても十分責務を果たさなかったことになると思いますので、その点でひとつ急がなければならないと。
 それからもう一つは、これは余り科技庁の方も最初は積極的じゃなかったんですけれども、申しおくれましたけれども、私、自民党の中でクローン小委員会の委員長をさせていただいておりまして、いろんな例について中身を、結構自民党の中でもいろいろなことを言う人がいて、それに全部説明したりいろいろなことをするので随分時間がかかって、もっと本当は法律の細かいところまでよく見なければいけなかったかなとも多少は思っておりますけれども、そこでも余りお役所の方はアピールしなかったんです。
 私は特に日本では臓器移植なんかがうまく進まない。臓器の一つ手前が組織、その一つ手前が細胞でありまして、それの移植によってどれだけの人が助かるかというのは本当に大きなことでございます。ところが、今はみんな人の臓器、人の細胞、人の組織を移植して使っている。
 ところが、この法案で一応届け出の対象になっていると思いますけれども、ES細胞、クローンのES細胞を使ってもいいし、それから普通のES細胞、このES細胞というのがまたちょっとわかりにくいんですけれども、これは受精胚をちょっと育てますとある細胞ができる、その細胞は幾らでもその細胞のまま同じ性質を持ったまま無限に増殖できる、ふやせる。だから何人分でもつくれる。
 しかも、その細胞は、それからまた後でおまじないをうまくしますと神経にもなるし、心臓にもなるし、筋肉にもなるし、そういうのをES細胞、新聞では万能細胞といいますけれども、そのES細胞が非常に今の細胞治療、臓器移植などに役に立つ。
 ところが、そのES細胞も人のですから、今例えば私のクローンをそのES細胞の中に入れると、そのES細胞は全く私の細胞になるわけですので、それを細胞のまま治療しても組織として治療しても全く問題ないということでございますので、これはやはり倫理的にも恐らく問題あるという方は百人に一人ぐらいじゃないかなと思いますけれども、そういう研究はやはり早く進めないと、これがすべて外国でやられちゃいますと、こういうのは特許とかそういうのもありますので、これから日本で非常に進むべき、全体をもし仮に再生医療というふうに言わせていただきますと、再生医療をやるときに全部アメリカに特許料を払わなくちゃいけないということになりますので、こういう研究はなるべく早くやらなくちゃいけない。
 それには、やっちゃいけないことを決めなくちゃいけないということで、それが第二の急ぐ理由じゃないかと思いますけれども、政府の方の御意見をお伺いいたします。
#11
○政務次官(渡海紀三朗君) 先生は専門家でございますのでよく御存じでいらっしゃいます。党内の委員長もやっていただいたわけでありますけれども、今回この法案を急ぐ理由というのは、一つはやはりそこにあるというふうに我々も考えておるところでございます。再生医療とか細胞治療とか、こういったオーダーメード医療の分野でかなり有効な方法として科学的知見がなされているところでございます。
 ただし、これを進めるに当たってはやはりそれなりの一定のルールというものをしっかりとつくってやっていかなければいけないだろう、そのルールのまず入り口が今回の法案であろうと。要は、絶対やってはいけないことというのをしっかり決めて、そしてやれること、やれないことというものをきっちりと交通整理をして、現在モラトリアムがかかっておりますこのライフサイエンスのある分野、この胚の分野についてのさまざまな道筋をしっかりと示していくということが大事であろうと。
 科学技術会議生命倫理委員会の報告書の中でも、先生よく御存じですので細かくは申し上げませんが、一定の方向性、特に卵を取り扱う場合の問題等々については既に考え方が示されておるわけでありますし、そういったことを前提としてしっかりとした指針をつくった上で研究開発を進める環境をつくっていくのが政府としての仕事であろうというふうに思っておるところでございます。
#12
○水島裕君 渡海政務次官はとてもおわかりで、私と全く同じ意見で、この間の事件に関しては私もいろいろ意見はございますけれども、渡海政務次官が辞表を撤回されたということは科学技術庁にとっては、そのことだけをとればよかったと思っております、ということがわかりました。
 それで、ちょっとこれはしつこいようですけれども、結城局長にもう一つお尋ねして、やや専門的なことなんですけれども、今のような研究を進めていく上でES細胞というのは大変大切なんですけれども、クローン胚からES細胞をとる場合は今度の法律、指針の中に入って、それから受精胚からES細胞をとってそれにいろいろ操作するのは、今度はES細胞、別なガイドラインで決めるというふうに伺っていますけれども、それでよろしゅうございますか。ですから、なおさらその辺をよく解説したわかりやすいものをつくっていただかないと、科学者はわからなくなってしまうということでございます。
#13
○政府参考人(結城章夫君) はい、そのとおりでございまして、クローン胚は特定胚ということでこの法律の規制対象になっております。したがって、クローン胚をつくってそこからES細胞をつくる場合はこの法律の規制を受けますが、通常の受精卵からES細胞をつくる場合は、これは特定胚に当たりませんのでこの法律の対象外ということになりますけれども、ES細胞を使った研究は、受精卵を材料にすると、ES細胞を取り出す結果、受精卵をつぶしてしまうということでございますので、倫理上の問題がございます。したがって、それにつきましては、この法律とは別に、法律に基づかない行政上のガイドラインをつくって行政指導をしていこうという考え方になっております。
#14
○水島裕君 それでは次に、こういうことを申し上げてこの法律が通るのにマイナスにならないかという懸念を持つ方もいらっしゃるかもしれませんけれども、クローン人間というともう何か極悪人のように皆さんが言うんですけれども、私はそうじゃないと思っているのであります。
 これは、私なら私個人の遺伝子を子孫に伝えられる一つの技術でございます。仮に私のことを言えば、本当はそうじゃないんですけれども、私が仮に無精子症だとしたら、もう私の遺伝子を子孫に伝える道筋は全くないわけでございます。もちろんそういうのは結婚したときは大体わからないわけでございまして、今でも十組に一組は不妊症になってしまう。通常はぜひ子供が欲しいという夫婦はたくさんいるんですね。生殖医療の進歩のおかげでその半分ぐらいは何とかなるというふうに聞いておりますけれども、それでもまだ少なくとも百万人のオーダーの人がぜひ自分の遺伝子を持った子供が欲しいと。特に自分と妻、夫と妻の遺伝子の両方を持った子供が欲しいという人がいるわけであります。
 今はまだ技術が開発されておりませんし、余りみんな言っておりませんけれども、夫からとったクローンと妻からとったクローン、これをうまくまたおまじないを、まだ今できていませんけれども、そういうふうにしますと、それが減数分裂、つまり生殖細胞と同じようになって、それを合体すれば両者の遺伝子を持ったクローン人間ができる可能性は十分にあるわけです。
 ですから、今の社会的通念、それから今の技術、今の私が一番懸念しているのは、科学者でございますから安全性でありまして、クローン動物が果たして、あるいはクローン人間が果たしてほかの人と同じように安全に生きられるかどうかというのはこれから動物で十分研究して、あるいは猿ぐらいで十分研究しなくちゃいけないんですけれども、それが本当に安全であって長生きもきちっとするということがわかって、しかも自分の遺伝子、夫の遺伝子と妻の遺伝子の両方を持ったクローン人間、これは単に通常の受精をしていないということだけで、あとは全部普通の子供と同じになるわけでございますから、そういうクローン人間が将来できたときに、わけのわからない人の精子とか卵子をもらった子供を産むよりかはよほどいいという時代にならないとも限らないわけでございますので、クローン人間は極悪人みたいに余り言わない方が私はいいんじゃないかと思います。
 お答えはちょっと難しいかとも思いますけれども、これはどなたにお聞きすることになっていましたか、あるいはむしろ政務次官ぐらいの方が。
#15
○政府参考人(結城章夫君) 現在の不妊治療の方向というのはいかに通常の生殖を補助するかという問題になっておりまして、現段階で体細胞クローン技術を使って不妊治療をするという方向には向いていないというふうに認識しております。
 ただ、今、先生おっしゃいましたように、技術的には、夫婦のいずれか一方あるいは両方からの体細胞を使って減数分裂を起こしてつくられた生殖細胞類似の細胞をつくるということや、夫婦おのおのの体細胞核を移植した人クローン胚からそれを分化させまして生殖細胞をつくるというふうなことで、有性生殖と同様に両親の遺伝情報を受け継ぐ子供をつくることは、これは将来的には技術的には可能になるんじゃないかという専門家の御意見もございます。
 ただ、仮に将来的にそういった技術が可能になったといたしましても、こういった技術を不妊治療に利用するか否かは、そのときの社会状況、それから安全性といった技術的状況、国民の意識などを勘案してその時点で判断されていくべき問題だと考えております。
#16
○政務次官(渡海紀三朗君) 御指名がございましたので。
 最後の部分が答えになろうかと思います。今回の法律も、やはり現在の国民的なコンセンサスというものがどこにあるかということを一つの基準にしております。また、反社会性ということを非常に大きな基準にしておるわけでございまして、例えば法規制におきましても、長いこと話をするのは恐縮でございますけれども、各国によって成り立ちが違うんですね。
 そういうところで、ここまでは今合意がとれるというところをベースにつくられたものでありますから、そのときの社会状況とかそのときの国民の意識とか、そういったものが技術の進歩とともに最終的にどういうふうに判断されるかということが非常に大きな要件になってくるんであろうというふうに考えておりまして、現時点でどうのこうのということはちょっと申し上げにくい御質問だなというふうに考えております。
#17
○水島裕君 もちろん、現時点は絶対禁止ということで法律をつくっているわけでございますから。また、大臣も何か御意見がございましたら、後で一緒にお話をお聞きしたいと思います。
 こういうことを申し上げようと思っていたり、よそでも言ったりしておりましたら、本当にちょっと前の日経の夕刊に、米国政府の倫理委員会で「クローン人間 将来解禁に含み」なんという記事も出ていたので、私は、この参議院の文教・科学委員会の方が先だったら日本の国会の方が先見の明があったなんというふうに、将来、十年ぐらいたってから言われたんじゃないかと思って少し残念に思っております。
 それから、次は、直ちにクローン技術が関係するというわけではありませんけれども、ライフサイエンス、バイオの今後の福祉、産業への活用ということについて科技庁と厚生省両方にお尋ねいたしたいんですけれども、今、日本もミレニアムプロジェクトで予算をつけたり、それから科学技術のレベルも高いということで、もちろん非常に独創的なものに欠けるという欠点はございますけれども、基礎研究はかなりいいところまで行っている。
 ところが、これがどういうわけだか日本では一つも医療、つまり福祉、それから産業に結びついてこない。このままにほっておいたら、私は先ほど申しましたように、政府は二〇一〇年で二十五兆ライフサイエンスの産業を上げようということも言っておりますし、二十一世紀はライフサイエンスの時代と言っておりますが、このままでは相当惨めな結果になってしまって、先ほど申しましたように、特許も外国に払わなくちゃいけない。
 今、遺伝子が非常に中心でございますけれども、遺伝子の研究をやるときには必ず遺伝子を増幅する遺伝子増幅器というのを使うわけですね。PCRと言っていますけれども、それを必ず使うんですけれども、それを何と、ちょっと前までの知識でございますけれども、全体の試薬の費用の五〇%ぐらいを特許料としてアメリカにみんな払っている。ですから、科技庁で幾らお金、研究費をつけても、極端に言うと、ある部分はその五〇%ぐらいはアメリカに払っている研究費を一生懸命つけていらっしゃる。それでも研究ができるからいいんですけれども。
 これからの再生医学、こういうところでもってやはり同じようなことになってしまいますと、日本の産業が伸びないどころか、いろいろ医療費とか何かまでも高くなって、それもしかも外国に払うということになってまいりますので何とかしなくちゃいけないというので、どこが一番日本でぐあいが悪いかと申しますと、ちょっとした発明、発見、非常に大きな発明、発見かもしれませんけれども、それを企業につけるところ、アメリカでいえば大体ベンチャーがやるようなところ、そこが非常にうまくいっていないのが一つ。それからもう一つは、ほぼ基礎実験が終わってこれを臨床に使う、つまり人で本当に効くかどうかという臨床試験、特にその初期段階がうまくいっていない。
 私が最近調査いたしましたら、日本の大手製薬会社が今結構有望な薬、バイオも含めて薬を五つとか十ぐらい持っているんですね。調べたら、それのすべてを全部外国に、今その臨床試験のちょっと前後から全部外国に頼んでいる。日本でやったのでは時間もかかるしお金もかかるし、余りいい成績、いい成績というか信頼を置ける成績が出ないので外国には認めてもらえない。お金は日本と同じかちょっと余計かかるかもしれないけれども、外国できちっとお金を渡すと一定の期間で臨床試験もできている。アメリカでやればその臨床試験がヨーロッパも日本も活用できるということで、期間も含めて経済的にいっても大体今、日本はみんなそういうふうにやっている。
 大きな会社はお金があるからそれでいいんですけれども、我々大学人とか多少ベンチャーをやっている人はなかなか外国に頼むほどのお金はない。せめて日本で人に効果がありそうかどうかと、そこまではそんなにお金がかかるものじゃないんです。
 そういうことがあるので、やろうとするとなかなかお金がないし、また厚生省も、そこへ堺審議官が来ていらっしゃいますけれども、厚生省もいつも主として待ちの姿勢。このごろようやく少しよくなって相談には乗ってくれるということで皆行って相談には乗っているんだけれども、でも頼むと大体三カ月ぐらい先で、それで行くと、おうおうと言って、次またあれしていらっしゃいと。いらっしゃいと言ったら、またずっとあとはただもう威張って、威張っているかどうか知りませんけれども、威張って待っている。
 アメリカはどうかと申しますと、アメリカはFDAが厚生省と同じようなことをやっていますけれども、非常にいいものができると、まずこれはいいという指定もするわけですね。なおかつ、担当官がついて、この担当官がこれこれこうやった方がいいんじゃないかと。それで会社がもたもたしていると、あれ、こう言っているのはどうなったというようなことでそっちからも連絡はして、何しろアメリカ人のために、アメリカ人の健康にいい薬はもう何とかして早く許可して患者さんに届けようという姿勢なものですから、こんなに違ってしまうわけです。
 ですから、質問は、実務的なことは厚生省の審議官で、大臣にも後でちょっと御印象をお伺いしたいんですけれども、ひとつ大したお金じゃない。私も招かれてこんなことを言っちゃ大変失礼ですけれども、この間、海上自衛隊の観艦式を議員の間でしかああいうのはなかなか見られないと思いまして行ってきましたら、森首相もちょっと私にまた失言をしておりましたけれども、別に大した失言じゃありませんけれども、そうすると、四十隻か六十隻、ずっと護衛艦が通っていくんですね。あれ一隻幾らだと聞いたら千五百億ぐらいかかる。どう見てもあの四十か六十のうち一隻ぐらいなくても、今のアジア情勢では日本は別に一隻なくてもどうってことないなと。
 ところが、その一隻を仮に、一年分一隻の予算の必要はもうないんです。大体あれ三分の一隻で一年間その予算をとっていただいて先ほどのような研究に出したら、私は日本の生命科学、ライフサイエンスの未来は物すごく明るくなる、適切なところに配ればですよ。配れば明るくなるというので、ぜひライフサイエンス議連でそういうことを今度ディスカッションする予定なんですけれども、あれは議長が加藤紘一さんなものでちょっと今困っているところなんで、でも多分、この間の小委員会も出てこられたから、この間のはこの間で別にきちっとやってくださると思いますし、お願いに行こうかとも思っておりますけれども、そういうふうにお金を適切にほんのわずかつけると。
 お金をつけても、今までは臨床研究、会社がもうかるような薬の研究、バイオの研究には政府はお金は出しません。オーファンドラッグというもう本当にわずかしか患者がいないときは別ですけれども、とにかく会社がもうかるような仕事にはお金は出しませんというのが一つ決まっているので、それもぜひやめてもらいたい。
 それからもう一つが、今度は人間。何もFDA以上ぐらいに私は厚生省、厚生省もだんだん優秀な審議官が出てきました、あそこに座っている人なんかはいい方。いい方でと言うと、ということは悪い人も余り能力のない人も結構たくさんいるんですけれども。そういう人もふえてきましたので、そういう人をひとつこの開発をやっている一員のつもりぐらいで、それはなっちゃうわけにはいかないかもしれませんが、そのぐらいの気持ちでもって、マンパワーも政府の人が応援する、いいものに限ってですね。
 その二つをやってくれれば日本のライフサイエンスは本当にうまくいくし、逆にそういうことをしないと落ちぶれていって、下手すると日本はアメリカの医療植民地みたいになってしまうという可能性も大いにあるので、ぜひそれは具体的なことと精神的なこととで御答弁をいただきたいと思います。
#18
○政府参考人(堺宣道君) ライフサイエンス分野の研究成果を医薬品、医療機器ともに実用化するということについては、まずその基礎研究から実用化の研究に橋渡しするということと、それの成果の治験のお話と、それからもう一つは審査のお話と、その三つあったかと思います。それぞれについて……
#19
○水島裕君 みんなうまくいっていない。
#20
○政府参考人(堺宣道君) 今の状況を御説明申し上げます。
 まず、実用化する研究につきましては、医薬品機構の開発研究融資制度、あるいは希少疾病用の医薬品等に対するオーファンドラッグの開発振興制度を設けております。
 また、画期的な医薬品の開発に結びつく基礎研究の成果のうち、基礎的過ぎるためにこのままでは企業に承継しにくいものに対しましては、その研究開発を促進するための事業、これを平成十三年度の予算の概算要求で新たに要求させていただいているところでございます。
 また、治験につきましては、今までいろいろ御指導もいただいておりますが、これで十分か十分じゃないかというのは別といたしまして、十三年度予算におきまして、治験推進助成事業といたしまして治験推進ネットワークモデル事業と、それからもう一つは、治験コーディネーターが少ないということでその養成事業というものを要求させていただいているところでございます。
 また、医薬品の開発あるいは早期の実用化に資するように、承認審査の点でございますが、医薬品の迅速な承認審査のために、医薬品機構におきまして企業からの治験相談というものを推進するということと、それから医薬品機構から提供を受けた相談内容を積極的に活用することによって新医薬品の承認申請の質の向上を促し、また医薬品機構が事前相談した、指導した内容で承認審査過程で矛盾なく維持されることを確保するように努めているところでございます。
 今後とも、すぐれた医薬品が開発されて早期に実用化されるよう、研究助成の段階あるいは治験の段階、それから医薬品機構の治験相談から審査センターの承認審査に至るまで、一貫した対応がなされるように努力していくつもりでございます。
 以上でございます。
#21
○国務大臣(大島理森君) 水島先生の御質問をずっと伺いまして、まず一つ大変参考になりましたし、改めてライフサイエンスの将来、これからどういう知見が生まれ、それが人類にとってどのようにプラスになるのかという、わからない、しかし可能性はたくさんある、そういう世界だよということをこの委員会を通じて国民の皆さんに今御説明していただいたような気がします。
 総論的なことで恐縮でございますが、明治以来の法律の中で法律要綱で絵をかいたというのは初めてでございます。これは法制局とも相当議論させました。つまり、わかってもらう、理解してもらうということがどんなに大事かということを改めて痛感した法律であるということを私自身も感じておりますし、多分今後、科学技術政策というものが二十一世紀、知の創造の競争の時代に各国がなった場合には、国会においてはこういう法律がたくさん出てくるのではないか、こう思います。
 ライフサイエンスの福祉、産業へ活用するための実用化、あるいはまたそこの橋渡し政策というものが日本は足りないよというお話でございました。これはライフサイエンスだけではなくて、日本の研究政策の中で一番おくれておった、アメリカと比べて一番ここがおくれておったところに今日のいろいろな問題が私は起こっていると思います。
 官邸でも経済再生会議等々をやりますと、大学改革の問題、研究のあり方等々いろいろ御議論いただきますが、一言で私が感じているのは、このインキュベーターの人材とそういう目きき、あるいは判断する組織も人材も残念ながら手薄であるということ、そしてそういう反省からさまざまな法律をつくってまいりました、先生御承知のように。
 そういう中に私は、一層そういうふうなことを、つまり民間と国研も含めて、大学も含めてもっともっと融合していくという施策が必要であろう。さらに、私どもも評価をし、判断し、競争的資金の導入というものにもっともっと積極的に重点を置いていかなければならないという基本論は私どもに課せられている、このように思っております。
 したがって、既に今やっていることはもう申し上げませんが、来年度、五省庁で約二千八百九十億ぐらいライフサイエンスにかけたいと思っておりますし、プラス六百億そこに加えて、ITもそうでございますが、ライフサイエンスというのは二十一世紀前半の国運にかかわる大きな研究政策分野、科学技術政策分野であるという認識をして、今、先生から御指摘いただいた基本も踏まえながら、もう一度申し上げますと、研究者、研究施設と民との融合政策、競争的資金の導入その他、私どもは今の具体的な御指摘を踏まえてさらに努力していかなければならぬなと、このように思っているところでございます。
#22
○水島裕君 ありがとうございました。
 最初の厚生省のお答えは本当に少しずつ進歩で、私も重い荷物で坂を一生懸命上っていてそろそろくたびれてきておりますので、ぜひもうちょっとずつ少し前に進む、少しずつは進んでいることはよく認めますけれども、よろしくお願いいたします。
 それで、今も大臣にこんなことをお伺いしたのは、あるいは文教・科学委員会でこういうことを申し上げたのはなぜかと申しますと、今までは研究は文教・科学委員会、文部省、科技庁、それから実用化の方は厚生省あるいは製薬会社、こちらは大学ということですけれども、どうも今の流れをずっと見ていますと、本当に人で、あるいは機械の場合は実用的に本当に有用かどうかというところぐらいまでを研究と思ってやらないと、研究のところでこれはよさそうなものですといって終わりますと、もう今のままでは製薬会社とか厚生省とかそういうところに任せておいても一つも進まない。一つもというのはちょっと大げさですけれども、そういうことがございますので、ぜひこれからはこの文教・科学委員会でもそういうところまで考えていろいろ案をつくっていただければと思います。
 少し延びて、同僚の方の時間を少し短くさせていただくことを了承していただいておりますのでもうちょっと続けさせていただきます。
 次は、やはり倫理ということが大切でありまして、このごろ、ある程度以上の学者はもう自分たちは倫理を十分考えてこういうことをやっている、ただそれをきちっと知らせる場がないと。むしろ自分たちはこういう研究をやっているんだからというのでどこかにそれをちゃんと報告して、それをディスクローズして、国民のだれでも、あるいは国会の方でも官僚の方でも見られるようにしておいて、そういうチェックする委員会なんかをつくっていただいてチェックすればいい。
 私は、やはりこれは国会が、国会も信用ないところございますけれども、官僚も国民からもっと信用がないような気もいたしますので、私は、国会図書館でもどこかそういう国会のところに、これはほとんど費用はかからないと思いますので、倫理に絡む研究をやった人、それから非常に多額の国の税金を使って研究をやる人はその要旨を、こういうことをこうこうこうやったという要旨を国会に、例えば国会情報センターとかというのをどこかにつくって、インターネットでもいいですからそこに届けて、とにかくだれでも見られるようにオープンにしておく。
 これは特許の秘密性とはほとんど抵触することはないので、特許というのはやり方のところを工夫するということで、どういう材料を使った、どういうことを使ったということはもう特許でないしょにする必要はほとんどないわけでございますのでそこは両立すると思いますので、ぜひ国会あたりでそういう情報センターをつくってやはり国会で責任を持つ。
