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2000/11/28 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第10号
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2000/11/28 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第10号

#1
第150回国会 法務委員会 第10号
平成十二年十一月二十八日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任   
     阿南 一成君     吉川 芳男君
     矢野 哲朗君     岡野  裕君
     角田 義一君     高嶋 良充君
     橋本  敦君     林  紀子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         日笠 勝之君
    理 事
                石渡 清元君
                久野 恒一君
                佐々木知子君
                江田 五月君
                魚住裕一郎君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                鴻池 祥肇君
                竹山  裕君
                小川 敏夫君
                高嶋 良充君
                竹村 泰子君
                林  紀子君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                斎藤 十朗君
                中村 敦夫君
   衆議院議員
       発議者      熊代 昭彦君
       発議者      滝   実君
       発議者      東  順治君
       発議者      田端 正広君
   国務大臣
       法務大臣     保岡 興治君
   政務次官
       法務政務次官   上田  勇君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       内閣総理大臣官
       房男女共同参画
       室長       大西 珠枝君
       総務庁長官官房
       審議官      久山 慎一君
       法務省人権擁護
       局長       横山 匡輝君
       文部省初等中等
       教育局長     御手洗 康君
       文部省教育助成
       局長       矢野 重典君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案(
 衆議院提出)

    ─────────────
#2
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十七日、橋本敦君、阿南一成君、矢野哲朗君及び角田義一君が委員を辞任され、その補欠として林紀子さん、吉川芳男君、岡野裕君及び高嶋良充君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(日笠勝之君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣総理大臣官房男女共同参画室長大西珠枝さん、総務庁長官官房審議官久山慎一君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、文部省初等中等教育局長御手洗康君及び文部省教育助成局長矢野重典君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(日笠勝之君) 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○石渡清元君 自民党の石渡清元でございます。
 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案、これまでも各般の施策が講じられてまいりました。今日における人権をめぐる現状の中で、特に我が党ではこちらの先輩の岩崎純三先生が特別委員長としてこの問題に非常に精力的に取り組まれてこられました。きょうその議題に入れることを非常にうれしく思っておるわけでございます。
 この法案は議員立法でございますけれども、昨年の七月に政府の人権擁護推進審議会の答申を受けての立法措置というふうに言われておりますけれども、それならば政府提案でもという考えもありますけれども、なぜこの法律案が議員提出によることになったのか、それを提案者にお伺いをいたします。
#7
○衆議院議員(熊代昭彦君) お答えさせていただきます。
 石渡委員から御指摘がございましたように、岩崎特別委員長に本当に卓抜なリーダーシップを発揮していただきまして、この法律を議員立法として提出できることになったわけでございます。
 御質問の件でございますけれども、人権擁護推進審議会の答申におきましては、人権教育・啓発に関する施策の推進に関しまして所要の行財政措置を講ずるということを求めております。法的措置にまで言及していなかったわけでございます。これまで人権教育・啓発の推進に関して法律案が内閣から提出されなかったのは、恐らく法的措置にまで言及されていなかったということでございます。
 しかし、法的措置をしてはならないということではございませんで、我々、同和問題に関する懇話会、岩崎座長のもとでいろいろと検討させていただきました。やはり人権問題、同和問題も含まれておりますけれども、それはそのうちの一つでございまして、あらゆる人の人権という意味で、この大切な人権問題について答申の趣旨を十分踏まえつつ、さらにその趣旨を徹底するということで、例えば国会報告の内容までも含めての思い切った法案をつくるべきではないかということで一致させていただきましたので、人権教育・啓発の一層の推進を図るということでこの法律を議員立法として提出させていただいた次第でございます。
 よろしくお願い申し上げます。
#8
○石渡清元君 それでは次に、いわゆる昨年の七月の答申、人権擁護推進審議会の答申が出されましたけれども、この審議経過について、どういったような審議がなされたか、これを御説明ください。
#9
○政府参考人(横山匡輝君) お答えいたします。
 人権擁護推進審議会におきましては、まず人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するためにどのような施策が必要であるかについて検討がなされ、これを踏まえまして、審議会が提言する諸施策を実現するために法的措置が必要であるか否かについての検討がなされました。その結果、国レベルの連絡協議体制の整備や人権啓発活動ネットワーク事業の拡充など、人権教育・啓発に関して審議会が提言する諸施策はいずれも法的措置をとることなく行財政措置で十分対応が可能である、そういう結論に達してこの答申がなされたものと承知しております。
#10
○石渡清元君 法的措置をとるまでもなくということでございます。今までもいろいろな施策があったかと思いますけれども、最近ではこの人権擁護関係ではどんな行財政措置を、最近の例をちょっとお示しいただければありがたいのでございますが。
#11
○政府参考人(横山匡輝君) お答え申し上げます。
 まず、人権教育・啓発各実施主体間の連携協力の推進という関係でございますが、人権啓発活動ネットワーク事業の充実というものがございます。これは都道府県レベルで、地方法務局と都道府県が人権啓発活動についてネットワークをつくりまして、それで効果的に推進するというものでございますが、これをさらに都道府県レベルから市町村レベルにも拡大しております。
 それから、国レベルにおける人権教育・啓発の連絡協議体制の整備というものが答申でうたわれておりますので、これを受けまして、本年九月二十五日に人権教育・啓発中央省庁連絡協議会というものを発足させまして、国レベルにおける連絡協議体制の整備に努めているところであります。
 また、財政面等におきましては、国が都道府県、政令指定都市に人権啓発活動を委託して実施していただくという関係で、人権啓発活動の人権啓発地方委託事業の充実ということで財政面からもその充実を図っている、そのようなところが主なところでございます。
#12
○石渡清元君 それでは、提案者にお伺いをいたしますけれども、人権教育及び啓発の政府の体制です。
 もちろん法務省を中心としたものになろうかと思いますけれども、人権教育のための国連十年推進本部のような総理大臣を本部長として二十数省庁、今度は来年からは省庁が再編をされますけれども、かなり大きな体制を考えているのか、どういったような政府体制を期待しているか、御説明をいただきたいと思います。
#13
○衆議院議員(田端正広君) お答えいたします。
 先生御案内のとおり、人権教育については文部省、人権啓発については法務省という、所掌する担当分野が中心になって政府全体をリードしているわけでありますが、今、局長から御説明がありましたように、所掌事務の関連ということで各省庁、つまり十六省庁を統合して人権教育・啓発中央省庁連絡協議会が本年九月に設置されました。したがって、法務省を中心にこの協議会の中で情報の相互交換、こういう形でより一層総合的、効果的な人権教育・啓発が推進されるものと私たちは期待しておるわけでありますが、さらにこれらの点についてより専門的、具体的な検討がなされていくことを期待しております。
 先般、十一月に入ってからこの協議会の中の幹事会も行われたようでありまして、そういった意味で、法務省が中心に十六省庁が連携をとりながらより一層具体的な検討に入っていくものと期待している次第でございます。
 以上です。
#14
○石渡清元君 結局は効果的あらしめるのは第七条の基本計画をどう展開していくかということになろうかと思います。
 平成九年に人権教育のための国連十年の国内行動計画が策定をされておりますけれども、本法律案で言う基本計画とその国内行動計画とはどう整合するのか、あるいは違うのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。
#15
○衆議院議員(熊代昭彦君) 御指摘の人権教育のための国連十年は国連の精神を踏まえましての卓抜な内容であるというふうに承知いたしております。それを当然十二分に参考にさせていただきました。取り入れるべきものは取り入れる、そしてまた我が国におきましてさらにつけ加えるべきものはつけ加えるというようなことで検討をいただいて立派な基本計画をつくっていただけるものと、そのように承知しております。
#16
○石渡清元君 それでは、文部省に人権教育についてお伺いをいたしますけれども、人権教育というのは基本的人権の尊重の精神が正しく身につくように学校教育及び社会教育において行われる教育活動、こういうふうに示されておりますけれども、具体的な内容についてもう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
#17
○政府参考人(御手洗康君) 学校教育におきましては、憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、基本的人権尊重の教育を児童生徒の発達段階に即して、小学校から高等学校の教育課程全体を通じまして、家庭、学校その他の社会における具体的な日常生活の中に生かすように努める、こういうことを基本にして行っているところでございます。
 例えば、小中学校の社会科におきましては日本国憲法について学習をいたしますが、その際に基本的人権尊重について具体的な人権の内容等も含めて学習することとしております。また、道徳教育におきましては、例えばだれに対しても思いやりの心を持つこと、あるいはだれに対しても公正公平に接し、差別や偏見のない社会の実現に努めるようにしていくということでございます。
 また、人権に関する具体的な課題には、女性に関する課題、高齢者に関する課題あるいは障害者に関する課題、さまざまな課題がございますが、例えば女性に関する課題につきましては、公民科や家庭科という教科の中で、男女の平等や男女相互の理解と協力の重要性、あるいは職業生活や社会参加におきます男女が対等な構成員であることなどにつきまして、それぞれ小中高の段階を踏んで学習をすることにしているわけでございます。
 高齢者につきましても、同じように福祉の重要性や高齢者に対する敬愛の念を育てるということを中心としながら、特に福祉施設やボランティア活動など実際の体験的な学習を通じて子供たちがこういったことに対する理解と具体的な実践的な態度を育てるということを重点にしているわけでございます。
