くにさくロゴ
2000/11/06 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第6号
姉妹サイト
 
2000/11/06 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第6号

#1
第150回国会 本会議 第6号
平成十二年十一月六日(月曜日)
   午後一時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  平成十二年十一月六日
   午後一時開議
 第一 労働者災害補償保険法及び労働保険の保
  険料の徴収等に関する法律の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、健康保険法等の一部を改正する法律案及び
  医療法等の一部を改正する法律案(趣旨説明
  )
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(井上裕君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 健康保険法等の一部を改正する法律案及び医療法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(井上裕君) 御異議ないと認めます。津島厚生大臣。
   〔国務大臣津島雄二君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(津島雄二君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案及び医療法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 今後の急速な高齢化等による医療費の増加を考えますと、良質な医療の確保とともに医療の効率化は避けて通れない課題であります。このため、国民各層の御理解と御協力を得つつ、抜本改革を着実に進めていくことが必要であります。
 このため、医療保険制度及び老人保健制度の安定的運営を目指し、給付と負担の見直し等の所要の措置を講ずるための健康保険法等の一部を改正する法律案を第百四十七回国会に提出いたしましたが、衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至りませんでした。
 しかしながら、今回の改正は、抜本改革に向けた第一歩であり、一刻も早くその実現を図る必要があることから、ここに再度この法律案を提案し、御審議を願うこととした次第でございます。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、健康保険法等の改正であります。
 まず、高額療養費の見直しであります。高額療養費における自己負担の限度額については、これまでの患者負担が家計に与える影響に加えて、患者が受けた医療サービスの費用も考慮して定めることとしております。
 次に、健康保険の保険料率の上限の見直しであります。現在、医療保険料率と介護保険料率を合算した率に適用されている保険料率の上限について、医療保険料率のみに適用することといたしております。
 このほか、健康保険組合の円滑な事業運営を図るための所要の改正、傷病手当金の見直し、育児休業期間中の事業主負担分の保険料の免除等の措置を講ずることとしております。
 また、船員保険法等についても、これに準じて所要の改正を行うこととしております。
 第二は、老人保健法の一部改正であります。
 老人医療の一部負担金につきまして、薬剤一部負担金を廃止するとともに、定額の上限額を設け、過度の負担増とならないよう配慮した上で、定率一割負担制を導入することとしております。なお、診療所については定額負担制も選択できることとしております。
 第三は、国民健康保険法の一部改正であります。
 まず、高額療養費については、健康保険法と同様の改正を行うほか、被保険者等が日本国外にある場合についても、療養の給付等の対象に加えることとしております。
 また、病院または診療所への入院によって他の市町村に転入した者については、転入前の市町村の国民健康保険の被保険者とすることとしております。
 最後に、この法律の施行期日は、一部の事項を除き、平成十三年一月一日としております。
 なお、健康保険法等の薬剤一部負担金については、平成十四年度までに、薬剤一部負担金を廃止するために必要な財源措置について検討を行った上で、廃止するものとしております。
 また、医療保険制度の改革については、平成十二年度の改革に引き続き、この法律の施行後における医療費の動向、医療保険の財政状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、抜本的な改革を行うために検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしております。
 次に、医療法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 高齢化に伴う疾病構造の変化や医療の高度化、さらに医療についての情報提供のあり方など、医療を取り巻く環境は今大きく変化しようとしております。こうした状況の変化を踏まえ、今後とも良質な医療を効率的に提供することができるよう、入院医療の提供体制を見直すとともに、医療における情報提供の推進、さらに医療従事者の資質の向上を図るための医療法等の一部を改正する法律案を第百四十七回国会に提出しましたが、衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至りませんでした。
 しかしながら、今回の改正は、抜本改革に向けた第一歩であり、一刻も早くその実現を図る必要があることから、ここに再度この法律案を提案し、御審議を願うこととした次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、入院医療の提供体制の見直しであります。
 これまでは、精神病床、感染症病床及び結核病床以外の病床は、すべてその他の病床として取り扱われておりましたが、これを長期療養のための療養病床と看護婦の配置を手厚くした一般病床とに区分し、それぞれの機能にふさわしい基準を定めることとしております。また、人員の配置が基準に照らして著しく不十分であるため適正な医療の提供に著しい支障が生ずる場合には、人員の増員または業務の停止を命ずることができることとしております。
 第二に、医療における情報提供の推進であります。
 医業等に関する広告規制を緩和し、診療録などの情報を提供することができる旨などを広告事項として追加することとしております。
 第三に、医療従事者の資質の向上であります。
 医師及び歯科医師に対する臨床研修については、現在、努力義務とされていますが、診療に従事しようとする場合、医師については二年以上、歯科医師については一年以上の臨床研修を必須化することとし、病院または診療所の管理者は、臨床研修を修了した者とすることなどを規定することとしております。
 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から六月以内の政令で定める日としておりますが、医師の臨床研修の必須化に関する規定については平成十六年四月一日から、歯科医師の臨床研修の必須化に関する規定については平成十八年四月一日から施行することとしております。
 以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案及び医療法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ─────────────
#6
○議長(井上裕君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。松崎俊久君。
   〔松崎俊久君登壇、拍手〕
#7
○松崎俊久君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部改正案、医療法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
 二〇〇〇年四月に行うとされていた医療保険制度の抜本改革が今回さらに先送りされ、増加する医療費のすべてが被保険者、患者負担となっています。特に、高齢者の一律一割負担は断じて許すことができません。
 総理は、医療保険制度の抜本改革をどうされるおつもりなのか、医療費の増大にどのように対処するのか、破綻に瀕した健保財政再建をどうするつもりなのかをお答えください。
 国民に負担引き上げを強いるだけで、国民の生命と健康を守る医療保険制度の抜本改革の約束を果たさないというのでは、総理には国民の生命と安全を保障する資格はございません。
