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2000/10/19 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第4号
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2000/10/19 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第4号

#1
第150回国会 本会議 第4号
平成十二年十月十九日(木曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四号
  平成十二年十月十九日
   午前十時開議
 第一 議長辞任の件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、新議員の紹介
 一、日程第一
 一、議長の選挙
 一、この際、休憩することの動議(金田勝年君
  提出)
 一、議長不信任決議案(久保亘君外三名発議)
  (委員会審査省略要求事件)
 一、この際、日程に追加して公職選挙法の一部
  を改正する法律案を議題とすることの動議(
  森山裕君提出)
 一、公職選挙法の一部を改正する法律案(片山
  虎之助君外四名発議)

     ─────・─────
#3
○副議長(菅野久光君) これより会議を開きます。
 この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。
 議席第三十三番、比例代表選出議員、清水達雄君。
   〔清水達雄君起立、拍手〕
#4
○副議長(菅野久光君) 議長は、本院規則第三十条の規定により、清水達雄君を国土・環境委員に指名いたします。
     ─────・─────
#5
○副議長(菅野久光君) 日程第一 議長辞任の件
 昨十八日、議長斎藤十朗君から辞任願が提出されました。
 辞表を参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
   辞職願
                   私儀、
 今般、議長の権威保つこと叶わず、議長の職を
 辞することといたします。
   平成十二年十月十八日
                斎藤 十朗
  参議院副議長 菅野 久光殿
#6
○副議長(菅野久光君) 議長の辞任を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○副議長(菅野久光君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#8
○副議長(菅野久光君) これより議長の選挙を行います。
 投票は無名投票でございます。議席に配付してございます白色の無名投票用紙に被選挙人の氏名を記入して、白色の木札の名刺とともに、御登壇の上、御投票を願います。
 氏名点呼を行います。
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#9
○副議長(菅野久光君) 投票漏れはございませんか。──投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#10
○副議長(菅野久光君) これより開票いたします。投票を参事に点検させます。
   〔参事投票及び名刺を計算、投票を点検〕
#11
○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百三十九票
 名刺の数もこれと符合いたしております。
 本投票の過半数は百二十票でございます。
  井上裕君        二百二十二票
   〔拍手〕
  田名部匡省君          七票
  佐藤道夫君           一票
  白票              九票
 よって、井上裕君が議長に当選せられました。
   〔拍手〕
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔参事 議長井上裕君を演壇に導く〕
#12
○副議長(菅野久光君) ただいま議長に当選せられました井上裕君を御紹介いたします。
   〔拍手〕
#13
○井上裕君 一言ごあいさつ申し上げます。
 ただいま、皆様の御推挙によりまして、図らずも私が第二十三代参議院議長の職につくことと相なりました。
 まことに身に余る光栄であり、同時にその職責の重さに身の引き締まる思いがいたします。
 微力ではございますが、国民主権の原則を大切にしながら、公正無私を旨として、議院の正常かつ円満な運営を図り、もって本院の権威の高揚と使命達成のため、全力を尽くす覚悟でございます。
 何とぞ皆様方の一層の御支援と御協力を心からお願い申し上げまして、就任のごあいさつといたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔議長井上裕君議長席に着く〕
     ─────・─────
#14
○議長(井上裕君) しばらくそのままお待ちください。
 ただいま理事が協議中でございますので、しばらくお待ちください。
 金田勝年君から、賛成者を得て、
 この際、休憩することの動議が提出されました。
 これより本動議の採決をいたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#15
○議長(井上裕君) 過半数と認めます。
 よって、本動議は可決されました。(拍手)
 これにて休憩いたします。
   午前十時三十三分休憩
     ─────・─────
   午後二時三十一分開議
#16
○議長(井上裕君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。(発言する者多し)
 暫時休憩いたします。
   午後二時三十三分休憩
     ─────・─────
   午後三時四十九分開議
#17
○副議長(菅野久光君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 久保亘君外三名から、委員会審査省略要求書を付して、議長不信任決議案が提出されました。
 お諮りいたします。
 議長不信任決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○副議長(菅野久光君) 御異議ないと認めます。
 よって、本決議案を議題といたします。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。久保亘君。
    ─────────────
   〔議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔久保亘君登壇、拍手〕
#19
○久保亘君 私は、民主党・新緑風会、日本共産党、社会民主党・護憲連合、自由党を代表し、井上裕参議院議長の不信任決議案の提案理由を説明いたします。
    議長不信任決議案
  本院は、議長井上裕君を信任しない。
  右決議する。
 斎藤十朗前議長が議長の権威を保つことかなわずという前代未聞の理由で議長を辞職し、与党の無法なやり方に身をもって抗議の意志を明らかにしているにもかかわらず、井上裕新議長は、その反省のかけらすら見せないまま、辞職の原因となった公職選挙法改正案を可決するため、議院運営委員会理事会の開会を黙認して、議題に追加することまで強行しました。
 井上新議長は、就任に当たって、議会の運営に当たって公正円満な運営をけさ約束されたばかりであります。私どもは、その重大な背反行為に対して、憤りを込めてこの不信任決議案を提出するものであります。(発言する者多し)
 井上新議長は、斎藤前議長が辞職した経緯を知りながら、与党の極めて不見識な提案を取り上げ、公職選挙法改正案を議題とする本会議のベルを押した。このような議案を議題とする行為は、およそ良識の府たる参議院の議長として不見識であり、事前に与党と謀議していると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 斎藤前議長が示したあっせん案の前文に、今日のこの国会の混乱の主たる要因について明確に述べられております。定数問題でいまだ決着していないのに新しい問題を提起し、国会に混乱を惹起したことは極めて遺憾であると述べられているのであります。
 そして加えて、このような議会制民主主義の基本ともいうべき選挙制度の改革に関する問題を野党の出席しない状態の中で審議、決定することは極めて遺憾であり、そのようなことは絶対に避けなければならないという議長の見識をあっせん案の中に示されていることは私どもの高く評価するところであります。
 しかし、あっせん案は、そのような原因の分析や、これらの問題を取り扱うに当たっての基本的な理念に基づく具体的な内容を示していなかった点において、なお論議すべき問題を残していたのであります。私どもはそのことを強く求めたのでありますが、とにかく本問題について速やかに数を頼んで議決したい、そういう与党の数の横暴によってこれらの良識は我が参議院においてもじゅうりんされたのであります。
 事の経緯を踏まえつつも、慣例に従い、本日、与党第一党の議長に投票した我々に対して、議長の約束は一体どうなったのであろうか。結局、新議長もまた党利党略の任務を遂行するために与党によって議長の席に送られたと言っても過言ではありません。
