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2000/11/07 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第3号
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2000/11/07 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第3号

#1
第150回国会 法務委員会 第3号
平成十二年十一月七日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月七日
    辞任         補欠選任   
     阿部 正俊君     脇  雅史君
     吉川 芳男君     山内 俊夫君
     角田 義一君     前川 忠夫君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                佐々木知子君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                鴻池 祥肇君
                竹山  裕君
                山内 俊夫君
                脇  雅史君
                小川 敏夫君
                竹村 泰子君
                角田 義一君
                前川 忠夫君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
                中村 敦夫君
   国務大臣
       法務大臣     保岡 興治君
   政務次官
       法務政務次官   上田  勇君
       金融再生政務次
       官        宮本 一三君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      属  憲夫君
       警察庁刑事局長  五十嵐忠行君
       法務省民事局長  細川  清君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民事再生法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出)
○外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案(
 内閣提出)

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房審議官属憲夫君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、法務省民事局長細川清君及び法務省矯正局長鶴田六郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(日笠勝之君) 民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○佐々木知子君 おはようございます。
 自民党の佐々木知子でございます。
 早速ですが、民事再生法等の一部を改正する法律案のうち、個人債務者の民事再生手続関係についてお伺いしたいと思います。
 まず、民事再生法は主として中小企業以上の規模の事業者の再生の手続として構想されたもののようですが、この法律が制定された当時、既に個人債務者についても民事再生手続が必要だとの認識は存在していたと承知しております。その社会的背景につきまして、提案理由説明では個人債務者の破産件数が急増しているとされておりますが、最近十年間における個人債務者の破産件数はどう推移しているのか、最高裁判所にお伺いいたします。
#6
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 個人債務者の破産事件の新受件数でございますが、平成二年には一万一千四百八十件でありましたが、翌年の平成三年にはその二倍以上の二万三千四百九十一件、平成四年には二年前の四倍近くの四万三千三百九十四件と急増いたしました。
 その後、平成七年までは四万件台前半で推移いたしましたが、その後再び増加傾向となりまして、平成十一年の新受件数は十二万三千九百十五件となったわけでございます。これは平成二年の新受件数の十・八倍の数字となっております。
#7
○佐々木知子君 急増しているということがわかりますけれども、今般、民事再生法に特則を設けることによって個人債務者向けの再建型手続を整備するものとして二つの特則が新設されております。一つが、第十章、住宅資金貸付債権に関する特則です。もう一つが、第十三章、小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則という次第でございますが、まず最初の特則に関して質問いたします。
 その背景には住宅ローンの返済ができなくなった個人債務者の増加があると思われますが、これまた最近十年間における住宅ローンの破綻件数はどう推移しているのでしょうか。
#8
○政府参考人(細川清君) 個人債務者が住宅金融公庫から借り入れた住宅ローンを支払えなくなったことから保証人となっている公庫住宅融資保証協会が代位弁済した件数は、平成二年度には五千件弱でございましたが、昨年度は一万五千件を超えており、十年間で三倍以上にふえております。また、その代位弁済の額でございますが、平成二年度には約三百七十億円でございましたが、平成十一年度には二千二百億円を超えており、十年間で六倍以上となっております。
 民間の金融機関が融資した住宅ローンの破綻件数につきましてはその数値が公表されておりませんが、住宅ローンの貸出残高は、平成十二年三月末現在で住宅金融公庫が約七十四兆円、これに対して民間の住宅ローンが約八十八兆円となっておりますので、民間の住宅ローンの破綻件数は少なくとも住宅金融公庫についての破綻件数と同程度はあるものと、このように考えているところでございます。
#9
○佐々木知子君 この提案理由説明を見ますと、再生計画による弁済の繰り延べを一定の厳格な要件のもとに認めるとのことですが、これは具体的にはどのような要件でございましょうか。
#10
○政府参考人(細川清君) 御指摘の住宅資金貸付債権に関する特則では、再生計画において住宅資金特別条項を定めることにより、住宅ローン債権者の同意がなくても裁判所の許可によって強制的に住宅ローンの弁済を繰り延べることができるようにしておりますが、他方、住宅ローンの債権者に不当な不利益を与えることがないように厳格な枠組みが設けられているところでございます。
 具体的に申し上げますと、住宅ローン債権者は住宅に設定された抵当権を有するなど優先的弁済を受ける地位にありますので、住宅ローンの債権の元本、利息、損害金等の減免を強制的に行うことは住宅ローン債権者の利益を不当に害することになります。そこで、住宅資金特別条項におきましては、住宅ローンの債権の元本、利息等の減免をすることはできず、その弁済の繰り延べを行うことができるということにしているわけでございます。
 次に、弁済の繰り延べの方法でございますが、これには三つの方法を用意しております。
 これは第百九十九条で規定しておりますが、第一の方法は、住宅ローンの債権のうちに既に弁済期が到来しているものは、住宅ローン以外の一般の再生債権の弁済期間、これは原則三年最大五年でございますが、この期間内に支払うこととして、まだ弁済期が到来していないものは当初の住宅ローン契約どおりに支払うというものでございます。これは、住宅ローンの弁済を遅滞して期限の利益を喪失した場合に、遅滞した分を一定の期間内に弁済することによって期限の利益を回復させようという考え方に基づくものでございます。
 第二の方法は、第一の方法による弁済計画を遂行する見込みがないという場合に、最長十年間七十歳まで住宅ローンの支払い期限を延長する、当初の約定期限に加えて十年間延長することができると、こういうものでございます。この方法による場合にでも住宅ローンの元本、利息等の全額を支払わなければならないわけですが、弁済期限が延長されることによって一回当たりの支払い額が少なくなることから、弁済計画の遂行が容易になるというメリットがあるわけでございます。
 第三の方法は、第二の方法によってもまだ弁済計画を遂行できる見込みがないという場合には、先ほどのように、最長十年七十歳まで支払い期限を延長するとともに、住宅ローン以外の一般再生債権の弁済期間内は元本の支払いを少なくするという弁済の繰り延べを行うことができるというものでございます。つまり再生の期間にはゆとりを持たせるということでございます。これは、住宅ローン以外の再生債権についても弁済しなければならない期間内は住宅ローンについての弁済の負担を軽減して、他の再生債権の弁済が終わってその支払いの負担がなくなった後に残された住宅ローンの債務を集中的に返済していくことができるようにすると、こういうことを目的とするわけでございます。
 なお、住宅資金特別条項の内容についての以上の枠組みは、裁判所の認可によって住宅ローン債権者の同意なしに強制的に住宅ローンの弁済の繰り延べを認めるための要件でございます。したがいまして、住宅ローンの債権者の個別の同意がある場合には、支払い期限を十年超えて延長するということもできるわけでございます。
#11
○佐々木知子君 それでは、住宅ローンの融資をした債権者の同意がなくても強制的にできると、裁判所の認可があればということですけれども、そのために債権者の利益が不当に害されるおそれというのはないのでしょうか、お伺いいたします。
#12
○政府参考人(細川清君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、枠組みについては厳格な要件が定められておりますが、そのほかにもいろいろ措置を講じております。
 まず第一に、弁済の繰り延べに当たっては、延長される期間についても住宅ローン契約で定めた利息を付さなければならないというものにしております。それから第二に、通常の民事再生手続では再生計画が遂行される見込みがないときに再生計画の不認可の決定がされるわけですが、住宅資金特別条項を定めた再生計画においては、当該再生計画が遂行可能であると裁判所が積極的に認定することができる場合でなければ裁判所はその再生計画を認可することができないこととしております。第三に、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける住宅ローン債権者に対して意見を陳述する機会を与えて、不認可事由があるかどうかということを調べることができるということになっております。
 このように、住宅ローン債権者の利益を確保するためにこの法律案では十分な措置を講じておりますので、住宅ローン債権者の利益が不当に侵害されるということはないものと考えております。
#13
○佐々木知子君 また、この特則では、住宅ローン債権は他の債権とは別枠で処理するとありますけれども、このような取り扱いによって他の一般債権者の利益が不当に害されるおそれというのはないのでしょうか。
#14
○政府参考人(細川清君) 住宅資金特別条項につきましては、住宅ローンの元本、利息等の全額を支払わなければならないのは先ほど申し上げたとおりでございます。そして、その内容も厳格に法定されているということも申し上げました。こういうふうに特別の保護を与えられております。
 しかしながら、住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議では、一般の再生債権者のみが議決権を有しており、住宅ローンの債権者は議決権が与えられておりません。したがって、住宅資金特別条項を定めた再生計画を受け入れるかどうかは、一般の再生債権者の意思にゆだねられていることになります。
 給与所得者等再生では、ここで住宅資金特別条項を定める場合もあるわけですが、こういう場合には再生計画の決議はそもそも行われないわけですが、その場合でも二年分の可処分所得を一般の再生債権者への弁済に充てなければならないものとしておりまして、住宅ローンの弁済にはこれ以外の原資を充てなければならないこととして、一般の再生債権者の利益が害されないようにしているわけでございます。
 また、住宅ローンの特則を設けることは、住宅ローンを抱えた債務者に対して、破産免責の手続ではなくて再生手続を選択するインセンティブを与えることになります。つまり、破産ですと住宅が失われますが、この手続ですと住資産を保持することはできます。ですから、そういうインセンティブがあることになりますが、再生手続では破産手続での配当よりも多くの弁済をするものでなければ再生計画が裁判所によって認可されないことになりますから、一般の債権者にとっても債権の回収率が高まるというメリットがあります。
 したがって、住宅ローンの特則を設けることによって一般の債権者の利益が不当に害されるということはないものと考えている次第でございます。
#15
○佐々木知子君 続きまして、もう一つの特則、小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則について御質問いたします。
 これは、いずれも継続的な収入の見込みのある個人債務者を対象として、それを二種類に分け、それぞれについて再生手続を設けているものですが、この二つに分けた理由というのはどのようなものでしょうか。
#16
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、この改正案では二種類の手続を設けているわけでございます。
 個人債務者が利用しやすい再生手続を創設するために、まず全般的に将来の継続的な収入の見込みがある個人債務者で無担保の再生債権の総額が三千万円を超えないものを対象として、債権調査や再生計画の可決のための手続などを簡素合理化する小規模個人再生の特則を設けております。
 また、このような将来の継続的な収入の見込みのある個人債務者のうち、サラリーマンのように将来の収入の額を確実かつ容易に算出することができる者につきましては、一定期間内の可処分所得を弁済原資に充てることを条件として、再生債権者の決議を経ないで再生計画を認可できることとして、手続をさらに簡素合理化しているわけでございます。
 そういうことで、二種類の手続ができておるということでございます。
#17
○佐々木知子君 再生債権の調査手続は再生計画の認可のための手続を簡素合理化したもののようでございますけれども、これは具体的にどのような手続とされたものでしょうか。
#18
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、この二種類の手続では、再生債権の調査の手続と、それから決議の手続というものを簡素合理化しております。
 具体的に申し上げますと、まず再生債権の調査手続でございますが、通常の民事再生手続では、再生債権の調査、確定は、争いがある場合には最終的には債権確定訴訟という訴訟によって債権を実体的に確定することにされております。しかし、小規模な個人債務者の再生事件についてこのような厳格な債権調査手続を要求することは、債権者にとってもまた債務者にとっても時間と費用がかかるという問題がございまして、費用対効果がつり合わないということでございます。
 そこで、小規模個人再生と給与所得者再生では費用対効果を勘案しまして、争いがある再生債権の存否及び額は個人再生委員による調査に基づく裁判所の評価によって、実体的には確定しないで手続内のみで確定する、そういう簡易な調査手続を設けることとしているわけでございます。
 次に、再生計画の認可のための手続でございますが、通常の民事再生手続では、再生計画の可決の要件として再生債権者の多数の積極的な同意が必要とされておりますが、この同意を取りつけるためには、多大な時間と労苦をかけて債権者を回って、説得して納得してもらうということが必要になってまいりますので、小規模の個人事業主やサラリーマンにとっては実際上困難を伴う場合もございます。他方、小規模個人再生の再生債権者の大多数は消費者信用関係の専門業者というふうに想定されますが、このような専門業者が再生計画に反対する場合には、その旨を書面で裁判所に提出することは容易であるというふうに考えられます。
 そこで、小規模個人再生においては、再生計画案に反対する旨を記載した書面を提出した再生債権者が半数に満たず、かつ債権総額の半分を超えないときは再生計画案の可決があったものとみなすこととしております。つまり、通常の手続では半数以上の積極的な同意が必要なんですが、この小規模個人再生では、逆に半数以上が反対しなければいい、つまりもっと言えば棄権は賛成とみなすと、こういうことになっているわけでございます。
 さらに、給与所得者再生におきましては、小規模個人再生の対象者のうち、サラリーマンなど将来の収入を確実に把握することができる者を対象として、その者の可処分所得の二年分以上の額を弁済原資に充てることを条件として再生計画の成立に通常必要とされる再生債権者の決議を省略することとしています。こういうことによって、給与所得者等再生におきましては小規模個人再生よりもさらに手続を簡素合理化しているわけでございます。
#19
○佐々木知子君 給与所得者等再生においては手続をさらに簡素化されている。つまり、可処分所得の二年分以上の額を弁済原資にすることを条件として債権者による再生計画案の決議を省略しているということなんですけれども、それはつまり可処分所得の二年分を弁済すれば残債務が免責されるということになるかと思います。
 これは債権者の利益を不当に害することにはならないのでしょうか。お伺いいたします。
#20
○政府参考人(細川清君) 可処分所得の二年分を三年間で弁済すれば残余は免責されるというのは御指摘のとおりでございます。
 この手続で債権者として想定される人のほとんどの方は貸金業者とかクレジット業者であるというふうに考えられますが、これらの業者は貸し付けの際、実務上、債務者の一年から二年分の可処分所得を基準に与信するのが通常だというふうに言われております。こういったことをまず考慮しております。
 このように、実務において通常行われている取引の中での厳しい与信基準に照らした要件を設定しているのでありますから、それ自体債権者の利益を不当に侵害するものではないと考えられます。
 また、可処分所得が低額で再生計画による弁済の総額が少ないものにならざるを得ない場合には、一回当たりの各債権者の弁済額が非常に少額となります。このような少額の弁済に相当の期間にわたって応じなければならないとすると、債権者の債権管理の負担、費用というものが重くなり過ぎます。この点を考慮して、再生計画にある弁済総額は可処分所得の二年分以上の額というだけではなくて、さらに原則として無担保の債権の総額の二〇%または百万円のいずれか多い額でもなければならないというふうに要件を定めているわけでございます。
 それからもう一つ、これらの再生手続の一般の要件でございますが、破産の場合における配当総額よりも多額でなければならないという要件もあるわけでございます。
 それで、給与所得者再生における再生計画に基づく分割の弁済の期間についても、債権者の債権管理上の負担を考慮して原則は三年といたしまして、この期間で先ほど申し上げました最低弁済額等の基準を満たした弁済をできない、そういう特別の事情がある場合には五年まで分割を延長することができるというふうにしているわけです。
 このように、給与所得者等再生におきましては、債権者の利益保護の観点からさまざまな要件を定めておりますので、これらの要件をすべて具備する再生計画が立案される場合には、債権者の手続を経ないで再生計画を認可したとしましても債権者の利益が不当に害されることはないであろうというふうに考えた次第でございます。
#21
○佐々木知子君 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則による手続を利用する場合ですけれども、実際に必要となる費用の額はどれくらいになるのでしょうか。これは最高裁判所にお伺いいたします。
#22
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 通常の再生手続を申し立てる場合と同様に、まず再生債務者が申し立て手数料として一万円を支払う必要がございます。このほか、予納金を納付する必要がございます。この予納金としましては、官報公告費用、それと送達通知費用、この概算額として数万円程度を納付する。
 このほか、個人再生委員の報酬見込み額、これも納付することになると思われます。
 この個人再生委員の報酬額は事件を担当する裁判所が定めるものでございまして、一概には報酬額を決めることはできないわけでございますけれども、この個人再生委員の権限の範囲が通常の民事再生法の監督委員の権限と比べて狭いなどのことがございますので、一般論としましては、民事再生手続の際の監督委員の報酬額よりも相当低額になるのではないか。これは推測でございますけれども、数万円から数十万円くらいになるのでないかというふうに思っております。それと、再生委員の給源の問題もございますので、地域の実情に応じてこの点は検討していく、こういったことを考慮して決められるものと思っております。
#23
○佐々木知子君 この手続を利用する個人債務者ですが、どれくらいの数になると予想されておられますでしょうか。
#24
○政府参考人(細川清君) これは将来の予測でございますので断言はできないんですが、予測の手がかりになる数字を若干申し上げたいと思います。
 まず、昨年の個人債務者の自己破産の申し立て件数は、先ほど最高裁から御紹介があったように十二万件強でございます。