 私は、どうもこれまでお役所にいろいろなことを責任を持たせ過ぎて、情報はお役所の中だけで持っているままと。そういう場合に何か問題が起きれば、これはお役所が責められるのは当たり前でございますけれども、やはりきちっと研究者が自分たちはこういうことをやっているんだというふうにオープンにしてやっていくというのが、研究者の自覚をこれから植えつける上でも大変大切だと思いますので、そういう考えを持っているわけでございますけれども、大臣、いかがでございましょうか。
#23
○国務大臣(大島理森君) ちょっと先ほどの答弁で私、来年の要求が二千八百九十億と、こう申し上げましたんですが、これは正しいんでございますが、平成十二年から比べて六百億ふえているということでございますので、改めて申し上げたいと思います。
 今、先生からお話しされましたように、国会でそれを全部義務づけをして、そこでだれでも見られるようにしたらいいじゃないか、一つの御意見かと思います。
 私どもとしては、もし届け出がありますれば、それは能率的な遂行を阻害しない限り、あるいはそこにはプライバシーという問題もあるのかもしれません、そういうものがない限りできるだけオープンにしていきたいと、こう思っております。
 国会には調査権という大変大きな権限がございますし、また私自身も議論して、私自身ある意味じゃ責任者でつくった予備的調査権というのもございます。すぐれてそういうあり方についてはぜひ国会で御論議いただき、その結果として政府にお申し出があれば検討をしなければならぬと思いますが、一つの考え方としての議論としてあるのかなと今伺っておりました。
 いずれにしろ、国会でお決めいただくことではないかな、こう思っております。
#24
○水島裕君 それでは、時間ですので最後に一言だけ申し上げますと、二十一世紀はITとともにライフサイエンスの時代でございます。
 今申しましたように、ライフサイエンスの研究開発をやっていく上では、やはりリスクとベネフィット、以前はこの二つぐらいだったわけですけれども、それとコスト、この三つはもう十分考えなくちゃいけない。それから、特にこういう法案を審議していて感じることは、それに加えて倫理、公開ということ。それから、やはり日本の産業ということ。
 これはやはり日本も今非常に苦境に立っておりまして、このライフサイエンスで日本を何とか戦後の科学技術で復興したようにしなければならないと思いますので、産業応用とリスク、エフェクト、コスト、それから産業と倫理、公開と、この五つを科学者は必ず頭に置いてするように私もあちこちでは申し上げるつもりでございますし、科学者ばかりではなく国民もそういうことを十分認識して、これらの研究、事業に邁進することが極めて大切なことだということを最後に申し上げて、私の質問とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#25
○仲道俊哉君 自由民主党の仲道でございます。
 さきの国会で本案が審議されていたときにちょうど当委員会に所属をしていました関係で、そのときにこの問題に大変興味を持ちまして勉強したいなと思っておりました。きょう、質疑の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。
 一九九七年の英国におけるクローン羊ドリーを初めとして、九八年七月の近畿大学農学部と石川県畜産総合センターの協力によるクローン牛「のと」、「かが」、それから二〇〇〇年一月の鹿児島県肉用牛改良研究所における再クローン牛の誕生など、人と同じ哺乳類におけるクローン技術の飛躍的な進歩は、腎臓等の慢性的なドナー不足を解消する臓器再生医療の分野などに希望の光を与えてくれました。
 しかし、その反面、もしこれが人に応用されたならば、人間の尊厳を侵し、人間の生命及び人体の安全を危うくして、また無性生殖であるがゆえに家族秩序などの社会秩序の維持に重大な影響を与えるおそれがあるわけでございまして、そのために、自由にしてよい領域と、一定の要件のもとにしてよい領域と、厳格に禁止すべき領域とを何らかの形で明確にすることが目下世界共通の課題となっております。
 本案の提出には、私はそういう意味ではもろ手を挙げて賛成をするものでありますが、先般の参考人の意見等を参考にして、幾つかの確認しておきたい点がありますので、質問をいたしたいというふうに思います。
 まず第一は、国民の合意形成と意見聴取についてあります。
 人間の本質と生命倫理に関する領域を法律をもって規制するには、何よりも国民の合意形成があることがまず前提であると私は考えます。クローン技術は一面では、先ほども水島委員からもお話が出ましたが、夫と妻双方の生殖機能に欠陥がある場合において子供を持つ喜びを与え得るものであり、その評価については各個人の倫理観、人生観、宗教観及び哲学などが複雑に絡んでまいります。
 法による規制はいまだ時期尚早との意見もありますが、国民の合意は十分に形成されたと確認ができますか。また、多くの国民の声を、特に私は女性の声を聞き、また国民に意見を述べる機会を与えなければならないと考えるわけですが、政府としてこの点についてどういった具体的な配慮をしたか、その点についてお伺いをいたします。
#26
○国務大臣(大島理森君) 仲道委員の御指摘のとおり、この問題は幅広く国民の皆さんの御意見を聞く、総意を探すということがとても大事なことだと思って今日までやってまいりました。
 具体的には、平成九年九月以来、二年余りにわたって議論させていただきました。そして、科学技術会議生命倫理委員会、そのもとに置かれたクローン小委員会、ヒト胚研究小委員会において、今先生がお話をされましたように、女性の意見等も含めて合計二十回以上にも及ぶ委員会での審議、それも全部オープンにさせていただきました。さらに、国民からパブリックコメントもちょうだいをさせていただきました。さらに、総理府や我が庁におきましてもさまざまなアンケートをちょうだいいたしました。そして、国会で御論議いただくということも、私はある意味では憲法上最も大事な国民のコンセンサスを得る場だと思っております。
 そしてさらに、先ほど水島先生からも御指摘がございましたように、この問題を国民に知ってもらう、この努力がなお私どもに必要である、アカウンタビリティーという責任はなお一層私どもにもある、こういう思いで、絶えず国民の皆さんに知ってもらう。さらに、世界の人たちにも、日本としてはこういうことをやりますと、国会の意思として国権の最高機関がこのように決めていただきました。法案が成立した際にはそういうことも考え、またそういう中にあって、先ほど水島委員のお話にありましたように、多様にこれからこの世界でいろんなことが起こり得るとすれば、やはりさまざまな御所見をまたいただく、そういう寛容性と責任が私どもにはあるのではないか。そういうことを経ながら、絶えず国民のコンセンサスをちょうだいしてこの世界を進展させていくという覚悟が必要だと認識しております。
#27
○仲道俊哉君 私は、共生社会調査会に入っている関係から、特にこの問題については女性の意見を十分に聞くことが必要であると思っておりましたが、今の御答弁では大変女性の意見を聞いておるというような御答弁でございましたので、一応安心はいたしました。
 ちょっと私の時間が短くなっているので、途中、通告を飛ばして質問をいたしたいと思います。
 次に、憲法二十三条の学問の自由との関係についてであります。
 科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚小委員会のメンバーである上智大法学部の町野教授は、本法案の法律的な論点に言及し、その報告書の中で、憲法二十三条は学問の自由を保障している、学問の自由に含まれるとされる学問研究の自由は精神的な自由の一つであるとされ、これに制限を加え得るとしても、それは厳格な要件のもとに初めて許されると解しております。
 すなわち、本法は、公共の福祉の要請によって学問研究の自由のうちの手段の自由を厳罰をもって制限するものでありますが、本法案における規制の範囲、刑罰の程度などは憲法二十三条が保障している学問の自由に配慮したものと言えるかどうか、説明をお願いいたしたいというふうに思います。
#28
○国務大臣(大島理森君) 今、先生が御指摘をいただきましたように、学問の自由というのは憲法上の大きな権利でございます。そういう権利も、やはり広く言えば公共の福祉という、一方、対置すべき概念があるものと思いますが、学問の自由は特にそういう中で尊重されなければなりません。それは、先ほど先生もお話しされましたように、内面的な精神活動を制限してはならない、ここが一番のポイントなんだろうと思います。
 そういうふうなことからして、このクローン法の規制は反社会性ということをいわばメルクマールとしてつくった法律でございまして、憲法が保障している学問の自由そのものと整合性はとれていると、私どもはこのように解しております。
#29
○仲道俊哉君 そうしますと、法律で学問研究の自由を制限したものが他にありますかどうか。あるとすれば、その規制の程度を本法との比較においてお知らせいただきたいというふうに思います。
#30
○政務次官(渡海紀三朗君) ほかの省庁のことについてちょっと調査はいたしておりませんが、例えば当庁の法律におきましては、まず原子力に関して原子炉等規制法や放射線障害防止法、こういったものについては、やはり取り扱うことが放射性物質の使用等でございますから許可や届け出が必要であるというふうに実は規制をいたしておるところでございます。その必要に応じて報告の徴収や立入検査、さまざまな改善命令等を行うことができるというふうにしておるところでございます。
 本法律の規制のやり方といたしましては、先ほど来議論になっておりますように、個体産生に関してはこれは禁止ということで法律で禁止をいたしておりますし、研究という意味では届け出制と指針、これを有効に活用、組み合わせをすることによって規制を行っているということで、研究の自律性また自由を守りながらも、報告の徴収とか立入検査、計画変更命令等を有効に活用することによって、研究の自由と規律の実効性がバランスのとれたものとなっていくように配慮をいたしておるところでございます。
#31
○仲道俊哉君 今出ました指針についてはまた後で質問をいたしますが、人間に有用な研究との兼ね合いについて、非常に大事なところでございますので政府の基本的な認識を、今一応大臣のお話をお聞きしましたが、再度お願いをいたしたいと思います。
 我々は、クローン人間などという、かつてはSF小説の世界の存在でしかなかったものが実現の可能性に直面して、これまで考えていた人間の概念に大きな動揺を来していることは否めない事実であります。しかし、遠い将来、失った愛児や最愛の配偶者のクローン人間を何の心理的抵抗もなくかつ安全につくれる時代になっても、今日と同じ否という認識でよいのかどうかはだれにもわかりません。したがって、今日の認識や社会通念を基準にして有用な研究まで抑制してしまうことは将来の国民と人類にとって損失にもなりかねないという気持ちも、私自身、揺れ動いておるわけでございます。
 研究を規制するに当たって、政府の基本的な認識を説明願いたいと思いますし、また将来の規制のあり方についてももしお考えがあればお聞かせいただきたいというふうに思います。
#32
○国務大臣(大島理森君) 仲道先生の御意見を伺って、一つ明確に申し上げて、そして御理解をいただきたい点がございますが、やはり個体としてのクローン人間をつくることはいけないと私どもはこの法律で書いてあります。この根拠はやはり人間の尊厳なんだろうと思うんです。
 それで、人間の尊厳というのは何かといいますと、やはり人間というのは唯一無二であるというところから、お互いに尊重し合って、そして社会を構成してみんなで幸せに生きていこうという、その最も基本的なところであろうと思います。第二点は、やはり人間が生まれるということの、そこの人間としての、人類としての価値というんでしょうか、そういうものが相まって、私どもは人間の個体、クローンとしての個体をつくってはいかぬという法律をつくらせていただきました。
 さはさりながら、そういうふうなところまで行かざるところにおいてのさまざまな、逆に人類の福祉の増進になる科学技術、ライフサイエンスというのは未知なる部分が圧倒的に多い。そこをやはりまた人類の福祉の向上のために有用性を求めて研究するというふうなことで、私どもはまず人間の尊厳を守るという意味でこういう法律でまずきちっと禁止をし、その他の世界のところにおいては、もちろん指針等をもちながら規制はいたしまするけれども、研究という分野を全く否定しない、そういうバランスをとった形でつくらせていただきました。
 繰り返すようですが、人間の尊厳に反する反社会性という観点から私どもは今度の法律の根幹をつくっている、このように御理解いただきたいと思います。
#33
○仲道俊哉君 大臣の決意のほどと、そして今はっきりした信念のもとでこの法律を出されたことに大変敬意を表したいというふうに思います。
 次に、法律禁止事項と指針禁止事項とを区別する妥当性、これは私は今回の法案の一番大事なポイントであるというふうに考えております。
 本法案ではクローン胚を九つに分類しておりますが、その一が人クローン胚、二つ目にヒト動物交雑胚、それから三つ目にヒト性融合胚、すなわちハイブリッド胚ですね、それからヒト性集合胚、いわゆるキメラ胚の四つのみを法律禁止事項として、その他の特定胚については文部科学大臣の定める指針による禁止事項としておるわけですね。その扱いの違いについて、妥当性の説明をお願いいたしたいというふうに思います。
#34
○政府参考人(結城章夫君) 刑罰を伴いまして法律で禁止するためには、単に倫理的な問題があるということだけでは不十分でございまして、実際に相当程度の反社会性があるということが必要だと考えております。
 九種類の特定胚が規制の対象になっておりますが、そのうちの四種類、今、先生お読みいただきました四種類ですが、これは母胎への移植を法律で禁止しておりますけれども、これはその個体が誕生した場合に人の尊厳の保持や社会秩序の維持などに重大な影響を与える可能性が高いものでございます。
 それ以外の五種類につきましては、例えば有性生殖を経て自然にも存在する一卵性双生児を人工的に生み出すということになるといった個体産生、仮に個体産生に至ったとしてもクローン人間の産生と同等の社会的弊害があるとは言えないものでございまして、人クローン胚の移植の場合と同等の刑罰をもって禁止することは妥当でないと考えております。したがいまして、この残りの五種類につきましては母胎への移植を法律では禁止せず、法律に基づく指針で禁止しようとしているものでございます。
 こういった二段階に整理しておるわけでございますが、このような整理は科学技術会議生命倫理委員会における審議の結果を反映したものでございます。
#35
○仲道俊哉君 最初の四つはいいんですが、残りの五つの指針の作成について私は問題にいたしたいわけですが、国会の関与を排斥した理由ですね。本法案の所管領域が少なくとも人間の本質と生命倫理に関するものである以上、国民の代表たる国会の関与が何よりも求められるべきであるというふうに私は基本的に考えます。しかるに、指針の作成及び変更に当たって、文部科学大臣は関係行政機関の長と協議し、総合科学技術会議の意見を聞けばよいと、国会の関与を認めていないわけですね。その理由と妥当性について説明をしていただきたいと思います。
#36
○国務大臣(大島理森君) 仲道先生のお話の中で、国会の関与がないではないかという御意見、法律的には指針として内閣がそういうことを決めると、こう書いてありますが、国会は関与がないということより、そういう法律に基づいてこれから指針をつくらせていただきますが、そこでもちろん国民からのパブリックコメントも求めたり多くの人々の意見を聞きますけれども、国会としてこの指針について御議論いただくことは何ら構わないことだと私思うんです。それは、国権の最高機関で本当に法律をつくっていただいて、それに基づいて指針ができていくわけです。
 それと、指針というのは、先ほど水島先生もお話しされましたように、多分日々の研究の過程においてさまざまな変化が行われるだろう、そうすると国会でこれを議決いただくということのタイムラグが生まれる可能性もなきにしもあらず。しかし、そういうガイドラインをつくった暁に、どういうガイドラインをつくったんだ、来て説明せよということであれば当然いたさなければならない義務は内閣にあるわけでございますから、そういう意味での国会の監視というのは絶えず私どもは受けているし、またこういう御議論をいただいた上での御議論というのは最も尊重しなければならないことだし、いわば研究のスピード、柔軟性というものを考慮しながら、本当に大事な、そして基本的なそういう骨格は法律で決めていただいて、そういう意味でのガイドラインをつくっていく。
 もちろん、国会の先生方の調査権という項目の中において、来て説明せよと言えば当然いたさなければならないし、私どももガイドラインができた暁には何らかの形で先生方にもそれは御報告をするという、法律的義務はないにしても、政治的仕事は私は社会的に責任としてあると思っております。
#37
○仲道俊哉君 それでは、一歩譲るといたしまして、政令あるいは省令とせずに指針とした理由ですね。そしてまた、指針の法的な位置づけについて説明をお願いいたしたいというふうに思います。
#38
○政府参考人(結城章夫君) ライフサイエンスの進展の速度は非常に速うございまして、これらの先端の研究動向を適時的確に反映していく必要がございます。そのために、規制形態や規制の内容がより柔軟なものになることが望まれるところでございます。
 この観点から、省令で技術基準を定めるというのは、非常に詳細な技術基準を定める場合には適しておるわけでございますが、より総合的な観点を踏まえて柔軟な規制を行うということであれば、指針において要件を定め、届け出制により研究の実施を的確に把握する枠組みの方がより適当であるというふうに考えたものでございます。
 指針において直接罰則を設けることはできませんが、法律上で遵守義務を課しておりまして、指針に適合しない取り扱いがなされている場合には届け出の義務違反とか命令違反といったことで罰則を科すことができますので、規制の実効性は十分に確保できるというふうに考えております。
#39
○仲道俊哉君 これまで指針による規制について幾つか質問をしてきたわけですが、指針に基づく大臣の命令違反が罰則によって今お答えのように担保されている以上、法律でも政令でも省令でもない指針という規範様式に強い法的な拘束力があるということは一応理解をいたしました。
 しかし、こうした国民の権利を制限して義務を課する実質的な意義におけるところの法規範の制定は憲法上唯一の立法機関とされる国会が行うのが本来の姿であろうと、多少私も心の隅にひっかかるわけでございますが、本案では、行政に広範な裁量権を認める結果、行政は国会のチェックなしに指針という形式によって事実上自由に規制の中身を定めることとなって、先般の実は参考人の意見を聞いておりますと、参考人の言ではありませんが、法による規制の抜け道を許すものだというような参考人の意見もございました。
 そういう批判を許す余地も残っておるわけでございますが、このことは本法案における最大の一つの難点であると考えますが、大臣は特定胚の一部の規制について広範な行政裁量を認めることについてどのような考えを持ちますか。また、法による規制の抜け道云々との先般の参考人らの批判に対してどのように説明をしますか。その見解をお伺いいたしたいというように思います。
#40
○国務大臣(大島理森君) 仲道先生から冒頭に研究の自由と規制という非常に大きな問題提起をしていただきました。ある意味ではそういう接点の中で一つの知恵として出した指針であると御理解を私はいただきたいんです。
 学問の自由、研究の自由を国家が規制する、法律で規制するということは非常に難しい問題でございますが、加えて、その研究の世界がドッグイヤーと言われる時代でもあり、また多様であり柔軟に対応していかなければならないとした場合に、絶えず衆議院、参議院で御了解をいただいた法律で規制をしていくということに相なりますと、そのスピード感あるいはまたその対応がなかなか難しい分野も出てくるのかなと。したがって、大きな骨格と規制は法律でしていただきながら、そこで指針という一つの知恵を出した形でこういう体系になりました。
 先ほども申し上げましたように、法律要綱に絵をかくということ自体も明治以来初めての法律でございます。そのぐらいに研究の自由と規制という世界の中における一つのアイデア、知恵としてさせていただいたということはひとつ御理解いただきたいものと思いますし、何回も申し上げますように、だから国会の監視以外のところにあるとは私どもは思っておりません。
 国権の最高機関である調査権というのは最高に強いものでございますし、絶えず皆様方の監視、御意見の対象としてこの指針もある。一方、研究開発の進展というものにも対応していく。そういうさまざまな観点から考えた一つのありようであるということを御理解いただきたいと、こう思います。
#41
○仲道俊哉君 指針についての大臣の確固たる信念のもとで、国民に開かれた中での、国会にもまた開かれた中での指針であるということの御説明をいただきました。私なりに理解をいたしたいというふうに思います。
 次に、許可制でなく届け出制にした理由についてですが、本法は、クローン胚等の特定胚を作成し、譲り受けまたは輸入しようとする者は一定の事項を文部科学大臣に届け出なければならないとして、主務官庁に対する届け出制度をとっております。一般的には許可制の方が届け出よりも強い規制でありますし、より実効性を担保できると思うのですが、許可でなく届け出とした理由について説明をお願いいたしたいというふうに思います。
#42
○政務次官(渡海紀三朗君) 人クローン胚を含めた特定胚の取り扱いにつきましては、先生御指摘のとおり、必要な規制の実効性を確保しつつ有用な研究の進展が阻害されないように、技術の急速な進展に対応が可能である規制が望ましいとの観点から届け出制とさせていただいておるところでございます。そして、実効を担保するためには、法律の中で指針の遵守義務を課すとともに、その遵守状況を確認するために例えば立入検査ができるとか、いろいろな方策をもってその実効性を担保させていただいております。
 特に、届け出制ではございますが、届け出制で届け出をすれば研究がすぐに開始できるという制度ではございませんで、届け出後六十日間は研究に着手できない実施制限を課すことといたしております。その間に国で内容のチェックをし、必要に応じて計画変更命令とか立入検査等により国が強制力を持った監視を行うことが可能となっておりまして、そのような指針の遵守義務と届け出制により規制の実効性を担保するようにさせていただいておるところでございます。
#43
○仲道俊哉君 はい、わかりました。
 では、次に刑罰及び両罰規定の人的、地理的な適用範囲の問題についてちょっと触れてみたいというふうに思います。
   〔委員長退席、理事岩瀬良三君着席〕
 本法は、日本人及び外国人が日本国内で行う場合にのみ適用になり、日本人が外国で行う場合には適用をされません。すなわち、属地主義をとるものと理解してよいのかどうかですね。こうした研究は、企業や財団などが大学等の研究者に研究費を提供し研究レポートを提出させる形で行われるケースが多いと思うんですが、本法第二十条の規定は、いわゆる両罰規定における代理人として当該法人等を処罰できると考えてよいのかどうか、その点を説明願いたいと思います。
 一方、研究の委託行為が外国の企業等によって外国において行われた場合の法二十条の適用はどうなるのか、それもあわせてお願いいたしたいというふうに思います。
#44
○政府参考人(結城章夫君) 我が国の刑罰の適用を定める第一義的な基準は、その犯罪行為が行われた場所が我が国の領域の内か外かという区分でございます。したがいまして、領域外で行われた犯罪行為については、特別な場合を除いて刑罰法規の適用がないということが原則でございます。しかしながら、共犯の場合は、その実行行為が行われた場所が日本国内でありますれば、その共犯者が海外にいる場合でも国内犯として取り扱われるということになっております。
 ただいま御質問のケース、外国の企業が日本の研究者に委託なり依頼なりをして日本の国内でクローン人間をつくった場合どうなるかということだと思いますけれども、その契約あるいは委託の内容にも多少よるかとは思いますが、原則今のようなことでございますので、実行行為が日本の領域内で行われているのであれば外国の企業も共犯者として処罰されることになると考えております。
 なお、犯行を行った当人のみならず、それを法人なり代理人がその依頼をした場合には、その法人に対しても両罰規定の適用があるわけでございます。
#45
