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2000/11/24 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第9号
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2000/11/24 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第9号

#1
第150回国会 法務委員会 第9号
平成十二年十一月二十四日(金曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月十七日
    辞任         補欠選任   
     脇  雅史君     岩崎 純三君
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任   
     岡野  裕君     矢野 哲朗君
     吉川 芳男君     阿南 一成君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                佐々木知子君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
    委 員
                阿南 一成君
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                鴻池 祥肇君
                竹山  裕君
                矢野 哲朗君
                小川 敏夫君
                竹村 泰子君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
                中村 敦夫君
   衆議院議員
       発議者      麻生 太郎君
       発議者      杉浦 正健君
       発議者      谷垣 禎一君
       発議者      漆原 良夫君
       発議者      高木 陽介君
       発議者      熊代 昭彦君
   国務大臣
       法務大臣     保岡 興治君
   政務次官
       法務政務次官   上田  勇君
       文部政務次官   鈴木 恒夫君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   安倍 嘉人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務省民事局長  細川  清君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       法務省保護局長  馬場 義宣君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○少年法等の一部を改正する法律案(衆議院提出
 )
○人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案(
 衆議院提出)


    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十七日、脇雅史君が委員を辞任され、その補欠として岩崎純三君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(日笠勝之君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 少年法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房長但木敬一君、法務省民事局長細川清君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び法務省保護局長馬場義宣君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(日笠勝之君) 少年法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○佐々木知子君 おはようございます。
 自民党の佐々木知子でございます。
 前回の参考人質疑を踏まえまして、幾つか御質問したいと存じます。
 まず、発議者の方にお伺いしたいんですけれども、前回、息子さんを亡くされた武るり子さんのお話というのが、非常に抑えておられただけにまた真実の重みを我々に改めて突きつけてくれたと私も非常に重く受けとめております。最終的には金銭で解決がつく財産犯罪などとは違いまして、何よりも貴重な人命が失われた場合にはもはや何をどうやっても取り返しがつかないということ、これは当たり前のことなんですけれども、本当に被害に遭った方というのはその重みを私たちに訴えかけてくれたと思います。
 今回の改正の大きな論点の一つというのは、第二十条の第二項、この新設規定によりまして、十六歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死に至らしめた場合は原則逆送ということになっておりますが、そうしたもはや取り返しがつかない場合、何かをすることによっては取り返しがつく場合、それは同列には論じられない、そうした観点から設けられたものだというふうに理解いたしましたが、それでよろしいでございましょうか。
#7
○衆議院議員(杉浦正健君) 佐々木先生のおっしゃるとおりでございます。自民党における検討過程でも、それから三党協議の過程においても、その点がいわば今回少年法の問題に取り組んだ原点と言ってよろしいかと思うんです。
 先生は武さんの例を申されましたけれども、衆議院でも別の被害者の方をお二方お呼びいたしました。それから、武さんの被害者の会ほか幾つか被害者の会がございますが、そういう方々から詳細に御意向を聴取したわけでございます。武さんを初め、いわゆる被害者の会をつくっておられる方々の大部分がかわいいお子さんを亡くされた方々でございます。
 そういう方々の声に耳を傾けておりますと、確かに先生がおっしゃったように命を亡くされた悲しみが根本なんですが、家庭裁判所の審判がいわば密室の中でございまして、何を審理しているのかわからない、傍聴もできない、記録も見られない。最近は被害者の方から事情聴取もされるようになりつつあるようなんですが、被害者の会の方々のころは、意見も聞いてくれない、結論も正しいかどうかわからない。つまり、少年には抗告権、いわば被疑者と申しますか非行少年の方は審判に対して不服を申し立てられるけれども、その審判の結果に対して被害者はおろかだれも抗告申し立てができない。そういう審判ではおかしいんじゃないでしょうか、私たちは知りたいんだ、何が起こったのか、うちの子供たちがなぜ、どういう過程で殺されたのか知りたいんだというのが出発点で、さまざまな今の家裁の審判手続に対する御不満を持っておられたわけでございます。
 原則逆送になりますと、もう先生方には釈迦に説法なんですが、何回も申し上げておりますが、起訴されます。そうしますと、公開の法廷で裁かれるわけであります。傍聴もできますし、場合によっては検察官が証人申し立てをすることもあるでしょう。意見を言う機会もあるでしょうし、記録も法律の定めで閲覧、謄写ができる、要するにわかるわけです。そういう公開の法廷で審理される、それによって被害者の皆様方の大部分の方が今持っておられる多くの不満が一気に解消するんじゃないかというのが原則逆送を考えた原点でございました。
 この法改正によりまして、家庭裁判所がまず裁量権を持っておられますから、逆送するかしないかは個々の事件について家庭裁判所が慎重に判断をされて、逆送するかどうか、被害者を死に至らしめた事件の場合でも逆送しない場合もあるわけなんですが、私は、家庭裁判所、最高裁がこの被害者の声に耳を傾けてきておられますから、何物にもかえがたい最愛の子を事件で奪われた被害者の声に耳を傾けていただいて、公開の法廷で裁くという方向に運用を変えていただけることを期待しておるわけであります。
 これは何度も申し上げましたが、刑事裁判所で審理を尽くした上で保護処分相当と認める場合は、五十五条ですか、家庭裁判所へ戻せるんですね。審理した結果、これは刑事処分より保護処分の方がいいと刑事裁判所の方で判断すれば保護処分に戻せるんですから、今まで移送決定がなされた例は皆無に近いと聞いておるんですが、公開の法廷できちっと裁いた上で裁判所が保護処分相当と認めれば家庭裁判所へ戻して適切な保護処分をするということもできる道は少年法上ございますので、戦後五十年の家庭裁判所の運用を、故意の犯罪行為によって死に至らしめた事件については原則として公開の法廷で裁く、それが少年の規範意識を高め、少年全体の非行が抑制される方向に働くことも期待いたしておるわけでございます。
#8
○佐々木知子君 被害者の方が真実を知りたいという気持ちは、私は検事をやっておりましてもう痛感いたしております。そして、何物にもかえがたい人命が失われた場合に匹敵するものとして、植物人間になった場合とかもう二度と治らないような重傷を負った場合というのもございます。そういうものも含めまして、真実を知りたいという被害者の叫びというのをぜひ刑事司法はこれから取り上げていかないといけないというふうに思っております。
 それから、先生も言われましたけれども、殺人だとか傷害致死だとかいいましても、いろんな情状がございます。例えば親殺しをやったとか、そういうような場合もございます。嬰児殺の場合もあります。それはケース・バイ・ケースで、原則は逆送だけれども、そうじゃなく保護処分になる場合も多々運用としてはあるということで、それはもう実務の感覚で私は適正になされるものだというふうに考えております。
 それから、もう一人の犯罪被害者である山口由美子さん、この方は御自身バスジャックによって重傷を受けた方でございました。御自身、多分非常に優しい方なのだろうと思いますし、また御自身の娘さんが不登校で悩んでおられたという現実の体験もございまして、加害者の少年に対しては厳罰は望んでいませんと優しいことをおっしゃっておられました。少年が心から反省して、一生かけて贖罪してくれることを望んでいるという御趣旨だったと思います。
 我が子をもう二度と取り返しのつかない形で惨殺されたような場合は別といたしましても、あるいはそういう寛大な気持ちになられる被害者の方も世の中には山口さんに限らずきっとおられることだろうと私は思っておりますが、ただ問題は、成人、少年に限らず犯罪者が真に更生するためには、みずからが犯した事実に率直にまず向き合うことがスタートだというふうに思っております。
 検事のときもそうでしたけれども、私たちが自白をとりたい、警察もそうですが、それはもちろん真実を究明する実体的真実主義ということはもちろんあります。それは第一次的なものだと申し上げても過言ではございませんが、ただ第二次的に、また並列的にありますのは、本当に心から反省をして立ち直ってもらうためには自分がやったことに向き合ってもらわなければならない、だから自白をとらないといけない、だからあなたのために本当のことを言いなさいよと。今の時点で、例えば自分がこういうことをやったのは被害者が挑発したからで、おれは悪くないんだとどこかに思っているとか、それとか共犯のAとかB、あいつが誘ったからで、おれは誘われてやったわけで悪いことはやっていないんだと。もしそういうふうな後ろ向きに思ったままでいるとすれば、成人も、もちろんこれは立ち直れずに再犯を犯すだろう、少年であれば、ましてや可塑性に富んだ今成長期なんですから、そういうふうなずるずるとした状態でこれから成長を続けていくようではまともな大人になれようはずがない、そしてまた必ずや再犯を犯すだろうと、私はそういうような気持ちで刑事司法に取り組んでまいりました。
 ですから、武さんの話にありましたけれども、被害者の少年は謝罪もしない。これは親もそうです。いろいろと弁解を繰り返している。それは親の立場としてはとてもいたたまれないでしょう。そして、彼らは恐らくそういうような形であっては更生などできようはずはないと。私はそれを非常に悲しいことだというふうに思いました。
 つまり、私は、事実認定の必要性というのは、厳罰化だなどとか非常に適切でない言葉をマスコミ等を初め使っていると思いますけれども、そうではなく、少年自身の改善更生のためにも必要不可欠だと確信しているんですが、それでよろしゅうございましょうか。
#9
○衆議院議員(麻生太郎君) 基本的にはそのとおりだと思っております。事実認定をきっちりやるということは、これは何も被害者のためだけではないのであって、事実認定を主犯というか加害者の方にしっかり認めてもらうというところは、今、佐々木先生御指摘のとおり、少年が今後更生していくためにも大変大事なところだと思っております。
 加えて、事実認定がこのところ違っておるのではないかと。例の山形のマット死事件、あれ以来いろいろな話がよく出てくるところで、主犯と従犯が、主犯格とついていったのとが違ったり、いろいろ例はほかにもあるんだと思いますが、そういったことが幾つも出てきましたので、基本的に世間、世論というものの少年審判に関する事実認定に対して大丈夫か等々の疑念、いわゆる信頼を欠いているというところが非常に多くの問題なんだと思っております。
 まかり間違って、少年が罪を犯していないのにもかかわらず、誤ってそっちが主犯かのごとく決められて再審もできない等々の話が非常に大きな問題にもなると思っていますので、基本的には、やっぱり罪を犯した少年に罪というか人を殺した等々の現実としっかり向き合ってもらって、その上で、今御指摘にあったように本人がさらに更生をしていくためにもこの種の事実認定、事実としっかり向き合った上でというところが一番基本的なところだと思っておりますので、今御指摘のあったところが本法改正に当たりまして事実認定におきましては一番大事なところだと考えております。
#10
○佐々木知子君 参考人の弁護士の方から、検察官は社会的に耳目を集めている事件、自分たちが立ち会いたい事件を選んで立ち会うのだというような御趣旨の発言がありました。検察官は公益の代表者でありまして、そういうことを言われると私は非常に心外だと思いますし、まず私人起訴というのが原則にございまして、日本の場合は検察官がそれを独占したということで、検察官は被害者の立場を代弁するものであるということも当然のことでございます。
 確かに、以前の法務省改正案では検察官の請求によっても立ち会えるというふうになっていたと思いますけれども、今回の改正では、二十二条の二第一項によりましてはっきりと、家庭裁判所が「その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、審判に検察官を出席させる」というふうになっております。
 つまり、検察官はあくまで審判の協力者であって、その検察官の出席を要求するのは家庭裁判所の裁量にかかっている、こう理解してよろしいわけですね。
#11
○衆議院議員(麻生太郎君) 今読まれましたとおり、今回の改正法の第二十二条の二というところが一番のポイントになっていると思いますが、主宰をいたしますのはあくまでも家庭裁判所、いわゆる裁判官側でありまして、検察官側は自分で選択権があるわけではなく、裁判所側にあるというように御理解いただいておりますが、そのとおりだと思っております。
#12
○佐々木知子君 では、続きまして法務省にお伺いしたいと思いますが、前田雅英教授から詳しい統計数字を示されて、少年犯罪は現実にふえているのだ、凶悪化しているのだとの指摘がございました。これに対して、別の参考人からは、いやふえていない、したがって立法事実はないのだとの意見提示もございました。
 この点につきましてはこれまで何度も質疑を繰り返されてきたところだとは思いますが、ここで再度確認しておきたいと存じます。
#13
○政務次官(上田勇君) ただいま御質問にありましたように、少年犯罪の動向についていろいろな意見が示されたところなんですが、これは比較する年次の問題であるとかいろいろな見方があるのは事実でありますが、私どもとしての考えを統計数字をもとに若干御説明させていただきたいというふうに思います。
 まず、少年刑法犯全体の検挙人員は昭和五十八年がピークでございました。それ以降ずっと減少してきたわけでありますが、平成七年を境に再度増加の傾向に転じまして、平成九年には二十万人を突破いたしまして、平成十一年の検挙人員というのが二十万一千八百二十六名という数字になっておりますので、平成九年以降この二十万を超える数字で推移しているところでございます。
 そして、特にその中でも凶悪犯であります殺人、強盗、放火及び強姦の凶悪犯の検挙人員について見ますと、これも平成七年を境に増加の傾向に転じまして、二千人を大きく超えております。平成十一年では二千四百十名ということになっております。
 平成十一年について見ますと、少年刑法犯全体の検挙人員というのは対前年に比べまして若干減少しているんですけれども、凶悪犯の検挙人員というのは増加しております。また、対人口比、これは十歳以上二十歳未満の人口に対する検挙数の比率でありますが、これで見てみますと平成二年以降一貫して増加の傾向にありまして、なおかつ当時の平成二年が人口比が〇・〇六であったのに対しまして平成十一年には〇・一七ということで、人口比で見てみますとより顕著な傾向があらわれております。
 少年による凶悪犯罪を罪名別に見ると、特に強盗犯の増加が著しく、平成十年からは千人台後半に及んでおりまして、平成十一年には千六百四十人余りとなっているほか、殺人犯も平成十年からは百人を超えて平成十一年には百十一人を数えるなど、凶悪化の傾向が認められるというふうに考えておりまして、こうした事態は大変憂慮すべき状況にあるというふうに考えております。
 また、低年齢化の問題についてもいろいろな御議論があったんですが、平成七年を境に年少少年による交通関係業過事件を除く刑法犯の検挙人員も増加傾向にある上、年少少年による殺人事件の検挙人員が平成七年以降十人台を維持し、平成十一年には十六人を数えるというところでございます。
 以上です。
#14
○佐々木知子君 ありがとうございました。
 ちなみに、私が調べたところによりますと、強盗がふえているというのは、主におやじ狩りなどを主体とする何とか狩りというのがふえているということでございます。何かゲーム感覚で手軽に気軽に小遣い稼ぎをするというのがそういうような形であらわれると。ちなみに、おやじ狩りのおやじと認定されるのは、心理技官の話によりますと、二十五歳以上がおやじと認定されているようでございます。
 昔は不良少年の小遣い稼ぎというと恐喝ということでカツアゲだったんですが、それがなぜ強盗になったかというと、一つすごくおもしろい指摘が調査官などからございます。それはコミュニケーションが下手になったからではないか。カツアゲというのは、おまえ金持っているだろう、おいちょっと貸せよとか何かこういうコミュニケーションが要るんだけれども、そういうことができなくなって、ばっと襲ってばっととる、そういうふうな強盗のパターンの方が気軽で簡単にできる、そういうふうになってきているのではないかというおもしろい指摘がございました。コミュニケーション能力が落ちてきているというのは、少年に限らず全体的な傾向だろうというふうに思っております。
 続きまして、観護措置期間についてお尋ねしたいと存じます。
 法務省の改正案では二週間ずつ更新して最長十二週間となっておりましたが、今回の改正では、それがやはり二週間ずつ更新して最長八週間ということで短縮されております。つまり、この間に、事実が争われているケースであれば、数々の証拠調べ等、成人の公判に匹敵する審理に加えまして、少年ですから調査官による社会調査、そして鑑別所における心身の鑑別、こういうものをも全うしなければならないだろうというふうに考えますが、そうしますと非常にこれは短いのではないか。成人の場合でも、事実が争われている事件というのは御存じのように数年かかるような事件も多々見られます。
 ですから、果たしてうまくいくのだろうかというふうに危惧するわけですけれども、これは本当に大丈夫だというふうにお考えでしょうか。
#15
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、少年審判における観護措置期間が四週間ということから、これまで非常に共犯者の多い事件などにつきましては家庭裁判所でいろいろな工夫を凝らしてこられたわけですが、それにしてもそこで適正な審判をするのには非常に多くの努力を要する、いろんな意味で困難があると。そういうふうなことから、政府提出法案では十二週間まで延長が例外的に可能としたわけでございます。しかしながら、現在四週間のところを一気に十二週間まで延長するということについてはいろんな御意見があり、与党間で御調整の結果、八週間ということにされたものと承知しております。
 もちろん、どの程度観護措置期間が必要かということにつきましてはそれぞれの事件によってさまざまではございますが、いずれにいたしましても現在の四週間に比べればより審理というものがやりやすくなる効果があることは間違いないわけでございまして、引き続きその運用状況を見ながら検討をしていきたいと考えております。
#16
○佐々木知子君 ぜひ八週間の間で全うしていただきたいというふうに思います。
 同じく弁護士の参考人から、起訴状一本主義や伝聞法則の適用のある当事者主義ではなく職権主義的構造である審判で少年を裁くのは少年にとって成人以上の不利益であって、以下云々とありましたけれども、子どもの権利条約に違反するおそれがあるのではないかと。その際、少年を普通に刑事裁判所で裁く他の諸国は対審構造だから問題がないのだという旨の発言がございました。
 これは私は非常に誤解に基づいていると思うんですけれども、英米法系ではない大陸法系の国の刑事裁判というのは、これは成人も少年も、少年も少年裁判所あるいは裁判所の少年部というところで成人と同様に対審構造で裁かれるわけですけれども、裁判官が全捜査記録に目を通しているんですね。そして、もちろん伝聞法則もない。つまり、日本の審判と同じ構造になっているんです、その意味においては。
 なぜ日本が起訴状一本主義で伝聞法則が適用があるかといえば、戦前は日本も職権主義的でやっておりましたので適用がなかったんですが、戦後、アメリカの当事者主義を取り入れてここは継ぎはぎになったということでございまして、なぜ起訴状一本主義や伝聞法則があるのかといえば、陪審員という素人裁判官向けに予断を持たせないという趣旨からこういうふうになったと。プロフェッショナルな裁判官にとっては本当はこれは必要はないのではないかということも言われておりますが、そういうようなことを私が言ってもあれですから、法務省の刑事局長にちょっと説明していただきたいと存じます。
#17
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま御指摘のとおり、刑事裁判のシステムにおきましても大陸法系と英米法系はそれぞれかなり大きく違っているところがあるわけでございます。
 大陸法系の場合は、ただいま御指摘のとおり、基本的に裁判所が事件の取り調べを進めていくという職権主義という構造をとっており、この方が実体的真実という面を発見するということに役立つという考えでいるものと思われる次第です。
 この場合には、ただいま委員御指摘のとおり、もちろん捜査記録はすべて裁判官のところに送付され、裁判官がそれを見ながら必要な取り調べを進めて有罪か無罪かということを判断していくというのが基本的な原則であると認識しております。また、御指摘のように、いわゆる伝聞法則につきましても、大陸法系では伝聞法則による証拠の制限というのはないというふうに認識しているわけでございます。
 そういうことで、刑事裁判という責任追及をする場合に、どういう制度がふさわしいかというような面も含めて刑事裁判の訴訟手続についていろんな工夫があるわけですが、手続の性質などに照らしていろんな制度があり得るものと考えております。
#18
○佐々木知子君 イギリスの刑事責任年齢は十歳であると。マーダー、いわゆる殺人、それからマンスローター、日本でいえば傷害致死に該当するかと思いますけれども、そんなにきっちりと分けるような法制ではないのですが、それであれば十歳でもう全く成人と同様に裁かれて、そして、あそこは死刑は廃止しておりますが、そのかわりに終身刑というのがございます、無期刑がございます。もう無期刑しかございませんので、殺人イコール無期刑ですので、十歳の少年二人が、九三年のこれはバルガー事件という有名な事件ですけれども、無期刑で基本的に終身、刑務所に入れられるという判決が下っておりますし、フランスは十三歳、ドイツは十四歳、刑事責任年齢に達している以上は普通に裁判所で裁かれるというような審理体制をとっております。どちらかというと、日本が非常に例外的な運用の仕方をしているということでございます。