 また、社会教育におきましても、公民館等におきまして人権教育の総合推進事業というような形で、種々の社会教育活動に取り組んでいるところでございます。
#18
○石渡清元君 いわゆる人権教育はすべての人の人権の尊重ということでございます。したがって、日本古来の伝統文化、そういう気持ちを大切にすることももちろんでありますけれども、具体的にお伺いしますが、例えば天皇制を否定するような、そういう考え方というのは人権教育の中にはありませんよね。
#19
○政府参考人(御手洗康君) 天皇の地位につきましては、小学校並びに義務教育段階の中学校におきまして日本国憲法の学習の際に、国民主権と並んで象徴としての天皇の地位を憲法に基づいて教えるということにしているところでございまして、各学校におきましては学習指導要領の趣旨に沿って適切に教えられているものと承知しているところでございます。
#20
○石渡清元君 それでは、この法案が通り、趣旨が徹底するように期待をし、私の質問を終わります。
#21
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 提案者の皆様、御苦労さまでございます。
 二十一世紀は人権の世紀というふうに言われておりまして、私どもも、二十一世紀こそ人権が最大限尊重され、風通しのいい社会にしなきゃいけない、そんな決意で取り組んでおるところ、今回、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案ということで、議員提案という形で立法化せんとされている先生方の御苦労に心から敬意を表するところでございます。
 さて、今、石渡理事の方から人権擁護推進審議会の答申を受けてのこのような立法ということでございますが、審議会の答申が出た段階で、各マスコミでは法的措置の言及がないという見出しで報道されたところでございますが、この法案が議員の方から出されたという趣旨も含めまして、法務大臣はどのように受けとめられているのか、そしてこの法案が成立した暁にはどのような人権啓発に係る施策というものを推進せんとされるのか、所感と決意をまず法務大臣の方からお願いを申し上げます。
#22
○国務大臣(保岡興治君) 法務省といたしましては、人権擁護推進審議会の答申をまずは最大限尊重して、所要の行政措置を講ずることによって人権啓発に関する施策の推進になお一層努力してまいりたいと思っているところでございます。
 法的措置を講じることにより、そういった施策をなおさらに一層推進していこうという趣旨で、この法律は施策のさらなる充実、拡充の強力な推進を求めているものだと思いますので、そういう趣旨に沿って全力を挙げて取り組んでいくつもりでございます。
#23
○魚住裕一郎君 そこで、提案者の皆様にお聞きをしたいんですが、拝見をさせていただきました目的、定義、そして基本理念、各主体の責務というもの、そして基本計画というものを報告させ、財政上の裏づけをという、そういう目の行き届いた法案化というふうに承知をしますが、実はかなり概括的なというか抽象的文言のように見えるところがございます。
 先般、趣旨説明を聴取いたしましたけれども、もう一度本法案の趣旨というものをちょっと御説明願いたいと思います。
#24
○衆議院議員(滝実君) お答えをいたします。
 おっしゃるように、本法案は人権教育あるいは人権啓発に関するいわば基本法的な性格を色濃く持っているわけでございますので、そういう意味では、概念的には抽象的な文言が目立つ、そういうような受け取り方をされる面があると存じます。
 この法案の趣旨につきましては、その目的にも書いてございますように、もともと人権擁護推進審議会の答申の趣旨を踏まえまして、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育・啓発、そういうような施策の総合的な推進に関する基本的事項、これが推進審議会の答申の趣旨でございますけれども、その趣旨を踏まえまして、人権教育、人権啓発に係る基本理念、あるいは地方公共団体あるいは国民の責務を明らかにしよう、そういうものでございます。そして、その中で基本計画の策定あるいは実施した施策に関する年次報告、そういうようなことをこの法案で、いわば基本計画とそれを担保する趣旨での年次報告、そういうものを定めようといたしたわけでございます。
#25
○魚住裕一郎君 そこで、先ほども御紹介があったわけですが、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画、ことしの九月二十一日ですか、そういう策定がされているようでございまして、そこでも人権教育という言葉が使われております。また、先ほどの人権擁護推進審議会、ここでも人権教育という言葉が使われておりまして、さらに本法案第二条で人権教育という言葉が使われているわけでございますが、この概念はそれぞれ同じというふうに認識してよろしいんでしょうか。その異同というものはあるんでしょうか。
#26
○衆議院議員(滝実君) 重なる部分もございますし、区別して使っている部分もあるかと存じます。
 まず、人権教育のための国連十年の国内行動計画における人権教育、これはかなり幅広い概念として使われているように思います。そういう意味では、今回の本法案に掲げております人権教育と人権啓発、この両方を含んだ概念が国内行動計画の人権教育の考え方ではないだろうかと思います。
 そういう意味では、改めて申し上げますと、人権擁護推進審議会の答申で使っております人権教育あるいは人権啓発、そういうものと今回のこの法案の人権教育、人権啓発の考え方が符合する、こういうことになろうかと存じます。
#27
○魚住裕一郎君 次に、第三条に基本理念が掲げられております。まさに国及び地方公共団体への指針ということでございますが、人権尊重の理念をしっかり理解し体得できるようにということでございます。もちろん、そのためにさまざまな機会を提供し、効果的な手法を採用するというのは当然かと思うんですが、ここに「国民の自主性の尊重」というふうに書いてあります。その次に「実施機関の中立性」、まさにそのとおりだなと思うんですが、ここの「国民の自主性の尊重」というのは、啓発・教育というのはある意味では強制的みたいな部分があろうかと思うんですね。教育実施といったって、集まってくださいよというような講義形式をするにしても、そういうある意味では強制力が働くわけでございますが、ここの第三条に記載の「国民の自主性の尊重」というものはどういうものなのか、またその趣旨も御説明をお願いしたいと思います。
#28
○衆議院議員(滝実君) 御指摘のような御心配があるわけでございます。そこで、人権擁護推進審議会の答申にも触れられておるわけでございますけれども、人権教育あるいは人権啓発というのは国民一人一人の心のあり方に密接にかかわり合っている、こういうような基本的な発想方法が審議会答申であるわけでございます。そして、そういうようなことを受けて国あるいは地方公共団体がこの教育あるいは啓発を推進するに当たりましては、心の問題というものが前提にあるわけでございますので、押しつけにならないように留意をしなければいけない、そして国民の自主性を尊重しながら取り組んでいくべきだ、こういうような基本的な考え方をここではそのまま取り上げまして、法文の中にそのような文言をあえて明示させていただいているような次第でございます。
#29
○魚住裕一郎君 まさに国民それぞれ各人の心のあり方が最大の課題とも言えるわけでございますが、次に第四条で「国の責務」、第五条では「地方公共団体の責務」、次に「国民の責務」というふうになっているんですね。自主性の尊重と言いながら、一方でまた国民の責務というような記載になっております。こういう国民の責務というふうに規定することによって、ある意味では国とか地方公共団体が遂行するこの人権教育あるいは啓発というもの、そういう活動によって国が是とする人権に関する考え方、こういうものを押しつける結果にはならないか。一方で自主性と言っておきながら、条文をもう一項目立てて国民の責務というような表現になっているわけでございますが、この辺はどういうふうに考えたらよろしいんでしょうか。
#30
○衆議院議員(滝実君) 御指摘のように、余りにも国あるいは地方公共団体がまず出てくる、そしてそれを受けて国民の責務というものを表現しているわけでございますので、そのような受け取り方が出てくるおそれがある、そういうようなことはおっしゃるとおりだと思います。
 そこで、先ほど申しましたように、この問題は心のあり方の問題に密着するわけでございますので、そこでその心構えとして規定したということで、あえて国民の責務というものを取り上げさせていただいているわけでございますけれども、その前提としては、この答申にもございますように、まだまだ国民の中に人権に対する正しい理解が定着していない、そういうような実態の認識を受けた上での答申になっているわけでございます。そこで、あえて国民の責務というものを表現させていただいたわけでございますけれども、先ほど申しましたように、当然押しつけになってはいけない、そういうような考え方を改めて表現を別途させていただいているような次第でございます。
#31
○魚住裕一郎君 国が基本計画を策定して実施していくという形になるわけですが、八条で「年次報告」という項目が立てられております。この八条の報告というのはどの省庁が行うことになるんでしょうか。
#32
○衆議院議員(滝実君) この人権教育に関する主たる省庁は文部省、そして啓発に関する主たる省庁は法務省、こういうようなことで組み立てているものでございますので、報告につきましても当然文部省あるいは法務省が中心となるというふうに考えております。
#33
○魚住裕一郎君 人権擁護推進審議会の答申、それは諮問第一というところから出ているわけでございますが、これはあともう一省庁なかったでしたか、その関係はいかがなんでしょうか。文部と法務だけだったでしょうか。
#34
○衆議院議員(滝実君) 基本的にはこの報告の主体というのは今申しましたように文部省、法務省でございますけれども、この関係省庁が十六省庁で先般も協議会をつくり上げたところでございます。したがって、場合によりましては、その関係する十六省庁の中で報告すべきものでふさわしいものがあれば、そういうものも当然阻むものではございませんので、その運用の実態に応じて御協議をいただく、こういうふうに考えております。
#35
○魚住裕一郎君 確かに、職業、就職の際の差別等があった場合は労働省等も関係するわけですから、そういうふうな報告もあるのかなというふうに考えておりまして、十六省庁、それをまとめて「政府」という表現になったんだろうというふうに拝察をいたします。
 ここで、この第八条に「政府が講じた」という表現がございます。これは普通、報告対象というのは大体講じた、それから今後講じようというようなことが年次報告の中でもあるのではなかろうかなというふうに思うわけでございますが、あえて「講じた」というふうな表現はどういうような観点から理解すればよろしいでしょうか。
#36
○衆議院議員(滝実君) 報告書をまとめるに当たりましては、やはり時間がかかるという問題が技術的な問題としてあるわけです。実績を報告するに当たりましては実績を掌握するのに時間がかかる、それを国会に報告するまでにやはり幾らかの時間がかかる。そういうことを考えてまいりますと、これから講じようといたしております施策を報告に載せますと、当然その時間差で講じようとしているものが講じたあるいは講じている最中の問題というふうに、そこのところがなかなか判然としにくい、技術的にどうしても時間でおくれてくる、こういうような技術的な問題もございますので、そういう意味で、この報告時期ということを考えまして、実績主義の講じた施策と、こういうふうにここでは考えさせていただいている次第でございます。
#37
○魚住裕一郎君 基本計画を策定しますね。基本計画を立てて、それに基づいて講じようとする施策というのがあるのかなと。それで終わって、経過して講じたというふうになるんでしょうけれども、たしか予算でも来年度予算と決算で二年ぐらい前の財政運営についてのレビューをするわけでございますが、ただ講じただけではどうなのかななんというふうに基本計画についてまた議論もさせてもらいながら、個別具体的な講じようとする施策みたいな部分も本来あってもいいのかなと思ったものですから質問をさせていただいたところであります。
 さて、この人権擁護推進審議会では、大臣の方から諮問第二というのがあって、人権救済機関といいますか人権救済のあり方、救済制度のあり方というものが審議されているようであります。ことしの七月に論点整理がなされ、かつ多分きょうの夕方になるんでしょうか、中間取りまとめもなされるというふうに聞いているところでございますが、国連の九三年のパリ原則には、国内人権機関のあり方につきまして、国内人権機関の機能というものを三つ掲げてあります。人権救済機能、それから人権教育機能、それから政府への提言機能というような、概略そういう三つの機能という形で、国内人権機関がしっかり政府から一定の独立性を保って、司法以上に簡易なあるいは迅速な救済措置がとれるようにしよう、そういうことが世界の基本的な方向かなというふうに理解をしておりまして、きょう夕刻出されるであろう人権救済制度のあり方につきましても、そういうような方向で中間取りまとめが出るのかなというふうに考えております。