 厚生省の資料説明、「健康保険法等の一部改正案の概要」によれば、今回の制度改革は医療保険制度の抜本改革の第一歩と、先ほど大臣もそうおっしゃいました。しかし、行き先と方向を明示しないでは、第一歩は危なくて踏み出せないのであります。
 さらに、資料、「医療法等の一部を改正する法律案の概要」によれば、制度改正の趣旨は、高齢化の進展などに伴う疾病構造の変化などを踏まえ、良質な医療を効率的に提供する制度を確立するため、入院医療を提供する体制の整備、医療における情報提供の推進及び医療従事者の資質の向上を図るとされています。
 しかし、その内容を見ますと、継ぎはぎだらけで正確な現状認識の上に立つ論理に全く欠けております。
 総理大臣にお尋ねします。
 今日の健保財政の危機は単に急速な高齢化に原因するとお考えですか。日本の国民総医療費はGDPに比例して高い水準にあると認識されているのでしょうか。
 国民総医療費の対GDP比を見ますと、一九九七年、日本は七・三二に対して、ドイツは一〇・四五、アメリカは一四・〇一であり、G7諸国の平均値は九・三二であります。諸外国に比べて日本の医療費はむしろ低いのであります。だからといって値上げが当然などと短絡されては困ります。
 次に、病床数を見ます。
 人口一億二千万の日本は百二十六万床、人口二億五千万のアメリカは五十万床で、人口割にすると日本はアメリカの五倍の病床を持つ世界一の病院大国であります。
 OECDの一九九八年ヘルスデータによれば、一九八〇年から九六年の十七年間に、単位人口当たりの病床数は、主な国では二七・四%減少しております。これは、在宅医療の流れが強まり、ナーシングホームの整備、医療技術の進歩の結果でありますが、我が国はひとり例外で、病床数は十七年間に一七・四%の増加を示しております。この現象を厚生大臣はどのように解釈されているのでありましょうか。
 入院患者の平均在院日数を見ますと、一九九五年、我が国が四十四・二日なのに対しアメリカはたったの八日、何と日本は五・五倍も長い入院日数なのであります。世界の平均と比べても三・五倍長く、一般病床に限定すれば二・七倍も長いのであります。厚生大臣、この事実をどのように分析されているのでありましょうか。
 我が国の病床数が多いのは、一九八〇年代に厚生省が無原則的に老人病院の開設を許可した結果であります。在院日数が長過ぎるのは、病床当たりの職員数が少なく診療密度が薄い、言いかえるならば生産性が低いということであります。
 では次に、病院職員、特に看護婦の数を比較してみましょう。
 我が国で医療水準が最も高いとされている病院は、入院患者二に対して看護婦一、アメリカのハワイ大学では入院患者一に対し看護婦三・五、何と日本の一流病院の七倍なのであります。入院患者一に対し日本の看護婦は最高の病院で〇・五、アメリカの病院は二以上、西ヨーロッパでは一以上、シンガポールでさえ一なのであります。せめてシンガポール並みの医療水準にしようとは思いませんか。
 入院経験のある方なら御存じだろうと思います。夜間に五十人の入院患者を抱える看護一ユニットにいる看護婦は二、三名であります。この現実こそが今日問題になっている医療事故の最も大きな原因であります。再びこのような事故を起こさぬよう努力しますなどと病院長に謝らせても、絶対に問題は解決しないのであります。
 厚生省は、当初、入院患者二・五人に対し一人の看護婦という案を示しながら、今回は三人に対し一人と大きく後退しました。
 総理は、過日、沖縄サミットで顔を合わされたG7の首脳たちにこの惨たんたる医療の現状を恥じなければなりません。IT革命を主導されるのは結構なことでありますが、国民の生命と健康がOECDの中で最も低い医療構造で支えられている現状を省みず、抜本改革をおくらせ、負担増のみを押しつけていることを反省するお気持ちはないのでしょうか。
 与党のリーダーの中に、世界一高いガソリン税のうち四兆二千億円を毎年道路建設に回しているのを再検討し、その一部を医療に回すという構想があるやに聞いております。仮に一兆円を看護婦人件費に回したとしますと、看護婦の給料に夜間勤務手当、年金、保険料を含めて一人一千万円かかると仮定しても、十万人の看護婦の増員が可能なのであります。
 以上、述べましたように、病床数と平均在院日数、職員、特に看護婦数という三要素は極めて強い相互関連を持っております。看護婦の増員は、手厚い看護を患者に提供し、看護婦を重労働から解放し、ゆとりの医療を実現し、医療事故防止にも大きく貢献するでありましょう。看護婦の増員は診療密度を濃くし、患者の在院日数を短くすることに役立ち、さらに後に述べる、病名主義から、国際疾病分類で一万以上もある病名をマンパワー、医薬品、医療材料などの医療資源の必要度から統計上で意味のある五百程度の病名グループに整理し分類する方法、すなわちダイアグノスチック・リレイテッド・グループ、DRGの採用を実現することによって、在院日数短縮に役立ち、病床の回転率を高くし、病床削減、医療機関の収益増と生産性の向上をもたらします。このことは諸外国の例が実証しております。医師会や歯科医師会の診療単価引き上げ、この要求をも可能にいたします。
 昭和二年、我が国の健康保険が制定され、安い負担と医療をすべての人にという理念は、勤労者へのあめの役割を演じつつも大きな効果を上げてまいりましたが、量的拡大を追求し、質的転換を遂げなければならない時期を逸し、制度疲労に陥ったのが現在の医療保険制度の危機の実態にほかなりません。
 抜本改革とは、在院日数、病床数、職員数、診療単価という一見独立した項目を中心点に固め、グローバルな視点で改革に臨むことであります。
 脳卒中、すなわち脳血管疾患の患者の治療は約三カ月で終了いたします。次は、リハビリテーションの段階、すなわち機能回復訓練のレベルで対処すべきなのに、中には、何年も血管拡張剤投与などの治療が続いても認められているのであります。アメリカでは、こんな治療は意味がないとされ、保険診療は認められません。我が国の脳血管疾患の発生はアメリカの五倍近くもあり、健保財政に大きく響いております。こうした矛盾をなくすために、医療の標準化、診断群別包括支払い方式、DRG―PPS導入を考えるべきであります。
 麻痺の部位、程度、症状などを複合させ実態を把握する方法、DRGの採用が、アメリカでは、医療の標準化に有益であり、在院日数の短縮、診断名と処置の記載が正確になったとされております。日本に適したDRG方式を確立し、病名主義一辺倒から脱却することが健保財政に大きく貢献するのであります。厚生大臣、いかがでございましょうか。
 厚生省健康政策局のもとに設置されましたカルテ等の診療情報の活用に関する検討会は、公表した報告書において、医療従事者は患者の求めがあった場合、治療効果に悪影響が明らかな場合を除いて診療記録またはこれにかわる文書を開示すべきであるとの見解を明らかにし、それを医療従事者の義務として法律化すべきだと提言いたしました。この提言を受けて、厚生省は法律化に向けて具体的作業に入る責任があると考えておりますが、厚生大臣は提言を率直に法制化する意思がおありでしょうか。
 国民福祉委員会で私の質問に対し、百二十六万床のうち約十九万床を療養型にするという答弁を厚生省がされたことがありますが、今回の法改正には急性期病床という概念が消えてしまっています。
 急性期病床という医療の中核がいわゆる慢性期を扱う療養型と混合している病院が多く、設備がそのためむだになり、医療費合理化の妨げとなっていることは周知の事実であります。
 仮に、十年間で在院日数を半減させ、二十日になったとするならば、単純な計算で約四十万ベッドが余剰となります。現在の世界の入院平均値の十二日になったとするならば、約六十万床が余剰となり、少なくともその中から余剰の五十万床は慢性期病床にして残りを急性期病床にするというぐらいの決断を持つべきであります。
 改正案では、病床区分はあっても目標の比率は全く見られません。厚生省は、区分だけで目標を持っていないのでありましょうか。厚生大臣にお尋ねいたします。
 以上述べましたように、今回の改正案は、健保法、医療法ともに抜本改革の視点を欠き、国民への一方的な負担を強いるものであり、到底国民の賛成が得られないことを申し添えて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(森喜朗君) 医療保険制度の抜本改革についてのお尋ねでございますが、急速な高齢化の進展などに伴い医療費が増大する一方、このところ経済が低迷していたことなどに起因して医療保険の財政は厳しい状況になっております。こうした中で、制度を将来にわたって持続可能な安定的なものにするために、医療保険制度の抜本改革は待ったなしの状況にあります。
 本年度においては、改革の一環として、薬価差の縮小や診療報酬の包括化を推進するなどの措置を講じたところであります。また、今回の健康保険法等の改正案は、定率制をとる若年世代との負担の均衡や医療費に対するコスト意識の喚起といった観点から老人医療について定率一割負担の導入等を図るものでありまして、抜本改革に向けた第一歩であると考えております。