○仲道俊哉君 通告の最初の方に出しておりましたが、クローン技術の規制についての先進国の取り組み、今外国との関係がございましたので、この技術を持つ先進各国は、デンバー・サミットの首脳宣言の趣旨を踏まえて国際的な整合性を持って事に当たるべきと考えますが、主な先進国のクローン技術に対する規制の取り組み状況を、あわせてそういう関係からお知らせいただきたいというふうに思います。
#46
○政府参考人(結城章夫君) まず、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツでございますけれども、これらの国はドリーの誕生以前から生殖医療に関連する規制の枠組みが存在しておりました。したがいまして、ドリー誕生以降は、既存の法律の枠組みの中で人のクローン個体の産生を禁止する措置をとってございます。このうち、ドイツは明文でクローン個体の産生を禁止しておりますし、イギリス及びフランスは法律の解釈あるいは運用により禁止をいたしております。
   〔理事岩瀬良三君退席、委員長着席〕
 次に、アメリカでございますけれども、米国は生殖医療の規制の枠組みがございませんけれども、平成九年三月にクリントン大統領が人のクローン個体産生に関する連邦資金の支出を当面禁止するという大統領令を発出いたしました。また、アメリカの国家生命倫理委員会は、体細胞核移植を伴う人クローン個体の産生については禁止すべきであるとの答申を出しておりまして、これを受けまして、アメリカの政府は議会に人クローン個体の産生を禁止する法律案を提出いたしましたが、議会の会期終了に伴いまして廃案となっております。したがいまして、現在アメリカでは連邦レベルでの人クローン個体産生を禁止する法令は存在しておりません。
 次に、国際機関の動向でございますけれども、平成九年六月にデンバー・サミットが行われまして、八カ国首脳宣言において、子孫をつくり出すことを目的に体細胞の核移植を行うことを禁止するために適切な国内措置及び緊密な国際協力が必要である旨の表明がなされております。
 また、ユネスコにおきましては、同年、平成九年十一月ですが、ヒトゲノムと人権に関する世界宣言を採択いたしまして、人間の尊厳に反する許されざる行為として人クローン個体産生を例示いたしております。
 さらに、平成九年五月には世界保健機構、WHOでございますけれども、WHOがクローン技術に関し人への応用は容認できないとする決議を採択いたしました。
 このように、体細胞由来の核移植による人クローン個体、つまり体細胞クローンの産生についてはこれを禁止することが世界的な趨勢になってございます。
#47
○仲道俊哉君 次に、規制と立入検査の実効性についてということで質問をしたいと思います。
 クローン胚を生み出すには大規模な研究施設は必要とせず、先ほどの水島委員も、あすでも私はつくれますというような発言がございましたが、そういう密室で行われることが多いわけですね。また、専門的過ぎて違法行為が行われているのかどうか認識するのが甚だ困難であろうと思います。専門家による内部告発でもない限り、水島先生がつくっても、その研究者かだれかがもし内部告発しなければわからないわけですから、発覚が非常に難しいというように思います。
 本法の実効性に疑いを挟む余地は少しもありませんが、政府として規制の実効性についてどのような展望を持っているのか、お伺いいたしたいと思いますし、また立入検査を行う職員には高度な専門知識が必要ですが、こうした検査は具体的にはどの部局のどういう職員が担当するのか、あわせてお尋ねをいたしたいというように思います。
#48
○政府参考人(結城章夫君) この法案におきましては、文部科学大臣が法律の施行に必要な限度において、その職員に研究施設等に立ち入り、書類の検査などを行うことができるという規定になっております。その職員といいますのは、文部科学省の研究振興局のライフサイエンス課の職員が中心になるかと思っております。その職員といたしましては、生物学などに知見を持った専門職員も配置されることになるというふうに考えております。
 これは、実際に研究の現場まで文部科学省の職員が踏み込むことができるということを意味しておりまして、研究に対する規制としてはかなり踏み込んだものになっておるというふうに考えております。実際に立入検査を行う場合には、実験現場での実験のノートとか発注伝票とかいろんな施設の運転記録というようなものを検査することになりまして、詳細に研究の状況が把握できることから、かなり実効性は確保されるというふうに考えております。
#49
○仲道俊哉君 それでは、最後の質問になろうと思いますが、万能細胞の研究と臨床への適用は国際的なプロジェクトとして行うべきであるというように思うわけですが、人類に有用な研究の成果は一個人や一民間企業が独占してはならず、あくまでも人類共通の財産でなければならないというように思います。欧米などでは、ヒトゲノムの解析結果などを特許制度の乱用によって一私企業が独占し、金もうけの手段としておるような風潮もあるやに聞いております。
 しかし、我が国においては、人類に有用な万能細胞の研究と研究成果について、民間企業などの営利の手段とはさせず、国民共有の財産であるとの認識のもとで政府が国家的プロジェクトとして研究の推進を図るべきであろうと思いますが、最後に大臣の御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
#50
○国務大臣(大島理森君) ミレニアムプロジェクトで、理化学研究所にマウス等の万能細胞研究を含む発生・再生科学総合研究センターを設置しております。また、そういうところで、今、先生の御指摘を踏まえ、精力的に取り組ませるよう努力してまいりたい、このように思っております。
 一方、ヒト万能細胞に関する研究については、やはりこれも多くの倫理性という問題がしっかりとなければいけないと思っておりまして、そういう観点の検討結果、科学技術会議の生命倫理委員会の検討結果や今後定められるガイドラインによっての規制に従って積極的に取り組んでいかなければならぬと思っております。
 いわゆるES細胞は、まさに先ほど専門家である水島先生からのお話もありましたが、神経、筋肉、そういうあらゆる細胞に研究の材料として可能性がいろいろであるということが言われておりますし、私どももそう思っております。したがって、先ほどのような形で、場所でさらにやってまいりますが、また民間でも取り組みが行われるだろう、このように思います。
 ヒト万能細胞の樹立機関や使用機関の満たすべき要件として、樹立されたヒト万能細胞自体の売買等により利益を得ないこと、研究計画の妥当性を審査する審査機関を設置すること等がいわば倫理関係として科学技術会議の生命倫理委員会で検討がなされたところでございますが、そういうものをしっかりと踏まえて、具体的にはガイドラインに従って行われるべきと考えております。
 いずれにしても、ES細胞の世界というのは始まったばかりでございまして、私ども政府といたしましても、あるいはまた民間、大学それらについても本格的にこれから始まるところであろうと思いますし、私どももそういうことにある意味では応援したり、政府自身も関係団体にきちっと研究させていかなければならない。繰り返しますが、それにおいても倫理という問題をしっかり踏まえていかなきゃならぬということを申し上げたいと思っております。
#51
○仲道俊哉君 終わります。
#52
○委員長(市川一朗君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時四十分まで休憩いたします。
   午前十一時三十六分休憩
     ─────・─────
   午後零時四十二分開会
#53
○委員長(市川一朗君) ただいまから文教・科学委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。
    ─────────────
#54
○委員長(市川一朗君) 休憩前に引き続き、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#55
○佐藤雄平君 佐藤雄平でございます。先週、そしてまたきょうの午前中、先週は参考人、そして午前中は水島先生の講義を聞いたような気持ちで、技術的な話も多少はわかってきたかな、そんなつもりでおります。
 しかしながら、私は、いろんなお話の中で、つくる気ならばヒトクローンがつくれる、私はここがやっぱり一番の問題であろうと。ですから、本当にどんな立派な法律をつくっても、現実問題としてその研究をする人、研究する機関、これがまさに生命の倫理というものについてきちっとした理解をしない限り、この法の効能というのはどうしても出てこないであろうと。ですから、ある意味では法律以前に人の命とか、それから人の尊厳、こういうふうなものをどうにかしてその研究者、そしてその機関にわかってもらうということが一番大事であろうと。そんな思いをすると、まさに生命の倫理というのはうんと大事であるなと。
 そんな思いをしている中で、クローン技術の早期整備の必要な理由というところにこんなことが載っているんです。英米、アジア諸国ではクローン胚の研究が本格化し、熾烈な国際競争、我が国が出おくれると基本技術や特許をすべて押さえてしまうと。私はこれはもう大変な問題で、まさに商業主義に走りそうな兆しがあると。そんなことを思うと、やっぱり非常に危惧するところでありますし、この間の参考人の質疑のときも、大臣、今「ヒト・クローン無法地帯」という本が出ているんです。これを見ると、人工授精から始まって、まさにクローンというのがビジネスになってしまう。
 私は、本当に科学技術の進歩というのは、人の生活、まさに人の社会にうんと大事だと思うんですけれども、一方、功罪ある罪の方から見るともうとても大変なことになってしまうし、しかも人類が生まれて初めての予測できないような、同じものがつくれるなんてもう途方もない、とんでもない話だと思うんです。そういうふうな中で、私は倫理の確立というのはうんと大事だと思うんです。
 幸いにして、大臣は文部大臣をやっておられます。まさに今の子供たちのいろんな非行の問題、少年法がきょう通過しますけれども、この子供たちの非行が大きな社会の巣となっているというのもやっぱり倫理というものの欠如があるんじゃないかな、道徳というものの欠如があるんじゃないかなと。
 そんなことを考えると、私は大変なある意味ではミレニアムでチャンスがやってきておる、子供たちの将来も考えたり、またこのヒトクローンの科学技術と、片方では弊害も考えたときの人の倫理、これを国民的な議論をするある意味では大変ないいチャンスだと思うんです。
 人の倫理法ができるかどうかわかりませんけれども、この際私は、本当に倫理、道徳、人の命の大事さ、尊厳、こんなものについての国民的な議論をするような政府の姿勢を示してもらうということは、二十一世紀にとって、若い世代に対してうんと大事なことだと思いますので、この点をまずお願いしながら、二番目、三番目も一緒にもう質問しちゃいます。
 それと同時に、最近マスコミで生命の操作という言葉が頻繁に出てくるんです。これは専門家の先生方がいらっしゃる前で恐縮でありますけれども、脳死の問題で植物人間を何ぼでも生きさせることができるとか、それからまたこれが助長してくると、部品を交換して亡くなりそうな人も十年でも二十年でも長生きさせることがある意味ではできる。そのとき立ちはだかることに人の寿命というのがあると思うんです。これは日本の東洋文化の精神かもわかりませんけれども、十歳で亡くなったけれども、惜しかったなと言いながらも、あれも寿命だったのかなということで、ある意味では日本人の感覚であきらめることができるんだけれども、しかしながらこの技術が助長してくるとますますそれがはびこってしまうような気がしてなりません。
 そういう意味で、私は生命の操作、そして今のまさに生命の倫理、これについての大臣、そしてまた厚生省に生命操作についての話も、今までの経過、厚生省の審議会の中でこのようなことについての何か議論があったならば、その経過も教えていただければありがたいと思います。
#56
○国務大臣(大島理森君) 今、佐藤先生から科学技術と倫理という問題について問われました。
 まず第一点は、あらゆる科学技術に倫理という問題の裏づけがございませんと、大変それが逆に人類にとって有害というか、むしろ敵になるものであるということは今日までの歴史が証左しているところであろうと思います。そういう中にあって、生命を扱うライフサイエンスというのは人間そのものの問題を扱うものですから、非常に大きな、もっと重い倫理観を絶えず自問自答しながら進めなければならないことであることは同じ考えに立ちます。
 しからば、それをどのようにして政策実行する上で担保していくのかという問いが一点だったと思いますが、まず第一に、これは政策と言えるかどうかわかりませんが、午前中もさまざまな御議論をいただきましたが、国民の皆様方の中に、ライフサイエンスの将来の可能性と同時に倫理性の必要なことを知ってもらい、ともに語り合ってもらうために、我々は一層このクローン法の意義を知ってもらう努力をしなければならないと思っております。
 やはり、国民が倫理という問題を考えるときに、人それぞれに倫理観の違いはあろうと思いますが、少なくとも長い間のそこの国民の歴史から生まれた常識の倫理というものが一番最後に左右を決定するものであろうとするならば、先ほど申し上げたように、国民に理解をしてもらう、考えてもらうということが大事かと思います。
 一方、私どもは、これからこのライフサイエンスの進展ということを考えたときに、例えば研究費補助を申請し、そのことにこたえようとするときに、絶えずこの問題を研究者に対してきちっと申し上げるということもあるべき姿として必要かと思いますし、あるいはまた、いろいろな研究集会等の中においてもこの問題を語り合ってもらうということをお願いしていくということも大事なことであろうかと思います。
 そういうことを踏まえながら、倫理というものにある意味では悩みながら、この問題に取り組んでいくという謙虚さを忘れずにやることが大事かと思いますし、また国会の場においても、先ほど水島先生から一つの国会としての御提案はいただきましたが、やはりともに国権の最高機関として絶えずこの問題に倫理という側面から問題提起をしていただくという側面もまた大事なのではないかなと思っております。
 我々は事あるごとに、具体的な研究費を提供する場合において、あるいはそういう会議を開く場合において、倫理という問題を問いかけたり御注意を申し上げたりしながら、国民とともに倫理観、倫理というものを確立していく、そういう大きな宿題があるということをまず申し上げたい、このように思います。
 そういう中にあって、今も申し上げましたが、やっぱり基本は国民的関心、国民的監視ということが大事なわけでございますので、今後何らかの審議を、こういう問題の議論のみではございませんが、やはり公開ということが私どもに課せられた課題だと、このように思っておりますので、そういうことを注意しながら、政策の審議会等においても極力公開ということを大原則にしながら進めてまいらなければならない。
 第二点は、そういう議論をしていただくために多様な人材にそこに集まってもらうということが必要かと思います。先ほども仲道先生から、女性の委員あるいは女性の議員をさらに入れて考えていきなさいということも言われました。私どもは、宗教学者、あるいはまた法学者、あるいは言論人、女性の皆さん、多様にこの問題を議論してもらうためにお集まりいただきましたが、このライフサイエンスの議論をしていただくためには一層幅広く、そういうふうなことも忘れてはならないことではないか、このように思っております。
 生命操作というお話がございました。
 私は、このライフサイエンスの世界というのは、人が長生きをしたいということの前に、長生きというより、今ある命に何か障害があった場合に、それを乗り越えるための研究開発であるであろう、このように思っております。
 私的なことでございますが、大島理森が二百歳まで生きたいとか、三百歳まで生きたいとは私は思ってはおりませんが、今もし私に何か疾患があれば、私の家族に疾患があれば、やっぱりそれを乗り越えてやりたい。そのためにはまだまだ乗り越えなければならない研究分野がある、あるいは開発分野がある。そういう意味でのライフサイエンスであるべきだと私は思っております。古来からいろいろな物語で不老長寿の薬とかということがよく言われますけれども、私は、そのことよりも、先ほど申し上げた本当に健全で、与えていただいた命を、それもある意味では限りある命の中で健康で健全に生きていきたい、そのためのライフサイエンスではないかな、このように思っておりまして、そういう観点からの発展を、私どもは研究開発の推進を考えていかなきゃならぬのではないか、このように思っておるところでございます。
#57
○政府参考人(堺宣道君) お答え申し上げます。
 医療技術による生命操作という観点も含めて、まず脳死した者からの臓器移植というのもございます。それは、脳死は人の死と言えるのか、あるいは脳死した人から臓器移植を認めてよいのか、あるいは認められるとするといかなる条件かというようなものを、平成二年に臨時脳死臓器移植調査会いわゆる脳死臨調を設置して以来、七年余りにわたる議論を経て、臓器移植に関する法律というのが平成九年六月に成立いたしまして、その法律に基づいて脳死した者からの臓器移植というものが現在実施されているところでございます。
 また、末期医療、ターミナルケアといいますか、末期医療というのも一つの生命をどう扱うか、どう考えていくかということになると思うわけでありますが、それにつきましては、これまで意識調査もやってまいりましたが、単なる延命治療というのはやめて、患者さんの残された人生が個々人にふさわしいものとなるように支援していく医療というものを国民あるいは医療関係者の多くが望んでいるというふうに考えられますが、個々の患者の希望、意思といった問題もまた別途あるわけでございます。一律に対応するということはふさわしくないんではないかなというふうに考えております。しかしながら、患者のニーズに応じて末期医療にふさわしいサービスが提供されるように、これまでも診療報酬において緩和ケア病棟への入院あるいは末期の悪性腫瘍患者の在宅医療というところの評価というものを行ってきたということもございます。
 今後とも、国民意識の動向を見きわめながら、患者さんの意思を尊重して、適切な医療が受けられるよう環境整備を進めていきたいというふうに思っております。
 また、精子、卵子、胚の提供等による生殖補助医療のあり方につきましては、平成十年十月から厚生科学審議会の先端医療技術評価部会のもとに医療、生命倫理、法律等の分野の専門家から成る専門委員会を設置して御検討いただいているところでございます。本年中に報告書を取りまとめていただいた後に、審議会として意見を集約していただく予定でございます。
 ほかにもございますが、以上のような例のように、生命倫理に関する問題というのは非常に幅広い内容を含んでおります。厚生省といたしましても、問題ごとに国民の理解が深められるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#58
○佐藤雄平君 生命倫理については本当に十分、二十分では話が尽きないと思います。大臣の国民に理解を求める、これも必要であろうと思いますけれども、やっぱり国民的な議論がほうふつと出るような、こういうふうなことが私は必要であろうと思いますので、あえて文部大臣としても、そんな生命に対する、命の大切さとかとうとさとか、そういうふうなものも一緒に内閣として議論していただければありがたいなと、そんな思いをしております。
 次に、科技庁がこの所管になった理由なんですけれども、たまたま新聞記事で、我が県出身なんですけれども、医師会会長の坪井さんでいらっしゃいまして、「先端治療 医の倫理確立を」という中で、「ヒトゲノム解析やクローン技術などを医療に反映させることは大事だが、核をいじって原爆をつくったように、一方で人類が大きなリスクを負うのでは駄目だ。」と、こんな話、コメントが実は載っております。
 今度のヒトクローンの有用という点からすれば、これは私は医療と医薬品について有用であろうと思います。となると、この人クローンの胚、ヒト胚の問題というのはどうしてもやっぱり厚生省の医療との兼ね合いというのが出てくるであろうと。そんなことを思いますと、なぜこれが共管にならなかったのか、科学技術庁の所管にだけなってしまったのか。
 それは私は、法律を施行するに当たって研究する機関というのは科技庁だけの機関じゃないと思うんです。これは、場合によっては厚生省の研究所、場合によっては農林省の研究所、それぞれあると思うんですけれども、単体の所管だけになると、申しわけないけれども今の縦割り行政の中で、先般も特定化学物質の規制法があったんですけれども、これもやっぱり環境庁が中心になってやっているわけです。結果的にはそれぞれの各省庁のお伺いを立てながらいろいろ指導をしているというふうな形になっている例もあるもので、そういうふうな意味で私は科技庁だけの、窓口というふうなことなんでしょうけれども、しかしながらこれから施行するに当たってやっぱり障害が出るんじゃないかなと思いますけれども、この件についての御見解をお教え願いたいと思います。
#59
○政府参考人(結城章夫君) この法案で規制の対象としております人クローン胚などの特定胚でございますけれども、将来的には医療への応用の可能性はございます。ただ、現時点ではあくまでも可能性にとどまっておりまして、今後実際に医療への応用を行う前に十分な基礎的研究を行うことが必要な段階にあるものであるというふうに認識いたしております。
 したがって、特定胚の医療応用は現時点では想定されないことから、科学技術の総合官庁、総合的に担当する官庁であります文部科学省で所管することが適当であるという整理を政府部内の議論において行ったものでございます。
#60
○佐藤雄平君 厚生省の方。
#61
○政府参考人(堺宣道君) ただいま御指摘のように、ヒトの遺伝子に関する研究など生命現象にかかわる研究というのは、医療あるいは薬の新薬の開発ということへの応用が期待できる研究分野であるということで、厚生省としてもかかわりが深く、大変重要なものだというふうに認識してございます。
 一方、これらの研究は生命倫理との関係が深いということで、社会的信頼を得て行われるように明確なルールのもとで適切に実施していく必要があり、本法案は人の生命にかかわる科学技術の適切な発展に必要なものというふうに考えております。
 今回、規制の対象となる研究というのは、現時点においては直ちに医療分野に応用されるものではないということではありますが、厚生省としても科学技術庁と十分な連携をとりながら、今後とも必要な協力をしていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#62
○佐藤雄平君 私、いろいろ見ていると、もうともかく医療ということの有用性、これにそのヒトクローンがつながっていかなかったら、ある意味では何で研究するのかなと思うようなところがあるんですけれども、これは今度の見直しの中で五年から三年になったというところでどういうふうな展開になるのか。そしてまた、あれは来月ですか、厚生省で生殖補助医療の報告が出るのは。その辺を見ながら検討をしていかなきゃいけないかなと、そんな思いをしております。
 そこで、生殖補助医療全般の規定、これはフランスにしてもイギリスにしてもドイツにしても、その一環の中での胚の研究、しかも人クローン胚という位置づけになっておりますけれども、日本もやっぱりいずれこういうふうな生殖補助医療の中でのヒトクローン、また胚の研究というような位置づけをすべきであろうという意見もありますけれども、これについての御所見はどのようにお考えでございましょうか。
#63
○政務次官(渡海紀三朗君) 今、委員もお話しになりましたように、今厚生省の審議会で生殖補助医療のほぼ最終的な見解が出てきておるのは皆さんも御承知のとおりであります。
 科学技術会議生命倫理委員会の議論の段階ではまだその辺が余り見えておりませんでしたし、そういう面も踏まえて、完全にそういったことを待ってという意見もあったと思いますが、その段階ではやはり近々に、きょうは午前中の議論で水島先生もお話しになりましたが、割と小さな設備で簡単にできてしまうような、こういったことだけは絶対あってはならないということで禁止をやっぱりすべきだろうという個別対応で法整備をしたというのがこれまでの経緯であろうというふうに思っております。
 将来、これは法律の中のさまざまな修正もなされておりますし、当然そういったこと全般を踏まえての議論もなされるでありましょうし、その中でより多くの国民の、先ほどから先生お話しの、国民の皆さんに御理解をいただいて、そしてコンセンサスが得られるものはきっちり法律の中にまた書き込んでいく必要もありましょうし、また指針もこれからつくらせていただくわけでありますが、それも時代に応じてやっぱり変化をさせていかなければいけない。全般的にはそのような流れの中で今回の法律が出ているんだということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