 そこで、この附則第二条に「見直し」というような条項が入っております。三年以内に云々と、被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項についての調査審議の結果を踏まえ見直しを行うというふうに記載をされているところでございます。今申し上げたような人権教育機能という観点からすれば、まさにオーバーラップする部分が多いんだろうなというふうに思うところでございますが、そのような理解でよろしいのかどうか、提案者と法務当局にお尋ねをいたします。
#38
○衆議院議員(滝実君) 委員御指摘のとおり、現在、人権擁護推進法に基づく人権擁護推進審議会の教育と啓発に関する答申に基づいて本法案を提出させていただいているわけでございますけれども、引き続き人権擁護推進審議会におきまして人権が侵害された場合における被害者救済に関する施策の基本的事項について調査審議が行われていることは今御指摘のとおりでございます。
 そういたしますと、そういうような答申が出され、それの取り扱いにつきましては、その内容によりましては人権教育あるいは人権啓発の推進に関して定めたこの法案につきましても再度見直すのが適当であるというような場合もあり得るわけでございまして、そういうようなことを念頭に置いてこの附則二条でそのような趣旨のことを表現させていただいていることは御指摘のとおりだと私ども考えております。
#39
○政府参考人(横山匡輝君) 人権擁護推進審議会におきましては、先ほど委員御指摘のとおり、諮問第二号の人権救済制度のあり方に関しまして、本日午後に開催されます第五十五回会議におきまして中間取りまとめを確定し、これを公表する予定であると承知しております。現在、未確定の段階でありますのでその内容にかかわるコメントは差し控えたいと思いますが、ただこの審議会が本年七月に公表しました論点整理におきましては、人権救済機関が他に担うべき任務の例として人権啓発が掲げられておりまして、その後の調査審議の過程におきましても、人権侵害の発生を未然に防止する一般的な人権啓発と個別の人権侵害に関して被害者を救済する人権救済を総合的かつ有機的に進めていくことが重要であるとの意見があったことは承知しております。
 今後、どのような答申が出るか、私どもこの場でコメントすることはできませんけれども、この附則第二条の見直しの規定につきましては、ただいま提案者の方からも御説明がありましたとおり、被害者救済と人権啓発のそのようなかかわり方についても当然念頭に置かれた規定ではないか、このように私どもも理解しているところでございます。
#40
○魚住裕一郎君 終わります。
#41
○竹村泰子君 おはようございます。
 民主党の竹村泰子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日の経済不況、そして閉塞感の中で、人の命や尊厳を軽視するさまざまな事象が発生しております。学校や会社、地域社会でのさまざまないじめや差別、児童虐待や家庭内暴力の顕在化、あるいはカルト宗教の流行とか、人権を守るべき立場の警察や公的機関による人権侵害あるいは被害放置など、日本社会はあらゆる分野において改めて命の尊厳と人権に関する認識が問われていると言わなければならないと思います。
 冷戦後に多発する民族や宗教による対立あるいは人権抑圧に対して、国連は、国連識字の十年、人権教育のための国連十年、平和と国際文化年など、世界じゅうに多文化との共生、平和と人権の文化、それらを定着させる活動を提案してまいりました。また、一九四八年の世界人権宣言を初め、国際人権規約や人種差別撤廃条約あるいは女性差別撤廃条約、拷問禁止条約、障害者の機会均等化に関する標準規則などの国際条約あるいは国連総会での決議を通して、人権に関する国際ルールといったようなものを問題解決のためのシステム整備として進めております。
 日本の国の中においては今なお部落差別や女性差別、子供、高齢者、障害者、そして色覚異常、アイヌ、在日外国人、HIV感染者、ハンセン病患者などさまざまな差別や人権侵害が本当に悲しいことに存在しておりまして、国連人権委員会は日本政府に対して勧告を出しております。
 日本社会の国際化が進む中で、さらに多くの文化や宗教、多様な生き方、人種や民族の違い、そういったことを尊重してともに暮らすことが求められているわけでございまして、今までの単一民族国家の幻想から多文化共生、多様な生き方の日本社会へ脱皮することが問われていると思うわけでございます。
 民主党は、二十一世紀にだれもが自由に安心して地域でともに暮らせる、そんな社会を実現するために、人権抑圧や人権侵害を引き起こすさまざまな無理解や偏見、差別意識という土壌を改革して、多様な文化や価値観の共存を認め、互いの違いを理解し、人権を尊重する豊かな人権文化を創造し、花開かせることが大切だと考えております。私も及ばずながら党の人権政策調査会の事務局長を務めさせていただいておりまして、今さまざまな取り組みをしているところでございます。
 このたび人権尊重の一環としてこの法案が提出されました。提出者の皆様の御労苦に対して心から敬意を表したいと思いますけれども、人権尊重を目的にしたこの法律案の趣旨には基本的にはもちろん賛成したいと思います。しかし、なお次の点について法案を補強するべきだと考えて、質問をさせていただきたいと思います。
 まず、発議者の皆様にお伺いいたしますが、人権教育及び啓発を推進する上で重要なことは、国際人権規約や女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約など、政府が締結した人権に関するさまざまな諸条約を踏まえることだと思います。また、条約に関連して、例えば人権教育を体系的に学校カリキュラムに導入するための適切な措置をとるよう勧告するという子どもの権利条約委員会の勧告とか、あるいは裁判官、検察官や行政官に対する研修を強く勧告する、これは九八年十一月の国連の規約人権委員会ですが、というような勧告が出されているわけでございます。
 このように、国連の委員会から指摘された人権教育及び啓発に関する勧告を踏まえるべきだと思いますが、発議者のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#42
○衆議院議員(熊代昭彦君) 竹村委員が国内外に及びます人権問題について広い目配りと卓見に基づいて行動しておられますことに対して、心から敬意を表する次第でございます。
 御指摘のことでございますけれども、日本が締結しましたあらゆる国際条約の尊重は当然のことでございます。その中に盛り込まれました卓抜な精神をしっかりと受けとめるとともに、条約そのものに抵触しないようにしっかりとした対策を行うということは当然のことでございまして、この法律は極めて基本法的な法律でございますので、極めて概括的なことを定めておりますけれども、御指摘の条約等すべて十二分に尊重して基本計画等を定めていく、そういう精神に立っております。
#43
○竹村泰子君 先ほども冒頭で述べましたように、人権については決して行政府だけの問題ではありません。立法、司法のみならず、社会全体で取り組んでいかなければならない問題であることを人権文化の創造と呼ばせていただきました。
 人権抑圧や人権侵害を引き起こすさまざまな無理解や偏見、差別、差別意識はもう本当にいろいろな形をとって社会に存在いたします。私たちの中にも差別や偏見の意識がないかと問われれば、全くないということは言えないと思います。したがって、国連規約人権委員会の勧告は最低限実施しなくてはならない課題であり、医療や福祉、そして介護等に関連する人たち、人権に関連する人たちの人権に関する研修は不可欠であると思われます。さらに、マスメディア関係者も自主的な研修の取り組みが必要であると思いますが、発議者はその点はいかがお考えになって提案をされたのでしょうか。
#44
○衆議院議員(熊代昭彦君) 御指摘のように、人権問題は人と人との関係でございまして、ともすれば自分の人権を主張する余り人の人権を阻害してしまう、そういうこともあり得ることだと思います。すべての人がすべての人の人権をしっかりと尊重しなければならないということでございますので、相手の立場に立って人権を尊重する、そういうのが基本的精神だというふうに思います。
 御指摘のように、医療、福祉、介護等に関連する人々とかマスメディア関係者の研修ということでございますけれども、国の方でも財政上の措置を講じております財団法人人権教育啓発推進センターにおいて、人権ライブラリーを設けて広く人権一般に関する文献やビデオ等を収集しておりまして、それらを活用するということが非常に有益なことであろうというふうに思っております。
 国の方でもそういうことを現にやっていただいておりますけれども、この法案の成立を契機にさらに国民一人一人がすべて人権問題について認識を新たにする、さらに深めるということの研修をあらゆる意味で推進していくということを考えていただけるものと承知しております。
#45
○竹村泰子君 ありとあらゆる機会を通じて、特に私が今お聞きしましたのは、マスメディアの研修なども大変必要なのではないかと思いましてお伺いいたしました。
 言うまでもなく、人権教育や人権啓発の推進は政府全体で取り組むべき課題であり、現に文部省、法務省はもとより、厚生省、運輸省、自治省、人事院、外務省、郵政省、総理府、労働省、農水省、警察庁、総務庁、通産省、北海道開発庁、環境庁など二十二の省庁ですか、で人権教育や人権啓発が取り組まれているとお聞きしておりますけれども、その行財政化された実施項目を予算書などで拝見してもなかなかわかりにくいんですね。私たち比較的見なれている者でもなかなかわかりにくい。一般の国民の皆さんは本当にわかりにくいとお思いになると思うんですけれども、総務庁からその資料を拝見して初めて理解するというようなこともございます。
 今後も総理府が持っていた人権教育に関する問題をトータルとして取り組んでいくという機能、つまりまとめる機能が必要であると考えておりますが、どのようにお考えでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
#46
○国務大臣(保岡興治君) 確かに、人権教育とか人権啓発の推進というのは総合的に、ある意味ではその目的を達するために機能的にというか戦略的にいろんな政策群を用意して当たるということが必要であり、その施策の連携協力ということは非常に大切なことだと存じております。
 ただ、中央省庁等改革基本法第十八条において、法務省の編成方針としては、その第一号に「人権擁護行政について、その充実強化を図ること。」と規定されておりまして、また第十五条の別表第二において、文部科学省の主要な行政機能として、生涯学習あるいは初等中等教育に関することがそれぞれ規定されていることなどから、この編成方針等に従って考えますと、人権啓発については法務省、それから人権教育については文部科学省においてそれぞれその充実強化が図られるものと考えております。
 政府全体の取り組みとしては、この両省が中心になって、今おっしゃったような関係省庁が先ほど申し上げたような総合的な政策推進の理念に沿って連携協力していくべきものだと承知しております。
#47
○竹村泰子君 人権は普遍的な課題であり、私たちすべての者に課せられた課題でございますから、各省庁ですべて人権問題に取り組んでくださるのは大変結構だと思いますけれども、それだけに茫漠としてとらえどころのない、何かつかみどころのないようなことにならないようにぜひしていただきたいと強く要望しておきます。
 これは人権擁護推進審議会で二年にわたって審議されたわけですけれども、その答申の段階から指摘されていたことに、実効性ある施策を行うための法的な措置について全く触れられていないということがございます。これは超党派の国会議員による人権政策の勉強会や地方自治体からも要望されていたことだと思いますけれども、発議者の方々は何かそれに対してはおっしゃることがおありでしょうか。そして、大臣の御所見を伺いたいと思います。
#48
○衆議院議員(熊代昭彦君) 審議会の御答申がどういう意図であるかというのは、それは審議会の方にお伺いする以外にないわけでございますけれども、法的なものに触れなかったということは一つの判断であろうと思います。これまでの歴史的経過がございまして、法的なものがあった場合にどうなるのかということも考えられたんじゃないか、これはあくまで推測でございます。