 これらの改正に引き続き、平成十四年度に向け、高齢者医療制度の見直しなど精力的に検討を進め、将来にわたって医療保険財政の安定を図ってまいる所存であります。
 医療保険財政の悪化の原因と我が国の医療水準についてのお尋ねでありました。
 医療保険財政については、今も申し上げましたとおり、このところ経済が低迷していたことにより賃金が伸び悩んでいること、急速な高齢化の進展などに伴って老人医療費が増大していることなどから大変厳しい状況にあるものと認識をいたしております。
 また、医療水準については、我が国の医療費のGDP比は他の先進諸国と比べて比較的低い水準となっておりますが、その医療制度は、国民皆保険のもと患者が自由に医療機関にかかることができ、また世界最高水準の平均寿命や低い乳幼児死亡率などの成果を見ても全般的に高い水準にあるものと考えております。
 医療構造の現状を省みず、抜本改革をおくらせ、負担増を押しつけているとのお尋ねでございましたが、我が国の医療水準が世界的に見ても全般的に高いものであるということは今も申し上げたとおりでございます。
 しかしながら、御指摘のように、病床数の多さや平均在院日数の長さなど効率性の面で改善を必要とする点があるのは事実であり、これまでも診療報酬改定において高齢者の慢性期入院医療における包括化なども進めるとともに、今回の医療法の改正案では、患者の病態にふさわしい医療を提供する観点から病床区分の見直しなどを行うことといたしております。
 今後とも、世界に誇れる我が国の医療制度を維持し、国民が安心して医療を受けられる体制を守っていくため、医療制度の抜本改革に全力を傾注し、良質な医療を効率的に提供できる体制を構築してまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣津島雄二君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(津島雄二君) まず、諸外国と比べて人口当たりの病床数が多いこと及び平均在院日数が長いことに関するお尋ねがございました。
 これらの理由として、長期にわたる療養を必要とする患者がそれ以外の患者と混在した状態で入院医療を受けていること、次に、介護提供体制の整備がおくれていたことから主として介護サービスを必要とする患者の入院が見られること、さらには、診療報酬制度が出来高払いを基本としていることから病院、病床の効率的な運用のためのインセンティブが働きにくいこと等が指摘されているところであります。
 こうした問題を改善するため、今回の医療法改正案においては、現行のその他の病床を療養病床と一般病床とに区分いたしまして、それぞれの病床の機能に応じた構造設備基準及び人員配置基準を設定することにより、個々の患者の病態に応じた医療サービスを適切に提供するための体制を整備することといたしております。
 また、本年四月から開始された介護保険につきましては、その定着に向けた取り組みを進めるとともに、診療報酬についても包括払い制度の拡大や医療機関の機能に応じた点数設定等の対応を行ってきたところでございます。
 今後とも、これらの施策を総合的に進め、良質で効率的な医療サービスの提供を推進してまいりたいと存じます。
 次に、看護職員の配置基準を諸外国並みに引き上げるべきとの御質問でございました。
 今回の医療法改正に伴い、一般病床の看護職員の配置基準を現行の患者四人に対して一人以上から患者三人に対し一人以上に引き上げることとしております。これは、医療審議会の審議におきまして、医療法における人員配置基準は最低基準であること、看護職員の地域的な偏在に配慮する必要があること、半世紀にわたる基準の変更に対する慎重な配慮が求められることといった議論があり、望ましい夜勤体制とされている複数職員による夜勤月八回という、いわゆる二・八体制を何とか確保するために必要な配置として設定したものでございます。
 医療法における基準は最低基準として設定するものであり、各病院に実際に配置される看護職員の数につきましては、病院の管理者が入院患者の病態や看護職員の業務量等に基づき適切に判断していくことが望ましいと考えており、そのために必要な診療報酬上の対応も行っているところでございます。
 なお、医療法に基づき定められた人員配置基準を大幅に上回る看護職員が配置されていた病院でも医療事故は発生しており、人員配置基準が医療事故の主要な原因とは考えにくいのでございます。
 いずれにせよ、続発する医療事故への対応につきましては、専門家による対策会議の開催や事例分析に基づく防止対策など総合的な対策を進め、国民の医療に対する信頼の確保に努めてまいります。
 いわゆるDRG―PPSの導入と医療保険財政についてのお尋ねがございました。
 欧米の状況を踏まえ、我が国では、平成十年十一月から、国立病院等の十病院におきまして診断群分類に応じた定額払い方式の導入による入院期間や診療内容の変化等を把握するため試行調査を実施しているところでございます。
 試行後一年間の調査結果では、平均在院日数などについての有意な変化は見られなかったことから、現在、調査対象や診断群分類等の見直しについて中央社会保険医療協議会で御議論いただいているところでございます。
 この御議論の結果も踏まえ、今後とも診断群分類に応じた定額払い方式について試行調査を進めてまいりたいと考えておりますが、いずれにしても明確なデータに基づき結論を出すべきものと考えております。
 カルテ等の診療情報の活用に関する検討会の提言を法制化する意思があるかというお尋ねでございました。
 カルテ等の診断記録の開示につきましては、検討会の提言を受け医療審議会で御審議いただいたところでありますが、その結果、今後インフォームド・コンセントの理念に基づく医療を一層推進するためには診療情報の患者への提供を積極的に行っていくことが必要とされたところでございます。
 一方、診療記録の開示につきましては、早急に法制化するべきであるとの意見と、医療従事者の側の自主的な取り組みにゆだねるべきであり法制化するべき性格のものではないとする意見があったことから、法制化については、今後の患者の側の認識や意向の推移、医療従事者の自主的な取り組みの状況、診療情報の提供及び診療記録の開示についての環境整備の状況を見つつさらに検討すべきとされたところでございます。
 厚生省としては、この医療審議会の審議結果を踏まえまして、医療従事者の自主的な取り組みを支援し、診療情報の提供等の普及、定着に向けた環境整備を推進するとともに、今回の医療法改正案におきましては、医療機関が広告できる事項として診療録その他の情報を提供することができる旨を追加したところでございます。
 今後、これらの取り組み等を通じて、さらに診療情報の積極的な提供や診療記録の開示を普及、定着させていきたいと考えております。
 最後に、改正案では急性期病床という概念が消失している、また病床区分があっても目標比率が見られないという御質問でございました。
 急性期病床という概念が消失しているとの御指摘につきましては、今回の医療法改正案においては、現行のその他の病床を、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための療養病床と、それ以外の患者を入院させるための一般病床に区分することといたしました。これは、医療審議会においても指摘されたように、仮に急性期、慢性期という厳格な形で区分を行い、患者を峻別すべきものとした場合に、患者の病態に対応できないおそれがあるためでございます。
 厚生省としましては、今回の改正により、患者の病態の変化に対応しながら適切な医療を提供できる体制が整備できるものと考えております。
 また、療養病床と一般病床の目標比率が見られないとのお尋ねにつきましては、患者をいずれの病床に入院させるかは主治医の判断によるべきものであること、両者の機能に一定の代替性が認められることから、医療計画上の基準病床数の算定に当たりましては、療養病床、一般病床を一体として算定することとしており、目標比率を設定することは適当でないと考えております。
 なお、今回の改正案による病床区分が定着した後に作成される医療計画におきましては、療養病床及び一般病床の種別に応じた算定を行い、その目安により都道府県が指導を行うことといたしておりまして、これにより適切な地域医療提供体制の確保が図られるものと考えております。(拍手)
    ─────────────
#10
○議長(井上裕君) 山本保君。
   〔山本保君登壇、拍手〕
#11
○山本保君 私は、自由民主党・保守党、そして公明党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案と医療法等の一部を改正する法律案について、総理大臣、厚生大臣並びに文部大臣に質問をいたします。
 さて、我が国はかつてない少子高齢社会を迎えております。この状況は今後ますます深刻になり、ちょうど私のような昭和二十年代生まれの団塊の世代が老後を迎えるころがそのピークであると言われ、二十年、三十年後を見据えた政策の策定と実行が求められているのであります。