#64
○佐藤雄平君 いずれにしても、わかりやすい行政にきちんとしていただくことを望んでおきます。
 先週の参考人の位田さんのお話の中で、特定胚研究の規律の方法、三番目に科学研究に対する規制の方法、それでこの中の二番目に届出制とあるんです。この届け出制の中で原則は自由と。これはもう本当に私は心配するところなんです。いわゆる研究者の自由は余り剥奪しないでほしいというような話もあった。しかしながら、この人クローン胚については、これは万が一というふうな、本当に千に一つのことがあっては大変だということで今その法律をつくっているわけですから、そういうふうな意味から考えると、研究そのものが、いい研究をするという前提で研究者、機関はやっているわけですから、そうであれば私はこれは許可制でなければいけないんじゃないだろうか、何で届け出制なんだろうと。
 位田さんの話で気になったのは、届け出制というのは原則はもう自由なんだと、しかも研究の自由を国が余り管理すると困ってしまうと。さっきの水島先生の話の中で、水島先生があしたつくろうと思えばつくれるかもしれないなんというそんな可能性も十分あるわけですから、そういうふうなことを考えると私は何で許可制にしなかったんだ、ここについてもう少し説明を願いたいと思います。
#65
○政府参考人(結城章夫君) 人クローン胚を初めとします特定胚の取り扱いについての規制のやり方でございますけれども、必要な規制の実効性は確保しながら、有用な研究の進展が阻害されないよう技術の急速な進展に対応可能な規制が望ましいわけでございます。そのため、政府案、この法案におきましては、技術の急速な進展に柔軟に対応できる指針を定め、指針の遵守義務を課すとともに、その遵守状況を確認するための届け出制を採用したわけでございます。
 特に、届け出をすればすぐ自由に研究が開始できるという制度ではございませんで、届け出後六十日間は研究に着手できない実施制限を課しております。その間に国で届け出の内容をチェックし、必要に応じて計画変更命令あるいは立入検査などによって国が強制力を持った監視を行うことが可能な仕組みとなっております。
 このように、指針の遵守義務と届け出制とにより、規制の実効性を担保しながら、技術の急速な進展に対応可能な柔軟性もあわせ持つ制度となりまして、特定胚の取り扱いの規制に最も適した形になっているというふうに考えております。
#66
○佐藤雄平君 時間も迫ってきたんで、はしょって最後の一つ。
 さっきも申しましたように、やっぱりこれビジネスになるともう大変な話だと思うんです。ですから、やっぱり世界の共通した一つの倫理観というのがどうしても必要であろうと。それを考えると、これは東洋と西洋の話になるのかなと。そういう意味では、日本の倫理観というのはある意味では東洋と西洋、両方のいいところを持っていると思うんです。その点からすると、私は、これは世界にある意味では人の生命の倫理というものを日本の政府が発すべきであろうと、WHOにしてもユネスコにしても。本当に生命は大事なんだということをこの日本の国から二十一世紀に向かって世界に発していただくことをお願いしながら、質問を閉じます。
 ありがとうございました。
#67
○国務大臣(大島理森君) 佐藤委員の御指摘のとおりでございます。
 ユネスコ、WHOの参加国に、私はこの法案が国会の御了承をいただき成立をせしめたならばすぐに英訳にし配送しようと思っておりますし、そしてまた、事あるごとに私どものもちろんインターネットをもってお知らせする。あらゆることをしながら、我が国の今次の意思、国会で御承認いただいた法律を御理解いただくようにして、最後はやっぱり世界じゅうで共通の認識を持たないとこれはいけないわけでございます。多分、先生のところにも陳情書というか、ラエリアン・ムーブメントの動きなんかが行っているんじゃないかと思うんです。私のところにも手紙が来たりしまして、そういう動きがあるわけでございますので、世界じゅうの共通した認識を、いわば法律として各国でつくって同じような価値観を持つことが大事なことだと、このように思っております。
#68
○佐藤雄平君 ありがとうございました。
#69
○小宮山洋子君 私は、民主党でヒト胚を大切にする立場からの法案をつくってきたということと、それから提供者としての女性とこれは深いかかわりのある法律案であるという立場から質問を幾つかさせていただきたいと思います。
 まず初めに、これまでも議論になってきていますけれども、クローンを規制する法律、諸外国では生命倫理とか生殖医療の法律を先に持っていまして、イギリスのヒト受精・胚研究法、ドイツの胚保護法、フランスの生命倫理法などですが、その枠組みの中でつくられているわけです。政府提案の法案にはその視点がないと思うんですが、先ほどから議論になっている厚生省の生殖補助医療に関する専門委員会の報告が来月にも出るというときに、なぜその視点を持った形で法律をつくられなかったのか。先ほど次官はまだそちらの方向が見えていなかったということですが、この議論は二年前からもう既に行われているということなんだと思いますので、もう一度お答えをいただきたいと思います。
#70
○国務大臣(大島理森君) 先ほど総括がお話しされました。そして、生殖医療の世界というのは、先生も御承知のように、日本の場合、一万人前後の方々がいわばそういう技術、そういう医療のおかげでお子さんを持つことができるという現実がございます。そういう日本という一つの世界の中で、そういう実態がある中で、生殖医療ということについて今すぐに国民的な合意が得られるかと。
 確かに、厚生科学審議会の議論、そしてそこで得られる審議会の小委員会の結論が近々出るやに聞いておりますが、それが必ずしもそこだけでまた国民的な合意が生まれるのかということを考えました場合に、これは先生に大変恐縮至極ですが、国会というところで法律をつくるに当たって、このクローンの法律自体も、この前の通常国会で議論されて、解散になって、こういう状況に今なって御審議をいただいておる。そういたしますと、生殖医療のところに国民の合意を得て、その上で法律をつくり、国会に御審議を願って、そしてそれらを含めた結論を得るとするならば、私も国会関係を長くやっておりますが、多分相当先になるのではないかと、このように思うんです。
 一方、先ほど申し上げましたように、ラエリアン・ムーブメントとか世界の動きの中で、あなたのお子さんをつくってさしあげます、それもクローン技術をもってつくってさしあげますという具体的な動きが出ているときに、私たちは今、日本という国の中でまずなさなければならないことは、クローンの個体をつくってはいかぬということだけはきっちりやっておかなきゃいけない。そういうことで、緊急性ということが一つあるということを御認識いただきたいと思います。
 その上に立って、午前中も御議論をいただきましたが、この生殖医療を含めてのライフサイエンスの科学技術というのは、本当にこれから多様に加速的にいろんな技術研究が行われる。それもすべていかぬというわけにはいかぬ。そういうことであるならば、そこはクローンの個体をつくるということだけはまず緊急性として抑えて、そしてそれにまつわるまたさまざまな問題のところはガイドラインということにして、生殖医療という、日本の一万人前後のお子さんたちがそういうことによって誕生し、家庭も幸せになっていくという現状の中で、日本の生殖医療の世界の倫理、あるいはそういうふうな合意というものがどの辺にあるか真剣に議論しながら、また国会でも御論議をいただく機会があろうかと思います。
 そういうふうに、ある意味では峻別をしながら、緊急性というものに今しかとこたえることが政治としての責務、行政としての責務という意味でこういう法律をお願いしていると、このように御理解いただきたいと思います。
#71
○小宮山洋子君 伺いたいことがたくさんございますので、恐れ入りますが、なるべく簡潔にお答えをいただけるようにお願いをしたいと思います。
 次に、この法案は一部の特定胚の母胎への移植だけを禁じていまして、クローン研究を広く認める。審議してきた科学技術会議の小委員会の答申とはちょっと違う内容になっているという意見もございます。それはなぜなんでしょうか。指針で規制、届け出制ということでは研究推進になるのではないかという心配がありますが。
#72
○政務次官(渡海紀三朗君) 政府案は、なるべく簡潔にお答えをいたしますが、母胎移植が禁止されていない特定胚についても、その取り扱いについて指針に従って必要な規制を行っております。これはあくまで指針でございますけれども、またこのような特定胚の取り扱いはヒト胚小委員会の結論と異なるものではございません。
 もし必要であれば中身も申し上げますが、よろしゅうございますか。
#73
○小宮山洋子君 はい、結構でございます。
 やはり今回の法案の最も大きな問題は、生命の萌芽であるヒト胚を保護して、提供者の意思を確認しながら利用を規制する、そういう根本的な視点が欠けている点ではないかというふうに思います。
 民主党では、ヒト受精胚のもとになる卵子の提供者である女性の意見なども聞きながら、ヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案を衆議院に提出いたしましたが、残念ながら修正と附帯決議に一部を生かすことしかできなかったわけです。
 この附帯決議の中にある卵子やヒト受精胚の提供者への情報提供と意思の尊重、あるいは特定胚を用いる必要性のある研究に限ること、特定胚などの授受は無償で行うこと、この法案で規定している以外の特定胚への規制など、こうした点については本来は法律に盛り込まれるべきものだったと私は考えております。
 このような附帯決議に盛り込まれた、いわば研究実施の明確な基準となるべきこれは重要な規定だと思うのですが、政府はこのようなことをどのようにして実施し、また倫理原則の遵守をどう保障されるのか、伺いたいと思います。
#74
○政務次官(渡海紀三朗君) この附帯決議作成に当たっては、衆議院の委員会で与野党ともに大変な御苦労をいただいた結果であるというふうに承知をいたしております。
 政府といたしましては、本法律案が成立した後に、法律に基づき文部科学大臣が策定する指針を規定することになるわけでありますけれども、この指針の中では、法律上の遵守義務が特定胚を取り扱う者に課せられるとともに、届け出した特定胚の取り扱いが指針に適合していない場合においては、国は強制力を持つ計画変更命令を発することができるなどの厳格な枠組みをつくることにしておるところでございます。
 また、このような仕組みにより、附帯決議に示された要件を指針に盛り込みまして、厳格に運用していきたいというふうに考えておるところでございます。
#75
○小宮山洋子君 法律が通りますと、法律案というのは一般の人がすぐ知ることができますけれども、なかなか附帯決議の中身を一般の人が知るというのは難しいかと思うんですが、そのあたり、今指針にとおっしゃいましたけれども、どれぐらいそれが一般の人にわかりやすくなるかということは大切な問題かと思うので、もう一度お答えいただいてよろしいでしょうか。
#76
○政務次官(渡海紀三朗君) 先ほども最後の方ではっきり申し上げましたが、指針の中にこの附帯決議の要件を盛り込んで、そしてそのことで指針の運用を図っていきたいということであります。
#77
○小宮山洋子君 クローンなどの研究には不妊治療で余った余剰胚が使われているわけですね。不妊の女性たちのグループからいろいろな意見書が科学技術委員会の委員の方にも寄せられたと思うんですが、クローン研究の際に、保存している胚だけではなくて、体外受精や顕微授精のために採卵した卵を使うことも密室では可能ではないかということ。それから、医師と患者の力関係の中で女性の意思が尊重される保障はないのではないかということ。多くの痛みとか苦しみ、多額の費用をもって不妊治療をしている女性たちの思いがさまざまに述べられているわけなんです。
 そういう意味では、法案の成立をここへ来て急ぐのではなくて、そうした生殖医療も包括的に規制する法律をこうした女性たちの意見も入れながらつくるべきだったのではないかと私はいろいろ御説明を伺っても思っておりますので、もう一度科学技術庁並びに厚生省からこの点について伺いたいと思います。
#78
○政務次官(渡海紀三朗君) この点は何度も議論になった点でございます。そして、ヒト胚の取り扱いということで随分衆議院の委員会でも議論が行われたわけであります。
 一方、先ほど大臣からもお話をいたしましたように、現場におきましては年間一万人もの人工授精の子供が生まれているといったような現状もございます。そういった現場をこれからどういうふうに整理をして、そして現実に即応した実効性のあるものにしてその胚を保護していくか、こういった議論がまだ集約している、国民的なコンセンサスがとれているとは言えない状況であろうというふうな判断のもとで、先ほどから何度も申し上げておりますように、まずクローン人間ができてしまったら大変だという中で個別にこういう対応した法律を今回出させていただいたと。これはまた科学技術会議生命倫理委員会の一つの報告の中身でもあるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思っておるところでございます。
#79
○小宮山洋子君 今御紹介しましたように、不妊治療をしている方からも密室という言い方で述べられているわけなんですけれども、現在五百を超える医療機関で不妊治療が行われていると聞いております。
 届け出制で行うということですけれども、届け出をしなかった者に対しては報告を求めることも当然できませんし、どこでやっているかわからないわけですから立入調査もできないわけですね。そのようにして届け出をしない者がいた場合に、それはどのようにして見つけることができるんでしょうか。罰則をかけることは事実上できないのではないか。そういう意味からしますと、これは許可制でないと実効性がないのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
#80
○国務大臣(大島理森君) 先生、簡単に言います。
 私は、そういう現場の人たちをある意味じゃ信頼しながら、そういうことをやれば多分周りで私は気がつくと思うんですね。そういうことを踏まえて、まず徹底することですよ、徹底すること。そして、それ以上、あなた、なかったらどうするんだねと、こういう質問をされると次の手がないのでございますが、徹底をすること、これです。
#81
○小宮山洋子君 それは大島大臣のように善意の方ばかりがいらっしゃればいいのですけれども、どうすると言われてどうしようもないって、だから届け出制は無理なんじゃないかと言っているんですね。
 現実に産婦人科のそういう治療をしていらっしゃるところは本当に規模の小さいところからいろんなところがあって、実際に治療を受けている患者が今までの経験からして自分から採取された卵などがどう使われているのかわからないと言っているわけです。その中でどうしろと言われても困ると言われても、それで実効性があるということでは私は納得ができませんが。
#82
○国務大臣(大島理森君) 許可制でも結局同じことじゃありませんか、許可制でも、そういうふうな議論をされたならば。先生、そう思いませんか。
#83
○政務次官(渡海紀三朗君) これは衆議院でもあった議論でございまして、これは隠してやっていれば許可制でも届け出制でも見つからないものは見つからないんですね。
 そして、この法律で届け出なしにやっていればその場合も実は罰則がかかります、見つかった場合は。見つけるという行為というのは、やっぱりよく言われるピアレビューだと思うんですね。これは京都大学の西川先生が実は参考人で言われたんですが、研究者の間でお互いがやっぱり監視し合うような環境をつくっていかなきゃいけない。そうでない限り、隠してやっているものは許可であろうが届け出であろうが実は見つかりようがないんですね。ちゃんと刑罰はかかるんです。この法律でも、指針により、無届けの場合も実は刑罰がかかるようになっております。
 そういう意味では、許可制であるからどうだ、届け出制がどうだということではないということでは御理解をいただきたいというふうに思います。
#84
○小宮山洋子君 それでもやはり届け出制より許可制の方が規制としては強いと思っておりますが、これをやっておりますと夕方までなってしまいますので、私としてはやはり許可制であるべきだというふうに申し上げて、次の質問にしたいと思います。
 特定胚の作成につきましては指針で決めることになっているわけですが、その内容がこの国会に対してまだ示されていないことも女性たちの中では不安の材料の一つになっております。
 先ほどから話題になっています厚生省の厚生科学審議会先端医療技術評価部会の生殖補助医療技術に関する専門委員会、ここで卵子、受精卵の提供による体外受精を認めようという方向で恐らく来月報告が出るのではないかと言われております。そうなりますと、この特定胚の作成に必要な提供卵子、提供受精卵と、このような体外受精のための提供者と同じになる可能性が強いのではないかと思いますが、これは科学技術庁としてはどういう対応を考えていらっしゃるんでしょうか。
#85
○政務次官(渡海紀三朗君) 余剰胚の扱いでございますが、これは四通りありまして、引き続き保管する場合がございます。そして、廃棄をする、もちろん御本人の承諾を得てでございますけれども。それから、第三者へ提供する場合、研究に提供する場合など、この四つのケースが基本的に考えられるだろうと思っております。
 このうち研究利用への胚の提供は、新たな生命の誕生につながる不妊治療への胚の提供という当初の提供者の意思とは異なる性質のものでございますけれども、その場合には提供者の意思が最大限尊重されることが大前提であるというふうに考えております。このために適切にインフォームド・コンセントが行われ、その内容に従った取り扱いがなされることが必要でございます。
 政府の案におきましても、第四条第二項第一号で「特定胚の作成に必要な胚又は細胞の提供者の同意が得られていること」を指針の要件の一つとして明確にいたしておりまして、研究利用が行われる際にはこの点が遵守されなければならないと考えておるところでございます。
#86
○小宮山洋子君 厚生省に伺いたいんですけれども、研究目的、特にクローン胚作成研究ですとかES細胞作成研究への卵子や胚の提供を厚生省の立場としては認められるのかどうか。その際、医療目的での提供と研究目的での提供、どちらを優先されるのか、伺いたいと思います。
#87
○政府参考人(堺宣道君) 現在、専門委員会で検討していただいているわけでございますが、これはあくまでも厚生省としては生殖補助医療が適切に実施されるということを基本ということでございます。それを基本としながら、卵子や胚の提供者が正しい情報に基づいて、的確な判断がされるように適切なインフォームド・コンセントがなされるということが重要なんではないかというふうに思っております。
 それから、先ほどの御質問、私、答弁漏れいたしましてあれでございますが、人の生命の萌芽としてのヒト受精胚の取り扱いのあり方についてでございますが、今後、総合科学技術会議等で検討が行われるということになることから、そうした検討結果を踏まえ、関係省庁と十分な連携をとりながら、厚生省としても必要な検討をしてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#88
○小宮山洋子君 今、生殖補助医療を第一にというお答えだったかと思うんですけれども、私はやはり生殖補助目的が最優先されて、そしてさらに医療目的が研究目的より常に優先する、このことを明確にしておく必要があるのではないかと思いますが、この点について厚生省と、もう一度科学技術庁のお考えを伺いたいと思います。
 先に厚生省にお答えいただいて、そしてもう一度、先ほど政務次官にお答えいただいているんですが、先ほども目的とは違うのでインフォームド・コンセントをというふうにおっしゃいました。その際に、やはり目的に合ったことが優先されるべきだと私は思いますが、その優先順位についてもう一度伺いたいということです。
#89
○政府参考人(堺宣道君) 研究には余剰胚を使うということでございますので、あくまでも医療目的というのが基本ということでございます。
#90
○政務次官(渡海紀三朗君) 同様の見解でございます。
#91
○小宮山洋子君 そうしたことも不妊治療のために提供している女性たちは不安に思っているわけです。当然のことだとおっしゃるような御答弁の仕方ですけれども、そういうような形にはみんな余り受けとめていない。だから、ここで私はあえてその優先順位を確認させていただきたいというふうに思いましたので、今の答えの中で、とにかく本来の目的である生殖補助目的が最優先であって、余剰胚をあくまでも研究に使うのであるから医療目的が研究目的よりも優先する、それを確認させていただいたと思います。
 それから、これはちょっと専門的な話になるかと思いますが、こうした研究というのは、やはり先ほど佐藤委員も言いましたように、医療に生かすために研究をされるということを望んでいる人が多いと思うんですが、例えば治療が困難な病気の例として挙げられていますミトコンドリア異常症につきましては、夫婦の未受精卵の核を別の人の除核未受精卵に移植するということが考えられていて、海外では既に行われているという情報もございます。
 これは、生殖医療の分野だと考えられるんですが、こうしたこともこの法律の中で解釈すると文部科学大臣への届け出になるんでしょうか。今、日本の中では、恐らくそのお答えとしては未受精卵では考えられていないので、受精卵であればそうだというお答えになるのかと思うんですけれども、私はこうしたことはやはり文部科学大臣というよりは厚生大臣の所轄するところではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
#92
○政務次官(渡海紀三朗君) 受精卵ではございませんので実は本法案の対象とはなりません、先ほどの先生がおっしゃったことは。卵子は人の個体に発生するための受精を経ていない段階のものでありますから、その保護の是非とか適切な取り扱いについては別の枠組みで議論されるべきものというふうに考えておりまして、本法案の枠組みには含まれていないということでございます。
#93
○小宮山洋子君 私は、後半にも申し上げた受精卵で行うのだとすると、この法案でいえば文部科学大臣が届け出を受けるということになるわけですね。
#94
○政務次官(渡海紀三朗君) 先ほどから議論になっています余剰胚の受精卵を研究目的にいわゆる胚として使う場合に、これは文部科学大臣の、どういいますか、所管に移るというとおかしいですが、なってくるというふうに御理解をいただいたらいいと思います。
 なお、卵子を含めたヒトの配偶子を用いた研究というのは、現在のところは日本産婦人科学会の自主規制で行われているというふうに承知をいたしております。
#95
○小宮山洋子君 それはわかっておりますけれども、その自主規制もなかなか皆さんが入っていらっしゃるわけではないし、従われているかどうかわからないというのが現状なんだと思います。
 それで、次に、特定胚の指針、先ほどから話題になっております指針については総合科学技術会議の意見を聞くこととされておりますけれども、この総合科学技術会議、とても大切な会議だと思いますが、どのような観点から、どのような体制で審議を行うのでしょうか。
 先ほど大臣のお答えの中で、ライフサイエンスの議論の中には女性も宗教者も広くというお答えがございましたが、現在の科学技術会議のように自然科学系の学者が中心の審議になりますと、どうしても研究推進の方向に偏るのではないかという危惧の声も聞かれております。この法案の作成のもとになっています小委員会の審議でも、委員からの要請で約束された女性の委員を加えることですとかヒアリングなどは行われなかったということが参考人質疑の中でも明らかになってきています。そうした中で、どのようにして当事者の女性はもちろんのこと、幅広い人選を行うのか、その総合科学技術会議の持ち方、運営の仕方について伺いたいというふうに思います。
#96
○国務大臣(大島理森君) 確かにすべての女性から意見を聞いたわけではございませんので、いろいろな立場の方々がおられると思いますが、この問題は、小宮山先生からも女性という立場からの問題提起がいろいろずっと続いてきたと思います。そのように女性の立場での思いあるいはまた考えというものが非常に大事であるなという思いを先生の質問をいただきながら考えておりました。