 しかし、私どもは、人権問題でございますので、あらゆる人の人権を尊重するということでございますから、従来、同和問題でございましたように、差別者と被差別者があって、差別者は必ず侵害し、被差別者は必ず人権を侵害されるんだというようなことではない、すべての人が人権を侵害する立場に立つこともあるし、すべての人が人権を侵害される立場に立つこともある、お互いの立場に立ってしっかりと人権を尊重していこうということでございますから、これは前向きにしっかりと考えて、基本法的なこの法律を定めていいんじゃないだろうか。しかも、定めたことは極めて基本的なことでございますけれども、国会報告というものを担保にしまして、極めて具体的にそれを国会でもフォローできるということでございまして、そういう趣旨でこの法律を提出させていただいたわけでございます。
#49
○国務大臣(保岡興治君) 御案内のとおり、今度の法案は、国、地方公共団体及び国民の責務をまず規定してあるほか、国が人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため基本的な計画を策定しなければならないことや、毎年、政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告を提出しなければならないものとされております。さらには、地方公共団体に対して、当該施策に係る事業の委託その他の方法により、財政上の措置を講ずることができることを規定しているところであります。
 法務省といたしましては、本法案が成立した際には、本法案に定められましたとおり、人権啓発に関する施策に係る基本計画の策定や年次報告に当たることになるわけでございますけれども、そのほか、現在でも講じております財政上の措置等について本法案の趣旨を踏まえて今後ともその充実を図りまして、人権啓発等に係る施策のなお一層の推進を行ってまいりたいと決意をいたしているところでございます。
#50
○竹村泰子君 その点はまた今後の課題として議論させていただきたいと思います。
 例として挙げるのには大きな問題なんですが、各省庁所管には障害者に対する欠格事項、これがまだまだ残っております。昨年来その見直し作業がされて、本年にも厚生省関連の三欠格事項の見直しをされることが発表されておりますけれども、総体を見れば六十三項目のうちそれが見直しされて五十七項目になったにすぎない。今後、この法案が成立し、この法案の趣旨を生かした欠格事項が撤廃されることを希望してやみませんけれども、ここにも、総理府がトータルとして各省庁をまとめ取り組んできたことが推進力であったというふうに思います。
 さきの衆議院の法務委員会でこの法案が審議された際、同僚の石毛えい子議員に対する計画の推進体制に関する答弁の中で、熊代議員は「附則の第二条に見直しの条文をつけてあります。ですから、この体制を実施しながら、そしてまた、人権擁護推進審議会の答申も見ながら、その点も十分に見直していくということも考えております」とお答えになっておられます。
 このことは、昨年七月の中央省庁等改革関連法の附帯決議で「「人権の二十一世紀」実現に向けて、日本における人権政策確立の取組は、政治の根底・基本に置くべき課題であり、政府・内閣全体での課題として明確にするべきであること。」とされていることを含めて見直しをしていくことを述べられたと思っておりますが、大臣、いかがでございましょうか。
#51
○衆議院議員(熊代昭彦君) 大臣にお尋ねでございますが、名前を御指摘ございましたので、とりあえず前座で私が答えさせていただきます。
 そういうふうに見直すということは根本的に見直すということでございますので、あらゆる可能性を踏まえているということでございますが、この法律は、全体の総括は法務省、そしてまた人権教育は文部省、それから人権啓発は法務省でございますが、全般の総括は法務省でしていただく、法務省が全体をにらんで十六省庁体制でしっかりやっていただける、そういう当面の方針については自信を持っているということもお答え申し上げたと思います。
 しかし、それを実施していく中で、そしてまた審議会の答申が間もなく予定されております。これはかなり抜本的な答申が出てくるのじゃないかと思いますので、それを踏まえて、それまでの実績とその答申を踏まえて見直しをしようという精神でございますので、そういう趣旨で御説明申し上げたところでございます。
#52
○国務大臣(保岡興治君) 昨年の七月の中央省庁等改革関連法が議決された際に、参議院の行財政改革・税制等に関する特別委員会の附帯決議で「「人権の二十一世紀」実現に向けて、日本における人権政策確立の取組は、政治の根底・基本に置くべき課題であり、政府・内閣全体での課題として明確にするべきであること。」と決議されていることは承知しております。
 先ほども申し上げたとおり、中央省庁等改革基本法に沿って、今、熊代提案者からもお話があったとおり、法務省、文部省がそれぞれの所管に沿って中心になりながら関係省庁と連携協力して総合的、効果的な施策の推進に当たることはもちろんですが、この法律が制定される運びになったのもそういった決議を踏まえた上でのことでしょうし、きょう御審議いただいているこの法案が成立した暁には、またその趣旨を踏まえて基本計画や年次報告の作成に当たって、いろいろ法の趣旨を踏まえた努力、さらに今までやってきた施策を含めて、さらに施策の充実強化に当たってまいるということでこの決議に対応してまいりたいと思っております。
#53
○竹村泰子君 欠格事項については、一〇〇%すべてというのはなかなか難しいかもしれないんですけれども、しかし障害者の方々もいろいろな能力を持っておられまして、私たちも能力には違いがいろいろあるわけでございますから、初めから門を閉ざしてしまうということではなく、やはりどの人も職業を選ぶ権利がある、立場を選ぶ権利がある、住まいを選ぶ権利があるというような、もう本当にごく当たり前の基本的な人権をしっかりと確立することができるような国であってほしいと。
 先ほども申しましたが、人権確立の取り組みは政治の根底、基本なんだということ、私はかなり前から人権の問題に取り組んできておりまして、ようやく日本もここまで来てくれたかという思いもいたしますが、そういった本当に開かれたすばらしい国になってほしいと思うや切でございます。よろしくお願い申し上げます。
 今まで答弁をお聞きして、私は人権教育・啓発の推進、これは政府全体で取り組むべき課題であって、その所管も政府全体の総合調整機能を持つ省庁、すなわち新たな省庁を再編されるとすれば内閣府が所管するべきだと考えますが、そういったことをますます私は確信を持ってそうなのだなというふうに思うようになったのでございますが、いかがでございましょうか。
#54
○衆議院議員(熊代昭彦君) 再編後に内閣府で所管してほしいという御要望もいろいろ伺っております。しかし、先ほど申し上げましたように、現在の人権の体制は、法務省が人権擁護局のもとに手足も持っておりますし、人権問題に具体的に対処できるということでございます。
 私どもは、現在の体制では法務省が一番ふさわしくて、そして人権教育は文部省で、それも法務省の統括のもとに、両省がほぼ対等でございますけれども、法務省が全体を統括するということでやっていけるというふうに思っております。この体制でいけるのではないかと思います。ただ、完全にこれはいささかも動かないということではなくて、それで実施していく上で再検討をしていこうというのが附則二条でございます。
 しかし、それと並んで審議会の方ではもうかなり思い切った答申を出されるようでございます。その答申が出たところで所管官庁等も全体の体制も再検討しなければならないし、できるというふうに考えているところでございます。
#55
○国務大臣(保岡興治君) 中央省庁再編後の所管についてどういうふうに定めているのか、私ちょっと不勉強で、詳しい手続、どこで定めるのかということを今のところ承知していないので、そういう前提でお答えしますが、今、熊代提案者からお話があったとおり、やはり今までこの人権啓発、人権教育に一生懸命努力してきてその実施組織や体制も持っております法務省や文部省が中心になって、全省庁の協力を得て施策の充実強化、効率化を図っていくということが当面大切なことではないか、そういうふうに心得て努力をしようと思っているところでございます。
#56
○竹村泰子君 私は別に法務省が悪いと言っているわけじゃなくて、人権擁護という、先ほどから言っているような政治の根底、基本に置くべき問題であるから、だからこそ現在も法務省の中に人権擁護局というのがあるわけで、人権を守るのは法務省ということになっているわけですけれども、やはり私は人権を守るための独立機関、人権委員会のような独立した機関を考えていかなければならないと思うんです。そのためのステップとしてもこれはやはり内閣府に総括は置くべきではないか、そういうふうに思いますが、今ここでそういう大きな議論をいたしましても恐らく、そうだ、そうしましょうとおっしゃらないと思いますので、これはぜひともに考えていくべき緊急な課題であるというふうに申し上げておきたいと思います。
 ところで、人権教育のための国連十年でございますけれども、現在、人権の世紀に向けてはさまざまな取り組みが見られます。国連の提唱による人権教育のための国連十年もその一つですが、我が国においても、政府は九五年十二月、内閣総理大臣を本部長に人権教育のための国連十年推進本部というのを設置されまして、人権教育の取り組みを開始されました。これを受けて、都道府県や市区町村でも推進本部が設置され、人権教育の取り組みが実施されております。
 人権教育のための国連十年、これはことしから五年目に入って折り返し点になっているわけでありますけれども、人権教育及び人権啓発推進法を制定するに当たっては、この人権教育のための国連十年に関する国の行動計画はもとより、各地方自治体が策定した行動計画を踏まえ、より一層内容を充実されるべきと考えます。
 私も手元に人種差別撤廃条約第一回、第二回定期報告仮訳をいただいておりますし、それから参議院でおつくりいただいた資料の中にも人権教育のための国連十年に関する国内行動計画の推進状況というのが巻末に入っておりまして、いろいろと拝見をいたしました。
 特にこの中で、私はいろんなことを考えたんですが、時間の関係があってすべてを質問するわけにはいきませんが、アイヌ対策や子供の人権、特に子供の人権については、少年法も成立をいたしましたが、さまざまないじめ、引きこもり、犯罪、いろいろなことが問題になっております。子どもの権利条約との整合性について、また本当の男女共同参画社会の各分野での実現についてどのようにお考えか、発議者及び総理府にお伺いしたいと思います。
#57
○衆議院議員(熊代昭彦君) 本法案第七条におきまして、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために基本計画を策定することになっております。
 その策定に当たりましては、委員御指摘のいろいろな国際規約もございますし、また御指摘がございましたアイヌ対策や子供の人権問題、男女共同参画型社会形成のための男女共同参画の施策等々、あらゆるものを踏まえましてやってまいりたいと、やっていただかなければならない、我々は実施機関ではございませんのでやっていただかなければならないし、そのようなものとしてこの法案の実施をしていただけるものというふうに期待しているところでございます。期待申し上げます。
#58
○政府参考人(大西珠枝君) 人権教育のための国連十年の国内行動計画におきましては、女性は重要課題の一つとして最初に掲げられております。
 そこで、国際的動向及び男女共同参画二〇〇〇年プランを踏まえまして政府全体として取り組んでいるところでございますが、総理府としては、男女平等及び人権尊重の意識を深く根づかせるための各種媒体を通じた政府広報の実施とか各種フォーラムの開催など啓発活動を実施して、男女共同参画への国民の理解を深めるよう努力しているところでございます。また、昨年六月には男女共同参画社会基本法が公布、施行されたところでございまして、この法律の国民への一層の周知に努めているところでございます。
 そして、この基本法に基づく初めての法定計画を現在作業をしているところでございまして、男女共同参画基本計画を本年、平成十二年中に策定するために今作業をしております。その策定後はこの男女共同参画基本計画に沿って男女共同参画社会の形成に一層努めてまいる所存でございます。
#59
○竹村泰子君 大臣、通告しておりませんで恐縮ですが、私が今子どもの権利条約のことに触れましたけれども、先日ある集会がございまして、子どもの権利条約がどのように浸透していっているだろうかということを関係各省庁、厚生省、文部省、法務省、総務庁その他、いろいろお聞きしたわけですけれども、本当に通り一遍のお返事しか出てこないんですね。
 きょうは文部省をお呼びしようと思ったんですが時間の関係でお呼びしておりませんけれども、学校教育の中で、学校の現場の先生が子どもの権利条約を教えようと思うけれども資料が何もない、そしてどうやって教えていいかわからないし、先生自体が内容もわからないと。もう権利条約が通って数年たちますけれども、そんな状況です。