 では、どうしたらよいのか考えてみたい。
 少子化を防ぐために、もっと子供を産みましょうというキャンペーンを張るのか。これは子供を産んではいけませんよというキャンペーンと同じように、実はおせっかいであって危険で、国がやってはならないことであると思います。そうではなくて、生まれてきた子供が健やかに育つ環境を整備することが本当の少子化対策であります。
 同様に、高齢社会にならないように、お年寄りを少なくしましょう、これも冗談であり、ナンセンスであります。つまり、生きていてよかった、長生きしてよかったと心から感じられる社会づくりの政策こそが本当の少子高齢化対策と言えるでありましょう。ぜひこうした視点を忘れずに盛り込んでいただきたいと総理にお願いする次第であります。
 そこで、先ごろ総理大臣の私的諮問機関である社会保障構造のあり方に関する有識者懇談会から答申が出されましたが、総理御自身から、この改革に向けた方向性をお示しいただき、その実行の決意のほどをお伺いしたく思います。
 また、今回の改正法案はそうした一連の社会保障改革の一つであると評価いたしますが、医療分野におきましては、診療報酬、医療提供体制、薬価及び高齢者医療制度を中心とした抜本的な改革を進める必要があり、場当たり的な当座の対症療法にとどまってはいけないことは言うまでもありません。
 そこで、今回の改正法案は、その中でどのように位置づくのか、また今後どういった方向で改革を進めていかれるのか、厚生大臣にそのスケジュールと決意のほどをお聞きいたします。
 次に、健康保険法等の改正法案について、厚生大臣にお伺いいたします。
 景気回復に幾分明るさが見え始めてきたとはいえ、依然、経済は低迷状態から抜け切らずにおります。その一方で、国民医療費は毎年一兆円程度の規模で増加を続けており、経済成長と医療費の伸びとの不均衡は拡大しております。特に、国民医療費の三分の一強を占める老人医療費は、急速な高齢化の進行に伴い、毎年九%前後の伸びを示している状況であります。また、医療技術の進歩は医療費の高額化を進めております。
 こうした中、政府管掌健康保険が三千億円以上の赤字を出し、また組合健保でも全組合の半数が赤字を出しているなど、医療保険財政は非常に厳しい状況にあります。今回の改正では、この点についてどういった対応がなされているのでしょうか、お尋ねいたします。
 また、これまでの厚生省の施策は、何年後には寝たきり老人が何万人になると予測して、その対応策を出すばかりで、本来最も必要である寝たきり老人の予防のための計画がなされていないと私も以前に申し上げました。昨年策定されましたゴールドプラン21によって、初めて元気なお年寄りづくりのための方針が明確にされたところであります。また、健康日本21を打ち出し、積極的に健康をつくり出す施策を実施してきております。そこで、これらの施策の展開と医療費の抑制との関係につきましても御説明いただきたいと思います。
 さらに、改正法案には、国民すべてが支え合うとして高齢者医療費の一割負担が盛り込まれております。ただ、すべての高齢者が弱者であるとは言えない。そうではありますが、経済的に余裕のない高齢者の方々も数多くいらっしゃるのもまた事実であります。今回の改正案の中でこうした方々への配慮はどのように盛り込まれているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 次に、医療法等の改正法案について、総理、厚生大臣、そして文部大臣に質問させていただきます。
 現在、多様かつきめ細かな医療提供体制の実現が求められております。しかしながら、実際の医療現場では病床当たりの看護婦数や病床面積の不足が指摘されております。また、療養型病床群が制度化されているにもかかわらず、長期療養者とそれ以外の患者が混在して入院しており、平均入院日数は諸外国に比べ長いとの問題も指摘されております。この点につきまして、今回の改正によってどのような改善が図られるのか、厚生大臣に御説明いただきたいと思います。
 次に、本改正案には医師の臨床研修の義務づけが盛り込まれておりますが、この研修に当たっては財政支援など身分保障措置が必要ではないかと思いますけれども、これについての御所見をいただきたいと思います。また、専門分化した医師の養成のための研修、これだけではなく、どんな病気も見逃さない安心できる町のお医者さんと、こういうプライマリーケアの専門家も一方重要ではないかと思います。この点について、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
 さらに、医療の高度化に伴い、医師以外の医療従事者の専門性の向上が大変重要になっております。そういった観点から、例えば保健婦、助産婦、看護婦、ソーシャルワーカー、歯科技工士、歯科衛生士など各医療職種についても、大学院のマスターコースを資格取得の前提にした医療教育体制の構築に努めるべきであると思いますけれども、この点につきまして、厚生大臣と文部大臣にお伺いいたします。
 最後に、本法案に関連して二つ質問をいたします。
 まず、現在、障害者の欠格条項の見直しがさまざまな資格において進められております。これは、障害者への差別をなくし、さらに社会参画を進める上で大変重要なことであると考えます。そこで、医師の資格における欠格条項の見直しとその意義、さらにその決意のほどを障害者施策推進本部長でもある総理大臣にお伺いいたします。
 また最後に、最近、医療ミスが多発しており、国民は安心できる医療提供体制を求めております。この点について、厚生大臣から医療事故防止対策の推進についての決意をお伺いし、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(森喜朗君) 社会保障の改革に向けた方向性と決意についてのお尋ねがございました。
 急速に少子高齢化が進行する中で、生涯を安心して暮らせる社会を築くため、将来にわたり持続可能で安定的、効率的な制度を構築することが必要であると考えております。
 今般、社会保障構造の在り方について考える有識者会議において報告書が取りまとめられ、社会保障の改革の方向性について幅広い観点から御提言をいただいたところでございます。
 報告書におきましては、持続可能な社会保障としていくためには、世代間の公平に配慮しながら、給付と負担のバランスを図ることが重要であるとし、そのための方策といたしまして、まず支え手をふやす、二番目には高齢者も能力に応じ負担を分かち合う、三番目といたしましては給付の見直しと効率化が必要であること、社会保障の費用を賄う財源といたしましては、社会保険方式を主としながら保険料及び公費負担を求めること、さらに、社会保障の規模についてとり得る選択の幅を示した上で、将来に向けてある程度の負担の増加は避けられないものの、できる限り負担増、特に現役の負担の上昇を抑えるべきことなどを提言しております。
 政府といたしましては、これを受けて、社会保障改革の全体像を明らかにするいわば大綱とも言うべきものの取りまとめと、これに基づく具体的推進方策を協議するため、政府・与党の連携のもとで必要な体制を整備し、国民的な議論のもと、国民の理解を得ながら社会保障の改革に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 障害者に係る医師法の欠格条項についてのお尋ねがございましたが、医師法も含めて、障害のあることを理由として一律に免許取得を制限している欠格条項を見直し、障害者がその能力を十分に発揮できるようにしていくことは、障害のある方も自立して障害のない方と同等に社会に参加するというノーマライゼーションの考え方を実現していく上で大変重要であると考えております。
 このため、現在、政府といたしましては、平成十四年度までに欠格条項の廃止を含む見直しを行うべく作業を進めているところであります。医師の資格における欠格条項についても、現在、医療関係者審議会におきまして御検討いただいているところでありまして、今後、その結論を踏まえ、障害者にも医師免許取得の門戸を開放し、その能力を十分に発揮できるよう適切な見直しを進めてまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣津島雄二君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(津島雄二君) 山本議員にお答えを申し上げます。
 まず、医療制度の抜本改革と今回の改正の関係はいかんというお尋ねでございましたが、医療制度の抜本改革は、急速な高齢化の進展する中で制度を将来にわたって安定的なものにするために行うべきものであります。
 今年度は、その一環として、薬価差の縮小を図るとともに、診療報酬の包括化を推進するなどの措置を講じたところであります。