 そもそも、この選挙制度改革に関する問題は、斎藤前議長のもとに協議会が設置され、本年二月二十五日に至るまで九回にわたって真剣な議論が積み重ねられてまいりました。協議会報告書にまとめられていることは既に協議会の須藤という座長から各派代表者懇談会に報告され、(発言する者あり)その中で特に、来年七月に行われる選挙制度については、次回の通常選挙に間に合わせることは時間的に困難であり、現行の比例代表制と選挙区制という制度の基本的な枠組みは維持するとされており、この報告は各派代表者懇談会で了承されたものであります。議長のもとで与野党が合意したのであり、それを無視し、唐突に与党に有利な非拘束名簿方式の導入を持ち出し、法案の採決まで強行しようとしていることは、与野党間の信義にもとるものであるばかりか、民主主義を冒涜していると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 選挙制度という主権者たる国民の参政権にかかわる重要な問題について、本会議での趣旨説明を省略して委員会に付託し、与党だけでわずか四日の委員会審議を行い、野党抜きで採決し、本会議に上程するなど、参議院始まって以来の暴挙であり、議会制民主主義の否定そのものであると断ぜざるを得ないのであります。
 また、この公職選挙法改正案の与党の数の力による強引な審議の背景にあるものは、久世前金融再生委員長の辞任に端を発する自民党の不透明な比例順位決定問題隠しであることは明白で、動機不純と言わなければなりません。本来、その経緯から、本会議の議題とするにはおろか、提出を撤回させることが当然であるにもかかわらず、議長就任と同時に党利党略に加担し、与野党間で十分な協議を行う努力を全くせず、本会議での採決に持ち込もうとするなど、公平中立な議長として到底許される行為ではありません。議長として不適格であり、我々はこのような議員に国権の最高機関たる本院の議長職を預からせることはできません。
 本日、井上裕君に投票した我々は、大変無念の思いを持ちながら、ここに不信任決議案を提出するものであります。
 議員各位の御賛同を心からお願いを申し上げて、提案理由の説明といたします。(拍手)
    ─────────────
#20
○副議長(菅野久光君) 本決議案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。吉村剛太郎君。
   〔吉村剛太郎君登壇、拍手〕
#21
○吉村剛太郎君 私は、自由民主党・保守党及び公明党を代表して、ただいま提案となりました井上議長に対する不信任決議案について、断固反対の立場から討論いたします。(拍手)
 この本会議は、一週間も前に何ら瑕疵なく特別委員会で可決された法案について、正当な手順として採決を行うために再開されたものであります。
 井上議長は、公正中立の立場から本会議を再開されたものでありますが、これをもって、つい先ほど圧倒的大多数の支持により選出されたばかりの新議長に対し不信任を突きつける野党は、国会の根本秩序を破壊しようとするものであると断ぜざるを得ません。(発言する者多し)
 そもそも、斎藤前議長の辞意表明となった事態については、特別委員会の設置、審議、採決について正当な手続に沿って実施したにもかかわらず、野党が特別委員会の名簿の提出拒否に始まり、審議拒否を続け、議会のルールを無視し続けたことにあります。
 野党は、法案反対の根拠として、昨年六月、参議院の各会派代表者懇談会のもとで設けられた実務者から成る参議院選挙制度改革に関する協議会の報告(二月)に反することを挙げていますが、各会派の最終合意の場は、あくまでも代表者懇談会であります。ここでは定数削減を含めて何もまとまらなかったにもかかわらず、野党は実務者協議の前提となったと記した協議会報告を各党、各会派の合意と勝手に位置づけ、与党の改革案がそれに違反すると言うのは、野党のまさに党利党略的な主張であります。(拍手)
 斎藤議長は、与党が法案を提出する前日の十月二日には各会派代表者懇談会の開催を呼びかけられましたが、野党は開催の直前になって拒否回答を行ってきた経緯があり、頭から嫌な法案は審議拒否を貫くという方針であったことは明白であります。
 国民の目に見える国会の場で法案の当否の論議を行うのが議会制民主主義のルールであり、それでこそ言論の府であります。それを完全に拒否するのみならず、議院運営委員会の法案の特別委員会への付託・採決を野党は実力で阻止しようとして、議院運営委員長初め多数のけが人を出したことは暴挙としか言いようがありません。
 斎藤議長が十六日提案されたあっせん案については、与党三党で真摯に検討しましたが、与野党ともあっせん案に同意に至らず、残念ながら不調に終わりました。
 与党三党のあっせん案に対する見解としては、次のとおりであります。
 議員定数削減は、行政改革、民間のリストラ等の進展、国民の要望等を踏まえて十名削減したものであり、逆転区の解消にとどめるのは適当ではない。
 拘束・非拘束名簿混合方式は、次の理由で採用することはできない。
 一、拘束・非拘束名簿混合方式は、選ぶ方にも選ばれる方にも複雑、不透明でわかりにくく、平成六年以降において具体化、実現を見なかったのである。
 二、与党三党は、このような事情も踏まえ、平成二年の第八次選挙制度審議会の答申に沿った非拘束方式が候補者の顔の見える最も適切な改革であると判断したのであります。
 斎藤前議長におかれましては、五年二カ月にわたり参議院議長として参議院の改革等に御尽力されたことに対し、この場をかりて改めて敬意を表したいと存じます。
 参議院選挙制度の改革は十数年来の懸案であり、国の将来にかかわる重大な課題が山積し、国民の政治意識が急速に多様化する今日、国民の多元的な意思を政治によりよく反映し、参議院の独自性を十分に発揮する参議院選挙制度の改革をもはや先送りできないと判断しました。責任ある与党としては、このような認識に立って、公職選挙法改正案が一日も早く成立するよう取り組んでまいります。
 二十世紀最後の今国会は中盤に差しかかりつつありますが、多くの重要法案が衆議院も巻き込んだ野党の審議ボイコット作戦によってほとんど審議が進んでおりません。このような事態を招いた野党の猛省を促すとともに、井上議長におかれましては、今までの豊かな御経験、高い御見識を生かされ、良識、言論の府として参議院がよみがえるよう御尽力されんことを切に御期待申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)
#22
○副議長(菅野久光君) 江田五月君。
   〔江田五月君登壇、拍手〕
#23
○江田五月君 私は、ただいま議題となりました本院議長井上裕君に対する不信任案につき、民主党・新緑風会を代表して、賛成の立場から意見を申し述べます。(拍手)
 井上新議長には、けさほど選ばれたばかりで、本来なら就任のお祝いを申し上げたいところであります。しかし、就任のお祝いにかえて、不信任案提出ということになりました。まことに遺憾です。本当に残念至極でございます。
 実は、私は昨年夏、本日午前中に辞任が許可された斎藤前議長に対し、不信任案に賛成の立場からの討論をいたしました。そのときにも、大変緊張した国会の中で、ぶっつけ本番、ノー原稿、メモだけで意見を申し上げることになってしまいました。本日も、つい先ほど賛成討論をやれということで、たくさんペーパーはありますが、メモが何枚かあるだけ。決してこういう意見の申し上げ方は私の本意ではありません。しかし、私は、今回本当に井上新議長に対して腹の底から怒りを感じております。
 斎藤さんのときにはまだそれでも、議長の立場も苦しいだろう、こちらの立場もある、そういう思いを込めて斎藤議長に、私が今から二十三年前に初めて本院に当選させていただいたころのことを、思い出もまぜながらお話を申し上げました。
 しかし、今回はやや趣が違う。井上新議長、あなたはけさほど就任あいさつの中で一体何と言われましたか。まだけさのことですから、私もビデオを見て、そこから文字を起こしてみました。
 最初に、図らずもということで、職につくことと相なったということがありました。まことに身に余る光栄であり、同時にその職責の重さに身の引き締まる思いがいたしますと、こうおっしゃっているじゃありませんか。そして、微力ではございますが、国民主権の原則を大切にしながら、その次ですよ、公正無私を旨としと、こう言っているんです。議院の正常かつ円満な運営を図りと言っているんですよ。議院の正常かつ円満な運営を図り、もって本院の権威の高揚と使命達成のため、全力を尽くす覚悟でございますと、こうおっしゃったんですね。けさのことですよ。まだその舌の根の乾かないうちに、今度は一体何をしようとされるのか。
 最近、皆さん、政治家の言葉が随分軽くなったということが言われます。政治家の言葉の重さ、しっかりとお互いに思いをいたさなきゃならぬと思いますが、この井上新議長のけさのあいさつほど軽々しい、まさにかんなくずのような言葉はないんじゃないかと、私は怒りを込めて糾弾をしたい。(発言する者あり)
 まさにむなしいですよ。いいですか、公正無私を旨とし、議院の正常かつ円満な運営を図る、もって本院の権威の高揚と使命達成のため全力を尽くす。けさ就任されてただいままでの間に、井上議長は一体いかなる努力をされたのか、何をしたのか、何一つやっていないじゃないか。本院の権威の高揚、使命達成、議院の正常かつ円満な運営に逆行することしかしていない。そうやって、今この本会議で非拘束名簿方式の法案を採決しようとされる。まさに朝の言葉と逆行ですよ。これでは不信任案を出さざるを得ない。
 けさの新聞では、井上新議長について幾つか人物評が載っています。「温厚で控えめな性格には定評がある。」。そうでしょう。あるいは、ある新聞には、「座右の銘は「失意泰然、得意泰然」。」と、こう書いてある。私はこれは違うと思います。実は、お互い麹町の宿舎の前にある小さなお魚屋さん、存じておられる方も多いと思いますが、あそこに、御存じですか、井上議長の色紙がかかっていますね。あの言葉は、失意泰然 得意泰然ではありません。「得意淡然 失意泰然」、こう書いておられる。温厚で控え目、得意淡然 失意泰然、立派なことです。立派なことですが、それはこういうときに何もしないということでいいのかということですよ。温厚で控え目だから、全部何事も控え目で、自民党の国対筋の言いなりになってそれで議長と言えるかということなんです。(拍手)