 今までの審議を通しまして、私はこれはちょっと理論というか議論の土壌がずれているんじゃないかなと思うんですけれども、非行を生んでいるのは、少年犯罪が凶悪化もしているんだったら、それは少年法の問題ではなくて教育などの問題であるというようなことを言われる方があります。
 もしかしたらそれはそうなのかもしれませんが、教育をどうするかというのは、これは法律の問題ではなくて、およそ少年法の問題ではなくて、教育自体の問題としてそれは真剣に考えていかなければいけないことだと思いますが、社会の規範としてある少年法ないしその刑事司法、そういうものをどうするかというのはまた別個の次元として法律家ないし立法に携わる者は考えていかなければいけないというふうに思っておりますので、今回の少年法改正は本当に一歩でございまして、またよりよい少年法を考えていくべきものだというふうに思っております。
 これで私の質問を終わらせていただきます。
#19
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 まず最初に、当法務委員会で今週の火曜日、二十一日に、少年の矯正施設、愛光女子学園と関東医療少年院、それから練馬にあります東京少年鑑別所、この三施設を視察してまいりました。
 そこで私が感じたことは、この少年の更生のための施設あるいは諸施策は非常に有効に機能しているんではないかという点でございます。あそこで従事しております職員の方々は大変に熱心に少年の更生のために頑張っておられます。私たちが見に行ったからそこだけうまくやっているということは決してないようで、中におります少年を見ますとよくそのことがわかりました。例えば鑑別所ですと、まだ身柄を拘束されて間もないということから大変に厳しい表情をしておりますが、少年院に行きましてだんだん教育の期間を経るとともにその表情にあらわれた性格の素直さというものがよくわかるというような状況をまさに見て感じました。
 そこで私が思うのは、今の少年の更生のためのこうした施設、あるいはもっと翻って、少年の更生を第一に考えている少年法というものは非常によく機能しているし、これまでも機能してきたんではないか、こういうふうに思っております。
 それで、まず提案者に私は基本的なことをお尋ねしたいんですが、現行の少年法、いわゆる少年の更生ということを中心にした今の少年法あるいはそれを実行しておりますそうしたさまざまな少年院等の施設、これは私は非常に有意義に機能していると思うんですが、提案者はその点はどのようにお考えなのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
#20
○衆議院議員(麻生太郎君) これは何と比較するかが一番難しいところだとは思います、再犯率を基準にされてみたり、いろいろな基準のとり方があるのだとは思いますけれども。
 私どもも、総じて少年院等々そこらの保護観察施設における少年への矯正の方法、またその他の社会の規範との関係の教育等々が幾つか幼年時代に欠落していたとか、またそういった環境に全くなかったとか、いろいろなそれまでの育った環境の違いもあるんだとは思いますけれども、他の人と一緒に生活をしていくという基本的なところ、人間はひとりじゃないんだということでみんなと一緒にやっていかなきゃいかぬということ等々の、生活を送るために必要最小限度、必要最低限の教育等々を施す、与えることに関しましては、今の少年院並びに鑑別所はかなりうまくいっている方だと、私どももそう思っております。
#21
○小川敏夫君 この改正案につきまして被害者の立場ということが提案者の方からたびたび強調されておるんですが、この愛光女子学園等に行きましてお話を聞いたところ、少年の約半数は両親が離婚を経験しているということでございました。
 そうしたことをヒントに考えますと、少年が非行を犯すといっても、非行を犯すために生まれてきた人間は私はいないと思います。やはりそこの非行に至るまでにさまざまな家庭の影響あるいはその他少年を取り巻くさまざまな環境によって非行に走らされてしまった、本当に普通の恵まれた環境の中ですくすくと心身ともに成長するということの環境に恵まれなかったという、非常に少年から見れば選ぶことができない環境に置かれた、そうした環境が少年を非行に追いやっている部分があるんではないか。
 そういうふうに考えますと、私は、非行に走ってしまうような環境に置かれたということの意味においては、その少年もそうした社会環境、さまざまな環境の被害者ではないかというような見方もできると思うんです。そうであれば、犯罪の被害者ということの観点も必要ですが、しかし非行に走るような環境に置かれてきたそうした少年に対する、被害と私は言葉づけましたが、そういう立場も考慮しなければならないと思うんですが、こういう私の考え方について提案者はどうでしょうか。
#22
○衆議院議員(麻生太郎君) 同じ環境に育って、両親の離婚もなく家庭も裕福、そういった状況において少年犯罪を犯す人もいれば、今離婚を例にとられましたけれども、そういった愛情深く育ててもらえない家庭環境に育ったにもかかわらず立派にやっている少年もいる。これは実は種々さまざまなんだと思っております。
 少なくとも同じ環境に育って、片方はそういった状況が悪くてもちゃんとやっている少年に対して、そうじゃないからといって少年が人を殺す。理由は何かといえば、何となくむしゃくしゃしていた等々、故意とはいえその内容は殺す経験をしてみたかったなんというのもありましたけれども、そういうのを含めて私どもからいえば信じられないようなことになっておりますが、そういった社会の状況、その少年を取り巻く状況が悪かったから罪を犯したという点に同情する余り、まともにやっている少年に対しての罪を、まあ命を奪う等々の極めて重大な社会犯罪、大きな犯罪を犯したときにはそれ相当の罰を受けるというのは私どもは基本的なところだと思っておりまして、私どもは、同じような条件であったにもかかわらずその少年によって、殺した方の人権というものと同時に殺された側のことも考えねばならぬところだと思っております。
 私どもは少年の更生をさせるというのは大変大事なところだとは思っておりますけれども、そういった人様をあやめる等々の大きな罪を犯したときはそれに伴っての罰を受けるというのが私どもの基本的な考え方であります。
#23
○小川敏夫君 非行に及びました少年につきまして、その少年個人にすべての責任を負わせるということではなくて、少年に非行に及ばせたそうした環境もやはり考えなければいけないんではないかと私は思います。
 時間の関係もありますので、法務省の方にお尋ねしますが、私はそうした意味で現在の少年院あるいは鑑別所は非常に有効に機能していると思うんです。この点について、当然のこととは思いますが、今のこの少年の保護と矯正という観点におきましてさらに力を注いでいただきたいと思っておりますが、その点、法務省のお考えをお聞かせください。
#24
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 少年矯正につきましてはこれまでも個々の少年の特性に応じてそれぞれ処遇方法あるいは教育内容等をいろいろ工夫し、またその制度の体系化とかいろいろ考えてやってまいりましたけれども、引き続き個々の少年に対する教育の必要性に応じた処遇の個別化を一層推進しまして適切に対応していきたいと考えております。
#25
○小川敏夫君 あと、東京少年鑑別所におきまして今少年の非行問題に関して一般相談、ここは練馬ですので、ねりま青少年心理相談室と、このような施設というか施策を用いて、その収容されている少年の鑑別だけでなくて、地域住民の、あるいは地域社会のそうした少年非行問題に対処しているというようなお話をお伺いしまして、私は非常に前向きで有意義なあり方ではないかと思っております。私は練馬に住んでおりますが、この東京少年鑑別所がそのような相談室を開いていること自体それまで知りませんでした。
 ですから、こうした有意義な前向きな方策はさらに進めるとともに、やはり地域に対する広報というものも含めて充実していただきたいと思っておりますが、その点についてお考えをお聞かせいただければと思います。
#26
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 ただいま委員の方から御指摘がございましたように、少年鑑別所は主として家庭裁判所から観護措置決定によって送致されました少年を収容して資質鑑別を行うのが主な職責となっておりますけれども、こうした専門的な知識等を活用しまして地域社会における少年の健全育成に資することも一つの仕事であろうということから、これまでもいろいろそういった一般社会から少年にかかわる鑑別とか相談、その多くは生活診断とかあるいは運転適性検査等でございますが、中には非行あるいは家出とかいうことに対していわゆる心理相談というようなことで応じてきたわけでありますけれども、引き続きそういった面についても努力していきたいというふうに考えております。
#27
○小川敏夫君 次に、検察官関与あるいは事実認定の問題について触れさせていただきます。
 私は、検察官関与という問題について考えますと、どうしても今回のこの改正案の制度で不安をぬぐい去ることができない。
 その一つは、一つというか根本は、観護措置期間というものを短ければ短いほどいいということで最長八週間にしておるわけです。
 先ほど佐々木委員の質問にもありましたが、成人の事件であれば二年も三年もかかるというものを、少年であるがゆえに非常に急いで、観護措置期間も短くして、その間に解決するんだということでした。そういう意味で、少年の身柄拘束が短いということそれ自体は非常に好ましいことだと思うんですが、ただそうして観護措置期間を短くして、その短い間にすべてを仕上げるために少年に不利益な形で、すなわち短い期間に検察官を関与させて少年に十分な防御とか弁解の機会を与えないで一気に強圧的に事実を決めてしまうんじゃないか、すなわち少年に非常に不利益な形で審判が進んでしまうのではないかというような不安を抱いております。
 そうした観点から質問をさせていただきますが、まず細かい事実関係で提案者にお伺いしますが、検察官関与をするこの検察官ですが、これは捜査に関与した、すなわち少年を直接取り調べをした検察官が今度は家庭裁判所に行ってそこに立会するということも可能なわけですね。
#28
○衆議院議員(麻生太郎君) 調べた検察官が裁判所でもということですね。可能です。
#29
○小川敏夫君 それから、検察官が複数関与することも可能なわけですね。
#30
○衆議院議員(麻生太郎君) あり得るとは思いますけれども、基本的には一人だと思っております。
#31
○小川敏夫君 法律上制限はございませんので、ある、法律上はあるということだと思いますが。
 それから、当然、検察官が少年に質問をするということもあるわけでございますね。
#32
○衆議院議員(麻生太郎君) あり得ます。あります。
#33
○小川敏夫君 今の少年の審判廷というもの、刑事法廷と違って非常に狭いところで仮に検察官が立ち会えば、恐らく少年のすぐ横に検察官が座るんじゃないか。そうすると、どうも取り調べをした検察官がすぐ横にいて、しかも仮に少年の陳述なり弁解について何か疑問があれば検察官が質問をするという状況を考えますと、やはり少年に必要以上の重圧感を与えるのではないかというふうに思うんですが、そうした心配は提案者としては考えておられないんでしょうか。
#34
○衆議院議員(麻生太郎君) 先生は裁判官も検事も弁護士もみんなやっておられる数少ない先生の一人だと思うんですが、御存じのように小さな部屋でありますので、今御心配の点も理解できないわけではありませんけれども、検察官と同時に、少年というか被疑者の方に対しては弁護士も付添人としてついておりますし、また裁判官という者が主宰する、少年法に基づく裁判ですからいわゆる主宰権というものは裁判官が持っておりますので、他の刑事裁判と同じような形で対立構造でやるわけではありませんし、そういった状況になったときには、これは裁判官が主宰しておりますから、ちょっと外へ出て弁護士とやるとか、いろいろやり方としては幾つもできるので、そうそうむちゃくちゃに威圧感を与えるだけの点ばかりが、御心配が全然ないなんて言うつもりはありませんけれども、検察官の顔の造作なんかによってはえらくおっかなく見えるのもいれば、やっぱりそこそこああと思わせるような検事もいれば、実にいろいろなんだと思っております。
 すべてが今おっしゃるような形でできてくる点ばかりではないと、私どもはそう思っておりますので、事実認定をきっちりさせるというところが今回の一番の問題点であります。
#35
○小川敏夫君 この広い委員会の部屋で私が提案者に質問しましても、麻生先生から何か反論されるのではないかと多少なりとも精神的に不安を覚えないわけではないんですが、これはまあ同じ議員として対等な立場でございますけれども、狭い審判廷で取り調べを受けた少年が、検察官が横に座っていると、どうも必要以上の、審判ですから当然緊張はあるんでしょうけれども、必要以上の重圧を受けるのではないかというふうに心配を抱いております。
 あと、この審判廷は大変狭いんですが、裁判所の方、審判廷の物理的な構造ですが、これをもう少し広くゆとりを持って、少年にそうした重圧を与えないような配慮というものを今後するような検討はされておるんでしょうか。
#36
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 突然のお尋ねで詳しいデータをお示しはできませんけれども、審判廷の大きさについてはいろいろと多様性があることも事実ではございますけれども、私の認識しているところでは、大方は大体三十平米ぐらいはあるものと考えているわけでございます。
 こういった中でどのような審判を運営していくのか、その具体的な庁においてさらに改善すべき点があるとすれば、それは改善を施していく必要があろうと考えておる次第でございます。
#37
○小川敏夫君 あと、検察官関与の中心のポイントは事実認定を適切に行うということだと思うんですが、私は現行法で検察官を関与させないでも相当できるんではないかというふうに思っております。現行少年法におきましても、裁判官には検察官や警察に対して補充捜査の協力を依頼することができると。
 それで、最高裁にお尋ねするんですが、現行の少年法のこの制度の中で、裁判官がそうした関係機関に捜査の協力を依頼してその協力を断られるというようなことはあるんでしょうか、それとも今の少年法で補充捜査の捜査協力依頼は捜査関係者の協力を得てスムーズにいっているんでしょうか、その点についての現状をお聞かせください。
#38
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 今、委員が御指摘のとおり、家庭裁判所として少年法十六条などによりまして捜査機関に対して補充捜査を依頼することはあるわけでございますが、こういった場合におきましては、そのお願いをした、依頼をした趣旨等を踏まえて適切にやっていただいているものと認識をしている次第でございます。
#39
○小川敏夫君 適切に補充捜査等をしていただいているという現状であれば、その補充捜査のために検察官が関与して、その検察官に補充捜査を指示しなくても、今の現行制度で十分できると思うんですね。また、仮に検察官が立会して検察官が補充捜査を行うといっても、実際には検察官自身が直接補充捜査を行うことはなくて、ほとんどがまた再び警察に捜査指示をして、実際に具体的な補充捜査を行うのは警察だと思うんです。
 そうしますと、直接問題点を把握している裁判官が直接警察に対して補充捜査の協力依頼をできる、それで警察がそれに適切に応対しているということであれば、私は、その補充捜査を行うという面については検察官を関与させる必要性はないんじゃないか、現行法で十分じゃないかと思うんですが、その点、補充捜査の必要性という面に絞ってみて、裁判所の方から検察官関与の必要性はあるのかどうか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
#40
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所におきましては、原則的には捜査機関から送られてきた送付記録、そしてこれに基づいた証人尋問といった手続によって事実を確定していくわけでございますけれども、事案の中には、例えば家裁に送致された後になりまして少年がアリバイの主張を始める場合でございますとか、あるいは捜査段階では単独犯ということで認めていた少年が、送致後になって、いや実は共犯がある、主犯は別の少年であると、こういった主張を始めるような場合もあるわけでございまして、こういった場合などにおきましては家庭裁判所から捜査機関に補充捜査を依頼するわけでございます。
 ただ、現在の手続のもとにおきましては、検察官が手続に関与していない関係で、検察官において争点を的確に把握することは困難な場合も多いわけでございまして、その意味では迅速かつ的確な捜査を実行しにくいという面があったりあるいは補充捜査の焦点を絞りにくい、こういった問題があることも否定できないように思われるわけでございます。
 今回の法改正が実現した場合には検察官が関与することになるわけでございますから、より適切、妥当な範囲の補充捜査を実現することが可能になるわけでございまして、裁判所に提出される証拠についても、争点に即した適切な証拠になるものと考えている次第でございます。
 また、補充捜査を行ったといたしましても、やはり審判廷での証人尋問等の場面におきましては裁判官は少年と対峙する様相を呈する問題があると。この点についての解決はなかなかできないものがあろうかと考えている次第でございます。
 以上でございます。
#41
○小川敏夫君 補充捜査の点は、問題点のポイントを一番知っているのは裁判官ですから、裁判官が直接警察に依頼して補充捜査をしてもらうということで私は十分だと思っております。
 それから、裁判官が少年と直接対峙することになるという点の御指摘がありました。その点、提案者の方も、審判で裁判官が少年に質問すると少年が裁判官を信頼しなくなる、敵対心を持つというようなお話でございました。
 今の少年法を見ますと、調査官というものがございます。現行法上、調査官はいわゆる要保護性の社会調査ということを行っているようで、事実認定については特段の調査は行っていないようですけれども、少年法上は裁判官の補助として事実認定に関する調査もできるわけでございます。ですから、そうした意味で、仮に裁判官と少年が対峙することが好ましくないというのであれば、いきなりそこに検察官を関与させるのではなくて、事実認定の職責を負う調査官というものを採用して、調査官にそのような事実認定に関する調査の指示とか少年に対する質問とかそういうものを行わせるというような、そうした工夫も可能ではなかったかと私は思うんです。
 最高裁にお尋ねしますが、現行少年法上、調査官がそうした事実認定に関する調査を行うということは禁止されていないわけですね。
#42
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 調査官が事実認定に関する調査を担当することは禁止されているかというお尋ねに関して申し上げますと、そのような明文はないわけではございます。しかしながら、少年法の幾つかの規定を総合して考えた場合には、家裁調査官は社会調査を担当する職と位置づけられているものと理解しているところでございます。
#43
○小川敏夫君 裁判所が調査官というものをそのように位置づけて運用しているということはわかりますが、ただ現行少年法はそのように規定づけているわけではないので、私は、現行少年法の中で今の社会調査を行っている調査官に事実認定をさせるというのではなくて、事実認定を行う調査官というものの制度を採用すれば、いきなり検察官を立会するという制度にしなくてもよかったのではないかというような考えを持っております。
 議論になりますからこの程度にしたいと思いますが、どうでしょう、法案提出者にもお伺いしたいんですが、検察官関与という問題、これはそうした意味で補充捜査という面からも現行法上できるし、調査官というものも活用すれば相当やれるんではないかと思うんですが、やはりどうしてもこの検察官関与というものを認めなければならないものなのでしょうか。その御意見をお聞かせください。
#44
○衆議院議員(谷垣禎一君) 小川先生が検察官の関与に疑念があるということで今いろいろ御議論がございまして、これはもう衆議院以来、また参議院でもずっと議論の一番のポイントの一つだったと思うんですね。
 それで、結局この問題はどういうねらいで検察官を導入するかということに、検察官の立ち会いを認めるかということになると思うんですが、先ほどからの御議論のように、補充捜査だけで片づくものというふうには私は思わないんですね。要するに、もし国民が、加害者の少年と裁判所だけが対話をしながら事実認定しているんではないかという疑義がありますと、この少年審判に対する信頼性も確保できない、そういう意味から多角的な視点が必要なのではないか。それは検察官が関与することによって多角的な視点が確保できるのではなかろうかと。
 それから、先ほど裁判官と少年が対峙してしまうとなかなか裁判官が本来果たすべき少年を保護し教育していく機能が果たせないのではないかという点は、調査官の活用によって回避できるのではないか、あるいは今までの調査官の制度と違うものを考えればいいのではないかという御議論であったと思いますが、今まで調査官というものは社会調査をやりながらやってきたわけでございまして、事実認定をさせるというディシプリンといいますか、そういうものが必ずしもできてきたわけではない。したがって、事実認定等をやるのは、やはり今まで裁判官あるいは検察官、もちろん弁護人もそうでございますが、そういうものが関与しながらやってきたということでございまして、それを裁判官の主宰のもとで一条あるいは二十二条というような趣旨を生かしながらやっていこう、こういう趣旨で私どもは検察官の立ち会いといいますか、付き添いというか参加をやって、今のような問題点を解決していこうと考えたわけでございます。
#45
○小川敏夫君 お話の御趣旨はわかりましたが、私としましては、冒頭に述べた疑念をどうしても払拭することがまだできたわけではございません。この改正案が成立して実際に施行されたとしましても、そうした問題につきましてしかるべきときにその実態をよく把握して、仮に何らかの問題点があればそれにすぐまた適切に対処するような方策をぜひ講じていただきたいという希望を述べまして、私の質問を終わります。
#46
○竹村泰子君 さまざまな議論がされてまいりました。そして、かなり問題点も明らかになってきているというふうに思います。
 私は、きょうの質問は、先日来出ている問題もかなりありますけれども、確認的に質問させていただきたいと思いますので、ぜひ今後のためにきちんとした答弁を求めたいというふうに思います。
 先日来言っておりますけれども、この政策変更の手順を提案者はどのように考えられていたのか。私たちは、民主的な議会において立法をする場合、やはり手順があるのではないか、一つの法案を改正する場合。例えば少年の凶悪事件がふえている。二番目に、これまでの政策、少年院教育と言われる政策では効果がない。刑事処罰を強化すれば凶悪事件は減る、だから刑事処罰を強化する必要がある。こういう段階的な手順があるのではないかと思いますけれども、提案者の皆さんはいきなり、少年の凶悪事件がふえている、だから刑事処罰を強化する必要があるというふうに一足飛びにお考えになったというふうに思えてならない。
 ある新聞は社説で、「今回の改正論議は六月の総選挙前ににわかに持ち上がった。選挙受けだけを狙った、打算的な観点から終始進められてきたといっても過言ではない。この間、少年事件の動向や内容を丹念に分析することも、非行問題に取り組んでいる現場の人々の話をじっくり聞くことも、ほとんどなされなかった。」というふうに、これは私じゃなくて社説が言っておりますので、そういったことで非常に飛躍的であった、責任政党の立法作業としてはお粗末過ぎたのではないか。改めてお聞きします。
#47
○衆議院議員(麻生太郎君) どの社の社説かは存じませんけれども、不勉強のきわみだと思います。