 小規模個人再生と給与所得者等再生の特則に類似する個人債務者の再生のための手続というものはアメリカにもございます。これは連邦破産法の十三章という手続でございますが、ここでは破産免責手続と個人債務者の再生手続の申し立ての比率はおおむね七対三だと言われております。そこで、日本で破産手続を利用した十二万人のうち何人が個人再生手続に回るかと考えますと、その七対三に分けてみますと、個人債務者の再生手続を利用する債務者数は一年間で三万六千人ということになるわけです。
 また、本年二月十七日から特定調停法が施行されております。これは、債務者と債権者の合意を基礎とする調停という手法を用いておりますが、個人債務者が破産しないで生活を再建するという点では個人再生の手続と目的は同じでございます。
 その申し立て件数は、二月十七日の施行から本年七月末までの約五カ月間で九万八千九百七十五件というふうに多数に上っています。この申し立て件数は債権者の数を基準にしております。民事再生手続では債務者の数を基準にしておりますので、債務者数に換算して一年間の利用債務者数を試算してみると一債務者当たりの債権者数は七人から八人程度でございますので、特定調停を利用する債務者は一年間で三万二千人程度になるわけでございます。
 特定調停では、残元本の全額を三年から五年で分割することが可能なものでなければ通常は調停が成立しないと言われております。他方、今度の個人再生手続におきましては、債権の一部弁済を内容とする再生計画の認可を受けることも可能でございます。したがいまして、個人再生の手続を利用することが考えられる数は、特定調停を利用している個人債務者数に照らすと相当の数に上るだろうというふうに考えられます。
 こういったことをすべて考えますと、大体多い場合には年間三万人から四万人の利用者があり得るだろうというふうに予測しているところでございます。
#25
○佐々木知子君 多いときには年間三万人から四万人の利用者を予測されておられるということですが、それだけの多数の事件を適正かつ迅速に処理しなければならないわけですから、裁判所の人的、物的体制の整備が必要になると思われる次第でございます。この点についてどのようなお考えがあるのか、最高裁判所にお伺いしたいと存じます。
#26
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 裁判所としましては、これまでも倒産事件の新受事件数の増加に対応するため、事件の急増している繁忙庁に対しまして必要な人員を増配置したり、あるいは特定の裁判官や書記官を専属的に倒産事件の処理に当たらせる、こういう事務処理体制を充実させてきたところでございます。また、OA機器などを導入する、それから申し立て書の定型書式や手続を説明した資料を用意するなどの事務の効率化も図ってまいりました。裁判所では、倒産事件の急増等に対応するため、ここ数年、裁判官、書記官の増員に力を入れてきているところでございます。
 今後とも、事件数の増嵩や個人債務者の再生手続の具体的な運用状況を踏まえまして、的確な事件処理が図れるような人的、物的体制の整備を図っていきたいと考えております。
#27
○佐々木知子君 今回、この改正によって個人債務者にとって利用しやすい再生手続を創設することになるわけですが、それによって借り手側のモラルハザードを招くことにならないのか、それが最も懸念されます。その点についてはいかがでございましょうか。
#28
○政府参考人(細川清君) 借り手側のモラルハザードを招かないということは大変重要な問題でございまして、法制審議会でも重要な論点の一つであったわけでございます。
 この点につきまして、この法案におきましては、まず、両手続ともわずかばかりの金銭の分割弁済によって破産しないで再生することが可能になることによってモラルハザードを招くことを防ぐという観点から、無担保の債権の総額の二〇%または百万円のいずれか多い額以上で、かつ破産の場合の配当額以上の額を弁済しなければならないということにしているわけでございます。
 次に、小規模個人再生においては、再生計画に反対する再生債権者が半数以上となり、または債権総額の半数を超える、こういう場合には手続が廃止されて裁判所から再生計画の認可を受けることができないことになるわけでございます。そういうわけで、債権者の意向が手続に反映されるわけです。
 それから、給与所得者等再生におきましては、債権者による決議は省略しますが、そのかわりに、可処分所得の二年分に相当する額が最低弁済額を上回る場合にはその額以上に弁済しなければならないということになっています。その可処分所得の算定は手取りの収入から生活保護レベルの生活費のみを控除して算出されますので、債務者としては相当生活を切り詰めて弁済をしなければならぬということになろうかと思います。
 そういうことで、モラルハザードを招くということはないものと考えているところでございます。
#29
○佐々木知子君 自己破産の数も非常にふえて年間十二万件に達していると。そして、住宅ローンなどの債務を抱えて経済的に行き詰まっている人も非常に多いと。そういう事態の中で、この法律が一刻も早く施行されることを待ち望んでいる個人債務者が極めて多いというふうに思われますけれども、施行の時期についてはどのようにお考えでございましょうか。
#30
○政府参考人(細川清君) この法案の附則第一条では、公布の日から六月以内で政令で定める日から施行することとなっております。
 六カ月という余裕を置いておりますのは、まず一つは、先ほど申しました可処分所得を算定するために重要な要素であります必要な費用の額を政令で定めるという作業がございます。それから、最高裁判所で手続の細目的事項を定める最高裁判所規則を制定する必要があります。それから、施行が円滑に行われるようにするために、法案とか法令について、手続の関係その他国民に周知を図るための周知期間が必要でございます。
 そういうことで六カ月というふうに置いているわけですが、近時の経済情勢の低迷とかいろんな企業のリストラクチャリングの進展等で住宅ローンを抱えた債務者の破産件数も非常にふえておりますので、この法案を待ち望んでいる人も相当あるということが新聞等でも報道されているわけでございます。そこで、こういった情勢を踏まえまして、先ほどもおっしゃいました作業の期間をできるだけ縮めまして可能な限り早期に施行する、公布をすることにしたいと考えております。
 具体的にいつかということでございますが、これは法案がいつ成立するかということによるんですけれども、今国会で成立させていただければ明年の四月一日から施行させていただけると思っているところでございます。
#31
○佐々木知子君 続きまして、国際倒産法制の整備について質問させていただきたいと存じます。
 民事再生法等の一部を改正する法律案のうち、破産法、会社更生法、民事再生法等の諸改正に関連する部分及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案があわせてこれに該当するかと思いますが、まず、厳格な属地主義を採用している現行の倒産法制では国際倒産事案に適切に対処できないとのことでありますが、国際倒産法制の整備を行わなければ具体的にどのような不都合が生じるのでしょうか、お答えください。
#32
○政府参考人(細川清君) 現行の破産法、会社更生法がとっている御指摘の厳格な属地主義が維持されるということになりますと、破産手続等が開始された場合であっても、一部の債権者が手続の開始国以外の国にある債務者の財産から抜け駆け的に債権回収することが従来どおり許容されることになります。
 例えば、日本で破産宣告を受けた企業がアメリカに財産を持っている場合、日本の債権者がアメリカに行って自分だけ債権回収するということができて、債権者の平等な扱いができなくなるということがございます。それから、外国で債権を回収した場合でも、現行の破産法では、債権回収額を国内の破産手続における配当額に反映させて調整する規定も整備されておりません。したがって、抜け駆け的に債権回収を行った債権者も、国内の破産手続においては、現行法上は他の債権者とさらに同じ割合で弁済を受けるということになってしまうわけでございます。
 しかも、外国に財産があるかどうかとかそういうことを調査するとか、外国で手続をするということをするためには、それだけの情報収集能力があって、海外での活動を可能にする組織力、豊富な資金力を持った企業に限られるということになりますので、一般の債権者の間では大変不公平が生じるということになるわけでございます。
 また、外国で再建型の倒産処理手続が開始された場合、例えば日本の会社更生手続に相当する手続がアメリカで開始された、そういう場合に、その会社の事業を継続する上で必要不可欠な財産というのが日本にあったといたしましても、日本の債権者はその財産に強制執行を申し立てて換価することが可能でございます。こうした場合にも、現行の倒産法制のもとでは強制執行手続を中止する手だてはないものですから、国際的な規模での合理的な再生計画の策定が非常に難しくなるという問題がございます。
 他方で、債務者が弁済に充てるべき財産を手続が開始された国以外において使ったり、隠すことも可能です。例えば、日本で破産宣告を受けた債務者が外国に有する財産は、破産管財人の管理処分権が及びませんので債務者は自由にこれを換価、処分することができます。しかもその対価を債権者への弁済に充てる義務もないわけでして、債務者がみずからこれを使うということも許されるわけです。
 しかも、もともと海外にあった財産だけではなくて、破産宣告の直前に債務者が国外に財産を持ち出してしまいますと、これについても同じように破産管財人の権限が及ばないということになります。こういう不正な行為が現行法では事実上野放しになっているという状態でございます。
#33
○佐々木知子君 確かにおっしゃるとおり、属地主義の倒産法制では現在のボーダレスエコノミーに対応するのは非常に難しいと思われますけれども、現在主要先進国で属地主義を採用している国というのは日本以外にあるのでございましょうか。
#34
○政府参考人(細川清君) 私どもが承知している先進国、英、米、仏、独等の法律では属地主義は採用されておりません。
 採用している国があるかということを調べてみたんですが、オランダではいまだに属地主義が残っているというふうに聞いています。これは法律の明文があるわけではなくて、オランダの最高裁判所の判例で、外国の破産手続の効力はオランダにある財産には及ばないとすると、それから、オランダで開始した破産手続の効力はオランダ国内にある財産にしか及ばない、そういう判例があるそうでございます。
 ですから、先進国では一般的には属地主義がとられていないということが言えると思います。
#35
○佐々木知子君 今回の法改正の契機の一端にUNCITRAL、国連国際商取引法委員会において国際倒産モデル法が採択されたことがあると伺っておりますが、UNCITRAL国際倒産モデル法というのはどのような内容のものでしょうか。
#36
○政府参考人(細川清君) 国連国際商取引法委員会は、国連総会のもとに設けられた特定の国の委員会でございます。そこで、これは国際的な商取引に関する法制の国際的な整備を図ろうという、こういう委員会でございますが、この国際倒産モデル法は国際倒産事件を処理する効果的なメカニズムを提供することを目的として、平成九年五月に開催されたUNCITRALの第三十回総会において採択されたわけでございます。
 その内容は、外国倒産処理手続に対する協力、国内倒産処理手続についての外国における協力の要請、同一の債務者について外国及び国内の倒産処理手続が並行して行われている場合の処理、外国の利害関係人による国内倒産処理手続の参加について、各国が国内法を整備する際のモデル法となる条項を定めているわけでございまして、お手元の参考資料の最後の方にUNCITRALのモデル法が登載されております。
 平成九年十二月の国連総会では、各国に対して、国際倒産に関する自国の倒産法制が現代的かつ効率的なものであるかを見直すとともに、その際には本モデル法を好意的に考慮すべきことを国連総会で決議されているわけでございます。それで、各国に勧告されたわけでございます。
 現在御提案申し上げている二法案は、それぞれ基本的にモデル法に倣って条文を整備したというものでございます。
#37
○佐々木知子君 国連総会で各国に対して国際倒産モデル法を踏まえた国内法の整備は勧告されたと今おっしゃいましたけれども、これを受けて日本以外の国は国際倒産法制の整備にどのように取り組んでいるのでしょうか。
#38
○政府参考人(細川清君) このモデル法の勧告を踏まえて、各国で国際倒産法制の整備作業が進められておると聞いております。
 まず、EU、欧州連合でございますが、これは本年五月にEU域内の外国倒産処理手続の承認及び並行倒産を規律するEUの理事会規則を制定しております。
 また、アメリカ合衆国でもモデル法を全面的に取り入れた連邦倒産法改正法案が上下両院に提出されております。アメリカでは上院にも下院にも両方法案が出るという仕組みになっておりますので、両方に提出されております。それで、これは聞くところによりますと本年じゅうに成立するであろうということでございました。
 また、メキシコではモデル法を全面的に取り入れた倒産法が成立して既に施行済みであると、このように聞いております。
#39
○佐々木知子君 外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案で定められている承認援助手続というのはどのような内容のものでしょうか。概要をお答えくださいませ。
#40
○政府参考人(細川清君) 承認援助手続は、国際的な経済活動を行う債務者について、国際的に整合のとれた財産の清算または経済的再生を図るために、外国倒産処理手続の承認の申し立てについての裁判並びに債務者の日本国内における業務及び財産に関して援助のための処分をすることを内容としております。外国倒産処理手続の効力をこのようにして日本国内においても適切に実現する手段を提供するものでございます。
 具体的に申し上げますと、まず、外国管財人等による援助の申し立てを受けた裁判所は、外国倒産処理手続が日本国内において援助を与える適格性を備えているかどうかを判定し、適格性を備えているという場合には外国倒産処理手続の承認の決定をすることになります。
 承認の決定がされた外国倒産処理手続について、必要に応じて申し立てによって債権者の個別的な権利行使を禁止することを内容とする処分、債務者の財産の管理処分権を制限することを内容とする処分等の援助のための処分を日本の裁判所がすることとしております。
 このほか、国内債権者を保護するために、債務者または承認管財人が国内財産の処分や国内財産の国外への持ち出し等を行うには裁判所の許可を得なければならないものとしておりまして、この義務に違反した場合には承認を取り消し、あるいは刑事罰も科すということにしているわけでございます。
#41
○佐々木知子君 その外国倒産処理手続の承認の申し立てをする場合には、どのような要件を満たしている必要があるのでしょうか。また、援助を与える適格性を備えるものとして承認の決定を受けるのはどのような外国倒産処理手続なのでしょうか。
#42
○政府参考人(細川清君) まず、承認の申し立ては外国管財人等によって行われる必要がありまして、一般の債権者等の申し立ては許さないということにしております。また、承認の申し立てをすることができる外国倒産処理手続は、債務者の住所、居所、営業所または事務所がある国で申し立てられたものである必要がございます。
 それから、承認をしない要件を法律は定めておりますが、まず、承認をしない場合は、承認援助手続の費用の予納がない場合、外国倒産処理手続において債務者の日本国内にある財産にその効力が及ばないものとされている場合、外国倒産処理手続について援助の処分をすることが日本における公の秩序または善良の風俗に反する場合、それから外国倒産処理手続について援助の処分をする必要がないことが明らかな場合、外国管財人等が、外国倒産処理手続の進行状況等について法律上には報告義務がありますが、その報告義務を怠った場合、不当な目的で申し立てがされたこと、その他申し立てが誠実にされたものではないことが明らかである場合、こういう場合には承認の申し立てが棄却されるということになります。したがいまして、それ以外の場合には承認の決定がなされるということになるわけでございます。
#43
○佐々木知子君 承認援助手続においては、裁判所は外国倒産処理手続を援助するため具体的にどのような処分を行うことができるのでしょうか。
#44
○政府参考人(細川清君) この法律案では承認の決定のみでは当然には法的効力は生じないわけでございまして、さらに個別の援助処分手続を、適格性が認められたことを前提にして援助処分を申し立てるということになるわけでございます。
 この援助処分には、債権者の個別的権利行使を制限する処分と、債務者の財産管理処分権限を制限する処分の二種類に分かれます。
 まず、債権者の個別的な権利行使を制限することを内容とする処分としては次のようなものがございます。
 第一として、強制執行、仮差し押さえもしくは仮処分の手続、訴訟手続、行政庁に係属している手続について中止命令を発することができます。これは第二十五条でございます。それから第二に、担保権の実行としての競売手続について中止命令を発することができます。これは第二十七条でございます。それから、すべての債権者に対して強制執行等を禁止する強制執行禁止命令を発することができます。これが第二十八条でございます。さらにこれらの手続によって中止された強制執行の手続について、特に必要がある場合にはその取り消し命令もすることができるということになっています。これらのうちに、先ほど申しました強制執行等の個別の執行の中止命令と担保権の実行としての競売手続の中止命令は、承認の決定がされる前でも一種の保全処分的にすることができるわけです。
 次に、債務者の財産の管理処分権を制限することを内容とする処分としては次のようなものがございます。
 第一は、債務者に対して財産の処分の禁止を命じる処分、弁済の禁止を命ずる処分をすることができます。これは第二十六条で規定しております。第二に、債務者の業務の遂行並びに財産の管理及び処分する権利を承認管財人に専属させる管理命令を発することができます。これは第三十二条で規定しています。これらのうちに、処分の禁止または弁済禁止の処分は承認の決定がされる前でも発することができます。また、承認の決定がされる前には承認管財人を任命する管理命令はできませんが、そのかわりに保全管理命令を発することができるものとしているわけでございます。
 以上が援助処分の概要でございます。
#45
○佐々木知子君 国内債権者を保護するために、国内財産を国外へ持ち出す場合には裁判所の許可を得なければならないものとしているということでございますが、具体的にはどのような行為について許可を得る必要があり、またどのような要件のもとで裁判所はこれに許可を与えるのでしょうか。
#46
○政府参考人(細川清君) まず債務者につきましては、援助の処分を行ったときには、債務者が国外への持ち出しをするような場合には裁判所の許可を得なければならないというふうに指定することができます。それから管理命令または保全管理命令が発せられている場合では、承認管財人または保全管理人は国外への持ち出しについては必ず裁判所の許可を得なければならないということになっております。
 これらの場合に裁判所の許可を得る必要があるのは、債務者の国内財産についての売買、交換、贈与その他の一切の処分行為、あるいは郵送したり運送業者に運送、その方法は問いませんが、とにかく一切の国外への持ち出しというものについて許可が必要となるわけでございます。
 これらの許可を要する行為について、裁判所は日本国内において債権者の利益が不当に侵害されるおそれがないときに限って許可を与えるわけです。例えば、日本の支社に労働者がいて、その人たちの未払いの労働債権がある、承認援助手続を求めている国の法制では労働債権について日本のような優先的地位が与えられていない、こういう場合には日本の労働債権者が不利益を受けますので、そういう場合には許可をしないということになるわけでございます。
 また、この許可について違反いたしますと刑事の罰則もかかるということになっているわけでございます。
#47
○佐々木知子君 債務者が裁判所の許可を得ないで国内財産の持ち出しを行った場合にはどのような制裁を受けるのでございましょうか。
#48
○政府参考人(細川清君) まず、罰則としましてただいま申し上げたように六十八条で規定を定めておりまして、許可を得ないで財産の処分、国外への持ち出しを行った場合には一年以下の懲役または百万円以下の罰金としております。
 それから、この法案上の制裁といたしましては、この外国倒産処理手続の承認の取り消しの事由となるわけでございます。そういうことから、承認の取り消しをすれば援助の処分等はなされないということになるわけでございます。
#49
○佐々木知子君 同一の債務者について外国倒産処理手続の承認援助手続と国内倒産処理手続とが競合した場合には、両手続の関係はどのように調整されるのでしょうか。
#50
○政府参考人(細川清君) 御指摘のような承認援助手続と国内の倒産処理手続とが同時に係属していると、並行して手続が進められるということになりますと、それぞれの手続の間で矛盾、抵触が生じるおそれがあります。そういうことを避けるために、この承認援助手続に関する法律案では、国内倒産処理手続と外国倒産処理手続の承認援助手続とが競合した場合には、原則として国内倒産処理手続が優先して進行するものとしておりまして、国内倒産処理手続の開始決定がされている場合に外国倒産処理手続の承認の申し立てがされたときは、その申し立てを棄却しなければならないことになります。また、外国倒産処理手続の承認の決定がされた後に国内倒産処理手続の開始決定があったときには、承認援助手続は中止するということになるわけであります。
 ただし、これには例外がございます。
 この例外の要件でございますが、外国倒産処理手続が外国主手続であること、つまりその手続が債務者の住所または主たる営業所等がある国で開始された手続であること。
 それから二番目として、外国倒産処理手続について援助の処分をすることが債権者の一般の利益に適合すると認められること、つまり債権者全体を集団と見て、そちらにした方が、外国承認援助手続でやった方が債権者の配当等が高くなると、そういう場合でございます。