 私はあれは子供の人権を守る条約としてはすばらしいものだと思います。確かに現実の中で実行不可能な、現実の日本で不可能かなと思うようなものもないではないですけれども、しかしその実効性について、法務省が人権を守る立場だとおっしゃるならば、子どもの権利条約、特に未来を担っていく子供たちの権利について何か御所見があれば大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#60
○国務大臣(保岡興治君) おっしゃるように、将来を担う人々をどうやって子供のときから守り、本当の意味ある成長を促すか、こういう子供の人権については、これが非常に重要なことは委員あるいは皆さんの認識は共通のものだと思います。
 ただ、国連のいわゆる子ども人権規約というものに基づくいろいろな情報については、これは私は所管ではありませんから、文部省の教育のことではまたそちらの所管でございますけれども、一般的に言って、子供の成長に応じて適切な情報はやっぱり人権を考える上で一つの事実として伝えていくべきでしょうし、またそういった子供の人権をめぐる委員会の発するところのいろんな情報を我が国の人権政策に照らしてどういうふうに伝えるかということについては、そのまま伝える場合もあるし、我が国の政策に照らして、我が国の人権尊重の趣旨を明確にしながら施策を充実強化していく、普及啓発を図っていくというようなこともまた大切でしょうし。
 いずれにしても、そういった子どもの人権規約についてよく踏まえた上で我が国の施策も進めていくべきだと思っております。
#61
○竹村泰子君 先ほどちょっと触れましたが、日本政府は国連から人権問題に関して改善勧告を受けたと思いますけれども、これはどういうものだったのか、これに対してどう対応したのか、しようとしているのか、お伺いしたいと思います。
#62
○国務大臣(保岡興治君) 国連の規約人権委員会から人権問題に関して改善勧告を受けたものがどういうものかという一般的な御質問としてまずお答えをしたいと思います。
 平成十年十一月に採択されたいわゆる人権B規約、これは市民的及び政治的権利に関する国際規約というものだと承知しておりますが、この人権委員会の最終見解においては人権に関連する種々の勧告ないしは懸念事項が示されましたけれども、人権侵害に対する救済に関して、特に人権侵害の申し立てに対する調査のための独立した仕組みを設立することを勧告されております。
 この勧告のように、人権救済を行う機関につきましては一定の独立性が必要との考え方もあるところから、人権擁護推進審議会において人権救済制度のあり方について現在御審議をいただいておるところでございまして、人権救済機関のあり方についてのさまざまな議論が行われているものと承知しております。
 法務省といたしましては、審議会の調査審議の結果も踏まえて、人権の世紀と言われる二十一世紀にふさわしい人権救済制度の確立に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
 さらに、法務省における現在の実現状況というんですか、あるいは実現に向けての今後の見通しについてお答えをしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
#63
○竹村泰子君 はい。
#64
○国務大臣(保岡興治君) 平成十年十一月の市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる人権B規約に基づき人権委員会が採択した最終意見の主な懸念事項及び勧告において、まず今お話し申し上げた人権の侵害調査のための独立機関の設立、それから嫡出子でない子に関する差別的な規定の改正、それから刑事罰を伴う外国人登録証明書の常時携帯義務の廃止、死刑確定者の処遇の改善、被疑者段階の刑事弁護制度の創設、検察官、行政官に対する人権教育、行政施設における厳しい規則や懲罰への懸念、再入国許可制度の必要性への懸念など、法務省に係るいろいろな事項について指摘がなされたものと承知しております。
 この最終見解においては、我が国の事情等について理解が必ずしも十分でないという点もないわけではございませんが、必要に応じて適切な対処をすべく措置もいろいろとっておりますし、またとろうとしているところでございます。
 例えば、平成十一年八月に成立した外国人登録法の一部を改正する法律によって、特別永住者の登録証明書の常時携帯義務違反に対して刑事罰を科さないこととなりました。また、人権擁護行政については、人権擁護推進審議会における審議の結果を踏まえて、先ほどもお話ししたように人権救済制度の確立に取り組んでまいります。
 また、今後の取り組みの姿勢といたしまして、法務省としましては、今後も規約、勧告等の趣旨を尊重しながら我が国の事情等に照らして適切な必要な対策をきちっと行ってまいりたいと思っているところでございます。
#65
○竹村泰子君 そういう御決意でぜひきちんと勧告に対してこたえていただきたいというふうに思いますし、実態を伴っていただきたいと思います。
 最後の質問になると思いますが、発議者と大臣にお伺いしたいと思います。
 法案では、人権教育及び人権啓発の総合的かつ計画的な推進を図るために基本計画を策定することになっております。また、毎年国会に政府が講じた人権教育及び啓発についての報告を提出しなければならないというふうになっております。これらについては既に各地方自治体や人権団体がさまざまな創意工夫を凝らして取り組んでおり、実践を踏まえた人権教育及び啓発の内容や方法も研究されております。
 そこで、この基本計画の策定については地方自治体や人権団体とぜひ十分に協議し、そしてこれを策定していただきたいと思いますが、大臣及び発議者のお考えを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
#66
○国務大臣(保岡興治君) 基本計画の策定については本法案の成立を待って具体的に検討にかかることになりますけれども、その策定に当たっては、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るとの本法第七条の趣旨を十分尊重して、地方公共団体等関係各方面の意見も踏まえて充実した内容のものにするように努めたいと思っております。
#67
○衆議院議員(熊代昭彦君) 大臣から既に御答弁いただきましたけれども、法案の提案者といたしましても、この基本計画の策定に当たりましては地方公共団体等関係各方面の意見を十二分に伺って、尊重して、反映してくださるものというふうに考えているところでございます。
 年次報告についても御言及がございました。年次報告も既に申し上げました両省を中心に各省庁がしっかりとした報告をしてくださるものというふうに期待しているところでございます。
#68
○竹村泰子君 終わります。
#69
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 まず、私は総務庁にお聞きしたいのですが、政府の同和対策事業は、一九六五年の同和対策審議会の答申以来、同和対策事業特別措置法、また地域改善対策特別措置法によって実施されてきましたけれども、九七年の三月末には特別措置法による特別対策はほぼ目的を達成したとして基本的には終結をしたわけですね。残りの事業も二〇〇二年の三月をもってすべて終了し、その時点で同和地区、同和の指定地区も地域もなくなる、そういうことでよろしいですね。
#70
○政府参考人(久山慎一君) お答え申し上げます。
 政府といたしましては、同和問題の早急な解決は国民的課題であるという認識のもとに、昭和四十四年以来三つの特別措置法を制定いたしまして、三十年余にわたりまして関係の諸施策を積極的に推進してまいったところでございます。
 こうした国あるいは地方公共団体の長年の取り組みによりまして生活環境を初めとする物的な基盤整備がおおむね完了したことなどを踏まえまして、政府におきましては、平成八年七月の閣議決定によりまして、特別対策はその時点までに着手した事業などに限って平成十三年度までの五カ年間の経過的措置として実施するとの方針を決定し、平成九年には地対財特法がこの方針に沿って改正されたところでございます。
 最後の特別措置法であります地対財特法の有効期限の到来後は、同和地区における施策ニーズに対しましては、他の地域と同様に地域の状況や事業の必要性の的確な把握に努めた上で所要の一般対策を講じていくことによって対応していくこととなります。
 以上です。
#71
○林紀子君 次に、法務省にお聞きしたいのですが、今お話にありましたように、部落問題はかつてあったような住環境や進学の格差もなくなる、また地域内外の結婚も進んで混在化も進んできました。もう格差はない、国民融合の時代を迎えております。だからこそ同和事業も基本的に終結した、二〇〇二年三月までには残務処理も終わる、ほとんどが一般事業に移行している状況だと思うわけです。
 この動きは同和教育の面でも進んでいると考えるわけです。
 この十月、和歌山県同和教育研究協議会、和同教がその歴史的役割を終えて解散を宣言いたしました。
 その声明を重点的に読んでみますと、「そもそも同和問題の解決とは、「同和」という言葉を死語にし、地域社会の中で使われない状況をうみだすことです。ところが同和対策事業は、」「旧身分に対する差別をなくしていくために、旧身分を特定するという、二律背反ともいうべき深刻で重大な問題をもっています。」「和歌山県では、すでに一九八〇年代に、部落問題の提起する教育課題はほぼ解決し、同和教育は、その役割を終えていました。」「同和教育を続けることは、今や、旧身分による垣根を取り除く上での障害となっています。」。そして、「三年にわたる討論の結果、これ以上同和教育を存続させると、かえって融合を阻害するという結論を得ました。」、こういうことで解散を宣言したものです。
 同和対策というのは、事業もそして教育啓発も、政府としても徹底してこの立場に立つべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#72
○政府参考人(横山匡輝君) ただいま委員から御指摘のありました同和教育に関する事柄そのものは、今にわかの御質問でありますし、また同和教育そのものは私ども所掌しておりませんので、同和教育そのものについての答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私ども人権啓発を推進する立場の者といたしましては、同和問題自体は非常に大きな人権問題の一つだという認識を持ちましてしっかりと啓発活動に取り組んでまいりたい、そう思っているところでございます。
#73
○林紀子君 私の方は通告もお願いしていたと思うんですけれども、同和事業も教育もやはり同じような立場に立つべきではないかというふうに思うわけです。
 そこで、熊代発議者にお聞きしたいのですが、私たちはこの同和問題についてはもう法律も要らないし行財政措置もとるべきではない、すべて一般事業化すべきだと考えております。
 九九年七月の人権擁護推進審議会の答申でも新たな法的措置には言及しませんでした。あえて異例の会長談話というものを出しまして、「答申に人権教育・啓発に関する法的措置を盛り込む必要があるという趣旨の意見が各方面から寄せられました。」、しかし、「審議会としては、答申に盛り込まれた諸施策については、いずれも行財政措置で十分対応が可能であるとの認識に至ったところ」だと述べているわけですが、この見解は正しいとお考えになりますか。
#74
○衆議院議員(熊代昭彦君) 審議会の会長の談話でございます。いろいろなことを御検討されまして法的措置に言及しない、そしてそれについて特別な談話をされたということでございます。それはそれで十二分に敬意を表する次第でございます。
 私どもの法律は地域改善対策、同和対策ではありませんで、人権対策ということでございますので、先ほども申し上げましたけれども、例えば被差別部落の被差別団体というような表現があるかどうかは別といたしまして、差別される側が固定している、差別する側と差別される側が固定しているというような見解はとりませんと。差別されている側も人権を侵害する可能性はありますと。ですから、あらゆる人が人権侵害者になり、あるいは人権の被害者になるということでございますので、人権問題一般としてこれを取り上げる、そういう趣旨を徹底してまいりますれば、人権の大切さということで法案をつくっていいのではないかということでございますから、少し視点を変えまして、そういう趣旨を徹底しての法律案を提出したいということで岩崎座長のもとで検討させていただいてこの法案を準備し、御審議をいただいているところでございます。
#75
○林紀子君 法的対応は必要ないという会長談話には敬意を表するけれども、人権教育啓発推進法というのは人権一般だからというお話なんですけれども、しかし今この人権という名前で現実に広島県では各地で部落解放同盟によりまして人権教育、まさに人権教育という名前で人権侵害、抑圧、教育現場への介入がいまだに繰り広げられているわけです。
 例えば、いまだに狭山事件の教材化やゼッケン登校、こんなことが行われているというのを熊代発議者は御存じだと思いますが、いかがですか。