 私どもは、この問題は平成九年十月二十一日から、当時のこのプロジェクトを主宰しました河村建夫委員長のもとに、少なくともこれまで、平成十年十二月二十一日までだけでも二十一回。各大学の先生はもちろん、日弁連等々からも何回となくヒアリングをさせていただいて、各社新聞の世論調査、また論説委員の方々からもヒアリングをさせていただいております。それだけでも二十二回。それ以後、平成十二年以降も参議院の陣内先生のもとにプロジェクトチームを何回となく開いておりまして、これを出すまでには結構いろいろ私どもなりに、それが少ないと言われればまた別でありますけれども、少なくともそれまでに私どもいろいろ勉強させていただいたと思っております。
 また、先ほどの御質問の中で上田政務次官の方から御答弁がありましたけれども、平成九年を境に少年犯罪が増加しているという数字は、これはどうも委員の方によって、同じ数字を見ながら、ふえていると言う方とふえておらぬと言う方といろいろ御意見が分かれるところなので、これはどうしてそうなるのか、なかなか私どもの理解できないところなんですけれども、上田政務次官の方から申し上げましたように、少なくとも私どもは少年犯罪は間違いなくふえておると思っております。かつ、その中で凶悪化が進んでいるということもまたその数字の上からも事実だと思っておりますので、これを何らかの形で防止をせにゃいかぬというところが一番の問題でありまして、生半可に思いつきや何かで選挙目当てにやったなどという話とは全然違うと理解をしております。
#48
○竹村泰子君 当然そういうお答えであるだろうと思いますけれども。
 その少年犯罪、凶悪事件がふえているのか。私たちは長期的に増加していないと思っておりますけれども、そういう議論は、先ほど上田政務次官が法務省としてのお答えをされておりましたのでそこのところは省きます。時間の関係で省かざるを得ませんけれども、凶悪事件がふえたという根拠は私どもはないと考えております。
 そして、先ほども議論がございましたけれども、日本の犯罪全体が成人、少年とも世界的に、特に成人の割合が少ない。殺人についても成人、少年とも世界でもまれに少ない、特に未成年者に続く二十代前半の殺人が世界的に少ない。また、少年院退院者の再犯率は成人の再犯率よりも少ないことなど、少年院教育は効果を上げていると。先ほど麻生議員も確かに効果を上げているというふうにおっしゃっておりましたけれども、このことも戦後日本の少年院教育が間違っていたという前提で法案をつくられたのではなかったのでしょうか。これは大臣にお伺いしたいと思います。
#49
○国務大臣(保岡興治君) ここにおりまして、先ほどの小川先生の質問に矯正局長も答えておりましたけれども、この半世紀の間、少年法が施行されてから我が国は少年非行の大きな三つのピークを経験しているわけですが、その時代の少年非行の抱える問題、その背景などにも十分配慮した、少年院においてはそれを克服するいろいろな努力をしておりまして、特に少年一人一人の問題性と必要性に応じた矯正教育の内容、方法を充実してきたということは先ほど詳しく申し上げたとおりでございまして、こういった努力を通じて、先生のおっしゃるように、少年院における非行少年の問題の克服や社会復帰に対しては、的確な対応、そしてその効果を上げる努力をしてきたことは非常に評価を受けている、そういうふうに考えております。
 多分、先生はそのために少年法の改正の必要性はないんではないかという御意見だと思いますが、それはやはり事実認定の適正化とか、あるいは少年の重大な人をあやめるような犯罪を犯した場合の規範意識、特に確信犯や愉快犯という最近の犯罪の特色をとらえた改正の必要性、あるいは被害者に対する配慮、こういった総合的な観点から今回の少年法の改正は行われたものと承知しておりまして、私としては大変意義のある少年法の改正と考えております。
#50
○竹村泰子君 私が今お聞きしましたのは、なぜ少年法を改正しなければならないのかという大きな提案理由の一つに、戦後の少年院教育が間違っていたという前提があったのではないかということを多々この審議の中でもお聞きしましたので、その前提は当たりませんねと確認をしたわけでございます。短くお答えください。
#51
○国務大臣(保岡興治君) 今、答弁した内容で既にお答えしているようなものでございますが、私はこの委員会で、従来、少年院その他少年の更生改善に向けた施設のいろいろな努力、こういったものは高い評価を受けているというのがこの委員会の共通の認識で、それが失敗であったという議論は全くないと思っております。
#52
○竹村泰子君 そして、少年犯罪の背景には子供の学校、家庭、地域での人権侵害やストレスや不登校やさまざまな問題を抱えている複雑な複合的な原因があると思います。人命を大事にしない社会思潮からもくるし、先日、私も代表質問で申し上げましたけれども、大人に責任があるのだと。特に、国民が見詰めている政治の姿はどうなのだということを申し上げましたけれども、そういう社会思想からくる規範意識の低下というものがあるのではないかと。犯罪を犯した子供には、遅まきながら、自分も他人も助け合って、みんな大事な社会の構成員なのである、存在なのであるということを丁寧に教育しなければならないと思います。これをしないで刑事処罰の強化を選択することは、アメリカや韓国の例のように、社会に反発して適応もできない危険な若年服役者をふやすことにはならないでしょうか、大臣。
#53
○国務大臣(保岡興治君) これもこの委員会でかなり詳しく質問者と提案者の間でやりとりされている中で、いろいろな見方があるのは確かかと存じますが、例えば今挙げられたアメリカにおける少年の刑事司法化というんでしょうか、そういった最近の傾向はむしろ犯罪を減らしているという考え方もいろいろな統計上から表明されているところであって、いろんな見方があるのだなとこの委員会を通じて思うところでございます。
 私は、先ほど申し上げたように、最近の少年犯罪の特色からいって、やはり規範意識を高めていく一つの、悪いことをやったら厳罰になるんだという一面の少年に対する警告、あるいは一般予防、被害者に対する納得性、こういったものの配慮が必要なのではないかということで今回の改正が行われているものと承知して、評価をしているところでございます。
 なお、私としては、委員のおっしゃるように、少年の非行、問題行為は大人社会の鏡であるということで、私もこの国の気質、体質というものが果たして将来の日本を危うくする点がないのかということは、大人社会も含めてこれは社会全体のありようとして考えていかなければならないということを強く思わされている者の一人でございます。
 だから、こういうことを通じて広く議論されましたことを将来の日本のために、あるいは少年の健全育成のために生かしていかなきゃいかぬと。この委員会における議論は非常にそういう意味で高い評価を受けていい議論をしてきていると私は思っております。
#54
○竹村泰子君 それでは、少し具体的なことに入りたいと思いますけれども、草加事件等の少年の冤罪事件は捜査段階におけるずさんな取り調べが原因でありました。先ほど調査のあり方の議論がございましたけれども、事実認定の適正化のためには捜査段階が最も重要であり、捜査の改革が必要となるのでありますけれども、本法案では捜査段階については全く触れておりません。
 少年法四十一条は「司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、」「犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。」と規定し、四十二条は「検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、」「これを家庭裁判所に送致しなければならない。」と規定し、家庭裁判所に送致する前に十分な捜査を遂げることを必要としておりますね。そうでなければ四週間で家庭裁判所が審判することはできないと。
 この十分な捜査が行われているか否かが今問われているのではないでしょうか。法務省はどうお考えでしょうか。
#55
○国務大臣(保岡興治君) 家庭裁判所に事件を送致するに際しては、できる限り十分な捜査を尽くすことは当然だと思います。捜査機関においてはこれまでも、少年事件の捜査に関しては少年の情操保護とか早期保護の要請などに配慮しながら、限られた時間の中でできる限り捜査を尽くしてきたところと承知しておりまして、今後ともより一層適正な捜査を努めていくものと考えております。
 しかしながら、このように限られた時間の中でできる限りの捜査を尽くしたとしても、審判において少年が非行事実を否認するなどし、多数の証拠調べが必要になる場合があることは事実であり、これに適切に対応するため、観護措置期間の延長は不可欠であると。そうしないと、事実の認定についての非常に慎重な手続あるいは審理というものも行いがたいし、またそれがきちっと把握できないと、少年の健全育成の点でも、また被害者の納得性の点でも、また社会一般の少年審判に対する信頼を確保する上でも非常に重要なことであって、そういった意味で観護措置期間の延長は不可欠なものだと承知しております。
#56
○竹村泰子君 人間は非常に不完全なものでありまして、非行を犯してしまった少年がどのように捜査されて裁かれるのか、現場の声を聞きながら少し細かくお聞きしたいと思います。今後の捜査から裁判までの段階でぜひ参考にされたいというふうに思います。
 事実認定をまず困難にしているものは何なのだろうか。非行事実の認定が困難になっていると指摘されておりますけれども、これはさっきからお話がございますように、少年が私はやっていないと主張した場合、その多くは警察の無理な取り調べで虚偽の自白をさせられたケースも多々あると。圧倒的な力を持つ捜査機関を前に少年には防御能力が非常に少なく、大人社会に傷つき自己否定に陥っている、ぼろぼろの傷だらけの子供たちが取り調べの対象になっておりまして、虚偽自白はいとも簡単に、私もそういった証言をお聞きしたことがありますけれども、やっていないのにやっていると言わなければその場が終わらないということで、もうずたずたぼろぼろになって、ついやってしまったと言う、大人でもそういう例がたくさんございます。
 しかも、弁護人の関与があると先ほど麻生議員もお答えになっておりましたが、ほとんどない場合が多いのは御存じのとおりです。その上、現少年法が本来定めている身柄拘束の制限はほとんど機能しておらず、安易に身柄が拘束された状態でそれがなされると。警察での捜査を点検して家裁へ送致するのが検察官でありますけれども、大変失礼ながら、トンネルと言われるほどこのチェックはされていないというふうにお聞きをしております。法務省、いかがでしょうか。
#57
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま検察庁におきます少年事件の取り扱いは単なるトンネルではないかというような御指摘がございましたけれども、決してそういうわけではございません。
 もちろん、いろんな事件について事件の内容、軽重に応じて実際にやっていることは違っている部分が出てくることは、これは当然でございますけれども、重要な事件につきましては成人の事件と変わらず非常に慎重に手続を進めているところでございます。
 ただ、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、少年の場合には一般的に早期処理の要請というのが非常に高いということも事実でございます。したがいまして、現行少年法は犯罪の嫌疑があればとにかく全部家庭裁判所に送致することを義務づけられているわけでございます。それはやはり少年の早期保護という要請からくるものと考えているわけでございますが、そういう中で非常に時間的に限られる場合も多くなるわけですけれども、できる限りの捜査を尽くして送るように努めてきているということでございます。
#58
○竹村泰子君 ぜひそうあってほしいと思います。
 次いで、裁判所の姿勢にも問題があるのではないか。送致された少年の事件記録はその段階で家裁に送られていますよね。捜査機関が一方的に収集した証拠、家裁は少年の視点でそれを洗い直す義務がありますけれども、その役割をしなくなってきているというふうに聞きます。いかがですか。
#59
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 家庭裁判所といたしましては、送致された少年につきまして非行事実があるものはあると確定をしなければいけませんし、ないものはないと確定しなければいけない、その意味において事実のあるなしをいわば中立的な立場において解明する職責を担っていると承知しているわけでございます。
 今、御指摘のところでございますけれども、家庭裁判所といたしましては、捜査機関から送付された記録につきまして、これをプラスの面、マイナスの面、両様から吟味いたしまして、必要な証拠調べを行って的確な事実認定を行っているものと承知しているところでございます。
#60
○竹村泰子君 少年法では、家裁送致は捜査を遂げ嫌疑が認められる場合とされており、証拠も全部送付し、それを裁判官が見ているということになるわけですよね。刑事裁判でいえば検察側の立証が終了しているというべきでありましょう。したがって、少年側が争って嫌疑が揺らぐというのであれば、もう既に捜査の段階は過ぎているわけでありますから、それはきちんと疑わしきは被告人の利益にという鉄則に従って無罪を宣告すればいいのでありまして、以前はこの原則主義で運用されてきたと思います。しかし、近ごろは保護主義の後退と連動して、非行を犯したのに犯していないと認定されることは少年の保護教育からいってもマイナスだというふうなことで、積極的に調べ直すというふうになってきていると思いますが、どうでしょうか。
#61
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所といたしましては、先ほど申し上げたとおり、ある事実はあるものと確定をしなければいけませんし、ないものはないと確定をする、そういった意味において中立な立場に立って証拠の吟味を行っているものと承知しているわけでございます。
 なお、送付記録を見ていることによってあたかもクロという心証を抱いて審理を進めているんじゃないか、こういった趣旨のお尋ねでもあるかと思うわけでございますけれども、家裁に送付される記録は捜査段階に収集された一切の記録が送付されるわけでございまして、その中には少年にとってマイナスなものもあればプラスなものもあるわけでございます。例えて申しますと、捜査段階において少年の供述が変転する、当初は認めていたけれども、それを否認に転じた、またさらに認める方に転じた、こういったことなどもすべて一切が家裁の手に入るわけでございまして、家庭裁判所といたしましては、これらのプラスの証拠とマイナスの証拠とを総合的に比較考量しながら事実認定を行おうとしているのが現状だろうと承知しているわけでございます。
#62
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま最高裁の家庭局長から御答弁があったことに若干つけ加えて申し上げますと、先ほども申し上げましたとおり、現行少年法は、犯罪の嫌疑が合理的に認められれば、これは家庭裁判所に送致をしなければならないということになっているわけでございます。したがいまして、現行少年法の仕組みを法文の上から考えますと、犯罪の嫌疑があると検察官が認めたものにつきまして家庭裁判所においてその後その事件の調査を行って、その嫌疑が真実で非行事実が認められるのかどうかということを家庭裁判所みずからが調べていくという、そういう構造になっているものと理解しております。
#63
○衆議院議員(杉浦正健君) 竹村先生のおっしゃるこれからの少年法の運用に当たっては、まず第一義的な捜査機関である警察、検察官の対応がきちっとしなきゃいけないということはまことにそのとおりでございます。
 優等生の答弁になるとああいうふうになってしまうんですが、現実の検察、警察の対応が被害者の方にとっても、あるいは事実認定をきちっとやる上においても十分であるかというと、とてもそう言えない状態が現実だと。トンネルというのはちょっと言い過ぎかと思いますが、ある程度当たっている面があるんではないかと思うんです。
 私どもは、今回の法改正によって、まず司法システムの少年事件に対応する第一線でございます警察、検察官が特に被害者が故意の犯罪行為によって死に至ったような事件においてはきちっと対応していただける、それに準ずる事件もそうですが、必ず司法システムの第一線がもっとしっかりと対応してもらえるだろうということを確信し、また期待しながらこの案をまとめ上げたわけであります。原則逆送といたしましたのはそういうねらいがあるわけであります。
 つまり、前にも申し上げたことがあると思うんですが、検察官は、送致されてきた事件をぱっと見まして、これは公判にかかるのかあるいは家裁限りかということを瞬時にして判断するわけでありまして、現在なら全件家裁送致、そして殺人事件ですら二割から三割しか逆送されていないという現実、傷害致死に至ってはほとんど逆送されていない。平野先生の御親戚の方の御子息が殺された事件もそうですが、逆送されるという前提であれば公判を前提にもちろん十分捜査を尽くすわけですけれども、もっときちっと調べるであろう、そうすればああいうような問題は起こらなかったんじゃないだろうかなというふうにも思うわけでございます。
#64
○竹村泰子君 議員同士が議論するのは大変大事なことだと思いますけれども、申しわけありませんが、何しろ与えられた時間が少のうございますので、お許しいただきたいと思います。
 先ほどから申し上げておりますように、無実を争う多くの場合、この場合はさきに言いましたように警察の無理な取り調べを受けて精神的ないろんな圧迫も受けて虚偽自白をさせられた少年たちも非常に多いと。しかも、その多くは問題少年と言われるいわゆる冤罪のターゲットにされた少年であるというふうに思います。
 そんな少年が心を解き放ち、そして真実を語れる状態になれるまでには、捜査機関から解放されて、かつ少年を受け入れてその言葉に耳を傾ける、少年が信頼できる人間との出会いが不可欠なのではないかと私は思うんです。大臣、検察官が関与する裁判的なものでそういう状況になるとお思いでしょうか。
#65
○国務大臣(保岡興治君) 竹村先生の御意見を交えた御質問を聞いていて、やはり捜査機関といえども実体的真実の解明という責任があるわけですから、できるだけ丁寧な、少年の弁解も十分聞いた上、いろんな角度からその少年の主張というものについて検討を加えるということが非常に大事だと私は思います。そういった意味では、捜査の段階から少年の特性、あるいはまたある意味では早期保護とか情操保護という特性もありますから、そういう点にも配慮してやらなきゃいけないと思います。
 事実、成人事件の場合は、身柄を拘束すると逮捕から含めて二十三日で起訴するということになるわけでございます、最長で。少年事件の場合も、やむを得ない場合はそういう期間を最大限利用するということもありますが、通常はできるだけ早く家裁に送る、全記録を送って家裁でもう一度よく検討してもらうという観点からできるだけ早く送るということで、場合によっては逮捕期間に送るということもあります。
 全件送致ということで、不処分、不開始が送致事件の七五%ぐらいある、そしてうち一〇%は不処分になるというようなことからいっても、やっぱり家裁の審判の特性、捜査機関の少年に配慮した特性、連携してできるだけ少年事件の解明に適切な対応ができるように今後とも努力していかなきゃならぬと。
 しかし、事実認定についてどうだというお尋ねであれば、これは今度の少年法改正の大事な柱になっておりまして、私は裁判官が検察官の役割も弁護人の役割も二役も三役もやることはとても難しい、特に否認事件、重大な複雑な事件は難しいという現場の裁判官の多くの人の主張をどうしたらいいかという観点に立った改正で、そういった答えとしては私は検察官の関与は非常に評価しているところでございます。
#66
○竹村泰子君 私どもの修正案では、検察官送致を決定できる場合を「罪質が重大で、かつ、刑事処分以外の措置によつては矯正の目的を達することが著しく困難であると認められる場合」に限定することにしております。また、少年たちは防御能力に極めて乏しいことにかんがみ、検察官送致を決定するには、少年に「弁護士である付添人を付さなければならない。」としております。
 私は、きょうはもう時間がなくなったので質問をやめなければなりませんけれども、もう一問残しておりますが、それはまたの機会にいたしますが、こういう中で、検察官は大事なお仕事でとても重要なお仕事だと思いますけれども、検察官が、そして弁護人がということになりますと、検察官はどうしても少年を犯罪を犯した人という決めつけで仕事をなさるわけでございまして、そして弁護人の方はそれを何とかカバーしよう、助けようという側に立つわけでありまして、少年たちはそのはざまで非常に埋没してしまうということも考えられる、非常に不幸なこともあり得ると思うんです。未来のある少年たちが本当によい形で裁判、犯してしまった罪を悔いて、そして更生のためにどういう手だてができるのだろうかということを本当に国も私たちも考えなければならないと思いまして、確認的に質問をさせていただきました。
 ぜひ今後の現場での参考になるように私どももしっかりと監視をしていきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
#67
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 提案者の皆様、御苦労さまでございます。
 大分議論も深まってきたなというふうに認識をしているところでございますが、今質問にもございましたように、現場の運用というようなことが問題になってこようかというふうに思っております。そしてまた、今回の改正案におきましては裁判所の役割も大変大きくなってきているというふうに思うところでございまして、まず今回の改正案が家裁の実務においてどういうような影響を与えるかということから、確認ということも含めて若干お話を承りたいというふうに思います。
 今回の改正案の一つの目玉みたいな部分は、原則逆送、いわゆるというふうに私は考えておりますが、導入されることになりました。家裁の審判においてこの原則逆送ということがどういうような影響を与えるのか。裁判所において、もちろんやってみなきゃわからないという部分はありますが、今考えておられる影響というものをちょっと御答弁願いたいと思います。
#68
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 今お尋ねのいわゆる原則検送が導入された場合の家裁の運用でございますけれども、具体的な審判の進め方につきましては、個別の事件に応じて裁判官の判断による事項でございますけれども、本法律案の二十条二項の規定ぶりでございますとか、あるいは国会における提案者からの御説明によりますと、基本的には、従前と同様に家裁調査官に対して調査命令を発しまして、その調査の結果を踏まえた上で、例えば少年の性格、資質、生い立ち、家族関係、友人関係等、こういった要保護性についての調査を行った上で、その結果と認定された非行事実の態様、重大性などを総合して最終的な処分を決定することになるものと思われます。
 最終的な処分がどうなるかということについては、個々具体的な事件についての裁判官の判断でございますから、私から申し上げることは控えたいと思いますけれども、裁判所といたしましては、国会での審議を踏まえて、立法趣旨に即して適切な事件処理が行われるものと考えているところでございます。
 以上でございます。
#69
○魚住裕一郎君 余り大きな議論になりませんでしたが、今回は裁定合議制というものも採用となります。従前は一人で一生懸命やられてこられたわけでございますが、従前の少年審判と比べてどういうふうに変わっていくのか、この点につきましても御答弁をお願いいたします。
#70
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 少年審判事件の多くの事件については従来どおり単独の裁判官が審理を行うということになろうかと思うわけでございますが、しかしながら非行事実が激しく争われるような重大事件におきましては事実認定に困難を感じる場面があるわけでございまして、こういった事案につきましては、合議決定を行いまして複数の裁判官による多角的な検討を通じてより客観性を帯びた判断を得よう、こういった方向で運用されていくものと思うわけでございます。そのような慎重な審理を行うことによりまして、少年に対してより説得力がある判断にもなるでありましょうし、またひいては国民の信頼も得られるものになるだろうと考えている次第でございます。