 私は、それぞれいろんな立場があること、それはよくわかりますよ。しかし、皆さんね、けさ議長になったばかりで、しかも午前中にああいう立派なあいさつをされて、そして今ここで、国対筋か執行部か知りませんが、その言いなりで動いていくというので、一体、議長の権威はどこへ行くのか、本院の権威はどこへ行くのか。私たちは、今、けさほどの井上議長に投票したあの思いを砂をかむ思いで思い返しております。一体、私たちは何だったんだろう。
 今、もう一つの新聞には、井上議長、千葉に住む病弱の奥さんに「毎朝「がんばれよ」と激励の電話をするのが最近の日課だ。」と、こういうことが書いてあります。優しいお人柄です。しかし、朝、奥さんに頑張れよと激励の電話をかけたその電話に、今度は自民党執行部からの電話があったらそのまま従うんですか。
 私どもの中でも、けさ十時過ぎに議員総会はやりました。井上議長が与党第一党の候補者であることを知らされました。私たちの中にも、ここで「井上裕」と書くことに疑問の声もあった。しかし、それでもなお、慣例だから第一党から出す、それにみんなで従おう、これを応援しようと。そして、思いを込めて、井上さんを信頼して、みんなが「井上裕」と書けば私たちの思いもわかってくれるだろう、そういう思いでみんな井上裕さんの名前を投票用紙に書いた。
 ところが、私どもの思いは無残にも踏みにじられた。もちろん、踏みにじられた我々がばかだという、そういう説もあるかもしれない。しかし、皆さん、与党の皆さんにあえて申し上げる。本当にそういう信義のないやり方で本院の権威は守られると思っていますか。(発言する者多し)
 ここで平気でやじっている皆さんの顔を私はよく覚えておく。人の言葉の奥にある思いに何らの思いもいたすことができない、そういう人たちに言論の府を構成する資格はない。まことに言語道断な本日の措置であります。信義にもとる措置であります。
 井上議長、あなたは千葉で僻地の歯科医として仕事を始められ、どんどん発展をしていった。そして、衆議院議員から参議院に転ぜられ、海部内閣のときでしたか、文部大臣をやられた。教育に、あるいは環境に誠心誠意努力をされてきておられる、そのことを私たち皆よく知っているんです。しかし、今のこういう井上新議長の議事の采配の仕方では教育を語ってほしくない。少数意見を切り捨てる、そういう議事運営で教育を語る、そういうことでは、これは子供たちはちゃんと育つわけがない。
 私も千葉にいたことがあります。千葉のあの土地の中から出てこられた井上さんが、本当にしっかりとした議長として本院の権威を高め、今混乱状況にあるこの本院をしっかりと秩序を取り返して取り戻していく、そのために最大限の努力をされるものだと私たちは思っておりました。その思いを一顧だにせず、きょうのようなこういう議事をとられるということ、これはもうどうしても信任をするわけにはいきません。
 先ほど、斎藤前議長のことについて若干申し上げました。私は、昨日の斎藤前議長の辞職願の文言、本当に重大な文言をお書きになっていると思いますよ。今般、議長の権威保つことあたわず、議長の権威保つことあたわずと。斎藤さんにそういう言葉を書かせた、これは一体だれに責任があるか。与党じゃありませんか。与党は、与党が与党出身の斎藤議長にこういう言葉を書かせたということ、これを一体どう思っているんだ。(発言する者多し)
 思えば、今回の公選法改正案、随分長い議論がございました。私は、さっきもちょっと申し上げましたが、一九七七年、昭和五十二年に全国区で本院に当選をさせてもらいました。その全国区では、田英夫さんが一位で百五十八万票でしたね。私が二位で百三十九万余り。扇さんもおられました。今、衆議院に行かれましたが、八代英太さんもおられました。そういう全国区の選挙を私たちは、まあ私の場合はいろんな特殊事情ございましたから、銭酷区、残酷区をそれほど味わったわけじゃない。それでも知っている。あの全国区をもう一度復活させるんですか。
 あの全国区選挙のときに、皆さんわかっていますか、例えば村上孝太郎さんという人がおられました。村上さんは大蔵事務次官から参議院を目指して全国を走り回って、走れ走れ孝太郎。ところが、当選をして、その後お亡くなりになってしまった。私が当選するちょっと前です。私が当選した次の回では何が起きたか。向井長年さんという方がおられました。全国を走り回って、その結果、投票日の当日亡くなられてしまった。そのような例をいっぱい私たちは知っている。これはやっぱりいけない。
 一部のタレント候補、これは通るでしょう。しかし、本当に全国を走り回ってと思うと銭酷区あるいは残酷区、まさに身命を賭す。これはやはり人間のやることではない、こういうことで変えたわけでしょう。それを今、また全国を舞台に個人名投票を書かせるという制度にするのですか。何のために一体あのとき全国区制度を変えたんでしょう。そういう反省は一体どこへ行くのか。
 何よりまず、今回の非拘束名簿方式の導入は、先ほども久保亘さんが提案理由の説明で申し述べたとおり、動機不純ですよ、動機不純。(発言する者多し)
 久世公堯金融再生委員長の不祥事が明らかになった。幾らでしたかね、二億円でしたかね、金を出してもらった。だれに出してもらったか、某宗教団体。一万人の党員、某宗教団体で名前を出してもらった。二億円は某マンション業者でしたか、原稿がないので時々間違うかもしれませんが、そういうことが明らかになり、しかもその二億円は党費だかあるいは自民党の会館の運営費だかわからない。そのあたりのことも明らかにしようと予算委員会で証人あるいは参考人の招致をお願いしているところ。こういうことを全部隠してしまおう、国民の目をそらして、自民党の皆さんの比例名簿作成の困難、これを制度問題に変えようというだけじゃありませんか。動機不純。動機不純の第一です、それが。
 もう一つある、動機不純第二。衆議院選挙でどういうことが起きたか。ついこの六月、個人名投票で、自民党の皆さん、さすがですね、二千四百万票とっている。しかし、国民は自民党と書かない。自民党と書く人はわずか一千六百万票、その差八百万票。これを個人名の投票で何とかごまかそうという、動機不純の第二ですよ。
 手続的にもひどいですよ。二月二十五日のこと、六月二日のこと。
 私も、ここに二月二十五日の経過についてペーパーがあります。これをずっと読み出せば幾らだって時間はかけることはできますよ。(発言する者多し)読みますか。まあやめときましょう。読めば幾らだって時間はかかるけれども、時間かけるばかりが能じゃないから読みませんよ。読まないけれども、わかっているでしょうが、皆さんは。(発言する者多し)わかっていないんですか。じゃ、読みましょうか。
 報告書の「要旨」というところでは、「T 参議院の役割と在り方」、「U 当面の改革」、その次の「一、」で「拘束名簿式比例代表制と選挙区制について」、「現行の拘束名簿式比例代表制と選挙区制については、時間的な制約等もあり、現行制度を前提として議論を進めることとなった。」、「こととなった。」と書いてあるじゃありませんか。今のは要旨ですが、その後にはちゃんと全文がある。(発言する者多し)全文を読みますか。読んでもいいですよ。
 「当面の改革」「一、拘束名簿式比例代表制と選挙区制について」「(1)拘束名簿式比例代表制と選挙区制抜本改革について」、「協議会においては、当面は現行の比例代表制と選挙区制という制度の基本的な枠組みは維持することを前提としつつ、何らかの改革を行う余地があるかどうかを検討することとし、抜本改革案については、参議院の役割と在り方を踏まえつつ引き続き検討が行われるべきであることで意見が一致した。」。
 そして、その次に、「(2)拘束名簿式比例代表制について」というところで、いろいろ議論はある、いろいろ議論はあるが、「いずれにしても」から始まるんですよ。「いずれにしても、現行の拘束名簿式比例代表制の仕組みそのものを改めるとなると抜本的な改革となり、その実現は容易でないことから、」、このときにはこういうことがそんなに容易に行われちゃいけないということをみんな認識していたわけですよ。皆さんもそうなんですよ。「実現は容易でないことから、当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進めることとなった。」と明確に書いてある。
 何だったら、これ、全部読みますか。(発言する者多し)余りばかばかしいことはやめましょう、お互いに。
 いいですか、六月二日のこともあるんですよ。議長が各派の代表者をお呼びになった。そして、定数のことだけはちゃんとやろうと、こういうことをおっしゃったじゃありませんか。そういうものをすべて弊履のごとく捨て去って、今のように不純な動機で出してきたのが今回の非拘束名簿方式じゃありませんか。
 しかも、内容がまたむちゃくちゃですよ。先ほど昔の全国区の残酷区、銭酷区、これを復活させる、このことは申しました。それだけじゃありませんよ。今度は全国区ではなくて比例代表制度ですから、個人名投票で票を書かせて、そして、それを自民党の方に横流しをして別の人を当選させる。顔が見える、委員会の中で発議者が、顔が見える制度だからいいんだと一生懸命強調しておられたこと、私も聞いておりました。しかし、顔が見える人で票をとっておいて、その票を横流しをして顔の見えない人を当選させる。何ですか、一体これは。顔が見えるが聞いてちゃんちゃらおかしいじゃありませんか。国民をだますも甚だしい。
 先日、自民党の比例代表候補十七人が発表されました。十七人をずっと、これも読み上げてもいいんですが、(発言する者多し)まあまあいいでしょう、そうまで言わずに。ずっと見ますと、官僚が八人でしょう、官僚。農水省が二人、厚生省が二人でしたかね、あと建設、郵政、自治、防衛。それに、遺族会とか医師会、歯科医師会、宗教団体、スポーツ関係者が三人というんでしょう。