 また、今回の健康保険法や医療法の改正は、若年者と高齢者の負担のバランスなどの観点から、高齢者の定率一割負担制を導入するとともに、患者の病態にふさわしい医療を提供する観点から病床区分の見直し等を行うものであり、抜本改革に向けて第一歩を踏み出すものであります。
 残された主要な課題としては、高齢者医療制度の見直しの問題がございますが、これにつきましては平成十四年度に向け引き続き精力的に検討を進めてまいります。
 次に、厳しい医療保険財政の状況を御指摘の上で、今回の健保法改正ではどういった対応をされるのかという御質問でございました。
 医療保険財政については、御指摘のとおり、賃金が伸び悩む一方で老人医療費が大きく伸びており、医療保険財政は大変厳しい状況にございます。
 今回の健康保険法等の改正法案は、高齢者の一部負担について、高齢者にも負担を分かち合っていただくとともに、コスト意識を喚起するという観点から定率一割負担制を導入することなどを内容とするものであり、医療制度の抜本改革の第一歩であるとともに、当面の医療保険制度の安定的な運営にも資すると考えております。
 次に、ゴールドプラン21及び健康日本21と医療費抑制の関係についての御質問でございました。
 国民の健康上の最大の課題である生活習慣病の予防及びその原因となる生活習慣の改善を図るために、厚生省といたしましては、本年三月に健康日本21を策定したところでございます。この健康日本21の推進によりまして、自立して健康に生活できる期間である健康寿命を延ばし、生活の質の向上を図るということが、二十一世紀の我が国を明るく活力ある社会とするために必要であるとともに、痴呆や寝たきりの方々に要する医療費等の社会的負担の増大を抑制する上でも重要であると考えております。
 また、ゴールドプラン21に基づく各種施策の推進によりまして、高齢者ができる限り若々しい高齢者、ヤングオールドと言ってもいいと思いますが、として健康で生き生きとした生活を送れるようにすることは、医療や介護に要する社会的負担を軽減することにもつながると考えております。
 今回の健保法改正における低所得の高齢者への配慮はどういうことをしてあるかというお尋ねでございますが、今回の改正案における高齢者の定率一割負担の導入に当たりましては、定額の月額上限を設け、高齢者の方々に無理のない範囲で、現行制度とほぼ同水準の負担をお願いすることとしたものでございます。
 また、低所得者の方々の入院時の負担につきましては、現行制度よりも負担の限度額を引き下げることとするなど、多様な高齢者の生活実態に配慮したきめ細かな措置を講ずることとしております。
 次に、医療提供体制につきまして、病床当たりの看護婦数や平均入院日数が諸外国に比べて長いというような問題が指摘されておりますが、今回の医療法改正案ではどのような改善がなされているかの御質問でございました。
 議員御指摘のように、我が国の入院医療につきましては、病床当たりの看護職員数や病床面積が必ずしも十分でないということ、長期療養の患者がそれ以外の患者と混在した状態で医療を受けており、諸外国に比べ平均在院日数が長いというような問題点が指摘されております。
 このため、今回の医療法改正案におきましては、病院の病床区分を見直しまして、現行のその他の病床を療養病床と一般病床に区分することによりまして、長期にわたり療養を必要とする患者とそれ以外の患者との混在を防ぎ、それぞれの患者にふさわしい医療を効率的に提供できる体制を整備することといたしております。
 より具体的に申しますと、療養病床におきましては、充実した療養環境のもとで、医学的管理下における介護、機能訓練などに重点を置いた医療を提供する一方で、一般病床におきましては、手厚い看護基準を定めることにより、手術などにより傷病を治癒させることに重点を置いた医療を提供することとしており、これにより御指摘の問題点の改善が図られるものと考えております。
 次に、医師の臨床研修の必須化に際して身分保障が必要ではないかというお尋ねでございました。
 従来より、研修医のための図書購入費など臨床研修病院の経費につきましては、国の補助により手当てするとともに、研修医の給与につきましては、診療行為の対価として診療報酬が支払われているところでございます。
 研修医の給与水準のあり方につきましては、さらに実態把握をした上で、関係審議会等で議論を深めてまいりたいと考えております。
 また、町のお医者さんという形の専門家も重要との御指摘はまことに卓見でございまして、私も二十一世紀の高齢社会の到来を控え、診療に従事しようとするすべての医者が、将来の専門性を問わず、患者を全人的に診る基本的な診療能力を身につけることが重要であると考えております。
 このような観点から、さらに研修内容の充実が図られるよう、施行までの間、十分に検討を行ってまいりたいと存じます。
 次に、医療従事者の専門性を高めるため、大学院のマスターコースを資格取得の前提とした医療教育体制を構築すべきとのお尋ねでございますが、医療の高度化に伴い、医療従事者の資質の向上が重要であり、大学院の修士課程を修了することなどにより、医療従事者が高い専門性を身につけることは望ましいと考えております。
 その一方、現状では、医療従事者の養成にはさまざまな課程が混在しており、大学院の修士課程を資格取得の前提とすることには課題が多いと考えられます。
 厚生省としては、御指摘の趣旨も踏まえ、それぞれの職種の特性に応じて養成課程を充実するなどにより、引き続き医療従事者の資質の向上に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、医療事故防止対策の推進についての決意を問うということでございます。
 続発する医療事故により、国民の医療に対する不安が高まっていることは否定することはできません。私は、この状況を謙虚に、また真摯に受けとめ、医療の安全性向上と信頼回復のために、行政はもちろん、医療関係者が一体となって取り組んでいくことが求められていると認識しております。
 このため、医療従事者一人一人が安全に十分に配慮するとともに、医療の高度化や分業化に対応した組織的な取り組みが進められるよう、これまで、個人がミスをしても事故につながらないフェールセーフの考え方を取り入れることとし、医薬品、医療用具等について医療事故を起こしにくいものに改める仕組みを構築するとともに、国立病院等における事故防止マニュアルの作成指針の策定などを行ってまいりました。
 また先般、森総理の御指示を踏まえ、医療関係者に対し取り組み強化のための緊急要請を行いますとともに、高度医療を行う特定機能病院の病院長会議を開催し、文部大臣と私から安全管理体制の強化等を要請し、関係者の連携強化や具体的方策の協議のため連絡会を設置したところでございます。
 引き続き、国民の医療に対する信頼を確保するため、専門家による対策検討会議の開催や事例分析に基づく医療事故防止対策など、総合的な対策を進めていく決意でございます。(拍手)
   〔国務大臣大島理森君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(大島理森君) お答えを申し上げます。
 専門性の高い看護婦等の医療技術者養成に係る大学院マスターコースについてのお尋ねであったと思います。
 医療の高度化や国民の医療ニーズの多様化に伴いまして、看護婦等の医療技術者の資質の向上は重大な課題となっております。先ほど厚生大臣がお答えしたとおりでございますが、文部省としては、看護等医療技術系の学部の整備とともに、免許を有する医療人の専門能力をより高めるため、例えば、がんを専門とする看護婦を養成する修士課程など、大学院の整備を積極的に進めてきたところであります。
 この結果、国公私立を通じまして、看護等医療技術系の大学院修士課程は、平成三年度には五校でありましたが、平成十二年度には三十八校となっております。
 今後とも、関係省庁と連携を図りながら看護等医療技術系大学院の整備に積極的に対応し、専門的な役割を医師と分担しつつ、チームとして医療を担える高度な専門医療人の養成に努めてまいりたいと思っております。(拍手)
    ─────────────
#15
○議長(井上裕君) 緒方靖夫君。
   〔緒方靖夫君登壇、拍手〕
#16
○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部改正案及び医療法の一部改正案について質問いたします。
 初めに、先日の与党三党による衆議院厚生委員会での強行採決に強く抗議するものです。慎重審議を求める国民の声を踏みにじり、国民の命と暮らしにかかわる重大な法案をわずかの審議でごり押しするやり方は断じて許されません。日本共産党は、このことを厳しく指摘するとともに、本院での徹底審議を求めるものです。
 十月から六十五歳以上のお年寄りの介護保険料徴収が始まりました。この保険料負担に対し、今、全国で苦情や怒りが広がっています。この介護保険料の負担に加え、さらに定率制の導入で高齢者への医療費自己負担を強いるのが今回の改正案です。