 また、非行事実とは別に、重大な事件であって社会的な関心が高い、そして非行の背景事情が複雑でなかなか処遇決定に困難を伴う、こういった事案におきましても、合議体によって慎重な審理判断をすることが適当な場合には合議決定がされるものと理解しているところでございます。
 そして、合議体による審理におきましては、委員会での御議論がありましたとおり、その裁判官が、審判が教育の場であるという十分な認識のもとで適宜役割分担を行うなどの方法によって審判の教育的機能を損ねることがないような運用に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
#71
○魚住裕一郎君 それから、今回、改正案で観護措置期間が最長で八週間ということになっておるわけでございますが、そんなに必要ないという意見もあれば、いやもっと長くなきゃいけないんじゃないかというような御意見もございます。実務的にこの期間というものをどのようにお考えになりますか。
#72
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 現行の四週間という期間の中で的確な事実認定を行うことが難しい場面があることは既に御議論されているとおりでございます。その意味におきまして、今回この法改正が実現した場合には八週間の期間まで延長ができるとなるわけでございまして、一定の限度で審理の充実化に資するものと考えている次第でございます。
 しかしながら、私ども最高裁といたしましては、かねて法制審議会において議論があった際に、これまでの具体的な実例などを踏まえまして最長十二週間までの延長を認めていただきたいという意見を述べていたところでございまして、実務上も八週間の期間内では足りない事案も十分予想されるところでございます。その意味では、八週間という期間になった場合には、当面は付添人、検察官等関係者の格別の協力をいただきまして集中審理に努めてまいりたいと考えているわけでございますけれども、さらに改めて上限の延長を必要とするかどうかについては、実務の運用を見ながら検討をしていく必要があろうと考えている次第でございます。
#73
○魚住裕一郎君 最長八週間というような形でございますが、この観護措置期間の長さの決め方ですが、どういう基準で決めていくのかお示しください。
#74
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 観護措置をとる目的から申し上げた方がよいかと思いますが、三つあると言われておりまして、一つは身柄の確保であり、二つ目は少年の心身鑑別であり、三つ目は少年の緊急保護の必要性と言われているわけでございます。
 具体的な期間については、今のような要素をどう考えるかという個別具体的な事案の判断によるわけでございますけれども、現在、事実認定に争いがない大多数の事件におきましては、少年の心身鑑別等を行うために大方三、四週間かかっているのが現状でございまして、この期間はいずれの事案においても事実が認められて最終処分を決定する場合には必要となってくるものと思われるわけでございます。これ以外にどれだけの期間が必要かということについては、事実認定のための証拠調べをどの程度行わなければいけないか、その証人の数等によって決まってくるものと考えている次第でございます。
 以上でございます。
#75
○魚住裕一郎君 それから、今審議している法案では審判に検察官が関与するという場面が生ずるわけでございますが、検察官が審判に関与した場合どのような形で審判を行うことになるのか、その想定しているところをお述べいただきたいと思います。
#76
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 審判に検察官が関与する制度を導入する趣旨については既に御議論があったとおりでございますが、法律家として犯罪行為を適正に処理すべき職責を担って、しかも公益の代表者という立場にある検察官に関与を求めるわけでございますが、その基本的な構造としては、現在とられております職権主義的審問構造を維持した上で関与を求めることになるわけでございます。
 その意味におきましては、裁判官があくまでも審判手続の主宰者としてどのような事実認定のための審理を行っていくのかということを主導的に考えてリードしていくわけでございまして、そのような中にあって検察官が審判協力者として関与をしていただくことになるわけでございます。
 その意味では、現在の基本的な構造においては変わりはないものと考えている次第でございます。
#77
○魚住裕一郎君 では具体的に、例えば証人尋問が必要になる場合、どういうふうな形でやるのかなと思うわけであります。
 対審構造であれば、申し入れをして、法文上はまず裁判官から聞くような形になっておりますが、例えば検察官が申し出た証人につきましては、裁判官から聞くのかあるいは検察官の方から聞くのか、そういうようなことも含めてどういうことが想定されておるでしょうか。
#78
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所としては、送付された記録等によってその当該事案の問題点は的確に把握できていると。この上で証人尋問を行うわけでございますので、基本的には、これまで例えば供述調書が出されているような人を証人として尋問する場合には裁判官からまず概括的な尋問をした上で、その上で付添人、検察官からお尋ねになる、こういうことになろうかと思うわけでございますが、ただ家裁送致後に新たに主張されたアリバイに関する証人などについて、家裁として全くこれまで事情を把握していないという場合におきましては、付添人あるいは首席検察官の尋問の後に家裁が補助的に尋問を行うという場合もあろうかと考えている次第でございます。
#79
○魚住裕一郎君 ぜひ、適正にといいますか、運用をお願いしたいと思います。
 続きまして、先般、平成十二年度補正予算が成立したところでございますが、法務御当局におきましても、今少年法を議論しているところであり、少年の健全育成あるいは保護矯正ということに関しまして大変多大な関心が集まっているところでございます。
 矯正あるいは更生につきまして、今回の補正におきまして、一生懸命取り組んでこられたことについて概略御説明をお願いしたいと思います。
#80
○政務次官(上田勇君) ただいまお尋ねがありました平成十二年度の補正予算におきまして、法務省としても今回のこの少年法の改正の御議論等も踏まえまして更生保護施設あるいは矯正施設に対します予算の要求をさせていただき、成立させていただいたところでございます。
 具体的には、まず更生保護施設についてでありますけれども、御承知のとおり、更生保護施設は更生保護事業法に基づいて更生保護法人が設置運営する施設でありまして、保護観察の対象者あるいは刑の執行が終わった者たちの中から、頼るべき親族とか縁故者がなくて更生のための保護を必要としている者に対しまして、宿泊場所の提供や就職の援助、生活指導などを行う施設でございますが、この更生保護施設の整備費補助金といたしまして二億二千九百万円が計上されているところでございます。
 これは、青少年の改善更生を促進するという観点から、青少年を収容、保護する施設のうち、特に施設の改善、これは老朽化が進んでいるところが多いものでありますので、その中でも特に施設改善の緊急度が高い施設につきまして全面改築を一カ所、補修等が五カ所、計六施設の整備の予算を計上させていただいているところでございます。
 また、それ以外にも、更生保護施設被保護者教育用のパーソナルコンピューターの整備経費等も計上させていただいております。
 また、矯正施設に関する補正予算については、一つは高度情報通信に対応する施設の整備といたしまして東京拘置所の整備、また青少年育成、更生対策として函館少年刑務所や和泉学園ほか二庁の工事、また新たに横浜少年鑑別所の青少年相談センターほか二庁、それぞれ予算を計上させていただいております。
 このうち横浜少年鑑別所の青少年相談センターでありますが、先般、東京少年鑑別所の同様な施設を御視察いただいたというふうに思いますが、もともと少年鑑別所は、家庭裁判所の保護措置等により身柄を収容された少年の資質鑑別を行うほか、一般社会からの要望にも応じまして、地域社会における少年の健全育成のため、広く少年に係る問題の相談を受けており、学校関係者、子供の問題で悩む保護者等が相談に訪れて、臨床心理学の専門家である鑑別技官が相談活動を行っております。
 この点については、先ほどの御質問の中でも評価をいただくお話をいただいたところでありますが、こうした地域社会からもその機能の充実が一層今求められているところでございますので、この横浜少年鑑別所に青少年相談センターを新築整備し、広く地域社会と連携して非行の防止に貢献するなど、少年鑑別所がこれまで蓄積してきました青少年問題に関する知見を地域に対して提供しようというものでございます。
 この青少年相談センターはいろいろと施設あるいは敷地の問題などもありまして、現在のところ整備されているのが四十庁、未整備のところがまだ十二庁あるわけでありますが、こうしたことにもこれから整備に取り組んでいきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#81
○魚住裕一郎君 確かに更生保護施設整備につきましては、当初予算では一億四千万、全面改築は二カ所だけというようなところで、一気に一・五倍というものも計上されて、本当に更生保護施設を充実させようという意気込み、私もそのとおりとも思いますし、もっともっとするべきじゃないかというふうに考えるところでございます。
 そこで、ずっと議論されてきた中で、総合的な青少年の健全育成、また更生、社会復帰策ということになるわけでございますが、今、政務次官からの御説明でもございましたが、この更生保護施設も、宿泊の提供とか就職の問題とかそういうようなことだけではなくて、もっと積極的に更生というものに活用してもいいんではないかというふうに思うところであります。
 私ども公明党といたしましては、少年院とかあるいは少年刑務所とか施設を出た後、家に帰るまでの間のグループホームというようなものも考えていいんではないかと。そういう中で専門員も配置をいたしまして、家庭環境等を含めてその少年を取り巻く社会の環境等も整備していくべきではないかというようなことも提言をさせていただいているところでございますが、当面の策として、この更生保護施設というものを、宿泊提供施設というよりも、もっと性格を変えてもいいんではないかというふうに考えておるところでございますが、法務御当局のお考えはいかがでございましょうか。
#82
○国務大臣(保岡興治君) 魚住先生から更生保護施設について大変御理解のある御質問、御意見を承ったところでございますが、先ほど上田総括政務次官からお答え申し上げたように、法務省としても一生懸命頑張っておるのでございますが、更生保護施設というものは全国で百一カ所あるわけです。そのうち築二十年以上三十年未満という施設が約二割。それから、築三十年以上というのが約四割もあります。これが三十九施設なんですね。ところが、一年でやる施設整備というのは大体三カ所ぐらいしかできないわけです。そういうことから考えると、確かに当初予算に比べて補正は一・五倍の上乗せをして頑張っているのでございますが、今後こういった施設の充実については、なお法務省としては国会、与党の御理解をいただいてもっとふやさなきゃいけないというふうに考えております。
 それと、今、先生がお話しのように、公明党の青少年健全育成等プロジェクト、浜四津敏子先生が座長で、総理にも申し入れいただいたその中に、先生御指摘のグループホームというものの御提案がございます。非行をした少年、虞犯少年などの受け皿になって、その社会復帰を支援する専門家等による保護を行う施設というふうに理解いたしましたが、このような施設が果たす役割は少年の更生に効果を与える上で非常に重要だと思っております。
 現在、法務省所管の更生保護施設では、少年院から仮退院した少年等のうち頼るべき親族等のない者を宿泊させる、そして就職の援助や生活の指導等の保護を行っておるわけでございますが、こういった処遇内容の向上を今後図る、そして機能をさらに充実させることはもちろんでありますけれども、更生保護事業法というのが平成八年四月に施行されましたが、その附則の第二項に、施行後五年をめどに法律の規定について検討を加えて所要の措置を講ずるものということになっておりますが、さらに更生保護施設の職員の人材確保、養成、事業の透明性の確保、あるいは更生保護施設の処遇施設としての法的位置づけの明確化、これなどは保護観察所と連携して保護観察機能の一翼を担ってもらうとか、先生御提案の専門家がどういう形で関与するかという法的根拠、こういったことなど非常に貴重な御提案をいただいていると私は思いますので、そういった御提案を踏まえて、この見直しに向けて法務省としても皆様方の御指導をいただきながら全力を挙げて機能強化に努力してまいりたいと思っております。
#83
○魚住裕一郎君 積極的な、前向きな御答弁ありがとうございます。
 そういう見直しの中で、例えば委託費も入所者数というような基準になっているようでございますが、それも定員制というような形でやった方がいいんではないかと。また、個々気がついた点を含めて発信をさせていただきたいというふうに思っております。
 また、私どもの提案として、社会奉仕命令、教育改革国民会議ではありませんが、やはり社会奉仕命令、社会とのかかわりの中で更生していくということが大事ではないかというふうに思っております。
 これは少年じゃありませんけれども、この間、市原の交通刑務所に行ったときに、仮出獄直前の方が施設での奉仕活動をやっておられた。そして、その関係者からありがとうという声をかけられて、大変社会に役立っているんだというような、そういう思いをしたという感想があるようでございます。
 特に少年ということを考えた場合には、人に感謝されるということ自体が少ない場合が多いんではないかというふうに思っておりまして、そういういろんな保護処分の一環としても採用できるんではないかというふうに思っておりますが、この点についてはいかがでございましょうか。
#84
○政務次官(上田勇君) かねて魚住委員から御提案のあることでございますけれども、保護処分の一環として、ある一定の期間さまざまな社会奉仕活動をさせるというような制度が非行少年に対しまして有効な施策であるということは、そういう御意見があるということはもう十分に承知しております。
 現在でも、少年院では院外教育活動の一つといたしまして、また保護観察所におきましても、これは命令という形ではないんですが、保護観察を受ける者の同意を得た上ででありますけれども、先ほど委員からもお話がありましたけれども、自己の有用性を再認識させてもらうというようなことを主な目的といたしまして、除草作業等の社会奉仕活動であるとか、あるいは老人福祉施設などでの介護体験学習、そういったことも実施いたしております。今後とも社会奉仕活動の活動先というのを、これは受け入れていただくところがなければいけないわけでありますので、そういった活動先の開拓、また活動内容もいろいろと充実をさせていきたいというふうに考えております。
 ただ、これを社会奉仕命令という制度として導入するということになりますと、これはイギリスを初めとして諸外国においてそういう制度、自由刑にかわる制度としてそういうものがあるのは承知しておりますけれども、これから受け入れ先の問題であるとか社会状況の問題、あるいは社会奉仕命令に違反した場合はどういうふうに対応するかという観点からも検討を加えた上で今後考えていきたいというふうに考えております。
#85
○魚住裕一郎君 お昼前になりましたのでそろそろ終わりにしたいと思いますが、提案者各位におかれましては、ことしの夏休みを返上して一生懸命議論されここまでおまとめになられたこと、本当に敬意を表するところでございます。
 この少年法の改正だけで今の問題についてすべてが解決するということではないということはもう再三述べられてきたところでございます。やはり犯罪を起こさない、起こさせないということ、そして今回の少年法の改正、そして残念ながら起こしてしまった場合の処遇と更生改善の道、そういう総合的な取り組みというのが一番肝要かというふうに思っておりますが、その総合的取り組みにつきまして法務大臣の御決意を拝聴いたしまして、質問を終わりにしたいと思います。
#86
○国務大臣(保岡興治君) 魚住先生からはもう本当にその点についてこの間から重ねて強い御意見、御要請を賜っておりまして、前にもお答え申し上げたつもりでございますけれども、今度の少年法改正をめぐって、先生を初め各委員から貴重な御意見、深まったいろいろな内容、実りもありますので、それを踏まえまして法務省は法務省としてその職分をきちっと果たしてまいりたいと思いますし、また関係省庁は、総務庁のもとに青少年対策推進会議みたいな連絡会議がありますので、そこは文部省とか厚生省とか警察とか、少年非行問題、あるいはそれを未然に防止するいろんな総合的な施策を考える拠点になっておりますので、そこを生かして、政府としてもまた法務省としても全力を挙げてこの少年法をめぐる国会の成果を総合政策につなげていくように努力したいと存じております。
#87
○魚住裕一郎君 終わります。
#88
○委員長(日笠勝之君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#89
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、少年法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#90
○橋本敦君 きょうは私は検察官関与の問題から質問に入らせていただきます。
 法案第二十二条の二で、検察官関与を裁判所が判断して認めることができる、こうなっているわけでございます。この問題については、検察官が関与するということになれば、裁判官は一切の訴訟記録、捜査記録をお読みになっていらっしゃいますから、あえて検察官が関与するということはどういうことになるかということが問題になるわけですね。
 私ども共産党としては、事案の事実認定等、複雑な事件もあることは間違いありませんから、そういう限度において検察官関与が考えられることをあえて否定はしません。しかし、その場合には、おのずと対審的構造にならざるを得ないわけです。とりわけ少年にとっては、裁判官は一切の記録を読んでおられる、検察官は捜査記録一切踏まえて審判廷に臨む、少年に付添人はついていますけれども、おのずとそこでは事実の争いがあれば糾問的構造になって、少年側は大変な不利益な状況に置かれるということが当然想定されるわけです。
 したがって、検察官関与を認める以上は、当然憲法三十一条が要請する一般刑事手続における適正手続の保障ということを真剣に考える必要があると私は思うんですが、提案者はいかがですか。
#91
○衆議院議員(谷垣禎一君) 今、橋本議員がおっしゃった適正手続というようなものが少年法の場合にも必要ではないかというのはそのとおりだろうと思うんです。それで、流山中央高校でしたか、あの事件の最高裁判決におきましてもその旨の判示が行われておりまして、その後あの最高裁判決が実務の基本的な流れをつくっているということも、これは釈迦に説法でございます。
 ただ、今、委員がおっしゃいました、いわゆる職権主義的な構造をとるかあるいは当事者主義的な構造をとるかというのは、これは午前中の議論でもございましたけれども、大陸法の国あるいは英米法の国それぞれあって、それぞれやはりすぐれている点もあり、一長一短と言いますといけませんけれども、それぞれいい点悪い点というものがあろうかと思います。
 いわゆる対審構造、当事者主義をとりますと、どうしても独立の当事者がそれぞれ攻撃、防御を尽くすというような形になってきて、その手続の流れもかなりリジッドなものにならざるを得ないし、また時間もかかる可能性がある。それに比べると職権主義的な構造はかなり柔軟な運営が可能であって、少年法が目指している教育的機能とかあるいはいろいろな矯正をやっていく上で職権主義の柔軟な構造というものがやはり少年法にはよいのではないか、こういう判断を少年法自体がしているんだろうと思うんです。
 そういう中で、検察官の関与を認めるということは、やや委員のおっしゃった見方と違いまして、それがすぐ当事者主義構造を取り入れるわけのものではない。やはり家庭裁判所の裁判官の手続主宰権のもとでそれに協力をする形で行われるわけでありまして、この場合にも少年法一条あるいは二十条という規定はかかってくるというふうに私どもは考えておりまして、そのことが直ちに当事者主義的な予断排除とか伝聞証拠排除ということを要請するものではないというふうに考えております。
#92
○橋本敦君 そこの考え方が根本的に違ってくるんですね。
 今おっしゃったような状況で検察官が関与をする、裁判官は予断排除の原則がないから一切訴訟資料を見ている。少年が否認すれば、警察ではおまえ認めておったじゃないかというようなことを検察官も裁判官も言うことになれば、おのずと糾問式、そういう関係になってくるんですよ、実情としては。だから、そこのところの実情も踏まえてどうすべきかということで問題がやっぱりあるわけです。
 したがって、そういうような状況も考えて日弁連としては、御存じと思いますけれども、九八年七月に出した「「少年司法改革」に関する意見書」ではこの問題を非常に重視して、検察官関与となればおのずと対審構造になっていくという状況を踏まえて、今おっしゃったけれども、証拠法則の厳格な適用、予断排除の適用、そしてまた反対尋問権の十分な保障、伝聞証拠の禁止など、一般刑事手続に認められている憲法上の要請でもある適正手続保障ということは当然導入されるべきだという意見を日弁連が出していることも私は当然のこととして理解できるんです。
 加えて言うならば、この問題は国際的にも大事な問題として議論されてきまして、御存じと思いますけれども、国際的な流れとしては国連の場で日本も賛成して採択された少年司法運営に関する国連最低基準規則、いわゆる北京規則でありますが、この十四条第二項では、「手続は、少年の最善の利益に資するものでなければならず、かつ、少年が手続に参加して自らを自由に表現できるような理解し易い雰囲気の下で行われなければならない。」、こう規定しているわけです。
 少年が手続を理解し、自由に物が言える雰囲気というのは、我が少年法が冒頭で、和やかな雰囲気のもとで審判を得られなきゃならないということと共通しているわけですから、少年法の規定はこういった国際的基準にも合致している。
 そういう雰囲気が検察官立ち会いによって事実上対審構造的なものになっていくというその実情を踏まえた上で議論しないと、実際の運用の問題としては、理論的に観念的に言っているだけでは事済まないという問題があるということを私は指摘しているわけです。
 そしてまた重要なことは、犯罪被害者とその弁護士さんたちがつくられている会があるんですが、その意見書でどう言っているかといいますと、「捜査を適正化するなどの法改正もしないで、警察と一体となった検察官が新たに少年審判に関与することは、弁護人が付いたとしても捜査側に有利な不公正な審判となり、加害少年や被害者に対する人権侵害も容認されかねません。それではかえって加害少年の冤罪が増え、被害者の言い分が通らない逆冤罪もまかり通り、真相や真犯人もわからなくなるような被害者にとっても問題のある案です。」と。
 少年法改正案では、少年審判に検察官が出席し、検察官抗告もでき、加害少年をますます追い詰め、冤罪もふえるような、そういうことであるなら、それは被害者を絶望に追い込む危険性も存在し、少年事件の真相究明の期待とはほど遠いことになると。被害者の側からも正確で厳正な事実認定ということ、被害者も真相解明を求めているし、そして犯罪を犯した少年が真に反省する上からいっても冤罪など起こしてはならぬ、真実の、正しい事実解明が必要だということを言っているわけです。
 私は、被害者の皆さんからさえこういう問題があるというときには、検察官関与については十分な、少年法本来の和やかな雰囲気のもとで少年が心開けるという、そういう審判になることと同時に、やっぱり証拠法のルールを裁判所はきちっと守る努力をして、そして適正手続も可能な限り入れて運用していく、そういうことが大事だと思うんですが、これは法の運用に当たる最高裁にお聞きしたいと思います。
#93
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 今回の法改正の内容は現在の職権主義的構造を維持した上で検察官の関与を求めるものであるわけでございますが、ただいま委員から御指摘の、裁判所において適正な手続の保障が十分じゃないんじゃないか、その点をどう考えるのか、こういうことでございますけれども、この点は先ほども提案者から御説明があったとおり、いわゆる流山高校事件、この決定を受けまして、家庭裁判所といたしましては、合理的な裁量のもとで証拠調べ等を行うものとされて、その運用が定着しているように承知しておるところでございます。今回、法改正が実現した場合には、その証拠調べの運用等につきましては今の規定の趣旨を十分踏まえた適切な運用がされるものと考えておるところでございます。
