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2000/11/08 第150回国会 参議院 参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第7号
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2000/11/08 第150回国会 参議院

参議院会議録情報 第150回国会 本会議 第7号

#1
第150回国会 本会議 第7号
平成十二年十一月八日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第七号
  平成十二年十一月八日
   午前十時開議
 第一 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 第二 著作権等管理事業法案(内閣提出)
 第三 民事再生法等の一部を改正する法律案(
  内閣提出)
 第四 外国倒産処理手続の承認援助に関する法
  律案(内閣提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、少年法等の一部を改正する法律案(趣旨説
  明)
 一、警察法の一部を改正する法律案(閣法第四
  号)(趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(井上裕君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 少年法等の一部を改正する法律案について、発議者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(井上裕君) 御異議ないと認めます。衆議院議員麻生太郎君。
   〔衆議院議員麻生太郎君登壇、拍手〕
#5
○衆議院議員(麻生太郎君) 少年法等の一部を改正する法律案につき、その趣旨を御説明申し上げます。
 近時、社会を震撼させる少年による凶悪重大犯罪が相次いで発生するなど、少年犯罪の動向につきましては、まことに憂慮すべき状況にあることは御存じのとおりであります。加えて、少年審判における事実認定手続のあり方が問われるとともに、犯罪の被害者に対する配慮を求める声が高まりを見せており、これらの問題に的確かつ迅速に対応することが喫緊の国民的課題となっております。この法律案は、このような状況を踏まえ、所要の法整備を行おうとするものであります。
 法律案の要点を申し上げます。
 第一は、少年及び保護者に対し、その責任について一層の自覚を促し、少年の健全な成長を図るため、少年事件の処分のあり方を見直すものであり、次の点を主な内容としております。
 その一は、刑事処分を可能とする年齢を十六歳以上から十四歳以上に引き下げるとするものであります。
 その二は、十六歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件については、検察官への送致を原則とすることなど、凶悪重大犯罪を犯した少年に対する処分のあり方を見直すものであります。
 その三は、家庭裁判所は、保護者に対し、訓戒などの措置をとることができることとし、また、審判は、懇切を旨とし、和やかに行うとともに、非行のあった少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならないとするものであります。
 要点の第二は、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図り、少年審判に対する被害者を初めとする国民の信頼を維持、強化するための制度の導入であります。
 その一は、家庭裁判所における少年審判等への裁定合議制度の導入であります。
 その二は、事実認定手続に検察官が関与した審理を導入することであります。検察官が審判の手続に関与する場合においては、少年に弁護士である付添人がないときは、家庭裁判所が弁護士である付添人を付することであります。
 その三は、事実認定及び法令の適用に関し、検察官の申し立てにより、高等裁判所が抗告を受理することができる制度を設けるものであります。
 その四は、現行法上最長四週間とされている観護措置期間を、最長八週間までとすることができるよう延長するものであります。
 その五は、保護処分終了後における救済手続の整備であります。
 要点の第三を申し上げます。被害者並びにその関係者に対する配慮を充実する制度の導入であります。
 その一は、家庭裁判所が、被害者等の申し出により、その意見を聴取する制度を導入するものであります。
 その二は、家庭裁判所が、被害者等に対し、少年審判の結果等を通知する制度を導入するものであります。
 その三は、被害者に対し、一定の範囲で非行事実に係る関係記録の閲覧並びに謄写を認めることを可能とするものであります。
 その他所要の規定に関する整備を行うことといたしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 よろしくお願い申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#6
○議長(井上裕君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹村泰子君。
   〔竹村泰子君登壇、拍手〕
#7
○竹村泰子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、与党提出の少年法の一部を改正する法律案に対して質問いたします。
 本題に入ります前に二点、総理に質問したかったのですが、残念ながら総理の御出席がかなわないので、御就任早々の官房長官にかわってお答えいただきたいと思います。
 まず、日英首脳会談で、朝鮮民主主義人民共和国による日本人拉致疑惑に関して総理が行方不明者として第三国で発見という打開策を明らかにした問題で、閣僚会議や自民党総務会、若手議員などからも批判が噴出したと聞いております。
 私たちが総理大臣としての資質を問うのは初めてではありません。いわく、神の国発言、無党派の市民層は寝ていろ発言、いわく、コーエン米国防長官とのいわゆる日本は瓶のふた発言等々、枚挙にいとまがありません。
 今回の日本人拉致疑惑に関しては、拉致されている人々や家族にとって危険な状態を招きかねないことからして、一国の総理大臣として国際感覚を欠き、外交の基本を認識しない、いかに軽率な発言であったかを率直に認め、辞任されるべきであると思います。
 二点目は、中川前官房長官の辞任問題です。
 この間の発言の二転三転、食い違い、逃げ腰の姿勢、警察の捜査情報を女性に通報するテープを出されてついに辞任に追い込まれるというお粗末さ。森内閣は改造をまつまでもなく、もう崩壊に向かっていると言わなければなりません。どのように考えておられるか、明確な答弁を求めます。
 私が少年法の質問に先立ちこの二点をお尋ねしたのは、こうした国のトップにあるお二人の物事をうそで固めてその場を切り抜けようとする情けない姿勢が成長期にある青少年にどういう影響を与えるのか、(発言する者あり)笑い事ではありません。決して無関係とは思えないからです。
 少年犯罪が起きるたびに、少年犯罪は凶悪化、低年齢化し、増加している、少年法を厳罰化すべきだと報道され、世論がそのように操作されがちです。確かに少年犯罪は多様化し、凶悪な殺人事件も目につきます。しかし、犯罪白書のデータを見れば、少年刑法犯の検挙数は八三年をピークに九五年までは減少していました。その後はやや増加傾向にありますが、激増しているというような言い方は正しくありません。では、凶悪化しているのかといえば、同じく犯罪白書によると、少年法の成立時、つまり一九四八年から六〇年代まで殺人等は三百から四百人ぐらいですが、七五年以降は百人以下の状態となり現在に至っています。
 与党の皆さんは、この少年法改正を何を目的として行おうとしているのか、まずお尋ねいたします。
 もちろん、従来とは異なったタイプの犯罪が目立つことも踏まえ、私も社会の変化に見合った改正の要否を検討することの必要性があることは承知しておりますが、少年法改正により年少者の犯罪が減るとお考えなのでしょうか。その点も発議者にお伺いいたします。
 少年法改正の問題に必ず挙げられることとして、犯罪被害者の方々に対する対応の問題があります。
 被害者または被害者家族の皆さんへの問題を考えるとき、加害者が成人であろうと少年であろうと、その被害に対する痛みはそれぞれに重いものであるということは当然のことであります。そのことを前提として、少年法の保護理念とは別に行為の責任をとらせることが重要であるとの論理が今回の改正案の一要素であると思いますが、少年たちに刑罰だけが責任をとらせる道であるのかどうかということに関しては疑問があります。法務大臣はこの点をどのようにお考えですか、お尋ねいたします。
 被害者の方たちのお話を伺うと、自分たちの痛みを加害少年は本当に理解し、反省し、処分されたのかどうかとやりきれぬ思いを語っておられます。
 改正案の中において、事件記録の閲覧、家裁において被害者の心情、意見の表明聴取が可能になるという点は一定の進展かと思いますが、私は、加害少年がみずからの行為の重大性を自覚し、被害者に対する心からの謝罪の気持ちを喚起し、再犯の道を歩ませないことこそが真の少年犯罪に対する対策だと思います。また、そうすることが被害者に対しての償いにもつながるものではないのでしょうか。
 被害者に対する問題は、その被害に対する重大性にかんがみ、国として施策を一層見直すべきであり、被害者の権利を確立する法律の成立が各方面から要望されております。民主党では、さきの国会で犯罪被害者基本法を提出しております。これまで余りにも無権利状態であった被害者の権利は法的に確立されるべきものだと思います。この点に関して法務大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか、明確にお答えください。
 少年犯罪は大人の犯罪と区別して考える必要があります。まず刑罰ではなく、少年に対する教育やその環境を整備するという福祉的措置を優先することには大切な理由があるのです。
 いじめ等により犯罪等の発生に対処するために、家庭、学校、地域が連携していじめ防止プログラムを設定し、いじめを容認しないという断固とした意思で真剣な取り組みをするべきだと思います。既にスウェーデンでは、ノルウェーの学者ダン・オルベウス氏のいじめ防止の理論を参考にしていじめに対する法律が成立しておりますが、この点大臣はいかがお考えでしょうか。
 衆議院段階では、民主党は与党案に対して二十カ所に及ぶ修正案を出しました。参議院でも提出予定であります。それに基づき、三会派与党案について少し詳しくお尋ねしたいと思います。
 まず、私たちが最も問題があると思っているのは、検察官関与であります。
 これまでは家庭裁判所での少年審判では、審判官が少年と向き合い、できるだけやわらかに心開かせて事情を聞くのに比べ、三会派案での検察官の関与の仕方は、事実認定手続において予断排除や証拠法則といった根本原則を無視したものであり、また、少年法の理念を損なう形で検察官の抗告受理申し立てを認めているものです。少年審判の場が少年を糾弾する場へと変質してしまうおそれがあります。
 私たち民主党が出した修正案で示しているように、保護条件の審判に関与した裁判官以外の裁判官によって構成される家庭裁判所によって、適正な手続に従って事実認定が行われるべきだと考えます。検察官送致を決定できるのは、著しく罪質が重大で刑事処分以外の措置によっては目的を達することが困難な場合と限定しております。
 また、少年は非常に可塑性が高く、防御能力が極めて乏しいことから、検察官送致を決定するには弁護士である付添人をつけなければならないとしています。この点、発議者はどう考えられるのでしょうか。
 与党案の二番目、与党案では十六歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪を問われる場合は検察官への送致を原則とする、いわゆる原則逆送を導入しようとするものです。教育的措置によって少年を矯正し、再び犯罪を犯すことのないよう防止しようという少年法の精神に反するものと考えます。少年事件については、まず家庭裁判所がしっかりとした調査を行った上で適切な判断を下すべきと考えますが、提案者の御意見をお聞かせください。
 先ほど、少年法を改正することで青少年の犯罪が減るとお考えかとお聞きしました。衆議院の委員会審議で提出者の杉浦議員は、すぐに減少するとは思わないが、少年の周りに警告を発するところに意味があると答えておられます。犯罪は減少しないだろうがそれでもいいと思っておられるのでしょうか。犯罪を減らしたいと思っている国民の期待と不安を裏切るものではないでしょうか。発議者の皆さんにお尋ね申し上げます。
 アメリカは一九七〇年代から厳罰化の道を選び、その間少年犯罪は減るどころか増加し続けたことは周知の事実であります。
 また、十月三十一日の朝刊ですが、お隣の韓国では厳罰色の強い規定が適用されていて、しかも少年犯罪は増加しているそうです。昨年まで三年間、日本の大学で少年法を研究していたある学者は、韓国でも日本でも少年事件の原因のほとんどは大人たちの責任だ、日本は今の少年法でも見事に成果を上げているのに、どうして大人たちは逃げて子供たちを罰することばかり考えるのかと言っています。
 法務大臣、私たちはこれら世界の動きをしっかりと見て、教訓として選び取らなければならないと考えますが、いかがですか。
 本来、大人が子供に対する態度こそ子供の育ちの基本と言えるのではないでしょうか。子供自身が大切にされていると実感することが人に対する思いやり、命のとうとさをみずから認識させることになると思います。思いやりを持って愛された経験がない子供に対し他人に思いやりを持てと言っても、それは難しいことです。
 先ほども触れましたが、規範を示すべき大人、特に政治家の目を覆うような行動等が世間を騒がせたりする中で、子供にだけ規範意識を養わせると豪語する大人に子供は心を決して開かないでしょう。
 刑法犯少年の総数そのものは減少しているものの、その犯罪の深刻化は、刑罰問題とは切り離し、原因の分析、対策をするべきと考えます。少年法の対応とは別に考えるべき問題だと思いますが、今後どのような対応を考えていらっしゃるのか、官房長官にお尋ねしたいと思います。
 最後に申し上げます。
 私は、少年非行に対して毅然とした姿勢を示し、少年がみずからの行為について責任意識を持つように規範を徹底することは大変重要であると思います。しかし、人格形成過程にある少年に対して安易な厳罰化で臨むことは、本当の意味での規範意識が育たないばかりか、少年の長い人生、更生の可能性と未来を奪うものであると考えます。
 憲法や子どもの権利条約、少年審判運営に関する国連最低基準規則、少年非行予防に関する国連ガイドライン等々が少年の人格とその権利を侵すことのないよう注意深く指針を示していることを重く受けとめるべきと強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員高木陽介君登壇、拍手〕