 全国区時代に何があったか。官僚OBの皆さんがずっと出てきて、それぞれの省庁が全国に持っているいろんな地方の組織、そしてそこへ張りついた業界団体あるいは企業、そういうものを全部縦の系列で総動員をして票を集めたんですよ。しかも各市町村、特に町村はどうなったか。町長さん、村長さんが自分のところから、やれ建設省の河川局の関係は何票出さなきゃ、あるいは農水省の構造改善局の人には何票出さなきゃ、そうでなきゃ補助金、陳情するときにそっぽを向かれる。そういうことで、縦から横から締め上げて票を集めた。役所ぐるみ、企業ぐるみ、業界ぐるみと言われたじゃありませんか。それをもう一遍やりたい。夢よもう一度。だから早々と全国区比例公認候補を決定して、今恐らく昔のあの思いをもう一度というので全国に指令を出しているんじゃありませんか。そういう選挙をまたやるんですか。
 しかも非拘束名簿ですから、比例名簿に政党が政党の見識でこの人は議会で活躍してもらおうという人を上位に置く、そんなことをしてもこれが意味がないということになってしまう。こういう、どこから見ても改悪以外の何物でもないという、そういう選挙制度になってしまっているんです。
 議長のあっせんがありました。私どもも、斎藤議長がまさに乾坤一てき、職を賭して出されたあっせん案、これを一生懸命に検討させていただいた。しかし、残念ながらこの議長のあっせん案によっても、今申し上げたような票の横流しであるとか、あるいは業界団体など総ぐるみであるとか、こういうものが直っていない。比例名簿をつくるときの困難はもっともっと違う形で解決すべきですよ。
 例えば、私のところにある方からEメールが届きました。そこにはこういうことが書いてあった。私も十分研究はしていないんですが、スウェーデンではというんです、比例名簿の発表を半年か一年か前にちゃんとやる。しかも、透明な検討の中で順位を決めて発表し、国民的にその名簿を議論する。そういうことをやったらどうですか。それをやらずに昔の制度に戻すという、そういうこそくなやり方で選挙制度がよくなると思うと、大間違いですよ。こういう今の、まあむちゃくちゃな選挙制度の改悪。自民党の皆さんももうちょっと私は考えてほしいと思う。
 私どもも今の比例制度がそのままでいいと思っていない。だから、抜本改革はやろうと言うんですよ。それより何より、最高裁判所に五倍からの差があって、それでも憲法違反でないと言わせるようなことをいつまで続けるんですか。
 一票等価というのは憲法の大原則ですよ。そのためにこそ選挙制度の改革をやろうじゃないですか。それが今では全然できていないじゃないですか。こういう支離滅裂、改悪以外の何物でもないこの非拘束名簿式法案、これを突然出してきて、私どもは、二月二十五日のこと、六月二日のことなど全部弊履のごとく捨て去る信義のないやり方は本院に似つかわしくない、そういうことで、この法案については、これは皆さんがしつらえた土俵にそのまま上がる、そういうわけにはいかない、こういう態度をとってきた。
 ところが、皆さん、どうですか。九月二十一日に臨時国会が召集されました。そして、九月二十九日ですか、斎藤前議長、議長の職権で委員を指名する、それも、あいうえお順というんですから、もう聞いてあきれる。
 十月二日には特別委員会をあえて開いて委員長選任をし、十月六日、公選法改正案を特別委員会に付託した。本会議の趣旨説明もなく、あの議運は何だったのか。過剰警備も甚だしい。あれだけ衛視を動員して何を一体やろうとするんですか。言論の府なんですか、あれが。
 六日の金曜日でした。その次の金曜日が特別委員会での採決。自民党幹事長、島根県、地震で大変だったんですよ。私は翌日、早速見に行きました。大変な状態、地震が起きたのが一時半ですよ。阪神大震災を超えるとも言われる地震が起きているのに、これに何らの思いも寄せず委員会採決を強行。何をそんなに焦っているんですか。来年の参議院選挙は今回の制度でやる、定数問題だけは解決をする、なぜ一体それができないんだ。(発言する者多し)
 焦っているその焦りの裏に何があるかを国民はちゃんと見きわめている。皆さん方は恥を知るがよい。必ず、こういう暴挙をやっていると国民は自民党に対して鉄槌を下すと思う、与党に対して。
 こういう議長をけさほど選んだ私どももあるいは不明のそしりを免れないかもしれない。その反省の思いも込めて、心から先ほど私どもが提出した本院議長井上裕君に対する不信任案に賛成の意見を申し上げて、私の討論といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
#24
○副議長(菅野久光君) 山下芳生君。
   〔山下芳生君登壇、拍手〕
#25
○山下芳生君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題とされました議長不信任決議案に対し、我が国の民主主義と参議院の権威にかけて断固賛成する立場から討論を行います。(拍手)
 この国会の異常な状態の中で、斎藤十朗前議長が辞任をされ、新たに井上裕議長が選出をされました。
 私たちは、井上新議長にあてて、選挙に先立ち、けさ次の二点の要請を行ってきました。一つ、公正、民主的な議会運営に努められたい。二つ、今日の事態の正常化を図るよう努力されたい。
 これに対し、井上議員は就任のあいさつで、国民主権の原則を大切にしながら、公正無私を旨として、議院の正常かつ円満な運営を図り、もって本院の権威の高揚と使命達成のため、全力を尽くす覚悟でございますと明確な決意を述べたはずであります。
 それからわずか六時間、その言葉の余韻が本会議場にはまだ残っております。ところが、井上議長は、議院の正常かつ円満な運営のための努力を尽くすことなく、与党の一方的要求を受け入れ、本会議を再開いたしました。
 そもそも、新たに議題として無理やり加えられた公職選挙法改悪案こそ、国会が不正常に陥った直接の原因であります。このような法案の採決強行にこの場を提供するなど、断じて許されません。それは、議長としての職責を放棄し、みずからの言明を覆す重大な背信行為であります。これが、不信任決議案に対する賛成の最大の理由であります。
 そもそも、国会の混乱が原因となって参議院議長が辞任、交代するなどというのは、かつてなかった、参議院史上初めてのことであります。自民、公明、保守の与党三党は、突然の選挙制度改変のごり押しというみずからの行為が、斎藤前議長が前例にない形でその地位を辞さなければならないほどに無法きわまるものであることを深く自覚すべきであります。(拍手)
 法案の内容に先立ち、今回の国会混乱の事態を招いた責任が、挙げて与党の三つのルール破りにあることを私は厳しく指摘したいと思います。
 第一に、参議院全会派の合意を一方的に踏みにじったルール破りであります。
 そもそも、来年の参議院選挙は現行制度で行う、つまり制度の抜本的改正は行わないというのが、だれが何と言おうと否定できない与野党すべての会派の合意であります。
 参議院各派代表者懇談会のもとに設置された参議院選挙制度改革協議会では九回も協議を重ね、本年二月に全会派の一致で報告書をまとめました。その報告書では、抜本的な改革は次回の通常選挙に間に合わせることは時間的に困難であり、抜本的な改革案については、参議院の役割とあり方を踏まえつつ引き続き検討が行われるべきであること、当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進める、このことで意見が一致したと明記しているのであります。しかも、この報告書は、議長も同席した各派代表者懇談会で了承され、いわば院の共通の意思となった文書であります。
 ところが、与党は突如この合意を踏みにじって、参議院の比例代表選挙を個人名で投票する非拘束名簿式に変更することを与党だけで勝手に決めてきたのであります。それは、斎藤前議長も、突然起こってきたとしか言いようがない、こう言わざるを得なかったように、まさに唐突に与党が提案してきたものであります。
 与党は、非拘束名簿式は、第八次選挙制度審議会で答申されたもので突然言い出したものではない、選挙制度改革協議会でも非拘束名簿式が否定されたわけではないなどとしきりに弁解をしてきました。しかし、与党の諸君は、この各党合意が形成されるまでの二年間、非拘束名簿式の導入が必要との提案をただの一度もしなかったではありませんか。
 私は、須藤座長のもと設けられた選挙制度改革協議会のメンバーであります。九回の協議会すべてに出席をいたしました。思い起こせば、この間の議論を一つ一つ、本当に大事な議論をしていたなと今でも明確に思い起こしていくことができます。
 先ほど江田議員から報告書の説明がございました。この報告書ができるに至った九回の協議会の私は会議録を持ってまいりました。この会議録は、須藤座長のもと、全会派の委員が一回一回、一言一句了承して、確認して、そしてつくられた会議録であります。
 例えば、第二回協議会、平成十一年七月七日。この一回目、二回目というのは、協議会の運営のルールをお互いに協議した、そういう会合でありました。ここに何とあるか。
 山下委員、共産、「これからの進め方について。各会派の考え方に開きがある。したがって、各党合意の原則で、多数決で決めないこと、定数問題も削減を前提にしないなど、特定の方向付けをもった議論はしないこと。当たり前であるが、各会派の考えを聴く上の前提としてほしい。」、こう提起したことに対し、須藤座長、自民党、「はい。」、こういうことまで書かれているわけであります。
 各会派合意の原則、一致の原則、これが全員の合意のルールであります。このルールに基づいて、毎回毎回、会議録が一言一句精査され、こういう形で提出をされているわけであります。
 ましてや、この九回の議論の積み上げの集大成が二月二十五日の各派協議会の報告書であります。須藤座長以下すべての会派の委員が一言一句これも確認、了承したものであることは言うまでもありません。
 そして、問題は、当面は現行制度を維持するという結論がいかにして出されたのかという経過であります。