 以上でございます。
#94
○橋本敦君 提案者がおっしゃった最高裁判例は少年審判事件の審判における裁判官の裁量、これは認めているわけですが、その裁量も全くの自由裁量でないよ、適正な司法手続の保障ということを考慮してその裁量は合理的でなきゃならぬよと、こういう判断をしているわけです。ここが最高裁の大事なところです。その合理的な判断に適正手続ということをきちっと入れていくということが、この最高裁の判断が出たときは検察官関与がないときの話です、そうでしょう。だから、検察官関与になれば一層厳正に最高裁の趣旨も踏まえて適正手続の保障を実際にもっと進めなきゃならぬということを指摘して、次に検察官の抗告問題に移ります。
 この検察官抗告をなぜ認めるか。少年は、裁判所が今度の改正によって重大犯罪ということで逆送決定して刑事裁判に回すという決定をされて、抗告権がありますか。
#95
○衆議院議員(杉浦正健君) 済みません、もう一回御質問を。
#96
○橋本敦君 少年側には逆送決定に対して抗告ができますか。
#97
○衆議院議員(杉浦正健君) できません。
#98
○橋本敦君 できないでしょう。大事な少年側はできない。検察側は裁判所の審判決定に対して抗告受理の申し立てができる。不公平じゃありませんか。どう考えますか。
#99
○衆議院議員(杉浦正健君) 被疑者と申しますか、被審判少年は審判の結果について抗告ができます。そして、現在の家裁の審判構造ではその少年側以外は抗告できない仕組みになっておるわけでございます。
 私どもが検察官に抗告受理の申し立て権を認めた理由は、検察官が関与した場合において家裁が非行事実について誤認をしたり、法令適用を誤ったりした場合に、抗告受理申し立ての権利を限定的ですが与えたわけでございまして、バランスはとれておるというふうに思います。
#100
○橋本敦君 そんなことないですよ。少年はいろいろ裁判所で審理してもらって逆送決定された、その逆送が法令に違反し、事実の判断が間違っているということで刑事裁判に付されることに対し抗告できないんですよ。この不公平性はぬぐいがたいですよ。今のお答えでは私は当然納得できません。
 それからさらに、もう一つ問題があるのは、日弁連も指摘していますけれども、検察官に抗告受理の申し立て権を与えると、おのずと裁判所の処分の最終確定がおくれますね。それは必然的でしょう。しかし、国際的な基準からいっても、少年法の基本的理念からいっても、少年には長期間不安定な拘束的状態に置かないで、速やかに保護処分なり処遇が決定できるようにしてやることが教育的配慮で大事なんですよ。だから、検察官に抗告受理申し立て権を付与することはこういう少年法の基本的な理念にも反する、そういう問題を持っておる。
 少年法のそういう立場から見て、検察官の抗告受理申し立ては認めるべきでないと思いますが、この遅延し、少年の身分が不安定に置かれ、少年の処遇の適切な速やかな処理がおくれるという問題について提案者はどう考えていますか。
#101
○衆議院議員(杉浦正健君) この案におきましては抗告受理申し立て制度を導入しようとしておるわけですが、検察官は原決定から二週間以内に抗告受理の申し立てをしなければならないとされておりますし、また高等裁判所も原裁判所から抗告受理の申し立て書の送付を受けてから二週間以内に抗告を受理するか否かを決定しなければならないということに相なっております。
 このように、抗告審における審理が相当でない場合は早期に決着が図られるように手当てされておるところでございますので、御指摘のような点は当たらないと思っております。
#102
○橋本敦君 御指摘の点は二週間、二週間で、そこで当たっているじゃないですか。だから、それはそういうように決めてあるからというだけの話であって、運用の問題として、そういう処遇がおくれるという状況が起こり得るということでその抗告受理が入れられて、そこで審理が行われて、やっぱりおくれていくんですよ。だから、その点は私は少年処遇という教育的配慮から見て問題があるという意見は変わりません。
 時間がありませんから、次は厳罰化問題に入っていきたいと思います。
 これはアメリカの例がしばしば出されました。この例で言いますと、立命館大学の葛野教授が大変よく御研究なさっているようでありまして、私が拝見をした九三年一月に出された法経論集六十九、七十号で論文をお出しになっておりまして、ニューヨーク州における少年犯罪を考察されております。
 これによりますと、ニューヨーク州では七〇年代後半の少年司法改革の流れの中で七八年に少年犯罪者法を制定して、それまでの教育的、福祉的性格を強く持っていた少年司法システムを変えたんです。そして、少年犯罪に対しては刑事罰強化を含むそういうシステムを用意することによって少年犯罪を抑止しようと、こういうことに進んでいったわけです。基本構造としては二つありまして、一つは一定年齢の一定重大犯罪は日本で言う原則逆送、刑事裁判にかけて刑事責任そのものを問うということ、二つ目は施設への必要的収容を要求して刑罰期間の長期化、これも規定をしたという二つになっているんです。
 この改正がなされた後、ニューヨーク市における犯罪抑止効果について研究がされるんですが、そこで三つの検討結果が検証されて結論が出た。一つは、謀殺・故殺、暴行については少年犯罪者法は被逮捕者数に対して影響を与えなかった。二つ目、強姦、放火に対しては少年犯罪者法はこれも影響を与えていない、つまり減っていない。三番目、以上を要約して少年犯罪者法は一般的予防効果がなかった、少年犯罪の減少に効果を持たなかったという結論が書かれております。
 この教授の資料によりますと、アメリカ全体で厳罰化が進行した八〇年代半ばから九〇年代半ばにかけて、少年による殺人事件が何と二・五倍にもふえているというアメリカの実情があるという報告があるわけです。こういう事実に照らせば、いわゆる刑罰強化あるいは厳罰化で少年犯罪の一般的予防効果がないということは明らかです。
 衆議院の論議で、議事録を調べてみますと、麻生提案者は、基本的にはこの法案が通ったからといって直ちに少年犯罪が減りますというようなことを申し上げることはないと思っておりますと、こうおっしゃっている。これは私は正しい御意見だと思うんです。この御意見に間違いありませんか。
#103
○衆議院議員(麻生太郎君) たびたび申し上げておると思いますが、少年犯罪等々につきましては、少なくとも極めていろんな問題が複雑に絡み合っておりますので、この法案が通っただけですぐできるとはだれも思っておられないと思っておりますので、さようにお答えいたしております。基本的にはそうです。
#104
○橋本敦君 最近の少年事犯の激増、凶悪犯がふえる、そういったことから、規範意識を持たせるために今度の法案だということですから、今の問題は非常に大事なんですよね。
 法務省に伺いますが、実際に少年の殺人事件、これを少年法発足当時と現在と一遍比べてみたいと思うんです。
 日弁連が作成した資料でもあるんですが、法務研究報告書その他をずっと調べた結果、昭和二十三年、十八歳、十九歳は殺人が二百六件、十四歳、十五歳は二十件、二十五年には二百三十二件と二十四件ありました。それが平成に入って平成十年二十七件、十一年二十件、つまり十八歳、十九歳は戦後直後から十分の一に減っている。十四歳、十五歳は六件ですから三分の一以下に減っている、こういう数字が出されているわけであります。
 これだけではなくて、犯罪白書平成十年度版、ここから作成された資料によりますと、一九九六年の殺人事件の検挙人員を人口十万人当たりの人口比にしてみますと、日本は〇・五、アメリカは七・一、ドイツは五・九、フランスは二・四、こういうことで、我が国は諸外国に比べて、幸いにして先進国の中で大変少ないという状況がここからうかがえるんですが、法務省、いかがですか。
#105
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま委員御指摘の数字につきまして、まず最初に引用されました昭和二十三年、二十四年、二十五年と平成八年以降の数字でございますが、この昭和二十三、四、五年についての数字として、当時のいわゆる法務研究にそのような数字が登載されていることは事実でございます。ただ、当時の正確な統計というのは現在ちょっとわかりません。いずれにいたしましても、その程度の数字であったんだろうと思われるわけでございます。なお、平成八年以降は、これは家庭裁判所で終局処理になった人員数ということであるようでございます。
 それから次に、諸外国との比較でございますが、法務総合研究所の調査した結果につきましては、今、委員御指摘のとおりと承知しております。ただ、アメリカとかほかの国は、日本で言う殺人よりはやや広い、いわゆる故殺みたいなものも含んだ数字でございます。そこで、国によっては日本の構成要件と違うものも一部含まれているという点だけ申し上げておきます。
#106
○橋本敦君 総体的には、私の指摘した数字は基本的には変わりはないわけですね。だから、そういう意味でも少年法を改正して、凶悪事件が発生して、厳罰化だということで直ちに一瀉千里にそこへ行くという状況でないことを十分検証しなきゃならぬ問題はいろいろあるということなんですよね。
 そこで、次の問題に移っていきますが、大阪弁護士会の意見書の配付をお願いしたいと思います。
   〔資料配付〕
#107
○橋本敦君 今から資料を配付していただきますのは、大阪弁護士会の資料でございます。後でまたゆっくり御検討いただきたいのでありますが、この資料はどういう資料かといいますと、大阪弁護士会が少年法等の一部を改正する法律案に対する意見書として、事例検討から見た少年を厳罰化、刑罰化することの問題点の検討ということをやったわけですね。
 これは、神戸の須磨事件、たびたび問題になった最近の凶悪事件、もちろんこういうことも含めて過去四十年間の百二十九件の凶悪重大犯罪について判例その他の資料を調べて、犯行動機、生育歴、犯行の前兆行動などを分析したわけです。
 その結果、どういう結論になったかといいますと、その結論として大事なことは、現実に少年事件が起こっていますけれども、過去四十年を展望しますと、その四十年にはいろいろ理解しがたいいろんな事件が起こっている、今回だけではない。そして、少年事件の量的検討について言うなら、犯罪統計によれば、凶悪重大事件は単純に増加しているとは言えない、低年齢化も進んでいるとは単純に言えないという状況を踏まえまして、とるべき方策として次のように言っているんですね。
 以上のとおりで、少年法を厳罰化、刑罰化する際に、その根拠としてしばしば指摘される少年重大事件の質的、量的変化、これは長い目で統計を調べてみると認めることはできない。また、事件に至った経過や少年の状況等を子細に検討すれば、刑罰化、厳罰化することにより少年事件が減少するとは考えられず、むしろ少年の更生を阻害することになる。現に重大な犯罪を犯した少年に真に責任を自覚させ改善更生への道を歩ませるためには、当該非行に至る動機や背景事情を科学的に調査探求した上で個別処遇、手厚いケアを行うことこそが求められている。児童相談所を初めとする子供にかかわる専門機関による十分な相談システムを考えることこそが必要である、こういう結論に達しているわけであります。
 この大阪弁護士会の過去四十年にわたる重大事件の分析検討というのは、実証的検討として私は貴重なものだとしてぜひ審議の場でもこれは踏まえていただきたい、こう思うわけですね。
 そして、この問題について弁護士会がこういうことを言っているんですが、これだけではなくて、少年法に詳しい澤登教授が「少年法」の中で次のように指摘されていることは、私は大変大事だと思うんですね。
 罪を犯した少年には、「罪障感に欠けた少年に責任の意識をしっかりもたせるところから教育が始まります。」、そうですね。「しかし多くの犯罪少年には、刑罰以外の手段がむしろ有効と考えられているわけです。家裁の終局決定における各処分の比率が、現行法施行以来ほとんど変わっていないのは、特に変える必要がなかったからだと考えることができます。そしてその背景には、わが国の各処遇機関の処遇能力の高さと、水準向上への継続的な努力があることを忘れてはなりません。」。私は、家裁の裁判官が熱意を持ち、少年の更生を展望され、家裁の少年調査官やあるいは鑑別所、少年院で少年更生のために随分と努力されているということは実っている、こう思うんですね。
 この点の評価について、私は当然よくそういうことで少年法の基本理念を踏まえて今日までやられてきた、そのことについては高く評価をすべきだと思いますが、最高裁はどうですか。
#108
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所におきましては、これまでもその事件の個々の具体的な状況等を踏まえて、また社会の状況等を踏まえてその当該少年の持っている問題性を調査した上で最終的な処遇選択を行ってきたものでございまして、一人一人の裁判官であれ調査官であれ、当該事案について心血を注いで判断を行ってきたものと承知しているところでございます。
#109
○橋本敦君 ですから、少年法の基本理念である教育的、保護主義的、そういう機能を理念として大事に守るということは絶対にこれは後退させちゃならぬ、その努力もされてきた。だから、この前指摘したように、刑務所出所者よりも少年院を出所された人の方が再犯率が低いという効果が上がっているわけですよ。ですから、今後もそういう少年法の基本的な理念というのは大事に維持していかなきゃならぬ。
 だから、澤登教授は続いてこう言われていますよ。「ここでひとこといっておきます。厳罰化だけをめざす政策は、法律を変えるだけですぐに実現できます。」、それは法律を変えればできますよ、今もやろうとしているんでしょう。「しかし、法律をどのように変えようと、非行少年と向き合い、改善へ向けての働きかけを続ける少年院の教官や保護観察官・保護司をはじめとする数多くのワーカーの活躍がなければ、非行は防止されないのです。ケースワークの活動を広範囲に引き出すことのできる制度が、少年法制として優れていると考えます。」、こうおっしゃっています。
 だから、私は、厳罰化を言う前に、現在の少年の教育的処遇、それがもっともっと十分にできるように、家裁の少年調査官の増員やあるいは少年院や医療少年院や鑑別所やそこらの施設の整備、法務省にお願いしたいのは、予算面、人的面も含めて、こういう面にもっと力を入れるという国の責任がまずあるのではありませんか、こう言いたいんですが、法務省はどう考えていますか。大臣で結構です。
#110
○国務大臣(保岡興治君) 御案内のとおり、少年による深刻な凶悪な事件が後を絶たない、そういうことで非常に憂慮すべき状況にあり、国民も非常に危機感を持っているという状況があるわけで、被収容少年に対する適切な矯正教育とその生活環境の充実、保護観察の対象となる少年に対する適切な保護観察の処遇が一層重要になってきております。
 一方、少年刑務所、少年院及び少年鑑別所における収容人員及び保護観察事件数が増加しておりまして、これは数字を挙げますと、平成六年、五年前の少年刑務所の一日の平均収容人員三千二百二十二人に対して平成十一年は四千百七十三名、少年院が三千三十名に対して、五年たった今日、平成十一年は四千百九十八名、それから少年鑑別所が平成六年が九百二十人に対して平成十一年は千三百二十一人、こういうふうに非常にふえているわけでございます。
 これらの施設においては、もちろん事務処理のなお一層の効率化、合理化というものにも努めなければなりませんが、被収容少年や保護観察対象となる少年に対する適切な処遇体制の充実強化というのはとても大事であると考えております。
 そこで、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び保護観察所の職員の定員でございますが、非常に国家財政が厳しい、定員管理もなかなか厳しいという状況がありまして、例えば平成十三年度の予算概算要求においては、特に緊急性の高い要員を確保するという観点から、行刑施設全体で看守部長とか看守を百四十六人、しかしこれについては定員削減が百四十四人と実質二名しか増員できない。そして、少年院法務教官が二十一人、少年鑑別所法務教官が十四人、保護観察官十二人の増員を要求していますが、これは定員削減と同数でございますので、実質増ゼロであります。
 こういうような予算あるいは定員管理というのは役所としては横並びでおさめていかないと、なかなか短期間に査定をし予算や定員の全体像をつくることが難しいものですから、やはり政治がある程度めり張りをつけるという努力をきちっとしないと、こういった必要なところに対する適切な増員要求というものはできないものだと、私は大臣として一生懸命そういうつもりで努力をいたしておるところでございます。
 また、少年刑務所、少年院及び少年鑑別所の施設整備については、明るい生活環境と実習や学習などの教育活動がより適切に行われる処遇環境を確保する。これは、例えば少年刑務所二庁、少年院三庁、少年鑑別所二庁の全体改築を行っているところでございます。これは整備が行われているところと行われていないところの差が大きくて、できるだけ早く整備をしないといけないという考えでおるところでございます。
 今後とも一生懸命努力したいと考えているところであります。
#111
○橋本敦君 最後に、今の大臣のお話からも率直に少年の処遇に関する予算、人員配置が全体の定員削減や予算縮小の中で極めて厳しくなっている、思い切って政治の力で何とかしなきゃならぬということで頑張らなきゃならぬというお話がありました。まさにそうですよね。
 少年犯罪に詳しい東大大学院教授の長谷川壽一さんは、こうした問題で少年の犯罪を減らすには少年に希望を与えることが大事だと、今の社会の中で閉塞感がある、少年に長期的な人生設計ができる、そういう希望を与える、そうすれば犯罪率も下がるし凶悪犯も減っていく、これはもう通説だと。ところが、今の社会では就職難があり、そして教育の問題があり、閉塞感がいっぱいだ、まさにこれは政治の責任じゃないかということをおっしゃっているのはそのとおりですよね。実際の処遇でも政治の責任はまだまだ足りない。
 団藤教授は、非行の原因をつくっている世の中をよくしないで結果だけを見て厳罰化の道を進むのは逆効果を生み出すだけであると。元最高裁判事であり我が国刑法学会の重鎮である団藤さんもおっしゃっている。これは正論だと思うんです。
 私は、いたずらに刑罰化、重罰化を急ぐのではなく、今私が指摘したそういう問題に国の責任として力を注いで、我が国の少年を二十一世紀に向かって立派に育てていく、少年犯罪も減らしていく、そういう立場で国が全力を挙げることを厳しく指摘して、要求して質問を終わります。
#112
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 少年法についてお聞きをする前に、一点だけ盗聴法に関することでお聞きをいたします。
 一九九九年五月三十一日、共同通信配信で次のようなものが流れました。
  埼玉県川越市の自宅に洋弓銃(ボーガン)が撃ち込まれた法務省の但木敬一官房長は三十一日午前「家族が恨みを買う理由は見当たらず、私の仕事に関すること、特に組織犯罪対策三法に関することではないかと考えている」と感想を述べた。
  その上で「法秩序維持に携わる私が対象となったことに、暴力の深化を感じる。今、暴力組織と闘わなければ、法案を提出することもできなくなるだろう」と話した。
と。
 記事は組織的犯罪対策三法案についての国会での審議のことが続いております。
 この件は新聞でも報道されましたとおり、司法試験受験を繰り返している人に懲役三年、執行猶予五年という判決が先日出ました。
 そういうふうに事件としては解決をしたのですが、当時、私たちが非常に驚いたのは、自宅にボーガンが撃ち込まれてすぐ組織的犯罪対策三法案にかかわる暴力であるということを表明されているということです。
 官房長、記者会見でどのように述べられたのでしょうか。
#113
○政府参考人(但木敬一君) 記者会見といいますか、記者が次々当時の川越の私の自宅の方に参りまして、私に対して取材活動をいろいろな社が行いました。
 大体の社の共通した質問は、まず何か思い当たることがありますかという質問でありました。それについて、私は、私及び私の家族への恨みというようなことでこのような被害を受けるとは思えないということを申しました。あるとすれば、私の職務にかかわることではないかということもお話ししました。
 当時、だれがどのような目的でやったのかは今の段階では全くわかりませんということはもちろん前提として申し上げた上で今のような話がございまして、そこで職務に関するものは何ですかという質問がありまして、当時、御案内のとおり、通信傍受法を含みます組織犯罪対策法が国会で審議され、衆議院の法務委員会で極めて厳しい対立のもとに採決が行われた時期そのものでございます。それで、職務について何か思い当たることはありますかという質問に対して、私は思い当たるとすればそういうことであるということは申し上げました。
 これは言ってみますれば犯罪被害を受けた直後の被害者の立場としての応答でございまして、その後国会で坂上議員からこの点について質問がございまして、そのときは捜査中のことなので一切のことは申し上げられないということを申し上げました。
 そのような経過でございます。
#114
○福島瑞穂君 「法秩序維持に携わる私が対象となったことに、暴力の深化を感じる。今、暴力組織と闘わなければ、法案を提出することもできなくなるだろう」ということはおっしゃったんですか。
#115
○政府参考人(但木敬一君) 一つの社に対してどういう答えをしたか余り記憶は定かではありません。ただし、いろいろな質問をずっと続けられておりますし、その中には私の方で条件をたくさんつけて、ればとかたらとか、こういう条件であればということはたくさん前提条件をつけた上でいろいろお話ししていると思います。報道の性格上、私が申しましたたらとかればとか、そういうことにつきましては逐一報道はしてもらっていないので、そういう意味ではそのとおりであるというふうには言えないと思いますけれども、いろいろな質問に対していろいろお答えしていますので、たら、ればをつけた上でそういうような意味のことを申し上げているかもしれません。
 ただし、これについては、私、正確な記憶ではございませんので。
#116
○福島瑞穂君 何ら捜査も開始していない段階で官房長が、これは組織的犯罪対策三法案、盗聴法に反対する人たちがやったのではないかというふうに述べられているわけですね、「法秩序維持に携わる私が対象となったことに、暴力の深化を感じる。今、暴力組織と闘わなければ、法案を提出することもできなくなるだろう」と。これは大きく報道をされました。「「暴力の深化感じる」 自宅に洋弓の但木官房長」という見出しで報道されました。
 当時、盗聴法に関しては、賛成、反対、厳しい対立がありました。そのときに、反対派の人たちはそんなこともやるのかと、やはり怖いというようなイメージにこの報道は大変役立ったわけです。
 官房長として非常に軽率だったというふうには思われませんか。
#117
○政府参考人(但木敬一君) 当時、いろいろな事件がございました。御記憶にあろうかと思います。中村先生の事件もございました……
#118
○福島瑞穂君 短くて結構です。軽率かどうかだけ答えてください。
#119
○政府参考人(但木敬一君) 私は被害者の立場で申し上げました。中身も、先ほど申しましたように、たくさんのたら、ればがついた上で話していることでありますので、被害者として事件直後に申し上げたことについて、別に軽率とか軽率でないとかいう話ではないと思っております。
#120
○福島瑞穂君 立場があると思うんですね。官房長ですから、捜査のプロでいらっしゃるわけです。何にも捜査が始まっていない段階で犯人はだれではないかということを言うのは非常に軽率だと思います。
 少年法のことについても、私はメディアの誘導、誤導が非常にあるのではないかというふうに考えております。
 不信任案の可決、否決をめぐる議論の中で、テレビである有力な国会議員が、補正予算も通さなくちゃいけないし、それから犯罪をなくすために、犯罪のために少年法がもうきちっとあるのだからということを述べられました。