#8
○衆議院議員(高木陽介君) 竹村議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 まず、少年法改正の目的についてお尋ねがございましたけれども、本改正の目的は、まず少年及びその保護者に対し、その責任について一層の自覚を促して少年の健全な成長を図ること、次に少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図ること、そして被害者に対する配慮をさらに進めること、以上を目的としております。
 続いて、少年法改正の効果についてお尋ねがございました。
 非行に至る背景には、家庭、学校、社会環境等、多くの要因があり、これらが関連して複雑に絡み合っているものと考えられます。
 本改正法案は、刑事処分可能年齢の引き下げや一定の事件については原則として逆送すべきことを内容とするもので、これによって、少年に罪を犯せば罰せられることがあることが明示され、また人の命の大切さを教えることとなり、規範意識を育てることになります。さらに、社会生活における責任を自覚させることにもつながって、その意味で少年犯罪の抑止のために有益であると考えております。
 以上です。(拍手)
   〔衆議院議員松浪健四郎君登壇、拍手〕
#9
○衆議院議員(松浪健四郎君) 少年法改正法案における検察官関与や民主党の修正案について御質問がございました。
 検察官関与が導入されたとしましても、柔軟性や非形式性を持った少年審判の手続構造は維持されるものであります。
 検察官は、公訴官としてではなく、あくまでも家庭裁判所の手続主宰権に服しつつ、審判の協力者として関与するものであります。また、少年法第一条及び第二十二条の趣旨を十分に踏まえまして、少年の年齢や性格に即し、わかりやすく、少年が正当な主張を述べられるような雰囲気のもとで審判が行われるよう適切に配慮するものと考えられます。従来の家庭裁判所における少年審判の本質を変えることにはならないものと考えております。
 民主党所属議員が衆議院に提出されました修正案につきましては、まず少年審判手続に刑事訴訟手続に準じた事実認定手続を導入するとされている点は、現行の少年審判の職権主義的審問構造を大きく変えることになります。事件の早期処理、少年の早期保護の観点などから問題があると考えております。
 また、民主党の修正案において、十六歳未満の少年について検察官送致決定をできる場合を、調査の結果、罪質が重大で、かつ刑事処分以外の措置によっては矯正の目的を達することが著しく困難であると認められる場合としておりますが、これは非常に重大な事案でございます。刑罰によってその責任を問う必要がある場合に、検察官送致決定をすることを制限することとなるなどの問題があると考えております。
 さらに、民主党の修正案では、十六歳未満の少年の検察官送致決定の際に、必要的に付添人を付することとしておりますが、非行事実の認定に問題のない事案についてまで付添人を必ず付することとする必要性に乏しいなどの問題がございます。
 したがいまして、民主党の修正案については種々の問題があると考えているところでございます。(拍手)
   〔衆議院議員杉浦正健君登壇、拍手〕
#10
○衆議院議員(杉浦正健君) いわゆる原則逆送と家庭裁判所の調査についてお尋ねがございました。
 本法が成立した場合におきましても、原則逆送の制度が設けられた場合におきましても、家庭裁判所は少年法第八条による調査をしなければならないことになっております。
 したがって、罪質や犯行の動機及び態様、犯行後の情況等の客観的要素に加えまして、少年の性格、年齢、行状及び環境等の事情を調査し、保護処分が適当であると考えられる場合ではないかについても検討することとされておりますので、改正法が成立した場合においては、裁判所においてこのような法の趣旨を踏まえた適切な運用がなされるものと考えております。
 また、衆議院の法務委員会における私の発言に関連いたしまして、私ども提案者の少年法改正案の効果に対する認識についてのお尋ねがございました。
 私も提案者ももとより、この改正によって犯罪が減少しなくても構わないというような認識を持つものでは毛頭ございません。本改正案は、近時、社会を震撼させる少年による凶悪重大犯罪が相次いで発生するなど、少年犯罪の動向は極めて憂慮すべき状況にあることにかんがみまして所要の法整備を行おうとするものであります。
 また、少年法改正の効果につきましては、先ほど御答弁したとおりでございまして、非行に至る背景には多くの要因があり、これらが関連して複雑に絡み合っているものと考えられるところでありますが、本改正法案は、刑事処分可能年齢の引き下げや一定の事件について原則として逆送すべきことなどを内容とするものであり、これによって、少年に罪を犯せば罰せられることがあるということが明示されまして、また人の命の大切さを教えることとなり、規範意識を育てるとともに、社会生活における責任を自覚させることになるものでございまして、その意味で少年犯罪の抑止のために有益であると考えております。
 この法改正によりまして、少年による凶悪な犯罪が減少することを心から願っておるところであります。(拍手)
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(福田康夫君) 竹村議員にお答えいたします。
 日本人拉致疑惑に関する総理の発言について御質問がございました。
 既に総理が国家基本政策委員会等の場で御答弁されているとおり、この発言は、これから北朝鮮との国交樹立を行うという英国の首脳に我が国の立場について十分理解してもらうことが我が国の対北朝鮮政策上も重要であると考えて、過去の周知の事実を述べられたものと承知しております。このことをもって我が国の国益を損ねるといったことはなく、また殊さらに取り上げて云々することは当を得ていないものと考えます。
 なお、繰り返して申し上げているとおり、拉致容疑問題は、我が国国民の生命にかかわる重要な問題であり、国交正常化のためには避けては通れない問題であると認識しており、解決に向けて粘り強く取り組んでいく決意であります。
 中川前官房長官の辞任問題についても言及がありましたが、中川前長官は、国会や記者会見の場で自分の身の潔白を再三表明しているところであり、前長官が名誉回復のために調査もされて、とるべき処置をなさるものと思っており、私としましてはそれを静かに見守っていくべきと考えます。
 現在、森内閣は、臨時国会で国民の生活に直結する多くの重要案件の処理に政府・与党挙げて全力で取り組んでいるところであります。また、来年一月からの中央省庁再編に魂を入れる努力を初め、日本新生という二十一世紀のかじ取りに向けてさまざまな課題に正面から取り組み、国民の期待にこたえるべく、政府・与党が一丸となって取り組んでいるところであります。
 森内閣についての御指摘がございましたけれども、御批判は御批判として謙虚に受けとめ、誠実に諸課題に取り組んでまいりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣保岡興治君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(保岡興治君) 竹村議員にお答え申し上げます。
 少年に対して刑罰によって責任をとらせることについてのお尋ねがございました。
 少年法は、第一条に規定されているとおり、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」ことなどを目的とするものであり、個々の事案、当該少年の特性などに応じ、刑事処分も含め、多様な処分を用意しているところでございます。少年に対し、事案に応じてより適切な厳しい処分ができることとしても、その責任を自覚する上で意義があるものと考えています。
 犯罪被害者の権利についてお尋ねがございました。
 被害者の法的な権利につきましては、これまでも、犯罪による権利の侵害に対し、損害賠償請求、刑罰権の発動を求める権利などが定められているところでありますが、被害者の立場を尊重することの重要性にかんがみ、さきの通常国会で、被害者について、刑事手続上、他の者とは異なる配慮を受ける地位にあることを明らかにした犯罪被害者保護のための二法を成立させていただいたところでございます。
 私も、犯罪被害者のグループの代表の方や、少年にかわいい子供さんを殺害された親御さんたちに直接お会いして、いろいろなお話をいただく機会も与えていただいたのでございますけれども、今後とも被害者の立場は十分配慮してまいりたいと考えております。
 いじめの問題についてお尋ねがございました。
 いじめは、心身ともに健全に育成されるべき児童生徒の人格や名誉、身体を傷つけるものであり、人権上看過できない問題と考えております。
 法務省におきましても、人権擁護行政の一環として、関係機関との連携のもとに、いじめに対し適正な対処を図っているところでございますが、おっしゃるとおり、いじめが非行に結びつかないように、家庭や学校、地域などが連携して非行の芽のうちにそれを摘むという、保護者などの相談を受ける窓口、その他の工夫がいろいろ大切なことだと考えており、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 少年犯罪の抑止効果についてお尋ねがございました。
 犯罪発生件数は、さまざまな要素によって増減するものでございまして、これについて特定の原因だけを強調して挙げることは困難であると考えています。
 また、少年が非行に至る背景には、先ほど提案者からもお話がございましたが、家庭、学校、社会環境など多くの要因があって、これらが関連して複雑に絡み合っているものと考えられますが、少年に対し、非行についての重大さと社会生活における責任を十分に認識させ、安易に流れることがないようにすることもとても重要なことだと思います。
 今回の改正は、社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに役に立つものであって、その意味で少年犯罪の抑止のために有益であると考えております。(拍手)
#13
○議長(井上裕君) 答弁の補足があります。国務大臣福田内閣官房長官。
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(福田康夫君) なれないことをしておりまして、答弁漏れございました。
 竹村議員から少年犯罪対策についてのお尋ねがございました。
 議員御指摘のとおり、少年犯罪の深刻化はまことに憂慮すべき状況にございます。この問題への対処に当たっては、少年法改正のみならず、家庭、学校、地域、関係機関等が協力し、社会が一丸となって取り組んでいくことが必要であると考えております。
 こうした観点から、政府の青少年対策推進会議が取りまとめました、重大な非行の前兆段階での的確な対応、悪質な少年犯罪に対する厳正な指導等を内容とする当面とるべき措置を踏まえ、関係省庁において諸施策を総合的に推進しております。
 少年犯罪対策については、今後ともあらゆる観点から政府一体となって徹底的に取り組んでいく所存であります。(拍手)
    ─────────────
#15
○議長(井上裕君) 橋本敦君。
   〔橋本敦君登壇、拍手〕
#16
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、少年法改正案について質問します。
 初めに、私は、衆議院において十分な審議を尽くさないまま本法案の採決が強行されたことに対し厳しく抗議するものであります。当日の新聞には、「厳罰ありき 拙速審議」、「言論の府 論議尽くさず」といった大きな見出しが躍り、国民の厳しい批判も高まっています。
 少年法は、罪を犯した少年の人生のみならず、日本社会の将来にも重大な影響を及ぼすものであり、それだけに関係各層の意見を踏まえて、長期的視点に立ち、慎重に審議を尽くすべきは当然であります。広い討論と国民的合意が必要なこの重要法案について、まず私は参議院における徹底審議を強く求めるものであります。
 今日、凶悪な少年犯罪が相次いで、多くの国民が深く憂慮し、一方、被害者からはその人権が軽視されていることに対し切実な訴えが出されています。
 こうしたもとで我が党は、少年法について、犯罪を犯した少年への教育的・福祉的措置を中心とした少年法本来の基本理念と目的は堅持し、一方、現行少年法が被害者に対して適正な配慮を欠く点などは当然改善が必要だと考えます。
 また、我が党は、成人年齢を十八歳に引き下げることで、少年法の適用年齢も引き下げ、選挙権の付与と一体の解決を図ることを提案しています。これは、今日の世界の大勢から見ても当然であり、若者たちに成人としての社会的権利を付与するとともに、法的・社会的責任を果たすことを求め、あすの日本を築いていく役割を期待するものであります。提案者の見解を伺います。
 さて、与党案の最大の眼目は、十四歳、十五歳の少年にまで刑罰を科し得る道を開くとともに、十六歳以上の少年の犯したいわゆる重大な犯罪は検察官に原則逆送とするなど、厳罰化であることは明白であります。
 しかし、その厳罰化を進めたアメリカでは、八〇年代以降、少年犯罪は減少するどころか、殺人は人口比で二・五倍にまで増大し、韓国では、戦前の日本と同様の検察官先審制が採用され、少年に対する保護理念より刑事処分優先の厳罰主義のもとで、少年犯罪の人数を見ると、一九八九年の約十万七千人から九八年には十四万八千人と激増しています。厳罰化によって少年犯罪を防止、減少させることが果たしてできるのか、提案者の明確な答弁を求めます。
 また、衆議院で参考人として意見陳述をされた立命館大学の葛野尋之教授は、教育や社会復帰を強調した少年法の保護処分を受けた場合に比べて、長期拘禁の刑罰を科された方が、他の事情を差し引いても再犯率が高いという傾向があると指摘されています。実際に、政府の昨年の犯罪白書によれば、再犯率は、少年院の場合は二四・三%であるのに比べ、刑務所の出所者は四八・二%と極めて高くなっています。
 このように、単純な厳罰化では少年犯罪の抑止効果がないばかりか、再犯の防止という社会防衛上も逆効果であるとの指摘を提案者はどう認識されていますか。
 十六歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件は検察官に対し原則逆送とすること、このことにはさらに重大な問題があります。現行少年法のもとでも、少年の動機、犯罪の性質や情状、少年の矯正可能性などを裁判官が個別的、具体的に判断して、保護処分よりも刑事裁判を行う必要があると判断するなら検察官に逆送されているのです。
 それにもかかわらず、あえて重大な犯罪であることだけを理由に原則逆送とするならば、家庭裁判所の審判権を事実上侵害するのみならず、家庭裁判所による事件の調査で犯罪の背景や原因、少年を取り巻く環境などが十分配慮されなくなるなど、少年審判本来の教育的・福祉的機能の低下を招き、少年法の理念は大きく後退して、家庭裁判所は刑事裁判へのトンネルとなるという重大な危惧があることを多くの識者、実務者が厳しく指摘しています。そうならないと言える確かな保証がありますか。