 それから三番目に、外国倒産処理手続について援助の処分をすることにより、日本国内において債権者の利益が不当に侵害されるおそれがないことという場合でございます。これは先ほど申し上げました労働債権等が不利な作用を受けるおそれがないということでございまして、こういう例外的な要件が満たされる場合には、外国の倒産処理手続の承認の決定が優先する場合がありますが、それ以外の場合には国内手続が原則として優先になるということでございます。
#51
○佐々木知子君 国際倒産法制の整備に関連して、今回民事再生法等の一部改正法案も予定されておりますが、その部分の概要をお伺いしたいと存じます。
#52
○政府参考人(細川清君) 民事再生法等の一部を改正する法律案の中にも国際倒産法制の整備に関連する部分がございます。
 これを具体的に申し上げますと、まず第一に、我が国の破産手続及び更生手続の効力は日本国内の財産にしか及ばないものとするいわゆる属地主義を改めた規定でございます。これは、先ほど御質問があったものでございまして、これは破産法の三条一項と会社更生法の四条第一項を削除するということでございます。
 それから第二に、国際的な経済活動を行う企業等が破綻した場合にどのような要件を備えれば日本の裁判所に破産、再生手続の開始または更生手続開始の申し立てをすることができるかという国際倒産管轄に関する規定を設けることでございまして、これは破産法百四条の二とか会社更生法の五条の二の新設でございます。現行法では国際倒産管轄に関する規定はございませんで、国内の管轄についての規定から国際倒産管轄を推測する、推知する、いわゆる逆推知説がとられているわけですが、それだけでは必ずしも十分でない場合がありますので、明文の国際管轄の規定を置いたということでございます。
 それから第三に、我が国の破産手続または更生手続が開始された後に、債権者が在外財産に強制執行等を行うことにより弁済を受けた場合には、弁済を受けていない債権者との公平を図るために配当額を調整する規定を設けております。これは破産法の二十三条の二、それから百八十二条の第六項及び二百六十五条の二、それから会社更生法の百十八条の二及び百二十四条の三の新設でございます。
 第四番目といたしまして、同一の債務者について我が国の破産手続または更生手続と外国で開始された倒産処理手続が競合した場合、いわゆる並行倒産の場合でございますが、この場合に相互の手続の調整を図るために管財人と外国管財人との間の協力義務を定める特則を置いております。
 最後ですが、破産手続、更生手続及び再生手続における管財人等の贈収賄行為について、これらの行為が外国で行われた場合にも処罰する国外犯処罰の規定を置いております。
 以上が概要でございます。
#53
○佐々木知子君 破産管財人等の職務執行に関する贈収賄行為が外国で行われた場合にも処罰する旨の規定が設けられたということでございますが、このような国外犯処罰規定を設けた理由をお伺いしたいと思います。
#54
○政府参考人(細川清君) この破産管財人等の職務に関する贈収賄行為でございますが、これの保護法益ですが、その職務の廉潔性の保持ということと倒産処理手続に対する信頼の確保という二つの保護法益があるわけでございます。
 今回の法改正によりまして破産手続、更生手続に対外的効力が付与されました。再生法についてはもともとそうなっておりますが、そういった破産管財人等の管理処分が債務者の外国にある財産にも及ぶことになりました。このため、破産管財人等の職務に外国で行われる財産の管理処分等も含まれることになりまして、当該職務と利害関係を有する者が外国にも所在する場合が多くなるものと考えられます。こうした外国に所在する利害関係人と破産管財人等の間で贈収賄行為が行われる場合には、その実行行為は当然国外で行われる蓋然性が高いものですから、この職務の公正を確保するためには実行行為が国内、国外のいずれで行われたかによって区別するべきではなくて、いずれも処罰の対象とする必要があります。そこで、破産手続等における収賄罪、贈賄罪について、国外犯処罰の規定を設けた次第でございます。
#55
○佐々木知子君 時間が参りましたので、これで終わります。
 ありがとうございました。
#56
○江田五月君 おはようございます。
 まず最初に、先週、十一月二日の本委員会での我が党小川敏夫委員の質疑の補充質問から入らせていただきます。
 特に犯歴照会の関係でございまして、なかなか答弁に神経を使われると思いますけれども、よろしくひとつお願いいたします。
 実はこの犯歴問題、犯歴不開示の例外はあるのかと、どんな場合かという議論、これは本年九月二十九日の参議院予算委員会での私の質問が皮切りかと思っておりますが、森総理の犯歴問題について警察庁五十嵐刑事局長が、犯罪経歴に関する情報は、犯罪捜査等の警察任務遂行のために警察が収集、保有しているもので、このような目的以外での開示は原則として行わないものであると、こういう答弁をされた。そこで私は、原則としてということならば、例外はあるんですかと、こう尋ねました。これに対して、例外的にこれを開示しようとする場合には、開示をすることによって得られる利益と開示しないことで守られる利益とを個々の事案ごとに比較考量した上でその決定がなされるべきものだと、こういう答弁をされました。
 これはこれで、確認ですが、よろしいですよね。
#57
○政府参考人(五十嵐忠行君) そのとおりでございます。
#58
○江田五月君 これを受けて、小川委員が、例外的に開示をする場合はどのような場合かと、こういう質問があった。警察庁は、海外への渡航や海外での事業のために外国政府から犯罪経歴証明を求められる場合があります、このような場合には、その求めに応じなければ本人に著しい不利益が生ずることが明らかで、ほかに方法がないことが明らかでもあることから、犯罪経歴を開示することによって得られる利益と開示しないことで守られる利益、これを比較考量した上で例外的な措置として犯罪経歴証明書を本人に交付することがあると、こう答弁をされました。
 この犯罪経歴証明書を本人に交付する、これは私も余り聞いたことがないんですが、しょっちゅうあるんですか。
#59
○政府参考人(五十嵐忠行君) 具体的な数字は承知しておりませんが、かなりあるのではないかというふうに思います。
#60
○江田五月君 なるほど。
 さらに、小川委員の質問で、森総理大臣本人からの要請があればその時点で考えたい、検討したいと、こう答弁をされました。また、開示しないことで守られる利益とは、個人のプライバシーと公務員法上の守秘義務と犯罪捜査や警察活動への支障がないことの三つ、開示しないことによって守られるのはプライバシー、それから守秘義務、それと捜査の密行性ですか、これの三つだと、こういう答弁でございます。
 そこで、確認ですけれども、森総理大臣御本人がみずからの犯罪経歴を開示してくれと、こう要請された場合は、開示することによって得られる利益としないことで守られる利益を比較考量した上で前者が後者を上回る場合は、森総理大臣本人に対して犯罪経歴証明書を交付する、これでよろしいんですね。
#61
○政府参考人(五十嵐忠行君) 今の件ですけれども、守秘義務の関係と、それから捜査上の支障の関係、それからプライバシーの問題、こういうところがいろいろ総合的に検討しなきゃいかぬポイントですということは申し上げました。プライバシーの関係についてはどうかという御質問だったものですからプライバシーだけについて答えたわけでありまして、じゃ、プライバシーの問題がクリアすればそれで全部オーケーかということでは答弁しておりません。
 要するに、守秘義務の関係とか、あるいは捜査上の支障とか、あるいはプライバシーの問題、これはあくまでも総合的に検討した上で判断すべき問題だというふうに私は答弁したつもりでございます。
#62
○江田五月君 今のは開示をしないことによって守られる利益三つ、その三つのうちの一つについて答弁をしたと。じゃ、そこだけ確認しましょう。開示をしないことによって守られるべき利益の三つのうちの一つであるプライバシーということに関して言えば、森総理大臣がみずから開示を求められれば、その点については、プライバシーの利益を守るという要請は考えなくてよくなる、こういう判断でよろしいですね。
#63
○政府参考人(五十嵐忠行君) それはあくまでもプライバシーだけという関係で、切り離して考えることは難しいと思うんです。要するに、プライバシーの関係、開示されることによって公になる、犯歴が。それはプライバシーの関係もありますし、ほかの関係も絡んでくるものですから、プライバシーだけ切り離して答弁するというのは、どうかと聞かれても非常に答えにくいというのが本音でございます。
#64
○江田五月君 三つがある、だからあとの二つの捜査の密行性を守っていかなきゃならぬ、公務員の守秘義務を守らなきゃならぬ、その点は私は今聞いていないんです。それは別のまた判断をしなきゃいけないんですが、三つのうちの一つ、プライバシーを守らなきゃならぬということについて言えば、当該御本人が開示をしてくれと言うんですから、それは、プライバシーを守るという要請については配慮をする必要がなくなるというのは当たり前じゃありませんか。
#65
○政府参考人(五十嵐忠行君) この間の答弁では、あくまでもそういう仮定の問題でありますけれども、そういうプライバシーのことだけについて言えば、本人の承諾を得ればその辺はそうなるのではないかなという趣旨の答弁はしていると思います。
#66
○江田五月君 この間の答弁はそうしたが、きょうは違うということはもちろんありませんよね。
#67
○政府参考人(五十嵐忠行君) この間の答弁は、仮定の問題でもありますが、仮定で答えると、本人が承諾しているということになればそういうことになろうかと思いますと。これはあくまでもプライバシーを切り離して、三つの中であくまでも切り離して、これだけでどうだという御質問だったものですから、そういう答え方をいたしました。
#68
○江田五月君 いやいや、私は、だからこの間はそう答えたのはわかったけれども、きょうは違うということはないんでしょうねと、今。最後の質問はそういう質問なので、どうですか。
#69
○政府参考人(五十嵐忠行君) くどいようですが、ほかのところの絡みがあるということを前提といたしまして、この間の、ほかのところの絡みがある、プライバシーのところはぶちっと切ってやればそういうことになると。それは同じでございます。
#70
○江田五月君 もうくどく言うのはやめましょう。
 そこで、あとの二つですよね、公務員法上の守秘義務を守ることと、それから犯罪捜査の密行性を守ること。何十年も前のことがなぜそんなに関係するのか。公務員法上の守秘義務の関係についてもこれはまだいろいろ議論するところがありますが、この間、小川委員が議論していますのでくどい質問はやめます。
 次に、今のは開示をしないことによって守られる利益の三点、開示をすることによっても実現できる利益、これの比較考量というわけですから、今度は開示をすることによって得られる利益というのを考えていかなきゃならぬと思うんですが、その前に、犯罪経歴証明書の交付、一般的に外国政府からの求めに応ずる場合は犯罪経歴がないことの証明書を本人に交付するという、まあそうだと。あることを証明して本人に交付しても余りプラスになることはまあないでしょうから、ないことを証明して本人に交付するんだろうと思いますが、犯罪経歴がない場合は本人に対して開示しないことで守られる利益というのはどんなものがあるんですか。
#71
○政府参考人(五十嵐忠行君) 渡航証明の関係で発給するいわゆる証明書の関係ですけれども、これについて犯歴がない場合もありますし、犯歴がある場合もございます。もちろん本人はわかりません。
#72
○江田五月君 いやいや、ある場合でも、それはこういう犯歴だからもう古いとかあるいは大したことないとか、ブッシュ大統領候補は酔っぱらい運転だったですかね、若いころに、そんなことはわかった方がむしろすっきりしていいというようなこともあるでしょう。
 今言っているのは、犯罪経歴がない場合に本人に対して開示しないことで守られる利益というのはどんなものがあるんですかとお聞きをしているんです。
#73
○政府参考人(五十嵐忠行君) 犯罪経歴は、犯罪捜査等の警察任務遂行のために警察が収集、保有しているものでありまして、その使用は犯罪捜査等のために必要な場合に限定され、この目的以外での犯罪経歴を開示することについては特に慎重な判断を要するものであり、極めて限定的に取り扱ってきておるところでございます。
 ただし、海外渡航などに際し外国政府から犯罪経歴証明を求められた場合には、その求めに応じなければ本人に著しい不利益が生じることが明らかで、ほかに方法がないことが明らかであり、かつその内容が公にされることはないことなどから、例外的な措置としてこれを本人に交付しているものでございます。
 犯罪経歴に関する情報の開示によるメリットについてお尋ねでありますが、今回の裁判所からの調査嘱託については、外国政府に提出する犯罪経歴証明書におけるような例外的に開示に応ずべき事情が認められなかったことから、調査には応じかねるというふうに判断したものでございます。
#74
○江田五月君 すぐまたそこへお戻りになってしまう。そういうお答えを前提にしてずっと論理を詰めてきているので、ぜひ御理解をいただきたいと思うんですが、犯罪経歴がない場合、ある場合とない場合と二種類しかないんですから、ない場合に本人に対して開示をしないことで守られる利益というのはどんなものがあるんですかと聞いているんです。
#75
○政府参考人(五十嵐忠行君) 開示の目的によるのではないかというふうに思います。
#76
○江田五月君 開示の目的。
#77
○政府参考人(五十嵐忠行君) どういうことで開示してほしいかということによるのではないかというふうに思われますが。
#78
○江田五月君 開示の目的ね。
 森総理大臣に犯罪経歴がない場合に、これは御本人はもちろん良心にかけてないと強くおっしゃっているわけで、ないんでしょう、犯罪経歴がないと。その森総理の場合に、犯罪経歴がないことを開示する、そうしますと、内閣総理大臣として疑惑をまず晴らすことができる、名誉も守られる、民事訴訟も有利になる。いいことばかりで、悪いことは何もない。
 犯罪経歴がないことを開示することでプライバシーを侵害するんだということがありますかね。犯罪経歴がないことで森総理のプライバシーが侵害される、そんなことはありますか。
#79
○政府参考人(五十嵐忠行君) 警察としては、犯罪経歴は個人のプライバシーに深くかかわるものであることなどから、どのような立場の方であれ、その開示については特に慎重な判断を要するものというふうに考えているところでございます。
#80
○江田五月君 質問の答えになるんですかね、それで。
 犯罪経歴がないことを開示すると森総理のプライバシーが侵害されますか。余り難しいことを聞いていないので。
#81
○委員長(日笠勝之君) どなたに。
#82
○江田五月君 刑事局長。
#83
○政府参考人(五十嵐忠行君) 繰り返しになりますけれども、警察としては、犯罪経歴は個人のプライバシーに深くかかわるものなどであることから、どのような立場の方であれ、その開示については特に慎重な判断を要するものというふうに考えているところでございます。
#84
○江田五月君 もう質問をとめてもいいくらいですけれども。
 犯罪経歴がないということを開示して、それを森総理が求められれば、もちろんのこと個人のプライバシーを侵害するというようなことはないですよ、それは。犯罪経歴がないことを開示することで守秘義務違反になるというようなことがあるのか、あるいはそんな大昔の犯罪経歴がないということを開示することで警察活動や捜査活動に支障があるのか。ないと思いますね。
 一つ、これは別に自慢するほどのことでもないんですけれども、皆さんに資料をお配りしてください。
   〔資料配付〕
#85
○江田五月君 これは、この間小川さんからちょっと皆さんに示していただいたんですが、あのときは質問の通告も何もしていなかったんですが、私の「無事故無違反の証」というので、さっき理事会で言ったら、それはおまえ、運転していないからだろうと言われたんですが、そんなことはない、時々運転はしているんですが。
 私の、昭和五十一年八月八日から、今現在持っている運転免許証の発行の日、平成九年五月十三日まで無事故無違反であることを証明しますというので、これ、おもしろいんですよね。五十一年八月八日からというので、では五十一年八月七日以前はどうなのかというのがすぐ問題になると思いますが、実は八月七日に私はスピード違反をやったので、そんなこともばれてしまうんですけれども。
 これは、あのときは突然だったのでお答えがなかったのは当然なんですが、これも犯歴証明の一つですかね。
#86
○政府参考人(属憲夫君) 自動車安全運転センターは、自動車安全運転センター法の規定に基づきまして、運転免許を受けた者からの求めに応じて運転経歴証明書を交付する業務を行っております。
 御指摘のSDカードは、この自動車安全運転センターが、運転免許を受けた者から運転経歴証明書の交付を求められたときに、その者が一定期間無事故無違反である場合に安全運転を慫慂する目的で運転経歴証明書に添えて渡しております。
#87
○江田五月君 もうちょっと前にお教えいただいてよく調べてみればよかったんですが、安全運転センター法という法律があって、それでその法律に基づいてできたこれは特殊法人ですか。
#88
○政府参考人(属憲夫君) 自動車安全運転センターは、自動車安全運転センター法に基づき認可された認可法人でございます。
#89
○江田五月君 交通事故あるいは違反の犯歴というのを、これは国家公安委員会ですか、これを管理しているのは。
#90
○政府参考人(属憲夫君) 交通事故や交通違反のそういった運転に絡むデータにつきましては、警察において管理をしております。
#91
○江田五月君 では、この認可法人たる自動車安全運転センターが警察庁に当該申請に係る本人の事故歴、違反歴を照会して、それがないということを確認の上、こういう証明書を本人の求めに応じて発行する、それは安全運転の慫慂のために公益に合致することである、そういう理解でよろしいんですか。
#92
○政府参考人(属憲夫君) そのとおりでございます。
#93
○江田五月君 そういうようなことで、犯歴というのはそんなにもう絶対隠さなきゃいけないということでもないので、私は、森総理に犯罪経歴がない場合、御本人からの要請があれば、やはりこれはどう考えたって開示する利益の方が開示しない利益よりも大きい、こう考えられるので、本人に対して犯罪経歴証明書を交付すると。森総理は国会で良心にかけて犯罪経歴はないとおっしゃっているんです。
 私はこういうこともあると思うんですよ。本当にないんだと、ないんだけれども、実はそういう履歴を証する記録が間違って何かあるということだってあり得る。その場合は本人の求めで直さなきゃいけない。いずれにせよ、これは今のお話だと確認されないんですかね。森総理から要請があれば、以上のようなことを踏まえて、利益が大きいので本人に対して証明書を交付する、こうお答えになれませんか。
#94
○政府参考人(五十嵐忠行君) 繰り返しで恐縮ですが、犯歴を開示するについては、捜査上の支障とかプライバシーの問題、守秘義務の問題、こういったものを総合的に判断して決定いたしたい、決定いたすべきものだというふうに考えております。
#95
○江田五月君 森総理は、自分には犯歴がないと言っているんですから、総理大臣がおっしゃることですからうそはないと思うので、それならば、森総理の方からの求めがあれば、それは何十年も前の話だし捜査に支障はない。あるいは、守秘義務に反するといったって、だってこれは私のこういうのもちゃんと出しているわけですから、だからお出しになるのが当然だと思いますよ。森総理が交付を求めるべきだという、これは皆さんへの質問じゃありません、森総理に求めなきゃいけませんが、そういうことを申し上げて、ちょっとこの問題で時間をとり過ぎました、次の問題に移っていきたいと思います。
 さてそこで、本日の議題である民事再生法改正案と外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案について質問いたします。
 まず、民事再生法等の一部改正案です。
 先ほども佐々木委員から御質問がありまして、御答弁もありましたが、すごいですよね、この破産事件の動向、新受件数あるいは既済件数。
 平成元年に一万三百十九人、それが平成十一年に十二万八千四百八十八件、十二倍です。自然人が九千四百三十三、そのうち自己破産が九千百九十、これが平成元年。平成十一年には、自然人が十二万三千九百十五、そのうち自己破産が十二万二千七百四十一件、大部分ですね。
 既済で見たらもう一つまた特徴があるんですが、既済件数が、平成元年の一万二千四百五十四が、平成十一年は十三万八千五百八十五。そのうち平成元年の自然人一万八百七十五中、同時廃止が七千四百三十一。ですから同時廃止がざっと四分の三。ところが、平成十一年は、自然人十三万三千二百十九のうち、同時廃止が十一万九千三百二十九。同時廃止の割合がかなり割合としては大きくなっていると思います。
 このような傾向、十年余の間に十二倍からにふえて、それも自然人がどんどんふえていって、それも同時廃止の割合などがどんどんふえてきている。この傾向というのは、これは細かな分析は結構ですから、政治家として法務大臣、どのようにごらんになりますか。
#96
○国務大臣(保岡興治君) 先ほどの局長の答弁にもあったかと思いますけれども、バブル崩壊後の不況が非常に長く続いていることや、また新しい時代に対応する、こういう不況に対応して企業が倒産したりあるいはリストラしたりする、そういった構造改革が同時並行で進んでいるということがこういう破産、個人、自然人の破産も急増している背景ではないかと思いますし、また先ほど言われた同時廃止の手続がかなりの部分を占めているという御指摘、これはもう清算して回収できるそういった財産がその破産者にほとんど残っていないということを示している。要するに、もう本当に破綻し切っているという状況で破産の申請がなされているという状況を示しているものと思います。
#97