 さてそこで、それじゃ女性を代表する意見というのは、何人選べばいいかという問題もありますが、我々は今後この問題に関するまだまだいろんな議論をしてもらわなければなりません。したがって、女性の中でもさまざまな意見、立場というものを考慮しつつ人選するように努力したいと思います。特に、先生は科学者であるとか、あるいはまたいわゆる宗教学者でも、あるいは法学者でも、そういう立場での女性というより、普通の女性の方の意見というものをもう少し考えて入れたらどうかという御指摘ではないかと思うんです。なるほどなという思いも私、聞いていていたします。したがって、そういうことが可能かどうかも含めて、極力そういう問題に対応するような考え方で今後この問題の議論をしていただくときに努力してまいりたい、このように思います。
#97
○小宮山洋子君 ありがとうございます。ぜひそういう方向でしていただければと思います。
 女性の側も確かにいろんな意見がございますけれども、今申し上げた不妊治療をしているグループですとか、あるいは今女性たちもいろいろなNGO活動などもしておりまして、はっきり理論的に物の言える女性はたくさんいると思いますので、ぜひ今の大臣のお約束、どのように運ばれるか、これからも情報をいただいて一緒に考えていければというふうに思っております。
 それから、先ほどから国民の合意、理解ということが何度も言われています。この問題は、私もこの春に法案が提出されるころから一生懸命勉強いたしましたけれども、なかなか難しいです。ですから、提供しているつもりでもなかなか本当の意味がわかっている人というのは数えるほどではないか。パブリックコメントも求められたということも承知しておりますけれども、なかなかパブリックコメントに意見を述べられるだけにわかる人というのはとても少ないのではないかというふうに思うんです。そういう意味では、理解ができるような形での情報公開というのがとても重要なのではないかと思います。
 特に、これから焦点になるのは指針をどのようにつくるかということだと思うんですが、これも以前の審議で科学技術会議も途中までは非公開だったし、現在、厚生省の生殖補助医療に関する専門家会議は今も非公開ですか、そのように聞いております。わからないことが見えないところで議論されているとどうやって理解をしたらいいのか。今回の法案についても多くの国民はその内容をほとんど知らないと思います。私も勉強している中で、各地へいろいろ行ったりするときに、今こういうことが話し合われていると言うと、十人のうち十人が知らないと言っても過言ではないぐらいほとんど知られていない。だけれども、これはすごく重要な問題なんだと思うんです。
 今後、やはり提供者のプライバシーということにはもちろん配慮をしなければいけないですけれども、総合科学技術会議での指針づくり、あるいはそれぞれこれから届け出をして行われるであろう研究などについて、情報がしっかりとわかる形で公開される必要があるのではないかと思うんですが、その点はどのようにお考えになるでしょうか。
#98
○政務次官(渡海紀三朗君) 委員御指摘のとおり、特に生命倫理委員会において当初非公開というようなこともあったやに聞いております。大変微妙な問題でございますので、非公開にすべきという強い主張があったことも、個人名は申し上げませんが、多分御存じだと思います。しかし、今春よりは会議自体を公開して行っておりますし、中間報告の公表、意見募集、アンケート、できる限り広く国民の意見に耳を傾ける努力をしてきたところでございます。今後、指針を策定するに当たっても、総合科学技術会議において公開のもとで議論を重ねていただくとともに、広く国民の意見を求める手続をとることを考えております。
 そして、その中で一番大事なことは、私も実は先生よりも新しいわけでございまして、勉強し始めたのは九月ぐらいでございます、正直言いまして。やっとわかり始めたころに審議が終わるかなと思っておるわけでありますけれども、大変これは確かに難しい問題であろうと思います。できるだけ当庁としても工夫をして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、とにかく図解入りの法律になっていること一つ見ていただいても、これは特殊なものでございますから、国民の皆さんにパブリックアドレスにおいてよく理解をしていただけるような工夫を心がけたい、そのように思っておるところでございます。
#99
○小宮山洋子君 ぜひお願いしたいと思います。
 そして、この法案は、科学技術庁、そして厚生省以外にも関係する省庁があると思います。政府案の認める特定胚研究の中には、ヒト以外の哺乳類の卵子、細胞、母胎を用いる研究が含まれております。牛、豚、ヤギなどを用いる畜産研究分野との協力のもとに行われるということが予想されるわけですが、農林水産省はこの問題に一定の責任をやはり持つべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#100
○政府参考人(小林新一君) 農林水産省におきましては、家畜クローンの研究につきましては、優良家畜の増殖のほか、希少動物の保護や医薬品などの有用物質の製造などにおきまして大きな意義を有し、また人間の倫理の問題等に直接触れるものでもないことから、ライフサイエンスに関する研究開発基本計画に沿って、情報の公開を進めつつ研究開発を促進しているところでございます。
 今回の法案でも、家畜クローン研究につきましては対象とされていないところでございます。
 ただ、先生御指摘のように、農林水産省が行っておる研究につきまして、特定胚の作成というふうなところにおきまして、家畜の卵子や細胞などの提供などを通じまして間接的に関係する可能性があるわけでございます。私どもといたしましては、第四条に規定されております特定胚の取り扱いに関する指針の策定に当たって、関係行政機関として関与させていただきますとともに、今回の制度の趣旨、内容につきまして、試験研究機関などに対しまして徹底を図っていきたいというふうに考えております。
#101
○小宮山洋子君 また、ES細胞研究では広範な産業での応用ということが期待されているのだと思います。医療を越えた他業種の参入などが予想されます。無償で提供されるヒトの胚を用いた研究で企業が上げる利潤の適切な社会還元のあり方ですとか特許の扱いなどの問題については、通産省、これからなる経済産業省が責任を持って指針などをつくるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
#102
○政府参考人(岡本巖君) お答え申し上げます。
 我が国におけるヒトの胚を用いた研究とかES細胞に関する研究というのは、今これからまさに基礎研究が始まろうとしている段階にあって、その実用化までにはいま少し時間がかかるのではないかと私ども考えております。
 通産省もバイオの関係をいろいろ進めているわけですが、今現在は、遺伝子解析に関連をしまして、生命倫理との関係でよるべき指針というものを私どもの大臣の諮問機関で鋭意検討していただいているところでございまして、厚生省あるいは科学技術庁、文部省とも一緒にこういった指針づくりを進めているところでございます。
 ES細胞等につきましても、研究が進んで、その成果の実用化ということが見込まれる状況になりました場合には、私どもは関係省庁とも密に連絡をとりながら、よるべき指針あるいはルールというようなものを鋭意検討してまいりたいと考えております。
#103
○小宮山洋子君 まだちょっと先の話みたいなお話でしたけれども、やはりこういうのは早く進む可能性があるのですから準備はしっかりしていただいた方がいいのではないかと思います。
 今お話にありましたヒトゲノムについては、既に四省庁共管でつくられているわけですね。クローン規制、ヒト胚利用の規制につきましても関係省庁が共管でするべきなのではないかと思うんですが、省庁再編後、どのような形で取り組まれるのかを科学技術庁に伺いたいと思います。
#104
○政務次官(渡海紀三朗君) ゲノムは既に先生おっしゃったとおりでございますが、クローン技術は技術としてはいまだ創成期のものでございますので、科学技術の総合官庁である文部、今度は文部科学省に移るわけでございますけれども、基礎研究を所管する文部科学省が担当することとなったものでございます。これは閣議においてそのように決定をされておるところでございます。
 また、ヒト胚利用の規制につきましては、総合科学技術会議、これは今度は内閣府に移るわけでございますが、その中におけるヒト胚研究全般についての検討や厚生科学審議会における生殖医療に関する検討など、十分な国民的議論を踏まえての規制のあり方を検討し、必要な措置を講ずるべきものと考えており、その内容に応じて適切な省庁が責任を持って運用すべきものと考えております。
 もちろん、その際に各省庁の調整を行い、情報交換をきっちりとやることは大変に重要なことであるというふうに考えております。
#105
○小宮山洋子君 民主党では、最初にも申し上げましたように、生命倫理、生殖医療をもとにして法律をつくるべきだと主張してまいりまして、法案もつくってきました。
 衆議院での修正で、附則に「政府は、この法律の施行後三年以内に、ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取扱いの在り方に関する総合科学技術会議等における検討の結果を踏まえ、この法律の施行の状況、クローン技術等を取り巻く状況の変化等を勘案し、この法律の規定に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」ということを明記したわけです。
 最初からお話ししているように、厚生省の審議会が間もなく生殖補助医療についての報告をまとめるわけですね。この附則に記されていることは三年以内ということで、三年後ではないわけなのですから、すぐにその生殖医療も含めた包括的な法律にしていくための論議をわかりやすく広く国民の意見も聞きながら始めるべきだと考えますが、この点について厚生省と科学技術庁の御意見を伺いたいと思います。
#106
○政府参考人(堺宣道君) 先ほども御答弁させていただきましたけれども、御指摘のように、ただいま専門委員会において意見を集約して報告書をことしじゅうに取りまとめていただく、その後に厚生科学審議会として意見集約をしていただく予定と。その結果を踏まえて厚生省としては適切に対応してまいりたいということでございます。
 また、人の生命の萌芽としてのヒトの受精胚の取り扱いにつきましては、今後、総合科学技術会議などでの検討が行われるということになるわけでございますが、こうした検討結果を踏まえて、関係省庁と十分な連携をとりながら、その取り扱いについて厚生省として必要な対応をとってまいりたいというふうに思っております。
 なお、現在、専門委員会は非公開ということ、確かに非公開でございますが、議事録はすべてインターネットで公開しておりますので、念のためにつけ加えさせていただきます。
 ありがとうございました。
#107
○国務大臣(大島理森君) ヒト胚の研究全般について今厚生省がお話をされましたが、年内に科学技術会議において具体的な検討を始めたい、こう思っております。
 最後に、小宮山先生に改めて私の考えを、余計なことを言うな、時間がないからと言われるのを承知でちょっと申し上げます。
 これは本当に意見が違うところであるかもしれません。しかし、民主党さんは衆議院で非常に理解をいただきました。クローンの技術と生殖医療を同じテーブルで議論することが本当にいいのかなということだけの問題提起を改めて先生に申し上げておきたいと思います。
#108
○小宮山洋子君 これでもう私の持ち時間を終わるのですけれども、私はやはり当然生殖医療の枠、どちらかというと生殖医療、生命倫理の枠内でクローン技術を考えるべきだと思っておりますので、私は同じテーブルに乗せて考えるべきだというふうに思っております。
 それから、先ほどの厚生省からのお話で、インターネットで公開されているのはわかっておりますが、二カ月後ぐらいで、すぐということではないと思いますので、やはりそうするとリアルタイムの議論がわかるということではないということを申し上げておきたいと思います。
 私は、ずっと一貫して申し上げているように、あくまでこれはやはり生命倫理、生殖医療の枠の中でクローン技術というものを規制すべきなので、クローン技術の特殊なものだけを規制するということではやはり納得できないと思っております。すぐにも議論を始められるということでしたので、そこへぜひ先ほどからお約束いただいている幅広い人を入れて議論を始めていただいて、その中身も情報公開をしていただきたい。
 私は、三年以内ということがついておりますので、この法案はいわば三年後までの時限立法なのだというふうに解釈をしております。ぜひ、諸外国同様、包括的な枠組みの中のクローン規制に変えていけるように、私たちも努力をしたいと思いますし、いろいろ広く皆様の意見を聞きながら、大切な問題ですから、今後も、法律ができたからいいということではなくて、次へ向けての作業をすぐに始めていただくように強くお願いをして私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#109
○国務大臣(大島理森君) 時限立法じゃございませんので、そこだけは大臣としてやっぱり言わなきゃならぬと思っております。
#110
○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。
 今回のヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案では、クローン技術等が用いられ方のいかんによっては重大な影響を与える可能性があるということから、大きく言って二つの内容での規制のあり方を示しているというふうに思います。
 第一に私が伺いたいのは、人クローン個体をつくり出すことを禁止する、この問題についてでございます。この点でまず、国民的な合意形成はどのようになっているのかという点について伺います。
#111
○国務大臣(大島理森君) 平成九年九月以来、時間的には二年余り議論してまいりました。そして、その間、先ほども申し上げてまいりましたが、小委員会の中で各界各層の御意見をちょうだいし、二十回の議論をしていただきましたし、パブリックコメントも求めました。
 先ほど小宮山先生のお話にもございましたが、パブリックコメントを発しても、あるいはお願いしても、非常に専門的なことだからなかなかそこは理解されないところがあるんだという部分も確かにこれはあります。しかし、人の倫理ですから、常識的な判断というのは割と正しい意見を言っている場合があるんですね。逆に専門的過ぎて、専門的な中に入り過ぎてちょっと間違うときもある。だから、私はパブリックコメントも非常に有意義であったと、このように思います。また、総理府また科技庁のアンケートもさまざまにいたしましたし、また各党内でもさまざまな御意見を闘わせたと思うんです。
 そういう中で、私ども今度法案を出させていただき、衆議院では各党ともそれぞれの御議論をしていただきながら一つの結論を出していただいた。だから、箇所箇所において、政府は政府としての各般の意見を聞く努力をしてまいりましたし、今後も、この問題というのはもうどのようにある意味では展開していくかわからない部分がある、だからこそ絶えず監視をしながら、絶えず議論をしていただこうと。修正条項があるというのは、やはりそういう問題も含めてそういう修正条項もあるわけでございます。
 今後とも、国民の合意形成、さらに理解を得ながら、この問題に対する国民の一つの合意を得られるようなことを一層努力をまた私はしていく責務があると思っております。
#112
○畑野君枝君 九八年九月の総理府のクローンに関する有識者アンケート調査でも、人のクローン個体を生み出すことに生命倫理上問題があるという回答は九三・五%を占めて、法規制を求めた声は七一・二%になっておりますし、またことしの三月に科技庁が生命倫理に関するアンケートを実施しておりますが、クローン技術を人に応用すべきでないと考えている人が八割近くを占めているということで、有識者のアンケートとほぼ同様の傾向を示しているということは伺っているところでございます。また、クローン技術を人に適用してはいけない理由として、人間の尊厳上の問題があるからと、このことを挙げた方が最も多い全体の七割を占めているというふうにも伺っているところでございます。
 そこで次に、禁止をした理由について伺いたいと思います。
 法案の第一条には、「人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性がある」ということで規制をしているわけでございますが、特に今回、人クローン個体、これを禁止するという点でなぜかという具体的な御説明をいただきたいのでございます。とりわけ、人の尊厳ということはこれまで法律になかった言葉でもございますので、その点、あわせてお願いをいたします。
#113
○国務大臣(大島理森君) クローンの個体化というのは、一番突き詰めていけば、人間の尊厳の侵害あるいは生まれてくる人間の生命、身体への危険、親子関係の家族秩序というものがあると思いますが、道具化だと思うんです。大島理森と同じコピーをつくってもだれも喜ばないかもしれませんが、何かに利用する、つまり生命を道具化する、ここの危険性と尊厳への侵害であり、社会秩序への挑戦であり、あるいは生命というものに対する我々が人類として生まれてからこの方持っている一つの価値観、そういうものに対する挑戦であろうと思うんですね。やっぱり人間が人間を道具化するというところに一番の反社会性があるのじゃないでしょうか。
#114
○畑野君枝君 クローン小委員会の論議でも、そうした道具化、手段化あるいは人間の育種、それから特定の個人の遺伝子が複製された、そういう点での人権の侵害のことが言われておりますし、またそれらを勘案すると、社会的な観点からは、人間の個人としての自由な意思や生存が尊重されているという状況とは言えないという憲法上の理念に著しく反する問題、それから親子関係等の家族秩序の混乱、そして安全性の問題を含めて言われているわけですが、大体そういう御認識だということでよろしいでしょうか。
#115
○国務大臣(大島理森君) そのとおりでございます。
#116
○畑野君枝君 それでは次に、人クローンの個体をつくることを禁止しているという点で国際的な合意形成はどのようになっているのか、また禁止とされている理由はどのようになっているのかという点について伺いたいと思います。
#117
○政務次官(渡海紀三朗君) 国際的にこの議論が開始されたといいますか、議論されるようになった一つの発端は例のドリーの誕生だったというふうに思います。哺乳類におけるいわゆるクローンの誕生というものがクローン人間の可能性というものを切り開くものとして世界に衝撃を与え、その後、さまざまな議論が行われております。
 先ほど来の議論の中でも説明されておりますが、ユネスコとか欧州評議会、国際的な場ではやはり人の尊厳に反する行為であると。先ほど少し大臣との間で議論もなされました。これは、人の尊厳というのは大変難しい解釈でございますけれども、等の理由が一番コンセンサスがあるようでございまして、クローン人間の禁止の方針が決議されるなどしておりまして、国際社会においてもこの技術規制の方針が打ち出されているところでございます。
 先進国の間でも、御案内のように、デンバー・サミットでクローン個体産生を禁止する国内措置を講ずるというふうな申し合わせもされております。
 法文上は先ほどから議論されておりますが、細かい説明はどういたしましょうか。よろしいですか。
#118
○畑野君枝君 していただけますか。
#119
○政務次官(渡海紀三朗君) 法文上の枠組みは、従来からそういった法文上持っておられる国はありますし、生殖医療の規制の枠組みを持っていたイギリス、フランス、先ほどから小宮山先生の議論の中にもそういうお話がございますが、それからドイツ。ドイツについては、既存法規の枠組みの中でこのことを担保しております。
 また、法文の解釈により、人間の尊厳を脅かす行為の認識のもと、クローンの個体産生の禁止措置がとられております。特に、フランスは生命倫理法という法律を一九九四年に十年ぐらいかかって議論してつくったと聞いておりますが、その中で優生操作という行為に当たるということで禁止をされております。
 アメリカだけが少し、消極的というわけではないんですが、アメリカというのは、御案内のように、大変自己責任というのを大切にする国でございまして、研究の自由の観点もあって、まだ法文化するとか、そういうことは行われていないようでございます。しかし、規制はされていないんですが、NIHとか、それからもう一つNSF等のさまざまな予算の分野で規制するとか、そういったことで、現実には人クローン個体産生というものは国としては、政府としてはやらないという方向でやっているようでございますが、御案内のように、アメリカでとにかくクローンベビーをつくるというような団体があらわれたりして、これからその行方が注目されるところでございます。
 その他さまざまな国、例えばロシア、韓国、イスラエル等についても個体産生の禁止について、イスラエルは平成十年に禁止法が制定をされておりますし、それぞれの国で、約三十ぐらいの国でこういった措置がとられているというふうに聞いておるところでございます。
#120
○畑野君枝君 今、大臣また政務次官からもお話がありましたが、やはり人の尊厳というのは本当に守らなくてはならないというふうに思います。年報医事法学の巻頭言の中でも、人間の尊厳が特に強調されなければならないのは、それが侵されやすい領域であり、その典型例の一つが生命倫理の領域であるというふうに言われているわけでございます。
 それで、次に具体的に法案の第一条の中身についてちょっと伺いたいんですが、「クローン技術又は特定融合・集合技術により作成される胚を人又は動物の胎内に移植することを禁止する」と言っているわけですけれども、この点についてもう少し具体的に御説明をしていただきたいと思います。
#121
○政府参考人(結城章夫君) この法案は、人クローン個体などの産生を防止することが目的でございます。現在の技術水準を考えますと、人または動物の子宮にかわるような人工子宮の技術はございません。クローン個体などを産生するためには、人クローン胚などを人または動物の母胎に移植することがどうしても必要になってまいります。したがって、この法案におきましては、個体発生に至る前段階とも言える人クローン胚の母胎への移植を禁止するという措置をとったわけでございます。
   〔委員長退席、理事岩瀬良三君着席〕
 なお、この法案では見直し規定もございますので、将来もしも母胎への移植なしに個体の産生が可能となるような技術革新が生じた場合には、その時点で必要な見直しをしていくことになるかと思っております。
#122
○畑野君枝君 そうしますと、胎内に移植するということは子宮の中に戻す行為ということで、それは犯罪行為の要件であるということになることかと思うんですが、その犯罪行為の主体なんですけれども、これはどういう人が対象となるんでしょうか。
#123
○政府参考人(結城章夫君) 法案の第三条で母胎への移植は行ってはならないとなっておりまして、それでもし違反があった場合は処罰されるわけですけれども、その処罰される者は人クローン胚などの母胎への移植という実行行為を行った者ということになります。ただし、母胎への移植はこれは一人で行えるものではございませんで、これを共同で行った者あるいは協力した者も刑法上の共同正犯、共謀共同正犯あるいは教唆犯、幇助犯といったことで処罰される可能性がございます。
 例えば、クローン胚などを胎内に移植される女性についてですが、積極的にその計画に加わり、母胎への移植行為に御本人が加わった場合、これは正犯として処罰されると考えられますし、人クローン胚と知りながらみずからの母胎への移植を認めた場合にもこれは共犯として処罰されるものと考えております。
#124
○畑野君枝君 女性にも大変深くかかわってくる問題だということがよくわかりました。
 次に、二つ目の大きな規制の問題について移りたいと思うんですけれども、クローン技術等による胚の作成、譲渡及び輸入の規制等適正な取り扱いを確保する措置を講ずるものとしている点でございます。この点については、指針に従って届け出をするということで禁止とは違った内容になっているわけですが、その妥当性について伺いたいと思います。
   〔理事岩瀬良三君退席、委員長着席〕
#125
○政府参考人(結城章夫君) この法律で規制の対象になります特定胚は九種類ございますが、そのうちの四種類につきましては法律で直接禁止をしております。残る五種類のものについては、これは仮にその個体産生が行われたとしましても反社会性がそれほど大きくない、最初の四つに比べれば大きくないということで、これにつきましては指針でコントロールをいたしますが、その指針の中で、母胎への移植は行ってはならないということを指針の中に書き込んで禁止をしていきたいと思っております。
#126
○畑野君枝君 そのようにされているというのは、一つは科学研究の自由の問題、そして先ほど申し上げましたヒトの胚は人の生命の萌芽とする生命倫理とのバランスということがあるかと思いますが、その点についてはいかがですか。
#127