 次に、刑事罰適用年齢の引き下げ対象である十四歳、十五歳は言うまでもなくいまだ中学生であります。憲法二十六条の義務教育のもとにある少年であります。そもそも、このような少年の健全な成長を図ることは、まさに国と社会の責任であります。したがって、幼くして犯罪を犯した少年に対しては、刑事裁判に付して早々といわゆる前科者とするのではなく、十分な教育的配慮のもとに、時間をかけて責任の重大さや被害者の痛みなどを理解させ、更生の道を歩ませることこそが必要ではありませんか。国の責任放棄は許されません。提案者と法務大臣の見解を伺います。
 次に、検察官関与の問題であります。
 家庭裁判所の少年審判における事件の正確な事実認定は、被害者に事件の真相を周知する上でも、また犯罪を犯した少年に深い反省と罪の自覚、自己改革を迫る教育的出発点となる点でも少年審判の核心であります。したがって、我が党は、一定の重大事件で事実認定が複雑、困難となっているような事件は、その事実認定に限って検察官の関与を認めることは検討してよいと考えています。しかし、そのためには、裁判官の予断排除、伝聞証拠の禁止並びに必要的弁護人付添制度など、我が憲法第三十一条が要請する適正手続の保障がぜひとも必要であります。
 国連の少年司法運営に関する最低基準規則でも、少年犯罪者に対する手続は、いかなる場合にも適正手続の名のもとに、刑事被告人に普遍的に適用される最低基準に従わねばならないとしているのです。このように、国際的にも規範化されている適正手続の保障がないまま検察官の関与を認めるならば、捜査段階で警察のずさんな一方的捜査や自白強要に抗し切れない少年をより一層弱い立場に追いやることになり、その上、検察官に抗告受理の申し立て権まで付与することになれば、少年法の理念と公正な裁判が守られないばかりか、冤罪の危険性さえ高くなるおそれがあるではありませんか。
 最後に、被害者対策の改善と今後の課題について伺います。
 先日、衆議院の参考人質疑で、西鉄高速バス乗っ取り事件で母を亡くされた塚本猪一郎さんは、政府はまず被害者を立ち直らせる十分な保護をし、さらに少年を更生、復帰させる手続をすべきだ、少年の本当の更生は被害者をも救うことになる、こう訴えて感動を呼びました。しかし、与党案の被害者保護対策は、審判結果等の通知、記録の閲覧、謄写、被害者の意見聴取を認めるにとどまり、これでは極めて不十分であります。少年犯罪事件の被害者対策は一層の充実が必要なのです。
 そのためには、捜査や審判手続の進展状況を含めた被害者への必要な情報の開示、被害者に対する十分な精神的ケアと経済的補償、適正な配慮のもとでの被害者と加害者の対面による加害少年の更生の促進なども実施すべきであります。提案者と法務大臣の答弁を求めます。
 少年問題は社会を映す鏡であると言われています。少年を責める前に、政治と社会に潜む悪とゆがみを正す責任を我々は忘れることは許されません。
 我が党は、少年の非行や犯罪をなくすために、受験競争から子供たちを解放し、子供の成長と発達段階に応じたゆとりのある教育への抜本的改革、社会、政治、経済の分野における腐敗をなくし、道義ある社会を目指すこと、子供たちを有害な情報から守るため社会の自主的ルールをつくることが重要であると呼びかけております。
 今、二十一世紀に向かう我が国社会の民主的発展と正しい理念に基づく青少年の健全な育成を展望する高い視野に立って、少年問題は法による厳罰主義で事足りるのか、それとも、政治と社会の責任をどう果たしていくのか、国民的課題であるこの根本問題について、法務大臣の所見を伺います。
 元最高裁判事で我が国刑法学会の重鎮である団藤重光教授は、二十一世紀はすぐそこまで来ている、次の世紀を担う子供たちをどう育てていくのかを真剣に考えなければならない、政治家は、多方面の専門家の意見に耳を傾け、未来の理想を考えるべきときです、社会的な調査もきちんとやらず、近視眼的な視野、見識で少年法の改正を急いで強行するとすれば、まさしく次代に恥ずべき世紀の恥辱と言わねばならないと、こう述べられています。まことに心すべき至言ではありませんか。
 国民の期待にこたえ、深い充実した慎重な審議を行うことを重ねて強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員高木陽介君登壇、拍手〕
#17
○衆議院議員(高木陽介君) 橋本議員にお答え申し上げます。
 少年法の適用年齢の上限を、選挙権を付与する年齢と合わせて十八歳に引き下げるべきではないかとのお尋ねがございました。
 少年法の適用年齢の上限を二十歳から十八歳に引き下げるということについては、刑事司法全般において若年者をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものであります。最近の少年犯罪の動向やその処遇の実情、十八歳、十九歳の者に対しての保護処分を行うことができなくなることの当否など、その改善更生に与える影響や矯正施設のあり方、さらに年齢について定めている他の法令との均衡など、種々の観点から慎重に検討する必要があると考えております。
 二番目の、少年法の改正により少年犯罪を防止、減少させることができるのかとのお尋ねがございました。
 先ほどの竹村議員の御質問にもございましたけれども、犯罪の発生件数はさまざまな要素により増減するものであって、これについて特定の原因を挙げることは困難であると考えております。また、少年が非行に至る背景には、家庭や学校、社会環境など多くの要因があり、これらが関連して複雑に絡み合っているものと考えられます。
 少年に対して、非行についての重大さと社会生活における責任を十分認識させ、安易に流れることのないようにすることは重要であり、今回の改正は、社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに資するものであって、その意味では少年犯罪の抑止のために有益であると考えております。(拍手)
   〔衆議院議員杉浦正健君登壇、拍手〕
#18
○衆議院議員(杉浦正健君) 刑務所からの出所者の再犯率等についてお尋ねがございました。
 申されたような葛野教授等のような御意見があることも承知いたしておりますし、また御指摘の犯罪白書の数字につきましては、統計のとり方とか対象者の質等が異なりますので一概に比較するのはいかがかと思うんですが、しかしそういう傾向がある、少年院を出た人よりも刑務所を出所した人の方が再犯率が高いという傾向があることは容易に想像できるところでございます。
 橋本議員は、本改正は単純な厳罰化だとおっしゃりたいんでしょうが、私どもはそうは考えておりません。刑事罰適用年齢の引き下げは、いわば刑法の十四歳という原則と少年法の十六歳以上というダブルスタンダードを解消したことでございます。
 また、いわゆる原則逆送制度の導入につきましても、人の命を故意の犯罪行為で奪うという凶悪な行為について、人の命の大切さを教え、罪を犯せば処罰されることがあるということを明示したわけでありまして、少年の規範意識を育てるとともに、社会生活における責任を自覚させようとするものでございまして、いわゆる単純な厳罰化とは言えないと思うものでございます。
 逆送された場合におきましても、少年法五十五条では、「裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもつて、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。」と定めております。戦後五十年、この五十五条はほとんど活用されておりませんでした。
 逆送された場合におきましても、裁判所におきまして適切な審理がなされると確信しておりますし、適切な矯正処遇や更生保護と相まちまして、少年の犯罪の抑止に資するものと考えておる次第であります。(拍手)
   〔衆議院議員漆原良夫君登壇、拍手〕
#19
○衆議院議員(漆原良夫君) 原則逆送制度の導入は、家庭裁判所の審判権を侵すばかりか、十分な調査が行われなくなる危惧を生ずるとの御意見をちょうだいいたしました。
 しかしながら、少年法第八条は、検察官等から少年事件の送致を受けた場合には事件について調査をしなければならない旨定めております。また、改正案第二十条第二項のただし書きは、調査の結果、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは逆送決定をしなくてもよいというふうな規定を設けておるところでございます。
 したがって、原則逆送の制度が設けられた場合でありましても、家庭裁判所は、罪質、犯罪の動機、態様、犯行後の情況等の客観的な要素に加えて、少年の性格、年齢、行状、環境等の事情をきめ細かく調査することになっております。その結果、保護処分が相当であると考えられる場合ではないかということについても十分に慎重に検討することとしておるところでございます。
 改正法案が成立した場合においては、裁判所においてこのような法の趣旨を踏まえた適切な運用がなされるものと考えておりますので、御懸念は当たらないというふうに考えております。
 義務教育年齢にある少年に対する更生のあり方についてお尋ねがありました。
 罪を犯した少年に対し、個々の事案や当該少年の個性等に応じて刑事処分をも含めて最も適切な処分を行った上でその年齢と資質に応じた教育を施す、そして責任の大きさを自覚させるとともに被害者の心情を理解させることは、少年の更生を図るためにも極めて重要であると考えております。そのことが、少年法の目的である少年の健全育成にも資するものと考えておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔衆議院議員谷垣禎一君登壇、拍手〕
#20
○衆議院議員(谷垣禎一君) 少年審判に検察官が関与することなどによって冤罪が生じるおそれがあるのではないかというお考えの御披瀝がございました。
 少年法は、少年の早期の保護育成を達成するために、家庭裁判所が審判を主宰して、柔軟で非定型的な職権主義審判構造を採用しているというふうに理解しておりますが、これを刑事手続と同様の手続といたしますと、審判が長期化して少年の早期保護の要請にも反するおそれが出てくるのではないか、あるいは教育的効果も失われるおそれがあるのではないか、こういったことから刑事手続と同様の手続とすることは相当ではないと考えております。
 今回の改正法案は、こういう少年審判の特質に配慮しながら、検察官関与制度などを導入いたしまして事実認定手続の適正化を図るものでありまして、真実の発見をより確かなものとするものでございます。
 裁判官は、検察官から送付された全記録を検討して、事実認定、法律適用の点で考慮すべき事項等を把握した上で少年の主張も十分聴取して、必要な証人尋問等を行って心証を形成しているところでありまして、また、検察官が出席する場合におきまして、少年に弁護士である付添人がないときは、国選で弁護士である付添人が付されるのでありますから、検察官が関与することなどによって冤罪が生じるというようなことはないと考えております。
 また、少年犯罪被害者の充実が必要であって、その保護をさらに拡充すべきであるとの御意見をいただきました。
 この問題につきましては、本改正法案では、少年犯罪の被害者への配慮を充実させるために、まず第一に被害者の申し出による意見の聴取、二番目に審判結果等の被害者への通知、それから三番目に被害者による記録の閲覧、謄写、こういう三つの制度を盛り込みました。
 しかしながら、御指摘のように、被害者に対する総合的な施策や、非行のある少年の改善更生の措置を充実することはもちろん必要でありまして、今後とも検討、努力していかなければならないと考えております。(拍手)
   〔国務大臣保岡興治君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(保岡興治君) 橋本議員にお答え申し上げます。
 義務教育年齢にある少年に対しては、教育的配慮に基づき更生を図るべきではないかとのお尋ねがございました。
 少年法の目的とする少年の健全育成という立場は今後とも堅持し、かかる法の基本理念を大切にする努力は今後とも尽くしていくべきであり、罪を犯した少年に対し、その年齢と資質に応じた教育を施し、自己の責任や被害者の立場などを理解させるよう配慮することも当然のことと考えております。
 少年法は、少年の健全育成を図るため、個々の事案、当該少年の特性などに応じ、刑事処分を含め多様な処分を用意しているところであり、事案に応じて、適切な厳しい処分により、少年にその責任や自己の与えた被害の大きさを自覚させるなどの矯正処遇を行うことが必要な場合もあるものと考えております。
 少年による犯罪の被害者に対する保護の充実についてお尋ねがございました。
 この問題は、御指摘のとおり、多岐の分野にわたるものであり、本改正法案においては、被害者などの申し出による意見の聴取、被害者通知制度、被害者等による記録の閲覧、謄写の制度が盛り込まれているものと承知しております。また、本年五月には、犯罪被害者保護のための二法を成立させていただいたところであります。
 先ほども申し上げましたが、犯罪の被害に遭われた、あるいはかわいい家族を殺害された方々のお話を聞いたりすると、もっともな点がたくさんあって、うなずかされる点も多いのでございまして、法務省といたしましても、この問題については、今後とも関係省庁と連携しつつ鋭意検討を行い、議論を尽くし、熟したものから適切に対応してまいりたいと考えております。
 少年問題に対する政治や社会のあり方についてお尋ねがございました。
 申すまでもなく、少年はやがて日本の将来を担っていくことになるのであり、その健全な育成を図ることは二十一世紀の日本のためにとても大切なことで、我々政治家に課せられた大きな使命であると思います。
 少年犯罪や少年非行に適切に対処し、少年の健全育成を図るためには、現在御審議中の少年法の改正が重要な柱になると考えておりますし、それにとどまらず、教育、文化、社会福祉、その他各般にわたる総合的な行政の充実を徹底工夫することも必要であり、またそれと相まって、少年の保護者や少年を取り巻く地域社会を初めとする国民全体の幅広い理解と不断の努力により、自浄作用の働く社会の力をつくり出していくこともとても大切なことだと考えておるところでございます。(拍手)
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#22
○議長(井上裕君) 福島瑞穂君。
   〔福島瑞穂君登壇、拍手〕
#23
○福島瑞穂君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、少年法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず、そもそも少年法改正をするための立法事実があるのでしょうか。