 私は、九回の議論を通じ、いや、この協議会が設置されるまでの一九九八年九月、前回通常選挙の直後、斎藤前参議院議長が、これまでは参議院の制度改革について押しボタン方式、委員会再編など十分やってきた、しかし、残りは選挙制度改革である、こうお述べになり、ついてはこの期は選挙制度改革について皆さんで議論をしてほしい、こう提起をされました。
 九八年の九月、この提起を受けて、各会派が半年間勉強し各会派としての参議院選挙制度改革の具体案をまとめ持ち寄ろうではないかというのが九八年九月の提起でありました。その後、各会派で参議院選挙制度改革の具体案づくりが鋭意進められました。九九年の四月、各会派からその案が提案をされました。しかし、そのとき提案された選挙制度改革案の中に、どの会派の案を見ても非拘束名簿式という制度を了とする提案はただの一つもなかったのであります。(拍手)
 自民党の提案はどうだったか。当時、自民党と自由党の連立合意が交わされました。そこには参議院の選挙制度についての合意が明記されております。当面は現行制度を維持する。そして、定数を五%ないし一〇%削減する。当時の扇千景議員の名前がはっきり書かれた合意文書であります。これに基づいて、もう一つ思い出しました。自民党の署名者は井上裕さんであります。この合意に基づいて自民党が提案した当時の選挙制度改革の具体案は、現行制度を維持し五%ないし一〇%定数削減する、これが自民党としての正式の改革提案だったことは承知のはずでございます。
 しかも、それだけではございません。その後、各会派から出された案をベースに、青木当時自民党幹事長が、どうやってその案をまとめるのか汗をかきなさい、こう議長より御下命され、それを受けて各会派を回り、つくられたのが参議院選挙制度改革に関する協議会であります。協議会の生みの親、青木自民党幹事長と言っても過言ではございません。みずからつくった協議会の合意をみずからひっくり返す、こんなことが許されていいはずはないではありませんか。(拍手)
 この協議会が立ち上げられ、各会派から選挙制度についての案が提案をされ、そして須藤座長のもと、あらゆる角度から参議院選挙制度のあるべき一致点を見出す努力がされました。
 私は、この協議会九回全部出席をして、当時の須藤座長の姿勢というものは大変評価すべきものがあったと今でも確信をしております。私のような経験のない議員の提案を一言一句真摯に受けとめてくださり、協議会の報告書に不偏不党の立場でその意見を盛り込んでいただいた、そういう毎回毎回の積み上げが二月二十五日の報告書の集大成であります。我が党の具体的な改革案、定数削減なぜ反対か、こういう異論まで一つ一つ丁寧に取り上げてくださり、一言一句盛り込まれたのがこの報告書であります。まさに参議院の良識を集大成した報告書ではないでしょうか。(拍手)
 この協議会の協議の中で、やはり各会派から議論を通じてあるべき選挙制度改革の提案、協議会の中でもそれぞれが行いました。しかし、この協議会の中でも、提案された選挙制度改革の案の中に非拘束名簿式がいいんだという案はどの会派からも一切出されておりません。
 自民党の案は、当時、公明党も加わった自自公連立となって、公明党の案も含めて、現行制度を維持する、定数を五%ないし一〇%削減する、これが当時の自民、自由、公明の公式の選挙制度改革の提案の中身であります。
 以来、私たちは一致点を誠実に探求し、この報告書をつくった。その結果が、当面は現行制度を維持する、こういう結論になるのは当たり前ではありませんか。(拍手)
 この二月二十五日の協議会の報告書を受け、私たちは、須藤座長のもと、参議院議長の出席のもと、各会派代表者懇談会のもとにこの報告書を御報告申し上げました。
 そのとき、自民党の村上会長以下どなたからも、現行の制度を当面維持する、この部分に対して異論は一切出なかったのであります。各派代表者懇談会で合意されてはいないなどという言い分は、合意される以前に、だれも意見がないほど完全に一致した前提だということの裏返しではありませんか。
 この場で協議の対象になったのが、報告書でも明記されている定数問題は意見の不一致がある、これが議論になったのは当たり前であります。
 現行制度を当面維持するというのは、その後、各派代表者懇談会、四回積み重ねられましたが、どの会議でも、どの会派からも一切異論は出ませんでした。
 この二年間、何遍も何遍も選挙制度改革の提案のチャンスがありながら、ただの一度も非拘束名簿式など提案しなかった与党が、突然、総選挙が終わってから、非拘束がいいんだなどというのは、これは皆さん、自民党、公明党そして自由党のみずからの党利党略以外に……(「保守党」と呼ぶ者あり)失礼をいたしました。自民党、公明党、保守党の党利党略以外に説明はつかないではありませんか。
 私は、この間、各派代表者懇談会、協議会に全部出席した生き証人として、事実をねじ曲げるような言論に断固抗議を表明するものであります。
 第二のルール破りは、国民がわからないうちに選挙制度を変えてしまおうというルール破りであります。
 言うまでもなく、選挙制度というのは、主権者である国民がどんな方法で代表を選ぶのか、国民の参政権の根本にかかわる重大問題であります。それをたった一回の国会で変えた前例はこれまでただの一つもありません。
 参議院に比例代表選挙を導入するのに一年半、三国会かけました。衆議院に小選挙区比例代表並立制を導入するのに二年半、海部、宮澤、細川と三内閣もかかったのであります。今回のように、来年の参議院選挙まで一年もない段階でどたばたと変えてしまっていい軽い問題では決してありません。
 だからこそ、与党が招致した参考人からでさえ、時間をかけているというふうには私には判断できない、拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるということについては、客観的に見て緊急性がございませんという当然の声が上がり、さらに、選挙と申しますものは、主権者たる国民が主権者としての権利を行使するほとんど唯一で最大の機会、選挙制度を改正しようという場合には、今なぜその改正が必要なのかについて国民に対しわかりやすく説明していただきたいという強い指摘があったのは当然であります。わずか四日間の委員会質疑なるもので、もう審議を尽くしたなどとはよくも言えたものであります。
 加えて第三のルール破りは、与党だけで選挙制度を変えてしまおうとしていることであります。
 選挙制度の改変は、時の政権与党だけでやってはなりません。数の力で選挙制度を自分たちに都合のよいものに改変することが許されるなどということは、およそ民主政治とは相入れません。だからこそ、これまで衆議院、参議院とも与党の賛成だけで選挙制度の抜本改変を行った例はどこを探してもないのであります。そのルールを破ろうとしているのが自民、公明、保守の三党なのであります。
 このような前代未聞の暴挙に対し、マスコミも、今問われているのは選挙という民主主義の土俵づくりの問題だ、多数派のごり押しが許される性質のものではない、こう厳しく指摘しているではありませんか。こうした与党による数々のルール破りが今回の異常事態をつくった原因であることは、もはや明々白々であります。(拍手)
 なぜ与党がここまで暴走するのか。その動機が余りに不純なものであることもいよいよはっきりしてまいりました。大体、与党が非拘束名簿式を突然主張し出した直接のきっかけ、これは久世前金融再生委員長の議席を金で買うという自民党の党内問題への国民の批判を選挙制度問題にすりかえるためであります。決して国民の中から非拘束式にしてくれという切実な声が上がったからではありません。
 しかも、自民党の金権腐敗体質はこれだけではありません。非拘束名簿式導入の先頭に立ってきた村上正邦自民党参議院議員会長は、党員名簿九万人余りとその党費数億円を中小零細業者の血と汗のにじんだ掛金で成り立っているケーエスデー中小企業経営者福祉事業団に出させ、その結果、自民党の比例代表名簿の中で事実上の第一位にランクされていたという重大な疑惑が公然と報道されているのであります。全国百万人を超える中小企業者会員とその共済金が自民党の幽霊党員名簿と党費に横流しされ議席が買い取られたという、かつてのオレンジ共済事件と最近の久世事件を組み合わせたような極めて悪質なものであります。自民党の金権腐敗体質は既に国民の我慢のならないところまで腐り切っております。国民の厳しい批判は当然であります。そのことを選挙制度にすりかえることは絶対に許されません。(拍手)
 これらの背景にあるより根本的な動機は、落ち目の自民党が、自民党という看板では国民の支持が得られなくなり、有名人の看板で選挙を行おうという、これまた不純な動機であります。(発言する者多し)
 自民党は、八〇年の全国区選挙では四二・四九%、二十一議席を確保していましたが、九八年の比例代表選挙では二五・一七%、十四議席にまで落ち込んでしまいました。こうした中、いみじくも青木自民党幹事長が、来年の参議院選挙は党の命運をかけた戦いだ、負ければ大変なことになる、前回の衆議院選挙でも小選挙区の候補者名と比例代表での党名の票差が八百万票もあったと切実な声で非拘束式導入の必要性を訴えたと報道されました。また、別の報道では、自民党の参議院比例代表選出候補議員を集め、今度非拘束式でやるのは党が勝つためだ、理由は後からついてくるかのような発言があったと報道をされております。去る七月の衆議院選挙で大敗した自民党が、政党名を掲げて戦う現行制度ではもう議席増は見込めないため、非拘束名簿式の導入で起死回生を図ろうとする党利党略があることは明白であります。(拍手)
 ただただ疑惑をそらしたい、ただただ選挙に自分が勝ちたい、こういう党利党略だけで選挙制度をもてあそぶとは言語道断であります。本当に選挙に勝ちたいのなら、選挙制度を変える前に、社会保障の削減で国民に我慢を強いながら、ゼネコン、大銀行には税金の大盤振る舞いという行き詰まった自民党政治の中身こそ真っ先に変えるべきではありませんか。これこそ国民大多数の声であることを強く指摘していくものであります。