 この委員会の中では、あるいは提案理由の中でも犯罪の抑止的効果ということは挙げられていません。この委員会の中でも犯罪の抑止ということは入っておりません。それは立証できない、立証というか、明白に立証できないということになっております。しかし、テレビなどの中では多くの人は、少年法が今回改正されれば安心して暮らせる、あるいは犯罪が減るのではないかというふうに誤導されて思っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#121
○衆議院議員(高木陽介君) この提案理由の問題については今まで何度も何度も論議がされてきて、大分平行線の部分もあったと思います。
 私たちは、今回の少年法の改正で少年犯罪が、これもふえているふえていないということも、いろんなデータの読み取り方によってかなり違うという認識もあると思います。そういった中で、私たちは少年犯罪を何とか防いでいきたい、健全育成もやっていきたい、そういった思いでやっております。
 ただ、規範意識という言葉も何度も出てまいりましたけれども、やはりこういった中で、マスコミの報道のあり方を今御指摘されましたけれども、マスコミの報道でも、やはり少年法がある意味では刑事処罰年齢が十四歳になるということでそういう認識も広まると思いますし、そういった部分では規範意識が根づいてもらいたい、そういうふうに私どもは思っております。
#122
○福島瑞穂君 しかし、委員会での議論が正確な形で出ているのだろうかというふうに思います。
 凶悪事件がふえているかどうかというのも委員会の中でずっと議論になりました。これは御存じのとおり、犯罪統計を長期のスパンで見てふえていないというふうに見るのか、ここ数年のあるデータを見てふえているというふうに見るのかということなんですが、立法する場合には長期のスパンで見るべきではないでしょうか。
#123
○衆議院議員(麻生太郎君) 両方見なくちゃいかぬと思っております、基本的には。
 しかし、長期的に見た場合、例えば昭和三十年、もはや戦後ではないという言葉が使われたのが昭和三十年だと記憶しますが、このころには成人と少年との間においていわゆる刑法による犯罪の検挙というのはほとんど同じだった。ところが、一昨年、一九九八年の統計によりますと、少なくとも十万人当たりの犯罪、いわゆる刑法犯の検挙率というのを見ますと、成人で約百六十七、少年では一千六百九十一という数字になっておりまして、約十倍という数字になっておる、長期的にはそういう数字もあるということを御参考いただければ幸いです。
#124
○福島瑞穂君 それは犯罪に占める中で成人の犯罪率、犯罪をする割合が低くなっているので、その比較をすると少年が成人に比べてふえているということだけれども、全体の統計で見た場合に少年犯罪が増加しているということは長期的スパンでは言えないと思います。
 殺人事件ですが、少年の殺人事件の推移を見てもおおむね横ばいです。昭和四十九年から平成十年まで見たときに、この殺人事件は横ばいです。別に少年の殺人事件がふえているということは言えないんですけれども、それはいかがでしょうか。
#125
○政府参考人(古田佑紀君) 殺人に限ってのお尋ねでございますが、先ほど委員御指摘のとおり、長期的スパンということで見た場合に、絶対的な件数というのは、少年犯罪全体として殺人はもちろん数としては減っている、そういう状況であることは昭和二十年代の初めから考えればそのとおりであろうと思います。
 ただ、それと同時に、数は数といたしましても、少年の中でどの程度そういう殺人事件が起こるかといういわゆる人口比のような問題もあるわけでございまして、犯罪統計をどういう角度からどう分析するかということはやはり数だけでは決められないように思うわけです。
#126
○福島瑞穂君 八月二十四日の朝日の夕刊の廣田東大助教授が出しているのもそうなんですが、十万人当たり検挙者は非常に減っております。今、古田局長がいみじくも言ってくださったように、件数としてふえているわけではない、長期的スパンで見たらふえているわけではないというふうにおっしゃいました。そういうことは実はきちっと人々の間に伝わっていないのではないか。さっき麻生さんがおっしゃった統計もわかります。しかし、それはこういう面で見たらこうではないかというふうに反論ができるわけで、きちっとそれを長期的スパンで見たらどうかとか全体としてどうかということでいえば、今犯罪がふえているという言い方はやはり不正確、間違っている、誤導であるというふうに思います。
 次に、少年法改正案のターゲットというか、ねらっている少年はだれなんだろうか。衆議院の法務委員会の議事録を見ますと、非常に凶悪な事件というふうに出ております。提案理由の中でも凶悪な事件というふうになっております。一方で、法務大臣は、愉快犯、確信犯、おやじ狩りというひったくりのことも話されました。どちらが、何がターゲットになっているんでしょうか。
#127
○衆議院議員(高木陽介君) 個別具体的なこういう犯罪だけを対象にしようという考え方で私どもはこの法改正に取り組んだものではありません。先ほどから申し上げているように、少年が犯罪を犯さないようにする、一番大切な問題でありますけれども、健全育成をしていく。ただし、犯した場合にどう対処していこうかということで私たちは話しました。
 先ほどの議論の中にもありましたけれども、犯罪の数だけではなくて、例えば最近、特にマスコミの報道のあり方ということもいろいろと問題になると思うんです。それは山形のマット死事件、これが大きなきっかけとなりましたけれども、そのときの事実認定のあり方、これも一つの問題となって今回の法改正のきっかけともなったと思います。さらには、バスジャックの問題もそうでありますし、また神戸の事件もそうでありましたけれども、やはり報道が過激になることによる影響もあったと思います。
 そこら辺のところで、数字の上では数が多くなった、または長期で見ればそんなにふえていない、そういう論議もありますけれども、終戦直後に少年法ができ上がったときと比べてみると、今の情報化の時代にあって、一つ一つの事件が特にマスコミを通じて広がっていくということで、これもかなり大きな影響を与えていると思っております。
#128
○福島瑞穂君 法務委員会の審議を通じて、なぜ改正しなくてはいけないのかというところがやっぱりまだ納得がいかない、わからないんです。
 その大きな理由の一つは、なぜ凶悪重大事件が起きるのかというきちっとしたアプローチを国会がまだしていないからではないかというふうに思うんです。一つ一つの事件がなぜ起きたのか、凶悪重大事件がなぜ起きるのか、今の子供たちがどういう問題を抱えているのか、国会は果たしてそれにどこまで肉薄をしたのだろうか、本当に原因一つ一つをきちっと検討し、その中で少年法改正しかないというふうになったんだろうかというふうに思っております。
 一つ一つ、例えば佐賀バス事件、神戸A少年の事件、先ほど橋本委員の方から大阪弁護士会の事例分析が出ました。私たちも、いろんな付添人、重大事件をやっている付添人の人から、少年がどういう少年で何に問題があるのかという報告書などもいただいております。これと少年法改正が全く結びつかないので、私たちは少年法のこの改正に賛成はできないわけですが、個別個別ケースで、一体、事件の根本的な問題、何が問題かというところまで検討されたのでしょうか。
#129
○衆議院議員(高木陽介君) 今、御指摘のあったように、国会としてこの少年犯罪の問題について取り組まなければいけない、まさにそのとおりだと思います。
 そういった中で、与党のプロジェクトを初め、先ほど麻生提案者の方からもございましたけれども、平成九年から論議がずっと進められてまいりました。その中で、何も少年法の改正だけがすべてだというふうに私どもはとらえていないということをこれは何度も申し上げております。そういった中で、私どもの公明党の方からも、更生のあり方ということで総理の方に申し入れもいたしましたし、それを受けて先ほども法務大臣から御答弁いただきましたけれども、そういう対処をしていこうということもございました。
 ということで、少年法の改正だけがすべてだというふうに、百かゼロかみたいな論議で、いつもここの論議になってしまうんですけれども、これは一つこれをやっていく、それだけでよしとはしないで、それ以外にもさまざまな角度からやっていこうという取り組みであります。
#130
○福島瑞穂君 では、根本原因は何と考えられたんですか。
#131
○衆議院議員(杉浦正健君) 少年法改正問題については、人それぞれの価値観でさまざまなお考えがあろうかと思います。
 私は、私個人のことを申し上げますと、そもそも少年法において、刑法が十四歳以上が処罰可能であるのに、十六歳以上しかできないということはおかしいということはかねがね思っておったところであります。
#132
○福島瑞穂君 私の質問は、少年犯罪の根本原因は何かと立法者は考えたのかとお聞きしたんです。
#133
○衆議院議員(高木陽介君) 根本原因というものは一つには限られないと思います。家庭環境の問題、または学校での問題、または対人関係の問題、または個人の内面の問題、さまざまな原因があります。これだというふうに決めて、それを解決するために少年法がこうやって変わるんだとか、そういう問題ではないと思うんです。やはりトータルに考えなければいけない。今も考えている最中だと思うんです。それは各党なりまたは議員個人個人なり、そういった中で、例えば衆議院の青少年特別委員会等でも論議がなされていると思います。
 そういったトータルな部分でそういう一つ一つ、またこれは個別事案も全部違うと思いますので解決しなければいけないんですが、その中にあって、今回の少年法改正というのは、例えば規範意識を高めてもらいたいという立法者の意図もあります。さらには、事実認定のあり方については、これもいろいろと問題が事実ありましたから、これを明確にしていきましょうという、そういった幾つかの課題によってこういう立法をしたということであります。
#134
○福島瑞穂君 立法者として無責任ではないかと思うのは実はその点なんです。つまり、少年犯罪について人々が心を痛める、それはそのとおりです。私たちも痛めます。しかし、立法するためには、その立法の理由は何かというところがあり、こういう法律をつくったら改善されるという確信がない限りそれは立法すべきでないと思うんです。
#135
○衆議院議員(麻生太郎君) どうも意見をわざとずらしておられるのか、我々の理解が足らぬのか、そこはよくわからないんですけれども、少なくとも私どもはこの法律ですべて解決するというつもりはない。少年法というのはそんな簡単なものじゃありません、犯罪を起こす背景はそんな簡単なものじゃありませんよと、これは皆さん全部納得しておられるんだと思います。この点はよろしいんですね。
 その上で、基本的に少年の刑事責任と刑事処罰可能年齢というものの差が今幾つかあるというようなことから、少なくとも故意に殺人を犯す、人様の命をあやめるという人は、同じ裕福な家庭に育っていて、まともに育っている子もいれば、同じ裕福でもまともじゃない子もいる。そのまともじゃない子がまともである子を殺す、故意にですよ、間違ってじゃありません、故意に殺すという場合には、少なくとも貧しいうちに育ってもまともに育っている、片親というさっきお言葉が出ましたが、両親が片親であったとかなんとか言いましたが、離婚しておられるとかいうケースの子の方が多いという比率、例がさっき小川議員の方から数字が挙がっていた気がしますが、こういった場合においてもまともに育っている子の方が多いんですよ、少なくとも。
 そのまともに育っている子の方を、自分の社会的な状況がどうだったこうだったということに転嫁して、少なくとも自分が殺人を犯したということが許されるというような状況というのは、これはいかがなものか。少なくともそういった殺人、人の命をあやめるというようなことをした子にはそれなりの社会的責任は負っていただかなければいかぬ。しかし、そういったものを今は負わなくていいんだと。今は、やったって僕は捕まらないんですからというようなことを堂々と言うような子があるという状況は、これは明らかに状況としてはいかがなものか、私どもは基本的にそう思っております。
 この法律ができることによって少なくともこういった問題は厳しくなるんだなという意識を持っていただくということは、基本的にはこの種のものに関する対応としての第一歩であり、非常に大事なことの一つ、ただしこれがすべてではないということを何回も申し上げておるところであります。
#136
○福島瑞穂君 私が少年法改正のこの審議で非常に不安を感ずるのは、まともに育った子とまともに育っていない子といって子供をぱんと分けていて、まともでない子が悪いことをしたら罪を負うべきである、以上、という形で終わっているからなんですね。
 というのは、もちろんカツアゲとかいわゆる恐喝とか悪いのはあります。しかし、私たちがもし不安を感ずるとすれば、いい子というふうに言われている、今子供たちはやっぱり内申書やいろんな点で非常に不安を感じています。十四や十七歳の子供がなぜ荒れるかというと、私は実はよくわかるような気がします。いい子競争をさせられていて、その中でもうっくつしている。ですから、周りは、あんなにいい子だったのになぜとなっているわけです。
 つまり、規範意識ということで議論がありますけれども、多分私たちが思っている規範意識とちょっと立法者の規範意識がずれているのかもしれない。上からどんなに規範意識をたたきつけても、いい子競争の中で苦しんでいる子供はそれはわかっているわけですよ。
 ただ、例えば神戸A少年は自分はつるされてもいいと言った。それから、いい子と言われている子供が殺人を犯すということに対してどう私たちは対応するかということに、立法の理由、目的、それから現実に起きていることとその説明がずれているので、私たちはそれに対してそうですかとやっぱり納得がいかないという、そこなんです。犯罪を犯し、問題を抱えている子供にこの少年法は果たして本当に解答を準備しているのだろうか。上から規範意識、悪いことは悪い、悪いことをしたら処罰されるんだということを言うことで、果たしてそれは子供に届くのだろうかというところを一番思います。
 悪いことをしたら処罰されるということを子供に知らしめるというふうにおっしゃいました。しかし、少年院に行くことだって保護処分でもちろん厳しいわけですし、ずっとここでも言っていますが、凶悪事件をやる少年の方が問題を抱えていてケーススタディーが必要なケースだとも言えると思います。
 まして、悪いことをやったのは悪いと言われるけれども、義務教育が終わるまではこの案ですと少年院に行くわけですよね。受刑者という名目のもとに少年院に行く。そして、監獄法の適用がありながら少年院の中で処遇されるということをやるわけです。
 要するに、刑事裁判に付させる、それから受刑者の立場にするというのは単なる見せしめのような形だと思うのですが、いかがですか。
#137
○衆議院議員(高木陽介君) この論議もずっと前々から出ていると思うんですけれども、まずは先ほど麻生提案者の方からありました、いい子悪い子、これは関係なく、人の命を奪う、しかも故意で、これはこれで一つの大きな問題だと思うんです。
 いろんな理由があります、例えば家庭の問題がありました、学校での問題がありました、内面にいろんな問題がありました、ではあなたはもう仕方がないですね。これはないと思うんです。やはり故意で人の命を奪ったということに関しては明確に、それはある意味では刑事裁判を受けていただきましょうというのが私たち立法者の意思です。
 ただ、家裁にも裁量権はあります。逆に十四歳、十五歳という年少少年の場合に少年院に行って受刑者となる、これは受刑者となりますけれども、そこで配慮をしたのが、やはりここは義務教育課程でございますので、少年院でしっかりそれはやっていただきましょう、こういうことであります。
#138
○福島瑞穂君 重罰化ではなくリストラティブジャスティスを、修復的司法、回復的司法ということを言ってきたわけですけれども、高木さんにお聞きします。
 法務委員会の中で、「少年の更生・社会復帰への支援拡充等に関する緊急提言」というものをされていらっしゃるというふうに話していらっしゃいます。被害者・少年等協議プログラムの導入など、リストラティブジャスティス、修復的司法についての取り組みを言っていらっしゃいます。
 今、拙速で少年法を改正させるよりも、さっき言ったような疑問もありますので、むしろ修復的司法などの、被害者はそのことも望んでいる、きちっと向き合ってくれということを望んでいるわけですから、リストラティブジャスティスをということについていかがでしょうか。あるいは、それの取り組みについて言ってください。
#139
○衆議院議員(高木陽介君) この修復的司法という考え方、これは日本でももともと例えば起訴猶予のときにいろいろあった部分だと思うんです。これは例えば被害者への慰謝、いわゆる謝るだとか、また弁護人による示談の努力だとか、こういうようなことが日本でも行われてきているわけですね。
 欧米の方で、いろんな考え方の中で被害者と本当に対面をするという、そういう場面もあると思うんですけれども、そこまでやって成功する場合もある、逆にやったことによって、まだ被害者の感情がそこまで熟していない場合もあると思います。だから、一概にこの考え方がすべていいんだというふうにも言い切れないし、いい部分もあると思いますけれども、そういった意味で、これは更生の段階でいわゆるそういうことをやったらどうかと党内で論議して提案をさせていただきました。
#140
○福島瑞穂君 先日、関東医療少年院などを訪れました。愛光女子学園は明るい雰囲気だったんですが、関東医療少年院は建物が古い、医療が古いということもありまして、正直言って医療あるいは少年院の処遇としてもちょっと中途半端、あるいは手元が暗いのじゃないかとか、いろんなことを思いました。
 もう少し、例えば扶養控除が廃止されるのじゃないかとかいろいろありますけれども、子供のために予算はぜひそういうところには使ってほしいという要望と、最後に法務省に、リストラティブジャスティス、修復的司法について、法務省として前向きに取り組む、あるいは研究、検討されたらいかがかという点についていかがでしょうか。
#141
○国務大臣(保岡興治君) 今、高木提案者からもお話がありましたが、やはり被害者と示談をしたり宥恕をされる、そういう関係で被害者の気持ちをいやしたり、そのことを通じて少年の自省の心をはぐくんだりするということは非常に重要なことだと思います。
 したがって、先ほど申しておられたように、検察官が事件を処理する際にも、また裁判官が判決において量刑を考える上でも、その点を従来日本は重視してきている。それは日本社会の特色だと思うんです。だから、外国では最近始まったようなことで珍しく取り上げられておりますけれども、我が国では非常に刑政において重視してきた要素だと、私はそう思っております。
 したがって、少年の健全育成の点でも、また被害者の気持ちをいやし受けとめていくためにも、この点は今後もさらに配慮すべき重要な要素と心得ております。
#142
○福島瑞穂君 終わります。
#143
○平野貞夫君 本来、少年犯罪の凶悪化の原因をよく解明してから少年法の厳罰化を検討するというのが筋道ではないかと思います。各先生方が御指摘されるとおりだと思います。
 残念ながら、ずっと質疑を聞いておりまして、今回の議員立法にはどうもそれが不十分ではないかということは提案者自身の方も認められているように、もうちょっと社会的、総合的な検討が要るという印象を持たれているように私は理解をしておるんですが、審議の状況からいいまして、いずれこの国会中にこの法案は成立することになると思います。
 となりますと、私は提案されている先生方の、政治家のこれからの政治的、社会的責任は大きいと思います。少年法が通ったから、成立したから後は知らないということじゃ困ると思いますので、どうかひとつ少年犯罪の凶悪化の原因、それを取り除く御努力を十分していただきたいと思いますが、そこら辺のことについてひとつ麻生先生に。
#144
○衆議院議員(麻生太郎君) 少年法ができました当時は、日本というのは敗戦直後であって、極めて貧しい時代でしたから、少年犯罪の内容は、盗み、かっぱらいの対象物はほとんど食料品であります。今、食料品をかっぱらう子はいません。豊かになったからです。明らかに社会の変化によってその種の少年犯罪は減ったということだけは間違いない事実だと思っております。しかし、かわりに別の犯罪がふえてきているということも事実でありまして、おもしろ犯などというものはあの時代ではなかった。社会の変化に伴って少年犯罪の質も変わったということだと理解をしております。
 今、この種の犯罪、幾つもその種類というのがありますのはもう平野先生御指摘のとおりでして、これがいじめによってみたり、家庭環境によってみたり、数え上げれば幾つもあると思いますが、そういったものがすべて法律だけで解決できるわけではありませんし、また豊かになったからといって解決できないということは、今回の一連の事件の質が変化していることを見ても明らかだと思っております。
 今、心の問題が言われてみたり、教育の問題が言われてみたり、いろいろな多くの問題が語られるようになりつつありますけれども、少なくとも経済成長一本やりから、いろんな意味でもう一回世の中というものを見直す、日本という国の心のあり方をもう一回研究しなくちゃいかぬという気持ちが最近いろいろなところで言われるようになったのは、少年犯罪を含めまして、そういった社会の変化というものがいい方向に行きつつある一つの兆しかなと理解をしておりますので、今後とも政治家として、その種のものがさらにしっかり社会に根をおろすように努めてまいりたいと思っております。
#145
○平野貞夫君 私は、この少年犯罪の凶悪化の原因は、そのほとんどは大人のせいというか、大人の社会のあり方にあると思っています。これは提案する先生方も、あるいは質問する先生方も、厳罰化しても犯罪が減るかどうかはわからぬということでは一致した認識を持っておると思いますが、仮に規範意識を向上させるために厳罰化することが必要だったとしても、やはりその原因を究明して原因をなくすること、そういうことが必要だと思いますが、私は、その原因をつくっている一つ、いろいろあるでしょうけれども典型的なものは二つあると思っていますが、一つは政治家の規範意識がなっていないんですよ。
 これは、提案者の先生方は立派でしょうけれども、私らも含めて反省せにゃいかぬことでございますが、例えば政治あるいは社会の指導的立場にある人たちが反社会的、反倫理的行為をやったり、あるいは国民の常識や期待を大きく裏切る言葉や言動、これがやっぱり少年の犯罪というか少年の心を傷つけるという面、これが一つだと思います。
 先週の内閣不信任案をめぐる加藤政局と言われているものに対して、テレビ朝日の報道によりますと、十六歳前後の少年たちからたくさんファクスやインターネットで政治に対する、大人に対する不信感が大量に訴えられたということが報道されております。これは質問じゃございません、指摘をしておきますが、きのうあたりは中学生、小学生が加藤ごっこというのをやっているそうですよ。
 それは、小渕総理をやめさせるときに、医者の診断書も医師団の発表もせずにやめさせるような常識を破るような行為、憲法に書いていないからできるとかなんとかということじゃなくて、これこそ大人、政治家のリーダーの規範意識の最たるものだと思います。こういうことをやっていたら、こういうことを政治家が国会でやりながら少年の犯罪の凶悪化云々ということは私は言えないと思います。その点を指摘しておきます。
 それから、もう一つ決定的に問題なのは学校教育の問題だと思います。
 私もいろいろな方の御協力で教えられて、特に平成七年以降の少年犯罪の凶悪化の原因は具体的に義務教育時の内申書にあるということを教わって指摘したわけですが、きょうは鈴木文部総括政務次官がお見えでございますのでちょっとお聞きしたいと思いますが、この内申書制度というのはどういう理由でいつつくられて、その効果をどう文部省として認識されていますか。
#146
○政務次官(鈴木恒夫君) お答えを申し上げます。
 いわゆる内申書、調査書と正式には申しますけれども、先生御承知のとおり、教育基本法ができましたのが昭和二十二年でございますが、その教育基本法と同じ昭和二十二年に学校教育法の施行規則というものができてございまして、それの五十四条に、調査書をつけねばならない、中学から高校に進学するときにはつけねばならないという規定がございます。
 恐らくその段階でも、高校の入学試験というものを学力だけではかっていいか、もっと総合的に、子供たちが学力以外によいところを持っているならばそれも当然入試のときに勘案されるべしという認識がこの背景にあったと思いますので、一回きりの学力検査、入試で子供のすべてがはかられるのは子供の将来を過つことにもなりかねないという認識に立ってこの調査書制度があるんだろうと思います。
 しかし、時が経まして、先生御存じのように、日本の教育、特に義務教育が知力偏重に偏ってきたという反省も徐々に出てまいりまして、この施行規則を二、三度にわたりまして少し変えてございます。