○江田五月君 バブル崩壊後の庶民の暮らしの厳しさといいますか、これをよく示している。この数は、みんながみんな同時廃止の場合に低所得層とはもちろん言えませんけれども、まあやっぱりごく普通の庶民、個人で、しかも低所得層がいろんな事情から大変な債務を、負債を抱えてしまってもうどうにもならなくなって破産というところに追い込まれている、そういう切実な状況を明らかに示していると思います。
 政治の責任、与党、野党を問わずこれは重大だと。日本の経済構造、産業構造を変えていく、そういう構造改革の過程で起きているのなら、まだそれでも救われるけれども、さて、構造改革はうまく進んでいるのかどうか、これも重要な政治のテーマだと思います。
 そのことについてはきょうはそれ以上申し上げませんが、こういうような状況に照らして、債務を抱えて経済的に窮状にあるそういう個人債務者の経済生活の再生、破産というところに追い込まれてお手上げでもうどうにもならないということにならない、そうしなくても再生のためのいろんな手だてがあると。そういう人たちを迅速かつ合理的に救済、再生させていくために今回一連の再生手続の特則を設けたということだと思いますが、この前に、個人の話だけじゃなくて恐縮ですが、更生特例法をおつくりになった。それから、民事再生法もありますし、それから特定調停法もありますし、こういうようなことがいろいろ整備をされてまいりました。
 そこで、まず平成八年以降の我が国の倒産法制の改正の経緯、そして今後の見通し、特にただいま申し上げたこれまでできた三つの類型、これがどういう使われ方をしてきたかということについて御説明いただけますか。
#98
○国務大臣(保岡興治君) 倒産法制の整備のこの数年来の経緯、これを私から説明して、その後どういうふうな使われ方をしているかということについては……
#99
○江田五月君 簡単にお願いします。
#100
○国務大臣(保岡興治君) 今お話しのように、平成八年の十月から倒産法制の整備を進めるということで検討を開始して、法制審議会の倒産法部会でも審議が始まったわけでございますけれども、とにかくバブル崩壊による不況が非常に厳しくなった時点で御指摘のように再建型倒産法制というものを前倒ししなきゃならぬということで、五年間かけてやる当初の予定を民事再生法については二年半前倒しをする、それで今回の提案を申し上げている三つの、二種類、一つの特例、この制度は一年半前倒しして進めてまいりました。
 残るところも、まだ破産手続の全面的な見直しや会社更生手続、特別清算手続、会社整理手続などの見直し、あるいは倒産手続における労働債権、担保付債権等の取り扱いを初めとする倒産実体法の見直しなどが残されているわけですが、これらの課題についてもできる限り早期の法案提出を目指して準備作業を進める所存で、御指摘の状況にできるだけ対応するつもりで頑張っているところでございます。
#101
○江田五月君 特に私は、保岡大臣、大臣をここで持ち上げてもしようがないんですが、例の不動産権利調整、あれがうまくいかなくて、その後仕切り直しをして特定調停法ができた。これも私どもの共通の努力でできたものだということを申し上げておきたいと思いますが、そのようなことについて今の動向について、民事局長。
#102
○政府参考人(細川清君) まず、特定調停法でございますが、本年二月十七日から施行されまして、一番最近の数字でございますが、五カ月間で約十万件の申し立てがございます。もっとも、これは債権者数の件数でございますので、債務者数に引き直しますと一年間で三万件、三万人ぐらいの債務者ということになる計算でございます。
 それから、民事再生法でございますが、これは四月一日から施行されたわけでございますが、八月末までに四百件ほどの申し立てがございまして、既に再生計画が認可されたものもございます。この件数は、民事再生法によって廃止された和議法と比べますと大体三倍ということになっているわけでございます。民事再生法では主として中小規模程度の企業を念頭に置いておりましたが、上場会社も三件ぐらい、そごうを初め申し立てられているという状況でございます。
 それから、更生特例法でございますが、これは法務省ではなくて今では金融庁所管の法律なんですが、要するに、会社更生法を金融機関とか証券会社、保険会社等に適用する場合の特例を定めたものでございまして、最近新聞をにぎわしておりますような大きな生命保険会社がここ数カ月の間に何件か申し立てられている、このような状況でございます。
#103
○江田五月君 特定調停法の債務者ベースでいうと三万件というのは、一年とおっしゃいましたが、施行後五カ月ですか、だから引き直してみるとという話ですね。
 宮本次官、更生特例法の状況、細かなことはいいんですが、ざっくりと言ってみてどんなことか、急で恐縮ですがおわかりになりますか。
#104
○政務次官(宮本一三君) 御質問の趣旨がちょっとよく……
#105
○江田五月君 金融機関に対して会社更生法が適用できるように改正されて、そしてその後、金融機関が更生特例法の適用になるようなケースがどんなことになっているか、細かな数字まではいいですから。何か聞くところによると、そうまで必要なかろう、金融機関のことだから、だけど伝家の宝刀でつくっておこうと思ったらやっぱり適用する事例が出てきたというようなことをちょっと聞きますが、どうですか。
#106
○政務次官(宮本一三君) 確かに、更生法の特例ということで、手続を会社更生法でやりますとすべての弁済が滞ってしまうというようなことでございますので、そういうことにならないようにということもございまして非常に大きな効果を持っておる次第でございます。
 また、預金者がそれぞれ手続に参加するということになりますと非常に大変な事態になりますので、これにかわりまして預金保険機構がかわってやるというような制度になっております。
 そういったおかげで、最近のいろんな事件が起こったときにも非常に有効に働いているということでございます。
#107
○江田五月君 突然でごめんなさい。
 さて、こういうことをずっと見ますと、やっぱり倒産法制を早急に手直しをし整備をし、本当に今の国民のニーズあるいは社会経済上のニーズにこたえるものに改めていかなきゃならぬというのはかなり急を要する、しかも非常に重要な課題だということがわかってくるわけです。
 そこで、倒産法制というものの理念といいますか、倒産法制というのは何を達成するために手直しをしていかなきゃならぬのかと。通告というようなことじゃなかったので何も言っていないんですけれども、私はこんなふうに思うんです。
 大臣、ひとつ御感想を伺いたいんですが、民事上の特に金銭債務、債権債務があると。債権はこれはもちろん満足させられなきゃいけない。しかし、その債権の満足ができないと、しかしそれをできなきゃほっておくというわけにいかないから、そこで倒産処理をしなきゃいけないというので、倒産処理の場合に二つねらうべきものがあるのかなと。
 一つは、そこまでどうにもならなくなって債務まみれになってしまった、これはやっぱり本人にも責任があるから市場から退場してもらわなきゃいけない。特に責任ある大きな会社などで、いろんな救済を受けて市場にだらだら残っていっていつまでも市場が整理されないというのは、これは困る。個人の場合はなかなか大変ですが、退場をしてもらうということが一つあるだろう。もうばらばらにして、がらにして骨までスープでしゃぶってなくしてしまうという話ですよね。これはひとつきっちりやらないと、それこそモラルハザードその他の問題も出てくるし、やらなきゃいけない。
 しかし同時に、法人、企業の場合であっても、ばらしてがらにしてスープで飲んでしまうのがいいわけじゃないので、生きている企業であれば、その生きている企業のバブリー、オイリーな部分はスリムにして生かして経済活動をさせる方が社会経済的にプラスも大きい、そういうことができるならば。そこをよく見きわめる。
 個人の場合には、もちろんこれは退場をいただいたってやっぱり毎日の生活はあります。経済活動をしていかなきゃならないので退場もほどほどにして復活をさせていかなきゃならぬ、再生と。
 そういうけじめをきっちりつけて退場をさせる。これをちゃんとやることと、もう一方でちゃんと再生をさせていくことと、この二つの目標を同時に追求するというのが倒産法の整備の理念じゃないのかなというふうにきのう寝ながら考えたんですが、どう思われますか。
#108
○国務大臣(保岡興治君) 非常に包括的なお話で、正しく答えられるかどうかわかりませんけれども、おっしゃるように市場原理を重視する、そういう世界がこれからどんどん進んでいくわけですね。そうすると、やはり市場原理の中で本当に公正、適正な経済活動が確保される。したがって、その中で滅びる者、合理的でない者は淘汰されるというような側面を市場原理を生かす形で大切にするという、おっしゃるような側面もあると思いますし、また一方で、生かすことができるならば、そのことが債権者の回収を完全に殺してしまうよりかは回収額も多くなる。債権者の利益にもなる。それから、債務者という一つの経済資源を生かすことにもなる。あるいは、そのことによって周辺に与える経済的影響を少なくすることができる。社会的なコストを軽減できるというんでしょうか、そういうこともある。
 それから、任意の清算は、やはり任意でみんなで話し合ってやっていくということは、それはある意味では市場原理の中の一つの形態かもしれないということを考えれば、それはそれで民間における話し合いというものは大切にするということも一つの理念ではないかと思います。
#109
○江田五月君 例えば、退場という側面について言えば、今の会社更生法も、特にアメリカの例などを参考にしてみると、単に客観的状況、我に利あらずで会社がつぶれたという場合ならまだいいんですが、いろいろ経営上の責任を追及されるような場面があって、それでも平気で残っているというようなケースがあって、やっぱりこれはもっと厳しく退場を迫る。しかし、企業としては非常にいいものもあって、この企業はこういうところをスリム化すれば社会経済上随分役に立つものがあるというようなものを生かしていくとか、そういうめり張りのきいた運用、あるいは特に法律の整備の場合でもめり張りのきいた整備にしていく必要があるんだろうと思っております。これは意見ですが。
 さてそこで、この民事再生法一部改正案にもう少し具体的に入ってまいります。
 この改正案は、趣旨から見ると、当然これは低所得者あるいは再生途上で遂行が極めて困難になった、そういう先ほどから申し上げているような今の経済状況の厳しさの中で本当に底辺であえいでいる庶民中の庶民、こういう人たちにきっちりと経済再生、生活再建、こういう道をつくっていくという、そういうために用意されたものだと思いますが、その点はいかがですか。
#110
○政府参考人(細川清君) この一部改正法案で御提案申し上げている小規模個人再生と給与所得者再生でございますが、これは要件にもございますように、無担保の債権額が三千万円以下ということでございますので、したがってサラリーマンとか個人で事業をしている商店の方とか農業の方とか、そういう方で負債の額が比較的少ないという人に簡易迅速な手続を用意しようというものでございます。
#111
○江田五月君 住宅ローンの再生の特則も、別に大住宅があってもう左うちわで生きている、バブリーな生活をしている人たちよりも、むしろ普通の庶民が住宅ローンでやっと我が家を手に入れようとしたら何かの加減でなかなか払えなくなったという、低所得者層というとちょっと、もうちょっといい言葉がないかなと思いますが、普通の一般の市民を念頭に置いていると、これはそれでよろしいですよね。
#112
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、収入が高額になる方は、私ども公務員のように住宅ローンを借りなくても家を建てられるわけですから、したがいまして住宅ローンの特則も、要するに住宅を長期間分割して返済する方法でなければ家を建てられないという人のもともと住宅ローンであるわけですから、そういう人を対象にしているんだということでございます。
#113
○江田五月君 さてそこで、実際には、しかしこの法案の規定はそういう一般市民、低所得者層に対して厳し過ぎるのではないかと指摘する向きもあると聞いておりまして、そこを具体的に聞いていきます。
 まず、二百三十一条二項三号の計画弁済総額の百万円かあるいは五分の一か、いずれか多い額という規定、これはちょっと高過ぎるんじゃないかという意見があります。そうですね、一カ月二万円で三年というと七十二万円を目安にせめて七十万円とか、あるいは五分の一をもうちょっとまけて十分の一と、そういうような指摘もあるんですが、百万円、五分の一というのはどういうことでお決めになった数字ですか。
#114
○政府参考人(細川清君) これは再生、再建型の手続でございますから、最低限破産の場合の配当額を下回らない弁済がなければそもそもする意味がないということになります。
 ただ、先ほど江田先生が御指摘になりましたように、同時廃止がほとんどだということになりますと、これは要するに破産をした場合には配当するものはないということになりますから、それだけが基準ですとこれは破産する場合と債権者にとっては全く同じだということになってしまいます。したがいまして、将来の継続的収入から弁済して破産宣告を免れるという、そういう目的のためには合致しない要件だということになります。ですから、さらに最低限の弁済額要件がなければならないということになるわけです。
 それで、考えなければならないのは、債務者は小規模個人再生や給与所得者再生を利用することによって破産宣告を受けないで、いわば破産者の烙印を押されることなく債権のカットを受けるわけでございます。ですから、これが余りわずかばかりの分割弁済でそういう破産宣告を免れるということになれば、やはりモラルハザードという問題が生じてくるということになります。
 また、小規模個人再生でも給与所得者等再生でも簡易な手続でございますが、破産の同時廃止をして免責を受けたという場合に比べますと、これらの裁判所とか債権者の双方にとってはるかに労力を要する手続でございますので、債務者がこの手続を利用して再生を図ろうとする以上は、やっぱり裁判所という国家機関の労力を投入し、債権者にも債権管理の手間をかけさせるという、そういうことに足りるだけの社会的な価値がなければならないということがその思想でございます。
 こういうことから、先ほど御指摘のような五分の一または百万円のいずれか多い額としているわけですが、他方、それが余り高くなってもいけませんので三百万円を上限としているわけです。ですから、負債総額が三千万円の場合には一割の弁済でいいということになっているわけです。
 それで、この五分の一、百万円の具体的な根拠でございますが、これは債権者にとっても、破産の免責を受ける場合は破産の場合よりも利益がなければならないということでございます。破産の宣告がありますと、債権者はその破産宣告を受けた、免除された債権の全額について税務上の損金処理をすることができるわけですから、十分の一程度の額では、これは損金処理の利益とそれから債権管理のコストがないということに比べてみますと、破産のときよりも債権者が有利にならぬという、そういう問題もございます。
 それから、これは百万円なり五分の一というものを三年、長い場合には五年間に分割していくわけですから、いろんな債権、何人か複数ある債権者に分けてみますと、それがもっと小さい額になるわけです。ですから、余りにも小さい額ですとコストが引き合わない、こういうようなことからこういう金額が出てくるわけでございます。
#115
○江田五月君 ぽんぽんとそのようなことについて聞いていきますので、これは証拠でもって証明するというわけにはなかなかいかない難しいことで、どこかで切らなきゃならぬという話ですから大変だと思いますが、考え方をひとつ簡潔にお答えください。だけれども、毎月毎月二万円というのは結構きつい人たちもいるので、そのことは一応頭に置いておいていただきたいと思います。
 二百二十六条、債権者一覧表に異議を述べることがある旨を記載していないものは異議を述べることができないと。しかし、この点で、特に利息制限法の上限を超えて既払いの利息は、これは多分元本充当というのは今も変わっていないと思いますが、そういうことを知らずに、利息として払ったからこれはしようがないというようなことで異議を述べることがある旨記載しないというのは、そういう債務者がいる場合などには不適切になってしまうという指摘がありますが、これはいかがですか。
#116
○政府参考人(細川清君) 確かに貸金業者等から借りた場合に利息制限法に超過している利息を取られている場合が往々にしてあるんですが、そういう場合に、自分で計算できない場合には申立人である債務者は異議をとどめるということさえ書いていただければいいわけです。
 それから、異議をとどめるということを書かないでそのまま手続が進んだ場合でも、この個人再生手続では債権調査の意味が手続的に確定するだけです。つまり、三千万円を超えていないか、五分の一が何かという金額を確定するために使っているだけで、実体的に確定しているわけではありません。ですから、訴訟を起こして真実の額は幾らだというふうに確認すればいいので、そうしますれば、その確定した額がその再生計画で定められた一般基準に従って分割されて変更されていく、こういうことになります。
#117
○江田五月君 手続を進めるための確定である、しかし実体的に確定するわけではない、したがって今の利息制限法の場合以外でも債務不存在確認の確定判決を得れば、それはそれでもうよろしいということですね。
 次に、最高裁民事局長、規則を準備されていると思いますが、特に一般市民層、低所得者層、そういう人たちへのいろんな配慮のある規則をつくっていかなきゃならぬと思いますが、どういう特段の配慮がございますか。
#118
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 今回の個人債務者再生手続の申し立ては一般の個人による小規模な申し立てが中心になると予想されるところでございます。
 必要な費用といたしましては、申し立て手数料一万円のほか予納金を納付していただく必要があるわけでございますが、その中身は、先ほども御説明申し上げましたけれども、官報公告費用、送達通知の費用の概算額、それから個人再生委員の報酬見込み額、こういうものがございます。
 そこで、送達通知に充てる郵券につきましては、これは必要な郵券を納めるということでございますけれども、手続が小規模で債権者の数がそれほど多くはないわけですので、少額にとどまるのではないかと思っております。それから、個人再生委員の報酬につきましても、これは権限が限られている、規模が非常に小さいということでございますので、民事再生手続に比べて相当低額なものになっていく。全体的に費用はそれほど普通の再生手続と比べてかからないというふうに考えております。
 それが前提でございますけれども、このほか裁判所といたしましては、個人の小規模な申し立てに備えまして、これは規則というようなことではなくて運用の話でございますけれども、手続の内容を簡潔に説明したリーフレット、これを裁判所の受付窓口に備えるなど窓口での手続教授の対応をする、あるいは指示に従って空欄を記入していけば完成するような定型の申し立て書を用意する、こういうようなことも考えてございます。それから、例えば定期収入についての添付書類につきましても入手しやすい給与明細書の写しの提出を認める、そういうようなことで、少しでも利用しやすい運用を検討しているところでございます。
 規則の中身を申し上げますと、手続の円滑運用を図るということでこれから検討してまいりますけれども、運用の面では今のような形で検討していきたいと考えております。
#119
○江田五月君 これはやはり最大限そういう運用を、規則においてもあるいは窓口の指導においても考えていただきたいと思います。
 それから、二百三十九条五項二号の過去に免責を受けた者に対する給与所得者等再生の申し立て制限、これは必要ないんじゃないかという指摘もあるんですが、これはモラルハザードとかそういう話ですかね。答えていただけますか。
#120
○政府参考人(細川清君) 給与所得者等再生は債権者の同意なくして再生計画が認可されるものであります。したがいまして、同意なくして、要するに最低弁済額として決めたもの以上は免除される、そういうことになるわけでございます。ですから、過去に破産免責を受けた人、つまり破産免責でも債権者の同意は要らないわけですから、そういうものを短期間のうちに続けてやるということは、これは何といってもモラルハザードの問題が生じてくるということでございます。
 そこで過去に破産免責等を受けた者については申し立て期間の制限を認めているわけですが、ただ、これで給与所得者再生が使えない人は、今度は小規模個人再生の方にはその制限がありませんからそちらで利用していただいて、少なくとも半数以上の債権者の反対がないという状態になればこの再生計画を認可してもらうことができるわけでございます。
#121
○江田五月君 ハードシップ免責四分の三以上の弁済は三分の二ぐらいでいいんじゃないかという意見もあるんですが、どうですか。
#122
○政府参考人(細川清君) その点についても法制審議会の審議でもいろいろ御意見があって、割と重要な論点であったんですけれども、要するに自分の責任でない事柄で遂行できなかった、少なくとも、完遂はしていないんですけれども相当部分は遂行した、こういう場合に遂行したと同じような効果を与えようというものですから、それはおのずから完全に履行した場合に近いものでなければいけない、そういうことで四分の三ということにしてあるわけでございます。
#123
○江田五月君 効果が完全履行したと同じことなんだから弁済の方もなるべく多い方がいいよ、やってくださいということですね。
 小規模個人再生で債権者の同意を要件とすべきでないという指摘もあります。これは、人の場合は半数以上か、金額でいうと半分を超えるか、ちょうど微妙な違いを置いていますね。これは何か理由があるんですか。それと、そんなものは要件とすべきでない、特に高利の貸金業者等が統一基準をつくって不同意として小規模個人再生手続が非常に制約を受けるおそれがあるよというような指摘もあるんですが、これはやっぱりどうしても必要ですか。