 次に、井上議長が与党の暴挙に加担しようとしている今回の法案の内容自体も重大であります。
 第一に、今回与党が導入をねらう非拘束名簿式比例代表制は、選んでもいない候補者に票を横流しし、民意をゆがめる根本的欠陥を持っております。自民党は嫌だけどA候補なら、こう考えて投票する人はたくさんいます。ところが、Aさんに入れたつもりの票が勝手に自民党の票に組み込まれたら、だれでも話が違うと怒ります。こんなことが生じるのが非拘束名簿式制度であります。一人で何人分もの票をとれる候補者を推し立てて、当選に余った票は所属政党のほかの好きでもない候補に横流し、自民党を選んだわけでもないのに自民党が議席を横取りする、これが非拘束名簿式のからくりであります。
 候補者の顔の見える選挙などというのも全く根拠がありません。現行制度が導入されたとき、自民党の村上正邦議員は、全国区制度について、「現行制度においては、もはやテレビ等にのべつ幕なしに出演し、国民大衆に名の知られた有名人でなければ、有為の人材といえども当選することはほとんど不可能にすらなっている現状であります。」、こう述べております。
 今回の非拘束名簿式について、自治省は公費負担試算で立候補者数を三百五十九人と仮定しており、全国区時代の三倍以上の候補者からたった一人を選ぶことになります。一人一人の候補者の政策や、一人一人の経歴や人柄など見えるはずがないじゃありませんか。まさに村上議員の言うように、有名人でなければ当選はますます不可能、顔が見える選挙とはなり得ないことは明らかであります。
 第二に、この制度は旧全国区制の金がかかる弊害を復活させるばかりか、業界団体との癒着、利益誘導型選挙を一層横行させ、残酷区、銭酷区と呼ばれた弊害の復活につながるものであります。
 与党は、選挙事務所を全国区時代の十五カ所から一カ所にするなど、選挙運動関連の量を減じたことをもって金がかからなくなると主張しています。しかし、村上正邦議員は、全国区制度は、「候補者が全国各地を一通りあいさつするのに約二年間の月日を要します」、費用等々、後援会費だけでも数億の資金が必要、「これは全国が一つの選挙区で、しかも八千万に上る有権者を相手にしなければならないという現行制度そのものに起因する問題」、一九八一年十月、参議院公職選挙法特別委員会、と述べており、選挙前の政治活動に金がかかることに変わりはありません。
 さらに、非拘束名簿式では、政党内の候補者の数はふえ、党内の順位争いも激化し、結局、旧全国区の選挙より一層金がかかる選挙となることは疑いありません。
 また、自民党は引き続き比例名簿登載者にはこれまでどおり二万人党員と党費集めを義務づけており、このもとで個人を選ぶ選挙にすることは業界・団体と政党との癒着を一層進め、業界代表候補などによる利益誘導型選挙が横行することは必至ではありませんか。(拍手)
 野党のほとんどが欠席した中、強行された委員会審議でも、新たに数々の法案の矛盾が明らかになりました。例えば、連座制の適用である候補が当選無効となっても、その票の助けをかりて別の候補が繰り上げ当選するという問題であります。提案者もこの矛盾を否定することはできませんでした。また、ある党で少ない得票の候補者が当選し公営選挙となるのに、他の党ではたくさんの得票を得た候補者が公営選挙の恩恵に浴しないことになる問題もこれまた明らかになりました。問題だらけの改悪法であります。
 このような悪法を通すために、本来、議長選挙後に速やかに散会すべき本会議を休憩、再開までして強行するというのが現在の事態であります。これは、井上議長が就任あいさつで述べた国民主権の原則を大切にという覚悟とは到底相入れないばかりか、そのことを根本から否定するものであることは明白であります。このような井上議長不信任案に対する賛成は余りにも当然であります。(拍手)
 今まさに、前代未聞の暴挙に次ぐ暴挙により参議院選挙制度の改悪が強行されようとしております。しかし、国会の中で幾ら多数を握ろうと、本当の決着は国民の中でつくものであります。選挙制度の主役は言うまでもなく国民であります。国民からの支持を失い、衰えつつある政権党の悪あがきを国民は決して許さないであろうことを表明し、前代未聞の暴挙への糾弾と井上議長に対する不信任案への賛成討論とするものであります。(拍手)
#26
○副議長(菅野久光君) 日下部禧代子君。
   〔日下部禧代子君登壇、拍手〕
#27
○日下部禧代子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました議長不信任決議案に対しまして、賛成の立場から討論を行いとう存じます。(拍手)
 まず、冒頭でございますが、先ほど反対討論で自民党の吉村議員はこのようにおっしゃいました。野党が斎藤十朗前議長のあっせん案を拒否したからあっせんが不調に終わったと、そのようにお聞きいたしました。そうですね、皆さん。(発言する者あり)
 しかしながら、それは事実と違うことを強調しておきたいと思うのであります。斎藤十朗前議長のあっせん案につきましては、十七日午後十時に開かれました各派代表者会議で、与党側はあっせん案を受け入れないと回答なさったのでありますが、野党側は議長に対してなお調整に努力するように求めたのであります。斎藤十朗前議長のあっせんを断ったのは与党側なのであります。この事実を私は声を大にして国民の皆様に知っていただきたいと思うのであります。(拍手)
 さて、本日の本会議で第二十三代議長に選出されました井上裕さんは、議長就任に当たりまして、国民主権の原則を大切にしながら、公正無私を旨として、議院の正常かつ円満な運営を図り、もって本院の権威の高揚と使命達成のため、全力を尽くす覚悟でございますと、その決意の一端を述べられたのであります。議長の権威保つことかなわず、議長の職を辞さざるを得なかった斎藤十朗前議長の思いを受け継がれまして、いかにして言論の府である参議院の権威を確立するか、そのことが井上新議長の任務であり、井上議長の思いもそこにあったと思うのでございます。
 そのことをおもんぱかって、そのことを今から申し上げようかと思います。私たち社会民主党・護憲連合も、事の経緯は別といたしまして、与党第一党から議長を選出するというこれまでの与野党で確立されましたよき慣例に従い、井上裕さんに投票したのでございます。
 しかし、残念なことに、井上裕さんは、その舌の根も乾かないうちに、与党の口車に乗せられたのか、あるいは事前に与党とお話し合いがあったのか、公職選挙法の一部を改正する法律案の本会議採決を強行するためのベルを押されたのであります。与党の言いなりで、どこが公正無私、どこが参議院の権威の確立でございましょうか。議長も与党の暴挙に手をかす法案処理マシンなのでありましょうか。井上裕さんの行動は、良識の府参議院の議長の職責の重さにかんがみてまことに不見識であり、到底議長としての任にたえ得るものではないと断ぜざるを得ません。(拍手)
 私個人といたしましては、井上裕さんのこれまで高い御見識、お人柄を非常に尊敬を申し上げておりました。それだけに、今回の井上新議長のなされましたこと、残念で残念でたまりません。悲しくさえ思うのであります。
 そもそも今回の異常事態のきっかけはどこにあったのでございましょうか。一つは、久世公堯前金融再生委員長の大型やみ献金問題にあったのであります。比例区順位を上げるために三万三千人分の党員の党費の立てかえに使ったという、その献金問題でございます。与党三党は、金で票を買っている、そのような疑惑を国民から隠すため、拘束式制度自体に問題をすりかえようとしたのであります。
 もう一つは、本年六月の総選挙の結果であります。自民党初め与党は大きく議席を、支持を減らしました。このままでは参議院選挙が危ない、それには有名人のお名前を利用させていただいて票を稼ぐしかない、そのためには拘束式では都合が悪いというものであります。しかも、非拘束式にすれば、補助金交付団体などの支持団体を最後までフルに働かせることができる。まさに、与党の党利党略であり、個利個略の暴挙と言わざるを得ないのであります。
 言うまでもなく、選挙制度は主権者である国民の代表を選出するルールであります。議会制民主主義の根幹であります。選ばれる側の勝手な思惑で、しかも多数の暴力で変えてしまってよいものでは決してありません。
 しかるに、与党は、本年二月二十五日の各派代表者会議における当面現行制度を維持するという合意を一方的に踏みにじる暴挙に出たのであります。
 この合意は、自民党の須藤良太郎さんを座長とする参議院選挙制度改革に関する協議会の結論を受けたものであります。九回にわたって真摯な論議を尽くした協議会の報告書は、「これらの抜本的な改革は、次回の通常選挙に間に合わせることは時間的に困難である」ことから、「当面は現行の比例代表制と選挙区制という制度の基本的な枠組みは維持することを前提としつつ、何らかの改革を行う余地があるかどうかを検討することとし、抜本改革案については、参議院の役割と在り方を踏まえつつ引き続き検討が行われるべきであることで意見が一致した。」とあるのであります。
 そして、「非拘束名簿式又は拘束・非拘束混合方式は、旧全国区と同じように個人本位の選挙となり、金がかかるとともに過酷な選挙運動を強いられるおそれがある」、「拘束名簿式は政党が参議院議員として相応しい識見ある候補者を立てることができ、そのことを通じて国民の多様な職域を代表する者が議員となることができる」、「この方式には積極的に活用する余地がある」といった意見があったことが記されております。
 そして、「現行の拘束名簿式比例代表制の仕組みそのものを改めるとなると抜本的な改革となり、その実現は容易でないことから、当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進めることとなった。」と明瞭に記述されているのであります。