 政府は、高齢者は豊かだなどと強調していますが、とんでもありません。高齢者の七六%が住民税非課税であり、四割を超えるお年寄りが月四万円台の年金で生活している、これが現状です。介護保険料徴収や利用料負担を合わせれば、今回の医療費負担の上乗せはまさに二重の苦しみです。
 私は、東京都内の病院で患者さんと懇談いたしました。そこで、老人医療費は以前は無料だったのに、一体どこまで負担せよというのか、あるいは、人間だれでも年をとり、体は弱くなる、これでどうやって生きていけというのかという怨嗟の叫びを聞きました。
 総理の耳には、こうした苦しみ、悲鳴は届いていないのですか。医療費の負担増がお年寄りの厳しい生活にさらに打撃を与えるものにならないのか、総理の認識をしかと伺いたいと思います。
 改正案は、七十歳以上の患者負担に原則として一割の定率負担を導入するものです。現在、お年寄りの医療費は、外来で一回五百三十円、入院で一日千二百円です。そうした定額負担となっております。ところが、今回の改正案で定率負担が導入されれば、病院で検査や治療を受けても医療費が幾らかかるかわからない。自己負担額も会計の窓口に行くまでわかりません。懇談した患者さんは、買い物をするときに値段がわからないで買い物をする人はいない、そう言っておりましたが、支払い額がわからないほど不安なことはないではありませんか。結局、重症の場合や所得の低い患者ほど診療を手控えざるを得ず、診療抑制や中断を招き、お年寄りを病院から遠ざけることは必至ではありませんか。総理の答弁を求めます。
 森首相、あなたは、今回の定率負担について、高齢者に無理のない範囲で現行制度とほぼ同じ水準の負担であると答弁されています。しかし、実態は違います。全国保険医団体連合会の試算によれば、現行の定額負担と比べると、通院、入院ともに平均で一・五倍の負担増となります。
 白内障手術は、かつて全額自己負担でしたが、大きな国民運動の成果で、九二年四月から保険で安く受けられるようになり、お年寄りから世の中が明るくなったと大変喜ばれました。しかしこの費用も、手術で八日間入院した場合、現行の定額制であれば平均九千二百三十円、それが三万五千八百七十円と、約四倍の負担増となります。このことは、津島厚生大臣も審議の中で、入院期間が短いため、負担が非常に上がることは事実だと、現行の定額負担と比べて大幅な負担増になることを認められております。まさにお年寄りいじめそのものではありませんか。これでなぜ現行制度とほぼ同じ水準の負担などと言えるのですか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 さらに、改正案は七十歳未満の高額療養費についても見直しを提案しております。高額療養費制度は、患者の負担が重くなり過ぎないように上限を設け、それを超える分の支払いを償還する制度です。現在の上限額は月六万三千六百円で、それ以上の患者負担はありません。ところが、改正案は、それに加えてかかった医療費に応じた額の一%を加算する仕組みなんです。これでは医療費がふえた分に応じて患者負担が無制限に増加する歯どめなき負担増となるではありませんか。総理の答弁を求めます。
 さきの衆議院厚生委員会で参考人に立った連合の代表は、政府の高額医療給付を受ける人のコスト意識を高めるためという言い分に対して、心ならずも重病になった患者にコスト意識を持てというのかと強い怒りを表明いたしました。高額医療を受けている患者も家族もそれだけ重い病苦と闘っているのです。こうした重症者に制限なしに高い医療費負担を課すことは、行政による一種のペナルティーにほかならないではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。
 政府は、高齢者の医療費が急増し健保財政が危機であること、このことを制度改正の理由に挙げております。しかし、健保財政悪化の大きな要因は、本来果たすべき国の負担分をどんどん削ってしまったことにあります。一九八〇年から九七年までの負担割合を見ると、国庫負担は三〇・四%から二四・四%と、今の金額で年間何と一兆七千億円も減っています。健保財政の危機と言うなら、患者負担をふやすのではなく、国庫負担をふやすことこそ求められているのではありませんか。総理の答弁を求めます。
 重大なのは、政府が今回の改定を抜本改革の第一歩と位置づけていることです。自民党などの与党医療保険制度改革協議会が九七年にまとめた「二十一世紀の国民医療」では、被用者保険の三割負担や大病院の外来五割負担を導入する案が打ち出されております。改革案は、まさにその第一歩としてもくろまれたものです。国費を減らし、そして国民負担への転嫁を強いる改正案は断固廃案とすべきであります。
 次に、医療法の改正案についてお尋ねいたします。
 日本医療労働組合連合会の調査では、看護婦さんの四人に三人が慢性疲労を訴え、七割が健康に不安を感じており、さらに月九回以上の夜勤が二割を超え改善の兆しが見えないなど、看護婦さんの労働条件はまさに依然として深刻であります。なぜこうした事態が起きているのか。それは看護婦さんの人数が圧倒的に少ないからであります。欧米諸国を見ても、病床当たりの看護職員の数は、日本に比べドイツで二倍以上、アメリカで五倍となっております。しかし、今回の改正案は、病院のベッドを一般病床と療養病床とに分け、療養病床を患者六人に対して看護婦一人という、世界に例を見ない低水準の基準を法定化するものであります。これでは、看護職員の労働条件の改善など到底図ることはできないではありませんか。答弁を求めます。
 現在、精神病床の位置づけについて、特例として患者六人に対して看護婦一人など、極めて劣悪な配置基準を決めております。しかし、こうした精神科特例が日本の精神科医療をゆがめてきたことは明らかであります。我が党は、精神科特例の廃止を一貫して要求してまいりました。今こそ、精神科医療費の改善とともに、精神科特例の廃止に足を踏み出すべきではありませんか。答弁を求めます。
 相次ぐ医療費の負担増は、国民の健康づくりにも逆行し、医療費の抑制には決してつながりません。国民の命を守るためにも、税金の使い方を医療、福祉、介護など社会保障重視に転換することを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(森喜朗君) 介護保険料の徴収と健康保険法等の改正についてのお尋ねがまずございました。
 介護保険料の徴収につきましては、市町村において周知、広報にそれぞれ工夫を凝らしながら御尽力をいただいておりまして、これまで大きな混乱もなく実施されていると考えております。
 また、今回の健康保険法等の改正は、医療保険制度の安定を図り、良質で効率的な医療を提供する体制を確立しようとするものであります。
 また、見直しに当たりましては、お年寄りの方々に御無理な負担とならないよう、さまざまな配慮を行っております。
 こうした改正の趣旨やさまざまな配慮などを的確に国民の皆様に御理解をいただけるように努力しているところであります。
 これらの負担はお年寄りの方々にとって無理のない範囲のものと考えておりますが、今後とも介護や医療を国民皆で支えていく必要性について広く国民に理解を求めてまいりたいと考えております。
 今回の定率一割負担制の導入と受診抑制についてのお尋ねがありました。
 高齢者の経済的地位の向上や高齢化の進展に伴う若年世代の負担の著しい増加を踏まえれば、若年世代との負担の均衡やコスト意識の喚起などの観点から、高齢者の方々にもその医療費に応じた負担を分かち合っていただくことが適当と考えます。
 また、今回の改正に当たりましては、定率負担に上限を設定するなど高齢者の生活実態を踏まえ必要な配慮を行っており、高齢者の医療保険は確保できるものと考えております。
 高齢者の一部負担の見直しに関するお尋ねでありますが、定率一割負担の導入に当たっては、ただいま申し上げたとおり、全体として現行制度とほぼ同水準の負担をお願いすることといたしております。
 負担の方式が変更されることによって、個々のケースで見れば現行制度に比べて負担が増加することもあれば軽減されることもありますが、いずれにしろ月々の負担限度額を設けることなどにより無理のない範囲で御負担をお願いできるものと考えております。
 高額医療費の見直しは歯どめなき負担増ではないかとのお尋ねでありますが、今回の改正案では、給付を受ける方とこれを支える方との負担の公平を図ることやコスト意識を喚起するといった観点から、一定の医療費を超えた部分について一%の負担をお願いするものであります。
 この負担は、低所得者の方や高額の負担が連続し負担が重くなっている方には求めないといった配慮を行っておりますので、これにより生活の安定を著しく損なうものではないと考えております。
 今回の高額医療費の改正は、重症者に対する一種のペナルティーではないかとの御指摘がございました。