 例えば、具体的に申し上げますと、昭和三十八年に「学力検査は、特別の事情のあるときは、これを行わないことができる。」、つまりテストをしなくていいというまず省令の改正を昭和三十八年にいたしました。それから、平成五年には、逆に「調査書は、特別の事情のあるときは、これを入学者の選抜のための資料としないことができる。」、つまり内申書は出さなくてもいいという変更もございますし、あるいはこれは中高一貫教育との関連もございまして、平成十年には「調査書及び学力検査の成績以外の資料により行うことができる。」、つまり学力検査も内申書も必要ないと、推薦入学なんかがその典型でございますけれども。
 そうした三回にわたります改正も加えて工夫をしておるところでございますが、要は子供を点数だけではかるべきでないという発想からこの体系ができ上がっていると御承知をいただきたいと思います。
#147
○平野貞夫君 知力だけで、点数だけで子供を評価すべきでないということは、それはそれでわかりますが、それ以外のことをチェックするというのがこの調査書の役割に、そのことによって点数だけじゃないということに変わってきたんじゃないですか。その点はどうでございますか。
#148
○政務次官(鈴木恒夫君) 平野先生御指摘のとおりでございまして、そうしたウエートの置き方が徐々に内申書の方にウエートがかかっていると。しかも、県の教育委員会あるいは市町村の教育委員会にそれぞれ裁量権をかなりゆだねて、入学試験そのものにも例えば論文を加味するとか面接を入れたところもございますし、そういう工夫もしてございますが、内申書の方もウエートを、このバランスはその県教委の判断にゆだねることにもしてございます。いろいろ工夫をしてあるつもりでございます。
#149
○平野貞夫君 御説明を聞いていますと、なかなかその内申書を向上させて生徒の評価について機能的なことがなされているようにお話しでございますが、私の理解はそうじゃなくて、その調査書を書く人の立場にもよるでしょうけれども、やっぱり少年の思想、信条、行儀といいますか行動というか、そういったものが内申書の対象になる。
 昔の人はおおらかでしたから、我々は青い山脈が澄んでいたころの時代ですからおおらかに育っていますけれども、麻生先生がおっしゃるように、管理化して非常にぎちぎちになった社会の中で、文部省は文部省でいろいろやっているでしょうけれども、地域は地域でさまざまな人間関係と管理社会化関係ができて、鈴木総括政務次官がおっしゃったように内申書が機能していないと。
 むしろ人間をワンパターン化し、モラトリアム化し、一種の信条とか思想というものを審査するというのは、個人の評価といいますか、非常に情実も入りますので、あるいは特別権力関係も地域では入るかもわかりませんが、そういう中で非常にゆがめられているというふうに、私はむしろマイナスに感じるわけです。そういったものはやりようによっては、既に精神的に人間というのは教育によって、文部省主導の教育によってもうクローン人間ができ上がっているかもわからぬと思っていますよ。そんな状況、だからいろんな犯罪が、凶悪な犯罪が起こっておるんじゃないかと思うんですが、その辺についての御意見を聞きたいんですが。
#150
○衆議院議員(麻生太郎君) これは物すごく答弁をする中で、最も格調高い質問なのでこれは真剣に答えなきゃいかぬと思って今、何も今まではいいかげんに答えたわけじゃありませんが、これは真剣に、ちょっとうかつに答弁できないところだと思いますので、これは今までの話と全然違うレベルのお話なので、これは全体のお話ですので、少年法だけで取り上げるわけのところではないのだと思いますので、(「次元の低い質問して済まなんだな」と呼ぶ者あり)いや、揚げ足をとるような話じゃないので、今、少年法の話と全然違ったレベルの話をしておられることを私は申し上げておるんですから、(「私たちも少年法以外の話をした」と呼ぶ者あり)いや、少年法以外の話をあなたもなさっていましたからね、最初に、全然関係なく……
#151
○委員長(日笠勝之君) 静粛に願います。
#152
○衆議院議員(麻生太郎君) だから、そういった意味では、この少年法の話の中でいろいろな問題を言わなきゃいかぬところなんですが、今、内申書というものに問題があるというのは確かです。内申する人の側に問題があったりするというのは、もう皆さん御指摘のあるとおりですから、そこは確かなんですが。
 逆に、内申書があるから学校でいい子を装って、それなら家庭で荒れるかといいますと、これは内申書のいい子が家庭で荒れたり、家庭でいい子が学校で荒れたり、これはなかなか子供の方も、いろいろ相手相手を見て顔色ぐらい見られるような知恵はもう十四、五歳になれば皆できますので、教室の外に出たら途端に今まで仲がよかった子供をいじめる子とか、これは先生の話を聞くともう幾つでも出てくるので、一概にこれだからというのを言われますと、教育制度全体にわたってこれは考えにゃいかぬところなので、少年法のレベルで私どもが考えているような答えで申し上げられる立場にも私ありませんので、ちょっとその点は、今の御質問というのは少年法を担当いたしました私どものレベルを超えた話だと思っております。
#153
○政務次官(鈴木恒夫君) 政府側として補足をさせていただく格好になりますけれども、私も横浜の小中学校を振り返ってみますと、内申書にどう書かれるかというのは物すごく子供心に気になったものでございますね。ですから、不当な評価を子供が与えられて、それがすくすくと育つべき子供の性格なり考え方をゆがめるということがあっては絶対ならないと。
 したがいまして、教師と子供の信頼関係というものも当然日常的に学校の中で培われねばなりませんし、この内申書の書き方につきましても、担任の先生だけではなしに、校長とか教頭とか、学校全体が一人の子供の育ち方を大事にするという意味で総合的に勘案する体制をお願いしているところでございます。
#154
○平野貞夫君 そのお願いがなかなか通っていないところに問題がございまして、大体、子供というのはある時期親に反抗するのは当たり前なんですよ。それから、先生に反抗するのは当たり前ですよ。反抗しなければ大人にならないんですよ。したがいまして、私はむしろ子供よりか先生の方に問題があると思います、私の経験からいって。ずっと六十過ぎまで抵抗するのもこれも問題ですけれどもね。それは肉体的、精神的発展の段階で、私はやっぱり本当に社会の活力をつくるという能力を持っている子の方が反抗もするし、反抗の量も多いし、反抗の質も複雑だと思うんですよ。そういうものを非常にワンパターン化したもので規制して、そしてある意味では一生を決めていくと。
 それで、私は教師も問題があると思いますが、担任の教師一人じゃなくて校長先生も入れた集団で査定するといっても、余計悪くなるんですよ、大体今の学校というのは。私なんか学校の成績が悪かったものですから、学校の先生にうんと今でも不満を持っておるんです。そういう状況で、私は内申書をやめてもらいたいという意見です。
 須磨の小学生殺害事件の容疑者が中学校三年生であったということで、当時、民主党の現幹事長の菅さんがなかなかいいことを言っておるんです。(発言する者あり)議論もしますけれども、いいときにはいいと言いますから。
 内申書の価値基準はいい高校、いい大学、いい社会という一色しかなくて、その基準が上からずうっと中学校、小学校までおりてきている、そこからちょっとでもはみ出したら、今の社会にはほかに選択する余地がないほどきちきちになっておると。子供は自分ではこのプレッシャーをなかなかはねのけられないから、たまったストレスを弱いところに持っていく、それがいじめになったり、あるいは凶悪な犯罪になっておるんじゃないかと。特に中学生は、高校に行くというラインに直結する調査書、内申書でがんじがらめにされていると。菅さんも、内申書なんかやめるべきです、中学生のプレッシャーになるだけでなく、先生の方も大変な思いをしている、苦労していると。生徒も先生もおろおろしているというのが内申書制度の実態だという意見をしています。さすがだと思います。
 私たちは、せめて内申書でも大きく見直して、また絶対評価のような内申書に二〇〇二年から変えるというんでしょう。人間に絶対的な評価なんかできるはずがないんですよ。大事な子供、子供は国の宝ですよ。そういう意味で、鈴木先生は実にお上手に文部省の内申書制度の正当化をやりますが、私はひとつほかの先生方と一緒になって、少年法の厳罰化が成立するなら、内申書をせめて廃止する議員連盟でもつくって、徹底的に少年の本当の心の回復といいますか、そういうものをやりたいということを申し上げて、ちょうど時間が来ましたので、答弁は要りません、終わります。
#155
○中村敦夫君 これまで法務委員会でこの少年法改正についてのさまざまな議論がありました。しかし、私には、少年犯罪の現実、それとこの少年法改正というものがどうしても脈絡がつながらない、整合性がわからないんです。
 一部マスコミがあおっているように、実際に凶悪犯罪が今急にふえているのか、犯罪が非常に異質化しているのかということの問題に関しては、これは偶然二、三の人格障害、精神病理学的なタイプの少年の犯罪というものが連続したということ以外に、統計的に見てもそのように断定するのは非常に難しいんですね。発議者の皆さんも認められているとおり、これは統計の読み方でかなり主張が違ってくるということは一致した考え方なんです。つまり、統計の読み方で多少違ってくるという程度の現実なんです。これが事実だと私は思うんですね。ですから、それが根拠になって法改正をするということには私はならないと思っているんです。
 それでは、一体この法改正の基本的な趣旨は何なのかということを考えてみると、やはり大目的が少年の規範意識を確立するというところに尽きるんだなと思うんです。それで、この規範意識の概念に関しての発議者たちの今までの説明、これも非常にあいまいですし、一人一人の方々の答えの性格も違うというふうに感じています。
 一般に社会的規範というのは私は二つに分類されていると思うんです。一つは法律です。これは今回は少年法のケースですから、少年の更生教育を目的としつつも、やはり刑罰化という刑法的な部分も与えて国家的な秩序維持のルールとしてこの規範があるわけですね。もう一つは、道徳的規範というものがあると思うんです。この道徳的規範というのは共同体というものが歴史的、文化的に持つ善悪の尺度でありまして、多くの国々ではそれが宗教というものの教えと深く関連しているわけです。ですから、規範というものは二つに分けなきゃいけないと思うんです。
 そうすると、現行の少年法というものが国家基盤を守るためのものとしてどんなものだろうかというふうに判断したときに、純法律的には私は非常に理想的な法律であるというふうに考えている。そして、その法律を家裁中心に運営してきたこれまでの実績というのは、それは一つ二ついろいろな間違いがあったとしても、おおむねうまくいっている、そして判断も正しいのではないかと。これは前回の委員会でも私は実例を挙げて説明したはずなんです。そして、更生の効果も上がっていると。
 今の少年法で欠けているのは、やはり被害者に対する対策、ケアというものの部分が抜けている。これはやはり何とかしなければならない。私はそれだけで十分じゃないかと。それ以外に問題があるとすると、むしろ検察とか警察の捜査、これが十分じゃない、しっかりしていないということじゃないかと思うんです。そしてまた、被害者に対する当局の態度というものが親切でない、丁寧でないというような、むしろ現場的な問題ということが実は世の中が問題にしている本質ではないかということであって、現行法の少年法の問題ではないというのが私の考え方です。
 一方、道徳の問題です。これはもう著しく崩壊しつつあるというふうに私は思うんですね。これは少年だけじゃなくて、大人の社会でひどく崩壊の進行が進んでいるということだと思うんです。そうすると、では日本の道徳というのは何なのか、私はよくそのことを考えるんです。そうしますと、伝統的に言えば儒教的な規律とか仏教的な教え、あるいは武士道、これは禅と儒教というものの合体の中から生まれてきたような規律です。そしてまた、近代ではヨーロッパ的な倫理観がそれに混合してきて、そしてあるバランスをとりながら社会的な道徳的規範というものがあったと思うんです。しかし、世の中がだんだん経済至上主義になって、金権主義、物欲崇拝みたいなものが価値観になっていくようなところで、だんだんこの道徳的な部分というのが崩れてきた。
 その規範というものに対する発議者たちのお答えを聞いていると、どうもこっちの話のようなニュアンスの方が多いんですよ。ですから、これは何か法律的なものと道徳的なものをごちゃまぜにしながら答えられているんじゃないかと。だから、この法案の論議というものがずっとすれ違いで、あいまいで、宙に浮いたような議論になってここまで来てしまったのではないかと思うんです。どうでしょうか。これは法律の問題なんですか、道徳の問題なんですか、皆さんが言う規範というものは。
#156
○衆議院議員(谷垣禎一君) 今、法と道徳とを分けて中村委員はおっしゃいましたけれども、この刑事関係で問題にしている法といい道徳というものは、最大限の道徳を求めているわけではないと思うんですね。世人の指標となるような高い道徳を求めているわけではない。要するに、社会生活をともにして一緒にやっていける程度の最低限のルール、人を殺してはならないとか、人のものを盗んではならないとか。これは法律ではあります。確かに法律ではございますけれども、道徳の内容としても、極めて高い道徳ではないけれども、道徳の一番基本のものだろうと私は思います。道徳が全く背景にないところに、道徳とは全く無関係に法規範というものができるわけではありません。だけれども、この法規範は極めて高度のものを求めているわけではないということを私は思います。
#157
○中村敦夫君 法律というのは時代とともに変わりますよね。これは社会的合意があって成立して立法されるわけです。しかし、これを守るのは道徳なんですよ。道徳がなければ、法律なんて幾ら書きかえたってだめなんです。道徳というものは、社会的な共有の価値観であると同時に個人の心の中にあるわけですよ。これが重要なんですね。
 ですから、それではその法律のところを厳罰化するということで規範というものが強化できるのかどうかという話になってしまうときに、非常にお答えがあいまいじゃないかと私は言っているんです。これは法律の問題じゃなくて道徳の問題じゃないのかというのが質問の趣旨なんです。
#158
○衆議院議員(谷垣禎一君) 先ほどと同じことの繰り返しになりますが、確かに法というのは社会とともに移っていく、委員のおっしゃるとおりだと思います。しかしながら、人類の歴史を見てきても、法の内容で、例えば人を殺すのは自由自在に殺してよいなんていう国家はおよそなかったわけでありますし、社会もなかったろうと思います。漢の高祖がつくられた法三章という法律も、人を殺すなかれとか盗むなかれとか、極めて単純な法でございます。しかし、それは当時でも現在でも基本的な道徳の内容だろうと私は思います。ですから、そういうことでございます。
#159
○中村敦夫君 この種の質問のお答えは、決まって、子供たちに人を殺すのは悪いことだぞと教えるんだ、そのための法律改正なんだというお答えが繰り返し出てくるんですよ。人殺しをするのはいけないことだなんて子供はみんな知っていますよ。知っているのに起きることがある、そしてそれが新しい質を持って起こるのであれば、それは何かというふうに追求するのが問題だと思うんですね。
 しかも、例えば宣言効果という言葉でこの法律はそれをねらっていると。要するに、悪いことをしたら厳罰が来るよという一つのおどかしですね。これは大人が子供をしつけるときにやる方法です。しかしながら、今の少年たちは現行の少年法ですら知らないんですよ。学校も親も少年法についてなんて教えたこともないわけなんですね。そうすると、法律のどこかをいじくったところでもってこの宣言効果というものがあるのかどうか。
 ここでしょう、だってこの法律の皆さんの一番の目的としているところは。だから、教育もしないでここだけで済ませて終わって、はいやりましたということでは何の意味もないんじゃないですか。
#160
○衆議院議員(麻生太郎君) おっしゃっている意味はよくわかります。文部政務次官はもうちょっと御退席になっておられますけれども、社会の時間に憲法だけじゃなくて少年法もというようなところも一つ必要になることなのかもしれません。また、マスコミ等々でこれだけ取り上げられた少年法というものは、たまたま私の子供は十五歳なんです、下の娘が十三歳、随分遅い子供だなとお思いでしょうが、事実遅いのでそのとおりなんですが、私に向かって言う質問は、やっぱりこれは同じことが出てくるわけです、少年法は自分のことですから。お父さん、これは私の年齢と言うわけです。そのとおり。やっぱり子供もそれなりの関心を持ったことは確かだと思って、それが結構話題にはなっているんだと思いますけれども、私は、こういったようなことが全くゼロではない、しかし一〇〇%でもないということなのであって、少なくともいろんな形でこういったものが浸透していく努力は今後とも必要だと思っております。
#161
○中村敦夫君 私は、現行の少年法は非常に形のよい理想的な形でまとまっている、そして今回改正することによって法律自体の形が非常に悪くなる、判じ物みたいな非常にゆがんだものになると。むしろ、現行の少年法というものをもっと生かし、家裁の施設の充実とかあるいは人材の育成とか、そういうことによってもっと子供たちに対して宣言効果があるような、そういう方向に向けていくべきだと考えておりますが、これ以上質問しても多分聞く耳を持たぬでしょうから、この件は終わりにしまして、矯正局の方へちょっと質問したいと思います。
 先日、関東医療少年院を視察しまして、幾つか思いついたことがございます。
 今月の十日に、京都医療少年院に入所中の十四歳の少女が首つり自殺をしたわけですね。この事件の概要というものを簡単に説明していただけませんか。
#162
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 お尋ねの事件は、十一月十日、午後一時五分ころ、京都医療少年院の単独室に収容しておりました十四歳の女子少年が外窓の鉄格子にパジャマのズボンの両端をかけて結び、その輪になった部分に首を入れて自殺を図っているところを職員が発見したものでございます。職員の急報により、直ちに少年院の医師が救命措置を講じた上、救急車を要請して市内の病院に搬入いたしましたが、午後二時十五分、死亡が確認されたものであります。
 少年矯正の現場におきましてこのような自殺事故が発生いたしましたことはまことに遺憾であります。今後、同種事故の再発防止に一層努めてまいりたいと考えております。
#163
○中村敦夫君 別に反省をしてもらいたいと言っているんではなくて、この少女の場合は人格障害とかの関係の事故だったんでしょうか。
#164
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 個々の少年院で収容されております少年の具体的な事柄ということになりますと、やはりプライバシーの面、また遺族のことも考えますと、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
#165
○中村敦夫君 関東医療少年院ではかなり具体的に内容を説明、この事件ではありませんが、精神障害系の子供がどこに何人いるかとかいうことをお聞きしたわけです。それで答えてくれましたけれども、一時間ぐらいずらっと施設を見ただけでは実は実態というのはわからないわけですね。私も取材側にいたことがありますから、やはり二、三日泊まり込んで全体の動きを見てみないと、どういうふうに稼働しているかというのはわかりにくいんです。
 ある家裁調査官からメールをいただきまして、京都医療少年院を視察したらしいんですね。その結果、ここの話は非常に惨たんたるものだったということがあり、とにかく当事者自体が余り期待しないでくださいよとその調査官に言ったぐらいだと。要するに、お粗末だったというふうに言っているんですね。
 私は、だから関東医療少年院の方がどうかは、ちょっとあの一時間の視察では判断できません。しかし、聞いたところ、精神科医は三人いるということなんですよ。それで、大体スタッフというのは医療組と教育組というふうに大きく分かれている。これはそれでいいと思うんですけれども、その中で精神科医が三人いると。
 しかしながら、臨床心理士というのがありますね、診療のコンサルタントの専門家たちですけれども、これは全国五十二カ所の鑑別所には全体で百三十七名いるそうですね。鑑別所にはいる、常任で。そこでいろいろと判断して少年院なり医療少年院なりに送るということがあるんだと思いますけれども、この臨床心理士というのは今や普通の学校にすら必要だと言われているほど子供たちの心というのが難しい時代に入ってきたわけですね。
 少年院もそうでしょうけれども、特に医療少年院などでは、人格障害ではなくても、いろいろ病気だったりけがをしたりしている子供たちが犯罪を犯したということで半ば隔離され治療を受けているという状況があるわけです。そうしますと、この年代が思春期であるということばかりでなく、やはり犯罪を犯し閉じ込められているという中で普通の心理状態ではないだろうし、情緒不安定になるということは精神病理的な問題を抱えた子供たちじゃなくても十分にあると思うんですね、非常にデリケートだと。ところが、一人も医療少年院には臨床心理士というものは置いていないということなんですね。私は、かなりこれは問題ではないかなと。ただの教育係というのとはやはり違うんですよ。
 そういう意味で、私はこういうところの充実というのを図るのはもう当たり前ではないかと思うんですが、矯正局ではこの点についてどう思いますか。
#166
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、精神疾患の治療のために医療少年院に収容されている少年につきましては、精神疾患のほか、複雑多様な心理的な問題を持っている事例も認められることが多いと思います。したがいまして、こうした問題の解決にもきめ細かく対応する必要があるというふうに認識しております。
 御指摘のありました臨床心理士の関係でございますが、この点につきましては、臨床心理の専門知識を有する少年鑑別所の心理技官の派遣とか人事交流等を活用しましてその面の処遇の内容の充実に努めてまいりたいと思います。
#167
○中村敦夫君 そういう御都合主義的な派遣とかいう問題じゃないんです。絶えずいなければその役割は果たせない職業なんですね、そのことを理解していただきたい。
 ではどうぞ、これはちょっと法案と違いますけれども。
#168
○衆議院議員(麻生太郎君) 昭和三十何年でしたか、池田内閣が所得倍増ということを言われたときに、時の医師会会長は武見太郎だったと記憶しますが、所得倍増は何年間でと言って、五年間と言われたら、精神病棟は三倍にしてくれと当時言われたんです。急激に社会が変化するとか世の中がよくなればすべてがよくなるとお思いでしょうが、それについていけない方では精神病患者が発生する比率は極めて高い、世の中が急激に変化したときは常にそういうことが起こるんだということを言われたんです。そのときはそばで聞いていてばかばかしいと思っていましたけれども、現実問題としては極めてゆゆしきことになりました。これは少年の話じゃありませんが、大人の話でも同じようなことが起きました。
 今の臨床士、いわゆるサイカイアトリストというものは少なくともその当時までは全く日本には存在していなかったいわゆるお医者さんの一つだったんですが、それ以後、サイカイアトリストと言われるものが、今臨床心理士と言われる表現になって出てきておりますが、これは少年院において今後とも必要なものだと、私どもは基本的にそう思っています。
 ただ、今役所として答え切らないところは、多分これはいわゆる人数の枠とか予算とかいうものに関係してまいりますので、現状で何とかしなくちゃならぬ立場の役所としてはいわゆる優等生のお答えしかほかに言いようがないと思いますが、これは政治の場面で今後とも考えねばならぬ問題だと、私どももそう思っております。
#169
○中村敦夫君 経済の競争社会に入るときに精神病がふえるというのは事実かどうかわかりませんが、基本的には日本ではこの部門は大変おくれているんですね、昔から。ですから、予算の問題だとかそういう問題ではなくて、むだな公共事業とかに何兆円とぶち込んでいるんですから、そうではなくて、人間というものを大事にしていく、そのために絶対に必要だと思うところには予算はきちっととっていくということが正しい姿勢ではないかということを述べさせていただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