 与党は、そのような合意はなかったとおっしゃっておりますが、振り返れば、選挙制度に関する協議会で与党側は次のように発言されているのであります。思い出していただきたいと存じます。比例代表制は公平に議席に反映させるということを大事にしていくべきだ、拘束式も捨てたものでもない、その持ち味を大切にすべきだ、党全体の流れとしては拘束式だ。国民会議方式を打ち出した実績がある。党なりの良識で、拘束式のよさを発揮しようとしたものだ。制度としてはなかなかのものであろうと、これは自民党の野沢さん、公明党の魚住さんの御発言でございました。お忘れではないと思います。政治家の言葉とは軽いものであってはなりません。政治家が言葉をくるくると変えるようでは国民の政治不信をますます募らせるばかりでございます。
 そして、与党は、選挙制度に関する特別委員会の設置を強行、我が党などの反対を押し切り、議長に野党委員の指名を強行させるという前代未聞の暴挙を重ねたのであります。しかも、民主主義の根幹にかかわる選挙制度を与党だけのわずか四日間の審議で委員会採決を強行、暴挙にさらに暴挙を重ねたのであります。民主主義の土俵を決めるルールを民主主義的ルールを否定して強行する、これ以上の参議院つぶし、議会制民主主義の破壊があるでありましょうか。
 与党が一方的に導入を打ち出した非拘束名簿式自体、民意にかなうものであるどころか、票の横流しによって有権者の民意を踏みにじる制度でもあったのであります。しかも、非拘束名簿式の導入は、残酷区、銭酷区と言われた旧全国区を再現し、金権選挙の再来につながるおそれがあります。そして、政党と国民とのきずな、結びつきを深めるという比例代表制導入で期待されました理念そのものも否定することになり、政党みずからの存在価値自体を問われかねないものとする制度改悪であります。まさに時計の針をはるか昔に戻してしまうことにほかならないのであります。
 全国区のひどい実態を知るため、かつて全国区から拘束式比例代表制に選挙制度が変えられるときの議事録を私は読み返してみたのであります。非常に私は勉強になりました。私はその当時まだ国政の場に身を置いておりませんでした。非常に国政を批判する立場にいた時期でもございました。したがいまして、今回改めて議員の立場になりまして、この一九八一年、昭和五十六年十月二十一日の会議録を読み起こしてみまして、大変な参考、そしてまたそのときの御発言に対して尊敬の念を強めたのでございます。
 その御発言、これは当時の公職選挙法改正に関する特別委員会における会議録でございます。大変参考になるので、本当に全部皆様に御披露したいと思いますけれども、一九八一年当時、まだ議員でなかった私のような方々もかなりいらっしゃると思います。かなりの部分を御参考までに紹介させていただきたいと思います。(発言する者多し)
 これは非常にすばらしい発言からスタートしております。
  本来参議院は、衆議院とは違った視点で政治に取り組まなければなりません。すなわち参議院こそ良識の府でなければなりません。それだけに深い理性と高い道義の政治理念に立って、私心を捨てて国家百年の大計のもとに堂々と政策を論じ、院としての高い見識を示すことによって国民の政治に対する安心感と信頼を得なければならないと私は考えます。しかし、それとはほど遠い現実に直面し、私は内心じくじたる思いを持つと同時に、その解決策を模索してきた一人であります。
全くこれはもう感じ入りました。御発言の主は若き日の村上正邦さんでいらっしゃいます。
 さらに続きます。
 日ごろから私、村上先生を御尊敬申し上げております。この会議録を拝見いたしまして、さらにその尊敬の念を強めたところでございます。
 まだ続きます。
  しかし、御承知のとおり参議院の実態については、残念ながらミニ衆議院あるいは衆議院のコピーなどとの批判の声を耳にすることはまことに遺憾なことであります。私は、こうした現状を脱却するためには、参議院の選挙制度、とりわけ全国区選挙制度に根本的なメスを入れるときがきたのではないかと痛感するものであります。私自身全国区選挙を闘ってきた者の一人でありますだけに、その思いはひとしお深いものがあります。
  現行の全国区選挙は、国全体が一つの選挙区であり、八千万人を超える有権者に対して選挙運動をやらなければならないという世界でも最も類例のない制度でありますだけに、資金の面においても候補者の精神的、肉体的消耗度においても想像を絶するものがあります。残酷区とも言われます現行選挙制度
これはそのときのですよ、全国区で。
 の陰で、われわれは多くのりっぱな先輩が病に倒れるのをかいま見、また失ってもまいりました。これはまさに国家的な損失にほかなりません。さきの選挙においては
当時の民主党の向井長年議員が、(「民社党」と呼ぶ者あり)当時、民社党。当時、
 民社党の向井長年議員が当選の報を待たずに開票半ばにして息を引き取られた悲しい出来事は、私の記憶に新しいところであり、同じ選挙を闘った者の一人としていまも私の胸に熱いものが込み上げてまいるのでございます。このような犠牲を再び繰り返してはなりません。
  加えて、一般有権者にとりましても、現行制度は候補者をよく知りその政見を十分に聞くこともできないまま百人を超える候補者の中から一人を選択しなければならないという、まことにわかりにくい選挙となっておりますことも大きな問題点であります。
さらに続けていらっしゃいます。
  こうした実情にかんがみ、わが自由民主党にあっては、昭和三十七年以来参議院選挙制度の改革について検討する正式機関を設けてこの問題に取り組んでまいりました。今回その努力が拘束名簿式比例代表制を採用する改正案としてまとまったことは御案内のとおりであり、私は諸先輩の御努力に深く敬意を表するものであります。同時に、私はこの改正案の実現こそ参議院改革の大きな第一歩となるものと確信いたすものであります。
少し飛ばします、まだございますけれども。
  事実、現行制度のもとでは、私は与野党を問わず莫大な資金を要することは必然であると思います。たとえば、単純に計算しても、百万票を目標にしたとき、その地盤培養行為としての後援会名簿は常識的に三百万以上を集めなければなりません。そのためのパンフレットの製作費用、さらに三百万名の名簿を対象にして一回はがきを出すと
これは当時でございますね。
 郵送料だけでも一枚四十円で一億二千万円を要します。これだけではありません。事前の告知ポスターの製作費、私の経験からいきましても候補者が全国各地を一通りあいさつするのには約二年間の月日を要します。これにかかるところの交通費、さらに全国的に設けられます後援会事務所設置に要する費用等々、後援会活動だけでも数億の資金が必要となってくるのが通例であります。手弁当、カンパ、ポスターを張る人件費が奉仕にいたしましても金がかかることには違いがないものと思います。
  こうした実態に対して、金がかかるのではなく、金をかける方が悪いのだという意見もありますが、私はこれは逆だと思います。このはがき代一つの例をとりましてもわかりますように、これは全国が一つの選挙区で、しかも八千万に上る有権者を相手にしなければならないという現行制度そのものに起因する問題であると思います
というふうにおっしゃっているのでございます。
 私は、当時でもこのように大変なお金がかかったんだな、今度はもう、今一枚のはがき代におきましても当時より随分上がっております。これは計算し直すとどういうことになるのかと。頭の悪い私、計算能力がないのですけれども、とにかく大変なことだということだけは非常によくわかったものであります。
 もう一つ、大変にこれは私が参考になったものでございますが、もう少し引用させていただきたいと存じます。
  参議院制度創設当初、その大きな目的の一つが学識経験者等の有為の人材を立法府に迎えるということでありました。しかしながら、現行制度においては、もはやテレビ等にのべつ幕なしに出演し、国民大衆に名の知られた有名人でなければ、有為の人材といえども当選することはほとんど不可能にすらなっている現状であります。この点、全国区制度創設当初は今日のようなテレビの普及は全く予期しなかったことであり、状況は全くさま変わりしているのであります。こうしたことから考えましても、政党が責任を持って候補者名簿を作成するという今回の改正案の方が、たびたび提案者も申しておられますように、いわゆる出たい人よりも出したい人をという本来の趣旨にかなった制度であると私は考えます
というお言葉でございます。もう本当に私は感服しながら読ませていただいたわけでございます。
 まだまだ非常にこれは長く続くのでございますが、村上先生はこのようなお言葉も述べていらっしゃいます。私もおりましたイギリスのお話でございます。これ、私の言葉ではございません。村上先生でございます。
  イギリスの著名な政治学者で政治家でもありましたジェームズ・ブライスは、民主政治とは弾丸にかえるに投票用紙をもってする戦いであるとの名言を残しております。ブライスの言った弾丸にかわる投票用紙をもってする戦いのルールの根本をなすものが申すまでもなく選挙制度であり、その改正は政党の盛衰を左右し、議員の死活にかかわるものであります。それだけに選挙法の大改革は、戦争に負けたとき、革命があったときなどいわゆる政治制度そのものに大きな変革があったときに行われてきたのが世界の通例であったと承知いたしております。
というふうに、これも私、大変に勉強になったことでございます。
 本当に感心をいたしてもっともっと御紹介申し上げたいのでございますが、ところが、どうしたことでございましょうか。与党が決めたから、後は勝手に与党だけでやらせてもらう、院内で積み上げてきたルールは関係ない、議長が何を言おうと関係ない、文句があるんだったらやめたらいいじゃないか、議長の権威をもみじんにも思わない今回の与党の姿勢こそ民主主義への挑戦であります。村上先生のあの御発言は何だったのでありましょうか。今こそ、私たち全員が襟を正してこの御発言をもう一度思い起こすそのときではないかと思うのでございます。(拍手)