#76
○衆議院議員(熊代昭彦君) ゼッケン登校や狭山事件の教材化については十分には承知しておりません。そういうものもあるのだというような話を若干聞かせていただいておりました。
 いずれにいたしましても、中身について詳しいことは知りませんので、具体的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、人権教育について政治運動や社会運動を学校教育に持ち込まないということは大切なことでありまして、学校教育にそれを持ち込むことは不適切であるというふうに思います。
 現実にどのようなことが行われておりましょうとも、人権という立場に立ち返って、その現実の問題も人権の立場できっちりと処理していくというのがこの法律の精神であり、そのように政府において実施していただかなければならないというふうに考えているところでございます。
#77
○林紀子君 狭山事件の教材化とかゼッケン登校というのがどういうものか詳しくは御存じないということですけれども、実情は部落解放同盟の運動方針の一つである狭山裁判闘争を狭山の節目教育、こういうふうに位置づけまして現場教育に押しつけているわけです。
 広島県でもありますけれども、福山市の小中学校では石川元被告の逮捕された日や裁判の判決日など年四回を狭山闘争日として集団登校させたり、子供たちに裁判批判を訴えさせる日にしている。広島県の福山市の小学校でも児童にも教職員にもゼッケン登校をさせている、こういう事態なわけです。ある保護者は、小学校二年生と四年生の子供が学校から帰ってきて石川さんが石川さんがなどと話している、びっくりした、何もわからない子供を洗脳するような間違った教育だと思って恐ろしく思いましたと、こういうふうに言っているわけです。
 今お話にもありましたけれども、発議者もかかわられた八六年の意見具申では、「一部に民間運動団体が教育の場に介入し、同和教育にゆがみをもたらしている」、「教育と政治・社会運動とを明確に区別し、教育の中立性の確立のための徹底的な指導を行うことが必要である。」と、こういうふうに述べていらっしゃるわけですね。
 しかし、今実際にここでお示ししているように、人権教育という名前でこういう教育が現場では押しつけられているわけなんですね。そういうことはどうお考えになるわけですか。
#78
○衆議院議員(熊代昭彦君) 具体的な広島県で行われている事象について承知しておりませんので、そのことについては何も申し上げるわけにはまいりませんけれども、もし御指摘のとおりの話がありまして人権教育の名のもとに政治運動や社会運動が学校教育の中に持ち込まれているということであれば、行政当局はそれを断固として排除すべきであるというふうに思います。
#79
○林紀子君 次に、文部省にお聞きしたいのですけれども、義務教育の教員が学校現場を離れて同和教育研究協議会で事実上専従活動をしている、こういうことがあります。
 義務教育費国庫負担法によりまして教員の給与については国も負担しておりますけれども、文部省は広島、奈良などで実際は同和教育研究協議会に勤務している教員について国庫負担は不適切であるとしてその給与を返還させましたね。どういう理由だったのか御説明いただきたいと思います。
#80
○政府参考人(矢野重典君) お尋ねの義務教育費国庫負担金の国に返還されたものといたしましては、平成九年度に奈良県から、教員が学校外にある奈良県同和教育研究会事務局で団体の事務に専ら従事していたといたしまして五十一名分、一千八百六十八万二千円、そして平成十年度には、これは広島県からでございますけれども、教員が学校外にある福山市同和教育研究協議会事務局でこれも団体の事務に専ら従事していたといたしまして二名分、百六十五万三千円の返還がございました。
 これらは、出張などの名目であっても、実態といたしましては団体の事務に専ら従事していたため、義務教育費国庫負担法の運用としてこれは国庫負担金の対象外職員として取り扱っているものでございます。
#81
○林紀子君 これに関連して熊代発議者に再びお聞きしたいのですが、ある県では県単事業として、小学校、中学校、高校から十三人の教員を選んで、長期研修の名目で同和教育研究協議会の運営に当たらせておりまして、本来の学校教育の任務から離れて専ら同和教育を推進し県下に普及する、こういう役割をさせられているわけですね。このような例は、福岡県、三重県、滋賀県、岡山県、兵庫県等々かなり各地で行われているわけです。
 この法案では地方公共団体の責務というのを定めているわけですけれども、この責務というのはこういう事例までも認めることになるのでしょうか。
#82
○衆議院議員(熊代昭彦君) 委員御指摘の案件につきまして十分承知しておりません。具体的なことを申し上げる立場にございませんが、行政の中立性の目から見て不適切なことは断固としてやめるのが行政の責務でございます。
 抽象的にそういうことでございまして、人権法というのはそういう人権としての中立的なものでありまして、ある団体が必ず人権を侵害されて、ある団体は必ず侵害しているというようなことでない、ある人が侵害しているということでないということでございます。
 行政が独立性を回復してしっかりしてほしいというのが私どもの考え方でございまして、国の行政機関であれば私どもが直接監督いたしますし、都道府県でございますれば地方自治でございますので地方の議会が監督すべきであるというふうに考えるところでございますが、いずれにしましても私は具体的なことを存じてはおりませんので、一般的なことを申し上げさせていただきます。
#83
○林紀子君 一般的にお答えいただいたわけですけれども、しかし国庫負担としては認められない、返還までさせたものが地方の負担では認められる、これはどう考えても整合性がない、おかしい問題だというふうに思うわけですね。主体性を欠いた行政運営そのものだというふうに思うわけです。
 私は熊代発議者が書かれたこの「同和問題解決への展望」というのも読ませていただきました。そして、その中で「行政の主体性の確立のための方策」というのを書かれているわけですが、先ほどの教育の中立性の問題も含めてですけれども、「地方公共団体においては、民間運動団体との対応に腐心している状況も見られるので、そのような地方公共団体の主体性の確立については、国は積極的な助言、指導を行うべきである。」ということでその方向性を示していらっしゃるわけですね。
 八六年の意見具申が出されたときに本当にそういう立場が貫かれておりましたら、今私が指摘をいたしましたようなことが地方でいろいろ起こるということは本当になかったんじゃないかというふうに思うわけなんですけれども、地域の特性に応じてとか、それから自治体の判断に任せるとか、そういうことはこの法案では考えないということでよろしいわけですね。
#84
○衆議院議員(熊代昭彦君) 私の著書を御引用いただきましてまことにありがとうございます。
 当時と現在とでは少し地方自治の考え方が変わっていると思います。いずれにいたしましても、国が主体的に地方を指導するというのは、対等な立場でやっていかなきゃいかぬのじゃないかというふうな地方分権推進法も出てまいりましたので、必ずしも当時と同じように国が積極的に指導するということではないと思いますけれども、国は精神をはっきりさせて原理原則をはっきりさせなければならないと思います。それに基づいて各地方公共団体がしっかりと判断していただきまして、行政は行政の強制力も持っているわけでございますので、地方公共団体としての行政の立場を貫いていただきたいというのが私どもの願いでございますし、この法律の精神でもございます。
#85
○林紀子君 今回の法案では、国民の中にある差別意識というのを殊さら取り上げまして、これを除去することが国や地方公共団体の責務だというふうにうたっているわけですけれども、現に地方公共団体が解同の意のままに行っている人権啓発、こういうものがさらにこの法律で力を得て、大手を振ってまかり通るようになるのではないか、ますます助長されるのではないかという懸念を私は大変大きく持っているわけなんです。
 人権についての、まさに人権という名前で行われているわけですけれども、市民総学習ということが広島県では東部でも北部でも大変広く行われております。この四、五年、特にこれが強まっているということなんですね。
 広島県の府中市では、この市民総学習に一軒に一人は必ず参加するように行政から言われて、町内会が中心となって全戸ローラーで参加が呼びかけられる。嫌でも嫌とは言えない、疑問があっても自由に口には出せない、まさに人権啓発の名による人権侵害というのが行われているわけです。こういう事実は御存じですか。
#86
○衆議院議員(熊代昭彦君) 各地方の問題につきまして具体的に承知していると申し上げる立場にはございませんし、実際問題としてもなかなかそこまでフォローできないところでございます。
 いずれにいたしましても、この法律第一条は「不当な差別の発生等」ということでございます。不当な差別というのは同和問題だけではございません。あらゆる差別でございます。
 力ある団体は力ある団体としてしっかりと自己制御力を持ってほしい、正義の原則に立って力を発揮してほしいというのが私の願いでございまして、力ある団体に弱いことを言って弱い人間に強いことを言うというようなことは一切私どもはやりません。それは人権の精神に反していることでございます。そのような精神に基づきましてこの法律は執行されるべきであるというふうに考えているところでございます。
#87
○林紀子君 今具体的なことは知らないというお話ですけれども、こういう事態があるということを私は率直に申し上げなくちゃいけないというふうに思うわけです。
 強い団体は力を制御するようにというふうなお話がありましたけれども、それが制御されないでまかり通ってきたところが今までの大変な同和の名による人権侵害ということなんだと思うわけです。
 こういうことが行われている府中市住民はこう言っております。「府中市=解放同盟。このカラーを消すべき。市職もどっぷり解同で考えが古い」、「小、中、高校のときに解放教育を受けましたが、卒業してからも市民総学習があり、いささかうんざりです。もう中止してほしいと思います。」。また、「同和行政、解放教育など市民全体が振り回されている。ただちにやめるべきだ。とくに市民総学習など出席者の名前を書かせたり、写真を撮るなどもってのほかだと思う。差別を受けているのは一般市民のほうだと思う。」、「一握りの団体に市民学習といった無意味な集会を強いられ、一人として大きな声で迷惑を口にしない。糾弾が恐ろしいだけの年中行事。やればやるだけ差別意識ができはしないか。」、こういう声がもう本当に噴き出しているわけですね。
 答申では、国が「地方公共団体に委託して行う啓発活動は非常に意義がある。そこで、これまでの同和問題に関する啓発活動の成果を踏まえながら、この事業を一層拡充していく必要がある。」というふうにうたっているわけですけれども、広島で行われているこういうような市民啓発がこれからも行われるのかどうか、そのことはどういうふうにお考えになりますでしょうか。
#88
○衆議院議員(熊代昭彦君) 委員御指摘のことは、この法律がてことなってそういう実態がさらに悪化するんじゃないかと、そういう意味での御指摘だと思います。各県に生じている事象をそれぞれ私が解釈するわけにもまいりません。そういう御指摘として回答を申し上げたいと思います。
 いずれにいたしましても、人権問題というとらえ方はかつての同和問題のとらえ方ではございません。かつてそういうことが行われて、それがまだ引き続いて行われているということがもし実態であれば、人権問題というとらえ方で、この法律のとらえ方でそれも是正してもらいたいというのが私どもの願いでございます。一つ一つ生じている事象を正義の原則に基づいて行政当局もしっかりとやってもらわなければならないし、団体もしかし正義の原則に基づいてやってくださるであろうし、それも期待したいということでございます。
 現実にいろいろな事象が生じますけれども、あらゆるものは正義の原則に、そして人権尊重の原則に従ってやっていただきたい、そういう願いを込めてこの法律を出させていただいたわけでございます。
 御理解を賜りたいと思います。
#89
○林紀子君 あらゆる人権の問題がうまくいくようにということでこれを出したんだと言いますけれども、しかし今、人権の名前で行われている同和の問題というのはこの法律によっても何の歯どめもかけられない、それどころか、かえって人権だ人権だということでこういう押しつけがさらに広まる、それを励ますことになるんじゃないかということを私は申し上げているわけで、どうしてもそこのところがすれ違ってしまうわけですが、熊代発議者は、あの意見具申を出されたときに実情を本当によく御存じなわけですから、そのことを言い出すととまらなくなってしまうというか、どうしても真実のところに目を向けなければいけなくなってしまうということなんじゃないかと思うわけですね。
 広島県では、わかっている限りで校長先生や先生たち十六人が部落解放同盟による確認、糾弾ということでみずから命を落としました。