 少年犯罪の増加、凶悪化、低年齢化が言われています。しかし、これは全く事実に反しています。戦後の刑法犯の少年検挙人員と人口比の増減を見ても、少年犯罪の数は、一九八三年ごろの戦後第三のピークのときから徐々に減少傾向を示しており、一九九六年から上がり始めていますが、それでも現在は第三のピーク時よりまだ少ない状態です。また、統計上、凶悪化、低年齢化はありません。昨年の少年犯罪の発生件数は一昨年と比べて六・三%減少しました。凶悪犯罪も三十年前に比べて約七割も減っています。立法事実がないのですから、改正の根拠はありません。
 今回の改正案は、最近発生した少年の残虐犯罪に便乗し、世論を誘導するものではないでしょうか。
 次に、少年法の厳罰化で果たして少年犯罪が減るのでしょうか。
 衆議院の法務委員会において、犯罪抑止効果を期待して法律改正をするのであれば、根拠となるデータはあるのかという質問に対して、法務大臣は、総合的なしっかりした調査の結果、何をやればどういう効果があるというデータはないと答弁をされました。
 少年法改正によって犯罪が抑止される、減るということは何ら立証されておりません。アメリカもドイツも少年法厳罰化の中でむしろ少年犯罪は増加し、少年法の厳罰化によって少年犯罪を抑止することができないことは諸外国の例がまさに示しています。にもかかわらず、なぜ日本で今の時期に少年法の厳罰化なのでしょうか。
 また、規範意識の強化ということも立法理由に挙げられることがあります。規範意識は厳罰化しなければ生まれないものなのでしょうか。
 今回の少年法改正案は、立法の根拠となる立法事実もなく、犯罪の抑止力も期待できず、さらに少年法の目的である「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」との少年法一条との法的整合性も全くない、百害あって一利なしのものです。
 まず、十六歳から十四歳への刑事処罰年齢の引き下げについて伺います。
 十四歳といえば義務教育を受ける年齢です。義務教育を受けるべき子供を刑務所に送ってどうするのですか。子供の教育を受ける権利はどうなるのでしょうか。
 改正案は、刑務所への収容が決まった少年も義務教育年齢の間は少年院に置くことができるようにしています。しかし、その場合、少年の法的な地位、権利義務は受刑者のそれになるのでしょうか、それとも少年院在院者のそれになるのでしょうか。それに、少年は、義務教育年齢を過ぎたら今度は少年院から刑務所に送られるのでしょうか。その少年への教育・更生プログラムはどうなるのでしょうか。全く問題意識のない改正案ではないでしょうか。十四歳引き下げは義務教育の放棄であり、少年院に入れることも大きな混乱を生みます。
 少年たちが残虐に見えるのは未熟なためです。刑務所は懲役を科すところであり、十四歳、十五歳の少年を刑務所に入れても心の発達は遂げられません。なぜ、年齢の引き下げなのでしょうか。
 次に、原則逆送規定についてお聞きします。
 現行法は、家裁が刑事処分が相当と判断すれば逆送できる仕組みをきちんととっております。今、なぜ原則と例外を逆転しなければならないのでしょうか。理由がありません。
 原則逆送を採用すると、いわゆる犯罪少年は成人以上の不利益な手続を強制されることになります。今回の改正で、成人であれば一回で済むところを、少年は家庭裁判所の審判で検察官の立ち会いのもとに徹底的な審議が行われ、もう一度成人と同様の刑事裁判を受けなくてはなりません。原則逆送の考えは少年法一条を著しく変容させるものです。少年法一条との整合性はあるのでしょうか。
 九月七日に発表された「検察統計年報」によれば、昨年の少年事件数は減少し、逆送事件も減少しています。この事実と原則逆送はどう結びつくのですか。原則逆送を認めなければ社会防衛ができないほど凶悪な少年犯罪が多発し、犯罪少年が保護処分では矯正不可能なまでに人格を荒廃させているのかどうか、感情論ではなく客観的な資料に基づいて立法事実の有無を検証すべきです。
 次に、少年審判への検察官の関与についてお聞きします。
 これは、現在の少年審判手続に構造の全く異なる検察官を関与させるもので、木に竹を接ぐものであり、少年法の基本構造を変更するもので許されないと考えますが、いかがお考えでしょうか。
 私たちは、社会の中から犯罪を減らしたいと思っています。そのためには、犯罪を行った人にきちんと変わってもらう必要があります。少年の場合は特にそうでしょう。一生閉じ込めておくことはできないのですから、きちっと変わってもらって出てきてもらう必要があります。そのためには、被害者を真正面に据えて加害少年が被害者と向き合い、事件の重大性や影響を少年が直接自分で認識し、受けとめ、真摯な謝罪、真の更生がなされるシステムが必要なのではないでしょうか。
 少年が被害者と向き合い、被害者から見た事件の重大性や影響を直接自分の目と耳で受けとめるとき、心からの謝罪や自責の念が生まれてきます。被害者が少年の実像を知り、真摯な謝罪を受けることは被害者にとっても救いになることもあります。
 残念ながら、実際のところ日本では、加害少年が被害者の声を直接聞くことはごくまれにしかありません。これに対して世界各国では、被害者と加害者が直接向き合って対話するプログラムが急速に広がっています。このような考え方、リストラティブジャスティス、いわゆる回復的司法によって犯罪を抑止しようというのが世界の趨勢です。
 二〇〇〇年四月、国連の犯罪防止会議においてもリストラティブジャスティスをもっと広めようという決議がなされました。官房長官及び法務大臣はリストラティブジャスティスについてどのように検討していらっしゃるでしょうか。お聞かせください。
 衆議院の法務委員会で、少年院の子供たちに篤志面接委員として会ってきた参考人は、子供が変わろうとするのは大人が自分のことを考えてくれると思えるときであると述べています。そのとおりです。
 立法者が、子供たちを悪い子供といい子供の二つに分けて、悪い子供は救いがないので切り捨てていくと宣言をしているのが今回の少年法改正案です。今回の少年法改正案は、立法理由のない大人のヒステリーであり、立法者たちの子供たちへの絶縁状です。皆さんたちの多くはお父さん、お母さんでもあるでしょう。子供たちと接すると、子供たちはゆっくりとしか変われないこと、子供たちは愛されたい、認められたい、大切に扱ってほしいと思っていることが本当におわかりだと思います。改正案は、子供たちがゆっくり変わっていくことを許さない、愛のない改正案です。
 改正案が仮に成立すれば、少年犯罪が増加していくことは火を見るよりも明らかです。子供たちはじっと見ています。厳罰化ではなく、リストラティブジャスティスをと訴え、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員谷垣禎一君登壇、拍手〕
#24
○衆議院議員(谷垣禎一君) 福島議員にお答えを申し上げます。
 少年法改正に関する立法事実についてお尋ねがありました。
 今回の改正を支える立法事実は全くないと断定されましたが、その議員の立論の基礎にある統計の読み方は、私たちとは異なっておられるようでございます。
 私どもは、少年刑法犯全体の検挙人員の推移を見ると、平成七年を境に増加の傾向に転じて二十万人を超えて推移しております。また、凶悪犯の検挙人員も平成七年を境に増加の傾向に転じて二千人を大きく超えるとともに、近時、社会を震撼させる凶悪重大犯罪が相次いで発生するなど、少年犯罪の動向はまことに憂慮すべき事態にあると考えております。
 さきの総選挙において選挙民から寄せられた声を初めとしまして、世論の大多数は少年法の早期改正を強く望んでおりまして、それを踏まえて、議員提案による少年法改正法案を提出し、喫緊の国民的課題にこたえようとしたものでありまして、断じて世論を誘導するものではございません。
 また、今の時期に少年法を改正する理由があるのかというお尋ねがございました。
 少年による深刻な凶悪事件が後を絶たず憂慮すべき現状にあることにかんがみますと、少年犯罪に対する適切な対策を講じることは喫緊の国民的課題となっております。
 今回の少年法改正案は、少年法の改正を望む国民の声が非常に強いことから、与党におきまして少年法のあり方についてさまざまな観点から議論を尽くし、この喫緊の課題に早急に対処するため必要な整備を図るものです。
 もとより少年法の改正だけが規範意識の醸成に資するものではありませんが、少なくとも、今回の改正は、少年に社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに資するものであって、その意味で少年犯罪の抑止に有益である、こう考えております。
 それから、少年審判に検察官を関与させることは少年法の基本構造を変更させるものではないかとのお尋ねがございました。
 先ほど、橋本議員のお尋ねにも御答弁を申し上げたところでございますが、本改正法案は、柔軟性や非形式性を持った現行の少年審判の手続構造は維持しながら、検察官は、公訴官としてではなく、あくまで家庭裁判所の手続主宰権に服しつつ、審判の協力者として関与することとしておりまして、何ら少年法の基本構造を変更することにはならないものである、こう考えております。(拍手)
   〔衆議院議員杉浦正健君登壇、拍手〕
#25
○衆議院議員(杉浦正健君) 義務教育年齢の少年が刑事処分となった場合の教育を受ける権利、法的地位、教育・更生プログラムについて御質問がございました。
 今回の改正法案では、懲役または禁錮の言い渡しを受けた少年に対しては、十六歳に達するまで少年院において刑を執行し、矯正教育を授けることができるようにしております。そのようになると思います。義務教育年齢にある十六歳未満の少年が年齢に相応した必要な教育を受けることができる、その点に配慮したものとなっております。
 少年院収容受刑者も、懲役刑または禁錮刑の執行を受ける受刑者としての地位を有する者でございます。しかし、少年院に収容している間は原則として少年院在院者と同様の処遇を行うものでございまして、改正後の少年院法第十七条の六におきましては、受刑者としての地位から当然準用が必要となる出所等に関する規定に限って監獄法を準用することとしたものでございます。
 少年院収容受刑者は、十六歳に達しますと、少年院から少年刑務所へ移送されることになります。少年院収容受刑者につきましては、少年院収容時から、教科教育のほか、例えば犯罪の重大性を認識させ、罪の意識の覚せいを図ること、生命のとうとさを認識させ豊かな人間性を涵養することなどに重点を置いた処遇計画を策定し、少年刑務所移送後もこれを引き継ぐことによりまして一貫性のある処遇を行うことが肝要であると考えております。少年院、少年刑務所を視察してまいりましたが、現場は非常によくやっておられまして、必ず我々の期待にこたえてもらえるものと思っております。
 刑事処分可能年齢の引き下げの趣旨についてお尋ねがございました。
 先ほど申し上げたとおりでございますが、近年、十四歳、十五歳の年少少年による凶悪重大事件が後を絶たず憂慮すべき状況にあることにかんがみまして、この年齢層の少年であっても罪を犯せば処罰されることがあるということを明示するとともに、事案に応じまして適切な、場合によっては厳しい処分も可能とすることによりまして、社会生活における責任を自覚させ、その健全な成長を図る必要があるものと考え、そのため、刑事処分可能年齢を刑法における刑事責任年齢に一致させまして十四歳まで引き下げることとしたものでございます。(拍手)
   〔衆議院議員漆原良夫君登壇、拍手〕
#26
○衆議院議員(漆原良夫君) 原則逆送制度を導入する趣旨についてお尋ねがありました。
 故意の犯罪行為によって人を死亡させるという重大な罪を犯した場合には、少年であっても刑事処分の対象となるという原則を示すことによって、何物にもかえがたい人命を尊重するという基本的な考え方を明らかにして、少年に自覚と自制を求めるとともに、事案に応じて適切な処分をする必要があります。
 そのような観点から、罪を犯すときに十六歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた場合には、保護処分が相当と認められる場合を除いて検察官送致、いわゆる逆送する制度を導入したわけでございます。
 原則逆送と少年法第一条との関係についてお尋ねがありました。
 少年法は、少年の健全育成の観点から、少年の保護を重視しつつも、犯罪の性質や少年の特性等によって、場合によっては刑事処分が選択されることをもともと予定しておるところでございます。しかし、人を死に至らしめるような特に凶悪重大な事件については、保護処分を適当と認める場合には保護処分に付することができることとしつつも、原則として逆送する制度を設けたとしても、私は少年法第一条の理念に反するとは考えておらないところでございます。
 平成十一年の少年事件数及び逆送事件数が減少していることと原則逆送との関係についてお尋ねがありました。
 御指摘のように、平成十一年の検察庁における少年の新規受理人員は平成十年に比べて減少しております。その中にあって、平成十一年の凶悪犯の検挙人員は増加しておりますとともに、社会の耳目を聳動する凶悪重大事件が相次いで起こっております。
 故意の犯罪行為によって人を死亡させるという行為は、自己の犯罪を実現するために何物にもかえがたい人命を奪うという点で極めて反社会性、反倫理性の高い許しがたい行為であるというふうに考えております。したがって、このような罪を犯した場合には、少年であっても刑事処分の対象となるという原則を明示することが、少年の規範意識を育て、健全な成長を図る上で重要なことであると考えたことから、原則逆送制度を設けることにしたわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(福田康夫君) 福島議員にお答えいたします。
 少年法を厳罰化することにより少年犯罪が減ると考えるかとのお尋ねですが、少年に対しては、非行についての重大さを十分認識させ、安易に流れることのないようにすることは重要であり、少なくとも、今回の改正は、社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに役立つものとなっております。その意味で少年犯罪の抑止の一助になるものと考えております。
 規範意識は少年法を厳罰化しないと生まれないものなのかとのお尋ねですが、規範意識の醸成はさまざまな方法によりなされ得るものです。しかし、少なくとも、今回の改正は、社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに役立つものであると考えております。
 リストラティブジャスティス、いわゆる回復的司法についてお尋ねがありました。
 この考え方は、犯罪により生じたさまざまな損害の回復を重視するものと理解しておりますが、我が国の刑事手続においては従来からそのような観点からさまざまな配慮が行われていると承知しております。少年審判手続におきましても、少年の改善更生に有益と認めるときは、御指摘のような処置をとることも環境調整の一環として可能であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣保岡興治君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(保岡興治君) 私にはリストラティブジャスティスのお尋ねがございました。