○政務次官(渡海紀三朗君) 人クローン胚を含めた特定胚の取り扱いでございますけれども、必要な規制の実効性を担保しつつ有用な研究についてはできるだけその進展が阻害されないようにということが大事であろうというふうに思っております。そういうことに一番なじむのが届け出制ではないかなと。指針による届け出制で自由な発想を担保しつつ、しかし内容はちゃんとチェックして、反社会性の強いものとか、これはやってはいけないというものはきっちりとその規制の中でチェックをしていくということが大事なんだろうというふうに思っております。
 これまでの議論の中でも随分なされた議論でございますが、やはり研究というのは真理の探究でありますからできるだけ自由な環境の中でやるのが一番いいんだと。しかし、これは事、大事な人クローン胚に関することであるとか、さまざまな倫理に関する問題がありますから、このいわゆる研究の自由度の問題と進展の問題と、そしてやはり規制というものをうまく調和させるにはこういった制度が一番よいであろうというふうに考えられて、今回このような措置をしたところでございます。
#128
○畑野君枝君 その点で、特定胚の取り扱いに関する指針に基づく届け出の問題ですけれども、その内容をどこでどのように審査をしていくのか、この点についてきちっとチェックがされているのかという点についてはいかがでしょうか。
#129
○政府参考人(結城章夫君) 特定胚の研究のように倫理的な問題を含む研究につきましては、まず研究機関に設置される倫理委員会などにより自主的に研究計画の妥当性を判断することが適切だと考えております。法案に基づきこれから策定いたします指針において、その点についても記載していく予定にいたしております。
 それで、研究機関の倫理委員会でまず判断をした上で、その後に法案に基づいて文部科学大臣に届け出がなされることになるわけですけれども、文部科学大臣は届け出の受領後六十日間の実施制限の期間内にその届け出の内容が真に適合しているかどうかを確認し、問題があれば計画変更命令を出す、あるいは場合によってはその計画の廃止命令を出すというような対処ができることになっております。
 なお、文部科学大臣が指針への適合性について判断する場合には、必要に応じて専門家の御意見も聞いて判断をしていくことにしたいと思っております。
#130
○畑野君枝君 その専門家の御意見を伺うという点では、考えていらっしゃる機構とかシステムとか、そういうものがあれば教えてください。
#131
○政府参考人(結城章夫君) 文部科学省のもとに科学技術学術審議会という新しい審議会ができますが、そこの中の担当の委員会なり分科会なりに御意見を聞くことにしたいと思っております。
#132
○畑野君枝君 そうした新しい科学技術学術審議会と、そのもとに専門委員会がつくられていく方向だということでございます。
 そこで、ヒト胚研究小委員会の中で、これはヒトES細胞樹立機関という例でございますのでちょっと違うわけでございますが、例えば、そういう樹立機関内に審査委員会、IRBをつくるときに、こんなふうな中身にしたらいいのではないかという提案もあるんです。
 例えば、その中では、「生物学、医学等関連する生命科学の諸分野、法学、生命倫理の専門家など、樹立計画の技術的、倫理的妥当性を審査するにふさわしい識見を有する委員から構成されている」とか、「委員会の構成員には、複数の外部有識者が含まれ、男女両性が含まれている」とか、こういう具体的な提案も出ているんです。
 私は、こういうのはなかなか重要じゃないかなというふうに思いまして、例えば国としてそういう審査機関をつくるときにも、先ほど女性の参加という話もございましたけれども、そういう審査委員会の中にもこういうようなことも検討しながらいかれたらいかがかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
#133
○国務大臣(大島理森君) 先ほど小宮山委員にもお話ししましたように、また先生からの御指摘もありましたように、多様な方々に何らかのきちっとした意見を聞くような仕組みを考えていかなきゃならぬと思っております。
#134
○畑野君枝君 女性にも大変深くかかわる問題だということが先ほどからも言われておりますので、ぜひ女性、男性、両性含まれるという点で進めていただきたいというふうに思います。
 それから、次に、今指針の運用の担保措置ということで六十日間というお話がございました。あわせまして、何か問題が起きたときのいろいろなチェックのあり方という点についても伺えますでしょうか。
#135
○政府参考人(結城章夫君) 届け出を受けまして、書面によってその審査を行うわけでございますけれども、それで十分判断ができないという場合には、報告の徴収であるとか現場への立入検査ということもできるようになっております。
 それで、その届け出内容が指針に適合したものであるかどうかをきちっと確認すると。もし適合しないという届け出に対しては計画変更命令を出しますし、全く合っていないというものであれば廃止命令も出せるということになっておるわけでございます。
#136
○畑野君枝君 ぜひそうした体制も人員あるいは内容を含めて充実させていただきたいと思います。
 次に、ES細胞、胚性幹細胞ということで、あらゆる組織、器官に分化する能力を持つ細胞というこの問題の研究についてなんです。
 これは今論議されている法律とは違うものでございますが、しかし別の指針をつくるというふうにも伺っているんです。それで、人クローン胚からES細胞をつくる、この問題についてはどのように考えていらっしゃるか伺います。
#137
○政府参考人(結城章夫君) ヒト胚研究小委員会の報告におきましては、余剰胚、これは通常の両性生殖、生殖医療の現場で出てまいる余剰胚でございますが、余剰胚から樹立されたES細胞研究の実績が蓄積されるのを待って人クローン胚からのES細胞の樹立の是非を検討すべきであるということでございまして、現時点では人クローン胚からのヒトES細胞の樹立は行わないこととすべき旨が示されております。
 したがいまして、ヒトES細胞の取り扱いに係る指針、これは法律とは別にこれからつくりますけれども、その中においては、この指摘を踏まえまして余剰胚に限ってES細胞を樹立することを認めていく方針でございます。
#138
○畑野君枝君 その余剰胚の扱いについてなんですけれども、先ほどからも言われているように、提供者の方の同意など、慎重に行われるべきだというふうに思うんです。
 そこでまず、厚生省に伺いたいんですが、不妊治療を含めた生殖補助医療全般の中で、余剰胚についてインフォームド・コンセントを含めてどのような対応をされていくのか、この点について伺います。
#139
○政府参考人(堺宣道君) まず、不妊治療についてでございますが、先ほど来御議論いただいている受精卵、体外受精だけの問題ではございませんで、ほかの方法もいろいろあるわけでございます。
 そういうことを知った上で、知っただけではなくて、いろいろ適合等があろうかと思いますので、そういうことも含めて、それじゃ受精卵の移植にしましょうかどうしましょうかということとか、それからその受精卵、卵をとって顕微鏡下で受精させるとたくさんとれるわけですが、それの保存はどうしましょうか、それからめでたく妊娠されたと、そのときに余った余剰胚はどうしましょうかと。いろいろなことでその患者さんといいますか、御夫婦といいますか、正しい情報が必要であろうかと思いますし、それに基づいて的確な判断というものが大切だろうと。そのためには、適切なインフォームド・コンセントということが重要になってくるということであります。
 それで、厚生省といたしましては、現在、研究班を設置いたしまして、体外受精を受ける患者への医師による説明の現状、あるいは患者へのカウンセリングのあり方に関する調査研究というものを行っているところでございます。
 今後、この研究成果も踏まえて、関係省庁とも連携しながら、不妊治療を受ける患者に対する適切なインフォームド・コンセントの実施を推進するための方策について検討していきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#140
○畑野君枝君 これは、提供は無償提供ということでよろしいですね。
#141
○政府参考人(堺宣道君) そのとおりでございます。
#142
○畑野君枝君 次に、余剰胚の扱いにつきまして科学技術庁に伺いたいと思いますけれども、今後、どのように扱っていかれるのか、指針について伺います。
#143
○政府参考人(結城章夫君) この法律で規制対象にしております特定胚を作成する際に、その材料として生殖医療の余剰胚を用いる場合には、その材料として使うということについても規制の対象になってまいります。
 具体的には、この法案に基づく指針においてその取り扱いの要件を盛り込んでいくことになりますが、その中身といたしましては、余剰胚の提供者のインフォームド・コンセントが適切に得られていること、あるいはその余剰胚の授受が無償で行われることといったことを指針で定めていきたいと思っております。
#144
○畑野君枝君 ヒト胚研究小委員会の基本事項の提案の中でも、「妥当性の確認」ということで、「第三者的な立場を含めて、研究実施機関内で十分な検討が行われるとともに、国または研究実施機関外の組織の確認を受けること。」というふうになっておりまして、この点では適切な対応を強めていただきたいというふうに思うわけでございます。
 さて、こうしたES細胞の研究について、将来的な商業化の問題についていろいろと懸念が出されているというふうに思います。先ほども御議論がございましたけれども、いろいろな有用性は認めつつも、商業化については慎重な対応も求められているんではないかと思います。世界の動向でも、例えばアメリカを中心とした企業戦略の影響という点では、アメリカのジェロン社の横暴が社会問題化したということで、特許出願で技術を囲い込む、こういうことが指摘をされているわけでございます。
 ですから、クローン技術というのは、活用によっては人間の生命の尊厳を根底から脅かすということですから、徹底した監視と規制が必要だというふうに思うわけですね。そういう点では、将来的な商業化、今はその段階ではないというふうにも伺っておりますが、どのように対応をされていくのか伺います。
#145
○政務次官(渡海紀三朗君) 現代の技術においてまだ商業化の段階というのはなかなか来ないというのは先生おっしゃるとおりだと思います。しかしながら、時代の変化とともに、このことが例えば医療とか、きょう午前中、水島先生のお話にもございましたように、薬の分野とか、さまざまな分野で商業的な分野に広がる可能性は否定できない。
 そのことについて、基本的に倫理にもとるようなことは将来とも規制をしていかなきゃいけないだろうと思いますが、今からそのことを予見しながら、そのときにどう対処するかというのはそのときの世論、これは国内世論だけではなくて世界的な世論、またその技術の安全性等に対する信頼性、そういうことによってそのときに判断をしていかざるを得ないんだろうな。これは個人的な意見も入っておりますが、そんなふうに考えております。
#146
○畑野君枝君 そうしますと、そのときに法律の問題も検討するということになるわけですね。
#147
○政務次官(渡海紀三朗君) 当然そういうことになると思います。
#148
○畑野君枝君 続きまして、三つ目の問題として、私は生命倫理と情報公開の問題について伺いたいと思います。
 研究の自由を守る、学問の自由を守る、こういうことと同時に、生命倫理、これをきちっと守っていくということであるわけですが、やはり一番のかぎは自己規制といいますか、みずからそういう点を守っていくということだと思うんですね。やはり社会の規範に裏づけられたものにしていく上では情報公開と国民的な議論、認識によって、今お話があったように、つくられていくものだというふうに思います。
 それで、例えばクローン羊のドリーが生まれたときに世論はどんな受けとめだったかということで、日本のマスコミでもいろいろ取り上げられましたが、ドイツのシュピーゲルという雑誌の表紙が、これは日本のマスコミでも紹介されました。よい例ではアインシュタインがいっぱい生まれるんじゃないか、悪い例ではヒトラーがいっぱい生まれて独裁国家ができるのではないか、あるいは一番前にあるのはスーパーモデルでございますから、マリリンモンローではないようでございますが、現代のスーパーモデル、この三人がコピーをされているというのが、国民的にはそのようなものかなという認識の反映の一つであったというふうに思います。
 例えば、三井情報開発株式会社総合研究所が社会的合意形成に関する調査というのを科学技術振興調整費調査研究報告書ということで出されているわけですけれども、例えば生命科学技術にかかわる情報は九七・二%の回答者の方が適切に提供されていないと。それから、国民の側に適切な情報を受け入れるだけの十分な体制がないというのが四八・三%という回答者でございます。
 ですから、参考人の方から意見もされましたけれども、情報公開をさらに具体化していく、あるいは国民的な議論のためのパブリックコメントのお話もありましたが、フォーラムなどを例えばつくるというのはいかがかと。それから、女性の意見、それから子供の権利にもかかわりますから子供の意見も存分に聞いていく。こういう点では、大島科学技術庁長官、いかがかと思いますが、情報公開の具体化やフォーラムなどの国民的な論議の問題、それから女性や子供の意見も取り入れていくという点でぜひお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#149
○国務大臣(大島理森君) 情報公開とかパブリックコメントということは本当に心してやっていかなければならないものだと思います。
 私は、実は政治家というのは、まさに国民の皆さんの意見を聞いたり、国民にも説明をしたりしながら国民の意見を代弁して、そしてこの国会の中で議論するとするならば、各政党、各先生方も積極的にこの問題を国民に語りかけて、そしてそこで対話をすることが実は一番正当なパブリックコメントではなかろうか、このように思います。
 一方、政府は、もちろんそのことに意を本当に重んじて、先ほど来先生方から御意見をちょうだいしたことを踏まえながら、多くの方々に意見をいただくなりあるいはまた伝えることに努力しなければならぬと思います。そのありようはいろいろ知恵を出してやっていきたい、このように思っております。
#150
○畑野君枝君 第三者機関をつくってほしいなという意見もあるわけですね。ですから、いろいろなことがあると思いますので、ぜひ今後とも広く御検討をしていただきたいと思いますし、私たちも一緒に進めてまいりたいというふうに思います。
 さて、こうした生命倫理の問題あるいは自己規制の問題を考えてまいりますと、やはり教育にまたざるを得ない、まつと言わざるを得ないと私は思います。生命倫理の問題は、今高等学校の倫理の教科書ではいろいろと扱われるようになりまして、私も文部省から幾つかコピーをいただきました。
 ある教科書では「生命倫理」ということで、「高度に科学技術が発達した現在、私たちは、生命の尊厳にかかわる新しい問題に直面している。」とか、それから別の教科書では「医療技術と生命倫理」ということで、「現代の科学技術のめざましい進歩によって、いまや人間の生命そのものに直接手を加える医療ができるようになってきた。」ですとか、また別の教科書では、「日本では、一九八〇年代に入って、欧米から生命倫理学が導入された。男女生み分け、体外受精、脳死と臓器移植などの話題が、新聞やテレビをにぎわすようになり、わたしたちの先端医療についての関心を高めた。 今日の先端医療では、臓器移植から遺伝子治療まで、およそ人間の体のすべてが、技術的に操作できる対象となった。「人間の生命に聖域なし」とまでいわれるのは、そのためである。 このようにみてくると、わたしたちの課題は、現代の医療技術と生命の尊厳をいかにして調和させるかということにある。その際、人間の「いのち」は、かけがえのない価値であることを忘れてはならない。」、このようにも紹介をされているわけでございます。
 この点で伺いたいんですけれども、参考人の方からもございました小学校の段階からこうした問題について学んでいくという点につきましては、その重要性について文部省としてはどのようにお考えか、伺います。
#151
○政府参考人(御手洗康君) 御指摘ございましたように、生命科学の最先端の技術につきましては高等学校の理科の生物あるいは基礎理科というようなところで扱うことになっておりまして、それに伴いまして理科の学習あるいは倫理や現代社会の学習の中で今御指摘のような学習が考えられるわけでございますけれども、小中学校では、その発達段階から考えまして、直接、御指摘のような先端科学技術を利用した生命倫理の問題ということについて、その内容あるいはそれに伴う生命倫理について取り扱うということは極めて困難であろうかと存じております。
 しかしながら、小中高等学校を通じまして道徳あるいは生活科、社会科、さらには理科などの各教科の学習を通じまして、例えば小学校では三、四年生におきまして身近な動物や植物を飼育、栽培していくという学習がございます。また、五、六年生におきましては、動物の発生や成長、生物の体のつくり、こういったことを学習する場面があるわけでございまして、こういった具体的な科学的な学習を通じながら生命尊重の態度を育てていく。これは各教科のみならず学校教育全体を通じて小中高等学校におきまして極めて大事な課題と考えているところでございまして、発達段階に即しながら人間尊重という観点から教えてまいりたいと考えております。
#152
○畑野君枝君 そういう点では、さきの参考人の御意見でも、生命倫理に関する教育は小学校段階から始めるべきであるとか、また別の参考人の方からも、社会の行動規範となる倫理は小学校のころから教える必要がある、こういう御意見があるわけでございますから、ぜひこういう声にもおこたえしていただきながら、理科教育あるいは性教育などの面も含めてまたカリキュラムなども御検討をしていただければと思います。
 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。
#153
○日下部禧代子君 社会民主党の日下部禧代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本法案についての共通の認識というのはわかりにくいということではないかなというふうに思うのでございます。これは、先ほど政務次官も、やっとわかりかけてきたら審議が終わりかけてきたというふうに非常に正直な御感想をお漏らしになっていらっしゃいました。私もわかりかけてきたその最初のところかもわかりません。そのわかりにくいということはやはり不安ということにつながってまいると思うのでございますね。
 そこで、その不安を一層募らせるということで申し上げてよろしいのでしょうか、十一月十七日の本会議におきまして、法務大臣のお答えでございましたが、人クローン個体がもし生まれた場合という御質問に対してのお答えがございました。「万が一にも人クローン個体が生まれてきた場合には、その人権を尊重し、通常の人と同様の取り扱いを行うことが適切であると認識いたしております。」というふうなお答えでございました。これを本会議場でお聞きなさった皆様方、ぞっという気持ちが一瞬なさったのではないかなと。やはりこれは、「万が一にも」というお言葉がついておりますけれども、このようなお言葉をいただくということは、一般の人ならずとも、議員もやはり不安を募らせたのではないかなというふうな思いがいたします。
 そこで、大臣にお聞きしたいのでございますが、この法律が非常にわかりにくい、法律というのは余りわかりやすいものはございませんけれども、特に日本の法律というのはわかりにくいというので定評がございます。この法案によってさらに難解な法律がまた一つ誕生したということになろうかというふうに思うわけでございますが、その難易度、わかりにくい方からABCDE五段階にしてこの法律はどのあたりに位置するのか。
 それからもう一つ、法務大臣のお言葉、これは大臣としてなかなかおっしゃりにくいかもわかりませんが、率直な御感想をいただきたいと存じます。
#154
○国務大臣(大島理森君) 最初の方からお答えをさせていただきますが、私に対しても衆議院でそういう質問があったときに、私はこう答えております。そういうことを想定しておりません、想定しないためにこの法律をつくるんですと、これで答えてまいりました。法務大臣の場合は法律の番人という立場で多分あれは言ったのかなと。その番人というのは、要するに人間というものをどう考えるか、生まれた場合とかなんとかというのでお答えをしたのかなと思っておりますが、法律を提案している主管庁の大臣としては、そういうことを想定しないためにつくったものですということをまず一点申し上げます。
 それから、第二点のABCDの難易度というのは、私もアチーブメントテストで育ったものでございますから、難易度と言われると、クローンの個体をつくっちゃいけないということだけは非常にわかりやすい法律だろうと思いますが、読めば読むほどなかなか、あれとこれとこうなってああなってというと非常に難しい点がありまして、難しい部分と明確な結論の部分と両方あって、答えも、なかなか難易度をつけられない難易度ですが、難しいなという感想を初め持ちました。ABCDの中で、どうでございましょうか、ちょっと答えづらい、難しい質問でございます。
#155
○日下部禧代子君 やはり解答というのは丸をつけないと、試験問題でございますと、これは文部大臣も兼ねていらっしゃいますので、その点、採点ができないのでございます、私、元教師といたしまして。やはり難易度というのがつけられないくらい難しいというふうな解釈をさせていただきたいと存じます。
 ところで、難しさとわかりにくさの一つに用語の問題があろうかと存じます。学者でも、科学者でございますね、なかなかわかりにくいというお言葉を私は何人からか伺っております、水島先生はおわかりになるのかもわかりませんが。
 例えば、ハイブリッド胚と通常言っているものを融合胚、あるいはまたキメラ胚と言われているものを集合胚というふうにこの法案ではなされておりますけれども、この理由は、これはいわば造語と言ってもよろしいのではないかなというふうに思うわけでございますが、その理由、それからまた、この言葉は、例えば融合胚、集合胚というような言葉は学会でオーソライズされているのでございましょうか。あるいはまた、先ほど大臣は英訳にして海外に発信するとおっしゃいましたが、その英語に訳されるときにはハイブリッド胚の方でなさるのか、融合胚でなさるのでしょうか。
#156
○政府参考人(結城章夫君) 一般論といたしまして、法律では極力片仮名の表記を避けることが原則だというふうに思っております。
 それで、キメラ、ハイブリッドですが、これは立派な英語でございますけれども、研究者の間のみで用いられている専門用語でございまして、一般国民に広く認識されている言葉ではないというふうに思っております。このため、この法案では明確に技術内容を表記できる用語として集合胚、融合胚という言葉、用語を使わせていただいております。
 一方、クローンでございますが、クローンという言葉は、クローン羊ドリーの誕生以来広く国民一般に用いられていることから、この法文の中でも用語としてそのまま片仮名で用いてございます。そういうことで使い分けをさせていただきました。
 それから、英訳する場合は恐らくキメラ、ハイブリッドという英語の単語にすることになるかと思っております。
#157
○日下部禧代子君 今のお答えでなおさらやはりこれはわかりにくい。その使い分けをどうやってするのかということになりますね。
 学会ではそれじゃ融合胚を使わないでハイブリッド胚と使うんですか。それとも集合胚と言わないでキメラ胚というふうに使うわけでございますか。
#158
○政府参考人(結城章夫君) 集合胚、融合胚というのは余り一般的に学会では使われていない、この法律で定義した用語でございます。学会ではキメラ、ハイブリッドと通常言われていると聞いております。
#159
○日下部禧代子君 法律において片仮名は使わない方がいいというだけであって、使ってはならないという取り決めはないと、昨日法制局に聞きましたところ、そういうふうに答えておりました。ですから、これは非常に現場では混乱なさる大きな原因ではないかというふうに指摘をさせていただきたいと思います。これからますますそれは、学会でお使いになる場合、あるいは法律でお使いになる場合というふうに区分けをしたりしなければならない。そして、外国での論文は英語のままであるというふうなことといいますと、ますますこれは混乱であります。混乱ということはやはり信用の問題にもかかわってきます。日本が外国に向かって発信しますときに、やはりそれはちゃんとオーソライズされた言葉できちっとした発信をすべきだということを私は指摘しておきたいと思います。