 今や、議会制民主主義の死、良識の府参議院の自己否定、そのような今回の状況を、我々一人一人の議員が、村上先生のこのお言葉を胸によみがえらせながら考えねばならないまさに今そのときではないかと思うのであります。もうこれ以上、数の力で選挙制度をみずからに都合よく変更する暴挙が繰り返されることのないことを、議員の一人といたしまして、国政の場に国民の皆様から送っていただいた者の一人といたしまして、心から願うものでございます。
 さらに、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団との関係で明るみに出た村上先生の疑惑、本当に残念でございます。久世問題に見られるように、今回の暴挙は、まさに票と順位を金で売買する残念ながら自民党の金権体質を覆い隠し、ますます政治と金との癒着を厚くさせるものであります。
 正常化のための努力を一切拒否し、しゃにむに、なりふり構わずに委員会採決まで持ち込み、議長のあっせんすらはねのけ、詰め腹を切らせ、本会議採決を強行しようという自公保与党三党の無謀な暴走をこれ以上続けさせてはならないのであります。こうした暴走を一つ一つ許すことが日本の民主主義をますます危うくさせるものであります。
 もう一つ申し上げておきたいことがあります。比例区制度、これは女性の一人である私としてどうしてもつけ加えさせていただきたい。
 北欧諸国、スウェーデンやデンマークなどの北欧においては女性の議員は議員のほぼ半数にまで迫っております。それはどのようにして達成されたか。これは比例区制度を導入したそのことが大きなきっかけになっていることを申し添えさせていただきたいと思うのであります。
 どうしても、社会的な地位ということから見ても、女性が大きな組織を持っているということはほとんどないわけであります。金をたくさん持っている女性、それもまあ、これはないだろうと思うのであります。そうなりますと、やはり女性が国政の場に進出していくそのためにも、どうしても私はこの比例区という制度は大きな大きな歴史的な意味を持っていたというふうに思うわけでございます。(拍手)
 私は、先ほど村上先生のイギリスの政治学者ジェームズ・ブライスの言葉をお引きになりました。私は、もう少しさかのぼりまして、十九世紀のイギリスの思想家ジョン・スチュアート・ミルの言葉を思い出しております。
 このようにジョン・スチュアート・ミルは十九世紀において言っております。他の人々を強制してその道を行かせるような権力は、他のすべての人々の自由や発展と相入れないのみではなく、強者自身をも堕落させることになるという言葉が、今、私は、古くはなく、新鮮な輝きを持って私の心によみがえってくるわけであります。二十一世紀を目前にしている今、日本の議会政治の成熟度は十九世紀以前ということになるのでありましょうか。
 私は教育者の一人でありましたし、そして新しい議長はかつて文部大臣でいらっしゃいました。今、このような国会のありさまを私たちの後に続く若い世代に何と言うのでありましょうか。
 私は、教育者としての、かつて文部大臣をなさいました新議長のお心をもう一度お聞きしたいのであります。本当のお言葉をお聞きしたいのであります。あのベルを押したのは間違いであった、自分の今までのすばらしい経歴に汚点を残すことになった、そう思っていらっしゃるのではないのか、私はそのように考えております。
 社会民主党・護憲連合は、主権者である国民の皆さんの自公保与党三党に対する厳しい審判を期待いたしまして、賛成討論を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
#28
○副議長(菅野久光君) これにて討論は終局いたしました。
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#29
○副議長(菅野久光君) これより採決をいたします。
 足立良平君外九十名より、表決は記名投票をもって行われたいとの要求が提出されております。
 現在の出席議員の五分の一以上に達しているものと認めます。
 よって、表決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#30
○副議長(菅野久光君) 投票漏れはございませんか。──投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#31
○副議長(菅野久光君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#32
○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百二十二票
  白色票           九十六票
  青色票          百二十六票
 よって、本決議案は否決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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   〔副議長退席、議長着席〕
#33
○議長(井上裕君) 森山裕君から、賛成者を得て、
 この際、日程に追加して公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とすることの動議が提出されました。(拍手)
 これより本動議の採決をいたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#34
○議長(井上裕君) 過半数と認めます。
 よって、本動議は可決されました。(拍手)
     ─────・─────
#35
○議長(井上裕君) 公職選挙法の一部を改正する法律案(片山虎之助君外四名発議)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。選挙制度に関する特別委員長倉田寛之君。
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   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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   〔倉田寛之君登壇、拍手〕
#36
○倉田寛之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、選挙制度に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、日本国憲法の定める二院制のもとにおける参議院に期待されている役割にかんがみ、参議院の独自性、自主性をより発揮し、国民の多様な意思を反映した機能的かつ充実した議院の運営に資するため、比例代表選出議員の選挙制度を非拘束名簿式に改めるとともに、参議院議員の定数について是正を含む削減を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、発議者片山虎之助君から趣旨説明を聴取した後、発議者及び政府参考人に対する質疑を行ったほか、参考人からの意見聴取を行いました。
 委員会におきましては、二院制下における参議院のあり方、参議院比例代表選出議員の選挙を非拘束名簿式比例代表制に改める意義、新制度における投票方法、立候補の届け出方法及び当選人決定の仕組み、名簿登載者に認められる選挙運動、連座制の適用、参議院議員の定数を削減する必要性等について熱心な質疑が行われました。
 また、国会法第五十七条の三の規定に基づいて内閣から意見を聴取いたしましたところ、特に異議がない旨の発言がありました。
 当委員会の審査の過程において、委員会の構成に関し、委員名簿の提出、理事の推薦を拒否し続けた会派があったことは、いかなる理由があるにせよ、言論の府としての本院の使命と責任を果たすべき委員会審査に大きな禍根を残したと言わざるを得ません。
 本法律案の審査におけるこのような極めて遺憾な事態はこれまで類例のないことであり、今後、決して繰り返してはならないのであります。
 しかしながら、このような状況下においても審査は粛々と進められ、非拘束名簿式に改めることは、候補者の顔の見える選挙になり有権者の関心が高まること、過度の政党化を緩和させること等の意義があること、政党等の選挙運動を認め名簿登載者の選挙運動に制限を加えること等により旧全国区制の持つ弊害が発生するおそれが少ないこと、参議院議員の定数削減については、今日の厳しい経済状況等にかんがみ、かつ、今後の抜本改革への端緒として必要であること、一方、参考人からは、新制度導入は時期尚早ではないかなど、極めて核心に触れた諸問題について論議が行われたことは評価に値するところであります。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#37
○議長(井上裕君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#38
○議長(井上裕君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#39
○議長(井上裕君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百二十八  
  賛成            百二十六  
  反対               二  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#40
○議長(井上裕君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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