 宮澤大蔵大臣が昨年の参議院の予算委員会で自民党議員の質問に答えてこういう答弁をなさっております。この同和問題というのは、きのうきょうの問題ではなく、四十年ほどの歴史がある。それも広島県のほとんど東部に限られた問題だった。それは私がまさに選ばれてきた地域であり、四十年間たくさんの人が闘ってきた。こうやって今命を落とされた人の報道があったが、人の知ると知らないとにかかわらず、たくさんの人がいわばリンチに遭い、職を失い、あるいは失望して公職をやめる、それは無限にある。何でその闘いが勝てなかったかというと、基本的には部落という問題に関係があるために、それについて報道することが差別発言になるということを報道機関は常に恐れていて、このことを口にすることはできない。天敵は共産党であります。共産党だけは実に勇敢に発言をしてきましたが、それ以外は、これについての差別発言を批判されるために世論の形成ができない、これが一番の原因であったと思います。私自身も、そういう中にあって、このことについて今日までこの事態の解決に十分な寄与をできなかったことを恥ずかしく思っていると。
 こういうふうに述べていらっしゃるわけですけれども、この宮澤大蔵大臣の発言は真摯に受けとめるべきではないかと思いますが、熊代発議者、いかがですか。
#90
○衆議院議員(熊代昭彦君) 私、宮澤先生の御発言を確認しているわけではございませんが、読み上げていただいた限りでは非常に真摯な御発言だというふうに思います。
 確認、糾弾につきましては、差別者であるから仕方がないということではなくて、確認、糾弾はいろいろと問題がある、人権啓発の手段として好ましくないということは既に確立されているというのが中央政府といいますか政府の見解でございます。法務省の見解でもございますし、地域改善対策協議会の答申にもございました。むしろ、怖い、避けた方がいいという意識を生じさせて新たな差別を生ずるものであろうということでございます。
 正式の人権擁護機関の手続や裁判所の手続にのっとらないということでございますから、どうしても行き過ぎが生じてくるということでございますので、これを断固としてやめていただかなければならない。力ある団体はみずからの判断でやめていただく必要があるだろうと。それがなされないときには行政当局がみずからまず関与しないと、そしてそれは行政当局の力でやめていただく必要があるだろうというふうに思います。
 それから、地方自治でございますから、それぞれの地方でしっかりと考えていただかなければならないと思います。そういう意味で、行政もそうでございますが、個人も人権のために闘っていただかなければならないというふうに思います。
 いずれにしましても、そういう問題も含めてこの人権教育推進法でしっかりと対処していただきたいという思いでございます。
#91
○林紀子君 ことし、広島県では、県知事、県教委、解放同盟などが結びました八者合意というのを正式に破棄しまして、教育長が県議会で解放教育基底論は誤った考え方だ、教育と政治運動や社会運動は明確に区別されるべきものだとはっきり答弁をいたしまして、部落解放同盟による教育介入をやめようということにようやく一歩を踏み出したわけですね。
 しかし、この法案は人権一般を装っていますけれども、その実体とねらいは、今までお示ししてきましたように、解同の不当な糾弾などの運動を事実上長引かせ、それによる人権侵害を根絶するどころかさらに続けさせることになる、そういう法案だという懸念を、今御答弁いただきましたが、どうしても払拭することはできません。
 こうした法案は時代を逆行させるものであり、決して認めることはできないということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。
#92
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 人権の二十一世紀へ向けて、ちょうど二〇〇〇年の最後の冬に人権教育・啓発に関する基本法ができることを大変うれしく思っております。民主、社民党も合同で提案を出したのですが、与党の方たちも人権啓発に関する法律ということで御尽力いただいて一つの法律が出てきて、きょうこれが審議できることを大変うれしく思っております。
 それで、財政上の措置が九条にありますが、この財政上の措置について条文は抽象的です。国は地方公共団体に対し財政上の措置を講ずることができると条文にありますが、この具体的な中身についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。発議者、お願いいたします。
#93
○衆議院議員(東順治君) 財政上の措置でございますけれども、これまで国は委託の方法やあるいは補助金の交付等でさまざまに財政上の措置を講じてまいりましたけれども、要はこの法的裏づけによってこれからさらに充実が期される、こういう意味合いを持っているというふうに思うわけでございます。
 ちなみに、これまでの法務省所管の人権啓発地方委託事業の予算額というのは、例えば平成十一年度約七億九千万円が平成十二年度は約二十四億一千九百万円と伸びておりますし、あるいはまた中央委託事業の予算額、これが平成十一年度約一億四千六百万円が三億九千八百万円ということに伸びておりまして、その他補助金交付もございますけれども、いずれにしてもこういうふうに講じられてきた措置というものが法律の裏づけによってさらに充実が期されていく、こういうふうに思います。
#94
○福島瑞穂君 国が地方公共団体に対し積極的に財政上の措置を、補助を出すなどをやっていただきたいんですが、いかがでしょうか。
#95
○衆議院議員(東順治君) この法的な裏づけが今回でできますれば、より前向きなそういう財政上の措置が講じられるということであると思います。
 以上です。
#96
○福島瑞穂君 ぜひ積極的な国からの財政上の措置が進められるようによろしくお願いします。
 次に、先ほど竹村委員からもあったのですが、内閣府にこの担当官庁を置くのか法務省に置くのかというのは立法上の一つの大きな争点だったと思います。法務省が頑張るということなんですが、人権政策は内閣全体でその取り組みに努めるべき横断的な問題であるというふうに思います。内閣府に移管するとか、そういうことは将来ないのでしょうか。
#97
○衆議院議員(東順治君) 先ほどもかなり濃密な議論がございましたので重複する部分があるかと思いますが、要するに今のスタンスというものは、人権啓発については法務省、人権教育については文部科学省、ここの両省というものを中心としながら関係省庁が連携をとり合って対応していこうということが基本なわけでございますが、ただしこの見直し条項で、第二条で、この法律は施行の日から三年以内に見直しを行うという部分がございます。
 この見直しというもののとらえ方ですが、今後の審議会の最終答申等も当然踏まえての見直しも生じてくるだろうし、今、福島委員がおっしゃるようなそういったことも可能性としていろいろ検討されるようになるのであろうと。見直しということはあらゆる可能性を含む、こういうことでございますので、今の段階で硬直した閉鎖的なそういう発想ではないということは言えると思います。
#98
○福島瑞穂君 人権教育・啓発についてはすべての国民が対象になるわけですが、特に公務員に対する人権教育が重要だと思います。
 先ほども出ておりますが、国際人権規約B規約の勧告の中では、特に法執行官と言われる人々、あるいは裁判官に対する研修も、特別にB規約の規約人権委員会の方から日本は勧告を受けております。公務員に対する人権教育についてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。
#99
○衆議院議員(東順治君) 公務員に対する人権教育、今、福島委員がおっしゃる重要性は私も全くそのとおりだろうと思います。
 人権教育を推進するに当たりましては、当然ながら公務員に対する人権教育というのは非常に重要でございまして、特に人権に深いかかわりを持つそういう職務にある人たちについては、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画、それにおきまして特にその取り組みの強化の必要性が掲げられておりますし、また昨年七月に出されました人権擁護推進審議会の答申においてもその研修の充実というものが求められているところでございます。
 この公務員に対する人権教育の問題につきましては、従来からそれぞれの省庁において日常の業務の指導監督や各種の研修、それらを通して人権をめぐる諸問題に関する訓練、啓発を実施しているものと考えられますけれども、これらの措置が今後さらに一層充実したものになることを期待しております。
 さらに、B規約について言及なさいましたけれども、これも御指摘のとおり、B規約と我が国が批准してきた条約等に示されている基準も参考とすべきであると考えます。これらの国際的な潮流というものを十分視野に入れて推進していくことが大切であろう、こう考えております。
#100
○福島瑞穂君 公務員に対する人権教育について非常に踏み込んだ形ではっきり述べていただいて、大変ありがたく思います。
 また、答弁の中で、条約を踏まえてということで、もう一歩踏み込んで言っていただいたんですが、先ほども竹村さんの方からもありましたが、特に日本が批准しているさまざまな条約及びその条約の委員会から出ている勧告、それから例えば具体的には被拘禁者の国際準則やさまざまな国際的な準則、国際水準に関するいろんな細則もあります。そういうものをわかりやすく、あるいはきちっと公務員に対してもっともっと研修をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#101
○衆議院議員(東順治君) 私は大変重要な指摘だと考えます。今御指摘のさまざまな国際的な規約等につきましては、いろいろと具体的なお話がございまして、そのとおりであると考えます。
 そういう中で、今もっと具体的にということでございますが、十分これは検討していかなきゃいけない事柄だと考えております。
#102
○福島瑞穂君 よく政治家のセクシュアルハラスメントの事件などが報道されますが、例えば政治家に対する人権研修などもやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#103
○衆議院議員(東順治君) 非常に具体的な質問でございまして、政治家に対する研修、それも当然検討に値する中に含まれることなんだろうと思いますけれども、時代の流れの中で必要なものというのは常に生じてくるわけで、やはりそういうときは弾力性を持って大胆にやるべきものはやっていかなきゃいけない、そういうふうに考えます。
 人権というものは人間と人間が生きていく上で極めて重要なことでございまして、それはさまざまな生活、さまざまな分野に生じてくる問題でございまして、そういうことから考えましたら、今、委員の御質問のごときこともやがては必要になってくるのかなと。今、必要だと思っておられるのかもしれませんが、十分検討に値することだと思います。
#104
○福島瑞穂君 基本計画の策定について、先ほど自治体、関連団体から意見を聞くべきであるという答弁がありましたけれども、もう一度その基本計画の策定について二点お聞きをいたします。
 基本計画の策定に当たっては、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画等を踏まえた上で、さらに現行法の改正なども視野に入れて策定すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#105
○衆議院議員(東順治君) 基本計画というものは、要するに人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進ということが目的でございますので、この目的というものをきちんと踏まえて策定するという、これが大事であると考えます。同時に、今回の基本計画というのは、国民に人権尊重の理念というものを深め体得していただく、そういう視点の上から、中長期的な展望のもとにこれに資する各種の基本的な施策を盛り込んだものが策定されたものでございます。この基本線ということをきっちり押さえていくことがまず大事であろう、こう考えます。
#106
○福島瑞穂君 ただ、総理府の審議会の答申で、例えば家庭内暴力防止法の立法化もドメスティック・バイオレンスに関しては必要であると出したように、人権問題をやっておりますと教育・啓発以外にいろんな改正なども必要になってくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#107
○衆議院議員(東順治君) 先ほど申し上げましたように、当然具体論として今御指摘のようなことは必要になってくるというふうに思います。
 ただ、今回のこの法律はいわば基本法的な性格のものでございまして、そこから派生してくるところの具体的な対応については、必要が生じれば当然立法というか、そういうことも必要になってくるだろう、私はこう考えます。