#124
○政府参考人(細川清君) 給与所得者等再生では可処分所得の二年分ということで、同意はなくてもいいことになっています。これは、この要件からきまして、その人の過去の収入から将来の収入を確実に把握できる、したがって債務者が将来にわたって払い得る限界というのはおのずから客観的にわかる、こういう前提です。ですから、無理なことは要求できないので、最大限していただければ同意がなくてもいいだろうという思想でございます。
 これに対して、小規模個人再生の場合には、将来の収入が確実に把握できるという要件がございませんので、債権者の同意を全く不要だということにしますと債権者に対して非常に不利益が及ぶ可能性があるということでございまして、そこでそのかわりに、積極的な同意のかわりに消極的な反対が半数を超えなければいいということになっております。
 それから、債権者の頭数と債権額については微妙な差がありまして、債権者数の方には半数に満たない、それから債権額では二分の一以上を超えないということで若干差があるんですが、それは少なくとも積極的な通常の場合の要件をひっくり返して債権者の棄権の人を賛成の人の方に加えていいという、それ以上の利益はやっぱり与えるべきではない、そういう考え方で規定したものでございます。
#125
○江田五月君 はい、わかりました。
 三千万円の制限、これじゃそんなもの皆超えちゃうよという指摘があるんですが、そうでもないという意見もあります。
 そこで、これはもちろん別除権などを全部除いた債権が三千万ということなんですが、今の破産申し立てのケースなどの実例から見て、三千万円という制限だと大部分がそれ以上になっちゃうよというんじゃこれは使いようがないので、そこでどのくらいまでがこれでカバーできるのかをお答えください。
#126
○政府参考人(細川清君) 三千万円について考慮した事情でございますが、アメリカの連邦倒産法の十三章の手続では、似たような手続なんですが、これは無担保の債務総額が二十五万ドル以下ということになっていまして、二千八百万円ぐらいでございます。
 それから、個人の債務者の破産事件で、一件当たりの破産債権の総額が五百万円から一千万円までの範囲であるものがほとんどでございます。商工ローンとかで借りた場合にはもうちょっと、二千万円等に上る場合がありますので、安全を見て三千万円というふうにいたしたわけでございます。したがいまして、個人の破産事件の少なくとも九割の人はこの対象になるだろうというふうに考えております。
#127
○江田五月君 これは改めて確認ですけれども、この法案による個人再生手続とこれまでの自己破産の手続、これはあくまでも本人がどちらでも選択できると。これはそれでよろしいですね。
#128
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおりでございます。
#129
○江田五月君 もう一つ、債務者が個人事業主である場合に、その個人事業主の従業員の賃金債権の確保、これは支障がないようにしなきゃならぬと思うのですが、これは一般先取特権で一般優先債権ですから、その部分はもちろんまず真っ先に弁済されるという理解でよろしいんですか。
#130
○政府参考人(細川清君) 労働者の賃金債権等につきましては、民法と商法に一般先取特権の規定がございます。したがいまして、民事再生手続上は、小規模個人再生でありましても給与所得者再生でありましても要するに一般優先債権でございますから、御指摘のとおり随時その権限を行使することができるということになります。
#131
○江田五月君 この委員会室へ入ってきたら北海道の農民の皆さんから切実な問い合わせがあるので聞いてくれというのがあって、個人の農業経営者、これはもちろんこの法案の対象になりますよね、確認ですが。
 それから、給与所得者再生と住宅ローンの特則、これは農業者についてはどういうことになるのか。農業者であっても、例えば農業生産法人の従業員であるとか、給与所得であれば当然、あるいは住宅ローンも別に農業者とほかの人と変わることはないということだと思いますが、その二つ。それでよろしいといえばよろしいと。
#132
○政府参考人(細川清君) まず、住宅資金特別条項に関する特則でございますが、これは通常の民事再生手続でも小規模個人再生でも給与所得者再生でも、すべての手続において使えるものでございます。
 それから、農業者についてですが、通常の手続を使えることは当然でございます。それから、小規模個人再生においても当然この要件に合致すれば使えます。それから、給与所得者等再生は、自分が給与等をもらっている人のことですから、御指摘のとおり農業生産法人に勤務しているような方は使えますけれども、自分みずから事業主になっている人は給与所得者等再生は使えないということになります。
#133
○江田五月君 その他、農業関係でさまざまな要求、切実な声がございますが、これはまた別の機会にお伝えをしたいと思います。
 次に、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案ですが、最高裁にまず伺います。
 規則をおつくりになると思いますが、外国倒産処理手続の申し立てに際して、これは外国管財人が申し立てる、あるいは債務者ですか、その外国の法制度の内容とか判例、運用実態などについて日本語による十分な資料を用意させるように規則を書かなきゃならないと思いますが、これはいかがですか。
#134
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 裁判所法七十四条は「裁判所では、日本語を用いる。」と規定されてございます。外国倒産処理手続の承認援助手続において、この点も同様でございます。したがいまして、御質問がありました申請する際の提出の資料につきましては、これは訳文添付が当然必要とされる。これは民訴規則百三十八条にも訳文添付の規定がございますけれども、これを準用するということで規則を今考えておるところでございます。
 それから、それ以外の外国法制に関する資料、これにつきましても、いろんな形で日本語の文献などが手に入るような形の対応を考えていきたいと考えております。
#135
○江田五月君 そこで、そういうだれでも手に入る国のことならいいんですけれども、手に入らないような、余り知られていないような国で始まった倒産手続が日本で承認援助を求めてくるような場合に、例えば保全管理命令などが出されて、利害関係人としていろんな人に通知がされて、そういう皆さんが自分たちの権利の保護のために記録の閲覧を求めてくる、こういうときには、当然その外国の法制度について日本語で申請時に添付された資料は開示されると。これはよろしいですね。
#136
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 外国倒産処理手続の承認援助手続についての閲覧、謄写でございますけれども、これは法案の十三条一項におきまして、「利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律又は第十五条において準用する民事訴訟法の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件の閲覧を請求することができる。」と、こう規定されております。二項では、利害関係人が文書等の謄写等をすることができるという旨を定めてございます。
 裁判所といたしましては、これらの規定の趣旨に従って、適切な閲覧、謄写の運用を心がけていきたいと考えております。
#137
○江田五月君 労働組合の皆さんなんかから、世界じゅうにはいろんな法制度があるだろうと。例えばどこかの国で自分の国の国民に優先権を与えて外国には全部劣後だというような倒産法制が仮にあったとして、そこの人に日本の債権者が債権譲渡して、それでそこの国で執行が始まって、それを日本に承認援助を求めてこられる、そんなことをされたらたまったものじゃないというような指摘があります。
 そういうことにはなっていない、それは当然そんなことはならないように手当てをしていると。特に、労働債権者等国内の債権者が少なくとも不利になるようなことになっていないと思いますが、どういう点でそういう配慮がなされているのか、それをお答えください。
#138
○政府参考人(細川清君) 御設例の、要するに承認を求めている外国倒産処理手続が依拠している法制が自国民を有利にして外国民を差別しているというのは不合理きわまるものでございます。したがいまして、これは承認の棄却事由である日本における公の秩序または善良の風俗に反するということになりますので、それは承認の申し立ては棄却ということになろうかと思います。
#139
○江田五月君 棄却ですよね。
 ただ、こっちではちょっと有利だけれどもこっちではちょっと不利だとか、そういうでこぼこがある程度あるような場合もある。そのでこぼこでちょっとでも日本の法制度と比べて、例えば労働債権者に不利なような制度になっているとかになったらもう初めから承認棄却となるのか、それともまあ全体を見て、これはとにかく承認をしておくが、後に個々の処分について、この処分はだめですよとかこの処分はここでストップですよとかこの処分はこういう解除をしますよとか、そういうような手だても講じておられるんだと思いますが、その点の説明をしてください。
#140
○政府参考人(細川清君) 先ほど申しましたように、公序良俗に反しとまでは言えなくて承認する場合であっても、今度は承認援助処分をするときに、例えば労働債権が未払いのものがある、それを払ってもらわなければ労働者の生活が成り立たないというような場合を考えてみますと、こういう場合には弁済禁止命令とかあるいは個別の権利の執行の禁止の命令において労働債権のものは除外するということになろうかと思いますし、またその承認管財人等があるいは債務者等がその当該企業の資産を外国に持ち出そうという場合には裁判所の許可が必要となりますので、裁判所の許可を得るためには、外国に持っていかれちゃうと労働者の配当の順位が低いから日本の労働者が困るという場合には許可しないということにいたしまして、そういう場合には、日本の労働者は個別的な権利執行するとか、あるいは国内の倒産手続を申し立てるとか、そういうことができるわけでございます。
#141
○江田五月君 総じて、今回のこの外国倒産処理手続の承認援助手続においては、労働債権者の雇用契約上の地位とかあるいは実体法上の優先的地位とか、こういうものに配慮がされておるので、国内倒産処理手続と比べてこの承認援助手続は労働債権者に不利となるものではないんだと、こう自信を持って言えますか。
#142
○政府参考人(細川清君) 例えば、承認援助手続をしたときは労働組合に通知することを裁判所に義務づけております。要するに、承認はされたけれども、それが労働者に不利だと思えばそこで国内手続を申し立てればいいわけで、国内手続は外国の手続よりも原則として優先するわけです。例外として外国承認手続が優先するのは、日本の債権者に不当な不利益がないとか、そういうことが要件になっています。ですから、結果的に日本の労働者の債権等が不当な扱いを受けるということはないものと確信しております。
#143
○江田五月君 その確信をひとつ皆さんによく知らせるようにしていただきたい、困ったことがあったらこういうこともできるんですよということはちゃんとわかりやすく説明をしていただきたいと思います。
 さて、国際化が急激に進展する時代、この法案が成立すれば、海外における企業倒産についての情報の収集とかあるいは情報提供の必要性が高まると思うんですね。
 保岡大臣、所管事項ではないかと思いますが、政治家としてお答えいただきたいんですが、国内であれば帝国データバンクとかいろいろありまして、民間の信用機関、これから情報提供サービスがあるが、海外の情報がどういうふうになるのか。突然、超大型倒産が海外で起こって、日本のある種の企業、産業がもう大変な困難に直面するというようなことだってあるわけで、そういうような海外の情報、企業倒産についての情報収集・提供体制の整備、政府の仕事か民間の仕事か、そのあたりは微妙なところがあると思いますが、全体としてもっと我々はそういうことにも注意を向けていろんな活動をしていく、あるいは活動をエンカレッジしていく、そういうことが必要だと思いますが、例えば閣議でそういう問題提起をされるかとか、大臣のお答えを伺いたいと思います。
#144
○国務大臣(保岡興治君) これから国際的な広がりで活動、営業する企業というのはもうどんどんふえていくと思いますし、IT、コンピューターネットワーク、こういった技術の進展によってそれはもう拍車がかかるものだと思います。したがって、企業活動の戦略、戦術をつくるためには当然情報があって初めて正しくできるということですから、そういった国際的な企業活動の前提となる情報を我が国の企業が持つということは極めて重要な問題だと思います。
 ただ、それは非常にある意味で情報の正確さとか内容については責任が伴います。したがって、これを公的な機関で対応するというのはなかなか難しいんじゃないか。一般的な情報であれば、公的なところで諸外国の経済情勢やあるいはそのルールの仕組み等についての情報の提供はあってしかるべきかと思いますが、個別の企業の情報などはやはり民間のすぐれたノウハウを、しかも幾つかのそういった調査機関が競争して、そしてその格付を求めて努力していって、そういう中で我が国もそういう情報提供を受けられるような環境に参画するあるいは連携するということが求められるんじゃないか、そういうふうに思います。
#145
○江田五月君 この新たに創設する外国倒産処理手続の承認援助手続、これが適正迅速に運用されるように、諸外国の倒産処理制度及び実情について、これは一般論ですが、調査研究、周知、こういうものは政府としてもやっていかなきゃならぬと思いますが、これは法務省の仕事か、あるいはもっと違うところの仕事か、いろいろあると思います。
 そこで、宮本政務次官にお越しいただいておりますが、この点、宮本さんにも、海外での企業倒産などについての情報収集・提供体制の整備の必要性をどう考えるかを伺います。
#146
○政務次官(宮本一三君) 御指摘のように、これから海外での情報、そうしたものの収集は非常に大きなウエートを持ってまいるわけでございます。金融庁といたしましても、そうした角度で鋭意努力をいたしておりますが、さらにこれからも一段と努力をし、そうしたあらゆる事態に対応できるような整備を心がけてまいりたい、このように考えております。
#147
○江田五月君 きょうは、さらに住専処理から始まった一連の金融再生の過程、あるいはその過程で本来退場すべきものが債権放棄等々で延命をされているんじゃないかとか、そうしたことも伺いたかったんですが、ちょうど時間になりましたので、これで質問を終わります。
 ありがとうございました。
#148
○委員長(日笠勝之君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時十五分休憩
     ─────・─────
   午後一時十六分開会
#149
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#150
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 今回、この民事再生法等の一部改正法律案、それから外国倒産処理手続の承認援助の法律案を審議させていただいておりますが、午前の質問でも、特に倒産法制をずっと整備してきたという経緯をお聞きしたわけでございますが、今回個人債務者に絞って民事再生手続の特則を設ける、しかも住宅ローンの問題とか給与所得者の特則というのも随分特則の特則みたいに出てきたなというふうに思うわけでございますが、午前中にも出てきたと思いますが、個人債務者に絞って特則を設けることとしたのはなぜかということを概括的にちょっと御説明をお願いしたいのですが。
#151
○政務次官(上田勇君) 今回、個人債務者に係る特則を設けた理由についてでございますけれども、御承知のとおり、現在の民事再生法におきましても、これは法人も個人もいずれも利用できるということではありますけれども、民事再生法が主として中小企業以上の規模を有する事業者の再生のための手続として構想されたものであるために、個人債務者が利用するということになりますと手続的な負担が重いというような問題点がこれまでも指摘されてきたところであります。
 また、いわゆるバブル経済の崩壊後の経済情勢の悪化に伴いまして個人債務者の破産事件数の急増という社会情勢も、きょうの午前中の質疑でもそういったことについて質疑がございましたけれども、個人債務者を対象とした再生手続の創設の必要性が強く叫ばれるようになってきたわけでございます。
 そこで、このような個人債務者が利用しやすい簡易迅速な民事再生手続の特則手続を設けようというのが今回の法案提出の理由であります。
 ところで、継続的な収入の見込みがある個人債務者の場合については、その収入を弁済の原資として再生債権の全部または一部を分割して弁済するという単純簡明な再生計画案を作成することになりますので、簡素な手続を設けるのに適していると考えております。
 これに対して、法人債務者の場合には、事業計画、事業資産の処分等に関する事項も再生計画案に盛り込むことがどうしても必要となりますので、その内容は個人債務者のものよりもはるかに複雑なものとならざるを得ないわけであります。こうした複雑な再生計画を作成せざるを得ない法人に対しては、小規模個人再生が予定している簡素な手続を利用させることはどうしても無理があるというふうに考えております。
 また、現実問題としても、いかに小規模、零細な法人とはいえども、法人である場合には無担保再生債権の総額が三千万円以下という例は少ないというふうに考えられておりまして、法人を対象者に加えるということはその実益にも乏しいんではないかというふうに考えているところでございます。
 以上のような理由で、利用対象者を今回は個人債務者に絞って民事再生手続の特則を設けることとしたわけでございまして、法人については今回の特則の利用対象者からは除外することとし、現行の民事再生手続において対応していただくというふうにしたところでございます。
#152
○魚住裕一郎君 個人に着目してといいますか集中して今回特則を設けるわけですが、破産しないで経済的再生を図るという手続としては特定調停もあるわけでございますが、今回の小規模個人再生などの新しい特則の手続と特定調停とどういう関係というか、どういうふうに異なっているのか、お願いできますか。
#153
○政府参考人(細川清君) 特定調停法は本年の二月から施行された法律でございますが、ただいま御指摘のとおり、経済的に破綻するおそれのある債務者の経済的再生を図るというための制度でございますので、今回の改正案と共通の目的を持っているわけでございます。
 しかし、個人再生の特則手続は倒産処理手続でございますが、特定調停は民事調停の一種でございます。そこで、手続とか手法が異なってまいります。
 まず、個人再生の特則手続では、再生計画に基づいて債務者の生活の再生を図ることを目的とするものでございますので、再生計画の成立のためには裁判所の認可を受けることが必要でございます。そしてまた、その再生計画が認可を受けて成立しますと、これに反対した債権者もこれに拘束されるということがあるわけでございます。その反面、個人債務者の再生手続では、原則三年、最大限五年間で分割弁済を継続するということや、午前中にも議論になりました最低弁済額といったような債務の弁済方法や弁済額について規制があるわけでございます。
 これに対して、特定調停は、要するに調停において当事者双方の合意を図ることが目的でございますので、合意をした当事者のみが拘束されて、最終的に反対して合意しなかった当事者、債権者にはその効力が及ばないということになります。その反面に、そういう合意がもとになっておりますので、弁済額や弁済方法については個人再生のような場合の制限はないということになるわけでございます。
#154
○魚住裕一郎君 民事再生法が施行されて半年ぐらいになるわけでございますけれども、これはたしか和議法の七十年ぶりぐらいの改正だったと思うんですが、この和議の時代と比較して、利用頻度といいますか利用者数というのはどの程度になっているんでしょうか。また、今話に出ました特定調停の利用件数、利用状況といいますか、ちょっとその辺をお教えいただけますか。
#155
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 再生事件の平成十二年四月から八月までの新受件数、これは概数でございますけれども、三百八十三件でございます。前年同時期の和議事件の新受件数はこれは九十三件でございますので、それと比べると数倍の件数が来ているということでございます。
 それから、再生事件の利用者について見ますと、個人の申し立てにかかわるものが少なくて、事件数の多い庁を個別に調査した結果によりますと、個人事業者が申し立てた事件は二件、これは病院経営者と薬局経営者いずれも負債総額は三十億円を超える、あるいは十億円を超える大きいものでございます。それと、法人の申し立てにあわせてその代表者個人が申し立てた事件、これが三件ございまして、多い庁のサンプル調査によりますと、全体に占める個人の申し立ては約四%でございます。
 それから、特定調停事件の平成十二年二月から八月までの新受件数は十一万九千四百九件、これも概数でございますが、こういう数字になっております。このうちで個人債務者に関する事件が十一万八千二百七十六件、九九%を占めている、こういう状況でございます。
#156
○魚住裕一郎君 本当に活用されるというか、これは倒産手続とか債務の処理ということで、暇な方が本当はいいというふうに思うわけでございますが。
 ただ、大変な数の利用数というか、そういうふうに考えるんですが、これを適正迅速に処理をするといった場合、やはり手足というか、裁判所書記官の役割が非常に大きくなるというか負担がふえるというふうに思うところでございますが、裁判所書記官の増員を図っていく必要があるだろうと思うんですね。その辺は最高裁はどういうふうに考えておられますか。
#157