 それから、クローン胚の定義でございますけれども、ヒト胚分割胚、これはヒトの胚を分割してクローンをつくることでございますね。それから、ヒト胚核移植胚、これは成体ではなく胚の細胞核を移植してクローンをつくることでございますが、この二つの胚に関しましてはクローン小委員会では扱われていないように私は思っております、これは平成十一年十一月十七日の報告書でございますけれども。ところが、生命倫理委員会の決定、あるいはまたこの法案において突然この二つについて言及されたわけでございます。これはどのような根拠でこのクローン胚の定義というのがこういうふうに拡大されたのでございましょうか。
#160
○政府参考人(結城章夫君) そこの経緯を御説明申し上げます。
 クローン小委員会におきましては、親の生命倫理委員会の方から、哺乳類初の体細胞クローンであるドリーの技術をヒトに適用した場合にどのような問題点があるか、またどのような規制を行うべきかという観点からの検討を依頼されたといいますか、おろされたということで議論を始めたわけでございます。したがいまして、クローン小委員会におきましては体細胞クローンの問題について詳細に分析、検討いたしましたが、ドリー以前から存在した技術でありますいわゆる受精卵クローンあるいは胚分割クローンということについては検討は行っておりません。
 他方、親の生命倫理委員会の方におきまして、クローン小委員会の報告書を受けまして、体細胞クローンについては明確に法律で禁止することといたしましたけれども、人工的な一卵性双生児などを生み出す類似の技術、これはヒト胚分割胚あるいはヒト胚核移植胚ということになりますけれども、その類似の技術についても検討を行いまして、個体産生に至らないよう具体的な措置を講じるべき、具体的にはこの法律に基づく指針で禁止するという結論に達したものでございます。
#161
○日下部禧代子君 今お答えの中にございましたように、この二つの胚というのも、これはそれぞれに子宮に戻せば、受精卵クローン、核分割クローンということになるわけでございまして、やはり受精卵クローンの個体ができる可能性はあるわけですね。現在、不妊治療にも使用されております。
 今おっしゃったように、一卵性時間差双子というようなことの可能性、これはお猿さんとか牛なんかではもう出産例があるというふうに聞いておりますけれども、そういたしますと、今経過はお話しになりましたが、両方ともこれは禁止すべきではないかというふうに思うんですが、いかがでございますか。やはり指針でよろしゅうございますか。
#162
○政務次官(渡海紀三朗君) 今、対象になっておりますヒト胚分割胚、ヒト胚核移植胚、先生おっしゃるとおり時間差で胎内に移植すれば双子なりできるわけでございますけれども、いわゆる既に存在をする人と同一の遺伝子構造を持つというものではございません。これはあくまで、いわゆる有性生殖による受精卵、その受精卵にある種の技術を加えることによって双子なり、当然後者のヒト胚核移植胚の場合は三つ子でも、場合によっては四つ子でもできるわけでございますけれども、そういった意味では随分意味が違うだろうと。体細胞から核移植のように無性生殖によってあらかじめ特定の遺伝子構造を持つ同じヒトクローンをつくるということとは随分意味が違うだろうということ。もう一つは、そういう意味においては反社会性という意味で随分差があるのではないか。
 それから、先生も御指摘のように、今のところ猿で成功していると、私は余り知らなかったんです、先生おっしゃいましたけれども。不妊治療の一つの方法として研究の余地もあるというふうなことが科学的知見として言われておるようなことを考えますと、やはり現在のところは指針で規制をしておいて、そして将来、この研究の進展によって柔軟に対応していくという方が適当であるというふうに判断をして、本法律案ではこのようにさせていただいたというところでございます。
#163
○日下部禧代子君 次に、動物性融合胚でございますが、これは動物の細胞核をヒトの除核卵に移植する、ヒトからヒトへ、ヒトから動物へというヒトクローンの逆、いわば変形動物クローンというようなものだというふうに解釈してよろしいのかと思いますが、ヒトの卵の中で動物を育てようということでございますね、易しく言うと。これはクローン小委員会、それからヒト胚研究小委員会の報告書においても言及されていないというふうに私、承知しております。本法案ではこの胚を母胎に戻すことを禁じていない特定胚の中に入れて、届け出れば認められる余地のある研究としていらっしゃいますね。
 なぜ審議会で論議されていないものが法案に入れられたのか。それからまた、これは研究者の方々に聞きますと、研究者も想定しなかったようなことであると。このような研究を容認する形になるのか、指針に従えば容認するということにもなり得るわけですね。私としては、こういう想像もできないような胚というのはやはり作成自体を禁止すべきだと思いますが、この三点につきまして御回答をお願いしたいと存じます。
#164
○政府参考人(結城章夫君) 動物性の融合胚につきましては、先生今おっしゃいましたとおり、生命倫理委員会の報告書では明示されておりません。検討されておらないものでございます。
 この法案を立法化する、法案を書く作業の中でクローン、キメラ、ハイブリッドといった技術を全部規制していこうということでございまして、理論的にあり得るものはすべて網羅する、いわば法律の抜け道を残さないという観点で考えていきまして、この動物性融合胚についても定義をし、規制の中に含める必要があるというふうに判断したものでございます。
 この動物性融合胚は、動物性集合胚と同じように、万一個体が生まれてきましても、それは基本的に動物でございます。したがって、反社会性ということについていいますと、人クローン胚などに比べれば反社会性は非常に低いと、少ないということでございまして、指針によるコントロールが妥当であるというふうに区分させていただきました。
 なお、今、先生おっしゃいましたように、この動物性融合胚というのはそもそも、恐らくだれもつくらない、つくっても何の価値もないものでございまして、現時点で研究の有用性も認められませんので、これからつくります指針においては、母胎への移植は当然禁止いたしますけれども、胚をつくること、そのこと自体も認めないという扱いにしたいというふうに思っております。法律の抜け道をつくらないためにどうしても書く必要があったものでございます。
#165
○日下部禧代子君 やはり、これは男性だとそういうことがおっしゃられるのかなと今思いながらお聞きしていたんですが、女性でございますと、自分の卵子の核が抜かれて、そして動物の核が入れられるということ、そのような実験、考えただけでも、もちろん想像できませんが、想像しただけでも何か戦慄が走るような、そういう感じがするわけでございます。女性の卵子の採取と、それから研究への利用のあり方ということにつきまして、やはりどうしてもこれはきちっと考えねばならないなという今ますますそういう思いを強くいたしたわけでございます。
 ところが、この女性の卵子の採取と研究への利用のあり方については、クローン小委員会でも、また厚生科学審議会先端医療技術評価部会ヒト組織の移植等への利用のあり方に関する専門委員会におきましてもこれは議論の対象外であったと。これは二十四日の本委員会の参考人質疑で位田隆一氏が言明していらっしゃるんですね。一体、どこで議論され、女性の卵子を研究用にしても構わないという判断をなさったのでございましょうか。
#166
○政務次官(渡海紀三朗君) きょうの議論の中でも女性の立場からの御発言がたくさんございまして、先ほど来大臣もおっしゃっているところでございますけれども、報告書の中にも、これはヒト胚研究小委員会の議論の中で、「採取に際して女性の心身に対する負担が重いヒト卵を使用することの倫理的な問題点を考慮し、」というふうに明記されております。そして、政府案においても特定胚の研究は非常に厳格な要件のもとでのみ研究が実施可能であるというふうにされているところでございまして、特に生殖細胞等の提供者に対し十分なインフォームド・コンセントを行うとともに、個人の情報保護に努めるなど、提供者の立場に十分配慮した手続がなされるように規定しているところでございます。
 なお、先生の御質問の生命倫理委員会を初めどこにおいても検討されていないのではないかということでございますが、これも議論の中でありましたように、現在のところ考えられているのは、今のところは厚生科学審議会の中で生殖医療が議論をされております。恐らくその整理が済みますと、よく言われる余剰胚についての扱いということが研究開発の場合にどういうふうになるのかというふうな順序で整理がされてくるのだろうというふうに思っておりまして、先ほど大臣からお話もございました総合科学技術会議でのいわゆる生殖医療も含めた議論というものの中でしっかりとそういった議論もなされるべきものであるというふうに認識をしておるところでございます。
#167
○日下部禧代子君 今議論がなされるべきであるというふうにおっしゃっているのは、なされていないということでありますよね。整理されてからというふうにおっしゃいましたけれども、それは整理されていないということだというふうに思うんですね。
 そういうような議論がきちんとされていない、そういう状況の中で女性の卵子を研究利用して構わないというような、そういう判断をするということはやはり私は時期が早過ぎるというふうに思うのであります。この先端医療技術評価部会ヒト組織の移植等への利用のあり方に関する専門委員会、これは位田先生も委員でいらして、そこでは対象外であるというふうに二十四日に言明なさっております。
#168
○政務次官(渡海紀三朗君) 少し私の説明がまずかったかもしれませんが、現在のところ、指針の中でも余剰胚に限って研究に考えるということにする、そういう議論でございますし、そういった意味で、その以前の扱いというものを待って、それから議論をしようということを申し上げたわけでございます。もちろんインフォームド・コンセントの中でそれも行うということでございます。
#169
○日下部禧代子君 一体どこで議論されたかということで、保護の部分はまた別の部分でありまして、私が申し上げているのは、どういう手続で研究利用して構わないかという問題を尋ねているんじゃないんです。女性の卵子の採取と研究への利用のあり方についてきちっとした議論がなされているかいないかということを聞いたわけでございまして、今の御回答は私は満足できないものであります。
 次に質問いたしますが、日本産科婦人科学会の会告では、生殖医学の基礎研究に限って卵子や受精卵、胚を研究に利用してよいというふうに定めておりますね。そうですね。本法案はこの限定を外すことにもなると考えられるのでありますが、本法案を策定するに当たりまして、日本産科婦人科学会あるいは厚生科学審議会生殖補助医療のあり方に関する検討会などとの議論はなさったのでございましょうか。その整合性はどのようになっておりましょうか。
#170
○政府参考人(結城章夫君) 日本産科婦人科学会の会告におきましては、ヒト胚や精子、卵子の研究利用は生殖医学発展のための基礎的研究あるいは不妊症の診断治療の進歩に貢献する目的のための研究に限って取り扱うことができるとされております。研究目的の限定については、研究が具体化する段階で調整が必要であるものの、その取り扱いについてはインフォームド・コンセントの取得やプライバシーへの配慮など、政府案と同様のものというふうに考えております。
 この法案の作成に当たりましては、日本産科婦人科学会とは密に連絡をとるとともに、生命倫理委員会においてヒアリングを行うなどして議論を重ねてまいりました。また、生命倫理委員会においてはそのほかの関係の審議会の審議状況にも常に注意をして審議を進めてまいっておりまして、議論の内容が政府全体として一体的かつ整合性のとれたものとなるように体制整備にも配慮いたしております。
 生命倫理委員会がまとめました報告書やこの法案についても、厚生省あるいは厚生省の審議会との間で情報交換、すり合わせをしてまいったところでございます。
#171
○日下部禧代子君 次に、ES細胞の研究の指針に関して幾つかの御質問をさせていただきたいと思いますが、ES細胞の研究について科技庁は、今までの御議論を聞いておりましてもまだ指針ができていない、これからだということでございますね。
 そこで、文部省の場合には、平成十年八月三十一日付の文部省告示第百二十九号で、「ヒトの体細胞(受精卵、胚を含む。)由来核の除核卵細胞への核移植は、研究においてこれを行わないものとする。」と、その研究を禁止しています。
 また、その後、平成十年十二月二十五日、これは文部省学術国際局研究助成課長の名前で、ヒトの胚性幹細胞、ES細胞に関する研究の中には、人のクローン個体の作成をもたらすおそれのある研究と同様に扱うものとするという旨の通知が各大学及び関係機関に出されておりますが、文部省、このとおりでよろしゅうございますか。
#172
○政府参考人(遠藤昭雄君) お答えいたします。
 文部省では、学術審議会の報告を踏まえまして、「大学等におけるヒトのクローン個体の作製についての研究に関する指針」というものを、今おっしゃいましたように、平成十年八月に告示しております。その中では、人のクローン個体の作成に関する研究を禁止し、これに該当するおそれのある研究計画については、該当しないことについて大学などの長と文部大臣の確認を求めるというふうにしております。また、ES細胞に関する研究の中には、人のクローン個体の作成をもたらすおそれのある研究、これに該当する可能性のあるものもあり得るということから、先ほどの指針の手続にのっとるというふうにしております。
 現在、科学技術会議におきましてこのES細胞に関する規制のあり方についても鋭意検討中でございますので、それがまとまるまでの間は大学などの研究者には先ほどの指針に基づく手続を遵守するよう指導しているところでございます。
#173
○日下部禧代子君 ところで、今議論しております法案の指針というのは、この文部省の指針とどのように関係するか。と申しますより、この文部省の指針に従ってつくられるのか、その指針作成の際、この文部省の指針というのはどのように尊重されるのかということをお聞きしたいと存じます。これは科技庁に聞きます。
#174
○国務大臣(大島理森君) 科技庁長官としてお答えをいたします。
 法律に基づいた指針でございますので、そういうところに今文部省で出している指針が融合されていくことに相なる、このように考えていただいていいと思うんです。法律に基づく指針でございますから。そして、それに基づいて、そういう場合は文部省の方の指針はその中に融合されていくと、こういうふうに考えていただいていいんじゃないかと思います。
#175
○日下部禧代子君 今、科技庁長官としてお答えくださいました。
 文部省では、人のクローン個体の作成をもたらすおそれのある研究は行わないものとすると、その研究を禁止しているわけですね。その趣旨に従うと、子宮に戻すことだけを禁止するのではなく、そのおそれのある研究も禁止するのが当然というように解釈ができるのでございますが、その点、文部省、科学技術庁両方にお答えいただきたいと存じます。
#176
○政府参考人(遠藤昭雄君) お答えします。
 先ほど申し上げました指針は、国全体としてクローンに関する方向性が議論中でございましたので、それが定められるまでの当面の措置として暫定的に策定をされたものでございます。大学では先端的な研究をしておりますので、まず全体の議論が固まるまでに、とりあえずこういう指針を定めようという当面の措置として定めたものでございます。
 したがいまして、今般、科学技術会議の報告に基づいて現在御審議中の法律案が成立、施行されるということになりますれば、この法律を踏まえまして、指針の廃止を含めた必要な見直しが行われなければならないというふうに考えています。
#177
○政府参考人(結城章夫君) 今の文部省の立場と全く同じでございます。
#178
○日下部禧代子君 ところで、生殖補助医療目的でつくられたヒトの胚を生殖補助とは関係ない再生医学の研究のために提供させるというのは倫理的に大きな問題を持っているというふうに思うんです。他の先進国と同じように法規制の対象とする、あるいは倫理原則と審査チェック体制を整えるべきだというふうに思うのですが、二十四日、参考人の質疑で井村科学技術会議生命倫理委員長が、ヒト胚ES研究の指針づくりも科技庁だけではなく、ヒトゲノム研究の倫理指針と同じように関係省庁と共同でやるというふうな御答弁があったように私、記憶しておりますが、再生医学研究においてもやはり倫理指針を四省庁共同で策定すべきだと思いますが、その点、いかがでございましょうか。
#179
○政府参考人(結城章夫君) ES細胞の研究は余剰胚を使うことに限定しておりまして、そのために新たに卵をとるとか胚をつくるということはいたしません。それから、余剰胚というのは生殖現場でもう不要になったものですけれども、それを研究に使う場合も、御本人といいますか提供者の事前同意がどうしても必要でございます。そういうことを踏まえて研究をやってまいります。
 それで、ただいまのES細胞のガイドライン、指針でございますけれども、これから科学技術会議の方でそのための検討をしていく、その場合は科学技術庁ということではございませんで、政府全体、各省も入った検討になっていくということでございます。
#180
○日下部禧代子君 ところで、ヒト胚研究小委員会が二十九日、あしたでございますね、再開されるというふうに聞いておりますが、その目的あるいはその作業予定はどのようなことになっておりますでしょうか。まずお聞きしたいと思います。
#181
○政府参考人(結城章夫君) 今回再開いたしますヒト胚研究小委員会でございますけれども、ことしの三月にヒト胚研究に関する生命倫理委員会報告におきまして、今後の課題とされましたヒトES細胞の取り扱いに関する枠組みの策定やヒト胚研究全般のあり方にかかわる検討を開始する前段階といたしまして、報告書のレビューあるいは最近の研究開発動向のヒアリングを行う機会として明日開催するものでございます。
 今後の予定といたしましては、長期間にわたる国会での御議論、きょうさらに続いていきますけれども、国会での議論の結果も踏まえ、この小委員会としての検討課題を適切に設定し、検討を進めていく予定にいたしております。
#182
○日下部禧代子君 それ、いつごろまでというふうに決まっていないのですか。
#183
○政府参考人(結城章夫君) 結論を出す目標は今のところまだ決めておりません。
#184
○日下部禧代子君 ところで、現在こうやって私ども参議院でこの法案について審議しております。その審議の最中にこの小委員会を開くということの意味はどういうところにございますか。
#185
○政府参考人(結城章夫君) この法案の附則の方でこれから検討を進めるようにということも書いていただいたわけでございまして、先ほど来の御答弁でありますように、年内にもそのための検討に入っていきたいというふうに思っております。明日の小委員会はそのための準備の会合ということで開かせていただきたいと思っております。
#186
○日下部禧代子君 まだ審議の最中でありますし、採決もしていないわけです。そういう中で委員会を、これもメンバーが前の小委員会のメンバーと何人かかわっていらっしゃいますが、そういう形で開かれるということは余り私は納得できないんです。この法案の審議が終了して、そしてこの中で我々が審議したことに関して、さてそれを受けてどうするかということであるべきではないかというふうに思うのですが、もう一度御回答をお願いいたします。
#187
○政府参考人(結城章夫君) 本格的な審議はこの国会の審議が済んだ後に入っていきたいと思っておりますが、明日はそのための準備の会合をさせていただきたいと思っております。
#188
○日下部禧代子君 もう一度伺います。この法案との関係はどのようになっているんでしょうか。それほどお急ぎにならなければなりませんか。やはり法案の審議を、法案に反映させるということであるならば、その準備段階もやはり法案の審議が終わってからというふうなのが普通考えられることではないのかと私は思うのでございます。そうなりますと、お急ぎになるということはなぜだろうと、やはり人間ですから疑問を感じてしまうわけであります。この法律の規制対象からヒト胚研究を除外したということになっちゃうのかなとも考えられなくもございません。その点、いかがですか。
#189
○国務大臣(大島理森君) 日下部先生の御指摘は、要はこの法案が議論されてまだ結論が出ていないときにヒト胚研究小委員会をあした開くのは国会の論議を無視しているんじゃないか、あるいは軽視しているんじゃないかというふうな御注意、質問ではないかと思います。
 今の法案は、今日までも議論してまいりましたが、私どもは、要するに個体としてのクローンは絶対つくっちゃいかぬというまずこの法律だけはきちっとしましょうと、そして有性生殖を含めたヒト胚の問題も含めての議論というのはこれからさまざまな形でまたしていかなきゃなりません。だとすれば、先ほども私申し上げましたが、まだまだ生命倫理の問題というのはこれから国民の合意をたくさんにつくっていかなきゃならぬということであれば、そういう意味で、先ほど答えましたように、まずそこの部分においても皆さんからの御意見もたくさんございまして、決して国会の論議を無視した、あるいはそういう途中でこの議論を始めるということではなくて、そういういろいろなさまざまな議論、そしてライフサイエンスという広い世界の中での一方においての倫理問題というものも議論していくという意味で立ち上がるということでございますので、むしろ先生方の御議論もそういうところに生かさなきゃならぬ、このように思っているところでございます。
#190
○日下部禧代子君 善意に解釈しますと、急いで委員会を再開なさったということは、この法案に委員会でのさまざまなまた御審議を反映させて、よりいいものにこの法案を時間をかけてつくろうではないかというふうにもとらえられるのでございますが、その点、いかがでございますか。
#191
○国務大臣(大島理森君) この法案と全く違う方向の問題を例えば議論するとかなんとかということであれば、この法案の中身にかかわる問題で違った議論を政府が始めるとかなんとかというのであれば、いろいろな御指摘をいただいて、おしかりいただいたりすることもあるかもしれませんが、いわゆるライフサイエンスの生命倫理という基本がございます。今の法案は、そういうふうな意味で、クローン個体というものを絶対やっちゃいかぬという法律をまずつくりましょうと、そういう以外にも例えば有性生殖の全体の一環としてやれという御議論も盛んにされました。
 そして、そういうふうな意味で、私たちは、そういう広い意味での生命倫理の問題というのは、まだまだ多分これからずっと議論して国民の合意を探していかなきゃならぬところがあるだろうという意味で、国会の審議と明日から行わせていただく、立ち上がらせていただく委員会とは競合するものではないと私は思っておるのでございます。
 そういうふうな議論を始めながら、また先生方から御指摘いただいたヒト胚の違った世界の部分についてどう考えていくかということを議論していくことは、むしろ先生方からはもっと早くやれとか、そういうふうな御議論もございますし、そういう意味で競合し相反するものではないのではないかなと思って、御理解をいただきたいと思います。
#192
○日下部禧代子君 ありがとうございました。
#193
○田名部匡省君 非常に難しくて、この法案は何回読んでも素人には理解できない部分というのが多いんです。
 先ほどの質問の中で、私はいろいろ聞いておって何か場当たり的だなと、何でそんなに急ぐのかなと。国民のコンセンサスといっても、なかなかこれコンセンサスを得るというのは、国民全体がどこまで理解できるか。
 私は、逆に言うと、倫理観とか宗教観というものの違いが随分あるなという感じがするんですね。アメリカはアメリカでそうだし、ヨーロッパはヨーロッパで、統一された宗教の中で倫理観とかそういうものがあって、じゃ、こうしようと。我が国はそういうのは残念ながら非常に欠如していると思うんです。関係ないものには関心を示さない。
 ところが、一方では、どうしても子供が欲しいという人もある。この間も参考人の方に質問をさせていただいたけれども、里親制度というものがあって、クローン人間だと言われることが困るという話もありますけれども、例えば人工授精で生まれた子供をみんなあの子は違う違うと言うかと。もらって育てても、愛情さえあれば、あれはもらってきた子だからおかしいおかしいということを言う人は余りいない。
 そういうことを考えると、このクローン人間というのをそんなにみんなが非難するだろうかなと、こう思ってみたり、いろいろ私も考えてみて、この法案の中を見ると、三条では「人又は動物の胎内に移植してはならない。」と書いてあるけれども、四条の方では何かやっちゃいかぬと。それじゃ、どの部分は認めるのかな、そういう疑問を持ったり、できるものは一体何なのかと。