#108
○福島瑞穂君 先ほど自治体、関連団体から基本計画の策定に当たっては意見を聞くべきであるとありましたが、再度その点について確認をいたします。
#109
○衆議院議員(東順治君) 非常に重要なことだと私は考えております。
 さきの衆議院の法務委員会でこの法案を審議して採決する際に、附帯事項というものが付されました。この附帯決議で最初にこのようにうたっております。「人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定に当たっては、行政の中立性に配慮し、地方自治体や人権にかかわる民間団体等関係各方面の意見を十分に踏まえること。」ということもあえて附帯決議に付しておりまして、地方公共団体と関係各方面の意見を踏まえる必要があるということは非常に重要なことであろう、こう考えております。
#110
○福島瑞穂君 基本計画の策定に当たってNGOや自治体の意見を積極的に取り入れるべきだという答弁は本当にありがとうございます。
 さらにお聞きします。
 人権教育及び人権啓発に関する基本計画に当たって、先ほどからも議論になっている国際条約、勧告、国際基準などもきちっと基本計画を策定するに当たって考慮されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
#111
○衆議院議員(東順治君) そのとおりであると考えます。
#112
○福島瑞穂君 では、今後この法律ができた後に基本計画がつくられると思うんですが、人権団体、NGOの意見も聞き、かつ国内行動計画、条約、勧告、国際基準を踏まえて基本計画はつくられるということでよろしいのですね。
#113
○衆議院議員(東順治君) そのような方向を十分踏まえて基本計画は策定すべしと、こう考えます。
#114
○福島瑞穂君 人権教育啓発推進法ができた暁にはやはりNGO、当事者の人たちの意見を大いに聞き、充実させていく必要が今後もあると思います。
 NGOや当事者の意見をどのように反映させていくかについて、お考えがあればお聞かせください。
#115
○衆議院議員(東順治君) 広く意見というものを取り入れるという、そういう場といいますか、例えば公聴会的なものとか、それはやっぱり具体的にはいろんなことを考えていかなければならないんだろうと思います。やはりより多くの、特に人権にかかわっている団体や人々の声、意見あるいは経験、そういったものをより広く集めまして、その中からより充実した基本計画をつくっていく、これは非常に大切なことでございますから、具体的な方途というものはより適格性を考慮したそういう場面というものをつくっていかなければならない、こう考えます。
#116
○福島瑞穂君 人権はあらゆる場面で問題があるわけですが、せっかく憲法があっても性差別はなかなかなくなりませんし、外国人差別、受刑者、死刑確定者、それから部落差別の問題ではいまだに結婚差別、就職差別がありますし、身元調査の事件もたくさん起きております。また、アイヌ、沖縄の人たちの差別、本当にさまざまな差別があることは御存じだと思います。
 条文の「社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生」となった場合、それぞれについて、これはちょっと通告をしていないので済みませんが、発議者はそれぞれどのように考えていらっしゃるか、教えてください。
#117
○衆議院議員(東順治君) ちょっともう一度お願いします。質問の趣旨が、最後のところがよくわからなかったんですが。
#118
○福島瑞穂君 申しわけありません、質問通告していなくて。時間が少し余ったものですから。
 社会的身分、門地、人種、信条、性別、性別はよくわかりますし、信条もある程度わかりますが、社会的身分、門地、人種をどういう定義で考えていらっしゃるか、教えてください。
#119
○衆議院議員(東順治君) 例えば門地といえば、先ほどから議論になっております部落民であるとかないとか、こういったことだとか、そのことから生ずる社会的な差別、例えばですよ、というような事柄だとか、あるいは人種といえば、これは例えば在日朝鮮人・韓国人、そういう人たちに対する不当な差別だとか、いろんな具体的な事象が考えられると思います。
 したがって、ここで並べておるのは、要するにおよそあらゆる差別と言われる、そしてまた人権問題というものに抵触すると考えられるすべての事柄、こういう意味合いで並べているわけでございます。
#120
○福島瑞穂君 きょうは文部省を呼んでいないのですが、例えば川崎市は子ども条例などをつくって子供たちに子どもの権利に関する条約を知らせようとかいろんな努力をしているのですが、学校現場の中での人権啓発・教育について、発議者、お考えをお聞かせください。
#121
○衆議院議員(東順治君) 質疑通告から随分離れて直接議論みたいになっておりますが、先ほどから熊代発議者も述べておられましたように、学校教育という場面に政治的あるいは社会運動的な色彩を帯びたものが入るということは私は不当であろう、こう考えております。
 同時に、やっぱり子供たちの教育の中に、人に対して尊敬をする、あるいは人の痛みがわかる、相手の立場に立つ、そういういわゆる心のありようというようなものをしっかり教師も子供もお互いに考えていこう、そしてお互いにそういったことを議論し語り合っていきながら、人として生きることの権利の大切さ、そういったものをしっかりと体得していくという、そういう学校教育というものが私は必要であろう、こう考えます。
#122
○福島瑞穂君 冒頭にも申し上げましたが、人権の二十一世紀へ向けてこういう法律が二〇〇〇年最後の臨時国会で審議されていることは本当にうれしく思います。この法律が第一歩になって日本の中で人権の二十一世紀になることを本当に期待をいたします。
 大臣、最後に何か決意をお願いいたします。
#123
○国務大臣(保岡興治君) 二十一世紀は人権の世紀と言われるように、委員御指摘のように今世紀最後のこの国会でこういった総合的な人権の教育・啓発に関する基本法みたいな法律ができたことは高く評価されると思います。
 その趣旨を踏まえて、この法律の求めている基本計画その他もろもろの点に留意して、一生懸命人権の擁護のために、人権確保のために頑張ってまいりたいと思います。
#124
○福島瑞穂君 以上です。
#125
○委員長(日笠勝之君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#126
○林紀子君 私は、日本共産党を代表して、与党三党提出の人権教育及び啓発の推進に関する法律案に対して反対の討論を行います。
 本法案は、人権教育・啓発に関する一般法の形をとっており、法文の中に同和の文言を一切使用していませんが、本法案が人権教育・啓発の名のもとに部落解放同盟による教育現場への介入にお墨つきを与え、確認・糾弾活動の合法化や同和対策の延命に根拠を与えようとするものであることは立法の経過から明らかです。ここに本法案の重大な問題があります。
 部落差別解消のための政府の施策は、今日では同和対策事業は基本的に終結しており、一部事業の残務処理を行っている段階です。二〇〇二年三月末にはすべての事業を終え、同和指定地域もなくなります。国民の間でも、かつてのような住環境や進学率の格差はなくなり、唯一残されていると言われていた結婚差別も若い世代では解消し、まさに国民融合の時代を迎えております。
 二十一世紀を前に、もはや同和の名を冠した事業はもちろん、同和を意図したいかなる立法も施策も必要のない時代を迎えているのです。
 だからこそ、法務省人権擁護推進審議会も、人権教育・啓発は国民一人一人の心のあり方に密接にかかわる問題であることから、その性質上、押しつけにならないよう留意する必要があるとして法的措置を提言せず、これを受けて政府も法的措置を見送ったのです。
 ところが、本法案はそれらを無視し、強引に議員立法として提出されました。本法案は憲法の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、」「差別されない。」の文言を入れかえてまで、殊さらに社会的身分など差別だけを取り出して、それを目的に国民への人権教育・啓発を行わせようとするものです。
 それは、確認・糾弾を背景に、国民の内心にまで入り込み、人権の名による人権侵害を引き起こすばかりか、同和教育の合法化をねらうものにほかなりません。現に、各地で依然として部落解放同盟による公教育への乱暴な介入が行われ、狭山事件の教材化やゼッケン登校などが押しつけられ、教育現場を混乱させています。確認・糾弾によって校長や教員が自殺に追い込まれる痛ましい事態もいまだ絶えておりません。
 同和地区児童生徒の旧身分暴きとプライバシー侵害が強行され、公立学校教員を同和教育研究団体に公費をつぎ込んで派遣し、同和推進事業に従事させるなどの行為も続いています。また、解放同盟主導の啓発活動なるものが自治体主催で市民に強制され、自由な発言が封じ込められるなど、政府がこれまでの同和対策で掲げてきた方針とも真っ向から反する施策が行われています。
 こうした不法な人権侵害と良心の自由の抑圧こそ憲法と法の正義の名において我が国社会から一日も早く根絶すべきであり、それこそが真に差別のない民主社会を進める道であります。
 ところが、本法案は、こうした解同の活動に悪用の口実を与えるばかりか、国や自治体に行政の権力をかりて国民の意識へのさらなる教育・啓発の責務を負わせるものです。これでは憲法で保障されている思想、良心の自由、表現の自由などを侵害するおそれのある法律であり、断じて認めることはできません。
 一九八六年の地対協意見具申が述べているように、今必要なのは教育と政治・社会運動とを明確に区別し、教育の中立性の確立のための徹底的な指導を行うことであり、行政の主体性の確立です。今、地方自治体では、解同と結びついた地方行政を見直す動きも始まっています。本法案は、こうした方向を逆行させる根拠ともなるものであり、賛成することはできません。
 以上の理由から、本法案に対し強く反対することを表明して、討論を終わります。
#127
○委員長(日笠勝之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#128
○委員長(日笠勝之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、江田五月君から発言を求められておりますので、これを許します。江田五月君。
#129
○江田五月君 私は、ただいま可決されました人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派共同提案による附帯決議を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    人権教育及び人権啓発の推進に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、「人権の二十一世紀」を実現するため、本法の施行に当たっては、次の諸点について格段の努力をすべきである。
 一 人権教育及び人権啓発の推進に関する本法の基本理念並びに国、地方公共団体及び国民の責務について周知徹底を図り、特に公務員による人権侵害のないよう適切な措置を講ずること。
 二 人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定に当たっては、地方公共団体や人権にかかわる民間団体等関係各方面の意見を十分に踏まえること。
 三 人権教育及び人権啓発に関する基本計画は、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画等を踏まえ、充実したものにすること。
 四 人権政策は、政治の根底・基本に置くべき重要課題であることにかんがみ、内閣全体でその取組に努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#130
○委員長(日笠勝之君) ただいま江田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#131
○委員長(日笠勝之君) 多数と認めます。よって、江田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、保岡法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。保岡法務大臣。
#132
○国務大臣(保岡興治君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#133
○委員長(日笠勝之君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#134
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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