#170
○委員長(日笠勝之君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#171
○委員長(日笠勝之君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、吉川芳男君及び岡野裕君が委員を辞任され、その補欠として阿南一成君及び矢野哲朗君が選任されました。
    ─────────────
#172
○委員長(日笠勝之君) 本案の修正について江田五月君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。江田五月君。
#173
○江田五月君 私は、ただいま議題となっております少年法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党及び自由党を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
 以下、その趣旨について御説明申し上げます。
 本修正案は、少年法等の一部を改正する法律案が我が国における少年犯罪等の現状を踏まえ現下の喫緊の国民的課題にこたえようとするものであることにかんがみ、政府に対し、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について事件処理等に係る統計数値等を国会に報告するとともに、その施行状況について検討を加え、必要があると認めるときはその検討の結果に基づいて所要の措置を講ずることを求めるものであります。
 以上が修正案の趣旨であります。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
#174
○委員長(日笠勝之君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#175
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、少年法等改正案並びに修正案について反対の討論を行います。
 そもそも、少年法という少年の未来を大きく左右する重大な法案を法制審議会にもかけない上、まだまだ国民的討論と国会での十分な審議が必要であるにもかかわらず、我が党の反対を押し切って質疑を終局し、今採決に至ったことは極めて残念であります。
 反対の第一は、厳罰化は少年法の教育主義、保護主義という基本的理念を大きく後退させることであります。
 厳罰で対処しても、少年の犯罪、非行の一般的予防効果とならないことはアメリカや韓国の例を見ても明らかであります。また、法務省が少年鑑別所に収容されている約千六百人の少年に対して行ったアンケート調査では、少年法が甘いから非行したのか、こういう問いに八七%の少年が違うとはっきり答えています。
 次に、刑事罰適用年齢の引き下げの対象となる十四歳、十五歳という年齢は言うまでもなくいまだ義務教育の中学生であります。
 このような少年を成人と同じ公開の刑事裁判にかけ、人生の幼い時代から早々と前科者のレッテルを張りつけるなどということは、およそ国連の子どもの権利条約や少年司法運営に関する国連最低基準規則、いわゆる北京規則の理念に反することは明白であり、我が国の憲法二十六条の教育を受ける権利を侵害するものであります。
 また、十六歳以上の少年の重大犯罪は検察官に対して原則逆送し公開の刑事裁判にかけるとすることも、少年の保護育成を妨げる重大な問題であります。現行法のもとでも、裁判官は事件の内容をよく吟味し、刑事裁判が必要とあれば検察官に逆送しています。それをあえて改正して検察官に原則的に逆送するとなりますと、家裁の裁判官の裁判の独立や裁量権を侵害するおそれがあり、重大な犯罪であるということだけで裁判官の判断は事実上逆送に傾くことは必至であります。そうなりますと、家庭裁判所の調査も安易に流れ、少年法の本来の正しい運用が損なわれるおそれがあることも重大であります。
 反対の第二は、審判への検察官関与であります。
 我が党は、重大な事件で事実関係について疑義がある場合には、事実認定手続に限って検察官関与を検討してもよい場合があると考えています。しかし、国連の少年司法に関する最低基準規則と我が国の憲法第三十一条が厳しく要請している予断排除や伝聞証拠禁止などのこうした適正手続が保障されないもとでは、検察官の関与は認めることは許されません。また、家庭裁判所の審判に対して検察官に抗告受理申し立て権を認めることは少年に対する迅速な教育的、福祉的処遇をおくらせることになることも明白であります。
 反対理由の第三は、犯罪被害者救済について、改正案には一定の改善が図られていますが、まだまだ不十分であります。
 言うまでもなく、犯罪被害者対策の充実は切実で重要な課題であります。被害者の人権とその救済対策の抜本的改善のためには、被害者側の意見陳述権の保障、捜査段階を含めて情報開示の一層の充実、被害者に対する十分な補償と精神的ケア、そして既に諸外国でも試みられている適正な配慮と十分な準備のもとでの被害者側と加害少年の対面、メディエーションなどが必要であります。
 最後に、少年問題は社会を映す鏡と言われています。非行を犯した少年だけを責めるわけにはいきません。受験中心の管理・競争教育から子供たちを解放し、しっかりした基礎学力と市民道徳を身につけさせるための教育改革が必要であります。
 さらに、政治、経済、社会のあらゆる分野に潜む不正、腐敗をなくし、我が国自身の道義ある社会の確立を目指さねばなりません。まさにそこに政治と社会の責任があります。
 近年、特異な凶悪事件が発生したことに目をとられ、これまで現行少年法が五十年間果たしてきた効果的な役割と機能を正しく見ず、厳罰化を急ぐことは、将来に向かって重大な禍根を残すことになりかねないでしょう。
 少年法の教育的、保護主義的理念は堅持すべきであります。罪を犯した少年に十分な反省を求めるとともに、その将来の人生に向かって自覚的な更生の道を歩ませるために十分な協力をし手だてをすることが今求められているのであり、そのためにも家庭裁判所、少年院、保護施設などの人的、物的充実改善を国の責任で進めるべきであります。
 なお、修正案は、本法案の厳罰化など、以上私が述べてきた諸問題を必ず見直す確かな保証があるとは言えませんので、賛成できません。
 このことを強調して、私の反対討論を終わります。
#176
○久野恒一君 私は、自由民主党・保守党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております少年法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案に賛成する立場から討論を行うものであります。
 少年法は制定以来五十年余りを経過いたしましたが、この間、我が国の社会、経済は大きく変化し、少年を取り巻く環境も著しく変貌しております。こうした中で、近年の少年犯罪の動向は、殺人、強盗等の凶悪犯が増加し、また犯罪少年の低年齢化の傾向があらわれております。特に、最近においては社会の耳目を集める凶悪重大事件が相次いでおり、極めて憂慮される状況にございます。このような少年犯罪の現況に適切に対処し、少年の健全育成を図るため、少年法における年齢区分や処分のあり方、審判における事実認定のあり方、また少年事件被害者保護の必要性などを含め、少年法の改正は国民的な喫緊の課題となっております。
 今回の与党三党から提出されている少年法等の改正案はこれらの要請に的確にこたえるものであり、全面的に賛成の意を表するものであります。
 以下、主な改正点に沿って賛成する理由を申し上げます。
 まず第一に、刑事処分可能年齢を十四歳以上に引き下げ、また十六歳以上の少年に係る故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件について、原則として検察官に送致することについてであります。
 年齢の引き下げは、少年犯罪の低年齢化に対処し、刑法上の責任能力を有する少年について、罪を犯した場合の責任を明らかにしてこれを自覚させるとともに、必要に応じて刑事処分も含め多様な対応が可能になる利点があります。いわゆる原則逆送は、人命尊重の観点から、少年に対して罪の自覚と行為の自制を求めるために有益であり、また人命を奪うという重大な結果を生じさせた犯罪に限った措置で、何ら健全育成の理念に反するものではないと考えます。
 第二に、裁定合議制度の導入、少年審判への検察官関与、検察官の申し立てによる抗告受理制度、観護措置期間の延長など、事実認定の適正化についてであります。
 少年に適切な処分を行うためには審判における正確な事実認定が前提でありますが、山形マット死事件に象徴されるように、事実認定が争点となる事件については現行法では不十分であることはかねて指摘されていたところであり、少年審判に対する国民の信頼を確保するためにも改善が必要とされておりました。改正による検察官の関与は公益の代表者、審判の協力者としての位置づけであり、これにより現行の審判構造を維持しつつ事実認定の一層の適正化が期待され、妥当な措置であると考えます。
 第三に、少年事件の被害者やその遺族への配慮の充実についてであります。
 本改正案には、家庭裁判所による審判結果等の通知、被害者の申し出による意見聴取、被害者等による記録の閲覧などの制度が盛り込まれております。少年犯罪による被害者の立場についてはこれまで全く配慮がなされておりませんでしたが、本委員会における参考人からも切実な要請があったように、これらの措置は被害者等の保護という面で重要な意義を有するものであります。
 以上が本案に賛成する理由でございます。
 次に、修正案は、政府に対し、この法律の施行後五年を経過した場合に、この法律による改正後の規定の施行状況について国会に報告するとともに、その状況について検討を加え、必要があると認めるときにはその検討の結果に基づいて所要の措置を講ずることを求めるものでございます。
 少年法も社会情勢や運用の状況を踏まえつつ適宜適切な措置を講ずることは必要なことであり、本修正案についてもあわせて賛成するものであります。
 最後に、本法案をおまとめいただいた発議者の御労苦に対して深い敬意を表し、私の賛成討論とさせていただきます。
#177
○福島瑞穂君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、少年法等の一部を改正する法律案及び修正案に対し反対の討論をいたします。
 まず第一に、この改正案及び修正案が少年法一条に全く反するものであるということです。
 少年法の全体を換骨奪胎し、少年法の趣旨を害し、実質的には少年法を廃止するものではないかという危惧を大変持つものであります。よって、全く賛成することはできません。
 第二に、立法事実についてです。
 立法事実はないと考えます。凶悪化、低年齢化ということが言われておりますけれども、データのとり方が随分問題ではないかと思います。繰り返しこの委員会で議論をしてきましたが、私たちを納得させられるだけの統計の提示はなかったと考えます。長期的に見て犯罪はふえておりませんし、それから昨年の少年犯罪の発生件数は一昨年と比べて六・三%減少しております。殺人事件は件数は全く横ばい、昭和五十年代以降ずっと横ばいですし、凶悪犯罪も三十年前に比べて約七割減っているということがあります。立法事実がないということが次の反対の理由です。
 第三番目の理由は、少年犯罪、凶悪重大犯罪がなぜ発生しているのかという根本的な原因のきちっとした検討なしに少年法改正案が提案をされているということです。
 長い審議を通じて、一体なぜ凶悪重大犯罪が発生をしているのか、それについて私たちは明確な答えを得ることはできませんでした。きちっとそれについて考える、原因を究明することはできませんでした。そのことと今回の少年法改正がどう結びつくのかという納得のいく説明はなかったように思います。
 第四番目に、今言われている修復的司法、回復的司法、リストラティブジャスティスというふうな視点がこの法改正案にないということです。改正案にそのことが欠けております。
 修復的司法として紹介されている被害者と加害者の協議制度がありますが、日弁連案にも取り入れられ、法務省も検討に入っている制度です。被害者の苦しみや心の傷を加害者に伝えることで加害者が被害者の痛みを知り、真の反省と謝罪がなされることにより少しでも被害者の心のいやしになることを目的とするものですが、そのようなプログラムなどの取り組みはこの改正案、修正案には一切入っておりません。厳罰化、刑事罰的改正ではますます被害者、加害者が対立し合って、両者の協議は不可能となっていきます。厳罰化ではなく、修復的司法、リストラティブジャスティスをということを申し上げたいというふうに思います。
 また、十六歳から十四歳への年齢の引き下げが盛り込まれております。これは、義務教育がどうなるかという論点の次に、少年院に送る、それで義務教育年齢を過ぎれば刑務所に送るという説明がなされました。しかし、受刑者の立場で少年院に行くということについては、非常に現場も混乱しますし、一貫した更生がなされるとは思えません。
 それから、原則逆送についても、なぜ原則と例外を逆転するのか、原則逆送によって少年たちは二重の負担を逆に持つのではないかと考えます。
 検察官関与に関しては、起訴状一本主義などがとられていない職権主義のもとで対立構造を生むことは木に竹を接ぐようなもので、非常に審判構造がゆがんでしまうというふうに考えます。
 また、被害者の救済については、厳罰化によって被害者をいやすのではなく、むしろ修復的司法、リストラティブジャスティスによって被害者の回復を図っていく。また、被害者救済は、この少年法改正と切り離して、現状でもできることですし、もっと取り組まれるべきことであるというふうに考えます。
 この国会の議論の中で、本当に子供たちの生の声、実際何に苦しんでいるのか、何が問題なのかということの十分な検討なく、改正案、修正案がきょう採決されることに強い怒りを感じます。
 以上が反対の理由です。
#178
○小川敏夫君 私は、民主党・新緑風会を代表し、修正案に賛成の立場で討論を行います。
 少年の非行は少年を取り巻く家庭やその他の環境に大きな影響を受けるものであります。こうした観点から、刑罰により少年の悪性を固定化させ反社会的存在として放逐するよりも、少年を教育し更生させることにより健全な一員として社会に復帰させることが何にも増して重要であり、これにより少年の再犯を防止し、社会を守る一般予防の効果も果たし得るものであります。
 少年法は五十年余りの歴史において右の役割を十分に果たしてきたものであることを評価しなければなりません。
 少年犯罪の被害者の立場を考慮することももとより必要でありますが、応報感情に過剰反応することなく、我が党が提案しております犯罪被害者基本法案の制定により、国及び社会が全体として被害者対策に取り組むことが適切であります。
 原案は、被害者感情を強調し、こうした現行少年法を厳罰化の方向で改正を加えるなどするもので、慎重な対応が必要である上、十六歳未満少年に刑事処分の道を開く規定、十六歳以上少年の一定の犯罪に対するいわゆる原則逆送の規定、そして検察官関与の規定などの点において問題がないとは言えません。
 この点、十六歳未満少年に対し刑事処分を相当とする場合を重罪事件でかつ少年に更生の可能性が著しく乏しい場合に限定し、さらに審判当事者としての少年の能力を補完するために必要的に付添人を付することを定め、少年に十分な配慮を行うことが適切であると考えます。また、十六歳以上の少年のいわゆる原則逆送についても、裁判官の裁量を可能な限り確保することが必要です。さらに、検察官関与の点につきましても、裁判官の予断を排除し、適正な証拠による事実認定の手続を設けることにより、原案の抱える問題点を解消することが必要であります。
 こうした観点から、民主党は、衆議院において、こうした内容を盛り込んだ修正案を提出し、本院においても提出を予定していたものであります。
 今回の少年法改正は、少年犯罪に対する社会の関心の高まりに伴い、先通常国会において改正の検討を要することが決議された背景を有するものであります。
 また、原案は、犯罪被害者の保護に対する社会の声の高まりを受け、被害者に対する配慮の規定を新たに設けるなど、積極的に賛同できる内容を含んでおります。
 このような事情を踏まえ、右に述べた諸問題点について、施行後の実施状況を観察し、今後、少年犯罪がどのような趨勢をたどるのか、あるいは審判のあり方にどのような状況が生ずるのかを十分に見守り、少年の更生を図る少年法の理念が損なわれることのないよう監視することが肝要であります。
 修正案は、本改正法施行から五年後の状況の国会に対する報告と見直しを定めていますので、前述の諸問題点についてもその状況により適切な対処がなされると期待できるものであります。
 よって、修正案に賛成するものであります。
#179
○委員長(日笠勝之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより少年法等の一部を改正する法律案の採決に入ります。
 まず、江田君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#180
○委員長(日笠勝之君) 多数と認めます。よって、江田君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#181
○委員長(日笠勝之君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、江田五月君から発言を求められておりますので、これを許します。江田五月君。
#182
○江田五月君 私は、ただいま可決されました少年法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党及び自由党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次代を担う少年の健全育成に関する総合的な施策を充実、強化するとともに、本法の施行に当たっては、次の諸点について格段の努力をすべきである。
 一 少年審判における事実認定手続及び検察官送致の在り方については、少年法の本旨及び実務の運用を踏まえて、今後とも検討を行うこと。
 二 刑事処分可能年齢を十四歳に引き下げることに伴い、少年受刑者の教育的観点を重視した処遇に十分配慮し、矯正処遇の人的・物的体制の充実・改善に努めること。
 三 観護措置期間の上限の在り方については、実務の運用を見ながら引き続き検討すること。
 四 公的付添人制度の在り方については、国選による制度や法律扶助制度等を勘案しつつ、鋭意検討すること。
 五 少年法の適用年齢については、選挙権年齢等の成年年齢の在り方、世論の動向、時代の変遷、主要各国の現状、婚姻年齢等他の法令に定める年齢区分との均衡等を勘案しつつ、鋭意検討を行うこと。
 六 悪質重大な少年事件等、社会的に関心を集める事件については、少年のプライバシーの保護の重要性に配慮しつつ、犯罪原因を究明し、同様の犯罪の防止に資する方策及び少年法第六十一条の在り方についての研究に努めること。
 七 少年事件における家庭裁判所の役割が重要であることにかんがみ、調査体制の充実等その機能の拡充に努めるとともに、少年問題に関する地域的ネットワークの構築等にも努めること。
 八 被害者の保護については、法整備を含め、関係省庁の密接な連携の下、精神的・経済的支援などの総合的な施策の更なる推進に努めるとともに、諸外国において実施されている修復的司法について、その状況を把握し、必要な措置を検討すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#183
○委員長(日笠勝之君) ただいま江田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#184
○委員長(日笠勝之君) 多数と認めます。よって、江田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、保岡法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。保岡法務大臣。
#185
○国務大臣(保岡興治君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#186
○委員長(日笠勝之君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#187
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#188
○委員長(日笠勝之君) 速記を起こして。
    ─────────────
#189
○委員長(日笠勝之君) 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案を議題といたします。
 発議者衆議院議員熊代昭彦君から趣旨説明を聴取いたします。衆議院議員熊代昭彦君。
#190
○衆議院議員(熊代昭彦君) 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 我が国におきましては、すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法のもとで、人権に関する諸制度の整備や人権に関する諸条約への加入など、これまで各般の施策が講じられてきましたが、今日におきましても、社会的身分、門地、人種、信条、性別等による不当な差別その他の人権侵害がなお存在しており、また我が国社会の国際化、情報化、高齢化の進展等に伴って人権に関するさまざまな課題も見られるようになってきております。
 このような情勢のもとで、平成八年十二月、人権擁護施策推進法が五年間の時限立法として制定され、人権教育及び人権啓発に関する施策を推進すべき国の責務が定められるとともに、これらの施策の総合的な推進に関する基本的事項等について調査審議するため人権擁護推進審議会が設置されました。
 同審議会においては、二年余りの調査審議を経て、昨年七月、法務大臣、文部大臣及び総務庁長官に対して答申を行い、人権教育及び人権啓発を総合的に推進するための諸施策を提言し、現在、政府において行財政措置によりこれらの実施が図られておりますが、人権教育及び人権啓発に関する施策の一層の推進のためには、同答申の趣旨を踏まえ、人権教育及び人権啓発に係る基本理念や国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定や年次報告等の所要の措置を定めることが不可欠と考え、この法律案を提出することとした次第であります。
 法律案の概要につきましては、基本理念として、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他のさまざまな場を通じて国民がその発達段階に応じ人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行わなければならないこととし、国及び地方公共団体はこの基本理念にのっとって人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を有するものとしております。
 また、国民の責務として、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。
 また、国は、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画を策定しなければならないこととし、政府は毎年国会に政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告を提出しなければならないこととしております。
 さらに、国は、人権教育及び人権啓発に関する施策を実施する地方公共団体に対し、当該施策に係る事業の委託その他の方法により財政上の措置を講ずることができることとしております。
 なお、この法律は、この法律の施行の日から三年以内に、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項についての人権擁護推進審議会の調査審議の結果をも踏まえ、見直しを行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#191
○委員長(日笠勝之君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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