 これは、もう今、官房長官からお答えしたことと同じでございますが、御指摘のような措置、これは現在の少年法の処遇においても環境調整の一環として可能だと思いますし、今後も、非行のあった少年の処遇においては、被害者の意識とか社会の変化を十二分に踏まえて工夫や検討をすべきものと考えております。(拍手)
#29
○議長(井上裕君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#30
○議長(井上裕君) この際、日程に追加して、
 警察法の一部を改正する法律案(閣法第四号)について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(井上裕君) 御異議ないと認めます。国務大臣西田国家公安委員会委員長。
   〔国務大臣西田司君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(西田司君) 警察法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、警察の職務の遂行の適正を確保するため、国家公安委員会及び都道府県公安委員会等の警察庁及び都道府県警察に対する監察の指示、当該指示を履行させるための委員による点検等、警察職員の法令違反等の報告の聴取、警察職員の職務執行についての苦情の申し出並びに委員の再任の制限に関する規定を設けることにより国家公安委員会等が警察庁等を管理する機能の強化を図るとともに、警察署における事務の処理に民意を反映させる警察署協議会の制度について定めるほか、最近の治安情勢にかんがみ、国の重大な利益を著しく害するおそれのある航空機の強取等の犯罪に係る事案についての警察運営に関する規定の整備を行うこと等をその内容としております。
 以下、各項目ごとにその概要を御説明いたします。
 第一は、国家公安委員会及び都道府県公安委員会等の管理機能の強化に関する規定の整備についてであります。
 その一は、国家公安委員会、都道府県公安委員会及び方面公安委員会は、監察について必要があると認めるときは、警察庁、都道府県警察及び方面本部に対する指示を具体的または個別的な事項にわたるものとすることができることとし、この場合において、国家公安委員会、都道府県公安委員会及び方面公安委員会は、その指名する委員に、当該指示の履行の状況を点検させることができることとするものであります。
 その二は、警視総監または道府県警察本部長は、都道府県警察の職員が、職務を遂行するに当たって法令または条例の規定に違反した等の疑いがあると認める場合は、速やかに事実を調査し、当該事由があることが明らかになったときは、都道府県公安委員会の定めるところにより、都道府県公安委員会に対し、その結果を報告しなければならないこととするものであります。
 その三は、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し、文書により苦情の申し出をすることができることとし、都道府県公安委員会は、当該申し出が都道府県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められる場合等を除き、これを誠実に処理し、処理の結果を文書により申し出者に通知しなければならないこととするものであります。
 その四は、国家公安委員会の委員については一回に限り、都道府県公安委員会及び方面公安委員会の委員については二回に限り、再任されることができることとするものであります。
 第二は、警察署協議会の制度に関する規定の整備についてであります。
 これは、管轄区域内の人口が僅少であること等特別の事情がある場合を除き、警察署に、警察署の管轄区域内における警察の事務の処理に関し、警察署長の諮問に応ずるとともに、警察署長に対して意見を述べる機関として、警察署協議会を置くものとするものであります。
 第三は、国の公安に係る事案についての警察運営に関する規定の整備についてであります。
 これは、国家公安委員会の管理する事務として、国際関係に重大な影響を与え、その他国の重大な利益を著しく害するおそれのある航空機の強取、人質による強要その他これらに準ずる犯罪に係る事案で国の公安に係るものについての警察運営に関することを加えるものであります。
 その他、国家公安委員会の管理する事務として政策の評価に関することを加えるとともに、皇宮護衛官について司法警察職員としての職務を行う旨の規定を置く等所要の規定の整備を行うこととしております。
 なお、この法律の施行日は、一部を除き、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞよろしくお願いをいたします。(拍手)
    ─────────────
#33
○議長(井上裕君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。菅川健二君。
   〔菅川健二君登壇、拍手〕
#34
○菅川健二君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました警察法の一部を改正する法律案に対し、質問いたします。
 まず、本題に先立ち、中川前官房長官の捜査情報の漏えい疑惑についてお尋ねいたします。
 中川前官房長官は、総理補佐を務めていた当時、交際相手の女性に、覚せい剤の関係で警察が動いているので気をつけなさいと電話連絡しており、この会話の中には、警視庁の保安課が動いているとの組織的な具体の名称まで述べ、警察の方の話はいいかげんな話じゃないともだめ押ししております。これら一連の会話は録音テープにとられ、中川氏本人も自分の声であると認めております。実際にこの直後、女性は覚せい剤容疑で警視庁から家宅捜査を受けました。
 これら一連の事実関係を見ますと、中川前官房長官は、官邸にいて本来秘密であるべき捜査情報を相手方に漏らしたことが明白であると断ぜざるを得ません。
 森総理は、さきのクエスチョンタイムで民主党の鳩山代表に、中川議員本人が調査して釈明されると言い逃れておりますが、内閣としても責任を持って調査し、適正に対処すべきと考えます。福田官房長官、いかがでしょうか。明快なお答えをお願いいたします。
 また、警察情報を漏えいしたことが事実であるとすれば、情報を提供した警察官は公務員法上、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという守秘義務の違反に問われることになります。警察庁はこの件について事実関係を十分調査の上、結果を公表すべきであると考えます。
 国家公安委員長、いかがでしょうか。警察の信頼回復の上にも重要ですので、速やかな対応を望みます。
 さて、かつて日本は世界でも最も治安のよい国として国際的にも認知され、また多くの国民は我が国の警察に対して全幅の信頼を寄せてまいりました。ところが、今日は犯罪の検挙率の低下や警察官の相次ぐ不祥事により、我が国の警察に対する国民の信頼感が根底から揺らぎ始めており、甚だ危機的な状況に直面しております。
 警察白書における国民の意識調査によると、警察の捜査活動について何らかの不満を持っている人が七三・一%に上り、一九六九年の二八・八%に比べると信頼の低下は深刻です。警察刷新会議の氏家座長も、ホームページの開設に当たって、このところ警察不祥事が頻発し、国民は不安のどん底におののいています、私はこの警察をめぐるさまざまな問題の根本には、日本の警察が戦後半世紀以上を経過し、制度疲労を起こしていることがあるのではないかと述べております。
 日本の警察はなぜこのように国民の信頼を失ったのでしょうか。その原因と、今後いかにして国民の信頼を回復するのか、その処方せんについて国家公安委員長の総括的な御所見を伺います。
 特に、昨年来、神奈川県警、新潟県警を初め、警察官の不祥事が相次ぎ、このまま放置すれば国民の治安の維持に重大な支障を生じるおそれがあり、早急な警察改革が要請されてきました。政府も、ようやく警察刷新会議の緊急提言を受けて、本法案が提出されたところです。
 我が会派としては、政府の前向きに取り組む姿勢には一応の敬意を表しつつも、本法案では、国民の警察に対する信頼関係を確立する観点から見ると甚だ不十分であり、残念ながら失望を禁じ得ません。
 一連の不祥事が警察官の綱紀のたるみにあることは論をまちません。そして、そのための警察の内部努力や自己改革は当然であります。しかし、今回の事態では、これだけで不祥事の背景となった警察の閉鎖性や甘えの体質、無謬性を打破することができないことが明らかになりました。
 国民は、警察に対する国民の監視の目を導入すること、そのために公安委員会の機能強化やさらなる情報公開を求めております。
 しかし、本法案ではその視点が極めて弱く、内容的にも不十分であると言わざるを得ません。民主党は、国民的視点から改革を進めるため、衆議院段階においてあえて対案を提出し、有識者の高い評価を得たところであります。
 以下、本法案と我が会派の主張の主な相違点を申し上げ、国家公安委員長の御所見をお聞きいたします。
 第一に、警察に対する監察機能の問題です。
 危機管理の専門家であり警察出身の佐々さんの言葉をかりますと、警察組織は日本が余りにも平和で豊かになった八〇年代ごろから腐り始めた、その主な理由としては、敵が存在しなくなり、ピラニアがいなくなった、シラスだけになったことが警察腐敗の原因ではないかと指摘されております。いずれの組織も、チェックのない組織は独善に陥り、腐敗し、堕落していくのが通例であります。
 今回の一連の警察不祥事においても、チェック機能が事実上麻痺していたところに大きな原因があります。したがって、このたびの警察制度の改革で一番重要なのは、警察行政に対していかにチェック機能をビルトインするかということであります。
 本法案では、監察について、公安委員会が警察に対して具体的、個別的事項の指示をすることができるとされておりますが、公安委員会が独自の職員を有するわけではなく、実際には警察の職員が補佐することとされております。監察される側が監察する側を補佐するのでは、十分な監察が期待できないのは自明の理でございます。これでは警察を第三者が直接監察する道を封じたことになり、身内に甘い、なれ合いの種を温存したと言わざるを得ません。
 私どもは、公安委員会に独自の事務局を置き、重大な不祥事については独自の監察機能を持たせることとしております。このような第三者による監察機能を公安委員会に持たせることにより、初めて警察に対するチェック機能が全うできるのではないでしょうか。いかがですか。
 第二に、警察に対する苦情処理の問題です。
 いわゆる桶川事件や栃木の石橋署事件など一連の不祥事において、苦情を聞いてもらえなかったとか文書を改ざんされ悲惨な結末となった事例も少なからずありました。もとより警察に対する苦情は、第一次的には警察署の窓口で受理し、誠実に対応し、解決されるべきものでありますが、これまでの事例から見て、これだけでは限界があります。
 本法案では、警察の窓口の相談を充実しながら、文書に限って公安委員会が受理することとなっております。しかし、公安委員会といっても独自の事務局はなく、結局警察の窓口で苦情を受け付けることになり、実態は従来とほとんど変わらないのではないでしょうか。
 我々は、公安委員会に事務局を持った苦情処理委員会を置き、苦情を言いたい国民の気持ちに即した処理を行うこととしております。
 苦情処理のあり方について御所見をお伺いいたします。
 第三に、警察情報の公開の問題です。
 警察情報が、プライバシーや捜査秘密にかかわるものなど公開すべきでない情報があることは事実でありますが、警察官の不祥事にかかわる情報などは、秘匿すればするほど国民の警察不信を招くものです。そうした観点から、特に警察は積極的に警察情報の公開に努めることを明示する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 また、警察情報の公開は、来年四月に施行される情報公開法において国家公安委員会と警察庁も対象となっており、同法では、地方公共団体もこの法律にのっとり情報公開に関して必要な施策を策定しなければならないとされております。
 これを受けて、自治体も、警察を公開対象に加える条例改正を進めておりますが、現在のところ、改正済みの都府県は十七にとどまっております。他の道府県においても速やかに改正を行うよう政府としても指導すべきであると考えますが、自治大臣としての御所見をお伺いいたします。
 宮城県では、情報公開条例の改正に当たって、県警本部長の第一次判断権を尊重する規定を明記しない知事の原案に対して、明記すべきであるとする警察本部との間に対立がありますが、県警の裁量権を広げれば、捜査上の秘密に名をかりて公表すべき情報まで隠されかねないとする知事の主張の方が正当性があると考えます。いかがお考えでしょうか。
 第四に、本法案の警察署協議会については、地域住民と警察との信頼関係を醸成する上で極めて重要な組織であると考えますが、この人選、運営次第によっては警察の御用機関になるなど形骸化するおそれが十分にあります。したがって、協議会の委員は、特定分野に偏ることなく、民意を十分に反映されるような人選をすること、議事は公開とするなどの配慮が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 次に、警察の組織、人員についてお尋ねいたします。
 戦後、我が国の混乱期においては、警察は警備、公安部門を中心として充実強化が図られてきました。その後、国情が安定してきた現在、国民生活に家庭内暴力、凶悪な少年犯罪、ストーカー事件等いろいろの問題が生じております。また、情報化、国際化等時代の変化に応じてサイバーテロ、国際犯罪等新たな問題も生じております。
 このような社会経済情勢の変化に対応して、管理部門や全国に一万人いる機動隊の人員の運用のあり方を含めて、警備、公安部門の人員を国民の身近な安全を守る地域の現場部門にシフトする等、組織の見直しと人員の再配置を図ることが重要ではないでしょうか、お尋ねいたします。
 警察庁は、来年度予算で地方警察官二千七百七十五名の増員を要求しておりますが、焼け太りではないかとの批判があります。人員の再配置と徹底的な合理化が進められることを前提に、警察官の増員は必要最小限にとどめるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、教育は人なりと言われますが、警察もまた人なりであります。警察刷新会議の緊急提言の結びに、「一連の不祥事を見るにつけ、国民に顔を向けず、組織の「上」ばかり見ている警察幹部が増えつつあるのではないかとの危惧を抱かずにはいられない。全警察職員は国民に奉仕するとの原点に立ち戻ってほしい。」と呼びかけております。反面、私は、きょうもなお第一線で多くの警察官が国民生活の安全のために黙々と職務に精励している姿を拝見しております。