 今回の改正は、高額な療養について給付を受ける方にもその負担を分かち合っていただくとともに、医療機関等においてもコスト意識を持っていただくものであります。高額な医療の費用も被保険者などだれかが負担するものであり、医療を受ける方にも応分の負担を分かち合っていただくことも制度を永続的なものとしていくためにはやむを得ないものと考えております。
 国庫負担についてのお尋ねでありますが、医療保険制度における国庫負担は、保険料等の拠出が困難な者に適切な保障を及ぼすという観点などから行っており、二十年前と比較すると、国の一般歳出の予算額は約一・五倍しか伸びていない中でほぼ二倍の約七兆円となっております。
 また、今回の定率負担制の導入は、コスト意識を喚起するとともに高齢者にも負担を分かち合っていただくという観点から行うものであります。
 今回の健康保険法等の改正案は、二十一世紀に向けて持続可能で安定的な医療保険制度を構築するための抜本的な改革の第一歩であり、速やかに成立をお願いしたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣津島雄二君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(津島雄二君) まず、緒方議員から、私に対しましても、今回の定率負担が大幅な負担増になるのではないかというお尋ねがございました。
 今般の定率一割負担制の導入によって、個々のケースで見ますと、負担の方式がこれまで一日当たりの定額制から医療費に応じた定率制に変わることになりますから、短期間の入院などの場合には現行制度に比べて負担が増加することもあり得ますが、その一方で負担が軽減されることもあるわけであります。私が衆議院厚生委員会において御答弁申し上げましたのは、その両方を申し上げたわけであります。
 しかし、今回の見直しでは、患者にとって過度の負担とならないよう負担の上限を設けておりますし、低所得者の方々の入院時の負担の限度額を現行制度より引き下げるなどもいたしました。したがいまして、高齢者の状況に応じたきめ細かな配慮を行っておりますので、全体として見ますと現行制度とほぼ同水準の負担となるものと考えております。
 もう一つ質問がございました。
 医療法の改正案における病床の区分や看護職員の配置基準についてのお尋ねでございましたが、今回、長期にわたり療養を必要とする患者とそれ以外の患者の混在を防ぎ、患者にふさわしい医療を提供できる体制を整備するために、現行のその他の病床を療養病床と一般病床に区分し、それぞれにふさわしい人員配置基準及び構造設備基準を定めることとしたものでございます。
 療養病床につきましては、平成四年の第二次医療法改正において、長期にわたり療養を必要とする患者を対象とした療養型病床群制度が設けられ、長期療養にふさわしい人員配置基準、構造設備基準が定められていますことから、医療審議会における議論が行われ、その結果、看護職員の配置基準も含めて、その基準を踏襲することにいたしたものでございます。
 医療法における基準は最低基準として設定するものでございまして、各病院に実際に配置される看護職員の数につきましては、病院の管理者が入院患者の病態や看護職員の業務量等に基づき適切に判断していくことが望ましいと考えており、そのために必要な診療報酬上の対応を行っているところでございます。
 なお、あわせて看護職員の確保については、引き続き総合的な対策を推進してまいりたいと思っております。
 また、いわゆる精神科特例についてのお尋ねがございました。
 精神病床の人員配置及び設備構造の基準につきましては、精神疾患の特性に応じた、精神病床にふさわしい基準とするため、現在、精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会において検討を進めております。
 基準の内容につきましては、入院患者に対し快適な環境のもとで質の高い医療サービスが提供されるとともに、精神障害者のさまざまな病態に応じた医療提供体制が求められております。
 いずれにいたしましても、公衆衛生審議会から、精神医療の特性を踏まえつつ、精神疾患以外の患者への医療提供体制との差をできるだけなくすべきとの意見をいただいているところであり、このような方向で精神医療体制の充実を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
#19
○議長(井上裕君) 清水澄子君。
   〔清水澄子君登壇、拍手〕
#20
○清水澄子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、健康保険法等の一部改正案及び医療法等の一部改正案につき質問いたします。
 現在、我が国では少子化、高齢化が世界に例を見ないスピードで進んでおり、既存のシステムでは対応できなくなった制度を今こそ抜本的に改革しなければなりません。福祉は経済成長の足を引っ張るといった弱者切り捨ての社会保障論から、福祉を社会経済の正面に据え、持続的成長を目指す真に豊かな社会づくりの戦略に転換すべきです。
 ところが、政府は、利用者の負担増など、その場しのぎの対応を繰り返し、小出し、先送り、約束違反に終始してきたのです。
 特に、医療については九七年の自社さ与党合意に基づく抜本改革を二年以上先送りにし、欧米に比べても高い医療費にはメスを入れず、高齢者の薬剤費の定額負担を導入したり、また国庫で肩がわりしてみたりと、その場限りを続けてきました。
 つまり、健康保険制度の赤字を生み出す構造的欠陥をそのままにして、膨張する医療費を被保険者と患者の負担増で埋め合わせるという悪循環を繰り返しており、私どもは到底賛成することはできません。
 そこで、まず総理に伺います。
 社会保障の総合的見直しは、社会全体に目を向け、少子高齢社会にふさわしい社会資源全体の配分をにらんだグランドデザインを描かねばなりません。
 政府・与党は、最近、悪名高い公共事業の偏重を改めるそぶりを見せましたが、結局は竜頭蛇尾に終わり、補正予算や来年度概算要求では旧態依然とした事業規模のみを競う公共事業の垂れ流しを相変わらず続けようとしています。また、次期防衛力整備計画では、国民経済の不況低迷をよそに、アジアの緊張緩和にも背を向け、またも五カ年にわたる軍事費の拡大、確保の計画をつくろうとしています。
 こうした中で、総理の諮問機関としてまとめられた有識者会議の報告も、結局は現在の社会経済の転換期を正しく踏まえたものではなく、高齢者はお金持ちという平成十二年度版厚生白書のコピーとも言える内容で、各種社会保障の枠内だけで財政を均衡させるという主張を前面に押し出しています。
 総理もまた、所信表明演説において、自己責任の原則、世代間の公平などと述べられ、弱者切り捨て、世代間の分断を正当化しようとしています。しかし、社会保障という経済分野は、雇用等を生み出し国民生活に安心を与えるということはあっても、元来、大量の富を生産する分野ではありません。
 本当に社会保障を重視するなら、少子高齢社会の今こそ、国家財政や社会経済の他の分野から社会保障分野への資源の一層の転換、再配分が必要と考えますが、総理、いかがでしょうか。
 さて、ここで九七年八月に自社さ政権で合意された二〇〇〇年に向けた医療制度抜本改革の公約について思い起こさねばなりません。
 社会民主党は、だれもが安心して受けられる医療制度の確立の観点から、薬漬け・検査漬け医療の解消、医療における情報公開、患者の権利法の制定や保険者機能の強化、低所得者や生活困難な高齢者、難病患者への公費負担の増大、薬価差益の完全解消等といった問題に正面から取り組んでまいりました。
 この自社さ政権の合意では、医療制度改革は二〇〇〇年を目途に可能なものからできる限り速やかに実施されることになっていました。そして、同年秋の介護保険法制定の際も、政府は二〇〇〇年度抜本改革を明言いたしました。さらに九八年の通常国会でも、国民健康保険法の附則修正という形で二〇〇〇年抜本改革を定めたのであります。
 なぜ二〇〇〇年に抜本改革ができなかったのか、またしても今回、負担のみを国民に押しつける提案になったのか、社会保障全体に最終的政治責任を持つ総理の見解を求めます。
 また、厚生大臣に伺います。
 当時の小泉厚生大臣は、厚生省としても抜本改革について九八年までに法案を作成すると表明しました。厚生省がおよそ二年、またそれ以上のおくれを公言するに至った理由は何か、お伺いいたします。
 また、自社さ合意の中では、抜本改革なくして負担増なしとの共通認識がありました。森総理は当時、自民党総務会長として与党合意を了承した立場であり、また津島厚生大臣は当時、与党医療協のメンバーでありました。よもやお忘れではないと思います。
 総理、九七年の合意に責任を持つ自民党の代表として、また九八年の教訓を踏まえて、今回の小出しと先送り、約束違反の値上げ提案は撤回すべきではありませんか。総理の見解を伺います。
 次に、厚生大臣に伺います。