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 御指摘のとおり、書記官は倒産事件においていろいろな仕事がございます。手続教授に始まりまして、申し立て書や陳述書などの申し立てに必要な書類の審査とか届け出債権の整理や事前審査をしてその上で裁判所の判断を仰ぐとか、各種機関の監督事務の補助、それから各種の催告や通知等に至るようないろんな事務を行ってございます。したがいまして、倒産事件を円滑に処理するためには書記官の役割が非常に重大でございます。
 そこで、裁判所としましては、ここ数年、継続的に書記官の大幅増員に努めてきているところでございます。今後とも、これまでに蓄積されたノウハウを生かして、適正迅速な処理の工夫を図るとともに、事件の動向なども見ながら的確な処理ができるような人的あるいは物的な体制の整備を図っていきたいと考えております。
#158
○魚住裕一郎君 午前も出ましたが、裁判所規則の関係なんですが、施行を待たれているという方が多いというふうに思うところですが、規則の整備は基本的にはどういう考えで整備しようとしているのか、また進捗状況はどんな状況になっておりますか。
#159
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 規則の基本的な考え方でございますけれども、この手続の目的は、基本的には経済的破綻に瀕した個人債務者が破産しないで経済的に再生できるようにする、それとともに債権者も破産の場合よりも多くの債権を迅速に回収できるようにするということでございまして、この手続の目的が十分達成されるように最高裁判所規則におきまして手続の円滑な進行を促す規定を設けるということを考えてございます。
 規則の具体的な内容につきましては現在検討中でございまして、確定的なことは申し上げられないわけでございますけれども、検討中の規定で主要なものは以下のようなものでございます。
 一つは、再生手続開始の申し立て書など各種の申し立て書の記載事項、それから添付書面、こういうものについて定めを置く。それから二つ目は、再生債務者の手元には債権額に関する資料がないことが多いわけですので、この再生債務者が再生債権者に対してこういった資料を送付するように求める、そういうことを認める規定を置く、こういうようなことを考えております。
 現在の規則検討の進捗状況でございますけれども、個人債務者の民事再生手続につきましても、民事再生法のときと同じように、法律の成立後施行までの期間の周知期間を十分確保した上で規則を迅速に制定することができるように準備作業を行っているところでございます。この準備作業の途中経過につきましては法制審議会の倒産法部会にも報告させていただきまして、内容等についても広く意見を聞いてきたところでございます。今後、法律が成立し次第、規則制定に向けた手続をやっていきたいと考えている次第でございます。
#160
○魚住裕一郎君 それで、以前に法務省で倒産法制に関する改正検討事項ですか、公表したと思うんですが、個人債務者の再生手続を管轄する裁判所、以前は簡易裁判所もそこの公表された検討事項ではあったと思うんですが、今回は地裁だけですね。これはなぜ簡裁を除外したんでしょうか。
#161
○政府参考人(細川清君) 確かに、公表いたしました改正検討事項の中には管轄裁判所として簡易裁判所も検討の一つの対象というふうにされていたわけでございます。その後、いろいろ検討した結果でございますが、その結果、やはり地裁が適当であろうということになったわけでございます。
 その理由でございますが、これは個人再生の特則手続でも民事再生手続の一環であることは間違いないわけでございまして、これを適正に処理するためには倒産処理に関する専門的な経験の積み重ねが必要になってまいります。現在のところ、倒産手続というのはすべて地方裁判所によって行われておりまして、やはりこのようなノウハウを持っているのは地方裁判所であるということが第一点でございます。
 それから、小規模個人再生でも給与所得者等再生でも、その要件がない場合には通常の民事再生事件に移行する場合もございますので、そういうことを考えますと、この点の理由からもやはり地方裁判所が適当であろうということになりまして、こういった理由から最終的には地裁ということになったわけでございます。
#162
○魚住裕一郎君 この小規模個人再生では個人再生委員というのが出てきますね。これは必要があると認めるときに裁判所が選任するという形になるんですが、具体的にどのような場合に必要があるというふうになるんでしょうか。
#163
○政府参考人(細川清君) 個人再生委員の職務には法律に規定がありますように三つ種類があるわけでございまして、その職務の内容に応じてそれぞれどのような場合に必要があるかということが定まってくるわけでございます。
 まず、債務者の財産及び収入の状況調査を職務とする場合でございますが、どういう場合に必要性があるかといいますと、債務者に財産隠匿や偽装債権の届け等の疑いがある、そういう場合には債務者の財産状況を解明しなければ債権者の利益が害され、あるいは再生計画の認可、不認可の決定が適切に行われないということになりますので、そういう場合に財産調査をする個人再生委員が選任されるということになります。
 それから、債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をするという職務がございますが、これは申立人である債務者にベテランの、ベテランでなくてもいいんですが、弁護士さんがついていて再生事件の処理について適切にアドバイスができるというならばよろしいんですが、そうじゃなくて、御本人がみずから申し立てたという場合には、なかなか法律の要件に定まった再生計画案を定めるのは難しいということになりますので、そういう場合に勧告をする個人再生委員を選任するということになります。
 それから、再生債権の評価の補助をする職務がございますが、これは評価の申し立てがあった場合には法律上必ず選任しなければならないということになっているわけでございます。
#164
○魚住裕一郎君 今、局長の話の中でも弁護士云々というような、ついていればというようなことを言っておられますが、そうすると、この個人再生委員というのは、もちろん法律にある意味じゃ通暁していなきゃいけないだろうとは思いますが、個人再生委員としては弁護士が適任なのかなとは思うんですが、そのほかにはどういう人が選任されるのか。弁護士偏在とかいろんな問題もずっと指摘されてきているところでございますが、その辺はいかがでしょうか。
#165
○政務次官(上田勇君) 法律上は個人再生委員に資格制限等は設けておりませんので、職務の内容に応じまして裁判所によって適格者が選任されるということになります。
 しかし、今、委員からもお話がありましたように、この個人再生委員は、現行の実務の中である程度の経験やノウハウを必要としているわけでありますので、その意味では今、委員から御指摘がありましたように、弁護士が最適任であるということはそのとおりだというふうに思います。
 また、御指摘にもあったんですが、個人再生手続の対象となる事件がこれからどれだけ起きるかわかりませんけれども、多数になるということを考えますと、弁護士だけで個人再生委員を賄い切れないのではないかという懸念がございますし、特に弁護士の少ないような地域などにおきましては、その職務の内容に応じましてはもっと幅広い適格者を探さなければいけないというふうに考えております。
 その場合における個人再生委員の具体的な候補といたしましては、これに限るということではありませんが、裁判関係事務の専門職であります司法書士とか、また特定調停事件などに携わっている調停委員の方などが適任者に挙げられるのではないかというふうに思っております。
#166
○魚住裕一郎君 今言っていただいた個人再生委員、やはり人が大事だと思うし、それから裁判手続ですから円滑に進めていくということが大事かと思いますが、破産管財人の場合も裁判所で名簿みたいなものを持っていて順次委嘱するという形になると思うんですが、この点につきましては裁判所としてはどのような体制を考えておられますか。
#167
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 手続の円滑な進行のためには、個人再生委員として適切な人を選任することが極めて重要でございます。
 この個人再生委員といたしましては、現行の実務におきまして倒産事件を手がけてそれに関するノウハウを有している弁護士が最適任であるというふうに我々も考えているわけでございます。個人再生委員の候補者の確保については弁護士会の協力が欠かせないわけでございます。
 倒産事件における機関の確保につきましては、従前から各裁判所におきまして弁護士会との間で協議の場が設けられておりますほか、民事再生法の施行前の準備としても監督委員の給源を確保するために弁護士会などとの協議を実施してきているところでございます。個人再生委員につきましても、今後、各裁判所の実情に応じて、これまでの協議の実績も踏まえて給源を確保するための協議を続けていくということになろうかと思います。最高裁といたしましても、そうした各裁判所の協議がスムーズにいくように、日本弁護士連合会などの上位団体に働きかけをしていきたいと考えているところでございます。
 それから、個人再生手続の対象事件が多数に及ぶことが予想されますので、弁護士だけではない個人再生委員も必要かというふうに思っております。弁護士の少ない地域などにおきましては、これは職務の内容に応じて広く適格者を求めることになると考えられておりますので、この点についてもその開拓の方法を検討していきたいと考えております。
#168
○魚住裕一郎君 それから、個人再生委員の報酬ですけれども、午前中も質問に出ましたけれども、弁護士仲間内では、例えば国選弁護も低過ぎるというので実際の感覚としては奉仕活動に近いような感覚でやっている人もいるわけでございますが、個人再生委員も余り低いとボランティア活動みたいな形になってしまうのではないか。せっかくいい制度をつくっても、その辺を担当する人がやる気をなくすのでは困るなというふうに思うんですが、もう一度報酬につきましてどの程度を考えているか、お知らせください。
#169
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 個人再生委員の報酬の額は、これは事件を担当する裁判所が定めるものでございまして、一概に我々の立場で報酬額はどうということは言えないわけでございますけれども、ただ、民事再生手続の監督委員などと比べますと、個人再生委員の職務内容はそれほど広範で複雑なものではないという点がございますので、それと比べるとやはり低額なものになる。午前中も申し上げましたけれども、これは予測でございますけれども、数万円から数十万円の範囲におさまるのではないか。要するに、権限の範囲がそう広くないということと、事件規模、これは事件規模が大きければまた話は別でございますけれども、事件規模が小さければその報酬額も少なくなるだろうというふうに考えております。
 結局のところ、どの程度の報酬で委員になっていただけるかという観点から考えていくということになろうかというふうに思っております。
#170
○魚住裕一郎君 それでは次に、国際倒産法制の関係をちょっとお聞きしたいんですが、今回、UNCITRALのモデル法の趣旨を踏まえて立案されたということでございますけれども、資料の中で仮訳が載っているわけでございますが、大体同じなんですか、違うところがあるんですか。もし違うところがあるのであれば、大きな点を教えてください。
#171
○政府参考人(細川清君) 今回の国際倒産に関する法案でございますが、これの中身は基本的にはUNCITRALのモデル法と同じでございますが、若干違うところがございます。
 モデル法では、承認を申し立てられた手続が外国主手続、すなわち債務者が主たる利益の中心を有する国で行われる手続である場合には、その承認がされますと強制執行及び訴訟手続等は自動的に中止されるということになり、また債務者の財産の処分権も当然に停止するということになっております。
 これに対して、この承認援助法案では、承認後、強制執行及び訴訟手続の中止、債務者の財産の処分の禁止といった効力は裁判所がその旨を決定することによって初めて生ずるということになっているわけで、そこのところが違うところでございます。
#172
○魚住裕一郎君 この承認援助に関する法律案の二十一条六号では、不当な目的で申し立てされた場合には棄却するというふうになっておりますが、承認の決定をした後不当な目的でされたことが判明した場合はどういうふうになるんでしょうか。
#173
○政府参考人(細川清君) 承認の決定をした後に、ただいま御指摘のように不当な目的でされたことその他申し立てが誠実にされたものでないことが明らかになった場合は、五十六条の規定に従いまして外国倒産処理手続の承認の取り消しの決定をするということになるわけでございます。
#174
○魚住裕一郎君 それから、承認管財人ですけれども、先ほども個人再生委員の報酬のことを聞きましたが、承認管財人の報酬はだれがどのようにして払っていくのか、まただれが費用を負担するのか、それから報酬額を裁判所が決めるという場合、どういう基準でこの報酬額を決めるのか、あわせて民事局長、法務省と最高裁、お願いします。
#175
○政府参考人(細川清君) 承認管財人の申し立てをする場合には、その申し立てをする外国管財人等が予納金を納めなきゃならないので、その予納金を原資として承認管財人に報酬を支払うことということになります。裁判所がその選任した場合の必要性とか、事件の規模等を判断して予納額を決めるということになります。
 この予納した金額の最終的な負担者はだれかということですが、それはもともとが外国の倒産処理手続ですから、その外国倒産処理手続を規律している外国の法律で最終的に負担者がどうなるかということが決まりますが、日本の裁判所との関係では、管理命令を申し立てている承認管財人等が予納しなければならぬということになるわけでございます。
#176
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 法の四十九条一項によりまして、裁判所が承認管財人の報酬額を定める場合、その報酬額は一般的に言いますとその職務と責任にふさわしい額ということになろうかと思います。これは民事再生規則二十五条でも同様な規定がございます。
 この報酬額でございますが、一般論としましては、この管財業務の内容、これがやはり一番大きな考慮要素になろうかと思います。そして、この承認援助手続における管財業務の内容というのは、これは対象となります外国倒産処理手続の性格、再建型のものなのかあるいは清算型のものなのかとか、あるいは債務者の日本国内における業務や財産の状況によって決まってくるということになろうかと思います。
 また、外国管財人以外の者を承認管財人に選任する場合には、これは日本における弁護士や経営専門家の中から選ぶということが想定されますので、国内の倒産処理手続においてこういった方たちが管財人になった場合の報酬額の実情、こういったものにかんがみまして、承認管財人の報酬額が決定されるものと思っております。
#177
○魚住裕一郎君 最後に、これは国連のモデルにのっとる形で立案されるわけでございますが、先進国だけではなくてやっぱり途上国も倒産が多いんだろうと。
 例えば、共産主義から市場経済に移行したところも含めて、やはり法整備、この間のときも法整備の支援ということを聞かせていただきましたけれども、倒産法制もかなり大事な分野ではないかなと。国際的に展開していく日本の企業、あるいはまた日本に来る企業もあるわけですから、この法整備の支援、特に倒産法制について今後法務省としてどう取り組んでいくかということを法務大臣にお聞きいたしまして、質問を終わります。
#178
○国務大臣(保岡興治君) これからの世界、あるいは我が国が国際的な経済活動をしていく上でルールというものが非常に重要で、特に先生今御指摘のように、発展途上国に対する法整備支援というのは我が国にとっても、また途上国にとっても大変意義のあることだということで、先生がかねて熱心にこの問題に取り組んでいただいていることに敬意を表しているところでございます。
 御指摘のように、先進国のみならず、発展途上国においてもモデル法に沿った国際倒産法制の整備が行われて初めて世界的な規模で公平かつ公正な倒産処理が可能となるわけでありますが、法務省では、従前からアジア諸国を中心として民商事分野の法整備支援に積極的に取り組んできたところであり、民事手続法の整備も支援の大きな柱の一つになっておりますけれども、国際倒産法制の整備についてもその一環として積極的に支援活動をしていくことが大変意義のあることだと思っております。一生懸命努力をしたいと思います。
#179
○魚住裕一郎君 終わります。
#180
○橋本敦君 今年四月に施行された民事再生法の運用状況についてはさきに質問もあり答弁もありましたが、この問題の流れとして、まず私も、この点について最高裁に運用状況はどうなっているか、もう一度改めてお伺いしたいと思います。
#181
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 再生事件の平成十二年四月から八月までの新受件数は三百八十三件、これは概数でございます。これは前年同時期の和議事件の新受件数であります九十三件と比べますと数倍のものというふうになっておるわけでございます。
 個人債務者による再生手続の利用は少ない、受件数の多い庁について調査したところによりましても、個人の事業者が申し立てた事件が二件、それから法人の申し立てにあわせてその代表者が申し立てた事件が三件、全体に占める個人の申し立ての割合は四%、そういう数値でございます。
#182
○橋本敦君 今答弁がありましたように、民事再生法は個人債務者も利用できる、そういう法的仕組みではあるわけですが、今御指摘のように極めてその利用が少ない。その原因、理由はどこにあるというように裁判所は見ていらっしゃいますか。あるいはこれは法務省でもどちらでも御答弁結構です。
#183
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、民事再生手続は個人債務者も利用できることになっているんですが、利用者は多くありません。一般に指摘されている問題点といたしましては、まず債権調査手続等に通常の民事再生手続は相当厳格な手続を定めておりますので手続の負担が大きいということと、監督委員等が選ばれるのが普通ですから、それに対する報酬を払わなきゃならない、手続の負担もばかにならない、そういうふうなことだろうと思っております。
#184
○橋本敦君 そこで、それを改善して個人の再生を図るということで今回の立法が出てきたと思うんですが、この立法の改正によって個人の申し立てがかなり要請にこたえてふえてくるという可能性があると思いますが、そこらの展望は法務省はどうお考えですか。
#185
○政府参考人(細川清君) 個人破産手続の件数でございますが、昨年は約十二万件ほどでございます。資料にあるとおりでございます。
 アメリカでも破産手続のほかに個人の再生手続が連邦倒産法の十三章というところにあるんですが、それで、アメリカの例を見ますと、破産免責の手続と個人の再生手続の比率が七対三の割合だと言われております。ですから、これで引き直してみますとやはり三万件ぐらいにはなるわけです。
 それから、午前中から問題になっております特定調停でございますが、当初五カ月間で十万件ぐらい、それからもうちょっと最新の情報では先ほど十一万件と言っておられましたが、そういう件数でございます。これは債権者数を基準としていまして、一債務者当たりに債権者が七、八人いるというのが普通ですから、それで換算して一年間に引き当てますとやはり三万数千の数になってまいります。特定調停では普通は全額元本を払わないと調停が成立しないと言われていますが、再生手続では一部カットできるわけですから、相当数利用があるということで多ければ三万人台の方が利用されるような手続になるのではないかというふうに考えております。
#186
○橋本敦君 それに関連して最高裁にお伺いいたしますが、一九九〇年から九九年にかけて個人の破産事件の新受件数、これはどういう傾向になっておりますか。
#187
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 最近十年間の個人の破産事件の新受件数でございますが、平成元年は一万一千四百八十件、平成三年が二万三千四百九十一件、約倍になりました。平成四年ごろになりますと四万三千三百九十四件、これは平成二年の四倍近くでございます。それ以降、四万件台が少し続きましたが、平成八年ごろから次第に増加傾向に転じまして、平成十一年は十二万三千九百十五件。事件が急増している、こういう状況がございます。
#188
○橋本敦君 そういった状況は、まさに今日のバブルがはじけた後の深刻な経済事情を反映し、国民のそういう意味での大変な苦しみを反映していることのあらわれでもありますから、総体的には私は政治経済の立て直しということで国民生活の向上を図らなくちゃならぬと思うんですが、それは政治の課題として、法整備として今回この法案で用意されたことによって破産事件がむしろ抑えられてこの件による倒産手続の利用がふえるということが期待されるわけですが、そういったことに対して最高裁としては人的対応を含めた今後の対応について御検討されていますか。
#189
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 今申し上げましたとおり、倒産事件全体が非常に急増しております。この新しい手続における事件の申し立ても多数予想されるわけでございまして、そういう事件処理を円滑にしていかなきゃならない、そのための人的体制、物的体制、今までも整備をしてまいりましたが、これからもなお一層体制整備をしていきたいと考えております。
#190
○橋本敦君 その点はぜひ御検討していただきたいと思います。
 そこで、次に住宅資金貸し付け、いわゆる住宅ローンの債権に関する民事再生手続の特則、これについて質問をしたいと思います。
 せっかく住宅を建て住宅ローンを組み苦労して我が家を手にしたのに、その後リストラに遭う、あるいは経済事情の激変によって収入を失うなど大変困難な状況の中で、住宅まで失わざるを得ないというようなことが重大な今日社会問題の一つとなっているわけです。指数としてそれがどれくらいはっきりできるのか、破産によって住宅ローンを組んでいたその家を手放さなくちゃならなくなった件数というのはどれくらいあるのか、民事局ではおわかりでしょうか。
#191
○政府参考人(細川清君) これは推定でございますけれども、住宅金融公庫から住宅資金の貸し付けを受けて、この弁済が滞ったがために住宅金融公庫保証協会が代位弁済したものが昨年で一万五千件ほどでございました。これは平成二年が五千件ぐらいですから、三倍となっています。それから、債権金額についても六倍程度になっているんじゃないかというふうに思われます。
 民間の住宅ローンの遅滞の件数というのは公表されていないんですけれども、住宅金融公庫の住宅ローンの貸付残高が七十四兆円です。民間は八十八兆円ですから、少なくとも民間にも同じ程度の住宅ローンを払えなくなった人があるんではないかなというふうに推定しております。
#192
○橋本敦君 したがって、それに対応する今度の法整備というのは、私は国民からもかなり期待されると思うんです。
 そこで、法務省にこの点についてさらに伺っていきたいんですが、まず第一に、この住宅資金の特別条項、これで弁済の繰り延べを内容とする住宅資金特別条項を再生計画に定めることができると、こうありますが、この再生計画の中に住宅資金特別条項を定めるその具体的内容については、これは住宅ローン債権者との協議あるいは他の債権者との協議、そういう協議を尽くしてからでないとなかなかできないのではないかというようにも思うんですが、どうお考えでしょうか。
#193
○政府参考人(細川清君) 住宅資金特別条項の内容は、ただいま御指摘のとおり、百九十九条で一項、二項、三項と厳格に定められていきまして、そこで定められていない部分は住宅ローンのもとの約款を適用するということにしております。そして、この場合は遂行可能性を裁判所が認定できるわけではありませんから、おのずから中身は限られてくると思うんです。ですから、この法案でも債権者の意見は聞きますけれども同意は要らないということになっていますので、御質問に直截にお答えいたしますと、住宅ローンの債権者の詳細な協議が要るかどうかということは必ずしも必要ではないんじゃないかなというふうに思っております。
#194
○橋本敦君 その点でこの法案の具体的な適用について私も一定の安心を持つんですが、そういうことで債権者の同意が得られなくてもということですが、裁判所がこれを判断されるという特別条項の内容について、特にその条項の遂行の見込みがない場合ある場合という、裁判所がこういう判断をされる必要があるということもあるんです。そこらあたり裁判所は、軽々に計画の遂行の見込みがない場合と判断されればせっかくの法が生かされないし、あるいはまた逆に、遂行の見込みがないのにあると、こういうように軽々に判断されてもこれもまた制度としては運用上問題があるし、ここらの判断は裁判所は極めて難しいと思うんですが、そこらの判断基準といいますか、住宅ローン債務者の救済を図りながら、円滑に一般債権者との均衡も図りながらやっていくという上で判断基準というのは特に考えられるんでしょうか、裁判所の。これは裁判所からでもどちらからでも結構ですが、裁判所どうですか、どうお考えですか。
#195
○政府参考人(細川清君) これは個々の事案において裁判官がみずからの独立をかけて良心をかけて判断をするわけですから、なかなか基準をつけるということはできないわけでございますが、ただ、結局遂行可能であるということは、要するにその債務者の人の将来の収入がどの程度あるかということの認定なんですね。その事実認定ができれば、おのずからこれは遂行可能の程度がわかってまいります。ですから、第一項で言う期限の利益を喪失したものだけを復活する形を選択できるのか、あるいは、それではだめなので二項のように十年延ばすという形にするかというのはおのずから判断が出てくるんじゃないかと。
 ですから、基準といえば、要するに一番大事なことは将来の収入を裁判所が確実に把握すると、そのために十分に当事者から資料等を出してもらう、そういうことが大事じゃないかなと思っています。
#196
○橋本敦君 そういう資料を出すということが実際可能であるという状況が判断されれば、この特別条項に基づいて、弁済日が到来しているものは三年、未到来のものは当初契約どおりの支払いということをやりながら進めていくと。そして、今おっしゃった遂行の見込みがない場合は最長十年ということも適用されるということで、住宅の保持を図りながら弁済をしていくということの再生を図ってやりたいと、こういうことが基本ですね。
 その場合、破産手続によるよりも、一般債権者もまた破産以上に弁済を受けられる可能性があると見ていますか。その点はどうですか。
#197
○政府参考人(細川清君) これは民事再生法の大原則ですが、これは再建型の手続でございますので、認可の要件として、債権者の一般の利益に適合するということが法律の要件となっております。これは一般の再生事件でも小規模個人再生あるいは給与所得者等再生でもすべて同じでございます。ですから、すべての要件がありますので、必ず一般の再生債権者も破産の場合よりは配当が得られるということが法律上前提となっているわけでございます。
#198
○橋本敦君 この手続が大いに利用されることを私は期待をして、せっかく手に入れた家を手放さなくても再生ができるという仕組みをうんと進めていくべきだということで期待はしておるんですが、この手続でどうしてもだめだよと、この手続の適用はしてやれないと言わざるを得ない事例というのは、今おっしゃった今後の弁済の可能性、これがないと見た場合だけですか。
#199
○政府参考人(細川清君) これは他の要件もございます。それは、要するに債務者が住宅を保持しながら再生を図るというために、そのための要件が満たされていないという場合にはできないわけです。
 例えば百九十八条で住宅資金特別条項を定めることができる場合を規定しております。
 まず第一は、既に保証人がいてそれが代位弁済したという場合には、民法五百条によって抵当権の代位行使ができるわけですね。この法律では、その保証人が保証会社の場合には六カ月以内に申し立ててくれればこれは使えますと言っていますが、保証会社じゃない場合にはそれはできないということになります。
 それから、住宅に例えば事業資金のためにお金を借りて抵当権がついているということになりますと、住宅ローンは延ばしても、事業の債権がもう即時に弁済期限が来ていていつでも実行できるということになりますと、これは住宅ローンの特別条項を定めても目的を達しないということになりますので、そういう場合にはできないという内在的な制約はあるわけでございます。
#200
○橋本敦君 したがって、そういう内在的な制約がないということになればこの適用が前に進むと、こういうことになるわけですね。わかりました。
 では、次の問題に入りますが、無担保再生債権が三千万で足切りされているという問題です。この問題については、小規模個人再生に関する特則で、その対象要件として、無担保再生債務の債務総額についてどういう意見がこれまで出されてきたかということですが、三千万以下とする案とかあるいは五千万以下とする案とか、いろいろあったんじゃないでしょうか。
#201
○政府参考人(細川清君) 法制審議会で検討の初めの時期におきましては、ただいま橋本先生が言われましたようないろいろの案がございました。
#202
○橋本敦君 それが、五千万ということではなくて三千万とした根拠というのはどういうことでしょうか。
#203
○政府参考人(細川清君) 三千万の根拠でございますが、個人債務者であっても負債額が非常に多い場合には再生計画による債権者の債権の免除の額というのは相当高額になります。債権者に与える不利益が多いものですから、そういう場合には、やはり通常の手続ではっきりした意見を聞かないとまずいだろうということが第一点でございます。
 それから、外国の法律を参考にいたしますと、アメリカの連邦破産法の十三章に同様な手続があるんですが、そこの要件では、無担保債務の総額が二十五万ドルということになっていまして、現在のレートで換算すると二千八百万ぐらいになります。
 それから、現在の個人の破産事件を見てみますと、一件当たりの破産債権の総額が五百万から一千万円までの範囲内にあるものが一番多いというふうに言われておりまして、商工ローン等から借りますと二千万円ぐらいになる場合もあるということが言われているわけです。
 ですから、三千万円ということにすれば大部分の個人の債務者の対応はできるんではないかなということから、最終的には三千万円という結論に至ったわけでございます。
#204
○橋本敦君 局長はそうおっしゃいますが、日弁連また京都弁護士会が意見書を出しているんですが、それによりますと、個人事業者においては債務総額が三千万を超えることは少なくありません、むしろ通常とさえ言える状況に今日はあります、そのために個人事業者の多くが小規模個人再生の手続を利用できないことになるということを心配すると、こういう指摘があるんですね。
 それから、一方、政府の無担保保証制度では、現行五千万までありますね。だから、その五千万ということも、そういう意味では債務として当然あり得ることも一般的に事業者としては当然出てくるわけですね。
 こういったことを考えましても、債務額が一定額以上の人はこの手続は利用できないという枠をはめる、一律に枠をはめてしまうということは合理的理由がないのではないかなという意見もあるんですが、法務省はどうお考えですか。
#205
○政府参考人(細川清君) 私どもの最終的に結論に至った理由は先ほど申し上げたことでございまして繰り返しませんが、当然この額についてはどこに線を引くかというのは非常に微妙な問題でございますので、さまざまな意見があるだろうということは当然予測できますし、現にあったわけでございます。
#206
○橋本敦君 したがって、この運用によっては今後、再生債務者が利用しやすい、そういう方向に改善をしていく必要があるかもしれないなと私は思っているんですが、そこらあたりを民事局長どうお考えですか。
#207
○政府参考人(細川清君) これはまだ実際に運用されておりませんので何とも言いがたいんですが、実際に運用してみて、相当事例も固まり、集積され、事情の変更もあったということであれば、そういった当然に必要な措置を講ずるというのは、どんな場合でも原則だと思います。
#208
○橋本敦君 その次に小規模個人再生の場合なんですが、これは債権者の積極的議決がなくても消極的賛成があれば再生計画が決議されるということになるとして進めていくわけですが、その再生計画の不認可事由の中に「決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。」、百七十四条第二項四号ですが、こうありますね。
 ここで言う「決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。」というのは、どういう具体的状況でどういうことなのか。ちょっと解釈があいまいになりはしないか、適用があいまいになりはしないかと、私心配するんですが、この点いかがですか。
#209
○政府参考人(細川清君) 債権者の一般の利益と申しますのは、集団としての債権者の利益という意味でございます。ですから、再生手続でも破産手続でも同じで、再生手続におきましては要するに集団、これは債権者というのは配当をいっぱい受けるのが再生債権者の利益なんですから、破産よりも配当が大きくなければ債権者の一般の利益に合致するとは言えません。
 ですから、そこで言っていることは、これは破産で清算した場合よりも配当額が多いということが債権者の一般の利益という意味で、そこは民事再生法のあちこちに出てきますが、すべて同じ解釈でございます。
#210
○橋本敦君 その次の問題として、小規模個人再生の場合ですが、この小規模個人再生の場合、個人ということの中に個人で零細な営業をしている営業者も含まれることは当然でしょうか。
#211
○政府参考人(細川清君) 個人であれば、給与所得者に限らず事業をしている方、商店をしている方、農業をしている方、こういう方も当然含まれます。
#212
○橋本敦君 その場合、数人の従業員を抱えているという個人事業者も入りますか。
#213
○政府参考人(細川清君) 当然入るわけでございます。
#214
○橋本敦君 その場合、さきにも質問があった問題ですが、その従業員のいわゆる労働債権がどう保全をされるか、あるいはその労働債権の支払いを求めて差し押さえ等の執行が行われるということになった場合、そういう執行については、これはこの手続で中止をさせるということになってしまうのか、そうならないのか、そこらあたりどうですか。
#215
○政府参考人(細川清君) この点は通常の民事再生手続と同じでございます。通常の民事再生手続でも今回の御提案申し上げている個人の手続でも、労働者の賃金債権につきましては民法上に一般の先取特権がございます。それから商法上は、株式会社と有限会社については全額あるわけですね。今回、個人ですから商法の規定は適用ありませんで民法だけが適用ありますから、六カ月分の賃金について先取特権があります。それは、先取特権がありますから再生法上は手続外として行使できるわけです。ですから、いつでも差し押さえをしたり強制執行もできると、こういうことになります。
#216
○橋本敦君 だから、したがって労働者の労働債権の保全は現行法どおりできるというように理解していいわけですね。それ非常に大事なことですから、念のために伺いました。
 それから次に、給与所得者再生の問題ですが、過去十年内に免責や本手続による再生計画の遂行をしたことがあるときは給与所得者等再生の申し立てができないと、こうなっていますね。なぜ十年なのか、十年より短ければなぜいけないのか、その点はどういう理由からですか。
#217
○政府参考人(細川清君) 給与所得者再生では、再生計画が認可されると、その支払うものとされたもの以外の債権については残額は免除されるわけですね。給与所得者再生は債権者の同意が不要ですから、債権者の意思に基づかないで相当大きな部分が免除されているということになります。破産の免責もそうです。破産の免責は全額免除されます。それで債権者の同意は要りません。ですから、こういうものを短期間に繰り返すということになれば、これは大変なモラルハザードを起こして日本国内の、国民のレベルも下がってくると、こういう話になりかねませんのでそういうことを考慮しているわけです。破産の免責手続においては、十年間内に破産免責手続がある場合にはこれは破産免責ができないということになっていますから、その十年を今回も基準としているわけです。
 ただ前が、例えば民事再生の給与所得者再生で免除を受けた場合とか、あるいはハードシップ免責で免除を受けた場合には、それはその決定のとき、当初の決定のときから十年間を計算させることにしていますから、例えば給与所得者再生で誠実に履行して三年で全部払って残額免除を受けた場合、当初の決定のときから計算しますから実際はその間隔は七年間になるわけですね。ですから、そういうことで誠実に履行した人には縮めるという思想はこの中に入っております。
#218
○橋本敦君 その点は理解ができます。
 私は、もう時間がないから最後の質問にしますけれども、こういう倒産法制全体が今日のニーズにこたえて合理的に整備されることはいいと思うんですが、根本的な問題として破産法そのものが倒産法制全体の整備にあわせて将来はやっぱり改正の問題が出てくるのではないかなという気もするんですけれども、破産法の本体そのものの改正という問題は法務省は今お考えには特になっていないんですか、どうですか。
#219
○政府参考人(細川清君) 倒産法の全体の改正につきまして、これは破産法のみならず、会社更生法とか特別清算等も含めまして、実は平成八年に法務大臣から法制審議会に諮問をされておりまして、昨年には民事再生法、ことしは個人再生と国際倒産ということで整備させてきました。残りにつきましては、御指摘の破産法につきましても、午前中に法務大臣からお答え申し上げたように、全体も見直すということは当然の作業日程になっておりまして、この法案が成立させていただければ直ちに破産法の全面改正等に取り組みたいと思っております。
#220
○橋本敦君 わかりました。
 時間が来ましたので終わります。
#221
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 申しわけないんですが、前回一般質問で通告しながら質問できなかったことについて、一つだけちょっと時間をいただいて質問をした後、本題に入りたいと思います。
 一つ、東京拘置所が収容者に対してことしの二月十六日から、所内で購入をする購入願の書類に関してマークシート方式に変更になったというふうに聞きました。生年月日の項目を新たに設けたということなんですが、なぜこのようにする必要があったのでしょうか。
#222
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 矯正では、平成八年度から矯正の各施設内及び施設相互間の通信網を結びまして、できるだけ矯正業務に関する情報をパソコン等によって円滑かつ迅速に処理するための矯正情報ネットワークというのを導入しているわけですが、その一つの利用形態として、今お尋ねのありましたような被収容者の日用品等の購入に対しまして、購入物品管理システムと称するものを開発しまして、購入を希望する物品をマークシートの用紙で申し込むことによりまして購入品の集計とか発注書の作成等を自動化するシステムを設けております。
 このうち、マークシートを利用するわけですけれども、だれが購入したかということを機械が購入者本人を特定して識別するという必要がございますので、そのために各施設では各収容者にそれぞれ特定のための番号、これを称呼番号と呼んでいますが、それと同時に生年月日のうちの年は抜かして月日だけを記載して申し込むというような取り扱いにしておるわけです。
#223
○福島瑞穂君 おっしゃったとおり、現在でも称呼番号があるわけですし、入所日もわかっているわけですから、生年月日をつけたこういうマークシート方式をしなくても特定できると考えますが、いかがでしょうか。獄中者の総背番号制になるのではないかというふうに危惧を持っておりますので聞いております。
#224
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 今御指摘のありました称呼番号ですけれども、これは御存じのとおり、各舎房の入り口の名札と申しますか、名札かけに既に各収容者とそれの称呼番号というのが記載されておりますので、他の収容者がほかの人の称呼番号を知り得るというような状況になっております。そうなりますと、称呼番号だけでは他人の番号を使って物品の購入を申し込むというおそれがございます。もしそうなった場合には、この日用物品の購入というのは領置金とかあるいは作業賞与金とかそういったお金から支払うものでありますので、そういった支払いの面で過誤が生ずるということにもなりますので、より購入者本人の特定を厳格にして、それから機械がしっかり識別できるように称呼番号のほかに今申し上げた生年月日のうちの月と日を書くようにした、こういうことでございます。
#225
○福島瑞穂君 ほかの人がほかの人の名前で購入すればそのことはすぐわかってしまうと考えますが、どうでしょうか。
 このシステムの導入のための予算はどれぐらいでしょうか。
#226
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 先ほど冒頭に申し上げましたように、矯正情報ネットワークシステム全体は平成七年度の補正予算をもって、この金額は十八億六千万円ですけれども、それで全体を構築し、その一つのアプリケーションということで先ほど申し上げました購入物品管理システムを開発していきましたけれども、この金額は平成九年から平成十一年まで合計二億二千六百万円になっております。
#227
○福島瑞穂君 どういう情報を入力していくのでしょうか。
#228
○政府参考人(鶴田六郎君) 先ほど申しましたように、矯正情報ネットワークの柱になっているのが被収容者データ管理システムですが、そこには収容者の個々の情報、例えば、受刑者であればもちろん氏名、本籍、あるいは刑期、刑名、刑事被告人であれば起訴罪名、そういったものとか、公判出廷日とか、いろいろな個人に関する情報が記録、管理されております。
#229
○福島瑞穂君 手紙の管理や面会などの点についても入力されるんでしょうか。
#230
○政府参考人(鶴田六郎君) 今の手元の資料では、どうもそこまでちょっと確認できませんので。
#231
○福島瑞穂君 なぜこういう質問をするかといいますと、御存じ、警察の情報は生年月日、本籍で特定をするというふうに聞いております。ですから、実は、その刑務所、拘置所、警察の情報が一元化して一人一人の個人の情報が集積をされネットワーク化されるのではないか、一人一人のプライバシー、先ほどもおっしゃったようなことも含めて全部蓄積されていくことで情報が一元化していくのではないかという危惧を持っておりますが、その点についてはいかがですか。
#232
○政府参考人(鶴田六郎君) 私どもで構築しております矯正情報ネットワークシステムというのは、クローズドと申しますか、矯正部内だけでそれぞれ円滑な業務を遂行するために使っているというもので、ほかから利用できることがないように、また受刑者の情報というのはそれぞれプライバシーにもかかわることですので、そういった面であくまでも矯正部内の円滑な業務という趣旨、目的のもとにつくられたものであります。そういうふうに御理解いただきたいと思います。
#233
○福島瑞穂君 例えば、弁護士と被拘禁者の人の文通した中身がコピーをされて法廷に出てくるということもありました、過去に、御存じのとおり。つまり、拘置所の中の情報がほかのところで、例えば手紙の内容などが公表されるということがありましたので、済みません、ちょっと細かい点のように思われるかもしれないんですが、今後もいろいろこの中身についてもう少しまた教えてください。
 では、本題に入ります。
 素朴な疑問で、破産の手続があって、委員会で成立した特定調停の手続があります。それと、今回議題になっている民事再生法等の一部を改正する法律、この三つの関係というものを法務省はどう考えていらっしゃるのでしょうか。
#234
○政府参考人(細川清君) 個人の債務者の破産手続を考えてみますと、もちろん破産宣告を受けた後に免責を申し立てれば、その時点における債務は全部免除されるわけでございますが、その破産の宣告には破産宣告に伴うさまざまな不利益がございます。法律上の資格の制限もございますし、事実上の不利益もあるということでございます。
 ですから、破産免責、破産とその免責の手続を使わないで、破産者ということにされないで経済的に立ち直りたい人がいるはずでございます。こういう人たちは従来はどうしていたかといいますと、この二月から施行になっていた特定調停法を使っていたわけですが、この特定調停は調停の一種ですから、債権者の同意がないとこれは成立しないわけでございます。現実にも、その合意が成立するためには少なくとも元本の全額を払わなければ調停が成立しないというのが実態のようでございます。
 今回の個人債務者の再生手続は、破産手続とか特定調停と違いまして、再生手続でございますから、裁判所の認可が得られれば債権者の中で反対の人もそれに拘束されるというのが第一点。それから、破産宣告という法律上の不利益を伴う処分を受けないで済むという点があります。
 こういったところがその三つの関係ということになろうかと思います。
#235
○福島瑞穂君 今後の破産免責手続の運用への影響はあるでしょうか。つまり、裁判所は免責をして破産に行くよりは免責を与えないで何とか頑張って払ってもらった方が債権者の方にもいいとも考えられますが、破産免責手続の運用への影響は考えていらっしゃるでしょうか。
#236
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 個人債務者の民事再生手続は、これは裁量免責というのがございまして、ある程度の金額を積み立てさせて裁量免責をするというそういうような運用も一部実質的に取り組んだような面もないわけではないんですけれども、破産手続とは全く別の再建型の手続ということになります。
 個人債務者の民事再生手続がつくられましても、やはり継続的な収入の得られない者などは破産手続による清算を図って免責を受けて経済的な再生を図る、これしかないわけでございまして、こういうニーズがあることに変わりはございません。
 したがいまして、この破産免責の運用、これはあくまでもこういう清算的な手続での運用でございまして、今度の再建型の民事再生、個人による民事再生手続ができたとしても、当然に影響を受ける、あるいは理解が変わってくるということではないというふうに考えております。
#237
○福島瑞穂君 最低弁済基準の定め方に関して検討された内容にはどういうものがあるでしょうか。江田委員からも午前中に五分の一の根拠について質問がありましたけれども、ちょっとはっきりしなかったので教えてください。
#238
○政府参考人(細川清君) 法制審議会で審議をしていた途中では実にさまざまな意見がございまして、一〇%とか二〇%とか三〇%とか、最低の、例えば法案では百万とありますが、底があるとかないとか、上限の三百万を設けるとか設けないとか、実にさまざまな意見がありましたが、これをずっと議論して、一年間議論した中で最終的に現在の法案のような内容になったということでございます。
#239
○福島瑞穂君 ごめんなさい、経過を聞いたのではなくて、根拠をお尋ねしたのですが。
#240
○政府参考人(細川清君) これはさまざまな理由があるわけですが、第一として、単に破産の配当額を下回らないというだけの基準では、現在の自己破産の申し立ての大部分は同時廃止の事件ですから、現実には何も弁済しないで再生計画をつくって破産宣告を回避できるということになりますので、それは適当でないということになるわけでございます。
 それで、そのために、簡素な手続であるにしても、破産の同時廃止と比較すると、裁判所や債権者の双方にとってこの個人債務者の再生の手続というものははるかに労力が必要な手続でございます。したがいまして、債務者がこの手続を利用して再生を図ろうとする以上は、裁判所という国家機関の労力を投入し、かつ債権者にも債権管理という手間をかけさせるというそれだけの社会的な価値がなければならないということが二番目の理由でございます。
 それで、こういった観点から五分の一あるいは百万円という額が最低弁済基準と定められたというわけでございます。
 その具体的な数字の根拠でございますが、破産免責を受けた場合には、残債権の全額について直ちに債権者は税務上の損金処理を行うことができますので、例えば負債総額の十分の一というような額ですと、債権者にはほとんどメリットがないということになりかねません。したがいまして、この負債総額の五分の一が百万円を下回るような場合にも、これは五年間で分割弁済していくわけですから、それも債権者が何人もいるわけですから、非常に少額になってしまう、そういうことも非常に問題になりますので、そういうことも考慮いたしまして五分の一または百万円という具体的な基準にいたしたわけでございます。
#241
○福島瑞穂君 住宅ローン債権者の同意がない限り、住宅資金特別条項では元本、利息などの弁済の繰り延べがされるのみで、弁済額の減額がされません。つまり元本は一円も一銭もまけてもらえない。もちろん金融機関との合意があればまけてもらえるわけですが、金融機関は恐らくまけないと思いますので、そのまま元本などについては先延ばしにはしてもらえるけれども払わなくちゃいけない。これはある意味で、全然別の考え方をすれば債務奴隷的というか、ゼネコンなどの債務の棒引きと大分違うと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
#242
○政府参考人(細川清君) 民事再生手続におきましては、通常の手続におきましても抵当権を持っている債権者は、別除権ですからこの再生手続に何ら拘束されることなく、期限が来ていればいつでも実行できるわけですね。それは破産宣告のときでも破産事件でも同じなんですが、そういうことができなくなるように制限して、一番長い場合には十年延長されるわけです。かつ、それが債権者の同意がなくして行われるわけですから、これを元本とか債権額を減額できるということになりますと、これは余りにも債権者の利益を害するということになろうかと思います。
 ですから、今債務奴隷というお言葉を使われましたが、債務者の考え方によっては、この際一挙に清算して全く一から出直したいという人はこれを使わずに破産の免責の手続を使う、そういうことになろうかと思います。
#243
○福島瑞穂君 給与所得者再生に関する特則と住宅の特例が重なる場合があると思うんです。そうしますと、住宅の場合は、例えばローンがばっと延びてその間少しずつ払っていく、もう一方で給与所得者再生に関する特則と両方ダブると。つまり、一人の人間がローンの負担にもあえいでいるし、個人的にも少しサラ金から二百万ぐらい借金しているという場合はよくあることだと思うんです。
 これ、ダブルパンチになった場合には、給与所得者等再生に関する特則では、「最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」というのがあって、それを除いた額を払わなくちゃいけないので、ローンを払えない。実は通常起こり得るローンの負担と個人の負担のダブルパンチがあった場合には、実質的には払えないということが起こると思いますが、いかがでしょうか。
#244
○政府参考人(細川清君) ただいまの問題につきましては二点ほど対策があるわけです。
 第一点は、給与所得者等再生におきましては、可処分所得の二年分を三年で払うということになっていますから、ですから一年分の余裕はあるということがまず第一点でございます。
 それから、住宅資金特別条項におきましては十年間に、ただもともとの約定の弁済期間に加えてさらに十年間弁済期間を延長することはできるんですが、その三番目の方法としてその延長の期間の最初の一般の債務を弁済している期間、三年なり五年、その期間においては元本の一部と利息だけを払えばいいという計画もできることになっています。
 ですから、当初の通常の債務を払っている間は住宅ローンの元本の弁済をぐっと低くしまして、通常の債務が払い終わったらば住宅ローンを払うということで対処できると考えております。
#245
○福島瑞穂君 給与所得者等再生に関する特則で、「最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」というものがありますが、この試算の中身について、どうしてこうなったのかについて教えてください。
#246
○政府参考人(細川清君) 可処分所得額の算出に当たって控除する額については、二百四十一条は「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用」としております。これは生活保護法で定めているものと同一の用語でございますので、控除額は生活保護レベルの額ということになるわけでございます。この費用の額は物価の変動等に機敏に対処する必要がありますので、政令で定めることとしておるわけでございます。
#247
○福島瑞穂君 借金があるから当然とも考えられますが、私は生活保護の基準で暮らせと言われると、ちょっとしんどいなと思う人も結構いらっしゃるんじゃないかと思うんです。
 例えば今まで年収一千万だった人が、八百万でもいいです、生活保護のレベルでないとだめだ、その最低限度の生活をしろというふうになると、この給与所得者等再生に関する特則を利用する人たちというのは減るのではないか、少ないのではないかとも思うんですが、いかがでしょうか。
#248
○政府参考人(細川清君) 先ほど御説明したような仕組みでございますので、ただいま御指摘のように、年収が多い人がこの手続を利用しますとその落差が大きくなります。一応、二年分を三年間で払いますので、若干余裕はありますが、収入の多い人については落差が大きいということは言えるわけです。
 ただ、そういう場合には、給与所得者再生がそういう可処分所得基準を厳格に設けておりますのは、これは債権者の同意が要らないということでございますので、もしこの給与所得者再生を利用したくないという人は、それは小規模個人再生の方を利用していただいてもいいわけでございます。
#249
○福島瑞穂君 ちょっとまたローンの方に戻って申しわけないんですが、今親子ローンなどが非常に使われておりますが、親子ローンへの適用はどういうふうになるのでしょうか。
#250
○政府参考人(細川清君) 親子ローンにもこれは適用がございます。
 いわゆる親子ローンは、親子が共同して住宅ローンの債務を負担する、そしてそれは全額について連帯債務を負担して、住宅に親子二人を債務者として一個の抵当権を設定する、それから親子のいずれかが弁済を遅滞したときは二人とも期限の利益を喪失する、こういうものが現在一般に行われている親子ローンでございます。
 これについて、住宅資金貸付債権に関する特則を利用しようとする場合には、その親子のうちに、現に住宅を所有しかつ居住している人が再生手続を申し立てていただければいいわけです。そして、それで再生計画が認められまして認可をいたしますと、これは通常の再生事件とは違いまして他の連帯債務者にもその再生の効力が当然及ぶことになりますから、現に居住している人、所有している人について、例えば十年間延びれば親子の他方の方の人の連帯債務もその処理に従って延長されると、そういうことになるわけでございます。
#251
○福島瑞穂君 外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案のことで、ほかの委員の方からもありましたけれども、労働債権者の不利にならないように配慮をしていると、そのことをお答えになりました。しかし、具体的にどういう点かちょっとまだはっきりしませんので、その点について説明してください。
#252
○政府参考人(細川清君) まず、承認援助がなされたという場合を考えてみますと、その援助手続に、外国の手続に参加することもできます。それから、それがその当該の労働者にとって、債権者にとって不利益だということになれば、国内の倒産処理手続も申し立てをすることはできます。
 それから、外国倒産処理手続の承認をし、援助の処分をしたときは個別の権利執行を禁止する場合がありますが、そういう場合には、労働者の生活の原資でこれは必要だということになれば、それは承認援助手続を目的達成する上でそれを制限するのは適当ではありませんから、それは制限しないということも考えられるわけです。
 それから、この手続では承認の決定をする、あるいはその前に援助処分を保全処分のときにしたときには、労働組合がある場合には労働組合に通知する、労働組合がない場合には過半数の労働者でつくっている代表者に通知すると、そういうふうな規定になっておりますので、その通知があれば先ほど申し述べましたような適切な対応をすることはできるだろうというふうに考えております。
#253
○福島瑞穂君 小規模個人再生に関する特則についてですが、よく問題になるのは資料がなかなか手に入らないということですが、債務者が借り入れ及び弁済に関する資料を債権者から入手するための方策、また入手できなかった場合はどうなるのでしょうか。つまり、ローンを持っている人が資料をくれと言っても現実にはなかなかサラ金などから資料が出てこないということもよく実はあるんですけれども、この点の手当てはどうお考えなのでしょうか。
#254
○政府参考人(細川清君) この点は法律上は規定はございませんが、現在の通常の民事再生手続では、再生規則の第三十七条で、債務者が認否書に届け出債権について認否を記載する前提として、届け出債権に関する証拠書類の送付請求権というのが規定されているわけです。
 それで、今回につきましても、先ほど最高裁の局長から御説明がありましたように、規則を制定する上で同様なものを検討しているということでございました。
#255
○福島瑞穂君 再生計画変更の要件である「やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったとき」の意味はどういうものでしょうか。どういう状況を言うのでしょうか。
#256
○政府参考人(細川清君) やむを得ない事由というのは、本人に責任がないという事由でございます。ですから、再生計画を作成した当初想定した収入がいろんな事情で予想外に落ち込んだという場合、あるいは勤めている会社の成績が悪くなって給与が引き下げられたとか、あるいは会社が倒産したので他に再就職しようと思ったんだけれども、結局再就職うまくいったけれども収入が大幅に減ったと、そういうような場合が挙げられると思います。
#257
○福島瑞穂君 ハードシップ免責の要件である「その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、」というのはどういう場合を言うのでしょうか。
#258
○政府参考人(細川清君) その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となった場合としては、債務者が例えば病気等によって長期間入院せざるを得ない状態になった、そういうことで弁済が極めて困難になったとか、あるいは再生計画の遂行の終盤になって会社が左回りになっていわゆるリストラで職を失って、就職のために十分努力したんだけれども職が得られないというような場合とか、あるいは個人の事業者、例えばお店をやっている人が隣の家からの類焼で店舗が焼けてしまって収入がなくなってしまった、そういうような事情が考えられると思います。
#259
○福島瑞穂君 最高裁にお聞きをいたします。
 裁判所の人的、物的体制の整備なんですが、これは午前中佐々木委員の方からも、それから午後魚住委員の方からも質問があったと思います。多くて三万から四万件の利用があるだろうという中で、裁判所の人的、物的体制の整備がいま一つ、もっと前向きに答弁していただきたいと思いまして、いかがでしょうか。
#260
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 物的体制の整備につきましては、午前中にも申し上げましたとおり、OA機器の導入、それから運用の点につきましての窓口相談、パンフレット、それから申し立て書の定型用紙の作成等をやっていくわけでございますが、人的対応につきましては、やはり書記官が大変重要な問題になってくるかと思っております。
 書記官の問題につきましては、これは倒産事件だけではございませんけれども、訴訟事件もふえておりますし、今回のこういう新しい手続に基づく事件も出てこようかと思いますので、増員につきましては二百人を超えるような数字の増員を考えたいというふうに思っております。
#261
○福島瑞穂君 書記官二百人増員で足りるのでしょうか。それから、書記官だけでなくて裁判官の増員も不可欠だと考えますが、いかがでしょうか。
#262
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 増員の問題はすべて今後の事件数がどうなるかということを見ながら最終的にまた考えていくということになろうかというふうに思っております。
 書記官の増員につきましては、事務官からの定員の振りかえ等を含めて二百を超えるという数字を考えておりますが、かなり大きい数字ではないかというふうに、これは手前みそになるかもしれませんが考えております。
 裁判官の増員、もちろんこれは必要でございますので、この点についても前向きに検討しているところでございます。
#263
○福島瑞穂君 前向きにと裁判所がおっしゃったので、前向きに検討されることを今後も期待し、どれぐらい増員されるかを見たいと思います。
 ぜひ、人的、物的体制の整備については法務委員会全員は応援したいと思っていると思いますので、三百とかけちけち言わずに、もっと書記官をふやしていただいて、裁判官もふやして、過労死しそうな人もたくさんいらっしゃいますから、ふやしてくださるようにお願いして、私の質問を終わります。
#264
○委員長(日笠勝之君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#265
○委員長(日笠勝之君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、角田義一君、阿部正俊君及び吉川芳男君が委員を辞任され、その補欠として前川忠夫君、脇雅史君及び山内俊夫君が選任されました。
    ─────────────
#266
○委員長(日笠勝之君) これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、民事再生法等の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#267
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#268
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、江田五月君から発言を求められておりますので、これを許します。江田五月君。
#269
○江田五月君 私は、ただいま可決されました民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派並びに各派に属しない議員斎藤十朗君及び中村敦夫君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 民事再生手続の特則が低所得者等の個人債務者の再生に資するためのものであることにかんがみ、その趣旨、内容、手続等について、関係団体のほか、広く国民に十分周知徹底するよう努めること。
 二 社会・経済的観点から、個人債務者に関する民事再生手続の特則が真に適正かつ迅速に運用されるよう、裁判所の人的・物的態勢の整備に遺漏なきを期すること。
 三 個人債務者が事業主である場合における再生手続に当たっては、当該個人事業主の雇用する労働者の雇用の安定と労働債権の確保に十分配慮するよう周知徹底に努めること。
 四 新たに創設する外国倒産処理手続の承認援助手続が適正・迅速に運用されるよう、諸外国の倒産処理制度及び実情について、調査・研究及びその周知に努めること。
 五 外国倒産処理手続の承認援助手続においては、労働債権者の雇用契約上の地位及び優先的地位に配慮がされており、国内倒産処理手続と比べ、労働債権者に不利となるものではないことを周知徹底するよう努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#270
○委員長(日笠勝之君) ただいま江田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#271
○委員長(日笠勝之君) 全会一致と認めます。よって、江田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、保岡法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。保岡法務大臣。
#272
○国務大臣(保岡興治君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#273
○委員長(日笠勝之君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#274
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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