 焦点となっているキャリア警察官については、現場重視の経験と自覚を促すとともに、従来のように警察本部長には最低昇進させるという安易な登用は排除し、厳格な選別を行うとともに、いわゆるノンキャリアの登用を積極的に行うべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 一般の警察官の人事、教育については、国民に奉仕するとの自覚の向上を図るとともに、信賞必罰を徹底し、意欲ある者が報いられる待遇や昇進システムを構築することにより、警察官が誇りと使命感を持って仕事ができるような環境を整えることが重要であると考えます。国民に信頼される警察職員のあり方について、国家公安委員長の決意をお聞きいたします。
 我々民主党は、警察に対する国民の信頼の回復を図るため、本法案の持つ多くの欠陥を指摘し、より実効性が上がる方策を提示してまいりました。
 本法案の抜本的な修正を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣西田司君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(西田司君) 菅川議員にお答えをいたします。
 中川前官房長官の捜査情報漏えい疑惑について、事実関係を十分調査の上、結果を公表すべきとのお尋ねでありますが、御指摘の捜査情報の漏えいに関する調査は捜査と密接に関係するものでありますので、このような場合、調査を行うかどうかなどについて申し上げることは、私としては適切でないと考えます。
 なお、一般論で申し上げれば、捜査の必要性があれば、法と証拠に基づき、警察において適正に対処するものと認識をいたしております。
 日本の警察が国民の信頼を失った原因と国民の信頼を回復するための処方せんについてお尋ねですが、昨年来、相次いで不祥事案が発生、発覚し、その中には組織のトップのあり方が問われた事案、国民の要望に警察がこたえていないという批判、こういう事案等があったことから、国民の警察に対する信頼が著しく損なわれたところであります。
 これら一連の不祥事案は、基本的には不祥事案を起こした個々の職員の職務倫理意識、あるいは幹部の指揮監督能力や管理能力の欠如に起因するところが大きいと考えております。
 また、警察刷新会議の提言におきましては、警察の閉鎖性、国民の批判や意見を受けにくい体質、時代の変化への対応能力の不足といった御指摘がなされたところであります。
 公安委員会及び警察としましては、これらの指摘に十分に耳を傾け、不祥事案の絶無を期し、国民の信頼の回復に全力を注がなければならないところであり、このため、警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化、国民のための警察の確立、新たな時代の要請にこたえる警察の構築、警察活動を支える人的基盤の強化について、対症療法にとどまらず、根本的な対策を推進していく必要があると考えております。
 公安委員会が独自に監察を行うことについてお尋ねでありますが、本来、公安委員会の役割は、個々具体的な警察事務の執行にみずから当たることなく、第三者的な立場から警察の事務の執行を監督することにあり、今後ともこの基本的な枠組みは維持すべきであることから、公安委員会が独自に監察を行うことは適当ではないと考えております。
 今回の政府提出の改正案では、現在の基本的枠組みを維持しつつ、公安委員会のイニシアチブによる具体的、個別的な監察の指示や、これを実効的に機能させるための監察担当委員等の仕組み、公安委員会に対する文書による苦情申し出制度等により、公安委員会の第三者機関的な監察点検機能の強化を図ることとしており、これによって厳正な監察が担保されるものと考えております。
 苦情処理のあり方についてお尋ねでありますが、苦情は本来、警察事務を執行する警察本部長以下で処理されることが基本であります。しかしながら、一連の不祥事において苦情が組織的に処理されていない事案が見られるところであり、そこで政府案においては、警察の第三者的管理機関である公安委員会に苦情の受理、処理及び処理結果の通知を責任を持って行わせようとするものであります。これにより、国民の信頼を得るに足る組織的かつ適切な苦情処理が行われるものと考えております。
 なお、苦情処理の適正化を図り、公安委員会の管理機能の強化を図るためには、国民と接する第一線における問題点が直接公安委員会に集約されることが望ましいものと考えております。
 警察の情報公開についてのお尋ねでありますが、国家公安委員会及び警察庁においては、警察刷新会議の緊急提言を受けて情報公開の推進に積極的に取り組むこととしております。また、国家公安委員会及び警察庁は、情報公開法の対象機関とされており、同法施行後は同法の規定に基づき適切に情報公開を実施していくこととしております。
 都道府県警察における情報公開については、各都道府県で判断すべき事項でありますが、情報公開法第四十一条において地方公共団体における情報公開の拡充について規定されていることなどから、現在までに十七都府県で警察を対象とする情報公開条例の改正が行われたところであります。
 また、警察庁においては、去る九月十四日に通達を発出し、情報公開条例の実務機関となっていない都道府県警察においては実施機関となる方向で検討を進めるよう指示したところであります。今後、そのような条例改正を行う道府県はさらに増加する見込みであります。
 以上のことから、警察法に警察の情報公開の推進に関する新たな規定は設けないこととしたものであります。
 都道府県において、警察を情報公開の対象とするための条例改正を行うよう指揮すべきとのお尋ねがありました。
 警察の情報公開の推進については、警察刷新会議の緊急提言においても指摘されており、同提言を踏まえ、警察庁から各都道府県警察に情報公開の推進を図る旨通知されているところであります。警察を情報公開の対象としていない道府県においても、情報公開法や通知の趣旨も踏まえ、情報公開の対象とする方向で検討を行っているものと承知をしております。私としても、このような検討が進むことを期待しており、必要な情報提供や助言を行ってまいりたいと考えております。
 宮城県の情報公開条例をめぐる問題についてのお尋ねでありますが、都道府県の情報公開条例にどのように規定を設けるかは各都道府県において判断されるべきものであると承知しております。
 今後、関係機関において十分な協議が尽くされ、情報公開と治安維持の双方の調和のとれた適切な解決が図られることを期待しておるものであります。
 なお、御指摘の第一次判断権の尊重についてでありますが、情報公開法においても、いわゆる公共安全情報については、外交・防衛情報と同じく行政機関の第一次的判断が尊重される規定とされております。すなわち、行政機関の判断が裁判で争われた場合には、行政機関の判断に合理性があるかどうかが審理され、合理性がないと判断されれば不開示決定は取り消されることとなります。したがって、公表すべき情報まで隠されかねないという議員の御懸念は当たらないものと考えております。
 警察署協議会についてのお尋ねでありますが、警察署協議会は、警察署の業務運営に地域住民の意向を反映させるために設置しようとするものであります。したがって、その委員の人選につきましては、地域住民の意向を代表して警察署の業務運営に関する意見、要望等を表明するにふさわしい方を公正に人選する必要があると考えております。このため、委員の委嘱は第三者的管理機関である公安委員会が行うこととしておりますが、その人選に当たっては、地域や所属組織等に偏りがないようにするとともに、自治会、自治体等の意見を聞いたり推薦を受けたりすることなどが必要であると考えております。
 また、その議事の公開については、警察署協議会が地域住民を代表して警察署の業務運営に関する意見、要望等を表明する機関であることにかんがみ、協議会における率直な意見の交換が害されないことなどに配慮しながら議事概要等の公表に努めてまいるものと承知をしております。
 組織の見直しと人員の再配置についてのお尋ねでありますが、議員御指摘のとおり、組織の見直しと人員の再配置については、警察を取り巻く社会情勢の変化等を踏まえて的確に行うべき課題であると認識をしております。
 先般、警察庁では各都道府県警察に対して人員の配置、運用の抜本的見直しを指示したところであり、現在、各都道府県警察において、すべての部門について業務のあり方や必要性を根本から見直し、国民の身近な要望等にこたえ、また、複雑多様化する警察事象に立ち向かうため、最も効果的な人員の配置、運用について検討が行われているものと承知をしております。
 なお、機動隊については、各種危機管理対応のための集団警備力の中核として、一定規模の体制は維持しなければならないと考えております。他方、従来から暴走族の一斉取り締まり等、その多角的運用にも鋭意努めているところであります。
 警察官の増員は必要最小限にとどめるべきとの御指摘がありました。
 警察庁では、平成十三年度予算概算要求において二千七百七十五人の地方警察官の増員を要求しておりますが、国及び地方の財政状況が極めて厳しい中、増員に対する理解を得るためには、その前提として業務のあり方や必要性にまで踏み込んだ徹底的な合理化と人員の再配置を推進する必要があると考えております。
 先ほども申し上げましたとおり、現在、各都道府県警察において徹底的な合理化と人員の再配置について検討が行われておりますが、警察官の増員についてはこの点十分に踏まえた上で対処すべきものと考えております。
 T種採用者等の人事管理の見直しについてのお尋ねでありますが、これにつきましては、緊急提言を踏まえ、警察改革要綱に盛り込み、改善に取り組んでいるところであります。T種採用者については、県警の課長として赴任するまでの期間を延伸させ、現場経験を十分させるとともに、警察本部長については、適格性についてより厳格に審査の上任命することとしたところであります。
 あわせて、都道府県警察採用の警察官についても、意欲と能力のある推薦者の警察本部長等への一層の登用を図ることとともに、それ以外の都道府県警察採用者についても、能力、実績に応じて枢要ポストにこれまで以上に登用することなど、適材適所の人事配置について努めてまいります。
 最後に、国民に信頼される警察職員のあり方について、私の決意を含め、お尋ねがございました。
 もとより警察は、国民の生命、身体及び財産を守るという大変大事な崇高な責任を負っており、この責務の遂行に当たっては、警察官一人一人がその職責を自覚して職務に邁進することが不可欠であると考えております。
 このため、議員御指摘のとおり、職務倫理、教育の充実を図るとともに、信賞必罰の徹底、厳しい勤務に従事する職員の処遇改善、能力、実績の適正な評価等を推進し、活力ある組織づくりに努めることが今最も重要であると考えております。
 これら諸施策を実現の上、一人一人の警察官が誇りと使命感を持って職務に精励することで国民の信頼を一日も早く回復できるよう、私としても警察庁を督励してまいる所存であります。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(福田康夫君) 菅川議員にお答えいたします。
 冒頭、中川前官房長官に関する御質問がございました。
 中川前官房長官は、国会における答弁においても、また辞任の際の記者会見においても、警察情報であることを明確に否定しているところであり、私としては改めて調査をする必要はないと考えております。
 ただいま国家公安委員長からも御指摘ございましたけれども、一般論として警察情報が漏えいするとは考えにくく、捜査の必要性があると判断されれば、捜査当局において法と証拠に基づいて適切に対応されるものと考えております。(拍手)
    ─────────────
#37
○議長(井上裕君) 富樫練三君。
   〔富樫練三君登壇、拍手〕
#38
○富樫練三君 私は、日本共産党を代表して、警察法改正案について質問いたします。
 今、我が国の警察行政の根本が問われております。問題の基本点はどこにあるのか、どう改革することが求められているのか、これらの問題に正面から回答を出すことが迫られております。
 昨年来の、神奈川県警本部長、新潟県警本部長、関東管区警察局長など、たび重なる警察の最高幹部の不祥事件は、「警察に自力更生はできるのか」、読売社説、「外部の力にゆだねよ」、朝日社説など、国民の警察不信を広げました。そして今、中川前官房長官問題が明らかとなり、これを一つの要因として、世論調査では内閣支持率が軒並み一〇%台を示すなど、危機的状況を示すに至ったのであります。
 そこで、まず、中川前官房長官問題の核心部分でもある捜査情報漏えい疑惑についてであります。
 昨年とことしだけでも、警察による個人情報漏えいに関する処分が十三件、二カ月に一回以上の割合で処分者が出ております。しかも、警視庁を初め、愛知、京都、大阪など全国に広がっています。これらは本来犯罪を捜査すべき警察が犯罪を犯していることであり、警察の根深い腐敗を示しています。
 さらに、今回の覚せい剤捜査情報の漏えい疑惑に政府高官が関与していたとなれば、内閣そのものの存立を危うくする重大事態であります。この疑惑が報道されてから既に三週間がたち、この間に三回の公安委員会の会議が開かれております。ところが、この情報漏えい疑惑に関して、警察庁からの国家公安委員会への報告もなし、国家公安委員会から調査の指示もなし、この問題に関する議論も一切行われておりません。
 国家公安委員会は、ことし一月に情報漏えい防止を指示した職務倫理及び服務に関する規則を大綱方針として定めております。このような重大な疑惑について本人も認めている以上、漏えい事件である可能性が大であります。これは一月に出した大綱方針違反であることは明らかであります。直ちに事実を調査し、結果の報告を求めるのは国家公安委員会として当然のことではありませんか。国家公安委員長、なぜ事実関係の調査と報告を警察庁に指示しないのですか。
 次に、改正案についてでありますが、まず警察に対する外部監察についてです。
 この間の不祥事件は、警察が警察をチェックするという身内による監察は全く体をなしていなかったことを浮き彫りにしました。警察庁は神奈川県警の覚せい剤事件隠ぺいなど不祥事件を契機に特別監察を実施しました。ところが、新潟県警に特別監察に行った関東管区警察局長の監察が空監察であったばかりか、監察当日の夜、九年余りにわたって行方不明となっていた少女が発見されたにもかかわらず、監察される側の県警本部長と監察する側の関東管区局長が雪見酒とかけマージャンに興じていたという驚くべき事実が明らかになりました。ところが、警察庁長官はこの関東管区局長を処分なしで退職させるという措置で済ませ、国家公安委員会は会議も開かず持ち回りで警察庁の言うままに追認してしまったのです。
 この不祥事への国民の非難を受けて、本改正案では、国家公安委員会が警察に対して具体的、個別的な事項について監察の指示と点検を行えることとし、補佐官をつけることができることとしました。このことをもって公安委員会が第三者的役割を果たすなどとしています。しかし、公安委員会ができるのは指示と点検だけであって、実際に監察を行う権限は依然として警察にあります。補佐官も警察職員です。身内による監察から一歩も出ていないのであります。
 結局、警察への外部からの監察はかたくなに拒否し、公安委員会といえども警察の内部には一歩も踏み込ませないということではありませんか。これでは今までと基本的に変わりありません。政府は、外部監察を行わない理由として、捜査と密接に関連しているなどの理由を挙げていますが、これらは守秘義務の徹底等で解決するものです。なぜそんなにかたくなに外部監察を拒否するのですか。
 日本共産党は、公安委員会が監察権を持ち、そのもとに警察出身ではない監察委員を配置し、独自に監察を行うことを提案しています。こうしてこそ初めて国家公安委員長の言う第三者的役割を果たすことになるのではありませんか。
 一連の事件は、警察に対する公安委員会の管理機能が全く働いていなかったことを明らかにするとともに、公安委員会を警察から独立させることの重要性を浮き彫りにしました。
 第一に、今回の改革によって委員補佐官室が設置されても、警察庁が国家公安委員会の事務を行うことに変わりはありません。補佐官の任命権者は警察庁長官であり、警察から独立した事務局ではありません。結局、国家公安委員会の規則の起案も警察に任され、警察なしには何一つできない仕組みは何も変わりません。
 我が党は、公安委員会のもとに、庶務部門及び監察、苦情処理などを扱い、任命権者を公安委員会とし、警察から完全に独立した事務局を置くことを提案しています。こうしてこそ公安委員会が警察を管理することができるのではありませんか。
 第二に、公安委員の人選も重要です。
 国民の代表者で構成する国会のチェックを受けることは、警察の言いなりにならない公安委員会をつくる最小限の保障です。委員任命に当たって事前に任命予定者に議会の関係委員会での意見表明を行う、いわゆる指名聴聞制度が必要だと考えますが、いかがですか。
 第三に、公安委員会の実質常勤化についてです。
 新潟の事件以降も、桶川事件、栃木の暴行殺人事件、情報漏えい事件、多数のストーカー事件など、毎日のように警察の関連記事が新聞などで報道されています。監察や苦情処理に関する報告や処理だけでも、一週間に一度、二時間程度の会議だけでは対応不可能です。この際、二千六百十三万円という年俸にふさわしく、実質常勤化するために、週一回会議を開くと定めた国家公安委員会運営規則を改正するのは当然だと考えますが、いかがですか。
 最後に、情報公開について伺います。
 この間の不祥事件は、警察の隠ぺい体質が警察犯罪を生み、広げ、悪質化させ、警察行政を憲法や警察法の精神から大きく逸脱させてきたことを示しています。今、警察の刷新に求められているのは、徹底した情報公開であります。
 本法案では、情報公開については来年四月施行の情報公開法によることを前提としています。その情報公開法では、犯罪の予防や公共の安全等に「支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」事項も不開示とされており、警察庁長官や県警本部長などの拡大解釈を果てしなく認める規定になっています。これでは、捜査に支障を及ぼすおそれがあるとして、ほとんどの情報が不開示とされ、情報公開法の効果を半減させることになります。
 総務庁長官及び国家公安委員長に伺います。
 情報公開法施行の前に、この「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」という部分を削除し、犯罪の予防や公共の安全等に支障のない限り原則公開とすべきではありませんか。
 以上、警察を改革する上で、これら肝心の問題にメスを入れないで済ますことはできません。このことは本法案に対する衆議院での審議を通じて一層明らかになりました。明確な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣西田司君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(西田司君) 中川前官房長官の捜査情報漏えい疑惑について、事実関係調査を指示すべきであるとのお尋ねでありますが、御指摘の捜査情報の漏えいに関する調査は捜査と密接に関連するものでありますので、このような場合、調査を行うかどうかなどについて申し上げることは、私としては適切でないと考えております。
 なお、一般論で申し上げれば、捜査の必要性があれば、法と証拠に基づき、警察において適正に対処するものと認識をいたしております。
 公安委員会と監察に関するお尋ねですが、今回の政府提出の改正案は、都道府県警察職員の懲戒事案にかかわる事案の公安委員会への報告義務、公安委員会に対する文書による苦情申し出制度等により、職務執行の問題点の把握という面における公安委員会の管理機能を強化するとともに、公安委員会による具体的、個別的な監察の指示、公安委員会が指名する委員による当該指示の履行状況の点検等により、不祥事発生時の適正な処理に当たっても公安委員会が十分なる第三者的監察点検機能を発揮できるようにするものであり、御指摘は当たらないものと考えております。
 いわゆる外部監察についてお尋ねですが、今回の政府提出の改正案は、警察の組織や業務に精通している必要があること、それから不祥事の調査は捜査活動と密接に関連すること、監察と人事の緊密な連携が必要であることなどから、外部監察を導入することは適当でないと考えます。
 組織の改革に当たっては自浄能力を高めることこそが重要であり、今回の政府提出の改正案は、こうした観点から公安委員会の警察を管理する本来の機能を強化しようとするものであります。
 公安委員会が独自に監察を行うことについてお尋ねですが、本来公安委員会の役割は、個々具体的な警察事務の執行にみずから当たることなく、第三者的立場から警察の事務の執行を監督することにより、今後ともこの基本的枠組みは維持すべきであることから、公安委員会が独自に監察を行うことは適当ではないと考えております。
 今回の政府提出の改正案では、現在の基本的枠組みを維持しつつ公安委員会の第三者機関的な監察点検機能の強化を図ることとしており、これによって厳正な監察が担保されるものと考えております。
 公安委員会の独立の事務局についてお尋ねがありました。
 公安委員会の独立事務局につきましては、事務局と警察庁、警察本部の二重構造はむだと効率の低下を生み出し、屋上屋を架す結果となることから、適当でないと考えます。また、現在の公安委員会制度には、事務局が介在しないことにより、警察からの情報がスムーズに公安委員会に上がり、公安委員会の意見に対して警察が直ちに対応することができるなどの長所があるものと考えております。
 このような考え方から、警察庁では警察刷新会議の緊急提言を踏まえ、国家公安委員会の事務局的機能を果たす課並みの委員補佐官室の新設を行うほか、各委員に補佐官を置くことを検討しているところであります。また、都道府県警察本部においても、所要の体制の整備や公安委員会事務担当スタッフの増強等を図ることにより、真に効果的な補佐体制が確立されるものと考えております。
 公安委員会の委員任命に当たって、事前に任命予定者に議会の関係委員会での意見表明を行う制度の導入についてお尋ねがありました。
 国家公安委員会の委員は内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命することとされておりますが、これは内閣の治安責任を明確化するとともに、委員の選任に当たって最終的に国民の代表たる国会が関与することにより警察に対する民主的コントロールを及ぼそうとするものと承知をいたしております。御指摘のような、委員の選任に当たって両議院の同意を得ることを要する場合の仕組みは国会において慎重に検討されるべきものと承知をしております。
 国家公安委員会の勤務についてのお尋ねでありますが、国家公安委員会にあっては現在週一回の定例会議を行っておりますが、警察事象は時、所を問わず発生していることから、定例会議のほか、突発事案や重大事件等、夜間、休日とも必要な報告を受けております。国家公安委員会規則では、議決を要する場として、定例会議のほか、必要がある場合の臨時会議に関する規定を設けており、現時点で規則を改正する必要はないと考えております。
 最後に、情報公開法施行の前に、この「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」という部分を削除し、犯罪の予防や公共の安全等に支障のない限り原則公開すべきではないかというお尋ねがありましたが、情報公開法は、いわゆる公共安全情報について、外交・防衛情報と同様、司法審査の場において行政機関の長の第一次的判断を尊重すると規定されております。
 これは、公共安全情報は、犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められること、諸外国においても法の適用または司法審査の関係で他の情報とは異なる特別の考慮が払われている場合が少なくないことから措置されたものであり、警察活動に支障を生じさせないために必要な規定であると考えております。
 また、行政機関の長の判断が裁判で争われた場合には、裁判所はその判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうかを審理することとなるので、行政機関の恣意的な判断が許されることはないと理解をしております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣続訓弘君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(続訓弘君) 富樫議員の情報公開に関する御質問にお答え申し上げます。
 同法は、行政情報の実情や諸外国の制度について広範に調査した上で立案したものでございます。特に、犯罪捜査等の情報につきましては、その性質上、開示、不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するという特殊性が認められるものでございます。
 諸外国の法制におきましても、不開示情報のうち犯罪捜査等に関する情報につきましては、その特殊性から特別の配慮が行われております。このため、犯罪捜査等の情報につきましては、公にすることにより公共の安全や秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるときには不開示とする旨、規定したものであります。したがいまして、犯罪捜査等情報の特殊性から、現行の規定は必要なものであると考えております。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
#41
○議長(井上裕君) 照屋寛徳君。
   〔照屋寛徳君登壇、拍手〕
#42
○照屋寛徳君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、警察法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 国民が安全で安心できる暮らしを送る上で、警察は重要な役割を担っております。しかし、神奈川県警に始まる一連の警察不祥事によって、警察組織や警察幹部に対する信頼は低下し、警察そのものの役割に対する疑問が出ているのは極めて残念であり、憂慮すべき事態であります。
 神奈川県警では、元警察官の覚せい剤使用事件や本部長らによる組織ぐるみの証拠隠滅、犯人隠避事件など、次々と警察官による犯罪、不祥事が露見し、ついには元本部長の検挙という前代未聞の事件にまで発展いたしました。
 一連の不祥事を契機に、警察庁は各県警へ特別監察を実施しました。しかしながら、新潟県警では、本部長が少女監禁事件の捜査指揮を放棄し、特別監察に訪れた関東管区警察局長と接待マージャンに興じたばかりか、特別監察も空監察であったことが明るみになりました。その後も、桶川事件をめぐる埼玉県警上尾署、リンチ殺人事件をめぐる栃木県警石橋署の対応等々、警察に訴えて助けを求めたのに、警察の不作為と捜査ミスが事件を拡大させ、被害者の人命を奪う悲惨な事件が相次ぎました。
 これら一連の事件は決して偶発的なものではありません。戦後、警察が抱えてきた構造的な問題であり、その根源にメスを入れなければ真の警察再生はあり得ません。この点についての国家公安委員長の御見解を伺います。
 私は、一連の不祥事の教訓として、警察行政が国民の日常的監視、監督から遮断されたことで聖域化され、組織防衛を何よりも優先してきたことや警察の自浄能力の欠如を指摘したいと考えます。警察の情報公開についても、捜査情報であるとの理由で不必要に公開範囲を狭めてきた体質を改めるべきであると考えます。不正をチェックするには、不正が存在するという情報が必要であります。イギリスの公益開示法のように、内部告発者を保護する法整備を行うよう提起いたします。その上で、警察情報の公開に関する総務庁長官の見解を賜ります。
 新潟県警では警察による自己監察が無意味であり、警察を管理する公安委員会が本来担うべき民主的コントロールが建前にすぎず、形骸化している実態が明らかになりました。警察は間違ったことをしない、あるいは間違ったことをしたと認める必要はないとする警察無謬観に基づいて、警察の不正を警察自身がチェックする監察制度自体の機能不全や無意味さも明らかになりました。
 しかしながら、警察刷新会議の提言は、第三者による外部監察を否定するなど踏み込み不足は否めず、一線で働く警察官の声も聞こえてきません。これは、本来国民的な警察改革の議論を行うべきであったのにもかかわらず、刷新会議の事務局を改革の対象である警察庁が務め、委員の人選も警察庁が行ったことによる限界であると考えます。その証拠に、警察を挙げて不祥事根絶に立ち向かっているにもかかわらず、警視庁の個人情報流出事件、大分県警佐伯署の調書偽造疑惑事件、警視庁碑文谷署警部補による犯人隠匿容疑事件など、警察の不祥事がマスコミをにぎわせているのではないでしょうか。国家公安委員長の御所見を賜ります。
 さて、刷新会議の提言を踏まえた警察法一部改正案も、公安委員会の独自の事務局の設置を見送るなど、極めて不十分であります。最大の問題は、公安委員会及び警察以外の第三者機関による外部監察を否定していることであります。しかも、会計検査院や総務庁行政監察局のような、警察行政をチェックする機関も本来の任務を果たしておりません。警察署協議会の設置や苦情の処理と回答義務の明記など、国民と警察との接点を制度化するのであれば、イギリスの警察不服審査庁やアメリカの警察監視委員会などにならい、外部の第三者による警察監視システムを設けるべきであると考えます。外部監察制度の導入についての国家公安委員長の御見解を伺います。
 また、警察行政にどのような問題があったのかを明らかにすることも総務庁行政監察局の重要な役割です。既に行政監察に着手していると伺っていますが、総務庁長官の見解を伺います。
 さて、警察の不作為や捜査ミスの発生の一つの原因として、捜査現場の人員の少なさや第一線警察官の過重労働が指摘されております。地域住民の安全の確保のために空き交番の解消を図ることは理解できます。しかし、警備公安警察のあり方や機動隊に対する大胆な見直しもないままの警察官の増員は、焼け太りと言われても過言ではなく、果たして国民の理解が得られるのか疑問であります。
 私は、警察の権限自体の分散化が今必要である、同時に、民事分野に不当な介入を図ることは厳に慎むべきであると考えますが、国家公安委員長の御見解を伺います。(「もう時間だ」と呼ぶ者あり)まだあります、時間は。
 次に、警察の装備、それから警察委員会の設置についての国家公安委員長の御見解を求めます。
 最後に、一連の不祥事によって、今や警察制度改革は一刻たりとも猶予できない状態となっております。今こそ緊急に改革を行うとともに、警察制度を根本的に見直すことも視野に入れるべきであります。一連の不祥事の反省に立ち、国民的監視のもと、警察が真に市民生活の安全の守り手として国民からの信頼を回復されることを願って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣西田司君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(西田司君) 神奈川県警察等における不祥事案についてお尋ねがございました。
 昨年来相次いで発生、発覚した不祥事案により国民の警察に対する信頼が著しく損なわれたことはまことに遺憾であり、残念であります。これら一連の不祥事案は、基本的には不祥事案を起こした個々の職員の職務倫理意識あるいは幹部の指揮監督能力や管理能力の欠如に起因するところが大きいと考えております。
 また、警察刷新会議の提言において、警察の閉鎖性、国民の批判や意見を受けにくい体質、時代の変化への対応能力の不足といった御指摘がなされたところであります。
 公安委員会及び警察としましては、これらの指摘に十分耳を傾け、不祥事案の絶無を期し、国民の信頼回復に全力を注がなければならないところであり、このため、警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化、国民のための警察の確立、新たな時代の要請にこたえる警察の構築、警察活動を支える人的基盤の強化について、対症療法にとどまらず、根本的な対策を推進していく必要があると考えております。
 警察刷新会議の提言についてお尋ねでありますが、同会議は一連の不祥事を契機として国家公安委員会が人選し、その求めに応じ発足したものであり、会議の進め方や論点はすべて会議のメンバーの御判断にゆだねられたものであります。また、刷新会議においては、電子メールにより国民の御意見等を受け付けるとともに、二度にわたり地方公聴会を開催して国民各層の幅広い声を直接聴取することに努め、その上で「警察刷新に関する緊急提言」を取りまとめられたものと承知をいたしております。
 緊急提言に盛り込まれた施策は、緊急に実行に移されるべき具体的な提案であり、制度的に問題の解決を図ろうとするものであると理解をいたしております。国家公安委員会としては、提言を重く受けとめ警察改革要綱を取りまとめたわけでありますが、要綱を初めとする全体の改革施策の実現にこれから全力を挙げ、国民の警察に対する信頼の回復に努めてまいる決意でございます。
 次に、いわゆる外部監察についてのお尋ねでありますが、警察に係る監察は、警察の組織や業務に精通している必要があること、不祥事の調査は捜査活動と密接に関連すること、監察と人事の緊密な連携が必要であることなどから、外部監察を導入することは適当でないと考えます。
 組織の改革に当たっては自浄能力を高めることこそが重要であり、今回の政府提出の改正案はこうした観点から公安委員会の警察を管理する本来の機能を強化しようとするものであります。
 警察活動の民事分野への介入と警察の権限の分散化についてのお尋ねでございます。
 民事上の法律関係の問題は、当事者間の協議や民事裁判によって解決が図られることが原則であります。しかしながら、このことは契約が詐欺に当たるときなど民事上の問題であるとともに、犯罪行為に該当する場合や、暴力団が介入し、放置しておけば個人の生命、身体、財産に被害が及び、あるいは公共の安全と秩序の維持に支障が生ずる場合等に警察が関与することを否定するものではなく、このような場合には、警察は犯罪捜査を行ったり相談に応じ必要な助言を行うなど、その責務の範囲内で適切に対処していく必要があると考えております。
 また、警察は法律の根拠を有する種々の権限を行使しておりますが、これらの権限は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するという警察の任務を達成するために必要なものとして与えられたものであり、これらの権限が適正に行使されるべきことは当然であると考えております。
 警察官の人権問題等についてお尋ねでありますが、これまでも警察においては、警察官に強い実力行使の権限が与えられていること等にかんがみ、警察学校や職場において、各種警察活動における職務執行に際して、人権への配意に徹底を期するよう教育、指導しているところであります。今後とも、この問題の重要性にかんがみ、教育、指導をさらに充実強化してまいることとしております。
 また、警察官の団結権等については、警察に与えられた責務を全うするため、必要な職務上の組織の一体性や指揮系統の確保の観点から、国家公務員法、地方公務員法等において禁止されているものと承知をいたしております。
 なお、警察においては、職員の処遇や業務の改善に生かすため、職員同士の意思疎通を図る場として警察職員協議会等を設けているところであり、今後、一層こうした制度の活性化に努めてまいる所存であります。
 最後に、中川前官房長官の捜査情報漏えい疑惑について、国家公安委員会は事実解明のために個別具体的な指示を出すべきであるとのお尋ねでありますが、それは、先ほどお答えを繰り返しておることと変わりはございません。このような場合、調査を行うかどうかにつきましては、私としては、適切ではない、今ここで申し上げることは適切ではないと、こう考えております。
 なお、一般論で申し上げれば、捜査の必要性があれば、法と証拠に基づき、警察において適正に対処するものと認識をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣続訓弘君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(続訓弘君) 照屋議員の御質問にお答え申し上げます。
 私には、警察情報の公開についての見解と、行政監察の役割と警察行政に係る行政監察についてのお尋ねがございました。
 まず、情報公開法は国家公安委員会及び警察庁を対象機関としているところであり、警察情報の公開につきましても、同法の規定に従って積極的に推進していく必要があると考えております。
 また、総務庁の行政監察は、政府部内において第三者的な立場から行政の実態と問題点を把握し、国民の目線に立って必要な勧告を行うことをその使命としております。
 総務庁では、全国各地において警察の不祥事案が相次いだ事態を受け、不祥事案の発生時対策、不祥事案の未然防止対策、特別監察の実施状況など、警察庁の実施する不祥事案対策の実効を確保する観点から行政監察を実施中でございます。現在、その取りまとめを急いでいる段階でありますが、実地調査等を通じて把握した不祥事案対策の浸透状況等を踏まえ、警察に対する国民の信頼回復のため、改善方策を勧告したいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
#45
○議長(井上裕君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#46
○議長(井上裕君) 日程第一 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長太田豊秋君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔太田豊秋君登壇、拍手〕
#47
○太田豊秋君 ただいま議題となりました家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本年、我が国では九十二年ぶりとなる口蹄疫の発生が確認され、その蔓延防止措置の実施過程で家畜の屠殺処分等の課題が明らかとなり、また、海外からの口蹄疫の侵入防止策を強化する必要が生じております。
 本法律案は、このような状況に対処し、より効果的かつ効率的な家畜防疫制度を構築しようとするものであります。
 このため、患畜となるおそれがある家畜の移動禁止期間及び口蹄疫等の発生時における通行制限、遮断期間を延長するほか、患畜等の屠殺処分及び焼却、埋却を家畜防疫員みずから行えるようにするとともに、指定検疫物等の対象に穀物のわら及び飼料用の乾草を追加する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、畜産をめぐる環境の変化に対応した家畜防疫体制のあり方、口蹄疫の感染源、感染経路の解明と粗飼料の輸入検疫状況、家畜伝染病の防疫措置に関する国民への周知及び民間協力の確保、海外悪性伝染病に関する情報収集と発生防止のための国際協力、畜産経営の大規模化に伴う蔓延防止措置のあり方と経営支援対策、国産稲わらの飼料向け利用の促進等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し四項目にわたる附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#48
○議長(井上裕君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#49
○議長(井上裕君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#50
○議長(井上裕君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一  
  賛成           二百三十一  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#51
○議長(井上裕君) 日程第二 著作権等管理事業法案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。文教・科学委員長市川一朗君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔市川一朗君登壇、拍手〕
#52
○市川一朗君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教・科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、著作権に関する仲介業務についての許可制度を廃止し、著作権及び著作隣接権の管理事業について登録制度を実施するとともに、使用料規程に関する協議及び裁定の制度を設けること等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、著作権等管理事業者と利用者との使用料規程に関する協議と行政のかかわり方、指定著作権等管理事業者に関する協議・裁定制度の円滑な運用、本法律案と独占禁止法との調整問題等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#53
○議長(井上裕君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#54
○議長(井上裕君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#55
○議長(井上裕君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十九  
  賛成           二百二十九  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#56
○議長(井上裕君) 日程第三 民事再生法等の一部を改正する法律案
 日程第四 外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案
  (いずれも内閣提出)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長日笠勝之君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔日笠勝之君登壇、拍手〕
#57
○日笠勝之君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、民事再生法等の一部を改正する法律案は、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に窮境にある個人債務者の経済生活の再生を迅速かつ合理的に図るための再生手続の特則を設けるとともに、国内で開始された破産手続等の効力を債務者の外国財産に及ぼす等の措置を講じようとするものであります。
 次に、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律案は、外国倒産処理手続について、その効力を日本国内において適切に実現するための承認援助手続を創設することにより、国際的に整合のとれた債務者の財産の清算または経済的再生を図ろうとするものであります。
 委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、個人債務者の破産件数の推移、住宅資金特別条項における弁済繰り延べの方法、事件数に対応する裁判所の態勢整備、国際倒産法制の整備の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、順次採決の結果、両法律案は、いずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両法律案に対して附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#58
○議長(井上裕君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#59
○議長(井上裕君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#60
○議長(井上裕君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十七  
  賛成           二百二十七  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#61
○議長(井上裕君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時散会
     ─────・─────

ソース: 国立国会図書館
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