 研究というのは、水島委員も冒頭に、わかりやすくて私どもも、ああ、なるほどなと。研究というのはやっぱり本当にやっておかないと、今はそういう感じでやっておっても、将来やがてどういうふうに開けていくかというのはだれもまだお目にもかかっていない、わからない分野を、最初からもうだめと決めつけていいんだろうかな、こんな感じを実は持つんですね。この辺に対する意見をお聞かせいただければありがたいと思うんです。
#194
○国務大臣(大島理森君) 田名部委員の今の御質問の中に、率直に私の所感から考えますと、研究という分野はまだわからないし、そして一方クローンという人間、まさに人間の愛情が一番大事じゃないか、そうすればそういう人間が生まれたとしても本当にそれがいいとか悪いとか言えるのかな、非常に率直な悩みを持ちながら御質問というか所見を述べられたような気がします。
 なぜそんなに急ぐ必要があるのかという冒頭の問題提起が一番の質問であったと思いますが、これは通常国会でも議論してもらいたいということで提出した。一方、いろいろ今までもお答えしましたが、非常にクローン人間の産生というのはもう技術的にもあるいは容易なところまで来ている。したがって、そういうふうなこと等々を考え、外国のある団体はクローンの人間をつくってさしあげますよという、もうそういう具体的なパブリシティーをやっている。
 ということをした場合に、我が国としては、先ほど申し上げましたように、人間の尊厳あるいは秩序、そういうものを満たすために個体としてのクローンは絶対つくらないようにしましょうと。このことだけは、宗教観が違え、あるいはまた倫理観がそれぞれによってあったとしても、そこだけは共通した認識だということが我が国のとるべき方向だし、そういう意思ではないかという思いで、そこはきちっと抑えましょうということで今度の法案を出させていただきました。
 一方、おっしゃるように、研究と倫理という問題をどのように調和をとるか。私は、調和ということよりは生命倫理というものが基本にあった上での研究開発だ、こうあるべきだと、こう申し上げておるところでございます。そういう中で、研究開発の有用性、必要性というものはおっしゃるとおり必要であろうという形での法案の骨格になっているということを御理解いただきたい、このように思います。
#195
○田名部匡省君 いろいろ含めて、臓器移植のときも中山先生が一生懸命になってあの運動をされて、言葉ではわかっても、いざとなると脳死は人の死だということに対する国民のどうしても相入れない感情というのはあったと思うんですね。我々も議員にいろいろ言われても、これ認識不足なものですから、この種のものはやっぱり専門家でないとなかなか理解できないという面がありまして、倫理原則が明確でない中で何となく対応されてきたと。
 一方では、研究の方はどんどん進んで、もういろんなことをやるようになるということを考えてみると、こういうのは日本にできる制度的な基盤というのはやっぱり欠けているなと。どうしてもこっちの方が先になっちゃってね。それも、さっき言ったように、関係ない人はそんなものは一向に関心を示さないんですね。切実に感じている人だけはもう一生懸命になるけれども、人のことを我が痛みのように思わない国民性というのがありまして、もうすべてに私は相通ずると思うんです。
 さっき言ったように、この間ちょっと資料をいただいたんですけれども、スイスの新興宗教団体が発表して、アメリカでつくりますと、それはアメリカに規制がないからだと。こういうことを見まして、アメリカじゃこれできるのかなと思って、それで、できるとすれば、さっき言ったように、アメリカでは補助金とか、そういうものは出さないんだと。補助金を出さないで、補助金をもらわなければ何ぼやってもいいようになっているんですか。
#196
○政府参考人(結城章夫君) アメリカにおきましては、平成九年三月にクリントン大統領が人クローン個体産生に関する連邦資金の支出を当面禁止するという大統領令を発しました。また、議会に人クローン個体の産生について禁止するという法案を出したわけですけれども、議会の会期終了に伴いまして廃案となっております。したがって、現在、アメリカでは連邦レベルでの人クローン個体産生を禁止する法律は存在しておりません。
#197
○田名部匡省君 私は、農水省の研究所へ一遍行ったとき、種子、種、いろいろ聞いたら、もうほとんどアメリカが独占的に持っているんですね。何かやろうというとアメリカに金を払わなきゃ、先ほどのお話のとおり、もう全部やられちゃっているんですよ。だから、そんなに日本というのはお粗末なのかと言ったら、アメリカはすごい研究が進むからという話を聞いて、その限りでは私はやっぱり負けないような研究というのはどんどんやるべきだ、こう思っているんです。
 今はクローン人間をつくることは禁止だと。それもそうだろうかな、こう思う部分はあるんですよ。ただ、それであれば、とりあえずクローン人間はつくらない、後はもっともっとコンセンサスを得たり、専門家が集まって、そしてもう完璧なほどになって、じゃ、この分野は人間のために認める分野にしていこうとか、こういう人に限ってはこうだとかというふうにした方が、今これ急いでやらなくたって、そう急に、あしたからばんばん研究してつくるという話でもない。
 国民のコンセンサスといったって、七〇%とか八〇%なんというのも何か書いてあったようですけれども、そんなにわかっているのか、コンセンサスを得るためにわかっている人は多いのかなと。例えば、この間の参議院選挙制度の非拘束とか拘束とかいったって全然わかりませんよ、何のことやら。それと同じように、わからないものをコンセンサスを得たんだと、こう言ったって、それはね。だから、そこまでやるんでしたらもっと徹底して、私がこの程度の質問ですから、その人たちが本当にこのことをわかるようにしてあげた方がいいし、特にこれは女性の意見というのを尊重すべきだと思うんですよ。
 大体男性は無責任で、女性の方が、これはどちらかというとお産でも何でも、十カ月もおなかに入れて大事に育てて産むのは女性ですから、女性のいろんな組織もあるだろうし、いろんなところでやっぱりもっと議論を深めてやってからでも私は何か遅くない気がする。何でこんなに急いで、中途半端に、場当たり的にやらなきゃならないのかなと。もっと専門家の人たちの意見も──何時までですか、私は。もう終わり……
#198
○委員長(市川一朗君) もうそろそろ終わりです。
#199
○田名部匡省君 終わりですから、残念ですがやめますが、反対ではないんですよ、私は。将来はどういうふうに変わっていくかというのも定かでない。どうしても子供が欲しくて欲しくてどうにもならぬという人たち、エイズの問題もきょうの新聞に出ていましたけれどもね。
 私のことを言って恐縮ですけれども、女房が帝王切開やったものですから、二回目の子はお産の日をもう過ぎていたんですけれども、やっぱり帝王切開しなきゃならなかった。もう一人欲しいからといって、そしていろんなことをしてもらって、三回帝王切開しているんですね。やっぱりそういう人も世の中にはいるんですよ。
 ですから、そういう人たちのことを考えて、今はすぐつくる必要はないにしても、将来本当にどうなっていくのか、世界がどうなっていくのか、変わるのか変わらないのか、いろいろありますので、拙速主義で余りばたばたやってしまって、後から、いや、あのときは間違っていたというようなことのないように。
 それから、今申し上げたように、研究というのは本当に大事なんですね。それはどんどん奨励して、外国に負けないようにやるということは私はもう大賛成であります。ただ、今急ぐ必要があるのか、もっと臓器移植のときのように時間をかけて、そういうところまで丁寧にやった上でおやりになったらどうかと、こう思うんですが、どうですか、最後に。
#200
○国務大臣(大島理森君) 田名部委員の御意見は、子供を産むあるいは欲しいという願望、リプロダクトというんでございましょうか、そういうふうな権限というものに対してどうこたえていくかという思想が必要ではないかという御意見も一方にあり、だからこそ研究というものを大いに進めなさい、法律でがっちり決めるということはどんなものかという、こんな趣旨であったと思います。
 大筋では大変私どもも同じような趣旨を持っておるところもありますが、ただ一つ、例えばその御両親がリプロダクトの権利があり願望があるとしても、クローン個体だけは人間の尊厳と社会の秩序を壊す、そういう観点から反社会性がございますと、そういうふうな観点からここは十年という罰則規定を設けたというのは、そういう願望があったとしても、それは日本の国としてはやっちゃいけないということで提案させていただきました。
 ですから、それ以外の部分のところで、もちろん法律で規制しているところもありますが、それ以外の部分のところはどのような研究が進むか、ある意味じゃ予想もつかないようなところですから、ガイドラインという形で規制をしながら、必要であればそこは見直しをして、またそのことについて国会で御論議いただくのは当然になってくるんだろうと思いますけれども、そういう研究との調和ということでこういう法律にさせていただきました。
 拙速ではないかという御指摘もちょうだいしましたが、もう二年三カ月も各般の御議論をいただき、通常国会でも一たん出させていただき、各党においてもそれぞれの御議論をいただいてきているところであり、国際社会の中で既に、今、先生御指摘いただいたように、クローンの個体をつくってさしあげましょうという団体が出てきている。先ほど水島先生の技術的な観点からのお話もちょうだいしたときに、やはりクローン個体、そういうふうなものはきちっと法律で規制するということは、その緊急性ということは私は認めていただきたいもの、そういう意味でこの法律を出させていただいた、そういうふうに御理解いただければと思っております。
#201
○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。
 今回、クローン技術を規制する法案についてさまざま御質疑ございました。先ほどから科学技術庁長官を含めて、生命の尊厳のために今回の法案が必要になったというお話ございました。
 私も、科学技術に実際携わっている人間にとっては、技術が進歩しますと、ほかの面でいろいろな形で規制しなくてはいけない問題が起こっても、案外進めたくなるというのが現実のその当事者の実感であろうかと思います。ですので、この法案、法律が拙速というよりも、科学技術が進んでいるのが人間の現代文明に適応しているのかどうか、また思想、哲学に関しての考え方からの規制も必要かというふうに思っております。
 そこで、今回、クローン羊のドリーの誕生がきっかけになったわけでございますが、クローンという中でまだ余りよくわかっていない問題について最初に質問させていただこうと思います。
 体細胞のクローンと受精卵のクローンというのは、具体的にはどのような相違があるのか、ここのところの御認識をお伺いしたいと思います。
#202
○政府参考人(結城章夫君) 体細胞クローンといいますのは、体細胞の核を除核した未受精卵に移植する無性生殖により、特定の個体と同一の遺伝子構造を有する個体を作成する技術でございます。
 一方、受精卵クローンといいますのは、有性生殖によってできました受精胚を材料といたしまして、新たな遺伝子構造を有する個体を作成する技術でございまして、いわば人工的に一卵性の多児を作成する技術でございます。
 このように体細胞クローンが無性生殖の技術であるのに対し、受精卵クローンは有性生殖の技術であることが根本的に異なっているところでございます。
#203
○福本潤一君 さまざまな形で水島先生からもお話があったようでございますが、体細胞クローン人間をつくることの問題点と受精卵クローン人間をつくることの問題点、この違いもお伺いさせていただきたいと思います。
#204
○政府参考人(結城章夫君) 科学技術会議の生命倫理委員会におきます議論では、核移植技術を用いて個体が産生された場合、その核の由来、すなわち有性生殖からの核か、あるいは無性生殖からの核かによって生ずる問題が非常に大きく異なるというふうにされておるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、受精卵クローン、すなわち有性生殖の核を利用するヒト胚分割胚あるいはヒト胚核移植胚につきましては、これは人工的に一卵性の双子などの多児を生み出すことと変わりないわけでございまして、あらかじめ社会に存在する人のコピーをつくり出すものではございません。
 一方、特定の人と同一の遺伝子構造を有する人を生み出す体細胞クローンの場合でございますけれども、無性生殖である体細胞の核を利用するわけでございまして、あらかじめ社会に存在する人、既にある人のコピーをつくり出すものであって、人の尊厳の保持や社会秩序の維持などに重大な影響を与える可能性が高いというふうになっております。
 このように人の尊厳及び社会秩序に対する影響は、受精卵クローンと体細胞クローンでは非常に大きく異なるわけでございます。
#205
○福本潤一君 おっしゃるように、体細胞クローンの問題点というのは深刻なものがあるということでございます。
 私も、物質の循環という意味で考えてみたときに、物質の循環というのは物理学でも生物学でも追っていますけれども、その中における原子の循環、こういう循環でいいますと、今人間は追い切れていない、ただわかったような気がしている。
 例えば、一万年前ぐらいのあのときの水は、それを構成する原子はどこにあるか。今、私の鼻の上にその水が来ていると言っても、うそなのか本当なのか科学者にも私にもわからないという原子レベルでの話で考えると、実際は科学者ですらわかっていない。ただ、体細胞を構成する分子等々が違うものだろうと。それが現実に形成されて一個の人間として成長したときに、同じ遺伝子を持っているという人間がこの世に存在してきたというときの混乱というのは、やはり倫理的にも哲学的にも考えていかなければいけないものではないかというふうに認識しております。
 そこで、先ほどからさまざまな質問をされていて、私も聞けていないところがあるので重なるといけませんし、きょうは早く終わる予定でございますので、若干の法律の中身の質問に先に入らせていただこうと思います。
 といいますのは、指針というものが直罰をかけない部分についてあるわけですが、指針の中で特定胚の適正な取り扱いを図っていくことになるというふうに出ています。そうしますと、この規制の実効性、これが具体的にどういうものかということを議論しておく必要があるだろうと思いますが、現在、指針はどういう方向で検討されておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
#206
○政府参考人(結城章夫君) 科学技術会議の生命倫理委員会のもとにございますヒト胚研究小委員会におきまして、人クローン胚などの取り扱いについて技術的な観点から研究上の有用性の評価を行うとともに、人クローン個体の産生などにつながるおそれのあることから、どのような規制を行うかについて検討が行われたわけでございます。
 ことしの三月に取りまとめられました報告書におきましては、人クローン胚などの取り扱いに関する指針の基本的な内容となるべき事項が取りまとめられてございます。この報告書を踏まえまして、これから法律に基づいて定めます指針におきましては以下のようなことを具体的に決めていきたいと思っております。
 一つは、個体産生に至らないように適切な取り扱いがなされること。二つ目には、あらかじめ動物実験が十分に行われていて、ヒト細胞を用いた確認が必要な段階であるなど、研究の必要性、妥当性が認められること。三つ目に、胚の特徴に応じた研究期間の制限があること。さらに、ヒトの細胞を使用する場合には、提供者のインフォームド・コンセントが適切に取得されていること。さらに、作成した特定胚の授受により商業的な利益を得ないことなどを規定することにいたしております。
#207
○福本潤一君 この指針の中で特定胚の適正な取り扱いがしっかりと確保されているかどうか、この点をお願いします。
#208
○政府参考人(結城章夫君) この法案では、技術の急速な進展に柔軟に対応できる指針を定め、指針の遵守義務を課すとともに、その遵守状況を確認するために届け出制を採用いたしております。
 特に、届け出をすれば直ちに研究を開始できるということではございませんで、届け出後六十日間は研究に着手できない実施制限を課しております。その六十日間の間に国で指針に適合しているかどうか、その内容をチェックいたしまして、必要な場合には計画変更命令、立入検査などによりまして国が強制力を持った監視を行うことが可能な制度になっております。
 このように指針の遵守義務と届け出制とにより規制の実効性を担保しながら、同時に技術の急速な進展に対応可能な柔軟性もあわせ持つ制度といたしておりまして、特定胚の適正な取り扱いの確保に最も適した規制の形となっていると考えております。
#209
○福本潤一君 六十日間という実施制限期間が設けられておるということでございますが、この間の審査は非常に大事なものになってくると思います。
 そうしますと、特定胚の適正な取り扱いが確保される手段について具体的に説明していただきたいということと、簡潔で要領よくお願いしたいと思いますが、さらに届け出が殺到して、この六十日間で間に合わないという場合はどうするのか、この点もあわせてお願いいたします。
#210
○政府参考人(結城章夫君) 届け出を受け取りました後に、それが指針に適合するかどうかを審査するわけでございます。それで、どうも判断ができないという場合には、その計画自体に問題があるというふうに判断をいたしまして、指針に適合しているという判断ができるような内容になるように計画の変更命令を出すことになります。また、明らかに届け出が指針と適合していないと判断される場合には、これは計画の廃止命令を出すことにいたしております。
 このように特定胚の取り扱い計画が指針に適合するものと判断されない限り、実施制限が働いておりますので、不適切な特定胚の取り扱いは行われないというふうに考えております。
 それから、届け出が殺到して六十日間でできるかという問題でございますけれども、届け出の審査は文部科学省の担当部局において行うわけでございますけれども、必要に応じまして生命科学に関する外部の専門家などの助言をいただくということで、効率的に審査を進めてまいりたいというふうに思っております。
 仮に大量の届け出があった場合は、専門家によりますワーキンググループを設けるなどによりまして集中的に検討を行いまして、六十日間での審査を全うしていきたいというふうに思っております。
#211
○福本潤一君 そういう意味では、このクローン法案との関係で、生殖補助医療とクローン技術を一体的に規制すべきではないかという意見もあったり、そういうことの質問もしたいと思っておりましたけれども、重なっておるようでございますので時間を短縮して、今現実にクローン技術の中で日本はどのレベルに行っているのかというのを具体的に聞かせていただこうと思います。
 特に、ES細胞研究というのが期待されておる。障害のある細胞、組織等の治療に非常に有効であるというふうに言われております。この技術レベルと、研究者が具体的にできるようになったから推進したいという意欲、それと、この規制法との関係が大きな話でありますし、国民の福祉につながる有用な研究を逆に阻害するのではないかという御心配もあるようでございますので、現在、どの程度のレベルに行っているのか、特に我が国におけるES細胞研究というものに絞って、どの程度進んでいるのかをお伺いしたいと思います。
#212
○政府参考人(結城章夫君) ES細胞の問題はこの法律とは直接は関係ないわけでございます。法律の規制の外側の問題でございます。
 ES細胞でございますけれども、万能細胞と呼ばれておりまして、体を構成するどのような細胞にもなることができる特別な細胞でございます。そういった特徴を生かしまして、将来的に移植等に生かそうとする研究が現在はマウスのES細胞を用いて行われておるところでございます。
 我が国における状況でございますけれども、これまでにマウスのES細胞から脳神経細胞や血管、心臓の筋肉などをつくり出すことに成功したとの報告がございます。
 神経細胞の作成においては、特定の骨髄細胞の上でES細胞を培養することによりほぼすべての細胞が一週間で神経細胞に変化したと。このうち一部はドーパミンという神経伝達物質をつくることが確認されたということでございます。
 また、血管の作成については、ES細胞を特定の細胞に分化させるだけでなくて、それらをもとに管状の立体構造を持つ組織を作成した点が非常に画期的でございまして、心筋梗塞や血管障害性疾患の治療への応用などが期待されております。
 また、日本ではマウスだけではなくて猿のES細胞の樹立もニホンザルなどを用いて成功しておりまして、よりヒトに近い性質を持つ細胞株として期待されております。
 なお、人間のES細胞の研究はまだ日本では始まっておりません。
#213
○福本潤一君 そういう意味ではまだ今回の法案にはかかわっていないわけでございますけれども、このES細胞を研究しているときはヒトの受精胚を壊さないと現実に研究できないという問題が起こっていますし、今後、将来において今回の法案の次に来る可能性もあるなというふうに思っておりますけれども、このES細胞研究に法規制を今後かけていこうというようなことの検討をされておられるのかどうかも含めて、この機会にお伺いしておきたいと思います。
#214
○政府参考人(結城章夫君) このヒトのES細胞につきましては生命倫理委員会におきまして検討がなされまして、それだけでは個体にならないことから法規制が不可欠なものではないということと、国際的にも端緒についたばかりの研究でありまして、技術的進展に適時対応していく必要があることから、柔軟な対応が望ましいとされておりまして、ガイドラインという法律によらない規制が妥当であるという結論になったものでございます。
 なお、ヒトES細胞から直接個体をつくる場合には、これはクローン技術あるいは融合・集合技術を使って特定胚という段階を経る必要がございますので、その段階になればこの法律の中に入ってまいりまして、法規制の対象となってまいるわけでございます。
#215
○福本潤一君 さまざまな方が長時間質疑されていた中でさまざまな御意見が出たと思います。
 その中で、田名部先生の方からは、時期尚早、拙速にならないようにというようなこともございました。こういう生殖医療、またES細胞等の問題を包括的に扱うということになりますと、国会で審議するだけではまた時間も短いということもあると思います。と同時に、大切な生命の尊厳にかかわる問題だと思います。
 そういう意味では、生命科学の問題は日進月歩していきますので、今後、迅速かつ正確にしていくためには、国民的論議をできるようなシステムをこういう国会の中の委員会以外にもつくっておくという必要が具体的にはあるのではなかろうかというふうに私は思います。
 ですので、政府としては、そういう国民全体にかかわる問題、と同時に一日ぐらいではわからないような問題、深刻な問題ではあるけれども、議論も大きく喚起する必要があるという問題に関して、特に生命科学の問題に関しては国民的議論を喚起していくシステム、こういうものも必要だと私は思いますけれども、どういうふうなお考えでおられるか、この点をお伺いして終わりたいと思います。
#216
○国務大臣(大島理森君) きょうの一日の議論をお伺いしても、今、先生が御指摘いただいたところは共通して御指摘いただいているところだと思っております。
 したがって、政府としても、今後どんどん発展していくライフサイエンスの世界を逆に堅実に着実に発展させていくためにも、そういう倫理問題というものを絶えず議論していくという心構えと仕組みをある意味では考えていかなきゃならぬのかなと、こういうふうな思いです。そして、そこには女性の意見も含めて多様な国民が出されるようにしなきゃならぬという御指摘もいただきました。
 そういうことを踏まえながら、今後とも検討して、また必要であればそういう場をつくることも含めていろいろ検討してまいりたいと思っておりますし、既に科学技術会議の生命倫理委員会というのが今日まで大きな役割を果たしてまいりましたので、そういう場を今後とも利用しながら議論していくということで、また努力してまいりたいと思います。
 御指摘を踏まえて、いろいろと模索しながら、多くの国民の議論をいただけるようなことを考えてまいりたいと、こう思っております。
#217
○福本潤一君 では、時間を大幅に余らせまして、私、時間を早目にさせていただく御無礼をわびながら、これで終わらせていただきます。よろしくお願いします。
#218
○委員長(市川一朗君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後三時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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