 抜本改革がおくれた原因は、日本医師会による強引な反対工作であることが明らかです。これを打開するため、社会保障制度審議会は、利害関係者を除いた公正な第三者機関としての医療臨調の設置を提言しております。厚生大臣はこの第三者機関という提言についてどうお考えか、また医療事業者の圧力に屈することなく、何よりも患者、利用者の立場に立った改革を早期に進めるべきだと思いますが、御決意を伺います。
 最後に、この法案の基本的な問題である高額医療費についてです。
 今回、上位所得者という区分を新設し、従来の上限を撤廃して、かかった医療費の一%は無制限に自己負担とするとしている点です。そもそも社会保険制度とは、所得に応じて保険料を負担し、しかし困ったときの危険負担は病状などに応じてかかった分の全額を保険財政から給付するというのが原則ではありませんか。今回の法案は、こうした社会保険制度の根幹を切り崩すものであり、断じて容認できません。答弁を求めます。
 私たち社民党は、患者、利用者の立場に立った医療の抜本改革を一日も早く実現する立場に立ち、今回の再び負担増だけを先行させる法案には反対であります。これからの徹底審議を国民の皆さんにお約束して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(森喜朗君) 他の分野の費用の社会保障分野への転換、再配分についてのお尋ねがありました。
 これまで増大してきた社会保障の費用については、保険料と公費を組み合わせるとともに、一定の利用者の御負担もお願いしながら賄われてきたところであります。
 このうち国庫負担につきましては、先ほども申し述べましたが、二十年前と比較すると、国の一般歳出の予算額が約一・五倍しか伸びていない中で約二倍の伸びとなっており、一般歳出に占める割合も二七%から三五%に上昇いたしております。
 各年度の予算編成においては、それぞれの施策について、その時々の社会経済情勢、直面する政策課題の優先度等を見きわめ、限られた財源の中で予算配分を行っており、今後とも社会経済の変化等に応じ不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。
 平成十二年度までに抜本改革ができなかった理由についてのお尋ねがありました。
 本年度においては、抜本改革の一環として、薬価差の縮小や診療報酬の包括化などを進めてきたところであります。また、今回の健康保険法、医療法等の改正法案は、医療保険制度の安定を図るとともに、良質で効率的な医療提供体制を確立することを目的とするものであり、医療制度の抜本改革に向けた第一歩となるものであります。
 残された主要な課題である高齢者医療制度の見直しにつきましては、これまで鋭意検討を進めてまいりましたが、現段階では各保険者の負担のあり方についてどう見直すかなどについて考え方を一つに集約するまでに至っていないところから、引き続き精力的に検討し、平成十四年度をめどに改革を進めてまいりたいと考えております。
 平成九年当時の与党三党の確認事項と今回の改正案による患者負担の見直しについてのお尋ねがありました。
 まず、御指摘の平成十年の改正は、老人医療費拠出金の負担の公平化などを図るために行われたものであり、いわゆる負担増を目的としたものではありません。今回の高齢者の定率一割負担の導入等を内容とする改正案も、患者にとって過度の負担とならないよう負担の上限を設けたり、低所得者への配慮などの十分な措置を講じており、全体として現行制度とほぼ同水準の御負担をお願いするものであります。
 先ほども申し上げましたとおり、今回の改正は医療制度の抜本改革に向けた第一歩であり、早期にその実現を図ってまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣津島雄二君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(津島雄二君) 清水議員から、私に対しましても、医療制度の抜本改革の実施がおくれた理由についてお尋ねがございました。
 医療制度の抜本改革につきましては、平成九年より関係審議会などによって鋭意検討を行ってきたところでありますが、テーマが極めて広範に及び、かつ関係者の利害が錯綜したため、議論の取りまとめに時間を要した次第でございます。
 総理から御答弁ございましたとおり、幾多の議論を経まして、本年度より薬価差、診療報酬などの措置を実施いたしますとともに、今回の健康保険法、医療法等の改正案を取りまとめ、抜本改革に向けた第一歩として御提案申し上げておるわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
 残された主要な課題は、総理から申されたとおり、高齢者医療制度の見直し等でございますが、この点につきましては鋭意検討を進めてまいりまして、関係者の意見を一つに集約するよう努力をし、平成十四年度を目途に改革を進めたいと考えております。
 次に、社会保障制度審議会の答申における第三者機関の設置についての御質問でございまして、医療制度の改革につきましては関係者の代表以外の方々によって御議論いただくという方法があるのではないかということでございましたが、これも一つの考え方ではありますが、現実に施策を実行に移す場合には関係者の理解と協力が必要なこともまた事実でございます。
 いずれにいたしましても、医療制度をめぐる問題の所在や改革のあり方につきましては、幅広く国民的な議論を喚起し、国民、関係者の御理解を得ながら抜本改革を実現することが肝要であると考えております。
 最後に、今回の高額療養費の見直しに際して給付に差をつけるのは社会保険の理念に反するのではないかという御指摘でございましたが、高額療養費における自己負担の限度額につきましては、現在でも家計に与える影響を考慮して、低所得の方について一般の方とは異なる額を設定しているところでございまして、必ずしも給付が一律でなければならないというわけではございません。
 今回の改正は、比較的所得が高い方についても一般の方と同程度の御負担をお願いするものであり、また一%の負担も、低所得の方や高額の自己負担が四回以上続いているような方については求めないこととしており、これにより過度の負担が生ずるものではないと考えております。
 こうした改正が、疾病や負傷による経済的負担を社会全体で軽減し、生活の安定を図るという医療保険制度の理念に反するものとは考えておりません。
 以上であります。(拍手)
#23
○議長(井上裕君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#24
○議長(井上裕君) 日程第一 労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。労働・社会政策委員長吉岡吉典君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔吉岡吉典君登壇、拍手〕
#25
○吉岡吉典君 ただいま議題となりました労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、労働・社会政策委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、労働者災害補償保険制度において、業務上の事由による労働者の脳・心臓疾患の発生の予防に資するための二次健康診断等の給付制度を創設するとともに、建設工事などの有期事業に関し、事業場ごとの災害率により労災保険料を増減させるいわゆるメリット制について、その増減幅の上限を百分の三十から百分の三十五に拡大しようとするものであります。
 委員会におきましては、メンタルヘルス対策拡充の必要性、労災保険特別加入制度の改善策、労働時間短縮等過労死予防に向けた施策の拡充の必要性、労災病院の再編についての取り組み方針、二次健康診断等給付の受給要件緩和の必要性、いわゆる労災隠しの現状と防止対策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し四項目にわたる附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#26
○議長(井上裕君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#27
○議長(井上裕君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#28
○議長(井上裕君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百二十  
  賛成            二百二十  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#29
○議長(井上裕君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十六分散会
     ─────・─────
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト